(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】量子デバイス及び量子デバイスを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
H10N 60/00 20230101AFI20241114BHJP
H10N 60/12 20230101ALI20241114BHJP
【FI】
H10N60/00 G
H10N60/12 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526670
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 CA2022051671
(87)【国際公開番号】W WO2023082014
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523326827
【氏名又は名称】ノール クアンティキ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カミランド レミール、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】レミュー、パスカル
【テーマコード(参考)】
4M113
【Fターム(参考)】
4M113AC45
4M113AC48
4M113AC50
(57)【要約】
量子デバイス及び量子デバイスを動作させる方法の、様々な実施例について説明している。量子デバイスは、一実施例では、基板と、該基板の基板表面上に支持され、量子デバイスの動作中に超伝導性を示す、超伝導回路素子と、受動的磁気素子とを備え、受動的磁気素子は、磁場を発生させ、超伝導回路素子は、量子デバイスの動作中に、磁場の少なくとも一部に直接的又は間接的に曝される。いくつかの実施例では、超伝導回路素子は、磁場の一部に間接的に曝され、磁場の一部が、1つ又は複数の磁場誘導部によって、少なくとも部分的に、受動的磁気素子に近接する第1の場所から、超伝導回路素子に近接する第2の場所へ誘導される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子デバイスであって、
基板と、
前記基板の基板表面上に支持され、前記量子デバイスの動作中に超伝導性を示す、超伝導回路素子と、
受動的磁気素子と
を備え、前記受動的磁気素子が、磁場を発生させ、前記超伝導回路素子が、前記量子デバイスの動作中に、前記磁場の少なくとも一部に直接的又は間接的に曝される、量子デバイス。
【請求項2】
前記超伝導回路素子が、対応する点で分配及び再結合する2本の岐路を備える超伝導ループを具備し、各岐路が、少なくとも1つのジョセフソン接合を備え、前記磁場の前記一部が、前記超伝導ループを横切る磁気誘導束に寄与する、請求項1に記載の量子デバイス。
【請求項3】
前記受動的磁気素子及び前記超伝導回路素子が、両方とも、前記基板の前記基板表面で支持される、請求項2に記載の量子デバイス。
【請求項4】
前記受動的磁気素子が、前記超伝導回路素子に隣り合って配置される、請求項3に記載の量子デバイス。
【請求項5】
前記超伝導ループが、少なくとも1本の低感度軸を有し、前記受動的磁気素子が、前記低感度軸上に位置する、請求項4に記載の量子デバイス。
【請求項6】
前記低感度軸が、前記超伝導ループの前記2本の岐路を横切って横方向に延びる、請求項5に記載の量子デバイス。
【請求項7】
前記受動的磁気素子が、前記基板表面に対して垂直な磁化方向を有する、請求項4に記載の量子デバイス。
【請求項8】
前記受動的磁気素子が、第1の受動的磁気素子であり、前記量子デバイスが、前記基板表面によって支持される第2の受動的磁気素子をさらに備え、前記第2の受動的磁気素子が、前記超伝導ループに対して中央に位置する、請求項7に記載の量子デバイス。
【請求項9】
前記基板表面によって支持される第3の受動的磁気素子をさらに備え、前記第3の受動的磁気素子が、前記超伝導ループに隣り合って、前記第1の受動的磁気素子とは反対側に位置する、請求項8に記載の量子デバイス。
【請求項10】
前記受動的磁気素子が、前記基板表面に平行な磁化方向を有し、前記磁化方向が、前記超伝導ループの前記低感度軸に沿って向きを合わせられる、請求項5に記載の量子デバイス。
【請求項11】
前記受動的磁気素子が、前記超伝導ループによって画定される平面の上方又は下方に配置される、請求項2に記載の量子デバイス。
【請求項12】
前記基板が、第1の基板であり、前記量子デバイスが、前記第1の基板から離間して保持される第2の基板をさらに備え、前記受動的磁気素子が、前記第2の基板によって支持される、請求項11に記載の量子デバイス。
【請求項13】
前記受動的磁気素子が、前記基板表面に形成された窪み内に配置される、請求項11に記載の量子デバイス。
【請求項14】
前記超伝導回路素子が、磁束量子ビット、超伝導量子干渉デバイス(SQUID)、超伝導非線形非対称誘導素子(SNAIL)、及び容量分路型SNAIL(SNAILMON)からなる群から選択される、請求項2に記載の量子デバイス。
【請求項15】
前記超伝導素子が、複数の超伝導素子のうちの1つであり、前記複数の超伝導素子が、前記基板表面上に配列構成で配置される、請求項1に記載の量子デバイス。
【請求項16】
前記磁気誘導束が、磁気誘導束量子Φ
0の規模である、請求項2に記載の量子デバイス。
【請求項17】
前記超伝導回路素子が、前記磁場の前記一部に間接的に曝され、前記磁場の前記一部が、1つ又は複数の磁場誘導部によって、少なくとも部分的に、前記受動的磁気素子に近接する第1の場所から、前記超伝導回路素子に近接する第2の場所へ誘導され、
前記1つ又は複数の磁場誘導部のそれぞれが、前記磁場の前記一部を少なくとも部分的に誘導するよう動作可能であり、
前記基板の少なくとも1つの基板層を横切って延在し、第1の端部及び第2の端部を有し、前記少なくとも1つの基板層の内側に内面を画定する、管状通路と、
前記量子デバイスの動作中に、超伝導性を示す材料の誘導層と、を備え、前記誘導層が、前記管状通路の前記内面を少なくとも部分的に覆い、前記第1の端部から前記第2の端部まで広がる、請求項1に記載の量子デバイス。
【請求項18】
1つの磁場誘導部を備え、前記基板表面が、第1の基板表面であり、前記基板が、前記第1の基板表面と反対側の第2の基板表面をさらに備え、前記受動的磁気素子が、前記第2の基板表面によって支持され、前記管状通路の前記第1の端部が、前記第1の基板表面上で、前記超伝導回路素子に近接して配置され、前記管状通路の前記第2の端部が、前記第2の基板表面上で、前記受動的磁気素子に近接して配置される、請求項17に記載の量子デバイス。
【請求項19】
前記基板が、第1の基板層及び第2の基板層を備え、前記第1の基板層が、前記基板表面を備え、前記基板が、内部磁場誘導部をさらに具備し、前記内部磁場誘導部が、
前記第1の基板層と前記第2の基板層との間に形成される空洞であって、内部空洞表面を画定する、空洞と、
前記量子デバイスの前記動作中に超伝導性を示す、前記材料の空洞誘導層と
を備え、前記空洞誘導層が、少なくとも部分的に前記内部空洞表面を覆い、
前記量子デバイスが、2つの磁場誘導部を備え、
前記2つの磁場誘導部のうちの第1の磁場誘導部が、その第1の端部が、前記内部磁場誘導部に結合され、その第2の端部が、前記基板表面上で、前記超伝導回路素子に近接して配置される、吸込み誘導部として作用し、
前記2つの磁場誘導部のうちの第2の磁場誘導部が、その第1の端部が、前記基板表面上で、前記受動的磁気素子に近接して配置され、その第2の端部が、前記内部磁場誘導部に結合される、発生源誘導部として作用し、
前記磁場の前記一部が、少なくとも部分的に、前記発生源誘導部の前記第1の端部から、前記内部磁場誘導部を通って、前記吸込み誘導部の前記第2の端部まで誘導される、請求項17に記載の量子デバイス。
【請求項20】
前記超伝導回路素子が、量子コンピュータの量子サブシステムとして動作するよう構成され、前記超伝導回路素子が、前記量子コンピュータの動作中に、前記量子サブシステム内に少なくとも1つの量子ビットを提供するよう動作可能である、請求項1に記載の量子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、量子コンピュータ処理に関し、詳細には、量子デバイス及び量子デバイスを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学者及び技術者は、何十年も前の発見以来、量子物理学の特性を様々なやり方で利用する、デバイス及びシステムを開発してきた。つい最近では、量子コンピュータ処理の分野は、具体的には、現代の計算、通信、及び暗号化を崩壊させる可能性があるので、特に活発な研究分野となっている。量子特性を利用するために、実際上又は理論的に、様々なアーキテクチャが検討されおり、具体的には、超伝導回路は、特に有望視されて出現した、アーキテクチャのフレームワークの一形態である。
【0003】
情報が物理的にメモリに記憶され、バイナリ形式(ビット)で読み出され、送信され、処理される、古典コンピュータとは対照的に、量子コンピュータでは、この文脈では量子情報と呼ばれる情報は、量子サブシステム(量子ビット)の状態で量子情報を符号化することにより、物理的にメモリに記憶され、量子アルゴリズムで処理され、フォン・ノイマン・エントロピに基づいて測定される(読み出される)。
【0004】
実際の物理デバイスにおいて、量子情報を符号化する際に直面する主な課題の1つは、2つの相反する要件のバランスを取ることである。第1に、量子情報は、本来壊れやすく、デコヒーレンスの要因による損失の影響を受ける。残念ながら、所望の(「制御」)相互作用を含む、環境との事実上すべての相互作用が、デコヒーレンスの潜在的な要因となる。したがって、量子情報を記憶し、処理するよう設計されたシステムは、環境との相互作用から可能な限り隔離されるべきである。第2に、量子情報が有用であるためには、量子情報を処理して最終的にアクセスできる必要があり、これは、外部制御システムとの相互作用を通じて制御可能である必要があり、忠実度高く制御するために、こうした相互作用の制御は、通常、高速で実行されることを意味する。
【0005】
したがって、超伝導回路、及び回路量子電気力学フレームワーク(CQED:circuit quantum electrodynamic framework)で設計された回路は、例えば量子コンピュータなどの、様々な量子デバイスの有望なアーキテクチャとして出現してきたが、かなりの改善の余地が残っていることを理解されよう。具体的には、トランスモンと呼ばれる一部の超伝導回路素子は、ある一定レベルのノイズ耐性を維持しながら、所望の非線形性を実現できるので、有用である。超伝導量子干渉デバイス(SQUID:superconducting quantum interference device)、超伝導磁束量子ビット、超伝導非線形非対称誘導素子(SNAIL:superconducting nonlinear asymmetric inductive element)、又は容量分路型SNAIL(SNAILMON)などの他の超伝導回路素子は、動作中に一定の磁気誘導束(magnetic flux)から恩恵を受けることができるか、又は一定の磁束を必要とすることさえあるという意味で、「磁束調節可能」である。SQUID及びSNAILは、例えば、複数のジョセフソン接合を備える超伝導ループを具備し、ループを横切る磁気誘導束に依存する周波数応答を提供する。いくつかの実例を挙げると、3次及び4次の非線形性、又は量子ビット間の相互作用などの他のパラメータは、磁束によって調節することができる。磁束調節可能な超伝導回路素子は、磁場の存在下で動作するよう設計されており、好適な磁場を発生させると、実際には、様々な課題が生じることが判明した。
【0006】
この背景情報は、関連する可能性があると出願人が考える情報を、明らかにするために提示されている。前述の情報のいずれかが、従来技術を構成すること、又は関連技術における一般常識の一部を形成することを、必ずしも認めることを意図したものではなく、また、そのように解釈されるべきではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Grimm,A.等、「Stabilization and operation of a Kerr-cat qubit」、Nature584、2020年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
超伝導回路ループに好適な動作環境を設けるように、磁場を発生させる1つの手法は、磁場を能動的に、すなわち超伝導回路ループとは別個の導体に沿って電流を循環させることによって、発生させることである。電流を、サンプル・チップの近くに配置された磁場コイル内を循環させるか、又は同じチップ上に配置され、例えば超伝導回路ループの近くを通っている、磁束バイアス線に沿って循環させることができる。かかる手法は、特定の問題を引き起こす可能性がある。実際、超伝導回路ループは、通常、典型的には希釈冷凍機で実現される、非常に低い(例えば、mKの範囲の)温度で動作する。磁場放射導体は、したがって、希釈冷凍機の内部で、超伝導回路ループに近接して配置されるが、駆動素子は、希釈冷凍機の外側に配置されるため、実際には課題を伴う。量子コンピュータ処理アーキテクチャでは、能動的にバイアスされた導電体が、望ましからざる相互作用及びクロストークの起こり得る原因となる。さらに、かかるバイアスされた導電体は通常、かなり占有面積が広く、超伝導ループと同じ基板に統合される追加のポートを必要とし、拡張性に、潜在的な制限を課す可能性がある。さらに、3D量子ビットなどの3Dアーキテクチャの超伝導回路ループの近傍での、チップ上の磁束バイアス線の使用を検討する場合、通常、リード線を基板上の超伝導素子に接続するガルバニック接続が、利用できない可能性があるという、特有の課題が生じる。最後に、希釈冷凍機に流れ込むDC電流によって生じる可能性のある放散に対処するために、追加のハードウェアを必要とし、コストがより増大する一因となり得る。少なくともいくつかの実施例では、永久磁石を使用して、超伝導回路環境で固定磁場成分を発生させる代替手法が、直観に反しているにも係わらず、電流循環によって磁束バイアスするよりも、利点を有する可能性のあることが判明した。
【0009】
様々なパラメータが、超伝導回路ループ上の磁場の有効性に影響を与える可能性がある。例えばSQUIDでは、超伝導体磁束ループ内の磁気誘導束(Φ)の、細かく調整された一定値を実現させることが望まれる場合があり、この一定値は、例えばΦ/Φ0が0から1の間のいずれかの特定の値となることを目標とするような、磁気誘導束量子(Φ0=2.068×10-15Wb)の規模であり得る。多くの実際的な実施例では、超伝導ループと同じ平面(例えば、同じウェハ表面)内に磁場発生源を組み込むことが、現実的ではない場合がある。これは、例えば、超伝導ループの近傍に永久磁石を形成する材料が存在することによって生じる、例えば損失によってもたらされる場合がある。したがって、超伝導ループを支持する基板の反対側に磁場発生源を配置することが好ましい場合があり、その場合、具体的には、磁場の幾何学的影響により、Φの所望の値を得ることが困難となる可能性がある。実際、多くの磁場の形状は、超伝導ループに値Φ/Φ0を与えることになり、この値は、約1/rnのΦ/Φ0など、発生源との距離rの累乗の関数として減少するであろう。ここで、nは、例えば幾何形状の詳細に応じて3から5の間で変わり得る。少なくともいくつかの実施例では、超伝導シリコン貫通ビアを用いて、基板を横切る磁場を誘導することにより、nが1により近づく関係を実現できる可能性があり、これは、少なくともいくつかの実施例では好適であり得ることが判明した。
【0010】
一態様によれば、量子デバイスが提供され、量子デバイスは、少なくとも1枚のウェハと、該少なくとも1枚のウェハによって支持された回路素子を備える超伝導回路であって、量子デバイスの動作中に超伝導性を示す、超伝導回路と、量子デバイスの動作中に、超伝導回路に対して所与の位置で、回路素子を横切る磁気誘導束を発生させるような、少なくとも1枚のウェハによって支持された受動的磁気素子とを備える。
【0011】
別の態様によれば、量子デバイスの回路素子を横切る永久磁気誘導束を発生させる受動的磁気素子を備え、回路素子がウェハによって支持される、量子デバイスを動作させる方法が提供される。
【0012】
別の態様によれば、量子デバイスが提供され、量子デバイスは、基板と、該基板の基板表面上に支持された超伝導回路素子であって、量子デバイスの動作中に超伝導性を示す、超伝導回路素子と、受動的磁気素子とを備え、受動的磁気素子は、磁場を発生させ、超伝導回路素子は、量子デバイスの動作中に、磁場の少なくとも一部に直接的又は間接的に曝される。
【0013】
一実施例によれば、超伝導回路素子は、対応する点で分配及び再結合する2本の岐路を備える超伝導ループを具備し、各岐路が、少なくとも1つのジョセフソン接合を備え、磁場の該一部が、超伝導ループを横切る磁気誘導束を提供する。
【0014】
一実施例では、受動的磁気素子及び超伝導回路素子は、両方とも、該基板の該基板表面で支持される。
【0015】
一実施例では、受動的磁気素子は、超伝導回路素子に隣り合って配置される。
【0016】
一実施例では、超伝導ループは、少なくとも1本の低感度軸を有し、受動的磁気素子は、該低感度軸上に配置される。
【0017】
一実施例では、低感度軸は、該超伝導ループの2本の岐路を横切って横方向に延びている。
【0018】
一実施例では、受動的磁気素子は、該基板表面に対して垂直な磁化方向を有する。
【0019】
一実施例では、受動的磁気素子は、第1の受動的磁気素子であり、基板表面によって支持される第2の受動的磁気素子をさらに備え、第2の受動的磁気素子は、超伝導ループに対して中央に配置される。
【0020】
一実施例では、このデバイスは、基板表面によって支持される第3の受動的磁気素子をさらに備え、第3の受動的磁気素子は、超伝導ループに隣り合って、第1の受動的磁気素子とは反対側に配置される。
【0021】
一実施例では、受動的磁気素子は、該基板表面に平行な磁化方向を有し、磁化方向が、超伝導ループの該低感度軸に沿って向きを合わせられる。
【0022】
一実施例では、受動的磁気素子は、該超伝導ループによって画定される平面の上方又は下方に配置される。
【0023】
一実施例では、基板は、第1の基板であり、第1の基板から離間して保持される第2の基板をさらに備え、受動的磁気素子は、第2の基板によって支持される。
【0024】
一実施例では、受動的磁気素子は、該基板表面に形成された窪み内に配置される。
【0025】
一実施例では、超伝導回路素子は、磁束量子ビット、超伝導量子干渉デバイス(SQUID)、超伝導非線形非対称誘導素子(SNAIL)、及び容量分路型SNAIL(SNAILMON)からなる群から選択される。
【0026】
一実施例では、超伝導素子は、複数の超伝導素子のうちの1つであり、複数の超伝導素子が、基板表面上に配列構成で配置される。
【0027】
一実施例では、磁気誘導束は、磁気誘導束量子Φ0の規模である。
【0028】
一実施例では、受動的磁気素子は、ドット・マイクロ磁石又は棒マイクロ磁石である。
【0029】
一実施例では、動作中の該受動的磁気素子の、磁束ループ上での最大磁場振幅
【数1】
は、該超伝導回路素子の超伝導材料の臨界磁場HCの1/10より小さい。
【0030】
一実施例では、受動的磁気素子は、磁気トンネル接合である。
【0031】
一実施例では、超伝導回路素子は、磁場の一部に間接的に曝され、磁場の一部が、1つ又は複数の磁場誘導部によって、少なくとも部分的に、受動的磁気素子に近接する第1の場所から、超伝導回路素子に近接する第2の場所へ誘導され、1つ又は複数の磁場誘導部のそれぞれが、磁場の一部を少なくとも部分的に誘導するよう動作可能であり、基板の少なくとも1つの基板層を横切って延在する管状通路であって、第1の端部及び第2の端部を有し、少なくとも1つの基板層の内側に内面を画定する、管状通路と、量子デバイスの動作中に、超伝導性を示す材料の誘導層であって、管状通路の内面を少なくとも部分的に覆い、第1の端部から第2の端部まで広がる、誘導層とを備える。
【0032】
一実施例では、このデバイスは、1つの磁場誘導部を備え、基板表面は、第1の基板表面であり、基板は、第1の基板表面と反対側の第2の基板表面をさらに備え、受動的磁気素子は、第2の基板表面によって支持され、管状通路の第1の端部は、第1の基板表面上で、超伝導回路素子に近接して配置され、管状通路の前記第2の端部は、第2の基板表面上で、受動的磁気素子に近接して配置される。
【0033】
一実施例では、基板は、第1の基板層及び第2の基板層を備え、第1の基板層は、基板表面を備え、基板が、内部磁場誘導部をさらに具備し、内部磁場誘導部が、第1の基板層と第2の基板層との間に形成される空洞であって、内部空洞表面を画定する、内部空洞と、量子デバイスの動作中に超伝導性を示す、該材料の空洞誘導層とを備え、空洞誘導層が、少なくとも部分的に該内部空洞表面を覆い、量子デバイスは、2つの磁場誘導部を備え、2つの磁場誘導部のうちの第1の磁場誘導部は、その第1の端部が、内部磁場誘導部に結合され、その第2の端部が、基板表面上で、超伝導回路素子に近接して配置される、吸込み誘導部として作用し、2つの磁場誘導部のうちの第2の磁場誘導部は、その第1の端部が、基板表面上で、受動的磁気素子に近接して配置され、その第2の端部が、内部磁場誘導部に結合される、発生源誘導部として作用し、磁場の一部は、少なくとも部分的に、発生源誘導部の第1の端部から、該内部磁場誘導部を通って、吸込み誘導部の第2の端部まで誘導される。
【0034】
一実施例では、超伝導回路素子は、量子コンピュータの量子サブシステムとして動作するよう構成され、超伝導回路素子は、量子コンピュータの動作中に、量子サブシステム内に少なくとも1つの量子ビットを提供するよう動作可能である。
【0035】
別の態様によれば、量子デバイスが提供され、量子デバイスは、基板と、磁場誘導部とを備え、磁場誘導部が、基板の少なくとも1つの基板層を横切って延在する、管状通路であって、第1の端部及び第2の端部を有し、少なくとも1つの基板層の内側に内面を画定する、管状通路と、量子デバイスの動作中に、超伝導性を示す材料の誘導層であって、管状通路の内面を少なくとも部分的に覆い、第1の端部から第2の端部まで広がり、磁場誘導部に沿って磁場の一部を誘導するよう動作可能である、誘導層とを備える。
【0036】
一実施例では、このデバイスは、磁場を少なくとも部分的に発生させるよう構成された、少なくとも1つの磁場発生源をさらに備える。
【0037】
一実施例では、このデバイスは、少なくとも1つの超伝導回路素子をさらに備え、超伝導素子は、該磁場誘導部によって誘導される磁場の該一部に曝される。
【0038】
一実施例では、少なくとも1つの超伝導回路素子のそれぞれは、複数のジョセフソン接合を備える超伝導ループを具備し、磁場誘導部によって誘導される磁場の一部が、量子デバイスの動作中に、超伝導ループを横切る磁気誘導束を与える。
【0039】
一実施例では、管状通路の第1の端部及び少なくとも1つの超伝導回路素子は、基板の同じ外面上に位置し、超伝導回路素子は、第1の端部に近接している。
【0040】
一実施例では、管状通路の第1の端部は、超伝導ループに対して中央に位置する。
【0041】
一実施例では、管状通路の第1の端部は、超伝導ループに隣り合って配置される。
【0042】
一実施例では、このデバイスは、その両方ともが外面上に支持される、第1の超伝導回路素子及び第2の超伝導回路素子をさらに備え、両方を同時に磁場の一部に曝すために、管状通路の第1の端部が、第1の超伝導回路素子の超伝導ループと、第2の超伝導回路素子の超伝導ループとの間に配置される。
【0043】
一実施例では、外面は、第1の外面であり、基板は、第1の外面と反対側の第2の外面をさらに備え、管状通路の第2の端部は、第2の外面上に位置し、磁場発生源は、第2の端部に近接して配置される。
【0044】
一実施例では、受動的磁場発生源は、第2の外面によって支持され、管状通路の第2の端部に隣り合う。
【0045】
一実施例では、基板は、第1の基板であり、このデバイスは、第1の基板の第2の外面から離間して保持された第2の基板をさらに備え、第2の基板は、第1の基板の第2の外面に隣り合う第3の外面を備え、磁場発生源は、第3の外面によって支持される。
【0046】
一実施例では、基板は、第1の基板層及び第2の基板層を備え、第1の基板層は、外面を備え、管状通路は、第1の層だけを横切って延在し、管状通路の第2の端部は、第1の層と第2の層との間に位置し、磁場発生源は、該基板内の管状通路の第2の端部に近接して配置される。
【0047】
一実施例では、少なくとも1つの磁場発生源は、受動的磁気素子を含む。
【0048】
一実施例では、少なくとも1つの磁場発生源は、電気駆動部に接続された導電体素子を備える、能動的磁気素子を含む。
【0049】
一実施例では、管状通路によって画定される内部容積は、少なくとも部分的に、非伝導性材料で充填される。
【0050】
一実施例では、受動的磁気素子は、該基板の表面に支持され、磁場誘導部は、磁場誘導部の第1が、該表面上で、該受動的磁気素子に隣り合って配置される、第1の磁場誘導部であり、量子デバイスは、第2の磁場誘導部を備え、第2の磁場誘導部は、表面上で、受動的磁気発生源に隣り合って、第1の磁場誘導部の第1の端部とは反対側に配置される、第2の磁場誘導部の第1の端部を有し、受動的磁気素子は、該第1の磁場誘導部及び該第2の磁場誘導部によって誘導される磁場の一部がそれぞれ、逆の磁束極性を有するように、横方向に向けられた磁場発生源として作用するよう配置される。
【0051】
本開示を読めば、本改善に関する、多くのさらなる特徴及び特徴の組合せが、当業者には明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1B】トランスモンの基本バージョンの概略回路図である。
【
図1C】磁束を調節可能な超伝導回路素子の概略回路図である。
【
図1D】磁束を調節可能な超伝導回路素子の概略回路図である。
【
図1F】ジョセフソン接合の、外部平行磁場に対する周波数応答を示す図である。
【
図1G】スピン量子ビットにおける、量子ドットに印加される磁場を、概略的に示す図である。
【
図2A】超伝導回路上に、能動的に駆動される磁場の一実例である、磁場を印加するための、可能性のある例示的構成の概略図である。
【
図2B】永久磁石の対応する構成、より具体的には、中央のドット磁石構成から放射される磁場の実例である、磁場を印加するための、可能性のある例示的構成の概略図である。
【
図2C】永久磁石の対応する構成、より具体的には、横の棒磁石構成から放射される磁場の実例である、磁場を印加するための、可能性のある例示的構成の概略図である。
【
図2D】永久磁石の対応する構成、より具体的には、横のドット磁石構成から放射される磁場の実例である、磁場を印加するための、可能性のある例示的構成の概略図である。
【
図3】ドット磁石の場合の、超伝導ループに対する永久磁石の位置の関数である、デバイス・パラメータのばらつきに対する磁気誘導束の感度のシミュレーション結果の図である。
【
図4】横の棒磁石構成の場合の、磁場シミュレーションの数値結果の図である。
【
図5】中央のドット磁石構成の場合の、磁場シミュレーションの数値結果の図である。
【
図6】横のドット磁石構成の場合の、磁場シミュレーションの数値結果の図である。
【
図7A】永久磁石の対応する構成、より具体的には、補償される中央のドット構成から放射される、磁場の実例を示す図である。
【
図7B】永久磁石の対応する構成、より具体的には、2重に補償される中央のドット構成から放射される、磁場の実例を示す図である。
【
図8】様々な永久磁石の構成での、磁気誘導束のばらつきを示す図である。
【
図9A】損失に関するシミュレーション結果を示す図である。
【
図9B】損失に関するシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】シミュレーションした、損失とSNAILMONループのスケール係数との関係を示すグラフである。
【
図11A】複数の超伝導ループ間で永久磁石を共有する、1次元配列構成の実例の図である。
【
図11B】複数の超伝導ループ間で永久磁石を共有する、1次元配列構成の実例の図である。
【
図11C】複数の超伝導ループ間で永久磁石を共有する、1次元配列構成の実例の図である。
【
図12】平面から外れた幾何配置の一実例を示す断面図である。
【
図13A】追加の、平面から外れた幾何配置の概略図である。
【
図13B】追加の、平面から外れた幾何配置の概略図である。
【
図14】基板を横切り、ビアをわたる超伝導回路素子への磁場の誘導を示す、シミュレーション結果の図である。
【
図15】
図14で提示したようなシミュレーションでの、磁気誘導束と基板の厚さ/ビアの長さとの関係のグラフである。
【
図16】追加の、平面から外れた幾何配置の概略図である。
【
図17】
図16に提示したような構成から生じる、磁場を示すシミュレーション結果の図である。
【
図18】磁気誘導束とフリップ・チップの間隙との関係、さらには磁石体積スケーリング係数のグラフである。
【
図19】磁場誘導部の、別の可能な実施例の概略図である。
【
図20】超伝導磁気誘導部及び超伝導空洞を備える量子デバイス構成について実行した、シミュレーション結果を提示する図である。
【
図21】超伝導磁場誘導部の管状要素の、例示的な代替構成の概略図である。
【
図22A】ウェハ表面に沿った、磁場誘導部の分布の概略図である。
【
図22B】磁場誘導部の分布及び関連する磁場発生源を用いて実現できる、磁気紋様プロファイルの概略図である。
【
図22C】単一の磁石を、2つの磁気誘導部と共に使用して、ウェハの反対側に逆極性の磁場を発生させる、例示的な一実施例の図である。
【
図23】量子ビットを提供できる量子サブシステムを形成する複数の量子デバイスを備える、量子プロセッサとして実現できる、量子システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
いくつかの図における要素は、話を単純且つ明快にするために例示されており、必ずしも原寸に比例して描かれていない。例えば、図の要素の一部の寸法は、ここで開示されている様々な実施例の理解が容易になるように、他の要素と比べて誇張されている場合がある。さらに、商業的に実現可能な実施例において有用又は必要な、一般的ではあるがよく理解されている要素は、本開示のこうした様々な実施例をより見やすくするために、図示されていないことが多い。
【0054】
本明細書の様々な実施態様及び態様について、下記で論じる詳細を参照しながら説明することにする。以下の説明及び図面は、本明細書を例示するものであり、本明細書を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書の様々な実施態様の完全な理解が得られるように、多数の特定の詳細を説明している。しかし、場合によっては、本明細書の実施態様を簡潔に論じるために、よく知られた又は従来の詳細については説明していない。
【0055】
さらに、本明細書で説明する実施態様の完全な理解を得るために、多数の特定の詳細を記載している。しかし当業者は、本明細書で説明する実施態様が、こうした特定の詳細なしに実施され得ることを理解されよう。他の実例では、本明細書で説明している実施態様を曖昧にしないように、よく知られた方法、手順、及び部品を詳細には説明していない。
【0056】
要素は、この明細書では、1つ又は複数の機能を「実行するよう構成される」か、又はかかる機能「向けに構成される」と説明されている場合がある。一般に、機能を実行するよう構成された、又は機能の実行に向けて構成された要素は、その機能を実行するよう対応しているか、その機能を実行するのに好適であるか、その機能を実行するよう適合されているか、その機能を実行するよう動作可能であるか、さもなければ、その機能を実行可能である。
【0057】
本開示の態様又は本開示の実例の要素を導入するときの、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は、1つ又は複数の要素が存在することを意味することを意図している。「備える」、「含む」、及び「有する」という用語は、包括的であることを意図し、列挙された要素以外のさらなる要素が存在し得ることを意味する。「例示的な」という用語は、「~の一実例」を意味することを意図している。「A、B、及びCのうちの1つ又は複数」という句は、「Aのうちの少なくとも1つ、Bのうちの少なくとも1つ、及び/又はCのうちの少なくとも1つ」を意味する。
【0058】
図1A~
図1Dは、回路素子の概略図である。より具体的には、
図1Aは、当技術分野でよく知られている、インダクタンスL及びキャパシタンスCを備える調和振動子の古典的電気回路を示している。調和振動子は、ω
0=1/√(LC)と定義される線形共振周波数応答を有する。
【0059】
回路素子が動作中に(通常、非常に低温を必要とする)超伝導性を示す、超伝導回路102では、インダクタンスの代わりにジョセフソン接合を導入することにより、トランスモンと呼ばれる、僅かに非調和の振動子を実現することができる。かかる構成におけるジョセフソン接合104は、例えば、量子情報を符号化し、操作するために使用できる、非線形性をもたらすことができる。トランスモンは、半導体及び絶縁体などの基板を覆う、低温で超伝導性を示す材料のトレースの形で形成することができる。
【0060】
図1Bに示している超伝導回路の基本的な実施例では、周波数ω
qは調整不可能である。ジョセフソン接合を備える他の超伝導回路素子も開発されており、回路内に超伝導ループが導入されている。超伝導ループは、より具体的には、超伝導ループの両側の対応する点で分配及び再結合する、2本の岐路を備えることができる。超伝導ループの各岐路に1つ(又は複数)のジョセフソン接合を導入でき、これにより、周波数ω
qが超伝導ループを貫く磁気誘導束Φに依存する構成を作り出すことができる。他のパラメータ及び相互作用は、磁束を設定して、超伝導デバイスを磁束不感点に調整する(例えば、磁束量子ビットにおいてΦ/Φ
0=0.5にする)ような磁気誘導束Φによって、又はこれらに限定されるものではないが、3次キュービック相互作用又は4次カー相互作用などの混合機能によって、調整することができる。
【0061】
ループを備える超伝導回路の実例を、
図1C及び
図1Dに提示している。
図1Cは、より具体的には、当技術分野で通常SQUID(超伝導量子干渉デバイス)と呼ばれ、超伝導ループ106の2本の岐路のそれぞれに1つのジョセフソン接合を備える、トランスモン・デバイスの一実例を提示している。
図1Dは、通常SNAIL(超伝導非線形非対称誘導素子)と呼ばれ、超伝導ループの2本の岐路のうちの第1の岐路に、1つの小さなジョセフソン接合を備え、超伝導ループ106の2本の岐路のうちの第2の岐路に、1つ又は複数の大きいジョセフソン接合を直列に備える、トランスモン・デバイスの一実例を提示している。容量分路型SNAILであるSNAILMONの詳細な例示的実施例は、Grimm,A.等、「Stabilization and operation of a Kerr-cat qubit」、Nature 584、2020年で説明されている。SNAILMONの本文献の例示的実施例は、この明細書において、概念実証を論証するための参考として使用し、特に、参照を容易にするために、「GrimmのSNAILMON」と呼ぶことにする。
【0062】
しかし、他のタイプの超伝導回路素子は、他のバージョンの超伝導回路などの、超伝導ループを備える超伝導回路素子を具備する、他のいくつかの実施例において、磁場の印加による恩恵を受けるか、又は磁場の印加を必要とする場合さえあり、また下記で提示される教示は、かかる他の実施例にも同様に適用可能であり得ることを理解されよう。
図1Eは、例えば、トンネル接合116(絶縁体層112及び超伝導層114と共に図示している)を有し、トンネル接合116の幅に沿って整列した磁場に対して、
図1Fに示すような周波数応答を示すことができる、ジョセフソン接合122特有の一実例を提示している。ここに必要となる磁場は、図に示しているトンネル接合の断面118で画定される磁束の活性領域が小さく、通常の磁束ループよりも数桁小さい可能性があるために、SQUID又はSNAILの超伝導ループで使用される磁場よりもかなり大きくなる可能性があるが、かかるジョセフソン接合は、永久磁場の存在の恩恵を受けることもできる。この意味で、この明細書は、実証する目的で使用する特定の実例の、限られたサブセットに限定されるものと解釈されるべきではない。
【0063】
他のいくつかの実施例では、超伝導回路素子以外の回路素子を備える量子デバイスもまた、磁場の印加の恩恵を受けるか、又は磁場の印加を必要とする場合さえあることを理解されよう。例えば、
図1Gは、量子ビットの一実例を提示している。磁場発生源124を使用して、スピン量子ビット内の量子ドット110に対して、図示されているような横方向磁場120を発生させることができる。制御ゲート108も、
図1Gに示している。磁場勾配は、例えばスピン量子ビットの制御に寄与することができる。
【0064】
量子デバイスの超伝導又は非超伝導回路素子は、従来の電子回路で使用される製造技法のうちの1つをある程度想起させることができるやり方で、ウェハと呼ばれる受動部品で支持でき、ウェハは、電気絶縁体又は半導体材料で作ることができ、最も一般的なウェハは、シリコン及びサファイアであり得る。超伝導回路素子の製造にはマイクロ及びナノ製造技法が必要であり得、したがって、いくつかの実施例では、ウェハが、かかるマイクロ及びナノ製造技法に適合することが要求される可能性がある。
【0065】
図2Aは、超伝導回路の回路素子を貫く磁気誘導束Φを加えるように、磁場Bを発生させることができる、第1の技法を提示している。この技法では、例えば電流源などの電気駆動部が、希釈冷凍機の冷却される容積の外側に配置される。リード線は、希釈冷凍機の壁を横切って延在する。超伝導回路(典型的には、動作中に超伝導性を示す材料の、トラック又はラインのパターンの形で実現される)は、1枚又は複数のウェハで画定でき、それぞれが、1つ又は複数のウェハ層を備えることができ(簡略化するために、ウェハは図示せず)、電気駆動部の入力に基づいて磁場を発生させる役割を担う導体も、同じウェハに統合され、典型的には、両端でガルバニック接続部を介してリード線に接続することができる。以後、デバイスの動作中、周囲温度(例えば、300K程度)の場所にあり得る電気バイアス源202が、磁場を発生させる電気回路に電流を発生させる。この回路は、希釈冷凍機の壁206及びガルバニック接続部を横切って延在するリード線208、並びにウェハ上の導体バイアス線210を備える。導体バイアス線210に沿って循環する電流は、磁場Bを発生させる。導体線210は、磁場Bが、超伝導ループ204を貫く、磁場の振幅がバイアス電流Iに依存する磁気誘導束Φを発生させるように、超伝導ループ204に対して慎重に設計された場所に配置される。この磁場生成技法は、磁場を発生させるために能動的に生成される電流循環を必要とするので、「受動的」に対比して「能動的」と見なすことができる。
【0066】
図2B、
図2C、及び
図2Dは、超伝導回路の回路素子(例えば、超伝導ループ214を備える)を貫く磁気誘導束Φを加えるように、磁場Bを発生させることができる、別の技法の例示的実施例を提示している。
図2B及び
図2Dでは、磁石の磁化方向は、超伝導ループを支持する表面に対して垂直であるのに対して、
図2Cでは、磁場の向きは、超伝導ループを支持する表面に対して平行である。磁石は、いずれの場合も、好適な磁気誘導束を加えるように、サイズ及び位置が定められている。
図2Bでは、磁石212はループ214に対して中央に位置しているのに対して、
図2C及び
図2Dでは、それぞれ磁石216及び218は、ループ214に隣り合って(例えば、
図2Cに示しているように、距離lだけ離れて)位置している。
図2B、
図2C、及び
図2Dの実例では、磁場Bを発生させるために、電流の代わりに永久磁石(例えば、それぞれ磁石212、216、又は218)が使用される。この技法は、磁場を維持するために、古典的回路での電流の循環を能動的に必要としないという意味で、「受動的」と見なすことができる。当業者にとって、磁気誘導束を発生させるかかる技法が、量子デバイスの超伝導回路における好適な解決策となる可能性があると推察することは、極めて直観に反するものであった。これは、実現可能性、ばらつき、及び損失、さらにおそらく、この分野に存在したパラダイムを含む一連の理由から、直感に反している可能性がある。
【0067】
まず、実現可能性の観点から、量子デバイスが磁束でバイアスされる多くの実際的な実施例、具体的には、磁束ループを備える実施例では、目標とする磁気誘導束が、Φ/Φ0が[0,1]の範囲にあり得る、磁束量子Φ0程度であり得ることに留意されたい。より小さな磁気誘導束を実現させると、一方では、より体積の小さい磁石を使用できるようになるが、他方では、より小さい磁石は、生産が困難/生産コストがかかる可能性があり、寸法が小さい場合、生産工程のばらつきにより、磁石間の寸法のばらつきが一層大きくなる可能性がある。例えば幅、高さ、長さ、又は直径に関して、例えば100nm未満の寸法の磁石を生産することは、かなり困難な可能性がある。寸法のばらつきは、最終組立てにおける動作中の磁気誘導束の精度及び値に、直接的な影響を与える可能性がある。もう1つの重要な要因は、超伝導回路に沿った磁場の振幅Bであり、超伝導ループ上の磁場の振幅が、超伝導体の臨界磁場Hcを超える場合(B>μ0Hc)、超伝導性を破損する可能性がある。最後に、超伝導回路の電磁環境に磁石自体が存在することにより、損失の形で、デバイスの動作が妨害される可能性がある。
【0068】
事例研究に移る前に、
図2B、
図2C、及び
図2Dに提示した例示的な実施例では、永久磁石が、バイアスをかける対象とされる超伝導回路素子がその上に支持されている表面と、同じウェハ表面上に位置することに留意されたい。この構成は、ここでは、特にウェハ表面が平面である状況において、「面内」と呼ぶことができる。下記で例示するような他の実施例では、このウェハ表面に対する磁石要素の位置は、ウェハ内の凹所に配置されるか、又は別のウェハ表面若しくは平面に揃えて配置されるなど、変えることができる。ウェハ表面は、他のいくつかの実施例では、湾曲しているなど、平面でなくてもよい。
【0069】
事例研究 - 序論
超伝導ループを貫く磁気誘導束Φの発生源として永久磁石を使用することが、ある特定の実施例にとって好適な手段となり得るかどうかを判断するために、事例研究を実行した。この特定の実施例では、上記で参照したGrimmのSNAILMONの周波数ω
q及びキュービック相互作用を課す(当技術分野では一般に「調節する」と呼ばれる)ために使用される磁気誘導束発生源である、永久磁石の様々な外形を考慮した。この特定の実施例では、
図4及び
図5に示す結果を取得するために、例えば、b=w
loop=7.94μm及びa=h
loop=8.20μmを使用した。磁気誘導束量子Φ
0は、約2.068×10
-15Wbであり、磁気誘導束Φは、超伝導ループで画定される範囲内の、磁場Bの法線成分の表面積分と定義される。電磁シミュレーションは、M
R≒1.98Tの残留磁化を有するFeCoでできた磁石をベースとしており、これは、より小さい磁石の寸法を試験するのに好都合であると考えた。実際、同じ周囲磁場を実現させるために残留磁化が減少する場合、磁石の寸法を大きくする必要があり、この観点から、残留磁化がより大きい材料が好都合であり得る。事例研究では、著者にとって、この特定の実施例に好適な、主観的感覚に結び付くと思われる目標を、やや恣意的に設定した。事例研究では、この観点から、目標磁気誘導束を磁束量子程度、例えばΦ∈[0,1]Φ
0、磁束ループ導体上での最大磁場振幅を超伝導体の臨界磁場Hcよりも1桁小さい、例えば
【数2】
、最小寸法を100nm(例えば、t、w、h[磁石の厚さ、幅、及び高さ]>100nmであり、かかる寸法未満の磁石を生産する場合、困難が予想されるか、又はコストが増加する)の、磁石製造工程のばらつきによって生じる磁気誘導束のばらつきを
【数3】
、並びに磁石の存在に起因する電磁損失を
【数4】
という目標に設定することができる。
【0070】
実現可能性
磁石の意図する機能に関して磁石の設計及び外形を最適化するためには、最終的な状況での、最後の製造工程のばらつきの影響を考慮することが、好ましい可能性がある。超伝導ループに対する磁石の形状、向き、及び位置の選択は、製造工程のばらつきに対する感度に影響を与える可能性があり、製造工程のばらつきに対する感度が最小限に抑えられるシナリオが、好ましい場合がある。事例研究では、かかる要因を評価するために、主要パラメータである、t、w、h、x、y、z(x、y、zは、磁束ループの中心に対する磁石の位置座標である)、hloop、及びwloopごとに、磁気誘導束の偏導関数を評価する。
【0071】
図2Cは、事例研究の対象となる磁石の形状、位置、及び向き20の第1の実施例を示している。磁石は、この場合、超伝導ループを支持するウェハ表面と同じウェハ表面上で、超伝導ループに対して横方向に位置する棒磁石である。事例研究では、ΔV=0.05×V
0(磁石体積Vの5%)、Δx、Δy、Δw
loop、Δh
loop=50nm、及びΔz=10nm、
【数5】
並びにQ∈{V,x,y,z,h
loop,w
loop}の、予防的製造ばらつき(conservative fabrication variability)を設定しており、ここでデルタは、パラメータの分散であり、便宜上ガウス分布と仮定した。この実施例の事例研究分析の結果を、
図3に提示しており、最終的な動作モードでの、製造上のばらつきの影響を軽減するために、超伝導ループを交差して横方向に、より具体的には超伝導ループの岐路を交差して横方向に延在する、低感度軸302を中心とするゾーンが、好ましい可能性があることを示している。ここでは追加の破線304及び306で図式化しているように、他の低感度軸又はゾーンも存在する可能性がある。したがって、棒磁石の構成の際には、棒磁石の長さが低感度軸に沿って延在するように、棒磁石を超伝導ループに隣り合って配置することが、好ましい可能性がある。対称的な回路素子は、低感度軸を有している可能性があるが、非対称な素子でも、やはり低感度ゾーンが存在する可能性がある。対称的な回路素子では、軸に沿って中心にない低感度ゾーンも存在する可能性がある。
【0072】
図4を参照して、最適な棒磁石の構成は、導関数解析から、磁石の厚さ0.3μm(目標>0.1μm)、幅0.65μm(目標>0.2μm)、長さ1.94μm(目標>0.2μm)、及びウェハ表面からのZオフセット0.5μmと判断した。この構成は、実現可能な寸法である、磁石の構成から、
【数6】
及び
【数7】
の値が得られ、したがって事例研究で設定したすべての目標が満たされた。
【0073】
同様のシミュレーションを、
図2Bで図式化されたような中央ドット磁石の構成で実行し、その結果を、
図5に提示しており、また別のシミュレーションを、
図2Dで図式化されたような横ドット磁石の構成で実行し、その結果を、
図6に提示している。これら2つの追加シミュレーションも、事例研究で設定されたすべての要件を満たし、実現可能性の観点から、超伝導ループと連携する、磁気誘導束を発生させる永久磁石の可能性が確認された。
【0074】
ばらつき
事例研究は、上記で明らかにしたように、2σ<0.05Φ
0を目標としており、5種類の相異なる永久磁石の構成で実行した。第1の永久磁石は、中央ドットと呼ばれる、
図2Bに提示したもの(例えば、中央ドット212)であり、ここでw(及びh)は130nmである。第2の永久磁石は、補償される中央ドットと呼ばれる、
図7Aに示しているものであり、横ドット磁石704から4.62μmの間隔lだけ離れた中央ドット磁石702を含む。中央ドット702のw
1は216nmであり、横ドット704のw
2は132nmである。第3の永久磁石は、2重に補償されるドットと呼ばれ、
図7Bに示しているように、第1の横ドット704と反対側の第2の横ドット706をさらに含む。この第3の場合、中央ドット702のw
1は308nmであり、横ドット704及び706のw
2、w
3は247nmであり、間隔lは5.43μmである。第4の永久磁石は、
図2Dに提示した横ドット218であり、wは625nmである。第5の永久磁石は、
図2Cに提示した横棒216であり、w=3.73μm、h=11.2μm、及びl=21.9μmである。200nmの同じ厚さtを、設計全体に使用した。モンテ・カルロ・シミュレーションは、100000ユニットのサンプル規模で、ばらつきは、全磁石を配置する位置、±5nmのΔt、及び±10nmのΔlを考慮して、均一な分布で、±20nmのΔw、Δh、Δw
loop、±30nmのΔx及びΔyで実行した。5つの相異なる設計に関するモンテ・カルロ・シミュレーションの結果を、
図8にプロットした(例えば、プロット802、804、806、808、及び810)。磁束のばらつきの目標は、後ろ4つの設計(例えば804、806、808、及び810)で達成された。M
Rを減少させるとばらつきが減るため、第1の設計(例えば802)であっても、事例研究の目標を達成できる可能性がある。
【0075】
損失
損失のシミュレーションは、Ansys高周波構造シミュレータ(HFSS:High Frequency Structure Simulator)を使用し、上記で喚起したGrimmのSNAILMON設計を使用して実行した。
【0076】
全損失
【数8】
は、
【数9】
としてモデル化され、ここでmは対象の固有モードであり、表面の汚れ及び欠陥に起因する表面容量性損失は、
【数10】
としてモデル化され、表面伝導性損失は、
【数11】
としてモデル化され、ここでω
m=モードの角周波数、t
l=損失要素の散逸層の厚さ、ε
l、μ
l、σ
l=損失要素の誘電率、透磁率、及び導電率、λ
0=金属表面lの表皮深さ、Q
l=損失要素の損失メカニズムの固有品質係数、E
elec(mag)=モードの全電(磁)場エネルギー、
【数12】
=固有モード電気位相ベクトル(phasor)、及び
【数13】
=表面と平行な固有モード磁気位相ベクトルである。
【0077】
結果を
図9A及び
図9Bに示し、以下の表に数値的に提示している。
【表1】
ここで、Vは体積、Sは表面、capは容量性損失(電場損失)、indは誘導性損失(磁場損失)、MAは金属-空気界面、MSは金属-ウェハ界面、mは
【数14】
における対象の固有モードであると仮定した。
【0078】
損失は、事例研究のために選択した目標を満たしていないことが判明した。しかし、
図10に示すように、
【数15】
は、SNAILMONループのスケール係数の関数として指数関数的に減少するので、磁石の存在に起因する損失は、単に磁束ループのサイズを大きくするだけで許容可能な値まで減らすことができ、少なくともいくつかの実施例では、許容可能なトレードオフと考えることができる。損失の問題に対処する別のやり方は、超伝導回路を支持するウェハの反対側に磁石を配置し、超伝導磁気誘導部を使用して、磁石から放射される磁場を、超伝導ループの範囲に誘導することであることにも留意されたい。この方法は、下記でさらに詳細に提示することとし、永久磁石の技法を、様々な実施例及び用途に適用する可能性を、さらに広げることに留意されたい。
【0079】
事例研究 - 結論
事例研究では、少なくともいくつかの実施例では、超伝導ループを横切る磁気誘導束の印加に、1つ又は複数の永久磁石を使用することは、好適な手法であるという結論に至った。
【0080】
事例研究は、ある程度特定の状況における、磁気誘導束Φの好適な発生源としての永久磁石の使用に取り組んでいるが、事例研究の結果を、他の多くの類似する状況に外挿することができ、したがって事例研究は、より一般的に、多くの超伝導ループの実施例において、磁気誘導束Φの発生源としての永久磁石の使用が好適であることを実証していることを理解されよう。さらに、上記で提示した事例研究で使用した特定の実例において、課した目標、限界、及び/又は制限の一部は、いくつかの代替実施例では存在しないか、又は緩和される場合があることに特に留意されたい。
【0081】
磁場のタイプ
磁気誘導束を発生させるために受動的な磁石要素が使用される、量子デバイスの詳細及びタイプに応じて、様々な可能性のあるシナリオが可能である。磁場発生源は、いくつかの実施例では、所与の動作段階の全期間にわたり、固定磁場成分だけを与えるよう意図され得る。この目的のために、超伝導回路素子に対して好適な場所に位置する1つ又は複数の永久磁石が、DC電源、リード線、導体トレース、及びガルバニック接続部を備える能動的磁場要素を、完全に置き換えることを可能にし得る。これは、いくつかの実施例では、極めて有益であり得る。他の実施例では、所期の磁場には、固定成分、及びAC成分などの可変成分、又は例えばDCバイアスに重畳された他の可変成分が含まれ得る。かかる可変成分が含まれる実施例では、能動的磁場要素を使用し、磁場の可変成分を与えることが、引き続き適切な場合がある。しかし、受動的磁石要素を使用することは、能動的磁場デバイスにDC部品を組み込む必要性を軽減するか又はなくするなど、依然として有益であり得る。したがって、DCバイアス等価物の一部又は全体など、任意の永久磁場成分は、1つ又は複数の受動的磁石要素を使用して印加されてもよく、一方、可変磁場成分は、能動的磁場デバイスを使用して印加し続けることができる。このようにして、能動的磁場デバイスは、例えば、簡素化又は軽減され得る。したがって、様々な実施態様の方式が可能であり、その詳細は、この明細書の教示に基づいて、特定の実施例を設計する担当者に委ねられる。
【0082】
さらに、強磁性体などの永久磁石は、受動的磁石要素として使用するための優れた候補と見なすことができるが、強磁性体が可能性のある唯一の候補ではないことを理解されよう。例えば、一実施例では、磁気トンネル接合を受動的磁石要素として使用することが、興味深いか、又は好適であると考えることができる。実際、磁気トンネル接合の磁場は、電流を流すことにより切り替えることができるが、一度切り替えられると、電流の能動的な循環なしに磁場を生成し続けるようになる。例えば、永久磁石又は同等の磁場強度が点在する磁気トンネル接合の積層体を使用し、磁気トンネル接合の磁場の向きを選択的に切り替え、隣り合う永久磁石の磁場を打ち消すか、又は増幅できる場合、磁気トンネル接合の磁場の向きを制御することにより、磁場強度をデジタル的に調節できるシステムを実現できる可能性がある。
【0083】
可能性のあるアーキテクチャ
図11A~
図11Cを参照すると、いくつかの実施例では、磁石の静磁場が、同じ超伝導デバイス(例えば、FluxQubit、SQUID、SNAIL、又はSNAILMON)の一部であり得るかどうかにかかわらず、複数の超伝導ループに好適に影響を与えるように配置され、構成される、1つ又は複数の磁石を使用することが好ましい可能性があり、かかる手法は、場合によっては、デバイスの占有面積の縮小につながる可能性があり、これはいくつかの実施例では、望ましい場合があることを理解されよう。例えば、
図11Cでは、複数の超伝導ループ1102が互いに隣り合って位置し、「横ドット」タイプの磁石(例えば、ドット磁石1104)が、隣り合う超伝導ループ間に位置し、隣り合う超伝導ループ1102の両方を貫く磁気誘導束に同時に寄与する。ループは、かかる実施例では、例えば相異なる量子ビットの一部を形成するか、又は同じ量子ビットの一部を形成することができる。
図11Bでは、隣り合う超伝導ループの対に磁気誘導束を加えるために、横方向に向けられた棒磁石1106が使用される。
図11Aでは、2重に補償される中央ドットの幾何配置(例えば、中央ドット磁石1112を使用して)が、横ドット1114を共有することによって、複数の隣り合う超伝導ループ1110に拡張されている。
【0084】
他の多くの代替アーキテクチャが可能である。実際、
図11A~
図11Cに提示した3つの実例は、比較的単純な1次元配列を提示しているが、この概念は、2次元配列、さらには3次元配列、及び平面の仮想表面ではなく湾曲した仮想表面にも拡張することができる。
【0085】
さらに、上記で提示し、説明した実施例では、1つ又は複数の磁石は、通常、比較的「面内」に位置し、「面内」は、超伝導ループを支持するウェハ表面にほぼ揃っていることを意味し、「チップ上」は、同じウェハ上を意味する。面内の幾何配置では、おそらく、超伝導回路素子を形成する超伝導トレースが支持されているウェハと同じウェハ上に、永久磁石をパターン化することが、最も推察しやすい幾何配置である。しかし、他の実施例では、共通の平面の平坦な表面上に永久磁石をパターン化するのではなく、かかるウェハに永久磁石を埋め込むことが、ある程度好ましい可能性がある。これは、例えば、ウェハ内に形成された凹所又は他の窪みの中に、永久磁石を配置することにより実現することができる。具体的には平面から外れた実施例など、さらに他の多くの実施例が可能である。具体的には、
図12Aが、かかる他の可能な一実施例を提示している。
図12Aに提示している実施例では、2枚のウェハ(1204及び1206)が使用され、はんだボール1208又は他の間隔をあける要素によって離間されている。各ウェハは、他方のウェハに面する表面を備える。さらに別の可能性のある実施例を挙げると、超伝導ループなどの超伝導回路素子1210を、これらの表面のうちの第1の表面上に付着させることができ、磁石1202を、これらの表面のうちの他方の表面に貼り付けることができる。
【0086】
図12Bは、SNAILMONも支持するウェハの同じ表面によって、マイクロ磁石1216が支持され、電気的に浮かせて絶縁されたチップ1212として、長方形の3Dの空洞1222内に収容される、さらに別の例示的な実施例を提示している。同軸ケーブル1214、コネクタチップ/RFアンテナ1218も
図12Bに示しており、矢印1220は、空洞を閉じることを示すものである。かかる実施例は、例えば3D幾何配置した量子ビットを具現化するために使用でき、受動的磁気素子は、例えば静磁束制御のプロセスで使用することができる。
【0087】
磁場誘導部
上記で喚起したように、受動的(例えば、磁石、磁気トンネル接合)であるか能動的(例えば、電流循環により駆動される導体)であるかにかかわらず、1つ又は複数の磁場発生源と、1つ又は複数の回路素子(例えば、超伝導ループ、ジョセフソン接合、スピン量子ビット)との相対位置の正確な選択は、特定の実施例又は用途特有の状況に鑑みて、設計者に好適に委ねることができ、多くの可能性のある構成があり得る。
【0088】
いくつかの実施例では、それを貫いて磁気誘導束が印加されるべき回路素子を支持する、ウェハの表面とは反対側のウェハの面(例えば、第2の面)上に、磁場発生源を配置し、磁場誘導部を使用して、ウェハの1つ又は複数の層にわたって、磁場を伝達することが好ましい可能性がある。この第1の例示的な実施例を、
図13Aに提示している。
【0089】
量子デバイスは、上記で提示された実施例と同様に、ウェハによって支持される回路素子を備えることができる。回路素子は、この特定の実施例では、デバイスの動作中に超伝導性を示し、ウェハの第1の表面上で支持される、材料のトレースの形態で設けられる超伝導ループである。ウェハは、より具体的には、回路素子を支持する第1の表面と、第1の表面の反対側の第2の表面とを備えることができ、回路素子は、「チップ上」にある。
【0090】
図13Aに提示している実施例では、磁場誘導部1302が設けられている。より具体的には、管状通路1310が、第1の表面1314を貫いて開口する、第1の面の第1の端部1312から、第2の表面1316を貫いて開口する、第2の面の第2の端部1308まで、ウェハ1304を横切って延在する。磁場誘導部1302は、量子デバイスの動作中に(例えば、希釈冷凍機内部の非常に低い温度で)、超伝導性を示す材料の層を備え、この実施例では、ウェハ1304内部の管状通路1310の内面1318を、完全にコーティングしている。磁場誘導部1302は、ここで、誘導層が超伝導である場合、量子デバイスの動作中に、ウェハ1304を横切って、すなわち第2の面から第1の面まで、磁場を誘導するために使用される。
【0091】
この第1の実例では、磁場発生源は、棒磁石1306(場の向きが長手方向に整列された、細長い方形の平行6面体)であり、棒磁石は、ビア1310の第2の端部1308に隣り合って、第2の表面1316上、すなわちウェハの、回路素子1320と反対側の面に、棒磁石の磁場の向きが磁場誘導部の方に向けられる状態で配置され、ここでは磁場誘導部の第2の端部と一致する、ウェハ表面から僅かにずれて置かれている。HFSSシミュレーションは、
図14の左側に提示しているモデルを使用して行った。
図14の中央及び右側は、結果を提示している。磁束は、例えば、ビア1404の各端部1402及び1406でループしている。
図14の左側には、マイクロ磁石1408の場所も示している。ウェハは、磁束線がウェハの周囲で、磁束線自体を閉じて戻すことを可能にする、有限の寸法を有していた。磁場は、興味深いことに、磁場誘導部の内部に閉じ込められ、磁場誘導部によって、磁場誘導部の他端までずっと誘導され、一方、磁場誘導部と隣り合う磁場の強度は、逆多項式的に低下することが確認できた。ビアによって誘導される磁場の一部は、例えば、超伝導ループ又は他の超伝導回路素子を横切る、好適な磁気誘導束を与えるように広がることができる。
【0092】
t=0.5μm、w=1μm、l=10μmの棒磁石、及び半径2μmのビアの実現可能性分析から、
【数16】
及び
【数17】
が得られ、これは、上記で提示した事例研究の実現可能性の目標を満たしている。
図13Bに提示しているように、ビアの開口部1312が、超伝導ループ1320に隣り合って位置している同様の事例研究では、
【数18】
及び
【数19】
が得られ、やはり上記で提示した事例研究の実現可能性の目標を満たしている。
【0093】
図15に見られるように、相対磁気誘導束は、概ねrの複数の累乗で減少する(例えば、外形及び磁気双極子方程式から予想されるように、1/r
4)が、ビアを使用することで、この関係を変えることが可能になり、その場合、相対磁気誘導束は、rに反比例して変化する(例えば1/r)か、さもなければ2未満、さらには1.5未満の累乗で、rに反比例して変化する。超伝導回路ループの外側に位置する開口部を備える磁場誘導部についての関係も、同様である。
【0094】
磁場発生源は、
図16に図式化している第2の実例では、ドット磁石1608(場の向きが、軸方向に整列された、円筒/円錐台の幾何形状)である。超伝導ループ1616は、第1の基板又はウェハ1602(ここではシリコンウェハ)の第1の面1620で支持され、(超伝導)磁気誘導場誘導部1614は、超伝導ループ1616に近接する第1の端部1618から、第1のウェハ1602の反対側の表面1622にある第2の端部1612まで、第1のウェハ1602を横切って画定されている。別のシリコンウェハなどの第2のウェハ1604は、第1のウェハ1602と隣り合って位置しているが、はんだボール・バンプ1606などのスペーサ要素によって、第1のウェハから所与の間隙だけ離間して保持されている。ドット磁石1608は、「フリップ・チップ」と呼ばれ得る構成で、第2のウェハ1604の表面1610に、磁場誘導部1614の長手方向に一直線になるよう、磁場誘導部の第2の端部1612に隣り合って配置される。さらに、表面1610と1622との間隙又は距離1624は、「フリップ・チップ間隙」とも呼ばれる。
図17は、HFSSモデル(左)の詳細を提示し、HFSSシミュレーションの結果を、中央及び右側に提示している(フリップ・チップ間隙0.01mm、並びに磁石体積の乗数それぞれ1及び2)。磁束ループ1702、マイクロ磁石1704、ビア(又は磁場誘導部)1706を、
図17の左側に示している。
【0095】
相対磁気誘導束と、フリップ・チップ間隙と、磁石体積スケーリング係数(初期磁石体積4.69μm
3)との関係を、ビア有りのシナリオとビア無しのシナリオとで比較するように、
図18に提示している。
【0096】
様々な代替実施例が可能である。例えば、
図19は、ウェハが複数のウェハ層、より具体的にはここでは2つのウェハ層(例えば、層1902及び1912)を備える、さらに別の可能な実施例を提示している。磁場誘導部1906の管状通路は、第1のウェハ層1902だけを横切って延在するという意味で、行き止まりである。さらに、ここではマイクロ磁石1904の形で設けられる磁場発生源は、2つのウェハ層間に、磁場誘導部1906の第2の端部1914に隣り合って位置し、回路素子1908は、第1の端部1916に隣り合って位置することができ、磁場誘導部1906を使用して、超伝導性である間、磁場を量子デバイス回路素子1908に誘導することができる。
図19は、他の回路素子1910も示している。
【0097】
いくつかの実施例では、磁場誘導部が十分に効果的であるために、磁気誘導束線が、磁場誘導部を貫通した後に、磁束線自体を閉じて戻す能力が備えられていなければならない。実際、磁場誘導部の端部が、閉じた超伝導空洞に対して開いている場合、磁場は、戻る通り道がなく、磁場誘導部にわたる閉じた超伝導空洞を貫通することができない。いくつかの実施例では、有限の寸法のウェハを横切る磁場誘導部を設けることは、磁場が、ウェハの縁部の周囲で閉じて戻ることを可能にするのに十分であり得る。他の実施例では、1つ又は複数の「戻り」磁気誘導部が、ウェハを横切って導入され、磁場が、戻り磁気誘導部にわたって閉じて戻るのを促すことができる。1つの特有の実施例を、
図20に提示している。
図20に提示している実施例では、空洞2002が2つのウェハ層2004と2006との間に形成され、空洞2002の表面は、超伝導材料の層で完全にコーティングされている。ここで、磁場発生源(マイクロ磁石2010)の磁場を空洞内に誘導するために、発生源誘導部2008と呼ばれ得る1つの磁気誘導部が設けられ、またここで、吸込み誘導部2012及び2014と呼ばれ得る、2つの戻り磁気誘導部が、超伝導空洞2002からの戻り通路を設けるために使用される。興味深いことに、かかる構成では、図示のシミュレーション結果で示しているように、磁場を、超伝導空洞2002によって、検出できるほどの又は著しい磁気損失なしに、発生源誘導部2008から様々な距離に位置する多くの吸込み磁気誘導部(例えば、吸込み誘導部2012及び2014)へ誘導することができる。代替構成では、例えば、1つ若しくは3つ以上の吸込み磁気誘導部、又は複数の発生源磁気誘導部を使用することができる。発生源誘導部との距離が同じでなくても、吸込み誘導部間で磁場を均等に分けることができる。各吸込み誘導部は、同じ磁場の最大振幅を受け取ることができ、磁束は、管状通路の面積によって異なる可能性がある。この結合はおそらく、発生源誘導部が、電流源であり、電流が、発生源誘導部内部の磁気誘導束であり、吸込み誘導部が、管状通路の超伝導コーティングの内側の面積に比例するインピーダンスを有する、抵抗負荷であるように視覚化でき、この場合、オームの法則が、電気回路で考慮されるやり方と同様に考慮されることを、確認することができる。
【0098】
いくつかの実施例では、磁場誘導部の誘導層が、管状通路の内面を完全に覆うことが好ましい可能性がある。
図21に概略的に提示しているような他の実施例では、磁気誘導部の誘導層2102が、管状通路の内面の、すべてではないが大部分を覆うことが好ましい可能性がある。図示の実例では、具体的には、管状通路の直径の15%未満などの、比較的細長い間隙2104を、誘導層の全長に沿って残していたが、理解を容易にするために、ここだけを示している。実際、いくつかの実施例では、かかる間隙の存在は、磁場誘導部の機能を補助し、具体的には、誘導層の非超伝導状態と誘導層の超伝導状態とが遷移する際の、磁場の貫通を容易にすることができる。これは、磁場を受ける回路素子が、超伝導ループであり、超伝導ループが、非超伝導状態から超伝導状態へ移行する間に、超伝導ループを横切る磁束の変化に抵抗する可能性があり、間隙の存在が、移行に適応するのに役立つ可能性があるいくつかの実施例において、特に有用となり得る。この構造は、いくつかの実施例では、非限定的な実例では、堆積が方向性を有する斜め蒸着(angle evaporation)技法、例えば電子ビーム蒸着を用いて実現することができる。サンプルを、ある角度を付けて蒸着しながら、ゆっくり360°未満回転させることにより、ビアの長手方向にわたって所望の間隙を残したまま、ビアの内側部分を超伝導材料で覆うことができる。いくつかの実施例では、同じ技法の変形形態として、シャドウイング蒸着(shadow evaporation)(ドーラン技法又は斜め蒸着としても知られる)によって、吊されたマスクを使用してもよい。
【0099】
様々な構成が可能である。例えば、
図11Cに提示したような実施例において、支持しているウェハの反対側に、関連する能動的又は受動的磁場発生源を備える磁場誘導部を、マイクロ磁石の代わりに使用して、磁場を、量子デバイスの2つ以上の回路で共有することができる。さらに、
図22Aに提示しているように、複数の磁場誘導部2202が配列され、複数の磁場誘導部を使用して、
図22Bに提示しているように、所与のウェハ表面に沿って磁気紋様プロファイル2204を生成することができる。ここで、
【数20】
は、上部基板に垂直な磁場である。かかる磁気紋様プロファイルは、
図22Cに提示しているように、2つの磁気誘導部2212及び2214のそれぞれの向かい合う端部2208と2210との間に、横向きの磁場発生源2206を使用することにより、1つの磁束極性だけでなく、2つの逆の磁束極性を含むことができることを理解されよう。かかる実施例では、所与のウェハ表面から出る場の強度は、関連する磁場発生源の強度だけでなく、磁場誘導部の反対側の端部と、関連する磁場発生源との距離によっても、測定することができる。
【0100】
図13A及び
図16に提示した実施例では、磁石を磁場発生源として使用したが、永久磁石を、適切な幾何形状を有する同等の磁束バイアス線に置き換えることが、同様の結果をもたらすことが期待され、いくつかの実施例では、能動的な磁場発生源が、受動的磁場発生源の好適な代替手段となり得ることを理解されよう。
【0101】
図13Aと
図16との両方の実施例において、超伝導回路は、第1の端部に近接して位置し、磁場発生源は、第2の端部に近接して位置する。
【0102】
興味深いことに、
図13A及び
図16に提示した実例の場合のように、磁石が、超伝導ループのウェハ表面(例えば平面)の完全に外部に配置され、磁石の磁場を、磁場誘導部を通して伝達する場合、磁石は、伝導による損失をまったく引き起こさないか、又は伝導による損失が著しく少なくなる可能性がある。損失は、したがって、上記で提示した、「前面」の磁石を使ってシミュレーションした場合よりも、著しく小さいことが予想され得る。
【0103】
磁場誘導部及び磁場誘導部に関連する磁場発生源が、
図1Eに提示したようなジョセフソン接合、又は
図1Gに提示したようなスピン量子ビットなど、超伝導ループ以外の量子デバイス回路素子のための磁場発生源として使用できる、実施例があり得る。
【0104】
一実施例では、誘導層内の容積は空のままにすることができるが、別の実施例では、例えば、その容積を非伝導性材料で充填することができる。
【0105】
上記で提示し、図示したいくつかの実例は、永久磁石から放射される磁場を誘導するために使用される、磁場誘導部を提示しているが、磁束バイアス線などから放射される同等の磁場が、同様に、ビアによって誘導されることが期待でき、これにより、磁場誘導部を使用して、受動的又は能動的磁場発生源の磁場を誘導し、したがって、様々な実施例において、受動的又は能動的磁場を誘導できることを理解されよう。磁束バイアス線は、電気駆動部に接続された、所与の構成/形状の超伝導素子の形で、設けることができる。電磁石を遠隔に配置し、電磁石の磁場をビアで誘導することにより、磁束バイアス線が、超伝導ループと隣り合って、超伝導ループの実際の表面内に、又は他のやり方で超伝導ループのより近くに配置するシナリオと比較して、量子デバイスの磁場生成回路と超伝導回路(例えば、量子ビットを提供する)との間のクロストークを低減できる可能性がある。具体的には、例えば、ビアの端部を超伝導ループの外側に配置することにより、超伝導回路が受けるあらゆる損失を低減すること、及び/又は磁気誘導束線によって伝達される磁場を、例えば複数の超伝導ループで共有することができる可能性がある。
【0106】
可能性のある用途
磁場を利用し、1つ若しくは複数の永久磁石、ウェハを横切って磁場を伝達する1つ若しくは複数の磁場誘導部、又はその両方を使用することにより恩恵を受ける可能性のある量子デバイスは、多種多様な用途で使用することができる。かかる用途の一実例は、量子コンピュータであり、量子コンピュータにおいて、超伝導回路は、量子ビット又は結合器を実現するのに有用であり得る。典型的な量子コンピュータ・アーキテクチャを、
図23に提示している。
【0107】
実際に、量子ビットに関して実行されるべき動作は、完全なプロセッサのアーキテクチャの選択にある程度依存する。複数の、競合するアーキテクチャがある。そのうちの2つ、すなわち量子アニーラ及びゲートベースの量子プロセッサに関する例示的な実施例を、下記で提示することにする。
【0108】
アーキテクチャのタイプに応じて、また論理状態の基底として使用される量子サブシステムのタイプにも応じて、量子プロセッサの実施態様の詳細は、実施例ごとに大きく異なる可能性がある。しかし、多くのアーキテクチャ及びタイプは、量子計算を進めるために、概して、2つ以上の量子サブシステムを使用する必要があろう。実際、典型的な、例示的量子プロセッサには、
図23に示しているように、量子サブシステムの量子状態が、典型的には量子縺れを伴う相互作用の際に、互いに相互作用するよう相互接続される、少なくとも2つの量子サブシステム(例えば、2302a、2302b、~2302N)が必要であろう。量子サブシステムのタイプは、アーキテクチャに応じて異なるであろう。ボソンベースの量子プロセッサとして具現化されるほとんどの量子システムは、量子状態を提供する何らかの形態の共振器を必要とし、量子状態は、量子サブシステムのいくつかのボソンを制御できる、何らかの形の駆動ハードウェア(例えば、2304a、2304b、~2304N)を使用して、量子サブシステム内で駆動されることになる。駆動ハードウェアは、本明細書ではコントローラ2306と呼ばれ、典型的には、古典コンピュータの形態で設けられる部品によって制御される。量子サブシステムは通常、非常に低い温度に冷却され、環境から隔離される。量子アニーリング・タイプのアーキテクチャ又は測定ベースの量子コンピュータ処理アーキテクチャなどの、一部のアーキテクチャでは、量子サブシステムを、動作可能に、直接相互接続することができる。ゲートベースの量子コンピュータ処理などの一部のアーキテクチャでは、量子サブシステムは通常、量子サブシステム間の相互作用を選択的に制御するために使用される、結合器(例えば、2308a~2308N)を介して相互接続される。結合器2308a~2308Nもまた、接続されている2つ以上の量子サブシステムの量子状態が、相互作用すべき状態を提供するよう動作可能な、量子サブシステムであり、利便性のために、やはり同じコントローラ2306が制御できる駆動ハードウェア(例えば、結合器駆動部2310a~2310N)によって駆動される。例えば該古典コンピュータ(図示せず)の不揮発性メモリに記憶された、制御命令2316に動作可能に結合されているコントローラ2306も、
図23に示している。コントローラ2306は、いくつかの実施例では、量子サブシステム2302a~2302Nで生成されるべき論理状態の定義2314と、駆動ハードウェア2304a、2304b、~2304N及び結合器駆動部2310a~2310Nを、論理状態を生成するよう動作させる、1つ又は複数の機能1316とを含む、制御命令2316を実行するよう構成される。
【0109】
当業者は、例えば上記で論じた誘導層に使用される、超伝導性を示す材料には、これらに限定されるものではないが、ニオブ(Nb)、窒化ニオブ(NbN)、窒化ニオブチタン(NbTiN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、及びアルミニウム(Al)などの材料が含まれ得ることを理解されよう。同様に、ジョセフソン接合の製造に使用される超伝導材料は、典型的にはAlである。しかし本開示は、ジョセフソン接合で他の超伝導材料を使用することを、排除するものではないことが、当業者には容易に理解されよう。
【0110】
磁場誘導部は、いくつかの実施例では、1つ又は複数の基板表面に対して、ある角度に向きを合わせられてもよく、且つ/又は湾曲部分を有してもよい。いくつかの実施例では、磁場の一部を誘導するために、2つ以上の磁場誘導部又はビアが、互いに直接結合されていてもよい。
【0111】
本開示は、例示を目的として、様々な実施例を説明しているが、かかる説明は、かかる実施例に限定されることを意図するものではない。それどころか、本明細書で説明され、図示されている出願人の教示は、実施例から逸脱することなく、様々な代替形態、修正形態、及び均等物を包含し、出願人の教示の全体的な範囲は、添付の特許請求の範囲で規定される。本明細書に示し、詳細に説明している情報は、本開示の上記で説明した目的、本開示の現時点で好ましい実施例を、完全に達成することができ、したがって、本開示によって広義に意図される主題を代表するものである。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子デバイスであって、
基板と、
前記基板の基板表面上に支持され、前記量子デバイスの動作中に超伝導性を示す、超伝導回路素子と、
受動的磁気素子と
を備え、前記受動的磁気素子が、
前記量子デバイスの動作段階の全期間において、固定磁場を発生させ、前記超伝導回路素子が、前記量子デバイスの
前記動作
段階に
おいて、前記
固定磁場の少なくとも一部に直接的又は間接的に曝される
ことにより、前記超伝導回路素子における一定の周波数応答を提供する、量子デバイス。
【請求項2】
前記超伝導回路素子が、対応する点で分配及び再結合する2本の岐路を備える超伝導ループを具備し、各岐路が、少なくとも1つのジョセフソン接合を備え、前記
固定磁場の前記一部が、前記超伝導ループを横切る
一定の磁気誘導束に寄与する、請求項1に記載の量子デバイス。
【請求項3】
前記受動的磁気素子及び前記超伝導回路素子が、両方とも、前記基板の前記基板表面で支持される、請求項2に記載の量子デバイス。
【請求項4】
前記受動的磁気素子が、前記超伝導回路素子に隣り合って配置される、請求項3に記載の量子デバイス。
【請求項5】
前記超伝導ループが、少なくとも1本の低感度軸を有し、前記受動的磁気素子が、前記低感度軸上に位置する、請求項4に記載の量子デバイス。
【請求項6】
前記低感度軸が、前記超伝導ループの前記2本の岐路を横切って横方向に延びる、請求項5に記載の量子デバイス。
【請求項7】
前記受動的磁気素子が、前記基板表面に対して垂直な磁化方向を有する、請求項4に記載の量子デバイス。
【請求項8】
前記受動的磁気素子が、第1の受動的磁気素子であり、前記量子デバイスが、前記基板表面によって支持される第2の受動的磁気素子をさらに備え、前記第2の受動的磁気素子が、前記超伝導ループに対して中央に位置する、請求項7に記載の量子デバイス。
【請求項9】
前記基板表面によって支持される第3の受動的磁気素子をさらに備え、前記第3の受動的磁気素子が、前記超伝導ループに隣り合って、前記第1の受動的磁気素子とは反対側に位置する、請求項8に記載の量子デバイス。
【請求項10】
前記受動的磁気素子が、前記基板表面に平行な磁化方向を有し、前記磁化方向が、前記超伝導ループの前記低感度軸に沿って向きを合わせられる、請求項5に記載の量子デバイス。
【請求項11】
前記受動的磁気素子が、前記超伝導ループによって画定される平面の上方又は下方に配置される、請求項2に記載の量子デバイス。
【請求項12】
前記基板が、第1の基板であり、前記量子デバイスが、前記第1の基板から離間して保持される第2の基板をさらに備え、前記受動的磁気素子が、前記第2の基板によって支持される、請求項11に記載の量子デバイス。
【請求項13】
前記受動的磁気素子が、前記基板表面に形成された窪み内に配置される、請求項11に記載の量子デバイス。
【請求項14】
前記超伝導回路素子が、磁束量子ビット、超伝導量子干渉デバイス(SQUID)、超伝導非線形非対称誘導素子(SNAIL)、及び容量分路型SNAIL(SNAILMON)からなる群から選択される、請求項2に記載の量子デバイス。
【請求項15】
前記超伝導素子が、複数の超伝導素子のうちの1つであり、前記複数の超伝導素子が、前記基板表面上に配列構成で配置される、請求項1に記載の量子デバイス。
【請求項16】
前記
一定の磁気誘導束が、磁気誘導束量子Φ
0の規模である、請求項2に記載の量子デバイス。
【請求項17】
前記超伝導回路素子が、前記
固定磁場の前記一部に間接的に曝され、前記
固定磁場の前記一部が、1つ又は複数の磁場誘導部によって、少なくとも部分的に、前記受動的磁気素子に近接する第1の場所から、前記超伝導回路素子に近接する第2の場所へ誘導され、
前記1つ又は複数の磁場誘導部のそれぞれが、前記
固定磁場の前記一部を少なくとも部分的に誘導するよう動作可能であり、
前記基板の少なくとも1つの基板層を横切って延在し、第1の端部及び第2の端部を有し、前記少なくとも1つの基板層の内側に内面を画定する、管状通路と、
前記量子デバイスの動作中に、超伝導性を示す材料の誘導層と、を備え、前記誘導層が、前記管状通路の前記内面を少なくとも部分的に覆い、前記第1の端部から前記第2の端部まで広がる、請求項1に記載の量子デバイス。
【請求項18】
1つの磁場誘導部を備え、前記基板表面が、第1の基板表面であり、前記基板が、前記第1の基板表面と反対側の第2の基板表面をさらに備え、前記受動的磁気素子が、前記第2の基板表面によって支持され、前記管状通路の前記第1の端部が、前記第1の基板表面上で、前記超伝導回路素子に近接して配置され、前記管状通路の前記第2の端部が、前記第2の基板表面上で、前記受動的磁気素子に近接して配置される、請求項17に記載の量子デバイス。
【請求項19】
前記基板が、第1の基板層及び第2の基板層を備え、前記第1の基板層が、前記基板表面を備え、前記基板が、内部磁場誘導部をさらに具備し、前記内部磁場誘導部が、
前記第1の基板層と前記第2の基板層との間に形成される空洞であって、内部空洞表面を画定する、空洞と、
前記量子デバイスの前記動作中に超伝導性を示す、前記材料の空洞誘導層と
を備え、前記空洞誘導層が、少なくとも部分的に前記内部空洞表面を覆い、
前記量子デバイスが、2つの磁場誘導部を備え、
前記2つの磁場誘導部のうちの第1の磁場誘導部が、その第1の端部が、前記内部磁場誘導部に結合され、その第2の端部が、前記基板表面上で、前記超伝導回路素子に近接して配置される、吸込み誘導部として作用し、
前記2つの磁場誘導部のうちの第2の磁場誘導部が、その第1の端部が、前記基板表面上で、前記受動的磁気素子に近接して配置され、その第2の端部が、前記内部磁場誘導部に結合される、発生源誘導部として作用し、
前記
固定磁場の前記一部が、少なくとも部分的に、前記発生源誘導部の前記第1の端部から、前記内部磁場誘導部を通って、前記吸込み誘導部の前記第2の端部まで誘導される、請求項17に記載の量子デバイス。
【請求項20】
前記超伝導回路素子が、量子コンピュータの量子サブシステムとして動作するよう構成され、前記超伝導回路素子が、前記量子コンピュータの動作中に、前記量子サブシステム内に少なくとも1つの量子ビットを提供するよう動作可能である、請求項1に記載の量子デバイス。
【国際調査報告】