(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】レジスト混合物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/075 20060101AFI20241114BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20241114BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20241114BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241114BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G03F7/075 511
C09D133/04
C08L83/04
G03F7/20 501
G03F7/20 521
G03F7/004 504
G03F7/004 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524474
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-07
(86)【国際出願番号】 EP2022080231
(87)【国際公開番号】W WO2023073186
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524149931
【氏名又は名称】ファラダアイシー センサーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】グーターマン,ライアン
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA05
2H197CA07
2H197CA09
2H197CE01
2H197HA03
2H225AC00
2H225AC22
2H225AC32
2H225AC33
2H225AC60
2H225AD05
2H225AE12P
2H225AF42P
2H225AF96P
2H225BA31P
2H225CA11
2H225CA30
2H225CC01
2H225CC12
2H225CC13
4J002CP031
4J002EH106
4J002EL026
4J002FD146
4J002GQ00
4J038DL031
4J038KA03
4J038PB09
(57)【要約】
【課題】
イオン伝導体を製造するためのレジスト混合物。
【解決手段】
いくつかの例では、混合物は、架橋性であり、シロキサンを含むポリマーと、クロスリンカーと、カチオン性成分及びアニオン性成分を含む塩とを含む。他の例では、混合物は、重合性であり、シロキサンを含むポリマーと、モノマーと、カチオン性成分及びアニオン性成分を含む塩とを含む。カチオン性成分またはアニオン性成分の少なくとも1つは、ポリマーと結合している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導体を製造するための架橋性レジスト混合物であって、前記混合物は、
シロキサンを含むポリマーと、
クロスリンカーと、
カチオン性成分、及び
アニオン性成分を含む
塩と
を含み、
前記カチオン性成分または前記アニオン性成分の少なくとも1つは、前記ポリマーと結合している、前記混合物。
【請求項2】
イオン伝導体を製造するための重合性レジスト混合物であって、前記混合物は、
シロキサンを含むポリマーと、
モノマーと、
カチオン性成分、及び
アニオン性成分を含む
塩と
を含み、
前記カチオン性成分または前記アニオン性成分の少なくとも1つは、前記ポリマーと結合している、前記混合物。
【請求項3】
クロスリンカーを含む、請求項2に記載の混合物。
【請求項4】
前記クロスリンカーは、前記モノマーと共有結合している、請求項3に記載の混合物。
【請求項5】
前記クロスリンカーは、前記ポリマーと共有結合している、請求項1または3に記載の混合物。
【請求項6】
前記クロスリンカーは、前記カチオン性成分または前記アニオン性成分の少なくとも1つと共有結合している、請求項1または3に記載の混合物。
【請求項7】
前記カチオン性成分または前記アニオン性成分のうちの前記少なくとも1つは、前記カチオン性成分または前記アニオン性成分のうちの前記少なくとも1つ及び前記ポリマーと共有結合しているリンカーによって前記ポリマーと結合している、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項8】
前記ポリマーは、第1のポリマーであり、前記混合物は、シロキサンまたは非シロキサンを含む第2のポリマーをさらに含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項9】
請求項1、3、6または7に従属する場合、請求項1または3に従属する場合、前記クロスリンカーは、前記第2のポリマーと共有結合している、請求項8に記載の混合物。
【請求項10】
前記塩は、炭素-炭素結合または炭素-水素結合の少なくとも1つを含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項11】
光開始剤を含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項12】
前記混合物は、フォトレジスト混合物である、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項13】
前記フォトレジストは、ネガ型フォトレジストである、請求項12に記載の混合物。
【請求項14】
前記カチオン性成分は、トリアゾリウム、チオイミダゾリウム、第4級アンモニウム、プロトン化第3級アミン、イミダゾリウム、置換イミダゾリウム、第4級ホスホニウム、プロトン化第3級ホスフィン、クロリニウム、ピロリジニウム、置換ピロリジニウム、ピリジニウム、置換ピリジニウム、スルホニウムまたは置換スルホニウムのうちの少なくとも1つを含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項15】
前記アニオン性成分は、スルホナート、ホスホナート、アルコキシド、チオラート、イミダゾラート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、トシラート、(メチル)アクリラート、カルボキシラート、アセタート、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ジメチルホスファート、メチルスルファート、ヘキサフルオロホスファート、トリフラート、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(ビストリフルイミド/TFSI))、またはテトラフルオロボラートのうちの少なくとも1つを含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物
【請求項16】
請求項1または3に従属する場合、前記クロスリンカーは、ビニル基、アクリラート基、アジド、アルキン、エポキシ、チオール、オレフィン、アルコール、アルデヒド、カルボキシラート、アミン、ホスフィンまたはジエンのうちの少なくとも1つを含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項17】
請求項1または3に従属する場合、前記クロスリンカーは、ジエチレングリコールジビニルエーテルまたはジエチレングリコールジアクリラートのうちの少なくとも1つを含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項18】
請求項1または3に従属する場合、架橋密度の改変のための添加剤を含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項19】
可塑剤を含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項20】
酸化還元活性添加剤を含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項21】
発色団を含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項22】
界面活性剤を含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項23】
前記カチオン性成分は、マルチカチオン性成分を含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項24】
前記アニオン性成分は、マルチアニオン性成分を含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項25】
前記塩は、双性イオンを含む、先行請求項のいずれかに記載の混合物。
【請求項26】
イオン伝導体を製造するプロセスであって、
先行請求項のいずれかに記載の混合物を基板に少なくとも部分的に堆積させることと、
i)請求項1に従属する場合、先行請求項のいずれかに記載の混合物の領域を架橋させて、架橋した混合物の領域及び架橋していない混合物の領域を形成すること、または
ii)請求項2に従属する場合、先行請求項のいずれかに記載の混合物の領域を重合させて、重合した混合物の領域及び重合していない混合物の領域を形成することと
を含む、前記プロセス。
【請求項27】
架橋していない前記混合物の前記領域または重合していない前記混合物の前記領域を少なくとも部分的に除去することを含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
除去することは、溶解させることを含む、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
架橋していない前記混合物の前記領域または重合していない前記混合物の前記領域を少なくとも部分的に除去することは、前記基板上に前記イオン伝導体のパターンを生成する、請求項27または28に記載のプロセス。
【請求項30】
イオン伝導体を製造するプロセスであって、
請求項1から25のいずれかの混合物を基板に堆積させることと、
前記混合物を架橋または重合させることの少なくとも1つを行うことと、
架橋または重合していない前記混合物の領域をエッチング除去することと
を含む、前記プロセス。
【請求項31】
前記混合物を堆積させることは、前記混合物を前記基板上にコーティングすることを含む、請求項26から30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項32】
コーティングすることは、スピンコーティングすることを含む、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
前記混合物を堆積させることは、前記混合物をプリントすることを含む、請求項26から30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項34】
前記混合物を放射線に曝露して、前記架橋させることまたは前記重合させることの少なくとも1つを引き起こすことを含む、請求項26から33のいずれかに記載のプロセス。
【請求項35】
前記放射線は、電子ビームまたは電磁放射線の少なくとも1つを含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記混合物を加熱して、前記架橋させることまたは前記重合させることの少なくとも1つを引き起こすことを含む、請求項26から35のいずれかに記載のプロセス。
【請求項37】
マイクロチップもしくはウェーハーは、前記基板を含み、及び/または前記基板は、ガラス、石英、サファイア、セラミック、金属、ポリマー、カーボン、もしくはフォトレジストを含む、請求項26から36のいずれかに記載のプロセス。
【請求項38】
請求項26から37のいずれかに記載のプロセスによって得られる、イオン伝導体。
【請求項39】
イオン伝導体であって、
少なくとも部分的に架橋したシロキサンを含むポリマーと、
カチオン性成分、及び
アニオン性成分を含む
塩と
を含み、
前記カチオン性成分または前記アニオン性成分の少なくとも1つは、前記ポリマーと結合している、前記イオン伝導体。
【請求項40】
前記カチオン性成分または前記アニオン性成分の前記少なくとも1つは、前記カチオン性成分または前記アニオン性成分の前記少なくとも1つ及び前記ポリマーと共有結合しているリンカーによって前記ポリマーに結合している、請求項39に記載のイオン伝導体。
【請求項41】
前記ポリマーは、第1のポリマーであり、前記イオン伝導体は、架橋した第2のポリマーを含む、請求項39または40に記載のイオン伝導体。
【請求項42】
イオン伝導体であって、
シロキサンを含む第1のポリマーと、
カチオン性成分、及び
アニオン性成分を含む
塩と、
前記第1のポリマーとは異なり、シロキサンまたは非シロキサンを含むポリマーと
を含み、
前記カチオン性成分または前記アニオン性成分の少なくとも1つは、前記第1のポリマーと結合している、前記イオン伝導体。
【請求項43】
前記第1のポリマーまたは前記第1のポリマーとは異なる前記ポリマーの少なくとも1つは、少なくとも部分的に架橋している、請求項41に記載のイオン伝導体。
【請求項44】
架橋した第2のポリマーを含む、請求項42または43に記載のイオン伝導体。
【請求項45】
前記カチオン性成分または前記アニオン性成分の前記少なくとも1つは、前記カチオン性成分または前記アニオン性成分の前記少なくとも1つ及び前記第1のポリマーと共有結合しているリンカーによって前記第1のポリマーと結合している、請求項42、43または44に記載のイオン伝導体。
【請求項46】
前記イオン伝導体は、固体状態または準固体状態の少なくとも1つである、請求項39から45のいずれかに記載のイオン伝導体。
【請求項47】
前記塩は、炭素-炭素結合または炭素-水素結合の少なくとも1つを含む、請求項39から46のいずれかに記載のイオン伝導体。
【請求項48】
前記カチオン性成分は、トリアゾリウム、チオイミダゾリウム、第4級アンモニウム、プロトン化第3級アミン、イミダゾリウム、置換イミダゾリウム、第4級ホスホニウム、プロトン化第3級ホスフィン、クロリニウム、ピロリジニウム、置換ピロリジニウム、ピリジニウム、置換ピリジニウム、スルホニウムまたは置換スルホニウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項39から47のいずれかに記載のイオン伝導体。
【請求項49】
前記アニオン性成分は、スルホナート、ホスホナート、アルコキシド、チオラート、イミダゾラート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、トシラート、(メチル)アクリラート、カルボキシラート、アセタート、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ジメチルホスファート、メチルスルファート、ヘキサフルオロホスファート、トリフラート、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(ビストリフルイミド/TFSI))、またはテトラフルオロボラートのうちの少なくとも1つを含む、請求項39から48のいずれかに記載のイオン伝導体。
【請求項50】
架橋密度の改変のための添加剤を含む、請求項39から49のいずれかに記載のイオン伝導体。
【請求項51】
可塑剤を含む、請求項39から50のいずれかに記載のイオン伝導体。
【請求項52】
酸化還元活性添加剤を含む、請求項39から51のいずれかに記載のイオン伝導体。
【請求項53】
発色団を含む、請求項39から52のいずれかに記載のイオン伝導体。
【請求項54】
界面活性剤を含む、請求項39から53のいずれかに記載のイオン伝導体。
【請求項55】
前記カチオン性成分は、マルチカチオン性成分を含む、請求項39から54のいずれかに記載のイオン伝導体。
【請求項56】
前記アニオン性成分は、マルチアニオン性成分を含む、請求項39から55のいずれかに記載のイオン伝導体。
【請求項57】
前記塩は、双性イオン性である、請求項39から56のいずれかに記載のイオン伝導体。
【請求項58】
請求項38から57のいずれか1項に記載のイオン伝導体を含む、素子。
【請求項59】
前記素子は、電気化学素子、電気機械素子、光電素子、光素子、エレクトロクロミック素子、または電気光学素子のうちの少なくとも1つである、請求項58に記載の素子。
【請求項60】
マイクロチップアセンブリ、プリント回路基板、センサー、バッテリー、光電池、電子回路またはマイクロ流体チップのうちの少なくとも1つを含む、請求項58または59に記載の素子。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
バッテリー、センサー、光電変換装置、及びその他のものなどの素子は、その動作中のイオンの流れに依存する。これは、液体電解質、例えば、イオンの流れを可能にする溶解イオンを含む液体を使用することによって実現することができる。しかしながら、そのような電解質は、漏出及び/または蒸発の可能性があり、その結果として所与の目的に必要とされる伝導性に影響を及ぼす。そのような問題を軽減することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図2】別の例によるポリマーの構造を概略的に示す。
【
図3】別の例によるポリマーの構造を概略的に示す。
【
図4】別の例によるポリマーの構造を概略的に示す。
【
図5】別の例によるポリマーの構造を概略的に示す。
【
図6】例によるポリマーの合成及び構造を概略的に示す。
【
図7】別の例によるポリマーの合成及び構造を概略的に示す。
【
図8】別の例によるポリマーの合成及び構造を概略的に示す。
【
図9】例による架橋性レジスト混合物を概略的に示す
【
図10】例によるイオン伝導体を製造するプロセスを概略的に示す。
【
図11】別の例によるイオン伝導体を製造するプロセスを概略的に示す。
【
図12】別の例によるイオン伝導体を製造するプロセスを概略的に示す。
【
図13】別の例によるイオン伝導体を製造するプロセスを概略的に示す。
【
図14】例によるイオン伝導体を含むマイクロチップアセンブリを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0003】
本明細書に記載の例は、電気を通すためにイオンが流れることができる材料を形成するために使用することができるレジスト混合物に関する。
【0004】
いくつかの例では、レジスト混合物は、ポリマーの可動性を低下させるためのクロスリンカーを含み、これにカチオン性成分またはアニオン性成分の少なくとも1つが結合している。そのような例が第1のクラスの例として下に言及される。
【0005】
第1のクラスの例では、レジスト混合物は、架橋性であり、シロキサンを含むポリマーと、クロスリンカーと、カチオン性成分及びアニオン性成分を含む塩とを含む。塩のカチオン性成分またはアニオン性成分の少なくとも1つは、例えば、共有結合によって直接、または塩のカチオン性成分もしくはアニオン性成分の少なくとも1つ及びポリマーと共有結合しているリンカーによってポリマーと結合している。ポリマーと塩の成分との間の結合は、例えば、塩の漏出もしくは浸出及び/または架橋後の任意の現像もしくは溶媒洗浄工程中に塩が洗い流される可能性を低減する。さらに、イオン(ポリマーに結合していない他方のカチオン性またはアニオン性成分、及びこの成分が流れて、電流/イオン電流をもたらす)が引き寄せられ得る架橋した材料内のイオン部位を維持することによって、架橋した材料が、浸出性電解質と比較して長期間、イオン伝導特性を維持することができ、それにより素子(例えば、架橋した、及び/または不動化した材料を組み込んだ電気機械素子)の使用寿命を延長することができる。さらに、例では、ポリマーのガラス転移温度は260ケルビン以下であり、これにより室温(298K)で、物質内を自由に移動するイオンが得られることがわかった。いくつかの例では、230ケルビン以下、または200ケルビン以下のガラス転移温度などでは、高いガラス転移温度と比較して自由なイオン移動性が改善される。例では、ポリマーの両親媒性の性質により、イオンが流れることができる相分離ドメインが形成される。いくつかの例では、レジスト混合物を架橋させることは、材料を準固体または固体状態と見なすことができるよう、ポリマー鎖の可動性を低下させる、例えば、実質的にポリマー鎖を不動化する。そのような特性は、有用なイオン伝導性及びさまざまな目的のための物理的特性をもたらす。
【0006】
第1のクラスの例では、レジスト混合物は、例えば、混合物を基板に堆積させた後に、レジスト混合物の1つ以上の領域を架橋させることによって、パターン形成可能である。次に、架橋していない混合物の他の領域が除去されて、所与の目的のために、例えば、電気伝導性を有するパターン形成された構造を必要とする所与の電気機械素子のために所望のとおりにパターン形成された架橋した領域を残すことができる。したがって、レジスト混合物は、レジスト混合物が特定の化学及び/または物理条件下で処理されて、基板に堆積させられたときにパターン形成に有用であるように、硬化させる、固体化するまたは別の方法で化学的及び/または物理的特性を変えることができる点でレジストとして働く混合物であると見なすことができる。例えば、処理されたレジストが基板上に残されると同時にレジストの未処理の領域を除去する場合、レジストはネガ型レジストと呼ばれることがある。
【0007】
レジスト混合物のそのような化学的及び/または物理的処理は、例えば、レジスト混合物を、フォトレジストの場合は光(例えば、紫外線)などの電磁放射線、または電子ビームなどの放射線、もしくは熱に曝露することである。そのような曝露は混合物の架橋を引き起こし、架橋した材料は、堆積させた混合物の架橋対象と選択されなかった領域を除去するために使用される溶媒または他の現像剤材料に対して十分に不溶性であるようにする。
【0008】
例の第2のクラスも本明細書で言及され、これは、カチオン性成分またはアニオン性成分の少なくとも1つが結合しているポリマーの可動性を低下させることに関して第1のクラスの例と機能性が類似しているが、カチオン性成分もしくはアニオン性成分の少なくとも1つが結合しているポリマーの可動性を低下させるために使用されるレジスト混合物中のクロスリンカーの代わりに、またはそれに加えて、カチオン性成分もしくはアニオン性成分の少なくとも1つが結合しているポリマーの可動性を低下させるか、またはそれを不動化するために、レジスト混合物中のモノマーを重合させる。重合したモノマーは、第1のポリマーとは異なるポリマーであり、シロキサンまたは非シロキサンを含み、それに結合したカチオン性またはアニオン性成分も含んでもよい。いくつかの例では、第2のクラスの例における重合性モノマー自体もさらに架橋可能であり、カチオン性成分またはアニオン性成分の少なくとも1つが結合しているポリマーの可動性をさらに低下させることができる。特に第1のクラスの例のさらなる詳細を、第2のクラスとは別に以下に示す。ただし、特定の機能は第1及び第2のクラスの例の両方に当てはまることが理解されるべきである。
【0009】
第2のクラスの例では、レジスト混合物は、重合性であり、少なくともシロキサンを含むポリマーと、モノマーと、カチオン性成分及びアニオン性成分を含む塩とを含む。第1のクラス例と同様に、塩のカチオン性成分またはアニオン性成分の少なくとも1つは、ポリマーと結合している。重合性レジスト混合物は、架橋させることの代わりに、またはそれに加えて、例えば、レジスト混合物を光などの電磁放射線に曝露することなどの化学的及び/または物理的処理によりモノマーを重合させることによってレジスト混合物を重合させることを除いて、第1のクラスの例に関して記載されているのと同様にパターン形成可能である。いくつかの例では、重合性レジスト混合物は、クロスリンカーを含み、これは、いくつかの例では、混合物中のモノマーと分離しており、他の例では、モノマーの一部である(例えば、クロスリンカーが、モノマーに共有結合しており、及び/またはモノマーがクロスリンカーを含む)。(例えば、重合したモノマーの鎖間、またはポリマーと結合した少なくとも1つのカチオン性成分もしくはアニオン性成分を有するポリマーの鎖間、または重合したモノマーのそれぞれの鎖と、ポリマーと結合した少なくとも1つのカチオン性成分またはアニオン性成分を有するポリマーの鎖の間の)モノマーの重合及びクロスリンカーの架橋は、結合した少なくとも1つのカチオン性成分またはアニオン性成分を有するポリマーの可動性を低下させる分子ネットワークを、例えば、絡み合いによって形成すると考えることができる。架橋は、モノマーの重合反応中、または代わりにモノマーの重合が起こった後のいずれかで行われてもよい。クロスリンカー(混合物中のモノマーとは分離またはモノマーの一部のいずれか)を用いない他の例では、重合したモノマー自体が少なくとも1つのカチオン性成分またはアニオン性成分が結合したポリマーの可動性を低下させることができる。
【0010】
第1及び第2のクラスのいくつかの例では、シロキサンを含むポリマーは、第1のポリマーと呼ばれ、混合物は、第1のポリマーとは異なる第2のポリマーをさらに含む。なお、第2のポリマーという用語は、第2のクラスの例に関して本明細書に記載されている重合したモノマーとは異なるポリマーを指すために使用される。第2のポリマーは、非シロキサンポリマーまたは第1のポリマーとは異なるシロキサンポリマーである。いくつかの例でのこの第2のポリマーは、それに共有結合しているクロスリンカー(例えば、他の例に記載されているものと同様)を有し、これは、第2のポリマー鎖を混合物中で一緒に架橋させるために使用することができる。
【0011】
理解されるように、クロスリンカーは、2つ以上のポリマー鎖を一緒に結合する反応性(例えば、適切な誘導により)である、レジスト混合物から架橋した材料を形成するための分子または化学基と考えることができ、それにより、重合反応を経てポリマー鎖を形成するモノマーとは区別することができる。クロスリンカーの使用により、いくつかの例では、第1のポリマーの鎖を第1のポリマーの別の鎖に結合させ、他の例では、第2のポリマーの鎖を第2のポリマーの別の鎖と結合させ、別の例では、第1のポリマーの鎖を第2のポリマーの鎖と結合させ、さらに別の例では、第1のポリマーまたは第2のポリマーの鎖を重合したモノマーの鎖と結合させる。架橋の方法は、一般に選択された架橋化学によって決定される。材料の密度及び得られる物理特性(例えば、ガラス転移、溶媒抵抗性及び/または硬度)は、例えば、クロスリンカーの分子の性質及び結合に利用可能な反応性部位の数によって決まる。架橋の程度は、クロスリンカーの特定の分子構造だけでなく、いくつかの例では、誘導の程度(例えば、混合物を光または熱に曝露する時間または強度)にも左右される。
【0012】
例の架橋した及び/または重合した材料は、それぞれがアニオンまたはカチオンと見なされ得る、ポリマーに結合していない塩のアニオン性またはカチオン性成分が流れることができる点でイオン伝導性材料と考えることができる。これは、イオンが材料を通って伝導可能で、例えば、電流及び/またはイオン電流をもたらす点でイオン伝導性と考えることができる。例では、架橋したまたは重合した材料は、溶媒、可塑剤またはポリマーに結合していない任意の電解質も必要とせず十分なイオン伝導性を有する。
【0013】
いくつかの例では、塩は、炭素-炭素結合または炭素-水素結合の少なくとも1つを含み、それゆえ、例では、有機塩と考えることもできる。いくつかの例では、塩は、イオン液体である。本明細書で言及されるイオン液体は、例えば、単離された場合に、373ケルビンで液体またはガラスである。いくつかの例では、塩は、双性イオン、マルチカチオンまたはマルチアニオンのうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
架橋したまたは重合した材料は、いくつかの例では、材料が実質的に固体でありながら依然としてイオン伝導性である点で固体イオン伝導体と考えることができる。実質的に固体状態には、完全に固体状態の架橋したまたは重合した材料だけでなく、完全に固体ではないが、大部分が固体または液体よりは固体(材料全体をとおして均一)である材料ならびにいわゆる、準固体状態のイオン伝導体、例えば、ゲル、半固体またはガラスである材料の例も含まれる。いくつかの例では、そのような材料は、材料のイオン及び/または電気伝導特性に寄与する浸出可能な自由な液体もしくは溶媒を含まないか、または(機能的許容範囲内で)実質的に含まない。これは、イオン伝導体の劣化に対する抵抗性を高め、イオン伝導体からの物質の浸出を低減することを可能にするため望ましい。
【0015】
ここで、図を適切に参照しながらさらに詳細な例を示す。
【0016】
図1は、例のポリマー100を示し、ここで、R
10は、ポリマーのシロキサンポリマー主鎖と結合した塩のカチオン性成分またはアニオン性成分である。ポリマーと結合できるであろう塩のカチオン性成分の例としては、トリアゾリウム、チオイミダゾリウム、第4級アンモニウム、プロトン化第3級アミン、イミダゾリウム、置換イミダゾリウム、第4級ホスホニウム、プロトン化第3級ホスフィン、クロロニウム、ピロリジニウム、置換ピロリジニウム、ピリジニウム、置換ピリジニウム、スルホニウムまたは置換スルホニウムが挙げられる。ポリマーと結合できるであろう塩のアニオン性成分の例としては、スルホナート、ホスホナート、アルコキシド、トリフラート、チオラート、イミダゾラート、トシラート、(メチル)アクリラート、カルボキシラート、アセタート、ジメチルホスファート、またはメチルスルファートが挙げられる。ポリマーと共有結合させるのに適さない他のカチオン性及びアニオン性成分が想定され、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ヘキサフルオロホスファート、ビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド(ビストリフルイミド/TFSI))、テトラフルオロボラート、塩化物、臭化物、またはヨウ化物である。R
20は、リンカーまたは共有結合であり、さらなる例では、そのようなカチオン性及びアニオン性成分の分子バリアントがポリマーと共有結合することが想定される。例となるリンカーとしては、下に示すエタン-1,2-ジイル、1-オキソプロパン-1,3-ジイル、1-オキソエタン-1,2-ジイル及び1,5-ジオキソ-3-ヒドロキシ-ペンタン-1,5-ジイルが挙げられる。
【化1】
ただし、別の例では異なるリンカーが想定される。リンカーの長さなどの特性の選択により、混合物を架橋させるときに伝導性及び任意のイオンチャネルの形態を調整することが可能になる。ポリマー100は、クロスリンカーと組み合わされると、例えば、イオン伝導体を製造するための、本明細書に記載の例の架橋性レジスト混合物をもたらす。いくつかの例では、塩は、双性イオン、マルチカチオン、またはマルチアニオン(例えば、ブチル-メチル-イミダゾール-2-イリデンボランなどのカチオン性官能化イミダゾリウム、その他も想定される)を含み、これによりさまざまなイオンチャネル構造が可能になり、イオン伝導性の改変が可能になる。
図1から9のn、m、及びoという用語が各高分子ブロックの繰り返し単位の数を示すことを当業者は理解するであろう。各用語は、例えば、1から100,000の間(1を含む)の任意の整数であり得る。いくつかの例では、複数の用語が等しい。
【0017】
例えば、イオン伝導体を製造するための架橋性レジスト混合物の例のポリマー200を
図2に概略的に示す。ポリマー200は、シロキサンポリマー主鎖を含むランダムコポリマーである。R
30は塩のカチオン性成分またはアニオン性成分である。R
10に関して前で概要を示したものと同じ例がR
30に関しても想定される。R
40は、リンカーまたは共有結合であり、R
20に関して前で概要を示したものと同じ例がR
40に関しても想定される。R
50は、クロスリンカーである。シロキサンポリマーと共有結合するクロスリンカーの例としては、下に示すプロパ-2-エン-1-イル、ブタン-3-エン-1-イル、及び5-(プロパ-2-エノイルオキシ)-ペンタン-1-イルが挙げられる。
【化2】
さまざまなリンカーが想定される。いくつかの例では、クロスリンカーは、触媒反応によって架橋可能であり、例えば、光開始アルキン・アジドクリック反応によって架橋可能なクロスリンカーである。
【0018】
結合を通るスラッシュ記号「/」は、
図2から9ではコポリマーの個々のサブユニット及びコポリマーのランダムな性質を示すために使用され、すなわち、2つ以上のサブユニットの配列及び結合性ならびに化学量論が変動する。あるいは、コポリマーは、例えば、デンドリマー、及び/または他の構成のコポリマー、例えば、ブロック、ジブロック、トリブロック、交互、及び/またはグラフトコポリマーである。ポリマーとのクロスリンカー及びカチオン性成分またはアニオン性成分の少なくとも1つの結合は、単一成分の混合物、言い換えると、個別のクロスリンカーを必要としないポリマーを含む混合物の使用を容易にし、いくつかの例では、処理、及び使用を簡略化する。
【0019】
図3は、クロスリンカーと混合されたときに、例えば、イオン伝導体を製造するための架橋性レジスト混合物を提供するためのポリマー300の例を概略的に示す。ポリマー300は、ランダムコポリマーであり、シロキサンポリマー主鎖を含む。R
60は、イオン液体のカチオン性成分またはアニオン性成分である。R
10に関して前で概要を示したものと同じ例がR
60に関しても想定される。R
70は、リンカーまたは共有結合であり、R
20に関して前で概要を示したものと同じ例がR
70に関しても想定される。いくつかの例では、2つのサブユニットの化学量論の選択により、混合物を架橋させるときに伝導性及び任意のイオンチャネルの形態を調整することが可能になる。
【0020】
クロスリンカーと混合されたときに、例えば、イオン伝導体を製造するための架橋性レジスト混合物に関するポリマー400の例を
図4に概略的に示す。ポリマー400は、シロキサンポリマー主鎖を含むブロックコポリマーである。R
80は、塩のカチオン性成分またはアニオン性成分であり、R
10に関して前で概要を示したものと同じ例がR
80に関しても想定される。R
90は、リンカーまたは共有結合であり、R
20に関して前で概要を示したものと同じ例がR
90に関しても想定される。いくつかの例では、n、m及びoの値の選択により、混合物を架橋させるときに伝導性及び任意のイオンチャネルの形態を調整することが可能になる。いくつかの例では、mは、0である。
【0021】
図5は、例えば、イオン伝導体を製造するための架橋性レジスト混合物を提供するためのポリマー500の例を概略的に示す。ポリマー500は、シロキサンポリマー主鎖を含む。R
110は、イオン液体のカチオン性成分またはアニオン性成分である。R
10に関して前で概要を示したものと同じ例がR
110に関しても想定される。R
120は、リンカーまたは共有結合であり、R
20に関して前で概要を示したものと同じ例がR
120に関しても想定される。R
100は、クロスリンカーであり、R
50に関して前で概要を示したものと同じ例がR
100に関しても想定される。
【0022】
いくつかの例では、混合物は、モノマー、例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリラートを含むが、別の例では、異なるモノマーが想定される。理解されるように、モノマーは、重合反応を経てポリマー鎖を形成する分子と考えることができる。例では、モノマーを重合させて、ポリマー、例えば、ポリ(1,6-ヘキサンジオールジアクリラート)を形成するが、他の例では、他のポリマーが想定される。いくつかの例では、カチオン性成分またはアニオン性成分の少なくとも1つと結合したポリマーは、可動性が低減されており(例えば、不動化される、及び/または溶媒への溶解により混合物から除去できない)、それは、絡み合うか、または重合したモノマーにより別の方法で不動化されるためである。
【0023】
いくつかの例では、混合物は、第2のポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリアクリラートまたはポリシロキサンを含む。いくつかの例では、第2のポリマーは、クロスリンカー、例えば、アクリラートにより官能化されたポリエステル、アクリラートにより官能化されたウレタン、またはオレフィンを含み、クロスリンカーを含む他のポリマーも想定される。いくつかの例では、クロスリンカーは、架橋させるために触媒、光開始剤及び/または増感剤を必要とすることが当業者には理解されるであろう。いくつかの例では、第2のポリマーに対する第1のポリマーの質量比は、1:100から100:1の間であり、別の例では、第2のポリマーに対する第1のポリマーの質量比は、1:5から5:1の間である。いくつかの例では、第2のポリマーは、シロキサンを含み、他の例では、第2のポリマーは、非シロキサンポリマー(言い換えると、シロキサンを含まないポリマー)である。いくつかの例では、第2のポリマーを架橋させる場合、第1のポリマーは、可動性が低減される、例えば、不動化される、及び/または第1のポリマーは、溶媒への溶解により、架橋した第2のポリマーから除去できない。他の例では、第2のポリマーを架橋させる場合、第1のポリマーは、不動化されず、及び/または第1のポリマーは、溶媒への溶解により、架橋した第2のポリマーから除去できる。
【0024】
いくつかの例では、混合物は、重合性及び架橋性モノマー、例えば、下に示すSU-8を含む。
【化3】
別の例では、異なるモノマーが想定される。
【0025】
いくつかの例では、混合物は、重合性及び架橋性のいくつかの異なるモノマーを含む。例えば、混合物は、50wt%(当業者は、重量パーセントの使用を理解するであろう)のトリメチロイルプロパントリアクリラート、20wt%の1,6-ヘキサンジオールジアクリラート、25wt%のアクリル酸、及び5wt%の光開始剤を含む第1の配合物を含み、トリメチロイルプロパントリアクリラート、1,6-ヘキサンジオールジアクリラート及びアクリル酸を下に示す。
【化4】
第1の配合物は、第1のポリマー及び塩を含む第2の配合物と混合されて、混合物を形成する。第1の配合物のさらなる例は、50wt%のポリウレタンアクリラート及び45wt%のトリメチロールプロパントリアクリラート及び5wt%の光開始剤である。いくつかの例では、第2の配合物に対する第1の配合物の質量比は、1:100から100:1の間であり、別の例では、第2の配合物に対する第1の配合物の質量比は、1:5から5:1の間である。
【0026】
本開示の混合物のいくつかの例は、例えば、それぞれが
図1から5のうちの1つの一般式を有する、例えば、それぞれが
図1の一般式による複数の異なるポリマーを含む。他の例では、異なるポリマーは、それぞれ異なる一般式である。一般式を有する単一のポリマー種を含む混合物の各成分が達成できる程度は、利用可能な出発材料の純度、組成物を生成するために使用される合成経路、及び達成可能な精製の程度により制限される。
【0027】
図6のものなどの例では、架橋性レジスト混合物は、ランダムコポリマー640を含む。ランダムコポリマー640は、イオン液体600(1-メチル-3-エチルスルファニル-アセチル-イミジゾリウムブロミド)及びシロキサンランダムコポリマー620(ポリ-1,2-エポキシペンチル-シロキサン-ランダム-シロキサン)を1:2のチオール:エポキシ比で組み合わせることによって合成される。混合物をイソプロパノールで可溶化し、反応を1mol%(当業者は、モルパーセントの使用を理解するであろう)のジイソプロピルエチルアミンで触媒する。混合物を室温(298ケルビン)で16時間撹拌した後、ランダムコポリマー640は、ジエチルエーテル中における沈殿及び揮発性物質の蒸発によって単離される。架橋した材料、例えば、イオン伝導体は、ポリマー640を5wt%の(4-メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートと混合することによって生成された混合物を堆積及び架橋させることにより生成される。混合物は、例えば、混合物を基板上に毎分3000回転(RPM、SI単位の60×s
-1に相当する)でスピンコーティングすることによって、基板上に1分間堆積させる。基板上の混合物の領域は、基板上の混合物の領域を紫外(UV)線(例えば、フォトマスクを通して水銀球から、ただし、発光ダイオードまたはレーザーなどの他のUV発生源も想定される)に30秒間、選択的に曝露することによって架橋させる。次に、基板を338Kで2分間、続いて368Kで2分間ホットプレートに接触させることによって加熱する。UV線により架橋していない混合物の領域を、アセトンを使用して溶解及び除去し、これにより、パターン形成された架橋した材料、例えば、イオン伝導体を基板上に生成する。
【0028】
図7は、例えば、イオン伝導体を製造するための架橋性レジスト混合物のためのランダムコポリマー740の合成を概略的に示す。ランダムコポリマー740は、ランダムコポリマー720(ポリ-プロピル-アセチル-シロキサン-ランダム-シロキサン)及びイオン液体700(ホスホニウム3-スルファニルプロピオン酸)を1:2のチオール:アクリラート比で組み合わせることによって合成される。混合物をイソプロパノールで可溶化し、323ケルビンに加熱する。室温(298ケルビン)で16時間撹拌した後、混合物をジエチルエーテル中で沈殿させ、揮発性物質を蒸発させて、反応性ポリマー740を単離する。
【0029】
架橋した材料、例えば、イオン伝導体は、ポリマー740を10wt%のペンタエリスリトールテトラアクリラート及び5wt%の2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノンと混合することによって生成された混合物を堆積及び架橋させることにより生成される。混合物は、例えば、混合物を基板上に3000RPMで1分間スピンコーティングすることによって基板上に堆積させる。基板上の混合物の領域は、領域を、フォトマスクを通したUV光に30秒間、曝露することによって架橋させる。UV線により架橋していない混合物の領域は、イソプロパノールを使用して溶解及び除去される。
【0030】
図8のものなどの例では、例えば、イオン伝導体を製造するための架橋性レジスト混合物は、ポリマー860を含む。ポリマー860は、ランダムコポリマーであり、置換イミダゾール800(1-エチル-イミジゾール)及びポリマー820(1-クロロ-プロピル-シロキサン-ランダム-シロキサン)を2:1のイミダゾール:アルキルクロリド比で組み合わせることによって合成される。混合物をn-ブタノールで可溶化し、353ケルビンにゆっくりと加熱する。室温(298ケルビン)で16時間撹拌した後、混合物をジエチルエーテル中で沈殿させ、揮発性物質を蒸発させて、ポリマー840を単離する。ポリマー860は、ポリマー840を準化学量論的な量のビニルスルホン酸ナトリウムと混合することによってポリマー840から誘導される。
【0031】
固体イオン伝導体などの架橋した材料は、1:1比のチオール対-エンのポリマー860及び1,2-ビス(2-メルカプトエトキシ)エタンならびに2wt%の2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノンの混合物を堆積及び架橋させることによって生成される。混合物は、混合物を基板上に3000RPMで1分間スピンコーティングすることによって基板上に堆積させる。基板上の混合物の領域は、領域を、フォトマスクを通したUV線に30秒間、曝露することによって架橋させる。UV線により架橋していない混合物の領域は、アセトンを使用して溶解及び除去される。他の例では、ポリマー860が既にクロスリンカーを含んでいるため、1,2-ビス(2-メルカプトエトキシ)エタンの添加は省略される。
【0032】
図9は、例えば、イオン伝導体を製造するための架橋性レジスト混合物のための成分の例、具体的には、光開始剤900(2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノン)、シロキサン主鎖と共有結合した置換イミダゾリウムを有する例のシロキサンポリマー920、及びクロスリンカー940(2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール)を示す。混合物の架橋を容易にするために光開始剤が使用される。光の影響下で、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノンはラジカルを形成し、これにより、ラジカル重合が開始されるが、他の光開始剤及び光開始重合の機構も想定されることを当業者は理解するであろう。いくつかの例に関しては、放射線の選択及び/または架橋化学の選択により、光開始剤を必要としない。
【0033】
例では、架橋性または重合性混合物は、例えば、イオン伝導体を製造するためのものであり、架橋されたときに混合物(複数可)の特性を改変するための添加剤(複数可)を含む。いくつかの例では、混合物を架橋させたときの架橋の密度を調節するためにブチルアクリラートなどの添加剤を添加し、及び/または混合物及び/または架橋させたときに混合物に可塑性を持たせるためにトリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレートなどの可塑剤を添加する。いくつかの例では、可塑剤は、反応性可塑剤、例えば、ブチルアクリラート、トリエチレングリコールアクリラートまたはシロキサンアクリラートである。他の例では、可塑剤は、非反応性可塑剤、例えば、プロピレングリコールまたは1-エチル-3-ブチル-イミダゾリウムテトラフルオロボラートである。他の可塑剤も想定される。架橋の密度を変化させること、または混合物に可塑性を持たせることにより、架橋した混合物の物理的特性の改変が可能になる。混合物のいくつかの例は、混合物の架橋及び/または重合を可能にするため、及び/または助けるために触媒、光開始剤及び/または増感剤を含む。
【0034】
いくつかの例は、酸化還元活性添加剤、例えば、ビニルフェロセンの添加によって、混合物もしくは架橋した混合物の電子的及び/またはイオン的特性の改変を可能にする。これにより、例えば、電解質として利用するために電子的及び/またはイオン的特性を調整することが可能になる。
【0035】
例では、混合物または得られる架橋した/重合した混合物の1つ以上の特性を改変するための1つ以上の添加剤を含むレジスト混合物。そのような特性としては、例えば、電子的、触媒的、機械的、光学的、物質移動または処理特性が挙げられる。そのような添加剤は、例えば、金属性、半導電性、絶縁性、または非金属性であり、及び/またはナノ粒子、マイクロ粒子、クラスター、フィラー、ナノチューブ、粘土、グラフェン、量子ドット、及び/またはカーボンブラックもしくはグラファイトなどのカーボンを含む。そのような添加剤、例えば、フィラーは、例えば、0.0001wt%から98wt%、例えば、0.01wt%から30wt%の範囲で存在する。
【0036】
いくつかの例では、イオン伝導体を製造するための架橋性レジスト混合物は、発色団を含む。いくつかの例に関しては、発色団は、混合物に適用される電磁放射線を調節することになり、これは、いくつかの例では、効率的な架橋を可能にする。例では、発色団は、少なくとも部分的に架橋したイオン伝導体に蛍光特性を与えるために使用される。発色団は、例えば、ローダミンまたはローダミン誘導体であるが、所望の電磁特性に応じて他の発色団も想定される。
【0037】
架橋のため、または塩の成分の結合に適したさまざまな官能基を有するシロキサンポリマーが市販されているため、イオン官能基及び/または架橋官能基を持つポリマー混合物の多くの異なる例が想定される。多くの適した塩及びクロスリンカーが市販されているため、塩及びクロスリンカーの多くの異なる例が想定される。いくつかの例では、混合物中のクロスリンカーは、ポリマーに結合していない。いくつかの例では、混合物中のクロスリンカーは、ポリマーに結合しており、ポリマーがそれ自体により架橋することが可能である。本明細書で言及されるあらゆるポリマーが、例えば、単純なポリマー、デンドリマー、及び/またはさまざまな構成のコポリマー、例えば、ブロック、ジブロック、トリブロック、ランダム、交互、及び/またはグラフトコポリマーであり得ることも当業者は理解するであろう。
【0038】
いくつかの例では、混合物は、複数の異なるクロスリンカーを含み、いくつかの例では、異なるクロスリンカーは、異なる反応経路によって架橋可能である。いくつかの例では、第1のポリマー及び第2のポリマーの両方が架橋性である。例えば、混合物は、ポリマー640、ポリウレタンアクリラート及び光開始剤の組み合わせを含み、他のそのような混合物も想定される。そのような混合物のいくつかの例では、複数の架橋機構が生じる。
【0039】
いくつかの例では、混合物は、第1のクロスリンカーが共有結合したポリマー及び第2のクロスリンカーを含む。例えば、混合物は、ポリマー860及びSU-8を含み、他の例も想定される。このような例では、この混合物の照射時に、複数の架橋機構が想定される。いくつかの例では、モノマーに対するポリマーの質量比は、1:100から100:1の間であり、別の例では、モノマーに対するポリマーの質量比は、1:5から5:1の間である。
【0040】
いくつかの例では、架橋性レジスト混合物は、例えば、イオン伝導体を製造するためのものであり、界面活性剤を含む。界面活性剤は、例えば、非イオン性(例えば、ポリソルベート)、アニオン性(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、カチオン性(例えば、塩化ベンザルコニウム)、または両性(例えば、ココアミドプロピルベタイン)である。界面活性剤は、架橋した固体イオン伝導体内に生成されるイオンチャネルの構造の改変を可能にし、いくつかの例では、その結果、イオン伝導性の調整を可能にする。イオン伝導性の調整は、例えば、組み込まれる塩の量を変えることによっても達成可能であり、これは、いくつかの例では、相分離領域及び形成されるイオンチャネルの形状及び程度に影響を与え、いくつかの例では、ガラス転移に影響を及ぼす。
【0041】
架橋した材料、例えば、イオン伝導体を製造するプロセスの例を
図10に示す。本プロセスは、イオン伝導体を製造するための架橋性レジスト混合物を基板に少なくとも部分的に堆積させることと、混合物の領域を架橋させることと、架橋していない混合物の領域を少なくとも部分的に除去することとを含む。これにより、基板上におけるイオン伝導体のパターン形成のために、架橋させるか、または架橋させないレジストの異なる領域の選択が可能になる。なお、本明細書に記載されている任意の例に関する本明細書に記載の基板は、例えば、本明細書の例に従い架橋させるため、重合させるため及び/またはパターン形成するためにレジスト混合物が堆積させられ得る表面(例えば、平面である)を有する、例えば、任意の構造、要素または他の物品であってもよい。
【0042】
重合した材料、例えば、イオン伝導体を製造するプロセスの例を
図11に示す。本プロセスは、イオン伝導体を製造するための重合性レジスト混合物を基板に少なくとも部分的に堆積させることと、混合物の領域を重合させることと、重合していない混合物の領域を少なくとも部分的に除去することとを含む。これにより、基板上におけるイオン伝導体のパターン形成のために、重合させるか、または重合させないレジストの異なる領域の選択が可能になる。
【0043】
例では、混合物を基板に少なくとも部分的に堆積させることは、混合物をキャストすること、混合物を基板にコーティングすること、スピンキャストすること、またはスピンコーティングすることによって達成されるが、他の方法も想定される。いくつかの例では、溶液堆積などのいくつかの技術によって混合物を堆積させる前に、基板の表面が処理及び/または洗浄される。例えば、表面は、プラズマ洗浄によって洗浄される。いくつかの例では、例えば、接着を改善するため、または表面官能基を導入するために表面が化学処理される。いくつかの例に関しては、表面の洗浄は、基板への混合物の接着を改善する。いくつかの例では、混合物は、表面への混合物の接着を高める接着添加剤を含み、接着添加剤の例は、表面がガラスの場合はアクリラートであり、または表面が金の場合はチオールであり、他の接着添加剤及び表面も想定される。いくつかの例では、接着添加剤は、ポリマーに結合しており、他の例では、接着は、ポリマーに結合していない。混合物を、ある厚さに堆積させ、例えば、混合物を、50nmから5mmの厚さに堆積させる。
【0044】
いくつかの例は、混合物の領域を放射線に曝露して、架橋を引き起こすことを含む。放射線の例としては、電子ビーム及び電磁放射線が挙げられる。例では、混合物は、フォトリソグラフィマスクなどのマスク、投射器の使用によって、及び/またはレーザーのパワーを選択的に制御しながら混合物の領域にわたりレーザーをラスター化することによってなど、放射線源を調節することによって選択的に照射される。いくつかの例では、レジスト混合物を加熱またはアニールして、架橋を引き起こす。いくつかの例では、これは、熱開始剤を用いて達成され、他の例では、熱開始剤を用いずに達成される。いくつかの例では、熱開始剤が使用されない場合、架橋は、423ケルビン以上の温度で達成される。いくつかの例では、熱開始剤が使用される場合、架橋は、室温(298ケルビン)で達成され、別の例では、熱開始剤が使用される場合、323ケルビンから393ケルビンの間の温度で達成される。いくつかの例は、製造の任意の時点で加熱され、これにより、化学反応の促進及び/または架橋した材料からの揮発性物質の除去が可能になる。
【0045】
図12のものなどのいくつかの例では、例えば、イオン伝導体を製造するためにレジスト混合物を基板に堆積させることは、例えば、インクジェットプリンターを使用して混合物を基板にプリントすることを含むが、他のプリント方法も想定される。混合物が基板上にプリントされる場合、プリントにより基板上における混合物のパターン形成が可能になるため、架橋及び/または重合プロセスによって架橋及び/または重合していない混合物の領域を除去することが常に必要な訳ではない。これにより、架橋していない混合物の領域の除去のために現像剤に曝露された場合に分解または除去されるであろう成分(例えば、場合によっては極めて浸出性の成分)の組み込みが可能になる。いくつかの例では、プリントされたイオン伝導体は、温度の変化または時間の経過による変形、解膨潤、またはクリープに対して抵抗力がある。プリントにより、他の一般的な微細加工技術と適合した様式でイオン伝導体の生成が可能になり、その結果として、いくつかの例では、マイクロチップまたはマイクロエレクトロニクス製品へのイオン伝導体の組み込みを簡素化する。いくつかの例では、プリントされたイオン伝導体は、溶媒及び化学蒸気に対して抵抗力がある。溶媒及び化学蒸気に対する抵抗力により、例えば、イオン伝導体のイオン伝導性を低下させることなく、イオン伝導体を他の一般的な微細加工技術にさらすことが可能になる。
【0046】
レジスト混合物を基板に施すために想定される他の技術としては、例えば、ドロップキャスト、ディップコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、ペインティング、ドクターブレード、及びインプリントリソグラフィが挙げられる。
【0047】
イオン伝導体を製造するプロセスの例を
図13に示す。本プロセスは、イオン伝導体を製造するためのレジスト混合物を基板に堆積させることと、混合物を架橋及び/または重合させることと、架橋及び/または重合した混合物の領域をエッチング除去することとを含む。これにより、エッチング除去するレジストの領域の選択が可能になる。エッチングは、例えば、化学的に、及び/または放射線により達成される。エッチングにより、例えば、基板に固体イオン伝導体のパターンが形成される。
【0048】
いくつかの例では、レジスト混合物の添加剤、例えば、フィラーまたは溶解物質を、架橋/重合混合物からエッチング、抽出または除去して、得られる材料の多孔性を高めることができることが理解されるべきである。フィラーまたは溶解物質は、現像した後、エッチングするか、または現像剤がエッチング剤である場合に現像することができる。例えば、ポリ(ビニルアルコール)ナノ粒子の分散物を含むフォトレジスト混合物を基板にスピンコーティングし、照射し、イソプロパノールで現像して非架橋材料を除去し、続いてエッチング水でポリ(ビニルアルコール)を除去し、それにより、ポリ(ビニルアルコール)が存在していた場所に空間を残すことができる。
【0049】
例えば、本明細書に記載の例の架橋したレジスト混合物及び/または重合したレジスト混合物を含む、本明細書に記載の例によるイオン伝導体は、多数の用途を有することが想定される。したがって、例では、電気化学素子、電気機械素子、光電素子、光素子、エレクトロクロミック素子、及び/または電気光学素子などの素子は、本明細書に記載の例のイオン伝導体を含む。そのような素子は、例えば、マイクロチップアセンブリ、プリント回路基板、センサー、バッテリー、光電池、電子回路、マイクロ流体チップ、電子部品もしくは動作中にイオンの流れに依存する別の構造であるか、またはそれを含む。
【0050】
図14に概略的に示されるものなどのいくつかの例では、マイクロチップアセンブリ1320(例えば、微細加工半導体構造または電子回路)は、本明細書に記載の例によるイオン伝導体、例えば、イオン伝導体構造1300を含む。いくつかの例では、半導体マイクロチップアセンブリへのイオン伝導体の組み込みは、例えば、バッテリー、センサー、光電変換装置、回路及び動作中にイオンの流れに依存する他の使用などの素子におけるイオン伝導体の使用である。
【0051】
基板は、例えば、ガラス、石英、サファイア、セラミック、金属、ポリマー、カーボン、またはフォトレジストを含む。本明細書に記載の例では、基板は、例えば、半導体マイクロチップまたはウェーハーの一部である。
【0052】
本明細書に記載の架橋したイオン伝導体の例に関して、直流イオン伝導率が、最大10-2ジーメンス・パー・センチメートル(S/cm、×10-2kg-1・m-3・s3・A2に相当する)として観察されたが、それよりも高い値も想定される。298ケルビンにおける一般的な値は、10-6から10-2S/cmになると予想される。得られる伝導率の値が、架橋した材料イオン伝導体の選択される組成物、任意の選択される添加剤、及び動作温度を含むいくつかの変数に左右されることを当業者は理解するであろう。
【0053】
いずれか1つの例と関連して説明されたいずれかの特徴は、単独で、または説明された他の特徴と組み合わせて使用されてもよく、また、例のいずれかの他の1つ以上の特徴と組み合わせて、または例のいずれかの他の任意の組み合わせで使用されてもよいことが理解されるべきである。更に、添付の請求項の範囲から逸脱することなく、上記説明されていない同等物及び修正も採用され得る。
【国際調査報告】