(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】オラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶及びその医薬的使用
(51)【国際特許分類】
C07D 237/32 20060101AFI20241114BHJP
A61K 31/502 20060101ALI20241114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241114BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241114BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C07D237/32 CSP
A61K31/502
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P29/00
A61P25/00
A61P9/00
A61P27/02
A61P31/04
A61P11/00
A61P1/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527319
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 IB2022000711
(87)【国際公開番号】W WO2023084311
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523098245
【氏名又は名称】ナフォーミックス テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホランド、ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】エバーリン、アレックス
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA03
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA13
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA75
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB35
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、新規の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶に関する。また本発明は、水を含まなくても(無水)または任意選択で水和されてもよい新規の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶にも関する。また本発明は、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物にも関する。本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶は、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害から利益を得られる疾患の治療に有用であり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶であって、前記ヒドロキシ安息香酸が式(I)の化合物であり、
【化1】
式中、n=0または1であり、
ただし、n=1の場合、ヒドロキシル基がベンゼン環の3位及び5位にはないことを条件とする、前記1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項2】
2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶であって、前記ヒドロキシ安息香酸が式(II)の化合物であり、
【化2】
式中、n=0または1である、前記2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項3】
前記共結晶が水和されている、請求項2に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項4】
前記共結晶が最大約1つの水和水を含む、請求項3に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項5】
前記共結晶が最大約2つの水和水を含む、請求項3に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項6】
前記共結晶が最大約3つの水和水を含む、請求項3に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項7】
前記共結晶が、1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、1:1オラパリブサリチル酸共結晶、及び1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶からなる群より選択される、請求項1に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項8】
前記共結晶が、2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、及び2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶からなる群より選択される、請求項2~6のいずれかに記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項9】
前記共結晶が、6.2、10.3、11.6、13.5、及び17.8°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または全てのピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、請求項2~6のいずれか1項に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項10】
前記共結晶が、1014、1222、1243、1435、及び1590cm
-1±1cm
-1のピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または全てのピークを有する赤外スペクトルによって特徴付けられる、請求項2~6のいずれか1項に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項11】
前記共結晶が、以下のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶である、請求項7に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶:
11.7、13.2、15.0、23.5、及び25.2°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、もしくは全てのピークを有する粉末X線回折パターン、または
図1と実質的に同様の粉末X線回折パターン。
【請求項12】
前記粉末X線回折パターンが、11.7、13.2、15.0、23.5、及び25.2°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも3つのピークを有する、請求項11に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項13】
前記共結晶が、以下のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶である、請求項8に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶:
6.1、10.3、11.6、12.2、及び20.8°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、もしくは全てのピークを有する粉末X線回折パターン、または
図5と実質的に同様の粉末X線回折パターン。
【請求項14】
前記共結晶が、以下のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶である、請求項7に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶:
3.5、8.5、9.4、11.9、及び16.5°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、もしくは全てのピークを有する粉末X線回折パターン、または
図10と実質的に同様の粉末X線回折パターン。
【請求項15】
前記粉末X線回折パターンが、3.5、8.5、9.4、11.9、及び16.5°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも3つのピークを有する、請求項14に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項16】
前記共結晶が、以下のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶である、請求項8に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶:
6.1、11.6、13.5、15.7、及び19.9°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、もしくは全てのピークを有する粉末X線回折パターン、または
図14と実質的に同様の粉末X線回折パターン。
【請求項17】
前記共結晶が、以下のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶である、請求項8に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶:
6.3、13.6、15.9、19.8、及び21.6°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、もしくは全てのピークを有する粉末X線回折パターン、または
図19と実質的に同様の粉末X線回折パターン。
【請求項18】
前記共結晶が、以下のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる1:1オラパリブサリチル酸共結晶である、請求項7に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶:
8.4、9.3、12.5、13.3、及び16.7°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、もしくは全てのピークを有する粉末X線回折パターン、または
図24と実質的に同様の粉末X線回折パターン。
【請求項19】
前記粉末X線回折パターンが、8.4、9.3、12.5、13.3、及び16.7°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも3つのピークを有する、請求項18に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項20】
前記共結晶が、以下のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶である、請求項7に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶:
9.4、11.7、16.0、17.4、及び19.9°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、もしくは全てのピークを有する粉末X線回折パターン、または
図27と実質的に同様の粉末X線回折パターン。
【請求項21】
前記粉末X線回折パターンが、9.4、11.7、16.0、17.4、及び19.9°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも3つのピークを有する、請求項20に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶。
【請求項22】
請求項1、7、11、12、14、15、もしくは18~21のいずれか1項に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶、または請求項2~6、8~10、13、16、もしくは17のいずれか1項に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶と、医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項23】
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害により疾患、障害、または状態を治療する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1、7、11、12、14、15、もしくは18~21のいずれか1項に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶、請求項2~6、8~10、13、16、もしくは17のいずれか1項に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶、または請求項22に記載の医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含む、前記方法。
【請求項24】
がん、線維症、炎症性状態、神経疾患、心血管状態、眼変性疾患、血管疾患、または敗血症性ショック、急性肺損傷(ALI)、及び急性肝不全の群から選択される重大な疾病を治療する方法であって、それを必要とする対象に、請求項1、7、11、12、14、15、もしくは18~21のいずれか1項に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶、請求項2~6、8~10、13、16、もしくは17のいずれか1項に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶、または請求項22に記載の医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含む、前記方法。
【請求項25】
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害により疾患、障害、または状態を治療するための、請求項1、7、11、12、14、15、もしくは18~21のいずれか1項に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶、請求項2~6、8~10、13、16、もしくは17のいずれか1項に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶、または請求項22に記載の医薬組成物の使用。
【請求項26】
がん、線維症、炎症性状態、神経疾患、心血管状態、眼変性疾患、血管疾患、または敗血症性ショック、急性肺損傷(ALI)、及び急性肝不全の群から選択される重大な疾病を治療するための、請求項1、7、11、12、14、15、もしくは18~21のいずれか1項に記載の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶、請求項2~6、8~10、13、16、もしくは17のいずれか1項に記載の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶、または請求項22に記載の医薬組成物の使用。
【請求項27】
1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶または2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶の調製方法であって、オラパリブと請求項1または2に記載のヒドロキシ安息香酸との混合物を溶媒中でスラリー化するステップを含む、前記調製方法。
【請求項28】
1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶または2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶の調製方法であって、オラパリブと請求項1または2に記載のヒドロキシ安息香酸との混合物を粉砕するステップを含む、前記調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮出願第63/277,773号(2021年11月10日出願)の優先権を主張し、その開示内容が参照により援用される。
【0002】
本開示は、オラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶、当該共結晶の治療的使用、及びこれらを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
オラパリブ(4-[(3-{[4(シクロプロピルカルボニル)ピペラジン-1-イル]カルボニル}-4-フルオロフェニル)メチル]フタラジン-1(2H)-オン(下記))は、酵素ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害剤である。
WO2004080976で最初にその合成が説明されている。
【化1】
【0004】
オラパリブは、有害な生殖系列もしくは体細胞BRCA遺伝子変異型の卵巣癌、乳癌、もしくは膵臓癌の疑いがある、または有害な生殖系列もしくは体細胞相同組換え修復(HRR)遺伝子変異型の前立腺癌の疑いがある成人の治療用として、現在AstraZenecaがLynparza(登録商標)のブランド名で販売している。
【0005】
欧州医薬品庁(EMA)のCHMP評価報告書(EMA/CHMP/789139/2014)に記載のように、オラパリブは、Biopharmaceutical Classification System(BCS)によりクラス4薬物に分類されており、これは溶解度及び透過性がいずれも低いことを意味する。そのため、有効性を十分にするには、溶解度及びバイオアベイラビリティが可能な限り高いオラパリブの形態を見出すことが不可欠である。オラパリブは、複数の多形形態、ならびに溶媒和形態及び水和形態で存在し、これらについては例えば、WO2008/04708(形態A)、WO2009/050469(形態L)、WO2010/041051、WO2017/123156、及びWO2017/40283で開示されている。最初に販売された製剤には形態Aが含まれており、その水溶解度は約0.1mg/mlでpH非依存性である。オラパリブの多形結晶形態の溶解度がこのように低いことから、十分なバイオアベイラビリティを達成するには溶解度を増強する製剤が求められた。最初に販売された製剤はカプセル剤であり、オラパリブ形態Aは、半固体ラウロイルマクロゴールグリセリド(LMG)マトリックス中の結晶分散物として微粒子化及び製剤化された。この製剤は、純粋な結晶オラパリブのバイオアベイラビリティを改善したものの、製剤に必要なLMGの量の関係で50mgのカプセル剤しか実現しなかった。臨床試験により、オラパリブの有効用量は1日に2回の400mgと示され、その結果、患者には1日に16個のカプセル剤が必要となった。さらに、必要な賦形剤の量の関係でカプセルのサイズは大型(0号)となった。また、同じ溶媒または溶媒混合物を使用した場合であっても、オラパリブに種々の多形形態が生じ得ることも分かった。例えば、WO2009/050469及びWO2008/04708では、エタノール/水及びメタノール/水の両方からは形態A及び形態L(いずれも無水形態)の両方が生じ得るのに対し、水単独からはオラパリブ水和物(形態H)が得られることが示されている。さらに、異なる溶媒からは異なる溶媒和物が生じ得、混合溶媒からは異なる比率の混合溶媒和物が生じ得る(WO2017/40283)。そのため、特定の方法を用いて生成されるオラパリブの正確な形態を制御することは困難である。2018年に、あるロットのオラパリブカプセル剤に指定限界を上回るレベルの形態Lが含まれていることが判明したため、AstraZenecaはこのロットを回収しなければならなかった。また、カプセルの貯蔵寿命中に形態Lの量が増加する恐れがあるため、他のいくつかのロットも回収された。そのため、複数の多形形態で存在せず、保存中に形態を変換させたり溶媒和形態または水和形態を生成したりしない、オラパリブの新規の結晶形態が必要とされている。
【0006】
より最近では、これらの制限の一部を克服するための新規の錠剤製剤が開発された。この錠剤製剤は、コポビドンポリマーのマトリックス中にオラパリブの非晶質固体分散物を含み、溶融押出法を用いて形成されている。この新規の錠剤はカプセル製剤よりも迅速な溶出を示し、続いてより高いバイオアベイラビリティも示したため、結果としてオラパリブの1日用量は800mgから600mgに減った。オラパリブの非晶質形態を使用することで、多形変換の問題も克服されたものの、このアプローチは次のような複数の欠点ももたらす。1)準安定性の非晶質形態は、概して結晶形態よりも保存の点において安定性が低く、そのため非晶質形態を維持するには大量の安定剤が必要となる。2)非晶質形態は、保存中に再結晶するリスクを常に有する。3)錠剤マトリックスに使用されるポリマー(コポビドン)が吸湿性であるため、錠剤製剤には水分取込みを防ぐための保護パッケージングが必要となる。そのため、非晶質形態のように高い溶解性を提供することができ、ただし非晶質形態に固有の低い安定性を伴わず、安定剤の必要がないオラパリブの代替的な結晶形態を見出すことが好ましいと考えられる。
【0007】
この数年の間に、酵素PARPが複数の非オンコロジー疾患で重要な役割を果たしていることが分かった(C.Szabo et al.,(2018)175:1932-222)。PARPは、肺炎症性疾患(例えば、喘息、COPD、及び急性肺傷害(ALI))ならびに他の炎症性状態(例えば、関節炎及び大腸炎)に関連することが示されている。また、神経変性疾患(例えば、パーキンソン病及びアルツハイマー病)、心血管状態(例えば、心筋虚血/再灌流傷害、様々な形態の心不全、心筋症、循環性ショック、心血管老化、糖尿病性心血管合併症、心筋肥大、アテローム動脈硬化症、傷害後の血管リモデリング、及びアテローム動脈硬化症)における主要な寄与因子であることも分かっている。PARPはいくつかの眼科疾患(例えば、網膜変性、網膜もしくは視神経の疾患、及び緑内障)に関与している(US6444676)。PARPは、肺、心臓、肝臓、及び腎臓の線維症を含む複数のタイプの線維症の進行において重要な媒介因子であることが示されている。このことは、オラパリブが多くの非オンコロジー状態の治療に使用され得ることを示唆すると考えられる。
【0008】
しかし、経口送達されたオラパリブは、しばしば重篤になり得る複数の忍容性副作用(悪心、嘔吐、疲労、及び貧血を含む)を有する。オラパリブの局所投与を可能にする代替的な送達方法を開発し、全身への曝露が最小限の治療が可能になることで、オラパリブを副作用リスクの低い新たな疾患に再利用することができ、患者のコンプライアンスが高まる可能性がある。また、オラパリブに治療上の利益が備わり得る疾患が広範囲であり、患者のタイプ及び治療が必要な具体的な身体部位が異なることを考慮すると、患者は、オラパリブ投与において患者のニーズに最も合うような複数の送達方法を有することにより利益を得られるものと予想される。医薬組成物としては、例えば、経口吸入用組成物、眼科用組成物、局所用組成物、または経皮用組成物を挙げることができる。例えば、吸入製剤にすることで、経口投与の副作用を伴わずに肺疾患(例えば、肺線維症、喘息、COPD、及びALI)の治療が可能になる。しかし、大量の安定化ポリマーを要し吸湿性がある非晶質の薬物形態、または多形不安定性に供されている結晶形態は、吸入送達に適していない。一方、既知のオラパリブの結晶形態の溶解度は低く、眼科用製剤または経皮用製剤は不可能と考えられる。そのため、オラパリブの代替的製剤で新規のPARP媒介性疾患を治療できるようにするには、良好な安定性及び高められた溶解性を共に備えるオラパリブの新規の結晶形態が必要とされている。
【0009】
低溶解性薬物の溶解度を改善するために使用される最も一般的な代替的結晶形態は、医薬的に許容される塩である。結晶塩は、薬物及び第2の成分が一緒に結晶化して、イオン結合により一緒に保持された2成分結晶複合体を形成し、2つの成分間でプロトン移動が生じる際に形成される。薬物塩は、純粋な結晶薬物よりも優れた物理的特性を有することが多い。しかし、オラパリブは非イオン化性であるため、塩を形成することができない。非イオン性薬物の場合、共結晶の形成は、薬物及び第2の成分が非イオン性結合(例えば、水素結合またはファンデルワールス結合)により保持され、2つの成分間でプロトン交換が生じない、代替的な2成分結晶複合体である。共結晶の第2の成分は「コフォーマー」と称される。薬物の共結晶は、薬物及びコフォーマーが個別である場合と比較して、特徴的な結晶学的及び分光学的特性を有するユニークな結晶構造を有する。このような多成分集合体は、励起を継続し、特に医薬分野内では有用である。というのも薬物の共結晶は、純粋な薬物よりも好ましい医薬的特性を有することが多く、そのため純粋な結晶性薬物でもその非晶質形態でも不可能な新規の薬物送達選択肢に適することが多いためである。この理由は、共結晶形態は改善された特性(例えば、改善された溶解もしくは溶解度特性、または有利な保存安定性、融点、吸湿性、もしくは他の物理化学的特性)を有し得るためである。オラパリブの医薬用共結晶がオラパリブの代替的な市販形態として許容されるためには、使用されるコフォーマーが「不活性」であることと、医薬製剤での使用が規制上の観点から容認されることとが重要である。1:1オラパリブ尿素共結晶は、過去にCN105753789で開示されている。しかし、この特許は1つのみのオラパリブの共結晶を開示するにとどまるため、溶解速度がさらに大きく改善され吸湿性が低い医学的に許容される他のオラパリブ共結晶が依然として必要とされている。1:1オラパリブフマル酸共結晶及び1:1オラパリブ3,5-ジヒドロキシ安息香酸共結晶は、過去にWO2021/044437で開示され、1:1オラパリブマレイン酸共結晶は、過去にCN111689905で開示され、1:1オラパリブマロン酸共結晶は、過去にCN111825621で開示されている。しかし、これらの共結晶は、上記文献で開示された方法を用いては再現することができなかった。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、新規の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶に関し、この1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶のヒドロキシ安息香酸は式(I)の化合物であり、
【化2】
式中、n=0または1であり、
ただし、n=1の場合、ヒドロキシル基がベンゼン環の3位及び5位にはないことを条件とする。
【0011】
また本発明は、新規の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶にも関し、この2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶のヒドロキシ安息香酸は式(II)の化合物であり、
【化3】
式中、n=0または1である。
【0012】
2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶は、水を含まなくても(無水)任意選択で水和されてもよい。2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶は、湿度などの条件に応じて様々な量の水を含むことがあり、典型的には平均で最大約3つの水和水を含む。
【0013】
例えば、本発明の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶の場合、共結晶は、最大約1つの水和水、最大約2つの水和水、最大約3つの水和水、または平均数の水和水を含むことができる。
【0014】
例示的なヒドロキシ安息香酸コフォーマーとしては、ゲンチジン酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、または3,4-ジヒドロキシ安息香酸を挙げることができる。
【0015】
詳細には、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶は、1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶、1:1オラパリブサリチル酸共結晶、及び1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶に関する。
【0016】
また本発明は、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物にも関する。本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶は、オラパリブと同じように使用することができる。オラパリブは、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の阻害から利益が得られる疾患の治療に有用である。このような疾患としては、がん、線維症、炎症性状態(例えば、喘息、COPD、大腸炎、関節炎)、神経疾患(例えば、神経変性、神経外傷、脳卒中)、心血管状態、眼変性疾患、血管疾患(例えば、糖尿病合併症、アテローム動脈硬化症)、及び様々な形態の重大な疾病(例えば、敗血症性ショック、ALI、急性肝不全)が挙げられる。そのため、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶は、このような疾患、障害、及び状態の治療に有用であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のXRPDパターンを示している。
【
図2】1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のDSCトレースを示している。
【
図3】1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のTGAトレースを示している。
【
図4】1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶の赤外スペクトルを示している。
【
図5】2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のXRPDパターンを示している。
【
図6】2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のDSCトレースを示している。
【
図7】2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のTGAトレースを示している。
【
図8】2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶の赤外スペクトルを示している。
【
図9】2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のGVS等温線グラフを示している。
【
図10】1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のXRPDパターンを示している。
【
図11】1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のDSCトレースを示している。
【
図12】1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のTGAトレースを示している。
【
図13】1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の赤外スペクトルを示している。
【
図14】2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のXRPDパターンを示している。
【
図15】2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のDSCトレースを示している。
【
図16】2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のTGAトレースを示している。
【
図17】2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の赤外スペクトルを示している。
【
図18】2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のGVS等温線グラフを示している。
【
図19】2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のXRPDパターンを示している。
【
図20】2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のDSCトレースを示している。
【
図21】2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のTGAトレースを示している。
【
図22】2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶の赤外スペクトルを示している。
【
図23】2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のGVS等温線グラフを示している。
【
図24】1:1オラパリブサリチル酸共結晶のXRPDパターンを示している。
【
図25】1:1オラパリブサリチル酸共結晶のDSCトレースを示している。
【
図26】1:1オラパリブサリチル酸共結晶のTGAトレースを示している。
【
図27】1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のXRPDパターンを示している。
【
図28】1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のDSCトレースを示している。
【
図29】1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のTGAトレースを示している。
【
図30】1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の
1H NMRスペクトルを示している。
【
図31】1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、2:1 2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶、結晶オラパリブ形態A(供給されたまま)、及び微粒子化された結晶オラパリブ形態Aにおける37℃のFaSSIF(V2)中の溶解プロファイルを示している。
【
図32】2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、2:1 2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、及び2:1オラパリブ・4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のXRPDオーバーレイを示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、新規の1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶に関し、この1:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶のヒドロキシ安息香酸は式(I)の化合物であり、
【化4】
式中、n=0または1であり、
ただし、n=1の場合、ヒドロキシル基がベンゼン環の3位及び5位にはないことを条件とする。
【0019】
また本発明は、新規の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶にも関し、この2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶のヒドロキシ安息香酸は式(II)の化合物であり、
【化5】
式中、n=0または1である。
【0020】
2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶は、水を含まなくても(無水)任意選択で水和されてもよい。2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶は、湿度などの条件に応じて様々な量の水を含むことがあり、典型的には平均で最大約3つの水和水を含む。
【0021】
例えば、本発明の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶の場合、共結晶は、最大約1つの水和水、最大約2つの水和水、最大約3つの水和水、または平均数の水和水を含むことができる。
【0022】
例示的なヒドロキシ安息香酸コフォーマーとしては、ゲンチジン酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、または3,4-ジヒドロキシ安息香酸を挙げることができる。
【0023】
詳細には、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶は、1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶、1:1オラパリブサリチル酸共結晶、及び1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶に関する。
【0024】
本発明の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶は、一意に同型構造である。本発明の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶は、粉末X線回折パターンの共通のピークによって特徴付けられ、これらのピークのうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または全てが、6.2、10.3、11.6、13.5、及び17.8°2θ±0.2°2θのピークから選択される。本発明の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶は、
図5、
図14、または
図19と実質的に同様の粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。本発明の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶の共通のピークは、粉末X線回折パターンのオーバーレイを示す
図32に図示されている。
【0025】
本発明の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶は、赤外スペクトルの共通のピークによって特徴付けられ、これらのピークのうちの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または全てが、1014、1222、1243、1435、及び1590cm
-1±1cm
-1のピークから選択される。本発明の2:1オラパリブ:ヒドロキシ安息香酸共結晶は、
図8、17、または22と実質的に同様の赤外スペクトルによって特徴付けられる。
【0026】
本発明のこれらのオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶、これらの調製、及びこれらの特性評価については、以下の実施例で説明し、図面に示す。本発明は、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶の治療有効量と、1つ以上の医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。また本発明は、本明細書に記載の疾患、障害、及び状態の治療方法、ならびにその治療のための本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶の有効量またはそれを含む医薬組成物の使用にも関する。本発明はさらに、本明細書に記載の疾患、障害、及び状態の治療に使用する医薬の製造における、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶の使用を提供する。
【0027】
オラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶の治療的使用
【0028】
上記で論じたように、オラパリブは様々な疾患、障害、及び状態の治療に有用であることが当技術分野で知られている。そのため、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶、1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶、1:1オラパリブサリチル酸共結晶、1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、及びこれらを含む医薬組成物も、このような疾患、障害、及び状態の治療に使用することができる。本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶で治療することができる疾患、障害、または状態としては、限定されるものではないが、がん、線維症、炎症性状態(例えば、喘息、COPD、大腸炎、関節炎)、神経疾患(例えば、神経変性、神経外傷、脳卒中)、心血管状態、眼変性疾患、血管疾患(例えば、糖尿病合併症、アテローム動脈硬化症)、及び様々な形態の重大な疾病(例えば、敗血症性ショック、ALI、急性肝不全)が挙げられる。
【0029】
したがって、本発明は、このような疾患、障害、または状態を治療する方法であって、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶の治療有効量を、それを必要とする患者に投与するステップ、または本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶を含む治療組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法に関する。
【0030】
「治療」または「治療すること」という用語は、哺乳類における疾患、障害、または状態の任意の治療を意味し、これには疾患、障害、もしくは状態を防止もしくはそれから保護すること、すなわち臨床症状を発症させないこと、疾患、障害、もしくは状態を阻害すること、すなわち臨床症状の発症を抑止もしくは抑制すること、及び/または疾患、障害、もしくは状態を緩和すること(状態もしくは障害に伴う不快感の緩和を含む)、すなわち臨床症状を軽減させることが含まれる。当業者であれば、ヒトの医学において、「防止」及び「抑制」を区別することが常に可能とは限らないことが理解されよう。というのは、最終的な誘導事象(単数または複数)が未知の場合も潜在的な場合もあるからであり、あるいは当該事象(単数または複数)の発生からしばらく後になるまで患者が確認されないからである。そのため、本明細書で使用する場合、「予防」という用語は、疾患、障害、または状態の「防止」及び「抑制」の両方を包含する「治療」の要素として意図されている。「保護」という用語は「予防」を含むことが意図されている。
【0031】
本発明の別の態様は、上述の疾患、障害、及び状態の治療における本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶の使用に関する。したがって、本発明はさらに、このような疾患、障害、及び状態の治療に使用する医薬の製造に関する。
【0032】
オラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶を含む医薬組成物
【0033】
本発明は、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶の治療有効量と、医薬的に許容される担体(医薬的に許容される賦形剤とも称される)とかを含む、これらから本質的になる、またはこれらからなる医薬組成物に関する。上述のように、これらの医薬組成物は、上記で論じたような障害を治療または防止する上で治療的に有用である。本発明の医薬組成物は、固形投与形態であってもよく、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶で作製した液体製剤であってもよい。
【0034】
本発明の医薬組成物は、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶を含む任意の医薬形態をとることができる。医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、経口用溶液、注射用組成物、局所用組成物、吸入用組成物、または経皮用組成物とすることができる。液体医薬組成物は、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶を用いて調製することができ、本発明の特定の実施形態に相当するものである。液体医薬組成物の場合、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶は、溶媒(例えば、水)に溶解し、溶液として患者に提供してもよく、治療の時点で調製して溶液にするための乾燥形態として提供してもよい。
【0035】
概して医薬組成物は、例えば、約0.1重量%~約99.9重量%の本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶、例えば、約0.5重量%~約99.5重量%の本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶、及び例えば、99.5重量%~0.5重量%の少なくとも1つの好適な医薬賦形剤または溶媒を含む。1つの実施形態において、組成物は、約5重量%~約75重量%の本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶とすることができ、残りは、下記で論じるような少なくとも1つの好適な医薬賦形剤、溶媒、または少なくとも1つの他のアジュバントである。
【0036】
本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶の「治療有効量」とは治療効果に相関する量であり、例えば、約5mg~約2000mg、約50mg~約1500mg、約100mg~約1000mg、約250mg~約750mg、または約500mgであり得る。任意の特定の患者に対する任意の特定の疾患、障害、または状態の治療に必要とされる実際の量は、様々な因子(例えば、治療対象となる特定の疾患、障害、または状態、治療対象となる疾患状態及びその重症度、用いられる特定の医薬組成物、患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別、及び食事、投与様式、投与時間、投与経路、排泄速度、治療の期間、用いられる特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用する任意の薬物、ならびに医学分野で周知されている他のこのような因子を含む)に依存し得る。これらの因子については、Goodman and Gilmanの“The Pharmacological Basis of Therapeutics”,Tenth Edition,A.Gilman,J.Hardman and L.Limbird,eds.,McGraw-Hill Press,155-173,2001(参照により本明細書に援用される)で論じられている。
【0037】
医薬組成物のタイプに応じて、医薬的に許容される担体は、当技術分野で知られている担体の任意の1つまたは組合せから選択することができる。医薬的に許容される担体の選択は、使用される医薬形態及び所望の投与方法に依存する。本発明の医薬組成物、すなわち本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶を含む医薬組成物の場合、結晶形態を維持する担体を選択すべきである。言い換えれば、担体は、オラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶を実質的に改変すべきではないし、担体は、例えば、望ましくない生物学的効果を生じたり、医薬組成物の任意の他の成分(複数可)と他の形で有害に相互作用をしたりすることにより、使用される本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶と他の形で不適合性であるべきでもない。
【0038】
本発明の医薬組成物は、医薬製剤分野で知られている方法によって調製することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,(Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1990)(参照により本明細書に援用される)を参照。固形投与形態において、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶は、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤(例えば、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム)、または(a)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸)、(b)結合剤(例えば、セルロース誘導体、デンプン、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアラビアゴム)、(c)保水剤(例えば、グリセロール)、(d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ、もしくはタピオカデンプン、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、複合ケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム)、(e)溶液リターダー(例えば、パラフィン)、(f)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物)、(g)湿潤剤(例えば、セチルアルコール、及びモノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸マグネシウムなど)、(h)吸着剤(例えば、カオリン及びベントナイト)、ならびに(i)滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはこれらの混合物)と混合してもよい。カプセル、錠剤、及び丸剤の場合、投与形態は緩衝剤も含むことができる。また、医薬製剤分野で知られている医薬的に許容されるアジュバントも本発明の医薬組成物に使用することができる。このようなアジュバントとしては、限定されるものではないが、保存剤、湿潤剤、懸濁化剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、乳化剤、及び分注剤が挙げられる。微生物の作用は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることにより、その防止を確実にすることができる。また、等張剤(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)を含めることが望ましい場合もある。所望される場合、本発明の医薬組成物は、少量の補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、酸化防止剤など、例えば、クエン酸、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、ブチル化ヒドロキシトルエンなどを含むこともできる。
【0039】
上記のような固体投与形態は、医薬分野で知られているように、コーティング剤及びシェル(例えば、腸溶コーティング)を用いて調製することができる。これらは鎮静剤(pacifying agent)を含んでもよく、また活性化合物(単数または複数)を腸管のある特定の部位で遅延して放出するような組成であってもよい。使用され得る埋込み組成物の非限定的な例としては、ポリマー物質及びワックスがある。また活性化合物は、適切な場合、上記の賦形剤のうちの1つ以上を有するマイクロカプセル化形態(例えば、ペレット)をとってもよい。
【0040】
懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、及びトラガカント、またはこれらの物質の混合物などを含んでもよい。液体投与形態は水性であってもよく、医薬的に許容される溶媒、ならびに当技術分野で知られている従来の液体投与形態の賦形剤(限定されるものではないが、緩衝剤、香味剤、甘味剤、保存料、及び安定剤を含む)を含んでもよい。
【0041】
経直腸投与用の組成物は、例えば坐剤であり、これは本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶と、好適な非刺激性賦形剤または担体(例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックス)とを混合することにより調製することができ、坐剤は常温では固体、体温では液体であり得るため、好適な体腔内で融解し、そこで活性成分を放出する。
【0042】
局所投与に適した組成物としては、当技術分野で知られているように、液体または半液体の調製物、例えば、リニメント、ローション、ゲル、塗布剤、水中油型もしくは油中水型エマルション(例えば、クリーム、軟膏、ペースト、もしくは泡沫)、あるいは溶液または懸濁液(例えば、滴剤)が挙げられる。本発明の組成物は、局所投与を対象とすることができ、この場合担体は、好適には溶液、エマルション、軟膏、またはゲル基剤を含むことができる。担体または基剤は、例えば、以下のうち1つ以上を含むことができる:ペトロラタム、ラノリン、ポリエチレングリコール、ミツロウ、鉱油、希釈剤(例えば、水及びアルコール)、ならびに乳化剤及び安定剤。粘凋剤が、局所投与用の医薬組成物中に存在してもよい。経皮投与を対象とする場合、組成物は経皮パッチまたはイオントフォレーシスデバイスを含むことができる。局所用製剤は、濃度約0.1~約10%w/v(単位体積当たりの重量)の本発明の化合物を含むことができる。
【0043】
上述の局所投与方法に加えて、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶を肺に局所投与する方法には様々なものが存在する。このような手段の1つには、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶から構成された吸入に適したサイズ、典型的には<10μm(すなわち、呼吸可能な範囲)の粒子の乾燥粉末吸入製剤が含まれ、治療を受ける患者はこれを吸入する。乾燥粉末吸入器の表現物は、単位用量のカプセルまたはブリスター、複数単位用量の表現物、またはリザーバーの表現物とすることができる。表現物は、薬物単独を含むこともあれば、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶の粒子が付着できる医薬的に許容される担体材料を増量剤として含むこともある。担体粒子は、任意の許容される薬理学的に不活性な材料または材料の組合せとすることができる。例えば、担体粒子は、糖アルコール、ポリオール(例えば、ソルビトール、マンニトール、またはキシリトール)、ならびに結晶糖(単糖及び二糖を含む)、無機塩(例えば、塩化ナトリウム及び炭酸カルシウム)、有機塩(例えば、乳酸ナトリウム)、ならびに他の有機化合物(例えば、尿素、多糖(例えば、シクロデキストリン及びデキストリン))から選択される1つ以上の材料から構成され得る。担体粒子は、結晶糖(例えば、グルコースもしくはアラビノースなどの単糖、またはマルトース、サッカロース、デキストロース、もしくはラクトースなどの二糖)であってもよい。本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶を肺に局所投与する別の手段としては、本発明の共結晶から作製された溶液、または吸入に許容される好適な水性ベースのビヒクル中で製剤化された薬物粒子の懸濁液を介し、ネブライザーまたはスプレー(例えば、ジェットネブライザー、振動メッシュネブライザー、または超音波ネブライザーから生成される)によって送達する手段がある。ビヒクルは、吸入に許容される賦形剤(例えば、マンニトール、グリセロール、緩衝剤(例えば、リン酸バッファーまたはクエン酸バッファー)、塩化ナトリウム、界面活性剤、及び安定剤)を含むことができる。溶液または懸濁液から生成される粒子は液体であっても固体であってもよく、粒子サイズは、吸入時に口腔及び喉頭を通過して肺に入るだけの十分に小さなサイズである。本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶を肺に局所投与するさらなる手段としては、定量吸入器を介し送達される非水性の加圧溶液または懸濁液がある。本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶は、これらの投与形態の製剤化に関して当技術分野で知られている噴霧剤、共溶媒、安定剤、及び他の賦形剤を含み得る製剤中に溶解または懸濁していてもよい。
【0044】
上述の局所投与方法に加えて、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶をこのような方法により全身投与する方法には様々なものが存在する。1つのこのような手段としては、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶から構成された呼吸可能な粒子のエアロゾル懸濁液を、治療を受けている患者が吸入するという手段が挙げられる。本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶は、医薬的に有効な量で肺を介し血流内に吸収されると考えられる。吸入可能な粒子は液体であっても固体であってもよく、粒子サイズは吸入時に口腔及び喉頭を通過するだけの十分に小さなサイズである。
【0045】
本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶の結晶形態は調製中も維持することができるため、固体投与形態は本発明の医薬組成物の1つの実施形態である。経口投与用の投与形態(カプセル剤、錠剤、丸剤、粉剤、顆粒剤、及び懸濁液を含む)を使用することができる。肺投与用の投与形態(定量吸入器、乾燥粉末吸入器、またはネブライザー製剤を含む)を使用することができる。このような固形投与形態の場合、活性化合物は、少なくとも1つの不活性の医薬的に許容される賦形剤(医薬的に許容される担体としても知られている)と混合することができる。
【0046】
本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶は、液体または注射用医薬組成物の製剤化にも使用することができる。純粋形態のまたは適切な医薬組成物中の本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶は、許容される投与様式または類似の有用性を果たすための薬剤を介し、投与を行うことができる。したがって、投与は、例えば以下の経路:経口、頬側、経鼻、経肺、非経口(静脈内、筋肉内、または皮下)、局所、経皮、膣内、膀胱内、全身、経眼、または経直腸を介し、固体、半固体、凍結乾燥粉末、または液体投与形態(本発明の共結晶から作製された溶液、エマルション、または懸濁液)の形態(例えば、錠剤、坐剤、丸剤、軟質弾性及び硬質ゼラチンカプセル、粉剤、溶液、懸濁液、スプレー、またはエアロゾルなど)で、例えば、正確な投与量の単純な投与に適した単位投与形態または複数単位投与形態で行うことができる。1つの投与経路は経口投与であり得、治療すべき状態の重症度に応じて調節することができる好都合な1日投与レジメンを使用する。
【0047】
また本発明は、液体医薬組成物を調製する方法であって、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶を医薬的に許容される溶媒に溶解するステップを含む方法、及びその方法に従って調製される液体医薬組成物にも関する。上記で論じたように、本発明の液体医薬組成物は、経口で、非経口で、吸入により、及び静脈内に投与することができる。
【実施例】
【0048】
以下の分析方法を使用して、本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶の特性評価を行った。
【0049】
Bruker D8粉末X線回折(XRPD)特性評価:Cu Ka放射線(40kV、40mA)及びGeモノクロメーターを取り付けたθ-2θ角度計を用いたBruker D8回折計により、試料の粉末X線回折パターンを取得した。入射ビームは、2.0mm発散スリットを通過し、次に0.2mm散乱防止スリット及びナイフエッジを通過する。回折ビームは、8.0mmの受光スリット及び2.5°ソーラースリットを通過し、次にLynxeye検出器を通過する。データ収集に使用したソフトウェアはDiffrac Plus XRD Commander、データ分析に使用したソフトウェアはDiffrac Plus EVAであった。試料は、受け取ったままの粉末を用いた平板試料として、2°~42°2θの角度範囲(ステップサイズ0.05°2θ及びステップ時間0.5秒を使用)にわたり周囲条件下で実行した。試料は、研磨されたゼロバックグラウンド(510)シリコンウエハー上で平らな面に穏やかに押し付けるか、または切断された空洞に詰めることによって調製した。試料をそれ自身の平面において回転させた。小型のD8 disc recessホルダーを試料の調製に使用した。
【0050】
Bruker D2粉末X線回折特性評価:CuKα放射線(30V、10mA)、θ-2θ角度計、V4受光スリット、Geモノクロメーター、及びLynxeye検出器を用いたBruker 2nd Gen D2-Phaser回折計により、試料の粉末X線回折パターンを取得した。この装置は、認定されたコランダム標準物質(NIST 1976)を用いて性能チェックが行われる。データを、周囲温度で2°~35°2θ(ステップサイズ0.05°2θ及びステップ時間2.0秒を使用)の角度範囲または2°~42°2θ(ステップサイズ0.025°2θ及びステップ時間5.0秒を使用)の角度範囲にわたり収集した。周囲条件下で実行した試料を、粉砕せずに受け取ったままの粉末を用いて平板試料として調製した。およそ20mgの試料を試料ホルダーに穏やかに充填し、Diffrac Plus EVA v4.2.0.14を用いて全ての試料を分析した。
【0051】
示差走査熱量測定(DSC)(TA Q2000):TA Instruments Q2000(50ポジションオートサンプラー搭載)でSCデータを収集した。D 典型的には、0.5~3mgの各試料をピンホール付きアルミニウムパンに入れ、10℃/minで25℃から300℃に加熱した。試料に対し乾燥窒素のパージを50ml/minで維持した。装置制御ソフトウェアはQシリーズ用Advantage及びThermal Advantageであり、Universal AnalysisまたはTRIOSを用いてデータを分析した。
【0052】
示差走査熱量測定(DSC)(Pyris 4000):45ポジション試料ホルダーを搭載したPerkinElmer Pyris 4000 DSCによりDSCデータを収集した。認定されたインジウムを用いて、この装置のエネルギー及び温度の較正を検証した。事前に定義した量(0.5~3.0mg)の試料をピンホール付きアルミニウムパンに入れ、20℃ min-1で30℃から350℃に加熱した。試料に対し乾燥窒素のパージを60ml/min-1で維持した。装置の制御、データ取得、及び分析をPyris Software v9.0.1.0203により実施した。
【0053】
熱重量分析(TGA)(TA Q500):16ポジションオートサンプラーを搭載したTA Instruments Q500 TGAにより、TGAデータを収集した。典型的には、事前に風袋操作したアルミニウムのDSCパンに5~10mgの各試料を装入し、10℃/minで周囲温度から350℃に加熱した。試料に対し窒素パージを60ml/minで維持した。装置制御ソフトウェアはQシリーズ用Advantage及びThermal Advantageであり、Universal AnalysisまたはTRIOSを用いてデータを分析した。
【0054】
熱重量分析(TGA)(Perkin Elmer 4000):Perkin Elmer TGA 4000システムによりTGAデータを収集した。認定されたインジウムを用いてエネルギー及び温度の較正を行った。典型的には、20ml/minで維持した窒素雰囲気中、20℃/minで2~5mgの各試料を加熱した。装置制御ソフトウェアは、Perkin Elmer Pryis Thermal Analysis v11.1.1.0492であった。Pyris熱分析ソフトウェアv13.3.1.0014を用いて全てのデータ分析を実施した。
【0055】
溶液プロトン核磁気共鳴(1H-NMR):オートサンプラーを搭載したJEOL EX 270MHz分光計を用いて1H-NMRスペクトルを収集した。試料をd6-DMSOに溶解し解析した。Delta NMR Processing and Control Software version 4.3を用いてデータを取得した。
【0056】
走査型電子顕微鏡(SEM):Phenom Pro走査型電子顕微鏡によりデータを収集した。導電性両面粘着テープを用いて少量の試料をアルミニウムスタブにマウントした。スパッターコーター(20mA、120s)を用いて金の薄層を適用した。
【0057】
重量蒸気収着(GVS):SMS DVS Intrinsic水分収着分析器(DVS Intrinsic制御ソフトウェアにより制御)を用いて吸着等温線を得た。試料温度を装置制御により25℃で維持した。湿度は、乾燥及び湿潤窒素流を混合することにより、合計流量200ml/minで制御した。試料の付近に設置した較正済みRotronicプローブ(1.0~100%RHのダイナミックレンジ)により相対湿度を測定した。%RHの関数としての試料における重量変化(質量緩和)を微量天秤(精度±0.005mg)により常時モニターした。
【0058】
典型的には、5~30mgの試料を周囲条件下で、風袋操作したメッシュステンレス鋼バスケットに入れた。試料を40%RH及び25℃(典型的な室内条件)で装入し取り出した。水分吸着等温線を表1で概説しているように実施した(完全サイクル当たり2スキャン)。標準等温線を25℃、10%RH間隔で0~90%RHの範囲にわたり実施した。典型的には、ダブルサイクル(4スキャン)を行った。Microsoft Excel内でDVS Analysis Suiteを用いてデータ分析を行った。等温線の完了後に試料を回収し、XRPDにより再分析した。
【表1】
【0059】
カールフィッシャー滴定:150℃のMetrohm 874オーブン試料プロセッサー及び851 Titrano電量計(Hydranal Coulomat AGオーブン試薬及び窒素パージを使用)により、各試料の水分含量を測定した。秤量した固体試料を密封した試料バイアルに導入した。滴定当たりおよそ10mgの試料を使用し、二重反復の定量を行った。別段の明記がない限り、これらの結果の平均値を示す。Tiamoソフトウェアを用いてデータの収集及び分析を実施した。
【0060】
HPLCによる化学純度定量:ダイオードアレイ検出器を搭載しOpenLABソフトウェアを使用したAgilent HP1100/Infinity II 1260シリーズシステムにより、純度分析を実施した。完全な方法の詳細を表2に示す。
【表2】
【0061】
フーリエ変換赤外分光法:Perkin-Elmer Spectrum One(汎用減衰全反射(ATR)サンプリングアクセサリーを装着)により、4000~650cm-1で16スキャンにわたってデータを収集した。Spectrumソフトウェアを用いてデータを収集し、ACD Spectrus Processorを用いて処理した。
【0062】
実施例1:1:1オラパリブ・ゲンチジン酸共結晶
【0063】
1.1 1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶の調製
【0064】
特性評価に使用する1:1オラパリブ・ゲンチジン酸共結晶のバッチを以下のように調製した。
【0065】
オラパリブ(500mg、1.15mmol)及びゲンチジン酸(178mg、1.15mmol)をアセトニトリル(200μL)とともにRetsch MM400ボールミル内で30Hzで6×20分間粉砕した。生成物を40℃で2時間真空中で乾燥した。
【0066】
1.2 1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のXRPD特性評価
【0067】
1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のD8 XRPDパターンを
図1に示す。表3に
図1のXRPDパターンで特定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd値を示す。ピークもしくは対応するd値の全体のリスト、またはそのサブセットは、また
図1と実質的に同様のXRPDパターンによっても、共結晶を特徴付けるのに十分であり得る。例えば、共結晶は、11.7、13.2、15.0、23.5、及び25.2°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または全てのピークによって特徴付けることができる。
【表3-1】
【表3-2】
【0068】
1.3 1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のDSC
【0069】
TA Q2000装置で得られた1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のDSCトレース(
図2)は、オンセット温度155.2℃、ピーク最大値158.0℃の単一の吸熱を示している。
【0070】
1.4 1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のTGA
【0071】
TA Q500装置で得られた1:1オラパリブ・ゲンチジン酸共結晶のTGAトレース(
図3)では、200℃まで顕著な重量損失は見られず、そのポイントで26%の重量損失が観察される(1モルのゲンチジン酸の損失に対応)。これは、共結晶が1:1のオラパリブ:ゲンチジン酸の化学量論を有することと、共結晶が無水であることとを示している。
【0072】
1.5 1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶の赤外スペクトル
【0073】
1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶の赤外スペクトルを
図4に示す。
図4の赤外スペクトルで特定された顕著なピークは、3010、1903、1665、1643、1598、1557、1501、1464、1438、1354、1341、1259、1244、1230、1200、1165、1126、1021、1009、928、878、822、797、767、749、705、及び671cm
-1±1cm
-1である。ピークの全体のリスト、またはそのサブセットは、また
図4と実質的に同様の赤外パターンによっても、共結晶を特徴付けるのに十分であり得る。
【0074】
実施例2:2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶
【0075】
2.1 2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶の調製
【0076】
特性評価に使用する2:1オラパリブ・ゲンチジン酸共結晶のバッチを以下のように調製した。
【0077】
オラパリブ(500mg、1.15mmol)及びゲンチジン酸(88mg、0.57mmol)を水(200μL)とともにRetsch MM400ボールミル内で30Hzで3×20分間粉砕した。生成物を40℃で2時間真空中で乾燥した。
【0078】
2.2 2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のXRPD特性評価
【0079】
2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のD8 XRPDパターンを
図5に示す。表4に
図5のXRPDパターンで特定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd値を示す。ピークもしくは対応するd値の全体のリスト、またはそのサブセットは、また
図5と実質的に同様のXRPDパターンによっても、共結晶を特徴付けるのに十分であり得る。例えば、共結晶は、6.1、10.3、11.6、12.2、及び20.8°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または全てのピークによって特徴付けることができる。
【表4-1】
【表4-2】
【0080】
2.3 2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のDSC
【0081】
TA Q2000装置で得られた2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のDSCトレース(
図6)は、オンセット温度104.4℃及びピーク最大値114.8℃を伴う吸熱に続いて、オンセット温度165.5℃及びピーク最大値182.2℃を伴う第2のブロードな吸熱を示している。
【0082】
2.4 2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のTGA
【0083】
TA Q500装置で得られた2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のTGAトレース(
図7)では、室温から120℃までの間に4.6%の重量損失が見られる。
【0084】
2.5 2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶の赤外スペクトル
【0085】
2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶の赤外スペクトルを
図8に示す。
図8の赤外スペクトルで特定された顕著なピークは、3380、3239、3011、1718、1662、1611、1591、1266、1449、1436、1373、1291、1281、1244、1222、1214、1198、1171、1088、1031、1015、936、870、837、806、799、766、749、730、及び681cm
-1±1cm
-1である。ピークの全体のリスト、またはそのサブセットは、また
図8と実質的に同様の赤外パターンによっても、共結晶を特徴付けるのに十分であり得る。例えば、共結晶は、1014、1222、1243、1435、及び1590cm
-1±1cm
-1のピークから選択される少なくとも2つのピーク、少なくとも3つのピーク、少なくとも4つのピーク、または全てのピークによって特徴付けることができる。
【0086】
2.6 2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶の重量蒸気収着(GVS)分析
【0087】
2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶について得られた水分吸着等温線グラフを
図9に示す。この共結晶は、窒素雰囲気下、25℃において0~90%の相対湿度範囲で3.4%w/wを可逆的に吸収することが分かった(0~5%RHで1.6%w/wを可逆的に吸収)。GVS後の試料のXRPD分析により、共結晶構造が変化していないことが確認された。
【0088】
2.7 2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のカールフィッシャー滴定
【0089】
2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶のカールフィッシャー分析により、試料には5.1%の水が含まれることが示された。これは3モルの水に相当する。
【0090】
実施例3:1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶
【0091】
3.1 1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の調製
【0092】
特性評価に使用する1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のバッチを以下のように調製した。
【0093】
オラパリブ(400mg、0.92mmol)及び2,4-ジヒドロキシ安息香酸(144mg、0.93mmol)をアセトニトリル(200μL)とともにRetsch MM400ボールミル内で30Hzで6×20分間粉砕した。生成物を40℃で2時間真空中で乾燥した。
【0094】
3.2 1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のXRPD特性評価
【0095】
1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のD8 XRPDパターンを
図10に示す。表5に
図10のXRPDパターンで特定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd値を示す。ピークもしくは対応するd値の全体のリスト、またはそのサブセットは、また
図10と実質的に同様のXRPDパターンによっても、共結晶を特徴付けるのに十分であり得る。例えば、共結晶は、3.5、8.5、9.4、11.9、及び16.5°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または全てのピークによって特徴付けることができる。
【表5-1】
【表5-2】
【0096】
3.3 1:1 オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のDSC
【0097】
TA Q2000装置で得られた1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のDSCトレース(
図11)は、オンセット温度132.1℃及びピーク最大値143.6℃を伴う吸熱に続いて、オンセット温度180.1℃及びピーク最大値203.1℃を伴う第2のブロードな吸熱を示している。
【0098】
3.4 1:1 オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のTGA
【0099】
TA Q500装置で得られた1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のTGAトレース(
図12)では、150℃まで顕著な重量損失は見られない。
【0100】
3.5 1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の赤外スペクトル
【0101】
1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の赤外スペクトルを
図13に示す。
図13の赤外スペクトルで特定された顕著なピークは、3172、3012、2907、1677、1645、1620、1594、1599、1496、1471、1436、1347、1260、1321、1212、1200、1141、1088、1028、1008、975、964、935、834、806、797、768、729、及び680cm
-1±1cm
-1である。ピークの全体のリスト、またはそのサブセットは、また
図13と実質的に同様の赤外パターンによっても、共結晶を特徴付けるのに十分であり得る。
【0102】
実施例4:2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶
【0103】
4.1 2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の調製
【0104】
特性評価に使用する2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のバッチを以下のように調製した。
【0105】
オラパリブ(500mg、1.15mmol)及び2,4-ジヒドロキシ安息香酸(90mg、0.58mmol)を水(100μL)及びエタノール(100μL)とともにRetsch MM400ボールミル内で30Hzで3×20分間粉砕した。生成物を40℃で2時間真空中で乾燥した。
【0106】
4.2 2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のXRPD特性評価
【0107】
2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のD8 XRPDパターンを
図14に示す。表6に
図14のXRPDパターンで特定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd値を示す。ピークもしくは対応するd値の全体のリスト、またはそのサブセットは、また
図14と実質的に同様のXRPDパターンによっても、共結晶を特徴付けるのに十分であり得る。例えば、共結晶は、6.1、11.6、13.5、15.7、及び19.9°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または全てのピークによって特徴付けることができる。
【表6-1】
【表6-2】
【0108】
4.3 2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のDSC
【0109】
TA Q2000装置で得られた2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のDSCトレース(
図15)は、オンセット温度111.8℃及びピーク最大値117.5℃を伴う主要な吸熱を示している。これに続いて、オンセット温度175.3℃及びピーク最大値183.0℃を伴う第2の吸熱、ならびにオンセット温度193.5℃及びピーク最大値208.4℃を伴う第3の吸熱が生じる。
【0110】
4.4 2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のTGA
【0111】
TA Q500装置で得られた2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のTGAトレース(
図16)では、40℃から125℃までの間に4.6%の重量損失が見られる。
【0112】
4.5 2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の赤外スペクトル
【0113】
2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の赤外スペクトルを
図17に示す。
図17の赤外スペクトルで特定された顕著なピークは、3268、3011、1656、1608、1590、1464、1435、1349、1337、1243、1221、1181、1173、1114、1096、1027、1014、976、936、838、805、797、750、729、706、693、及び657cm
-1±1cm
-1である。ピークの全体のリスト、またはそのサブセットは、また
図17と実質的に同様の赤外パターンによっても、共結晶を特徴付けるのに十分であり得る。例えば、共結晶は、1014、1222、1243、1435、及び1590cm
-1±1cm
-1のピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または全てのピークによって特徴付けることができる。
【0114】
4.6 2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の重量蒸気収着(GVS)分析
【0115】
2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶について得られた水分吸着等温線グラフを
図18に示す。この共結晶は、窒素雰囲気下、25℃において0~90%の相対湿度範囲で4.5%w/wを可逆的に吸収することが分かった(0~5%RHで2.5%w/wを可逆的に吸収)。GVS後の試料のXRPD分析により、共結晶構造が変化していないことが確認された。
【0116】
4.7 2:1 オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のカールフィッシャー滴定
【0117】
2:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のカールフィッシャー分析により、試料には5.5%の水が含まれることが示された。これは3.2モルの水に相当する。
【0118】
実施例5:2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶
【0119】
5.1 2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶の調製
【0120】
特性評価に使用する2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のバッチを以下のように調製した。
【0121】
オラパリブ(500mg、1.15mmol)及び4-ヒドロキシ安息香酸(79mg、0.57mmol)を水(200μL)とともにRetsch MM400ボールミル内で30Hzで3×20分間粉砕した。生成物を40℃で2時間真空中で乾燥した。
【0122】
5.2 2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のXRPD特性評価
【0123】
2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のD8 XRPDパターンを
図19に示す。表7に
図19のXRPDパターンで特定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd値を示す。ピークもしくは対応するd値の全体のリスト、またはそのサブセットは、また
図19と実質的に同様のXRPDパターンによっても、共結晶を特徴付けるのに十分であり得る。例えば、共結晶は、6.3、13.6、15.9、19.8、及び21.6°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または全てのピークによって特徴付けることができる。
【表7】
【0124】
5.3 2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のDSC
【0125】
TA Q2000装置で得られた2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のDSCトレース(
図20)は、オンセット温度97.7℃及びピーク最大値106.3℃を伴う主要な吸熱に続いて、オンセット温度154.4℃及びピーク最大値182.8℃を伴う第2のブロードな吸熱を示している。
【0126】
5.4 2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のTGA
【0127】
TA Q500装置で得られた2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のTGAトレース(
図21)では、室温から120℃までの間に4.4%の重量損失が見られる。
【0128】
5.5 2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶の赤外スペクトル
【0129】
2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶の赤外スペクトルを
図22に示す。
図22の赤外スペクトルで特定された顕著なピークは、3266、1684、1655、1619、1608、1589、1464、1447、1435、1373、1349、1310、1277、1256、1243、1222、162、1099、1059、936、868、806、784、751、729、705、693、及び664cm
-1±1cm
-1である。ピークの全体のリスト、またはそのサブセットは、また
図22と実質的に同様の赤外パターンによっても、共結晶を特徴付けるのに十分であり得る。例えば、共結晶は、1014、1222、1243、1435、及び1590cm
-1±1cm
-1のピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または全てのピークによって特徴付けることができる。
【0130】
5.6 2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶の重量蒸気収着(GVS)分析
【0131】
2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶について得られた水分吸着等温線グラフを
図23に示す。この共結晶は、窒素雰囲気下、25℃において0~90%の相対湿度範囲で3.4%w/wを可逆的に吸収することが分かった(0~5%RHで1.5%w/wを可逆的に吸収)。GVS後の試料のXRPD分析により、共結晶構造が変化していないことが確認された。
【0132】
5.7 2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のカールフィッシャー滴定
【0133】
2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のカールフィッシャー分析により、試料には4.8%の水が含まれることが示された。これは2.9モルの水に相当する。
【0134】
実施例6:1:1オラパリブサリチル酸共結晶
【0135】
6.1 1:1オラパリブサリチル酸共結晶の調製
【0136】
特性評価に使用する結晶性1:1オラパリブ・サリチル酸共結晶のバッチを以下のように調製した。
【0137】
オラパリブ(208mg、048mmol)及びサリチル酸(66mg、0.48mmol)をニトロメタン(3滴)とともにRetsch MM400ボールミル内で30Hzで5×15分間粉砕した。生成物を40℃で1時間真空中で乾燥した。
【0138】
6.2 1:1 オラパリブサリチル酸共結晶のXRPD特性評価
【0139】
1:1オラパリブサリチル酸共結晶のD2 XRPDパターンを
図24に示す。表8に
図24のXRPDパターンで特定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd値を示す。ピークもしくは対応するd値の全体のリスト、またはそのサブセットは、また
図24と実質的に同様のXRPDパターンによっても、共結晶を特徴付けるのに十分であり得る。例えば、共結晶は、8.4、9.3、12.5、13.3、及び16.7°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または全てのピークによって特徴付けることができる。
【表8】
【0140】
6.3 1:1オラパリブサリチル酸共結晶のDSC
【0141】
Pyris 4000装置で得られた1:1オラパリブ・サリチル酸共結晶のDSCトレース(
図25)は、ピーク最大値146.4℃を伴う主要な吸熱を示している。
【0142】
6.4 1:1オラパリブサリチル酸共結晶のTGA
【0143】
Perkin Elmer 4000装置で得られた1:1オラパリブサリチル酸共結晶のTGAトレース(
図26)では、150℃まで顕著な重量損失は見られず、そのポイントで24%の重量損失が観察される(1モルのサリチル酸の損失に対応)。これは、共結晶が1:1のオラパリブ:サリチル酸の化学量論を有することと、共結晶が無水であることとを示している。
【0144】
実施例7:1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶
【0145】
7.1 1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の調製
【0146】
特性評価に使用する結晶性1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のバッチを以下のように調製した。
【0147】
オラパリブ(74mg、0.17mmol)及び3,4-ジヒドロキシ安息香酸(26mg、0.17mmol)をガラスバイアルに入れ、3,4-ジヒドロキシ安息香酸で飽和した水(3ml)を加えた。得られたスラリーをシェーカーに入れ、2日間熟成させた(室温から50℃まで8時間サイクル、50℃に4時間加熱、次いで室温までさらに4時間冷却)。次いで生成物を真空下で濾過し、40℃で8時間真空中で乾燥した。
【0148】
7.2 1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のXRPD特性評価
【0149】
Bruker 2nd Gen D2-Phaser回折計により取得した1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のD2 XRPDパターンを
図27に示す。表9に
図27のXRPDパターンで特定されたピークの角度、°2θ±0.2°2θ、及びd値を示す。ピークもしくは対応するd値の全体のリスト、またはそのサブセットは、また
図27と実質的に同様のXRPDパターンによっても、共結晶を特徴付けるのに十分であり得る。例えば、共結晶は、9.4、11.7、16.0、17.4、及び19.9°2θ±0.2°2θのピークから選択される少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または全てのピークによって特徴付けることができる。
【表9】
【0150】
7.3 1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のDSC
【0151】
Pyris 4000装置で得られた1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のDSCトレース(
図28)は、ピーク最大値93.2℃を伴うブロードな吸熱を示している。ブロードな吸熱は、ピーク最大値の温度の上下に2つの小さなショルダーピークを示している。
【0152】
7.4 1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のTGA
【0153】
Perkin Elmer 4000装置で得られた1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶のTGAトレース(
図29)では、45℃から95℃までの間におよそ2.3%の重量損失が見られ、これは0.8モルの水に対応する。このことから、1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の結晶構造内に捕捉された水の存在が示唆される。
【0154】
7.5 1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の1H NMRスペクトル
【0155】
図30に示す1:1オラパリブ3,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶の
1H NMRスペクトルは、以下のピークを示している:
1H NMR (400MHz, DMSO): δ 0.65-0.80 (4H), 1.80-2.05 (1H), 3.05-3.25 (2H), 3.40-3.80 (6H), 4.33 (2H), 6.75-6.80 (1H), 7.20-7.30 (2H), 7.30-7.35 (1H), 7.35-7.45 (1H), 7.40-7.50 (1H), 7.80-7.85 (1H), 7.85-7.95 (1H), 7.95-8.00 (1H), 8.20-8.30 (1H), 及び12.60 (1H).
1H NMRスペクトルにおける6.75-6.80ppmのピークは、3,4-ジヒドロキシ安息香酸の1プロトンに対応する。このピークの積分とオラパリブの1プロトンに対応する1.80-2.05ppmのピークの積分との比較により、共結晶が1:1のAPI:コフォーマーの化学量論を有することが示される。
【0156】
実施例8:オラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶の固体状態安定性試験
【0157】
オラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶の物理的安定性を、加速保存条件下での経時的な固体形態変換または分解の徴候に関して調べるための試験を行った。1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、2:1 2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、及び2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶を別々に、40℃/75%相対湿度及び25℃/97%相対湿度で7日間保存した。この時間後、全ての試料は白色の固体のままであり、潮解の徴候は見られなかった。各試料をXRPDにより分析して任意の潜在的な形態変化を観察し、HPLCにより分析して任意の分解の徴候を定量するように純度を定量した。試験の結果を表10に示す。
【表10】
【0158】
表10は、加速条件下で7日間保存した後、全ての共結晶が元の結晶形態を保持し、これらの条件下では本発明のオラパリブヒドロキシ安息香酸共結晶のいずれも固体形態の変換または解離を受けないことを示している。全ての共結晶は、これらの加速保存条件に曝露した際に、HPLC純度分析による定量においてほとんど分解の徴候を示さなかった。
【0159】
実施例9:溶解試験
【0160】
US2018/0113216で説明されているように、オラパリブの経口バイオアベイラビリティは、胃腸(GI)管内の薬物の溶解速度及び全体の溶解度の両方に依存する。US2018/0113216には、オラパリブが、その透過性を制限しGI管からのその吸収を制限する濃度でどのようにP-gpによる流出の傾向を有するかについて記載されている。この流出比率は、溶液中の薬物の濃度が増加するにつれて低下する。したがって、この流出の問題を最小限に抑え、最適な吸収及びバイオアベイラビリティを達成するには、GI管内での溶解速度が可能な限り高く、また薬物が血流内に吸収されるようにするだけの十分な時間にわたり高いレベルの溶解度を維持するオラパリブの形態を見出すことが不可欠である。そのため、1:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、1:1オラパリブ2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、2:1 2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、及び2:1オラパリブ4-ヒドロキシ安息香酸共結晶の溶解速度を、純粋な結晶オラパリブ形態A(供給されたまま)2~20μm及び粉砕された結晶オラパリブ形態A 0.5~5μmと比較して調べる試験を行った。25mgのオラパリブに相当する分量の各オラパリブを使用し、pH6.5(37℃)の50mLの模擬腸液(FaSSIF V2)を用いて溶解試験を行った。この溶解試験はPion inForm(登録商標)装置を用いて行った。光ファイバープローブを用いたin-situ UV分光法によりオラパリブの検出及び定量化を実施し、これにより試料導入時点から瞬時にデータを収集することができた。予め決定したpH依存モル吸光係数を用いて、UV吸収データをmg/mL(±0.2mg/mL)に変換して、溶解した薬物の量を定量化した。
【0161】
本試験の結果を
図31に示す。本試験の全てのヒドロキシ安息香酸共結晶の溶解速度は、結晶オラパリブ形態A(供給されたまま)または粉砕されたオラパリブ形態Aのいずれよりも高く、全てのヒドロキシ安息香酸共結晶が、模擬腸培地中でオラパリブ形態Aよりも高いレベルの溶解を達成し、60分間にわたり溶解の損失は最小限であった。粉砕による粒子サイズの低減は、難溶性の薬物の溶解速度を増加させるための認識された方法であるが、
図31からは、オラパリブ形態Aの粒子サイズを低減した結果、溶解速度が低下するとともに、30分の時間期間にわたる任意の時点でオラパリブの溶解量が全体的に減少することが分かる。
【0162】
図32は、2:1オラパリブゲンチジン酸共結晶、2:1 2,4-ジヒドロキシ安息香酸共結晶、及び2:1オラパリブ・4-ヒドロキシ安息香酸共結晶のXRPDオーバーレイを示している。
【国際調査報告】