IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 上海科技大学の特許一覧

特表2024-543186C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用
<>
  • 特表-C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用 図1
  • 特表-C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用 図2
  • 特表-C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用 図3
  • 特表-C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用 図4
  • 特表-C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用 図
  • 特表-C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用 図5
  • 特表-C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用 図
  • 特表-C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用 図6
  • 特表-C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用 図7
  • 特表-C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用 図8
  • 特表-C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用 図9
  • 特表-C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システムおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20241112BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 9/22 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/55 ZNA
C12N15/11 Z
C12N9/22
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N7/01
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531724
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 CN2022132596
(87)【国際公開番号】W WO2023098485
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202111445474.3
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518222745
【氏名又は名称】上海科技大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI TECH UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.393 Middle Huaxia Road, Pudong New Area, Shanghai, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】季泉江
(72)【発明者】
【氏名】陳未中
(72)【発明者】
【氏名】馬佳誠
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA01
4B065BA30
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は生物医薬の分野に属し、RNAによってガイドされるエンドヌクレアーゼとして用いられるC2C9ヌクレアーゼの使用および極小型ゲノム編集システムを開示し、前記ゲノム編集システムは、C2C9ヌクレアーゼおよび/または前記C2C9ヌクレアーゼをコードする核酸、ならびにガイドRNAまたは前記ガイドRNAをコードする核酸を含む。本発明に記載の極小型ゲノム編集システムは原核細菌および真核細胞のゲノムにおける少なくとも一つの標的配列に対して遺伝子編集を行うことができる。また、本発明は、前記ゲノム編集システムの使用および編集方法を開示する。本発明の遺伝子編集システムまたは方法によって標的遺伝子を正確にノックアウトまたは切断することができ、切断効率が高く、標的遺伝子の正確な編集を実現させる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNAによってガイドされるエンドヌクレアーゼとして用いられるC2C9ヌクレアーゼの使用。
【請求項2】
遺伝子編集システムにおけるC2C9ヌクレアーゼまたは前記C2C9ヌクレアーゼをコードする核酸の使用。
【請求項3】
遺伝子編集システムであって、C2C9ヌクレアーゼおよび/または前記C2C9ヌクレアーゼをコードする核酸、ならびにガイドRNAまたは前記ガイドRNAをコードする核酸を含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
前記C2C9ヌクレアーゼは、
(I)RNAによってガイドされる核酸結合活性を有する、野生型C2C9ヌクレアーゼまたはその断片、
(II)RNAによってガイドされる核酸結合活性を有する、(I)のアミノ酸配列と少なくとも30%の配列相同性を有するバリアント、
(III)さらに核局在化シグナル断片を含む、上記(I)または(II)、
(IV)、さらに、
(a)修飾または突然変異の前よりも顕著に減少したエンドヌクレアーゼ活性を有するようにさせるか、エンドヌクレアーゼ活性をなくす、一つまたは複数の修飾または突然変異、ならびに/あるいは
(b)ほかの機能活性を有するポリペプチドまたはドメインを含む、上記(I)または(II)または(III)、
(V)エンドヌクレアーゼ活性を有する、上記(I)または(II)または(III)、であることを特徴とする、請求項3に記載の遺伝子編集システム。
【請求項5】
前記C2C9ヌクレアーゼは800個アミノ酸以下であり、ならびに/あるいは、前記C2C9ヌクレアーゼはRNAによってガイドされる核酸結合活性を有することを特徴とする、請求項3または4に記載の遺伝子編集システム。
【請求項6】
標的配列におけるPAM配列を認識し、ならびに/あるいは、PAM配列の後の長さが12~40bpであり、好ましくは20bpである核酸断片を標的することを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載の遺伝子編集システム。
【請求項7】
前記PAM配列はAAN、GANであり、ここで、Nは縮重塩基で、A、T、CまたはGの任意の塩基を表すことを特徴とする、請求項6に記載の遺伝子編集システム。
【請求項8】
前記C2C9ヌクレアーゼはN末端からC末端まで、
配列番号1で示されるアミノ酸配列または当該アミノ酸配列と少なくとも30%の配列同一性を有するバリアントを含み、RNAによってガイドされる核酸結合活性および/またはエンドヌクレアーゼ活性を有するドメイン1、配列番号2で示されるアミノ酸配列または当該アミノ酸配列と少なくとも30%の配列同一性を有するバリアントを含み、かつRNAによってガイドされる核酸結合活性および/またはエンドヌクレアーゼ活性を有するドメイン2を含むことを特徴とする、請求項3~7のいずれか一項に記載の遺伝子編集システム。
【請求項9】
前記C2C9ヌクレアーゼは配列番号3~117で示されるアミノ酸配列のいずれか一つ、または配列番号3~117で示されるアミノ酸配列のいずれか一つと少なくとも30%の配列相同性を有し、かつRNAによってガイドされる核酸結合活性および/またはエン
ドヌクレアーゼ活性を有することを特徴とする、請求項3~7のいずれか一項に記載の遺伝子編集システム。
【請求項10】
前記ガイドRNAは、
標的配列とハイブリダイズ可能な遺伝子標的領域(i)、
tracrメイト配列(ii)、
tracrRNA配列(iii)を含み、
ここで、前記tracrメイト配列(ii)と前記tracrRNA配列(iii)がハイブリダイズし、ステム-ループ構造を形成し、
前記ガイドRNAは一本鎖で、前記核酸標的領域(i)とtracrメイト配列(ii)およびtracrRNA配列(iii)が順に連結してなるか、あるいは、前記ガイドRNAは二本鎖を含み、その一方の鎖は前記遺伝子標的領域(i)とtracrメイト配列(ii)が連結してなり、もう一方の鎖は前記tracrRNA配列(iii)であることを特徴とする、請求項3~7のいずれか一項に記載の遺伝子編集システム。
【請求項11】
(1)C2C9ヌクレアーゼの発現構築体、
(2)完全なガイドRNAの発現構築体を含み、
前記完全なガイドRNAはガイドRNA骨格、および当該ガイドRNA骨格の3’末端付加の標的配列に相応するRNA配列を含み、前記標的配列はPAM配列の後の長さが12~40bpの核酸断片であり、好ましくは、PAM配列の後の長さが20bpの核酸断片であることを特徴とする、請求項5または6に記載の遺伝子編集システム。
【請求項12】
前記ガイドRNA配列は前記C2C9ヌクレアーゼに相応し、ここで、前記Actinomadura craniellae C2C9(配列番号3)に相応するtracrメイト配列は配列番号118で示され、前記tracr RNA配列は配列番号119で示され、一体に連結して得られたガイドRNA骨格配列は配列番号120で示されることを特徴とする、請求項10に記載の遺伝子編集システム。
【請求項13】
遺伝子編集方法であって、標的遺伝子を請求項3~12のいずれか一項に記載の遺伝子編集システムと接触させることで、標的遺伝子の編集を実現させることを特徴とする、方法。
【請求項14】
i)前記C2C9ヌクレアーゼまたは前記C2C9ヌクレアーゼをコードする核酸を細胞に導入する工程、
ii)前記ガイドRNAまたは前記ガイドRNAをコードする核酸を細胞に導入する工程、
iii)C2C9ヌクレアーゼによって媒介され、標的遺伝子に一つまたは複数の切口が生じるか、前記標的遺伝子をターゲティング、編集、修飾または操作する工程を含むことを特徴とする、請求項13に記載の遺伝子編集方法。
【請求項15】
前記C2C9ヌクレアーゼは加工または未加工の様態のガイドRNAによって標的遺伝子にガイドされることを特徴とする、請求項13または14に記載の遺伝子編集方法。
【請求項16】
前記C2C9ヌクレアーゼとガイドRNAが複合体を形成し、前記標的遺伝子におけるPAM配列を認識し、ならびに/あるいは、前記遺伝子編集システムの標的配列はPAM配列の後の長さが12~40bpの核酸断片であり、好ましくは、PAM配列の後の長さが20bpの核酸断片であることを特徴とする、請求項13または14に記載の遺伝子編集方法。
【請求項17】
さらに、異質ポリヌクレオチド配列を含むドナー鋳型を細胞に導入する工程を含むことを
特徴とする請求項14に記載の遺伝子編集方法。
【請求項18】
体内、インビトロ細胞または無細胞の環境において標的遺伝子および/またはその関連ポリペプチドに対して遺伝子編集を行うことにおける請求項3~12のいずれか一項に記載の遺伝子編集システムまたは請求項13~17のいずれか一項に記載の方法の使用であって、前記インビトロ細胞は細菌細胞、古細菌細胞、真菌細胞、原生生物細胞、ウイルス細胞、植物細胞および動物細胞を含むことを特徴とする、使用。
【請求項19】
体内、インビトロ細胞または無細胞の環境において標的遺伝子および/またはその関連ポリペプチドに対して遺伝子編集を行うことにおける請求項3~12のいずれか一項に記載の遺伝子編集システムまたは請求項13~17のいずれか一項に記載の方法の使用であって、前記遺伝子編集は、遺伝子切断、遺伝子削除、遺伝子挿入、点突然変異、転写抑制、転写活性化、塩基編集およびガイド編集からなる群より選ばれることを特徴とする、使用。
【請求項20】
遺伝修飾された細胞であって、請求項3~12のいずれか一項に記載の遺伝子編集システムまたは請求項13~17のいずれか一項に記載の方法によって遺伝子編集を行って得られた細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬の分野に属し、極小型C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集システム、および当該システムの原核細菌および真核細胞におけるゲノム編集方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CRISPR/Cas(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats/CRISPR-associated protein)は、近年開発された新規な遺伝子編集システムである。当該システムは主にCasエンドヌクレアーゼおよび相応するガイドRNAから構成される。CasエンドヌクレアーゼはガイドRNAと特異的に結合し、相補的塩基対形成によってゲノムの特定の部位を標的として認識して切断し、ゲノムDNAの二本鎖を断裂させる。そして、生体の内在または外来のDNA修復機構、たとえば、末端連結の相同組換えおよび非相同組み換えの修復機構によって断裂したゲノムDNAを修復することで、修復の過程においてゲノムの特定の部位の編集を実現させる。
【0003】
CRISPR/Casシステムによる細胞または種に対する遺伝学的操作は、幅広く生命科学、医学、農学などの分野の基礎研究、生物技術の開発、および疾患の治療手段の研究開発に応用することができる。たとえば、遺伝病や癌などの疾患の突然変異遺伝子を矯正すること、農作物に対して遺伝子工学的改造を行い、その性能を向上させること、微生物のゲノムを正確に改造し、高付加価値の化合物の生産を促進すること、病原微生物のゲノムを切断して病原微生物を殺傷し、感染の治療に使用するなどが挙げられる。CRISPR/Casシステムの利便性と効率性のため、既に幅広く医学、生物、農学などの分野で応用されている。
【0004】
現在、広く使用されているCRISPR/Casゲノム編集システムは、主にCRISPR/Cas9およびCRISPR/Cas12aの2種類を含む。その2種類のゲノム編集システムにおいて、CRISPRエフェクタータンパク質であるヌクレアーゼCas9およびCas12aはいずれも1000超のアミノ酸を含有する大型タンパク質で、よってCRISPR/Cas9またはCRISPR/Cas12aの細胞への送達の過程に大きな問題がある。たとえば、生体の遺伝子治療の過程において、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cas12aシステムは常にレンチウイルスベクターにパッケージングして使用する必要がある。しかし、レンチウイルスベクターのパッケージング容量に限りがあるため、CRISPR/Cas9およびCRISPR/Cas12aシステムの巨大な分子サイズによってレンチウイルスベクターのパッケージング効率が制限され、パッケージングの難易度が高まり、これらのシステムの遺伝子治療などの分野における幅広い応用が大きく制限される。また、CRISPR/Casシステムによって認識されるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM、PAM配列またはPAM部位)の有限性のため、選べるゲノムの部位が制限され、医学や生物学などの分野におけるさらなる応用が影響される。そのため、効率的でかつ小分子量の新規なゲノム編集システムの発見と開発が切望されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、極小型ゲノム編集システム(CRISPR/C2C9システムを含む)および方法を提供する。本発明のゲノム編集システムによれば、原核細菌および真核細胞の標的部位に対して正確な切断を行うことで、遺伝子の正確なノックアウトまたは編集を実現させることができる。また、本発明は新規なRNA編集可能なエンドヌクレアーゼを提供す
る。さらに、本発明はガイドRAN(gRNA)および/または標的配列を含むほかの構成要素、および様々な応用においてそれらを生成および使用する方法に関する。このような応用の例は、転写を調節する方法、ならびに新規なヌクレアーゼおよびほかの構成要素、たとえば、核酸および/またはポリペプチドで遺伝子(たとえばDNAやRNA)をターゲティング、編集および/または操作する方法を含む。さらに、本発明は前記編集システムのエレメントを含む組み換え細胞およびキットなどに関する。
【0006】
本発明の一つの側面では、ゲノムにおける少なくとも一つの標的配列に対して遺伝子編集を行うゲノム編集システムであって、以下のものを含有するゲノム編集システムを提供する:
(a)C2C9ヌクレアーゼまたはC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸、ならびに
(b)ガイドRNA(gRNA)または前記gRNAをコードする核酸。
【0007】
前記C2C9ヌクレアーゼはそれにマッチするガイドRNAと複合体を形成する。
【0008】
一つの好適な実施形態において、前記ゲノム編集システムはCRISPR-C2C9ゲノム編集システムである。
【0009】
一つの好適な実施形態において、前記CRISPR-C2C9ゲノム編集システムは以下のものを含有する:
(1)C2C9ヌクレアーゼの発現構築体、
(2)完全なガイドRNAの発現構築体、
前記完全なガイドRNAはガイドRNA骨格、および当該ガイドRNA骨格の3’末端付加の標的配列に相応するRNA配列を含み、前記標的配列はPAM配列の後の長さが12~40bpの核酸断片、好ましくはPAM配列の後の長さが20bpの核酸断片である。本発明に記載のC2C9ヌクレアーゼは本分野の通常のC2C9ヌクレアーゼであってもよい。好適に、前記C2C9ヌクレアーゼの大きさは好ましくは800個アミノ酸以下である。より好適に、前記C2C9ヌクレアーゼの由来は以下のアミノ酸配列のいずれか一つまたは以下のいずれか一つのアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を持つ配列番号3~117である。ある実施形態において、前記C2C9ヌクレアーゼはActinomadura craniellaeC2C9(AcC2C9)、Corynebacterium glutamicumC2C9(CgC2C9)、Rothia dentocariosaC2C9(RdC2C9)およびMicrococcus luteusC2C9(MilC2C9)などからなる群より選ばれる。
【0010】
本発明の好適な実施例において、前記C2C9ヌクレアーゼは配列表における配列番号3で示されるAcC2C9ヌクレアーゼである。
【0011】
ある実施形態において、前記AcC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸はデオキシリボ核酸(DNA)である。ある実施形態において、AcC2C9ヌクレアーゼのDNAコード配列は配列表における配列番号121で示されるか、あるいは配列番号121と少なくとも30%,少なくとも35%,少なくとも40%,少なくとも45%,少なくとも50%,少なくとも55%,少なくとも60%,少なくとも65%,少なくとも70%,少なくとも75%,少なくとも80%,少なくとも85%,少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列相同性を持つバリアントである。
【0012】
ある実施形態において、前記AcC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸はリボ核酸(RNA)である。ある実施形態において、前記C2C9ヌクレアーゼをコードするRNAは
mRNAである。
【0013】
ある実施形態において、前記AcC2C9ヌクレアーゼをコードする配列はヒトコドンに応じて最適化されたコード配列で、好ましくは配列表における配列番号122で示されるか、あるいは配列番号122と少なくとも30%,少なくとも35%,少なくとも40%,少なくとも45%,少なくとも50%,少なくとも55%,少なくとも60%,少なくとも65%,少なくとも70%,少なくとも75%,少なくとも80%,少なくとも85%,少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列相同性を持つバリアントである。
【0014】
ある実施形態において、前記C2C9ヌクレアーゼまたはC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸はリポソームまたは脂質ナノ粒子の中に調製されている。ある実施形態において、前記リポソームまたは脂質ナノ粒子は前記gRNAまたは前記gRNAをコードする核酸も含む。
【0015】
ある実施形態において、前記システムはgRNAと予備配位したC2C9ヌクレアーゼを含むことで、標的遺伝子(たとえば、標的DNA)の配列におけるPAM配列を認識するリボ核タンパク質(RNP)複合体を形成し、すなわち、正確にDNA配列の横に局在化し、C2C9ヌクレアーゼおよびガイドRNAからなる複合体が標的遺伝子におけるPAM配列を認識することを含む。
【0016】
ここで、前記AcC2C9ヌクレアーゼのガイドRNAの骨格配列は配列表における配列番号120で示される。
【0017】
ある実施形態において、前記完全なガイドRNA発現構築体はガイドRNA骨格の発現DNA配列、および当該発現DNA配列の3’末端に付加された標的配列に相応するRNA配列の発現DNA配列を含み、ここで、前記標的配列はPAM配列の後の長さが20bpの断片である。
【0018】
ここで、前記CRISPR-C2C9ゲノム編集システムが好適に認識するPAM部位はAANおよび/またはGANである。
【0019】
ある実施形態において、本発明に記載のシステムは、さらに、異質ポリヌクレチオド配列含有ドナー鋳型を含んでもよく、ここで、前記異質ポリヌクレオチド配列は前記標的ポリヌクレオチド配列に挿入されることができる。ある実施形態において、異質ポリヌクレオチドのドナー鋳型はgRNAと物理的に連結している。
【0020】
もう一つの側面では、本発明は、標的遺伝子座における二本鎖DNAをターゲティング、編集、修飾または操作する方法であって、上記のようなシステムにおけるC2C9ヌクレアーゼ、完全なガイドRNAおよび前記二本鎖DNAを混合することを含み、前記完全なガイドRNAは、5’-前記C2C9ヌクレアーゼに相応するガイドRNA骨格+前記二本鎖DNAにおける標的配列に相応するRNA配列-3’である方法を提供する。ある実施形態において、前記方法は二本鎖DNAを切断するために用いられる。
【0021】
ある実施形態において、本発明は、細胞において上記のように標的遺伝子座における二本鎖DNAをターゲティング、編集、修飾または操作する方法を提供する。ある実施形態において、前記方法は、さらに、ポリヌクレオチドのドナー鋳型を細胞に導入する工程を含み、前記ドナー鋳型はドナーの一本鎖または二本鎖のポリヌクレオチドのドナー鋳型である。
【0022】
本発明のある実施形態において、相同組換え修復、非相同末端結合またはマイクロホモロジー媒介末端結合によってDBSにおいてDNAを修復する。
【0023】
上記のように、前記AcC2C9ヌクレアーゼに相応する好適なガイドRNAの骨格は、配列表における配列番号120で示される。その3’末端に異なる標的配列に対する標的RNA配列を加えると、完全なガイドRNAになる。
【0024】
前記C2C9ヌクレアーゼに対する好適な限定は上記の通りで、好ましくは、由来が配列番号3~117などからなる群で、より好ましくは、Actinomadura craniellae C2C9(AcC2C9)、Corynebacterium glutamicum C2C9(CgC2C9)、Rothia dentocariosa
C2C9(RdC2C9)およびMicrococcus luteus C2C9(MiC2C9)から選ばれ、さらに好ましくは、配列表における配列番号3またはそのバリアントで示される。前記AcC2C9ヌクレアーゼのヒトコドンに応じて最適化されたより好適なコード配列は配列表における配列番号122で示される。前記バリアントは配列番号3のアミノ酸残基と少なくとも20%(たとえば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列相同性を有し、RNAによってガイドされるDNA結合活性および/または二本鎖DNA切断活性が残っている。
【0025】
本発明に記載の切断方法は本分野の通常のものであってもよく、たとえば、本発明の好適な実施例において、前記切断方法は50~200mM NaClおよび/または5~20mM MgClの条件下で行われる。たとえば、NaClの濃度は50~100mM、100~150mM、150~200mMである。たとえば、MgClの濃度は5~10mM、10~15mM、15~20mMである。好適に、150mM NaCl、10mM MgCl、10mM Tris-HCl、pH=7.5、1mM DTTの緩衝溶液で行われる。
【0026】
前記切断方法は、反応温度が34~43℃であり、たとえば、34~37℃、37~40℃、40~43℃であり、好ましくは37℃であり、反応時間が好ましくは30~60minである。
【0027】
もう一つの側面では、前述のゲノム編集システムを標的配列を含有する原核細菌または真核細胞内に導入してゲノム編集を行うことを含む、ゲノム編集方法を提供する。
【0028】
本発明に記載の原核細菌は大腸菌、肺炎クレブシエラ菌などの原核微生物を含むが、これらに限定されない。
【0029】
本発明に記載の真核細胞は哺乳動物細胞、酵母などの真核生物細胞を含むが、これらに限定されない。
【0030】
前述のゲノム編集方法における「遺伝子編集」は本分野の通常のもの、たとえば、遺伝子切断、遺伝子削除、遺伝子挿入、点突然変異、転写抑制、転写活性化、塩基編集およびガイド編集などでもよいが、これらに限定されない。
【0031】
もう一つの側面では、本発明は、ゲノム編集におけるC2C9ヌクレアーゼの使用を提供する。
【0032】
前記C2C9ヌクレアーゼおよび前記遺伝子編集に対するさらなる限定は上記の通りであ
る。
【0033】
当該ゲノム編集システムのヌクレアーゼの大きさは800個アミノ酸以下である。
【0034】
もう一つの側面では、本発明は、修飾された細胞であって、前述のシステムまたは方法のいずれか一つのによって細胞のゲノムを編集された細胞を提供する。一つの実施形態において、前記修飾された細胞は、(a)前述のC2C9ヌクレアーゼまたは前記C2C9ヌクレアーゼをコードする核酸、ならびに(b)ガイドRNA(gRNA)または前記gRNAをコードする核酸を含み、ここで、前記gRNAは前記C2C9ヌクレアーゼまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列にガイドすることができる。ある実施形態において、前記修飾された細胞は、さらに、異質ポリヌクレチオド配列含有ドナー鋳型を含み、ここで、前記異質ポリヌクレオチド配列は前記標的ポリヌクレオチド配列に挿入されることができる。
【0035】
本発明の積極的な進歩効果は以下のことを含む。
CRISPR/C2C9は出願人が発見した新規なゲノム編集システムで、C2C9ヌクレアーゼおよびgRNAを含み、当該システムはサイズが小さく(C2C9ヌクレアーゼは、一般的に、800個アミノ酸以下である)、複雑なPAMが必要でない(認識するPAM部位はAANなどであるという特徴)。完全なガイドRNAのガイドおよび局在化機能により、C2C9ヌクレアーゼは体内、インビトロ細胞または無細胞の環境において正確に局在化、ターゲティングし、ゲノムDNAを切断し、ゲノムDNAの二本鎖の断裂を実現させることができる。宿主細胞自身または外来の修復機構を利用し、当該システムは効率的かつ正確に生体内またはインビトロ細胞または無細胞の環境におけるゲノム編集を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】AcC2C9のPAMの同定の流れおよび結果の図である。結果から、AcC2C9は5’-AANタイプのPAM配列および少量の5’-GAN配列(ここで、Nは縮重塩基で、A、T、CまたはGのいずれか一つの塩基を表す)を効率的に認識することができることが示された。ここで、横座標-1、-2、-3、-4、-5、-6はそれぞれNTS鎖(非標的鎖)における標的DNA領域の配列の5’末端の上流に位置する1、2、3、4、5、6個目のDNA塩基を表す。その上のアルファベットはAcC2C9ヌクレアーゼのDNA配列に対する嗜好性を表し、アルファベットが占める比率が高いほど、当該塩基に対するAcC2C9の嗜好性が強いことを示す。
図2】CgC2C9、RdC2C9およびMiC2C9のPAMの同定結果の図である。結果から、CgC2C9は5’-AASタイプのPAM配列(ここで、Sは縮重塩基で、CはまたはGのいずれか一つの塩基を表す)を効率的に認識することができ、RdC2C9(B)およびMiC2C9(C)は5’-AANタイプのPAM配列(ここで、Nは縮重塩基で、A、TはまたはCのいずれか一つの塩基を表す)を効率的に認識することができることが示された。
図3】CRISPR-AcC2C9システムによって肺炎クレブシエラ菌の生細胞において遺伝子ノックアウトを行ったPCR結果の図である。結果から、選定されたdha遺伝子はCRISPR-AcC2C9システムによって正確にノックアウトされることができたことが示された。
図4】AcC2C9ヌクレアーゼによって基質DNAを切断した結果の図である。結果から、基質DNAはAcC2C9によって正確に二つのDNA断片に切断されたことが示された。
図5】AcC2C9ヌクレアーゼの異なる温度(A)、異なるNaCl濃度(B)、異なるMgCl濃度(C)および異なる2価イオン(D)の条件における反応活性の図である。結果から、AcC2C9は40℃、100mM NaCl、10mM MgClの条件下で活性が最も高いことが示された。
図6】(A)はAcC2C9の完全なガイドRNAの配列の概略図である。(B)はtracrRNAおよびcrRNAの条件下で、AcC2C9ヌクレアーゼによって基質DNAを切断した結果の図である。
図7】AcC2C9ヌクレアーゼによって4種類の58bpの蛍光標識DNA基質を切断した結果の図である。結果から、AcC2C9の標的鎖における主な切断部位はPAM部位の3’末端の下流の21~22ntの箇所で、非標的鎖における主な切断部位はPAM部位の3’末端の下流の15~16ntの箇所であることが示された。
図8】AcC2C9一過性発現プラスミドが媒介するヒト細胞における遺伝子編集の結果の図である。(A)はIndel実験のTBE-PAGEゲルの図である。選ばれた5つの異なる遺伝子部位のうち、AcC2C9ヌクレアーゼはVEGFA、HEXAおよびDNMT1という三つの遺伝子に対する効率的な遺伝子編集の実現に成功した。(B)はAcC2C9一過性発現プラスミドが媒介するヒト細胞においてVEGFA遺伝子の編集後のハイスループットシーケンシングの統計結果の図である。図に示すように、AcC2C9ヌクレアーゼは正確に標的配列に挿入または欠失の突然変異を導入することができた。
図9】AcC2C9一過性発現プラスミドのHEK293T細胞における47箇所の部位における遺伝子編集の効率の図である。
図10】AcC2C9システムを発現するAAVのヒト細胞HEK293T、HLEA、U-2OS、Huh-7およびHepG細胞における3つの異なる遺伝子部位の編集効率の図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、具体的な実施例を組み合わせて、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。また、本発明の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができ、それらの等価の様態も本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるべきである。
【0038】
用語「C2C9」、「C2C9ヌクレアーゼ」、「C2C9ポリペプチド」、「C2C9タンパク」、「C2C9タンパク質」は入れ替えて使用することができる。
【0039】
用語「ガイドRNA」、「gRNA」、「単一gRNA」および「キメラgRNA」は入れ替えて使用することができる。
【0040】
なお、本発明における用語「一」または「一つ」の実体とは一つまたは複数の当該実体を指すため、用語「一」(または「一つ」)、「一つまたは複数」および「少なくとも一つ」は本明細書において入れ替えて使用することができる。
【0041】
用語「相同性」または「同一性」または「類似性」とは二つのペプチドの間または二つの核酸分子の間の配列の類似性をいう。相同性は異なるペプチドまたは核酸分子における相応する位置を比較することによって決定することができ、比較される分子の配列における同一の位置が異なる配列において同様の塩基またはアミノ酸に占められた場合、当該分子は当該位置において相同である。配列の間の相同の程度は配列が共有するマッチまたは相同の位置数の関数によって決定する。「関連しない」又は「非相同の」配列は、本発明に開示された配列の一つと相同性が20%未満であるべきである。
【0042】
ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(あるいはポリペプチドまたはポリペプチド領域)がもう一つのポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチド領域(あるいはポリペプチドまたはポリペプチド領域と所定の百分率(たとえば、20%、30%、40%、50
%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%)の配列相同性を有するとは、アラインメントの場合、アラインメントされる二つの配列において当該百分率の塩基(またはアミノ酸)が同様であることである。当該アラインメントおよび百分率相同性または配列同一性は本分野で既知のソフトおよび方法によって決定することができる。たとえば、Ausubelら eds.(2007)Current Protocols in Molecular Biologyに記載のようである。好適に、配列のアラインメントの場合、デフォルトのパラメーターを使用する。中では、選べるアラインメントプログラムの一つはBLASTで、デフォルトのパラメーターを使用する。特に、プログラムBLASTNおよびBLASTPによってアラインメントを行う場合、以下のデフォルトのパラメーターを使用する:Genetic code=standard;filter=none;strand=both;cutoff=60;expect=10;Matrix=BLOSUM62;Descriptions=50sequences;sort by=HIGH SCORE;Databases=non-redundant,GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+SwissProtein+SPupdate+PIR。生物学的意義で等価と思われるポリヌクレオチドとは、上記で限定された百分率相同性を有し、同様または類似の生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。
【0043】
ポリヌクレオチドがDNAである場合、当該ポリヌクレオチドの配列は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)およびチミン(T)の四つのヌクレオチド塩基を代表するアルファベットからなる。ポリヌクレオチドがRNAの場合、当該ポリヌクレオチドの配列は、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)およびウラシル(U)の四つのヌクレオチド塩基を代表するアルファベットからなる。そのため、用語「ポリヌクレオチド配列」は、ポリヌクレオチド分子のアルファベットで表示される。当該アルファベットの表示は中央演算処理装置を持つコンピューターにおけるデータベースに入力し、バイオインフォマティクスの応用、たとえば、機能ゲノミクスや相同性検索に使用することができる。用語「多型性」とは一つよりも多い様態の遺伝子またはその一部の共存をいい、「遺伝子の多型性領域」とは遺伝子が同一の位置に異なるヌクレオチドの表現の様態(すなわち、異なるヌクレオチド配列)があることである。遺伝子の多型性領域は単一のヌクレオチドでもよく、異なる対立遺伝子において異なる。
【0044】
本発明において、用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は入れ替えて使用することができ、任意の長さのヌクレオチドの重合の様態をいい、デオキシリポヌクレオチドであってもリポヌクレオチドであってもよく、あるいはそのアナログであってもよい。ポリヌクレオチドは任意の三次元構造を有してもよく、既知または未知の任意の機能を実行してもよい。ポリヌクレオチドの実例は、遺伝子または遺伝子断片(プローブ、プライマー、ESTまたはSAGEタグを含む)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、dsRNA、siRNA、miRNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブとプライマーを含むが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、たとえば、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログも含む。ポリヌクレオチドに修飾が存在する場合、当該修飾はポリヌクレオチドの組み立ての前またはその後に付与されてもよい。ヌクレオチド配列は非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、重合後、さらに修飾され、たとえば、カップリングによって標識成分で標識されてもよい。当該用語は同時に二本鎖および一本鎖のポリヌクレオチド分子を指す。別途に説明または要求しない限り、本発明に開示されたポリヌクレオチドのあらゆる実施形態はその二本鎖の様態および既知または二本鎖の様態が構成できると予想可能な二本の相補的な一本鎖の様態のうちのいずれかを含む。
【0045】
ポリヌクレオチドに使用される場合、用語「コード」とはポリヌクレオチドがポリペプチドを「コード」することで、その天然の状態において、あるいは当業者に公知の方法によって操作された場合、転写および/または翻訳によって標的ポリペプチドおよび/またはその断片を生成するか、あるいは当該標的ポリペプチドおよび/またはその断片をコードするmRNAを生成することができることを意味する。アンチセンス鎖とは当該ポリヌクレオチドと相補的な配列で、それからコード配列を推定することができる。
【0046】
用語「ゲノムDNA」は生物のゲノムのDNAを表し、細菌、古細菌、真菌、原生生物、ウイルス、植物または動物のゲノムのDNAを含む。
【0047】
用語DNAを「操作する」とは結合、一本鎖に切口を入れること、あるいはDNAの二本鎖を切断すること、あるいはDNAまたはDNAと結合したポリペプチドを修飾または編集することを含む。DNAを操作することは前記DNAによってコードされるRNAまたはポリペプチドの発現をサイレンシング、活性化または調節すること(転写しないようにすること、または転写活性を低下させること、または翻訳しないようにすること、または翻訳のレベルを低下させること)、あるいはポリペプチドとDNAの結合を防止または増強することができる。切断は多くの方法、たとえば、ホスホジエステル結合の酵素触媒または化学的加水分解によって行うことができ、一本鎖の切断であってもよく、二本鎖の切断であってもよく、DNA切断は平滑末端または突出末端の発生につながる。
【0048】
用語「ハイブリダイズ可能」または「相補的」または「基本的に相補的」とは、核酸(たとえば、RNA)が、適切な体外および/または体内の温度と溶液のイオン強度の条件において配列特異的に、逆平行に別の核酸と非共有的に結合し、すなわち、ワトソン・クリック型塩基対および/またはG/U塩基対の形成、「アニーリング」または「ハイブリダイズ」をすることができるようにするヌクレオチド配列を含むことである。
【0049】
本分野において、ポリヌクレオチドの配列はそれが特異的にハイブリダイズできる標的核酸の配列と100%相補的であることが必要ではないと理解されている。ポリヌクレオチドは一つまたは複数の領域においてハイブリダイズしてもよい。ポリヌクレオチドはそれが標的とする標的核酸配列における標的領域の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%の配列相補性を有してもよい。本分野において、既知のBLASTプログラムおよびPowerBLASTプログラムにより、通常のように核酸における特定の核酸配列の領域の間の百分率相補性を決定することができる。
【0050】
本発明において、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は入れ替えて使用することができ、任意の長さのアミノ酸の重合の様態を表し、コードおよび非コードのアミノ酸、化学的または生物化学的に修飾または誘導されたアミノ酸、および修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含んでもよい。
【0051】
用語「結合ドメイン」とは、非共有的に別の分子と結合することができるタンパク質ドメインである。結合ドメインは、たとえば、DNA分子(DNA-結合タンパク質)、RNA分子(RNA-結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質-結合タンパク質)に結合してもよい。タンパク質ドメイン-結合タンパク質の場合、その自体(ホモ二量体、ホモ三量体などを形成するように)および/または一つまたは複数の異なるタンパク質の一つまたは複数の分子と結合してもよい。
【0052】
用語「保存的アミノ酸置換」は、タンパク質における類似する側鎖を有するアミノ酸残基の交換性を表す。例示的な保存的アミノ酸置換の組は、バリン-ロイシン-イソロイシン
、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリンおよびアスパラギン-グルタミンである。
【0053】
用語特定のRNAを「コード」するDNA配列は、RNAに転写されるDNA核酸配列である。DNAポリペプチドはタンパク質に翻訳されるRNA(mRNA)をコードしてもよく、あるいはDNAポリペプチドはタンパク質に翻訳されないRNA(たとえば、tRNA、rRNAまたはgRNAで、「非コード」RNAまたは「ncRNA」とも呼ばれる)をコードしてもよい。「タンパク質コード配列」あるいは特定のタンパク質またはポリペプチドをコードする配列は、適切な調節配列の制御下で、体内または体外でmRNAに転写され(DNAの場合)、ポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸配列である。
【0054】
用語「ベクター」または「発現ベクター」はレプリコン、たとえば、プラスミド、ファージ、ウイルスやコスミドで、それに別のDNA断片、すなわち、「挿入断片」を付加させることで、細胞における付加の断片の複製を実現させることができる。
【0055】
用語「発現カセット」は、プロモーターに操作可能に連結したDNAコード配列を含む。「操作可能に連結」とは並列連結で、各成分はこれらが予期されるように作用を発揮させる関係にある。本発明において、用語「組み換え発現ベクター」または「DNA構築体」は入れ替えて使用することができ、ベクターおよび少なくとも一つの挿入断片を含むDNA分子を表す。組み換え発現ベクターは、通常、挿入断片を発現および/または増幅させる目的あるいはほかの組み換えヌクレオチド配列を構築するために生成される。
【0056】
外来DNA、たとえば、組み換え発現ベクターが既に細胞内に導入された場合、細胞は既に前記DNAによって「遺伝的に修飾」または「形質転換」または「形質移入」される。外来DNAの存在は永久または一時的な遺伝的改変につながる。形質転換DNAは細胞のゲノムに組み込まれているか、組み込まれていない。
【0057】
用語「標的DNA」は「標的部位」または「標的配列」を含むDNAポリヌクレオチドである。本発明において、用語「標的部位」、「標的配列」、「標的プロトスペーサーDNA」または「プロトスペーサー様配列」は入れ替えて使用することができ、標的DNAに存在する核酸配列を表し、十分な結合のための条件が存在すると、gRNAのDNA-標的領域がそれと結合する。RNA分子は標的DNAにおける標的配列と結合、ハイブリダイズまたは相補する配列を含むことで、結合したポリペプチドを標的DNAにおける特定の位置(標的配列)にターゲティングする。「切断」とはDNA分子の共有結合の主鎖の断裂である。
【0058】
用語「ヌクレアーゼ」および「エンドヌクレアーゼ」は入れ替えて使用することができ、ポリヌクレオチドを切断するための内部切断の核酸分解の触媒活性を有することを指す。ヌクレアーゼの「切断ドメイン」または「活性ドメイン」または「ヌクレアーゼドメイン」とは、ヌクレアーゼにおけるDNA切断のための触媒活性を有するポリペプチド配列またはドメインである。切断ドメインは一つのポリペプチド鎖に含まれてもよく、あるいは切断活性は二つまたは複数のポリペプチドの結合によって生じてもよい。
【0059】
用語「局在化ポリペプチド」または「RNA-結合部位ガイドポリペプチド」とは、結合するRNAを特定のDNA配列にターゲティングするポリペプチドである。
【0060】
用語「ガイド配列」またはDNA-標的領域(または「DNA-標的配列」)は、本発明において「プロトスペーサー様」配列と呼ばれる標的DNAにおける特定の配列と相補的なヌクレオチド配列(標的DNAの相補鎖)を含む。
【0061】
用語「組み換え」とは二つのポリヌクレオチドの間で遺伝情報を交換する過程である。本発明において使用される「相同組換え修復(HDR)」は、たとえば、細胞において二本鎖の断裂を修復する期間で発生する特殊化様態のDNA修復を表す。この過程はヌクレオチド配列の相同性が必要で、「ドナー」分子を「標的」分子(すなわち、二本鎖の断裂を経た分子)の修復に供する鋳型として使用し、遺伝情報がドナーから標的に移るようになる。ドナーのポリヌクレオチドが標的分子と異なり、ドナーのポリヌクレオチドの一部または全部の配列が標的DNAに組み込まれると、相同組換え修復は標的分子の配列の改変(たとえば、挿入、欠失、突然変異)につながることがある。
【0062】
用語「非相同末端結合(NHEJ)」とは相同の鋳型が不要な場合、断裂末端同士を直接連結することによってDNAにおける二本鎖の断裂を修復することである。NHEJは、二本鎖の断裂部位の近くのヌクレオチド配列の欠失につながることが多い。
【0063】
用語「治療」は疾患または症状の発生を防止すること、疾患または症状を抑制すること、あるいは疾患を軽減することを含む。
【0064】
本発明において、用語「個体」、「被験者」、「宿主」および「患者」は入れ替えて使用することができ、診断、治療または療法を行おうとする任意の哺乳動物の被験者、特にヒトを表す。
【0065】
本発明は、i)gRNAと相互作用するRNA-結合部分、ならびに活性部分を含むCRISPR編集システムに適用される極小型C2C9ヌクレアーゼを提供する。
【0066】
前記C2C9ヌクレアーゼは、標的遺伝子(たとえば、標的DNA)における転写を調節する活性、切断活性(エンドリボヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼの活性)、遺伝子編集活性などの少なくとも一つの活性を有し、遺伝子編集を実現させるタイプは、遺伝子切断、遺伝子削除、遺伝子挿入、点突然変異、転写抑制、転写活性化および塩基編集などを含むが、これらに限定されない。前記C2C9ヌクレアーゼは任意の生物種由来のものであってもよい。
【0067】
非制限的な例示として、前記C2C9ヌクレアーゼは、たとえば、CRISPR編集システムのヌクレアーゼとして有用である。
【0068】
本発明において、C2C9ヌクレアーゼのバリアントが改善された所望の特徴、たとえば、機能、活性、動態学、半減期などを有するように、修飾、突然変異、DNA組み換えなどの手段によってC2C9ヌクレアーゼのバリアントを形成することもできる。前記修飾は、たとえば、アミノ酸の欠失、挿入または置換であってもよく、さらに、たとえば、異なるヌクレアーゼ由来の相同または異質の切断ドメイン(たとえば、CRISPR-関連ヌクレアーゼのHNHドメイン)でC2C9ヌクレアーゼの「切断ドメイン」を置き換えることであってもよい。本分野で既知のDNA結合および/またはDNA修飾タンパク質の任意の修飾方法、たとえば、メチル化作用、脱メチル作用、アセチル化作用などにより、たとえば、C2C9ヌクレアーゼのDNA標的性を変えることができる。前記DNA組み換えとは、異なる由来のC2C9ヌクレアーゼのDNA配列の間で配列の断片を交換することで、RNA-ガイドのエンドヌクレアーゼ活性を有する合成タンパク質をコードするキメラDNA配列を生成することである。前記修飾、突然変異、DNA組み換えなどは単一で使用しても組み合わせて使用してもよい。
【0069】
前記C2C9ヌクレアーゼはN末端からC末端まで、
配列番号1で示されるアミノ酸配列または当該アミノ酸配列と少なくとも30%、少なく
とも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントを含む、ドメイン1、
配列番号2で示されるアミノ酸配列または当該アミノ酸配列と少なくと30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の配列同一性を有するバリアントを含む、ドメイン2、を含む。
【0070】
前記C2C9ヌクレアーゼのバリアントは以下のものであってもよい:
(I)野生型C2C9ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも20%(たとえば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列相同性を有し、野生型C2C9ヌクレアーゼの活性が残っているバリアント、
(II)上記(I)のC2C9ヌクレアーゼまたはそのバリアントにおいて、構築されたC2C9CRISPRシステムが無細胞反応、原核細胞、または真核細胞の環境において適切な活性を有するように、さらに、ほかの構成要素、たとえば、核局在化シグナル断片を含むバリアント、
(III)野生型C2C9ヌクレアーゼまたは上記(I)および(II)のバリアントの相応するポリヌクレオチド配列のコドン最適化バリアント、
(IV)上記野生型C2C9ヌクレアーゼおよび(I)~(III)のいずれか一つのバリアントで、さらに、以下のものを含むバリアント、
(a)顕著に減少したか、検出不能なヌクレアーゼ活性を有するC2C9を生成する、一つまたは複数の修飾または突然変異、ならびに
(b)ほかの機能活性を有するポリペプチドまたはドメイン。
(IV)(b)における適切なポリペプチドはC2C9ヌクレアーゼおよびそのバリアントのC末端ドメインと連結している。
【0071】
(IV)におけるC2C9ヌクレアーゼのバリアントは、標的DNA配列に二本鎖の断裂を導入することではなく、修飾または突然変異によって任意の塩基を任意の可能なほかの塩基対に転換させることができる。
【0072】
(IV)におけるC2C9ヌクレアーゼのバリアントは野生型C2C9ヌクレアーゼまたは(I)~(III)のバリアントと異質配列からなる融合体またはキメラポリペプチドであってもよい。前記異質配列は、光によって誘導される転写調節物、小分子/薬物応答転写調節物、転写因子、転写阻害タンパク質などを含むが、これらに限定されない。融合体またはキメラポリペプチドを形成する場合、野生型C2C9ヌクレアーゼまたは(I)~(III)のバリアントは完全なC2C9ヌクレアーゼまたはその一部または完全に欠陥のものであってもよい。たとえば、触媒活性のエンドヌクレアーゼドメインを含有するC2C9ヌクレアーゼはFoklドメインと融合し、キメラタンパク質を形成するか、あるいは修飾によってエンドヌクレアーゼドメイン活性を失ったC2C9ヌクレアーゼはFoklドメインと融合し、キメラタンパク質を形成するか、あるいは、エピジェネティック修飾因子、タグ、造影剤、転写調節剤、ヒストン、遺伝子ドメイン活性を調節するほかの構成要素などがC2C9ヌクレアーゼと融合してキメラタンパク質を製造する。ある実施形態において、異質配列は追跡または精製しやすいタグ(たとえば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、YFP、RFP、CFPのような蛍光タンパク質、Hisタグ、ヘマグルチニン(HA)タグ、FLAGタグ、Mycタグなど)を提供してもよい。ある実施形態において、異質配列はC2C9ヌクレアーゼの細胞内局在化を提供してもよい。
【0073】
ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼのバリアントはC2C9ヌクレアーゼの修飾様態である。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼの修飾様態はC2C9ヌクレアーゼの天然に存在するヌクレアーゼ活性を低下させるアミノ酸の変化を含む。たとえば、ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼの修飾様態は50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満または1%未満の相応する野生型C2C9ヌクレアーゼのヌクレアーゼ活性を有する。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼの修飾様態は顕著なヌクレアーゼ活性を有さないが、gRNAと相互作用する能力が残っている。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼの修飾様態はヌクレアーゼ活性を有さない。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼのエンドリボヌクレアーゼ活性またはDNAに対する結合親和力が大幅に減少または増強しない場合、変わったか消されたDNAエンドヌクレアーゼ活性を有する突然変異ポリペプチドである。
【0074】
ある実施形態において、前記C2C9はほかの酵素成分またはほかの成分と合わせて使用することで、さらにC2C9ヌクレアーゼの様々な潜在的な応用を開発してもよい。(IV)におけるC2C9ヌクレアーゼのバリアントの非制限的な例として、たとえば、不活性化したC2C9と塩基デアミナーゼの融合によるC2C9ヌクレアーゼに基づく一塩基編集システムの開発、不活性化したC2C9と逆転写酵素の融合によるC2C9ヌクレアーゼに基づくPrime編集システム、不活性化したC2C9と転写活性化因子の融合によるC2C9ヌクレアーゼに基づく転写活性化システム、不活性化したC2C9と核酸エピジェネティック酵素の融合によるC2C9ヌクレアーゼに基づくエピジェネティックシステム、不活性化したC2C9を利用するC2C9ヌクレアーゼに基づく転写抑制システムである。
【0075】
C2C9ヌクレアーゼのバリアントは、以下のような特定の性質を有してもよいが、これらに限定されない:
増強または低下した標的部位と結合する能力を有するか、あるいは標的部位と結合する能力が残っている;
増強または低下したエンドリボヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼ活性を有するか、あるいはエンドリボヌクレアーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼ活性が残っている;
シトシン、グアニンまたはアデニン塩基に作用可能なデアミナーゼ活性を有し、脱アミノ部位を介して複製し細胞内において修復して、それぞれグアニン、チミンおよびグアニンが生成する;
標的DNAの転写を調節する活性を有し、標的DNAにおける特定の位置の標的DNAの転写を増加か減少してもよい;
変えられたDNA標的性を有する;
増加または低下または維持した安定性;
標的DNAの相補鎖を切断することができるが、低下した標的DNAの非相補鎖を切断する能力を有する;
標的DNAの非相補鎖を切断することができるが、低下した標的DNAの相補鎖を切断する能力を有する;
低下した標的DNAの相補鎖および非相補鎖の両者を切断する能力を有する;
DNAに関連するポリペプチド(たとえば、ヒストン)を修飾する酵素活性を有し、酵素活性はメチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、脱アセチル化酵素活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、リボシル化活性などのうちの一つまたは複数(これらの酵素活性によってタンパク質に対する共有結合修飾を触媒する;たとえば、C2C9ヌクレアーゼのバリアントはメチル化作用、アセチル化作用、ユビキチン化、リン酸化作用などにより、ヒストンを修飾することにより、ヒストン関連DNAの構造の変化を引き起こすことで、DNAの構造と特性を制御する)でもよい。
【0076】
ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼのバリアントは切断活性を有さない。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼのバリアントは一本鎖の切断活性を有する。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼのバリアントは二本鎖の切断活性を有する。
【0077】
増強した活性または能力を有するとは、野生型C2C9ヌクレアーゼに対し、少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%向上した活性または能力を有することである。
【0078】
低下した活性および能力を有するとは、野生型C2C9ヌクレアーゼに対し、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満または1%未満の活性または能力を有することである。
【0079】
本発明において、前記C2C9ヌクレアーゼは好ましくは配列番号3~117などからなる群由来のものである。
【0080】
ある実施形態において、異なるC2C9ヌクレアーゼの様々な酵素学的特性(たとえば、異なるPAM配列に対する嗜好)を利用するため、異なる種由来のC2C9ヌクレアーゼは異なる応用、たとえば、酵素触媒活性の増加または減少、細胞毒性レベルの増加または減少、NHEJ、相同組換え修復、一本鎖断裂、二本鎖断裂などの間のバランスの改変、の提供に有利である。
【0081】
ある実施形態において、前記C2C9ヌクレアーゼはActinomadura craniellae由来のもので、配列番号3のアミノ酸配列または配列番号3と少なくとも約90%(たとえば、少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上のうちのいずれか)の配列相同性を有するバリアントを含み、Actinomadura craniellae C2C9または「AcC2C9」はPAM配列AANを認識することができる。ある実施形態において、前記C2C9ヌクレアーゼはCorynebacterium glutamicum由来のもので(配列番号5)、Corynebacterium glutamicum C2C9または「CgC2C9」はPAM配列AANを認識することができる。ある実施形態において、前記C2C9ヌクレアーゼはRothia dentocariosa由来のもので(配列番号20)、Rothia dentocariosa C2C9または「RdC2C9」はPAM配列AAGを認識することができる。ある実施形態において、前記RdC2C9ヌクレアーゼはPAM配列AAA、AATまたはAACを認識することができる。ある実施形態において、前記C2C9はMicrococcus luteus由来のもので(配列番号12)、Micrococcus luteus C2C9または「MiC2C9」はPAM配列AANを認識することができる。前記AANはAAA、AAC、AAGおよびAATを含む。
【0082】
異なる種由来のC2C9ヌクレアーゼまたは同一の種由来の異なるC2C9ヌクレアーゼは標的DNAにおいて異なるPAM配列が必要であることがあるため、選択された特定のC2C9ヌクレアーゼに対し、PAM配列の要求は前記PAM配列と異なることがある。
【0083】
ある実施形態において、これらの小さいC2C9は本発明の下記の任意のシステム、組成物、キットおよび方法に使用してもよい。
【0084】
一つの好適な実施形態において、前記C2C9ヌクレアーゼはActinomadura
craniellae由来のもので、AcC2C9で、その配列が配列表における配列番号3で示される。
【0085】
ある実施形態において、前記AcC2C9ヌクレアーゼのバリアントは以下のものである:
(I)配列番号3の野生型AcC2C9ヌクレアーゼのアミノ酸配列と少なくとも20%(たとえば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、99%)の配列相同性を有し、野生型C2C9ヌクレアーゼに対して増加、減少または維持した活性を有するバリアント、
(II)上記(I)のAcC2C9ヌクレアーゼまたはそのバリアントで、構築されたC2C9CRISPRシステムが無細胞反応、原核細胞、または真核細胞の環境において適切な活性を有するように、さらに、ほかの構成要素、たとえば、核局在化シグナルを含むバリアント、
(III)配列番号3の野生型AcC2C9ヌクレアーゼまたは上記(I)および(II)のバリアントの相応するポリヌクレオチド配列のコドン最適化バリアント、
(IV)上記配列番号3の野生型AcC2C9ヌクレアーゼおよび(I)~(III)のいずれか一項のバリアントで、さらに、以下のものを含むバリアント:
(a)顕著に減少したか、検出不能なヌクレアーゼ活性を有するC2C9を生成する、一つまたは複数の修飾または突然変異、ならびに
(b)ほかの機能活性を有するポリペプチド。
【0086】
本発明によって提供されるC2C9ヌクレアーゼはアミノ酸の数が少ない。一つの好適な実施形態において、前記C2C9ヌクレアーゼのアミノ酸配列が配列番号3で示される場合、PAM配列AANと相互作用する。切断部位は、通常、PAM配列の上流の1~3個の塩基対以内に存在する。異なる種由来のC2C9ヌクレアーゼまたは同一の種由来の異なるC2C9ヌクレアーゼは標的DNAにおいて異なるPAM配列が必要であることがあるため、選択された特定のC2C9ヌクレアーゼに対し、PAM配列の要求は前記PAM配列と異なることがある。C2C9はPAM配列「AAN」またはほかの適切な標的PAM配列を標的とするように工学的に改変することができる。
【0087】
ある実施形態において、前記AcC2C9ヌクレアーゼのバリアントは配列番号3で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%(たとえば、少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列相同性を有してAcC2C9ヌクレアーゼの活性が残っている。
【0088】
別途に説明しない限り、用語「C2C9」、「C2C9ヌクレアーゼ」は野生型C2C9ヌクレアーゼおよびそのすべてのバリアントを含み、当業者は通常の手段によってC2C9ヌクレアーゼのバリアントのタイプを決定することができるが、上記で挙げられたものに限らない。
【0089】
また、本発明は、AcC2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチドを含む核酸を提供する。一つの実施形態において、本発明は、コドンが最適化されたポリヌクレオチド配列であって、一つまたは複数の機能性C2C9ドメインをコードするか、あるいは元の天然ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドと同様の機能を有するポリペプチドをコードする配列を提供する。そのため、当業者は特定の標的種において本発明に記載のC2C9ヌクレアーゼを使用し、ヌクレオチド配列または組み換え核酸に対してコドンの最適化を行うことができる。天然ヌクレオチド配列の配列番号121を100%未満(たとえば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%未満)の同一性を有するように、本分野で既知のほかの方法をコドンの最適化に使用してもよい。本発明のポリヌクレオチドは、コードされるC2C9ヌクレアーゼの標的細胞における発現が増加するようにコドンが最適化されている。ある実施様態におい
て、本発明のポリヌクレオチドは、ヒト細胞における発現が増加するようにコドンが最適化されている。ある実施様態において、本発明のポリヌクレオチドは、大腸菌細胞における発現が増加するようにコドンが最適化されている。ある実施様態において、本発明のポリヌクレオチドは、真菌細胞における発現が増加するようにコドンが最適化されている。ある実施様態において、本発明のポリヌクレオチドは昆虫細胞における発現が増加するようにコドンが最適化されている。
【0090】
一つの実施形態において、前記AcC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸は配列表における配列番号122で示される。一つの実施形態において、本発明は、AcC2C9ヌクレアーゼのコドンが最適化されたポリヌクレオチド配列であって、配列番号121と少なくとも90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.2%、99.5%、99.8%、99.9%または100%の配列相同性を有する配列を提供する。一つの好適な実施形態において、前記AcC2C9ヌクレアーゼのヒトコドンに応じて最適化されたより好ましいコード配列は配列表における配列番号122で示され、一つまたは複数の機能性C2C9ドメインをコードするか、あるいは元の天然ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドと同様の機能を有するポリペプチドをコードする。ある実施形態において、前記C2C9ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは配列番号121~122と少なくとも約90%(たとえば、少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上のいずれか)の配列相同性を有する。
【0091】
ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼをコードする核酸はDNAである。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼをコードする核酸はRNAである。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼをコードする核酸は発現ベクター、たとえば、組み換え発現ベクターである。宿主細胞に適合であれば、任意の適切な発現ベクターを使用してもよく、ウイルスベクター(たとえば、ワクシニアウイルスに基づくウイルスベクター、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルスベクター(たとえば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、およびレトロウイルスから誘導されるベクター、たとえば、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルスおよび乳腺腫瘍ウイルス)などを含むが、これらに限定されない。
【0092】
ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は操作可能に制御エレメント、たとえば、転写制御エレメント、たとえば、プロモーターに連結している。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は操作可能に誘導型プロモーターに連結している。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は操作可能に構成型プロモーターに連結している。転写制御エレメントは真核細胞、たとえば、哺乳動物細胞、あるいは原核細胞(たとえば、細菌や古細菌細胞)において作用を発揮してもよい。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、原核と真核細胞の両者においてC2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列が発現されるように、複数の制御エレメントに操作可能に連結している。ある実施形態において、前記C2C9ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列は、操作可能に細胞または体外の環境において発現するための適切な核局在化シグナルに連結している。
【0093】
本発明において、前記C2C9ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列は、それに対して多くの修飾を容易に行うことができるように、人工合成の手段によって合成すること、たとえば、化学的方法によって合成することができる。前記修飾は本分野で公知の任意の修飾様態を使用してもよい。ある実施形態において、前記C2C9ヌクレアーゼを
コードするポリヌクレオチド配列は、多くの修飾、たとえば、転写活性の増強、酵素活性の改変、翻訳または安定性(たとえば、タンパク質の加水分解、分解に対する耐性)または特異性の向上、溶解性の改変、送達の改変、宿主細胞における先天性免疫応答の減少を容易に導入することができるように、一つまたは複数の修飾を含む。前記修飾は本分野で公知の任意の修飾様態を使用してもよい。ある実施形態において、修飾によって細胞に導入されるC2C9ヌクレアーゼをコードするDNAまたはRNAは、任意の一つまたは複数のゲノムの遺伝子座を編集する。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼをコードする核酸配列は修飾された核酸、たとえば、コドンが最適化されたものである。前記修飾は単一の修飾であってもよく、組み合わせの修飾であってもよい。
【0094】
本発明において、C2C9ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む核酸は核酸ミメティックでもよい。たとえば、優れたハイブリダイズ性質を有するポリヌクレオチドミメティックのペプチド核酸などが挙げられる。
【0095】
本発明において、前記C2C9ヌクレアーゼ、またはC2C9ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドは任意の生物または体外の環境に適用され、細菌、古細菌、真菌、原生生物、植物または動物を含むが、これらに限定されない。相応的に、適用する標的細胞は、真核細胞および原核細胞、たとえば、細菌細胞、古細菌細胞、真菌細胞、原生生物細胞、植物細胞または動物細胞を含むが、これらに限定されない。前記真菌細胞は哺乳動物細胞および植物細胞を含み、前記原核細胞は大腸菌および肺炎クレブシエラ菌を含む。適用する標的細胞は任意のタイプの細胞でもよく、幹細胞、体細胞などを含む。前記細胞は体内におけるものであってもインビトロにおけるものであってもよい。ある実施形態において、前記C2C9ヌクレアーゼまたは当該C2C9ヌクレアーゼをコードする核酸はリポソームまたは脂質ナノ粒子の中に調製されている。
【0096】
また、本発明は、CRISPR/C2C9遺伝子編集システムの構築における前記C2C9ヌクレアーゼの使用を提供する。
【0097】
また、本発明は体内、インビトロ細胞または体外の環境における適切なPAM配列であって、AANおよび/またはGANであるPAM配列を提供する。
【0098】
また、本発明は原核、真核および体外の環境における適切なPAM配列および適切なガイドを提供する。本発明によって提供されるガイドRNA(gRNA)は、ヌクレアーゼ、たとえば、C2C9ヌクレアーゼを標的遺伝子における特定の標的配列にガイドする。
【0099】
ある実施形態において、前記gRNAは以下のものを含む:
標的遺伝子における標的配列と相補的なヌクレオチド配列の第一断片(「遺伝子標的配列」または「遺伝子標的断片」とも呼ぶ)、ならびに
C2C9ヌクレアーゼと相互作用する第二断片(「タンパク質結合配列」または「タンパク質結合断片」とも呼ぶ)。
【0100】
ある実施形態において、前記gRNAはリピートスペーサーアレイを含み、ここで、前記スペーサーは遺伝子における標的配列と相補的な核酸配列を含む。
【0101】
ある実施形態において、前記gRNAは以下のものを含む:
i.標的配列とハイブリダイズ可能な遺伝子標的領域(たとえば、DNA-標的領域)、ii.tracrメイト配列、および
iii.tracrRNA配列、
前記ガイドRNAは一本鎖で、前記DNA-標的領域(i)とtracrメイト配列(ii)およびtracrRNA配列(iii)が順に連結してなるか、あるいは、前記ガイ
ドRNAは二本の鎖を含み、その一方の鎖は前記遺伝子標的領域(i)とtracrメイト配列(ii)が連結してなり、もう一方の鎖は前記tracrRNA配列(iii)である。
【0102】
ここで、前記遺伝子標的領域(i)は、好ましくはPAM配列の後の長さが20bpの核酸断片に相応するRNA配列である。
【0103】
ここで、前記tracrメイト配列(ii)は前記tracrRNA配列(iii)とハイブリダイズし、ステム-ループ構造を形成する。
【0104】
ここで、前記tracrメイト配列(ii)は前記tracrRNA配列(iii)と一体に連結し、一本のガイドRNA骨格配列を形成することができる。
【0105】
ここで、標的配列とハイブリダイズする遺伝子標的領域(i)およびtracrメイト配列(ii)が連結したRNA配列(crRNA)と、前記tracrRNA配列(iii)とは、二本の単独のRNA配列として、同時に存在する場合、C2C9エンドヌクレアーゼ活性を媒介することができる。あるいは、ガイドRNA骨格配列および標的配列とハイブリダイズするDNA-標的領域(i)が連結して得られる、標的配列に対する完全なガイドRNA発現構築体は、同様にC2C9エンドヌクレアーゼ活性を媒介することができる。
【0106】
gRNAの遺伝子標的領域は、標的遺伝子における配列と相補的なヌクレオチド配列を含み、当該遺伝子標的領域はハイブリダイズ(すなわち、塩基対合)によって配列特異的に標的遺伝子と相互作用する。たとえば、gRNAが標的遺伝子における任意の必要な配列とハイブリダイズするように、遺伝子工学の手段によってgRNAの遺伝子標的領域を修飾することができる。gRNAは上記遺伝子標的配列を介して結合したポリペプチドを標的遺伝子における特定のヌクレオチド配列にガイドする。
【0107】
前記ステム-ループ構造はC2C9ヌクレアーゼと相互作用するタンパク質結合構造を形成する。ある実施形態において、前記gRNAのタンパク質結合構造は4つのステム-ループ構造を含み、tracrメイト配列(ii)は、通常、tracrRNA配列(iii)との間で相補的塩基対形成によって対合する。gRNAの塩基配列を改造することによってC2C9ヌクレアーゼの活性を向上させるか、非特異的な認識を減少させることができる。
【0108】
ある実施形態において、標的遺伝子はDNA配列である。ある実施形態において、標的遺伝子はRNA配列である。
【0109】
ある実施形態において、前記gRNAはsgRNAである。一つの好適な実施形態において、前記gRNAの配列は配列番号123で示される。
【0110】
ある実施形態において、標的遺伝子の標的配列は12~40ヌクレオチドの長さを有してもよく、たとえば、13~20、18~25、22~32、26~37、30~38、32~40ヌクレオチドの長さでもよい。ガイドRNAの標的領域(i)と標的遺伝子の標的配列の間の相補性百分率は少なくとも50%(たとえば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)であってもよい。
【0111】
ある実施形態において、前記gRNAは、さらに、転写ターミネーターを含む。
【0112】
また、本発明は、修飾型gRNAであって、修飾によって標的遺伝子における任意の必要な配列とのハイブリダイズを実現させること;あるいは、gRNAを修飾することによってgRNA自身の特性を改変すること、たとえば、修飾によってgRNAの安定性を増強することで、細胞に存在するリボヌクレアーゼ(RNase)による分解に対する耐性を増強することを含むが、これらに限定されず、細胞における半減期を延長させること;あるいは、修飾によってgRNAおよびエンドヌクレアーゼ(たとえば、C2C9ヌクレアーゼ)を含むCRISPR-C2C9ゲノム編集複合体の形成またはその安定性を増強すること;あるいは、修飾によってゲノム編集複合体の特異性を増強すること;あるいは、修飾によってゲノム編集複合体とゲノムにおける標的配列の間の相互作用の開始部位、安定性または動態学を増強すること;あるいは、修飾によって細胞に導入されるRNAによる先天性免疫反応の可能性または程度を低下させることなどができるgRNAを提供する。本発明において、gRNAを修飾することによってCRISPR-C2C9システム(下記のように)の多くの特性を改変すること、たとえば、CRISPR-C2C9ゲノム編集複合体の形成、標的活性、特異性、安定性または動態学の特性を増強することができる。本分野で既知の修飾手段によってRNAを修飾することができ、ピリミジンのリボース、塩基残基またはRNAの3’末端の逆方向の塩基における2’-フルオロ、2’-アミノの修飾などを含むが、これらに限定されない。本発明において、任意の一つの修飾または複数の修飾の組み合わせによってgRNAを修飾することができる。ある実施形態において、修飾によって細胞に導入されるsgRNAは、任意の一つまたは複数のゲノムの遺伝子座を編集する。
【0113】
本発明は、gRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。ある実施形態において、gRNAをコードする核酸は発現ベクター、たとえば、組み換え発現ベクターである。宿主細胞に適合すれば、任意の適切な発現ベクターを使用してもよく、ウイルスベクター(たとえば、ワクシニアウイルスに基づくウイルスベクター、ポリオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルスベクター(たとえば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、およびレトロウイルスから誘導されるベクター、たとえば、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルスおよび乳腺腫瘍ウイルス)などを含むが、これらに限定されない。
【0114】
ある実施形態において、同様の細胞において同時に複数のgRNAを用いて、同時に同様の標的遺伝子または異なる標的遺伝子における異なる位置の転写を調節する。同時に複数のgRNAを使用する場合、同様の発現ベクターまたは異なる発現ベクターに存在してもよく、同時に発現してもよい。同様のベクターに存在する場合、同様の制御エレメントにおいて発現することができる。
【0115】
ある実施形態において、gRNAをコードするヌクレオチド配列は操作可能に制御エレメント、たとえば、転写制御エレメント、たとえば、プロモーターに連結している。ある実施形態において、gRNAをコードするヌクレオチド配列は操作可能に誘導型プロモーターに連結している。ある実施形態において、gRNAをコードするヌクレオチド配列は操作可能に構成型プロモーターに連結している。転写制御エレメントは真核細胞、たとえば、哺乳動物細胞、あるいは原核細胞(たとえば、細菌や古細菌細胞)において作用を発揮することができる。ある実施形態において、gRNAをコードするヌクレオチド配列は、原核と真核細胞の両者においてgRNAをコードするヌクレオチド配列が発現されるように、複数の制御エレメントに操作可能に連結している。
【0116】
本発明において、前記gRNAは、それに対して多くの修飾を容易に行うことができるように、人工合成の手段によって合成すること、たとえば、化学的方法によって合成するこ
とができる。前記修飾は本分野で既知の任意の修飾手段を使用することができ、たとえば、polyAテールの使用、5’キャップアナログの付加、5’または3’非翻訳領域(UTR)、5’または3’末端に含まれるチオリン酸化2’-O-メチルヌクレオチドまたはホスファターゼ処理による5’末端のホスファートの除去などが挙げられる。
【0117】
ある実施形態において、前記gRNAをコードするヌクレオチド配列は、たとえば、活性、安定性または特異性の増強、送達の改変、宿主細胞における先天性免疫応答の減少またはほかの増強に使用される、一つまたは複数の修飾を含む。
【0118】
ある実施形態において、gRNAをコードするヌクレオチド配列の活性、細胞分布または細胞摂取を増強する一つまたは複数の標的部分または結合体をgRNAに化学的に連結している。前記標的部分または結合体は機能基と共有結合する結合体基を含んでもよく、結合体基はレポーター分子、ポリアミン、ポリエチレングリコールを含む。ある実施形態において、薬効学的性質を増強する基をgRNAに連結しており、薬効学的性質を増強する基は摂取を改善する基、分解に対する耐性を増強する基および/または標的核酸との配列特異的ハイブリダイズを増強する基を含む。
【0119】
本発明において、gRNAをコードするポリヌクレオチドを含む核酸は核酸ミメティックであってもよい。たとえば、優れたハイブリダイズ性質を有するポリヌクレオチドミメティックのペプチド核酸などが挙げられる。
【0120】
本発明において、前記gRNA、またはgRNAをコードするポリヌクレオチドは任意の生物または体外の環境に適用され、細菌、古細菌、真菌、原生生物、植物または動物を含むが、これらに限定されない。相応的に、適用する標的細胞は、細菌細胞、古細菌細胞、真菌細胞、原生生物細胞、植物細胞または動物細胞を含むが、これらに限定されない。適用する標的細胞は任意のタイプの細胞であってもよく、幹細胞、体細胞などを含む。
【0121】
また、本発明は、組み換え発現ベクターであって、(i)gRNAをコードするヌクレオチド配列、および(ii)C2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを提供する。一つの実施形態において、標的遺伝子における転写を調節する部位は前記gRNAによって決定する。
【0122】
また、本発明は、(a)前述のC2C9ヌクレアーゼまたは前述の前記C2C9ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む核酸、ならびに/あるいは、(b)前述の一つまたは複数のgRNAまたは前記gRNAをコードする核酸を含む、C2C9ヌクレアーゼに基づくCRISPR-C2C9システムを提供する。ここで、前記gRNAは前記C2C9ヌクレアーゼを標的配列にガイドすることができる。
【0123】
ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼはそのままタンパク質として提供される。たとえば、スフェロプラスト形質転換用外因性タンパク質および/または核酸形質転換真菌の手段を使用してもよい。任意の適切な方法、たとえば、注射の手段などによってC2C9ヌクレアーゼを細胞に導入することができる。
【0124】
本発明に記載のシステムにおいて、C2C9ヌクレアーゼおよびgRNAは宿主細胞において複合体を形成し、標的遺伝子(たとえば、標的DNA)の配列におけるPAM配列を認識することができる。前記CRISPR/C2C9遺伝子編集システムの標的配列はPAM配列の後の長さが20bpの核酸断片(たとえば、DNA断片)である。一つの実施形態において、前記複合体は選択的に宿主細胞における標的DNAの転写を調節することができる。CRISPR/C2C9遺伝子編集システムは標的DNAの二本鎖を切断し、DNAの断裂につながる。標的鎖(gRNAと相補的に対合するDNA一本鎖で、Tar
geting strandまたはTS鎖とも呼ばれる)の主な切断部位はPAM部位の3’末端の下流の21-22ntの箇所で、一方、非標的鎖(gRNAと相補的に対合しないDNA一本鎖で、Non-targeting strandまたはNTS鎖とも呼ばれる)の主な切断部位はPAM部位の3’末端の下流の15-16ntの箇所である。
【0125】
一つの実施形態において、前記システムはgRNAとC2C9ヌクレアーゼの複合体を含む。
【0126】
一つの実施形態において、前記システムは組み換え発現ベクターを含む。一つの実施形態において、前記システムは組み換え発現ベクターを含み、前記組み換え発現ベクターは、(i)gRNAをコードするヌクレオチド配列、および(ii)C2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含み、前記gRNAは、(a)標的DNAにおける配列と相補的なヌクレオチド配列を含む第一領域、および(b)C2C9ヌクレアーゼと相互作用する第二領域を含み、前記C2C9ヌクレアーゼは、(a)前記gRNAと相互作用するRNA-結合部分、および(b)標的DNA内の転写を調節する活性部分を含み、ここで、標的DNA内の転写を調節する部位は前記gRNAによって決定する。
【0127】
ある実施形態において、前記システムは配列番号3で示されるC2C9ヌクレアーゼを含む(あるいはそれからなる)。ある実施形態において、前記システムはC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸を含み、前記核酸は配列番号121または配列番号122と少なくとも約90%(たとえば、少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)の配列相同性を有する。ある実施形態において、前記システムはC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸を含み、前記核酸は配列番号121または配列番号122の配列を含む(あるいはそれからなる)。ある実施形態において、前記システムにおけるgRNAは単一のgRNA(sgRNA)である。ある実施形態において、前記システムは、さらに、一つまたは複数の別のgRNAまたは一つまたは複数の別のgRNAをコードする核酸を含む。
【0128】
ある実施様態において、前記システムは細胞または体外の環境において発現するための適切なプロモーターおよび/または適切な核局在化シグナルを含み、前記C2C9ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド配列は(i)細胞または体外の環境において発現するための適切なプロモーター、および/または(ii)適切な核局在化シグナルに操作可能に連結している。
【0129】
ある実施様態において、前記システムでは、前記gRNAをコードするポリヌクレオチド配列は(i)細胞または体外の環境において発現するための適切なプロモーター、および/または(ii)適切な核局在化シグナルに操作可能に連結している。
【0130】
ある実施形態において、本発明は、(a)配列番号3のアミノ酸配列または配列番号3と少なくとも90%の配列相同性を有するバリアントを含むC2C9ヌクレアーゼ、ならびに(b)前記C2C9ヌクレアーゼまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列にガイドすることができるgRNAを含む、システムを提供する。
【0131】
ある実施形態において、本発明は、(a)配列番号3のアミノ酸配列または配列番号3と少なくとも90%の配列相同性を有するバリアントを含むC2C9ヌクレアーゼ、あるいは配列番号121もしくは配列番号122のいずれか一つのポリヌクレオチド配列または配列番号121もしくは配列番号122のいずれか一つのポリヌクレオチド配列と少なくとも90%の配列相同性を有するバリアントを含むC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸、ならびに(b)前記C2C9ヌクレアーゼまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列にガイドすることができるgRNAまたはgRNAをコードする核酸を含む、シ
ステムを提供する。ある実施形態において、前記gRNAはsgRNAである。
【0132】
本発明に記載のシステムは一つのgRNAを含んでもよく、あるいは同時に複数のgRNAを含んでもよい。ある実施形態において、前記システムは同時に複数のgRNAを含むことで、同時に同様の標的DNAまたは異なる標的DNAにおける異なる位置を修飾する。一つの実施形態において、二つまたはそれ以上のガイドRNAは同様の遺伝子または転写体または遺伝子座を標的とする。一つの実施形態において、二つまたはそれ以上のガイドRNAは異なる関連しない遺伝子座を標的とする。ある実施形態において、二つまたはそれ以上のガイドRNAは異なるが関連する遺伝子座を標的とする。
【0133】
本発明に記載のシステムにおける各構成部分はベクターの手段で送達することができる。たとえば、ポリヌクレオチドについて、使用できる方法はナノ粒子、リポソーム、リボ核タンパク質、小分子RNA-結合体、キメラ体およびRNA-融合タンパク質複合体などを含むが、これらに限定されない。
【0134】
ある実施形態において、前記C2C9またはgRNAはベクターに構築され、C2C9および/またはgRNAをコードするヌクレオチド配列は制御エレメント、たとえば、転写制御エレメント、たとえば、プロモーターに操作可能に連結していてもよい。転写制御エレメントは真核細胞(たとえば、哺乳動物細胞)あるいは原核細胞(たとえば、細菌や古細菌細胞)において作用を発揮してもよい。ある実施形態において、gRNAをおよび/またはC2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、二つの原核生物においてガイドRNAおよび/または局在化修飾ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が発現されるように、複数の制御エレメントに操作可能に連結している。ある実施形態において、gRNAおよび/またはC2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は同一のベクターに構築されている。ある実施形態において、gRNAおよび/またはC2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は異なるベクターに構築されている。ある実施形態において、gRNAをおよび/またはC2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は操作可能に構成型プロモーターに連結している。ある実施形態において、gRNAをおよび/またはC2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は操作可能に誘導型プロモーターに連結している。
【0135】
本発明に記載のシステムは、さらに、一つまたは複数のドナー鋳型を含んでもよい。ある実施形態において、前記ドナー鋳型は標的遺伝子に挿入するためのドナー配列を含む。ある実施形態において、前記ドナー鋳型はドナーカセットを含み、当該ドナーカセットは片側または両側の横にgRNA標的部位がある。ある実施形態において、前記ドナー鋳型のドナーカセットの両側の横にgRNA標的部位があり、ここで、当該ドナー鋳型のgRNA標的部位は、当該システムにおけるgRNAのゲノムgRNA標的部位の逆相補配列である。ドナー配列は、通常、それが置き換えるゲノム配列と異なり、すなわち、ドナー配列は、通常、ゲノム配列に対する塩基の改変、挿入、欠失、逆位または転位を含み、かつ相同組換え修復に十分な相同性がある。ドナー配列は、一本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖DNAまたは二本鎖RNAでもよい。ある実施形態において、前記ドナー配列は外因性配列である。ある実施形態において、前記ドナー配列はドナーDNA配列(ドナーの一本鎖または二本鎖DNAを含む)で、ここで、標的DNA配列は相同組換え修復によって編集する。ある実施形態において、ドナー鋳型はシステムにおけるgRNAと物理的に連結している。ある実施形態において、完全なC2C9ヌクレアーゼまたはその一部または完全に欠陥のもの、あるいはgRNAがドナー鋳型と連結していることで、一つまたは複数のgRNA分子によって一つまたは複数の特定の標的遺伝子(たとえば、標的DNA)の部位にガイドすることにより、外因性DNA配列の相同組換えを促進する。
【0136】
本発明に記載のシステムは、さらに、二量体FOK1ヌクレアーゼを含み、完全なC2C
9ヌクレアーゼまたはその一部または完全に欠陥のC2C9ヌクレアーゼ、あるいはgRNAが二量体FOK1ヌクレアーゼに連結していることで、一つまたは複数のgRNA分子によって一つまたは複数の特定のDNA標的部位にガイドすると、エンドヌクレアーゼによる切断をガイドしてもよい。
【0137】
本発明に記載のシステムは細胞における複数の位置でDNAを編集または修飾することで、遺伝子治療に使用することができ、疾患の遺伝子治療、生物学の研究、農作物の耐性の改良や生産量の向上などを含むが、これらに限定されない。
【0138】
本発明において、前記システムは任意の生物または体外の環境に適用され、細菌、古細菌、真菌、原生生物、植物または動物を含むが、これらに限定されない。相応的に、適用する標的細胞は、細菌細胞、古細菌細胞、真菌細胞、原生生物細胞、植物細胞または動物細胞を含むが、これらに限定されない。適用する標的細胞は任意のタイプの細胞でもよく、幹細胞、体細胞などを含む。前記細胞は体内におけるものであってもよく、インビトロにおけるものであってもよい。
【0139】
また、本発明は、前述のC2C9ヌクレアーゼまたはそれをコードするポリヌクレオチド、gRNAまたはそれをコードするポリヌクレオチド、組み換え発現ベクター、システムのうちの一つまたは複数を含み、さらに、許容される担体、媒体などを含んでもよい、組成物を提供する。前記許容される担体、媒体は、たとえば、無菌水または生理食塩水、安定化剤、賦形剤、抗酸化剤(アスコルビン酸など)、緩衝剤(リン酸、クエン酸、ほかの有機酸など)、防腐剤、界面活性剤(PEG、Tweenなど)、キレート剤(EDTAなど)、バインダーなどが挙げられる。そして、ほかの低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンやリシンなどのアミノ酸、多糖や単糖などの糖質または炭水化物、マンニトールやソルビトールなどの糖アルコールを含んでもよい。注射のための水溶液を調製する場合、たとえば、生理食塩水、ブドウ糖やほかの補助薬物、たとえば、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムを含有する等張溶液を使用してもよく、適切な可溶化剤、たとえば、アルコール(エタノールなど)、多価アルコール(プロピレングリコール、PEGなど)、ノニオン性界面活性剤(ツイン80、HCO-50)などを併用してもよい。ある実施形態において、組成物はgRNAと核酸を安定化させる緩衝液を含む。
【0140】
また、本発明は前述のシステムまたは組成物を含むキットを提供する。前記キットは、さらに、希釈緩衝液、洗浄緩衝液、対照試薬などの別の試薬から選ばれる一つまたは複数を含んでもよい。ある実施形態において、前記キットは、(a)上記のようなC2C9ヌクレアーゼまたはC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸、ならびに(b)gRNAまたは前記gRNAをコードする核酸を含み、ここで、前記gRNAは前記C2C9ヌクレアーゼまたはそのバリアントを標的ポリヌクレオチド配列にガイドすることができる。ある実施形態において、前記キットは、さらに、異質ポリヌクレチオド配列含有ドナー鋳型を含み、ここで、前記異質ポリヌクレオチド配列は前記標的ポリヌクレオチド配列に挿入されることが可能である。
【0141】
本発明は、前述のC2C9ヌクレアーゼまたはそれをコードするポリヌクレオチド、gRNAまたはそれをコードするポリヌクレオチド、組み換え発現ベクター、システム、組成物およびキットの使用であって、体内、インビトロ細胞または無細胞のシステムにおける以下のいずれか一つを含むが、これらに限定されない用途に用いられる使用を提供する:標的遺伝子を切断する;
標的遺伝子の発現を制御する;
標的遺伝子を遺伝的に修飾する;
標的遺伝子関連ポリペプチドを遺伝的に修飾する;
標的遺伝子の任意の必要な位置における意図的で制御される損傷;
標的遺伝子の任意の必要な位置における意図的で制御される修復;
二本鎖断裂を導入する以外の手段によって標的遺伝子を修飾する(C2C9ヌクレアーゼは酵素活性を有し、二本鎖断裂を導入する以外の手段によって標的遺伝子を修飾する。前記酵素活性はC2C9自身が有するもの、あるいはたとえば酵素活性を有する異質ポリペプチドをC2C9ヌクレアーゼに融合させてキメラC2C9ヌクレアーゼを形成して得られたものであってもよく、前記酵素活性は、メチルトランスフェラーゼ活性、脱アミノ作用活性、ディスムターゼ活性、アルキル化活性、デメチラーゼ活性、DNA修復活性、トランスポザーゼ活性、レコンビナーゼ活性、DNA損傷活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジン二量体形成活性などを含むが、これらに限定されない)。
【0142】
ある実施形態において、前記標的遺伝子は標的DNAである。ある実施形態において、前記標的遺伝子は標的RNAである。
【0143】
本発明において、前記C2C9はほかの酵素成分またはほかの成分と合わせて使用することで、さらにC2C9ヌクレアーゼの様々な潜在的な応用を開発してもよい。非制限的な例として、たとえば、不活性化したC2C9と塩基デアミナーゼの融合によるC2C9ヌクレアーゼに基づく一塩基編集システムの開発、不活性化したC2C9と逆転写酵素の融合によるC2C9ヌクレアーゼに基づくPrime編集システム、不活性化したC2C9と転写活性化因子の融合によるC2C9ヌクレアーゼに基づく転写活性化システム、不活性化したしたC2C9と核酸エピジェネティック酵素の融合によるC2C9ヌクレアーゼに基づくエピジェネティックシステム、不活性化したC2C9を利用するC2C9ヌクレアーゼに基づく転写抑制システムが挙げられる。
【0144】
本発明のC2C9ヌクレアーゼまたはそれをコードするポリヌクレオチド、gRNAまたはそれをコードするポリヌクレオチド、組み換え発現ベクター、システム、組成物およびキットは研究の分野、診断の分野、工業の分野(たとえば、微生物工学)、薬物の発見(たとえば、ハイスループットスクリーニング)、標的の確認、画像学の分野および治療の分野などに使用することができる。研究の分野への使用は、たとえば、標的核酸の転写の上方調節によるたとえば、発育、生長、代謝(たとえば、特定の酵素のレベルを制御することによって正確に生合成の経路を制御および調節する)、遺伝子発現などに対する影響を確認することであってもよい。
【0145】
本発明において、前記C2C9ヌクレアーゼまたはそれをコードするポリヌクレオチド、gRNAまたはそれをコードするポリヌクレオチド、組み換え発現ベクター、システム、組成物およびキットなどは任意の生物に適用され、細菌、古細菌、真菌、原生生物、植物または動物を含むが、これらに限定されない。相応的に、適用する標的細胞は、細菌細胞、古細菌細胞、真菌細胞、原生生物細胞、植物細胞または動物細胞(たとえば、げっ歯類動物細胞、ヒト細胞、非ヒト霊長類動物細胞)を含むが、これらに限定されない。適用する標的細胞は任意のタイプの細胞でもよく、幹細胞、体細胞などを含む。
【0146】
本発明に記載のC2C9ヌクレアーゼ、gRNA、システム、組成物および方法などが真核細胞に適用される場合、たとえば、哺乳動物細胞に使用されてもよい。ある実施形態において、前記細胞はヒト胎児細胞ではないか、ヒト胎児細胞由来のものではない。ある実施形態において、前記細胞はヒト胚胎細胞ではないか、ヒト胚胎細胞由来のものではない。ある実施形態において、本発明はヒト胎児またはヒト胚胎の破壊に関しない。ある実施形態において、前記被験者または個体はヒト胎児または胚胎ではない。
【0147】
本発明に記載のC2C9ヌクレアーゼまたはそれをコードするポリヌクレオチド、gRN
Aまたはそれをコードするポリヌクレオチド、組み換え発現ベクター、システム、組成物およびキットなどが原核細胞に適用される場合、たとえば、大腸菌に使用される。ある実施形態において、細菌細胞における遺伝子発現の遮断に使用される。ある実施形態において、適切なgRNAおよび/または適切なC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸を標的細胞の染色体に導入し、前記核酸は誘導型プロモーターの制御下において翻訳して発現され、ここで、コードされるgRNAおよびC2C9ヌクレアーゼの両者は複合体を形成し、標的DNAの興味のある位置で切断する。そのため、ある実施形態において、工学的改変の手段により、細菌ゲノムに適切なC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸配列および/またはプラスミドにおけるgRNAが含まれ、誘導型プロモーターの制御下において、gRNAおよびC2C9ヌクレアーゼの発現を誘導することによって任意の標的の遺伝子の発現を制御する。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼは酵素活性を有し、二本鎖断裂を導入する以外の手段によって標的DNAを修飾する。前記酵素活性はC2C9自身が有するもの、あるいはたとえば酵素活性を有する異質ポリペプチドをC2C9ヌクレアーゼに融合させてキメラC2C9ヌクレアーゼを形成して得られたものでもよく、前記酵素活性は、メチルトランスフェラーゼ活性、脱アミノ作用活性、ディスムターゼ活性、アルキル化活性、デメチラーゼ活性、DNA修復活性、トランスポザーゼ活性、レコンビナーゼ活性、DNA損傷活性、脱プリン活性、酸化活性、ピリミジン二量体形成活性などを含むが、これらに限定されない。本発明において、所望の相補核酸配列をgRNAの遺伝子標的領域(たとえば、DNA-標的領域)に入っているように遺伝子工学的改変を行うことによって標的遺伝子における任意の位置の標的遺伝子の遺伝的修飾を制御することができる。本発明において、所望の相補核酸配列をC2C9に入っているように遺伝子工学的改変を行うことによって標的遺伝子における任意の位置の標的核酸の遺伝的修飾を制御することができる。ある実施形態において、細菌の標的DNAにおける任意の必要な位置のDNAの意図的で制御される損傷に使用される。ある実施形態において、細菌の標的DNAにおける任意の必要な位置のDNAの配列の特異的で制御される修復に使用される。
【0148】
また、本発明は、細胞あるいは体内、インビトロ細胞または無細胞システムにおいて標的遺伝子(たとえば、標的DNA)をターゲティング、編集、修飾または操作する方法であって、前述のC2C9ヌクレアーゼまたはそれをコードするポリヌクレオチド、gRNAまたはそれをコードするポリヌクレオチド、組み換え発現ベクター、システム、組成物、キットなどを体内、インビトロ細胞または無細胞システムに導入し、標的遺伝子をターゲティング、編集、修飾または操作することを含む方法を提供する。
【0149】
一つの実施形態において、前記方法は以下のことを含む:
(a)前記C2C9ヌクレアーゼまたはC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸を体内、インビトロ細胞または無細胞システムに導入する;ならびに
(b)前記gRNA(sgRNA)またはインサイチュでこのようなsgRNAを生成することに適する核酸(たとえば、DNA)を導入する;ならびに
(c)細胞または標的遺伝子をC2C9ヌクレアーゼまたはC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸、gRNA(sgRNA)たはインサイチュでこのようなsgRNAを生成することに適する核酸と接触させることで、前記標的遺伝子に一つまたは複数の切断、切り口または編集を生じさせ、ここで、前記C2C9ヌクレアーゼは加工または未加工の様態のgRNAによって前記標的遺伝子にガイドされる。
【0150】
ある実施形態において、前記標的遺伝子は標的DNAである。ある実施形態において、標的DNAはDNA関連タンパク質と結合していない体外の裸のDNAでもよい。ある実施形態において、標的DNAは体外細胞における染色体DNAである。ある実施形態において、前記標的遺伝子は標的RNAである。ある実施形態において、標的DNAを前記C2C9ヌクレアーゼおよびgRNAを含む標的複合体と接触させ、gRNAは標的DNAと
相補的なヌクレオチド配列を含むことで、標的複合体に標的特異性を提供し、C2C9ヌクレアーゼが部位特異的な活性を提供する。ある実施形態において、標的複合体は標的DNAを修飾することで、たとえば、DNA切断、DNAメチル化作用、DNA損傷、DNA修復などにつながる。ある実施形態において、標的複合体は標的DNA関連ポリペプチド(たとえば、ヒストン、DNA-結合タンパク質など)を修飾することで、たとえば、標的DNA関連ポリペプチド-ヒストンのメチル化、ヒストンのアセチル化、ヒストンのユビキチン化などにつながる。
【0151】
本発明に記載の方法において、体内に使用される場合、C2C9ヌクレアーゼまたはそれをコードするポリヌクレオチド、gRNAまたはそれをコードするポリヌクレオチド、組み換え発現ベクター、システム、組成物および/またはドナーポリヌクレオチドをそのまま個体に投与する。
【0152】
本発明に記載の方法において、公知の方法によってC2C9ヌクレアーゼまたはC2C9ヌクレアーゼのポリヌクレオチドをコードするヌクレオチド配列の核酸を細胞に導入することができる。同様に、公知の方法によってgRNAまたはgRNAをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を細胞に導入することができる。公知の方法は、DEAE-デキストランを介する形質移入、リポソームを介する形質移入、ウイルスまたはファージ感染、リポフェクション、形質移入、接合、プロトプラスト融合、ポリエチレンイミを介する形質移入、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、ジーンガン、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、ナノ粒子を介する核酸送達などを含む。たとえば、エレクトロポレーション、塩化カルシウム形質移入、マイクロインジェクション、リポフェクションなどによってプラスミドを送達する。ウイルスベクターによる送達について、細胞をgRNAおよび/またはC2C9ヌクレアーゼおよび/またはキメラC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸ならびに/あるいはドナーポリヌクレオチドを含むウイルス粒子と接触させる。
【0153】
ある実施形態において、本発明に記載の方法では、ヌクレアーゼが細胞における標的DNAを切断することによって二本鎖断裂が生じ、さらに細胞が、通常、以下の手段によって修復する:非相同末端結合(NHEJ)および相同組換え修復。
【0154】
非相同末端結合において、断裂末端同士をそのまま連結することによって二本鎖断裂を修復する。前記過程において、切断部位で少量の塩基対を挿入または欠失させてもよい。そのため、C2C9ヌクレアーゼのDNAに対する切断は標的DNA配列を切断し、細胞を外因性のドナーポリヌクレオチドが提供されていないまま前記配列を修復させることによって標的DNA配列から核酸材料を削除することに使用することができる。そのため、前記方法は遺伝子のノックアウトまたは標的DNAにおける選ばれた遺伝子座への遺伝物質のノックインに使用することができる。
【0155】
相同組換え修復において、切断される標的DNA配列と相同性を有するドナーポリヌクレオチドは切断される標的DNA配列の鋳型の修復に使用されることで、遺伝情報がドナーポリヌクレオチドから標的DNAへ移るようになる。そのため、新たな核酸材料を部位へ挿入/複製することができる。ある実施形態において、標的DNAをドナーポリヌクレオチドと接触させる。ある実施形態において、ドナーポリヌクレオチドを細胞に導入する。NHEJおよび/または相同組換え修復による標的DNAに対する修飾は、たとえば、遺伝子矯正、遺伝子置換、遺伝子挿入、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド挿入、遺伝子破壊、遺伝子突然変異、配列置換などにつながる。
【0156】
ある実施形態において、標的遺伝子を含む細胞は体外のものである。ある実施形態において、標的遺伝子を含む細胞は体内のものである。gRNAおよび/またはC2C9ヌクレ
アーゼをコードするヌクレオチド配列を含む適切な核酸は、発現ベクターを含み、ここで、gRNAおよび/またはC2C9ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターは組み換え発現ベクターである。ある実施形態において、前記方法は同様または異なる組み換えベクターによってC2C9ヌクレアーゼおよび一つまたは複数のgRNA(gRNA)を細胞に導入し、細胞をgRNAおよび/またはC2C9ヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含むベクターと接触させることで、ベクターを細胞に吸収させる。
【0157】
本発明の上記方法は、細胞における複数の位置のDNAの編集または修飾に使用することもできる。
【0158】
本発明の上記方法は、標的DNAの転写の調節に使用することもできる。
【0159】
ある実施形態において、本発明によって提供される方法は、完全なC2C9ヌクレアーゼまたはその一部または完全に欠陥のもの、あるいはgRNA部分を二量体FOK1ヌクレアーゼに連結することで、一つまたは複数のcrRNA分子によって一つまたは複数の特定のDNA標的部位にガイドすると、エンドヌクレアーゼによる切断をガイドすることを含む。別のある実施形態において、本発明によって提供される方法は、二量体FOK1ヌクレアーゼと連結したC2C9ヌクレアーゼを細胞に入る二つまたはそれ以上のRNAとしてまたはDNAにコードされる、一つのプロモーターの制御下にあるgRNAとともに細胞に導入し、各gRNAはリピートスペーサーアレーを含み、ここで、前記スペーサーはDNAにおける標的配列と相補的な核酸配列を含み、かつ前記リピート配列はステム-ループ構造を含む。ある実施形態において、本発明で提供される方法は、完全なC2C9ヌクレアーゼまたはその一部または完全に欠陥のもの、gRNAをドナーの一本鎖または二本鎖DNAのドナー鋳型に連結することで、一つまたは複数のgRNA分子によって一つまたは複数の特定のDNA標的部位にガイドすることにより、外因性DNA配列の相同組換えを促進する。
【0160】
また、本発明は、標的遺伝子-関連ポリペプチドのための方法であって、標的遺伝子を標的複合体と接触させることを含み、前記標的複合体は前述のC2C9ヌクレアーゼまたはC2C9ヌクレアーゼをコードする核酸、ならびにgRNAまたはインサイチュでこのようなsgRNAを生成することに適する核酸を含む。
【0161】
ある実施形態において、標的遺伝子-関連ポリペプチドはヒストン、DNA-結合タンパク質などである。ある実施形態において、標的複合体は標的DNA関連ポリペプチドを修飾することで、たとえば、標的DNA関連ポリペプチド、たとえば、ヒストンのメチル化、ヒストンのアセチル化、ヒストンのユビキチン化などにつながる。
【0162】
ある実施形態において、前記標的遺伝子は標的DNAである。ある実施形態において、標的DNAは体外細胞における染色体DNAである。ある実施形態において、標的DNAは体内細胞における染色体DNAなどである。ある実施形態において、前記標的遺伝子は標的RNAである。ある実施形態において、標的DNAを前記C2C9ヌクレアーゼおよびgRNAを含む標的複合体と接触させ、gRNAおよびC2C9ヌクレアーゼは複合体を形成し、gRNAは標的DNAと相補的なヌクレオチド配列を含むことで、標的複合体に標的特異性を提供し、C2C9ヌクレアーゼが部位特異的な活性を提供する。ある実施形態において、C2C9ヌクレアーゼに基づくCRISPR/C2C9システムでは、修飾されたポリヌクレオチドを使用し、修飾を細胞におけるC2C9ヌクレアーゼをコードするDNAまたはRNAならびに/あるいはgRNAに導入することで、任意の一つまたは複数のゲノムの遺伝子座を編集する。
【0163】
また、本発明は、上記C2C9ヌクレアーゼまたはそれをコードするポリヌクレオチド、gRNAまたはそれをコードするポリヌクレオチド、組み換え発現ベクター、システム、組成物で宿主細胞に対して遺伝修飾を行った細胞を提供する。
【0164】
本発明において、gRNAおよび/またはC2C9ヌクレアーゼおよび/または組み換え発現ベクターおよび/またはドナーポリヌクレオチドの有効投与量は当業者にとって通常のものである。異なる投与経路および治療される病症の特性によって決定することができる。
【0165】
C2C9ヌクレアーゼは出願人が発見したCRISPR遺伝子編集システムに適する新規なヌクレアーゼで、相応するガイドRNAによってガイドされると正確に標的遺伝子に局在化し、ゲノムDNAの切断を行い、ゲノムDNAの二本鎖断裂を実現させる。C2C9ヌクレアーゼのバリアントは、異なる特徴または有利な特徴を有することがある。これらのC2C9ヌクレアーゼおよびそのバリアントは未曾有のゲノム編集の別の可能性を提供する。C2C9ヌクレアーゼおよびそのバリアントは、それらを使用するシステムによっては、異なる活性を有することがある。C2C9は分子量においてCas9およびCas12aの半分またはそれ以下しかないにもかかわらず、C2C9はCas9およびCas12aに近いか類似するゲノム切断効率を有し、原核細菌および真核細胞において効率的なゲノム編集を実現させることができるため、生物技術および遺伝子治療などの分野において広い応用の将来性がある。
【0166】
本発明によって提供されるC2C9ヌクレアーゼは既に報告されたCRISPR-Casエンドヌクレアーゼに対して有利な特性、たとえば、原核、真核および/または体外の環境におけるより高い活性を示すことができる。ある実施形態において、C2C9は以下の一つまたは複数を兼ねる:小さいサイズ、高い編集活性、および短いPAM配列だけが必要。本発明において、RNA-ガイドのヌクレアーゼの小さいサイズとは長さが約800個アミノ酸以下のヌクレアーゼである。
【0167】
本発明において、前記細菌または原核細菌は大腸菌、肺炎クレブシエラ菌、バクテロイデス・オバツス(Bacteroides ovatus)、カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、スタフィロコッカス・サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)、バクテロイデス・ブルガタス(Bacteroides vulgatus)、バクテロイデス・ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、アシネトバクター・ルヴォフィイ(Acinetobacter lwoffii)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、パラバクテロイデス・ジョンソニイ(Parabacteroides johnsonii)、バクテロイデス・オレイシプレヌス(Bacteroides oleiciplenus)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、バクテロイデス・マシリエンシス(Bacteroides massiliensis)、パラバクテロイデス・メルダエ(Parabacteroides merdae)、フソバクテリウム・モルティフェラム(Fusobacterium mortiferum)およびビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)などであってもよい。
【0168】
本発明において、前記真核細胞は是哺乳動物細胞、真菌などの真核生物細胞を含むが、こ
れらに限定されない。前記真菌は酵母、アスペルギルスを含み、たとえば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、クルイベロマイセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、 クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、およびシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・デュブリニエンシス(Candida dubliniensis)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、カンジダ・ギリエルモンディ(Candida guiliermondii)、カンジダ・ケフィール(Candida kefyr)、カンジダ・クルーセイ(Candida krusei)、カンジダ・ルシタニアエ(Candida lusitaniae)、カンジダ ・メリニイ(Candida melinii)、カンジダ・オレオフィラ(Candida oleophila)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)およびカンジダ・ユチリス(Candida utilis)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・クラバタス(Aspergillus clavatus)、アスペルギルス・グラウクス(Aspergillus glaucus)群、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・ウスタス(Aspergillus ustus)およびアスペルギルス・バージカラー(Aspergillus versicolor)などであってもよい。
【0169】
本発明の実施例において、極小型CRISPR-C2C9ヌクレアーゼに基づく新規なゲノム編集方法を開示した。本発明において、ガイドRNAのガイドおよび局在化機能により、C2C9は正確にゲノムDNAを切断し、ゲノムDNAの二本鎖断裂を実現させることができることを示す。宿主細胞自身または外来の修復機構を利用し、当該システムは効率的かつ正確に生細胞においてゲノム編集を実現させることができる。
【実施例
【0170】
以下、実施例を合わせて本発明の実施形態を明確に、完全に説明するが、もちろん、記載される実施例は本発明を説明するための一部の実施例にすぎず、本発明の範囲に対する限定とされない。実施例において、具体的な条件が記載されていないものは、通常の条件またはメーカーのお薦めの条件で行われた。使用された試薬または装置はメーカーが未記載の場合、市販品として購入できる通常の製品と見なされる。
【0171】
各実施例で使用される生物材料の由来は以下のとおりである:
肺炎クレブシエラ菌NCTC9633菌株(米国ATCC社から購入、カタログ番号:13883);感受性大腸菌DH5α菌株(Jingsu Cowin Biotech co., Ltd.から購入、カタログ番号:CW0808S)。各実施例で使用されるLB液体培地はSangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.から購入、カタログ番号:A507002-0250;LB固体培地はSangon
Biotech (Shanghai) Co., Ltd.から購入、カタログ番号:A507003-0250;アプラマイシンは米国BioVision社から購入、カタログ番号:B1521-1G;カナマイシンは、Shanghai Aladdin Biochemical Technology Co., Ltd.から購入、カタログ番号:K103024-5g。
実施例1:AcC2C9のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)同定プラスミドp15a-AcC2C9Controlおよびp15a-AcC2C9PAMの構築
【0172】
(1.1)p15a-AcC2C9Controlプラスミドの配列は配列番号124で、その具体的な構築方法は以下の通りである:
Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.で、AcC2C9ヌクレアーゼおよびそれに相応するガイドRNA発現カセットのDNA配列(その配列は配列番号125である)およびp15aプラスミドの骨格(その配列は配列番号126である)を全遺伝子合成された。Gibson assembly技術によってその二つのDNA断片をp15a-AcC2C9Controlプラスミドに組み立てた。大腸菌DH5α商品の感受性細胞を形質転換させ、75μg/mLアプラマイシン含有LB培地プレートに塗布してスクリーニングした。単一のクローンを取って拡大培養し、プラスミドを抽出し、シークエンシングによってプラスミドの配列を同定した後、p15a-AcC2C9Controlプラスミドを得た。
【0173】
(1.2)p15a-AcC2C9PAMプラスミドの配列は配列番号127で、その具体的な構築方法は以下の通りである:
Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.で、以下の二つのプライマーを合成された。
【0174】
PAMprimerF:5’-atcgTGTCCTCTTCCTCTTTAGCG-3’(配列番号128)
【0175】
PAMprimerR:5’-ggccCGCTAAAGAGGAAGAGGACA-3’(配列番号129)
【0176】
上記二つのプライマーをアニーリングし、具体的な反応系は、5μl 10×T4 DNA リガーゼ緩衝液(NEB社)、10μLPAM primerF(10μM)、10μLPAM primerR(10μM)、25μL ddHOである。95℃で5min加熱した後、1~2時間内でゆっくり室温に降温させ、二つの一本鎖プライマーを塩基対合によって二本鎖DNAを形成させた。その後、ddHOで得られた産物を20倍希釈した。
【0177】
上記で得られた二本鎖DNAをGolden Gate技術によってp15a-AcC2C9ControlプラスミドのBsaI部位に挿入し、具体的な反応系は、1μL 10×T4 DNA リガーゼ緩衝液、1μL上記20倍希釈されたリン酸化二本鎖DNA、20fmolp15a-AcC2C9Controlプラスミド、0.5μL T4 DNA リガーゼ(400units/μL)、0.5μLBsaI-HF(20units/μL)で、最後に全体積が10μLになるように適量のddHOを入れた。当該反応で使用された緩衝液および酵素はいずれもNEB社製である。PCR装置において反応を行い、サイクルは、37℃で2min;16℃で5min、計25サイクル;さらに80℃で15minである。
【0178】
当該10μLの反応物で大腸菌の感受性DH5α菌株を形質転換させ、75μg/mLアプラマイシン含有LB固体培養プレートに敷いた。形質転換液が固体培養プレートに吸収されると、37℃のインキュベーターにおいて逆さまで一晩培養した。培地に生長した形質転換菌株を移して保存し、同時にプラスミドを抽出してSangon Biotech
(Shanghai) Co., Ltd.に送ってシークエンシング検証を行い、最終的にp15a-AcC2C9PAMプラスミドを得た。
実施例2 PAM同定用基質プラスミドpUC19-6N-libraryの構築
【0179】
pUC19-6N-libraryプラスミドの配列は配列番号130で、その具体的な構築方法は以下の通りである:
商品pUC19プラスミドを鋳型とし、6Nランダム配列付きのプライマー6N-F(その配列は配列番号131)および普通のプライマー6N-R(その配列は配列番号132)で環状ポリメラーゼ伸長クローニング(circular polymerase extension cloning)を行った。PCR産物をDpnIで消化処理した後、大腸菌DH5α商品の感受性細胞を形質転換させ、カルベニシリン含有LBAプレートに塗布し、塗布器で10万超の単一クローンをかき取って収集し、混合後、プラスミドを抽出し、PAM同定基質プラスミドpUC19-6N-libraryを得た。
実施例3 AcC2C9のPAM同定
【0180】
実施例1で構築されたp15a-AcC2C9Controlプラスミドで大腸菌DH5α商品の感受性細胞を形質転換させ、さらに75μg/mLアプラマイシン含有LB固体プレートに塗布した。翌日、単一クローンを取って100mLの新鮮なLB液体培地において培養し、OD 600=0.5になると細菌を収集した後、氷の上で予め冷却された滅菌10%v/vグリセリンで菌体を2回洗浄し、最終的に1mLの滅菌10%v/vグリセリン溶液で細菌を再懸濁させ、p15a-AcC2C9Controlプラスミドを持つDH5α感受性細胞を得た。
【0181】
実施例1で構築されたp15a-AcC2C9PAMプラスミドを持つDH5α感受性細胞を製造し、その製造過程は上記p15a-AcC2C9Controlプラスミドを持つDH5α感受性細胞の製造過程と同様である。
【0182】
100ngの実施例2で構築されたpUC19-6N-libraryプラスミドを取り、エレクトロポレーションによってp15a-AcC2C9Controlプラスミドを持つDH5α感受性細胞に導入し、50μg/mLカルベニシリンおよび75μg/mLアプラマイシン含有LB固体プレートに塗布した。それぞれ塗布器で10万超の単一クローンをかき取って収集し、混合後、プラスミドを抽出し、対照ライブラリー(control library)を得た。
【0183】
100ngの実施例2で構築されたpUC19-6N-libraryプラスミドを取り、エレクトロポレーションによってp15a-AcC2C9PAMプラスミドを持つDH5α感受性細胞に導入し、AcC2C9のPAM欠失ライブラリー(PAM depletion library)を製造した。その製造過程は対照ライブラリーの工程と同様である。
【0184】
それぞれcontrol libraryおよびPAM depletion libraryを鋳型とし、プライマーPAM-1F(その配列は配列番号133である)およびPAM-1R(その配列は配列番号134である)を使用し、第一ラウンドのPCRを行い、電気泳動によって産物を検出し、さらに1μLの第一ラウンドのPCR産物を鋳型とし、プライマーPAM-2F(その配列は配列番号135である)およびPAM-2R(その配列は配列番号136である)を使用し、第二ラウンドのPCRを行い、電気泳動によって産物を検出した。それぞれVAHTS DNA Clean Beads磁気ビーズ(Vazyme Biotech Co.,Ltd.)で産物を精製した。それぞれIllumina Hiseq2500プラットフォームによってハイスループットシークエンシングを行い、それぞれ1Gb元のデータを得、6Nランダム配列の情報を抽出し、PAM depletion libraryにおける配列の頻度をcontrol libraryにおける配列の頻度と比較し、weblogoを構築することで、AcC2C9嗜好のPAM情報を得た。
【0185】
図1はAcC2C9のPAMの同定の流れおよび結果の図である。結果から、AcC2C9は5’-AANタイプのPAM配列および少量の5’-GAN配列(ここで、Nは縮重塩基で、A、T、CまたはGのいずれか一つの塩基を表す)を効率的に認識することができることが示された。ここで、横座標-1、-2、-3、-4、-5、-6はそれぞれNTS鎖(非標的鎖)における標的DNA領域の配列の5’末端の上流に位置する1、2、3、4、5、6個目のDNA塩基を表す。その上のアルファベットはAcC2C9ヌクレアーゼのDNA配列に対する嗜好性を表し、アルファベットが占める比率が高いほど、AcC2C9の当該塩基に対する嗜好性が強いことを示す。
実施例4 CgC2C9、RdC2C9およびMiC2C9のPAM同定
【0186】
CgC2C9、RdC2C9およびMliC2C9のPAM同定の工程はAcC2C9に類似する。
【0187】
Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.で、CgC2C9、RdC2C9およびMliC2C9ヌクレアーゼおよびそれに相応するガイドRNA発現カセットのDNA配列(その配列は配列番号137~139である)を全遺伝子合成された。Gibson assembly技術によってそれぞれこの三つのヌクレアーゼDNA断片をp15aプラスミド骨格(その配列は配列番号126である)とp15a-CgC2C9Control(その配列は配列番号140である)、p15a-RdC2C9Control(その配列は配列番号141である)およびp15a-MiC2C9Control(その配列は配列番号142である)に組み立てた。大腸菌DH5α商品の感受性細胞を形質転換させ、75μg/mLアプラマイシン含有LB培地プレートに塗布してスクリーニングした。単一のクローンを取って拡大培養し、プラスミドを抽出し、シークエンシングによってプラスミドの配列を同定した。
【0188】
Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.に以下のプライマーの合成を依頼した。
【0189】
CgPAMprimerF:5’-tcccTGTCCTCTTCCTCTTTAGCG-3’(配列番号143)
【0190】
RdPAMprimerF:5’-ttccTGTCCTCTTCCTCTTTAGCG-3’(配列番号144)
【0191】
MiPAMprimerF:5’-gcctTGTCCTCTTCCTCTTTAGCG-3’(配列番号145)
【0192】
CgC2C9、RdC2C9およびMliC2C9に相応するプライマーをそれぞれPAMprimerR:5’-ggccCGCTAAAGAGGAAGAGGACA-3’(配列番号129)とをアニーリングし、具体的な反応系は、5μl 10×T4 DNA
リガーゼ緩衝液(NEB社)、10μL primerF(10μM)、10μL primerR(10μM)、25μL ddHOである。95℃で5min加熱した後、1~2時間内でゆっくり室温に降温させ、二つの一本鎖プライマーを塩基対合によって二本鎖DNAを形成させた。その後、ddHOで得られた産物を20倍希釈した。上記で得られた二本鎖DNAをGolden Gate技術それぞれによってp15a-CgC2C9Control,p15a-RdC2C9Controlおよびp15a-MiC2C9ControlプラスミドのBsaI部位に挿入し、具体的な反応系は、1μL
10×T4 DNA リガーゼ緩衝液、1μL上記20倍希釈されたリン酸化二本鎖DNA、20fmolプラスミド、0.5μL T4 DNA リガーゼ(400unit
s/μL)、0.5μBsaI-HF(20units/μL)で、最後に全体積が10μLになるように適量のddHOを入れた。当該反応で使用された緩衝液および酵素はいずれもNEB社製である。PCR装置において反応を行い、サイクルは、37℃で2min;16℃で5min、計25サイクル;さらに80℃で15minである。当該10μLの反応物で大腸菌の感受性DH5α菌株を形質転換させ、75μg/mLアプラマイシン含有LB固体培養プレートに敷いた。形質転換液が固体培養プレートに吸収されると、37℃のインキュベーターにおいて逆さまで一晩培養した。培地に生長した形質転換菌株を移して保存し、同時にプラスミドを抽出してSangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.に送ってシークエンシング検証を行い、最終的にp15a-CgC2C9PAM(その配列は配列番号146である)、p15a-RdC2C9PAM(その配列は配列番号147である)、およびp15a-MiC2C9PAM(その配列は配列番号148である)プラスミドを得た。
【0193】
CgC2C9、RdC2C9およびMiC2C9のPAM嗜好性を同定した。その操作工程は実施例3におけるAcC2C9のPAM同定工程と完全に同様である。
【0194】
図2はCgC2C9、RdC2C9およびMiC2C9のPAMの同定結果の図である。結果から、CgC2C9は5’-AASタイプのPAM配列(ここで、Sは縮重塩基で、CはまたはGのいずれか一つの塩基を表す)を効率的に認識することができ、RdC2C9(B)およびMiC2C9(C)は5’-AANタイプのPAM配列(ここで、Nは縮重塩基で、A、TはまたはCのいずれか一つの塩基を表す)を効率的に認識することができることが示された。
実施例5 肺炎クレブシエラ菌ゲノム編集用p15a-AcC2C9およびpSGKP-AcC2C9プラスミドの構築
【0195】
p15a-AcC2C9プラスミドの配列は配列番号149で、その具体的な構築方法は以下の通りである:
実施例1におけるp15a-AcC2C9Controlプラスミドを鋳型とし、それぞれAcC2C9ヌクレアーゼの遺伝子およびp15aプラスミド骨格を増幅した。
【0196】
AcC2C9ヌクレアーゼの遺伝子を増幅する5’プライマー配列AcC2C9F:
tcatctgtgcatatagctatactgatttcgtcagactcaca(配列番号150)
【0197】
AcC2C9ヌクレアーゼの遺伝子を増幅する3’プライマー配列ACC2C9R:
cgccaaccagccaCCTTATTGACCTGCACCGCTATG(配列番号151)
【0198】
p15aプラスミド骨格を増幅する5’プライマー配列p15aF:
CAGGTCAATAAGGtggctggttggcgtactgtt(配列番号152)
【0199】
p15aプラスミド骨格を増幅する3’プライマー配列p15aR:
atcagtatagctatatgcacagatgaaaacggtgtaaaaaaga(配列番号153)
【0200】
Vazyme Biotech Co.,Ltd.のPhanta Max Master Mix試薬でそれぞれAcC2C9遺伝子断片およびp15aプラスミド骨格を増幅し、反応系は、25μL 2xPhanta Max Master Mix、1.5μL5’プライマー(10μM)、1.5μL 3’プライマー(10μM)、0.5μl
鋳型DNA(100ng/μL)、1.5μL DMSO、20μL ddHOである。PCR反応系を調製した後、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行い、サイクルは、98℃で2min;その後98℃で20s、55℃で20s、72℃で3min、計30サイクル;最後に72℃で5minである。Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.製のSanPrepカラム式PCR産物精製キットでPCR産物をそれぞれ回収した。PCR産物の精製の具体的な工程はキットのマニュアルに従って行われた。
【0201】
得られたAcC2C9遺伝子断片およびp15aプラスミド骨格をGibson Assemblyによって一つのプラスミドに組み立てた。具体的な反応系は、5μLNEBuilderHiFi DNA Assembly Master Mix(NEB社)、20fmol AcC2C9遺伝子断片、20fmol p15aプラスミド骨格で、全体積が10μLになるように適量のddHOを入れた。50℃で1時間反応させた。10μLの反応物で大腸菌の感受性DH5α菌株を形質転換させ、75μg/mLアプラマイシン含有LB固体培養プレートに敷いた。形質転換液が固体培養プレートに吸収されると、37℃のインキュベーターにおいて逆さまで一晩培養した。培養プレートに生長した形質転換菌株を移して保存し、Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.製のSanPrepカラム式プラスミドDNAミニプレップキットによってプラスミドを抽出して後の実験に供し、プラスミド抽出の具体的な工程はキットのマニュアルに従って行われた。同時にプラスミドをSangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.に送ってシークエンシング確認を行い、最終的にp15a-AcC2C9プラスミドを得た。
【0202】
pSGKP-AcC2C9プラスミドの配列は配列番号154で、その具体的な構築方法は以下の通りである:
Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.で、AcC2C9ヌクレアーゼに相応するガイドRNA発現カセットのDNA配列(その配列は配列番号155である)およびpSGKPプラスミドの骨格(その配列は配列番号156である)を全遺伝子合成された。Gibson assembly技術によってその二つのDNA断片をpSGKP-AcC2C9プラスミドに組み立てた。大腸菌DH5α商品の感受性細胞を形質転換させ、50μg/mLカナマイシン含有LB培地プレートに塗布してスクリーニングした。単一のクローンを取って拡大培養し、プラスミドを抽出し、シークエンシングによってプラスミドの配列を同定した後、pSGKP-AcC2C9プラスミドを得た。
実施例6 肺炎クレブシエラ菌ゲノムdha遺伝子を標的とするpSGKP-AcC2C9-dhaプラスミドの構築
【0203】
pSGKP-AcC2C9-dhaプラスミドの配列は配列番号157で、その具体的な構築方法は以下の通りである:
まず、肺炎クレブシエラ菌の標的遺伝子に特定のAAG(本実施例において選ばれたAcC2C9が認識するPAM配列はAAGである)配列の後の20塩基のDNA断片(この20塩基はスペーサー(spacer)と呼ばれ、AANがそれに含まれていない)を選定した後、当該spacer配列を実施例1で構築されたp15a-AcC2C9Controlプラスミドに挿入した。本工程の特徴は、spacer断片がp15a-AcC2C9ControlプラスミドのBsaI部位に挿入できるように、当該一本鎖DNA配列の5’末端にatcgを加える必要があることにある。同時に、spacerの逆相補配列を合成し、逆相補配列の5’末端にggccを加える必要がある。たとえば、本実施例で選定されたdha遺伝子spacerのDNA配列(配列番号158)は、5’-TGTTTGTTACCAACTGCCTG-3’で、二つのプライマーの具体的な配列の設計は以下の通りである。
【0204】
PAM primerF(dha-spF):5’-atcgTGTTTGTTACCAACTGCCTG-3’(配列番号159)
【0205】
PAM primerR(dha-spR):5’-ggccCAGGCAGTTGGTAACAAACA-3’(配列番号160)
【0206】
上記二つのプライマーをアニーリングし、具体的な反応系は、5μl 10×T4 DNA リガーゼ緩衝液(NEB社)、10μLPAM primerF(10μM)、10μLPAM primerR(10μM)、25μL ddHOである。95℃で5min加熱した後、1~2時間内でゆっくり室温に降温させ、二つの一本鎖プライマーを塩基対合によって二本鎖DNAを形成させた。その後、ddHOで得られた産物を20倍希釈した。
【0207】
上記で得られた二本鎖DNAをGolden Gate技術によって実施例4で構築されたpSGKP-AcC2C9プラスミドのBsaI部位に挿入し、具体的な反応系は、1μL 10×T4 DNA リガーゼ緩衝液、1μL上記20倍希釈されたリン酸化二本鎖DNA、20fmol pSGKP-AcC2C9プラスミド、0.5μL T4 DNA リガーゼ(400units/μL)、0.5μLBsaI-HF(20units/μL)で、最後に全体積が10μLになるように適量のddHOを入れた。当該反応で使用された緩衝液および酵素はいずれもNEB社製である。PCR装置において反応を行い、サイクルは、37℃で2min;16℃で5min、計25サイクル;さらに80℃で15minである。
【0208】
当該10μLの反応物で大腸菌の感受性DH5α菌株を形質転換させ、75μg/mLアプラマイシン含有LB固体培養プレートに敷いた。形質転換液が固体培養プレートに吸収されると、37℃のインキュベーターにおいて逆さまで一晩培養した。培地に生長した形質転換菌株を移して保存し、同時にプラスミドを抽出してSangon Biotech
(Shanghai) Co., Ltd.に送ってシークエンシング検証を行い、最終的にpSGKP-AcC2C9-dhaプラスミドを得た。
実施例7 p15a-AcC2C9プラスミド含有肺炎クレブシエラ菌のエレクトロポレーション感受性細胞の製造
【0209】
肺炎クレブシエラ菌NCTC9633菌株(米国ATCC社から購入、カタログ番号:13883)をLB固体培養プレートに画線し、37℃のインキュベーターにおいて逆さまで一晩培養した。培養プレートに生長した一つの単一クローン集落を取り、3mLのLB液体培地に接種し、37℃のシェーカーにおいて250rpmの回転数で一晩振とうした。翌日、1mLの菌液を取って100mLの新鮮なLB液体培地に接種し、37℃のシェーカーにおいて続いて振とうした。菌液のOD600が0.3に達すると、菌液を氷の上に置いて10分冷却した。4℃の遠心機において8000rpmの回転数で5分遠心して菌を回収し、培地上清を捨て、底部の細菌沈殿を20mLの10%(v/v)グリセリン(高圧で滅菌し、氷の上で予め冷却した)で再懸濁させた。同様の回転数で遠心し、上清を捨て、底部の細菌沈殿を再び20mLの10%(v/v)グリセリンで再懸濁させた。同様の回転数でもう一度遠心し、上清を捨てた後、底部の細菌沈殿を1mLの10%(v/v)グリセリンで再懸濁させた。得られた細菌のエレクトロポレーション感受性細胞を分けてEPチューブに、50μLずつ菌液を入れた。分けた菌液をまず液体窒素において快速に冷凍した後、-80℃の冷蔵庫に入れて保存した。なお、再懸濁時に動作が軽く、ピペットで軽く吹いて混ぜる手段によって細菌を再懸濁させてもよい。
【0210】
1本の新しく製造された肺炎クレブシエラ菌のエレクトロポレーション感受性細胞を取り
、氷の上に5~10分置いた後、1μgの実施例4で製造されたp15a-AcC2C9プラスミドを入れた。均一に混合した後、1mmエレクトロポレーションセル (Bio-Rad社)に移し、室温でGenePulserXcell電撃装置(Bio-Rad社)において電撃を行った。電撃のパラメーターは、1800V、200Ω、25μFである。電撃後、すぐに1mLのLB液体培地を入れ、均一に混合した後、きれいなEPチューブに移し、37℃のシェーカーにおいて1~2時間振とうした。100μLの菌液を取って75μg/mLアプラマイシン含有LB固体培養プレートに敷いた。菌液が固体培養プレートに吸収されると、37℃のインキュベーターにおいて逆さまで一晩培養した。一つの単一クローン集落を取り、3mLの75μg/mLアプラマイシン含有LB液体培地の中で37℃のシェーカーにおいて250rpmの回転数で一晩振とうした。翌日、1mLの細菌菌液を取って100mLの新鮮な75μg/mLアプラマイシン含有LB培地に接種し、37℃のシェーカーにおいて続いて振とうした。菌液のOD600が0.2に達すると、菌液に1mLの20%w/vのアラビノースを入れ、菌液を続いて2h振とうした後、菌液を氷の上に置いて10分冷却した。4℃の遠心機において8000rpmの回転数で5分遠心して菌を回収し、培地上清を捨て、底部の細菌沈殿を20mLの10%v/vグリセリン(高圧で滅菌し、氷の上で予め冷却した)で再懸濁させて2回洗浄した。最後に同様の回転数でもう一度遠心し、上清を捨てた後、底部の細菌沈殿を1mLの10%v/vグリセリンで再懸濁させた。得られた細菌のエレクトロポレーション感受性細胞を分けてEPチューブに、50μLずつ菌液を入れた。分けた菌液をまず液体窒素において快速に冷凍した後、-80℃の冷蔵庫に入れて保存した。なお、再懸濁時に動作が軽く、ピペットで軽く吹いて混ぜる手段によって細菌を再懸濁させてもよい。
実施例8 AcC2C9システムによる肺炎クレブシエラ菌生細胞の効率的な遺伝子削除の実現
【0211】
1本の実施例6で製造されたp15a-AcC2C9プラスミド含有肺炎クレブシエラ菌のエレクトロポレーション感受性細胞を取り、氷の上に5~10分置き、溶けると200ngの実施例5で製造されたpSGKP-AcC2C9-dhaプラスミドおよび最終濃度が5μMのdha遺伝子相同組換え修復鋳型(その配列は配列番号161である)を入れ、軽く均一に混合した。ピペットで均一に混合された細菌プラスミド混合物を予め冷却された1mmエレクトロポレーションセル(Bio-Rad社)に移し、氷の上に5min静置した。エレクトロポレーションセルの外壁の凝結水を拭き取り、GenePulserXcell電撃装置(Bio-Rad社)において電撃を行った。電撃のパラメーターは、1800V、200Ω、25μFである。電撃後、すぐに1mLのLB培養液を入れて電撃後の細胞を洗い出し、無菌のEPチューブに移し、37℃のシェーカーにおいて250rpm/minの回転数で1h再生培養した。菌液を75μg/mLアプラマイシンおよび50μg/mLカナマイシン含有LB固体培地に塗布し、菌液が吸収されると、37℃のインキュベーターにおいて逆さまで一晩培養した。
【0212】
生長した集落を集落PCRを行って編集の効果を検証した。
【0213】
dha遺伝の集落PCR検証の5’プライマー:
5’-TCATCATTGGCATCCTGAAA-3’(配列番号162)
【0214】
dha遺伝の集落PCR検証の3’プライマー:
5’-TGGTCAGCCTGCTGATTAAA-3’(配列番号163)
【0215】
図3はCRISPR-AcC2C9システムによって肺炎クレブシエラ菌の生細胞において遺伝子ノックアウトを行ったPCR結果の図である。結果から、選定されたdha遺伝子はCRISPR-AcC2C9システムによって正確にノックアウトされることができたことが示された。
実施例9 AcC2C9タンパク質異質発現プラスミドpET28a-sumo-AcC2C9の構築
【0216】
実施例1におけるp15a-AcC2C9Controlプラスミドを鋳型とし、AcC2C9ヌクレアーゼの遺伝子の配列を増幅し、AcC2C9を発現するpET28a-sumo-AcC2C9プラスミド(その配列は配列番号164)の構築に使用した。
【0217】
AcC2C9遺伝子を増幅する5’プライマー配列pET-AcC2C9F(5’プライマー):
5’-tCTTGAAGTCCTCTTTCAGGGACCCATGGTGCAGACGGAGATCCTG-3’(配列番号165):
【0218】
AcC2C9遺伝子を増幅する3’プライマー配列pET-AcC2C9R(3’プライマー):
5’-gtcgacggagctcgaattcttaagcTTATGGAGGCGTTGCCGTTTCG-3’(配列番号166):
【0219】
Vazyme Biotech Co.,Ltd.のPhanta Max Master Mix試薬でAcC2C9遺伝子断片を増幅したが、反応系は、25μL 2xPhanta Max Master Mix、1.5μL 5’プライマー(10μM)、1.5μL 3’プライマー(10μM)、0.5μl実施例4で製造されたp15a-AcC2C9プラスミド(100ng/μL)、1.5μL DMSO、20μL ddHOである。PCR反応系を調製した後、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行ったが、サイクルは、98℃で2min;その後98℃で20s、55℃で20s、72℃で1min、計30サイクル;最後に72℃で5minである。Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.製のSanPrepカラム式PCR産物精製キットでPCR産物をそれぞれ回収した。PCR産物の精製の具体的な工程はキットのマニュアルに従って行われた。
【0220】
Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.で、pET28a-sumoプラスミド骨格(その配列は配列番号167)を全遺伝子合成された。Gibson assembly技術によってその二つのAcC2C9遺伝子断片をpET28a-sumoプラスミド骨格とpET28a-sumo-AcC2C9プラスミドに組み立てた。大腸菌DH5α商品の感受性細胞を形質転換させ、50μg/mLカナマイシン含有LB培地プレートに塗布してスクリーニングした。単一のクローンを取って拡大培養し、プラスミドを抽出し、シークエンシングによってプラスミドの配列を同定した後、pET28a-sumo-AcC2C9プラスミドを得た。
実施例10 AcC2C9による効率的な体外二本鎖DNA切断の実現
【0221】
切断基質の製造。肺炎クレブシエラ菌のゲノムを鋳型とし、5’FAM標識のプライマーで切断基質を増幅した。切断基質を増幅する5’プライマーの配列は5’-CCGCATATATCGCAAAACAA-3’(配列番号168)で、切断基質を増幅する3’プライマーの配列は5’-CTGGCTGTGAACAAAGTGGA-3’(配列番号169)である。Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.製のSanPrepカラム式PCR産物精製キットでPCR産物をそれぞれ回収した。
【0222】
AcC2C9ヌクレアーゼの製造。実施例8で構築されたpET28a-sumo-AcC2C9プラスミドで大腸菌発現菌株BL21(DE3)を形質転換させた。翌日、形質転換体を1LのLB培地に接種し、37℃の条件において振とう培養を行った。OD60
が0.6に達すると、培養液に0.5mLの1M IPTGを入れ、温度を16℃に降温させて続いて一晩培養した。一晩培養された菌株を収集し、超音波で破砕した後、HisTrap Ni-NTA(GE Healthcare)クロマトグラフィーカラムによって精製した。その後、HiLoad 16/600 Superdex 200pg
分子篩(GE Healthcare)でさらに精製した。精製後のタンパク質を限外ろ過チューブで濃縮した後、500mM NaCl、10mMTris-HCl、pH=7.5、1mM DTTの緩衝液において保存した。
【0223】
切断基質を標的とする完全なガイドRNA(その配列は配列番号170である)の製造。完全なガイドRNAの製造は体外転写によって実現させた。その転写鋳型DNAはGenewiz Biotech Co., Ltd.によって合成され、その配列が配列番号171である。完全なガイドRNAは上記鋳型でHiScribe T7 High Yield RNA Synthesis Kit(NEB社)によって転写してなる。具体的な工程はキットのマニュアルに従って行われた。製造後の完全なガイドRNAはフェノール/クロロホルムによる抽出およびエタノールによる沈殿で精製した。
【0224】
体外切断実験は150mM NaCl、10mM MgCl、10mM Tris-HCl、pH=7.5、1mM DTTの条件において行われた。反応系の全体積は20μLで、それに30nM切断基質、2μM AcC2C9および2μM完全なガイドRNAが含まれている。反応時間はそれぞれ0分、1分、2分、5分、15分および30分で、反応温度は37℃であった。反応終了後、50mM EDTAおよび2mg/mL ProteinKを入れて反応を停止させた。反応物を6%w/vのTBEアクリルアミドゲルによって分離し、Bio-Rad社のGELDOCゲルイメージング装置において488nmの青色光で励起して画像を得た。
【0225】
図4はAcC2C9ヌクレアーゼによって基質DNAを切断した結果の図である。結果から、基質DNAはAcC2C9によって正確に二つのDNA断片に切断されたことが示された。
実施例11 AcC2C9の最適な反応条件の検出
【0226】
AcC2C9の最適な反応条件を検出するために、本発明は体外切断実験を利用して異なる反応条件においてAcC2C9の活性を検出した。
【0227】
切断基質。実施例10に記載の通りである。
【0228】
AcC2C9ヌクレアーゼの製造。実施例10に記載の通りである。
【0229】
切断基質を標的とする完全なガイドRNA。実施例10に記載の通りである。
(1)温度によるAcC2C9活性に対する影響
【0230】
体外切断実験は100mM NaCl、10mM MgCl、10mM Tris-HCl、pH=7.5、1mM DTTの条件において行われた。反応系の全体積は20μLで、それに30nM切断基質、2μM AcC2C9および2μM完全なガイドRNAが含まれている。反応時間はそれぞれ0分、5分、10分、20分、40分および60分で、反応温度はそれぞれ30℃、34℃、37℃、40℃、43℃、46℃および50℃であった。反応終了後、50mM EDTAおよび2mg/mL ProteinKを入れて反応を停止させた。反応物を6%w/vのTBEアクリルアミドゲルによって分離し、Bio-Rad社のGELDOCゲルイメージング装置において488nmの青色光で励起して画像を得た。切断のバンドの量と全DNA基質量の比率からAcC2C9の切断効率を決定した。
(2)NaCl濃度によるAcC2C9活性に対する影響
【0231】
体外切断実験の反応緩衝液は10mM MgCl、10mM Tris-HCl、pH=7.5、1mM DTTで、それぞれ50mM、100mM、200mM、300mMおよび500mM NaClを入れた。反応系の全体積は20μLで、それに30nM切断基質、2μM AcC2C9および2μM完全なガイドRNAが含まれている。反応時間はそれぞれ0分、5分、10分、20分、40分および60分で、反応温度は37℃であった。反応終了後、50mM EDTAおよび2mg/mL ProteinKを入れて反応を停止させた。反応物を6%w/vのTBEアクリルアミドゲルによって分離し、Bio-Rad社のGELDOCゲルイメージング装置において488nmの青色光で励起して画像を得た。切断のバンドの量と全DNA基質量の比率からAcC2C9の切断効率を決定した。
(3)MgCl濃度によるAcC2C9活性に対する影響
【0232】
体外切断実験の反応緩衝液は100mM NaCl、10mM Tris-HCl、pH=7.5、1mM DTTで、それぞれ0mM、1mM、2mM、5mM、10mMおよび20mM MgClを入れた。反応系の全体積は20μLで、それに30nM切断基質、2μM AcC2C9および2μM完全なガイドRNAが含まれている。反応時間はそれぞれ0分、5分、10分、20分、40分および60分で、反応温度は37℃であった。反応終了後、50mM EDTAおよび2mg/mL ProteinKを入れて反応を停止させた。反応物を6%w/vのTBEアクリルアミドゲルによって分離し、Bio-Rad社のGELDOCゲルイメージング装置において488nmの青色光で励起して画像を得た。切断のバンドの量と全DNA基質量の比率からAcC2C9の切断効率を決定した。
(4)異なる2価イオンによるAcC2C9活性に対する影響
【0233】
体外切断実験の反応緩衝液は100mM NaCl、10mM Tris-HCl、pH=7.5、1mM DTTで、それぞれ10mMのMgCl、CdCl、CoCl、MnClおよびNiClを入れた。反応系の全体積は20μLで、それに30nM切断基質、2μM AcC2C9および2μM完全なガイドRNAが含まれている。反応時間はそれぞれ0分、5分、10分、20分、40分および60分で、反応温度は37℃であった。反応終了後、50mM EDTAおよび2mg/mL ProteinKを入れて反応を停止させた。反応物を6%w/vのTBEアクリルアミドゲルによって分離し、Bio-Rad社のGELDOCゲルイメージング装置において488nmの青色光で励起して画像を得た。切断のバンドの量と全DNA基質量の比率からAcC2C9の切断効率を決定した。
【0234】
図5はAcC2C9ヌクレアーゼの異なる温度(A)、異なるNaCl濃度(B)、異なるMgCl濃度(C)および異なる2価イオン(D)の条件における反応活性の図である。結果から、AcC2C9は40℃、100mM NaCl、10mM MgClの条件において活性が最も高いことが示された。40分反応した場合、AcC2C9は40℃における切断効率が98.8%に、100mM NaClにおける切断効率が98.7%に、10mM MgClにおける切断効率が98.9%に達した。
実施例12 完全なガイドRNAをtracrRNAとcrRNAに分けた後の活性の検出
【0235】
切断基質を標的とする完全なガイドRNAはtracrRNAおよびcrRNA(標的配列とハイブリダイズするDNA-標的領域とtracrメイト配列が連結してなるRNA配列)を含む。完全なガイドRNAをtracrRNAとcrRNAに分けた後の生物活性の有無を検証するために、本発明は体外二本鎖DNA切断実験を行った。
【0236】
基質を切断した。実施例10に記載の通りである。
【0237】
AcC2C9ヌクレアーゼを製造した。実施例10に記載の通りである。
【0238】
tracrRNA(配列番号172)の製造。tracrRNAの製造は体外転写によって実現させ、その転写鋳型DNAはGenewiz Biotech Co., Ltd.によって合成され、その配列が配列番号173である。tracrRNAは上記鋳型でHiScribe T7 High Yield RNA Synthesis Kit(NEB社)によって転写してなる。具体的な工程はキットのマニュアルに従って行われた。製造後のtracrRNAはフェノール/クロロホルムによる抽出およびエタノールによる沈殿で精製した。
【0239】
crRNA(配列番号174)の製造。crRNAの製造は体外転写によって実現させ、その転写鋳型DNAはGenewiz Biotech Co., Ltd.によって合成され、その配列が配列番号175である。crRNAの転写および精製の工程はtracrRNAと同様である。
【0240】
体外切断実験は150mM NaCl、10mM MgCl、10mM Tris-HCl、pH=7.5、1mM DTTの条件において行われた。反応系の全体積は20μLで、それに30nM切断基質、2μM AcC2C9、2μM tracrRNAおよび2μM crRNAが含まれている。反応時間は30分で、反応温度は37℃であった。反応終了後、50mM EDTAおよび2mg/mL ProteinKを入れて反応を停止させた。反応物を6%w/vのTBEアクリルアミドゲルによって分離し、Bio-Rad社のGELDOCゲルイメージング装置において488nmの青色光で励起して画像を得た。crRNAおよびtracrRNAの条件において、基質DNAは同様に正確に二つのDNA断片に切断されたことがわかり、完全なガイドRNAをtracrRNAとcrRNAに分けた後も同様に生物活性を有することが示された。
【0241】
図6(A)はAcC2C9の完全なガイドRNAの配列の概略図で、(B)はtracrRNAおよびcrRNAの条件において、AcC2C9ヌクレアーゼによって基質DNAを切断した結果の図である。
実施例13 AcC2C9の二本鎖DNAを切断する切口部位の同定
【0242】
短い蛍光標識合成DNAを標的とする完全なガイドRNAの製造。実施例9に記載の通りである。
【0243】
AcC2C9ヌクレアーゼの製造。実施例9に記載の通りである。
【0244】
切断基質の製造。切断基質は4種の58bpの蛍光標識合成DNA配列である。Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.によって二つの塩基対相補のプライマーを合成され、その配列はそれぞれ5’-GGCTGTGAGAAAGCGGTTCAGGTGAAAGTGAAAACACTGCCCGACGCCCAGTTCGAAG-3’(配列番号176)および5’-CTTCGAACTGGGCGTCGGGCAGTGTTTTCACTTTCACCTGAA CCGCTTTCTCACAGCC-3’(配列番号177)である。それぞれ二つのプライマーの5’末端または3’末端にFAM蛍光基で標識した。
【0245】
体外切断実験は150mM NaCl、10mM MgCl、10mM Tris-HCl、pH=7.5、1mM DTTの条件において行われた。反応系の全体積は10μ
Lで、それに20nM切断基質、2μM AcC2C9、2μM完全なガイドRNAが含まれている。反応温度は37℃であった。反応時間は30分であった。反応終了後、10μL 2×カルボキサミド仕込み緩衝液(Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.)を入れて反応を停止させた。反応物を20%のTBE-Urea-PAGEによって分離し、488nmの青色光で励起して画像を得た。
【0246】
図7はAcC2C9ヌクレアーゼによって4種類の58bpの蛍光標識DNA基質を切断した結果の図である。結果から、AcC2C9の標的鎖における主な切断部位はPAM部位の3’末端の下流の21-22ntの箇所で、非標的鎖における主な切断部位はPAM部位の3’末端の下流の15-16ntの箇所であることが示された。
実施例14 AcC2C9の哺乳動物細胞遺伝子編集プラスミドpAcC2C9Hsの構築
【0247】
本実施例に記載のAcC2C9は好適なヒトコドンに応じて最適化されたAcC2C9コード遺伝子を使用した。
【0248】
pAcC2C9Hsプラスミドの配列は配列番号178で、その具体的な構築方法は以下の通りである:
ヒト由来一過性発現プラスミド骨格(その配列は配列番号179である)、ピューロマイシン耐性遺伝子発現カセット配列(その配列は配列番号180である)、ヒトコドンに応じて最適化されたAcC2C9コード遺伝子発現カセット配列(その配列は配列番号181である)およびヒト細胞におけるAcC2C9に相応するガイドRNA(配列番号123)発現カセット(その配列は配列番号182である)はいずれもSangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.によって合成され、四つの断片はGibson assembly技術によってpAcC2C9Hsプラスミドに組み立てられた。大腸菌DH5α商品の感受性細胞を形質転換させ、カルベニシリン含有LBAプレートに塗布し、単一クローンを取って増幅培養し、プラスミドを抽出し、シークエンシングによって同定した後、pAcC2C9Hsプラスミドを得た。
実施例15 AcC2C9によるヒト生細胞における効率的な遺伝子編集の実現
【0249】
AcC2C9ヌクレアーゼでヒト生細胞における効率的な遺伝子編集を実現させることができた。ヒト胚胎腎臓細胞HEK293を鋳型としてその遺伝子編集の効果を示す。
【0250】
pAcC2C9Hsプラスミドに標的spacer配列を挿入した。本実施例において、ヒトゲノムにおけるVEGFA、EMX1、HEXA、DNMT1およびFANCFという計5つの遺伝子を標的配列として選び、それぞれこれらの標的配列に1つの20bpの標的配列DNAを選んだ。それぞれオリゴヌクレオチド配列Guide1-F、Guide1-R、Guide2-F、Guide2-R、Guide3-F、Guide3-R、Guide4-F、Guide4-R、Guide5-FおよびGuide5-R(配列はそれぞれ配列番号183~192である)を合成した。それぞれGuide1-FとGuide1-R、Guide2-FとGuide2-R、Guide3-FとGuide3-R、Guide4-FとGuide4-R、およびGuide5-FとGuide5-Rをアニーリングした後、Golden gate assembly技術によってこの5つの標的配列DNAをそれぞれpAcC2C9Hsプラスミドに挿入し、それぞれpAcC2C9Hs-guide1、pAcC2C9Hs-guide2、pAcC2C9Hs-guide3、pAcC2C9Hs-guide4およびpAcC2C9Hs-guide5プラスミド(配列はそれぞれ配列番号193~197である)に構築した。
【0251】
一過性発現プラスミドが媒介するヒト細胞遺伝子編集。凍結保存されたHEK293細胞を再生させた。2日後、HEK293細胞を24ウェルプレートに継代し、各ウェルの細
胞数は約1.5×10個であった。16~18時間後、0.75μLのlipofectamine3000(Invitrogen)でそれぞれ500ngpAcC2C9Hs-guide1、pAcC2C9Hs-guide2、pAcC2C9Hs-guide3、pAcC2C9Hs-guide4およびpAcC2C9Hs-guide5プラスミドを細胞に形質移入した。続いて72時間培養した。付着細胞を消化し、ゲノムDNAを抽出した。遺伝子に相応する増幅プライマー(Guide1-IndelFとGuide1-IndelR、Guide2-IndelFとGuide2-IndelR、Guide3-IndelFとGuide3-IndelR、Guide4-IndelFとGuide4-IndelR、Guide5-IndelFとGuide5-IndelR、その配列はそれぞれ配列番号198~207である)でPCRによって遺伝子断片を増幅した。ゲルからPCR産物を回収した。NEBuffer2(NEB社)でPCR産物をアニーリングした。その後、T7endonuclease 1(NEB社)を入れ、37℃で15min酵素切断した。50mM EDTAを入れて反応を停止させた後、反応物を6%のTBE-PAGEによって分離し、4S Red dye(Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.)で染色して画像を得た。
【0252】
図8はAcC2C9一過性発現プラスミドが媒介するヒト細胞における遺伝子編集の結果の図である。(A)はIndel実験のTBE-PAGEゲルの図である。選ばれた5つの異なる遺伝子部位のうち、AcC2C9ヌクレアーゼはVEGFA、HEXAおよびDNMT1遺伝子に対する効率的な遺伝子編集の実現に成功した。(B)はAcC2C9一過性発現プラスミドが媒介するヒト細胞においてVEGFA遺伝子の編集後のハイスループットシーケンシングの統計結果の図である。図に示すように、AcC2C9ヌクレアーゼは正確に標的配列に挿入または欠失の突然変異を導入することができた。
実施例16 AcC2C9のヒト生細胞における複数の部位の編集効率の検出
【0253】
AcC2C9の異なる遺伝子部位における普遍性を検証するために、ヒトゲノムにおけるVEGFA、AAVS1、PDCD1、HEXA、EMX1、TP53、DNMT1およびFANCE遺伝子の標的配列に、続いて47の標的部位を選んだ。Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.によって配列Guide6-F-Guide52-F(配列はそれぞれ配列番号208~254である)およびGuide6-R-Guide52-R(配列はそれぞれ配列番号255~301である)が合成さた。
【0254】
実施例15と同様の工程に従い、相応するプライマーをアニーリングした後、Golden gate assembly技術によってこの47の標的配列のDNAをそれぞれpAcC2C9Hsプラスミドに挿入し、構築に成功したプラスミドをlipofectamine3000(Invitrogen)によってそれぞれHEK293細胞に形質移入して遺伝子編集を行った。編集後の細胞を収集してゲノムを抽出し、編集部位を増幅した後、産物をJiangxi HaploX Biotechnology Co., Ltd.に送ってハイスループットシークエンシングを行い、細胞編集効率を検出した。
【0255】
図9はAcC2C9一過性発現プラスミドのHEK293T細胞の47箇所の部位における遺伝子編集の効率の図で、遺伝子編集効率が最も高かった部位は部位15で、効率が73.7%に達した。
実施例17 アデノ関連ウイルス(AAV)が媒介するAcC2C9のヒト生細胞における遺伝子編集
【0256】
Sangon Biotech (Shanghai) Co., Ltd.によってAAV2プラスミド骨格(その配列は配列番号302である)およびそれぞれVEGFA、
AAVS1、PDCD1遺伝子を標的とするAcC2C9発現カセット(その配列はそれぞれ配列番号303~305である)を全遺伝子合成された。Gibson assembly技術によってAAV2プラスミド骨格を三つのAcC2C9発現カセットと組み立て、AAV2-AcVEGFA(その配列は配列番号306である)、AAV-AcAAVS1(その配列は配列番号307である)およびAAV2-AcPDCD1(その配列は配列番号308である)を得た。大腸菌DH5α商品の感受性細胞を形質転換させ、50μg/mLカルベニシリン含有LB培地プレートに塗布してスクリーニングした。単一のクローンを取って拡大培養し、プラスミドを抽出し、シークエンシングによってプラスミドの配列を同定した。
【0257】
構築して得られたプラスミドをGuangzhou Packgene Biotechnology Co., Ltd.に送ってAAV生産を行い、それぞれ三つの部位を標的とするAcC2C9システムを含有するAAVを得た。凍結保存されたHEK293T、HLEA、U-2OS、Huh-7およびHepG細胞を再生させた。ヒト細胞を24ウェルプレートに継代し、各ウェルの細胞数は約0.5×10個であった。24時間後、各ウェルに0.5×1010コピー数のAAVを入れて形質移入した。続いて72時間培養した後、付着細胞を消化し、ゲノムDNAを抽出した。編集部位を増幅した後、産物をJiangxi HaploX Biotechnology Co., Ltd.に送ってハイスループットシークエンシングを行い、細胞編集効率を検出した。
【0258】
図10はAcC2C9システムを発現するAAVのヒト細胞HEK293T、HLEA、U-2OS、Huh-7およびHepG細胞における3つの異なる遺伝子部位(VEGFA、AAVS1、PDCD1)の編集効率の図である。AcC2C9システムを発現するAAVのヒト細胞HEK293T細胞における3つの異なる遺伝子部位の編集効率がそれぞれ18.2%、39.4%、13.5%で、AcC2C9システムを発現するAAVのヒト細胞HLEA細胞における3つの異なる遺伝子部位の編集効率がそれぞれ8.4%、22.1%、12.2%で、AcC2C9システムを発現するAAVのヒト細胞U-2OS細胞における3つの異なる遺伝子部位の編集効率がそれぞれ11.8%、29.2%、29.8%で、AcC2C9システムを発現するAAVのヒト細胞Huh-7細胞における3つの異なる遺伝子部位の編集効率がそれぞれ5.1%、11.9%、5.6%で、AcC2C9システムを発現するAAVのヒト細胞HepG細胞における3つの異なる遺伝子部位の編集効率がそれぞれ3.9%、7.4%、6.0%であった。
【0259】
以上の実施例は本発明の技術的解決策を説明するためのものに過ぎず、それを制限するものではない。好適な実施例を参照して本発明を詳しく説明したが、当業者には、本発明の具体的な実施形態を変更するか、一部の技術的特徴に対して同等の入れ替えを行うことできることがわかる。発明の構想の趣旨および範囲を超えない限り、当業者が想到できる変化および利点はいずれも本発明で保護を要求される技術的解決策の範囲に入っている。
図1
図2
図3
図4
【図
図5
【図
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2024543186000001.xml
【国際調査報告】