(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】粘着防止機能を備えたシリンジ用ストッパ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/178 20060101AFI20241112BHJP
【FI】
A61M5/178
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534034
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 US2022051945
(87)【国際公開番号】W WO2023107440
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギョーム レヒー
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ フレモン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066PP02
(57)【要約】
シリンジのプランジャに取り付けるように適合されたテールを有する本体と、ヘッドと、任意選択で、本体の外側側壁の円周の周りの複数の環状リブおよび溝とを含むシリンジ用ストッパであって、リブは溝によって分離されている。ストッパは、テールおよび/またはヘッドの外面から延在する複数の突起および/または少なくとも1つの溝内から外側側壁から外向きに延びる複数の突起を含む。テールおよび/またはヘッドの外面から延びる突起は、少なくとも1つの円に配置され、円内の2つの隣接する突起間の角度距離は、1つの突起によって占有される角度距離よりも小さい。また、そのようなストッパを含む注射器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジ用のストッパであって、
前記シリンジのプランジャロッドに取り付けられるように適合された近位テールと遠位ヘッドを有する本体と、
前記テールおよび/または前記ヘッドの外面から延在する複数の突起と、
を備え、
前記突起は、前記ストッパにおける前記テールおよび/または前記ヘッドの外面における少なくとも1つの円に配置され、前記円における2つの隣接した前記突起の間の角度距離は、1つの前記突起によって占有される角度距離よりも小さい、ことを特徴とするストッパ。
【請求項2】
前記シリンジの前記プランジャロッドの少なくとも一部を受け入れ、係合するように適合された空洞は、前記ストッパの前記本体内に画定され、前記空洞への開口部が前記ストッパの前記テールに設けられ、前記突起は、前記ストッパの前記テールに設けられ、かつ前記ストッパの前記テールの前記外面上の少なくとも1つの円に配置され、前記テールの端面の外周と前記空洞の外周との間に画定された、前記ストッパの前記テールの前記外面上の環状リングから延在する、請求項1に記載のストッパ。
【請求項3】
前記突起は、前記ストッパにおける前記テールおよび/または前記ヘッドの外面の外周に沿った外側円と、さらに前記外側円と同心の少なくとも1つの追加の円に配置され、それぞれの円における2つの隣接する突起の間の角度距離は、1つの前記突起によって占有される角度距離よりも小さい、請求項1または2に記載のストッパ。
【請求項4】
実質的に円筒形の突起の第1の円が、前記ストッパにおける前記テールおよび/または前記ヘッドの外面の外周に隣接して、前記ストッパにおける前記テールおよび/または前記ヘッドに設けられ、前記第1の円に設けられた前記突起の数n1は、
によって画定され、ここで、Rは、前記ストッパにおける前記テールよび/または前記ヘッドの外面の外径であり、βは、各突起の半径rと半径Rとの比(r/R)であり、γは、前記突起の円と前記ストッパにおける前記ヘッドの端面の外周との間の距離の安全係数である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のストッパ。
【請求項5】
前記突起の少なくとも1つの同心円が前記突起の前記第1の円の内側に設けられ、i番目の前記円に設けられる突起の数niは、
であり、ここで、Riは突起の第i-1番目の円の内径である、請求項4に記載のストッパ。
【請求項6】
実質的に円筒形の突起の単一の円が設けられ、前記円に設けられた突起の最小数は、
で表され、ここで、
ここで、Dpは各突起の直径であり、Dоは前記ストッパの前記テールの外周の外径であり、Dcは前記空洞の外周の直径であり、
ここで、突起間の前記角度距離は、
である、請求項2に記載のストッパ。
【請求項7】
前記突起は、前記ストッパにおける前記ヘッドの外面の外周に沿った外側円に配置され、前記外側円より内側の突起は、前記ストッパにおける前記ヘッドの外面の中心に配置される、請求項1、2または6に記載のストッパ。
【請求項8】
前記突起は、それぞれの前記円に沿って等間隔に配置され、前記突起は、実質的に円筒形であり、および/または前記ストッパの前記ヘッドの前記外面は、平坦、凸状、または円錐形である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のストッパ。
【請求項9】
前記ストッパの前記ヘッドが凸状であり、前記ストッパの前記ヘッドの外面の外周に隣接する円における突起は、前記ストッパの前記ヘッドの外面の外周に隣接する円より内側に位置する突起が前記ヘッドの外面から外向きに延在する方向の高さよりも高い、前記ストッパの前記ヘッドの外面から外向きに延在する方向の高さを有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のストッパ。
【請求項10】
前記ストッパの前記ヘッドは、円錐形であり、実質的に三角形の形状、好ましくは実質的に二等辺三角形の形状を有し、前記突起の三角形形状の頂点角に対応する頂点、前記突起の三角形の形状の基部に対応する基部、および頂点と基部との間に延在する2つの辺を備えた、突起の円は、前記ストッパの前記ヘッドの外面から延在する、請求項1または2に記載のストッパ。
【請求項11】
シリンジ用のストッパであって、
前記シリンジのプランジャロッドに取り付けられように適合された近位のテール、遠位のヘッド、本体の外側側壁の円周の周りの複数の環状リブ、および前記本体の外側側壁の円周の周りの複数の溝を有する前記本体であって、前記リブは、前記溝によって互いに間隔をおかれている、前記本体と、
を備え、
複数の突起が、少なくとも1つの前記溝内から前記本体の外側側壁から半径方向外向きに延在する、ことを特徴とするストッパ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの溝内の前記突起の角度間隔は30°以上であり、前記少なくとも1つの溝内の前記突起の角度間隔の中央値は40°~60°であり、および/または前記少なくとも1つの溝内の前記突起の角度間隔の最大値は60°~80°である、請求項11に記載のストッパ。
【請求項13】
前記突起は、それぞれの溝内の前記突起の間の角度距離の半分に対応する、溝から溝へのオフセット間隔を有した、複数の溝に設けられる、請求項11または12に記載のストッパ。
【請求項14】
半径方向の前記突起の高さは、前記リブの半径と前記溝の半径との差の、50%~100%未満である、請求項11乃至13のいずれか一項に記載のストッパ。
【請求項15】
シリンジであって、
チャンバを画定するシリンジ本体と、
前記チャンバ内に少なくとも部分的に受け入れられたプランジャロッドと、
前記チャンバ内に受け入れられた前記プランジャロッドの端部に取り付けられた、請求項1~14のいずれか一項に記載のストッパと、
を備えたシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2021年12月6日に出願された欧州特許出願第21212446.5号の優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ストッパ本体の外面から延在する粘着防止機能を有するシリンジ用のストッパ、およびそのようなストッパを含むシリンジに関する。
【背景技術】
【0003】
シリンジ用ストッパの従来技術、特に、ゴムまたはゴムのような材料で作られたストッパでは、保管または組み立ての間に、第1のストッパの表面が別の第2のストッパの表面に付着することがある。例えば、1つのストッパのテールおよび/またはヘッドの外面は、別のストッパのテール、ヘッドの外面、または側壁に付着することがあり、または2つのストッパの外側側壁が互いに付着することがある。ストッパが、空気が抜かれた、保管または出荷中にパレットに積み重ねられるプラスチック袋に梱包されていると、粘着が発生する可能性がある。また、ストッパがシリンジ内に組み立てられる前に振動ボウル内で搬送されるとき、シリンジの製造中に粘着が発生する可能性がある。従って、これらの状況での付着の発生と、発生する付着の接着強度の両方を低減するストッパが必要となる。
【0004】
コーティングされていないストッパの場合、ストッパ相互の粘着は、ガンマ線滅菌によって促進される共有結合などの分子内力、および/またはファン・デル・ワールス力などの分子間力によって引き起こされる。共有結合は、共有結合、例えば、炭素-硫黄結合の形成を可能にするために、2つの異なるストッパの2つの表面の間で、オングストロームスケール(10-10m)での近接を必要とする(Penoccchio etal.炭素-硫黄結合の構造特性:半実験的観点,Can.J.Chem.,2016,Vol.94No.12,pp.1065-1076)。ファン・デル・ワールス力は、力が及ぼされる2つの表面間の距離の6のべき乗の逆数で変化する(lsraelachvili、分子間力および表面力、2003)。従って、2つの表面間の相互作用を効果的に得るためには、界面での非常に密接な接触が必要となる。
【0005】
このように、ストッパが肉眼的に互いに接着するには、ストッパの表面間の密接な接触が必要である。
【0006】
2つの異なるストッパの2つの表面間の、本明細書では明らかな接触域と称される、密接な接触は、互いに接触しているストッパの表面に外力が加えられるときに生じ得る。この力は包装されたストッパに作用し得るものであり、ストッパを含むバッグから空気を排出して包装密度を増加させるとき、およびストッパのバッグが出荷のためにパレットに共に積み重ねられた段ボール箱に包装されるとき、外力が増大し得る。
【0007】
ストッパに使用される材料のような弾性材料の場合、ヘルツの理論(Popov,接触問題の厳密な取り扱い-ヘルツ接触,接触力学および摩擦、2010;pp.55-70)を用いて、明らかな接触域の増加を記述することができる。理想化された表面(外部条件、ヤング弾性率、ポアソン比などの既知のパラメータを有する半平面/球、円筒/円筒など)に適用されるが、粘着防止機能を有するストッパなどのより複雑な形状でのヘルツ方程式の数値解法は自明ではない。粘着力(分子内力)を考慮する場合(JKR理論、表面エネルギと弾性固体の接触、Proc.R.Soc.LondonMath.Phys.Sci.,1971,vol.324,no.1558,pp.301-313)、複雑な形状に関する解法はさらに困難になる。
【0008】
さらに、接触力学の最新の発展(多接触力学、Persson、ゴム摩擦の理論および接触力学、J.Chem.Phys.,2001,vol.115,no.8,pp.3840-3861)によって、明らかな接触域の概念は、ナノメートルからミリメートルの大きさに及ぶ、異なる長さでの表面粗さや化学状態に依存する有効接触面積によって置き換えられる。これにより、このアプローチでの有効接触面積の近似は、よく特徴付けられた表面と組み合わせた数値シミュレーションによってのみ実行可能になる。
【0009】
これらの要因を念頭に置いて、組み立ておよび保管中のストッパ相互の付着を低減するために、付着防止機能を有する本発明のストッパが開発された。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、シリンジのプランジャロッドに取り付けられるように適合された近位テールと、遠位ヘッドを有する本体と、テールおよび/またはヘッドの外面から延在する複数の突起と、を備えたシリンジ用ストッパに関する。突起は、ストッパにおけるテールおよび/またはヘッドの外面における少なくとも1つの円をなして配置され、円における2つの隣接する突起の間の角度距離は、突起のうちの1つによって占有される角度距離よりも小さい。少なくとも1つの円に配置された突起の外面は、多角形構造を画定する。突起は、円形、楕円形、正方形、多角形、または文字またはロゴの形状である断面を有する突起を含むが、これらに限定されない任意の形状を有することができる。
【0011】
ストッパの本体は、注射器のプランジャロッドの少なくとも一部を受け入れ、係合させるように適合された空洞をさらに含み、この空洞への開口部がストッパのテールに設けられている。突起は、ストッパのテールに設けられ、ストッパのテールの外面上の少なくとも1つの円に配置され、外面の外周と空洞の外周との間に画定されるストッパテールの外面の環状リングから延在し得る。突起が円筒形であって、突起が単一の円をなす場合、円における突起の最小数は、次のように定義される。
【0012】
【0013】
ここで、
【0014】
【0015】
ここで、Dpは各突起の直径であり、Dоはストッパのテールの外面の外径であり、Dcは空洞の外周の直径であり、突起間の角度距離は、
【0016】
【0017】
である。
【0018】
突起は、ストッパのヘッドの外面の外周に沿った外側円に配列され、外側円より内側の突起は、ストッパヘッドの外面の中心に位置することができる。
【0019】
突起は、ストッパにおけるテールおよび/またはヘッドの外面の外周に沿った外側円と、さらに外側円より内側の追加の同心円に配置され得、それぞれの円において隣接する2つの突起間の角度距離は、1つの突起によって占有される角度距離よりも小さい。実質的に円筒形の突起の第1の外側円は、ストッパにおけるテールおよび/またはヘッドの外面の外周に隣接する、ストッパのテールおよび/またはヘッドに設けられ、第1の円における突起の数n1は、
【0020】
【0021】
で表され、ここで、Rは、ストッパにおけるテールおよび/またはヘッドの外面の外径であり、βは、各突起の半径rと半径Rとの比(r/R)であり、γは、突起の円とストッパのヘッドの端面の外周との間の距離に関する安全係数である。突起の追加の同心円は、突起の第1の円より内側に設けられ得、第iの円における突起の数niは、
【0022】
【0023】
で表され、ここで、Riは突起の第i-1の円の内径である。
【0024】
突起は、少なくとも1つの円に沿って等間隔で配置されてもよく、突起は、円形、楕円形、正方形、多角形、または文字もしくはロゴの形状である断面を有する突起を含むが、これらに限定されない任意の形状を有してもよく、および/またはストッパのヘッドの外面は、平坦、凸状、または円錐形であってもよい。ストッパのヘッドの凸状外面は、ストッパのヘッドの外面が湾曲しており、この湾曲は、湾曲の頂点が、ストッパの長手方向軸に直交し、外面の外周を含む平面から離れるように延在するものである。すなわち、ヘッドの外面の頂点と上記平面との距離が、ストッパを、ストッパの長手方向軸に垂直な方向で側面から見たときに、ヘッドの外面の外周に隣接するヘッドの外面の部分と上記平面との間の距離よりも大きいものである。ストッパのヘッドが凸状である場合、ストッパのヘッドの外面の外周に隣接する円における突起は、ストッパヘッドの外面に隣接する円より内側に位置する突起のヘッドの外面から外向きに延在する方向の高さよりも高い、ストッパのヘッドの外面から外向きに延在する方向の高さを有し得る。
【0025】
ストッパのヘッドが円錐形である場合、実質的に三角形の形状、好ましくは実質的に二等辺三角形の形状を有し、突起の三角形形状の頂点角度に対応する頂点、突起の三角形の形状の基部に対応する基部、および頂点と基部との間に延在する2つの辺を備えた、突起の円は、ストッパヘッドの外面から延在し得る。
【0026】
本発明はさらに、シリンジのプランジャロッドに取り付けるように適合された遠位テールを有する本体と、遠位ヘッドと、本体の外側側壁の円周の周りの複数の環状リブと、本体の外側側壁の円周の周りの複数の溝とを備え、リブは溝によって互いに離間され、複数の突起が少なくとも1つの溝内から半径方向において本体の外側側壁から外向きに延在する、シリンジ用ストッパに関する。少なくとも1つの溝内の突起の角度間隔は30°以上であり、少なくとも1つの溝内の突起の中央値の角度間隔は40°~60°であり、および/または少なくとも1つの溝内の突起の最大角度間隔は60°~80°であり得る。半径方向の突起の高さは、リブの半径と溝の半径との差の50%以上100%未満であり得る。突起は、各溝内の突起間の角度距離の半分に対応した、溝から溝までのオフセット間隔を有する複数の溝に設けられてもよい。
【0027】
本発明はさらに、チャンバを画定するシリンジ本体と、チャンバ内に少なくとも部分的に受け入れられたプランジャロッドと、チャンバ内に受け入れられたプランジャの端部に取り付けられた上述のストッパとを備えるシリンジに関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、シリンジ内の本発明のストッパの断面図である。
【
図2】
図2は、テールの外面から延在する付着防止突起を有する本発明のストッパの断面図である。
【
図4】
図4は、2つの
図2の本発明ストッパのテール間の接触を示し、実線で示される1つの本発明のストッパの底部と、破線で示される他の本発明のストッパの底部を示す図である。
【
図5】
図5は、ヘッドの外面から延在する付着防止突起を有した本発明のストッパの断面図である。
【
図7】
図7は、2つの
図5の本発明ストッパのヘッド間の接触を示し、実線で示される1つの本発明のストッパの上部と、破線で示される他の本発明のストッパの上部を示す図である。
【
図8】
図8は、ヘッドの外面の中心に付着防止突起を有さない2つの本発明のストッパのヘッド間の接触を示し、実線で示される1つの本発明ストッパの上部と、破線で示される他の本発明ストッパの上部示す図である。
【
図9】
図9は、ヘッドの外面の中心に付着防止突起を有する2つの本発明のストッパのヘッド間の接触を示し、実線で示される1つの本発明ストッパの上部と、破線で示される他の本発明ストッパの上部示す図である。
【
図10】
図10は、ヘッドの外面から延在する付着防止突起の同心円を有する本発明に係るストッパの上面図である。
【
図11】
図11は、本発明に係るストッパのヘッドの外面から延びる突起の最大数nmaxと、突起の半径rの、ストッパヘッドの外周の半径Rに対する比率βとの関係を示すグラフである(r/R)。
【
図12】
図12は、本発明に係るストッパのヘッドから延在する突起の同心円のそれぞれにおける最大突起数と、突起の半径rの、ストッパヘッドの外周の半径Rに対する比率βとの関係を示すグラフである(r/R)。
【
図13】
図13は、有効総接触面積と、ストッパヘッドの外周の半径Rに対する突起の半径rの比率β(r/R)との関係を示すグラフである。
【
図14】
図14は、テールの外面から延在する付着防止突起の同心円を有する本発明に係るストッパの底面図である。
【
図15】
図15は、凸状ヘッドの外面から延在する付着防止突起を有した本発明に係るストッパの断面図である。
【
図16】
図16は、円錐ヘッドの外面から延在する付着防止突起を有した本発明に係るストッパの断面図である。
【
図18】
図18は、ストッパ本体の外側側壁から延在する付着防止突起を有した本発明に係るストッパの断面図である。
【
図19】
図19は、2つのストッパの外側側壁の間の接触を示す2つの従来技術に係るストッパの部分断面図であり、ストッパの1つがクロスハッチングで示され、ストッパの1つがクロスハッチングなしで示される図である。
【
図20】
図20は、2つの本発明に係るストッパの外側側壁の間の接触を示す、
図19の2つの本発明のストッパの部分断面図であり、本発明のストッパの1つがクロスハッチングで示され、本発明のストッパの1つがクロスハッチングなしで示される図である。
【
図21】
図21は、様々なストッパ構成について、ストッパ本体の外側側壁から延在する付着防止突起の角度間隔を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
特に明記しない限り、本明細書で用いられるすべての数、例えば、値、範囲、量、またはパーセンテージを表すものは、“役”という語によって、この用語が明示的に出現しない場合でも、前置きされていると読むことができる。本明細書に記載される数値範囲はどのようなものでも、その中に含まれる総ての部分範囲を含むことが意図されている。例えば、“1~10”の範囲は、列挙された最小値1と列挙された最大値10との間の、およびそれらを含む任意のおよび総ての部分範囲、すなわち、1以上の最小値で始まり、10以下の最大値で終わる総ての部分範囲、ならびに、例えば、1~6.3、または5.5~10、または2.7~6.1の間の総ての部分範囲を含むことが意図されている。複数形には単数形が含まれ、その逆も同じである。範囲が与えられるとき、それらの範囲および/またはそれらの範囲内の数の任意の端点は、本発明の範囲と組み合わせることができる。“含む”、“例えば~など”、“例えば”、および同様の用語は、“含む/例えば~など/例えば”を意味するがそれらに限定されない。
【0030】
以下の説明の目的のために、用いられる空間配向用語は、添付の図面、図で方向付けられ、または以下の詳細な説明で記載されるように、参照される実施形態に関連したものである。しかしながら、以下に説明する実施形態は、多くの代替の変形および構成を想定し得ることを理解されたい。また、添付の図面、図、または本明細書の説明に記載される、特定の構成要素、デバイス、特徴、および動作シーケンスは、単に例示的なものであり、限定的であると見なされるべきではないことも理解されたい。本明細書で用いられる場合、“遠位”は、注射器のヘッドまたは注射器の注射端を含むストッパの端部を指す。ストッパの断面図では、“遠位”はストッパの上端を指す。同様に、“遠位奉公”は、ストッパのヘッドに向かう方向、または注射器の注入端に向かう方向である。本明細書で使用される場合、“近位”は、シリンジのテールまたはプランジャ端を含むストッパの端部を指す。断面図では、“近位”はストッパの下端を指す。同様に、“近位方向”は、ストッパのテールに向かう方向、またはシリンジのプランジャ端に向かう方向である。
【0031】
本発明は、注射器12で用いられるストッパ10に関する。シリンジは、シリンジ本体14と、ストッパ10が接続されたプランジャ16とを備える。
【0032】
図1に示されるように、シリンジ本体14は、近位端18と、遠位端20と、近位端18と遠位端20との間に延在する側壁22を備える。側壁22は、医薬組成物を受け入れるように適合されたチャンバ24を画定する。チャンバ24は、実質的に円筒形である。カニューレアセンブリをシリンジ12に取り付けるための取付け部26は、シリンジ本体14の遠位端20から長手方向に延在する。取付け部26は、ルアーロックまたはルアースリップとすることができる。カニューレアセンブリは、シリンジ12に恒久的に取り付けられてもよく、または代替的に、カニューレアセンブリは、使用の直前にシリンジ12に組み立てられてもよい。シリンジ本体14は、プラスチックまたはガラスで作製することができる。
【0033】
プランジャ16は、近位端30と遠位端32を有するプランジャロッド28と、プランジャロッド28の遠位端32から延在する係合部分34と、プランジャロッド28の長手方向軸に実質的に垂直な方向でプランジャロッド28の近位端30から半径方向外向きに延在する親指パッド36と、を含み得る。プランジャロッド28の少なくとも一部およびプランジャロッド28の係合部分34は、シリンジ本体14のチャンバ24内に含まれる。プランジャロッド28の係合部分34は、ストッパ10に接続するように適合されている。プランジャ16は、シリンジ本体14を動かないようにしている間にプランジャ16に加えられる遠位方向の力によって、シリンジ本体14のチャンバ24内でプランジャロッド28の係合部分34およびそれに取り付けられたストッパ10を遠位方向に移動し、シリンジ本体14を動かないようしている間にプランジャ16に加えられる近位方向の力によって、プランジャロッド28の係合部分34およびそれに取り付けられたストッパ10をシリンジ本体のチャンバ24内で近位方向に移動するように、シリンジ本体14に対して移動可能である。
【0034】
ストッパ10の少なくとも一部は、シリンジ本体14のチャンバ24の内径と等しいかそれより大きい直径を有し、それによって、ストッパ10の部分とシリンジ本体14の側壁22の内面との間に密封係合を作る。
【0035】
本発明のストッパ10は、標準的な0.5ml~20mlのシリンジなど、任意の種類のシリンジと共に用いるためのサイズとすることができる。
【0036】
図2、
図3、
図5、
図6および
図9-17に示すように、ストッパ10は、プランジャロッド28に接続するように適合された近位テール40と、遠位ヘッド42と、テール40の外面44およびヘッド42の外面46のうちの少なくとも1つに付着防止機構と、を有する本体38を含む。テール40は、本体38内に画定された空洞50への開口部48を含む。開口部48および空洞50は、プランジャロッド28の係合部分34を受け入れ、係合するように適合され、それによって、ストッパ10をプランジャ16に取り付けることができる。空洞50の開口部48は、円形の開口部とすることができ、ストッパ10のテール40の外面44が環状リングであるように、ストッパ10のテール40の外径Dоよりも小さい直径Dcを有する。図に示され、以下に説明されるストッパ10は、空洞50を含むが、空洞50は任意選択であり、プランジャ16は、空洞を必要とせずに、他の手段を介してストッパ10に取り付けられ得ることを理解されたい。
【0037】
従来技術のストッパでは、保管または組み立て中に、1つのストッパのテール40および/またはヘッド42のそれぞれの外面44、46が、別のストッパのテール40の外面44、46および/またはヘッド42、または別のストッパの側壁に固着することがある。本発明のストッパ10の付着防止機能は、1つのストッパ10におけるテール40および/またはヘッド42の面44、46が、別のストッパ10のテール40および/またはヘッド42の面44、46に付着する傾向を低減するために設けられる。
【0038】
付着防止機能は、ストッパ10におけるテール40および/またはヘッド42から外向きに延びる突起52とすることができる。図に示され、以下に説明される突起52は、実質的に円形の断面を有する実質的に円筒形であるが、突起52の形状および寸法が、1つのストッパ10におけるテール40および/またはヘッド42の、別のストッパにおけるテール40および/またはヘッド42への接着防止を、以下に説明する方法でもたらすものである限り、突起52は任意の形状を有し得る。例えば、突起は、円形、楕円形、正方形、多角形、または文字またはロゴの形状の断面を有し得る。
【0039】
図3、
図6、
図10および
図14に示すように、突起52は、ストッパ10におけるテール40および/またはヘッド42の外面44、46に少なくとも1つの円に配列される。円形上の突起52の配置は多角形を画定する。例えば、3つの突起52が円上に配置されて三角形を画定し、4つの突起52が円上に配置されて正方形または長方形を画定し、5つの突起52が円形上に配置されて五角形を画定することができるなどである。
【0040】
2つの隣接する突起52の間の角度距離θsは、1つの突起52によって占有される角度距離θpより小さい、すなわち、θs<θpである。本明細書で用いられる2つの隣接する突起52の間の角度距離θsは、突起52の外面と、最も隣接する突起52の外面との間の最小角度距離である。このように突起52の寸法を決定しおよび位置を決めすることによって、1つのストッパ10の突起52は、別のストッパ10の突起52の間に入り込むことができず、2つのストッパ10におけるテール40および/またはヘッド42の外面44、46同士の最大接触面積は、1つのストッパ10の突起52の最大総表面積に限定される。
【0041】
ストッパ10(
図2および
図3)のテール40に関して、複数の突起52aは、ストッパ10のテール40の外面44の周囲で近位に向かって外向きに延在し得る。突起52aは、テール40の外面44の環状リングを一周して等間隔に配置される。
【0042】
半径方向における突起52aの寸法Dpは、ストッパ10のテール40の外面44の外径Dоと空洞50の開口部48の外周の直径Dcとの差によって決定されるように、環状リングの半径方向幅以下である。円筒形突起52aの場合、突起52aの直径は、ストッパ10のテール40の外径Dоと空洞50の開口部48の外周の直径Dcとの差によって決定されるように、環状リングの半径方向の幅以下である。
【0043】
2つの隣接する突起52の間の角度距離θsは、1つの突起52によって占有される角度距離θpより小さい、すなわち、θs<θpである。このように突起52aの寸法を決定しおよび位置を決定することによって、1つのストッパ10のテール40の外面44上の突起52aは、別のストッパ10(
図4)のテール40の外面44上の突起52aの間に嵌合することができず、2つのストッパ10のテール40の外面44同士の最大接触面積は、1つのストッパ10の突起52aの総表面積の最大値に制限される。
【0044】
突起52aの数は、ストッパ10のテール40の外面44の環状リングの円周に沿って延在する突起52aの直径Dp、ストッパのテールの外径Dо、および空洞50の開口部48の直径Dcを与えることによって計算することができる。
【0045】
突起52aがストッパ10のテール40の外面44の環状リング内で半径方向において中心に置かれるとき、すなわち、突起52aが、ストッパ10のテール40の外周と空洞50の開口部48との共通の原点からの距離にあり、この距離が、ストッパ10のテール40の直径Dоと空洞50の開口部48の外周の直径Dcとの和を4で割ったもの((Dо+Dc)/4)であるとき、ストッパ10のテール40の外面44の環状リングの周囲に延在する寸法(直径)Dpを有する1つの突起52aによって占有される角度距離θpは、
【0046】
【0047】
半径方向において、突起52aの総てによって占有される総角度距離は、π未満である。したがって、突起の最小数nminは
【0048】
【0049】
また、突起間の角度距離θsは、
【0050】
【0051】
一例として、ストッパ10のテール40の外面44の環状リングの周囲に沿って延在する最大寸法(直径)Dpが1mmである場合、ストッパのテールの外径Dоは5mmであり、空洞の開口部の直径Dcは3mmである。
【0052】
【0053】
この構成では、最適な突起数は7である。
【0054】
ストッパ10のヘッド42に関し、
図5および
図6に示すように、複数の突起52bがヘッド42の外面46から遠位方向に外向きに延在する。突起52bは、テール40の環状リングに対応する領域に、円状に設けられ、突起が多角形、具体的には、
図5および
図6のように、七角形を画定するように、ストッパ10のヘッド42の外面46の外周に沿って等間隔に配置される。2つのストッパ10間で、テール40とヘッド42との接触を最小限に抑えるために、ヘッド42の外面46上の突起52bは、ストッパ10の外周に関してストッパのテール40の外面44に設けられた突起52aと、ストッパ10のヘッド42の外面46の外周の周りの間隔に対応する態様で配置され得る。
【0055】
2つの隣接する突起52bの間の角度距離θsは、1つの突起52bによって占有される角度距離θpより小さい、すなわち、θs<θpである。このように突起52bの寸法を決定しおよび位置を決定することによって、1つのストッパ10のヘッド42の外面46上の突起52bは、別のストッパ10(
図7)のヘッド46の外面44上の突起52bの間に嵌合することができず、2つのストッパ10のヘッド44の外面46同士の最大接触面積は、1つのストッパ10の突起52bの総表面積の最大値に制限される。
【0056】
ストッパ10におけるヘッド42の外面46上の突起52bのそのような配置は、1つのストッパ10のヘッド42と別のストッパ10のテール40との間の接触面積を減少させ、ストッパ10のテール40の外面44上の突起52aが1つのストッパ10のテール40と別のストッパ10のテール40との間の接触面積を減少させ、ストッパ10のテール40が互いに付着する傾向を減少させるのと同じ方法で、ストッパ10が互いに付着する傾向を減少させる一方、ヘッド42の接触面積が十分に減少せず、ヘッド42とヘッド42の接触が、
図8に示すように生じるとき付着する可能性が十分に減少しない場合がある。
図8に示される構成では、2つのストッパ10の交差部に位置する2つの突起は、直接接触している。この状況は、
図9に示されるように、ストッパ10におけるヘッド42の外面46の中心、すなわち、ストッパ10のヘッド42の外周の原点の中心に追加の突起52cを設けることによって回避することができる。
【0057】
代替的または追加的に、ストッパ10のヘッド42の外面46の外周に沿って設けられた突起52bの円の直径よりも直径が小さい、突起52d、52eの1つまたは複数のさらなる同心円を設けることができる(
図10)。これらの突起52d、52eの数およびこれらの突起52d、52eの配置は、
ストッパ10のヘッド42の外径R、
最大許容直接リジッド被覆率α、
突起52d、52eの半径r(半分の大きさ)、
突起52d、52eの半径rとストッパ10のヘッド42の外面46の外径の半径Rとの比β(r/R)、
ストッパ10のヘッド42の表面上の突起52b、52d、52e、52fの数n、
突起52bの外側円とストッパ10のヘッド42の外面46の外周との間の距離、および突起52b、52d、52e、52fの隣接する円の間の距離の安全係数γ、および
各突起、52b、52d、52e、52fによって占有される角度距離θ、
に基づいて定めることができる。
【0058】
最大許容直接リジッド被覆率αは、2つのストッパ10の端部が互いに直接接触しているときの最大許容接触面積である。例えば、ストッパ10の端部が完全に整列している場合、すなわち、1つのストッパ10上のすべての突起52が、他のストッパ10上の突起52と完全に重なり合っている場合、α=1(100%)である。α=0.5の場合は、突起間の接触面積は、1つのストッパ10の突起52の総接触面積の50%である。
【0059】
安全係数γは、半径方向において突起52の相互貫入を回避するための同心円の間の半径方向間隔である。
【0060】
2つのストッパ10のヘッド42の外面46が完全に整列している場合、外面と外面との直接接触となる。2つのストッパ10間の付着を効果的に低減するために、突起52b、52d、52e、52fは、ストッパ10のヘッド42の外面46の表面積の最大50%を覆う、すなわち、α=0.5である。ストッパ10のヘッド42の外径Rを1(任意の単位)に設定するとき、ストッパ10における突起52b、52d、52e、52fの半径rの、ヘッド42の外径Rに対する所与の比β(r/R)での、突起52b、52d、52e、52fの最大総数nmaxは、以下の式を用いて決定することができる。
【0061】
【0062】
一例として、
図11は、最大許容直接リジッド被覆率αが0.5(50%)で、突起52b、52d、52e、52fが0.5の半径rを有する場合の、0.025~0.5(2.5~50%)の比率βと、突起52b、52d、52e、52fの最大総数nmaxと、の関係を示している。
【0063】
接触面積をさらに最小化するために、突起52b、52d、52e、52fは、ストッパ10の外周から、安全係数γによって決定された距離から半径方向に離間させることができる。半径方向において、所与の突起52bの中心は、ストッパ10の中心から距離R-γR-rに位置する。安全係数γを0.05(5%)に設定してもよい。1つの突起によって占有される角度距離θpは、
【0064】
【0065】
である。
【0066】
2つのストッパ10のヘッド42が完全に整列しているときに、2つのストッパ10のヘッド42の外面46間の接触を最小化するために、突起間の空間によって占有される総角度距離は180°未満である。ストッパ10のヘッド42の外面46の外周に隣接する外側円の突起52bの最大数n1は、比率βの関数として、以下のように決定され得る。
【0067】
【0068】
一例として、
図12は、最大許容直接リジッド被覆率αが0.5(50%)であり、安全係数γが0.05(5%)であるとき、ストッパ10のヘッド42の外面46の外周に隣接する外側円における突起52bの0.1~0.5(10~50%)の比率βと最大数n1の関係を示している。
【0069】
具体的な例として、最大許容直接リジッド被覆率αが0.5(50%)で、比率βが0.125(12.5%)の場合、突起の最大総数nmaxは、
【0070】
【0071】
であり、また、ストッパ10のヘッド42の半径Rが1(任意の単位)の場合、ストッパ10のヘッド42の外面46の外周に隣接する外側円に配置される突起52bの数n1は、
【0072】
【0073】
である。残りの21個の突起は、ストッパ10におけるヘッド42の外面46の外周に隣接する外側円内に位置する1つまたは複数の同心円に配置することができる。
【0074】
突起52の同心円間の距離は、隣接する円の2つの突起52の外面間の空間が突起52の直径Dpよりも小さくなるように、突起52の直径Dpの2倍未満としなければならない。
【0075】
ストッパ10におけるヘッド42の外面46の外周に隣接する円上の突起52bの最大数n1を決定するための方程式:
【0076】
【0077】
は、R-γR-βRをRn-γR-βRに置き換えることによって、各同心円上に配置する突起52d、52eの最大数を決定するために反復的に用いることができ、式中、Rnは、突起の最大数が決定されている突起の円に隣接する突起のより大きな外側の円の半径である。
【0078】
一例として、
図12は、最大許容直接リジッド被覆率αが0.5(50%)であり、安全係数γが0.05(5%)であり、ストッパの半径Rが1(任意単位)である場合の、0.1~0.5(10~50%)の比率βと突起の各円の突起の最大数との関係を示している。
【0079】
具体的な例として、最大許容直接リジッド被覆率αが0.5(50%)である場合、安全係数γは0.05(5%)であり、比率β(r/R)は0.1(10%)であり、ストッパの半径Rは1(任意の単位)を有し、突起は0.1の半径r(任意の単位)を有する場合、ストッパ10のヘッド42の外面46の外周に隣接する突起52bの外側円に配置される突起52bの数n1は、
【0080】
【0081】
であり、R1は0.75である。
【0082】
突起52bの外側円に隣接する突起52dの第2の同心円に配置される突起52dの数n2は、
【0083】
【0084】
であり、R2は0.5である。
【0085】
突起52dの第2の同心円に隣接する突起52eの第3の同心円に配置される突起52eの数n3は、
【0086】
【0087】
であり、R3は0.25である。
【0088】
突起52eの第3の同心円に隣接する突起52fの第4の同心円に配置される突起52fの数n4は、
【0089】
【0090】
である。
【0091】
ストッパ10のヘッド42上の突起52b、52d、52e、52fの有効総表面積は、所与の最大許容直接リジッド被覆率αおよび安全係数γに対する、
図12に示されるような所与の比βに対する突起52b、52d、52e、52fの総数(n1+n2+n3など)を合計することによって計算することができる。
【0092】
一例として、
図13は、最大許容直接リジッド被覆率αが0.5(50%)であり、安全係数γが0.05(5%)である場合の、比率βが0.1~0.5(10~50%)の有効総接触面積を示している。
【0093】
具体的な例として、0.1(10%)の比率β、最大許容直接リジッド被覆率αが0.5(50%)、安全係数γが0.05(5%)、ストッパ10のヘッド42の外面46の半径Rが1(任意単位)、突起の半径rが0.1(任意単位)であるとき、突起の総数Nは上記のように計算されて34であり、有効総接触面積は、
【0094】
【0095】
であり、これは、50%の最大許容直接リジッド被覆率αを下回っている。
図13から分かるように、比率β(r/R)が0.3以下の場合、有効総接触面積は、最大許容直接リジッド被覆率αの50%より小さいかまたはそれに近い。
【0096】
ストッパ10のヘッド42の外面46上の突起52b、52d、52e、52fの配置を決定するための上記の方程式は、ストッパ10のテール40の外面44に設けられた突起52aにも適用することができ、ストッパ10のテール40の外面44を画定する環状リングの半径幅および突起52aの直径が、突起52aの1つの輪(円)のみを設けることを可能にするときに、ストッパ10のヘッド42の外面46の外周に隣接する外側円の方程式が用いられる。ストッパ10のテール40の外面44および突起の直径を画定する環状リングの半径方向の幅が、突起52a、52jの複数の円を与えることを可能にするとき(
図14)、追加の方程式が、ストッパ10のテール40の外面44の突起に用いられ得る。
【0097】
本発明のストッパは、(1)ストッパのヘッドの外面の外周に隣接するストッパのヘッドの外面に設けられた突起の単一の外側円であって、ストッパのヘッドの外面の中心に設けられた追加の突起(
図6)を含む形態、(2)ストッパのヘッドの外面に設けられた突起の複数の円であり、円が同心円であり、各円が異なる数の突起を有し、円がストッパのヘッドの外面の中心に近いほど、円に設けられた突起の数が少ない形態(
図10)、(3)ストッパのヘッドの外面に設けられた複数の突起の円であり、円が同心円であり、各円が異なる数の突起を有し、円がストッパのヘッドの外面の中心に近いほど、円に設けられた突起の数が少なく、ストッパのヘッドの外面の中心に追加の突起が設けられる形態、(4)ストッパのテールの外面の外周と空洞の開口部の外周との間における、ストッパのテールの外面に設けられた突起の単一の外側円の形態(
図3)、(5)ストッパのテールの外面の外周と空洞の開口部の外周との間における、ストッパの端部の外面に設けられた突起の複数の円であって、複数の円が同心円であり、各円が異なる数の突起を有し、円が空洞の外周に近いほど、リングに設けられた突起の数が少ない形態(
図14)、および(6)ヘッド構成(1~3)とテール構成(4及び5)のいずれかの任意の組み合わせ、を含むが、これらに限定されないいくつかの実施形態を有し得る。さらに、ヘッド構成(1~3)とテール構成(4および5)のいずれかとの任意の組み合わせについて、ヘッドは、テールとは異なる合計数の突起を有し得、および/またはヘッド上の突起の外側輪(円)の突起の数は、テール上の突起の外側輪の突起の数と異なる場合があり、および/またはヘッド上の突起のサイズは、テール上の突起の外側輪の突起のサイズと異なる場合がある。例えば、ヘッドの突起の外側輪は、7つの突起を含み得、テールの突起の外側輪は、6つの突起を含み得る。
【0098】
ストッパ10のヘッド42の外面は、平坦、凸状、または円錐形であり得る。ストッパ10のヘッド42の凸状外面は、ストッパのヘッドの外面が湾曲しており、この湾曲は、湾曲の頂点が、ストッパの長手方向軸に直交する、外面の外周を含む平面から離れるように延在するものである。すなわち、ヘッドの外面の頂点と上記平面との距離が、ストッパを、ストッパの長手方向軸に垂直な方向で側面から見たときに、ヘッドの外面の外周に隣接するヘッドの外面の部分と上記平面との間の距離よりも大きいものである。
【0099】
ストッパ10のヘッド42aの外面46aが凸状であるとき(
図15)、ストッパ10のヘッド42aの外面46aの外周に隣接する突起52gの外側輪の内側に配置された任意の追加の突起52hは、ストッパ10のヘッド42aの外面46aから外向きおよび直交して延在する方向の高さを有し得、これは、ストッパ10のヘッド42aの外面46aに隣接する突起52gの外側輪における、突起52gの外面46aから外向きに延びる方向の高さより低い。
【0100】
ストッパ10のヘッド42bの外面46bが円錐形である場合(
図16)、上記の突起の構成の代替として、突起52iの単一の輪を設けることもできる。
【0101】
突起52iは、実質的に三角形の形状、好ましくは、突起52iの三角形の形状の頂点角度に対応する頂点64、突起52iの三角形の形状の基部に対応する基部66、および頂点64と基部66との間に延在する2つの側面68a、68bを有することができる。突起52iの頂点64は、突起52iの基部66の円周方向幅よりも小さい円周方向幅を有する。
【0102】
各突起52iの頂点64は、ストッパ100のヘッド42の外面46の中心、すなわち、ストッパ100のヘッド42の外面46の外周の原点に隣接しており、これは、ストッパ100のヘッド42の円錐の頂点に対応し、各突起52iの基部66は、ストッパ100のヘッド42の外面46の外周に隣接している。
【0103】
突起52iの基部66は、ストッパ100のヘッド42の外面46の丸い外周に対応するように丸くすることができる。突起52iが、ストッパ100のヘッド42の外面46の外周から離れるように、突起52iの基部66とストッパ100のヘッド42の外周との間に空間70が設けられてもよく、ストッパ100のヘッド42の外周に直接隣接するストッパ100のヘッド42の外面46の環状部分は、突起52iによって覆われていない。
【0104】
突起52iの頂点64は、空間72がストッパ100のヘッド42の外面46の中心に提供されるように、切り詰めることができる。空間72は、円形とすることができ、突起52iの切断された頂点64は、突起52iの頂点64が、突起52iによって覆われていない、ストッパ100のヘッド42の外面46の中心に空間72を画定するように湾曲させることができる。
【0105】
突起52iは、対応する実質的に三角形の空間74は、隣接する突起52iの間に設けられるように、ストッパ100のヘッド42の外面46の外周の周りに均等に分布することができる。繰り返しになるが、上述した実施形態のすべてと同様に、2つの隣接する突起の間の角度距離θsは、突起のうちの1つによって占有される角度距離θp以下である、すなわち、θs≦θpである。
【0106】
ストッパ本体の外側側壁の付着も問題になる可能性がある。従って、付着防止機能は、ストッパ本体の外側側壁に設けられた環状リブの間にも含まれ得る。
【0107】
図18に示されるように、実質的に円筒形のストッパ本体38は、ストッパ本体38の外側側壁58の外周に沿って複数の環状リブ54を含むことができる。リブ54は、溝56によって互いに均等に離間され得る。リブ54は、溝56の直径Dinnerよりも大きい直径Douterを有する。
【0108】
2つのストッパ100の外側側壁58が互いに接触すると、一方のストッパのリブ54は、他方のストッパ100の溝56に受け入れられ得、その逆もまた同様であり、ストッパ100の外側側壁58間の完全な接触をもたらす(
図19)。
【0109】
そのような接触を回避するため、複数の突起61が、ストッパ本体38の外側側壁58から、溝56の少なくとも1つ内から半径方向に外向きに延在する(
図20)。突起61を溝56内に配置することによって、リブ54の機能を妨げることなく付着を低減することが可能であり、リブ54は、シリンジ12のチャンバ24内でストッパ100を移動させるために必要な力を低減する一方で、シリンジ本体14の内側側壁との密封をもたらす。
【0110】
溝56から半径方向外向きに延在する突起61の高さHprotrusionは、高さHprotrusionが、リブ54の領域におけるストッパ本体38の直径Dоuterから、溝56の領域におけるストッパ本体の直径Dinerを引いた値を2で割ったものよりも小さくなるように、すなわち、Hprotrusion<(Dоuter-Diner)/2に設定される。突起61の領域におけるストッパ本体38の直径Dprotrusionは、溝56の領域におけるストッパ本体の直径Dinnarと突起の高さHprotrusionの合計である。安全係数を含めて、Hprotrusion<(Douter-Dinner)/2を確実にすることができる。
【0111】
Microsoft(登録商標)ExcelのOracle(登録商標)CrystalBallソフトウェア(バージョン11.1.2.4.600)を用いたモンテカルロシミュレーションを実施して、ストッパ100の周囲の突起61の適切な数(間隔)と突起61の高さを決定し、所望の粘着防止特性がもたらされた。シミュレーションでは、次の要因を用いた。
【0112】
リブ54領域におけるストッパ本体38の直径Douter、
溝56の領域におけるストッパ本体38の直径Dinner
突起61の領域におけるストッパ本体38の直径Dprotrusion、
ストッパ100が付着を引き起こす可能性のある力の下に置かれたときの楕円化による変形fdefomationのパーセンテージ、
突起61の高さHprotrusion、および
突起高さの安全係数fp
直径Dinnerを有する溝56は、直交座標系(x,y)の原点(0,0)を中心とした、長軸ainnerおよび短軸binnerを有する楕円によって以下の式で表される。
【0113】
【0114】
同様に、直径Douterを有するリブ54は、中心が((Dinner+Douter)/2、0)で、長軸aouterおよび短軸bouterを有する楕円によって以下の式で表される。
【0115】
【0116】
外力が加えられていない場合(fdeformtion=0)、上記のそれぞれで、どちらの楕円も円であり、短軸は長軸に等しい。
【0117】
X=rcosθおよびx=rsinθとして極座標に切り替えることにより、式1は次のようになる。
【0118】
【0119】
式3の右辺を1/ainnerで割ることにより、溝楕円の方程式が以下のように得られ、ここで、ainner=Dinner/2×(1-fdeformtion/100)およびbinner=1/ainner(制約下の等方性変形):
【0120】
【0121】
同様に、溝楕円と同様の関係で、リブ楕円の方程式2を極座標に切り替えて以下の式が得られ、ここで、aouter=Douter/2×(1-fdeformtion/100)およびbouter=1/aouterである。
【0122】
【0123】
この式における正のルートrouter,1(θ)およびrouter,2(θ)は、リブ楕円の包絡線を表し、所与のθ、d(θ)について、2つの楕円間の距離は次のように表される
【0124】
【0125】
2つの突起61間の最小角度距離は、所与のθに対して、Δθがシミュレーション中に用いられる1°の増分である、という条件で近似される。
【0126】
【0127】
また、
【0128】
【0129】
シミュレーションには、次のリブ直径Douterおよび溝直径Dinnerを用いた。
【0130】
【0131】
等方性楕円化パラメータfdeformationは、0%(楕円化なし)から10%(極端な楕円化、現実世界の条件では起こりそうにない)まで変化した。突起高さHprotrusionは、0.5×(Douter/2-Dinner/2)から、(Douter/2-Dinner/2)まで、すなわち、溝56深さの50%から溝56深さの100%まで変化した。
【0132】
モンテカルロシミュレーションは、構成ごとに10,000回の試行で伝統的に実行され、各ストッパについての突起61間の決定された最小角度距離を
図21に示す。
【0133】
リブ内の突起61は、筒とストッパとの間の接触圧力が変更された場合、作動および滑走の力、または容器閉鎖の完全性などのストッパ機能に影響を与える可能性があるため、突起61のストッパ特性に対する可能性のある影響を決定するために、有限要素分析(FEA)が行われた。
【0134】
1mLの筒(内径6.35mm)を、内溝とリブの外径との間の距離の約50%に等しい高さの突起を有する1mLのストッパと組み立てた。6つの突起61は、各連続した溝の間に30°オフセットで、各溝内で60°離れて配置された。システムのFEA分析は、突起の外面に対する筒の内面が明確であったことを示し、従って、突起と筒の内面との間の直接接触は観察されなかった。ストッパの接触圧力は確かに変更されなかったため、ストッパの機能は突起の影響を受けなかった。
【0135】
図21に示すように、突起61の角度間隔は、ストッパ設計にかかわらず、最小約30°、中央値40°~60°、および最大60°~80°で類似している。中央値に基づいて、付着を避けるために、ストッパの周囲に6~9個の突起61が設けられている。
【0136】
突起61は、接触面積をさらに最小化するために、突起間の角度距離の半分に対応する、溝56から溝56までのオフセット間隔を有する複数の溝に設けられ得る。例えば、溝56ごとに6つの突起がある場合、第1の溝56は、ストッパ100の外周の周りに0°、60°、120°、180°、240°、および300°の突起を有し、第2の溝56は、ストッパ100の外周の周りに30°、90°、150°、210°、270°、および330°の突起61を有する。
【0137】
突起61の高さは、リブ半径Douter/2と溝半径Dinner/2との差の50%から100%未満とすることができる。
【0138】
突起61は、凸状の外面を有する丸みを帯びてもよく、実質的に楕円形の断面を有してもよく、または突起61の形状および寸法が、1つのストッパ100の外側側壁58の、別のストッパ100の外側側壁58への接着防止をもたらす限り、任意の形状を有してもよい。例えば、突起61は、円形、楕円形、正方形、長方形、または多角形である断面を有し得、平坦な外面または直線の辺を有した丸みを帯びた外面を有し得る。突起の丸みを帯びた凸面は、突起がドーム形状を有するように、総ての方向に凸面であってもよい。
【0139】
ストッパは、ストッパとシリンジバレルとの間に変わらずに密封を提供しながら、シリンジバレル内でストッパを容易に移動させるための任意の適切な材料で作製することができる。そのような材料としては、天然ゴム、合成ゴム、およびより具体的には、ブチル、ブロモブチル、クロロブチル、シリコーン、ニトリル、スチレンブタジエン、ポリクロロプレン、エチレンプロピレンジエン、フルオロエラストマー、熱可塑性エラストマー、ならびにそれらの組み合わせ及びブレンドから作製されるゴムが挙げられるが、これらに限定されず、好ましくは、ブロモブチルなどのブチルゴムから作製される。ストッパの外面は、任意選択で、適切なコーティング材料でコーティングされてもよい。そのようなコーティング材料としては、ストッパ材料とシリンジ12のチャンバ24を占有する医薬組成物との間のバリアとして機能し、ストッパ材料からの物質の抽出および/または浸出、ならびに医薬組成物のストッパ材料への浸透の低減を可能にするコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフルオリデン、フッ化ビニル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロアルコキシポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、パリレン、またはポリエチレン、ポリプロピレン、パリレンC、およびパリレンFなどの非フルオロポリマー、ならびに/またはベントチューブの処理中の滑らかさ、粘着性の低下、および/またはストッパの保護のためのシリコーン層などの非フルオロポリマーが挙げられる。
【0140】
本発明の特定の実施形態は、例示の目的で上記で説明されてきたが、当業者には、本発明の詳細の多数の変更が、本発明から逸脱することなく行われ得ることが明らかであろう。
【国際調査報告】