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特表2024-543275タイヤトレッドコンパウンド用複合材料の開発のための機械学習に基づく予測方法
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  • 特表-タイヤトレッドコンパウンド用複合材料の開発のための機械学習に基づく予測方法 図1A
  • 特表-タイヤトレッドコンパウンド用複合材料の開発のための機械学習に基づく予測方法 図1B
  • 特表-タイヤトレッドコンパウンド用複合材料の開発のための機械学習に基づく予測方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-20
(54)【発明の名称】タイヤトレッドコンパウンド用複合材料の開発のための機械学習に基づく予測方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
B60C19/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531678
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 IB2022061517
(87)【国際公開番号】W WO2023095101
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】102021000030077
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】パオロ パチョッタ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア グイディ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ロンバルディ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA03
3D131BA05
3D131BA18
3D131LA21
3D131LA34
(57)【要約】
本発明は、タイヤトレッドコンパウンド用複合材料の開発のための機械学習に基づく予測方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤトレッドコンパウンドの製造のために試験される複合材料の粘弾性又は加工性特性を予測するために、電子計算機を用いて実施される方法であって、
a)参照として使用される未加工データのデータベース、すなわち、既に存在する複合材料のレシピ及び対応する既知の前記粘弾性又は加工性特性を含む一次データセットを準備するステップと、
b)前記一次データセットを前処理するステップであり、
i. 前記一次データセットにおける1つ又は複数の特性パラメータの統合ステップであり、前記1つ又は複数の特性パラメータは、以下、すなわち、
・各レシピのジニ係数
・各レシピの混合カテゴリ
・各レシピの適用のタイプ
・各レシピの材料の総量
・各レシピの成分の比率
・前記複合材料のレシピにおけるルーバン法によるグループ化
・前記複合材料のレシピにおけるK平均法によるグループ化、及び
・前記複合材料のレシピによって形成された前記データセットに適用されたオートエンコーダを通じて次元を縮小されたデータ
から選択されるものであり、これにより、拡張データセットを得る、該統合ステップ、
ii.前記拡張データセットの前記成分及び/又は数値特性パラメータに1つ又は複数の変換関数を適用することによる、前記拡張データセットの変換ステップであり、前記1つ又は複数の変換関数は、以下、すなわち、
1.B-スプライン平滑化
2.Box-Cox変換、及び
3.スケーリング変換
から選択されるものであり、これにより、変換されたデータセットを得る、該変換ステップ、
によって行う、該前処理するステップと、
c)前記変換されたデータセットの前記データを使用して、機械学習に基づくアルゴリズムをトレーニングするステップと、
d)ステップc.に従ってトレーニングされた前記アルゴリズムを、試験される前記複合材料の前記粘弾性又は加工性特性を前記予測するために、ステップb)に従って前処理され、試験される前記複合材料の前記レシピを代表する一連のデータに適用するステップと、
を備える、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記粘弾性又は加工性特性は、トルクML及びMH、T10、T50及びT90、スコーチ時間(Ts)、加硫及び未加硫せん断弾性率G’及び課された条件下でのtandを含む、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記一次データセット中の1つ又は複数の特性パラメータを統合する前記ステップは、ステップiで示された全ての前記パラメータの前記統合ステップを含む、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法において、前記拡張データセットを変換する前記ステップは、ii.で示された全ての前記変換関数の前記適用ステップを含む、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、ii.で示された前記変換関数は、順繰りに実行される、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、ii.で示された前記変換関数が、示された順序(1.、2.、3.)で実行される、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法において、機械学習に基づく前記アルゴリズムは、混合線形モデルを適用するように構成されている、方法。
【請求項8】
複合材料分析装置(RPA)であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された、複合材料分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫前、加硫中及び加硫後のゴムコンパウンドの粘弾性又は加工性特性の予測方法に関するものであり、この方法は機械学習に基づいており、したがって、タイヤトレッドコンパウンド用複合材料の開発のために、電子計算機によって実施される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、タイヤの製造分野、特にタイヤトレッドの製造に使用されるゴムコンパウンドの組成の決定に関する。
【0003】
RPA(ラバープロセスアナライザ(rubber process analyzer))は、先進的な動的機械レオロジー試験装置として、一般に全ての工場で利用できる。
【0004】
RPA(ラバープロセスアナライザ)は、先進的な動的機械レオロジー試験装置として、プロセスの各ステップにおける複合材料の製造パラメータを監視するために、一般的に全ての工場で利用できる。実際、複合材料の作業性は、開発段階で定義された硬化前後のレオメトリック曲線及びせん断弾性率の記述子の特定の範囲(例えば、ML及びMHトルク、T10、T50及びT90、スコーチ時間、一定の負荷応力条件における加硫及び未加硫せん断弾性率G’及びtand)によって決定される。
【0005】
これらの特性は、複合材料に使用されるレシピの特性、特に成分、その量及びそれらの2つ以上の間で確立される特定の相乗効果によって保証される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、複合材料に使用されるレシピの正しい配合は、まず適切な技術的パッケージを見つけるために、実験室でいくつかの検証ステップを経てから、目的が完全に達成されるまで、段階的な微調整によって配合を最適化する必要がある。
【0007】
このような反復的な実験的キャンペーンの各々は、製品の観点からは製品開発のリードタイム及びコスト(市場投入までの時間)が増大し、データの観点からは、さまざまなテストキャンペーン中に行われた測定値内のランダムノイズに起因する本質的なばらつきを持つデータベースが生成されることになる。
【0008】
上記条件での製品性能の予測は、通常、コンパウンドの検証を達成するための広範な実験室試験が必要であり、時間とリソースを要する。
【0009】
したがって、本発明の目的は、特許請求の範囲請求項1に定義されるようなプロセスを提供することによって、従来技術によって解決されずに残されたこれらの問題を解決することである。
【0010】
特に、本発明の目的は、任意の物理的試験を実施する必要なく、タイヤ用ゴムコンパウンドの製造のための複合材料の重要な粘弾性及び加工性特性のいくつかを正確な推定を提供するために、実験室試験をシミュレートすることである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、特許請求の範囲請求項8に記載の複合材料分析装置(RPA)である。
【0012】
本発明のさらなる特徴は、対応する特許請求の範囲従属請求項に定義される。
【0013】
複合材料の挙動、ひいてはタイヤの性能を予測できるソフトウェアツールの使用により、以下のことが可能になる。
・経常コスト(原材料、人件費など)の大幅削減。
・実験室試験の実行能力及び品質の最適化(他の活動に人員を割り当てることが可能になる)。
・新製品の市場投入までの時間短縮。
・既知の方法論に対する予測精度の向上。
【0014】
従来技術に対する他の明確な利点は、本発明の特徴及び用途とともに、純粋に非限定的な例として与えられる、その好ましい実施形態の以下の詳述から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付図の図面を参照する。
図1A】本発明による機械学習及び特性予測アルゴリズムのトレーニングステップの概略ブロック図である。
図1B】本発明による機械学習及び特性予測アルゴリズムのトレーニングステップの概略ブロック図である。
図2】加硫トルクが所定の増加に達するために要する時間を検証するのに有用なグラフを示す。
【0016】
[理論的背景]
ポリマー母材(マトリックス)複合材料は、応力を受けると特徴的な弾性と粘性の両方の反応を示すユニークな材料である。
【0017】
複合材料の基本パラメータ(例えば、トルクML及びMH、T10、T50及びT90、スコーチ時間、加硫及び未加硫せん断弾性率G’及び固定せん断条件におけるtand)の1つに基づく複合材料のレオメトリック曲線の予測は、混合から押出及び加硫ステップに至る複合材料の作業性を決定及び評価し、ミキサーのダウンタイム、押出製品の欠陥、加硫中のプレスの目詰まり又は加硫不足/過加硫などの問題を回避するための基本的なものである。
【0018】
加工性特性は、複数のステップでレオメトリックテストを実施することにより評価される。これらの工場で試験されたプロセスパラメータのいくつかは、最近、特定の評価によって性能パラメータと関連づけられるようになったため、工場性能のばらつきを推定するために、その予測がさらに重要になってきている。このような評価は、複合材料の検証に到達するために複数の実験室試験を必要とし、時間及び資源を必要とする。
【0019】
一方、デジタル予測装置を使用することで、以下のことが可能になる。
・経常コスト(原材料、人件費など)の削減。
・試験実験室の作業量及び品質の最適化(人員を他の活動に集中させることができる)。
・新製品の市場投入までの時間短縮。
【0020】
したがって、潜在的なエンドユーザは、この装置の恩恵を受ける可能性のある全てのエンジニア及び実験室の専門家である。
【0021】
上記段落で予想したように、加工性試験装置は、品質基準に適合させるために複合材料を監視するための工場でも利用可能である。本発明は、エンドユーザとしての工場にも拡張され、且つリリースされる可能性があり、工場の技術サービスは、生産停止時間/損失が限られている工場で起こりうる問題を解決するために、時間を大幅に短縮して配合開発の際に配合の特性の変更を評価したり、単に研究開発の加工性対応を改善したりすることができる。
【0022】
ラバープロセスアナライザ(RPA)は、加硫前、加硫中、加硫後のポリマー及び複合材料の粘弾性又は加工性特性を測定するために設計された貴重な機械である。加硫特性は、時間及び温度の関数として特性を測定することによって決定することができる。試験は、要求される試験方法に応じて異なる条件で行うことができ、G’及びtandの測定は、異なるせん断速度での周期的なトルクによって加えられた時間及び/又はひずみの関数として連続的に記録することができる。
【0023】
各試験の出力のいくつかは、データセットにおけるカーディナリティ及びエンジニアが加工性を評価する際の重要性に基づいて、範囲で選択されている。
1.ML、加硫曲線の低トルク、グリーン(未加硫)コンパウンドの弾性率。
2.MH、加硫曲線の最大トルク、又は曲線がプラトーまで上昇したときのトルク、加硫コンパウンドの弾性率。
3.T10、T50、T90は、ML+ΔTの同族体%に達するまでの時間であり、ΔTはMH-ML間のトルク差。
4.Ts、すなわちスコーチ時間、加硫の設定+1dNmトルク増分に達するまでの時間(図2参照)。
5.加硫前のひずみG’@100%、これはグリーン(未加硫)複合材料の粘度に関するパラメータ。
6.加硫後のひずみG’@1%、ひずみtand@15%、これは、タイヤのトレッド性能を予測するために使用される加硫コンパウンドの動的特性に関連する。
7.加硫後のひずみG’@50%、高ひずみの静的特性に関連する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、上記図を参照しながら本発明を説明する。
【0025】
したがって、タイヤ用ゴムコンパウンドの製造に使用可能な複合材料の粘弾性又は加工性特性(例えば、ML及びMHトルク、T10、T50及びT90、スコーチ時間(Ts)、加硫及び未加硫ひずみ弾性率G’及び負荷ひずみにおけるtand)を予測するための方法論について説明する。
【0026】
一般論として、これまでに混合されたことのない新しい複合材料のML及びMHトルク、T10、T50及びT90硬化時間、スコーチ時間、せん断弾性率、及び負荷ひずみにおけるtandなどの加工性特性を予測するための方法論について、以下の手順に従って説明する。
・既存のレシピ及びそれに対応する粘弾性又は加工性特性(すなわち、ML、MH、T10、T50、T90、TS、G’@100%、G’@1%、G’@50%)を収集してデータベースを作成し、一次データセットを得る。
・データ拡張によって一次データセットを統合し、拡張データセットを得る手順。
・変換されたデータセットを得るために、拡張データを変換する手順。
・変換されたデータセットを用いた機械学習(例えば、線形混合モデル)に基づくアルゴリズムのトレーニング。
・トレーニングされたアルゴリズムによる、試験される新しいレシピの粘弾性又は加工性特性の予測。
【0027】
特に、機械学習アルゴリズムの専用の「モデルをトレーニングするステップ(step of training the model)」を、拡張され、変換されたデータセット上で行った後、元のデータセットにアルゴリズムを直接適用するよりも高い精度で加工性特性を予測することが可能となる。
【0028】
実際、この方法により、データベースのランダムノイズが予測精度に与える影響を大幅に軽減することができる。
【0029】
特に、上記のように拡張され、変換されたデータベースに含まれるデータセットを使用してモデルをトレーニングするステップの後、データベースの生データに直接アルゴリズムを適用するよりも高い精度で複合材料の粘弾性及び加工性特性を予測することが可能である。
【0030】
実際、このようにすることで、データベースのノイズ及びデータの本質的なばらつきが予測精度に与える影響を大幅に減らすことができる。
【0031】
この装置は、以下のアクション及びアルゴリズムの実装によって特徴付けられる。
1.試験される複合材料のレシピを代表する実験室データの収集。
2.データ拡張手順:この手順は、新たな特性パラメータを導入するための様々な手法を利用することで、機械学習アルゴリズムの予測能力を強化することができる。
3.拡張データの変換手順:この手順は、様々な変換手法を活用することにより、機械学習アルゴリズムの予測能力を高めることができる。
4.機械学習アルゴリズム(例えば、線形混合モデルアルゴリズム):このアルゴリズムは、ゴムコンパウンドの加工性特性を予測することを目的とする。
図1A及び1Bの例示的な図を参照して、本発明による方法のステップを説明する。
【0032】
このプロセスには、すでに説明したように、一次データセットの生成に続く以下のステップが含まれる。
1.一次データセットからのデータの統合(データ拡張):この手順は、拡張データセットを生成するために、一次データセット(例えば、各レシピの成分及びその量のリストを含む)に追加されなければならない新しい特性パラメータを開発することを目的とする。これは、各レシピについて、機械学習モデルの予測能力を向上させるために、一連の新しい特性パラメータが推定されることを意味する。新しい特性パラメータは、後述するように、クラスタリングアルゴリズム、入力セットに適用される非線形演算子及び専用に並びにカスタマイズされた人工ニューラルネットワークのような、一連の非均質な手法の適用に由来する。
【0033】
2.拡張データセットに含まれるデータの変換:前の手順と同様に、これは予測性能を向上させることを目的としている。異なる点は、この手順は新しい特性パラメータを追加することではなく、その変換に焦点を当てていることである。以下で詳述するように、採用したデータ変換アルゴリズムは、スプライン関数及びBox-Cox変換に基づいている。
【0034】
3.機械学習アルゴリズムのトレーニングステップ:拡張され、変換されたデータセットのデータ(コンパウンドのレシピ及び対応する特性パラメータ)は、機械学習手法(例えば、混合線形モデル)によって実装された予測モデルの入力として提供される。その後、モデルの内部パラメータがデータに適合するように調整される(トレーニングステップ)。
【0035】
4.予測ステップ:トレーニングが完了すると、アルゴリズムは結果を一般化することができるため、これまでに混合されたことのない複合材料の新しいレシピの複合材料の加工性特性値を予測するのに適している(予測ステップ)。
【0036】
データセット統合(データ拡張)及び変換(データセット変換)手順が適用された元のデータセットは、前処理されたデータセットとして定義される。
【0037】
(一次データセットのデータ統合手順)
複合材料の加工性特性の予測を改善するために、追加機能が導入された。実際、複合材料の配合から得られる情報は、特性予測の目標を達成するには不十分であることが観察されている。
【0038】
例えば、特性パラメータとして導入された混合条件は、重要な役割を果たしており、非常に有益であることが観察されている。そのため、元のデータセットを補強するために使用されている。
【0039】
一方、多すぎるパラメータで形成されたモデルは、予測における一般化の欠如が特徴である。トレーニングデータセットでは予測できても、新しいデータ、つまり新しいテストデータセットの操作では正しく予測できない。この現象は過学習(オーバーフィッティング)と呼ばれ、過学習が発生すると、生産ステップで実行可能なモデルを生成することができなくなる。
【0040】
このため、過学習を回避しながら予測性能を向上させる「データ拡張(data augmentation)」と呼ばれる手法が開発された。
【0041】
データ拡張手順には以下の特性パラメータの1つ又は複数の推定と一次データセットへの統合が含まれる。
・<各レシピのジニ係数の推定>:ジニ指数又はジニ比とも呼ばれ、統計的分散の尺度であり、各レシピに直接適用される。この特性パラメータは、配合の隠れた構造の説明を提供するために追加された。
【0042】
・<各レシピの混合カテゴリの定義>:複合材料のレシピを混合する手法のカテゴリが、カテゴリタイプの新しい特性パラメータとして導入された。この特性パラメータは、予測される物理的特性の影響が向けられる成分の混合条件(例えば、ミキサー自体の幾何学的パラメータ、温度、時間及びロータの速度)に関する情報を提供するために追加された。この情報を提供するための、より包括的な方法は、全ての混合パラメータをデータセットに直接導入することで達成できるかもしれないが、我々の戦略は、無駄のない解を提供するためにカテゴリタイプのパラメータのみを使用し、過学習を避けることである。そうすることで、全ての混合パラメータは、タイプを示すカテゴリタイプの単一のパラメータによって要約され、したがって、例えばタンジェンシャル又はインターペネトレーションスクリューミキサーなど、適用される混合カテゴリタイプを示す。
【0043】
・<各レシピの複合材料の適用タイプの定義>:複合材料の適用(例えば、タイヤの構成要素又はタイヤを装着する車両のカテゴリ)が、新しいカテゴリ別特性パラメータとして導入された。この特性パラメータは、複合材料の最終的な適用に関する情報を提供し、複合材料が開発される際に予想されるマクロ要件のカテゴリ別プレビューを提供するために追加された。その際、複合材料が最終的に使用される適用の種類を示すカテゴリタイプのパラメータによって、予想される全てのマクロ要件が要約される。実際、各種の適用は、異なるマクロ要件を必要とする。複合材料の適用の類型は、例えば、加硫中の圧力及び温度の条件などが互いに異なる自動車又は商用車のためである。
【0044】
・<各レシピの混合手法と複合材料の適用タイプの相互作用>:混合カテゴリと複合材料の適用の間の全ての可能な組み合わせが推定され、各レシピのカテゴリタイプの新しい特性パラメータを定義するために使用される。このカテゴリタイプの特性パラメータは、混合条件が複合材料の適用に及ぼす可能性のある影響、すなわち複合材料に想定されるマクロ要件を明示的に記述するために導入された。実際、混合カテゴリは複合材料の物理的特性に影響を与えることができ、複合材料の適用のタイプは複合材料のマクロ要件の記述を提供するので、カテゴリタイプの2つの変数は接続される。この接続は、混合カテゴリと複合材料の適用の間の全ての可能な組み合わせを表現するこの新しいカテゴリ変数を通じて記述される。
【0045】
・<各レシピの材料総量の見積もり>:これは成分の全量の合計を表し、レシピ毎に見積もられている。このように各成分の量は常に総量に関連し、レシピ毎に異なる。
【0046】
・<各レシピの成分比率の推定>:異なる成分の比率が、予測される加工性特性とどのような相関関係があるかを決定するために、網羅的な検索が実施された。そのため、目標特性と相関することが示された推定成分の比率が、新たな特性パラメータとして追加された。これらの特性パラメータは、目標特性の予測に有益な非線形成分の項を明示的な説明を提供するために追加された。
【0047】
・<ルーバン法によるグループ化(Louvain grouping)>:ルーバン法による方法は、成分の共起に基づいてレシピをグループ化するために使用された。実際、ルーバンの教師なしアルゴリズムは、利用可能なデータセットを構成するコンパウンドのレシピが付属していた。一例として、レシピは天然ゴム及びカーボンブラックの共起ではなく、合成ゴム及びシリカの有無(共起)に従ってグループ化することができる。したがって、各レシピはルーバン法を用いてグループ化され、その結果、割り当てられたクラスタについてカテゴリ型の新しい特性パラメータが推定された。このカテゴリカルなパラメータは、グループ化/クラスタ自体の識別子に対応する。この特徴づけパラメータは、一次データセットの不均一性の説明を提供するために導入された。実際、クラスタリングアルゴリズムは、成分の共起に基づいて異なるレシピをグループ化することができる。これは、このようなグループ化情報をデータセットに統合することで、異なるレシピで成分がどのように使用されているかについての洞察を明示的に提供できる可能性があることを意味する。
【0048】
・<K平均法によるグループ化>:各レシピはK平均法による方法を使用してグループ化され、その結果、割り当てられたクラスタについてカテゴリカルなタイプの特性パラメータが推定された。カテゴリカルなパラメータはグループ化自体の識別子に対応する。K平均法によるグループ化アルゴリズムは、利用可能なデータセットを構成する複合材料のレシピに附属された。最適なハイパーパラメータ最適化設定、すなわち識別するクラスタ数又は実装する最適化アルゴリズムを見つけるために、グリッドサーチの最適化が実装された。この特性パラメータは、一次データセットの不均一性の説明を提供するために導入された。実際、クラスタリングアルゴリズムは、成分の空間における距離の基準に従って、異なるレシピをグループ化することができる。つまり、このようなグループ化情報を一次データセットに導入することで、異なるレシピで成分がどのように使用されているかについての洞察を明示的に提供することができる。
【0049】
・<オートエンコーダを介した次元削減>:オートエンコーダ(AE)は、入力を出力にコピーするようにトレーニングされた、教師なし人工ニューラルネットワークの特殊なタイプである。これを達成するために、まずAEは入力を小さな潜在空間にマッピングすることができ、次にAEは潜在表現を出力にエンコードする。この操作の結果、AEは再構成誤差を低減してデータを圧縮するようにトレーニングされる。圧縮データの最適な次元数、すなわち潜在空間の次元数を見つけるために、グリッドサーチの最適化が使用された。オートエンコーダを用いたいわゆる次元削減アルゴリズムが開発され、複合材料のレシピによって形成される一連のデータを処理して、次元を削減した、つまり圧縮された表現を作成した。この圧縮されたデータは、元のレシピの次元を減らしたが、非常に有益な表現であるため、新たな特性パラメータとして導入された。
【0050】
好ましい実施形態によれば、上記の特性パラメータは全て一次データセットに統合される。
【0051】
(拡張データの変換)
機械学習アルゴリズムのトレーニングに使用する前に、適切な変換操作を行うと、予測精度が大幅に向上する。
【0052】
拡張データセットに存在するデータを変換する手順では、特徴付け成分及び/又はパラメータに以下の変換関数の1つ又は複数を使用する。
・B-スプライン平滑化:B-スプライン関数を使用して、次のトレーニングステップの前に、拡張データセットの数値データを平滑化した。変換する成分及び/又は特性パラメータを選択するために、グリッドサーチの最適化アルゴリズムが使用された。
【0053】
・Box-Cox変換:Box-Cox変換を拡張データセットの数値データに適用し、分布を正規分布に近づけた。
【0054】
・スケーリング変換:機械学習モデルの後続のトレーニングステップを改善するために、拡張データセットの全ての数値データを同じ数値範囲にスケーリングした。
【0055】
上記の変換関数を1つ又は複数を適用すると、変換されたデータセットが生成される。
【0056】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記の変換関数は全て、一次データセットのレシピを処理するために使用される。
【0057】
さらに、さらなる実施形態によれば、データ変換手順を構成する前述の変換機能は、好ましくは、提案された順序に従って実行されなければならない。
【0058】
これらの実施形態によれば、説明した全てのステップが前処理パイプラインに導入されているのは、それらの相乗的相互作用が予測性能を最大化できるからである。
【0059】
このようにして得られた変換された(前処理された)データセットは、データ拡張及び変換手順の実施後に、機械学習モデルのより一般的なトレーニングステップを開始するために使用することができる。本明細書に記載される実施形態によれば、混合線形モデルが実装され、加工性特性の予測装置を提供するためにトレーニングされた。それにもかかわらず、一次データセットが記載されたように処理されるとすぐに、最終的な予測を行うために他の任意の機械学習モデルを使用してもよい。
【0060】
最後に、試験される複合材料の粘弾性又は加工性特性を予測するために、既にトレーニングされた機械学習アルゴリズムに入力として供給される前に、試験される複合材料のレシピに関連するデータ又は試験される複合材料のレシピを代表するデータ(図1B)に同じ前処理ステップ(データ拡張及びデータ変換)が適用される。
【0061】
本発明は、これまでその好ましい実施形態を参照して説明した。純粋に例として、本明細書に記載された好ましい実施形態において実施された技術的特徴の各々は、有利には、同じ発明概念に属する他の実施形態を形成するために、本明細書に記載された以外の方法で、他の特徴と組み合わせることも可能であり、これらは全て、以下に記載される特許請求の範囲によって与えられる保護範囲内に入ることが意図される。
図1A
図1B
図2
【国際調査報告】