特表 2024-543193 ポリマー分散剤を含む潤滑剤組成物

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公表特許公報(A)

(11)【公表番号】

(43)【公表日】2024-11-19

(54)【発明の名称】ポリマー分散剤を含む潤滑剤組成物

(51)【国際特許分類】

   C10M 173/02 20060101AFI20241112BHJP

   C10M 151/02 20060101ALN20241112BHJP

   C10M 103/02 20060101ALN20241112BHJP

   C10N 20/06 20060101ALN20241112BHJP

   C10N 20/04 20060101ALN20241112BHJP

   C10N 40/24 20060101ALN20241112BHJP

   C10N 30/00 20060101ALN20241112BHJP

   C10N 30/06 20060101ALN20241112BHJP

【ＦＩ】

C10M173/02

C10M151/02

C10M103/02 Z

C10N20:06

C10N20:04

C10N40:24 Z

C10N30:00 Z

C10N30:06

【審査請求】未請求

【予備審査請求】未請求

(21)【出願番号】P 2024532251

(86)(22)【出願日】2022-12-01

(85)【翻訳文提出日】2024-05-29

(86)【国際出願番号】 US2022051499

(87)【国際公開番号】W WO2023107324

(87)【国際公開日】2023-06-15

(31)【優先権主張番号】202111056417

(32)【優先日】2021-12-06

(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN

(81)【指定国・地域】

(71)【出願人】

【識別番号】502141050

【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー

(74)【代理人】

【識別番号】100099759

【弁理士】

【氏名又は名称】青木 篤

(74)【代理人】

【識別番号】100123582

【弁理士】

【氏名又は名称】三橋 真二

(74)【代理人】

【識別番号】100128495

【弁理士】

【氏名又は名称】出野 知

(74)【代理人】

【識別番号】100208225

【弁理士】

【氏名又は名称】青木 修二郎

(74)【代理人】

【識別番号】100144417

【弁理士】

【氏名又は名称】堂垣 泰雄

(72)【発明者】

【氏名】ヘマ サーガル ギディ

【テーマコード（参考）】

4H104

【Ｆターム（参考）】

4H104AA04A

4H104EA03C

4H104EA08C

4H104LA03

4H104LA20

4H104PA26

(57)【要約】

潤滑剤組成物は、水と、グラファイトと、増粘剤と、アクリル酸から誘導されるモノマー構造単位および２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位を含むポリマー分散剤と、を含む。

【特許請求の範囲】

【請求項1】

潤滑剤組成物であって、
水と、
グラファイトと、
増粘剤と、
アクリル酸から誘導されるモノマー構造単位および２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位を含むポリマー分散剤と、を含む、潤滑剤組成物。

【請求項2】

前記潤滑剤組成物の総重量に基づいて２０重量％～６０重量％の水を含む、請求項１に記載の潤滑剤組成物。

【請求項3】

前記潤滑剤組成物の総重量に基づいて１０重量％～６０重量％のグラファイトを含む、請求項１に記載の潤滑剤組成物。

【請求項4】

前記グラファイトが、０．５μｍ～５．０μｍのＤ９０粒径を有する、請求項３に記載の潤滑剤組成物。

【請求項5】

前記ポリマー分散剤が、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って測定した場合、３，０００ｇ／ｍｏｌ～６，０００ｇ／ｍｏｌの重量平均分子量を有する、請求項１に記載の潤滑剤組成物。

【請求項6】

前記潤滑剤組成物の総重量に基づいて０．０１重量％～１．０重量％の分散剤を含む、請求項１に記載の潤滑剤組成物。

【請求項7】

前記ポリマー分散剤が、前記ポリマー分散剤の総重量に基づいて２０重量％～３０重量％の２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位を含む、請求項１～６のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。

【請求項8】

前記ポリマー分散剤が、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って測定した場合、４，０００ｇ／ｍｏｌ～５，０００ｇ／ｍｏｌの重量平均分子量を有する、請求項７に記載の潤滑剤組成物。

【請求項9】

前記ポリマー分散剤が、Ｎ－ｔｅｒｔ－ブチルアクリルアミドから誘導されるモノマー構造単位を含む、請求項１～６のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。

【請求項10】

前記ポリマー分散剤が、前記ポリマー分散剤の総重量に基づいて１重量％～３０重量％のＮ－ｔｅｒｔ－ブチルアクリルアミドから誘導されるモノマー構造単位を含む、請求項９に記載の潤滑剤組成物。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、潤滑剤組成物に関し、より具体的には、ポリマー分散剤を利用する水性グラファイト分散液を含む潤滑剤組成物に関する。

【背景技術】

【0002】

序論
熱間鍛造は、金属ワークピースをダイ内に配置し、圧力下で変形させる工業プロセスである。金属ワークピースを塑性的に変形させるために金属ワークピースに印加されるエネルギーは、熱に変換される。ワークピースの鍛造と熱の発生とを繰り返すと、ダイの温度が上昇する。摩擦を低減し、確実にワークピースをダイから取り外すことができるようにするために、鍛造中にワークピースとダイとの間の界面で潤滑剤を使用する。良好な潤滑は、ワークピースの変形を改善し、ダイキャビティの正確な充填に有利に働き、自由流動運動および高い比圧力を有する点における工具の摩耗を低減し、鍛造力を低減することができる。このような特徴は、鍛造工具において誘起される応力を減少させ、工具とワークピースとが直接接触するのを防ぎ、このことは、より長い工具寿命およびより良好な品質管理に寄与する。

【0003】

近年、熱間鍛造のために選択される潤滑剤は、水系潤滑剤であった。水系潤滑剤は、典型的には、担体としての水と、グラファイトなどの潤滑粒子とを含む。水系潤滑剤は、グラファイトをダイに付着させて、水が蒸発するにつれてダイ上に固体コーティングを形成する。水系潤滑剤は、油系潤滑剤に比べて有利であるが、その理由は、油系潤滑剤は、圧力下でダイ表面から流れ落ち、ワークピース／ダイ界面から絞り出される傾向があるためである。しかし、水系潤滑剤にも欠点がないわけではない。水中のグラファイト分散液は安定ではなく、連続撹拌を必要とし、そうしなければ凝集および沈降が生じる。潤滑剤保持タンク内で凝集および沈降が生じると、ダイに塗布されるグラファイトの量が不正確になり、それによってダイの有効寿命が減少する可能性がある。凝集および沈降はまた、潤滑剤を鍛造ダイに塗布することを意図するパイプおよびスプレーノズルを詰まらせる可能性がある。理想的には、グラファイト分散液は、長期間にわたって沈降に耐える。水系潤滑剤の１つの測定では、潤滑剤が２４日後に８０％のグラファイトの分散液を維持することができ、沈降物が分散可能な形態のままであるかどうかを調べる（「沈降試験」）。

【0004】

分散剤を使用して水性のグラファイト分散液の凝集および沈降を減少させる試みがなされてきた。異なる分散剤のグラファイトに対する効力についての理論的説明は一致していない。例えば、米国特許出願公開第２００９０３０５０５２（Ａ１）号（「‘０５２号公報」）には、固形分含有量の高い安定な水性グラファイト分散液が開示されている。‘０５２公報は、芳香族環／フェニル基およびイオン性スルホネート基を含むリグノスルホン酸などの分散剤を利用することによって、その水性グラファイト分散液中のより高い固体充填含有量を達成する。

【0005】

中国特許出願公開第１１１９２５６９７（Ａ）号（「‘６９７号公報」）は、膜を形成するために水に分散させることができるグラフェンおよび水溶性ポリマー分散剤複合材料が提供されている。‘６９７号公報には、分散剤が分散剤とグラフェンとの間のπ－π相互作用に起因して表面不活性グラフェンと水溶性ポリマーとの間の相溶性を改善するので、芳香環構造およびイオン性スルホン酸基を含有する水溶性ポリマー分散剤を含めることによって、強化された水性グラフェン分散液を得ることができると説明されている。

【0006】

先行技術によって実証されているように、グラファイト材料と共に使用される分散剤が芳香族構造およびイオン性スルホネート基を含むことが重要であることを考慮すると、芳香族またはイオン性スルホネート部分を含まないが、沈降試験に合格することができる分散剤を発見することは驚くべきことであろう。

【発明の概要】

【0007】

本開示は、沈降試験に合格することができるが、芳香族構造またはイオン性スルホネート部分を含まない分散剤を提供する。本出願の発明者は、アクリル酸から誘導されるモノマー構造単位および２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位を含む非イオン性ポリマー分散剤を含む潤滑剤組成物が、沈降試験に合格できることを発見した。このような結果は、フェニルまたは芳香族環構造が分散剤とグラファイトとの間の相溶化を達成し、したがって分散を安定化させるのに必要な成分であるという先行技術の示唆にもかかわらず、本出願の分散剤は、このような構造を有していないという点で驚くべきことである。更に、本発明の分散剤は、イオン性スルホネート部分を含まないが、それでもなお沈降試験に合格することができる。

【0008】

本開示は、グラファイトを利用する潤滑剤の形成に特に有用である。

【0009】

本開示の第１の特徴によれば、潤滑剤組成物は、水と、グラファイトと、増粘剤と、アクリル酸から誘導されるモノマー構造単位および２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位を含むポリマー分散剤と、を含む。

【0010】

本開示の第２の特徴によれば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて２０重量％～６０重量％の水を含む。

【0011】

本開示の第３の特徴によれば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて１０重量％～６０重量％のグラファイトを含む。

【0012】

本開示の第４の特徴によれば、グラファイトは、０．５μｍ～５．０μｍのＤ９０粒径を有する。

【0013】

本開示の第５の特徴によれば、ポリマー分散剤は、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って測定した場合、３，０００ｇ／ｍｏｌ～６，０００ｇ／ｍｏｌの重量平均分子量を有する。

【0014】

本開示の第６の特徴によれば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて０．０１重量％～１．０重量％の分散剤を含む。

【0015】

本開示の第７の特徴によれば、ポリマー分散剤は、ポリマー分散剤の総重量に基づいて２０重量％～３０重量％の２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位を含む。

【0016】

本開示の第８の特徴によれば、ポリマー分散剤は、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って測定した場合、４，０００ｇ／ｍｏｌ～５，０００ｇ／ｍｏｌの重量平均分子量を有する。

【0017】

本開示の第９の特徴によれば、ポリマー分散剤は、Ｎ－ｔｅｒｔ－ブチルアクリルアミドから誘導されるモノマー構造単位を含む。

【0018】

本開示の第１０の特徴によれば、ポリマー分散剤は、ポリマー分散剤の総重量に基づいて１重量％～３０重量％のＮ－ｔｅｒｔ－ブチルアクリルアミドから誘導されるモノマー構造単位を含む。

【発明を実施するための形態】

【0019】

本明細書で使用される場合、「および／または」という用語は、２つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか１つをそれ自体で用いることができるか、または列挙された項目のうちの２つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分Ａ、Ｂ、および／またはＣを含有するものとして説明されている場合、組成物は、Ａを単独で、Ｂを単独で、Ｃを単独で、ＡおよびＢを組み合わせて、ＡおよびＣを組み合わせて、ＢおよびＣを組み合わせて、またはＡ、Ｂ、およびＣを組み合わせて、含有することができる。

【0020】

別途記載のない限り、全ての範囲は、終点を含む。

【0021】

本明細書で使用される場合、重量パーセント（「重量％」）という用語は、別途明記しない限り、成分がポリマー組成物の総重量に占める重量のパーセンテージを示す。

【0022】

本明細書で使用される場合、Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ａｂｓｔｒａｃｔ Ｓｅｒｖｉｃｅｓ登録番号（「ＣＡＳ＃」）は、本文書の優先日の時点でＣｈｅｍｉｃａｌ Ａｂｓｔｒａｃｔ Ｓｅｒｖｉｃｅによって化学化合物に最後に割り当てられた固有の数字識別子を指す。

【0023】

潤滑剤組成物
本開示は、潤滑剤組成物に関する。潤滑剤組成物は、水と、グラファイトと、増粘剤と、アクリル酸から誘導されるモノマー構造単位および２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位を含むポリマー分散剤と、を含む。潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて２０重量％～６０重量％の水を含み得る。例えば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて２０重量％以上、または２５重量％以上、または３０重量％以上、または３５重量％以上、または４０重量％以上、または４５重量％以上、または５０重量％以上、または５５重量％以上、一方で同時に、６０重量％以下、または５５重量％以下、または５０重量％以下、または４５重量％以下、または４０重量％以下、または３５重量％以下、または３０重量％以下、または２５重量％以下の水を含む。潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の特徴の特性を変化させるように設計された１つ以上の他の添加剤を含んでいてもよい。

【0024】

増粘剤
表面への潤滑剤組成物の塗布および保持を支援するために、潤滑剤組成物中に増粘剤を含める。増粘剤は、寒天、アルギン酸ナトリウム、ラムサムガム（rhamsam gum）、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、ニームガム、チャッティガム（gum chatti）、カラナ（caranna）、ガラクトマンナン、トラガカントガム、カラヤガム、グアーガム、ウェランガム、β－グルカン、セルロース、チクルガム、キノガム、ダンマルガム、グルコマンナン、アカシアガム、カシアガム、マスチックガム、トウヒガム、サイリウム種子殻、ジェランガム、キサンタンガム、ジウタンガム、コロハガム、ガッティガム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラヤガム、コンニャクガム、ペクチン、およびこれらの組み合わせなどの多糖を含んでいてもよい。追加的にまたは代替的に、増粘剤は、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシビニルポリマー、ポリ（ビニルピロリジノン）およびコポリマー、ポリオキシプロピレン、ならびにこれらの組み合わせなどの他の粘度調整成分を含んでいてもよい。

【0025】

潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて０．１重量％～５．０重量％の増粘剤を含み得る。例えば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて０．１重量％以上、０．２重量％以上、０．４重量％以上、または０．６重量％以上、または０．８重量％以上、または１．０重量％以上、または１．５重量％以上、または２．０重量％以上、または２．５重量％以上、または３．０重量％以上、または３．５重量％以上、または４．０重量％以上、または４．５重量％以上、一方で同時に、５．０重量％以下、または４．５重量％以下、または４．０重量％以下、または３．５重量％以下、または３．０重量％以下、または２．５重量％以下、または２．０重量％以下、または１．５重量％以下、または１．０重量％以下、または０．５重量％以下の増粘剤を含み得る。

【0026】

グラファイト
潤滑剤組成物は、グラファイトを含む。グラファイトは、球状、板状、楕円状、および／または不規則な形状を有していてよい。グラファイトの粒子は、０．５マイクロメートル（「μｍ」）～１０μｍのＤ９０を有し得る。本明細書で使用される場合、用語「Ｄ９０」は、グラファイト粒子の９０％が指定の値よりも小さな直径または最長長さを有し、粒子の１０％が指定の値よりも大きな直径または最長長さを有することを意味する。グラファイトは、０．５μｍ以上、または１．０μｍ以上、または１．５μｍ以上、または２．０μｍ以上、または２．５μｍ以上、または３．０μｍ以上、または３．５μｍ以上、または４．０μｍ以上、または４．５μｍ以上、または５．０μｍ以上、または５．５μｍ以上、または６．０μｍ以上、または６．５μｍ以上、または７．０μｍ以上、または７．５μｍ以上、または８．０μｍ以上、または８．５μｍ以上、または９．０μｍ以上、または９．５μｍ以上、一方で同時に、１０μｍ以下、または９．５μｍ以下、または９．０μｍ以下、または８．５μｍ以下、または８．０μｍ以下、または７．５μｍ以下、または７．０μｍ以下、または６．５μｍ以下、または６．０μｍ以下、または５．５μｍ以下、または５．０μｍ以下、または４．５μｍ以下、または４．０μｍ以下、または３．５μｍ以下、または３．０μｍ以下、または２．５μｍ以下、または２．０μｍ以下、または１．５μｍ以下、または１．０μｍ以下のＤ９０粒径を有し得る。グラファイトのＤ９０粒径は、Ｍａｌｖｅｒｎ Ｍａｓｔｅｒｓｉｚｅｒ（商標）レーザー回折粒径分析器を使用して求められる。

【0027】

潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて１０重量％～６０重量％のグラファイトを含む。例えば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて１０重量％以上、または１５重量％以上、または２０重量％以上、または２５重量％以上、または３０重量％以上、または３５重量％以上、または４０重量％以上、または４５重量％以上、または５０重量％以上、または５５重量％以上、一方で同時に、６０重量％以下、または５５重量％以下、または５０重量％以下、または４５重量％以下、または４０重量％以下、または３５重量％以下、または３０重量％以下、または２５重量％以下、または２０重量％以下、または１５重量％以下のグラファイトを含む。

【0028】

分散剤
潤滑剤組成物は、分散剤を含む。分散剤は、アクリル酸から誘導されるモノマー構造単位および２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位を含むポリカルボキシレート分散剤である。分散剤は、ポリマーである。本明細書で使用される場合、「ポリマー」は、一緒に結合された同じまたは異なる型の複数のモノマーを含む高分子化合物を意味し、ホモポリマーおよびインターポリマーを含む。本明細書で使用される場合、「インターポリマー」は、一緒に結合された少なくとも２つの異なるモノマー型を含むポリマーを意味する。インターポリマーには、コポリマー（通常、２つの異なるモノマー型から調製されるポリマーを指すために用いられる）、および３つ以上の異なるモノマー型から調製されるポリマー（例えば、ターポリマー（３つの異なるモノマー型）およびクォーターポリマー（４つの異なるモノマー型））が含まれる。分散剤は、アクリル酸、２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸、Ｎ－ｔｅｒｔ－ブチルアクリルアミド、他のモノマー前駆体、およびこれらの組み合わせから誘導されるモノマー構造単位を含んでいてもよい。分散剤は、スルホン酸イオン基または部分を含まなくてもよい。

【0029】

分散剤は、分散剤の総重量に基づいて４０重量％～８０重量％のアクリル酸から誘導されるモノマー構造単位を含んでいてもよい。例えば、分散剤は、分散剤の総重量に基づいて４０重量％以上、または４５重量％以上、または５０重量％以上、または５５重量％以上、または６０重量％以上、または６５重量％以上、または７０重量％以上、または７５重量％以上、一方で同時に、８０重量％以下、または７５重量％以下、または７０重量％以下、または６５重量％以下、または６０重量％以下、または５５重量％以下、または５０重量％以下、または４５重量％以下のアクリル酸から誘導されるモノマー構造単位を含んでいてもよい。

【0030】

分散剤は、分散剤の総重量に基づいて１０重量％～４０重量％の２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位を含んでいてもよい。例えば、分散剤は、分散剤の総重量に基づいて１０重量％以上、または１５重量％以上、または２０重量％以上、または２５重量％以上、または３０重量％以上、または３５重量％以上、一方で同時に、４０重量％以下、または３５重量％以下、または３０重量％以下、または２５重量％以下、または２０重量％以下、または１５重量％以下の２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位を含んでいてもよい。

【0031】

分散剤は、分散剤の総重量に基づいて１重量％～３０重量％のＮ－ｔｅｒｔ－ブチルアクリルアミドから誘導されるモノマー構造単位を含んでいてもよい。例えば、分散剤は、分散剤の総重量に基づいて１重量％以上、または５重量％以上、または１０重量％以上、または１５重量％以上、または２０重量％以上、または２５重量％以上、一方で同時に、３０重量％以下、または２５重量％以下、または２０重量％以下、または１５重量％以下、または１０重量％以下、または５重量％以下のＮ－ｔｅｒｔ－ブチルアクリルアミドから誘導されるモノマー構造単位を含んでいてもよい。

【0032】

分散剤は、分散剤の総重量に基づいて４０重量％～８０重量％のアクリル酸から誘導されるモノマー構造単位、１０重量％～４０重量％の２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位、および０重量％～３０重量％のＮ－ｔｅｒｔ－ブチルアクリルアミドから誘導されるモノマー構造単位を含んでいてもよい。分散剤は、各モノマー構造単位について上記で特定された重量％範囲内の任意の値を含んでいてもよい。分散剤は、ポリ（フタルアルデヒド）、キシレン、他のエンドキャッピング剤、およびこれらの組み合わせでエンドキャップされていてもよい。

【0033】

分散剤は、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って測定した場合、３，０００グラム／モル（「ｇ／ｍｏｌ」）～６，０００ｇ／ｍｏｌの重量平均分子量を有してもよい。例えば、分散剤の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って測定した場合、３，０００ｇ／ｍｏｌ以上、または３，５００ｇ／ｍｏｌ以上、または４，０００ｇ／ｍｏｌ以上、または４，５００ｇ／ｍｏｌ以上、または５，０００ｇ／ｍｏｌ以上、または５，５００ｇ／ｍｏｌ以上、一方で同時に、６，０００ｇ／ｍｏｌ以下、または５，５００ｇ／ｍｏｌ以下、または５，０００ｇ／ｍｏｌ以下、または４，５００ｇ／ｍｏｌ以下、または４，０００ｇ／ｍｏｌ以下、または３，５００ｇ／ｍｏｌ以下であってもよい。

【0034】

分散剤は、水などの懸濁剤中に懸濁させてもよい。このような場合、懸濁剤中の分散剤の量は、固形分と呼ばれ、分散剤と懸濁剤とを合わせた総重量に基づく分散剤の重量パーセントとして表される。固体含有量は、分散剤と懸濁剤とを合わせた総重量に基づいて２０重量％～６０重量％であってもよい。例えば、固形分は、合わせた分散剤および懸濁剤の総重量に基づいて２０重量％以上、または２５重量％以上、または３０重量％以上、または３５重量％以上、または４０重量％以上、または４５重量％以上、または５０重量％以上、または５５重量％以上、一方で同時に、６０重量％以下、または５５重量％以下、または５０重量％以下、または４５重量％以下、または４０重量％以下、または３５重量％以下、または３０重量％以下、または２５重量％以下であってもよい。

【0035】

潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて０．１重量％～５．０重量％の分散剤を含み得る。例えば、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて０．１重量％以上、または０．２重量％以上、または０．３重量％以上、または０．４重量％以上、または０．５重量％以上、または０．６重量％以上、または０．７重量％以上、または０．８重量％以上、または０．９重量％以上、または１．０重量％以上、または１．５重量％以上、または２．０重量％以上、または２．５重量％以上、または３．０重量％以上、または３．５重量％以上、または４．０重量％以上、または４．５重量％以上、一方で同時に、５．０重量％以下、または４．５重量％以下、または４．０重量％以下、または３．５重量％以下、または３．０重量％以下、または２．５重量％以下、または２．０重量％以下、または１．５重量％以下、または１．０重量％以下、または０．９重量％以下、または０．８重量％以下、または０．７重量％以下、または０．６重量％以下、または０．５重量％以下、または０．４重量％以下、または０．３重量％以下、または０．２重量％以下の分散剤を含む。

【実施例】

【0036】

材料
以下の材料を、実施例において使用した。

【0037】

グラファイトは、５．０μｍのＤ９０を有するグラファイト粒子の粉末であり、Ｍｏｌｙｇｒａｐｈ Ｌｕｂｒｉｃａｎｔｓ（Ｍｕｍｂａｉ，Ｉｎｄｉａ）から市販されている。

【0038】

増粘剤は、Ｌｏｂａ Ｃｈｅｍｉｅ Ｍｕｍｂａｉ（Ｉｎｄｉａ）から市販されているキサンタンガムである。

【0039】

分散剤１は、商品名ＡＮＴＩ－ＴＥＲＲＡ（登録商標）で販売されているポリカルボン酸のアルキルアンモニウム塩の溶液であり、ＢＹＫ－Ｃｈｅｍｉｅ ＧｍｂＨ（Ｗｅｓｅｌ，Ｇｅｒｍａｎｙ）から市販されている。

【0040】

分散剤２は、構造（Ｉ）、ＣＡＳ番号９０８４－０６－４を有する９７重量％活性粉末であり、Ｔｈｅ Ｄｏｗ Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ｃｏｍｐａｎｙ（Ｍｉｄｌａｎｄ Ｍｉｃｈｉｇａｎ）から入手可能である。

【0041】

【化1】

【0042】

分散剤３は、ＣＡＳ番号１５１－２１－３を有する純粋なドデシル硫酸ナトリウムであり、Ｌｏｂａ Ｃｈｅｍｉｅ Ｍｕｍｂａｉ（Ｉｎｄｉａ）から入手可能である。

【0043】

分散剤４は、ポリ（フタルアルデヒド）でエンドキャップされたアクリル酸から誘導されるモノマー構造単位のホモポリマーであり、２０００ｇ／ｍｏｌの重量平均分子量を有し、４７～４９重量％の固形分を有し、Ｔｈｅ Ｄｏｗ Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ｃｏｍｐａｎｙ（Ｍｉｄｌａｎｄ Ｍｉｃｈｉｇａｎ）から入手可能である。

【0044】

分散剤５は、約７５重量％～８０重量％のアクリル酸から誘導されるモノマー構造単位と、２０重量％～２５重量％の２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位とのコポリマーである。分散剤５は、４５００ｇ／ｍｏｌの重量平均分子量を有し、ポリ（フタルアルデヒド）でエンドキャップされ、分散剤の総重量に基づいて４０重量％～４５重量％の固形分を有する。分散剤５は、Ｔｈｅ Ｄｏｗ Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ｃｏｍｐａｎｙ（Ｍｉｄｌａｎｄ Ｍｉｃｈｉｇａｎ）から入手可能である。

【0045】

分散剤６は、約６０重量％～７０重量％のアクリル酸から誘導されるモノマー構造単位と、２５重量％～３０重量％の２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位と、５重量％～１０重量％のＮ－ｔｅｒｔ－ブチルアクリルアミドから誘導されるモノマー構造単位とのターポリマーである。分散剤６は、４５００ｇ／ｍｏｌの重量平均分子量を有し、ポリ（フタルアルデヒド）でエンドキャップされ、分散剤の総重量に基づいて４０重量％～４５重量％の固形分を有する。分散剤６は、Ｔｈｅ Ｄｏｗ Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ｃｏｍｐａｎｙ（Ｍｉｄｌａｎｄ Ｍｉｃｈｉｇａｎ）から入手可能である。

【0046】

分散剤７は、約５５重量％～６５重量％のアクリル酸から誘導されるモノマー構造単位と、１５重量％～２５重量％の２－アクリルアミド－２－メチルプロパンスルホン酸から誘導されるモノマー構造単位と、１５重量％～２５重量％のＮ－ｔｅｒｔ－ブチルアクリルアミドから誘導されるモノマー構造単位とのターポリマーである。分散剤７は、５０００ｇ／ｍｏｌの重量平均分子量、および分散剤の総重量に基づいて４０重量％～５０重量％の固形分を有する。分散剤７は、Ｔｈｅ Ｄｏｗ Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ｃｏｍｐａｎｙ（Ｍｉｄｌａｎｄ Ｍｉｃｈｉｇａｎ）から入手可能である。

【0047】

試料の調製
最初に増粘剤と、分散剤と、水の一部とを合わせ、次いで、撹拌機を使用して溶液を１分間混合することによって実施例を調製した。次に、グラファイト粉末を溶液にゆっくりと添加し、ペーストが形成されるまで混合した。次に、グラファイトペーストを残りの水で希釈し、オーバーヘッド撹拌機を使用して混合して、表１に列挙する組成を有する分散液を形成した。次いで、希釈したペーストを１００ミリリットル（「ｍＬ」）のメスフラスコに添加し、１００ｍＬのラインまで満たした。

【0048】

試験方法
沈降試験：沈降試験は、所定の期間後に分散液の何パーセントが分散したままであるかを判定する。１００ｍＬのメスフラスコを１００ｍＬの印まで実施例で満たし、フラスコを指定の時間静置する。透明または濁った水相と分散しているグラファイト相との間の相分離界面を目視観察することによって、分散したままである実施例の量を測定する。相分離は、特定の期間後にグラファイト分散相と水相との境界が何ｍＬのところにあるかを調べ、最初の１００ｍＬで除し、１００を乗じることによって決定される。例えば、グラファイト分散相と水相との界面が９５ｍＬである場合、分散液の９５％が相分離に耐えた。実施例は、２４時間（すなわち、１日）後に実施例の８０％がグラファイト分散相中に残っている場合、沈降試験に合格したとみなす。

【0049】

結果
以下の表1は、各比較例（「comparative example、ＣＥ」）および各本発明の実施例（「inventive example、ＩＥ」）の組成を成分の重量パーセントで提供し、表２は、各ＩＥおよびＣＥの性能データを提供する。表２のデータは、グラファイト分散相中に残っている実施例のパーセントを提供する。項目「ｎｍ」は、特定の時間間隔が測定されなかったことを示す。

【0050】

【表1】

【0051】

【表2】

【0052】

表１および表２から分かるように、全て２４時間後に８０％超のグラファイト分散液を維持しているＩＥ１～ＩＥ６によって示されるように、ＩＥ１～ＩＥ６は、沈降試験に合格する潤滑剤組成物の生成に関してＣＥ１～ＣＥ１０よりも大幅に優れている。ＣＥ１およびＣＥ２は、分散剤が含まれない場合の水性グラファイト分散液から予測することができる安定性のベースラインを示す。ＣＥ４、ＣＥ７、およびＣＥ８は全て、ＣＥ１およびＣＥ２に比べてＣＥ４、ＣＥ７、およびＣＥ８の保持されたグラファイト分散相のパーセンテージがより低いことによって証明されるように、特定の分散剤を含めると分散安定性に影響を及ぼさなくできること、または分散剤を有さない分散液に比べて水中のグラファイトの安定性を実際に低下させる可能性があることを実証している。ＣＥ３、ＣＥ５、ＣＥ６、ＣＥ９、およびＣＥ１０は全て、対照試料ＣＥ１およびＣＥ２よりも良好な分散安定性を呈するが、沈降試験によって所望される安定性を達成することができない。

【0053】

ＣＥ１～ＣＥ１０とは異なり、ＩＥ１～ＩＥ６の各々は、２４日間の試験後に８０％以上のグラファイト分散相を維持することができるので、沈降試験に合格する。このような結果は、試験された分散剤の種々のタイプにもかかわらず、フェニルまたは芳香族環構造を含まないポリマー分散剤が、先行技術による反対の示唆にもかかわらず最良に機能するので、驚くべきことである。更により驚くべきことは、多数の芳香族構造およびイオン性スルホネート部分を含む分散剤２（すなわちＣＥ５およびＣＥ６）にもかかわらず、ＩＥ１～ＩＥ６の分散剤は、芳香族またはイオン性スルホネート部分を含まないＣＥ２よりも良好な性能を呈することである。

【国際調査報告】