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特表2024-543366浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法
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  • 特表-浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/25 20160101AFI20241114BHJP
   B63B 75/00 20200101ALI20241114BHJP
【FI】
F03D13/25
B63B75/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527286
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-08
(86)【国際出願番号】 CN2022082970
(87)【国際公開番号】W WO2023082524
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】202111334857.3
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521100472
【氏名又は名称】江蘇亨通藍徳海洋工程有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGTONG LAND OCEAN ENGINEERING CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Block A, Shuilvxincheng Business Building, Guomeng Town, Yandu District, Yancheng, Jiangsu , China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】李飛
(72)【発明者】
【氏名】杜浩楠
(72)【発明者】
【氏名】張俊蕾
(72)【発明者】
【氏名】陸剣慶
(72)【発明者】
【氏名】樊泳波
(72)【発明者】
【氏名】許文強
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA24
3H178BB77
3H178CC25
3H178DD67X
(57)【要約】
本発明は、浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法を提供し、浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時にナセルとタワーとを確実にドッキングできないという問題を解決することができ、ジャッキアップ洋上プラットフォーム又は着床式洋上プラットフォームを用いて大規模な洋上風力タービンを配置することによる高コストや長い工期の問題を解決する。浮体船のデッキプラットフォームにクレーンが設けられ、クレーンは、ドッキング及び位置決め装置が予め配置されたナセルを、スプレッダーによってタワーの上方の所定の距離まで予め吊り上げ、その後、ハンドチェーンホイストを介してドッキング及び位置決め装置をタワーに接続し、ハンドチェーンホイストを手動で操作してナセルフランジとタワーフランジのフランジ孔を合わせるとともに、クレーンを操作してナセルをナセルフランジ孔まで降ろして配置しておき、1対1で対応するタワーフランジ孔内に接続ボルトを入れ、最後に、ドッキング及び位置決め装置とハンドチェーンホイストを取り外し、このようにナセルとタワーとのドッキング作業を完了する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体船のデッキプラットフォームにクレーンが設けられ、前記クレーンのメインリフティングジブには、ナセルを吊り上げるためのスプレッダーが設けられ、洋上風力タービンのナセルの底面及びタワーの天面にナセルフランジ及びタワーフランジがそれぞれ設けられ、前記ナセルフランジ及びタワーフランジには、ナセルフランジ孔及びタワーフランジ孔がそれぞれ周方向に均等に開けられ、かつ、ナセルフランジ孔とタワーフランジ孔は互いに1対1で対応する浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法であって、
クレーンを用いて、前記スプレッダーによって、ドッキング及び位置決め装置が予め配置されたナセルをタワーの上方の所定の距離まで吊り上げ、その後、ハンドチェーンホイストを介して前記ドッキング及び位置決め装置をタワーに接続し、ハンドチェーンホイストを手動で操作してナセルフランジとタワーフランジのフランジ孔を合わせるとともに、クレーンを操作してナセルをナセルフランジ孔まで降ろして配置しておき、1対1で対応するタワーフランジ孔内に接続ボルトを入れ、最後に、前記ドッキング及び位置決め装置とハンドチェーンホイストを取り外し、このように、ナセルとタワーとのドッキング作業を完了する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ドッキング及び位置決め装置は、位置決めピンと、ナセルの底部の中心位置に取り付けられた吊り上げ板と、を含み、前記吊り上げ板の底部に、十字状に配置された4つのリフティングラグが設けられ、前記4つのリフティングラグは、それぞれ、第1リフティングラグ、第2リフティングラグ、第3リフティングラグ、及び第4リフティングラグであり、前記位置決めピンの長さが前記接続ボルトの長さよりも長く、
ナセルを吊り上げる前に、ナセルフランジ孔のうちの3つを位置決めピン孔として選択し、前記3つの位置決めピン孔内に前記位置決めピンを設け、残りのナセルフランジ孔のすべてに接続ボルトを設け、前記3つの位置決めピン孔は、それぞれ第1位置決めピン孔、第2位置決めピン孔、及び第3位置決めピン孔であり、前記第1位置決めピン孔及び第2位置決めピン孔は、前記ナセルの底部の中心と同一直線上にあり、
また、タワーフランジ孔のうちの4つを牽引孔とし、それぞれ、第1牽引孔、第2牽引孔、第3牽引孔、第4牽引孔とし、第1牽引孔は第1位置決めピン孔に対応し、第2牽引孔は第2位置決めピン孔に対応し、前記第3位置決めピン孔に対応するタワーフランジ孔と前記第1牽引孔との間のいずれかのタワーフランジ孔、前記第2牽引孔との間のいずれかのタワーフランジ孔を前記第3牽引孔及び第4牽引孔とし、
クレーンが上記のドッキング及び位置決め装置を配置したナセルをタワーの上方の所定の距離まで吊り上げた後、4つのハンドチェーンホイストを利用し、4つのハンドチェーンホイストの一方側のハンガーフック端を4つのリフティングラグにそれぞれ接続し、4つのハンドチェーンホイストの他方側のハンガーフック端をスリングを介して前記第1牽引孔、第2牽引孔、第3牽引孔、第4牽引孔にそれぞれ接続し、その後、前記4つのハンドチェーンホイストを手動で操作しながらクレーンによってナセルを降ろし、3つの位置決めピン孔内の位置決めピンをそれぞれタワーの対応するタワーフランジ孔に入れて、ナセルとタワーとの初期位置合わせを行い、
その後、残りのナセルフランジ孔内の接続ボルトがすべて1対1で対応するタワーフランジ孔に伸びるまで、クレーンによってナセルをさらに降ろし、
最後に、4つのハンドチェーンホイスト及び3つの位置決めピンを取り外し、3つの位置決めピン内にそれぞれ接続ボルトを取り付ける、ことを特徴とする請求項1に記載の浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法。
【請求項3】
前記位置決めピンは、第1位置決めピンと第2位置決めピンを含み、前記第1位置決めピンの長さが第2位置決めピンの長さよりも長く、かつ、第2位置決めピンの長さが接続ボルトの長さよりも長く、前記第2位置決めピンは2つ設けられており、2つの前記第2位置決めピンは、それぞれ第1位置決めピン孔及び第2位置決めピン孔内に取り付けられ、前記第1位置決めピンは、前記第3位置決めピン孔内に取り付けられ、前記4つのハンドチェーンホイストは、それぞれ第1ハンドチェーンホイスト、第2ハンドチェーンホイスト、第3ハンドチェーンホイスト、及び第4ハンドチェーンホイストであり、第1ハンドチェーンホイストは、一方側のハンガーフック端が前記第1リフティングラグに接続され、他方側のハンガーフック端がスリングを介して第1牽引孔に接続され、第2ハンドチェーンホイストは、一方側のハンガーフック端が前記第2リフティングラグに接続され、他方側のハンガーフック端がスリングを介して第2牽引孔に接続され、第3ハンドチェーンホイストは、一方側のハンガーフック端が前記第4リフティングラグに接続され、他方側のハンガーフック端がスリングを介して第3牽引孔に接続され、第4ハンドチェーンホイストは、一方側のハンガーフック端が前記第3リフティングラグに接続され、他方側のハンガーフック端がスリングを介して第4牽引孔に接続され、
前記4つのハンドチェーンホイストを取り付けるときに、適切に取り付けられた4つのハンドチェーンホイストのいずれも力を受けないように、ホイストの長さを同時に調整する必要があり、
その後、第3ハンドチェーンホイスト及び第4ハンドチェーンホイストをそれぞれ手動で締め付けながら、クレーンによってナセルをゆっくりと降ろし、前記第1位置決めピンの位置を調整しながら第1位置決めピンを対応するタワーフランジ孔内にゆっくりと入れ、
次に、第3ハンドチェーンホイスト及び第4ハンドチェーンホイストを締め付けながら、第1ハンドチェーンホイスト及び第2ハンドチェーンホイストをそれぞれ手動で調整することによって2つの前記第2位置決めピンの位置を調整し、それと同時に、2つの第2位置決めピンがそれぞれ第1牽引孔及び第2牽引孔に位置合わせて伸びるまでクレーンによってナセルをゆっくりと降ろし、それによって、ナセルとタワーとの初期位置決めを完了する、ことを特徴とする請求項2に記載の浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法。
【請求項4】
前記第3位置決めピン孔は、前記第1位置決めピン孔と第2位置決めピン孔とを接続する垂直二等分線上にあり、且つ、前記第3位置決めピン孔に対応するタワーフランジ孔は、径方向において第3牽引孔及び第4牽引孔のいずれとも45°の角度をなす、ことを特徴とする請求項2に記載の浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法。
【請求項5】
3つの前記位置決めピンは、いずれもピン本体部、ネジ付き端部、位置決め端部、及び位置決め案内部を含み、前記ピン本体部は、一端がナセルフランジ孔と嵌合する前記ネジ付き端部であり、他端が前記位置決め案内部によって前記位置決め端部に一体接続され、前記位置決め案内部は、ネジ付き端部から位置決め端部に向かって延びる縮径円錐状であり、前記位置決め端部は、規則的な四角形である、ことを特徴とする請求項2に記載の浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法。
【請求項6】
前記ハンドチェーンホイストの選択は、ハンドチェーンホイストの長さの選択及び受力の選択を含み、其中ハンドチェーンホイストの長さは、ナセルを吊り上げる前に浮体船の現在のロール角及びピッチ角から、横揺れ=ロール角度×吊り下げ物の高さ×π/180、縦揺れ=ピッチ角度×吊り下げ物の高さ×π/180により浮体船の横揺れ及び縦揺れを算出し、算出した前記横揺れ及び縦揺れに基づいてCADロフティングを行い、さらにCADロフティングサイズを基にして余裕0.5m~1mを残し、ハンドチェーンホイストの長さを得る方法によって計算され、前記ハンドチェーンホイストの受力は、算出した横揺れと縦揺れを重ね合わせて総合的な揺れを得て、ホイスト受力=[ナセルの重量×(総合的な揺れの2倍)/吊り下げ物のブームトップからの距離]×ハンドチェーンホイストの最大長さ/リフティングラグの牽引孔からの水平方向の距離によって計算される、ことを特徴とする請求項2に記載の浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法。
【請求項7】
クレーンによってナセル吊り上げ及びドッキング作業を行う前に、建設現場の天候、海象、船舶の状況が所定の吊り上げ要件を満たしているかどうかを観察して判断する必要があり、
クレーンによってナセル吊り上げ及びドッキング作業を行う前に、今後12時間以内の建設現場の天気予報を観察して更新し、風力タービンのタワー吊り上げ完了後9時間以内に、風速が8メートル/秒未満であること、降雨がないこと、うねり高さが0.5メートル未満であることを確認し、また、浮体船のロール角とピッチ角の両方が0.2°に維持され、浮体船の傾斜角とトリム角が0.3°に維持されることを確認する、ことを特徴とする請求項1に記載の浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法。
【請求項8】
ナセルをタワーの上の所定の距離まで吊り上げるプロセス中、クレーンを2回停止して観察する必要があり、1回目の停止観察は、クレーンによってナセルを吊り上げた後に実施し、2回目の停止観察は、ナセルを持ち上げてタワーの上まで回転させた後に実施し、前記2回の停止観察では、吊り上げた後のナセルの当該観察位置での実際の揺れが予め設定された安全吊り上げ制御揺れγよりも小さいか否か、ピッチングが100mm未満であるか否かが観察され、また、2回の停止観察の時間が2分間~10分間である、ことを特徴とする請求項1に記載の浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法。
【請求項9】
クレーンによってナセルを吊り上げる前に、ナセルフランジには2本のガイラインを取り付け、各ガイラインはメインガイラインとサブガイラインを含み、前記メインガイラインは、浮体船のウインドラスのワーピングエンドによって巻き取られ又は巻き戻され、予備ガイラインは、手動作業によりガイライン操縦を行う、ことを特徴とする請求項1に記載の浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法。
【請求項10】
前記スプレッダーは、ハンガーフックユニットとホイスティングビームを含み、前記ハンガーフックユニットは前記クレーンのメインリフティングジブに接続され、前記ホイスティングビームは、上方スリングを介して前記ハンガーフックユニットに吊られ、前記ホイスティングビームの下方には前記ナセルが索具を介して吊り上げられ、前記ホイスティングビームは両端のそれぞれに1本のガイラインが接続されており、一方側のガイラインは、前記クレーンのメインリフティングジブの滑車に巻き付けられ、前記ナセルとタワーとのドッキング作業が完了した後、かつ前記スプレッダーを取り外す前に建設現場の風速が今後1時間で8メートル/秒を超えないこと、スプレッダーを取り外す前の30分以内のクレーンのクレードル角が0.2度を超えないこと、及びスプレッダーの揺れが0.4メートルを超えないことを確認する、ことを特徴とする請求項1に記載の浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力タービン配置の技術分野に関し、特に、洋上風力タービンのナセルとタワーとのドッキング及び配置の分野に関し、具体的には、浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法である。
【背景技術】
【0002】
ナセルとタワーとのドッキング作業は、風力タービンの配置プロセスの重要な工程であり、大型の吊り上げ装置を使用して、まず、ナセルをタワーの上方まで吊り上げ、次にナセルの底部フランジをタワーの上部フランジに接続し、その後、ボルトによって接続して配置するのが一般的である。洋上風力タービンの配置作業では、洋上の外部環境負荷の激しい影響により、浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時に浮体船のクレーンジブが大きく揺れ、ジブのフックで吊り上げられたナセルが大きな揺れを起こし、風力タービンのタワーに確実にドッキングすることが困難になり、無理にドッキングすると、揺れるナセルとタワーとが衝突しやすく、軽い場合、両者をドッキングするボルトが曲がったり、深刻な場合、ナセルが破損したりする恐れがある。このため、現在のほとんどの洋上風力タービンの配置では、ジャッキアップ洋上プラットフォーム又は着床式洋上プラットフォームを使用して、ナセルを吊り上げてタワーとドッキングする。しかし、ジャッキアップ洋上プラットフォーム又は着床式洋上プラットフォームは、それ自体が高コストで、機動性が低く、特に大型洋上風力タービンの配置には、コストが高く、工期も長いため、満足のいくものであるとは言えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の問題に対して、本発明は、浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法を提供し、浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時にナセルとタワーとを確実にドッキングできないという問題を解決することができ、ジャッキアップ洋上プラットフォーム又は着床式洋上プラットフォームを用いて大規模な洋上風力タービンを配置することによる高コストや長い工期の問題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
その技術的形態は以下の通りである。浮体船のデッキプラットフォームにクレーンが設けられ、前記クレーンのメインリフティングジブには、ナセルを吊り上げるためのスプレッダーが設けられ、洋上風力タービンのナセルの底面及びタワーの天面にナセルフランジ及びタワーフランジがそれぞれ設けられ、前記ナセルフランジ及びタワーフランジには、ナセルフランジ孔及びタワーフランジ孔がそれぞれ周方向に均等に開けられ、かつ、ナセルフランジ孔とタワーフランジ孔は互いに1対1で対応する浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法であって、クレーンを用いて、前記スプレッダーによって、ドッキング及び位置決め装置が予め配置されたナセルをタワーの上方の所定の距離まで吊り上げ、その後、ハンドチェーンホイストを介して前記ドッキング及び位置決め装置をタワーに接続し、ハンドチェーンホイストを手動で操作してナセルフランジとタワーフランジのフランジ孔を合わせるとともに、クレーンを操作してナセルをナセルフランジ孔まで降ろして配置しておき、1対1で対応するタワーフランジ孔内に接続ボルトを入れ、最後に、前記ドッキング及び位置決め装置とハンドチェーンホイストを取り外し、このように、ナセルとタワーとのドッキング作業を完了する、ことを特徴とする。
【0005】
さらに、前記ドッキング及び位置決め装置は、位置決めピンと、ナセルの底部の中心位置に取り付けられた吊り上げ板と、を含み、前記吊り上げ板の底部に、十字状に配置された4つのリフティングラグが設けられ、前記4つのリフティングラグは、それぞれ、第1リフティングラグ、第2リフティングラグ、第3リフティングラグ、及び第4リフティングラグであり、前記位置決めピンの長さが前記接続ボルトの長さよりも長く、ナセルを吊り上げる前に、ナセルフランジ孔のうちの3つを位置決めピン孔として選択し、前記3つの位置決めピン孔内に前記位置決めピンを設け、残りのナセルフランジ孔のすべてに接続ボルトを設け、前記3つの位置決めピン孔は、それぞれ第1位置決めピン孔、第2位置決めピン孔、及び第3位置決めピン孔であり、前記第1位置決めピン孔及び第2位置決めピン孔は、前記ナセルの底部の中心と同一直線上にあり、また、タワーフランジ孔のうちの4つを牽引孔とし、それぞれ、第1牽引孔、第2牽引孔、第3牽引孔、第4牽引孔とし、第1牽引孔は第1位置決めピン孔に対応し、第2牽引孔は第2位置決めピン孔に対応し、前記第3位置決めピン孔に対応するタワーフランジ孔と前記第1牽引孔との間のいずれかのタワーフランジ孔、前記第2牽引孔との間のいずれかのタワーフランジ孔を前記第3牽引孔及び第4牽引孔とし、クレーンが上記のドッキング及び位置決め装置を配置したナセルをタワーの上方の所定の距離まで吊り上げた後、4つのハンドチェーンホイストを利用し、4つのハンドチェーンホイストの一方側のハンガーフック端を4つのリフティングラグにそれぞれ接続し、4つのハンドチェーンホイストの他方側のハンガーフック端をスリングを介して前記第1牽引孔、第2牽引孔、第3牽引孔、第4牽引孔にそれぞれ接続し、その後、前記4つのハンドチェーンホイストを手動で操作しながらクレーンによってナセルを降ろし、3つの位置決めピン孔内の位置決めピンをそれぞれタワーの対応するタワーフランジ孔に入れて、ナセルとタワーとの初期位置合わせを行い、その後、残りのナセルフランジ孔内の接続ボルトがすべて1対1で対応するタワーフランジ孔に伸びるまで、クレーンによってナセルをさらに降ろし、最後に、4つのハンドチェーンホイスト及び3つの位置決めピンを取り外し、3つの位置決めピン内にそれぞれ接続ボルトを取り付ける。
【0006】
さらに、前記位置決めピンは、第1位置決めピンと第2位置決めピンを含み、前記第1位置決めピンの長さが第2位置決めピンの長さよりも長く、かつ、第2位置決めピンの長さが接続ボルトの長さよりも長く、前記第2位置決めピンは2つ設けられており、2つの前記第2位置決めピンは、それぞれ第1位置決めピン孔及び第2位置決めピン孔内に取り付けられ、前記第1位置決めピンは、前記第3位置決めピン孔内に取り付けられ、前記4つのハンドチェーンホイストは、それぞれ第1ハンドチェーンホイスト、第2ハンドチェーンホイスト、第3ハンドチェーンホイスト、及び第4ハンドチェーンホイストであり、第1ハンドチェーンホイストは、一方側のハンガーフック端が前記第1リフティングラグに接続され、他方側のハンガーフック端がスリングを介して第1牽引孔に接続され、第2ハンドチェーンホイストは、一方側のハンガーフック端が前記第2リフティングラグに接続され、他方側のハンガーフック端がスリングを介して第2牽引孔に接続され、第3ハンドチェーンホイストは、一方側のハンガーフック端が前記第4リフティングラグに接続され、他方側のハンガーフック端がスリングを介して第3牽引孔に接続され、第4ハンドチェーンホイストは、一方側のハンガーフック端が前記第3リフティングラグに接続され、他方側のハンガーフック端がスリングを介して第4牽引孔に接続され、前記4つのハンドチェーンホイストを取り付けるときに、適切に取り付けられた4つのハンドチェーンホイストのいずれも力を受けないように、ホイストの長さを同時に調整する必要があり、その後、第3ハンドチェーンホイスト及び第4ハンドチェーンホイストをそれぞれ手動で締め付けながら、クレーンによってナセルをゆっくりと降ろし、前記第1位置決めピンの位置を調整しながら第1位置決めピンを対応するタワーフランジ孔内にゆっくりと入れ、次に、第3ハンドチェーンホイスト及び第4ハンドチェーンホイストを締め付けながら、第1ハンドチェーンホイスト及び第2ハンドチェーンホイストをそれぞれ手動で調整することによって2つの前記第2位置決めピンの位置を調整し、それと同時に、2つの第2位置決めピンがそれぞれ第1牽引孔及び第2牽引孔に位置合わせて伸びるまでクレーンによってナセルをゆっくりと降ろし、それによって、ナセルとタワーとの初期位置決めを完了する。
【0007】
またさらに、前記第3位置決めピン孔は、前記第1位置決めピン孔と第2位置決めピン孔とを接続する垂直二等分線上にあり、且つ、前記第3位置決めピン孔に対応するタワーフランジ孔は、径方向において第3牽引孔及び第4牽引孔のいずれとも45°の角度をなす。
【0008】
さらに、3つの前記位置決めピンは、いずれもピン本体部、ネジ付き端部、位置決め端部、及び位置決め案内部を含み、前記ピン本体部は、一端がナセルフランジ孔と嵌合する前記ネジ付き端部であり、他端が前記位置決め案内部によって前記位置決め端部に一体接続され、前記位置決め案内部は、ネジ付き端部から位置決め端部に向かって延びる縮径円錐状であり、前記位置決め端部は、規則的な四角形である。
【0009】
さらに、前記ハンドチェーンホイストの長さは、ナセルを吊り上げる前に浮体船の現在のロール角及びピッチ角から、横揺れ=ロール角度×吊り下げ物の高さ×π/180、縦揺れ=ピッチ角度×吊り下げ物の高さ×π/180によって浮体船の横揺れ及び縦揺れを算出する方法によって計算され、算出した横揺れ及び縦揺れからCADロフティングを行い、さらにCADロフティングサイズを基にして余裕0.5m~1mを残し、ハンドチェーンホイストの長さを得る。
【0010】
さらに、前記ハンドチェーンホイストの受力は、上記で算出した横揺れと縦揺れとを重ね合わせて総合的な揺れを得て、ホイスト受力=[ナセルの重量×(総合的な揺れの2倍)/吊り下げ物のブームトップからの距離]×ハンドチェーンホイストの最大長さ/リフティングラグの牽引孔からの水平方向の距離によって計算される。
【0011】
さらに、クレーンによってナセル吊り上げ及びドッキング作業を行う前に、建設現場の天候、海象、船舶の状況が所定の吊り上げ要件を満たしているかどうかを観察して判断する必要がある。
【0012】
またさらに、クレーンによってナセル吊り上げ及びドッキング作業を行う前に、今後12時間以内の建設現場の天気予報を観察して更新し、風力タービンのタワー吊り上げ完了後9時間以内に、風速が8メートル/秒未満であること、降雨がないこと、うねり高さが0.5メートル未満であることを確認し、また、浮体船のロール角とピッチ角の両方が0.2°に維持され、浮体船の傾斜角とトリム角が0.3°に維持されることを確認する。
【0013】
さらに、ナセルをタワーの上の所定の距離まで吊り上げるプロセス中、クレーンを2回停止して観察する必要があり、1回目の停止観察は、クレーンによってナセルを吊り上げた後に実施し、2回目の停止観察は、ナセルを持ち上げてタワーの上まで回転させた後に実施し、前記2回の停止観察では、吊り上げた後のナセルの当該観察位置での実際の揺れが予め設定された安全吊り上げ制御揺れγよりも小さいか否か、ピッチングが100mm未満であるか否かが観察され、また、2回の停止観察の時間が2分間~10分間である。
【0014】
さらに、クレーンによってナセルを吊り上げる前に、ナセルフランジには2本のガイラインを取り付け、各ガイラインはメインガイラインとサブガイラインを含み、前記メインガイラインは、浮体船のウインドラスのワーピングエンドによって巻き取られ又は巻き戻され、前記予備ガイラインは、手動作業によりガイライン操縦を行う。
【0015】
さらに、前記スプレッダーは、ハンガーフックユニットとホイスティングビームを含み、前記ハンガーフックユニットは前記クレーンのメインリフティングジブに接続され、前記ホイスティングビームは、上方スリングを介して前記ハンガーフックユニットに吊られ、前記ホイスティングビームの下方には前記ナセルが索具を介して吊り上げられ、前記ホイスティングビームは両端のそれぞれに1本のガイラインが接続されており、一方側のガイラインは、前記クレーンのメインリフティングジブの滑車に巻き付けられ、前記ナセルとタワーとのドッキング作業が完了した後、かつ前記スプレッダーを取り外す前に、建設現場の風速が今後1時間で8メートル/秒を超えないこと、スプレッダーを取り外す前の30分以内のクレーンのクレードル角が0.2度を超えないこと、及びスプレッダー揺れが0.4メートルを超えないことを確認する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有益な効果は以下の通りである。ナセルにドッキング及び位置決め装置が設けられ、ドッキング及び位置決め装置とタワーがハンドチェーンホイストによって接続され、ナセルがクレーンによって降ろされてタワーにドッキングするプロセス中、ハンドチェーンホイストに対する操作によってナセルの角度及び位置を調整し、ナセルフランジ孔に予め設置された接続ボルトを対応するタワーフランジ孔に位置合わせすることによって、ドッキングの確実性を効果的に向上させる。また、浮体船を利用してナセルの吊り上げ及びタワーとのドッキングの作業を行うことによって、ジャッキアップ洋上プラットフォームや着床式洋上プラットフォームを用いた作業による高コスト、及び長い施工周期の問題を回避する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るドッキング及び位置決め装置及びハンドチェーンホイストによるナセルとタワーとのドッキングの模式図である。
図2】本発明におけるドッキング及び位置決め装置の吊り上げ板の構造模式図である。
図3】本発明におけるドッキング及び位置決め装置の位置決めピンの構造模式図である。
図4】本発明における3つの位置決めピン孔のナセルの底面でのレイアウトの模式図である。
図5】本発明における4つのハンドチェーンホイストのレイアウトの平面模式図である。
図6図4におけるA-Aに沿って示されるナセルとタワーとのドッキングの流れ模式図である。
図7】本発明における浮体船を用いたナセルとタワーとのドッキングの模式図である。
図8】本発明におけるハンドチェーンホイストの受力の計算の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、浮体船を用いた洋上風力タービンの配置時のナセルの吊り上げ及びドッキング方法において、浮体船のデッキプラットフォーム60にクレーン50が設けられ、図7に示すように、クレーン50のメインリフティングジブ51には、ナセルを吊り上げるためのスプレッダーが設けられ、クレーン50によってナセル吊り上げ及びドッキング作業を行う前に、建設現場の天候、海象、船舶の状態が所定の吊り上げ要件を満たしているかどうかを観察して判断する必要がある。クレーンによってナセル吊り上げ及びドッキング作業を行う前に、今後12時間以内の建設現場の天気予報を観察して更新し、風力タービンのタワー吊り上げ完了後9時間以内に、風速が8メートル/秒未満であること、降雨がないこと、うねり高さが0.5メートル未満であることを確認し、また、浮体船のロール角とピッチ角の両方が0.2°に維持され、浮体船の傾斜角とトリム角が0.3°に維持されることを確認する。さらに、ナセルを吊り上げる前に、甲板勤務者は船の姿勢やアンカーポイントに係る力をリアルタイムで監視し、アンカーケーブルにかかる力を即座に調整して船を安定した吊り上げ状態に保つ。それによって、浮体船への悪天候や海象の影響を可能な限り回避し、浮体船はナセルとタワーを比較的安定した状態で吊り上げてドッキングすることができる。
【0019】
図1に示すように、洋上風力タービンのナセル10の底面及びタワー20の天面にナセルフランジ11がそれぞれ設けられ、タワーフランジ21、ナセルフランジ及びタワーフランジには、ナセルフランジ孔及びタワーフランジ孔がそれぞれ周方向に均等に開けられ、かつ、ナセルフランジ孔とタワーフランジ孔は互いに1対1で対応する。クレーン50は、スプレッダーによって、ドッキング及び位置決め装置が予め配置されたナセル10をタワー20の上方の所定の距離まで吊り上げ、その後、タワー20を介してドッキング及び位置決め装置をハンドチェーンホイスト36に接続し、ハンドチェーンホイストを手動で操作してナセルフランジとタワーフランジのフランジ孔を合わせるとともに、クレーンを操作してナセルをナセルフランジ孔まで降ろして配置しておき、接続ボルト33を1対1で対応するタワーフランジ孔に入れ、最後に、ドッキング及び位置決め装置とハンドチェーンホイストを取り外し、このようにナセルとタワーとのドッキング作業を完了する。
【0020】
クレーンによってナセル10を吊り上げる前に、ナセルフランジ11には2本のガイラインを取り付け、各ガイラインはメインガイラインとサブガイラインを含み、メインガイラインは、浮体船のウインドラスのワーピングエンドによって巻き取られ又は巻き戻され、予備ガイラインは、手動作業によりガイライン操縦を行う。操作の際には、前後のウインドラスにはそれぞれ、ウインドラスを操作するための熟練した船員が装備されており、ウインドラスの隣には2人の作業員がおり、1人はワーピングエンドにロープを巻き取り、巻き取りと巻き戻しをリアルタイムで制御することを担当し、もう1人はタワーのプラットフォームからの指示に従い、ウインドラスを操縦する船員に指示を伝える。予備ガイライン操縦には手動ガイライン操縦が使用され、4人が引っ張ってガイライン操縦制御を行い、ガイラインは、現場の吊り上げ角度に応じてガイライン操縦位置を調整し、メインガイラインが破断した場合に、ナセルが高空で旋回しないことを回避する。キャビンの吊り上げプロセス中、吊り上げ指揮官はリアルタイムでキャビンの姿勢を観察し、ガイライン操縦制御要員にタイムリーな指示を与えると同時に、クレーンのクレーンジブフレームに対するキャビンの位置を観察して、有効な安全距離を確保する。
【0021】
ナセル10を吊り上げる前に、ナセル10の底面の中央にドッキング及び位置決め装置を取り付ける。図2図4、及び図5に示すように、ドッキング及び位置決め装置は、位置決めピンと、ナセルの底部の中心位置に取り付けられた吊り上げ板31と、を含み、吊り上げ板31の底部に、十字状に配置された4つのリフティングラグが設けられ、この4つのリフティングラグは、それぞれ、第1リフティングラグ32a、第2リフティングラグ32b、第3リフティングラグ32c、及び第4リフティングラグ32dであり、位置決めピンの長さが接続ボルト33の長さよりも長く、ナセル10を吊り上げる前に、ナセルフランジ孔のうちの3つを位置決めピン孔として選択し、この3つの位置決めピン孔内に位置決めピンを設け、残りのナセルフランジ孔のすべてに接続ボルト33を設け、3つの位置決めピン孔は、それぞれ第1位置決めピン孔34a、第2位置決めピン孔34b、及び第3位置決めピン孔34cであり、第1位置決めピン孔34a、第2位置決めピン孔34bは、ナセル10の底部の中心と同一直線上にある。また、タワーフランジ孔のうちの4つを牽引孔とし、それぞれ、第1牽引孔22a、第2牽引孔22b、第3牽引孔22c、第4牽引孔22dとし、第1牽引孔22aは第1位置決めピン孔34aに対応し、第2牽引孔22bは第2位置決めピン孔34bに対応し、第3位置決めピン孔34cに対応するタワーフランジ孔と第1牽引孔22aとの間のいずれかのタワーフランジ孔、第2牽引孔22bとの間のいずれかのタワーフランジ孔を第3牽引孔22c及び第4牽引孔22dとする。クレーンが上記のドッキング及び位置決め装置を配置したナセル10をタワーの上方の所定の距離まで吊り上げた後、4つのハンドチェーンホイストを利用し、4つのハンドチェーンホイストの一方側のハンガーフック端を4つのリフティングラグにそれぞれ接続し、4つのハンドチェーンホイストの他方側ハンガーフック端をスリングを介して第1牽引孔22a、第2牽引孔22b、第3牽引孔22c、第4牽引孔22dにそれぞれ接続し、その後、4つのハンドチェーンホイストを手動で操作しながらクレーンによってナセルを降ろし、3つの位置決めピン孔内の位置決めピンをそれぞれタワーの対応するタワーフランジ孔に入れて、ナセルとタワーとの初期位置合わせを行い、その後、残りのナセルフランジ孔内の接続ボルト33がすべて1対1対で対応するタワーフランジ孔に伸びるまで、クレーンによってナセルをさらに降ろし、最後に、4つのハンドチェーンホイスト及び3つの位置決めピンを取り外し、3つの位置決めピン内にそれぞれ接続ボルトを取り付ける。三角測量原理を利用して、ナセルフランジ孔のうちの3つのフランジ孔を3つの位置決めピン孔とし、この3つの位置決めピン孔のそれぞれに位置決めピンを設け、4つのハンドチェーンホイストによって、ナセルの底面の中心に設けられた吊り上げ板31の4つのリフティングラグをタワーフランジ21の4つの牽引孔にそれぞれ接続し、ドッキングプロセス中、4つのハンドチェーンホイストを牽引することによって、タワー20に対するナセル10の角度を調整し、3つの位置決めピンをタワーの対応するフランジ孔に合わせ、さらに3つの位置決めピンによってナセルとタワーとの初期位置決めを実現する。
【0022】
好ましい技術案では、図3図5、及び図6に示すように、位置決めピンは、第1位置決めピン35aと第2位置決めピン35bを含み、第1位置決めピン35aの長さが第2位置決めピン35bの長さよりも長く、且つ、第2位置決めピン35bの長さが接続ボルト33の長さよりも長く、第2位置決めピン35bは2つ設けられており、2つの第2位置決めピン35bは、それぞれ第1位置決めピン孔34a及び第2位置決めピン孔34b内に取り付けられ、第1位置決めピン35aは、第3位置決めピン孔35c内に取り付けられ、4つのハンドチェーンホイストは、それぞれ第1ハンドチェーンホイスト36a、第2ハンドチェーンホイスト36b、第3ハンドチェーンホイスト36c、及び第4ハンドチェーンホイスト36dであり、第1ハンドチェーンホイスト36aは、一方側のハンガーフック端が第1リフティングラグ32aに接続され、他方側のハンガーフック端がスリングを介して第1牽引孔22aに接続され、第2ハンドチェーンホイスト36bは、一方側のハンガーフック端が第2リフティングラグ32bに接続され、他方側のハンガーフック端がスリングを介して第2牽引孔22bに接続され、第3ハンドチェーンホイスト36cは、一方側のハンガーフック端が第4リフティングラグ32dに接続され、他方側のハンガーフック端がスリングを介して第3牽引孔22cに接続され、第4ハンドチェーンホイスト36dは、一方側のハンガーフック端が第3リフティングラグ32cに接続され、他方側のハンガーフック端がスリングを介して第4牽引孔22dに接続される。4つのハンドチェーンホイストを取り付けるときに、適切に取り付けられた4つのハンドチェーンホイストのいずれも力を受けないように、ホイストの長さを同時に調整する必要がある。その後、第3ハンドチェーンホイスト36c及び第4ハンドチェーンホイスト36dをそれぞれ手動で締め付けながら、クレーンによってナセルをゆっくりと降ろし、第1位置決めピン35aの位置を調整しながら第1位置決めピン35aを対応するタワーフランジ孔内にゆっくりと入れる。次に、第3ハンドチェーンホイスト36c及び第4ハンドチェーンホイスト36dを締め付けながら、第1ハンドチェーンホイスト36a及び第2ハンドチェーンホイスト36bをそれぞれ調整することによって2つの第2位置決めピン35bの位置を調整し、それと同時に、2つの第2位置決めピン35bがそれぞれ第1牽引孔22a及び第2牽引孔22bに位置合わせて伸びるまで、クレーンによってナセルをゆっくりと降ろし、それによって、ナセルとタワーとの初期位置決めを完了する。三角測量原理に基づいて、3つの位置決めピンを、1つが長く、残りの2つが短いような形態にし(すなわち、第1位置決めピン35aの長さが第2位置決めピン35bの長さよりも長く、第2位置決めピン35bの長さが接続ボルト33の長さよりも長い。)、それによって、3つの位置決めピンを利用してドッキングし位置を合わせるときに、まず、第1位置決めピン35aをタワーフランジに位置合わせし、次に、2つの第2位置決めピン35bを位置合わせし、それによって、ナセルとタワーとのドッキングの安定性及び確実性を向上させる。
【0023】
さらに好ましい技術案では、第3位置決めピン孔34cは、第1位置決めピン孔34aと第2位置決めピン孔34bとを接続する垂直二等分線上にあり、図4に示すように、3つの位置決めピン孔は、直角二等辺三角形に配置され、且つ、第3位置決めピン孔34cに対応するタワーフランジ孔は、径方向において第3牽引孔22c及び第4牽引孔22dのいずれとも45°の角度をなす。それによって、4つのハンドチェーンホイストの牽引操作がより簡単かつ省力化され、ナセルとタワーとのドッキングや位置決めの困難が軽減される。
【0024】
さらに、図3に示すように、3つの位置決めピンは、いずれもピン本体部351、ネジ付き端部352、位置決め端部353、及び位置決め案内部354を含み、ピン本体部351は、一端がナセルフランジ孔と嵌合するネジ付き端部352であり、他端が位置決め案内部354によって位置決め端部353に一体接続され、位置決め案内部354は、ネジ付き端部352から位置決め端部353に向かって伸びる縮径円錐状であり、位置決め端部353は、規則的な四角形である。位置決めピンの円錐状の位置決め案内部354及び四角形の位置決め端部は、位置決めピンとタワーの対応するフランジ孔とのドッキングの初期段階において効率的な案内位置決め作用を果たし、ドッキング位置決めの確実性をさらに向上させることができる。
【0025】
上記の4つのハンドチェーンホイストの長さは、ナセルを吊り上げる前に浮体船の現在のロール角及びピッチ角から、横揺れ=ロール角度×吊り下げ物の高さ×π/180、縦揺れ=ピッチ角度×吊り下げ物の高さ×π/180により浮体船の横揺れ及び縦揺れを算出し、算出した横揺れ及び縦揺れに基づいてCADロフティングを行い、さらにCADロフティングサイズを基にして余裕0.5m~1mを残し、ハンドチェーンホイストの長さを得る方法によって計算される。ハンドチェーンホイストの受力は、上記で算出した横揺れと縦揺れを重ね合わせて総合的な揺れを得て、ホイスト受力=[ナセルの重量×(総合的な揺れの2倍)/吊り下げ物のブームトップからの距離]×ハンドチェーンホイストの最大長さ/リフティングラグの牽引孔からの水平方向の距離によって計算され、図8に示すように、γ'は揺れの2倍であり、Lは、吊り下げ物のブームトップからの距離であり、lはリフティングラグの牽引孔からの水平方向の距離であり、Dは、ハンドチェーンホイストの最大長さである。
【0026】
さらに好ましい技術案では、ナセル10をタワー20の上方の所定の距離まで吊り上げるプロセス中、クレーンを2回停止して観察する必要があり、1回目の停止観察は、クレーンによってナセルを吊り上げた後に実施し、2回目の停止観察は、ナセルを持ち上げてタワーの上まで回転させた後に実施し、2回の停止観察では、吊り上げた後のナセルの当該観察位置での実際の揺れが当該観察位置での予め設定された安全吊り上げ制御揺れγよりも小さいか否か、ピッチングが100mm未満であるか否かが観察され、また、2回の停止観察の時間が2分間~10分間である。安全吊り上げ制御揺れγは、対応する観察位置でのロール角度、ピッチ角度、及び吊り下げ物の高さから、当該位置での吊り上げ安全横揺れ及び縦揺れを計算し、次に、吊り上げ安全横揺れと縦揺れとを重ね合わせることによって得られる。
【0027】
本発明では、スプレッダーは、ハンガーフックユニット41とホイスティングビーム42を含み、ハンガーフックユニット41はクレーン50のメインリフティングジブ51に接続され、ホイスティングビーム42は、上方スリングを介してハンガーフックユニット41に吊られ、ホイスティングビーム42の下方には、ナセル10が索具を介して吊り上げられ、ホイスティングビーム42は、両端のそれぞれに1本のガイラインが接続されており、一方側のガイラインは、クレーン50のメインリフティングジブ51の滑車52に巻き付けられる。それによって、ナセルとタワーとのドッキングを完了した後にスプレッダーを取り外すときのホイスティングビームの安定性を確保することができる。さらに、ナセルとタワーとのドッキング作業を完了したがスプレッダーを取り外す前に、建設現場の風速が今後1時間で8メートル/秒を超えないこと、スプレッダーを取り外す前の30分以内のクレーンのクレードル角が0.2度を超えないこと、及びスプレッダー揺れが0.4メートルを超えないことを確認する必要がある。それによって、スプレッダーを取り外すプロセスが、ドッキングされたナセルとタワーとに損傷を与える悪天候や海況などの外部要因の影響を受けないことが確保される。
【0028】
以上、本発明の具体的な実施について詳細に説明したが、内容は本発明のより優れた実施態様にすぎず、本発明の実施範囲を限定するために用いられるとは考えられない。本発明の出願の範囲内で行われた等価な変更及び改良等も本発明の特許の対象となるものとする。
【符号の説明】
【0029】
10 ナセル
11 ナセルフランジ
20 タワー
21 タワーフランジ
22a 第1牽引孔
22b 第2牽引孔
22c 第3牽引孔
22d 第4牽引孔
31 吊り上げ板
32a 第1リフティングラグ
32b 第2リフティングラグ
32c 第3リフティングラグ
32d 第4リフティングラグ
33 接続ボルト
34a 第1位置決めピン孔
34b 第2位置決めピン孔
34c 第3位置決めピン孔
35 位置決めピン
35a 第1位置決めピン
35b第2位置決めピン
351 ピン本体部
352 ネジ付き端部
353 位置決め端部
354 位置決め案内部
36 ハンドチェーンホイスト
36a 第1ハンドチェーンホイスト
36b 第2ハンドチェーンホイスト
36c 第3ハンドチェーンホイスト
36d 第4ハンドチェーンホイスト
41 ハンガーフックユニット
42 ホイスティングビーム
50 クレーン
51 メインリフティングジブ
52 滑車
60 浮体船のデッキプラットフォーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】