(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-20
(54)【発明の名称】電池電極及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20241113BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20241113BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241113BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20241113BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20241113BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/13
H01G11/38
H01G11/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531657
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2022083347
(87)【国際公開番号】W WO2023094623
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミッレファンティ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】マラーニ, アレッシオ
(72)【発明者】
【氏名】ビーソ, マウリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】マウリ, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】デボルトリ, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ガウシー, フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】カダム, ビジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シングテ, ラフル
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078BA44
5E078BB21
5E078BB34
5H050AA14
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA24
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、PTFE及び低融点フッ素樹脂を含む電極組成物、その調製方法及び電気化学セル構成要素の製造のためのその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイス用の電極の作製に使用するためのバインダー組成物[バインダー(B)]であって、
a.ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と;
b.220℃未満の融点を有する低融点VDF系フッ素樹脂[ポリマー(A)]であって、前記ポリマー(A)が、
-前記ポリマー(A)の全ての繰り返し単位に対して少なくとも50モル%の、VDFに由来する繰り返し単位、及び
-少なくとも1つのコモノマー(CM)に由来する繰り返し単位を含み、前記コモノマー(CM)が、親水性(メタ)アクリルコモノマー[コモノマー(MA)]並びに
(i)テトラフルオロエチレン(TFE);
(ii)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などの、クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C
2~C
6フルオロオレフィン;
(iii)式CF
2=CFOR
f1(式中、R
f1は、C
1~C
6フルオロ-又はペルフルオロアルキル基、例えば-CF
3、-C
2F
5、-C
3F
7である)の(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル;及び
(iv)ヘキサフルオロプロピレン(HFP)
からなる群から選択されるフッ素化コモノマー[コモノマー(F)]から選択される、低融点VDF系フッ素樹脂[ポリマー(A)]と
を含み、
前記少なくとも1つのコモノマー(F)が、ポリマー(A)の繰り返し単位の総モル数に対して0.05モル%~30.0モル%の量でポリマー(A)中に存在することを特徴とするバインダー組成物[バインダー(B)]。
【請求項2】
ポリマー(A)が、前記ポリマー(A)の全ての繰り返し単位に対して、少なくとも60モル%、より好ましくは、少なくとも70モル%の、VDFに由来する繰り返し単位を含む、請求項1に記載のバインダー(B)。
【請求項3】
前記重量比のPTFE/ポリマー(A)が、95/5重量/重量~30/70重量/重量に含まれる、請求項1又は2に記載のバインダー(B)。
【請求項4】
前記コモノマー(MA)が、式:
【化1】
(式中、R1、R2、R3のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、水素原子、又はC
1~C
3炭化水素基であり、R
OHは、ヒドロキシル基、又は少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC
1~C
5炭化水素部分である)に従う、請求項1~3のいずれか一項に記載のバインダー(B)。
【請求項5】
前記コモノマー(MA)が、
-下式のヒドロキシエチルアクリレート(HEA):
【化2】
-下式のいずれかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)
【化3】
-下式のアクリル酸(AA):
【化4】
及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載のバインダー(B)。
【請求項6】
ポリマー(A)が、VDF-AAコポリマーである、請求項5に記載のバインダー(B)。
【請求項7】
ポリマー(A)が、VDF-CTFEコポリマー、VDF-TFEコポリマー、VDF-HFPコポリマー又はVDF/TFE/PMVEターポリマーから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のバインダー(B)。
【請求項8】
電気化学デバイス用の電極の作製に使用するための電極形成組成物[組成物(C)]であって、
a)少なくとも1種の電極活物質(AM)と;
b)請求項1~7のいずれか一項に記載のバインダー(B)と;
c)任意選択的に、少なくとも1種の導電剤と
を含むことを特徴とする電極形成組成物[組成物(C)]。
【請求項9】
電気化学セル用の電極[電極(E)]を製造するための方法であって、
-A)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び低融点VDF系フッ素樹脂[ポリマー(A)]を組み合わせて、請求項1~7のいずれか一項に記載のバインダー(B)を提供すること;
-B)溶媒の非存在下で、少なくとも1種の電極活物質(AM)、上で定義したような前記バインダー(B)、及び任意選択的に、少なくとも1種の導電剤を乾式混合すること;
-C)工程B)において得られた粉末状の乾燥混合物を圧縮機に供給して、自己支持性乾燥フィルムを形成すること;及び
-D)前記乾燥フィルムを導電性基板に適用して、前記電極を形成すること
を含む方法。
【請求項10】
工程B)において、前記乾式混合が、均一な乾燥混合物が形成されるまで、例えば、ミル、ミキサー又はブレンダー中で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程C)が、200℃以下の温度、好ましくは180℃未満の温度で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、二次電池のための電極(E)。
【請求項13】
請求項12に記載の少なくとも1つの電極(E)を含む、二次電池などの電気化学デバイス。
【請求項14】
前記電気化学デバイスが、
-正極及び負極
を含む二次電池であり、
前記正極及び前記負極のうちの少なくとも1つが、請求項12に記載の電極(E)である、請求項13に記載の電気化学デバイス。
【請求項15】
前記電気化学デバイスが、
-正極及び負極
を含む二次電池であり、
前記正極が、請求項12に記載の電極(E)である、請求項14に記載の電気化学デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月29日出願の欧州特許出願第21211090.2号及び2022年7月15日出願の欧州特許出願第22186754.2号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、PTFE及び低融点フッ素樹脂を含む電極組成物、その調製方法及び電気化学セル構成要素の製造のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
これまで、リチウム二次電池の電極は、電極活物質、添加剤及びバインダーが、溶媒又は水性媒体中に分散されたスラリーを調製すること、及び電極フィルムを形成するようにスラリーを処理することを含む湿式プロセスによって主に製造される。
【0004】
乾式電極プロセスは、上記の湿式プロセスによって必要とされる時間及びコストのかかる乾燥手順を減少させるために開発された。
【0005】
典型的な乾式プロセスは、特定のポリマーのフィブリル化性を用いて、埋め込まれる導電性材料のためのマトリックスを提供する。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの、フルオロポリマーのファミリーにおけるポリマーのいくつかは、高い作動温度又は貯蔵温度で有機溶媒を用いるものでさえ、二次電池において使用される一般的な電極溶媒中で特に不活性であり、安定している。したがって、PTFEを用いて作製される電極の安定性は、他のバインダーを用いて作製されるものより高くなり得る。
【0006】
例えば、乾式電極作製プロセスは、PTFEバインダーを、粉末形態の活電極物質と組み合わせること、及びカレンダー加工して、電極フィルムを形成することを含み得る。しかしながら、PTFEは、電極活物質に対する良好な接着性を有するが、集電体に対する接着性に困難がある。
【0007】
バインダーとしてPTFE及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)を組み合わせて使用し、FEPの融点(240~270℃)又はそれ以上を有する材料を実現することによって、PTFEの、集電体及び電極活物質に対する接着性を改善するための方法が、当該技術分野において公知である(特開2000149954号公報)。しかしながら、FEPの融点以上、具体的には、280℃以上の温度に加熱するために、特殊な熱処理デバイスが、電極フィルムを提供するのに必要とされ、それは、エネルギーの観点から不都合である。
【0008】
本発明の一目的は、十分な接着強度を確保することができ、効率的なプロセスによって作製され得る電極を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
ここで、本出願人は、特定のフッ素含有熱可塑性プラスチックの添加が、二次電池用の電極のためのバインダーとして使用される場合、PTFEに対する改善された接着性を確保するのに特に有効であることを発見した。
【0010】
ここで、電気化学デバイス用の電極の作製に使用するためのバインダー組成物[バインダー(B)]であって、
a.ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と;
b.220℃未満の融点を有する低融点VDF系フッ素樹脂[ポリマー(A)]であって、前記ポリマー(A)が、
-前記ポリマー(A)の全ての繰り返し単位に対して少なくとも50モル%の、VDFに由来する繰り返し単位、及び
-少なくとも1つのコモノマー(CM)に由来する繰り返し単位を含み、前記コモノマー(CM)が、親水性(メタ)アクリルコモノマー[コモノマー(MA)]並びに
(i)テトラフルオロエチレン(TFE);
(ii)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などの、クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C2~C6フルオロオレフィン;
(iii)式CF2=CFORf1(式中、Rf1は、C1~C6フルオロ-又はペルフルオロアルキル基、例えば-CF3、-C2F5、-C3F7である)の(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル;及び
(iv)ヘキサフルオロプロピレン(HFP)
からなる群から選択されるフッ素化コモノマー[コモノマー(F)]から選択される、低融点VDF系フッ素樹脂[ポリマー(A)]と
を含むことを特徴とするバインダー組成物[バインダー(B)]が、本明細書で提供される。
【0011】
別の態様において、本発明は、電気化学デバイス用の電極の作製に使用するための電極形成組成物[組成物(C)]であって、
a)少なくとも1種の電極活物質(AM)と;
b)上で定義したようなバインダー(B)と;
c)任意選択的に、少なくとも1種の導電剤と
を含むことを特徴とする電極形成用組成物(C)を提供する。
【0012】
本出願人は、バインダー(B)が、その加工性により、低温での乾式プロセス又は押し出しによる電極の作製に適しており、それによって、非常に効率的なプロセスによって電極を提供することを意外にも発見した。
【0013】
ここで、別の態様において、本発明は、電気化学セル用の電極[電極(E)]を製造するための方法であって、
-A)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び上で定義したような低融点VDF系フッ素樹脂[ポリマー(A)]を組み合わせて、バインダー(B)を提供すること;
-B)溶媒の非存在下で、少なくとも1種の電極活物質(AM)、上で定義したようなバインダー(B)、及び任意選択的に、少なくとも1種の導電剤を乾式粉砕すること;
-C)工程B)において得られた粉末状の乾燥混合物を圧縮機に供給して、自己支持性乾燥フィルムを形成すること;及び
-D)乾燥フィルムを導電性基板に適用して、電極を形成すること
を含む方法を提供する。
【0014】
別の態様において、本発明は、上で定義したような方法によって得ることができる、二次電池のための電極(E)を提供する。
【0015】
更なる態様において、本発明は、上で定義したような少なくとも1つの電極(E)を含む、二次電池又はキャパシタなどの電気化学デバイスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に関連して、用語「重量パーセント」(重量%)は、特定の成分の重量と混合物の総重量との間の比として算出される、混合物中の特定の成分の含量を示す。ポリマー/コポリマー中のある種のモノマーに由来する繰り返し単位に言及する場合、重量パーセント(重量%)は、ポリマー/コポリマーの総重量に対する当該モノマーの繰り返し単位の重量の間の比を示す。液体組成物の総固形分に言及する場合、重量パーセント(重量%)は、液体中の全ての非揮発性成分の重量の間の比を示す。
【0017】
本明細書において使用される際、用語「接着する」及び「接着」は、2つの層が、それらの接触面を介して互いに永続的に結合されることを示す。
【0018】
用語「電気化学デバイス」とは、正極と、負極と、液体電解質とを含む電気化学セル/アセンブリであって、単層又は多層のセパレータが前記電極の1つの少なくとも1つの表面と接触している電気化学セル/アセンブリを意味することが本明細書で意図される。好適な電気化学デバイスの非限定的な例としては、とりわけ、二次電池、特にリチウムイオン電池などのアルカリ又はアルカリ土類二次電池、鉛酸電池並びにキャパシタ、特にリチウムイオン系キャパシタ及び電気二重層キャパシタ(スーパーキャパシタ)が挙げられる。電気化学セルの非限定的な例としては、特に、電池、好ましくは、二次電池、電気二重層キャパシタが挙げられる。
【0019】
本発明の目的のために、「二次電池」とは、充電式電池を示すことを意図する。二次電池の非限定的な例は、特に、アルカリ又はアルカリ土類二次電池を含む。
【0020】
本発明との関連で、用語「PTFE」は、テトラフルオロエチレン(TFE)の重合から得られるポリマーを意味する。
【0021】
しかし、PTFEポリマーがまた、限定はされないが、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ペルフルオロ-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)などの少量の1つ以上のコモノマーを含んでもよいが、ただし、後者がテトラフルオロエチレンホモポリマーの熱的及び化学的安定性などの、独自の特性に有意に悪影響を及ぼさないことは理解される。好ましくは、そのようなコモノマーの量は、約3モル%を超えず、より好ましくは約1モル%未満であり;0.5モル%未満のコモノマー含有率が特に好ましい。全体コモノマー含有率が0.5モル%よりも大きい場合には、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)コモノマーの量は約0.5モル%未満であることが好ましい。PTFEホモポリマーが最も好ましい。
【0022】
本発明のバインダー(B)の調製において使用するのに好適なPTFEは、粉末の形態又はラテックスの形態であり得る。
【0023】
粉末の形態のPTFEは、極低温凝固によって又は電解質の添加による電解凝固によってPTFE格子を凝固することによって得られる。例えば、米国特許第6790932号明細書を参照されたい。電解質の好ましい例は、以下の通りである:
-凝固容器中の水の量を元に計算して2g/lの濃度の硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3)、
-凝固容器中の水の量を元に計算して8g/lの濃度の炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、又は
-硝酸(HNO3)、凝固容器中の水の量を元に計算して65%の25mlの溶液。
【0024】
或いは、PTFEの粉末は、上述される電解質による凝固によってゲルの形態のPTFE格子から得られてもよい。ゲルは、米国特許第6790932号明細書及び米国特許第6780966号明細書に従って得られてもよい。
【0025】
凝固が起こった後、ポリマーは、室温で、脱塩水で洗浄される。凝固及び洗浄の後、次に、そこで得られたPTFE粉末が乾燥される。
【0026】
PTFE格子は、一般に、分散又は乳化重合によって得られる。
【0027】
粉末の形態のPTFEは、一般に、1~1600ミクロン、好ましくは、100~800ミクロン、より好ましくは、400~700ミクロンの粒径を有する。
【0028】
粒径は、累積パーセンテージが50%に達するときの対応する粒径であるD50に対して表され得る。D50は、中位粒径又は中位径とも呼ばれる。例えば、D50=5μmの粉末試料の場合、それは、粒子の50%が、5μmより大きく、50%の粒子が、5μmより小さいことを意味する。
【0029】
用語「フッ素樹脂」は、ポリマー鎖の繰り返し単位を構成する炭素原子に結合された少なくとも1つの水素原子が、フッ素原子又はフッ素原子を有する有機基で置換された樹脂を意味することが本明細書で意図される。
【0030】
ポリマー(A)は、好ましくは半結晶性フッ素樹脂である。
【0031】
用語「半結晶性の」は、ASTM D 3418に従って、10℃/分の加熱速度での示差走査熱量測定法(DSC)によって測定されるときに1J/g超の、より好ましくは、少なくとも8J/gの融解熱を有するポリマー(A)を意味することが本明細書で意図される。
【0032】
ポリマー(A)は、前記ポリマー(A)の全繰り返し単位に対して、少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも60モル%、より好ましくは少なくとも70モル%のVDFに由来する繰り返し単位を含む。
【0033】
ポリマー(A)は、少なくとも1つの親水性(メタ)アクリルモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含み得、ここで、コモノマー(MA)は、好ましくは、以下の式:
【化1】
(式中、R1、R2、R3のそれぞれは、互いに等しいか又は異なり、独立して、水素原子、又はC
1~C
3炭化水素基であり、R
OHは、ヒドロキシル基、又は少なくとも1つのヒドロキシル基を含むC
1~C
5炭化水素部分である)の化合物である。
【0034】
用語「少なくとも1つの親水性(メタ)アクリルコモノマー(MA)」は、ポリマー(A)が、上で記載されたような1つ又は2つ以上の親水性(メタ)アクリルコモノマー(MA)に由来する繰り返し単位を含み得ることを意味すると理解される。本明細書の残りの部分において、表現「親水性(メタ)アクリルコモノマー(MA)」及び「コモノマー(MA)」は、本発明の目的のために、複数形及び単数形の両方において理解され、すなわち、それらは、1つ又は2つ以上の両方の親水性(メタ)アクリルコモノマー(MA)を意味すると理解される。
【0035】
親水性(メタ)アクリルコモノマー(MA)は、好ましくは式:
【化2】
(式中、R1、R2、R
OHのそれぞれは、上で定義されたような意味を有し、及びR3は、水素であり;より好ましくは、R1、R2、R3のそれぞれは、水素である一方、R
OHは、上で詳述したのと同じ意味を有する)に従う。
【0036】
親水性(メタ)アクリルコモノマー(MA)の非限定的な例は、とりわけ、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0037】
コモノマー(MA)は、より好ましくは、以下のものからなる群から選択される:
-下式のヒドロキシエチルアクリレート(HEA):
【化3】
-下式のいずれかの2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)
【化4】
-下式のアクリル酸(AA):
【化5】
-及びこれらの混合物。
【0038】
より好ましくは、コモノマー(MA)は、AA及び/又はHEA、更に好ましくはAAである。
【0039】
ポリマー(A)中のコモノマー繰り返し単位の量の決定は、NMR法などの任意の適切な方法によって実施することができる。モノマー(MA)に関して、特に、例えばアクリル酸含有量の決定によく適している酸塩基滴定法、側鎖に脂肪族水素を含む(MA)コモノマー(例えば、HPA、HEA)の定量に適切なNMR法、ポリマー(A)の製造中の供給された(MA)コモノマーと未反応の残留物(MA)コモノマーとの合計に基づく重量差、及びIR法に言及することができる。
【0040】
少なくとも1つの親水性(メタ)アクリルコモノマー(MA)が存在する場合、ポリマー(A)は、典型的には、ポリマー(A)の繰り返し単位の総モルに対して0.05~10.0モル%を含む。
【0041】
少なくとも1つの親水性(メタ)アクリルコモノマー(MA)を含むポリマー(A)は、国際公開第2008/129041号パンフレットに従って調製され得る。
【0042】
ポリマー(A)は、VDF及びコモノマー(MA)と異なる少なくとも1つの[コモノマー(F)]に由来する繰り返し単位を含み得、[コモノマー(F)]は、以下のものからなる群から選択される:
(i)テトラフルオロエチレン(TFE);
(ii)-クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C2~C6フルオロオレフィン、例えば、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)及び1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン;
(iii)式CF2=CFORf1(式中、Rf1は、C1~C6フルオロ-又はペルフルオロアルキル基、例えば-CF3、-C2F5、-C3F7である)の(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル;及び
(iv)ヘキサフルオロプロピレン(HFP)。
【0043】
最も好ましいフッ素化コモノマー(F)は、テトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)ヘキサフルオロプロピレン(HFP)である。
【0044】
少なくとも1つのコモノマー(F)が、ポリマー(A)の繰り返し単位の総モルに対して、典型的には0.05モル%~30.0モル%の量でポリマー(A)中に存在し得る。
【0045】
特定の実施形態によると、ポリマー(A)は、本質的にVDF及びモノマー(MA)に由来する繰り返し単位からなる。前記実施形態によると、モノマー(MA)は、好ましくはAAであり、ポリマー(A)は、VDF-AAコポリマーである。
【0046】
他の実施形態によると、ポリマー(A)は、本質的にVDF及び少なくとも1つのコモノマー(F)由来の繰り返し単位からなる。前記実施形態によると、コモノマー(F)は、好ましくは、CTFE、TFE及びMVEから選択される。前記実施形態による好ましいポリマー(A)は、VDF-CTFEコポリマー、VDF-TFEコポリマー、VDF-HFPコポリマー又はVDF/TFE/PMVEターポリマーである。
【0047】
ポリマー(A)は、その物理化学的特性に影響を与えることも損なうこともない、欠陥、末端基等などの他の部分を更に含み得る。
【0048】
ポリマー(A)は、文献で知られている手順に従って、有機媒体中の懸濁液中、又は水性エマルジョン中で、VDFモノマー及び任意選択的に少なくとも1つのコモノマー(F)を重合することによって得られる。
【0049】
ポリマー(A)を調製するための手順は、ラジカル開始剤であるフッ化ビニリデン(VDF)、及び任意選択的に少なくとも1つのコモノマー(F)の存在下、任意選択的に連鎖移動剤及び反応容器内の分散剤の存在下、水性媒体中での重合を含む。
【0050】
一般に、本発明の方法は、少なくとも40℃、好ましくは少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも60℃の温度で実行される。
【0051】
重合が懸濁液において実施される場合、ポリマー(A)は、典型的には、粉末の形態で提供される。
【0052】
ポリマー(A)を得るための重合がエマルションにおいて実施される場合、ポリマー(A)は、典型的には、水性分散液(D)の形態で提供され、分散液(D)は、乳化重合によって直接得られたままで又は濃縮工程後に使用され得る。好ましくは、分散液(D)中のポリマー(A)の固形分は、20重量%~50重量%に含まれる範囲である。
【0053】
乳化重合によって得られたポリマー(A)は、分散液の濃縮及び/又は凝固によって水性分散液(D)から単離することができ、その後の乾燥によって粉末形態で得ることができる。
【0054】
乳化重合によって得られたポリマー(A)はまた、噴霧乾燥によって水性分散液(D)から単離することができる。噴霧乾燥は、液体材料(溶液又は分散液)が蒸発されるプロセスであり、乾燥した粉末が、液体原料を高温乾燥媒体(乾燥した温風)中に噴霧して、PSD(粒度分布)によって測定される小さい粉末粒径を得ることによって生成される。
【0055】
本発明のポリマー(A)は、好ましくは、例えば、国際公開第2018/189090号パンフレットに、国際公開第2018/189091号パンフレット及び国際公開第2018/189092号パンフレットに記載される手順に従って、水性重合媒体中での乳化重合によって得られる。
【0056】
本発明の一実施形態において、ポリマー(A)は、例えば、国際公開第2019/076901号パンフレットに記載される手順に従って、任意のフッ素系界面活性剤の非存在下で行われる方法による乳化重合によって有利に得られる。
【0057】
ポリマー(A)の溶融温度は、示差走査熱量測定(本明細書では以下、DSCとも呼ばれる)によって得られたDSC曲線から決定され得る。DSC曲線が複数の溶融ピーク(吸熱ピーク)を示す場合、溶融温度(Tm)は、最大のピーク面積を有するピークに基づいて決定される。
【0058】
ポリマー(A)の溶融温度が220℃未満であることが不可欠である。
【0059】
より高い溶融温度を有するVDF系フッ素樹脂を使用することによって、金属コレクターに対するバインダー(B)の接着を得ることはできず、層間剥離のリスクが高い。
【0060】
バインダー(B)は、PTFE及びポリマー(A)を両方とも粉末形態で混合することによって、又はPTFEラテックスとポリマー(A)ラテックスとの混合、その後の極低温又は電解手順による共凝固及び単離によって得られる。
【0061】
ブレンド中の所望のポリマー比を得るために、PTFEラテックス及び/又はポリマー(A)ラテックスの乾燥含有量は、熱天秤中で、200℃で50グラムのポリマーラテックスを乾燥させることによって評価され得る。
【0062】
一般に、重量比PTFE/ポリマー(A)は、95/5重量/重量~30/70重量/重量に含まれるであろう。当業者は、バインダー(B)のターゲット最終特性を考慮して最も適切な重量比を選択するであろう。
【0063】
本出願人は、PTFEに添加されるポリマー(A)の量が、PTFEをフィブリル化する能力に影響を与えないことを意外にも発見した。
【0064】
別の態様において、本発明は、電気化学デバイス用の電極の作製に使用するための電極形成組成物[組成物(C)]であって、
a)少なくとも1種の電極活物質(AM)と;
b)上で定義したようなバインダー(B)と;
c)任意選択的に、少なくとも1種の導電剤と
を含むことを特徴とする電極形成用組成物(C)を提供する。
【0065】
電極形成組成物(C)に使用され得るバインダー(B)の量は、様々な要因の影響を受ける。1つのそのような要因は、活物質の表面積及び量、並びに電極形成組成物に添加される導電性付与添加剤の表面積及び量である。これらの要因は、バインダー粒子が導電材料粒子と導電性材料粒子との間にブリッジを提供し、それらを接触させ続けるため、重要であると考えられる。
【0066】
本発明の電極形成組成物[組成物(C)]は、1種以上の電極活物質(AM)を含む。本発明の目的のためには、用語「電極活物質」は、電気化学セルの充電段階及び放電段階中にアルカリ若しくはアルカリ土類金属イオンをその構造中に組み入れるか又は挿入する、及びそれから実質的に放出することができる化合物を意味することを意図する。電極活物質は、好ましくは、リチウムイオンを組み入れる又は挿入する、及び放出することができる。
【0067】
本発明の電極形成組成物(C)における電極活物質の性質は、前記組成物が負極(アノード)又は正極(カソード)の製造に使用されるかどうかによって異なる。
【0068】
リチウムイオン二次電池用の正極を形成する場合、電極活物質は、式LiMQ2(式中、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr及びV等の遷移金属から選択される少なくとも1つの金属であり、Qは、O又はS等のカルコゲンである)の複合金属カルコゲナイドを含むことができる。これらの中でも、式LiMO2(式中、Mは、上で定義されたものと同じものである)のリチウム系複合金属酸化物を使用することが好ましい。これらの好ましい例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiNixCo1-xO2(0<x<1)及びスピネル構造化LiMn2O4を挙げることができる。
【0069】
代替形態として、リチウムイオン二次電池のための正極を形成する場合には更に、電極活物質は、式M1M2(JO4)fE1-f(式中、M1は、リチウムであり、M1金属の20%未満に対応する別のアルカリ金属によって部分的に置換され得、M2は、Fe、Mn、Ni又はこれらの混合物から選択される+2の酸化レベルの遷移金属であり、0を含めてM2金属の35%未満に対応する、+1~+5の酸化レベルの1つ以上の更なる金属によって部分的に置換され得、JO4は、任意のオキシアニオンであり、Jは、P、S、V、Si、Nb、Mo又はこれらの組合せのいずれかであり、Eは、フルオリド、ヒドロキシド又はクロリドアニオンであり、fは、通常、0.75~1に含まれるJO4オキシアニオンのモル分率である)のリチウム化又は部分的にリチウム化された遷移金属オキシアニオン系電気活物質を含み得る。
【0070】
上記に定義されているようなM1M2(JO4)fE1-f電気活物質は、好ましくは、ホスファートをベースとし、秩序立った又は修飾されたカンラン石構造を有し得る。
【0071】
より好ましくは、正極を形成する場合の電極活物質は、式Li3-xM’yM’’2-y(JO4)3(式中、0≦x≦3であり、0≦y≦2であり、M’及びM’’は、同じ又は異なる金属であり、それらの少なくとも1つは、遷移金属であり、JO4は、好ましくは、別のオキシアニオンで部分的に置換されていてもよいPO4であり、Jは、S、V、Si、Nb、Mo又はそれらの組合せのいずれかである)を有する。更により好ましくは、電極活物質は、式Li(FexMn1-x)PO4(式中、0≦x≦1であり、xは好ましくは1である)のホスファート系の電気活物質である(すなわち式LiFePO4のリチウム鉄ホスファートである)。
【0072】
リチウムイオン二次電池用の負極を形成する場合、電極活物質は、好ましくは、1種以上の炭素系材料及び/又は1種以上のケイ素系材料を含み得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、炭素系材料は、天然若しくは人工グラファイト等のグラファイト、グラフェン、又はカーボンブラックから選択され得る。
これらの材料は、単独で又はその2つ以上の混合物として使用され得る。
【0074】
炭素系材料は、好ましくは、グラファイトである。
【0075】
ケイ素系化合物は、クロロシラン、アルコキシシラン、アミノシラン、フルオロアルキルシラン、ケイ素、塩化ケイ素、炭化ケイ素及び酸化ケイ素からなる群から選択される1つ以上であり得る。
【0076】
より具体的には、ケイ素系化合物は、酸化ケイ素又は炭化ケイ素であり得る。
【0077】
電極活物質中に存在する場合、ケイ素系化合物は、電気活性化合物の総重量に対して1~60重量%、好ましくは5~30重量%の範囲の量で含まれる。
【0078】
1種以上の任意選択的な導電性付与添加剤が、本発明の組成物から作製される結果として生じる電極の導電性を改善するために添加されてもよい。電池用の導電剤は、当該技術分野において公知である。
【0079】
それらの例には、カーボンブラック、グラファイト微粉末、カーボンナノチューブ、グラフェン、若しくは繊維等の炭素系材料、又はニッケル若しくはアルミニウム等の金属の微粉末若しくは繊維が挙げられ得る。任意選択の導電剤は、好ましくは、カーボンブラックである。カーボンブラックは、例えば、商標、Super P(登録商標)又はKetjenblack(登録商標)で入手可能である。
【0080】
存在する場合、導電剤は、上記の炭素系材料とは異なる。
【0081】
任意選択の導電剤の量は、電極形成組成物中の総固形分の好ましくは0~30重量%である。特に、カソード形成組成物については、任意選択的な導電剤は、典型的には、組成物内の固形分の総量の0重量%~10重量%、より好ましくは0重量%~5重量%である。
【0082】
ケイ素系電気活性化合物を含まないアノード形成組成物については、任意選択的な導電剤は、典型的には、組成物内の固形分の総量の0重量%~5重量%、より好ましくは0重量%~2重量%であり、一方、ケイ素系電気活性化合物を含むアノード形成組成物については、より多い量の、典型的には、組成物内の固形分の総量の0.5~30重量%の任意選択的な導電剤を導入することが有益であることが分かった。
【0083】
電極形成組成物(C)は、少なくとも1種の電極活物質(AM)、バインダー(B)及び任意選択的に、少なくとも1種の導電剤を十分に混合することによって調製され得る。
【0084】
高せん断力による混合は、得られる組成物を支持するためのマトリックス又は格子を最終的に形成するフィブリルを生成するための、バインダー粒子のフィブリル化を含む。得られる生地状の材料は、何度もカレンダー加工されて、所望の厚さ及び密度の導電性フィルムを生成し得る。高せん断力は、混合物を押し出し機に供することによって提供され得る。
【0085】
本発明の電極形成組成物(C)は、電極[電極(E)]の製造方法において使用することができ、前記方法は、
-A)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び上で定義したような低融点VDF系フッ素樹脂[ポリマー(A)]を組み合わせて、バインダー(B)を提供すること;
-B)溶媒の非存在下で、少なくとも1種の電極活物質(AM)、上で定義したようなバインダー(B)、及び任意選択的に、少なくとも1種の導電剤を乾式混合すること;
-C)工程B)において得られた粉末状の乾燥混合物を圧縮機に供給して、自己支持性乾燥フィルムを形成すること;及び
-D)乾燥フィルムを導電性基板に適用して、電極を形成すること
を含む。
【0086】
工程B)において、電極活物質(AM)、上で定義したようなバインダー(B)、及び任意選択的に、少なくとも1種の導電剤を混合することは、これらの成分を、粒子混合物にいずれの溶媒、液体、加工助剤なども添加せずに乾式混合することによって行われる。乾式混合は、例えば、ミル、ミキサー又はブレンダー(高強度撹拌棒、又は以下に更に記載されるような他の代替的な装置が装備されたVブレンダーなど)中で、均一な乾燥混合物が形成されるまで行われ得る。当業者は、本明細書を一読した後、混合時間が、バッチサイズ、材料、粒径、密度、並びに他の特性に基づいて変化してもよく、依然として本発明の範囲内のままであることを認識するであろう。
【0087】
本発明の方法の工程C)において、工程B)において得られた粉末状の乾燥混合物は、物理的圧縮工程に供されて、自己支持性乾燥フィルムが得られる。
【0088】
工程B)において得られた乾燥混合物の圧縮は、例えば、ローラー圧縮機又はタブレットプレスによって、物理的圧縮として行われ得るが、それはまた、圧延、堆積(build-up)として又はこの目的に適した任意の他の技術によって行われてもよい。
【0089】
機械的圧縮工程は、熱的圧密工程に関連し得る。加圧及び熱処理の組合せは、それが単独で行われる場合より低い温度での熱的圧密を可能にする。
【0090】
一実施形態において、機械的圧縮工程は、圧縮によって、好適には、工程B)において得られた乾燥混合物を2つの金属箔間で圧縮することによって行われる。好ましくは、機械的圧縮工程は、5~50MPa、好ましくは10~30MPaの圧縮圧力を加えることによって行われる。
【0091】
圧縮工程は、好都合には、200℃以下の温度で、好ましくは180℃未満の温度で行われる。
【0092】
工程D)において、工程C)において得られた乾燥フィルムは、導電性基板上に適用されて、電極が形成される。
【0093】
基板材料のシートは、金属箔、特にアルミニウム箔を含み得る。
【0094】
バインダー(B)の改善された接着のため、工程C)において得られた乾燥フィルムは、いずれのプライマー又は接着剤層も必要とせずに導電性基板上に適用され得る。
【0095】
本発明の電極(E)は、電気化学デバイスでの、特に二次電池での使用に特に好適である。
【0096】
一態様において、本発明は、二次電池である電気化学デバイスを提供し、この二次電池は、
-正極及び負極
を含み、
ここで、正極及び負極のうちの少なくとも1つは、本発明による電極(E)である。
【0097】
好ましくは、電気化学デバイスは、
-正極及び負極
を含む二次電池であり、
ここで、正極は、本発明による電極(E)である。
【0098】
本発明の二次電池は、好ましくは、アルカリ二次電池又はアルカリ土類二次電池である。
【0099】
本発明の二次電池は、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
【0100】
本発明による電気化学デバイスは、当業者に公知の標準的な方法によって調製することができる。
【0101】
本発明は、これから、以下の実施例に関連して記載され、その目的は、単に例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0102】
原材料
ポリマー(A-1):25℃においてDMF中で0.38l/gの固有粘度及び164℃のT2fを有するVDF-AA(0.6モル%)ポリマー。
ポリマー(A-6):Solvay Specialty Polymers S.p.A.からSolef(登録商標)21510として市販されているVDF-HFP(15重量%)コポリマー;
ポリマー(A-8):Solvay Specialty Polymers S.p.A.からSolef(登録商標)32008として市販されているVDF-CTFEコポリマー;
PTFE 1:ASTM D792に従って測定される、2160の比重を有し、ASTM D4895に従って測定される、9.50MPaのレオメトリー圧力を有するPTFEホモポリマー粉末;
PTFE 2:ASTM D792に従って測定される、2.18の比重を有し、ASTM D4895に従って測定される、8.00MPaのレオメトリー圧力を有するPTFEホモポリマー粉末;
Matthey製のLife Powerとして入手可能なリン酸鉄リチウム、LFP;
Imerys S.Aから入手可能なSC65として入手可能なカーボンブラック;
Solvay Materialsから入手可能なGalden HT80;
Solvionic製のEC/DMC 1/1v/v中1MのLiPF6の電解質混合物。
【0103】
ポリマー(A-2):VDF/CTFEコポリマーの調製
550rpmで作動する撹拌機とともにバッフルを装着したAISI 316鋼鉄製縦型オートクレーブに、1.3lの脱塩水を導入した。次に、温度を75℃の反応温度にし;これに到達したら、4絶対バールの圧力変化を生じるVDFを導入した。次に、モル量で90%のVDF及び10%のCTFEの純ガス混合物を、20絶対バールの圧力に到達するまで圧縮機を介して添加した。次に、3重量%の濃度の過硫酸アンモニウム(APS)の脱塩水の溶液45mlを供給した。重合圧力を、上記の混合物を供給することによって一定に維持し;300gのガスが供給されたとき、反応器を室温で冷却し、次にストリッピングした。92モル%のVDF及び8モル%のCTFEを含むポリマー(A-2)を、ラテックス形態で排出し、脱気した。
【0104】
ポリマー(A-3):VDF/CTFEコポリマーの調製
5lの体積の反応器、3.4lの脱塩水、35%の濃度で脱塩水に溶解されたc-C6O4アンモニウム塩の25gの溶液、3重量%の濃度で脱塩水中の過硫酸アンモニウム(APS)の25mlの溶液を使用し、モル量で90%のVDF及び10%のCTFEの500gの混合物を、反応器中に供給したことを除いて、ポリマー(A-2)の調製と同じ手順に従った。90.4モル%のVDF及び9.6モル%のCTFEを含むポリマー(A-3)を、ラテックス形態で排出し、脱気した。
【0105】
ポリマー(A-4):VDF/TFE/PMVEターポリマーの調製
650rpmにおける撹拌機、1.4lの脱塩水、80℃の温度、8バールの圧力変化を生じるVDFの導入、6バールの圧力変化を生じるMVE(メチルビニルエーテル)の導入、35%の濃度で脱塩水に溶解されたc-C6O4アンモニウム塩の10gの溶液、2重量%の濃度で脱塩水中の過硫酸アンモニウム(APS)の15mlの溶液を除いて、ポリマー(A-2)の調製と同じ手順に従った。次に、90%/10%のモル比でのVDF/TFEのガス状混合物を、20絶対バールの圧力に到達するまで圧縮機を介して加えた。重合が開始したら、モル量で10%のTFE及び90%のVDFの150グラムの混合物を、反応器中に供給する。81.1モル%のVDF、10.3モル%のTFE及び8.6モル%のPMVEを含むポリマー(A-4)を、ラテックス形態で排出し、脱気した。
【0106】
ポリマー(A-5):VDF/TFEコポリマーの調製
5リットルの反応器を使用し、3.5リットルの脱塩水を導入し、7.8バールの圧力変化を生じるVDFを導入し、3重量%の濃度で脱塩水中の過硫酸アンモニウム(APS)の10mlの溶液、モル量で25%のTFE及び75%のVDFの500グラムの混合物を、反応器中に供給したことを除いて、実施例(A-2)と同じ手順に従った。
【0107】
ポリマー(A-7):VDF/CTFEコポリマーの調製。噴霧乾燥
ポリマーの単離を噴霧乾燥機によって行ったことを除いて、ポリマー(A-2)の調製と同じ手順に従った。
【0108】
ポリマー(C-1):VDF/TFEコポリマーの調製-比較例
5リットルの反応器を使用し、3.5リットルの脱塩水、8バールの圧力変化を生じるVDFの導入、35%の濃度で脱塩水に溶解されたc-C6O4アンモニウム塩の30gの溶液、3重量%の濃度で脱塩水中の過硫酸アンモニウム(APS)の20mlの溶液、モル量で80%のTFE及び20%のVDFの500gの混合物を、反応器中に供給したことを除いて、ポリマー(A-4)の調製と同じ手順に従った。31モル%のVDF及び69モル%のTFEを含むポリマー(C-1)を、ラテックス形態で排出し、脱気した。
【0109】
ポリマー後処理
粉末形態のポリマー(A-2)、(A-3)、(A-4)、(A-5)及び(C-1)が、
-凝固容器中の水の量を元に計算して2g/lの濃度の硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3)、
-凝固容器中の水の量を元に計算して8g/lの濃度の炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、又は
-硝酸(HNO3)、凝固容器中の水の量を元に計算して65%の25mlの溶液
を用いた極低温凝固又は電解凝固によって、対応するラテックスから得られた。
【0110】
凝固が起こった後、各ポリマーを、室温で、脱塩水で洗浄した。凝固及び洗浄の後、次に、得られた粉末を、少なくとも80℃且つ120℃未満の温度で、通気式オーブン中で24時間乾燥させた。
【0111】
ASTM D3418規格に従ってDSCによって特性評価される、ポリマー(A-1)~(A-7)及び(C-1)の溶融温度及び融解エンタルピー(ΔH)を、表1に報告する。
【0112】
【0113】
ポリマー混合
フッ素樹脂及びPTFEを、粉末形態において又はラテックス混合によって混合した後、上記の後処理の節に報告される手順に従って共凝固させた。組成物の詳細を表2に報告する。
【0114】
金属基板による積層
PTFE-1又はPTFE-2のいずれかとともにポリマー(A-1)~(A-6)及び(C-1)ポリマーのいずれかの組成物を含むフィルムが、2つのアルミニウム箔の間で粉末組成物を圧縮することによって得られた。積層プロセスを、180℃未満の温度及び160バールの圧力で行った。材料を6分間加熱装置に入れておき、次に、合計で180秒間にわたって(手動で圧力を放出することによって)6回の脱気工程を行いながら作動圧力で加圧した。次に、試料を、コールドプレスによって室温で冷却した。試料を、4~6分の間に含まれる期間にわたって第1の工程と同じ圧力で冷却プレスに入れておいた。
【0115】
接着の評価及び測定
接着の評価及び測定を、積層後に得られた3層構造(金属箔/フィルム/金属箔)において、ASTM D 1876に従って、上記のように得られたフィルムとアルミニウム箔との間で行った。接着値を表2に報告する。
【0116】
【0117】
*ラテックスの乾燥含有量を、ブレンド中の所望のポリマー比を得るために、熱天秤中で、200℃で50gのポリマーラテックスを乾燥させることによって評価した。
【0118】
2つのアルミニウム箔の間での圧縮によるフィルムの調製において単独で用いられた場合、PTFE-1及びPTFE-2粉末に関して接着は観察されなかった。
【0119】
ポリマー(A-2)及び(A-7)の粒径
ポリマー(A-2)及び(A-7)の粒度分布(PSD)を、ISO 13-320:2020に従って乾燥試料の結合について、Laser Diffraction Beckman Coulter LS 13320を用いて測定した。結果を表3にD50として示す。
【0120】
【0121】
加工性
材料の加工性を、10s-1及び100s-1のせん断速度及び180℃の温度で、金型(L/D 10、直径1mm、20°の角度で動作)を用いて、Capillary Rheometer(Goettefert Rheograph 2003)を用いて検証した。
【0122】
本出願人は、本発明によるバインダー組成物が、PTFEの融点をはるかに下回る温度で好適に加工され得、したがって低融点VDF系フッ素樹脂添加剤の量の存在にもかかわらず、バインダーの押し出し物が得られることを意外にも発見した。
【実施例】
【0123】
実施例1:電極作製:20/80の比率のポリマー(A-2)及びPTFE-1の組成物
1.8gのLFP及び0.1gのSC65の乾燥混合物を、乳棒を用いてセラミック乳鉢中で2種の粉末を5分間粉砕することによって調製した。
【0124】
1mlのGalden HT80を、粉末混合物に加え、複合体を、0.5分間にわたって20000rpmで、Vortexミキサー中で混合した。均一なペーストが得られた。
【0125】
0.02gのポリマー(F-2)及び0.08gのPTFE-1を、均一なペーストに加え、混合物を、0.5分間にわたって16000rpmで、Vortexミキサー中で混合した。均一な複合体が得られた。
【0126】
次に、複合体を、乳棒を用いてセラミック乳鉢中で更に5分間混合して、ポリマーをフィブリル化した。
【0127】
複合体を、5分間にわたって24トンで、平形プレスにおいて最後に加圧して、直径20mm及び厚さ0.9mmのタブレットを得た。
【0128】
この手順を繰り返して、3つのタブレットを作製した。
【0129】
タブレットを、減圧下で2時間にわたって90℃で、真空オーブン(Buchi)中で乾燥させて、電極組成物を得た。
【0130】
得られた正極は、以下の組成を有していた。90重量%のLFP、1重量%のポリマー(A-2)、4%のPTFE-1及び5重量%のカーボンブラック。こうして、電極EC1を得た。
【0131】
比較例1:PTFE-1を用いた電極作製
1.8gのLFP及び0.1gのSC65の乾燥混合物を、乳棒を用いてセラミック乳鉢中で2種の粉末を2分間粉砕することによって調製した。
【0132】
1mlのGalden HT80を、粉末混合物に加え、複合体を、0.5分間にわたって20000rpmで、Vortexミキサー中で混合した。均一なペーストが得られた。
【0133】
0.1gのポリマーPTFE-1を、均一なペーストに加え、混合物を、0.5分間にわたって16000rpmで、Vortexミキサー中で混合した。均一な複合体が得られた。
【0134】
次に、複合体を、乳棒を用いてセラミック乳鉢中で更に5分間混合して、ポリマーをフィブリル化した。
【0135】
複合体を、5分間にわたって24トンで、平形プレスにおいて最後に加圧して、直径20mm及び厚さ0.9mmのタブレットを得た。
【0136】
この手順を繰り返して、3つのタブレットを作製した。
【0137】
タブレットを、減圧下で2時間にわたって90℃で、真空オーブン(Buchi)中で乾燥させて、電極組成物を得た。
【0138】
得られた正極は、以下の組成を有していた。90重量%のLFP、5重量%のポリマーPTFE-1及び5重量%のカーボンブラック。電極CE1をこのようにして得た。
【0139】
電気抵抗測定
10年につき10点を記録する1Hz~200kHzの周波数で、10mV rmsの摂動を加えることによって、EC1及びCE1の電気抵抗測定を、2つのステンレス鋼板(18mmの直径)の間でElCelにおいて行った。電気抵抗の結果を、複素インピーダンススペクトルのx軸との切片から取った。3連で繰り返される測定の平均値として計算される2つの試料の平均抵抗を、以下の表3に報告する。値は、両方の組成物について同様であり、これは、マイナスの寄与が、PTFEと異なるポリマーの使用から生じていないことを示している。
【0140】
イオン抵抗測定
0.5~0.6mlの電解質でディスクを湿潤させ、ディスクの湿潤を有するのに10分間待機することによって、EC1及びCE1の電気抵抗測定を、2つのステンレス鋼板(18mmの直径)の間でElCelにおいて行った。10年につき10点を記録する1Hz~200kHzの周波数での10mV rmsの摂動を加える。イオン抵抗の結果を、複素インピーダンススペクトルのx軸との切片から取った。3連で繰り返される測定の平均値として計算される2つの試料の平均抵抗を、以下の表3に報告する。値は、両方の組成物について同様である。
【0141】
【0142】
データは、本発明のバインダーが、良好なイオン特性及び導電性を保持すると同時に、集電体に対する改善された接着を有し、それにより、電極用のバインダーとして好適に使用され得ることを示す。
【0143】
実施例2:電極作製:50/50の比率のポリマー(A-8)及びPTFE-2の組成物
5.41gのグラファイト、1.36gのケイ素及び0.072gのSC45の乾燥混合物を、電気乳鉢中で10分間粉末を粉砕することによって調製した。5mlのGalden HT80を、粉末混合物に加え、複合体を、1分間にわたって電気乳鉢中で混合した。均一なペーストが得られた。0.18gのポリマー(A-8)粉末、0.18gのPTFEを、4mlのGalden HT80とともに、均一なペーストに加え、5分間にわたって乳鉢粉砕機中で混合した。均一な複合体が得られた。次に、複合体を、ポリマーをフィブリル化し、全体的な結合した自立性フィルムを得るために、手動で操作した。フィルムを、厚さを200μm未満に低下させるようにカレンダー加工した。得られた負極は、以下の組成を有していた。75.2重量%のグラファイト、18.8重量%のケイ素、2.5重量%のポリマー(A-8)、2.5%のPTFE及び1重量%のカーボンブラック。こうして、電極EC2を得た。EC2試料を、2つの銅集電体の間に設置し、プレス中で、10分間にわたって150℃で予熱した。次に、160バールを10分間にわたって加えて、150℃の温度及び160バールの圧力で、EC2を集電体上に積層した。次に、プレスを、圧力を解放せずに室温に冷ました。
【0144】
接着の評価及び測定
接着の評価及び測定を、積層後に得られた3層構造(金属箔/フィルム/金属箔)において、ASTM D 1876に従って、上記のように積層された試料と箔との間で行った。接着レベルを以下の表4に報告する。圧縮によるフィルムの調製において単独で用いられる場合、2つのアルミニウム箔の間にも2つの銅箔の間にも、PTFE粉末に関して接着は観察されなかった。
【0145】
剥離強度を、以下の基準に基づいて評価した。剥離強度についてのより大きい値は、ポリマーと集電体との間のより良好な密接な接着を示す。
A:少なくとも10.0N/mの剥離強度
B:少なくとも2N/m且つ10.0N/m未満の剥離強度
C:接着が得られたが、試料の剛性のため測定するのが困難である
D:接着なし
【0146】
【0147】
カソード作製(NMC/C65/バインダー)
カソードを、ポリマー(A-2)、(A-3)、(A-6)、(A-7)又は(A-8)のいずれか及びPTFE-1を含むバインダー組成物を用いて、2工程プロセスによって製造した。
【0148】
第1の工程は、10分間にわたって高速でNMC111及びC65をまず一緒に混合することによる、プラネタリーミキサー(スピードミキサー)における粉末の乾式混合である。その後、ポリマーブレンドPTFE-1/ポリマーを、混合物に加え、2分間にわたってより低い速度で、同じミキサー中で混合した。得られた混合物を、めのう乳鉢(90℃で加熱された)中に注ぎ、せん断を、約5分間にわたって混合物に加えた。混合物は、約50×20×2mm(l×L×t)の寸法を有する「プレフィルム」を生じた。
【0149】
第2の工程は、90℃又は180℃(異なるフィブリル化温度)で加熱された2ロールカレンダー(Collin W100 T)における熱間圧延工程であった。1.2対1の速度比を有するカレンダーロールを使用した。主ロールを、2rpmの回転速度で駆動し、第2のロールを、2.4rpmの速度で駆動した。材料を導入し、カレンダーへと5回加工し、間隙を2000μmから250μmへと減少させて、徐々にせん断力を膜に加え、それによって、圧縮力の過剰な増加を回避した。各工程において、間隙は、前の工程の約75%になった。最小のカレンダー間隙に到達したら(250μm)、膜を四つ折りにし、90°回転させてから挿入し、ここでは1000μmから開始し、一連の約6~7回の減少により250μmまで減少させて、同じ方法に従ってカレンダーへと再度加工した。結果として、約250μmの自立性膜が得られた。このプロセスによって製造されたカソードの厚さを、別のカレンダー加工機械(GK300L Saueressig)を用いて更に減少させた。2つのロールを有するこの第2のカレンダー加工機械は、同じ速度で回転するが、50μm程度のロール間の間隙を可能にする。90μmの目標厚さに到達した。厚さの減少は、プロセスを「全乾式プロセス(all-dry-process)」にするように、溶媒を使用せずに実行した。
【0150】
次に、カソードを、GK300L Saueressigカレンダーにおいて180℃の温度及び25バールの圧力で、20μmの厚さのアルミニウムシート上に共積層させた。
【0151】
Al集電体上へのカソードの接着(剥離試験)
Al集電体への正極の接着強度を、180°剥離試験を用いて評価した。乾燥した電極の電極ストリップ(2cm*10cm)を、両面テープ(幅25mm;厚さ0.24mm)を用いて剛性のAlプレート(2.6cm*10cm)上に、電極を下向きに及び集電体を上向きに固定した。Al集電体を、180°の角度及び300mm/分の一定速度に維持しながら、電動式の張力/圧縮力試験台(Mark-10 Corporation製のESM303)を用いて、電極から引き剥がした。電極からAl集電体を取り外すのに必要とされる力は、同じ組成を有する3つの独立したスラリーを用いて3つの独立した電極から生成された3つの独立したストリップの平均値として、表5に記録した。剥離試験を、露点が-40℃の乾燥室内で行った。
【0152】
【0153】
EC3~EC7の全ての正極において、Al集電体に対する優れた接着特性が、明らかに観察され、これは、CE2のものと区別できる。
【0154】
更に、表5中のデータは、改善された剥離強度及び減少した変動性を含む、集電体に対する接着についての更なる利点が、添加剤の粒径を減少させることによって得られることを実証している。また、視覚的にも、より小さい粒径の添加剤で得られる電極がより均一であることは明らかである。
【0155】
対照的に、より高い溶融温度を有する添加剤は、接着に関して、より低い溶融温度を有する同等の添加剤よりわずかに劣って作用する。
【0156】
データはまた、より高いフィブリル化温度がより高い接着性をもたらすことも示す。
【0157】
容量保持の試験
電池の製造:
Pat cell(EL-Cell GmbH)を、バランスの取れたグラファイトアノードディスク(NEIから購入されたグラファイト4.5mAh/cm2-Nanomyte(登録商標)BE-200E)と一緒に、CE2、EC3、EC6及びEC7に従って作製された正極の小さいディスクを打ち抜くことによって作製した。コインセルの作製に使用した電解質は、Sigma Aldrich製の、EC/DMC 1/1 v/v中の1MのLiPF6溶液の混合物であった。ポリエチレンセパレータ(東燃化学株式会社より市販)は入手したものをそのまま使用した。
【0158】
1CのCレートでのフルセルのサイクリング安定性(開放容量を2通り測定し、下表6に示す):
【0159】
【0160】
表6中の結果は、本発明による電極が、PTFEのみを含む電極より良好なサイクリング安定性を有することを示す。
【国際調査報告】