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特表2024-543241塩化ビニルコポリマーおよびコポリマー組成物、ならびにそれを含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-19
(54)【発明の名称】塩化ビニルコポリマーおよびコポリマー組成物、ならびにそれを含む物品
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/06 20060101AFI20241112BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20241112BHJP
【FI】
C08F214/06
C08L27/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024555271
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-16
(86)【国際出願番号】 IB2022060764
(87)【国際公開番号】W WO2023089453
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】2101007108
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524184415
【氏名又は名称】エスシージー ケミカルズ パブリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティーヤピーブーンチャイヤー チュラット
(72)【発明者】
【氏名】サエ-リム チャンタナ
(72)【発明者】
【氏名】タナラット ソムバット
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AE034
4J002BB024
4J002BC112
4J002BD051
4J002BN122
4J002BN162
4J002CD163
4J002CF033
4J002DE239
4J002DG046
4J002DH036
4J002DJ039
4J002EG036
4J002EG046
4J002EH097
4J002EH147
4J002EZ036
4J002FD019
4J002FD023
4J002FD027
4J002FD036
4J002FD174
4J002FD202
4J002GQ01
4J100AC03P
4J100AL04R
4J100AL05R
4J100AL34Q
4J100DA01
4J100JA03
4J100JA57
4J100JA67
(57)【要約】
本発明は、90~99重量%の範囲の塩化ビニルポリマー単位と、0.5~10重量%の範囲のマレイン酸ポリマー単位と、0~5重量%の範囲のアクリル酸ポリマー単位と、を含むコポリマーに関する。さらに、本発明はまた、コポリマー組成物およびそれを含む物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリマーであって、
a.90~99重量%の範囲の塩化ビニルポリマー単位と、
b.0.5~10重量%の範囲のマレイン酸ポリマー単位と、
c.0~5重量%の範囲のアクリル酸ポリマー単位と、を含むコポリマー。
【請求項2】
a.93~99重量%の範囲の前記塩化ビニルポリマー単位と、
b.0.5~7重量%の範囲の前記マレイン酸ポリマー単位と、
c.0.5~5重量%の範囲の前記アクリル酸ポリマー単位と、を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
a.90~98重量%の範囲の前記塩化ビニルポリマー単位と、
b.2~10重量%の範囲の前記マレイン酸ポリマー単位と、を含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
マレイン酸が、マレイン酸ジアルキルである、請求項1~3のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項5】
マレイン酸ジアルキルが、6~36個の範囲の炭素原子を有する、請求項4に記載のコポリマー。
【請求項6】
マレイン酸ジアルキルが、マレイン酸ジ-2-エチルヘキシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジセチル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4または5に記載のコポリマー。
【請求項7】
アクリル酸が、アクリル酸アルキルである、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項8】
アクリル酸アルキルが、4~21個の範囲の炭素原子を有する、請求項7に記載のコポリマー。
【請求項9】
アクリル酸アルキルが、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸ステアリル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7または8に記載のコポリマー。
【請求項10】
50~84の範囲のK値を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項11】
50~75の範囲のK値を有する、請求項2または10に記載のコポリマー。
【請求項12】
61~84の範囲のK値を有する、請求項3または10に記載のコポリマー。
【請求項13】
硬質用途であって、好ましくは、飲料水パイプ、ドア、窓、モールディング、パネルモールディング、導管、廊下床、ケーブルトレイ、および硬質発泡ボード、
半硬質用途であって、好ましくは、フィルム、シート、ブリスターパック、ステッカー、クレジットカード、半硬質プラスチックシート、シュリンクスリーブ、およびクリングフィルム、
軟質用途であって、好ましくは、軟質プラスチックシート、ケーブル、屋内電線、屋外電線、自動車用電線、ゴムタイル、冷蔵庫シール、鏡縁部シール、電気テープ、人工皮革、および軟質プラスチックシート、または
接着剤用途であって、好ましくはPVCパイプ接着剤である、請求項1~12のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載のコポリマーを含むコポリマー組成物。
【請求項15】
他のポリマー、添加剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項14に記載のコポリマー組成物。
【請求項16】
添加剤が、安定剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、充填剤、潤滑剤、難燃剤、発泡剤、顔料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載のコポリマー組成物。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか1項に記載のコポリマー、または
請求項14~16のいずれか1項に記載のコポリマー組成物を含む物品。
【請求項18】
硬質用途であって、好ましくは、飲料水パイプ、ドア、窓、モールディング、パネルモールディング、導管、廊下床、ケーブルトレイ、および硬質発泡ボード、
半硬質用途であって、好ましくは、フィルム、シート、ブリスターパック、ステッカー、クレジットカード、半硬質プラスチックシート、シュリンクスリーブ、およびクリングフィルム、
軟質用途であって、好ましくは、軟質プラスチックシート、ケーブル、屋内電線、屋外電線、自動車用電線、ゴムタイル、冷蔵庫シール、鏡縁部シール、電気テープ、人工皮革、および軟質プラスチックシート、または
接着剤用途であって、好ましくはPVCパイプ接着剤である、請求項17に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コポリマーおよびコポリマー組成物、ならびにそれを含む物品に関する化学である。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニルポリマーは、ポリ塩化ビニルまたはPVCとしても知られており、優れた耐薬品性、耐水性、および優れた電気絶縁性などの好ましい特性を有する熱可塑性物質である。したがって、水道管、クリングフィルム、食品用包装フィルム、ステッカー、電線被覆絶縁体、ケーブルなど、様々な産業における物品の製造に一般的に使用されている。ただし、PVCには、耐熱性が低い、脆い、弾性が低いなどの特定の欠点がある。したがって、特定の種類の物品になるように必要に応じて成形することはできない。したがって、何らかの具体的な特性が必要な物品になるようにPVCを成形するためには、PVCを、必要に応じて最終製品の用途に適するように、例えば添加剤または他の種類のポリマーなどの他の成分と混合して、成形されるポリマーまたはポリマー組成物の耐熱性、耐低温性、柔軟性、強度、弾性などの特性を改善する必要がある。
【0003】
PVCを他の成分に混合する場合によくある問題は、すなわち、PVCと、可塑剤および添加剤などの他の成分との不適合性である。これは、物品中身からの添加剤の移行もしくは転移を引き起こすか、またはフィッシュアイが見られる物品の不均一な表面を引き起こす。例えば、ポリマーの軟質性を改善し、物品に滑らかな表面をもたせる必要がある場合、可塑剤および添加剤を添加することで実現することができる。可塑剤がPVCの細孔に吸収されるのには時間がかかり、よって可塑剤を吸収するためには多くのエネルギーを消費する。その結果、成形後の物品の熱耐性が低下する。さらに、PVCの粒径が500μmより大きいと、物品の表面にフィッシュアイが見られる可能性が高くなり、その物品を長期間使用すると、そのような細孔に吸収された可塑剤が物品の表面から移行することになり、物品の軟質性が低下する。さらに、優れた耐油性などの具体的な特性が必要とされる特定の用途では、必要な軟質性を実現するために大量の可塑剤を添加すると、物品の耐油性が低下することになり、物品の特性が要件または規定された基準を満たさなくなる。一方、可塑剤の量を減らすと、物品の特定の物理的特性に悪影響を与えることになるか、または、120℃を超えるような高温ラミネートによるクレジットカードへの成形など、製品の溶融特性の改善が必要な用途において、製造中の高熱により、埋め込まれたチップが損傷する可能性がある。したがって、この種の用途では、120℃以下の温度でラミネートできるようにするために、通常、PVCを塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマーなどの別のポリマーと混合することによってポリマー特性を改善するので、調製手順は複雑になる。
【0004】
そのため、前述の問題を解決するための手法を発明および開発するための試みに加えて、PVC樹脂の特性を改善して用途に適したものにするための試みもまた存在する。PVCのコポリマーである樹脂の特性を改善する手法を開示した特許文献の例は以下のとおりである。
【0005】
国際公開第2019/066496号には、10~90重量部の範囲の塩化ビニルモノマー、0.1~50重量部の範囲のエチレン性不飽和モノマー、1.0重量部以上の範囲の10~20個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー、および1~30重量部の範囲のヒドロキシルモノマーであるモノマーからなるコポリマーを含む、塩化ビニル系樹脂組成物が開示されている。
【0006】
欧州特許出願公開第2067795号には、共重合またはグラフトされたポリハロゲン化ビニル樹脂の製造方法が開示されている。これは、(A)ハロゲン化ビニルモノマーまたはハロゲン化ビニルモノマーベースの重合性モノマーの混合物からなる複合組成物に関する90.0重量%~99.9重量%と、(B)アクリル酸アルキルモノマーもしくはラテックスまたはアクリル酸アルキル/アクリル酸系ポリマー粉末の複合組成物に関する10.0重量%~0.1重量%とからなる。
【0007】
中国特許第104250334号には、90~99.5重量%の範囲の量の塩化ビニルモノマーと、0.5~10重量%の範囲の量のアクリル酸モノマーとの反応を含む、塩化ビニル-アクリル酸コポリマーを調製するための方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、ポリ塩化ビニルの特性を改善するための、具体的には、上記従来技術の例に開示されているように、塩化ビニルモノマーと他のコモノマーとの共重合を使用してポリマーの特性を改善するための、様々な手法の研究および開発にもかかわらず、そのようなポリマーを様々な用途に使用するための必要性を満たすために、そのコポリマーだけではなく、ポリ塩化ビニルの特性を開発するまたは改善する必要性が依然として残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、必要に応じて様々な用途に適するように、特に、弾性、耐熱性、耐低温性、強度、耐油性、必要に応じて高温~低温で成形することができる能力など、その特定の特性が改善されたポリ塩化ビニル(PVC)のコポリマーを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、様々な用途に適した特性を有する本発明によるコポリマーから作製された、または本発明によるコポリマーからなる、コポリマー組成物および物品を提供することであって、様々な用途には、硬質用途であって、例えば、飲料水パイプ、ドア、窓、モールディング、パネルモールディング、電気導管、廊下床、ケーブルトレイ、および硬質発泡ボード、半硬質用途であって、例えば、フィルム、シート、ブリスターパック、ステッカー、クレジットカード、半硬質プラスチックシート、シュリンクスリーブ、およびクリングフィルム、軟質用途であって、例えば、軟質プラスチックシート、ケーブル、屋内電線、屋外電線、自動車用電線、ゴムタイル、冷蔵庫シール、鏡縁部シール、電気テープ、人工皮革、および軟質プラスチックシート、または接着剤用途であって、例えば、PVCパイプ接着剤が含まれる。
【0011】
本発明の第1の態様は、
a.90~99重量%、好ましくは、93~99重量%の範囲の塩化ビニルポリマー単位と、
b.0.5~10重量%、好ましくは、0.5~7重量%の範囲のマレイン酸ポリマー単位と、
c.0~5重量%、好ましくは、0.5~5重量%の範囲のアクリル酸ポリマー単位と、を含むコポリマーに関する。
別の実施形態では、本発明によるコポリマーは、
a.90~98重量%の範囲の塩化ビニルポリマー単位と、
b.2~10重量%の範囲のマレイン酸ポリマー単位と、を含む。
【0012】
本発明の第2の態様は、本発明による上記コポリマーを含むコポリマー組成物であって、他のポリマー、添加剤、またはそれらの組み合わせもまた含み得るコポリマー組成物に関する。すなわち、コポリマー組成物は、本発明によるコポリマーと1種以上の他のポリマーとを含んでもよく、または本発明によるコポリマーと添加剤とを含んでもよく、または本発明によるコポリマーを1種以上の他のポリマーおよび添加剤と共に含んでもよい。添加剤は、例えば、安定剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、充填剤、潤滑剤、難燃剤、発泡剤、顔料、またはそれらの組み合わせなど、用途に適するようにコポリマー組成物の特性を改善するために使用される任意の種類のものとすることができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、本発明によるコポリマーまたはコポリマー組成物から作製された、またはそれを含む物品に関する。
【0014】
本発明によるコポリマー、このようなコポリマーを含むコポリマー組成物、およびこのコポリマーもしくはコポリマー組成物から作製された、またはこのコポリマーもしくはコポリマー組成物を含む物品は、優れた硬度および弾性などの物理的特性、優れた低温での接着性を有し、添加剤の使用を低減し、例えば、物品の表面からの可塑剤の移行などの問題を解決または軽減することができる。さらに、それらは、物品の外観を良好にするだけでなく、成形の消費電力が低く、物品への成形が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に示されるいかなる態様も、特に明記しない限り、本発明による他の態様への適用を包含するものとする。
【0016】
本明細書で使用される技術用語および科学用語は、特に規定しない限り、当業者によって理解される意味を有する。
【0017】
本発明全体を通じて、「約(about)」という用語は、本明細書に現れるまたは示されるあらゆる値が変化または逸脱する可能性があることを示すために使用される。このような変化または逸脱は、値を決定するために使用される機器または方法のエラーによって引き起こされることがある。
【0018】
「~で構成される(consist(s) of)」、「~を備える(comprise(s))」、「~を含有する(contain(s))」、「~を含む(include(s))」という用語は、オープンエンドの動詞である。例えば、1つの構成要素もしくは複数の構成要素または1つのステップもしくは複数のステップ「で構成される(consist(s) of)」、「を備える(comprise(s))」、「を含有する(contain(s))」、または「を含む(include(s))」任意の方法は、1つの構成要素もしくは1つのステップまたは複数のステップもしくは複数の構成要素のみに限定されるものではなく、指定されていない構成要素またはステップもまた包含する。
【0019】
本明細書で言及されるツール、デバイス、方法、材料、または化学物質は、特に指定しない限り、当業者が一般的に使用または実践するツール、デバイス、方法、材料、または化学物質を意味する。
【0020】
本発明において開示され、特許請求される全ての構成要素および/または方法は、任意の要素の作用、実践、修正、または変更から得られる本発明の態様を網羅することを意図しており、この任意の要素の作用、実践、修正、または変更とは、本発明とは実質的に異なる実験を必要とせずに、特性および有用性を付与し、請求項には具体的に明記されていないが、当業者の判断によれば、本発明による態様と同じ効果をもたらすものである。したがって、本発明による態様の代替または類似物、および当業者にとって明らかなわずかな修正または変更もまた、本発明の趣旨、範囲、および概念の範囲内にあるとみなされる。
【0021】
定義
本発明による「ポリマー単位」という用語は、2つ以上のモノマー単位または繰り返し単位によって構成されるかまたは形成されるポリマーまたはコポリマー鎖の任意の部分を指すものとする。本明細書において使用される「ポリマー単位」という用語には、そのようなモノマー単位または繰り返し単位のオリゴマーも含まれるものとする。
【0022】
本発明による「塩化ビニルポリマー単位」という用語は、2つ以上の塩化ビニル繰り返し単位または塩化ビニルオリゴマーによって構成されるかまたは形成されるコポリマー鎖の任意の部分を指すものとする。
【0023】
本発明による「マレイン酸ポリマー単位」という用語は、2つ以上のマレイン酸繰り返し単位またはマレイン酸オリゴマーによって構成されるかまたは形成されるコポリマー鎖の任意の部分を指すものとする。
【0024】
本発明による「アクリル酸ポリマー単位」という用語は、2つ以上のアクリル酸繰り返し単位またはアクリル酸オリゴマーによって構成されるかまたは形成されるコポリマー鎖の任意の部分を指すものとする。
【0025】
以下、実験例および特性試験結果を参照して本発明をより詳細に説明するが、それらは本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0026】
本発明の第1の態様は、
a.90~99重量%の範囲の塩化ビニルポリマー単位と、
b.0.5~10重量%の範囲のマレイン酸ポリマー単位と、
c.0~5重量%の範囲のアクリル酸ポリマー単位と、を含む、コポリマーに関する。
本発明の好ましい実施形態によれば、上記コポリマーは、
a.93~99重量%の範囲の塩化ビニルポリマー単位と、
b.0.5~7重量%の範囲のマレイン酸ポリマー単位と、
c.0.5~5重量%の範囲のアクリル酸ポリマー単位と、を含む。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、上記コポリマーは、
a.90~98重量%の範囲の塩化ビニルポリマー単位と、
b.2~10重量%の範囲のマレイン酸ポリマー単位と、を含む。
【0027】
本発明によるマレイン酸は、マレイン酸ジアルキルであり得、好ましくは6~36個の範囲の炭素原子を有するマレイン酸ジアルキルであり得る。例示的なマレイン酸ジアルキルは、マレイン酸ジ-2-エチルヘキシル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジセチル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0028】
本発明によるアクリル酸は、アクリル酸アルキルであり得、好ましくは4~21個の範囲の炭素原子を有するアクリル酸アルキルであり得る。例示的なアクリル酸アルキルは、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸ステアリル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0029】
本発明によれば、コポリマーは、50~84の範囲のK値を有する。好ましくは、コポリマーが、塩化ビニルポリマー単位、マレイン酸ポリマー単位、およびアクリル酸ポリマー単位を含む場合、上記指定された範囲において、コポリマーは、50~75の範囲のK値を有する。また、コポリマーが、塩化ビニルポリマー単位とマレイン酸ポリマー単位とを含み、すなわちアクリル酸ポリマー単位を含まない場合、コポリマーは、61~84の範囲のK値を有する。
【0030】
上記指定されたK値を有するコポリマーは、最終製品の用途または特性に適するように選択される。例えば、硬質用途の場合、好ましいコポリマーは、低~中程度のK値を有することになり、半硬質または軟質用途の場合、好ましいコポリマー、は中~高程度のK値を有することになる。
【0031】
本発明によるコポリマーは、様々な用途に適しており、例えば、
-飲料水パイプ、ドア、窓、モールディング、パネルモールディング、電気導管、廊下床、ケーブルトレイ、および硬質発泡ボードなどからなる群から選択することできる硬質用途、
-フィルム、シート、ブリスターパック、ステッカー、クレジットカード、半硬質プラスチックシート、シュリンクスリーブ、およびクリングフィルムなどからなる群から選択することができる半硬質用途、
-軟質プラスチックシート、ケーブル、屋内電線、屋外電線、自動車用電線、ゴムタイル、冷蔵庫シール、鏡縁部シール、電気テープ、人工皮革、および軟質プラスチックシートなどからなる群から選択することができる軟質用途、
-PVCパイプ接着剤などの接着剤用途、がある。
【0032】
本発明の第2の態様は、上記指定された態様および特性を有する本発明によるコポリマーを含むコポリマー組成物に関する。
【0033】
本発明によるコポリマー組成物は、他のポリマー、添加剤、またはそれらの組み合わせもまた含み得る。すなわち、コポリマー組成物は、本発明によるコポリマーと1種以上の他のポリマーとを含んでもよく、または本発明によるコポリマーと添加剤とを含んでもよく、または本発明によるコポリマーを1種以上の他のポリマーおよび添加剤と共に含んでもよい。
【0034】
コポリマー組成物の特性を用途に適するように改善することができる添加剤であれば、どのような添加剤でも使用することができる。例えば、添加剤は、安定剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、充填剤、潤滑剤、難燃剤、発泡剤、顔料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0035】
本発明による使用可能な安定剤の例としては、錫安定剤、メチル錫安定剤、オクチル錫安定剤、有機錫安定剤、カルシウム亜鉛安定剤などの非鉛安定剤、三塩基性硫酸鉛(TBLS)、二塩基性亜リン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛(DBL)などの鉛安定剤からなる群から選択することができる薬剤がある。
【0036】
本発明による使用可能な耐衝撃性改良剤の例としては、メチルブタジエンスチレン(MBS)、アクリル系耐衝撃改良剤(AIM)、塩素化ポリエチレン改良剤(CPE)からなる群から選択することができる薬剤がある。
【0037】
本発明による使用可能な可塑剤の例は、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)などのフタル酸系、アジピン酸ジオクチル(DOA)、トリメリット酸トリオクチル(TOTM)、アジピン酸ポリエステル、フタル酸ジオクチル(DOP)、エポキシ化大豆油(EPO)などの非フタル酸系からなる群から選択することができる。
【0038】
本発明による使用可能な充填剤の例としては、炭酸カルシウム(CaCO)、カオリンなどからなる群から選択することができる薬剤がある。
【0039】
本発明による使用可能な潤滑剤の例としては、ワックス、好ましくはポリエチレンワックスなどがある。
【0040】
本発明の第3の態様は、本発明によるコポリマーまたはコポリマー組成物を含む物品に関する。
【0041】
本発明による物品は、様々な用途に適しており、例えば、
-飲料水パイプ、ドア、窓、モールディング、パネルモールディング、電気導管、廊下床、ケーブルトレイ、および硬質発泡ボードなどからなる群から選択することできる硬質用途、
-フィルム、シート、ブリスターパック、ステッカー、クレジットカード、半硬質プラスチックシート、シュリンクスリーブ、およびクリングフィルムなどからなる群から選択することができる半硬質用途、
-軟質プラスチックシート、ケーブル、屋内電線、屋外電線、自動車用電線、ゴムタイル、冷蔵庫シール、鏡縁部シール、電気テープ、人工皮革、軟質プラスチックシートなどからなる群から選択することができる軟質用途、または
-PVCパイプ接着剤などの接着剤用途、がある。
【0042】
本発明によるコポリマーの調製方法は、当技術分野で既知の任意の適した方法を使用して実行することができる。
【0043】
実験例
本発明によるコポリマー、ならびに本発明によるコポリマーから作製されたまたは本発明によるコポリマーを含むコポリマー組成物および物品の特性を研究するために、各実施例が、表1に示すように、それぞれのポリマー単位の量および種類が異なることを条件として、例えば、本発明によるコポリマーである実施例1~8、ポリ塩化ビニルホモポリマーである比較例1および2、ならびにコポリマーである比較例3および4などのポリマー例を調製した。
【0044】
【表1】
【0045】
ポリマー例を、特性について、すなわち、ポリマーの平均粒径、可塑剤吸収時間(plasticizer absorption time(PAT))、およびガラス転移温度(Tg)について、以下に詳述するように試験した。
【0046】
1)平均粒径の測定
ポリマーの平均粒径を測定するために、乾燥ポリマー粉末を、それぞれ上部に大きな目開き、下部に小さな目開きが位置するように積み重ねられた、異なる目開きサイズのふるいに通した。ふるい振とう機を使用して、これらのふるいを10分間振とうした。次いで、以下の式を使用して乾燥ポリマー粉末の粒径を計算した。
ポリマー粉末サイズ=[(P1×D1)+(P2×D2)+.....+(Pn×Dn)]/100
ここで、P1、P2、…、Pnは、異なる目開きサイズのふるいに残ったポリマー粉末の量(率(%))であり、D1、D2、…、Dnは、ふるいの平均目開きサイズ、例えば、μm(ミクロン)である。
例えば、P1は、平均目開きサイズD1のふるいに残っている乾燥ポリマー粉末の率である。
【0047】
2)可塑剤吸収時間(PAT)の測定
可塑剤吸収時間は、ASTM D2396-88規格に従った方法で測定することができる。可塑剤吸収時間とは、組成物に可塑剤を添加してからプラネタリーミキサーの混練トルクが最小になるまでの時間である。
【0048】
3)ガラス転移温度(Tg)の測定
ガラス転移温度は、ポリマーの熱変化を分析するために、示差走査熱量計(DSC)を使用して、試験試料(ポリマー)を1つのトレイに配置し、別のトレイを参照トレイとして使用して、それらを加熱することによって測定することができる。DSCは、ポリマーの化学変化を引き起こす温度を読み取ることになる。
【0049】
上記の試験結果、すなわちポリマー例の平均粒径、可塑剤吸収時間(PAT)、およびガラス転移温度(Tg)を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
以上の試験結果から、本発明によるコポリマー実施例(実施例1~8)の可塑剤吸収時間(PAT)は、ポリ塩化ビニルホモポリマーである比較例(比較例1、2)の可塑剤吸収時間(PAT)よりも著しく短いことがわかった。PATの短縮により、薬剤の混合に使用される時間およびエネルギーが低減され、生産コストを削減することができるというプラスの効果があった。さらに、PATの短縮は、ポリマーの劣化を遅らせるのにも役立った。
【0052】
さらに、塩化ビニルポリマー単位とマレイン酸ジ-2-エチルヘキシルポリマー単位とを含むコポリマー、すなわち本発明の実施例1、6、7、8のみを、比較例3、4と比較すると、本発明によるマレイン酸ジ-2-エチルヘキシルポリマー単位の量を0.5~10重量%の範囲で含有したコポリマー(実施例1、6、7、8)は、マレイン酸ジ-2-エチルヘキシルポリマー単位の量が0.5重量%未満のコポリマー(比較例3)と比較して、ガラス転移温度(Tg)が著しく低いこと、またマレイン酸ジ-2-エチルヘキシルポリマー単位の量が10重量%を超えるコポリマー(比較例4)であっても、本発明によるコポリマー(実施例1、6、7、8)と比較して、ガラス転移温度が低いことがわかった。しかしながら、コポリマーの粒径を比較すると、比較例4によるコポリマーは、実施例1、6、7、8によるコポリマー例に比べて粒径がはるかに大きいことがわかった。さらに、比較例4によるコポリマーは、500μmより大きい粒子の量が最大10%であり、物品作製の際にフィッシュアイが見つかる可能性が高いこともわかった。
【0053】
試験結果
次いで、コポリマー実施例を用いて、以下に詳述するように、用途、すなわち、クレジットカード、ケーブルシース、クリングフィルムへの成形などの用途に応じて、コポリマー組成物および物品を調製した。
【0054】
1.クレジットカード
コポリマー実施例と比較ポリマー例を用いて、添加剤の量および種類が異なる組成物例を調製した。次いで、組成物例およびそれらの組成物例から成形された物品について、以下に詳述するように、特性、すなわち、衝撃強度、ラミネート性、および熱安定性について試験した。
【0055】
1)アイゾット衝撃強度
アイゾット衝撃強度を、ASTM D-256(2018)規格に従って測定した。試験した組成物例は、厚さ3mmであり、V字型の切り欠きを入れて、5.5Jの振り子で打撃した。
【0056】
2)ラミネート特性試験
組成物例のラミネート成形試験を、各組成物例からの厚さ0.5mmのラミネート試料を温度140℃で調製することによって実行した。得られたラミネートを、ホットプレスを使用して、温度100℃、110℃、120℃で、5分間、50バールの圧力をかけながら、厚さ1mmのフレーム内で2つの試料ラミネートを合わせてスプライスすることによってワークピースに成形した。完了後、ワークピースラミネートの貼り合わせ状態を検査し、0~5に格付けすることによって評価し、0は貼り合わされていない、5はしっかりと貼り合わされていることを意味する。
【0057】
3)熱安定性試験
組成物例の熱安定性を、メトラスタット(metrastat)機を温度200℃で100分間使用して、厚さ0.5mmの組成物例を使用して測定した。熱安定性を、変色および劣化を示すその他の兆候を目視で観察して検査した。また、試験試料の初期変色時間、および組成物例の焼け変色時間も記録した。
【0058】
コポリマー実施例1~5(表1)からそれぞれ調製した組成物例1~5と、比較ポリマー例1(表1)から調製した比較組成物例1であり、ここで、これらの組成物例は、添加物の量および種類が異なっており、前述の特性試験結果を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
表3の試験結果から、本発明によるコポリマーを含む組成物例(例3、4、5)は、塩化ビニルホモポリマーを含む比較例1と比較して、衝撃強度が大幅に向上していることが示されている。
【0061】
様々な温度でのラミネート試験結果を検討したところ、本発明による組成物例1~5は温度120℃でラミネート可能であることが分かり、この温度において、組成物例3~5はラミネート評価スコアが最も高く(5点)、本発明によるコポリマー組成物がラミネートに適した特性を有することを示しており、また、温度110℃では、組成物例5のみがラミネート可能であることがわかった。
【0062】
本発明による組成物の低温でのラミネート能力または高い評価スコアは、比較例(表2を参照)と比較してポリマーのガラス転移温度(Tg)が低いことに起因する。このことは、低温での溶融を可能にする。この低温でのラミネート能力は、一部の用途、具体的にはクレジットカードまたはチップなどの熱に弱いデバイスを収容したその他の製品の製造にとって極めて必要な特性である。
【0063】
2.ケーブルシース
コポリマー実施例6、7(表1)と比較ポリマー例2(表1)を用いて、添加剤の量および種類が異なる組成物例を調製した。次いで、比較組成物例2だけでなく、組成物例およびそれらから成形された物品についても、特性、すなわち、融解時間、メルトフローインデックス(MFI)、体積抵抗率(VR)、硬度、および移行について試験した。詳細は、以下のとおりである。
【0064】
1)融解時間
融解時間は、ASTM D2396:2020規格に従って、バッチミキサーを、温度180℃で、スクリュー回転数40rpmで使用して、トルクが一定値に低下するまで組成物例を混合し、一定のトルクに到達するまでの時間を記録することによって試験した。
【0065】
2)メルトフローインデックス(MFI)
メルトフローインデックスは、ASTM D1238:2020規格に従って、決定された温度及び力の重さでシリンダ内の組成物例を溶融させ、シリンダから流出する組成物例を重量測定し、以下の式を使用してメルトフローインデックスを計算することによって試験した。
MFI=10W/T
ここで、Wは、押し出された組成物例の平均重量(グラム)である。
Tは、押し出された組成物例の押し出し時間(分)である。
【0066】
3)体積抵抗率(VR)
体積抵抗率を、ASTM D257に従って、厚さ2mmの組成物例を2つの電極の間に置き、電圧を60秒間印加することによって測定した。次いで、表面抵抗率または体積抵抗率を測定した。見かけの値(60秒の通電時)を算出し、報告した。
【0067】
4)硬度
硬度を、D2240-68:2021規格に従って、厚さ6mmの組成物例のワークピースを調製し、ショアA圧子を使用してデュロメータを用いて試験することによって測定した。平均値を測定するために、5地点において試験を行った。
【0068】
5)移行
可塑剤の移行を、調製後の厚さ1mmの組成物例をオーブンで温度70℃で10日間加熱することによって判定した。次いで、このような例の表面への可塑剤の移行率を、以下の式を使用して計算した。
移行率=(保温前重量-保温後重量)×100/保温前重量
【0069】
コポリマー実施例6、7(表1)からそれぞれ調製した組成物例6、7、比較ポリマー例2(表1)から調製した比較組成物例2は、添加剤の量および種類が異なっており、前述の特性試験結果を表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
表4の試験結果は、本発明によるコポリマー組成物(組成物例6、7)が、比較組成物例2と比較して、短い融解時間および高いポリマーメルトフローインデックスを示すことを示している。このような優れた結果によって、本発明によるコポリマー組成物は、電線製造における電力消費を、最大4.16%削減することができる。製造時の電力を節約することに加えて、比較組成物例2と比較して、本発明によるコポリマー組成物の例示的な成形されたワークピースの外表面にはフィッシュアイが見られることもなくなる。ワークピースの外表面は、実際の使用のために考慮すべき重要な特性の1つであるため、このことは、本発明の利点となる。
【0072】
ケーブルシース製品などの絶縁製品の製造のためにポリマーを使用するには、工業規格(IS)に従った特定の硬度値を満たす必要があり、抵抗率を測定する必要がある。優れた絶縁材は、当然のことながら、体積抵抗率が高く、導電性が低い。試験結果から、本発明によるコポリマー組成物は、可塑剤添加剤の添加の結果として、比較組成物例2と比較して、材料中の電流に対してより高い抵抗を示すことがわかった。より少量の場合(表4参照)、材料中の電子の流れは少なくなるが、硬度値は比較組成物例2と同等であり、すなわち、本発明によるコポリマー組成物から成形された物品の硬度値は、油の添加量が少ないにもかかわらず上昇しなかった。
【0073】
半硬質または軟質の用途の場合、材料を軟化させるために、可塑剤添加剤を配合に加える必要がある。可塑剤を過剰に添加すると、可塑剤が表面に移行して、軟質性が低下し、特定の特性が劣化し、またワークピースの表面に粘着性が生じて、用途に好ましくないだけでなく、脆弱性が増大する可能性がある。上記試験から、本発明によるコポリマー組成物は、ワークピースの硬度値が同じである比較組成物例2と比較して、可塑剤(フタル酸ジオクチル)の移行が少ないことがわかった。
【0074】
さらに、本発明によるコポリマー組成物例は、比較組成物例2よりも可塑剤吸収時間が短いこともわかった。上記値は、ポリマーが油を吸収するのにかかる時間を示す。可塑剤吸収時間が短くなるということは、エネルギーが低減され混合時間が短くなることを意味する。これにより、エネルギーを節約し、処理時間を削減し、ポリマーまたはポリマーから成形された物品の劣化を低減し、またその結果、物品の表面をより滑らかにすることができる、またはフィッシュアイを低減することができる。
【0075】
3.クリングフィルム
コポリマー実施例8(表1)を用いて、本発明によるコポリマー組成物例である組成物例8を調製し、比較ポリマー例2(表1)を用いて、量および種類が異なる添加剤を使用した比較組成物例3を調製した。次いで、比較組成物例3だけでなく、組成物例およびそれから成形された物品もまた、特性、すなわち、可塑剤吸収時間、硬度、メルトフローインデックス、総移行量(overall migration(OM))、および表面への可塑剤の移行について試験した。可塑剤吸収時間、硬度値、メルトフローインデックス(MFI)、および表面への可塑剤の移行の測定の詳細は、前述のとおりである。
【0076】
総移行量(OM)試験を、BS EN 1186-15:2002規格に従って、調製された組成物例を試験することによって実行した。これは、14×14cmの試験ワークピースを調製し、それぞれの組成物例から得られたワークピースを重量測定し、それらを温度20℃で、2日間イソオクタン溶液に浸漬することによって行った。完了後、イソオクタン溶液を除去してから、イソオクタン溶液に浸漬したワークピースの重量測定を行った。次いで、イソオクタンを蒸発させてから、蒸発後にワークピース内の残留添加剤の重量測定を行った。測定した全ての重量を記録し、総移行量を測定するために以下の式を使用して計算を行った。
M=(A-B)/S
ここで、Mは、総移行量(mg/dm)である。
【0077】
Aは、蒸発後のワークピース例と蒸発に使用した容器との合計重量(mg)である。
【0078】
Bは、試験前に測定された蒸発に使用された容器の重量(mg)である。
【0079】
Sは、ワークピース例と溶液との間の接触面積(dm)である。
【0080】
組成物例同士は、異なる量及び異なる種類の添加剤を含有しており、前述の特性試験結果を表5に示す。
【0081】
【表5】
【0082】
表5の試験結果は、本発明によるコポリマー実施例組成物の試験ワークピースの可塑剤吸収時間が、比較組成物例と比較して大幅に短縮されていることを示している。可塑剤吸収時間が短くなるということは、エネルギーが低減され混合時間が短くなることを意味する。これにより、エネルギーを節約することができ、またポリマーまたは物品の劣化も軽減することができる。
【0083】
本発明によるコポリマー実施例組成物の試験ワークピースのメルトフローインデックスは、比較組成物例よりも高い。
【0084】
アルコールなどの溶液を用いた抽出に対する耐性を試験する総移行量(OM)を考慮すると、本発明のコポリマー実施例組成物の試験ワークピースは、比較組成物例のそれよりも総移行量が著しく小さいことがわかった。これは、本発明のコポリマー実施例組成物が、比較組成物例よりも溶液を用いた抽出に対してより耐性を有することができることを示している。
【0085】
一般的に、半硬質物品には、物品が用途に適した硬度を確実に有するために可塑剤の添加が必要であり、時間の経過とともに可塑剤が物品の表面に移行することになり、物品の表面に粘着性が生じ、用途に望ましくない状態となり、脆弱性が増大する。表5から、本発明によるコポリマー組成物例から作製された試験ワークピースの表面への可塑剤の移行は、比較組成物例から作製された試験ワークピースのそれよりも著しく低いことがわかった。
【0086】
上記の全ての試験結果から、本発明によるそのようなコポリマーを含むコポリマー組成物だけではなく、ポリ塩化ビニルのコポリマーも、改善された特性を有すると結論付けることができる。すなわち、ポリ塩化ビニルのコポリマーは、より低い温度で成形することができ、より簡単に溶融することができるため、ワークピースの作製におけるエネルギーを節約することができる。また、溶液に対しても十分な耐性を有することができる。換言すれば、表面への可塑剤の移行が低減される。さらに、本発明によるポリ塩化ビニルのコポリマーは、ワークピースまたは物品の表面のフィッシュアイ問題を解決し、物品の外観をより美しく魅力的にし、耐用年数を延ばすことができることもわかった。
【0087】
本発明の最良の形態
本発明の最良の形態は、本発明の詳細な説明に記載されているとおりである。
【国際調査報告】