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特表2024-543251ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-20
(54)【発明の名称】ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20241113BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241113BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
A61K8/86
A61Q19/00
A61Q1/00
A61K8/81
A61K8/25
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527404
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 CN2021129777
(87)【国際公開番号】W WO2023082093
(87)【国際公開日】2023-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】イ・ディン
(72)【発明者】
【氏名】シンウェイ・ユ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB242
4C083AB431
4C083AB432
4C083AC122
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD351
4C083BB23
4C083BB25
4C083CC03
4C083CC11
4C083EE07
4C083EE12
(57)【要約】
ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための組成物であって、(i)少なくとも1種のアクリル酸グリセリルポリマー、(ii)少なくとも1種のポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロール、(iii)合成フルオロフロゴパイトである、第1の真珠光沢顔料、及び(iv)マイカを含有する第2の真珠光沢顔料を含む、組成物に関する。ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための非治療的方法であって、この組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、非治療的方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための組成物であって、
(i)少なくとも1種のアクリル酸グリセリルポリマー、
(ii)少なくとも1種のポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロール、
(iii)合成フルオロフロゴパイトである、少なくとも1種の第1の真珠光沢顔料、及び
(iv)マイカを含有する、少なくとも1種の第2の真珠光沢顔料
を含む、組成物。
【請求項2】
前記アクリル酸グリセリルポリマーが、アクリル酸グリセリルコポリマーから選択され、好ましくはアクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマーから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アクリル酸グリセリルポリマーが、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~1質量%、好ましくは0.01質量%~0.5質量%、より好ましくは0.01質量%~0.3質量%の範囲内の量で存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロールが、下に示す式(I):
Gly-{O(PO)s(EO)t-(BO)uH}3 (I)
[式中、
Glyは、グリセリンからヒドロキシル基を除去することによって得られる残基を示し、
POは、オキシプロピレン基を示し、
EOは、オキシエチレン基を示し、
s及びtは、それぞれ、PO及びEOの平均付加モル数を示し、1~50の範囲内の値を有し、
POのEOに対する質量比(PO/EO)は、1/5~5/1の範囲内であり、
BOは、4個の炭素原子を有するオキシアルキレン基を示し、
uは、BOの平均付加モル数を示し、0.5~5の範囲内である]
によって表される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
式(I)において、
sが、2~15、好ましくは3~7の範囲内であり、
tが、3~20、好ましくは6~10の範囲内であり、
uが、1~5、好ましくは2~4の範囲内である、
請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロールが、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンである、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロールが、前記組成物の総質量に対して、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.5質量%~5質量%、より好ましくは1質量%~3質量%の範囲内の量で存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1の真珠光沢顔料が、前記組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~4.5質量%、より好ましくは0.1質量%~4質量%の範囲内の量で存在する、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記第2の真珠光沢顔料が、二酸化チタンでコーティングされたマイカである、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記第2の真珠光沢顔料が、前記組成物の総質量に対して、0.5質量%~10質量%、好ましくは0.75質量%~6質量%、より好ましくは1質量%~4質量%の範囲内の量で存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記第1の真珠光沢顔料の前記第2の真珠光沢顔料に対する質量比が、1:20~4:1、よりいっそう好ましくは1:2~2:1の範囲内であり、最も好ましくは、前記第1の真珠光沢顔料の前記第2の真珠光沢顔料に対する質量比が、1:1である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
好ましくは2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のホモポリマー及びコポリマー並びに多糖バイオポリマーから選択され、より好ましくはアンモニウムポリアクリルジメチルタウラミド、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム及びアカシアガムから選択される、親水性増粘剤を更に含む、請求項1から11に記載の組成物。
【請求項13】
前記親水性増粘剤が、前記組成物の総質量に対して、0.1質量%~2.0質量%、好ましくは0.2質量%~1.5質量%、より好ましくは0.25質量%~1.0質量%の範囲内の量で存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の総質量に対して、
(i)0.01質量%~0.3質量%のアクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、
(ii)1質量%~3質量%のPEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、
(iii)0.1質量%~4質量%の合成フルオロフロゴパイト、及び
(iv)1質量%~4質量%の二酸化チタンでコーティングされたマイカ
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための非治療的方法であって、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物を前記ケラチン物質に適用する工程を含む、非治療的方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、組成物に関する。特に、本発明は、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための組成物に関する。本発明はまた、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための非治療的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
世界中の消費者が、ケラチン物質、とりわけ皮膚の外観を改善するため、特に、皮膚に光学的美容効果、例えば、トーンアップ効果及び良好な輝き(radiance)を提供するために、新規の化粧料を探している。
【0003】
上に言及した光学的効果を皮膚にもたらすことができる化粧料は、例えば、顔料を含有するファンデーション製品として公知である。
【0004】
しかしながら、これらの製品は依然として、申し分ないものではない。例えば、適用後に、皮膚に粉状の及び乾燥した感覚を残すことがある。これは、大量の水を包み込む能力が低いことに起因しうる。
【0005】
US11033471B2は、a)25μmの平均粒径を有する第1の合成フルオロフロゴパイト、b)1層又は複数層の赤色酸化鉄で完全に又は部分的にコーティングされ、二酸化チタンで更にコーティングされた、42μm以下の平均径を有する第1のマイカ、及びc)1層又は複数層の二酸化チタンで完全に又は部分的にコーティングされ、二酸化鉄で更にコーティングされた、42μm以下の平均径を有する第2のマイカを含む、皮膚への局所適用のための組成物を開示している。
【0006】
上に言及したトーンアップ効果の他に、消費者は、皮膚の感覚特性に関してますます多くの要件を有する。その中でも、保湿は、今日、最も難しい要件の1つである。
【0007】
WO2021077320A1は、水性相に、(i)アセチル化ヒアルロン酸及び/又はその塩と、ヒアルロン酸及び/又はその塩との組み合わせ、並びに(ii)可溶化剤を含む組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US11033471B2
【特許文献2】WO2021077320A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在の製品は、保湿に焦点を合わせてトーンアップ効果を犠牲にしているか、又は長期的な保湿を損ないながら、トーンアップ効果に焦点を合わせているかのいずれかである。
【0010】
したがって、美容産業において、長く続く保湿と、輝き及びトーンアップ効果の間の良好なバランスとをもたらす化粧料を消費者に提供することが、依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の概要
本発明者等は、今や、上記所望の特性を有するこのような組成物を配合できることを発見した。
【0012】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための組成物であって、
(i)少なくとも1種のアクリル酸グリセリルポリマー、
(ii)少なくとも1種のポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロール、
(iii)合成フルオロフロゴパイトである、少なくとも1種の第1の真珠光沢顔料、及び
(iv)マイカを含有する、少なくとも1種の第2の真珠光沢顔料
を含む、組成物を提供する。
【0013】
(i)少なくとも1種のアクリル酸グリセリルポリマー、(ii)少なくとも1種のポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロール、(iii)少なくとも1種の第1の真珠光沢顔料(合成フルオロフロゴパイトである)、及び(iv)マイカを含有する、少なくとも1種の第2の真珠光沢顔料の組み合わせによって、本発明の組成物は、ケラチン物質に、一日中続く保湿と、輝き及びトーンアップ効果の間の良好なバランスとを提供できることを見出した。
【0014】
したがって、第2の態様によれば、本発明は、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための非治療的方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、非治療的方法を提供する。
【0015】
本発明の他の特徴、要素、特徴及び利点は、以下の本発明の詳細な記載からより明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の詳細な説明
以下の記載において、別段の指示がない限り、値の範囲の限界値は、特に「…から…の間」及び「…~…」という表現において、その範囲に含まれる。
【0017】
更に、本記載において使用される「少なくとも1つ」という表現は、「1つ又は複数」という表現と同等である。
【0018】
本出願全体にわたって、「含む(comprising)」という用語は、すべての特定的に言及される特徴に加えて、任意選択の、追加の、不特定の特徴を包含するものと解釈されたい。ここで使用される場合、「含む(comprising)」という用語の使用はまた、特定的に言及される特徴以外の特徴が存在しない(すなわち「~からなる」)実施形態を開示している。
【0019】
別段の定義がない限り、ここで使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者が通例理解するものと同じ意味を有する。本記載における用語の定義が、本発明が属する技術分野における当業者が通例理解する意味と競合する場合、ここに記載される定義を適用するものとする。
【0020】
別段特定されない限り、本記載及び特許請求の範囲において使用される、成分の量等を表現する数値のすべては、「約」という用語によって修飾されているものと理解されたい。したがって、反対の指示がない限り、ここに記載される数値及びパラメータは、要求される所望の目的に従って変更することができる、およその値である。
【0021】
本発明の目的上、「ケラチン物質」という用語は、ヒトの皮膚、粘膜、例えば唇を網羅することが意図される。顔面の皮膚が、本発明によって特に最も考慮される。
【0022】
第1の態様によれば、本発明は、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための組成物であって、
(i)少なくとも1種のアクリル酸グリセリルポリマー、
(ii)少なくとも1種のポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロール、
(iii)合成フルオロフロゴパイトである、少なくとも1種の第1の真珠光沢顔料、及び
(iv)マイカを含有する、少なくとも1種の第2の真珠光沢顔料
を含む、組成物を提供する。
【0023】
アクリル酸グリセリルポリマー
第1の態様によれば、本発明の組成物は、少なくとも1種のアクリル酸グリセリルポリマーを含む。
【0024】
好ましくは、アクリル酸グリセリルポリマーは、アクリル酸グリセリルコポリマーから選択される。
【0025】
より好ましくは、アクリル酸グリセリルポリマーは、アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマーから選択される。
【0026】
アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマーは、非常に親水性であり、100万ダルトンを超える分子量を有し、一般に、グリセリンで部分的にエステル化された(典型的には約50%エステル化された)ポリアクリル酸骨格を含む。
【0027】
アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマーは、水を保持するクラスレートを形成し、放出時に潤滑及び保湿を皮膚に供給すると考えられる。
【0028】
このようなコポリマーは、とりわけ、Guardian Laboratories社により、LUBRAJEL(登録商標) MS、LUBRAJEL(登録商標) CG、LUBRAJEL(登録商標) DV、LUBRAJEL(登録商標) NP、LUBRAJEL(登録商標) OII、LUBRAJEL(登録商標) Oil BG、LUBRAJEL(登録商標) PF、LUBRAJEL(登録商標) TW、LUBRAJEL(登録商標) WAの名称で販売されている。好ましくは、LUBRAJEL(登録商標) MSが使用される。
【0029】
有利には、アクリル酸グリセリルポリマーは、組成物の総質量に対して、0.01質量%~1質量%、好ましくは0.01質量%~0.5質量%、より好ましくは0.01質量%~0.3質量%の範囲内の量で存在する。
【0030】
ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロール
第1の態様によれば、本発明による組成物は、少なくとも1種のポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロールを含む。
【0031】
ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロールは、下に示す式(I):
Gly-{O(PO)s(EO)t-(BO)uH}3 (I)
[式中、
Glyは、グリセリンからヒドロキシル基を除去することによって得られる残基を示し、
POは、オキシプロピレン基を示し、
EOは、オキシエチレン基を示し、
s及びtは、それぞれ、PO及びEOの平均付加モル数を示し、1~50の範囲内の値を有し、
POのEOに対する質量比(PO/EO)は、1/5~5/1の範囲内であり、
BOは、4個の炭素原子を有するオキシアルキレン基を示し、
uは、BOの平均付加モル数を示し、0.5~5の範囲内である]
によって表されうる。
【0032】
有利には、式(I)において、
sは、2~15、好ましくは3~7の範囲内であり、
tは、3~20、好ましくは6~10の範囲内であり、
uは、1~5、好ましくは2~4の範囲内である。
【0033】
式(I)によって表されるポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロールは、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドをグリセリンに、プロピレンオキシド及びエチレンオキシドの各々を、グリセリンに対して3~150モル当量の比で付加し、続いて4個の炭素原子を有するアルキレンオキシドを、グリセリンに対して1.5~15モル当量の比で付加することによって、得ることができる。
【0034】
前述のアルキレンオキシドをグリセリンに付加する場合、付加反応は、アルカリ触媒、相間移動触媒又はルイス酸触媒等を用いて行われる。一般に、アルカリ触媒、例えば水酸化カリウムが好ましく用いられる。
【0035】
式(I)によって表されるポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロールの中でも、6~10molのエチレンオキシド及び3~7molのプロピレンオキシドをグリセリンに付加し、続いて2~4molのブチレンオキシドを付加することによって得られるものがより好ましい。
【0036】
式(I)によって表されるポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロールの中でも、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンが好ましく、これは、8molのエチレンオキシド及び5molのプロピレンオキシドをグリセリンに付加し、続いて3molのブチレンオキシドを付加することによって得られる。
【0037】
PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンは、日油株式会社からWILBRIDE S-753の商標名で市販されている。
【0038】
有利には、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセロールは、組成物の総質量に対して、0.1質量%~10質量%、好ましくは0.5質量%~5質量%、より好ましくは1質量%~3質量%の範囲内の量で存在する。
【0039】
真珠光沢顔料
第1の態様によれば、本発明の組成物は、少なくとも1種の第1の真珠光沢顔料と、少なくとも1種の第2の真珠光沢顔料とを含む。
【0040】
「真珠光沢顔料」という用語は、虹色であってもなくてもよく、とりわけある種の軟体動物によってその殻中で生成され、或いは合成され、且つ光学干渉による色効果を有する、任意の形態の有色粒子を意味するものと理解されるべきである。
【0041】
好ましくは、真珠光沢顔料は、10~50μmの範囲内、好ましくは5~15μmの範囲内の体積平均径(D50)を有する。
【0042】
体積平均径(D50)は、その下に試料体積の50%が存在する最大粒子直径を指す、粒径分布についてのパラメータである。
【0043】
平均径は、レーザー粒度計、例えばMalvern社製のMastersizer 2000(登録商標)機、及び/又はBrookhaven Instrument Corporation社製のBI90+(登録商標)機によって測定されうる。
【0044】
限定的な粒径と有色の反射とを有する真珠光沢顔料は、有色の反射とケラチン物質の当初の色とを混合することによって、ケラチン物質、例えば皮膚の色補正に寄与し、自然な外観に寄与することができる。
【0045】
真珠光沢顔料は、任意の形状であってよい。
【0046】
例えば、少なくとも5、好ましくは10超、より好ましくは20超、よりいっそう好ましくは50超のアスペクト比を有する、板の形態の真珠光沢顔料を使用することができる。アスペクト比は、アスペクト比=長さ/厚さの式に従って、平均厚さと平均長さとによって決定することができる。
【0047】
本発明の目的上、第1の真珠光沢顔料は合成フルオロフロゴパイトであり、第2の真珠光沢顔料はマイカを含有する。
【0048】
好ましくは、第2の真珠光沢顔料は、二酸化チタンでコーティングされたマイカである。
【0049】
より好ましくは、第1の真珠光沢顔料の第2の真珠光沢顔料に対する質量比は、1:20~4:1、よりいっそう好ましくは1:2~2:1の範囲内であり、最も好ましくは、第1の真珠光沢顔料の第2の真珠光沢顔料に対する質量比は、1:1である。
【0050】
本発明による組成物中に導入されうる合成フルオロフロゴパイトの市販製品として、ECKART社によりSYNAFIL S 1050の名称で販売されているものを挙げることができる。
【0051】
本発明による組成物中に導入されうる、二酸化チタンでコーティングされたマイカの市販製品として、MERCK社によりRONASTAR MAGIC BLUEの名称で販売されている二酸化チタン(及び)マイカ/CI77891(及び)マイカを挙げることができる。
【0052】
有利には、第1の真珠光沢顔料は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~4.5質量%、より好ましくは0.1質量%~4質量%の範囲内の量で存在する。
【0053】
有利には、第2の真珠光沢顔料は、組成物の総質量に対して、0.5質量%~10質量%、好ましくは0.75質量%~6質量%、より好ましくは1質量%~4質量%の範囲内の量で存在する。
【0054】
親水性増粘剤
好ましくは、本発明の組成物は、親水性増粘剤を含む。
【0055】
「親水性増粘剤」という用語は、組成物の親水性相の粘度を上昇させることができる化合物を意味することが意図される。
【0056】
親水性増粘剤は、単独で又は組み合わせて使用されうる。
【0057】
親水性増粘剤として、特に、水溶性又は水分散性の増粘性ポリマーを挙げることができる。特に、次のものから選択されうる:
- ポリビニルピロリドン、
- ポリビニルアルコール、
- 変性又は未変性のカルボキシビニルポリマー、例えば、Goodrich社によりCarbopol(登録商標)(CTFA名:カルボマー)の名称で販売されている製品、
- アクリル酸又はメタクリル酸又はそれらの塩及びそれらのエステルのホモポリマー又はコポリマー、特に、Allied Colloid社によりVersicol F(登録商標)、又はVersicol K(登録商標)又はSalcare SC95、Ciba-Geigy社によりUltrahold 8(登録商標)の名称で販売されている製品、ポリアクリレート及びポリメタクリレート、例えば、Guardian社によりLubrajel及びNorgelの名称で、又はHispano Chimica社によりHispagelの名称で販売されている製品、Synthalen Kタイプのポリアクリル酸、
- ポリアクリルアミド、
- Hercules社によりReten(登録商標)の名称でナトリウム塩の形態で販売されているアクリル酸とアクリルアミドとのコポリマー、Vanderbilt社によりDarvan No.7(登録商標)の名称で販売されているポリ(メタクリル酸ナトリウム)、Henkel社によりHydagen F(登録商標)の名称で販売されているポリヒドロキシカルボン酸のナトリウム塩、
- 任意選択で架橋及び/又は中和されていてもよい、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のホモポリマー及びコポリマー、例えば、ポリアクリロイルジメチルタウリンアンモニウム、
- W/O型エマルションの形態の架橋アニオン性アクリルアミド/AMPSコポリマー、例えば、SEPPIC社により、Sepigel 305(CTFA名:ポリアクリルアミド/C13~14イソパラフィン/ラウレス-7)の名称で、及びSimulgel 600(CTFA名:アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルベート80)の名称で販売されているもの、
- Pemulenタイプのポリアクリル酸/アクリル酸アルキルコポリマー、
- 多糖バイオポリマー、例えば、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、アカシアガム、スクレログルカン、キチン誘導体及びキトサン誘導体、カラギーナン、ジェラン、アルギネート、又はセルロース、例えば、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース。例えば、CP Kelco社によりKeltrol(登録商標) CG-Tの商標名で販売されているキサンタンガムを挙げることができる、
- 酸水素炎中で揮発性ケイ素化合物を高温で加水分解し、微粉砕シリカを生成することによって得られる親水性フュームドシリカ。親水性シリカは、表面に多数のシラノール基を有する。このような親水性シリカは、例えば、Degussa社によりAerosil 130(登録商標)、Aerosil 200(登録商標)、Aerosil 255(登録商標)、Aerosil 300(登録商標)及びAerosil 380(登録商標)の名称、又はCabot社によりCab-O-Sil HS-5(登録商標)、Cab-O-Sil EH-5(登録商標)、Cab-O-Sil LM-130(登録商標)、Cab-O-Sil MS-55(登録商標)及びCab-O-Sil M-5(登録商標)の名称で販売されている。好ましくは、ナノメートルからマイクロメートルであってよい、例えば約5~200nmの範囲内の粒径を有する。
- 親水性クレイ、
- 会合性ポリマー、例えば、Rohm & Haas社によりAculyn 46の名称で販売されているPEG-150/ステアリルアルコール/SMDIコポリマー、又はElementis社によりRheolate FX 1100の名称で販売されているステアレス-100/PEG-136/HDIコポリマー、
- 並びにこれらの混合物。
【0058】
好ましい実施形態によれば、親水性増粘剤は、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のホモポリマー及びコポリマー、並びに多糖バイオポリマーから選択される。
【0059】
より好ましい実施形態によれば、親水性増粘剤は、アンモニウムポリアクリルジメチルタウラミド、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム及びアカシアガムから選択される。
【0060】
いくつかの好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、ポリアクリロイルジメチルタウリンアンモニウムを含む。
【0061】
有利には、存在する場合、親水性増粘剤は、組成物の総質量に対して、0.1質量%~2.0質量%、好ましくは0.2質量%~1.5質量%、より好ましくは0.25質量%~1.0質量%の範囲内の量で存在する。
【0062】
水性相
本発明の組成物は、水性相を含む。
【0063】
本発明による組成物の水性相は、水と、任意選択で、1種又は複数の水混和性又は少なくとも部分的に水混和性の化合物、例えばC2~C8低級ポリオール又はモノアルコール、例えばエタノール及びイソプロパノールとを含む。
【0064】
「ポリオール」という用語は、少なくとも2つのフリーのヒドロキシル基を含む任意の有機分子を意味するものと理解されるべきである。
【0065】
挙げることができるポリオールの例には、グリコール、例えば、ペンチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール及びイソプレングリコール、カプリリルグリコール、グリセロール(すなわちグリセリン)、並びにポリエチレングリコールが含まれる。
【0066】
追加の美容活性成分
最終的な目的に応じて、本発明による組成物は、1種又は複数の追加の美容活性成分を含むことができる。
【0067】
本発明の組成物に使用されうる美容活性成分として挙げることができる例には、酵素、フラボノイド、マット化剤(例えば、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム)、老化防止剤、酸化防止剤、脱色剤、α-ヒドロキシ酸、テンショニング剤及びこれらの混合物が含まれる。
【0068】
当業者には、本発明による組成物の最終的な使用に基づいて、追加の美容活性成分の量を調節することは容易である。
【0069】
追加のアジュバント又は添加剤
本発明の組成物は、従来の化粧用アジュバント又は添加剤、例えば、香料、キレート剤(例えば、EDTA二ナトリウム)、保存剤(例えば、クロルフェネシン及びフェノキシエタノール)並びに殺菌剤、増粘剤(例えば、ポリアクリロイルジメチルタウリンアンモニウム)、pH調整剤(例えば、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)並びにこれらの混合物を含んでもよい。
【0070】
当業者は、本発明による組成物の最終的な使用に悪影響を及ぼさないように、追加のアジュバント又は添加剤の量を選択することができる。
【0071】
特に好ましい実施形態によれば、本発明は、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための組成物であって、組成物の総質量に対して、
(i)0.01質量%~0.3質量%のアクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、
(ii)1質量%~3質量%のPEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、
(iii)0.1質量%~4質量%の合成フルオロフロゴパイト、及び
(iv)1質量%~4質量%の二酸化チタンでコーティングされたマイカ
を含む組成物を提供する。
【0072】
ガレヌス形態及び使用
好ましくは、本発明の組成物は、ヒドロゲルの形態である。
【0073】
第2の態様によれば、本発明は、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための非治療的方法であって、本発明による組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、非治療的方法を提供する。
【0074】
適用時に、本発明による組成物は、長く続く保湿(例えば、1日中続く保湿)と、輝き(radiant)及びトーン補正(トーンアップ)効果の間の良好なバランスとを提供することができる。
【0075】
保湿は、クロネオメータ(croneometer)によって評価することができ、測定された値が40超である場合、長く続く保湿が提供されたと結論付けることができる。
【0076】
輝きは、光沢計によって評価することができ、測定された値が3超である場合、良好な輝きが提供されたと結論付けることができる。
【0077】
トーン補正効果は、色度計によって評価することができ、測定されたb*値が10未満である場合、良好なトーン補正効果が提供されたと結論付けることができる。
【0078】
本発明をこれから、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例
【0079】
実施例
使用した主な原材料、その商標名及び供給業者を、Table 1(表1)に列挙する。
【0080】
【表1】
【0081】
(本発明の実施例1~3及び比較例1~6)
本発明による実施例(IE.)1~3及び比較例1~6による組成物を、下のTable 2(表2)に与える量に従って調製した。各成分の量は、それを含有する組成物の総質量の質量%で与える。
【0082】
【表2】
【0083】
調製手順
上に列挙した組成物は、本発明の実施例1の組成物を例に取ると、以下の通り調製した:
1)ポリアクリロイルジメチルタウリンアンモニウムを水に加え、混合物が均一になるまで、10分にわたって混合する、
2)グリセリン(及び)アクリル酸グリセリル/アクリル酸コポリマー、PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン、合成フルオロフロゴパイト、並びに二酸化チタン(及び)マイカ/CI 77891(及び)マイカを1つずつ加え、均一な組成物が得られるまで分散させる。
【0084】
評価
各組成物を数人の志願者の顔面に適用し、次いで、保湿、トーンアップ効果及び輝きを、以下の通り評価した。
【0085】
保湿
皮膚水分の測定は、世界的に認められているCORNEOMETER(登録商標)法に基づき、これは静電容量法である。
【0086】
測定中、測定キャパシタは、試料の水分含有量に応じて静電容量の変化を示す。試料中の電流伝導を防止するため、ガラス板が、プローブヘッド中の金属トラック(金)を皮膚から分離している。測定中、電気散乱場が皮膚に貫入し、誘電率が決定される。一方のトラックが電子の余剰(負電荷)を構築し、他方のトラックが電子の不足(正電荷)を構築する。
【0087】
志願者は試験前に、温度及び湿度が一定の部屋(21±1℃、45±5%RH)に、1時間にわたって滞在することを要した。各試料を、腕の3×3cm2の領域に指サックを用いて2mg/cm2で適用し、30分後に測定を行った。
【0088】
測定は、各回1秒にわたって行った。測定は、測定する皮膚領域にプローブを置くことによって開始された。プローブは、プローブヘッド内のバネの圧力に則って、測定領域に対して垂直に置いた。各領域を3回試験し、平均値を得た。試験データとして、6時間のデータを記録した。
【0089】
輝き
光沢計を使用して、in vitroの輝きを評価した。
【0090】
各実施例を、人工皮膚の2×7cm2の領域に指サックを用いて1mg/cm2で適用し、30分後に測定を行った。
【0091】
各試験を3回行い、20°、60°及び80°における平均輝き値を得た。60°における輝き値を記録した。より高い値は、より高い輝きを意味する。
【0092】
トーンアップ効果
色度計を使用したin vitro色測定によって、トーンアップ効果を評価した。
【0093】
各試料を、人工皮膚の2×7cm2の領域に指サックを用いて1mg/cm2で適用し、30分後に測定を行った。
【0094】
各試験を3回行い、L*(明度)、a*(赤~緑)及びb*(青~黄)について平均値を得たが、ここで、b*はトーンアップを表す(より低いことは、抗つや消し及び黄変効果をもたらす、黄色みがより低いことを意味する)。
【0095】
得られた結果をTable 3(表3)にまとめた。
【0096】
【表3】
【0097】
Table 3(表3)から、本発明の実施例(IE.)1~3の組成物は、長く続く保湿と、輝き及びトーンアップ効果の間の良好なバランスとを提供できることがわかる。
【国際調査報告】