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特表2024-543330ヒドロホルミル化プロセスからロジウムを回収するためのプロセス
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  • 特表-ヒドロホルミル化プロセスからロジウムを回収するためのプロセス 図1
  • 特表-ヒドロホルミル化プロセスからロジウムを回収するためのプロセス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ヒドロホルミル化プロセスからロジウムを回収するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/02 20060101AFI20241114BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20241114BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B01D61/02 500
B01J31/22 Z
B01D61/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525523
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 US2022078046
(87)【国際公開番号】W WO2023086718
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/263,892
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508168701
【氏名又は名称】ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ブランマー、マイケル エイ.
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ユジュン
(72)【発明者】
【氏名】シン、アマーナス
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、グレン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】バックス、エイドリアン フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ベサム、マイケル
【テーマコード(参考)】
4D006
4G169
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006HA41
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA56
4D006MA03
4D006MC02
4D006PA02
4D006PB70
4G169AA06
4G169BA27B
4G169BC71A
4G169BC71B
4G169BE25A
4G169BE29B
4G169CB51
(57)【要約】
本開示は、ヒドロホルミル化プロセスからロジウムを回収するためのプロセスに関する。一態様では、生成物-触媒分離ゾーンからのテール流が、少なくとも1つの有機溶媒ナノ濾過分離膜へと提供され、最終透過物流が、最終有機溶媒ナノ濾過分離膜を出て、最終透過物流のロジウム濃度が、テール流のロジウム濃度よりも低い。透過物流を現場で灰化して、ロジウム含有灰を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ゾーン内で少なくとも1つのアルデヒドを製造することを含む、ヒドロホルミル化プロセスからロジウムを回収するためのプロセスであって、前記反応ゾーンが、触媒の存在下でC~C22オレフィン、水素及び一酸化炭素を含み、前記触媒が、ロジウム及び有機リン配位子を含み、前記プロセスが、
(a)生成物-触媒分離ゾーンからテール流を受け入れることであって、前記テール流が、アルデヒド、重質物、ロジウム、及び有機リン配位子を含む、受け入れることと、
(b)前記テール流の少なくとも一部を、少なくとも1つの有機溶媒ナノ濾過(OSN)分離膜に提供することであって、最終透過物流が、最終OSN分離膜を出て、前記最終透過物流が、アルデヒド、重質物、ロジウム、及び有機リン配位子を含み、前記最終透過物流のロジウム濃度が、前記テール流のロジウム濃度よりも低い、提供することと、
(c)前記最終透過物流を現場で灰化して、ロジウム含有灰を生成することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記プロセスが、1つのOSN分離膜を使用する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記プロセスが、2つのOSN分離膜を使用する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
第1のOSN分離膜からの透過物流の全てが、第2のOSN分離膜へと提供される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記最終透過物流が灰化されて前記ロジウム含有灰を生成する灰化器が、前記生成物-触媒分離ゾーンの半径10マイル以内に位置する、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ロジウム含有灰からロジウムを回収することを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
少なくとも1つの分離膜からの保持物の少なくとも一部を第1のOSN分離膜に通すことを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記最終透過物流が、前記テール流が前記生成物-触媒分離ゾーンを出た90日以内に灰化される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
灰化されるべき前記最終透過物流を灰化前に処理して、残留アルデヒド生成物を回収することを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ヒドロホルミル化プロセスからロジウムを回収するためのプロセスに関する。
【0002】
序論
高級アルコール(7以上の炭素鎖長)は、均一系遷移金属触媒を使用する高級オレフィンのヒドロホルミル化を介して製造され得る。このようなプロセスにおいて、ロジウムから構成される触媒を使用することにより、比較的低い温度及び圧力での効率的な操作が可能になる。典型的なプロセスでは、アルデヒド中間体及び均一系触媒を含有する反応流体を分離ゾーンへと供給し、粗生成物であるアルデヒドを蒸発させ、オーバーヘッドで凝縮させ、不揮発性流出物(触媒を含有する)を反応ゾーンへと再循環させる。これらのプロセスの連続操作中、アルデヒド化合物は、典型的には、アルドール縮合反応に起因する重質副生成物(多くの場合、ヘビーエンド又は重質物と呼ばれる)を形成する。これらの化合物は揮発性が低いため、蒸発による除去が不可能である。したがって、重質副生成物又は重質物は、時間経過と共に反応ゾーン内に蓄積する。系内の重質物濃度を制御することは、重質物が液体パージを介して除去される(例えば、分離ゾーンから不揮発性流出物の一部を除去する)ことを必要とする。この流体はもちろん、非常に高価な均一系ロジウム触媒を含有する。
【0003】
国際公開第2020/263462号で論じられているように、パージされた流体は不安定であり、保管時に分解する可能性がある。流体は、輸送容器に収集されなければならず、貴金属回収施設に輸送する前に長期間保管されることが多い。この時間の間に、触媒は、溶液から沈殿することがあり、これは貴金属回収プロセスを非常に複雑なものにする。更に、非生産的な形態で保管される(すなわち、アルデヒド製造に直接使用されない)貴金属は、考慮されなければならない費用である。加えて、多くの地域は、「使用済み触媒流体」を危険な廃棄物であると考えており、これが輸送を複雑にする可能性がある。
【0004】
ロジウムの高価格を考慮すると、高級オレフィンのヒドロホルミル化プロセスにおいて重質物濃度を制御するための費用効率の高いプロセスを有することが望ましいだろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ヒドロホルミル化プロセスからロジウムを回収するためのプロセスを提供する。いくつかの態様では、本プロセスは、ロジウムアカウンタビリティを改善する一方で、高級オレフィンのヒドロホルミル化プロセス内の重質物濃度も維持するのに特に有利である。
【0006】
一実施形態では、反応ゾーン内で少なくとも1つのアルデヒドを製造することを含む、ヒドロホルミル化プロセスからロジウムを回収するためのプロセスであって、反応ゾーンが、触媒の存在下でC~C22オレフィン、水素及び一酸化炭素を含み、触媒が、ロジウム及び有機リン配位子を含み、
(a)生成物-触媒分離ゾーンからテール流を受け入れることであって、テール流が、アルデヒド、重質物、ロジウム、及び有機リン配位子を含む、受け入れることと、
(b)テール流の少なくとも一部を、少なくとも1つの有機溶媒ナノ濾過(OSN)分離膜に提供することであって、最終透過物流が、最終OSN分離膜を出て、最終透過物流が、アルデヒド、重質物、ロジウム、及び有機リン配位子を含み、最終透過物流のロジウム濃度が、テール流のロジウム濃度よりも低い、提供することと、
(c)最終透過物流を現場で灰化して、ロジウム含有灰を生成することと、を含む、プロセス。
【0007】
これら及び他の実施形態は、「発明を実施するための形態」において、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のプロセスのいくつかの実施形態を実装するためのシステムの概略図である。
図2】実施例のセクションに記載される実験に使用される実験室規模の装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示されるプロセスは、成分としてロジウム及び有機リン配位子を含む触媒の存在下で少なくとも1つのアルデヒド生成物を形成するのに十分なヒドロホルミル化条件下でCO、H、及びC~C22オレフィンを接触させることを含むヒドロホルミル化プロセスと組み合わせて使用される。
【0010】
元素の周期表及びその中の様々な族に対する全ての言及は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,72nd Ed.(1991-1992)CRC Press、page I-11で公開されたバージョンである。
【0011】
矛盾する内容が述べられていない限り、又は文脈から黙示的でない限り、全ての部及びパーセンテージは、重量に基づくものであり、全ての試験方法は、本出願の出願日現在のものである。米国特許実務の目的のために、任意の参照される特許、特許出願又は公開の内容は、特に定義の開示(具体的に本開示で提供されるいずれの定義とも矛盾しない範囲)及び当該技術分野における一般知識に関して、参照によりそれらの全体が組み込まれる(又はそれと等価な米国版がそのように参照により組み込まれる)。
【0012】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」は、互換的に使用される。「含む(comprise)」、「含む(include)」、及びそれらの変形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に現れる場合に限定的な意味を有しない。
【0013】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。本発明の目的のために、当業者が理解することと一致して、数値範囲は、その範囲に含まれる可能性のある全ての部分範囲を含み、かつサポートすることを意図するということを理解されたい。例えば、1~100の範囲は、1.01~100、1~99.99、1.01~99.99、40~60、1~55などを伝達することを意図している。
【0014】
本明細書で使用される場合、「ppmw」という用語は、重量百万分率を意味する。
【0015】
本発明の目的では、「炭化水素」という用語は、少なくとも1個の水素原子及び1個の炭素原子を有する全ての許容される化合物を含むことが意図される。そのような許容される化合物は、1個以上のヘテロ原子を有していてもよい。広義の態様では、許容される炭化水素は、置換又は非置換であり得る、非環式(ヘテロ原子を含む又は含まない)及び環式、分岐及び非分岐、炭素環及び複素環の、芳香族及び非芳香族有機化合物を含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、別段の指示がない限り、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが意図される。広範な態様では、許容される置換基には、有機化合物の非環式及び環式、分岐状及び非分岐状、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が含まれる。例示的な置換基には、例えば、アルキル、アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル(炭素の数が1~20以上、好ましくは1~12の範囲であり得る)、並びにヒドロキシ、ハロ、及びアミノが含まれる。許容される置換基は、適切な有機化合物について、1つ以上であり得、同じか又は異なり得る。本発明は、有機化合物の許容される置換基によりいかなる方式でも限定されることは意図されていない。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「ヒドロホルミル化」という用語は、1つ以上のロジウム錯体触媒の存在下で合成ガスを使用する、少なくとも1つのオレフィンからアルデヒドの混合物への変換を含むことが企図される。
【0018】
本発明の目的のために、「反応ゾーン」及び「反応器」という用語は、互換的に使用され、反応流体を含有するヒドロホルミル化プロセスの領域を指し、オレフィン及び合成ガスの両方が高温で添加される。
【0019】
本発明の目的のために、「生成物-触媒分離ゾーン」及び「分離ゾーン」という用語は、互換的に使用され、反応流体が(1)ロジウム触媒を主に含まず、水素化、アルドール化などの更なる下流の操作へと提供される粗アルデヒド生成物流と、(2)ロジウム触媒を含有するテール流とに分離される領域を指す。一実施形態では、生成物-触媒分離ゾーンは、気化器を含み、反応流体が加熱され(すなわち、温度は反応ゾーンの温度よりも高い)、生成物であるアルデヒドの蒸気圧の増加を引き起こす。生成物-触媒分離ゾーンは、任意選択的に減圧下で操作することができる。一実施形態では、気化器は、生成物の除去を補助し、任意選択的に、触媒の安定化を助ける様々な組成のガスを流動させることを特徴とする(「ストリップガス気化器」)。次いで、得られた気相を凝縮器に通し、液体の粗アルデヒド生成物流と、ロジウム錯体触媒を含有する不揮発性流出物テール流(テール、気化器テール、又はテール流)と、を提供する。このようなストリップガス気化器の例は、例えば、米国特許第8,404,903号及び第10,023,516号に記載されている。一実施形態では、生成物-触媒分離ゾーンは、少なくとも1つの有機溶媒ナノ濾過段階を含む。一実施形態では、生成物-触媒分離ゾーンは、気化器と組み合わせた少なくとも1つの有機溶媒ナノ濾過段階を含む。ストリップガス気化器に加えて、生成物-触媒分離ゾーンの他の例は、溶媒抽出、結晶化、蒸留、ワイプドフィルム蒸発、流下膜蒸発、相分離、濾過、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「テール流」という用語は、生成物-触媒分離ゾーンからのロジウム触媒含有流出物を含むことが企図される。生成物-触媒分離ゾーンがストリップガス気化器を含む一実施形態では、テール流は、ストリップガス気化器からの不揮発性流出物を含む。
【0021】
本明細書で使用される場合、「OSN分離膜」という用語は、生成物-触媒分離ゾーンからのテール流と適合性があり、ロジウム、ロジウム-配位子錯体触媒、及び任意選択的に遊離有機リン配位子の大部分を保持することができる一方で、同時に重質物の一部を透過物として通過させることができる有機溶媒ナノ濾過分離膜を意味する。そのようなOSN分離膜は、例えば、限定されないが、ポリジメチルシロキサン(polyldimethylsiloxane、PDMS)、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK)、ポリプロピレンなどを含む表面活性層を含む。いくつかの実施形態では、OSN分離膜は、1つ以上の表面活性層が適用された支持材料から更に構成されてもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、「OSN段階」という用語は、保持物及び透過物流を提供するためにOSN分離膜を利用するプロセス工程へとテール流の少なくとも一部を提供することを含むことが企図される。いくつかの実施形態では、単一のOSN段階が用いられてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのOSN段階が使用され、並行して行われる。いくつかの実施形態では、少なくとも2つのOSN段階が使用され、連続して行われる。
【0023】
「OSN供給物」という用語は、ナノ濾過のためにOSN段階へと供給されるロジウム触媒に富むテール流の部分を含むことが企図される。いくつかの実施形態では、テール流は、OSN供給物である。「OSN供給速度」は、OSN供給物がOSN段階に提供される単位時間当たりの体積を記載することが企図される。
【0024】
「OSN保持物」又は「保持物」という用語は、OSN分離膜を通過しないOSN供給物の部分を含むことが企図される。一般に、OSN分離膜を通過する流体の量は、OSN分離膜自体の性質、流体の特性(例えば、粘度)、プロセス温度、及び膜の供給側に適用される圧力を含むがこれらに限定されない複数の要因に依存する。いくつかの実施形態では、保持物は、反応ゾーンに戻されてもよい。他の実施形態では、保持物は、再循環され、テール流と合わされ、OSN供給物を構成し、それによって、半連続又はループ方式で同じOSN段階に供給されてもよい。いくつかの実施形態では、保持物は、並列して、又は連続して第2のOSN段階へと提供されてもよい。
【0025】
「OSN透過物」又は「透過物流」という用語は、OSN分離膜を通過し、アルデヒド生成物及び重質物を含むOSN供給物の部分を含むことが企図される。重要なことに、透過物流は、OSN供給物と比較して、より低い濃度のロジウムを含有する。いくつかの実施形態では、透過物流は、供給物に対して、より低い濃度の有機リン配位子を含有する。いくつかの実施形態では、2つ以上のOSN段階が連続して行われ、第1の段階からの透過物流は、第2の段階のためのOSN供給物を含む。「最終透過物流」という用語は、最終(又は唯一の)OSN分離膜を出て、灰化のために送られる透過物流を指す。
【0026】
「反応流体」、「反応媒体」及び「触媒溶液」という用語は、本明細書で互換的に使用され、限定されないが、(a)ロジウム-有機リン錯体触媒、(b)遊離有機リン配位子、(c)反応中に形成されたアルデヒド生成物、(d)未反応反応剤、(e)重質物、(f)上述のロジウム錯体触媒及び上述の遊離ホスフィン配位子のための溶媒、及び任意選択的に(g)対応する酸化物などの有機リン配位子分解生成物を含む混合物を含み得る。反応流体は、限定されないが、(a)反応ゾーン内の流体、(b)分離ゾーンに向かう途中の流体流、(c)分離ゾーン内の流体、(d)テール流、(e)OSN供給物、(f)OSN透過物、(g)OSN保持物、(h)反応ゾーン又は分離ゾーンから抜き取られた流体、(i)外部冷却器内の流体、及び(j)触媒処理ゾーン(例えば、抽出器)内の流体を包含し得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ロジウム触媒」、「ロジウム錯体」、「ロジウム錯体触媒」、及び「触媒錯体」という用語は、互換的に使用され、配位子が電子相互作用を介して結合又は配位結合した少なくとも1つのロジウム原子を含むことが企図される。そのような配位子の例としては、限定されないが、ビスホスファイト、トリフェニルホスフィン、四座ホスフィン、トリ有機ホスファイト、一酸化炭素、オレフィン、及び水素が挙げられる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「遊離」配位子という用語は、ロジウムに結合又は配位結合していないリン含有分子を含むことが企図される。
【0029】
本明細書で使用される場合、「重質副生成物」及び「重質物」という用語は、互換的に使用され、ヒドロホルミル化プロセスの所望の生成物の標準沸点より少なくとも25℃高い標準沸点を有する副生成物を指す。そのような材料は、例えば、アルドール縮合又は配位子分解によるものを含む、1個以上の副反応による通常の操作下でヒドロホルミル化プロセスにおいて本質的に形成することが知られている。
【0030】
本発明は、一般に、反応ゾーン内で少なくとも1つのアルデヒドを製造することを含む、ヒドロホルミル化プロセスからロジウムを回収するためのプロセスであって、反応ゾーンが、触媒の存在下でC~C22オレフィン、水素及び一酸化炭素を含み、触媒が、ロジウム及び有機リン配位子を含む、プロセスに関する。一態様では、本プロセスは、
(a)生成物-触媒分離ゾーンからテール流を受け入れることであって、テール流が、アルデヒド、重質物、有機リン配位子、及びロジウムを含む、受け入れることと、
(b)テール流の少なくとも一部を、少なくとも1つの有機溶媒ナノ濾過(organic solvent nanofiltration、OSN)分離膜に提供することであって、最終透過物流が、最終OSN分離膜を出て、最終透過物流が、アルデヒド、重質物、有機リン配位子、及びロジウムを含み、最終透過物流のロジウム濃度が、テール流のロジウム濃度よりも低い、提供することと、
(c)最終透過物流を現場で灰化して、ロジウム含有灰を生成することと、を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、本プロセスは、1つのOSN分離膜を使用する。そのような実施形態では、最終透過物流は、OSN分離膜を出る透過物流である。
【0032】
いくつかの実施形態では、本プロセスは、少なくとも2つのOSN分離膜を使用する。いくつかのそのような実施形態では、第1のOSN分離膜からの透過物流の全てが、第2のOSN分離膜へと提供される。そのような実施形態では、最終透過物流は、第2の(又は最後の)OSN分離膜を出る透過物流である。いくつかの実施形態では、第1のOSN分離膜からの透過物流の一部のみが、第2のOSN分離膜へと提供される。いくつかのそのような実施形態では、最終透過物流は、第2のOSN分離膜へと提供されない第1のOSN分離膜からの透過物の一部と、第2のOSN分離膜からの透過物流と、を含む。いくつかの実施形態では、本プロセスは、並行して操作される少なくとも2つのOSN分離膜を使用する。いくつかのそのような実施形態では、最終透過物流は、第1のOSN分離膜からの透過物流を第2のOSN分離膜からの透過物流と組み合わせて含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのOSN分離膜からの透過物流の少なくとも一部は、前のOSN分離膜(又は同じOSN分離膜)を通って再循環される。
【0034】
いくつかの実施形態では、最終透過物流が灰化されてロジウム含有灰を生成する灰化器は、生成物-触媒分離ゾーンの半径10マイル以内に位置する。灰化器がヒドロホルミル化プロセスに近接して位置するため、本発明の実施形態は、有利なことに、ロジウム含有液体パージの保管及び/又は輸送から生じる複雑さを回避する。最終透過物流が灰化されてロジウム含有灰を生成する灰化器は、いくつかの実施形態では、生成物-触媒分離ゾーンの半径5マイル以内に位置し、いくつかの実施形態では、生成物-触媒分離ゾーンの半径3マイル以内に位置し、又はいくつかの実施形態では、生成物-触媒分離ゾーンの半径1マイル以内に位置する。いくつかの実施形態では、最終透過物流が灰化されてロジウム含有灰を生成する灰化器は、生成物-触媒分離ゾーンと同じ製造設備に位置する。
【0035】
いくつかの実施形態では、最終透過物流は、テール流が生成物-触媒分離ゾーンを出た90日以内に灰化される。いくつかの実施形態では、最終透過物流は、テール流が生成物-触媒分離ゾーンを出た30日以内に灰化される。いくつかの実施形態では、最終透過物流は、テール流が生成物-触媒分離ゾーンを出た10日以内に灰化される。
【0036】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、ロジウム含有灰からロジウムを回収することを更に含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、最終透過物流は、55℃以上の引火点を有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、灰化されるべき最終透過物流を灰化前に処理して、残留アルデヒド生成物を回収する。
【0039】
少なくとも1つのOSN分離膜の使用は、アルデヒド、重質物、及び重要なことに生成物-触媒分離ゾーンからのテール流と比較して、より低いロジウム含有量を含む最終透過物流を提供する。この利点は、ヒドロホルミル化反応ゾーン中の重質物濃度を制御することを可能にし、反応ゾーンから除去されるロジウムの量を減少させ、ヒドロホルミル化プロセスのロジウム在庫要件を最小限にする。
【0040】
最終透過物流を現場で灰化することで、テール流中の実質的に全てのロジウムを捕捉し、その後に、貴金属回収(precious metal recovery、PMR)を行うことができる。加えて、ロジウム含有灰は、大容量の液体よりも輸送が容易であり、輸送が安価であるため、PMRに関連する時間及び総費用が大幅に削減されるはずである。ロジウム含有灰は、長期間保管された大きな容器の流体よりも均質であり、貴金属(ロジウム)含有量の定量化を容易にする。灰化器を適切な大きさにし(例えば、重質物形成速度に基づいてテール流からの最終透過物流を連続的に灰化し)、次いで、灰をPMR設備に迅速に輸送することによって、任意の所与の時間にヒドロホルミル化プロセスの外部に存在する貴金属の量が低減される。灰は、三塩化ロジウム製造及びその後のヒドロホルミル化触媒前駆体製造のための便利な出発点である。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、ヒドロホルミル化プロセス内の重質物濃度を所望のレベルに制御することを可能にし、系から失われる貴金属(例えば、ロジウム)の量を最小限にすることを確実にし、貴金属在庫費用を低減する。
【0042】
ここでヒドロホルミル化に使用される出発材料を検討すると、水素及び一酸化炭素は、石油クラッキング及び精製操作を含む任意の好適な供給源から得てもよい。
【0043】
シンガス(syngas)(合成ガス由来)は、様々な量のCO及びHを含有するガス混合物に与えられる名称である。生成方法は、周知である。水素及びCOは、典型的には、シンガスの主成分であるが、シンガスは、CO並びにN及びArなどの不活性ガスを含有し得る。HのCOに対するモル比は、大きく変動するが、一般に1:100~100:1、好ましくは1:10~10:1の範囲である。シンガスは、市販されており、多くの場合、燃料源として、又は他の化学物質を生成するための中間体として使用される。化学生成のための最も好ましいH:COモル比は、3:1~1:3であり、通常、ほとんどのヒドロホルミル化用途のためには約1:2~2:1が目標とされる。シンガス混合物は、水素及びCOの好ましい供給源である。
【0044】
いくつかの実施形態では、オレフィン出発材料反応剤は、1つ以上のC~C22オレフィンを含む。いくつかの実施形態では、本発明のヒドロホルミル化プロセスで使用され得るオレフィン出発材料反応剤は、ブテン、イソブテンなどのオリゴマー化から得ることができるような分岐内部オレフィン混合物を含む。いくつかの実施形態では、ブテンの二量体化に由来する混合オクテン含有流が使用され、そのような混合物は、例えば、AxensからのDimersol(商標)プロセス(Institut Francais du Petrole,Review,Vol.37,N°5,September-October 1982,p 639)、又はHuls AGからのOctol(商標)プロセス(Hydrocarbon Processing,February 1992,p 45-46)によって生成され得る。別の実施形態では、例えば、米国特許第4,518,809号及び第4,528,403号に開示されているような、いわゆる二量体、三量体又は四量体プロピレン混合物を使用することができる。別の実施形態では、本発明のプロセスで使用されるオレフィン混合物は、エチレンオリゴマー化に由来するC以上の直鎖アルファオレフィンを含む。別の実施形態では、本発明のプロセスで使用されるオレフィン混合物は、Fischer-Tropschプロセスに由来するオレフィンを含む。
【0045】
有利には、ヒドロホルミル化プロセスにおいて溶媒を用いる。ヒドロホルミル化プロセスを過度に妨害しない任意の好適な溶媒が使用され得る。実例として、ロジウム触媒によるヒドロホルミル化プロセスに好適な溶媒としては、例えば、米国特許第3,527,809号、同第4,148,830号、同第5,312,996号、及び同第5,929,289号に開示されているものが挙げられる。好適な溶媒の非限定的な例としては、飽和炭化水素(アルカン)、芳香族炭化水素、エーテル、アルデヒド、ケトン、ニトリル、アルコール、エステル、及びアルデヒド縮合生成物が挙げられる。溶媒の具体的な例としては、テトラグライム、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、キシレン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ブチルアルデヒド、及びベンゾニトリルが挙げられる。有機溶媒はまた、飽和限界までの溶解水を含有し得る。例示的な好ましい溶媒としては、ケトン(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、エステル(例えば、酢酸エチル、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)、炭化水素(例えば、トルエン)、ニトロ炭化水素(例えば、ニトロベンゼン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF))、及びスルホランが挙げられる。ロジウム触媒によるヒドロホルミル化プロセスでは、例えば、米国特許第4,148,830号及び同第4,247,486号に記載されているように、生成されることが所望されるアルデヒド生成物及び/又は例えばヒドロホルミル化プロセス中に系中で生成され得るより高沸点のアルデヒド液体縮合副生成物に対応するアルデヒド化合物を主な溶媒として採用することが望ましい場合がある。主な溶媒は、通常は最終的に、連続プロセスの性質に起因して、アルデヒド生成物及びより高沸点のアルデヒド液体縮合副生成物(「重質物」)の両方を含む。溶媒の量は特に重要なものではなく、反応媒体に所望の量の遷移金属濃度を提供するのに十分であればよい。典型的には、溶媒の量は、反応流体の総重量を基準として、約5重量パーセント~約95重量パーセントの範囲である。溶媒の混合物を用いてもよい。
【0046】
ヒドロホルミル化プロセスはまた、有機リン配位子を使用する。ロジウム-錯体触媒の配位子及び/又は遊離配位子として機能し得る有機リン化合物は、アキラル(光学的に不活性)又はキラル(光学的に活性)型のものであってもよく、当該技術分野で周知である。アキラル有機リン配位子が好ましい。
【0047】
ロジウム錯体触媒の配位子として機能し得る有機リン配位子の中には、モノ有機ホスファイト、ジ有機ホスファイト、トリ有機ホスファイト、有機ポリホスファイト、トリアリールホスフィン、多座ホスフィン化合物、及びそれらの混合物がある。そのような有機リン配位子及び/又はその調製のための方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0048】
代表的なモノ有機ホスファイトには、次式を有するものが含まれていてもよく、
【0049】
【化1】

式中、R10は、4~40個、又はそれより多くの炭素原子を含有する置換又は非置換の三価炭化水素基、例えば、三価非環式及び三価環状基、例えば、1,2,2-トリメチロールプロパンなどに由来するものなどの三価アルキレン基、又は1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサンなどに由来するものなどの三価シクロアルキレン基を表す。そのようなモノ有機ホスファイトは、例えば、米国特許第4,567,306号により詳細に記載されていることが見出され得る。
【0050】
代表的なジ有機ホスファイトには、次式を有するものが含まれていてもよく、
【0051】
【化2】

式中、R20は、4~40個、又はそれより多くの炭素原子を含有する置換又は非置換の二価炭化水素基を表し、Wは、1~18個、又はそれより多くの炭素原子を含有する置換又は非置換の一価炭化水素基を表す。
【0052】
上記の式(II)においてWによって表される代表的な置換及び非置換の一価炭化水素基には、アルキル及びアリール基が含まれるが、R20によって表される代表的な置換及び非置換の二価炭化水素基には、二価非環式基及び二価芳香族基が含まれる。例示的な二価非環式基には、例えば、アルキレン、アルキレン-オキシ-アルキレン、アルキレン-S-アルキレン、シクロアルキレン基、及びアルキレン-NR24-アルキレンが含まれ、式中、R24は、水素、又は置換若しくは非置換の一価炭化水素基、例えば、1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。より好ましい二価非環式基は、例えば、米国特許第3,415,906号及び同第4,567,302号などにより完全に開示されているような二価アルキレン基である。例示的な二価芳香族基には、例えば、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン-アルキレン、アリーレン-アルキレン-アリーレン、アリーレン-オキシ-アリーレン、アリーレン-NR24-アリーレンが含まれ、式中、R24は、上で定義されるように、アリーレン-S-アリーレン、及びアリーレン-S-アルキレンなどである。より好ましくは、R20は、例えば、米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、及び同第4,835,299号などにより完全に開示されているような二価芳香族基である。
【0053】
ジ有機ホスファイトのより好ましいクラスの代表は、次式のものであり、
【0054】
【化3】

式中、Wは、上で定義された通りであり、各Arは、同じか又は異なり、置換又は非置換アリール基を表し、各yは、同じか又は異なり、0又は1の値であり、Qは、-C(R33-、-O-、-S-、-NR24-、Si(R35、及び-CO-から選択される二価架橋基を表し、式中、各R33は、同じか又は異なり、水素、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル、トリル、及びアニシルを表し、R24は、上で定義された通りであり、各R35は、同じか又は異なり、水素又はメチル基を表し、mは、0又は1の値を有する。そのようなジ有機ホスファイトは、例えば、米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、及び同第4,835,299号により詳細に記載されている。
【0055】
代表的なトリ有機ホスファイトには、次式を有するものが含まれていてもよく、
【0056】
【化4】

式中、各R46は、同じか又は異なり、置換又は未置換の一価炭化水素基、例えば、1~24個の炭素原子を含有し得るアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、及びアラルキル基である。例えば、例示的なトリ有機ホスファイトには、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、ブチルジエチルホスファイト、トリ-n-プロピルホスファイト、トリ-n-ブチルホスファイト、トリ-2-エチルヘキシルホスファイト、トリ-n-オクチルホスファイト、トリ-n-ドデシルホスファイト、ジメチルフェニルホスファイト、ジエチルフェニルホスファイト、メチルジフェニルホスファイト、エチルジフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリナフチルホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)メチルホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)シクロヘキシルホスファイト、トリス(3,6-ジ-t-ブチル-2-ナフチル)ホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)(4-ビフェニル)ホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)フェニルホスファイト、ス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)(4-ベンゾイルフェニル)ホスファイト、ビス(3,6,8-トリ-t-ブチル-2-ナフチル)(4-スルホニルフェニル)ホスファイトなどのトリアルキルホスファイト、ジアルキルアリールホスファイト、アルキルジアリールホスファイト、トリアリールホスファイトなどが含まれる。好ましいトリ有機ホスファイトは、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトである。そのようなトリ有機ホスファイトは、例えば、米国特許第3,527,809号及び同第4,717,775号により詳細に記載されている。
【0057】
代表的な有機ポリホスファイトは、2つ以上の三級(三価)リン原子を含有し、次式を有するものを含んでもよく、
【0058】
【化5】

式中、Xは、2~40個の炭素原子を含有する置換又は非置換のn価有機架橋基を表し、各R57は、同じか又は異なり、4~40個の炭素原子を含有する二価有機基を表し、各R58は、同じか又は異なり、1~24個の炭素原子を含有する置換又は非置換の一価炭化水素基を表し、a及びbは、同じか又は異なってもよく、a+bの合計が2~6であり、nがa+bに等しいという条件で、各々0~6の値を有する。「a」が2以上の値を有する場合、各R57基は、同じか又は異なっていてもよい。各R58基はまた、いかなる所与の化合物においても同じか又は異なっていてもよい。
【0059】
Xによって表される代表的なn価(好ましくは二価)の有機架橋基、及び上記のR57によって表される代表的な二価有機基は、非環式基及び芳香族基の両方、例えば、アルキレン、アルキレン-Q-アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン-アルキレン、及びアリーレン-(CH-Q-(CH-アリーレン基などを含み、各Q、y、及びmは、式(III)において上で定義された通りである。上記のX及びR57によって表されるより好ましい非環式基は、二価アルキレン基であるが、一方で、上記のX及びR57によって表されるより好ましい芳香族基は、例えば、米国特許第4,769,498号、同第4,774,361号、同第4,885,401号、同第5,179,055号、同第5,113,022号、同第5,202,297号、同第5,235,113号、同第5,264,616号、同第5,364,950号及び同第5,527,950号により完全に開示されるものなど、二価アリーレン及びビスアリーレン基である。上記の各R58基によって表される代表的な好ましい一価炭化水素基には、アルキル基及び芳香族基が含まれる。
【0060】
例示的な好ましい有機ポリホスファイトには、以下の式(VI)~(VIII)のものなどのビスホスファイトが含まれてもよく、
【0061】
【化6】

式中、式(VI)~(VIII)の各R57、R58、及びXは、式(V)について上で定義されたものと同じである。好ましくは、各R57及びXは、アルキレン、アリーレン、アリーレン-アルキレン-アリーレン、及びビスアリーレンから選択される二価炭化水素基を表すが、一方で、各R58基は、アルキル及びアリール基から選択される一価炭化水素基を表す。このような式(V)~(VIII)の有機ホスファイト配位子は、例えば、米国特許第4,668,651号、同第4,748,261号、同第4,769,498号、同第4,774,361号、同第4,885,401号、同第5,113,022号、同第5,179,055号、同第5,202,297号、同第5,235,113号、同第5,254,741号、同第5,264,616号、同第5,312,996号、同第5,364,950号、及び同第5,391,801号に開示されるものが見出され得る。
【0062】
式(VI)~(VIII)のR10、R20、R46、R57、R58、Ar、Q、X、m、及びyは、上で定義された通りである。最も好ましくは、Xは、二価アリール-(CH-(Q)--(CH)y-アリール基を表し、式中、各yは、個々に0又は1の値を有し、mは、0又は1の値を有し、Qは、-O-、-S-又は-C(R35-であり、式中、各R35は、同じか又は異なり、水素又はメチル基を表す。より好ましくは、上で定義されたR58基の各アルキル基は、1~24個の炭素原子を含有してもよく、上記の式(VI)~(VII)の上で定義されたAr、X、R57基、及びR58基の各アリール基は、6~18個の炭素原子を含有してもよく、上述の基は、同じか又は異なっていてもよいが、一方で、Xの好ましいアルキレン基は、2~18個の炭素原子を含有してもよく、R57の好ましいアルキレン基は、5~18個の炭素原子を含有してもよい。加えて、好ましくは、上記の式のXの二価Ar基及び二価アリール基は、フェニレン基であり、ここで、-(CH-(Q)-(CH-によって表される架橋基は、フェニレン基を式のリン原子に接続する、式の酸素原子に対してオルトである位置で当該フェニレン基に結合している。任意の置換基は、そのようなフェニレン基上に存在する場合、所与の置換フェニレン基をそのリン原子に結合する酸素原子に対して、フェニレン基のパラ及び/又はオルトの位置で結合していることが好ましい。
【0063】
上記の式(I)~(VIII)のそのような有機ホスファイトのR10、R20、R57、R58、W、X、Q、及びAr基のいずれかを、所望な場合、本発明のプロセスの所望の結果に過度に悪影響を及ぼさない1~30個の炭素原子を含有する任意の好適な置換基で置換してもよい。アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、及びシクロヘキシル置換基などの対応する炭化水素基に加えて、上述の基の上にあり得る置換基としては、例えば、--Si(R35などのシリル基;-N(R15などのアミノ基;-アリール-P(R15などのホスフィン基;-C(O)R15アシルオキシ基、例えば、-OC(O)R15などのアシル基;--CON(R15及び-N(R15)COR15などのアミド基;-SO15などのスルホニル基、-OR15などのアルコキシ基;-SOR15などのスルフィニル基、-P(O)(R15などのホスホニル基、並びにハロ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ基などを挙げることができ、各R15基は、個々に、1~18個の炭素原子を有する同じ又は異なる一価炭化水素基(例えば、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール及びシクロヘキシル基)を表すが、但し、-N(R15などのアミノ置換基では、各R15が合わさって、窒素原子を有する複素環式基を形成する二価架橋基も表してもよく、-C(O)N(R15及び-N(R15)COR15などのアミド置換基では、Nに結合した各R15が、水素であってもよいことを条件とする。特定の所与の有機ホスファイトを構成する置換又は非置換の炭化水素基のいずれかが同じか又は異なっていてもよい。
【0064】
より具体的には、例示的な置換基としては、一級、二級及び三級のアルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、neo-ペンチル、n-ヘキシル、アミル、sec-アミル、t-アミル、イソオクチル、デシル、オクタデシルなど;フェニル、ナフチルなどのアリール基;ベンジル、フェニルエチル、トリフェニルメチルなどのアラルキル基;トリル、キシリルなどのアルカリール基;シクロペンチル、シクロヘキシル、1-メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、シクロヘキシルエチルなどの脂環式基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t-ブトキシ、-OCHCHOCH、-O(CHCHOCH、-O(CHCHOCHなどのアルコキシ基;フェノキシなどのアリールオキシ基;並びに-Si(CH、-Si(OCH、-Si(Cなどのシリル基;-NH、-N(CH、-NHCH、-NH(C)などのアミノ基;-P(Cなどのアリールホスフィン基;-C(O)CH、-C(O)C、-C(O)Cなどのアシル基;-C(O)OCHなどのカルボニルオキシ基;-O(CO)Cなどのオキシカルボニル基;-CONH、-CON(CH、-NHC(O)CHなどのアミド基;-S(O)などのスルホニル基;-S(O)CHなどのスルフィニル基;-SCH、-SC、-SCなどのスルフィジル基;ホスホニル基、例えば、-P(O)(C、-P(O)(CH、-P(O)(C、-P(O)(C、-P(O)(C、-P(O)(C13、-P(O)CH(C)、-P(O)(H)(C)が挙げられる。
【0065】
このような有機ホスファイト配位子の特定の具体例としては、以下のものが挙げられる。
2-t-ブチル-4-メトキシフェニル(3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイト、メチル(3,3’-ジ-t-ブチル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイト、6,6’-[[4,4’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-[1,1’-ビナフチル]-2,2’-ジイル]ビス(オキシ)]ビス-ジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン、6,6’-[[3,3’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-5,5’-ジメトキシ-[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジイル]ビス(オキシ)]ビス-ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6,6’-[[3,3’,5,5’-テトラキス(1,1-ジメチルプロピル)-[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジイル]ビス(オキシ)]ビス-ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6,6’-[[3,3’,5,5’-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジイル]ビス(オキシ)]ビス-ジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン、(2R、4R)-ジ[2,2’-(3,3’,5,5’-テトラキス-tert-アミル-1,1-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスファイト、(2R,4R)-ジ[2,2’-(3,3’、5,5’-テトラキス-tert-ブチル-1,1-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスファイト、(2R,4R)-ジ[2,2’-(3,3’-ジ-アミル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル)]2,4-ペンチルジホスファイト、(2R、4R)-ジ[2,2’-(3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメチル-1,1’-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスファイト、(2R,4R)-ジ[2,2’-(3,3’-ジ-tert-ブチル-5、5’-ジエトキシ-1,1’-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスファイト、(2R,4R),ジ[2,2’(3,3’ジ-tert,ブチル-5,5-ジエチル-1,1-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスファイト、(2R,4R)ジ[2,2’-(3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスファイト、6-[[2’-[(4,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-1,3,2-ベンゾジオキサホスホル-2-イル)オキシ]-3,3’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-5,5’-ジメトキシ[1,1’-ビフェニル]-2-イル]オキシ]-4,8-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,10-ジメトキシジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6-[[2’-[1,3,2-ベンゾジオキサホスホル-2-イル)オキシ]-3,3’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-5,5’-ジメトキシ[1,1’-ビフェニル]-2-イル]オキシ]-4,8-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,10-ジメトキシジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6-[[2’-[(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサホスホリナン-2-イル)オキシ]-3,3’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-5,5’-ジメトキシ[1,1’-ビフェニル]-2-イル]オキシ]-4,8-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,10-ジメトキシジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、亜リン酸の2’-[[4,8-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,10-ジメトキシジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]-3,3’-ビス(1,1-ジメチルエチル)-5,5’-ジメトキシ[1,1’-ビフェニル]-2-イルビス(4-ヘキシルフェニル)エステル、2-[[2-[[4,8,-ビス(1,1-ジメチルエチル)、2,10-ジメトキシジベンゾ-[d,f][1,3,2]ジオキシホスフェピン-6-イル]オキシ]-3-(1,1-ジメチルエチル)-5-メトキシフェニル]メチル]-4-メトキシ、6-(1,1-ジメチルエチル)フェニル、亜リン酸のジフェニルエステル、亜リン酸の3-メトキシ-1,3-シクロヘキサメチレンテトラキス[3,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-ナフタレニル]エステル、亜リン酸の2,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-1,4-フェニレンテトラキス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]エステル、亜リン酸のメチレンジ-2,1-フェニレンテトラキス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]エステル、及び亜リン酸の[1,1’-ビフェニル]-2,2’-ジイルテトラキス[2-(1,1-ジメチルエチル)-4-メトキシフェニル]エステル。
【0066】
本発明の配位子として機能し得るトリアリールホスフィンは、3つのアリール若しくはアリールアルキル基、又はそれらの組み合わせに共有結合した少なくとも1つのリン原子を含む任意の有機化合物を含む。トリアリールホスフィン配位子の混合物を用いてもよい。代表的な有機モノホスフィンとしては、以下の式を有するものが挙げられ、
【0067】
【化7】

式中、各R29、R30、及びR31は、同じか又は異なっていてもよく、4~40個、又はそれより多くの炭素原子を含有する置換又は非置換アリール基を表す。そのようなトリアリールホスフィンは、例えば、米国特許第3,527,809号により詳細に記載されているのを見出すことができ、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。例示的なトリアリールホスフィン配位子は、トリフェニルホスフィン、トリナフチルフィン、トリトリルホスフィン、トリ(p-ビフェニル)ホスフィン、トリ(p-メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(m-クロロフェニル)-ホスフィン、p-N,N-ジメチルアミノフェニルビス-フェニルホスフィンなどである。トリフェニルホスフィン、すなわち、各R29、R30、及びR31がフェニルである式Iの化合物は、好ましい有機モノホスフィン配位子の例である。
【0068】
本発明の配位子として機能し得る多座ホスフィンは、2つ以上のリン原子を含有する有機化合物を含み得る。具体的な例としては、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノメチル)-1,1’-ビフェニル(2,2'-Bis(diphenylphosphinomethyl)-1,1'-biphenyl、BISBI)、及び国際公開第1989006653A1号に記載されているようなその置換変形が挙げられる。
【0069】
本発明の配位子として機能し得る多座ホスフィンは、式XIIIのテトラホスフィン化合物を含み、
【0070】
【化8】

式中、各Pは、リン原子であり、R61~R105の各々は、独立して、水素、C1~C8アルキル基、アリール基、アルカリール基、又はハロゲンである。好ましい実施形態では、R61~R105の各々は、水素である。このような化合物は、例えば、米国特許第7,531,698号に開示されている。
【0071】
一実施形態では、配位子の混合物が使用される。一実施形態では、四座ホスフィン及びトリアリールホスフィンから構成される混合物が使用される。
【0072】
本発明の触媒は、ロジウム及び有機リン配位子を含む。ロジウムは、系中で触媒に転化される前駆体形態として液体本体に導入され得る。そのような前駆体形態の例は、ロジウムカルボニルトリフェニルホスフィンアセチルアセトネート、Rh、Rh(CO)12、Rh(CO)16、及びロジウムジカルボニルアセチルアセトネートである。反応媒体中に活性種を提供する触媒化合物、及びそれらの調製の両方は、当該技術分野で知られており、Brown et al.,Journal of the Chemical Society,1970,pp.2753-2764を参照されたい。
【0073】
究極の観点では、液体本体中のロジウム濃度は、遊離金属として計算して、約10ppm~約1200ppmの範囲のロジウムであり得る。液体本体中の有機リン配位子の量は、配位子の性質に応じて変化し得る。一実施形態では、トリ有機ホスファイトは、全反応混合物の重量に基づいて約0.2~8重量%の範囲で使用されてもよい。一実施形態では、単座ホスフィンは、全反応混合物の重量に基づいて5~15重量%の範囲で使用されてもよい。別の実施形態では、有機ポリホスファイトなどのキレート配位子は、ロジウムに対して約1~5モル当量の濃度で使用される。別の実施形態では、ポリホスフィンは、ロジウム1モル当たり約1~10モルの範囲で存在する。別の実施形態では、ロジウムに対して1~5モル当量の範囲のポリホスフィンと、2~15重量%のトリアリールホスフィンとを含む混合物が使用される。別の実施形態では、テトラホスフィンは、ロジウム1モル当たり約1~10モルの範囲で存在する。別の実施形態では、ロジウムに対して1~5モル当量の範囲のテトラホスフィンと、2~15重量%のトリアリールホスフィンとを含む混合物が使用される。
【0074】
ロジウム錯体触媒は、均質形態又は不均質形態であり得る。例えば、予備形成されたロジウムヒドリド-カルボニル-ホスフィン配位子触媒が調製され、ヒドロホルミル化反応混合物に導入されてもよい。より好ましくは、ロジウム-ホスフィン配位子錯体触媒は、系中での活性触媒の形成のために反応媒体に導入され得るロジウム触媒前駆体に由来してもよい。例えば、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、Rh、Rh(CO)12、Rh(CO)16、Rh(NOなどのロジウム触媒前駆体は、系中での活性触媒の形成のために有機リン配位子と共に反応混合物に導入されてもよい。一実施形態では、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートをロジウム前駆体として使用し、溶媒存在下でトリアリールホスフィンと反応させて触媒ロジウム-トリアリールホスフィン配位子錯体前駆体を形成し、これを系中での活性触媒の形成のために過剰な(遊離)トリアリールホスフィンと共に反応器に導入する。一実施形態では、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートをロジウム前駆体として使用し、溶媒存在下で有機ポリホスファイトと反応させて触媒ロジウム-有機ポリホスファイト配位子錯体前駆体を形成し、これを系中での活性触媒の形成のために過剰な(遊離)有機ポリホスファイトと共に反応器に導入する。いずれの場合でも、一酸化炭素、水素、及び有機リン配位子は、全て金属と錯体を形成することができ、ヒドロホルミル化反応に使用される条件下で活性金属-配位子触媒が、反応混合物中に存在すれば十分である。カルボニル及び有機リン配位子は、ヒドロホルミル化プロセスの前に又は当該プロセス中に系中で、ロジウムと錯体を形成することができる。
【0075】
例として、好ましい触媒前駆体組成物は、可溶化したロジウム錯体前駆体、溶媒及び過剰な有機リン配位子から本質的になる。ほとんどの場合に、有機リン配位子は、一酸化炭素ガスの発生によって証明されるように、ロジウムアセチルアセトネート錯体前駆体のカルボニル配位子のうちの1つに容易に置き換わる。
【0076】
したがって、ロジウム-配位子錯体触媒は、有利なことに、一酸化炭素及び有機リン配位子と錯体化されたロジウムを含み、少なくとも1つの有機リン分子が金属に結合(錯体化)されている。この触媒は更に、キレート化様式及び/又は非キレート化様式で、一酸化炭素及び多座有機リン化合物(例えば、有機ポリホスファイト又は四座ホスフィン)と錯体化されたロジウムを含む。
【0077】
一実施形態では、ロジウム錯体の混合物が用いられる。反応流体中に存在するロジウム錯体触媒の量は、所望の生成速度を生じさせるのに必要な最小限の量でありさえすればよい。一般に、反応媒体中の遊離金属として計算して、10ppmw~1000ppmwの範囲のロジウム濃度は、ほとんどのプロセスに対して十分であるはずであるが、一般に、10~500ppmwの金属、より好ましくは25~350ppmwのロジウムを用いることが好ましい。
【0078】
ロジウム錯体触媒に加えて、遊離有機リン配位子(すなわち、金属と錯体化していない有機リン配位子)も、反応媒体中に存在し得る。遊離配位子の重要性は、米国特許第3,527,809号、GB 1,338,225、及びBrown et al.(前出)ページ2759~2761に教示されている。例として、トリアリールホスフィンを使用する本発明のヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中に5~15重量%以上の遊離トリアリールホスフィンを含み得る。別の実施形態では、有機ポリホスファイト配位子を用いる本発明のヒドロホルミル化プロセスは、遊離有機ポリホスファイト配位子も含有する。反応流体中の遊離有機ポリホスファイト配位子の濃度は、ロジウム1モル当たり約0.1~10モルの範囲であってもよい。別の実施形態では、四座ホスフィン配位子を使用する本発明のヒドロホルミル化プロセスは、遊離四座ホスフィン配位子も含有する。反応流体中の遊離四座ホスフィン配位子の濃度は、ロジウム1モル当たり約0.1~10モルの範囲であってもよい。別の実施形態では、四座ホスフィン配位子とトリアリールホスフィン配位子との混合物を使用する本発明のヒドロホルミル化プロセスはまた、遊離四座ホスフィン配位子とトリアリールホスフィン配位子の両方を含有する。反応流体中の遊離四座ホスフィン配位子の濃度は、ロジウム1モル当たり約0.1~10モルの範囲であってもよく、一方、トリアリールホスフィンは、約2~15重量%の範囲であってもよい。
【0079】
ヒドロホルミル化プロセス及びその操作のための条件は、よく知られている。好ましい実施形態では、1つ以上のオレフィンは、連続様式又は半連続様式でヒドロホルミル化され、生成物は、生成物-触媒分離ゾーンで分離され、濃縮された触媒溶液は、反応器へと再循環される。触媒再循環手順は、一般に、触媒及びアルデヒド生成物を含有する液体反応媒体の一部を、ヒドロホルミル化反応器、すなわち反応ゾーンから連続的又は断続的のいずれかで抜き取ることと、それらからアルデヒド生成物の一部を、1つ以上の段階において、適切な場合に常圧、減圧又は加圧下で蒸発分離によって回収することと、を伴う。アルデヒド生成物の一部がストリッピングされ、かつロジウム-錯体触媒を含む不揮発性流出物は、次に、例えば米国特許第5,288,918号に開示されているように、反応ゾーンへと再循環される。そのような種類の再循環手順は、当該技術分野において周知であり、例えば米国特許第4,148,830号に開示されているように、所望のアルデヒド反応生成物から分離された金属-有機リン錯体触媒流体の液体再循環、又は例えば米国特許第4,247,486号に開示されているガス再循環手順、並びに所望な場合には液体及びガスの再循環手順の両方の組み合わせを伴っていてもよい。最も好ましいヒドロホルミル化プロセスは、連続液体触媒再循環プロセスを含む。好適な液体触媒再循環手順は、例えば、米国特許第4,668,651号、同第4,774,361号、同第5,102,505号及び同第5,110,990号に開示される。揮発性材料の縮合、並びに例えば更なる蒸留によるその分離及び更なる回収は、任意の従来の方式で行うことができ、粗アルデヒド生成物は、所望な場合、更なる精製及び異性体分離のために通過させてもよく、任意の回収された反応剤(例えば、オレフィン出発材料及びシンガス)を、任意の所望の方式でヒドロホルミル化ゾーン(反応器)に再循環させることができる。
【0080】
好ましい実施形態では、ヒドロホルミル化反応流体は、少なくともいくらかの量の4つの主要成分又は成分、すなわち、アルデヒド生成物、ロジウム-有機リン配位子錯体触媒、遊離有機リン配位子、及び上述の触媒及び上述の遊離配位子のための溶媒を含有する。ヒドロホルミル化反応混合物組成物は、ヒドロホルミル化プロセスにおいて故意に使用されているか、又は当該プロセス中に系中で形成されたものなどの追加の成分を含んでいてもよく、また、通常は含むであろう。そのような追加の成分の例としては、未反応オレフィン出発材料、一酸化炭素及び水素ガス、及び系中で形成された副生成物、配位子分解化合物、及び高沸点液体アルデヒド縮合副生成物(重質物)、並びに使用される場合には、他の不活性共溶媒型の材料又は炭化水素添加剤が挙げられる。
【0081】
用いられるヒドロホルミル化反応条件は、変動し得る。例えば、ヒドロホルミル化プロセスの水素、一酸化炭素、及びオレフィン出発化合物の全ガス圧は、1~69,000kPaの範囲であり得る。しかしながら、一般に、本プロセスは、水素、一酸化炭素及びオレフィン出発化合物の全ガス圧14,000kPa未満、より好ましくは3,400kPa未満で操作されることが好ましい。最小全圧は、所望の反応速度を得るのに必要な反応剤の量によって主に制限される。より具体的には、ヒドロホルミル化プロセスの一酸化炭素分圧は、1~6,900kPaが好ましく、21~5,500kPaがより好ましく、水素分圧は34~3,400kPaが好ましく、69~2,100kPaがより好ましい。一般に、ガス状H:COのモル比は1:10~100:1以上の範囲であってよく、より好ましいモル比は1:10~10:1である。
【0082】
一般に、ヒドロホルミル化プロセスは、任意の操作可能な反応温度で実施され得る。有利には、ヒドロホルミル化プロセスは、-25℃~200℃、好ましくは50℃~120℃の反応温度で行われる。
【0083】
ヒドロホルミル化プロセスは、例えば、連続撹拌槽反応器(continuous stirred tank reactor、CSTR)、又はバブル若しくはプラグフロー反応器などの1つ以上の好適な反応器を使用して実施され得る。反応器の最適なサイズ及び形状は、使用される反応器の種類に依存する。用いられる反応ゾーンは、単一の容器であってもよく、又は2個以上の個別の容器を備えてもよい。用いられる生成物-触媒分離ゾーンは、単一の容器であってもよく、又は2個以上の個別の容器を備えてもよい。
【0084】
ヒドロホルミル化プロセスは、所望な場合、消費されなかった出発材料(例えば、未反応オレフィン)の再循環を伴って実施され得る。反応は、単一の反応ゾーン内又は複数の反応ゾーン内で、連続して、又は並列で実施され得る。反応工程は、出発材料の一方を他方に漸増的に添加することにより行われてもよい。また、反応工程は、出発材料の同時添加により合わされてもよい。出発材料は、各々又は全ての連続した反応ゾーンに添加されてもよい。完全な転化が所望されないか、又は得ることができない場合、出発材料は、例えば、蒸留により生成物から分離されてもよく、次に、出発材料は、反応ゾーンに再循環して戻されてもよい。
【0085】
ヒドロホルミル化プロセスは、ガラスライニングされたステンレス鋼又は類似の種類の反応設備のいずれかで行われ得る。過度の温度変動を制御するために、又は可能性のあるあらゆる「暴走」反応温度を防止するために、反応ゾーンには1つ以上の内部及び/又は外部熱交換器を取り付けてもよい。
【0086】
本発明のヒドロホルミル化プロセスは、1つ以上の工程又は段階で行われ得る。反応工程又は段階の正確な数は、資本コストと達成される高い触媒選択性、活性、寿命、及び操作性の容易さとの間の最良の妥協点、及び問題の出発材料の固有の反応性、並びに反応条件に対する出発材料及び所望の反応生成物の安定性により左右される。
【0087】
一実施形態では、本発明において有用なヒドロホルミル化プロセスは、例えば米国特許第5,728,893号に記載されているような、多段階反応器中で実施されてもよい。そのような多段段階反応器は、容器1つ当たり1つより多い理論的反応段階を作り出す内部の物理的障壁を用いて設計することができる。
【0088】
一実施形態では、任意の好適な方法によって生成されたアルデヒド生成物混合物は、例えば、溶媒抽出、結晶化、蒸留、蒸発、ワイプドフィルム蒸発、流下膜蒸発、相分離、濾過、又はこれらの任意の組み合わせを含む生成物-触媒分離ゾーンにおいて、粗反応混合物の他の成分から分離され得る。粗反応混合物からアルデヒド生成物を除去することが望ましい場合があるが、それは、国際公開第1988/008835号に記載されているように、それらが捕捉剤の使用を通して形成されるためである。いくつかの実施形態では、アルデヒド生成物は、ストリップガス気化器を使用して粗反応混合物から除去される。
【0089】
上記のように、所望のアルデヒドは、反応混合物から回収されてもよい。例えば、米国特許第4,148,830号及び同第4,247,486号に開示されている回収技術を使用することができる。例えば、連続液体触媒再循環プロセスでは、反応ゾーンから除去された液体反応混合物(アルデヒド生成物、触媒などを含有する)、すなわち、反応流体の一部を、生成物-触媒分離ゾーン(例えば、気化器/凝縮器)に送ってもよく、所望のアルデヒド生成物は、1つ以上の段階で、常圧、減圧、又は高圧下で液体反応流体から蒸留により分離され、凝縮され、生成物受容器に集められてもよく、所望な場合に、更に精製されてもよい。液体反応混合物を含有する残りの非揮発性触媒は、次いで、所望な場合に、任意の他の揮発性材料(例えば、未反応オレフィン)を、例えば、任意の従来の様式での蒸留によって、縮合アルデヒド生成物から分離した後に、液体反応物に溶解した水素及び一酸化炭素と共に可能な限り反応器に再循環され得る。
【0090】
より具体的には、反応流体を含有する金属-有機リン錯体触媒からの所望のアルデヒド生成物の蒸留及び分離は、所望の任意の好適な温度で起こり得る。一般に、そのような蒸留は、比較的低い温度、例えば、170℃未満、より好ましくは50℃~165℃の範囲の温度で行われることが好ましい。一実施形態では、そのようなアルデヒド蒸留は、生成物で飽和され、それを凝縮器に運ぶのを助ける流動ガスの存在下で行われ、それによってアルデヒドを液体として収集することが可能になる。そのようなストリップガス気化器は、例えば、米国特許第8404903号及び米国特許出願公開第2014-62087572号に記載されている。別の実施形態では、分離は、高沸点アルデヒド(例えば、C以上)がより低い温度で揮発することを可能にする高減圧下で行われてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、アルデヒド生成物は、直鎖及び分岐鎖のC以上のアルデヒドの混合物から構成される。
【0092】
本発明の実施形態では、生成物-触媒分離ゾーンからのテール流の少なくとも一部は、少なくとも1つの有機溶媒ナノ濾過(OSN)分離膜へと提供される。いくつかの実施形態では、生成物-触媒分離ゾーンからの全テール流は、少なくとも1つのOSN分離膜へと提供される。
【0093】
上述したように、本発明のいくつかの実施形態で使用するのに適したOSN分離膜は、例えば、限定されないが、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレンなどを含む表面活性層を含む。いくつかの実施形態では、OSN分離膜は、1つ以上の表面活性層が適用された支持材料から更に構成されてもよい。そのような膜の非限定的な例が知られており、例えば、米国特許第5,430,194号、同第5,681,473号、同第6,252,123号、及び同第9,828,656号に記載されている。本発明のいくつかの実施形態で使用することができるOSN分離膜の例は、Borsig Membrane Technologyから市販されている。
【0094】
いくつかの実施形態では、複数のOSN分離膜が使用されてもよい。他の箇所で述べたように、いくつかの実施形態では、少なくとも2つのOSN分離膜が使用される。いくつかの実施形態では、2つのOSN分離膜が連続して使用される(例えば、第1のOSN分離膜からの透過物流が、第2のOSN分離膜へのOSN供給物であり、第2の(又は最後の)OSN分離膜からの透過物流が、最終透過物流である)。いくつかの実施形態では、2つのOSN分離膜が並行して使用される(例えば、生成物-触媒分離ゾーンからのテール流が分割され、一部が第1のOSN分離膜へのOSN供給物であり、他の部分が、第2のOSN分離膜へのOSN供給物であり、両方のOSN分離膜からの透過物流が合わさって、最終透過物流を形成する)。
【0095】
いくつかの実施形態では、最終透過物流を灰化前に処理して、残留アルデヒド生成物を回収する。この段階での触媒は、反応ゾーンに再循環されないため、触媒の分解を懸念することなく、残留アルデヒドを回収するためにより厳密な条件を用いることができる。このような処理の例としては、蒸留(例えば、真空蒸留、ワイプドフィルム蒸発など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
最終透過物流を灰化器へと提供して、ロジウム含有灰を生成する。一般に、有機反応流体からロジウム灰を生成するのに有用であるとして当業者に知られている任意の灰化器を使用してもよい。例えば、本発明のプロセスの灰化工程に適した装置は、商業的ベンダーから購入してもよい。この設計は、貴金属(例えば、ロジウム)が燃焼排ガス中に失われないことを確保する適切な手段を含むべきである。このような特徴の例としては、限定されないが、燃焼後のサイクロン式灰除去を伴う一次燃焼チャンバ、灰保持トレイ内の燃焼、その後の二次燃焼、及び燃焼排ガスを排気スタックに送る前に、下流の急冷/洗浄/濾過/静電濾過工程が挙げられる。
【0097】
灰化器のサイズは、最終透過物流の予想生成速度、所望の灰化頻度、安全性、及び当業者に公知の他の要因に基づいて選択することができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、灰化器は、ヒドロホルミル化プロセスと共に現場に位置する。本明細書で使用される場合、「現場」という用語は、一般に、最終透過物流を灰化のために長距離輸送する必要がないように、灰化器が生成物-触媒分離ゾーンとほぼ同じ場所にあることを意味する。典型的には、灰化器は、生成物-触媒分離ゾーンと同じバッテリ限界内に位置する。いくつかの実施形態では、灰化器は、生成物-触媒分離ゾーンと同じ製造設備に位置する。いくつかの実施形態では、灰化器は、生成物-触媒分離ゾーンの半径10マイル以内に位置する。最終透過物流が灰化されてロジウム含有灰を生成する灰化器は、いくつかの実施形態では、生成物-触媒分離ゾーンの半径5マイル以内に位置し、いくつかの実施形態では、生成物-触媒分離ゾーンの半径3マイル以内に位置し、又はいくつかの実施形態では、生成物-触媒分離ゾーンの半径1マイル以内に位置する。いくつかの実施形態では、灰化器は、配管によってOSN段階へと接続され、トート、ドラム、鉄道車両、トラックなどを使用した最終透過物流の隔離及び/又は輸送は存在しない。
【0099】
次いで、得られたロジウム含有灰を集め、金属内容物の回収のために貴金属精製機に輸送してもよい。
【0100】
灰化器がヒドロホルミル化プロセスに近接して位置するため、本発明の実施形態は、有利なことに、ロジウム含有液体パージの長期間の保管及び/又は輸送から生じる複雑さを回避する。ヒドロホルミル化プロセスからのロジウム含有パージ流を保管/輸送する代わりに、ロジウムを回収するためにロジウム含有灰を保管/輸送することには多くの利点がある。例えば、パージ流は、より大きな体積及びより大きな質量を有し、考慮される必要がある引火点を有しており、灰などの固体と比較して、異なる輸送予防措置(例えば、漏れを回避すること)を必要とする液体である。加えて、パージ流流体が長期間保管される場合、ロジウム含有固体の沈殿が潜在的に起こり得るが、これはロジウム含有量の定量化及び回収の両方をより困難にする。
【0101】
図1は、本発明のプロセスのいくつかの実施形態を実装するためのシステムの概略図である。図1では、オレフィン1及びシンガス2が、反応ゾーン3に供給される。反応ゾーン3内の反応流体の一部は、ライン4を介して除去され、生成物-触媒分離ゾーン5(例えば、ストリップガス気化器)に提供される。粗生成物流6は、下流での更なる処理(例えば、水素化、アルドール化など)のために除去される。テール流7は、生成物-触媒分離ゾーン5から除去される。示されている実施形態では、テール流7の一部は、ライン8を介して反応ゾーン3に送り返されるが(任意選択的に、触媒処理プロセス(図示せず)と共に)、他の実施形態では、テール流7の全てが、OSN段階10に供給される。テール流7の残りの部分は、流れ9を介して、OSN段階10として表される少なくとも1つのOSN分離膜に分流される。保持物11は、ライン8を介して反応ゾーン3に戻されるか、又は反応システムの他の場所に送られてもよい。最終透過物流12は、灰化器13に送られ(任意選択的に、サージタンク又はデイタンク(図示せず)を介して)、ここで、液体流は、酸化剤14、典型的には空気などのO含有ガスにより灰化されて、貴金属含有灰15と、主に窒素、CO、及び水蒸気を含むガス状流出物16とを生成する。様々な他のシステムを使用して、本明細書の教示に基づいて本発明の実施形態を実装することができる。
【0102】
触媒溶液中の有機リン化合物の濃度を測定するための分析技術は、当業者に周知であり、高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography、HPLC)及びガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography、GC)が挙げられる。HPLCが典型的には好ましい。
【0103】
触媒金属濃度を測定するための分析技術は、当業者に周知であり、それには、原子吸光(atomic absorption、AA)、誘導結合プラズマ(inductively coupled plasma、ICP)、及び蛍光X線(X-ray fluorescence、XRF)が含まれる。本発明の実施形態では、原子吸光(AA)は、当業者に知られているように、液体中の触媒金属濃度を測定するために使用される。灰化後の灰の触媒金属濃度は、XRF又はICPによって決定することもできる。一実施形態では、灰化後の灰の金属濃度は、ICP及びXRFの両方によって測定される。
【0104】
触媒溶液中の重質物の濃度を測定するための分析技術は当業者に周知であり、GCを含む。流体の粘度も測定することができ、重量物濃度と粘度との間の相関が確立される。GCが典型的には好ましい。
【0105】
本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例においてより詳細に説明する。
【実施例
【0106】
以下の実施例における全ての部及び百分率は、他に示されていない限り重量による。以下の実施例中の圧力は、別段の指示がない限り、ポンド/平方インチゲージとして与えられる。別段の指示がない限り、触媒溶液の調製、OSN供給物の保管及びOSN透過物の収集などの全ての操作は、不活性雰囲気下で行われる。OSN分離膜は、Borsig Membrane Technologies製のシリコーン系複合膜(o-NF1又はo-NF2)である。
【0107】
ヒドロホルミル化触媒は、ロジウム(ジカルボニル)アセチルアセトネートと、以下に示す有機リン化合物のうちの1つとから構成される。
【0108】
【化9】
【0109】
OSN供給物(OSN分離膜への供給物)及びOSN透過物(OSN分離膜からの透過物)の重質物濃度を含む一般的な流体組成は、当業者に公知の技術を使用してガスクロマトグラフィー(GC)によって決定される。
【0110】
成分の定量化は、外部標準較正に基づく。
【0111】
OSN供給物及びOSN透過物試料中の配位子A又はBの濃度は、当業者に公知の技術を使用する高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して測定される。
【0112】
定量化は、外部標準較正に基づく。
【0113】
OSN供給物及びOSN透過物試料中のロジウム濃度は、Perkin Elmer Analyst 900 Atomic Absorption Analyzerを使用する分析によって決定される。試料(0.1~0.2g)を、0.2%の硝酸ランタン(Aldrich)を含有する99%の2-メトキシエタノール(「メチルセロソルブ」、Fisher)5gで希釈する。較正標準を同じマトリックス中で調製する。
【0114】
ヒドロホルミル化ユニットの説明
連続ヒドロホルミル化は、直列に接続された3個の1リットルステンレス鋼撹拌タンク反応器から構成される液体再循環反応器システムで行われる。各反応器は、垂直に取り付けられた撹拌機と反応器の底部近くに位置する円形の管状スパージャーとを備えている。各スパージャーは、反応器内の液体本体に、所望のガス流を提供するのに十分な大きさの複数の穴を含む。スパージャーは、オレフィン及び/又はシンガスを反応器に供給するために使用され、各反応器への未反応ガスを再循環するためにも使用することができる。各反応器は、反応器温度を制御する手段としてシリコーン油シェルを有する。反応器1~2及び反応器2~3は、未反応ガス及びラインを移送してアルデヒド生成物及び触媒を含有する液体溶液の一部を反応器1から反応器2へ、及び反応器2から反応器3へポンプ輸送することを可能にするために更にラインを介して接続される。したがって、反応器1の未反応オレフィンは、反応器2において、続いて反応器3において更にヒドロホルミル化される。各反応器はまた、所望の液体レベルを維持するための空気圧液面コントローラを含有する。反応器3は、未反応ガスを除去するための吹き出し口を有する。
【0115】
液体反応流体の一部を、反応器3から、減圧下の加熱容器を含む気化器に連続的に送り込む。気化器からの流出流は、気化器の底部に位置する気液分離器に送られ、そこで気化したアルデヒドは、液体反応溶液の不揮発性成分から分離される。この実施形態では、気化器及び気液分離器は、生成物-触媒分離ゾーンを含む。気化したアルデヒド生成物は、凝縮されて、生成物受容器に収集される。空気圧液面コントローラは、分離器の底部において、再循環されるべき触媒を含む所望の不揮発性成分の液面を制御する。分離器からの不揮発性流出物(テール流)は、再循環ラインを通して反応器1にポンプ輸送される。ガス組成(モル%)は、ガスクロマトグラフィー(GC)によって測定し、分圧は、次に、ラウルの法則を使用して全圧に基づいて計算される。
【0116】
一般的な手順
OSN分離膜を用いた実験は、小さな実験室規模の装置で行われる。実験室規模の装置の概略を図2に示す。
【0117】
膜セル17(OSN段階)は、焼結ステンレス鋼から構成される薄い円板によって支持された表面積が12.97cmの平坦シートOSN分離膜の円形片を含む。OSN供給物は、ライン19を介して小型ピストンポンプ18によって5mL/分で膜セルに導入される。セル内の圧力は、膜セルの下流にある背圧調節器20によって確立され、圧力ゲージ21によって監視される。OSN透過物は、小さなボトル22に集められ、分析25cのためにサンプリングされる。透過物回収率(透過物の流束)を重量測定法で測定する。次に、計算を適用して、その値を、1時間当たり1平方メートルの膜当たりに生成される透過物のリットル数(L/m/hr)として表すことができる。OSN保持物は、特に注記されない限り、ライン24を介してOSN供給タンク23に再循環される。遮断弁25a~dは、一般に、メンテナンス又はサンプリングを除き、オンのままである。
【0118】
実施例1
上述のヒドロホルミル化ユニットを使用して、1-オクテン及び直鎖内部異性体を含む混合オクテンの供給物から、混合C9アルデヒドを生成する。触媒は、ロジウム及び配位子Aから構成される。数週間の連続操作の後、触媒流体は、かなりの濃度の重質物を含有する。流体をヒドロホルミル化ユニットから排出し、OSN供給タンクに添加し、o-NF2 OSN分離膜(Borsig Membrane Technology製)を使用して図2に示される一般的な手順に従って、ナノ濾過を行う。結果を表1A及び1Bにまとめている。
【0119】
実施例2
o-NF2 OSN分離膜の代わりに、o-NF1 OSN分離膜(Borsig Membrane Technology)を使用することを除き、実施例1の手順を繰り返す。結果を表1A及び1Bにまとめている。
【0120】
実施例3~4
1-オクテン、直鎖内部オレフィン及び分岐内部オレフィンを含む混合オクテン供給物を使用して、上記のヒドロホルミル化ユニットを使用して連続ヒドロホルミル化運転を行う。触媒は、ロジウム及び配位子Bから構成される。数週間の連続操作の後、触媒流体は、かなりの濃度の重質物を含有する。流体をヒドロホルミル化ユニットから排出し、OSN供給タンクに添加し、o-NF2膜を使用して図2に示される一般的な手順に従って、ナノ濾過を行う。結果を表1A及び1Bにまとめている。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
表1A及び1Bの結果は、OSN供給物がOSN分離膜へと供給され、重質物及びOSN供給物よりも低いロジウム濃度を含むOSN透過物流を生成し得ることを示す。OSN透過物流の有機リン配位子濃度もまた、OSN供給物に対して低減される。表1Bに報告される除去率(%)は、OSN分離膜が、OSN供給物内に遷移金属、有機リン配位子、又は重質物を保持する傾向を説明することが企図される。理想的には、除去率は、ロジウム及び有機リン配位子について高く、重質物について低い。除去率を計算し、百分率として表す。例えば、100ppmの濃度でロジウムを含むOSN供給物がOSN段階へと提供され、25ppmのロジウムを含む透過物流を生成する場合、ロジウム除去率は75%であると計算される。
【0124】
図2に示される実験室規模の装置は、実験室環境における小規模実験を容易にするように設計されていることを理解すべきである。商業的実装態様は、本明細書の他の場所で説明されるように変動するであろう。例えば、OSN供給タンクを使用するのではなく、生成物-触媒分離ゾーンからのテール流をOSN分離膜へと連続的に供給して、複数のOSN分離膜を使用することができるなどである。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ゾーン内で少なくとも1つのアルデヒドを製造することを含む、ヒドロホルミル化プロセスからロジウムを回収するためのプロセスであって、前記反応ゾーンが、触媒の存在下でC~C22オレフィン、水素及び一酸化炭素を含み、前記触媒が、ロジウム及び有機リン配位子を含み、前記プロセスが、
(a)生成物-触媒分離ゾーンからテール流を受け入れることであって、前記テール流が、アルデヒド、重質物、ロジウム、及び有機リン配位子を含む、受け入れることと、
(b)前記テール流の少なくとも一部を、少なくとも1つの有機溶媒ナノ濾過(OSN)分離膜に提供することであって、最終透過物流が、最終OSN分離膜を出て、前記最終透過物流が、アルデヒド、重質物、ロジウム、及び有機リン配位子を含み、前記最終透過物流のロジウム濃度が、前記テール流のロジウム濃度よりも低い、提供することと、
(c)前記最終透過物流を現場で灰化して、ロジウム含有灰を生成することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記プロセスが、2つのOSN分離膜を使用し、第1のOSN分離膜からの透過物流の全てが、第2のOSN分離膜へと提供される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
(今回補正)前記ロジウム含有灰からロジウムを回収することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
(今回補正)少なくとも1つのOSN分離膜からの保持物の少なくとも一部を第1のOSN分離膜に通すことを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
(今回補正)灰化されるべき前記最終透過物流を灰化前に処理して、残留アルデヒド生成物を回収することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【国際調査報告】