(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】セルパウチ用ポリプロピレン系多層フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241114BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20241114BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20241114BHJP
【FI】
B32B27/32 E
H01M50/105
H01M50/121
H01M50/133
H01M50/119
H01M50/129
H01M50/131
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525888
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-01
(86)【国際出願番号】 KR2022014484
(87)【国際公開番号】W WO2023085597
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0154954
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511123485
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビョン、ジュ イ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ジン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ホ
【テーマコード(参考)】
4F100
5H011
【Fターム(参考)】
4F100AA20A
4F100AA20C
4F100AB10D
4F100AB33D
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK46E
4F100AK64A
4F100AK64B
4F100AK64C
4F100AK67A
4F100AK67B
4F100AK67C
4F100AL07A
4F100AL09B
4F100BA03
4F100CA30C
4F100EH20
4F100EJ37E
4F100JB01
4F100JK06
4F100JK16
4F100JL01
4F100JL12
5H011AA01
5H011AA02
5H011AA03
5H011AA09
5H011AA17
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011KK01
5H011KK02
5H011KK04
(57)【要約】
主にセルパウチのシーラント層として使用され、電池が物理的、化学的衝撃から、または電気的ストレスに露出されてもパウチの内部接着層のクラックの発生が抑制され、成形性、絶縁性、及び耐電解液性に優れたポリプロピレン系多層フィルムが開示される。本発明は、(a)プロピレン系二元または三元共重合体と、(b)無定形プロピレンゴムと、(c)アミド系スリープ剤と、(d)アンチブロッキング剤と、(e)変性ポリオレフィンとを含むポリプロピレン系多層フィルムであって、スキン層と、コア層と、シール層とを含むが、前記シール層の厚さは前記多層フィルムの厚さの10乃至15%であり、前記(a)プロピレン系二元または三元共重合体は前記シール層の厚さの3乃至10%のサイズのゴムドメイン(rubber domain)が形成されているポリプロピレン系多層フィルムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プロピレン系二元または三元共重合体と、(b)無定形プロピレンゴムと、(c)アミド系スリープ剤と、(d)アンチブロッキング剤と、(e)変性ポリオレフィンとを含むポリプロピレン系多層フィルムであって、スキン層と、コア層と、シール層とを含むが、
前記シール層の厚さは前記多層フィルムの厚さの10乃至15%であり、前記(a)プロピレン系二元または三元共重合体は前記シール層の厚さの3乃至10%のサイズのゴムドメイン(rubber domain)が形成されているポリプロピレン系多層フィルム。
【請求項2】
前記(a)プロピレン系二元または三元共重合体はエチレンを2乃至7重量%及び1-ブテンを0乃至6重量%含量で含み、
前記(b)無定形プロピレンゴムはエチレンまたは1-ブテンを10乃至60重量%含量で含み、
前記(c)アミド系スリープ剤は飽和または不飽和アミド系スリープ剤であり、
前記(d)アンチブロッキング剤は平均粒径が1.5乃至3μmの球状のシリカであり、
前記(e)変性ポリオレフィンはジカルボン酸またはその酸無水物が1乃至10重量%の含量でグラフトされていることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系多層フィルム。
【請求項3】
前記(a)プロピレン系二元または三元共重合体は融点(Tm)が125乃至155℃及び溶融指数(MI、230℃、2.16kg荷重)が1乃至12g/10minであり、
前記(b)無定形プロピレンゴムは溶融指数(MI、230℃、2.16kg荷重)が1乃至5g/10minであり、
前記(c)アミド系スリープ剤は炭素数14乃至22個のアミド系スリープ剤のうち2つ以上が混合されたものであり、
前記(d)アンチブロッキング剤は105℃乃至60min条件で乾燥する際の水分含有量が0.5重量%未満の粒子であって、粒子の嵩密度(bulk density)が0.8乃至1.0g/cm
3であることを特徴とする請求項2に記載のポリプロピレン系多層フィルム。
【請求項4】
前記スキン層は(a)プロピレン系二元または三元共重合体を70乃至99重量部、(e)変性ポリオレフィンを1乃至30重量部、及び(d)アンチブロッキング剤を0.1乃至2重量部の割合で含み、
前記コア層は(a)プロピレン系二元または三元共重合体を50乃至90重量部、及び(b)無定形プロピレンゴムを10乃至50重量部の割合で含み、
前記シール層は(a)プロピレン系二元または三元共重合体を60乃至140重量部、(c)アミド系スリープ剤を0.1乃至2重量部、及び(d)アンチブロッキング剤を0.1乃至2重量部の割合で含み、
全体フィルム組成に対して、(a)プロピレン系二元または三元共重合体を80乃至90重量部、(b)無定形プロピレンゴムを10乃至20重量部、(c)アミド系スリープ剤を0.1乃至0.3重量部、(d)アンチブロッキング剤を0.005乃至0.1重量部、及び(e)変性ポリオレフィンを0.4乃至0.8重量部の割合で含むことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系多層フィルム。
【請求項5】
前記多層フィルムは下記方法によって測定された熱接着強度が60N/15mm以上であり、電解液浸漬の後、剥離強度が80%以上維持されることをことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系多層フィルム:
[熱接着強度の測定方法]
前記多層フィルム(厚さ40μm)、アルミニウム箔(厚さ50μm、多層フィルムのスキン層の上に積層)、及びナイロン(厚さ15μm、前記アルミニウム箔の上に積層)を順次に積層し、130℃でラミネートして50℃で14日間硬化したラミネートフィルムを前記多層フィルムが接するようにして、200℃、2kgf、及び1sの条件で熱接着した後、幅15mmで裁断し、23℃で100mm/minの剥離速度で180°の剥離角における剥離強度を測定する。
[耐電解液特性の測定方法]
前記熱接着強度の測定に使用された試片を85℃の電解液に75時間浸漬した後、前記熱接着強度の測定方法と同じ方法で剥離強度を測定する。
【請求項6】
前記多層フィルムは下記方法によるフォーミング(Forming)試験で裂ける現象が現れておらず、熱接着強度の試験の際に多層フィルムの間でのみ剥離が起こることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系多層フィルム:
[フォーミング性能の測定方法]
額縁状の金属型(10cm×10cm)の上に前記ラミネートフィルムをナイロン面が型の縁に当たるように載せ、多層フィルムの面の上を四角錘で加圧して最小6mmの深さまで絞り(drawing)を5回実施し、ラミネートフィルムの角部分に裂けた個数を測定する。
[熱接着強度の試験方法]
前記多層フィルム(厚さ40μm)、アルミニウム箔(厚さ50μm、多層フィルムのスキン層の上に積層)、及びナイロン(厚さ15μm、前記アルミニウム箔の上に積層)を順次に積層し、130℃でラミネートして50℃で14日間硬化したラミネートフィルムを前記多層フィルムが接するようにして、200℃、2kgf、及び1sの条件で熱接着した後、幅15mmで裁断し、23℃で100mm/minの剥離速度で180°の剥離角で剥離を行う。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載のフィルムからなるシーラント層と、
前記シーラント層の上に形成されるバリア層と、
前記バリア層の上に形成される外部樹脂層と、
を含むセルパウチ用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリプロピレン系多層フィルムに関し、より詳しくは、セルパウチ用ポリプロピレン系多層フィルムに関する。
【0002】
本出願は2021年11月11日付けで出願された韓国特許出願第10-2021-0154954号に対する優先権及び利益を主張し、この出願はその全文が本願に参照として含まれる。
【背景技術】
【0003】
二次電池は普通リチウム二次電池を指し、ノートパソコン、スマートフォン、タブレットPC、ビデオカメラなどの携帯用端末装置、ハイブリッド自動車を含む電気自動車、エネルギー貯蔵用スマートグリッドなどに使用される電池であって、小型化、軽量化、薄型化すると共に、厳しい熱的環境と機械的衝撃などの多様な環境的要因を克服するための研究が進められている。
【0004】
このようなリチウム電池に使用される包装材として、従来の缶型包装材とは異なって、電池の形状を自由に変形し得るという利点から、多層構造(例えば、内部樹脂層、アルミニウム層、及び外部樹脂層)からなる外装材として二次電池用パウチが使用される。通常的に使用される二次電池用パウチフィルムは、順次に、熱接着性を有してシーリング剤の役割をするポリエチレン(poly ethylene、PE)、無延伸ポリプロピレン(casted polypropylene、cPP)、ポリプロピレン(poly propylene、PP)などのポリオレフィンまたはこれらの共重合体による接着層で構成される内部樹脂層、機械的強度を維持する基材及び水分と酸素のバリア層としての役割をする金属箔であるアルミニウム層、電池セルを外部の衝撃から保護するためにポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate、PET)、ポリエチレンナフタレート(Poly ethylene naphthalate、PEN)、ナイロン(Nylon)、または液晶高分子樹脂(Liquid Crystal Polymer、LCP)などの機能性高分子フィルムが外部樹脂層を形成する多層膜構造で構成されている。
【0005】
従来は金属、特にアルミニウムをプレス加工して円筒や平行六面体状などに成形した包装材が主に使用されていた。しかし、このような金属製缶包装材の場合、容器の外壁が堅くて電池自体の形状が金属製缶包装材の形状によって決定されるという制約がある。
【0006】
このような制約を克服しようと、多層プラスチックフィルムからなる包装材の技術が開発されてきた。例えば、特許文献1は、基材層、接着層、バリア層、ドライラミネーション層、及びシーラント層からなり、シーラント層を低流動性ポリプロピレン層と高流動性ポリプロピレン層で構成したセルパウチを開示しており、特許文献2は、基材フィルムと表面保護層に2軸延伸ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリオレフィン樹脂を利用して積層したセルパウチと、2次加工として基材フィルムにフッ素系、シリコン系、またはアクリル系樹脂をコーティングする技術が開示されている。
【0007】
パウチ型二次電池は形態に融通性を有し得、より小さい体積及び質量で同じ容量の二次電池を具現し得るという長所がある。しかし、缶型とは異なってパウチ型は軟質のパウチを容器として使用するため、多様な工程で様々な理由で損傷を受け得る。例えば、電極組立体をパウチの内部に収納する過程で電極タブや電極リードなどの突出部位がパウチ内部のPP、cPP層のクラック(crack)などの損傷を与えるようになり、そのような損傷によってアルミニウム層が露出されれば電解液との反応性によって副反応が発生してしまう。このように電解液に露出されたアルミニウム層は、電池の内部に浸透または拡散された電解液と酸素または水分と化学反応を起こすようになって腐食し得るが、それによって腐食性ガスが発生して電池の内部を膨張させるスウェリング(swelling)現象が発生するという問題点がある。詳しくは、六フッ化リン酸リチウム(LIPF6)が水及び酸素と反応して腐食性ガスでフッ化水素酸(HF)が生成され得る。このようなフッ化水素酸はアルミニウムと反応して急激な発熱反応を起し得、2次反応でアルミニウム表面に吸着されて組織の内部に浸透するようになると組織の脆性が増加し、微細な衝撃にもパウチフィルムのクラックが発生して、電解液の漏液のためリチウムと大気が反応して発火が発生し得る。
【0008】
特許文献3は、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどで構成される外部樹脂層、第1接着層、アルミニウム層、第2接着層、及びポリオレフィンで構成される内部樹脂層を含む二次電池用アルミニウムパウチフィルムについて開示しているが、パウチの全体層構成について記述しているのみであって、内部樹脂層を構成するポリオレフィンの具体的な組成については言及していない。
【0009】
特許文献4は、プロピレンにエチレンまたはブテンをランダム共重合したプロピレン系ランダム共重合体を主成分とするA層と、コモノマー(エチレンまたはブテン)の含量が0乃至1.5重量%であるプロピレン重合体60乃至90重量%、及びコモノマー(エチレンまたはブテン)の含量が10乃至40重量%であるプロピレン重合体10乃至40重量%で構成されるB層、プロピレン基盤エチレンまたはブテンランダム共重合体で構成されるC層を含むポリプロピレン系複合フィルムであって、B層には脂肪酸アミド系滑剤が100乃至2000ppmであって、メタロセン触媒基盤の低密度ポリエチレンを0乃至20重量%含むことを特徴としているが、B層の原料を除いた残りの原料については詳しく言及していない。
【0010】
特許文献5は、Tm140~150℃のランダムポリプロピレン及びスリープ剤を主成分とする第1スキン層(seal)、Tm155~165℃のブロックポリプロピレン及びスリープ剤を主成分とするコア層、Tm140~150℃のランダムポリプロピレン及びスリープ剤を主成分とする第2スキン層(skin)を含むポリプロピレン系複合フィルムであって、全層に使用されるスリープ剤はオレアミド、エルカアミド、べヘンアミド、及びステアルアミドのうちから選択される脂肪酸アミド系スリープ剤であり、第1スキン層には1種以上、コア層にはべヘンアミド及びステアルアミドのうち一つ及びエルカアミドを含むことを特徴としているが、全体のフィルムでシール層が占める割合及び使用されたランダムポリプロピレンのドメイン(domain)などに関する特性については詳しく言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国公開特許 第2003-0029141号
【特許文献2】韓国公開特許 第2002-0030737号
【特許文献3】韓国登録特許 第1485523号
【特許文献4】韓国公開特許 第2019-0047104号
【特許文献5】韓国登録特許 第1894449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は主にセルパウチのシーラント層として使用され、電池が物理的、化学的衝撃から、または電気的ストレスに露出されてもパウチの内部接着層のクラックの発生が抑制され、成形性、絶縁性、及び耐電解液性に優れたポリプロピレン系多層フィルムを提示しようとする。
【0013】
また、前記多層フィルムをシーラント層として使用するセルパウチ用材料を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために本発明は、(a)プロピレン系二元または三元共重合体と、(b)無定形プロピレンゴムと、(c)アミド系スリープ剤と、(d)アンチブロッキング剤と、(e)変性ポリオレフィンとを含むポリプロピレン系多層フィルムであって、スキン層と、コア層と、シール層とを含むが、前記シール層の厚さは前記多層フィルムの厚さの10乃至15%であり、前記(a)プロピレン系二元または三元共重合体は前記シール層の厚さの3乃至10%のサイズのゴムドメイン(rubber domain)が形成されているポリプロピレン系多層フィルムを提供する。
【0015】
また、前記(a)プロピレン系二元または三元共重合体はエチレンを2乃至7重量%及び1-ブテンを0乃至6重量%含量で含み、前記(b)無定形プロピレンゴムはエチレンまたは1-ブテンを10乃至60重量%含量で含み、前記(c)アミド系スリープ剤は飽和または不飽和アミド系スリープ剤であり、前記(d)アンチブロッキング剤は平均粒径が1.5乃至3μmの球状のシリカであり、前記(e)変性ポリオレフィンはジカルボン酸またはその酸無水物が1乃至10重量%の含量でグラフトされていることを特徴とするポリプロピレン系多層フィルムを提供する。
【0016】
また、前記(a)プロピレン系二元または三元共重合体は融点(Tm)が125乃至155℃及び溶融指数(MI、230℃、2.16kg荷重)が1乃至12g/10minであり、前記(b)無定形プロピレンゴムは溶融指数(MI、230℃、2.16kg荷重)が1乃至5g/10minであり、(c)アミド系スリープ剤は炭素数14乃至22個のアミド系スリープ剤のうち2つ以上が混合されたものであり、(d)アンチブロッキング剤は105℃乃至60min条件で乾燥する際の水分含有量が0.5重量%未満の粒子であって、粒子の嵩密度(bulk density)が0.8乃至1.0g/cm3であることを特徴とするポリプロピレン系多層フィルムを提供する。
【0017】
また、前記スキン層は(a)プロピレン系二元または三元共重合体を70乃至99重量部、(e)変性ポリオレフィンを1乃至30重量部、及び(d)アンチブロッキング剤を0.1乃至2重量部の割合で含み、前記コア層は(a)プロピレン系二元または三元共重合体を50乃至90重量部、及び(b)無定形プロピレンゴムを10乃至50重量部の割合で含み、前記シール層は(a)プロピレン系二元または三元共重合体を60乃至140重量部、(c)アミド系スリープ剤を0.1乃至2重量部、及び(d)アンチブロッキング剤を0.1乃至2重量部の割合で含み、全体フィルム組成に対して、(a)プロピレン系二元または三元共重合体を80乃至90重量部、(b)無定形プロピレンゴムを10乃至20重量部、(c)アミド系スリープ剤を0.1乃至0.3重量部、(d)アンチブロッキング剤を0.005乃至0.1重量部、及び(e)変性ポリオレフィンを0.4乃至0.8重量部の割合で含むことを特徴とするポリプロピレン系多層フィルムを提供する。
【0018】
また、前記多層フィルムは下記方法によって測定された熱接着強度が60N/15mm以上であり、電解液浸漬の後、剥離強度が80%以上維持されることを特徴とするポリプロピレン系多層フィルムを提供する。
[熱接着強度の測定方法]
前記多層フィルム(厚さ40μm)、アルミニウム箔(厚さ50μm、多層フィルムのスキン層の上に積層)、及びナイロン(厚さ15μm、前記アルミニウム箔の上に積層)を順次に積層し、130℃でラミネートして50℃で14日間硬化したラミネートフィルムを前記多層フィルムが接するようにして、200℃、2kgf、及び1sの条件で熱接着した後、幅15mmで裁断し、23℃で100mm/minの剥離速度で180°の剥離角における剥離強度を測定する。
[耐電解液特性の測定方法]
前記熱接着強度の測定に使用された試片を85℃の電解液に75時間浸漬した後、前記熱接着強度の測定方法と同じ方法で剥離強度を測定する。
【0019】
また、前記多層フィルムは下記方法によるフォーミング(Forming)試験で裂ける現象が現れておらず、熱接着強度の試験の際に多層フィルムの間でのみ剥離が起こることを特徴とするポリプロピレン系多層フィルムを提供する。
[フォーミング性能の測定方法]
額縁状の金属型(10cm×10cm)の上に前記ラミネートフィルムをナイロン面が型の縁に当たるように載せ、多層フィルムの面の上を四角錘で加圧して最小6mmの深さまで絞り(drawing)を5回実施し、ラミネートフィルムの角部分に裂けた個数を測定する。
[熱接着強度の試験方法]
前記多層フィルム(厚さ40μm)、アルミニウム箔(厚さ50μm、多層フィルムのスキン層の上に積層)、及びナイロン(厚さ15μm、前記アルミニウム箔の上に積層)を順次に積層し、130℃でラミネートして50℃で14日間硬化したラミネートフィルムを前記多層フィルムが接するようにして、200℃、2kgf、及び1sの条件で熱接着した後、幅15mmで裁断し、23℃で100mm/minの剥離速度で180°の剥離角で剥離を行う。
【0020】
前記他の課題を解決するために、本発明は、前記フィルムからなるシーラント層と、前記シーラント層の上に形成されるバリア層と、前記バリア層の上に形成される外部樹脂層と、を含むセルパウチ用材料を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、特定組成のスキン層と、コア層と、シール層とを含むポリプロピレン系多層フィルムであって、セルパウチのシーラント層として使用されて接着性能に優れ、後加工における成形性を同時に満足しながらも、優れた機械的物性、表面特性、及び透明性を有するようにする特定層の厚さと特定成分の性状との関係であって、シール層の厚さとプロピレン系二元または三元共重合体のゴムドメインのサイズとの関係を提示する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】セルパウチのシーラント層の剥離後の形態であって、ピールシール(peel seal)(a)、層間剥離(b)、及びデラミネーション(delamination)(c)現象を説明する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、好ましい実施例を介して本発明を詳細に説明する。その前に、本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や単語は通常的であるか辞書的な意味に限って解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るとの原則に立脚して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきである。よって、本明細書に記載された実施例の構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないため、本出願の時点において、これらを代替し得る多様な均等物と変形例が存在し得るということを理解すべきである。
【0024】
本発明者らは従来のセルパウチのシーラント層として使用されるスキン層と、コア層と、シール層とを含む素材として、求められる接着性能及び後加工での成形性を同時に満足するフィルム素材に関して研究した結果、驚くもセルパウチのシーラント層として使用すれば、接着性能に優れ、後加工での成形性を同時に満足しながらも、優れた機械的物性、表面特性、及び透明性を有するようにするシール層の厚さとプロピレン系二元または三元共重合体のゴムドメインのサイズとの関係が存在することを発見し、本発明に至った。
【0025】
よって、本発明は、(a)プロピレン系二元または三元共重合体と、(b)無定形プロピレンゴムと、(c)アミド系スリープ剤と、(d)アンチブロッキング剤と、(e)変性ポリオレフィンとを含むポリプロピレン系多層フィルムであって、スキン層と、コア層と、シール層とを含むが、前記シール層の厚さは前記多層フィルムの厚さの10乃至15%であり、前記(a)プロピレン系二元または三元共重合体は前記シール層の厚さの3乃至10%のサイズのゴムドメインが形成されているポリプロピレン系多層フィルムを開示する。
【0026】
本発明によるポリプロピレン系多層フィルムは、シーラント層と、前記シーラント層の上に形成されるバリア層と、前記バリア層の上に形成される外部樹脂層とを含むセルパウチのシーラント層として使用すれば、接着性能に優れ、後加工での成形性を同時に満足しながらも、優れた機械的物性、表面特性、及び透明性を有するようにする。
【0027】
前記シーラント層は十分な熱接合特性のために約25乃至120μmの厚さを有してもよいが、これに限らずに具現しようとするセルパウチの用途、例えば、約88μmの総厚さで具現される薄膜型セルパウチ、約113μmの総厚さで具現される一般型セルパウチ、または約153μmの総厚さで具現される中大型セルパウチによって適切な厚さを有し得る。
【0028】
前記外部樹脂層はバリア層の上に備えられて外部に露出され得るリチウム二次電池の包装材料の最外層であって、バリア層を保護し得るように耐摩耗性と共に耐熱性、耐寒性、耐ピンホール性、絶縁性、耐化学性、成形性などを有する素材を利用して形成されることが好ましい。このような耐熱性樹脂フィルムからなる外部樹脂層は、ポリアミド系(polyamide-based)樹脂またはポリエステル系(polyester-based)樹脂を含み得る。前記ポリアミド系樹脂は延伸率が高く成形に有利なナイロンであり得、前記ポリエステル系樹脂は高い耐化学性、耐ピンホール性、絶縁性、機械的強度などを具現し得るポリブチレンテレフタレート(polybuthylene terephthalate、PBT)またはポリエチレンテレフタレート(PET)であり得る。
【0029】
前記外部樹脂層は、十分な程度の耐摩耗性、耐熱性、耐ピンホール性、耐化学性、成形性、絶縁性などを全て考慮して約15乃至30μmの厚さを有し得る。外部樹脂層の厚さが薄すぎれば、外部樹脂層の強度不足のため二次電池の包装材料の成形性が低下し得る。反面、厚すぎる場合は外部樹脂層の下部に備えられるシーラント層及びバリア層が相対的に薄い厚さで具現されなければならないため、二次電池の包装材料で熱接着強度の低下、各層間の剥離強度の低下などの問題が発生し得る。しかし、外部樹脂層の厚さは前記範囲に限らずに具現しようとするセルパウチの用途、例えば、約88μmの総厚さで具現される薄膜型セルパウチ、約113μmの総厚さで具現される一般型セルパウチ、または約153μmの総厚さで具現される中大型セルパウチによって適切な厚さを有し得る。
【0030】
本発明では前記外部樹脂層とバリア層を接着するための第1接着樹脂層が更に形成され得る。
【0031】
第1接着樹脂層は外部樹脂層とバリア層を接着し得る接着剤によって形成されるが、第1接着樹脂層の形成に使用される接着剤は2液硬化型接着剤であってもよく、1液硬化型接着剤であってもよい。また、第1接着樹脂層の形成に使用される接着剤の接着器具についても特に限らず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などからいずれも選択され得る。
【0032】
第1接着樹脂層の形成に使用し得る接着剤の樹脂成分として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂と、ポリエーテル系接着剤と、ポリウレタン系接着剤と、エポキシ系樹脂と、フェノール樹脂系樹脂と、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂と、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂と、ポリ酢酸ビニル系樹脂と、セルロース系接着剤と、(メタ)アクリル系樹脂と、ポリイミド系樹脂と、尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂と、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンなどのゴムと、シリコン系樹脂と、フッ化エチレンプロピレン共重合体などが挙げられる。これらの接着剤成分は1種を単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の変形模様については特に限らないが、例えば、その接着剤成分としてポリアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂などが挙げられる。そのうちでも延伸性、高湿度条件下での耐久性や応変抑制作用、熱縫合時の熱劣化抑制作用などに優れ、外部樹脂層とバリア層との間のラミネーション強度の低下を抑制してデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤、ポリアミド、ポリエステル、またはこれらと変性ポリオレフィンとの混合樹脂などが挙げられる。
【0033】
一方、第1接着樹脂層の厚さは、例えば、2乃至10μmであり得る。
【0034】
前記バリア層は外部からの湿気や空気、そして内部から発生したガスの出入を遮断するための金属箔気体遮断層であって、シーラント層と接触し得る。バリア層はガスバリア性及び水分バリア性を有する金属を含むが、例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、タングステン(W)などからなる群より選択される一つ以上(単一金属または単一金属の混合)、またはこれらから選択される2種以上の合金(alloy)などを含み得る。好ましい具現例として、バリア層は水分バリア性、ガスバリア性、及び成形性をいずれも考慮して、アルミニウム(Al)またはアルミニウム合金(Al alloy)を含み得る。バリア層は十分な程度のガスバリア性及び水分バリア性のために、約25乃至45μmの厚さを有し得る。しかし、バリア層の厚さはこれに限らず、具現しようとするセルパウチの用途、つまり、一般的には、約88μmの総厚さで具現される薄膜型セルパウチ、約113μmの総厚さで具現される一般型セルパウチ、または約153μmの総厚さで具現される中大型セルパウチによって適切な厚さを有し得る。
【0035】
バリア層は接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために少なくとも一つの面、好ましくは少なくともシーラント層側の面、より好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とはバリア層の表面に耐酸性被膜を形成する処理である。化成処理は、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、シュウ酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチル酢酸、塩化クロム、硫酸カルシウムクロムなどのクロム酸化合物を利用したクロム酸クロメート処理と、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸可能物を利用したリン酸クロメート処理と、アミノ化フェノール重合体を利用したクロメート処理などが挙げられる。
【0036】
バリア層に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化錫などの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼き付け処理をすることで、バリア層の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には正イオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成し得る。ここで、正イオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボキシル酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリルの主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。これらの正イオン性ポリマーは1種を単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの架橋剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0037】
前記化成処理は1種の化成処理を単独で行ってもよく、2種以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。また、前記化成処理は1種の化合物を単独に使用して行ってもよく、2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。これらの中でも好ましくはクロム酸クロメート処理、より好ましくはクロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理が挙げられる。
【0038】
化成処理は耐酸性被膜の形成に使用する化合物を含む溶液をバーコート法、ロールコート法、ブラビアコート法、浸漬法などによってバリア層の表面に塗布した後、金属箔の温度が70乃至200℃程度になるように加熱することで行われる。
【0039】
本発明では前記バリア層とシーラント層を接着するための第2接着樹脂層が更に形成され得る。
【0040】
第2接着樹脂層は外部樹脂層とバリア層を接着し得る接着剤によって形成され得る。第2接着樹脂層の形成に使用される接着剤は2液硬化型接着剤であってもよく、1液硬化型接着剤であってもよい。また、第2接着樹脂層の形成に使用される接着剤の接着器具についても特に限らず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などのうちいずれも選択され得る。
【0041】
第2接着樹脂層の形成に使用し得る接着剤の樹脂成分としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂と、ポリエーテル系接着剤と、ポリウレタン系接着剤と、エポキシ系樹脂と、フェノール樹脂系樹脂と、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂と、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂と、ポリ酢酸ビニル系樹脂と、セルロース系接着剤と、(メタ)アクリル系樹脂と、ポリイミド系樹脂と、尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂と、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンなどのゴムと、シリコン系樹脂と、フッ化エチレンプロピレン共重合体などが挙げられる。これらの接着剤成分は1種を単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の変形模様については特に限らないが、例えば、その接着剤成分としてポリアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂などが挙げられる。そのうちでも延伸性、高湿度条件下での耐久性や応変抑制作用、熱縫合時の熱劣化抑制作用などに優れ、シーラント層とバリア層との間のラミネーション強度の低下を抑制してデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤、ポリオレフィン系樹脂、またはこれらと変性ポリオレフィンとの混合樹脂などが挙げられる。
【0042】
一方、第2接着樹脂層の厚さは、例えば、2乃至60μmであり得る。
【0043】
本発明による二次電池用包装材料の製造方法は所定組成の各層を積層した積層体が得られる限り特に制限されないが、以下の方法が例示される。
【0044】
まず、外部樹脂層、第1接着樹脂層、及びバリア層が順次に積層された積層体(積層体A)を形成する。積層体Aの形成は、詳しくは、表面が化成処理されたバリア層に第1接着樹脂層の形成に使用される接着剤を押出法、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布乾燥した後、その外部樹脂層を積層して第1接着樹脂層を硬化するドライラミネーション法によって行い得る。
【0045】
次に、積層体Aのバリア層の上にシーラント層を積層する。バリア層とシーラント層との間に第2接着樹脂層を設ける場合は、例えば、(1)積層体Aの金属箔の上に第2接着樹脂層を形成するための接着剤を溶液コーティングした高温で乾燥方法などによって積層し、この第2接着樹脂層に予め2層または3層のシート状に製膜したシーラント層を熱ラミネーション法によって積層する方法(ドライラミネーション法)、(2)積層体Aのバリア層の上に2層または3層からなるシーラント層を共押出することで積層する方法(共押出ラミネーション法)、(3)積層体Aのバリア層と予め2層または3層のシート状に製膜したシーラント層との間に、溶融した第2接着樹脂層を流し込みながら、第2接着樹脂層を介して積層体Aとシーラント層を接合する方法(サンドイッチラミネーション法)などが使用され得る。
【0046】
セルパウチのシーラント層はバッテリの安定性に影響を及ぼす要素であって、電解液の漏洩を防ぐことが重要である。それを防止するためには剥離後の形状を見るべきである。剥離後の形状は総3つの形態に区分されるが、これは
図1に示したように、それぞれピールシール(a)、層間剥離(b)、及びデラミネーション(c)である。ピールシールは2つの面のシール層が均一に白華現象を起こしながら剥がれることであって、これは外部から衝撃が発生しても従来の接着力を失わないため、安定性の部分で有利に作用する。層間剥離は多層CPP(cast polypropylene)フィルムの内部接着面の間が、そしてデラミネーションはCPPフィルムとアルミニウム箔との間が剥離することであって、2つの場合とも剥離前に比べ接着力が減少する。層間剥離の場合は一方のCPPの厚さが薄くなり、デラミネーションの場合はCPP層とアルミニウム箔が分離されて露出され、該当部位で漏洩可能性が高くなる。
【0047】
このような剥離現象と接着強度を同時に満足するためには、全体のフィルム厚さからシール層の厚さの割合を10乃至15%に限定すべきである。シール層は熱接着の際に両側のフィルムのシール層が突き当たるようになり、熱接着特性に最も重要な役割をするようになるが、全体のフィルムの厚さからシール層の厚さの割合が10%未満であれば相対的にコア層で吸収される熱量が多くなって層間剥離が発生し熱接着強度が低く、15%を超過すれば熱融着しデラミネーションが起こって使用できなくなる。
【0048】
ここで、本発明ではシール層に使用される(a)プロピレン二元または三元共重合体のゴムドメインのサイズはシール層の厚さの3乃至10%である。前記ゴムドメインのサイズの範囲でフィルムが熱接着されれば、マトリックスに対しガラス転移温度(Tg)が低いゴムドメインが溶融されながら熱接着の際に役に立つ。前記ゴムドメインのサイズが大きければ互いに突き当たる際に接着する部位が広くなって熱接着強度は増加するが、デラミネーションが発生し、ゴムドメインのサイズが小さければ熱接着強度が低下する。この際、前記ゴムドメインのサイズは当業者が共単量体の種類及び含量、触媒組成及び使用量、重合温度、圧力など重合条件を変化することで容易に調節し得、本発明ではゴムドメインのサイズと共単量体の種類など重合条件との関係にいかなる限定はない。一方、ゴムドメインのサイズは、該当共重合体を190℃に加熱されたプレス(press)を活用して厚さ2mmの試片を製作し、該当試片を常温の核酸でエッチングしてFE-SEMで観測することで、その平均とサイズを測定し得る。
【0049】
本発明において、前記(a)プロピレン二元または三元共重合体は多層フィルムの主成分であって、プロピレンと、プロピレン以外の1種または2種のα-オレフィンの共重合体であるが、好ましくはプロピレン及びエチレンが同時に注入されて重合される二元共重合体、またはプロピレン、エチレン、及び1-ブテンが同時に注入されて重合される三元共重合体であり得る。前記共重合体の重合方法は本技術分野で公知の通常の方法によるものであって、本発明で特に限らない。
【0050】
前記(a)プロピレン系二元または三元共重合体は、構成成分としてオレフィン系接着剤成分と同じプロピレンを含み得ることからアルミニウム剥離強度の向上に寄与するが、前記(a)プロピレン系二元または三元共重合体は無定形プロピレンエチレン共重合体ではない結晶性共重合体であって、エチレンを2乃至7重量%含量、または1-ブテンを0乃至6重量%含量で含むことが好ましく、より好ましくはエチレンを3乃至6重量%含量、または1-ブテンを0乃至5重量%含量で含み得、融点(Tm)は125乃至155℃であることが好ましく、140乃至154℃であることがより好ましい。前記(a)プロピレン系二元または三元共重合体のエチレン含量が2重量%未満であれば軟質性が足りなくてフォーミング(foming)の際に白華及び角(edge)が裂ける現象が発生し得、接着剤とのラミネート工程における湿潤性(wetting)が低下し得る。また、エチレンの含量が7重量%を超過すれば、耐熱性が足りなくて使用中に発熱による外観問題(変形及び歪み)が発生し得る。
【0051】
一方、前記(a)プロピレン系二元または三元共重合体は溶融指数(MI、230℃、2.16kg荷重)が1乃至12g/10minであり得、好ましくは2乃至8g/10minである。揚州指数が1g/10min未満であれば生産性が低下し得、12g/10minを超過すればアルミニウム剥離強度の改善効果が微々であり得る。
【0052】
本発明において、前記(b)無定形プロピレンゴムは、プロピレンとプロピレン以外の1種のα-オレフィンの共重合体であり、好ましくはプロピレンとエチレンまたは1-ブテンが同時に注入されるが、エチレンと1-ブテンは10乃至60重量%含量で含むことが好ましく、より好ましくはエチレンを10乃至30重量%、または1-ブテンを20乃至40重量%含量を含み得る。エチレンまたは1-ブテンの含量が10重量%未満であれば耐衝撃性の改善効果が微々であり得、60重量%を超過すれば低分子が多量含まれてフィルム成形の際にねばねばして(sticky)表面が不均一になり得、引張強度が低くなり得る。前記共重合体の重合方法は本技術分野で公知の通常の方法によるものであって、本発明で特に限らない。
【0053】
本発明において、前記(c)スリープ剤は、時間が経つにつれ該当有機化合物が基材の表面に移行してスリープ性を与えることで、深絞りなどの後加工工程における摩擦係数を下げて成形性及び作業性を向上する役割をし、(d)アンチブロッキング剤は、フィルムの表面に凹凸を形成することで、深絞りなどの後加工工程におけるねばねばする(sticky、blocking)現象を緩和して成形性及び作業性を向上する役割をする。
【0054】
前記(c)スリープ剤は脂肪酸から合成されたアミド系有機化合物であることが好ましいが、これは高い融点を有し、ヒドロキシル(hydroxyl)基がアミノ(amino)構造に置換されて中性的構成を有している。
【0055】
このような前記(c)スリープ剤は炭素価が14乃至22個のアミドスリープ剤のうち2種以上が混合されたものであって、好ましくは炭素数14乃至22で1次または2次、飽和または不飽和アミド系の有機化合物であり得る。
【0056】
前記(d)アンチブロッキング剤は粒子の模様が球状のものであって、粒子の分布が均一なシリカアンチブロッキング剤であることが好ましく、また、乾燥(105℃及び60min条件)の際の水分含有量が0.5重量%未満の粒子であって、平均粒径が1.5乃至3.0μm、好ましくは2乃至3μmであり、粒子の嵩密度が0.8乃至1.0g/cm3であることが好ましい。
【0057】
前記(e)変性ポリオレフィンは多層フィルムのスキン層の副成分であって、前記極性作用基であるジカルボン酸またはその酸無水物が1乃至10重量%含量、好ましくは3乃至5重量%含量でグラフトされた変性ポリプロピレンであり得る。変性ポリプロピレンのジカルボン酸またはその酸無水物の含量が1重量%未満であればアルミニウム箔との接着力が低下し得、10重量%を超過すれば極性作用基によってフィッシュアイ(F/E)が発生し低分子が発生して、コロナ表面処理後の表面張力が低くなってアルミニウム箔との接着力が低下し得る。
【0058】
ここで、前記ジカルボン酸はマレイン酸、フタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アルケニルコハク酸、シス-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、またはこれらの2種以上の混合物を含み得るが、前記ジカルボン酸の無水物は上述した例のジカルボン酸無水物であり得、好ましくは前記ジカルボン酸はマレイン酸であり得る。
【0059】
以上の(a)乃至(e)成分はスキン層、コア層、及びシール層の主成分乃至副成分を構成し、セルパウチのシーラント層として使用する際に目的とする接着性能及び後加工における成形生成の具現のために特定の含量比で含まれ得る。
【0060】
つまり、本発明において、前記スキン層は(a)プロピレン系二元または三元共重合体を70乃至99重量部、(e)変性ポリオレフィンを1乃至30重量部、及び(d)アンチブロッキング剤を0.1乃至2重量部の割合で含み、前記コア層は(a)プロピレン系二元または三元共重合体を50乃至90重量部、及び(b)無定形プロピレンゴムを10乃至50重量部の割合で含み、前記シール層は(a)プロピレン系二元または三元共重合体を60乃至140重量部、(c)アミド系スリープ剤を0.1乃至2重量部、及び(d)アンチブロッキング剤を0.1乃至2重量部の割合で含み、全体フィルム組成に対して、(a)プロピレン系二元または三元共重合体を80乃至90重量部、(b)無定形プロピレンゴムを10乃至20重量部、(c)アミド系スリープ剤を0.1乃至0.3重量部、(d)アンチブロッキング剤を0.005乃至0.1重量部、及び(e)変性ポリオレフィンを0.4乃至0.8重量部の割合で含み得る。
【0061】
一方、本発明によるポリプロピレン系多層フィルムを構成する各層の樹脂組成は本発明を目的を損なわない限り、必要によって各種添加剤、例えば、酸化防止剤、触媒中和剤、顔料、分散剤、耐候剤、帯電防止剤、UV安定剤、タルクなどを1種以上更に含有し得る。このような添加剤の使用量は、それぞれ本発明によるポリプロピレン系多層フィルムの特性に影響を及ぼさずにそれを製造するのに使用し得るとして知られている範囲内で全体の製造量及び製造工程などを考慮して調節し得る。
【0062】
本発明において、前記成分を利用した多層フィルムの製造は当業界に知られている通常の方法により得る。例えば、各層を構成する前記成分をそれぞれ必要な量でヘンシェルミキサに投入し混合した後、押出器を利用して180乃至240℃でペレット状に製造し、多層フィルム成形機によって溶融成形してフィルム(film)化することで多層フィルムを製造し得る。
【0063】
以上の本発明によるポリプロピレン系多層フィルムは、セルパウチのシーラント層として使用すれば接着性能に優れ、後加工での成形性を同時に満足しながらも、優れた機械的物性、表面特性、及び透明性を有し得るようにし得るが、詳しくは、本発明によるポリプロピレン系多層フィルムは、下記方法によって測定された熱接着強度が60N/15mm以上で、電解液浸漬後の剥離強度が80%以上維持され、下記方法によるフォーミング試験で裂ける現象が現れず、熱接着強度試験の際に多層フィルムの間でのみ剥離が起こるポリプロピレン系多層フィルムを提供し得る。
[熱接着強度の測定方法]
前記多層フィルム(厚さ40μm)、アルミニウム箔(厚さ50μm、多層フィルムのスキン層の上に積層)、及びナイロン(厚さ15μm、前記アルミニウム箔の上に積層)を順次に積層し、130℃でラミネートして50℃で14日間硬化したラミネートフィルムを前記多層フィルムが接するようにして、200℃、2kgf、及び1sの条件で熱接着した後、幅15mmで裁断し、23℃で100mm/minの剥離速度で180°の剥離角における剥離強度を測定する。
[耐電解液特性の測定方法]
前記熱接着強度の測定に使用された試片を85℃の電解液に75時間浸漬した後、前記熱接着強度の測定方法と同じ方法で剥離強度を測定する。
[フォーミング性能の測定方法]
額縁状の金属型(10cm×10cm)の上に前記ラミネートフィルムをナイロン面が型の縁に当たるように載せ、多層フィルムの面の上を四角錘で加圧して最小6mmの深さまで絞りを5回実施し、ラミネートフィルムの角部分に裂けた個数を測定する。
【0064】
以上の本発明によるポリプロピレン系多層フィルムは主にセルパウチの成形に適用されるが、これに限らず、例えば、包装用フィルム、レトルトパウチ、電子材料用パウチなどの成形に適用されてもよいことはもちろんである。
【実施例】
【0065】
以下、具体的な実施例及び比較例によって本発明をより詳細に説明する。
【0066】
まず、実施例及び比較例で使用された成分の製造例または仕様は以下のようである。
【0067】
(a)プロピレン系二元または三元共重合体の製造
反応装置にプロピレンとエチレンまたは1-ブテンを注入して塊状重合反応をさせるが、共重合体内のゴムドメインのサイズが表1に記載のサイズになるよう、共単量体の含量をエチレン2乃至7重量%、及び1-ブテン0乃至6重量%の範囲内で調節して、プロピレン系二元または三元共重合体(融点(Tm):140乃至165℃、溶融指数(230℃、2.16kg荷重):約2乃至10g/10min)を製造した。ゴムドメインのサイズはpressで2Tサンプルを製作した後、ヘキサンでエッチングしてFE-SEMで観測して測定しており、共重合体の溶融指数、融点、及びエチレン/1-ブテンの含量の測定方法は以下のようである。
-溶融指数(Melt Index)
ASTM D1238によって230℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
-融点(Tm)
差動走査熱量計(商標名DSC、Perkin-Elmer Co.製造)を使用し、窒素ガス大気下で220℃で5分間試片10mgを予備溶融した後、温度を5℃/minの減温速度で40℃に降下する。次に、温度を5℃/minの昇温速度で上昇させ、収得した溶融吸熱曲線の最大ピークのピーク温度を融点(Tm)として定義した。また、5℃/minの昇温速度で前記測定装置を使用することで測定されたインジウム(In)の融点は156.6℃である。
-エチレン及び1-ブテンの含量
赤外線吸収スペクトル(FT-IR)を使用し、720、703cm-1特性ピークを利用してエチレンの含量を測定し、767cm-1の特定ピークを利用して1-ブテンの含量を測定した。
【0068】
(b)無定形プロピレンゴム
プロピレン系エラストマ(MI1~4、EL10~30重量%、またはBN-1 20~40重量%)を使用した。
【0069】
(c)アミド系スリープ剤
Erucamideを使用した。
【0070】
(d)アンチブロッキング剤
球状のシリカ粒子(水分含有量0.5重量%未満、平均粒径2乃至3μm、及びbulk density0.8乃至1.0g/cm3)を使用した。
【0071】
(e)変形ポリオレフィン
無水マレイン酸3乃至5重量%含量でグラフトされたポリプロピレンを使用した。
【0072】
[実施例1乃至5、比較例1乃至4]
スキン層は、(a)プロピレン系二元または三元共重合体を70乃至99重量部、(e)変性ポリオレフィンを1乃至30重量部、及び(d)アンチブロッキング剤を0.1乃至2重量部の割合の範囲内で、コア層は(a)プロピレン系二元または三元共重合体を50乃至90重量部、及び(b)無定形プロピレンゴムを10乃至50重量部の割合の範囲内で、シール層は(a)プロピレン系二元または三元共重合体を96乃至99.8重量部、(c)アミド系スリープ剤を0.1乃至2重量部、及び(d)アンチブロッキング剤を0.1乃至2重量部の割合の範囲内で組成するが、全体組成が下記表1の組成比(単位:重量部、通常添加されるフェノール系酸化防止剤、ホスフェート系酸化防止剤、及び触媒中和剤としてヒドロタルサイトを追加)になるようにし、220℃で単軸押出器によって溶融混合してペレット(pellet)化して、各層別にプロピレンブロック共重合体混合樹脂組成物を製造した。次に、製造された各層別の混合樹脂組成物を220℃で多層フィルム成形機によって溶融成形してフィルム化し、厚さ40μm及び表1に記載のシール層の厚さの割合を有する多層フィルムを製造した。
【0073】
次に、外部樹脂層として延伸ポリアミドフィルム(厚さ15μm)とバリア層として両面にリン酸クロメート被膜を形成したアルミニウム薄膜(厚さ50μm)を、ドライラミネーションで接着剤(ポリウレタン系2液硬化型接着剤、厚さ3μm)を利用して接合する。シール層は3層に構成し、T-die casting方式で成形する。前記外部樹脂層、バリア層接合フィルムとシーラント層(厚さ40μm)をドライラミネーションで接合し、リチウム二次電池用包装材料を得た。
【0074】
[試験例]
前記製造されたペレット及びフィルムを利用して試片を製作し、及び下記方法によって物性を測定乃至評価して、その結果を下記表1に示した。
[物性の測定乃至評価方法]
(1)熱接着強度
前記製造された包装材料を多層フィルムが接するようにして200℃、2kgf、及び1sの条件で熱接着した後、幅15mmに裁断し、23℃で100mm/minの剥離速度で180°の剥離角での剥離強度を測定した。80N/15mm以上は「◎」、80N/15mm未満60N/15mm以上は「○」、60N/15mm未満は「△」で表示した。
(2)耐電解液特性
前記熱接着強度の測定に使用された試片を85℃電解液に75時間浸漬した後、前記熱接着強度の測定方法と同じ方法で剥離強度を測定し、電解液浸漬前の剥離強度に対する電解液浸漬後の剥離強度が80%以上に維持されれば「○」で表示した。前記電解液組成は[EC/DEC/DMC=1/1/1(v/v部)+LiPF
6(1mol/L)+H
2O 300ppm]にしており、ここで、ECは炭酸エチレン、DECは炭酸ジエチル、DMCは炭酸ジメチルである。
(3)Slip性
摩擦係数を測定(多層フィルム面基準)し、動摩擦係数が0.3以下であれば「◎」、0.3超過0.4以下であれば「○」で表示した。
(4)Forming性能
額縁型金属モールド(10cm×10cm)の上に前記包装材料を外部樹脂層が型の縁に当たるように載せ、多層フィルム面の上を四角錐で加圧して、最小9mmの深さまで絞りを実施し、包装材料の角部分に裂ける現象が0であれば「◎」、一つ乃至3つであれば「△」、4つであれば「×」で表示した。
(5)peel seal
熱接着強度を測定する際、
図1(a)のように均一に両側のフィルムが剥離されれば「○」、
図1(b)のように両フィルムのシール層の間の剥離ではなく、フィルム内部のスキン層、コア層、またはシール層の間で剥離が起これば「△」、
図1(c)のようにフィルムとアルミニウム箔との間で剥離が起これば「×」で表示した。
【0075】
【0076】
表1を参照すると、本発明によってスキン層、コア層、及びシール層を特定の組成範囲で含むが、全体フィルムにおいてシール層の厚さの割合が特定範囲内にあり、シール層の厚さとプロピレン系二元または三元共重合体のゴムドメインのサイズにおいて特定割合で有するポリプロピレン系多層フィルムの場合、セルパウチのシーラント層として使用すれば(熱接着強度及びpeel sealを参照)、接着性能に優れ、後加工(Forming性能を参照)での成形性を同時に満足しながらも、優れた機械的物性、表面特性、及び透明性を具現し得ることを確認し得る。
【0077】
それに対し、熱接着強度の面では全体フィルムにおいてシール層の厚さの割合が10%未満であれば(比較例1)、相対的にコア層で吸収される熱量が多くなり層間剥離が発生して熱接着強度が低くforming性能が低下し、15%を超過すれば(比較例2)、熱接着強度には優れるが、熱接着強度の試験の際に多層フィルムの間で剥離(
図1(a)を参照)が起こらず、多層フィルムとアルミニウム箔との間でデラミネーションが発生(
図1(c)を参照)することが分かる。
【0078】
また、フィルムを熱接着する際、マトリックスに対してガラス転移温度(Tg)が低いゴムドメインが溶融されながら熱接着の際に役に立つようになるが、ドメインのサイズがシール層の厚さの10%を超過すれば(比較例3)、互いに突き当たる際に接着する部位が広くなって熱接着強度は増加するがデラミネーションが発生し、ドメインのサイズがシール層の厚さの3%未満であれば(比較例4)、熱接着強度及びforming性能が低下することが分かる。
【0079】
このことから、セルパウチのシーラント層として使用される多層フィルムにおいて、接着性能及び後加工における成形性と共に優れた機械的物性、表面特性、及び透明性をいずれも満足するシール層の厚さとプロピレン系二元または三元共重合体のゴムドメインのサイズとの関係が存在するということが分かり、本発明によるスキン層、コア層、及びシール層を含むポリプロピレン系多層フィルムはこれを十分に満足することを確認し得る。
【0080】
これまで本発明の好ましい実施例を詳細に説明した。本発明の説明は例示のためのものであって、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的特徴を変更せずとも他の具体的な形態に容易に変更し得ることを理解できるはずである。
【0081】
よって、本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味、範囲及びその均等概念から導き出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-23
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
第2接着樹脂層はシーラント層とバリア層を接着し得る接着剤によって形成され得る。第2接着樹脂層の形成に使用される接着剤は2液硬化型接着剤であってもよく、1液硬化型接着剤であってもよい。また、第2接着樹脂層の形成に使用される接着剤の接着器具についても特に限らず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などのうちいずれも選択され得る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
次に、積層体Aのバリア層の上にシーラント層を積層する。バリア層とシーラント層と
の間に第2接着樹脂層を設ける場合は、例えば、(1)積層体Aのバリア層に第2接着樹脂層を形成するための接着剤を溶液コーティングした高温で乾燥方法などによって積層し、この第2接着樹脂層に予め2層または3層のシート状に製膜したシーラント層を熱ラミネーション法によって積層する方法(ドライラミネーション法)、(2)積層体Aのバリア層の上に2層または3層からなるシーラント層を共押出することで積層する方法(共押出ラミネーション法)、(3)積層体Aのバリア層と予め2層または3層のシート状に製膜したシーラント層との間に、溶融した第2接着樹脂層を流し込みながら、第2接着樹脂層を介して積層体Aとシーラント層を接合する方法(サンドイッチラミネーション法)などが使用され得る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
セルパウチのシーラント層はバッテリの安定性に影響を及ぼす要素であって、電解液の漏洩を防ぐことが重要である。それを防止するためには剥離後の形状を見るべきである。剥離後の形状は総3つの形態に区分されるが、これは
図1に示したように、それぞれピールシール(a)、層間剥離(b)、及びデラミネーション(c)である。ピールシールは2つの面のシール層が均一に白華現象を起こしながら剥がれることであって、これは外部から衝撃が発生しても従来の接着力を失わないため、安定性の部分で有利に作用する。層間剥離は多層CPP(cast polypropylene)フィルムの内部接着面の間が、そしてデラミネーションはCPPフィルムとアルミニウム箔との間が剥離することであって、2つの場合とも剥離前に比べ接着力が減少する。層間剥離の場合は一方のCPP
フィルムの厚さが薄くなり、デラミネーションの場合はCPP
フィルムとアルミニウム箔が分離されて露出され、該当部位で漏洩可能性が高くなる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
本発明において、前記(b)無定形プロピレンゴムは、プロピレンとプロピレン以外の1種のα-オレフィンの共重合体であり、好ましくはプロピレンとエチレンまたは1-ブテンが同時に注入されるが、エチレンまたは1-ブテンは10乃至60重量%含量で含むことが好ましく、より好ましくはエチレンを10乃至30重量%、または1-ブテンを20乃至40重量%含量を含み得る。エチレンまたは1-ブテンの含量が10重量%未満であれば耐衝撃性の改善効果が微々であり得、60重量%を超過すれば低分子が多量含まれてフィルム成形の際にねばねばして(sticky)表面が不均一になり得、引張強度が低くなり得る。前記共重合体の重合方法は本技術分野で公知の通常の方法によるものであって、本発明で特に限らない。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
前記(e)変性ポリオレフィンは多層フィルムのスキン層の副成分であって、極性作用基であるジカルボン酸またはその酸無水物が1乃至10重量%含量、好ましくは3乃至5重量%含量でグラフトされた変性ポリプロピレンであり得る。変性ポリプロピレンのジカルボン酸またはその酸無水物の含量が1重量%未満であればアルミニウム箔との接着力が低下し得、10重量%を超過すれば極性作用基によってフィッシュアイ(F/E)が発生し低分子が発生して、コロナ表面処理後の表面張力が低くなってアルミニウム箔との接着力が低下し得る。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
また、フィルムを熱接着する際、マトリックスに対してガラス転移温度(Tg)が低いゴムドメインが溶融されながら熱接着の際に役に立つようになるが、ゴムドメインのサイズがシール層の厚さの10%を超過すれば(比較例3)、互いに突き当たる際に接着する部位が広くなって熱接着強度は増加するがデラミネーションが発生し、ゴムドメインのサイズがシール層の厚さの3%未満であれば(比較例4)、熱接着強度及びforming性能が低下することが分かる。
【国際調査報告】