(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】衝撃測定のための支持床
(51)【国際特許分類】
G01N 29/04 20060101AFI20241114BHJP
G01N 29/12 20060101ALI20241114BHJP
G01N 29/22 20060101ALI20241114BHJP
G01N 29/32 20060101ALI20241114BHJP
G01N 29/46 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G01N29/04
G01N29/12
G01N29/22
G01N29/32
G01N29/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024524683
(86)(22)【出願日】2022-10-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2022079767
(87)【国際公開番号】W WO2023072925
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520030800
【氏名又は名称】グラインドソニック・ベスローテン・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】GRINDOSONIC BV
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デン・ボッシェ,アレックス
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AD20
2G047BC03
2G047CA03
2G047GD02
(57)【要約】
本発明は、温度制御試験チャンバと、インパクタと、センサシステムと、支持システムとを備える衝撃励起測定システムに関し、インパクタは、0℃~1600℃の試験温度範囲内の任意の試験温度で、支持システムによって支持された試験片に下方からの衝撃を与えるように構成され、センサシステムは、インパクタによって試験片に与えられる衝撃に対する試験片の振動応答を得るように構成され、支持システムは、試験チャンバ内で固体試験片を支持するための土台を備え、前記土台は、試験片の弾性よりも実質的に大きい前記弾性を備え、前記土台は、インパクタが試験片に下方から衝撃を与えることを可能にするための貫通部をさらに備え、インパクタは、衝撃高さで試験片に衝撃を与えるように構成され、衝撃高さは、試験温度に少なくとも部分的に依存し、土台は、試験片を支持高さで支持するように構成され、支持高さは、前記試験温度範囲内の任意の試験温度で高々0.5mmだけ衝撃高さとは異なる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度制御試験チャンバと、インパクタと、センサシステムと、支持システムとを備える衝撃励起測定システムであって、前記インパクタは、0℃~1600℃の試験温度範囲内の任意の試験温度で、前記支持システムによって支持された試験片に下方からの衝撃を与えるように構成され、前記センサシステムは、前記インパクタによって前記試験片に与えられる前記衝撃に対する前記試験片の振動応答を得るように構成され、前記支持システムは、前記試験チャンバ内で固体試験片を支持するための土台を備え、前記土台は、前記試験片の弾性よりも実質的に大きい前記弾性を備え、前記土台は、前記インパクタが前記試験片に下方から衝撃を与えることを可能にするための貫通部をさらに備え、
前記インパクタは、衝撃高さで前記試験片に前記衝撃を与えるように構成され、前記衝撃高さは、前記試験温度に少なくとも部分的に依存し、
前記土台は、前記試験片を支持高さで支持するように構成され、前記支持高さは、前記試験温度範囲内の任意の試験温度で高々0.5mmだけ前記衝撃高さとは異なる、システム。
【請求項2】
前記支持高さは、0℃~1600℃の前記試験温度範囲内の任意の試験温度で高々0.1mmだけ前記衝撃高さとは異なる、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項3】
前記インパクタは、好ましくは高々25×10
-6K
-1である線膨張係数を備える、熱的に安定な材料を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記インパクタはセラミック材料を備え、好ましくはそれにより前記インパクタはセラミック材料で作られる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記土台は、好ましくは高々50×10
-6K
-1の線膨張係数を備える、熱的に安定な材料を備える、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記土台は、平坦なマットの形状を備える、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記土台は、多結晶ムライトアルミナウールを備える、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記土台は、多結晶ムライトアルミナウールで作られる、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記土台は、室温で、10mm~50mm、好ましくは12.5mm~25mmの高さを備える、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記試験片の水平移動は、ピンのセットによって制限される、先行する請求項のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
キットであって、
-温度制御試験チャンバと、インパクタと、センサシステムとを備える衝撃励起測定システムであって、前記インパクタは、0℃~1600℃の試験温度範囲内の任意の試験温度で、試験片に下方から衝撃を与えるように構成され、前記センサシステムは、前記インパクタによって前記試験片に与えられる前記衝撃に対する前記試験片の振動応答を得るように構成され、前記インパクタは、衝撃高さで試験片に衝撃を与えるように構成され、前記衝撃高さは、前記試験温度に少なくとも部分的に依存する、衝撃励起測定システムと、
-固体試験片と、
-前記試験チャンバ内で固体試験片を支持するための土台を備える支持システムであって、前記土台は、前記試験片の弾性よりも実質的に大きい前記弾性を備え、前記土台は、前記インパクタが前記試験片に下方から衝撃を与えることを可能にするための貫通部をさらに備え、前記土台は、支持高さで前記試験片を支持するための支持面を備え、前記支持高さは、前記試験温度範囲内の任意の試験温度で高々0.5mmだけ前記衝撃高さとは異なる、支持システムと
を備える、キット。
【請求項12】
前記土台に対する前記試験片の水平移動を制限するためのピンのセットを備える、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
好ましくは0℃~1600℃の温度範囲内の1つまたは複数の温度で、試験片の材料特性を音響的に測定するための方法であって、
a.請求項1~8のいずれかに記載のシステムの試験チャンバ内の前記支持システム上に試験片を配置し、好ましくは前記試験片を試験温度範囲内に加熱することと、
b.好ましくは、較正期間内に前記試験片から振動信号を捕捉することによって、好ましくは前記試験温度範囲内でバックグラウンド測定を実行し、それによってノイズ信号を取得することと、
c.以下のこと、すなわち、
c1.前記試験片に振動励起を付与することと、
c2.試験期間内に前記試験片の振動信号を捕捉し、それによって前記振動励起に対する振動応答信号を取得することと
によって、好ましくは前記試験温度範囲内および前記試験期間内で前記試験片に対して音響測定を実行することと、
d.前記振動応答信号を分析することによって前記試験片の前記材料特性を取得し、好ましくはそれによって前記ノイズ信号を考慮することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、衝撃励起技術を用いて固体試験片に対して測定を行うための非破壊方法およびシステムに関する。本発明は、試験片に対して異なる温度で試験を行うのに特に有用である。測定は、固体の欠陥および異常を検出し、E弾性率、G弾性率、ポアソン定数およびダンピングパラメータを特徴付けるのに有用である。より詳細には、本発明は、試験片を正しい位置に保つための改良された支持システムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
固体の試験は、いくつかの方法で行うことができる。第1の試験は、通常、固体が正しいサイズおよび形状を有するかどうかを確認し、表面欠陥をチェックする目視検査からなる。しかしながら、多くの場合、固体の特性は、目に見えない可能性がある内部構造に大きく依存する。例えば、金属および合金の強度は、バルク欠陥の特定の種類および量に大きく依存する。これらの欠陥は、小さくても大きくてもよく、自然な原因のため、製造方法のため、摩耗のため、事故のためなどで発生する可能性がある。
【0003】
欠陥がどのように発生するかとは無関係に、場合によっては、その欠陥に関する固体の状態を知ることが重要である。欠陥について固体を分析するために、固体の試験片に対して侵襲的方法または非侵襲的方法を使用することができる。これにより、非侵襲的な方法により、試験片を破壊または変更することなく分析が可能になる。したがって、非侵襲的方法は、典型的には、後にまだ使用する必要があるか、またはさらなる試験(それ自体が侵襲的または非侵襲的であり得る)を受ける必要がある試験片に使用される。
【0004】
固体のための1つのタイプの非侵襲的試験方法は、試験片を分析するために振動を使用する。これにより、試験片は、制御された振動を受け、これは固体を通って伝播することができ、これにより透過、反射または吸収される。制御された振動は、衝撃励起技術(IET:impact excitation technique)で誘発されてもよく、それによって試験片は、衝撃を受けたときに実質的に妨げられることなく振動することができるように配置される。インパルス励起技術では、次いで、試料に専用の工具または発射体を衝突させ、圧電センサ、マイクロフォン、レーザ振動計または加速度計などの振動信号測定センサでピックアップされるときに得られた振動を分析することによって、試験片の材料特性が決定される。固体を通る振動は、音または音波とも呼ばれ、測定は音響測定とも呼ばれる。したがって、振動信号測定センサは、本出願の文脈では「音響センサ」とも呼ばれる。
【0005】
音を使用して固体を試験するための装置は、国際公開第2019/020825号に記載されている。この文献は、固体材料試料の機械的振動応答を分析するための装置であって、固体材料試料の表面上のそれぞれの明確な点に衝撃を付与するように配置されたインパクタのアレイと、少なくとも1つのインパクタの衝撃に続いて、機械的振動応答を時変信号として捕捉するように構成されたセンサと、時変信号を分析して、時変信号を構成する正弦波の周波数および減衰定数を決定するように構成された処理手段とを備える装置を開示している。本発明はまた、固体材料試料を特徴付ける対応する方法に関する。
【0006】
振動励起に対する固体試験片の応答の分析は、典型的には、以下のパラメータの1つまたは複数、好ましくはすべての抽出を含む。
【0007】
-試験片の引張弾性を示すヤング率(E);
-剪断応力に対する試験片の応答を示す剪断弾性率(G);
-印加された一軸応力に直交する方向における試験片の変形を示すポアソン比(ν);
-内部摩擦によって引き起こされる信号のダンピングまたは減衰量
これらの特性は、典型的には、振動励起の周波数または周波数範囲に依存する。これにより、試験片は、試験片の異なる振動モードに依存するいくつかの共振周波数を有し得る。ここで重要なモードは、曲げモードおよびねじりモードである。これらの共振周波数におけるパラメータ値は、試験片の状態を記述するための重要な数値である。
【0008】
多くの用途において、例えば機械における固体部品は、異なる温度で使用される。これにより、動作温度は、急速におよび/または広い温度範囲にわたって変動する可能性がある。例えば、車両のブレーキディスクは、動作中にかなり急速に(基本的にはわずか数秒で環境温度から500℃超まで)加熱する可能性がある。別の例は、航空機のジェット用の灯油の噴射ノズルであり、これは動作中に1500℃を超えて加熱する可能性がある。高温範囲は、部品の材料特性、特に上述のヤング率、剪断弾性率、およびポアソン比などの弾性特性に大きく影響し得る。例えば、一般に、固体は、平均して内部結合の弱化に起因してより高い温度でより柔軟になると予想することができ、これは基本的に、EおよびGが温度の上昇とともに徐々に減少すると予想されることを意味する。
【0009】
異なる温度では、固体部品は異なる材料特性を有し得る。これは、部品の機能に影響を及ぼす可能性がある。部品の正常なまたは意図された機能が妨げられる温度または温度範囲を見出すことが重要である。これは、材料のバルク特性、温度を変えることによって誘発される可能性がある欠陥、より高い温度でより重要になり得る欠陥、部品の異なる部分の膨張の変動性などに起因する可能性がある。部品の材料特性の温度依存性の具体例は、以下の通りである。
【0010】
-弾性特性の一般的な変化であり、これにより部品の剛性が低下し、それによってその適切な機能が妨げられ、例えばブレーキディスクが高温で弾性的すぎて適切な制動ができなくなり得る。
【0011】
-特定の温度または特定の温度範囲内での相転移は、部品の材料特性を著しく変化させる可能性がある。
【0012】
-化学反応は、部品の材料特性を等しく変化させる可能性がある。
-例えば、合金中の化学量論的な異なる相の析出が、例えば製造方法の欠陥に起因して材料中に存在し、異なる温度依存膨張を有する材料間の内部材料境界をもたらす可能性がある。明らかに、これは深刻な問題につながる可能性がある。
【0013】
-積層体または他の層状部品であり、これにより、ある層の次の層への接着性が、温度の上昇で低下する可能性がある。
【0014】
異なる温度で、および/または意図した動作の全温度範囲にわたって固体部品の適切な機能を試験するために、試験片の材料特性を異なる温度で測定する必要がある。これにより、試験片は、例えば、部品全体、部品の一部、または部品の同じ材料の片であり得る。試験は、好ましくは、少なくとも温度の制御を可能にする制御された環境で行われる。次いで、異なる温度で材料特性を測定する。
【0015】
本発明者らは、-50℃未満から2000℃超に及ぶ可能性がある広い温度範囲にわたって試験片の材料特性を測定することが実際には非常に困難な可能性があることを見出した。そのような温度範囲のための温度制御された環境を作り出すには、典型的には、いくつかの振動生成部品を備え得るオーブンが必要である。明らかに、オーブンによって生成されるバックグラウンド振動は、測定プロセスを妨げる可能性がある。これらのバックグラウンド振動は、通常、より高い温度で悪化する。さらに、いくつかの材料特性(例えば、EおよびG)が温度の上昇とともに減少すると予想され得るので、信号も減少する。両方の効果は、高温でより低い信号対ノイズ(STN:signal-to-noise)比をもたらす。
【0016】
国際公開第2020/254698号は、高温で試験片の材料特性を音響的に測定するための方法を開示しており、この方法は、a.試験片を試験温度範囲内に加熱することと、b.較正期間内に試験片から振動信号を捕捉することによって前記試験温度範囲内でバックグラウンド測定を実行し、それによってノイズ信号を取得することと、c.以下のこと、すなわち、c1.試験片に振動励起を付与することと、c2.試験期間内に試験片の振動信号を捕捉し、それによって前記振動励起に対する振動応答信号を取得することと、によって前記試験温度範囲内および試験期間内で前記試験片に対して音響測定を実行することと、d.振動応答信号を分析することによって試験片の材料特性を取得し、それによってノイズ信号を考慮することとを含む。この文献はまた、高温で試験片の材料特性を音響的に測定するためのシステムを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記の先行技術文献は、異なる温度での衝撃に対する音響応答を得るための方法およびシステムを開示しているが、本発明者らは、特に異なる温度で行われる試験について、精度が依然として改善され得ることを見出した。
【0018】
本発明は、高温での試験片に対する音響測定のためのSTN比が悪化するという問題を解決し、任意の温度でのより正確なダンピング測定結果を得ることを目的とする。さらに、本発明は、試験チャンバ内で試験片を支持するための新規かつ発明的な支持システムを提供し、支持システムは、試験片を異なる温度で安定した誤差低減方法で支持することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概要
本発明は、温度制御試験チャンバと、インパクタと、センサシステムと、支持システムとを備える衝撃励起測定システムに関する。異なる温度で試験片の材料特性を得るために、本システムを使用して、試験温度範囲内の様々な温度で試験片の振動応答を試験することができ、これは試験片の材料欠陥または試験片の組成または構造の予想されるまたは理想的な挙動からの逸脱をチェックするために重要である可能性がある。したがって、インパクタは、0℃~1600℃の試験温度範囲内の任意の試験温度で、支持システムによって支持された試験片に下方からの衝撃を与えるように構成される。インパクタは、好ましくは弾道インパクタであり、これは、好ましくはインパクタアクチュエータによってインパクタに速度が提供され、その後、インパクタは、少なくとも試験片に衝突するまで重力の下で移動することを意味する。下方から衝撃を与えることにより、衝撃後にインパクタが下方に落下してもよく、インパクタが試験片に第2の衝撃を与えないことが保証される。センサシステムは、インパクタによって試験片に与えられる衝撃に対する試験片の振動応答を得るように構成される。好ましくは、センサシステムは、試験片の音響応答を記録することができる1つまたは複数のマイクロフォンを備える。代替的に、または追加的に、センサシステムはまた、レーザなどの1つまたは複数のコヒーレント光源と、試験片から反射されたコヒーレント光源からの光を記録し、それによって試験片の振動応答を測定するように構成された1つまたは複数の光学センサとを備えてもよい。
【0020】
支持システムは、試験チャンバ内で固体試験片を支持するための土台を備え、前記土台は、試験片の弾性よりも実質的に大きい弾性を備え、前記土台は、インパクタが試験片に下方から衝撃を与えることを可能にするための貫通部をさらに備える。部品の「弾性」という用語は、部品が応力下で弾性的に伸張する様態を指し、それによって、第1の部品が第2の部品よりも同じ応力下でより大きな相対歪みを有する場合、第1の部品は第2の部品よりも弾性的であると呼ばれる。これにより、弾性は、相対歪みパラメータ(ε)を弾性変形の応力パラメータ(σ)で割った比(ε/σ)で表すことができ、好ましくはこの比はヤング率(E)である。好ましくは、支持土台の弾性は、試験片の材料の弾性の少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、さらに好ましくは少なくとも50倍、さらにより好ましくは少なくとも100倍、さらにより好ましくは少なくとも200倍、さらにより好ましくは少なくとも500倍、さらにより好ましくは試験片の材料の弾性の少なくとも1000倍である。本発明のシステムおよび方法は、衝撃に対する音響応答を測定し、共振周波数、共振周波数のシフト、特定の周波数における応答の減衰定数などに関する音響応答を分析することによって試験片の特性を得るための方法に関する。
【0021】
本発明によるシステムにおけるインパクタは、衝撃高さで試験片に衝撃を与えるように構成される。衝撃高さは、インパクタが試験片に衝撃を与えるための意図された高さである。インパクタが弾道インパクタである場合、インパクタアクチュエータは、インパクタが衝撃高さに達するのに十分な大きさであり、好ましくは、インパクタが試験片に一定量の衝撃エネルギーを伝達するようにより大きい垂直速度成分をインパクタに提供するように構成される。典型的には、実験者は、衝撃エネルギーを可能な限り良好に制御することを望むが、これは、インパクタから試験片に伝達されて振動を引き起こすエネルギーに対応するからである。好ましくは、衝撃エネルギーの量は、衝撃が試験片を塑性変形させないように十分に小さい。さらに、衝撃エネルギーの量は、好ましくは、センサシステムの最適感度に対応する振幅で試験片を振動させるのに必要なエネルギーに本質的に対応する。
【0022】
本発明では、衝撃高さは、試験温度に少なくとも部分的に依存する。試験温度は広い温度範囲内で変化し得るので、インパクタ自体は、寸法、特に高さを有することができ、これは異なる温度での測定のために変化し得る。したがって、衝撃高さは、インパクタの熱線膨張に依存し、より具体的には、インパクタの高さの熱線膨張に依存する。衝撃高さは、温度に依存する他の特性にも依存し得る。例えば、インパクタは、少なくとも部分的に試験チャンバの内側に配置されてもよく、したがって試験温度にあってもよいインパクタアクチュエータによって駆動されてもよい。インパクタアクチュエータが温度依存特性を有する場合、インパクタアクチュエータによってインパクタに提供されるエネルギーも温度依存性を有する可能性があり、これはひいては衝撃高さに影響を及ぼし得る。ここでも、衝撃高さは、インパクタが試験片に衝撃を与えるための意図された高さであり、インパクタおよびインパクタアクチュエータの試験設定によって制御されることに留意されたい。
【0023】
本発明のシステムでは、土台は、試験片を支持高さで支持するように構成される。支持高さは、試験片が支持される実際の高さ、特に衝撃がインパクタによって試験片に与えられる位置の高さを指す。多くの場合、試験片は梁状であり、梁の底面が支持高さで水平になるように水平に支持される。正確な測定を確実にするために、支持高さは、前記試験温度範囲内の任意の試験温度で高々0.5mmだけ衝撃高さとは異なる。好ましくは、支持高さは、前記試験温度範囲内の任意の試験温度における衝撃高さと本質的に同じである。
【0024】
本発明者らは、広い温度間隔に及ぶ異なる温度で測定を行う場合、測定の精度は高度に温度依存性であることを見出した。これらの測定では、各温度について、インパクタの作動のための同じ設定を含む同じプロセスパラメータを使用した。本発明者らは、驚くべきことに、精度の変化の主な原因が、インパクタに対する試験片の位置、より具体的にはインパクタに対する試験片の変化した高さに対する熱膨張に起因することを見出した。熱膨張は、典型的には非常に小さく、肉眼では容易に見ることができない。実際、1mm程度の小さな高さの変化は全く見えないが、既に精度の大幅な低下につながる可能性がある。
【0025】
したがって、本発明者らは、従来技術の支持システムを用いて得られた測定の精度が改善され得ることを見出した。これにより、本発明者らは、精度が温度に依存し得ることに気付き、支持システムの熱膨張が正確な測定値を得るのに重要な役割を果たすことを見出した。この効果は、測定が実行される温度間隔が大きい場合に特に顕著である。実際、システムは、その振動特性が前記支持システムによって影響されないように試験片を支持することができる支持システムを必要とする。インパクタに対して大きく変化しない支持高さに試験片を維持することもできるそのような支持システムを見つけることは自明ではない。インパクタは、特定の高さで試験片に衝撃を与えるように構成される。したがって、インパクタと支持システムとの間の相対的な高さのいかなる変化も、正確な測定を実行するシステムの能力に影響を及ぼす。
【0026】
したがって、本発明のシステムの支持システムは、好ましくは平坦なマットの形状の熱的に安定した弾性材料からなる支持土台を備える。支持土台は、好ましくは開放構造を備える。好ましくは、支持土台は不織材料から構成される。支持土台は、インパクタが試験片に下方から衝撃を与えることを可能にするための少なくとも1つの貫通部を備える。
【0027】
「熱的に安定な材料」という用語は、大きな温度間隔にわたって非常に小さな熱膨張を有する材料を指す。好ましくは、材料は、高々25.0×10-6K-1、より好ましくは高々15.0×10-6K-1、さらにより好ましくは高々10.0×10-6K-1、さらにより好ましくは高々8.0×10-6K-1、さらにより好ましくは高々6.0×10-6K-1、さらにより好ましくは高々5.0×10-6K-1、さらにより好ましくは高々4.0×10-6K-1、最も好ましくは高々3.0×10-6K-1の線膨張係数を備える。好ましくは、材料は、測定が実行される温度間隔の全範囲にわたってそのような低い熱膨張を備える。
【0028】
本発明はまた、キットに関し、キットは、
-温度制御試験チャンバと、インパクタと、センサシステムとを備える衝撃励起測定システムであって、インパクタは、0℃~1600℃の試験温度範囲内の任意の試験温度で、試験片に下方から衝撃を与えるように構成され、センサシステムは、インパクタによって試験片に与えられる衝撃に対する試験片の振動応答を得るように構成され、インパクタは、衝撃高さで試験片に衝撃を与えるように構成され、衝撃高さは、試験温度に少なくとも部分的に依存する、衝撃励起測定システムと、
-固体試験片と、
-試験チャンバ内で固体試験片を支持するための土台を備える支持システムであって、前記土台は、試験片の弾性よりも実質的に大きい弾性を備え、土台は、インパクタが試験片に下方から衝撃を与えることを可能にするための貫通部をさらに備え、土台は、支持高さで試験片を支持するための支持面を備え、支持高さは、前記試験温度範囲内の任意の試験温度で高々0.5mmだけ衝撃高さとは異なる、支持システムと
を備える。
【0029】
本発明はまた、好ましくは0℃~1600℃の温度範囲内の1つまたは複数の温度で、試験片の材料特性を音響的に測定するための方法に関し、方法は、
a.本発明によるシステムの試験チャンバ内の支持システム上に試験片を配置し、好ましくは試験片を試験温度範囲内に加熱することと、
b.好ましくは、較正期間内に試験片から振動信号を捕捉することによって、好ましくは前記試験温度範囲内でバックグラウンド測定を実行し、それによってノイズ信号を取得することと、
c.以下のこと、すなわち、
c1.試験片に振動励起を付与することと、
c2.試験期間内に試験片の振動信号を捕捉し、それによって前記振動励起に対する振動応答信号を取得することと
によって、好ましくは前記試験温度範囲内および試験期間内で前記試験片に対して音響測定を実行することと、
d.振動応答信号を解析することによって試験片の材料特性を取得し、好ましくはそれによってノイズ信号を考慮することと
を含む。
【0030】
図面の概要
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】本発明による梁状試験片ならびに試験片の振動モードのノードを有する支持土台を示す図である。
【
図1B】本発明による梁状試験片ならびに試験片の振動モードのノードを有しない支持土台を示す図である。
【
図2】本発明によるシステムの一実施形態を示す図である。
【
図3】本発明によるシステムの一実施形態を示す図である。
【
図4】本発明による、音響応答を測定し、異なる温度でこれらの測定値から材料特性を得るための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、上記および本明細書でさらに説明される衝撃励起測定システムと、上記および本明細書でさらに説明される衝撃励起測定システム、支持システムおよび少なくとも1つの試験片を備えるキットと、上記および本明細書でさらに説明される試験片の材料特性を音響的に測定するための方法とに関する。
【0033】
「音響」および「振動」という用語は、本明細書全体を通して同義語として使用される。
【0034】
本発明のシステムまたは方法を使用して実行することができる測定は、好ましくは、下限および上限を含む温度間隔にわたって実行される。この温度間隔は、好ましくは高々50℃、より好ましくは高々30℃、さらにより好ましくは高々20℃、さらにより好ましくは高々0℃、さらにより好ましくは高々-18℃、さらにより好ましくは高々-80℃の下限を含む。温度間隔の特に好ましい下限は室温である。温度間隔は、好ましくは、少なくとも20℃、より好ましくは少なくとも50℃、さらにより好ましくは少なくとも100℃、さらにより好ましくは少なくとも200℃、さらにより好ましくは少なくとも400℃、さらにより好ましくは少なくとも600℃、さらにより好ましくは少なくとも800℃、さらにより好ましくは少なくとも1000℃以上、例えば1100℃、1200℃、1300℃、1400℃、1500℃、1600℃およびそれらの間またはそれ以上の任意の値の上限を含む。土台の材料は、好ましくは、温度間隔にわたって熱的に安定である。-80℃~1600℃の可能性があるが、特に0℃~1600℃の大きな温度間隔の観点から、土台は、好ましくは不織構造で、ムライト(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、または多結晶ムライトおよびアルミナウールなどのそれらの組合せなどのセラミック材料またはガラス状材料で作られることが好ましい。好ましくは、これにより、土台は、10wt%~50wt%のムライトと、50wt%~90wt%のアルミナとを含む。より好ましくは、土台は、20wt%~40wt%のムライトと、60wt%~80wt%のアルミナとを含む。さらにより好ましくは、土台は、25wt%~35wt%のムライトと、65wt%~75wt%のアルミナとを含む。さらにより好ましくは、土台は、約28wt%のムライトと、約72wt%のアルミナとを含む。
【0035】
一実施形態では、土台は平坦なマットの形状を備える。好ましくは、土台は、5mm~50mm、より好ましくは6mm~45mm、さらにより好ましくは7mm~40mm、さらにより好ましくは8mm~35mm、さらにより好ましくは9mm~30mm、さらにより好ましくは10mm~29mm、例えば10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mm、25mm、26mm、27mm、28mm、29mm、またはそれらの間の任意の値の高さを備える。12.5mmまたは25mmが特に好ましい。ここで与えられる土台の高さは、20℃で測定される。
【0036】
特に好ましい実施形態では、土台は、1600℃(2912°F)までの温度に曝露することができる多結晶ムライト繊維から製造されたブランケットを備え、それはアウトガスヒュームまたは関連する問題を引き起こす有機結合剤または他の添加剤を含まない。好ましくは、土台は、ほとんどの腐食剤、酸化および還元に対する優れた耐性を示す。好ましくは、そのようなブランケットのパラメータおよび材料含有量は、以下の表に与えられる。
【0037】
【0038】
好ましい土台の例は、M.E.Schupp Industriekeramik GmbHによって提供されるFibermax(登録商標)Needled Blanketを備える。
【0039】
好ましくは、試験片は、所定の形状および/または所定のサイズを含む。これにより、同じ支持システムを使用して、同じ所定の形状および/またはサイズを有する異なる試験片での測定が可能になるため、測定を容易に行うことができる。
【0040】
好ましくは、インパクタは、機械的インパクタであるか、または少なくとも機械的インパクタを備える。機械的インパクタは、例えば機械的または電気機械的など、いくつかの方法で作動させ得る。機械的システムは広い温度範囲にわたって使用可能である傾向があるため、機械的インパクタが好ましい場合がある。
【0041】
好ましくは、支持システムの土台は、試験チャンバに対して固定される。この固定は、例えば、試験チャンバの一部に土台を接着することによって恒久的であり得るか、または固定は、例えば、試験チャンバの一部に土台をクランプ、ねじ込み、ボルト締めまたはピン留めすることによって解除可能であり得る。
【0042】
測定中、試験片が土台に対して再配置されないことが重要であり得る。これは、試験片の特定の振動ノードが励起されるように試験片が土台上に配置される場合に特に重要である。このような構成では、試験片を振動させながら、土台に対して再配置することを禁止することが好ましい。これは、試験片の水平移動を制限することによって達成することができる。このような水平移動を制限する正確なやり方は、試験片の形状に依存し得るが、多くの場合、ピンのセットを使用してもよく、それにより、ピンは、試験片のすぐ横で土台に挿入され、好ましくは、ピンは、試験片のすべての側面に配置され、それにより、試験片の水平移動を制限する。試験片が梁状の形状を有する場合、好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも4つのピンが使用され、少なくとも1つのピンが梁状の試験片の4つの側面の各々で土台に固定される。次いで、任意選択の第5のピン、または任意選択のさらなるピンを、試験片の水平回転を防止するために任意の側に配置してもよい。これを
図1Aに示す。
図1Aは、梁状試験片(100)が、特定の高さ(102)、例えば25mmの平坦なマットの形状の土台(101)によってどのように支持されるかを示す。試験片(100)は、ピンのセットによって水平に移動することが制限され、ピンのうちの3つ(103a、103b、103c)が図に示されているが、ピンのうちの少なくとも2つが、水平移動を完全に制限するために試験片の背後に存在する。インパクタ(108)によって試験片に与えられる機械的衝撃は、試験片の振動モードに従って試験片の振動を誘発する。衝撃の位置に応じて、特定の振動モードが優先的に励起される。例えば、示した図では、衝撃は、試験片の端部で、2つのノード(104a、104b)を有する曲げモードのアンチノード(105b)の位置に与えられる。試験片の他方の側の別のアンチノード(105a)に衝撃を与えることによって、同様の励起を達成することができる。好ましくは、衝撃は、測定しようとする試験片の振動モードのアンチノードの位置で試験片に与えられる。
【0043】
ノードの位置における曲げモード振動の振幅は、試験片の重心フレームにおいて消失するか、または少なくとも非常に小さい。これは、試験片が完全試験中にノードの位置で支持されることを意味する。土台の弾性は、試験片が本質的に自由に振動できること、すなわち、振動が土台の存在によって本質的に影響されないことを保証する。実際、土台の弾性は、土台が試験片の振動運動に追従できることを保証する。
【0044】
振動応答の測定により、実験者は、曲げモードおよびねじりモードなどの異なる振動モードの固有周波数、ならびに振動モードが消滅する速さを示すダンピング係数を得ることができる。本発明によれば、これらの振動特性を異なる温度で得ることができる。固有周波数またはダンピング係数の突然のまたは予期しないシフトなどの、温度に伴う特性の突然のまたは予期しない変化は、典型的には、試験片の構造の変化、欠陥またはエラーを示す。
【0045】
曲げ振動モードの固有周波数ffは、試料の動的ヤング率Eを示す。質量m、長さL、幅b、および厚さtを有する図示の梁の場合、以下の関係を使用することができる。
【0046】
【0047】
補正因子Tは以下のように定義される。
【0048】
【0049】
ねじり振動モードの固有周波数ftは、試料の剪断弾性率を示す。質量m、長さL、幅b、および厚さtを有する図示の梁の場合、以下の関係を使用することができる。
【0050】
【0051】
補正因子Rは以下のように定義される。
【0052】
【0053】
本発明によるシステムの土台(101)を
図1Bに示す。それは、好ましくは、土台上に配置することができる試験片の振動モードのアンチノードに対応する位置に貫通部(106)を備える。これにより、例えば弾道インパクタを使用して、下方(107)から衝撃を与えることができる。
【0054】
図2および
図3は、本発明によるシステムを示す。図は、加熱チャンバおよび/または試験片を所望の温度または所望の温度範囲にすることができる加熱要素(302、303、304、305、306)のセットを備える温度制御試験チャンバ(「加熱チャンバ」、301)を示す。加熱要素(302、303)は、加熱チャンバ壁に取り付けられ、例えば高温の高圧流体との熱交換、電気抵抗加熱、磁気誘導などによって加熱チャンバ壁に熱を供給し得る。これらの壁加熱要素の熱は、例えば換気装置(304、305)によって加熱チャンバ内に分配することができる。換気装置(304、305)はまた、加熱された空気または蒸気などの温かい流体を加熱チャンバに供給するように構成されてもよい。加熱要素はまた、マイクロ波要素(306)などの放射加熱要素を備えてもよい。加熱チャンバは、好ましくは、加熱チャンバおよび/または試験片の実際の温度を測定するための1つまたは複数の温度計も備え、好ましくは、試験片および/または加熱チャンバの温度を制御するように構成された制御回路も備える。
【0055】
試験片(307)は、図中の土台(101)を備える支持体によって吊り下げられ、土台は、
図2では、支持バー(308a、308b、309a、309b)のセットを備えるテーブル(330)上に配置され、土台の弾性が試験片の弾性よりも実質的に大きいために、土台は試験片を可能な限り自由に振動させることを可能にする。
図3において、土台(101)は、加熱チャンバの底面に配置され、それによって、
図2のテーブルなどの任意の支持構造体の熱膨張の影響を除去する。マイクロフォンまたはレーザ干渉計を備え得る音響センサ(310)または複数の音響センサは、好ましくは明確に画定された位置で試験片と接触(311)させることができ、または導波管を使用して音響センサに対する音響応答を導くことができ、好ましくは導波管の一端は加熱チャンバ内で試験片の近くにまたは直接接触させられ、他端は好ましくは加熱チャンバの外側に位置する。後者の実施形態は、センサを加熱チャンバの外側に配置することを可能にする。土台(101)は、インパクタ(312)の上端が試験片に衝撃を与えることを可能にする貫通部(107)を備える。
【0056】
好ましい実施形態では、音響センサはレーザ干渉計を備える。レーザ干渉計は、真空中での測定に特に有用であり、非接触測定を可能にする。代替的または追加的に、音響センサは、例えば以下に記載されるような、超音波測定センサおよび/または飛行時間センサおよび/またはドップラー式センサを備えてもよい。
【0057】
-S-R.Huang、R.M.Lerner、K.J.Parker、「Time domain Doppler estimators of the amplitude of vibrating targets」、J.Acous.Soc.Am.,91(2),965-974(1992)
-J.Tapson、「High precision,short range ultrasonic sensing by means of resonance mode-locking」、Ultrasonics,33,6,441-444(1995)
-R.Kazys、R.Sliteris、L.Mazeika、「Ultrasonic technique for Vibration Measurements」、Proceedings of the 15th World Conference on Non-Destructive Testing、2000年10月15日~21日、ローマ、https://www.ndt.net/article/wcndt00/papers/idn246/idn246.htm
また、これらのタイプのセンサは、非接触測定に使用されてもよい。
【0058】
一実施形態において、本発明の方法は、加熱チャンバが、大気圧よりも低い圧力、好ましくは0.5バール以下、より好ましくは0.2バール以下、最も好ましくは本質的に真空圧力を含むように実施される。これにより、好ましくは、レーザ干渉計を使用して、低圧力からゼロ圧力で非接触振動測定を可能にする。ゼロ圧力まで低下した測定は、周囲のノイズをダンピングさせ、それによって信号対ノイズ比を増加させる。
【0059】
インパクタは、好ましくは、インパクタアクチュエータ(313)によってインパルスを与えることができる弾道インパクタ(312)を備える。弾道インパクタ(312)は、好ましくは、高温に耐えることができ、その特性が温度とともに大きく変化しないセラミックロッドであり、すなわち、インパクタは、好ましくは、熱的に安定なセラミック材料から本質的になる。それは、インパクタアクチュエータ(313)を使用して試験片に向かって上方(314)に発射することができ、インパクタアクチュエータは、
-好ましくは垂直方向に沿って弾道インパクタを案内するための、加熱チャンバの底部を通る案内管(315)と、
-インパクタ(312)に好ましくは垂直なインパルス(317)を付与すように構成された電気機械的に操作されるハンマー(316)と
を備える。ハンマー(316)は、電気コイル(318)と、コイル(318)を通って流れる電流に応じて移動することができる可動ロッドまたは弾丸(319)とを備え得る。そのようなシステムの一例が米国特許第6,782,970号に提示されており、それにより、本発明では、インパクタアクチュエータの弾丸は、試験片に直接ではなくセラミックインパクタ(312)にインパルスを付与する。代替的に、インパルスをインパクタに付与するための、圧力駆動インパクタまたは圧力駆動衝撃アクチュエータ(380)が使用されてもよい。
【0060】
好ましくは、テーブルの支持バーは、インパクタおよび/または案内管と同じ材料から作られる。好ましくは、これにより、支持バーは、熱的に安定なセラミック材料から本質的になる。
【0061】
本発明の方法の一実施形態では、較正期間内に試験片から振動信号を捕捉することによって前記試験温度範囲内でバックグラウンド測定を実行し、それによってノイズ信号を取得するステップbが実行されることが好ましい。振動応答の分析を実行するときに環境のバックグラウンドノイズを考慮すると、材料特性のより良い決定がもたらされる。さらに、音響測定と同じ試験温度範囲で背景ノイズを考慮することによって、本発明者らは、振動応答のはるかに良好な分析を実行できることを見出した。これは、例えば、測定を実行するために使用される加熱要素、換気装置、または任意の他の機器もしくは機器部品に起因して、ノイズが温度範囲に大きく依存する可能性があり、それらの各々が異なる温度範囲で異なる挙動をする可能性があるためである。このノイズは、試験機器自体からのノイズ、特に、温度に依存し得るインパクタおよび/またはインパクタアクチュエータからのノイズを含み得ることに留意されたい。
【0062】
本発明者らは、試験片に振動励起を付与することを除いて、音響測定のすべてのステップを行うことによってバックグラウンド測定が行われる場合に最良の結果が達成されることをさらに見出した。したがって、好ましい実施形態では、バックグラウンド測定を実行するステップbは、試験片に振動励起を付与するステップc1を除いて、音響測定を実行するステップcのすべてのステップを実行することを含む。これは、上記の方法、ならびに本明細書および特許請求の範囲で後述する方法のすべての実施形態に適用される。衝撃に対する音響応答が測定される各温度または温度間隔で較正測定を実行することにより、試験機器、特にインパクタおよび/またはインパクタアクチュエータの温度依存性を考慮に入れることが可能になる。
【0063】
好ましい実施形態では、本発明の衝撃励起測定システムの試験チャンバは、試験片を試験温度範囲内にするための加熱要素を備える。
【0064】
好ましい実施形態では、衝撃励起測定システムは、試験チャンバ内に配置された試験片に振動励起を付与するときにインパクタを作動させるためのインパクタアクチュエータを備える。
【0065】
好ましい実施形態では、衝撃励起測定システムは、試験チャンバと、センサと、インパクタとに関連する制御システムを備え、制御システムは、
・任意選択的に、試験片を試験温度範囲内に入れるように試験チャンバに指示し、
・試験期間中に、振動励起がインパクタによって加熱チャンバ内に配置された試験片に機械的に付与されるようにインパクタアクチュエータを用いてインパクタを作動させ、前記振動励起に対する振動応答信号をセンサから取得するように、衝撃システムに指示し、
・任意選択的に、較正期間中に、インパクタが加熱チャンバ内に配置された試験片に振動励起を機械的に付与しないように、インパクタアクチュエータを用いてインパクタを作動させ、センサからノイズ信号を取得するように、衝撃システムに命令し、
・振動応答信号を分析することによって、好ましくはノイズ信号を考慮に入れることによって、試験片の材料特性を得る
ように構成される。
【0066】
さらなる態様において、本発明は、試験片の熱膨張パラメータを求める熱膨張測定方法に関する。この熱膨張測定方法は、
-第1の温度における実験データから少なくとも2つの共振周波数を抽出することと、
-前記第1の温度における前記少なくとも2つの共振周波数から第1の寸法パラメータの第1の値を取得することと、
-前記第1の測定温度における前記第1の寸法パラメータの前記第1の値を第2の温度における前記第1の寸法パラメータの第2の値と比較することと、
-前記比較から熱膨張パラメータを計算することと
を含む。
【0067】
これにより、第1の温度における少なくとも2つの共振周波数は、試験片の材料特性であり、これは好ましくは上述し、さらに本明細書で説明する音響測定方法によって得ることができる。上述し、さらに本明細書で説明する衝撃励起測定システムは、好ましくは、少なくとも2つの共振周波数を得るために使用され得る。
【0068】
図4は、本発明による方法の一実施形態を示す。第1のステップaで、温度を第1の温度範囲内にする(1021)。次いで、ステップbが実行され(1002)、それによって試験片に衝撃が与えられないように注意が払われ(1001)、それによって好ましくは衝撃システムが作動されるが、衝撃が回避されるようになっている。次いで、ステップcを実施し、試験片に衝撃を付与し(ステップc1、1010)、振動応答信号を捕捉する(ステップc2、1020)。次いで、信号が分析され(ステップd、1030)、それによってE、G、νおよび/または他の特性(特に減衰定数も)がステップaの温度範囲内で得られる。衝撃回避作動ステップ(1001)、ノイズ捕捉ステップ(1002)、衝撃ステップ(1010)、および応答捕捉ステップ(1020)は、信号が分析される(1030)前に(図示されているように、例えば、装置が連続的に動作する複数のインパクタを有する場合)繰り返し実行されてもよく、あるいは、捕捉された各信号が別々に分析されてもよい。これにより、異なる温度または温度範囲でのノイズ信号および/または振動応答信号をステップdの分析で組み合わせて、材料特性のより正確な値を取得し、および/またはこれらの材料特性の温度依存性を決定し得る。
【0069】
選択された励起モードに応じて、分析1030は、特にピーク周波数を特定し、上記のような式を適用することによって、応答のスペクトルの周波数から動的ヤング率(E)または剪断弾性率(G)を決定するステップをさらに含み得る。
【0070】
好ましくは、分析は、減衰定数を基準値と比較すること1040をさらに含む。このステップは、本発明による方法を品質管理目的で使用することを可能にする。実際、製造品の品質を制御する方法は、上述の方法を使用して製造品の少なくとも一部を前記固体材料試料として特徴付けることと、減衰定数が前記基準値の所定のマージン内にある場合、「合格」条件1040/YESをシグナリングすることと、減衰定数が前記基準値の前記所定のマージン外にある場合、「不合格」条件1040/NOを宣言することとを含む。したがって、本発明の一態様によれば、製造品の品質を制御する方法が提供され、方法は、上記の方法を使用して前記製造品の少なくとも一部を前記試験片として特徴付けることと、前記減衰定数が前記基準値の所定のマージン内にある場合、「合格」条件をシグナリングすることと、前記減衰定数が前記基準値の前記所定のマージン外にある場合、「不合格」条件を宣言することとを含む。
【0071】
本発明の一実施形態では、ステップa~dは、同じ温度で、異なる温度で、または異なる温度範囲内で、2回以上、好ましくは繰り返し実行される。好ましい実施形態では、試験片は連続的に加熱され、それによってステップa~dは後続の温度範囲内で実行される。
【0072】
例えば、試験片は、室温(20℃)から1℃/秒の速度で連続的に加熱することができる。その場合、ステップa~dは20秒ごとに定期的に実行することができ、これは、ステップa~dの第1のセットが20~40℃の温度範囲で実行され、ステップa~dの第2のセットが40~60℃の温度範囲で、さらに例えば1580~1600℃の最高温度範囲まで実行されることを意味する。しかしながら、温度範囲は、等しく大きい必要はなく、例えば、対象の温度範囲に対してより小さくてもよいことに留意されたい。例えば、試験片または試験片と同じ材料から作製された部品が主に700~800℃の温度で使用されることが分かっている場合、例えば5℃に及ぶより小さい温度範囲をとることによって、これらの温度間の材料特性をより正確に測定することを決定することができる。
【0073】
さらに、ステップbおよび/またはcで実行される測定は、より正確なノイズ信号および/または振動応答信号を得るために、他の温度でステップbおよび/またはcで実行される測定と組み合わせることができることにも留意されたい。例えば、80℃~100℃の温度範囲および100℃~120℃の温度範囲でステップa~dを実行すると仮定する。これにより、ステップbは82~87℃の温度部分範囲で第1の時間、102~107℃の温度部分範囲で第2の時間を実行することができ、一方、ステップcは92~97℃の部分範囲で第1の時間を実行することができる。そのような場合、ステップdの分析は、2回のステップbで得られた2つのノイズ信号を考慮して実行することができる。したがって、好ましい実施形態では、ステップa、b、cおよび/またはdは、温度範囲内で2回以上行われる。代替的または追加的に、ステップa、b、cおよび/またはdは、重複し得る異なる温度範囲で複数回実行されてもよい。
【0074】
一実施形態では、制御システムは、ノイズ信号を考慮して振動応答信号を分析して試験片の材料特性を決定するように構成された処理手段を備える。
【0075】
これにより、処理手段は、好ましくは、捕捉された信号に対するフーリエ変換または高速フーリエ変換または高調波分解を使用することによって、時間領域で、またはより好ましくは周波数領域で振動応答信号からノイズ信号を減算するように構成され得る。減算はまた、時間領域と周波数領域との組合せで実行されてもよい。処理手段は、好ましくは、時変信号を分析して、時変信号を構成する正弦波の周波数および減衰定数を決定するように構成され、すなわち、それは高調波反転問題を解決する。高調波反転の問題は、より一般的には、所与の帯域幅における有限個のそのような正弦波の和からなる離散時間有限長信号を構成する正弦波の周波数、減衰定数、振幅、および位相を決定することからなり、文献では周知であるが、今日までIETと関連付けられていない。Vladimir A.MandelshtamおよびHoward S.Taylorは、彼らの論文「Harmonic inversion of time signals and its applications」、The Journal of Chemical Physics 107,6756(1997)において、高調波反転問題を小さい行列対角化の問題として再評価することによってこの問題を解決するために、Wall and Neuhauserの一般的なフィルタ対角化方法の使用を記載している。マサチューセッツ工科大学のSteven G.Johnsonによる「Harminv」プログラムを含む、この技術のコンピュータベースの実装は当技術分野で既知である。分析の結果は、スクリーン140に、または他の機器による記憶もしくはさらなる処理のための任意の他の適切なインターフェースに出力され得る。
【0076】
処理手段は、1つまたは複数の専用ハードウェア部品(例えば、ASIC)、適切に構成可能な構成可能ハードウェア部品(例えばFPGA)、適切なソフトウェアを備えたマイクロプロセッサ、または上記の組合せから構成されてもよい。同じ部品が他の機能を実行してもよい。
【0077】
本発明の好ましい実施形態では、試験片は、ワークピース、装置または装置の部品である。本発明の別の好ましい実施形態では、試験片は、明確な形状、好ましくは梁形状を備え、ワークピース、装置、または装置の部品と同じ材料から、または同じ製造技術を使用して作製される。
【国際調査報告】