IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイキューアイピー ホールディング ビー.ブイ.の特許一覧

特表2024-543348モノパイルをガイド内に挿入する船舶及び方法
<>
  • 特表-モノパイルをガイド内に挿入する船舶及び方法 図1
  • 特表-モノパイルをガイド内に挿入する船舶及び方法 図2
  • 特表-モノパイルをガイド内に挿入する船舶及び方法 図3
  • 特表-モノパイルをガイド内に挿入する船舶及び方法 図4
  • 特表-モノパイルをガイド内に挿入する船舶及び方法 図5
  • 特表-モノパイルをガイド内に挿入する船舶及び方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】モノパイルをガイド内に挿入する船舶及び方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/52 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
B66C23/52
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526973
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 NL2022050638
(87)【国際公開番号】W WO2023085930
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】2029720
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523042802
【氏名又は名称】アイキューアイピー ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100166718
【弁理士】
【氏名又は名称】石渡 保敬
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ゼー,アレクサンダー マールテン
(72)【発明者】
【氏名】ザイルマンス,ユルゲン アーヤン
(72)【発明者】
【氏名】バッカー,ファビアン コリン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン ベルク,ブラム
(72)【発明者】
【氏名】オスナブリュッヘ,ヤコブ
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA10
3F205CA01
3F205DA01
(57)【要約】
船舶は、船体と、海底内に打ち込まれるモノパイルを案内する為のガイドとを備えている。前記ガイドは、前記船体に移動可能に取り付けられており、及び該ガイドには、受け部と、前記ガイドの閉鎖状態及び開放状態を形成する為の、前記受け部に対して移動可能な閉鎖部とが設けられており、該閉鎖状態において、前記ガイドは、主平面に延在する環状体を形成し、及び前記開放状態において、前記ガイドは、前記受け部によって境界を画された空間への開口を有し、前記開口を介してモノパイルが前記空間内に受け入れられることを可能にする。前記船舶はまた、前記ガイドを前記船体に対して前記主平面内に変位させる為の変位装置と、前記変位装置を制御する為の制御システムとを備えている。前記モノパイルと前記ガイドとが互いに向かって移動し且つ前記ガイドが前記モノパイルを受け入れる為に前記開放状態にあるときに、前記制御システムが前記船体に対するモノパイルの揺動経路を前記主平面内の方向に決定するように、そして、前記変位装置が、前記決定された揺動経路と実質的に同期して前記ガイドを前記同じ方向に変位されるように、前記制御システムが構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(1)であって、該船舶(1)は、船体(3)と、海底(B)内に打ち込まれるモノパイル(2)を案内する為のガイド(6)とを備えており、ここで、該ガイド(6)は、前記船体(3)に移動可能に取り付けられており、及び該ガイド(6)には、受け部(9)と、前記ガイド(6)の閉鎖状態及び開放状態を形成する為の、前記受け部(9)に対して移動可能な閉鎖部(10)とが設けられており、該閉鎖状態において、前記ガイド(6)は、主平面に延在する環状体を形成し、及び前記開放状態において、前記ガイド(6)は、前記受け部(9)によって境界を画された空間への開口を有し、前記開口を介してモノパイル(2)が前記空間内に受け入れられることが可能になり、前記船舶(1)はまた、前記ガイド(6)を前記船体(3)に対して前記主平面内に変位させる為の変位装置(13,14)と、前記変位装置(13,14)を制御する為の制御システム(15)とを備えており、ここで、前記モノパイル(2)と前記ガイド(6)とが互いに向かって移動し且つ前記ガイド(6)が前記モノパイル(2)を受け入れる為に前記開放状態にあるときに、前記制御システム(15)が前記船体(3)に対するモノパイル(2)の揺動経路を前記主平面内の方向に決定するように、そして、前記変位装置(13,14)が前記ガイド(6)を前記決定された揺動経路と実質的に同期して前記同じ方向に変位されるように、前記制御システム(15)が構成されている、前記船舶(1)。
【請求項2】
前記制御システム(15)が、前記方向を、前記ガイド(6)に向かう及び前記ガイド(6)から離れる第1の成分(F)と前記第1の成分(F)に対して横方向に延在する第2の成分(S)とに分解するように構成されており、ここで、前記決定された揺動経路が前記受け部(9)から第1の距離に配置されている場合に、前記変位装置(13,14)は、前記ガイド(6)を前記第1の成分(F)及び前記第2の成分(S)に沿って変位され、一方、前記決定された揺動経路が、前記第1の距離よりも大きいところの、前記受け部(9)からの第2の距離に配置されている場合に、前記変位装置(13,14)は、前記ガイド(6)を前記第2の成分(S)に沿ってのみ変位される、請求項1に記載の船舶(1)。
【請求項3】
前記閉鎖状態において、前記受け部(9)が前記主平面内で部分的に円形であるように、前記ガイド(6)が前記主平面内で実質的に円形である、請求項1又は2に記載の船舶(1)。
【請求項4】
前記閉鎖部が一対の扉(10)を備えており、該一対の扉(10)は、前記受け部(9)に枢動可能に取り付けられ、及び前記ガイド(6)の外側方向において互いに対して反対方向に、好ましくは互いに独立して、開く、請求項1~3のいずれか1項に記載の船舶(1)。
【請求項5】
前記変位装置には、互いに垂直に延在する作用線に沿って動作するリニアアクチュエータ、例えば油圧シリンダ(13,14)又はラック・ピニオンシステム、が設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の船舶(1)。
【請求項6】
前記制御システム(15)が、前記揺動経路を決定する為に前記ガイド(6)に対するモノパイル(2)の実際の位置を決定する為の位置センサー(12)を備えている、請求項1~5のいずれか1項に記載の船舶(1)。
【請求項7】
前記位置センサー(12)が前記ガイド(6)に配置されている、請求項6に記載の船舶(1)。
【請求項8】
前記位置センサー(12)が前記受け部(9)に配置されている、請求項7に記載の船舶(1)。
【請求項9】
前記船舶(1)には、モノパイル(2)を吊り上げ、そして該吊り上げたモノパイル(2)を前記ガイド(6)に移動させる為のクレーン(5)が設けられている、請求項1~8のいずれか1項に記載の船舶(1)。
【請求項10】
前記制御システム(15)が、前記モノパイル(2)の実際の傾斜角度を決定する為の傾斜角度センサーを備えている、請求項1~9のいずれか1項に記載の船舶(1)。
【請求項11】
前記ガイド(6)及び/又は前記変位装置(13,14)には、モノパイル(2)と前記ガイド(6)との衝突を緩和する為の減衰装置が設けられている、請求項1~10のいずれか1項に記載の船舶(1)。
【請求項12】
前記減衰装置が、前記ガイド(6)の内周で減衰要素を備えている、請求項11に記載の船舶(1)。
【請求項13】
前記ガイド(6)が、前記主平面に対して垂直に延在する軸を中心として前記船体(3)に対して回転可能である、請求項1~12のいずれか1項に記載の船舶(1)。
【請求項14】
海底(B)内に打ち込まれるモノパイル(2)を、該モノパイル(2)を案内する為のガイド(6)内に挿入する方法であって、該ガイド(6)は、船舶(1)の船体(3)に移動可能に取り付けられており、及びガイド(6)には、受け部(9)と、前記ガイド(6)の閉鎖状態及び開放状態を形成する為の、前記受け部(9)に対して移動可能な閉鎖部(10)とが設けられており、該閉鎖状態において、前記ガイド(6)は、主平面に延在する環状体を形成し、及び前記開放状態において、前記ガイド(6)は、前記受け部(9)によって境界を画された空間への開口を有し、モノパイル(2)が前記開口を介して前記空間内に受け入れられることが可能になり、ここで、前記開放状態において、前記モノパイル(2)と前記ガイド(6)とが互いに移動し、その移動の間に、前記主平面内の前記船体(3)に対する前記モノパイル(2)の揺動経路が決定され、そして、前記ガイド(6)が前記決定された揺動経路と実質的に同期してその同じ方向に変位される、前記方法。
【請求項15】
前記方向が、前記ガイド(6)に向かう及び前記ガイド(6)から離れる第1の成分(F)と前記第1の成分(F)に対して横方向に延在する第2の成分(S)とに分解され、ここで、前記決定された揺動経路が前記受け部(9)から第1の距離に配置されている場合に、前記ガイド(6)は、前記第1の成分(F)及び前記第2の成分(S)に沿って変位され、一方、前記決定された揺動経路が、前記第1の距離よりも大きいところの、前記受け部(9)からの第2の距離に配置されている場合に、前記ガイド(6)は、前記第2の成分(S)に沿ってのみ変位される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記モノパイル(2)を前記ガイド内に挿入した後に、前記閉鎖部(10)が閉じられ、その間に及び/又はその後に、前記揺動経路の振幅を最小にする為に、前記モノパイル(2)に反力が施与されるように前記ガイド(6)が変位される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記モノパイル(2)を前記ガイド内に挿入した後に、前記閉鎖部(10)が閉じられ、その間に及び/又はその後に、前記モノパイル(2)を備えている前記ガイド(6)の残りの振動運動が減衰される、請求項14又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関し、該船舶は、船体と、海底内に打ち込まれるモノパイルを案内する為のガイドとを備えており、ここで、該ガイドは、該船体に移動可能に取り付けられており、及び該ガイドには、受け部と、該ガイドの閉鎖状態及び開放状態を形成する為の、該受け部に対して移動可能な閉鎖部とが設けられており、該閉鎖状態において、該ガイドは、主平面に延在する環状体を形成し、及び該開放状態において、該ガイドは、該受け部によって境界を画された空間への開口を有し、該開口を介してモノパイルが該空間内に受け入れられることが可能になり、該船舶はまた、該ガイドを該船体に対して該主平面内に変位させる為の変位装置と、該変位装置を制御する為の制御システムとを備えている。
【背景技術】
【0002】
そのようなガイドを備えている船舶は、波による動き補償されたパイルグリッパー(wave-induced motion compensated pile gripper)とも呼ばれ、当技術分野において知られている。該運動補償により、該グリッパーは乱れた船舶の動きを補償することができる。浮体式船舶(floating vessel)からモノパイルを設置することによりジャッキアップバージ(jack-up barges)よりも高い積載量とクレーン容量(crane capacities)とが可能であり及び該船舶を位置決めする為の時間が少なくてすむ故に、モノパイル設置の総時間が最小化されるという大きな利点を有するが、波による船舶動き(wave-induced vessel motions)とモノパイル動き(monopile motions)の故に、困難である。モノパイルが該船舶でクレーンのケーブルの下方に吊り下げられ、そして、該ガイドにおける開口を通じて前述された空間内に挿入される場合に、波による動きが、該モノパイルと該ガイドとの衝突を生じる場合がある。実際には、該モノパイルを該ガイド内へと挿入する間に、該モノパイルの下部が水中に位置する場合があり、このことにより、該モノパイルの波による動きをまた生じる場合があることが注目される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、衝突のリスクを最小限に抑える船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、本発明に従う船舶によって達成され、ここで、該制御システムは、該モノパイルと該ガイドとが互いに向かって移動し且つ該ガイドが該モノパイルを受け入れる為に開放状態にあるときに、該制御システムが該船体に対するモノパイルの揺動経路を該主平面内の方向に決定するように、そして、該変位装置が該決定された揺動経路と実質的に同期して該ガイドをその同じ方向に変位されるように、該制御システムが構成されている。
【発明の効果】
【0005】
本発明の利点は、該ガイドによる該モノパイルの受け渡しの間に該モノパイルと該ガイドとの衝突を回避する為に、該ガイドが能動的な動き補償を有することである。モノパイルが該船舶上のクレーンの吊り上げケーブルの下方に吊り下げられている場合に、該モノパイルは通常、該主平面の高さで、該主平面内の該船体に対して一定方向に揺動経路をたどるように揺動する。該ガイドと該モノパイルとが互いに移動するときに、該ガイドが該揺動経路をたどることができる為に、両者が互いに接近したときに衝突の危険性が低くなる。それにもかかわらず衝突が生じる場合に、該ガイドと該モノパイルとの相対速度が限られている為に、影響は相対的に小さくなるであろう。これにより、厳しい気象条件下においてもモノパイルを迅速に受け入れることが可能である。
【0006】
該モノパイルが該ガイドに移動するときに、該船体に対するその運動は、該ガイドに向かう変位とその揺動経路との重ね合わせであることに留意されたい。実際には、該モノパイルと該ガイドが互いに接近する平均速度は、該揺動経路に沿った該船体に対する該モノパイルの最大速度よりもはるかに低くなるであろう。
【0007】
特定の実施態様において、該制御システムが、該方向を、該ガイドに向かう及び該ガイドから離れる第1の成分と該第1の成分に対して横方向に延在する第2の成分とに分解するように構成されており、ここで、該決定された揺動経路が該受け部から第1の距離に配置されている場合に、該変位装置は、該ガイドを該第1の成分及び該第2の成分に沿って変位され、一方、該決定された揺動経路が、該第1の距離よりも大きいところの、該受け部からの第2の距離に配置されている場合に、該変位装置は、該ガイドを該第2の成分に沿ってのみ変位される。このことは、該モノパイルと該ガイドが互いに接近しているときには、該ガイドがまず該第2の成分のみに沿って変位し、該モノパイルが該受け部に接近しているときには、該第1の成分に沿ってまた変位するであろうことを意味する。この理由は、該ガイドに接近する最初の部分の間、該受け部と該モノパイルとの間の、該第1の成分に沿ったクリアランスが、該第2の成分に沿ったクリアランスよりも大きいからである。実際には、該第1の成分は、該環状体の該開口に対して垂直でありうる。
【0008】
該閉鎖状態において、該受け部が該主平面で部分的に円形であるように、該ガイドが該主平面で実質的に円形でありうる。それにもかかわらず、代替の形状が考えられる。該受け部は、部分的に多数の環状形状を有していてもよい。
【0009】
該閉鎖部は一対の扉を備えていてもよく、該該一対の扉は、該受け部に枢動可能に取り付けられ、及び該ガイド(6)の外側方向において互いに対して反対方向に、好ましくは互いに独立して、開く。これにより、該受け部によって境界を画された該空間への大きなアクセスを作成する為の機会が提供される。
【0010】
実用的な実施態様において、該変位装置には、互いに垂直に延在する作用線に沿って動作するリニアアクチュエータ(linear actuators)、例えば油圧シリンダ(hydraulic cylinders)又はラック・ピニオンシステム(rack and pinion system)、が設けられている。
【0011】
該制御システムは、該揺動経路を決定する為に該ガイドに対するモノパイルの実際の位置を決定する為の位置センサーを備えていてもよい。このことにより、該制御システムは、該揺動経路に沿った該モノパイルの実際の速度を導き出すことがまた可能である。加えて、該モノパイルの実際の位置と速度とを正確に決定する為に、例えば該モノパイル及び/又は該モノパイルを吊り上げる為の吊り具に動き測定センサーが適用されてもよい。
【0012】
該制御システムはまた、該モノパイルの実際の傾斜角度を決定する為の傾斜角度センサーを備えていてもよい。該実際の傾斜角度は有用なパラメータであり、それは、該モノパイルの実際の位置と組み合わせて該モノパイルの実際の動き特性の正確な指標を提供し、それによって、該ガイドの位置の正確な制御が容易になる。
【0013】
該位置センサーは、レーダー、レーザー又はライダー技術に基づくものであってもよいが、それは、視覚システム又は該モノパイルに接触する機械システムであってもよい。レーダー及びライダー技術は、あらゆる気象条件下で適用されることができる故に好ましい。該モノパイルの実際の位置を正確に決定する為に、複数の位置センサーが適用されうる。
【0014】
該位置センサーは、該ガイドに対する該モノパイルの位置の正確な測定を達成する為に、ガイドに、好ましくは該受け部に、配置されうる。このことにより、該制御システムは、主平面内のモノパイルの揺動経路を正確にたどることが可能になる。該位置センサーを該船体に配置することがまた考えられる。
【0015】
該船舶には、モノパイルを吊り上げ、そして該吊り上げたモノパイルを該ガイドに移動させる為のクレーンが設けられている。
【0016】
該ガイド及び/又は該変位装置には、モノパイルと該ガイドとの衝突を緩和する為の減衰装置が設けられていてもよい。
【0017】
特定の実施態様において、該減衰装置が、該ガイドの内周(inner circumference)に、又はより特には、該受け部の内側(inner side)に、減衰要素を備えている。
【0018】
該ガイドは、該主平面に対して垂直に延在する軸を中心として該船体に対して回転可能であってもよい。このことにより、モノパイルと該開口部が互いに接近しているときに、該開口部が該モノパイルに向けられることができるように、該開口の向きを変える機会が提供される。この構成はまた、該制御システムが、該決定された揺動経路と実質的に同期して該ガイドを変位させるように構成されているという特徴無しにでも考えられることに留意されたい。換言すれば、本発明はまた船体であって、該船舶は、船体と、海底内に打ち込まれるモノパイルを案内する為のガイドとを備えており、ここで、該ガイドは、該船体に移動可能に取り付けられており、及び該ガイドには、受け部と、該ガイドの閉鎖状態及び開放状態を形成する為の、該受け部に対して移動可能な閉鎖部とが設けられており、該閉鎖状態において、該ガイドは、主平面に延在する環状体を形成し、及び該開放状態において、該ガイドは、該受け部によって境界を画された空間への開口を有し、該開口を介してモノパイルが該空間内に受け入れられることが可能になり、該船舶はまた、該ガイドを該船体に対して該主平面内に変位させる為の変位装置と、該変位装置を制御する為の制御システムとを備えており、ここで、該ガイドが、該主平面に対して垂直に延在する軸を中心として該船体に対して回転可能である。
該船舶は、本明細書において前述されているように他の特徴を備えていてもよく、例えば、該ガイド及び/又は該変位装置は、モノパイルとガイドとの衝突を緩和する為の減衰装置が設けられていてもよい。
【0019】
本発明はまた、海底内に打ち込まれるモノパイルを、該モノパイルを案内する為のガイド内に挿入する方法であって、該ガイドは、船舶の船体に移動可能に取り付けられており、及びガイドには、受け部と、該ガイドの閉鎖状態及び開放状態を形成する為の、該受け部に対して移動可能な閉鎖部とが設けられており、該閉鎖状態において、該ガイドは、主平面に延在する環状体を形成し、及び該開放状態において、該ガイドは、該受け部によって境界を画された空間への開口を有し、モノパイルが該開口を介して該空間内に受け入れられることが可能になり、ここで、該開放状態において、該モノパイルと該ガイドとが互いに移動し、その移動の間に、該主平面内の該船体に対する該モノパイルの揺動経路が決定され、そして、該ガイドが該決定された揺動経路と実質的に同期してその同じ方向に変位されるところの上記の方法に関する。
【0020】
特定の実施態様において、該方向が、該ガイドに向かう及び該ガイドから離れる第1の成分と該第1の成分に対して横方向に延在する第2の成分とに分解され、ここで、該決定された揺動経路が該受け部から第1の距離に配置されている場合に、該ガイドは、該第1の成分及び該第2の成分に沿って変位され、一方、該決定された揺動経路が、該第1の距離よりも大きいところの、該受け部からの第2の距離に配置されている場合に、該ガイドは、該第2の成分に沿ってのみ変位される。
【0021】
実際には、該モノパイルを該ガイド内に挿入した後に、該閉鎖部が閉じられ、その間に及び/又はその後に、該揺動経路の振幅を最小にする為に、該モノパイルに反力が施与されるようにガイドが変位される。
【0022】
該モノパイルを該ガイド内に挿入した後に、該閉鎖部が閉じられ、その間に及び/又はその後に、該モノパイルを備えている該ガイドの残りの振動運動が減衰されることがまた可能である。
【0023】
本発明の1つの実施態様を例示的に示す概略図面を参照して本発明が以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明に従う船舶の1つの実施態様を示す透視図である。
図2図2は、図1において示されている船舶からモノパイルを吊り上げるところから、該モノパイルを海底に打ち込むまでの一連の作業を示す説明図である。
図3図3は、図1において示されている船舶の一部の拡大上面図であり、海底内に打ち込まれるモノパイルを案内する為のガイドを示す。
図4図4は、図3と同様の図であるが、異なる状況を示す。
図5図5は、図3及び図4のガイドとモノパイルとの実際の位置を時間の関数として示す図である。
図6図6は、図3と同様の図であるが、異なる向きで該ガイドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、モノパイル2を海底B内に設置する為の浮体式設置船舶(floating installation vessel)1を示す。設置船舶1は、上部デッキ4を備えている船体3を有する。モノパイル2を吊り上げる為のクレーン5が船体3に取り付けられている。設置船舶1には、モノパイル2を海底B内に打ち込む間に、該モノパイル2を該モノパイル2の長手方向に案内するガイド6がまた設けられている。
【0026】
操業条件下では、複数のモノパイル2が、設置船舶1によって生産施設から沖合の設置現場まで水平に運搬される。図2は、沖合の設置現場での一連の作業を示す。複数のモノパイル2のうちの1本は、図1において示されているように、モノパイル2を甲板4上に支持するヒンジ17で補助されながら、クレーン5によって吊り上げられ、その後、モノパイル2はクレーン5のケーブル7から垂直に吊り下げられる。引き続き、モノパイル2はガイド6によって受け止められ、海底B上に配置され、その後、ケーブル7はモノパイル2から切り離される。次に、モノパイル2を海底B内に打ち込む為に、杭打ち装置8がモノパイル2の頂部上にクレーン5によって配置される。代替的には、スプリットブロッククレーン(split block crane)が存在し、該スプリットブロッククレーンにより、該クレーンがヒンジ17無しにそれ自体で反転動作を実行することが出来るようにモノパイル2の上端と下端とが別々に持ち上げられることができる。
【0027】
該ガイド6は、開放状態と閉鎖状態とを有する。該開放状態が、図3及び図4において示されている。該閉鎖状態において、ガイド6はモノパイル2を囲む為の環状体を形成する。該環状体は主平面内に延在する。この場合、該環状体は実質的に円形であり、中心線CLを有する。該主平面は、設置船舶1の上部デッキ4に実質的に平行であり、それは穏やかな海の場合には水平である。ガイド6には、受け部9と、ガイド6の外方向に互いに反対方向に開く一対の扉10の形態で閉鎖部とが設けられている。該開放状態において、ガイド6は開口を有し、該開口は、モノパイル2が受け部9によって境界を画された空間内に挿入されることを可能にする。図3及び図4において示されている実施態様における受け部9は半円形である。扉10は、協働するロック部材11を通じて互いにロックされることができる。ガイド6は、図3及び図4において示されているものとは異なる形状を有していてもよく、一方、扉10は例えば、単一の扉によって置き換えられてもよい。
【0028】
該ガイド6には、ローラーを備えているガイドアームである引き込み式杭支持体(retractable pile supports)、いわゆるボギー(bogeys)12が設けられている。ボギー12は、杭打ちが開始される前、すなわちモノパイル2がガイド6内に位置し且つガイド6がその閉鎖状態にあるときに、中心線CLに向かって移動される。ガイド6の開放状態において、ボギー12は、モノパイル2が受け部9によって境界を画された空間に入ることを可能にし、且つボギー12とモノパイル2との衝突の危険を最小にする為に、後退している。この場合に、ガイド6が閉鎖状態にあり且つボギー12が後退しているときに、ボギー12は仮想円(imaginary circle)上にある。
【0029】
設置船舶1は、一対の第1油圧シリンダ13及び一対の第2油圧シリンダ14の形態の変位装置を備えている。複数の第1油圧シリンダ13は第1の作用線Yに沿って作動し、及び複数の第2油圧シリンダ14は第1の作用線Yに直交する第2の作用線Xに沿って作動する。第1の作用線Y及び第2の作用線Xは、該主平面に平行に延在する。その結果、ガイド6は該主平面内で上部デッキ4に対して移動可能である。
代替的には、第1油圧シリンダ13及び第2油圧シリンダ14は、他のリニアアクチュエータ、例えばラック・ピニオンシステム、ウインチ等、に置き換えられてもよい。
【0030】
図3及び図4は、ガイド6の中心線CLに向かって、該主平面のレベルでモノパイル2の軸方向中心線がたどる所望の経路Dを示す。部分的に円形の経路D又は旋回軌道は、クレーン5の回転運動によって引き起こされる。そのような円軌道Dは、非常に穏やかな海の場合にたどられうる。しかしながら、モノパイル2は浮体式設置船舶1から設置される故に、実際には、モノパイル2の下部が海中に位置する場合に、設置船舶1の動きにより及び波によりモノパイル2は揺動する。このことが図2において示されている。通常、モノパイル2は、ガイド6の主平面から離れた位置、多くの場合は主平面の上方にあるその重心の周りで揺動する。
【0031】
受け部9によって境界を画された空間内にモノパイル2を挿入する間に、ガイド6とモノパイル2とが衝突することを防ぐ為に、設置船舶1は、ガイド6が接近するモノパイル2の揺動経路と実質的に同期して移動するように第1油圧シリンダ13及び第2油圧シリンダ14を制御する為の制御システム15を備えている。この理由の為に、設置船舶1は、受け部9で複数の位置センサー16を備えている(図3を参照)。この場合、複数の位置センサー16の各々は、図3において破線によって境界が示されている検出範囲をカバーする。複数の位置センサー16からの信号は制御システム15によって受信される。これらの信号に基づいて、制御システム15は、モノパイル2がガイド6に向かって移動しているときに、該主平面におけるガイド6に対するモノパイル2の実際の揺動経路を決定する。制御システム15は、ガイド6がモノパイル2の決定された揺動経路と同じ方向に実質的に同期して変位するように上記の油圧シリンダ13及び14を制御する。言い換えれば、ガイド6はモノパイル2の揺動運動をたどる。複数の位置センサー16と制御システム15とは、モノパイル2の中心線が決定されるように構成されうる。このことにより、モノパイル2の中心線が、ガイド6の中心線CLによってたどられるべき基準として使用する機会が提供される。
【0032】
図において示されている実施態様において、制御システム15は、該決定された揺動経路を、ガイド6に向かう及びガイド6から離れる第1の成分Fと、第1の成分Fに対して垂直に延在する第2の成分Sとに分解する(図4を参照)。該決定された揺動経路がガイド2の受け部9の近くに、すなわち受け部9から第1の距離に、位置するときに、制御システム15は、ガイド6が第1の成分Fと第2の成分Sとの両方に沿って変位するように上記の油圧シリンダ13及び14を制御する。該決定された揺動経路が受け部9からより大きな距離、すなわち受け部9から第1の距離よりも大きい第2の距離、に位置するときに、ガイド6は第2の成分Sのみに沿って変位する。後者の状況は図3において示されている。この制御戦略の理由は、モノパイル2がガイド6に接近しているときに、受け部9とモノパイル2との間の第2の成分Sに沿って衝突する危険性が第1の成分Fに沿って衝突する危険性よりも高くなるのに対して、モノパイル2が受け部9に接近しているときには、両方の方向で衝突する危険性が高くなるからである。従って、モノパイル2は、ガイド6の開口を、その反対側で最大のクリアランスで通過する。
【0033】
該ガイド6及び/又は該第1油圧シリンダ13及び第2油圧シリンダ14には、モノパイル2とガイド6との衝突を緩和する為の減衰装置が設けられている。例えば、ボギー12は減衰要素(図示せず)を備えていてもよい。
【0034】
制御システム15の動作は、図5において可視化されている。この図は、ガイド6の中心線CLとモノパイル2の中心線の実際の位置Pを、時間tの関数として示す。モノパイル2の中心線は、ガイド6に向かうモノパイル2の中心線の平均的な動きを表す曲線を中心に揺動する。該曲線は、図3及び図4において示されている経路Dを表していることを示す為に、参照符号Dが与えられている。図6の左側では、揺動するモノパイル2がガイド6に接近していることがわかるが、ガイド6は制御システム15によってまだ変位していない。ある瞬間、モノパイル2とガイド2との間の距離が所定の値よりも小さくなる。モノパイル2が位置センサー16の範囲に到達すると、動き補償がすぐに開始されることができる。引き続き、ガイド6は主平面内でモノパイル2の揺動経路をたどり始める。結果として、モノパイル2は、受け部9によって境界を画された空間内で更に安全に移動することができ、そして、最終的に、モノパイル2の中心線がガイド6の中心線CLとほぼ一致するとすぐに、扉10が閉じられ、そしてボギー12が延在される。次に、制御システム15は、モノパイル2を船体3に対して安定させる為に、ガイド6がモノパイル2の揺動運動を打ち消すように上記の油圧シリンダ13及び14を制御しうる。モノパイル2が正しい目標位置に突き刺される必要がある為に、モノパイル2を船体3に対して安定された後、モノパイル2が海底Bに対して能動的に位置決めされる必要がある。その後、吊り上げケーブル7がモノパイル2から切り離され得、そして、モノパイル2を海底Bに打ち込む為に、杭打ち装置8がモノパイル2の頂部上に配置されることができる。
【0035】
図6は、ガイド6が、ガイド6の主平面に対して垂直に延在する軸を中心として船体3に対して回転可能であることを示す。その結果、該開口は、ガイド6の開放状態において、異なる方向に向けられることができる。図6において示されている状況において、該開口は船体3の長手方向軸に対して垂直な方向に向けられている。従って、該ガイドの中心線CLは、図3及び図4において示されている状態のように、ガイド6に向かうモノパイル2の部分的に円形の経路Dの端部に位置しない。
【0036】
本発明は、図面において示され且つ本明細書に既に記載された実施態様に限定されるものでなく、特許請求の範囲及びその技術的均等物の範囲内で異なる態様で変化されうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】