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特表2024-543161進行性線維化を伴う間質性肺疾患を治療するための、新たな経口医薬組成物及び投与レジメン
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  • 特表-進行性線維化を伴う間質性肺疾患を治療するための、新たな経口医薬組成物及び投与レジメン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】進行性線維化を伴う間質性肺疾患を治療するための、新たな経口医薬組成物及び投与レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20241112BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P11/00
A61K9/28
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024531320
(86)(22)【出願日】2022-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2022084968
(87)【国際公開番号】W WO2023104958
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/287,642
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21218202.6
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22177750.1
(32)【優先日】2022-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘスリンガー クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】バウアー ベレーナ
(72)【発明者】
【氏名】ボッセルト セバスティアン マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラウス ペーター
(72)【発明者】
【氏名】コーバー スーザン
(72)【発明者】
【氏名】リウ イー
(72)【発明者】
【氏名】サルノ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴォス フロリアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA44
4C076BB01
4C076CC15
4C076DD38
4C076DD41
4C076EE32
4C076FF02
4C076FF04
4C076FF21
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB26
4C086MA01
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、本質的に、
●18mg又は9mgの用量の式IIIのPDE4B-阻害剤及び、
●任意に、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤からなる、1種又は複数の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者の処置に使用するための経口医薬組成物に関わり、この経口医薬組成物は、患者に1日2回投与されるべきである。本発明は、式IIIのPDE4B-阻害剤を18mg又は9mgの用量で含み、及び、ニンテダニブ又はピルフェニドンから選択される治療有効用量の第2の活性成分を含む、経口医薬組成物にさらに関わり、これらの経口医薬組成物は、患者に1日2回投与される。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に、18mgの式IIIのPDE4B-阻害剤と、
【化1】
任意に、1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤とからなる、1種又は複数の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者の処置に使用するための経口医薬組成物であって、患者に1日2回投与される、経口医薬組成物。
【請求項2】
1種又は複数の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、請求項1に記載の経口医薬組成物。
【請求項3】
フィルム-コーティング錠である、請求項1又は2の少なくとも1項に記載の経口医薬組成物。
【請求項4】
本質的に、18mgの式IIIのPDE4B-阻害剤と、任意に、1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤とからなる、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬組成物を製造するための、式IIIのPDE4B-阻害剤の使用であって、
【化2】
経口医薬組成物が、患者に1日2回投与される、使用。
【請求項5】
進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、請求項4に記載の式IIIのPDE4B-阻害剤の使用。
【請求項6】
経口医薬組成物が、フィルム-コーティング錠である、請求項4又は5の少なくとも1項に記載の式IIIのPDE4B-阻害剤の使用。
【請求項7】
式IIIのPDE4B-阻害剤を18mgの用量で唯一の活性剤として含み、
【化3】
1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含んでもよい、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬組成物であって、患者に1日2回投与される、経口医薬組成物。
【請求項8】
進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、請求項7に記載の経口医薬組成物。
【請求項9】
フィルム-コーティング錠である、請求項7又は8の少なくとも1項に記載の経口医薬組成物。
【請求項10】
式IIIのPDE4B-阻害剤を18mgの用量で唯一の活性剤として含み、1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含んでもよい、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬組成物を製造するための、式IIIのPDE4B-阻害剤の使用であって、
【化4】
経口医薬組成物が、患者に1日2回投与される、使用。
【請求項11】
進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、請求項10に記載の式IIIのPDE4B-阻害剤の使用。
【請求項12】
経口医薬組成物が、フィルム-コーティング錠である、請求項10又は11の少なくとも1項に記載の式IIIのPDE4B-阻害剤の使用。
【請求項13】
進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置する方法であって、式IIIのPDE4B-阻害剤を唯一の活性剤として18mgの用量で含み、
【化5】
1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含んでもよい経口医薬組成物を患者に1日2回投与するステップを含む、方法。
【請求項14】
進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
経口医薬組成物が、フィルム-コーティング錠である、請求項13又は14の少なくとも1項に記載の方法。
【請求項16】
進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置する方法であって、本質的に、18mgの式IIIのPDE4B-阻害剤と、
【化6】
任意に、1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤とからなる経口医薬組成物を患者に1日2回投与するステップを含む、方法。
【請求項17】
進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
経口医薬組成物が、フィルム-コーティング錠である、請求項16又は17の少なくとも1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.1 ホスホジエステラーゼ及び線維症におけるその役割
ホスホジエステラーゼ(PDE)は、セカンドメッセンジャー、環状アデノシン一リン酸(cAMP)又は環状グアノシン一リン酸の加水分解を媒介する。PDEは、複数の遺伝子を含有し、およそ100種のPDEアイソフォームが引き起こされる選択的mRNA-スプライシングバリアントも生じる11種の遺伝子スーパーファミリーによりコード化(サブタイプA、B、Cなどをコード化)される。PDE4は以前から、炎症の制御及び免疫担当細胞の調節に関係づけられており、現在利用できる3種の選択的PDE4阻害剤により、炎症性及び/又は自己免疫性疾患におけるPDE4阻害剤の有益な役割が裏付けられる(Sakkas et al., 2017, Curr. Med. Chem. 24, 3054-3067; Li et al., 2018, Front. Pharmacol. 9, 1048)。ファーストインクラスのPDE4阻害剤である経口ロフルミラスト(Daliresp(登録商標)、Daxas(登録商標))は、慢性気管支炎に関連する重度COPD及び増悪の病歴が認められる患者におけるCOPD増悪の危険性を低下させると、2011年に米国食品医薬品局により承認された(U.S. Food & Drug Administration, 2013, DALIRESP(R) (roflumilast))。別の化合物である経口アプレミラスト(Otezla(登録商標))は、乾癬性関節炎及びプラーク乾癬の処置について2014年に承認された(U.S. Food & Drug Administration, 2017, OTEZLA(R) (apremilast))。第3のPDE4阻害剤であるクリサボロール(Eucrisa(登録商標))は、軽度から中等度のアトピー性皮膚炎の局所処置について2016年に承認された(U.S. Food & Drug Administration, 2016, EUCRISATM (crisaborole))。これらの中で、PDE4サブタイプA~Dの4種のうち何らかの優先的な酵素阻害を示すものはない。
【0002】
PDE4阻害の一般的な抗炎症能力は、ロフルミラストが例示となるように、十分に確立されており(Hatzelmann et al., 2010, Pulm. Pharmacol. Ther. 23, 235-256)、様々な炎症性及び免疫介在性疾患におけるPDE4阻害剤の使用は、広く調査されている(Sakkas et al., 2017, Curr. Med. Chem. 24, 3054-3067; Li et al., 2018, Front. Pharmacol. 9, 1048)。しかし、この10年間で、PDE4は、線維芽細胞におけるPDE4阻害剤の機能的役割を評価する動物研究に、またin vitro実験に基づき、線維症においても重要な役割を果たし得ることがますます明らかになってきている。PDE4阻害剤による肺線維症の減衰は、げっ歯類でのブレオマイシンに誘導された線維症において最も幅広く、様々な実験条件下で実証された。ラットモデルでは、ロリプラムは、線維化スコア、ヒドロキシプロリン含有量、及び血清腫瘍壊死因子-α(TNF-α)を阻害することを示した(Pan et al., 2009, Respirology 14, 975-982)。この初期研究では、PDE4阻害剤は、ブレオマイシン負荷の開始から投与されたので、初期の炎症の阻害又は続発する線維症の阻害により、ロリプラムが主に活性であるかどうかが明らかにならなかった。しかし、マウス及びラットでの第2の早期研究では、経口ロフルミラストが、用量依存的手法にて、予防及び治療プロトコールの両方で活性であることが示された(Cortijo et al., 2009, Br. J. Pharmacol. 156, 534-544)。肺抽出物では、ロフルミラストは、組織学的に評価した線維症、ヒドロキシプロリン含有量、並びにTNF-α、トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)、結合組織成長因子(CTGF)、α1コラーゲン、エンドセリン-1及びムチン5acのmRNA発現を阻害した。気管支肺胞洗浄液(BALF)では、TNF-α、インターロイキン(IL)-13、TGF-β及びムチン5acのレベル、脂質ヒドロペルオキシドの形成、並びに炎症細胞(例えば好中球及びマクロファージ)の流入が阻害された。線維症以外に、右心室肥大及び血管リモデリング(肺動脈)が、ロフルミラストにより好影響を受けた。同一のグループは、後に、ブレオマイシンマウスにおける肺線維症に関連するメタボロームが、ロフルミラストにより調節されたことも実証した。コラーゲン形成/構造に関与するアミノ酸(AA)グリシン及びプロリンのレベルは、ロフルミラストにより低下した一方、肺グルタチオン及び血漿テトラヒドロビオプテリンは増加し、これにより、ロフルミラストによる酸化的平衡における変化が示唆された(Milara et al., 2015, PLoS One 10, e0133453)。別のPDE4阻害剤であるシロミラストは、後期段階の肺線維症を阻害し、ブレオマイシンマウス中のコラーゲン含有量を減少させるが、TGF-β1及びコラーゲンタイプ(Col)1A1発現に対する効果は見出されない傾向があると示されている(Udalov et al., 2010, BMC Pulm. Med. 10, 26)。
【0003】
PDE4阻害による肺線維症の改善は、ブレオマイシンモデルに限定されなかった。マウスのサーファクタントタンパク質Cプロモーターの制御下で、ジフテリア毒素受容体を発現するトランスジェニックマウスにおけるII型肺胞上皮細胞を標的化した肺線維症のマウスモデルでは、ロフルミラストが、肺ヒドロキシプロリン含有量、並びにTNF-α、フィブロネクチン(FN)及びCTGFのmRNA発現を減少させた(Sisson et al., 2018, Physiol. Rep. 6, e13753)。興味深いことに、ロフルミラストは、予防レジメンにおいて、及び治療レジメンにおいての両方で活性であり、後者の条件下で、ピルフェニドン及びニンテダニブと治療的に等効力と思われた。さらに、慢性移植片対宿主病のマウスモデルでは、肺線維症は、経口ロフルミラストにより減弱された(Kim et al., 2016, Exp. Hematol. 44, 332-341.e334)。ロフルミラストは、線維症、コラーゲン沈着、ヒドロキシプロリン及びTGF-β1含有量、細胞浸潤並びにIL-6及びIL-1βのmRNAの発現を阻害した。さらに、BALF炎症細胞(マクロファージ、リンパ球、好中球及び好酸球)では、IL-6、IL-1β及び単球走化性タンパク質-1のmRNAの発現は、ロフルミラストにより阻害された。ウサギ結核モデルでは、肺の損傷及び線維症は、Celgeneからの2種のPDE4阻害剤、CC-3052(Subbian et al., 2011, Am. J. Pathol. 179, 289-301)及びCC-11050(Subbian et al., 2016, EBioMedicine 4, 104-114)により阻害されたことが示された。PDE4阻害は、コラーゲン沈着、及びメタロプロテアーゼ12を含む様々なマトリックスメタロプロテアーゼのmRNA発現に好影響を与えることにより抗生物質療法及び肺線維症を改善した。
【0004】
肺以外に、PDE4阻害の線維症に対する有益な効果は、皮膚、肝臓、腎臓及び結腸を含むいくつかの他の器官で実証されている。例えば、SScの様々な前臨床マウスモデルでは、皮膚線維症がブレオマイシン又はトポイソメラーゼIにより誘導され、慢性移植片対宿主病は、ロリプラム及びアプレミラストにより阻害された(Maier et al., 2017, Ann. Rheum. Dis. 76, 1133-1141)。このグループは、SScが認められる患者の線維芽細胞及びその患者の末梢血液から精製したM2マクロファージにおいて、線維化を促進するサイトカイン(IL-6、IL-13、TGF-β1/β2)の放出に対する、PDE4阻害の直接的な阻害効果を見出していなかったが、これは、使用される実験条件下での外因性cAMPトリガー(exogenous cAMP trigger)の欠乏による可能性がある。マウスにおける片側尿管閉塞に誘導された閉塞性腎症のモデルでは、ロリプラムは、間質性腎線維症を阻害することが示された(Ding et al., 2017, Antioxid. Redox Signal. 29, 637-652)。in vitroのマウス初代尿細管上皮細胞では、TGF-βは、PDE4A/Bを上方調節し、ロリプラムは、TGF-βに誘導された損傷、FN発現、及びミトコンドリア新生不全を阻害した。ロフルミラストは、ラットにおいて、ジエチルニトロソアミンに誘導された肝線維症、ヒドロキシプロリン沈着及びTGF-β1発現を阻害した(Essam et al., 2019, Life Sci. 222, 245-254)。同様に、ロリプラムは、ラットにおいて胆管結紮に誘導された肝線維症モデルでは、PDE4A、B及びDを上方調節して、コラーゲン沈着、α-平滑筋アクチン(α-SMA)の染色とmRNA発現、並びにTGF-β1 mRNA及びTNF-αタンパク質の発現を阻害した(Gobejishvili 2019)。in vitroの肝臓星細胞では、ロリプラムは、α-SMA及びCol1A2のmRNA発現を阻害した(Gobejishvili et al., 2013, J. Pharmacol. Exp. Ther. 347, 80-90)。結腸組織に関しては、ロリプラムは、ラットにおいてトリニトロベンゼンスルホン酸に誘導された結腸炎のモデルでは、コラーゲン及びTGF-β1を阻害し(Videla et al., 2006, J. Pharmacol. Exp. Ther. 316, 940-945)、アプレミラストは、マウスにおいてデキストラン硫酸ナトリウムに誘導された潰瘍性大腸炎のモデルでは、結腸における線維症、コラーゲン沈着、及び線維症に関連した遺伝子の発現を阻害した(Li et al., 2019, Br. J. Pharmacol. 176, 2209-2226)。マウスの盲腸擦過モデルでは、ロリプラムは、線維形成反応を阻害し、これにより、PDE4阻害は、術後腹腔内癒着を予防する能力を有することが指し示された(Eser et al., 2012, Dis. Colon Rectum 55, 345-350)。癒着は、異常治癒による開腹手術に起因すると想定される。この想定の裏付けとして、ロリプラムは、マウスにおける皮下又は腹腔内ポリエーテル-ポリウレタンスポンジインプラントモデルでは、インプラント内のコラーゲン及びTGF-β1沈着を阻害することにより活性であると示された(Mendes et al., 2009, Microvasc. Res. 78, 265-271)。したがって、様々な動物モデルで、肺においてだけではなくいくつかの他の器官においてきわめて広範囲にわたって、選択的PDE4阻害の線維症に対する有益な影響が証明された。線維性疾患におけるPDE4阻害剤の特異的標的は大部分が知られていないが、PDE4阻害剤は、炎症誘発性細胞及び伝達物質の阻害を経由して間接的に、並びに/又は線維症を媒介する典型的なエフェクター細胞(線維芽細胞、筋線維芽細胞)の阻害により直接的に作用すると推測したくなる。
【0005】
PDE4阻害剤による様々な線維芽細胞機能の直接的調節は、ヒト起源の線維芽細胞の細胞株で実証された。Kohyamaらは、PDE4阻害剤のin vitroでの線維芽細胞に対する直接的影響を実証した(Kohyama et al., 2004, Clin. Immunol. 111, 297-302)。ヒト胎児肺線維芽細胞(HFL-1)では、ロリプラム及びシロミラストは、FNに誘導された走化性及びコラーゲンゲルの収縮を阻害した。プロスタグランジンE2(PGE2)による線維芽細胞機能の阻害は、PDE4阻害剤の存在下で左にシフトし、インドメタシンによる内因性PGE2の阻害は、効果が低下した(Kohyama et al., 2002, Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 26, 694-701)。シロミラストによる線維芽細胞の細胞株HFL-1機能の阻害は、IL-1β(PGE2を上方調節し、シロミラスト曲線を左にシフトした)、又はIL-4(PGE2を下方調節し、シロミラスト曲線を右にシフトした)のようなサイトカインにより調節できた。ロリプラム及びロフルミラストによるHFL-1機能(FNに刺激された走化性及びコラーゲンゲル収縮)の阻害は、シクロオキシゲナーゼ-2発現、及び後続のPGE2合成に依存していた(Kohyama et al., 2002, Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 26, 694-701)。さらに、TGF-β1に刺激されたFNの放出は、正のフィードバック機構としてのPGE2放出の刺激と並行して、PDE4阻害剤により阻害された(Togo et al., 2009, Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol. 296, L959-L969.)。別のヒト胎児肺線維芽細胞株(GM06114)では、ロフルミラストの活性代謝物であるロフルミラストN-オキシドは、PGE2の存在下で、TNF-αにより刺激される細胞間接着分子-1及びエオタキシン放出、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)とIL-1βにより刺激される増殖、並びに、IL-1βの存在下で、TGF-β1に誘導されたα-SMA、CTGF及びFNのmRNA発現を阻害することを示した(Sabatini et al., 2010, Pulm. Pharmacol. Ther. 23, 283-291)。重要なことには、IL-1βは、PDE4の活性を上方調節した。
【0006】
通常のヒト肺線維芽細胞(NHLF)では、PDE4阻害剤の影響は、いくつかの公報に記載されている。α-SMA発現により評価された、TGF-βに誘導された線維芽細胞から筋線維芽細胞への変換は、PGE2の存在下で、ピクラミラストにより阻害されることが示されている(Dunkern et al., 2007, Eur. J. Pharmacol. 572, 12-22)。同一のグループは、後続の論文で、IL-1βとbFGFにより刺激された線維芽細胞増殖のピクラミラストによる阻害、並びにシクロオキシゲナーゼ-2及びPGE2の重要性を示した(Selige et al., 2010, J. Cell. Physiol. 223, 317-326)。PDE4サブタイプに特異的なsiRNAを使用することにより、この応答におけるPDE4B及びPDE4Aの関与、並びにTGF-βに誘導されたα-SMA発現におけるPDE4B及びPDE4Dの関与が示された(Selige et al., 2011, J. Cell. Physiol. 226, 1970-1980)。PDE4阻害により線維芽細胞機能を調節するためのcAMPトリガーの重要性は、TGF-β1に誘導されたCTGF mRNA及びα-SMAタンパク質発現の、並びに長時間作用性β2-アドレナリン作動薬インダカテロールの存在下でのFNの、ロフルミラストによる阻害で裏付けられた(Tannheimer et al., 2012, Respir. Res. 13, 28)。さらに、ブレオマイシン又は8-epi-PGF2αにより刺激された様々な他のNHLF応答(コラーゲン合成、増殖、活性酸素種及びF2-イソプロスタン形成、NADPHオキシダーゼ4発現)は、ロフルミラストN-オキシドにより阻害された(Vecchio et al., 2013, Mediators Inflamm. 2013, 745984)。さらに別のヒト肺線維芽細胞モデル(WI-38)では、アデニルシクラーゼ活性化物質フォルスコリンの存在下で、TGF-βに誘導されたコラーゲンα1、CTGF及びFNのmRNA発現は、ロフルミラスト及び別のPDE4阻害剤(化合物1)(Sisson et al., 2018, Physiol. Rep. 6, e13753)、並びに、2種選択性(dual-selective)PDE4/5阻害剤(化合物A)(Muraki et al., 2019, Biosci. Biotechnol. Biochem. 83, 1000-1010)により阻害された。
【0007】
したがって、多数のin vitro研究で、PDE4阻害剤は、内因性又は外因性cAMPトリガーのどちらが試験系に利用できるかどうかを問わず、様々な線維芽細胞機能を直接的に阻害することが可能であると指し示されている。cAMPアゴニストの可用性は、人工的in vitro条件下では限定され得るが、病的状態(炎症、線維化)組織では、PGE2、アデノシン、ヒスタミン又はアドレナリンのようなcAMPアゴニストが形成され得ると予想され得る。そのような条件下でのPDE4の重要性は、サイトカイン、例えばIL-1βによるPDE4活性の上方調節によりさらに向上させることができる。
【0008】
線維症の別の興味深い態様の調節である上皮間葉転換は、in vitroでのTGF-β1に刺激されたA549ヒト肺胞上皮細胞株で取り組まれた。TGF-β1は、PDE4サブタイプ(PDE4A及び4D)の上方調節を刺激し、ロリプラム及びsiRNAは、FN及びコラーゲンmRNA発現のような上皮間葉転換変化を阻害したが、α-SMA mRNAを阻害しなかった(Kolosionek et al., 2009, Mol. Biol. Cell 20, 4751-4765)。
【背景技術】
【0009】
1.2 進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)
間質性肺疾患(ILD)は、閉塞性気道疾患、例えば喘息又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)と識別される、間質に影響を与える肺疾患の異質群を含む。長期化したILDは、肺線維症を引き起こし得るが、常にそうとは限らない。最も広範に研究されているILDは、特発性肺線維症(IPF)であり、これは進行性肺線維症により特徴付けられる。非IPF ILDは、結合組織疾患関連ILD、例えば関節リウマチ及び他の自己免疫性疾患に関連するもの、全身性強皮症関連ILD(SSc-ILD)、及び多発性筋炎/皮膚筋炎、並びに慢性サルコイドーシスに関連するILD、慢性過敏性肺臓炎、特発性非特異的間質性肺炎、並びに曝露関連疾患、例えば石綿肺症及び珪肺症を含み得る(Cottin et al, . Eur. Respir. Rev. 28, 180100; Kolb, M., and Vasakova, M. (2019), Respir. Res. 20, 57)。これらのILDが認められる患者の40%までが、進行性線維化の表現型を発症し得る。
【0010】
進行性線維化ILDは、高い死亡率に関連し、IPFが認められる患者における診断後生存率の中央値は、2~5年と推定されている(Raghu, G., Chen, S.Y., Yeh, W.S., Maroni, B., Li, Q., Lee, Y.C., and Collard, H.R. (2014). Idiopathic pulmonary fibrosis in US Medicare beneficiaries aged 65 years and older: incidence, prevalence, and survival, 2001-11. Lancet Respir. Med. 2, 566-572)。線維化ILDの進行は、肺機能の減退、運動能力の低下、クオリティオブライフの劣化、咳及び呼吸困難の悪化、急性増悪、並びに形態学的異常の亢進を含む様々なパラメーターで反映される(Cottin et al. Eur. Respir. Rev. 28, 180100, 2019; Kolb and Vasakova, 2019, Respir. Res. 20, 57)。IPFが認められる患者では、努力肺活量(FVC)は、十分に確立された死亡の予測因子であり、急性増悪は、きわめて高い死亡率に関連する。副腎皮質ステロイド及び/又は免疫抑制薬は、進行性線維化ILDを処置するために適応外使用されることがあるが、IPFにおいて疾患進行を遅くする現在唯一の承認された処置は、ニンテダニブ及びピルフェニドンである(Richeldi et al., 2018, Eur. Respir. Rev. 27, 180074)。ニンテダニブは、米国で2014年から(U.S. Food & Drug Administration, 2020, OFEV(R) (nintedanib))、また欧州及び日本で2015年から承認されている(European Medicines Agency, 2021b, OFEV(R) (nintedanib))が、ピルフェニドンは、日本で2008年、欧州で2011年(European Medicines Agency, 2021a, Esbriet (pirfenidone))、また米国で2014年(U.S. Food & Drug Administration, 2019, ESBRIET(R) (pirfenidone))に承認されている。肺移植は、IPFに対して唯一の治療的に可能性のある処置であり、IPF及び他の進行性線維化ILDにおける医学的需要は高いままである。
【0011】
しかし、FVCの軽度又は中等度の障害(≧50%と予測される)を有するIPFが認められる患者では、現在承認されている薬物ピルフェニドン及びニンテダニブの両方が、FVCの減退を低下させることしかできず、疾患進行を遅くするのと同じであったが、両方とも、IPFの症状を止める、又はさらに好転させる、若しくは癒やすことは不可能であった(Tzouvelekis et al Ther. Clin. Risk Management 2015, 11, 359-370)。
それにも関わらず、ピルフェニドンを用いた、又はニンテダニブを用いた処置選択肢のどちらも、IPF疾患進行を遅くするのに著しい有益な効果を示す。
ニンテダニブ及びピルフェニドンの両方に関連する最も顕著な副作用は、胃腸事象、特に下痢、悪心、嘔吐、腹痛、食欲減退及び体重減少である。胃腸の副作用が生じるケースでは、これらは通常、処置の中断、用量減少、又は胃腸の副作用の対症療法により管理される(Mazzei et al, Ther. Adv. Respir. Dis. 2015, Vol. 9 [3], pp. 121-129を参照されたい)。
【0012】
一方ではピルフェニドンの、また一方ではニンテダニブのこうした「累積的な胃腸の副作用」のため、ピルフェニドン及びニンテダニブの組合せによるIPFの組合せ処置は、頻繁には使用されない。調査は、ピルフェニドン及びニンテダニブを用いた組合せ処置は、胃腸の副作用、詳細には下痢、悪心、嘔吐及び上腹部痛の亢進につながることを示した(Vancheri et al., nintedanib with Add-on pirfenidone in Idiopathic Pulmonary Fibrosis: Results of the INJOURNEY Trial. Am J Respir Crit Care Med. 2017, Epub ahead of print)。
結果として、これまでにIPFを処置するために承認された活性剤ピルフェニドン及びニンテダニブの両方が、単体で投与された場合、IPFを止める、又は癒やすことが不可能であるが、その代わり、IPF疾患進行をあるパーセンテージに遅くすることだけはできることで(Tzouvelekis et al Ther. Clin. Risk Management 2015, 11, 359-370)、また、さらにニンテダニブ及びピルフェニドンの両方が、著しい胃腸の副作用を示し、副作用は両方の化合物が組み合わせられた場合に累積することで、IPF/PF-ILDを処置する改善した方法、詳細には改善した治療薬の効能(ケア処置の標準と比較して)を、詳細には胃腸の副作用に関して、許容できる耐容性/安全性と組み合わせた、IPF/PF-ILDを処置する改善した方法の著しい医学的需要が依然としてある。
【0013】
1.3 特許文献
承認されたPDE4阻害剤ロフルミラスト及びアプレミラストに加えて、改善した性質を有する他のPDE4阻害剤を記載する多くのさらなる特許出願が公開されている:
●WO2006/056607、WO2006/058869、WO2006/058868及びWO2006/058867ではPDE4-阻害剤としてのプテリジン。
●WO2006/111549、WO2007/118793及びWO2009/050242ではPDE4-阻害剤としてのピペリジノ-ジヒドロチエノピリミジン。
●WO2009/050248及びWO2013/026797ではPDE4-阻害剤としてのピペリジノ-ジヒドロチエノピリミジン。
【発明の概要】
【0014】
式IのPDE4-阻害剤
【化1】
及び式IIのPDE4-阻害剤
【0015】
【化2】
及び詳細には、式IIの化合物のR-鏡像異性体である式IIIのPDE4-阻害剤
【0016】
【化3】
は、WO2013/026797で開示されている。式I、II及びIIIのPDE4-阻害剤は、PDE4Bサブタイプを優先的に阻害することが示されている。
WO2019/081235は、ヒト肺線維芽細胞を使用したin vitroアッセイで、線維芽細胞増殖に関する過剰付加的な相乗的効果を示すニンテダニブ及び式IIIのPDE4-阻害剤の組合せについて開示している。
【0017】
したがって、WO2013/026797とWO2019/081235のどちらも、ヒトPF-ILD/IPF-患者、詳細には許容できる胃腸の有害事象/副作用において、優れた治療効能(単体で、並びにニンテダニブ処置又はピルフェニドン処置であるケア処置の標準と組み合わせて)、及び許容できる耐容性/安全性プロファイルの両方を組み合わせた、式IIIのPDE4-阻害剤の経口組成物及び/又は投与レジメンについて開示していない。
しかし、一方ではPF-ILD、好ましくはIPFの処置について満足できる治療効能、また一方では許容できる耐容性/安全性を両方とも組み合わせた、投与を伴う経口組成物及び投与レジメンのみで、十分な服薬遵守につながり、それにより患者に対する適正なPF-ILD/IPF-治療につながる。
結果として、本発明の課題は、PF-ILD患者、好ましくはIPF患者の処置について満足できる治療効能、及び許容できる耐容性/安全性プロファイルの両方を組み合わせた、好適な用量の式IIIのPDE4阻害剤を含む経口組成物及びその投与レジメンを提供することであり、これにより、十分な服薬遵守につながる。
【0018】
本発明のこの課題は、IPF患者(フェーズII)での、単体で、又は、ケアIPF-処置の標準(ニンテダニブ又はピルフェニドンを用いる)と組み合わせた、式IIIのPDE4-阻害剤の効能、安全性及び耐容性を評価する12週間にわたる臨床トライアルの結果により解決され、これにより、式IIIのPDE4阻害剤を含む新たな経口医薬組成物が得られた。
【化4】
PF-ILD患者の処置に使用するための、好ましくはIPF患者の処置に使用するための18mg又は9mgの用量で、この経口医薬組成物は、前記PF-ILD患者、又は好ましくはIPF患者に1日2回投与される(b.i.d.)。
好ましい実施形態では、式IIIのPDE4-阻害剤は、PF-ILD患者、好ましくはIPF患者に、18mgの用量で1日2回投与される。
2. 本発明の記載
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の態様では、本発明は、式IIIのPDE4B-阻害剤を、18mg又は9mgの用量で含む、1種又は複数の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)の処置に使用するための、経口医薬組成物に関わり、
【化5】
【0020】
この経口医薬組成物は、患者に1日2回投与される。
好ましい実施形態では、式IIIのPDE4-阻害剤は、PF-ILD患者、好ましくはIPF患者に、18mgの用量で1日2回投与される。
上で言及されている経口医薬組成物の好ましい実施形態では、1種又は複数の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)は、特発性肺線維症(IPF)である。
上で言及されている経口医薬組成物のさらなる好ましい実施形態では、この経口医薬組成物は、フィルム-コーティング錠である。
【0021】
さらなる態様では、本発明は、本質的に、
●9mgの用量の式IIIのPDE4B-阻害剤
【化6】
及び、
●任意に、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤からなる、1種又は複数の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者、より好ましくはディオパシック(diopathic)肺線維症(IPF)に罹患した患者の処置に使用するための、経口医薬組成物に関わり、この経口医薬組成物は、患者に1日2回投与される。
【0022】
より好ましい実施形態では、本発明は、本質的に、
●18mgの用量の式IIIのPDE4B-阻害剤
【化7】
及び、
●任意に、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤からなる、1種又は複数の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)の処置に使用するための、より好ましくは特発性肺線維症(IPF)の処置に使用するための、経口医薬組成物に関わり、
この経口医薬組成物は、患者に1日2回投与される。
本明細書では、これらの経口医薬組成物は、本質的に、18mg又は9mgの用量の式IIIのPDE4B-阻害剤、及び、任意に、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤からなり、これは、1日2回投与されるべきであり、好ましくはフィルム-コーティング錠である。
【0023】
別の好ましい実施形態では、本発明は、
●式IIIのPDE4B-阻害剤を、唯一の活性剤として、
【化8】
9mgの用量及び、
●任意に、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤を含む、1種又は複数の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者、より好ましくは特発性肺線維症(IPF)に罹患した患者の処置に使用するための、経口医薬組成物に関わり、
この経口医薬組成物は、患者に1日2回投与される。
【0024】
別の好ましい実施形態では、本発明は、
●式IIIのPDE4B-阻害剤を、唯一の活性剤として、
【化9】
18mgの用量及び、
●任意に、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤を含む、1種又は複数の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者、より好ましくは特発性肺線維症(IPF)に罹患した患者の処置に使用するための、経口医薬組成物に関わり、
この経口医薬組成物は、患者に1日2回投与される。
【0025】
本明細書では、式IIIのPDE4B-阻害剤を、上で言及されている用量の9mg又は18mgで唯一の活性剤として含み、また、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤を含んでもよい、これらの経口医薬組成物は、好ましくはフィルム-コーティング錠である。
第2の態様では、本発明は、本質的に、18mg又は9mgの用量の式IIIのPDE4B-阻害剤、及び、任意に、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤からなる、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬組成物を製造するための、式IIIのPDE4B-阻害剤の使用に関わり、
【0026】
【化10】
前記経口医薬組成物は、前記患者に1日2回投与されるべきである。
【0027】
上で言及されている使用の好ましい実施形態では、式IIIのPDE4B-阻害剤は、PF-ILD患者、好ましくはIPF患者に、18mgの用量で1日2回投与される。
本質的に、18mg又は9mgの用量の式IIIのPDE4B-阻害剤、及び、任意に、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤からなる、PF-ILDに罹患した患者を処置するための経口医薬組成物を製造するための、式IIIのPDE4B-阻害剤の上で言及されている使用の好ましい実施形態では、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)は、特発性肺線維症(IPF)である。
本質的に、18mg又は9mgの用量の式IIIのPDE4B-阻害剤、及び、任意に、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤からなる、PF-ILDに罹患した患者を処置するための経口医薬組成物を製造するための、式IIIのPDE4B-阻害剤の上で言及されている使用のさらに好ましい実施形態では、経口医薬組成物は、フィルム-コーティング錠である。
【0028】
第3の態様では、本発明は、
●18mg又は9mgの式IIIのPDE4B-阻害剤
【化11】
●治療有効用量のニンテダニブ及び、
●任意に、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤を含む、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬組成物に関わり、
この経口医薬組成物は、前記患者に1日2回投与される。
【0029】
好ましい実施形態では、本発明は、
●18mg又は9mgの式IIIのPDE4B-阻害剤
【化12】
及び
●150mgのニンテダニブ及び、
●任意に、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤を含む、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬組成物に関わり、
この経口医薬組成物は、前記患者に1日2回投与される。
【0030】
別の好ましい実施形態では、本発明は、
●18mg又は9mgの式IIIのPDE4B-阻害剤
【化13】
及び
●100mgのニンテダニブ及び、
●任意に、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤を含む、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬組成物に関わり、
この経口医薬組成物は、前記患者に1日2回投与される。
【0031】
上で言及されている経口医薬組成物のさらなる好ましい実施形態では、処置される進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)は、特発性肺線維症(IPF)である。
第4の態様では、本発明は、18mg又は9mgの式IIIのPDE4B-阻害剤を含む、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬を製造するための、治療有効用量のニンテダニブを含む別の経口医薬と組み合わせた(バックグラウンド処置として)式IIIのPDE4B-阻害剤の使用に関わり、
【0032】
【化14】
それによって、18mg又は9mgの式IIIのPDE4B-阻害剤を含む前記経口医薬が、患者に1日2回投与される。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明は、18mg又は9mgの式IIIのPDE4B-阻害剤を含む、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬を製造するための、150mgのニンテダニブを含む別の経口医薬と組み合わせた(バックグラウンド処置として)式IIIのPDE4B-阻害剤の使用に関わり、
【化15】
それによって、式IIIのPDE4B-阻害剤を含む前記経口医薬が、患者に1日2回投与される。
【0034】
別の好ましい実施形態では、本発明は、18mg又は9mgの式IIIのPDE4B-阻害剤を含む、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬を製造するための、100mgのニンテダニブを含む別の経口医薬と組み合わせた(バックグラウンド処置として)式IIIのPDE4B-阻害剤の使用に関わり、
【化16】
それによって、式IIIのPDE4B-阻害剤を含む前記経口医薬が、患者に1日2回投与される。
好ましい実施形態では、上で言及されている経口医薬は、特発性肺線維症(IPF)の処置に使用される。
【0035】
第5の態様では、本発明は、
●18mg又は9mgの式IIIのPDE4B-阻害剤
【化17】
●治療有効量のピルフェニドン及び、
●任意に、1種又は複数の、医薬として許容できる担体又は賦形剤を含む、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための、経口医薬組成物に関わり、この経口医薬組成物は、前記患者に1日2回投与される。
好ましい実施形態では、上で言及されている経口医薬組成物は、特発性肺線維症(IPF)の処置に使用される。
【0036】
第6の態様では、本発明は、18mg又は9mgの式IIIのPDE4B-阻害剤を含む、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬を製造するための、治療有効用量のピルフェニドンを含む別の経口医薬と組み合わせた(バックグラウンド処置として)式IIIのPDE4B-阻害剤の使用に関わり、
【化18】
それによって、式IIIのPDE4B-阻害剤を含むこの経口医薬は、患者に1日2回投与される。
【0037】
本明細書では、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)は、好ましくは特発性肺線維症(IPF)である。
本明細書では、別の経口医薬におけるピルフェニドンの治療有効用量(バックグラウンド処置として)は、好ましくは801mg~2403mgの一日用量である。
第7の態様では、本発明は、
●18mg又は9mgの式IIIのPDE4B-阻害剤を含む第1の医薬組成物又は剤形を含み、
【化19】
また、1種又は複数の、医薬として許容できる担体及び/又は賦形剤を含んでもよく、
且つ
●100mg又は150mgの用量のニンテダニブを含む第2の医薬組成物又は剤形を含み、
また、
●1種又は複数の、医薬として許容できる担体及び/又は賦形剤を含んでもよい、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するためのキットに関わり、第1及び第2の医薬組成物の両方が、1日2回投与されるべきである。
【0038】
好ましい実施形態では、上で言及されているキットは、特発性肺線維症(IPF)の処置に使用される。
上で言及されているキットのさらなる好ましい実施形態では、第1の医薬組成物又は剤形は、第2の医薬組成物又は剤形と一斉に、同時に、順次に、連続して、交互に又は別々に投与されるべきである。
第8の態様では、本発明は、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するためのキットであって、
●18mg又は9mgの式IIIのPDE4B-阻害剤を含む、第1の医薬組成物又は剤形を含み、
【0039】
【化20】
また、1種又は複数の、医薬として許容できる担体及び/又は賦形剤を含んでもよく、
且つ
●治療有効用量のピルフェニドンを含む第2の医薬組成物又は剤形を含み、
また、
●1種又は複数の、医薬として許容できる担体及び/又は賦形剤を含んでもよい、キットに関わり、
第1の治療用組成物又は剤形は、1日2回投与されるべきである。
【0040】
上で言及されているキットの好ましい実施形態では、キットは、特発性肺線維症(IPF)に罹患した患者の処置に使用される。
上で言及されているキットのさらなる好ましい実施形態では、第1の医薬組成物又は剤形は、第2の医薬組成物又は剤形と一斉に、同時に、順次に、連続して、交互に又は別々に投与されるべきである。
上で言及されているキットのさらなる好ましい実施形態では、第2の医薬組成物又は剤形は、ピルフェニドンを267mgの用量で含み、1日3回又は534mgの用量で投与され、1日3回又は801mgの用量で投与され、1日3回投与される。
上で言及されているキットの別の好ましい実施形態では、第2の医薬組成物又は剤形は、ピルフェニドンを801mg~2403mgの一日用量で含む。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】「非AF群」での努力肺活量(FVC)におけるベースライン[ml]からの変化に対する調整平均(SE)を記載する図である。「非AF群」では、処置の12週間後、FVCにおける、「Form. IIIのComp.群」(=「活性剤群」)と「プラセボ群」との間における、ベースラインからの変化の差は、101.7ml(MMRM)であった。塗り潰された三角形として描写されているデータポイントを伴う曲線は、「Form. IIIのComp.」(「活性剤群」を意味する)を受けた群を表し、白抜きの三角形として描写されているデータポイントを伴う破線の曲線は、「プラセボ」を受けた群を表す。
図2】完全「AF群」(「抗線維化バックグラウンド薬物療法群としてのニンテダニブ」+「抗線維化バックグラウンド薬物療法群としてのピルフェニドン」)での、努力肺活量(FVC)におけるベースライン[ml]からの変化に対する調整平均(SE)を記載する図である。完全「AF群」では、処置の12週間後、「Form. III群のComp.」(=「活性剤群」)と「プラセボ群」との間でのFVCにおけるベースラインからの変化の差は、80.4ml(MMRM)であった。塗り潰された三角形として描写されているデータポイントを伴う曲線は、「Form. IIIのComp.」(「活性剤群」を意味する)を受けた群を表し、白抜きの三角形として描写されているデータポイントを伴う破線の曲線は、「プラセボ」を受けた群を表す。
図3】ニンテダニブを抗線維化バックグラウンド薬物療法として得た(「ニンテダニブ抗線維化バックグラウンド薬物療法群としての」)「AF群」の一部での、努力肺活量(FVC)におけるベースライン[ml]からの変化に対する調整平均(SE)を記載する図である。ニンテダニブを抗線維化バックグラウンド薬物療法として得た「AF群」の一部では、処置の12週間後、「Form. III群のComp.」(=「活性剤群」)と「プラセボ群」との間でのFVCにおけるベースラインからの変化の差は、105.43ml(MMRM)であった。塗り潰された三角形として描写されているデータポイントを伴う曲線は、「Form. IIIのComp.」(「活性剤群」を意味する)を受けた群を表し、白抜きの三角形として描写されているデータポイントを伴う破線の曲線は、「プラセボ」を受けた群を表す。
図4】ピルフェニドンを抗線維化バックグラウンド薬物療法として得た(「ピルフェニドン抗線維化バックグラウンド薬物療法群としての」)「AF群」の一部での、努力肺活量(FVC)におけるベースライン[ml]からの変化に対する調整平均(SE)を記載する図である。ピルフェニドンを抗線維化バックグラウンド薬物療法として得た「AF群」の一部では、処置の12週間後、「Form. III群のComp.」(=「活性剤群」)と「プラセボ群」との間でのFVCにおけるベースラインからの変化の差は、61.30ml(MMRM)であった。塗り潰された三角形として描写されているデータポイントを伴う曲線は、「Form. IIIのComp.」(「活性剤群」を意味する)を受けた群を表し、白抜きの三角形として描写されているデータポイントを伴う破線の曲線は、「プラセボ」を受けた群を表す。
図5】「プールしたAFバックグラウンド」(=「非AF群」+完全「AF群」)での、努力肺活量(FVC)におけるベースライン[ml]からの変化に対する調整平均(SE)を記載する図である。「プールしたAFバックグラウンド」では、処置の12週間後、「Form. III群のComp.」(=「活性剤群」)と「プラセボ群」との間でのFVCにおけるベースラインからの変化の差は、88.38ml(MMRM)であった。黒丸として描写されているデータポイントを伴う曲線は、「Form. IIIのComp.」(「活性剤群」を意味する)を受けた群を表し、白丸として描写されているデータポイントを伴う破線の曲線は、「プラセボ」を受けた群を表す。
図6】12週目での(MMRM)、完全「AF群」(=「抗線維化」)、「非AF群」(=「抗線維化なし」)及び「プールしたAFバックグラウンド」(=「全患者」)での、努力肺活量(FVC)におけるベースライン[ml]からの調整平均(SE)の変化を記載する図である。
【0042】
3. 臨床トライアル
3.1 臨床トライアルの詳細な説明
研究は、募集時に少なくとも年齢40歳の、特発性肺線維症(IPF)が認められる成人にオープンとした。抗線維化薬を含むIPFに標準的な薬を摂取する人々に、研究の間それらを摂取させ続けた。
【0043】
研究の目的は、式IIIのPDE4阻害剤が、肺機能の悪化を遅くすることができるかどうかを見出すことであった。
【0044】
【化21】
参加者は、約4カ月研究に参加した。この時間中、参加者は研究施設を約7回訪れた。開始時に、参加者は研究施設を2週間おきに訪れた。処置の1カ月後、参加者は研究施設を4週間おきに訪れた。
【0045】
参加者を機会により(by chance)2群(「活性剤群」及び「プラセボ群」)に分けた。12mgの式IIIの化合物を含む錠剤1錠、及び6mgの式IIIの化合物を含む錠剤1錠(「活性錠剤」は18mg単回投与となる、表1を参照されたい)を第1群の患者に1日2回(b.i.d.)経口的に投与した。12mgプラセボ錠1錠及び6mgプラセボ錠1錠(両方とも活性成分を含有しない、表1を参照されたい)を第2群の患者に1日2回(b.i.d.)経口的に投与した。プラセボ錠は、活性成分(=式IIIの化合物)の錠剤のように見える。
【0046】
【表1】
「活性剤群」及び「プラセボ群」を、バックグラウンド薬物療法に関する2つの異なる群:「AF群」(「抗線維化バックグラウンド薬物療法群」)及び「非AF群」(「非抗線維化バックグラウンド薬物療法群」)にさらに分けた。「非AF群」の一部の患者は、トライアル中にニンテダニブ又はピルフェニドンの抗線維化バックグラウンド薬物療法(認可されている用量及び投与レジメン)を受けず(18mg用量をb.i.d(=1日2回)での式IIIのPDE4B阻害剤、又はb.i.d(1日2回)でのプラセボが単体で投与されたことを意味する)、「AF群」の一部の患者は、トライアル中にニンテダニブ又はピルフェニドンの抗線維化バックグラウンド薬物療法を受けた(18mg用量をb.i.d(=1日2回)での式IIIのPDE4B阻害剤、又はb.i.d(1日2回)でのプラセボが、ニンテダニブ又はピルフェニドンと組み合わせて投与されたことを意味する)。バックグラウンド薬物療法としてのニンテダニブ及びピルフェニドンの両方の組合せは、「AF群」には許可されなかった。
【0047】
参加者は、研究訪問の際に肺機能テスト(「努力肺活量(FVC)」)を行った。肺機能テストにおける変化の結果を、「活性剤群」と「プラセボ群」(「AF群内及び「非AF群」内の両方)との間で比較した。医師は、参加者の全般的健康も定期的に確認した。
【0048】
研究のために、以下の組み入れ基準が認められる147名のIPF患者を補充した:
●インフォームドコンセントに署名する時点で年齢≧40歳の患者。
●診断:訪問1回目の12カ月以内に撮られた胸部高解像度コンピューター断層撮影スキャン(HRCT)スキャン、及び利用できる場合は外科的肺生検に基づいて治験責任医師が確認して、2018 ATS/ERS/JRS/ALAT指針に基づくIPF。
並びに
IPFが見出される不明確なHRCTが、(過去の)生検により局所的に確認され得る場合、訪問2回目*の前に中央判定により確認して、IPFの臨床診断と一致する通常型間質性肺炎(UIP)又は高確率でUIPのHRCTパターン
●訪問1回目の前に少なくとも8週間安定。
●患者は:
- 訪問1回目の前に少なくとも8週間、ニンテダニブ又はピルフェニドンを用いた治療に参加していてはならない(ニンテダニブとピルフェニドンの組合せは許可されていない)
又は
- 訪問1回目の前に少なくとも8週間、ニンテダニブ又はピルフェニドンを用いた安定な*治療、及び無作為化後にこのバックグラウンド治療に安定なままである計画に参加していなければならない
*安定な治療は、個々に及び一般的な耐容性を示したピルフェニドン又はニンテダニブのレジメンと定義される(ニンテダニブとピルフェニドンの組合せは許可されていない)]
●努力肺活量(FVC)訪問1回目で予測される正常の≧45%
●一酸化炭素(DLCO)の肺の拡散容量(ヘモグロビン[Hb]に対して補正した[訪問1回目])訪問1回目で予測される正常の≧25%~<80%。
●トライアルへの承認前に、ICH-GCP及び現地の法規に従って、文書によるインフォームドコンセントに署名及び日付記入した。
【0049】
参加したIPF患者に対して、以下の除外基準を適用した:
●訪問1回目で、関連する気道閉塞(気管支拡張剤以前の(pre-bronchodilator)努力呼気一秒量(FEV1)/努力肺活量(FVC)<0.7)。
●治験責任医師の意見において、他の臨床的に重大な肺の異常。
●スクリーニング前の4カ月以内、及び/又はスクリーニング期間中において、急性IPFの増悪(治験責任医師に判定される)。
●訪問1回目の前の4週間以内に、及び/又はスクリーニング期間中において、抗生物質を必要とする下気道の感染症。
●訪問1回目の前の3カ月以内に行った、又はトライアルの経過中計画される大手術(治験責任医師の評価に従っての大規模)(移植リストに載ることは許可される)。
●適切に処置した皮膚の基底細胞癌、「監視下の」前立腺癌又は子宮頸部上皮内癌を除く、訪問1回目の前の5年以内に記録された活動性の若しくは疑われるあらゆる悪性疾患、又は悪性疾患の病歴。
●訪問1回目又は訪問2回目での臨床検査又は実験所見に基づく、活動性感染症(慢性又は急性)の証拠。
●過去2年におけるあらゆる自殺行為(すなわち実際の試み、中断された試み、失敗した試み又は準備行動若しくは挙動)。
●患者に、訪問1回目の前の4週間以内、及び/又はスクリーニング期間中に、SARS-CoV-2による感染症が確認された。
●さらなる除外基準が当てはまる。
【0050】
トライアルは、無作為化二重盲検プラセボ対照並行群研究であった。研究の12週間の間、参加した全IPF患者の肺機能は、努力肺活量(FVC)におけるベースラインからの変化(「主要評価基準」)を測定することによりモニターした。処置期間の12週間、及び処置期間後1週間(時間フレーム:13週間まで)の間、処置で発生した有害事象(TEAE)を、参加した全IPF患者でモニターした(「第2の評価基準」)。
【0051】
3.2 フェーズII臨床トライアルの結果:
3.2.1 全母集団
147名の患者のうち、トライアル薬物を早期に中断した者は、「AF群」10/49(20.4%)及び「非AF群」5/49(10.4%)の両方で、全員「活性剤群」からの者であった。
早期中断の最も頻繁な理由は、有害事象であり、これは「AF群」における中断10/10の100%、また、「非AF群」における中断3/5の60%を占めた(表2を参照されたい)。
【0052】
【表2】
【0053】
表3は、IPFの診断からの時間が、「非AF群」(2.54年)に対して「AF群」(4.33年)で長く、プラセボ対照と活性剤アームとの間で釣り合っていたことを示す。
【表3】
【0054】
表4は、「AF群」におけるIPF患者が、バックグラウンド薬物療法としてニンテダニブをピルフェニドンより多く使用した(「活性剤群」でニンテダニブ53.1%及びピルフェニドン46.9%、「プラセボ群」でニンテダニブ68%及びピルフェニドン32%)ことを示す。さらに、表4は、「AF群」からのIPF-患者では、IPFの診断から経過した時間は、「非AF群」の患者(「活性剤群」で2.7年及び「プラセボ群」で2.2年)よりも長かった(「活性剤群」で4.6年、及び「プラセボ群」で3.9年)ことを示す。
【0055】
【表4】
【0056】
3.2.2 式IIIのPDE4-阻害剤の効能に関する結果
3.2.2.1 「非AF群」での結果
調整平均の推定(混合モデル反復測定、MMRM):
「非AF群」のIPF患者は、18mgの式IIIの化合物を含有する錠剤を1日2回受けた(=「活性剤群」)、又は活性成分がないプラセボ錠剤を1日2回受けた(ここでは「プラセボ錠剤」は、18mgの式IIIの化合物を含有する「活性錠剤」と、外見、匂い、味などに関して、見分けのつがない)。「非AF群」の患者は、12週間の研究期間中に、IPFを処置するためのケアバックグラウンド薬物療法の標準を受けなかった(ニンテダニブバックグラウンド薬物療法なし、及びピルフェニドンバックグラウンド薬物療法なしを意味する)。テストした各患者は、各研究訪問の際に一定の間隔で肺機能テストを行った。これらの肺機能テストの結果から、研究において異なる時点でのFVCにおけるベースラインからの変化(ml)を判定した(図1を参照されたい)。12週間の研究期間内における異なる時点での肺機能テストからの患者のデータは、混合モデル反復測定(MMRM)により分析した。MMRMは、推定プロセスにおいて患者の反復測定セットの使用を可能にして、経時的データを分析する確立された方法である(Fitzmaurice et al., “Longitudinal Data Analysis, Chapman & Hall/CRC, New York (2009))。
【0057】
研究の開始から12週目までのFVCにおけるベースラインからの変化は、「プラセボ群」で-95.62ml及び「活性剤群」で+6.10mlであり、研究の開始から12週目までのFVCにおけるベースラインからの変化において、「活性剤群」と「プラセボ群」との間で101.72mlの差が生じた(表5、図1及び図6を参照されたい)。一方、「プラセボ群」でのFVCにおけるベースラインからの変化は、12週間の長い研究期間中に実質的に減少し(これらの未処置患者において、IPF疾患が実質的に進行したことを意味する)、「活性剤群」でのFVCにおけるベースラインからの変化(式IIIのPDE4-阻害剤を18mg用量で1日2回受けた)は、同じ12週間の長い研究期間中に安定したままであった、又はわずかに増加さえした(図1及び図6を参照されたい)。結果として、18mg用量で1日2回の式IIIのPDE4-阻害剤は、ニンテダニブ又はピルフェニドンのケアバックグラウンド薬物療法の標準なしで、12週間の処置期間にわたり、IPF-患者において素晴らしい治療効能を示す。
【0058】
【表5】
【0059】
3.2.2.2 「AF群」での結果
調整平均の推定(MMRM):
「AF群」のIPF患者は、18mgの式IIIの化合物を含有する錠剤を1日2回(=「活性剤群」)、又は、同様に見え、活性成分がないプラセボ錠剤を1日2回(=「プラセボ群」)受けた。さらに、「AF群」の患者は、12週間の研究期間中に、IPFを処置するためのケアバックグラウンド薬物療法の標準を受けた(認可されている投与/投与レジメンでのニンテダニブバックグラウンド薬物療法、又は、認可されている投与/投与レジメンでのピルフェニドンバックグラウンド薬物療法を意味し、バックグラウンド薬物療法としてのニンテダニブ及びピルフェニドンの両方の組合せは許可されていなかった)。テストした各患者は、肺機能テストを各研究訪問の際に一定の間隔で行った。これらの肺機能テストの結果から、研究において異なる時点でのFVCにおけるベースラインからの変化(ml)を判定した(図2を参照されたい)。12週間の研究期間内において、異なる時点での肺機能テストからの患者データを、混合モデル反復測定(MMRM)により分析した。
【0060】
研究の開始から12週目までのFVCにおけるベースラインからの変化は、「プラセボ群」で-77.7ml及び「活性剤群」で+2.72mlであり(表6、図2及び図6を参照されたい)、研究の開始から12週目までのFVCにおけるベースラインからの変化において、「活性剤群」と「プラセボ群」との間に80.42mlの差が生じた。一方、「プラセボ群」(「AF群」の「プラセボ群」は、抗線維化バックグラウンド薬物療法のみを受け、これは、ニンテダニブのみ又はピルフェニドンのみを意味する)でのFVCにおけるベースラインからの変化は、12週間の長い研究期間中に減少し(これらの患者において、抗線維化バックグラウンド薬物療法単体で、IPF疾患が進行したことを意味する)、「活性剤群」(ニンテダニブ又はピルフェニドンの抗線維化バックグラウンド薬物療法と組み合わせて、式IIIのPDE4-阻害剤を18mg用量で1日2回受けた)でのFVCにおけるベースラインからの変化は、同じ12週間の長い研究期間中に安定したままであった、又はわずかに増加さえした(図2及び図6を参照されたい)。結果として、抗線維化バックグラウンド薬物療法(ニンテダニブ又はピルフェニドン)と組み合わせた、18mg用量で1日2回の式IIIのPDE4-阻害剤は、同じ抗線維化バックグラウンド薬物療法単体により処置したIPF-患者における治療効果と比較して12週間の処置期間にわたり、IPF-患者において素晴らしく改善した治療効能を示す。
【0061】
「活性剤群」と「プラセボ群」との間で比較した、FVCにおけるベースラインから12週目までの、「AF群」で80.42mlのこの変化は、「非AF群」での101.72mlより小さい。しかし、「AF群」でも、ニンテダニブ又はピルフェニドンを用いた抗線維化バックグラウンド薬物療法は、ある治療の基本的作用を担うはずなので、これは理解できる。
【0062】
【表6】
【0063】
しかし、「AF群」からの結果を、患者に実施された抗線維化バックグラウンド薬物療法のタイプにより別々に分析した(「AF群」内の「ピルフェニドンバックグラウンド薬物療法群」から「ニンテダニブバックグラウンド薬物療法群」を分離することを意味する)場合、1日2回投与される18mgの式IIIのPDE4-阻害剤と組み合わせた、より高い治療効能への傾向は、ピルフェニドンをバックグラウンド薬物療法として受けた群と比較して、ニンテダニブをバックグラウンド薬物療法として受けた群で観察された。
【0064】
この傾向は、表7で要約されているデータから結論付けることができる:ここでのニンテダニブをバックグラウンド薬物療法として得た群では、「活性剤群」と「プラセボ群」との間で、ベースラインから12週目までの変化の間における105.43mlの調整平均の差は、トライアルデータから計算し、一方、ピルフェニドンをバックグラウンド薬物療法として得た群では、「活性剤群」と「プラセボ群」との間で、ベースラインから12週目までの変化の間におけるわずか61.30mlの調整平均の差は、トライアルデータから計算した(表7を参照されたい)。
バックグラウンド薬物療法としてのニンテダニブ又はピルフェニドンの間で区別しないケースでは、「活性剤群」と「プラセボ群」との間における、ベースラインから12週目までの変化の間における80.42mlの調整平均の差、ほぼその間に収まる値を判定した(比較として表6を参照されたい)。
【0065】
処置の12週間にわたり、FVCにおけるベースラインからの変化に対する進展の経過は、「バックグラウンド薬物療法群としてのニンテダニブ」では図3に由来し得、「バックグラウンド薬物療法群としてのピルフェニドン」では図4に由来し得る。
【表7】
結果として、臨床トライアルからのデータは、1日2回投与される18mgの式IIIのPDE4-阻害剤及びニンテダニブの組合せ(認可されている用量及び投与レジメンで)は、1日2回投与される18mgの式IIIのPDE4-阻害剤及びピルフェニドン(認可されている用量及び投与レジメンで)の組合せよりも一層良好な治療効能を有し得ることを指し示す。
【0066】
3.2.2.3 「プールしたバックグラウンド療法」(「非AF群」+「AF群」)での結果
調整平均の推定(MMRM):
「非AF群」及び「AF群」について合わせた結果から、図5若しくは図6に示されている、又は表8で要約されている結果が導き出された。
「プラセボ群」(患者が「非AF群」又は「AF群」のどちらにいるかに応じて、抗線維化バックグラウンド薬物療法を受けた、又は受けていない)でのFVCにおけるベースラインからの変化は、12週間の長い研究期間中に着実に減少した一方、「活性剤群」(患者が「非AF群」又は「AF群」のどちらにいるかに応じて、式IIIのPDE4-阻害剤を18mg用量で、単体で、又は、ニンテダニブ若しくはピルフェニドンの抗線維化バックグラウンド薬物療法と組み合わせて1日2回受けた)でのFVCにおけるベースラインからの変化は、同じ12週間の長い研究期間中に安定したままであった、又はわずかに増加さえした(図5及び図6を参照されたい)。
【0067】
FVCにおけるベースラインから12週目までの変化は、すべての結果(「非AF群」+「AF群」での結果を意味する)を考慮すると、「活性剤群」で-4.59mlであり、「プラセボ群」で-83.79mlであった。「活性剤群」と「プラセボ群」との間で比較した、FVCにおけるベースラインから12週目までの変化は、すべての結果(「非AF群」+「AF群」での結果を意味する)を考慮すると、88.38mlになると計算された。
【0068】
【表8】
【0069】
3.2.3 式IIIのPDE4-阻害剤の安全性/耐容性に関する結果
「活性剤群」では、患者の67%:「非AF群」では64.6%、及び「AF群」では73.5%が有害事象(AE)を経験した。「プラセボ群」では、患者の60%:「非AF群」では52%及び「AF群」では68%がAEを経験した(表9を参照されたい)。テストした群すべてのうち、AEを経験した患者の8.8%のみがトライアル薬物の中断に至り、患者の7.5%が、重篤な有害事象を経験し(表10を参照されたい)、また、AEを経験した患者のうち2名の患者(1.4%を意味する)が死亡に至った(両名とも「活性剤群」、1名はCovid-19肺臓炎のため、もう1名は血管炎の未確認症例のため)。
【0070】
【表9】
【0071】
【表10-1】

【表10-2】
最も頻繁に報告された有害事象(AE)は、胃腸障害であり、そのうち下痢が最も頻繁なAEであった(全患者の10%超で下痢が観察された(表11を参照されたい))。
【0072】
「AF群」及び「非AF群」両方の群のうち、対応する「活性剤群」(式IIIの化合物は、抗線維化バックグラウンド薬物療法と組み合わせて、又は単体で投与された)で、それぞれの「プラセボ群」と比較して、有害事象である下痢の頻度の増加が観察された。「活性剤群」からの患者3名は、AEである下痢のため処置を中断し、全員がニンテダニブバックグラウンド処置下における「AF群」からの年齢≧65歳の男性であった。
「非AF群」のうち、下痢は、「活性剤群」では、対応する「プラセボ群」(8%)でのおよそ2倍の頻度(16.7%)で報告された(表11を参照されたい)。「AF群」のうち、やはり下痢は、「活性剤群」では、対応する「プラセボ群」(16.0%)でのおよそ2倍の頻度(30.6%)で報告された(表11を参照されたい)。
しかし、「AF群」内において報告されている下痢の全体的レベルは、「非AF群」と比較してやはり上昇した(表11を参照されたい、「プラセボ群」内で、「非AF群」における8%の下痢と比較して「AF群」における16%が下痢;「Form. III群のComp.」内で、「非AF群」における16.7%の下痢と比較して、「AF群」における30.6%が下痢)。
【0073】
結果として、18mgの用量で1日2回投与される式IIIのPDE4-阻害剤は、AEである下痢の頻度増加を引き起こすとみられるが、抗線維化バックグラウンド薬物療法、詳細にはニンテダニブを用いたバックグラウンド薬物療法も、「AF群」における下痢の報告されているケースの頻度増加に著しく寄与するとみられる(「非AF群」と比較して)。
それにも関わらず、「AF群」内及び「非AF群」内で報告されている下痢のすべてのケースは、重篤な有害事象ではなかった(表10を参照されたい)。
【0074】
報告されている下痢事象の大多数は、2件の中等度の下痢のケース(2.1%)及び1件の重度の下痢のケース(1.0%)を除いて軽度であり、それらの下痢のケースはいずれも男性で、且つニンテダニブバックグラウンド療法下における「AF群」の「活性剤群」で発生した。さらに1件の重度の下痢のケースは、ニンテダニブバックグラウンド療法下における「AF群」の「プラセボ群」で年齢64歳の女性に発生した。
全体として、最も頻繁に報告されている中断に至るAEは下痢であり(n=4)、これらのケースはすべて、「AF群」の一部であり、ニンテダニブバックグラウンド薬物療法中であった。
すべての処置アーム内で報告されている下痢のケースで、下痢に関連する脱水のケースは観察されなかった。
すべての処置アームで、低カリウム血症のケースは報告されなかった。
【0075】
胃腸障害(詳細には下痢)とは別に、すべての処置アームにわたって単独の有害事象のみが、一切特定のパターンなしで報告された(「AF群」及び「非AF群」において、「活性剤群」及び「プラセボ群」において)(表11を参照されたい)。
【表11-1】
【表11-2】
【0076】
3.2.3.2 「AF群」内における式IIIのPDE4-阻害剤の安全性/耐容性に関する結果(抗線維化バックグラウンド処置のタイプにより分離される)
一方では完全な「AF群」(表11に示されている)での、また一方では、抗線維化バックグラウンド薬物療法としてニンテダニブを受けた「AF群」の一部(「ニンテダニブバックグラウンド薬物療法群」)での、及びピルフェニドンを抗線維化バックグラウンド薬物療法として受けた「AF群」の一部(「ピルフェニドンバックグラウンド薬物療法群」)(表14に示されているように)での「胃腸障害」AEの頻度に関して、詳細にはAE「下痢」の頻度に関しての結果を比較すると、「ピルフェニドンバックグラウンド薬物療法群」は、明らかにより少ない頻度のAE「胃腸障害」を示すことが明白になった:
●「form. IIIのComp.アーム」での完全「AF群」において、患者の36.7%が、胃腸障害を経験した(表11を参照されたい)
●「form. IIIのComp.アーム」での「ニンテダニブバックグラウンド薬物療法部分群」において、患者の46.2%が、胃腸障害を経験した(表14を参照されたい)
また、
「form. IIIのComp.アーム」での「ピルフェニドンバックグラウンド薬物療法部分群」において、患者の26.1%のみが、胃腸障害を経験した(表14を参照されたい)
比較できる結果は、「AF群」のそれぞれの「プラセボ群」から見出され得る:
●「プラセボアーム」において、完全「AF群」では、患者の32.0%が、胃腸障害を経験した(表11を参照されたい)
●「プラセボアーム」において、「ニンテダニブバックグラウンド薬物療法部分群」では、患者の41.2%が、胃腸障害を経験した(表14を参照されたい)
また、
「プラセボアーム」において、「ピルフェニドンバックグラウンド薬物療法部分群」では、患者の12.5%のみが、胃腸障害を経験した(表14を参照されたい)。
【0077】
「form. IIIのComp.アーム」でのAE「下痢」の状況を分析すると、まったく同じ傾向が観察できる:
●「form. IIIのComp.アーム」において、完全「AF群」では、患者の30.6%が、下痢を経験した(表11を参照されたい)
●「form. IIIのComp.アーム」において、「ニンテダニブバックグラウンド薬物療法部分群」では、患者の46.2%が、下痢を経験した(表14を参照されたい)
また、
「form. IIIのComp.アーム」において、「ピルフェニドンバックグラウンド薬物療法部分群」では、患者の13.0%のみが、下痢を経験した(表14を参照されたい)
また、それぞれの「プラセボアーム」については:
●「プラセボアーム」において、完全「AF群」では、患者の16.0%が、下痢を経験した(表11を参照されたい)
●「プラセボアーム」において、「ニンテダニブバックグラウンド薬物療法部分群」では、患者の23.5%が、下痢を経験した(表14を参照されたい)
また、
「プラセボアーム」での「ピルフェニドンバックグラウンド薬物療法部分群」では、下痢を経験した患者は実に0%であった(表14を参照されたい)。
【0078】
ピルフェニドンが、抗線維化バックグラウンド薬物療法として使用されるケースにおける、AEである胃腸障害、詳細にはAEである下痢に対する減少傾向のこの傾向(抗線維化バックグラウンド薬物療法としてのニンテダニブと比較して)は、トライアル薬物の中断に至る有害事象の頻度/パーセンテージが示されている表15からも裏付けられる。表15から、「活性剤アーム」(「式IIIの化合物」)における「AF群」内では、18mg b.i.d.の式IIIの化合物と、バックグラウンド薬物療法としてのニンテダニブの組合せにより、以下に至ることは明白である
●AEである胃腸障害によるトライアル処置の中断4(15.4%)件
及び
●下痢のAEによるトライアル処置の中断3(11.5%)件
【0079】
一方、18mg b.i.d.の式IIIの化合物と、バックグラウンド薬物療法としてのピルフェニドンの組合せにより、トライアル処置はまったく中断に至らなかった(表15を参照されたい)。ピルフェニドンをバックグラウンド薬物療法として使用したすべての処置アームにおいて(それぞれの「活性剤群」及び「プラセボ群」において、を意味する)、何らかの胃腸のAEによりトライアル処置を中断する単独のケースは、記録されなかった(表15を参照されたい)。したがって、18mg b.i.d.の式IIIの化合物、及びバックグラウンド処置としてのピルフェニドンを用いた組合せ処置(認可されている用量で)は、18mg b.i.d.の式IIIの化合物、及びバックグラウンド処置としてのニンテダニブ(認可されている用量で)を用いた組合せ処置と比較して、AEである胃腸障害の頻度減少及び重症度の低下、詳細には、AEである下痢の頻度減少及び重症度の低下を伴い得る。
【0080】
【表12】
【0081】
【表13】
【0082】
【表14-1】
【表14-2】
【0083】
【表15】
【0084】
4.結論
臨床トライアルの「非AF群」の結果から、抗線維化バックグラウンド薬物療法なしで、18mgの用量で1日2回(b.i.d.)投与された式IIIのPDE4-阻害剤は、12週間の処置期間、IPF-患者においてFVCの減退を実質的に遅くするという仮説が裏付けられる(「非AF群」:「form. IIIのComp.(=活性剤)群」では、12週間後、FVCにおけるベースラインからの変化は+6.1mlであり;それぞれの「プラセボ群」では、12週間後、FVCにおけるベースラインからの変化は、-95.6mlである(表5、図1を参照されたい))。
「非AF群」では、これにより、「活性剤群」と「プラセボ群」との間での、FVCにおけるベースラインから12週目までの変化の間に調整平均の差101.72mlが生じ、このため、アンチフィボティック(antifibotic)バックグラウンド処置なしで、PF-ILD/IPF患者に18mgの用量で1日2回投与された式IIIのPDE4-阻害剤は、PF-ILD患者、好ましくはIPF患者の処置に高い治療効能を示すという仮説が裏付けられる(表5、図1を参照されたい)。
【0085】
一方、「活性剤群」の患者1名のみ(2.1%)は、「非AFアーム」の「プラセボ群」の患者なし(0%)と比較して、トライアルの中断に至る胃腸障害を経験した(表15を参照されたい)。
「ニンテダニブを抗線維化バックグラウンド薬物療法として受けたAF群」の一部の結果により、抗線維化バックグラウンド薬物療法としてのニンテダニブと組み合わせて、1日2回(b.i.d.)、18mgの用量で投与される式IIIのPDE4-阻害剤は、ニンテダニブ単体を用いた処置と比較して、12週間の処置期間、IPF-患者においてFVCの減退を実質的に遅くする(「バックグラウンド薬物療法としてのニンテダニブを用いたAF群」:「form. IIIのComp.(=活性剤)群」では、12週間後、FVCにおけるベースラインからの変化は、+23.41mlであり;それぞれの「プラセボ群」では、12週間後、FVCにおけるベースラインからの変化は-82.01mlである(表7、図3を参照されたい))という仮説が裏付けられる。
【0086】
これにより、「ニンテダニブを抗線維化バックグラウンド薬物療法として受けたAF群」では、「活性剤群」と「プラセボ群」との間での、FVCにおけるベースラインから12週目までの変化の間に調整平均の差105.43mlが生じる(表7、図3を参照されたい)。
これにより、1日2回投与される18mgの式IIIのPDE4-阻害剤及びニンテダニブの組合せ(認可されている用量及び投与レジメンで投与される)が、並外れて高い治療効能を引き起こし得るという仮説が裏付けられる。
一方、「ニンテダニブを抗線維化バックグラウンド薬物療法として用いたAFアーム」の「プラセボ群」の患者なし(0%)と比較して、「活性剤群」の患者4名(15.4%)は、トライアル処置の中断に至るAEとして胃腸障害を経験し、これらの患者4名のうち3名は、トライアル処置の中断に至るAEである下痢を経験した(表15を参照されたい)。
【0087】
「ピルフェニドンを抗線維化バックグラウンド薬物療法として受けたAF群」の結果により、抗線維化バックグラウンド薬物療法としてのピルフェニドンと組み合わせて、1日2回(b.i.d.)投与される18mgの式IIIのPDE4-阻害剤は、ピルフェニドン単体を用いた処置と比較して、12週間の処置期間、IPF-患者においてFVC減退を実質的に遅くする(「ピルフェニドンをバックグラウンド薬物療法として用いたAF群」:
「form. IIIのComp.(=活性剤)群」では、12週間後、FVCにおけるベースラインからの変化は、-18.67mlであり;それぞれの「プラセボ群」では、12週間後、FVCにおけるベースラインからの変化は、-80.06mlである(表7、図4を参照されたい))という仮説が裏付けられる。
これにより、「ピルフェニドンを抗線維化バックグラウンド薬物療法として受けたAF群」で、「活性剤群」と「プラセボ群」の間での、FVCにおけるベースラインから12週目までの変化の間に調整平均の差61.30mlが生じる(表7、図4を参照されたい)。
【0088】
一方、「活性剤群」も「プラセボ群」も、「ピルフェニドンを抗線維化バックグラウンド薬物療法として用いたAFアーム」の単独の患者は、トライアルの中断に至る胃腸障害を経験しなかった(表15を参照されたい)。
同時に、18mgの式IIIのPDE4-阻害剤を1日2回(b.i.d.)投与すると、すべての処置アームで(「非AF群」及び「AF群」で)有害事象「胃腸障害」の頻度、詳細にはAE「下痢」の頻度が増加した。
しかし、「AF群」のうち、報告されている有害事象である胃腸障害の頻度及び重症度、詳細には報告されている有害事象である下痢の頻度及び重症度は、使用される抗線維化バックグラウンド薬物療法の種類に強く依存していた。ピルフェニドンを抗線維化バックグラウンド薬物療法として受けたIPF-患者では、ニンテダニブを抗線維化バックグラウンド処置として受けたIPF-患者と比較して、有害事象である胃腸障害、詳細には有害事象である下痢が少ない頻度で記録され、少ない頻度でトライアル処置の中断に至った(表14及び15を参照されたい)。
【0089】
ニンテダニブを抗線維化バックグラウンド薬物療法として受けたIPF-患者では、有害事象である胃腸障害、詳細には有害事象である下痢を頻繁に記録し、いくつかのケースでは、トライアル処置の中断にも至った(表14及び15を参照されたい)。しかし、ニンテダニブを抗線維化バックグラウンド薬物療法として受けたIPF-患者は、ピルフェニドンを抗線維化バックグラウンド処置として受けたIPF-患者より良好な治療効能を示した。
結果として、提示されたフェーズIIトライアルの「ニンテダニブを抗線維化バックグラウンド処置として用いたAF群」での結果により、ニンテダニブバックグラウンド処置(ニンテダニブについて認可されている用量及び投与レジメン(好ましくは150mg b.i.d.又は100mg b.i.d.で))と組み合わせた、18mgの用量で1日2回の式IIIのPDE4-阻害剤により、許容できる耐容性及び安全性プロファイルと組み合わせた(許容できる服薬遵守につながる)、優れた治療効能が生じ得る仮説が裏付けられる。ニンテダニブ、及び18mgの用量で1日2回投与される式IIIのPDE4-阻害剤の組合せは、したがって詳細には、胃腸障害、詳細には下痢に対する傾向若しくは素因を有さない、又は、PF-ILD/IPF処置歴において、これまでに胃腸障害による、詳細には下痢による問題を経験していないPF-ILD/IPF-患者に好適になり得る。
【0090】
結果として、提示されたフェーズIIトライアルの「ピルフェニドンを抗線維化バックグラウンド処置として用いたAF群」での結果により、ピルフェニドンバックグラウンド処置(ピルフェニドンについて認可されている用量及び投与レジメンで、好ましくは一日用量801mg~2403mgになる用量及び投与レジメンで)と組み合わせた、18mgの用量で1日2回の式IIIのPDE4-阻害剤は、優れた耐容性及び安全性プロファイルと組み合わせた(患者の優れた遵守につながる)満足できる治療効能を引き起こし得る仮説が裏付けられる。ピルフェニドン、及び18mgの用量で1日2回投与される式IIIのPDE4-阻害剤の組合せは、したがって詳細には、胃腸障害、詳細には下痢に対する素因若しくは傾向を有する、又は、PF-ILD/IPF処置歴において、これまでに胃腸障害による、詳細には下痢による問題を経験したPF-ILD/IPF-患者に好適になり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に、18mgの式IIIのPDE4B-阻害剤と、
【化1】
任意に、1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤とからなる、1種又は複数の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者の処置に使用するための経口医薬組成物であって、患者に1日2回投与される、経口医薬組成物。
【請求項2】
1種又は複数の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、請求項1に記載の経口医薬組成物。
【請求項3】
フィルム-コーティング錠である、請求項1又は2記載の経口医薬組成物。
【請求項4】
本質的に、18mgの式IIIのPDE4B-阻害剤と、任意に、1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤とからなる、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬組成物を製造するための、式IIIのPDE4B-阻害剤の使用であって、
【化2】
経口医薬組成物が、患者に1日2回投与される、使用。
【請求項5】
進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、請求項4に記載の式IIIのPDE4B-阻害剤の使用。
【請求項6】
経口医薬組成物が、フィルム-コーティング錠である、請求項4又は5記載の式IIIのPDE4B-阻害剤の使用。
【請求項7】
式IIIのPDE4B-阻害剤を18mgの用量で唯一の活性剤として含み、
【化3】
1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含んでもよい、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬組成物であって、患者に1日2回投与される、経口医薬組成物。
【請求項8】
進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、請求項7に記載の経口医薬組成物。
【請求項9】
フィルム-コーティング錠である、請求項7又は8記載の経口医薬組成物。
【請求項10】
式IIIのPDE4B-阻害剤を18mgの用量で唯一の活性剤として含み、1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含んでもよい、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬組成物を製造するための、式IIIのPDE4B-阻害剤の使用であって、
【化4】
経口医薬組成物が、患者に1日2回投与される、使用。
【請求項11】
進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、請求項10に記載の式IIIのPDE4B-阻害剤の使用。
【請求項12】
経口医薬組成物が、フィルム-コーティング錠である、請求項10又は11記載の式IIIのPDE4B-阻害剤の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
結果として、提示されたフェーズIIトライアルの「ピルフェニドンを抗線維化バックグラウンド処置として用いたAF群」での結果により、ピルフェニドンバックグラウンド処置(ピルフェニドンについて認可されている用量及び投与レジメンで、好ましくは一日用量801mg~2403mgになる用量及び投与レジメンで)と組み合わせた、18mgの用量で1日2回の式IIIのPDE4-阻害剤は、優れた耐容性及び安全性プロファイルと組み合わせた(患者の優れた遵守につながる)満足できる治療効能を引き起こし得る仮説が裏付けられる。ピルフェニドン、及び18mgの用量で1日2回投与される式IIIのPDE4-阻害剤の組合せは、したがって詳細には、胃腸障害、詳細には下痢に対する素因若しくは傾向を有する、又は、PF-ILD/IPF処置歴において、これまでに胃腸障害による、詳細には下痢による問題を経験したPF-ILD/IPF-患者に好適になり得る。
本発明の好ましい態様は、下記の通りである。
〔1〕本質的に、18mgの式IIIのPDE4B-阻害剤と、
任意に、1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤とからなる、1種又は複数の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者の処置に使用するための経口医薬組成物であって、患者に1日2回投与される、経口医薬組成物。
〔2〕1種又は複数の進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、前記〔1〕に記載の経口医薬組成物。
〔3〕フィルム-コーティング錠である、前記〔1〕又は〔2〕の少なくとも1項に記載の経口医薬組成物。
〔4〕本質的に、18mgの式IIIのPDE4B-阻害剤と、任意に、1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤とからなる、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬組成物を製造するための、式IIIのPDE4B-阻害剤の使用であって、
経口医薬組成物が、患者に1日2回投与される、使用。
〔5〕進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、前記〔4〕に記載の式IIIのPDE4B-阻害剤の使用。
〔6〕経口医薬組成物が、フィルム-コーティング錠である、前記〔4〕又は〔5〕の少なくとも1項に記載の式IIIのPDE4B-阻害剤の使用。
〔7〕式IIIのPDE4B-阻害剤を18mgの用量で唯一の活性剤として含み、
1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含んでもよい、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬組成物であって、患者に1日2回投与される、経口医薬組成物。
〔8〕進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、前記〔7〕に記載の経口医薬組成物。
〔9〕フィルム-コーティング錠である、前記〔7〕又は〔8〕の少なくとも1項に記載の経口医薬組成物。
〔10〕式IIIのPDE4B-阻害剤を18mgの用量で唯一の活性剤として含み、1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含んでもよい、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置するための経口医薬組成物を製造するための、式IIIのPDE4B-阻害剤の使用であって、
経口医薬組成物が、患者に1日2回投与される、使用。
〔11〕進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、前記〔10〕に記載の式IIIのPDE4B-阻害剤の使用。
〔12〕経口医薬組成物が、フィルム-コーティング錠である、前記〔10〕又は〔11〕の少なくとも1項に記載の式IIIのPDE4B-阻害剤の使用。
〔13〕進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置する方法であって、式IIIのPDE4B-阻害剤を唯一の活性剤として18mgの用量で含み、
1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤を含んでもよい経口医薬組成物を患者に1日2回投与するステップを含む、方法。
〔14〕進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、前記〔13〕に記載の方法。
〔15〕経口医薬組成物が、フィルム-コーティング錠である、前記〔13〕又は〔14〕の少なくとも1項に記載の方法。
〔16〕進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に罹患した患者を処置する方法であって、本質的に、18mgの式IIIのPDE4B-阻害剤と、
任意に、1種又は複数の医薬的に許容される担体又は賦形剤とからなる経口医薬組成物を患者に1日2回投与するステップを含む、方法。
〔17〕進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)が、特発性肺線維症(IPF)である、前記〔16〕に記載の方法。
〔18〕経口医薬組成物が、フィルム-コーティング錠である、前記〔16〕又は〔17〕の少なくとも1項に記載の方法。
【国際調査報告】