(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電子デバイスに使用するためのポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/38 20060101AFI20241114BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20241114BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20241114BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01Q1/38
H01Q3/26 Z
H01Q21/06
H01Q1/24 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526584
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 US2022049507
(87)【国際公開番号】W WO2023086448
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン・シン
【テーマコード(参考)】
5J021
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021DB02
5J021DB03
5J021FA06
5J021FA13
5J021GA02
5J021HA01
5J021HA05
5J021HA06
5J021JA05
5J021JA08
5J046AB03
5J046AB06
5J046AB07
5J046AB08
5J046AB10
5J046AB13
5J046PA07
5J047AB03
5J047AB06
5J047AB07
5J047AB08
5J047AB10
5J047AB13
5J047FD01
(57)【要約】
少なくとも1種のサーモトロピック液晶ポリマーを含むポリマーマトリックス内に分布した誘電フィラーを含むポリマー組成物が開示される。ポリマー組成物は、2GHzの周波数で決定される約0.01以下の誘電正接、および2GHzの周波数で決定される約6以上の誘電率を示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のサーモトロピック液晶ポリマーを含むポリマーマトリックス内に分布した誘電フィラーを含むポリマー組成物であって、2GHzの周波数で決定される約0.01以下の誘電正接、2GHzの周波数で決定される約6以上の誘電率、ならびに1,000s
-1のせん断速度および前記ポリマー組成物の溶融温度より約15℃高い温度で決定される約0.1~約65Pa・sの溶融粘度を示す、前記ポリマー組成物。
【請求項2】
約280℃~約400℃の溶融温度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
1.8MPaで決定される約200℃以上の荷重たわみ温度を示す、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
液晶ポリマーが前記ポリマー組成物の約30wt.%~約90wt.%を構成する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマーマトリックスが、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸に由来する繰り返し単位を約10mol.%以上の量で含む高ナフテン系サーモトロピック液晶ポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記高ナフテン系サーモトロピック液晶ポリマーが、1種または複数種の芳香族ジカルボン酸、1種または複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸、またはそれらの組合せに由来する繰り返し単位を含む、請求項5に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記芳香族ヒドロキシカルボン酸が、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、またはそれらの組合せを含む、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記芳香族ジカルボン酸が、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、またはそれらの組合せを含む、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記高ナフテン系サーモトロピック液晶ポリマーが、1種または複数種の芳香族ジオールに由来する繰り返し単位をさらに含む、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記芳香族ジオールが、ヒドロキノン、4,4’-ビフェノール、またはそれらの組合せを含む、請求項9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記サーモトロピック液晶ポリマーが全芳香族性である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
前記サーモトロピック液晶ポリマーが、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰り返し単位を約20mol.%~約80mol.%の量で含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記サーモトロピック液晶ポリマーが、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰り返し単位を約40mol.%~約60mol.%の量で含む、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記サーモトロピック液晶ポリマーが、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸および4-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰り返し単位を約5~約40のモル比で含む、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記誘電フィラーが、1MHzの周波数で決定される約50以上の誘電率を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記誘電フィラーが二酸化チタン粒子を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記二酸化チタン粒子がルチル形態である、請求項16に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記二酸化チタン粒子がアルミナを含む表面処理を含む、請求項16に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
前記誘電フィラーがチタン酸バリウムを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
約10wt.%~約60wt.%の前記誘電フィラーを含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
ガラス繊維を含まない、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
レーザー活性化可能添加剤を含まない、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項23】
誘電層を含む電子デバイスであって、前記誘電層が請求項1に記載のポリマー組成物を含む、前記電子デバイス。
【請求項24】
前記誘電層の表面上に1つまたは複数の導電素子が形成されている、請求項23に記載の電子デバイス。
【請求項25】
アンテナ素子が設けられた基板、ならびに前記基板および前記アンテナ素子の上に配されたカバーを含むアンテナシステムであって、前記基板、前記カバー、または両方が、少なくとも1種のサーモトロピック液晶ポリマーを含むポリマーマトリックス内に分布した誘電フィラーを含むポリマー組成物を含み、前記ポリマー組成物が、2GHzの周波数で決定される約0.01以下の誘電正接、および2GHzの周波数で決定される約6以上の誘電率を示す、前記アンテナシステム。
【請求項26】
前記ポリマー組成物が、1,000s
-1のせん断速度および前記ポリマー組成物の溶融温度より約15℃高い温度で決定される約0.1~約65Pa・sの溶融粘度を示す、請求項25に記載のアンテナシステム。
【請求項27】
前記ポリマーマトリックスが、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸に由来する繰り返し単位を約10mol.%以上の量で含む高ナフテン系サーモトロピック液晶ポリマーを含む、請求項25に記載のアンテナシステム。
【請求項28】
前記誘電フィラーが、1MHzの周波数で決定される約50以上の誘電率を有する、請求項25に記載のアンテナシステム。
【請求項29】
前記誘電フィラーが二酸化チタン粒子を含む、請求項25に記載のアンテナシステム。
【請求項30】
前記組成物が約10wt.%~約60wt.%の前記誘電フィラーを含む、請求項25に記載のアンテナシステム。
【請求項31】
前記基板が前記ポリマー組成物を含む、請求項25に記載のアンテナシステム。
【請求項32】
前記基板の誘電率の、前記カバーの誘電率に対する比が約1~約10である、請求項31に記載のアンテナシステム。
【請求項33】
前記カバーが前記ポリマー組成物を含む、請求項25に記載のアンテナシステム。
【請求項34】
前記カバーの誘電率の、前記基板の誘電率に対する比が約1~約10である、請求項33に記載のアンテナシステム。
【請求項35】
前記アンテナシステムが少なくとも1つのフェーズアレイアンテナを含む、請求項25に記載のアンテナシステム。
【請求項36】
請求項25に記載のアンテナシステムを含む電子デバイス。
【請求項37】
携帯電話である、請求項36に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年11月15日の出願日を有する米国仮特許出願第63/279,306号に基づき、その優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]5Gシステムには、アンテナ素子などの様々な種類の電気構成要素が利用される。残念なことに、5G用途で遭遇する高周波での送受信は、一般に電力消費および発熱量の増加をもたらす。結果として、従来の電子構成要素に頻繁に使用される材料は、高周波性能能力に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、5Gアンテナシステムに使用するための改善された電子構成要素が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003]本発明の一実施形態によると、少なくとも1種のサーモトロピック液晶ポリマーを含むポリマーマトリックス内に分布した誘電フィラーを含むポリマー組成物が開示される。当該ポリマー組成物は、2GHzの周波数で決定される約0.01以下の誘電正接、2GHzの周波数で決定される約6以上の誘電率、ならびに1,000s-1のせん断速度および当該ポリマー組成物の溶融温度より約15℃高い温度で決定される約0.1~約65Pa・sの溶融粘度を示す。
【0004】
[0004]本発明の別の実施形態によると、その上にアンテナ素子が設けられた基板(substrate)、ならびに基板およびアンテナ素子の上に配されたカバーを含むアンテナシステムが開示される。基板、カバー、または両方は、少なくとも1種のサーモトロピック液晶ポリマーを含むポリマーマトリックス内に分布した誘電フィラーを含むポリマー組成物を含む。当該ポリマー組成物は、2GHzの周波数で決定される約0.01以下の誘電正接、および2GHzの周波数で決定される約6以上の誘電率を示す。
【0005】
[0005]本発明の他の特徴および態様を以下にさらに詳細に示す。
[0006]当業者にとってその最良の様式を含む本発明の完全かつ有効な開示は、添付の図の参照を含め、本明細書の残りの部分にさらに具体的に示される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】[0007]本発明のポリマー組成物を利用し得る電子デバイスの一実施形態の透視図である。
【
図2】[0008]無線通信回路と共に利用され得る電子デバイスの一実施形態の概略図である。
【
図3】[0009]信号のビームを向けるために制御回路を使用して調整され得るフェーズドアンテナアレイの一実施形態の図である。
【
図4】[0010]本発明のポリマー組成物を利用し得るパッチアンテナの一実施形態の透視図である。
【
図5】[0011]カバー層を有する電子デバイスの一実施形態の側面図である。
【
図6】[0012]カバー層に対して取り付けられ得るフェーズドアンテナアレイの一実施形態の断面側面図である。
【
図7】[0013]アンテナユニットセルの繰り返しパターンを有するフェーズドアンテナアレイの一実施形態を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0014]本考察は例示的な実施形態の説明に過ぎず、本発明のより広範な態様の制限を意図するものではないことが当業者に理解される。
[0015]概して、本発明は、少なくとも1種のサーモトロピック液晶ポリマーを含むポリマーマトリックス内に分布した誘電フィラーを含むポリマー組成物に関する。組成物の様々な態様を選択的に制御することにより、本発明者は、得られる組成物が、フェーズドアンテナアレイを利用するものなどの、誘電層で使用するための高誘電率と低誘電正接の独特の組合せを維持できることを発見した。例えば、ポリマー組成物は、2GHzまたは5GHzの周波数でスプリットポスト共振器法によって決定される約6以上、いくつかの実施形態では約8以上、いくつかの実施形態では約10以上、いくつかの実施形態では約10~約30、いくつかの実施形態では約11~約25、いくつかの実施形態では約12~約24の高誘電率を示してもよい。このような高い誘電率は、薄い層を形成する能力を促進し、また、最小レベルの電気的干渉のみで同時に動作する複数の導電素子(例えば、アンテナ)が利用されることを可能にすることができる。エネルギーの損失率の尺度である誘電正接も、2GHzまたは5GHzの周波数でスプリットポスト共振器法によって決定される約0.01以下、いくつかの実施形態では約0.009以下、いくつかの実施形態では約0.008以下、いくつかの実施形態では約0.0001~約0.007など、比較的低くてもよい。注目すべきことに、本発明者はまた、驚くべきことに、誘電率および誘電正接が、約-30℃~約100℃の温度などの様々な温度に曝露された場合でも、上述の範囲内に維持され得ることを発見した。例えば、本明細書に記載される熱サイクル試験に供された場合、熱サイクル後の誘電率の、初期誘電率に対する比は、約0.8以上、いくつかの実施形態では約0.9以上、いくつかの実施形態では約0.95~約1.1であってもよい。同様に、高温に曝露された後の誘電正接の、初期誘電正接に対する比は、約1.3以下、いくつかの実施形態では約1.2以下、いくつかの実施形態では約1.1以下、いくつかの実施形態では約1.0以下、いくつかの実施形態では約0.95以下、いくつかの実施形態では約0.1~約0.95、いくつかの実施形態では約0.2~約0.9であってもよい。誘電正接の変化(すなわち、初期誘電正接から熱サイクル後の誘電正接)もまた、約-0.1~約0.1、いくつかの実施形態では約-0.05~約0.01、いくつかの実施形態では約-0.001~0の範囲であってもよい。
【0008】
[0016]従来、高誘電率と低誘電正接の組合せを有するポリマー組成物は、小さなサイズの誘電層を形成する金型のキャビティに容易に流れ込むことができるように、十分に低い溶融粘度を同時に有さないと考えられていた。しかし、従来の考えとは対照的に、ポリマー組成物は優れた溶融加工性を有することが見出された。例えば、ポリマー組成物は、ISO11443:2021に従い、1,000秒-1のせん断速度、およびポリマー組成物の溶融温度より約15℃高い温度で決定される約0.1~約65Pa・s、いくつかの実施形態では約0.1~約50Pa・s、いくつかの実施形態では約0.2~約45Pa・s、いくつかの実施形態では約0.5~約40Pa・s、いくつかの実施形態では約1~約35Pa・sなどの超低溶融粘度を有してもよい。当然ながら、他の実施形態ではより高い溶融粘度が利用されてもよく、例えば約100Pa・sまで、いくつかの実施形態では約75Pa・sまでである。
【0009】
[0017]ポリマー組成物はまた、優れた熱特性を有する。組成物の溶融温度は、例えば、約280℃~約400℃、いくつかの実施形態では約290℃~約380℃、いくつかの実施形態では約300℃~約350℃であってもよい。このような溶融温度であっても、短期耐熱性の尺度である荷重たわみ温度(「DTUL」)の、溶融温度に対する比は、依然として比較的高いままであってもよい。例えば、比は、約0.5~約1.00、いくつかの実施形態では約0.6~約0.95、いくつかの実施形態では約0.65~約0.85の範囲であってもよい。具体的なDTUL値は、例えば約200℃以上、いくつかの実施形態では約220℃以上、いくつかの実施形態では約230℃~約300℃、いくつかの実施形態では約240℃~約280℃であってもよい。このような高いDTUL値は、とりわけ、構造を電気構成要素の他の構成要素と嵌合するための高速かつ信頼性の高い表面取付プロセスの使用を可能にし得る。
【0010】
[0018]ポリマー組成物はまた、薄い層を形成する際に有用な高い衝撃強度を有してもよい。組成物は、例えば、ISO試験No.ISO179-1:2010に従って23℃の温度で決定される約0.5kJ/m2以上、いくつかの実施形態では約1~約60kJ/m2、いくつかの実施形態では約2~約50kJ/m2、いくつかの実施形態では約5~約45kJ/m2のシャルピーノッチ付き衝撃強度を有してもよい。組成物の引張および曲げ機械的特性も良好であり得る。例えば、ポリマー組成物は、約20~約500MPa、いくつかの実施形態では約50~約400MPa、いくつかの実施形態では約70~約350MPaの引張強度;約0.4%以上、いくつかの実施形態では約0.5%~約10%、いくつかの実施形態では約0.6%~約3.5%の引張破断ひずみ;および/または約5,000MPa~約20,000MPa、いくつかの実施形態では約8,000MPa~約20,000MPa、いくつかの実施形態では約10,000MPa~約20,000MPaの引張弾性率を示してもよい。引張特性は、ISO試験No.527:2019に従い、23℃の温度で決定されてもよい。ポリマー組成物はまた、約20~約500MPa、いくつかの実施形態では約50~約400MPa、いくつかの実施形態では約100~約350MPaの曲げ強度;約0.4%以上、いくつかの実施形態では約0.5%~約10%、いくつかの実施形態では約0.6%~約3.5%の曲げ伸び;および/または約5,000MPa~約20,000MPa、いくつかの実施形態では約8,000MPa~約20,000MPa、いくつかの実施形態では約10,000MPa~約15,000MPaの曲げ弾性率を示してもよい。曲げ特性は、178:2019に従って23℃の温度で決定されてもよい。
【0011】
[0019]次に、本発明の様々な実施形態をより詳細に説明する。
I.ポリマー組成物
A.ポリマーマトリックス
[0020]ポリマーマトリックスは、1種または複数種のサーモトロピック液晶ポリマーを含む。液晶ポリマーは、一般に、棒状構造を有し、溶融状態(例えば、サーモトロピックネマチック状態)で結晶挙動を示し得る範囲で「サーモトロピック」と分類される。ポリマー組成物に利用される液晶ポリマーは、典型的に約280℃~約400℃、いくつかの実施形態では約290℃~約380℃、いくつかの実施形態では約300℃~約350℃の溶融温度を有する。溶融温度は、ISO11357-3:2018によって決定されるような示差走査熱量測定(「DSC」)を使用して、当技術分野で周知のように決定されてもよい。このようなポリマーは、当技術分野で公知のように、1種または複数種の繰り返し単位から形成されてもよい。液晶ポリマーは、例えば、一般に下記式(I)によって表される1種または複数種の芳香族エステル繰り返し単位を含んでもよい:
【0012】
【0013】
(式中、
環Bは、置換もしくは非置換6員アリール基(例えば、1,4-フェニレンまたは1,3-フェニレン)、置換もしくは非置換5もしくは6員アリール基に縮合した置換もしくは非置換6員アリール基(例えば、2,6-ナフタレン)、または置換もしくは非置換5もしくは6員アリール基に連結した置換もしくは非置換6員アリール基(例えば、4,4-ビフェニレン)であり;
Y1およびY2は、独立してO、C(O)、NH、C(O)HN、またはNHC(O)である)。
【0014】
[0021]典型的に、Y1およびY2の少なくとも1つはC(O)である。このような芳香族エステル繰り返し単位の例としては、例えば、芳香族ジカルボン酸繰り返し単位(式I中のY1およびY2はC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位(式I中のY1はOであり、Y2はC(O)である)、ならびにそれらの様々な組合せが挙げられてもよい。
【0015】
[0022]芳香族ヒドロキシカルボン酸、例えば4-ヒドロキシ安息香酸;4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸;2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸;3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸など、ならびにそれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにそれらの組合せに由来する芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位を、例えば、利用することができる。特に好適な芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)である。利用される場合、ヒドロキシカルボン酸(例えば、HBAおよび/またはHNA)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約20mol.%~約85mol.%、いくつかの実施形態では約30mol.%~約80mol.%、いくつかの実施形態では約40mol.%~75mol.%を構成する。
【0016】
[0023]芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなど、ならびにそれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、およびそれらの組合せに由来する芳香族ジカルボン酸繰り返し単位も利用することができる。特に好適な芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸(「TA」)、イソフタル酸(「IA」)、および2,6-ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)を挙げることができる。利用される場合、芳香族ジカルボン酸(例えば、IA、TA、および/またはNDA)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約1mol.%~約50mol.%、いくつかの実施形態では約5mol.%~約40mol.%、いくつかの実施形態では約10mol.%~約35mol.%を構成する。
【0017】
[0024]他の繰り返し単位もポリマーに利用することができる。特定の実施形態では、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(または4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど、ならびにそれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにそれらの組合せなどの芳香族ジオールに由来する繰り返し単位を利用することができる。特に好適な芳香族ジオールとしては、例えば、ヒドロキノン(「HQ」)および4,4’-ビフェノール(「BP」)を挙げることができる。利用される場合、芳香族ジオール(例えば、HQおよび/またはBP)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約1mol.%~約50mol.%、いくつかの実施形態では約5mol.%~約40mol.%、いくつかの実施形態では約10mol.%~約35mol.%を構成する。また、芳香族アミド(例えば、アセトアミノフェン(「APAP」))および/または芳香族アミン(例えば、4-アミノフェノール(「AP」)、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなど)に由来するものなどの繰り返し単位を利用することができる。利用される場合、芳香族アミド(例えば、APAP)および/または芳香族アミン(例えば、AP)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約0.1mol.%~約20mol.%、いくつかの実施形態では約0.5mol.%~約15mol.%、いくつかの実施形態では約1mol.%~約10%を構成する。また、ポリマーに様々な他のモノマー繰り返し単位が組み込まれてもよいことが理解されるべきである。例えば、特定の実施形態では、ポリマーは、脂肪族または脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミンなどの非芳香族モノマーに由来する1つまたは複数の繰り返し単位を含んでもよい。当然ながら、他の実施形態では、ポリマーは、非芳香族(例えば、脂肪族または脂環式)モノマー由来の繰り返し単位を欠くという点で、「全芳香族性」であってもよい。
【0018】
[0025]必ずしも必要ではないが、少なくとも1種の液晶ポリマーは、典型的にNDA、HNA、またはそれらの組合せなどのナフテン系ヒドロキシカルボン酸およびナフテン系ジカルボン酸に由来する繰り返し単位の比較的高い含有量を含む範囲で「高ナフテン系」ポリマーであるポリマーマトリックス中に利用される。すなわち、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、またはHNAとNDAの組合せ)に由来する繰り返し単位の総量は、典型的にポリマーの約10mol.%以上、いくつかの実施形態では約15mol.%以上、いくつかの実施形態では約20mol.%~約80mol.%、いくつかの実施形態では約30mol.%~約70mol.%、いくつかの実施形態では約40mol.%~約60mol.%である。多くの従来の「低ナフテン系」ポリマーとは対照的に、得られる「高ナフテン系」ポリマーは良好な熱的および機械的特性を示すことができると考えられる。
【0019】
[0026]1つの特定の実施形態では、例えば、液晶ポリマーは、20mol.%~約80mol.%、いくつかの実施形態では約30mol.%~約70mol.%、いくつかの実施形態では約40mol.%~約60mol.%の量でHNAに由来する繰り返し単位を含んでもよい。液晶ポリマーはまた、様々な他のモノマーを含んでもよい。例えば、ポリマーは、約0.1mol.%~約15mol.%、いくつかの実施形態では約0.5mol.%~約10mol.%、いくつかの実施形態では約1mol.%~約5mol.%の量でHBAに由来する繰り返し単位を含んでもよい。利用される場合、HBAに由来する繰り返し単位の、HNAに由来する繰り返し単位に対するモル比は、約5~約40、いくつかの実施形態では約10~約35、いくつかの実施形態では約20~約30など、所望の特性を達成するのに役立つ特定の範囲内で選択的に制御されてもよい。ポリマーはまた、約10mol.%~約40mol.%、いくつかの実施形態では約20mol.%~約30mol.%の量の芳香族ジカルボン酸(例えば、IAおよび/またはTA);および/または約10mol.%~約40mol.%、いくつかの実施形態では約20mol.%~約30mol.%の量の芳香族ジオール(例えば、BPおよび/またはHQ)に由来する繰り返し単位を含んでもよい。しかし、一部の場合では、所望の特性の達成を助けるために、ポリマー中のそのようなモノマーの存在を最小にすることが所望され得る。例えば、芳香族ジカルボン酸(例えば、IAおよび/もしくはTA)ならびに/または芳香族ジオール(例えば、BPおよび/もしくはHQ)に由来する繰り返し単位の総量は、ポリマーの約5mol%以下、いくつかの実施形態では約4mol.%以下、いくつかの実施形態では約0.1mol.%~約3mol.%であってもよい。
【0020】
[0027]ポリマーの特定の構成成分および性質に関係なく、液晶ポリマーは、まずエステル繰り返し単位(例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸など)および/または他の繰り返し単位(例えば、芳香族ジオール、芳香族アミド、芳香族アミンなど)を形成するために使用される芳香族モノマーを反応容器に導入して重縮合反応を開始させることによって調製されてもよい。このような反応で利用される特定の条件および工程は周知であり、Calundannに対する米国特許第4,161,470号;Linstid,IIIらに対する米国特許第5,616,680号;Linstid,IIIらに対する米国特許第6,114,492号;Shepherdらに対する米国特許第6,514,611号;およびWaggonerに対するWO2004/058851号により詳細に記載されている可能性がある。反応に利用される容器は特に限定されないが、典型的に、高粘度流体の反応に通常使用されるものを利用することが所望される。このような反応容器の例としては、アンカー型、多段型、螺旋リボン型、スクリューシャフト型など、またはその変更された形状などの様々な形状の撹拌翼を備えたかき混ぜ機を有する撹拌槽型装置を挙げることができる。このような反応容器のさらなる例としては、混練機、ロールミル、バンバリーミキサーなどの樹脂混練に一般的に使用される混合装置を挙げることができる。
【0021】
[0028]所望される場合、反応は、当技術分野で公知のように、モノマーのアセチル化を通して進行してもよい。これは、アセチル化剤(例えば、無水酢酸)をモノマーに添加することによって達成され得る。アセチル化は、一般に約90℃の温度で開始される。アセチル化の初期段階では、酢酸副生成物および無水物が蒸留し始める点未満の気相温度を維持するために、還流が利用されてもよい。アセチル化中の温度は、通常90℃~150℃、いくつかの実施形態では約110℃~約150℃の範囲である。還流が使用される場合、気相温度は、典型的に酢酸の沸点を超えるが、残留無水酢酸を保持するのに十分低いままである。例えば、無水酢酸は約140℃の温度で気化する。したがって、反応器に約110℃~約130℃の温度で気相還流を与えることが特に望ましい。実質的に完全な反応を保証するために、過剰量の無水酢酸が利用されてもよい。過剰の無水物の量は、還流の有無を含む利用される特定のアセチル化条件によって変化する。存在する反応物ヒドロキシル基の総モルに基づき、約1~約10モルパーセントの過剰量の無水酢酸を使用することは珍しくない。
【0022】
[0029]アセチル化は、別個の反応器容器内で行われてもよいか、または重合反応器容器内でin situで行われてもよい。別個の反応器容器が利用される場合、1種または複数種のモノマーがアセチル化反応器に導入され、その後重合反応器に移されてもよい。同様に、1種または複数種のモノマーを、プレアセチル化を経ずに反応器容器に直接導入することもできる。
【0023】
[0030]モノマーおよび任意選択のアセチル化剤に加えて、重合を促進するのを補助するために、他の成分も反応混合物中に含めることができる。例えば、金属塩触媒(例えば、酢酸マグネシウム、酢酸スズ(I)、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなど)および有機化合物触媒(例えば、N-メチルイミダゾール)などの触媒を任意選択で利用することができる。このような触媒は、典型的に、繰り返し単位前駆体の総重量に基づいて約50~約500百万分率の量で使用される。別個の反応器が利用される場合、重合反応器ではなくアセチル化反応器に触媒を適用することが典型的に所望されるが、これは決して必須ではない。
【0024】
[0031]反応混合物を、一般に重合反応器容器内で高温に加熱して、反応物の溶融重縮合を開始する。重縮合は、例えば、約200℃~約400℃の温度範囲内で行われてもよい。例えば、芳香族ポリエステルを形成するための1つの好適な技術は、前駆体モノマーおよび無水酢酸を反応器に投入すること、混合物を約90℃~約150℃の温度に加熱してモノマーのヒドロキシル基をアセチル化すること(例えば、アセトキシを形成すること)、次いで温度を約200℃から約400℃に上昇させて溶融重縮合を行うことを含んでもよい。最終重合温度に近づくにつれ、所望の分子量が容易に達成され得るように、反応の揮発性副生成物(例えば、酢酸)を除去することもできる。反応混合物は、良好な熱および物質移動、ひいては良好な材料の均一性を確保するために、一般に重合中にかき混ぜに供される。かき混ぜ機の回転速度は、反応の過程で変化し得るが、典型的に約10~約100回転毎分(「rpm」)、いくつかの実施形態では約20~約80rpmの範囲である。溶融物中の分子量を構築するために、重合反応を真空下で行うこともでき、真空の適用により、重縮合の最終段階で形成される揮発物の除去が促進される。真空は、約34~約206kPa(約2.27~約13.61kg(約5~約30ポンド)毎平方インチ(「psi」))、いくつかの実施形態では約68~約137kPa(約10~約20psi)の範囲内などの吸引圧力の適用によって形成され得る。
【0025】
[0032]溶融重合後、溶融ポリマーは、典型的に所望の構成のダイが取り付けられた押出オリフィスを通して反応器から排出され、冷却され、収集されてもよい。一般に、溶融物は穴あきダイを通して排出されてストランドを形成し、これが水浴中に取り込まれ、ペレット化され、乾燥される。いくつかの実施形態では、溶融重合ポリマーはまた、その分子量をさらに増大させるために、引き続いて固体重合法に供されてもよい。固体重合は、ガス(例えば、空気、不活性ガスなど)の存在下で行われてもよい。好適な不活性ガスとしては、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノンなど、およびそれらの組合せを挙げることができる。固体重合反応器容器は、ポリマーを所望の固体重合温度で所望の滞留時間維持することができる実質的に任意の設計であってもよい。このような容器の例は、固定床、静止床、移動床、流動床などを有するものであってもよい。固体重合が実施される温度は変化してもよいが、典型的に約200℃~約400℃の範囲内である。重合時間は、当然ながら温度および目標分子量に基づいて変化する。しかし、ほとんどの場合、固体重合時間は約2~約12時間、いくつかの実施形態では約4~約10時間である。
【0026】
[0033]ポリマー組成物中に利用される液晶ポリマーの総量は、典型的にポリマー組成物全体の約30wt.%~約90wt.%、いくつかの実施形態では約35wt.%~約80wt.%、いくつかの実施形態では約40wt.%~約60wt.%である。特定の実施形態では、液晶ポリマーはすべて上述のような「高ナフテン系」ポリマーである。しかし、他の実施形態では、「低ナフテン系」液晶ポリマーも、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、またはHNAとNDAの組合せ)に由来する繰り返し単位の総量が、ポリマーの10mol.%未満、いくつかの実施形態では約8mol.%以下、いくつかの実施形態では約6mol.%以下、いくつかの実施形態では約1mol.%~約5mol.%である組成物に利用されてもよい。利用される場合、このような低ナフテン系ポリマーは、比較的少量でのみ存在することが一般に所望される。例えば、利用される場合、低ナフテン系液晶ポリマーは、典型的に、組成物中の液晶ポリマーの総量の約1wt.%~約50wt.%、いくつかの実施形態では約10wt.%~約45wt.%、いくつかの実施形態では約20wt.%~約40wt.%、組成物全体の約0.5wt.%~約45wt.%、いくつかの実施形態では約2wt.%~約35wt.%、いくつかの実施形態では約5wt.%~約25wt.%を構成する。対照的に、高ナフテン系液晶ポリマーは、典型的に、組成物中の液晶ポリマーの総量の約50wt.%~約99wt.%、いくつかの実施形態では約55wt.%~約95wt.%、いくつかの実施形態では約60wt.%~約90wt.%、組成物全体の約25wt.%~約65wt.%、いくつかの実施形態では約30wt.%~約60wt.%、いくつかの実施形態では約35wt.%~約55wt.%を構成する。
【0027】
B.誘電フィラー
[0034]所望の誘電特性を達成するのを補助するために、ポリマー組成物は誘電フィラーも含む。誘電フィラーは、典型的に、組成物の約10wt.%~約60wt.%、いくつかの実施形態では約30wt.%~約55wt.%、いくつかの実施形態では約40wt.%~約50wt.%の量で利用される。特定の実施形態では、所望の結果を達成するのを補助するために、誘電フィラーの電気的特性を選択的に制御することが望ましい場合がある。例えば、材料の誘電率は、1MHzの周波数で決定される約20以上、いくつかの実施形態では約40以上、いくつかの実施形態では約50以上であってもよい。1MHzの周波数で決定される約1,000~約15,000、いくつかの実施形態では約3,500~約12,000、いくつかの実施形態では約5,000~約10,000などの高誘電率材料を特定の実施形態で利用することができる。他の実施形態では、1MHzの周波数で決定される約20~約200、いくつかの実施形態では約40~約150、いくつかの実施形態では約50~約100などの中程度の誘電率材料を利用することができる。誘電フィラーの体積抵抗率も同様に、例えばASTM D257-14に従って約20℃の温度で決定される約1×1011~約1×1020オーム・cm、いくつかの実施形態では約1×1012~約1×1019オーム・cm、いくつかの実施形態では約1×1013~約1×1018オーム・cmの範囲であり得る。所望の特性は、標的体積誘電率および/もしくは体積抵抗率を有する単一の材料を選択することによって、または得られるブレンドが所望の特性を有するように、複数の材料を共に(例えば、絶縁性および導電性)ブレンドすることによって達成することができる。
【0028】
[0035]特に好適な無機酸化物材料としては、例えば、強誘電および/または常誘電材料を挙げることができる。好適な強誘電材料の例としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)、チタン酸ストロンチウムバリウム(SrBaTiO3)、ニオブ酸ナトリウムバリウム(NaBa2Nb5O15)、ニオブ酸カリウムバリウム(KBa2Nb5O15)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタナイト(CaTiSiO5)、およびそれらの組合せが挙げられる。同様に、好適な常誘電材料の例としては、例えば、二酸化チタン(TiO2)、五酸化タンタル(Ta2O5)、二酸化ハフニウム(HfO2)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、アルミナ(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)など、およびそれらの組合せが挙げられる。特に好適な無機酸化物材料は、TiO2、BaTiO3、SrTiO3、CaTiO3、MgTiO3、BaSrTi2O6、およびZnOを含む粒子である。当然ながら、他の種類の無機酸化物材料(例えば、マイカ)も誘電フィラーとして利用することができる。
【0029】
[0036]1つの特定の実施形態では、二酸化チタン(TiO2)粒子は、誘電フィラーとしてポリマー組成物中に利用されてもよい。粒子は、ルチルまたはアナターゼ結晶形態であってもよいが、ルチルは、そのより高い密度および着色強度のために特に好適である。ルチル二酸化チタンは、一般的に塩化物法または硫酸塩法のいずれかによって作製される。塩化物法では、TiCl4がTiO2粒子に酸化される。硫酸塩法では、硫酸およびチタンを含む鉱石を溶解し、得られた溶液を一連の工程に供してTiO2を得る。好ましくは、二酸化チタン粒子はルチル結晶形態であり、塩化物法を使用して作製されてもよい。二酸化チタン粒子は、実質的に純粋な二酸化チタンであってもよいか、またはシリカ、アルミナ、ジルコニアなどの他の金属酸化物を含んでもよい。他の金属酸化物は、例えば、チタン化合物を他の金属化合物、例えばケイ素、アルミニウムおよびジルコニウムの金属ハロゲン化物と共酸化または共沈させることにより、粒子に組み込まれてもよい。共酸化または共沈された金属が存在する場合、それらは典型的に、二酸化チタン粒子の重量に基づき、金属酸化物として0.1~5wt.%の量で存在する。アルミナがハロゲン化アルミニウム(例えば、塩化アルミニウム)の共酸化によって粒子に組み込まれる場合、アルミナは典型的に、粒子の総重量に基づいて約0.5~約5wt.%、いくつかの実施形態では約0.5~約1.5wt.%の量で存在する。二酸化チタン粒子はまた、無機酸化物(例えば、アルミナ)、有機化合物、またはそれらの組合せでコーティングされてもよい。このようなコーティングは、当業者に公知のように、表面湿式処理技術および/または酸化技術を使用して適用されてもよい。一実施形態では、例えば、二酸化チタン粒子は、コーティングの約0.5~約5wt.%、いくつかの実施形態では約1~約3wt.%の量などのアルミナを含むコーティングを含んでもよい。
【0030】
[0037]誘電フィラーの形状およびサイズは特に限定されず、粒子、微粉末、繊維、ウィスカー、テトラポッド、プレートなどを含んでもよい。一実施形態では、例えば、誘電フィラーは、約0.01~約50マイクロメートル、いくつかの実施形態では約0.05~約10マイクロメートル、いくつかの実施形態では約0.1~約1マイクロメートルの平均直径を有する粒子を含んでもよい。
【0031】
C.任意選択の添加剤
i.導電フィラー
[0038]所望される場合、導電フィラーをポリマー組成物中に利用して、ポリマー組成物が所望の誘電性能を達成することを確実にしてもよい。例えば、例えば約20℃の温度で決定される約1オーム・cm未満、いくつかの実施形態では約0.1オーム・cm未満、いくつかの実施形態では約1×10-8~約1×10-2オーム・cmの体積抵抗率を有する導電炭素材料を利用することができる。好適な導電炭素材料としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブなどを挙げることができる。他の好適な導電フィラーとしては、同様に、金属(例えば、金属粒子、金属フレーク、金属繊維など)、イオン液体などを挙げることができる。利用される場合、例えば、導電フィラーは、ポリマー組成物の約0.1wt.%~約10wt.%、いくつかの実施形態では約0.2wt.%~約8wt.%、いくつかの実施形態では約0.5wt.%~約6wt.%を構成してもよい。
【0032】
ii.鉱物フィラー
[0039]ポリマー組成物はまた、任意選択で、ポリマーマトリックス内に分布した1種または複数種の鉱物フィラーを含んでもよい。利用される場合、そのような鉱物フィラーは、典型的にポリマー組成物の約1wt.%~約50wt.%、いくつかの実施形態では約2wt.%~約45wt.%、いくつかの実施形態では約5wt.%~約40wt.%を構成する。ポリマー組成物に利用される鉱物フィラーの性質は、鉱物粒子、鉱物繊維(または「ウィスカー」)など、およびそれらのブレンドなど様々であってもよい。典型的に、ポリマー組成物中に利用される鉱物フィラーは、組成物の機械的強度、接着強度、および表面特性を改善するのに役立つように、特定の硬度値を有する。例えば、硬度値は、モース硬度スケールに基づいて約2.0以上、いくつかの実施形態では約2.5以上、いくつかの実施形態では約3.0以上、いくつかの実施形態では約3.0~約11.0、いくつかの実施形態では約3.5~約11.0、いくつかの実施形態では約4.5~約6.5であってもよい。
【0033】
[0040]一般に、天然および/または合成ケイ酸塩鉱物、例えばタルク、マイカ、シリカ(例えば、非晶質シリカ)、アルミナ、ハロイサイト、カオリナイト、イライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、パリゴルスカイト、パイロフィライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ウォラストナイトなど;硫酸塩;炭酸塩;リン酸塩;フッ化物、ホウ酸塩などから形成されたものなどの様々な異なる種類の鉱物粒子のいずれかをポリマー組成物中に利用することができる。特に適しているのは、炭酸カルシウム(CaCO3、モース硬度3.0)、炭酸水酸化銅(Cu2CO3(OH)2、モース硬度4.0);フッ化カルシウム(CaFl2、モース硬度4.0);ピロリン酸カルシウム(Ca2P2O7、モース硬度5.0)、無水第二リン酸カルシウム(CaHPO4、モース硬度3.5)、水和リン酸アルミニウム(AlPO4・2H2O、モース硬度4.5);シリカ(SiO2、モース硬度5.0~6.0)、ケイ酸アルミニウムカリウム(KAlSi3O8、モース硬度6)、ケイ酸銅(CuSiO3・H2O、モース硬度5.0);水酸化ホウケイ酸カルシウム(Ca2B5SiO9(OH)5、モース硬度3.5);アルミナ(AlO2、モース硬度10.0);硫酸カルシウム(CaSO4、モース硬度3.5)、硫酸バリウム(BaSO4、モース硬度3~3.5)、マイカ(モース硬度2.5~5.3)など、およびそれらの組合せなどの所望の硬度値を有する粒子である。例えば、マイカが特に好適である。例えば、白雲母(KAl2(AlSi3)O10(OH)2)、黒雲母(K(Mg,Fe)3(AlSi3)O10(OH)2)、金雲母(KMg3(AlSi3)O10(OH)2)、リチア雲母(K(Li,Al)2-3(AlSi3)O10(OH)2)、海緑石(K,Na)(Al,Mg,Fe)2(Si,Al)4O10(OH)2などを含む任意の形態のマイカを一般に利用することができる。白雲母系のマイカは、ポリマー組成物への使用に特に好適である。
【0034】
[0041]特定の実施形態では、硫酸バリウムおよび/または硫酸カルシウム粒子などの鉱物粒子は、一般に本質的に顆粒状または結節状の形状を有してもよい。そのような実施形態では、粒子は、ISO13320:2009に従って(例えば、Horiba LA-960粒度分布分析計を用いて)レーザー回折技術を使用して決定される約0.5~約20マイクロメートル、いくつかの実施形態では約1~約15マイクロメートル、いくつかの実施形態では約1.5~約10マイクロメートル、いくつかの実施形態では約2~約8マイクロメートルのメジアン径(例えば、直径)を有してもよい。他の実施形態では、約4以上、いくつかの実施形態では約8以上、いくつかの実施形態では約10~約500などの比較的高いアスペクト比(例えば、平均直径を平均厚さで除したもの)を有する、マイカ粒子などのフレーク状鉱物粒子を利用することが望ましい場合もある。そのような実施形態では、粒子の平均直径は、例えば、約5マイクロメートル~約200マイクロメートル、いくつかの実施形態では約8マイクロメートル~約150マイクロメートル、いくつかの実施形態では約10マイクロメートル~約100マイクロメートルの範囲であってもよい。平均厚さは、同様に、例えばISO13320:2009に従って(例えば、Horiba LA-960粒度分布分析計を用いて)レーザー回折技術を使用して決定される約2マイクロメートル以下、いくつかの実施形態では約5ナノメートル~約1マイクロメートル、いくつかの実施形態では約20ナノメートル~約500ナノメートルであってもよい。鉱物粒子はまた、狭い粒度分布を有してもよい。すなわち、粒子の少なくとも約70体積%、いくつかの実施形態では粒子の少なくとも約80体積%、いくつかの実施形態では粒子の少なくとも約90体積%が、上述の範囲内のサイズを有してもよい。
【0035】
[0042]好適な鉱物繊維としては、同様に、ケイ酸塩、例えばネオケイ酸塩、ソロケイ酸塩、イノケイ酸塩(例えば、ウォラストナイトなどのカルシウムイノケイ酸塩;トレモライトなどのカルシウムマグネシウムイノケイ酸塩;アクチノライトなどのカルシウムマグネシウム鉄イノケイ酸塩;アンソフィライトなどのマグネシウム鉄イノケイ酸塩など)、フィロケイ酸塩(例えば、パリゴルスカイトなどのアルミニウムフィロケイ酸塩)、テクトケイ酸塩など;硫酸塩、例えば硫酸カルシウム(例えば、脱水または無水石膏);鉱物ウール(例えばロックウールまたはスラグウール)などに由来するものを挙げることができる。特に好適なのは、Nyco MineralsからNyglos(登録商標)(例えば、Nyglos(登録商標)4WまたはNyglos(登録商標)8)という商品名で市販されているイノケイ酸塩、例えばウォラストナイト(モース硬度4.5~5.0)に由来する繊維を含む、所望の硬度値を有する繊維である。鉱物繊維は、約1~約35マイクロメートル、いくつかの実施形態では約2~約20マイクロメートル、いくつかの実施形態では約3~約15マイクロメートル、いくつかの実施形態では約7~約12マイクロメートルのメジアン幅(例えば、直径)を有してもよい。鉱物繊維はまた、狭いサイズ分布を有することができる。すなわち、繊維の少なくとも約60体積%、いくつかの実施形態では繊維の少なくとも約70体積%、いくつかの実施形態では繊維の少なくとも約80体積%が上述の範囲内のサイズを有してもよい。理論によって限定されることを意図しないが、上述のサイズ特性を有する鉱物繊維は、成型機器内をより容易に移動することができ、これによりポリマーマトリックス内の分布を向上させ、表面欠陥の発生を最小化すると考えられる。上述のサイズ特性を有することに加えて、鉱物繊維はまた、得られるポリマー組成物の機械的特性および表面品質をさらに改善するのに役立つ比較的高いアスペクト比(平均長さをメジアン幅で除したもの)を有してもよい。例えば、鉱物繊維は、約2~約100、いくつかの実施形態では約2~約50、いくつかの実施形態では約3~約20、いくつかの実施形態では約4~約15のアスペクト比を有してもよい。このような鉱物繊維の体積平均長さは、例えば、約1~約200マイクロメートル、いくつかの実施形態では約2~約150マイクロメートル、いくつかの実施形態では約5~約100マイクロメートル、いくつかの実施形態では約10~約50マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0036】
iii.レーザー活性化可能添加剤
[0043]決して必須ではないが、ポリマー組成物は、レーザー直接構造化(「LDS」)プロセスによって活性化され得る添加剤を含むという意味で「レーザー活性化可能」であってもよい。このようなプロセスでは、添加剤は、金属の放出を引き起こすレーザーに曝露される。したがって、レーザーは導電素子のパターンをその部分に描き、埋め込まれた金属粒子を含む粗面化された表面を残す。これらの粒子は、その後のメッキプロセス(例えば、銅メッキ、金メッキ、ニッケルメッキ、銀メッキ、亜鉛メッキ、錫メッキなど)で結晶成長の核として作用する。レーザー活性化可能添加剤は、一般に酸化物結晶を含み、この酸化物結晶は、画定可能な結晶形成内に2つ以上の金属酸化物クラスター構成を含んでもよい。例えば、全体的な結晶形成は、以下の一般式を有してもよい:
AB2O4またはABO2
(式中、
Aはカドミウム、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マグネシウム、スズ、チタンなど、およびそれらの組合せなどの2以上の価数を有する金属カチオンであり、
Bはアンチモン、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガン、スズなど、およびそれらの組合せなどの3以上の価数を有する金属カチオンである)。
【0037】
[0044]典型的に、上式中のAは、第1の金属酸化物クラスターの主要な陽イオン成分を提供し、Bは第2の金属酸化物クラスターの主要な陽イオン成分を提供する。これらの酸化物クラスターは、同じまたは異なる構造を有してもよい。一実施形態では、例えば、第1の金属酸化物クラスターは四面体構造を有し、第2の金属酸化物クラスターは八面体クラスターを有する。いずれにせよ、クラスターは、電磁放射に対する感受性が高められた、単一の識別可能な結晶型構造を共に提供することができる。好適な酸化物結晶の例としては、例えば、MgAl2O4、ZnAl2O4、FeAl2O4、CuFe2O4、CuCr2O4、MnFe2O4、NiFe2O4、TiFe2O4、FeCr2O4、MgCr2O4、スズ/アンチモン酸化物(例えば、(Sb/Sn)O2)、およびそれらの組合せが挙げられる。銅クロム酸化物(CuCr2O4)は、本発明での使用に特に好適であり、Shepherd Color社から「Shepherd Black 1GM」という名称で入手可能である。一部の場合では、レーザー活性化可能添加剤はまた、WO2018/130972に記載されるようなコア-シェル構成を有してもよい。そのような添加剤において、添加剤のシェル成分は、典型的にレーザー活性化可能であるが、コアは無機化合物(例えば、二酸化チタン、マイカ、タルクなど)などの任意の一般的な化合物であってもよい。
【0038】
[0045]利用される場合、レーザー活性化可能添加剤は、典型的にポリマー組成物の約0.1wt.%~約30wt.%、いくつかの実施形態では約0.5wt.%~約20wt.%、いくつかの実施形態では約1wt.%~約10wt.%を構成する。当然ながら、ポリマー組成物はまた、スピネル結晶などのこのようなレーザー活性化可能添加剤を含まなくてもよいか(すなわち0wt.%)、またはこのような添加剤は、約1wt.%以下、いくつかの実施形態では約0.5wt.%以下、いくつかの実施形態では約0.001wt.%~約0.2wt.%の量など、わずかな濃度でのみ存在してもよい。
【0039】
iv.ガラス繊維
[0046]本発明の1つの有益な態様は、得られる部品の機械的特性に悪影響を与えることなく、良好な誘電特性が達成され得ることである。このような特性が維持されるのを確実に補助するために、ポリマー組成物は、ガラス繊維などの従来の繊維状フィラーを実質的に含まないままであることが一般的に望ましい。したがって、利用されるとしても、ガラス繊維は、典型的にポリマー組成物の約10wt.%以下、いくつかの実施形態では約5wt.%以下、いくつかの実施形態では約0.001wt.%~約3wt.%を構成する。
【0040】
v.任意選択の添加剤
[0047]滑剤、熱伝導性フィラー(例えば、カーボンブラック、グラファイト、窒化ホウ素など)、顔料、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、ドリップ防止添加剤、核剤(例えば、窒化ホウ素)、トライボロジー剤(例えば、フルオロポリマー)、帯電防止フィラー(例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、グラファイト、イオン液体など)、繊維状フィラー(例えば、ガラス繊維、炭素繊維など)、流動調整剤(例えば、三水和アルミニウム)、ならびに特性および加工性を向上させるために添加される他の材料などの多種多様な他の追加の添加剤もポリマー組成物に含まれてもよい。例えば、実質的に分解することなく液晶ポリマーの加工条件に耐えることができる滑剤がポリマー組成物に利用されてもよい。そのような滑剤の例としては、それらの混合物を含む脂肪酸エステル、その塩、エステル、脂肪酸アミド、有機リン酸エステル、およびエンジニアリングプラスチック材料の加工で滑剤として一般的に使用される種類の炭化水素ワックスが挙げられる。好適な脂肪酸は、典型的にミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、モンタン酸、オクタデシン酸、パリン酸など、約12~約60個の炭素原子の骨格炭素鎖を有する。好適なエステルとしては、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、ワックスエステル、グリセロールエステル、グリコールエステルおよび複合エステルが挙げられる。脂肪酸アミドには、脂肪第一級アミド、脂肪第二級アミド、メチレンおよびエチレンビスアミド、ならびにアルカノールアミド、例えば、例えばパルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N,N’-エチレンビスステアラミドなどが含まれる。また、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸の金属塩、パラフィンワックス、ポリオレフィンおよび酸化ポリオレフィンワックスを含む炭化水素ワックス、ならびに微結晶性ワックスも好適である。特に好適な滑剤は、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸カルシウム、またはN,N’-エチレンビスステアラミドなどのステアリン酸の酸、塩、またはアミドである。利用される場合、滑剤は典型的に、ポリマー組成物の約0.05wt.%~約1.5wt.%、いくつかの実施形態では約0.1wt.%~約0.5wt.%(重量で)を構成する。
【0041】
II.形成
[0048]ポリマー組成物を形成するために使用される成分は、当技術分野で公知のように、様々な異なる技術のいずれかを使用して一緒に組み合わされてもよい。特定の一実施形態では、例えば、液晶ポリマー、誘電フィラー、および他の任意選択の添加剤を押出機内で混合物として溶融加工して、ポリマー組成物を形成する。混合物は、約250℃~約450℃の温度で、単軸または多軸押出機で溶融混練されてもよい。一実施形態では、混合物は、複数の温度ゾーンを含む押出機で溶融加工されてもよい。個々のゾーンの温度は、典型的に液晶ポリマーの溶融温度に対して約-60℃~約25℃の範囲内で設定される。例として、混合物は、Leistritz 18mm共回転完全噛合式二軸押出機などの二軸押出機を使用して溶融加工されてもよい。汎用スクリュー設計を使用して混合物を溶融加工することができる。一実施形態では、すべての成分を含む混合物は、容積式フィーダーによって第1のバレルのフィード口にフィードされてもよい。別の実施形態では、公知のように、異なる成分が押出機の異なる添加ポイントで添加されてもよい。例えば、液晶ポリマーがフィード口で適用され、特定の添加剤(例えば、誘電フィラー)がその下流に位置する同じまたは異なる温度帯で供給されてもよい。いずれにせよ、得られた混合物は、溶融および混合され、その後ダイを通して押し出されてもよい。押し出されたポリマー組成物は、次いで水浴中で急冷されて固化され、ペレタイザーで造粒され、次いで乾燥されてもよい。
【0042】
III.誘電層
[0049]一旦形成されると、ポリマー組成物は、アンテナシステムを利用する電子デバイスなどの多種多様なデバイスで使用するための誘電層に成形されてもよい。ポリマー組成物の有益な特性のために、誘電層は、典型的に約5ミリメートル以下、いくつかの実施形態では約4ミリメートル以下、いくつかの実施形態では約0.5~約3ミリメートルの厚さなどの小さなサイズを有する。典型的に、誘電層は、乾燥および予熱されたプラスチック顆粒が金型に射出される射出成型プロセスなどの成型プロセスを使用して形成される。
【0043】
[0050]誘電層は、アンテナシステムを利用する電子デバイスで使用するのに特に好適であり得る。一実施形態では、例えば、誘電層は、1つまたは複数のアンテナ素子がその上に形成された基板であってもよい。アンテナ素子は様々な方法で、例えばメッキ、電気メッキ、レーザー直接構造化などによって形成されてもよい。レーザー活性化可能添加剤としてスピネル結晶を含む場合、例えば、レーザーによる活性化は、スピネル結晶が割れて開き、金属原子を放出する物理化学反応を引き起こすことができる。これらの金属原子は、金属化(例えば、還元性銅コーティング)のための核として作用することができる。レーザーはまた、微視的に不規則な表面を作り、ポリマーマトリックスをアブレートし、金属化の際に銅を固定することができる多数の微視的なピットおよびアンダーカットを作る。パッチアンテナ素子、逆Fアンテナ素子、クローズドおよびオープンスロットアンテナ素子、ループアンテナ素子、モノポール、ダイポール、平面逆Fアンテナ素子、これらの設計の混成など、様々な異なる種類のアンテナを基板上に形成することができる。基板として利用されることに加えて、誘電層はまた、基板およびアンテナ共振素子の上に配されたカバーとして利用されてもよい。本発明のポリマー組成物は、基板、カバー、または両方に利用されてもよい。特定の実施形態では、基板の誘電率がカバーの誘電率と異なることが所望される場合がある。このようにして、得られるアンテナシステムは、電圧定在波無線(「VSWR」)の増加、利得の減少、および/または帯域幅の増加を示してもよい。例えば、層の1つの誘電率の、別の層の誘電率に対する比は、約1~約20、いくつかの実施形態では約1.5~約10、いくつかの実施形態では約2~約8、いくつかの実施形態では約3~約6であってもよい。一実施形態では、例えば、基板はカバーよりも高い誘電率を有する。このような実施形態では、本発明のポリマー組成物を基板に利用することが所望される場合がある。別の実施形態では、カバーは基板よりも高い誘電率を有する。そのような実施形態では、本発明のポリマー組成物をカバーに利用することが所望される場合がある。
【0044】
[0051]得られたアンテナシステムは、様々な異なる電子構成要素に利用されてもよい。例として、アンテナシステムは、デスクトップコンピュータ、ポータブルコンピュータ、ハンドヘルド電子デバイス、車載機器などの電子構成要素に形成されてもよい。一つの好適な構成では、アンテナシステムは、利用可能な内部空間が比較的小さい比較的緻密なポータブル電子構成要素のハウジング内に形成される。好適なポータブル電子構成要素の例としては、携帯電話、ラップトップコンピュータ、小型ポータブルコンピュータ(例えば、ウルトラポータブルコンピュータ、ネットブックコンピュータおよびタブレットコンピュータ)、腕時計型デバイス、ペンダント型デバイス、ヘッドホンおよびイヤホン型デバイス、無線通信機能付きメディアプレーヤ、ハンドヘルドコンピュータ(パーソナルデジタルアシスタントとも呼ばれる場合がある)、リモートコントローラ、全地球測位システム(GPS)デバイス、ハンドヘルドゲームデバイスなどが挙げられる。アンテナはまた、ハンドヘルドデバイスのカメラモジュール、スピーカまたはバッテリーカバーなどの他の構成要素と一体化されてもよい。
【0045】
[0052]
図1に示される一つの特に好適な電子デバイスは、1つまたは複数のアンテナを含む無線回路を含み得るハンドヘルドデバイス10である。アンテナは、ミリメートル波およびセンチメートル波通信を取り扱うために使用されるフェーズドアンテナアレイを含んでもよい。極高周波(EHF)通信と称される場合があるミリメートル波通信は、60GHzまたは約30GHz~300GHzの他の周波数の信号を含む。センチメートル波通信は、約10GHz~30GHzの周波数の信号を含む。本明細書では、ミリメートル波通信の使用が例として説明される場合があるが、センチメートル波通信、EHF通信、または任意の他の種類の通信も同様に使用することができる。所望される場合、電子デバイスは、衛星航法システム信号、携帯電話信号、ローカル無線エリアネットワーク信号、近距離無線通信、光ベースの無線通信、または他の無線通信を取り扱うための無線通信回路を含むこともできる。
【0046】
[0053]電子デバイス10は、ポータブル電子デバイスまたは他の好適な電子デバイスであってもよい。例えば、電子デバイス10は、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、腕時計型デバイス、ペンダント型デバイス、ヘッドホン型デバイス、イヤホン型デバイス、または他のウェアラブルもしくは小規模デバイスなどのやや小型のデバイス、携帯電話などのハンドヘルドデバイス、メディアプレーヤ、または他の小型ポータブルデバイスであってもよい。デバイス10はまた、セットトップボックス、デスクトップコンピュータ、コンピュータまたは他の処理回路が統合されたディスプレイ、コンピュータが統合されていないディスプレイ、無線アクセスポイント、無線基地局、キオスク、建物、もしくは車両に組み込まれた電子デバイス、または他の好適な電子機器であってもよい。デバイス10は、ケースと称される場合もあり、プラスチック、ガラス、セラミック、繊維複合材、金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウムなど)、他の好適な材料、またはこれらの材料の組合せから形成され得るハウジング12を含んでもよい。いくつかの状況では、ハウジング12の一部は、誘電または他の低導電性材料(例えば、ガラス、セラミック、プラスチック、サファイアなど)から形成されてもよい。他の状況では、ハウジング12またはハウジング12を構成する構造の少なくとも一部は、金属素子から形成されてもよい。
【0047】
[0054]デバイス10は、所望される場合、デバイス10の前面に取り付けられてもよいディスプレイ6を有してもよい。ディスプレイ6は、静電容量式タッチ電極を組み込んだタッチスクリーンであってもよいか、またはタッチに対して非感応性であってもよい。ハウジング12の後面(すなわち、デバイス10の前面に対向するデバイス10の面)は、後部ハウジング壁12R(例えば、平面ハウジング壁)などの実質的に平面なハウジング壁を有してもよい。後部ハウジング壁12Rは、後部ハウジング壁を完全に貫通し、したがってハウジング12の一部を互いに分離するスロットを有してもよい。後部ハウジング壁12Rは、導電部分および/または誘電部分を含んでもよい。所望される場合、後部ハウジング壁12Rは、ガラス、プラスチック、サファイア、またはセラミックなどの誘電体の薄い層またはコーティングによって覆われた平面金属層を含んでもよい。ハウジング12はまた、ハウジング12を完全に貫通しない浅い溝を有してもよい。スロットおよび溝は、プラスチックまたは他の誘電体で充填されてもよい。所望される場合、互いに分離された(例えば、貫通スロットによって)ハウジング12の部分は、内部導電構造(例えば、スロットを橋渡しする板金または他の金属部材)によって接合されてもよい。
【0048】
[0055]ハウジング12は、周辺構造12Wなどの周辺ハウジング構造を含んでもよい。周辺構造12Wおよび後部ハウジング壁12Rの導電部分は、本明細書でハウジング12の「導電構造」と総称される場合もある。周辺構造12Wは、デバイス10およびディスプレイ6の周辺部の周りに延びてもよい。デバイス10およびディスプレイ6が4つの縁を有する矩形形状を有する構成では、周辺構造12Wは、4つの対応する縁を有する矩形リング形状を有し、後部ハウジング壁12Rからデバイス10の前面まで延在する周辺ハウジング構造を使用して実装されてもよい(一例として)。周辺構造12Wまたは周辺構造12Wの一部は、所望される場合、ディスプレイ6のベゼル(例えば、ディスプレイ6の4つの側面すべてを取り囲み、および/またはディスプレイ6をデバイス10に保持するのに役立つ化粧トリム)として機能してもよい。周辺構造12Wは、所望される場合、デバイス10の側壁構造を形成してもよい(例えば、垂直側壁、湾曲側壁などを有する金属バンドを形成することによって)。周辺構造12Wは、金属などの導電材料から形成されてもよく、したがって周辺導電ハウジング構造、導電ハウジング構造、周辺金属構造、周辺導電側壁、周辺導電側壁構造、導電ハウジング側壁、周辺導電ハウジング側壁、側壁、側壁構造、または周辺導電ハウジング部材(例として)と称される場合もある。周辺導電ハウジング構造12Wは、ステンレス鋼、アルミニウムなどの金属、または他の好適な材料から形成されてもよい。周辺導電ハウジング構造12Wを形成する際に、1つ、2つ、または2つより多くの別個の構造が使用されてもよい。
【0049】
[0056]ディスプレイ6は、デバイス10のユーザのために画像を表示するアクティブエリアAAを形成する画素のアレイを有してもよい。例えば、アクティブエリアAAは、ディスプレイ画素のアレイを含んでもよい。画素のアレイは、液晶ディスプレイ(LCD)構成要素、電気泳動画素のアレイ、プラズマディスプレイ画素のアレイ、有機発光ダイオードディスプレイ画素または他の発光ダイオード画素のアレイ、エレクトロウェッティングディスプレイ画素のアレイ、または他のディスプレイ技術に基づくディスプレイ画素のアレイから形成されてもよい。所望される場合、アクティブエリアAAは、タッチセンサ静電容量式電極、力センサ、またはユーザ入力を収集するための他のセンサなどのタッチセンサを含んでもよい。ディスプレイ6はまた、アクティブエリアAAの1つまたは複数の縁に沿って延びる非アクティブ境界領域を有してもよい。非アクティブエリアIAは、画像を表示するための画素を有さなくてもよく、ハウジング12内の回路および他の内部デバイス構造と重なってもよい。デバイス10のユーザによるこれらの構造の視認を遮るために、非アクティブエリアIAに重なるディスプレイ6のディスプレイカバー層または他の層の下側は、非アクティブエリアIAで不透明マスキング層によってコーティングされてもよい。不透明マスキング層は、任意の好適な色を有してもよい。
【0050】
[0057]ディスプレイ6は、透明ガラス、クリアプラスチック、透明セラミック、サファイア、もしくは他の透明結晶材料の層などのディスプレイカバー層、または他の透明層を使用して保護されてもよい。ディスプレイカバー層は、平面形状、凸湾曲プロファイル、平面部分および湾曲部分を有する形状、平面主要エリアの平面から曲げられた部分を有する1つまたは複数の縁に囲まれた平面主要エリアを含むレイアウト、または他の好適な形状を有してもよい。ディスプレイカバー層は、デバイス10の前面全体を覆ってもよい。別の好適な配置では、ディスプレイカバー層は、デバイス10の前面の実質的にすべて、またはデバイス10の前面の一部のみを覆ってもよい。開口部がディスプレイカバー層に形成されてもよい。例えば、開口部は、ボタンを収容するためにディスプレイカバー層に形成されてもよい。開口部はまた、スピーカポート8またはマイクロホンポートなどのポートを収容するためにディスプレイカバー層に形成されてもよい。開口部は、所望される場合、通信ポート(例えば、オーディオジャックポート、デジタルデータポートなど)ならびに/またはスピーカおよび/もしくはマイクロホンなどのオーディオ構成要素用のオーディオポートを形成するためにハウジング12に形成されてもよい。
【0051】
[0058]領域2および4では、デバイス10の導電構造内(例えば、周辺導電ハウジング構造12Wと、後部ハウジング壁12Rの導電部分、プリント回路基板上の導電トレース、ディスプレイ6の導電電気構成要素などの対向する導電接地構造との間)に開口部が形成されてもよい。間隙と称される場合もあるこれらの開口部は、空気、プラスチック、および/または他の誘電体で充填されてもよく、所望される場合、デバイス10の1つまたは複数のアンテナ用のスロットアンテナ共振素子の形成に使用されてもよい。デバイス10内の導電ハウジング構造および他の導電構造は、デバイス10のアンテナのための接地面として機能してもよい。領域2および4の開口部は、オープンまたはクローズドスロットアンテナのスロットとして機能してもよいか、ループアンテナの材料の導電経路によって取り囲まれる中央誘電領域として機能してもよいか、ストリップアンテナ共振素子または逆Fアンテナ共振素子などのアンテナ共振素子を接地面から分離する空間として機能してもよいか、寄生(parasite)アンテナ共振素子の性能に寄与してもよいか、またはそうでなければ、領域2および4に形成されるアンテナ構造の一部として機能してもよい。所望される場合、ディスプレイ6のアクティブエリアAAおよび/またはデバイス10の他の金属構造の下にある接地面は、デバイス10の端部の一部に延在する部分を有してもよく(例えば、接地は、領域2および4の誘電体充填開口部に向かって延在してもよい)、それにより領域2および4のスロットを狭くする。
【0052】
[0059]一般に、デバイス10は、任意の好適な数のアンテナ(例えば、1つまたは複数、2つ以上、3つ以上、4つ以上など)を含んでもよく、そのうちの1つまたは複数は、本発明のポリマー組成物を利用してもよい。デバイス10のアンテナは、細長いデバイスハウジングの対向する第1および第2の端部に(例えば、
図1のデバイス10の領域2および4における端部)、デバイスハウジングの1つまたは複数の縁に沿って、デバイスハウジングの中央に、他の好適な位置に、またはこれらの位置の1つまたは複数に位置してもよい。
【0053】
[0060]周辺導電ハウジング構造12Wの一部には、周辺間隙構造が備えられてもよい。例えば、周辺導電ハウジング構造12Wには、
図1に示すように、1つまたは複数の間隙9が備えられてもよい。周辺導電ハウジング構造12Wの間隙は、ポリマー、セラミック、ガラス、空気、他の誘電材料、またはこれらの材料の組合せなどの誘電体で充填されてもよい。間隙9は、周辺導電ハウジング構造12Wを1つまたは複数の周辺導電セグメントに分割してもよい。周辺導電ハウジング構造12Wには、例えば、2つの周辺導電セグメント(例えば、間隙9が2つある配置において)、3つの周辺導電セグメント(例えば、間隙9が3つある配置において)、4つの周辺導電セグメント(例えば、間隙9が4つある配置において)、6つの周辺導電セグメント(例えば、間隙9が6つある配置において)などがあってもよい。このように形成される周辺導電ハウジング構造12Wのセグメントは、デバイス10のアンテナの一部を形成することができる。
【0054】
[0061]典型的な実施形態では、デバイス10は、1つまたは複数の上部アンテナおよび1つまたは複数の下部アンテナを有してもよい(例として)。上部アンテナは、例えば、領域4でデバイス10の上端に形成されてもよい。下部アンテナは、例えば、領域2でデバイス10の下端に形成されてもよい。アンテナは、同一の通信帯域、重複する通信帯域、または別々の通信帯域をカバーするために別々に使用されてもよい。アンテナは、アンテナダイバシティ方式または多入力多出力(MIMO)アンテナ方式を実装するために使用されてもよい。アンテナは、対象の任意の通信帯域をサポートするために使用されてもよい。例えば、デバイス10は、ローカルエリアネットワーク通信、音声およびデータ携帯電話通信、全地球測位システム(GPS)通信または他の衛星航法システム通信、Bluetooth(登録商標)通信、近距離無線通信などをサポートするためのアンテナ構造を含んでもよい。デバイス10の2つ以上のアンテナは、所望される場合、ミリメートルおよびセンチメートル波通信をカバーするためのフェーズドアンテナアレイに配置されてもよい。
【0055】
[0062]
図2は、電子デバイス10に使用され得る例示的な構成要素を示す概略図である。図示のように、デバイス10は、制御回路14などの記憶および処理回路を含んでもよい。制御回路14は、ハードディスクドライブ記憶装置、不揮発性メモリ(例えば、フラッシュメモリ、またはソリッドステートドライブを形成するように構成された、他の電気的にプログラム可能な読み取り専用メモリ)、揮発性メモリ(例えば、静的または動的ランダムアクセスメモリ)などの記憶装置を含んでもよい。制御回路14の処理回路は、デバイス10の動作を制御するために使用されてもよい。この処理回路は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、ベースバンドプロセッサ集積回路、特定用途向け集積回路などに基づいてもよい。制御回路14は、インターネット閲覧アプリケーション、ボイスオーバーインターネットプロトコル(VOIP)通話アプリケーション、電子メールアプリケーション、メディア再生アプリケーション、オペレーティングシステム機能などのソフトウェアをデバイス10で実行するために使用されてもよい。外部機器とのインタラクションをサポートするために、制御回路14は、通信プロトコルの実装に使用されてもよい。制御回路14を使用して実装され得る通信プロトコルには、インターネットプロトコル、無線ローカルエリアネットワークプロトコル(例えば、WiFi(登録商標)と称される場合があるIEEE802.11プロトコル)、Bluetooth(登録商標)プロトコルまたは他の無線パーソナルエリアネットワークプロトコルなどの他の短距離無線通信リンク用プロトコル、IEEE802.11adプロトコル、携帯電話プロトコル、MIMOプロトコル、アンテナダイバシティプロトコル、衛星航法システムプロトコルなどが含まれる。
【0056】
[0063]デバイス10は入出力回路16を含んでもよい。入出力回路16は、入出力デバイス18を含んでもよい。入出力デバイス18は、データがデバイス10に供給されることを可能にし、データがデバイス10から外部デバイスに提供されることを可能にするために使用されてもよい。入出力デバイス18は、ユーザインタフェースデバイス、データポートデバイス、および他の入出力構成要素を含んでもよい。例えば、入出力デバイスは、タッチスクリーン、タッチセンサ機能のないディスプレイ、ボタン、ジョイスティック、スクロールホイール、タッチパッド、キーパッド、キーボード、マイクロホン、カメラ、スピーカ、ステータスインジケータ、光源、オーディオジャックおよび他のオーディオポート構成要素、デジタルデータポートデバイス、光センサ、加速度センサ、または地球に対する動きおよびデバイスの配向を検出できる他の構成要素、静電容量センサ、近接センサ(例えば、静電容量式近接センサおよび/または赤外線近接センサ)、磁気センサ、ならびに他のセンサおよび入出力構成要素を含んでもよい。
【0057】
[0064]入出力回路16はまた、外部機器と無線通信するための無線通信回路34を含んでもよい。無線通信回路34は、1つまたは複数の集積回路から形成された高周波(RF)トランシーバ回路、電力増幅器回路、低雑音入力増幅器、受動RF構成要素、1つまたは複数のアンテナ40、伝送線、およびRF無線信号を取り扱うための他の回路を含んでもよい。無線信号はまた、光を使用して(例えば、赤外線通信を使用して)送られてもよい。無線通信回路34は、様々な高周波通信帯域を取り扱うための高周波トランシーバ回路20を含んでもよい。例えば、回路34は、トランシーバ回路22、24、26および28を含んでもよい。
【0058】
[0065]トランシーバ回路24は、無線ローカルエリアネットワークトランシーバ回路であってもよい。トランシーバ回路24は、Wi-Fi(登録商標)(IEEE802.11)通信用の2.4GHzおよび5GHz帯域、または他の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)帯域を取り扱うことができ、2.4GHz Bluetooth(登録商標)通信帯域または他の無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)帯域を取り扱うことができる。回路34は、600~960MHzの低通信帯域、1710~2170MHzの中帯域、2300~2700MHzの高帯域、3400~3700MHzの超高帯域、または600MHz~4000MHzの他の通信帯域、または他の好適な周波数(例として)などの周波数範囲の無線通信を取り扱うために、携帯電話トランシーバ回路26を使用してもよい。回路26は、音声データおよび非音声データを取り扱うことができる。
【0059】
[0066]ミリメートル波トランシーバ回路28(極高周波(EHF)トランシーバ回路28またはトランシーバ回路28と称される場合がある)は、約10GHz~300GHzの周波数での通信をサポートすることができる。例えば、トランシーバ回路28は、約30GHz~300GHzの極高周波(EHF)またはミリメートル波通信帯域、および/または約10GHz~30GHzのセンチメートル波通信帯域(超高周波(SHF)帯域と称される場合がある)での通信をサポートすることができる。例として、トランシーバ回路28は、約18GHz~27GHzのIEEE K通信帯域、約26.5GHz~40GHzのKa通信帯域、約12GHz~18GHzのKu通信帯域、約40GHz~75GHzのV通信帯域、約75GHz~110GHzのW通信帯域、またはおよそ10GHz~300GHzの任意の他の所望の周波数帯域での通信をサポートすることができる。所望される場合、回路28は、60GHzでのIEEE802.11ad通信、および/または27GHz~90GHzの第5世代モバイルネットワークもしくは第5世代無線システム(5G)通信帯域をサポートしてもよい。所望される場合、回路28は、27.5GHz~28.5GHzの第1の帯域、37GHz~41GHzの第2の帯域、および57GHz~71GHzの第3の帯域、または10GHz~300GHzの他の通信帯域など、10GHz~300GHzの複数の周波数帯域での通信をサポートしてもよい。回路28は、1つまたは複数の集積回路(例えば、システム・イン・パッケージ・デバイスの共通のプリント回路上に取り付けられた複数の集積回路、異なる基板上に取り付けられた1つまたは複数の集積回路など)から形成されてもよい。回路28は、本明細書でミリメートル波トランシーバ回路28と称される場合があるが、ミリメートル波トランシーバ回路28は、10GHz~300GHzの周波数における任意の所望の通信帯域での通信を取り扱うことができる(例えば、トランシーバ回路28は、ミリメートル波通信帯域、センチメートル波通信帯域などで高周波信号を送受信することができる)。
【0060】
[0067]無線通信回路34のアンテナ40は、任意の好適なアンテナの種類を使用して形成されてもよい。例えば、アンテナ40は、ループアンテナ構造、パッチアンテナ構造、スタックパッチアンテナ構造、寄生素子を有するアンテナ構造、逆Fアンテナ構造、スロットアンテナ構造、平面逆Fアンテナ構造、モノポール、ダイポール、ヘリカルアンテナ構造、表面集積導波路構造、これらの設計の混成などから形成される共振素子を有するアンテナを含んでもよい。所望される場合、アンテナ40の1つまたは複数は、キャビティ付きアンテナであってもよい。異なる帯域および帯域の組合せに対して異なる種類のアンテナが使用されてもよい。例えば、1種のアンテナがローカル無線リンクアンテナの形成に使用されてもよく、別の種類のアンテナがリモート無線リンクアンテナの形成に使用されてもよい。衛星航法システム信号の受信のために専用アンテナが使用されてもよいか、または所望される場合、アンテナ40は、衛星航法システム信号と他の通信帯域の信号(例えば、無線ローカルエリアネットワーク信号および/または携帯電話信号)の両方を受信するように構成されてもよい。アンテナ40は、ミリメートル波およびセンチメートル波通信を取り扱うためのフェーズドアンテナアレイに配置されてもよい。
【0061】
[0068]伝送線路は、デバイス10内でアンテナ信号をルーティングするために使用されてもよい。例えば、伝送線路は、アンテナ40をトランシーバ回路20に結合するために使用されてもよい。デバイス10の伝送線路は、同軸ケーブル経路、マイクロストリップ伝送線、ストリップライン伝送線、エッジ結合マイクロストリップ伝送線、エッジ結合ストリップライン伝送線、ミリメートル波周波数で信号を伝達するための導波路構造(例えば、コプレーナ導波路または接地されたコプレーナ導波路)、これらの種類の伝送線の組合せから形成された伝送線などを含んでもよい。デバイス10の伝送線路は、所望される場合、リジッドおよび/またはフレキシブルプリント回路基板に統合されてもよい。一実施形態では、伝送線路は、多次元(例えば、二次元または三次元)に折り畳まれるまたは屈曲されてもよく、屈曲後の屈曲または折り畳み形状を維持する(例えば、多層積層構造は、他のデバイス構成要素の周囲でルーティングするために特定の三次元形状に折り畳まれてもよく、補強材または他の構造によって定位置に保持されることなく、折り畳み後の形状を保持するのに十分剛性であってもよい)多層積層構造(例えば、接着剤を介さずに一緒に積層される銅などの導電材料および樹脂などの誘電材料の層)内に統合される伝送線導体(例えば、信号および/または接地導体)を含んでもよい。積層構造の複数の層はすべて、接着剤なしで(例えば、複数の層を接着剤で共に積層するために複数のプレスプロセスを実施するのとは対照的に)、共に一括積層されてもよい(例えば、単一のプレスプロセスで)。所望される場合、フィルタ回路、スイッチング回路、インピーダンス整合回路、および他の回路が伝送線内に介在されてもよい。
【0062】
[0069]いくつかの実施形態では、アンテナ40は、アンテナアレイ(例えば、ビームステアリング機能を実装するためのフェーズドアンテナアレイ)を含んでもよい。例えば、極高周波無線トランシーバ回路28用のミリメートル波信号を取り扱う際に使用されるアンテナは、フェーズドアンテナアレイとして実装されてもよい。ミリメートル波通信をサポートするためのフェーズドアンテナアレイの放射素子は、パッチアンテナ、ダイポールアンテナ、または他の好適なアンテナ素子であってもよい。トランシーバ回路28は、所望される場合、フェーズドアンテナアレイと統合され、統合フェーズドアンテナアレイおよびトランシーバ回路モジュール、またはパッケージ(本明細書では、統合アンテナモジュールまたはアンテナモジュールと称される場合がある)を形成することができる。ハンドヘルドデバイスなどのデバイスでは、ユーザの手、またはデバイスが置かれているテーブルもしくは他の表面などの外部物体の存在は、ミリメートル波信号などの無線信号をブロックする可能性がある。さらに、ミリメートル波通信は、通常、アンテナ40と外部デバイスのアンテナとの間の見通し線を必要とする。したがって、複数のフェーズドアンテナアレイをデバイス10に組み込み、そのそれぞれをデバイス10内または上の異なる位置に置くことが望ましい場合がある。この種の配置では、ブロックされていないフェーズドアンテナアレイが使用に切り替えられてもよく、一旦使用に切り替えられると、フェーズドアンテナアレイはビームステアリングを使用して無線性能を最適化することができる。同様に、フェーズドアンテナアレイが外部デバイスに面していないか、または外部デバイスへの見通し線を有さない場合、外部デバイスへの見通し線を有する別のフェーズドアンテナアレイが使用に切り替えられてもよく、そのフェーズドアンテナアレイがビームステアリングを使用して無線性能を最適化することができる。デバイス10の1つまたは複数の異なる位置からのアンテナが一緒に動作される構成も使用されてもよい(例えば、フェーズドアンテナアレイを形成するためなど)。
【0063】
[0070]
図3は、デバイス10のアンテナ40をどのようにフェーズドアンテナアレイに形成することができるかを示す。
図3に示すように、フェーズドアンテナアレイ60(本明細書では、アレイ60、アンテナアレイ60、またはアンテナ40のアレイ60と称される場合がある)は、伝送線路64(例えば、1つまたは複数の高周波伝送線)などの信号経路に結合されてもよい。例えば、フェーズドアンテナアレイ60の第1のアンテナ40-1は、第1の伝送線路64-1に結合されてもよく、フェーズドアンテナアレイ60の第2のアンテナ40-2は、第2の伝送線路64-2に結合されてもよく、フェーズドアンテナアレイ60のN番目のアンテナ40-Nは、N番目の伝送線路64-Nに結合されてもよい、などである。アンテナ40は、フェーズドアンテナアレイを形成すると本明細書に記載されるが、フェーズドアンテナアレイ60のアンテナ40は、集合的に単一のフェーズドアレイアンテナを形成すると言及される場合もある。フェーズドアンテナアレイ60のアンテナ40は、任意の所望の数の行および列、または任意の他の所望のパターンで配置されてもよい(例えば、アンテナは、行および列を有するグリッドパターンに配置される必要はない)。信号送信動作中、伝送線路64は、外部無線機器への無線送信のために、トランシーバ回路28(
図2)からフェーズドアンテナアレイ60に信号(例えば、ミリメートル波および/またはセンチメートル波信号などの高周波信号)を供給するために使用されてもよい。信号受信動作中、伝送線路64は、フェーズドアンテナアレイ60で受信された信号を外部機器からトランシーバ回路28(
図2)へ伝達するために使用されてもよい。
【0064】
[0071]フェーズドアンテナアレイ60における複数のアンテナ40の使用は、アンテナによって伝達される高周波信号の相対的な位相および大きさ(振幅)を制御することにより、ビームステアリング配置が実装されることを可能にする。
図3の例では、例えば、アンテナ40は、それぞれ対応する高周波位相および大きさコントローラ62を有する(例えば、伝送線路64-1に介在された第1の位相および大きさコントローラ62-1は、アンテナ40-1によって取り扱われる高周波信号の位相および大きさを制御してもよく、伝送線路64-2に介在された第2の位相および大きさコントローラ62-2は、アンテナ40-2によって取り扱われる高周波信号の位相および大きさを制御してもよく、伝送線路64-Nに介在された第Nの位相および大きさコントローラ62-Nは、アンテナ40-Nによって取り扱われる高周波信号の位相および大きさを制御してもよい、などである)。位相および大きさコントローラ62はそれぞれ、伝送線路64の高周波信号の位相を調整するための回路(例えば、移相回路)および/または伝送線路64の高周波信号の大きさを調整するための回路(例えば、電力増幅器および/または低雑音増幅器回路)を含んでもよい。
【0065】
[0072]位相および大きさコントローラ62は、ビームステアリング回路(例えば、フェーズドアンテナアレイ60によって送信および/または受信される高周波信号のビームをステアリングするビームステアリング回路)と本明細書で総称される場合もある。「ビーム」または「信号ビーム」という用語は、フェーズドアンテナアレイ60によって特定の方向に送受信される無線信号を総称するように本明細書で使用されてもよい。「送信ビーム」という用語は、特定の方向に送信される無線高周波信号を指すために本明細書で使用される場合もある一方、「受信ビーム」という用語は、特定の方向から受信される無線高周波信号を指すために本明細書で使用される場合もある。例えば、位相および大きさコントローラ62が、送信されたミリメートル波信号の位相および/または大きさの第1のセットを生成するように調整される場合、送信された信号は、点Aの方向に配向された
図3のビーム66によって示されるミリメートル波周波数送信ビームを形成する。しかし、位相および大きさコントローラ62が、送信されたミリメートル波信号の位相および/または大きさの第2のセットを生成するように調整される場合、送信された信号は、点Bの方向に配向されるビーム68によって示されるミリメートル波周波数送信ビームを形成する。同様に、位相および大きさコントローラ62が、位相および/または大きさの第1のセットを生成するように調整される場合、無線信号(例えば、ミリメートル波周波数受信ビームにおけるミリメートル波信号)は、ビーム66によって示されるように、点Aの方向から受信されてもよい。位相および大きさコントローラ62が、位相および/または大きさの第2のセットを生成するように調整される場合、信号は、ビーム68によって示されるように、点Bの方向から受信されてもよい。各位相および大きさコントローラ62は、
図2の制御回路14またはデバイス10の他の制御回路から受信された対応する制御信号58に基づき、所望の位相および/または大きさを生成するように制御されてもよい(例えば、位相および大きさコントローラ62-1によって提供される位相および/または大きさは、制御信号58-1を使用して制御されてもよく、位相および大きさコントローラ62-2によって提供される位相および/または大きさは、制御信号58-2を使用して制御されてもよい、などである)。所望される場合、制御回路14は、制御信号58をリアルタイムで能動的に調整して、送信または受信ビームを経時的に異なる所望の方向にステアリングしてもよい。位相および大きさコントローラ62は、所望される場合、受信された信号の位相を特定する情報を制御回路14に提供してもよい。
【0066】
[0073]アンテナ40を実装するために、任意の所望のアンテナ構造が使用されてもよい。好適な一実施形態では、アンテナ40を実装するためにパッチアンテナ構造が使用されてもよい。
図3のフェーズドアンテナアレイ60に使用されてもよい例示的なパッチアンテナを
図4に示す。図示されるように、アンテナ40は、アンテナ接地面102などの接地面から分離され、接地面に対して平行であるパッチアンテナ共振素子104を有してもよい。パッチアンテナ共振素子104は、
図4のX-Y平面などの平面内に位置してもよい(例えば、素子104の横方向表面エリアは、X-Y平面に位置してもよい)。接地面102は、パッチ素子104の平面に平行な平面内に位置してもよい。したがって、パッチ素子104および接地面102は、距離110だけ離間した別々の平行平面に位置してもよい。パッチ素子104の側面の長さは、アンテナ40が所望の動作周波数で共振するように選択されてもよい。例えば、パッチ素子104の側面はそれぞれ、アンテナ40によって伝達される信号の波長(例えば、パッチ素子104を取り囲む材料の誘電特性を考慮した有効波長)の半分にほぼ等しい長さ114を有してもよい。一つの好適な配置において、長さ114は、ほんの2つの例として、57GHz~70GHzのミリメートル波周波数帯域をカバーするための0.8mm~1.2mm(例えば、およそ1.1mm)、または37GHz~41GHzのミリメートル波周波数帯域をカバーするための1.6mm~2.2mm(例えば、およそ1.85mm)であってもよい。
【0067】
[0074]取り扱われる偏波を強化するために、アンテナ40に複数の給電を備えてもよい。図示されるように、アンテナ40は、伝送線路64Vなどの第1の伝送線路64に結合されるアンテナポートP1の第1の給電、および伝送線路64Hなどの第2の伝送線路64に結合されるアンテナポートP2の第2の給電を有してもよい。第1のアンテナ給電は、接地面102に結合された第1の接地給電端子(図示せず)、およびパッチ素子104に結合された第1の正極給電端子98-1を有してもよい。第2のアンテナ給電は、接地面102に結合された第2の接地給電端子(図示せず)、およびパッチ素子104の第2の正極給電端子98-2を有してもよい。開口部または穴117および/もしくは119は、接地面102に形成されてもよい。伝送線路64Vは、穴117を通ってパッチ素子104の正極アンテナ給電端子98-1まで延在する垂直導体(例えば、導電貫通ビア、導電ピン、金属柱、半田バンプ、これらの組合せ、または他の垂直導電相互接続構造)を含んでもよい。伝送線路64Hは、穴119を通ってパッチ素子104の正極アンテナ給電端子98-2まで延在する垂直導体を含んでもよい。
【0068】
[0075]ポートP1に関連する第1のアンテナ給電を使用する場合、アンテナ40は、第1の偏波を有する高周波信号を送信および/または受信してもよい(例えば、ポートP1に関連するアンテナ信号115の電界E1は、
図4のY軸に平行に配向されてもよい)。ポートP2に関連するアンテナ給電を使用する場合、アンテナ40は、第2の偏波を有する高周波信号を送信および/または受信してもよい(例えば、ポートP2に関連するアンテナ信号115の電界E2は、ポートP1およびP2に関連する偏波が互いに直交するように、
図4のX軸に平行に配向されてもよい)。アンテナ40が単一偏波アンテナとして動作するように、ポートP1およびP2の一方が所与の時間に使用されてもよいか、またはアンテナ40が他の偏波と共に動作するように(例えば、二重偏波アンテナ、円偏波アンテナ、楕円偏波アンテナなどとして)、両方のポートが同時に動作されてもよい。所望される場合、アンテナ40が所与の時間で垂直または水平偏波をカバーする間に切り替わることができるように、アクティブポートが経時的に変更されてもよい。
【0069】
[0076]寄生アンテナ共振素子106などの帯域幅拡大寄生アンテナ共振素子をアンテナ40に利用することもできる。例えば、寄生アンテナ共振素子は、パッチ素子104上の距離112に位置する導電構造から形成されてもよい。寄生素子106は直接給電されないが、パッチ素子104は伝送線路64Vおよび64H、ならびに正極アンテナ給電端子98-1および98-2を介して直接給電される。寄生素子106は、パッチ素子104によって生成された電磁界の建設的な摂動を生じさせ、アンテナ40に新たな共振を生じさせてもよい。これは、アンテナ40の全体的な帯域幅を広げる(例えば、57GHz~71GHzのミリメートル波周波数帯域全体をカバーする)のに役立ち得る。寄生素子106の少なくとも一部または全体は、パッチ素子104と重なってもよい。
図4の例では、寄生素子106は十字形または「X」字形である。
【0070】
[0077]
図4のアンテナ40は、基板(図示せず)上に形成されてもよい。所望される場合、基板は、上述のようにポリマー組成物から形成されてもよい。また、基板は、複数のスタック誘電層を含んでもよく、そのうちの1つまたは複数は、ポリマー組成物および/または繊維ガラス充填エポキシ、ガラス、サファイア、セラミックなどの他の種類の材料を含んでもよい。接地面102、パッチ素子104、および寄生素子106は、所望される場合、基板の異なる層に形成されてもよい。
【0071】
[0078]
図5は、フェーズドアンテナアレイ60(
図3)がデバイス10のカバー層を介して高周波信号をどのように伝達し得るかを示す電子デバイス10の断面側面図である。
図5のページの平面は、例えば、
図1のY-Z平面に位置してもよい。示されるように、周辺導電ハウジング構造12Wは、デバイス10の周辺部の周囲に延在してもよい。周辺導電ハウジング構造12Wは、第1のカバー層120から第2のカバー層122まで、デバイス10の高さ(厚さ)を横切って延在してもよい。所望される場合、カバー層120は、デバイス10の横方向表面エリア全体にわたって延在してもよく、デバイス10の第1の(前)面を形成してもよい。カバー層122は、デバイス10の横方向表面エリア全体にわたって延在してもよく、デバイス10の第2の(後)面を形成してもよい。
図5の例では、カバー層122は、デバイス10の後部ハウジング壁12Rの一部を形成するのに対し、カバー層120は、ディスプレイ6の一部(例えば、ディスプレイ6のディスプレイカバー層)を形成する。ディスプレイ6の能動回路は、カバー層120を通して光を放射してもよく、カバー層120を通してユーザからのタッチまたは力入力を受け取ってもよい。カバー層122は、後部ハウジング壁12Rの導電部分(例えば、デバイス10の横方向エリアの実質的にすべてにわたって延在する導電バックプレートまたは他の導電層)の下に薄い誘電層またはコーティングを形成してもよい。カバー層120および122は、本発明のポリマー組成物、ガラス、サファイア、セラミック、他のポリマー材料などの任意の所望の誘電材料から形成されてもよい。
【0072】
[0079]周辺導電ハウジング構造12Wなどの導電構造は、
図3のフェーズドアンテナアレイ60によって伝達される電磁エネルギーをブロックする場合がある。高周波信号がデバイス10の外部の無線機器によって伝達されることを可能にするために、フェーズドアンテナアレイ60は、カバー層120および/またはカバー層122の背後に取り付けられてもよい。カバー層120の背後に取り付けられた場合、フェーズドアンテナアレイ60は、カバー層120を介して無線信号(例えば、ミリメートルおよびセンチメートル波周波数の無線信号)124を送受信してもよい。カバー層122の背後に取り付けられた場合、フェーズドアンテナアレイ60は、カバー層120を介して無線信号126を送受信してもよい。
【0073】
[0080]実際には、高周波信号124および126などのミリメートルおよびセンチメートル波周波数の高周波信号は、特にカバー層120および122などの比較的高密度の媒体を通して実質的な減衰を受ける可能性がある。高周波信号はまた、カバー層120および122内での反射による相殺的干渉を受ける可能性があり、カバー層120および122とデバイス10の内部との間の界面で望ましくない表面波を発生させる可能性がある。例えば、カバー層120の背後に取り付けられたフェーズドアンテナアレイ60によって伝達される高周波信号は、カバー層120の内面で表面波を発生させる可能性がある。注意を払わないと、表面波は、横方向外側に(例えば、カバー層120の内面に沿って)伝播する可能性があり、矢印125で示されるように、デバイス10の側面から逃げる可能性がある。このような表面波は、フェーズドアンテナアレイの全体的なアンテナ効率を低下させる場合があり、外部機器との望ましくない干渉を発生させる場合があり、例えば、望ましくない高周波エネルギー吸収をユーザに与える場合がある。同様の表面波は、カバー層122の内面でも発生され得る。
【0074】
[0081]これに関して、
図6は、これらの問題を軽減するために、フェーズドアンテナアレイ60がどのようにデバイス10内に実装され得るかを示すデバイス10の断面側面図である。
図6に示すように、フェーズドアンテナアレイ60は、デバイス10の内部132内に、カバー層130に対して取り付けられた基板140上に形成されてもよい。フェーズドアンテナアレイ60は、行および列のアレイ(例えば、一次元または二次元アレイ)に配置された複数のアンテナ40(例えば、
図4に示されるスタックパッチアンテナ)を含んでもよい。カバー層130は、例として、デバイス10の誘電後壁を形成してもよいか(例えば、
図6のカバー層130は、
図5のカバー層122を形成してもよい)、またはデバイス10のディスプレイカバー層を形成してもよい(例えば、
図6のカバー層130は、
図5のカバー層120を形成してもよい)。フェーズドアレイアンテナ60内のアンテナ40は、基板140の表面に取り付けられてもよいか、または基板140内に部分的または完全に埋め込まれてもよい(例えば、基板140の単一層内または基板140の複数層内)。
【0075】
[0082]
図6の例では、フェーズドアンテナアレイ60のアンテナ40は、接地面(例えば、
図4の接地面102)、および基板140の層142内に埋め込まれた導電トレースから形成されるパッチ素子104を含む。フェーズドアンテナアレイ60の接地面は、例えば、基板140内の導電トレース154から形成されてもよい。フェーズドアンテナアレイ60のアンテナ40は、基板140の表面150の導電トレースから形成される寄生素子106(例えば、
図4に示される十字形寄生素子)を含んでもよい。例えば、寄生素子106は、基板140の最表層142上の導電トレースから形成されてもよい。別の好適な配置では、寄生素子106とカバー層130との間に1つまたは複数の層142が介在してもよい。さらに別の好適な配置では、寄生素子106が省略されてもよく、基板140の表面150の導電トレースからパッチ素子104が形成されてもよい(例えば、パッチ素子104は、接着層136またはカバー層130の内面146と直接接触してもよい)。
【0076】
[0083]基板140の表面150は、カバー層130の内面146に対して取り付けられてもよい(例えば、付着されてもよい)。例えば、基板140は、接着層136を使用してカバー層130に取り付けられてもよい。当然ながら、所望される場合、基板140はまた、他の接着剤、ねじ、ピン、ばね、導電ハウジング構造などを使用してカバー層130に固定されてもよい。同様に、基板140はカバー層130に固定される必要はない。フェーズドアンテナアレイ60の寄生素子106は、カバー層130の内面146と直接接触してもよいか(例えば、接着層136が省略された状況、もしくは接着層136が寄生素子106と整列する開口部を有する状況で)、または接着層136によって内面146に結合されてもよい(例えば、寄生素子106は接着層136と直接接触してもよい)。
【0077】
[0084]フェーズドアレイアンテナ60および基板140は、本明細書でアンテナモジュール138と総称される場合もある。所望される場合、トランシーバ回路134(例えば、
図2のトランシーバ回路28)または他のトランシーバ回路は、アンテナモジュール138(例えば、基板140の表面152にある、または基板140内に埋め込まれた)に取り付けられてもよい。
【0078】
[0085]所望される場合、導電層(例えば、カバー層130が
図5のカバー層122を形成する場合の後部ハウジング壁12Rの導電部分)も、カバー層130の内面146上に形成されてもよい。こうした状況では、導電層は、デバイス10に構造的および機械的支持を提供してもよく、デバイス10のアンテナ接地面の一部を形成してもよい。導電層は、フェーズドアンテナアレイ60および/またはアンテナモジュール138と整列された開口部を有してもよい(例えば、高周波信号162が導電層を通って伝達されるようにするため)。
【0079】
[0086]導電トレース154は、接地トレース154、接地面154、アンテナ接地154、または接地面トレース154と本明細書で称される場合もある。接地トレース154とカバー層130との間の基板140の層142は、本明細書でアンテナ層142と称される場合もある。接地トレース154と基板140の表面152との間の基板140の層は、本明細書で伝送線層と称される場合もある。アンテナ層は、フェーズドアンテナアレイ60のアンテナ40のパッチ素子104および寄生素子106を支持するために使用されてもよい。伝送線層は、フェーズドアンテナアレイ60の伝送線路(例えば、
図4の伝送線路64Vおよび64H)を支持するために使用されてもよい。
【0080】
[0087]トランシーバ回路134は、トランシーバポート160を含んでもよい。各トランシーバポート160は、1つまたは複数の対応する伝送線路64(例えば、
図4の伝送線路64Hおよび64Vなどの伝送線路)によってそれぞれのアンテナ40に結合されてもよい。アンテナ40用の伝送線路は、基板140の伝送線層内に埋め込まれてもよい。伝送線路は、基板140の伝送線層内の導電トレース168(例えば、基板140内の1つまたは複数の誘電層142上の導電トレース)を含んでもよい。導電トレース168は、フェーズドアンテナアレイ60におけるアンテナ40の伝送線路64の1つまたは複数の信号導体および/または接地導体を形成してもよい。所望される場合、基板140の伝送線層内の追加の接地されたトレース、および/または接地トレース154の一部が、1つまたは複数の伝送線路64の接地導体を形成してもよい。導電トレース168は、垂直導電構造166を介してアンテナ40の正極アンテナ給電端子(例えば、
図4の正極アンテナ給電端子98-1および98-2)に結合されてもよい。導電トレース168は、垂直導電構造171を介してトランシーバポート160に結合されてもよい。垂直導電構造166は、基板140の伝送線層の一部、接地トレース154の穴または開口部164(例えば、
図4の穴117および119などの穴)、ならびに基板140のアンテナ層を通ってパッチ素子104まで延在してもよい。垂直導電構造171は、基板140の伝送線層の一部を通ってトランシーバポート160まで延在してもよい。
【0081】
[0088]注意を払わなければ、フェーズドアンテナアレイ60のアンテナ40によって送信される高周波信号が内面146で反射し、それによりいくつかの方向でフェーズドアンテナアレイ60の利得を制限する場合がある。アンテナ40からの導電構造(例えば、パッチ素子104または寄生素子106)を、内面146に対して直接(例えば、接着層136を介して、または内面146と直接接触して)取り付けることは、これらの反射を最小化する役割を果たし、それによりすべての方向におけるフェーズドアンテナアレイ60のアンテナ利得を最適化することができる。接着層136は、これらの反射を最小化するように十分に小さいが、カバー層130と基板140との間の満足な接着を依然として可能にする選択された厚さ176を有してもよい。例として、厚さ176は、300ミクロン~400ミクロン、200ミクロン~500ミクロン、325ミクロン~375ミクロン、100ミクロン~600ミクロンなどであってもよい。
【0082】
[0089]基板140および/またはカバー層130は、本発明のポリマー組成物、ならびにガラス、サファイア、セラミック、他のポリマー材料などの他の種類の材料から形成されてもよい。特定の実施形態では、カバー層の誘電率が、上述のような基板の誘電率とは異なることが所望される場合がある。例えば、カバー層130の誘電率の、基板140の誘電率に対する比は、約1~約10、いくつかの実施形態では約2~約8、いくつかの実施形態では約3~約6であってもよい。このような実施形態では、カバー層130に本発明のポリマー組成物を利用することが所望される場合がある。別の実施形態では、基板140の誘電率の、カバー層130の誘電率に対する比は、約1~約20、いくつかの実施形態では約1.5~約10、いくつかの実施形態では約2~約8、いくつかの実施形態では約3~約6であってもよい。このような実施形態では、基板140に本発明のポリマー組成物を利用することが所望される場合がある。このような誘電率の差は、相殺的干渉効果を緩和するのに役立ち得る。例えば、カバー層130の誘電率およびカバー層130の厚さ144は、カバー層130がフェーズドアンテナアレイ60の4分の1波インピーダンス変成器を形成するように選択されてもよい。このように構成されると、カバー層130は、フェーズドアンテナアレイ60のアンテナインピーダンスとデバイス10の外部の自由空間インピーダンスとの整合を最適化することができ、カバー層130内の相殺的干渉を緩和することができる。カバー層130の厚さ144は、カバー層130を形成するために使用される材料におけるフェーズドアンテナアレイ60の動作の有効波長の0.15~0.25倍(例えば、有効波長のおよそ4分の1)になるように選択され得る。有効波長は、フェーズドアンテナアレイ60の動作の自由空間波長(例えば、10GHz~300GHzの周波数に対応するセンチメートルまたはミリメートル波長)を定数係数(例えば、カバー層130を形成するために使用される材料の誘電率の平方根)で除すことによって与えられる。この例は単なる例示であり、所望される場合、厚さ144は、有効波長の0.17~0.23倍、有効波長の0.12~0.28倍、有効波長の0.19~0.21倍、有効波長の0.15~0.30倍などになるように選択されてもよい。実際には、厚さ144は、例として0.8mm~1.0mm、0.85mm~0.95mm、または0.7mm~1.1mmであってもよい。接着層136は、カバー層130の誘電率よりも小さい誘電率を有する誘電材料から形成されてもよい。
【0083】
[0090]各アンテナ40は、導電ビア170などの垂直導電構造により、フェーズドアンテナアレイ60の他のアンテナ40から分離されてもよい。導電ビア170のセットまたはフェンスは、フェーズドアンテナアレイ60の各アンテナ40を横方向に取り囲むことができる。導電ビア170は、表面150から接地トレース156まで基板140を通して延在してもよい。導電ビアが基板140を通過する際に、導電ランディングパッド(図示せず)を使用して導電ビア170を各層142に固定化することができる。導電ビア170を接地トレース154に短絡することにより、導電ビア170を接地トレース154と同じ接地または基準電位に保持することができる。
図6に示すように、フェーズドアンテナアレイ60の各アンテナ40のパッチ素子104および寄生素子106は、対応する体積172(本明細書ではキャビティ172と称される場合がある)内に取り付けられてもよい。各アンテナ40の体積172の縁は、導電ビア170、接地トレース154、およびカバー層130によって画定されてもよい(例えば、各アンテナ40の体積172は、導電ビア170、接地トレース154、およびカバー層130によって囲まれてもよい。このようにして、導電ビア170および接地トレース154は、フェーズドアンテナアレイ60の各アンテナ40のための導電キャビティを形成してもよい(例えば、フェーズドアンテナアレイ60の各アンテナ40は、導電ビア170および接地トレース154から形成された導電キャビティを有するキャビティ付きスタックパッチアンテナであってもよい)。フェーズドアンテナアレイ60の各アンテナ40、その対応する導電ビア170、その対応する体積172、および接地トレース154のその対応する部分は、本明細書でアンテナユニットセル174と称される場合もある。フェーズドアンテナアレイ60のアンテナユニットセル174は、任意の所望のパターン(例えば、行および/もしくは列または他の形状を有するパターン)で配置されてもよい。いくつかの導電ビア170は、所望される場合、隣接するアンテナユニットセル174によって共有されてもよい。
【0084】
[0091]
図7は、フェーズドアンテナアレイ60を上から見た図である(例えば、
図6の矢印175の方向に撮影した場合)。図示されるように、アンテナモジュール138上のフェーズドアンテナアレイ60は、行および列の矩形グリッドパターンに配置された複数のアンテナユニットセル174を含んでもよい。各アンテナユニットセル174は、対応する導電ビア170のセット(例えば、導電ビア170の対応するフェンス)によって横方向に囲まれたそれぞれのアンテナ40を含んでもよい。各アンテナユニットセル174の導電ビア170のフェンスは、アンテナ40によってカバーされる周波数で不透明であってもよい。各導電ビア170は、2つの隣接する導電ビア170から距離(ピッチ)200だけ離間されてもよい。アンテナ40によってカバーされる周波数で不透明であるために、距離200は、アンテナ40の動作波長(例えば、
図6の基板140の誘電効果を補償した後の有効波長)の約1/8未満であってもよい。フェーズドアンテナアレイ60の各アンテナ40は、距離206だけ、フェーズドアンテナアレイ60の1つまたは複数の隣接するアンテナ40から離間されてもよい。距離206は、例えば、アンテナ40の動作波長(例えば、
図6の基板140の誘電特性を考慮した有効波長)の2分の1にほぼ等しくてもよい。
図7の例では、各アンテナユニットセル174は、導電ビア170によって画定された矩形周辺部を有する。例えば、各アンテナユニットセル174は、第1の矩形寸法204および第2の矩形寸法202を有してもよい。寸法202は寸法204と等しくてもよいか(例えば、各アンテナユニットセル174は正方形の外形を有してもよい)、または寸法202は寸法204と異なってもよい。寸法202および204は、フェーズドアンテナアレイ60のアンテナ40がアンテナ40の動作の有効波長のおよそ2分の1だけ離間するように選択され得る。例として、寸法202および204は、3.0~5.0mm、2.0~6.0mm、2.5~5.5mmなどであってもよい。
【0085】
[0092]本発明は、以下の実施例を参照することにより、より良く理解することができる。
【実施例】
【0086】
試験方法
[0093]溶融粘度:溶融粘度(Pa・s)は、ISO11443:2021に従い、Dynisco LCR7001キャピラリーレオメーターを使用して、400秒-1または1,000秒-1のせん断速度および溶融温度(例えば、約325℃)より15℃高い温度で決定されてもよい。レオメーターオリフィス(ダイ)は、直径1mm、長さ20mm、L/D比20.1、および入口角度180°であってもよい。バレルの直径は9.55mm+0.005mmであってもよく、ロッドの長さは233.4mmであってもよい。
【0087】
[0094]溶融温度:溶融温度(「Tm」)は、当技術分野で公知のように、示差走査熱量測定(「DSC」)によって決定されてもよい。溶融温度は、ISO11357-3:2018によって決定される示差走査熱量測定(DSC)ピーク溶融温度である。DSC手順では、TA Q2000機器で実施されるDSC測定を使用して、ISO規格10350に記載されるように、試料を毎分20℃で加熱および冷却した。
【0088】
[0095]荷重たわみ温度(「DTUL」):荷重たわみ温度は、ISO75-2:2013(ASTM D648と技術的に同等)に従って決定されてもよい。より詳細には、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの試験片試料を、規定荷重(最大外繊維応力)が1.8メガパスカルであるエッジワイズ3点曲げ試験に供してもよい。検体をシリコーン油浴に下げてもよく、0.25mm(ISO試験No.75-2:2013では0.32mm)たわむまで温度を毎分2℃で上昇させる。
【0089】
[0096]引張弾性率、引張応力および引張伸び:引張特性は、ISO527:2019(ASTM D638と技術的に同等)に従って試験されてもよい。弾性率および強度測定は、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの同一の試験片試料に対して行われてもよい。試験温度は23℃であってもよく、試験速度は1または5mm/分であってもよい。
【0090】
[0097]曲げ弾性率、曲げ応力および曲げ伸び:曲げ特性は、ISO178:2019(ASTM D790と技術的に同等)に従って試験されてもよい。この試験は、64mmの支持スパンで実施されてもよい。試験は、切断されていないISO3167多目的棒の中央部分で行われてもよい。試験温度は23℃であってもよく、試験速度は2mm/分であってもよい。
【0091】
[0098]シャルピー衝撃強度:シャルピー特性は、ISO179-1:2010(ASTM D256-10、方法Bと技術的に同等)に従って試験されてもよい。この試験は、タイプ1の検体サイズ(長さ80mm、幅10mm、厚さ4mm)を使用して行われてもよい。ノッチ付き衝撃強度を試験する場合、ノッチはタイプAノッチ(底面半径0.25mm)であってもよい。検体は、一枚歯フライス盤を使用して多目的棒の中心から切り出すことができる。試験温度は23℃であってもよい。
【0092】
[0099]誘電率(「Dk」)および誘電正接(「Df」):誘電率(または静的比誘電率(relative static permittivity))および誘電正接は、Baker-Jarvisら、IEEE Trans.on Dielectric and Electrical Insulation、5(4)、p.571(1998)およびKrupkaら、Proc.7th International Conference on Dielectric Materials:Measurements and Applications、IEEE Conference Publication No.430(1996年9月)に記載されるような公知のスプリットポスト誘電体共振器技術を使用して決定される。より詳細には、80mm×90mm×3mmのサイズのプラーク試料、または直径101.6mmおよび厚さ3mmの円板を、2つの固定された誘電体共振器の間に挿入した。共振器により、検体の平面の誘電率成分を測定した。5個の試料を試験し、平均値を記録する。スプリットポスト共振器は、2GHzまたは5GHzなどの低ギガヘルツ領域での誘電測定を行うために使用されてもよい。
【0093】
[00100]熱サイクル試験:検体を温度制御チャンバに入れ、-30℃~100℃の温度範囲で加熱/冷却する。最初に試料を温度100℃に達するまで加熱し、その時点ですぐに冷却した。温度が-30℃に達したら、検体を100℃に達するまで再びすぐ加熱する。23回の加熱/冷却サイクルを3時間かけて実施してもよい。
【0094】
[00101]表面/体積抵抗率:表面および体積抵抗率値は、IEC62631-3-1:2016またはASTM D257-14に従って決定されてもよい。この手順に従い、標準検体(例えば、1メートル立方体)を2つの電極の間に置く。電圧を60秒間印加し、抵抗を測定する。表面抵抗率は、電位勾配(V/m単位)と電極長さの単位あたりの電流(A/m単位)の商であり、一般に絶縁材料の表面に沿った漏れ電流に対する抵抗を表す。電極の4つの端が正方形を画定するため、商の長さは相殺され、表面抵抗率はオームで報告されるが、より記述的な単位であるオーム毎平方も一般的に見られる。体積抵抗率もまた、材料中の電流に平行な電位勾配の、電流密度に対する比として決定される。SI単位では、体積抵抗率は、材料の1メートル立方体の対向面間の直流抵抗(オーム・mまたはオーム・cm)に数値的に等しい。
【0095】
実施例1~10
[00102]実施例1~10は、液晶ポリマー(LCP1、LCP2、LCP3およびLCP4);二酸化チタン粒子(アルミナおよび疎水性有機表面処理を含む塩化物法ルチル、平均粒径0.27μm)、チタン酸カルシウム、またはチタン酸バリウム粒子;炭素繊維;三水和アルミニウム(「ATH」)、および亜クロム酸銅フィラーの様々な組合せから形成される。LCP1は、HNA48%、BP25%、TA25%、およびHBA2%から形成される。LCP2は、HBA73%およびHNA27%から形成される。LCP3は、HBA43%、NDA20%、TA9%およびHQ28%から形成される。LCP4は、HBA60%、HNA4.2%、TA17.9%およびBP17.9%から形成される。配合は、18mm単軸押出機を使用して実施した。部品を射出成型し、試料をプラーク(60mmx60mm)にする。
【0096】
【0097】
[00103]実施例1~10を熱的および機械的特性について試験した。結果を以下の表2に示す。
【0098】
【0099】
[00104]本発明のこれらおよび他の修正および変形は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって実施され得る。また、様々な実施形態の態様は、全体的または部分的に相互交換され得ることが理解されるべきである。さらに、当業者であれば、前述の説明は例示に過ぎず、そのような添付の特許請求の範囲にそのようにさらに記載された本発明を限定することを意図しないことを理解する。
【国際調査報告】