(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】負極材料、電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20241114BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508469
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2022132157
(87)【国際公開番号】W WO2024103273
(87)【国際公開日】2024-05-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524053018
【氏名又は名称】▲開▼封瑞▲豊▼新材料有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】黄 健
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 宝▲シュエン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 若▲チー▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲書▼展
(72)【発明者】
【氏名】任 建国
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050BA17
5H050CB08
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】本出願は、負極材料及び電池を提供する。
【解決手段】
負極材料は、人造黒鉛を含み、前記人造黒鉛は、内部及び/又は表面に細孔を有し、前記負極材料は、吸油量をOmL/100gに、細孔容積をVcm
3/kgに、比表面積をSm
2/gにした際に、400≦O×V×S≦1500である。本出願が提供する負極材料は、加工性能に影響を与えることなく、負極材料の電解液に対する吸着、浸潤能力を向上させ、負極材料の高レート充放電性能を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人造黒鉛を含む負極材料であって、
前記人造黒鉛は、内部及び/又は表面に細孔を有し、
前記負極材料は、吸油量をOmL/100gに、細孔容積をVcm
3/kgに、比表面積をSm
2/gにした際に、400≦O×V×S≦1500であり、
前記細孔容積は、米国マイクロメリティックス社製のASAP 2460装置を用いて測定し、BJH脱着累積細孔容積(BJH Desorption cumulative volume of pores)モデルを用いて17Å~3000Åの細孔径範囲内で算出したものである、ことを特徴とする負極材料。
【請求項2】
吸油量をOmL/100gにした際に、43≦O≦60であることを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
細孔容積をVcm
3/kgにした際に、5≦V≦8であることを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項4】
比表面積をSm
2/gにした際に、1.78≦S≦3.0であることを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項5】
粒径が0.9≦(D90-D10)/D50≦1.8、且つ10μm≦D50≦30μmを満たすことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項6】
以下の特徴(1)~(2)のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の負極材料。
(1)前記負極材料は、非晶質炭素をさらに含む;
(2)前記負極材料は、非晶質炭素をさらに含み、前記負極材料における前記非晶質炭素の質量割合は、0.1wt%~5wt%である。
【請求項7】
ラマン分光測定により負極材料を測定し、1300cm
-1~1400cm
-1の範囲にあるピーク強度(I
D)と1580cm
-1~1620cm
-1の範囲にあるピーク強度(I
G)との強度比(I
D/I
G)は、0.03≦I
D/I
G≦0.10であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の負極材料。
【請求項8】
人造黒鉛一次粒子及び/又は人造黒鉛二次粒子を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の負極材料。
【請求項9】
前記細孔は、ミクロ孔及びメソ孔のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の負極材料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の負極材料を含むことを特徴とする電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、負極材料の技術分野に関し、具体的には負極材料、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
黒鉛は、電気伝導率が高く、リチウムイオン拡散係数が大きく、層状構造のリチウム吸蔵前後の容積変化が小さく、リチウム吸蔵容量が高く、リチウム吸蔵電位が低いなどの利点を有するため、現在主流の商業化リチウムイオン電池の負極材料となっている。
【0003】
従来の黒鉛負極の黒鉛化装置は、主に坩堝炉及び箱形炉の2種類があり、両者は、いずれもバッチ式作業であり、黒鉛化過程に停電が必要であるため、連続生産を実現できず、また、装置の昇温及び冷却の過程が制限され、昇降温速度が遅いため、生産周期が長くなり、一般的には、黒鉛化周期は、15~50日以内である。黒鉛化生産の過程において、原料中の揮発成分、不純物元素等を高温条件下で逃がすため、黒鉛内部及び/又は表面に空孔を形成する。一般的には、人造黒鉛は、いずれも一定の数の細孔構造を有し、細孔の存在は、Li+の黒鉛材料内部での拡散チャネルを増加させ、Li+の拡散抵抗を減少させることができ、それにより材料のレート特性を効果的に向上させる一方、多すぎる細孔構造は、材料の比表面積の増大を招き、製品の初回効率及びサイクル性能の劣化をさらに招く。実際に、単純に細孔構造を改善するだけでは、レート特性が最適に達することができず、やはり改善の余地がまだ大きい。研究者は、黒鉛材料の性能に対する単一の要素の影響を研究するにとどまり、黒鉛のレート特性を最大限に改善するために、複数の要素の間の相乗効果から深く研究していない。
【0004】
したがって、黒鉛材料の発展が成熟した現在の段階において、単一のパラメータを改善することは、低コスト、高性能の黒鉛材料に対する市場の要求を満たすことができず、様々な要因が相乗した作用機序を研究し、市場の要求を満たす黒鉛負極材料を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑みて、本出願は、負極材料、電池を提供し、負極材料におけるリチウムイオンを放出・吸蔵する活性サイト及び拡散チャネルを向上させ、負極材料の高レート充放電性能を向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様において、本出願は、負極材料を提供し、前記負極材料は、人造黒鉛を含み、前記人造黒鉛は、内部及び/又は表面に細孔構造を有し、前記負極材料は、吸油量をOmL/100gに、細孔容積をVcm3/kgに、比表面積をSm2/gにした際に、400≦O×V×S≦1500であり、
前記細孔容積は、ASAP2460装置(米国マイクロメリティックス社製)を用いて測定し、BJH脱着累積細孔容積(BJH Desorption cumulative volume of pores)モデルを用いて17Å~3000Åの細孔径範囲内で計算して得られるものである。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記負極材料は、吸油量がOmL/100gであり、43≦O≦60である。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記負極材料は、細孔容積をVcm3/kgにした際に、5≦V≦8である。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記負極材料は、比表面積をSm2/gにした際に、1.78≦S≦3.0である。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記負極材料は、粒径が0.9≦(D90-D10)/D50≦1.8、且つ10μm≦D50≦30μmを満たす。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記負極材料は、非晶質炭素をさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記負極材料は、非晶質炭素をさらに含み、前記負極材料における前記非晶質炭素は、質量割合が0.1wt%~5wt%である。
【0013】
いくつかの実施形態では、ラマン分光測定により負極材料を測定し、1300cm-1~1400cm-1の範囲にあるピーク強度IDと1580cm-1~1620cm-1の範囲にあるピーク強度IGとの強度比ID/IGは、0.03≦ID/IG≦0.10である。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記負極材料は、人造黒鉛一次粒子及び/又は人造黒鉛二次粒子を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記細孔は、ミクロ孔及びメソ孔のうちの少なくとも1種を含む。
【0016】
第2態様において、本出願は、第1態様に記載の人造黒鉛負極材料を含む電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本出願の技術案は、少なくとも以下の有益な効果を有する。
当業者は、人造黒鉛の一定範囲内の細孔容積がLi+の拡散チャネルを増加させることができ、一定範囲内の比表面積が十分な電気化学反応界面を保証し、リチウムイオンの固液界面及び固相内での拡散を促進し、濃度分極を低減し、負極材料の容量及びレート特性の向上に有利であることを知っている。出願人は、これに基づいて鋭意研究した結果、リチウムイオンの放出・吸蔵は、拡散チャネルと反応界面を必要とするだけでなく、電解液を媒体として必要とし、いくつかの細孔が表面形態又は他の要因の影響を受けて電解液に浸潤されないと、その作用を発揮することができず、それに対応する表面も当然に電気化学反応を起こすことができず、「有効な電気化学反応空間」が足りないことに相当するため、十分な細孔容積と比表面積だけ満足することで、レート特性が必ずしも効果的に向上されるとは限られない。電解液の浸潤能は、一般的には、吸油量により発現される。本出願は、細孔容積、比表面積及び吸油量の3つの要素を組み合わせて大量の実験研究を行い、負極材料のO×V×Sを上記範囲内に制御することにより、負極材料において効果的なリチウムイオンの放出・吸蔵を行うことができる反応空間が十分であり、人造黒鉛負極材料の高レート充放電性能の向上に有利である。
【0018】
本出願が提供する負極材料は、連続黒鉛化プロセスによって製造加工され、材料を連続的に供給及び排出を行い、全ての材料が通過する経路及び時間が一致し、さらに高温領域を通過する時間及び温度が一致し、且つ黒鉛化過程において仮焼及び黒鉛化段階の昇温速度又は降温速度を制御することにより、材料内の揮発成分、不純物元素等の物質を均一且つ迅速に逃がすことができ、同時に、一定量の添加剤を導入し、黒鉛内部及び/又は表面での細孔容積の正確な制御を実現する。上記プロセスの相乗使用により、比表面積、吸油量、細孔容積の関係が400≦O×V×S≦1500を満たすように正確に制御することができる。
【0019】
本出願が提供する負極材料は、単位質量あたりのエネルギー消費が低く、コスト及び生産周期が明らかな優位を有し、且つ環境に優しい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本出願の実施例12が提供する人造黒鉛負極材料の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本出願をよりよく説明して本出願の技術案を理解しやすくするために、以下、本出願をさらに詳細に説明する。なお、下記の実施例は、本出願の簡単化された例に過ぎず、本出願の保護範囲を示す又は制限するものではない。本出願の保護範囲は、特許請求の範囲に準ずる。
【0022】
負極材料の分野において、連続黒鉛化設備についての開発が数十年続き、早くとも1987年の特許(US06619591)には、炭素含有材料に対して連続黒鉛化処理を行うことができる機器が開示され、近年、出願人も連続黒鉛化設備を開発し続け、例えば2019年に出願された登録公告番号がCN211425033Uである特許には、材料を排出口から連続的に排出するとともに、材料配管から連続的に供給することができる縦型連続リチウム電池負極材料生産用キルンが開示されている。連続黒鉛化プロセスは、従来のプロセスと比べて、黒鉛化の時間が数日から数時間に短縮され、エネルギー消費の低減が相当に顕著であるが、黒鉛化の時間が大幅に短縮されることにより、従来の人造黒鉛と比べて、連続黒鉛化プロセスは、人造黒鉛のミクロ構造の変化、特に人造黒鉛の内部における細孔構造の変化、結晶形の変化などが得られる。従来より、業界では、このような変化は、人造黒鉛の要求性能を満たすことが難しく、改善することが困難であると検証されているため、連続黒鉛化設備が30~40年前からずっと存在していても、連続黒鉛化された人造黒鉛負極製品の量産に成功した前例がない。
【0023】
近年、エネルギーのさらなる逼迫に伴い、人造黒鉛のコストをさらに低減するために、出願人は、連続黒鉛化設備の応用に対して開発し続け、性能において現在の通常の黒鉛化負極材料と同等、ひいてはより良好な人造黒鉛負極材料を開発し、人造黒鉛負極材料のエネルギー消費を低減し、さらにコストを低減することを目的とする。出願人は、大量の製造プロセスの開発を経て、人造黒鉛製品に不利な変化をもたらす温度の急速な昇降を改善できる様々な手段を開発し、製品を選別することで、一連の異なる型番の人造黒鉛負極材料を得る。これらの人造黒鉛負極材料は、ミクロ構造が通常の人造黒鉛製品と異なるが、その電気的性能は、いずれも通常の人造黒鉛製品と基本的に同等であることができ、ひいては、ある方面での電気的性能、加工性能の表現は、より優れているか又は安定しており、通常の人造黒鉛製品に代わる条件を備えている。
【0024】
以下、出願人が開発した製造プロセスを例として、該製造プロセス及びそれに関連する製品についてさらに詳細に説明する。
【0025】
負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
S10では、生コークスを500~1200℃の温度で3h~6h仮焼処理し、仮焼処理過程の昇温速度は、2~10℃/minであり、自然冷却した後に低温仮焼コークス(Low temperature calcined coke)を得る。
S20では、低温仮焼コークスに対して整形処理を行い、メジアン径が10μm~20μmのコークス粉末を得る。
S30では、コークス粉末、接着剤、添加剤及び溶媒を含む混合物を5Mpa~100Mpaの圧力でプレスし、コークス粉末と添加剤との質量比が100:(1~5)である前駆体を得る。
S40では、前駆体を連続黒鉛化炉内に置いて12℃/min~20℃/minの昇温速度で2800℃~3200℃まで昇温し、さらに2800℃~3200℃で2h~5h保温した後、15℃/min~25℃/minの降温速度で30℃まで冷却し、負極材料を得る。
【0026】
本出願が提供する負極材料の製造方法は、生コークス仮焼処理によって得られた低温仮焼コークスをコークス粉末に粉砕し、低温仮焼段階の昇温速度が遅くて、揮発成分を徐々に逃がすことに有利し、細孔構造の初期形成過程を制御し、コークス粉末、接着剤、添加剤及び溶媒の混合物をプレスし、前駆体をそのまま連続黒鉛化炉内に配置し、昇温速度が極めて速く、急速昇温した後、短時間で前駆体を黒鉛化温度に到達させ、添加剤が急速に揮発して逃がし、黒鉛粒子の内部及び/又は表面に細孔をさらに形成し、細孔の存在は、比表面積及び吸油量の向上に寄与し、負極活物質の電極における反応可能な面積を増加させ、材料の高レート充放電性能の向上に寄与する。また、連続黒鉛化炉内の材料を炉に投入してから排出する過程は、数時間内にのみ完了し、熱エネルギー利用率が高く、生産コストを低減することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、生コークス原料は、石油コークス、ニードルコークス、ピッチコークス及び等方性コークスのうちの少なくとも1種を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、仮焼処理の過程において、昇温速度は、具体的には、2℃/min、3℃/min、5℃/min、6℃/min、8℃/min、9℃/min又は10℃/minなどであってよい。理解できるように、仮焼処理の昇温速度が上記範囲内にあることにより、原料中の揮発成分を徐々に逃がすことに有利であり、細孔構造を予備的に形成し、後続の黒鉛化過程における迅速な昇温と組み合わせ、400≦O×V×S≦1500を満たす負極材料を得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、仮焼処理の温度は、具体的には、500℃、550℃、600℃、700℃、750℃、800℃、850℃、900℃、1000℃又は1200℃などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。理解できるように、仮焼処理温度が上記範囲内にあることにより、生コークス原料中の揮発成分等の物質の排出に有利である。
【0030】
いくつかの実施形態では、仮焼処理の保温時間は、具体的には、3h、4h、4.5h、5h、5.5h又は6hなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。好ましくは、仮焼処理の保温時間は3h~4hである。
【0031】
いくつかの実施形態では、整形は、粉砕、球状化又は分級のうちの少なくとも1種を含む。
【0032】
整形されて得られるコークス粉末のメジアン径は、10μm~20μmであり、より具体的には、12μm、13μm、14μm、16μm、18μm、18.5μm、19μm又は20μmなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。複数回の試験により、コークス粉末のメジアン径を上記範囲内に制御することにより、加工性能、容量及びレート特性の両立に有利である。
【0033】
いくつかの実施形態では、コークス粉末中の炭素の質量含有量は、80%以上であり、具体的には、80%、81%、82%、85%、90%、95%又は96%などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。
【0034】
いくつかの実施形態では、溶媒は、水、エタノール、アセトン、ベンゼン、トルエン、キノリン、テトラヒドロフラン及び四塩化炭素のうちの少なくとも1種を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、接着剤は、重質油、ミネラル油、コールタール、ピッチ、石油樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、クマロン樹脂、ジャガイモ澱粉、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、サツマイモ澱粉、葛粉及びタピオカ粉のうちの少なくとも1種を含む。ピッチは、石油系液状ピッチ及び石炭系液状ピッチのうちの少なくとも1種を含んでもよい。具体的には、石油系液状ピッチは、石油ピッチ、改質ピッチ、メソフェーズピッチ等であってもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、添加剤は、酸化ホウ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、ホウ酸、塩化ホウ素及びホウ酸ナトリウムのうちの少なくとも1種を含み、添加剤は、黒鉛化触媒とする一方で、黒鉛化過程において急速な昇降温により揮発して逃がし、人造黒鉛の内部及び/又は表面に安定な細孔を形成することに有利である。
【0037】
いくつかの実施形態では、コークス粉末と、接着剤と、溶媒と、添加剤との質量比は、100:(3~20):(5~50):(1~5)であり、具体的には、100:3:5:1、100:10:15:1、100:15:20:5、100:20:20:1、100:20:15:3、100:10:10:5又は100:15:25:2などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。添加剤の含有量を上記範囲内に制御することにより、黒鉛化過程の触媒化に有利である一方、黒鉛内部に一定の数の細孔を形成することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、混合物の混合方式は、機械的撹拌及び超音波分散のうちの少なくとも1種を含む。混合に機械的撹拌を採用する場合、混合物における各成分を十分に均一に混合すれば、プロペラ式撹拌機、タービン式撹拌機、フラットブレード式撹拌機等を採用することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、撹拌速度は、10r/min~1000r/minであり、具体的には、10r/min、50r/min、70r/min、100r/min、120r/min、150r/min、200r/min、300r/min、350r/min、400r/min、500r/min又は1000r/minなどであってもよく、ここで限定されない。撹拌速度を上記範囲内に制御することにより、各成分を混合して均一な混合物を形成することに有利である。
【0040】
撹拌は、常温で行ってもよく、予熱状態で行ってもよく、好ましくは、撹拌温度を25℃~200℃に制御してもよく、理解できるように、適切な予熱は各成分を混合して均一な混合物を形成することに有利である。
【0041】
いくつかの実施形態では、プレスの方式は、押出、金型プレス、ロールプレス、等方圧加圧のうちの少なくとも1種を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、プレスの圧力は、具体的には5MPa、15MPa、25MPa、30MPa、35MPa、40MPa、45MPa、50MPa、55MPa、60MPa、70MPa、80MPa、90MPa又は100MPaなどであってもよく、プレス処理により、黒鉛化過程における材料の流動性を向上させることができる一方、材料の炉装入量及び生産能力を向上させることができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、黒鉛化処理の保温温度は、具体的には、2800℃、2900、3000℃、3100℃、3150℃、3180℃又は3200℃などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。
【0044】
いくつかの実施形態では、黒鉛化処理の保温時間は、具体的には、2h、2.5h、3h、3.5h、3.8h、4h、4.5h又は5hなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。好ましくは、黒鉛化処理の保温時間は、2h~3hである。
【0045】
いくつかの実施形態では、黒鉛化処理の昇温速度は、具体的には、12℃/min、13℃/min、14℃/min、16℃/min、18℃/min、18.5℃/min或20℃/minなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。急速昇温は、材料黒鉛の内部及び/又は表面における細孔の形成及び比表面積の制御に有利である。
【0046】
いくつかの実施形態では、黒鉛化処理後の降温速度は、15℃/min~25℃/minであり、具体的には、15℃/min、16℃/min、17℃/min、18℃/min、20℃/min、21℃/min、22℃/min、23℃/min、24℃/min又は25℃/minなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。急速降温は、材料の比表面積及び吸油量の制御に有利であるとともに、黒鉛化加工の周期を大幅に短縮し、生産コストを低減することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、黒鉛化処理後に、粉砕、篩分け及び消磁のうちの少なくとも1種を含む。好ましくは、炭化処理後、粉砕、消磁及び篩分けを順に行う。
【0048】
いくつかの実施形態では、粉砕手段は、機械式粉砕機、気流式粉砕機及び低温粉砕機のうちのいずれか1種であってもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、篩分け方式は、固定篩、ドラムスクリーン、共振篩、ローラーふるい、振動篩及びチェーンふるい(chain grizzly)のうちのいずれか1種であり、篩分けのメッシュ数は、100~500メッシュであり、具体的には、篩分けのメッシュ数は、100メッシュ、200メッシュ、250メッシュ、325メッシュ、400メッシュ、500メッシュ等であってもよく、負極材料の粒子径を上記範囲内に制御することにより、負極材料の加工特性の向上に寄与する。
【0050】
いくつかの実施形態では、消磁装置は、永久磁石式ドラム型磁選機、電磁除鉄機及び脈動高勾配磁気選別機のうちのいずれか1つであり、消磁は、最終的に負極材料中の磁性材料の含有量を制御するためであり、リチウムイオン電池に対する磁性材料の放電効果を回避するとともに、使用中における電池の安全性を確保するためである。
【0051】
負極材料であって、人造黒鉛を含み、人造黒鉛は、内部及び/又は表面に細孔を有し、負極材料は、吸油量をOmL/100gに、細孔容積をVcm3/kgに、比表面積をSm2/gにした際に、400≦O×V×S≦1500であり、細孔容積は、米国マイクロメリティックス社製のASAP 2460装置を用いて測定し、BJH脱着累積細孔容積(BJH Desorption cumulative volume of pores)モデルを用いて17Å~3000Åの細孔径範囲内で計算して得られるものである。
【0052】
本出願が提供する負極材料は、連続黒鉛化プロセスによって生産加工されてなり、まず材料を低温で急速昇温して仮焼し、次に高温で急速昇温して黒鉛化処理を行い、同時に、原料に一定量の添加剤を加え、黒鉛内部及び/又は表面における細孔の正確な制御を実現し、材料の細孔容積、比表面積、吸油量が理想的な調整制御設計要求に達する。
【0053】
当業者は、人造黒鉛の一定範囲内の細孔容積がLi+の拡散チャネルを増加させることができ、一定範囲内の比表面積が十分な電気化学反応界面を保証し、リチウムイオンの固液界面及び固相内での拡散を促進し、濃度分極を低減し、負極材料の容量及びレート特性の向上に有利であることを知っている。出願人は、これに基づいて鋭意研究した結果、リチウムイオンの放出・吸蔵は、拡散チャネルと反応界面を必要とするだけでなく、電解液を媒体として必要とし、いくつかの細孔が表面形態又は他の要因の影響を受けて電解液に浸潤されないと、その作用を発揮することができず、それに対応する表面も当然に電気化学反応を起こすことができず、「有効な電気化学反応空間」が足りないことに相当するため、十分な細孔容積と比表面積だけ満足することで、レート特性が必ずしも効果的に向上されるとは限られない。電解液の浸潤能は、一般的には、吸油量により発現される。本出願は、細孔容積、比表面積及び吸油量の3つの要素を組み合わせて大量の実験研究を行い、負極材料のO×V×Sを上記範囲内に制御することにより、負極材料において効果的なリチウムイオンの放出・吸蔵を行うことができる反応空間が十分であり、人造黒鉛負極材料の高レート充放電性能の向上に有利である。
【0054】
いくつかの実施形態では、負極材料の吸油量を、OmL/100gにした際に、43≦O≦60であり、具体的には、43、44、45、47、49、51、52、53、54、55、57、59又は60などであってもよく、ここで限定されない。材料の吸油量を上記範囲内に制御することにより、材料の電解液に対する吸着、浸潤性能の向上に有利であり、負極材料の電気化学性能がより良好である。
【0055】
いくつかの実施形態では、負極材料の細孔容積を、Vcm3/kgにした際に、5≦V≦8であり、具体的には、5.1、5.2、5.5、5.8、6.0、6.2、6.5、6.8、7.0、7.2、7.5又は8.0などであってもよく、ここで限定されない。細孔が電極内部で電気化学反応を発生する場合、細孔は、負極材料により多くのリチウムイオン拡散チャネルと電気化学反応界面を作り、リチウムイオンの固液界面及び固相内での拡散を促進し、濃度分極を低減し、負極材料のレート特性の向上に有利である。
【0056】
いくつかの実施形態では、負極材料の比表面積を、Sm2/gにした際に、1.78≦S≦3.0であり、具体的には、1.79、1.85、1.95、2.00、2.25、2.43、2.57、2.61、2.72、2.85、2.90又は3.0などであってもよく、ここで限定されない。理解できるように、比表面積が大きすぎると、固体電解質膜の形成を招きやすくなり、不可逆リチウム塩が過度に消費され、電池の初回効率を低下させる。
【0057】
いくつかの実施形態では、細孔は、ミクロ孔及びメソ孔のうちの少なくとも1種を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、負極材料の粒径D50は、10μm~30μmである。具体的には、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、20μm、25μm又は30μmなどであってもよく、ここで限定されない。
【0059】
いくつかの実施形態では、負極材料の粒径は、0.9≦(D90-D10)/D50≦1.8を満たし、具体的には、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7又は1.8などであってもよく、ここで限定されない。負極材料の粒径が上記関係を満たすことにより、負極材料の粒度分布の集中及び適切な堆積密度を確保することができる。
【0060】
なお、レーザー回折法を用いて粒径分布を得て測定された容積基準の累積粒度分布において、D10は、粉末の累積粒度分布の百分率が10%に達する時に対応する粒径を表し、D50は、累積粒度分布百分率が50%に達する時に対応する粒径を表し、D90は、累積粒度分布百分率が90%に達する時に対応する粒径を表す。
【0061】
いくつかの実施形態では、負極材料は、非晶質炭素をさらに含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、負極材料は、非晶質炭素をさらに含み、負極材料における非晶質炭素の質量割合は0.1wt%~5wt%であり、負極材料における非晶質炭素の質量割合は、具体的には、0.1wt%、0.3wt%、0.5wt%、1wt%、2wt%、3wt%、4wt%又は5wt%であってもよく、非晶質炭素の存在は、リチウムイオンにより多くの不規則でより開放された拡散経路を提供し、材料レート特性の向上に有利である。
【0063】
いくつかの実施形態では、ラマン分光測定により負極材料を測定し、1300cm-1~1400cm-1の範囲にあるピーク強度IDと1580cm-1~1620cm-1の範囲にあるピーク強度IGとの強度比ID/IGは、0.03≦ID/IG≦0.10であり、具体的には、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09又は0.1などであってもよく、ここで限定されない。負極材料の強度比ID/IGを上記範囲内に制御することにより、負極材料の黒鉛化度合いを向上させることができ、黒鉛結晶の品質がより良好になる。
【0064】
いくつかの実施形態では、負極材料は、人造黒鉛一次粒子及び/又は人造黒鉛二次粒子を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、細孔は、ミクロ孔及びメソ孔のうちの少なくとも1種を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、負極材料の比容量は、320mAh/g~370mAh/gであり、具体的には、320mAh/g、340mAh/g、342mAh/g、345mAh/g、353mAh/g、355mAh/g、357mAh/g 、360mAh/g、365mAh/g又は370mAh/gなどであってもよく、ここで限定されない。
【0067】
電池であって、上記負極材料を含む。
【0068】
当業者にとって明らかなように、以上で説明された電池の製造方法は実施例に過ぎない。本出願で開示された内容を逸脱しない範囲内において、当該分野で通常使用される他の方法を採用してもよく、他の種類の電池、例えばナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池等に製造して測定してもよい。
【実施例】
【0069】
以下、複数の実施例により、本出願の実施例についてさらに説明する。ただし、本出願の実施例は、以下の具体的な実施例に限定されない。保護範囲内において、適切な変更を実施することができる。
【0070】
実施例1
本実施例の複合負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)大慶石油コークスを800℃の温度で4h仮焼処理し、仮焼処理過程の昇温速度は、5℃/minであり、冷却して低温仮焼コークスを得た。
(2)低温仮焼コークスを粉砕して整形装置で整形し、粉砕整形されたコークス粉末を得て、メジアン径を15μmに制御する。
(3)コークス粉末と、コールタールと、キノリンと、炭化ケイ素とを質量比100:5:15:2で均一に混合して混合物を得た。
(4)混合物を20MPa圧力でプレスして前駆体を得た。
(5)前駆体を連続黒鉛化炉により3000℃で黒鉛化処理して黒鉛化品を得た。昇温曲線は、16.5℃/minの昇温速度で3000℃まで昇温し、3000℃で3h保温し、保温後、16.0℃/minの降温速度で30℃まで冷却したものである。
(6)黒鉛化品を分散、消磁、250メッシュ篩分けなどの工程で処理し、人造黒鉛負極材料を得た。
【0071】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0072】
実施例2
本実施例の複合負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)寶鋼ピッチコークスを750℃の温度で4h仮焼処理し、仮焼処理過程の昇温速度は、3℃/minであり、冷却して低温仮焼コークスを得た。
(2)低温仮焼コークスを粉砕して整形装置で整形し、粉砕整形されたコークス粉末を得て、メジアン径を15μmに制御する。
(3)コークス粉末と、澱粉と、水と、ホウ酸ナトリウムとを質量比100:6:20:2で均一に混合して混合物Aを得た。
(4)混合物を20MPa圧力でプレスして前駆体を得た。
(5)前駆体を連続黒鉛化炉により2950℃で黒鉛化処理して黒鉛化品を得た。昇温曲線は、15℃/minの昇温速度で2950℃まで昇温し、2950℃で3h保温し、保温後、20℃/minの降温速度で30℃まで冷却したことである。
(6)黒鉛化品を分散、消磁、250メッシュ篩分けなどの工程で処理し、人造黒鉛負極材料を得た。
【0073】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0074】
実施例3
本実施例の複合負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)大慶石油コークスを800℃の温度で4h仮焼処理し、仮焼処理過程の昇温速度は、6℃/minであり、冷却して低温仮焼コークスを得た。
(2)低温仮焼コークスを粉砕して整形装置で整形し、粉砕整形されたコークス粉末を得て、メジアン径を15μmに制御する。
(3)コークス粉末と、コールタールと、キノリンと、窒化ホウ素とを質量比100:5:15:3で均一に混合して混合物Aを得た。
(4)混合物を20MPa圧力でプレスして前駆体を得た。
(5)前駆体を連続黒鉛化炉により2900℃で黒鉛化処理して黒鉛化品を得た。昇温曲線は、18℃/minの昇温速度で2900℃まで昇温し、2900℃で3h保温し、保温後、21.5℃/minの降温速度で30℃まで冷却したことである。
(6)黒鉛化品を分散、消磁、250メッシュ篩分けなどの工程で処理し、人造黒鉛負極材料を得た。
【0075】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0076】
実施例4
本実施例の複合負極材料の製造方法は、以下のステップを含む。
(1)大慶石油コークスを800℃の温度で4h仮焼処理し、仮焼処理過程の昇温速度は、5℃/minであり、冷却して低温仮焼コークスを得た。
(2)低温仮焼コークスを粉砕して整形装置で整形し、粉砕整形されたコークス粉末を得て、メジアン径を15μmに制御する。
(3)コークス粉末と、澱粉と、水と、炭化ホウ素とを質量比100:6:20:2で均一に混合して混合物Aを得た。
(4)混合物を20MPa圧力でプレスして前駆体を得た。
(5)前駆体を連続黒鉛化炉により3000℃で黒鉛化処理して黒鉛化品を得た。昇温曲線は、20℃/minの昇温速度で3000℃まで昇温し、3000℃で3h保温し、保温後、16.6℃/minの降温速度で30℃まで冷却したことである。
(6)黒鉛化品を分散、消磁、250メッシュ篩分けなどの工程で処理し、人造黒鉛負極材料を得た。
【0077】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0078】
実施例5
実施例1との相違点は、ステップ(1)における仮焼温度が500℃であることである。
【0079】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0080】
実施例6
実施例1との相違点は、ステップ(1)における仮焼温度が1200℃であることである。
【0081】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0082】
実施例7
実施例1との相違点は、ステップ(1)における仮焼時間が3hであることである。
【0083】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0084】
実施例8
実施例1との相違点は、ステップ(1)における仮焼時間が6hであることである。
【0085】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0086】
実施例9
実施例1との相違点は、ステップ(3)において、コークス粉末と、コールタールと、キノリンと、炭化ケイ素とを質量比100:3:15:2で均一に混合して混合物を得たことである。
【0087】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0088】
実施例10
実施例1との相違点は、ステップ(3)において、コークス粉末と、コールタールと、キノリンと、炭化ケイ素とを質量比100:20:15:2で均一に混合して混合物を得たことである。
【0089】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、二次粒子人造黒鉛である。
【0090】
実施例11
実施例1との相違点は、ステップ(3)において、コークス粉末と、コールタールと、キノリンと、炭化ケイ素とを質量比100:5:5:2で均一に混合して混合物を得たことである。
【0091】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0092】
実施例12
実施例1との相違点は、ステップ(3)において、コークス粉末と、コールタールと、キノリンと、炭化ケイ素とを質量比100:5:50:2で均一に混合して混合物を得たことである。
【0093】
上記負極材料の電子顕微鏡写真を
図1に示し、
図1から分かるように、負極材料は、一次粒子と二次粒子からなる。
【0094】
実施例13
実施例1との相違点は、ステップ(3)において、コークス粉末と、コールタールと、キノリンと、炭化ケイ素とを質量比100:5:15:1で均一に混合して混合物を得たことである。
【0095】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0096】
実施例14
実施例1との相違点は、ステップ(3)において、コークス粉末と、コールタールと、キノリンと、炭化ケイ素とを質量比100:5:15:5で均一に混合した後、混合物を得た。
【0097】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0098】
実施例15
実施例1との相違点は、ステップ(4)におけるプレス圧力が5MPaであることである。
【0099】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0100】
実施例16
実施例1との相違点は、ステップ(4)におけるプレス圧力が100MPaであることである。
【0101】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0102】
実施例17
実施例1との相違点は、ステップ(5)における黒鉛化処理の温度が2800℃であることである。
【0103】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0104】
実施例18
実施例1との相違点は、ステップ(5)における黒鉛化処理の温度が3200℃であることである。
【0105】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0106】
実施例19
実施例1との相違点は、ステップ(5)における黒鉛化処理の保温時間が2hであることである。
【0107】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0108】
実施例20
実施例1との相違点は、ステップ(5)における黒鉛化処理の保温時間が5hであることである。
【0109】
上記負極材料は、一次粒子人造黒鉛及び二次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は、一次粒子人造黒鉛である。
【0110】
比較例1
実施例1との相違点は、ステップ(4)で得られた前駆体を黒鉛坩堝内に入れてから、黒鉛坩堝をアチソン炉(Acheson furnace)内に移し、高温黒鉛化過程を経て負極材料を得、黒鉛化過程は、最高温度が2900℃であり、最高温度の保温時間が3hであり、黒鉛化過程は、昇温速度が0.6℃/minであり、降温速度が0.1℃/minであることである。
【0111】
比較例2
大慶石油コークスを粉砕して整形装置で整形し、粉砕整形されたコークス粉末を得て、得られたメジアン径が15μmであるコークス粉末をそのまま黒鉛坩堝内に入れてから、黒鉛坩堝をアチソン炉内に移し、高温黒鉛化を経て負極材料を得、黒鉛化過程は、最高温度が2900℃であり、最高温度の保温時間が8hであり、黒鉛化過程は、昇温速度が0.7℃/minであり、降温速度が0.1℃/minであることである。
【0112】
比較例3
大慶石油コークスを800℃の温度で4h仮焼処理し、仮焼処理の昇温速度は、1.5℃/minであり、その後、連続黒鉛化炉に投入した。昇温曲線は、8℃/minの昇温速度で2900℃まで昇温し、2900℃で3h保温し、保温後、10℃/minの降温速度で30℃まで冷却したことであり、排出物を粉砕して整形し、メジアン径を15μmに制御し、負極材料を得た。
【0113】
測定方法
(1)負極材料の粒径の測定方法:
マルバーンレーザ粒度計により複合負極材料の粒径分布範囲を測定した。
【0114】
(2)負極材料の細孔容積の測定方法:
米国マイクロメリティックス社製のASAP 2460装置を用いて測定し、細孔容積Vは、BJH脱着累積細孔容積(BJH Desorption cumulative volume of pores)モデルを用いて17Å~3000Åの細孔径範囲内で計算して得られるものである。
【0115】
(3)負極材料の比表面積の測定方法:
動的比表面積アナライザJW-DX(北京精微高博科学技術有限公司製)を用いて測定し、単位は、m2/gである。
【0116】
(4)負極材料の表面形態の測定方法:
S4800走査型電子顕微鏡(日立社製)を用いて負極材料粒子の表面形態を観察した。
【0117】
(5)負極材料の吸油量の測定方法:
ASAHI S-500吸油量測定装置(日本ASAHISOUKEN社製)を用いて測定し、吸油量Oは、粘度特性の変化によるトルクが最大トルクの70%に達した時の亜麻仁油の滴下量であり、単位は、mL/100gである。
【0118】
(6)負極材料のID/IGの測定方式:
ラマン分光測定により、複合負極材料の1300cm-1~1400cm-1の範囲にあるピーク強度IDと、1580cm-1~1620cm-1の範囲にあるピーク強度IGとの比ID/IGを測定した。
【0119】
(7)電池性能の測定方法:
実施例1~22及び比較例1~3で製造された負極材料、カルボキシメチルセルロースと、導電性カーボンブラックと、スチレンブタジエンゴムとを95:1.5:1.5:2の質量比で脱イオン水中で8h磁気撹拌し、均一に混合させた。混合して得られたスラリーを銅箔上に塗布し、60℃で真空乾燥して作業電極とした。対電極及び参照電極として金属リチウムを用い、セパレータは、Celgard2325であり、電解液は1mol・L-1LiPF6-EC(エチレンカーボネート)/DMC(ジメチルカーボネート)/EMC(エチルメチルカーボネート)(容積比1:1:1)であり、高純度アルゴンガスで充填されたグローブボックス内でCR2016型コイン電池パックの組み立てを完成させた。
【0120】
初回放電容量/初回放電効率測定は、LAND電池測定装置で行い、充放電条件は、2h静置し、0.1Cで0.005Vまで、0.09C、0.08C…0.02Cで0.001Vまで放電し、15min静置し、0.1Cで1.5Vまで充電し、15min静置したことである。
【0121】
ボタン半電池は、25±2℃の環境下でレート特性測定を行い、0.2C、1C及び2Cの充放電比容量及びクーロン効率を得た。ボタン半電池のレート測定充放電条件は、(1)0.1Cで0.01V放電し、5h定電圧、0.1Cで1.5Vまで充電し、(2)0.2Cで0.01Vまで放電し、0.01Cまで定電圧し、0.2Cで1.5Vまで充電し、(3)0.2Cで0.01Vまで放電し、0.01Cまで定電圧し、2Cで1.5Vまで充電し、(4)0.2Cで0.01Vまで放電し、0.01Cまで定電圧し、0.2Cで1.5Vまで充電し、(5)1Cで0.01Vまで放電し、0.01Cまで定電圧し、0.2Cで1.5Vまで充電し、(6)2Cで0.01Vまで放電することである。
【0122】
全電池測定:各実施例で製造されて得られた負極材料を負極活性材料とし、負極活性材料と、導電剤と、接着剤と、分散剤との質量百分率が95.2:1.5:2:1.3であり、脱イオン水に溶解して混合し、固形分を50wt%に制御し、厚さ8μmの銅箔集電体に塗布し、真空乾燥して、負極極片を製造して得た。リン酸鉄リチウムと、ポリフッ化ビニリデンと、導電剤カーボンブラックとを質量比が95:2:3で溶媒NMP(N-メチルピロリドン)と均一に混合した後、厚さ16μmのアルミニウム箔に塗布し、真空乾燥して、正極極片を製造し、塗布完了した正・負極極片をシートプレス、巻回、乾燥、注液、封口及び化学的合成、容量グレーディング等の工程を経て、554065型ソフトパックリチウムイオン電池を製造した。
【0123】
得られたソフトパック電池をLAND電池テストシステム(武漢金諾電子有限公司製)で充放電測定を行い、常温条件、1C/1C電流で充放電し、充放電電圧を3.0V~4.35Vに制限し、初回効率と500回容量維持率測定を行った(負極極片のプレス密度が1.60g/cm3である)。
上記実施例で得られた負極材料の性能測定の結果を以下の表1に示し、負極材料で製造された電池の性能測定の結果を以下の表2に示す。
【0124】
【0125】
【0126】
実施例1~20の測定データから分かるように、本出願の実施例で製造された黒鉛内部及び/又は表面に細孔が形成され、材料の高レート充放電性能が明らかに向上した。これは、負極材料が電極として製造されリチウムイオン電池に適用される場合、電解液を注入した後、材料内部の有効な電気化学反応空間が十分であり、負極材料のレート特性の向上に有利であるからである。
【0127】
比較例1で製造された負極材料は、吸油量Oが大きすぎるため、O×V×Sが上記範囲から逸脱し、材料のレート及びサイクル性能がいずれも劣った。
【0128】
比較例2で製造された負極材料は、人造黒鉛の細孔が十分に豊富ではなく、細孔容積Vが小さすぎ、O×V×Sが上記範囲から逸脱し、リチウムイオンの拡散チャネルが十分ではなく、負極材料のレート特性の向上に有利しない。
【0129】
比較例3で製造された負極材料は、製造過程における仮焼処理及び黒鉛化処理の昇温速度が本出願の製造方法の最適化範囲から逸脱するため、O×V×Sが上記範囲から逸脱し、容量、レート特性が同等のプロセス条件で製造された実施例1より劣る。
【0130】
本出願は、以上に好ましい実施例により開示されているが、特許請求の範囲を制限するものではなく、いかなる当業者も、本出願の技術思想から逸脱せずに、若干の可能な変更や修正をすることができるため、本出願の保護範囲は、本出願の特許請求の範囲に定める範囲に準ずるべきである。
【国際調査報告】