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特表2024-543239キメラアディポネクチンポリペプチド、同ポリペプチドを含む細胞外小胞、およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】キメラアディポネクチンポリペプチド、同ポリペプチドを含む細胞外小胞、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241112BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241112BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20241112BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241112BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 9/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61P 33/02 20060101ALI20241112BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20241112BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/62 Z
C12N5/071
A61K35/12
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/10 101
A61P9/12
A61P11/00
A61P13/12
A61P19/00
A61P19/06
A61P19/10
A61P9/00
A61P9/02
A61P33/02 171
A61K47/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024553920
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 EP2022084653
(87)【国際公開番号】W WO2023104822
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】21306717.6
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524213988
【氏名又は名称】シロア
(71)【出願人】
【識別番号】524213999
【氏名又は名称】ジェリド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】マアムーン,ゼイン エル アビディーン ロバート
(72)【発明者】
【氏名】トレンティン,ベルナデット ナディーン
(72)【発明者】
【氏名】ポラック,カタジナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC15
4C076CC17
4C076CC21
4C076EE59
4C076EE60
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA19
4C087CA47
4C087NA14
4C087ZA05
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZA42
4C087ZA45
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA70
4C087ZA81
4C087ZA96
4C087ZA97
4C087ZC31
4C087ZC33
4C087ZC35
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA01
4H045EA27
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、アディポネクチンを含むキメラポリペプチド、前記キメラポリペプチドをコードする核酸、および前記キメラポリペプチドを含む細胞外小胞に関する。本発明はさらに、医薬として、特には様々な疾患を処置するための、前記細胞外小胞の使用に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の順序で、
i)アディポネクチン、好ましくは野生型アディポネクチンのアミノ酸配列、
ii)膜貫通型タンパク質の膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、および
iii)任意選択で、エンドソーム選別輸送複合体(Endosomal Sorting Complexes Required for Transport)(ESCRT)細胞機構と相互作用するペプチドのアミノ酸配列
を含む、キメラポリペプチド。
【請求項2】
前記アディポネクチンのアミノ酸配列と前記膜貫通型ドメインのアミノ酸配列との間に少なくとも1つのリンカーをさらに含む、請求項1に記載のキメラポリペプチド。
【請求項3】
N末端からC末端に、構成要素iii)、ii)、およびi)を含む、請求項1~2に記載のキメラポリペプチド。
【請求項4】
膜直下標的化ドメインをさらに含み、好ましくは前記膜直下標的化ドメインがアンカー分子に連結されており、好ましくは前記アンカー分子が脂肪酸である、請求項1~3のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項5】
前記膜貫通型ドメインが、好ましくはそれぞれ配列番号34および配列番号36を有する、より好ましくはそれぞれ配列番号35および配列番号37を有する、CD40Lの膜貫通型ドメインおよびCD8の膜貫通型ドメインを含む群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項6】
パイロットペプチドが、配列番号1を有する少なくとも1つのYxxLモチーフまたは配列番号4を有する少なくとも1つのDyxxLモチーフ、および配列番号8を有する少なくとも1つのPxxPモチーフを含み、「x」が、任意のアミノ酸残基を表す、
請求項1~5のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項7】
前記パイロットペプチドが、配列番号30を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含み、
前記配列番号30のバリアントが、それぞれ配列番号1および配列番号4を有する、少なくとも3つのYxxLモチーフおよび/またはDyxxLモチーフ、ならびに配列番号8を有する少なくとも4つのPxxPモチーフを保持し、「x」が、任意のアミノ酸残基を表す、
請求項1~6のいずれか1項に記載のキメラポリペプチド。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のキメラポリペプチドをコードする核酸。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のキメラポリペプチドを含む細胞外小胞であって、
前記キメラポリペプチドの膜貫通型ドメインが、細胞外小胞脂質二重層に固定されており、
前記キメラポリペプチドのアディポネクチンが、細胞外小胞の外面に露出している、
細胞外小胞。
【請求項10】
前記細胞外小胞が、好ましくは約30nm~約120nmの範囲の直径を有するエクソソームである、請求項9に記載の細胞外小胞。
【請求項11】
任意選択で可溶性アディポネクチンをさらに含む、請求項9または10に記載の細胞外小胞の集団。
【請求項12】
精製されている、好ましくは超精製されている、請求項9もしくは10に記載の細胞外小胞、または請求項11に記載の細胞外小胞の集団。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項9、10、もしくは12に記載の細胞外小胞、または請求項11もしくは12に記載の細胞外小胞の集団。
【請求項14】
糖尿病、肥満、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性もしくは欠乏に関連する疾患、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、アテローム性動脈硬化症(冠動脈疾患、脳卒中、および末梢動脈疾患を含む)、線維症、炎症性肺疾患、ネフローゼ疾患、睡眠時無呼吸、ドライアイ疾患、炎症性眼疾患、胃炎および胃食道逆流症、炎症性腸疾患、膵炎、骨粗鬆症、ならびに炎症性の骨および関節疾患を含む群から選択される疾患、障害、または状態の処置に使用するための、請求項9、10、もしくは12に記載の細胞外小胞、または請求項11もしくは12に記載の細胞外小胞の集団。
【請求項15】
アディポネクチンが、任意選択でラクトアドヘリンまたはその機能的C1および/もしくはC2ドメインに融合した組み換え型アディポネクチンである、請求項14に記載の使用のための細胞外小胞またはその集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アディポネクチンを含むキメラポリペプチド、前記キメラポリペプチドをコードする核酸、および前記キメラポリペプチドを含む細胞外小胞に関する。さらに本発明は、医薬としての、特には様々な疾患を処置するための、前記細胞外小胞の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪組織は、幅広い様々な生物活性タンパク質(アディポカイン)および脂質を分泌する内分泌臓器であり、このうちアディポネクチンは、最も豊富なアディポカインのうちの1つである。アディポカインは、244アミノ酸のサイトカインであり、主にオリゴマー複合体で見いだされる。アディポネクチンは、インスリン抵抗性、心血管疾患、炎症性状態、およびがんを含む様々なヒトおよび動物の状態に有益な効果を発揮することが知られている。このように、アディポネクチンは、様々な疾患の新薬開発にとって有望な候補である。
【0003】
この有望な態様にもかかわらず、現在、臨床試験で利用可能なアディポネクチン療法は存在しない。実際に、翻訳後修飾および適切な高度に多量体化した複合体アセンブリを含む、アディポネクチンの天然の機能的形態の大規模産生は、困難なタスクである。アディポネクチンの短い半減期と組み合わせると、妥当な価格で高レベルの生物活性アディポネクチンを供給する生産戦略は存在しない。よって、多量体の天然の活性型アディポネクチンを提供する別の手法が待たれている。
【0004】
本発明において、本発明者らは、アディポネクチンが、細胞外小胞に固定される場合に、大量に、しかも天然の高度に多量体化した形態で産生され得ること、およびこれらアディポネクチンを多く含む細胞外小胞が、特徴付けられた適格なバッチで精製および保存され得ることを見いだした。このような標準化された物質は、たとえば糖尿病、肥満、および関連する代謝性疾患、インスリン抵抗性、心血管疾患、炎症性状態、およびがんなどの、アディポネクチンから利益を得る様々なヒト状態を処置するための有望な戦略のための道を切り開く。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、任意の順序で、
i)アディポネクチン、好ましくは野生型アディポネクチンのアミノ酸配列、
ii)膜貫通型タンパク質の膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、および
iii)任意選択で、エンドソーム選別輸送複合体(Endosomal Sorting Complexes Required for Transport)(ESCRT)細胞機構と相互作用するペプチドのアミノ酸配列
を含む、キメラポリペプチドに関する。
【0006】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、アディポネクチンのアミノ酸配列と膜貫通型ドメインのアミノ酸配列との間に少なくとも1つのリンカーをさらに含む。
【0007】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、構成要素iii)、ii、およびi)を含む。
【0008】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、膜直下標的化ドメインをさらに含み、好ましくは、膜直下標的化ドメインは、アンカー分子に連結され、好ましくは、アンカー分子は、脂肪酸である。
【0009】
一実施形態では、膜貫通型ドメインは、好ましくはそれぞれ配列番号34および配列番号36を有する、より好ましくはそれぞれ配列番号35および配列番号37を有する、CD40Lの膜貫通型ドメインおよびCD8の膜貫通型ドメインを含む群から選択される。
【0010】
一実施形態では、パイロットペプチドは、配列番号1を有する少なくとも1つのYxxLモチーフまたは配列番号4を有する少なくとも1つのDYxxLモチーフ、および配列番号8を有する少なくとも1つのPxxPモチーフを含み、ここで「x」は任意のアミノ酸残基を表す。
【0011】
一実施形態では、パイロットペプチドは、配列番号30を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含み、配列番号30のバリアントは、それぞれ配列番号1および配列番号4を有する少なくとも3つのYxxLモチーフおよび/またはDYxxLモチーフ、ならびに配列番号8を有する少なくとも4つのPxxPモチーフを保持し、「x」は、任意のアミノ酸残基を表す。
【0012】
本発明はまた、本発明のキメラポリペプチドをコードする核酸にも関する。
【0013】
本発明はまた、本発明のキメラポリペプチドを含む細胞外小胞にも関し、好ましくはキメラポリペプチドの膜貫通型ドメインは、細胞外小胞脂質二重層に固定されており、キメラポリペプチドのアディポネクチンは、細胞外小胞の外面に露出している。
【0014】
一実施形態では、細胞外小胞は、好ましくは約30nm~約120nmの範囲の直径を有する、エクソソームである。
【0015】
本発明はまた、任意選択で可溶性アディポネクチンをさらに含む、本発明の細胞外小胞の集団にも関する。
【0016】
一実施形態では、本発明の細胞外小胞または本発明の細胞外小胞の集団は精製されており、好ましくは超精製されている。
【0017】
本発明はまた、医薬として使用するための、本発明の細胞外小胞または本発明の細胞外小胞の集団にも関する。
【0018】
本発明はまた、糖尿病、肥満、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性もしくは欠乏に関連する疾患、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、アテローム性動脈硬化症(冠動脈疾患、脳卒中、および末梢動脈疾患を含む)、線維症、炎症性肺疾患、ネフローゼ疾患、睡眠時無呼吸、ドライアイ疾患、炎症性眼疾患、胃炎および胃食道逆流症、炎症性腸疾患、膵炎、骨粗鬆症、ならびに炎症性の骨および関節疾患を含む群から選択される疾患、障害、または状態の処置に使用するための、本発明の細胞外小胞または本発明の細胞外小胞の集団にも関する。
【0019】
本発明はまた、糖尿病、肥満、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性もしくは欠乏に関連する疾患、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、アテローム性動脈硬化症(冠動脈疾患、脳卒中、および末梢動脈疾患を含む)、線維症、ネフローゼ疾患、睡眠時無呼吸、ドライアイ疾患、炎症性眼疾患、胃炎および胃食道逆流症、炎症性腸疾患、膵炎、骨粗鬆症、ならびに炎症性の骨および関節疾患を含む群から選択される疾患、障害、または状態の処置に使用するための、その外面に露出したアディポネクチンを有する細胞外小胞またはその集団にも関する。
【0020】
一実施形態では、アディポネクチンは、任意選択でラクトアドヘリンまたはその機能的C1および/またはC2ドメインに融合した組み換え型アディポネクチンである。
【0021】
本発明はまた、対象の肥満、インスリン抵抗性、またはインスリン抵抗性もしくは欠乏に関連する疾患を診断する方法であって、
a)対象から以前に回収したサンプル中のアディポネクチンに会合した小さい細胞外小胞のレベルまたは量を測定するステップと、
b)ステップa)で決定したレベルまたは量を、アディポネクチンに会合した小さい細胞外小胞の参照レベルまたは量と比較するステップであって、参照レベルまたは量が、肥満もしくはインスリン抵抗性に罹患していないことが既知である参照対象からのサンプル、または全員が肥満もしくはインスリン抵抗性に罹患していない1人より多くの参照対象からのサンプルのプールにおいて事前に決定されている、ステップと、
c)ステップa)で決定したレベルまたは量が参照レベルまたは量よりも低い場合、対象が肥満、インスリン抵抗性、またはインスリン抵抗性もしくは欠乏に関連する疾患に罹患していると結論づけるステップと
を含む、方法に関する。
【0022】
定義
本発明において、以下の用語は以下の意味を有する。
【0023】
数字に先行する「約」は、前記数字の値の±10%を意味する。
【0024】
「アディポネクチン」(「30kDa脂肪細胞補体関連タンパク質」、「脂肪細胞補体関連30kDaタンパク質」、または略して「ACRP30」としても知られている)は、脂肪細胞に主に由来するタンパク質である。本明細書中使用される場合、用語「アディポネクチン」は、アディポネクチンを産生する任意の種に由来するアディポネクチンを含む。ヒトにおいては、アディポネクチンは、ADIPOQ遺伝子(ACDC、ACRP30、APM1、またはGBP28遺伝子とも呼ばれる)によりコードされている。この遺伝子は、配列番号33を有するアディポネクチン前駆体をコードしており、in vivoで配列番号31を有するその成熟形態へとプロセシングされる。
【0025】
「CD8」は、T細胞受容体(TCR)の共受容体として作用する膜貫通型糖タンパク質を表す。ヒトにおいて、CD8膜貫通型ドメインは、配列番号36を有するアミノ酸配列を含む。
【0026】
「CD40リガンド」(「CD40L」または「CD154」とも呼ばれる)は、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバーである、膜貫通型タンパク質を表す。ヒトにおいて、CD40L膜貫通型ドメインは、配列番号34を有するアミノ酸配列を含む。
【0027】
「キメラ」は、ポリペプチドを指す場合、それらの機能および/またはそれらの細胞分布が異なる少なくとも2つのタイプの複数のドメインを組み合わせるポリペプチドを指し、これらドメインの少なくとも2つは、同じもしくは異なる種の別個のタンパク質、または異なる種の同じタンパク質に由来する。
【0028】
「糖尿病」は、慢性的に過剰な血中の糖(グルコース)を特徴とする代謝性疾患を指し、「真性糖尿病」とも呼ばれている。糖尿病を診断するために使用される基準の1つは、1.26g/L血液(または約7mmol/L血液)より高いの絶食時血糖値である。いくつかのタイプの糖尿病が存在する:
「1型糖尿病」は、「若年性糖尿病」とも呼ばれており、小児または若年成人におけるインスリンを産生する膵臓のランゲルハンス島のβ細胞の消失を特徴とする(自己免疫疾患);および
「2型糖尿病」は、「非インスリン依存性糖尿病」とも呼ばれており、(すなわちインスリン感受性細胞のインスリンに対する応答が消失する場合)インスリン抵抗性の漸進的な発症を特徴とする。インスリン抵抗性は、脂肪組織および筋肉によるグルコースの取り込みの減少、ならびに肝臓でのグルコース産生の阻害の減少により徴候が示される。より進行したステージでは、2型糖尿病は、インスリン欠乏症、すなわち、内分泌性膵細胞によるインスリン合成の機能不全をもたらし得る。
【0029】
「インスリン抵抗性または欠乏に関連する疾患」または「グルコース耐糖能障害に関連する疾患」は、2型糖尿病、メタボリックシンドロームを含むいくつかの代謝性疾患だけでなく、心血管疾患(Ford, 2005. Diabetes Care. 28(7):1769-78)、非アルコール性脂肪肝疾患(Bugianesi et al., 2010. Curr Pharm Des. 16(17):1941-51)、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)(Diamanti-Kandarakis, 2006. Endocrine. 30(1):13-7)、アルツハイマー病(Watson & Craft, 2003. CNS Drugs. 17(1):27-45)、およびがん(Arcidiacono et al., 2012. Exp Diabetes Res. 2012:789174)も指す。
【0030】
「ドメイン」は、タンパク質またはポリペプチドを指す場合、前記タンパク質またはポリペプチドに関する構造的および/または機能的性質を有する領域を指す。本明細書中使用される場合、「膜貫通型ドメイン」は、生体膜のリン脂質二重層に及ぶタンパク質またはポリペプチドの機能的な領域を指す。
【0031】
「ESCRT」または「エンドソーム選別輸送複合体(endosomal sorting complexes required for transport)」は、本来、5つのマルチサブユニットタンパク質複合体から作製された細胞機構を指し、これは専用のエンドソームと協調的に作用して、限界膜から内腔内に突出する(bud into)小胞への特定の積み荷の移動を容易にする。この機構は、いくつかのエンベロープウイルスにより乗っ取られ、形質膜を含む細胞膜から突出する。
【0032】
「エクソソーム」は、真核細胞のエンドソームの区画で産生される細胞外小胞を指す(Thery et al., 2018. J Extracell Vesicles. 7(1):1535750; Yanez-Mo et al., 2015. J Extracell Vesicles. 4:27066; van Niel et al., 2018. Nat Rev Mol Cell Biol. 19(4):213-228)。通常、エクソソームは、その表面にCD81、CD63、およびCD9のマーカーを保有する。
【0033】
「発現ベクター」は、それ自体が終止配列に作動可能に連結された目的の核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む、適切な宿主細胞において目的の核酸配列(たとえば本発明に係る核酸など)の発現を指示することが可能なベクターを指す。
【0034】
「細胞外小胞」は、細胞から自然に放出され、前記細胞のサイトゾルフラクションを含む脂質二重層から構成されるいずれかの小胞を指す。特にこの表現は、細胞外の空間、すなわち「エクソソーム」内に分泌される小胞を含む。
【0035】
「インスリン抵抗性」は、既知の量の外因性または内因性インスリンが対象でのグルコースの取り込みおよび利用を正常な集団と同じように増加させることができないことを指す。
【0036】
「単離された」およびそのいずれかの語形変化ならびに「精製された」およびそのいずれかの語形変化は、互換可能に使用されており、これが指す分子実体(たとえばポリペプチド、核酸、細胞外小胞など)が、前記分子実体が通常見いだされる天然の環境で見いだされる他の成分(すなわち混入物質)を実質的に含まないことを意味する。好ましくは、単離または精製された分子実体(たとえば単離または精製されたポリペプチド、単離または精製された核酸、単離または精製された細胞外小胞など)は、細胞において会合する他の分子実体を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、前記単離または精製された分子実体が、50%より多く、好ましくは60%より多く、70%より多く、80%より多く、90%より多く、95%より多く、およびさらにより好ましくは98%または99%より多くの不均一な組成物を表す(すなわち少なくとも50%純粋である)ことを意味する。純度は、限定するものではないが、クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、イムノアッセイ、組成物解析、生物学的アッセイなどを含む当業者に公知の様々な方法により評価され得る。
【0037】
「肥満」(または過体重)は、健康に有害であり得る体脂肪の異常または過剰な蓄積として定義される慢性疾患(1997年より世界保健機関により認定)を指す。さらに世界保健機関によると、肥満の定義は、ボディマス指数(BMI=体重/(身長))の測定値に基づき、疾患を3つのレベル:25kg/m<BMI<30kg/mである場合「過体重」;30kg/m<BMI<40kg/mである場合「肥満」;および40kg/m<BMIである場合「病的肥満」に分類する。
【0038】
「パイロットペプチド」は、ESCRTタンパク質と相互作用するペプチドを指す。前記パイロットペプチドは、膜小胞、特にエクソソームを形成する小胞、または膜小胞、特には真核細胞におけるエクソソーム形成小胞の形成に関与する細胞区画に向けられることが可能である。
【0039】
「対象」は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。一実施形態では、対象は、「患者」、すなわち医療の受診を待機しているか、または医療を受診しているか、または過去/現在/将来医療の対象であった/ある/あり得るか、または疾患の発症に関してモニタリングされている温血動物、より好ましくはヒトであり得る。
【0040】
「膜直下標的化ドメイン」または「膜標的化ドメイン」または「膜動員ドメイン」は、互換可能に使用され、細胞、特には真核細胞(たとえばエクソソーム産生細胞)において、前記膜の中に挿入されることなく細胞膜および/または小胞膜に自身を固定することができるドメインを指し、前記固定は、1つ以上のアンカー分子によって、および/または膜直下標的化ドメインと膜との間の相互作用(たとえば静電相互作用)によって達成される。特定の実施形態では、膜直下標的化ドメインは、細胞膜の内面(すなわち細胞膜の細胞質側)および/または小胞膜の内面(すなわち小胞膜の内腔側)に結合するか、またはこれと相互作用することが可能である。
【0041】
「治療上有効量」は、標的に有意な負のまたは有害な副作用をもたらすことなく、(1)疾患、障害、もしくは状態の発症を遅延もしくは予防すること;(2)疾患、障害、もしくは状態の1つ以上の症状の進行、増悪、もしくは悪化を遅延もしくは停止させること;(3)疾患、障害、もしくは状態の症状の寛解をもたらすこと;(4)疾患、障害、もしくは状態の重症度もしくは頻度を低減させること;または(5)疾患、障害、もしくは状態を治癒することを目的とする、キメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団、組成物、医薬組成物、医薬などのレベルまたは量を指す。治療上有効量は、予防的または防止的な作用のために、疾患、障害、または状態の発症の前に投与され得る。あるいはまたはさらに、治療上有効量は、治療作用のために、疾患、障害、または状態の発症後に投与され得る。
【0042】
「膜貫通型タンパク質」は、生体膜のリン脂質二重層への固定を可能にする、少なくとも1つの膜貫通型ドメインを含むタンパク質を指す。膜貫通型ドメインは、一般的に疎水性-らせん状であり、いくつか、特には2、3、4、5、6、7、8、9、または10、またはさらには20以上の疎水性のαヘリックスを含有し得る。これはまた、β-シート、たとえば8~22個のβ鎖から通常構成されるβバレル構造で整列し得る。膜貫通型タンパク質はまた、脂質層の異なる側にあるN末端およびC末端の位置により分類することもできる:I型、II型、III型、およびIV型。I型膜貫通型タンパク質は、ストップ-トランスファーアンカー(stop-transfer anchor)配列で脂質膜に固定されており、それらのN末端ドメインは、合成の間小胞体(ER)の内腔(および成熟形態が細胞膜上に位置する場合は細胞外空間)を標的とする。II型およびIII型は、シグナル-アンカー配列で固定されており、II型は、そのC末端ドメインがER内腔を標的とするが、III型は、そのN末端ドメインがER内腔を標的とする。IV型は、そのN末端ドメインがサイトゾルを標的とするIV-A、およびN末端ドメインが内腔を標的とするIV-Bにさらに細分される。
【0043】
「~を処置すること(treating)」または「処置(treatment)」または「軽減(alleviation)」は、治療上の処置および予防的または防止的手段の両方を指し、この目的は、標的とする病態または障害を防止または遅延(軽減)することである。処置を必要とするものは、障害をすでに有するもの、および障害を有する傾向のあるもの、または障害を防止すべきものを含む。一実施形態では、キメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団、組成物、医薬組成物、医薬などの治療量の投与後に、対象が以下:処置すべき疾患、障害、または状態に関連した症状のうちの1つ以上のいくらかの度合いまでの緩和;罹患率および死亡率の低減;ならびにクオリティオブライフの問題の改善のうちの少なくとも1つを示す場合、対象の疾患、障害、または状態の「処置」は成功している。疾患における処置の成功および改善を評価するための上記のパラメータは、医師によく知られている通常の手法により容易に測定可能である。
【0044】
「ベクター」は、それが連結されている目的の核酸(たとえば本発明に係る核酸など)を輸送することが可能な核酸を指す。目的の核酸(たとえば本発明に係る核酸など)の発現を指示することが可能なベクターは、「発現ベクター」と呼ばれる。一般に、発現ベクターは、プラスミドの形態にある。本明細書において、用語「プラスミド」および「ベクター」は、互換可能に使用される。しかしながら、均等な機能を供給する他の形態の発現ベクターもまた、ベクターという用語に包有される。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
本発明は、任意の順序で、
アディポネクチンのアミノ酸配列、
膜貫通型タンパク質の膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、および
任意選択で、エンドソーム選別輸送複合体(ESCRT)細胞機構と相互作用するペプチドのアミノ酸配列
を含む、キメラポリペプチドに関する。
【0046】
一実施形態では、構成要素i)、ii)、およびiii)は、キメラポリペプチドにおいてN末端からC末端にまたはC末端からN末端に構築されている。
【0047】
本発明によれば、キメラポリペプチドは、アディポネクチンのアミノ酸配列を含む。
【0048】
一実施形態では、アディポネクチンのアミノ酸配列は、野生型アディポネクチンのアミノ酸配列を含むかまたはからなる。
【0049】
一実施形態では、アディポネクチンのアミノ酸配列は、変異体アディポネクチンのアミノ酸配列を含むかまたはからなる。
【0050】
一実施形態では、アディポネクチンのアミノ酸配列は、野生型ヒトアディポネクチンのアミノ酸配列を含むかまたはからなる。一実施形態では、野生型ヒトアディポネクチンは、配列番号33を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。
配列番号33
MLLLGAVLLLLALPGHDQETTTQGPGVLLPLPKGACTGWMAGIPGHPGHNGAPGRDGRDGTPGEKGEKGDPGLIGPKGDIGETGVPGAEGPRGFPGIQGRKGEPGEGAYVYRSAFSVGLETYVTIPNMPIRFTKIFYNQQNHYDGSTGKFHCNIPGLYYFAYHITVYMKDVKVSLFKKDKAMLFTYDQYQENNVDQASGSVLLHLEVGDQVWLQVYGEGERNGLYADNDNDSTFTGFLLYHDTN
【0051】
前記野生型ヒトアディポネクチンは、配列番号32のアミノ酸配列を有するペプチドシグナルを含み、これは典型的に、in vivoで切断されて、野生型ヒトアディポネクチンの成熟形態を形成する。
配列番号32
MLLLGAVLLLLALPGHDQ
【0052】
よって、一実施形態では、アディポネクチンのアミノ酸配列は、配列番号31を有する野生型ヒトアディポネクチンの成熟形態のアミノ酸配列を含むかまたはからなり、すなわち配列番号32を有するペプチドシグナルは、配列番号33を有する野生型ヒトアディポネクチンから切断されている。
配列番号31
ETTTQGPGVLLPLPKGACTGWMAGIPGHPGHNGAPGRDGRDGTPGEKGEKGDPGLIGPKGDIGETGVPGAEGPRGFPGIQGRKGEPGEGAYVYRSAFSVGLETYVTIPNMPIRFTKIFYNQQNHYDGSTGKFHCNIPGLYYFAYHITVYMKDVKVSLFKKDKAMLFTYDQYQENNVDQASGSVLLHLEVGDQVWLQVYGEGERNGLYADNDNDSTFTGFLLYHDTN
【0053】
一実施形態では、アディポネクチンのアミノ酸配列は、配列番号31、配列番号33を有するアミノ酸配列またはそれらのバリアントを含むかまたはからなる。
【0054】
一実施形態では、配列番号31または配列番号33を有するアミノ酸配列のバリアントは、配列番号31または33のアミノ酸配列と少なくとも70%の全体的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の全体的配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0055】
さらにまたはあるいは、配列番号31または配列番号33を有するアミノ酸配列のバリアントは、配列番号31または配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも70%の局地的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の局地的配列同一性を含む。
【0056】
本発明によれば、キメラポリペプチドは、膜貫通型タンパク質の膜貫通型ドメインのアミノ酸配列を含む。
【0057】
一実施形態では、膜貫通型ドメインは、哺乳動物、ウイルス、および細菌を含むいずれかの生物に由来する膜貫通型タンパク質のドメインである。
【0058】
一実施形態では、膜貫通型ドメインは、ヒトタンパク質、非ヒト動物のタンパク質、病原性生物または作用物質のタンパク質(特にウイルスタンパク質、細菌タンパク質、寄生生物タンパク質)、または腫瘍細胞タンパク質を含むかまたはからなる群から選択される膜貫通型タンパク質のドメインである。
【0059】
一実施形態では、膜貫通型ドメインは、I型の膜貫通型タンパク質のドメインである。前記I型の膜貫通型タンパク質の膜貫通型ドメインは、本明細書において上述したようにキメラポリペプチドにおいて使用されてもよく、構成要素i)、ii)、およびiii)は、存在する場合、キメラポリペプチドにおいてN末端からC末端に構築されている(たとえば図1のコンストラクト1)。
【0060】
一実施形態では、膜貫通型ドメインは、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(たとえば限定するものではないが、HIV-1またはHIV-2)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)(たとえば限定するものではないが、HTLV-1またはHTLV-2)、およびマソン・ファイザー・サルウイルス(MPMV)を含むかまたはからなる群から選択されるレトロウイルスの膜貫通型糖タンパク質のドメインである。
【0061】
一実施形態では、膜貫通型ドメインは、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン膜貫通型タンパク質のドメインである。
【0062】
一実施形態では、膜貫通型ドメインは、CD8のドメインである。
【0063】
一実施形態では、膜貫通型ドメインは、II型の膜貫通型タンパク質のドメインである。前記II型の膜貫通型タンパク質の膜貫通型ドメインは、本明細書において上述したようにキメラポリペプチドにおいて使用されてもよく、構成要素i)、ii)、およびiii)は、存在する場合、キメラポリペプチドにおいてC末端からN末端に構築されている(たとえば図1のコンストラクト2、3、4、5)。
【0064】
一実施形態では、膜貫通型ドメインは、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ膜貫通型タンパク質のドメインである。
【0065】
一実施形態では、膜貫通型ドメインは、CD40リガンド(CD40L)のドメインである。
【0066】
一実施形態では、膜貫通型ドメインは、CD40リガンド(CD40L)またはCD8のドメインである。
【0067】
一実施形態では、CD40Lの膜貫通型ドメインは、配列番号34を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。一実施形態では、膜貫通型ドメインは、配列番号35を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。
配列番号34
IFMYLLTVFLITQMIGSALFAVYLH
配列番号35
MIETYNQTSPRSAATGLPISMKIFMYLLTVFLITQMIGSALFAVYLHRRLDK
【0068】
一実施形態では、CD8の膜貫通型ドメインは、配列番号36を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。一実施形態では、膜貫通型ドメインは、配列番号37を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。
配列番号36
IYIWAPLAGICVALLLSLIITLICYH
配列番号37
DIYIWAPLAGICVALLLSLIITLICYHR
【0069】
一実施形態では、配列番号34、35、36、または37を有するアミノ酸配列のバリアントは、配列番号34、35、36、または37のアミノ酸配列と少なくとも70%の全体的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の全体的配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0070】
さらにまたはあるいは、配列番号34、35、36、または37を有するアミノ酸配列のバリアントは、配列番号34、35、36、または37のアミノ酸配列と少なくとも70%の局地的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の局地的配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0071】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、他では「パイロットペプチド」としても知られている、エンドソーム選別輸送複合体(ESCRT)細胞機構と相互作用するペプチドのアミノ酸配列をさらに含む。
【0072】
一実施形態では、前記パイロットペプチドは、膜小胞、特にはエクソソーム形成小胞、または膜小胞の形成に関与する細胞区画、特には真核細胞におけるエクソソーム形成小胞に向けることが可能である。
【0073】
本発明のキメラポリペプチドなどのキメラポリペプチドに組み込まれる場合、パイロットペプチドは、前記キメラポリペプチドを、膜小胞および/またはそれらの形成の位置に向けることを可能にし、特には、前記ポリペプチドが、膜小胞に会合した細胞により分泌され得る(特にエクソソーム)ように、前記キメラポリペプチドを膜小胞の膜に向けることを可能にする。
【0074】
ESCRTタンパク質と相互作用するパイロットペプチドは、付与された欧州特許第2 268 816号および米国特許第9,546,371号に記載されており、この関連する内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0075】
一実施形態では、パイロットペプチドは、少なくとも1つのYxxLモチーフ(配列番号1)を含み、ここで「x」は、任意のアミノ酸残基を表す。特にこれは、1、2、または3つの配列番号1を有するYxxLモチーフを含み得る。
【0076】
一実施形態では、パイロットペプチドの前記YxxLモチーフまたはYxxLモチーフのうちの1つは、たとえばYINL(配列番号2)またはYSHL(配列番号3)であり得る。
【0077】
一実施形態では、パイロットペプチドは、DYxxLモチーフ(配列番号4)を含み、ここで「x」は、任意のアミノ酸残基を表す。
【0078】
一実施形態では、前記DYxxLモチーフは、たとえばDYINL(配列番号5)であり得る。
【0079】
あるいはまたはさらに、パイロットペプチドは、YxxLモチーフ(配列番号1)と等価である少なくとも1つのモチーフ、たとえばYxxFモチーフ(配列番号6)を含み、ここで「x」は、任意のアミノ酸残基を表す。
【0080】
あるいはまたはさらに、パイロットペプチドは、DYxxLモチーフ(配列番号4)と等価である少なくとも1つのモチーフ、たとえばDYxxFモチーフ(配列番号7)を含み、ここで「x」は、任意のアミノ酸残基を表す。
【0081】
一実施形態では、パイロットペプチドは、少なくとも1つのPxxPモチーフ(配列番号8)をさらに含み、ここで「x」は、任意のアミノ酸残基を表す。特にこれは、配列番号8を有する1、2、3、または4つのPxxPモチーフを含み得る。
【0082】
一実施形態では、前記パイロットペプチドのPxxPモチーフまたはPxxPモチーフのうちの1つは、PSAP(配列番号9)またはPTAP(配列番号10)である。
【0083】
一実施形態では、パイロットペプチドは、配列番号1を有する少なくとも1つのYxxLモチーフまたは配列番号4を有する少なくとも1つのDYxxLモチーフ、および配列番号8を有する少なくとも1つのPxxPモチーフを含む。
【0084】
一実施形態では、パイロットペプチドは、配列番号1または配列番号4をそれぞれ有する1、2、または3つのYxxLモチーフおよび/またはDYxxLモチーフ、ならびに配列番号8を有する1、2、3、または4つのPxxPモチーフを有するアミノ酸配列からなる。
【0085】
一実施形態では、パイロットペプチドは、配列番号1または配列番号4をそれぞれ有する3つのYxxLモチーフおよび/またはDYxxLモチーフ、ならびに配列番号8を有する4つのPxxPモチーフを有するアミノ酸配列からなる。
【0086】
一実施形態では、配列番号1を有するYxxLモチーフまたは配列番号1を有するYxxLモチーフの少なくとも1つは、1つより多い場合、下流に位置しており、すなわち、配列番号8を有する1つ以上のPxxPモチーフに対してC末端の位置に位置している。
【0087】
配列番号1を有する少なくとも1つのYxxLモチーフを含むパイロットペプチドを有するタンパク質は、細胞タンパク質およびウイルスタンパク質を含む。特に、これらウイルスタンパク質は、エンベロープウイルス(enveloped virus)の膜貫通型糖タンパク質などのエンベロープウイルスのタンパク質、またはヘルペスウイルスのタンパク質、たとえば配列番号1を有する少なくとも2つのYxxLモチーフを含むエプスタイン・バーウイルスのLMP2-Aタンパク質である。
【0088】
一実施形態では、パイロットペプチドは、レトロウイルスの膜貫通型糖タンパク質のペプチドである。一実施形態では、パイロットペプチドは、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(たとえば限定するものではないが、HIV-1またはHIV-2)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)(たとえば限定するものではないが、HTLV-1またはHTLV-2)、およびマソン・ファイザー・サルウイルス(MPMV)を含むかまたはからなる群から選択されるレトロウイルスの膜貫通型糖タンパク質のペプチドであり得る。
【0089】
一実施形態では、パイロットペプチドは、以下のアミノ酸配列:
配列番号11:PxxPxxxxPxxPxSxYxxLxPxxPExYxxLxPxxPDYxxL;
配列番号12:PxxPxPxxPxSxYxxLxPxxPExYxxLxPxxPDYxxL;
配列番号13:PxxPxxxxPxxPxSxYxxLxPxxPExYxxLxPxxPDYxxLxxxx;および
配列番号14:PxxPxPxxPxSxYxxLxPxxPExYxxLxPxxPDYxxLxxxx;
(式中、「x」および「x」はそれぞれ任意のアミノ酸残基および任意の1つまたはいくつかのアミノ酸残基を表す)
のうちの1つを含む。
【0090】
一実施形態では、パイロットペプチドは、以下のアミノ酸配列:
配列番号15:PxxPxxxxxxxxxxxxYxxL;
配列番号16:PxxPxxxxxxxxxxxDYxxL;
配列番号17:PxxPxxYxxxxxxxxxYxxL;
配列番号18:PxxPxxYxxxxxxxxDYxxL;
配列番号19:PxxPExYxxLxPxxPDYxxL;
配列番号20:PxxPxYxxL;
配列番号21:PxxPxDYxxL;
配列番号22:PxxPxYxYxxL;
配列番号23:PxxPxYxDYxxL;
配列番号24:PxxPExYxxLxPxxPDYxxL;
配列番号25:PxxPxxxxPxxPxxxYxxLxPxxPExYxxLxPxxPDYxxL;
配列番号26:PxxPxPxxPxYxxLxPxxPExYxxLxPxxPDYxxL;
配列番号27:PxxPxxxxPxxPxxxYxxLxPxxPExYxxLxPxxPDYxxLxxxx;および
配列番号28:PxxPxPxxPxYxxLxPxxPExYxxLxPxxPDYxxLxxxx
(式中、「x」および「x」はそれぞれ任意のアミノ酸残基および任意の1つまたはいくつかのアミノ酸残基を表す)
のうちの1つを含む。
【0091】
特に、「n」は、1以上かつ50未満であり得る。「n」は、特には、1~20のいずれかの値を有し得る。
【0092】
一実施形態では、パイロットペプチドは、6~100アミノ酸残基、特には20~80、30~70、または40~60アミノ酸残基、たとえば40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50アミノ酸残基を含む。
【0093】
一実施形態では、パイロットペプチドは、配列番号30を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。配列番号30を有するパイロットペプチドをコードする例示的な核酸配列は、配列番号29またはそのバリアントを含むかまたはからなる。
配列番号29
GCGCCCCACTTCCCTGAAATCTCCTTCCCCCCTAAACCCGATTCTGATTATCAGGCCTTGCTACCATCCGCGCCAGAGATCTACTCTCACCTCTCCCCCACCAAACCCGATTACATCAACCTTCGACCGGCGCCCTAA

配列番号30
APHFPEISFPPKPDSDYQALLPSAPEIYSHLSPTKPDYINLRPAP
【0094】
一実施形態では、配列番号30を有するアミノ酸配列のバリアントは、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも70%の全体的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の全体的配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0095】
さらにまたはあるいは、配列番号30を有するアミノ酸配列のバリアントは、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも70%の局地的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の局地的配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0096】
一実施形態では、配列番号30を有するアミノ酸配列のバリアントは、配列番号1または配列番号4をそれぞれ有する少なくとも1、2、または3つのYxxLまたはDyxxLモチーフ;および配列番号8を有する1、2、3、または4つのPxxPモチーフを保持する。
【0097】
一実施形態では、配列番号30のバリアントは、配列番号1および配列番号4をそれぞれ有する少なくとも3つのYxxLモチーフおよび/またはDYxxLモチーフ;ならびに配列番号8を有する少なくとも4つのPxxPモチーフを保持し、ここで「x」は、任意のアミノ酸残基を表す。
【0098】
一実施形態では、配列番号30を有するアミノ酸配列のバリアントは、配列番号1または配列番号4をそれぞれ有する3つのYxxLモチーフおよび/またはDYxxLモチーフ、ならびに配列番号8を有する4つのPxxPモチーフを保持する。
【0099】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、少なくとも1つのリンカーをさらに含む。
【0100】
一実施形態では、少なくとも1つのリンカーは、アディポネクチンのアミノ酸配列および膜貫通型ドメインのアミノ酸配列を結合する。
【0101】
一実施形態では、少なくとも1つのリンカーは、切断可能ではない。一実施形態では、少なくとも1つのリンカーは、切断可能である。
【0102】
一実施形態では、少なくとも1つのリンカーは、Gly-Serリンカーである。Gly-Serリンカーの例として、限定するものではないが、GSリンカー、GSリンカー、GSリンカー、GSリンカーが挙げられ、それらの反復および組み合わせを含む。
【0103】
一実施形態では、少なくとも1つのリンカーは、(GGGS)配列(配列番号38)を含むかまたはからなり、ここでnは、1~10、好ましくは1~5の範囲の正の整数である。
【0104】
一実施形態では、少なくとも1つのリンカーは、(GGGSGGGGS)配列(配列番号39)を含むかまたはからなり、ここでnは、1~10、好ましくは1~5の範囲の正の整数である。
【0105】
一実施形態では、アディポネクチンのアミノ酸配列および膜貫通型ドメインのアミノ酸配列を接続する少なくとも1つのリンカーは、配列SGGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGGS(配列番号53)を含む。前記リンカーは、本明細書において上述したキメラポリペプチドにおいて使用されてもよく、構成要素i)、ii)、および存在する場合はiii)は、キメラポリペプチドにおいてN末端からC末端に構築されている(たとえば図1のコンストラクト1)。
【0106】
一実施形態では、アディポネクチンのアミノ酸配列および膜貫通型ドメインのアミノ酸配列を接続する少なくとも1つのリンカーは、配列GGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGSG(配列番号54)を含む。前記リンカーは、本明細書において上述したキメラポリペプチドにおいて使用されてもよく、構成要素i)、ii)、および存在する場合はiii)は、キメラポリペプチドにおいてC末端からN末端に構築されている(たとえば図1のコンストラクト2、3、4、5)。
【0107】
一実施形態では、キメラポリペプチドが1つより多くのリンカーを含む場合、2つ以上のリンカーは、同一であってもよくまたは異なっていてもよい。
【0108】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、膜直下標的化ドメインのアミノ酸配列をさらに含む。
【0109】
一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、本明細書において上述したキメラポリペプチドに付加されており、構成要素i)、ii)、および存在する場合はiii)は、キメラポリペプチドにおいてC末端からN末端に構築されている(たとえば図1のコンストラクト2、3、4、5)。
【0110】
一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、好ましくは1つ以上のアンカー分子を介しておよび/または静電相互作用などの相互作用を介して、キメラポリペプチドが細胞または小胞の膜の脂質二重層に固定されるのを可能にするために十分である。
【0111】
よって、キメラポリペプチドにおけるその存在により、膜直下標的化ドメインは、細胞において発現される場合、キメラポリペプチドを前記膜に挿入することなく、キメラポリペプチドを細胞または小胞の膜に固定(または膜の中に固定)することを可能にする。
【0112】
一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、細胞膜の内面(すなわち細胞膜の細胞質側)および/または小胞膜の内面(すなわち小胞膜の内腔側)に結合する特性をキメラポリペプチドに付与する。
【0113】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、膜直下標的化ドメインをさらに含み、膜直下標的化ドメインは、アンカー分子に連結されている。
【0114】
「アンカー分子」は、細胞または小胞の膜の脂質二重層の少なくとも1つの層に挿入されることが可能な任意の分子を意味する。特に、アンカー分子は、脂質または脂質含有分子である。よって膜直下標的化ドメインは、「脂質に固定された」とも言われている。
【0115】
一実施形態では、アンカー分子は、1つ以上の脂質または脂質含有分子を含むかまたはからなり、前記脂質は、それらを細胞または小胞の膜の脂質二重層に封入することを可能にする疎水性炭素鎖を含む。
【0116】
一実施形態では、脂質は、限定するものではないが、ミリスチン酸、パルミチン酸、およびイソプレノイド(たとえば、ゲラニル-ゲラニルおよびファルネシルなど)を含む脂肪酸である。
【0117】
一実施形態では、アンカー分子は、共有結合により膜直下標的化ドメインに連結されている。
【0118】
一実施形態では、アンカー分子は、膜直下標的化ドメインのグリシン(ミリスチン酸の場合)、システイン、またはセリンのアミノ酸残基を介して膜直下標的化ドメインに連結されている。これら結合は、アミド結合またはチオエステル結合を介し得る。
【0119】
一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、外因性膜タンパク質のドメイン、または外因性膜タンパク質の膜直下標的化ドメインのバリアントである。
【0120】
一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、脂肪酸、特にはミリスチン酸、パルミチン酸、またはイソプレノイド(たとえば、ゲラニル-ゲラニルおよびファルネシルなど)の(たとえばアシル化またはプレニル化による)結合を可能にするコンセンサス配列を含むかまたはからなる。
【0121】
一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、以下のように:
(M)G-X-X-X-S/C(配列番号45)
(式中、
、X、およびXは、独立して、互いに、任意のアミノ酸残基を示し、
(M)は、キメラポリペプチドのN末端に位置する場合、翻訳後修飾によりin vivoで除去され得るイニシエーターのメチオニンを示す)
配列番号45を有するコンセンサス配列を含むかまたはからなる。
【0122】
一実施形態では、
は、C、S、およびLを含むかまたはからなる群から選択され、ならびに/または
は、S、I、V、M、およびLを含むかまたはからなる群から選択され、ならびに/または
は、K、Q、H、F、C、およびSを含むかまたはからなる群から選択される。
【0123】
一実施形態では、本明細書中記載のキメラポリペプチドが、アンカー分子に連結された膜直下標的化ドメインを含む場合、これは、好ましくは、キメラポリペプチドのN末端の位置に位置している。
【0124】
一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、いくつかの塩基性アミノ酸残基、特にはK、R、およびHを含むかまたはからなる分から選択されるいくつかのアミノ酸残基をさらに含み得る。「いくつかの(several)」は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、またはそれより多くを意味する。これらの塩基性アミノ酸残基は、特に、細胞または小胞の膜の脂質、特にコリンおよびその誘導体(たとえばホスファチジルコリン)との相互作用に関与し得、よって、これら膜に対する膜直下標的化ドメインの親和性を増加させることを可能にする。
【0125】
一実施形態では、塩基性アミノ酸残基は、配列番号45を有するコンセンサス配列に、および/またはこのコンセンサス配列の外側に位置し得る。
【0126】
よって、一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、
(M)GXXKS(配列番号46)、
CKXK(配列番号47)、および
CKXKXXXXRRR(配列番号49)
(式中、
Xは、任意のアミノ酸残基を示し、
(M)は、キメラポリペプチドのN末端に位置している場合、翻訳後修飾によりin vivoで除去され得るイニシエーターのメチオニンを示す)
から選択されるアミノ酸配列を含むかもしくはからなるか、または
これら配列のいずれかのバリアントであり、前記バリアントは、細胞または小胞の膜の脂質二重層に膜直下標的化ドメインを固定する能力を保持している。
【0127】
一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、SrCファミリータンパク質のタンパク質に由来する。このようなタンパク質の例として、限定するものではないが、Src、Yes、Lyn、Fyn、Lck、Blk、Fgr、Hck、およびYrkタンパク質(Resh, 1994. Cell. 76(3):411-413)、特にはこれらタンパク質のうちの1つのN末端部分、たとえばこれらタンパク質のうちの1つの15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のN末端アミノ酸残基が挙げられる。
【0128】
一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、c-Srcタンパク質またはv-Srcタンパク質、好ましくはc-Srcに由来する。
【0129】
あるいは、膜直下標的化ドメインは、たとえば限定するものではないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)MAタンパク質またはフィロウイルスタンパク質を含むウイルスカプシドタンパク質などの、他のアシル化タンパク質に由来し得る。
【0130】
一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、Srcタンパク質に由来する。
【0131】
一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、Srcタンパク質に由来し、以下のアミノ酸配列:
(M)GSSKSKPKDPSQRRR(配列番号50)、
(M)GSSKSKPKDPSQRRRKSR(配列番号51)
(M)GSSKSKPKDPSQRRRKSRGPGG(配列番号52)、または
これら2つの配列のいずれかのバリアント(前記バリアントは、細胞または小胞の膜の脂質二重層に膜直下標的化ドメインを固定する能力を保持している)
(式中、(M)は、キメラポリペプチドのN末端に位置している場合、翻訳後プロセシングによりin vivoで除去され得るイニシエーターのメチオニンを示す)
のうちの1つを含むかまたはからなる。
【0132】
一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、Srcタンパク質に由来し、配列番号51を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。
【0133】
一実施形態では、配列番号50、51、または52を有するアミノ酸配列のバリアントは、配列番号50、51、または52のアミノ酸配列と少なくとも70%の全体的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の全体的配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0134】
さらにまたはあるいは、配列番号50、51、または52を有するアミノ酸配列のバリアントは、配列番号50、51、または52のアミノ酸配列と少なくとも70%の局地的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の局地的配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0135】
一実施形態では、膜直下標的化ドメインは、Srcタンパク質に由来し、配列番号50、51、もしくは52を有するアミノ酸配列またはそのバリアント、好ましくは配列番号51を有するアミノ酸配列を含むかまたはからなり、上記で定義される1つ以上のアンカー分子をさらに含み、特には、2位のグリシン残基に連結されたミリスチン酸(ミリスチル部分の形態)を含む。
【0136】
一実施形態では、キメラポリペプチドが膜直下標的化ドメインを含む場合、この膜直下標的化ドメインは、少なくとも1つのリンカーを介してキメラポリペプチドの残りの部分に連結され得る。
【0137】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
本明細書中上記で定義されるアディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント;
本明細書中上記で定義される膜貫通型タンパク質の膜貫通型ドメインのアミノ酸配列;
本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列
を含むかまたはからなる。
【0138】
任意選択で、1つ以上のリンカーが、本発明のキメラポリペプチドの構成要素の間に付加され得る。
【0139】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
本明細書中上記で定義されるアディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント;
任意選択でリンカー;
本明細書中上記で定義される膜貫通型タンパク質の膜貫通型ドメインのアミノ酸配列;
任意選択でリンカー;および
本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列
を含むかまたはからなる。
【0140】
このようなコンストラクトの一例を、「コンストラクト1」として図1に示す。
【0141】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
本明細書中上記で定義されるヒト野生型アディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント、
任意選択でリンカー、
本明細書中定義されるCD8の膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、
任意選択でリンカー、ならびに
本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列(好ましくは、パイロットペプチドは、配列番号1または配列番号4をそれぞれ有する少なくとも1つのYxxLモチーフおよび/またはDYxxLモチーフ、ならびに配列番号8を有する少なくとも1つのPxxPモチーフを含む)
を含むかまたはからなる。
【0142】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
本明細書中上記で定義されるヒト野生型アディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント、
任意選択でリンカー、
本明細書中定義されるCD8の膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、
任意選択でリンカー、ならびに
本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列(好ましくは、パイロットペプチドは、配列番号1または配列番号4をそれぞれ有する3つのYxxLモチーフおよび/またはDYxxLモチーフ、ならびに配列番号8を有する4つのPxxPモチーフを含む)
を含むかまたはからなる。
【0143】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
配列番号33を有するヒト野生型アディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント、
任意選択でリンカー、
配列番号37を有するCD8の膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、またはそのバリアント、
任意選択でリンカー、および
配列番号30を有するパイロットペプチドのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0144】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号40を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。
配列番号40
MLLLGAVLLLLALPGHDQETTTQGPGVLLPLPKGACTGWMAGIPGHPGHNGAPGRDGRDGTPGEKGEKGDPGLIGPKGDIGETGVPGAEGPRGFPGIQGRKGEPGEGAYVYRSAFSVGLETYVTIPNMPIRFTKIFYNQQNHYDGSTGKFHCNIPGLYYFAYHITVYMKDVKVSLFKKDKAMLFTYDQYQENNVDQASGSVLLHLEVGDQVWLQVYGEGERNGLYADNDNDSTFTGFLLYHDTNSGGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGGSDIYIWAPLAGICVALLLSLIITLICYHRSRGAPHFPEISFPPKPDSDYQALLPSAPEIYSHLSPTKPDYINLRPAP
【0145】
一実施形態では、配列番号40を有するアミノ酸配列のバリアントは、配列番号40のアミノ酸配列と少なくとも70%の全体的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の全体的配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0146】
さらにまたはあるいは、配列番号40を有するアミノ酸配列のバリアントは、配列番号40のアミノ酸配列と少なくとも70%の局地的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の局地的配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0147】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
任意選択で、本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列、
本明細書中上記で定義される膜貫通型タンパク質の膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、
本明細書中上記で定義されるアディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0148】
任意選択で、1つ以上のリンカーが、本発明のキメラポリペプチドの構成要素の間に付加され得る。
【0149】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
任意選択で、本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列、
任意選択でリンカー、
本明細書中上記で定義される膜貫通型タンパク質の膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、
任意選択でリンカー、および
本明細書中上記で定義されるアディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0150】
このようなコンストラクトの例を、「コンストラクト2」および「コンストラクト3」として図1に示す。
【0151】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
任意選択で、本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列;(好ましくは、パイロットペプチドは、配列番号1または配列番号4をそれぞれ有する少なくとも1つのYxxLモチーフおよび/またはDYxxLモチーフ、ならびに配列番号8を有する少なくとも1つのPxxPモチーフを含む)、
任意選択でリンカー、
本明細書中上記で定義されるCD40Lの膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、
任意選択でリンカー、および
本明細書中上記で定義されるヒト野生型アディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0152】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列;(好ましくは、パイロットペプチドは、配列番号1または配列番号4をそれぞれ有する少なくとも1つのYxxLモチーフおよび/またはDYxxLモチーフ、ならびに配列番号8を有する少なくとも1つのPxxPモチーフを含む)、
本明細書中上記で定義されるCD40Lの膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、
本明細書中上記で定義されるヒト野生型アディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0153】
任意選択で、1つ以上のリンカーが、本発明のキメラポリペプチドの構成要素の間に付加され得る。
【0154】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
任意選択で、本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列(好ましくは、パイロットペプチドは、配列番号1または4をそれぞれ有する3つのYxxLモチーフおよび/またはDyxxLモチーフ、ならびに配列番号8を有する4つのPxxPモチーフを含む)、
任意選択でリンカー、
本明細書中上記で定義されるCD40Lの膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、
任意選択でリンカー、および
本明細書中上記で定義されるヒト野生型アディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0155】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列;(好ましくは、パイロットペプチドは、配列番号1または4をそれぞれ有する3つのYxxLモチーフおよび/またはDyxxLモチーフ、ならびに配列番号8を有する4つのPxxPモチーフを含む)、
本明細書中上記で定義されるCD40Lの膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、
本明細書中上記で定義されるヒト野生型アディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0156】
任意選択で、1つまたはいくつかのリンカーが、本発明のキメラポリペプチドの構成要素の間に付加され得る。
【0157】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
配列番号30を有するパイロットペプチドのアミノ酸配列またはそのバリアント、
本明細書中上記で定義されるCD40Lの膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、
本明細書中上記で定義されるヒト野生型アディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0158】
任意選択で、1つまたはいくつかのリンカーが、本発明のキメラポリペプチドの構成要素の間に付加され得る。
【0159】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
任意選択で、配列番号30を有するパイロットペプチドのアミノ酸配列またはそのバリアント、
任意選択でリンカー、
配列番号35を有するCD40Lの膜貫通型ドメインのアミノ酸配列またはそのバリアント、
任意選択でリンカー、および
配列番号31を有するヒト野生型アディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0160】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
配列番号30を有するパイロットペプチドのアミノ酸配列またはそのバリアント、
配列番号35を有するCD40Lの膜貫通型ドメインのアミノ酸配列またはそのバリアント、
配列番号31を有するヒト野生型アディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0161】
任意選択で、1つまたはいくつかのリンカーが、本発明のキメラポリペプチドの構成要素の間に付加され得る。
【0162】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号41を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。
配列番号41
MSRGSMIETYNQTSPRSAATGLPISMKIFMYLLTVFLITQMIGSALFAVYLHRRLDKGGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGSGETTTQGPGVLLPLPKGACTGWMAGIPGHPGHNGAPGRDGRDGTPGEKGEKGDPGLIGPKGDIGETGVPGAEGPRGFPGIQGRKGEPGEGAYVYRSAFSVGLETYVTIPNMPIRFTKIFYNQQNHYDGSTGKFHCNIPGLYYFAYHITVYMKDVKVSLFKKDKAMLFTYDQYQENNVDQASGSVLLHLEVGDQVWLQVYGEGERNGLYADNDNDSTFTGFLLYHDTN
【0163】
一実施形態では、パイロットペプチドが上記の実施形態において任意選択ではない場合、キメラポリペプチドは、配列番号42を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。
配列番号42
MSRGGGAPHFPEISFPPKPDSDYQALLPSAPEIYSHLSPTKPDYINLRPAPGGSRGSMIETYNQTSPRSAATGLPISMKIFMYLLTVFLITQMIGSALFAVYLHRRLDKGGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGSGETTTQGPGVLLPLPKGACTGWMAGIPGHPGHNGAPGRDGRDGTPGEKGEKGDPGLIGPKGDIGETGVPGAEGPRGFPGIQGRKGEPGEGAYVYRSAFSVGLETYVTIPNMPIRFTKIFYNQQNHYDGSTGKFHCNIPGLYYFAYHITVYMKDVKVSLFKKDKAMLFTYDQYQENNVDQASGSVLLHLEVGDQVWLQVYGEGERNGLYADNDNDSTFTGFLLYHDTN
【0164】
一実施形態では、配列番号41または配列番号42を有するアミノ酸配列のバリアントは、それぞれ配列番号41また42のアミノ酸配列と少なくとも70%の全体的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の全体的配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0165】
さらにまたはあるいは、配列番号41または配列番号42を有するアミノ酸配列のバリアントは、それぞれ配列番号41また42のアミノ酸配列と少なくとも70%の局地的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の局地的配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0166】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
本明細書中上記で定義される膜直下標的化ドメインのアミノ酸配列(好ましくは、前記膜直下標的化ドメインは、アンカー分子に連結されている)、
任意選択で、本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列、
本明細書中上記で定義される膜貫通型タンパク質の膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、
本明細書中上記で定義されるアディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0167】
任意選択で、1つまたはいくつかのリンカーが、本発明のキメラポリペプチドの構成要素の間に付加され得る。
【0168】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
本明細書中上記で定義される膜直下標的化ドメインのアミノ酸配列;(好ましくは、前記膜直下標的化ドメインは、アンカー分子に連結されている)、
任意選択でリンカー、
任意選択で、本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列、
任意選択でリンカー、
本明細書中上記で定義される膜貫通型タンパク質の膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、
任意選択でリンカー、および
本明細書中上記で定義されるアディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0169】
このようなコンストラクトの例を、「コンストラクト4」および「コンストラクト5」として図1に示す。
【0170】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
本明細書中上記で定義される配列(M)G-X-X-X-S/C(配列番号45)を有する膜直下標的化ドメインのアミノ酸配列(好ましくは、前記膜直下標的化ドメインは脂肪酸に連結されている)
任意選択でリンカー、
任意選択で、本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列;(好ましくは、パイロットペプチドは、配列番号1または配列番号4をそれぞれ有する少なくとも1つのYxxLモチーフおよび/またはDYxxLモチーフ、ならびに配列番号8を有する少なくとも1つのPxxPモチーフを含む)、
任意選択でリンカー、
本明細書中上記で定義されるCD40Lの膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、
任意選択でリンカー、および
本明細書中上記で定義されるヒト野生型アディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0171】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
本明細書中上記で定義される配列(M)G-X-X-X-S/C(配列番号45)を有する膜直下標的化ドメインのアミノ酸配列(好ましくは、前記膜直下標的化ドメインは脂肪酸に連結されている)、
任意選択でリンカー、
任意選択で、本明細書中上記で定義されるパイロットペプチドのアミノ酸配列;(好ましくは、パイロットペプチドは、配列番号1または4をそれぞれ有する3つのYxxLモチーフおよび/またはDyxxLモチーフ、ならびに配列番号8を有する4つのPxxPモチーフを含む)、
任意選択でリンカー、
本明細書中上記で定義されるCD40Lの膜貫通型ドメインのアミノ酸配列、
任意選択でリンカー、および
本明細書中上記で定義されるヒト野生型アディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0172】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、N末端からC末端に、
配列番号51を有する膜直下標的化ドメインのアミノ酸配列(好ましくは、前記膜直下標的化ドメインは脂肪酸、好ましくはミリスチン酸に連結されている)
任意選択でリンカー、
任意選択で、配列番号30を有するパイロットペプチドのアミノ酸配列またはそのバリアント、
任意選択でリンカー、
配列番号35を有するCD40Lの膜貫通型ドメインのアミノ酸配列またはそのバリアント、
任意選択でリンカー、および
配列番号31を有するヒト野生型アディポネクチンのアミノ酸配列またはそのバリアント
を含むかまたはからなる。
【0173】
一実施形態では、キメラポリペプチドは、配列番号43を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。
配列番号43
MGSSKSKPKDPSQRRRKSRGPGGGSGGGSGGGSGGGSSRGSMIETYNQTSPRSAATGLPISMKIFMYLLTVFLITQMIGSALFAVYLHRRLDKGGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGSGETTTQGPGVLLPLPKGACTGWMAGIPGHPGHNGAPGRDGRDGTPGEKGEKGDPGLIGPKGDIGETGVPGAEGPRGFPGIQGRKGEPGEGAYVYRSAFSVGLETYVTIPNMPIRFTKIFYNQQNHYDGSTGKFHCNIPGLYYFAYHITVYMKDVKVSLFKKDKAMLFTYDQYQENNVDQASGSVLLHLEVGDQVWLQVYGEGERNGLYADNDNDSTFTGFLLYHDTN
【0174】
一実施形態では、パイロットペプチドが上記の実施形態において任意選択ではない場合、キメラポリペプチドは、配列番号44を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。
配列番号44
MGSSKSKPKDPSQRRRKSRGPGGGSGGGSGGGSGGGSSRGGGAPHFPEISFPPKPDSDYQALLPSAPEIYSHLSPTKPDYINLRPAPGGSRGSMIETYNQTSPRSAATGLPISMKIFMYLLTVFLITQMIGSALFAVYLHRRLDKGGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGSGGGGSGGGSGETTTQGPGVLLPLPKGACTGWMAGIPGHPGHNGAPGRDGRDGTPGEKGEKGDPGLIGPKGDIGETGVPGAEGPRGFPGIQGRKGEPGEGAYVYRSAFSVGLETYVTIPNMPIRFTKIFYNQQNHYDGSTGKFHCNIPGLYYFAYHITVYMKDVKVSLFKKDKAMLFTYDQYQENNVDQASGSVLLHLEVGDQVWLQVYGEGERNGLYADNDNDSTFTGFLLYHDTN
【0175】
一実施形態では、配列番号43または配列番号44を有するアミノ酸配列のバリアントは、それぞれ配列番号43または配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも70%の全体的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の全体的配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0176】
さらにまたはあるいは、配列番号43または配列番号44を有するアミノ酸配列のバリアントは、それぞれ配列番号43または配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも70%の局地的配列同一性、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の局地的配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0177】
さらに本発明は、本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0178】
一実施形態では、核酸は、核酸発現ベクターなどの核酸ベクターに含まれている。
【0179】
一実施形態では、核酸は、核酸発現ベクターなどの核酸ベクターに含まれており、調節エレメントに作動可能に連結される。
【0180】
調節エレメントの例として、限定するものではないが、プロモーター、コザックコンセンサス開始配列、ポリアデニル化シグナル、終止配列(すなわちストップコドン)などが挙げられる。特に、調節エレメントは、細菌、酵母、昆虫細胞、哺乳動物細胞、またはヒト細胞などの細胞における核酸の発現に適している。
【0181】
さらに本発明は、本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチドを含む細胞外小胞(EV)に関する。
【0182】
一実施形態では、細胞外小胞は、キメラポリペプチドに含まれるアディポネクチンをその外面に保有する。一実施形態では、キメラポリペプチドの膜貫通型ドメインは、細胞外小胞の脂質二重層に固定されている。
【0183】
本明細書中使用される場合、「その外面に保有する」との表現は、キメラポリペプチドに含まれるアディポネクチンが、細胞外小胞の外側に部分的または完全に露出していることを意味する。この構成は、同じ細胞外小胞における隣接するキメラポリペプチドの他のアディポネクチンまたは可溶性アディポネクチンのいずれかと、キメラポリペプチドに含まれるアディポネクチンのオリゴマー形成を可能にする。
【0184】
一実施形態では、細胞外小胞は、小分子細胞外小胞である。
【0185】
一実施形態では、細胞外小胞は、エクソソームである。
【0186】
一実施形態では、エクソソームは、約30nm~150nm、好ましくは約30nm~約120nm、より好ましくは約40~約80nmの範囲の直径を有する。一実施形態では、エクソソームは、約30nm~約120nmの範囲の直径を有する。
【0187】
本発明のさらなる目的は、本明細書中上記で定義される細胞外小胞の集団である。
【0188】
一実施形態では、細胞外小胞の集団は、水溶液、好ましくは0.9%のNaCl水溶液および/またはPBSにおいて単分散している。
【0189】
「単分散」とは、細胞外小胞の集団における細胞外小胞のサイズが実質的に均一であることを意味する。「実施的に均一な」とは、細胞外小胞が、おおよそ平均サイズの狭いサイズ分布を有することを意味する。一実施形態では、0.9%のNaCl水溶液および/またはPBS中の細胞外小胞は、平均サイズに関して100%未満、たとえば75%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、または5%未満の標準偏差を示すサイズを有する。
【0190】
一実施形態では、細胞外小胞の集団は、可溶性アディポネクチン、すなわち遊離形態であり、言い換えると本発明に係るキメラポリペプチドに含まれていないアディポネクチンタンパク質をさらに含む。
【0191】
一実施形態では、可溶性アディポネクチンは、野生型アディポネクチンである。一実施形態では、可溶性アディポネクチンは、変異体アディポネクチンである。
【0192】
一実施形態では、可溶性アディポネクチンは、野生型ヒトアディポネクチンである。一実施形態では、野生型ヒトアディポネクチンは、配列番号33を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。一実施形態では、野生型ヒトアディポネクチンは、配列番号31を有するアミノ酸配列またはそのバリアントを含むかまたはからなる。
【0193】
本発明のさらなる対象は、本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチドを含む細胞外小胞または細胞外小胞の集団を得る方法である。
【0194】
細胞外小胞または細胞外小胞の集団を得るための一般的な手段および方法は、当該分野で周知である。たとえば、Whitford & Guterstam, 2019. Future Med Chem. 11(10):1225-1236; Taylor & Shah, 2015. Methods. 87:3-10; Desplantes et al., 2017. Sci Rep. 7(1):1032を参照されたい。
【0195】
一実施形態では、細胞外小胞または細胞外小胞の集団を得るための方法は、本明細書中上記で定義される細胞外小胞または細胞外小胞の集団を産生するステップを含む。
【0196】
一実施形態では、この細胞外小胞または細胞外小胞の集団を産生するステップは、細胞に、本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチドをコードする核酸をトランスフェクトするステップを含む。
【0197】
一実施形態では、細胞は、HEK293T細胞または派生する細胞株由来の細胞である。一実施形態では、細胞は、脂肪細胞である。一実施形態では、細胞は、限定するものではないが、マスト細胞、リンパ球(たとえばT細胞またはB細胞など)、および樹状細胞を含む免疫細胞である。一実施形態では、細胞は、限定するものではないが、胚性幹細胞、成体幹細胞(たとえば造血幹細胞、乳房幹細胞、腸幹細胞、間葉系幹細胞、内皮幹細胞、神経幹細胞、嗅覚成体幹細胞、または神経堤幹細胞)、がん幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、および誘導性幹細胞(iSC)を含む幹細胞である。
【0198】
一実施形態では、細胞外小胞または細胞外小胞の集団を得るための方法は、好ましくは細胞外小胞を欠いた培地(すなわち無血清培地、細胞外小胞枯渇血清を補充した培地、または細胞外小胞枯渇血小板ライセートを補充した培地)において、トランスフェクトした細胞を、細胞外小胞の産生を可能にするために十分な時間培養するステップをさらに含む。
【0199】
一実施形態では、細胞外小胞または細胞外小胞の集団を得るための方法は、前記細胞外小胞または細胞外小胞の集団を精製するステップをさらに含む。
【0200】
一実施形態では、前記細胞外小胞または細胞外小胞の集団を精製するステップは、トランスフェクトした細胞培養上清の清澄化(たとえば遠心分離またはデプスろ過による)、ろ過、限外ろ過、透析濾過、分子ふるい精製および/またはイオン交換クロマトグラフィーを含む。他の細胞外小胞または細胞外小胞の集団を精製するための方法として、限定するものではないが、超遠心分離、タンジェンシャルフローろ過(TFF)およびBE-SECクロマトグラフィーが挙げられる。
【0201】
一実施形態では、本発明の細胞外小胞または細胞外小胞の集団は、精製されている。よって、本発明はまた、精製された細胞外小胞または細胞外小胞の集団にも関する。
【0202】
精製するための方法は、当業者に周知であり、限定するものではないが、本明細書において上述した精製方法を含む。
【0203】
一実施形態では、本発明の細胞外小胞または細胞外小胞の集団は、半精製細胞外小胞または細胞外小胞の集団を得るために超遠心分離により精製される。よって本発明はまた、半精製細胞外小胞または細胞外小胞の集団にも関する。
【0204】
本明細書中使用される場合、半精製細胞外小胞または細胞外小胞の集団は、細胞外小胞または細胞外小胞の集団、細胞外小胞もしくは細胞外小胞の集団の膜に固定されているかまたは細胞外小胞もしくは細胞外小胞の集団に強固に会合したタンパク質、ならびに細胞外小胞または細胞外小胞の集団に会合したタンパク質のクラウンを含む(図2B参照)。
【0205】
一実施形態では、本発明の細胞外小胞または細胞外小胞の集団は、超精製細胞外小胞または細胞外小胞の集団を得るために、タンジェンシャルフローろ過およびクロマトグラフィー、特にはSECおよびBE-SECクロマトグラフィーにより精製される。よって本発明はまた、超精製細胞外小胞または細胞外小胞の集団にも関する。
【0206】
本明細書中使用される場合、超精製細胞外小胞または細胞外小胞の集団は、細胞外小胞または細胞外小胞の集団、および細胞外小胞もしくは細胞外小胞の集団の膜に固定されているかまたは超精製された細胞外小胞もしくは細胞外小胞の集団に強固に会合したタンパク質を含む(図2C参照)。
【0207】
HEK293T細胞における細胞外小胞の産生の例を、以下の実施例の節に提供する。
【0208】
本発明はさらに、本明細書において上述したキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、または細胞外小胞の集団を含むか、から本質的になるか、またはからなる組成物に関する。
【0209】
本明細書中使用される場合、組成物に関する「~から本質的になる」は、キメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、または細胞外小胞の集団が、前記組成物の中で生物活性を有する唯一の治療剤または作用物質であることを意味する。
【0210】
一実施形態では、本組成物は、可溶性アディポネクチン、すなわち上記ですでに定義されている遊離形態のアディポネクチンをさらに含む。
【0211】
さらに本発明は、本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、または細胞外小胞の集団と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含むか、から本質的になるか、またはからなる医薬組成物に関する。
【0212】
用語「薬学的に許容される賦形剤」は、あらゆる溶媒、希釈剤、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。前記賦形剤は、動物、好ましくはヒトに投与される際に、有害反応、アレルギー反応、または他の望ましくない反応を生じない。ヒトへの投与では、調製物は、たとえばFDA局またはEMAなどの規制局が要求する無菌性、発熱性、および一般的な安全性および純度の基準を満たさなければならない。
【0213】
これら医薬組成物で使用され得る薬学的に許容される賦形剤として、限定するものではないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、たとえばヒト血清アルブミン、バッファー物質、たとえばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性油飽和脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩、または電解質、たとえばプロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質(たとえばカルボキシメチルセルロース)、ポリエチレングリコール、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が挙げられる。
【0214】
一実施形態では、本医薬組成物は、可溶性アディポネクチン、すなわち上記ですでに定義されている遊離形態のアディポネクチンをさらに含む。
【0215】
本発明はさらに、本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、または細胞外小胞の集団を含むか、から本質的になるか、またはからなる医薬に関する。
【0216】
一実施形態では、本医薬は、可溶性アディポネクチン、すなわち上記ですでに定義されている遊離形態のアディポネクチンをさらに含む。
【0217】
一実施形態では、本組成物、本医薬組成物、または本医薬は、本明細書中上記で定義される、精製された細胞外小胞または細胞外小胞の集団を含む。
【0218】
本発明はさらに、キットオブパーツであって、第1のパーツに本明細書中上記で定義される細胞外小胞または細胞外小胞の集団を含み、第2のパーツに可溶性アディポネクチン、すなわち上記ですでに定義されている遊離形態のアディポネクチンを含む、キットオブパーツに関する。
【0219】
一実施形態では、キットオブパーツの2つのパーツは、同時使用のため、または任意の順序での経時的な使用で意図されている。
【0220】
本発明はさらに、薬物または医薬として使用するための、本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団、組成物、医薬組成物、医薬、またはキットオブパーツに関する。
【0221】
本発明はさらに、それを必要とする対象の疾患、障害、または状態の処置に使用するための、本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団、組成物、医薬組成物、医薬、またはキットオブパーツに関する。
【0222】
本発明はさらに、それを必要とする対象の疾患、障害、または状態を処置するための医薬の製造における、本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団、組成物、医薬組成物、医薬、またはキットオブパーツに関する。
【0223】
本発明はさらに、それを必要とする対象の疾患、障害、または状態を処置するための方法であって、本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団、組成物、医薬組成物、医薬、またはキットオブパーツを前記対象に投与するステップを含むかまたはからなる、方法に関する。
【0224】
一実施形態では、疾患、障害、または状態は、肥満、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性もしくは欠乏に関連する疾患、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、アテローム性動脈硬化症(冠動脈疾患、脳卒中、および末梢動脈疾患を含む)、線維症、炎症性肺疾患、ネフローゼ疾患、睡眠時無呼吸、ドライアイ疾患、炎症性眼疾患、胃炎および胃食道逆流症、炎症性腸疾患、膵炎、骨粗鬆症、ならびに炎症性の骨および関節疾患を含むかまたはからなる群から選択される。一実施形態では、疾患、障害、または状態は、糖尿病である。
【0225】
インスリン抵抗性または欠乏に関連する疾患の例として、限定するものではないが、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、心血管疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、多嚢胞性卵巣症候群、アルツハイマー病、およびがん(特に子宮内膜がん、閉経期乳がん、白血病、結腸がん、胃がん、および前立腺がん)が挙げられる。一実施形態では、疾患は、2型糖尿病である。
【0226】
炎症性肺疾患の例として、限定するものではないが、喘息、アレルギー性喘息、肺気腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸窮迫症候群、気管支炎、肺炎、嚢胞性線維症、肺線維症線維症、および肺サルコイドーシスが挙げられる。
【0227】
ドライアイ疾患の例として、限定するものではないが、涙液減少(hypolacrimation)、涙欠乏、眼球乾燥症、シェーグレン症候群のドライアイ、非シェーグレン症候群のドライアイ、乾性角結膜炎、涙液欠乏型ドライアイ(aqueous tear deficiency dry eye)、蒸発性ドライアイ、スティーブンス・ジョンソン症候群、境界性眼類天疱瘡眼瞼炎、アレルギー性結膜炎関連のドライアイ、ウイルス感染後結膜炎関連のドライアイ、白内障手術後に関連するドライアイ、VDT作業に関連するドライアイ、およびコンタクトレンズの装用に関連するドライアイが挙げられる。
【0228】
炎症性眼疾患の例として、限定するものではないが、ぶどう膜炎、強膜炎、眼手術後の炎症、角膜移植、角膜創傷治癒、結膜炎、網膜疾患、緑内障、および高眼圧症が挙げられる。
【0229】
炎症性の骨および関節疾患の例として、限定するものではないが、嚢胞性線維性骨炎、骨髄炎、種子骨炎、ブローディー膿瘍(Brodie abscess)、骨膜炎、肋軟骨炎、および多発性軟骨炎が挙げられる。
【0230】
一実施形態では、疾患、障害、または状態は、低アディポネクチン血症であるか、または低アディポネクチン血症に関連する。
【0231】
本明細書中使用される場合、「低アディポネクチン血症」は、標準的なレベルと比較して血流において低減されたレベルのアディポネクチンを指す。血流中のアディポネクチンのレベルを測定するための方法は、当業者に周知であり、限定するものではないが、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、AlphaLISAイムノアッセイ、および免疫比濁法(ラテックス粒子増強免疫比濁法など)が挙げられる。
【0232】
一実施形態では、疾患、障害、または状態は、肥満である。一実施形態では、疾患、障害、または状態は、インスリン抵抗性である。一実施形態では、疾患、障害、または状態は、インスリン抵抗性または欠乏に関連する疾患、たとえば2型糖尿病、メタボリックシンドローム、心血管疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、多嚢胞性卵巣症候群、アルツハイマー病、およびがん;特には2型糖尿病およびメタボリックシンドロームである。一実施形態では、疾患、障害、または状態は、2型糖尿病である。
【0233】
また本発明は、肥満、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性もしくは欠乏に関連する疾患、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、アテローム性動脈硬化症(冠動脈疾患、脳卒中、および末梢動脈疾患を含む)、線維症、炎症性肺疾患、ネフローゼ疾患、睡眠時無呼吸、ドライアイ疾患、炎症性眼疾患、胃炎および胃食道逆流症、炎症性腸疾患、膵炎、骨粗鬆症、ならびに炎症性の骨および関節疾患を含む群から選択される疾患、障害、または状態の処置に使用するための、その外面に露出したアディポネクチンを保有する細胞外小胞、またはその集団に関する。一実施形態では、疾患、障害、または状態は、糖尿病である。
【0234】
一実施形態では、細胞外小胞は、組み換え型アディポネクチンで部分的にまたは完全にコーティングされている。
【0235】
「組み換え型アディポネクチン」は、細胞により内因的に産生されない外因性アディポネクチンを意味する。組み換え型アディポネクチンで部分的または完全にコーティングされた細胞外小胞は、in cellulo(たとえば、細胞外小胞産生細胞に、アディポネクチンをコードする核酸をトランスフェクトすることにより、細胞に外因性アディポネクチンを産生させることによる)、またはex cellulo(たとえば、適切な組み換え発現系で以前に産生されさらに精製されたタンパク質形態のアディポネクチンを提供することによる)で、細胞外小胞をアディポネクチンと接触させることにより得ることができる。
【0236】
「コーティングされた」とは、アディポネクチンが、細胞外小胞の外面に露出しており、この外面にアディポネクチンが、細胞外小胞の外部の構成要素との任意の適切なタイプの相互作用(たとえば限定するものではないが、静電相互作用、タンパク質間相互作用、タンパク質-脂質相互作用など)を介して結合していることを暗に意味する。
【0237】
一実施形態では、細胞外小胞は、国際特許公開公報第2003016522号(関連する内容は参照により本明細書に組み込まれている)に記載されるように、ラクトアドヘリン、特にはラクトアドヘリンの機能的C1および/またはC2ドメインに融合した組み換え型アディポネクチンで部分的または完全にコーティングされている。
【0238】
一実施形態では、本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団、組成物、医薬組成物、医薬、またはキットオブパーツの構成要素は、それを必要とする対象へ投与するために製剤化されている。
【0239】
一実施形態では、対象への投与は、非経口に、吸入スプレーによって、直腸に、鼻に、または埋め込まれたリザーバーにより行われ得る。用語「投与」は、特に、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内、および頭蓋内の注射または注入技術を含む。
【0240】
一実施形態では、本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団、組成物、医薬組成物、医薬、またはキットオブパーツの構成要素は、治療上有効量でそれを必要とする対象に投与される。
【0241】
しかしながら、本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団、組成物、医薬組成物、医薬、またはキットオブパーツの構成要素の一日の総使用量は、健全な医療の判断の範囲内で担当医により決定されることが理解されるであろう。
【0242】
特に、任意の特定の患者の特異的な治療上有効な用量レベルは、処置される疾患および疾患の重症度;使用される本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団、組成物、医薬組成物、医薬、またはキットオブパーツの構成要素の活性;対象の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、および食事;使用される本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団、組成物、医薬組成物、医薬、またはキットオブパーツの構成要素の投与時間、投与経路、および排泄率;処置期間;使用される本明細書中上記で定義されるキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団、組成物、医薬組成物、医薬、またはキットオブパーツの構成要素と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;ならびに医学の分野で周知の同様の要因を含む様々な要因に依存する。各処置で必要とされる総用量を、複数回投与または単回投与で投与してもよい。
【0243】
本発明はまた、対象の肥満、インスリン抵抗性、またはインスリン抵抗性もしくは欠乏に関連する疾患を診断する方法であって、
a)対象から以前に回収したサンプル中のアディポネクチンに会合した小さい細胞外小胞のレベルまたは量を測定するステップと、
b)ステップa)で決定したレベルまたは量を、アディポネクチンに会合した小さい細胞外小胞の参照レベルまたは量と比較するステップであって、
参照レベルまたは量が、肥満もしくはインスリン抵抗性に罹患していないことが既知である参照対象からのサンプル、または全員が肥満もしくはインスリン抵抗性に罹患していない1人より多くの参照対象からのサンプルのプールにおいて事前に決定されている、ステップと、
c)ステップa)で決定したレベルまたは量が参照レベルまたは量よりも低い場合、前記対象が肥満、インスリン抵抗性、またはインスリン抵抗性もしくは欠乏に関連する疾患に罹患していると結論づけるステップと
を含む、方法に関する。
【0244】
本発明はまた、非治療的な方法での本発明のキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団のin vitroまたはin vivoでの使用にも関する。
【0245】
一実施形態では、本発明のキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団は、様々な生物プロセスでのアディポネクチンの機能または生物活性を評価するためにin vitroまたはin vivoで使用される。
【0246】
一実施形態では、本発明のキメラポリペプチド、核酸、細胞外小胞、細胞外小胞の集団は、所定の生物プロセスでのアディポネクチンの作用を決定するためのin vitroまたはin vivoで使用される。
【図面の簡単な説明】
【0247】
図1図1は、本発明に係るキメラポリペプチドの5つの例示的なコンストラクトを示す。
図2図2は、EV、および培養培地中のEVの環境(図2A)、半精製EV(図2B)、および超精製EV(図2C)の概略図である。図2A:培養培地中のEVは、タンパク質および混入物質に会合している。図2:超遠心分離により半精製されたEVは、会合したタンパク質のクラウンに会合している。図2C:TFF(タンジェンシャルフローろ過)およびクロマトグラフィーにより超精製されたEVは、膜に固定されたまたは膜に強固に会合したタンパク質に会合している。
図3図3は、配列番号40の配列のキメラポリペプチドが細胞抽出物およびEVにおいて発現されることを示すイムノブロットである。これは、キメラポリペプチドを発現する細胞およびEVの抽出物(3、5)ならびにキメラポリペプチドを発現しない対照の細胞およびEVの抽出物(2、4)のイムノブロット解析を示し、ここでキメラポリペプチドの発現は、パイロットペプチド(2、3、4、5)を標的とする抗体により検出されている。(1)は、分子量マーカーを表す。
図4図4は、EVの中のキメラポリペプチドに含まれるアディポネクチンが多量体であることを示すイムノブロットである。これは、配列番号40の配列のキメラポリペプチドを発現するEV抽出物(3、4)またはキメラポリペプチドを発現しない対照EV抽出物(2)のイムノブロット解析を示し、ここでキメラポリペプチドは、パイロットペプチドを標的とする抗体により明らかにされる。抽出物2、3に関する実験は、還元条件(DTT)で行われるが、抽出物4に関する実験は、多量体構造を保存する非還元条件で行われる。(1)は、分子量マーカーを表す。
図5図5は、配列番号40の配列のキメラポリペプチドを発現するEVの表面でEVマーカーおよびアディポネクチンの存在を示す3つのグラフの組み合わせである。キメラポリペプチドを発現するEVを、2つのEVマーカーであるCD81およびCD63を標的とする抗体、ならびにアディポネクチンを標的とする抗体によるELISA試験に供した。抗アディポネクチン抗体は、キメラポリペプチドを発現しない対照EVとは反応しない。
図6図6は、培養培地から半精製されたEVにおけるアディポネクチンの産生を示す略図、イムノブロット、および表の組み合わせである。図6Aは、半精製EVの概略図である。図6Bは、半精製EVの還元条件でのウェスタンブロットである。レーン0は、パイロットペプチドのみを有する空のベクターを含むDNAコンストラクトを一過性にトランスフェクトした細胞(0)に対応する。レーン「wt」は、野生型アディポネクチンに対応するDNAを一過性にトランスフェクトした細胞に対応する。他のレーンは、コンストラクト1(配列番号40、レーン1)、コンストラクト2(配列番号42、レーン2)、コンストラクト3(配列番号41、レーン3)、コンストラクト4(配列番号43、レーン4)、コンストラクト5(配列番号44、レーン5)に対応するキメラアディポネクチンをコードするDNAを一過性にトランスフェクトした細胞に対応する。図6Cは、野生型アディポネクチン(wt)、および膜に異なるように固定されておりコンストラクト1~コンストラクト5を有するキメラアディポネクチンに対応するキメラアディポネクチンの概略図である。図6Dは、図6Bの星印(*)により同定されたタンパク質のサイズ(kDa)を示す表である。
図7図7は、培養培地から半精製されたEVにおける多量体アディポネクチンの産生を示す略図およびイムノブロットの組み合わせである。図7Aは、半精製したEVの概略図である。図7Bは、半精製EVの非還元条件でのウェスタンブロットである。レーン0は、パイロットペプチドのみを有する空のベクターを含むDNAコンストラクトを一過性にトランスフェクトした細胞(0)に対応する。レーン「wt」は、野生型アディポネクチンに対応するDNAを一過性にトランスフェクトした細胞の解析に対応する。他のレーンは、コンストラクト1(配列番号40、レーン1)、コンストラクト2(配列番号42、レーン2)、コンストラクト3(配列番号41、レーン3)、コンストラクト5(配列番号44、レーン5)に対応するキメラアディポネクチンをコードするDNAを一過性にトランスフェクトした細胞に対応する。
図8図8は、培養培地から超精製されたEVにおけるアディポネクチンの産生を示す略図およびイムノブロットの組み合わせである。図8Aは、超精製EVの概略図である。図8Bは、細胞抽出物および超精製EVの還元条件でのウェスタンブロットを示す。レーン(wt)は、野生型アディポネクチンに対応する。レーン0は対照細胞を表し、レーン2は、コンストラクト2を有する膜に固定されたアディポネクチンを表し、レーン(2+wt)は、アディポネクチン(wt)および膜に固定されたアディポネクチンの混合物を表す。図8Cは、超精製EVの非還元条件でのウェスタンブロットを示す。レーン(wt)は、野生型アディポネクチンに対応する。レーン0は対照細胞を表し、レーン2は、コンストラクト2を有する膜に固定されたアディポネクチンを表し、レーン(2+wt)は、アディポネクチン(wt)および膜に固定されたアディポネクチンの混合物を表す。
図9図9は、超精製EVの特徴を示すイムノブロット、ヒストグラム、およびグラフの組み合わせである。図9Aは、細胞抽出物および対照としてのAlixマーカーを有する超精製EVの還元/非還元条件でのウェスタンブロットを示す(左のパネル:還元条件の細胞抽出物、中央のパネル:還元条件のEV、右のパネル:非還元条件のEV)。レーン(wt)は、野生型アディポネクチンを発現する細胞に対応し、レーン0は対照細胞のアディポネクチンを表し、レーン2は、コンストラクト2を有する膜に固定されたアディポネクチンを表す。図9Bは、CD81 EVマーカー(左のグラフ)およびEV上のアディポネクチン(右のグラフ)のELISAによる検出を示す2つのグラフの組み合わせである。図9Cは、対照細胞(左のカラム)、野生型アディポネクチンを発現する細胞(中央のカラム)、およびコンストラクト2を有するキメラアディポネクチンを発現する細胞(右のカラム)からのEVにおけるELISAによるアディポネクチンの定量化を示すヒストグラムである。
図10図10は、EVの濃度(図10A)およびサイズ(図10B)の観点からの超精製EVの特徴を示す2つのヒストグラムの組み合わせである。カラム(EV「0」)は、対照細胞のEVを表し、カラム(EV「wt」)は、野生型アディポネクチンを安定して発現する細胞のEVを表し、(EV「2」)は、コンストラクト2(配列番号42)を有するキメラアディポネクチンをコードするDNAを発現する細胞のEVを表す。
図11図11は、産生時0(T0 4°C)、および産生から3か月後の、異なる条件(4℃または-80℃)で保存されたアディポネクチンを示す超精製EVのELISAによる特徴付けを示す6つのグラフの組み合わせである。これは、産生時0(T0 4°C)ならびに+4℃および-80℃での保存下で産生から3ケ月後の、超精製EVのアディポネクチン(Adpn)およびCD81の保存のELISAによる特徴付けを表す。EV「0」は、対照細胞のEVを表す。EV「wt」は、野生型アディポネクチンを安定して発現する細胞のEVを表し、EV「2」は、コンストラクト2(配列番号42)を有するキメラアディポネクチンをコードするDNAを発現する細胞のEVを表す。
図12図12は、産生時0(T0 4°C)、および産生から3か月後の、異なる条件(4℃または-80℃)で保存されたアディポネクチンを示す超精製EVにおけるアディポネクチンの定量化を示すヒストグラムである。これは、産生時0(T0 4°C)、ならびに+4℃および-80℃での保存下で産生から3ケ月後の、アディポネクチンを安定して発現する細胞の培養培地から開始して、超精製EV(EV 「wt」およびEV 「2」)のアディポネクチン(Adpn)の保存を特徴付ける、定量的ELISA解析の結果を表す。EV「0」は、対照細胞のEVを表す。EV「wt」は、野生型アディポネクチンを安定して発現する細胞のEVを表し、EV「2」は、コンストラクト2(配列番号42)を有するキメラアディポネクチンをコードするDNAを発現する細胞のEVを表す。
図13図13は、産生時0(T0 4°C)、および産生から3か月後の、異なる条件(4℃または-80℃)で保存されたアディポネクチンを提示する超精製EVのサイズおよび濃度の解析を示す2つのヒストグラムの組み合わせである。これらヒストグラムは、産生時0(T0 4°C)、ならびに+4℃および-80℃での保存下で産生から3ケ月後の、対照細胞(EV「0」)およびアディポネクチンを安定して発現する細胞(EV「wt」およびEV「2」)の培養培地から超精製されたEVのサイズ(nm)(左のパネル)および粒子の濃度(p/ml、粒子/ミリリットル)(右のパネル)を表す。EV「0」は、対照細胞のEVを表す。EV「wt」は、野生型アディポネクチンを安定して発現する細胞のEVを表し、EV「2」は、コンストラクト2(配列番号42)を有するキメラアディポネクチンをコードするDNAを発現する細胞のEVを表す。
【実施例
【0248】
アディポネクチンは、脂肪細胞により分泌される最も重要なアディポサイトカインのうちの1つであり、糖尿病、肥満、インスリン抵抗性、心血管疾患、炎症性状態、およびがんを含む様々なヒト状態において有用な効果を発揮することが知られている。アディポネクチンは、様々な疾患を処置するための新薬開発にとって有望な候補と思われるが、臨床試験で利用可能なアディポネクチン療法は、現在存在しない。
【0249】
実際に、機能的なアディポネクチンの大規模な生産は、その複雑さのため困難である。アディポネクチンは、244アミノ酸のサイトカインであり、翻訳後修飾を含み、3つのオリゴマー複合体:低分子量(LMW)形態、中間分子量(MMW)、および高分子量(HMW)形態で存在し、このことは、機能的なアディポネクチンが、翻訳後修飾の存在および適切な高度多量体化を必要とすることを意味する。細菌系は、哺乳動物のタンパク質合成機構を欠いており、機能的に活性なアディポネクチンを産生できないが、大量生産のための哺乳動物の培養系の利用は、拡張可能なプロセスではない。さらに、アディポネクチンは、循環中の半減期が短く、そのため組み換え型アディポネクチンを外から投与することは実現不可能な手法となる。
【0250】
興味深いことに、高度に活性なHMWアディポネクチンが、主に血清中のエクソソームのフラクションに存在すること(Phoonsawat et al., Adiponectin is partially associated with exosomes in mouse serum, BBRC Vol. 448, Issue 3, 2014, Pages 261-266)、およびアディポネクチンが可溶性アディポネクチンの非特異的な吸収の結果として細胞外小胞の外面に主に分布すること(Blandin et al., Extracellular vesicles are stable carriers of adiponectin with insulin-sensitive properties, http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.4036824)が見いだされた。さらに、アディポネクチンに会合した細胞外小胞が、in vitroにて標的細胞においてインスリン感作効果を媒介すること、および高脂肪食を与えたマウスにそれらを注射すると、動物がインスリン抵抗性を発症するのを防止することが示された(Blandin et al., Extracellular vesicles are stable carriers of adiponectin with insulin-sensitive properties, http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.4036824)。
【0251】
これら結果は、これらがアディポネクチンに会合した細胞外小胞を投与することが、アディポネクチンの変化に関連する疾患を処置するための貴重な手法であり得ることを示すため、有望ではあるが、このようなアディポネクチンに会合した細胞外小胞は、治療適応に適してはいない。特に、本明細書中以下の実施例に示されるように、このようなアディポネクチンに会合した細胞外小胞の超精製は、表面のアディポネクチンの除去を誘導し、アディポネクチンをほとんど欠いている超精製細胞外小胞をもたらす。よって、機能的なアディポネクチン、すなわちHMWであり治療適応に適した細胞外小胞上の機能的なアディポネクチンの大規模な生産を可能にする手段を提供することが依然として必要とされている。
【0252】
本明細書において、本発明者らは、産業上のスケールで、機能的なアディポネクチンをロードし、数か月間安定であり、治療適応、特にインスリン抵抗性および糖尿病、ならびに他の疾患の治療に関して有用であり得る、細胞外小胞の産生を可能にする新規のキメラアディポネクチンを開発した。
【0253】
本発明を、さらに以下の実施例により例証する。
【0254】
実施例1
キメラアディポネクチンポリペプチドを含む半精製細胞外小胞の産生
材料および方法
哺乳動物細胞におけるアディポネクチンおよびアディポネクチンを保有する細胞外小胞の産生
【0255】
細胞外小胞を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から得たHEK293T細胞で産生した。細胞を、5%熱不活化ウシ胎仔血清(iFBS)、2mMのGlutaMAX、および5μg/mLのゲンタマイシンを補充したDMENにおいて、5%のCOの湿潤インキュベーターにて37℃で培養した。HEK293T細胞を、定期的に試験し、MycoAlert(商標)マイコプラズマ検出キット(Lonza Nottingham, Ltd.)により陰性であることが見いだされた。
【0256】
野生型アディポネクチンをコードする核酸配列(配列番号31または33)およびエクソソームを標的とするキメラアディポネクチンポリペプチドをコードする核酸配列(配列番号40-44)を、CMV/HTLVキメラプロモーターの制御下にて真核細胞の発現ベクターに挿入した。必要な場合、耐性遺伝子をコードするゼオシンを、アディポネクチンをコードする核酸と縦列で、CMW IRES配列の下流に付加し、ゼオシン耐性の同時発現および安定なトランスフェクト細胞株の確立を可能にした。これら核酸配列を、PEIを使用してHEK293T細胞にトランスフェクトした。必要な場合は、安定したトランスフェクト細胞株の選択を、15日間の500μg/mLのゼオシンの存在下で得た。
【0257】
大規模なエクソソーム産生をもたらすために、HEK293Tトランスフェクト細胞を、1Lの完全培地において10トレイの細胞チャンバー内にプレーティングした。24時間後に、培養物に、細胞外小胞フリーiFBSを補充した培地を与え、さらに48時間インキュベートした。
【0258】
アディポネクチン-細胞外小胞および細胞外小胞の精製
細胞培養培地を、トランスフェクトHEK293T細胞から回収し、アディポネクチン-細胞外小胞の単離を、以前記載されるように(Taylor & Shah, 2015. Methods. 87:3-10; Desplantes et al., 2017. Sci Rep. 7(1):1032; Corso G. et al. 2017. Scientific Reports. 7: 11561. DOI:10.1038/s41598-017-10646-x)行った。簡潔に述べると、細胞培養上清を、2回の連続する遠心分離:1300rpmで10分間および4000rpmで15分間(両方とも4℃)し、その後0.22μmの膜フィルターを介してろ過することにより清澄化した。次に、上清を、超遠心分離および透析濾過により濃縮し、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)またはBE-SECのカラム(CL2 B or Sephacryl S1000またはCaptocore, GE Healthcare)にロードした。細胞外小胞のバイオマーカー(CD81およびCD63)を含有するフラクションを、ELISAにより同定した。ウェスタンブロットにより同定したアディポネクチンを含有する細胞外小胞のフラクションをプールし、必要に応じて濃縮し、解析および注射に使用した。
【0259】
SDS-PAGE、ウェスタンブロット、および抗体
アディポネクチン-細胞外小胞のタンパク質濃度を、BCAアッセイ(Pierce BCA Protein Assay Kit, ThermoFisher Scientific)を使用して測定した。アディポネクチン-細胞外小胞調製物を溶解し、4~15%のアクリルアミドゲル上にてSDS-PAGEにより分離し(4~15% Mini-PROTEAN(登録商標)TGX Stain-Free(商標)Gel kit, Bio Rad)、その後PVDF膜に転写した。非還元条件でのウェスタンブロットのため、DTTを含まないローディングバッファーを使用した。
【0260】
アディポネクチンの免疫検出を、アディポネクチンに対する一次抗体(抗アディポネクチンモノクローナル抗体、クローンABM52A3, Abeomics Ref. #10-7597;または抗アディポネクチンウサギポリクローナル抗体、Invitrogen Ref. #PA1 054)、または抗Ciloaパイロットペプチド(PP)(ウサギで産生された社内の抗体)によって行った。
【0261】
特異的な細胞外小胞のマーカーの免疫検出は、CD81(Genetex Ref. #GTX101766)、CD63(Genetex Ref. #GTX132953)、Alix(Proteintech #12422-1-AP)、シンテニン(Fisher Scientific Ref. #11326573)のいずれかに対する一次抗体によって行った。
【0262】
次に、膜を、対応するHRPコンジュゲート二次抗体(ロバ抗マウスまたは抗ウサギまたは抗ヤギHRP, Jackson ImmunoResearch, Refs. #715-035-150、#711-035-152、または#715-038-147)と共にインキュベートした。
【0263】
シグナルを、増強した化学発光検出キット(Super Signal West Pico Plus; ThermoFischer Scientific; Ref. 34580)を使用して検出し、膜をChemiDoc Imaging System(Bio Rad)によってイメージングした。
【0264】
また、これら一次抗体+GeneTex(GTX112777)抗アディポネクチンポリクローナル抗体、ならびにそれぞれの二次抗体を使用して、ELISAによりアディポネクチン-細胞外小胞の表面上のアディポネクチンを検出した。
【0265】
アディポネクチンおよび細胞外小胞のマーカーに特異的なIgGELISA
アディポネクチン、ならびにCD81およびCD63に特異的な表面マーカーにおける細胞外小胞の表面含有量を、上記の抗体のうちのいくつかおよび同様に抗CD81抗体(Ancell; Ref. #ANC 302 020)または抗CD63抗体(Agro-Bio; Ref. #S12086)を使用してELISAにより決定した。
【0266】
簡潔に述べると、MaxiSorp ELISAプレート(Nunc)を、ウェルあたり100μLの50μM炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム(pH9.6)バッファーにおいて段階的1/2希釈(1μgから開始)したアディポネクチン-細胞外小胞によって、4℃で一晩コーティングした。コーティングしたプレートを、200μLの1×PBSで3回洗浄し、ウェルあたり3%BSAを含む1×PBS200μLによって、37℃で1時間飽和させた。プレートを、1×PBSで3回洗浄し、その後一次抗体希釈物(アディポネクチンでは1:500または細胞外小胞に特異的なマーカーでは1:10000)を含む3%のBSAおよび5%のFBSと共に、37℃で2時間インキュベートした。この後、ウェルあたり200μLの1×PBSで3回洗浄し、3%BSAを含む1×PBSで1:10000に希釈した対応する二次のHRPコンジュゲート抗体(前記のウェスタンブロットで明記したもの)のウェルあたり100μlと共にインキュベートした。二次抗体とのインキュベーション後、プレートをウェルあたり200μLの1×PBSで5回洗浄し、ウェルあたり100μLのTMB(Bio-Rad; Ref. #R8/R9)で30分間顕色した。反応を、ウェルあたり50μLの停止溶液(2Nの硫酸)を添加することにより停止した。
【0267】
ClarioStar Plusプレートリーダー(BMG Labtech)を使用して450nmの吸光度を読み取った。逆数のエンドポイント力価を、バックグラウンドより3倍高い450nmのOD3での希釈として定義した。
【0268】
結果
本発明者らは、N末端またはC末端のいずれかにアディポネクチンを有するキメラアディポネクチンを含む半精製EVの産生を初めて示した(図1および2B)。
【0269】
N末端にアディポネクチンを有するキメラアディポネクチンの産生
図3は、N末端からC末端に、そのシグナルペプチドを有するアディポネクチン(配列番号33)、(GGGSGGGGS)リンカー(配列番号39を有する)、CD8膜貫通型ドメイン(配列番号37を有する)、およびペプチドパイロット(配列番号30を有する)を含む、配列番号40を有するキメラポリペプチドが、細胞において発現され、細胞外小胞に分泌されることを示している。
【0270】
興味深いことに、このキメラポリペプチドの構成は、イムノブロット解析により検出されるように、細胞外小胞におけるアディポネクチンのオリゴマー形成を可能にした(図4)。
【0271】
アディポネクチンが細胞外小胞の表面で発現されることを確認するために、本発明者らは、ELISAアッセイを行い、配列番号40を有するキメラポリペプチドを発現する細胞外小胞またはキメラポリペプチドを発現しない対照細胞外小胞においてアディポネクチンおよび細胞外小胞特異的マーカーを標識した。図5に示されるように、2つの細胞外小胞特異的マーカー(CD63およびCD81)、ならびにアディポネクチンが、キメラポリペプチドを発現する細胞外小胞で検出された。対照細胞外小胞においてアディポネクチンが検出されないことは、キメラポリペプチドを発現する細胞外小胞におけるアディポネクチン検出の特異性を確認する。
【0272】
N末端およびC末端にアディポネクチンを有するキメラアディポネクチンの産生
試験したコンストラクトを図6Cに提供し、抗アディポネクチン抗体により明らかとなったタンパク質のサイズを図6Dに提供する。野生型アディポネクチン(wt)、コンストラクト1(配列番号40)を有するキメラアディポネクチンに対応するDNA、コンストラクト2(配列番号42)を有するキメラアディポネクチンに対応するDNA、コンストラクト3(配列番号41)を有するキメラアディポネクチンに対応するDNA、コンストラクト4(配列番号43)を有するキメラアディポネクチンに対応するDNA、およびコンストラクト5(配列番号44)を有するキメラアディポネクチンに対応するDNAを一過性にトランスフェクトした細胞からのアディポネクチンのサイズはそれぞれ、26,37kDa、36,92kDa、38,50kDa、32,98kDa、36,23kDa、および41,75kDaの範囲にある。
【0273】
これら結果は、コンストラクト1、2、3,および5、ならびにwtのアディポネクチンが、半精製EVにおいてアディポネクチンを発現することをさらに示している。予想外なことに、コンストラクト4は、EV上でアディポネクチンの発現をもたらさない。注意すべきことに、wtアディポネクチンまたはコンストラクト2を有するキメラアディポネクチン(配列番号42)を有する半精製EVは、還元条件で解析した場合に最高量のアディポネクチンを含むEVである(図6Aおよび6B)。
【0274】
興味深いことに、非還元条件で解析した場合(図7A図7B)、結果は、コンストラクト2(配列番号42)に対応するキメラアディポネクチンを保有する半精製EVが、wtアディポネクチンを保有するEV、またはコンストラクト3(配列番号41)もしくはコンストラクト5(配列番号44)に対応するキメラアディポネクチンを保有するEVより多量の高度にオリゴマー化した(HMW)アディポネクチンを含むことを示している。
【0275】
実施例2
キメラアディポネクチンポリペプチドを含む超精製細胞外小胞の産生
材料および方法
哺乳動物細胞におけるアディポネクチンおよびアディポネクチンを保有する細胞外小胞の産生
野生型アディポネクチンまたはキメラアディポネクチンのポリペプチド(配列番号42)を保有する細胞外小胞を、本明細書において上述したように産生した。
【0276】
培養培地から超精製されたEVにおけるアディポネクチンの産生
異なるDNAコンストラクト:野生型アディポネクチン(wt)、コンストラクト2(配列番号42)を有する膜に固定されたアディポネクチン(2)、その両方(2+wt)を安定して発現する細胞、または対照細胞(9)の培養培地を濃縮し、TFFおよびBE-SECクロマトグラフィーを使用して精製した。産生細胞から超精製EVおよび抽出物を、本明細書において上述したように還元条件または非還元条件でSDS-PAGE分離に供し、ウェスタンブロットにより解析し、アディポネクチン一次抗体、次にHRPコンジュゲート二次抗体を用いて明らかにした。
【0277】
超精製EVの特徴付け
異なるDNAコンストラクト:野生型アディポネクチン(wt)、膜に固定されたアディポネクチン(2)を安定して発現する細胞、または対照細胞(0)の培養培地を、濃縮し、TFFおよびBE-SECクロマトグラフィーを使用して精製した。産生細胞から超精製されたEVおよび抽出物を、還元条件または非還元条件でSDS-PAGE分離に供し、ウェスタンブロットにより解析し、抗Alix(EVマーカー)および抗アディポネクチンの一次抗体、次いでHRPコンジュゲート二次抗体を用いて明らかにした。
【0278】
EVの表面上でのEVマーカー(CD81)およびアディポネクチン(Adpn)の存在を、ELISAにより検出した。異なるタイプのEVを、1から1/123(1=50μlの純粋なEV)までの希釈でELISAプレートに固定し、抗CD81抗体または抗アディポネクチン抗体、次いで二次抗HRP抗体により検出した。
【0279】
アディポネクチンの量を、定量ELISAによりEV調製物において測定した。EVを溶解して固定または会合したアディポネクチンの総量を検出し、アディポネクチンの濃度(ng/ml)を、ヒトアディポネクチンの定量化のための市販のELISAサンドイッチキットを使用して測定した。
【0280】
結果
本発明者らはまた、C末端にアディポネクチンを有するキメラアディポネクチンを含む超精製EVの産生も示した(図1および2C)。
【0281】
超精製EVの産生および超精製EVの特徴付けの結果を、図8および図9および10に示す。
【0282】
図8B(左のパネル)は、WTアディポネクチン(レーンwtおよびwt+2)が、固定型(レーン2およびwt+2)よりも良好に細胞において発現されることを示している。しかしながら、EVを超精製する場合、固定されたアディポネクチン(レーン2およびwt+2)は、WTアディポネクチン(レーンwtおよびwt+2)よりかなり安定してEVにおいて標的化される(超精製に抵抗性である)。これは、対応するコンストラクトが単独(レーンwtおよび2)であるかまたは共発現される(wt+2)場合、あてはまる(図8B、右のパネル)。非還元条件で超精製され解析したEVでは(図8C)、コンストラクト2単独(レーン2)またはWTアディポネクチンと共発現されたコンストラクト2(レーン2+wt)は、高度にオリゴマー化している。コンストラクト2のみが、EV上において大量の高度にオリゴマー化した(HMW)アディポネクチンの安定な標的化を可能にする。対照的に、WTアディポネクチンの量が細胞において高い場合であっても、これは半精製EVでは存在が少なく、超精製EVでは完全に無視できる。これら結果は、キメラアディポネクチンコンストラクト2を使用することが、その表面に大量の高度にオリゴマー化したアディポネクチンを保有する超精製EVを産生することを可能にし、wtアディポネクチンをトランスフェクトした細胞から得た超精製EVが、アディポネクチンをほぼ欠いていることを明らかに示している。
【0283】
図9および10は、超精製EVの特徴付けをさらに提示する。2つのEVマーカーであるAlixおよびCD81、およびアディポネクチンは、wtアディポネクチンまたはコンストラクト2(配列番号42)を安定して発現する細胞からのEVにおいて検出される(図9A、B)。ELISAによるアディポネクチンの定量化は、コンストラクト2を発現する細胞からの超精製EVが、wtアディポネクチンを発現する細胞からの超精製EVより多くのアディポネクチンを保有することを示している(図9C)。これら結果は、NanoAnalyzerでの解析によりさらに確認されており、より多くのアディポネクチンを保有するコンストラクト2を発現する細胞からの超精製EVが、wtアディポネクチンを発現する細胞からの超精製EVより大量に検出されることを明らかにする(図10A)。対照として、EVのサイズは、両条件で類似している(図10B)。
【0284】
まとめると、これら結果は、C末端にアディポネクチン、特にコンストラクト2を有するキメラアディポネクチンが、大量の高度にオリゴマー化した(HMW)アディポネクチンをその表面に保有する超精製EVを得ることを可能にし、このことはwtアディポネクチンにあてはまらないことを示している。結論として、これら結果は、wtアディポネクチンと比較した、本発明のコンストラクト、特にコンストラクト2の利点を明らかに実証している。
【0285】
実施例3
超精製EVの保存
材料および方法
産生から3か月後の、異なる条件(4℃または-80℃)で保存されたアディポネクチンを示す超精製EVのELISAによる特徴付け
EVの表面上のEVマーカー(CD81)およびアディポネクチン(Adpn)の存在を、産生および精製の直後(T0)または4℃もしくは-80℃で保存してから3か月後(4℃で3ケ月および-80℃で3ケ月)に、ELISAにより検出する。アディポネクチンを安定して発現する細胞(wtおよび2)または対照細胞(0)の培養培地から超精製された異なるタイプのEvを、1から1/128(1=50μlの純粋なEV)までの希釈でELISAプレートに固定し、抗CD81抗体(上部のパネル)または抗アディポネクチン抗体(下部のパネル)、次いで二次抗HRP抗体により検出する。
【0286】
産生から3ヶ月後の、異なる条件(4℃または-80℃)で保存したアディポネクチンを示す超精製EVにおけるアディポネクチンの定量化
アディポネクチンの量を、産生および精製の直後(T0)または4℃もしくは-80℃で保存してから3か月後(4℃で3ケ月および-80℃で3ケ月)に、定量ELISAによりEV調製物において測定する。アディポネクチンを安定して発現する細胞(wtおよび2)または対照細胞(0)の培養培地から超精製された異なるタイプのEvを溶解して、固定または会合したアディポネクチンの総量を検出し、アディポネクチンの濃度(ng/ml)を、ヒトアディポネクチンの定量化のための市販のELISAサンドイッチキットを使用して測定する。
【0287】
ELISAによる定量化のため、アディポネクチンの濃度を、サンドイッチELISAキット(Human Adiponectin/Acrp30 DuoSet ELISA R&D Systems #DY1065-05)を製造社のプロトコルに従って使用して測定した。実験前および固定されたものを含むアディポネクチンの総量を測定するために、EVを溶解した。簡潔に述べると、1容量のEVを4容量の溶解バッファー(NP-40 1%、TNE 1X:Tris 0,1M、EDTA 1mM、およびPMSF 0.25 mM 最終)と共に、氷中で30分間インキュベートした。インキュベーションステップの後、Evを、キットの試薬希釈液を使用して希釈し、溶解したEV100μlをELISAに使用した。2つの異なる希釈物を各EVサンプルにアプライし、測定を、それぞれに関し技術的に反復して行った。
【0288】
産生から3ヶ月後の、異なる条件(4℃または-80℃)で保存したアディポネクチンを示す超精製EVのサイズおよび濃度の解析
異なる調製物におけるEVのサイズ(nm)および濃度(mlあたりの粒子:p/ml)を、NanoAnalyzer機器(NanoFCM)を使用して測定する。
【0289】
超精製EVのバッチを、そのサイズ(nm)およびミリリットルあたりの粒子における粒子の濃度(p/ml)について、NanoAnalyzer機器(nanoFCM)を使用して解析した。この機器は、解析前にクオリティコントロールビーズ(250nm SiNPs)およびサイズ標準物質(size standard)ビーズ(S16M-Exo)で較正され、これは推奨通りに行われた。サンプルを、推奨されるように約10粒子/mlの作業サンプル濃度で1×PBSで希釈し、12.000粒子/分の最大速度で1分間獲得した。
【0290】
結果
本発明者らは、超精製EVが、4℃または-80℃で保存した場合に大量のアディポネクチンを維持することをさらに実証した。
【0291】
結果を図11、12、および13に示す。これら図面は、コンストラクト2またはwtアディポネクチンのいずれかを発現する細胞から超精製されたEVが、EVが4℃または-80℃で3ケ月間保存される場合に依然としてアディポネクチンを保有すること(図11)、およびコンストラクト2を発現する細胞から超精製されたEVが、4℃または-80℃で3か月間保存後にwtアディポネクチンを発現する細胞からのEVより大量のアディポネクチンをなおも含有すること(図12)を示している。これら結果は、NanoAnalyzerでの解析により確認されており、これは、アディポネクチンがコンストラクト2を有するEV膜に固定される場合にEV濃度のごくわずかな変動のみが観察されることを明らかにしている(図13、右のパネル)。EVのサイズに関して、サイズの測定の変動は有意ではない(図13、左のパネル)。
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2024-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
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【国際調査報告】