IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイの特許一覧

特表2024-543327電子デバイスを備えたタイヤの製造方法
<>
  • 特表-電子デバイスを備えたタイヤの製造方法 図1
  • 特表-電子デバイスを備えたタイヤの製造方法 図2
  • 特表-電子デバイスを備えたタイヤの製造方法 図3
  • 特表-電子デバイスを備えたタイヤの製造方法 図4
  • 特表-電子デバイスを備えたタイヤの製造方法 図5
  • 特表-電子デバイスを備えたタイヤの製造方法 図6
  • 特表-電子デバイスを備えたタイヤの製造方法 図7
  • 特表-電子デバイスを備えたタイヤの製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電子デバイスを備えたタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/06 20060101AFI20241114BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B29D30/06
B60C19/00 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525360
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2022080126
(87)【国際公開番号】W WO2023073126
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】102021000027812
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ ヨツィア
(72)【発明者】
【氏名】ロビン フランク アレンズ
【テーマコード(参考)】
3D131
4F501
【Fターム(参考)】
3D131LA01
3D131LA24
4F501TA01
4F501TC24
4F501TE10
4F501TV27
(57)【要約】
電子デバイス(1)を備えたタイヤ(8)の製造方法であって、電子デバイス(1)を、ゴムの第1のストリップ(6)とゴムの第2のストリップ(7)との間に挿入する工程であって、ゴムの第1のストリップ(6)およびゴムの第2のストリップ(7)は、その間で、ハウジング(5)をそれ自体で画定する電子デバイス(1)を取り囲む、工程と、ハウジング(5)をグリーンタイヤ(8)のインナーライナ(13)に、ゴムの第1のストリップ(6)がインナーライナ(13)に直接接触し、ゴムの第2のストリップ(7)がゴムの第1のストリップ(6)の介入によりインナーライナ(13)から離れるように、適用する工程と、ハウジング(5)を備えたグリーンタイヤ(8)が加硫プロセスを受ける工程とを含む製造方法。第1のゴムストリップ(6)は、完全にグリーンなゴムから成る一方、第2のゴムストリップ(7)は、部分的にのみ加硫済みのゴム、すなわち、加硫が開始されているが完了していないゴムから成る。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイス(1)を備えたタイヤ(8)の製造方法であって、
前記電子デバイス(1)を、第1のゴムストリップ(6)と第2のゴムストリップ(7)との間に挿入する工程であって、前記第1のゴムストリップ(6)および前記第2のゴムストリップ(7)は、その間で、ハウジング(5)をそれ自体で画定する前記電子デバイス(1)を取り囲む、工程と、
前記ハウジング(5)をグリーンタイヤ(8)のインナーライナ(13)に、ゴムの前記第1のストリップ(6)が前記インナーライナ(13)に直接接触し、ゴムの前記第2のストリップ(7)がゴムの前記第1のストリップ(6)の介入により前記インナーライナ(13)から離れるように、適用する工程と、
前記ハウジング(5)を備えた前記グリーンタイヤ(8)が加硫プロセスを受ける工程と
を含み、
前記第1のゴムストリップ(6)は、完全にグリーンなゴムから成り、
前記第2のゴムストリップ(7)は、部分的にのみ加硫済みのゴム、すなわち、加硫が開始されているが完了していないゴムから成る、製造方法。
【請求項2】
ゴムの前記第2のストリップ(7)は、20~40%加硫済みのゴム、すなわち、20~40%、加硫を受けたゴムから成る、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2のゴムストリップ(7)は、加硫の完了時に達する最大剛性(RMAX)のうち、25%~50%の剛性(R)を有するゴムから成る、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
ゴムの前記第2のストリップ(7)は、40Nm~120Nmの接線弾性定数を有するゴムから成る、請求項1、2、または3に記載の製造方法。
【請求項5】
加硫前の前記ハウジング(5)は、前記電子デバイス(1)の厚さに、片面につき0.5mm追加された値に等しい、全体の厚さ(T)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記電子デバイス(1)と、加硫前の各ゴムストリップ(6、7)の外面との間に、0.4mm以上、好ましくは0.5mm以上のゴムの厚さ(T)がある、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記電子デバイス(1)と、加硫後の各ゴムストリップ(6、7)の外面との間に、0.2mm以上、好ましくは0.3mm以上のゴムの厚さ(T)がある、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第2のゴムストリップ(7)は、前記第1のゴムストリップ(6)より小さい、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記2つのゴムストリップ(6、7)間のサイズの差は、0.5mm~8mmである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
平面視で、各ゴムストリップ(6または7)は、鋭い縁を持たないように、2つの小さな丸い端部を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
ゴムの前記2つのストリップ(6、7)は、前記電子デバイス(1)の厚さの半分に、0.5mm追加された値に等しい、同じ厚さを有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
ゴムの前記第1のストリップ(6)は、75~85mmの長さ(L)と、20~45mmの幅(W)と、1.2~1.4mmの厚さとを有し、
ゴムの前記第2のストリップ(7)は、65~75mmの長さ(L)と、33~37mmの幅(W)と、1.2~1.4mmの厚さとを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ハウジング(5)は、前記タイヤ(8)のサイドウォールにおいて、かつ、前記ハウジング(5)の中心部が、半径方向に最も内側の部分からトレッドの向こう側へと測定される半径方向の高さであって、前記タイヤ(8)の断面の高さ(SH)の50%未満である半径方向の高さを有するように、グリーンタイヤ(8)の前記インナーライナ(13)に適用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイス(特に、トランスポンダ)を備えたタイヤを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近代的な自動車の能動部品を成し、取り付けられるタイヤの種類に関する情報、タイヤの状態に関する情報、および環境条件に関する情報も提供できる、いわゆる「スマート」タイヤが登場している。
【0003】
「スマート」タイヤは、通常、タイヤの識別、特徴、および履歴についてのリモート通信を(タイヤが取り付けられる自動車と、タイヤの点検または交換を実施する必要がある操作者との双方に)可能にするトランスポンダ(つまり、無線周波数で通信を行うのに適した電子デバイス)を備えている。
【0004】
最近、トランスポンダの存在に基づいた「無線自動識別(RFID)」技術と、トランスポンダ内に効果的なタイヤ圧を記憶し、続いて、トランスポンダ自体を用いて効果的なタイヤ圧の情報をリモートで伝えるために、効果的なタイヤ圧を測定する「タイヤ空気圧モニタリングシステム(TPMS)」技術との一体化が提案されている。
【0005】
タイヤに結合されることを意図したトランスポンダは、トランスポンダを四方から完全に取り囲むゴム製のハウジングに事前に挿入される。その後、トランスポンダをタイヤに結合させるため、トランスポンダをタイヤの内面に(典型的に、タイヤの気密性を確保するインナーライナの上に)取り付けることが可能である、あるいは、トランスポンダをタイヤのサイドウォールの内部に一体化する(すなわち、トランスポンダをタイヤのサイドウォールを作り上げるさまざまな層の真ん中に配置する)ことが可能である。トランスポンダをタイヤの内面に取り付けても、異物の存在によりタイヤの構造は全く変化しないため、期待される性能がタイヤに確実にもたらされる。トランスポンダは、タイヤがまだグリーンであるときに(すなわち、タイヤを加硫処理する前に)、またはタイヤが加硫処理された後に、タイヤの内面に取り付けられてよい。
【0006】
タイヤは、初めに、加硫プロセスの終わりに加硫用金型からのタイヤの取り外しを促進する機能を有する滑剤層により湿らされる(代替的に、加硫用金型のブリスターが、滑剤を使用して湿らされる場合もある。その結果、加硫済みタイヤの表面には、トランスポンダが適用される領域に、(例えば、レーザービームを使用したクリーニングにより)局所的に除去する必要がある滑剤層ができる(除去しなければ、トランスポンダは、タイヤの表面に十分な力で付着することができなくなる)。それゆえ、タイヤが加硫処理された後に、トランスポンダをタイヤの内面を取り付ける場合、製造時間およびコストを増加させる追加的な処理(トランスポンダが適用される領域のクリーニング)が必要となる。
【0007】
加えて、トランスポンダを加硫済みタイヤの表面に十分に付着させるためには、十分に強力で、タイヤのインナーライナを作り上げるゴム化合物と相性がよく、かつ、タイヤのインナーライナの完全性を決して損なわない接着剤(糊)を使用する必要がある。この接着剤も、経済的および環境的観点から見れば、追加的なコストとなる。
【0008】
それゆえ、製造時間およびコストを低減するために、タイヤがまだグリーンであるときに(すなわち、タイヤを加硫処理する前に)、トランスポンダをタイヤの内面に取り付けることが好ましい。しかしながら、加硫プロセス中に達する高圧および高温により、トランスポンダの一部が、そのゴム製のハウジングの外側に表れ(いわゆる「表面化(surfacing)」現象)、トランスポンダの(完全な故障とまではいかなくても)機能不全を引き起こすことが多く観察されている。加えて、加硫プロセス中に達する高圧および高温により、トランスポンダの一部がカーカスコードに接触し、トランスポンダの(完全な故障とまではいかなくても)機能不全を引き起こし、カーカスコードの操作にマイナスに干渉することも多い。最後に、加硫プロセス中に達した高圧および高温は、インナーライナに(特に、トランスポンダのゴム製のハウジングの端に)、長期的な観点ではインナーライナに割れ目を生じさせ、空気漏れにつながるような、凹凸を生じさせる可能性がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、タイヤまたは電子デバイスの損傷を回避し、同時に実行が容易で経済的である、電子デバイスを備えたタイヤの製造方法を提供することである。
【0010】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に記載されたような、電子デバイスを備えたタイヤの製造方法が提供される。
【0011】
特許請求の範囲には、本明細書の不可欠な部分を形成する、本発明の好適な実施形態が記載される。
【0012】
本発明は、例示の非限定的な実施形態を示す添付の図面を参照して、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ゴム製のハウジングに挿入されたトランスポンダの模式図である。
図2】切断線II-IIに従った図1のトランスポンダの断面図である。
図3】切断線III-IIIに従った図1のトランスポンダの断面図である。
図4図1のトランスポンダの透視図である。
図5図1のトランスポンダの分解透視図である。
図6】加硫プロセスが進行するにつれてのゴムの強度の変化を示すグラフである。
図7】加硫プロセスが進行するにつれてのゴムの接着性の変化を示すグラフである。
図8図1のトランスポンダが適用されたタイヤの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、数字1は、その全体においてトランスポンダ、すなわち、情報を保管可能で、無線周波数を用いて通信可能な(通常、受動的な、すなわち、専用の電源を持たない)電子デバイスを指す。言い換えれば、トランスポンダ1は、リーダー(またはポーリングデバイス)と呼ばれる特定の固定または携帯機器の側でリモートポーリングに応答するのに適した、小寸法の「スマートラベル」である。リーダーは、ポーリングされているトランスポンダ1内に含まれる情報を読み取り可能および/または修正可能であると同時に、無線周波数でトランスポンダ1自体と通信可能である。従って、トランスポンダ1は、いわゆる「無線自動識別(RFID)」技術に従って動作する無線リーディングおよび/またはライティングシステムの一部である。
【0015】
図1に示すように、トランスポンダ1は、不揮発性メモリ(典型的に、EEPROMまたはFRAMであり、後者はより高価だが技術的により進歩している)を備えた電子回路2(すなわち、マイクロチップ)と、電子回路2に接続されたアンテナ3と、電子回路2およびアンテナ3の両方を支え、(例えば、銅被覆ベトロナイト(vetronite)、FR4、または他の類似の物質の薄いシートを備えうる)「基板」として定義されることが多い支持体4とを備える。以下で詳細に説明するが、支持体4は、存在しない可能性もある。図1に示す実施形態において、アンテナ3は、ダイポールアンテナ(または単にダイポール)であり、電流が流れ、リモートで電磁場を放射する線形導電体を使用して実装されている2つの等しく開いたアームを備える。
【0016】
使用中、アンテナ3は、電磁誘導により、アンテナ3内の電位差を引き起こす電磁信号を受信し、これにより、電子回路2内で電流の循環が生じ、電子回路2自体に電力が供給される。電子回路2は、このように作動されると、アンテナ3を用いて、メモリ内に含まれるデータを送信し、必要に応じて、そのメモリ内に含まれるデータの修正も行う。
【0017】
図1図2、および図3に示すように、トランスポンダ1は、互いに重ね合わされ、圧力をかけられたグリーンゴムの2つのストリップ6および7を備えるゴム製のハウジング5に挿入されている。一般に、ハウジング5の2つのグリーンゴムストリップ6および7は、トランスポンダ1より(すなわち、電子回路2およびアンテナ3より)長い/幅が広い。
【0018】
別の実施形態(図示せず)によれば、支持体4は存在せず、その機能は、ハウジング5のゴムのストリップ6および7が担う。
【0019】
好適な(しかし、明らかに非限定的な)実施形態によれば、加硫前の(トランスポンダ1を中に含む)ハウジング5の厚さTは、2.3~2.9mmであり(かつ、例えば、2.6mmに等しく)、加硫前のハウジング5の幅Wは、約20~45mmであり(かつ、例えば、40mmに等しく)、加硫前のハウジング5の長さLは、約70~90mmである(かつ、例えば、80mmに等しい)。好適な実施形態によれば、加硫前、ハウジング5の厚さTは、トランスポンダ1の厚さに、片面につき0.4~0.5mm(すなわち、全体で0.8~1.0mm)の厚さが追加された値に等しい。このように、加硫前の2つのゴムストリップ6および7は、(0.4~0.5mmに等しい)同じ厚さを有するが、この厚さは、トランスポンダ1と、加硫前の各ゴムストリップ6または7の外面との間に、0.5mm以上(より一般的に、0.4mm以上)ゴムの厚さがある、すなわち、トランスポンダ1と、加硫前の各ゴムストリップ6または7の外面との間に、少なくとも0.5mm(0.4mm)のゴムが設けられるように選択される。この規則に従えば、トランスポンダ1の最大の厚さが(すなわち、最も厚い領域で)1.6mmであれば、加硫前の(トランスポンダ1を中に含む)ハウジング5の厚さTは、2.6mmに等しくなる。トランスポンダ1がより厚く、またはより薄くなると、ハウジング5の厚さTも同様により厚く、またはより薄くなる。
【0020】
結果として、加硫前の2つのゴムストリップ6および7は同じ厚さを有するが、この厚さは、トランスポンダ1の厚さの半分に約0.4~0.5mm追加した値に等しい。
【0021】
加硫前の2つのゴムストリップ6および7が、トランスポンダ1の厚さの半分に約0.4~0.5mm追加した値に等しい、同じ厚さを有するとき、(2つのゴムストリップ6および7の間に囲まれた)トランスポンダ1と、加硫前の2つのゴムストリップ6および7の外面との間には、約0.4~0.5mの厚さを有するゴムの層が存在する。この未加硫のゴムの厚さにより、加硫プロセスの終わりに、(2つのゴムストリップ6および7の間に囲まれた)トランスポンダ1と、2つの加硫済みゴムストリップ6および7の外面との間に、少なくとも0.2mmの(すなわち、0.2~0.3mm以上であり、かつ、一般的に0.2~0.3mmよりわずかに大きい)厚さを有する加硫済みゴムの層が確実にもたらされる。言い換えれば、加硫プロセスの終わりに得られる最終結果として、(2つのゴムストリップ6および7の間に囲まれた)トランスポンダ1は、少なくとも0.2~0.3mmの加硫済みゴムにより覆われる(かつ、それにより「保護される」)。
【0022】
一般的に、加硫前のハウジング5の長さLは、トランスポンダ1の長さに、片側につき2~5mm(すなわち、合計で4~10mm)追加された値に等しい。
【0023】
添付の図面に示す実施形態において、ゴムストリップ7は、下にあるゴムストリップ6よりわずかに小さい(すなわち、狭く、短い)(加硫前の2つのゴムストリップ6および7の間のサイズの差は、0.5mm~8mmである)。この点に関して、下にあるゴムストリップ6よりわずかに小さい(すなわち、狭く、短い)ゴムストリップ7により、以下の技術的効果が得られることに留意することが重要である。つまり、タイヤのインナーライナにおけるゴムのステップが、加硫中の空気の流れに対するブロックを作り出すが、加硫中、このゴムのステップが低減し(実質的に円すい形になると想定される)、さまざまな成形不良を回避することができる。別の実施形態(図示せず)によれば、ゴムストリップ7は、下にあるゴムストリップ6と全く同じサイズを有する。具体的には、添付の図面に示す実施形態においては、ゴムストリップ6は、75~85mm(好ましくは、80mm)の加硫前の長さLと、20~45mm(好ましくは、40mm)の加硫前の幅Wと、1.2~1.4mm(好ましくは、1.3mm)の加硫前の厚さTとを有する。代わりに、ゴムストリップ7は、65~75mm(好ましくは、70mm)の加硫前の長さLと、33~37mm(好ましくは、35mm)の加硫前の幅Wと、1.2~1.4mm(好ましくは、1.3mm)の加硫前の厚さTとを有する。
【0024】
好適な実施形態によれば、平面視で、各ゴムストリップ6または7は、鋭い縁を持たないように、2つの小さな丸い端部を有する。
【0025】
ゴムストリップ6は、完全にグリーンなゴム(すなわち、部分的にでさえ、全く加硫処理されていないゴム)から成る。一方、ゴムストリップ7は、部分的にのみ加硫済みのゴム(すなわち、加硫が開始されているが完了していないゴム、すなわち、完全にグリーンでも、完全に加硫済みでもないゴム)から成る。具体的には、ゴムストリップ7は、(以下で詳述するように)20~40%加硫済みのゴム、すなわち、20~40%加硫を受けたゴムから成る。
【0026】
図6および図7に示すように、加硫のパーセンテージ%Cが(完全にグリーンなゴムに対応する)0%から(完全に加硫済みのゴムに対応する)100%へと進行するにつれ、図7に示すような、チオエーテル結合を形成するゴムの能力(すなわち、他の物質に付着するゴムの能力)は減少し、それと同時に、図6に示すようなゴムの剛性Rは増加する。物質の力学において、剛性は、外力により生じる弾性変形に対抗(抵抗)するボディの能力であり、その逆は、降伏度(yieldability)または柔軟性と呼ばれる。外力と弾性変形との間の比率は、「ヤング率」、または弾性率(ここで、その測定単位はN/mである)と呼ばれ、物質の剛性の直接測定を表す(ヤング率が低いほど、剛性が低くなるため、物質が変形しやすくなる)。
【0027】
一般的に、加硫のパーセンテージ%Cは、ゴムが加硫温度にさらされた期間に基づいて測定される(典型的に、160~180°C、またはより一般的に、140~200°C)。従って、50%に等しい加硫パーセンテージ%Cは、ゴムが、完全な加硫を成すために必要な時間の50%、加硫温度にさらされたことを示している。
【0028】
図6に示す好適な実施形態によれば、ゴムストリップ7は、加硫の完了時に達する最大剛性RMAXのうち、20%(R)~40%(R)の剛性Rを有するゴムから成る(代替的に、剛性Rは、加硫の完了時に達する最大剛性RMAXのうち、20~25%と50%との間となる可能性がある)。上述のように、剛性Rは、対応する「ヤング率」または弾性率を用いて測定されてよく、よって、剛性Rの増加は、「ヤング率」の増加に対応する。具体的には、ゴムストリップ7は、50Nm~100Nmの(より一般的に、40Nm~120Nmの)接線弾性定数を有するゴムから成る。
【0029】
好ましくは、2つのゴムストリップ6および7は、全く同じ種類のゴム化合物から成る。ただし、代替的に、2つのゴムストリップ6および7は、2つの異なる種類のゴム化合物から成る可能性がある。
【0030】
図8に示すように、トランスポンダ1を含むハウジング5は、トロイダルケース9を備えるタイヤ8に結合する(取り付けられる)。トロイダルケース9は、それ自体の上に部分的に折り曲げられるため、2つのサイドフラップを有する(すなわち、間で重ね合わされた2つの層であり、通常、「折り返し」と呼ばれる)。カーカス9の両側には、2つの環状のビード10が設けられ、その各々は、カーカス9により取り囲まれている。カーカス9は、トレッドベルト12を介在させることにより、環状のトレッド11を支持する。ボディプライ9内には、気密であり、インナーライニングを構成し、かつ、タイヤ8内に空気を保ち、その同じタイヤ8のタイヤ圧を経時的に維持する機能を有するインナーライナ13が配置されている。
【0031】
タイヤ8の構成には、トランスポンダ1を2つのゴムストリップ6間に挿入し、続いて、ゴムストリップ6がインナーライナ13に直接接触し、ゴムストリップ7がゴムストリップ6の介入によりインナーライナ13から離れるように(すなわち、ゴムストリップ6がインナーライナ13の側にあり、ゴムストリップ7がインナーライナ13とは反対側にあるように)、ハウジング5をグリーンタイヤ8のインナーライナ13に適用する(取り付ける)ことによりハウジング5を構成することが含まれる。
【0032】
グリーンタイヤ8のインナーライナ13に(トランスポンダ1を中に含む)ハウジング5が適用されると、ハウジング5を備えたグリーンタイヤ8は加硫プロセスを受け、その加硫プロセスの終わりに、(トランスポンダ1を中に含む)ハウジング5がタイヤ8の不可欠かつ分離できない部分となる。当然、ハウジング5は、任意の位置でグリーンタイヤ8のインナーライナ13に適用されてよく、図8に示すものは、1つの可能性のある非限定的な例にすぎない。
【0033】
図8に示す好適な(しかし、拘束力はない)実施形態によれば、ハウジング5は、タイヤ8のサイドウォールにおいて、かつ、ハウジング5の中心部が、半径方向に最も内側の部分からトレッドの向こう側へと測定される半径方向の高さであって、(同様に半径方向に測定される)タイヤの断面の高さSHの50%より低い半径方向の高さを有するように、グリーンタイヤ8のインナーライナ13に適用される。この点に関して、ハウジング5が、好ましくは、ハウジング5の幅Wが半径方向に向き、ハウジング5の長さLが円周方向に向き、かつ、ハウジング5の厚さTが軸方向に向くように、グリーンタイヤ8のインナーライナ13に適用されることに留意することが重要である。
【0034】
本明細書に記載の実施形態は、本発明の保護範囲から逸脱することなく、組み合わされてよい。
【0035】
上述の製造方法は、多くの利点を有する。
【0036】
まず、上述の製造方法は、容易に自動化された少しの操作を実施することを伴う限りにおいては、非常に単純で、経済的である。基本的に、トランスポンダ1を持たないタイヤの製造と比較したとき、ハウジング5をグリーンタイヤ8に留めること(グリーンタイヤ8がまだ平らなとき、いわゆる「チップターニング(tip-turning)」の前に実行されうる操作)を追加したにすぎない。
【0037】
さらに、上述の製造方法によれば、トランスポンダ1の一部がそのゴム製のハウジング5の外側に表れること(いわゆる「表面化(surfacing)」現象)につながるような、加硫プロセス中に達する高圧および高温を避けることができ、トランスポンダ1の一部をケース9のコードに接触させるような、加硫プロセス中に達する高圧および高温を避けることができ、かつ、加硫プロセス中に達する高圧および高温がインナーライナ13に凹凸を生じさせることを防ぐこともできる。
【0038】
最後に、上述の製造方法によれば、タイヤ8へのトランスポンダ1の十分に強力で、耐久性のある付着が保証され、それにより、トランスポンダ1が、部分的にでさえ、タイヤ8から分離するリスクを避けることができる。
【0039】
(代わりに、形状が、平面視で、完全に矩形であった場合、そこにあったであろう)鋭い縁がないことにより、ハウジング5が加硫プロセス中にインナーライナ13に伝える応力が低減するため、平面視で、ゴムの各ストリップ6または7が、(鋭い縁を持たないように)2つの小さな丸い端部を有するという事実が重要であると強調するが大切である。
【符号の説明】
【0040】
1 トランスポンダ
2 電子回路
3 アンテナ
4 支持体
5 ハウジング
6 ストリップ
7 ストリップ
8 タイヤ
9 カーカス
10 ビード
11 トレッド
12 トレッドベルト
13 インナーライナ
L 長さ
W 幅
T 厚さ
SH 断面高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイス(1)を備えたタイヤ(8)の製造方法であって、
前記電子デバイス(1)を、第1のゴムストリップ(6)と第2のゴムストリップ(7)との間に挿入する工程であって、前記第1のゴムストリップ(6)および前記第2のゴムストリップ(7)は、その間で、ハウジング(5)をそれ自体で画定する前記電子デバイス(1)を取り囲む、工程と、
前記ハウジング(5)をグリーンタイヤ(8)のインナーライナ(13)に、ゴムの前記第1のストリップ(6)が前記インナーライナ(13)に直接接触し、ゴムの前記第2のストリップ(7)がゴムの前記第1のストリップ(6)の介入により前記インナーライナ(13)から離れるように、適用する工程と、
前記ハウジング(5)を備えた前記グリーンタイヤ(8)が加硫プロセスを受ける工程と
を含み、
前記第1のゴムストリップ(6)は、完全にグリーンなゴムから成り、
前記第2のゴムストリップ(7)は、部分的にのみ加硫済みのゴム、すなわち、加硫が開始されているが完了していないゴムから成る、製造方法。
【請求項2】
ゴムの前記第2のストリップ(7)は、20~40%加硫済みのゴム、すなわち、20~40%、加硫を受けたゴムから成る、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2のゴムストリップ(7)は、加硫の完了時に達する最大剛性(RMAX)のうち、25%~50%の剛性(R)を有するゴムから成る、請求項に記載の製造方法。
【請求項4】
ゴムの前記第2のストリップ(7)は、40Nm~120Nmの接線弾性定数を有するゴムから成る、請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
加硫前の前記ハウジング(5)は、前記電子デバイス(1)の厚さに、片面につき0.5mm追加された値に等しい、全体の厚さ(T)を有する、請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記電子デバイス(1)と、加硫前の各ゴムストリップ(6、7)の外面との間に、0.4mm以上、好ましくは0.5mm以上のゴムの厚さ(T)がある、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記電子デバイス(1)と、加硫後の各ゴムストリップ(6、7)の外面との間に、0.2mm以上、好ましくは0.3mm以上のゴムの厚さ(T)がある、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第2のゴムストリップ(7)は、前記第1のゴムストリップ(6)より小さい、請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記2つのゴムストリップ(6、7)間のサイズの差は、0.5mm~8mmである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
平面視で、各ゴムストリップ(6または7)は、鋭い縁を持たないように、2つの小さな丸い端部を有する、請求項に記載の製造方法。
【請求項11】
ゴムの前記2つのストリップ(6、7)は、前記電子デバイス(1)の厚さの半分に、0.5mm追加された値に等しい、同じ厚さを有する、請求項に記載の製造方法。
【請求項12】
ゴムの前記第1のストリップ(6)は、75~85mmの長さ(L)と、20~45mmの幅(W)と、1.2~1.4mmの厚さとを有し、
ゴムの前記第2のストリップ(7)は、65~75mmの長さ(L)と、33~37mmの幅(W)と、1.2~1.4mmの厚さとを有する、請求項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ハウジング(5)は、前記タイヤ(8)のサイドウォールにおいて、かつ、前記ハウジング(5)の中心部が、半径方向に最も内側の部分からトレッドの向こう側へと測定される半径方向の高さであって、前記タイヤ(8)の断面の高さ(SH)の50%未満である半径方向の高さを有するように、グリーンタイヤ(8)の前記インナーライナ(13)に適用される、請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【国際調査報告】