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特表2024-543282積層品中で感触が柔らかいホットメルト接着剤組成物、それを使用するための方法、及びそれで作製される物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】積層品中で感触が柔らかいホットメルト接着剤組成物、それを使用するための方法、及びそれで作製される物品
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/14 20060101AFI20241114BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20241114BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20241114BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C09J123/14
C09J153/02
C09J11/08
C09J11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551703
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 US2022017672
(87)【国際公開番号】W WO2022182851
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】202110207943.1
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522005147
【氏名又は名称】ボスティック,エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ハマン,リチャード イー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン,クン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ダンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,ウー
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040BA182
4J040DA111
4J040DA112
4J040DM012
4J040JB01
4J040KA26
4J040KA31
4J040LA01
4J040LA06
4J040MA10
4J040MB02
4J040NA05
(57)【要約】
ホットメルト接着剤組成物は、その両方がシングルサイト触媒を使用することによって調製される、低分子量で半結晶性のプロピレンベースのポリマー及び高分子量で本質的に非晶質のプロピレンベースのポリマーを含むポリマーの組み合わせを、ワックス、水添スチレンブロックコポリマー、粘着付与剤、及び可塑剤とともに含む。組成物は、177℃で500cP~40,000cPの範囲の好適な粘度を有し、使い捨ての不織布衛生物品を含む、低表面エネルギー基材と弾性基材との接合が見られる各種工業用途に有用である。積層品中の冷却された接着剤は、接着剤が比較的高いショアA硬さを実証しても、硬い感触ではなく、代わりに柔らかい感触である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約10,000g/モル~約90,000g/モルの重量平均分子量及び約30J/g~約100J/gの融解エンタルピーを有するシングルサイト触媒によるポリプロピレンコポリマーを含む第1のポリマー;
(b)100,000g/モル超の重量平均分子量及び約0J/g~約30J/gの融解エンタルピーを有するシングルサイト触媒によるポリプロピレンコポリマーを含む第2のポリマー;
(c)ワックス;
(d)水添スチレンブロックコポリマー;
(e)粘着付与剤;並びに
(f)可塑剤
を含む、ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
前記水添スチレンブロックコポリマーは、SEBS、SEPS、及びSEEPSの少なくとも1つからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水添スチレンブロックコポリマーは、SEBSを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記SEBSは、約50~約85%、好ましくは約60~約80%のジブロックを有し、約15~約50%、好ましくは約20~約40%のスチレンを有し、5kgの重量を使用した200℃での試験で約1~約60、好ましくは約2~約50、より好ましくは約5~約40g/10分のメルトフローレートを有し、約40~約100、好ましくは約50~約90、最も好ましくは約55~約85のショアA硬さを有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
(a)前記第1のポリマーは、約4~約20wt%、好ましくは約5~約15wt%、最も好ましくは約6~約10wt%の量で存在し;
(b)前記第2のポリマーは、約12~約40wt%、好ましくは約15~約35wt%、最も好ましくは約20~約30wt%の量で存在し;
(c)前記ワックスは、約4~約24wt%、好ましくは約5~約20wt%、最も好ましくは約7~約15wt%の量で存在し;
(d)前記水添スチレンブロックコポリマーは、約0.25~約10wt%、好ましくは約0.5~約5wt%、より好ましくは約0.5~3wt%、最も好ましくは約0.5~約2wt%の量で存在し;
(e)前記粘着付与剤は、約35~約65wt%、好ましくは約40~約60wt%、最も好ましくは約45~約55wt%の量で存在し;
(f)前記可塑剤は、約2~約12wt%、好ましくは約3~約10wt%、最も好ましくは約4~約7wt%の量で存在する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ワックスは、フィッシャー・トロプシュワックスを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第2のポリマーの重量平均分子量は、前記第1のポリマーの重量平均分子量の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍であり、前記第1のポリマーの融解エンタルピーは、前記第2のポリマーの融解エンタルピーより少なくとも20J/g、好ましくは少なくとも35J/g、最も好ましくは少なくとも50J/g大きい、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1のポリマー、前記第2のポリマー、前記ワックス、前記水添スチレンブロックコポリマー、前記粘着付与剤、並びに前記可塑剤は、以下:
初期、1週間のエージング後、及び2週間のエージング後に少なくとも80、並びに4週間のエージング後に少なくとも60の耐クリープ性;並びに
少なくとも80、好ましくは少なくとも87のショアA硬さ
を有するホットメルト接着剤組成物を提供するのに有効な量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記第1のポリマー、前記第2のポリマー、前記ワックス、前記水添スチレンブロックコポリマー、前記粘着付与剤、及び前記可塑剤は、以下:
最大で約4、好ましくは最大で約3.5の柔らかさ;
少なくとも約1.5、好ましくは少なくとも約2の噴霧性;及び
最大で約3、好ましくは最大で約2.5のブロッキング値
を提供するのに有効な量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ホットメルト接着剤は、ASTM D3236-88による測定で、177℃で最大で約40,000cP、好ましくは最大で約20,000cP、最も好ましくは最大で約10,000cPの粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
溶融状態の請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物を一次基材に塗布するステップ;及び
二次基材を前記接着剤組成物と接触させることによって、前記二次基材を前記第1の基材に貼り合わせるステップであって、前記第1の基材又は前記第2の基材の少なくとも1つは弾性であるステップ
を含む、積層品を作製する方法。
【請求項12】
前記一次基材は、弾性ストランドである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記一次基材は、不織布である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記二次基材は、前記弾性ストランドを包む不織布である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記二次基材はポリエチレンフィルムであり、三次基材は不織布である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
使い捨て物品の弾性レッグカフ、スタンディングレッグカフ、弾性サイドパネル、又は伸縮性イヤーとして使用される、請求項11に記載の方法によって作製される積層品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層品中で感触が柔らかい、シングルサイト触媒を使用して調製される、ポリプロピレンポリマーを含むポリマーブレンドをベースとする新規なホットメルト接着剤組成物に関する。接着剤組成物は、乳幼児用おむつ、成人失禁用物品、及び女性用衛生パッドなどの各種の使い捨ての不織布衛生製品の製造においてしばしば見られる弾性基材及び低表面エネルギー基材を接合するのに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
ホットメルト接着剤は、典型的には、周囲温度で固体の物質として存在するが、熱を加えると流動性のある液体に変換され得る。これらの接着剤は、各種基材を接合することがしばしば必要となる各種の使い捨て商品の製造において特に有用である。具体的な用途としては、使い捨てのおむつ、病院用のパッド、女性生理用ナプキン、パンティシールド、手術用ドレープ、及び成人失禁用ブリーフ(まとめて使い捨ての不織布衛生製品と呼ばれる)が挙げられる。他の雑多な用途としては、紙製品、包装材料、自動車のヘッドライナー、家電製品、テープ及びラベルが挙げられる。これらの用途のほとんどにおいて、ホットメルト接着剤は、その溶融状態に加熱され、次いで、基材(しばしば一次基材と名付けられる)に塗布される。次いで、第2の基材(しばしば二次基材と名付けられる)を直ちに第1の基材と接触させ、それに対して押し付ける。接着剤は、冷却すると固化して、強力な接合を形成する。ホットメルト接着剤の大きな利点は、水性又は溶剤系の接着剤の場合のように、液体のキャリアが存在しないことであり、それにより、溶媒の除去に関連する高コストのプロセスを排除する。
【0003】
多くの用途において、ホットメルト接着剤は、ピストン又はギアポンプ設備を使用することにより、薄いフィルム又はビーズの形態で基材上に直接押出し加工されることが多い。この場合、基材は、圧力下で加熱したダイと密接な接触状態に置かれる。ダイの温度を接着剤の融点より十分に高く維持して、溶融されたホットメルト材料が吐出ノズルからスムーズに流れ出るようにしなければならない。ほとんどの用途、特に食品包装及び使い捨ての不織布衛生物品の製造において遭遇する用途では、しばしば、デリケートで熱の影響を受けやすい基材、例えば薄い寸法のプラスチックフィルムを接合することが含まれる。これは、ホットメルト接着剤用途のためのコーティング温度の上限を規定する。今日市販されているホットメルトは、典型的には、基材の焼け又は変形を回避するために、200℃未満、好ましくは150℃未満のコーティング温度を有するように配合されている。直接的なコーティングに加えて、いくつかの間接的又は非接触コーティング方法も開発されており、それにより圧縮空気を用いて遠くから基材上にホットメルト接着剤をスプレーコーティングすることもできる。これらの非接触コーティング技術としては、従来のスパイラルスプレー、Omega(商標)、Surewrap(商標)、及び各種形態のメルトブロー法が挙げられる。しかしながら、多くの場合、間接的な方法では、許容されるコーティングパターンを得るために、接着剤の粘度が、塗布温度において十分に低く、通常、2,000~30,000cPの範囲、好ましくは2,000~15,000cPの範囲でなければならない必要がある。他の多くの物理的要因、特に接着剤のレオロジー特性が、ホットメルトの噴霧性の決定に関与する。市販のホットメルト製品の大半は、スプレー塗布に合うようになっていない。噴霧性を予測するための理論的モデル又はガイドラインで許容されているものは存在せず、それは、塗布設備を用いて実験的に決定しなければならない。
【0004】
ホットメルト接着剤は、典型的には、ポリマー、可塑剤、粘着付与性樹脂、及び抗酸化剤のパッケージからなる有機材料である。接着性を修正するか又は特別な性質を付与するために、他の成分、例えばワックス、フィラー、着色剤、及びUV吸収剤を使用することもできる。これらの有機成分は、接着剤のコーティング条件下で熱分解を受けやすい。
例えば、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)トリブロックコポリマーをベースとする、広く使用されている市販のホットメルト接着剤は、175℃で24時間おくと、粘度がその元の値から約50パーセント低下することが起こり得る。スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ベースのホットメルトは、同様の条件下で架橋の問題を起こす可能性がある。架橋は、粘度の劇的な上昇をもたらし得、最後的に、三次元ポリマーネットワークの形成により、接着剤を流動不能にする可能性がある。粘度の変化は、しばしば、炭化、ゲル化、及び溶融された材料の上部での皮膜の形成を伴う。分解は、必然的に接着剤の特性及び性能の劣化をもたらすことになる。加えて、それらは、設備の損傷をもたらす可能性もある。分解速度は、温度依存性があり、温度が高いほど分解が早くなる。したがって、接着剤のコーティング温度を下げることにより、分解を遅くすることができる。
【0005】
米国特許第10,011,744号は、低分子量で半結晶性のプロピレンベースのポリマー及び高分子量で本質的に非晶質のプロピレンベースのポリマー、粘着付与剤、並びに可塑剤を含むホットメルト接着剤組成物について記載している。この特許による接着剤は、各種の低表面エネルギー基材への高い接合強度、一定の張力下で弾性材料を保持するための高い凝集力、優れた熱安定性、良好な湿潤特性、広い塗布温度範囲、長いオープンタイム、良好なグリーン接合強度、及び本質的にすべての既知のホットメルトコーティング方法との適合性を提供することを含む、以前のホットメルト接着剤では提供することに成功しなかった、ユニークな特性の組み合わせを提供することが見出された。しかしながら、この特許に開示された特定の接着剤配合物は、積層品中での冷却後、硬い手触りを有する。
【発明の概要】
【0006】
したがって、上述の従来技術の接着剤の短所を克服することになるホットメルト接着剤を提供することは有利であろう。本発明において、半結晶性で低分子量のシングルサイト触媒ポリプロピレンベースの(LMW SSC-PP)ポリマー、及び本質的に非晶質で高分子量のシングルサイト触媒ポリプロピレンベースの(HMW SSC-PP)ポリマーを、ワックス及び水添スチレンブロックコポリマーとともに含むポリオレフィンポリマーブレンドは、冷却時及び積層形態で感触が柔らかい接着剤を提供することが見出される。接着剤は、各種の低表面エネルギー基材への高い接合強度、一定の張力下で弾性材料を保持するための高い凝集力、優れた熱安定性、良好な湿潤特性、広い塗布温度範囲、長いオープンタイム、良好なグリーン接合強度、及び本質的にすべての既知のホットメルトコーティング方法との適合性を提供することを含む、‘744号特許によって提供されるユニークな特性の組合せをさらに提供する。
【0007】
本発明の実施形態によれば、ホットメルト接着剤組成物は、約10,000g/モル~約90,000g/モルの重量平均分子量及び約30J/g~約100J/gの融解エンタルピーを有するシングルサイト触媒によるポリプロピレンコポリマーを含む第1のポリマー、100,000g/モル超の重量平均分子量及び約0J/g~約30J/gの融解エンタルピーを有するシングルサイト触媒によるポリプロピレンコポリマーを含む第2のポリマー、ワックス、水添スチレンブロックコポリマー、粘着付与剤、並びに可塑剤を含む。
【0008】
本発明の別の実施形態によれば、積層品を作製する方法は、溶融状態の本発明のいずれかの実施形態のホットメルト接着剤組成物を一次基材に塗布するステップ、及び二次基材を接着剤組成物と接触させることによって、二次基材を第1の基材に貼り合わせるステップであって、第1の基材又は第2の基材の少なくとも1つは弾性であるステップを含む。接着剤は、冷却時、第1の基材及び第2の基材をともに接合する。本発明の実施形態は、本発明の実施形態による方法によって作製される積層品も含む。そのような積層品は、使い捨て物品で使用するための弾性レッグカフ、スタンディングレッグカフ、弾性サイドパネル、又は伸縮性イヤーを含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用する場合、SSCは、α-オレフィンを重合させるためのシングルサイト触媒を指す。
【0010】
本明細書で使用する場合、Mwは、ポリマーの重量平均分子量を指す。特段の記載がない限り、本明細書では、重量平均分子量は、ポリスチレン標準品を使用した高温でのサイズ排除クロマトグラフ(SEC)を用いて特徴づけられる。
【0011】
本発明の目的において、本質的に非晶質という用語は、ポリプロピレンベースのポリマーが0J/g~約30J/gの融解エンタルピーを示す状態を指すのに使用される。
【0012】
本発明の目的において、半結晶性という用語は、ポリプロピレンベースのポリマーが30J/g超の融解エンタルピーを示す状態を指すのに使用される。
【0013】
本明細書で使用する場合、HMW SSC-PPは、シングルサイト触媒を使用することによって生成され、約100,000g/モル超のMwを有する、高分子量で本質的に非晶質のプロピレンホモポリマー又はコポリマーのクラスを指す。ポリマーは、DSC曲線上に融解ピークを示さない、完全に非晶質であり得るが、それらは、DSC曲線上において、材料1グラムあたり30ジュール(J/g)以下、すなわち0J/g~約30J/gの融解エンタルピーを伴う、小さいが認識可能な1つ又は複数の融解ピークを生じる、小さい割合の結晶も有し得る。
【0014】
本明細書で使用する場合、DSC曲線は、示差走査熱量測定(DSC)機器を使用することによって得られる熱流量又は熱容量対温度のプロットを指す。融解エンタルピーを決定するために使用される試験方法は、以下の実施例においてより詳細に記載されるような、ASTM E793-01“Standard Test Method for Enthalpies of Fusion and Crystallization by Differential Scanning Calorimetry”である。
【0015】
本明細書で使用する場合、LMW SSC-PPは、約100,000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)、並びにDSC曲線上において、材料1グラムあたり30ジュール(J/g)以上、すなわち、典型的には約30J/g~約100J/g、より好ましくは約30J/g~約90J/g、最も好ましくは約35J/g~約80J/gの融解エンタルピーを伴う別個の1つ又は複数の融解ピークを有する、低分子量で半結晶性のプロピレンホモポリマー又はコポリマーのクラスを指す。「融解エンタルピー(enthalpy of melting)」、「融解エンタルピー(enthalpy of fusion)」、「融解熱(heat of fusion)」、及び「融解熱(heat of melting)」は、交換可能に使用される。
【0016】
本発明によれば、ベースポリマー成分として、約10,000g/モル~約90,000g/モルの重量平均分子量及び約30J/g~約100J/gの融解エンタルピーを有するシングルサイト触媒によるポリプロピレンコポリマーを含む第1のポリマー、並びに100,000g/モル超の重量平均分子量及び約0J/g~約30J/gの融解エンタルピーを有するシングルサイト触媒によるポリプロピレンコポリマーを含む第2のポリマーを含む、ホットメルト接着剤組成物が生成される。したがって、第1のポリマーはLMW SSC-PPであり、第2のポリマーはHMW SSC-PPである。両方のポリマーは、いくつかの点で従来のチーグラー・ナッタ触媒系と区別することができるシングルサイト触媒系を使用することによって調製される。チーグラー・ナッタ触媒系は、典型的には、触媒と共触媒との対からなり、最も一般的なそのような対は、TiCl及びAl(CCl、又はTiCl及びAl(Cである。従来のZ-N触媒系は、典型的には、不活性な担体に担持され、担体粒子上にいくつかの活性触媒サイトを有し、それらの各々は異なる活性を有する。α-オレフィンのホモ重合では、活性サイトが多いほど、より多くのモノマー分子をポリマー骨格中に取り込み、それにより相対的により長い鎖長、すなわちより高い分子量を有するポリマー分子が生成される。逆に、活性サイトが少ないほど、より短い鎖長のポリマー分子が生じるようになる。Z-N触媒によって生成されたポリマーは、10までの多分散指数(PDI)を有する非常にブロードな分子量分布を有する一方で、SSC触媒によって調製されたポリマーは、典型的には約1(すなわち1.1)~約4のPDIを有する狭い分子量分布を有する。PDIは、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比として定義される。Z-N触媒を用いると、重合反応は、高度に立体特異的である。α-オレフィン分子は、触媒の化学構造及び結晶構造に依存して、ポリマー鎖に対して特定の配向のみで付加し、それにより、規則的な三次元のポリマー鎖の立体配置の繰り返しが生じる。
【0017】
シングルサイト触媒系(SSC)は、従来のZ-N触媒と少なくとも1つの重要な点で異なる。それらは、各触媒分子において単一の活性遷移金属サイトのみを有し、したがって、この金属サイトでの活性は、すべての触媒分子で同一である。工業的規模で現在広く使用されているSSC触媒の1つのタイプは、触媒及び共触媒又は活性化剤からなるメタロセン触媒系である。触媒は、2個の環状有機配位子間に位置する金属原子を有する遷移金属錯体であり、配位子は、同一の又は異なるシクロペンタジエン誘導体である。共触媒は、メタロセン錯体を触媒的に活性な種に変換することによってメタロセン触媒を活性化することが可能な任意の化合物であり得、そのような化合物の一例は、アルモキサン、好ましくは4~30の平均オリゴマー化度を有するメチルアルモキサンである。本発明の目的では、他の中性若しくはイオン性の活性化剤を使用することができ、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:各種の有機ホウ素化合物、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニルホウ酸トリ(n-ブチル)アンモニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニルホウ酸ジメチルアニリニウム、又はテトラキス(ペンタフルオロフェニルホウ酸トリチル。別のタイプのSSC触媒は、幾何拘束型触媒(CGC)である。
【0018】
本明細書で使用する場合、CGCは、幾何拘束型触媒として知られているSSC触媒系のサブクラスを指す。メタロセンと異なり、幾何拘束型触媒(CGC)は、同一の金属中心上の他の配位子の1つに対して、π系の重心と追加の配位子との間のこの金属での角度が、比較される非架橋錯体より小さくなるように結合された、唯一の環状配位子を有することを特徴とする。より具体的には、CGCという用語は、ansa架橋シクロペンタジエニルアミド錯体について使用されるが、その定義は、このクラスの化合物をはるかに超えている。したがって、CGCという用語は、他の多少なりとも関連する配位子系を指すのに広く使用されており、それらは、ansa架橋シクロペンタジエニルアミド配位子系とアイソローバル(isolobal)及び/又は等電子的であってもなくてもよい。さらに、その用語は、しばしば、歪みを誘導しない長いansa架橋を有する関連錯体についても使用される。
【0019】
メタロセンと同様に、好適なCGCは、活性化されたメチルアルミノキサン(MAO)、ペルフルオロ化ボラン、及びホウ酸トリチル共触媒であり得る。しかしながら、CGCをベースとした触媒系は、相当するメタロセンベースの系よりはるかに多量の高級アルファ-オレフィンの取り込みを示す。非メタロセンベースのSSC(ポスト-メタロセンとも呼ばれる)の、オレフィン重合のためのシングルサイト触媒も既知である。典型的なポスト-メタロセン触媒は、バルキーで中性のアルファ-ジイミン配位子を特徴とする。これらのポスト-メタロセン触媒は、しかしながら、プラストマー及びエラストマーを生成するためのエチレンの重合に使用される方がはるかに多い。それらがプロピレンのようなα-オレフィンの重合に使用されることは稀である。オレフィン重合のためのシングルサイト触媒系は、当業者に周知であり、次の2つのシンポジウムで精力的に論じられている:Stereoselective Polymerization with Single-Site Catalysts(Lisa S.Baugh及びJo Ann M.Canich編、CRC press出版(2008))並びにPolyolefins:50 Years after Ziegler and Natta II:Polyolefins by Metallocenes and Other Single-Site Catalysts(Walter Kaminsky編、Springer Heidelberg出版(2013))。
【0020】
本発明の組成物は、第1のポリマー及び第2のポリマーを、約9:1~約1:9、好ましくは約7:1~約2:3、最も好ましくは約5:1~約3:1の重量比で含み得る。本明細書において成分又は特性の複数の範囲が提供される場合、本発明は、範囲の限界のいずれかの間にある追加の範囲を企図する。例えば、第1のポリマー対第2のポリマーの重量比は、約9:1~約2:3及び約7:1~約3:1にあってもよい。本発明の組成物中のポリマーの合計量は、広範囲、例えば、約20重量%~約80重量%、好ましくは約25重量%~約60重量%、最も好ましくは約30重量%~約45重量%にわたって変動し得る。
【0021】
本発明のホットメルト接着剤組成物中の第1のポリマーは、プロピレンのホモポリマー、又はプロピレンと、エチレン及び4~8個の炭素鎖長を有するアルファ-オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーのいずれかを含み、約70重量%~約99重量%、好ましくは約80重量%~約98重量%、最も好ましくは約85重量%~約98重量%のプロピレンを有する。第1のポリマーは、約10,000g/モル~約100,000g/モル、好ましくは約10,000g/モル~約80,000g/モル、最も好ましくは約10,000g/モル~約60,000g/モルの重量平均分子量、約20℃~約150℃、好ましくは約30℃~約110℃、最も好ましくは約40℃~約100℃のDSCを使用して測定した融点、及び約30J/g~約100J/g、好ましくは約35J/g~約80J/g、最も好ましくは約35J/g~約60J/gのDSCを使用して測定した融解エンタルピーを有する。これらの融解エンタルピーは、100%結晶性アイソタクチックPPの場合の融解エンタルピーが190J/gであることから計算して、約18重量%~約53重量%、好ましくは約18重量%~約42重量%、最も好ましくは約18重量%~約32重量%の結晶化度に相当する。さらに、第1のポリマーは、190℃において、好ましくは約800cP~約100,000cP、最も好ましくは約1,000cP~約20,000cPの範囲のブルックフィールド粘度を有する。いくつかの実施形態では、第1のポリマーは、約10,000g/モル~約30,000g/モル、好ましくは約12,000g/モル~約29,000g/モル、最も好ましくは約15,000g/モル~約27,500g/モルの重量平均分子量を有する。本発明による例示的な第1のポリマーとしては、Exxonmobil Chemical Companyから市販されているVistamaxx 8880が挙げられる。
【0022】
本発明のホットメルト組成物中の第2のポリマーは、プロピレンホモポリマー、又はプロピレンベースの、エチレン及び4~8個の炭素鎖長を有するアルファ-オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーのいずれかであり、約70重量%~約99重量%、好ましくは約80重量%~約98重量%、最も好ましくは約80重量%~約90重量%のプロピレンを有する。第2のポリマーは、100,000g/モル超、好ましくは約100,000g/モル~約1,000,000g/モル、最も好ましくは約100,000g/モル~約600,000g/モルの重量平均分子量を有する。さらに、第2のポリマーは、主に非晶質の物質であり、DSC融解ピークを示さないか、又はわずかな残留結晶性を有して、約20℃~約120℃、好ましくは約30℃~約100℃、最も好ましくは約40℃~約80℃のDSC融解ピークを示し、約0J/g~約30J/g、好ましくは約5J/g~約25J/g、最も好ましくは約5J/g~約20J/gのDSCを使用して測定した融解エンタルピーを有するかのいずれかである。これらの融解エンタルピーは、100%結晶性アイソタクチックPPの場合の融解エンタルピーが190J/gであることから計算して、約0重量%~約18重量%、好ましくは約2.6重量%~約15.8重量%、最も好ましくは約2.6重量%~約13.2重量%の結晶化度に相当する。第2のポリマーは、約1g/10分~約200g/10分、好ましくは約10g/10分~約100g/10分、最も好ましくは約20g/10分~約60g/10分の、ASTM D1238に準拠した230℃/2.16Kg試験条件でのメルトフローレート(MFR)を有する。本発明による例示的な第2のポリマーとしては、Exxonmobil Chemical Companyから市販されているVistamaxx 6502が挙げられる。
【0023】
本発明の実施形態によれば、第2のポリマーの分子量(M)は、第1のポリマーの分子量の少なくとも2倍である。好ましくは、第2のポリマーの分子量は、第1のポリマーの分子量より少なくとも3倍大きい。より好ましくは、第2のポリマーの分子量は、第1のポリマーの分子量より少なくとも5倍大きい。第2のポリマーの分子量は、第1のポリマーの分子量より少なくとも8倍又は10倍大きい場合さえある。本明細書に開示されたいずれかの接着剤に関して、そのような分子量にずれがある2種のポリマー成分を利用することにより、本発明の目的がより容易に達成され得ることが見出された。別の実施形態では、第1のポリマーの融解エンタルピーは、第2のポリマーの融解エンタルピーより少なくとも20J/g、好ましくは少なくとも35J/g、最も好ましくは少なくとも50J/g大きい。
【0024】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、ワックスも含む。好ましくは、ワックスは、フィッシャー・トロプシュワックスを含む。合成フィッシャー・トロプシュワックスは、フィッシャー・トロプシュ合成によって得られ、アルカンへの合成ガス(CO及びH)のコバルト又は鉄触媒によるフィッシャー・トロプシュ合成から生じる炭化水素を含む。この合成の粗生成物は、蒸留によって液体及び異なる固体留分に分離される。炭化水素は、主にn-アルカン、少数の分岐アルカンを含有し、基本的にシクロアルカン又は不純物を含有しない。フィッシャー・トロプシュワックスは、メチレン単位からなり、それらの炭素鎖長分布は、一実施形態によれば、含まれる特定の炭素原子鎖長について分子数が均等に増減することを特徴とする。
【0025】
フィッシャー・トロプシュワックスは、好ましくは、10~25wt%の分岐炭化水素含有量を有する。フィッシャー・トロプシュワックスの分岐分子は、好ましくは、10wt%超、最も好ましくは25wt%超のメチル分枝を有する分子を含有する。さらに、フィッシャー・トロプシュワックスの分岐分子は、好ましくは、四級炭素原子を含有しない。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、炭化水素ワックスは、1モル当たり500~1200グラム、より好ましくは1モル当たり575~950グラムの分子量(数平均)を有する。炭化水素ワックスの分子量(数平均)及びイソアルカン含有量は、欧州ワックス連合(European Wax Federation)のEWF法001/03に従ってガスクロマトグラフィーを使用して提供される。好ましい実施形態では、炭化水素ワックスは、さらに、互いに独立した以下の特性の1つ以上を有する:
・135℃で20mPa・s未満のブルックフィールド粘度;
・25℃で10 1/10mm未満、好ましくは8 1/10mm未満の針入度;
・炭化水素ワックスは水素化処理される;及び
・1wt%未満の油分。
【0027】
25℃での針貫入の値は、ASTM D1321に従って提供され、ワックスの油分は、ASTM D721に従って提供される。
【0028】
本発明の実施形態では、ワックスは、以下の特性の1つ以上を有する:
・ASTM D938に従って約60℃~約105℃、好ましくは約64℃~約102℃、より好ましくは約80℃~約102℃、最も好ましくは約80℃~約86℃の凝固点;
・約2.5%~20%、好ましくは約5%~15%、最も好ましくは約10%~15%のイソアルカンのパーセント;及び
・約180J/g~230J/g、好ましくは約205J/g~約230J/g、最も好ましくは約215J/g~約225J/gの、ASTM E793に従って提供される融解熱。
【0029】
本明細書で使用される好ましいワックスは、Sasol Ltdから市販されている、フィッシャー・トロプシュワックスのSERATIONライン、特にSERATION 1830である。
【0030】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、水添スチレンブロックコポリマー(SBC)も含む。水添SBCは、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-ブチレン(SEB)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)、スチレン-エチレン-プロピレン(SEP)、及びスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEEPS)を含む群から選択され得る。好ましくは、水添スチレンブロックコポリマーは、SEBS、SEPS、若しくはSEEPSポリマーを含むか、又はそれらである。最も好ましくは、水添スチレンブロックコポリマーは、SEBSを含むか、又はSEBSである。実施形態では、SEBSは、約50~約85%、好ましくは約60~約80%のジブロック含有量を有し、約15~約50%、好ましくは約20~約40%のスチレン含有量を有し、5kgの重量を使用した200℃での試験で約1~約100、好ましくは約20~約90、より好ましくは約40~約80g/10分のメルトフローレートを有し、約40~約100、好ましくは約50~約90、最も好ましくは約55~約85のショアA硬さを有する。本発明で使用するための1つの好適なSBCポリマーは、Kraton CorporationによってKRATON(登録商標)G1726という商標で市販されている。
【0031】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、接着性を拡張し、比接着を改善する、相溶性の粘着付与性樹脂又は粘着付与剤も含む。本明細書で使用する場合、「粘着付与剤」又は「粘着付与性樹脂」という用語は、以下を含む:
(a)ASTM法E28-58Tによる決定で10℃~150℃の環球式(R&B)軟化点を有する、脂肪族及び脂環式石油系炭化水素樹脂、後者の樹脂は、主として脂肪族及び/又は脂環式のオレフィン及びジオレフィンからなるモノマーの重合から得られる;水素化された脂肪族及び脂環式石油系炭化水素樹脂も含まれる;この種のC5オレフィン留分をベースとする市販されているそのような樹脂の例は、Eastman Chemicalsにより販売されているPiccotac 95粘着付与性樹脂、及びExxonMobil Chemical Companyにより販売されているEscorez 1310LCであり、シクロペンタジエンをベースとする水素化された脂環式石油系炭化水素樹脂の例は、ExxonmobilからのEscorez 5400、及びResinall CorporationからのResinall R1095Sである;
(b)芳香族石油系炭化水素樹脂及びそれらの水素化誘導体;水素化芳香族炭化水素樹脂の例は、Arakawa ChemicalsからのArkon P-115である;
(c)脂肪族/芳香族の石油から誘導された炭化水素樹脂及びそれらの水素化誘導体;
(d)芳香族変性脂環式樹脂及びそれらの水素化誘導体;
(e)約10℃~約140℃の軟化点を有するポリテルペン樹脂、後者のポリテルペン樹脂は、一般に、テルペン炭化水素、例えばピネンとして知られるモノテルペンをフリーデル・クラフツ触媒の存在下で適度に低い温度で重合させることから得られる;水素化されたポリテルペン樹脂も含まれる;
(f)天然テルペンのコポリマー及びターポリマー、例えばスチレン/テルペン、 -エチルスチレン/テルペン、及びビニルトルエン/テルペン;
(g)天然及び変性ロジン、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、蒸留ロジン、水素化ロジン、二量化ロジン、及び重合ロジンなど;
(h)天然及び変性ロジンのグリセロールエステル及びペンタエリスリトールエステル、例えば、ペールウッドロジンのグリセロールエステル、水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、ペールウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、トール油ロジンのペンタエリスリトールエステル、及びロジンのフェノール変性ペンタエリスリトールエステルなど;並びに
(i)フェノール変性テルペン樹脂、例えば、テルペン及びフェノールの酸性媒体中での縮合から得られる樹脂生成物など。
【0032】
いくつかの配合物では、上述の粘着性付与樹脂の2種以上の混合物が必要となり得る。本発明に有用な粘着付与性樹脂は、おそらく、極性の粘着付与性樹脂を含み得る。しかしながら、利用可能な極性の粘着付与性樹脂の選択は、極性樹脂の多くが部分的にのみポリオレフィンと相溶性のようであるという事実から限られる。好ましくは、粘着付与性樹脂は、非極性のタイプのいずれかから選択され得、それらは市販されている。本明細書で使用するための好ましい樹脂は、ナフサの熱分解プロセスで発生するC5脂肪族オレフィン及びジオレフィンの共重合及び水素化から得られる熱可塑性樹脂である。そのような樹脂の例としては、Kolon Industriesから市販されているSUKOREZ(登録商標)ラインの樹脂が挙げられる。
【0033】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、可塑剤も含む。可塑剤は、所望の粘度制御を提供し、可撓性を付与する役割を果たす。適切な可塑剤は、鉱物油などの通常の可塑化用油だけでなく、オレフィンオリゴマー及び低分子量ポリマー、並びに植物油及び動物油、並びにそれらの誘導体を含む群から選択され得る。採用され得る石油系油は、芳香族炭化水素をわずかな比率でのみ含有する比較的高沸点の材料である。この点に関して、芳香族炭化水素は、芳香族炭素原子の割合による測定で、油の好ましくは30%未満、より好ましくは15%未満であるべきである。より好ましくは、油は、本質的に非芳香族であり得る。オリゴマーは、約350g/モル~約10,000g/モルの平均分子量を有するポリプロピレン、ポリブテン、水素化ポリイソプレン、水素化ポリブタジエンなどであり得る。好適な植物油及び動物油としては、通常の脂肪酸のグリセロールエステル及びそれらの重合生成物が挙げられる。他の有用な可塑剤は、従来のジベンゾエート、ホスフェート、フタレートエステル、及びモノ-又はポリグリコールのエステルの群に見出すことができる。そのような可塑剤の例としては、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、リン酸2-エチルヘキシルジフェニル、ポリエチレングリコール400-ジ-2-エチルヘキソエート;ブチルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、及びジオクチルフタレートが挙げられるが、これらに限定されない。本発明における有用性が見出される可塑剤は、任意の数の異なる可塑剤であり得るが、発明者らは、鉱物油、及び5,000g/mol未満の平均分子量を有する液状のポリブテンが特に有利であることを発見した。理解されるように、可塑剤は、典型的には、接着強度及び/又は接着剤の使用温度を実質的に低下させることなく接着剤組成物全体の粘度を低下させ、さらにオープンタイムを延長し、接着剤の可撓性を改善するために使用されてきた。本明細書で使用するための好適な可塑剤としては、Calumet Specialty Productsから市販されているCALSOLラインの可塑剤が挙げられる。
【0034】
本発明のホットメルト接着剤組成物の成分の相対的な量は、具体的な最終用途及び所望の特性、例えば、接着性、塗布温度、塗布温度での粘度、ショアA硬さ、及び知覚される柔らかさに応じて、広範囲にわたって変動し得る。本発明の実施形態では、第1のポリマー、第2のポリマー、ワックス、水添スチレンブロックコポリマー、粘着付与剤、並びに可塑剤は、以下の一方又は両方を有するホットメルト接着剤組成物を提供するのに有効な量で存在する:
初期、1週間のエージング後、及び2週間のエージング後に少なくとも80、並びに4週間のエージング後に少なくとも60の耐クリープ性;並びに
少なくとも80、好ましくは少なくとも87のショアA硬さ。
【0035】
本明細書で使用する場合、耐クリープ性は、以下の実施例で説明されるような意味を有する。
【0036】
本発明の実施形態では、第1のポリマー、第2のポリマー、ワックス、水添スチレンブロックコポリマー、粘着付与剤、及び可塑剤は、以下の一方又は両方を有するホットメルト接着剤組成物を提供するのに有効な量で存在する:
最大で約4、好ましくは最大で約3.5の柔らかさ;
少なくとも約1.5、好ましくは少なくとも約2の噴霧性;及び
最大で約3、好ましくは最大で約2.5のブロッキング値。
【0037】
本明細書で使用する場合、柔らかさ及び噴霧性は、以下の実施例で説明されるような意味を有し、そのように決定される。ブロッキング値は、積層品のはがされたスプールが、その基材から流出した接着剤によって自身にくっつく程度の尺度である。1の値は、はがされたスプールはどれも自身にくっつかなかったことを意味する一方で、5の値は、広範囲の積層品が自身にくっついたことを意味する。ワックスの量が増加すると、ショアA硬さの値は増加するが、積層品内の冷却された接着剤の知覚される柔らかさも、ワックスの量の増加とともに増大することが見出された。知覚される柔らかさの改善を伴うショアA硬さの増大は、直観に反する驚くべきことである。
【0038】
本発明の別の実施形態によれば、ホットメルト接着剤組成物の主要な成分は、個々に又はまとめて、以下の量で存在する:
(a)第1のポリマーは、約0.1~約20wt%の量で存在し;
(b)第2のポリマーは、約8~約40wt%の量で存在し;
(c)ワックスは、約2~約24wt%の量で存在し;
(d)水添スチレンブロックコポリマーは、約0.25~約30wt%の量で存在し;
(e)粘着付与剤は、約35~約65wt%の量で存在し;
(f)可塑剤は、約2~約12wt%の量で存在する。
【0039】
本発明の別の実施形態(本明細書では「低SBC配合物」と呼ばれる)によれば、ホットメルト接着剤組成物の主要な成分は、個々に又はまとめて、以下の量で存在する:
(a)第1のポリマーは、約4~約20wt%、好ましくは約5~約15wt%、最も好ましくは約6~約10wt%の量で存在し;
(b)第2のポリマーは、約12~約40wt%、好ましくは約15~約35wt%、最も好ましくは約20~約30wt%の量で存在し;
(c)ワックスは、約4~約24wt%、好ましくは約5~約20wt%、最も好ましくは約7~約15wt%の量で存在し;
(d)水添スチレンブロックコポリマーは、約0.25~約10wt%、好ましくは約0.5~約5wt%、最も好ましくは約0.5~約2wt%の量で存在し;
(e)粘着付与剤は、約35~約65wt%、好ましくは約40~約60wt%、最も好ましくは約45~約55wt%の量で存在し;
(f)可塑剤は、約2~約12wt%、好ましくは約3~約10wt%、最も好ましくは約4~約7wt%の量で存在する。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態(本明細書では「高SBC配合物」と呼ばれる)によれば、ホットメルト接着剤組成物の主要な成分は、個々に又はまとめて、以下の量で存在する:
(a)第1のポリマーは、約0.1~約10wt%、好ましくは約0.2~約5wt%、最も好ましくは約0.25~約3wt%の量で存在し;
(b)第2のポリマーは、約8~約40wt%、好ましくは約12~約30wt%、最も好ましくは約15~約25wt%の量で存在し;
(c)ワックスは、約2~約20wt%、好ましくは約3~約15wt%、最も好ましくは約4~約10wt%の量で存在し;
(d)水添スチレンブロックコポリマーは、約10~約30wt%、好ましくは約12~約27wt%、最も好ましくは約15~約25wt%の量で存在し;
(e)粘着付与剤は、約35~約65wt%、好ましくは約40~約60wt%、最も好ましくは約45~約55wt%の量で存在し;
(f)可塑剤は、約2~約12wt%、好ましくは約3~約10wt%、最も好ましくは約4~約7wt%の量で存在する。
【0041】
本明細書に述べられた成分の量は、ホットメルト接着剤組成物の総重量に基づく。組成物は、上記の6つの主要な成分のみで構成され得る(すなわち、それらから本質的になり得るか、又はそれらからなり得る)。あるいは、ホットメルト接着剤組成物は、1つ以上のさらなる任意選択の成分を含み得る。1つのそのような任意選択の成分は、安定剤である。安定剤は、存在する場合、約0.1重量%~約3重量%の量で含まれ得る。好ましくは約0.2%~1%の安定剤が、組成物中に組み込まれる。本発明のホットメルト接着剤組成物において有用な安定剤は、組み入れられて、上述のポリマー、したがって接着剤系全体を熱分解及び酸化分解の影響から保護するのに役立ち、そのような分解は、通常、接着剤の製造及び塗布中、並びに最終製品を周囲環境に通常に曝露させる際に起こる。適用可能な安定剤の中でも、高分子量のヒンダードフェノール及び多官能フェノール、例えば硫黄及びリン含有フェノールである。ヒンダードフェノールは、当業者に周知であり、そのフェノール性ヒドロキシル基のすぐ近くに立体的にバルキーな基も含有するフェノール系化合物であることを特徴とし得る。特に、三級ブチル基は、一般に、ベンゼン環上で、フェノール性ヒドロキシル基に対するオルト位の少なくとも1つにおいて置換される。ヒドロキシル基の近くのこれらの立体的にバルキーな置換基の存在は、その伸縮振動数、それに応じてその反応性を抑制する役割を果たし、したがって、この立体障害は、フェノール化合物にその安定化特性を提供する。
【0042】
これらの安定剤の性能は、それと組み合わせて以下のものを利用することによって、さらに向上され得る;(1)相乗剤、例えば、チオジプロピオネートエステル及びホスファイトなど;並びに(2)キレート剤及び金属不活性化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸、その塩、及びジサリチラルプロピレンジイミンなど。
【0043】
特定の物理的特性を修正するために、他の任意選択の添加剤が本発明のホットメルト接着剤組成物中に組み込まれ得ることを理解すべきである。これらとしては、例えば、不活性な着色剤としてのそのような材料、例えば二酸化チタン、フィラー、蛍光剤、UV吸収剤、界面活性剤、他のタイプのポリマーなどが挙げられ得る。典型的なフィラーとしては、タルク、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、マイカ、ウォラストナイト、長石、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、水和アルミナ、ガラスミクロスフェア、セラミックミクロスフェア、熱可塑性ミクロスフェア、バライト、及び木粉が挙げられる。界面活性剤は、衛生用の使い捨て不織布で特に重要であるが、これは、界面活性剤が、例えば、おむつのコアに塗布される接着剤の表面張力を劇的に低下させることができ、それにより、コアによる尿のより速やかな移行及びその後の吸収が可能となるからである。
【0044】
本発明のホットメルト組成物は、ASTM-D3236に従い、177℃でブルックフィールド粘度計を使用して測定して、177℃で最大で約40,000cP、好ましくは最大で約20,000cP、最も好ましくは最大で約10,000cPの低い粘度を有することをさらに特徴とする。
【0045】
本発明のホットメルト接着剤組成物は、当技術分野で既知の混合技術のいずれかを使用することによって配合され得る。従来技術の混合手順の代表例は、本発明で使用されるポリマー以外のすべての成分を、ローターを備えたジャケット付きの混合ケトルに入れ、その後、混合物の温度を150℃~200℃の範囲まで上げて、内容物を溶融させることを含む。このステップで使用される正確な温度は、特定の成分の融点に依存するであろうことを理解すべきである。次いで、第1及び第2のポリマーが撹拌下のケトルに続いて導入され得、一貫した均一な混合物が形成されるまで混合を続ける。混合プロセス全体にわたって、二酸化炭素又は窒素などの不活性ガスを用いてケトルの内容物を保護する。本発明の趣旨に反することなく、例えば取り込まれている空気の除去を容易にするために真空をかけるなどの、各種の追加及び変更をこの手順に加えて、ホットメルト組成物を生成することができる。本発明の組成物を配合するのに有用な他の設備としては、単軸若しくは二軸のスクリュー押し出し機又は他の種類の押し出し機、ニーダー、インテンシブミキサー、Ross(商標)ミキサーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本発明の接着剤組成物は、例えば、使い捨ての不織布衛生物品、紙加工、フレキシブル包装、木工、カートン及びケースのシール、ラベル貼り、並びに他の組み立て用途などの多くの用途で、汎用のホットメルト接着剤として使用され得る。特に好ましい用途としては、不織布の使い捨てのおむつ及び女性生理用ナプキン構造物、おむつ及び成人失禁用ブリーフの弾性付属品、おむつ及びナプキンのコアの安定化、おむつのバックシート積層物、工業用フィルター材料の加工、手術衣及び手術用ドレープの組み立てなどが挙げられる。
【0047】
次いで、得られたホットメルト接着剤は、各種塗布技術を使用して基材に塗布され得る。例としては、ホットメルトグルーガン法、ホットメルトスロットダイコーティング法、ホットメルトホイールコーティング法、ホットメルトローラーコーティング法、メルトブローコーティング法、スパイラルスプレー法、接触式若しくは非接触式ストランドコーティング法(商品としては、Omega(商標)、Surewrap(商標)、V-slot(商標)、及びAllegro(商標))などが挙げられる。好ましい実施形態では、ホットメルト接着剤は、ストランドコーティング法を使用して弾性ストランド上に直接塗布され、これは、おむつ及び成人失禁用物品の製造における弾性付属品のための好ましい技術である。一例では、本発明のホットメルト組成物を、Allegro(商標)ノズルを使用してコーティングして、乳幼児用おむつ、用便しつけ用パンツ、及び成人失禁用物品の伸縮性レッグ、レッグカフ、及びウェストバンドのために使用される弾性ストランド上に連続した接着剤接合ラインを形成する。各種技術を完全に説明することは、本発明の意図ではなく、詳細は、文献又はノズル製造業者のウェブサイト(www.nordson.com又はwww.itw.com)に見出すことができる。
【0048】
本発明の実施形態では、積層品を作製する方法は、(1)溶融状態の本発明のホットメルト接着剤組成物を一次基材に塗布するステップ;及び(2)二次基材を接着剤組成物と接触させることによって、二次基材を第1の基材に貼り合わせるステップであって、第1の基材又は第2の基材の少なくとも1つは弾性であるステップを含む。一次基材は、おむつのレッグカフの一部として使用される弾性ストランド、又はおむつのバックイヤー積層物として使用される弾性バンドなどの、おむつの弾性部分であり得る。そのような弾性ストランド(又はバンド)及びおむつのレッグカフの一部としてのそれらの利用は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,190,606号に示されている。二次基材は、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)不織布又はポリエチレンフィルムなどの、不織布材料、織物、又はフィルムを含み得、方法は、弾性ストランドの周りに二次基材を折りたたむこと、又は二次基材で弾性ストランドを包むことを含み得る。このようにして、二次基材のみが、レッグカフの1つ又は複数のストランドを包み込む基材として機能し得る。
【0049】
代替の実施形態では、三次基材が使用され、二次及び三次基材は、弾性ストランドの反対側で弾性ストランドに貼り合わされ得る。そのような実施形態では、二次基材がポリエチレンフィルムであり得、且つ三次基材が不織布材料のフィルムであり得るか、又はその逆であり得る。さらに、不織布と組み合わされたポリオレフィンフィルムからなる複合おむつバックシートを、上述の二次及び三次基材として使用することもできる。
【0050】
一次基材が弾性ストランドである他の実施形態では、二次基材がポリエチレンフィルムであり得、不織布などの三次基材がそのフィルムに接着され得る。一次基材が不織布である実施形態では、二次基材が弾性フィルムであり得る。以下の実施例で示すように、本発明の組成物は、弾性ストランドに塗布した場合、業界における性能要件をシミュレートするクリープ試験において傑出した結果を与える。
【0051】
本明細書に記載された方法のいずれかによって作製される積層品は、使い捨て物品の弾性レッグカフ、スタンディングレッグカフ、弾性サイドパネル、又は伸縮性イヤーとして使用され得る。そのような積層品は、弾性基材及び少なくとも1つの他の基材を有する。
【0052】
本発明の態様
態様1.
(a)約10,000g/モル~約90,000g/モルの重量平均分子量及び約30J/g~約100J/gの融解エンタルピーを有するシングルサイト触媒によるポリプロピレンコポリマーを含む第1のポリマー;
(b)100,000g/モル超の重量平均分子量及び約0J/g~約30J/gの融解エンタルピーを有するシングルサイト触媒によるポリプロピレンコポリマーを含む第2のポリマー;
(c)ワックス;
(d)水添スチレンブロックコポリマー;
(e)粘着付与剤;並びに
(f)可塑剤
を含む、ホットメルト接着剤組成物。
【0053】
態様2.
水添スチレンブロックコポリマーは、SEBS、SEPS、及びSEEPSの少なくとも1つからなる群から選択される、態様1に記載の組成物。
【0054】
態様3.
水添スチレンブロックコポリマーは、SEBSを含む、態様1に記載の組成物。
【0055】
態様4.
SEBSは、約50~約85%、好ましくは約60~約80%のジブロックを有し、約15~約50%、好ましくは約20~約40%のスチレンを有し、5kgの重量を使用した200℃での試験で約1~約60、好ましくは約2~約50、より好ましくは約5~約40g/10分のメルトフローレートを有し、約40~約100、好ましくは約50~約90、最も好ましくは約55~約85のショアA硬さを有する、態様3に記載の組成物。
【0056】
態様5.
(a)第1のポリマーは、約0.1~約20wt%の量で存在し;
(b)第2のポリマーは、約8~約40wt%の量で存在し;
(c)ワックスは、約2~約24wt%の量で存在し;
(d)水添スチレンブロックコポリマーは、約0.25~約30wt%の量で存在し;
(e)粘着付与剤は、約35~約65wt%の量で存在し;
(f)可塑剤は、約2~約12wt%の量で存在する、
態様1~4のいずれかに記載の組成物。
【0057】
態様6.
(a)第1のポリマーは、約4~約20wt%、好ましくは約5~約15wt%、最も好ましくは約6~約10wt%の量で存在し;
(b)第2のポリマーは、約12~約40wt%、好ましくは約15~約35wt%、最も好ましくは約20~約30wt%の量で存在し;
(c)ワックスは、約4~約24wt%、好ましくは約5~約20wt%、最も好ましくは約7~約15wt%の量で存在し;
(d)水添スチレンブロックコポリマーは、約0.25~約10wt%、好ましくは約0.5~約5wt%、より好ましくは約0.5~3wt%、最も好ましくは約0.5~約2wt%の量で存在し;
(e)粘着付与剤は、約35~約65wt%、好ましくは約40~約60wt%、最も好ましくは約45~約55wt%の量で存在し;
(f)可塑剤は、約2~約12wt%、好ましくは約3~約10wt%、最も好ましくは約4~約7wt%の量で存在する、
態様1~4のいずれかに記載の組成物。
【0058】
態様7.
(a)第1のポリマーは、約0.1~約10wt%、好ましくは約0.2~約5wt%、最も好ましくは約0.25~約3wt%の量で存在し;
(b)第2のポリマーは、約8~約40wt%、好ましくは約12~約30wt%、最も好ましくは約15~約25wt%の量で存在し;
(c)ワックスは、約2~約20wt%、好ましくは約3~約15wt%、最も好ましくは約4~約10wt%の量で存在し;
(d)水添スチレンブロックコポリマーは、約10~約30wt%、好ましくは約12~約27wt%、最も好ましくは約15~約25wt%の量で存在し;
(e)粘着付与剤は、約35~約65wt%、好ましくは約40~約60wt%、最も好ましくは約45~約55wt%の量で存在し;
(f)可塑剤は、約2~約12wt%、好ましくは約3~約10wt%、最も好ましくは約4~約7wt%の量で存在する、
態様1~4のいずれかに記載の組成物。
【0059】
態様8.
ワックスは、フィッシャー・トロプシュワックスを含む、態様1~7のいずれかに記載の組成物。
【0060】
態様9.
ワックスは、以下の特性:
(a)ASTM D938に従って約60℃~約105℃、好ましくは約64℃~約102℃、より好ましくは約80℃~約102℃、最も好ましくは約80℃~約86℃の凝固点;
(b)約2.5%~20%、好ましくは約5%~15%、最も好ましくは約10%~15%のイソアルカンのパーセント;
(c)135℃で20mPa・s未満のブルックフィールド粘度;
(d)25℃で10 1/10mm未満、好ましくは8 1/10mm未満の針入度;
(e)約180J/g~230J/g、好ましくは約205J/g~約230J/g、最も好ましくは約215J/g~約225J/gの、ASTM E793に従って提供される融解熱;
(f)1wt%未満の油分;及び
(g)1モル当たり500~1200グラム、より好ましくは1モル当たり575~950グラムの分子量(数平均)
の1つ以上を有する、態様8に記載の組成物。
【0061】
態様10.
第2のポリマーの重量平均分子量は、第1のポリマーの重量平均分子量の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍であり、第1のポリマーの融解エンタルピーは、第2のポリマーの融解エンタルピーより少なくとも20J/g、好ましくは少なくとも35J/g、最も好ましくは少なくとも50J/g大きい、態様1~9のいずれかに記載の組成物。
【0062】
態様11.
第1のポリマー、第2のポリマー、ワックス、水添スチレンブロックコポリマー、粘着付与剤、並びに可塑剤は、以下:
初期、1週間のエージング後、及び2週間のエージング後に少なくとも80、並びに4週間のエージング後に少なくとも60の耐クリープ性;並びに
少なくとも80、好ましくは少なくとも87のショアA硬さ
を有するホットメルト接着剤組成物を提供するのに有効な量で存在する、態様1~10のいずれかに記載の組成物。
【0063】
態様12.
第1のポリマー、第2のポリマー、ワックス、水添スチレンブロックコポリマー、粘着付与剤、及び可塑剤は、以下:
最大で約4、好ましくは最大で約3.5の柔らかさ;
少なくとも約1.5、好ましくは少なくとも約2の噴霧性;及び
最大で約3、好ましくは最大で約2.5のブロッキング値
を提供するのに有効な量で存在する、態様1~11のいずれかに記載の組成物。
【0064】
態様13.
ホットメルト接着剤は、ASTM D3236-88による測定で、177℃で最大で約40,000cP、好ましくは最大で約20,000cP、最も好ましくは最大で約10,000cPの粘度を有する、態様1~12のいずれかに記載の組成物。
【0065】
態様14.
溶融状態の態様1~13のいずれかに記載のホットメルト接着剤組成物を一次基材に塗布するステップ;及び
二次基材を接着剤組成物と接触させることによって、二次基材を第1の基材に貼り合わせるステップであって、第1の基材又は第2の基材の少なくとも1つは弾性であるステップ
を含む、積層品を作製する方法。
【0066】
態様15.
一次基材は、弾性ストランドである、態様14に記載の方法。
【0067】
態様16.
一次基材は、不織布である、態様14に記載の方法。
【0068】
態様17.
二次基材は、弾性ストランドを包む不織布である、態様15に記載の方法。
【0069】
態様18.
二次基材はポリエチレンフィルムであり、三次基材は不織布である、態様15に記載の方法。
【0070】
態様19.
使い捨て物品の弾性レッグカフ、スタンディングレッグカフ、弾性サイドパネル、又は伸縮性イヤーとして使用される、態様14~18のいずれかに記載の方法によって作製される積層品。
【0071】
実施例
以下に述べる実施例によって、本発明をさらに説明する。
【0072】
ブルックフィールド粘度は、本明細書では、ASTM D-3236法に従い、163℃(325゜F)で提供される。
【0073】
示差走査熱量測定(DSC)試験を、TA Instrument製のDSC Model Q1000で加熱-冷却-加熱のプログラムを用いて実施した。好ましくは、約10mgのサイズの試料を、アルミニウム製のDSC試料パンに封入した。パンを機器の試料チャンバに入れて、20℃/分の加熱速度で周囲温度から200℃まで加熱し、そこから試料を-110℃まで急冷した。次いで、温度を20℃/分の加熱速度で200℃まで上昇させ、データを収集する。ジュール/グラム(J/g)の単位で測定した融解エンタルピー(ΔH)を、Model Q1000 DSCに組み込まれているアプリケーションソフトウェアパッケージを使用して、DSC曲線の融解ピークの面積から計算する。本発明の目的のために、特に指定のない限り、融点は、融解ピークの最大値、すなわち融解ピークの最高点に相当する温度と定義される。
【0074】
クリープ試験のための試験片は、Surewrap(商標)、Allegro(商標)、及びスロットダイチップに対応するように設計された、Nordson(商標)Zero-Cavityホットメルトコーティングモジュールを備えた特注のコーター/ラミネーターを使用して調製した。本発明のために、Allegro(商標)チップを使用して、本発明の組成物を、680デシテックス(dtex)の繊度を有するInvista(商標)弾性ストランドに直接塗布する。チップは、5mm間隔の3本の別個の接着剤ノズル又はオリフィスを有し、3本の弾性ストランドを同時にコーティングすることができる。クリープ保持率試験のための試験片は、Allegro(商標)ノズルを装着したNordson Zero Cavity(商標)コーティングモジュールを備えた特注のホットメルトコーターで、Allegro(商標)シングルストランドコーティング技術を使用することによって調製した。300%の伸びまで引き伸ばした3本の弾性ストランド(Investa 680)を、約150℃のコーティング温度で各々コーティングした。これらのコーティング試験では、ノズルガイドに対する弾性ストランドの入口角度(すなわち、塗布器の軸に垂直な線と、入口側でノズルとノズルに最も近いガイド又はローラーとの間に延在する弾性ストランドとの間の角度)を2.5°に維持した。(上述のパラメータは、ノズル製造業者によって採用された規約「Universal Allegro Elastic Coating Nozzles Customer Product Manual,Part 1120705_01」(2/15発行)を使用して記述されていることに注意されたい)。接着剤は、約300メートル/分のライン速度、25ミリグラム/ストランド/メートル(mg/s/m)の添着量、0.5秒のオープンタイム、及び40psiのニップロール圧で塗布された。次いで、コーティングされたストランドを、ポリエチレンフィルム(Clopay DH284 PE)とポリプロピレンスパンボンド不織布(NW FQN 12 gsm)との間に積層して、弾性積層品を形成する。
【0075】
耐クリープ性試験を、実施例1及び2に記載した積層試験片を用いて実施した。積層試験片は、弾性ストランド及び非弾性基材を含む。約350mmの積層試験片のセグメントを完全に引き伸ばし、硬質のPolyglassボード片に確実に固定する。非弾性基材を引き伸ばした形状に維持しながら、長さ300mmのところに印を付け、弾性ストランドをその印のところで切断する。次いで、試験片を37.8℃(100゜F)の空気循環オーブンに入れる。これらの条件下では、引張状態の弾性ストランドは、ある程度の距離まで収縮する可能性がある。4時間後、弾性ストランドの両端間の距離を測定する。クリープ保持率と定義され、パーセント(%)で表される、初期長さに対する最終長さの比率は、接着剤の弾性ストランドを保持する能力の尺度である。
【0076】
材料
Calsol 5550は、Calumet Specialty Productsから市販されているナフテン系プロセスオイルである。
【0077】
Kolon USA Incから市販されているSukorez SU-500は、約100℃のR&B軟化点を有する水素化DCPD粘着付与剤である。
【0078】
Irganox 1010は、BASF Corporationから市販されているヒンダードフェノール系抗酸化剤である。
【0079】
Seration 1830は、Sasol Ltdから市販されている、約83℃の凝固点を有するフィッシャー・トロプシュワックスである。
【0080】
Clariantから市販されているLicocene PP2502は、約18,000g/molの重量平均分子量(Mw)及び約37J/gの融解熱を有するポリプロピレンコポリマーである。
【0081】
Exxonmobil Chemical Company から市販されているVistamaxx 6502は、約119,000g/molの重量平均分子量(Mw)及び約9J/gの融解熱を有するポリプロピレンコポリマーである。
【0082】
Kraton Corporationから市販されているKraton G1726Mは、30wt%のスチレン含有量及び70wt%のジブロック含有量を有するSEBSコポリマーである。
【0083】
表1に重量パーセントで示した実施例1及び2のホットメルト接着剤を、本明細書で上述した成分及び混合手順を用いて調製した。混合を、モーターで駆動されるプロペラ、加熱マントル、温度制御ユニット、及び約1ガロンのサイズの容器からなる実験室タイプのミキサー中、窒素雰囲気下において177℃で実施した。ポリマーを除いて、表に示した比率に従って計算した各成分の適切な量を、容器に加えた。次いで、容器の温度を上昇させて、内容物を溶融させた。容器中の成分が完全に溶融してから、モーターを起動して、撹拌を始める。次いで、ポリマー成分を導入した。ポリマーが完全に溶解して、均一な混合物が形成されるまで混合を続けた。
【0084】
【表1】
【0085】
環球式軟化点(表1の「SP」)を、自動化Herzogユニットを用い、グリセロール中で、ASTM E28によって測定した。
【0086】
以下の試験を、実施例1及び2、並びにBostik, Inc.から市販されているPOベースの接着剤H9696Uに対して実施し、以下の表2及び3に報告する:クリープ保持率、柔らかさ試験、及び噴霧性試験。
【0087】
柔らかさ試験は、5つの異なるパラメータ:手の摩擦、粗さ、毛羽立ち、均等な重みの手触り、及び非対称の手触りを平均し、各パラメータは、1から5の段階で評価され、1は最も柔らかく、5は最も柔らかくなかった。手の摩擦は、接着剤を堆積させた積層品の表面上で手を動かすのに必要な力であり、ドラッグがないことはより低い数字に寄与し、高い抵抗(又はドラッグ)はより高い数字に寄与する。粗さは、接着剤を堆積させた積層品表面上のザラザラ、粒々、又はでこぼこした粒子の全体的な存在であり、そのような粒子がないことはより低い数字に寄与し、そのような粒子が多いことはより高い数字に寄与する。毛羽立ちは、接着剤を堆積させた積層品表面上のパイル、繊維、又は毛羽の量であり、そのようなパイル、繊維、又は毛羽がないことはより低い数字に寄与し、そのようなものが多いことはより高い数字に寄与する。手触りは、単に、接着剤を堆積させた積層品を触る人にとって積層品の感触がどのくらい柔らかいかの全体的に主観的な尺度であり、全体的な柔らかさの平均を出す上で、平均値としての1回(表3で「均等な重み」と呼ばれる)、及び中央値としての1回(表3で「非対称」と呼ばれる)の、2回カウントされる。
【0088】
噴霧性試験は、スパイラルスプレーノズルではないスプレーノズルの観察に基づくものである。2つの基準を観察した:(1)ストランド上に堆積された接着剤の各間隔の均一性、及び(2)噴霧された接着剤の総量に対するストランド上に堆積された接着剤の量。前者について、隣接する接着剤の堆積間隔の長さ又は幅の小さいずれは、良好な噴霧性に寄与し、1から5の段階でより高い数字を意味した。逆に、隣接する接着剤の堆積間隔の長さ又は幅の大きいずれは、乏しい噴霧性に寄与し、1から5の段階でより低い数字を意味した。第2の基準について、噴霧された接着剤の総量に対するストランド上に堆積された接着剤の量がより多いことは、より良好な噴霧性(及びより良好なクリープ保持率)、したがってより高い噴霧性の数字をもたらし、逆も同様である。
【0089】
【表2】
【0090】
実施例1は、対照に匹敵する噴霧性及びクリープ保持率を実証した。
【0091】
【表3】
【0092】
実施例1及び2の両方が、対照より良好な柔らかさを実証した。
【0093】
値の範囲が提供されている場合、その範囲の上限と下限との間の各中間の値及び中間の値の任意の組合せ又はサブコンビネーション、並びにその記述された範囲にある任意の他の記述されるか又は中間の値は、記載された値の範囲内に包含されることが理解される。加えて、本発明は、その成分の第1の範囲の下限及び第2の範囲の上限である、成分の範囲を含む。
【0094】
他の定義がなされない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び学術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解しているのと同じ意味を有する。本明細書で具体的に挙げたすべての刊行物及び特許は、本発明に関連して使用される可能性のある、それら刊行物に記載されている化学物質、機器、統計的解析及び方法論の記述及び開示を含めたすべての目的のために、参照によりそのすべてが組み込まれる。本明細書で引用されたすべての参考文献は、当技術分野のレベルを示していると受け取るべきである。本明細書におけるいずれの内容も、本発明が、先願発明のためにかかる開示の日付を遡って付与される権利が与えられないことを認めるものとして受け取るべきではない。
【0095】
本明細書では、ある特定の実施形態を参照しながら説明し、記述してきたが、それにも関わらず、示された詳細に本発明を限定することは意図されていない。むしろ、請求項の均等物の範囲内において且つ本発明の趣旨から逸脱することなく、詳細において各種の修正がなされ得る。
【国際調査報告】