(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】可溶性中間体を利用するPt(PF3)4の合成のための低圧プロセス、及び、得られたPt(PF3)4の保管
(51)【国際特許分類】
C01G 55/00 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
C01G55/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532230
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 US2022052139
(87)【国際公開番号】W WO2023107562
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ニキフォロフ,グリゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ブラスコ,ニコラス
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA06
4G048AB02
4G048AC08
4G048AE06
(57)【要約】
【解決手段】 Pt(PF
3)
4(CAS番号19529-53-4)の合成方法は、一般式Pt(Hal)
2(PF
3)
xを有する白金化合物を無水溶剤中に溶解してPt(Hal)
2(PF
3)
x溶液(式中、Hal=F、Cl、Br又はI、x=1、2)を形成するステップ、金属粉末及び過剰量のPF
3をPt(Hal)
2(PF
3)
x溶液に添加するステップ、並びに、反応条件下におけるPt(Hal)
2(PF
3)
x、PF
3及び金属粉末の反応を介してPt(PF
3)
4を形成するステップを含む。本方法はさらに、一般式Pt(Hal)
2を有する白金前駆体を無水溶剤に分散させて、Pt(Hal)
2(式中、Hal=F、Cl、Br又はI)の懸濁液を形成するステップ、PF
3をPt(Hal)
2の懸濁液に導入するステップ、並びに、PF
3及びPt(Hal)
2の反応により白金化合物Pt(Hal)
2(PF
3)
xの無水溶剤中の溶液を形成するステップにより、Pt(Hal)
2(PF
3)
xを合成するステップを含む。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pt(PF
3)
4(CAS番号19529-53-4)の合成方法であって:
一般式Pt(Hal)
2(PF
3)
xを有する白金化合物を無水溶剤中に溶解してPt(Hal)
2(PF
3)
x溶液(式中、Hal=F、Cl、Br又はI、x=1、2)を形成するステップ;
金属粉末及び過剰量のPF
3を前記Pt(Hal)
2(PF
3)
x溶液に添加するステップ;並びに
反応条件下におけるPt(Hal)
2(PF
3)
x、PF
3及び前記金属粉末の反応を介してPt(PF
3)
4を形成するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記反応条件は、およそ30~200℃の範囲の反応温度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応条件は、およそ300psig未満の反応圧力を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記無水溶剤は、150℃超の沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属粉末は、銅、亜鉛又はアルミニウム粉末である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記金属粉末は、200~900ミクロンの範囲の粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記白金化合物Pt(Hal)
2(PF
3)
x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)を合成するステップをさらに含み、前記合成するステップは:
一般式Pt(Hal)
2を有する白金前駆体を前記無水溶剤に分散させて、Pt(Hal)
2(式中、Hal=F、Cl、Br又はI)の懸濁液を形成するステップ;
PF
3をPt(Hal)
2の前記懸濁液に導入するステップ;並びに
前記白金化合物Pt(Hal)
2(PF
3)
x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)の前記無水溶剤中の前記溶液を、PF
3及びPt(Hal)
2の反応を介して形成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記白金前駆体Pt(Hal)
2は無水である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記白金化合物Pt(Hal)
2(PF
3)
x(Hal=F、Cl、Br又はI、x=1、2)は無水である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記無水溶剤は、一般式(C
nH
2n+1)
2O(n≧1)及びH
3C(O(CH
2)
2)
nOCH
3(n≧1)を有するオキシ炭化水素溶剤、一般式(C
nH
2n+1)
xC
6H
6-x(x≧1、n≧1)を有するアレーン溶剤又は一般式C
nH
2n+2(n≧1)を有するアルカン溶剤から選択される炭化水素溶剤である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
Pt(PF
3)
4の収率はおよそ70~99.9%の範囲内である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
Pt(PF
3)
4の純度は、精製後におよそ90~99.9重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
Pt(PF
3)
4(CAS番号19529-53-4)の合成及び保管方法であって:
a)白金前駆体Pt(Hal)
2(式中、Hal=F、Cl、Br又はI)及び金属粉末の無水溶剤中の懸濁液を形成するステップ;
b)過剰量のPF
3を、Pt(Hal)
2及び前記金属粉末の前記懸濁液に導入するステップ;
c)低圧条件下におけるPF
3及びPt(Hal)
2(式中、Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)の反応で、前記無水溶剤中に可溶性反応中間体Pt(Hal)
2(PF
3)
xを形成するステップ;
d)前記無水溶剤中におけるPt(Hal)
2(PF
3)
x、前記金属粉末及びPF
3の反応によりPt(PF
3)
4を形成するステップ;
e)金属製のトラップ中において、Pt(PF
3)
4を空気及び水分を含まない条件下で精製するステップ;並びに
f)前記精製したPt(PF
3)
4を前記空気及び水分を含まない条件下で前記金属製のコンテナ中に保管するステップ
を含む方法。
【請求項14】
前記白金前駆体Pt(Hal)
2は無水PtCl
2である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記無水溶剤は150℃超の沸点を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
反応温度はおよそ30~200℃の範囲である、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記低圧条件はおよそ300psig未満の圧力である、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
Pt(PF
3)
4の純度は、精製後におよそ90~99.9重量%である、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
Pt(PF
3)
4(CAS番号19529-53-4)の製造及び保管方法であって:
a)キシレン又はヘキサデカンから選択される無水溶剤中の白金前駆体Pt(Cl)
2の懸濁液を形成するステップ;
b)過剰量のPF
3をPt(Cl)
2の前記懸濁液に導入して、PF
3及びPt(Cl)
2の反応により、Pt(Cl)
2(PF
3)
x(x=1、2)の前記無水溶剤中の溶液を形成するステップ;
c)銅粉末をPt(Cl)
2(PF
3)
x(x=1、2)の前記溶液に添加するステップ;
d)前記銅粉末、PF
3及びPt(Cl)
2(PF
3)
xの反応から、前記無水溶剤中に、20~300psigの範囲の低PF
3圧力、及び、30~200℃の範囲の反応温度でPt(PF
3)
4を形成するステップ;
e)ステンレス鋼製のトラップ中において、Pt(PF
3)
4を空気及び水分を含まない条件下で精製するステップ;並びに
f)前記精製したPt(PF
3)
4を前記空気及び水分を含まない条件下で前記ステンレス鋼製のコンテナ中に保管するステップであって、前記コンテナの内表面は、電解研磨されているか、又は、PF
3で不動態化されているステップ
を含む、方法。
【請求項20】
前記銅粉末は、200~900ミクロンの範囲の粒径を有する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月9日に出願された米国特許出願第17/546,169号明細書に対する米国特許法119条(a)及び(b)の優先権による利益を主張するものであり、その内容のすべてが参照により本明細書において援用されている。
【0002】
本発明は、フィルム形成組成物の前駆体として用いられるPt(PF3)4の合成及び保管に関する。Pt(PF3)4は、Pt(Hal)2(Hal=F、Cl、Br又はI)又はPt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)から選択される白金化合物、金属粉末及びPF3から、低圧で、反応中間体Pt(Hal)2(PF3)を溶解可能である無水溶剤中で合成され、ここで、Pt(Hal)2(PF3)xは、Pt(Hal)2及びPF3から形成され得る。次いで、得られたPt(PF3)4は、空気及び水分を含まない条件下に、室温で、ステンレス鋼などの金属で作製され、好ましくは、不動態化又は電解研磨された内表面を有する装置及びアンプル中で保管される。
【背景技術】
【0003】
化学蒸着(CVD)及び原子層堆積(ALD)法が、工業規模での触媒及び電池の作製において大きな関心を集めている。高スループットの工業プロセスに適した前駆体は、理想的には室温で高い蒸気圧を有し、最短時間及び前駆体の安定性が損なわれない温度で最大の適用量が確保されているべきである。白金は触媒として広く利用されており、現在では、支持体上に白金を含有する広く多様な材料が入手可能である。それにもかかわらず、適切な白金前駆体がないために、気相からの白金の蒸着を利用するプロセスはまれである。
【0004】
例えば、室温で固体であるが室温で揮発性である六フッ化白金(PtF6、CAS番号13693-05-5)は、酸化性が非常に強く、それに応じてエッチング特性も非常に強いために、蒸着前駆体として適用されることはまれである。蒸着プロセスについて広く引用される(MeCp)PtMe3(CAS番号94442-22-5)は69℃で1Torrの蒸気圧を有するが、50℃で徐々に分解し始め(Journal of Vacuum Science&Technology,B:Microelectronics and Nanometer Structures(1990),8(6),1826-9)、高スループットプロセスでのこの化合物の利用が妨げられてしまう。
【0005】
錯体Pt(PF3)4(CAS番号19529-53-4)は室温で揮発性の液体であると共に室温で36Torrの蒸気圧を有し(R.D.Sanner et al.,Report(1989),(UCRL-53937;Order No.DE90000902))、気相からのPt蒸着のためのほぼ理想的な潜在的前駆体である。しかしながら、この化合物は商業的な入手可能性が非常に限定されている。規模の拡張性の欠如に対する理由は、気相からのPt蒸着のためのほぼ理想的な潜在的前駆体であるPt(PF3)4の合成に付随する技術的困難性であり得る。しかしながら、この化合物は商業的な入手可能性が非常に限定されており(日本国内においては1社の供給業者のみ[Japan Advanced Chemicalsからグラム単位)、この化学物質を使用する好適なALDプロセスはこれまで報告されていない。規模の拡張性の欠如に対する理由は、グラム単位でのPt(PF3)4の合成に付随する技術的困難性であり得、許容可能な収率及び現実的な運転条件で工業的に規模が拡張され得る態様においてさらに困難であり得る。
【0006】
グラム単位であると共に70~80%の収率であったPt(PF3)4の元々の合成は、反応(1)により、100~150atm.PF3及び100℃で、「微細で及び酸化物を含まない銅粉末」を適用して行った(Angew.Chem.Int.Ed.1965,4,521)。この合成に係る製法は文献及び同一の方法を採用する後述の文献において一文のみで記載されており、反応及び器具に関するいかなる詳細もない。この反応は2種の固形分(PtCl2及びCu粉末)の混合物に対する高圧下でのPF3ガスの適用が必要であり、当業者である化学者にとっても規模の拡張はほとんど可能ではない。
PtCl2+2Cu+PF3(過剰量)→Pt(PF3)4+2CuCl (1)
【0007】
60~80℃及び開示されていない圧力下でのPtCl2とPF3との反応(2)では、Pt(PF3)4は1%の収率でのみ得られることに注目すべきである(Inorg.Nucl.Chem.Letters,Vol.4,pp.275-278,1968)。このような低い収率のために、このアプローチは工業用途に実装することが不可能となっている。
PtCl2+PF3(過剰量)→Pt(PF3)4+他の生成物 (2)
【0008】
開示されていない圧力下における同一の出発化合物からのフロー反応(3)では、ドナー-アクセプター付加物のみが生成された(Inorg.Nucl.Chem.Letters,Vol.4,pp.275-278,1968)。
3PtCl2+PF3(過剰量)→PtCl2(PF3)2+[PtCl2(PF3)]2(3)
【0009】
化合物PtCl2(PF3)2及び[PtCl2(PF3)]2を固体PtCl2及びPF3ガスから合成した(J.Chatt,A.A.Williams,J.Chem.Soc.[London]1951,3061)。Zeitschrift fur Anorganische und Allgemeine Chemie,Band 364,1969,p192-208の第200ページにおける一文に従って、固体化合物は開示されていない「より高い」圧力下でPF3と反応してPt(PF3)4が形成され得る。この「より高い圧力」は、Zeitschrift fur Anorganische und Allgemeine Chemie,Band 364,1969,p192-208において、Pt(PF3)4の合成について報告されている範囲であるため、40~150atmであると推測され得る。化合物PtCl2(PF3)2は極性溶剤であるCDCl3に可溶性であり、そのNMRがJ.Chem.Res.,Syn.,1981,2,38により報告された。J.Chem.Soc.[London]1951,3061によれば、ベンゼン中におけるPtCl2(PF3)2の溶解度は「低い」と報告されており、モル濃度は0.005~0.01Mであったところ、PtCl2(PF3)2の融点は118.3℃である。PtCl2(PF3)2のFTIRスペクトルがJournal of Chemical Research,Synopses(1981),(2),37に開示されている。
【0010】
或いは、Pt(PF3)4の調製が、入手が困難である回転式オートクレーブにおいてグラム単位で、反応(4)により、40atmのPF3雰囲気下で、95%の収率で達成されている(Zeitschrift fur Anorganische und Allgemeine Chemie.Band 364.1969,192-208)。
PtCl4+4Cu+4PF3→Pt(PF3)4+4CuCl(4)
【0011】
PtCl4+6PF3→Pt(PF3)4+2PF3Cl2(5)
銅を伴わない反応(5)ではPF3Cl2が生成されるが、同等の揮発度のためにPt(PF3)4の精製が複雑であることに注目すべきである(Zeitschrift fur Anorganische und Allgemeine Chemie.Band 364.1969,192-208)。銅の添加によりPF3Cl2の量が減少するが、これは、反応(4)及び(5)では、CVD及びALD前駆体に対する品質基準を満たさない不純物を含むPt(PF3)4がもたらされ得ることを示唆している。注目すべきは、反応(4)では2種の固形分を混合し、これらをPF3ガスと接触させることも必要であり、既述の規模の拡張性に関する問題が大きくなってしまう。PtCl4と過剰量のPF3との反応では、規模の拡張はさらに非現実的なものとなってしまう。
【0012】
露国特許第2478576C2号明細書には、2~6.3MPa(19.7~62.2atm)のPF3(6a及び6b)雰囲気下における2ステッププロセスが開示されており、ここで、CuOは同一のオートクレーブ中において還元され、その後、K2PtCl6及びPF3が導入される。
CuO+H2→Cu+H2O(6a)
K2PtCl6+4Cu+PF3(過剰量)→Pt(PF3)4+4CuCl+2KCl(6b)
【0013】
露国特許第2201463С1号明細書、米国特許第7044995B2号明細書、Terekhov et al.(Terekhov et al.,International Symposium on Recycling of Metals and Engineered Materials,Proceedings,4th,Oct.22-25,2000,pp.487-491)、及び、Kovtun et al.(Publications of the Australasian Institute of Mining and Metallurgy(2002),2/2002,367-372)には、揮発性のPt(PF3)4が形成される、「PGMマット」又は「原料」とPF3ガスとの相互作用による鉱石からの白金抽出が開示されている。原料はPt金属を含有すると共に、(7d)によりPF3と相互作用すると仮定された。しかしながら、1891年に最初に報告されたとおり、Pt及びPF3は白金化合物F5PPtをもたらし(H.Moissan,Bull.Soc.Chim.France 5,454(1891))、この化合物は(PCl3)PtCl2と類似していると考えられていた。
3Pt+4HNO3+18HCl→3H2PtCl6+4NO+8H2O(7a)
H2PtCl6+2NH3→(NH4)2PtCl6(7b)
(NH4)2PtCl6+H2=2NH4Cl+4HCl+Pt(超音波の照射下)(7c)
Pt+PF3(過剰量)→Pt(PF3)4(7d)
【0014】
加えて、Chem.Ber.101,138-142(1968)によれば、Pt金属は、いかなる条件下でもPF3とは反応しない。米国特許第7044995 B2号明細書には、微細に分散されたPt金属(白金黒、粒径<20μm)はPF3と反応せず、多段手法(7a~7c)、及び、ステップ(7c)における超音波の照射下での水素による還元の適用により得られた「活性化された」Pt金属のみがPF3と反応する可能性があることが開示されている。
【0015】
PtCl2から開始される反応に対して溶剤効果は負であり得、これは、Zhurnal Neorganicheskoi Khimii(1970),15(9),2445-8によれば、PtCl2+I2=PtCl2I2の無溶媒での反応とは対照的に、有機溶剤中におけるこれらの試薬の反応では種々の生成物がもたらされたがPtCl2I2はもたらされなかったためである。数々の分類の溶剤がPF3、PtCl2及び還元Pt種と反応し、従って、これらは、Pt(PF3)4の合成には使用され得ない。これらの分類の溶剤としては、PF3と反応して、RNHPF2、(RNH)2PF2H及び(RNH)2PFをもたらす(J.Chem.Soc.A(1970),(11),1935-8を参照のこと)ために、第一級アミンが挙げられる。例えばNMe3、NEt3といった第三級アミンはPF3と付加物を形成している(Inorganic Chemistry(1963),2,384-8を参照のこと)。アルコール及びPF3は有機亜リン酸塩を形成する(Transactions of the Illinois State Academy of Science(1936),29(No.2),89-91を参照のこと)。アルコールに対するP(Hal)3(Hal=Cl、Br)の反応性の一般的なパターンは広く報告されている。PCl3及びPBr3について示されているとおり(Uspekhi Khimii(1968),37(5),745-77を参照のこと)、ジエン、オレフィン、不飽和アルデヒド、ケトンは、PF3と反応して付加化合物を形成する。アセトンは、PF3及びPt(II)化合物と反応する(Zhurnal Obshchei Khimii(1975),45(3),512-18;Inorganica Chimica Acta(1997),264(1-2),297-303を参照のこと)。ハロカーボンは、Organometallics(2019),38(10),2273;Organometallics 2009,28,1358-1368;及び、Organometallics(1987),6(12),2548]において選択された実施例で示されているとおり、酸化的付加を介した反応条件下でPt化合物と反応し得、ここで、白金錯体に対するアルキル及びハロゲン化アリールの酸化的付加は広く報告されている反応である。
【0016】
結論として、Pt(PF3)4に対する既存の合成アプローチは反応条件に強く依存しており、一方で、条件を変更した場合には、Pt(PF3)4の収率が著しく低下し得、又は、異なる生成物がもたらされ得、プロセスのロバスト性の欠如が示され、露国特許第2478576C2号明細書に特許請求されているとおり、3MPa(29.6atm、420psig)よりも低いPF3圧力が要求される合成プロセスはこれまで報告されていない。合成のほとんどでは、高圧オートクレーブなど、大規模へのプロセスの規模の拡張に通常利用可能ではない特殊な器具又は条件が必要とされている。特に、既存の方法では技術的詳細が不足しており、Pt(PF3)4の純度はいずれの文献においても報告されていない。さらに、開示されている方法はすべて本質的に乾式のアプローチであり、これもまた工業規模への規模拡張には重大な課題となっている。
【0017】
Journal of the American Chemical Society(2002),124(42),12550-12556など、白金化合物による炭化水素の触媒変換に係る数値の基準が存在している。Jackson et al.,J.Am.Chem.Soc.1997,119,7567-7572では、Pt化合物の触媒活性が、Pt4(PF3)8-飽和及び芳香族環式炭化水素のモデル系について示されている。すなわち、Pt4(PF3)8から生成された小型の白金クラスターが、多様な飽和及び芳香族環式炭化水素(シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン)と反応する。Jackson et al.により、白金の触媒及び脱水素化挙動が明らかにされている。従って、反応系に炭化水素溶剤を導入し、その後、加熱することで、種々の触媒反応により生成物の混合物がもたらされ得ると推定され得、及び、Pt(PF3)4の選択的合成には好ましくない考えであると考察され得る。これらの理由のために、Pt(PF3)4は有機溶剤中において合成及び操作されたことはなく、Pt(PF3)4化学の研究のために、無水HF及びSO2のみが溶剤として適用されていた(Drews et al.,Chem.Eur.J.2008,14,4280-4286)。
【0018】
これまで、拡張性のある方法が不在であることのみにより潜在的に理想的なPt(PF3)4前駆体は適用されておらず、従って、高収率でのPt(PF3)4の製造の規模拡張が可能である方法を提供することは大きな進歩であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
Pt(PF3)4(CAS番号19529-53-4)の合成方法であって:
一般式Pt(Hal)2(PF3)xを有する白金化合物を無水溶剤中に溶解してPt(Hal)2(PF3)x溶液(式中、Hal=F、Cl、Br又はI、x=1、2)を形成するステップ;
金属粉末及び過剰量のPF3をPt(Hal)2(PF3)x溶液に添加するステップ;並びに
反応条件下におけるPt(Hal)2(PF3)x、PF3及び金属粉末の反応を介してPt(PF3)4を形成するステップを含む方法が開示されている。本開示の方法は、以下の態様の1つ以上を含み得る:
・およそ-120~200℃の範囲の反応温度を含む反応条件;
・およそ30~200℃の範囲の反応温度を含む反応条件;
・室温~およそ180℃の範囲の反応温度を含む反応条件;
・室温~およそ130℃の範囲の反応温度を含む反応条件;
・およそ80~130℃の範囲の反応温度を含む反応条件;
・およそ10psig~およそ3000psigの範囲の反応圧力を含む反応条件;
・およそ20psig~およそ1000psigの範囲の反応圧力を含む反応条件;
・およそ20~およそ300psigの範囲の反応圧力を含む反応条件;
・およそ300psig未満の反応圧力を含む反応条件;
・150℃超の沸点を有する無水溶剤;
・200℃超の沸点を有する無水溶剤;
・銅、亜鉛又はアルミニウム粉末である金属粉末;
・銅粉末である金属粉末;
・亜鉛粉末である金属粉末;
・アルミニウム粉末である金属粉末;
・Ptよりも低い電極電位を有する金属粉末;
・PF3と相互作用せず、且つ、反応条件下でPF3と錯体を形成しない金属粉末;
・反応プロセス中に粉末形態を維持することを可能とする適切な粒径範囲を有する金属粉末;
・200~900ミクロンの範囲の粒径を有する金属粉末;
・300~500ミクロンの範囲の粒径を有する金属粉末;
・白金化合物Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)を合成するステップであって:
一般式Pt(Hal)2を有する白金前駆体を無水溶剤に分散させて、Pt(Hal)2(式中、Hal=F、Cl、Br又はI)の懸濁液を形成するステップと;
PF3をPt(Hal)2の懸濁液に導入するステップと;
PF3及びPt(Hal)2の反応により、白金化合物Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)の無水溶剤中の溶液を形成するステップと;
を含むステップをさらに含む;
・無水である白金前駆体Pt(Hal)2;
・PtCl2である白金前駆体Pt(Hal)2;
・無水PtCl2である白金前駆体Pt(Hal)2;
・無水である白金化合物Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI、x=1、2);
・PtCl2(PF3)2である白金化合物Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI、x=1、2);
・無水PtCl2(PF3)2である白金化合物Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI、x=1、2);
・さらに:
金属製のトラップ中において、空気及び水分を含まない条件下でPt(PF3)4を精製するステップ;及び
精製したPt(PF3)4を空気及び水分を含まない条件下で金属製のコンテナ中に保管するステップを含み
ここで、保管するステップは
コンテナの内表面から水分を除去するステップ;及び
コンテナの内表面を電解研磨するステップ、又は
精製したPt(PF3)4を導入する前に、コンテナをPF3で不動態化するステップ
を含む;
・それぞれ、炭素鋼、ステンレス鋼、又はステンレス鋼316合金から選択されるトラップ用の金属;
・それぞれ、炭素鋼、ステンレス鋼、又はステンレス鋼316合金から選択されるコンテナ用の金属;
・炭化水素溶剤である無水溶剤;
・一般式(CnH2n+1)2O(n≧1)及びH3C(O(CH2)2)nOCH3(n≧1)を有するオキシ炭化水素溶剤から選択される炭化水素溶剤;
・一般式(CnH2n+1)xC6H6-x(x≧1、n≧1)を有するアレーン溶剤から選択される炭化水素溶剤;
・一般式CnH2n+2(n≧1)を有するアルカン溶剤から選択される炭化水素溶剤;
・デカン、ジ-、トリ-、テトラ、ペンタ-及びヘキサデカン等から選択される乾燥アルカン溶剤である無水溶剤;
・キシレン、メシチレン、シメン、ペンチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジイソブチルベンゼン等から選択される乾燥アレーン溶剤である無水溶剤;
・ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオクチルエーテル、ジエチレングリコールのジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等から選択される乾燥エーテル溶剤である無水溶剤;
・キシレン、メシチレン、シメン、ペンチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジイソブチルベンゼン等から選択されるアレーン溶剤である無水溶剤;
・好ましくは、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオクチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルである乾燥エーテル溶剤;
・好ましくは、キシレン、メシチレン、シメン、ペンチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジイソブチルベンゼンである乾燥アレーン溶剤;
・好ましくは、ジ-、トリ-、テトラ、ペンタ-及びヘキサデカン、並びに、鉱油として公知であるアルカンの混合物である乾燥アルカン溶剤;
・反応中間体を溶解可能である無水溶剤;
・Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI、x=1、2)を溶解可能である無水溶剤;
・PtCl2(PF3)2)を溶解可能である無水溶剤;
・Pt(PF3)4と反応しない無水溶剤;
・Pt(Hal)2(Hal=F、Cl、Br又はI)と反応しない無水溶剤;
・PtCl2と反応しない無水溶剤;
・キシレンである無水溶剤;
・ヘキサデカンである無水溶剤;
・およそ70~99.9%の範囲内であるPt(PF3)4の収率;
・およそ70~95%の範囲内であるPt(PF3)4の収率;
・およそ70~93%の範囲内であるPt(PF3)4の収率;
・99重量%超であるPt(PF3)4の純度;
・99.5重量%超であるPt(PF3)4の純度;
・およそ90~99.9重量%であるPt(PF3)4の純度;
・およそ99.0~99.9重量%であるPt(PF3)4の純度;
・およそ99.5~99.9重量%であるPt(PF3)4の純度;及び
・大規模な工業規模に拡張性を有する形成されたPt(PF3)4。
【0020】
また、Pt(PF3)4(CAS番号19529-53-4)の製造及び保管方法が開示されており、この方法は:
a)白金前駆体Pt(Hal)2(式中、Hal=F、Cl、Br又はI)及び金属粉末の無水溶剤中の懸濁液を形成するステップ;
b)過剰量のPF3を、Pt(Hal)2及び金属粉末の懸濁液に導入するステップ;
c)低圧条件下におけるPF3及びPt(Hal)2(式中、Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)の反応で、無水溶剤中に可溶性反応中間体Pt(Hal)2(PF3)xを形成するステップ;
d)無水溶剤中におけるPt(Hal)2(PF3)x、金属粉末及びPF3の反応によりPt(PF3)4を形成するステップ;
e)金属製のトラップ中において、Pt(PF3)4を空気及び水分を含まない条件下で精製するステップ;並びに
f)精製したPt(PF3)4を空気及び水分を含まない条件下で金属製のコンテナ中に保管するステップを含む。本開示の方法は以下の態様の1つ以上を含み得る:
・PtCl2である白金前駆体Pt(Hal)2;
・150℃超の沸点を有する無水溶剤;
・200℃超の沸点を有する無水溶剤;
・一般式(CnH2n+1)2O(n≧1)及びH3C(O(CH2)2)nOCH3(n≧1)を有するオキシ炭化水素溶剤、一般式(CnH2n+1)xC6H6-x(x≧1、n≧1)を有するアレーン溶剤又は一般式CnH2n+2(n≧1)を有するアルカン溶剤から選択される炭化水素溶剤である無水溶剤;
・キシレン又はヘキサデカンである無水溶剤;
・反応中間体を溶解可能な無水溶剤;
・Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI、x=1、2)を溶解可能な無水溶剤;
・PtCl2(PF3)2)を溶解可能な無水溶剤;
・Pt(PF3)4と反応しない無水溶剤;
・Pt(Hal)2(Hal=F、Cl、Br又はI)と反応しない無水溶剤;
・PtCl2と反応しない無水溶剤;
・およそ30~200℃の範囲の反応温度;
・およそ80~130℃の範囲の反応温度;
・約300psig未満の圧力である低圧条件;
・およそ20~300psigの範囲の圧力である低圧条件;
・銅、亜鉛又はアルミニウム粉末である金属粉末;
・銅粉末である金属粉末;
・Ptよりも低い電極電位を有する金属粉末;
・PF3と相互作用せず、且つ、反応条件下でPF3と錯体を形成しない金属粉末;
・反応プロセス中に粉末形態を維持することを可能とする適切な粒径範囲を有する金属粉末;
・200~900ミクロンの範囲の粒径を有する金属粉末;
・300~500ミクロンの範囲の粒径を有する金属粉末;
・およそ70~99.9%の範囲内であるPt(PF3)4の収率;
・およそ70~95%の範囲内であるPt(PF3)4の収率;
・およそ70~93%の範囲内であるPt(PF3)4の収率;
・精製後におよそ90~99.9重量%であるPt(PF3)4の純度;
・精製後に99.0~99.9重量%であるPt(PF3)4の純度;
・それぞれ、炭素鋼、ステンレス鋼、又はステンレス鋼316合金から選択されるトラップ用の金属及びコンテナ用の金属;並びに
・さらに:
コンテナの内表面を電解研磨するステップ、又は
精製したPt(PF3)4を導入する前にコンテナをPF3で不動態化するステップ
を含むステップ。
【0021】
また、Pt(PF3)4(CAS番号19529-53-4)の製造及び保管方法が開示されており、この方法は:
a)キシレン又はヘキサデカンから選択される無水溶剤中の白金前駆体Pt(Cl)2の懸濁液を形成するステップ;
b)過剰量のPF3をPt(Cl)2の懸濁液に導入して、PF3及びPt(Cl)2の反応により、Pt(Cl)2(PF3)x(x=1、2)の無水溶剤中の溶液を形成するステップ;
c)銅粉末をPt(Cl)2(PF3)x(x=1、2)の溶液に添加するステップ;
d)銅粉末、PF3及びPt(Cl)2(PF3)xの反応から、無水溶剤中に、30~200℃の範囲の反応温度、及び、20~300psigの範囲の低PF3圧力でPt(PF3)4を形成するステップ;
e)ステンレス鋼製のトラップ中において、Pt(PF3)4を空気及び水分を含まない条件下で精製するステップ;並びに
f)精製したPt(PF3)4を空気及び水分を含まない条件下でステンレス鋼製のコンテナ中に保管するステップであって、コンテナの内表面は、電解研磨されているか、又は、PF3で不動態化されているステップを含む。本開示の方法は、以下の態様の1つ以上を含み得る:
・200~900ミクロンの範囲の粒径を有する銅粉末;及び
・300~500ミクロンの範囲の粒径を有する銅粉末。
【0022】
表記及び命名法
以下の詳細な説明及び特許請求の範囲では、一般に技術分野において周知である多数の略語、符号及び用語が使用されている。一方、典型的には、定義は、ステンレス鋼(SS)などの各頭字語の初出時に提供されている。一定の略語、符号及び用語が以下の明細書及び特許請求の範囲全体を通して用いられており、以下のものを含む。
【0023】
以下の詳細な説明及び特許請求の範囲では、一般に技術分野において周知である多数の略語、符号及び用語が使用されている。
【0024】
本明細書において用いられるところ、不定冠詞「a」又は「an」は1つ以上を意味する。
【0025】
本明細書において用いられるところ、本文又は特許請求の範囲における「約(about)」又は「約(around)」又は「およそ」は、記載の値の±10%を意味する。
【0026】
本明細書において用いられるところ、本文又は特許請求の範囲における「室温」は、およそ18℃~およそ25℃を意味する。
【0027】
本明細書において用いられるところ、本文又は特許請求の範囲における「大気圧」は、およそ1atmを意味する。
【0028】
元素周期表からの元素の標準的な略語が本明細書において用いられている。元素は、これらの略記により参照され得ることが理解されるべきである(例えば、Siはケイ素を指し、Nは窒素を指し、Oは酸素を指し、Cは炭素を指し、Hは水素を指し、Halは、F、Cl、Br、Iであるハロゲンを指す)。
【0029】
Chemical Abstract Serviceによって割り当てられた固有のCAS登録番号(すなわち、「CAS」)は、開示されている特定の分子を特定するために提供されている。
【0030】
本明細書において用いられるところ、「炭化水素」という用語は、炭素及び水素原子のみを含有する飽和又は不飽和官能基を指す。
【0031】
本明細書において用いられるところ、「低圧」、「低反応圧力」又は「低PF3圧力」という用語は、300psig未満又は20atm未満の圧力を指す。同じことが「低減された圧力」にも適用され、これは300psig又は20atm未満に低減された又は下げられた圧力を指す。いくつかの場合において、「低圧」、「低反応圧力」又は「低PF3圧力」は、20psig~300psigの範囲の圧力範囲を指し得る。
【0032】
本明細書において、範囲は、1つのおおよその特定の値から、及び/又は、他のおおよその特定の値までとして表記され得る。このような範囲が表記されている場合、他の実施形態は1つの特定の値から、及び/又は、他の特定の値までであり、前記範囲内におけるすべての組み合わせを伴うことが理解されるべきである。本明細書に記載されている範囲のいずれか及びすべては、「包括的」という用語が設けられているかどうかにかかわらず、それらの端点を含む(すなわち、x=1~4又はxは、1~4の範囲である、とは、x=1、x=4を含み、及び、x=これらの間いずれかの数を含む)。
【0033】
本明細書において、「一実施形態」又は「実施形態」への参照は、実施形態に関連して説明される特定の機構、構造又は特徴は、本発明の少なくとも一実施形態に含まれ得ることを意味する。本明細書中の様々な箇所における「一実施形態において」という句の出現は、必ずしもすべてが同一の実施形態を指すものではなく、別個の実施形態又は代替的実施形態が相互に排他的である必要もない。同じことが「実施」という用語にも適用される。
【0034】
本出願で使用されるところ、「例示的な」という語は、本明細書において、例、事例又は例示としての役割を果たすことを意味するために用いられる。本明細書において「例示的な」として記載されるいずれかの態様又は設計も、必ずしも他の態様又は設計よりも好ましい、又は、有利であると解釈されるべきではない。むしろ、この例示的なという語の使用は、概念を具体的な方法で提示することが意図されている。
【0035】
加えて、「又は」という用語は、排他的な「又は」ではなく包括的「又は」を意味することが意図されている。すなわち、別段の特定がある場合を除き、又は、文脈から明らかである場合を除き、「XはA又はBを採用する」は、自然な包括的順列のいずれかを意味することが意図されている。すなわち、XがAを採用している場合;XがBを採用している場合;又は、XがA及びBの両方を採用している場合、といった前述のいずれの場合にも、「XはA又はBを採用する」が満たされる。加えて、本出願及び添付の特許請求の範囲において用いられるところ、冠詞「a」及び「an」は、別段の特定がある場合を除き、又は、単数形を指すことが文脈から明らかである場合を除き、一般的に「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【0036】
本発明の前述及び種々の他の態様、特徴、及び、利点、並びに、本発明自体は、以下の図面と関連して考察される場合、以下の本発明の詳細な説明を参照することにより、より完全に理解され得る。図面は単なる例示を目的として提示されており、本発明を限定することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、
図1は、Pt(PF
3)
4を合成する例示的な開示された系のブロック図である。
【
図2a】
図2aは、
図2aは、Pt(Hal)
2(Hal=F、Cl、Br又はI)から開始される、Pt(PF
3)
4の合成の例示的な開示されたプロセスのフローチャートである。
【
図2b】
図2bは、
図2bは、Pt(Hal)
2(PF
3)
x(x=1、2;Hal=F、Cl、Br又はI)から開始される、Pt(PF
3)
4の合成の例示的な開示されたプロセスのフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図3は、PtCl
2(PF
3)
2の段階で停止した反応混合物のPtCl
2(PF
3)
2結晶及びヘキサデカンの上澄み溶液の
19F NMRスペクトルである。
【
図4】
図4は、
図4は、室温での、電解研磨ステンレス鋼小型キャニスタにおける、経時的な、Pt(PF
3)
4アッセイ及び不純物の相対量のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
Pt(PF3)4(CAS番号19529-53-4)を合成、製造、生産及び保管する方法が開示されている。本開示の方法は、高収率でのPt(PF3)4の製造を規模拡張が可能であり、製造されるPt(PF3)4は、微小電子素子又は触媒産業におけるPt-含有フィルム蒸着の前駆体として使用され得る。
【0039】
開示の合成方法は、不溶性の白金化合物Pt(Hal)2(Hal=F、Cl、Br又はI)及び可溶性反応中間体、白金化合物Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)を用いるPt(PF3)4の2段階湿式合成であり得、これは、低圧条件における不溶性のPt(Hal)2(Hal=F、Cl、Br又はI)懸濁液からの可溶性反応中間体の形成、並びに、Pt(PF3)4を形成する、可溶性中間体と金属粉末及びPF3などの共反応体との反応を含む。
【0040】
或いは、可溶性中間体Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)は単離及び精製が可能であるため、開示の合成方法は、一定の反応条件下で、可溶性のPt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)を用い、金属粉末及びPF3などの共反応体と反応させて、Pt(PF3)4を形成する、Pt(PF3)4の1段階湿式合成であり得る。好ましくは、Hal=Clである。好ましくは、金属粉末は銅粉末である。
【0041】
さらに、低圧で進行し得、及び、一般的な反応器又は装置で行われ得る、Pt(PF3)4のロバストで高収率及び拡張性を有する合成が開示されている。より具体的には、Pt(PF3)4は、Pt(Hal)2(Hal=F、Cl、Br又はI)又はPt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)から選択される白金化合物から、PF3及び銅粉末などの金属粉末を伴って、低PF3圧力下で、無水溶剤中において合成され得る。金属粉末は、およそ200~900ミクロン、好ましくはおよそ300~500ミクロンの範囲の粒径を有し得る。無水溶剤は、反応中間体Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)を溶解可能であり得、ここで、Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)は、Pt(Hal)2及びPF3から、低圧条件下などの一定の反応条件下で形成され得る。本明細書において、白金化合物Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)は、Pt(PF3)4の合成のための反応体又は出発材料として使用するために、単離及び精製可能である。開示の合成方法を用いたPt(PF3)4の収率は、およそ70~99.9%の範囲であり得る。本開示はまた、金属トラップによる生成物Pt(PF3)4の精製プロセス、及び、容器中における精製したPt(PF3)4の保管条件を含む。Pt(PF3)4は、空気及び水分を含まない条件下で、ステンレス鋼で作製されていると共に、好ましくは不動態化又は電解研磨された内表面を有する装置及びアンプルにおいて保管され得る。Pt(PF3)4は、室温で、その純度を変えることなく、ステンレス鋼容器及び内表面が不動態化又は電解研磨されたステンレス鋼容器などの金属容器において、保管され得る。
【0042】
上記のとおり、当技術分野において拡張性を有する方法が存在しない理由は、パイロットプラントでの合成及び大量製造のための通例利用可能な反応器は、高圧下での操作のために設計されておらず、及び、空気に敏感な固形分の効率的な撹拌(混合)のために設計されていないためであり得る。すなわち、約100atmの高圧下で操作可能な市販されている(例えばHigh Pressure Equipment Company製)反応器は、反応を進行させるために必須である撹拌機能を有さない。加えて、市販されている反応器(例えばBuchiglas USA製)では、反応器内においてPF3を凝縮させるために必要なドライアイス温度への冷却でさえも困難である。固形分の撹拌は特別に設計された撹拌シャフトを用いることである程度は向上可能であるが、白金金属をもたらし、Pt(PF3)4の収率を低下させる、PtCl2/Cuなどの寄生反応は解決されない。加えて、不純物の除去が困難であり、高価で不確実な追加の精製ステップが必要となる。
【0043】
Pt(PF3)4のロバストで高収率及び拡張性を有する合成に係る本開示の方法は例えば20atm未満といった低PF3圧力下で進行し得、通常用いられる市販の反応器で実施され得る。これまで潜在的に理想的なPt(PF3)4前駆体は、拡張性を有する合成方法がないことのみに起因して適用されておらず、このため、本開示の方法は、高収率でPt(PF3)4の規模が拡張された製造をもたらすことを可能とする方法を提供するものであり、本技術分野における重要な進歩である。拡張性を有する合成方法が存在しない理由は、パイロットプラントでの合成及び大量製造のための通常用いられる市販の反応器は、上記のとおり、高圧下(例えば、30atm以上)での操作のために設計されておらず、及び、空気に敏感な固形分の効率的な撹拌(混合)のために設計されていないためである。
【0044】
本開示の方法は、初めて、溶剤におけるPtCl2+PF3+CuによるPt(PF3)4の合成を目的とする反応が、反応条件(例えば、20~300psigの低圧及び80~130℃の温度)で、出発材料Pt(Hal)2(Hal=F、Cl、Br又はI)がPtCl2であり、及び、金属粉末がCu粉末である場合に、十分に可溶性の中間体PtCl2(PF3)2を介して進行することを証明した可能性がある。一般的な知見では、PtCl2(PF3)2などの無機化合物の溶解度は、飽和炭化水素溶剤中においては、アレーン溶剤であるベンゼン中における場合よりも低く、従って、炭化水素溶剤であるヘキサデカン中における溶解度に頼ることは反直感的であり、並びに、アレーン溶剤中であってもこのような低溶解度での反応に頼ることは反直感的である。
【0045】
従来技術によれば、Pt(PF3)4は通常、PtCl2、K2PtCl6及びK2PtCl6から調製されていたが、一方で、K2PtCl6がPF3圧力を下げるために必要である。PtCl2及びK2PtCl6は共に、開示の溶剤(例えば、アレーン、飽和炭化水素)に不溶性である。以下の実施例及び比較例に示すとおり、溶剤効果は、白金出発化合物について、例えばPtCl2(実施例1、表1、比較例1)について、及び、K2PtCl6(実施例7、表5)については同様ではない。開示の溶剤(例えば、キシレン、ヘキサデカン)の添加はPtCl2から開始される反応では有益であるが、溶剤を伴わず出発化合物K2PtCl6からの無溶媒での反応:
K2PtCl6+Cu(過剰量)+PF3(過剰量)→Pt(PF3)4+4CuCl+2KCl
は、Pt(PF3)4の収率がヘキサデカン溶剤中におけるK2PtCl6から開始する反応よりも高く、これは、溶剤による利益は、PtCl2、PtF2、PtI2、PtBr2等などの一定のPt前駆体に対して有益であることを示している。従って、Pt(Hal)2(Hal=F、Cl、Br又はI)からのPt(PF3)4の合成に溶剤を用いることは新規である。
【0046】
図1は、Pt(PF
3)
4の合成のための例示的な開示された固体-気体PtCl
2+PF
3+Cu系のブロック図である。図示のとおり、先ず、Cu粉末11などの金属粉末がライン101を介して反応器16に加えられる。開示のプロセスにおいては、無水溶剤が溶剤14として用いられる。溶剤14として適用された溶剤は、0~50ppmの水分、好ましくは0~10ppmの水分、より好ましくは0~1ppmの水分を有し得る。溶剤14は、乾燥プロセス104を通して3Å若しくは4Åの分子ふるい又は活性アルミナから選択される乾燥剤と接触されることにより乾燥し得る。乾燥プロセス104は、10~50℃の温度範囲、好ましくは室温で、0.5時間~20時間の範囲内で行うことが可能である。いくつかの実施形態において、乾燥プロセス104は、溶剤を分子ふるいと共にコンテナ15中に保持することにより、又は、乾燥プロセス104において乾燥剤の入ったカラム(図示せず)に通すことにより達成し得る。乾燥後のコンテナ15中における水分含有量は、Karl Fischer滴定又はいずれかの他の好適な分析により測定し得る。溶剤14は市販の溶剤であり得、及び、乾燥剤との接触の前に、減圧-不活性ガスサイクルを適用することにより、又は、0.5ppm未満のO
2及び水分を含む不活性ガスを通気させることにより脱気し得る。溶剤又は無水溶剤14は、コンテナ15中に保管しても、又は、乾燥プロセス104の直後にライン105を介して反応器16に送ってもよい。乾燥した無水溶剤14を含むコンテナ15を次のステップの前に保管することが可能であり、又は、反応器16が配置されている他の場所に輸送することが可能である。
【0047】
その後、いずれかの好適な手段、例えば固体滴下漏斗102を適用することにより、不活性雰囲気下(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム)で反応器16にPtCl212が充填される。PtCl212は無水PtCl2であり得る。以下において、PF313は圧力差によって添加ライン103を介して反応器16に充填されるが、反応器16は、予備減圧及び加熱されていてもよく、又は、室温及び予備減圧されていてもよく、又は、PF3を一定の圧力及び温度で含んでいてもよい。反応器16は、PF3の添加の前に、0.1~50Torr、好ましくは0.1~2Torrに減圧されて、窒素、アルゴン、ヘリウムから選択される不活性ガスが除去され得る。非凝縮性ガス(窒素、アルゴン、ヘリウム)が反応器16中に存在しないことで、生成物Pt(PF3)4の蒸留がより効率的となる。或いは、反応器16に加えられるPF3は、1atmの窒素、アルゴン又はヘリウムを室温で含んでいてもよい。PF313を反応器16に加えることで、反応器16中に20psig~300psigのPF3圧力が形成される。PF3は、プロセス中に数回に分けて添加され得、又は、連続的に添加され得る。PF3圧力の値は、適用される反応器の圧力定格に依存し、プロセス中に数回に分けて、又は、連続的に添加され得、プロセス後にリサイクルされ得る。
【0048】
反応器16は、Pt(PF3)4の合成及び精製に適用される、撹拌、温度及び圧力制御、並びに、反応監視手段を有する典型的な容器であり得る。反応器16は、およそ-120℃~およそ200℃、好ましくは室温~180℃、より好ましくは室温~130℃の範囲の温度、及び、およそ10psig~およそ3000psig、好ましくはおよそ20psig~およそ1000psig、より好ましくはおよそ20psig~およそ300psigの対応する圧力で維持される冷却及び加熱装置を有する。反応器16はバラストとして機能する空の容器に接続されており、過剰に加圧された場合に反応内容物を排気する排気孔を有する。反応器16は窒素及び減圧ライン(図示せず)、及び、PF3スクラバー(図示せず)に接続されており、並びに、ライン107を介して生成物Pt(PF3)4を回収し、及び、ライン110を介して未反応のPF3をリサイクルするためのトラップ18及び20に接続されている。
【0049】
溶剤14は種々の有機溶剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、溶剤14は、デカン、ジ-、トリ-、テトラ、ペンタ-又はヘキサデカンから選択される乾燥アルカン溶剤であり得る。この場合、Cu粉末11、無水PtCl212及び乾燥アルカン溶剤14が反応器16に充填されて懸濁液が形成される。溶剤14中におけるPtCl2固体の開始量は、1%~50%、好ましくは5%~40%、より好ましくは20%~30%である。PtCl212対Cu粉末11のモル比は、1:2~1:20、好ましくは1:6~1:10である。すなわち、Pt対Cuのモル比は1:2~1:20、好ましくは1:6~1:10である。反応器16は、PF313を導入する前に、0.1~50Torr、好ましくは0.2~5Torrに減圧される。
【0050】
或いは、溶剤14は、キシレン、メシチレン、シメン、ペンチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン又はジイソブチルベンゼンから選択される乾燥アレーン溶剤であり得る。この場合、Cu粉末11、無水PtCl212及び乾燥アレーン溶剤14が反応器16に充填される。溶剤中におけるPtCl2固体の開始量は、1%~50%、好ましくは10~40%、より好ましくは20%~30%である。PtCl2対Cuのモル比は、1:2~1:20、好ましくは1:6~1:10である。すなわち、Pt対Cuのモル比は、1:2~1:20、好ましくは1:6~1:10である。反応器16は、PF313の導入の前に、0.1~50Torr、好ましくは0.2~5Torrに減圧される。
【0051】
或いは、溶剤14は、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオクチルエーテル、ジエチレングリコールのジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルから選択される乾燥エーテル溶剤であり得る。この場合、Cu粉末11、無水PtCl212及び乾燥エーテル溶剤14が反応器16に充填される。溶剤中におけるPtCl2固体の開始量は、1%~50%、好ましくは10~40%、より好ましくは20%~30%である。PtCl2対Cuのモル比は、1:2~1:20、好ましくは1:6~1:10である。すなわち、Pt対Cuのモル比は、1:2~1:20、好ましくは1:6~1:10である。反応器16は、PF313の導入の前に、0.1~50Torr、好ましくは0.2~5Torrに減圧される。
【0052】
PF
313を反応器16に導入した後、反応混合物は最初に、PF
313圧力下における、PtCl
212及びCu粉末11の溶剤14中の懸濁液である。次いで、反応混合物を撹拌しながら反応器16を加熱することで、20~120℃の温度範囲、好ましくは90~120℃の温度範囲内で、PtCl
2(PF
3)
x(x=1、2)が形成される。この反応は、上記の好ましい温度範囲で撹拌しながら20~80分間加熱した後に停止し得、PtCl
2(PF
3)
2を、溶剤、反応副産物、残存するPF
3等から単離し得る。化合物PtCl
2(PF
3)
x(x=1、2)は溶剤14に可溶性であり、これは、
図3に示すとおり、NMRスペクトロスコピーにより証明され得る。反応は、反応器16においてPF
3圧力下で継続し、PF
3及びPtCl
2(PF
3)
x(x=1、2)が溶剤に溶解され、及び、銅粉末11と反応する。反応の過程において、PF
313が消費される。PF
313は、反応器16に数回に分けて添加可能であり、又は、連続的に添加されて一定の選択された圧力を維持可能である。すべての出発及び中間体白金化合物が消費されたら、反応器16中の圧力は所与の温度で一定となる。
【0053】
反応時間は、1時間~24時間、好ましくは4時間~8時間の範囲内であり得る。転換率は、インサイツラマン分光法又はいずれかの他の好適な技術により、PF3の消費速度及び反応器16中における圧力変化によって監視し得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、反応器16中における反応はヘキサデカン中において、20~50psigのPF3下に、100~125℃の温度で生じ、6時間で終了する。或いは、いくつかの実施形態において、反応器16中における反応はキシレン中において、20~40psigのPF3下に、100~125℃の温度で生じ、5時間で終了する。
【0055】
反応が終了した後、反応混合物は20~65℃、好ましくは30~45℃に冷却される。残留するPF3、Pt(PF3)4及び溶剤からなるガスは、-196℃~-160℃の範囲の温度に維持された予備減圧されたトラップ17に送られる。PF3(融点-151.5℃、沸点-101.9℃)及びPt(PF3)4(融点-15℃)及び溶剤が、予備減圧されたトラップ17中で凝縮される。予備減圧されたトラップ17におけるPt(PF3)4の凝縮が終了したら、減圧が断続的に行われて窒素、アルゴン、ヘリウムなどの残存ガスが除去されて、予備減圧されたトラップ17における反応器16からの残留するPt(PF3)4の蒸留を容易とするために、0.1~50Torr、好ましくは0.2~2Torrの範囲内の減圧が形成され得る。Pt(PF3)4及びPF3を含む反応生成物を凝縮する前に、予備減圧されたトラップ17、Pt(PF3)4トラップ18及びPF3トラップ20が0.01~10Torr、好ましくは0.1~1Torrに予備減圧される。
【0056】
上記の手法の代わりに、反応が終了した後に、反応混合物は、20~65℃、好ましくは30~45℃に冷却され、PF3、Pt(PF3)4及び溶剤を含むガスの一部が、-60~-80℃の範囲の温度に維持されたライン106を通って予備減圧されたトラップ17に送られる。PF3は凝縮されず、Pt(PF3)4及び溶剤は予備減圧されたトラップ17で凝縮される。Pt(PF3)4及び溶剤が予備減圧されたトラップ17で凝縮された後、凝縮されていないPF3は、圧力差によって予備減圧されたトラップ17から-160~-196℃の範囲の温度に維持されたPF3トラップ20に送られ、次いで、PF3、Pt(PF3)4及び溶剤を含むガスの次の一部が、反応器16から予備減圧されたトラップ17に送られ、このサイクルが、すべてのPF3がPF3トラップ20で凝縮され、及び、すべてのPt(PF3)4が予備減圧されたトラップ17で凝縮されるまで継続される。
【0057】
好ましくは、気体生成物の凝縮は、連続プロセスが開示されている上記のステップにより行われ、これは、効率的なエンジニアリング及びドライアイス-イソプロパノール(-79℃)による予備減圧されたトラップ17の冷却によっても、反応器16からのガスの連続的な流れは結果的にPF3トラップ20中のPt(PF3)4の20~60%がバイパス108されることとなり、PF3トラップ20からのPt(PF3)4のすべてを回収するための追加のステップ(図示せず)が必要となるためである。追加のステップは、PF3の沸点(-102℃)よりも高い温度、通例-79℃(ドライアイス冷却)にトラップ20を温めるステップ、及び、液体窒素で冷却された第1の個別のトラップ(図示せず)におけるすべてのPF3を捕捉するステップを含み得る。すべてのPF3を捕捉した後、トラップ20は室温に温められ、Pt(PF3)4は第2の個別のトラップ(図示せず)で捕捉される。第1の個別のトラップにおいて捕捉されたPF3は、反応器16における合成のためにライン110を通ってPF313にリサイクルされ得る。予備減圧されたトラップ17、Pt(PF3)4トラップ18及びPF3トラップ20及びすべての接続ラインは金属から作製されているか、又は、金属製のものであり、ここで、金属材料は、好ましくは、炭素鋼、ステンレス鋼及びステンレス鋼合金である。いくつかの実施形態において、予備減圧されたトラップ17、Pt(PF3)4トラップ18及びPF3トラップ20及びすべての接続ラインはステンレス鋼製である。すべてのトラップは、不動態化又は電解研磨された内表面を有し得る。
【0058】
Pt(PF3)4は、空気及び水分を含まない条件下における分留によりPF3から分離される。揮発性種を回収した後、予備減圧されたトラップ17は-20~-90℃、好ましくは-60~-80℃の範囲の温度に温められ、PF3が、-160~-196℃の範囲の温度に維持されたPF3トラップ20で蒸溜される。PF3トラップ20中のPF3は、保管され得、異なる場所に移され得、又は、PF313として次の合成のためにリサイクルされ得る。
【0059】
溶剤、固体塩化銅などの反応副産物で汚染されたPt(PF3)4は、PF3の消費後に予備減圧されたトラップ17に残留する。予備減圧されたトラップ17中のPt(PF3)4は、90~99%の純度を有し、0.1~5%のPF3、並びに、0.1~10%の溶剤、並びに、好ましくはリンオキソフッ化物及び固体塩化銅である0.1~1%の他の不純物を含有する。混合物が10~40℃の範囲の温度、好ましくは室温で維持されており、及び、レシーバが-50~-196℃の範囲の温度で維持されている場合には、Pt(PF3)4及び溶剤、固形分は分離され、ここで、装置及びレシーバは蒸留前に予備減圧され得、蒸留中の圧力は0.01Torr~760Torr、好ましくは0.1Torr~5Torrである。より具体的には、予備減圧されたトラップ17で回収されたPt(PF3)4は、Pt(PF3)4トラップ18における蒸留により精製される。一実施形態において、PF3の消費の後にPt(PF3)4を含有する予備減圧されたトラップ17は、0~40℃、好ましくは室温に温められ、Pt(PF3)4は予備減圧されたトラップ17で、0.01~50Torr、好ましくは0.1~2Torrの圧力で蒸溜され、一方で、Pt(PF3)4トラップ18は-15~-196℃の範囲の温度に維持される。
【0060】
Pt(PF3)4トラップ18で回収されたPt(PF3)4は、精製後に、70~99.9%w/w、好ましくは80~99.9%w/w、より好ましくは90~99.9%w/w、さらにより好ましくは95~99.9%w/w、さらにより好ましくは99.0~99.99%w/wの純度を有する。好ましくは、回収されたPt(PF3)4は99.50~99.99%w/wの純度を有すると共に、0~0.5%のPF3、0.01~0.5%の他の不純物(リンオキソフッ化物、Pt4(PF3)8などの熱分解生成物など)、及び、0~0.5%の残存溶剤を含有する。Pt(PF3)4の純度は、1H、19F、31P、195Pt NMR、FTIR、及び、ラマン分光法で測定した。
【0061】
精製したPt(PF3)4は、およそ0重量%~およそ0.1重量%のPF3、好ましくはおよそ0重量%~およそ0.05重量%のPF3の不純物を有し得る。精製したPt(PF3)4は、PF3、POF3、(HO)POF2、(HO)2POFを含むリンフッ化物及びオキソフッ化物を、およそ0重量%~およそ1重量%、好ましくは、およそ0重量%~およそ0.05重量%有し得る。精製したPt(PF3)4は、Pt(PF3)4以外の白金化合物を0重量%~およそ0.1重量%、好ましくは、およそ0重量%~およそ0.05重量%の、Pt(PF3)4以外の白金化合物を有し得る。Pt(PF3)4中のPt(Hal)2、Pt4(PF3)8、Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI、x=1、2)の合計濃度は、精製後で、およそ0重量%~およそ0.1重量%、好ましくはおよそ0重量%~およそ0.05重量%であり得る。さらに、精製したPt(PF3)4は、0.1ppmw~1000ppmwの合成に用いた溶剤、好ましくはおよそ0ppmw~200ppmwの溶剤、より好ましくは0ppmw~50ppmwの溶剤、さらにより好ましくは0ppmw~20ppmwの溶剤を有し得る。しかも、精製したPt(PF3)4は、およそ0ppmw~およそ100ppmwのフッ化水素、0ppmw~およそ50ppmwの塩化水素を有し得る。加えて、精製したPt(PF3)4は、およそ0ppb~10ppmの鉄、ニッケル、マンガン、コバルト、銅等などの微量金属を有し得る。残存するPF3はPt(PF3)4の合成にリサイクルされる。
【0062】
いくつかの実施形態において、Pt(PF3)4中の有機化合物の量を測定するために、Me4Siなどの内標準が用いられ得る。いくつかの実施形態において、サンプル調製は、C8誘導体化シリカゲルなどの適切な吸着媒による有機溶剤の吸着を含み得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、Pt(PF3)4トラップ18は、所望の純度のPt(PF3)4を得るための蒸溜のために、例えばトラップ18a及びトラップ18b(図示せず)といった2つの後続のトラップを備えていてもよい。精製の後、Pt(PF3)4は、出荷、蒸着又は保管のための金属アンプル19へのパッケージングの前に、Pt(PF3)4トラップ18中で保管されてもよい。或いは、Pt(PF3)4は、パッケージング109の後に金属アンプル19中で保管され得る。金属アンプル19は、ステンレス鋼、炭素鋼及びステンレス鋼316合金などの金属から製造された金属製のコンテナ/容器であり得る。金属アンプル19の内表面は、PF3で不動態化されているか、又は、電解研磨されていてもよい。
【0064】
金属Pt(PF3)4トラップ18、金属アンプル19の表面由来の水分は、Pt(PF3)4を、金属Pt(PF3)4トラップ18及び金属アンプル19に導入する前に、減圧下で、およそ100~170℃で加熱することにより除去され得る。或いは、金属Pt(PF3)4トラップ18、金属アンプル19の表面由来の水分は、Pt(PF3)4を金属Pt(PF3)4トラップ18及び金属アンプル19に導入する前に、トラップ容器をPF3で不動態化することにより除去され得る。
【0065】
精製したPt(PF3)4は、金属Pt(PF3)4トラップ18、金属アンプル19中で、-80~60℃、好ましくは10~40℃、より好ましくは20~25℃の温度範囲で保管され得る。本開示の方法は、ステンレス鋼、炭素鋼及びステンレス鋼316合金コンテナなどの金属コンテナ中におけるPt(PF3)4の保管を含む。金属コンテナの内表面は、PF3で不動態化されるか、又は、電解研磨され得る。ここで、ステンレス鋼コンテナは、ステンレス鋼製の一端開口型の小型サンプルシリンダ、又は、電解研磨ステンレス鋼製小型キャニスタであり得る。例示的な一実施形態において、精製したPt(PF3)4は、ステンレス鋼製の一端開口型の小型サンプルシリンダ中に、室温で、2ヶ月、Pt(PF3)4純度が変化することなく保管された。或いは、精製したPt(PF3)4は、電解研磨ステンレス鋼製小型キャニスタ中に、室温で、2ヶ月、Pt(PF3)4純度が変化することなく保管された。
【0066】
本開示の方法は、
図2aに示されている、可溶性中間体Pt(Hal)
2(PF
3)
x(x=1、2;Hal=F、Cl、Br又はI)を介したステッププロセスであって、いわゆる、溶液中における、固体-気体Pt(Hal)
2-M-PF
3合成プロセスにより表され得る。ここで、HALは、F、Cl、Br又はIであり、好ましくは、HalはClであり;Mは金属(Cuなど)であり、次いで、Pt(Hal)
2-M-PF
3合成プロセスは、PtCl
2-Cu-PF
3合成プロセスとなる。本開示の方法では、高収率(すなわち、70~99.9%)、高純度(すなわち、99%超、好ましくは99.99%超)でPt(PF
3)
4が生成され、並びに、純度の損失を伴わない高純度のPt(PF
3)
4保管及び配達が可能となる。炭化水素溶剤の使用は開示の固体-気体PtCl
2-Cu-PF
3反応プロセスに有利であり、ここで、溶剤は、不溶性出発材料である固体白金化合物PtCl
2及びPF
3ガスから、適切な反応条件下で形成される反応中間体(例えば、白金錯体PtCl
2(PF
3)
2)を溶解可能であると共に、Pt(PF
3)
4と反応しない。このような溶剤を使用することにより、Pt(PF
3)
4を高収率で、より短時間に、低PF
3圧力で得ることが可能となる。開示のPt(PF
3)
4の合成方法におけるPF
3の圧力が低いために、PF
3を凝縮させる反応器の冷却が不要となり、圧力定格が低い反応器が使用可能である。その結果、通常入手可能な器具及び反応器を、開示のPt(PF
3)
4の合成方法に利用することが可能である。これにより、結果として、大規模な工業規模に拡張性を有し、圧力要求が低いことで要求される設備の複雑さが限定的であるPt(PF
3)
4合成プロセスがもたらされる。ここで、反応条件は反応温度、反応圧力等を含む。
【0067】
開示の合成方法では、固体-気体反応における低い収率、中程度の収率及び再現性のない収率の問題、並びに、Pt(PF3)4の合成に求められる高圧のPF3の問題が、PtCl2-Cu-PF3反応系への開示の溶剤の添加により解決される。溶剤の添加により、低PF3圧力下における、より短時間での、再現可能な高収率を伴うPt(PF3)4の合成が達成される(表1、実施例1番~4番)。合成プロセスが改善される理由は、PtCl2及びPF3から、低圧反応条件下にインサイチュで得られるPtCl2(PF3)2の溶解度である。溶液-固体反応は、2種の異なる固形分及び気体間の反応よりもかなり効率的であることは一般的な知見である。溶剤を添加することにより、固体-気体PtCl2-Cu-PF3反応系がかなり効率的である溶液-固体反応に変化する。合成における溶剤の使用は一般的に実施されているが、これは、適用される反応条件、PF3の高い反応性、並びに、有機溶剤中における多様な白金配位及び触媒化学のために所与の反応系に対する明白な解決策ではなく、反論の対象にさえなり得る。
【0068】
固体-気体Pt(Hal)
2-M-PF
3合成系における溶剤の添加で、固体-気体反応における低い収率、中程度の収率及び再現性のない収率の問題(以下の比較例1を参照のこと)、及び、Pt(PF
3)
4の合成に求められるPF
3の高い圧力(50~150Atm)の問題が解決される。溶剤を添加することにより、低PF
3圧力下、より短時間、再現可能な高収率でのPt(PF
3)
4の合成が可能となる(以下の実施例2~4を参照のこと)。収率の改善に係る理由は、PtCl
2及びPF
3から一定の反応条件下に、インサイチュで得られる反応中間体PtCl
2(PF
3)
2の溶解度である(
図3)。繰り返しになるが、溶液-固体反応は、2種の異なる固形分及び気体間の反応よりもかなり効率的であることは公知である。以下の実施例2~4においては、PtCl
2-Cu-PF
3合成系における溶剤の添加により、10~50psigのPF
3圧力、5~6時間、再現可能な高収率でのPt(PF
3)
4の合成(実施例1をも参照のこと)が可能とされており、これは、固体-気体であるPtCl
2-Cu-PF
3合成系が、溶液-固体反応となったためである。その結果、通常入手可能な器具及び反応器を開示のPt(PF
3)
4の合成プロセスに利用可能である。
【0069】
好適な溶剤は、出発化合物及び中間体及び生成物Pt(PF3)4に対して「不活性」であるべきであり、並びに、出発化合物及び中間体及び生成物Pt(PF3)4と反応条件下で反応しないべきである。換言すると、好適な溶剤は、反応条件下で、出発化合物、中間体及び生成物Pt(PF3)4により触媒的に変換しないべきであり、並びに、溶剤は、出発化合物及び生成物を他の化合物に変換しないべきである。好適な溶剤は、かなり効率的で再現可能であり、従って、2種の異なる固形分及び気体間の反応よりも拡張性を有する溶液-固体反応を達成するために、反応において少なくとも1種の中間体のみを溶解するべきである。好適な溶剤は、Pt(Hal)2及びPF3から反応条件下にインサイチュで得られるPt(Hal)2(PF3)x(式中、Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)などの少なくとも1種の白金含有反応中間体を溶解可能であるべきである。
【0070】
白金前駆体は、一定の反応条件下で溶剤中に可溶性反応中間体を形成し得、他の場合には、溶剤の添加は溶剤を用いない反応と比してPt(PF3)4の収率の低下をもたらしてしまうこととなり(比較例1(b)を参照のこと)、ここで、Pt(PF3)4の収率は固体-気体反応及び実施例7(9番)において60%であり、Pt(PF3)4の収率は、同一の圧力及び温度下で、ヘキサデカン中の反応において26%である。開示の白金前駆体Pt(Hal)2(Hal=F、Cl、Br又はI)は可溶性中間体を形成し、従って、これらは、開示の合成プロセスに好適である。
【0071】
本明細書において用いられる好適な溶剤は、エーテル、アレーン又はアルカン溶剤から選択され得る。溶剤の好ましい沸点(BP)は、150℃超、好ましくは200℃超であり得る。これは、Pt(PF3)4の計算上の沸点は、“Vapor Pressure Measurements of Volatile Transition-Metal Complexes”、R.D.Sanner,J.H.Satcher,Jr.,Report(1989),UCRL-53937からの式logP=10.34-2610/T(PはTorr、Tはケルビン)による計算で約77℃であるために、溶剤と生成物Pt(PF3)4との効率的な分離に必要である。例えば、ヘキサデカン(BP:285℃、融点(MP):18℃及び蒸気圧(VP):20℃で0.07Torr)、p-シメン(BP:177℃、MP:-68℃及びVP:20℃で1Torr)及びジヘキシルエーテル(BP:223℃、MP:-43℃及びVP:20℃で0.05Torr)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(BP:216℃、MP:-45℃及びVP:20℃で0.025Torr)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(BP:275℃、MP:-30℃及びVP:20℃で0.001Torr)は、開示のPt(Hal)2-M-PF3合成系における溶剤としての使用に好適であり得る。
【0072】
一実施形態において、中間体PtCl2(PF3)2は、ヘキサデカン中におけるPtCl2及びPF3の反応から単離し、同一性は分析により確認した。PtCl2(PF3)2を、銅及びPF3と表1の5番に開示の条件下でさらに反応させて、Pt(PF3)4を製造した。
【0073】
PF3、PtCl2、PtCl2(PF3)x(x=1、2)及びPt(PF3)4は水分と反応するために、Pt(PF3)4の合成には無水溶剤を用いなければならない。水分との反応により、生成物Pt(PF3)4を汚染するHCl、HF、及び/又はリンオキソフッ化物、フルオロリン酸などの副生成物がもたらされてしまう。例えば、いずれかのガラス製の容器にPt(PF3)4が入れられると、HFはSiF4を形成し得る。汚染物の形成を防止するために、市販の溶剤は乾燥剤との接触により乾燥され得る。
【0074】
図2aは、Pt(PF
3)
4の合成のための開示のPt(Hal)
2-M-PF
3合成プロセスのフローチャートであり、Pt(Hal)
2(Hal=F、Cl、Br又はI)から開始される。出発材料は、Pt(Hal)
2(Hal=F、Cl、Br又はI)及び金属粉末(M)及びPF
3を含む。20~180℃の範囲の反応温度で、Pt(Hal)
2(Hal=F、Cl、Br又はI)及び金属粉末は可溶性ではない可能性がある。例えば、PtCl
2は、20~180℃の範囲の反応温度では可溶性ではない。先ず、ステップ202で、出発材料であるPt(Hal)
2(Hal=F、Cl、Br又はI)及び金属粉末の懸濁液が、Pt(Hal)
2(Hal=F、Cl、Br又はI)及び金属粉末を無水溶剤に分散させることにより、無水溶剤中に形成される。その後、過剰量のPF
3ガスが、Pt(Hal)
2(Hal=F、Cl、Br又はI)及び金属粉末の懸濁液に導入される。ここで、好ましくは、Hal=Clであり、次いで、Pt(Hal)
2はPtCl
2である。好ましくは、金属粉末はCu粉末である。
【0075】
Pt(Hal)2(Hal=F、Cl、Br又はI)は無水であり、無水溶剤中に懸濁される。溶剤は乾燥剤で乾燥されて無水溶剤が形成され、これが、出発材料である無水Pt(Hal)2及び金属粉末との混合に用いられる。溶剤又は無水溶剤は、一般式(CnH2n+1)2O及びH3C(O(CH2)2)nOCH3(n≧1)を有するオキシ炭化水素溶剤、一般式(CnH2n+1)xC6H6-x(x≧1、n≧1)を有するアレーン溶剤、又は、一般式CnH2n+2(n≧1)を有するアルカン溶剤などの炭化水素溶剤であり得る。本開示の方法における使用に好適な無水溶剤は、デカン、ジ-、トリ-、テトラ、ペンタ-及びヘキサデカン等から選択される乾燥アルカン溶剤;キシレン、メシチレン、シメン、ペンチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジイソブチルベンゼン等から選択される乾燥アレーン溶剤;ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオクチルエーテル、ジエチレングリコールのジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等から選択される乾燥エーテル溶剤;又は、キシレン、メシチレン、シメン、ペンチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジイソブチルベンゼン等から選択されるアレーン溶剤;又は、これらの組み合わせであり得る。エーテル溶剤は、好ましくは、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオクチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルである。アレーン溶剤は、好ましくは、キシレン、メシチレン、シメン、ペンチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジイソブチルベンゼンである。アルカン溶剤は、好ましくは、ジ-、トリ-、テトラ、ペンタ-及びヘキサデカン、並びに、鉱油として公知であるアルカンの混合物である。本開示の方法において用いられる無水溶剤は、キシレン又はヘキサデカンであり得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、溶剤又は無水溶剤は、キシレン又はヘキサデカンであり得る。乾燥剤は、3Å又は4Å分子ふるいであり得る。無水溶剤中のPt(Hal)
2(Hal=F、Cl、Br又はI)、金属粉末及び過剰量のPF
3で、可溶性反応中間体Pt(Hal)
2(PF
3)
x(x=1、2;Hal=F、Cl、Br又はI)がステップ204で形成され得る。本明細書において用いられる溶剤又は無水溶剤は、可溶性反応中間体Pt(Hal)
2(PF
3)
x(x=1、2;Hal=F、Cl、Br又はI)を溶解可能である必要がある。ここで、過剰量のPF
3が、Pt(Hal)
2(Hal=F、Cl、Br又はI)及び金属粉末の懸濁液に添加され得る。それ故、可溶性反応中間体Pt(Hal)
2(PF
3)
x(x=1、2;Hal=F、Cl、Br又はI)が、Pt(Hal)
2(Hal=F、Cl、Br又はI)及び過剰量のPF
3から、例えば80℃~130℃の温度及び例えば20psig~300psigの低圧で形成され得る。溶剤は中間体Pt(Hal)
2(PF
3)
x(x=1、2;Hal=F、Cl、Br又はI)を溶解可能であるよう選択されているため、Pt(Hal)
2(Hal=F、Cl、Br又はI)は過剰量のPF
3と反応して、反応中間体Pt(Hal)
2(PF
3)
x(x=1、2;Hal=F、Cl、Br又はI)の無水溶剤中の溶液を形成し得る。ステップ206で、反応中間体Pt(Hal)
2(PF
3)
x(x=1、2;Hal=F、Cl、Br又はI)の溶液は、金属粉末及びPF
3ガスと反応して(例えば、Hal=Clである場合、金属粉末はCu粉末であり、PtCl
2(PF
3)
2+2Cu+3PF
3=2CuCl+Pt(PF
3)
4)、Pt(PF
3)
4を形成し得る。このステップでは、過剰量のPF
3が用いられる。次いで、ステップ208では、生成されたPt(PF
3)
4が、未反応の出発材料、溶剤、並びに、ハロゲン化銅(例えば、CuCl、CuCl
2)、及び、PF
3とのその錯体などの反応副産物から分離及び精製される。
図1に示されているとおり、分離及び精製ステップは、予備減圧されたトラップ及び/又は金属トラップにおいて、残存するPF
3及び溶剤及び反応副産物を除去するために行われ得る。残存するPF
3は、出発材料として用いるためにリサイクルされ得る。金属トラップは、ステンレス鋼、炭素鋼及びステンレス鋼316合金などの金属製のものであり得る。次いで、精製した生成物Pt(PF
3)
4は、ステップ210で金属アンプル又は容器又はコンテナ中で保管される。保管用の金属アンプル又は容器又はコンテナは、ステンレス鋼、炭素鋼及びステンレス鋼316合金などの金属製のものであり得る。或いは、保管アンプル又は容器又はコンテナは、プラスチック製のものであり得る。アンプル又は容器又はコンテナの内表面は、PF
3で不動態化されているか、又は、電解研磨されていてもよい。
【0077】
本開示の方法においては、PF3、PtCl2、PtCl2(PF3)x(x=1、2)及びPt(PF3)4は水分と反応するために、Pt(PF3)4の合成には無水溶剤が使用されなければならない。汚染物の形成を防止するために、市販の溶剤は、3Å若しくは4Å分子ふるい、又は、活性アルミナから選択される乾燥剤との接触により乾燥され得る。溶剤乾燥プロセスは、溶剤及び乾燥剤を接触させることにより達成され得、これは、静的プロセス又はフロープロセスで達成され得る。乾燥ステップの前に、市販の溶剤を、不活性ガスを通すことにより、又は、減圧-不活性ガスサイクルを適用することにより脱気してもよく、ここで、減圧は0.1Torr~100Torr、好ましくは0.5~10Torrの範囲内であり、及び、不活性ガスは、含有する酸素及び水分が1ppm未満であるN2、Ar又はHeから選択される。或いは、市販の溶剤は脱気せずに乾燥剤で乾燥される。
【0078】
開示の合成方法は、高収率で生成物Pt(PF3)4が優先され、及び、副反応による影響が最低限となる反応条件の調整及び最適化により、Pt(PF3)4の実用的/拡張性を有する合成方法を提供する。開示の合成方法は、標準的な高圧反応器、例えば、Parr Instrument Company製の反応器Series 4520、4530、4540、4540(1900~5000psig定格);圧力定格ガラス反応器、例えば、Parr Instrument Company製のSeries 5100ガラス反応器(150psig定格);又は、標準的な撹拌機及びヒータを備えているBuechiglas製の実験室及び試験圧力反応器で実施され得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、Pt(PF3)4の合成、精製及び保管のための開示の合成方法は、以下のステップを含み得る:
a)溶剤を乾燥させるステップ;
b)フロー反応器中において、PtCl2などの一般式Pt(Hal)2(Hal=Cl、Br、I)を有する白金化合物と、金属銅粉末などの一定の粒径を有する金属粉末とを乾燥された又は無水溶剤に分散して、Pt(Hal)2(Hal=Cl、Br、I)及び金属銅粉末の混合物又は懸濁液を形成するステップ;
c)過剰量のPF3を混合物又は懸濁液に添加するステップ;
d)ステップc)において形成した反応混合物を、以下の反応及び生成物をもたらす必要な温度及び必要なPF3圧力(すなわち、低PF3圧力)で撹拌するステップ:
a.PtCl2(PF3)x(x=1、2)の形成;
b.PtCl2(PF3)xの乾燥溶剤中の溶液;及び
c.PtCl2(PF3)x及びPF3と金属銅粉末との生成物Pt(PF3)4を形成する反応;
e)反応混合物から個別のトラップに揮発性種を蒸溜して、以下を達成する、生成物Pt(PF3)4を精製するステップ:
i.未反応の出発材料、副産物、溶剤の分離;及び
ii.生成物Pt(PF3)4の未反応のPF3からの分離。
f)蒸留により粗Pt(PF3)4を精製するステップ;
g)未反応のPF3をステップc)にリサイクルするステップ;並びに
h)ステンレス鋼、炭素鋼及びステンレス鋼316合金などの金属製であり、及び、金属アンプル又はコンテナの内表面がPF3で不動態化又は電解研磨されている金属アンプル又はコンテナ中で精製した生成物Pt(PF3)4を保管するステップ。
【0080】
或いは、Pt(PF3)4を白金化合物Pt(Hal)2(式中、Hal=F、Cl、Br又はI)で合成する本開示の方法は、以下のステップを含む:
白金化合物Pt(Hal)2(式中、Hal=F、Cl、Br又はI)を無水溶剤中に分散して、Pt(Hal)2の懸濁液を形成するステップ;
過剰量のPF3をPt(Hal)2の懸濁液に導入するステップ;
PF3及びPt(Hal)2の反応により、白金化合物Pt(Hal)2(PF3)xの無水溶剤中の溶液を形成するステップ;
一定の粒径を有する金属粉末及び追加の過剰量のPF3を、Pt(Hal)2(PF3)x溶液に添加するステップ;並びに
反応条件下におけるPt(Hal)2(PF3)x、PF3及び金属粉末の反応を介してPt(PF3)4を形成するステップ。
【0081】
この場合、Pt(Hal)2(PF3)xは、過剰量のPF3と、Pt(Hal)2の無水溶剤中の懸濁液とにより合成された反応中間体である。繰り返すが、Pt(PF3)4の合成に対する溶剤の使用は新規であると考えられる。本発明者らが知る限りにおいて、Pt(PF3)4が、溶剤中において、反応中間体Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)を含むいずれかの白金化合物から合成されたことはなかった。
【0082】
或いは、白金化合物Pt(Hal)2(式中、Hal=F、Cl、Br又はI)でPt(PF3)4を合成する本開示の方法は、以下のステップを含む:
一定の粒径を有する金属粉末を提供するステップ;
PF3ガスを提供するステップ;
20psig~300psigの低圧及び80℃~130℃の範囲の温度などの反応条件下で白金前駆体Pt(Hal)2及びPF3から形成される少なくとも1種の白金含有反応中間体Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)を溶解可能である無水溶剤中において、金属粉末、PF3及び白金化合物Pt(Hal)2(式中、Hal=F、Cl、Br又はI)からPt(PF3)4を合成するステップ;並びに
空気及び水分を含まない条件で、金属又はプラスチックから作製された装置及びアンプル中でPt(PF3)4を精製及び保管するステップ。
【0083】
或いは、白金化合物Pt(Hal)2(式中、Hal=F、Cl、Br又はI)でPt(PF3)4を合成する本開示の方法は、以下のステップを含む:
a)溶剤を乾燥剤で乾燥させて無水溶剤を形成するステップ;
b)一定の粒径を有する金属粉末、一般式Pt(Hal)2(式中、Hal=F、Cl、Br又はI)を有する白金化合物及び過剰量のPF3を無水溶剤に添加してPt(Hal)2(PF3)x(式中、x=1、2)を形成するステップであって、無水溶剤はPt(Hal)2(PF3)xを溶解可能であるステップ;
c)金属粉末、PF3及びPt(Hal)2(PF3)xの無水溶剤中における反応により、Pt(PF3)4を合成するステップ;並びに
d)合成したPt(PF3)4を精製するステップ、及び、精製したPt(PF3)4を、空気及び水分を含まない条件下で、ステンレス鋼又はプラスチックなどの金属又はプラスチックから作製した装置及びアンプル中で保管するステップ。
【0084】
ここで、プラスチックは、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン、Teflon、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)から選択され得る。
【0085】
上記のとおり、反応中間体Pt(Hal)
2(PF
3)
x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)は炭化水素溶剤に可溶性であり、単離及び精製可能である。Pt(PF
3)
4の合成は、白金化合物Pt(Hal)
2(PF
3)
x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)から開始され得る。
図2bは、Pt(Hal)
2(PF
3)
x(x=1、2;Hal=F、Cl、Br又はI)から開始されるPt(PF
3)
4を合成する例示的なプロセスのフローチャートである。図示のとおり、ステップ302で、Pt(Hal)
2(PF
3)
x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)溶液が、Pt(Hal)
2(PF
3)
x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)を無水溶剤に溶解することにより形成される。好ましくは、HalはClであり、Pt(Hal)
2(PF
3)
xはPtCl
2(PF)
xである。次いで、ステップ304で、一定の粒径を有する金属粉末がPt(Hal)
2(PF
3)
x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)溶液に導入されて、懸濁液が形成される。好ましくは、金属粉末は一定の粒径を有するCu粉末である。その後、過剰量のPF
3ガスがステップ306で懸濁液に導入される。次いで、Pt(Hal)
2(PF
3)
x(x=1、2;Hal=F、Cl、Br又はI)と金属粉末及びPF
3とを、低圧下で、ステップ308で反応させることにより、Pt(PF
3)
4が形成される。このステップでは、過剰量のPF
3が用いられる。次いで、ステップ310では、生成されたPt(PF
3)
4が、未反応の出発材料、溶剤、並びに、ハロゲン化銅(例えば、CuCl、CuCl
2)及びPF
3とのその錯体などの反応副産物から分離及び精製される。
図1に示されているとおり、分離及び精製ステップは、予備減圧されたトラップ及び/又は金属トラップにおいて、残存するPF
3及び溶剤及び反応副産物を除去するために行われ得る。残存するPF
3は、出発材料として用いるためにリサイクルされ得る。金属トラップは、ステンレス鋼、炭素鋼及びステンレス鋼316合金などの金属製のものであり得る。精製した生成物Pt(PF
3)
4は、次いで、ステップ312で、金属アンプル又は容器又はコンテナ中で保管される。保管用の金属アンプル又は容器又はコンテナは、ステンレス鋼、炭素鋼及びステンレス鋼316合金などの金属製のものであり得る。或いは、保管アンプル又は容器又はコンテナは、プラスチック製のものであり得る。アンプル又は容器又はコンテナの内表面は、PF
3で不動態化されているか、又は、電解研磨されていてもよい。
【0086】
白金化合物Pt(Hal)2(PF3)x(式中、Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)でPt(PF3)4を合成する本開示の方法は、以下のステップを含む:
Pt(Hal)2(PF3)x(Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)を無水溶剤中に溶解して、Pt(Hal)2(PF3)x溶液を形成するステップ;
一定の粒径を有する金属粉末及び過剰量のPF3をPt(Hal)2(PF3)x溶液に添加するステップ;並びに
20psig~300psigの範囲の低圧及び80℃~130℃の範囲の温度の反応条件下における、Pt(Hal)2(PF3)x、PF3及び金属粉末の反応によりPt(PF3)4を形成するステップ。
【0087】
或いは、白金化合物Pt(Hal)2(PF3)x(式中、Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)でPt(PF3)4を合成する本開示の方法は、以下のステップを含む:
a)溶剤を乾燥剤で乾燥させて無水溶剤を形成するステップ;
b)白金化合物Pt(Hal)2(PF3)x(式中、Hal=F、Cl、Br又はI;x=1、2)、一定の粒径を有する金属粉末及び過剰量のPF3を無水溶剤に添加して、Pt(PF3)4合成するステップであり、無水溶剤は、Pt(Hal)2(PF3)xを溶解可能であるステップ;並びに
c)合成したPt(PF3)4を精製するステップ、及び、精製したPt(PF3)4を、空気及び水分を含まない条件下で、ステンレス鋼などの金属又はプラスチックから作製した装置及びアンプル中で保管するステップ。
【0088】
ここで、プラスチックは、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン、Teflon、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)から選択され得る。金属は、炭素鋼、ステンレス鋼、又はステンレス鋼316合金から選択され得る。金属粉末は、Cu、Zn又はAl粉末等であり得る。
【0089】
本開示はまた、生成物Pt(PF3)4の純度及び生成物Pt(PF3)4用の保管容器を含む。生成物Pt(PF3)4は、ステンレス鋼及び電解研磨ステンレス鋼製の容器に室温で、純度の変更を伴うことなく保管され得る。Pt(PF3)4の合成のための本開示の方法はさらに、合成されたPt(PF3)4を精製するステップ:
合成されたPt(PF3)4を金属トラップで蒸溜して溶剤及び副生成物を除去して、副生成物が除去されたPt(PF3)4を形成するステップ;
副生成物が除去されたPt(PF3)4を金属容器で蒸溜して、溶剤及び残存するPF3を除去して、精製されたPt(PF3)4を形成するステップ;並びに
任意に、残存するPF3をPt(PF3)4の合成にリサイクルするステップ
を含む。
【0090】
Pt(PF3)4を合成するための本開示の方法はさらに、精製したPt(PF3)4を保管するステップ:
精製したPt(PF3)4を、金属(例えば、ステンレス鋼)製の容器、又は、内表面不動態化若しくは電解研磨金属(例えば、ステンレス鋼)製容器に、室温で保管するステップ
を含む。
【0091】
ここで、金属容器又は内表面不動態化若しくは電解研磨金属容器で保管した精製したPt(PF3)4の純度は、変更せず、一定のままであり得る。容器は、炭素鋼、ステンレス鋼、及びステンレス鋼316合金から作製される。金属容器は、電解研磨された内表面を有し得る。或いは、Pt(PF3)4はプラスチック容器に保管され得る。プラスチック材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン、Teflon、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)であり得る。
【0092】
本開示の方法において用いられる金属粉末は、白金よりも低い電極電位を有し、反応条件下でPF3とは相互作用せず、且つ、PF3と錯体を形成せず、並びに、反応プロセス中に粉末形態を維持することを可能とする適切な粒径範囲を有する金属から構成される。
【0093】
好ましくは、金属粉末は、銅、亜鉛、アルミニウム粉末等である。反応条件下でPF3と相互作用せず、且つ、PF3と錯体を形成せず、及び、白金(+1.2)よりも低い電極電位を有するいずれかの金属及びそのハロゲン化物が、本明細書において用いられ得る。例えば、Cu(+0.34)、Pb(-0.13)、Sn(-0.14)、Cd(-0.40)、Zn(-0.76)及びこれらのハロゲン化物は反応条件下でPF3と相互作用せず、且つ、PF3と錯体を形成せず、これらは、金属粉末として使用され得る。
【0094】
以下の非限定的な実施例は本発明の実施形態をさらに例示するために提供されている。しかしながら、実施例はすべてについて包括的であることは意図されておらず、及び、本明細書に記載の本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0095】
実験手法
反応混合物、出発材料、溶剤及び生成物は、流れの一部又はアリコートを用いて、ガスクロマトグラフィ、NMR、ラマン、FTIR分光法などのいずれかの好適な手段により分析され得る。すべての計測は、酸素及び水分を含む雰囲気との接触を完全に防ぎながら、密閉したコンテナ、好適な試験管、又は、アンプル中のサンプルで行った。O2及び水が0.1ppm未満である、高純度の液体窒素、窒素ガス。
【0096】
試薬:ヘキサクロロ白金酸カリウム(IV)(K2PtCl6、Ptアッセイ40.1±0.7%、CAS:16921-30-5)はColonial Metals, Inc.製であり;塩化白金(II)(PtCl2、Ptアッセイ73.3±1.0%、CAS:10025-65-7)はColonial Metals, Inc.製であった。3種の銅粉末は、1種がStrem Chemicals Inc.製の(99.999%)100メッシュ(100メッシュ=149μm)であり;他の種がSigma-Aldrich製の<425μm、99.5%のものであり;他の種がSigma-Aldrich製の<45μm、99.99%のものであった。フッ化リン(III)(PF3、CAS:7783-55-3)はAdvance Research Chemicals,Inc.製であった。分子ふるい、3Å、ビーズ、4~8メッシュ(Sigma-Aldrich)は、乾燥窒素流中に300~350℃の温度で、又は、減圧下に300~350℃の温度で再生し、再生後に、O2及び水分が0.5ppm未満である窒素雰囲気下で操作した。溶剤であるキシレン及びヘキサデカンはSigma-Aldrich製であり、脱気し、及び、3Å分子ふるいで乾燥させた。反応器には、O2及び水が0.5ppm未満である窒素雰囲気下に、白金化合物及び銅粉末を充填した。
【0097】
実施例1.高圧反応器中における、ヘキサデカン溶剤によるPt(PF3)4の合成。
以下の表1を参照すると、PtCl2、Cu、ヘキサデカンの使用量を、グローブボックス中のParr Instrument Company製の反応器(Series 4540、600mL、5000psig定格)に充填する。反応器を移動し、減圧ラインに接続し、0.3Torr未満に減圧し、必要な量のPF3を、-79℃未満(1~3番)又は室温(6番)で反応器に導入した。次いで、反応器を室温に温め、撹拌を開始し、次いで、反応器中の温度を105℃に高め、反応混合物をPF3圧力下で撹拌した。反応6番において、PF3は反応の最中に数回に分けて反応器に添加して、圧力を100~200psigの範囲内に維持する。すべての反応において、最初の6時間に105℃で圧力の低下が見られ、次いで、圧力は安定化し、これは、反応がおよそ6時間かかり得ることを示す。反応器中の圧力はさらに数時間の間監視し、次いで、反応器の内容物を35~45℃に冷却し、ガスの一部(約25~35%)をドライアイス-イソプロパノール混合物で冷却した予備減圧したトラップ(0.44L、ステンレス鋼材料)に送った。反応6番において、トラップにおけるすべての圧力を開放した。反応器を閉じ、トラップを約10分間維持し、次いで、非凝縮性ガスを液体窒素で冷却した第2のトラップ(6L、アルミニウム材料)に送った。輸送ライン及びバルブは、0℃未満に冷却されている場合には、通過するガスで温めた。6L Alトラップ中のPF3分量を凝縮させた後、6L Alトラップに減圧を適用して、トラップ中における圧力を1Torr未満とした。すべてのPF3及びPt(PF3)4が反応器から無くなり、2つの異なるトラップで回収されるまで操作を繰り返した。次いで、Pt(PF3)4を含むトラップを別の予備減圧した容器(0.4L、電解研磨ステンレス鋼)に再度接続した。Pt(PF3)4を含む親トラップを室温に温め、一方で、受け側の容器を液体窒素で冷却し、すべてのPt(PF3)4を受け側の容器において静的減圧下で蒸溜した。蒸留の後、受け側の容器を室温に温め、残存するPF3をスクラバーから開放した。Pt(PF3)4の収率は、以下の表1のとおりである。
【0098】
【0099】
1H、19F NMRによれば、Pt(PF3)4の純度はすべての実験において99%超である。例えば、反応1番では、ニート生成物の19F NMR(σCFCl3,ppm):-11.5(m,J(P-F)=1302Hz,99.63%,Pt(PF3)4),-34.4(d,J(P-F)=1402Hz,0.05%,PF3),-81.58(0.19%,フルオロリン酸,割り当てなし),-92.4(d,J(P-F)=2035Hz,0.12%,POF3)。ニート生成物の1H NMR(σSiMe4,ppm):0.90及び1.32(ヘキサデカン),13.1(s,フルオロリン酸)。1H NMRによるヘキサデカンの測定。0.18gの精製した生成物を反応1番からとり、0.03%を含有する0.77gのC6D6と混合した(0.23mg,0.0026mmol)のSiMe4。溶液の1H NMR(σSiMe4,ppm):0.00(s,97.7mol.%,SiMe4),1.32(2.3mol.%,ヘキサデカン),7.16(s,フルオロリン酸、C6D6は水分が乾燥していなかったため相対的強度は計測せず)。mol%を重量%に再計算する場合、溶液は0.23mgのTMSを含有することを考慮すると、Pt(PF3)4サンプル中のヘキサデカンの総量は0.014mgであり、反応1番からのPt(PF3)4中の79ppmに相当する。
【0100】
追加のトラップからトラップへの蒸留により、Pt(PF3)4を99.79%の純度で得られる。ニートサンプルの19F NMRをガラスアンプルで計測した(σCFCl3,ppm):-11.5(m,J(P-F)=1302Hz,99.79%,Pt(PF3)4),-88.20(d,J(P-F)=975Hz,0.19%,(HO)POF2),-92.4(d,J(P-F)=2035Hz,0.01%,POF3)-166.1(s,0.02%,SiF4)。ニートサンプルの1H NMR(σSiMe4,ppm):0.90及び1.32(ヘキサデカン,相対的強度28%),12.94(s,(HO)POF2,相対的強度72%)。ヘキサデカンの共鳴は、0.03%のSiMe4を含有する0.78gのC6D6中の0.07gのサンプルの溶液に対する検出限界未満であった。従って、ヘキサデカンの総量は80ppm未満である。FTIR。[Golden Gate(商標)プローブにおける液体Pt(PF3)4、分解能4cm-1]:882、827、496cm-1。
【0101】
実施例2.PtCl2(PF3)2及びヘキサデカン溶剤の単離を伴うPt(PF3)4の合成。
a)ヘキサデカン中のPtCl2(PF3)x(x=1、2)の合成。
PtCl2(1.9g、7.1mmol)、ヘキサデカン(15.8g、20.4mL)を、撹拌バー、熱電対、圧力計を備えた150mLの圧力ガラスアンプル(Chemglass Life Sciences、部品番号CG-1880-31)に充填した。アンプルを、減圧ラインとPF3を含むシリンダとに接続した。出発材料を含むアンプルを約0.2Torrに減圧して窒素を除去し、次いで、35psigのPF3添加し、懸濁液を撹拌下に加熱した。内容物を、100~120℃の温度範囲、20~35psigのPF3下で4時間撹拌し、ここで、PF3は、圧力が20psigに近づいた時に、数回に分けて添加した。反応の最中、最初はヘキサデカンに不溶性であったPtCl2はPF3と完全に反応し、ヘキサデカンに可溶性の化合物が形成され、その一部が装置の低温部分で無色の結晶として昇華した。4時間後、加熱を停止し、反応混合物を室温に冷却し、PF3をシリンダに戻して凝縮し、結晶の一部を溶液から分離して分析した;ヘキサデカンの上澄み溶液の一部もまた19F NMRにより分析した。純粋な無水ヘキサデカンに溶解した結晶の19F NMR(σCFCl3,ppm):-36.4(m,J(Pt-F)=628Hz,J(P-F)=1320Hz,PtCl2(PF3)2)。ヘキサデカンの上澄み溶液の19F NMR(σCFCl3,ppm):-32.5(d,J(P-F)=1405Hz,PF3),-36.4(m,J(Pt-F)=622Hz,J(P-F)=1318Hz,PtCl2(PF3)2)。結晶のFTIR(Golden Gate(商標)プローブ上の純粋な固体、分解能4cm-1):417(sh,w),447(sh,w),461(m),483(s),507(s),518(s),531(m),551(s),901(vs),907(sh),933(vs),961(s),969(w),974(m),985(w)結晶のDSC:19.0℃(相転移),72.5℃(相転移),118.3℃(融点)。
【0102】
b)ヘキサデカン中におけるPtCl2(PF3)x(x=1、2)からのPt(PF3)4の合成。
a)からの無色の結晶をヘキサンの上澄み溶液に入れ、銅を添加し(2.22g、34.9mmol)、アンプル(150mL HW圧力ガラス容器)を減圧ラインとPF3を含むシリンダとに接続した。出発材料を含むアンプルを約2Torrに短時間減圧して窒素を除去し、次いで40psigのPF3添加し、懸濁液を、100~130℃の温度範囲で撹拌しながら4時間加熱した。この反応は20~40psigのPF3下であり、ここで、PF3は、圧力が20psigに近づいた時に、数回に分けて添加した。4時間後、加熱を停止し、反応混合物を35℃に冷却し、Pt(PF3)4、PF3、いくらかの溶剤を、静的減圧下に液体窒素で冷却したトラップ(ステンレス鋼製)で凝縮した。Pt(PF3)4を、トラップからトラップへの蒸留により、PF3及び残存するヘキサデカンから精製した。Pt(PF3)4の収率は1.25gである(32%、a)においてPtCl2(PF3)2及び上澄み溶液の一部を分析に用いたため低収率)。ニート生成物Pt(PF3)4の19F NMR(σCFCl3,ppm):-11.5(m,J(P-F)=1301Hz,Pt(PF3)4)。ニート生成物の1H NMR(σSiMe4,ppm):0.23(t,J=6.1Hz,71.7mol.%,Me2SiF2),0.90及び1.32(28.3mol.%,ヘキサデカン)。
【0103】
実施例3.ガラスアンプル中における、ヘキサデカン溶剤を伴うPt(PF3)4の合成。
PtCl2(8.75g、32.9mmol)、Cu(18.25g、287.2mmol)、ヘキサデカン(30.95g、40mL)を、撹拌バー、熱電対、圧力計を備えるアンプル(Chemglass Life Sciences製の150mL HW圧力ガラス容器、部品番号CG-1880-31)に充填した。アンプルを、減圧ラインとPF3を含むシリンダとに接続した。出発材料を含むアンプルを約0.2Torrに減圧して窒素を除去し、次いで、40psigのPF3添加し、内容物を撹拌下に加熱した。内容物を、110~120℃の温度範囲、20~50psigのPF3下で5.5時間撹拌し、ここで、PF3は、圧力が20psigに近づいた時に、数回に分けて添加した。反応の最中、PtCl2(PF3)2の結晶が形成し、次いで、消費され、反応の終了時には、反応混合物は2種の不混和性の液体を含有していた。5時間30分間後、加熱を停止し、反応混合物を41℃に冷却し、Pt(PF3)4、PF3、いくらかの溶剤を、静的減圧下に液体窒素で冷却したトラップ(ステンレス鋼製)で凝縮した。Pt(PF3)4を、トラップからトラップへの蒸留により、PF3及び残存するヘキサデカンから精製した。Pt(PF3)4の収率は79%である(14.2g)。ニートサンプルの19F NMR(σCFCl3,ppm):-11.5(m,J(P-F)=1301Hz,99.40%,Pt(PF3)4),-34.4(d,J(P-F)=1402Hz,0.36%,PF3),-92.4(d,J(P-F)=2035Hz,0.23%,POF3),-166.0(s,0.007%,SiF4)。ニートサンプルの1H NMR(σSiMe4,ppm):0.23(t,J=6.1Hz,67.4mol.%,Me2SiF2),0.90及び1.32(6.9mol.%,ヘキサデカン),1.45(d,J=6.1Hz,25.8mol.%,P(OiPr)3)。1H NMRによる有機内容物の判定。有機化合物の共鳴強度は、0.03%(0.228mg、0.0026mmol)のSiMe4を含有する0.76gのC6D6に溶解した0.09gのPt(PF3)4サンプルの溶液に対する検出限界未満であった。従って、有機化合物の総量はPt(PF3)4中に80ppm未満である。
【0104】
実施例4.ガラスアンプル中における、キシレン溶剤を適用するPt(PF3)4の合成。
PtCl2(2.19g、8.2mmol)、Cu(4.69g、73.8mmol)、キシレン(16.1g)を、撹拌バー、熱電対、圧力計を備える150mLの圧力ガラスアンプル(Chemglass Life Sciences、部品番号CG-1880-31)に充填した。アンプルを、減圧ラインとPF3を含むシリンダとに接続した。出発材料を含むアンプルを約3Torrに短時間減圧して窒素を除去し、次いで40psigのPF3添加し、内容物を撹拌下に加熱した。内容物を、100~120℃の温度範囲、20~40psigのPF3下で4.5時間撹拌し、ここで、PF3は、圧力が20psigに近づいた時に、数回に分けて添加した。反応の最中、PtCl2(PF3)2の結晶が形成し、次いで、消費され、反応の終了時には、反応混合物は2種の不混和性の液体を含有していた。4時間30分間後、加熱を停止し、反応混合物を38℃に冷却し、Pt(PF3)4、PF3、いくらかの溶剤を、静的減圧下に液体窒素で冷却したトラップ(ステンレス鋼製)で凝縮した。Pt(PF3)4を、トラップからトラップへの蒸留により、PF3及び残存する溶剤であるキシレンから精製した。Pt(PF3)4の収率は95%(4.3g)である。ニートサンプルの19F NMR(σCFCl3,ppm):-11.5(m,J(P-F)=1301Hz,99.58%,Pt(PF3)4),-34.4(d,J(P-F)=1402Hz,0.39%,PF3),-92.4(d,J(P-F)=2035Hz,0.03%,POF3),-166.0(s,0.01%,SiF4)。%は積分による。ニートサンプルの1H NMR(σSiMe4,ppm):0.12(t,J=6.1Hz,0.7mol.%,Me2SiF2),1.11(t)及び2.56(q)(18.8mol%,Et-C6H5),2.05(s)及び2.14(s)(79.4mol.%,キシレン),6.97(m,芳香族プロトン),12.46(br,1.0mol.%,フルオロリン酸)。1H NMRによる残存する溶剤の測定。0.088gのPt(PF3)4サンプルをとり、0.03%(0.24mg,0.0027mmol)のSiMe4を含有する0.80gのC6D6に溶解した。1H NMR(σSiMe4,ppm):0.00(s,6.28mol.%,SiMe4),1.07(t)及び2.39(q)(18.64mol%,Et-C6H5),2.02(s,11.41mol.%,キシレン),2.14(s,63.67mol.%,キシレン),6.97(m,芳香族プロトン)。mol%を重量%に再計算する場合、溶液は0.24mgのTMSを含有することを考慮すると、有機化合物の総量は4.27mgであり、88mgのPt(PF3)4サンプル中の4.85重量%に相当する。
【0105】
実施例5.Pt(PF3)4保管寿命
保管寿命試験を室温で12週間行った。Pt(PF3)4を実施例3及び4に記載の合成で得て、50cm3の体積でブラインドキャップを取り付けた316合金一端開口型の小型サンプルシリンダ中、及び、ブラインドキャップを取り付けた電解研磨ステンレス鋼製小型キャニスタ(V=400cm3)中に室温で保管した。Pt(PF3)4を導入する前に、両方のコンテナはおよそ150℃及び30~50mTorrで減圧焼成した。19F及び1H NMRスペクトルを原液Pt(PF3)4について2週間毎に計測して、Pt(PF3)4アッセイ及び不純物の相対量を19F及び1H NMRスペクトルから監視した。保管寿命試験の結果を表2に示す。
【0106】
【0107】
Pt(PF
3)
4アッセイ及び不純物の相対量は、12週間の間すべての実験においてほぼ同様である。偏差は316SSスチールアンプルの方が高い。これらの結果から、経時的なPt(PF
3)
4の安定性が示されている。
図4は、400mLの電解研磨ステンレス鋼製小型キャニスタにおける、室温での経時的なPt(PF
3)
4アッセイ及び不純物の相対量に係るグラフである。開示のPt(PF
3)
4は、微小電子素子又は触媒産業におけるPt含有フィルムのための前駆体としての使用が目的とされる。
【0108】
比較例1.Angew.Chem.Int.Ed.1965,4,521及び露国特許第2478576C2号明細書からの処方を用いた、K2PtCl6から開始されるPt(PF3)4の合成
Angew.Chem.Int.Ed.1965,4,521及び露国特許第2478576C2号明細書からの処方に従うPt(PF3)4の合成を以下の表3に示す。実験は、Parr Instrument Company製の市販の高圧反応器(Series 4540、600mL、5000psig定格、実験10番及び12番で標準的なインペラを備え、並びに、bにおける固形分の効率的な撹拌のために設計されたU型アンカー撹拌機を備える)で実施される。露国特許第2478576C2号明細書に係るプロセスは、純粋な水素を利用すると共に、還元後の乾燥ステップを利用するものであり、これは、規模拡張により系からの水の除去が可能であるとしても高価で安全性の高い器具及び長い時間が必要である。表3に示されているとおり、10番は149μmサイズの銅粉末Cu(銅粉末は供給業者によりアルゴン雰囲気に梱包されたものであり、そのまま用いた)で行った。11番及び12番は425μmサイズの銅粉末Cu(99.5%、Sigma-Aldrich製)で行った。[Angew.Chem.Int.Ed.1965,4,521]に従って行った、PtCl2(12番、表3)から開始するPt(PF3)4の合成は、425μmサイズの銅粉末から調製したCu(99.5%、Sigma-Aldrich製)で行った。Pt(PF3)4(10~12番)は低~中度の収率で形成される。
【0109】
表3を参照すると、比較例は、市販の標準的な器具で行い、出発材料K2PtCl6、PtCl2、Cuの使用量を、酸素及び水分が<0.5ppmであるグローブボックス中の反応器に充填した。反応器をシールし、減圧ラインに接続し、0.2Torr未満に減圧し、-79℃未満に冷却し、必要な量のPF3を反応10番~12番に、低温で撹拌しながら導入した。次いで、反応器を室温に温め、105~130℃に温め、内容物をPF3圧力下で24時間撹拌した。次いで、反応器の内容物を35~45℃に冷却し、ガスの一部(約25~35%)を、ドライアイス-イソプロパノール混合物で冷却した予備減圧したトラップ(0.44L、ステンレス鋼材料)に送った。反応器を閉じ、トラップを約10分間維持し、次いで、非凝縮性ガスを液体窒素で冷却した第2のトラップ(6L、アルミニウム材料)に送った。輸送ライン及びバルブは、0℃未満に冷却されている場合には、通過するガスで温めた。6L Alトラップ中のPF3分量を凝縮させた後、6L Alトラップに減圧を適用して、トラップ中における圧力を1Torr未満とした。すべてのPF3及びPt(PF3)4が反応器から無くなり、2つの異なるトラップで回収されるまで操作を繰り返した。次いで、Pt(PF3)4を含むトラップを別の予備減圧した容器(50mL、ステンレス鋼)に再度接続した。Pt(PF3)4を含む親トラップを室温に温め、一方で、受け側の容器を液体窒素で冷却し、すべてのPt(PF3)4を受け側の容器において静的減圧下で蒸溜した。蒸留の後、受け側の容器を室温に温め、残存するPF3をスクラバーから開放した。各実験に係るPt(PF3)4の収率は低~中度の収率を示したが、露国特許第2478576C2号明細書は60~95%の収率を主張していた。露国特許第2478576C2号明細書のレシピから得られたPt(PF3)4の低~中度の収率は、溶剤の欠如による可能性がある。Pt(PF3)4の純度は、1H、19F NMRによれば、すべての実験において97.9%超である。例として、実験b)からのニート生成物の19F NMR(σCFCl3,ppm):-11.5(m,J(P-F)=1302Hz,97.9%,Pt(PF3)4)、-34.4(d,J(P-F)=1402Hz,0.2%,PF3)、-92.4(d,J(P-F)=2035Hz,2.0%,POF3)。
【0110】
【0111】
実施例6.高圧反応器における、ヘキサデカン溶剤を伴うK2PtCl6から開始するPt(PF3)4の合成。
K2PtCl6(79.5g、0.16mol)、Cu(120.6g、1.9mol)、ヘキサデカン(100g)を、グローブボックス中の反応器(Parr Instrument Company、Series 4540、600mL5000psig定格)に充填する。反応器を移動し、減圧ラインに接続し、0.3Torrに減圧し、-79℃未満に冷却し、387g(4.4mol)のPF3を反応器に導入した。次いで、反応器を室温に温め、撹拌を開始し、反応器を120℃にさらに温め、内容物を、PF3圧力下で22時間撹拌した。次いで、反応器の内容物を35~45℃に冷却し、ガスの一部(約25~35%)をドライアイス-イソプロパノール混合物で冷却した予備減圧したトラップ(0.44L、ステンレス鋼材料)に送った。反応器を閉じ、トラップを約10分間維持し、次いで、非凝縮性ガスを液体窒素で冷却した第2のトラップ(6L、アルミニウム材料)に送った。輸送ライン及びバルブは、0℃未満に冷却されている場合には、通過するガスで温めた。6L Alトラップ中のPF3分量を凝縮させた後、6L Alトラップに減圧を適用して、トラップ中における圧力を1Torr未満とした。すべてのPF3及びPt(PF3)4が反応器から無くなり、2つの異なるトラップで回収されるまで操作を繰り返した。次いで、Pt(PF3)4を含むトラップを別の予備減圧した容器(50mL、ステンレス鋼)に再度接続した。Pt(PF3)4を含む親トラップを室温に温め、一方で、受け側の容器を液体窒素で冷却し、すべてのPt(PF3)4を受け側の容器において静的減圧下で蒸溜した。蒸留の後、受け側の容器を室温に温め、残存するPF3をスクラバーから開放した。Pt(PF3)4の収率は23.2g、K2PtCl6から25.9%である。この実施例及び上記の比較例1の2つの反応における、K2PtCl6から開始したPt(PF3)4の収率を列挙する、表4を参照のこと。13番は上記の比較例1からのものであり、11番及び14番はこの実施例の結果であった。両方の反応は同じ温度及びPF3圧力である。19F NMRスペクトルの積分によるPt(PF3)4のアッセイは99.48%である。実験b)からのニート生成物の19F NMR(σCFCl3,ppm):-11.5(m,J(P-F)=1302Hz,99.48%,Pt(PF3)4)、-34.4(d,J(P-F)=1402Hz,0.3%,PF3)、-92.4(d,J(P-F)=2035Hz,0.2%,POF3)。
【0112】
【0113】
表3におけるPtCl2の使用に係る収率が低い理由は、成分の非効率的な混合、反応中における金属塩化物による金属の被覆、並びに、2種の異なる固形分及び気体から開始される反応に付随する他の要因によるものであり得る。解決策は、固体気体系から溶液-固体系に移行して、成分のより良好な混合、及び、金属粉末が懸濁された液体相中に溶解した成分のより効率的な相互作用を達成することであり得る。しかしながら、溶剤がPt前駆体又は中間体と触媒反応を起こすであろうと予想されるため、溶液-固体系はこれまで報告されていない。
【0114】
本明細書に記載の主題は、ユーザ対話型の構成要素を有するコンピューティングアプリケーションのための1つ以上のコンピューティングアプリケーション機能/操作を処理するための例示的な実装の文脈で説明し得るが、主題はこれらの特定の実施形態には限定されない。むしろ、本明細書に記載の技術は、いずれかの好適なタイプのユーザ対話型の構成要素実行管理方法、システム、プラットフォーム及び/又は装置に適用され得る。
【0115】
本発明の性質を説明するために本明細書において記載及び図示されている詳細、材料、ステップ及び部品の配置において多くの追加の変更は、添付の特許請求の範囲に表記されている本発明の原則及び範囲内において、当業者により成し得ることが理解されるべきである。それ故、本発明は、上記の実施例及び/又は添付の図面における特定の実施形態に限定されることは意図されていない。
【0116】
本発明の実施形態が示され及び説明されているが、本発明の趣旨又は教示から逸脱しない限りにおいて、当業者によりその変更が成し得る。本明細書に記載の実施形態は、単なる例示であり、限定的ではない。組成及び方法の多くの変形及び変更が可能であると共に、本発明の範囲内である。従って、保護の範囲は本明細書に記載の実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は特許請求の範囲の主題に係るすべての均等物を含むものとする。
【符号の説明】
【0117】
11 Cu粉末
12 PtCl2
13 PF3
14 溶剤
15 コンテナ
16 反応器
17 予備減圧されたトラップ
18 Pt(PF3)4トラップ
19 金属アンプル
20 PF3トラップ
101 ライン
102 滴下漏斗
103 添加ライン
104 乾燥プロセス
105 ライン
106 ライン
107 ライン
108 バイパス
109 パッケージング
110 ライン
【国際調査報告】