(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】紙から黒鉛を低水分で製造する方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/205 20170101AFI20241114BHJP
【FI】
C01B32/205
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570244
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2022080232
(87)【国際公開番号】W WO2024088543
(87)【国際公開日】2024-05-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242292
【氏名又は名称】ニッポン・コルンマイヤー・カーボン・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】クライン・ダーフィト
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB05
4G146AD21
4G146BA34
4G146BB02
4G146BB04
4G146BB06
4G146BB07
4G146BC04
4G146BC35A
4G146BC35B
4G146BC36A
4G146BC36B
(57)【要約】
本発明は、絶縁材として使用するための高密度黒鉛を紙から、好ましくは古紙から低水分で製造する方法に関する。本発明によって、紙、好ましくは古紙から低密度黒鉛を製造するための、費用硬化が高く、簡単でかつ持続的な方法が提供されるべきである。紙/古紙、紙くずまたは紙ストリップを、容器中で、ジメチルスルホキシド中で浸漬軟化し、紙繊維を生成すること、ペーストがまたはペースト様稠度を有する混合物が生じるまで、ポリアクリロニトリルを前記の分解された紙繊維に攪拌しながら混合すること、前記ペーストを型に入れ、その後、プレスして余分な液体をペーストから押し出して、プレス加工品を生じせしめること、次いで、前記プレス加工品を、ポリアクリロニトリルの硬化のために、ポリアクリロニトリルが重合して硬化されたプレス加工品が生じるまで、所定の時間にわたって水中に浸漬すること、硬化した前記プレス加工品を、空気中で、約100℃までの比較的高い温度で予備乾燥すること、乾燥した前記プレス加工品を、安定化のために、空気中で250℃まで昇温して、残留水分を除去すること、及び硬化及び乾燥した前記プレス加工品を、炉中で、>1,000℃で炭化し、次いで>2,000℃で黒鉛化して、低密度黒鉛ブロックとすること、によって達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材として使用するための低密度黒鉛を、紙から、好ましくは古紙から低水分で製造する方法であって、
- 紙/古紙、紙くずまたは紙ストリップを、適当な容器中で、紙が繊維に分解されるまで、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で浸漬軟化すること、
- ペーストがまたはペースト様の稠度を持つ混合物が生じるまで、ポリアクリロニトリル(PAN)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中の分解された前記紙繊維に攪拌しながら混合すること、
- 前記ペースト(3)を適当な型中に入れ、その後にプレスしてペーストから余分な液体を押し出すかまたは前記ペーストを等方圧プレスして、プレス加工品(4)を生じせしめること、
- 次いで、前記プレス加工品(4)を、ポリアクリロニトリルを硬化させるために型から取り出し、そしてポリアクリロニトリルが重合し、そして硬化したプレス加工品(4)が生じるまで、所定の時間、水中に浸漬すること、
- 硬化した前記プレス加工品(4)を、約100℃までの比較的高い温度下に、空気中で予備乾燥すること、
- 硬化した前記プレス加工品(4)を、安定化のために、空気中で250℃まで昇温して、残留水分を除去すること、
- 硬化及び乾燥した前記プレス加工品(4)を、炉中で、>1,000℃で炭化し、次いで>2,000℃で黒鉛化して、低密度の黒鉛ブロック(5)とすること、
を特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記の炭化プレス加工品の黒鉛化を2,500℃で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硬化及び乾燥した前記プレス加工品(4)の高温処理が、一般的に、空気排除下、真空下または保護ガス下に行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁材として使用するための低密度黒鉛を紙から、好ましくは古紙から低水分で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
古紙は非常に大量に発生するために、それをリサイクルするだけでなく、様々な用途のための黒鉛の製造のために使用することも考慮される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それ故、本発明の課題は、絶縁材料としても使用できる低密度の黒鉛を、紙から、好ましくは古紙から製造するための費用効果高く、簡単でかつ持続的な方法であって、水の使用を最小限に減少できる、方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明が基づく前記課題は、
- 紙/古紙、紙くずまたは紙ストリップを、適当な容器中で、紙が繊維に分解されるまで、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で浸漬軟化すること、
- ペーストがまたはペースト様の稠度を持つ混合物が生じるまで、ポリアクリロニトリル(PAN)を、ジメチルスルホキシド中の分解された前記紙繊維に攪拌しながら混合すること、
- 前記ペーストを適当な型中に入れ、その後にプレスしてペーストから余分な液体を押し出すかまたは前記ペーストを等方圧プレスして、プレス加工品を生じせしめること、
- 次いで、前記プレス加工品を、ポリアクリロニトリルを硬化させるために、型から取り出し、そしてポリアクリロニトリルが重合し、そして硬化したプレス加工品が生じるまで、所定の時間、水中に浸漬すること、
- 硬化した前記プレス加工品を、約100℃までの高められた温度下に、空気中で予備乾燥すること、
- 硬化した前記プレス加工品を、安定化のために、空気中で250℃まで昇温して、残留水分を除去すること、
- 硬化及び乾燥した前記プレス加工品を、炉中で、>1,000℃で炭化し、次いで>2,000℃(最大で3,000℃まで)で黒鉛化して、低密度の黒鉛ブロックとすること、
によって解決される。
【0005】
黒鉛化の際の好ましい温度は2,500℃であり、この際、高温処理は、一般的に、空気の排除下、真空下または保護ガス下に行われる。
【0006】
糖類、シロップまたはデンプンなどの追加的なバインダーの使用は当該方法では必要ではなく、そのため、極めて低い水の要求量の故からも、絶縁材料としてまたは他の用途で良好に使用できる低密度黒鉛の、格別費用効果が高い製造方法である。
【0007】
この方法の唯一の欠点は、ポリアクリロニトリルの硬化/重合に最大で二週間要する場合がある点に見ることができるが、これは、シリアル生産では問題なく埋め合わせることができる。
【0008】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ペースト様稠度を有する、バインダーと混合された分解された紙。
【
図3】等方圧プレス工程及び硬化後の
図2の混合物。
【実施例】
【0010】
紙/古紙、紙くずまたは紙ストリップ1からの黒鉛の製造を可能にするために、これを先ず、適当な容器2中で、紙1が繊維に分解されるまで、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で比較的長い期間にわたって浸漬軟化する(
図1)。この工程にはどうしても数日間かかることがある。
【0011】
次いで、ジメチルスルホキシド中で浸漬軟化された紙繊維を適当な混合装置中に入れそしてその中で混合すると同時に、ポリアクリロニトリル(PAN)を、ペースト3がまたはペースト様稠度を有する混合物が生じるまで、攪拌しながら混合する(
図2)。
【0012】
その後のステップでは、前記ペースト3を適当な型中に入れ、その後にプレスしてペーストから余分な液体を押し出すかまたはペーストを等方圧プレスして、プレス加工品4を生じせしめる(
図3)。
【0013】
次いで、前記プレス加工品4を、プレス装置から取り出し、そしてポリアクリロニトリルの硬化のために及び所定の時間にわたって、ポリアクリロニトリルが重合されそして硬化したプレス加工品4が生じるまで、水中に完全に浸漬し、これを先ず空気中で乾燥する。プレス加工品4中のポリアクリロニトリルの前記の硬化または重合工程には最大で二週間かかることがあるが、これはシリアル生産では問題なく埋め合わせることができる。
【0014】
ポリアクリロニトリルのこの重合工程は、比較的少量の水が使用される唯一のプロセスステップであり、ここで、水は複数回使用することもできる。従って、水の使用は最小限まで減少することができる。
【0015】
硬化されたプレス加工品4のその後の炭化または黒鉛化は非常に高い温度下に行われるため、使用された溶剤及びプレス加工品4の硬化のための水を原因として、最終製品において程度の差はあれ顕著な亀裂形成を後になって招き得るガス及び蒸気が放出される虞がある。この理由のために、硬化されそして空気中で予備乾燥及び硬化されたプレス加工品4は、比較的長い時間にわたる、空気雰囲気中250℃までの安定化のための炉内での緩やかな加熱によって加温して、残留溶剤及び水分を、プレス加工品4から可能な限り完全に除去する。
【0016】
硬化及び乾燥したプレス加工品4は、次いで、炉中で、>1,000℃で炭化し、次いで>2,000℃(最大で3,000℃まで)で黒鉛化して低密度黒鉛ブロック5とし、この際、黒鉛化の時の好ましい温度は約2,500℃であるのがよい。
【0017】
当然ながら、この高温処理は、空気排除下、真空下または保護ガス下で行う必要がある。
【0018】
該方法の格別な利点は、糖、シロップまたはデンプンなどのバインダーの使用は該方法では必要ではない点に見ることができる。
【0019】
水は、少量のみで、ポリアクリロニトリルの硬化のためだけにしか必要ではないので、極めて低い水要求量の故に、絶縁材としてまたは他の用途で良好に使用できる低密度黒鉛の、格別費用効果の高い製造方法である。
【符号の説明】
【0020】
1 紙/古紙、紙くずまたは紙ストリップ
2 容器
3 ペースト
4 プレス加工品
5 黒鉛ブロック
【国際調査報告】