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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】強化ポリアミド
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20241114BHJP
   C08L 77/04 20060101ALI20241114BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L77/04
C08L83/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527109
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 CN2021130742
(87)【国際公開番号】W WO2023082277
(87)【国際公開日】2023-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ワン、タオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ホンユ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、シルン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、カイナン
(72)【発明者】
【氏名】ミン、ミン
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ、ウェンケ
(72)【発明者】
【氏名】オーヤン、ウーイェ
(72)【発明者】
【氏名】リュー、アンドン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB21X
4J002CL00W
4J002CL03W
4J002CP03Z
4J002CP05Y
4J002CP06Z
4J002CP09Z
4J002CP10Z
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD130
4J002FD320
4J002GF00
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
強化ポリアミド組成物であって、(a)少なくとも1つのポリアミドと、(b)少なくとも1つの強化剤成分と、(c)良好な衝撃強度を有する強化ポリアミド組成物を提供する、1mm/s~100,000mm/sの粘度を有する少なくとも1つのシロキサン系成分と、を含む強化ポリアミド組成物;強化ポリアミド組成物を製造するための方法;並びに強化ポリアミド組成物から作製される物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化ポリアミド組成物であって、
(a)少なくとも1つのポリアミドと、
(b)少なくとも1つの強化剤成分と、
(c)増加した衝撃強度を有する強化ポリアミド組成物を提供するための、1mm/s~100,000mm/sの粘度を有する少なくとも1つのシロキサン系成分と、を含む、強化ポリアミド組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのシロキサン系成分中の官能化極性末端基が、ヒドロキシル基;アミノ基;エポキシ基;カルボニル基;メルカプト基、及びそれらの混合物を含む、請求項1に記載の強化ポリアミド組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのシロキサン系成分中の非官能化非極性末端基が、アリル基;アルキル基;及びこれらの混合物を含む、請求項1に記載の強化ポリアミド組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポリアミドである成分(a)の濃度が、前記強化ポリアミド組成物の総重量に基づいて、50重量%~98.99重量%であり、前記少なくとも1つの強化剤成分である成分(b)の濃度が、1重量%~50重量%であり、前記少なくとも1つのシロキサン系成分の濃度が、0.01重量%~10重量%である、請求項1に記載の強化ポリアミド組成物。
【請求項5】
前記ポリアミドである成分(a)が、(ai)ナイロン-4,6;(aii)ナイロン-6,6;(aiii)ナイロン-6,10;(aiv)ナイロン-6,9;(av)ナイロン-6,12(avi)ナイロン-11;(avii)ナイロン-12;(aviii)6T~12T;(aix)6I~12I;(ax)2-メチルペンタメチレンジアミン及び/又はヘキサメチレンジアミンと、アジピン酸、イソフタル酸及びテレフタル酸からなる群から選択される1つ以上の酸とから形成されるポリアミド;並びに(axi)前記ナイロン及びそのポリアミドのブレンド及び/又はコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の強化ポリアミド組成物。
【請求項6】
前記強化ポリアミド組成物が、前記少なくとも1つのシロキサン系成分を含有しないポリアミド組成物と比較して、衝撃強度において少なくとも10パーセントの増加を示す、請求項1に記載の強化ポリアミド組成物。
【請求項7】
前記組成物が、前記組成物に基づいて、最大50重量パーセントの、充填剤、潤滑剤、可塑剤、顔料、染料、酸化防止剤、安定剤、成核剤、難燃剤、発泡剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される成分を含む、請求項1に記載の強化ポリアミド組成物。
【請求項8】
高流動性及び靱性を示す強化ポリアミド組成物を調製するための方法であって、
(a)少なくとも1つのポリアミドと、
(b)少なくとも1つの強化剤成分と、
(c)増加した衝撃強度を有する強化ポリアミド組成物を提供するための、1mm/s~100,000mm/sの粘度を有する少なくとも1つのシロキサン系成分とを、一段階で、所定の温度で、かつ所定の時間で溶融混合することを含み、成分(a)~(c)の前記溶融混合が、200℃を超える温度で行われる、方法。
【請求項9】
高流動性及び靱性を示す強化ポリアミド組成物を調製するための方法であって、
(I)60℃未満の温度で、以下の2つの成分:
(α)少なくとも1つの強化剤成分と、
(β)少なくとも1つのシロキサン系成分と、を混合して、ブレンド複合材成分を形成する工程と、
(II)200℃超の温度で、以下の2つの成分:
(γ)少なくとも1つのポリアミドと、
(ε)工程(I)からの前記ブレンド複合材成分と、を溶融混合して、増加した衝撃強度を有する強化ポリアミド組成物を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項10】
高流動性及び靱性を示す強化ポリアミド組成物を調製するための方法であって、
(A)100℃超の温度で、以下の2つの成分:
(α)少なくとも1つの強化剤成分と、
(β)少なくとも1つのシロキサン系成分と、を溶融混合して、ブレンド複合材成分を形成する工程と、
(B)工程(A)からの前記ブレンド複合材成分をペレット化して、複数の複合材ペレットを形成する工程と、
(C)200℃超の温度で、以下の2つの成分:
(γ)少なくとも1つのポリアミドと、
(ε)工程(B)からの前記複数の複合材ペレットと、を溶融混合して、増加した衝撃強度を有する強化ポリアミド組成物を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の強化ポリアミド組成物から製造された、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化ポリアミド組成物に関し、より具体的には、本発明は、強化ポリアミド組成物であって、ポリアミドと、耐衝撃性改良剤と、強化ポリアミド組成物に改善された衝撃強度及び流動性特性を与えるシロキサン系ポリマーとのブレンドを含む強化ポリアミド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロンは、ポリアミドから構成される合成熱可塑性ポリマーのファミリーの総称である。ポリアミド(PA)は、アミド結合によって連結された繰り返し単位である。ナイロンは、アミド連結(-CO-NH-)の少なくとも85重量%が2つの脂肪族基に直接結合している脂肪族又は半芳香族ポリアミドに基づく周知の合成熱可塑性ポリマーである。
【0003】
合成加工ナイロン(又はPA)は、優れた機械特性、耐溶剤性、耐摩耗性などを有するプラスチックであり、ナイロン材料は、様々な用途で使用するための物品/製品及び部品を形成するために、様々な繊維、フィルム、又は形状に溶融加工することができる。例えば、強化ナイロン複合材料は、自動車用途、産業機械用途、消費者用途、及び電子用途などの用途に使用することができる。特に自動車分野において、室温及び室温より低い温度の両方で強化ナイロンの衝撃強度を引き続き改善する必要がある。しかしながら、ナイロンは、低いノッチ付き衝撃強度を有し、特に、ナイロンは、低温環境における靱性が低いという欠点を示し、このことは、ナイロンの産業における更なる用途を制限する。したがって、産業界は、強化ナイロンの衝撃強度性能をより良好にする(増加又は改善する)方法を絶えず求めている。
【0004】
典型的には、強化ナイロンの衝撃強度性能(又は耐衝撃性)は、耐衝撃性改良(IM)剤又は添加剤を強化ナイロンに添加することによって増加する。耐衝撃性改良剤材料を強化ナイロンに添加することは、特に自動車分野において、室温及び室温より低い温度の両方で強化ナイロンの衝撃強度を改善する1つの方法である。更に、より効率的な耐衝撃性改良剤は、強化ナイロンの剛性/靱性/流動性バランスを改善し、強化ナイロン及びそれから作製される物品の製造に伴うコストを低減することができるので、強化ナイロンから作製される物品の重量を更に低減することを可能にするために、より効率的な耐衝撃性改良剤が必要とされる。
【0005】
これまで、強化ナイロンにおいて主に使用される耐衝撃性改良剤(IM)は、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンエラストマーであった。通常、無水マレイン酸(MAH)は、以下の一般的化学反応スキーム(スキーム(I))に示されるように、POE上にグラフト化された無水物基とナイロン中のアミン末端基との間の反応を通してPOEとナイロンとの間の適合性を高めるために、ポリオレフィンエラストマー(POE)の骨格にグラフト化される。
【0006】
【化1】
【0007】
MAHグラフト化POEは、非極性ポリオレフィンと高極性ナイロンとの間に必要とされる良好な適合性特性を実現する。しかしながら、上記反応は、不可逆的なイミド結合を引き起こし、得られるナイロン/POEブレンド組成物の流動性特性を著しく低下させる。
【0008】
これまで、例えば、IMのMAHグラフト比を最適化すること、POEのTgを低下させること、及び/又はPOE中に架橋を提供することを含む、強化ナイロンの衝撃強度を改善するための多くの努力が行われてきた。努力の大部分は、POE上にグラフト化されたMAHレベルを改良するなどの、MAHグラフト化POE(「POE-g-MAH」とも略される)成分の設計を伴う。しかしながら、強化ナイロン組成物の衝撃強度及び流動性性能の両方を最適化するための前述の産業による努力は、限られた成功しか収めていない。
【0009】
例えば米国特許第9,056,982(B2)号及び米国特許第9,388,312号は、50重量パーセント~99重量パーセントのナイロン6.6樹脂、1重量パーセント~50重量パーセントのポリマー性能改良剤、及び0.01重量パーセント~25重量パーセントのシリコーン系添加剤を含むペレット又は固体の形態の熱可塑性組成物であって、シリコーン系添加剤が、ゲル又は油のいずれともみなすことができない超高分子量シロキサンポリマーを含み、シロキサンポリマーが官能化されておらず、かつポリアミドと非反応性の熱可塑性組成物に言及している。
【0010】
米国特許出願公開第20140316041号(国際公開第2014176143(A1)号に相当)は、熱可塑性又は熱硬化性樹脂系における強化剤としての超高分子量ポリジメチルシロキサン(PDMS)の使用について言及している。上記参考文献に記載されている樹脂系は、広範囲の種類のポリマー及びポリアミドを包含する。沈降シリカ及びヒュームドシリカも同様にPDMSにブレンドされる。PDMSの充填量は高く、上記参考文献に開示されている組成物中で20重量%~80重量%の範囲である。そのようなPDMSの高充填量は、高極性ポリアミドと低極性PDMSとの間の乏しい適合性のために、PDMSを使用する樹脂系に有害であり得る。
【0011】
中国特許第110437611(A)号は、超低温耐性を有する強化ナイロン複合材料について言及している。上記参考文献に記載されている複合材料は、ガラス繊維、潤滑剤、及び他の添加剤に加えて、強化剤としてアミノ又はエポキシ末端PDMSを必要とする。強化剤として有用なポリオレフィンエラストマーは言及されていない。加えて、上記の参考文献は、全配合物に基づいて高充填量(例えば、5重量%~12重量%)の強化剤を必要とする。
【0012】
中国特許第102964822(A)号は、ナイロンの強化剤として少なくとも2つのビニル基を有するビニル-PDMSを使用することによってナイロンを強化することに言及している。水素シリコン油も架橋剤として使用される。ビニル基は、水素シリコン油で架橋されるPDMS中に存在する必要がある。
【0013】
中国特許第111117223(A)号は、再生ナイロンを含有するナイロン複合材料から作製された自動車軸受材料に言及しており、1部~10部の第2の成分ポリマーは、超高分子量(Mw)PDMSを超高Mw PE、PU、エチレン-プロピレンコポリマーなどと共に使用する。中国特許第111117223(A)号に開示されている目的は、ナイロン複合材料の水吸着を低減することである。中国特許第111117223(A)号には、衝撃強度又は流動性を改善すること、又は衝撃強度又は流動性を改善するためにPDMSを使用することは記載されていない。
【0014】
公知の強化ナイロン組成物によって提供される衝撃強度に関する制限を考慮すると、強化ナイロンの流動性などの強化ナイロンの他の特性に悪影響を及ぼすことなく、かつ強化ナイロンの製造コストを著しく増加させることなく、特に-30℃未満などの低温での強化ナイロンの衝撃強度を更に改善することが望ましい。
【0015】
更に、改良された強化ナイロン組成物を形成する適切な成分をブレンドすることによって、靱性の増加などの改良された特性を有する新規な強化ナイロン化合物、材料又は組成物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0016】
広範な一実施形態では、本発明は、強化ポリアミド組成物であって、(a)少なくとも1つのポリアミド(例えば、ナイロン化合物)と、(b)少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と、(c)強化ポリアミド組成物の衝撃強度特性が改善されるように強化ナイロン組成物を形成するための、少なくとも1つの液体低粘度シロキサン系ポリマーとのブレンドを含む、強化ポリアミド組成物に関する。
【0017】
別の実施形態では、本発明の強化ポリアミド組成物は、強化ポリアミド組成物の総重量に基づいて、50重量%~98.99重量%の濃度を有する少なくとも1つのポリアミドである成分(a)と、1重量%~50重量%の濃度を有する少なくとも1つの耐衝撃性改良剤組成物である成分(b)と、0.01重量%~10重量%の濃度を有する少なくとも1つの液体低粘度シロキサン系ポリマーである成分(c)とを含む。
【0018】
更に別の実施形態では、本発明は、衝撃強度特性の改善(例えば、少なくとも10%の増加)を示す上記強化ポリアミド組成物を調製するための方法を含む。
【0019】
更に別の実施形態では、本発明は、改善された衝撃強度特性を有する上記の強化ナイロン組成物を製造するための方法を含む。
【0020】
更になお別の実施形態では、本発明は、改善された衝撃強度特性を有する上記強化ポリアミド組成物を用いて製造された物品を含む。
【0021】
1つ以上の他の実施形態では、本発明は、上記強化ナイロン組成物を使用して製造された物品、及び物品を製造するための方法を含む。
【0022】
本発明の実施形態の追加の特徴及び有利な点は、以下の発明を実施するための形態に記載され、一部はその説明から当業者に容易に明らかになるか、又は発明を実施するための形態及び特許請求の範囲を含む、本明細書に記載の実施形態を実践することによって認識される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書における温度は、摂氏温度(℃)である。
【0024】
本明細書における「室温(Room temperature、RT)」及び/又は「周囲温度」は、別途特定されない限り、20℃~26℃の温度を意味する。
【0025】
「エラストマー」は、粘弾性(すなわち、粘度及び弾性の両方)を有し、他の材料と比較して弱い分子間力、一般に低いヤング率及び高い破壊歪みを有するポリマーである。IUPAC(国際純正・応用化学連合)は、「エラストマー」という用語を「ゴム様弾力性を示すポリマー」と定義している。
【0026】
「ポリマー」は、同じ種類又は異なる種類のモノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物である。したがって、ポリマーという総称は、「ホモポリマー」(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すために用いられる)、及び「インターポリマー」という用語を包含し、これはコポリマー(2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すのに用いられる)、ターポリマー(3つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを指すのに用いられる)、及び3つより多くの異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。微量の不純物、例えば触媒残留物が、ポリマー中及び/又はポリマー内に組み込まれる可能性がある。それはまた、コポリマーのすべての形態、例えば、ランダム、ブロックなども包含する。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製され」、特定のモノマー又はモノマーの種類に「基づいて」、特定のモノマー含量を「含有する」などと称されるが、本文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残基を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意されたい。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものとして言及される。
【0027】
「組成物」という用語は、当該組成物を構成する材料の混合物、並びに当該組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を指す。
【0028】
本明細書における「ナイロンポリマー組成物」は、少なくとも1つの純粋なナイロンポリマーと、少なくとも1つ以上の他の成分、例えば、エラストマー、ガラス繊維、小分子添加剤などとの組み合わせ、混合物、又はブレンドを意味する。上記材料をブレンドするために使用されるブレンドのタイプは、一般に、二軸スクリュー押出機又は浸漬によって進められるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書において「耐衝撃性改良剤」とは、硬質部品の物理的特性要件を満たすために、様々なプラスチック樹脂の可撓性、靱性、及び衝撃強度を増加させるために添加される添加剤を意味する。
【0030】
ナイロン組成物に関する用語「衝撃靱性」、「衝撃強度」、及び「耐衝撃性」は、本明細書において、CHARPY、ISO 179に記載されている衝撃法によって評価されるナイロン組成物の衝撃強度の性能特性を意味する。上記用語は互換的に使用することができる。
【0031】
ナイロン組成物に関する「室温(RT)衝撃強度」は、本明細書において、室温条件下で試験されたナイロン組成物の衝撃強度値を意味する。
【0032】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、任意の追加の構成成分、工程、又は手順が本明細書において具体的に開示されているか否かにかかわらず、それらの存在を排除することを意図したものではない。疑義を避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、特に反対の記載がない限り、ポリマーであるか否かにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる他の構成成分、工程、又は手順をあらゆる後続の説明の範囲から除外する。「からなる」という用語は、明確に描写又は列挙されていない任意の構成成分、工程、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、及び任意の組み合わせで指す。単数形の使用には複数形の使用が含まれ、その逆もまた同様である。
【0033】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値から上限値までのすべての値(下限値及び上限値を含む)を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば1、又は2、又は3~5、又は6、又は7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などを含む)。
【0034】
本明細書全体にわたって使用される場合、以下の略称は、文脈から別途明確に指示されない限り、以下の意味を有する。「=」は、「等しい」又は「と等しい」を意味し、「<」は、「未満」を意味し、「>」は、「よりも大きい」を意味し、「≦」は、「以下」を意味し、「≧」は、「以上」を意味し、「@」は、「において」を意味し、μm=ミクロン、g=グラム、mg=ミリグラム、mW/m・K=1メートル当たりのミリワット・ケルビン度、L=リットル、mL=ミリリットル、g/mL=1ミリリットル当たりのグラム、g/L=1リットル当たりのグラム、g/10min=10分当たりのグラム、kg/m=1立方メートル当たりのキログラム、ppm=重量百万分率、pbw=重量部、rpm=1分間当たりの回転数、m=メートル、mm=ミリメートル、cm=センチメートル、μm=マイクロメートル、mm/s=1秒当たりのミリメートル、min=分、s=秒、ms=ミリ秒、hr=時、Pa=パスカル、MPa=メガパスカル、Pa・s=パスカル秒、mPa・s=ミリパスカル秒、g/mol=1モル当たりのグラム、g/eq=1当量当たりのグラム、mg KOH/g=1グラム当たりの水酸化カリウムのミリグラム、Mn=数平均分子量、Mw=重量平均分子量、pts=重量部、1/s又は秒-1=秒の逆数[s-1]、℃=摂氏温度、mmHg=水銀柱ミリメートル、psig=1平方インチ当たりのポンド、kPa=キロパスカル、%=パーセント、vol%=体積パーセント、mol%=モルパーセント、及びwt%=重量パーセント。
【0035】
別途明記されない限り、すべてのパーセンテージ、部、比などの量は、重量によって定義される。例えば、本明細書に記載したすべてのパーセンテージは、別途指示されない限り、重量パーセンテージ(重量%)である。
【0036】
本発明の具体的な実施形態が、本明細書の以下に記載される。これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全であり、当業者に本発明の主題の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0037】
一般に、本発明は、様々な用途のための、特に、ナイロン組成物が衝撃強度及び流動特性の増加を有することを必要とする用途において、ナイロン物品/製品又は部品を製造するのに有用な、強化ポリアミド(例えば、ナイロン)配合物又は組成物を含む。
【0038】
広範な実施形態では、本発明の強化ポリアミド組成物は、(a)少なくとも1つのポリアミド(例えば、ナイロン化合物)と、(b)少なくとも1つの強化剤成分と、(c)強化ポリアミド組成物の衝撃強度特性が改善されるように強化ナイロン組成物を形成するための、少なくとも1つの液体低粘度シロキサン系ポリマーとのブレンド又は混合物を含む。
【0039】
ナイロン組成物のポリアミド化合物である成分(a)は、ポリマー主鎖の不可欠な部分として繰り返しアミド基(R-CO-NH-R’)を含有するポリマーである。本発明において有用なポリアミド化合物は、1つ以上のポリアミド化合物を含み得る。本発明に使用することができる好適なポリアミド樹脂としては、当技術分野で公知の任意のポリアミドが挙げられる。本発明において有用なポリアミドとしては、例えば、脂肪族、半結晶性、芳香族、半芳香族ナイロン樹脂、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ナイロン樹脂は、本質的にラクタム又はジアミン、脂肪族、半芳香族又は芳香族ジカルボン酸、及びそれらの混合物の出発材料から調製されるものである。本発明において有用な適切なラクタムとしては、例えば、カプロラクタム、ラウロラクタム、及びそれらの混合物が挙げられる。本発明において有用な適切なアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン;ヘキサメチレンジアミン(HMD);2-メチルペンタメチレン-ジアミン;ウンデカメチレンジアミン;ドデカメチレンジアミン;2.2.4-(2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン;5-メチルノナエチレンジアミン;メタキシリレンジアミン(MXD);パラキシリレンジアミン;2-メチル-1,5-ペンタメチレンジアミン(MPMD);及びこれらの混合物が挙げられる。本発明において有用な好適なジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸(DDDA)、テレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウム-スルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
本発明においては、これらの出発材料に由来するナイロンホモポリマー又はコポリマーを単独又は混合物としてのいずれかで使用する。本発明の組成物に望ましいポリアミド樹脂の具体例としては、以下のものが挙げられる:(ナイロン6);ポリウンデカンアミド(ナイロン11);ポリラウラミド(ナイロン12);ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66);ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46);ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610);ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(6T);ポリヘキサメチレンイソテレフタルアミド(61);2-メチルペンタメチレンテレフタルアミド(ナイロンDT);2-メチルペンタメチレンイソフタルアミド(DI);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプラミドコポリマー(ナイロン6T/6);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12);ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T);ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/61)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドf-ポリカプラミドコポリマー(ナイロン66/61/6);ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/-ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/61);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/61);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルペンタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T);ポリヘキサメチレンテレフタルアミドf-ポリヘキサメチレンセバカミド/ポリカプラミドコポリマー(ナイロン6T/610/6);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6T/12/66);ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミド/-ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/12/61);ポリm-キシリレンアジパミド(ナイロンMXD6);及び上記化合物のいずれかの混合物及びコポリマーなど。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態では、ポリアミド成分である成分(a)は、衝撃強度が所望される任意のポリアミドであり得る。例えば、ポリアミド成分は、(ai)ナイロン-6;(aii)ナイロン-4,6;(aiii)ナイロン-6,6;(aiv)ナイロン-6,10;(av)ナイロン-6,9(avi)ナイロン-6,12;(avii)ナイロン-7;(aviii)ナイロン10;(aix)ナイロン-10,10;(ax)ナイロン-11;(axi)ナイロン-12;(axii)ナイロン-12.12;(aviii)6T~12T;(axiv)6I~12I;(axv)2-メチルペンタメチレンジアミン及び/又はヘキサメチレンジアミンと、アジピン酸、イソフタル酸及びテレフタル酸からなる群から選択される1つ以上の酸とから形成されるポリアミド;(axvi)当該ナイロン及びそのポリアミドのブレンド及び/又はコポリマー;並びに(axvii)それらの混合物からなる群から選択することができる。
【0042】
他の好ましい実施形態では、ポリアミドは、ナイロン6(自己重合するカプロラクタムから作製されるポリカプロラクタム)、ナイロン6,6(ポリマー主鎖内に繰り返しアミド基を有する長鎖合成ポリアミドであるヘキサメチレンジアミン-アジピン酸縮合生成物)、ナイロン4、ナイロン11、ナイロン6,10;及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0043】
更に他の好ましい実施形態では、本発明において有用なポリアミド化合物としては、ナイロン6;ナイロン6,6;及びそれらの混合物が挙げられる。
【0044】
いくつかの実施形態では、ポリアミド成分である成分(a)は、Ultramidシリーズ製品(BASFから入手可能)などの市販の化合物から選択することができる。他の実施形態では、本発明において有用な市販のポリアミド化合物のいくつかの例としては、例えば、Zytel 7304 NC010(Dupontから入手可能)、PA6-YH800(Yueyang Baling Shihua Chemical&Synthetic Fiber Co.Ltd.から入手可能)、並びにこれらの混合物が挙げられ得る。
【0045】
成分(a)であるポリアミド成分の濃度は、一実施形態では50重量%~98.99重量%、別の実施形態では70重量%~92重量%、なお別の実施形態では75重量%~90重量%であり得る。
【0046】
本発明の組成物において有用な強化剤成分(b)(又は耐衝撃性改良剤成分)は、例えば、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンエラストマー;アミン又はカルボン酸官能化ポリオレフィン;カルボン酸官能化ポリオレフィンの金属塩を含むアイオノマー;及びそれらの混合物から選択することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、強化剤成分である成分(b)は、例えば、(bi)重合エチレン、3個の炭素原子~12個の炭素原子の少なくとも1つの重合α-オレフィン、及び4個の炭素原子~14個の炭素原子を有する分岐鎖、直鎖及び環状化合物からなるクラスから選択される少なくとも1つの重合不飽和モノマーから本質的になる少なくとも1つのポリマー;(bii)3個の炭素原子~8個の炭素原子を有するα,βエチレン性不飽和ジカルボン酸、並びに1個の炭素原子~29個の炭素原子を有するアルコールのモノエステル、ジカルボン酸の無水物、ジカルボン酸の金属塩、及び金属イオンによる中和によってイオン化された0%~100%のカルボン酸基を有する0%~100%の前記ジカルボン酸を有する当該ジカルボン酸のモノエステルからなるクラスから選択されるその誘導体からなるクラスから選択される不飽和モノマー;並びに(biii)上記成分(bi)及び(bii)の混合物からなる群から選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、強化剤成分(「耐衝撃性改良剤」とも呼ばれる;成分(b))は、無水マレイン酸官能化エラストマーエチレンコポリマー、無水マレイン酸官能化エチレン、αオレフィンコポリマー、エチレン、アクリル酸エステル及び無水マレイン酸のターポリマー、無水マレイン酸(MAH)グラフト化ポリオレフィンエラストマー(POE)及びこれらの組み合わせを含む。1つの好ましい実施形態では、強化剤成分である成分(b)は、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィンエラストマー(POE-g-MAH)である。
【0049】
いくつかの実施形態では、強化剤成分は、Exxelorシリーズ製品(ExxonMobilから入手可能);Tafmerシリーズ製品(三井化学株式会社から入手可能);及びこれらの混合物などの市販の化合物から選択することができるが、これらに限定されない。
【0050】
強化剤成分(b)は、強化剤成分がナイロン成分(a)及びPDMS成分(c)と混合される前に、所定のMAHグラフト率、メルトインデックス、分子量、分子量分布、及び/又は分岐を有するものとして更に特徴付けることができる。例えば、強化剤成分は、一実施形態では、0.1~5、別の実施形態では0.2~2.0、更に別の実施形態では0.3~1.0のMAHグラフト率を有する。例えば、耐衝撃性改良剤は、一実施形態では、0.8g/cc~0.95g/cc、別の実施形態では、0.83g/cc~0.93g/cc、更に別の実施形態では、0.85g/cc~0.92g/ccの密度を有する。
【0051】
本発明のナイロン組成物を調製するのに使用される強化剤(耐衝撃性改良剤)化合物である成分(b)の濃度は、例えば、一実施形態では、ナイロン組成物の重量に基づいて1重量%~50重量%、別の実施形態では、8重量%~35重量%、更に別の実施形態では、10重量%~25重量%を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、シロキサン系成分である成分(c)としては、例えば、ジシロキサン、トリシロキサン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
一実施形態では、シロキサン系成分は、PDMSである。カルビノール官能化PDMS、カルボキシル官能化PDMS、アミノ官能化PDMS及び非官能化PDMSを含むいくつかのタイプのPDMSは、本発明において有用であることが見出されており、すなわち、上記の選択されたタイプのPDMSは、強化ナイロンの衝撃強度に著しい改善をもたらす。いくつかの実施形態では、PDMSは、ヒドロキシル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、メルカプト基、それらの混合物を含む、炭素基などの1つ以上の官能基を含有してもよい。いくつかの実施形態では、ポリジメチルシロキサン中の官能基は、ポリジメチルシロキサン鎖の末端又はポリジメチルシロキサン鎖の側部にある。本発明において有用な好適な非官能化PDMSの例としては、The DOW Chemical Company製のXIAMETER(商標)PMX-200シリーズ製品のいずれか1つ以上が挙げられる。
【0054】
異なる分子量(Mw;粘度によって特定される)を有するPDMSは、強化ナイロン組成物の衝撃強度の改善をもたらすことも見出されている。アミノ官能化PDMSはまた、毛細管粘度低下などの流動性に関連する更なる利点を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明で使用されるシロキサン系成分(PDMS)は、XIAMETER(商標)PMX-200(The Dow Chemical Companyから入手可能);KFシリーズ製品(SHIN-ETSU Co.Ltd.から入手可能);及びこれらの混合物などの市販の化合物から選択することができる。一実施形態では、本発明において有用な非官能化PDMSとしては、The Dow Chemical Companyから入手可能な市販製品が挙げられる。別の実施形態では、本発明において有用な官能化されたPDMSは、SHIN-ETSU Co.Ltd.から入手可能な市販品である。これに限定されないが、PDMSは、固体又はペレットとは対照的に液体形態で使用される。
【0056】
いくつかの実施形態では、シロキサン系成分の粘度は、一般的な一実施形態では1mm/s~100,000mm/s、別の実施形態では3mm/s~90,000mm/s、更に別の実施形態では5mm/s~80,000mm/sであり得る。
【0057】
シロキサン系成分である成分(c)の濃度は、一実施形態ではナイロン組成物に基づいて0.01重量%~10重量%、別の実施形態では0.1重量%~8重量%、なお別の実施形態では0.2重量%~5重量%であり得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、本発明の強化ポリアミド組成物は、所望であれば、1つ以上の任意の成分、添加剤又は他の薬剤化合物を更に含むことができる。本発明の強化ポリアミド組成物において有用な任意選択の化合物である成分(d)としては、例えば、充填剤、潤滑剤、可塑剤、顔料、染料、酸化防止剤、安定剤、成核剤、難燃剤、発泡剤、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0059】
一般に、任意選択の化合物の濃度は、強化ポリアミド組成物中で使用される場合、例えば、一実施形態では0重量%~50重量%、別の実施形態では0.01重量%~50重量%、なおも別の実施形態では0.1重量%~40重量%、更に別の実施形態では0.1重量%~30重量%を含む。
【0060】
一般的な一実施形態では、強化ナイロン組成物は、(a)少なくとも1つのポリアミド(例えば、ナイロン化合物)と、(b)少なくとも1つの強化剤成分と、(c)1mm/s~100,000mm/sの粘度を有する少なくとも1つの液体低粘度シロキサン系ポリマーと、を合わせる、ブレンドする、又は混合することによって製造することができる。得られた混合物は、改善された衝撃強度特性を示す強化ナイロン組成物を形成する。
【0061】
本発明の一実施形態の例示として、限定されるものではないが、本発明の強化ナイロン組成物を製造するための一般的な方法は、(a)強化ナイロン組成物の重量に基づいて50重量%~98.99重量%の濃度の少なくとも1つのポリアミドと、(b)強化ナイロン組成物の重量に基づいて1重量%~50重量%の濃度の少なくとも1つの強化剤と、(c)強化ナイロン組成物の重量に基づいて0.01重量%~10重量%の濃度の少なくとも1つのシロキサン系ポリマーと、(d)必要に応じて、強化ナイロン組成物の重量に基づいて50重量%未満の濃度のいずれか任意選択の成分と、を混合する、合わせる、又はブレンドすることを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、改善された靱性を示す強化ポリアミド組成物を調製するための本発明の方法は、一段階で、所定の温度で、かつ所定の時間で、ポリアミドである成分(a)と、強化剤である成分(b)と、シロキサン系ポリマーである成分(c)と、を溶融混合することを含む。一段階の溶融混合工程は、一実施形態では200℃以上、別の実施形態では200℃~350℃、別の実施形態では220℃~320℃、更に別の実施形態では250℃~300℃の溶融温度で行うことができる。一段階の溶融混合工程の時間は、一実施形態では20秒超、別の実施形態では20秒~10分、更に別の実施形態では30秒~5分であり得る。一実施形態では、上記の溶融混合一段階の方法は、従来の二軸スクリュー(少なくとも2つのスクリュー)押出機などの少なくとも1つの押出機で行うことができる。
【0063】
他の実施形態では、高い流動性及び靱性を示す強化ポリアミド組成物を調製するための本発明の方法は、少なくとも以下の2つの工程を含むことができる:(I)少なくとも以下の2つの成分:(α)POE-g-MAHなどの上記強化剤成分(b);及び(β)PDMSなどの上記シロキサン系ポリマー成分(c)を、所定の温度で、かつ所定の時間で混合して、ブレンド複合材成分を形成する(すなわち、強化剤/シロキサン系ポリマー混合物を形成する)第1の工程と、(II)(γ)上記ポリアミド成分(a)、及び(δ)工程(I)からのブレンド複合材成分を溶融混合して、強化ポリアミド組成物を形成する第2の工程。
【0064】
第1の混合工程(I)は、例えば、成分(b)及び(c)を一緒に浸漬又は配合し、次いで、例えば、少なくとも1つの二軸スクリュー押出機を使用して浸漬又は配合した成分を混合することによって行うことができる。第1の混合工程(I)に浸漬方法を用いる場合、第1の混合工程(I)の温度は、一実施形態では60℃未満、別の実施形態では0℃~60℃、更に別の実施形態では10℃~55℃であり得る。浸漬方法を用いる場合、第1の混合工程(I)の時間は、一実施形態では1時間超、別の実施形態では1時間~48時間、更に別の実施形態では2時間~24時間であり得る。
【0065】
第1の溶融混合工程(I)に配合方法を用いる場合、第1の溶融混合工程(I)は、一実施形態では100℃超、別の実施形態では100℃~200℃、更に別の実施形態では120℃~180℃の温度で行うことができる。配合方法を用いる場合、第1の混合工程(I)の時間は、一実施形態では1秒超、別の実施形態では20秒~10分、更に別の実施形態では30秒~5分であり得る。
【0066】
第1の混合工程(I)に浸漬方法を用いる場合、第2の溶融解混合工程(II)の温度は、一実施形態では200℃超、別の実施形態では230℃~350℃、更に別の実施形態では250℃~300℃であり得る。溶融混合の第2の工程(II)の時間は、一実施形態では1秒超、別の実施形態では20秒~10分、更に別の実施形態では30秒~5分であり得る。一実施形態では、上記の溶融混合の第2の工程(II)は、従来の二軸スクリュー(少なくとも2つのスクリュー)押出機などの少なくとも1つの押出機で行うことができる。
【0067】
第1の混合工程(I)に配合方法を使用する場合、溶融混合工程(II)は、第1の混合工程(I)と同じであり得る温度及び時間で行うことができる。
【0068】
他の実施形態では、高い靱性を示す強化ポリアミド組成物を調製するための方法は、少なくとも以下の3つの工程を含むことができる:(A)少なくとも以下の2つの成分:(α)少なくとも1つの強化剤成分(b)、例えば、POE-g-MAHなど;及び(β)少なくとも1つのシロキサン系成分、例えば、PDMSなどのシロキサン系ポリマーを溶融混合して、強化剤/シロキサン系ポリマー混合物を形成する第1の工程;(B)工程(A)からの強化剤/シロキサン系ポリマー混合物をペレット化して複数の複合材ペレットを形成する第2の工程、及び(C)少なくとも以下の2つの成分:(γ)少なくとも1つのポリアミド;及び(ε)工程(B)からの複数の複合材ペレットを溶融混合して強化ポリアミド組成物を形成する第3の工程。一実施形態では、上記の溶融混合の第3の工程(C)は、従来の二軸スクリュー(少なくとも2つのスクリュー)押出機などの少なくとも1つの押出機で行うことができる。
【0069】
溶融混合の第1の工程(A)の温度は、一実施形態では200℃未満、別の実施形態では100℃~200℃、更に別の実施形態では120℃~180℃であり得る。混合の第1の工程(A)の混合についての時間は、一実施形態では1秒超、別の実施形態では20秒~10分、更に別の実施形態では30秒~5分であり得る。
【0070】
ペレット化工程(B)は、押出機を出る樹脂を所定のサイズのペレットに切断するためのストランドカッターなどの従来の装置を使用して行われる。
【0071】
溶融混合の第3の工程(C)の温度は、一実施形態では、200℃超、別の実施形態では、230℃~350℃、更に別の実施形態では、250℃~300℃の温度であり得る。溶融混合の第3の工程(C)の時間は、一実施形態では1秒超、別の実施形態では20秒~10分、更に別の実施形態では30秒~5分であり得る。
【0072】
強化ポリアミド組成物を調製するための本発明の方法の実施形態、及び上記のようなその工程は、当業者に公知の従来の装置によって行うことができる。例えば、均一又は均質な混合物を形成するための成分の混合は、二軸スクリュー押出機、BUSS混練機、バッチミキサーなどの公知のブレンダー又はミキサーによって行うことができる。
【0073】
上述のように、本発明の強化ポリアミド組成物は、(a)少なくとも1つのポリアミド(例えば、ナイロン化合物)と、(b)少なくとも1つの強化剤成分(例えば、POE-g-MAH)と、(c)1mm/s~100,000mm/sの粘度を有する少なくとも1つの液体低粘度シロキサン系ポリマー(例えば、PDMS)との混合物を含む。本発明の強化ポリアミド組成物は、いくつかの有利な利点を示す。例えば、ポリアミドがPOE-g-MAH及びPDMSと混合される場合、得られる強化ポリアミド組成物は、有利には、室温衝撃強度の増強を示す。加えて、場合によっては、本発明の強化ポリアミド組成物(ナイロン組成物)の流動性も向上させることができる。したがって、少なくとも1つのナイロン、少なくとも1つのPOE-g-MAH及び少なくとも1つのPDMSの組み合わせは、少なくとも増加した衝撃強度を有する本発明の強化ポリアミド組成物を形成する。加えて、本発明の強化ポリアミド組成物の衝撃特性は、強化ナイロン組成物を形成するためにポリアミドがPOE-g-MAH及びPDMSとブレンドされるとき、曲げ弾性率、引張強度、伸長、熱変形温度(HDT)などの強化ナイロン組成物の他の機械的性能が最適化されたレベルで維持される一方で改善され得る。
【0074】
例えば、一般的な一実施形態では、強化剤成分(例えば、POE-g-MAH)及びシロキサン系ポリマー(例えば、PDMS)を含有する強化ポリアミド組成物は、有利には、本発明の強化剤成分(例えば、POE-g-MAH)を含有するがシロキサン系ポリマー(例えば、PDMS)を含有しないナイロン組成物と比較して、室温(RT)又は-30℃未満の温度で少なくとも10%の衝撃強度の改善(例えば、増加)を示す。別の実施形態では、上記強化剤成分及びシロキサン系ポリマーを含む本発明の強化ポリアミド組成物は、上記強化剤成分を含有するが本発明のシロキサン系ポリマーを含有しないポリアミド組成物と比較して、衝撃強度において少なくとも15%の改善を示し;更に別の実施形態では、上記強化剤成分及び本発明のシロキサン系ポリマーを含む本発明の強化ポリアミド組成物は、上記強化剤成分を含有するが本発明のシロキサン系ポリマーを含有しないポリアミド組成物と比較して、衝撃強度において少なくとも20%の改善を示す。更に別の実施形態では、上記強化剤成分及び本発明のシロキサン系ポリマーを含む本発明の強化ポリアミド組成物は、上記強化剤成分を含有するが本発明のシロキサン系ポリマーを含有しないポリアミド組成物と比較して、衝撃強度において10%~100%の改善を示す。
【0075】
驚くべきことに、本発明の強化ポリアミド組成物のRT/低温衝撃強度に対する上記の改善は、ほんの少量(例えば、5重量%未満)のPDMSを強化ナイロン組成物に添加することによって達成され得ることが見出された。例えば、低充填量(例えば、強化ポリアミド配合物の総重量に基づいて0.4重量%~2重量%)のPDMSは、POE-g-MAHと共に、高充填量、例えば、当技術分野において公知の組成物によって必要とされる20重量%~80重量%のPDMSと比較して、本発明の強化ポリアミド組成物のRT/低温衝撃強度を改善するのに有効な耐衝撃性改良剤を形成する。また、従来技術で使用されるPDMSの分子量は、本発明で使用されるPDMSの分子量(粘度を測定することによって決定される)より大きい。本発明において、強化ポリアミド組成物は、特定の分子量のPDMSを必要としない。しかしながら、好ましい一実施形態では、本発明の組成物の衝撃強度を改善するために、1mm/s~100,000mm/sの範囲の測定粘度を有するPDMSが望ましい。
【0076】
本発明のナイロン組成物の別の利点は、組成物の曲げ弾性率を維持しながら衝撃強度の上記の改善された特性(例えば、RT及び低温での)を有するために、より薄い壁を有し、より少ない組成物を使用する軽量物品/製品又は部品を製造するためにナイロン組成物を使用することができることである。
【0077】
本発明の強化ナイロン組成物から製造される物品/製品又は部品は、例えば、電子機器、自動車部品、ギア、及び玩具などを含むことができる。
【0078】
本発明の強化ナイロン組成物の成分:(a)少なくとも1つのポリアミド(例えば、ナイロン化合物)、(b)少なくとも1つの強化剤成分、及び(c)少なくとも1つのシロキサン系ポリマーが、例えば溶融混合温度で完全かつ均一に混合されると、得られた溶融混合物を使用して、従来の方法及び装置を使用して物品/製品又は成形部品を形成することができる。例えば、射出成形、押出成形、又はブロー成形方法などの方法を使用して、強化ナイロン組成物から物品/製品又は成形部品を形成することができる。
【0079】
1つの好ましい実施形態では、物品/製品又は成形部品は、例えば、射出成形方法及び二軸スクリュー押出機などの押出装置を使用して生成及び加工される。一般に、本発明の強化ポリアミド組成物から物品を製造する方法は、例えば、(1)上記の強化ポリアミド組成物を製造する方法のいずれか1つを使用して、(a)少なくとも1つのポリアミド、(b)少なくとも1つの強化剤成分、及び(c)少なくとも1つのシロキサン系ポリマーを混合することによって強化ポリアミド組成物を提供する工程と、(2)工程(1)の組成物を、例えば、押出方法又は射出方法を使用して物品に加工して物品を形成する工程と、を含む。
【0080】
より薄く、したがってより軽い部品を作り出すためには、ナイロン組成物が高い衝撃強度を有することが必要である。本発明のナイロン組成物は、曲げ弾性率などの組成物の他の特性を維持しながら、適切な成分(a)~(c)を使用して本発明の強化ナイロン組成物を形成することによって、衝撃強度(又は靱性)の改善を示すことができる。強化ナイロン組成物のそのような高性能特性は、本発明の強化ナイロン組成物から製造される、優れた衝撃特性を必要とする内装部品及び外装部品並びに物品のダウンゲージングを可能にする。
【0081】
耐衝撃性改良剤添加剤、強化ナイロン組成物、及び上述した強化ナイロン組成物から製造された物品、製品又は部品は、広範囲のポリマー組成物及び構造において使用することができる。一般に、本発明の強化ナイロン組成物は、従来のコポリマーから作製された部品よりも高い耐衝撃強度(すなわち、増加した強靱性及び耐久性)を有する部品が必要である用途において使用される。例えば、限定されるものではないが、強化ナイロン組成物は、様々な用途に使用することができ、耐衝撃性及び強度を必要とする分野において有用な成形品に形成することができる。一実施形態では、例えば、強化ナイロン組成物は、自動車用剛性部品及び構成要素を製造するための自動車用途において使用することができる。自動車製品は、従来のポリマー加工によって製造することができる。
【実施例
【0082】
以下の本発明の実施例(Inv.Ex.)及び比較例(Comp.Ex.)(まとめて「実施例」とする)は、本発明の特徴を更に詳細に説明するために本明細書で提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして明示的にも暗示的にも解釈されることを意図しない。本発明の実施例はアラビア数字によって特定され、比較例はアルファベット文字によって表される。以下の実験で、本明細書に記載の組成物の実施形態の性能を分析した。特に指示しない限り、すべての部及びパーセンテージは、総重量に基づく重量による。
【0083】
原材料
強化ナイロン複合材配合物を調製するために実施例で使用した原材料(成分)は、PA6 B3s、ポリアミドナイロン(BASFから入手可能);並びにPOE-g-MAH1(0.50重量%MAHグラフトレベル)及びPOE-g-MAH2(0.90重量%MAHグラフトレベル)、無水マレイン酸グラフトポリオレフィンエラストマーを含んでいた。2.16kgの荷重で190℃においてASTM D1238によって測定されるように、POE-g-MAH1は、1.6g/10分のメルトインデックス(MI)を有し、POE-g-MAH2は、1.3g/10分のMIを有していた。実施例で使用したPDMS材料を、表Iに記載する。
【0084】
【表1】
【0085】
配合物
実施例で使用した強化ナイロン複合材配合物は、シリーズ1の実験については表II及びIIIに、シリーズ2の実験については表IV及びVに記載した配合物に基づいて作製した。
【0086】
【表2】

表IIについての注記:PDMS量は、ナイロン組成物の総重量に基づく。
【0087】
【表3】

表IIIについての注記:PDMS量は、ナイロン組成物の総重量に基づく。
【0088】
【表4】

表IVの注記:PDMS量は、ナイロン組成物の総重量に基づく。
【0089】
【表5】

表Vについての注記:PDMS量は、ナイロン組成物の総重量に基づく。
【0090】
一般に、表II~Vに記載されている強化ナイロン複合材配合物は、PDMS成分をPOE成分とブレンドする第1の工程、続いてブレンドされたPDMS/POE成分をナイロン成分と混合する第2の工程によって調製された。
【0091】
PDMS成分をPOE成分とブレンドする第1の工程は、本明細書において以下に記載されるような浸漬手順又は配合手順のいずれかを利用することによって行われる。
【0092】
PDMSをPOEとブレンドするための浸漬方法
KF-6000のPDMSを含むPDMS(本発明の実施例1~3及び本発明の実施例21)、KF-6001(本発明の実施例4及び5);KF-8010(本発明の実施例6及び7);X-22-161A(本発明の実施例8及び9);X-22-162C(本発明の実施例10及び11);PMX-200流体10cSt(本発明の実施例12~14及び本発明の実施例22)、PMX-200流体20cSt(本発明の実施例15~16及び本発明の実施例23及び24)並びにPMX-200流体100cSt(本発明の実施例17及び本発明の実施例25)、を浸漬方法によってPOEペレットとブレンドした。PDMSを最初に室温でPOEと混合し、次いでPDMSをPOEペレットの本体に染み込ませた、すなわち浸透させた。400gのPOEペレットを最初に2Lのプラスチック容器に入れ、次いで、表II及びIIIの重量パーセントに従って、PDMSを容器に添加した。POEペレットとPDMSとの混合物を有する容器を、異なる方向(同様の頻度で上下及び左右)に5分間手で振った。振盪を止め、容器を横にして、容器を5分間静置した。振盪と容器を横にする操作を6回繰り返した後、更に3時間室温で保持した。あるいは、PDMSを室温でPOEと予備混合し、次いで自動振盪機に入れ、自動振盪機内で、60℃及び85rpmで4時間~12時間振盪させることができる。
【0093】
PDMSをPOEとブレンドするための配合方法
PMX-200流体1K cStのPDMS(本発明の実施例18、及び本発明の実施例26及び27)を含むPDMS;PMX-200流体1K cSt(15%)(本発明の実施例28~30);PMX-200流体10K cSt(本発明の実施例19);PMX-200流体60k cSt(本発明の実施例20);及びDOWSIL(商標)SGM 15 GUM(比較例B及びC)をそれぞれ、二軸スクリュー押出機配合方法によってPOEペレットとブレンドした。ブレンドを押出機に供給する前に、PDMSを最初にPOEとブレンドし、次いで、ブレンドを押出機に供給した。使用した押出機は、以下の条件/パラメータを有していた:
【0094】
使用した装置は、ZSK-18二軸スクリュー押出機であり;押出機の出力は、19.2KWであり;押出機の直径Dは、D=18mmであり;押出機のL/D比は、L/D=48であり;押出機バレルの種々のゾーンの温度を以下のように設定した:RT~150℃の範囲において、ゾーン1=60℃、ゾーン2=90℃、ゾーン3=120℃、ゾーン4=120℃、ゾーン5=120℃、ゾーン6=120℃、及びゾーン7=110℃;押出機のスクリュー速度は300rpmであり、押出機へのブレンド材料の供給速度は5~12kg/時であった。
【0095】
二軸スクリュー押出機におけるPDMS及びPOEの配合工程の後、得られたPDMS/POE化合物のブレンドを、0.5mm~1mmの直径及び2mm~5mmの長さを有するペレットに切断した。
【0096】
ナイロンへのPDMS/POE混合物の配合
ナイロン試料を最初に120℃で少なくとも4時間除湿器で乾燥させた。次いで、上述の方法:「PDMSをPOEとブレンドするための浸漬方法」又は「PDMSをPOEとブレンドするための配合方法」を使用して製造されたブレンドPDMS/POEペレットを、押出機中でPDMS/POEペレット及びナイロン試料を配合することによって乾燥ナイロン試料とブレンドした。使用した押出機は、上記のように配合することによってPDMSをPOEとブレンドするために使用したのと同じ押出機であった。PDMS/POEペレット及びナイロンサンプルを配合するための押出機の条件/パラメータは、以下の通りであった:押出機のバレル温度を、RT~約350℃の範囲において、以下のように設定した:ゾーン1=150℃、ゾーン2=195℃、ゾーン3=260℃、ゾーン4=260℃、ゾーン5=260℃、ゾーン6=260℃、ゾーン7=250℃;押出機のスクリュー速度は250rpmであり、押出機へのブレンド材料の供給速度は8~10kg/時であった。
【0097】
PDMS/POEペレット及びナイロン試料を配合した後、PDMS、POE及びナイロンのブレンドを含む得られた配合物を、0.5mm~1mmの直径及び2mm~5mmの長さを有するペレットに切断した。
【0098】
試験方法
以下の試験方法及び測定手順を使用して、強化ナイロン組成物及び以下の方法に従って強化ナイロン組成物から調製した試験片を試験した。
【0099】
毛細管粘度試験
配合されたナイロン/POE試料を、最初に、120℃で少なくとも4時間、除湿器内で乾燥させ、配合された試料を乾燥させた後、配合された試料を真空下でアルミニウムバッグ内に密封した。874 Oven Sample Processor(Thermo-Fisher Co.Ltd.から入手可能)を使用して、いわゆるカール・フッシャー法によって、配合ナイロン/POE試料中の水分含有量を試験した。配合されたナイロン/POE試料の水分は、毛細管粘度試験を用いて試料を試験する前に1,000ppm未満であることが推奨される。毛細管粘度試験に使用した毛細管レオメーター機器は、Gottfert rheograph 26(Gottfert Inc.から入手可能)であった。毛細管粘度試験に用いた試験温度は260℃であった。使用した毛細管の長さは30mmであり、毛細管の直径は1mmであった。試験に用いた剪断速度は、90 1/s~7,000 1/sの範囲にわたった。粘度に関する表に記載されたデータは、770 1/sでの剪断速度で報告される。
【0100】
射出成形方法
配合されたナイロン/POEペレットを最初に、120℃で少なくとも4時間、除湿器で乾燥させた後、ペレットを射出成形に供した。射出成形機Fanuc Roboshot S-2000i100BH(Fanucから入手可能)を射出成形方法に使用した。配合された試料を射出成形に供して試験片を製造し、本明細書において以下に記載される衝撃強度試験を用いて試験片に対して衝撃試験を行った。射出成形機及び方法のパラメータは以下の通りであった:射出スクリューのバレル温度を250℃~260℃に設定し、冷却温度は190℃であり、冷却時間は15秒であり、射出速度は30mm/秒であり、射出圧力は200MPaであった。
【0101】
衝撃強度試験
実施例で調製した試験片の衝撃性能を試験するために使用した衝撃強度試験方法は、CHARPY、ISO179(「ISO」は「国際標準化機構(International Organization for Standardization)」を表す)に記載されている。CHARPY、ISO179は、定義された条件下でプラスチックのシャルピー衝撃強度を決定するための方法を特定している。この試験で使用する試験片は、表II~表Vの配合物から作製され、以下の寸法:長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmを有する平坦な試験片である。CHARPY、ISO179は、適切にサイズ決めされたハンマーアームを有する振り子システムを使用して、3点曲げ構成で衝撃を受けたときの破壊に対するプラスチックの耐性を決定するために使用される方法を定義している。試験は機器を用いず、試験片を破壊するのに必要なエネルギーを決定するために使用される。異なる試験パラメータを、試験片が作製されている材料の種類、並びに試験される試験片におけるノッチカットの種類に従って特定する。
【0102】
本明細書に記載の実施例では、以下の一般的な手順に従った:すべての試験片に半径2mmのノッチを入れた。試験片を試験する前に、すべての試験片を最初に除湿器中で120℃で4時間乾燥させた。その後、試験片を湿器内で室温で2日間平衡化した。
【0103】
試験すべき各試験片を振り子衝撃試験機に水平に取り付け、両端を固定せずに支持した。試験機のハンマーを解放し、試験片を貫通させた。使用した第1のハンマーアームで破損が生じなかった場合、破損が生じるまで、より重いハンマーを順次使用した。次いで破壊時に、得られたエネルギー及び破壊の種類を記録した。
【0104】
使用された衝撃試験条件は以下の通りであった:4ジュールの振り子容量及び室温で≧6時間又は冷凍庫内-30℃及び/又は-40℃で≧6時間の試験片コンディショニング。冷凍庫内の試験片を冷凍庫から取り出し、5秒以内に衝撃試験を行った。試験条件は、室温(すなわち、23℃±2℃の温度)及び50%RH±10%RHであった。
【0105】
試験結果
強化ナイロン配合物の粘度結果は、上記の毛細管粘度試験を行うことによって得られ;シリーズ1実験についての粘度結果は、表VIに記載され;シリーズ2実験についての粘度結果は、表VIIに記載されている。正規化毛細管粘度の結果は、試料の毛細管粘度値を、以下の表の列見出しに示されている特定の比較例の毛細管粘度値で割ることによって計算し、次いで、その値に100を掛けて百分率に変換した。正規化されたアイゾット衝撃の結果も、試料のアイゾット衝撃値を特定の比較例のアイゾット衝撃値で割ることによって計算し(これは以下の表の見出しに示されている)、次いで、その値に100を掛けて百分率に変換した。
【0106】
【表6】

表VIの注記:(1)より低い粘度がより良好であり、望ましい。
【0107】
【表7】

表VIIの注釈:(1)より低い粘度がより良好であり、望ましい。
【0108】
強化ナイロン配合物から作製された射出成形試験片の衝撃強度の結果は、上記の射出成形方法に従って調製された射出成形試験片に対して上記の衝撃強度試験を行うことによって得られた。シリーズ1実験の衝撃強度の結果を表VIIIに記載し、シリーズ2実験の衝撃強度の結果を表IXに記載する。
【0109】
【表8】

表VIIIの注記:(1)より高い曲げ弾性率値は、対照と比較してより良好であるか、又は大幅に低下しておらず;これらの値が望ましい。
【0110】
【表9】
【0111】
結果の考察
シリーズ1の実験では、異なるタイプのPDMS(カルビノール、アミノ、カルボキシル及び非官能化)を、異なるPDMS添加量を有するPOE-g-MAH1に浸漬した。次いで、PDMS浸漬したPOEを、PA6 B3s(BASFから入手可能な中粘度ポリアミドナイロン(ナイロン6))と配合した。シリーズ1実験における配合物の毛細管粘度特性を表VIに記載し、配合物から製造した試験片の衝撃強度特性を表VIIIに記載する。
【0112】
本発明の強化ポリアミド組成物を対照配合物、例えば、強化剤POE-g-MAH1によって強化された強化ポリアミドナイロンPA6 B3sと比較すると、本発明の実施例のすべてが、PDMSを含有する強化ポリアミド組成物の室温衝撃強度特性に対して著しい改善を示した。POEで強化され、PDMS添加剤を含有する本発明の強化ポリアミド組成物の試料はまた、-30℃の低温での衝撃強度特性の著しい改善を示した。加えて、本発明の実施例は、比較例に対して維持又は改善された曲げ弾性率性能を示した。
【0113】
結果は、PDMS添加剤がPOEの強化効率を著しく改善することができるという結論を裏付けている。更に、PDMSが官能化されているか官能化されていないかにかかわらず、衝撃強度に有意差はない。また、PDMSの粘度(分子量に相関する)は、強化ポリアミド組成物について室温での衝撃強度に顕著な差を示さず、しかしながら、より高い粘度のPDMS(より高い分子量のPDMSに相関する)は、強化ポリアミド組成物について-30℃での衝撃強度の改善がより少ないことを示した。例えば、PDMS、PMX-200流体10 cSt~PMX-200流体100cStを含有する強化ポリアミド組成物(本発明の実施例12~17)の-30℃衝撃強度を、PDMS、PMX-200流体1k cSt及びPMX-200流体10k cStを含有する強化ポリアミド組成物(本発明の実施例18及び19)の-30℃衝撃強度を比較すると、より高い粘度のPMX-200流体PDMS(より高いMwのPMX-200流体PDMSを意味する)は、強化ポリアミド組成物の-30℃衝撃強度に対してはるかに少ない改善を有する。シリーズ1の実験において、PMX-200流体1k cSt及びPMX-PMX-200流体10k cStのPDMSは高いMw特性を有するので、これらの2つのPDMS試料はPOEに浸漬させることができないことに留意されたい。これらの2つのPDMS試料を、まず、浸漬法の代わりに配合法を使用して100℃下でPOEと配合させた。
【0114】
衝撃強度に加えて、アミノ及びカルボキシルPDMSは、毛細管粘度の顕著な減少を示した。表VI及びVIIは、770-s(毛細管粘度試験の典型的な剪断)でのPDMSの毛細管粘度を記載する。結果は、PDMSの粘度の約30%の減少が起こることを示す。アミン又は有機酸は、強化ナイロン組成物の流動性を改善することが可能である。
【0115】
シリーズ2の実験では、様々なPDMSを、異なるPDMSローディングを有するPOE-g-MAH2と混合した。シリーズ2実験における配合物の毛細管粘度特性を表VIIに記載し、配合物から作製した試験片の衝撃強度衝撃強度特性を表IXに記載する。表IXの結果は、室温及び-30℃の温度での衝撃強度について同じ改善を示している。15%のPOE充填量を有する配合物も検査したところ、改善傾向は同じである。高すぎるPDMS充填量(例えば、POE中10%のPDMS)を有する配合物について、結果は、2%~5%のPDMS充填量を有する配合物と比較して、室温での衝撃強度の低下を示す。予想外に、強化ポリアミド組成物中のPDMS添加量の結果は、衝撃強度の改善に影響を及ぼす可能性があり、したがって、強化ポリアミド組成物の所望の衝撃強度を提供するために、PDMS充填量の適切な選択が必要であることが見出された。
【国際調査報告】