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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】負極材料、電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20241114BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508517
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2022132149
(87)【国際公開番号】W WO2024103272
(87)【国際公開日】2024-05-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524053018
【氏名又は名称】▲開▼封瑞▲豊▼新材料有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520417045
【氏名又は名称】貝特瑞新材料集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BTR NEW MATERIAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7A, 7B, and 8, High-Tech Industrial Park, Xitian Community, Gongming Office, Guangming New District Shenzhen, Guangdong 518106 China
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】黄 健
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 宝▲シュエン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 若▲チー▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲書▼展
(72)【発明者】
【氏名】任 建国
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB08
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA13
(57)【要約】
【課題】本出願は、内部及び/又は表面に細孔を有する人造黒鉛を含む負極材料、電池を提供する。
【解決手段】前記負極材料は、細孔容積をVcm3/kgに、比表面積をSm2/gに、タップ密度をTg/mLにした際に、8.5≦V×S/T≦27である。本出願が提供する負極材料及び電池は、材料の加工性能を保証した上で、負極材料の電気化学的性能を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部及び/又は表面に細孔を有する人造黒鉛を含む負極材料であって、
前記負極材料は、細孔容積をVcm3/kgに、比表面積をSm2/gに、タップ密度をTg/mLにした際に、8.5≦V×S/T≦27であり、
前記細孔容積は、米国マイクロメリティックス社製のASAP 2460装置を用いて測定し、BJH脱着累積細孔容積(BJH Desorption cumulative volume of pores)モデルを用いて、17Å~3000Åの細孔径範囲内で算出したものである、ことを特徴とする負極材料。
【請求項2】
細孔容積をVcm3/kgにした際に、5.0≦V≦8.0である、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
比表面積をSm2/gにした際に、1.78≦S≦3.00である、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項4】
タップ密度をTg/mLにした際に、0.734≦T≦1.160である、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項5】
以下の特徴(1)~(2)のうちの少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
(1)前記細孔は、マイクロ孔及びメソ孔のうちの少なくとも1種を含む;
(2)前記細孔の平均細孔径は、50Å~200Åである。
【請求項6】
X線回折によって測定すると、黒鉛結晶の(002)面の面間隔をd002にした際に、3.356Å≦d002≦3.364Åである、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項7】
粒径D50が10μm~30μmである、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項8】
人造黒鉛1次粒子及び/又は人造黒鉛2次粒子を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の負極材料。
【請求項9】
以下の特徴(1)~(2)のうちの少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の負極材料。
(1)前記負極材料は、アモルファスカーボンをさらに含む;
(2)前記負極材料は、アモルファスカーボンをさらに含み、前記アモルファスカーボンの前記負極材料における質量割合が、0.1wt%~5wt%である。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の負極材料を含む、ことを特徴とする電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、負極材料の技術分野に関し、具体的には負極材料、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、黒鉛は、電気伝導率が高く、リチウムイオン拡散係数が大きく、層状構造のリチウム吸蔵前後の容積変化が小さく、リチウム吸蔵容量が高く、リチウム吸蔵電位が低いなどの利点を有するため、現在主流の商業化リチウムイオン電池の負極材料となっている。
【0003】
従来の黒鉛負極の黒鉛化装置は、主にるつぼ炉及び箱形炉の2種類があり、両者はいずれもバッチ式作業であり、黒鉛化過程に停電が必要であるため、連続生産を実現できず、また、設備の昇温及び冷却の過程が特に制限され、昇降温速度が遅いため、生産周期が長くなり、一般的には、黒鉛化周期は、15~45日以内である。黒鉛化生産の過程において、原料中の揮発成分、不純物元素等を高温条件下で放出するため、黒鉛内部及び/又は表面に空孔を形成する。一般的に、人造黒鉛は、いずれも一定の数の細孔構造を有し、細孔の存在は、Li+が黒鉛材料内部での拡散チャネルを増加させ、Li+の拡散抵抗を減少させ、それにより材料のレート特性を効果的に向上させることができる。実際に、単純に細孔構造を改善するだけでは、レート特性が最適に達することができず、やはり改善の余地がまだ大きい。研究者は、黒鉛材料の性能に対する単一の要素の影響を研究するにとどまり、黒鉛のレート特性を最大限に改善するために、複数の要素の間の相乗効果から深く研究していない。
【0004】
したがって、黒鉛材料がすでに成熟している現段階では、単一に1つのパラメータを改善することは、すでに市場の低コスト、高性能黒鉛材料に対する需要を満たすことができず、様々な要因が相乗した作用機序を研究し、市場の需要を満たす黒鉛負極材料を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑み、本出願は、材料の加工性能を向上させた上で、負極材料のレート特性及び容量を向上させることができる負極材料、電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様によれば、本出願は負極材料を提供し、前記負極材料は、人造黒鉛を含み、前記人造黒鉛は、内部及び/又は表面に細孔構造を有し、前記負極材料は、細孔容積をVcm3/kgに、比表面積をSm2/gに、タップ密度をTg/mLにした際に、8.5≦V×S/T≦27であり、
前記細孔容積は、米国マイクロメリティックス社製のASAP 2460装置を用いて測定し、BJH脱着累積細孔容積(BJH Desorption cumulative volume of pores)モデルを用いて、17Å~3000Åの細孔径範囲内で算出したものである。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、細孔容積をVcm3/kgにした際に、5.0≦V≦8.0である。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、比表面積をSm2/gにした際に、1.78≦S≦3.00である。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、タップ密度をTg/mLにした際に、0.734≦T≦1.160である。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記細孔は、マイクロ孔及びメソ孔のうちの少なくとも1種を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記細孔は、平均細孔径が50Å~200Åである。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、X線回析によって測定され、黒鉛結晶の(002)面の面間隔をd002にした際に、3.356Å≦d002≦3.364Åである。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記負極材料の粒径D50は、10μm~30μmである。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、人造黒鉛1次粒子及び/又は人造黒鉛2次粒子を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、アモルファスカーボンをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記負極材料は、アモルファスカーボンをさらに含み、前記アモルファスカーボンの前記負極材料中の質量割合は、0.1wt%~5wt%である。
【0017】
第2態様によれば、本出願は、第1態様に記載の負極材料を含む電池を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本出願の技術案は、少なくとも以下の有益な効果を奏する。
本出願が提供する負極材料は、内部及び/又は表面に細孔を有する人造黒鉛を含み、負極材料の細孔容積をVcm3/kgに、比表面積をSm2/gに、タップ密度をTg/mLにした際に、8.5≦V×S/T≦27である。一般的に、人造黒鉛の一定範囲内の細孔容積は、リチウムイオンの拡散チャネルを増加させ、リチウムイオンの拡散抵抗を減少させ、材料のレート特性を効果的に向上させることができ、一定範囲内の比表面積が十分な電気化学反応界面を保証し、リチウムイオンの固液界面及び固相内での拡散を促進し、濃度分極を低減し、負極材料の容量及びレート特性の向上に有利である。出願人は大量の鋭意研究を経て、リチウムイオンが移動する時、移動速度が移動空間(即ち、細孔容積の寸法)及び反応界面の寸法に関係するだけでなく、人造黒鉛表面の摩擦状況にも関係するため、細孔容積及び比表面積が十分であっても、必ずしもリチウムイオンが完全に放出・吸蔵することを保証できるとは限らず、摩擦状況がタップ密度の寸法を直接的に影響することができることを見出した。V×S/Tをこの範囲に制限することにより、適切な空間及び反応界面において、リチウムイオンが人造黒鉛材料粒子の内部でよりスムーズに放出・吸蔵することを保証し、材料のレート及び容量をより大きく向上させることができる。
【0019】
本出願が提供する負極材料は、連続黒鉛化プロセスによって生産加工され、全ての材料が連続的に仕込まれ、連続的に排出され、さらに全ての材料が高温域を通過する時間及び温度を一致させ、且つ黒鉛化過程は、昇降温速度を制御することにより、材料内の揮発成分、不純物元素等の物質を均一で迅速に放出することができ、それによって、黒鉛内部及び/又は表面細孔容積の正確な制御を実現し、細孔容積及び材料比表面積の制御を実現する。上記プロセス方法を相乗的に使用することにより、従来の黒鉛化炉内の異なる位置に温度勾配が存在することによる材料の加熱ムラ、生産加工された製品の比表面積、細孔容積、タップ密度などの指標のバラツキが大きく制御されないなどの問題点を克服し、それによって加工された材料の細孔容積、比表面積、タップ密度が理想的な制御設計要求に到達させる。
【0020】
本出願が提供する負極材料は、単位質量あたり内のエネルギー消費が低く、コスト及び生産周期が明らかな利点を有し、且つ環境に優しい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本出願の実施例10が提供する負極材料の走査型電子顕微鏡写真である。
図2】本出願の実施例10が提供する負極材料の走査型電子顕微鏡写真の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本出願をよりよく説明して本出願の技術案を理解しやすくするために、以下、本出願をさらに詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本出願の簡単化された例に過ぎず、本出願の権利保護範囲を示す又は制限するものではなく、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲に準ずる。
【0023】
負極材料の分野において、連続黒鉛化設備についての開発が数十年続き、早くとも1987年に、特許(US06619591)に炭素含有材料に対して連続黒鉛化処理を行うことができる装置が開示され、近年、出願人も連続黒鉛化設備を開発し続け、例えば2019年に出願された登録公告番号がCN211425033Uである特許には、排出口から連続的に排出するとともに、材料パイプから連続的に仕込むことができる縦型連続リチウム電池負極材料生産用キルンが開示されている。連続黒鉛化プロセスは従来のプロセスと比べて、黒鉛化の時間が数日から数時間に短縮されるため、エネルギー消費の低減が相当に顕著であるが、黒鉛化の時間が大幅に短縮されることにより、従来の人造黒鉛と比べて、連続黒鉛化プロセスは、人造黒鉛のミクロ構造の変化、特に人造黒鉛の内部細孔構造の変化、結晶形の変化などが得られる。従来より、業界では、このような改変は、人造黒鉛の要求性能を満たすことが難しく、改善することが困難であると検証されているため、連続黒鉛化設備が30~40年前から存在していたとしても、連続黒鉛化された人造黒鉛負極製品の量産に成功した前例はない。
【0024】
近年、エネルギーのさらなる逼迫に伴い、人造黒鉛のコストをさらに低減するために、出願人は、連続黒鉛化設備の応用を開発し続け、性能において現在の通常の黒鉛化負極材料と同等、ひいてはより良好な人造黒鉛負極材料を開発し、人造黒鉛負極材料のエネルギー消費を低減し、さらにコストを低減することを目的とする。出願人は、大量の調製プロセスの開発を経て、人造黒鉛製品に不利な変化をもたらす温度の急速な昇降を改善できる様々な手段を開発し、製品を選別することで、一連の異なる型番の人造黒鉛負極材料を得る。これらの人造黒鉛負極材料は、ミクロ構造が通常の人造黒鉛製品と異なるが、その電気的性能はいずれも通常の人造黒鉛製品と基本的に同等であることができ、ひいては、ある方面での電気的性能、加工性能の表現は、より優れているか又は安定しており、通常の人造黒鉛製品に代わる条件を備えている。
【0025】
以下、出願人が開発した調製プロセスを例として、該調製プロセス及びそれに関連する製品についてさらに詳細に説明する。
【0026】
負極材料の製造方法であり、
生コークスに対して整形処理を行い、コークス粉末を得るステップS10と、
コークス粉末、バインダー及び溶媒を含む混合物を5Mpa~100Mpaの圧力でプレスし、前駆体を得る。ここで、コークス粉末、バインダー及び溶媒は、質量比で100:(3~20):(5~50)であるステップS20と、
S20における前駆体を1000℃~1500℃の温度に置いて2h~6h炭化処理を行い、冷却して炭化品を得るステップS30と、
前駆体を連続黒鉛化炉内に置いて黒鉛化処理を行い、負極材料を得て、ここで、黒鉛化処理の具体的な方法は、12℃/min~25℃/minの昇温速度で2800℃~3200℃まで昇温し、さらに2800℃~3200℃で2h~5hを保温した後、22℃/min~26℃/minの降温速度で30℃まで冷却することであり、そのうち、黒鉛化処理の昇温速度と炭化処理の昇温速度との比を4~8に制御するステップS40とを含む。
【0027】
本出願が提供する負極材料の製造方法は、コークス粉末、バインダー及び溶媒の混合物をプレスし、プレス品を一定の温度条件下で炭化処理し、その後、炭化品をそのまま連続黒鉛化炉内に置き、急速な昇温を経た後、比較的短い期間で前駆体を黒鉛化温度に到達させるように昇温速率が極めて速く、不純物原子が揮発して逃げ、黒鉛粒子の内部及び/又は表面に細孔を形成することができる。また、連続黒鉛化炉内の材料を炉に投入してから排出する過程は、数時間内にのみ完了し、連続作業方式を採用し、材料を連続的に仕込み及び連続的に排出し、この期間中、停電過程がなく、連続黒鉛化炉内の異なる位置の温度勾配の差が小さく、負極材料黒鉛化の均一性を高めることができ、且つ連続黒鉛化炉の熱エネルギー利用率が高く、生産コストを低減することもできる。
【0028】
いくつかの実施形態において、生コークスは、石油コークス、ニードルコークス、ピッチコークス及び等方性コークスのうちの少なくとも1種を含む。
【0029】
いくつかの実施形態において、整形は、粉砕、球状化又は分級のうちの少なくとも1種を含み、整形処理は、粒子形態の改善及びタップ密度の向上に有利である。
【0030】
整形されて得られるコークス粉末のメジアン径は、10μm~20μmであり、より具体的には、10μm、11.5μm、12μm、13μm、15μm、17μm、18μm、18.5μm、19μm又は20μmなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。複数回の試験により、コークス粉末のメジアン径を上記範囲内に制御することは、加工性能、容量及びレート特性の両立に有利である。
【0031】
いくつかの実施形態において、コークス粉末中の炭素の質量含有量は、80%以上であり、具体的には80%、81%、82%、85%、90%、95%又は96%などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。
【0032】
いくつかの実施形態において、溶媒は、水、エタノール、アセトン、ベンゼン、トルエン、キノリン、テトラヒドロフラン及び四塩化炭素のうちの少なくとも1種を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、バインダーは、重質油、ミネラル油、コールタール、エチレンタール、ピッチ、石油樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、クマロン樹脂、ポテトスターチ、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、サツマイモデンプン、くず粉及びタピオカ粉のうちの少なくとも1種を含む。ピッチは、石油系液状ピッチ及び石炭系液状ピッチのうちの少なくとも1種を含んでもよい。具体的には、石油系液状ピッチは、石油ピッチ、改質ピッチ、メソフェーズピッチ等であってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、コークス粉末、バインダー、溶媒の質量比は、100:(3~20):(5~50)であり、具体的には、100:3:5、100:10:15、100:15:20、100:20:20、100:20:15、100:10:10又は100:15:25などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。
【0035】
理解されるように、実施例において、バインダーの割合が低い(バインダーとコークス粉末との質量比が3~10:100である)場合、得られた人造黒鉛が1次粒子を主とし、実施例において、バインダーの割合が高い(バインダーとコークス粉末との質量比が10~20:100である)場合、得られた人造黒鉛が2次粒子を主とする。
【0036】
いくつかの実施形態において、混合物の混合方式は、機械的撹拌及び超音波分散のうちの少なくとも1種を含む。混合に機械的撹拌を採用する場合、混合物における各画分を十分に均一に混合すれば、プロペラ式撹拌機、タービン式撹拌機、フラットブレード式撹拌機等を採用することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、撹拌速度は、10r/min~1000r/minであり、具体的には、10r/min、50r/min、70r/min、100r/min、120r/min、150r/min、200r/min、300r/min、350r/min、400r/min、500r/min又は1000r/minなどであってもよく、ここで限定されない。撹拌速度を上記範囲内に制御することにより、各画分を混合して均一な混合物を形成することに有利である。
【0038】
撹拌は、常温で行ってもよく、予熱状態で行ってもよく、好ましくは、撹拌温度を25℃~200℃に制御してもよく、理解されるように、適切な予熱は各画分を混合して均一な混合物を形成することに有利である。
【0039】
いくつかの実施形態において、プレスの方式は、押出、金型プレス、ロールプレス、等方圧加圧のうちの少なくとも1種を含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、プレスの圧力は、5MPa~100MPaであり、具体的には、5MPa、15MPa、25MPa、30MPa、35MPa、40MPa、45MPa、50MPa、55MPa、60MPa、70MPa、80MPa、90MPa又は100MPaなどであってもよく、プレス処理を通じて、一方では黒鉛化過程における材料の流動性を向上させることができ、それによって黒鉛化降温過程の冷却速度を加速させ、ミクロ形態、比表面積及びタップ密度の制御に有利であり、他方では炉装填量及び生産能力を向上させることができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、炭化処理の温度は、具体的には、1000℃、1050℃、1100℃、1200℃、1300℃、1400℃又は1500℃などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。理解されるように、炭化処理温度が上記範囲内にあると、原料中の揮発成分等の物質の排出に有利であり、需要を満たす細孔構造の形成に有利である。
【0042】
いくつかの実施形態において、炭化処理の保温時間は、2h~6hであり、具体的には、2h、2.5h、3h、4h、5h又は6hなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。
【0043】
いくつかの実施形態において、炭化処理後に自然冷却して炭化品を得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、黒鉛化処理の保温温度は、具体的には、2800℃、2900℃、3000℃、3050℃、3100℃、3150℃、3180℃又は3200℃などであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。
【0045】
いくつかの実施形態において、黒鉛化処理の保温時間は、2h~5hであり、具体的には、2h、2.5h、3h、3.5h、3.8h、4h、4.5h又は5hなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。好ましくは、黒鉛化処理の保温時間は、2h~3hである。
【0046】
いくつかの実施形態において、黒鉛化処理の昇温速度は、12℃/min~25℃/minであり、具体的には、12℃/min、13℃/min、15℃/min、18℃/min、20℃/min又は25℃/minなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。急速な昇温は、一方では材料の細孔容積及び比表面の制御に有利であり、同時に熱の消散及び生産コストを低減することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、黒鉛化処理の降温速度は、22℃/min~26℃/minであり、具体的には、22℃/min、23℃/min、24℃/min、24.5℃/min、25℃/min、25.5℃/min又は26℃/minなどであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、当該数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用される。急速な降温は、黒鉛化加工の周期を大幅に短縮し、生産コストを低減することができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、黒鉛化処理の昇温速度と炭化処理過程の昇温速度との比は、4~8の間に制御され、具体的には、4、4.5、5、6、7又は8などであってもよい。両者の昇温速度を上記範囲内に維持することにより、材料の細孔構造、表面のミクロ形態及び摩擦状況に影響を与えることができ、ひいては材料の比表面積及びタップ密度の制御に有利であり、しかも造孔剤を使用せずに、人造黒鉛の内部に一定量の細孔容積を形成することを実現することができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、黒鉛化処理後に、粉砕、篩分け及び消磁のうちの少なくとも1種を含む。好ましくは、炭化処理後、粉砕、消磁及び篩分けを順に行う。
【0050】
いくつかの実施形態において、粉砕手段は、機械式粉砕機、気流式粉砕機及び低温粉砕機のうちのいずれか1種である。
【0051】
いくつかの実施形態において、篩分け方式は、固定篩、ドラムスクリーン、共振篩、ローラーふるい、振動篩及びチェーンふるい(chain grizzly)から選択されるいずれか1種であり、篩分けのメッシュ数は100~500メッシュであり、具体的に、篩分けのメッシュ数は100メッシュ、200メッシュ、250メッシュ、325メッシュ、400メッシュ、500メッシュ等であってもよく、負極材料の粒子径を上記範囲内に制御することにより、負極材料の加工特性の向上に寄与する。
【0052】
いくつかの実施形態において、消磁装置は、永久磁石式ドラム型磁選機、電磁除鉄機及び脈動高勾配磁気選別機から選択されるいずれか1つであり、消磁は、最終的に負極材料中の磁性材料の含有量を制御するためであり、電池に対する磁性材料の放電効果を回避するとともに、使用中における電池の安全性を確保するためである。
【0053】
1つの実施形態に係る負極材料は、人造黒鉛を含み、人造黒鉛の内部及び/又は表面に細孔を有し、負極材料は、細孔容積をVcm3/kgに、比表面積をSm2/gに、タップ密度をTg/mLにした際に、8.5≦V×S/T≦27であり、細孔容積は、米国マイクロメリティックス社製のASAP 2460装置を用いて測定し、BJH脱着累積細孔容積(BJH Desorption cumulative volume of pores)モデルを用いて、17Å~3000Åの細孔径範囲内で算出したものである。
【0054】
本出願が提供する負極材料は、連続黒鉛化プロセスによって生産加工され、全ての材料が高温域を通過する時間及び温度を一致させ、且つ昇降温速度の制御を採用することによって、材料内の揮発成分、不純物元素等の物質を均一で迅速に放出することができ、それによって、材料の細孔容積、比表面積、タップ密度を理想的な調整制御設計要求に到達させる。
【0055】
一般的に、人造黒鉛の一定範囲内の細孔容積は、Li+の拡散チャネルを増加させ、Li+の拡散抵抗を減少させ、それにより材料のレート特性を効果的に向上させることができ、一定範囲内の比表面積が十分な電気化学反応界面を保証し、リチウムイオンの固液界面及び固相内での拡散を促進し、濃度分極を低減し、負極材料の容量及びレート特性の向上に有利である。出願人は大量の鋭意研究を経て、リチウムイオンが移動する時、移動速度が移動空間(即ち、細孔容積の寸法)及び反応界面の寸法に関係するだけでなく、人造黒鉛表面の摩擦状況にも関係するため、細孔容積及び比表面積が十分であっても、必ずしもリチウムイオンが完全でスムーズに放出・吸蔵することを保証できるとは限らず、摩擦状況がタップ密度の大きさを直接的に影響することができることを見出した。V×S/Tをこの範囲に制限することにより、適切な空間及び反応界面において、リチウムイオンが人造黒鉛材料粒子の内部でよりスムーズに放出・吸蔵することを保証し、材料のレート及び容量をより大きく向上させることができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、負極材料は、細孔容積をVcm3/kgした際に、5.0≦V≦8.0であり、具体的には、5.0、5.1、5.2、5.5、5.8、6.0、6.3、6.5、6.8、6.9、7.0、7.1、7.5、7.6、7.8又は8.0などであってもよく、ここで限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態において、細孔は、マイクロ孔及びメソ孔のうちの少なくとも1種を含む。マイクロ孔は、孔径が2nm未満の細孔であり、メソ孔は、孔径が2nm~50nmの細孔である。黒鉛の内部及び/又は表面に豊富な細孔が形成されることは、より多くのリチウムイオン拡散チャネルの創造に有利であり、それによって負極材料の電気化学的性能を向上させる。
【0058】
いくつかの実施形態において、細孔の平均細孔径は、50Å~200Åである。具体的には、細孔の平均細孔径は、具体的に50Å、60Å、70Å、100Å、150Åまたは200Åなどであってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、負極材料は、比表面積をSm2/gにした際に、1.78≦S≦3.00であり、具体的には、1.78、1.85、1.95、2.00、2.25、2.43、2.57、2.61、2.72、2.75、2.80又は3.00などであってもよく、ここで限定されない。理解されるように、比表面積が大きすぎると、固体電解質膜の形成を招きやすくなり、不可逆リチウム塩が過度に消費され、電池の初回効率を下させる。
【0060】
いくつかの実施形態において、負極材料は、タップ密度をTg/mlにした際に、0.734≦T≦1.160であり、具体的には、0.734、0.751、0.768、0.784、0.797、0.818、0.822、0.837、0.863、0.989、0.963、0.958、0.983、0.981、0.997、1.012、1.023、1.033、1.041、1.086又は1.160などであってもよく、ここで限定されない。
【0061】
いくつかの実施形態において、負極材料は、X線回折によって測定され、(002)面の面間隔をd002にした際に、3.356Å≦d002≦3.364Åである。面間隔d002が上記範囲内にあることから、人造黒鉛粒子の黒鉛結晶度が高く、即ち、黒鉛化度が高いことが分かる。
【0062】
いくつかの実施形態において、負極材料は、粒径D50が10μm~30μmである。具体的には、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、20μm、25μm又は30μmなどであってもよく、ここで限定されない。具体的には、レーザー回折法により、負極材料の体積基準の累積粒度分布における50%の粒径を測定して得ることができる。好ましくは、負極材料の粒径D50が10μm~20μmである。
【0063】
いくつかの実施形態において、負極材料は、人造黒鉛1次粒子及び/又は人造黒鉛2次粒子を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、負極材料は、アモルファスカーボンをさらに含む。理解されるように、接着剤が黒鉛化処理された後、一部が黒鉛化カーボンに転化しにくく、黒鉛化カーボンに転化できない部分がアモルファスカーボンの形で人造黒鉛粒子の表面に存在する。
【0065】
いくつかの実施形態において、負極材料におけるアモルファスカーボンの質量比は、0.1wt%~5wt%であり、少量のアモルファスカーボンの存在は、リチウムイオンにより多くの不規則でより開放された拡散経路を提供し、材料のレート特性の向上に有利である。
【0066】
いくつかの実施形態において、負極材料は、比容量が320mAh/g~370mAh/gであり、具体的には、320mAh/g、340mAh/g、342mAh/g、345mAh/g、353mAh/g、355mAh/g、357mAh/g、360mAh/g、365mAh/g又は370mAh/gなどであってもよく、ここで限定されない。
【0067】
いくつかの実施形態において、負極材料の初回クーロン効率は、93%以上であり、具体的には、93.0%、93.1%、94.3%、94.4%、94.5%、94.6%、94.7%、94.8%、94.9%又は95.1%などであってもよく、ここで限定されない。
【0068】
電池であって、上記負極材料を含む。
【0069】
当業者にとって明らかなように、以上で説明された電池の製造方法は実施例に過ぎない。本発明の内容を逸脱しない範囲内において、当該分野で通常使用される他の方法を採用してもよく、他の種類の電池、例えばナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池等に製造して測定してもよい。
【実施例
【0070】
以下、複数の実施例により、本出願の実施例についてさらに説明する。ただし、本出願の実施例は、以下の具体的な実施例に限定されない。保護範囲内において、適切な変更を実施することができる。
【0071】
実施例1
本実施例に係る負極材料の製造方法は、
(1)山東省京陽コークスを粉砕して整形装置で整形し、粉砕整形された後のコークス粉末を得て、メジアン径を12μmに制御するステップと、
(2)コークス粉末、コールタール及びキノリンを質量比100:5:20で均一に混合して混合物を得るステップと、
(3)混合物を20MPa圧力でプレスして前駆体を得るステップと、
(4)前駆体を1100℃の温度で4h炭化処理し、炭化過程における昇温速度が3.3℃/minであり、冷却して炭化品を得るステップと、
(5)炭化品を連続黒鉛化炉3100℃で黒鉛化処理して黒鉛化品を得る。昇温曲線は、17.2℃/minの昇温速度で3100℃まで昇温し、3100℃で3h保温し、保温後、25.6℃/minの降温速度で30℃まで冷却することであり、黒鉛化過程の昇温速度と炭化過程の昇温速度との比を5.2に制御するステップと、
(6)黒鉛化品を分散、消磁、篩分け工程で処理し、人造黒鉛負極材料を得るステップとを含む。
【0072】
上記負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0073】
実施例2
本実施例に係る負極材料の製造方法は、
(1)山東省京陽ニードルコークスの生コークスを粉砕して整形装置で整形し、粉砕整形された後のコークス粉末を得て、メジアン径を12μmに制御するステップと、
(2)コークス粉末、フェノール樹脂及び水を質量比100:5:20で均一に混合して混合物を得るステップと、
(3)混合物を20MPa圧力でプレスして前駆体を得るステップと、
(4)前駆体を1100℃の温度で4h炭化処理し、炭化過程における昇温速度が3.3℃/minであり、冷却して炭化品を得るステップと、
(5)炭化品を連続黒鉛化炉3100℃で黒鉛化処理して黒鉛化品を得る。昇温曲線は、16.0℃/minの昇温速度で3100℃まで3.2h昇温し、3100℃で3h保温し、保温後、22℃/minの降温速度で30℃まで2.3h冷却することであり、黒鉛化過程の昇温速度と炭化過程の昇温速度との比を4.8に制御するステップと、
(6)黒鉛化品を分散、消磁、篩分け工程で処理し、人造黒鉛負極材料を得るステップとを含む。
【0074】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0075】
実施例3
本実施例に係る負極材料の製造方法は、
(1)大慶石油コークスの生コークスを粉砕して整形装置で整形し、粉砕整形されたコークス粉末を得て、メジアン径を15μmに制御するステップと、
(2)コークス粉末、コールタール及びキノリンを質量比100:5:15で均一に混合して混合物を得るステップと、
(3)混合物を20MPa圧力でプレスして前駆体を得るステップと、
(4)前駆体を1200℃の温度で3h炭化処理し、炭化処理の昇温速度が3.2℃/minであり、冷却して炭化品を得るステップと、
(5)炭化品を連続黒鉛化炉3000℃で黒鉛化処理して黒鉛化品を得る。昇温曲線は、13.5℃/minの昇温速度で3000℃まで3.7h昇温し、3000℃で3h保温し、保温後、24.7℃/minの降温速度で30℃まで2h冷却することであり、黒鉛化処理の昇温速度と炭化処理の昇温速度との比を4.2に制御するステップと、
(6)黒鉛化品を分散、消磁、篩分け工程で処理し、人造黒鉛負極材料を得るステップとを含む。
【0076】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0077】
実施例4
本実施例の負極材料の製造方法は、
(1)大慶石油コークスの生コークスを粉砕して整形装置で整形し、粉砕整形されたコークス粉末を得て、メジアン径を15μmに制御するステップと、
(2)コークス粉末、フェノール樹脂及び水を質量比100:5:15で均一に混合して混合物を得るステップと、
(3)混合物を20MPa圧力でプレスして前駆体を得るステップと、
(4)前駆体を1150℃の温度で4h炭化処理し、炭化処理の昇温速度が3.1℃/minであり、冷却して炭化品を得るステップと、
(5)炭化品を連続黒鉛化炉3000℃で黒鉛化処理して黒鉛化品を得る。昇温曲線は、14.3℃/minの昇温速度で3000℃まで3.5h昇温し、3000℃で3h保温し、保温後、22.5℃/minの降温速度で30℃まで2.2h冷却することであり、黒鉛化処理の昇温速度と炭化処理の昇温速度との比を4.6に制御するステップと、
(6)黒鉛化品を分散、消磁、篩分け工程で処理し、人造黒鉛負極材料を得るステップとを含む。
【0078】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0079】
実施例5
実施例1との相違点は、ステップ(4)における炭化温度が1500℃であることである。
【0080】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0081】
実施例6
実施例1との相違点は、ステップ(4)における炭化温度が1000℃であることである。
【0082】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0083】
実施例7
実施例1との相違点は、ステップ(4)における炭化時間が3hであることである。
【0084】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0085】
実施例8
実施例1との相違点は、ステップ(4)における炭化時間が6hであることである。
【0086】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0087】
実施例9
実施例1との相違点は、ステップ(2)において、コークス粉末、コールタール及びキノリンを質量比100:3:20で均一に混合して混合物を得ることである。
【0088】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0089】
実施例10
実施例9との相違点は、ステップ(1)において使用される原料が大慶石油コークスであり、ステップ(2)において、コークス粉末、コールタール及びキノリンを質量比100:20:20で均一に混合して混合物Aを得ることである。
【0090】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、図1及び図2の走査型電子顕微鏡図から分かるように、大部分は2次粒子人造黒鉛であり、全体的に表面が平坦であり、形態が良好である。
【0091】
実施例11
実施例9との相違点は、ステップ(1)において使用される原料が錦州石化石油コークスの生コークスであり、ステップ(2)において、コークス粉末、コールタール及びキノリンを質量比100:5:5で均一に混合して混合物を得ることである。
【0092】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0093】
実施例12
実施例10との相違点は、ステップ(2)において、コークス粉末、コールタール及びキノリンを質量比100:5:50で均一に混合して混合物を得ることである。
【0094】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0095】
実施例13
実施例10との相違点は、ステップ(2)において、コークス粉末、フェノール樹脂及びエタノールを質量比100:5:20で均一に混合して混合物を得ることである。
【0096】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0097】
実施例14
実施例10との相違点は、ステップ(2)において、コークス粉末、エポキシ樹脂及び水を質量比100:5:20で均一に混合して混合物を得ることである。
【0098】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0099】
実施例15
実施例10との相違点は、ステップ(3)におけるプレス圧力が5MPaであることである。
【0100】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0101】
実施例16
実施例10との相違点は、ステップ(3)におけるプレス圧力が100MPaであることである。
【0102】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0103】
実施例17
実施例10との相違点は、ステップ(5)における黒鉛化処理の温度が3000℃であることである。
【0104】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0105】
実施例18
実施例10との相違点は、ステップ(5)における黒鉛化処理の温度が3200℃であることである。
【0106】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0107】
実施例19
実施例10との相違点は、ステップ(5)における黒鉛化過程の昇温曲線が12℃/minの昇温速度で3000℃まで昇温することである。
【0108】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0109】
実施例20
実施例10との相違点は、ステップ(5)における黒鉛化処理の保温時間が5hであることである。
【0110】
本実施例で得られた負極材料は、1次粒子人造黒鉛及び2次粒子人造黒鉛を含み、その大部分は1次粒子人造黒鉛である。
【0111】
比較例1
実施例1との相違点は、ステップ(5)において、炭化品を黒鉛ルツボ内に入れ、その後、黒鉛ルツボをアチソン炉内に移して黒鉛化処理を行って負極材料を得て、黒鉛化過程の昇温曲線は、0.7℃/minの昇温速度で3100℃まで昇温し、3h保温し、0.1℃/minの降温速度で30℃まで冷却することであり、黒鉛化過程の昇温速度と炭化処理の昇温速度との比を0.2に制御し、負極材料を得ることである。
【0112】
比較例2
山東省京陽ニードルコークスの生コークス原料を粉砕し、整形装置によって整形処理され、得られたメジアン径が12μmのコークス粉末を1100℃の温度で4h炭化処理し、炭化後のコークス粉末を黒鉛ルツボ内に入れ、その後黒鉛ルツボをアチソン炉内に移して黒鉛化処理を行って負極材料を得る。黒鉛化過程の昇温曲線は、0.7℃/minの昇温速度で3100℃まで昇温し、8h保温し、0.1℃/minの降温速度で30℃まで冷却することであり、黒鉛化過程の昇温速度と炭化処理の昇温速度との比を0.2に制御し、負極材料を得る。
【0113】
比較例3
山東省京陽ニードルコークスの生コークス原料を1100℃の温度で4h炭化処理した後、通常の連続黒鉛化炉に投入して黒鉛化処理を行い、黒鉛化処理の昇温曲線は、9.6℃/minの昇温速度で2900℃まで昇温し、3h保温し、10℃/minの降温速度で30℃まで冷却することであり、整形粉砕された後に得られた負極材料の黒鉛化過程の昇温速度と炭化処理の昇温速度との比を2に制御し、負極材料を得る。
【0114】
測定方法
(1)負極材料の粒径の測定方法は、マルバーンレーザ粒度計により負極材料の粒径分布範囲を測定することである。
(2)負極材料の比表面積の測定方法は、北京精微高博科学技術有限公司の動的比表面積高速測定器JW-DXを用いて測定し、単位がm2/gであることである。
(3)負極材料の表面形態の測定方法は、日立会社のS4800走査型電子顕微鏡を用いて負極材料粒子の表面形態を観察することである。
(4)負極材料のタップ密度の測定方法は、Anton Paar (Shanghai) Trading Co.Ltd.のQuantaタップ密度分析器Dual Autotapを用いて測定し、タップ密度Tは振動1000回後の数値であり、単位がg/mLである。
(5)負極材料の黒鉛結晶の結晶面層間距離の測定方法は、X線回折法により、負極材料における黒鉛結晶(002)面の結晶面層間距離d002を特徴付け、単位がÅであることである。
(6)電池性能の測定方法は、実施例1~20及び比較例1~3で製造された負極材料、カルボキシメチルセルロース、導電性カーボンブラック及びスチレンブタジエンゴムを95:1.5:1.5:2の質量比で脱イオン水中で8h磁気撹拌し、均一に混合させた。混合して得られたスラリーを銅箔上に塗布し、60℃で真空乾燥して作業電極とした。対電極及び参照電極として金属リチウムを用いて、セパレータがCelgard2325であり、電解液が1mol・L-1LiPF6-EC(エチレンカーボネート)/DMC(ジメチルカーボネート)/EMC(エチルメチルカーボネート)(体積比1:1:1)であり、高純度アルゴンガスを充填したグローブボックス内でCR2016型コイン電池の組み立てを完成することである。
【0115】
初回放電容量/初回放電効率測定は、LAND電池測定装置で行い、充放電条件は、2h静置し、0.1Cで0.005Vまで、0.09C、0.08C…0.02Cで0.001Vまで放電し、15min静置し、0.1Cで1.5Vまで充電し、15min静置することである。
【0116】
ボタン式半電池は、25±2℃の環境下でレート特性測定を行い、0.2C、1C及び2Cの充放電比容量及びクーロン効率を得る。ボタン式半電池のレート測定充放電条件は、(1)0.1Cで0.01Vまで放電し、5h定電圧し、0.1Cで1.5Vまで充電し、(2)0.2Cで0.01Vまで放電し、0.01Cまで定電圧し、0.2Cで1.5Vまで充電し、(3)0.2Cで0.01Vまで放電し、0.01Cまで定電圧し、2Cで1.5Vまで充電し、(4)0.2Cで0.01Vまで放電し、0.01Cまで定電圧し、0.2Cで1.5Vまで充電し、(5)1Cで0.01Vまで放電し、0.01Cまで定電圧し、0.2Cで1.5Vまで充電し、(6)2Cで0.01Vまで放電することである。
【0117】
全電池測定は、以下の通りである。
各実施例で製造された負極材料を負極活物材料とし、負極活物質と、導電剤と、バインダーと、分散剤との質量百分率が95.2:1.5:2:1.3であることに応じて、水に溶解して混合させ、固形分を50wt%に制御し、厚さ8μmの銅箔集電体に塗布し、真空乾燥して、負極極片を製造し、リン酸鉄リチウムと、ポリフッ化ビニリデンと、導電剤カーボンブラックとを質量比が95:2:3で溶媒NMP(N-メチルピロリドン)と均一に混合した後、厚さ16μmのアルミニウム箔に塗布し、真空乾燥して、正極極片を製造し、塗布された正・負極極片を片の製造、巻回、乾燥、注液、封口及び化学的合成、容量グレーディング工程を経て、554065型ソフトパックリチウムイオン電池を製造した。
【0118】
得られたソフトパック電池を武漢金諾電子有限公司のLAND電池テストシステムで充放電テストを行い、常温条件、1C/1C電流で充放電し、充放電電圧を3.0V~4.35Vに制限し、初回効率と500週間容量維持率測定を行い(負極極片のプレス密度が1.60g/cm3)、
上記性能測定結果は、下表で示される。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
実施例1~20の測定データから分かるように、本出願の実施例で製造された黒鉛の内部及び/又は表面に細孔が形成され、細孔を追加のリチウム貯蔵空間とすることは、負極材料のリチウム貯蔵容量を向上させ、負極材料の比容量が343mAh/g以上に達することができる。V×S/Tを8.5~27の範囲内に制御することにより、適切な空間及び反応界面において、リチウムイオンが負極材料粒子の内部でよりスムーズに放出・吸蔵することを保証し、負極材料の電気化学的性能を向上させることができる。
【0122】
比較例1における非連続黒鉛化プロセスにより製造された負極材料は、比表面積が大きすぎ、タップ密度が小さすぎ、V×S/Tが上記範囲から外れ、同種類の原料で作製された実施例1~2と比較して、材料の比容量及びレート特性が著しく低下している。
【0123】
比較例2における非連続黒鉛化プロセスにより製造された負極材料は、人造黒鉛の細孔が十分に豊富ではなく、細孔容積Vが小さすぎ、タップ密度が大きすぎ、V×S/Tが上記範囲から外れ、人造黒鉛が負極材料として、リチウムを放出・吸蔵する反応を発生する表面の有効活性サイトが低減し、材料のレート特性が著しく低下している。
【0124】
比較例3において、連続黒鉛化プロセスを用いて負極材料を製造したが、バインダーを添加せず、黒鉛化昇降温速度及び黒鉛化の昇温速度と炭化処理の昇温速度との比を制御せずに、それによってV×S/Tが上記範囲から外れ、同じプロセス条件で製造した実施例1~2に比べて、容量やレート特性がより劣っていた。
【0125】
本出願は、以上に好ましい実施例により開示されているが、特許請求の範囲を制限するものではなく、いかなる当業者も、本出願の技術思想から逸脱せずに、若干の可能な変更や修正をすることができるため、本出願の保護範囲は、特許請求の範囲に定める範囲に準ずるべきである。
図1
図2
【国際調査報告】