(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-20
(54)【発明の名称】芳香族ポリマー性カルボジイミドを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C08G 18/02 20060101AFI20241113BHJP
C08G 18/16 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
C08G18/02 050
C08G18/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527405
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2022081308
(87)【国際公開番号】W WO2023083877
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム・ラウファー
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034AA05
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KD03
4J034KD14
4J034KE02
4J034QB08
4J034RA19
(57)【要約】
本発明は、芳香族ポリマー性カルボジイミドを製造するためのプロセス、それによって得ることが可能な芳香族ポリマー性カルボジイミド、及び加水分解防止剤としてのそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
R
4-R
8-(-N=C=N-R
8-)
m-R
4 (I)
[式中、
mは、2~500、好ましくは3~20、極めて特に好ましくは4~10の整数を表し、
R
8は、C
1~C
12-アルキル-置換されたアリーレン、C
7~C
18-アルキルアリール-置換されたアリーレン、又はC
1~C
12-アルキル-置換された、アルキレン-橋架けされたアリーレンを表すが、ここで、記述された全部のアリーレンはそれぞれ、前述のアルキル基及び/又はアルキルアリール基の少なくとも2個を用いて置換されているが、ただし、R
8には、全部で9~30個の炭素原子が含まれ、そして
R
4は、-NCO、-NCNR
5、-NHCONHR
5、-NHCONR
5R
6、又は-NHCOOR
7である(ここでR
5及びR
6は、同一であるか又は異なっていて、C
1~C
12-アルキル、C
6~C
12-シクロアルキル、C
7~C
18-アラルキル、又はアリール基を表し、そして、R
7は、C
1~C
22-アルキル、C
6~C
12-シクロアルキル、C
6~C
18-アリール、又はC
7~C
18-アラルキル基、不飽和C
2~C
22-アルキル基、又はアルコキシポリオキシアルキレン基を表す)]のポリマー性芳香族カルボジイミドを製造するためのプロセスであって、
芳香族ジイソシアネートを、120℃~220℃、好ましくは160℃~200℃の温度で、芳香族ジイソシアネートの含量を基準にして質量で15~40ppm、好ましくは20~30ppmの濃度にある少なくとも1種のリン含有触媒(ここで、前記リン含有触媒は、ホスホレン及びホスホリジンから選択される)の存在下に、カルボジイミド化することによる、プロセス。
【請求項2】
基R
8において、前記アルキル置換基が、合計して3~24個の炭素原子、好ましくは合計して4~24個の炭素原子を有するが、ただしR
8が、合計して10~30個の炭素原子を有し、最も好ましくは、合計して6~18個の炭素原子を有するが、ただしR
8が、合計して12~30個の炭素原子を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
R
8が、少なくとも2個のC
1~C
12-アルキル基を用いて置換されたC
1~C
12-アルキル-置換されたアリーレンを表すが、ただし、R
8が、合計して10~24個の炭素原子を有する、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
R
8が、ジイソプロピルフェニレン及び/又はトリイソプロピルフェニレンを表す、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ポリマー性芳香族カルボジイミドが、式(II)
【化1】
(式中、R
4は、上で定義されたものであり、そしてn=1~20、好ましくはn=1~15である)に相当する、請求項1及び2のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記リン含有触媒が、ホスホレン及びホスホリジンから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記リン含有触媒が、ホスホレンオキシド及びホスホリジンオキシドから、好ましくはアルキルホスホレンオキシド、たとえばメチルホスホレンオキシドから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記リン含有触媒が、一般式(1)
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、互いに独立して、H、又は脂肪族C
1~C
15-炭化水素基、脂環族C
5~C
15-炭化水素基、アリール-C
6~C
15-炭化水素基、アラルキル-C
6~C
15-炭化水素基、若しくはアルクアリール-C
6~C
15-炭化水素基を表す)の化合物又はそれらの二重結合異性体から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
式(1)の中のR
1が、H、又は脂肪族C
1~C
10-炭化水素基、又はアリール-C
6~C
15-炭化水素基を表し、そして式(1)の中のR
2が、H、又は脂肪族C
1~C
10-炭化水素基を表す、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
式(1)の中のR
1が、メチル基、エチル基若しくはプロピル基、又はフェニル基若しくはベンジル基を表し、そして式(1)の中のR
2が、H、又はメチル基、エチル基、若しくはプロピル基を表す、請求項8又は9に記載のプロセス。
【請求項11】
式(1)の中のR
1が、メチル基又はフェニル基を表し、そして式(1)の中のR
2が、H又はメチル基を表す、請求項8~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
採用される前記カルボジイミド化触媒が、1-メチル-2-ホスホレン1-オキシド及び/又はその二重結合異性体である1-メチル-3-ホスホレン1-オキシドである、請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
ISO 11664-4に記載のCIE L
*a
*b
*法でのb値として測定して、50未満、好ましくは35未満、特に好ましくは25未満、最も好ましくは15未満の色数、及び多くとも10ppm、好ましくは多くとも5ppm、特に好ましくは多くとも1ppmの、請求項6~12のいずれか1項に記載のリン含有触媒の含量を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の式(I)のポリマー性芳香族カルボジイミド。
【請求項14】
請求項13に記載の前記ポリマー性芳香族カルボジイミドの使用であって、ポリウレタン含有組成物、好ましくは熱可塑性のTPU、PU接着剤、PU注型樹脂、PUエラストマー、又はPUフォームのための加水分解安定剤としての使用。
【請求項15】
請求項13に記載のポリマー性芳香族カルボジイミドを含む、ポリウレタン含有組成物、好ましくは熱可塑性のTPU、PU接着剤、PU注型樹脂、PUエラストマー、又はPUフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリマー性カルボジイミドを製造するためのプロセス、それらのプロセスによって製造される芳香族ポリマー性カルボジイミド、及びポリウレタン(PU)含有組成物、好ましくは熱可塑性のTPU、PU接着剤、PU注型樹脂、PUエラストマー又はPUフォームにおける加水分解抑制剤としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボジイミドが、多くの用途、たとえば、熱可塑性プラスチック、エステルベースのポリオール、ポリウレタン、トリグリセリド、及び潤滑油などのための加水分解抑制剤として有用であることが判明している。
【0003】
従来技術のカルボジイミド合成法は、イソシアネートから出発し、それを、塩基性触媒又は複素環式触媒の作用下にCO2を脱離させながらカルボジイミド化させている。このことにより、単官能又は多官能のイソシアネートを、モノマー性又はポリマー性カルボジイミドに転換させることが可能となる。本発明の文脈においては、「ポリマー」という用語は、広く解釈されるべきである、すなわち、極めて短いポリマー、たとえばオリゴマーもまた、この定義の中に含まれる。
【0004】
典型的に使用される触媒は、たとえば(非特許文献1)及び(非特許文献2)に記載されているように、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物、たとえばアルカリ金属のアルコキシド、及びリンを含む複素環式化合物である。
【0005】
従来技術において、立体障害のポリマー性カルボジイミドの製造は、リン含有触媒、たとえばホスホレンを用いて、極めて良好に進行する。しかしながら、(特許文献1)に記載されているように、それらのリン含有触媒は、数段の蒸留ステップを含む、高コストで複雑なプロセスを使用しない限り、完全には除去できない。カルボジイミドは、ポリウレタンの製造において好んで使用されることが理由で、痕跡量のリン触媒の存在が、大きな問題の原因となるので、避けなければならない。
【0006】
たとえば(特許文献2)に記載されているように、従来技術からのプロセスでは、リンを含まない触媒が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第2897996B1号明細書
【特許文献2】欧州特許第3307709B1号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Angew.Chem.,1962,74,801~806
【非特許文献2】Angew.Chem.,1981,93,855~866
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の多段蒸留及びリンを含まない触媒の使用のいずれもが、暗色の、すなわち変色したカルボジイミドが得られるという欠点を有している。多くのポリウレタン用途においては、たとえば透明、無色、又は淡色の部材では、色が中心的な役割を果たしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の文脈においては、「芳香族カルボジイミド」という用語は、その中で、カルボジイミド官能基が芳香族基に直接結合されているカルボジイミドを意味していると理解されたい。「ポリマー性カルボジイミド」という用語は、一般的に、少なくとも2個の繰り返し単位を有するカルボジイミドを意味しており、さらには、その用語には、オリゴマー性のカルボジイミドも含まれていると理解されたい。
【0011】
したがって、本発明の目的は、ポリマー性芳香族カルボジイミドを安価に製造することを可能とし、有機リン化合物を実質的に含まず、そしてISO 11664-4に従ったCIE L*a*b*法でのb値として測定して、50未満、好ましくは35未満、特に好ましくは25未満、最も好ましくは15未満の低い色数を有する(従って、それらは、色堅牢度が高いPUシステムの製造及び/又は安定化で使用することが可能である)ポリマー性芳香族カルボジイミドを与える、改良されたプロセスを提供することである。
【0012】
驚くべきことには、少なくとも1種のリン含有触媒の存在下に、極めて低い濃度で、120℃~220℃、好ましくは160℃~200℃、極めて特に好ましくは180℃~200℃の温度で、芳香族ジイソシアネートを反応させる(カルボジイミド化させる)と、前述の目的が達成されるということが今や見出された。したがって、本発明は、芳香族ジイソシアネートを、120℃~220℃、好ましくは160℃~200℃の温度で、その芳香族ジイソシアネートを基準にして質量で15~40ppm、好ましくは20~30ppmの濃度にある、少なくとも1種のリン含有触媒の存在下に、カルボジイミド化することによる、式(I)のポリマー性芳香族カルボジイミドを製造するためのプロセスを提供する:
R4-R8-(-N=C=N-R8-)m-R4 (I)
[式中、
mは、2~500、好ましくは3~20、極めて特に好ましくは4~10の整数を表し、
R8は、C1~C12-アルキル-置換されたアリーレン、C7~C18-アルキルアリール-置換されたアリーレン、又はC1~C12-アルキル-置換され、アルキレン-橋架けされたアリーレンを表すが、ここで、記述されたアリーレンはそれぞれ、前述のアルキル基及び/又はアルキルアリール基の少なくとも2個を用いて置換されているが、ただし、R8には、全部で9~30個の炭素原子が含まれ、そして
R4は、-NCO、-NCNR5、-NHCONHR5、-NHCONR5R6、又は-NHCOOR7である(ここでR5及びR6は、同一であるか又は異なっていて、C1~C12-アルキル、C6~C12-シクロアルキル、C7~C18-アラルキル、又はアリール基を表し、そして、R7は、C1~C22-アルキル、C6~C12-シクロアルキル、C6~C18-アリール、又はC7~C18-アラルキル基、不飽和C2~C22-アルキル基、又はアルコキシポリオキシアルキレン基を表す)]
【0013】
基R8において、そのアルキル置換基は、典型的には、合計して3~24個の炭素原子を有している。基R8において、そのアルキル置換基は、好ましくは、合計して4~24個の炭素原子を有しているが、ただし、R8は、合計して10~30個の炭素原子を有している。基R8において、そのアルキル置換基は、最も好ましくは、合計して6~18個の炭素原子を有しているが、ただし、R8は、合計して12~30個の炭素原子を有している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい実施態様においては、R8が、前述のアルキル基の少なくとも2個を用いて置換された、C1~C12-アルキル-置換されたアリーレンを表すが、ただし、R8は、合計して10~24個の炭素原子を有している。
【0015】
本発明のさらなる好ましい実施態様においては、R
8は、ジイソプロピルフェニレン及び/又はトリイソプロピルフェニレンを表す。本発明の特に好ましい実施態様は、式(II):
【化1】
[式中、
R
4は、上で定義されたものであり、
そして
n=1~20、好ましくはn=1~15である]のポリマー性芳香族カルボジイミドを製造するためのプロセスに関する。
【0016】
そのカルボジイミド化で採用可能な芳香族ジイソシアネートは、R8が、上で定義されたものである式(III)に相当する:
OCN-R8-NCO (III)
【0017】
本発明の文脈においては、そのリン含有触媒が、ホスホレン又はホスホリジンである。採用されるホスホレンは、好ましくはホスホレンオキシド、特に好ましくはアルキルホスホレンオキシド、たとえばメチルホスホレンオキシドであり、そして採用されるホスホリジンは、好ましくはホスホリジンオキシドである。
【0018】
たとえば、1,3-ジメチル-2-フェニル-1,3,2-ジアザホスホリジン2-オキシド(CAS No.6226-05-7)を、ホスホリジンとして採用してもよい。
【0019】
採用されるカルボジイミド化触媒は、好ましくは1種又は複数のホスホレンオキシドから、より好ましくは1種又は複数のメチルホスホレンオキシドから選択される。
【0020】
採用されるカルボジイミド化触媒が、一般式(1):
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、互いに独立して、H、又は脂肪族C
1~C
15-炭化水素基、脂環族C
5~C
15-炭化水素基、アリール-C
6~C
15-炭化水素基、アラルキル-C
6~C
15-炭化水素基、若しくはアルクアリール-C
6~C
15-炭化水素基を表す)のホスホレンオキシド又はそれらの二重結合異性体であれば、特に好ましい。
【0021】
R1は、好ましくはH又は脂肪族C1~C10-炭化水素基又はアリール-C6~C15-炭化水素基、特に好ましくは、メチル基、エチル基若しくはプロピル基、又はフェニル基若しくはベンジル基、そして最も好ましくは、メチル基又はフェニル基である。
【0022】
R2は、好ましくはH又は脂肪族C1~C10-炭化水素基、特に好ましくはH、又はメチル基、エチル基若しくはプロピル基であり、最も好ましくはH又はメチル基である。
【0023】
特に好ましいホスホレンオキシドは,以下のものである:3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン1-オキシド、1-フェニル-2-ホスホレン1-オキシド、1-メチル-2-ホスホレン1-オキシド、1,3-ジメチル-2-ホスホレン1-オキシド、1-エチル-3-メチル-2-ホスホレン1-オキシド、並びにそれらの二重結合異性体の3-メチル-1-フェニル-3-ホスホレン1-オキシド、1-フェニル-3-ホスホレン1-オキシド、1-メチル-3-ホスホレン1-オキシド、1,3-ジメチル-3-ホスホレン1-オキシド、1-エチル-3-メチル-3-ホスホレン1-オキシド。
【0024】
最も好適に採用されるカルボジイミド化触媒は、1-メチル-2-ホスホレン1-オキシド(MPO)及び/又はその二重結合異性体である1-メチル-3-ホスホレン1-オキシドである。
【0025】
さらなる実施態様においては、さらなる無機又は有機化合物たとえば、共活性化剤、相乗剤及び/又は溶媒を、リン含有触媒に添加してもよい。
【0026】
さらなる実施態様においては、そのリン含有触媒に、カルボジイミド化に対する効果が(あるとしても)ほとんど無く、且つPUの用途にさらなる悪影響を示すこともない、さらなるリン含有化合物が混合されていてもよい。可能なそれらの例としては、リン酸塩、ポリリン酸塩、モノマー性又はポリマー性のリン酸エステルが挙げられる。
【0027】
さらなる実施態様においては、さらなる相間移動触媒又は化合物を採用してもよい。この目的のためには、イオン性液体又はエーテルが好ましい。
【0028】
独立して、又は他の芳香族ジイソシアネートと組み合わせて採用される、特に好ましい芳香族ジイソシアネートは、式(IV)又は(V)の化合物である。
【化3】
【0029】
式(IV)の化合物は、トリイソプロピルフェニルジイソシアネートである。
【0030】
本発明におけるプロセスの好ましい実施態様においては、そのリン含有触媒は、カルボジイミド化の後で、単蒸留によるか、及び/又は場合によっては溶媒を使用した抽出若しくは再結晶によって分離される。
【0031】
カルボジイミド化は、ニート(in substance)でも、溶媒中でも実施することができる。好適に採用される溶媒は、C7~C22アルキルベンゼン、パラフィンオイル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ケトン、又はラクトンである。
【0032】
その反応混合物が、m=2~500、好ましくは3~20、極めて特に好ましくは4~10の平均縮合度に相当する、所望のNCO基含量を有するようになったら、カルボジイミド化を停止させるのが好ましい。
【0033】
本発明における芳香族ポリマー性カルボジイミドの好ましい製造変法においては、過剰のイソシアネートモノマー及びリン含有触媒を、次いで、150~200℃、好ましくは160~180℃の温度で蒸留除去する。
【0034】
本発明のさらなる実施態様においては、次いで、カルボジイミドの遊離の末端イソシアネート基を、脂肪族及び/又は芳香族のアミン、アルコール及び/又はアルコキシポリオキシアルキレンアルコールと、好ましくは-NH、-NH2及び/又は-OH基をわずかに過剰にし、場合によっては当業者には公知の触媒、好ましくはtert-アミン又は有機スズ化合物、特に好ましくはDBTL(ジブチルスズジラウレート)又はDOTL(ジオクチルスズジラウレート)の存在下に反応させる。アミン、アルコール、及び/又はアルコキシポリオキシアルキレンアルコールの、式(I)のポリマー性カルボジイミドに対する物質量比は、存在しているN=C=O基を基準にして、好ましくは(1.005~1.05):1、特に好ましくは(1.01~1.03):1である。
【0035】
本発明のさらなる実施態様においては、カルボジイミド化反応を中断させるために、反応混合物の温度を、50~120℃、好ましくは60~100℃、特に好ましくは80~90℃に下げ、そして場合によっては、好ましくはC7~C22アルキルベンゼンの群から選択される溶媒、特に好ましくはトルエンを添加した後に、カルボジイミドの遊離の末端イソシアネート基を、脂肪族及び/又は芳香族のアミン、アルコール及び/又はアルコキシポリオキシアルキレンアルコールと、好ましくは-NH、-NH2及び/又は-OH基をわずかに過剰にし、場合によっては当業者には公知のPU触媒、好ましくはtert-アミン又は有機スズ化合物、特に好ましくはDBTL(ジブチルスズジラウレート)又はDOTL(ジオクチルスズジラウレート)の存在下に反応させる。アミン、アルコール、及び/又はアルコキシポリオキシアルキレンアルコールの、式(I)のポリマー性カルボジイミドに対する物質量比は、存在しているN=C=O基を基準にして、好ましくは(1.005~1.05):1、特に好ましくは(1.01~1.03):1である。
【0036】
本発明のさらなる実施態様においては、第一級又は第二級のアミン又はアルコール及び/又はアルコキシポリオキシアルキレンアルコールを用いて、式(I)のイソシアネート含有化合物(ここで、R4=-NCO)の中の遊離のNCO基を、部分的に、好ましくは50%未満、好ましくは40%未満で末端官能化させることにより、本発明における式(I)のポリマー性カルボジイミドの製造が実施される。
【0037】
本発明におけるカルボジイミドは、それを製造した後に精製するのが好ましい。その粗反応生成物を、蒸留によるか及び/又は溶媒抽出によって精製するのがよい。好適に使用される精製に適した溶媒は、C7~C22-アルキルベンゼン、パラフィンオイル、アルコール、ケトン、又はエステルである。これらは、市場でも入手可能な溶媒である。
【0038】
本発明はさらに、ISO 11664-4に記載のCIE L*a*b*法でのb値として測定して、50未満、好ましくは35未満、特に好ましくは25未満、最も好ましくは15未満の色数、及び多くとも10ppm、好ましくは多くとも5ppm、特に好ましくは多くとも1ppmの本発明におけるリン含有触媒の含量を有する、式(I)で表されるポリマー性カルボジイミドも提供する。これらは、本発明におけるプロセスにより得ることが可能である。
【0039】
本発明はさらに、多くとも10ppm、好ましくは多くとも5ppm、特に好ましくは多くとも1ppmの比率で本発明におけるリン含有触媒を含む、芳香族式(I)のポリマー性カルボジイミドを少なくとも90%含む、ポリウレタンのための加水分解安定剤も提供する。
【0040】
それらの安定剤は特に、例外的に良好な加水分解保護作用を可能とする。
【0041】
本発明はさらに、ポリウレタン(PU)、好ましくは熱可塑性ポリウレタンを製造するためのプロセスも提供するが、ここで、ポリオール、好ましくはポリエステルポリオールとイソシアネートとの反応が、本発明におけるポリマー性カルボジイミドの存在下に実施されるか、及び/又はその反応の後で、本発明におけるポリマー性カルボジイミドが、ポリウレタンに添加される。
【0042】
本発明のさらなる好ましい実施態様においては、そのプロセスが、PU触媒並びに補助的及び/又は追加的物質の存在下に実施される。
【0043】
ポリウレタンの製造は、好ましくは、国際公開第2005/111136A1号パンフレットの記載に従って実施される。
【0044】
ポリウレタンは、ポリイソシアネートと、多価アルコール、ポリオール、好ましくはポリエステルポリオールとの重付加反応によって、ほとんど定量的に形成される。結合は、一つの分子のイソシアネート基(-N=C=O)と、また別の分子のヒドロキシル基(-OH)との反応によるウレタン基(-NH-CO-O-)の形成でもたらされる。
【0045】
ジイソシアネートとポリオールとの間の反応のプロファイルは、それらの成分のモル比に依存する。望ましい平均分子量及び望ましい末端基を有する中間体を容易に得ることができる。次いでそれらの中間体を、次の段階でジオール又はジアミンと反応させる(鎖伸張させる)と、所望のポリウレタン又はポリウレタン-ポリウレアハイブリッドが形成される。それらの中間体は、一般的には、プレポリマーと呼ばれている。
【0046】
プレポリマーを製造するために好適なポリオールは、ポリアルキレングリコールエーテル、ポリエーテルエステル、又は末端ヒドロキシル基を有するポリエステル(ポリエステルポリオール)である。
【0047】
本発明の文脈におけるポリオールは、好ましくは、2000まで、好ましくは500~2000の範囲、特に好ましくは500~1000の範囲の分子量(単位、g/mol)を有する化合物である。
【0048】
本発明の文脈においては、「ポリオール」という用語には、ジオール及びトリオールの両方、さらには1分子あたり3個を超えるヒドロキシル基を有する化合物が包含されている。トリオールを使用するのが特に好ましい。
【0049】
好ましいポリオールは、ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルエステルポリオールである。
【0050】
そのポリオールが、200まで、好ましくは20~150の間、特に好ましくは50~115の間のOH価を有しているのが有利である。
【0051】
特に好適なのは、各種のポリオールと芳香族又は脂肪族のジカルボン酸との反応生成物、及び/又はラクトンのポリマーであるポリエステルポリオールである。
【0052】
この場合、好ましいは、好適なポリエステルポリオールを形成させるのに使用可能な、芳香族ジカルボン酸である。ここで特に好ましいのは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、及びベンゼン環を有する置換されたジカルボン酸である。
【0053】
好ましい脂肪族ジカルボン酸は、好適なポリエステルポリオールを形成させるために使用可能なもの、特に好ましくはセバシン酸、アジピン酸、及びグルタル酸である。
【0054】
好ましいラクトンのポリマーは、好適なポリエステルポリオール、特に好ましくはポリカプロラクトンを形成させるために使用可能なものである。
【0055】
ジカルボン酸及びラクトンのポリマーのいずれもが、市販されている物質である。
【0056】
特に好ましいのはさらに、好適なポリエステルポリオールを形成させるために使用可能なポリオール、極めて特に好ましくはエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びシクロヘキサンジメタノールである。
【0057】
本発明のさらなる好ましい実施態様においては、そのポリオールが、ポリエーテルエステルポリオールである。
【0058】
そのために好ましいのは、前述の各種のポリオールと芳香族又は脂肪族のジカルボン酸との反応生成物、及び/又はラクトンのポリマー(たとえば、ポリカプロラクトン)である。
【0059】
採用可能なポリオールとしては、市販されている化合物、たとえばBayer MaterialScience AGの製品で、商品名Baycoll(登録商標)又はDesmophen(登録商標)として販売されているものが挙げられる。
【0060】
好ましいジイソシアネートは、芳香族及び脂肪族のジイソシアネートである。特に好ましいのは、以下のものである:トルエン2,4-ジイソシアネート、トルエン2,6-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4-フェニルイソシアネート)、ナフタレン1,5-ジイソシアネート、テトラメチレン1,4-ジイソシアネート及び/又はヘキサチレン1,6-ジイソシアネート、極めて特に好ましくは、トルエン2,4-ジイソシアネート及びトルエン2,6-ジイソシアネート。
【0061】
採用可能なジイソシアネートとしては、市販されている化合物、たとえばBayer MaterialScience AGの製品で、商品名Desmodur(登録商標)として販売されているものが挙げられる。
【0062】
本発明のさらなる実施態様においては、その組成物に、少なくとも1種のジアミン及び/又はジオールがさらに含まれる。
【0063】
鎖伸張のために採用される好ましいジアミンは、以下のものである:3,5-ジアミノ-4-クロロ安息香酸2-メチルプロピル、ビス(4,4’-アミノ-3-クロロフェニル)メタン、3,5-ジメチルチオ-2,4-トリレンジアミン、3,5-ジメチルチオ-2,4-トリレンジアミン、3,5-ジエチル-2,4-トリレンジアミン、3,5-ジエチル-2,6-トリレンジアミン、4,4’-メチレンビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)、及び1,3-プロパンジオールビス(4-アミノベンゾエート)。
【0064】
好ましいジオールは、以下のものである;ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、及び/又はシクロヘキサンジメタノール。
【0065】
本発明の文脈において鎖伸張のために採用されるジアミン又はジオールは、Lanxess Deutschland GmbHから、商品名Addolink(登録商標)として入手可能な汎用化学製品である。
【0066】
採用される触媒は、好ましくはジプロピレングリコール中の、ジブチルスズジラウレート又はトリエチレンジアミンである。
【0067】
採用可能な触媒としては、市販されている化合物、たとえばRheinchemie Rheinau GmbHの製品で、商品名Addocat(登録商標)として販売されているものが挙げられる。
【0068】
本発明における式(I)の芳香族ポリマー性カルボジイミドは、全混合物を基準にして、好ましくは0.1重量%~2重量%、特に好ましくは0.5重量%~1.5重量%、最も好ましくは1.0重量%~1.5重量%の量で採用される。
【0069】
このプロセスで製造されるポリウレタン(PU)ベースの系は、加水分解に対する優れた安定性を特徴としている。
【0070】
したがって本発明はさらに、ポリウレタン含有組成物の中、好ましくは熱可塑性のTPU、PU接着剤、PU注型樹脂、PUエラストマー、又はPUフォーム、さらにはそれらから得ることが可能な製品の中における加水分解安定剤としての、本発明における芳香族ポリマー性カルボジイミドの使用を提供する。
【実施例】
【0071】
以下の例は、本発明を説明するためのものであるが、本発明を限定する効果を有するものではない。
【0072】
一般的な製造手順、例1~9:
200gのモノマー性ジイソシアネートを、内部温度計、還流冷却器及び不活性ガス導入口を備えた500mlの三口フラスコの中に量り込み、それに続けて、例1~9のそれぞれの触媒を、以下で特定される比率(CDI1-9、ジイソシアネートの重量基準)で添加した。加熱段階では、少量のアルゴン気流を、気相に通した。CO2の発生が始まったら、不活性ガスを停止させた。カルボジイミド化は、NCO含量が約12重量%に到達するまで、180℃で撹拌しながら続けた。残存しているモノマー性ジイソシアネート及び液状の触媒を、180℃、真空下で蒸留除去した後で、温度を下げて約120℃とし、ポリマー性カルボジイミドの残っている遊離のNCO基を、メチルポリエーテルアルコール(MPEG)を用いて末端官能化(末端封止)させた。存在している各種の固体状触媒(炭酸Cs)は、濾過により除去した。
【0073】
例1:
1,3-ビス(2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゾール(TMXDI)と、0.2重量%の1-メチル-1-オキソ-3-ホスホレン(MPO)との反応による脂肪族ポリマー性カルボジイミドの製造(比較例)。
【0074】
例2:
式(IV)の化合物と、0.5重量%のカリウムメトキシドとの反応による芳香族ポリマー性カルボジイミドの製造(比較例)。
【0075】
例3:
化合物TMXDIと、0.5重量%のカリウムメトキシドとの反応による脂肪族ポリマー性カルボジイミドの製造(比較例)。
【0076】
例4:
式(IV)の化合物と、3重量%の炭酸Csとの反応による芳香族ポリマー性カルボジイミドの製造(比較例)。
【0077】
例5:
化合物TMXDIと、3重量%の炭酸Csとの反応による脂肪族ポリマー性カルボジイミドの製造(比較例)。
【0078】
例6:
式(IV)の化合物と、ジイソシアネートを基準にして0.2重量%の(MPO)との反応による芳香族ポリマー性カルボジイミドの製造(比較例)。
【0079】
例7:
式(IV)の化合物と、ジイソシアネートを基準にして20ppm(0.002重量%)のMPOとの反応による芳香族ポリマー性カルボジイミドの製造(本発明実施例)。
【0080】
例8:
式(IV)の化合物と、ジイソシアネートを基準にして30ppm(0.003重量%)のMPOとの反応による芳香族ポリマー性カルボジイミドの製造(本発明実施例)。
【0081】
例9:
式(IV)の化合物と、ジイソシアネートを基準にして50ppm(0.005重量%)のMPOとの反応による芳香族ポリマー性カルボジイミドの製造(比較例)。
【0082】
色の測定
色の測定は、ISO 11664-4に記載のCIE L*a*b*法に従って実施した。b*を評価した。
【0083】
破壊的副作用についてのPU反応性試験
触媒のリン化合物が残っていると、ポリウレタンの生成を顕著に妨害し、それらの品質に悪影響を及ぼす。
【0084】
最初に、1部のポリカーボジイミド及び9部の4,4’-メチレンジ(フェニルイソシアネート)(MDI)を、250mlの四口のフラスコの中に仕込んだ。それに続けて、窒素を用いて不活性化を行った。次いでその混合物を加熱した80℃とし、攪拌した。それについて、混合物が発泡しているか/ガスが発生しているかをチェックした。24時間後に、最終的なサンプルを使用して、粘度が上昇したかどうかを評価した。
【0085】
例1~9で得られたポリマー性カルボジイミドの性質を表1に示す。
【0086】
【0087】
それらの結果が示すところでは、本発明におけるプロセスによって、極めて低い色数を有するポリマー性芳香族カルボジイミドを得ることが可能となった。塩基性触媒を使用すると、暗色のカルボジイミドが得られる。
【0088】
さらに、本発明における芳香族ポリマー性カルボジイミドを使用した結果では、PUの反応性試験において破壊的な副作用が生じないが、それとは全く対照的に、(比較例)6で、大量のリン含有触媒を使用して得られた反応生成物は、追加の蒸留をしない限り、ほとんどのPU用途では、使用に適していない。
【0089】
芳香族及び脂肪族ジイソシアネートの転化率に関する実験
この目的のために、(ジイソシアネートを基準としたMPOの量で)0.002重量%(例10、11、及び13)又は0.001重量%(例12)の1-メチル-1-オキソ-ホスホレンを使用して、180℃で24時間経過後でのイソシアネート含量の低下を示す。これらの検討が示したところでは、脂肪族ジイソシアネートは、0.002重量%のリン含有触媒の存在下ではカルボジイミド化させることができず、芳香族ジイソシアネートは、0.001重量%の触媒の存在下ではカルボジイミド化させることができない。したがって、本発明におけるプロセスは、特定の触媒量を使用した芳香族ポリマー性カルボジイミドを製造する場合にのみ、適している。欧州特許第2897996B1号明細書に記載されている反応条件(圧力300mbar、窒素流量10L/h)であっても、イソシアネートのカルボジイミドへの転化は不可能であった(例11)。
【0090】
NCO含量の測定
NCO含量は、電位差滴定により測定した。その測定は、イソシアネート(脂肪族又は芳香族)と第一級又は第二級アミンとの反応に基づいており、それにより、相当する尿素誘導体が生成し、それに続けて、塩酸を用いて、過剰のアミン溶液の逆滴定を行う。
【0091】
この目的のために、最初に仕込んだサンプルを、過剰の反応剤溶液(ジブチルアミンのトルエン中0.1N溶液)と混合する。最後に、この手順で消費されなかった試薬の量を、他の適切な滴定溶液(0.1Nのイソプロパノール性塩酸溶液)を用いて逆滴定することにより求める。
【0092】
それらの測定結果を、表2に示す。
【0093】
【国際調査報告】