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特表2024-543170レーダ測定を実行する方法およびレーダ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】レーダ測定を実行する方法およびレーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/10 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
G01S13/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531473
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 EP2022083313
(87)【国際公開番号】W WO2023094610
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】21210745.2
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524198593
【氏名又は名称】アコネール、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】Acconeer AB
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(72)【発明者】
【氏名】エーリク、モンソン
(72)【発明者】
【氏名】ペータル、アルメルス
(72)【発明者】
【氏名】リカルド、ネランデル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス、アクスホルト
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB01
5J070AB24
5J070AC02
5J070AD01
5J070AD02
5J070AE07
5J070AH02
5J070AH04
(57)【要約】
レーダ測定を実行する方法であって、第1乃至第4の測定を実行することを備えており、各々は、レーダパルスを生成することと、レーダパルスをレーダ目標に向けて送信することと、参照パルスを生成することと、反射された後のレーダパルスの反射を備える信号を受信することと、受信信号を参照パルスと混合することと、混合積を積分することと、を備えており、参照パルスを生成することは、レーダパルスを生成することに対して、第1、第2、第3および第4の遅延時間だけそれぞれ遅延されており、第2および第1の遅延時間の間、第3および第2の遅延時間の間、ならびに第4および第3の遅延時間の間の差の各々は、レーダパルスの波長の4分の1に相当しており、第1および第3のレーダ測定の積分混合積の間と、第2および第4のレーダ測定の積分混合積の間の差とをそれぞれ表す第1および第2の値を決定することを備える、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ測定を実行する方法であって、
前記方法は、第1、第2、第3および第4のレーダ測定を実行することを備えており、
各レーダ測定は、
それぞれのレーダパルスを生成することと、
前記それぞれのレーダパルスをレーダ目標に向けて送信することと、
それぞれの参照パルスを生成することと、
前記レーダ目標からの前記それぞれのレーダパルスの反射を備える信号を、それぞれの受信信号として受信することと、
前記それぞれの受信信号を前記それぞれの参照パルスと混合して、それぞれの混合積を取得することと、
前記それぞれの混合積を積分して、DC信号であるそれぞれの積分混合積を取得することと、
を備えており、
前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定において、前記それぞれの参照パルスを生成することは、前記それぞれのレーダパルスを生成することに対して、第1、第2、第3および第4の遅延時間だけそれぞれ遅延されており、前記第2および第1の遅延時間の間、前記第3および第2の遅延時間の間、ならびに前記第4および第3の遅延時間の間の差の各々は、前記レーダパルスの波長の4分の1に相当しており、
前記方法は、前記第1および第3のレーダ測定の前記それぞれの積分混合積の間の差を表す同相成分値と、前記第2および第4のレーダ測定の前記それぞれの積分混合積の間の差を表す第2の値とを決定することをさらに備えており、前記第1の値は同相成分Iの推定値であり、前記第2の値は直交成分Qの推定値である、方法。
【請求項2】
前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定の各々は、前記それぞれの積分混合積をデジタル値に変換することをさらに備えており、第1、第2、第3および第4のデジタル値が取得され、前記第1の値を決定することは前記第1および第3のデジタル値の間の差を算出することを備え、前記第2の値を決定することは前記第2および第4のデジタル値の間の差を算出することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーダ測定の前記それぞれのレーダパルスは同一の波形およびマグニチュードを有し、前記それぞれの参照パルスは同一の波形およびマグニチュードを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記それぞれの受信信号を前記それぞれの参照パルスと混合することは、整合フィルタを用いて前記受信信号をフィルタリングすることを備えており、前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定において、前記整合フィルタのそれぞれの遅延は、前記第1、第2、第3および第4の遅延時間に設定されている、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記レーダパルスおよび参照パルスは、ミリ波帯(mmWave band)の搬送周波数を有する、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記レーダパルスおよび参照パルスは、超広帯域(ultra-wideband)パルスである、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定は、連続するレーダ測定の群を形成する、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定は、第1の測定群を形成し、
前記方法は、
前記レーダパルスおよび前記参照パルスを生成する間に、第1、第2、第3および第4の遅延時間をそれぞれ伴う第1、第2、第3および第4のレーダ測定を備える第2の測定群を実行し、前記第2および第1の遅延時間の間、前記第3および第2の遅延時間の間、ならびに前記第4および第3の遅延時間の間の差の各々は、前記レーダパルスの波長の4分の1に相当することと、
前記第2の測定群の前記第1および第3のレーダ測定の前記積分混合積の間の差を表す第1の値と、前記第2の測定群の前記第2および第4のレーダ測定の前記積分混合積の間の差を表す第2の値とを決定し、前記第1の値は同相成分Iの推定値であり、前記第2の値は直交成分Qの推定値であることと、
をさらに備える、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2のレーダ測定群の前記それぞれの第1、第2、第3および第4の遅延時間は等しく、前記方法は、前記第1および第2の測定群に基づいて前記第1の値および/または前記第2の値を比較することをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のレーダ測定群の前記第1、第2、第3および第4の遅延時間は、前記第1のレーダ測定群の前記第1、第2、第3および第4の遅延時間と異なる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1および第2の測定群の間の測定距離に関する間隔は、前記レーダパルスの波長の4分の1を超える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1の複数の測定群を実行することと、その後、第2の複数の測定群を実行することとを備えており、
各第1および第2の測定群は、前記レーダパルスおよび前記参照パルスを生成する間に、第1、第2、第3および第4の遅延時間をそれぞれ伴う第1、第2、第3および第4のレーダ測定を実行することを備え、前記第2および第1の遅延時間の間、前記第3および第2の遅延時間の間、ならびに前記第4および第3の遅延時間の間の差の各々は、前記レーダパルスの波長の4分の1に相当しており、
前記方法は、各第1および第2の測定群について、前記測定群の前記第1および第3のレーダ測定の積分混合積の間の差を表す第1の値と、前記測定群の前記第2および第4のレーダ測定の積分混合積の間の差を表す第2の値とを決定することをさらに備えており、各測定群について決定された前記第1の値および前記第2の値は、それぞれ、前記群についての同相成分Iの推定値および直交成分Qの推定値であり、
前記第1の複数の測定群は第1の範囲の測定距離にわたっており、前記第2の複数の測定群は第2の範囲の測定距離にわたり、前記第1の範囲の副範囲を形成し、
連続する第1の測定群の間の測定距離に関する間隔は、連続する第2の測定群の間の測定距離に関する間隔を超える、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
各第1の測定群について決定された前記第1および第2の値に基づいて前記レーダ目標との第1の距離を推定することと、
その後、前記第1の距離が前記第2の距離の範囲内にあるように、各第2の測定群について前記第1、第2、第3および第4の遅延時間を決定することと、
各第2の測定群について決定された前記第1および第2の値に基づいて前記レーダ目標との第2の距離を推定することと、
をさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
送信部(110)と、受信部(120)と、パルス生成回路(114,124)とを備えるレーダ装置(100)であって、
前記レーダ装置は、第1、第2、第3および第4のレーダ測定を実行するように構成されており、
各レーダ測定は、
前記パルス生成回路(114)によって、それぞれのレーダパルスを生成することと、
前記送信部によって、前記それぞれのレーダパルスをレーダ目標に向けて送信することと、
前記パルス生成回路(124)によって、それぞれの参照パルスを生成することと、
前記受信部によって、前記レーダ目標からの前記それぞれのレーダパルスの反射を備える信号を、それぞれの受信信号として受信することと、前記それぞれの受信信号を前記それぞれの参照パルスと混合して、それぞれの混合積を取得することと、前記混合積を積分して、DC信号であるそれぞれの積分混合積を取得することと、
を備えており、
前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定において、前記パルス生成回路は、前記それぞれのレーダパルスに対して第1、第2、第3および第4の遅延時間にそれぞれ設定された遅延を伴う前記それぞれの参照パルスを生成し、前記第2および第1の遅延時間の間、前記第3および第2の遅延時間の間、ならびに前記第4および第3の遅延時間の間の差の各々は、前記レーダパルスの波長の4分の1に相当しており、
前記レーダ装置は、前記第1および第3のレーダ測定の前記それぞれの積分混合積の間の差を表す第1の値と、前記第2および第4のレーダ測定の前記それぞれの積分混合積の間の差を表す第2の値とを決定するように構成された信号処理部(140)をさらに備えており、前記第1の値は同相成分Iの推定値であり、前記第2の値は直交成分Qの推定値である、レーダ装置。
【請求項15】
アナログ-デジタル変換器(142)をさらに備えており、前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定の各々は、前記アナログ-デジタル変換器によって前記それぞれの積分混合積をデジタル値に変換することをさらに備えており、第1、第2、第3および第4のデジタル値が取得され、
前記処理回路は、前記第1および第3のデジタル値の間の差を算出することによって前記第1の値を決定し、前記第2および第4のデジタル値の間の差を算出することによって前記第2の値を決定するように構成されている、請求項14に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ測定を実行する方法およびレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業、医療、保安および消費者用途において、短距離かつ高精度の測定を可能にするレーダ技術への関心が高まっている。非限定の例示的な用途は、距離測定および位置測定、存在および身振りの検出、ならびに厚さ、サイズ、誘電特性、材料組成などの材料特性の調査を含む。
【0003】
パルスに基づいたレーダシステムでは、送信時間が短く維持され得、これにより低い電力消費を可能にしている。超広帯域(ultra-wideband:UWB)パルス(例えば、数GHz以上)は、パルス持続時間を数ナノ秒または数百ピコ秒以下のオーダにすることを可能にする一例であり得る。パルスに基づいたレーダシステムでは、レーダパルスはレーダ目標により反射されるように送信され、反射されたレーダパルスは、例えばレーダパルスの飛行時間、および/または振幅や位相などの反射パルスのその他の特徴を決定するために、受信および解析される。
【0004】
ミリメートル帯、あるいはミリ波帯(mmWave band、本願では30GHzから300GHzまで広がるスペクトルに相当するものとして扱う)において動作するパルスに基づいたレーダシステムは、ミリ波レーダパルスの短い波長が短距離用途において高い正確性を有する測定を容易にするため、特に興味深い。しかし、ミリ波信号の高い周波数は、信号処理中の困難を導入する。例えば、十分な忠実性(fidelity)を有するミリ波レーダパルスの直接的なサンプリングは、帯域幅とアナログ-デジタル変換の速度に対して高い要請をもたらす可能性があり、加えて、大量のデータの収集および処理を要求する。
【発明の概要】
【0005】
上記観点において、本発明概念の目的は、電力効率性、低い計算複雑性および短い測定時間のうち1またはより多くを可能にするパルスレーダ測定のための改良された方法およびレーダ装置を提供することである。さらなる、または代替的な目的は、以下から理解され得る。
【0006】
本発明概念の第1の態様によれば、レーダ測定を実行する方法が提供され、
方法は、第1、第2、第3および第4のレーダ測定を実行することを備えており、
各レーダ測定は、
レーダパルスを生成することと、
レーダパルスをレーダ目標に向けて送信することと、
参照パルスを生成することと、
レーダ目標からのレーダパルスの反射を備える信号を、受信信号として受信することと、
受信信号を参照パルスと混合して、混合積を取得することと、
混合積を積分して、積分混合積を取得することと、
を備えており、
第1、第2、第3および第4のレーダ測定において、参照パルスを生成することは、レーダパルスを生成することに対して、第1、第2、第3および第4の遅延時間だけそれぞれ遅延されており、第2および第1の遅延時間の間、第3および第2の遅延時間の間、ならびに第4および第3の遅延時間の間の差の各々は、レーダパルスの波長の4分の1に相当しており、
方法は、第1および第3のレーダ測定の積分混合積の間の差を表す第1の値と、第2および第4のレーダ測定の積分混合積の間の差を表す第2の値とを決定することをさらに備える。
【0007】
方法は、「時間希釈測定法(time-diluted measurement approach)」と呼ばれ得るものを、計算の効率性およびデータのスパース性を有する、受信レーダパルスの振幅および位相の情報の推定と組み合わせる。
【0008】
本明細書でさらに説明されるように、時間希釈測定法は、反復的に送信することおよびレーダパルスの反射を備える信号を受信することと、受信信号を、測定間で変化される遅延を伴って生成される参照パルスと相関させること(すなわち、混合すること、および積分すること)とによって、受信レーダパルスを「直接的に」サンプリングする必要を回避することができる。受信信号が備えるレーダパルスの反射は、以下では、反射レーダパルスと呼ばれることがある。
【0009】
第1、第2、第3および第4の遅延時間は、互いに異なるそれぞれの遅延時間、すなわち4つの異なる値の遅延時間を指す。第2の遅延時間は第1の遅延時間より大きくてもよく、第3の遅延時間は第2の遅延時間より大きくてもよく、第4の遅延時間は第3の遅延時間より大きくてもよい。より具体的には、方法によれば、参照パルスの第1、第2、第3および第4の遅延時間は、波長の間隔の4分の1を伴うサンプリング位置に相当するように意図的に選択される。第1、第2、第3および第4のレーダ測定の積分混合積は、位相(すなわち、レーダパルスの搬送周波数)が90度ずつ離れた位置における反射レーダパルス(すなわち、反射レーダパルスと参照パルスとの間の相互相関)を適宜表し得る。同相成分Iを代表する振幅情報および直交成分Qを代表する位相情報(すなわち、I/Qペア)は、それぞれ、第1および第2の値に基づいて適宜推定され得る。すなわち、第1乃至第4の測定の受信信号(すなわち、反射レーダパルス)について、第1および第2の値は、同相成分Iの推定値および直交成分Qの推定値をそれぞれ形成する。換言すると、方法は、第1および第3のレーダ測定の積分混合積の間の差を決定することによって同相成分Iを推定することと、第2および第4のレーダ測定の積分混合積の間の差を決定することによって直交成分Qを推定することとを備える。
【0010】
したがって、受信信号におけるレーダパルスの反射についての振幅および位相の情報は、4つのレーダ測定のみから取得され得る。時間希釈測定法の最小の測定時間は、一般的にレーダ測定の回数およびパルス繰り返し周波数によって境界付けられる。したがって、反射パルスの持続時間全体にわたったサンプルに基づいた完全なI/Q復調法と比較して、時間的により短い測定シーケンスが用いられて、振幅および位相の情報を推定するために必要不可欠な数のサンプルを取得することができるため、方法は、低減された測定時間を可能にする。
【0011】
本明細書で用いられる「パルス」という用語(例えば、「レーダパルス」および「参照パルス」)は、ある搬送周波数および限られた時間的広がりを有する電磁振動信号を指す。各パルスは、複数の振動または周期を含んでもよい。「ウェーブレット」という用語は、「パルス」の類義語として用いられ得る。
【0012】
本明細書で用いられる「混合する」という用語は、混合積を取得するための2つの信号(例えば、受信レーダパルスおよび参照パルス)のRF混合/周波数混合を指す。
【0013】
受信信号の参照パルスとの混合は、混合器によって実行されてもよい。第1乃至第4のレーダ測定の間の遅延を変化させることによって、混合器における(例えば、第1の混合器の入力における)参照パルスの到着の相対時間は、混合器における(例えば、第2の混合器の入力における)受信信号の/受信信号内の反射レーダパルスの到着の時間に対して、測定間で変化されてもよい。
【0014】
本明細書で用いられる「積分する」という用語は、信号の時間積分(例えば、積分混合積)を取得するための、積分器による信号(例えば、混合積)の積分を指す。したがって、積分は、各測定の混合積を、DC信号であるそれぞれの積分混合積に変換する。混合積は、その持続時間の全体にわたって積分されるべきである。すなわち、混合積が積算される(例えば、積分器によって)間の時間周期は、混合積の持続時間の全体を包含するべきである。
【0015】
第1、第2、第3および第4のレーダ測定は4つの別々のレーダ測定として理解されるべきであり、各々は、それぞれのレーダパルスを生成することと、それぞれのレーダパルスを送信することと、それぞれの参照パルスを生成することと、レーダ目標からのそれぞれのレーダパルスの反射を備える信号を、それぞれの受信信号として受信することと、それぞれの受信レーダ信号を、それぞれの(送信)レーダパルスに対してそれぞれの遅延時間(すなわち、第1、第2、第3または第4の遅延時間)に設定された遅延を伴って生成されたそれぞれの参照パルスと混合して、それぞれの混合積を取得することと、それぞれの混合積を積分して、それぞれの積分混合積を取得することとを備える。
【0016】
4つのレーダ測定は、一連のレーダ測定を形成してもよく、すなわち一連に実行されてもよい。ただし、「第1」「第2」「第3」および「第4」といったレーダ測定の呼び名は、4つのレーダ測定のラベルとしてのみ意図されており、どのような順番で実行されてもよい。
【0017】
実施形態によれば、第1、第2、第3および第4のレーダ測定は、連続するレーダ測定の群を形成し得る。これは、時間において密に間隔を空けて測定が実行されることを可能にする。よって、連続するレーダ測定の間の測定条件が変化する(例えば、レーダ目標との距離が変化する)リスクが低減され得るため、推定された振幅および位相の情報の正確性が改良され得る。
【0018】
第1、第2、第3および第4のレーダ測定のレーダパルス(すなわち、送信レーダパルス)は、同一の波形およびマグニチュードを有してもよい。換言すると、4つのレーダ測定のレーダパルスは、波形およびマグニチュードに関して同じレーダパルスであってもよい。
【0019】
対応するように、第1、第2、第3および第4のレーダ測定の参照パルスは、同一の波形およびマグニチュードを有してもよい。換言すると、4つのレーダ測定の参照パルスは、波形およびマグニチュードに関して同じ参照パルスであってもよい。
【0020】
同じ送信レーダパルス/参照パルスは、位相同期の(phase-coherent)レーダ測定を可能にする。ここで、位相同期の測定によるとは、一連に送信/生成されたレーダパルス/参照パルスの間に位相同期性(一定の所定の位相関係)があることを意味する。これは、信号処理を容易にすることができ、測定の正確性を向上させることができる。
【0021】
実施形態によれば、受信信号を参照パルスと混合することは、整合フィルタを用いて受信レーダ信号をフィルタリングすることを備えてもよく、第1、第2、第3および第4のレーダ測定において、整合フィルタのそれぞれの遅延は、第1、第2、第3および第4の遅延時間に設定される。
【0022】
換言すると、混合することが、整合フィルタを用いた受信信号のフィルタリングを実現するように、各参照パルスが適合されてもよい。各レーダ測定の混合/フィルタリングからの出力は、(それぞれの)フィルタリングされたパルスに応じて表され得る。
【0023】
整合フィルタは、レーダパルスの受信された反射に相当する(元々の)送信レーダパルスと同一の波形およびマグニチュードを、各参照パルスが有することを示唆する。
【0024】
整合フィルタ法は、位相同期の測定および改良された信号-ノイズ性能を容易化することができる。
【0025】
レーダパルスおよび参照パルスは、ミリ波帯の搬送周波数、すなわち30GHzから300GHzまでの範囲の搬送周波数を有してもよい。ミリ波帯は、小型フォームファクタ(compact form factor)を有するレーダセンサおよびアンテナを用いて、短距離用途で高い正確性を有する測定を容易にする。
【0026】
レーダパルスおよび参照パルスは、超広帯域パルス、例えば50psから10nsの範囲のパルス持続時間と同等の帯域幅であってもよい。
【0027】
実施形態によれば、第1、第2、第3および第4のレーダ測定の各々は、積分混合積をデジタル値に変換することをさらに備えてもよく、第1、第2、第3および第4のデジタル値が取得され、第1の値(すなわち、同相成分Iの代表)を決定することは(第1の測定の)第1のデジタル値および(第3の測定の)第3のデジタル値の間の差を算出することを備え、第2の値(すなわち、直交成分Qの代表)を決定することは(第2の測定の)第2のデジタル値および(第4の測定の)第4のデジタル値の間の差を算出することを備える。したがって、振幅および位相の情報は、デジタル領域において、例えばデジタル信号処理器を用いて、単純かつ効率的に推定され得る。デジタル領域において第1および第2の値(I/Qペア)を算出することは、その後のレーダ測定の処理をさらに容易にすることができる。
【0028】
実施形態によれば、第1、第2、第3および第4のレーダ測定は、第1の測定群を形成してもよく、
方法は、
レーダパルスおよび参照パルスを生成する間に、第1、第2、第3および第4の遅延時間をそれぞれ伴う第1、第2、第3および第4のレーダ測定を備える第2の測定群を実行することと、
第2の測定セットの第1および第3のレーダ測定の積分混合積の間の差を表す第1の値と、第2の測定セットの第2および第4のレーダ測定の積分混合積の間の差を表す第2の値とを決定することと、
をさらに備えてもよい。
【0029】
すなわち、第2の測定群の第1、第2、第3および第4のレーダ測定の各々は、第1の測定群の第1、第2、第3および第4のレーダ測定と同様に、レーダパルスをレーダ目標に向けて送信することと、参照パルスを生成することと、レーダ目標からのレーダパルスの反射を備える信号を、受信信号として受信することと、受信信号を参照パルスと混合して、混合積を取得することと、混合積を積分して、積分混合積を取得することとを備えてもよく、第2の群の第1、第2、第3および第4のレーダ測定において、参照パルスを生成することは、レーダパルスを生成することに対して、第1、第2、第3および第4の遅延時間だけそれぞれ遅延されており、第2および第1の遅延時間の間、第3および第2の遅延時間の間、ならびに第4および第3の遅延時間の間の差の各々は、レーダパルスの波長の4分の1に相当する。
【0030】
第2の測定群は、第1の測定群に相当する測定群に適宜関係しており、第1の測定群と同様に、振幅および位相の情報が4つのレーダ測定のみから取得されることを可能にする。
【0031】
上記の第1の群の第1、第2、第3および第4のレーダ測定に関する任意の説明は、第2の群の第1、第2、第3および第4のレーダ測定に対応して適用され得る。
【0032】
第1および第2のレーダ測定群のそれぞれの第1、第2、第3および第4の遅延時間は等しくてもよく、方法は、第1および第2の測定群に基づいて第1の値および/または第2の値を比較することをさらに備えてもよい。これは、同一の第1乃至第4のレーダ測定を2回(またはより多く)実行することと、それぞれの第1の値(例えば、第1および第2のIの推定値)および/またはそれぞれの第2の値(例えば、第1および第2のQの推定値)を比較することとを可能にする。よって、変化したレーダ応答(例えば、レーダ目標との変化した距離)は、例えば第2の値(第1および第2のQの推定値)の間の変化として検出され得る。
【0033】
代替的に、第2のレーダ測定群の第1、第2、第3および第4の遅延時間は、第1のレーダ測定群の第1、第2、第3および第4の遅延時間と異なってもよい。これは、異なる距離範囲におけるレーダ測定を実行することを可能にする。例えば、第1のレーダ測定群の第1乃至第4の遅延時間が第1の測定距離にある目標の測定を可能にするように設定され得る一方、第2のレーダ測定群の第1乃至第4の遅延時間が、第1の測定距離よりも大きいまたは小さい第2の測定距離にある目標の測定を可能にするように設定され得る。
【0034】
第2の群の第1、第2、第3および第4の遅延時間は、第1のセットの遅延時間と同様に、サンプリング位置の波長の間隔の4分の1に相当すると理解されるべきである。
【0035】
第1および第2の測定群の間の測定距離に関する間隔は、レーダパルスの波長の4分の1を超えてもよい。振幅および位相の情報が第1および第2のレーダ測定群から独立して取得され得るため、それらの群は、任意に空間的に分割され得、具体的には波長の4分の1よりも大きく分割され得る。これは、まばらなサンプリングや、拡張された測定範囲のサンプリングをも可能にすることにさらに寄与し得る。
【0036】
実施形態によれば、方法は、第1の複数の測定群(第1の諸測定群)を実行することと、その後、第2の複数の測定群(第2の諸測定群)を実行することとを備えてもよく、
各第1および第2の測定群は、
レーダパルスを生成することと、
レーダパルスをレーダ目標に向けて送信することと、
参照パルスを生成することと、
レーダ目標からのレーダパルスの反射を備える信号を、受信信号として受信することと、
受信信号を参照パルスと混合して、混合積を取得することと、
混合積を積分して、積分混合積を取得することと、
を備えており、
各群の第1、第2、第3および第4のレーダ測定において、参照パルスは、レーダパルスに対して第1、第2、第3および第4の遅延時間にそれぞれ設定された遅延を伴って生成され、第2および第1の遅延時間の間、第3および第2の遅延時間の間、ならびに第4および第3の遅延時間の間の差の各々は、レーダパルスの波長の4分の1に相当しており、
方法は、各第1および第2の測定群について、測定群の第1および第3のレーダ測定の積分混合積の間の差を表す第1の値と、測定群の第2および第4のレーダ測定の積分混合積の間の差を表す第2の値とを決定することをさらに備えており、
第1の複数の測定群は第1の範囲の測定距離にわたっており、第2の複数の測定群は第2の範囲の測定距離にわたり、第1の範囲の副範囲を形成し、
連続する第1の測定群の間の測定距離に関する間隔は、連続する第2の測定群の間の測定距離に関する間隔を超える。
【0037】
これは、(第1の)より広い距離範囲にわたった(第1の)よりまばらに分散されたレーダ測定群のセット(第1の「掃引(sweep)」)と、その後の、当該より広い距離範囲内の、より狭い(第2の)距離範囲にわたった(第2の)よりまばらでなく分散されたレーダ測定群のセット(第2の「掃引」)とを備える2部分測定プロトコル(two-part measurement protocol)を可能にする。したがって、より広いがより粗いサンプリングされた距離範囲は、より狭いがより細かいサンプリングされた距離範囲と組み合わされ得る。
【0038】
第2の測定群(第2の掃引)は、第1の測定群(第1の掃引)に応答するように構成されてもよい。
【0039】
実施形態によれば、方法は、
各第1の測定群について決定された第1および第2の値に基づいてレーダ目標との第1の距離を推定することと、
その後、第1の距離が第2の距離の範囲内にあるように、各第2の測定群について第1、第2、第3および第4の遅延時間を決定することと、
各第2の測定群について決定された第1および第2の値に基づいてレーダ目標との第2の距離を推定することと、
をさらに備えてもよい。
【0040】
したがって、レーダ目標との距離の第1の粗い推定値は、第1の(まばらに分散された)測定群に基づいて取得されてもよく、第1の推定値に応答して、第2の測定群が、レーダ目標との距離のより精度の高い推定を可能にするように構成されてもよい。
【0041】
第2の態様によれば、送信部と、受信部と、パルス生成回路とを備えるレーダ装置が提供され、
レーダ装置は、第1、第2、第3および第4のレーダ測定を実行するように構成されており、
各レーダ測定は、
パルス生成回路によって、レーダパルスを生成することと、
送信部によって、レーダパルスをレーダ目標に向けて送信することと、
パルス生成回路によって、参照パルスを生成することと、
受信部によって、レーダ目標からのレーダパルスの反射を備える信号を、受信信号として受信することと、受信信号を参照パルスと混合して、混合積を取得することと、混合積を積分して、積分混合積を取得することと、
を備えており、
第1、第2、第3および第4のレーダ測定において、パルス生成回路は、レーダパルス(を生成すること)に対して第1、第2、第3および第4の遅延時間にそれぞれ設定された遅延を伴う参照パルスを生成し、第2および第1の遅延時間の間、第3および第2の遅延時間の間、ならびに第4および第3の遅延時間の間の差の各々は、レーダパルスの波長の4分の1に相当しており、
レーダ装置は、第1および第3のレーダ測定の積分混合積の間の差を表す第1の値と、第2および第4のレーダ測定の積分混合積の間の差を表す第2の値とを決定するように構成された信号処理部をさらに備える。
【0042】
第1の態様に係る方法を参照して説明されたすべての有利性、実施形態、特徴および主題は、第2の態様に係るレーダ装置に適用すること(および/または第2の態様に係るレーダ装置と組み合わされること)もでき、逆もまた同様である。例えば、レーダ装置は、いかなる第1の態様の方法のステップ、または第1の態様の実施形態も実行するように構成され得る。
【0043】
実施形態によれば、レーダ装置は、アナログ-デジタル変換器(ADC)をさらに備えてもよく、第1、第2、第3および第4のレーダ測定の各々は、ADCによって積分混合積をデジタル値に変換することをさらに備えてもよく、第1、第2、第3および第4のデジタル値が取得され、
処理回路は、第1および第3のデジタル値の間の差を算出することによって第1の値を決定し、第2および第4のデジタル値の間の差を算出することによって第2の値を決定するように構成されてもよい。
【0044】
実施形態によれば、レーダ装置は、(送信部によって送信される)レーダパルスの生成を引き起こす第1のトリガをパルス生成回路に出力し、第1のトリガに対して制御可能な遅延の後に、(受信レーダパルスと混合される)参照パルスの生成を引き起こす第2のトリガをパルス生成回路に出力するように構成されたタイミング回路をさらに備えてもよい。
【0045】
パルス生成回路は、第1のトリガに応答してレーダパルスを生成し、第2のトリガに応答して参照パルスを生成するように構成されてもよい。
【0046】
レーダ装置は、第1、第2、第3および第4のレーダ測定において、タイミング回路を制御して、第1のトリガに対する第2のトリガの遅延を、第1、第2、第3および第4の遅延時間にそれぞれ設定してもよい。
【0047】
これにより、レーダパルスおよび参照パルスのペアの相対的なタイミングは、タイミング回路を介して制御され得る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
上記の内容ならびに追加的な目的、特徴および有利性は、添付された図面の参照しながら、以下の例証的かつ非限定の詳細な説明を通じて、よりよく理解され得る。図面において、同様の参照符号は、別途言及されない限り同様の構成要素について用いられる。
図1図1は、実施形態に係るレーダ装置のブロック図である。
図2図2は、レーダ測定を実行する方法の実施形態のフローチャートである。
図3図3は、レーダ測定の模式的なタイミング図である。
図4図4は、クラスタの概念を示す概略図である。
図5図5は、いくつかの連続した複数のレーダ測定群から取得された例示的な振幅(上図)および位相(下図)を示す図である。
図6図6は、図5と同様の例、ただし、連続した掃引の間に移動するレーダ目標についての例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、実施形態に係るレーダ装置100を示す。レーダ装置100は、送信部110および受信部120を備える。送信部110は、レーダパルスTxを送信するように構成されている。受信部120は、レーダパルスRxを受信するように構成されている。
【0050】
レーダ装置100の動作中、レーダパルスTxは、参照符号10で表示されたレーダ目標に向けて送信され得る。レーダパルスTxは、レーダ目標10によって反射され得、受信部120によって各々がレーダ目標10により反射された送信レーダパルスTxの反射を備える受信信号として受信され得る。以下では、受信信号が備える送信レーダパルスTxの反射は、受信レーダパルスRxと呼ばれ得る。すなわち、「受信レーダパルスRx」という表現は、送信され(そして反射された)レーダパルスTxの反射信号エネルギーを備える受信信号の広がりを表現する。
【0051】
理解され得るように、レーダ目標10の種類は、レーダ装置100の用途に依存するものである。身振り検知用途では、レーダ目標10は、電子装置(例えば、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、メディア再生機器、スマートウォッチ、ヘッドフォン、またはレーダに基づいて非接触型のユーザインタラクションを実装するいくつかの他の電子装置)に対して比較的近くに位置するユーザの手または指であり得る。自動ロボット用途(例えば、掃除ロボット、芝刈りロボット、ドローン)では、レーダ目標10は、存在および/または位置が自動ロボットによる移動決定に関連し得る、壁やいくつかの障害物などの構造物であり得る。表面走査用途では、レーダ目標10は、関心物(interest)の表面(例えば、ロボットによって横切られる表面)であり得る。ただし、これらの用途およびレーダ目標の例は、非限定の例にすぎず、多くの他の種類の用途およびレーダ目標10が可能である。
【0052】
レーダ装置100は、送信アンテナ112を備える。送信部110は、送信アンテナ112を介してレーダパルスTxを送信するように構成されている。送信アンテナ112は、送信部110の出力端子に結合されてもよい。レーダ装置100は、受信アンテナ122を備える。受信部120は、受信アンテナ122を介してレーダパルスRxを受信するように構成されている。受信アンテナ122は、受信部120の入力端子に結合されてもよい。アンテナ120,122は、有向型のもの、例えばダイポールアンテナ、八木アンテナ、またはフェーズドアレイアンテナであってもよい。レーダ測定の指向性を改良するため、ホーンリフレクタおよび/または誘電体レンズなどの反射部が、送信部110および/または受信部120に関連して配置されてもよい。図示された実施形態は、レーダパルスを送信および受信するために分割されたアンテナを有しているが、送信部110および受信部120が共通のアンテナを用いることも可能である。例えば、送信部110または受信部120の一方と、アンテナとを選択的に結合するため、共通のアンテナと、送信部110および受信部120との間に選択器が接続されてもよい。
【0053】
送信部110は、送信部110により送信されるレーダパルスTxを生成するように構成されたレーダパルス生成器114を備える。レーダパルス/ウェーブレットTxは、ラジオ周波数パルス、例えば50psから10nsの範囲のパルス持続時間およびミリ波帯の搬送周波数を有するUWBパルスであってもよい。レーダパルスTxは、例として、(例えばFWHMで測定された)約7GHzから約14GHzの帯域幅を有してもよい。レーダパルスTxが属する周波数帯の非限定の例は、57-71GHz、57-64GHzまたは77-81GHzを含んでもよい。このようなパルスが短距離用途において高い正確性を有する測定を可能にし得る一方、本明細書で開示される測定法は、より一般的な適用性を有し、それにより、より高いまたはより低い搬送周波数と、より長いまたはより短いパルス持続時間とを併せて用いられると想定される。
【0054】
レーダパルス生成器114は、同一の波形およびマグニチュードを有する各レーダパルスTxを生成するように構成されてもよく、時間的に間隔が空いた測定時期に生成されたレーダパルスTxは、互いに関して位相同期性を示し得る。これは、位相同期のレーダ反射データを取得することを可能にし、したがって、以下でさらに説明される時間希釈測定法を容易にする。
【0055】
受信部120は、参照パルス生成器124を備える。参照パルス生成器124は、参照パルスRefを生成するように構成されている。上述した送信レーダパルスTxの特性は、ウェーブレット生成器124によって生成された参照パルスRefに対応して適用可能である。そのため、参照パルスRefは、ラジオ周波数パルス、例えばUWBミリ波パルスであってもよい。参照パルス生成器124は、同一の波形およびマグニチュードを有する各参照パルスRefを生成するように構成されてもよく、時間的に間隔が空いた測定時期に生成された参照パルスRefは、共通の位相同期性を示し得る。
【0056】
レーダパルスTxおよび参照パルスRefは、さらに、同一の波形およびマグニチュードを示すように生成されてもよい。換言すると、レーダパルスTxは、参照パルスRefと同じであってもよい。これは、以下でさらに説明するように、動作中、受信部120が受信レーダパルスRxの整合フィルタ検出を実装することを可能にする。
【0057】
パルス生成器114,124は、様々な方式で実装され得る。1つの例によれば、パルス生成は、開示されたPCT出願PCT/EP2011/058847の第11頁第22-30行の図4に関連して記載された送受信モジュールを用いて実現され得る。この実装は、良好に定義され、固定された初期の位相、搬送周波数および持続時間を伴うUWBミリ波レーダパルスおよび参照パルスを生成する低複雑性の方法を提供する。ただし、パルス生成は、他の振動子の構成を用いて、例えば、(例えば、たすきがけされた(closs-coupled)差動ペアによって提供される)負の微分コンダクタンスまたは正帰還に依存するパルス生成器によっても実現され得、振動を急速に開始または消滅させることが可能である。さらなる例示的な実装は、それ自体当業者に知られているように、連続発振を切替可能な増幅器に通過させること、ベースバンドパルスのフィルタリング、ベースバンドパルスのアップコンバージョン、または所望の波形を生成するデジタルゲートを使用することを含む。
【0058】
図示された実施形態では、送信部110および受信部120は、それぞれのパルス生成器114および124を備える。パルス生成器114および124は、レーダ装置100のパルス生成回路を共に定義する。送信部110および受信部120について異なるパルス生成器を用いることは、レーダパルスTxおよび参照パルスRefのタイミングが好都合に互いに独立に制御されることが可能であり、TxおよびRxパルスが相手との間で時間的な重複を伴って生成されることを可能にする点で有利となりうる。さらには、実際のパルス(TxおよびRef)の遅延が回避され得、精密な遅延制御を容易にし得るため、タイミング制御が容易にされ得る。一方、送信部110および受信部120によって共有された単一のパルス生成器を備えるパルス生成回路を備える実施形態も可能である。単一のパルス生成器の実施形態は、パルス生成器がレーダパルスTxおよび参照パルスRefを生成するための分割されたトリガと、それぞれのパルスを送信部110または受信部120に向けるスイッチとを提供することによって遅延制御を実装できる。代替的に、送信ブランチおよび参照ブランチの両方に、単一のパルスが生成および分配されてもよい。送信ブランチは、レーダパルスTxを送信部110への入力として提供してもよい。参照ブランチは、受信パルスを遅延させる遅延回路を備えて、レーダパルスTxに対して遅延された参照パルスRefを受信部120への入力として提供してもよい。単一のパルス生成器または分割された114,124などのパルス生成器を用いるいずれの場合も、レーダ装置100は、レーダパルスTxおよび参照パルスRefを生成するように構成されたパルス生成回路を備えてもよい。
【0059】
受信部120は、混合器126を備える。混合器126は、1組の入力信号の混合を実行し、その混合積Mixを出力するように構成されている。混合器126の第1の入力は、(受信アンテナ122に結合された)受信部110の入力端子に結合されている。混合器126の第2の入力は、参照パルス生成器124の出力に結合されている。したがって、時間的な重複を伴って混合器の入力に適用される受信パルスRxおよび参照パルスRefに応答して、混合器126は、RxおよびRefパルスの重複部分の即時的な混合積(パルスでもある)を出力することができる。受動的および能動的、平衡的または非平衡的な混合器の実装、例えばギルバートセル、ダイオードミキサまたは受動的な電界効果トランジスタミキサも可能である。
【0060】
受信部120は、積分器128を備える。積分器128は、混合積Mixを積分して、積分混合積Intを出力するように構成されている。積分器128の入力は、混合器126の出力に結合されている。重複するRxおよびRef入力パルスについての混合積Mixは、AC信号であり、したがってDC信号に変換されてもよい。積分器128は、キャパシタまたは積分オペアンプ(integrating OP-amp)によって実装されてもよい。任意の場合に、積分時間は、(パルスされた)混合積Mixの予測される最大の持続時間以上であるべきであると理解されるべきである。
【0061】
レーダ装置100は、信号処理部140を備える。信号処理部140は、積分器128によって出力された積分混合積Intを受信および処理するように構成されている。以下の説明の目的のため、インデックスiが測定セットを指すために導入され、インデックスjが測定セットのある測定を指すために導入される。したがって、測定セットiの各測定jは、積分器128によって出力された積分混合積Intを生じる。
【0062】
信号処理部140は、ADC142を備える。ADC142の入力は、積分器128の出力に結合されている。ADC142は、各積分混合積Intをデジタル対照物xi,j(添え字i,jは測定セットiの測定jを適宜表す)に変換するように構成されている。
【0063】
信号処理部140は、デジタル信号処理器(DSP)144を備える。DSP144の入力は、ADC142の出力に結合されている。DSP144は、デジタル値Int_dを処理するように構成されている。図2に関連してさらに説明されるように、信号処理部140/DSP144は、レーダ測定からの結果である積分混合積Int/デジタル値Int_dを処理して、I/Q成分の形式で振幅および位相の情報を推定することができる。I/Qの推定値は、修正および/もしくはさらなる処理のためにDSP144のメモリに記憶されてもよく、ならびに/またはレーダ装置100の通信バスを介して周辺回路に出力されてもよい。DSP144は、専用回路内、または特定用途向け集積回路(ASIC)もしくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)内に実装されてもよい。一方、DSP144の機能は、マイクロプロセッサ、および処理動作を実装する命令を記憶する非揮発性メモリなどのコンピュータ読取可能媒体によって代替的に実装されてもよい。
【0064】
図1には示されていないが、レーダ装置100は、ADC142のダイナミックレンジに対して信号レベルを最適化するため、ADC142に先立って積分混合積Intを適合させる(例えば増幅する、または減衰する)ための追加の回路を備えてもよい。
【0065】
レーダ装置100は、タイミング回路130を備える。以下から理解され得るように、タイミング回路130は、レーダパルスTxおよび参照パルスRefの生成にわたるタイミング制御を容易化することができる。
【0066】
タイミング回路130は、レーダパルスTxの生成を引き起こすための第1のトリガTrig_txをレーダパルス生成器114に出力するように構成されている。タイミング回路130は、参照パルスRefの生成を引き起こすための第2のトリガTrig_refを参照パルス生成器124に出力するように構成されている。タイミング回路130は、第1のトリガTrig_txの後で、制御可能/プログラム可能な遅延を伴う第2のトリガTrig_refを出力するように構成されている。換言すると、タイミング回路130は、第1のトリガの出力に対して制御可能な遅延時間だけ第2のトリガの出力を遅延させることができる。第1および第2のトリガTrig_tx,Trig_refは、例えば(デジタル)パルスの上昇エッジまたは下降エッジによって形成されてもよい。
【0067】
逆にいえば、レーダパルス生成器114は、第1のトリガTrig_txを受信することに応答して、レーダパルスTxを生成するように構成されている。対応するように、参照パルス生成器124は、第2のトリガTrig_refを受信することに応答して、参照パルスRefを生成するように構成されている。
【0068】
単一のパルス生成器が送信部110および受信部120によって共有される実施形態では、第1および第2のトリガTrig_tx,Trig_refの両方が、パルス生成回路に出力されてもよい。
【0069】
他の場合では、レーダパルスTxおよび参照パルスRefは、タイミング回路130の制御可能な遅延を設定することによって、可変的な遅延を伴って生成され得る。
【0070】
タイミング回路130は、例えばレーダ装置100の電圧制御振動子(voltage-controlled oscillator:VCO)またはいくつかの他の既存のクロック源によって提供される参照クロックに基づいて動作してもよい。タイミング回路130は、それぞれのクロックエッジ数の後、第1のトリガTrig_txおよび第2のトリガTrig_refを出力するように構成されたカウンタ回路を備えてもよい。より高精度の遅延制御は、クロック信号を、第1のトリガ生成Trig_txと関連した第1の経路と、第2のトリガ生成Trig_refと関連した第2の経路とに分配することによって取得され得る。第1および第2の経路に沿って伝播するそれぞれのクロック信号の間の細かい遅延制御を提供するため、第1または第2の経路のうち1つに遅延線(例えば、タップ付き遅延線または他のデジタルもしくは連続する遅延回路)が提供されてもよい。例として、タップ付き遅延線などの最先端の遅延回路は、約0.5ps以下の解像度/ステップサイズを有する可変的な遅延制御を可能にし得る。一方、第1および第2のトリガTrig_tx,Trig_refの生成を制御するため、分割されたまたは同期したクロック源を用いることも可能である。
【0071】
ここで、図2および図3を参照して、レーダ装置100の動作が説明される。
【0072】
図2は、レーダ装置100により実装された、レーダ測定を実行する方法200のフローチャートである。図3は、方法200の基礎を形成する単一のレーダ測定を図示する図3の模式的なタイミング図である。
【0073】
レーダパルスTxは、パルス生成回路によって(例えば、パルス生成器114によって)生成され、送信部110によってレーダ目標10に向けて送信される。レーダパルスTxは、レーダ目標10により反射された後、受信部120によって受信レーダパルスRxとして受信される。具体的には、受信部120は、レーダパルスTxの反射を備える信号を受信信号として受信することができ、当該反射は受信レーダパルスRxである。混合器126は、受信レーダパルスRxを、パルス生成回路によって(例えば、参照パルス生成器124によって)生成された参照パルスRefと混合して、混合積Mixを取得する。混合積Mixは、積分器128によって積分されて、積分混合積Intを取得する。
【0074】
上述したように、レーダ装置100は、レーダパルスTxに対して可変的な遅延時間(τ)を伴う参照パルスRefを生成し得る。それゆえ、混合器126における受信レーダパルスRxと参照パルスRefとの間の時間的な整列具合(alignment)/タイミングオフセット(δ)は、レーダパルスTxおよび遅延時間τの往復遅延(round-trip delay:RTD)の関数である。理解されるように、RTDは、レーダ目標10との距離に依存する。RTDが変化しないという制約の下、混合中の受信レーダパルスRxと参照パルスRefとの間の瞬間的な位相関係、および、したがって瞬間的な混合積Mixは、遅延時間τが変化することによって、一連のレーダ測定の間で適宜、決定論的に変化され得る。よって、各レーダ測定の積分混合積Intまたはデジタル対照物xi,jは、(例えば、τの関数としての)受信レーダパルスRxと参照パルスRefとの間の相互相関の値またはサンプルに相当する。
【0075】
したがって、図2によれば、方法200は、第1の遅延時間(τi,1)、第2の遅延時間(τi,2>τi,1)、第3の遅延時間(τi,3>τi,2)、および第4の遅延時間(τi,4>τi,3)に設定されたそれぞれの遅延τi,j=1…4を伴う第1のレーダ測定(j=1、ステップ210)、第2のレーダ測定(j=2、ステップ220)、第3のレーダ測定(j=3、ステップ230)、および第4のレーダ測定(j=4、ステップ240)によって定義される測定群または測定セット(例えば、第1の測定群または測定セットi=1)を実行することを備える。遅延時間τi,j=1…4は、波長の間隔の4分の1を伴うサンプリング位置に相当するように設定される。レーダ測定は、既述の順序で実行されてもよいが、順番から外れて実行されてもよい。いかなる場合も、互いに連続してレーダ測定を実行することは、4つの測定の間のレーダパルスTxについての変化するRTDのリスクを削減するために有利であり得る。
【0076】
第1乃至第4の測定の各々では、受信レーダパルスRxおよび参照パルスRefは、混合積Mixを出力する混合器126に到達する。上述したように、同じ送信レーダパルスTxおよび参照パルスRefについて、混合積Mixは、整合フィルタによって出力された、フィルタリングされたパルスに相当する。整合フィルタの実装は改良された信号-ノイズ性能を提供することができるが、それは、原則として、レーダパルスTxに整合していない参照パルスRef、例えば異なる包絡線を有するが整合する搬送/中心周波数を有する参照パルスRefおよびレーダパルスTxを用いて、代表測定値を取得することも可能にする。
【0077】
混合積/フィルダリングされたパルスは積分器128によって積分され、積分器128は、積分混合積Intを出力する。
【0078】
積分混合積Intは、信号処理部140によって受信され、ADC142によって対応するデジタルサンプルxi,j=1…4に変換され、DSP144に出力される。
【0079】
サンプルxi,j=1…4の各1つを受信することに応答して、DSP144は、第1の値I=xi,1-xi,3と、第2の値Q=xi,2-xi,4とを算出する。換言すると、信号処理部140(ステップ250)は、第1および第3のレーダ測定(j=1,3)の積分混合積Intの間の差と、第2および第4のレーダ測定(j=2,4)の積分混合積Intの間の差とを表す第1の値Iと第2の値Qとを決定する。第1および第2の値I,Qは、第1乃至第4のレーダ測定の受信レーダパルスRxについての同相成分および直交成分の推定値をそれぞれ形成する。
【0080】
この方式の理解を容易にするため、図4への参照が行われ、図4は、レーダ測定群iにおいて取得される4つの(相互相関)サンプルxi,j=1…4を概略的に示す。取得空間(遅延時間τi,j=1…4によって定義される)におけるサンプリング位置の波長の間隔の4分の1を図示するため、サンプルは、搬送周波数fを有する受信レーダパルスRxの一部分を表す正弦波波形の上部に示されている。受信レーダパルスの一部分は、一定の振幅の包絡線および一定の位相の搬送体とともに示され、レーダパルスの単一周期/波長についての合理的な近似であることが期待される。レーダ測定群iのサンプリング位置は、(空間的な)対応するクラスタとして考慮され、(サンプリング位置、あるいは等価なものとして、群の遅延時間の平均によって与えられる)クラスタ中心の周りに分散されてもよい。信号処理部140/DSP144は、群/クラスタiの4つのサンプルxi,j=1…4を、クラスタiの同相(in-phase)成分Iと、直交(quadrature)成分Qとを表す複素数z、すなわち、
【数1】
に変換する。信号処理部140/DSP144は、各クラスタiについての1つのI/Qペアを適宜決定してもよい。
【0081】
本実施形態に係る減算は、信号処理部140によってデジタル領域において実行されるが、他の実施形態では、(例えば、積分混合積をアナログ減算器に供給することによって)アナログ領域における減算を実行して、アナログの差分信号のペアを取得することも可能であり、アナログの差分信号のペアは、その後ADCによってデジタル対照物IおよびQに変換されてもよい。
【0082】
上記から理解され得るように、相互相関または受信パルスは、単一の測定においてサンプリングされるのではなく、むしろ、時間希釈様式において、すなわち複数の測定にわたって分散された、より詳しくは4つの測定にわたって分散された様式においてサンプリングされる。直接サンプリング法は、受信パルスの複数の搬送周波数におけるサンプリングレートを要求し、短い波長(例えば、ミリ波帯)については、例えばADCに対して必要とする帯域幅要求のため、可能ではないか、少なくとも現実的ではない可能性がある。これは、低電力用途において特有の困難となり得る。一方、時間希釈測定法によれば、相互相関のサンプルが取得されるレートは、レーダパルスの搬送周波数によって影響されない。ある意味では、時間希釈測定法におけるサンプリングレートは、(変化すらしうる)測定を実行するレートに対応する。実際、時間希釈測定法における測定レートは、おおよそレーダ送信部110のパルス繰り返し周波数(PRF)に相当し得る。
【0083】
一方で、サンプリングされた相互相関のタイミング解像度は、測定間の遅延時間τのステップサイズに依存する。したがって、レーダパルスの全幅にわたるサンプルに基づくI/Q変調は、相当数の測定を要求し得る。増加した全体の測定時間を示唆することに加えて、これは、保存および処理するべき相当の量のデータを意味する。より短い波長について、これは、増加する問題になり得る。しかし、本明細書で開示される方法およびレーダ装置は、2つの単純な減算を伴う波長の間隔の4分の1を有する4つのレーダ測定を組み合わせることによって、これらの困難が乗り越えられることを可能にする。
【0084】
上記の説明では、レーダパルスTxについての測定条件、具体的にはRTDは、測定群iを形成する4つの測定j=1…4の間で変化しないことが仮定されている。レーダ装置100がレーダパルスTxを同じパルスとして生成および送信できるように、第1乃至第4の測定j=1…4の受信レーダパルスRxも、同じであり得る(すなわち、同一の波形およびマグニチュードを有し得る)。これは、測定条件のダイナミクス(例えば、レーダ装置100に対するレーダ目標10の速度)と比較して短い時間間隔の間に4つの測定を実行することによって確保され得る。
【0085】
ただし、方法200は、その後のレーダ測定群の間で測定条件が変化することを排除しない。再び図2を参照すると、4つのレーダ測定210,220,230,240を備えるさらなるレーダ測定群i+1が、前の測定セットにおけるように同一の遅延時間設定のセット(j=1…4について、τi+1,j=τi,j)、または更新された測定時間設定のセット(j=1…4について、τi+1,j=τi,j+Δi+1)のいずれかで実行されてもよく、ここで、Δi+1は、(クラスタ中心iおよびi+1の間の空間/間隔における距離に対応する)所定のまたは設定可能な遅延時間オフセットである。
【0086】
同一の遅延時間設定のセットで2つ以上のレーダ測定群を実行することは、変化したレーダ応答を検出することを可能にする。DSP144は、その後の測定群から取得されるIの推定値および/またはQの推定値を比較してもよい(ステップ260)。DSP144は、高速フーリエ変換(FFT)をN個の測定群(例えば、16個~512個)に適用して、レーダ目標10からのドップラー応答を推定してもよい。これは、例えば速度推定および身振り検知の場合に用いられ得る。
【0087】
異なる遅延時間設定のセットで2つ以上のレーダ測定群を実行することは、2つ以上の測定距離におけるレーダ応答を取得することを可能にする。上記にある「クラスタ用語(cluster-terminology)」において、これは、測定距離範囲(またはより短い測定範囲)の全体にわたって分散されたそれぞれのクラスタ中心における(すなわち、レーダ装置100からの異なる距離に位置する)複数のレーダ測定群を実行するものとして言及され得る。理解され得るように、複数のレーダ測定群などは、測定距離範囲の全体にわたる「掃引」と呼ばれ得る。クラスタ中心は、等距離に分散され(すべての測定iについて等しいΔi+1の設定を示唆する)、または非一様に分散されてもよい(例えば、Δi+1がその後の測定の間で変化し得る)。掃引の群/クラスタ中心の間隔(すなわち、群内(intra-group)間隔)は、諸群内のサンプリング位置の間隔(すなわち、群間(inter-group)間隔)を超えてもよい。群間間隔は、上述したようにレーダパルスTxの波長の4分の1である。一方で、群内間隔は、レーダパルスTxの波長の4分の1を超えてもよい。例えば、群内間隔は、10-100個のレーダパルスTxの波長/周期に対応してもよい。
【0088】
図5は、静止したレーダ目標に向けたいくつかの連続した複数のレーダ測定群(すなわち、「掃引」)から(例えば、6個の掃引から)取得された、例示的な振幅(上図)および位相(下図)を示す。異なるドットの影は、それぞれの掃引を示す。各掃引におけるレーダ目標との距離は、測定距離(例えば、本例では約0.64m)の関数としての振幅のピークの位置として特定されてもよい。掃引間の目標距離における小さい不一致は、ランダムな誤差に帰し得る。掃引の結果は、信号-ノイズ比(SNR)を向上させるため、複素数平面で平均されてもよい。
【0089】
図6は、連続した掃引の間に移動するレーダ目標についての同様の例を示す。掃引は、おおよそ同一の振幅を伴うピークをもたらす(上図)が、位相が変化している(下図)。I,Qデータのスライス(図6の上のグラフにおいて示された縦方向の波線)に沿った位相を比較することによって、位相が掃引間で約210度変化したことが決定され得る。360度の全位相回転が(搬送周波数における)レーダパルスTxの波長の半分を意味すると仮定すると、レーダ目標の速度は、(既知のパラメータである)掃引間の時間を加味することによって推定され得る。
【0090】
さらなる測定手法によれば、第1の広い距離範囲にわたる第1の掃引は、第2の狭い距離範囲にわたる第2の掃引と組み合わされてもよい。狭い距離範囲は、より広い距離範囲の副範囲であってもよい。第1の掃引をより大きな群間隔(群内間隔)に構成し、第2の掃引をより小さな群間隔に構成することによって、第1の粗いスキャンは、より広い距離範囲で実行され得、より狭い距離範囲における第2のより細かいスキャンによって追従され得る。これは、(例えば、レーダ装置からの遠い距離における障害物を素早く検知するために)より広い距離範囲の粗いスキャンと、(例えば、レーダ装置に近接するレーダ目標の距離および/または速度のより精確な推定を可能にするために)狭い距離範囲のより細かいスキャンとを交互に実行するために用いられ得る。
【0091】
第2の測定群/掃引は、第1の測定群/掃引に応答して構成されてもよい。レーダ目標との第1の距離は、第1の掃引の各クラスタ/群について決定された第1および第2の値I,Qに基づいて推定されてもよい。第2の掃引の遅延時間τi,j=1…4は、その後、第2の掃引によってカバーされる距離範囲が推定された第1の距離を含むように、構成され/決定されてもよい。第1の距離は、例えば各クラスタについての第1および第2の値I,Qの絶対値のピークの位置(例えば図5を参照)を見つけることによって推定されてもよい。次いで、第2の掃引が実行されてもよく、レーダ目標との第2の距離は、第2の掃引の各クラスタ/群について決定されたI,Qに基づき推定されてもよい。
【0092】
上記において、本発明概念は、主に限られた数の例を参照しながら説明された。しかし、当業者に容易に理解されるように、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明概念の範囲内で、上記で開示されたものを超えた他の例が等しく可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ測定を実行する方法であって、
前記方法は、第1、第2、第3および第4のレーダ測定を実行することを備えており、
各レーダ測定は、
それぞれのレーダパルスを生成することと、
前記それぞれのレーダパルスをレーダ目標に向けて送信することと、
それぞれの参照パルスを生成することと、
前記レーダ目標からの前記それぞれのレーダパルスの反射を備える信号を、それぞれの受信信号として受信することと、
前記それぞれの受信信号を前記それぞれの参照パルスと混合して、それぞれの混合積を取得することと、
前記それぞれの混合積を積分して、DC信号であるそれぞれの積分混合積を取得することと、
を備えており、
前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定において、前記それぞれの参照パルスを生成することは、前記それぞれのレーダパルスを生成することに対して、第1、第2、第3および第4の遅延時間だけそれぞれ遅延されており、前記第2および第1の遅延時間の間、前記第3および第2の遅延時間の間、ならびに前記第4および第3の遅延時間の間の差の各々は、前記レーダパルスの波長の4分の1に相当しており、
前記方法は、前記第1および第3のレーダ測定の前記それぞれの積分混合積の間の差を表す第1の値と、前記第2および第4のレーダ測定の前記それぞれの積分混合積の間の差を表す第2の値とを決定することをさらに備えており、前記第1の値は同相成分Iの推定値であり、前記第2の値は直交成分Qの推定値である、方法。
【請求項2】
前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定の各々は、前記それぞれの積分混合積をデジタル値に変換することをさらに備えており、第1、第2、第3および第4のデジタル値が取得され、前記第1の値を決定することは前記第1および第3のデジタル値の間の差を算出することを備え、前記第2の値を決定することは前記第2および第4のデジタル値の間の差を算出することを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーダ測定の前記それぞれのレーダパルスは同一の波形およびマグニチュードを有し、前記それぞれの参照パルスは同一の波形およびマグニチュードを有する、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記それぞれの受信信号を前記それぞれの参照パルスと混合することは、整合フィルタを用いて前記受信信号をフィルタリングすることを備えており、前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定において、前記整合フィルタのそれぞれの遅延は、前記第1、第2、第3および第4の遅延時間に設定されている、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記レーダパルスおよび参照パルスは、ミリ波帯(mmWave band)の搬送周波数を有する、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記レーダパルスおよび参照パルスは、超広帯域(ultra-wideband)パルスである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定は、連続するレーダ測定の群を形成する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定は、第1の測定群を形成し、
前記方法は、
前記レーダパルスおよび前記参照パルスを生成する間に、第1、第2、第3および第4の遅延時間をそれぞれ伴う第1、第2、第3および第4のレーダ測定を備える第2の測定群を実行し、前記第2および第1の遅延時間の間、前記第3および第2の遅延時間の間、ならびに前記第4および第3の遅延時間の間の差の各々は、前記レーダパルスの波長の4分の1に相当することと、
前記第2の測定群の前記第1および第3のレーダ測定の前記積分混合積の間の差を表す第1の値と、前記第2の測定群の前記第2および第4のレーダ測定の前記積分混合積の間の差を表す第2の値とを決定し、前記第1の値は同相成分Iの推定値であり、前記第2の値は直交成分Qの推定値であることと、
をさらに備える、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2のレーダ測定群の前記それぞれの第1、第2、第3および第4の遅延時間は等しく、前記方法は、前記第1および第2の測定群に基づいて前記第1の値および/または前記第2の値を比較することをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のレーダ測定群の前記第1、第2、第3および第4の遅延時間は、前記第1のレーダ測定群の前記第1、第2、第3および第4の遅延時間と異なる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1および第2の測定群の間の測定距離に関する間隔は、前記レーダパルスの波長の4分の1を超える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1の複数の測定群を実行することと、その後、第2の複数の測定群を実行することとを備えており、
各第1および第2の測定群は、前記レーダパルスおよび前記参照パルスを生成する間に、第1、第2、第3および第4の遅延時間をそれぞれ伴う第1、第2、第3および第4のレーダ測定を実行することを備え、前記第2および第1の遅延時間の間、前記第3および第2の遅延時間の間、ならびに前記第4および第3の遅延時間の間の差の各々は、前記レーダパルスの波長の4分の1に相当しており、
前記方法は、各第1および第2の測定群について、前記測定群の前記第1および第3のレーダ測定の積分混合積の間の差を表す第1の値と、前記測定群の前記第2および第4のレーダ測定の積分混合積の間の差を表す第2の値とを決定することをさらに備えており、各測定群について決定された前記第1の値および前記第2の値は、それぞれ、前記群についての同相成分Iの推定値および直交成分Qの推定値であり、
前記第1の複数の測定群は第1の範囲の測定距離にわたっており、前記第2の複数の測定群は第2の範囲の測定距離にわたり、前記第1の範囲の副範囲を形成し、
連続する第1の測定群の間の測定距離に関する間隔は、連続する第2の測定群の間の測定距離に関する間隔を超える、請求項に記載の方法。
【請求項13】
各第1の測定群について決定された前記第1および第2の値に基づいて前記レーダ目標との第1の距離を推定することと、
その後、前記第1の距離が前記第2の距離の範囲内にあるように、各第2の測定群について前記第1、第2、第3および第4の遅延時間を決定することと、
各第2の測定群について決定された前記第1および第2の値に基づいて前記レーダ目標との第2の距離を推定することと、
をさらに備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
送信部(110)と、受信部(120)と、パルス生成回路(114,124)とを備えるレーダ装置(100)であって、
前記レーダ装置は、第1、第2、第3および第4のレーダ測定を実行するように構成されており、
各レーダ測定は、
前記パルス生成回路(114)によって、それぞれのレーダパルスを生成することと、
前記送信部によって、前記それぞれのレーダパルスをレーダ目標に向けて送信することと、
前記パルス生成回路(124)によって、それぞれの参照パルスを生成することと、
前記受信部によって、前記レーダ目標からの前記それぞれのレーダパルスの反射を備える信号を、それぞれの受信信号として受信することと、前記それぞれの受信信号を前記それぞれの参照パルスと混合して、それぞれの混合積を取得することと、前記混合積を積分して、DC信号であるそれぞれの積分混合積を取得することと、
を備えており、
前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定において、前記パルス生成回路は、前記それぞれのレーダパルスに対して第1、第2、第3および第4の遅延時間にそれぞれ設定された遅延を伴う前記それぞれの参照パルスを生成し、前記第2および第1の遅延時間の間、前記第3および第2の遅延時間の間、ならびに前記第4および第3の遅延時間の間の差の各々は、前記レーダパルスの波長の4分の1に相当しており、
前記レーダ装置は、前記第1および第3のレーダ測定の前記それぞれの積分混合積の間の差を表す第1の値と、前記第2および第4のレーダ測定の前記それぞれの積分混合積の間の差を表す第2の値とを決定するように構成された信号処理部(140)をさらに備えており、前記第1の値は同相成分Iの推定値であり、前記第2の値は直交成分Qの推定値である、レーダ装置。
【請求項15】
アナログ-デジタル変換器(142)をさらに備えており、前記第1、第2、第3および第4のレーダ測定の各々は、前記アナログ-デジタル変換器によって前記それぞれの積分混合積をデジタル値に変換することをさらに備えており、第1、第2、第3および第4のデジタル値が取得され、
前記処理回路は、前記第1および第3のデジタル値の間の差を算出することによって前記第1の値を決定し、前記第2および第4のデジタル値の間の差を算出することによって前記第2の値を決定するように構成されている、請求項14に記載のレーダ装置。
【国際調査報告】