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特表2024-543194直鎖トリデカノールを含むアルコール混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】直鎖トリデカノールを含むアルコール混合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 31/125 20060101AFI20241112BHJP
   C07C 29/141 20060101ALI20241112BHJP
   C07C 29/80 20060101ALI20241112BHJP
   C07C 45/50 20060101ALN20241112BHJP
   C07C 47/02 20060101ALN20241112BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20241112BHJP
【FI】
C07C31/125
C07C29/141
C07C29/80
C07C45/50
C07C47/02
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532252
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 US2022051497
(87)【国際公開番号】W WO2023107322
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/286,129
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エー.ブラマー
(72)【発明者】
【氏名】ワンリン ユー
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB68
4H006AC21
4H006AC41
4H006AD11
4H006BA21
4H006BA24
4H006BA48
4H006BA61
4H006BB11
4H006BE20
4H006BE40
4H006FE11
4H039CA60
4H039CA62
4H039CB20
4H039CF10
4H039CL45
(57)【要約】
アルコール混合物は、アルコール混合物の総重量に基づいて90重量%超の直鎖トリデカノールを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール混合物であって、
前記アルコール混合物の総重量に基づいて90重量%超の直鎖トリデカノールを含む、アルコール混合物。
【請求項2】
前記アルコール混合物の総重量に基づいて、前記アルコール混合物の92重量%以上が直鎖トリデカノールである、請求項1に記載のアルコール混合物。
【請求項3】
前記アルコール混合物の総重量に基づいて、前記アルコール混合物の94重量%以上が直鎖トリデカノールである、請求項2に記載のアルコール混合物。
【請求項4】
前記アルコール混合物の総重量に基づいて、前記アルコール混合物の7重量%以下が分岐トリデカノールである、請求項1に記載のアルコール混合物。
【請求項5】
配合物であって、
0.1重量%~99重量%の、請求項1に記載のアルコール混合物を含む、配合物。
【請求項6】
アルコール混合物の製造方法であって、
12直鎖オレフィンを一酸化炭素、水素、及び触媒組成物と接触させてアルデヒド混合物を生成する工程と、
前記アルデヒド混合物を水素化して、前記アルコール混合物の総重量に基づいて90重量%超の直鎖トリデカノールを含むアルコール混合物を生成する工程と、を含む、方法。
【請求項7】
前記アルコール混合物を蒸留する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
界面活性物質の製造方法であって、
請求項6に記載のアルコール混合物のアルコキシル化を行う工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アルコール混合物に関し、より具体的には、直鎖トリデカノールを含むアルコール混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
8~20の炭素原子を有するアルコールは、界面活性剤を製造するための前駆体として有用であることが知られている。アルコールは、親水性部分を含むように官能化されて、界面活性剤を形成する。親水性部分は、アルコキシル化、グリコシド化、硫酸化、リン酸化などのプロセスによってアルコールに付加されてもよい。得られる界面活性物質の特性及び適用機能は、アルコール前駆体の鎖長に大きく依存する。C13アルコール又は約C13を中心とするアルコール混合物は、例えば洗濯及び食器洗浄を含む幅広い用途で使用することができる界面活性剤を製造するのに特に有用である。アルコールの炭素原子は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。アルコールの炭素原子の分岐構造は、界面活性剤の物理的特性及び適用特性、並びに界面活性剤の生分解性を決定する際に重要な役割を果たす。例えば、疎水性物質の分岐(hydrophobe branching)は、分岐が増加するにつれて、泡立ち及び食器洗浄用途における性能に劇的に影響を及ぼす。疎水性物質の分岐はまた、界面活性剤の湿潤及びゲル化挙動に有意に影響を及ぼす。
【0003】
産業において最も一般的に使用されるC13アルコール生成物は、プロピレン又はブテンのオリゴマー化と、それに続くヒドロホルミル化によって製造される。これらの合成経路から製造されるC13アルコールは、高度に分岐している。分岐は、界面活性剤の迅速な湿潤性、溶解性、及びより低い泡持続性に有益であり得るが、分岐はまた、生分解性及び洗浄効率に悪影響を及ぼし得る。より低い分岐度を有するC13アルコールを製造するために、C又はCオレフィンのオリゴマー化における分岐を減少させるためのプロセスにおける努力がなされてきた。より少ない分岐度を有するC13アルコールを製造するための別のアプローチは、C12直鎖アルファ-オレフィンをアルデヒドにヒドロホルミル化し、続いて、オキソ法としても知られる水素化を行うことである。
【0004】
界面活性剤に使用するための高度に直線性のアルコールは、以前に試みられている。例えば、高級アルケンのロジウム触媒ヒドロホルミル化は、80%~90%のアルコール直線性を生成することができたが、90%を超える直線性はいまだに達成不可能である。Rhodium catalyzed hydroformylation(Vol.22)のセクション8.4.3を参照されたい。それにもかかわらず、トリデカノールについては90%を超える直線性は回避されている。例えば、米国特許第9,828,565号(「’565特許」)は、トリデカノールの混合物を含む組成物であって、混合物の少なくとも約60重量%が直鎖トリデカノールであり、混合物の少なくとも約10重量%が分岐トリデカノールである組成物を提供する。’565特許は、「分岐含量が高いほど、流動点が低くなり、加工が容易かつ経済的になる」と説明しており、「10~40%の分岐を有するアルコールが、多くの界面活性剤誘導体について低温溶解性と汚れ除去との間の最適なトレードオフを提供することを見出した」と説明している。’565特許はまた、分岐及び直鎖トリデカノールが結晶化を用いて分離されることを説明している。
【0005】
上記を考慮すると、90重量%超の直鎖トリデカノールを含み、界面活性剤の形成に有用であったアルコール混合物を有することは驚くべきことである。
【発明の概要】
【0006】
本出願の発明者らは、90重量%超の直鎖トリデカノールを含み、界面活性剤の形成に有用であるアルコール混合物を発見した。このような界面活性剤は、開始剤として使用されるアルコールが直線性であることから、増強された生分解性を有すると考えられる。当該界面活性剤は、様々な用途で使用されるのに十分な洗浄性能を提供すると考えられる。また驚くべきことに、オキソ法は、分岐トリデカノールを除去するための分離プロセスを必要とせずに、90重量%を超える直鎖トリデカノールを有するアルコール混合物を生成することができることが発見されている。
【0007】
本開示は、工業原料の形成に特に有用である。
【0008】
本開示の第1の特徴によれば、アルコール混合物は、アルコール混合物の総重量に基づいて90重量%超の直鎖トリデカノールを含む。
【0009】
本開示の第2の特徴によれば、アルコール混合物の総重量に基づいて、アルコール混合物の92重量%以上が直鎖トリデカノールである。
【0010】
本開示の第3の特徴によれば、アルコール混合物の総重量に基づいて、アルコール混合物の94重量%以上が直鎖トリデカノールである。
【0011】
本開示の第4の特徴によれば、アルコール混合物の総重量に基づいて、アルコール混合物の7重量%以下が分岐トリデカノールである。
【0012】
本開示の第5の特徴によれば、配合物は、0.1重量%~99重量%の、請求項1に記載のアルコール混合物を含む。
【0013】
本開示の第6の特徴によれば、アルコール混合物の製造方法は、C12直鎖オレフィンを一酸化炭素、水素、及び触媒組成物と接触させてアルデヒド混合物を生成する工程と、アルデヒド混合物を水素化して、アルコール混合物の総重量に基づいて90重量%超の直鎖トリデカノールを含むアルコール混合物を生成する工程と、を含む。
【0014】
本開示の第7の特徴によれば、アルコール混合物の製造方法は、アルコール混合物を蒸留する工程をさらに含む。
【0015】
本開示の第8の特徴によれば、界面活性物質の製造方法は、アルコール混合物のアルコキシル化を行う工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、2つ以上の項目の列挙で使用される場合、列挙された項目のうちのいずれか1つをそれ自体で用いることができるか、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせを用いることができることを意味する。例えば、組成物が成分A、B、及び/又はCを含有するものとして説明されている場合、組成物は、Aを単独で、Bを単独で、Cを単独で、A及びBを組み合わせて、A及びCを組み合わせて、B及びCを組み合わせて、又はA、B、及びCを組み合わせて、含有することができる。
【0017】
別途記載のない限り、全ての範囲は、終点を含む。
【0018】
本明細書で使用される場合、重量パーセント(「重量%」)という用語は、別途明記しない限り、成分が組成物の総重量に占める重量のパーセンテージを示す。
【0019】
本明細書で使用される場合、Chemical Abstract Services登録番号(「CAS#」)は、本文書の優先日の時点でChemical Abstract Serviceによって化学化合物に最後に割り当てられた固有の数字識別子を指す。
【0020】
アルコール混合物
本開示は、アルコール混合物に関する。アルコール混合物は、直鎖トリデカノールを含む。直鎖トリデカノールは構造(I)に対応する。
【化1】
アルコール混合物は、アルコール混合物の総重量に基づいて90重量%超の直鎖トリデカノールを含む。例えば、アルコール混合物は、アルコール混合物の総重量の総重量に基づいて、90.1重量%以上、又は90.5重量%以上、又は91.0重量%以上、又は91.5重量%以上、又は92.0重量%以上、又は92.5重量%以上、又は93.0重量%以上、又は93.5重量%以上、又は94.0重量%以上、又は94.5重量%以上、又は95.0重量%以上、又は95.5重量%以上、それと同時に、96.0重量%以下、又は95.5重量%以下、又は95.0重量%以下、又は94.5重量%以下、又は94.0重量%以下、又は93.5重量%以下、又は93.0重量%以下、又は92.5重量%以下、又は92.0重量%以下、又は91.5重量%以下、又は91.0重量%以下、又は90.5重量%以下の直鎖トリデカノールを含み得る。
【0021】
アルコール混合物は、分岐トリデカノールを含むことができる。分岐トリデカノールは、構造(II):
【化2】
[式中、R及びRは、2つのアルキル鎖に合計11個の炭素原子を含有する直鎖アルキル鎖である]を有してもよい。構造(II)の分岐位置はCの位置に示されているが、分岐トリデカノールには他の分岐点が存在してもよいことが理解されるであろう。アルコール混合物は、7重量%以下の分岐トリデカノールを含んでもよい。例えば、アルコール混合物は、アルコール混合物の総重量の総重量に基づいて、0.0重量%以上、又は0.1重量%以上、又は0.5重量%以上、又は1.0重量%以上、又は1.5重量%以上、又は2.0重量%以上、又は2.5重量%以上、又は3.0重量%以上、又は3.5重量%以上、又は4.0重量%以上、又は4.5重量%以上、又は5.5重量%以上、又は6.0重量%以上、又は6.5重量%以上、それと同時に、7.0重量%以下、又は6.5重量%以下、又は6.0重量%以下、又は5.5重量%以下、又は5.0重量%以下、又は4.5重量%以下、又は4.0重量%以下、又は3.5重量%以下、又は3.0重量%以下、又は2.5重量%以下、又は2.0重量%以下、又は1.5重量%以下、又は1.0重量%以下、又は0.5重量%以下の分岐トリデカノールを含み得る。
【0022】
配合物
アルコール混合物は、1つ以上の配合物の形成において利用され得る。例えば、配合物は、可塑剤、潤滑剤、洗浄組成物、ホームケア組成物、化粧品組成物、工業用組成物、医薬品、パーソナルケア製品、又は他の材料であってもよい。配合物は、配合物の総重量に基づいて、0.1重量%~99重量%のアルコール混合物を含む。例えば、配合物は、配合物の総重量に基づいて、0.1重量%以上、又は1重量%以上、又は5重量%以上、又は10重量%以上、又は20重量%以上、又は30重量%以上、又は40重量%以上、又は50重量%以上、又は60重量%以上、又は70重量%以上、又は80重量%以上、又は90重量%以上、それと同時に、99重量%以下、又は90重量%以下、又は80重量%以下、又は70重量%以下、又は60重量%以下、又は50重量%以下、又は40重量%以下、又は30重量%以下、又は20重量%以下、又は10重量%以下、又は1重量%以下のアルコール混合物を含み得る。
【0023】
アルコール混合物の製造方法
本発明はまた、アルコール混合物の製造方法に関する。アルコール混合物の製造方法は、工程(1)C12直鎖オレフィンを一酸化炭素、水素、及び触媒組成物と接触させてアルデヒド混合物を生成することと、それに続く工程(2)アルデヒド混合物を水素化して、アルコール混合物の総重量に基づいて90重量%超の直鎖トリデカノールを含むアルコール混合物を生成することと、を含む。オレフィン、水素、及び一酸化炭素を接触させてアルデヒドを製造することは、一般にヒドロホルミル化として知られている。反応条件及びプロセス特性は、当該技術分野において周知である。例えば、世界知的所有権機関(World Intellectual Property Organization)公開番号2019231613A1は、本発明のヒドロホルミル化を実施するための適切な反応条件及びプロセス条件を提供している。C12直鎖オレフィンは、末端不飽和又は内部不飽和であり得る。
【0024】
本方法で使用する水素及び一酸化炭素は、石油分解及び精製操作を含む任意の好適な供給源から得てよい。本方法で使用される水素及び一酸化炭素は、合成ガスの形態で予め混合されてもよい。合成ガス(syngas)(合成ガス(synthesis gas)に由来)は、様々な量のCO及びHを含有するガス混合物に与えられる名称である。生成方法は、周知である。水素及びCOは、典型的には、シンガスの主成分であるが、シンガスは、CO並びにN及びArなどの不活性ガスを含有し得る。HとCOとのモル比は、大きく変動するが、概して、1:100~100:1、好ましくは1:10~10:1の範囲である。合成ガスは市販されており、多くの場合燃料源として又は他の化学物質を生成するための中間体として使用される。化学生成のための最も好ましいH:COモル比は、3:1~1:3であり、通常、ほとんどのヒドロホルミル化用途のためには約1:2~2:1が目標とされる。
【0025】
ヒドロホルミル化プロセスにおいて溶媒を用いてもよい。ヒドロホルミル化プロセスを過度に妨害しない任意の好適な溶媒が使用され得る。実例として、ロジウム触媒によるヒドロホルミル化プロセスに好適な溶媒としては、例えば、米国特許第3,527,809号、同第4,148,830号に開示されている溶媒が挙げられる。
【0026】
本方法で使用される触媒組成物は、(a)遷移金属、(b)モノホスフィン、及び(c)構造(III)を有するテトラホスフィンを含み、
【化3】
【0027】
構造(III)のPはリン原子を表し、構造(III)のPhは、各PPhがジフェニルホスフィノ部分を含むように2つのフェニル部分を表す。
【0028】
遷移金属は、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、及びそれらの混合物から選択される第8族、第9族、及び第10族金属を含むことができる。ロジウムの例では、触媒組成物の遷移金属は、ロジウムヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)又はロジウムジカルボニルアセチルアセトネートなどの安定な結晶性固体の形態で提供されてもよい。
【0029】
モノホスフィンは、トリフェニルホスフィン、トリス(o-トリル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリ(p-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(m-クロロフェニル)-ホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、及びトリオクチルホスフィンのうちの1種以上である。いくつかの実施形態では、モノホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。いくつかの実施形態では、触媒組成物は、異なるモノホスフィン種の混合物を含む。
【0030】
12直鎖オレフィンを一酸化炭素、水素、及び触媒組成物と接触させる工程がアルデヒド混合物を生成したら、次に、アルデヒド混合物を水素化して、アルコール混合物の総重量に基づいて90重量%超の直鎖トリデカノールを含むアルコール混合物を生成する工程を行う。アルデヒド混合物の水素化から形成される混合物は、残留オレフィン及びアルデヒドを含有し、生成されるアルコール(すなわち、アルコール混合物)の90重量%超が直鎖トリデカノールであることが理解されるであろう。「水素化」とは、分子水素(H)とアルデヒドとの間で起こる化学反応であり、その結果、アルデヒドがアルコールに飽和される。水素化は、典型的には、ニッケル、パラジウム、又は白金などの触媒の存在下で行われる。
【0031】
アルコール混合物を形成するためのアルデヒド混合物の水素化の工程が行われた後、アルコール混合物は、存在する直鎖トリデカノールの重量%をさらに増加させるために蒸留されてもよい。蒸留は、直鎖トリデカノールを、それが混合される1つ以上の他の材料(例えば、未反応オレフィン、溶媒、アルデヒド等)から分離するために使用される。蒸留は、蒸留塔を使用して実施され、100℃~500℃の温度で実施され得る。
【0032】
界面活性物質の製造方法
本開示はまた、界面活性物質の形成に関する。界面活性物質はアルコール混合物から形成され、したがってアルコール混合物の誘導体である。界面活性物質の製造方法は、アルコール混合物のアルコキシル化を行う工程を含む。アルコールのアルコキシル化のための触媒及び反応条件は、「Alkylene Oxides and Their Polymers」 edited by F.E.Bailey,Jr.and Joseph V.Koleske,Marcel Dekker,Inc.,New York,1991に記載されているように当該技術分野において周知である。アルコール混合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、及びそれらの組み合わせでアルコキシル化されていてもよい。アルコール混合物のアルコキシル化は、界面活性物質を生成する。本発明のアルコール混合物から誘導することができる界面活性物質には、「Nonionic Surfactants-Alkyl Polyglucosides」,edited by Dieter Balzer and Harald,Marcel Dekker,Inc.,New York,2000,pp19-75に記載されているような合成手法を使用するアルキルポリグルコシド、並びに「Anionic Surfactants-Organic Chemistry」 edited by Helmut W.Stache,Inc.,New York,1996,pp223-312に記載されているようなアルコール及びアルコールエーテルサルフェート(アニオン性界面活性剤)も挙げられる。
【実施例
【0033】
材料
以下の材料を、実施例において使用した。
【0034】
オレフィンは、Shell Chemical LP(Houston,Texas)からNEODENE(商標)-12として市販されている炭素12個のα-オレフィンである。
【0035】
水素化触媒は、ニッケル系水素化触媒であり、BASF(Ludwigshafen,Germany)からNi 3228として市販されている。
【0036】
ロジウムはロジウムジカルボニルアセチルアセトネートであり、MilliporeSigma(Burlington,MA)から入手可能である。
【0037】
TPPはトリフェニルホスフィンであり、MilliporeSigma(Burlington,MA)から入手可能である。
【0038】
溶媒はトルエンであり、MilliporeSigma(Burlington,MA)から入手可能である。
【0039】
実施例で使用されるテトラホスフィンは、以下に記載されるように調製される。
【化4】
l,1’-ビフェニル-2-2’,6,6’-テトラカルボン酸の合成。オーバーヘッド撹拌機、底部ドレンバルブ、及び水冷凝縮器を備えた5Lのジャケット付き反応器に、1Lの塩化メチレン及び50g(0.247mol)のピレンを充填する。混合物をピレンが溶解するまで撹拌し、その後、0.25Lのアセトニトリル、1.5Lの脱イオン水、及び2.0gの塩化ルテニウム(III)を添加する。得られた二相性混合物を激しく撹拌し、ジャケットを通して冷却液を循環させることにより18℃まで冷却する。次いで、反応器温度を23℃~27℃に維持しながら、過ヨウ素酸ナトリウムを2.5時間にわたって少量ずつ添加する(合計500g;2.34mol)。最初は褐色である反応混合物は、すぐに暗褐色になり、最終的には褐色がかった緑色になる。一晩(18時間)撹拌した後、撹拌を停止し、層を分離させる。下層をブフナー漏斗に排出して、粗製の緑色/褐色の固体生成物を収集し、塩化メチレン(2X500mL)で洗浄し、空気を流動させることによってフィルター上で乾燥させる。次いで、固体を反応器に戻し、1.5Lのアセトンで1時間還流する。23℃に冷却した後、黄色の溶液をブフナー漏斗に排出し、濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、黄色の固体を残す。粗四酸生成物を70℃の真空オーブンで一晩乾燥させ、さらに精製することなく使用する。
【化5】
l,1’-ビフェニル-2,2’,6,6’-テトラメタノールの合成。前の工程で使用した5Lの反応器を乾燥させ、窒素で一晩パージする。粗製の1,1’-ビフェニル-2-2’,6’-テトラカルボン酸(50.0g、0.152モル)を、1.5LのTHFと共に窒素下で充填する。得られた溶液を撹拌し、冷却した流体を反応器のジャケットを通して循環させることにより0℃に冷却する。次に、水素化アルミニウムリチウムのTHF溶液(1M;666mL;0.665mol)を蠕動ポンプを介して2時間にわたって添加する。この間、混合物を激しく撹拌し、反応器温度を0℃~2℃に維持する。安全性の目的のために、ゆっくりとした窒素パージを反応器に適用し、通気流が凝縮器を通過して、発生した水素を反応器から一掃する。水素化アルミニウムリチウムの添加が完了した後、反応器をさらに15分間攪拌冷却し、次いで、ゆっくりと室温まで温める。室温で30分間撹拌した後、反応器の内容物を65℃に加熱し、緩やかな窒素パージ下で一晩撹拌する。翌朝、反応器を0℃に冷却し、蠕動ポンプを介して徐々に添加した25mLの水、続いて50mLの10%NaOH及び75mLの水で、0~7℃で1.5時間にわたってクエンチする。クエンチ手順は水素を発生させるため、窒素掃気を使用して実施される。クエンチされた溶液をゆっくりと室温まで温め、次いで、反応器からブフナー漏斗に排出する。このようにして収集された固体を、熱THF(3X300mL)で洗浄する。揮発性物質を、組み合わされた濾液からロータリーエバポレーターで除去すると、35gの淡黄色の固体が残される。固体を熱エタノールに溶解し、濾過し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。
【0040】
真空オーブン内で一晩乾燥させることによって、32.3gの淡黄色の生成物(77.1%の収率、約97%の純度)が残った。
【数1】
NMR(400MHz,DMSO)。d 7.46(d,J-6.8Hz,4H),7.39(dd,J=8.6,6.4Hz,2H),4.99(t,7=5.3Hz,4H),3.94(d,7=5.3Hz,8H)ppm。13C NMR(400MHz,DMSO)d 139.3,133.1,127.3,125.4,60.4ppm。
【化6】
2,2’、6,6’-テトラキス(クロロメチル)-1,1’-ビフェニルの合成。5Lの反応器を乾燥させ、窒素で一晩パージし、次いで1,1’-ビフェニル-2、2’、6、6’-テトラメタノール(45g;0.164mol)、塩化メチレン(450mL)、及びジメチルホルムアミド(1mL)を充填する。得られた黄色の溶液を撹拌し、0℃に冷却する。次いで、塩化チオニル(1,071g、9.01mol)を蠕動ポンプを介して2時間かけてゆっくりと添加し、反応器温度を0℃付近に維持する。添加の間、反応器を窒素で掃引して、発生するHCl及びSOを除去し、オフガスを水スクラバに通す。次に、反応溶液を23℃に温め、30分間撹拌してから、一晩加熱還流(約45℃)させる。翌日、溶液を15℃に冷却し、反応器から排出した。塩化メチレンを大気圧での蒸留によって除去し、残留塩化チオニルを真空蒸留により除去した。得られた残留物を最初にロータリーエバポレーターで乾燥させ、続いて真空オーブン内で、60℃で一晩乾燥させ、58.1gの黄色の固体を残した。(100%の収率、約95%の純度)。
【数2】
NMR(400MHz CDC12)d 7.66-7.60(m,4H),7.56(dd,7=8.8,6.4Hz,2H),4.28(s,8H)ppm。13C NMR(400MHz,CDC12)d 136.9,135.5,131.3,130.3,45.0ppm。
【化7】
1,1’-ビフェニル-2,2’,6,6’-テトラメタンジイル)テトラキス(ジフェニルホスファン)(テトラホスフィン)の合成。リチウムワイヤー(2.1g、300mmol)を小片に切断し、無水THF(130mL)と共にドライボックス内の250mLのフラスコに充填する。懸濁した溶液をシュレンクラインに移し、窒素下の氷水浴で冷却する。クロロジフェニルホスフィン(28.1mL、151.7mmol)を0℃で50分間かけて滴下し、次に0℃でさらに30分間撹拌した。この間、色は、曇った黄色から赤色に変化する。溶液をドライボックスに移し、室温で一晩撹拌した。翌朝、溶液をカニューレで濾過して、清潔で乾燥した500mL丸底フラスコに入れ、シュレンクラインに移し、-78℃に冷却した。2,2’6,6’-テトラキス(クロロメチル)-l,1’-ビフェニル(12.7g、37mmol)のTHF(60mL)溶液を、50分かけて滴下し、次いで、さらに20分間冷却撹拌した。次いで、溶液をゆっくりと23℃まで温め、次いで、ドライボックスに移して、一晩撹拌する。次いで、脱気した塩化メチレン(300mL)及び水(150mL)を添加し、得られた混合物を分離した。下層を丸底フラスコに移し、ロータリーエバポレーターで、30℃で濃縮し、粗生成物を含むTHF溶液を残した。流動窒素の下、この溶液を65℃で加熱しながら、脱気したエタノール(100mL)を徐々に加える。エタノール添加中に、白色の固体が沈殿し始めた。次いで、混合物を冷却し、冷蔵庫に一晩入れた。翌日、得られた固体をドライボックス内で濾過し、エタノール(2×50mL)で洗浄することによって回収する。真空下で一晩乾燥させることによって、所望の生成物が白色の粉末として残る(90%の収率、99%の純度)。31P NMR(400MHz,CDC13)d-14.5ppm。
【数3】
NMR(400MHz,CDC13)d 7.30-7.17(m,40H),6.91-6.82(m,2H),6.72(d,J=7.7Hz,4H),3.21(s,8H)ppm。得られたテトラホスフィンは構造(III)を有する。
【0041】
試験方法
ガスクロマトグラフィー(「GC」)分析は、表1に詳述されるパラメータを使用して、Agilent6890ガスクロマトグラフで行われる。
【表1】
【0042】
試料調製及び結果:アルデヒド混合物
実施例1~4の総合結果を表2に要約する。
【0043】
100mLのParrミニ反応器に、ロジウム(0.0121g;150百万分率(「ppm」)ロジウム)、テトラホスフィン(0.0886g;2mol/molロジウム)、TPP(0.6538g;2重量%)、オレフィン(30mL;23.6g)、及び溶媒(10mL;8.7g)を含む溶液を充填した。反応器を1:1のCO:H2(合成ガス;0.206メガパスカル(「MPa」))で加圧し、撹拌しながら加熱した。95℃の温度に達したら、圧力を1:1合成ガスで0.689MPaに上昇させた。次に、Brooksマスフローメーター及びBrooksトータライザを使用して合成ガスの導入を制御することによって、実験全体を通して反応器圧力を0.689MPaに維持した。95℃で4時間後、加熱を止め、反応器を冷却させた。アルデヒド混合物を反応器から取り出し、GCによって分析した。
【0044】
実施例2:より低いロジウム濃度、より低い反応温度、より低い反応圧力、及びより長い反応時間を使用した以外は、実施例1の手順を繰り返した。
【0045】
実施例3:より高い濃度のTPP、より低い反応温度及び圧力、並びにより短い反応時間を除いて、実施例1の手順を繰り返した。
【0046】
実施例4:より高い濃度のTPP、より低い反応温度及び圧力を除いて、実施例1の手順を繰り返した。
【0047】
表2の%オレフィン転化率の計算は、アルデヒド混合物の未反応オレフィン含有量に基づく。例えば、90%のオレフィン転化率は、溶媒含量を除いて、アルデヒド混合物が10%の未反応オレフィンから構成されていることを示す。表2の%直鎖アルデヒドの計算は、アルデヒド混合物中のアルデヒド異性体の相対量に基づく。例として、実施例4のアルデヒド混合物中に含まれるアルデヒドは、96%の直鎖アルデヒド及び4%の分岐アルデヒドから構成されている。表2において、略語「Rx」は反応を表す。
【表2】
【0048】
実施例5~9の総合結果を表3に要約する。
【0049】
実施例5:300mLのParrミニ反応器に、ロジウム(0.0377g;100pmロジウム)、テトラホスフィン(0.2764g;2mol/molロジウム)、TPP(0.6538g;0.4重量%)、オレフィン(170mL;133.5g)、及び溶媒(20mL;17.3g)を含む溶液を充填した。反応器を1:1のCO:H2(合成ガス;約0.206MPa)で加圧し、撹拌しながら加熱した。反応器温度が90℃に達したら、圧力を1:1合成ガスで0.414MPaに上昇させた。次に、Brooksマスフローメーター及びBrooksトータライザを使用して合成ガスの導入を制御することによって、実験全体を通して反応器圧力を0.414MPaに維持した。90℃で5時間後、加熱を止め、反応器を冷却させる。アルデヒド混合物を取り出し、GCによって分析した。
【0050】
実施例6~9:2重量%のTPPを使用し、オレフィンの濃度、溶媒の濃度、及び反応時間をわずかに変更した以外は、実施例5の手順を繰り返す。
【表3】
【0051】
試料調製及び結果:直鎖トリデカノール
実施例1~9のアルデヒド混合物を混合することによって複合物を調製した。一連の反応において、複合物の一部(例えば、200mL)を300mLステンレス鋼Parr反応器中で水素化して、アルコール混合物を形成した。最初の反応のために、水素化触媒を触媒バスケットに装填し、次いで反応器を組み立て、パージし、窒素でリークチェックした。反応器をゆっくりと還元温度(例えば、150℃未満)にし、温度スパイクを回避するために注意深く制御しながら水素を供給した。還元プロセスが完了したら、複合アルデヒド混合物を反応器に真空移送させた。次いで、反応器を水素で加圧し、反応温度(140℃)にした。Brooks質量流量計によって、水素圧を終始3.89MPa(絶対)に維持した。水素化反応が完了したら、反応器を冷却し、減圧し、アルコール混合物を反応器のドレンバルブを通して回収した。次いで、複合物の新鮮な部分を反応器に真空移送し、第2の水素化反応を同じ条件下で行った。このようにして、約600gの複合アルデヒド混合物を一連の3つの反応で水素化して、約600gのアルコール混合物を得た。
【0052】
得られたアルコール混合物を、B/R Instrument Corporation製の回転バンド式蒸留塔を用いて蒸留した。蒸留中、アルコール混合物を、塔の底部に接続された1Lの塔底蒸留リボイラー(1-L bottom distillation reboiler)に充填し、加熱マントルに入れた。磁気撹拌子を使用して、良好な混合及び均一な沸騰を達成した。当該技術分野で知られているような沸点に基づいて画分を収集し、アルカン及び未反応オレフィンを含む軽質留分は回収して廃棄し、アルコール画分を再び合わせ、2回目の水素化を行う。得られたアルコール混合物(460g)を2回蒸留した。沸点及び/又は受器の留出物の体積に基づいて、蒸留中に様々な塔頂カットが採取され、少量の残留物(底部)がリボイラー中に残る。第2の蒸留の結果を表4に要約する。
【表4】
【0053】
表4の結果は、90重量%以上の直鎖トリデカノールを含むアルコール混合物が、本発明の方法を使用して調製され得ることを示す。アルコール混合物の残りは、分岐トリデカノールである。
【0054】
試料の準備と結果:界面活性剤
上記からの蒸留アルコール混合物の試料をアルコキシル化して、界面活性剤を製造するための前駆体としてのアルコール混合物の適合性を実証した。アルコール混合物(94.1g)及び2.1gの45%KOH水溶液を丸底フラスコに入れ、75℃で回転蒸発によってストリッピングして、500ppm未満の最終含水量にした。触媒されたアルコール(74.48g)を、インペラ、窒素ライン及び酸化物供給ラインに接続された浸漬管(1/4インチOD)を備えた2000mLのParrステンレス鋼反応器に充填した。反応器を窒素充填(pad)/脱充填(de-pad)シーケンス(6サイクル)によって不活性化した。反応器を0.154MPa(絶対)窒素圧下で145℃に加熱した。加熱は、外部電気バンドヒーターによって提供され、冷却は、流量制御を有する内部コイルを通して循環される水によって提供された。エチレンオキシド(67.98g、1.54モル)を、0.399MPa(絶対)未満の圧力を維持しながら反応器に充填し、充填完了時に1時間温浸して、エトキシル化生成物を形成した。エトキシル化生成物を65℃に冷却し、反応器から排出して(141g)、質量収支を得た。378g/molの理論分子量を有するエトキシル化生成物を生成するために、質量差によって反応器に充填されたエチレンオキシドの実際の量は67.98gであった。エトキシル化生成物を氷酢酸(0.803g)で中和した。
【0055】
1.00グラムのエトキシレート生成物を1000mLの脱イオン水に溶解して、0.1重量%濃度の溶液を作製した。溶液の表面張力を、Wilhelmyプレート法を用いてKRUSS K100力張力計で室温で測定した。表面張力は26.4mN/mと報告され、エトキシレート生成物が界面活性物質であることを示した。
【国際調査報告】