(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】改善された等温増幅
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20241112BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20241112BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6876 Z
C12N15/09 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531420
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 AU2022051403
(87)【国際公開番号】W WO2023092178
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524197150
【氏名又は名称】ジェネティック シグネチャーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ダグラス
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ06
4B063QQ07
4B063QQ08
4B063QQ10
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
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4B063QR75
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4B063QR77
4B063QR79
4B063QS24
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】
標的核酸のループ介在等温増幅(LAMP)の偽陽性の発生を低減させ、効率を増加させ、及び/又は感度を増加させる。
【解決手段】
標的核酸用の複数のLAMPプライマーであって、F3プライマー及びB3プライマーを含み、F3及びB3プライマーの両方又はF3プライマーは、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含む複数のLAMPプライマー;dNTP;鎖置換DNAポリメラーゼ;逆転写酵素;RNAポリメラーゼ;及びrNTP並びに任意選択で核酸結合色素又はプローブを合わせて、LAMP試薬ミックスを形成すること、LAMP試薬ミックスを標的核酸と、標的核酸の増幅に好適な条件下でインキュベートし、プロモーター、RNAポリメラーゼ及びrNTPの不存在下で実施される同じ増幅と比較して効率及び/又は感度が増加することを含む方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸のループ介在等温増幅(LAMP)の偽陽性の発生を低減させ、効率を増加させ、及び/又は感度を増加させる方法であって、
a)
i)標的核酸用の複数のLAMPプライマーであって、F3プライマー及びB3プライマーを含み、前記F3及びB3プライマーの両方又は前記F3プライマーは、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含む複数のLAMPプライマー;
ii)dNTP;
iii)鎖置換DNAポリメラーゼ;
iv)逆転写酵素;
v)RNAポリメラーゼ;及び
iv)rNTP;並びに
vii)任意選択で核酸結合色素又はプローブ
を合わせてLAMP試薬ミックスを形成すること、
b)前記LAMP試薬ミックスを前記標的核酸と、前記標的核酸の増幅に好適な条件下でインキュベートし、前記プロモーター、RNAポリメラーゼ及びrNTPの不存在下で実施される同じ増幅と比較して効率及び/又は感度が増加すること
を含む方法。
【請求項2】
前記プローブは、前記標的に特異的な蛍光プローブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロモーター配列は、配列番号1のT7プロモーター、配列番号2~4のT3プロモーター、及び配列番号5~6のSP6プロモーターから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記RNAポリメラーゼは、T7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ及びSP6RNAポリメラーゼから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記rNTPの濃度は、約0.25mM~約2.5mMであり、RNAポリメラーゼの濃度は、反応当たり約7.5単位~反応当たり約50単位である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記LAMP試薬ミックスは、グアニジニウム塩酸塩(GuHCl)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記GuHClは、少なくとも約30mMの濃度におけるものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記標的核酸は、重亜硫酸塩処理される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数のLAMPプライマーは、FIPプライマー、BIPプライマー、LFプライマー及びLBプライマーをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記FIPプライマー、前記BIPプライマー、前記LFプライマー及び前記LBプライマーは、RNAポリメラーゼ用のプロモーターを含まない、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記F3プライマー及び前記B3プライマーの両方は、5’末端におけるプロモーター配列を含み、前記プロモーター配列は、配列番号1のT7プロモーター、配列番号2~4のT3プロモーター、及び配列番号5~6のSP6プロモーターから選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記F3プライマーは、5’末端におけるプロモーター配列を含み、前記プロモーター配列は、配列番号1のT7プロモーター、配列番号2~4のT3プロモーター、及び配列番号5~6のSP6プロモーターから選択される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項13】
前記標的核酸は、病原体に特異的なRNA又はDNAである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記病原体は、細菌、ウイルス、真菌及び寄生虫から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記細菌は、サルモネラ属種(Salmonella spp)、ボルデテラ属種(Bordetella spp)、カンピロバクター属種(Campylobacter spp)、クロストリジウム属種(Clostridium spp)、クラミジア属種(Chlamydia spp)、クラミドフィラ属種(Chlamydophila spp)、リステリア属種(Listeria spp);リンフォグラヌローマ属種(Lymphogranuloma spp)、シゲラ属種(Shigella spp)、ナイセリア属種(Neisseria spp)、スタフィロコッカス属種(Staphylococcus spp)、ストレプトコッカス属種(Streptococcus spp)、リステリア属種(Listeria spp)、リーシュマニア属種(Lieshmania spp)、バチルス属種(Bacillus spp)、ボレリア属種(Borellia spp)、リケッチア属種(Ricketssia spp)、コリネバクテリウム属種(Corynebacterium spp)、ガーデネラ属種(Gardenella spp)、ヘモフィルス属種(Haemophilus spp)、エシェリキア属種(Escherichia spp)、ヘリコバクター属種(Helicobacter spp)、クレブシエラ属種(Klebsiella spp)、レジオネラ属種(Legionella spp)、マイコバケリウム属種(Mycobacerium spp)、マイコプラズマ属種(Mycoplasma spp)、モラキセラ属種(Moraxella spp)、パスツレラ属種(Pasteurella spp)、ニューモシスティス属種(Pneumocystis spp)、シュードモナス属種(Pseudomonas spp)、トレポネーマ属種(Treponema spp)、ウレアプラズマ属種(Ureaplasma spp)、ビブリオ属種(Vibrio sp)、エルモナス属種(Aermonas spp)、及びエルシニア属種(Yersinia spp)から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ウイルスは、パレコウイルス、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス科(togaviridae)、ポリオーマウイルス、パピローマウイルス、ヘパドナウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、ピコルナウイルス、ヘペウイルス、カリシウイルス、レオウイルス、レトロウイルス オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、エボラウイルス、
フィロウイルス科(Filoviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、ブニヤウイルス目(Bunyavirales)、アレナウイルス科(Arenaviridae)、ハンタウイルス科(Hantaviridae)及びデルタウイルスから選択される、請求書14に記載の方法。
【請求項17】
前記コロナウイルスは、コロナウイルスHKU-1、コロナウイルスOC43、コロナウイルスNL63/229E、又はSARS-CoV-2である、請求書16に記載の方法。
【請求項18】
前記寄生虫は、ブラストシスティス属種(Blastocystis spp)、ジアルジア属種(Giardia spp)、クリプトスポリジウム属種(Cryptosporidium spp)、サイクロスポラ属種(Cyclospora spp)、ブラストシスティス属種(Blastocystis spp)、ジエントアメーバ属種(Dientamoeba spp)、エントアメーバ属種(Entamoeba spp)、クリプトコッカス属種(Cryptococcus spp)、エンテロシトゾーン属種(Enterocytozoon spp)、エンセファリトゾーン属種(Encephalitozoon spp)、バベシア属種(Babesiaspp);リーシュマニア属種(Leishmania spp)、シストソーマ属種(Schistosoma spp)、トリパノソーマ属種(Trypanosoma spp)、トリキモナス属種(Trichimonas spp)、トレポネーマ属種(Treponemaspp)、及びプラスムドイウム属種(Plasmdoium spp)から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記真菌は、アスペルギルス属種(Aspergillus spp)、カンジダ属種(Candida spp)、ヒストプラズマ属種(Histoplasma spp)、フザリウム属種(Fusariumspp)、ニューモシスティス属種(Pneumocystis spp)、パラコクコイデス属種(Paracoccoides spp)、コクシジオイデス属種(Coccidioides spp)、及びスケドスポリウム属種(Scedosporium spp)から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記LAMP反応の前記感度は、少なくとも約10%~約30%だけ増加される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記LAMP反応の前記効率は、少なくとも約5%~約20%だけ増加される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ループ介在等温増幅(LAMP)は、マルチプレックス反応であって、ステップa)において、第2の標的核酸用の第2の複数のLAMPプライマーであって、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含むF3プライマーを含む第2の複数のLAMPプライマーを合わせることを含むマルチプレックス反応である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
標的核酸用の複数のLAMPプライマーであって、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを各々含むF3プライマー及びB3プライマー、又は5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含むF3プライマーと、前記標的核酸に相補的な少なくとも1つの配列とを含む複数のLAMPプライマー。
【請求項24】
ループ介在等温増幅反応(LAMP)反応を使用して標的核酸を検出するためのキットであって、
i)前記標的核酸用の複数のLAMPプライマーであって、F3プライマー及びB3プライマーを含み、前記F3及びB3プライマーの両方又は前記F3プライマーは、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含む複数のLAMPプライマー;
ii)dNTP;
iii)鎖置換DNAポリメラーゼ;
iv)逆転写酵素;
v)RNAポリメラーゼ;
iv)rNTP;及び
vii)任意選択で核酸結合色素又はプローブ
を含むキット。
【請求項25】
前記プローブは、前記標的に特異的な蛍光プローブである、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記標的核酸は、RNA又はDNA特異的病原体である、請求項24又は25に記載のキット。
【請求項27】
前記複数のLAMPプライマーは、FIPプライマー、BIPプライマー、LFプライマー及びLBプライマーをさらに含む、請求項24~26のいずれか一項に記載のキット。
【請求項28】
前記FIPプライマー、前記BIPプライマー、前記LFプライマー及び前記LBプライマーは、RNAポリメラーゼ用のプロモーターを含まない、請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記ループ介在等温増幅(LAMP)は、マルチプレックス反応である、請求項24~28のいずれか一項に記載のキット。
【請求項30】
第2の標的核酸用の第2の複数のLAMPプライマーであって、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含むF3プライマーを含む第2の複数のLAMPプライマーをさらに含む、請求項29に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
[001] 本発明は、等温増幅反応を改善するための方法及びキットに関する。特に、本発明は、複数のループ介在等温増幅(LAMP)プライマーを用いることにより、LAMP反応の効率及び/又は感度を増加させるための方法及びキットであって、LAMPプライマーの少なくとも1つは、RNAポリメラーゼ用のプロモーターを含む方法及びキットに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
[002] 本出願は、参照により全体として組み込まれる2021年11月23日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2021903771号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
背景
[003] サンプル中の核酸標的配列の検出は、通常、存在するDNAの量が測定可能なほど多くなるまで、増幅されるべき標的配列を要求する。RNA標的配列、例えば、ウイルスRNAの検出は、増幅前にRNAのDNAへの転写を付加的に要求する。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、核酸増幅及び核酸検出法における中心的役割を担っている。しかしながら、PCRの1つの欠点は、DNA変性を可能とし、DNA断片を増幅させるために数秒~数分ごとに段階的に反応ミックスの温度を変更し、変性及び増幅のサイクルを複数回繰り返すためのサーマルサイクラーの必要性である。
【0004】
[004] 等温増幅反応は、定温における標的核酸の検出を可能とし、したがってサーマルサイクリングの必要性により拘束されない。種々の等温増幅法が存在し、それらは全ていくつかの共通の特徴を共有する。例えば、DNA鎖は熱変性されないため、等温法は、プライマー結合及び増幅反応の開始を可能とするための鎖置換活性を有するポリメラーゼに依存する。等温増幅法は、疾患のポイントオブケア診断及び市販の診断プラットフォームに適用されており、多大な成功を収めている。
【0005】
[005] ループ介在等温増幅(LAMP)は、精巧な設備を要求せずに標的核酸を検出するために設計された等温増幅法である。LAMP反応は、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ及びDNA又はRNA標的核酸の区別される領域を認識するように特異的に設計される4~6つの異なるプライマーのセットを使用する。反応は、限られたリソースを用いて、例えば、インキュベーションのための水浴(典型的には60~70℃)を使用して実施され得、陽性結果は、濁度、比色変化、ラテラルフローリードアウト、蛍光DNA結合色素又は標識プローブの添加により目視的に同定され得る。COVID-19パンデミックにおいて、SARS-CoV-2 RNAを臨床及び住宅環境において迅速に検出するためにLAMP反応が採用されてきた。
【0006】
[006] 多くの等温法及びキットが目下存在するが、改善された効率及び/又は感度を有する既存の方法及びキットの改善が依然として必要とされている。
【0007】
[007] 本発明者らは、既存の等温増幅法の効率及び/又は感度を改善するための方法及びキットを開発した。特に、本発明者らは、予想外に、LAMPの効率及び/又は感度が、RNAポリメラーゼプロモーターを含むLAMPプライマーを添加することにより、及びrNTPをRNAポリメラーゼとともに添加することにより、RNAポリメラーゼプロモーターを含むLAMPプライマー、rNTP、及びRNAポリメラーゼの不存在下の同じ反応(同じ条件下)と比較して改善され得ることを見出した。
【0008】
[008] 本明細書に含められた文献、行為、材料、装置、物品などの任意の考察は、本技術に文脈を提供する目的のためのものにすぎない。これらの事項のいずれか又は全てが、本明細書の各請求項の優先日前に存在するために従来技術基準の一部を形成し、又は本技術に関連する分野における共通一般知識であったことの承認と解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
[009] 第1の態様において、標的核酸のループ介在等温増幅(LAMP)の偽陽性の発生を低減させ、効率を増加させ、及び/又は感度を増加させる方法であって、
a)
i)標的核酸用の複数のLAMPプライマーであって、F3プライマー及びB3プライマーを含み、F3及びB3プライマーの両方又はF3プライマーは、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含む複数のLAMPプライマー;
ii)dNTP;
iii)鎖置換DNAポリメラーゼ;
iv)逆転写酵素;
v)RNAポリメラーゼ;及び
vi)rNTP並びに
vii)任意選択で核酸結合色素又はプローブ
を合わせてLAMP試薬ミックスを形成すること、
b)LAMP試薬ミックスを標的核酸と、標的核酸の増幅に好適な条件下でインキュベートし、プロモーター、RNAポリメラーゼ及びrNTPの不存在下で実施される同じ増幅と比較して効率及び/又は感度が増加すること
を含む方法が提供される。
【0010】
[010] 一実施形態において、プローブは、標的に特異的であり、例えば、Easybeacon(商標)プローブ(Pentabase製)である。
【0011】
[011] 一実施形態において、RNAポリメラーゼ用のプロモーターは、LAMPプライマーの5’末端に存在する。
【0012】
[012] 標的核酸の増幅に好適な条件は、LAMP試薬ミックスを標的核酸と約60℃~約70℃の温度で約10分間~約40分間インキュベートすることを含み得る。
【0013】
[013] 標的核酸の増幅に好適な条件は、LAMP試薬ミックスを標的核酸と約65℃の温度で約10分間~約40分間インキュベートすることを含み得る。
【0014】
[014] 一実施形態において、標的核酸の増幅に好適な条件は、LAMP試薬ミックスを標的核酸と約42℃の温度で約1分間~約10分間インキュベートし、次いでLAMP試薬ミックスを標的核酸と約60℃~約70℃の温度で約10分間~約40分間さらにインキュベートすることを含み得る。
【0015】
[015] 一実施形態において、標的核酸の増幅に好適な条件は、LAMP試薬ミックスを標的核酸と約42℃の温度で約1分間~約10分間インキュベートし、次いでLAMP試薬ミックスを標的核酸と約65℃の温度で約10分間~約40分間さらにインキュベートすることを含み得る。
【0016】
[016] 一部の実施形態において、プロモーターの配列は、配列番号1のT7プロモーター、配列番号2~4のT3プロモーター、及び配列番号5~6のSP6プロモーターから選択される。一部の実施形態において、増幅を改善するためにランダムヌクレオチドがプロモーター配列の5’又は3’末端に付加され得る。
【0017】
[017] 一部の実施形態において、プロモーターは、配列番号1の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列、配列番号2の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列、配列番号3の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列、配列番号4の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列、配列番号5の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列、及び配列番号6の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列から選択される。
【0018】
[018] 一部の実施形態において、RNAポリメラーゼは、T7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ、SP6RNAポリメラーゼ及びE.コリ(E.coli)RNAポリメラーゼから選択される。
【0019】
[019] 一部の実施形態において、LAMP試薬ミックス中のrNTPの濃度は、約0.25mM、好ましくは、2.5mM未満であり、LAMP試薬ミックス中のRNAポリメラーゼの濃度は、反応当たり約7.5単位、好ましくは、反応当たり50単位未満である。
【0020】
[020] 一実施形態において、LAMP試薬ミックスは、グアニジニウム塩酸塩(GuHCl)を含む。LAMP試薬ミックス中のGuHClの濃度は、少なくとも約30mM~約60mMである。
【0021】
[021] 一部の実施形態において、標的核酸は、重亜硫酸塩処理される。
【0022】
[022] 一部の実施形態において、標的核酸は、その野生型(WT)形態である。
【0023】
[023] 一実施形態において、複数のLAMPプライマーは、FIPプライマー、BIPプライマー、LFプライマー及びLBプライマーを含む。
【0024】
[024] 一部の実施形態において、FIPプライマー、BIPプライマー、LFプライマー及びLBプライマーは、RNAポリメラーゼ用のプロモーターを含まない。
【0025】
[025] 一部の実施形態において、F3プライマー及びB3プライマーの両方は、5’末端におけるプロモーター配列を含み、プロモーター配列は、配列番号1のT7プロモーター、配列番号2~4のT3プロモーター、及び配列番号5~6のSP6プロモーターから選択される。
【0026】
[026] 一部の実施形態において、F3プライマーは、5’末端におけるプロモーター配列を含み、プロモーター配列は、配列番号1のT7プロモーター、配列番号2~4のT3プロモーター、及び配列番号5~6のSP6プロモーターから選択される。
【0027】
[027] 一部の実施形態において、F3プライマー又はB3プライマーは、5’末端におけるプロモーター配列を含有し、プロモーター配列は、配列番号1の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列、配列番号2の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列、配列番号3の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列、配列番号4の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列、配列番号5の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列、及び配列番号6の配列と少なくとも90%の配列同一性を有する配列から選択される。
【0028】
[028] 標的核酸は、RNA又はDNAであり得る。一部の実施形態において、RNA又はDNAは、病原体に特異的である。
【0029】
[029] 病原体は、細菌、ウイルス、真菌及び寄生虫から選択される。
【0030】
[030] 細菌は、サルモネラ属種(Salmonella spp)、ボルデテラ属種(Bordetella spp.)、カンピロバクター属種(Campylobacter spp)、クロストリジウム属種(Clostridium spp)、クラミジア属種(Chlamydia spp)、クラミドフィラ属種(Chlamydophila spp)、リステリア属種(Listeria spp);リンフォグラヌローマ属種(Lymphogranuloma spp)、シゲラ属種(Shigella spp)、ナイセリア属種(Neisseria spp.)、スタフィロコッカス属種(Staphylococcus spp)、ストレプトコッカス属種(Streptococcus spp)、リステリア属種(Listeria spp)、リーシュマニア属種(Lieshmania spp)、バチルス属種(Bacillus spp)、ボレリア属種(Borellia spp)、リケッチア属種(Ricketssia spp)、コリネバクテリウム属種(Corynebacterium spp)、ガーデネラ属種(Gardenella spp)、ヘモフィルス属種(Haemophilus spp)、エシェリキア属種(Escherichia spp)、ヘリコバクター属種(Helicobacter spp.)、クレブシエラ属種(Klebsiella spp)、レジオネラ属種(Legionella spp)、マイコバクテリウム属種(Mycobacerium spp)、マイコプラズマ属種(Mycoplasma spp);モラキセラ属種(Moraxella spp)、パスツレラ属種(Pasteurella spp)、ニューモシスティス属種(Pneumocystis spp)、シュードモナス属種(Pseudomonas spp)、トレポネーマ属種(Treponema spp)、ウレアプラズマ属種(Ureaplasma spp)、ビブリオ属種(Vibrio sp)、エルモナス属種(Aermonas spp)、及びエルシニア属種(Yersinia spp)から選択され得る。
【0031】
[031] ウイルスは、パレコウイルス、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス科(togaviridae)、ポリオーマウイルス、パピローマウイルス、ヘパドナウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、ピコルナウイルス、ヘペウイルス、カリシウイルス、レオウイルス、レトロウイルス オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、エボラウイルス、
フィロウイルス科(Filoviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、ブニヤウイルス目(Bunyavirales)、アレナウイルス科(Arenaviridae)、及びハンタウイルス科(Hantaviridae)並びにデルタウイルスから選択され得る。一実施形態において、コロナウイルスは、コロナウイルスHKU-1、コロナウイルスOC43、コロナウイルスNL63/229E、又はSARS-CoV-2である。
【0032】
[032] 寄生虫は、ブラストシスティス属種(Blastocystis spp)、ジアルジア属種(Giardiaspp)、クリプトスポリジウム属種(Cryptosporidium spp)、サイクロスポラ属種(Cyclospora spp)、ブラストシスティス属種(Blastocystis spp)、ジエントアメーバ属種(Dientamoeba spp)、エントアメーバ属種(Entamoeba spp)、クリプトコッカス属種(Cryptococcus spp)、エンテロシトゾーン属種(Enterocytozoon spp)、エンセファリトゾーン属種(Encephalitozoon spp)、バベシア属種(Babesiaspp)、リーシュマニア属種(Leishmania spp)、シストソーマ属種(Schistosoma spp)、トリパノソーマ属種(Trypanosoma spp);トリキモナス属種(Trichimonas spp)、トレポネーマ属種(Treponemaspp.)、及びプラスムドイウム属種(Plasmdoium spp)から選択され得る。
【0033】
[033] 真菌は、アスペルギルス属種(Aspergillus spp)、カンジダ属種(Candidaspp)、ヒストプラズマ属種(Histoplasma spp)、フザリウム属種(Fusarium spp)、ニューモシスティス属種(Pneumocystis spp)、パラコクコイデス属種(Paracoccoides spp)、コクシジオイデス属種(Coccidioides spp)、及びスケドスポリウム属種(Scedosporium spp)から選択され得る。
【0034】
[034] 一部の実施形態において、LAMP反応の感度は、少なくとも約10%~約30%だけ増加される。一実施形態において、LAMP反応の感度は、約18分間未満の単一コピー検出レベルに至るまで改善される。
【0035】
[035] 一部の実施形態において、LAMP反応の効率は、少なくとも約5%~約20%だけ増加される。
【0036】
[036] 一部の実施形態において、LAMPは、マルチプレックス反応であって、ステップa)において、第2の標的核酸用の第2の複数のLAMPプライマーであって、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含むF3プライマーを含む第2の複数のLAMPプライマーを合わせることを含むマルチプレックス反応である。
【0037】
[037] 一実施形態において、標的核酸用の複数のLAMPプライマーであって、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを各々含むF3プライマー及びB3プライマー、又はRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含むF3プライマーと、標的核酸に相補的な少なくとも1つの配列とを含む複数のLAMPプライマーが提供される。
【0038】
[038] 第2の態様において、本発明は、標的核酸を用いるループ介在等温増幅反応(LAMP)反応を検出するためのキットであって、
i)標的核酸用の複数のLAMPプライマーであって、F3プライマー及びB3プライマーを含み、F3及びB3プライマーの両方又はF3プライマーは、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含む複数のLAMPプライマー;
ii)dNTP;
iii)鎖置換DNAポリメラーゼ;
iv)逆転写酵素;
v)RNAポリメラーゼ;
vi)rNTP;及び
vii)任意選択で核酸結合色素又はプローブ
を含むキットに関する。
【0039】
[039] LAMP反応産物は、沈殿ピロリン酸マグネシウムの目視試験又は濁度モニタリング、インターカレートフルオロフォア又は蛍光プローブを用いる二本鎖DNA(dsDNA)の蛍光検出、ピロリン酸変換を介する生物発光レポーティングを含む当業者に公知の種々の方法を使用し、及びラテラルフロー装置の使用により検出され得る。
【0040】
[040] 一実施形態において、第2の態様のキットは、RNA又はDNA特異的病原体を検出する。
【0041】
[041] 複数のLAMPプライマーは、FIPプライマー、BIPプライマー、LFプライマー及びLBプライマーをさらに含み得る。
【0042】
[042] 一部の実施形態において、FIPプライマー、BIPプライマー、LFプライマー及びLBプライマーは、RNAポリメラーゼ用のプロモーターを含まない。
【0043】
[043] 一実施形態において、第2の態様のキットは、マルチプレックスLAMP反応を検出するためのものである。
【0044】
[044] 一部の実施形態において、マルチプレックスLAMP反応を検出するための第2の態様のキットは、第2の標的核酸用の第2の複数のLAMPプライマーであって、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含むF3プライマーを含む第2の複数のLAMPプライマーをさらに含む。
【発明を実施するための形態】
【0045】
定義
[045] 本明細書全体にわたり、文脈が特に要求しない限り、語「含む(comprise)」、又は変形、例えば、「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」は、記述される要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の包含を意味するが、いかなる他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群も除外しないと理解される。
【0046】
[046] 文脈が特に要求し、又は特に別段の記述がない限り、単数の整数、ステップ又は要素として本明細書に引用される本発明の整数、ステップ、又は要素は、引用される整数、ステップ又は要素の単数形及び複数形の両方を明確に包含する。
【0047】
[047] 本明細書の文脈において、用語「a」、「an」及び「the」は、その冠詞の文法的対象物の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「サンプル」への言及は、1つのサンプル、又は2つ以上のサンプルを意味する。
【0048】
[048] 「少なくとも1つ」は、本明細書において使用される場合、1つ以上、特に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上に関する。
【0049】
[049] 本明細書の文脈において、用語「約」は、数字又は値への言及が絶対的な数字又は値と解釈されるべきではなく、典型的な許容誤差又は装置限界内を含む、当業者が当技術分野に従って理解するものに基づくその数字又は値の上下の許容変動を含むことを意味する。換言すると、用語「約」の使用は、同じ機能又は結果を達成する文脈において当業者が引用値と同等であるとみなす範囲又は概算値を指すと理解される。
【0050】
[050] 本明細書において使用される語句「及び/又は」は、そのように等位接続される要素、すなわち、ある場合には接続されて存在し、他の場合には接続されずに存在する要素の「いずれか又は両方」を意味すると理解されるべきである。非限定的な例として、「効率及び/又は感度」への言及は、一実施形態においては効率のみを指し、別の実施形態においては感度のみを指し、さらに別の実施形態においては、効率及び感度の両方を指し得る。
【0051】
[051] 本明細書において使用される用語「等温増幅」は、プロセスの間に形成される任意の二本鎖の鎖を分離するために熱を使用せずに標的核酸を反復的にコピーするプロセスを指す。一部の実施形態において、「等温増幅」は、単一温度で実施される増幅反応を指す。一部の実施形態において、「等温増幅」は、2つの異なる温度で実施される増幅反応を指す。等温増幅としては、限定されるものではないが、ループ介在等温増幅(LAMP)、鎖置換増幅(SDA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ホールゲノム増幅(WGA)、ローリングサークル増幅(RCA)及び多重置換増幅(MDA)が挙げられる。本明細書に記載の方法及びキットは、種々の等温増幅技術、例えば、LAMP、SDA、HDA、RPA、WGA、RCA及びMDAにおいて適用され得ることが想定される。
【0052】
[052] 「標的核酸」は、反復コピーの対象物である核酸配列又はより大きい核酸の部分配列(テンプレート)を指す。標的核酸は、RNA又はDNAであり得、インビボ又はインビトロで生物学的サンプルから得られ得る。本明細書において使用される用語「標的核酸」は、mRNA及びゲノムDNAも包含する。
【0053】
[053] 本明細書において使用される場合、用語「サンプル」は、その最も広い意味で使用される。一実施形態において、これは、生物学的及び環境的資源を含む、任意の資源から得られる代表的部分又は培養物を含むことを意味する。生物学的サンプルは、動物(ヒトを含む)から得られ、唾液、スワブサンプル、気管支洗浄物(BAL)、体液(例えば、血液、血漿、血清、CSF、糞便若しくは尿)、器官、組織、細胞、器官若しくは組織の切片部分、又は生物学的対象から単離された細胞(例えば、疾患細胞を含有する領域)を包含し得る。環境サンプルとしては、環境材料、例えば、表面物質、土壌、泥、汚泥、下水、生物膜、水、及び工業サンプルが挙げられる。しかしながら、このような例は、本発明に適用可能なサンプルタイプを限定するものと解釈されるべきではない。
【0054】
[054] 標的DNA又はRNAは、真核生物起源、原核生物起源、ウイルス起源又はバクテリオファージ起源のものであり得る。例えば、標的DNA又はRNAは、昆虫、原生動物、鳥類、魚類、爬虫類、哺乳類(例えば、ラット、マウス、ウシ、イヌ、モルモット、若しくはウサギ)、又は霊長類(例えば、チンパンジー若しくはヒト)から得られ得る。標的DNAは、逆転写酵素の酵素を使用してRNAテンプレート(例えば、mRNA、リボソームRNA、siRNA及び他のバリアント)から生成される相補的DNA(cDNA)であり得る。
【0055】
[055] 用語「プライマー」又は「プライマー配列」は、標的核酸テンプレートにハイブリダイズして標的核酸:プライマーハイブリッドを生成し、核酸合成を開始させるオリゴヌクレオチドを指す。当業者は、任意の等温増幅反応用の好適なプライマーを設計及び同定することができる。プライマーを設計するためのツールは、当技術分野において公知である。プライマーは、RNAオリゴヌクレオチド、DNAオリゴヌクレオチド、又はキメラ配列であり得る。一実施形態において、標的核酸配列のLAMPを検出するための複数のLAMPプライマーが提供される。本明細書において使用される用語「LAMPプライマー」は、第1のアウタープライマーF3、第2のアウタープライマーB3、第1のインナープライマーFIP(又はプライマーF1c及びF2)、第2のインナープライマーBIP(又はプライマーB1c及びB2)、第1のループプライマーLF、並びに第2のループ-プライマーLBを含む複数のプライマーを指す。LAMPプライマーの標準的なセットに加え、一実施形態において、LAMPプライマーの少なくとも1つは、RNAポリメラーゼ用のプロモーター配列を含む。例えば、F3プライマー又はB3プライマーは、標的認識配列と一緒にRNAポリメラーゼ結合部位を有するように設計される。一実施形態において、RNAポリメラーゼ結合部位は、LAMPプライマー配列の5’末端に存在する。
【0056】
[056] 本明細書において使用される「RNAポリメラーゼ」としては、限定されるものではないが、T7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ、SP6RNAポリメラーゼ、及びE.コリ(E.coli)RNAポリメラーゼが挙げられ得る。例えば、用語「T7プロモーター」は、T7RNAポリメラーゼにより認識される配列に関し、用語「T3プロモーター」は、T3RNAポリメラーゼにより認識される配列に関し、用語「SP6プロモーター」は、SP6RNAポリメラーゼにより認識される配列に関する。プロモーター配列がそれぞれのRNAポリメラーゼにより認識されると、RNAポリメラーゼは、DNAテンプレートからのRNAの転写を開始させる。任意の好適なRNAポリメラーゼが本明細書に記載の方法及びキットに含められ得る。一実施形態において、T7プロモーターの核酸配列は、20ヌクレオチド長であり、配列番号1に記載される。一実施形態において、T3プロモーターの核酸配列は、17、20又は24ヌクレオチド長のいずれかであり、それぞれ配列番号2~4に記載される。一実施形態において、SP6プロモーターの核酸配列は24又は18ヌクレオチド長であり、それぞれ配列番号5及び6に記載される。
【0057】
[057] 本明細書において使用される場合、用語「鎖置換DNAポリメラーゼ」は、そのDNA合成活性とは別に鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼを指す。鎖置換DNAポリメラーゼは、核酸テンプレート鎖の配列をベースにしてテンプレート鎖を読み取ることによりDNA合成を継続する一方、テンプレート鎖にアニールされる相補鎖を置換し得る。等温増幅法に使用される鎖置換DNAポリメラーゼは、プルーフリーディング又は非プルーフリーディングDNAポリメラーゼであり得、これは、高温性又は中温性であり得る。任意の好適な鎖置換DNAポリメラーゼが本明細書に記載の方法及びキットに含められ得る。例えば、鎖置換DNAポリメラーゼは、Bstラージフラグメントポリメラーゼ、Bst2.0、Bst3.0、Bca(exo-)、Vent、Vent(exo-)、Deep Vent、Deep Vent(exo-)、Φ29ファージ、MS-2ファージ、Z-Taq、KOD、クレノウ断片、GspSSD、GspF、OmniAmpポリメラーゼ、SDポリメラーゼ及びそれらの任意の組み合わせから選択され得る。
【0058】
[058] 用語「dNTP」及び「rNTP」は、ヌクレオチド、すなわち、それぞれデオキシリボヌクレオチド三リン酸及びリボヌクレオチド三リン酸に関し、当業者に公知である。この用語は、dNTP及びrNTPの改変形態も包含し、但し、それらの改変形態がDNAポリメラーゼ活性を有する酵素及び/又はRNAポリメラーゼ活性を有する酵素により認識されることを条件とする。
【0059】
[059] 本明細書において使用される場合、用語「逆転写酵素」は、RNAテンプレートから第1鎖相補的DNA(cDNA)をコピーし得る任意のDNAポリメラーゼを指す。このような酵素は、一般にRNA指向又はRNA依存性DNAポリメラーゼと称される。一部の実施形態において、逆転写酵素は、一本鎖RNA又はDNAのいずれかをテンプレートとして使用してcDNA鎖をコピーし得る。
【0060】
[060] 種々の等温増幅法に好適な増幅試薬は、当技術分野において公知である。例えば、慣用のLAMP反応用の試薬ミックスは、鎖置換DNAポリメラーゼ、LAMPプライマー、及び標的DNAに付加されるdNTPを含む。慣用のLAMP反応用の試薬ミックスは、標的核酸がRNA標的である場合、逆転写酵素をさらに含み得る。本明細書の文脈において、用語「LAMP試薬ミックス」は、i)標的核酸用の複数のLAMPプライマーであって、LAMPプライマーの少なくとも1つは、RNAポリメラーゼ用のプロモーターを含む複数のLAMPプライマー、ii)dNTP、iii)鎖置換DNAポリメラーゼ、iv)逆転写酵素、v)RNAポリメラーゼ、及びvi)rNTPを含む試薬ミックスを指す。
【0061】
[061] 本明細書において使用される「効率」は、増幅の検出可能なレベルに達するのに要する時間に基づき測定される。例えば、増幅効率が高ければ高いほど、増幅結果に達するのに要する時間は短くなる。
【0062】
[062] 本明細書において使用される「感度」は、検出限界、すなわち、所与の増幅条件下で確実に検出及び定量するために存在しなければならない標的核酸の最小量を指す。一実施形態において、感度は、閾値サイクル(Ct)値として表現される。Ct値は、サンプル中の核酸テンプレートの出発量の計算のためのツールとして機能し、蛍光シグナルがベースライン(ベースシグナル)から顕著に増加し始めるサイクル数を表す。一実施形態において、本発明の方法及びキットは、等温増幅反応の感度を18分間未満の単一コピー検出レベルに至るまで改善する。
【0063】
[063] 本発明がより明確に理解され得るように、好ましい実施形態が以下の実施例を参照して記載される。
【0064】
実施形態の説明
方法
[064] 本発明者らは、RNAポリメラーゼ用のプロモーターをLAMPプライマーに付加し、rNTPをRNAポリメラーゼとともに添加することにより、種々の等温増幅法の速度及び感度が改善されることを見出した。
【0065】
[065] 慣用のLAMPは、通常、60℃~70℃の定温で実施され、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼ並びに、標的核酸上の6つの異なる認識部位を認識するように特異的に設計されるインナー及びアウタープライマーと称される4つのオリゴヌクレオチドのセットを用いる。2つのアウタープライマーは、非サイクルステップ間でのみ鎖置換における役割を担う一方、インナープライマーは、センス及びアンチセンス配列の両方を含み、ステムループ構造を有する典型的なLAMP増幅産物の形成に寄与する。4つのオリゴヌクレオチドプライマーに加え、LAMPアッセイは、増幅効率を改善するための2つの追加のプライマー、いわゆるループプライマーを含み、それにより標的配列当たり合計6つのプライマーをもたらし得る。標的核酸上の8つの区別される配列に及ぶ、異なるLAMPプライマーのこのような組み合わせは、より良好な特異度を提供する。
【0066】
[066] 本発明は、i)標的核酸用の複数のLAMPプライマーであって、F3プライマー及びB3プライマーを含み、F3及びB3プライマーの両方又はF3プライマーは5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含む複数のLAMPプライマーを使用することにより、LAMPの効率及び/又は感度を増加させる方法を提供する。方法はまた、ii)dNTP、iii)鎖置換DNAポリメラーゼ、iv)逆転写酵素、v)RNAポリメラーゼ、vi)rNTP、及び任意選択で核酸結合色素又はプローブを含む。構成成分は、合わせされてLAMP試薬ミックスを形成する。試薬ミックスは、通常、使用直前に調製される。しかしながら、試薬ミックス又は試薬ミックスの一部の構成成分は事前に調製され得ることが想定され、例えば、プライマー、dNTP及びrNTPはプレミックスされ、酵素は使用直前に添加され得る。
【0067】
[067] 複数のLAMPプライマーは、FIPプライマー、BIPプライマー、LFプライマー及びLBプライマーをさらに含む。
【0068】
[068] 好ましくは、F3及びB3プライマー又はF3プライマーのみが、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含む。すなわち、他のプライマーはRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含まない。例えば、FIPプライマー、BIPプライマー、LFプライマー及びLBプライマーは、RNAポリメラーゼ用のプロモーターを含まない。
【0069】
[069] 試薬ミックスは、緩衝液溶液も含む。LAMP反応に好適な緩衝液溶液は、当技術分野において公知である。1つの好適な緩衝液は、20mMのTris-HCL、10mMの(NH4)2SO4、50mMのKCL、2mMのMgSO4、0.1%のTween(登録商標)20を含むpH8.8 Tris-HCl緩衝液である。当業者は、代替的な緩衝液を認識し、緩衝液の選択が使用されるポリメラーゼに部分的に依存的であることを理解する。例えば、上記緩衝液は、Bst2.0DNAポリメラーゼを用いる使用に最適化される。
【0070】
[070] LAMP試薬ミックスが形成されると、標的核酸が添加され、試薬ミックス及び核酸が標的核酸の増幅に好適な条件下でインキュベートされる。
【0071】
[071] 一部の実施形態において、標的核酸又は標的核酸を含有すると疑われるサンプルは、当技術分野において公知の任意の方法を使用して重亜硫酸塩処理され、それにより標的核酸の特異的メチル化形態の検出が容易になり得る。
【0072】
[072] 重亜硫酸塩処理が使用される実施形態において、試薬ミックス及びサンプルは、任意選択で、約42℃で1~15分間の期間インキュベートされてから50~55℃(例えば、53℃)の昇温で5~40分間、例えば、15、20、30分間インキュベートされ得る。
【0073】
[073] 他の実施形態において、試薬ミックス及びサンプルは、任意選択で約42℃で1~15分間の期間インキュベートされてから60~70℃(例えば、65℃)の昇温で5~40分間、例えば、15、20、又は30分間インキュベートされる。
【0074】
[074] 好ましくは、方法は、LAMP試薬ミックスに添加される特定のプライマーセットに要求される場合、グアニジニウム塩酸塩(GuHCl)を用いて実施される。GuHClは、約30nM~約90nM、例えば、約30mM、約40nM、約50nM、約60nM、約70nM、約80nm、又は約90nMの濃度で存在し得る。一部の実施形態において、GuHClは、LAMP試薬ミックス中に約60nMの濃度で存在する。
【0075】
[075] LAMP試薬ミックス中のrNTP及びRNAポリメラーゼの濃度は、最適化され得る。一部の実施形態において、LAMP試薬ミックス中のrNTPの濃度は、約0.25mM、好ましくは、約2.5mM未満であり、LAMP試薬ミックス中のRNAポリメラーゼの濃度は、反応当たり約7.5単位、好ましくは、反応当たり約50単位未満である。
【0076】
[076] 本明細書に例示されるとおり、プライマー配列の一部としてのRNAポリメラーゼプロモーター配列の使用は、LAMP反応の効率及び/又は感度を改善する。同じアプローチは、他の等温増幅技術、例えば、鎖置換増幅(SDA)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ホールゲノム増幅(WGA)、ローリングサークル増幅(RCA)及び多重置換増幅(MDA)の効率及び/又は感度を改善するために使用され得ることが想定される。
【0077】
等温増幅産物の検出
[077] 反応の進行は、核酸を検出するための当技術分野において公知の任意の方法を使用して測定され得る。例えば、LAMP増幅産物は、直接又は間接的アプローチ、例えば、核酸結合色素又はプローブを使用して検出され得る。
【0078】
[078] LAMP増幅産物の直接的検出は、蛍光レポーティングを用い得る。このアプローチは、インターカレート色素、例えば、臭化エチジウム、SYBR Green、EvaGreen及びYO-PRO-Iの使用に基づく。一般に、インターカレート色素は、二本鎖DNA中への結合時に蛍光発光の大きい増加を示す非配列特異的蛍光色素である。この特性は、LAMP反応の間の蛍光を継続的に測定することにより核酸増幅をリアルタイムでモニタリングするために使用され得る。
【0079】
[079] より特異的な検出アプローチが開発されており、当技術分野において公知である(すなわち、標的核酸配列の存在下でのみ開花(florescence)、例えば、Real-time Detection and Monitoring of Loop Mediated Amplification(LAMP)Reaction Using Self-quenching and De-quenching Fluorogenic Probes.Gadkar VJ,Goldfarb DM,Gantt S,Tilley PAG.Sci Rep.2018 Apr 3;8(1):5548参照)。
【0080】
[080] LAMP増幅の間接的検出は周知であり、反応副生物としてのピロリン酸塩の形成に本質的に依存する。LAMP反応が進行するにつれ、核酸重合の間のDNA鎖中へのdNTPの取り込みによりピロリン酸イオンが放出される。これらのイオンは二価金属イオン、例えば、マグネシウムイオン(LAMP反応ミックス中に存在)と反応して白色の不溶性ピロリン酸マグネシウム沈殿物を産生する。この産物は、反応溶液の濁度の累積的増加をもたらし、ピロリン酸塩沈殿物は濁度を単位として測定され得る。或いは、LAMP増幅の検出は、反応中のマンガンイオン及びカルセイン(フルオレセインとしても公知)の取り込みを介して達成され得る。カルセインの蛍光は、マンガンイオンの結合により自然にクエンチされる。LAMP反応の副生物として産生されたピロリン酸塩は、沈殿を介して緩衝液からマンガンイオンを除去し、回復したカルセイン蛍光と連動する濁度の増加により、可視又はUV光を用いる励起時の容易な目視によるリードアウトが可能になる。別の検出フォーマットは、ピロリン酸塩のATPへの酵素的変換であり、それはDNA合成の間に産生され、熱安定性ホタルルシフェラーゼにより生成される生物発光を介してモニタリングされる。
【0081】
[081] 一部の実施形態において、反応の進行を測定するためにプローブ(核酸プローブ)が使用される。好ましくは、プローブは、増幅される標的配列(例えば、SARS-CoV-2からの標的配列)に特異的である。核酸プローブは、標的配列に結合し得る核酸への1つ以上のフルオロフォア及びクエンチャーのコンジュゲーションにより生成されることが多い。したがって、このタイプのプローブは核酸のリアルタイムの配列特異的定量に使用され、塩基対合して対合フルオロフォア及びクエンチャーで終結するステムを形成し得る5~7つの相補的ヌクレオチドのストレッチによりフランキングされる中央の標的特異的一本鎖ループを含み得る。特異的配列標的の不存在下では、プローブの5’及び3’末端におけるフルオロフォア及びクエンチャーの近接に起因して蛍光はクエンチされたままである。ループへの相補的核酸の結合は、フルオロフォア及びステムを強制的に対合解除する立体構造変化をもたらし、クエンチャーからのフルオロフォアの分離は配列特異的蛍光をもたらす。プローブは、標的に結合した場合にのみシグナルを産生し、したがって増幅産物の直接的尺度を提供する。
【0082】
[082] 本明細書に記載の方法は、当技術分野において公知の任意のプローブを用いて使用され得、当業者は、方法についての使用に好適な標的特異的プローブを同定又は設計することができる。
【0083】
[083] 一実施形態において、方法は、1つ以上のEasybeacon(商標)プローブを利用する。
【0084】
[084] いくつかの異なる標的核酸配列を同時に増幅させるためのマルチプレックス化は公知であり、当業者により達成され得る。
【0085】
[085] 一実施形態において、本明細書に記載のLAMP反応は、第1及び第2の複数のLAMPプライマーと、第1及び第2の標的核酸を標的化するプローブとを合わせることにより、単一チューブ/反応中の2つの異なる標的核酸配列のマルチプレックス検出を可能とする。好ましくは、第1の複数のLAMPプライマーの少なくとも1つは、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含み、第2の複数のLAMPプライマーの少なくとも1つは、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含む。
【0086】
[086] 一実施形態において、本明細書に記載のLAMP反応は、第1、第2、及び第3の複数のLAMPプライマーと、第1、第2、及び第3の標的核酸を標的化するプローブとを合わせることにより、単一チューブ/反応中の3つの異なる標的核酸配列のマルチプレックス検出を可能とする。好ましくは、第1の複数のLAMPプライマーの少なくとも1つは、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含み、第2の複数のLAMPプライマーの少なくとも1つは、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含み、第3の複数のLAMPプライマーの少なくとも1つは、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含む。
【0087】
[087] 一実施形態において、LAMP反応は、多数のEasybeacon(商標)プローブを用いるマルチプレックス化に適する。
【0088】
[088] 一部の実施形態において、本明細書に記載のLAMP反応は、サンプルからのDNA又はRNAの抽出なしで実施され、「無抽出LAMP」と称される。
【0089】
標的核酸
[089] 本明細書に記載の方法は、任意の標的核酸、例えば、ウイルス若しくは細菌に特異的なRNA若しくはDNA配列又は疾患若しくは病態と特異的に関連するRNA若しくはDNA配列を用いて使用され得る。
【0090】
[090] 一部の実施形態において、標的核酸は、例えば、生物学的サンプルが病原体を含有し、又は含有すると疑われる場合、病原体又は感染性因子からのものである。したがって、本明細書に提供される方法及びキットは、任意の公知の病原体又は感染性因子を検出するために有用である。
【0091】
[091] 方法及びキットは、ウイルス、細菌、真菌又は寄生虫の病原体及び感染性因子、例えば、ウイルス、例えば、一本鎖RNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、ジカウイルス、HIV、A、B、及びC型肝炎ウイルス、HSV、CMV EBV、HPV、SARS-CoV-2、インフルエンザA型、インフルエンザB型、RSV、デングウイルス1~4型、チクングニヤ、パラインフルエンザ1~4型、アデノウイルス、ヒトライノウイルス、エンテロウイルス、水痘、例えば、VZV、ヘルペスウイルス属(Herpesvirsus)、例えば、HSV-1、HSV-2、エプスタインバーウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ロタウイルス、ノロウイルスグループ1及び2、サポウイルス、アストロウイルス、ボカウイルス、エボラウイルス、フィロウイルス科(Filoviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、ブニヤウイルス目(Bunyavirales)、アレナウイルス科(Arenaviridae)、及びハンタウイルス科(Hantaviridae)を検出するために使用され得る。
【0092】
[092] 一実施形態において、ウイルス病原体は、パレコウイルス、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス科(togaviridae)、ポリオーマウイルス、パピローマウイルス、ヘパドナウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、ピコルナウイルス、ヘペウイルス、カリシウイルス、レオウイルス、レトロウイルス オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、エボラウイルス、
フィロウイルス科(Filoviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、ブニヤウイルス目(Bunyavirales)、アレナウイルス科(Arenaviridae)、ハンタウイルス科(Hantaviridae)及びデルタウイルスから選択される。
【0093】
[093] 一実施形態において、ウイルスは、コロナウイルス、例えば、コロナウイルスHKU-1、コロナウイルスOC43、コロナウイルスNL63/229E、SARS-CoV-2である。
【0094】
[094] 一実施形態において、細菌は、サルモネラ属種(Salmonella spp);ボルデテラ属種(Bordetella spp.)、例えば、B ペルツスシス(B pertussis)、B.ホルメシイ(B.holmesii)、B.パラペルツスシス(B.parapertussis)、カンピロバクター属種(Campylobacter spp);クロストリジウム属種(Clostridium spp.)、例えば、C.ディフィシレ(C.difficile)、C.ディフィシレ(C.difficile)リボタイプ027、C ディフィシレ(C difficle)リボタイプ078;クラミジア属種(Chlamydia spp.)、例えば、C.ニューモニエ(C.pneumoniae)、C.トラコマティス(C.trachomatis);クラミドフィラ属種(Chlamydophila spp.)、例えば、C.プシッタキ(C.psittaci);リステリア属種(Listeria spp);リンフォグラヌローマ属種(Lymphogranuloma spp.)、例えば、シゲラ属種(Shigella spp);ナイセリア属種(Neisseria spp.)、例えば、N.ゴノルロエア(N.gonorrhoaea);スタフィロコッカス属種(Staphylococcus spp);ストレプトコッカス属種(Streptococcus spp.)、例えば、S アガラクティエ(S agalactiae);リステリア属種(Listeria spp);リーシュマニア属種(Lieshmania spp);バチルス属種(Bacillus spp);ボレリア属種(Borellia spp);リケッチア属種(Ricketssia spp);コリネバクテリウム属種(Corynebacterium spp);ガーデネラ属種(Gardenella spp);ヘモフィルス属種(Haemophilus spp.)、例えば、H.インフルエンゼ(H.influenzae);エシェリキア属種(Escherichia spp)、例えば、E.コリ(E.coli);ヘリコバクター属種(Helicobacter spp.)、例えば、H.ピロリ(H.pylori);クレブシエラ属種(Klebsiella spp);レジオネラ属種(Legionella spp.)、例えば、L プネモフィラ(L pnemophila);マイコバケリウム属種(Mycobacerium spp.)、例えば、M.ツベルクローシス(M.tuberculosis);マイコプラズマ属種(Mycoplasma spp.)、例えば、M,プネモニエ(M,pnemoniae)、M.ゲニタリウム(M.genitalium)、M.ホミニ(M.homini);モラキセラ属種(Moraxella spp);パスツレラ属種(Pasteurella spp);ニューモシスティス属種(Pneumocystis spp.)、例えば、P ジロベキイ(P jirovecii);シュードモナス属種(Pseudomonas spp);トレポネーマ属種(Treponema spp);ウレアプラズマ属種(Ureaplasma spp.)、例えば、U.ウレアリティクム(U.urealyticum);ビブリオ属種(Vibrio sp)、エルモナス属種(Aermonas spp.)、及びエルシニア属種(Yersinia spp.)、例えば、Y ペスティス(Y pestis)から選択される。
【0095】
[095] 寄生虫病原体は、原生動物又は後生動物病原体、例えば、プラスモジア属(Plasmodia)種、リーシュマニア属(Leishmania)種、シストソーマ属(Schistosoma)種、及びトリパノソーマ属(Trypanosoma)種)、細菌(例えば、マイコバクテリウム属(Mycobacteria)、特に、M.ツベルクローシス(M.tuberculosis)、サルモネラ属(Salmonella)、ストレプトコッカス属(Streptococci)、E.コリ(E.coli)及びスタフィロコッカス属(Staphylococci)、及び真菌(例えば、カンジダ属(Candida)種及びアスペルギルス属(Aspergillus)種)であり得る。
【0096】
[096] 一実施形態において、寄生虫病原体は、ブラストシスティス属種(Blastocystis spp.)、例えば、B.ホミニス(B.hominis);ジアルジア属種(Giardiaspp.)、例えば、G.インテスティナリス(G.intestinalis)、G.ランブリア(G.lamblia);クリプトスポリジウム属種(Cryptosporidium spp)、サイクロスポラ属種(Cyclospora spp.)、例えば、C.カイエタネンシス(C.cayetanensis);ブラストシスティス属種(Blastocystis spp)、ジエントアメーバ属種(Dientamoeba spp.)、例えば、D.フラギリス(D.fragilis);エントアメーバ属種(Entamoeba spp.)、例えば、E.ヒストリティカ(E.histolytica);クリプトコッカス属種(Cryptococcus spp)、エンテロシトゾーン属種(Enterocytozoon spp.)、例えば、E.ビエネウシ(E.bieneusi);エンセファリトゾーン属種(Encephalitozoon spp.)、例えば、E.インテスティナリス(E.intestinalis);バベシア属種(Babesia spp);リーシュマニア属種(Leishmania spp)、シストソーマ属種(Schistosoma spp)、トリパノソーマ属種(Trypanosoma spp.);トリキモナス属種(Trichimonas spp.)、例えば、T.バギナリス(T.vaginalis);トレポネーマ属種(Treponema spp.)、例えば、T.パリデュム(T.pallidum);及びプラスムドイウム属種(Plasmdoium spp)から選択される。
【0097】
[097] 一実施形態において、真菌病原体は、アスペルギルス属種(Aspergillus spp)、カンジダ属種(Candida spp)、ヒストプラズマ属種(Histoplasma spp)、フザリウム属種(Fusariumspp)、ニューモシスティス属種(Pneumocystis spp)、パラコクコイデス属種(Paracoccoides spp)、コクシジオイデス属種(Coccidioides spp)、又はスケドスポリウム属種(Scedosporium spp)である。
【0098】
[098] 本明細書に記載の方法及びキットは、本質的にあらゆる核酸含有生物、又は環境中の遊離核酸の検出及び同定に適用され得る。したがって、病原体又は感染性因子は、遺伝子情報(例えば、遺伝子配列)が利用可能な実質的にあらゆる病原体又は感染性因子であり得る。一部の実施形態において、標的核酸は、ヒト起源からのものである。このような場合、方法及びキットは、生物学的サンプル、例えば、法医分析用、ゲノタイピング用などに得られる生物学的サンプル中の標的核酸を検出するために用いられ得る。
【0099】
[099] 一部の実施形態において、疾患としては、例えば、癌、糖尿病、心疾患、高血圧、神経新生(neurogenerative)及び感染性疾患が挙げられ得る。一部の実施形態において、標的核酸は、特定の遺伝子病態と関連する。例えば、標的核酸は、PAM識別が有利である一塩基多型(SNP)を含み、それとしては、限定されるものではないが、BRCA1/BRCA2突然変異、嚢胞性線維症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー及びヘモクロマトーシス)が挙げられる。
【0100】
[0100] 慣用のLAMPは標的核酸用のマルチプルプライマーを利用するが、偽陽性結果の比較的高い発生が公知の制約である。慣用のLAMPアッセイは、増幅検出の間接的方法を使用し得、それらは、リアルタイムかエンドポイントかを問わず、慎重なプライマー設計、最適な反応条件及び偽陽性を否定するための堅牢性試験に依存する。対照的に、本明細書に記載の方法は、RNAポリメラーゼ用のプロモーターを含むLAMPプライマーを使用し、FDA承認LAMP反応と比較して偽陽性結果の発生を低減させることが実証される(実施例9参照)。したがって、本明細書に記載のT7改変LAMPプロトコルはLAMP法の有用性を改善し、偽陽性の発生を低減させ得る。
【0101】
キット
[0101] 本発明はまた、本明細書に開示される方法を実施するためのキットを提供する。典型的には、本発明の方法を実施するためのキットは、方法を実施するための全ての必要な試薬を含有する。例えば、一実施形態において、キットは、i)標的核酸用の複数のLAMPプライマーであって、F3プライマー及びB3プライマーを含み、F3及びB3プライマーの両方又はF3プライマーは、5’末端におけるRNAポリメラーゼ用のプロモーターを含む複数のLAMPプライマー、ii)dNTP、iii)鎖置換DNAポリメラーゼ、iv)逆転写酵素、v)RNAポリメラーゼ、vi)rNTP、並びに任意選択でvii)核酸結合色素及び/又はviii)緩衝液を含む。キットは、本明細書に提供される検出及び/又は同定法を実施するための説明書をさらに含み得る。
【0102】
[0102] 一実施形態において、キットは、反応ミックス用の構成成分を含有する1つ以上の容器を含み得、反応ミックスへの標的核酸の添加は、反応ミックス及び標的核酸が本明細書に記載の適切な温度でインキュベートされた場合、核酸増幅を推進する。
【0103】
[0103] 典型的には、本発明のキットは、例えば、洗浄試薬、及び/又は本発明の方法の性能において要求される他の試薬を含有する1つ以上の他の容器も含む。
【0104】
[0104] 本発明の文脈において、キットは、試薬が別個の容器中で含有される任意のキットを含み、小型ガラス容器、プラスチック容器又はプラスチック片若しくは紙片を含み得る。このような容器は、あるコンパートメントから別のコンパートメントへの試薬の効率的な移動を可能とし得る一方、サンプル及び試薬のクロスコンタミネーション、並びにあるコンパートメントから別のものへの定量的な各容器の薬剤又は溶液の添加を回避する。
【0105】
[0105] このようなキットは、試験サンプルを受ける容器、方法において使用される試薬を含有する容器、及び増幅された核酸の検出に要求される試薬を含有する容器も含み得る。
【0106】
[0106] 典型的には、本発明のキットは、キット構成成分を使用して適切な方法を実施するための説明書も含む。本発明のキット及び方法は、自動分析設備及びシステムと併せて使用され得る。
【0107】
[0107] 異なる標的核酸の検出、同定又は定量への適用のため、本発明の単一キットが適用可能であり、或いは、例えば、各標的に特異的な試薬を含有する異なるキットが要求され得る。本発明の方法及びキットは、任意の標的核酸を検出し、同定し、又は定量することが望ましい任意の状況において適用される。
【0108】
[0108] 本発明を目下、以下の具体例を参照してより詳細に記載するが、それらはいかなる形でも本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0109】
実施例
実施例1:材料及び方法
[0109] プライマー
[0110] 各プライマー(IDT)の100mM原液を分子グレード水(Sigma RNBJ2199)中で調製した。次いで、プライマーを表1に示される比で混合して10×作業溶液を得た。
【0110】
【0111】
[0111] 試験されるプロモーターとしては、T7プロモーター、T3プロモーター及びSP6プロモーターが挙げられる。表2に提供されるとおり、T7プロモーターの核酸配列は20ヌクレオチド長であり、配列番号1に記載され、T3プロモーターの核酸配列は17、20又は24ヌクレオチド長のいずれかであり、配列番号2~4に記載され、SP6プロモーターの核酸配列は24又は18ヌクレオチド長であり、配列番号5及び6に記載される。プロモーター配列は、表2中で太字及び下線で示される。ランダムヌクレオチドをプロモーター配列の5’又は3’末端で付加して増幅を改善することができる。
【0112】
【0113】
[0112] T7RNAポリメラーゼ、T3RNAポリメラーゼ又はSP6RNAポリメラーゼの結合部位を含有する5’テールを含むプライマーB3及びF3を合成した。これらのプライマーを、以下の反応において慣用のLAMP F3及びB3プライマーに代えて用いた。
【0114】
[0113] 表3に記載されるとおり、SARS CoV-2のM遺伝子、N遺伝子、E遺伝子及びRdRP遺伝子に対する、並びにインフルエンザA型H3標的を検出するためのインフルエンザA型のヘマグルチニン遺伝子に対するLAMPプライマーセットを設計した。本明細書において使用される他のプライマーも表3に記載する。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
サンプル調製
[0114] 重亜硫酸塩(B)及び野生型(WT)反応は両方とも良好であった。サンプルの重亜硫酸塩処理を以下のとおり実施した:ステップ1)150μLの定量培養物、QAP、RNA又は陽性臨床サンプルを、EasyScreen SP006サンプルプロセシングキット(Genetic Signatures)からの250μLの合わせた試薬1+2に添加し;ステップ2)サンプルを95℃で20分間加熱し、手短にボルテックスに供し、次いで2秒間スピンさせ、室温に冷却しておき;ステップ3)次いで、材料をGS-mini上で製造業者の説明書(Genetic Signatures)に従って60~200μLの最終溶出容量で精製し;ステップ4)サンプルを精製後に-70℃で冷凍した。
【0119】
[0115] 野生型4塩基精製をGS-mini上で製造業者の説明書(Genetic Signatures)に従って100~400μLの最終溶出容量で実施し;サンプルを精製後に-70℃で冷凍した。
【0120】
[0116] 反応をWarmStart比色LAMP2×LAMPマスターミックス(New England Biolabs:NEB)中で調製した。これは16mMのMgSO4、したがって1×最終反応中で8mMのMgSO4を含有した。追加の構成成分は、SYTO-9緑色蛍光核酸染色ミックス(Invitrogen)、Firescript逆転写酵素(Solis BioDyne)、10×プライマーミックス(IDT)、rNTP(NEB)、RNAポリメラーゼ(NEB)、水及びサンプルを含んだ。試薬を表4に記載し、各構成成分の容量を表5に記載する。
【0121】
[0117] 試験LAMP反応は、RNAポリメラーゼ、rNTP及びRNAポリメラーゼテール(プロモーター)を有するプライマーを含有した。対照LAMP反応はRNAポリメラーゼもrNTPも含有せず、プライマーをRNAポリメラーゼテールなしで含めた。陰性サンプル「非テンプレート対照(NTC)」は、テンプレート(核酸)を含有しなかった。
【0122】
[0118] 重亜硫酸塩処理(重亜硫酸塩LAMP)反応を、任意選択でPCRサーマルサイクラー(BioRad CFX96)中で最初に42℃で1~10分間ランさせ、次いで同じPCRサーマルサイクラー中で53℃で30~60分間ランさせた。或いは、サンプルはヒートブロック、水浴又はインキュベーター上でランさせることができる。蛍光を1分間に1回測定して反応進行を評価した。
【0123】
[0119] 野生型4塩基LAMP反応を、任意選択でPCRサーマルサイクラー(BioRad CFX96)中で最初に42℃で1~10分間ランさせ、次いで同じPCRサーマルサイクラー中で65℃で30分間ランさせた。或いは、サンプルはヒートブロック、水浴又はインキュベーター上でランさせることができる。蛍光を1分間に1回測定して反応進行を評価した。
【0124】
[0120] LAMPプライマーセットを含む標的核酸を表3に列記する。
【0125】
【0126】
【0127】
実施例2:インフルエンザA型LAMP
[0121] LAMP反応をSt Vincent’s Hospital Sydney,Australiaからの多数のインフルエンザA型陽性臨床サンプルに対して実施した。表6は、これらのサンプルに対して実施された野生型4塩基LAMPインフルエンザH3タイピングアッセイの結果を示す。
【0128】
【0129】
[0122] LAMPプライマーF3及びB3を、T7又はSP6テール(T7又はSP6プロモーター)のいずれかを用いて合成し、対照LAMP反応と比較した。表6に示されるとおり、テール付きプライマーを使用したデータは、検出された陽性サンプルの数の増加及び結果までの時間の低減の両方をもたらした。
【0130】
実施例3:SARS-CoV-2 LAMP
[0123] LAMP反応を2021年版の分子診断についての品質管理(2021 Quality Control for Molecular Diagnostics)(QCMD)SARS-CoV-2パネルに対して実施した。表7は、これらのサンプルに対して実施された野生型4塩基LAMPアッセイの結果を示す。
【0131】
【0132】
[0124] 野生型4塩基LAMPプライマーを使用して定量QCMDパネルを増幅させた。T7、SP6又はT3 5’テールを含有するF3プライマーを合成し、慣用のLAMPアッセイと比較した。表7に示されるとおり、RNAポリメラーゼテールを用いるLAMPを使用して実施された反応は、より迅速な結果までの時間をもたらした。より重要なことに、5つのサンプルの4つを検出したSP6アッセイについて感度の増加が生成された一方、慣用のLAMPは5つのサンプルの2つを検出したにすぎなかった。
【0133】
実施例4:培養SARS-CoV-2 LAMP
[0125] St Vincent’s Hospital Sydney,Australiaからの重亜硫酸塩変換培養SARS-CoV-2サンプルを使用してLAMP反応を実施した。
【0134】
【0135】
[0126] T7、SP6又はT3 5’テールを含有するLAMPプライマーを合成し、対照(すなわち、慣用)LAMP反応と比較した。表8に示されるとおり、テール付きプライマーを使用したデータは、検出された陽性サンプルの数の増加及び結果までの時間の低減の両方をもたらした。表8は、テール付きプライマーを使用する場合、少なくとも10倍の感度の増加を達成することができることを示す。
【0136】
実施例5:プライマータイトレーション
[0127] T7-LAMP(N遺伝子の検出)プライマー濃度の最適化は、75,000コピーを使用した最初の陽性結果の時間を約17分間から10.76分間に至るまで低減させ、感度を18分間未満の単一コピー検出レベルに至るまで改善した(表9)。データは、1.75×の最適プライマー濃度を使用する場合、対照LAMPと比較して感度の10倍増加を達成することができることを示す。重亜硫酸塩及び野生型T7-LAMP反応は類似の感度を有し、最適化される場合に単一コピー標的を検出し得る。
【0137】
【0138】
実施例6:グアニジニウム塩酸塩
[0128] グアニジニウム塩酸塩(GuHCl)の添加は、T7-LAMP反応の速度及び感度の増加において好ましい効果を有した。
【0139】
【0140】
実施例7:rNTP及びRNAポリメラーゼ濃度の最適化
[0129] T7RNAポリメラーゼ(50,000U/mL)タイトレーションを使用したT7-LAMP(N遺伝子の検出)の最適化は、対照反応と比較した場合、12.5単位及びT7無添加と比較して反応において10、7.5及び5単位のポリメラーゼを使用した場合に陽性の増加が見られることを示した。しかしながら、10単位を反応に添加した場合、サンプル#8について8分間超のタイムラグが存在する。
【0141】
【0142】
[0130] rNTP(25mM)タイトレーションを使用したT7-LAMP(N遺伝子の検出)の最適化は、反応への約0.175μlのrNTPの添加が最適範囲であり、4つのサンプルを検出した0.2μlと比較して5つのサンプルの検出をもたらしたことを示した。rNTPを反応に添加しなかった場合、結果までの時間は最大15分間だけ遅延され、3つのサンプルのみが陽性と検出された。サンプル#2は、最大濃度のrNTP(0.2μl)及び添加rNTPを有さなかったサンプルを除き全ての濃度のrNTPで検出された。最大12分間の遅延は、0.1μlを添加した場合に示された。
【0143】
【0144】
実施例8:プローブベースLAMP-マルチプレックス化
[0131] LAMP反応のマルチプレックス化を実施し、それは蛍光色素をFIPプライマーの5’末端に付着させることを含み、3’クエンチャーを含有するFIPに相補的な第2のプライマーを合成した。増幅が生じる場合、相補的オリゴが置換され、蛍光が放出される。以下のN遺伝子についての例を参照。
【化1】
【0145】
[0132] 別のアプローチは、プライミング部位を有さない標的核酸中の領域に対して、又は非必須プライマー、例えば、LB及びLFプライマーをプローブ結合部位として使用して慣用のEasybeacon(商標)プローブを設計することである。次いで、これらのプローブは結合し、続いてDNAの新たな鎖の合成時に置換される。
【0146】
[0133] LAMPアッセイとマルチプレックス化との適合性を決定するため、以下のSARS-CoV-2領域:RdRP、Orf1a、As1e、N遺伝子、E遺伝子、及びM遺伝子、並びに内因性ヒト対照(12S rRNA)に対するEasybeacon(商標)プローブを合成した。Easybeacon(商標)プローブは、標的配列への結合の効率を改善するインターカレート擬似ヌクレオチド(Intercalating Pseudo Nucleotide)(IPN)を含有する。プローブベースのシングルプレックス反応の組成を表13に示す。
【0147】
【0148】
[0134] LAMP反応のLB(ループバック)及びLF(ループフォワード)領域の両方に対するプローブを設計した。全てのプローブを最初にシングルプレックスで試験してSARS-CoV-2臨床サンプルを使用するプローブベース化学反応を使用して得られた蛍光のレベルを決定した。SARS-CoV-2臨床サンプルをシングルプレックスで使用する5つの異なる蛍光プローブの性能(分で測定)を表14に示す。以下のデータは、全ての領域及びフルオロフォアがLAMP反応において強力なシグナルを産生し、そのいくつかは典型的なRT-PCRシグナルよりも強いことを示す。
【0149】
【0150】
[0135] LAMPアッセイをマルチプレックス化することができるか否かを決定するため、プライマー及びプローブの種々の組み合わせをシングルプレックス、デュプレックス及びトリプレックスで試験した。アッセイにおいて使用されたプローブは、Easybeacon(商標)プローブ(Pentabase製)であった。LAMPマルチプレックスミックスの組成を表15に列記する。以下のデータは、マルチプレックス反応はトリプレックスで十分に機能したが、結果までの時間がわずかに遅延したことを示す。
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
[0136] LAMPアッセイを、内因性ヒト対照12SヒトrRNA標的の取り込みによっても試験した(表18)。
【0155】
【0156】
[0137] 表18は、3つの個々の標的(SARS-CoV-2のE遺伝子、RdRP及びN遺伝子)並びに内部プロセス対照(ヒト12S rRNA)をマルチプレックス化して完全なアッセイを産生することが可能であることを示す。
【0157】
マルチプレックス化GSL LAMP及びリアルタイムPCRの比較
プロスペクティブ研究
[0138] プロスペクティブ研究において、121個のSARS-CoV-2陽性サンプルを現地の病院から新たに回収し、UTM中で希釈し、2つに分けた。TGA承認GSLサンプル調製法(SP012)を使用して一方のセットを精製し、次いでTGA承認RP012キットを使用するRT-PCRにより増幅させた。GS-miniを製造業者の説明書に従って使用して第2のセットを精製し、As1e、RdRP、N及びM遺伝子を標的として含有するQuadPlex GSLリアルタイムLAMPアッセイで増幅させた(表20及び21参照)。推定陽性は、RT-PCRにおいて2つの遺伝子の1つ又はLAMPアッセイにおいて3つの遺伝子の1つのみについて陽性であったサンプルである。
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
[0139] プロスペクティブ研究は、現地の病理検査機関から回収された121個の陽性SARS-CoV-2サンプルからなるものであった。推定陽性は、アッセイにおいてSARS-CoV-2標的の1つのみが陽性であるサンプルである。GSL LAMPアッセイを使用して、PCRにより推定陽性であった3つのサンプルをLAMPアッセイにおいて厳密に陽性と称した。推定陽性サンプルは、一般に陽性と称されず、したがってGSL LAMPは100%の感度(121/121個)を与えた一方、PCRは97.5%の感度(118/121個)を与えた。
【0162】
レトロスペクティブ研究
[0140] レトロスペクティブ研究において、-80℃で18か月間超保管された82個のSARS-CoV-2をUTM中で希釈し、2つに分けた。次いで、サンプルを上記のとおりGSLリアルタイムPCR及びQuadplex GSL改変RT-LAMPアッセイで増幅させた。推定陽性サンプルは、1つの遺伝子のみが陽性である場合、総数に含めない。依然としてGSL LAMPでCt>40で検出されたサンプルが存在した。プロスペクティブ研究で回収されたサンプルを使用するqRT-PCRで使用すると100%の一致が存在した。Ct値>40を有するサンプルの検出は、一般に、サンプル中の標的配列の1又は2コピーのみの存在を示し、GSL LAMP手順の改善された感度を実証する。データは、レトロスペクティブサンプルのわずかに低減された性能を示し、それはサンプル分解及びqRT-PCR(<100bp)と比較して大きいサイズ(250bp)のLAMPアンプリコンにより引き起こされ得た。
【0163】
【0164】
実施例9:Color GenomicsのN遺伝子プライマーとの比較
Color(https://www.color.com)のLAMP Nプライマーの特異度を、一連の臨床抽出物及び非テンプレート対照に対して試験した。使用されたN遺伝子プライマーは、FDAによりEmergency use Authorisation(EUA)が提供された「Color SARS-CoV-2 LAMP診断アッセイ」プライマーであった。この実験のため、Dudley DM,Newman CM,Weiler AM,Ramuta MD,Shortreed CG,Heffron AS,et al.(2020)Optimizing direct RT-LAMP to detect transmissible SARS-CoV-2 from primary nasopharyngeal swab samples.PLoS ONE15(12):e0244882に列記される配列に基づきプライマーを合成し、T7テール付きF3プライマーを添加した。約18分後の表23(下記)のデータから把握することができるとおり、ColorのN遺伝子プライマーを使用する非テンプレート対照(NTC)アッセイを使用すると偽陽性増幅曲線が作成された。対照的に、本明細書に記載のT7LAMPバリアントアッセイを使用すると、25分間の増幅後でも偽陽性シグナルは生成されなかった。
【0165】
[0141] 偽陽性増幅シグナルは、LAMP法の十分に文献報告された欠点である。表23に示されるとおり、T7改変LAMPプロトコルは、偽陽性の発生を低減させる。
【0166】
【0167】
[0142] LAMP As1eアッセイの特異度を、一連のSARS-CoV-2臨床抽出物、非テンプレート対照及び陽性インフルエンザA型サンプルに対して試験した。約15分後のデータから把握することができるとおり、対照アッセイを使用すると偽陽性増幅曲線が作成された。追加的に、偽陽性シグナルは、既に試験されたインフルエンザA型臨床サンプルを使用すると見られた。しかしながら、T7LAMPバリアントアッセイを使用すると、偽陽性シグナルは、NTC及びインフルエンザA型サンプルの両方で20分間の増幅後でも生成されなかった。偽陽性増幅シグナルは、LAMP法の十分に文献報告された欠点である。したがって、T7改変LAMPプロトコルは、LAMP法の有用性を改善し、低い陽性シグナルの検出の増加をもたらす。追加的に、サンプル8、10及び29は、T7lamp As1eアッセイにおいて6~11分後に陽性であったが、対照アッセイにおいては陰性であった。
【0168】
【0169】
実施例10:公知のLAMP反応との比較
[0143] T7プロモーターを種々の公開プロモーター配列(プロモーター配列については表25参照)に付加することにより、RNAポリメラーゼ用のプロモーターを含むLAMPプライマーのLAMP反応を改善する能力を試験し、具体的にはT7プロモーターをF3プライマーに付加した。
【0170】
【0171】
【0172】
[0144] 表26のColor-ORF1aプライマーは、Color Genomics.SARS-CoV-2 LAMP Diagnostic Assay. 2020 https://www.color.com/wp-content/uploads/2020/05/LAMP-Diagnostic-Assay.pdf.に記載されている。
【0173】
[0145] 表27の遺伝子-N-Aプライマーは、Broughton JP,Deng X,Yu G,et al.CRISPR-Cas12-based detection of SARS-CoV-2.Nat Biotechnol.2020 Jul;38:870-874に記載されている。
【0174】
[0146] 表28のYu-ORF1aプライマーは、Yu L,Wu S,Hao X,et al.Rapid Detection of COVID-19 Coronavirus Using a Reverse Transcriptional Loop-Mediated Isothermal Amplification (RT-LAMP)Diagnostic Platform.[letter].Clin Chem 2020 Jul 1;66(7):975-977に記載されている。
【0175】
[0147] 表29のEl-Tholoth-ORF1aは、El-Tholoth M,Bau HH,Song J.A single and two-stagem,closed tube,molecular test for the 2019 novel coronavirus (COVID-19)at home,clinic,and points of entry.ChemRxiv.2020に記載されている。
【0176】
[0148] 表30のLamb-ORF1aプライマーは、Lamb LE,Bartolone SN,Ward E,Chancellor MB.Rapid detection of novel coronavirus/Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2(SARS-CoV-2)by reverse transcription-loop-mediated isothermal amplification.PLoS One.2020;15に記載されている。
【0177】
[0149] 表26~30から把握することができるとおり、T7LAMPアッセイは、感度及び偽陽性の低減に関して改善された性能をもたらす。
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
実施例11.T7LAMPとリアルタイムPCRとの比較
[0150] 表31は、28個のランダムに選択された、事前試験されたSARS CoV-2サンプルの結果を示す。限られた利用性に起因してサンプルを試験前に少なくとも10倍希釈した。把握することができるとおり、T7-LAMP手順は、目下、「ゴールドスタンダード」PCR法の感度に接近している。
【0184】
【0185】
実施例12.無抽出LAMP
[0151] プロスペクティブ研究からの80個の臨床サンプルを、400mMのGuHCl及びプロテイナーゼKを含有する無抽出緩衝液で希釈した(7.5μLの緩衝液及び12.5μLのサンプル)。次いで、サンプルを80℃で10分間加熱し、次いで、ラテラルフロー装置用の改変プライマーを含有するGSL LAMP反応に直接添加した。陽性シグナルは検出チャンバーを閉じて2~3分後に見られた。無抽出LAMP法の利点は、それがヒートブロックの使用を要求するにすぎず、結果を30分以内に得ることができることであり、それはRNA又はDNAの抽出を要求せず、したがってそれはリソースが限られた状況に特に有用である。データは、サンプルがCt値>35でも依然として陽性であったが、Ct>37で陰性であったことも示す。
【0186】
【0187】
実施例13.サンプル
[0152] 上記実施例において同定されたサンプルのさらなる詳細を表33に提供する。同じ説明であるが異なるサンプル番号を有するサンプル(例えば、臨床サンプル、インフルエンザA型陽性)は、異なる患者又は資源からのものである。
【0188】
【0189】
実施例14.T7配置位置
[0153] 上記のとおり、T7又はSP6テール(T7又はSP6プロモーター)のいずれかを用いて合成されたLAMPプライマーF3及びB3を用いたLAMP反応は、対照LAMP反応と比較して改善された増幅感度及び効率を示した。表6に示されるとおり、テール付きプライマーを使用したデータは、検出された陽性サンプルの数の増加及び結果までの時間の低減の両方をもたらし、したがってF3及びB3アウタープライマーの両方をRNAポリメラーゼプロモーター配置に使用することができることを実証した。
【0190】
[0154] 追加の試験時、本発明者らは、F3-T7及びB3-T7の混合物がLAMPアッセイの感度をさらに改善しなかったことを見出し、より多数のサンプルの試験時、全体的にF3-T7はB3-T7よりもわずかに良好に機能したことが見出された。
【0191】
[0155] 表34は、種々のLAMPプライマーに対するT7プロモーターの配置の効果を示す。データは、T7テール(プライマー配列の5’末端における)についての最適な配置が、アウターF3プライマーセット上であることを示す。T7テールがインナーFIPプライマー上に配置される場合、RdRP(SARS-CoV-2遺伝子)領域1プライマーセットを使用すると結果までの時間の差は本質的に存在せず、RdRPプライマーセット2を用いると、反応は実質的に阻害される。T7テールが内部ループLFプライマー上に配置される場合、T7テールなしの対照反応と比較してほとんど差が存在しない。対照的に、T7テールがF3(アウタープライマー)上に配置される場合、結果までの時間の減少及びさらにはRdRP領域1についての陽性の増加が存在する(太字のF3-T7結果)。
【0192】
【0193】
実施例15.ナイセリア・ゴノルロホエア(Neisseria gonorrohoea)LAMP
[0156] 本明細書に記載のLAMP反応は、細菌検出に使用することもできる。表35は、N.ゴノルロホエア(N.gonorrohoea)の存在を検出するために使用された場合のGSL LAMPの結果を示す。16S rRNAのユニーク領域に対するLAMPプライマーを設計し、通常のとおり増幅させた(表36)。データから把握することができるとおり、わずか5~10コピーをLAMP増幅反応において検出することができる(表35)。
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
[0157] 表37は、N.ゴノルロホエア(N.gonorrohoea)LAMP反応を使用した交差反応性研究の結果を示す。試験された細菌又はウイルス非標的生物のいずれについても交差反応性は観察されなかった。
【0198】
[0158] 具体的な実施形態及び上記実施例に示される本発明に対して、広く記載される本発明の主旨からも範囲からも逸脱せずに多数のバリエーション及び/又は改変を行うことができることが当業者により認識される。したがって、本実施形態は、全ての点において説明的なものであり、限定的なものではないとみなされるべきである。特に、当業者は、本開示の利益を考慮して、本発明の原理による方法及びキットの使用に好適であり、それら及び他のタイプの適用に好適な条件及び/又はパラメータを同定し、選択し、最適化し、又は改変することができることが理解されるべきである。正確な使用、試薬の選択、変数、例えば、濃度、容量、インキュベーション時間、インキュベーション温度の選択などは、それが意図される特定の適用に大いに依存し得る。
【配列表】
【国際調査報告】