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特表2024-543262局所麻酔薬を含有する胃内滞留性経口投与単位
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-20
(54)【発明の名称】局所麻酔薬を含有する胃内滞留性経口投与単位
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20241113BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241113BHJP
   A61P 23/02 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 31/216 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 31/215 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241113BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
A61K31/167
A61P3/00
A61P23/02
A61K31/216
A61K31/445
A61K31/215
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531272
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2022079975
(87)【国際公開番号】W WO2023094100
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】21210588.6
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524074781
【氏名又は名称】オレクサ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ヒューベル, デニー
(72)【発明者】
【氏名】ピーターズ, ベルナルドゥス ワイナンド マティス マリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC21
4C076DD38
4C076DD67
4C076EE16
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE33
4C076EE38
4C076GG12
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA03
4C086ZC21
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB15
4C206DB43
4C206FA03
4C206GA18
4C206GA31
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA03
4C206ZC21
(57)【要約】
本発明は、150~1,000mgの重量を有する胃内滞留性経口投与単位であって、前記投与単位が、70~100重量%のコア単位及び0~30重量%のコーティングを含み、コア単位が、(a)15~50重量%の局所麻酔薬;(b)2~20重量%の発泡剤;(c)8~30重量%の親水性水溶性ポリマー;(d)5~75重量%の賦形剤を含む、胃内滞留性経口投与単位を提供する。本発明の投与単位は、栄養を十分に入手できる対象における栄養失調を治療若しくは予防するため、又は早期の若しくは過剰な満腹感を治療若しくは予防するために特に適している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
150~1,000mgの重量を有する胃内滞留性経口投与単位であって、前記投与単位が、70~100重量%のコア単位及び0~30重量%のコーティングを含み、前記コア単位が、
(a)15~50重量%の局所麻酔薬;
(b)2~20重量%の発泡剤;
(c)8~30重量%の親水性ポリマー;
(d)5~75重量%の賦形剤
を含む、胃内滞留性経口投与単位。
【請求項2】
前記成分(a)~(d)が、均一に混合される、請求項1に記載の投与単位。
【請求項3】
前記投与単位が、30~400mgの局所麻酔薬を含有する、請求項1又は2に記載の投与単位。
【請求項4】
前記局所麻酔薬が、リドカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、オキセサゼイン、プリロカイン、ブタニリカイン、カルチカイン、シンコカイン、クリブカイン、エチドカイン、メピバカイン、ロピバカイン、トリカイン、トリメカイン、バドカイン、アルチカイン、レボブピバカイン、アミロカイン、コカイン、プロパノカイン、クロルメカイン、シクロメチカイン、プロキシメタカイン、アメトカイン、ブタカイン、ブトキシカイン、アミノ安息香酸ブチル、クロロプロカイン、ジメトカイン、オキシブプロカイン、ピペロカイン、パレトキシカイン、プロカイン、プロポキシカイン、トリカイン及びそれらの組合せから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の投与単位。
【請求項5】
前記局所麻酔薬が、リドカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、オキセサゼイン、プリロカイン及びそれらの組合せから選択される、請求項4に記載の投与単位。
【請求項6】
前記局所麻酔薬がリドカインである、請求項5に記載の投与単位。
【請求項7】
前記発泡剤が、重炭酸塩、炭酸塩及びそれらの組合せから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の投与単位。
【請求項8】
前記親水性ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、ポリエチレンオキシド、カルボマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、メタクリル酸コポリマー、ポリアクリル酸、カラギーナン、天然ゴム、グアーガム、トラガカント、アカシアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム及びそれらの組合せから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の投与単位。
【請求項9】
前記親水性ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項8に記載の投与単位。
【請求項10】
前記賦形剤が、ラクトース、微結晶性セルロース、マンニトール、デンプン及びそれらの組合せから選択される充填剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の投与単位。
【請求項11】
前記コア単位が、20~70重量%の充填剤を含有する、請求項10に記載の投与単位。
【請求項12】
前記コア単位が、クロスカルメロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン及びそれらの組合せから選択される崩壊剤を含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の投与単位。
【請求項13】
前記コア単位が、0.5~15重量%の崩壊剤を含有する、請求項12に記載の投与単位。
【請求項14】
成分(a)~(d)の前記組合せが、前記コア単位の少なくとも75重量%を占める、請求項1~13のいずれか一項に記載の投与単位。
【請求項15】
前記投与単位が、3~30重量%の唾液耐性コーティングを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の投与単位。
【請求項16】
前記唾液耐性コーティングが、ジメチルアミノエチルメタクリレートを基準にして、少なくとも50重量%のカチオン性コポリマーを含む、請求項15に記載の投与単位。
【請求項17】
栄養を十分に入手できる対象における栄養失調の治療若しくは予防、又は早期の若しくは過剰な満腹感の治療若しくは予防に使用するための投与単位であって、前記使用が、請求項1~16のいずれか一項に記載の投与単位の経口投与を含む、投与単位。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載の投与単位を調製する方法であって、
・成分(a)、(b)、(c)及び(d)を均一に混合することによって、錠剤化混合物を調製すること:並びに
・前記錠剤化混合物を圧縮して錠剤にすること
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所麻酔薬を含有する胃内滞留性経口投与単位及びこのような投与単位を調製する方法に関する。本発明は、栄養を十分に入手できる対象における栄養失調の治療若しくは予防における、又は早期の若しくは過剰な満腹感の治療における、この投与単位の使用にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
「加齢による食欲不振」は、一部の高齢者において観察される食欲及びエネルギー摂取の減少を指す。飽満(満足感を伴い得る、食事の終了をもたらすプロセス)及び満腹感(食後に持続する充足感、空腹感が戻るまでさらなるエネルギー摂取を抑制する可能性がある)は、食欲及びエネルギー摂取の制御における重要な因子であり、飽満及び満腹感のいくつかの局面が、高齢者において変化されるというエビデンスがある。
【0003】
悪液質は、栄養補給では十分に回復されない進行する筋力低下を引き起こす基礎疾患に関連する複合症候群である。様々な疾患、最も一般的には、癌、鬱血性心不全、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎疾患及びAIDSが、悪液質を引き起こし得る。早期の(早すぎる)満腹感は、寄与因子として特定されている。不十分なカロリー摂取による体重減少と対照的に、悪液質は、脂肪減少の代わりに、主に筋力低下を引き起こす。
【0004】
早期の若しくは過剰な満腹感の慢性症状の次に、急性症状も存在する。腹部手術の後、多くの患者は、食事の開始に際し問題を有する。食欲の減退又は過剰な満腹感は、術後腸閉塞をもたらし得る。術後腸閉塞は、固形食に対する不耐性、腸内ガス及び有形便の通過の遅延、疼痛及び腹部膨満、吐き気、嘔吐、並びに腸内のガス又は水分の貯留によって特徴付けられる。術後腸閉塞は、長期の入院につながることが多い。
【0005】
リドカインなどの局所麻酔薬は、全身麻酔薬と対照的に、意識消失なしで身体の特定の場所における疼痛を取り除く。局所麻酔薬は、2つのクラス:アミノアミド及びアミノエステル局所麻酔薬のうちの1つに属する。合成局所麻酔薬は、コカインと構造的に関連する。それらは、主に、非常に低い乱用の可能性を有し、高血圧症又は(わずかな例外を除いて)血管収縮を生じない点で、コカインとは異なる。
【0006】
リドカインは、主に、注射及び/又は局所/経皮経路のいずれかによって投与されるアミノアミド型の局所麻酔薬である。局所麻酔薬としてのリドカインの有効性プロファイルは、迅速な作用発現及び有効性の中間持続時間によって特徴付けられる。
【0007】
リドカインは、歯科において最も一般的に使用される局所麻酔薬の1つである。表面麻酔のために、いくつかの製剤が、内視鏡の挿管前などに使用され得る。リドカインのpHを緩衝させると、局所的な麻痺の痛みが軽減される。リドカイン滴下が、短時間の眼科手術のために眼に使用され得る。
【0008】
Trachisan(登録商標)は、咽喉痛を軽減する市販のリドカイントローチ剤である。
【0009】
Quadeib et al.(The Oral Administration of Lidocaine HCl Biodegradable Microspheres:Formulation and Optimization,Int J Nanomedicine.2020;15:857-869.)には、リドカインの溶解度を向上させ、インビトロでのリドカインの放出を促進する経口リドカイン製剤が記載されている。様々な比率のアルギネート及びキトサンが、様々なタイプのミクロスフェアを作製するのに使用された。著者によれば、このミクロスフェアは、リドカインのための新規な経口送達系として使用され得、単独のリドカインよりかなり低い心毒性を示す。
【0010】
国際公開第2013/171252号パンフレットには、食前又は食事中又は食後に咽頭-食道-胃-十二指腸管の内腔に十分な用量の局所麻酔薬を適用することによって、哺乳動物における食物摂取及び食物滞留を促進するための方法が記載されている。リドカインは、局所麻酔薬の例として言及されている。
【0011】
米国特許出願公開第2011/0287096号明細書には、
(a)塩基性アミン薬剤、酸性化剤、炭素化合物、親水性不溶性ポリマー、及び非水溶性流体浸透剤を含む胃内滞留型成分;並びに
(b)塩基性アミン薬剤、酸性化剤及び持続放出ポリマーを含む非胃内滞留型成分
を含む経口剤形が記載されている。
【0012】
米国特許出願公開第2020/0316150号明細書には、ベルゲニンに富むヒマラヤユキノシタ(Bergenia ciliata)水アルコール抽出物又は画分;ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)K15M、HPMC K30M、HPMC K100M、キサンタンガム、キトサン、10~100cpsの範囲の粘度のエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、及びそれらの組合せからなる群から選択される胃内滞留型膨張性ポリマー;並びに任意に、担体、アジュバント、及び結合剤からなる群から選択される賦形剤を含む持続放出胃内滞留型膨潤性経口製剤が記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、栄養を十分に入手できる対象における栄養失調を治療若しくは予防するため、又は早期の若しくは過剰な満腹感を治療若しくは予防するために特に適している投与単位を開発した。本発明に係る投与単位は、経口で摂取され得、その後、長時間にわたって胃内で局所麻酔薬を徐々に放出する。
【0014】
本発明の胃内滞留性経口投与単位は、150~1,000mgの重量を有し、70~100重量%のコア単位及び0~30重量%のコーティングを含み、コア単位は、
(a)15~50重量%の局所麻酔薬;
(b)2~20重量%の発泡剤;
(c)8~30重量%の親水性ポリマー;
(d)5~75重量%の賦形剤
を含む。
【0015】
本発明者らは、理論によって拘束されるのを望むものではないが、本発明の投与単位が、胃液と接触するとき、発泡剤が、気泡を放出し始めると同時に、親水性ポリマーが、これらの気泡を捕捉する湿潤マトリックスを形成し始めると考えられる。この共同作用から得られる浮揚性が、投与単位を浮遊させ、それによって、胃内の投与単位の滞留時間を増加させる。湿潤ポリマーマトリックスは、投与単位の崩壊を防止するか又は少なくとも遅らせるため、局所麻酔薬は、徐々に放出される。特に、局所麻酔薬が、胃液と接触するときに不活性化される場合、局所麻酔薬の漸進的な及び長期の放出は、持続効果を達成するのに重要である。
【0016】
本発明の胃内滞留性経口投与単位は、例えば、弾性膜を含まないため、製造が容易であるという利点を提供する。さらに、投与単位の放出特性は、コア単位の成分の濃度レベルを調整することによって、有効に及び容易に操作され得る。
【0017】
本発明はまた、栄養を十分に入手できる対象における栄養失調、又は早期の若しくは過剰な満腹感の治療若しくは予防における上記の投与単位の使用であって、投与単位の経口投与を含む使用に関する。投与単位の経口投与の後、局所麻酔薬は、長期間の間、胃内で徐々に放出され、早期の満腹感の抑制を引き起こす。満腹感のこの抑制は、局所麻酔薬によって誘発される胃壁組織における筋線維の弛緩によって引き起こされると考えられる。
【0018】
本発明の投与単位を調製する方法であって、
・成分(a)、(b)、(c)及び(d)を均一に混合することによって、錠剤化混合物を調製すること:並びに
・錠剤化混合物を圧縮して錠剤にすること
を含む方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
したがって、本発明の第1の態様は、150~1,000mgの重量を有する胃内滞留性経口投与単位であって、前記投与単位が、70~100重量%のコア単位及び0~30重量%のコーティングを含み、コア単位が、
(a)15~50重量%の局所麻酔薬;
(b)2~20重量%の発泡剤;
(c)8~30重量%の親水性ポリマー;
(d)5~75重量%の賦形剤
を含む、胃内滞留性経口投与単位に関する。
【0020】
本明細書において使用される際の「局所麻酔薬」という用語は、意識消失なしで身体の特定の場所における疼痛を取り除く薬剤を指す。これらの局所麻酔薬は、薬学的に許容される塩を含む任意の薬学的に許容される形態で投与単位中に存在し得る。
【0021】
本明細書において使用される際の「表面麻酔薬」という用語は、局所的に適用されるとき、組織における疼痛を取り除く局所麻酔薬を指す。
【0022】
本明細書において使用される際の「リドカイン」という用語は、リドカイン並びにその薬学的に許容される塩(リドカイン.HClなど)を包含する。
【0023】
本明細書において使用される際の「親水性ポリマー」という用語は、水膨潤性及び/又は水溶性であるポリマーを指す。
【0024】
本発明の投与単位は、好ましくは、錠剤、より好ましくは、圧縮錠の形態で提供される。錠剤は、好ましくは、少なくとも40N、より好ましくは、80~140Nの錠剤強度を有する。
【0025】
本発明の投与単位は、成分(a)~(d)を均一に混合し、続いて錠剤化及び任意に保護コーティングの適用によって、非常に簡素な方法で調製され得るという利点を提供する。したがって、好ましい実施形態において、成分(a)~(d)は、均一に混合される。
【0026】
好ましい実施形態によれば、本発明に従って用いられる局所麻酔薬は、表面麻酔薬である。表面麻酔薬は、低い投与量で非常に有効であるという利点を提供する。
【0027】
局所麻酔薬は、好ましくは、リドカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、オキセサゼイン、プリロカイン、ブタニリカイン、カルチカイン、シンコカイン、クリブカイン、エチドカイン、メピバカイン、ロピバカイン、トリカイン、トリメカイン、バドカイン、アルチカイン、レボブピバカイン、アミロカイン、コカイン、プロパノカイン、クロルメカイン、シクロメチカイン、プロキシメタカイン、アメトカイン、ブタカイン、ブトキシカイン、アミノ安息香酸ブチル、クロロプロカイン、ジメトカイン、オキシブプロカイン、ピペロカイン、パレトキシカイン、プロカイン、プロポキシカイン、トリカイン及びそれらの組合せから選択される。より好ましくは、局所麻酔薬は、リドカイン、ベンゾカイン、ブピバカイン、オキセサゼイン、プリロカイン及びそれらの組合せから選択される。最も好ましくは、局所麻酔薬は、リドカインである。
【0028】
本発明に従って用いられる局所麻酔薬は、好ましくは、アミノアミド型局所麻酔薬である。
【0029】
本発明の投与単位は、好ましくは、30~400mg、より好ましくは、40~300mg、最も好ましくは、50~200mgの局所麻酔薬を含有する。
【0030】
投与単位に含まれるリドカインの量は、好ましくは、30~400mgの範囲、より好ましくは、40~300mgの範囲、最も好ましくは、50~200mgの範囲である。
【0031】
本発明の投与単位のコア単位は、好ましくは、20~45重量%、より好ましくは、30~40重量%の局所麻酔薬を含有する。
【0032】
投与単位のコア単位は、好ましくは、20~45重量%のリドカイン、より好ましくは、30~40重量%を含有する。
【0033】
リドカインは、任意の薬学的に許容される形態でコア単位中に存在し得る。好ましくは、用いられるリドカインは、リドカイン塩酸塩である。
【0034】
コア単位中の発泡剤は、好ましくは、胃液と接触するとき、二酸化炭素を放出する。
【0035】
特に好ましい実施形態によれば、発泡剤は、重炭酸塩、炭酸塩及びそれらの組合せから選択される。より好ましくは、発泡剤は、重炭酸アンモニウム、重炭酸カルシウム、重炭酸リチウム、重炭酸マグネシウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アルギニン、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸リジン、炭酸マグネシウムカリウム、炭酸ナトリウム、グリシン炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸亜鉛及びそれらの組合せから選択される。さらにより好ましくは、発泡剤は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及びそれらの組合せから選択される。最も好ましくは、発泡剤は、炭酸水素ナトリウムである。
【0036】
投与単位のコア単位は、好ましくは、3~18重量%、より好ましくは、4~16重量%、最も好ましくは、4~12重量%の発泡剤を含む。
【0037】
コア単位中に存在する親水性ポリマーは、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、ポリエチレンオキシド、カルボマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、メタクリル酸コポリマー、ポリアクリル酸、カラギーナン、天然ゴム、グアーガム、トラガカント、アカシアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム及びそれらの組合せから選択される。より好ましくは、親水性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそれらの組合せから選択される。最も好ましくは、親水性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0038】
コア単位は、好ましくは、10~25重量%、より好ましくは、12~20重量%の親水性ポリマーを含有する。
【0039】
賦形剤は、好ましくは、10~60重量%、より好ましくは、25~50重量%、最も好ましくは、32~45重量%の濃度でコア単位に含まれる。
【0040】
特に好ましい実施形態によれば、成分(a)~(d)の組合せは、コア単位の少なくとも75重量%、より好ましくは、コア単位の少なくとも85重量%、最も好ましくは、コア単位の少なくとも90重量%を占める。
【0041】
コア単位に含まれる賦形剤は、好ましくは、ラクトース、微結晶性セルロース、マンニトール、デンプン及びそれらの組合せから選択される充填剤を含む。より好ましくは、前記充填剤は、ラクトース、微結晶性セルロース及びそれらの組合せから選択される。最も好ましくは、充填剤は、微結晶性セルロースを含む。
【0042】
コア単位は、好ましくは、0~40重量%のラクトース及び0~45重量%の微結晶性セルロースを含む。より好ましくは、コア単位は、1~20重量%のラクトース及び20~40重量%の微結晶性セルロースを含む。最も好ましくは、コア単位は、2~10重量%のラクトース及び26~38重量%の微結晶性セルロースを含む。
【0043】
コア単位は、好ましくは、20~70重量%の充填剤、より好ましくは、25~50重量%の充填剤、最も好ましくは、28~45重量%の充填剤を含有する。
【0044】
特に好ましい実施形態によれば、コア単位は、クロスカルメロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン及びそれらの組合せから選択される崩壊剤を含有する。より好ましくは、崩壊剤は、クロスカルメロース、デンプングリコール酸ナトリウム及びそれらの組合せから選択される。
【0045】
コア単位は、好ましくは、0.5~15重量%の崩壊剤、より好ましくは、0.7~10重量%の崩壊剤、さらにより好ましくは、0.8~6重量%の崩壊剤、さらにより好ましくは、1~5重量%の崩壊剤、最も好ましくは、1.4~4重量%の崩壊剤を含有する。
【0046】
さらなる好ましい実施形態によれば、コア単位は、制酸薬を含有する。用いられ得る制酸薬の例としては、グルコン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、グルコン酸カリウム、クエン酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、グルコン酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム及びそれらの組合せが挙げられる。
【0047】
コア単位は、好ましくは、5~30重量%の制酸薬、より好ましくは、8~25重量%の制酸薬を含有する。
【0048】
投与単位の好ましい実施形態において、コア単位は、水溶性2価金属塩、より特定的に、Ca2+の水溶性塩及び/又はMg2+の水溶性塩と組み合わせてアルギネートを含有する。水溶性2価金属塩は、水溶性制酸薬であり得る。本明細書において、「水溶性」は、HClを用いて1.2のpHになるまで酸性化された、蒸留水中の少なくとも50mg/Lの溶解度を有する塩を指す。アルギネート及び水溶性2価金属塩を含有する投与単位が、胃液と接触するとき、2価金属塩は、溶解し、それによって、2価金属を放出し、それが、続いて、ゲルネットワークの形成下でアルギネートを架橋する。
【0049】
水溶性2価金属塩は、好ましくは、水溶性カルシウム塩である。コア単位において好適に用いられ得る水溶性カルシウム塩の例としては、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム及びそれらの組合せが挙げられる。最も好ましくは、水溶性2価金属塩は、炭酸カルシウムである。
【0050】
コア単位に用いられるアルギネートは、好ましくは、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム及びそれらの組合せから選択される。最も好ましくは、アルギネートは、アルギン酸ナトリウムである。
【0051】
アルギネートは、好ましくは、0.01~1重量%、より好ましくは、0.03~0.5重量%の濃度でコア単位に含まれる。
【0052】
水溶性2価金属塩は、好ましくは、1~100mmol/L、より好ましくは、2~20mmol/Lの濃度でコア単位に含まれる。
【0053】
特に好ましい実施形態によれば、コア単位は、制酸薬、アルギネート及び水溶性2価金属塩の組合せを含む。
【0054】
さらに別の実施形態によれば、コア単位は、滑沢剤を含有する。用いられ得る滑沢剤の例としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸、パルミチン酸、水酸化カルシウム、タルク、トウモロコシデンプン、フマル酸ステアリルナトリウム、ロイシン、ポリエチレングリコール、ベヘン酸グリセリル、コロイド状二酸化ケイ素、水添植物油、鉱油、ワックス及びそれらの組合せが挙げられる。より好ましくは、滑沢剤は、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム及びそれらの組合せから選択される。
【0055】
コア単位は、好ましくは、0.2~3重量%の滑沢剤、より好ましくは、0.3~2重量%の滑沢剤、最も好ましくは、0.5~1.5重量%の滑沢剤を含有する。
【0056】
局所麻酔薬の口中での放出を防止するために、コア単位は、好ましくは、唾液耐性コーティングで取り囲まれる。唾液耐性コーティングは、口又は咽喉中での局所麻酔薬の望ましくない放出を最小限に抑える。
【0057】
唾液耐性コーティングは、好ましくは、少なくとも50重量%、より好ましくは、少なくとも80重量%の、ジメチルアミノエチルメタクリレートをベースとするカチオン性コポリマー、より好ましくは、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びメチルメタクリレートをベースとするコポリマー(例えばEudragit(登録商標)E)を含む。
【0058】
投与単位は、好ましくは、3~30重量%、より好ましくは、4~15重量%の唾液耐性コーティングを含む。
【0059】
本発明の投与単位の性能は、人工胃液を用いた溶解試験において決定され得る。この試験は、USP2装置及び900mLの人工胃液(pH1.2)を用いて行われる。試験の詳細な説明は、The United States Pharmacopeial Convention.General Chapter:711 Dissolution:Apparatus 2.The United States Pharmacopeia and The National Formulary.USP 34-NF 29.Rockville,MD:The United States Pharmacopeial Convention,2011に見出される。好ましくは、この溶解試験において、本発明の投与単位は、10分後に15~60%の局所麻酔薬及び60分後に60~100%の局所麻酔薬を放出した。より好ましくは、この溶解試験において、本発明の投与単位は、10分後に20~50%の局所麻酔薬及び60分後に80~100%の局所麻酔薬を放出した。
【0060】
本発明の別の態様は、栄養を十分に入手できる対象における栄養失調の治療若しくは予防、又は早期の若しくは過剰な満腹感の治療若しくは予防に使用するための投与単位であって、前記使用が、本明細書において前述される胃内滞留性経口投与単位の経口投与を含む、投与単位に関する。
【0061】
対象は、好ましくは、ヒト対象である。より好ましくは、対象は、加齢による食欲不振、悪液質、栄養失調、術後腸閉塞、神経性無食欲症又はサルコペニアを患っているヒト対象である。
【0062】
さらなる好ましい実施形態において、対象は、手術、特に、腹部手術を受けたヒト患者である。このタイプの患者への胃内滞留性投与単位の経口投与は、術後腸閉塞を発生するリスクを低下させるという利点を提供する。
【0063】
投与単位の使用は、好ましくは、投与単位の少なくとも1回の連日投与を含む。
【0064】
特に好ましい実施形態によれば、経口投与単位は、食事の摂取の開始の30分前まで、より好ましくは、15分前まで、最も好ましくは、10分前までに投与される。
【0065】
本発明に係る投与単位の使用は、好ましくは、30~400mgの局所麻酔薬の用量、より好ましくは、50~300mgの局所麻酔薬の用量を提供する投与単位の経口投与を含む。
【0066】
使用は、好ましくは、30~400mgのリドカインの用量、より好ましくは、50~300mgのリドカインの用量を提供する投与単位の経口投与を含む。
【0067】
本発明のさらに別の態様は、本明細書において前述される投与単位を調製する方法であって、
・成分(a)、(b)、(c)及び(d)を均一に混合することによって、錠剤化混合物を調製すること:並びに
・錠剤化混合物を圧縮して錠剤にすること
を含む方法に関する。
【0068】
本発明の方法の好ましい実施形態において、錠剤化混合物は、圧縮工程前に、200~1000μmのメッシュサイズ、より好ましくは、300~800μmのメッシュサイズを有する篩に通される。
【0069】
本発明の方法は、好ましくは、唾液耐性コーティングを適用するさらなる工程を含む。
【0070】
唾液耐性コーティングは、乾燥粉末コーティングによって、又は溶媒及びコーティングポリマーを含む液体コーティング混合物によるコーティングによって適用され得る。好ましくは、唾液耐性コーティングは、液体コーティング混合物を圧縮錠に適用し、溶媒を蒸発させることによって適用される。
【0071】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示される。
【実施例
【0072】
実施例1
本発明に係る経口投与単位を、表1に示される処方箋に基づいて調製した。
【0073】
【表1】
【0074】
これらの錠剤を、以下のように調製した:リドカイン及び全ての賦形剤を、篩にかけ、秤量し、全て(ステアリン酸マグネシウムを除く)を混合容器に移した。15分間の混合の後、ステアリン酸マグネシウムを添加し、混合を、さらに5分間続けて、錠剤化ブレンドを得た。ブレンドを圧縮して円形の錠剤にした。
【0075】
実施例2
実施例1の経口投与単位の錠剤強度を、Pharma Test(商標)硬度計を用いて決定した。さらに、試験を、経口投与単位の浮遊時間及び崩壊時間を決定するために行った。錠剤が浮遊を開始するまでの時間を、100mlの人工胃液(pH1.2)を含むガラスビーカー中で実験的に決定した。崩壊試験を、ディスクを含む自動化崩壊試験システム(Parmatron DisiTest)を用いて行った。
【0076】
試験の結果が、表2に示される。
【0077】
【表2】
【0078】
実施例3
実施例1の錠剤の溶解特性を、900mLの人工胃液(pH1.2)が充填されたUSP2装置を用いて決定した。結果が、図1に示される。
【0079】
実施例4
リドカイン錠剤を、実施例1と同様の手順を用いて、表3に示される処方箋に基づいて調製した。
【0080】
【表3】
【0081】
次に、錠剤を、コーティング溶液(Eudragit EPOの水溶液)を錠剤に噴霧することによって、回転ドラム中で、高温で、唾液耐性コーティングで被覆した。乾燥させた後、錠剤の重量は、約10重量%だけ増加していた。
【0082】
被覆錠剤の溶解特性が、図2に示される。
【0083】
実施例5
胃腸管内で、局所回路が、食物摂取及び輸送の調節において役割を果たす。食物摂取の結果としての胃の機械的伸展が、伸張受容器(ニューロン)を活性化し、それがひいては満腹シグナルを誘発する。伸張受容器の薬理学が、胃底ストリップ調製物中で分析され得る。
【0084】
新鮮な胃組織(殺処分の0~1時間後)を、常法により殺処分された飼育ブタから採取した。胃の底部領域を取り出し、冷生理食塩水(0.9%のNaCl)溶液で洗浄した。組織を、清浄な冷生理食塩水に沈め、実験室に搬送した(搬送時間30分)。
【0085】
粘膜及び粘膜下層を、筋層(筋肉層)から除去した。筋層を、約1×5cmのストリップで縦筋線維に沿って切り取った。ストリップを、37℃の生理食塩溶液中で15分間インキュベートした。
【0086】
その後、胃底ストリップを、37℃に保たれた透明な容器中に垂直に入れた。伸張を、ストリップの底部において5gの重りによって確保した。試験溶液を、容器中に加えた。アセチルコリン(10-4M)曝露を用いて、胃底組織の収縮を誘発した。デジタルカメラを用いて実験の開始の0、5、10、15、30、45及び60分後の時点で写真を撮影した。ストリップの長さを、Photoshopソフトウェア(Adobe)を用いて、盲検化評価者(治療を知らされていない)によって測定した。値を、ベースラインのパーセンテージ(t=0分)として表した。
【0087】
表4は、生理食塩水+アセチルコリン(対照)及びリドカインと組み合わせた生理食塩水+アセチルコリン(70mg/L)への曝露後の、胃底ストリップの相対長さ(ベースラインのパーセンテージ)を示す。
【0088】
【表4】
【0089】
これらの結果は、アセチルコリンによって誘発される収縮が、リドカインへの曝露によって解消されたことを示す。
【0090】
実施例6
今回、リドカインの代わりに、ベンゾカイン(70mg/L)を用いたことを除いて、実施例5を繰り返した。実験の結果は、表5に要約される。
【0091】
【表5】
【0092】
実施例7
今回、リドカインの代わりに、ブピバカイン(70mg/L)を用いたことを除いて、実施例5を繰り返した。実験の結果は、表6に要約される。
【0093】
【表6】
【0094】
実施例8
今回、リドカインの代わりに、オキセサゼイン(70mg/L)を用いたことを除いて、実施例5を繰り返した。実験の結果は、表7に要約される。
【0095】
【表7】
【0096】
実施例9
今回、リドカインの代わりに、プリロカイン(70mg/L)を用いたことを除いて、実施例5を繰り返した。実験の結果は、表8に要約される。
【0097】
【表8】
【0098】
実施例10
リドカインの酸感受性を、1、5及び15分間にわたってリドカインを酢酸(pH2.5)に曝露することによって決定してから、実施例5と同様に、胃底ストリップに対して実験を行った。
【0099】
実験の結果は、表9に要約される。
【0100】
【表9】
【0101】
結果は、リドカインが、低いpHで不活性化されることを示す。最も短い曝露時間(1分間)でのみ、リドカインは、活性なままであり、アセチルコリン誘発収縮を阻害する。
【0102】
実施例11
本発明に係る経口投与単位を、表10に示される処方箋に基づいて調製した。
【0103】
【表10】
【0104】
これらの錠剤を、以下のように調製した:リドカインを、600μmの篩上でタンブリングミキサーにおいて篩にかけた。ステアリン酸マグネシウムを除く他の成分を、800μmの篩上でタンブリングミキサーにおいて篩にかけた。上記の成分を、15分間にわたってタンブリングミキサーにおいて混合した。次に、ステアリン酸マグネシウムを、500μmの篩上で篩にかけ、粉末混合物に加えた後、さらに15分間にわたってタンブリングミキサーにおいて混合した。そのように得られた混合物を圧縮して、318mgの平均重量を有する10mmの両凸形の錠剤にした。
【0105】
経口投与単位の錠剤強度、浮遊時間及び崩壊時間を、実施例2と同じように決定した。結果は、表11に要約される。
【0106】
【表11】

【国際調査報告】