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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ウイルスアダプター及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/705 20060101AFI20241114BHJP
   C07K 14/52 20060101ALI20241114BHJP
   C07K 14/015 20060101ALI20241114BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20241114BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241114BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241114BHJP
   C12N 7/01 20060101ALN20241114BHJP
   C12N 1/15 20060101ALN20241114BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20241114BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20241114BHJP
   C12N 5/04 20060101ALN20241114BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20241114BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
C07K14/52
C07K14/015
C12N15/864 100Z
A61K35/76
A61K48/00
C12N7/01
C12N1/15
C12N1/21
C12N1/19
C12N5/04
C12N5/10
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527318
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2022080988
(87)【国際公開番号】W WO2023083750
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】2116101.3
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2116104.7
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519041013
【氏名又は名称】ザ フランシス クリック インスティテュート リミテッド
【氏名又は名称原語表記】The Francis Crick Institute Limited
【住所又は居所原語表記】1 Midland Road London Greater London NW1 1AT United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロドリケス サミュエル ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】チェルベッティーニ ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】スダルシャン ブーヴァナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA89X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA13
4C084ZC80
4C087AA01
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA13
4C087ZC80
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA01
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ウイルスの結合プロファイルを変化させ、及び/又はウイルスの細胞指向性を改変することが可能なウイルスアダプタータンパク質に関する。一態様において、本発明は、ウイルスの結合プロファイルを変化させ、及び/又はウイルスの細胞指向性を改変することが可能なウイルス用の共有結合アダプタータンパク質に関する。本発明は、ウイルスの結合プロファイル及び細胞指向性を改変するための、また薬剤として使用される形質導入ベクターとしての特許請求されたウイルスアダプタータンパク質の使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド。
【請求項2】
(i)ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドと、(ii)リガンドとを含むウイルスアダプター分子。
【請求項3】
前記ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基が前記単離ポリペプチドに対して異種である、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項4】
(i)ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドと、(ii)リガンドとを含み、前記1つ以上のシステイン残基が前記単離ポリペプチドに対して異種である、請求項2に記載のウイルスアダプター分子。
【請求項5】
非修飾野生型ウイルスカプシドに結合することが可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
【請求項6】
野生型ウイルスカプシドと比較して5つ以下の(例えば5つ、4つ、3つ、2つ又は1つの)アミノ酸点突然変異を有するウイルスカプシドに結合することが可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
【請求項7】
野生型ウイルスカプシドに対して5アミノ酸以下の(すなわち1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸又は5アミノ酸の)アミノ酸挿入又はアミノ酸欠失を有するウイルスカプシドに結合することが可能である、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
【請求項8】
野生型ウイルスカプシドに対して挿入又は欠失を有しないウイルスカプシドに結合することが可能である、請求項1~6のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
【請求項9】
1つ以上のシステイン残基を有し、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
【請求項10】
前記単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子がコクサッキーウイルス-アデノウイルス受容体(CXADR)の一部を含み、任意にCXADR配列が配列番号20である、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
【請求項11】
中和抗体A20の抗原結合部分を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
【請求項12】
前記リガンドが細胞表面分子に結合することが可能である、請求項1~11のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
【請求項13】
前記リガンドがHer2、インターロイキン-1受容体、インターロイキン-2受容体、インターロイキン-3受容体、インターロイキン-4受容体、インターロイキン-5受容体、インターロイキン-6受容体、インターロイキン-7受容体、インターロイキン-8受容体、インターロイキン-9受容体、インターロイキン-10受容体、インターロイキン-11受容体、インターロイキン-12受容体、インターロイキン-13受容体、インターロイキン-15受容体、インターロイキン-18受容体、インターロイキン-20受容体、インターロイキン-21受容体、インターロイキン-22受容体、インターロイキン-23受容体、インターロイキン-27受容体、インターロイキン-28受容体、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、CD58、CD2、CD2、CD59、CD40、CD72、CD5、CD36、CD19、CD21、CD81、CD27、CD28、CTLA-4、CD85j、CD95、CD96、α4β1インテグリン、CD115、CD6、CD178、LFA-1、TNFRSF4、DR4、DR5、RANK/CD265、TACI/CD267、CD267、CD268、CD269、HVEM、PD1/CD279、B7-1/CD80、CD278、CD4、CD8、CD19、NMDAR、AMPAR、mGluR5、DRD1、DRD2、Bmp4、GLP1R、レプチン受容体、α5β5インテグリン及びglycoRNAからなるリストから選択される1つ以上の細胞表面分子と結合する、請求項1~12のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
【請求項14】
前記アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部がPKD1ドメインの少なくとも一部、PKD2ドメインの少なくとも一部、PKD3ドメインの少なくとも一部、PKD4ドメインの少なくとも一部、PKD5ドメインの少なくとも一部又はそれらの任意の組合せを含む、請求項9~13のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の少なくとも1つの単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子。
【請求項16】
前記ウイルスがアデノ随伴ウイルスであり、任意に該アデノ随伴ウイルスがAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.74からなるリストから選択される、請求項15に記載のウイルス粒子。
【請求項17】
前記アデノ随伴ウイルス粒子がヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、O-結合型シアル酸、N-結合型シアル酸、N-結合型ガラクトース等の非タンパク質結合剤との相互作用を媒介するカプシドタンパク質における1つ以上のアミノ酸変化を含む、請求項15又は16に記載のウイルス粒子。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか一項に記載のウイルス粒子を含む医薬組成物。
【請求項19】
ウイルス粒子を共有結合修飾する方法であって、
ウイルス粒子を準備することと、
前記ウイルス粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドを準備することと、
前記ウイルス粒子と前記単離ポリペプチドとを、該単離ポリペプチドが該ウイルス粒子に共有結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
【請求項20】
ウイルス粒子を共有結合修飾する方法であって、
ウイルス粒子を準備することと、
前記ウイルス粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子を準備することと、
前記ウイルス粒子と前記ウイルスアダプター分子とを、単離融合ポリペプチドが該ウイルス粒子に共有結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
【請求項21】
前記単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に1つ以上の異種システイン残基、例えば1つ、2つ又は3つの異種システイン残基を導入することを更に含む、請求項19又は20に記載のウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
【請求項22】
前記単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子と前記ウイルス粒子との共有結合が、1つ以上のウイルスカプシドタンパク質の天然指向性を減少又は消失させる、請求項19~21のいずれか一項に記載のウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
【請求項23】
前記単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子と前記ウイルス粒子との共有結合が、1つ以上の細胞型に対する前記ウイルス粒子の指向性を増大させる、請求項19~21のいずれか一項に記載のウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
【請求項24】
薬剤として使用される、請求項15~17のいずれか一項に記載のウイルス粒子又は請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項25】
標的細胞とウイルス粒子とを接触させることにより、目的の核酸配列を標的細胞に送達することを含む、治療を必要とする対象において疾患を治療する方法に使用される、請求項15~17のいずれか一項に記載のウイルス粒子又は請求項18に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスの結合プロファイルを変化させ、及び/又はウイルスの細胞指向性を改変することが可能なウイルスアダプタータンパク質に関する。一態様において、本発明は、ウイルスの結合プロファイルを変化させ、及び/又はウイルスの細胞指向性を改変することが可能なウイルス用の共有結合アダプタータンパク質に関する。本発明は、ウイルスの結合プロファイル及び細胞指向性を改変するための、また薬剤として使用される形質導入ベクターとしての特許請求されたウイルスアダプタータンパク質の使用にも関する。一態様において、本発明は、AAVの結合プロファイルを変化させ、及び/又はAAVの細胞指向性を改変することが可能なアデノ随伴ウイルス(AAV)用のアダプターに関する。本発明は、AAVの結合プロファイル及び細胞指向性を改変するための、また薬剤として使用される形質導入ベクターとしての特許請求されたAAVアダプターの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
アデノ随伴ウイルス
ウイルスのアデノ随伴ウイルス(AAV)は、パルボウイルス科に属する。これらは、18nm~30nmの直径を有し、約5kbの直鎖状一本鎖DNAを含む正二十面体の無エンベロープカプシドによって区別される。AAVの効率的な複製には、ヘルパーウイルス、例えばアデノウイルス、ヘルペスウイルス又はワクシニアウイルスによる宿主細胞の同時感染が必要とされる。代替的には、AAVの複製を補助するのに必要とされるヘルパーウイルスに由来するウイルスタンパク質を、ヘルパープラスミドの一部として分離した状態で補充することで、in vitroにてヘルパーウイルスの非存在下で複製を促すことができる。この作製方法は最も一般的であり、ヘルパーフリーAAV作製と称される。ヘルパーウイルスの非存在下で、AAVは潜伏状態に入り、ウイルスゲノムは、宿主細胞ゲノムに安定して組み込まれることが可能であるが、これはめったに起こらない。AAVは、広範な分裂細胞及び非分裂細胞に感染することができ、ウイルスゲノムを感染細胞内でエピソームとして存続させるか、又は宿主ゲノム内に組み込むことができるため、哺乳動物細胞用の形質導入ベクターとして特に興味が持たれている。
【0003】
一般に、ベクターの機能には約145bpの長さの2つの逆方向末端反復(ITR)で十分である。これらは複製、パッケージング、及び宿主細胞ゲノムへの組込みに必要とされる「シス」シグナルを運ぶ。組換えベクター粒子へのパッケージングのためには、非構造タンパク質(Repタンパク質)及び構造タンパク質(Capタンパク質)の遺伝子を有するベクタープラスミドを、パッケージングに適した細胞、例えばHeLa細胞又はHEK293細胞にトランスフェクトし、続いて細胞に、例えばアデノウイルスを感染させるか、又はヘルパープラスミドをコトランスフェクトする。
【0004】
AAVカプシドは、3つの異なるタンパク質:VP1、VP2及びVP3からなり、それらの相対的比率は、それぞれおよそ1:1:10であり、これは8.3%のVP1、8.3%のVP2及び83.3%のVP3に相当する。AAVカプシド遺伝子は、AAVゲノムの末端に位置し、異なる開始コドンを用いる同じオープンリーディングフレーム(ORF)によってコードされている。VP1遺伝子は、VP2遺伝子配列全体を含み、VP2遺伝子は、特定のN末端領域を有するVP3遺伝子配列全体を含む。1つのリーディングフレームが3つ全てのAAVカプシドタンパク質をコードするということが、異なる程度ではあるが全てのカプシドタンパク質の同時発現が必須であることの原因である。
【0005】
カプシドタンパク質の分子質量は、VP1が87kDa、VP2が73kDa、VP3が62kDaである。カプシド遺伝子の配列は、例えば非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3又は非特許文献4(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されている。AAVゲノムの物理的地図及び遺伝学的地図は、例えば非特許文献5(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されている。例示的なAAVカプシド配列が、本明細書において図7図19及び配列番号7~配列番号19にも提示される。
【0006】
また、様々なAAV血清型が知られており、中でもヒトAAV血清型2(AAV2)は、体細胞遺伝子療法に有利な特性を有するウイルスベクターである。その本質的な利点は、ヒトに対して病原性がないこと、ウイルスゲノムが感染細胞においてエピソームとして存続すること、又は細胞ゲノムへの安定した組込み、非分裂細胞に感染する能力、ビリオンの安定性により、高力価への精製が可能であること、免疫原性が低いこと、組換えAAVベクター中にウイルス遺伝子及び遺伝子産物が実質的に存在しないことであり、これは遺伝子療法に使用する際の安全性の観点から有利である。現在、AAVベクターへの遺伝子のクローニングは、例えば特許文献1、非特許文献6又は非特許文献5(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されているように、当業者に一般的に知られている方法によって行われている。
【0007】
例えばAAV2は、一般に広い活性スペクトル(指向性)を有する。ヒト上皮性腫瘍細胞株等の上皮組織だけでなく、子宮頸癌若しくは卵巣癌、又は黒色腫等の原発腫瘍材料、及びヒトケラチノサイトにも非常に効率的に感染するが(70%~80%)、リンパ造血細胞等の造血細胞には、10分の1~100分の1(0.5%~5%)で感染する(非特許文献7、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)。
【0008】
この理由の1つは、細胞表面上でのAAVとAAV受容体との相互作用が細胞へのAAVの取込みに必要とされることであり得る。このため、例えば、推定上の一次AAV2受容体は、150kDaの細胞膜糖タンパク質(非特許文献8、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)又はヘパラン硫酸プロテオグリカン(非特許文献9、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)である。決定されている潜在的二次受容体は、α Vβ 5インテグリン(非特許文献10、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)及びヒト線維芽細胞増殖因子受容体1(非特許文献11、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)である。結合研究により、この受容体の表面密度が、AAV2が非効率的に感染する細胞で減少していることが現在示されている。
【0009】
レトロウイルス及びアデノウイルスのカプシドタンパク質の遺伝子修飾により、特定の細胞でのみ発現する受容体の結合部位を導入することが可能であることが知られており、これによりベクターの受容体媒介標的化が可能となっている(例えば、非特許文献12、非特許文献13、非特許文献14、非特許文献15又は非特許文献16(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)を参照されたい)。
【0010】
また、特許文献2にはAAVカプシド融合タンパク質が言及されており、これは臨床的に関連する抗原の異種エピトープを含むと言われ、免疫応答を誘導すると言われ、カプシド形成を妨げないと言われている。非特許文献17(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)は、以前にバキュロ系において発現されたAAV粒子のin vitroアセンブリに関するものであった。cap遺伝子にも突然変異が加えられているが、これは指向性の変化ではなく、いずれの場合にも1つのVPタンパク質のみが発現されるプラスミド構築物をもたらすことを意図している。非特許文献18(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)は、AAV2の天然指向性を調査することを意図するものであった。この目的で、突然変異をAAV2 VPタンパク質のC末端に導入し、このようにしてRGDモチーフを変化させることが基本前提であった。
【0011】
AAVの間接的標的化は、非特許文献19(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に開示されている。この場合、AAV2カプシド及び標的細胞の両方に対して指向される二重特異性抗体が使用された。非特許文献20(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)には、VP1のN末端に直接挿入されたVP2のN末端に融合したCD34分子に対する一本鎖抗体フラグメントが開示されている。しかしながら、この方法には2つの明らかな不利点がある。第一に、感染価が非常に低く、第二に、パッケージングの成功のために、融合タンパク質と未変異のカプシドタンパク質VP1、VP2及びVP3との同時発現が必要であった。しかしながら、これによりキメラカプシドタンパク質と野生型カプシドタンパク質との混合物が生じ、その組成、ひいては活性は予測不可能であった。さらに、HeLa細胞の野生型受容体を介したパッケージング効率及び感染性も野生型と比較して大幅に低下した。
【0012】
したがって、本発明の目的の1つは、既知のAAVベクターよりも特異的かつ効率的な遺伝子導入が可能となるようにAAVを修飾することである。
【0013】
驚くべきことに、AAV結合タンパク質、例えばAAV受容体(AAVR、KIAA0319L)又はその一部を、融合タンパク質の一部としてAAVに強固に結合するように修飾することができ、この融合パートナーを用いてAAVの指向性を変化させ得ることが今回見出された。幾つかの態様において、結合タンパク質は、ウイルスに共有結合することができる。同様に、他のウイルス結合タンパク質を、融合タンパク質の一部としてウイルスカプシドに一貫して共有結合するように修飾することができ、この融合パートナーを用いてウイルスの指向性を変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第95/23867号
【特許文献2】国際公開第96/00587号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Srivastava, A. et al. (1983), J. Virol., 45, 555-564
【非特許文献2】Muzyczka, N. (1992), Curr. Top. Micro. Immunol., 158, 97-129
【非特許文献3】Ruffing, N. et al. (1992), J. Virol., 66, 6922-6930
【非特許文献4】Rutledge, E. A. et al. (1998) J. Virol. 72, 309-319
【非特許文献5】Kotin, R. M. (1994), Human Gene Therapy, 5, 793-801
【非特許文献6】Chiorini J. A. et al. (1995), Human Gene Therapy, 6, 1531-1541
【非特許文献7】Mass et al. (1998) Human Gene Therapy, 9, 1049-1059
【非特許文献8】Mizukami, H. et al. (1996), Virology, 217, 124-130
【非特許文献9】Summerford, C. & Samulski, R. J. (1998), J. Virol., 72, 1438-1445
【非特許文献10】Summerford et al., (1999), Nature Medicine 5, 78-82
【非特許文献11】Qing et al., (1999) Nature Medicine 5, 71-77
【非特許文献12】Cosset, F. L. & Russell, S. J. (1996), Gene Ther., 3, 946-956
【非特許文献13】Douglas, J. T. et al. (1996), Nat. Biotechnol., 14, 1574-1578
【非特許文献14】Krasnykh, V. N. et al. (1996), J. Virol., 70, 6839-6846
【非特許文献15】Stevenson, S. C. et al. (1997), J. Virol., 71, 4782-4790
【非特許文献16】Wickman, T. J. et al. (1996), Nat. Biotechnol., 14, 1570-1573
【非特許文献17】Steinbach et al. (1997) Biol. Abstr. 104, Ref. 46570
【非特許文献18】Ruffing et al. (1994) J. Gen. Virol. 75, 3385-3392
【非特許文献19】Bartlett et al. (1999) Nat. Biotechnol. 17, 181-186
【非特許文献20】Yang et al. (1998) Hum. Gene Ther. 1, 1929-1937
【発明の概要】
【0016】
本概要は、詳細な説明で詳細に記載される概念を紹介する。これは、主張される主題の必須の特徴を特定するために使用されるべきではなく、主張される主題の範囲を限定するために使用されるべきでもない。
【0017】
本発明は、ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドを提供する。
【0018】
本発明は、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドを提供する。
【0019】
本発明はまた、(i)ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドと、(ii)リガンドとを含むウイルスアダプター分子を提供する。
【0020】
本発明はまた、(i)ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドと、(ii)リガンドとを含むウイルスアダプター分子を提供する。
【0021】
幾つかの実施の形態において、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基は、単離ポリペプチドに対して異種である。幾つかの実施の形態において、ウイルスアダプタータンパク質は、(i)ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドと、(ii)リガンドとを含み、1つ以上のシステイン残基は、単離ポリペプチドに対して異種である。幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子は、非修飾野生型ウイルスカプシドに結合することが可能である。
【0022】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、野生型ウイルスカプシドと比較して5つ以下の(例えば5つ、4つ、3つ、2つ又は1つの)アミノ酸点突然変異を有するウイルスカプシドに結合することが可能である。幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、野生型ウイルスカプシドに対して5アミノ酸以下の(すなわち1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸又は5アミノ酸の)アミノ酸挿入又はアミノ酸欠失を有するウイルスカプシドに結合することが可能である。幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、野生型ウイルスカプシドに対して挿入又は欠失を有しないウイルスカプシドに結合することが可能である。
【0023】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、アデノ随伴ウイルスカプシドに結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含む。幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子は、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全長配列を含む。幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の配列は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子は、AAVRポリペプチドにおける1つ以上の点突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異は、配列番号1を参照して定義される。
【0024】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、1つ以上のシステイン残基を有し、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含む。幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、1つ以上のシステイン残基を有し、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全長配列を含む。幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の配列は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子は、AAVRポリペプチドにおける1つ以上の点突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異は、配列番号1を参照して定義される。
【0025】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子は、1つ以上の異種システイン残基を導入するためのAAVRポリペプチドにおける1つ以上の点突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異は、配列番号1を参照して定義される。
【0026】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、DARPin、ナノボディ、好適な抗体様タンパク質、リポカリンフォールドに由来するタンパク質、アフィボディ(affibody)(例えば、プロテインAのZドメインに由来するアフィボディ)、フィブロネクチンのドメイン、FynのSH3ドメイン、プロテアーゼ阻害剤ステフィンA(stefin A)に由来するアフィマー(affimer)又はスキャフォールド、非抗体スキャフォールドタンパク質(アディロン(Adhiron))、及び抗体又はその抗原結合フラグメントからなるリストから選択されるポリペプチドの一部を含む。幾つかの実施形態において、単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子は、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。
【0027】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、DARPin、ナノボディ、好適な抗体様タンパク質、リポカリンフォールドに由来するタンパク質、アフィボディ(例えば、プロテインAのZドメインに由来するアフィボディ)、フィブロネクチンのドメイン、FynのSH3ドメイン、プロテアーゼ阻害剤ステフィンAに由来するアフィマー又はスキャフォールド、非抗体スキャフォールドタンパク質(アディロン)、及び抗体又はその抗原結合フラグメントからなるリストから選択されるポリペプチドを含む。幾つかの実施形態において、単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子は、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。
【0028】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、中和抗体A20の抗原結合部分を含む。幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、中和抗体A20の1つ以上の相補性決定領域(CDR)と実質的に同一の配列を含み、例えば、中和抗体A20の1つ以上の相補性決定領域(CDR)が1つ、2つ又は3つのアミノ酸点突然変異を含んでいてもよく、任意に、点突然変異の1つ以上が異種システイン残基である。幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、中和抗体A20の相補性決定領域(CDR)の各々と実質的に同一の1つ以上の配列を含み、例えば、中和抗体A20の相補性決定領域(CDR)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つが1つ、2つ又は3つのアミノ酸点突然変異を含んでいてもよく、任意に、点突然変異の1つ以上が異種システイン残基である。
【0029】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、中和抗体A20の1つ以上の相補性決定領域(CDR)の完全長配列を含み、例えば、ポリペプチドは、抗体A20のVHCDR1(配列番号26)、抗体A20のVHCDR2(配列番号27)、抗体A20のVHCDR3(配列番号28)、抗体A20のVLCDR1(配列番号22)、抗体A20のVLCDR2(配列番号23)及び抗体A20のVLCDR3(配列番号24)の1つ以上を含む。
【0030】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、中和抗体A20の相補性決定領域(CDR)の全てを含む。幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、中和抗体A20の完全長VH鎖(配列番号25)及びVL鎖(配列番号21)の配列と実質的に同一の1つ以上の配列を含み、例えば、中和抗体A20のVH配列及び/又はVL配列が1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のアミノ酸点突然変異を含んでいてもよく、任意に、点突然変異の1つ以上が異種システイン残基である。
【0031】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、中和抗体A20の完全長VH鎖(配列番号25)及びVL鎖(配列番号21)の配列を含む。
【0032】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、
1つ以上の非天然アミノ酸、
ポリペプチドに架橋した1つ以上の化学的部分、
ビオチンタグ、例えばビオチン化AAVR、
SpyTagペプチド、例えばAAVR-SpyTag、及び/又は、
プロテインAポリペプチド若しくはプロテインGポリペプチド、
の1つ以上を更に含む。
【0033】
幾つかの実施の形態において、リガンドは、細胞表面分子に結合することが可能である。幾つかの実施の形態において、リガンドは、抗体又はその抗原結合フラグメント等のヒトタンパク質である。幾つかの実施の形態において、リガンドは、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-5、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-9、インターロイキン-10、インターロイキン-11、インターロイキン-12、インターロイキン-13、インターロイキン-14、インターロイキン-15、インターロイキン-16、インターロイキン-17、インターロイキン-18、インターロイキン-19、インターロイキン-20、インターロイキン-21、インターロイキン-22、インターロイキン-23、インターロイキン-24、インターロイキン-25、インターロイキン-26、インターロイキン-27、インターロイキン-28、インターロイキン-29、インターロイキン-30、インターロイキン-31、インターロイキン-32、インターロイキン-33、インターロイキン-34、インターロイキン-35、インスリン、トランスフェリン、CD2、CD58、CD59、CD2、CD40L/CD154、CD5、CD72、CD5L、CD23、CD70、CD80、CD86、S100Ap、CD178、CD155、CD106、CSF1、CD166、FasL、CD242、CD252、TRAIL、RANKL、APRIL、CD257、CD272、CD273、CD274、CD275、PD-L1、PD-L2、Cas13及びCas7-11、エンドセリン、レプチン、バソプレッシン、CD10、CD31、CD119、アペリン、エラベラ(elabela)、アドレノメデュリン、ボツリヌス毒素に由来する標的化ドメイン、神経ペプチド、サイトカイン又は小分子からなるリストから選択される1つ以上のリガンドである。
【0034】
幾つかの実施の形態において、リガンドは、小分子であり、任意に、小分子は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又はマレイミドを介して単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に連結される。幾つかの実施の形態において、リガンドは、小分子であり、任意に、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、小分子を単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に連結する非標準アミノ酸を含む。
【0035】
幾つかの実施の形態において、リガンドは、Her2、インターロイキン-1受容体、インターロイキン-2受容体、インターロイキン-3受容体、インターロイキン-4受容体、インターロイキン-5受容体、インターロイキン-6受容体、インターロイキン-7受容体、インターロイキン-8受容体、インターロイキン-9受容体、インターロイキン-10受容体、インターロイキン-11受容体、インターロイキン-12受容体、インターロイキン-13受容体、インターロイキン-15受容体、インターロイキン-18受容体、インターロイキン-20受容体、インターロイキン-21受容体、インターロイキン-22受容体、インターロイキン-23受容体、インターロイキン-27受容体、インターロイキン-28受容体、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、CD58、CD2、CD2、CD59、CD40、CD72、CD5、CD36、CD19、CD21、CD81、CD27、CD28、CTLA-4、CD85j、CD95、CD96、α4β1インテグリン、CD115、CD6、CD178、LFA-1、TNFRSF4、DR4、DR5、RANK/CD265、TACI/CD267、CD267、CD268、CD269、HVEM、PD1/CD279、B7-1/CD80、CD278、CD4、CD8、CD19、NMDAR、AMPAR、mGluR5、DRD1、DRD2、Bmp4、GLP1R、レプチン受容体、α5β5インテグリン及びglycoRNAからなるリストから選択される1つ以上の細胞表面分子と結合する。
【0036】
幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部は、PKD1ドメインの少なくとも一部、PKD2ドメインの少なくとも一部、PKD3ドメインの少なくとも一部、PKD4ドメインの少なくとも一部、PKD5ドメインの少なくとも一部又はそれらの任意の組合せを含む。
【0037】
幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部は、PKD1ドメイン、PKD2ドメイン、PKD3ドメイン、PKD4ドメイン、PKD5ドメイン又はそれらの任意の組合せを含む。アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部が配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなるリストから選択される配列を含む、請求項9~30のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
【0038】
幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部は、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全長配列を含み、任意に、完全配列は配列番号1を含む。
【0039】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つの単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に結合したウイルス粒子を提供する。幾つかの実施の形態において、ウイルス粒子は、本発明による少なくとも1つの単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に共有結合する。
【0040】
幾つかの実施の形態において、1つ以上のウイルスカプシドタンパク質は、単離ポリペプチドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む。幾つかの実施の形態において、1つ以上のウイルスカプシドタンパク質は、単離ポリペプチド中の1つ以上のシステイン残基とジスルフィド架橋を形成することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む。
【0041】
幾つかの実施の形態において、ウイルスは、アデノ随伴ウイルスであり、任意に、アデノ随伴ウイルスは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.74からなるリストから選択される。幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルスがAAV1である。幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルスは、AAV2である。幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルスは、野生型AAVである。
【0042】
幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルスは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択されるカプシドアミノ酸配列の一部を含む。
【0043】
幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルスは、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択されるカプシドアミノ酸配列の完全長を含む。
【0044】
幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルスは、野生型アミノ酸配列に対して1つ以上の保存的アミノ酸変化、例えば野生型アミノ酸配列に対して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個又は20個の保存的アミノ酸変化を有し、任意に、野生型アミノ酸配列は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択される。幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルスは、野生型アミノ酸配列に対して5つ以下の非保存的アミノ酸変化、例えば野生型アミノ酸配列に対して5つ、4つ、3つ、2つ又は1つの非保存的アミノ酸変化を有し、任意に、野生型アミノ酸配列は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択される。
【0045】
幾つかの実施の形態において、ウイルスは、アデノウイルス、アイチウイルス、オーストラリアコウモリリッサウイルス、BKポリオーマウイルス、バンナウイルス、バーマ森林ウイルス、ブニヤムウェラウイルス、ブニヤウイルス、ラクロスブニヤウイルス、カンジキウサギブニヤウイルス、サルヘルペスウイルス、チャンディプラウイルス、チクングニアウイルス、コサウイルス、牛痘ウイルス、コクサッキーウイルス、クリミア-コンゴ出血熱ウイルス、デングウイルス、ドーリウイルス、ジュグベウイルス、ドゥベンヘイジウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、エボラウイルス、エコーウイルス、脳心筋炎ウイルス、エプスタインバーウイルス、ヨーロッパコウモリリッサウイルス、GBウイルス、C/G型肝炎ウイルス、ハンタンウイルス、ヘンドラウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、デルタ肝炎ウイルス、馬痘ウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトアストロウイルス、ヒトコロナウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトエンテロウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、ヒトパルボウイルス、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、ヒトライノウイルス、ヒトSARSコロナウイルス、ヒトスプマレトロウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス、ヒトトロウイルス、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、イスファハンウイルス、JCポリオーマウイルス、日本脳炎ウイルス、フニンアレナウイルス、KIポリオーマウイルス、クンジンウイルス、ラゴスコウモリウイルス、ビクトリア湖マールブルグウイルス、ランガットウイルス、ラッサウイルス、ローズデールウイルス、跳躍病ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、マチュポウイルス、マヤロウイルス、MERSコロナウイルス、麻疹ウイルス、メンゴ脳心筋炎ウイルス、メルケル細胞ポリオーマウイルス、モコラウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、サル痘ウイルス、ムンプスウイルス、マレーバレー脳炎ウイルス、ニュージャージーポリオーマウイルス、ニューヨークウイルス、ニパウイルス、ノーウォークウイルス、オニョンニョンウイルス、オルフウイルス、オロプーシュウイルス、ピチンデウイルス、ポリオウイルス、プンタトロフレボウイルス、プウマラウイルス、狂犬病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ロサウイルスA、ロスリバーウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、風疹ウイルス、サギヤマウイルス、サリウイルスA、シチリア型サシチョウバエ熱ウイルス、サッポロウイルス、SARSコロナウイルス、セムリキ森林ウイルス、ソウルウイルス、サルフォーミーウイルス、シミアンウイルス40、シンドビスウイルス、サウサンプトンウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介ポワサンウイルス、トルクテノウイルス、トスカーナウイルス、ウークニエミウイルス、ワクシニアウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、天然痘ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、WUポリオーマウイルス、ウエストナイルウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルス、ヤバ様疾患ウイルス、黄熱ウイルス及びジカウイルスからなるリストから選択される。幾つかの実施の形態において、ウイルスは野生型ウイルスである。
【0046】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはアデノウイルスであり、ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子は、コクサッキーウイルス-アデノウイルス受容体(CXADR)の一部を含み、任意に、CXADR配列は配列番号20である。
【0047】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはアデノウイルスであり、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子は、コクサッキーウイルス-アデノウイルス受容体(CXADR)の一部を含み、任意に、CXADR配列は配列番号20である。
【0048】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはアデノウイルスであり、ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子は、CD46の一部を含み、任意に、CD46配列は配列番号29である。
【0049】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはアデノウイルスであり、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子は、CD46の一部を含み、任意に、CD46配列は配列番号29である。
【0050】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはアデノウイルスであり、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子は、コクサッキーウイルス-アデノウイルス受容体(CXADR)の完全長配列を含み、任意に、CXADR配列は配列番号20である。幾つかの実施の形態において、1つ以上のウイルスカプシドに、野生型アミノ酸配列に対して1つ以上の異種システイン残基、例えば野生型アミノ酸配列に対して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の異種システイン残基が導入されている。幾つかの実施の形態において、1つ以上の異種システイン残基は、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルスカプシドとの界面に導入される。
【0051】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはAAV1であり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含み、AAV1は、Gly266Cys、Thr504Cys及びAsp590Cysから選択される1つ以上の突然変異を含み、AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドは、Thr434Cys、Asp429Cys及びSer425Cysから選択される1つ以上の突然変異を含む。
【0052】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはAAV2であり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含み、AAV2はGly265Cys、Thr503Cys及びGln589Cysから選択される1つ以上の突然変異を含み、AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドはThr434Cys、Asp429Cys及びSer425Cysから選択される1つ以上の突然変異を含む。
【0053】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはAAV2であり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含み、AAV2はGln589Cys突然変異を含み、AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドは、Ser425Cys及びVal480Gluから選択される1つ以上の突然変異を含み、任意に、AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドは、Ser425Cys突然変異及びVal480Glu突然変異の両方を含む。
【0054】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはAAV2であり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)のPKD2ドメイン(例えば配列番号3)を含み、AAV2はGln589Cys突然変異を含み、AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドは、Ser425Cys及びVal480Gluから選択される1つ以上の突然変異を含み、任意に、AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドは、Ser425Cys突然変異及びVal480Glu突然変異の両方を含む。
【0055】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはAAV1であり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含み、AAV2はGln589Cys突然変異を含み、AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドは、Ser425Cys及びVal480Gluから選択される1つ以上の突然変異を含み、任意に、AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドは、Ser425Cys突然変異及びVal480Glu突然変異の両方を含む。
【0056】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはAAV1であり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)のPKD2ドメイン(例えば配列番号3)を含み、AAV2はGln589Cys突然変異を含み、AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドは、Ser425Cys及びVal480Gluから選択される1つ以上の突然変異を含み、任意に、AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドは、Ser425Cys突然変異及びVal480Glu突然変異の両方を含む。
【0057】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはAAV5であり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含み、AAV5はGln697Cys突然変異を含み、AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドは、Ser356Cys突然変異を含む。
【0058】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはAAV5であり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)のPKD1ドメイン(例えば配列番号2)を含み、AAV5はGln697Cys突然変異を含み、AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドは、Ser356Cys突然変異を含む。
【0059】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはAAV2であり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドは、中和抗体A20の抗原結合部分を含み、AAV2はSer264Cys、Val708Cys及びAsn717Cysから選択される1つ以上の突然変異を含み、中和抗体A20ポリペプチド又は融合ポリペプチドは、VH Tyr102Cys、VH Ser56Cys及びVL Ile93Cysから選択される1つ以上の突然変異を含む。
【0060】
幾つかの実施の形態において、ウイルスはAAV2であり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドは、中和抗体A20の抗原結合部分を含み、AAV2はGly266Cys、Thr504Cys及びAsp590Cysから選択される1つ以上の突然変異を含み、中和抗体A20ポリペプチド又は融合ポリペプチドは、VH Tyr102Cys、VH Ser56Cys及びVL Ile93Cysから選択される1つ以上の突然変異を含む。
【0061】
幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス粒子は、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、O-結合型シアル酸、N-結合型シアル酸、N-結合型ガラクトース等の非タンパク質結合剤との相互作用を媒介するカプシドタンパク質における1つ以上のアミノ酸変化を含む。
【0062】
幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス粒子は、AAV2のアルギニン残基585及び588での突然変異を含む。
【0063】
本発明はまた、本発明によるウイルス粒子を含む医薬組成物を提供する。
【0064】
本発明はまた、ウイルス粒子を共有結合修飾する方法であって、
ウイルス粒子を準備することと、
ウイルス粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドを準備することと、
ウイルス粒子と単離ポリペプチドとを、単離ポリペプチドがウイルス粒子に共有結合するように組み合わせることと、
を含む、方法を提供する。
【0065】
本発明はまた、ウイルス粒子を共有結合修飾する方法であって、
ウイルス粒子を準備することと、
ウイルス粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子を準備することと、
ウイルス粒子とウイルスアダプター分子とを、単離融合ポリペプチドがウイルス粒子に共有結合するように組み合わせることと、
を含む、方法を提供する。
【0066】
幾つかの実施の形態において、方法は、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に1つ以上の異種システイン残基、例えば1つ、2つ又は3つの異種システイン残基を導入することを更に含む。幾つかの実施の形態において、方法は、ウイルスカプシドに1つ以上の異種システイン残基、例えば1つ、2つ又は3つの異種システイン残基を導入することを更に含む。
【0067】
幾つかの実施の形態において、方法は、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルスカプシドとの両方に1つ以上の異種システイン残基、例えば単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルスカプシドとの両方に1つ、2つ又は3つの異種システイン残基を導入することを更に含む。
【0068】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルス粒子との結合は、1つ以上のウイルスカプシドタンパク質の天然指向性を減少又は消失させる。幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルス粒子との結合は、1つ以上の細胞型に対するウイルス粒子の指向性を増大させる。
【0069】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルス粒子との共有結合は、神経細胞、マクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞、癌細胞、筋細胞、肝細胞、視細胞(photoreceptors)、膵β細胞、腎細胞及び肺細胞からなるリストから選択される1つ以上の細胞型に対するウイルス粒子の指向性を増大及び/又は減少させる。
【0070】
幾つかの実施の形態において、ウイルス粒子は、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子を含まないウイルス粒子の天然指向性と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも100%減少又は増大した指向性を有する。幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルス粒子との結合により、ウイルス粒子がウイルスをスキャフォールドとして用いて多量体様式でタンパク質抗原を提示することが可能になる。
【0071】
幾つかの実施の形態において、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルス粒子との共有結合は、細胞溶解を選択的に誘導し、任意に、細胞溶解が神経細胞、マクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞、癌細胞、筋細胞、肝細胞、視細胞、膵β細胞、及び肺細胞からなるリストから選択される1つ以上の細胞型において誘導される。
【0072】
本発明はまた、ウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法であって、
ウイルス粒子を準備することと、
ウイルス粒子のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドと標的細胞に特異的なリガンドとを含むウイルスアダプター分子を準備することと、
ウイルス粒子とウイルスアダプター分子とを、ウイルスアダプター分子がウイルス粒子に結合するように組み合わせ、それにより修飾ウイルス粒子を生成することと、
標的細胞を含む細胞の混合物と修飾ウイルス粒子とを接触させることと、
を含む、方法を提供する。
【0073】
本発明の方法の幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含む。本発明の方法の幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)のPKD1ドメインの少なくとも一部、PKD2ドメインの少なくとも一部、PKD3ドメインの少なくとも一部、PKD4ドメインの少なくとも一部、PKD5ドメインの少なくとも一部又はそれらの任意の組合せを含む。本発明の方法の、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全なPKD1ドメイン、完全なPKD2ドメイン、完全なPKD3ドメイン、完全なPKD4ドメイン、完全なPKD5ドメイン又はそれらの任意の組合せを含む。幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドは、AAVRポリペプチドにおける1つ以上の突然変異を含み、任意に、1つ以上の突然変異が配列番号1を参照して定義される。アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)のPKD1ドメインの少なくとも一部、PKD2ドメインの少なくとも一部、PKD3ドメインの少なくとも一部、PKD4ドメインの少なくとも一部、PKD5ドメインの少なくとも一部又はそれらの任意の組合せを含み、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドは、AAVRポリペプチドにおける1つ以上の突然変異を含み、任意に、1つ以上の突然変異が配列番号1を参照して定義される。幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全なPKD1ドメイン、完全なPKD2ドメイン、完全なPKD3ドメイン、完全なPKD4ドメイン、完全なPKD5ドメイン又はそれらの任意の組合せを含み、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドは、AAVRポリペプチドにおける1つ以上の突然変異を含み、任意に、1つ以上の突然変異が配列番号1を参照して定義される。
【0074】
本発明の方法の幾つかの実施の形態において、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含む。本発明の方法の幾つかの実施の形態において、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)のPKD1ドメインの少なくとも一部、PKD2ドメインの少なくとも一部、PKD3ドメインの少なくとも一部、PKD4ドメインの少なくとも一部、PKD5ドメインの少なくとも一部又はそれらの任意の組合せを含む。本発明の方法の幾つかの実施の形態において、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)のPKD1ドメイン、PKD2ドメイン、PKD3ドメイン、PKD4ドメイン、PKD5ドメイン又はそれらの任意の組合せを含む。
【0075】
本発明の方法の幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなるリストから選択される配列を含む。本発明の方法の幾つかの実施の形態において、ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドは、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全長配列を含み、任意に、完全配列は配列番号1を含む。
【0076】
本発明はまた、標的細胞と本発明による修飾ウイルス粒子又は本発明による医薬組成物とを接触させることを含む、目的の核酸配列を標的細胞に送達する方法であって、ウイルス粒子が目的の核酸配列を含む、方法を提供する。
【0077】
本発明の方法の幾つかの実施の形態において、目的の核酸配列は、RABエスコートタンパク質1、RPE65、第VIII因子、第IX因子、コクリン(Cochlin)、CLN7、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、アクアポリン1、グリア細胞株由来神経栄養因子、アスパルトアシラーゼ、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素、網膜色素変性症GTPアーゼ調節因子欠損、筋小胞体カルシウムATPアーゼ、環状ヌクレオチド感受性チャネルβ3、ニュールツリン、ガラクトシダーゼβ1、グルコース-6-ホスファターゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、ジストロフィン及びカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)からなるリストから選択されるタンパク質をコードする。
【0078】
幾つかの実施の形態において、標的細胞はin vitroである。幾つかの実施の形態において、標的細胞は対象においてin vivoである。幾つかの実施の形態において、標的細胞は神経細胞、マクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞、癌細胞、筋細胞、肝細胞、視細胞、膵β細胞、腎細胞及び肺細胞からなるリストから選択される。幾つかの実施の形態において、対象はヒトである。幾つかの実施の形態において、標的細胞はヒト標的細胞である。
【0079】
本発明はまた、薬剤として使用される本発明によるウイルス粒子又は本発明による医薬組成物を提供する。本発明は、本発明によるウイルス粒子又は本発明による医薬組成物を治療有効量投与することを含む、治療を必要とする患者を治療する方法も提供する。
【0080】
本発明はまた、標的細胞とウイルス粒子とを接触させることにより、目的の核酸配列を標的細胞に送達することを含む、治療を必要とする対象における疾患を治療する方法に使用される本発明によるウイルス粒子又は本発明による医薬組成物を提供する。本発明は、治療を必要とする対象において疾患を治療する方法であって、本発明によるウイルス粒子又は本発明による医薬組成物を治療有効量投与し、それにより標的細胞とウイルス粒子とを接触させることによって、目的の核酸配列を標的細胞に送達することを含む、方法も提供する。
【0081】
幾つかの実施の形態において、疾患は、神経変性障害、癌、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、血友病、先天盲障害、糖尿病、嚢胞性線維症、コロイデレミア、血友病A、血友病B、CLN7疾患、ポンペ病、パーキンソン病、カナバン病、脱髄疾患、RPE65突然変異による遺伝性網膜ジストロフィー、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症、X連鎖性網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、チャーグ-ストラウス症候群(CSS)、重症虚血肢、色覚異常、アルツハイマー病、黄斑変性、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、ウィルソン病、糖原病IA型、クリグラーナジャー症候群、テイ-サックス病、サンドホフ病、多発性骨髄腫、多系統萎縮症、ガングリオシドーシス、ダノン病、ファブリー病、バッテン病、フェニルケトン尿症、関節リウマチ、ムコ多糖症IIIa型、サンフィリポ症候群B、ムコ多糖症VI型、α1-アンチトリプシン欠損症、脊髄性筋萎縮症1型、クラッベ病、ベッカー型筋ジストロフィー、シャルコー-マリー-トゥースニューロパチー1a型、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII(CPT II)欠損症及びトリメチルアミン尿症、嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症からなるリストから選択される。
【0082】
本発明の幾つかの実施の形態において、本発明のウイルス粒子又は組成物は、標的細胞とウイルス粒子とを接触させることにより、目的の核酸配列を標的細胞に送達することを含む、治療を必要とする対象における疾患を治療する方法に使用され、以下のリスト:
神経変性障害の治療のための神経細胞、
癌の治療のための免疫細胞(例えばマクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞)、
免疫応答を惹起するための免疫細胞(例えばマクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞)、
癌の治療のための癌細胞又は腫瘍細胞、
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療のための筋細胞、
血友病の治療のための肝細胞、
先天盲障害のための視細胞、
糖尿病の治療のための膵β細胞、又は、
嚢胞性線維症の治療のための肺細胞、
による指定の標的細胞の標的化が、指定の疾患を治療又は改善する。
【0083】
幾つかの実施の形態において、ウイルス粒子又は医薬組成物を対象に対してエアロゾルにより(例えば肺細胞に)、筋肉内に、動脈内に(例えば肝動脈を介して)、関節内に、網膜下に、頭蓋内に、静脈内に、髄腔内に、冠動脈内に又は皮下に投与する。
【0084】
本発明の幾つかの実施の形態において、リガンドは、Cas13分子等の配列特異的RNA結合分子からなり得る。この場合、これにより標的RNAを表面上に発現する細胞に対する指向性がウイルスに付与される。具体的には、この場合、アダプター分子は、Cas13とPKD2ドメインの一部又は完全長との融合からなる。Cas13は、続いてCas13に適したシングルガイドRNA(sgRNA)と複合体を形成し、sgRNAのプロトスペーサー領域に相補的なRNAと結合する能力をこれに付与することができる。
【0085】
本発明の幾つかの実施の形態において、ウイルスアダプタータンパク質を生成する方法は、ウイルスカプシドタンパク質を準備することと、ウイルスカプシドタンパク質と標的細胞に対して高い特異性を有する標的化分子とを反応させることとを含む。反応は、NHS若しくはマレイミド化学を用いて行ってもよく、又は反応性基(アジド又はアルキン又はテトラジン又はトランス-シクロオクテン等)を有する非標準アミノ酸をウイルスカプシド分子の特定の位置に組み込むことによって行ってもよい。本発明の幾つかの実施の形態において、ウイルスアダプタータンパク質は、ウイルスカプシドタンパク質と、標的細胞に対して高い特異性を有する標的化分子とを含む。
【0086】
幾つかの実施の形態において、ウイルスカプシド分子をスプリットインテイン、SpyTag、テトラシステインFCMモチーフ(FLNCCPGCCMEP)又はybbRモチーフ(TVLDSLEFIASKLA)等の標的化分子に結合することが可能な特定のペプチド配列と組み合わせる。
【0087】
この場合、標的化分子は、特定の受容体に結合するように選ぶことができる。幾つかの実施の形態において、標的化分子は、標的細胞型で発現された受容体に対する抗体等のタンパク質であり得る。
【0088】
幾つかの実施の形態において、標的化分子は小分子であり得る。例えば、セロトニン又はドーパミン等の神経伝達物質をウイルスカプシドタンパク質に結合させることにより、ウイルス粒子と組み合わせた場合にそれぞれセロトニン受容体又はドーパミン受容体を発現する細胞に特異的なウイルス粒子を生成するアダプター分子を作製することが可能である。
【0089】
幾つかの実施の形態において、AAV粒子を本発明による2つ以上の単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子に結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、AAV粒子を本発明による2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれ以上の異なる単離ポリペプチド又は異なるAAVアダプター分子に結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、AAV粒子を本発明による2つの異なる単離ポリペプチド又は異なるAAVアダプター分子に結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、AAV粒子を本発明による3つの異なる単離ポリペプチド又は異なるAAVアダプター分子に結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、AAV粒子を本発明による4つの異なる単離ポリペプチド又は異なるAAVアダプター分子に結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、AAV粒子を本発明による5つの異なる単離ポリペプチド又は異なるAAVアダプター分子に結合させてもよい。かかる実施の形態は、複数の異なる細胞型に対する特異性を提供する。例えば、単一のAAV粒子と、幾つかがCD4に特異的であり、幾つかがCD8に特異的なアダプター分子の混合物とを組み合わせることによって、CD4+及びCD8+の両方のT細胞系列を標的とする単一のAAVベースの遺伝子療法を策定し得る。
【0090】
幾つかの実施の形態において、ウイルス粒子を本発明による2つ以上の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に共有結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、ウイルス粒子を本発明による2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれ以上の異なる単離ポリペプチド又は異なるウイルスアダプター分子に共有結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、ウイルス粒子を本発明による2つの異なる単離ポリペプチド又は異なるウイルスアダプター分子に共有結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、ウイルス粒子を本発明による3つの異なる単離ポリペプチド又は異なるウイルスアダプター分子に共有結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、ウイルス粒子を本発明による4つの異なる単離ポリペプチド又は異なるウイルスアダプター分子に共有結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、ウイルス粒子を本発明による5つの異なる単離ポリペプチド又は異なるウイルスアダプター分子に共有結合させてもよい。かかる実施の形態は、複数の異なる細胞型に対する特異性を提供する。例えば、単一のウイルス粒子と、幾つかがCD4に特異的であり、幾つかがCD8に特異的なアダプター分子の混合物とを組み合わせることによって、CD4+及びCD8+の両方のT細胞系列を標的とする単一のウイルス遺伝子療法を策定し得る。
【0091】
幾つかの実施の形態において、AAV粒子を本発明による2つ以上の単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子に結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、AAV粒子を本発明による2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれ以上の異なる単離ポリペプチド又は異なるAAVアダプター分子に結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、AAV粒子を本発明による2つの異なる単離ポリペプチド又は異なるAAVアダプター分子に結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、AAV粒子を本発明による3つの異なる単離ポリペプチド又は異なるAAVアダプター分子に結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、AAV粒子を本発明による4つの異なる単離ポリペプチド又は異なるAAVアダプター分子に結合させてもよい。幾つかの実施の形態において、AAV粒子を本発明による5つの異なる単離ポリペプチド又は異なるAAVアダプター分子に結合させてもよい。かかる実施の形態は、複数の異なる細胞型に対する特異性を提供する。例えば、単一のAAV粒子と、幾つかがCD4に特異的であり、幾つかがCD8に特異的なアダプター分子の混合物とを組み合わせることによって、CD4+及びCD8+の両方のT細胞系列を標的とする単一のAAV遺伝子療法を策定し得る。
【0092】
幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、Schweizer A, Rusert P, Berlinger L, Ruprecht CR, Mann A, Corthesy S, et al. (2008) CD4-Specific Designed Ankyrin Repeat Proteins Are Novel Potent HIV Entry Inhibitors with Unique Characteristics. PLoS Pathog 4(7): e1000109に開示されているようにCD4特異的設計アンキリンリピートタンパク質(DARPin)の少なくとも一部を含む。幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、Schweizer A, Rusert P, Berlinger L, Ruprecht CR, Mann A, Corthesy S, et al. (2008) CD4-Specific Designed Ankyrin Repeat Proteins Are Novel Potent HIV Entry Inhibitors with Unique Characteristics. PLoS Pathog 4(7): e1000109に開示されているようなCD4特異的設計アンキリンリピートタンパク質(DARPin)の完全長を含む。
【0093】
本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドに結合することが可能な任意の好適な抗体様タンパク質の少なくとも一部を含む(Kondo T et al., Antibody-like proteins that capture and neutralize SARS-CoV-2. Sci Adv. 2020 Oct 14;6(42):eabd3916)。本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドと結合することが可能な任意の好適な抗体様タンパク質の完全長タンパク質を含む。
【0094】
本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドと結合することが可能なリポカリンフォールドに由来するタンパク質の少なくとも一部を含む(Beste et al., Small antibody-like proteins with prescribed ligand specificities derived from the lipocalin fold, PNAS March 2, 1999 96 (5) 1898-1903)。本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドと結合することが可能なリポカリンフォールドに由来する完全長タンパク質を含む。
【0095】
本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドと結合することが可能なプロテインAのZドメインに由来するアフィボディの少なくとも一部を含む(Nord et al., Binding proteins selected from combinatorial libraries of an α-helical bacterial receptor domain, Nature Biotechnology, volume 15, pages 772-777 (1997))。本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドと結合することが可能なプロテインAのZドメインに由来する完全長アフィボディを含む。
【0096】
本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドと結合することが可能なフィブロネクチンのドメインの少なくとも一部を含む(Koide, et al., The fibronectin type III domain as a scaffold for novel binding proteins, Journal of Molecular Biology, Volume 284, Issue 4, 1998, Pages 1141-1151)。本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドと結合することが可能なフィブロネクチンのドメインの完全長配列を含む。
【0097】
本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドと結合することが可能なFynのSH3ドメインの少なくとも一部を含む(Grabulovski, et al., A Novel, Non-immunogenic Fyn SH3-derived Binding Protein with Tumor Vascular Targeting Properties, Journal of Biological Chemistry, Volume 282, Issue 5, 2007, Pages 3196-3204)。本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドと結合することが可能なFynのSH3ドメインの完全長配列を含む。
【0098】
本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドと結合することが可能なプロテアーゼ阻害剤ステフィンAに由来するアフィマー又はスキャフォールドの誘導体の少なくとも一部を含む(Woodman R, Yeh JT, Laurenson S, Ko Ferrigno P. Design and validation of a neutral protein scaffold for the presentation of peptide aptamers. J Mol Biol. 2005 Oct 7;352(5):1118-33)。本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドと結合することが可能なプロテアーゼ阻害剤ステフィンAに由来するアフィマー又はスキャフォールドの誘導体の完全長配列を含む。
【0099】
本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドと結合することが可能な非抗体スキャフォールドタンパク質(アディロン)の少なくとも一部を含む(Tiede et al., Adhiron: a stable and versatile peptide display scaffold for molecular recognition applications, Protein Eng Des Sel. 2014 May; 27(5): 145-155)。本発明の幾つかの実施の形態において、本発明の単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子は、ウイルスカプシドと結合することが可能な非抗体スキャフォールドタンパク質(アディロン)の完全長配列を含む。
【0100】
幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むAAVアダプター分子は、単離ポリペプチド又はアダプター分子の溶解度を増大させる1つ以上の点突然変異、例えば単離ポリペプチド又はアダプター分子の溶解度を増大させる1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の点突然変異を含む。
【0101】
幾つかの実施の形態において、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子は、単離ポリペプチド又はアダプター分子の溶解度を増大させる1つ以上の点突然変異、例えば単離ポリペプチド又はアダプター分子の溶解度を増大させる1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の点突然変異を含む。
【0102】
幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むAAVアダプター分子は、細菌系及び/又は哺乳動物系における単離ポリペプチド又はアダプター分子のタンパク質発現及び/又は精製の収率を増大させる1つ以上の点突然変異、例えば細菌系及び/又は哺乳動物系における単離ポリペプチド又はアダプター分子のタンパク質発現及び/又は精製の収率を増大させる1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の点突然変異を含む。
【0103】
幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むAAVアダプター分子は、単離ポリペプチド又はアダプター分子の溶解度を増大させる1つ以上の点突然変異、例えば単離ポリペプチド又はアダプター分子の溶解度を増大させる1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の点突然変異を含むAAVRのPKD2ドメインを含む。
【0104】
幾つかの実施の形態において、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むAAVアダプター分子は、細菌系及び/又は哺乳動物系における単離ポリペプチド又はアダプター分子のタンパク質発現及び/又は精製の収率を増大させる1つ以上の点突然変異、例えば細菌系及び/又は哺乳動物系における単離ポリペプチド又はアダプター分子のタンパク質発現及び/又は精製の収率を増大させる1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の点突然変異を含むAAVRのPKD2ドメインを含む。
【0105】
本発明の特定の利点は、アダプター分子の一部としてAAV結合タンパク質を使用することにより、ウイルスのカプシドへの組換えAAVベクターのパッケージング効率を損なうことなく、AAVの指向性を本質的に変化させることができることであり、特に、低感受性の細胞に対する感染性を数倍増大させることができるか、又は高感受性の細胞に対する感染性を数分の1に低下させることができる。したがって、本発明は、例えば体細胞遺伝子療法のための特定の細胞のin vitro及びin vivoでの形質導入の改善に特に適している。
【0106】
幾つかの実施の形態において、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子は、細菌系及び/又は哺乳動物系における単離ポリペプチド又はアダプター分子のタンパク質発現及び/又は精製の収率を増大させる1つ以上の点突然変異、例えば細菌系及び/又は哺乳動物系における単離ポリペプチド又はアダプター分子のタンパク質発現及び/又は精製の収率を増大させる1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の点突然変異を含む。
【0107】
幾つかの実施の形態において、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子は、単離ポリペプチド又はアダプター分子の溶解度を増大させる1つ以上の点突然変異、例えば単離ポリペプチド又はアダプター分子の溶解度を増大させる1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の点突然変異を含むAAVRのPKD2ドメインを含む。
【0108】
幾つかの実施の形態において、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子は、細菌系及び/又は哺乳動物系における単離ポリペプチド又はアダプター分子のタンパク質発現及び/又は精製の収率を増大させる1つ以上の点突然変異、例えば細菌系及び/又は哺乳動物系における単離ポリペプチド又はアダプター分子のタンパク質発現及び/又は精製の収率を増大させる1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の点突然変異を含むAAVRのPKD2ドメインを含む。
【0109】
本発明の幾つかの実施の形態において、本発明による単離ポリペプチド、AAVアダプター分子又は共有結合ウイルスアダプター分子は、還元剤の存在下でAAV粒子、AAVカプシド、ウイルス粒子又はウイルスカプシドに結合することができる。本発明の幾つかの実施の形態において、還元剤はトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)である。本発明の幾つかの実施の形態において、本発明による単離ポリペプチド、AAVアダプター分子又は共有結合ウイルスアダプター分子は、カップリング反応の前に部分的に酸化されていてもよい。本発明の幾つかの実施の形態において、本発明によるAAV粒子、AAVカプシド、ウイルス粒子又はウイルスカプシドは、カップリング反応の前に部分的に酸化されていてもよい。本発明の幾つかの実施の形態において、本発明による単離ポリペプチド、AAVアダプター分子又は共有結合ウイルスアダプター分子及び本発明によるAAV粒子、AAVカプシド、ウイルス粒子又はウイルスカプシドは、カップリング反応の前に部分的に酸化されていてもよい。
【0110】
本発明の幾つかの実施の形態において、本発明による部分的に酸化された単離ポリペプチド、AAVアダプター分子又は共有結合ウイルスアダプター分子は、還元剤の存在下でAAV粒子、AAVカプシド、ウイルス粒子又はウイルスカプシドに結合することができる。本発明の幾つかの実施の形態において、本発明による単離ポリペプチド、AAVアダプター分子又は共有結合ウイルスアダプター分子は、還元剤の存在下で部分的に酸化されたAAV粒子、AAVカプシド、ウイルス粒子又はウイルスカプシドに結合することができる。本発明の幾つかの実施の形態において、本発明による部分的に酸化された単離ポリペプチド、AAVアダプター分子又は共有結合ウイルスアダプター分子は、還元剤の存在下で部分的に酸化されたAAV粒子、AAVカプシド、ウイルス粒子又はウイルスカプシドに結合することができる。本発明の幾つかの実施の形態において、還元剤はトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)である。
【0111】
本発明の幾つかの実施の形態において、「ウイルス粒子」又は「AAV粒子」は、ウイルス様粒子であってもよい。本発明の幾つかの実施の形態において、「ウイルス粒子」又は「AAV粒子」は、カプシドタンパク質の組換え発現後にin vitroで組み立てられたウイルス様粒子であってもよい。本発明の幾つかの実施の形態において、「ウイルス粒子」又は「AAV粒子」は、細胞発現系においてin vivoで組み立てられたウイルス様粒子であってもよい。本発明の幾つかの実施の形態において、細胞発現系は、細菌(例えばE.コリ(E. coli))、酵母(例えばS.セレビシエ(S. cerevisiae))、植物、昆虫(例えばキンウワバ)又は哺乳動物(例えばヒト)の細胞発現系であり得る。
【0112】
本発明の特定の利点は、アダプター分子の一部としてウイルスカプシドに共有結合することが可能な結合タンパク質を使用することにより、ウイルスのカプシドへの組換えベクターのパッケージング効率を損なうことなく、ウイルスの指向性を本質的に変化させることができることであり、特に、低感受性の細胞に対する感染性を数倍増大させることができるか、又は高感受性の細胞に対する感染性を数分の1に低下させることができる。したがって、本発明は、例えば体細胞遺伝子療法のための特定の細胞のin vitro及びin vivoでの形質導入の改善に特に適している。
【0113】
本明細書に記載される本発明の実施の形態のいずれにおいても、ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子(「ウイルスアダプター分子」)は、ウイルスカプシドに共有結合することが可能であり得る。単離ポリペプチドとウイルスカプシドとの非共有結合に関する上記の記載のいずれも、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドに準用される。単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルスカプシドとの共有結合に関する特定の実施の形態を本明細書に記載する。
【0114】
これより、本発明の実施形態を、例にすぎないが、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0115】
図1】AAVに曝露した細胞におけるmScarlet遺伝子の発現を示す画像である。合成膜アンカー型抗sfGFPナノボディを発現するHEK293FTを記載のように処理した。A - HEK293FT細胞に、mScarlet遺伝子を有する野生型AAV2を感染させた。B - HEK293FT細胞に、mScarlet遺伝子を有するAAV2ウイルスArg585Ala Arg588Alaを感染させた。C - HEK293FT細胞をsfGFP-PKD2アダプタータンパク質に曝露した後、mScarlet遺伝子を有するAAV2ウイルスArg585Ala Arg588Alaを感染させた。データは、sfGFP-PKD2タンパク質融合が、パートナー受容体を発現する細胞においてAAV2 Arg585Ala Arg588Alaの感染性を大幅に回復させることを示す(実施例6を参照されたい)。
図2】DAPRin-PKD2アダプタータンパク質を有する及び有しない野生型AAV2による感染を示すSKBR3細胞株実験を示す図である。A - SKBR3+AAV2 wt(-)DAPRin-PKD2、B - SKBR3+AAV2 wt(+)DAPRin-PKD2。画像は、Her2特異的DARPin-PKD2融合タンパク質が、SKBR3細胞におけるAAV2野生型の感染性を大幅に増強することを示す。
図3】mScarlet-PKD2+AAV2ミックスによる感染を示すHEK293FT細胞を用いた実験を示す図である。データは、溶液中のmScarlet-PKD2融合タンパク質の存在が、AAV2野生型の感染性を濃度依存的に阻害することを示し、融合タンパク質のPKD2ドメインが、ウイルスと効果的に相互作用し、結合について細胞AAVRに競り勝つことができ、感染を防ぐことが示唆される。
図4】PKD2融合タンパク質とAAV2との結合動態の表面プラズモン共鳴(SPR)測定を示す図である。SPRシグナルにより、固定化されたAAV2と融合タンパク質との相互作用が確認され、測定された親和性は6μM前後である。
図5】PKD2融合タンパク質とAAV1との結合動態の表面プラズモン共鳴(SPR)測定を示す図である。SPRシグナルにより、固定化されたAAV2と融合タンパク質との相互作用が確認され、測定された親和性は2μM前後である。
図6】例示的なAAV受容体アミノ酸配列を示す図である。UniprotエントリQ8IZA0から得られ、配列番号1として開示される。PKD1は残基312~401であり、PKD2は残基409~498であり、PKD3は残基504~594であり、PKD4は残基600~688であり、PKD5は残基694~785であり、全て太字で強調表示し、配列番号2~配列番号6として表す。
図7】例示的なAAV1 cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。NCBIエントリNP_049542から得られ、配列番号7として開示される。
図8】例示的なAAV2 cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。NCBIエントリYP_680426から得られ、配列番号8として開示される。
図9】例示的なAAV3 cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。NCBIエントリNP_043941.1から得られ、配列番号9として開示される。
図10】例示的なAAV4 cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。NCBIエントリNP_044927から得られ、配列番号10として開示される。
図11】例示的なAAV5 cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。NCBIエントリYP_068409から得られ、配列番号11として開示される。
図12】例示的なAAV6 cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。UniprotエントリO56137_9VIRUから得られ、配列番号12として開示される。
図13】例示的なAAV7 cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。NCBIエントリYP_077178から得られ、配列番号13として開示される。
図14】例示的なAAV8 cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。NCBIエントリYP_077180から得られ、配列番号14として開示される。
図15】例示的なAAV9 cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。UniprotエントリQ6JC40_9VIRUから得られ、配列番号15として開示される。
図16】例示的なAAV10 cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。NCBIエントリAAT46337から得られ、配列番号16として開示される。
図17】例示的なAAV11 cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。UniprotエントリQ5Y9B2_9VIRUから得られ、配列番号17として開示される。
図18】例示的なAAV12 cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。UniprotエントリA9RAI0から得られ、配列番号18として開示される。
図19】例示的なAAV13 cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。UniprotエントリB5SUY7から得られ、配列番号19として開示される。
図20】AAV1(Asp590Cys)突然変異体の残基Cys590とsfGFP-PKD2(Ser425Cys)アダプター融合タンパク質のCys425との間のジスルフィド結合の形成を示す図である。この図は、それぞれジスルフィド結合したsfGFP-PKD2+VP1、sfGFP-PKD2+VP2及びsfGFP-PKD2+VP3に対応する、150kDaマーカーと100kDaマーカーとの間を移動する3つのバンドの形成を示す。これら3つのバンドは、突然変異Asp590Cysを有するAAV1カプシドと突然変異Ser425Cysを有するsfGFP-PKD2とを混合した場合にのみ非還元ゲル(上)で観察することができ、それ以外では観察されない。さらに、これらのバンドは、β-メルカプトエタノール(βME)等の還元剤の存在下で不安定である(下のゲル)。実施例6を参照されたい。
図21】アダプタータンパク質と複合体を形成した共有結合AAV1の単離を示す図である。この図は、イオジキサノール段階勾配超遠心法により精製したAAV1-sfGFP CAR-V複合体の組成を示す。PKD2突然変異融合タンパク質とウイルスカプシドタンパク質VP1、VP2及びVP3との安定に結合したヘテロ二量体を、40%イオジキサノール画分から回収することができた(100kDa超のバンド)。これにより、共有結合したAAV1Cys<>sfGFP粒子の形成の成功が証明される(実施例2を参照されたい)。
図22】アダプターに共有結合したAAV1の指向性を示す図である。データは、AAV1(Asp590Cys)<>sfGFP CAR-Vが、キメラsfGFP受容体を発現していないHEK293T細胞に対する指向性が低下しているが、標的細胞がキメラ受容体を発現する場合に感染性が回復することを示す。データは、HEK293T細胞が、アダプタータンパク質を有しないAAV1(Asp590Cys)による感染に対して感受性が高いことを更に示す(実施例3を参照されたい)。
図23】例示的なコクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体(CxAdR)cap遺伝子アミノ酸配列を示す図である。UniprotエントリP78310から得られ、配列番号20として開示される。
図24】例示的なA20抗体配列を示す図である。McCraw et al., Structure of adeno-associated virus-2 in complex with neutralizing monoclonal antibody, Volume 431, Issues 1-2, 15-30 September 2012, Pages 40-49から得られ、配列番号21~配列番号28として開示される。
図25】例示的なCD46配列を示す図である。UniprotエントリP15529から得られ、配列番号29として開示される。
図26】AAV1カプシドに対するPKD2(V480E)突然変異体の親和性を示す図である。野生型(四角で示す、実線でフィッティング)又はVal480Glu突然変異(丸で示す、破線でフィッティング)のいずれかのAAV1カプシドとAAVRのPKD2ドメインとの間の親和性についての応答-濃度プロット(Y軸:任意単位、X軸:モル濃度)。プロットは、PKD2野生型について測定されたKdが12.18μMであり、PKD2(V480E)突然変異体については6.13μMであることを示し、突然変異体がAAV1カプシドに対してより高い親和性を有することが示される。このように、PKD2(V480E)変異体がAAVカプシドに対して改善された親和性を有し、アダプタータンパク質として優れていることを発見した。
図27】CAR由来アダプタータンパク質とのAdV-5ファイバーノブ(fibre knob)カップリングを示す図である。突然変異V441Cを有するアデノウイルス-5に由来するファイバーノブタンパク質と、突然変異V70Cを有するヒトコクサッキーウイルス-アデノウイルス受容体(CAR)に由来するアダプタータンパク質との反応。反応は20mM Tris-HCl(pH8)、150mM NaCl及び0.1mM CuSO中で行った。ノブタンパク質(22kDa)の最終濃度は2μMとし、アダプタータンパク質(42kDa)の濃度は4μMとした。タンパク質バンドを非還元4%~12%ビス-トリスゲルで分離した。レーン3は、ノブタンパク質とCAR由来アダプタータンパク質との共有結合付加体に相当する分子量65kDa前後のバンドの形成を示す。したがって、ウイルスを再標的化するためのアダプタータンパク質の使用が、アダプターとしてCAR融合タンパク質を用いるアデノウイルスに適用され得ることが実証された。
図28】AAVR由来アダプタータンパク質に共有結合したAAV粒子の陰性染色電子顕微鏡法を示す図である。倍率52000倍でのAAV粒子の陰性染色電子顕微鏡法。A)AAV1(Asp590Cys)粒子をアフィニティークロマトグラフィー(CytivaのAVBセファロース樹脂)、続いてイオジキサノール勾配超遠心法によって精製し、リンタングステン酸によって染色し、電子顕微鏡法によって撮像した。図から粒子の輪郭が滑らかであることが明らかである。B)AAV1(Asp590Cys)粒子をアフィニティークロマトグラフィー(CytivaのAVBセファロース樹脂)によって精製した後、sfGFP-PKD2(Ser425Cys)アダプタータンパク質(3μM)とインキュベートした(室温で20時間)。次いで、粒子をイオジキサノール勾配超遠心法によって精製し、リンタングステン酸によって染色し、電子顕微鏡法によって撮像した。図から粒子の輪郭が粗く、天然粒子よりも大きいことが明らかである。C)粒子の直径の定量。A)の天然粒子の平均直径は26.0nmであるが、B)のアダプタータンパク質コーティング粒子の平均直径は29.0nmである。この図は、AAV1(Asp590Cys)とアダプタータンパク質との複合体を示す。
図29】PKD2由来アダプタータンパク質とのAAV1Asp590Cysカップリングを示す図である。システインを含み、様々な融合パートナーを包含するPKD2由来融合タンパク質がAAV1Asp590Cysと共有結合を形成し得ることを示すクマシー染色SDS PAGE。使用した融合パートナーは、eGFPに対するシングルドメイン抗体(a:eGFP sdAb)、Her2に結合するように進化させたDARPin(a:Her2 DARPin)、スーパーフォルダーGFPの単量体変異体(msfGFP)、及びE.コリ由来のマルトース結合タンパク質(MBP)である。全てのアダプタータンパク質を室温で2時間、最終濃度3μMでAAV1Asp590Cysとカップリングした。タンパク質を非還元4%~12%ビス-トリス勾配ゲル上で泳動した。この図は、PKD2(Ser425Cys)とともにアダプタータンパク質を構成する融合パートナーの同一性が、共有結合付加体を形成する能力を維持しながらモジュール方式でカスタマイズされ得ることを示す。これにより、本発明者らの技術を用いて、融合パートナーの同一性を変化させることにより、AAVを多くの異なる受容体に対して再標的化し得ることが示唆される。図の凡例:はカプシドタンパク質を表し、†はアダプタータンパク質を表し、††はアダプタータンパク質二量体を表し、†はアダプタータンパク質とウイルスタンパク質とのコンジュゲート種を表す。
図30】1mM TCEP中でのPKD2由来アダプタータンパク質とのAAV1Asp590Cysカップリングを示す図である。ウイルスを分離した状態で(マーカーの後の最初のレーン)、又はPKD2(Ser425Cys-Val480Glu)とともに、図に示すような融合パートナーから構成されるアダプタータンパク質3μMとインキュベートした場合のAAV1Asp590Cysカプシドタンパク質に対するブロット。インキュベーションは1mM TCEPの存在下、室温で20時間行った。インキュベーション後、反応物をMOPSバッファー中、200Vで37分間、8%ビス-トリス非還元ゲル上で泳動した。泳動後、ゲルをPVDF膜に転写し、AAV VP1/2/3に対する一次マウスモノクローナルB1抗体(Progen、カタログ番号690058)及び赤外IRDye(商標) 800CWヤギ抗マウスIgG二次抗体(Li-COR、カタログ番号926-32210)を用いてイムノブロットした。図は、1mMの還元剤TCEPの存在下であってもアダプタータンパク質とウイルスカプシドタンパク質との共有結合付加体が形成され得ることを示し、タンパク質間のジスルフィド結合が、完全に溶媒に曝されていない界面で形成されることが示される。注目すべきことに、アダプターが細菌細胞で発現される場合(例えばsfGFP及びDARPin)及びアダプターが哺乳動物細胞で発現される場合(例えばa:ICAM scFv)の両方でウイルスタンパク質とアダプターとの間に付加体が形成され得る。
図31】AAV1野生型又は抗EGFR-AAV1によるSKOV3細胞の感染を示す図である。(抗EGFR)DARPin-PKD2(Ser425Cys-Val480Glu)融合タンパク質でコーティングされたAAVによるSKOV3細胞の感染により、この細胞株が通常、高用量(培地1μL当たり1.5×10vg)で投与されるAAV1に対して感受性が低いことが示され、この細胞株が、コーティングされたウイルスによる感染に対して3倍感受性が高いことが示される。感染性は、72時間の感染後にGFP(その遺伝子はウイルスによって送達された)を発現した細胞の割合によって測定した。データを3回の反復試験の平均としてプロットし、対応のない両側t検定により分析した。エラーバーは標準偏差を示す。有意性はns:p>0.05、=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001で表す。この図は、アダプタータンパク質によるAAV1(Asp590Cys)の再標的化が、その感染性を実質的に増大させ得ることを示す。
図32】ADK1a中和 - rAAV1導入遺伝子発現に対する抗AAV1 mAbの影響を示す図である。0.5×10vgの組換えAAV1又は0.5×10vgのAAV1(Asp590Cys)<>(抗EGFR)DARPin-PKD2(Ser425Cys-Val480Glu)CAR-VをADK1a中和抗体(Progen、カタログ番号610150)の段階希釈物とともに室温で1時間インキュベートした後、混合物を用いて、96ウェルプレートに播種したHEK293T細胞に感染させた。GFPレポーターの発現によって測定される感染細胞の割合を24時間後に測定し、使用した抗体の濃度の関数としてプロットした。プロットから、組換えAAV1がADK1a抗体によって中和されるのに対し、コーティングされたCAR-V粒子が、中和抗体の濃度に関わらず、同じレベルの感染性を維持し、したがって中和に抵抗性を示すことが示される。
図33】コーティングされたAAV(Asp590Cys)による293T細胞株、CHO細胞株及びSKBR3細胞株の感染を示す図である。細胞培地1μL当たり2.0×10vgの最終濃度でのコーティングされた及びコーティングされていないAAV1(Asp590Cys)ウイルス粒子による感染の48時間後の形質導入細胞のパーセンテージ。ウイルスのコーティングは、1μM PKD2(Ser425Cys-Val480Glu)アダプタータンパク質の存在下、室温で2時間行った。定量は、レーザー走査共焦点顕微鏡法によって評価されるウイルスによって送達されたレポーターを発現する細胞の数に基づくものであった。x軸は、ウイルスのコーティングに用いられたアダプタータンパク質によって標的化された受容体を示す。データは、2回の反復試験の平均としてプロットした。高レベルのHER2及びEGFRを発現するSKBR3細胞株(C)の感染は、対応するPKD2(Ser425Cys-Val480Glu)アダプタータンパク質でコーティングされたAAV1(Asp590Cys)ウイルス粒子による感染性がより高いことを示す。AAV1(Asp590Cys)のコーティングにより、対応する受容体を有しないCHO細胞(B)における感染性が低下する。このデータは、アダプタータンパク質によるAAV1(Asp590Cys)のコーティングが、アダプタータンパク質と相互作用する受容体を発現する細胞型に対するその特異性を増強し得ることを示す。
図34】TZM-bl異種移植モデルにおける肝AAV形質導入を示す図である。コーティングされていないAAV1(Asp590Cys)と比べた、sfGFP-PKD2(Ser425Cys-Val480Glu)及び(抗CD4)DARPin-PKD2(Ser425Cys-Val480Glu)でコーティングされたAAV1(Asp590Cys)による肝臓感染性。コーティングされた及びコーティングされていないAAV1(Asp590Cys)粒子をC57BL/6Jaxマウスに3.2×1010vg/マウスで静脈注射してから14日後に肝臓を採取した。マウスは、TZM-bl細胞から構成される腫瘍を宿していた。データは、アダプタータンパク質によるウイルスのコーティングが、AAVのオフターゲット感染の主な部位である肝臓の感染を消失させることを示す。定量は、各マウスの肝臓の50μm切片3つに基づくものであった。画像は、レーザー走査共焦点顕微鏡で取得した。データは、3回の反復試験の平均としてプロットした。
図35】PKD1S356C由来APとのAAV5Q697Cカップリングを示す図である。分離した状態の(マーカー後の最初のレーン)又はPKD1(Ser356Cys)と融合したスーパーフォルダーGFPから構成される10μMのアダプタータンパク質(38.2kDa)とインキュベートしたウイルスのAAV5Gln697Cys上のAAV5カプシドタンパク質に対するブロット。インキュベーションは、室温で16時間行った。インキュベーション後、反応物をMOPSバッファー中、200Vで37分間、8%ビス-トリス非還元ゲル上で泳動した。次いで、ゲルをPVDF膜に転写し、AAV VP1/2/3に対する一次マウスモノクローナルB1抗体(Progen、カタログ番号690058)及び赤外IRDye(商標) 800CWヤギ抗マウスIgG二次抗体(Li-COR、カタログ番号926-32210)を用いてイムノブロットした。図は、カプシドタンパク質の分子量のシフトによって示されるアダプタータンパク質とウイルスカプシドタンパク質との共有結合付加体を示す。重要なことには、アダプタータンパク質とのインキュベーション後に遊離VPタンパク質に対応する測定可能なバンドを観察することができず、カップリングが完了に至ったことが示される。これにより、PKD1由来アダプタータンパク質がAAV5Q697Cの再標的化に使用され得ることが示される。
図36】DSG2由来APとのAdV B3ノブカップリングを示す図である。アデノウイルスB3ファイバーノブ(残基128~319、Uniprot ID P04501、strepタグ付き、Asn192Cys突然変異体、23.4kDa)と、スーパーフォルダーGFPをデスモグレイン2(残基150~385、Ala174Cys突然変異体)に融合することによって得られたアダプタータンパク質(AP)との共有結合カップリングを示すクマシー染色ゲル。APの分子量は54.4kDaである。3μgの精製ノブを4μgの精製アダプタータンパク質とともにインキュベートし、1mM CaClの非存在下(左)又は存在下(右)にてPBS中、室温で18時間、総反応量15μLでインキュベートした。次いで、反応物を4%~12%ビス-トリスアクリルアミドゲル上でMES泳動バッファーを用いて非還元条件にて200Vで40分間泳動した。次いで、ゲルをクマシー色素で染色した。ゲルは、カルシウムイオンの存在下でのみ観察されるファイバーノブとアダプタータンパク質との共有結合付加体の形成を示し、結合の形成がノブとデスモグレイン2との間のCa2+依存性相互作用に依存することが示される。したがって、DSG2由来アダプタータンパク質は、アデノウイルスB3に共有結合させ、その指向性をリダイレクトするのに使用することができる。
図37】例示的なヒトアデノウイルスB3繊維タンパク質配列を示す図である。UniprotエントリP04501から得られ、配列番号30として開示される。
図38】例示的なデスモグレイン2(DSG2)配列を示す図である。UniprotエントリQ14126から得られ、配列番号31として開示される。
図39】コーティングされたAAV2(Gln589Cys)による293T細胞の感染を示す図である。細胞培地1μL当たり1.6×10vgの最終濃度でのコーティングされた及びコーティングされていないAAV2(Gln589Cys)ウイルス粒子による感染の48時間後の形質導入細胞のパーセンテージ。ウイルスのコーティングは、3μM PKD2(Ser425Cys-Val480Glu)アダプタータンパク質の存在下、室温で24時間行った。定量は、レーザー走査顕微鏡法によって評価されるウイルスによって送達されたレポーターを発現する細胞の数に基づくものであった。x軸は、ウイルスのコーティングに用いられたアダプタータンパク質によって標的化された受容体を示す。データは、2回の反復試験の平均としてプロットした。細胞表面に発現されるHER2及びEGFRに対するアダプタータンパク質でコーティングした場合、ウイルスは293T細胞に対してより感染性が高い。細胞表面受容体が存在しないGFPでコーティングすると感染性が低下する。データは、アダプタータンパク質によるAAV2(Gln589Cys)のコーティングが、アダプタータンパク質と相互作用する受容体を発現する細胞に対するその特異性を増強し得ることを示す。
図40】PKD2由来アダプタータンパク質とのAAV2(Gln589Cys)カップリングを示す図である。分離した状態の(それぞれマーカーの後の最初及び3番目のレーン)、又はPKD2(Ser425Cys-Val480Glu)と融合した5μMのスーパーフォルダーGFPとインキュベートしたウイルスを用いたAAV1Asp590Cys及びAAV2Gln589Cysカプシドタンパク質に対するブロット。インキュベーションは、室温で22時間行った。インキュベーション後、反応物をMOPSバッファー中、200Vで40分間、8%ビス-トリス非還元ゲル上で泳動した。次いで、ゲルをPVDF膜に転写し、AAV VP1/2/3に対する一次マウスモノクローナルB1抗体(Progen、カタログ番号690058)及び赤外IRDye(商標) 800CWヤギ抗マウスIgG二次抗体(Li-COR、カタログ番号926-32210)を用いてイムノブロットした。図は、マーカーの後のレーン2及びレーン5におけるカプシドタンパク質の分子量のシフトによって示されるアダプタータンパク質とウイルスカプシドタンパク質との共有結合付加体を示す。重要なことには、付加体のバンドは、AAV1及びAAV2の両方の突然変異ウイルスについて形成される。これにより、PKD2由来アダプタータンパク質がAAV1及びAAV2の指向性をリダイレクトするのに使用され得ることが確認される。
図41】コーティングされたAAV5(Gln697Cys)によるSKBR3細胞の感染を示す図である。細胞培地1μL当たり1.0×10vgの最終濃度でのコーティングされた及びコーティングされていないAAV5(Gln697Cys)ウイルス粒子による感染の6日後の形質導入細胞のパーセンテージ。ウイルスのコーティングは、0.5μM PKD1(Ser356Cys)アダプタータンパク質の存在下、室温で24時間行った。定量は、レーザー走査顕微鏡法によって評価されるウイルスによって送達されたレポーターを発現する細胞の数に基づくものであった。x軸は、ウイルスのコーティングに用いられたアダプタータンパク質によって標的化された受容体を示す。データは、2回の反復試験の平均としてプロットした。細胞表面で高度に発現されるHER2に対するアダプタータンパク質でコーティングした場合、ウイルスはSKBR3細胞に対してより感染性が高い。細胞表面受容体が存在しないGFPでコーティングすると感染性が低下する。データは、アダプタータンパク質によるAAV5(Gln697Cys)のコーティングが、対応する受容体を発現する細胞に対するその特異性を増強することにより、再標的化を可能にし得ることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0116】
本発明がより容易に理解されるように、まず或る特定の用語を以下に定義する。以下の用語及び他の用語に対する更なる定義は、本明細書を通して記載される。
【0117】
本明細書において使用される場合、1以上の目的の値に適用される「およそ」又は「約」という用語は、規定の基準値に類似する値を指す。或る特定の実施形態において、「およそ」又は「約」という用語は、(かかる数が可能性のある値の100%を超える場合を除いて)別段の指定がない限り又は文脈から明らかでない限り、規定の基準値のいずれかの方向の(より大きい又はより少ない)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%)、6%)、5%、4%、3%、2%、1%)以内に含まれる値の範囲を指す。
【0118】
本明細書において使用される場合、「改善」という用語は、状態の予防、低減若しくは緩和又は対象の状態の好転を意味する。改善は、疾患状態の完全な回復又は完全な予防を含むが、これらを必要とするわけではない。
【0119】
本明細書において使用される場合、「比較可能な」という用語は、科学的に合理的な比較を可能にするために、試験システム、条件のセット、効果又は結果と十分に類似しているシステム、条件のセット、効果又は結果を指す。どのシステム、条件のセット、効果又は結果が、本明細書に記載の任意の特定の試験システム、条件のセット、効果又は結果と「比較可能な」ほど十分に類似しているかを当業者は認識し、理解するであろう。
【0120】
本明細書において使用される場合、「相関する」という用語は、「と相関を示す」というその通常の意味を有する。2つの特徴、項目又は値は、これらが一緒に出現及び/又は変動する傾向を示す場合、互いに相関を示すことを当業者は認識するであろう。幾つかの実施形態において、相関は、そのp値が0.05未満である場合に統計学的に有意であり、幾つかの実施形態において、相関は、そのp値が0.01未満である場合に統計学的に有意である。幾つかの実施形態において、相関は、回帰分析によって評価される。幾つかの実施形態において、相関は相関係数である。
【0121】
本明細書において使用される場合、「向上させる」、「増加させる」若しくは「低減させる」という用語又は文法的同等物は、参照に対する値(例えば、ベースライン)測定値、例えば、本明細書に記載される、比較可能な条件で取られた測定値(例えば、本明細書に記載の治療の開始より前の同じ個体において、又は治療がない場合の1対照個体(又は複数の対照個体)の測定値)を示す。
【0122】
本明細書において使用される場合、「ポリペプチド」は、一般的に言えば、ペプチド結合によって互いに結合した少なくとも2つのアミノ酸の列(string)である。幾つかの実施形態において、ポリペプチドは少なくとも3個~5個のアミノ酸を含むことができ、それらのそれぞれは、少なくとも1つのペプチド結合によって他のアミノ酸に結合している。ポリペプチドは、場合により、「非天然」アミノ酸又は他のエンティティを含むこともあり、これらは任意でポリペプチド鎖に組み込むことができることを当業者は認識するであろう。
【0123】
本明細書において使用される場合、「タンパク質」という用語は、ポリペプチド(すなわち、ペプチド結合によって互いに連結した少なくとも2つのアミノ酸の列)を指す。タンパク質は、アミノ酸以外の部分(例えば、糖タンパク質、プロテオグリカン等であってもよい)を含むことができ、及び/又はそうでなければプロセッシング若しくは修飾を受けていてもよい。「タンパク質」は、細胞によって産生される(シグナル配列を有するか又は有さない)完全なポリペプチド鎖であってもよく、又はその特徴的な部分であってもよいことを当業者は認識するであろう。タンパク質は、例えば、1つ以上のジスルフィド結合によって連結した、又は他の手段によって結合した、2つ以上のポリペプチド鎖を含むことができることもあることを当業者は認識するであろう。ポリペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸又は両方を含有することができ、当該技術分野で既知の様々なアミノ酸修飾又は類似体のうちのいずれかを含有することができる。有用な修飾としては、例えば、末端アセチル化、アミド化、メチル化等が挙げられる。幾つかの実施形態において、タンパク質は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、合成アミノ酸及びこれらの組合せを含むことができる。「ペプチド」という用語は、一般に、約100アミノ酸未満、約50アミノ酸未満、20アミノ酸未満又は10アミノ酸未満の長さを有するポリペプチドを指すのに使用される。
【0124】
本明細書において使用される場合、「リガンド」という用語は、生体分子との相互作用を媒介することができる分子、例えば細胞表面受容体を指す。リガンドは、タンパク質若しくはポリペプチドの一部、又はタンパク質若しくはポリペプチドの全長配列を含み得る。リガンドはまた、生体分子との相互作用を媒介することができる任意の他の分子、例えば、適切な小分子等の細胞表面受容体を含んでいてもよい。本発明の幾つかの実施形態において、リガンドは標的細胞との生物学的相互作用を媒介する。本発明の幾つかの実施形態において、リガンドは、単離ポリペプチド又はアダプター分子と、ウイルス粒子又はウイルスカプシドとの相互作用とは異なる生物学的相互作用を媒介する。
【0125】
本明細書において使用される場合、タンパク質又はポリペプチドの「全長」という用語は、配列中に示されるアミノ酸の全てを実質的に含む標準タンパク質(canonical protein)全体を指す。本明細書において使用される場合、タンパク質又はポリペプチドの「一部」という用語は、全長タンパク質と同じ機能(例えば、標的の結合)を実質的に実現することができる全長タンパク質の特徴的な部分を指す。タンパク質又はポリペプチドの「一部」という用語は、全長タンパク質又はポリペプチドのアミノ酸の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%を含むタンパク質部分又はポリペプチド部分を指してもよい。本明細書において使用される場合、タンパク質又はポリペプチドの「一部」は、少なくとも100、200、300、400、500又はそれ以上のアミノ酸を含んでいてもよい。
【0126】
本明細書において使用される場合、「保存的」変化又は「保存的アミノ酸変化」という用語は、置換アミノ酸が類似の構造特性又は化学特性を有する場合を指す。タンパク質又はポリペプチドに関して、保存的変化とは、タンパク質又はポリペプチドの少なくとも1つの機能に影響を与えないアミノ酸変化(例えば、ウイルスカプシドの機能に影響を与えないアミノ酸変化)である。保存的アミノ酸置換の1つのタイプは、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループはセリン及びトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループはアスパラギン及びグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リシン、アルギニン、及びヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループはシステイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換グループは、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、及びアスパラギン-グルタミンである。
【0127】
本明細書において使用される場合、「非保存的」変化又は「非保存的アミノ酸変化」という用語は、アミノ酸を、異なる構造特性又は化学特性を有する別のアミノ酸で置き換えること、例えばグリシンをトリプトファンで置き換えることを指す。タンパク質又はポリペプチドに関して、非保存的変化とは、タンパク質又はポリペプチドの少なくとも1つの機能に影響を与えるアミノ酸変化(例えば、ウイルスカプシドの機能に影響を与えるアミノ酸変化)である。生物学的活性に影響を与えることなくどのアミノ酸残基をどれだけ置換、挿入又は欠失し得るかを決定する手引きは、当該技術分野で既知のコンピュータープログラム、例えばDNAStarソフトウェアを使用して見出され得る。変異体は機能性アッセイにおいて試験することができる。或る特定の変異体は、10%未満、好ましくは5%未満、更により好ましくは2%未満、又は1%未満で置換されたアミノ酸を有する。本明細書において使用される場合、「点突然変異」という用語は単一のアミノ酸置換を指す。
【0128】
本明細書において使用される場合、「挿入」という用語は、1つ以上の連続する異種アミノ酸残基(すなわち、野生型アミノ酸配列中の対応する位置に現れないアミノ酸)の導入を指す。挿入は、長さが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のアミノ酸であってもよい。挿入を有しないウイルスカプシドについて言及する場合、好ましくは、ウイルスカプシドは、長さが5を超えるアミノ酸の挿入を含まない。挿入を導入する手段は、例えば遺伝的手段又は化学的手段を介して、当業者には既知であろう。
【0129】
本明細書において使用される場合、「欠失」という用語は、アミノ酸配列からの1つ以上の連続するアミノ酸残基の除去を指す。欠失は、長さが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上のアミノ酸であってもよい。欠失を有しないウイルスカプシドについて言及する場合、好ましくは、ウイルスカプシドは、長さが5を超えるアミノ酸の欠失を含まない。欠失を導入する手段は、例えば遺伝的手段又は化学的手段を介して、当業者には既知であろう。
【0130】
本明細書において使用される場合、「対象」、「個体」又は「患者」という用語は、例えば、実験的、診断的、予防的及び/又は治療的な目的のために、本発明の実施形態を使用する又は施すことができる任意の生物を指す。典型的な対象としては、動物(例えば、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類及びヒト;昆虫;蠕虫等)が挙げられる。本発明の好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0131】
本明細書において使用される場合、「標的細胞」又は「標的組織」という用語は、任意の細胞、組織、又は生物を指す。幾つかの実施形態において、標的細胞又は標的組織は、ウイルスベクターを介した遺伝子治療による治療の影響を受けやすい病的状態に関与する細胞又は組織である。
【0132】
本明細書において使用される場合、「治療レジメン」という用語は、部分的に又は完全に、特定の疾患、障害及び/又は状態の1つ以上の症状若しくは特徴を軽減する、該症状若しくは特徴を改善する、該症状若しくは特徴を除去する、該症状若しくは特徴を阻害する、該症状若しくは特徴を予防する、該症状若しくは特徴の発症を遅延させる、該症状若しくは特徴の重症度を低減させる、及び/又は該症状若しくは特徴の発生率を低減させる任意の方法を指す。これは、場合により、規則的な又は変化のある時間間隔によって間隔があけられた1つ以上の用量の投与を含むことができる。幾つかの実施形態において、治療レジメンは、その実行が、(例えば、細胞、組織又は生物の関連する集団にわたって)特定の効果、例えば、有害な状態若しくは疾患の低減若しくは排除を達成する、及び/又は該低減若しくは排除の達成と相関するように設計されているものである。幾つかの実施形態において、治療は、同じ又は異なる時間量にわたって、同時に、連続して、又は異なる時点のいずれかでの1つ以上の治療剤の投与を含む。幾つかの実施形態において、「治療レジメン」は、遺伝学的方法、例えば、遺伝子療法、遺伝子破壊、又は発現(例えば、特定の遺伝子産物、例えば、一次転写産物又はmRNAの転写、プロセシング及び/又は翻訳)を誘導する若しくは低減させることが知られている他の方法を含む。
【0133】
本明細書において使用される場合、「治療有効量」という用語は、任意の医療的治療に適用可能な合理的な利益/危険比で、治療される対象に治療効果を与える治療剤の量を指す。そのような治療効果は、客観的(すなわち、何らかの試験又はマーカーによって測定可能)又は主観的(すなわち、対象が効果の指標を示すか又は効果を感じる)であってもよい。幾つかの実施形態において、「治療有効量」は、例えば、疾患と関連する症状を改善することによって、疾患の発症を予防する若しくは遅延させることによって、及び/又は疾患の症状の重症度若しくは頻度を減らすことによっても、関連する疾患若しくは状態を治療する、改善する若しくは予防する(例えば、関連する疾患若しくは状態の発症を遅延させる)のに、及び/又は検出可能な治療効果若しくは予防効果を示すのに有効な、治療剤又は組成物の量を指す。治療有効量は、一般に、複数の単位用量を含むことができる投与レジメンで投与される。任意の特定の治療剤に関して、治療有効量(及び/又は有効な投与レジメン内の適切な単位用量)は、例えば、投与経路又は他の治療剤との組合せに応じて変動してもよい。代替的に又は付加的に、任意の特定の患者のための特定の治療有効量(及び/又は単位用量)は、用いられる特定の治療剤の活性;用いられる特定の組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康状態、性別及び食事;用いられる特定の治療剤の投与時間、投与経路及び/又は排出若しくは代謝の速度;治療の継続期間;医療技術分野で既知であるような因子を含めて、様々な因子に依存してもよい。
【0134】
本発明の幾つかの実施形態において、治療方法は、本明細書に記載の組成物又はウイルス粒子を治療有効量で投与することを含む。本発明の幾つかの実施形態において、本明細書で使用するために記載される組成物は、治療有効量で投与される。
【0135】
本明細書において使用される場合、「治療」(さらに「治療する」又は「治療すること」)という用語は、部分的に又は完全に、特定の疾患、障害及び/又は状態の1つ以上の症状若しくは特徴を軽減する、該症状若しくは特徴を改善する、該症状若しくは特徴を除去する、該症状若しくは特徴を阻害する、該症状若しくは特徴の発症を遅延させる、該症状若しくは特徴の重症度を低減させる及び/又は該症状若しくは特徴の発生率を低減させるという点において所望の効果を達成する、治療レジメンによる治療剤の任意の投与を指す。幾つかの実施形態において、治療レジメンによる治療剤の投与が、所望の効果の達成と相関している。そのような治療は、関連する疾患、障害及び/又は状態の徴候を示さない対象のもの、及び/又は疾患、障害及び/又は状態の初期徴候しか示さない対象のものであってもよい。代替的に又は付加的に、そのような治療は、関連する疾患、障害及び/又は状態の1つ以上の確立された徴候を示す対象のものであってもよい。幾つかの実施形態において、治療は、関連する疾患、障害及び/又は状態を患っていると診断された対象のものであってもよい。幾つかの実施形態において、治療は、関連する疾患、障害及び/又は状態の発生の危険性の増大と統計的に相関している1つ以上の罹病性因子を有すると知られている対象のものであってもよい。
【0136】
「抗体」という用語には、ジスルフィド結合によって相互接続された、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖の4つのポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子が含まれる。各重鎖は、重鎖可変ドメイン(VH)及び重鎖定常領域(CH)を含む。重鎖定常領域は、少なくとも3つのドメインCH1、CH2、CH3、及び任意にCH4を含む。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(CH)及び軽鎖定常領域(CL)を含む。重鎖及び軽鎖可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が組み入れられた、相補的決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に更に細分することができる。各重鎖及び軽鎖可変ドメインは、アミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3つのCDR及び4つのFRを含む(重鎖CDRは、HCDR1、HCDR2及びHCDR3と略してもよく、軽鎖CDRは、LCDR1、LCDR2及びLCDR3と略してもよい)。典型的な四量体抗体構造は、2つの同一の抗原結合ドメインを含み、該抗原結合ドメインはそれぞれ、VHドメインとVLドメインとの会合によって形成され、それぞれが各々のCHドメイ及びCLドメインとともに、抗体のFv領域を形成する。単一ドメイン抗体は、単一の抗原結合ドメイン、例えばVH又はVLを含む。抗体の抗原結合ドメイン、例えば、抗原の特異的結合対の第1のメンバーを認識して結合する抗体の一部分は、「パラトープ」とも称される。それは、抗体のFv領域の(5~10のアミノ酸の)小領域、すなわち抗原結合フラグメント(Fab領域)の一部分であり、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の一部分を含有する場合がある。パラトープが特異的結合対の第1のメンバーに高い親和性で結合する場合、パラトープは、特異的結合対の第1のメンバーに特異的に結合する。「高親和性」抗体という用語は、特異的結合対の標的の第1のメンバーに関して、約10-9M以下(例えば、約1×10-9M、1×10M-10M、1×10-11M、又は約1×10-12M)のKDを有する抗体を指す。一実施形態において、KDは表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)によって測定され、別の実施形態では、KDはELISAによって測定される。
【0137】
「相補的決定領域」という語句又は「CDR」という用語には、通常(すなわち、野生型動物において)免疫グロブリン分子(例えば、抗体又はT細胞受容体)の軽鎖又は重鎖の可変領域における2つのフレームワーク領域の間に現れる生物の免疫グロブリン遺伝子の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列が含まれる。CDRは、例えば、生殖系列配列、又は再配置された若しくは再配置されていない配列によって、また例えば、ナイーブ又は成熟B細胞又はT細胞によってコードされ得る。CDRは、体細胞変異(例えば、動物の生殖系列においてコードされる配列とは異なる)、ヒト化、及び/又は、アミノ酸の置換、挿入若しくは欠失による修飾が可能である。状況によっては(例えば、CDR3の場合)、CDRは、(例えば、再配置されていない核酸配列内では)連続していないが、B細胞核酸配列内では、例えば、配列のスプライシング又は接続(例えば、重鎖CDR3を形成するためのV-D-J組換え)の結果として連続している、2つ以上の配列(例えば、生殖系列配列)によってコードされ得る。
【0138】
「重鎖」又は「免疫グロブリン重鎖」という語句には、任意の生物由来の、免疫グロブリン重鎖定常領域配列を含む免疫グロブリン重鎖配列が含まれる。重鎖可変ドメインは、特に指定のない限り3つの重鎖CDR及び4つのFR領域を含む。重鎖のフラグメントとしては、CDR、CDR及びFR、並びにそれらの組合せが挙げられる。典型的な重鎖は、(N末端からC末端までの)可変ドメインに続いて、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを有する。重鎖の機能性フラグメントには、特異的結合対の第1のメンバーを特異的に認識する(例えば、マイクロモル、ナノモル又はピコモル範囲のKDを有する特異的結合対の第1のメンバーを認識する)ことができ、細胞から発現及び分泌することができ、かつ少なくとも1つのCDRを含むフラグメントが含まれる。重鎖可変ドメインは、生殖系列に存在するVH、DH及びJHセグメントのレパートリーに由来するVH、DH及びJHセグメントを総じて含む可変領域ヌクレオチド配列によってコードされる。
【0139】
「軽鎖」という語句には、任意の生物由来の免疫グロブリン軽鎖配列が含まれ、特に指定のない限り、ヒトκ及びλ軽鎖、及びVpreB、並びに代替軽鎖が含まれる。軽鎖可変ドメインは典型的に、特に指定のない限り、3つの軽鎖CDR及び4つのフレームワーク(FR)領域を含む。概して、全長軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端まで、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を含む可変ドメイン、及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖可変ドメインは、生殖系列に存在するVセグメント及びJセグメントのレパートリーに由来するVLセグメント及びJLセグメントを総じて含む軽鎖可変領域遺伝子配列によってコードされる。様々な生物のV軽鎖セグメント及びJ軽鎖セグメントの配列、位置及び命名法は、IMGTデータベース(www.imgt.org)で見ることができる。軽鎖には、例えば、それらが現れる、特異的結合対と結合するタンパク質の第1のメンバーによって選択的に結合される、特異的結合対の第1又は第2の第1のメンバーいずれかと選択的に結合しないものを含む。軽鎖にはまた、それらが現れる、特異的結合対と結合するタンパク質の第1のメンバーによって選択的に結合される、特異的結合対の1つ以上の第1のメンバーに結合して認識することで、重鎖又は別の軽鎖に結合、認識又は補助するものも含まれる。共通又はユニバーサル軽鎖には、ヒトVκ1-39Jκ遺伝子又はヒトVκ3-20Kκ遺伝子に由来するものが含まれ、またそれらの体細胞変異(例えば、親和性成熟)型が含まれる。例示的なヒトVLセグメントとしては、ヒトVκ1-39遺伝子セグメント、ヒトVκ3-20遺伝子セグメント、ヒトVλ1-40遺伝子セグメント、ヒトVλ1-44遺伝子セグメント、ヒトVλ2-8遺伝子セグメント、ヒトVλ2-14遺伝子セグメント、及びヒトVλ3-21遺伝子セグメントが挙げられ、またそれらの体細胞変異(例えば、親和性成熟)型が挙げられる。或る1つの生物(例えば、ヒト、又は齧歯類、例えばラット若しくはマウス、又はトリ、例えばニワトリ)由来の可変ドメイン、及び同じ又は異なる生物(例えば、ヒト、又は齧歯類、例えばラット若しくはマウス、又はトリ、例えばニワトリ)由来の定常領域を含む軽鎖を生成することができる。
【0140】
「カプシドタンパク質」という用語には、ウイルスのカプシドの一部分であるタンパク質が含まれる。アデノ随伴ウイルスの場合、カプシドタンパク質は概して、VP1、VP2及び/又はVP3を指し、また単一のcap遺伝子によってコードされる。AAVの場合、3つのAAVカプシドタンパク質は、3つのタンパク質全てが共通の終止コドンを使用するが、mRNAの選択的スプライシング及び/又は翻訳開始コドンの選択的使用を介して、capオープンリーディングフレーム(ORF)から重複して生成される。
【0141】
本明細書で使用される「野生型」という用語には、(突然変異体、病変したもの、変性したもの等と対比して)「正常な」状態又は状況において自然界に見られるような構造及び/又は活性を有する存在が含まれる。当業者は、野生型ウイルスベクター、例えば野生型カプシドタンパク質を、修飾カプシドとの比較研究において参照ウイルスベクターとして使用し得ることを理解するであろう。概して、参照ウイルスカプシドタンパク質/カプシド/ベクターは、効果を試験するための変化を除いて、被検ウイルスカプシドタンパク質/カプシド/ベクターと同一である。ポリヌクレオチド又はポリペプチドに関して使用される場合、「野生型」とは、野生型生物内に見られるか又は野生型生物によって発現されるポリヌクレオチド又はポリペプチドの天然(未修飾)形態を指す。
【0142】
本明細書において使用される場合、「共有結合性」、「共有結合」又は「共有結合した」という用語は、原子間の電子対の共有を伴う化学結合を指す。これらの電子対は共有電子対又は結合電子対として知られており、原子間の引力と反発力との安定したバランスにより共有結合が形成される。多くの分子では、電子の共有により、各原子は、安定した電子配置に対応する完全な価電子殻と同等の状態に達することができる。本発明の好ましい実施形態において、共有結合は、ジスルフィド(SS結合)であり、2つのチオール基のカップリングによって誘導され得る。2つのシステイン残基のチオール基間の共有結合は、タンパク質の二次構造及び三次構造の重要な要素である。共有結合は、イオン結合又は電磁分子間力等の他の結合形態よりも1つ以上の生体分子間に強力な連結をもたらし得る。
【0143】
本明細書において使用される場合、「ウイルスアダプター分子」という用語は、ウイルスカプシドに結合することが可能なポリペプチドとリガンドとを含むタンパク質、融合タンパク質、又は接合化合物を指す。「ウイルスアダプター」という用語も、かかる化合物を指すのに使用されることがある。幾つかの実施形態において、「ウイルスアダプター分子」という用語は、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含むポリペプチドとリガンドとを含むタンパク質、融合タンパク質、又は接合化合物を指す。「ウイルスアダプター」又は「共有結合性ウイルスアダプター」という用語も、かかる化合物を指すのにも使用されることがある。本明細書において使用される場合、「AAVアダプター分子」という用語は、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能なポリペプチドとリガンドとを含むタンパク質、融合タンパク質、又は接合化合物を指す。「AAVアダプター」という用語もかかる化合物を指すのに使用されることがある。
【0144】
遺伝子療法
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の組換えウイルスベクターは、ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに結合したウイルス粒子、又はウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子を含み、なお、ウイルス粒子は目的のヌクレオチドを封入する。幾つかの実施形態において、目的のヌクレオチドは、ウイルスプロモーター、細菌プロモーター、哺乳動物プロモーター、鳥類プロモーター、魚プロモーター、昆虫プロモーター、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されるプロモーターの制御下にある。幾つかの実施形態において、目的のヌクレオチドは非ヒトプロモーターの制御下にある。幾つかの実施形態において、プロモーターはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。幾つかの実施形態において、プロモーターはEF1αプロモーターである。幾つかの実施形態において、プロモーターはCAGGプロモーターである。幾つかの実施形態において、プロモーターはユビキチンC(UbC)プロモーターである。
【0145】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載の組換えウイルスベクターは、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドに共有結合したウイルス粒子、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子を含み、なお、ウイルス粒子は目的のヌクレオチドを封入する。幾つかの実施形態において、目的のヌクレオチドは、ウイルスプロモーター、細菌プロモーター、哺乳動物プロモーター、鳥類プロモーター、魚プロモーター、昆虫プロモーター、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択されるプロモーターの制御下にある。幾つかの実施形態において、目的のヌクレオチドは非ヒトプロモーターの制御下にある。幾つかの実施形態において、プロモーターはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。幾つかの実施形態において、プロモーターはEF1αプロモーターである。幾つかの実施形態において、プロモーターはCAGGプロモーターである。幾つかの実施形態において、プロモーターはユビキチンC(UbC)プロモーターである。
【0146】
概して、目的のヌクレオチド又は遺伝子は、検出可能なマーカー、例えばレポーター、又は治療用ポリペプチドをコードし得る1つ以上の遺伝子であり得る。幾つかの実施形態において、目的のヌクレオチドはレポーター遺伝子である。幾つかの実施形態において、目的のヌクレオチド又は遺伝子は、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ等からなる群から選択される検出可能なマーカーをコードするレポーター遺伝子である。幾つかの実施形態において、検出可能なマーカーは緑色蛍光タンパク質である。他の実施形態において、目的のヌクレオチドは、自殺遺伝子、抗体又はそのフラグメントをコードするヌクレオチド、CRISPR/Casシステム又はその一部(複数の場合もある)をコードするヌクレオチド、アンチセンスRNAをコードするヌクレオチド、siRNAをコードするヌクレオチド、分泌酵素、治療用タンパク質をコードする遺伝子等からなる群から選択される。一実施形態において、目的のヌクレオチドは、マルチドメイン治療薬、例えば、2つの異なる機能をもたらす少なくとも2つのドメインを含むタンパク質をコードする。
【0147】
本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の組換えウイルス粒子を含み、例えば、ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに結合したウイルス粒子、又はウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子を含み、なお、ウイルス粒子が目的のヌクレオチド又は遺伝子を封入する、ウイルスベクターを含んでいてもよい。
【0148】
本明細書に記載の組成物は、本明細書に記載の組換えウイルス粒子を含み、例えば、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドに共有結合したウイルス粒子、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子を含み、なお、ウイルス粒子が目的のヌクレオチド又は遺伝子を封入する、ウイルスベクターを含んでいてもよい。
【0149】
また、本明細書には、組換えウイルスカプシドタンパク質、それを含むウイルスベクター、組成物等を製造及び使用する方法が記載される。幾つかの実施形態において、ウイルス、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等をリダイレクトし、診断用/治療用カーゴを標的細胞等に送達する方法は、標的細胞(in vitro又はin vivo、例えばヒトにおけるものであってもよい)を、本明細書に記載の組換えウイルスカプシドタンパク質を含む組換えウイルスベクターと接触させることを含む。かかる方法は、第1の工程としてウイルスベクターを生成すること、例えば、ウイルスベクターの生成に十分な条件でパッケージング細胞を培養することを含んでいてもよく、なお、パッケージング細胞は、ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子をコードするプラスミドを含む。かかる方法は、第1の工程としてウイルスベクターを生成すること、例えば、ウイルスベクターの生成に十分な条件でパッケージング細胞を培養することを含んでいてもよく、なお、パッケージング細胞は、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子をコードするプラスミドを含む。
【0150】
幾つかの実施形態において、標的細胞は(ヒト)肝細胞であり、(モザイク)組換えウイルスベクターは、アシアロ糖タンパク質受容体、例えば(h)ASGR1に特異的に結合する標的化リガンドを含む。幾つかの実施形態において、標的細胞は(ヒト)神経細胞であり、(モザイク)組換えウイルスベクターは、GABA、トランスフェリン受容体等に特異的に結合する標的化リガンドを含む。幾つかの実施形態において、標的細胞は(ヒト)T細胞であり、(モザイク)組換えウイルスベクターは、CD3、例えばCD3εに特異的に結合する標的化リガンドを含む。幾つかの実施形態において、標的細胞は(ヒト)造血幹細胞であり、(モザイク)組換えウイルスベクターは、CD34に特異的に結合する標的化リガンドを含む。幾つかの実施形態において、標的細胞は(ヒト)腎臓細胞である。幾つかの実施形態において、標的細胞は(ヒト)筋細胞であり、(モザイク)組換えウイルスベクターは、インテグリンに特異的に結合する標的化リガンドを含む。幾つかの実施形態において、標的細胞は(ヒト)癌細胞であり、(モザイク)組換えウイルスベクターは、腫瘍関連抗原、例えば、E6及びE7、Her2等に特異的に結合する標的化リガンドを含む。幾つかの実施形態において、標的化リガンドはヒトグルカゴン受容体(hGCGR)に結合する。
【0151】
本明細書に提示されるウイルス粒子の(例えば、目的のヌクレオチドの)遺伝学的なカーゴ容量は様々な値をとることができる。ウイルス粒子の遺伝学的なカーゴ容量は、5.0kb、5.1kb、5.2kb、5.3kb、5.4kb、5.5kb、5.6kb、5.7kb、5.8kb、5.9kb、6.0kb、6.1kb、6.2kb、6.3kb、6.4kb、6.5kb、6.6kb、6.7kb、6.8kb、6.9kb、7.0kb、7.1kb、7.2kb、7.3kb、7.4kb、7.5kb、7.6kb、7.7kb、7.8kb、7.9kb、8.0kb、8.1kb、8.2kb、8.3kb、8.4kb、8.5kb、8.6kb、8.7kb、8.8kb、8.9kb、9.0kb、9.1kb、9.2kb、9.3kb、9.4kb、9.5kb、9.6kb、9.7kb、9.8kb、9.9kb、10.0kb、又はこれらの値のいずれか2つの間の数値若しくは範囲であってもよく、又はおよそこれらとすることができる。ウイルス粒子の遺伝学的なカーゴ容量は、少なくとも5.0kb、5.1kb、5.2kb、5.3kb、5.4kb、5.5kb、5.6kb、5.7kb、5.8kb、5.9kb、6.0kb、6.1kb、6.2kb、6.3kb、6.4kb、6.5kb、6.6kb、6.7kb、6.8kb、6.9kb、7.0kb、7.1kb、7.2kb、7.3kb、7.4kb、7.5kb、7.6kb、7.7kb、7.8kb、7.9kb、8.0kb、8.1kb、8.2kb、8.3kb、8.4kb、8.5kb、8.6kb、8.7kb、8.8kb、8.9kb、9.0kb、9.1kb、9.2kb、9.3kb、9.4kb、9.5kb、9.6kb、9.7kb、9.8kb、9.9kb、又は10.0kbであってもよく、又は最大でこれらとすることができる。遺伝学的なカーゴ容量は、(i)ウイルス粒子がDNAse I消化から保護することができる一本鎖DNA分子の最大長、及び/又は(ii)ウイルス粒子がDNAse I消化から保護することができる二本鎖DNA分子の最大長であってもよい。一本鎖DNA分子は、自己ハイブリダイズして二本鎖領域を形成することができる。一本鎖DNA分子は、自己相補的AAV(scAAV)ベクターを含んでいてもよい。
【0152】
アデノ随伴ウイルス(AAV)
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒト及び他の幾つかの霊長類種に感染する小型ウイルスである。それらはディペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)属に属し、更にパルボウイルス(Parvoviridae)科に属する。それらは小型(20nm)の複製欠陥のある無エンベロープウイルスであり、およそ4.8キロベース(kb)の直鎖状一本鎖DNA(ssDNA)ゲノムを有する。
【0153】
AAVが疾患を引き起こすことは現在知られていない。ウイルスは非常に穏やかな免疫反応を引き起こす。幾つかの追加の特徴により、AAVは、遺伝子治療用のウイルスベクターの生成にとって、また同一遺伝子型ヒト疾患モデルの生成にとって魅力的な候補となっている。AAVを使用した遺伝子療法ベクターは、分裂細胞及び静止細胞の両方に感染し、宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく染色体外状態で存続し得るが、天然ウイルスでは、ウイルスによって運搬された遺伝子の宿主ゲノムへの組込みが起こる。
【0154】
AAVゲノムは、ポジティブセンス又はネガティブセンスいずれかの一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)で構築されており、その長さは約4.7キロベースである。ゲノムは、DNA鎖の両端の逆方向末端反復(ITR)配列と、2つのオープンリーディングフレーム(ORF):rep及びcapとを含む。前者は、AAVライフサイクルに必要なRepタンパク質をコードする4つの重複遺伝子で構成され、後者には、カプシドタンパク質VP1、VP2及びVP3の重複ヌクレオチド配列が含まれ、これらが相互作用して正二十面体対称のカプシドを形成する。
【0155】
逆方向末端反復(ITR)配列はそれぞれ145塩基を含む。それらは、AAVゲノムの効率的な増殖に必要であることが示された対称性のためにそのように名付けられている。この特性を与えるこれらの配列の特徴は、ヘアピンを形成する能力であり、これは、第2DNA鎖のプライマーゼ非依存性合成を可能にする、いわゆるセルフプライミングに寄与する。ITRは、AAV DNAの宿主細胞ゲノム(ヒトでは19番目の染色体)への組込みと、そこからの救出の両方に必要であること、また、完全に組み立てられたデオキシリボヌクレアーゼ耐性AAV粒子の生成と組み合わせたAAV DNAの効率的なカプシド形成にも必要であることも示された。
【0156】
ゲノムの「左側」には、p5及びp19と呼ばれる2つのプロモーターがあり、そこから、異なる長さの2つの重複するメッセンジャーリボ核酸(mRNA)が生成され得る。これらはそれぞれ、スプライスアウトされる場合とされない場合があるイントロンを含有する。これらの可能性を考慮すると、4つのmRNA、したがって重複する配列を有する4つのRepタンパク質を合成することができる。それらの名前であるRep78、Rep68、Rep52及びRep40は、それらのサイズをキロダルトン(kDa)で表す。Rep78及びRep68は、セルフプライミング作用でITRによって形成されたヘアピンに特異的に結合し、ヘアピン内の指定された末端解離部位である特定の領域で切断することができる。それらはまた、AAVゲノムのAAVS1特異的組込みに必要であることも示された。4つのRepタンパク質は全て、ATPに結合し、ヘリカーゼ活性を有することが示された。また、それらはp40プロモーター(後述)からの転写を上方制御し、p5及びp19プロモーターの両方を下方制御することが示された。
【0157】
ポジティブセンスAAVゲノムの右側は、p40と表される1つのプロモーターから開始する3つのカプシドタンパク質VP1、VP2及びVP3の重複配列をコードする。これらのタンパク質の分子量はそれぞれ、87キロダルトン、72キロダルトン及び62キロダルトンである。AAVカプシドは、1:1:10の比率で正二十面体対称に配置された合計60モノマーのVP1、VP2及びVP3の混合物で構成され、推定サイズは3.9メガダルトンである。
【0158】
cap遺伝子は、アセンブリ活性化タンパク質(AAP)と呼ばれる追加の非構造タンパク質を生成する。このタンパク質はORF2から生成され、カプシド構築プロセスに不可欠である。
【0159】
3つのVPは全て1つのmRNAから翻訳される。このmRNAは合成した後、2つの異なる方法でスプライシングされ得る。長いイントロン又は短いイントロンのいずれかが切除され、2.3kb長及び2.6kb長のmRNAプールの2つのmRNAプールが形成され得る。通常、特にアデノウイルスの存在下では、長いイントロンが好ましいため、2.3kb長のmRNAがいわゆる「メジャースプライス」に相当する。この形態では、VP1タンパク質の合成が開始される最初のAUGコドンがスプライスアウトされ、VP1タンパク質合成の全体的なレベルが低下する。メジャースプライスに残る第1のAUGコドンは、VP3タンパク質の開始コドンである。しかしながら、同じオープンリーディングフレーム内のそのコドンの上流には、最適なコダックコンテキストに囲まれたACG配列がある。
【0160】
より大きなイントロンが好ましくはスプライスアウトされ、メジャースプライスでは、ACGコドンが遥かに弱い翻訳開始シグナルであるため、AAV構造タンパク質がin vivoで合成される比率は約1:1:10であり、成熟ウイルス粒子と同じである。VP1タンパク質のN末端にある特有のフラグメントは、おそらく後期エンドソームからのAAV粒子の放出に必要なホスホリパーゼA2(PLA2)活性を有することが示された。
【0161】
AAVは、ヒト及び他の霊長類において高度に蔓延しており、幾つかの血清型が様々な組織試料から単離されている。血清型2、3、5及び6がヒト細胞で発見され、AAV血清型1、4及び7~11が非ヒト霊教類試料で発見された。AAVカプシドタンパク質には12の超可変表面領域が含まれ、殆どの変化は三重の近位ピーク(threefold proximal peaks)で発生するが、パルボウイルスゲノムは一般に、血清型全体にわたって高度に保存された複製及び構造遺伝子を示す。既知の血清型は全て、複数の多様な組織型の細胞に感染し得る。組織特異性はカプシド血清型によって決定され、AAVベクターの指向性範囲を変更するシュードタイピングは、治療におけるそれらの使用にとって重要となり得ると考えられる。
【0162】
血清型2(AAV2)は、これまでに最も広範囲に検査されている。AAV2は、骨格筋、ニューロン、血管平滑筋細胞及び肝細胞に対する自然な指向性を示す。AAV2については、へパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、aVβ5インテグリン及び線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR-1)の3つの細胞受容体が述べられている。前者は一次受容体として機能するのに対し、後の2つは共受容体活性を有し、受容体媒介エンドサイトーシスによってAAVが細胞に侵入することができるようにする。HSPGは一次受容体として機能するが、細胞外マトリックスに豊富に存在するとAAV粒子を捕捉して、感染効率を損なう可能性がある。
【0163】
研究により、ウイルス血清型2(AAV2)癌細胞は健康な細胞に害を及ぼさないことが示されている。「我々の結果から、アデノ随伴ウイルス型2は、人口の大部分に感染しているものの悪影響は知られておらず、複数の種類の癌細胞を死滅させるが、健康な細胞には影響を及ぼさないことが示唆される」と、2005年にペンシルバニア州立大学医学校(ペンシルバニア州)の免疫学と微生物学の教授であるCraig Meyersは述べた[69][70]。これは新たな抗癌剤につながると考えられる。
【0164】
他の血清型。AAV2は様々なAAVに基づく研究において最も一般的な血清型であるが、他の血清型も遺伝子送達ベクターとしてより効果的であり得ることが示されている。例えば、AAV6は気道上皮細胞への感染において遥かに優れているように見受けられ、AAV7はネズミ骨格筋細胞の非常に高い形質導入率を示し(AAV1及びAAV5も同様)、AAV8は肝細胞への形質導入に優れており、AAV1及びAAV5は、血管内皮細胞への遺伝子送達において非常に効率的であることが示された。脳では、殆どのAAV血清型が神経向性を示す一方、AAV5は星状膠細胞にも形質導入する。また、AAV1とAAV2とのハイブリッドであるAAV6はAAV2よりも低い免疫原性を示す。
【0165】
血清型は、それらが結合する受容体に関して異なり得る。例えば、AAV4及びAAV5の形質導入は、可溶性シアル酸(これらの血清型毎に異なる形態)によって阻害される場合があり、AAV5は、血小板由来増殖因子受容体を介して細胞に侵入することが示された。
【0166】
臨床及び研究の両方の目的で、新たなAAV変異体を改変及び改良するために多くの努力がなされてきた。このような修飾には、特定の組織を標的とする新たな指向性、及び免疫系による検出を回避するための修飾表面残基が含まれる。研究者等は、特定の細胞を標的とするために特定の組換えAAV(rAAV)株を選ぶだけでなく、更に精細な標的にアプローチするために或る特定のAAV株のハイブリッドを作製する実践であるAAVシュードタイピングも研究してきた。ハイブリッドは、或る1つの株からカプシドを取得し、別の株からゲノムを取得することによって作製される。例えば、AAV2のゲノムとAAV5のカプシドとのハイブリッドであるAAV2/5を伴う研究では、脳細胞において、ハイブリダイズしていないAAV2が実現するよりも高い精度及び範囲を実現することができた。研究者等は、ハイブリッドカプシドを有する株を作製することにより、シュードタイピングの実験を続けてきた。AAV-DJは、8つの異なるAAV株からのハイブリッドカプシドを有するため、体の多くの領域の種々の細胞に感染することができ、これは、限られた指向性を有する単一株のAAVには存在しない特性である。新たなAAV変異体を改変及び改良する他の取組みは、臨床用途及びAAV生物学の研究向けに特性を強化した新たなベクターを生成するために、ウイルス変異体の祖先を再構築することを伴っている。
【0167】
キメラ抗原受容体ウイルス(CAR-V)
本明細書において使用される場合、キメラ抗原受容体ウイルス、すなわちCAR-Vは、細胞表面リガンド又は抗原に結合することが可能な合成タンパク質(キメラ抗原受容体)の表面提示によって指向性が変更されたウイルス粒子である。提示される例では、CAR-Vは、室温で500μL反応中、0.1μg~1μgのカプシドを、改変した表面発現抗sfGFPナノボディの形態で合成表面抗原に結合することが可能な濃度15μMのsfGFP-PKD2アダプター分子の形態の合成受容体と一晩カップリングすることによって、AAV1 Asp590Cysビリオンから得ることができる。
【0168】
ウイルス様粒子(VLP)
ウイルス様粒子(VLP)は、ウイルスに似た分子であるが、ウイルス遺伝物質を含まないため非感染性である。それらは、天然に存在することもあれば、ウイルス構造タンパク質の個々の発現によって合成され、次いでウイルス様構造に自己組織化することもある(Zeltins, Molecular Biotechnology volume 53, pages 92-107 (2013))。種々のウイルス由来の構造カプシドタンパク質の組合せを使用して、組換えVLPを作製することができる。in vivoでの組織化(すなわち、複数のタンパク質の組換え共発現を介したE.コリ(E. coli)等の細胞内での組織化)及びin vitroでの組織化(すなわち、化学量論量の精製済みタンパク質を使用した反応容器内におけるタンパク質の自己組織化)の両方を使用して、ウイルス様粒子を形成することができる。
【0169】
VLPは、パルボウイルス科(例えば、アデノ随伴ウイルス)、レトロウイルス科(例えば、HIV)、フラビウイルス科(例えば、C型肝炎ウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、ニパ)及びバクテリオファージ(例えば、Qβ、AP205)を含む多種多様なウイルスファミリーのコンポーネントから生成されている。VLPは、細菌、哺乳動物細胞株、昆虫細胞株、酵母及び植物細胞を含む複数の細胞培養系で生成することができる。
【0170】
VLPは、自然界の幾つかのLTRレトロトランスポゾンによって生成される構造を指す場合もある。これらは、欠陥のある未熟なビリオンであり、遺伝物質を含有することもあるが、機能性ウイルスエンベロープが欠如しているため一般に非感染性である。
【0171】
作用物質の医薬組成物
本発明の他の態様はまた、本発明による単離ポリペプチド、AAVアダプター分子、ウイルスアダプター分子、ウイルス粒子、ウイルス様粒子、核酸又は細胞、必要に応じて、例えば生理食塩水、安定剤若しくはプロテイナーゼ阻害剤等の適切な賦形剤及び添加剤を含む、医薬品又は診断補助薬に関する。
【0172】
キット
本発明の幾つかの実施形態において、本明細書に記載の作用物質(例えば、単離ポリペプチド、AAVアダプター分子、ウイルスアダプター分子、ウイルス粒子、ウイルス様粒子、核酸、細胞、又は医薬組成物)はキットで提供することができる。幾つかの例では、キットは、(a)本明細書に記載の作用物質を含む容器と、場合により(b)情報資料とを含む。情報資料は、本明細書に記載の方法及び/又は例えば治療的利益のための作用物質の使用に関する、説明資料、指示的資料、マーケティング資料又は他の資料であり得る。
【0173】
キットの情報資料は、その形式が制限されない。幾つかの例では、情報資料は、治療剤の製造、治療剤の分子量、濃度、有効期限、バッチ又は製造場所の情報等に関する情報を含むことができる。他の局面では、情報資料は、例えば、投与の適切な量、方式又は様式(例えば、本明細書に記載の投与の用量、剤形又は様式)で治療剤を投与する方法に関する。
【0174】
或る場合には、情報資料、例えば指示書は、印刷物、例えば、印刷された文章、図面及び/又は写真、例えば、ラベル又は印刷されたシートで提供される。情報資料は、他の型式、例えば、点字、コンピューター可読資料、ビデオ録画物又は録音物で提供することもできる。他の例では、キットの情報資料は、キットの使用者が、その中の治療剤及び/又は本明細書に記載の方法におけるその使用に関して本質的な情報を得ることができる、問い合わせ先、例えば、物理アドレス、電子メールアドレス、ウェブサイト又は電話番号である。情報資料は、型式の任意の組合せで提供することもできる。
【0175】
治療剤に加えて、キットは、他の成分、例えば、溶媒若しくは緩衝液、安定化剤又は防腐剤を含むことができる。キットは、更なる作用物質、例えば、第2又は第3の作用物質、例えば、他の治療剤を含むこともできる。成分は、任意の形態、例えば、液体、乾燥又は凍結乾燥形態で提供することができる。成分は、実質的に純粋(しかし、これらを、一緒に組み合わせるか若しくは互いに別々に送達することができる)及び/又は無菌であり得る。成分が液状溶液で提供される場合、液状溶液は、水溶液、例えば、無菌の水溶液であり得る。成分が乾燥形態として提供される場合、再構成は、一般に、適切な溶媒の添加による。溶媒、例えば、無菌の水又は緩衝液を、場合によりキット中に提供することができる。
【0176】
キットは、治療剤又は他の作用物質のための1つ以上の容器を含むことができる。或る場合には、キットは、治療剤及び情報資料のための別々の容器、ディバイダー又はコンパートメントを含む。例えば、治療剤をボトル、バイアル又はシリンジに入れることができ、情報資料をプラスチック製のスリーブ又はパケットに入れることができる。他の局面では、キットの別々の要素は単一の分割されていない容器に含まれる。例えば、ラベルの形態で情報資料が添付されたボトル、バイアル又はシリンジに治療剤を入れることができる。或る場合には、キットは、それぞれ治療剤の1つ以上の単位剤形(例えば、本明細書に記載の剤形)を含む、複数(例えば、1パック)の個々の容器を含むことができる。容器は、単位用量、例えば、治療剤を含む単位を含むことができる。例えば、キットは、例えば、それぞれ単位用量を含む、複数のシリンジ、アンプル、ホイルパケット、ブリスターパック又は医療装置を含むことができる。キットの容器は、気密性、防水性(例えば、湿気又は蒸発の変化に対して不浸透性)及び/又は遮光性であり得る。
【0177】
キットは、場合により、治療剤の投与に適した装置、例えば、シリンジ又は他の適切な送達装置を含むことができる。装置は、例えば単位用量の治療剤を予め充填して提供することができ、又は空であってもよいが、充填に適しているものとする。
【0178】
併用療法
幾つかの実施形態において、本発明は、本発明による、ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子、及び第2の治療薬を含む組成物(例えば、1つ以上の組成物、製剤又は投与製剤)又は医薬配合剤を特徴とする。幾つかの実施形態において、第2の治療薬は、鎮痛薬、麻酔薬、抗菌剤、抗痙攣薬、抗認知症薬、抗鬱薬、解毒剤、制吐薬、抗真菌剤、抗痛風薬、抗炎症剤、抗片頭痛薬、抗筋無力症薬、抗マイコバクテリア薬、抗悪性腫瘍薬、抗寄生虫薬、抗パーキンソン病薬、抗精神病薬、鎮痙薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、双極性薬、血糖調節薬、心血管治療薬、中枢神経系作用薬、歯科用薬及び経口薬、外皮用剤、酵素補充剤/修飾剤、胃腸薬、泌尿生殖器薬、ホルモン剤、炎症性腸疾患薬、骨代謝疾患薬、眼科用薬、耳用薬、気道用薬、鎮静剤/催眠剤、骨格筋弛緩剤、治療用栄養素/ミネラル及び電解質からなるリストから選択される1つ以上の作用物質から選ばれる。
【0179】
幾つかの実施形態において、組成物は薬学的に許容可能な担体を含む。幾つかの実施形態において、ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子、及び第2の作用物質は、単一組成物中に、又は2つ以上の異なる組成物として存在することができる。ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子、及び第2の作用物質は、同じ投与経路を介して、又は異なる投与経路を介して投与することができる。ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子、及び第2の作用物質は、同時に又は連続的に投与することができる。幾つかの実施形態において、医薬配合剤は、ウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子、及び第2の作用物質を別々に又は一緒に含む。
【0180】
投与経路
作用物質又は医薬組成物は、経口、非経口、舌下、経皮、直腸、経粘膜、局所、吸入、口腔投与、胸膜内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻腔内、くも膜下腔内、及び/又は関節内、又はそれらの組合せを含む様々な経路によって投与することができる。幾つかの実施形態では、作用物質又は医薬組成物は経口投与される。
【0181】
形質導入効率
幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも10%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも20%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも30%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも40%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも50%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも60%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも70%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも80%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも90%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも95%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも99%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本明細書に記載の組換えウイルス粒子分子を含むウイルス粒子による対照細胞への形質導入は無効とされ、例えば目的のヌクレオチドの発現を測定する方法、例えばレポーターアッセイ等による場合に、例えば検出不可能である。
【0182】
反対に、リガンドを含むウイルスアダプター分子に結合したウイルス粒子は、標的細胞に感染することができ、例えば、参照ウイルスカプシド、例えば参照ウイルスカプシドタンパク質、例えば野生型対照ウイルスカプシドタンパク質を含むカプシドの能力と比較して、形質導入について本来許容される参照細胞を標的として結合する能力が部分的又は完全に回復したものである。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも10%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも20%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも30%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも40%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも50%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも60%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも70%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも80%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも90%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも100%高い形質導入効率を示す。
【0183】
幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドに共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも10%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドに共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも20%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドに共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも30%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドに共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも40%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドに共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも50%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドに共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも60%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドに共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも70%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドに共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも80%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドに共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも90%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドに共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも95%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドに共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルス粒子と比較して、形質導入効率の少なくとも99%の低下を示す。幾つかの実施形態において、本明細書に記載の組換えウイルス粒子分子を含むウイルス粒子による対照細胞への形質導入は無効とされ、例えば目的のヌクレオチドの発現を測定する方法、例えばレポーターアッセイ等による場合に、例えば検出不可能である。
【0184】
反対に、リガンドを含むウイルスアダプター分子が共有結合したウイルス粒子は、標的細胞に感染することができ、例えば、参照ウイルスカプシド、例えば参照ウイルスカプシドタンパク質、例えば野生型対照ウイルスカプシドタンパク質を含むカプシドの能力と比較して、形質導入について本来許容される参照細胞を標的として結合する能力が部分的又は完全に回復したものである。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも10%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも20%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも30%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも40%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも50%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも60%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも70%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも80%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも90%高い形質導入効率を示す。幾つかの実施形態において、本発明のウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上の異種システイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子は、適切な対照野生型ウイルスカプシドの形質導入効率より少なくとも100%高い形質導入効率を示す。
【0185】
カプシドタンパク質及び結合剤タンパク質の突然変異に適した残基の同定
ジスルフィド結合を形成することができるシステインに突然変異する可能性のある残基対を同定するために、受容体又はリガンドに結合したウイルスの構造を、PDB等の公共のデータベースから検索した(例えば、AAVRのPKD2ドメインと複合体を形成したAAV1構造、PBDエントリ6jcq)。2つのパートナー間の界面に並ぶ残基を検査して、(i)ウイルス粒子上の残基と(ii)受容体又はリガンド上の残基との対を、以下のように同定した:
Pymol又はChimera等のソフトウェアを使用してコンピューター上でシステイン残基に突然変異させた場合、側鎖が界面を破壊すると考えられる主要な立体衝突を誘発しない(すなわち、システイン残基の側鎖が、別の残基が既に存在する空間領域を占有するものではない);
残基(i)及び残基(ii)を置換するシステインのベータ炭素の距離が5.5Å未満となる;
システイン残基(i)及び残基(ii)の側鎖には、C(α)-C(β)の周りの側鎖の回転によって得られる配向が存在し、側鎖のガンマ位の硫黄原子の距離が2.5Å未満となる;
C(β)1-S(γ)1-S(γ)2、S(γ)1-S(γ)2-C(β)の原子によって形成される角度が、文献(例えば、Dombkowski et al., Protein disulphide engineering, FEBS Letters Volume 588, Issue 2, 21 January 2014, Pages 206-212)に示されているように、天然に存在するジスルフィド結合で観察される最適な角度と著しく(40%超)異ならない。
【0186】
タンパク質の柔軟性が静的構造によって正確に表されないことを考慮するために、最小限の構造的制約を示す表面残基については参照パラメーターからの任意の偏差が許容された。
【0187】
アダプタータンパク質(A)は、以下のように、ウイルス粒子(V)と相互作用することができるウイルス結合タンパク質(B)に由来し得る:
1)結合タンパク質(B)が、当該技術分野において標準的な方法で測定した場合に、Kd<100μMの親和性でウイルス(V)に結合することができる;
2)少なくとも1対の残基X及び残基Yが存在し、ここで、Xは結合タンパク質Bの一部分であり、Yはウイルス粒子Vの一部分であり、結合タンパク質Bがウイルス粒子Vとの複合体を形成する場合、それらそれぞれのβ炭素の間隔が5.5Å未満となる;
3)システイン側鎖が界面を破壊すると考えられる主要な立体衝突を誘発しない(すなわち、システイン残基の側鎖が、別の残基が既に存在する空間領域を占有するものではない)ように、残基X及び残基Yがシステインに突然変異することができる;
4)残基X及び残基Yの側鎖には、システインへの突然変異後に、C(α)-C(β)の周りの側鎖の回転によって得られる配向が存在し、側鎖のガンマ位の硫黄原子の距離が2.5Å未満となる;及び/又は、
5)C(β)1-S(γ)1-S(γ)2、S(γ)1-S(γ)2-C(β)の原子によって形成される角度が、文献(例えば、Dombkowski et al., Protein disulphide engineering, FEBS Letters Volume 588, Issue 2, 21 January 2014, Pages 206-212)に示されているように、天然に存在するジスルフィド結合で観察される最適な角度と著しく異ならない(例えば、40%以下である)。
【0188】
これらの基準の1つ以上が満たされる場合、Xのシステインへの突然変異によって結合タンパク質(B)から得られるアダプタータンパク質(A)、及びYのシステインへの突然変異によってVから得られる改変ウイルス(V’)は、本発明によれば、合理的な可能性を伴って、互いに共有結合することが予期され得る候補アダプタータンパク質-ウイルス対である。
【0189】
本発明の幾つかの実施形態において、候補アダプタータンパク質-ウイルス対は、上記の基準の1つ以上に基づき選択され得る。本発明の幾つかの実施形態において、候補アダプタータンパク質-ウイルス対は、上記リストの少なくとも1つの要件を満たす。本発明の幾つかの実施形態において、候補アダプタータンパク質-ウイルス対は、上記リストの少なくとも2つの要件を満たす。本発明の幾つかの実施形態において、候補アダプタータンパク質-ウイルス対は、上記リストの少なくとも3つの要件を満たす。本発明の幾つかの実施形態において、候補アダプタータンパク質-ウイルス対は、上記リストの少なくとも4つの要件を満たす。本発明の幾つかの実施形態において、候補アダプタータンパク質-ウイルス対は、上記リストの5つの要件を全て満たす。
【0190】
本発明の幾つかの実施形態において、ウイルスカプシド中、及び/又はウイルスカプシドに結合するのに適した単離ポリペプチド中の残基は、本明細書に記載の方法を使用することによって、システイン残基への突然変異のために選択され得る。アミノ酸残基をシステイン残基に突然変異させる手段は、例えば遺伝的手段又は化学的手段により当業者に知られている。
【0191】
以下の実施例において本発明を更に説明する。これらの実施例は、本発明の実施形態を示しているが、単なる例示を目的として与えられていることが理解されるべきである。上記の議論及びこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認することができ、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を様々な用途及び条件に適合させるために様々な変更及び修正をなすことができる。したがって、本明細書に図示し説明したものに加えて、本発明の様々な修正が、前述の説明から当業者には明らかとなるであろう。かかる修正も、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【実施例
【0192】
実施例1-AAV1(Asp590Cys)突然変異体の残基Cys590と、sfGFP-PKD2(Ser425Cys)アダプター融合タンパク質のCys425との間のジスルフィド結合の形成
図20の上のゲルを参照されたい。野生型(凡例ではAAV1WT)又はAsp590Cys(凡例ではAAV1Cys)いずれかのウイルス2μLを、wt(凡例ではPKD2WT)又はSer425Cys(凡例ではPKD2Cys)いずれかのsfGFP-PKD2融合タンパク質の100μMストック1.5μLと、最終反応量10μL(20mM Tris HCl pH 8、100mM NaCl)において、図に示す組合せで混合した。反応物を室温で1時間インキュベートし、次いで4%~12%のNuPAGE上、200Vで1時間泳動した。適切な個々のコンポーネントも対照として泳動した。ゲルローディングダイには還元剤を含めなかった。
【0193】
図20の下のゲルを参照されたい。野生型(凡例ではAAV1WT)又はAsp590Cys(凡例ではAAV1Cys)いずれかのウイルスストック4μLを、wt(凡例ではPKD2WT)又はSer425Cys(凡例ではPKD2Cys)いずれかのsfGFP-PKD2融合タンパク質の100μMストック3μLと、最終反応量20μL(20mM Tris HCl pH 8、100mM NaCl)において、図に示す組合せで混合した。反応物を室温で1時間インキュベートし、次いで試料を2つに分割した。反応物の半分を非還元ローディングダイと混合し(左のレーン)、反応物の半分を、βMEを含有する還元ローディングダイと混合した。試料は4%~12%のNuPAGE上、200Vで1時間泳動した。適切な個々のコンポーネントも対照として泳動した。
【0194】
ゲルは、150kDaと100kDaとの間を移動する、sfGFP-PKD2+AAV1、sfGFP-PKD2+VP2及びsfGFP-PKD2+VP3に対応するバンドの形成を示し、これは、AAV1カプシド及びsfGFP-PKD2アダプタータンパク質が両方ともシステイン残基を含有する場合にのみ観察することができ、還元剤の存在下で不安定になり、ジスルフィド結合ヘテロ二量体と一致する(図20)。
【0195】
実施例2-共有結合したAAV1 CAR-V複合体の精製
AAV1(Asp590Cys)ウイルスを、sfGFP-PKD2(Ser425Cys)融合タンパク質50μMの存在下、PBS中で一晩インキュベートした。ここで、PKD2(Ser425Cys)とは、AAVR(Ser425Cys)突然変異体(融合タンパク質50μM)のPKD2ドメインを指す。
【0196】
インキュベーション後、ウイルス粒子を未反応の過剰なsfGFP-PKD2(Ser425Cys)融合ポリペプチドから分離するために、反応物を、イオジキサノール段階勾配を使用する超遠心分離にかけた。超遠心分離後、40%イオジキサノール画分に分配された粒子を収集し、バッファーを交換し、4%~12%のSDS PAGE上で泳動した。
【0197】
ゲルは、勾配が、未結合のsfGFP-PKD2(Ser425Cys)アダプタータンパク質の大部分を精製して除去するのに有効であったことを示している(37kDa~50kDaの間のバンド、及び75kDa~100kDaの間のバンドを比較)。さらに、ゲルは、PKD2突然変異体融合タンパク質と、ウイルスカプシドタンパク質VP1、VP2及びVP3との安定に結合したヘテロ二量体を回収することができたことを示している(100kDaを超えるバンド)。これは、共有結合したAAV1Cys<>sfGFP粒子の形成が成功したことを証明した(図21)。
【0198】
実施例3-アダプターに共有結合したAAV1の指向性
HEK293T細胞を24ウェルプレートに播種した。細胞がおよそ60%の細胞占有面積率に達したとき、2つウェルに、膜結合抗sfGFPナノボディの形態でキメラsfGFP受容体を発現するプラスミドをトランスフェクトし(右列)、他のウェルにはトランスフェクトしなかった(左列)。細胞を37℃で24時間インキュベートして、トランスフェクトされた細胞内でのキメラ受容体の発現を可能にした。続いて、細胞をAAV1(Asp590Cys)<>sfGFP(CAR-V)、又はAAV1(Asp590Cys)いずれかに感染させた。ウイルスは両方とも、赤色蛍光タンパク質mScarletをコードする遺伝子を保有していた。画像は位相差(灰色)又はmScarlet(赤)を示している。
【0199】
データは、AAV1(Asp590Cys)<>sfGFP CAR-V(実施例1に記載)が、キメラsfGFP受容体を発現していないHEK293T細胞に対する指向性を低下させたものの、標的細胞がキメラ受容体を発現すると、感染力が回復することを示している。データは、HEK293T細胞が、アダプタータンパク質を有しないAAV1(Asp590Cys)による感染に対して非常に感受性が高いことを更に示している。これらのデータは、アダプタータンパク質が、対応するキメラ受容体を発現しない細胞に対するAAV1の感染力を低下させるが、対応するキメラ受容体を発現する細胞に対する感染力を回復させることを実証している(図22)。
【0200】
実施例4-小分子リガンドの使用
ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドを取得すること、及びそれを、標的細胞に対して高い特異性を有する標的化分子と反応させることによって、アダプタータンパク質を生成することが可能である。この反応は、NHS若しくはマレイミド化学を使用して実施することも、又は、ウイルスカプシド結合分子内の特定の位置に反応性基(アジド又はアルキン又はテトラジン又はトランスシクロオクテン等)を有する非標準アミノ酸を組み込むことによって実施することもできる。
【0201】
それは、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドを、標的化分子に結合することが可能な特定のペプチド配列、例えばスプリットインテイン、SpyTag、テトラシステインFCMモチーフ(FLNCCPGCCMEP)又はybbRモチーフ(TVLDSLEFIASKLA)と融合することによっても実施することができる。このような場合、標的化分子は、反応性エレメントの反対側、例えばスプリットインテインの反対側;SpyCatcher;フルオレセインヒ素ヘアピン、又はコエンザイムAをそれぞれ含むように設計される。
【0202】
次いで標的化分子は、特定の受容体に結合するように選ばれ得る。場合によっては、標的化分子がタンパク質、例えば、標的細胞型上で発現される受容体に対する抗体であってもよい。抗体の場合、抗体をアルキン基で修飾し、次いでクリックケミストリーを介して、ウイルスカプシド分子上のアジド基に反応させてもよい。
【0203】
場合によっては、標的化分子は小分子であってもよい。例えば、セロトニン又はドーパミン等の神経伝達物質をウイルスカプシドに接続させることによって、ウイルス粒子と合わせると、それぞれセロトニン受容体又はドーパミン受容体を発現する細胞に特異的なウイルス粒子を生成するアダプター分子を作製することが可能となる。このアプローチ(すなわち、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドと反応性基とを含むアダプタータンパク質を作製すること、次いでそれを標的化分子と反応させること)は、標的化分子が、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドとの融合として発現することができない場合(例えば、標的化分子が、単鎖タンパク質でない場合、又は小分子である場合)、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドに対する標的化分子の融合により、効率的に精製することができない場合に、特に有用である。
【0204】
実施例5-種々のウイルスの使用
アデノウイルス
本発明は、AAVにとって大きすぎるペイロードの送達のためにアデノウイルスを使用して実施することができる。例えば、アデノウイルス(AdV)は、全長スパイクタンパク質を送達するためにAstraZeneca製のCOVID-19ワクチンに使用されており、アデノウイルスは、他の幾つかの遺伝子療法でも試験中である。AAVの場合と同様に、細胞型特異的なAdVは、より特異的でより効率的、かつ毒性の低い遺伝子療法を可能にする。幾つかのアデノウイルスは、コクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体(CXADR)に特異的である。したがって、CXADRとリガンドとの融合を含むアダプター分子は、アデノウイルスを特定の細胞型に再標的化するのに使用することができると考えられる。本発明の幾つかの実施形態において、アダプター分子は、CXADRの少なくとも一部とリガンドとの融合からなる。幾つかのアデノウイルスはCD46に特異的である。したがって、CD46の一部又は全長とリガンドとの融合を含むアダプター分子は、アデノウイルスを特定の細胞型に再標的化するのに使用することができると考えられる。本発明の幾つかの実施形態において、アダプター分子は、CD46の少なくとも一部とリガンドとの融合からなる。本発明は、アデノウイルス-CXADR CAR-V又はアデノウイルス-CD46 CAR-V、又はAAV-A20抗体CAR-Vを使用して実施することができると考えられる。本発明の幾つかの実施形態において、CXADRタンパク質は配列番号20の一部を含んでいてもよい。本発明の幾つかの実施形態において、CXADRタンパク質は配列番号20の全長配列を含んでいてもよい。
【0205】
レンチウイルス
本発明は、ゲノムの組込みを目的としたペイロードを送達するためにレンチウイルスを使用して実施することができる。例えば、レンチウイルスは、そのペイロードを標的細胞に組み込むことで、特定の遺伝子挿入を伴う安定な細胞株の作製が可能になるため、in vitroでの細胞改変に使用されることが多い。細胞型特異的レンチウイルスベクターは、細胞療法における遺伝子編集工程の特異性及び効率を高めるために使用することができると考えられる。レンチウイルスはCD4受容体に対して極めて特異的であるため、リガンドに融合したCD4受容体の一部からなるアダプター分子は、レンチウイルスベクターの特定の細胞型への再標的化を促進させる可能性がある。
【0206】
ウイルス上の残基と結合剤との組合せ
ヒトアデノウイルスD37繊維タンパク質とヒト(h)CxAdR(結晶構造アクセッション番号PDB 2j12、Seiradake et al., Structural and Mutational Analysis of Human (h) Ad37 and Canine Adenovirus 2 Fiber Heads in Complex with the D1 Domain of Coxsackie and Adenovirus Receptor, JBC, Volume 281, Issue 44, 3 November 2006, Pages 33704-33716を参照)との組合せについては、hCxAdRの少なくとも一部を含有するアダプター融合タンパク質と対で、以下の突然変異を含有するhAdV-D37を使用することによって、共有結合したアデノウイルス(hAdV)CAR-Vを得ることができ、なお、hCxAdRは、以下の対応する点突然変異を含有する[PDBファイルに示される番号付け]:
hAdV-D37上のVal226Cys及びhCxAdRにおけるVal70Cys
hAdV-D37上のSer193Cys及びhCxAdRにおけるGlu56Cys
hAdV-D37上のSer274Cys及びhCxAdRにおけるVal128Cys
【0207】
本発明の幾つかの実施形態において、本発明の単離ポリペプチド又はアダプタータンパク質は、上記の点突然変異の1つ以上を含むhAdV-D37と組み合わせた、hCxAdRの少なくとも一部を含んでいてもよい。本発明の幾つかの実施形態において、本発明の単離ポリペプチド又はアダプタータンパク質は、ヒトアデノウイルス5(例えば、hAdV-D37を含む)と組み合わせた、hCxAdRの少なくとも一部を含んでいてもよく、なお、hCxAdRはVal70Cys突然変異を含み、AdV-5はVal441Cys突然変異を含む。
【0208】
他のアデノウイルスはCxAdRに結合しないこともあるが、CD46を含む他の細胞受容体には結合する場合がある(Seiradake et al., Structural and Mutational Analysis of Human Ad37 and Canine Adenovirus 2 Fiber Heads in Complex with the D1 Domain of Coxsackie and Adenovirus Receptor, JBC, Volume 281, Issue 44, 3 November 2006, Pages 33704-33716を参照)。それ故、本発明は、アデノウイルスカプシド又はウイルス粒子と、CD46等の別の適切なアデノウイルス結合タンパク質との組合せを使用して実施することができる。
【0209】
hCD46と複合体を形成したhAdV11pの繊維タンパク質の構造(PDBエントリ2O39、Persson et al., Adenovirus type 11 binding alters the conformation of its receptor CD46, Nature Structural & Molecular Biology volume 14, pages164-166 (2007)を参照)は、hCD46のフラグメントを含有するアダプター融合タンパク質と対で、以下の点突然変異を含有するhAdV-11pを使用することによって、共有結合したhAdV CAR-Vを得ることができることを示しており、なお、hCD46は以下の対応する点突然変異を含有する:
hAdV-11p上のAsn283Cys及びhCD46におけるThr42Cys
【0210】
本発明の幾つかの実施形態において、本発明の単離ポリペプチド又はアダプタータンパク質は、上記の点突然変異を含むhAdV-11pと組み合わせた、CD46の少なくとも一部を含んでいてもよい。
【0211】
AAV2は、A20中和抗体(PDBエントリ3j1s(McCraw et al., Structure of adeno-associated virus-2 in complex with neutralizing monoclonal antibody, Volume 431, Issues 1-2, 15-30 September 2012, Pages 40-49を参照)に結合することができる。
【0212】
A20中和抗体(nAb)の一部を含有するアダプター融合タンパク質と対で、以下の突然変異を含有するAAV2を使用することによって、A20抗体に共有結合したAAV2 CAR-Vを得ることができ、なお、A20 nAbは以下の対応する突然変異を含有する:
A20抗体に結合したAAV2(Ser264Cys)(重鎖Tyr102Cys→これはA20のCDR3に位置する)
A20抗体に結合したAAV2(Val708Cys)(重鎖Ser56Cys→これはA20のCDR2に位置する)
A20抗体に結合したAAV2(Asn717Cys)(軽鎖Ile93Cys→これはA20のCDR3に位置する)
【0213】
本発明の幾つかの実施形態において、本発明の単離ポリペプチド又はアダプタータンパク質は、上記の点突然変異の1つ以上を含むAAV2と組み合わせた、A20抗体の少なくとも一部を含んでいてもよい。本発明の幾つかの実施形態において、AAV2は、配列番号8に対して少なくとも85%、90%、95%、99%又は100%の同一性を有する配列を含み、A20抗体の一部は、配列番号21~配列番号28のいずれか1つに対して少なくとも85%、90%、95%、99%又は100%の同一性を有する1つ以上の配列を含む。
【0214】
AAV5は、AAVRのPKD1ドメインに結合することができる。AAV5とAAVRのPKD1ドメインとの間の共有結合は、AAVRのPKD1ドメインの少なくとも一部を含有するアダプター融合タンパク質と対で、以下の突然変異の1つ以上を含有するAAV5を使用することによって得ることができ、なお、AAVRのPKD1ドメインは以下の対応する突然変異を含有する:
AAV5上の突然変異Gln697Cys及びPKD1上のSer356Cys;
AAV5上の突然変異Leu543Cys及びPKD1上のLeu376Cys
【0215】
本発明の幾つかの実施形態において、本発明の単離ポリペプチド又はアダプタータンパク質は、上記の点突然変異の1つ以上を含むAAV5と組み合わせた、AAVRのPKD1ドメインの少なくとも一部を含んでいてもよい。本発明の幾つかの実施形態において、AAV5は、配列番号11に対して少なくとも85%、90%、95%、99%又は100%の同一性を有する配列を含み、AAVRのPKD1ドメインは、配列番号2に対して少なくとも85%、90%、95%、99%又は100%の同一性を有する配列を含む。
【0216】
ヒトアデノウイルスB3(その繊維タンパク質、Uniprot配列P04501を介して)は、デスモグレイン2(DSG2、Uniprot配列ID:Q14126)に結合することができる。ヒトアデノウイルスB3とデスモグレイン2との間の共有結合は、デスモグレイン2の少なくとも一部を含有するアダプター融合タンパク質と対で、以下の突然変異の1つ以上を含有するヒトアデノウイルスB3を使用することによって得ることができ、なお、デスモグレイン2は以下の対応する突然変異を含有する:
繊維タンパク質上の突然変異Tyr147Cys及びDSG2上の突然変異His175Cys;
繊維タンパク質上の突然変異Asn188Cys及びDSG2上の突然変異Thr226Cys;
繊維タンパク質上の突然変異Asn192Cys及びDSG2上の突然変異Ala174Cys;
繊維タンパク質上の突然変異Asp261Cys及びDSG2上の突然変異Lys362Cys;
繊維タンパク質上の突然変異Phe265Cys及びDSG2上の突然変異Ser366Cys
【0217】
本発明の幾つかの実施形態において、本発明の単離ポリペプチド又はアダプタータンパク質は、上記の点突然変異の1つ以上を含むヒトアデノウイルスB3と組み合わせた、デスモグレイン2の少なくとも一部を含んでいてもよい。本発明の幾つかの実施形態において、ヒトアデノウイルスB3は、配列番号30に対して少なくとも85%、90%、95%、99%又は100%の同一性を有する配列を含み、デスモグレイン2は、配列番号31に対して少なくとも85%、90%、95%、99%又は100%の同一性を有する配列を含む。幾つかの実施形態において、本発明の単離ポリペプチド又はアダプタータンパク質は、ヒトアデノウイルスB3と組み合わせたデスモグレイン2の少なくとも一部を含んでいてもよく、なお、ヒトアデノウイルスB3は繊維タンパク質上にAsn192Cys突然変異を含み、デスモグレイン2の一部はAla174Cys突然変異を含む。
【0218】
実施例6-sfGFP-PKD2融合タンパク質
24ウェルプレートにおいて、HEK293FT細胞をウェルA、ウェルB及びウェルCに播種し、70%~80%の細胞占有面積率に達するまで待った。次いで細胞を3つのウェル全てにおいてプラスミドでトランスフェクトし、膜アンカー型抗sfGFPナノボディの発現を可能にした。トランスフェクトの24時間後、5μLのsfGFP-PKD2融合タンパク質(約2mg/mL)をウェルA3に添加し、ナノボディによる融合タンパク質の捕捉を可能にするために30分間インキュベートした後、未結合の融合タンパク質を洗い流し、細胞培地を交換した。
【0219】
ウェルA(図1A)は、mScarlet遺伝子を保有するAAV2野生型に感染させた。ウェルB及びウェルC(図1B及び図1C)は、mScarlet遺伝子を保有するAAV2ウイルスArg585Ala Arg588Alaに感染させた。感染の24時間後、細胞を画像化して、mScarletを視覚化した。画像は、sfGFP-PKD2融合タンパク質が、合成膜アンカー型抗sfGFPナノボディを発現する細胞におけるAAV2 Arg585Ala Arg588Alaの感染力を増強することを示している(図1)。
【0220】
実施例7-DARPin-PKD2融合タンパク質を有するSKBR3細胞
2つの35mmディッシュにSKBR3細胞を播種した。細胞が約60%の細胞占有面積率に達したら、培地を1mLのDMEM+10%FBSに交換し、100μLのDARPin-PKD2(2μM)(DARPinリガンドはHer2に対する高親和性結合剤とした)をディッシュの1つに加え、他のディッシュは対照として保管した。ウェルを30分間インキュベートして、DARPin-PKD2融合タンパク質のDARPinドメインがSKBR3細胞株によって内因的に発現されるHer2受容体に結合することができるようにした後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、新たな培地を加えた。
【0221】
次いで両方のディッシュを、mScarlet遺伝子を保有するAAV2野生型に感染させた。24時間後、細胞を免疫染色用に固定した(DNA=青、Her2=緑、mScarlet=赤、位相差=灰色)。画像は、DARPin-PKD2融合タンパク質が、SKBR3細胞におけるAAV2野生型の感染力を大幅に増強することを示している(図2)。
【0222】
実施例8-mScarlet-PKD2融合タンパク質はAAV2の感染性を遮断する
HEK293FT細胞を、マトリゲルでコーティングした24ウェルプレートに播種し、細胞が約90%の細胞占有面積率に達するまで培養した。mScarlet-PKD2融合タンパク質(図3に示す濃度)を、強力なプロモーターの下でGFP遺伝子を保有するAAV2野生型(図3に示す濃度)と混合し、各試料の融合タンパク質の濃度を変化させながら、その量のウイルスを固定した。10分のインキュベート後、細胞をmScarlet-PKD2+AAV2混合物で感染させた。24時間後、感染のマーカーとして細胞のGFP発現を画像化した。
【0223】
データは、溶液中のmScarlet-PKD2融合タンパク質の存在が濃度依存的にAAV2野生型の感染力を阻害することを示し、融合タンパク質のPKD2ドメインがウイルスと効果的に相互作用して、結合について細胞AAVRと競合し、感染を防ぐことを示唆している(図3)。
【0224】
実施例9-AAV2へのPKD2融合タンパク質の結合
10μLの市販のAAV2ウイルス(1013vg/mL)をCM3チップ上に固定化し、アミンカップリングによる表面プラズモン共鳴(SPR)を実施した。AAV2チャネルのSPRシグナルを、sfGFP-PKD2融合タンパク質の濃度を増加させることにより得られる参照チャネルと比べて測定した。
【0225】
SPRシグナルは、固定化AAV2と融合タンパク質との間の相互作用を確認し、測定された親和性は約6μMであった(図4)。
【0226】
実施例10-AAV1へのPKD2融合タンパク質の結合
10μLの市販のAAV1ウイルス(1013vg/mL)をCM3チップ上に固定化し、アミンカップリングによる表面プラズモン共鳴(SPR)を実施した。AAV2チャネルのSPRシグナルを、sfGFP-PKD2融合タンパク質の濃度を増加させることにより得られる参照チャネルと比べて測定した。
【0227】
SPRシグナルは、固定化AAV1と融合タンパク質との間の相互作用を確認し、測定された親和性は約2μMであった(図5)。
【0228】
実施例11-小分子リガンドの使用
アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド(例えば、PKD2ドメイン含有タンパク質)を取得し、それを、標的細胞に対して高い特異性を有する標的化分子と反応させることによって、アダプタータンパク質を生成することが可能である。この反応は、NHS又はマレイミド化学を使用して実施することも、又は、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド内の特定の位置に反応性基(アジド又はアルキン又はテトラジン又はトランスシクロオクテン等)を有する非標準アミノ酸を組み込むことによって実施することもできる。
【0229】
それは、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシド分子に結合することが可能な単離ポリペプチドを、標的化分子に結合することが可能な特定のペプチド配列、例えばスプリットインテイン、SpyTag、テトラシステインFCMモチーフ(FLNCCPGCCMEP)又はybbRモチーフ(TVLDSLEFIASKLA)と融合することによって実施することもできる(Fernandes, D.D., et al. Characterization of Fluorescein Arsenical Hairpin (FlAsH) as a Probe for Single-Molecule Fluorescence Spectroscopy. Sci Rep 7, 13063 (2017)を参照)。このような場合、標的化分子は、反応性エレメントの反対側、例えばスプリットインテインの反対側;SpyCatcher;フルオレセインヒ素ヘアピン、又はコエンザイムAをそれぞれ含むように設計される。
【0230】
次いで標的化分子は、特定の受容体に結合するように選ばれ得る。場合によっては、標的化分子がタンパク質、例えば、標的細胞型上で発現される受容体に対する抗体であってもよい。抗体の場合、抗体をアルキン基で修飾し、次いでクリックケミストリーを介して、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド上のアジド基に反応させてもよい。
【0231】
場合によっては、標的化分子は小分子であってもよい。場合によっては、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドは、PKD2ドメイン含有タンパク質である。例えば、セロトニン又はドーパミン等の神経伝達物質を、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに接続させることによって、AAVと合わせると、それぞれセロトニン受容体又はドーパミン受容体を発現する細胞に特異的なAAVを生成するアダプター分子を作製することが可能となる。このアプローチ(すなわち、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドと反応性基とを含むアダプター分子を作製すること、次いでそれを標的化分子と反応させること)は、標的化分子が、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとの融合として発現することができない場合(例えば、標的化分子が単鎖タンパク質でない場合、又は小分子である場合)、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドに対する標的化分子の融合により、効率的に精製することができない場合に、特に有用である。
【0232】
実施例12-本発明の更なる例
本発明者等は、本発明の特に有利な特徴を生み出す本発明の数多くの態様を特定した。
【0233】
AAVRのPKD2(V480E)変異体は、AAVカプシドに対する親和性が向上しており、これによりアダプタータンパク質として優れている(図26参照)。
【0234】
ウイルスを再標的化するためのウイルスアダプタータンパク質の使用は、CAR-融合タンパク質をアダプターとして使用してアデノウイルスに適用することができる(図27参照)。
【0235】
複合体は、AAV1(Asp590Cys)とアダプタータンパク質との間で生成され得る(図28参照)。
【0236】
PKD2(Ser425Cys)とともにアダプタータンパク質を構成する融合パートナーの同一性は、共有結合付加体を形成する能力を維持しながら、モジュール方式でカスタマイズすることができる。これは、本技術を使用して、融合パートナーの同一性を変更することにより、多くの異なる受容体に対してAAVを再標的化することができることを意味する(図29参照)。
【0237】
アダプタータンパク質とウイルスカプシドタンパク質との間の共有結合付加体は、1mMの還元剤トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)の存在下でも形成することができ、これはタンパク質間のジスルフィド結合が、溶媒に完全に曝されていない界面に形成されることを示す(図30参照)。TCEP等の還元剤の存在下でのカップリングは、アダプタータンパク質とウイルスとのカップリングにも有利であり、カップリング反応前にタンパク質及びウイルスを部分的に酸化しておいてもよい。
【0238】
アダプタータンパク質によるAAV1(Asp590Cys)の再標的化は、その感染力を実質的に増加させることができる(図31参照)。
【0239】
組換えAAV1はADK1a抗体によって中和されるが、コーティングされたウイルス粒子(CAR-V粒子)は、中和抗体の濃度にかかわらず同じレベルの感染力を維持し、それ故、中和に対して抵抗性である(図32参照)。
【0240】
AAV1(Asp590Cys)をアダプタータンパク質でコーティングすると、アダプタータンパク質と相互作用する受容体を発現する細胞型に対するその特異性を高めることができる(図33参照)。
【0241】
ウイルスをアダプタータンパク質でコーティングすると、AAVのオフターゲット感染の主要部位である肝臓に感染しなくなる(図34参照)。
【0242】
アダプタータンパク質とのインキュベート後、遊離VPタンパク質に対応する認識可能なバンドは観察することができず、これはカップリングが完了したことを示している。これにより、PKD1由来のアダプタータンパク質を使用して、AAV5Q697Cを再標的化し得ることが示される(図35参照)。
【0243】
ファイバーノブとアダプタータンパク質との間の共有結合付加体の形成は、専らカルシウムイオンの存在下で観察され、このため、結合の形成がノブとデスモグレイン2との間のCa2+依存性相互作用に依存していることが示される。故に、DSG2由来のアダプタータンパク質は、アデノウイルスB3に共有結合し、その指向性を変えるために使用することができる(図36参照)。
【0244】
図39は、AAV2(Gln589Cys)をアダプタータンパク質でコーティングすると、アダプタータンパク質と相互作用する受容体を発現する細胞に対するその特異性を高めることができることを示している。
【0245】
図40は、マーカー後のレーン2及びレーン5におけるカプシドタンパク質の分子量のシフトによって示される、アダプタータンパク質とウイルスカプシドタンパク質との間の共有結合付加体を示している。重要なことは、AAV1及びAAV2突然変異体ウイルスの両方に付加体のバンドが形成されることである。これにより、PKD2由来のアダプタータンパク質を使用して、AAV1及びAAV2の指向性を変えることができることが確認される。
【0246】
図41は、AAV5(Gln697Cys)をアダプタータンパク質でコーティングすると、対応する受容体を発現する細胞に対するその特異性を高めることによって再標的化を可能にすることを示している。
【0247】
これらの追加のデータは、本明細書に記載の原理が複数の異なるウイルスアダプタータンパク質及び複数の異なるウイルス型に包括的に利用可能であることを実証するものである。特に、本出願は、5つの別個のウイルス-アダプタータンパク質対にわたる包括的な効果を裏付ける証拠を提供する:
PKD2(Ser425Cys-Val480Glu)+AAV1(Asp590Cys)
PKD2(Ser425Cys-Val480Glu)+AAV2(Gln589Cys)
PKD1(Ser356Cys)+AAV5(Gln697Cys)
DSG2(Ala174Cys)+AdV-B3(Asn192Cys)
CAR(Val70Cys)+AdV-5(Val441Cys)
【0248】
本発明の組成物及び方法に対して様々な修飾及び変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内にある限り、そのような修飾及び変更を包含することが意図される。
【0249】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願が、引用することにより本明細書の一部をなすように具体的かつ個別に示されているようかのように、引用することによりその全体が本明細書の一部をなすものとする。加えて、本出願におけるいずれかの引用文献の引用又は特定は、かかる引用文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用されている限りにおいて、それは必ずしも限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0250】
本発明の更なる実施形態を以下に開示する:
1.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチド。
2.(i)アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドと、(ii)リガンドとを含むAAVアダプター分子。
3.非修飾野生型ウイルスカプシドに結合することが可能である、実施形態1又は2のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
4.野生型ウイルスカプシドと比較して5つ以下の(例えば5つ、4つ、3つ、2つ又は1つの)アミノ酸点突然変異を有するウイルスカプシドに結合することが可能である、実施形態1~3のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
5.野生型ウイルスカプシドに対して5アミノ酸以下の(すなわち1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸又は5アミノ酸の)アミノ酸挿入又はアミノ酸欠失を有するウイルスカプシドに結合することが可能である、実施形態1~4のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
6.野生型ウイルスカプシドに対して挿入又は欠失を有しないウイルスカプシドに結合することが可能である、実施形態1~5のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
7.アデノ随伴ウイルスカプシドに結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含む、実施形態1~6のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
8.アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全長配列を含む、実施形態1~7のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
9.アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の配列が配列番号1のアミノ酸配列を含む、実施形態7又は8のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
10.AAVRポリペプチドにおける1つ以上の点突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態7~9のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
11.AAVRポリペプチドにおける1つ以上の点突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなるリストから選択される配列を参照して定義される、実施形態7~10のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
12.PKD2ドメインにおけるV480E突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態7~10のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
13.V480E突然変異を有する配列番号1の配列を含む、実施形態7~12のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
14.V480E突然変異を有する配列番号3の配列を含む、実施形態7~11のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
15.PKD2ドメインにおけるS425C突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態7~14のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
16.S425C突然変異を有する配列番号1の配列を含む、実施形態7~14のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
17.S435C突然変異を有する配列番号3の配列を含む、実施形態7~14のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
18.PKD2ドメインにおけるS425C突然変異及びV480E突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1又は配列番号3を参照して定義される、実施形態7~17のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
19.DARPin、ナノボディ、好適な抗体様タンパク質、リポカリンフォールドに由来するタンパク質、アフィボディ(例えば、プロテインAのZドメインに由来するアフィボディ)、フィブロネクチンのドメイン、FynのSH3ドメイン、プロテアーゼ阻害剤ステフィンAに由来するアフィマー又はスキャフォールド、非抗体スキャフォールドタンパク質(アディロン)、及び抗体又はその抗原結合フラグメントからなるリストから選択されるポリペプチドの一部を含む、実施形態1~6のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
20.DARPin、ナノボディ、好適な抗体様タンパク質、リポカリンフォールドに由来するタンパク質、アフィボディ(例えば、プロテインAのZドメインに由来するアフィボディ)、フィブロネクチンのドメイン、FynのSH3ドメイン、プロテアーゼ阻害剤ステフィンAに由来するアフィマー又はスキャフォールド、非抗体スキャフォールドタンパク質(アディロン)、及び抗体又はその抗原結合フラグメントからなるリストから選択されるポリペプチドを含む、実施形態1~6のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
21.
a)1つ以上の非天然アミノ酸、
b)ポリペプチドに架橋した1つ以上の化学的部分、
c)ビオチンタグ、例えばビオチン化AAVR、
d)SpyTagペプチド、例えばAAVR-SpyTag、及び/又は、
e)プロテインAポリペプチド若しくはプロテインGポリペプチド、
の1つ以上を更に含む、実施形態1~20のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
22.リガンドが細胞表面分子に結合することが可能である、実施形態1~21のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
23.リガンドが抗体又はその抗原結合フラグメント等のヒトタンパク質である、実施形態1~22のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
24.リガンドがインターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-5、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-9、インターロイキン-10、インターロイキン-11、インターロイキン-12、インターロイキン-13、インターロイキン-14、インターロイキン-15、インターロイキン-16、インターロイキン-17、インターロイキン-18、インターロイキン-19、インターロイキン-20、インターロイキン-21、インターロイキン-22、インターロイキン-23、インターロイキン-24、インターロイキン-25、インターロイキン-26、インターロイキン-27、インターロイキン-28、インターロイキン-29、インターロイキン-30、インターロイキン-31、インターロイキン-32、インターロイキン-33、インターロイキン-34、インターロイキン-35、インスリン、トランスフェリン、CD2、CD58、CD59、CD2、CD40L/CD154、CD5、CD72、CD5L、CD23、CD70、CD80、CD86、S100Ap、CD178、CD155、CD106、CSF1、CD166、FasL、CD242、CD252、TRAIL、RANKL、APRIL、CD257、CD272、CD273、CD274、CD275、PD-L1、PD-L2、Cas13及びCas7-11、エンドセリン、レプチン、バソプレッシン、CD10、CD31、CD119、アペリン、エラベラ、アドレノメデュリン、ボツリヌス毒素に由来する標的化ドメイン、神経ペプチド、サイトカイン又は小分子からなるリストから選択される1つ以上のリガンドである、実施形態1~23のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
25.リガンドが小分子であり、任意に、小分子がN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又はマレイミドを介して単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子に連結される、実施形態1~24のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
26.リガンドが小分子であり、任意に、単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子が、小分子を単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子に連結する非標準アミノ酸を含む、実施形態1~24のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
27.リガンドがHer2、インターロイキン-1受容体、インターロイキン-2受容体、インターロイキン-3受容体、インターロイキン-4受容体、インターロイキン-5受容体、インターロイキン-6受容体、インターロイキン-7受容体、インターロイキン-8受容体、インターロイキン-9受容体、インターロイキン-10受容体、インターロイキン-11受容体、インターロイキン-12受容体、インターロイキン-13受容体、インターロイキン-15受容体、インターロイキン-18受容体、インターロイキン-20受容体、インターロイキン-21受容体、インターロイキン-22受容体、インターロイキン-23受容体、インターロイキン-27受容体、インターロイキン-28受容体、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、CD58、CD2、CD2、CD59、CD40、CD72、CD5、CD36、CD19、CD21、CD81、CD27、CD28、CTLA-4、CD85j、CD95、CD96、α4β1インテグリン、CD115、CD6、CD178、LFA-1、TNFRSF4、DR4、DR5、RANK/CD265、TACI/CD267、CD267、CD268、CD269、HVEM、PD1/CD279、B7-1/CD80、CD278、CD4、CD8、CD19、NMDAR、AMPAR、mGluR5、DRD1、DRD2、Bmp4、GLP1R、レプチン受容体、α5β5インテグリン及びglycoRNAからなるリストから選択される1つ以上の細胞表面分子と結合する、実施形態1~26のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
28.アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部がPKD1ドメインの少なくとも一部、PKD2ドメインの少なくとも一部、PKD3ドメインの少なくとも一部、PKD4ドメインの少なくとも一部、PKD5ドメインの少なくとも一部又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態7~27のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
29.アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部が、完全なPKD1ドメイン、完全なPKD2ドメイン、完全なPKD3ドメイン、完全なPKD4ドメイン、完全なPKD5ドメイン又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態7~28のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
30.アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部が配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなるリストから選択される配列を含む、実施形態7~29のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
31.アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部がアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全長配列を含み、任意に、完全配列が配列番号1を含む、実施形態7~30のいずれか1つによる単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子。
32.実施形態1~31のいずれか1つによる少なくとも1つの単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子に結合したアデノ随伴ウイルス粒子。
33.実施形態1~32のいずれか1つによる少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子に結合したアデノ随伴ウイルス粒子。
34.2つ以上の異なる標的細胞に対して特異性を有する、実施形態33によるアデノ随伴ウイルス粒子。
35.2つ以上の異なる標的細胞に対して増大した指向性を有する、実施形態33によるアデノ随伴ウイルス粒子。
36.2つ以上の標的細胞が異なる細胞表面分子を発現する、実施形態34又は35によるアデノ随伴ウイルス粒子。
37.少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子が、2つ以上の標的細胞上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、実施形態34~36のいずれか1つによるアデノ随伴ウイルス粒子。
38.2つ以上の異なる細胞表面分子を発現する標的細胞に対して特異性を有する、実施形態33によるアデノ随伴ウイルス粒子。
39.2つ以上の異なる細胞表面分子を発現する標的細胞に対して増大した指向性を有する、実施形態33によるアデノ随伴ウイルス粒子。
40.少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子が、標的細胞上の2つ以上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、実施形態38又は39によるアデノ随伴ウイルス粒子。
41.アデノ随伴ウイルスがAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.74からなるリストから選択される、実施形態32によるアデノ随伴ウイルス粒子。
42.アデノ随伴ウイルスがAAV2である、実施形態32又は41のいずれか1つによるアデノ随伴ウイルス粒子。
43.アデノ随伴ウイルスが野生型AAVである、実施形態32~42のいずれか1つによるアデノ随伴ウイルス粒子。
44.アデノ随伴ウイルスが配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択されるカプシドアミノ酸配列の一部を含む、実施形態32~43のいずれか1つによるアデノ随伴ウイルス粒子。
45.アデノ随伴ウイルスが配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択されるカプシドアミノ酸配列の完全長を含む、実施形態32~44のいずれか1つによるアデノ随伴ウイルス粒子。
46.アデノ随伴ウイルスが、野生型アミノ酸配列に対して1つ以上の保存的アミノ酸変化、例えば野生型アミノ酸配列に対して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個又は20個の保存的アミノ酸変化を有し、任意に、野生型アミノ酸配列が配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択される、実施形態32~45のいずれか1つによるアデノ随伴ウイルス粒子。
47.アデノ随伴ウイルスが、野生型アミノ酸配列に対して5つ以下の非保存的アミノ酸変化、例えば野生型アミノ酸配列に対して5つ、4つ、3つ、2つ又は1つの非保存的アミノ酸変化を有し、任意に、野生型アミノ酸配列が配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択される、実施形態32~46のいずれか1つによるアデノ随伴ウイルス粒子。
48.ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、O-結合型シアル酸、N-結合型シアル酸、N-結合型ガラクトース等の非タンパク質結合剤との相互作用を媒介するカプシドタンパク質における1つ以上のアミノ酸変化を含む、実施形態32~47のいずれか1つによるアデノ随伴ウイルス粒子。
49.1つ以上の突然変異がAAV2のアルギニン残基585及び588を含む、実施形態48によるアデノ随伴ウイルス粒子。
50.実施形態32~49のいずれか1つによるアデノ随伴ウイルス粒子を含む医薬組成物。
51.AAV粒子を修飾する方法であって、
AAV粒子を準備することと、
アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドを準備することと、
AAV粒子と単離ポリペプチドとを、単離ポリペプチドがAAV粒子に結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
52.AAV粒子を修飾する方法であって、
AAV粒子を準備することと、
アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むAAVアダプター分子を準備することと、
AAV粒子とAAVアダプター分子とを、単離融合ポリペプチドがAAV粒子に結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
53.AAV粒子を修飾する方法であって、
AAV粒子を準備することと、
アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)単離ポリペプチドを準備することと、
AAV粒子と単離ポリペプチドとを、単離ポリペプチドがAAV粒子に結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
54.AAV粒子を修飾する方法であって、
AAV粒子を準備することと、
アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含む2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)AAVアダプター分子を準備することと、
AAV粒子とAAVアダプター分子とを、AAVアダプター分子がAAV粒子に結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
55.単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子とAAV粒子との結合が、1つ以上のAAVカプシドタンパク質の天然指向性を減少又は消失させる、実施形態51~54のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法。
56.単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子とAAV粒子との結合が、1つ以上の細胞型に対するAAV粒子の指向性を増大させる、実施形態51~55のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法。
57.単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子とAAV粒子との結合が、神経細胞、マクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞、癌細胞、筋細胞、肝細胞、視細胞、膵β細胞、腎細胞及び肺細胞からなるリストから選択される1つ以上の細胞型に対するAAV粒子の指向性を増大させる、実施形態51~56のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法。
58.AAV粒子が、単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子を含まないAAV粒子の天然指向性と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも100%減少又は増大した指向性を有する、実施形態51~57のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法。
59.AAV粒子が2つ以上の異なる標的細胞に対して特異性を有する、実施形態51~58のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法。
60.AAV粒子が2つ以上の異なる標的細胞に対して増大した指向性を有する、実施形態51~58のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法。
61.2つ以上の標的細胞が異なる細胞表面分子を発現する、実施形態59又は60によるAAV粒子を修飾する方法。
62.少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子が、2つ以上の標的細胞上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、実施形態59~61のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法。
63.アデノ随伴ウイルス粒子が、2つ以上の異なる細胞表面分子を発現する標的細胞に対して特異性を有する、実施形態51~58のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法。
64.アデノ随伴ウイルス粒子が、2つ以上の異なる細胞表面分子を発現する標的細胞に対して増大した指向性を有する、実施形態51~58のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法。
65.少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子が、標的細胞上の2つ以上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、実施形態63又は64によるAAV粒子を修飾する方法。
66.AAV粒子を標的細胞に標的化する方法であって、
AAV粒子を準備することと、
アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドと、標的細胞に特異的なリガンドとを含むAAVアダプター分子を準備することと、
AAV粒子とAAVアダプター分子とを、AAVアダプター分子がAAV粒子に結合するように組み合わせ、それにより修飾AAV粒子を生成することと、
標的細胞を含む細胞の混合物と修飾AAV粒子とを接触させることと、
を含む、方法。
67.AAV粒子を標的細胞に標的化する方法であって、
AAV粒子を準備することと、
アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドと、標的細胞に特異的なリガンドとを含む2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)AAVアダプター分子を準備することと、
AAV粒子と2つ以上のAAVアダプター分子とを、AAVアダプター分子がAAV粒子に結合するように組み合わせ、それにより修飾AAV粒子を生成することと、
標的細胞を含む細胞の混合物と修飾AAV粒子とを接触させることと、
を含み、標的細胞が2つ以上の異なる細胞表面分子を発現し、任意に、AAVアダプター分子が標的細胞上の2つ以上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、方法。
68.AAV粒子を2つ以上の標的細胞に標的化する方法であって、
AAV粒子を準備することと、
アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドと、2つ以上の標的細胞の少なくとも1つに特異的なリガンドとを含む2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)AAVアダプター分子を準備することと、
AAV粒子と2つ以上のAAVアダプター分子とを、AAVアダプター分子がAAV粒子に結合するように組み合わせ、それにより修飾AAV粒子を生成することと、
2つ以上の標的細胞を含む細胞の混合物と修飾AAV粒子とを接触させることと、
を含み、2つ以上の標的細胞が2つ以上の異なる細胞表面分子を発現し、任意に、AAVアダプター分子が2つ以上の標的細胞上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、方法。
69.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含む、実施形態51~68のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
70.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)のPKD1ドメインの少なくとも一部、PKD2ドメインの少なくとも一部、PKD3ドメインの少なくとも一部、PKD4ドメインの少なくとも一部、PKD5ドメインの少なくとも一部又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態51~69のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
71.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全なPKD1ドメイン、完全なPKD2ドメイン、完全なPKD3ドメイン、完全なPKD4ドメイン、完全なPKD5ドメイン又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態51~70のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
72.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、AAVRポリペプチドにおける1つ以上の突然変異を含み、任意に、1つ以上の突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態51~71のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
73.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)のPKD1ドメインの少なくとも一部、PKD2ドメインの少なくとも一部、PKD3ドメインの少なくとも一部、PKD4ドメインの少なくとも一部、PKD5ドメインの少なくとも一部又はそれらの任意の組合せを含み、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、AAVRポリペプチドにおける1つ以上の突然変異を含み、任意に、1つ以上の突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態51~72のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
74.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全なPKD1ドメイン、完全なPKD2ドメイン、完全なPKD3ドメイン、完全なPKD4ドメイン、完全なPKD5ドメイン又はそれらの任意の組合せを含み、アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、AAVRポリペプチドにおける1つ以上の突然変異を含み、任意に、1つ以上の突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態51~73のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
75.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなるリストから選択される配列を含む、実施形態51~74のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
76.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全長配列を含み、任意に、完全配列が配列番号1を含む、実施形態51~75のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
77.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、1つ以上の点突然変異を有するアデノ随伴ウイルス受容体の一部を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態51~76のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
78.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、1つ以上の点突然変異を有するアデノ随伴ウイルス受容体の一部を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなるリストから選択される配列を参照して定義される、実施形態51~76のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
79.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、PKD2ドメインにおけるV480E突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態51~77のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
80.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、V480E突然変異を有する配列番号1の配列を含む、実施形態51~79のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
81.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、V480E突然変異を有する配列番号3の配列を含む、実施形態51~78のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
82.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、PKD2ドメインにおけるS425C突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態51~81のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
83.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、S425C突然変異を有する配列番号1の配列を含む、実施形態51~82のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
84.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、S425C突然変異を有する配列番号3の配列を含む、実施形態51~83のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
85.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドが、PKD2ドメインにおけるS425C突然変異及びV480E突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1又は配列番号3を参照して定義される、実施形態51~84のいずれか1つによるAAV粒子を修飾する方法又はAAV粒子を標的細胞に標的化する方法。
86.目的の核酸配列を標的細胞に送達する方法であって、標的細胞と実施形態32~49のいずれか1つによる修飾AAV粒子又は実施形態50による医薬組成物とを接触させることを含み、AAV粒子が目的の核酸配列を含む、方法。
87.目的の核酸配列がRABエスコートタンパク質1、RPE65、第VIII因子、第IX因子、コクリン、CLN7、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、アクアポリン1、グリア細胞株由来神経栄養因子、アスパルトアシラーゼ、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素、網膜色素変性症GTPアーゼ調節因子欠損、筋小胞体カルシウムATPアーゼ、環状ヌクレオチド感受性チャネルβ3、ニュールツリン、ガラクトシダーゼβ1、グルコース-6-ホスファターゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、ジストロフィン及びカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)からなるリストから選択されるタンパク質をコードする、実施形態86の方法。
88.標的細胞がin vitroである、実施形態66~87のいずれか1つによる方法。
89.標的細胞が対象においてin vivoである、実施形態66~87のいずれか1つによる方法。
90.標的細胞が神経細胞、マクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞、癌細胞、筋細胞、肝細胞、視細胞、膵β細胞、腎細胞及び肺細胞からなるリストから選択される、実施形態66~89のいずれか1つによる方法。
91.対象がヒトである、実施形態89又は90による方法。
92.標的細胞がヒト標的細胞である、実施形態66~93のいずれか1つによる方法。
93.薬剤として使用される、実施形態32~49のいずれか1つによるAAV粒子又は実施形態50による医薬組成物。
94.標的細胞とAAV粒子とを接触させることにより、目的の核酸配列を標的細胞に送達することを含む、治療を必要とする対象における疾患を治療する方法に使用される、実施形態32~49のいずれか1つによるAAV粒子又は実施形態50による医薬組成物。
95.疾患が神経変性障害、癌、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、血友病、先天盲障害、糖尿病、嚢胞性線維症、コロイデレミア、血友病A、血友病B、CLN7疾患、ポンペ病、パーキンソン病、カナバン病、脱髄疾患、RPE65突然変異による遺伝性網膜ジストロフィー、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症、X連鎖性網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、チャーグ-ストラウス症候群(CSS)、重症虚血肢、色覚異常、アルツハイマー病、黄斑変性、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、ウィルソン病、糖原病IA型、クリグラーナジャー症候群、テイ-サックス病、サンドホフ病、多発性骨髄腫、多系統萎縮症、ガングリオシドーシス、ダノン病、ファブリー病、バッテン病、フェニルケトン尿症、関節リウマチ、ムコ多糖症IIIa型、サンフィリポ症候群B、ムコ多糖症VI型、α1-アンチトリプシン欠損症、脊髄性筋萎縮症1型、クラッベ病、ベッカー型筋ジストロフィー、シャルコー-マリー-トゥースニューロパチー1a型、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII(CPT II)欠損症及びトリメチルアミン尿症、嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症からなるリストから選択される、実施形態94による使用のためのAAV粒子又は医薬組成物。
96.標的細胞とAAV粒子とを接触させることにより、目的の核酸配列を標的細胞に送達することを含む、治療を必要とする対象における疾患を治療する方法に使用され、以下のリスト:
a)神経変性障害の治療のための神経細胞、
b)癌の治療のための免疫細胞(例えばマクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞)、
c)免疫応答を惹起するための免疫細胞(例えばマクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞)、
d)癌の治療のための癌細胞又は腫瘍細胞、
e)デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療のための筋細胞、
f)血友病の治療のための肝細胞、
g)先天盲障害のための視細胞、
h)糖尿病の治療のための膵β細胞、又は、
i)嚢胞性線維症の治療のための肺細胞、
による指定の標的細胞の標的化が、指定の疾患を治療又は改善する、実施形態32~49のいずれか1つによるAAV粒子又は実施形態50による医薬組成物。
97.AAV粒子又は医薬組成物を対象に対してエアロゾルにより(例えば肺細胞に)、筋肉内に、動脈内に(例えば肝動脈を介して)、関節内に、網膜下に、頭蓋内に、静脈内に、髄腔内に、冠動脈内に又は皮下に投与する、実施形態93~97のいずれか1つによる使用のためのAAV粒子又は医薬組成物。
98.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド。
99.(i)ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドと、(ii)リガンドとを含むウイルスアダプター分子。
100.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基が単離ポリペプチドに対して異種である、実施形態98による単離ポリペプチド。
101.(i)ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドと、(ii)リガンドとを含み、1つ以上のシステイン残基が単離ポリペプチドに対して異種である、実施形態99によるウイルスアダプター分子。
102.非修飾野生型ウイルスカプシドに結合することが可能である、実施形態98~101のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
103.野生型ウイルスカプシドと比較して5つ以下の(例えば5つ、4つ、3つ、2つ又は1つの)アミノ酸点突然変異を有するウイルスカプシドに結合することが可能である、実施形態98~102のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
104.野生型ウイルスカプシドに対して5アミノ酸以下の(すなわち1アミノ酸、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸又は5アミノ酸の)アミノ酸挿入又はアミノ酸欠失を有するウイルスカプシドに結合することが可能である、実施形態98~103のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
105.野生型ウイルスカプシドに対して挿入又は欠失を有しないウイルスカプシドに結合することが可能である、実施形態98~103のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
106.1つ以上のシステイン残基を有し、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含む、実施形態98~105のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
107.1つ以上のシステイン残基を有し、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全長配列を含む、実施形態98~106のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
108.アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の配列が配列番号1のアミノ酸配列を含む、実施形態106又は107のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
109.AAVRポリペプチドにおける1つ以上の点突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態106~108のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
110.AAVRポリペプチドにおける1つ以上の点突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなるリストから選択される配列を参照して定義される、実施形態106~109のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
111.PKD2ドメインにおけるV480E突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態106~110のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
112.V480E突然変異を有する配列番号1の配列を含む、実施形態106~110のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
113.V480E突然変異を有する配列番号3の配列を含む、実施形態106~110のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
114.PKD2ドメインにおけるS425C突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態106~113のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
115.S425C突然変異を有する配列番号1の配列を含む、実施形態106~114のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
116.S425C突然変異を有する配列番号3の配列を含む、実施形態106~115のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
117.PKD2ドメインにおけるS425C突然変異及びV480E突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1又は配列番号3を参照して定義される、実施形態106~116のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
118.1つ以上の異種システイン残基を導入するためのAAVRポリペプチドにおける1つ以上の点突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態106~117のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
119.1つ以上の異種システイン残基を導入するためのAAVRポリペプチドにおける1つ以上の点突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなるリストから選択される配列を参照して定義される、実施形態106~118のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
120.単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子がDARPin、ナノボディ、好適な抗体様タンパク質、リポカリンフォールドに由来するタンパク質、アフィボディ(例えば、プロテインAのZドメインに由来するアフィボディ)、フィブロネクチンのドメイン、FynのSH3ドメイン、プロテアーゼ阻害剤ステフィンAに由来するアフィマー又はスキャフォールド、非抗体スキャフォールドタンパク質(アディロン)、及び抗体又はその抗原結合フラグメントからなるリストから選択されるポリペプチドの一部を含む、実施形態98~105のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。幾つかの実施形態において、単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子は、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。
121.単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子がDARPin、ナノボディ、好適な抗体様タンパク質、リポカリンフォールドに由来するタンパク質、アフィボディ(例えば、プロテインAのZドメインに由来するアフィボディ)、フィブロネクチンのドメイン、FynのSH3ドメイン、プロテアーゼ阻害剤ステフィンAに由来するアフィマー又はスキャフォールド、非抗体スキャフォールドタンパク質(アディロン)、及び抗体又はその抗原結合フラグメントからなるリストから選択されるポリペプチドを含む、実施形態98~105のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。幾つかの実施形態において、単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子は、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。
122.単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子が、コクサッキーウイルス-アデノウイルス受容体(CXADR)の一部を含み、任意に、CXADR配列が配列番号20である、実施形態98~105、120又は121のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
123.単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子が、コクサッキーウイルス-アデノウイルス受容体(CXADR)の完全長配列を含み、任意に、CXADR配列が配列番号20である、実施形態98~105、120又は121のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
124.中和抗体A20の抗原結合部分を含む、実施形態98~105、120又は121のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
125.単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子が、中和抗体A20の1つ以上の相補性決定領域(CDR)と実質的に同一の配列を含み、例えば、中和抗体A20の1つ以上の相補性決定領域(CDR)が1つ、2つ又は3つのアミノ酸点突然変異を含んでいてもよく、任意に、点突然変異の1つ以上が異種システイン残基である、実施形態124による単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
126.単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子が、中和抗体A20の相補性決定領域(CDR)の各々と実質的に同一の1つ以上の配列を含み、例えば、中和抗体A20の相補性決定領域(CDR)の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つが1つ、2つ又は3つのアミノ酸点突然変異を含んでいてもよく、任意に、点突然変異の1つ以上が異種システイン残基である、実施形態125による単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
127.単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子が、中和抗体A20の1つ以上の相補性決定領域(CDR)の完全長配列を含み、例えば、ポリペプチドが抗体A20のVHCDR1(配列番号26)、抗体A20のVHCDR2(配列番号27)、抗体A20のVHCDR3(配列番号28)、抗体A20のVLCDR1(配列番号22)、抗体A20のVLCDR2(配列番号23)及び抗体A20のVLCDR3(配列番号24)の1つ以上を含む、実施形態124による単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
128.中和抗体A20の相補性決定領域(CDR)の全てを含む、実施形態127による単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
129.ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子が、中和抗体A20の完全長VL鎖(配列番号21)及びVH鎖(配列番号25)の配列と実質的に同一の1つ以上の配列を含み、例えば、中和抗体A20のVL配列及び/又はVH配列が1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個のアミノ酸点突然変異を含んでいてもよく、任意に、点突然変異の1つ以上が異種システイン残基である、実施形態98~105又は120~128のいずれか1つによる1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド。
130.ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子が、中和抗体A20の完全長VL鎖(配列番号21)及びVH鎖(配列番号25)の配列を含む、実施形態98~105又は120~128のいずれか1つによる1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド。
131.
a)1つ以上の非天然アミノ酸、
b)ポリペプチドに架橋した1つ以上の化学的部分、
c)ビオチンタグ、
d)SpyTagペプチド、及び/又は、
e)プロテインAポリペプチド若しくはプロテインGポリペプチド、
の1つ以上を更に含む、実施形態98~130のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
132.リガンドが細胞表面分子に結合することが可能である、実施形態98~131のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
133.リガンドが抗体又はその抗原結合フラグメント等のヒトタンパク質である、実施形態98~132のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
134.リガンドがインターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-5、インターロイキン-6、インターロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-9、インターロイキン-10、インターロイキン-11、インターロイキン-12、インターロイキン-13、インターロイキン-14、インターロイキン-15、インターロイキン-16、インターロイキン-17、インターロイキン-18、インターロイキン-19、インターロイキン-20、インターロイキン-21、インターロイキン-22、インターロイキン-23、インターロイキン-24、インターロイキン-25、インターロイキン-26、インターロイキン-27、インターロイキン-28、インターロイキン-29、インターロイキン-30、インターロイキン-31、インターロイキン-32、インターロイキン-33、インターロイキン-34、インターロイキン-35、インスリン、トランスフェリン、CD2、CD58、CD59、CD2、CD40L/CD154、CD5、CD72、CD5L、CD23、CD70、CD80、CD86、S100Ap、CD178、CD155、CD106、CSF1、CD166、FasL、CD242、CD252、TRAIL、RANKL、APRIL、CD257、CD272、CD273、CD274、CD275、PD-L1、PD-L2、Cas13及びCas7-11、エンドセリン、レプチン、バソプレッシン、CD10、CD31、CD119、アペリン、エラベラ、アドレノメデュリン、ボツリヌス毒素に由来する標的化ドメイン、神経ペプチド、サイトカイン又は小分子からなるリストから選択される1つ以上のリガンドである、実施形態98~133のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
135.リガンドが小分子であり、任意に、小分子がN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又はマレイミドを介して単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に連結される、実施形態98~134のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
136.リガンドが小分子であり、任意に、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子が、小分子を単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に連結する非標準アミノ酸を含む、実施形態98~134のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
137.リガンドがHer2、インターロイキン-1受容体、インターロイキン-2受容体、インターロイキン-3受容体、インターロイキン-4受容体、インターロイキン-5受容体、インターロイキン-6受容体、インターロイキン-7受容体、インターロイキン-8受容体、インターロイキン-9受容体、インターロイキン-10受容体、インターロイキン-11受容体、インターロイキン-12受容体、インターロイキン-13受容体、インターロイキン-15受容体、インターロイキン-18受容体、インターロイキン-20受容体、インターロイキン-21受容体、インターロイキン-22受容体、インターロイキン-23受容体、インターロイキン-27受容体、インターロイキン-28受容体、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、CD58、CD2、CD2、CD59、CD40、CD72、CD5、CD36、CD19、CD21、CD81、CD27、CD28、CTLA-4、CD85j、CD95、CD96、α4β1インテグリン、CD115、CD6、CD178、LFA-1、TNFRSF4、DR4、DR5、RANK/CD265、TACI/CD267、CD267、CD268、CD269、HVEM、PD1/CD279、B7-1/CD80、CD278、CD4、CD8、CD19、NMDAR、AMPAR、mGluR5、DRD1、DRD2、Bmp4、GLP1R、レプチン受容体、α5β5インテグリン及びglycoRNAからなるリストから選択される1つ以上の細胞表面分子と結合する、実施形態98~136のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
138.アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部がPKD1ドメインの少なくとも一部、PKD2ドメインの少なくとも一部、PKD3ドメインの少なくとも一部、PKD4ドメインの少なくとも一部、PKD5ドメインの少なくとも一部又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態106~137のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
139.アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部がPKD1ドメイン、PKD2ドメイン、PKD3ドメイン、PKD4ドメイン、PKD5ドメイン又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態106~137のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
140.アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部が配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなるリストから選択される配列を含む、実施形態106~138のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
141.アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部が、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全長配列を含み、任意に、完全配列が配列番号1を含む、実施形態106~140のいずれか1つによる単離ポリペプチド又は共有結合ウイルスアダプター分子。
142.実施形態98~141のいずれか1つによる少なくとも1つの単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子。
143.実施形態98~141のいずれか1つによる少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子。
144.2つ以上の異なる標的細胞に対して特異性を有する、実施形態143によるウイルス粒子。
145.2つ以上の異なる標的細胞に対して増大した指向性を有する、実施形態143によるウイルス粒子。
146.2つ以上の標的細胞が異なる細胞表面分子を発現する、実施形態144又は145によるウイルス粒子。
147.少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子が、2つ以上の標的細胞上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、実施形態144~146のいずれか1つによるウイルス粒子。
148.2つ以上の異なる細胞表面分子を発現する標的細胞に対して特異性を有する、実施形態143によるウイルス粒子。
149.2つ以上の異なる細胞表面分子を発現する標的細胞に対して増大した指向性を有する、実施形態143によるウイルス粒子。
150.少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子が、標的細胞上の2つ以上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、実施形態148又は149によるウイルス粒子。
151.1つ以上のウイルスカプシドタンパク質が、単離ポリペプチドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む、実施形態142~150のいずれか1つによるウイルス粒子。
152.1つ以上のウイルスカプシドタンパク質が、単離ポリペプチド中の1つ以上のシステイン残基とジスルフィド架橋を形成することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む、実施形態142~151のいずれか1つによるウイルス粒子。
153.ウイルスがアデノ随伴ウイルスであり、任意に、アデノ随伴ウイルスがAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.74からなるリストから選択される、実施形態142~152のいずれか1つによるウイルス粒子。
154.アデノ随伴ウイルスがAAV2である、実施形態142~153のいずれか1つによるウイルス粒子。
155.アデノ随伴ウイルスが野生型AAVである、実施形態142~154のいずれか1つによるウイルス粒子。
156.アデノ随伴ウイルスが配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択されるカプシドアミノ酸配列の一部を含む、実施形態142~155のいずれか1つによるウイルス粒子。
157.アデノ随伴ウイルスが配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択されるカプシドアミノ酸配列の完全長を含む、実施形態142~156のいずれか1つによるウイルス粒子。
158.アデノ随伴ウイルスが、野生型アミノ酸配列に対して1つ以上の保存的アミノ酸変化、例えば野生型アミノ酸配列に対して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個又は20個の保存的アミノ酸変化を有し、任意に、野生型アミノ酸配列が配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択される、実施形態142~155のいずれか1つによるウイルス粒子。
159.アデノ随伴ウイルスが、野生型アミノ酸配列に対して5つ以下の非保存的アミノ酸変化、例えば野生型アミノ酸配列に対して5つ、4つ、3つ、2つ又は1つの非保存的アミノ酸変化を有し、任意に、野生型アミノ酸配列が配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択される、実施形態142~158のいずれか1つによるウイルス粒子。
160.ウイルスがアデノウイルス、アイチウイルス、オーストラリアコウモリリッサウイルス、BKポリオーマウイルス、バンナウイルス、バーマ森林ウイルス、ブニヤムウェラウイルス、ブニヤウイルス、ラクロスブニヤウイルス、カンジキウサギブニヤウイルス、サルヘルペスウイルス、チャンディプラウイルス、チクングニアウイルス、コサウイルス、牛痘ウイルス、コクサッキーウイルス、クリミア-コンゴ出血熱ウイルス、デングウイルス、ドーリウイルス、ジュグベウイルス、ドゥベンヘイジウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、エボラウイルス、エコーウイルス、脳心筋炎ウイルス、エプスタインバーウイルス、ヨーロッパコウモリリッサウイルス、GBウイルス、C/G型肝炎ウイルス、ハンタンウイルス、ヘンドラウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、デルタ肝炎ウイルス、馬痘ウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトアストロウイルス、ヒトコロナウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトエンテロウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、ヒトパルボウイルス、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、ヒトライノウイルス、ヒトSARSコロナウイルス、ヒトスプマレトロウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス、ヒトトロウイルス、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、イスファハンウイルス、JCポリオーマウイルス、日本脳炎ウイルス、フニンアレナウイルス、KIポリオーマウイルス、クンジンウイルス、ラゴスコウモリウイルス、ビクトリア湖マールブルグウイルス、ランガットウイルス、ラッサウイルス、ローズデールウイルス、跳躍病ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、マチュポウイルス、マヤロウイルス、MERSコロナウイルス、麻疹ウイルス、メンゴ脳心筋炎ウイルス、メルケル細胞ポリオーマウイルス、モコラウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、サル痘ウイルス、ムンプスウイルス、マレーバレー脳炎ウイルス、ニュージャージーポリオーマウイルス、ニューヨークウイルス、ニパウイルス、ノーウォークウイルス、オニョンニョンウイルス、オルフウイルス、オロプーシュウイルス、ピチンデウイルス、ポリオウイルス、プンタトロフレボウイルス、プウマラウイルス、狂犬病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ロサウイルスA、ロスリバーウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、風疹ウイルス、サギヤマウイルス、サリウイルスA、シチリア型サシチョウバエ熱ウイルス、サッポロウイルス、SARSコロナウイルス、セムリキ森林ウイルス、ソウルウイルス、サルフォーミーウイルス、シミアンウイルス40、シンドビスウイルス、サウサンプトンウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介ポワサンウイルス、トルクテノウイルス、トスカーナウイルス、ウークニエミウイルス、ワクシニアウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、天然痘ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、WUポリオーマウイルス、ウエストナイルウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルス、ヤバ様疾患ウイルス、黄熱ウイルス及びジカウイルスからなるリストから選択される、実施形態142~159のいずれか1つによるウイルス粒子。
161.ウイルスが野生型ウイルスである、実施形態160によるウイルス粒子。
162.ウイルスがアデノウイルスであり、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子が、CD46の一部を含み、任意に、CD46配列が配列番号29である、実施形態160によるウイルス粒子。
163.ウイルスがアデノウイルスであり、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子が、CD46の完全長配列を含み、任意に、CD46配列が配列番号29である、実施形態162によるウイルス粒子。
164.ウイルスがアデノウイルスであり、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子が、コクサッキーウイルス-アデノウイルス受容体(CXADR)の一部を含み、任意に、CXADR配列が配列番号20である、実施形態160によるウイルス粒子。
165.ウイルスがアデノウイルスであり、ウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチド、又はウイルスカプシドに共有結合することが可能な1つ以上のシステイン残基を含む単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子が、コクサッキーウイルス-アデノウイルス受容体(CXADR)の完全長配列を含み、任意に、CXADR配列が配列番号20である、実施形態164によるウイルス粒子。
166.1つ以上のウイルスカプシドに、野生型アミノ酸配列に対して1つ以上の異種システイン残基、例えば野生型アミノ酸配列に対して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個の異種システイン残基が導入されている、実施形態142~165のいずれか1つによるウイルス粒子。
167.1つ以上の異種システイン残基が、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルスカプシドとの界面に導入される、実施形態166によるウイルス粒子。
168.ウイルスがAAV1であり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドが、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含み、
AAV1がGly266Cys、Thr504Cys及びAsp590Cysから選択される1つ以上の突然変異を含み、
AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドがThr434Cys、Asp429Cys及びSer425Cysから選択される1つ以上の突然変異を含む、実施形態166又は167によるウイルス粒子。
169.ウイルスがAAV2であり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドが、アデノ随伴ウイルスカプシドに共有結合することが可能なアデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含み、
AAV2がGly265Cys、Thr503Cys及びGln589Cysから選択される1つ以上の突然変異を含み、
AAVRポリペプチド又は融合ポリペプチドがThr434Cys、Asp429Cys及びSer425Cysから選択される1つ以上の突然変異を含む、実施形態166又は167によるウイルス粒子。
170.ウイルスがAAV2であり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドが中和抗体A20の抗原結合部分を含み、
AAV2がSer264Cys、Val708Cys及びAsn717Cysから選択される1つ以上の突然変異を含み、
中和抗体A20ポリペプチド又は融合ポリペプチドがVH Tyr102Cys、VH Ser56Cys及びVL Ile93Cysから選択される1つ以上の突然変異を含む、実施形態166又は167によるウイルス粒子。
171.ウイルスがhAdV-11pであり、単離ポリペプチド又は単離融合ポリペプチドがhCD46の一部を含み、
hAdV-11pが突然変異Asn283Cysを含み
hCD46が突然変異Thr42Cysを含む、実施形態166又は167によるウイルス粒子。
172.アデノ随伴ウイルス粒子がヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、O-結合型シアル酸、N-結合型シアル酸、N-結合型ガラクトース等の非タンパク質結合剤との相互作用を媒介するカプシドタンパク質における1つ以上のアミノ酸変化を含む、実施形態142~171のいずれか1つによるウイルス粒子。
173.実施形態142~172のいずれか1つによるウイルス粒子を含む医薬組成物。
174.ウイルス粒子を共有結合修飾する方法であって、
ウイルス粒子を準備することと、
ウイルス粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドを準備することと、
ウイルス粒子と単離ポリペプチドとを、単離ポリペプチドがウイルス粒子に共有結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
175.ウイルス粒子を共有結合修飾する方法であって、
ウイルス粒子を準備することと、
ウイルス粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子を準備することと、
ウイルス粒子とウイルスアダプター分子とを、ウイルスアダプター分子がウイルス粒子に共有結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
176.ウイルス粒子を共有結合修飾する方法であって、
ウイルス粒子を準備することと、
ウイルス粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)単離ポリペプチドを準備することと、
ウイルス粒子と2つ以上の単離ポリペプチドとを、単離ポリペプチドがウイルス粒子に共有結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
177.ウイルス粒子を共有結合修飾する方法であって、
ウイルス粒子を準備することと、
ウイルス粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含む2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)ウイルスアダプター分子を準備することと、
ウイルス粒子と2つ以上のウイルスアダプター分子とを、ウイルスアダプター分子がウイルス粒子に共有結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
178.単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に1つ以上の異種システイン残基、例えば1つ、2つ又は3つの異種システイン残基を導入することを更に含む、実施形態174~177のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
179.ウイルスカプシドに1つ以上の異種システイン残基、例えば1つ、2つ又は3つの異種システイン残基を導入することを更に含む、実施形態174~178のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
180.単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルスカプシドとの両方に1つ以上の異種システイン残基、例えば単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルスカプシドとの両方に1つ、2つ又は3つの異種システイン残基を導入することを更に含む、実施形態174~179のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
181.単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルス粒子との共有結合が、1つ以上のウイルスカプシドタンパク質の天然指向性を減少又は消失させる、実施形態174~180のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
182.単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルス粒子との共有結合が、1つ以上の細胞型に対するウイルス粒子の指向性を増大させる、実施形態174~180のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
183.AAV粒子が2つ以上の異なる標的細胞に対して特異性を有する、実施形態174~182のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
184.単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルス粒子との共有結合が、2つ以上の異なる標的細胞に対するウイルス粒子の指向性を増大させる、実施形態174~182のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
185.2つ以上の標的細胞が異なる細胞表面分子を発現する、実施形態183又は184によるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
186.少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子が、2つ以上の標的細胞上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、実施形態183~185のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
187.ウイルス粒子が、2つ以上の異なる細胞表面分子を発現する標的細胞に対して特異性を有する、実施形態174~184のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
188.ウイルス粒子が、2つ以上の異なる細胞表面分子を発現する標的細胞に対して増大した指向性を有する、実施形態174~184のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
189.少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子が、標的細胞上の2つ以上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、実施形態187又は188によるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
190.単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルス粒子との共有結合が、神経細胞、マクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞、癌細胞、筋細胞、肝細胞、視細胞、膵β細胞、腎細胞及び肺細胞からなるリストから選択される1つ以上の細胞型に対するウイルス粒子の指向性を増大及び/又は減少させる、実施形態174~189のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
191.ウイルス粒子が、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子を含まないウイルス粒子の天然指向性と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも100%減少又は増大した指向性を有する、実施形態174~190のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
192.単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルス粒子との共有結合により、ウイルス粒子がウイルスをスキャフォールドとして用いて多量体様式でタンパク質抗原を提示することが可能になる、実施形態174~191のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
193.単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルス粒子との共有結合が、細胞溶解を選択的に誘導し、任意に、細胞溶解が神経細胞、マクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞、癌細胞、筋細胞、肝細胞、視細胞、膵β細胞、腎細胞及び肺細胞からなるリストから選択される1つ以上の細胞型において誘導される、実施形態174~192のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法。
194.ウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法であって、
ウイルス粒子を準備することと、
ウイルス粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドと標的細胞に特異的なリガンドとを含むウイルスアダプター分子を準備することと、
ウイルス粒子とウイルスアダプター分子とを、ウイルスアダプター分子がウイルス粒子に共有結合するように組み合わせ、それにより修飾ウイルス粒子を生成することと、
標的細胞を含む細胞の混合物と修飾ウイルス粒子とを接触させることと、
を含む、方法。
195.ウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法であって、
ウイルス粒子を準備することと、
ウイルス粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドと標的細胞に特異的なリガンドとを含む2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)ウイルスアダプター分子を準備することと、
ウイルス粒子と2つ以上のウイルスアダプター分子とを、ウイルスアダプター分子がウイルス粒子に結合するように組み合わせ、それにより修飾ウイルス粒子を生成することと、
標的細胞を含む細胞の混合物と修飾ウイルス粒子とを接触させることと、
を含み、標的細胞が2つ以上の異なる細胞表面分子を発現し、任意に、ウイルスアダプター分子が標的細胞上の2つ以上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、方法。
196.ウイルス粒子を2つ以上の標的細胞に標的化する方法であって、
ウイルス粒子を準備することと、
ウイルス粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドと、2つ以上の標的細胞の少なくとも1つに特異的なリガンドとを含む2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)ウイルスアダプター分子を準備することと、
ウイルス粒子と2つ以上のウイルスアダプター分子とを、ウイルスアダプター分子がウイルス粒子に結合するように組み合わせ、それにより修飾ウイルス粒子を生成することと、
2つ以上の標的細胞を含む細胞の混合物と修飾ウイルス粒子とを接触させることと、
を含み、2つ以上の標的細胞が2つ以上の異なる細胞表面分子を発現し、任意に、ウイルスアダプター分子が2つ以上の標的細胞上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、方法。
197.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドが、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の一部を含む、実施形態174~196のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
198.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドが、1つ以上の点突然変異を有するアデノ随伴ウイルス受容体の一部を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態174~197のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
199.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドが、1つ以上の点突然変異を有するアデノ随伴ウイルス受容体の一部を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなるリストから選択される配列を参照して定義される、実施形態174~198のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
200.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドがPKD2ドメインにおけるV480E突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態174~198のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
201.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドが、V480E突然変異を有する配列番号1の配列を含む、実施形態174~199のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
202.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドが、V480E突然変異を有する配列番号3の配列を含む、実施形態174~200のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
203.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドがPKD2ドメインにおけるS425C突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1を参照して定義される、実施形態174~202のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
204.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドが、S425C突然変異を有する配列番号1の配列を含む、実施形態174~203のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
205.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドが、S425C突然変異を有する配列番号3の配列を含む、実施形態174~204のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
206.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドが、PKD2ドメインにおけるS425C突然変異及びV480E突然変異を含み、任意に、1つ以上の点突然変異が配列番号1又は配列番号3を参照して定義される、実施形態174~205のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
207.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドが、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)のPKD1ドメインの少なくとも一部、PKD2ドメインの少なくとも一部、PKD3ドメインの少なくとも一部、PKD4ドメインの少なくとも一部、PKD5ドメインの少なくとも一部又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態174~206のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
208.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドが、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)のPKD1ドメイン、PKD2ドメイン、PKD3ドメイン、PKD4ドメイン、PKD5ドメイン又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態174~207のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
209.アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドが配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6からなるリストから選択される配列を含む、実施形態174~208のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
210.ウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドが、アデノ随伴ウイルス受容体(AAVR、KIAA0319L)の完全長配列を含み、任意に、完全配列が配列番号1を含む、実施形態174~209のいずれか1つによるウイルス粒子を共有結合修飾する方法又はウイルス粒子を標的細胞に標的化する方法。
211.目的の核酸配列を標的細胞に送達する方法であって、標的細胞と実施形態142~172のいずれか1つによる修飾ウイルス粒子又は実施形態173による医薬組成物とを接触させることを含み、ウイルス粒子が目的の核酸配列を含む、方法。
212.目的の核酸配列がRABエスコートタンパク質1、RPE65、第VIII因子、第IX因子、コクリン、CLN7、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、アクアポリン1、グリア細胞株由来神経栄養因子、アスパルトアシラーゼ、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素、網膜色素変性症GTPアーゼ調節因子欠損、筋小胞体カルシウムATPアーゼ、環状ヌクレオチド感受性チャネルβ3、ニュールツリン、ガラクトシダーゼβ1、グルコース-6-ホスファターゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、オルニチントランスカルバミラーゼ、ジストロフィン及びカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)からなるリストから選択されるタンパク質をコードする、実施形態211の方法。
213.標的細胞がin vitroである、実施形態194~212のいずれか1つによる方法。
214.標的細胞が対象においてin vivoである、実施形態194~212のいずれか1つによる方法。
215.標的細胞が神経細胞、マクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞、癌細胞、筋細胞、肝細胞、視細胞、膵β細胞、腎細胞及び肺細胞からなるリストから選択される、実施形態194~214のいずれか1つによる方法。
216.対象がヒトである、実施形態214又は215による方法。
217.標的細胞がヒト標的細胞である、実施形態194~216のいずれか1つによる方法。
218.薬剤として使用される、実施形態142~172のいずれか1つによるウイルス粒子又は実施形態173による医薬組成物。
219.標的細胞とウイルス粒子とを接触させることにより、目的の核酸配列を標的細胞に送達することを含む、治療を必要とする対象における疾患を治療する方法に使用される、実施形態142~172のいずれか1つによるウイルス粒子又は実施形態173による医薬組成物。
220.疾患が神経変性障害、癌、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、血友病、先天盲障害、糖尿病、嚢胞性線維症、コロイデレミア、血友病A、血友病B、CLN7疾患、ポンペ病、パーキンソン病、カナバン病、脱髄疾患、RPE65突然変異による遺伝性網膜ジストロフィー、芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)欠損症、X連鎖性網膜色素変性症、レーバー先天性黒内障、チャーグ-ストラウス症候群(CSS)、重症虚血肢、色覚異常、アルツハイマー病、黄斑変性、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、ウィルソン病、糖原病IA型、クリグラーナジャー症候群、テイ-サックス病、サンドホフ病、多発性骨髄腫、多系統萎縮症、ガングリオシドーシス、ダノン病、ファブリー病、バッテン病、フェニルケトン尿症、関節リウマチ、ムコ多糖症IIIa型、サンフィリポ症候群B、ムコ多糖症VI型、α1-アンチトリプシン欠損症、脊髄性筋萎縮症1型、クラッベ病、ベッカー型筋ジストロフィー、シャルコー-マリー-トゥースニューロパチー1a型、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII(CPT II)欠損症及びトリメチルアミン尿症、嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症からなるリストから選択される、実施形態219による使用のためのウイルス粒子又は医薬組成物。
221.標的細胞とウイルス粒子とを接触させることにより、目的の核酸配列を標的細胞に送達することを含む、治療を必要とする対象における疾患を治療する方法に使用され、以下のリスト:
a)神経変性障害の治療のための神経細胞、
b)癌の治療のための免疫細胞(例えばマクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞)、
c)免疫応答を惹起するための免疫細胞(例えばマクロファージ、小膠細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、NK細胞)、
d)癌の治療のための癌細胞又は腫瘍細胞、
e)デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療のための筋細胞、
f)血友病の治療のための肝細胞、
g)先天盲障害のための視細胞、
h)糖尿病の治療のための膵β細胞、又は、
i)嚢胞性線維症の治療のための肺細胞、
による指定の標的細胞の標的化が、指定の疾患を治療又は改善する、実施形態142~172のいずれか1つによるウイルス粒子又は実施形態173による医薬組成物。
222.ウイルス粒子又は医薬組成物を対象に対してエアロゾルにより(例えば肺細胞に)、筋肉内に、動脈内に(例えば肝動脈を介して)、関節内に、網膜下に、頭蓋内に、静脈内に、髄腔内に、冠動脈内に又は皮下に投与する、実施形態218~221のいずれか1つによる使用のためのウイルス粒子又は医薬組成物。
223.少なくとも1つの単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子であって、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子とウイルスとが100μM未満の親和性(Kd)を有する、ウイルス粒子。
224.少なくとも1対の残基X及び残基Yが存在し、Xが単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子の一部であり、Yがウイルス粒子の一部であり、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子がウイルス粒子と複合体を形成する際に、それぞれのβ炭素が5.5Å未満離れている、実施形態223のウイルス粒子。
225.システイン側鎖が界面を破壊する主要な立体衝突を誘導しないように、残基X及び残基Yをシステインに突然変異させることができる、実施形態224のウイルス粒子。
226.残基X及び残基Yの側鎖について、システインへの突然変異後に、C(α)-C(β)の周りの側鎖の回転によって得られ、側鎖のγ位における硫黄原子の距離が2.5Å未満離れているような配向が存在する、実施形態224又は225のウイルス粒子。
227.少なくとも1つの単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子であって、少なくとも1対の残基X及び残基Yが存在し、Xが単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子の一部であり、Yがウイルス粒子の一部であり、単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子がウイルス粒子と複合体を形成する際に、それぞれのβ炭素が5.5Å未満離れている、ウイルス粒子。
228.システイン側鎖が界面を破壊する主要な立体衝突を誘導しないように、残基X及び残基Yをシステインに突然変異させることができる、実施形態227のウイルス粒子。
229.残基X及び残基Yの側鎖について、システインへの突然変異後に、C(α)-C(β)の周りの側鎖の回転によって得られ、側鎖のγ位における硫黄原子の距離が2.5Å未満離れているような配向が存在する、実施形態227又は228のウイルス粒子。
230.C(β)1-S(γ)1-S(γ)2、S(γ)1-S(γ)2-C(β)の原子によって形成される角度が、自然発生ジスルフィド結合において観察される最適な角度とは著しく異ならない(例えば40%超大きくはならない)、実施形態223~229のいずれか1つのウイルス粒子。
231.少なくとも1つの単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に共有結合したウイルス粒子であって、C(β)1-S(γ)1-S(γ)2、S(γ)1-S(γ)2-C(β)の原子によって形成される角度が、自然発生ジスルフィド結合において観察される最適な角度とは著しく異ならない(例えば40%超大きくはならない)、ウイルス粒子。
232.実施形態1~31のいずれか1つによる少なくとも1つの単離ポリペプチド若しくはAAVアダプター分子又は実施形態98~141のいずれか1つによる少なくとも1つの単離ポリペプチド若しくはウイルスアダプター分子に結合したウイルス様粒子(VLP)。
233.実施形態1~31のいずれか1つによる少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの単離ポリペプチド若しくはAAVアダプター分子又は実施形態98~141のいずれか1つによる少なくとも1つの単離ポリペプチド若しくはウイルスアダプター分子に結合したウイルス様粒子(VLP)。
234.2つ以上の異なる標的細胞に対して特異性を有する、実施形態233によるウイルス様粒子(VLP)。
235.2つ以上の異なる標的細胞に対して増大した指向性を有する、実施形態233によるウイルス様粒子(VLP)。
236.2つ以上の標的細胞が異なる細胞表面分子を発現する、実施形態234又は235によるウイルス様粒子(VLP)。
237.少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子が、2つ以上の標的細胞上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、実施形態233~235のいずれか1つによるウイルス様粒子(VLP)。
238.2つ以上の異なる細胞表面分子を発現する標的細胞に対して特異性を有する、実施形態233によるウイルス様粒子(VLP)。
239.2つ以上の異なる細胞表面分子を発現する標的細胞に対して増大した指向性を有する、実施形態233によるウイルス様粒子(VLP)。
240.少なくとも2つ、3つ、4つ又は5つの単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子が、標的細胞上の2つ以上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、実施形態238又は239によるウイルス様粒子(VLP)。
241.配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択されるカプシドアミノ酸配列の一部を含む、実施形態232~240のいずれか1つによるウイルス様粒子(VLP)。
242.配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択されるカプシドアミノ酸配列の完全長を含む、実施形態232~241のいずれか1つによるウイルス様粒子(VLP)。
243.ウイルス様粒子のカプシドタンパク質がアデノウイルス、アイチウイルス、オーストラリアコウモリリッサウイルス、BKポリオーマウイルス、バンナウイルス、バーマ森林ウイルス、ブニヤムウェラウイルス、ブニヤウイルス、ラクロスブニヤウイルス、カンジキウサギブニヤウイルス、サルヘルペスウイルス、チャンディプラウイルス、チクングニアウイルス、コサウイルス、牛痘ウイルス、コクサッキーウイルス、クリミア-コンゴ出血熱ウイルス、デングウイルス、ドーリウイルス、ジュグベウイルス、ドゥベンヘイジウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、エボラウイルス、エコーウイルス、脳心筋炎ウイルス、エプスタインバーウイルス、ヨーロッパコウモリリッサウイルス、GBウイルス、C/G型肝炎ウイルス、ハンタンウイルス、ヘンドラウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、デルタ肝炎ウイルス、馬痘ウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトアストロウイルス、ヒトコロナウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトエンテロウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、ヒトパルボウイルス、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、ヒトライノウイルス、ヒトSARSコロナウイルス、ヒトスプマレトロウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス、ヒトトロウイルス、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、イスファハンウイルス、JCポリオーマウイルス、日本脳炎ウイルス、フニンアレナウイルス、KIポリオーマウイルス、クンジンウイルス、ラゴスコウモリウイルス、ビクトリア湖マールブルグウイルス、ランガットウイルス、ラッサウイルス、ローズデールウイルス、跳躍病ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、マチュポウイルス、マヤロウイルス、MERSコロナウイルス、麻疹ウイルス、メンゴ脳心筋炎ウイルス、メルケル細胞ポリオーマウイルス、モコラウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、サル痘ウイルス、ムンプスウイルス、マレーバレー脳炎ウイルス、ニュージャージーポリオーマウイルス、ニューヨークウイルス、ニパウイルス、ノーウォークウイルス、オニョンニョンウイルス、オルフウイルス、オロプーシュウイルス、ピチンデウイルス、ポリオウイルス、プンタトロフレボウイルス、プウマラウイルス、狂犬病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ロサウイルスA、ロスリバーウイルス、ロタウイルスA、ロタウイルスB、ロタウイルスC、風疹ウイルス、サギヤマウイルス、サリウイルスA、シチリア型サシチョウバエ熱ウイルス、サッポロウイルス、SARSコロナウイルス、セムリキ森林ウイルス、ソウルウイルス、サルフォーミーウイルス、シミアンウイルス40、シンドビスウイルス、サウサンプトンウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、ダニ媒介ポワサンウイルス、トルクテノウイルス、トスカーナウイルス、ウークニエミウイルス、ワクシニアウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、天然痘ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、WUポリオーマウイルス、ウエストナイルウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルス、ヤバ様疾患ウイルス、黄熱ウイルス及びジカウイルスからなるリストの1つ以上のウイルスから選択される、実施形態232~242のいずれか1つによるウイルス様粒子(VLP)。
244.ウイルス様粒子が、野生型ウイルスカプシドアミノ酸配列に対して1つ以上の保存的アミノ酸変化、例えば野生型ウイルスカプシドアミノ酸配列に対して1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個又は20個の保存的アミノ酸変化を有し、任意に、野生型ウイルスカプシドアミノ酸配列が配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択される、実施形態232~243のいずれか1つによるウイルス様粒子(VLP)。
245.ウイルス様粒子が野生型ウイルスカプシドアミノ酸配列に対して5つ以下の非保存的アミノ酸変化、例えば野生型ウイルスカプシドアミノ酸配列に対して5つ、4つ、3つ、2つ又は1つの非保存的アミノ酸変化を有し、任意に、野生型ウイルスカプシドアミノ酸配列が配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19からなる群から選択される、実施形態232~243のいずれか1つによるウイルス様粒子(VLP)。
246.ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、O-結合型シアル酸、N-結合型シアル酸、N-結合型ガラクトース等の非タンパク質結合剤との相互作用を媒介するカプシドタンパク質における1つ以上のアミノ酸変化を含む、実施形態232~245のいずれか1つによるウイルス様粒子(VLP)。
247.1つ以上の突然変異がAAV2のアルギニン残基585及び588を含む、実施形態246によるウイルス様粒子(VLP)。
248.実施形態232~247のいずれか1つによるウイルス様粒子(VLP)を含む医薬組成物。
249.ウイルス様粒子を修飾する方法であって、
ウイルス様粒子を準備することと、
ウイルス様粒子カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドを準備することと、
ウイルス様粒子と単離ポリペプチドとを、単離ポリペプチドがウイルス様粒子に結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
250.ウイルス様粒子を修飾する方法であって、
ウイルス様粒子を準備することと、
ウイルス様粒子カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むAAVアダプター分子を準備することと、
ウイルス様粒子とAAVアダプター分子とを、単離融合ポリペプチドがウイルス様粒子に結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
251.ウイルス様粒子を修飾する方法であって、
ウイルス様粒子を準備することと、
ウイルス様粒子カプシドに結合することが可能な2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)単離ポリペプチドを準備することと、
ウイルス様粒子と単離ポリペプチドとを、単離ポリペプチドがウイルス様粒子に結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
252.ウイルス様粒子を修飾する方法であって、
ウイルス様粒子を準備することと、
ウイルス様粒子カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含む2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)AAVアダプター分子を準備することと、
ウイルス様粒子とAAVアダプター分子とを、AAVアダプター分子がウイルス様粒子に結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
253.単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子とAAV粒子との結合が、1つ以上のAAVカプシドタンパク質の天然指向性を減少又は消失させる、実施形態249~252のいずれか1つによるウイルス様粒子を修飾する方法。
254.単離ポリペプチド又はAAVアダプター分子とAAV粒子との結合が、1つ以上の細胞型に対するAAV粒子の指向性を増大させる、実施形態249~253のいずれか1つによるウイルス様粒子を修飾する方法。
255.ウイルス様粒子を標的細胞に標的化する方法であって、
ウイルス様粒子を準備することと、
ウイルス様粒子カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドと、標的細胞に特異的なリガンドとを含むAAVアダプター分子を準備することと、
ウイルス様粒子とAAVアダプター分子とを、AAVアダプター分子がウイルス様粒子に結合するように組み合わせ、それによりウイルス様粒子を生成することと、
標的細胞を含む細胞の混合物と修飾ウイルス様粒子とを接触させることと、
を含む、方法。
256.ウイルス様粒子を標的細胞に標的化する方法であって、
ウイルス様粒子を準備することと、
ウイルス様粒子カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドと標的細胞に特異的なリガンドとを含む2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)AAVアダプター分子を準備することと、
ウイルス様粒子と2つ以上のAAVアダプター分子とを、AAVアダプター分子がウイルス様粒子に結合するように組み合わせ、それにより修飾ウイルス様粒子を生成することと、
標的細胞を含む細胞の混合物と修飾ウイルス様粒子とを接触させることと、
を含み、標的細胞が2つ以上の異なる細胞表面分子を発現し、任意に、AAVアダプター分子が標的細胞上の2つ以上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、方法。
257.ウイルス様粒子を2つ以上の標的細胞に標的化する方法であって、
ウイルス様粒子を準備することと、
ウイルス様粒子カプシドに結合することが可能な単離ポリペプチドと、2つ以上の標的細胞の少なくとも1つに特異的なリガンドとを含む2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)AAVアダプター分子を準備することと、
ウイルス様粒子と2つ以上のAAVアダプター分子とを、AAVアダプター分子がウイルス様粒子に結合するように組み合わせ、それにより修飾ウイルス様粒子を生成することと、
2つ以上の標的細胞を含む細胞の混合物と修飾ウイルス様粒子とを接触させることと、
を含み、2つ以上の標的細胞が2つ以上の異なる細胞表面分子を発現し、任意に、AAVアダプター分子が2つ以上の標的細胞上の異なる細胞表面分子に特異的に結合する、方法。
258.ウイルス様粒子を共有結合修飾する方法であって、
ウイルス様粒子を準備することと、
ウイルス様粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドを準備することと、
ウイルス様粒子と単離ポリペプチドとを、単離ポリペプチドがウイルス様粒子に共有結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
259.ウイルス様粒子を共有結合修飾する方法であって、
ウイルス様粒子を準備することと、
ウイルス様粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含むウイルスアダプター分子を準備することと、
ウイルス様粒子とウイルスアダプター分子とを、ウイルスアダプター分子がウイルス様粒子に共有結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
260.ウイルス粒子を共有結合修飾する方法であって、
ウイルス様粒子を準備することと、
ウイルス様粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)単離ポリペプチドを準備することと、
ウイルス様粒子と2つ以上の単離ポリペプチドとを、単離ポリペプチドがウイルス様粒子に共有結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
261.ウイルス様粒子を共有結合修飾する方法であって、
ウイルス様粒子を準備することと、
ウイルス様粒子のウイルスカプシドに共有結合することが可能な単離ポリペプチドとリガンドとを含む2つ以上の(例えば2つ、3つ、4つ又は5つの)ウイルスアダプター分子を準備することと、
ウイルス様粒子と2つ以上のウイルスアダプター分子とを、ウイルスアダプター分子がウイルス様粒子に共有結合するように組み合わせることと、
を含む、方法。
262.単離ポリペプチド又はウイルスアダプター分子に1つ以上の異種システイン残基、例えば1つ、2つ又は3つの異種システイン残基を導入することを更に含む、実施形態258~262のいずれか1つによるウイルス様粒子を共有結合修飾する方法。
263.ウイルス様粒子のウイルスカプシドに1つ以上の異種システイン残基、例えば1つ、2つ又は3つの異種システイン残基を導入することを更に含む、実施形態258~263のいずれか1つによるウイルス様粒子を共有結合修飾する方法。
図1-1】
図1-2】
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図33-1】
図33-2】
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【配列表】
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【国際調査報告】