(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】毛の成長を促進するための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/565 20060101AFI20241112BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
A61K31/565
A61P17/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024531585
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2022083612
(87)【国際公開番号】W WO2023094690
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520404207
【氏名又は名称】エステトラ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】ジェラルド,セリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ディオン,ヴァレリー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA09
4C086MA01
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA89
(57)【要約】
本発明は、脱毛の予防及び/又は毛の成長の促進のための組成物、かかる組成物が使用された美容的治療又は療法治療、及びかかる組成物を含む関連する製剤又は投与単位に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱毛の予防又は治療における使用のための、約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する量のエステトロール成分を含む経口投与単位。
【請求項2】
約10 mg~約25 mgのエステトロール成分を含む組成物の経口投与を含む脱毛の予防又は治療方法。
【請求項3】
脱毛の予防又は治療のための組成物又は薬剤の製造における有効量のエステトロール成分の使用であって、前記エステトロール成分が、約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する量で使用される、使用。
【請求項4】
(カテゴリー?)
前記予防又は治療が、毛の質感、質及び/又は外観の改善又は維持をもたらし、好ましくは、前記治療が、標的領域毛数(TAHC)及び/又は標的領域毛幅(TAHW)の改善を含む又はもたらす、請求項1に記載の使用のための経口投与単位、請求項2に記載の方法、又は請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記予防又は治療が、脱毛の予防、脱毛の逆転、脱毛の遅延、脱毛の低減、又は毛の成長の増加を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法又は使用。
【請求項6】
(マルチマルチ)
前記脱毛が、ホルモン関連脱毛、より好ましくはエストロゲン欠乏等の閉経期ホルモン脱制御によって引き起こされる脱毛、好ましくは女性型脱毛又はアンドロゲン性脱毛症(AGA)である、請求項1~5のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法又は使用。
【請求項7】
(マルチマルチ)
前記予防又は治療が、ケラチノサイトの機能及び/又は成長を増加させ、これに関連して、好ましくは、バルジ、外毛根鞘(ORS)又は毛球に属するもの等の表皮ケラチノサイト(KC)の機能及び/又は成長を増加させる、請求項1~6のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法又は使用。
【請求項8】
(マルチマルチ)
前記予防又は治療が、毛包間葉性線維芽細胞の機能及び/又は成長を増加させ、これに関連して、毛乳頭(DP)細胞の機能及び/又は成長を増加させる、請求項1~7のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法又は使用。
【請求項9】
(マルチマルチ)
前記予防又は治療が、退行期の開始の遅延又は退行期の予防を意味する、請求項1~8のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法又は使用。
【請求項10】
(マルチマルチ)
前記予防又は治療が、成長期の促進及び/又は延長を意味する、請求項1~9のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法又は使用。
【請求項11】
(マルチマルチ)
前記予防又は治療が、毛包細胞間の上皮-間葉相互作用の回復及び/又は促進を意味する、請求項1~10のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法又は使用。
【請求項12】
(マルチマルチ)
前記予防又は治療が、毛包における炎症及び/又は酸化ストレスの低減により特徴付けられる、請求項1~11のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法又は使用。
【請求項13】
(マルチマルチ)
約14 mg~約21 mgのエステトロール、好ましくは約14 mg~約16 mg又は約19 mg~約21 mgのエステトロールに相当する1日量が投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項14】
(マルチマルチ)
前記エステトロール成分がエステトロール又はそのエステルであり、好ましくは、前記エステトロール成分はエステトロール一水和物である、請求項1~13のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項15】
(マルチマルチ)
前記投与単位にプロゲストーゲンが含まれていない、又はプロゲストーゲンが使用されていない、又は同時投与されない、請求項1~14のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項16】
(マルチマルチ)
前記経口投与単位中にプロゲストーゲンが存在する、又は、プロゲストーゲンが使用されるか、同時投与されるか、又はエステトロールでの治療後に投与され、好ましくは前記プロゲストーゲンが、プロゲステロン、ドロスピレノン、ノルエチステロン、ノルエチステロン-アセテート(NETA)、ノルエチンドロン、ジドロゲステロン、レボノルゲストレル(LNG)、エトノゲストレル、ノルゲストレル、ノメゲストロール、ノメゲストロール-アセテート(NOMAC)、トリメゲストン、ネストロン、ジドロゲステロン、ゲストデン、デソゲストレル、ノルゲスチメート、酢酸シプロテロン、ジエノゲスト、及びクロルマジノンを含む群から選択され、より好ましくは前記プロゲストーゲンがドロスピレノン、プロゲステロン、又はジドロゲステロンを含む群から選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、方法、又は使用。
【請求項17】
前記プロゲストーゲンが、約1 mg~約4 mg、より好ましくは約0.25 mg~約4 mg、例えば約1 mg~約3 mg、約2.5 mg~3.5 mgのドロスピレノンに相当する量で、前記経口投与単位中に存在する、又は使用される若しくは同時投与される若しくは投与される、又は前記プロゲストーゲンが、約2.5 mg~3.5 mgのドロスピレノンに相当する量で投与される、請求項16に記載の、使用のための経口投与単位又は方法。
【請求項18】
(マルチマルチ)
脱毛の予防又は治療に適した更なる有効成分が前記経口投与単位中に存在する、又は脱毛の予防又は治療に適した更なる有効成分が同時投与される又はエステトロールを用いた治療の前又は後に投与される、請求項1~17のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位、使用又は方法。
【請求項19】
(マルチマルチ)
前記組成物が経口投与単位として製剤化される、好ましくは、前記組成物が経口、舌下、口腔、又は唇投与のために製剤化される、請求項1~18のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位又は方法。
【請求項20】
(マルチマルチ)
前記経口投与単位が1日投与単位に対応するように製剤化される、又はそれぞれ1日投与単位として投与される、請求項1~19のいずれか1項に記載の、使用のための経口投与単位又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱毛の予防及び/又は毛の成長の促進のための組成物、かかる組成物が使用された美容的治療又は療法治療、及びかかる組成物を含む関連する製剤又は投与単位に関する。
【0002】
本明細書中で更に詳細に記載するように、この治療は、脱毛の予防又は毛の成長の促進のための現在利用可能な方法と比較した場合に、副作用に対する有利なプロファイルと両立する統計的に有意な有効性を示す。
【背景技術】
【0003】
加齢とともに毛の成長速度は毛の太さの低減を伴って低下する。白髪は、毛母におけるメラニン産生の減少の結果として現れる。この影響は、ホルモンアンバランスの影響に起因して閉経期女性(すなわち閉経周辺期及び閉経後の女性)において悪化し、多くの場合否定的な自己イメージにつながる。ホルモンバランスの変化は、皮膚の組成及び毛包の機能に影響をおよぼす可能性がある。また、皮脂腺の分泌物(皮脂)は、毛及び皮膚のための軟化剤を提供し、アンドロゲンホルモンの影響下にある。皮脂分泌は加齢とともに低下し、エストロゲンレベルによっても影響される可能性がある。
【0004】
毛包周期は、毛包の成長期間(成長期)、その後の退行及び再構築の期間(退行期)、最後に休止の期間(休止期)によって特徴付けられる。
【0005】
エストロゲンレベルは、毛の成長及び脱毛の双方に関連してきた。例えば、妊娠中、女性のエストロゲンレベルは通常より高くなり、これが毛包成長を増加させ、豊かでふさふさした髪につながる。対して、妊娠後又は閉経期の間及び後等にエストロゲンレベルが低下すると、より多くの毛包が「休止」期間に入り、これが脱毛につながり、毛のボリューム低下、部分的な禿げにさえつながる。
【0006】
エストラジオール(E2)又はエステトロール(E4)等のエストロゲンを含む組成物の皮膚への局所適用が広くに研究されてきた。例えば、エステトロールを含む美容的組成物の局所適用について報告する特許文献1が参照される。その中で、エストロゲンの皮膚への適用のいくつかの効果として、毛の成長速度の遅延(これは閉経期女性における顔の毛の成長等を避けるために有益なものであると見なされた)が含まれることが示唆された。
【0007】
文献では、例えばHye-Sun Oh及びRobert C. Smart(非特許文献1)等において報告されているようにエストロゲンの局所適用は好ましいものと見なされており、該文献では、概して、毛包周期を調節する局所的因子と全身的因子との作用を分類するのが困難であったとされている。要するに、結果は、局所的に適用されたE2及びICI-182780(純粋なエストロゲン受容体アンタゴニスト)の毛の成長調節効果は、全身的というより、局所的に発生していることを示している。
【0008】
エストロゲンを含むホルモン補充療法の経口(全身)投与は、通常、例えば脱毛/毛の成長に対する美容的用途としては最良の選択肢とは見なされないが、これにより毎日皮膚/頭皮にクリーム等を塗布する(これは一定の対象には煩わしい及び/又は不快な体験となる)必要がなくなるため、興味深い経路である。別の長所は、一定の用量でのエストロゲンの全身使用によって、閉経期に関連する症状が同時に緩和できることである。しかし、この投与形態に関する1つの長年の懸念事項は、対象におけるかかる全身投与又はエストロゲンの蓄積に関連する副作用を避ける必要があることである。例えば、特許文献1には、皮膚の治療にはエストロゲンの局所適用が好ましいことが記載されている。反対に、この文献には、閉経期の症状は経口又は皮下投与によって別途治療されるべきであると記載されている。また、提案された投与量は、低エストロゲン症の症状を抑制するには低すぎるものであった。
【0009】
しかしながら、現在のエストロゲン関連療法に関連するもの等の有害作用のリスクを増加させることなく、これらの特定された問題のうちのいくつかを克服する新たな組成物又は製剤を開発する必要が以前としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】PCT出願国際公開第03/103685号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】PNAS, Vol. 93, pp. 12525-12530, October 1996
【発明の概要】
【0012】
常に自己再生を行い、繰り返し周期を経る毛包(HF)の能力は、その間葉区分と上皮区分との間で生じる相互作用、所謂上皮-間葉相互作用(EMI)に依存している。そのため、HF再生/刺激の促進を目標とする有効な戦略は、関連する細胞集団の組み合わせだけでなくその機能/シグナル伝達及び/又は遊走をも標的とした場合に最もうまくいくであろう。HF間葉には主に特化した毛乳頭(DP)細胞があるが、上皮部分は通常、バルジ、外毛根鞘(ORS)又は毛球自体を含む様々な毛包源に存在し得るケラチノサイト(KC)を含む。かかる上皮細胞は幹様特徴を有する表皮KCに由来することができ、これは、毛包自体に属するか又は皮膚中に存在し、HF上皮を形成でき、DP細胞とEMIを形成し、DP細胞の成長をサポートし、HF及び皮脂腺様構造の形成を促進する(Abreu et al., 2021, Stem Cell Research & Therapy volume 12, Article number: 62)。
【0013】
出産後の生活において、毛包は休止期間(休止期)、成長期間(成長期)及び退行期間(退行期)を含む周期的な成長を経る。退行期中、毛包の底部にある上皮(ケラチノサイト)細胞はアポトーシスを経るが、DP細胞(線維芽細胞)は無傷のまま残り、毛包バルジの幹細胞に隣接して休止するに至るまで、上方へ引っ張られるか又は遊走する。この状態は休止期(休止)期間で継続する。成長期では、毛包の底部にある細胞が増殖を開始し、これが毛包の下方成長及びDPの包囲をもたらす。DP細胞自体は(実際上)分裂しないと考えられているが、おそらく真皮鞘の隣接する細胞(間葉細胞-線維芽細胞)からの補充により、DP内の細胞数は成長期において増加する。成長期(成長)開始時に、DPは二次毛芽の幹細胞を活性化し、これが毛包の新たな下方成長につながる。退行期(退行)中、毛包は血液供給から分離され、毛包細胞はアポトーシスを経る。
【0014】
この背景に対し、本発明者らは、ここで驚くべきことに、特定の投与範囲でのエステトロールの経口投与が、閉経期ホルモンアンバランスに関連する又は起因する脱毛の予防又は回復、及び閉経期(閉経周辺期又は閉経後)女性における毛の成長増加に有利である可能性があることを見出した。これは、毛の質感、毛の質及び毛の外観の改善につながる。より詳細には、これは、標的領域毛数(「TAHC」)及び標的領域毛幅(「TAHW」)等(但しこれらに限定されない)の特定のパラメーターの改善につながる。
【0015】
予期しないことに、臨床的に意義のある濃度のE4が経口投与後に皮膚に到達することが示された。さらに、E4は、E2とは異なり、例えばバルジ、外毛根鞘(ORS)又は毛球細胞を含む表皮ケラチノサイトと、例えば毛乳頭(DP)細胞等の真皮線維芽細胞と、皮脂腺との全てに作用することができる。エステトロールは、線維芽細胞及びケラチノサイトの増殖、遊走及び上皮-間葉相互作用への影響から、毛包の活性化及び皮脂分泌の増加にわたる、脱毛の予防又は低減に有利ないくつかの効果を有することが示されている。さらに、エステトロールには皮膚の炎症を低減させるといった影響があり、これが毛包の健康につながることが示された。これにより、脱毛の予防又は低減のために使用できる経口製剤又は投与単位を提供する機会が開かれる。
【0016】
いかなる理論にも拘束されることを望まないが、エステトロールは(例えばエストラジオールとは異なり)ケラチノサイトに作用することによって、成長期及びしたがって毛包の成長を促進及び/又は延長することができ、及び/又はケラチノサイトの増殖を増加させ及び/又はそのアポトーシスを低減させることにより退行期の開始を遅延させることができ、これにより脱毛を低減させると考えられる。さらに、線維芽細胞(すなわちDP細胞を含む)にも作用することにより、上皮-間葉相互作用がエステトロールによって改善され、これがDP細胞及び毛の成長の活性化につながると考えられる。
【0017】
以下の番号が付けられた段落に、本発明のいくつかの特定の実施形態を記載する。
【0018】
態様1.脱毛の予防又は治療における使用のための、約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する量での、好ましくは約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する1日量でのエステトロール成分を含む経口投与単位。
【0019】
態様2.脱毛の予防又は治療のための組成物又は薬剤の製造における、有効量のエステトロール成分の使用であって、エステトロール成分が、約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する1日量で使用される、使用。
【0020】
態様3.約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する1日量でのエステトロール成分の経口投与(又は経口摂取)を含む、脱毛の予防又は治療方法。
【0021】
態様4.約10 mg~約25 mgのエステトロールに相当する1日量でのエステトロール成分の経口投与(又は経口摂取)を含む、好ましくは約10 mg~約25 mgのエステトロール成分を含む組成物の経口投与を含む、脱毛の予防又は治療の美容的方法。
【0022】
態様5.上記予防又は治療が、毛の質感、質及び外観の改善を含む又はもたらし、好ましくは上記予防又は治療が、標的領域毛数(TAHC)及び/又は標的領域毛幅(TAHW)の改善を含む又はもたらす、態様1に記載の使用のための経口投与単位、態様2に記載の使用、態様3に記載の予防又は治療方法、又は態様4に記載の方法。
【0023】
態様6.上記脱毛が、ホルモン関連脱毛、より好ましくはエストロゲン欠乏等の閉経期ホルモン脱制御によって引き起こされる脱毛である、態様1~5のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用又は方法。
【0024】
態様7.脱毛が閉経後の女性における毛の障害によって引き起こされる、態様1~6のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用又は方法。
【0025】
態様8.上記脱毛が女性型脱毛又は女性型アンドロゲン性脱毛症(AGA)(すなわち女性型脱毛)である、態様1~7のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用又は方法。
【0026】
態様9.上記予防又は治療が、脱毛の予防、脱毛の逆転、脱毛の速度低下、脱毛の低減、毛の成長増加を含む、又は毛の質感、質及び/又は外観の改善につながる、態様1~8のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用又は方法。
【0027】
態様10.上記予防又は治療が、ケラチノサイトの機能及び/又は成長を増加させ、これに関連して、好ましくは、バルジ、外毛根鞘(ORS)又は毛球に属するもの等の表皮ケラチノサイト(KC)の機能及び/又は成長を増加させる、態様1~9のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用又は方法。
【0028】
態様11.上記予防又は治療が、毛包間葉線維芽細胞の機能及び/又は成長を増加させ、これに関連して、毛乳頭(DP)細胞(すなわち分化した毛の誘導に特化した線維芽細胞の形態)の機能及び/又は成長を増加させる、態様1~10のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用又は方法。
【0029】
態様12.上記予防又は治療が、退行期の開始の遅延又は退行期の予防を意味する、態様1~11のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用又は方法。
【0030】
態様13.上記予防又は治療が、成長期の促進及び/又は延長を意味する、態様1~12のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用又は方法。
【0031】
態様14.上記予防又は治療が、毛包細胞間の上皮-間葉相互作用の回復及び/又は促進を意味する、態様1~13のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用又は方法。
【0032】
態様15.上記予防又は治療が、毛包における炎症及び/又は酸化ストレスの低減により特徴付けられる、態様1~14のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用又は方法。
【0033】
態様16.約14 mg~約21 mgのエステトロール、好ましくは約14 mg~約16 mg又は約19 mg~約21 mgのエステトロールに相当する1日量が投与される、態様1~15のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0034】
態様17.上記エステトロール成分がエステトロール又はそのエステルである、態様1~16のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0035】
態様18.上記エステトロール成分がエステトロール一水和物である、態様1~17のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0036】
態様19.上記投与単位にプロゲストーゲンが含まれていない、又はプロゲストーゲンが使用されていない、又は同時投与されない、態様1~18のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0037】
態様20.プロゲストーゲンが経口投与単位中に存在する、又はプロゲストーゲンが使用される、同時投与される又はエステトロールでの治療後に投与される、態様1~19のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。
【0038】
態様21.上記プロゲストーゲンが、プロゲステロン、ドロスピレノン、ノルエチステロン、ノルエチステロン-アセテート(NETA)、ノルエチンドロン、ジドロゲステロン、レボノルゲストレル(LNG)、エトノゲストレル、ノルゲストレル、ノメゲストロール、ノメゲストロール-アセテート(NOMAC)、トリメゲストン、ネストロン、ジドロゲステロン、ゲストデン、デソゲストレル、ノルゲスチメート、酢酸シプロテロン、ジエノゲスト、及びクロルマジノンを含む群から選択される、態様20に記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。好ましい実施形態において、上記プロゲストーゲンは、ドロスピレノン、プロゲステロン、又はジドロゲステロンを含む群から選択される。
【0039】
態様22.上記プロゲストーゲンが約0.25 mg~約4 mg、例えば約1 mg~約4 mg、より好ましくは約1 mg~約3 mg、約2.5 mg~3.5 mgのドロスピレノンに相当する量で上記経口投与単位中に存在する、又は上記プロゲストーゲンが約2.5 mg~3.5 mgのドロスピレノンに相当する量で投与される、態様20又は21に記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。好ましい実施形態において、上記プロゲストーゲンはドロスピレノンである。
【0040】
態様23.上記プロゲストーゲンが約1 mg~20 mgのプロゲステロンに相当する量で上記経口投与単位中に存在する、又は上記プロゲストーゲンが約5 mg~10 mgのプロゲステロンに相当する量で投与される、態様20又は21に記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。好ましい実施形態において、上記プロゲストーゲンはプロゲステロンである。
【0041】
態様24.上記プロゲストーゲンが約25 mg~300 mgのジドロゲステロンに相当する量で上記経口投与単位中に存在する、又は上記プロゲストーゲンが約100 mg~200 mgのジドロゲステロンに相当する量で投与される、態様20又は21に記載の、使用のための経口投与単位、使用、又は方法。好ましい実施形態において、上記プロゲストーゲンはジドロゲステロンである。
【0042】
態様25.脱毛の予防又は治療に適した更なる有効成分が経口投与単位中に存在する、又は脱毛の予防又は治療に適した更なる有効成分が同時投与される又はエステトロールを用いた治療の前又は後に投与される、態様1~24のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位、使用又は方法。
【0043】
態様26.組成物が、経口、舌下、口腔、又は唇投与のために製剤化される、態様1~25のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位又は方法。
【0044】
態様27.経口投与単位が1日投与単位に対応するように製剤化される、又はそれぞれ1日投与単位として投与される、態様1~26のいずれか1つに記載の、使用のための経口投与単位又は方法。
【0045】
態様28.本明細書中に定義したいずれか1つの態様では、上記投与形態を、エステトロール成分を含む1日経口投与単位を含有する包装ユニット(例えば、ブリスターパック)を含むパーツキット(kit-of-parts)として提示することができる。当業者はさらに、本発明の範囲内において、各包装ユニット(例えばブリスターパック)が番号付け可能であり、又は他の方法でマーキング可能であることを知っている。本発明の範囲内において、各包装ユニットは、カードボード、紙板、箔プラスチックの裏打ちを備えて、適切なカバーに収められた密封ブリスターパックとすることができる。
【0046】
ボトル等の包装ユニットも想定される。ボトルの材料は特に限定されない。好ましい実施形態において、ボトルは、例えば紫外線によるボトルの内容物の劣化を低下又は防止することができる一方で、該ボトルの内容物の目視検査が可能な程度の透明性を維持できる色によって特徴付けられるガラスのボトルである。適切な色は、琥珀色、コバルト色、又はヴィンテージグリーンである(これらに限定されない)。
【0047】
態様29.態様28に記載のパーツキットの特定の実施形態において、包装ユニットは28個の容器、又は28の倍数個の容器(例えば28の2倍~12倍の個数の容器)を含む。
【0048】
上記の番号付けられた態様は、以下の部分及び添付の特許請求の範囲において更に記載されている。添付の特許請求の範囲の主題はこれにより本明細書に詳細に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)存在下で、4つの濃度で適用したエステトロール(E4)と異なる時間接触させた後の正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%+MMCに対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL)+MMC;E4 10
-7 M+MMC;E4 10
-8 M+MMC;E4 10
-9 M+MMC;E4 10
-10 M+MMC。
【
図2】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)非存在下で、4つの濃度で適用したエステトロール(E4)と異なる時間接触させた後の正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%に対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL);E4 10
-7 M;E4 10
-8 M;E4 10
-9 M;E4 10
-10 M。
【
図3】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)存在下で、4つの濃度で適用したβ-エストラジオール(E2)と異なる時間接触させた後の正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%+MMCに対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL)+MMC;E2 10
-7 M+MMC;E2 10
-8 M+MMC;E2 10
-9 M+MMC;E2 10
-10 M+MMC。
【
図4】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)非存在下で、4つの濃度で適用したβ-エストラジオール(E2)と異なる時間接触させた後の正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%に対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL);E2 10
-7 M;E2 10
-8 M;E2 10
-9 M;E2 10
-10 M。
【
図5】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)存在下で、4つの濃度で適用したエステトロール(E4)と異なる時間接触させた後の正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%+MMCに対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL)+MMC;E4 10
-7 M+MMC;E4 10
-8 M+MMC;E4 10
-9 M+MMC;E4 10
-10 M+MMC。
【
図6】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)非存在下で、4つの濃度で適用したエステトロール(E4)と異なる時間接触させた後の正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%に対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL);E4 10
-7 M;E4 10
-8 M;E4 10
-9 M;E4 10
-10 M。
【
図7】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)存在下で、4つの濃度で適用したβ-エストラジオール(E2)と異なる時間接触させた後の正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%+MMCに対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL)+MMC;E2 10
-7 M+MMC;E2 10
-8 M+MMC;E2 10
-9 M+MMC;E2 10
-10 M+MMC。
【
図8】増殖阻害剤マイトマイシンC(MMC)非存在下で、4つの濃度で適用したβ-エストラジオール(E2)と異なる時間接触させた後の正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)によって被覆されている無細胞領域の百分率を示す図である。結果は0時間の時点に対する無細胞領域被覆の百分率で表される(3つの独立した培養の平均±標準偏差)。スチューデントのt検定を行い、エタノール0.1%に対する治療の効果を比較した。0.01<p<0.05のp値は有意、0.001<p<0.01は高度に有意、p<0.001は非常に高度に有意と見なされる。左側の条件:6時間接触後の無細胞領域被覆。右側の条件:24時間接触後の無細胞領域被覆。各時点について、左から右に:EtOH対照(CTL);E2 10
-7 M;E2 10
-8 M;E2 10
-9 M;E2 10
-10 M。
【
図9】スクラッチアッセイにおける線維芽細胞遊走に対するエストロゲンの影響を示す図である。パイロット実験では、E4がマウス(A)及びヒト(B)の線維芽細胞の両方において、E2と同程度に線維芽細胞の遊走を促進することが示唆される。上側の小図は、ビヒクル、E2(10
-7 M)又はE4(10
-7 M)存在下での創傷閉鎖の代表的な画像を示し、下側の小図は、ビヒクル、E2又はE4存在下での創傷閉鎖の百分率を示す。10
-7 MのE2及び10
-7 MのE4をマウス線維芽細胞(A)において試験し、E2及びE4の両方について5つの用量(10
-10 M(左)から10
-6 M(右)に徐々に増加)をヒト線維芽細胞(B)において試験した。データは異なるドナーから得た3つの独立した培養の平均±SEMとして表される。*:p<0.05。
【
図10】スクラッチアッセイにおけるケラチノサイト遊走に対するエストロゲンの影響を示す図である。15%ヒトケラチノサイト増殖サプリメント(HKGS)を補充した培養条件下において、ケラチノサイトに対するE4(10
-10 M及び10
-7 M)の影響はE2の影響より高いように思われる。X軸:異なる試験条件(全ての濃度はMで表される)。Y軸:創傷閉鎖の百分率。破線:対照条件(左端の条件;10
-7 Mエタノール)について観察された基礎ケラチノサイト遊走レベル。
【
図11】免疫細胞分極化に対するエストロゲンの影響を示す図である。(A)陰性対照(M1ビヒクル)、エストラジオール(M1 E2)又はエステトロール(M1 E4)で治療した活性化ヒト単球における、及び(B)陰性対照(M0ビヒクル)で治療した非活性化マウス骨髄由来単球(BMDM)、又は陰性対照(M1ビヒクル)、エストラジオール(M1 E2)又はエステトロール(M1 E4)で治療した活性化マウスBMDMにおける、サブタイプM1を表す炎症促進マーカーの相対的発現として結果を表す。E4の投与は、単球のサブタイプM1(炎症促進性)からサブタイプM2(治癒)への切り替えをもたらす。
【
図12】実施例6の実験デザインを示す図である。先に文献記載されているように(Edelkamp et al., Molecular Dermatology, 2020及びLangan et al., Exp Dermatol, 2015)、FUEからの顕微解剖したヒト成長期VI HFを、2 mMのL-グルタミン(Gibco)、10 ng/mlのヒドロコルチゾン(Sigma Aldrich)、10 μg/mlのインスリン(Sigma Aldrich)及び1ペニシリン/ストレプトマイシンミックス(Gibco)を添加してWilliams Complete Media(WCM)としたWilliam's E培地(Gibco、Life Technologies)の最少培地において、37℃、5 CO
2で培養した。
【
図13】Ki-67/TUNEL染色を示す図である。gHM:胚芽毛母、pcHM:皮質前毛母。
【
図14】毛周期の段階を示す図である。上二つの画像:成長期段階。中央二つの画像:初期退行期段階。DP:毛乳頭;DPst:毛乳頭茎;CTS:結合組織鞘;gHM:胚芽毛母。下の画像:異栄養性毛包の代表的な画像(Keyence VHX900)。
【
図15】エステトロールは培地へのLDH放出を誘導しない。ドナー2からの6日目まで培養したn=7~8 HF/群からの培地をプールした(1日目、3日目、5日目及び6日目);平均、GraphPad Prism 9、D'Agostino & Pearsonオムニバス正規性検定。ノンパラメトリック分析を適用して(クラスカル・ウォリス検定、Dunnの多重比較検定-ビヒクル固定)、有意差なし。
【
図16-1】エステトロールは毛幹生成に影響しない。n=4の女性ドナーのプールデータ、平均±SEM、GraphPad Prism 9。クラスカル・ウォリス検定p=0.4856;Dunnの多重比較検定(ビヒクル固定)ns;マン・ホイットニー対ビヒクル*p<0.05。Langan et al., Exp Dermatol 2015に公開された基準に従ってマクロ的毛周期段階分類を行った。A=成長期;EC=初期退行期;MC=中期退行期;dys=異栄養性退行期。
【
図17-1】ミクロ的には全てのエステトロール濃度(特に3 μM)でHFはより長く成長期に維持される(A、B)。n=4の女性ドナーのプールデータ、平均±SEM、GraphPad Prism 9。クラスカル・ウォリス検定*p=0.0304;Dunnの多重比較検定(ビヒクル固定)ns;マン・ホイットニー対ビヒクル*p<0.05。(C、D)顕微鏡画像:DP:毛乳頭;HMx:毛母;DC:毛球部毛根(dermal cup)。表示スケールバーは100 μmを示す。
【
図18-1】エステトロール(3 μM)は毛母ケラチノサイトの増殖を増加させるが、アポトーシスには影響しなかった(A、B)。n=4の女性ドナーのプールデータ、平均±SEM、GraphPad Prism 9。(A):one-way ANOVA p=0.2115;Holm-Sidakの多重比較検定ビヒクル固定ns;対応のないスチューデントのt検定対ビヒクル*p<0.05。(B):クラスカル・ウォリス検定p=0.6460;Dunnの多重比較検定(ビヒクル固定)ns;マン・ホイットニー対ビヒクル;ns。(C)顕微鏡画像:Ki-67+細胞をAuber's lineの下の画定領域(胚芽毛母、gHM)でカウントし、TUNEL+細胞をAuber's lineの下の画定領域(gHM)及び上の画定領域(皮質前毛母、pcHM)でカウントした。
【
図19-1】試験した全ての濃度のE4が、 毛乳頭(DP)細胞におけるバーシカンの発現及びアルカリホスファターゼ活性を傾向的に増加させた。n=4の女性ドナーのプールデータ、平均±SEM、GraphPad Prism 9。(A)毛乳頭におけるバーシカンの発現。クラスカル・ウォリス検定p=0.3529;Dunnの多重比較検定(ビヒクル固定)ns;マン・ホイットニー対ビヒクルns。(B)毛乳頭におけるアルカリホスファターゼ活性。クラスカル・ウォリス検定p=0.5508;Dunnの多重比較検定(ビヒクル固定)ns;マン・ホイットニー対ビヒクルns。(C)顕微鏡画像。DP=毛乳頭。表示スケールバーは100 μmを示す。
【
図20】DP線維芽細胞の遊走分析は、試験した全ての濃度のE4がDPにおける細胞密度に顕著に影響しないことを明らかにした。n=4の女性ドナーのプールデータ、平均±SEM、GraphPad Prism 9。クラスカル・ウォリス検定p=0.2081、Dunnの多重比較検定(ビヒクル固定)ns;マン・ホイットニー対ビヒクルns。
【
図21】全てのエステトロール濃度は傾向的に細胞密度を減少させ、300 nM及び3 μMのE4はDP茎における細胞の総数を有意に低減させた。n=4の女性ドナーのプールデータ、平均±SEM、GraphPad Prism 9。(A)毛乳頭茎細胞の密度。one-way ANOVA p=0.5092;Holm-Sidakの多重比較検定ビヒクル固定ns;対応のないスチューデントのt検定対ビヒクルns。(B)毛乳頭茎細胞の総数。one-way ANOVA *p=0.0296;Holm-Sidakの多重比較検定ビヒクル固定*p=0.0177;対応のないスチューデントのt検定対ビヒクル、*p<0.05。
【
図22】エステトロールは誘導毛球部毛根の細胞密度に有意な影響をおよぼさなかった。n=4の女性ドナーのプールデータ、平均±SEM、GraphPad Prism 9。One-way ANOVA p=0.7616;Holm-Sidakの多重比較検定ビヒクル固定ns;対応のないスチューデントのt検定対ビヒクルns。
【
図23】バルジ基底層において、3 μMのE4はK15陽性細胞の百分率を有意に減少させたが、30 μM(有意)及び3 μM及び300 nM(傾向的)のE4はその増殖を増加させた。n=4の女性ドナーのプールデータ、平均±SEM、GraphPad Prism 9。(A)バルジ基底層におけるK15+細胞の百分率。One-way ANOVA p=0.0641;Holm-Sidakの多重比較検定ビヒクル固定#p=0.0288;対応のないスチューデントのt検定対ビヒクル*p<0.05。(B)バルジ基底層におけるKi-67+細胞の百分率。クラスカル・ウォリス検定p=0.1302;Dunnの多重比較検定(ビヒクル固定)ns;マン・ホイットニー対ビヒクル**p<0.01。
【
図24-1】毛球上(suprabulbar)ORSにおいて、エステトロールはK15陽性細胞の百分率に何ら影響をおよぼさなかったが、300 nM(有意)及び3 μM(傾向的)のE4はその増殖を減少させた。n=4の女性ドナーのプールデータ、平均±SEM、GraphPad Prism 9。(A)毛球上基底層におけるK15+細胞の百分率。クラスカル・ウォリス検定p=0.9375;Dunnの多重比較検定(ビヒクル固定)ns;マン・ホイットニー対ビヒクルns。(B)毛球上基底層におけるKi-67+細胞の百分率。クラスカル・ウォリス検定p=0.7462;Dunnの多重比較検定(ビヒクル固定)ns;マン・ホイットニー対ビヒクル*p<0.05。(C)顕微鏡画像。スケールバー=100 μm(ORS:外毛根鞘)。
【
図25】3 μM(有意)並びに300 nM及び30 μM(傾向的)のエステトロールは毛球上ORSにおけるCD34陽性細胞の百分率を増加させた。(A)バルジ基底層におけるCD34+細胞の百分率。n=4の女性ドナーのプールデータ、平均±SEM、GraphPad Prism 9 One-way ANOVA p=0.1011;Holm-Sidakの多重比較検定ビヒクル固定*p=0.0392;対応のないスチューデントのt検定対ビヒクル*p<0.05。(B)顕微鏡画像。スケールバー=100 μm(ORS:外毛根鞘)。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確な指示のない限り、単数及び複数の両方の指示対象を含む。
【0051】
「含む」("comprising", "comprises")、及び「~で構成される(comprised of)」という用語は、本明細書中で使用される場合、「含む」("including", "includes")、又は「含有する」("containing", "contains")と同義であり、これらの用語は、包括的又は非制限的であり、追加の言及されていない構成要員、構成要素、又は方法工程を排除しない。これらの用語は、「~からなる(consisting of)」及び「本質的に~からなる(consisting essentially of)」も包含し、これらは、特許用語論において十分に確立された意味を享受する。
【0052】
端点による数値範囲の言及は、個々の範囲内に属する全ての数値及び端数、並びに言及される端点を含む。これは、数値範囲が「...から...まで」という表現、又は「...と...との間」という表現、又は別の表現のどれにより導入されているかに関わらず、数値範囲に当てはまる。
【0053】
「約(about)」又は「およそ(approximately)」という用語は、本明細書中で使用される場合、パラメーター、量、時間間隔等の測定可能な値にかかる場合、指定される値を基準にしたその値からの変動、例えば、指定される値を基準にしたその値からの±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、なおより好ましくは±0.1%以下の変動等を包含することを意味するが、そのような変動が、開示される本発明を実施するのに適切である場合に限る。当然のことながら、「約」又は「およそ」という修飾語がかかる値は、それ自身も具体的にかつ好ましく、開示されている。
【0054】
一方で、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」という用語、例えば、構成要員の群のうちの1つ以上の構成要員又は少なくとも1つの構成要員等は、それ自体が明らかであり、更なる例示として、この用語は、とりわけ、上記構成要員のうちのいずれか1つに対する言及、又は上記構成要員のうちのいずれか2つ以上、例えば、上記構成要員のうちのいずれか3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、又は7つ以上等、及び上記構成要員全てに至る言及を包含する。別の例では、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」は、1、2、3、4、5、6、7、又はそれ以上を指す場合がある。
【0055】
本明細書中の本発明に対する背景の検討は、本発明の状況を説明するために含まれている。これは、特許請求の範囲のいずれかの優先日の時点で、言及される資料のいずれかが、いずれかの国において公開された、既知であった、又は共通する一般知識であったことを認めるものではない。
【0056】
本開示全体を通じて、様々な刊行物、特許、及び公開特許明細書は、引用元を特定するようにして参照される。本明細書中に引用される全ての文献は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。特に、本明細書中で具体的に言及されるそのような文献の教示又はセクションが、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0057】
特に定義されない限り、本発明の開示において使用される全ての用語は、技術用語及び科学用語も含めて、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するとおりの意味を有する。更なる案内として、本発明の教示がより良く理解されるように、用語の定義を含める。特定の用語が、本発明の特定の態様又は本発明の特定の実施形態に関連して定義される場合、そのような関連性又は意味は、本明細書全体を通じて、すなわち、本発明の他の態様又は実施形態の文脈においても、特に定義されない限り、適用されることを意味する。例えば、生成物に関する実施形態は、方法及び使用の相当する特徴にも適用可能である。
【0058】
以下の各節において、本発明の異なる態様又は実施形態が、より詳細に定義される。そのようにして定義される各態様又は実施形態は、相反する記載が明白にない限り、任意の他の態様(複数の場合もある)又は実施形態(複数の場合もある)と組み合わせることが可能である。特に、好適である又は有利であるとして示される特徴はどれでも、好適である又は有利であるとして示される任意の他の単数又は複数の特徴と組み合わせることが可能である。
【0059】
本明細書全体を通じて「1つの実施形態」、「実施形態」に対する言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じて様々な箇所で見られる「1つの実施形態において」、又は「実施形態において」という語句の登場は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すとは限らない。そのうえさらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、本開示から当業者に明らかであると思われるとおりに、任意の適切な様式で組み合わせることが可能である。そのうえさらに、本明細書中に記載される一部の実施形態が、一部の特徴を含みながらも他の実施形態に含まれる他の特徴を含んでいないとしても、当業者に理解されると思われるとおり、異なる実施形態の特徴の組合せは、本発明の範囲内にあることを意味し、異なる実施形態を形成するものである。例えば、添付の特許請求の範囲において、当業者に理解されると思われるとおり、特許請求される実施形態の代替的な組合せが包含される。
【0060】
本発明の全体的定義及び文脈
本明細書全体を通して使用される「エステトロール成分」という用語は、エステトロール、エステトロールのエステルであって、ヒドロキシル基のうちの少なくとも1つの水素原子が1個~25個の炭素原子の炭化水素カルボン酸、スルホン酸、又はスルファミン酸のアシルラジカルによって置換されているエステトロールのエステル、エステトロール水和物、例えばエステトロール一水和物、及びこれらの組合せからなる群から選択される物質を包含する。本明細書の任意の部分全体を通してエステトロールが言及されている場合、任意のエステトロール含有成分(すなわち化合物)及び/又はエステトロール誘導体(例えばエステトロールエステル)も想定されていることが理解される。より好ましくは、本開示の文脈において、本明細書中に記載された投与単位又は美容的若しくは医療使用及び治療方法に適した特に好ましいエステトロール成分は、エステトロール(エステトロール水和物を含む)である。最も好ましくは、該エステトロール成分はエステトロール一水和物である。
【0061】
本明細書で使用される場合の「エステトロール」という用語は、1,3,5(10)-エストラトリエン-3,15α,16α,17β-テトロール又は15α-ヒドロキシエストリオール、並びにエステトロールの水和物、例えばエステトロール一水和物を指す。「エステトロール」又は略して「E4」は、胎児ヒト肝臓により産生されるエストロゲンステロイド(PubChem CID:27125)である。エステトロールは、15α及び16αの位置が2つの付加的な水酸基で置換された17β-エストラジオールに対応する3-ヒドロキシステロイドとして記載することができる。エステトロールはエストロゲン受容体アゴニストであることが知られている(Coelingh Bennink et al., Estetrol review: profile and potential clinical applications, Climacteric, 2008)。本明細書に記載されるエステトロール成分がエステトロールを示す場合、該エステトロールは内生エステトロールとすることができる。代替で、エステトロールは、化学的に合成されてもよく、(変異体)組換え酵素の使用によって合成されてもよく、又はこれらの任意の組合せにより合成されてもよい。エステトロールは、代替で、当該技術分野では分子式:C
18H
24O
4、又は構造式(I)によっても示されることができる:
【化1】
式(I)
【0062】
好ましい実施形態において、エステトロールは一水和物として存在するか、又は本明細書で使用される。
【0063】
いくつかの実施形態において、エステトロール成分は単独の活性成分とすることができ、又は脱毛の緩和若しくは予防のための当該技術分野で既知の任意の他の美容的若しくは薬学的活性剤と組み合わせることができる。
【0064】
好ましい実施形態において、上記エステトロール成分はプロゲストーゲン成分なしで投与されるが、いくつかの実施形態において、例えば患者が依然として子宮を有している場合、任意選択のプロゲストーゲン成分を、エステトロール成分に加えて投与することができる。
【0065】
「プロゲストーゲン」、「プロゲストーゲン」、「ゲスターゲン」、又は「ゲストーゲン(gestogen)」という用語及びそれらの派生語である「プロゲストーゲン化合物」は、本明細書中及び当該技術分野のどちらで使用される場合でも、対象の体内で、天然の女性ホルモンであるプロゲステロンのものと同様な効果をもたらす任意の分子を指す。プロゲストーゲンは、プロゲステロン受容体のアゴニストであると見なされ、それらの機能は、当該技術分野で徹底的に調査されてきた(特にKuhl, Pharmacology of estrogens and progestogens: influence of different routes of administration, Climacteric, 2005において検討されている)。プロゲスチンは、プロゲストーゲンのサブグループであり、このサブグループは合成プロゲストーゲンを含む。上記用語は、当該技術分野において区別なく使用される場合があるものの、一般的な理解として、プロゲスチンが言及される場合、それは合成プロゲストーゲンを意味する。
【0066】
プロゲスチンの例としては、レボノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエチステロン、ジドロゲステロン、ドロスピレノン、3-β-ヒドロキシデソゲストレル、3-ケトデソゲストレル、17-デアセチルノルゲスチメート、19-ノルプロゲステロン、アセトキシプレグネノロン、アリルエストレノール、アムゲストン、クロルマジノン、シプロテロン、デメゲストン、デソゲストレル、ジエノゲスト、ジヒドロゲステロン、ジメチステロン、エチステロン、エチノジオールジアセテート、フルオロゲストンアセテート、ガストリノン、ゲストデン、ゲストリノン、ヒドロキシメチルプロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロン、リネストレノール、メシロゲストン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メレンゲストロール、ノメゲストロール、ノルエチンドロン、ノルエチノドレル、ノルゲストレル(d-ノルゲストレル及びdl-ノルゲストレルを含む)、ノルゲストリエノン、ノルメチステロン、プロゲステロン、キンゲスタノール、(17α)-17-ヒドロキシ-11-メチレン-19-ノルプレグナ-4,15-ジエン-20-イン-3-オン、チボロン、トリメゲストン、アルゲストン-アセトフェニド、ネストロン、プロメゲストン、17-ヒドロキシプロゲステロンエステル、19-ノル-17ヒドロキシプロゲステロン、17α-エチニルテストステロン、17α-エチニル-19-ノルテストステロン、d-17β-アセトキシ-13β-エチル-17α-エチニルゴン-4-エン-3-オンオキシム、6β,7β;15β,16β-ジメチレン-3-オキソ-17-プレグナ-4,9(11)-ジエン-21,17β-カルボラクトン又はタナプロゲット、及びこれらのプロゲストーゲンをin vivoで遊離させることができるこれらの化合物の前駆体が含まれる。
【0067】
ドロスピレノン(DRSPと略す、PubChem CID:68873)は、プロゲスチンの一例であり、全体に低いオフターゲット活性と組み合わされた、その抗鉱質コルチコイド及び抗アンドロゲン作用により、複合経口避妊薬(COC)においてますます広く使用されるようになっている。一般に、ドロスピレノン含有COCは、第4世代COCと呼ばれる。ドロスピレノンを含む市販のCOCの非限定的な例は、「Yaz(商標)」及び「Yasmin(商標)」として知られている。プロゲストーゲンのみのドロスピレノンの経口避妊薬の一例は、「Slynd(商標)」である(これも市販されている)。さらに、エストラジオール及びドロスピレノン等のエストロゲンを含むHRT組成物として、「Angeliq(商標)」等が入手可能である。ドロスピレノンは、代替で、当該技術分野ではその分子式C
24H
30O
3、又は構造式(II)によって示される場合がある:
【化2】
式(II)
【0068】
当然のことながら、「ドロスピレノン」という用語が本明細書中で使用される場合、任意のドロスピレノン誘導体も企図される。
【0069】
限定ではなく例示として、COCに使用されてきた他のプロゲストーゲン又はプロゲスチンとして、ノルエチステロン、ノルエチンドロン、レボノルゲストレル(LNG)、ノルゲストレル、ゲストデン、デソゲストレル、ノルゲスチメート、酢酸シプロテロン、ジエノゲスト、及びクロルマジノンが挙げられる。
【0070】
本発明の文脈において、子宮を有する女性に投与するためのエステトロール成分と組み合わせて他の化合物を使用することができる。選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)は、本発明の方法におけるエステトロール成分に有用な補完物として期待されるかかる化合物のカテゴリを規定する。本発明の文脈における使用のための好ましいSERMは、バゼドキシフェンである。
【0071】
本明細書に更に記載される方法及び組成物において、「プロゲストーゲン成分」について参照される場合、かかる参照にはSERM、特にバゼドキシフェンが含まれることが理解されるべきである。
【0072】
「有効量」という用語は、生理学的効果を得るために必要な量を指す。この生理学的効果は、1回の投与によって又は反復投与によって達成され得る。
【0073】
好ましい対象は、ヒト女性対象である。
【0074】
或る特定の実施形態において、対象は、閉経期、閉経周辺期、及び/又は閉経後の女性の対象である。或る特定の実施形態において、対象は、エストラジオールレベルが100 pg/ml未満、好ましくは50 pg/ml未満、好ましくは30 pg/ml未満、より好ましくは20 pg/ml未満、より好ましくは20 pg/ml未満、最も好ましくは10 pg/ml未満の、閉経期、閉経周辺期、又は閉経後の対象である。代替的な実施形態において、対象は、濾胞刺激ホルモン濃度が少なくとも20ミリ国際単位/ミリリットル(mIU/ml)、好ましくは少なくとも25 mIU/ml、より好ましくは少なくとも30 mIU/ml、より好ましくは少なくとも35 mIU/ml、最も好ましくは少なくとも40 mIU/mlであることによって特徴付けられる、閉経期、閉経周辺期、又は閉経後の対象である。
【0075】
「閉経期の対象」とは、当該技術分野で「閉経後の対象」又は「更年期の対象」と区別なく用いられるが、卵巣によるホルモン(例えばエストラジオール)産生の低下又は停止を伴って1年間月経出血がなかった女性の対象を指す。別の言い方をすれば、「閉経」は、卵巣の主要な機能の障害又は停止によって特徴付けられる生物学的状態と説明することができる。閉経には、血管機能障害、膣の乾燥、情緒の変化、睡眠障害、尿失禁、認知機能変化、身体的不調の訴え、及び性機能障害等(但しこれらに限定されない)、重症度が変化する広範な臨床症状が伴う場合がある。閉経の診断法は当該技術分野で文献記載されており、したがって当業者には知られている(Nelson, Menopause, Lancet, 2008)。
【0076】
「閉経周辺期」とは、閉経の約3年~4年前に始まり最終月経期の1年後に終了する人生の期間を指し、不規則な月経サイクルの持続、ホルモンレベルの極端な変動、頻繁な無排卵、及び血管運動症状の出現によって特徴付けられる(Harlow et al., Executive summary of the Stages of Reproductive Aging Workshop+10: addressing the unfinished agenda of staging reproductive aging, Menopause, 2012)。「閉経後」又は「閉経後の」という用語は、月経期の恒久的な停止によって特徴付けられる女性の対象を表す。この恒久的な停止は、任意の他の明らかな病理学的又は生理学的原因のない12ヶ月の無月経の観察の後に、遡及的に決定される。「閉経後」という用語には、早期卵巣不全、手術(例えば卵巣摘出)、癌の化学療法又は放射線療法、及び特定の疾患(例えば感染症又は甲状腺機能低下症)の結果としての閉経も含まれる。
【0077】
本明細書で使用される場合の「脱毛」という用語は、典型的には閉経期移行後の、対象におけるエストロゲンレベルの低減に由来する脱毛に相当する。該用語は、概して女性型脱毛及び女性型アンドロゲン性脱毛症に相当する。これは自然な閉経期事象に起因して、又は子宮の早期摘出若しくは低エストロゲン状態につながる任意の他の症候群若しくは障害に起因して発生する可能性がある。明らかに上記のものは女性の対象にのみ当てはまるが、テストステロン変換に主に由来するエストロゲンレベルが正常レベル以下である場合、脱毛症は男性の対象でも発生する可能性がある。
【0078】
本発明者らは、予期しないことに、エステトロールがケラチノサイトの増殖及び機能に対して有利な効果を有することを見出した。
【0079】
「ケラチノサイト」という用語は上皮中及び上皮毛包細胞中に見られる細胞の一種を包含し、これにはバルジケラチノサイト、外毛根鞘(ORS)ケラチノサイト及び毛球ケラチノサイトが包含される。皮膚の外層において、ケラチノサイトは細胞の約90%を占める。「ケラチノサイト機能の増加」という用語は、上皮及び毛包におけるケラチノサイトの増殖増加、並びに上皮及び毛包におけるケラチノサイトの機能の増加、改善又は回復の両方を含むことを意味する。該機能には、皮膚の厚さ及び保湿、十分な皮膚バリアの提供及び適切な創傷治癒の保証、成長期中の毛包細胞の成長促進、並びに上皮-間葉相互作用、すなわち毛乳頭細胞を含む毛包の線維芽細胞等の間葉細胞との相互作用が含まれる(但しこれらに限定されない)。
【0080】
ケラチノサイトは、酸化及び炎症にも役割を果たす。ROS産生(とりわけケラチノサイトにおける産生)及び酸化ストレスの上昇は、DNA、タンパク質及び脂質の損傷を増加させ、早すぎる皮膚の老化及び脱毛につながる可能性がある。慢性的な低い程度の炎症は、ケラチノサイトによる炎症促進性サイトカインの発現を増加させることによって皮膚を損傷させ、これは有害な変化及び早すぎる皮膚の老化及び脱毛につながる。
【0081】
さらに、皮膚の色素沈着は、ケラチノサイト、及び、主な機能がメラニン色素の産生であるメラノサイトよって影響される。メラノサイトはケラチノサイトに囲まれており、メラノサイトがそのメラニン色素をケラチノサイトに伝達する。メラノサイトとケラチノサイトの緊密な相互作用及びコミュニケーションにより、単一のメラノサイトが36個のケラチノサイトによって包囲可能であり、これにより例えばエステトロールによってケラチノサイトに影響を与え、メラノサイトに、したがって色素沈着にも影響を与える。本開示で使用される場合の「メラニン」という用語は、表皮に局在するメラノサイトにより産生される一群の天然色素を指す。様々な種類のメラニンが当該技術分野で文献記載されている(例えばWei et al., Unraveling the structure and function of Melanin through synthesis, J Am Chem Soc, 2021に)。「メラニン形成」は当該技術分野において一般に使用されており、メラニン産生のプロセスに関連している。メラニン形成は、例えば、皮膚が紫外線照射に曝されたときに上方調節され、皮膚の色調の暗色化をもたらす。
【0082】
「活性酸素種」(一般に「ROS」と略される)という用語は、酸素(O2)から形成される分子に対する総称である。理解のための例としては、過酸化物、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素、及びアルファ酸素である。活性酸素種は、とりわけ、線維芽細胞及びケラチノサイトにおいて産生される。真皮及び表皮の両方が皮膚を酸化から保護することができる一方で、表皮は最も高濃度の抗酸化物を含んでいる。ROSは、毛包に損傷を引き起こすため、女性型脱毛に関して否定的な又は悪化させる要因である。したがって、女性型脱毛を避けるためには、ROSの低減が重要である。
【0083】
ケラチノサイトは、創傷治癒を促進するための重要な細胞種でもあり、創傷の閉鎖及び再上皮化だけでなく、免疫細胞に隣接する創傷における炎症の調節をも担う。ケラチノサイトの機能の不均衡は、不均衡な炎症を引き起こす可能性がある。
【0084】
本明細書で用いられる「皮膚の炎症」又は「皮膚炎症」に関する表現は、当該技術分野で一般に受け入れられている意味に従って解釈されるべきであり、したがって任意の局所的な皮膚の免疫反応を示す。本発明の文脈において、皮膚炎症の原因は特に限定されず、これには例えば病原体、免疫システムの機能不全、アレルギー反応、及び創傷が含まれる。したがって、皮膚炎症は、免疫細胞が最も重要な細胞種を維持した状態での、対象の皮膚における細胞間相互作用の結果と見なすことができる。
【0085】
さらに、本発明者らは、エステトロールが線維芽細胞の増殖及び機能にも有利に影響することを見出した。
【0086】
「線維芽細胞」という用語は、真皮に、及び毛乳頭細胞を包含する間葉性毛包細胞に見られる細胞の一種を包含する。かかる線維芽細胞は、毛包内の毛乳頭細胞も含み、これは実際上増殖しないが、上皮間葉相互作用(EMI)に起因する周囲のケラチノサイトとの相互作用を通して数が増加する。
【0087】
真皮線維芽細胞は皮膚結合組織(真皮)に存在する主要な細胞種である。線維芽細胞は毛の成長中に上皮細胞と相互作用し(EMI)、毛包間の皮膚において、皮膚創傷治癒中に重要な役割を果たし、良好な皮膚の健康維持、より具体的には皮膚の厚さ、皮膚のコラーゲン含有量及び弾性の維持、並びに皮膚水分含有量/損失の良好なバランスの維持に関連する様々な機能を有することが知られている。線維芽細胞は毛の成長中、毛包間の皮膚において表皮細胞と相互作用する。
【0088】
本明細書で使用される場合の「皮脂」という用語は、脂腺細胞により皮脂腺で産生される油状及び又は蝋状の物質を指し、脂腺細胞はホロクリン分泌によって皮脂を分泌する高度に特化した上皮細胞である。皮脂は、トリグリセリド、ワックスエステル、スクワレン及び遊離脂肪酸を含む組成物であり、表皮バリア及び皮膚の免疫システムの一体的成分を形成する。皮脂腺は表皮を生じる同じ組織から成長し、毛包に接続された皮脂腺と、独立に存在する皮脂腺とに分類できる。皮脂腺の分泌物(皮脂)は、毛及び皮膚に軟化剤を提供し、アンドロゲンホルモンの影響下にある。皮脂分泌は年齢と共に低下し、エストロゲンレベルによって影響される可能性がある。
【0089】
抗脱毛療法、並びに毛の質感、毛の質及び毛の外観の改善
本発明は、1つの態様において、本明細書の他の部分に定義されるような、脱毛の予防又は治療における使用のための、エステトロール成分を含む組成物を提供する。別の言い方をすれば、本発明は、エステトロール成分を含む組成物の、脱毛の予防又は治療、並びに毛の質感、質及び外観の改善のための使用を想定している。更に別の言い方をすれば、本発明は、エステトロール成分(又はエステトロール成分を含む組成物)の、脱毛の予防又は治療のための薬剤の製造のための使用を想定している。最後に、本発明は、更に、エステトロール成分の対象への全身投与を含む組成物の投与を含む、脱毛の予防又は低減のための治療方法を提供する。脱毛を測定及び/又は監視する多数の方法及びアプローチは、標的領域毛数(「TAHC」)及び標的領域毛幅(「TAHW」)等、当該技術分野において文献記載されている(例えば、Dhurat and Saraogi, Int J Trichology, 2009によりレビューされている)。本明細書及び当該技術分野全体を通して、標的領域毛幅及び標的領域毛厚という用語は、区別なく使用することができる。
【0090】
本明細書で使用される場合の「脱毛」という用語は、対象、好ましくは成人の対象、より好ましくは女性の成人の対象におけるあらゆる種類の脱毛に関する。本明細書で使用される場合の「脱毛」は、あらゆる種類の脱毛症を広く指す。したがって、本明細書で使用される場合の「脱毛」は、アンドロゲン性脱毛症(AGA)、又は円形脱毛症、線維性脱毛症、びまん性脱毛症、瘢痕性脱毛症及び全身性脱毛症としてよりよく知られている臨床状態を包含する。したがって、本明細書に記載の、使用のための投与単位、使用又は方法は、脱毛症、特にアンドロゲン性脱毛症の治療のために使用することができる。アンドロゲン性脱毛症は当該技術分野において非常に詳細に多数の機会で文献記載されており、したがって当業者には知られている(例えば、Chin et al., Androgenetic alopecia, StatPearls, 2022)。アンドロゲン性脱毛症(「パターン脱毛」という用語と区別なく示される)は、主に頭皮の頂部及び前部に影響する脱毛の状態である。男性型脱毛は一般に前部の生え際の後退、頭頂部の脱毛、又はその組み合わせとして記述される。女性型脱毛は、典型的には、頭皮全体にわたるびまん性の毛のボリューム低下として特徴付けられる。好ましい実施形態において、本明細書に記載の、使用のための投与単位、使用又は方法は、女性型脱毛の治療のために使用される。
【0091】
「治療」又は「治療する」という用語は、既に発症し、(臨床的に)顕在化している症状、疾患又は状態の療法治療と、治療の目的が、望まれない苦痛が起こる可能性を予防、低下又は低減させる、例えば、脱毛に関連する症状、臨床的(状態)又は疾患の発生、進行及び進展を予防することである、防止又は予防措置との両方を指すものと解釈される。したがって、本発明の更なる態様は、対象、好ましくは閉経期の対象における脱毛の予防のために使用される有効量のエステトロール成分に関している。有益な又は望ましい臨床結果としては、1つ以上の症状の緩和、1つ以上の生物学的マーカーの改善、疾患の広がりの消失、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和等がある(但しこれらに限定されない)。
【0092】
本発明の文脈で使用される場合の「予防」又は「予防する」とは、対象における状態像又は疾患像の顕在化の回避、すなわち予防措置又は防止措置の確立を指す。予防治療とは、対象の体又はその要素が望ましくない生理学的変化の症状(の悪化)を示さないようにすることを目的とする治療を指す。
【0093】
本明細書で使用される場合の「療法治療」又は「療法」等の用語は、対象の体又は対象の体の一部を、老化により引き起こされる望ましくない生理学的状態、疾患又は障害から、望ましい状態、例えば、より軽症の状態(例えば、改善)に、若しくはその正常な健康状態にさえ変化させること(例えば、対象の健康、身体的完全性及び身体的健康の回復)、該望ましくない生理学的状態でそれを維持する(すなわち、悪化させない)こと(例えば、安定化)、又は該望ましくない生理学的変化若しくは障害と比較してより重度の若しくは悪化した状態への進行を減速させることを目的とする治療を指す。測定可能な軽減としては、測定可能なマーカー又は症状における任意の統計的に有意な低下が挙げられる。本明細書で使用される場合の統計的に有意とは、当業者が理解するように統計分析で一般に受け入れられているカットオフ値である0.05未満のp値を指す。「治療」には、治癒的治療と、症状を低下させ、及び/又は進行を遅らせ、及び/又は状態又は疾患を安定化させる治療との両方が包含される。
【0094】
当業者は、有効な療法治療を達成するために、上記対象に治療上有効な用量を投与する必要があることを認識している。したがって、本開示の文脈において、「有効量」とは、生理学的効果を得るために必要な量を指す。生理学的効果は、単回投与又は多回投与によって得られるものであってもよい。「治療上有効量」又は「治療上有効な用量」は、投与した場合に、脱毛に苦しむ対象の治療に関して臨床上有利な反応をもたらすエステトロール成分の量を示す。同様に、「防止に有効な量」又は「防止に有効な用量」とは、脱毛の(臨床的)顕在化の開始を阻害又は遅延するエステトロール成分の量を指す。当業者は、「分量」、「量」及び「レベル」等の用語が同義語であり、当該技術分野において十分に定義された意味を有していることを認識しており、これらが特に本明細書に記載される用途のための有効量と見なされるエステトロール成分の絶対的な定量化、又は例えば対象の体重を基準とするエステトロール成分の濃度等のエステトロール成分の相対的な定量化を指すことができることを理解している。適切な値又は値の範囲は、1人の対象又は対象の群(すなわち、少なくとも2人の対象)から得ることができる。
【0095】
本明細書に開示されているエステトロール成分の任意の値及び範囲が、異なる医学的適応又は目的に適していることが強調されるが、当業者は、特定の個人がエステトロール成分治療から、治療すべき状態又は疾患の性質及び程度、対象の性別、対象の年齢、体重、他の医学的適応、栄養状態、投与方法、代謝状態、他の薬学的活性成分の干渉又は影響又は効用等(但しこれらに限られない)を含む広範なパラメーターを考慮することによる該成分の最適投与量の更なる最適化によって、更に改善された効用を経験することができることを認識している。さらに、個々人は、使用されるエステトロール成分に対する特定の固有の反応性を有する場合がある。
【0096】
「対象」、「患者」、「個人」等の用語は、本明細書で区別なく使用される場合があり、ヒト対象、好ましくはその人生の閉経期又は閉経周辺期にある女性対象を指す。
【0097】
エステトロール成分を含む組成物の全身投与工程を含む、脱毛を予防する又は低減させる美容的方法も同様に想定されている。別の言い方をすれば、本発明は、同様に、脱毛の予防又は低減のためのエステトロール成分を含む組成物の美容的使用を想定している。当業者は、「美容的使用」が「非医療的、非治療的使用」、したがって、臨床的病理を緩和、予防、又は治療することを目的としない使用を意味していることを理解している。
【0098】
本発明の治療的又は美容的療法は、通常、少なくとも10日、好ましくは少なくとも20日の期間でのエステトロール成分の連続投与を用いる。
【0099】
エステトロール治療成分又は美容成分は、約10 mg~約25 mgのエステトロール成分、好ましくはエステトロール、より好ましくはエステトロール一水和物の1日投与量で投与される。
【0100】
特定の実施形態において、エステトロール成分は約14 mg~約21 mgの1日投与量で投与される。
【0101】
別の特定の実施形態において、エステトロール成分は約14 mg~約16 mg、又は約19 mg~約21 mgの1日投与量で投与される。
【0102】
1つの実施形態において、本発明の治療的又は美容的療法は、子宮非摘出の患者に投与される。特定の実施形態において、本発明の治療的又は美容的療法は、約15 mg又は20 mgのエステトロール成分の、好ましくは子宮非摘出の患者への毎日投与を含む。
【0103】
本発明の治療的又は美容的療法が子宮摘出術を受けた患者に投与される場合、エステトロール成分は、好ましくは、プロゲストーゲン成分なしで、又は更に唯一の活性成分として投与される。
【0104】
本発明の療法が子宮非摘出の患者に投与される場合、エステトロール成分は単独の活性成分として投与されるか、又は任意選択のプロゲストーゲン成分とともに投与することができる。該任意選択のプロゲストーゲン成分は、連続的に(すなわち、エステトロール成分に加えて毎日)、又は逐次的に(逐次的とは、例えば毎月10日間~14日間、又は3ヶ月毎に14日間のプロゲストーゲン成分の投与を意味する)投与することができる。
【0105】
本明細書で使用される場合の「連続的な」/「連続的に」という用語は、(治療上)顕著な中断なしに、比較的規則的な間隔で成分を投与することを意味する。当然、本発明の方法の全体的な有効性に影響しない軽微な中断が発生する可能性があり、実際、かかる逸脱も本発明に包含される。好ましい実施形態において、より数学的には、2回の連続した投与間の最長の間隔が平均間隔の3.5倍以下の場合、投与レジメンは連続的と見なされる。更により好ましくは、該最長の間隔は平均間隔の2.5倍以下、最も好ましくは1.5倍以下である。
【0106】
1つの実施形態において、任意選択のプロゲストーゲン成分は非経口経路、例えば子宮内デバイス(IUD)を使用して投与される。1つの実施形態において、該IUDによってプロゲストーゲン成分レボノルゲストレルが送達される。1つのかかる実施形態において、IUDはMirena(商標)IUD又はLevosert(商標)IUDである。
【0107】
したがって、当業者は、エステトロール成分が、当該技術分野で知られている脱毛の軽減又は予防のための任意の他の美容的又は薬学的活性薬物とともに投与可能であることを理解している。
【0108】
1つの実施形態において、本発明の治療的又は美容的療法は、エステトロール成分の経口、舌下、口腔、又は唇投与を用いる。後者の3つの投与方法は、エステトロール成分が消化系を通過する必要がなく、ファーストパス肝臓曝露(first-pass liver exposure)を回避できるという利点を提供する。さらに、これらの投与方法では、作用の迅速な開始が得られる。
【0109】
本明細書で使用される場合の「舌下」という用語は、舌下組織を通ってエステトロール成分を血液中に拡散させる薬理学的投与経路を指す。
【0110】
本明細書で使用される場合の「口腔」という用語は、エステトロール成分を口腔前庭、すなわち頬の裏側(頬粘膜)と歯/歯肉との間の口の内部領域の組織を通って血液中に拡散させる薬理学的投与経路を指す。
【0111】
本明細書で使用される場合の「唇下」という用語は、エステトロール成分を唇と歯肉との間に配置させる薬理学的投与経路を指す。
【0112】
本発明の治療的又は美容的方法において、エステトロール成分及びプロゲストーゲン成分は個別の投与単位で投与することができる。しかし、これら2つの成分を単一の投与単位に組み合わせることも可能であり、実際非常に便利である。
【0113】
本発明に係る治療的又は美容的方法において、プロゲストーゲン成分及びエステトロール成分の組合せが、少なくとも10日間連続的に適切に投与される。
【0114】
本発明は、当業者に知られている様々な投与方法の形態で実施するために適切に簡略化することができる。これらの方法の中でも、エステトロール成分及び任意選択のプロゲストーゲン成分の一定量を含む投与単位を含む単相調製物を使用する方法である。
【0115】
プロゲストーゲン成分の逐次的な投与が選択される本発明の実施形態において、2つの成分を、これらが投与される日に単一の投与単位に組み合わせることも可能であり便利である。
【0116】
本発明の別の実施形態において、療法は閉経後の対象に施される。
【0117】
或る特定の実施形態において、全身投与が意図される本明細書に記載される組成物は、エストロゲンを含まない、局所(すなわち、経皮)投与が意図される美容的組成物と併せて使用され、好ましくは、該美容的組成物はホルモンを含まない。
【0118】
組成物
本発明のエステトロール成分は、エステトロール、ヒドロキシル基のうちの少なくとも1つの水素原子が、1個~25個の炭素原子の炭化水素カルボン酸、スルホン酸又はスルファミン酸のアシルラジカルによって置換されたエステトロールのエステル、及びこれらの組合せからなる群から選択される物質を包含する。より好ましくは、エステトロール成分はエステトロール(エステトロール水和物を含む)である。最も好ましくは、投与単位に含まれるエステトロール成分はエステトロール一水和物である。
【0119】
本発明のエステトロール成分は、約15 mg~約25 mgのエステトロール一水和物に相当する1日投与量で使用される。換言すれば、エステトロール成分がエステトロール一水和物自体でない場合、エステトロール成分の1日投与量は、約10 mg~約25 mgのエステトロール一水和物、例えば、約14 mg~16 mgのエステトロール、好ましくはエステトロール一水和物、又は約19 mg~21 mgのエステトロール、好ましくはエステトロール一水和物の1日投与量に相当する薬学的効果を得られるように調整される。
【0120】
本発明の特に好ましい実施形態において、本発明に係る医薬組成物は毎日投与用に設計されており、すなわちこれは1日投与単位を表す。
【0121】
経口投与の場合、本発明に係る経口投与単位は、好ましくは、錠剤、カプセル、カシェ剤、ペレット、丸剤、粉末及び粒剤等の固形又は半固形の投与単位(「投与形態」という用語と区別なく使用される)である。「固形又は半固形の投与単位」という用語は、本発明のエステトロール成分及び/又は任意選択のプロゲストーゲン成分が溶解又は分散されている液体、例えば油を収容するカプセルも包含する。錠剤及び同等の固形又は半固形の投与単位は、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、他のセルロース系材料及びデンプン)、希釈剤(例えば、乳糖及び他の糖類、デンプン、リン酸二カルシウム及びセルロース系材料)、崩壊剤(例えば、デンプン重合体及びセルロース系材料)、及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸塩及びタルク)等の材料を適切に含有することができる。これらの錠剤及び同等の固形投与単位は、例えば、水溶液又は有機溶液を使用する湿式造粒、及び直接圧縮によって製造できる。
【0122】
舌下、口腔又は唇投与の場合、本発明に係る医薬組成物は、好ましくは口内分散性投与単位である。
【0123】
本明細書中で用いられる場合の「口内分散性投与単位」という用語は、唾液と接触したときに口腔内で迅速に崩壊し、エステトロール成分を唾液中に分散させて、口腔内粘膜を介して吸収可能なように設計された投与単位を指す。
【0124】
投与単位が口内分散性投与単位である場合、投与単位からのエステトロール成分の放出速度は、Ph. Eur. 2.9.1 ("Disintegration of tablets and capsules")及びUSP<701>「("Disintegration")に従う、例えば水を崩壊媒体として用いる崩壊試験を用いて、適切に決定できる。本発明の口内分散性固形投与単位は、上記崩壊試験に供した場合、典型的には、5分未満、より好ましくは2分未満、更により好ましくは1.5分未満、更により好ましくは1分未満、更により好ましくは45秒未満、最も好ましくは30秒未満で崩壊する。
【0125】
1つの実施形態において、投与単位はエステトロール成分を含むが、プロゲストーゲン成分は含まない。
【0126】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分及びプロゲストーゲン成分を含む経口組合せ1日投与単位を提供する。
【0127】
好ましくは、プロゲストーゲン成分は、プロゲステロン、ドロスピレノン、ジドロゲステロン、これらのプロゲストーゲンの前駆体、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0128】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分をプロゲステロンとともに含む組合せ組成物を提供する。
【0129】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分をドロスピレノンとともに含む組合せ組成物を提供する。
【0130】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分をジドロゲステロンとともに含む組合せ組成物を提供する。
【0131】
エステトロール及びプロゲストーゲン成分は、個別の経口投与単位で存在することができ、又は同一の経口投与単位に組み合わせることができる。
【0132】
本発明のプロゲストーゲン成分がドロスピレノンである場合、これは、1日当たり、好ましくは0.25 mg~10 mg、更により好ましくは約0.25 mg~約4 mg、例えば約1 mg~4 mg、約1 mg~3 mg、又は約2.5 mg~3.5 mg、好ましくは約3 mgの1日投与量で使用される。
【0133】
本発明のプロゲストーゲン成分がジドロゲステロンである場合、これは、好ましくは約5 mg~約10 mgの1日投与量で、より好ましくは約5 mgの1日投与量で使用される。
【0134】
本発明のプロゲストーゲン成分がプロゲステロンである場合、これは、好ましくは50 mg~200 mgの1日投与量で使用される。1つの実施形態において、プロゲステロンは、これが連続的に使用される場合、50 mg~100 mgの1日投与量で使用される。別の実施形態において、プロゲステロンは、これが逐次的に使用される場合、例えばこれが毎月約14日間投与される場合、100 mg~200 mgの1日投与量で使用される。
【0135】
異なるプロゲストーゲン成分を使用する場合、1日投与量は、50 mg~200 mgのプロゲステロンの投与量と同じ薬理学的効果を得られるように調整される。
【0136】
本発明の好ましい実施形態において、組成物はエステトロール成分及び任意選択のプロゲストーゲン成分を単一の投与単位、好ましくは1日投与単位に組み合わせる。本発明のより好ましい実施形態において、該組合せ1日投与単位は経口組合せ1日投与単位である。
【0137】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分及びプロゲステロンを含む経口組合せ1日投与単位を提供する。
【0138】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分及びドロスピレノンを含む経口組合せ1日投与単位を提供する。
【0139】
1つの実施形態において、本発明は、エステトロール成分及びジドロゲステロンを含む経口組合せ1日投与単位を提供する。
【0140】
本発明の好ましい実施形態において、約20 mgの1日投与量のエステトロールを約100 mgの1日投与量のプロゲステロンと組み合わせた、経口組合せ1日投与単位が提供される。
【0141】
好ましい実施形態において、14 mg~16 mgのエステトロール又は19 mg~21 mgの1日投与量のエステトロール、好ましくはエステトロール一水和物と、約2.5 mg~3.5 mgのドロスピレノンと組み合わせた経口組合せ1日投与単位が提供される。
【0142】
本発明の別の実施形態において、エステトロール成分は、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、特にバゼドキシフェンと併せて、子宮を依然として有する患者に投与される。好ましくは、バゼドキシフェンは約10 mg~50 mgの1日投与量で投与される。より好ましくは、バゼドキシフェンは約20 mgの1日投与量で投与される。
【0143】
1つの実施形態において、本発明は、プロゲストーゲン成分を除いた療法を提供する。
【0144】
本明細書で使用される場合の「平均レベルを調節する」又は「レベルを調節する」又は「レベルを低下させる」又は「レベルを増加させる」という用語の意味は、それぞれ、特定の状態を有する対象における基準平均レベルと比較した場合に、言及される物質のタンパク質及び/又はmRNA発現レベルを調節する、低下させる、又は増加させることを包含するものとして見る必要がある。対象におけるタンパク質レベルは、例えば対象のサンプルについてのELISA等の標準的な技術を用いて分析可能である。対象におけるmRNA発現レベルは、例えば対象のサンプルについての定量的RT-PCR(Q-PCR)等の標準的な技術を用いて分析可能である。別の実施形態において、調節はタンパク質又は発現レベルを増加させることを含む。
【0145】
或る特定の好ましい実施形態において、エステトロール成分は固形投与単位に含まれ、好ましくは、各固形投与単位は約10 mg~25 mg、例えば約14 mg~21 mg、又は約14 mg~16 mg、又は約19 mg~21 mg、又は約15 mg、又は約20 mgのエステトロール成分を含む。より好ましい実施形態において、エステトロール成分は錠剤、カプレット、又はカプセル、最も好ましくは錠剤に含まれる。更なる実施形態において、固形投与単位は1日固形投与単位に対応するよう製剤化されている。また更なる実施形態において、固形投与単位は経口投与単位(すなわち、対象が嚥下することが意図された投与単位)である。したがって、或る特定の実施形態において、医学的使用又は治療方法は、有効量のエステトロールを含む固形投与単位の毎日服用を含む。或る特定の実施形態において、有効量のエステトロール成分は、本明細書の他の部分で定義されたようなプロゲスチンとすることができる、又は脱毛の予防又は治療のための追加的な美容的又は(薬学的)活性成分とすることができる、少なくとも1種の薬学的活性成分を更に含む単回投与単位に含まれる。
【0146】
代替的な実施形態において、固形投与単位は舌下、口腔、及び/又は唇投与に適している。かかる実施形態において、固形投与単位は唾液等の水性溶媒と接触したときにエステトロール成分を迅速に放出することができる。したがって、これらの実施形態において、固形投与単位は、約5分以内、好ましくは約3分以内、より好ましくは約2.5分以内、より好ましくは約90秒以内、最も好ましくは約90秒以内に、エステトロール成分の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは約80%を放出する口内分散性投与単位である。本明細書中で用いられる場合の「口内分散性投与単位」という用語は、これが唾液と接触したときに口腔内で迅速に崩壊し、エステトロール成分を唾液中に分散させて、これが口腔内粘膜を介して吸収可能なよう設計された投与単位を指す。投与単位からのエステトロール成分の放出速度を決定する方法は、当業者に知られている。当該分野で一般に受け入れられている標準化された試験としては、Ph. Eur. 2.9.1 ("Disintegration of tablets and capsules")及びUSP<701>("Disintegration")に従う、例えば水を崩壊媒体として用いる崩壊試験がある(但しこれに限定されない)。
【0147】
或る特定の実施形態において、エステトロール成分は即時放出投与単位又は組成物に含まれている。代替的な実施形態において、エステトロール成分は遅延放出、持続放出、又は制御放出投与単位又は組成物に含まれている。「即時放出」、「遅延放出」、及び「持続放出」又は「制御放出」という用語は、当業者には明らかであり、医薬組成物の放出プロファイルを表している。即時放出では、医薬組成物はほぼ即時に投与単位から対象又は患者の体に放出される。遅延放出投与単位では、医薬組成物は投与後に遅延して体内に送達される。持続放出又は制御放出投与単位では、投与単位は、特定の期間にわたって一定の薬物濃度を維持できるように予め定められた速度で医薬組成物を放出するよう設計されている。投与単位の放出プロファイルは、主な薬局方において文献記載されたように評価できる。例えば、即時放出は欧州医薬品庁によって、活性物質の少なくとも75%が45分以内に溶解するものとして定義されている(European Pharmacopeia (Ph. Eur.) 9th edition)。しかし、加えて、医薬品物質の治療範囲、溶解性及び透過性因子に応じて、適切な試験及び時間窓が異なってもよいことは、当業者には自明である。
【0148】
代替的な実施形態において、本発明の文脈で考慮可能な投与方法は、これによって全身バイオアベイラビリティが得られる限り、特に限定されない。これには、経口、直腸、気管支、鼻腔、口腔、舌下、膣、経皮、皮下、子宮、若しくは非経口の投与、又は、粉末及び液体エアゾールの投与を含む吸入若しくは噴霧による投与に適した形態が含まれる(但しこれらに限定されない)。好ましい実施形態において、投与方法は経口投与である。経口投与には経口摂取による投与が含まれるが、付加的に、任意選択で口内分散性錠剤等(但しこれらに限定されない)の口内分散性投与単位による、口腔及び舌下投与等の投与方式も含まれることが理解される。全ての場合において、目標は、経口投与単位を用いた場合と同等の血漿中エステトロール有効投与量(例えば、同等のAUC及び/又はCmax値)を実現することである。
【0149】
或る特定の実施形態において、エステトロール成分は単位投与単位に製剤化され、これには、硬カプセル、軟カプセル、錠剤、被覆錠剤(塗布錠剤又は糖衣錠剤等)、顆粒剤、水性又は油状溶液、シロップ、乳濁液、懸濁液、吸入剤又は坐剤が含まれ(但しこれらに限定されない)、当該技術分野で知られている任意の適切な包装手段で提供可能であり、非限定的の例は、トローチ、小袋、小包、ボトル、フィルム、スプレー、ミクロカプセル、インプラント、ロッド又はブリスターパックである。有効量のエステトロール成分が経口投与により投与される実施形態において、本発明に係る経口投与単位は、好ましくは、錠剤、カプセル、カシェ剤、ペレット、丸薬、粉末及び顆粒等の固形又は半固形投与単位である。特に好ましい組成物は、本明細書に開示された用量のエステトロール一水和物と、固形又は半固形投与単位に適した賦形剤との組合せを含む。
【0150】
「固形又は半固形投与単位」という用語は、本発明のエステトロール成分及び/又は任意選択のプロゲストーゲン成分が溶解又は分散されている液体、例えば油を含むカプセルも包含する。錠剤並びに同等の固形及び半固形投与単位は、結合剤(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(ポビドン、PVP)、他のセルロース系材料及びデンプン)、希釈剤(例えば乳糖(一水和物)及び他の糖類、デンプン(例えば、とうもろこしデンプン)、リン酸二カルシウム及びセルロース系材料)、崩壊剤(例えばデンプン重合体及びセルロース系材料(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム))、並びに滑沢剤(例えば、(マグネシウム)ステアリン酸塩及びタルク)等の材料を適切に含むことができる。これらの錠剤及び同等の固形投与単位は、当該技術分野で詳細に文献記載されている(例えば、Kaur, Processing technologies for pharmaceutical tablets: A review, Int Res J Pharm, 2012)任意の適切な手段によって調製可能である。投与単位を製造する場合にエステトロール成分を処理する非限定的な例としては、例えば水溶液又は有機溶液を使用する湿式造粒、直接圧縮、3Dプリンティング、又は有機若しくは無機溶媒を用いてエステトロール成分を担体粒子にコートする方法がある。
【0151】
本発明の更なる態様が、本明細書に開示された任意の医学的適応における使用のための有効量のエステトロール成分を含む医薬組成物又は美容的組成物に関することは明らかである。「製剤」又は「組成物」という用語は、本明細書において区別なく使用可能である。本明細書に記載の1種以上の医薬組成物又は美容的組成物の任意の実施形態において、該組成物が1種以上の薬学的に又は美容的に許容される担体(すなわち賦形剤)を含むことができることは明らかである。本明細書中で用いられる場合の「薬学的に許容される」又は「美容的に許容される」という用語は、当該技術分野と一致するものであり、医薬組成物又は美容的組成物の他の成分と相溶性があり、受容者に有害でないことを意味する。本発明の特に好ましい実施形態において、本発明に係る医薬組成物は毎日投与用に設計されており、すなわち、これは1日投与単位を表す。医薬組成物中で使用可能な賦形剤は、特に限定されず、したがって、薬学的活性成分賦形剤、結合剤賦形剤、担体賦形剤、共処理賦形剤、コートシステム賦形剤、制御放出賦形剤、希釈剤賦形剤、崩壊剤賦形剤、乾燥粉末吸入剤賦形剤、発泡システム賦形剤、乳化剤賦形剤、脂質賦形剤、滑沢剤賦形剤、徐放賦形剤、浸透促進剤賦形剤、透過促進剤賦形剤、pH調節剤賦形剤、可塑剤賦形剤、保存料賦形剤、保存料賦形剤、可溶化剤賦形剤、溶媒賦形剤、持続放出賦形剤、甘味剤賦形剤、味付け剤賦形剤、増粘剤賦形剤、粘度調節剤賦形剤、増量剤賦形剤、圧縮賦形剤、乾式造粒賦形剤、ホットメルト押出し賦形剤、湿式造粒賦形剤、速放化剤賦形剤、高バイオアベイラビリティ賦形剤、分散賦形剤、可溶化促進賦形剤、安定化剤賦形剤、カプセル増量賦形剤、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択される1種以上の賦形剤とすることができる。かかる媒体及び薬物の薬学的活性物質に対する使用は一般的実務であることを当業者は知っており、したがって、これらの賦形剤の組み込みは当該技術分野で既知である。使用される全ての成分は、最終的な医薬組成物中に含有される濃度で無毒性でなければならず、エステトロール成分(該エステトロール成分は好ましくは医薬組成物中の主たる薬学的活性成分として存在する)の活性に不利に干渉するものであってはならないことは明らかである。或る特定の実施形態において、当業者が同じ群の賦形剤に属すると分類する2種以上の賦形剤が医薬組成物に添加される。更なる実施形態において、異なる群に属する異なる種類の2種以上の賦形剤が医薬組成物に添加される。或る特定の実施形態において、賦形剤は2つ以上の機能を果たすことができ、及び/又は当業者によって異なる群又は種類の賦形剤に属すると分類されることができる。
【0152】
本発明によって想定される組成物は、スキンケア効用をもたらすことができる更なる皮膚活性成分を含むことができる。スキンケア効用としては、皮膚の美容的外観に関連する効用があり得る(但しこれに限定されない)。更なる皮膚活性成分が、即時で短期的(すなわち急性的)な効用、及び/又は長期の持続的(すなわち慢性的)な効用を提供することができる。
【0153】
本発明によって想定される組成物は、当該技術分野で知られているヘアケアの効用を提供可能な、脱毛の予防又はヘアケア促進の更なる活性成分を含むことができる。ヘアケアの効用には、毛の美容的外観だけでなくその成長に関連する効用が含まれる(但しこれらに限定されない)。更なるヘアケア活性成分が、即時で短期的(すなわち急性的)な効用、及び/又は長期の持続的(すなわち慢性的)な効用を提供することができる。
【0154】
本発明についてその詳細な実施形態と併せて記載したが、上記の記載から、多くの代替形態、変更形態及び変形形態が当業者には明らかであろうことは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲内にある全てのかかる代替形態、変更形態及び、変形形態を包含することが意図される。本明細書に開示された本発明の態様及び実施形態は、以下の非限定的な実施例によって更に裏付けられる。
【0155】
以下の具体的な実験実施例は、特許請求される発明の裏付けとして提供されるが、本発明の範囲を限定するものとして見なされるべきではない。
【実施例】
【0156】
実施例1:ラットモデルにおける経口投与後のエステトロールの組織分布
[14C]-エステトロールを用いて雌ラット(部分的に色素性及び非色素性)において組織分布を決定した。
【0157】
非色素性の雌ラットへの[14C]-エステトロールの単回経口投与後、放射能濃度は全体に0.5時間の最初の時点で最大となり、最も高い濃度は肝臓で測定された(12.5 μg当量/g)。放射能は迅速に排除されたため、投与24時間後までに、消化管及び膀胱の要素以外では、副腎、腎臓、肝臓、膵臓、唾液腺及び甲状腺のみが定量化可能であった。
【0158】
部分的に色素性の雌ラットへの[14C]-エステトロールの単回経口投与後、放射能濃度は全体で経口投与0.5時間後の最初の時点で最大となり、最も高い濃度は肝臓で測定された(13.7 μg当量/g)。放射能はまた速やかに排除され、投与24時間後までに大部分の組織でBLQ(0.076 μg当量/g未満)となった。投与7日後までに、肝臓(0.410 μg当量/g)を除く全ての分析した組織が、メラニン含有構造(脈絡膜、色素性皮膚)を含め、定量限界以下となった。
【0159】
プロトコル-非色素性ラットにおける組織分布研究
雌のスプラーグドーリーラット7匹の群にそれぞれ[14C]-エステトロールを単回経口投与した。選択した各時間(下記参照)で1匹の動物を(CO2過剰投与により)屠殺し、その後直ちにヘキサン/固体CO2中で瞬間凍結させた。量的全身オートラジオグラフィ(QWBA)の技術を用いて放射能の組織分布を検査するために死体を保持した。
【0160】
分析のための時間は0.5時間、1時間、2時間、5時間、8時間、24時間及び48時間であった。
【0161】
全身オートラジオグラフィの切片化の完了後、残った死体は廃棄物として処分した。
【0162】
Fuji FLA-5100蛍光イメージアナライザ及び関連するTina and SeeScanソフトウェアを使用して、組織中の放射能分布を決定及び定量化した。GE Healthcareが作成した較正済みオートラジオグラフィマイクロスケールを使用して、組織中の放射能濃度を決定した。マイクロスケールを用いて標準曲線を作成し、これから放射能の組織濃度(nCi/g)を決定した。次いで、これらの値を投与製剤の比活性を用いてμg当量/gに変換した。
【0163】
プロトコル-色素性ラットにおける組織分布研究
雌のリスターフーデッドラット6匹の群にそれぞれ[14C]-エステトロールを単回経口投与した。選択した各時間(下記参照)で1匹の動物を(CO2過剰投与により)屠殺し、その後直ちにヘキサン/固体CO2中で瞬間凍結させた。死体を定量的全身オートラジオグラフィ(QWBA)の技術を用いて放射能の組織分布を検査するために保持した。
【0164】
分析のための時間は(0.5時間、8時間、及び24時間、7日、14日及び35日)であった。
【0165】
凍結した死体を全身オートラジオグラフィに供した。
【0166】
非色素性ラットにおける結果(皮膚に焦点)
濃度を報告する際、放射能は[14C]-エステトロール又は[14C]-エステトロール由来の任意の代謝産物に関連していると仮定した。全ての場合において、投与した試験化合物の比活性を、濃度の計算に用いた。放射能の回収率は投与放射能の百分率(%投与量)として報告する。同様に、放射能濃度はμg当量/gとして報告する。
【0167】
[14C]-エステトロールの単回経口投与後の雌スプラーグドーリーラットから得た組織(ここでは皮膚のみ)中の放射能濃度及び組織:血液比をそれぞれ表1及び表2に示す。
【0168】
表1:非色素性雌ラットへの[
14C]-エステトロールの15 mg/kgの公称投与レベルでの単回経口投与後の組織中の放射能濃度(μg当量/gとして表す)
【表1】
【0169】
表2:非色素性雌ラットへの[
14C]-エステトロールの15 mg/kgの公称投与レベルでの単回経口投与後に決定した組織:血液比
【表2】
【0170】
色素性ラットにおける結果(皮膚に焦点)
[14C]-エステトロールの単回経口投与後の雌のリスターフーデッドラットから得られた組織中の放射能濃度及び組織:血液比をそれぞれ表3及び表4に示す。
【0171】
表3:部分的に色素性の雌ラットへの[
14C]-エステトロールの15 mg/kgの公称投与レベルでの単回経口投与後の組織中の放射能濃度(μg当量/gとして表す)
【表3】
【0172】
表4:部分的に色素性の雌ラットへの[
14C]-エステトロールの15 mg/kgの公称投与レベルでの単回経口投与後に決定した組織:血液比
【表4】
【0173】
選択した組織/器官中の放射能総量(Caster[2]から得た、%投与量/組織、組織%体重として表す)を表5に示す。
【0174】
表5:部分的に色素性の雌ラットへの[
14C]-エステトロールの15 mg/kgの公称投与レベルでの単回経口投与後の選択した組織における放射能総量
%投与量/組織で表した結果
【表5】
【0175】
結論:最初のサンプリング時間(0.5時間)では、総投与量/組織に基づいて、放射能は、色素性及び非色素性の皮膚中に投与した投与量の1%超で存在した(それぞれ1.7%及び1.1%)。結果から明らかなように、経口投与後の皮膚において顕著なE4濃度が達成されており、これはエステトロールが皮膚に十分に到達しており、治療上有効であろうことを示す。
【0176】
実施例2:皮膚中の2つの主要な細胞種としてのケラチノサイト及び線維芽細胞に対するin vitroでのE4の効果
この研究の目的は、2D培養中のヒト表皮ケラチノサイト及びヒト真皮線維芽細胞の遊走及び増殖能力に対するエステトロールの影響を評価し、このエストロゲンの影響を別の基準エストロゲンであるエストラジオール(E2)と直接比較することである。
【0177】
この研究は、ケラチノサイト及び線維芽細胞のそれぞれに対する4つの濃度でのE4及びE2の特性を評価することを目的としたin vitroアッセイにある。このアッセイでは、専用の培養装置(IBIDIチャンバ)を使用して、コンフルエントな単層の細胞から生成された標準的な無細胞表面のコロニー形成の測定を行う。アッセイは、それぞれ細胞増殖及び遊走、又は遊走のみに焦点を当てるために、増殖阻害剤の存在下及び非存在下で行う。
【0178】
方法論
細胞モデル-正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)
正常ヒト包皮由来表皮ケラチノサイト(NHEK、Lonza)の培養を用いて研究を行った。細胞を、Human Keratinocyte Growth Supplement(HKGS、ThermoFisher Scientific)及び抗生物質を添加した無血清Epilife培地(ThermoFisher Scientific)中で増殖させた。細胞を37℃、5%CO2雰囲気下の加湿インキュベーター内に維持した。
【0179】
細胞モデル-正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)
正常ヒト包皮由来真皮線維芽細胞(NHDF、ATCC)を10%ウシ胎児血清(FBS、ThermoFisher Scientific)、L-グルタミン及び抗生物質を添加したフェノールを含まないダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、ThermoFisher Scientific)中で増殖させた。細胞を37℃、5%CO2雰囲気下で加湿インキュベーター内に維持した。
【0180】
アッセイ及び分析
細胞を、予め12ウェル培養プレートに挿入した、画定された無細胞ギャップを有する2ウェルシリコーンインサート(IBIDIチャンバ:IBIDI GmbH、80209)にプレーティングした。この培養デバイスにより、細胞コロニー形成を監視するための標準化された500 μm±100 μmの無細胞ギャップを作成することができる。播種24時間後、培養が高いコンフルエントに達したとき、インサート内の細胞を、マイトマイシンC(MMC)を用いて10 μg/mLで2時間処理するか、又はそうしなかった。この2時間の後、インサートを除去し、E2又はE4を用いてMMC存在下又は非存在下で細胞を更に2時間処理した。その後、必要な場合、培養培地を除去し、細胞をMMC非存在下でE2又はE4を用いて22時間処理した。
【0181】
アッセイに関して、ケラチノサイトはHKGSを含まないEpilife培地にプレーティングし、全ての処理をこの培地中で行った。線維芽細胞を2.5%のFBSのみを含有するDMEM培地にプレーティングし、処理はFBS非存在下で行った。
【0182】
E2及びE4をそれぞれ4つの濃度(10-7 M、10-8 M、10-9 M、10-10 M)で適用した。並行して、細胞を陽性対照(ヒトケラチノサイトについてはHKGS 1%、ヒト線維芽細胞については10 ng/mlのPDGF-BB)を用いて処理した。
【0183】
細胞のコロニー形成を監視し、ギャップ閉鎖速度を評価するために、0時間(E2又はE4を用いた処理の開始時及び培養インサート除去に対応)、6時間及び24時間(E2又はE4を用いた処理終了時に対応)という異なる時点で、ギャップの写真を撮った。写真は、顕微鏡Zeiss(Axiover 25-10×対物レンズ)、及びカメラInvenio2EIII(DeltaPix - Lux-Optic)を用いて撮った。コロニー形成領域を、WimAsisプラットフォーム-WimScratchソフトウェアを使用して写真から定量化した。各インサートについて各時点で3枚の写真を撮った。各状態につき3回繰り返して行い、これは各条件及び各取得時点についての合計9枚の写真を意味する。
【0184】
結果
正常ヒト表皮ケラチノサイト(NHEK)
陽性基準として使用したHKGSを用いた処理は、MMC存在下及び非存在下でのコロニー形成領域の有意な増加を可能とし、これにより、試験が妥当であることが確認された。
【0185】
増殖阻害剤(MMC)存在下では、10
-7 M及び10
-10 MでのE4は、処理の24時間後においてエタノール対照と比較して無細胞領域のコロニー形成を有意に増加させ、これは細胞遊走の刺激を示す(
図1)。6時間でのMMC非存在下では、10
-7 M及び10
-10 Mの濃度でのE4は、無細胞領域のコロニー形成をエタノール対照と比較して有意に増加させた(
図2)。
【0186】
増殖阻害剤(MMC)の存在下及び非存在下のいずれにおいても、E2はエタノール対照と比較して無細胞領域のコロニー形成を有意に増加させることができなかった(
図3及び
図4)。10
-7 M~10
-9 Mの濃度範囲において、処理の24時間後には、ギャップ閉鎖に対する阻害効果を有するようにさえ思われる。この阻害は10
-8 Mの濃度についてのみ有意であった。
【0187】
正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)
陽性基準として使用した10 ng/mlでのPDGF-BBを用いた処理は、MMC存在下及び非存在下のいずれにおいてもコロニー形成領域を有意に増加させ、これにより、アッセイが妥当であることが確認された。
【0188】
増殖阻害剤(MMC)非存在下では、E4は無細胞領域のコロニー形成を有意に増加させることができなかった(
図6)。しかし、24時間でのMMC存在下では、10
-7 M及び10
-8 MでのE4は、エタノール対照と比較して無細胞領域のコロニー形成を有意に増加させることができた(
図5)。
【0189】
増殖阻害剤(MMC)存在下では、E2は無細胞ギャップのコロニー形成を有意に増加させることができなかった(
図7)。しかし、24時間でのMMC非存在下では、10
-7 M、10
-8 M及び10
-10 MでのE2は、エタノール対照と比較して無細胞領域のコロニー形成を増加させた(
図8)。
【0190】
結論
この研究において、本発明者らは、10-7 M及び10-10 MでのE4が、培養におけるケラチノサイトによって経時的にコロニー形成された表面を有意に増加させることに気付いた。この効果は、MMC非存在下及び存在下のそれぞれにおいて、処理の6時間及び24時間後に有意であった。したがって、E4は、処理の6時間後に観察されたような細胞増殖を刺激する効果を有する可能性があるが、増殖阻害剤存在下、24時間後のコロニー形成表面に違いが観察されたことを考えると、一定の遅延後にケラチノサイト遊走を誘導する可能性もある。E2の存在下では、ケラチノサイトの増殖又は遊走についての有意な効果は観察できなかった。
【0191】
E4及びE2は、処理の24時間後の線維芽細胞培養に対して有意な活性を示した。E4はむしろ細胞遊走に作用する一方(10-7 M及び10-8 Mで)、E2は線維芽細胞の増殖に特異的な効果を示すように思われた(10-7 M、10-8 M、及び10-10 Mで)。結果を以下の表6にまとめている。
【0192】
表6:エステトロール(E4)又はエストラジオール(E2)のケラチノサイト(NHEK)及び線維芽細胞(NHDF)に対する活性
【表6】
【0193】
実施例3:in vitroモデルでの創傷治癒におけるケラチノサイト、線維芽細胞、及び免疫細胞に対するエステトロール(E4)の効果
急性創傷反応には、局所的に活性化しかつ末梢から集まる様々な細胞種が関与する。このパイロット研究では、エステトロール(E4)の複数の創傷関連細胞種(ケラチノサイト、線維芽細胞、及び免疫細胞)に対する効果を、エストラジオール(E2)の効果と直接比較した。
【0194】
ケラチノサイト及び線維芽細胞の実験
プロトコル
ヒトの皮膚を、採取後30分以内に保持培地(4%ペニシリン-ストレプトマイシン及びアンホテリシンB溶液を含有するDMEM)中で研究室に搬送した。一回脱脂し、皮膚を、4%PSAを含むHBSSで濯ぎ、次いで抗生物質を含まないDPBSで濯ぎ、その後、薄いストリップに切断し、DPBS中の0.2%Dispase II上一晩4℃で浮かせ、その後、手作業で表皮を真皮から分離した。次いで、初代ヒト表皮ケラチノサイト及び初代ヒト真皮線維芽細胞を単離した。
【0195】
初代のケラチノサイト及び線維芽細胞の両方のコンフルエントウェルを、高度に確認されたスクラッチ創傷手順(1 mLの滅菌フィルタの先端を用いる)に供した。スクラッチ後、細胞をDPBSで濯ぎ、処理剤を含む細胞特異的培地を各ウェルに添加した。細胞を、タイコグラフィックライブセルイメージングプラットフォーム(Livecyte 2(商標)、Phasefocus)で24時間~48時間、イメージングした。個々の非標識化細胞の自動追跡を3D細胞測定と組み合わせて、スクラッチ閉鎖速度を含む様々な創傷関連細胞パラメーターを定量化する。
【0196】
E4(10-10 M~10-6 M)及びE2を用いて、マイトマイシンC(MMC、増殖を阻害するため)存在下及び非存在下で、ビヒクルを陰性対照として投与量範囲発見実験を行った。
【0197】
線維芽細胞-結果
広く確認されているin vitroの線維芽細胞単層スクラッチアッセイを用いて、本発明者らは、E4がE2と同程度に、マウス及びヒトの線維芽細胞の両方においてin vitro創傷閉鎖を促進することを実証した(それぞれ
図9A及び
図9B)。アッセイは、C57Bl/6雌マウスから単離した線維芽細胞及び20歳、49歳及び57歳の3人の女性ドナーから提供された余剰腹部皮膚から単離した線維芽細胞を用いて、活性炭処理ウシ胎児血清を含有するフェノールレッドを含まない細胞培養培地で行った。
【0198】
ケラチノサイト-結果
データは、ケラチノサイトの遊走に対するエストロゲン(E4及びE2)の効果が、培養培地中に用いたHKGS(Human Keratinocyte Growth Supplement)の%に依存したことを示している。しかし、15%HKGSを含む培養条件下では、ケラチノサイトに対するE4(10
-10 M及び10
-7 M)の影響はE2の効果より大きいように思われる(
図10)。
【0199】
免疫細胞実験
ヒト単球及びマウス単球(BMDM 骨髄由来単球)で、M1/TH-1(NOS2)及びM2/TH-2(ARG1)の表現型のマーカーを用いてin vitroで免疫細胞の極性化を評価した。
【0200】
プロトコル
国の倫理審査による承認規定の下、完全な患者の書面同意を得た上で、ヒト血液を採取した。新鮮に単離したヒト血液をEDTAバキュテイナ管中に採取し、PBSで1:1に希釈し、histopaque(Merck)上に穏やかに積層させた。直後に100×gで30分間遠心分離し、histopaque界面に形成された白っぽいバフィーコートを吸引し、滅菌PBSで2回洗浄した(100×g、10分間遠心分離)。Miltenyi Classical Monocyte Isolation Kit、LSカラム及びMidiMACsセパレータ(Miltenyi)を用いて、洗浄したバフィー層細胞から、非接触古典的単球(CD14++、CD16-)を単離した。単離した細胞を組織培養プレートに播種し、刺激してPMAを用いて分化させた。
【0201】
E4又はビヒクル(陰性対照)の抗炎症効果を評価するために実験を行った。qPCR方法論を用いて、炎症促進性(MI/TH-1表現型用のNOS2)及び抗炎症性(ME/TH-2表現型用のARG1)の十分に確認されたマーカーを用いて、E2及びE4の免疫細胞極性化への効果を評価した。
【0202】
結果
E4は抗炎症効果を示し、マウスBMDM(骨髄由来単球)又はヒト単球のサブタイプM1(炎症促進性)からサブタイプM2(治癒)への切り替えを促進した。結果をそれぞれ
図11A及び
図11Bに示す。
【0203】
実施例4:in vitroモデルでの創傷治癒におけるケラチノサイト及び線維芽細胞の遺伝子発現に対するE4の効果
RT-qPCRによる遺伝子発現変化を研究することにより、E4の治癒特性を転写レベルで調べた。創傷治癒プロセスに焦点を当てた84個の遺伝子qPCRアレイを用いた。これらのアレイには、細胞外マトリクス(ECM)リモデリング因子、炎症性サイトカイン及びケモカイン並びに増殖因子及び主要シグナリング分子を含む、創傷治癒プロセスの3つの期に重要な遺伝子が含まれている。創傷治癒に対するE4の潜在的効用を強調するために、遺伝子発現における変化は、デルモコスメティックの文脈で解釈した。
【0204】
細胞処理
25 cm2の培養フラスコ(T25)での24時間播種後、細胞をE4で15時間処理した。培養条件はスクラッチ試験に用いたもの(実施例2参照)と同一であり、細胞をFBS/HKGSの非存在下、E4で処理した。遺伝子発現アッセイについて使用した細胞密度は、スクラッチ試験に用いたものよりも低く、創傷閉鎖アッセイの培養インサート中で、ケラチノサイトについての113636 細胞/cm2、及び線維芽細胞についての100000 細胞/cm2に対して、遺伝子発現アッセイについては15800 細胞/cm2であった。実際のところ、遺伝子発現分析は、通常、コンフルエントに達していない(under-confluent)細胞(対数増殖期の間)について行われる。
【0205】
全RNAの抽出
10-7 MのE4又は対照として用いたエタノール0.1%を用いた15時間の処理の終了時に、Qiagen RNeasyキット(Qiagen)を用いて全RNAを抽出した。細胞を冷PBSで濯ぎ、キット付属の適当なバッファーに溶解させた。サプライヤーの推奨に従って抽出を行った。採取したRNAを-80℃で保存した。
【0206】
RNA整合性分析
RNA濃度を分光光度計による測定(QIAxpert、Qiagen)により求め、RNAの質をキャピラリー電気泳動(Agilent Bioanalyzer 2100-Agilent RNA 6000 Nano Kit)によって分析した。
【0207】
cDNA合成
全RNAからキット「RT2 First Strand Kit」(Qiagen)を用いて製造業者の指示に従って逆転写を行った。
【0208】
RT2 Profiler PCRアレイを用いた定量PCR
cDNA集団中の特定マーカーの発現変化を定量化するために、qPCR法を用いた。84個の標的遺伝子に対する特異的プライマーを含むアレイ「RT2 Profiler PCR Arrayヒト創傷治癒」。
【0209】
標的遺伝子の増幅を、「HotStart Taq DNA Polymerase」、及び、検出方法としてのSYBR Greenの使用によってサプライヤーの推奨に従って行った。SYBR Greenは核酸の塩基対の間に挿入されると蛍光を発するマーカーである。したがって、蛍光強度は産生された単位複製配列の量に正比例する。
【0210】
qPCRは、Quantstudio7 Real-Time PCR System(Applied Biosystems)及びそのソフトウェア(QuantStudioリアルタイムPCR Software v1.3、ソフトウェア、Applied Biosystems)を用いて行った。
【0211】
E4で処理した条件について得られたデータを両細胞種におけるエタノール対照と比較した。閾値サイクル(Ct)値を、アレイ上に存在するいくつかのハウスキーピング遺伝子のCt値の平均に対して正規化した(下表に示す)。最大のCtカットオフ値を36サイクルに固定したが、これは、36を超えるCt値は分析において考慮しなかったことを意味する。
【0212】
結果
ヒトケラチノサイト(表7)又は線維芽細胞(表8)を10-7 MのE4を用いて15時間処理すると、創傷治癒プロセスの異なる期に関与する特定の興味深い経路が誘導された。
【0213】
【表7】
表7:培養中ヒト表皮ケラチノサイトのエステトロール(E4)での15時間の処理後の発現が変化した遺伝子のリスト-エタノール対照に対する倍数変化(FC)で表す:FC>1:増加-FC<1:低下
【0214】
表8:培養中ヒト真皮線維芽細胞のエステトロール(E4)での15時間の処理後の発現が変化した遺伝子のリスト-エタノール対照に対する倍数変化(FC)で表す:FC>1:増加-FC<1:低下
【表8】
【0215】
数が少なく振幅も小さいものの、これらの遺伝子発現における変化(エタノール対照と比較)は、E4が炎症促進性因子の下方制御及び結合MMP/TIMPシステムの刺激を介して、炎症期と増殖/リモデリング期との間の切り替えを促進する可能性を示唆している。
【0216】
ヒト線維芽細胞又はケラチノサイトを10-7 MのE4で15時間処理すると、ケモカインCXCL5及びCXCL11、シクロオキシゲナーゼ2(PTGS2)及び線維芽細胞増殖因子2(FGF2)の発現が有意に低下し、増殖期への切り替えが強化された。
【0217】
実施例5:E4の抗酸化特性の証拠
本研究の目的は、マウスリンパ腫細胞株L5178Y TK+/-において、試験品であるエステトロール(E4)によって誘導される活性酸素種(ROS)の発生を調査することであった。
【0218】
プロトコル
対数増殖期のL5178Y TK+/-細胞を、ブラック96ウェル細胞培養プレートに、90 μLの細胞培養培地中1×104細胞でプレーティングした。対照及び試験品を、10 μLのPBS中10%エタノール溶液中の10x濃縮液として細胞に適用し(プレート上のエタノールの最終濃度は1%であった)、これを3回繰り返して行った。細胞を37℃、5%CO2で3時間インキュベートし、ROS試薬を用いて蛍光によりROSの発生を評価した:ROS試薬は、1アンプル(50 μg)の試薬を70 μL DMSOに溶解し、更にこれを2.1 mLの予熱したPBSで希釈して新鮮に調製した。10 μLのROS試薬を各ウェルに添加し、プレートを暗所で30秒間振盪した。プレートを約37℃、5%CO2で1時間30分インキュベートし、492 nmでの励起、520 nmでの発光でもってプレートスキャナーにて蛍光を読み取った。
【0219】
最大100 μMの濃度の陰性対照であるラクテート(ROSを誘導しないことが知られている)及び陽性対照である過酸化水素(細胞内でROSを増加させることが知られている)、並びに、1 μM、10 μM、50 μM、100 μM、1000 μM、及び3000 μMの濃度の試験品を用いて、3つの実験を行った。陰性対照、陽性対照及び試験品で処理した細胞についてのROS誘導の結果を、非処理のビヒクル対照で得られた結果と比較した。
【0220】
結果
陰性対照であるラクテートは、ビヒクル対照と比較した場合に、最大100 μMの濃度でいかなる実験においてもROSを誘導しなかった。陽性対照である過酸化水素は、ビヒクル対照と比較した場合に、3時間の曝露後にROSレベルの増加傾向を示した。
【0221】
最大3000 μMのE4は、L5178Y TK+/-細胞において検出された投与量に依存したROSの低下を引き起こしたが、最大100 μMのラクテートは3時間の曝露後にROSの誘導に影響を与えなかった。
【0222】
結論
E4は3回の実験全てにおいて、ROSレベルにおける投与量に依存した低下を引き起こし、試験した最高濃度(3000 μM)で最大の効果を示し、このことは、本研究においてE4は抗酸化剤として作用したことを示唆する。
【0223】
実施例6:毛包器官培養(ex vivoモデル)
12個~44個の完全長の前頭側頭部の毛包(HF)を、50歳超の4人の女性ドナーから得た。ドナーはそれぞれ59歳、62歳、59歳、及び67歳の白人女性の対象であった(ドナー1:12個の側頭部成長期HF;ドナー2:29個;ドナー3:44個;ドナー4:32個)。文献記載されているように(Edelkamp et al., Methods Mol Biol, 2020, 2154:105-119及びLangan et al., Exp Dermatol, 2015, Dec;24(12):903-1)皮膚から顕微解剖した後、HFを適切な培養培地に置き、顕微解剖の外傷から回復できるように24時間の休止期間を与えた。試験物質(ビヒクル(0.3%EtOH)又は30 μM、3 μM、300 nMの濃度のE4のいずれか)を24時間の終わりに培地に添加した。総培養時間は研究パラメーター及び実験課題に応じて5日~7日であった。毛包器官培養実験の実験デザインを
図12に示す。退行期の開始の遅延能力を分析するために、より長期の培養実験を用いることができる。
【0224】
このモデルにより、E4処理が成長期持続期間を延長し及び/又は退行期の開始を遅延させることができるかどうかを評価することができる。臨床的には、脱毛は成長期にあるHFの低減又は成長期持続期間の短縮化と関連している。したがって、成長期の促進が、脱毛を制限する可能性がある。
【0225】
以下のパラメーターを調査した:
【0226】
ex vivoの毛幹の伸長(デジタル明視野顕微鏡)
このパラメーターはHFの成長速度を反映し、したがってHFの伸長又は毛幹生成と相関する。
【0227】
HFの長さを決定するために、各HFについて、毛球結合組織鞘の端部から遠位の外毛根鞘(ORS)の端部まで、50倍の倍率のデジタル光学顕微鏡(VHX 900 Keyence Corporation、大阪、日本国)及び関連ソフトウェアを使用して測定した(Edelkamp et al., Methods Mol Biol, 2020, 2154:105-119、及びLangan et al., Exp Dermatol, 2015, Dec;24(12):903-1)。測定はベースラインで、24時間の休止期間後、及びその後、実験の全継続期間中、24時間~48時間毎に行った。伸長は、成長のミリメートルとして及び/又はベースライン測定からの百分率伸長として表される。
【0228】
毛母ケラチノサイトの増殖及びアポトーシス
胚芽毛母ケラチノサイトは、大部分、成長期中に増殖する。その増殖は成長期/退行期移行中に劇的に低減し、後期退行期ではなくなる(Langan et al., Exp Dermatol, 2015)。毛母ケラチノサイトのアポトーシスを、成長期/退行期移行の追加的指標として使用する。
【0229】
増殖は、明確に特定された領域における、増殖マーカーKi67(又はBrdU又はEdU等の別の増殖マーカー)に陽性であった毛母ケラチノサイト(胚芽毛母ケラチノサイト、Auber's lineの下)の百分率を定量化することで評価し、アポトーシスは、同じケラチノサイト集団(Auber's lineの下)及び皮質前毛母ケラチノサイト(Auber's lineの上)において、TUNEL(TdT-mediated dUTP-biotin nick-end labelling)免疫蛍光(又は活性化カスパーゼ-3等の別のアポトーシスマーカー)を使用して評価した(Langan et al., Exp Dermatol 2015)(
図13)。
【0230】
マクロ的及びミクロ的毛周期段階分類及び毛周期スコア
毛周期段階分類及び毛周期スコアの計算は毛周期の進行及び成長期-退行期移行の指標である(Langan et al., Exp Dermatol, 2015)。毛周期段階分類及び毛周期スコアは培養終了時に行った。各HFの毛周期段階について、いくつかの確立されたマクロ的及びミクロ的パラメーターに基づいて決定した(Langan et al., Exp Dermatol, 2015)。マクロ的毛周期段階については、生きたHFの明視野画像をデジタル顕微鏡(Keyence VHX 900)で撮影した。ミクロ的毛周期段階分類は、Ki67/TUNEL免疫組織学及びマッソン・フォンタナ組織化学を使用して決定した。毛周期段階分類は、各毛周期段階におけるHFの百分率を計算することにより分析した。毛周期スコアは、以下のように任意のスコアを各毛周期段階に与えることにより決定した:成長期:100、初期退行期:200、中期退行期:300、後期退行期:400、異栄養性:500、スコアが高いほど退行期にあるHFの数が多いことを示す。
【0231】
【0232】
成長期及び初期退行期だけでなく、異栄養性毛包の代表的な画像も
図14に示す。
【0233】
培地への乳酸脱水素酵素(LDH)の放出
LDHは損傷した細胞の細胞質から培養培地に放出される。したがって、薬剤の細胞毒性は、文献記載のように(Gherardini et al Int J Cosmet Sci, 2019, Apr; 41(2)):164-182)、比色アッセイを用いて(Cytotoxicity Detection Kit [LDH]、Roche)、培養培地内に存在するLDHの活性に基づいて推定できる。各培養について日毎に収集した上澄みに対して測定を行い、ブランクに対して正規化した。
【0234】
最大放出について、培地中へのLDHの最大放出を誘導するために、HFをビヒクル媒地中、1% Triton X 100にて37℃で30分間処理した。
【0235】
アルカリホスファターゼ活性-毛乳頭(DP)誘導性
アルカリホスファターゼはDP誘導性の指標である(Yang, J Dermatol Sci, 2010, Jan; 57(1):2-11)。アルカリホスファターゼのin situ活性をDPにおいて測定した。
【0236】
バーシカン発現-DP誘導性
バーシカンは、巨大なコンドロイチン硫酸プロテオグリカン分子であり、成長期HFのDPにおいて発現し、退行期HFにおいて減少し、その発現は毛の誘導性特性と相関する(Yang, J Dermatol Sci 2010)。バーシカンの強度をDPにおいて分析した。
【0237】
CD34発現-幹細胞子孫
CD34はHFバルジ幹細胞の子孫によって発現されるマーカーである。これは、峡部(バルジの下(sub-bulge)から毛球上までの領域)の下、外毛根鞘(ORS)の最外層において発現される(Purba et al., BioEssays, 2014, May; 36(5):513-25)。CD34の発現及びCD34+細胞の百分率を毛球上ORSにおいて分析した。
【0238】
DP線維芽細胞の遊出
DPに属する線維芽細胞は、成長期と退行期との間の移行中、遊走する(Hawkshaw et al., Journ of Invest Dermatol, 2015, 135(8):2129-2132)。退行期開始時に、DP線維芽細胞がDP茎を通って毛球部毛根へ遊出し、成長期誘導時にこれはDPに遊走して戻る。したがって、DP茎及びDPに存在するDP線維芽細胞の数を定量化(Kloepper et al., Exp Dermatol, 2010, Mar; 19(3):305-12)すれば、成長期誘導又は退行期促進の直接的な読み出しとなる。K15発現-幹細胞。
【0239】
K15発現-幹細胞
K15はHFバルジ幹細胞及びその子孫で発現されるI型サイトケラチンである(Purba et al., BioEssays, 2014)。これはバルジ、バルジ下(infra-bulge)及び毛球上ORSにおいて発現される。バルジ幹細胞はK15発現、細胞形態及び解剖学的位置(皮脂腺の下、立毛筋がHFに付着する領域にある)を用いて特定される。K15発現をバルジ基底層において及び毛球上ORSにおいて分析し、K15陽性細胞の増殖をKi67免疫蛍光染色と組み合わせて評価した。
【0240】
統計
各ドットは単一の毛包を表す;平均±SEM;GraphPad Prism 9;D'Agostino & Pearsonオムニバス正規性検定;群比較に関して(# p<0.05、## p<0.01、### p<0.001、#### p<0.0001)、非ガウス分布(クラスカル・ウォリス検定、Dunnの多重比較検定-各群対ビヒクル)、ガウス分布(One-way ANOVA、Dunettの又はHolm-Sidakの多重比較検定-各群対ビヒクル);一対比較(* p<0.05)、非ガウス分布(マン・ホイットニー)、ガウス分布(t検定);ns、有意性なし。少なくとも1つの群が、所与の群比較又は一対比較においてガウス分布を示さない場合には、非ガウス分布用の統計に従った。
【0241】
n=3~4のドナー、個々のHF。データはまずガウス分布に関してD'Agostino & Pearson オムニバス正規性検定を用いて分析し、ROUT法(0=10/o)を用いて異常値を特定し、除去した。データがガウス分布に従う場合、one-way ANOVA分析を行い、続いてHolm-Sidakの多重比較検定を行った(ビヒクル固定及び対応のないスチューデントのt検定対ビヒクル)。データが小さすぎてデータがガウス分布に従うかどうかを決定できない場合、又はデータがガウス分布に従わない場合、クラスカル・ウォリス検定を行い、続いてDunnの多重比較検定を行った(ビヒクル固定及びマン・ホイットニー検定対ビヒクル)。「成長期のみ」の評価にはn=3の患者のデータのみが含まれることに留意されたい。ドナー1はビヒクル群に成長期にあるHFを有しない。
【0242】
結果
-試験した全ての濃度のE4は、HFの細胞毒性(培地へのLDH放出)を誘導しなかった(
図15)。
-E4は毛幹生成を変えなかった(
図16)。
-ミクロ的には、3 μM(有意)並びに300 nM及び30 μM(傾向的)のE4は、成長期を延長した(
図17)。
-3 μM(有意)並びに300 nM及び30 μM(傾向的)のE4は、毛母ケラチノサイトのアポトーシスに影響することなく、毛母ケラチノサイトの増殖を増加させた(
図18)。
-試験した全ての濃度のE4は、DP細胞におけるバーシカン発現及びアルカリホスファターゼ活性を傾向的に増加させた(
図19)。
-DP線維芽細胞遊出分析により、試験した全ての濃度のE4は、DPにおける細胞密度に著しい影響をおよぼさず(
図20)、全ての濃度が細胞密度を傾向的に減少させ、300 nM及び3 μMのE4はDP茎における細胞の総数を有意に低減させた(
図21)が、E4は誘導毛球部毛根における細胞密度に有意な影響をおよぼさなかった(
図22)ことが明らかとなった。
-バルジ基底層において、3 μMのE4がK15陽性細胞の百分率を有意に減少させたが、30 μM(有意)並びに3 μM及び300 nM(傾向的)のE4はその増殖を増加させた(
図23)。
-毛球上ORSにおいて、E4はK15陽性細胞の百分率にいかなる影響もおよぼさなかったが、300 nM(有意)及び3 μM(傾向的)のE4はその増殖を減少させた(
図24)。
-3 μM(有意)並びに300 nM及び30 μM(傾向的)のE4は、毛球上ORSにおけるCD34陽性細胞の百分率を増加させた(
図25)。
【0243】
考察及び結論
ここで報告する実験では、毛の成長促進の文脈における、エストロゲン化合物E4の、毛周期、毛母ケラチノサイト、DP誘導性及びDP線維芽細胞遊出、幹細胞維持、並びに子孫生成に対する潜在的な効果を調査した。実験により、試験した濃度のE4がHFの細胞毒性(培地へのLDHの放出)を誘導しなかったことが確認された。最も重要なことに、4人の個々のドナーからのデータから、E4が、傾向的に(300 nM及び30 μM)及び有意に(3 μM)ex vivoで成長期を延長させたことが明らかとなった。3 μMのE4の有意な成長期延長効果は、DP茎における細胞密度の減少によって更に支持された。というのもDP線維芽細胞は退行期においてDPからのその遊出中にこの特定の区分に蓄積されるからである(Kloepper et al., Exp Dermatol. 2010)。成長期延長効果は、3 μMのE4での処理後の毛母ケラチノサイトの増殖の有意な増加によっても裏付けられた。
【0244】
データは、E4の成長期延長効果が、少なくとも部分的に、DP線維芽細胞誘導性の刺激によって媒介された可能性があることを示唆した。実際、試験した全ての濃度のE4は、DPにおけるアルカリホスファターゼ活性及びバーシカン発現を傾向的に上方調節するように見えた。
【0245】
バルジにおいて、3 μMのE4が多能性HF幹細胞の増殖速度を傾向的に増加させるように見えた一方で、これはK15陽性細胞の百分率を有意に低減させた。しかし、この処理は、毛球上ORSにおける幹細胞子孫の生成及び/又は活動に有益な影響をおよぼした。具体的には、3 μMのE4は増殖性K15陽性細胞の数を傾向的に減少させ、かつCD34陽性細胞の百分率を有意に増加させ、後者はE4の成長期延長効果を更に裏付けた(Purba et al., 2014)。
【0246】
まとめると、これらの実験は、毛の成長促進のための3 μMのE4処理の探求を更に促すものであった。E4は成長期を維持し、HFが縮小化するのを防ぎ得る能力を有する可能性がある。上記の実験を、FPHL患者からの、影響させた及び影響させない終端及び中間の顕微解剖した完全なHFを用いて繰り返す。これによりE4での処理の有益な効果が見られることが期待される。
【0247】
実施例7:閉経期(閉経周辺期及び閉経後)の女性における脱毛に対するエステトロール治療の効果を評価するための臨床研究
アンドロゲン性脱毛症の閉経後女性におけるエステトロールの効果を評価し、毛のパラメーターへの影響を評価するための無作為化二重盲検プラセボ対照第二相(パイロット)研究を開始する。
【0248】
研究デザイン:
この無作為化二重盲検プラセボ対照第二相(パイロット)研究は、産婦人科学的及び皮膚科学的という2つの部分から成り、これらはそれぞれの専門分野に特化した2つの異なる検査施設で行われる。
【0249】
対象適格性の決定には、サビンスケールを用いた脱毛パターンの分類が含まれる。対象を無作為に2つの治療群の一方に割り当て、20 mgの一水和物としてのE4又はプラセボのいずれかを与える。
【0250】
MHTの有効性の調査には、脂質及びグルコースの代謝、並びに骨代謝回転の評価が含まれる。さらに、Clinical Global Impression scale(CGI)を使用して医師が全体的に改善を評価する。皮膚科学的調査には、定量的な毛の測定、対象による自己評価(Subject Self-Assessment)(SSA)、及び毛の成長についての責任医師の全体評価(Investigator's Global Assessment)(IGA)が含まれる。さらに、閉経期特異的な生活の質(MENQOL)及び皮膚科学的QoL(Dermatology Life Quality Index [DLQI])のアンケートに対象が回答する。エステトロール(E4)の安全性を、全ての対象において研究全体を通して評価する。
【0251】
参加者数(計画:
60人の参加者(治療群1:30人、治療群2:30人)
このサンプルサイズは、標的領域毛数(TAHC)における群間で20本/cm2の差を検出するために、標準偏差25本/cm2を仮定し、ノンパラメトリックアプローチ(Sauerbronn, int J Gynaecol Obstet, 2000, Jan; 68(1):35-41)の使用を考慮して、5%の両側第一種過誤及び80%の検出力に関して決定した。
【0252】
有効性変数
閉経期ホルモン補充(MHT)に関する有効性変数:
空腹時血液サンプルの研究所検査によって評価した場合の、脂質及びグルコースの代謝、並びに骨代謝回転に対する効果の評価
CGI評価
さらに、MENQOLアンケートに対象が回答する。
【0253】
皮膚科学的有効性変数:
皮膚科学的測定及び評価は、ベースライン(スクリーニング時又は次の来訪時)及び来訪時(例えば、12週目及び24週目、4ヶ月目、8ヶ月目及び12ヶ月目)に行う。
最上位の皮膚科学的有効性変数は以下のとおりである:
標的領域毛数(TAHC)、
毛の成長評価(HGA)。
他の変数は副次的な変数として考慮する。
毛のパラメーターは、以下の測定を用いて評価する。
【0254】
定量的な毛の測定のための標準化接写撮影(HairMetrix Phototrichogram、Canfield)からのデジタル画像分析:
標的領域毛数(TAHC)及び、
非産毛及び産毛/産毛様(縮小化)毛について個別に、標的領域毛幅(TAHW)。
標準化接写撮影を補助するために、ベースライン及び1回以上の来訪の間に頭皮マイクロドットタトゥーを行う。
【0255】
Canfieldカメラ装置ソフトウェアを介してベースラインで撮影した対象の頭皮の全体写真を使用したSSA及びIGAのための標準化全体撮影(Global Photography)、並びに、それと、Canfield供給のラップトップにインストールされたCanfieldレビューソフトウェアで即時に利用可能とされたリアルタイムの全体写真それぞれとの比較
【0256】
頭皮の毛の成長の対象による自己評価は以下の3つの評価によって行う:
毛の成長評価(HGA)(Olsen EA, Whiting D, Bergfeld W, Miller J, Hordinsky M, Wanser R, et al. A multicenter, randomized, placebo-controlled, double-blind clinical trial of a novel formulation of 5% Minoxidil topical foam versus placebo in the treatment of androgenetic alopecia in men. J Am Acad Dermatol. 2007;57:767-74)
【0257】
頭皮の毛の成長を、以下の7段階評価を使用してベースライン(来訪X)と比較する:
[-3]大幅に減少
[-2]中程度に減少
[-1]わずかに減少
[0]変化なし
[1]わずかに増加
[2]中程度に増加
[3]大幅に増加
これは以下のステートメントに対するものである:
「私の頭皮の毛の成長は、ベースラインと比較して...。」
【0258】
有効性変数:毛の成長指数(HGI):
毛の成長指数(HGI)(Gubelin Harcha W, Barboza Martinez J, Tsai TF, Katsuoka K, Kawashima M, Tsuboi R, et al. A randomized, active- and placebo-controlled study of the efficacy and safety of different doses of dutasteride versus placebo and finasteride in the treatment of male subjects with androgenetic alopecia. J Am Acad Dermatol. 2014;70:489-98 e3参照)
【0259】
頭皮の毛の成長を、以下の7段階評価を使用して健康アウトカムアンケートでベースライン(来訪X)と比較する:
[-3]非常に少ない
[-2]中程度に少ない
[-1]わずかに少ない
[0]同じ量
[1]わずかに多い
[2]中程度に多い
[3]非常に多い
これは以下の3つの質問に対するものである:
「治療開始以来、私が毛のボリューム低下領域を見るとき、私は...(頭皮)を見ることができる」。
「治療開始以来、私の毛は今...(頭皮)を覆っている」。
「治療開始以来、私の頭の毛のボリューム低下領域の外観(厚さ/質/量)は...」。
【0260】
毛の成長満足度評価基準(Hair Growth Satisfaction Scale)(HGSS)(Gubelin Harcha W, Barboza Martinez J, Tsai TF, Katsuoka K, Kawashima M, Tsuboi R, et al. A randomized, active- and placebo-controlled study of the efficacy and safety of different doses of dutasteride versus placebo and finasteride in the treatment of male subjects with androgenetic alopecia. J Am Acad Dermatol. 2014;70:489-98 e3参照)
【0261】
頭皮の毛の成長/外観を、以下の7段階評価を使用してベースライン(来訪X)と比較する:
[-3]非常に不満足
[-2]不満足
[-1]やや不満足
[0]中立/満足でも不満でもない
[1]やや満足
[2]満足
[3]非常に満足
これは5つの質問に対するものである、「あなたは...についての感じにどれだけ満足していますか」:
あなたの毛全体の外観。
あなたの頭の治療領域内の毛のボリューム低下領域(複数の場合もある)の外観。
治療領域で見ることができる頭皮の量。
治療領域の毛の量。
治療領域での毛の成長。
【0262】
頭皮の毛の成長の責任医師による全体評価(IGA)は以下の7段階評価を使用して行う:
[-3]大幅に減少
[-2]中程度に減少
[-1]わずかに減少
[0]変化なし
[1]わずかに増加
[2]中程度に増加
[3]大幅に増加
【0263】
さらに、DLQI及びHairdex(商標)(Fischer TW, Schmidt S, Strauss B, Elsner P. Hairdex Ein Instrument zur Untersuchung der krankheitsbezogenen Lebensqualitaet bei Patienten mit Haarerkrankungen. Hautarzt., 2001 Mar; 52 (3):219-27参照)について対象は回答することができる。
【0264】
安全性変数:
病歴及び産婦人科学的病歴
理学的検査
産婦人科学的検査
乳房検査
皮膚の皮膚科学的検査
バイタルサイン
心電図(ECG)
パパニコロウ(PAP)テスト
経膣超音波(TVUS)
マンモグラフィー
研究所検査:
下記を目的とする空腹時採血
血液学/化学
参加のための脂質/グルコースパラメーター
下記を目的とする採血:
参加のための卵胞刺激ホルモン(FSH)及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)
尿妊娠検査
事前の及び併用投薬について全研究期間を通して確認及び観察する。
有害事象(AE)について全研究期間を通して監視及び収集する。
【0265】
参加基準:
対象は、以下の全ての参加基準を満たした場合に治療に割り当てられる:
1.いずれかの試験手順の開始前で、現地の規制上の要件に従って試験の性質が説明された後の、署名及び日付のある記入済みインフォームドコンセント用紙及び全ての必要なプライバシー許可;
2.スクリーニング時に年齢が40歳以上65歳以下の女性;
3.子宮摘出の対象について:子宮摘出がスクリーニング開始の少なくとも6週間より前に行われたはずであることが文書化されている。子宮摘出は、全摘又は亜全摘(すなわち子宮頚部を除去しない)とすることができる;
4.子宮非摘出の対象について:TVUSで2層の子宮内膜の厚さが4 mm以下;
5.閉経期に伴うVMSの緩和を目的とする治療を求めている;
6.体格指数が18.5 kg/m2以上35.0 kg/m2以下;
7.スクリーニング中又はスクリーニング開始前の9ヶ月以内に行われたマンモグラムで、顕著な疾患の兆候が示されない1;
8.以下のいずれかで定義される閉経後の状態:
a.子宮非摘出の対象について:
少なくとも12ヶ月の自然な無月経
又は、血清FSHレベルが40 mIU/mL超(エストロゲン/プロゲスチン含有薬の休薬後に得た値(該当する場合)、除外基準18及び20を参照)の6ヶ月の自然な無月経
又は、子宮摘出術の有無にかかわらず、両側卵巣摘出術2の術後6週間;
b.子宮摘出の対象について:
血清FSHが40 mIU/mL超(エストロゲン/プロゲスチン含有薬の休薬後に得た値(該当する場合)、除外基準18及び20を参照);
又は、両側卵巣摘出術2の術後少なくとも6週間;
9.来訪1の前の病歴、身体及び産婦人科学的検査、並びに臨床評価に基づいた、責任医師の判断での、良好な身体的及び精神的状態;
10.プロトコルの要件、指示、及びプロトコルに記載の制限事項を理解し遵守できる;
11.検査日誌及び質問票への記入が可能で、協力する。
12.少なくとも1年の非喫煙者(電子たばこを含む)
【0266】
皮膚の状態を考慮した更なる参加基準:
13.関連密度領域における頭皮の毛の密度がサビンスケールでn.2~n.6の段階の、側頭部及び後頭部に対する頭頂の毛の密度の減少。
14.対象が研究期間全体を通して同じヘアスタイル、毛の長さ及び毛の色を維持する意志がある(スクリーニング/ベースラインにおける承認された写真より前の同じ毛の染色間隔を意味する)。
15.対象が研究全体を通して他の全体的なヘアケアの製品及び計画を続けることに同意する。
16.対象が同じ食事及びサプリメントのパターンを維持することに同意する。
【0267】
1対象は、研究に登録するためにはBreast Imaging-Reporting And Data System(BI-RADS)スコアが1又は2でなければならない。不十分なマンモグラム結果、すなわちBI-RADS 0は許容されず、更なる評価が必要である。検査施設は、対象の研究ファイルに関する公式な報告書の複製を取得する必要がある。この研究の一貫としてマンモグラフィーが行われる場合は、デジタル化された画像を取得すべきである。
2両卵巣が摘出されたことを立証した対象の医師からのレターヘッドにおける報告書又はステートメントが必要である。
【0268】
除外基準:
対象は、以下の除外基準のうちの1つを満たす場合、治療に割り当てられない:
1.スクリーニング来訪の1年より前に診断された場合の基底細胞癌又は非転移性の扁平上皮癌を除く、悪性腫瘍の病歴3;
2.責任医師が、乳房検査及び/又はマンモグラフィーで、乳癌の除去のために追加的臨床試験が必要であろう乳癌と疑われる、何らかの臨床的に顕著な知見を見出した場合(但し、超音波により単純嚢胞と確認された場合は許容される);
3.部分的に子宮摘出及び子宮非摘出の対象における、意義不明な異型扁平上皮細胞(ASC-US)又はそれ以上(低度扁平上皮内病変[LSIL]、異型扁平上皮細胞は、高度扁平上皮内病変[HSIL][ASC-H]、HSIL異形又は悪性細胞を除外することができない)を用いたPAPテスト4。注:リフレックスヒトパピローマウイルス(HPV)テストを行い、ハイリスク発癌性HPVサブタイプ16及び18について陰性の場合、ASC-USは許容される;
4.子宮非摘出対象について:
a.子宮癌、子宮内膜増殖症の存在;
b.子宮内膜ポリープ(複数の場合もある)の存在;
c.診断未確定の膣出血又は診断未確定の異常子宮出血;
d.子宮内膜アブレーション;
e.責任医師の判断によるエストロゲン及び/又はプロゲスチン療法の使用に禁忌となる子宮/子宮内膜の異常。これには子宮腺筋症又は顕著な筋腫の存在又は病歴が含まれる;
5.スクリーニング中の収縮期血圧(BP)が139 mmHg超、拡張期BPが89mmHg超5;
6.静脈又は動脈血栓塞栓症(例えば表在性又は深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳卒中、心筋梗塞、狭心症等)の病歴、又は静脈血栓塞栓症(VTE)の一親等内の家族の病歴;
7.既知の後天性又は先天性の凝固障害又は異常凝固因子(既知の血栓性素因を含む)の病歴;
8.研究所において、空腹時のグルコースの値が125 mg/dL超、及び/又は糖化ヘモグロビンの値が7.5%超6;
9.異常リポ蛋白血症(LDLが190 mg/dL超及び/又はトリグリセリドが300 mg/dL超)7;
10.胆嚢疾患の存在又は病歴(胆嚢摘出した場合は除く);
11.全身性エリテマトーデス;
12.胃バイパス手術を含むあらゆる吸収不良疾患;
13.スクリーニング開始前の12ヶ月間における急性肝疾患の病歴、又は慢性若しくは重度の肝疾患[アラニントランスアミナーゼ(ALT)又はアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)が基準上限値(ULN)の2倍超、ビリルビンがULNの1.5倍超]若しくは肝腫瘍の存在若しくは病歴;
14.慢性又は現在の急性腎機能障害(推定糸球体濾過量60 mL/分未満);
15.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎又はC型肝炎血清学が陽性;
16.ポルフィリン症;
17.責任医師の判断での主要な精神疾患(例えば統合失調症、双極性障害等)の診断又は治療;
18.以下のエストロゲン/プロゲスチン含有薬(複数の場合もある)の使用:
a.膣の非全身性ホルモン製品(リング、クリーム、ゲル)については、スクリーニング開始の1週間前;
b.全身的効果を有する膣又は経皮エストロゲン又はエストロゲン/プロゲスチン製品については、スクリーニング開始の4週間前;
c.経口エストロゲン及び/又はプロゲスチン製品、及び/又は選択的エストロゲン受容体モジュレータ療法については、スクリーニング開始の8週間前;
d.子宮内プロゲスチン療法については、スクリーニング開始の8週間前;
e.プロゲスチン植え込み又はエストロゲン単独注射可能な医薬品療法については、スクリーニング開始の3ヶ月前;
f.エストロゲンペレット療法又はプロゲスチン注射可能な医薬品療法については、スクリーニング開始の6ヶ月前;
19.アンドロゲン/デヒドロエピアンドロンステロン(DHEA)含有薬の使用:
a.経口、外用、膣用又は経皮アンドロゲンについては、スクリーニング開始の8週間前;
b.植え込み可能又は注射可能アンドロゲン療法については、スクリーニング開始の6ヶ月前;
20.スクリーニング開始の2週間前までの、VMSの治療のためのフィトエストロゲン又はブラックコホシュの使用;
21.試験参加中、除外基準18、19及び20に記載の全てのホルモン製品の停止に協力しない;
22.治療が不十分な甲状腺機能障害。スクリーニング時の遊離チロキシン(T4)が正常範囲内であれば、低い又は高いTSHの対象も許容される8。
23.調査対象の製品若しくはこの分類の医薬品若しくはその任意の成分に対するアレルギー/不耐の病歴若しくは存在、又は責任医師の見解において対象の参加が禁忌である医薬品若しくは他のアレルギーの病歴;
24.報告された観察に基づいた、責任医師の判断による、スクリーニング開始前の12ヶ月間におけるアルコール又は薬物の乱用(マリファナを含む(合法であっても))又は依存の病歴;
25.スポンサー、又はCROの被雇用者、又は責任医師の直接の監督下にある及び/又は試験に直接関与する被雇用者;
26.責任医師の見解で、対象に危険をもたらすであろう、臨床的に有意な全身性疾患、不安定な医学的疾病、生命を脅かす疾患、又は現在の悪性腫瘍の既知の又は疑わしい病歴を有する対象;
27.1ヶ月(30日)以内に別の調査対象薬の臨床試験に参加した、又はスクリーニング開始前1ヶ月(30日)以内に調査対象薬を与えられた;
28.何らかの理由で責任医師により不適格と判断される。
【0269】
毛の状態への影響を考慮した更なる除外基準:
29.対象が、標的領域の頭皮に、真菌性又は細菌性感染、脂漏性皮膚炎、乾癬、湿疹、毛包炎、瘢痕、又は頭皮の萎縮等のIMP又は検査方法の適用に干渉する可能性のある何らかの皮膚科学的障害を有している。
30.対象が、責任医師の見解において、IMPの評価に干渉する可能性がある、又は干渉する局所、全身(例えば、管理されていない甲状腺疾患、毛の成長又はパターンに関わる特定の遺伝的障害)、又は外科治療を必要とする皮膚の病状又は状態を有している。
31.対象が、高アンドロゲン血症の病歴又は何らかの兆候(例えば、過剰な顔面/陰部/臍周りの毛の成長、重度のにきび、病歴における過剰なテストステロン値)を有している。
32.対象に、付け毛、通気性のないウィッグ又はヘアボンディングの、現在又は最近の使用歴(6ヶ月以内)がある。
33.対象が、時期を問わず、頭皮毛髪移植を行った。
34.対象が、びまん性休止期脱毛、円形脱毛症、瘢痕性脱毛症、抜毛癖、又はAGA以外の状態/疾患に起因する活発な脱毛の病歴を有している。
35.対象が、激しい食事又は体重の変化の現在又は最近の経歴(6ヶ月以内)を有している、又は摂食障害(複数の場合もある)、何らかの減量手術歴(胃バイパス、胃スリーブ、胃ステープリング)、過去6ヶ月以内のマクロ又はミクロの栄養不足(すなわち研究所試験により確認された臨床的に有意な鉄不足、タンパク質不足)、及び/又は現在の何らかの吸収性疾患(すなわちセリアック、過敏性腸症候群等)の診断を有している。
36.対象が以下のいずれかの局所的な調製品又は処置を頭皮に用いた:
a)ベースライン(来訪2)の前12週間以内の、ミノキシジル、ホルモン療法、抗アンドロゲン物質、又は毛の成長に影響することが知られている他の薬剤を含む毛の成長のための局所頭皮治療。
b)ベースライン(来訪2)の前4週間以内の、毛の成長に影響すると知られている又は合理的に考えられる局所頭皮市販薬(OTC)又は美容的治療(例えばMaxilene、Nioxin、Foltene等のブランド)、又は、ノコギリヤシ、銅等を含む毛の健康又は毛の成長用の製品。
c)ベースライン(来訪2)の前4週間以内の、コルチコステロイド、ピメクロリムス、タクロリムス、及びレチノイド(但しこれらに限定されない)を含む毛の成長に付随的に影響をおよぼす可能性のある局所頭皮治療。
d)ベースライン(来訪2)の前6ヶ月以内の、頭皮処置(外科的、レーザー、光、又はエネルギー治療、マイクロニードリング等)。
e)1年以内の、頭皮の多血小板血漿(PRP)処置。
37.対象が以下の全身投薬又は処置を用いた:
a)来訪2/ベースラインの12週間以内の、βブロッカー、シメチジン、ジアゾキシド、又はコルチコステロイド(筋肉内及び病巣内注射を含む)。吸入、鼻腔内、又は眼用のコルチコステロイドは、使用が安定している限り(ベースライン(来訪2)の前少なくとも4週間の間投与量及び頻度が不変であると定義)、許可される。
b)ベースライン(来訪2)の前6ヶ月以内の、レチノイド、イソトレチノイン、1日10000 IU超のビタミンA摂取、又はシクロスポリン療法。
c)ベースライン(来訪2)の前12ヶ月以内の、任意の5αレダクターゼ投薬(すなわち、フィナステリド(Propecia(商標)等)、デュタステリド又は同様の製品(複数の場合もある))。
d)過去5年間内の、化学療法又は細胞毒性剤。
e)時期を問わない頭皮の放射線治療。
f)ベースライン(来訪2)の前6ヶ月以内の、抗アンドロゲン物質;抗アンドロゲン物質(シプロテロンアセテート、クロルマジノンアセテート等)と避妊ピルとの併用は、使用が安定している限り(ベースライン(来訪2)の前少なくとも3ヶ月の間投与量及び頻度が不変であると定義)、許可される。
g)ベースライン(来訪2)の前3ヶ月以内又は研究の間の、責任医師の見解で、対象の毛又は毛の成長に大きく影響する可能性がある、スピロノラクトン、ビタミン(5 mg/日超のビオチン摂取を含む)又はホメオパシーサプリメントである毛の成長若しくは毛の健康用の製品、又はアナボリックステロイドを含む他のステロイドホルモン(任意の形態)を含む(但しこれらに限定されない)、他の全身療法。
【0270】
3皮膚の基底細胞癌又は非転移性の皮膚扁平上皮癌であって、対象のスクリーニングの1年より前にいずれかが診断されている場合のみ除外される。
4スクリーニング前の18ヶ月以内、又はスクリーニング時に試験が行われるまでに、書面にて示されるとおり。
5更に5分間~10分間座った後でも値が参加基準を外れる場合、スクリーニング時にBP測定を繰り返すことができる。適格性判断には最後の測定値を用いる。安定した降圧剤レジメンで管理されている軽度~中程度の高血圧がある対象は、全ての参加/除外基準を満たせば、登録可能である。メチルドパ又はクロニジン含有降圧剤投薬を用いる対象は含まれることはない。
6過去6ヶ月間、並びに休薬及びスクリーニング中に評価された空腹時グルコース及び糖化ヘモグロビンの研究所での値が考慮されなければならない。
7脂質低下療法を用いている対象は、スクリーニングの前少なくとも1ヶ月にわたって安定した用量でなければならない。
8スクリーニング時のTSHが正常範囲外の場合のみ、リフレックスT4試験をスクリーニング時に行うべきである。
【0271】
統計的方法:
分析は、intention-to-treat及びper-protocol集団に対して行う。分類別要因を頻度及び百分率を用いてまとめ、連続した測定値を平均及び標準偏差を用いて記述する。
【0272】
正規分布に従うデータについては、ベースラインからの群内変化の有意性をスチューデントのt分布から推定し、ベースラインからの群間変化の比較は独立t検定を用いて行う。結果は平均及び95%信頼区間として表示する。正規分布に従わないデータについては、同等のノンパラメトリック手法を使用する:ベースラインからの群内変化についてはウィルコクソンの符号順位検定、群間比較についてはマン・ホイットニーU検定を使用する。結果は中央値、最小値及び最大値として表示する。
【0273】
分析はSASソフトウェア(Stat version 15.2; SAS Institute, Cary, NC, USA)を用いて、有意水準を0.05として行う。この探索的POC試験では、検定の多重性に対する調整は行わない。
【符号の説明】
【0274】
図面訳
図1
Acellular area covering (% relative to the acellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図2
Acellular area covering (% relative to the acellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図3
Acellular area covering (% relative to the acellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図4
Acellular area covering (% relative to the acellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図5
Acellular area covering (% relative to the acellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図6
Acellular area covering (% relative to the acellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図7
Acellular area covering (% relative to the acellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図8
Acellular area covering (% relative to the acellular area at t=0h) 無細胞領域被覆(t=0時間での無細胞領域に対する相対%)
図9
A
Vehicle ビヒクル
Mouse Fibloblasts マウス線維芽細胞
% closure %閉鎖
Veh ビヒクル
B
Vehicle ビヒクル
Human Fibroblasts ヒト線維芽細胞
% closure %閉鎖
V ビヒクル
図10
Vehicle ビヒクル
図11
A
Human monocytes ヒト単球
M1 Veh M1ビヒクル
B
Mouse BMDM マウスBMDM
M0 Veh M0ビヒクル
M1 Veh M1ビヒクル
図12
resting period 休止期間
day 0 0日目
microdissection of full-length HFs from scalp skin or FUEs 頭皮又はFUEからの完全長HFの顕微解剖
Froze 3 anagen D0 HFs 3個の成長期の0日目HFを凍結した
48-well plate (1 HF/well) 48ウェルプレート(1 HF/ウェル)
day 1 1日目
Treatment start 処理開始
day 3 3日目
Medium change 培地交換
day 5 5日目
Decision to continue culture if more than 20% of HFs in the vehicle group are still in anagen. ビヒクル群のHFの20%超が未だ成長期にあれば培養継続の決定
day 6 6日目
Close ex vivo culture ex vivo培養を完了
Embedding of HFs in cryomatrix for protein analysis タンパク質分析用にクリオマトリクス中にHFを包埋
図14
Masson Fontana マッソン・フォンタナ
Anagen 成長期
Early catagen 初期退行期
図15
HF-ML-22-023 LDH measurements HF-ML-22-023のLDH測定
Max release 最大放出
LDH Release [arbitrary units] LDH放出[任意単位]
Day 1 1日目
Day 2 2日目
Day 3 3日目
Day 4 4日目
Day 5 5日目
Day 6 6日目
Vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
HF-ML-22-023 % cytotoxicity HF-ML-22-023の%細胞毒性
LDH release [%] LDH放出[%]
図16
Hair shaft production (Pooled donors) 毛幹生成(プールしたドナー)
Day 3 3日目
Day 5 5日目
Day 6 6日目
Fold change of % of elongation (Vehicle normalized to 1) 伸長の%の倍数変化(ビヒクルを1に正規化)
Vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
図17
A
Microscopic hair cycle staging (Pooled donors) ミクロ的毛周期段階分類(プールしたドナー)
% of hair follicles in each stage 各段階にある毛包の%
dystrophic 異栄養性
Mid catagen 中期退行期
Early catagen 初期退行期
Anagen 成長期
Vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
B
Pooled microscopic hair cycle score プールしたミクロ的毛周期スコア
Arbitrary units 任意単位
vehicle normalized to 1 1に正規化したビヒクル
Vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
C
Vehicle ビヒクル
early catagen 初期退行期
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
anagen 成長期
D
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
anagen 成長期
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
図18
A
Pooled hair matrix keratinocyte proliferation プールした毛母ケラチノサイトの増殖
Fold change of Ki-67+ hair matrix keratinocytes Ki-67+毛母ケラチノサイトの倍数変化
vehicle normalized to 1 1に正規化したビヒクル
vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
B
Pooled hair matrix keratinocyte apotosis プールした毛母ケラチノサイトのアポトーシス
Fold change of TUNEL+ hair matrix keratinocytes TUNEL+毛母ケラチノサイトの倍数変化
vehicle normalized to 1 1に正規化したビヒクル
vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
C
Vehicle ビヒクル
図19
A
Versican expression (Pooled donors) バーシカン発現(プールしたドナー)
Fold change of fluoreszence intensity 蛍光強度の倍数変化
[Arbitrary units] [任意単位]
vehicle normalized to 1 1に正規化したビヒクル
vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
B
Pooled alkaline phosphatase activity (Pooled donors) プールしたアルカリホスファターゼ活性(プールしたドナー)
Fold change of alkaline phosphatase activity アルカリホスファターゼ活性の倍数変化
[Arbitrary units] [任意単位]
vehicle normalized to 1 1に正規化したビヒクル
vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
C
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
Vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
図20
Density of dermal papilla cells (Pooled donors) 毛乳頭細胞の密度(プールしたデータ)
Fold change of cell number/μm2 in the dermal papilla 毛乳頭における細胞数/μm2の倍数変化
vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
図21
A
Density of dermal papilla stalk cells (Pooled donors) 毛乳頭茎細胞の密度(プールしたデータ)
Fold change of cell number/μm2 in the dermal papilla stalk 毛乳頭茎における細胞数/μm
2の倍数変化
vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
B
Total number of dermal papilla stalk cells (Pooled donors) 毛乳頭茎細胞の総数(プールしたデータ)
Fold change of cell number in the dermal papilla stalk 毛乳頭茎における細胞数の倍数変化
vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
図22
Pooled density of dermal cup cells プールした毛球部毛根細胞の密度
Fold change of cell number/μm
2 in the dermal cup 毛球部毛根における細胞数/μm2の倍数変化
vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
図23
A
Percentage of K15+ cellsin the bulge basal layer (Pooled donors) バルジ基底層におけるK15+細胞の百分率(プールしたドナー)
Fold change of % of K15+ in DAPI cells DAPI細胞におけるK15+の%の倍数変化
vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
B
Percentage of Ki-67+ cells in the bulge basal layer (Pooled donors) バルジ基底層におけるKi-67+細胞の百分率(プールしたドナー)
Fold change of % of Ki67+ in K15+ cells K15+細胞におけるKi67+の%の倍数変化
vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
図24
A
Percentage of K15+ cells in the suprabulbar basal layer (Pooled donors) 毛球上基底層におけるK15+細胞の百分率(プールしたドナー)
Fold change of % of K15+ in DAPI cells DAPI細胞におけるK15+の%の倍数変化
vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
B
Percentage of Ki-67+ cells in the suprabulbar basal layer (Pooled donors) 毛球上基底層におけるKi-67+細胞の百分率(プールしたドナー)
Fold change of % of Ki67+ in K15+ cells K15+細胞におけるKi67+の%の倍数変化
vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
C
vehicle ビヒクル
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
図25
A
Percentage of CD34+ cells in the bulge basal layer (Pooled donors) バルジ基底層におけるCD34+細胞の百分率(プールしたドナー)
Fold change of % of CD34+ in DAPI cells DAPI細胞におけるCD34+の%の倍数変化
vehicle ビヒクル
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
B
Vehicle ビヒクル
3μM Estetrol 3 μMエステトロール
30μM Estetrol 30 μMエステトロール
300nM Estetrol 300 nMエステトロール
【国際調査報告】