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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】細胞表面上の結合ドメイン分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20241112BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20241112BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20241112BHJP
   C12N 5/0781 20100101ALI20241112BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20241112BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALI20241112BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20241112BHJP
   C12N 5/0787 20100101ALI20241112BHJP
   C12N 5/074 20100101ALI20241112BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20241112BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241112BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241112BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20241112BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20241112BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20241112BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20241112BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/071
C12N5/078
C12N5/0781
C12N5/0783
C12N5/0784
C12N5/0786
C12N5/0787
C12N5/074
C12N5/0775
C12N15/12
C07K19/00
C07K14/705
C12N15/62 Z
A61K35/17
A61K35/545
A61K35/28
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P37/04
A61P37/02
A61K48/00
A61K35/768
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531361
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-24
(86)【国際出願番号】 AU2022051412
(87)【国際公開番号】W WO2023092185
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】2021903825
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521268082
【氏名又は名称】イミュネクサス・セラピューティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・コプシダス
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ターハグ
(72)【発明者】
【氏名】マリー-アン・ヴァレリー・シュミット
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB33
4C087BB63
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB09
4C087ZC37
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、標的分子に結合する結合ドメインをその膜の表面上に発現するように修飾されている哺乳動物細胞に関する。本開示はまた、そのような修飾された哺乳動物細胞を生成するためのタンパク質構築物及び核酸、並びに哺乳動物細胞を使用して治療剤をインビボで標的細胞又は組織に送達するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞膜を有する哺乳動物細胞であって、前記細胞が、前記膜の表面上に、標的分子に結合するCTLA-4結合ドメインを発現するように修飾されている、哺乳動物細胞。
【請求項2】
前記標的分子への前記CTLA-4結合ドメインの結合が、インビボで前記細胞を前記標的分子にホーミングする、請求項1に記載の哺乳動物細胞。
【請求項3】
前記標的分子への前記CTLA-4結合ドメインの結合が、インビボで前記標的分子を前記細胞にホーミングする、請求項1に記載の哺乳動物細胞。
【請求項4】
前記細胞が、霊長類、イヌ、ネコ、及びげっ歯類由来の細胞からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞。
【請求項5】
前記細胞が、細胞株ファミリーCHO、NSO、HEK293、骨髄腫、NOS、COS、BHK、HeLa及びPER.C6のうちのいずれか1つに属する、請求項1~4のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞。
【請求項6】
前記細胞が、初代細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞。
【請求項7】
前記細胞が、免疫細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞。
【請求項8】
前記免疫細胞が、T細胞、細胞傷害性T細胞、単球、末梢血造血幹細胞、マクロファージ、抗原提示細胞、ナチュラルキラー細胞、マスト細胞、好中球、好酸球、好塩基球、ナチュラルキラーT細胞、B細胞、樹状細胞、及び調節性T細胞を含む群から選択される、請求項7に記載の哺乳動物細胞。
【請求項9】
前記細胞が、幹細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞。
【請求項10】
前記幹細胞が、間葉系前駆体又は幹細胞である、請求項9に記載の哺乳動物細胞。
【請求項11】
前記細胞が、誘導多能性幹細胞(iPSC)である、請求項9に記載の哺乳動物細胞。
【請求項12】
前記細胞が、分化幹細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞。
【請求項13】
前記細胞が、分化間葉系前駆体又は幹細胞である、請求項12に記載の哺乳動物細胞。
【請求項14】
前記CTLA-4結合ドメインが、以下に記載される配列番号1の残基1~25、34~54、60~97、及び106~126に対応するフレームワーク配列からなる、請求項1~13のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞。
KAMHVAQPAVVLASSRGIASFVCEYASPGKATEVRVTVLRQADSQVTEVCAATYMTGNELTFLDDSICTGTSSGNQVNLTIQGLRAMDTGLYICKVELMYPPPYYLGIGNGTQIYVIDPEPSPDSN
【請求項15】
前記CTLA-4結合ドメインが、配列番号1の残基1~25、34~54、60~97、及び106~126に対して少なくとも約70%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞。
【請求項16】
配列番号1の26~33位、及び/又は55~59位、及び/又は98~105位のアミノ酸残基が、1つ以上の異種配列で修飾又は置換されている、請求項15に記載の哺乳動物細胞。
【請求項17】
前記CTLA-4結合ドメインが、以下に記載される配列を含むか、又はそれからなり、
【化1】
ここで、X、X、及びXが、任意のアミノ酸残基であり、nが、5~15の数であり、n1、n2、n3が、それぞれ、結合ループ(BL)1、2、及び3を示す、先行請求項のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞。
【請求項18】
Xn1が、5~8アミノ酸であり、Xn2が、5~8アミノ酸であり、Xn3が、10~15アミノ酸である、請求項17に記載の哺乳動物細胞。
【請求項19】
Xn1が、8アミノ酸である、請求項18に記載の哺乳動物細胞。
【請求項20】
Xn2が、5アミノ酸である、請求項18に記載の哺乳動物細胞。
【請求項21】
前記CTLA-4結合ドメインが、膜貫通ドメインによって前記膜の前記表面に連結されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞。
【請求項22】
前記膜貫通ドメインが、ヒト血小板由来成長因子受容体(PDGFR)の膜貫通ドメイン、ヒトアシアロ糖タンパク質受容体、ヒト及びマウスB7-1、ヒトICAM-1、ヒトerbb1、ヒトerbb2、ヒトerbb3、ヒトerbb4、ヒト線維芽細胞成長因子受容体、例えば、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、ヒトVEGFR-1、ヒトVEGFR-2、ヒトエリスロポエチン受容体、ヒトPRL-R、プロラクチン受容体、ヒトEphA1、エフリンA型受容体1、ヒトインスリン、IGF-1受容体、ヒト受容体様タンパク質チロシンホスファターゼ、ヒトニューロピリン、ヒト主要組織適合性複合体II(アルファ及びベータ鎖)、ヒトインテグリン(アルファ及びベータファミリー)、ヒトシンデカジン、ヒトミエリンタンパク質、ヒトカドヘリン、ヒトシナプトブレビン-2、ヒトグリコホリン-A、ヒトBnip3、ヒトAPP、アミロイド前駆体タンパク質、ヒトT細胞受容体アルファ及びベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3ゼータ、及びCD3イプシロンからなる群から選択される、請求項21に記載の哺乳動物細胞。
【請求項23】
前記CTLA-4結合ドメインが、リンカーによって前記膜貫通ドメインに接続されている、請求項21又は22に記載の哺乳動物細胞。
【請求項24】
前記細胞が、治療剤を運搬するようにも修飾されている、請求項1~23のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞。
【請求項25】
前記治療剤が、抗がん剤又は免疫調節剤である、請求項24に記載の哺乳動物細胞。
【請求項26】
前記治療剤が、組換えウイルス、又は天然に存在する若しくは修飾された腫瘍溶解性ウイルスである、請求項24に記載の哺乳動物細胞。
【請求項27】
前記標的分子が、腫瘍によって発現される標的及び腫瘍間質に関連する標的からなる群から選択される、請求項1~26のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞。
【請求項28】
対象における標的分子に哺乳動物細胞をホーミングするための方法であって、前記対象に、請求項1~27のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞を投与することを含む、方法。
【請求項29】
キメラ結合ドメインであって、
(a)キメラドメインを細胞内膜にわたってトランスロケーションするためのリーダー配列と、
(b)標的分子に特異的なCTLA-4結合ドメインと、
(c)前記キメラドメインを哺乳動物細胞の表面膜にアンカーする膜貫通ドメインと、を含む、キメラ結合ドメイン。
【請求項30】
前記CTLA-4結合ドメインと前記膜貫通ドメインとの間に位置するリンカー配列を更に含む、請求項29に記載のキメラ結合ドメイン。
【請求項31】
前記リンカーが、Gly-Serペプチドリンカーである、請求項30に記載のキメラ結合。
【請求項32】
前記リーダー配列が、マウスIgカッパ(METDTLLLWVLLLWVPGSTGD;配列番号16)、ヒトOSM(MGVLLTQRTLLSLVLALLFPSMASM;配列番号17)、VSV-G(MKCLLYLAFLFIGVNC;配列番号18)、ヒトIgG2 H(MGWSCIILFLVATATGVHS;配列番号19)、BM40(MRAWIFFLLCLAGRALA;配列番号20)、セクレコン(MWWRLWWLLLLLLLLWPMVWA;配列番号21)、ヒトIgKVIII(MDMRVPAQLLGLLLLWLRGARC;配列番号22)、CD33(MPLLLLLPLLWAGALA;配列番号23)、tPA(MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSPS;配列番号24)、ヒトキモトリプシノゲン(MAFLWLLSCWALLGTTFG;配列番号25)、ヒトトリプシノゲン-2(MNLLLILTFVAAAVA;配列番号26)、ヒトIL-2(MYRMQLLSCIALSLALVTNS;配列番号27)、Gaussia luc(MGVKVLFALICIAVAEA;配列番号28)、アルブミン(HSA)(MKWVTFISLLFSSAYS;配列番号29)、インフルエンザヘマグルチニン(MKTIIALSYIFCLVLG;配列番号30)、ヒトインスリン(MALWMRLLPLLALLALWGPDPAAA;配列番号31)、シルクワームフィブロインLC及び(MKPIFLVLLVVTSAYA;配列番号32)からなる群から選択される、請求項29~31のいずれか一項に記載のキメラ結合ドメイン。
【請求項33】
前記膜貫通ドメインが、17~29個の残基、又は19~26個の残基、又は21~24個の残基を含む、請求項29~32のいずれか一項に記載のキメラ結合ドメイン。
【請求項34】
前記膜貫通ドメインが、ヒト血小板由来成長因子受容体(PDGFR)の膜貫通ドメイン、ヒトアシアロ糖タンパク質受容体、ヒト及びマウスB7-1、ヒトICAM-1、ヒトerbb1、ヒトerbb2、ヒトerbb3、ヒトerbb4、ヒト線維芽細胞成長因子受容体、例えば、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、ヒトVEGFR-1、ヒトVEGFR-2、ヒトエリスロポエチン受容体、ヒトPRL-R、プロラクチン受容体、ヒトEphA1、エフリンA型受容体1、ヒトインスリン、IGF-1受容体、ヒト受容体様タンパク質チロシンホスファターゼ、ヒトニューロピリン、ヒト主要組織適合性複合体II(アルファ及びベータ鎖)、ヒトインテグリン(アルファ及びベータファミリー)、ヒトシンデカジン、ヒトミエリンタンパク質、ヒトカドヘリン、ヒトシナプトブレビン-2、ヒトグリコホリン-A、ヒトBnip3、ヒトAPP、アミロイド前駆体タンパク質、ヒトT細胞受容体アルファ及びベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3ゼータ、及びCD3イプシロンからなる群から選択される、請求項29~32のいずれか一項に記載のキメラ結合ドメイン。
【請求項35】
請求項29~34のいずれか一項に記載のキメラ結合ドメインをコードする、核酸分子。
【請求項36】
薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と一緒に、請求項1~27のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞を含む、薬学的組成物。
【請求項37】
医薬品として使用するための、請求項36に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、標的分子に結合する結合ドメインをその膜の表面上に発現するように修飾されている哺乳動物細胞に関する。本開示はまた、そのような修飾された哺乳動物細胞を生成するためのタンパク質構築物及び核酸、並びに哺乳動物細胞を使用して治療剤をインビボで標的細胞又は組織に送達するための方法に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、2021年11月26日に出願されたAU2021/903825からの優先権を主張し、その全容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
参照による組み込み
本明細書で引用又は参照される全ての文書、並びに(本明細書に言及される任意の製品用の任意の製造業者の使用説明書、説明、製品仕様、及び製品シートと一緒に、又は参照により本明細書に組み込まれる任意の文書において引用される文書)本明細書に引用又は参照される全ての文書は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
配列表の参照
配列表の電子提出物の全容は、全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれる。
【背景技術】
【0005】
医学の目的は、損傷した又は罹患した細胞、組織、及び臓器の機能を維持、改善、又は回復させることである。この目標は、患者を治療するために細胞ベースの治療法を用いることによって達成され得る。しかしながら、細胞ベースの治療法の可能性が完全に実現されるためには、細胞は、治療法が必要とされる部位に移動又は「ホーミング」すべきであり、細胞は、所望の治療法を提供することができるべきである。細胞ベースの治療法を用いる試みがなされてきたが、ヒトの臨床環境では限られた成功しかもたらしていない。
【0006】
したがって、治療法が望まれる患者の部位にホーミングすることができ、治療上の利益を提供することができる改善された細胞ベースの治療法のための実質的な必要性が存在する。本発明は、これらの必要性に対処し、他の関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態では、本開示は、細胞膜を有する哺乳動物細胞を提供し、細胞は、膜の表面上に、標的分子に結合する細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質(CTLA-4)結合ドメインを発現するように修飾されている。
【0008】
一例では、CTLA-4結合ドメインの標的分子への結合は、細胞をインビボで標的分子にホーミングする。
【0009】
一例では、CTLA-4結合ドメインの標的分子への結合は、標的分子をインビボで細胞にホーミングする。
【0010】
一例では、修飾された哺乳動物細胞は、真核細胞である。別の例では、細胞は、霊長類由来、サル由来、及びげっ歯類由来の細胞からなる群から選択される。例えば、細胞は、以下の細胞株ファミリーのうちのいずれか1つに属し得る:チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、マウス骨髄腫細胞(NSO)、ヒト胎児腎臓(HEK293)、ヒト骨髄腫細胞株、T細胞リンパ腫細胞株(NOS)、腎線維芽細胞株(COS)、ベビーハムスター腎臓(BHK)、HeLa及びPER.C6。
【0011】
一例では、修飾された哺乳動物細胞は、初代細胞である。別の例では、細胞は、霊長類由来、イヌ由来、ネコ由来、及びげっ歯類由来の細胞からなる群から選択される。別の例では、初代細胞は、神経細胞、星細胞、線維芽細胞、周皮細胞、肝細胞、骨芽細胞、内皮細胞、又は上皮細胞である。
【0012】
好ましくは、細胞又は細胞株は、単離される。
【0013】
別の例では、修飾された哺乳動物細胞は、免疫細胞である。例えば、免疫細胞は、T細胞(例えば、CD4+)、細胞傷害性T細胞、単球、末梢血造血幹細胞、マクロファージ、抗原提示細胞、ナチュラルキラー細胞、マスト細胞、好中球、好酸球、好塩基球、ナチュラルキラー(NK)T細胞、B細胞、樹状細胞、ヘルパーT細胞、及び調節性T細胞からなる群から選択され得る。
【0014】
別の例では、修飾された哺乳動物細胞は、幹細胞である。別の例では、細胞は、多能性幹細胞である。別の例では、幹細胞は、間葉系前駆体又は幹細胞である。別の例では、細胞は、間葉系前駆細胞(MPC)又は間葉系幹細胞(MSC)である。別の例では、細胞は、分化幹細胞である。例えば、分化幹細胞は、分化MPC又はMSCであり得る。別の例では、MPC又はMSCは、培養拡張される。
【0015】
一例では、細胞は、誘導多能性幹細胞(iPS)である。
【0016】
一例では、CTLA-4結合ドメインは、以下に記載されるCTLA-4配列を含むか、又はそれからなる。
KAMHVAQPAVVLASSRGIASFVCEYASPGKATEVRVTVLRQADSQVTEVCAATYMTGNELTFLDDSICTGTSSGNQVNLTIQGLRAMDTGLYICKVELMYPPPYYLGIGNGTQIYVIDPEPSPDSN (配列番号1)
【0017】
一例では、配列番号1の31位のアラニン(A)は、チロシン(Y)で置換されている。一例では、配列番号1の56位のスレオニン(T)は、メチオニン(M)で置換されている。一例では、配列番号1の106位のロイシン(L)は、グルタミン酸(E)で置換されている。
【0018】
一例では、CTLA-4結合ドメインは、フレームワーク及び曝露された結合ループ(BL)を有する足場を含むか、又はそれからなる。一例では、フレームワークは、配列番号1の残基1~25、34~54、60~97、及び106~126に対応する。
【0019】
別の例では、CTLA-4結合ドメイン足場は、配列番号1又は配列番号1の残基1~1~25、34~54、60~97及び106~126に対して少なくとも約70%の配列同一性、又は少なくとも75%、80%、85%、87%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%の同一性を有する配列を含むか、又はそれからなる。
【0020】
別の例では、配列番号1の26~33位、及び/又は55~59位、及び/又は98~105位のアミノ酸残基は、1つ以上の異種配列で修飾又は置き換えられる。
【0021】
別の例では、CTLA-4結合ドメインは、以下に記載される配列を含むか、又はそれからなり、
【化1】
ここで、Xは、任意のアミノ酸残基であり、nは、5~15の数であり、n1、n2、n3は、それぞれ、結合ループ(BL)1、2、及び3を示す。
【0022】
別の例では、Xnは、5~8アミノ酸であり、Xnは、5~8アミノ酸であり、Xnは、10~15アミノ酸である。
【0023】
別の例では、天然のCTLA-4の単一の結合ループ、2つの結合ループ、又は3つの結合ループの全ては、アミノ酸の置換、付加若しくは欠失、及び/又は1つ以上の物理的特性(例えば、サイズ、形状、電荷、疎水性等)への任意の変化によって修飾されていてもよい。
【0024】
更なる例では、CTLA-4結合ドメイン配列の曝露された結合ループ(BL1)配列ASPGKATE(配列番号3)若しくはASPGKYTE(配列番号4)、及び/又は曝露されたループ(BL2)配列MTGNE(配列番号5)及び/又は曝露された結合ループ(BL3)配列ELMYPPPYY(配列番号6)は、アミノ酸置換、付加若しくは欠失によって修飾されているか、又は異種配列で置き換えられている。
【0025】
一例では、配列番号1の26~33位、及び/又は55~59位、及び/又は98~105位のアミノ酸残基は、修飾されているか、又は置き換えられている。別の例では、配列番号1の27~33位、及び/又は54~62位、及び/又は98~106位のアミノ酸残基は、修飾されているか、又は異種配列で置き換えられている。
【0026】
別の例では、CTLA-4結合ドメインを修飾する効果は、CD80及びCD86に対するその自然な親和性を消滅させることである。
【0027】
一例では、CTLA-4結合ドメイン足場は、以下の配列を含むか、又はそれからなり、
【化2】
ここで、Xは、任意のアミノ酸残基であり、nは、5~15の数であり、数n1、n2及びn3は、結合ループ領域を示す。より具体的には、1、2及び3は、それぞれ、CTLA-4結合ドメインのBL-1、BL-2及びBL-3に対応する。
【0028】
一例では、CTLA-4結合ドメインのBL-1、BL-2及びBL-3は、それぞれ、ASPGKYTE(配列番号4)、MTGNE(配列番号5)及びELMYPPPYY(配列番号6)を含むか、又はそれらからなり、ドメインは、B7-1に結合する。
【0029】
一例では、CTLA-4結合ドメインのBL-1、BL-2及びBL-3は、それぞれ、TVSWVDME(配列番号8)、WNGRW(配列番号9)及びQLDPSWGYYWQGY(配列番号10)を含むか、又はそれらからなり、ドメインは、スクレロスチンに結合する。
【0030】
一例では、CTLA-4結合ドメインは、配列KAMHVAQPAVVLASSRGIASFVCEYASPGKYTEVRVTVLRQADSQVTEVCAATYMTGNELTFLDDSICTGTSGNQVNLTIQGLRAMDTGLYICKVELMYPPYYLGIGNGTQIYVIDPEPSPDSN(配列番号11)を含むか、又はそれからなり、ドメインはB7-1に結合する。
【0031】
別の例では、CTLA-4結合ドメインは、配列KAMHVAQPAVVLASSRGIASFVCEYTVSWVDMEVRVTVLRQADSQVTEVCAATYWNGRWLTFLDDSICTGTSSGNQVNLTIQGLRAMDTGLYICKVQLDPSWGYYWQGYEGIGNGTQIYVIDPEPSPDSN(配列番号12)を含むか、又はそれからなり、ドメインは、スクレロスチンに結合する。
【0032】
更なる例では、CTLA-4結合ドメインのBL-1、BL-2及びBL-3は、それぞれ、抗体のCDR1、CDR2及びCDR3配列で置き換えられる。CDR配列が由来する抗体は、任意の種に由来し得る。一例では、抗体は、ヒトに由来する。別の例では、抗体は、家畜、例えば、ネコ、イヌ、ウサギ、モルモット又はウマに由来する。
【0033】
一例では、CTL-4結合ドメインは、膜貫通ドメインによって膜の表面に係留される。任意の好適な膜貫通ドメインが使用され得る。一例では、膜貫通ドメインは、ヒト血小板由来成長因子受容体(PDGFR)の膜貫通ドメイン、ヒトアシアロ糖タンパク質受容体、ヒト及びマウスB7-1、ヒトICAM-1、ヒトerbb1、ヒトerbb2、ヒトerbb3、ヒトerbb4、ヒト線維芽細胞成長因子受容体、例えば、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、ヒトVEGFR-1、ヒトVEGFR-2、ヒトエリスロポエチン受容体、ヒトPRL-R、プロラクチン受容体、ヒトEphA1、エフリンA型受容体1、ヒトインスリン、IGF-1受容体、ヒト受容体様タンパク質チロシンホスファターゼ、ヒトニューロピリン、ヒト主要組織適合性複合体II(アルファ及びベータ鎖)、ヒトインテグリン(アルファ及びベータファミリー)、ヒトシンデカジン、ヒトミエリンタンパク質、ヒトカドヘリン、ヒトシナプトブレビン-2、ヒトグリコホリン-A、ヒトBnip3、ヒトAPP、アミロイド前駆体タンパク質、ヒトT細胞受容体アルファ及びベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3ゼータ、及びCD3イプシロンからなる群から選択される。
【0034】
別の例では、CTLA-4結合ドメインは、リンカーを介して膜貫通ドメインに接続されている。一例では、リンカーは、配列(SGGGG)S(配列番号13)を含み、ここで、nは、2~8、又は3~6、又は3~4の任意の数である。一例では、リンカーは、配列SGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号14)若しくはSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号15)を含むか、又はそれからなる。
【0035】
第2の実施形態では、本開示は、対象における標的分子に哺乳動物細胞をホーミングするための方法を提供し、対象に、第1の実施形態による本明細書に記載の修飾された哺乳動物細胞を投与することを含む。
【0036】
一例では、細胞はまた、治療剤を運搬するようにも修飾されている。治療剤は、例えば、抗がん剤又は免疫調節剤であり得る。別の例では、治療剤は、天然に存在するか、又は修飾された腫瘍溶解性ウイルスである。
【0037】
しかしながら、本開示の修飾された哺乳動物細胞は、更なる修飾を必要とせずに、天然の治療剤を運搬し得ることが理解されるであろう。例えば、MPC又はMSCは、天然に有益なタンパク質、例えば、サイトカイン、酵素及び他のタンパク質を含有し、これらは、パラクリンシグナル伝達を介してインビボで標的細胞又は組織に送達され得る。したがって、これらの細胞は、治療剤自体、又は共投与された治療剤のアジュバントとみなされ得る。
【0038】
一例では、標的分子は、腫瘍によって発現される標的及び腫瘍間質に関連する標的からなる群から選択される。
【0039】
第3の実施形態では、本開示は、対象に、本明細書に記載の修飾された哺乳動物細胞を投与することを含む、標的分子を本明細書に記載の哺乳動物細胞にホーミングするための方法を提供する。
【0040】
例えば、本発明の修飾された哺乳動物細胞は、例えば、再生又は修復が必要とされる組織部位に係留されるか、又は組織部位内に埋め込まれ得る。次いで、係留された細胞は、目的の標的分子を結合して、その標的分子を損傷した部位にホーミングする。好適な標的分子の例としては、細胞及び組織の成長を刺激及び支持するか、又は創傷治癒を促進する、成長因子及び細胞外マトリックス分子を含む成長エフェクター分子が挙げられる。
【0041】
第4の実施形態では、本開示は、
(a)キメラドメインを細胞内膜にわたってトランスロケーションするためのリーダー配列と、
(b)標的分子に特異的なCTLA-4結合ドメインと、
(c)キメラドメインを哺乳動物細胞の表面膜にアンカーする膜貫通ドメインと、を含む、キメラ結合ドメインを提供する。
【0042】
一例では、キメラ結合ドメインは、CTLA-4結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に位置するリンカー配列を更に含む。一例では、リンカーは、ペプチドリンカーである。当該技術分野で既知の任意の好適なペプチドリンカーを、本開示で利用することができる。一例では、リンカーは、Gly-Serペプチドリンカーである。
【0043】
一例では、リンカーは、配列(SGGGG)nS(配列番号13)を含み、nは、2~8、又は3~6、又は3~4の任意の数である。一例では、リンカーは、配列SGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号14)若しくはSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号15)を含むか、又はそれからなる。
【0044】
一例では、リーダー配列は、マウスIgカッパ(METDTLLLWVLLLWVPGSTGD;配列番号16)、ヒトOSM(MGVLLTQRTLLSLVLALLFPSMASM;配列番号17)、VSV-G(MKCLLYLAFLFIGVNC;配列番号18)、ヒトIgG2 H(MGWSCIILFLVATATGVHS;配列番号19)、BM40(MRAWIFFLLCLAGRALA;配列番号20)、セクレコン(MWWRLWWLLLLLLLLWPMVWA;配列番号21)、ヒトIgKVIII(MDMRVPAQLLGLLLLWLRGARC;配列番号22)、CD33(MPLLLLLPLLWAGALA;配列番号23)、tPA(MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSPS;配列番号24)、ヒトキモトリプシノゲン(MAFLWLLSCWALLGTTFG;配列番号25)、ヒトトリプシノゲン-2(MNLLLILTFVAAAVA;配列番号26)、ヒトIL-2(MYRMQLLSCIALSLALVTNS;配列番号27)、Gaussia luc(MGVKVLFALICIAVAEA;配列番号28)、アルブミン(HSA)(MKWVTFISLLFSSAYS;配列番号29)、インフルエンザヘマグルチニン(MKTIIALSYIFCLVLG;配列番号30)、ヒトインスリン(MALWMRLLPLLALLALWGPDPAAA;配列番号31)、シルクワームフィブロインLC及び(MKPIFLVLLVVTSAYA;配列番号32)からなる群から選択される。
【0045】
一例では、膜貫通ドメインは、17~29残基、又は19~26残基、又は21~24残基を含む。別の例では、膜貫通ドメインは、ヒト血小板由来成長因子受容体(PDGFR)の膜貫通ドメイン、ヒトアシアロ糖タンパク質受容体、ヒト及びマウスB7-1、ヒトICAM-1、ヒトerbb1、ヒトerbb2、ヒトerbb3、ヒトerbb4、ヒト線維芽細胞成長因子受容体、例えば、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、ヒトVEGFR-1、ヒトVEGFR-2、ヒトエリスロポエチン受容体、ヒトPRL-R、プロラクチン受容体、ヒトEphA1、エフリンA型受容体1、ヒトインスリン、IGF-1受容体、ヒト受容体様タンパク質チロシンホスファターゼ、ヒトニューロピリン、ヒト主要組織適合性複合体II(アルファ及びベータ鎖)、ヒトインテグリン(アルファ及びベータファミリー)、ヒトシンデカジン、ヒトミエリンタンパク質、ヒトカドヘリン、ヒトシナプトブレビン-2、ヒトグリコホリン-A、ヒトBnip3、ヒトAPP、アミロイド前駆体タンパク質、ヒトT細胞受容体アルファ及びベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3ゼータ、及びCD3イプシロンからなる群から選択される。
【0046】
第5の実施形態では、本開示は、本明細書に記載のキメラ結合ドメインをコードする核酸分子を提供する。一例では、核酸は、DNA、RNA、又は両方である。
【0047】
本開示はまた、本開示のポリペプチド、特に配列番号1、11又は12のうちのいずれか1つのポリペプチドをコードする核酸を提供する。
【0048】
一例では、分子は、以下に記載される結合ドメインの核酸配列を含むか、又はそれからなり、
【化3】
ここで、N1は、第1の結合ループをコードするヌクレオチドの長さであり、N2は、第2の結合ループをコードするヌクレオチドの長さであり、N3は、第3の結合ループをコードするヌクレオチドの長さである。一例では、N1、N2及びN2は、15~45ヌクレオチドである。一例では、N1は、15~24ヌクレオチドである。N2は、15ヌクレオチドであり、N3は、30~45ヌクレオチドである。Nは、任意のヌクレオチド(A、C、T、G)である。
【0049】
一例では、核酸は、核酸がプロモーターに作動可能に連結されている発現構築物中に提供される。そのような発現構築物は、ベクター、例えば、プラスミドであり得る。
【0050】
第6の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の核酸で形質転換された宿主細胞を提供する。好適な宿主細胞には、細菌、哺乳動物細胞、酵母、苔(苔
【数1】
植物)、及びバキュロウイルス系が含まれる。
【0051】
第7の実施形態では、本開示は、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と一緒に、本明細書に記載の修飾された哺乳動物細胞を含む、薬学的組成物を提供する。組成物は、医薬品として提供されてもよい。一例では、組成物は、障害の治療に使用するためのものである。
【0052】
別の例では、結合ドメインは、検出を容易にするために、薬剤で標識されてもよい。
【0053】
本明細書に記載の哺乳動物細胞及び薬学的組成物は、医薬品としての使用、並びに、例えば、腫瘍疾患、自己免疫疾患、神経疾患、整形外科的疾患、心疾患及び外傷の治療を含む、広範囲の状態又は疾患の治療に好適であることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】CTLA-4 BDを発現するプラスミドDNA(BD_B7若しくはBD_SOSTのいずれか)又はプラスミドDNAなし(模擬トランスフェクション)のいずれかでトランスフェクトしたHEK293細胞で行われた細胞内ELISAアッセイの結果を示す。パネルAは、抗CTLA-4一次抗体(1:1000)及び抗マウスIgG(HRP)二次抗体(1:5000)を使用した、細胞表面上のBD_B7の検出を示す。パネルBは、パネルAと同じ抗体を使用した、細胞表面上のBD_SOSTの検出を示し、パネルCは、抗SOST一次抗体(1:1000)及び抗マウスIgG(HRP)二次抗体(1:5000)を使用した、BD_SOST発現HEK細胞に結合したヒト組換えスクレロスチンの検出を示す。全ての値は、算術平均±SEMである。アスタリスクは、両側の対合されていないt検定からのp値を示す:*p≦0.05、***p≦0.001。
図2】CTLA-4 BDMを発現するプラスミドDNA(BD_B7若しくはBD_SOSTのいずれか)又はプラスミドDNAなし(模擬トランスフェクション)のいずれかでトランスフェクトしたCHO細胞で行われた細胞内ELISAアッセイの結果を示す。パネルAは、抗CTLA-4一次抗体(1:1000)及び抗マウスIgG(HRP)二次抗体(1:5000)を使用した、細胞表面上のBD_B7の検出を示す。パネルBは、パネルAと同じ抗体を使用した、細胞表面上のBD_SOSTの検出を示し、パネルCは、抗SOST一次抗体(1:1000)及び抗マウスIgG(HRP)二次抗体(1:5000)を使用した、BD_SOST発現HEK細胞に結合したヒト組換えスクレロスチンの検出を示す。全ての値は、算術平均±SEMである。アスタリスクは、両側の対合されていないt検定からのp値を示す:*p≦0.05、***p≦0.001。
図3】CTLA-4 BDMを発現するプラスミドDNA(BDM_B7若しくはBDM_SOSTのいずれか)又はプラスミドDNAなし(模擬トランスフェクション)のいずれかでトランスフェクトした脂肪組織で行われた細胞内ELISAアッセイの結果を示す。パネルAは、抗CTLA-4一次抗体(1:1000)及び抗マウスIgG(HRP)二次抗体(1:5000)を使用した、細胞表面上のBDM_B7の検出を示す。パネルBは、パネルAと同じ抗体を使用した細胞表面上のBDM_SOSTの検出を示し、aMSCがSOST結合タンパク質を内在的に発現するため、rhSOSTの結合を評価することができなかった。全ての値は、算術平均±SEMである。アスタリスクは、両側の対合されていないt検定からのp値を示す:**p≦0.01、***p≦0.001。
図4】CTLA-4BDを発現するプラスミドDNA(BD_B7若しくはBD_SOSTのいずれか)又はプラスミドDNAなし(模擬トランスフェクション)のいずれかでトランスフェクトした骨髄由来間葉系幹細胞(bMSC)で行われた細胞内ELISAアッセイの結果を示す。パネルAは、抗CTLA-4一次抗体(1:1000)及び抗マウスIgG(HRP)二次抗体(1:5000)を使用した、細胞表面上のBD_B7の検出を示す。パネルBは、パネルAと同じ抗体を使用した、細胞表面上のBD_SOSTの検出を示す。パネルCは、抗CD80一次抗体(1:1000)及び抗マウスIgG(HRP)二次抗体(1:5000)を使用した、BD_B7を発現するbMSCに結合したヒトB7-1(CD80)タンパク質の検出を示し、bMSCがSOST結合タンパク質を内因性に発現するため、rhSOSTの結合を評価することができなかった。パネルDは、抗CD80一次抗体(1:1000)及び抗マウスIgG(HRP)二次抗体(1:5000)を使用した、BD_B7発現bMSCに結合したRaji細胞の検出を示す。パネルEは、抗CTLA-4抗体(緑色)及び核染色DAPI(青色)で染色された、BD_B7を発現するトランスフェクトされたbMSCの免疫蛍光染色を示す。全ての値は、算術平均±SEMである。アスタリスクは、両側の対合されていないt検定からのp値を示す:**p≦0.01、***p≦0.001。
【0055】
配列表へのキー
配列番号1:CTLA-4結合ドメインのアミノ酸配列
配列番号2:CTLA-4結合ドメイン足場1のアミノ酸配列
配列番号3:曝露された結合ループ(BL1)配列1をコードするアミノ酸配列
配列番号4:曝露された結合ループ(BL1)配列2をコードするアミノ酸配列
配列番号5:曝露ループ(BL-2)配列をコードするアミノ酸配列
配列番号6:曝露された結合ループ(BL-3)配列をコードするアミノ酸配列
配列番号7:CTLA-4結合ドメイン足場2のアミノ酸配列
配列番号8:スクレロスチンBL-1配列をコードするアミノ酸配列
配列番号9:スクレロスチンBL-2配列をコードするアミノ酸配列
配列番号10:スクレロスチンBL-3配列をコードするアミノ酸配列
配列番号11:B7-1のCTLA-4結合ドメインをコードするアミノ酸配列
配列番号12:スクレロスチンのCTLA-4結合ドメインをコードするアミノ酸配列
配列番号13:リンカーをコードするアミノ酸配列
配列番号14:リンカーをコードするアミノ酸配列
配列番号15:リンカーをコードするアミノ酸配列
配列番号16:マウスIgカッパのリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号17:ヒトOSMのリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号18:VSV-Gのリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号19:ヒトIgG2 Hのリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号20:BM40のリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号21:セクレコンのリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号22:ヒトIgKVIIIのリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号23:ヒトCD33のリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号24:tPAのリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号25:ヒトキモトリプシノゲンのリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号26:ヒトトリプシノゲン-2のリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号27:ヒトIL-2のリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号28:Gaussia lucのリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号29:アルブミン(HSA)のリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号30:インフルエンザヘマグルチニンのリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号31:ヒトインスリンのリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号32:シルクワームフィブロインLCのリーダー配列をコードするアミノ酸配列
配列番号33:CTLA-4結合ドメインをコードする核酸配列
【発明を実施するための形態】
【0056】
選択された定義
本明細書全体を通して、単語「comprise(含む)」、又は「comprises(含む)」若しくは「comprising(含む)」などの変形は、記載された要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群を含むことを意味するが、任意の他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群を除外することを意味しないと理解されたい。
【0057】
「CTLA-4結合ドメイン」は、CTLA-4のN末端細胞外ドメインに由来するドメインである。CTLA-4結合ドメインは、例えば、改変されたC末端配列を有する配列番号1に記載されるような天然のCTLA-4配列又はその修飾型を含み得る。修飾は、フレームワーク若しくは足場領域、又は結合ループ(BL)配列のうちの1つ以上で生じ得る。一例では、全てのBL配列は、CTLA-4結合ドメインがもはやその天然リガンドに結合しなくなるように異種又はランダムBL配列によって置き換えられる。一例では、修飾されたCTLA-4ドメインの結合特異性は、ドメインが目的の異なる標的分子に結合するように改変される。
【0058】
「結合ループ」(BL)は、特異的抗原に結合する抗体可変ドメインにおける相補性決定領域(CDR)と同様の様式で機能する、ポリペプチドループ構造又は領域である。3つの抗原結合ループ配列(本明細書では、それぞれ、BL-1、BL-2及びBL-3と称される)が、CTLA-4結合ドメインに存在し、それらは、ループ配列の必要な三次元コンフォメーションを提供する足場配列内に位置する。天然のBL配列は、足場に移植することができる1つ以上の対応するCDRと置き換えることができる。例えば、ディスプレイ技術を使用して、NNKコドンを導入し、続いて所望の結合特性を選択することによって、足場の特異的ループのアミノ酸配列をランダム化することによって、CTLA-4結合ドメインのBL部位に多様性を導入することができる。この機序は、高親和性の抗原特異的抗体の自然選択と同様である。
【0059】
CTLA-4結合ドメインの文脈における「結合特異性」という用語は、標的抗原又はエピトープ上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存する、そのそれぞれの標的抗原又はエピトープに結合するドメインの能力を指す。例えば、CTLA-4結合ドメインは、一般にタンパク質ではなく、特定のタンパク質構造を認識し、それに結合する。例として、ドメインがエピトープ「A」に結合する場合、標識された「A」及びドメインを含有する反応において、エピトープ「A」(又は遊離、標識されていない「A」)を含有する分子の存在は、ドメインに結合された標識された「A」の量を低減する。
【0060】
この用語はまた、CTLA-4結合ドメインが標的抗原に「特異的に結合する」ことを含むと理解されるべきである。「特異的に結合する(specifically binds)」又は「特異的に結合する(binds specifically)」という用語は、本開示のCTLA-4結合ドメインが、代替的な標的抗原と比較して、特定の標的抗原とより頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、及び/又はより高い親和性で反応するか、又は会合することを意味すると解釈される。「結合」への言及は、「特異的結合」という用語に対する明示的な支持を提供し、その逆も同様である。典型的には、この用語は、所与の標的抗原に対するドメインの親和性を表すために使用される。いくつかの状況では、毒性が問題となり得る場合、低親和性結合を有することが望ましくあり得る。他の状況では、他の標的抗原に対する交差反応性を最小限に抑えるための高親和性結合を有することが望ましい場合がある。一例では、結合は、本明細書に記載されるように特異的結合である。
【0061】
選択された標的に対する分子の部分(すなわち、タンパク質若しくはBDM)の「結合親和性」又は「親和性」という用語を測定することができる。「親和性」という用語は、2つの薬剤の可逆的結合のための平衡定数を指し、解離定数(Kd)又は平衡解離定数(KD)として表される。
【0062】
本明細書で使用される「標的分子」という用語は、CTLA-4結合ドメインが結合する物質を意味する。標的分子は、例えば、抗原であり得る。抗原は、典型的には、CTLA-4結合ドメインによって認識される1つ以上の抗原エピトープを含む。タンパク質抗原は、可溶性タンパク質又は膜結合タンパク質であり得る。可溶性タンパク質の例としては、転写因子、抗体、成長因子、血液タンパク質(例えば、アルブミン)、又は薬物(例えば、ステロイド、医薬品など)が挙げられるが、これらに限定されない。85asZ膜結合タンパク質のタイプとしては、成長因子受容体、腫瘍マーカー、細胞表面マーカー、又は細胞への輸送を媒介するマーカー(例えば、トランスフェリン)、又はFc受容体が挙げられる。典型的には、インビボで免疫応答を上昇させることができる物質を指す。それは、ポリペプチド、タンパク質、核酸(例えば、DNA、RNA、若しくはDNA及びRNAの組み合わせ)、又は他の分子であり得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」(同義語「抗原決定基」)という用語は、本開示のCTLA-4結合ドメインが結合する領域を意味すると理解される。従来、この用語は、免疫グロブリンVH/VL対によって結合された構造を指す。エピトープは、CTLA-4結合ドメインの最小結合部位を定義する。この用語は、必ずしも、CTLA-4結合ドメインが接触する特定の残基又は構造に限定されない。例えば、この用語は、CTLA-4結合ドメインのBL配列によって接触されるアミノ酸にまたがる領域、及びこの領域外の5~10個(若しくはそれ以上)又は2~5個又は1~3個のアミノ酸を含む。いくつかの例では、エピトープは、ポリペプチドが折り畳まれたときに互いに近接して配置され、例えば、別のポリペプチド、すなわち「コンフォメーションエピトープ」と会合する一連の不連続アミノ酸を含む。この用語は、線形ペプチド配列(すなわち、「連続」)からなるもの、又は非連続アミノ酸配列(すなわち、「コンフォメーション」若しくは「不連続」)からなるものを含む。
【0064】
本明細書で言及されるiPS細胞は、治療目的で必要とされる任意のタイプのヒト細胞の無制限の供給源の開発を可能にする胚様多能性状態にリプログラミングされている皮膚又は血液由来の細胞を指すと理解される。
【0065】
CTLA-4結合ドメイン
細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)は、免疫応答中にT細胞調節に関与する。CTLA-4は、活性化T細胞の表面上で主にかつ一過性に発現する44kDaのホモ二量体であり、ここで、抗原提示細胞上のCD80及びCD86表面抗原と相互作用して、免疫応答の調節をもたらす(Waterhouse et al.(1996)Immunol Rev 153:183-207、van der Merwe et al.(1997)J Exp Med 185(3):393-403)。
【0066】
各CTLA-4モノマーサブユニットは、N末端細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及びC末端細胞内ドメインからなる。細胞外ドメインは、N末端V様ドメイン(VLD;免疫グロブリンスーパーファミリーとの相同性によっておよそ14kDaの予測分子量)、及びVLDを膜貫通ドメインに接続する約10個の残基の茎を含む。VLDは、それぞれ、CD80及び/又はCD86に結合するBL-1、BL-2及びBL-3に対応する表面ループ(Metzler WJ et al(1997)Nat Struct Biol 4(7):527-31)を含む。ヒトCTLA-4の配列は、以前に決定されている(US5,434,131、US5,844,095、US5,851,795)。
【0067】
CTLA-4の構造及び変異研究は、CD80及びCD86への結合が、「GFCC」V様ベータ鎖から、またBL-3における高度に保存されたMYPPPYY配列から形成されたVLD表面を介して生じることを示唆している。CTLA-4モノマー間の二量体化は、2つの茎におけるシステイン残基(Cys120)間のジスルフィド結合を介して起こり、2つの細胞外ドメインのテザリングをもたらすが、V様ドメイン間の見かけの直接的な会合はない(Metzler WJ et al(1997)Nat Struct Biol 4(7):527-31)。二量体化は、リガンドに対する親和性の増加にのみ寄与するようである。
【0068】
CTLA-4に対するヒト配列は、UniProt参照P16410として利用可能である。CTLA-4の細胞外ドメインは、配列の36~161位に対応する(CTLA-4は、全長126アミノ酸を有する)。アミノ酸残基1~35は、シグナルペプチドに対応する。
【0069】
本明細書に示されるように、CTLA-4結合ドメイン内の1つ以上の結合ループ構造を、スクレロスチン又はCD3に対して指向された異種結合ループ配列で置き換えると、哺乳動物発現系を使用して、可溶性の単量体の非グリコシル化結合分子が生成された。したがって、VLDは、可溶性の単一ドメイン分子を構築するための基本的なフレームワークを提供し、分子の結合特異性は、結合ループ構造の修飾によって操作され得る。
【0070】
CTLA-4結合ドメインのフレームワーク残基は、ラクダ科抗体に存在する構造的特徴に従って修飾され得る。ラクダ重鎖免疫グロブリンは、単一のVHドメインからなることにより、従来の抗体構造とは異なる。
【0071】
曝露されたフレームワーク残基におけるいくつかの非従来の置換(主に本質的に疎水性から極性)は、内部ベータシートフレームワーク構造を維持しながら、疎水性表面を低減する(Desmyter et al.(1996)Nat Struct Biol 3:803-811)。
【0072】
3つの結合ループ内で、いくつかの構造的特徴は、通常、VLDによって提供される抗原結合表面の喪失を補う。BL2ループは、他のVHドメインと大きく異なるわけではないが、BL1及びBL3は、長さが非常に異種である非正準コンフォメーションを採用する。例えば、H1ループは、Ig分子中の通常の5個と比較して、2~8個の残基の間の任意の場所を含有してもよい。しかしながら、最大の変動を示すのはBL3であり、報告された17個のラクダ抗体配列において、この領域の長さは、7~21個の残基の間で変動する(Muyldermans et al.(1994)Protein Eng 7:1129-1135)。第3に、多くのラクダ科VHドメインは、ラクダの場合にBL1及びBL3を相互接続するジスルフィド結合を有し、ラマの場合にCDR-1及びCDR-2を相互接続する(Vu et al.1997)。この構造的特徴の機能は、ループの安定性を維持し、抗原内のポケットへの結合を可能にし、表面積を増加させる平面的なループコンフォメーションとは異なる、より輪郭のあるループコンフォメーションを提供することであるように思われる。しかしながら、全てのラクダ科抗体がこのジスルフィド結合を有するわけではなく、これは、それが絶対的な構造的要件ではないことを示唆する。
【0073】
これらの前述の特徴は、ラクダ科Vドメインがインビボで可溶性分子として提示され、多種多様な標的分子に対する効果的な免疫応答を形成するのに十分な高い親和性を有することを可能にした。
【0074】
標的分子に対する新規の結合親和性を有する単一のVLD分子を生成及び選択する方法は、US7,166,697に記載されており、その全容は参照により組み込まれる。本方法は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーに由来するVLDへの周知の分子進化技法の適用を伴う。本方法は、多数の変異VLDをスクリーニングするためのファージ又はリボソームディスプレイライブラリの生成を伴い得る。
【0075】
糸状fd-バクテリオファージゲノムは、ファージがファージの表面に、ファージ内に含まれるDNAによってコードされるIg様タンパク質(Fab)などのタンパク質を提示するように操作される(Smith,1985;Huse et al.,1989;McCafferty et al.,1990;Hoogenboom et al.,1991)。タンパク質分子は、Fdバクテリオファージの表面上に提示され得、遺伝子III、又はそれほど一般的ではない遺伝子VIIIによってコードされたファージコートタンパク質に共有結合的にカップリングされ得る。抗体遺伝子を遺伝子IIIコートタンパク質に挿入すると、末端に位置するファージ当たり3~5個の組換えタンパク質分子が発現する。対照的に、遺伝子VIIIへの抗体遺伝子の挿入は、ファージ粒子当たり約2000コピーの組換えタンパク質を提示する可能性を有するが、これは、単一の提示されたタンパク質の親和性を隠すことができる多価系である。Fd-バクテリオファージの表面上の機能的Ig様断片のディスプレイから、E.coliにおける可溶性Ig様断片の分泌に容易に切り替えることができるため、Fdファージミドベクターも使用される。遺伝子IIIコートタンパク質のN末端を有するファージディスプレイされた組換えタンパク質融合は、2つのタンパク質遺伝子の間に戦略的に位置付けられたアンバーコドンによって可能にされる。E.coliのアンバーサプレッサー株において、得られるIgドメイン-遺伝子III融合物は、ファージコート内にアンカーされる。
【0076】
タンパク質親和性に基づく選択プロセスは、抗体、抗原、受容体、及びリガンドなどの任意の高親和性結合試薬に適用することができる(例えば、Winter and Milstein,(1991)Nature 349:293-299(その全容が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。したがって、バクテリオファージ上に提示される最高親和性結合タンパク質の選択は、そのタンパク質をコードする遺伝子の回収のためにカップリングされる。Igを提示するファージは、ビーズに共有結合的にカップリングした、又はELISA若しくは固相放射免疫アッセイと同様の様式でプラスチック表面に吸着した同族結合パートナーへの結合によって親和性選択することができる。ほとんど全てのプラスチック表面はタンパク質抗原を吸着するが、Nunc Immunotubesなどのいくつかの市販製品は、この目的のために特に製剤化されている。
【0077】
リボソームディスプレイライブラリは、無細胞翻訳系において新規に合成され、選択目的のためにリボソームの表面上に提示されるポリペプチドを含む(Hanes and Pluckthun,(1997)Proc Natl Acad Sci USA 94:4937-4942、He and Taussig,(1997)Nucl Acids Res 25:5132-5134)。「無細胞翻訳系」は、リボソーム、タンパク質合成に必要な可溶性酵素(通常、リボソームと同じ細胞から)、トランスファーRNA、アデノシン三リン酸、グアノシン三リン酸、リボヌクレオシド三リン酸再生系(ピルビン酸ホスホエノール及びピルビン酸キナーゼなど)、並びに外因性mRNAによってコードされるタンパク質を合成するために必要な塩及び緩衝液を含む。ポリペプチドの翻訳は、無傷のポリソームを維持する条件下、すなわち、リボソーム、mRNA分子及び翻訳されたポリペプチドが単一の複合体内で会合している条件下で生じさせることができる。これは、翻訳されたポリペプチドの「リボソームディスプレイ」に効果的につながる。
【0078】
選択のために、翻訳されたポリペプチドは、対応するリボソーム複合体と関連して、マトリックスに結合される標的分子(例えば、Dynabeads)と混合される。標的分子は、DNA分子、タンパク質、受容体、細胞表面分子、代謝物、抗体、ホルモン、又はウイルスなどの目的の任意の化合物(若しくはその一部分)であり得る。翻訳されたポリペプチドを提示するリボソームは、標的分子に結合し、これらの複合体は、RT-PCRを使用して選択され、mRNAが再増幅され得る。
【0079】
結合分子を修飾するいくつかの代替アプローチが存在するが、提示された全てのタンパク質に対する一般的なアプローチは、個々の結合試薬が、それらの同族受容体への親和性によってディスプレイライブラリから選択されるパターンに適合する。これらの試薬をコードする遺伝子は、いくつかのインビボ及びインビトロ変異戦略のうちのいずれか1つ又は組み合わせによって修飾され、最も高い親和性結合分子の提示及び選択のための新しい遺伝子プールとして構築される。
【0080】
B7-1(CD80)タンパク質及びB7-2(CD86)タンパク質
B7タンパク質は、活性化抗原提示細胞(APC)上に見出される末梢膜タンパク質であり、T細胞上のCD28又はCD152(CTLA-4)表面タンパク質のいずれかと対合すると、それぞれ、APCとT細胞との間のN MHC-TCRシグナルの活性を増強又は低下させるための共刺激シグナル又は共阻害シグナルを生成することができる。活性化されたAPC上に存在するだけでなく、B7は、T細胞上にも見出される。
【0081】
B7タンパク質は、B7-1、B7-2、B7-DC、B7-H1~B7-H7を含む、いくつかのファミリーメンバーを含む。B7-1タンパク質は、CD80とも称され、CD28及びCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)に結合する。B7-1のヒト配列(CD80)のUniProt参照は、P33681である。
【0082】
一例では、CTLA-4結合ドメインは、B7-1ヒトタンパク質に結合する。一例では、CTLA-4結合ドメインは、B7-2タンパク質に結合する。
【0083】
スクレロスチン
スクレロスチンは、C末端システイン結節様ドメインを有し、骨形態形成タンパク質(BMP)アンタゴニストのDAN(神経芽腫における差動スクリーニング選択遺伝子異常)ファミリーと配列類似性を有する分泌糖タンパク質である。スクレロスチンは、骨細胞によって産生され、骨形成の抗同化作用を有する。ヒト配列のUniProt参照は、Q9BQB4である。
【0084】
一例では、CTLA-4結合ドメインは、スクレロスチンヒトタンパク質に結合する。
【0085】
結合親和性の測定
エピトープの結合は、ELISAなどの従来の抗原結合アッセイによって、FRETを含む蛍光ベースの技法によって、又は分子の質量を測定する表面プラズモン共鳴などの技法によって測定され得る。CTLA-4結合ドメインの抗原又はエピトープへの特異的結合は、例えば、Scatchard分析及び/又はラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA及びサンドイッチ競合アッセイなどの酵素免疫アッセイなどの競合結合アッセイを含む、好適なアッセイによって決定され得る。
【0086】
表面プラズモン共鳴アッセイなどの競合アッセイを使用して、特定の標的に結合するように操作されているCTLA-4結合ドメインがそうすることができるかどうかを決定することができる。例解として、CTLA-4結合ドメインは、幹細胞因子受容体(CSFR又はc-キット受容体)に結合するように操作することができ、天然リガンド(c-キット)の結合と競合するその能力について試験することができる。標的への結合について競合するCTLA-4結合ドメインの能力を決定するため、並びに解離定数(KD)を決定するためのインビトロ競合アッセイは、当該技術分野で知られている。
【0087】
CTLA-4結合ドメインとそのそれぞれの標的との間の相互作用の結合親和性又は解離定数(KD)は、当該技術分野で知られている多くの方法によって測定することができる。そのような方法には、蛍光滴定、競合ELISA、等温滴定熱量測定(ITC)及び表面プラズモン共鳴(BIAcore)又はバイオ層干渉法(例えば、Blitz系(ForteBio))などの熱量測定法が含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
好ましい表面プラズモン共鳴アッセイは、当該技術分野で既知のBIAcoreである。
【0089】
ほとんどの結合部分は、低マイクロモル(10-6)~ナノモル(10-7~10-9)の範囲のKD値を有する。高親和性結合部分は、一般に、ピコモル(10~12)範囲にある非常に高い親和性結合部分とともに、低ナノモル範囲(10~9)にあると考えられる。
【0090】
それぞれの部分とその標的との間の複合体形成は、それぞれの結合パートナーの濃度、競合因子の存在、使用される緩衝系のpH及びイオン強度、並びにKDの決定に使用される実験方法(例えば、蛍光滴定、競合ELISA若しくは表面プラズモン共鳴)、又は実験データの評価に使用される数学的アルゴリズムなどの多くの異なる要因の影響を受ける。
【0091】
したがって、KD値が、所与の標的に対する特定のCTLA-4結合ドメインの親和性を決定するために使用される方法及び実験設定に応じて、ある特定の実験範囲内で変化し得ることが当業者には明らかである。これは、KD値が表面プラズモン共鳴(Biacore)によって決定されたか、競合ELISAによって決定されたか、又は「直接ELISA」によって決定されたかどうかに応じて、測定されたKD値又は許容範囲にわずかな偏差が存在し得ることを意味する。
【0092】
好ましい例では、KD値は、例えば、固定化された標的に対するBIAcore表面プラズモン共鳴(Cytiva Life Sciences,Marlborough,MA,USA)を使用して、表面プラズモン共鳴アッセイを使用することによって決定される。
【0093】
親和性は、無関係のアミノ酸配列に対するタンパク質又はBDMの親和性よりも、少なくとも1倍大きい、少なくとも2倍大きい、少なくとも3倍大きい、少なくとも4倍大きい、少なくとも5倍大きい、少なくとも6倍大きい、少なくとも7倍大きい、少なくとも8倍大きい、少なくとも9倍大きい、少なくとも10倍大きい、少なくとも20倍大きい、少なくとも30倍大きい、少なくとも40倍大きい、少なくとも50倍大きい、少なくとも60倍大きい、少なくとも70倍大きい、少なくとも80倍大きい、少なくとも90倍大きい、少なくとも100倍大きい、又は少なくとも1000倍大きい、又はそれ以上であり得る。標的(例えば、タンパク質抗原)に対するタンパク質又はBDMの親和性は、例えば、約100ナノモル(nM)~約0.1nM、約100nM~約1ピコモル(pM)、又は約100nM~約1フェムトモル(fM)以上であり得る。
【0094】
一例では、タンパク質は、約200nM以下、約100nM以下、約50nM以下、約25nM以下、約10nM以下、約5nM以下、約1nM以下、又は約0.5nM以下のKDによって測定される親和性を有する。
【0095】
一例では、CTLA-4結合ドメインは、約200nM以下、約100nM以下、約50nM以下、約25nM以下、10nM以下、約5nM以下、約1nM以下、又は約0.5nM以下のKDによって測定される親和性を有する。
【0096】
バイオ層干渉法は、インタラクトーム内の生体分子相互作用を測定するためのラベルフリー技術である。それは、バイオセンサーの先端に固定化されたタンパク質の層と内部参照層の2つの表面から反射された白色光の干渉パターンを分析する光学分析技法である。バイオセンサーの先端に結合した分子の数の任意の変化は、リアルタイムで測定することができる干渉パターンのシフトを引き起こす。
【0097】
バイオセンサーの先端表面に固定されたリガンドと溶液中の分析物との間の結合は、バイオセンサーの先端での光学厚さの増加をもたらし、これは、生物学的層の厚さの変化の直接的な測定値である波長シフトΔλをもたらす。相互作用は、リアルタイムで測定され、結合特異性、会合及び解離の速度、又は濃度を精密かつ正確に監視する能力を提供する。
【0098】
バイオセンサーに結合又は解離する分子のみが、干渉パターンをシフトさせ、応答プロファイルを生成することができる。非結合分子、周囲の媒体の屈折率の変化、又は流速の変化は、干渉パターンに影響を与えない。これは、バイオ層干渉法の独自の特徴であり、タンパク質-タンパク質相互作用、定量化、親和性、及び動態のためのアプリケーションで使用される粗試料で実行する能力を拡張する。
【0099】
標的分子
本開示による標的分子は、好ましくは抗原である。抗原は、タンパク質、糖鎖、脂質、リポタンパク質又は核酸から選択され得る。タンパク質は、可溶性タンパク質又は膜結合タンパク質であり得る。可溶性タンパク質の例としては、転写因子、抗体、成長因子、血液タンパク質(例えば、アルブミン)、又は薬物(例えば、ステロイド、医薬品など)が挙げられるが、これらに限定されない。膜結合タンパク質のタイプには、成長因子受容体、腫瘍マーカー、又は細胞への輸送を媒介するマーカー(例えば、トランスフェリン)、又はFc受容体が含まれる。
【0100】
核酸標的は、DNA、RNA、又はDNA及びRNAの組み合わせであり得る。
【0101】
標的抗原は、腫瘍関連抗原であり得る。そのような腫瘍関連抗原には、MUC-1及びそのペプチド断片、タンパク質MZ2-E、多型上皮ムチン、葉酸結合タンパク質LK26、MAGE-1又はMAGE-3及びそれらのペプチド断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)及びそのペプチド断片、がん胎児性抗原(CEA)及びそのペプチド断片、アルファフェトプロテイン(AFP)及びそのペプチド断片、膵臓腫瘍胎児抗原及びそのペプチド断片、CA125、15-3、19-9、549、195及びそれらのペプチド断片、前立腺特異的抗原(PSA)及びそのペプチド断片、前立腺特異的膜抗原(PSMA)及びそのペプチド断片、扁平上皮がん抗原(SCCA)及びそのペプチド断片、卵巣がん抗原(OCA)及びそのペプチド断片、膵臓がん関連抗原(PaA)及びそのペプチド断片、Her1/neu及びそのペプチド断片、gp-100及びそのペプチド断片、変異体K-rasタンパク質及びそのペプチド断片、変異体p53及びそのペプチド断片、非変異体p53及びそのペプチド断片、切断型上皮成長因子受容体(EGFR)、キメラタンパク質p210BCR-ABL、テロメラーゼ及びそのペプチド断片、サバイビン及びそのペプチド断片、メラン-A/MART-1タンパク質及びそのペプチド断片、WT1タンパク質及びペプチド断片、LMP2タンパク質及びペプチド断片、HPV E6 E7タンパク質及びペプチド断片、イディオタイプタンパク質及びペプチド断片、NY-ESO-1タンパク質及びペプチド断片、PAPタンパク質及びペプチド断片、がん精巣タンパク質及びペプチド断片、並びに5T4タンパク質及びペプチド断片が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
標的抗原は、心臓、血液系、肺、腸、胃、直腸、前立腺、甲状腺、肝臓又は食道内に位置する細胞上に存在する抗原又はエピトープであり得る。
【0103】
発現ベクター
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」は、CTLA-4結合ドメインをコードするポリヌクレオチドを発現するのに好適な、ベクター、例えば、円形又は線形、一本鎖又は二本鎖、天然又は操作された染色体外プラスミドベクター、コスミド、ウイルスベクター、発現ベクター、遺伝子移行ベクター、ミニサークルベクター、及び人工染色体などを包含する。
【0104】
一例では、発現ベクターは、プラスミドディスプレイベクターである。
【0105】
別の例では、発現ベクターは、ミニサークルDNAベクターである。「ミニサークルDNAベクター」は、「ミニサークルベクター」又は「ミニサークル」と称され得、全ての原核生物ベクター部分(例えば、細菌複製起源、プラスミドの細菌増殖に関連する遺伝子)が除去されている、小さい(通常、3~4kb、およそ3~4kb、又は通常、10kb以下の範囲)円形のエピソームプラスミド誘導体である。ミニサークルベクターは、原核DNA配列を含まないため、それらが哺乳動物細胞に導入遺伝子を移すためのビヒクルとして用いられるとき、外来物として知覚され、破壊される可能性が低い。
【0106】
導入遺伝子発現カセットを運搬及び移送するためのミニサークルDNAベクターの使用は、中間真核宿主系(例えば、昆虫細胞株産生系)を利用することなく、哺乳動物細胞を(例えば、直接)トランスフェクトすることを可能にする。更に、ミニサークルベクター(標準プラスミドベクターよりも小さい)のサイズ及び外部細菌配列の欠如は、細胞のトランスフェクションを増強し、哺乳動物宿主細胞内での導入遺伝子発現の延長された持続時間を可能にする。例えば、ミニサークルベクターは、プラスミド上に見出される無関係の細菌配列を欠いているため、標準ベクターよりも小さい。プラスミドベクターとミニサークルベクターとの間のサイズの違いは、無関係な細菌配列の欠如、プラスミドと比較してかなり小さいなど、ベクターの全体的なサイズと比較して実質的ではない量の無関係な細菌配列の含有、及びそれらの変形に起因し得る。哺乳動物宿主におけるミニサークルによる長期にわたる高レベルの導入遺伝子発現は、SV40、CMV、UBC、EF1A、PGK及びCAGGなどの強力かつ構成的なプロモーターの組み込みによっても促進され得る。
【0107】
好適なミニサークルベクターは、例えば、Mun et al(2016)Biomaterials 101(2016)310-320、及びGaspar et al(2014)Expert Opin.Biol.Ther.15(3):1-27に記載されている。
【0108】
本開示のキメラ結合構築物を生成するために、本明細書に記載されるCTLA-4結合ドメイン配列をコードする核酸配列を、標準方法によって好適な発現ベクターにクローニングする。
【0109】
CTLA-4結合ドメインをコードする発現ベクターは、哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれ、宿主ゲノムが複製するにつれて複製することができる。代替的に、CTLA-4結合ドメインをコードする発現ベクターは、染色体外複製を可能にする複製の起源を含有し得る。
【0110】
発現ベクター構成要素には、例えば、エンハンサー要素、プロモーター、ポリアデニル化配列、及び転写終結配列のうちの1つ以上も含まれ得る。
【0111】
哺乳動物細胞において活性な例示的なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス即時初期プロモーター(CMV-IE)、ヒト伸長因子1-αプロモーター(EF1)、小核RNAプロモーター(U1a及びU1b)、α-ミオシン重鎖プロモーター、シミアンウイルス40プロモーター(SV40)、ルース肉腫ウイルスプロモーター(RSV)、アデノウイルス主要後期プロモーター、β-アクチンプロモーター;CMVエンハンサー/β-アクチンプロモーター又はその免疫グロブリンプロモーター若しくは活性断片を含むハイブリッド調節エレメントが挙げられる。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1細胞株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胎児腎臓細胞株(懸濁培養での成長のためにサブクローニングされた293若しくは293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10)、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)である。
【0112】
発現のために発現ベクターを哺乳動物細胞に導入するための手段は、当業者に既知である。所与の細胞に使用される技法は、既知の成功した技法に依存する。組換えDNAを細胞に導入するための手段としては、とりわけ、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランによって媒介されるトランスフェクション、リポフェクタミン(Gibco,MD,USA)及び/又はセルフェクチン(Gibco,MD,USA)を使用することなどによる、リポソームによって媒介されるトランスフェクション、PEGによって媒介されるDNA取り込み、レトロウイルス形質導入、エレクトロポレーション、及びDNAコーティングされたタングステン又は金粒子(Agracetus Inc.,WI,USA)を使用することなどによる、マイクロ粒子衝撃が挙げられる。
【0113】
リーダー配列
一例では、リーダー配列ペプチドは、いくつかの真核タンパク質のN末端にある16~20アミノ酸の配列であり、それらの最終的な目的地を決定する。作製され、細胞質中で機能するタンパク質は、リーダー配列を欠いている。特定の細胞小器官を目的とするタンパク質は、各細胞小器官に適切なシグナル配列を必要とする。小胞体に入るように指定されたタンパク質のリーダー配列は、脂質二重層膜に埋め込まれるようになる疎水性アミノ酸を含み得、それは、新生タンパク質を膜内の細孔の位置を示す受容体タンパク質に導くように機能する。タンパク質が細孔を介して脳槽内ルーメンに入ると、リーダーセグメントがタンパク質から切断され得る。例えば、インターフェロンタンパク質のリーダー配列ペプチドは、細胞がインターフェロンを分泌することを可能にするが、分泌プロセス中に成熟分子から除去される。リーダー配列ペプチドは、しばしばシグナルペプチドとも称される。
【0114】
好適なリーダー配列の例としては、以下が挙げられる。
【表1】
【0115】
膜貫通ドメイン
「膜貫通ドメイン」という用語は、核酸配列によってコードされ、任意選択の細胞外部分、膜貫通ドメイン、及び任意選択の細胞質尾部を含むポリペプチド又はタンパク質を指す。膜貫通ドメインは、膜内で熱力学的に安定であり、通常、主に疎水性アミノ酸からなる膜貫通タンパク質の単一の膜貫通アルファヘリックスを含む、任意の三次元タンパク質構造である。膜貫通ドメインの長さは、平均21アミノ酸であるが、4~48アミノ酸の間で変化し得る。膜貫通ドメインは、アミノ酸の任意選択のN末端細胞外接続ストレッチ及び膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、C末端細胞質アミノ酸ストレッチ又は細胞内ドメインを更に含み得る。
【0116】
使用される膜貫通ドメインとしては、ヒト血小板由来成長因子受容体(PDGFR)遺伝子の膜貫通ドメイン(SwissprotエントリーP16234)、ヒトアシアロ糖タンパク質受容体(SwissprotエントリーP07306)、ヒト及びマウスB7-1(ヒト:SwissprotエントリーP33681及びマウス:SwissprotエントリーQ00609)、ヒトICAM-1(SwissprotエントリーP05362)、ヒトerbb1(SwissprotエントリーP00533)、ヒトerbb2(SwissprotエントリーP04626)、ヒトerbb3(SwissprotエントリーP21860)、ヒトerbb4(SwissprotエントリーQ15303)、ヒト線維芽細胞成長因子受容体、例えばFGFR1(SwissprotエントリーP11362)、FGFR2(SwissprotエントリーP21802)、FGFR3(SwissprotエントリーP22607)、FGFR4(SwissprotエントリーP22455)、ヒトVEGFR-1(SwissprotエントリーP17948)、ヒトVEGFR-2(SwissprotエントリーP35968)、ヒトエリスロポエチン受容体(SwissprotエントリーP19235)、ヒトPRL-R、プロラクチン受容体(SwissprotエントリーP16471)、ヒトEphA1、エフリンA型受容体1(SwissprotエントリーP21709)、ヒトインスリン(SwissprotエントリーP06213)、インスリン様成長因子1受容体(IGFR1、SwissprotエントリーP08069、配列番号181)、ヒト受容体様タンパク質チロシンホスファターゼ(SwissprotエントリーQ12913、P23471、P23467、P18433、P23470、P23469、P23468)、ヒトニューロピリン(SwissprotエントリーP014786)、ヒト主要組織適合性複合体クラスII(アルファ及びベータ鎖)、ヒトインテグリン(アルファ及びベータファミリー)、ヒトシンデカン、ヒトミエリンタンパク質、ヒトカドヘリン、ヒトシナプトブレビン-2(SwissprotエントリーP63027)、ヒトグリコホリン-A(GpA、SwissprotエントリーP02724、配列番号185)、ヒトBnip3(SwissprotエントリーQ12983)、ヒトAPP(SwissprotエントリーP05067)、アミロイド前駆体タンパク質(SwissprotエントリーPODJI8)、ヒトT細胞受容体アルファ遺伝子(PTCRA、SwissprotエントリーPQ6ISU1)及びT細胞受容体ベータ、CD3ガンマ(SwissprotエントリーP09693)、CD3デルタ(SwissprotエントリーP04234)、CD3ゼータ(SwissprotエントリーP20963)、並びにCD3イプシロン(CD3E、SwissprotエントリーP07766)、ヒトセリン/スレオニン-タンパク質キナーゼ受容体R3(ACVL1、SwissprotエントリーP37023)、ヒト炭疽菌毒素受容体2(ANTR2、SwissprotエントリーP58335)、ヒトT細胞表面糖タンパク質CD4(CD4、SwissprotエントリーP01730)、ヒト受容体型チロシン-タンパク質ホスファターゼμ(PTPRM、SwissprotエントリーP28827、配列番号177)、ヒト腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー5(TNR5、SwissprotエントリーP25942)、ヒトインテグリンベータ-1(ITB1、SwissprotエントリーP05556)、ヒトHLAクラスI組織適合性抗原、B-7アルファ鎖(SwissprotエントリーP01889)、ヒトトトロンボモジュリン(TRBM、SwissprotエントリーP07204)、ヒトインターロイキン-4受容体サブユニットアルファ(IL4RA、SwissprotエントリーP24394)、ヒト低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質6(LRP6、Swissprotエントリー075581)、ヒト高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ(FCERA、SwissprotエントリーP12319)、ヒトキラー細胞免疫グロブリン様受容体2DL2(K12L2、SwissprotエントリーP43627)、ヒトサイトカイン受容体共通サブユニットベータ(IL3RB、SwissprotエントリーP32927)、ヒトインテグリンアルファ-IIb(ITA2B、SwissprotエントリーP08514)、ヒトT細胞特異的表面糖タンパク質CD28(CD28、SwissprotエントリーP10747)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
免疫グロブリン膜貫通ドメインも用いられ得る。好適な例としては、ヒト免疫グロブリン遺伝子IGHA1(NCBIアクセスコード:M60193)、IGHA2(NCBIアクセスコード:M60194)、IGHD(NCBIアクセスコード:K02881)、IGHE(NCBIアクセスコード:X63693)、IGHG1(NCBIアクセスコード:X52847)、IGHG2(NCBIアクセスコード:AB006775)、IGHG3(NCBIアクセスコード:D78345)、IGHG4(NCBIアクセスコード:AL928742)、IGHGP(NCBIアクセスコード:X52849)、IGHM(NCBIアクセスコード:X14940)に由来する膜貫通ドメイン、並びにマウス免疫グロブリン遺伝子IGHA1(NCBIアクセスコード:K00691)、IGHD(NCBIアクセスコード:J00450)、IGHE(NCBIアクセスコード:X03624、U08933)、IGHG1(NCBIアクセスコード:J00454、J00455)、IGHG2A(NCBIアクセスコード:J00471)、IGHG2B(NCBIアクセスコード:J00462、D78344)、IGHG3(NCBIアクセスコード:X00915、V01526)、IGHM(NCBIアクセスコード:J00444)からの膜貫通ドメインが挙げられる。
【0118】
一例では、使用される膜貫通ドメインは、PDGFR膜貫通ドメイン、ヒトB7-1膜貫通ドメイン、マウスB7-1膜貫通ドメイン、ヒトアシアログリコタンパク質受容体膜貫通ドメイン、及びerbb-2膜貫通ドメインからなる群から選択される。
【0119】
一例では、膜貫通ドメインは、PDGFR膜貫通ドメインである。
【0120】
別の例では、膜貫通ドメインは、野生型CTLA-4膜貫通ドメイン又はそのバリアントである。例えば、CTLA-4結合ドメインは、二量体形成を付与する残基が欠失している、その天然に存在する膜貫通ドメインに結合することができる。
【0121】
リンカー
リンカーは、任意の2つのタンパク質間の柔軟性の向上を促進し、かつ/又は立体障害を低減することができる。リンカーは、タンパク質の2つのドメインの間のランダムコイルに存在すると決定された配列などの天然起源のものであり得る。例示的なリンカー配列は、RNAポリメラーゼアルファサブユニットのC末端ドメインとN末端ドメインとの間に見出されるリンカーである。天然に存在するリンカーの他の例としては、1CI及びLexAタンパク質に見出されるリンカーが挙げられる。
【0122】
リンカー内では、アミノ酸配列は、経験的に決定されるように、又はモデリングによって明らかにされるように、リンカーの好ましい特徴に基づいて変化し得る。リンカーを選択する際の考慮事項は、リンカーの柔軟性、リンカーの電荷、及び天然に存在するサブユニット内のリンカーのいくつかのアミノ酸の存在を含む。リンカーはまた、リンカー内の残基がDNAに接触し、それによって結合親和性又は特異性に影響を及ぼすか、又は他のタンパク質と相互作用するように設計することができる。場合によっては、特に、サブユニット間のより長い距離にまたがる必要がある場合、又はドメインが特定の構成で保持されなければならない場合、リンカーは、任意選択で、追加の折り畳まれたドメインを含み得る。
【0123】
いくつかの例では、リンカーの設計は、リンカーが比較的短い距離、好ましくは約10オングストローム(Å)未満に及ぶことを必要とするドメインの配置を伴うことが好ましい。しかしながら、ある特定の実施形態では、リンカーは、最大約50Å以上の距離に及ぶ。
【0124】
「ペプチドリンカー」という用語は、CTLA-4結合ドメインを膜貫通ドメインに接続又はカップリングする短いペプチド断片を指す。リンカーは、ペプチド結合によって一緒に連結されたアミノ酸からなることが好ましい。例えば、ペプチドリンカーは、小さいアミノ酸残基又は親水性アミノ酸残基(例えば、グリシン、セリン、スレオニン、プロリン、アスパラギン酸、アスパラギン等)を含むことができる。例えば、ペプチドリンカーは、少なくとも5アミノ酸の長さ、又は約5~約100アミノ酸の長さ、又は約10~50アミノ酸の長さ、又は約10~15アミノ酸の長さを有するアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0125】
一例では、リンカーは、グリシン及びアラニンなどの立体的に妨げられていないアミノ酸の大部分で構成される。したがって、更なる例では、リンカーは、ポリグリシン、ポリアラニン又はポリセリンである。
【0126】
当業者であれば、多くの一般的に使用されるペプチドリンカーが、本開示の実施形態で使用され得ることを理解するであろう。ある特定の実施形態では、短いペプチドリンカーは、リンカー長を増加させるために繰り返し単位を含んでもよい。例えば、二重、三重又は四重の繰り返しリンカーである。一例では、リンカーは、式(Gly-Gly-Gly-Ser)nを含むか、又は式(Ser-Gly-Gly-Gly)n Serを含み、式中、nは、3~6の数である。
【0127】
一例では、リンカーは、配列SGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号14)若しくはSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号15)を含むか、又はそれからなる。
【0128】
非ペプチドリンカーもまた可能である。例えば、-NH-(CH2)s-C(O)-(式中、s=2~20)などのアルキルリンカーを使用することができる。これらのアルキルリンカーは、低級アルキル(例えば、C1~C6)、低級アシル、ハロゲン(例えば、Cl、Br)、CN、NH2、フェニルなどの任意の非立体的妨害基によって更に置換され得る。例示的な非ペプチドリンカーは、100~5000kD、好ましくは100~500kDの分子量を有するPEGリンカーである。
【0129】
使用に好適な他のリンカーの例としては、GSTVAAPS、TVAAPSGS若しくはGSTVAAPSGS、又は複数のそのようなリンカーが挙げられる。他の例としては、(TVSDVP)n(GS)mが挙げられ、式中、n=1及びm=1であるか、又はn=2及びm=1であるか、又はn=2及びm=0である。
【0130】
別の例では、リンカーは、GSである。
【0131】
間葉系前駆体又は幹細胞
本明細書で使用される場合、「間葉系前駆体又は幹細胞」(MLPC)という用語は、多能性を維持しながら自己再生する能力、及び間葉系起源、例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、間質細胞、線維芽細胞及び腱、又は非中胚葉起源、例えば、肝細胞、神経細胞及び上皮細胞のいずれかのいくつかの細胞型に分化する能力を有する未分化多能性細胞を指す。
【0132】
「間葉系前駆体又は幹細胞」という用語は、親細胞及びその未分化子孫の両方を含む。この用語はまた、間葉系前駆細胞(MPC)、多能性間質細胞、間葉系幹細胞(MSC)、血管周囲間葉系前駆体又は幹細胞、及びそれらの未分化子孫を含む。したがって、一例では、間葉系前駆体又は幹細胞は、間葉系幹細胞である。
【0133】
間葉系前駆体又は幹細胞は、自己、同種異系、異種異系、同系又は同種異系であり得る。自己細胞は、それらが再移植される同じ個体から単離される。同種異系細胞は、同じ種のドナーから単離される。異種細胞は、別の種のドナーから単離される。同系又は同種細胞は、双子、クローン、又は高度に近交系の研究動物モデルなどの遺伝的に同一の生物から単離される。
【0134】
一例では、間葉系前駆体又は幹細胞は、同種異系である。一例では、同種間葉系前駆体又は幹細胞を培養拡張し、凍結保存する。
【0135】
一例では、間葉系前駆体又は幹細胞は、STRO-1及び1つ以上のインテグリンを発現する。インテグリンは、細胞-細胞及び細胞-細胞外マトリックス接着事象の両方を媒介する細胞接着受容体のクラスである。
【0136】
一例では、間葉系前駆体又は幹細胞は、STRO-1及びコクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体を発現する。別の例では、間葉系前駆体又は幹細胞は、STRO-1、コクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体、並びに上記参照されるインテグリンのうちの1つ以上を発現する。
【0137】
別の例では、間葉系前駆体又は幹細胞は、CD29+、CD54+、CD73+、CD90+、CD102+、CD105+、CD106+、CD166+、MHC1+MSCである。
【0138】
一例では、間葉系前駆体又は幹細胞は、MSCである。MSCは、均質な組成物であってもよく、又はMSCで濃縮された混合細胞集団であってもよい。均一なMSC組成物は、接着性骨髄細胞又は骨膜細胞を培養することによって得ることができ、MSCは、独自のモノクローナル抗体で同定される特定の細胞表面マーカーによって同定され得る。MSCで濃縮された細胞集団を得るための方法は、例えば、米国特許第5486359号に記載されている。従来のプラスチック接着単離によって調製されたMSCは、CFU-Fの非特異的なプラスチック接着特性に依存する。
【0139】
「濃縮された」、「濃縮」という用語、又はそれらの変形形態は、1つの特定の細胞型の割合又はいくつかの特定の細胞型の割合が、未治療の細胞集団(例えば、それらの天然環境における細胞)と比較したときに増加する細胞集団を説明するために本明細書で使用される。一例では、間葉系前駆体又は幹細胞が濃縮された集団は、少なくとも約0.1%又は0.5%又は1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%又は25%又は30%又は50%又は75%の間葉系前駆体又は幹細胞を含む。
【0140】
一例では、細胞集団は、選択可能な形態のSTRO-1+細胞を含む細胞調製物から濃縮される。これに関して、「選択可能な形態」という用語は、細胞が、STRO-1+細胞の選択を可能にするマーカー(例えば、細胞表面マーカー)を発現することを意味すると理解されるであろう。マーカーは、STRO-1であり得るが、必ずしもそうである必要はない。例えば、本明細書に記載及び/又は例示されるように、STRO-2及び/又はSTRO-3(TNAP)及び/又はSTRO-4及び/又はVCAM-1及び/又はCD146及び/又は3G5を発現する細胞(例えば、間葉系前駆細胞)も、STRO-1を発現する(及びSTRO-1brightであり得る)。したがって、細胞がSTRO-1+であることの表示は、細胞がSTRO-1発現によってのみ選択されることを意味しない。一例では、細胞は、少なくともSTRO-3発現に基づいて選択され、例えば、それらは、STRO-3+(TNAP+)である。例えば、MPCは、抗STRO-3抗体を用いて骨単核細胞から単離され得る。
【0141】
細胞又はその集団の選択への言及は、必ずしも特定の組織供給源からの選択を必要としない。本明細書に記載されるように、STRO-1+細胞は、多種多様な供給源から選択され得るか、単離され得るか、又は濃縮され得る。とはいえ、いくつかの例では、これらの用語は、STRO-1+細胞(例えば、間葉系前駆細胞)を含む任意の組織、又は周細胞(例えば、STRO-1+周細胞)を含む血管化された組織若しくは組織、又は本明細書に列挙される組織のうちのいずれか1つ以上からの選択のためのサポートを提供する。
【0142】
一例では、本開示で使用される細胞は、TNAP+、VCAM-1+、THY-1、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)、CD45+、CD146+、3G5+又はそれらの任意の組み合わせからなる群から個別に又は集合的に選択される1つ以上のマーカーを発現する。
【0143】
本開示の好ましい実施形態では、間葉系前駆体又は幹細胞は、健康なボランティアの骨髄から濃縮された間葉系前駆体又は幹細胞に由来するマスター細胞バンクから得られる。そのような供給源に由来する間葉系前駆体又は幹細胞の使用は、間葉系前駆体若しくは幹細胞ドナーとして機能することができる利用可能な適切なファミリーメンバーを有しない、又は即時の治療を必要とし、間葉系前駆体又は幹細胞を生成するのにそのような時間中に再発、疾患関連の低下又は死亡の高いリスクにある対象にとって特に有利である。
【0144】
本開示によって包含される間葉系前駆体又は幹細胞もまた、対象への投与前に凍結保存され得る。一例では、対象への投与前に、間葉系前駆体又は幹細胞を培養拡張し、凍結保存する。
【0145】
一例では、本開示は、間葉系前駆体又は幹細胞、並びにそれらの子孫、それらから誘導される可溶性因子、及び/又はそれらから単離された細胞外小胞を包含する。別の例では、本開示は、間葉系前駆体又は幹細胞、並びにそれらから単離された細胞外小胞を包含する。例えば、本開示の間葉系前駆体系又は幹細胞を、細胞培養培地への細胞外小胞の分泌に好適な期間及び条件下で培養することが可能である。分泌された細胞外小胞は、その後、治療法で使用するために培養培地から得ることができる。
【0146】
「細胞外小胞」という用語は、本明細書で使用される場合、細胞から自然に放出され、サイズが約30nm~10ミクロンの範囲の脂質粒子を指すが、典型的にはサイズが200nm未満である。それらは、放出細胞(例えば、間葉系幹細胞;STRO-1+細胞)由来のタンパク質、核酸、脂質、代謝産物、又はオルガネラを含有することができる。
【0147】
本明細書で使用される「エクソソーム」という用語は、概して約30nm~約150nmの範囲のサイズであり、それらが細胞膜に輸送され、放出される哺乳動物細胞のエンドソーム区画に由来する細胞外小胞のタイプを指す。それらは、核酸(例えば、RNA;microRNA)、タンパク質、脂質、及び代謝産物を含み得、1つの細胞から分泌され、他の細胞によって取り込まれて、それらのカーゴを送達することによって、細胞間通信において機能する。
【0148】
多能性幹細胞
本明細書で使用される場合、「多能性幹細胞」という表現は、3つ全ての胚葉(すなわち、内胚葉、外胚葉及び中胚葉)に分化することができる細胞を指す。本発明のいくつかの実施形態によれば、「多能性幹細胞」という発現は、胚性幹細胞(ESC)及び誘導多能性幹細胞(iPS細胞)を含む。
【0149】
「胚性幹細胞」という発現は、妊娠後に形成された胚組織(例えば、胚盤胞)(着床前(すなわち、着床前胚盤胞))、後期着床/早期原虫形成から得られた細胞である。胚盤胞から得られた(WO2006/04763を参照されたい)、及び妊娠中のいつでも、好ましくは妊娠10週前に胎児性器組織から得られた拡張胚盤胞細胞(EBC)。
【0150】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の多能性幹細胞は、例えば、ヒト又は霊長類(例えば、サル)に由来する胚性幹細胞である。
【0151】
市販の幹細胞もまた、本発明のこの態様で使用され得ることが理解されるであろう。ヒトES細胞は、NIHヒト胚性幹細胞レジストリー(www.escr.nih.gov)から購入することができる。市販の胚性幹細胞株の非限定的な例としては、BG01、BG02、BG03、BG04、CY12、CY30、CY92、CY10、TE03、TE04及びTE06が挙げられる。
【0152】
本明細書で使用される場合、「誘導多能性幹(iPS)細胞」(又は胚性多能性幹細胞)という表現は、体細胞(例えば、成体体細胞)の脱分化によって得られた増殖性及び多能性幹細胞を指す。
【0153】
本発明のいくつかの実施形態によると、iPS細胞は、ESCと同様の増殖能を特徴とし、したがって、ほぼ無限時間の培養において維持及び増殖することができる。
【0154】
IPS細胞は、遺伝子操作によって多能性を与えられ、細胞を再プログラムし、胚性幹細胞の特徴を得ることができる。それらは、-4、Sox2、Kfl4及びc-Mycの発現を誘導することによって体細胞から生成することができる。加えて、又はその代わりに、本発明のiPS細胞は、本質的に、Yu et al.,(2007)Science 318(5858):1917-1920及びNakagawa et al.,(2008)Science 322(5903):949-953に記載されているように、Oct4、Sox2、Nanog及びLin28の発現を誘導することによって体細胞から導出される。体細胞の遺伝子操作(リプログラミング)は、プラスミド若しくはウイルスベクターの使用などの任意の既知の方法を使用して、又はゲノムへの任意の組み込みなしで誘導することによって行うことができることに留意されたい(Yu J.et al.,Science.2009,324:797-801)。
【0155】
本発明のiPS細胞は、胚性線維芽細胞、hESCから形成される線維芽細胞、胎児線維芽細胞、封入線維芽細胞、成人皮膚及び皮膚組織であり得る。それらは、リンパ球、並びに成人肝細胞及び胃細胞の脱分化を誘導することによって利用可能である。
【0156】
IPS細胞株はまた、WiCellバンクなどの細胞バンクを介して利用可能である。市販のiPS細胞株の非限定的な例として、iPS包皮クローン1[WiCellカタログ番号:iPS(包皮)-1-DL-1]、iPSIMR90クローン1[WiCellカタログ番号:iPS(IMR90)-1-DL-1]]、及びiPSIMR90クローン4[WiCellカタログ番号:iPS(IMR90)-4-DL-1]。
【0157】
本発明のいくつかの実施形態によれば、誘導多能性幹細胞は、ヒト誘導多能性幹細胞である。
【0158】
治療剤
一実施形態では、哺乳動物細胞は、治療剤を標的細胞又は組織に運搬するように修飾されている。
【0159】
一例では、治療剤は、組換えウイルスである。「組換えウイルス」という用語は、本明細書に定義される細胞(又はその集団)において目的の導入遺伝子を発現するウイルスを指すために、本開示の文脈で使用される。一例では、組換えウイルスは、がん細胞を死滅させることができる導入遺伝子を発現する。一例では、組換えウイルスは、単純ヘルペスウイルス骨格を含む。一例では、組換えウイルスは、単純ヘルペスウイルスである。
【0160】
一例では、組換えウイルスは、感染した腫瘍細胞に対する免疫応答を増強する遺伝子を発現する。例えば、遺伝子は、GM-CSF、FLT3L、CCL3、CCL5、IL2、IL4、IL6、IL12、IL15、IL18、IFNA1、IFNB1、IFNG、CD80、4-1BBL、CD40L、熱ショックタンパク質(HSP)、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0161】
一例では、治療剤は、腫瘍溶解性ウイルスである。「腫瘍溶解性ウイルス」という用語は、本開示の文脈において、がん細胞に感染し、成長を低減することができるウイルスを指すために使用される。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、細胞増殖を阻害することができる。別の例では、腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞を死滅させることができる。一例では、腫瘍溶解性ウイルスは、対応する正常細胞と比較して、がん細胞を優先的に感染させ、その成長を阻害する。別の例では、腫瘍溶解性ウイルスは、対応する正常細胞と比較して、がん細胞の中で優先的に複製し、がん細胞の成長を阻害する。
【0162】
一例では、腫瘍溶解性ウイルスは、自然に感染し、がん細胞の成長を低減することができる。そのようなウイルスの例としては、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎、粘液腫、レオウイルス、シンドビス、麻疹、及びコクサッキーウイルスが挙げられる。腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞に自然に感染し、その成長を低減することができ、通常、これらの細胞において発生する細胞異常を利用することによってがん細胞を標的とする。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、Ras、Akt、p53、及び/又はインターフェロン(IFN)経路欠損などの表面付着受容体、活性化されたがん遺伝子を利用してもよい。
【0163】
別の例では、本開示によって包含される腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞に感染し、その成長を低減するように操作される。そのような操作に好適な例示的なウイルスには、腫瘍溶解性RNAウイルス、例えば、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)及びワクシニアウイルスなどの腫瘍溶解性DNAウイルス;並びにレンチウイルス、レオウイルス、コクサッキーウイルス、セネカバレーウイルス、ポリオウイルス、はしかウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、及びげっ歯類プロトパルボウイルスH-1PVなどのパルボウイルスが挙げられる。一例では、腫瘍溶解性ウイルスは、上記で参照されるウイルスの骨格を含む。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、HSV骨格を含むことができる。一例では、腫瘍溶解性ウイルスは、HSVである。
【0164】
一例では、腫瘍溶解性ウイルスは、複製可能である。一例では、腫瘍溶解性ウイルスは、対応する正常細胞及び/又は間葉系前駆体又は幹細胞と比較して、がん細胞で選択的に複製する。一例では、腫瘍溶解性ウイルスの腫瘍特異性は、がん細胞において構成的に活性化される転写活性に依存することによってウイルス複製を制限するように操作することができる(すなわち、条件的複製)。一例では、腫瘍溶解性ウイルスは、条件的複製性レンチウイルスである。別の例では、腫瘍溶解性ウイルスは、条件的複製性アデノウイルス、レオウイルス、麻疹、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス又はワクシニアである。
【0165】
別の実施形態では、治療剤は、好ましくは抗原、例えば腫瘍抗原に対して、免疫応答の誘導、活性化、及び/又は増強を直接的又は間接的にもたらすか、又は生じる免疫応答刺激サイトカインである。特に、本発明の免疫応答刺激サイトカインは、好ましくは、腫瘍疾患の治療に有益な免疫応答の誘導、活性化、及び/又は増強をもたらすサイトカインとみなされる。
【0166】
特定の種類のサイトカインとしては、モノカイン、すなわち、単核貪食細胞によって産生されるサイトカイン、リンホカイン、すなわち、活性化リンパ球、特にTh細胞によって産生されたサイトカイン、インターロイキン、すなわち、白血球とケモカインとの間のメディエーターとして機能するサイトカイン、すなわち、白血球の移動に主に関与する小サイトカインを挙げることができる。サイトカインシグナル伝達は柔軟性があり、保護反応及び有害反応の両方を誘発し得る。それらは、カスケードを産生するか、又は他のサイトカインの産生を増強若しくは抑制することができる。サイトカインの様々な役割にもかかわらず、当業者は、どのサイトカインが免疫応答刺激とみなされ得、したがって、本明細書に記載の腫瘍疾患の治療に適用され得るかを認識している。
【0167】
抗腫瘍療法で一般的に使用されるサイトカインの2つの群は、インターフェロン及びインターロイキンである。
【0168】
インターフェロンは、通常、抗ウイルス応答に関与する免疫系によって産生されるサイトカインであるが、がんの治療における有効性も示す。インターフェロン(IFN)には、I型(IFNアルファ及びIFNベータ)、2型(IFNガンマ)及び比較的新しく発見されたIII型(IFNラムダ)の3つの群がある。IFNアルファは、毛様細胞白血病、AIDS関連カポジ肉腫、濾胞性リンパ腫、慢性骨髄性白血病、及び黒色腫の治療に適用されている。I型及びII型IFNは、広く研究されており、両方の型が、免疫系の抗腫瘍効果を促進するが、I型IFNのみが、これまでのところ、がん治療において臨床的に有効であることが示されている。IFNラムダは、動物モデルにおいてその抗腫瘍効果について試験されており、有望であることが示されている。
【0169】
本発明のいくつかの実施形態によれば、免疫応答刺激又は免疫応答調節サイトカインは、好ましくは、T細胞調節に関与するか、又はT細胞に対するエフェクター機能を有するものである(T細胞調節サイトカイン)。これらのサイトカインは、炎症促進性微小環境の誘導に関して所望の特性を示し、それによって、腫瘍に対する免疫系の活性化を促進し、かつ/又は抗腫瘍免疫療法治療の有効性を強化する。そのようなサイトカインは、T細胞などの免疫エフェクター細胞を引き付け、メモリー免疫細胞の成熟を促進することができる場合がある。これらのサイトカインの例は、IFNガンマ、IL-2、IL-12、IL-23、IL-15及びIL-21である(Kelley’s Textbook of Rheumatology;Firestein et al,8th ed.(ISBN 978-1-4160-3285-4),p367「Cytokines」)。
【0170】
別の例では、T細胞増殖及び/又は分化を誘導する免疫刺激分子は、CD28である。CD28(分化クラスター28)は、活性化に必要な共刺激シグナルを提供するT細胞上に発現するタンパク質のうちの1つである。CD28はまた、好酸球顆粒球を刺激することが見出されており、抗CD28とのそのライゲーションは、IL-2、IL4、IL-13及びIFNガンマの放出をもたらす。
【0171】
別の例では、免疫応答刺激サイトカインは、T細胞、例えば、CCL1、CCL2及び/又はCCL17を引き付けるための走化性特性を有するケモカインである。
【0172】
別の例では、治療剤は、チェックポイント阻害剤である。例えば、チェックポイント阻害剤は、PD-L1及び/又はPD-1阻害剤であってもよい。
【0173】
組成物
本開示の哺乳動物細胞は、薬学的に許容される担体又は賦形剤と組み合わせたときに、組成物として使用することができる。そのような薬学的組成物は、インビボでの対象への投与に有用である。
【0174】
薬学的に許容される担体は、投与された患者にとって生理学的に許容され、それが投与される分子の治療特性を保持する。薬学的に許容される担体及びそれらの製剤は、一般に、例えば、Remington’pharmaceutical Sciences(18th ed.Ed.A Gennaro,Mack Publishing Co.,Easton PA 1990)に記載されている。1つの例示的な担体は、生理食塩水である。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という語句は、ポリペプチドを、身体のある臓器又は部分の投与部位から身体の別の臓器又は部分に運搬するか、又は輸送することに関与する、薬学的に許容される材料、組成物、又はビヒクル、例えば、液体又は固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、又はカプセル化材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、患者に有害ではないという意味で許容されなければならない。
【0175】
薬学的に許容される賦形剤は、保存剤又は凍結保存剤を含み得る。
【0176】
薬学的組成物は、全身又は局所の特定の投与経路と適合性であるように製剤化することができる。
【0177】
対象への投与のための好適な形態に分子を調製するための方法(例えば、薬学的組成物)は、当該技術分野で知られており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990)及びU.S.Pharmacopeia:National Formulary(Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1984)に記載される方法を含む。
【0178】
本開示の薬学的組成物は、非経口投与、例えば、静脈内投与、又は臓器若しくは関節の体腔若しくは管腔への投与などに特に有用である。投与のための組成物は、一般的に、薬学的に許容される担体、例えば、水性担体に溶解されたポリペプチドの溶液を含む。様々な水性担体、例えば、緩衝された生理食塩水などを使用することができる。組成物は、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤などの生理学的条件に近づけるために必要な薬学的に許容される補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含有し得る。これらの製剤における本開示のタンパク質の濃度は広く変動し得、選択される特定の投与形態及び患者の必要性に従って、主に流体体積、粘度、体重などに基づいて選択されるであろう。例示的な担体には、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンが含まれる。混合油及びオレイン酸エチルなどの非水性ビヒクルも使用され得る。リポソームもまた、担体として使用され得る。ビヒクルは、等張性及び化学安定性を向上させる少量の添加剤、例えば、緩衝剤、保存剤又は添加剤を含有し得る。
【0179】
製剤化すると、本開示の細胞は、投薬製剤と適合する様式で、かつ治療的/予防的に有効であるような量で投与される。
【0180】
静脈内投与について、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF Parsippany,N.J.)又はリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。抗細菌剤及び抗真菌剤としては、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸及びチメロサールが挙げられる。等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、及び塩化ナトリウムを組成物に含んでもよい。得られた溶液は、そのまま使用するために包装することができるか、又は凍結乾燥することができ、凍結乾燥調製物は、後で投与前に滅菌溶液と組み合わせることができる。
【0181】
本開示の組成物は、本明細書に提供される他の治療部分又はイメージング/診断部分と組み合わせることができる。治療部分及び/又はイメージング部分は、別個の組成物として、又はコンジュゲート部分として提供することができる。リンカーは、必要に応じて共役部分に含めることができ、本明細書の他の場所に記載されている。
【0182】
本開示の組成物は、他の治療剤、例えば、化学療法剤とともに投与され得る。化学療法剤は、当該技術分野で既知であり、細胞傷害性及び細胞抑制性薬物を含む。非限定的な例としては、パクリタキセル、シスプラチン、メトトレキサート、ドキソルビシン、フルダラビン等が挙げられる。治療される状態に応じて、他の治療剤が企図される。
【0183】
本開示の一実施形態は、障害を治療するための医薬品を作製するための本開示の薬学的組成物のうちのいずれかの使用を企図する。医薬品は、適切なラベルを有する好適な薬剤パッケージに包装することができ、ラベルは、対象における障害の治療を表示するためのものである。
【0184】
本開示の広範な一般的な範囲から逸脱することなく、多くの変形及び/又は修正が上記の実施形態に行われ得ることが、当業者には理解されるであろう。したがって、本実施形態は、全ての点において例解的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【実施例
【0185】
方法
プラスミド生成
哺乳動物細胞の細胞外表面での発現を達成するために、いくつかのCTLA-4結合ドメイン(CTLA-4 BD)をコードするDNA配列を、プラスミドディスプレイベクター(Invitrogen、カタログ番号V66020)にクローニングした。ディスプレイは、分泌のためのペプチドを示す免疫グロブリンG(IgG)カッパ軽鎖のリーダー配列(シグナルペプチド)、及び形質膜内でタンパク質をアンカーする血小板由来成長因子受容体β(PDGFRβ)からの膜貫通ドメインを含む。これら2つの特徴の間でフレーム内にクローニングされた配列は、プラスミドでトランスフェクトされた細胞の細胞外表面上に提示される。
【0186】
本明細書に記載される実験について、2つのCTLA-4 BD、すなわち、BD_B7及びBD_SOSTをコードする核酸配列を、標準的な技法(制限及びライゲーション)を使用してディスプレイにクローニングした。BD_B7は、B7.1(CD80)に対して、BD_SOSTは、ヒトスクレロスチン(SOST)に対して指向される。
【0187】
これらの実施例で使用されるCTLA-4配列は、天然配列のC末端修飾を含み、天然配列PEPCPDSDGSTGは、PEPSPDSNと置き換えられる。この配列は、BDMが単量体形態に留まることを可能にするC末端Cys残基を含まない。BD_B7及びBD_SOSTの両方は、GSリンカーの直前に、C末端におけるアミノ酸A(アラニン)の付加を含む。
BD_B7-ディスプレイベクターのアミノ酸配列:
【化4】
下線付き結合ループ領域
TMD=膜貫通ドメイン
下線及び斜体=IgKリーダー配列
BD_SOSTディスプレイベクターのアミノ酸配列:
【化5】
下線付き結合ループ領域
TMD=膜貫通ドメイン
下線及び斜体=IgKリーダー配列
【0188】
哺乳動物細胞のトランスフェクション
HEK293及びCHO細胞のトランスフェクション
HEK293細胞を、10%超低IgG胎仔血清(FCS、Gibco、カタログ番号1921005PJ)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco、カタログ番号10567014)で成長させた。CHO細胞を、10%超低IgG胎仔牛血清(FCS、Gibco、カタログ番号1921005PJ)を補充したDMEM/F12(Gibco、カタログ番号10565018)で成長させた。プロトコルの残りの部分は、両方の細胞型で同一であった。トランスフェクションの1日前に、細胞を、以前にポリD-リジン(PDL、Gibco、カタログ番号A38904-01)で製造業者の使用説明書に従ってコーティングされた96ウェルマイクロタイタープレート上にプレーティングした。その後のトランスフェクション及び細胞内ELISAのための理想的な細胞密度は、播種時にウェル当たり10,000個の細胞であると経験的に決定された。プレーティングの翌日、細胞を、リポフェクタミン3000トランスフェクションキット(Invitrogen、カタログ番号L3000-008)を使用してトランスフェクトした。ウェル当たりのDNA及びリポフェクタミンの理想的な量は、100ng(HEK細胞)又は200ng(CHO細胞)のDNA及び0.15μlのリポフェクタミン3000であると経験的に決定された。トランスフェクションは、製造業者の使用説明書に従って行った。
【0189】
ヒト間葉系幹細胞(MSC)のトランスフェクション
脂肪組織に由来するヒト間葉系幹細胞(aMSC、Merck、カタログ番号SCC038、ロット番号VP1806250)及び骨髄(bMSC、Merck、カタログ番号SCC034、ロット番号3602371)を、10%超低IgG胎仔血清(FCS、Gibco、カタログ番号1921005PJ)を補充したDMEM/F12(Gibco、カタログ番号10565018)中、又は間葉系幹細胞基礎培地(MSCBM、Lonza、カタログ番号PT-3001)中で成長させた。
【0190】
リポフェクションを介したbMSCのトランスフェクション
DNAのトランスフェクションは、模擬トランスフェクションではないが、有意な細胞傷害性を引き起こし、非特異的抗体結合は、細胞の数と相関しているため、トランスフェクションプロトコルを修正する必要があった。トランスフェクションの1日前に、細胞を、播種時にウェル当たり50,000細胞の密度で12ウェルマイクロタイタープレート上にプレーティングした。プレーティングの翌日、リポフェクタミン幹トランスフェクションキット(Invitrogen、カタログ番号STEM00003)を使用して細胞をトランスフェクトした。ウェル当たりのDNA及びリポフェクタミンの理想的な量は、ウェル当たり625ngのDNA及び2.5μlのリポフェクタミン幹であると経験的に決定された。トランスフェクションの30分前に、100nMの最終濃度でデキサメタゾン及び1μMの最終濃度でKPT-330(Selinexor)を添加することによって、細胞を「プライミングした」。このステップは、MSCにおけるトランスフェクション効率及び発現を大幅に増加させる(Hamann et al.,Glucocorticoid Priming of Nonviral Gene Delivery to hMSCs Increases Transfection by Reducing Induced Stresses,Mol Ther Methods Clin Dev 2020)トランスフェクションは、製造業者の使用説明書に従って行った。トランスフェクションの1日後、細胞をアキュターゼ剥離液で剥離し、カウントした。細胞を、ウェル当たり10,000個の細胞の密度で、96ウェルプレートにプレーティングした。翌日に細胞内ELISAを行った。
【0191】
トランスフェクション誘導型細胞毒性を補償するための別のアプローチでは、対照細胞を、BDMを含有しないpDisplay DNAでトランスフェクトし、BDM含有pDisplayでのトランスフェクションと同等の速度で細胞死を引き起こした。これらの場合において、細胞を、ウェル当たり7,500個の細胞の密度で96ウェルプレートにプレーティングした。翌日、上記のように、細胞をデキサメタゾン及びKPT-330でプライミングし、次いで、リポフェクタミン幹トランスフェクションキット(Invitrogen、カタログ番号STEM00003)を使用してトランスフェクトした。ウェル当たりのDNA及びリポフェクタミンの理想的な量は、ウェル当たり100ngのDNA及び0.15μlのリポフェクタミン幹であると経験的に決定された。
【0192】
エレクトロポレーション(ヌクレオフェクション)を介したbMSCのトランスフェクション
リポフェクションの代替として、プラスミドDNAを、Amaxa Nucleofector IIエレクトロポレーター及びヒト間葉系幹細胞Nucleofectorキット(Lonza、カタログ番号VVPE-1001)を使用してエレクトロポレーションによってbMSCに導入した。
【0193】
細胞をT75フラスコ中のMSCBM中でおよそ90%コンフルエンスまで増殖させた。トランスフェクションの日に、各フラスコ内の細胞を、カルシウム及びマグネシウムを含まない10mlのHank平衡塩溶液(HBSS-/-、Gibcoカタログ番号14175095)で洗浄した。次いで、細胞を、HBSS -/-中の3mlの0.25%トリプシンとともに、37℃及び5% COで10~15分間インキュベートした。分離した細胞をカルシウム及びマグネシウムを含有する7mlのHBSS(HBSS+/+、Gibcoカタログ番号14025092)で洗浄して再懸濁した。細胞を250×gで10分間遠心分離し、上清を吸引し、ペレットを1mlのHBSS+/+中に再懸濁した。血球計を使用して細胞をカウントし、1×10個の細胞に対応する体積を1.5mlの管に移した。細胞を再び250×gで10分間遠心分離し、上清を吸引し、ペレットを2μgのプラスミドDNAを含有する100μlのNucleofector溶液中に再懸濁した。懸濁液をヌクレオフェクションキュベットに移し、直ちにエレクトロポレーションする。事前に温めた500μlのMSCBMを細胞に添加し、懸濁液を、1mlのMSCBMを含有する6ウェルプレートのウェルに移した。細胞を37℃及び5% COで15分間インキュベートした後、細胞数及び生存率を血球計を使用して評価した。次いで、適切な体積を所望の容器に移した(例えば、96ウェルプレートの場合、15,000個の細胞を各ウェルに加え、T25フラスコの場合、最大1×10個を加えた)。
【0194】
哺乳動物細胞を用いた細胞内ELISA
全ての細胞内ELISA実験を、96ウェルのマイクロタイタープレートにおいて実行した。一次抗体がCTLA-4結合ドメインのリガンドに対して指向されたアッセイでは、CTLA-4BDを発現する細胞の上清を吸引し、様々な濃度のリガンド(rhSOST(R&D systems 1406-ST-025/CF)又はB7-1/CD80タンパク質(Acro Biosystems、B71-H5259)を含有する培地に置き換え、室温で1時間インキュベートした。CTLA-4結合ドメインを発現する細胞へのBリンパ球の結合を評価するアッセイについては、リンパ芽細胞様細胞株(Raji細胞)からの細胞を使用した。必要な数のRaji細胞(各アッセイウェルに対して100,000細胞)を遠心分離し、適切な体積のMSCBM(100μl/100,000細胞)中に再懸濁し、細胞懸濁液をbMSCを含有するウェルに加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした後、ウェルをD-PBSで3回非常に慎重に洗浄した。
【0195】
細胞内ELISAアッセイを、CTLA-4 BDプラスミドDNAによるトランスフェクションの2日後に実行した。細胞上清を吸引し、細胞を3回、300μlのD-PBS(137mMのNaCl、8.1mMのNaHPO、2.68mMのKCl、1.47mMのKHPO、0.9mMのCaCl、0.5mMのMgCl)で洗浄し、次いで、50μlのホルムアルデヒド溶液(PBS中4%、例えば、Santa Cruz Biotechnology、カタログ番号SANTS-281692)を加えることによって固定した。室温でのインキュベーションの15~20分後、溶液を吸引し、細胞を300μlのD-PBS-T(0.05%(w/v)のTween-20を含有するD-PBS)で3回洗浄した。ウェルを、室温で1時間、D-PBS-T中の300μlの5%脱脂乳で1時間インキュベートすることによってブロックした。ブロック緩衝液を吸引し、ウェルを3×300μlのD-PBS-Tで洗浄した後、D-PBS-Tで希釈した50μlの一次抗体を加えた(抗体及びそれらのそれぞれの希釈については表1を参照されたい)。室温でのインキュベーションの1時間後、抗体溶液を吸引し、ウェルを300μlのD-PBS-Tで3~5回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート二次抗体をD-PBS-T中で希釈し(表1を参照されたい)、100μlを各ウェルに加えた。室温で1時間のインキュベーション後、抗体溶液を吸引し、ウェルを300μlのD-PBS-Tで3回、300μlのD-PBSで2回洗浄した。次いで、100μlのHRP基質溶液(1-Step Ultra TMB、Themo Fisher、カタログ番号34029)をウェルに加えた。5~15分後、100μlの1MのHClを加えることによって反応を停止させ、マイクロプレートリーダーを使用して、450nmの波長での吸光度を測定した。
【表2】
【0196】
免疫蛍光染色及び共焦点顕微鏡検査
免疫蛍光(IF)染色及びその後の撮像のために、トランスフェクトしたbMSCを8ウェルチャンバースライド(Nunc Lab-Tek Chamber Slide System,Permanox plastic,ThermoFisherカタログ番号177830)上にプレーティングした。プレーティングの1~2日後、上清を吸引し、ウェルを250μlのD-PBSで3回洗浄した。細胞を、室温で15分間、PBS中の100μlの4%ホルムアルデヒドで固定した。ホルムアルデヒド溶液を吸引し、ウェルをD-PBSで3回洗浄した。次いで、ウェルを、D-PBS-T中の250μlの10%正常ヤギ血清(NGS、ThermoFisherカタログ番号31873)で1時間ブロックした。ブロック緩衝液を吸引し、ブロック緩衝液中に100μlの一次抗体を加えた(希釈については表1を参照されたい)。室温で1時間インキュベートした後、一次抗体溶液を除去し、ウェルを250μlのD-PBS-Tで3回洗浄した。ブロック緩衝液中の100μlのフルオロフォア標識二次抗体(希釈については表1を参照されたい)を加え、暗所にて室温で1時間インキュベートした。ウェルを、250μlのD-PBS-Tで3回、及び250μlのD-PBSで2回洗浄した。次いで、ウェルを、PBS中の1μg/mlの4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI、Sigmaカタログ番号D9543)溶液を用いて5分間インキュベートして、核を染色した。ウェルを、250μlのD-PBSで3回洗浄した。プラスチックチャンバ及びシリコーンガスケットをスライドから慎重に取り外し、ガラスカバースリップを、ProLongガラス褪色防止封入剤(ThemoFisherカタログ番号P36982)を使用して封入した。スライドを、暗所にて室温で24時間硬化させ、次いで、暗所にて4℃で保存した。
【0197】
結果
実施例1 CTLA-4上の細胞表面発現
図1に提示される結果は、(A)、B7-1(CD80)又は(B)、結合ドメイン(BD)でトランスフェクトされたHEK293腎細胞又は抗CTLA-4抗体を使用してBD配列を含まないプラスミドでトランスフェクトされた模擬の細胞表面に発現されるスクレロスチン(SOST)のいずれかに対して指向されたBDの検出を比較した。スクレロスチンに結合するように操作されたBDを発現するHEK細胞に結合したヒト組換えスクレロスチンの結合を図1Cに示す。
【0198】
図2は、図1の実験を再現するが、トランスフェクトされた細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞であった。(A)B7-1(CD80)又は(B)結合ドメイン(BD)でトランスフェクトされたCHO細胞又はトランスフェクトされた模擬(空のプラスミド)の細胞表面上に発現されたスクレロスチン(SOST)のいずれかに対して指向されたBDを、抗CTLA-4抗体で検出した。スクレロスチンに結合するように操作されたBDを発現するCHO細胞に結合したヒト組換えスクレロスチンの結合を図2Cに示す。
【0199】
本発明者らはまた、CTLA-4結合ドメイン(BD_B7若しくはBD_SOST)を発現するDNAを含むプラスミドでトランスフェクトされる脂肪組織由来間葉系幹細胞(aMSC)、又は空のプラスミドでトランスフェクトされた模擬の能力も調べた。CTLA-4に特異的な抗体を使用して、細胞表面上のBDの検出を調べた。aMSCはSOST結合タンパク質を内因的に発現するため、rhSOSTの結合を評価することができなかった。
【0200】
これらの結果は、CTLA-4結合ドメインを、一連の哺乳動物細胞、すなわちHEK293、CHO、及び脂肪由来MSCの表面膜上に発現され、機能的に折り畳まれ、提示され得ることを示している。これらの細胞の表面に提示されるCTLA-4結合ドメインは、それらの正しい構成を維持し、それらの既知の結合パートナーに結合することができる。
【0201】
実施例2 CTLA-4を発現するMSCは、CD80発現細胞に結合することができる
本発明者らは、B7-1に対して指向されたCTLA-4結合ドメイン又はスクレロスチンに対して指向されたCTLA-4結合ドメインを発現するプラスミドDNAでトランスフェクトされた骨髄由来間葉系幹細胞(bMSC)がbMSCの細胞表面に発現することができることを示す実験(細胞内ELISA)を行った。抗CTLA-4特異的抗体を使用して、細胞表面発現を検出した。図4Aは、BD_B7の検出を示し、図4Bは、抗CTLA-4抗体を使用したBD_SOSTの検出を示す。図4Cは、bMSCを発現するBD_B7に結合したヒトB7-1(CD80)タンパク質の検出を示す。bMSCはSOST結合タンパク質を内因的に発現するため、rhSOSTの結合を評価することができなかった。
【0202】
bMSCを発現するBD_B7を、CD80を発現するRaji細胞に結合する能力について調べた。bMSCを発現するBD_B7に結合したRaji細胞の検出を、抗CD80抗体を使用して行った。トランスフェクトされたbMSCを染色し、CTLA-4BDが抗CTLA-4抗体を使用して細胞表面に配置され(緑色に染色)、核染色(青色)が核染色(DAPI)を使用して観察された免疫蛍光染色が観察された。
【0203】
これらの結果は、CTLA-4結合ドメインが発現され、正しく折り畳まれ、骨髄由来MSC(BMSC)の表面に提示され、BDが認識する抗原を発現する細胞に結合することができることを示す。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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【国際調査報告】