(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ケトンを含む日焼け止めのイミン類似体を含む日焼け止め組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/898 20060101AFI20241114BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20241114BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20241114BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20241114BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K8/898
C12N9/10 ZNA
C12N9/02
A61Q17/04
A61K8/35
A61K8/41
A61K8/46
A61K8/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527351
(86)(22)【出願日】2022-11-09
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 US2022079573
(87)【国際公開番号】W WO2023086839
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521387785
【氏名又は名称】キュリー カンパニー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ミルチェック,エリカ エム.
(72)【発明者】
【氏名】シンデル,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ザバドス,ゾルト
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB372
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC182
4C083AC211
4C083AC212
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC531
4C083AC532
4C083AC551
4C083AC552
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC662
4C083AC782
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC852
4C083AD022
4C083AD092
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD212
4C083AD242
4C083AD262
4C083AD352
4C083AD392
4C083CC19
4C083EE12
4C083EE17
(57)【要約】
少なくとも1種のケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンを含む日焼け止め組成物および日焼け止め活性成分であって、少なくとも1種のケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンが反応して、ケトン含有UVフィルターのイミン類似体を形成し、イミン類似体が、a)UV保護を400nmもしくはそれを上回る可視領域に拡張することができる、b)耐水性である、および/またはc)皮膚浸透を防止もしくは減少させる、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する、日焼け止め組成物および日焼け止め活性成分が、本明細書で開示される。このイミン類似体は、トランスグルタミナーゼもしくはその任意のバリアントおよび/またはリジルオキシダーゼと反応して、日焼け止め組成物または日焼け止め活性成分を目的の標的に結合させることができる基質を提供するようにさらに修飾されてもよい。また、日焼け止め組成物または日焼け止め成分のうちのいずれかを、化粧品的または薬学的に許容される担体とともに含む化粧品調製物または医薬調製物も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンを含む日焼け止め組成物であって、前記ケトン含有UVフィルターおよび前記少なくとも1種の第一級または第二級アミンが反応して前記ケトン含有UVフィルターのイミン類似体を形成し、前記イミン類似体が、a)UV保護を400nmもしくはそれを上回る可視領域に拡張することができる、b)耐水性である、および/またはc)皮膚浸透を防止もしくは減少させる、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する、日焼け止め組成物。
【請求項2】
前記ケトン含有UVフィルターが、アボベンゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、スルイソベンゾン、およびオキシベンゾンからなる群から選択される、請求項1に記載の日焼け止め組成物。
【請求項3】
前記ケトン含有UVフィルターの前記イミン類似体形態が、さらに修飾されて、トランスグルタミナーゼもしくはその任意のバリアントおよび/またはリジルオキシダーゼと反応して、前記日焼け止め組成物を目的の標的に結合させることができる基質を提供する、請求項1または2に記載の日焼け止め組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンを含む日焼け止め活性成分であって、前記ケトン含有UVフィルターおよび前記第一級または第二級アミンが反応して、a)UV保護を400nmもしくはそれを上回る可視領域に拡張することができる、b)耐水性である、および/またはc)皮膚浸透を防止もしくは減少させる、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有するイミン類似体を形成する、日焼け止め活性成分。
【請求項5】
前記ケトン含有UVフィルターが、アボベンゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、スルイソベンゾン、およびオキシベンゾンからなる群から選択される、請求項4に記載の日焼け止め活性成分。
【請求項6】
前記ケトン含有UVフィルターの前記イミン類似体形態が、さらに修飾されて、トランスグルタミナーゼもしくはその任意のバリアントおよび/またはリジルオキシダーゼと反応して、前記日焼け止め活性成分を目的の標的に結合させることができる基質を提供する、請求項4または5に記載の日焼け止め活性成分。
【請求項7】
請求項1もしくは2に記載の日焼け止め組成物または請求項4もしくは5に記載の日焼け止め活性成分と、化粧品的または薬学的に許容される担体とを含む、化粧品調製物または医薬調製物。
【請求項8】
請求項3に記載の日焼け止め組成物または請求項6に記載の日焼け止め活性成分と、化粧品的または薬学的に許容される担体とを含む、化粧品調製物または医薬調製物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月11日に出願された米国特許出願公開第17/524,222号の優先権を主張し、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦支援研究に関する記述
本発明は、一部には、米国科学財団(National Science Foundation)によって授与された助成金第2026057号に基づく政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
参照による組み込み
2022年11月7日に作成され、本明細書とともに提出された24,235バイトのサイズを有するSequenceListing.txtという名称のファイルにおいて提供される配列表は、その全体が参照により組み込まれる。
【0004】
分野
本分野は、a)UV保護を400nmもしくはそれを上回る可視領域に拡張することができる、b)耐水性である、および/またはc)皮膚浸透を防止もしくは減少させる、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有するケトン含有UVフィルターのイミン類似体を含む日焼け止め組成物に関する。
【背景技術】
【0005】
紫外線(UV)フィルターは、UV光を遮断または吸収する化合物、混合物、または材料である。UVフィルターの主な用途の1つは、日焼けおよび他の日光/UV関連の損傷から皮膚を保護するための日焼け止め剤としてのそれらの使用である。過剰なUV線は、日焼け、光老化および皮膚がんを引き起こすおそれがあるため、日焼け止め剤などのケア製品は、通常、それらがフィルターする特定の波長についての分類を含む。UV分類には、UVA(320~400nm)、UVB(290~320nm)およびUVC(200~280nm)が含まれる。広域スペクトル日焼け止め剤は、UVAおよびUVB光線の両方から保護する。
【0006】
UV吸収性化合物は、日焼け止め剤だけでなく、他のパーソナルケア製品、例えば、口紅、シャンプー、ヘアスプレー、ボディーソープ、および防虫剤にも使用される。ケミカルフィルターは、紫外線を吸収するか、反射するかまたは散乱させることによってUV線から保護する。反射および散乱は、無機UVフィルター、例えば、二酸化チタンおよび酸化亜鉛によって達成される。吸収、主にUVBの吸収は、有機UVフィルターによって行われる。
【0007】
欧州連合は、UVA保護のUVB保護に対する比によって広域スペクトル保護を決定しており、太陽光線保護指数(SPF)の数の3分の1がUVA保護であることを要求している。現在、欧州の日焼け止め剤に使用されているEUに認可されたUVAフィルターは8種ある。EUに認可されたUVAフィルターのいくつかは、トリアジン含有UVフィルターである。それらは、いくらかのUVB保護も提供する。残念ながら、そのような化合物は、米国での使用がまだFDAに認可されておらず、そのような認可がいつなされるかは明らかでない。
【0008】
したがって、これらのトリアジン含有UVフィルターの有効性に匹敵するか、またはそれを上回る可能性さえある、FDAに認可されたUVフィルターを使用する新たな日焼け止め剤を開発する必要性が、依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
第1の実施形態では、少なくとも1種のケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンを含む日焼け止め組成物であって、ケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンが反応してケトン含有UVフィルターのイミン類似体を形成し、前記イミン類似体が、a)UV保護を400nmもしくはそれを上回る可視領域に拡張することができる、b)耐水性である、および/またはc)皮膚浸透を防止もしくは減少させる、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する、日焼け止め組成物が開示される。
【0010】
第2の実施形態では、ケトン含有UVフィルターは、アボベンゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、スルイソベンゾン、およびオキシベンゾンからなる群から選択される。
【0011】
第3の実施形態では、ケトン含有UVフィルターのイミン類似体形態は、トランスグルタミナーゼもしくはその任意のバリアントおよび/またはリジルオキシダーゼと反応して、日焼け止め組成物を目的の標的に結合させることができる基質を提供するようにさらに修飾されてもよい。
【0012】
第4の実施形態では、少なくとも1種のケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンを含む日焼け止め活性成分であって、ケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンが反応して、ケトン含有UVフィルターのイミン類似体を形成し、前記イミン類似体が、a)UV保護を400nmもしくはそれを上回る可視領域に拡張することができる、b)耐水性である、および/またはc)皮膚浸透を防止もしくは減少させる、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する、日焼け止め活性成分が開示される。好ましくは、ケトン含有UVフィルターは、アボベンゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、スルイソベンゾン、およびオキシベンゾンからなる群から選択される。
【0013】
第5の実施形態では、日焼け止め活性成分のケトン含有UVフィルターのイミン類似体形態は、トランスグルタミナーゼもしくはその任意のバリアントおよび/またはリジルオキシダーゼと反応して、前記日焼け止め活性成分を目的の標的に結合させることができる基質を提供するようにさらに修飾される。
【0014】
第6の実施形態では、本明細書に記載される日焼け止め組成物または日焼け止め活性成分のうちの少なくとも1つと、化粧品的または薬学的に許容される担体とを含む化粧品調製物または医薬調製物が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】オキシベンゾンと比較したイミン-1、イミン-2、およびイミン-3のアセトニトリル中のUV/Visスペクトル特性を示す図である。
【
図2】オキシベンゾンと比較したカルバメート-1のアセトニトリル中のUV/Visスペクトル特性を示す図である。
【
図3】オキシベンゾンと比較したイミン-4、イミン-5、およびN-Boc-イミン-6のアセトニトリル中のUV/Visスペクトル特性を示す図である。
【
図4】N-Boc-イミン-6のエタノール中のUV/Visスペクトル特性を示す図である。
【
図5】アボベンゾンと比較したイミン-7およびN-Boc-イミン-7のアセトニトリル中のUV/Visスペクトル特性を示す図である。
【
図6】ほぼ等しい濃度のスルイソベンゾンと比較したN-Boc-イミン-8およびイミン-8のエタノール中のUV/Visスペクトル特性を示す図である。
【
図7】イミン-10のエタノール中のUV/Visスペクトル特性を示す図である。
【
図8】アボベンゾン、オキシベンゾン、スルイソベンゾン、DHHB、および下記の実施例に記載されるイミンの構造を、ChemDrawによって決定されたそれらの推定LogP値とともに描写している図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
配列の簡単な説明
以下の配列は、連邦規則集第37編第1.821~1.825条(37 C.F.R. §§1.821-1.825)(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む特許出願の要件-配列規則(Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosure-the Sequence Rules)」)に従い、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(2009)ならびに欧州特許条約(EPC)および特許協力条約(PCT)の規則5.2および49.5(a-bis)、ならびに実施細則のセクション208および附属書類Cの配列表要件に準拠する。ヌクレオチドおよびアミノ酸の配列データに使用される記号および形式は、連邦規則集第37編第1.822条(37 C.F.R. §1.822)に記載される規則に準拠する。
【0017】
配列番号1は、ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)の野生型トランスグルタミナーゼ(Tgアーゼ)配列のアミノ酸配列に対応する。
【0018】
配列番号2は、配列番号1の配列のバリアントに対応し、このバリアントは配列番号1に比して三重突然変異(N282E、H289I、およびS299K)を有する。
【0019】
配列番号3は、配列番号1のバリアントに対応し、このバリアントは配列番号1に比して四重突然変異(N282K、G283A、S284P、およびS299V)を有する。
【0020】
配列番号4は、配列番号1のバリアントに対応し、このバリアントは配列番号1に比して二重突然変異(S199AおよびS299A)を有する。
【0021】
配列番号5は、配列番号1のバリアントに対応し、このバリアントは配列番号1に比して二重突然変異(S199AおよびS299V)を有する。
【0022】
配列番号6は、配列番号1のバリアントに対応し、このバリアントは配列番号1に比して三重突然変異(S2P、S199GおよびS299V)を有する。
【0023】
配列番号7は、配列番号1のバリアントに対応し、このバリアントは配列番号1に比して単一突然変異(S2P)を有する。
【0024】
配列番号8は、ポリヒスチジンタグを有する配列番号1、すなわち、ポリヒスチジンタグを有する野生型Tgアーゼに対応する。
【0025】
本明細書に引用されるすべての特許、特許出願、および刊行物は、その全体が参照により組み込まれる。
【0026】
文脈で別様に明確に指示されない限り、単数形を使用する語は複数形を含み、その逆もまた同様である。
【0027】
本出願全体を通して、さまざまな実施形態を範囲形式で提示することができる。範囲形式での記載は、単に便利さおよび簡潔さのためであり、本明細書に記載される実施形態の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、その範囲内の個々の数値と同様に、すべての可能な部分範囲を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~2、1~3、1~4および1~5、2~3、2~4、2~5、2~6、3~4、3~5、3~6などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5および6を有するとみなされるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0028】
本開示では、多くの用語および略号が使用される。別段の記載がない限り、以下の定義が適用される。
【0029】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈で別様に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの化合物」または「少なくとも1つの化合物」という用語は、それらの混合物を含めて、複数の化合物を含むことができる。「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「1つまたは複数の」、および「少なくとも1つの」という用語は、例えば、本明細書で互換的に使用することができる。
【0030】
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、値または範囲のある程度の変動性、例えば、記述された値または記述された範囲の限界から10%以内、5%以内、または1%以内を許容することができる。
【0031】
「アミノ酸」という用語は、タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドの基本的な化学構造単位を指す。特定のアミノ酸を特定するために本明細書で使用される以下の略号は、表1に見出すことができる。
【0032】
【0033】
「および/または」および「または」という用語は、本明細書で互換的に使用され、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれの他方を含むかまたは含まないかについての特定の開示を指す。したがって、本明細書で「Aおよび/またはB」などの語句で使用される「および/または」という用語は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことを意図している。同様に、「A、Bおよび/またはC」などの句に使用される「および/または」という用語は、以下の態様のそれぞれを範囲に含むことを意図している:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0034】
「アボベンゾン」という用語は、UVA線を吸収し、日焼け止め剤の中の成分として使用される化合物C20H22O3(CAS登録番号70356-09-1)を指す。UVA線は、皮膚がんおよび皮膚老化の原因となるUV光のタイプである。しかし、アボベンゾンは、日光で分解するため、これは通常、有効であるように他の成分と組み合わされる。アボベンゾンは、3%までの濃度でFDAによって認可されている。アボベンゾンはParsol(登録商標)の商標で販売されている。
【0035】
「組成物」という用語は、2つまたはそれ以上の物質または化合物の組合せを指す。
【0036】
「含む(comprises」)、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語およびそれらの活用形は、互換的に使用され、「含むが、これらに限定されない」ことを意味する。本明細書において態様が「含む(comprising)」という言葉で記載される場合は常に、「からなる」および/または「から本質的になる」という言葉で記載される他の類似の態様も提供されることが理解される。
【0037】
「からなる」という用語は、「含み、かつ限定される」ことを意味する。
【0038】
「から本質的になる」という用語は、組成物の指定の材料、または方法の指定のステップ、および材料または方法の基本的な特性に実質的に影響を及ぼさない追加の材料またはステップを意味する。
【0039】
アミノ酸残基の位置に関して本明細書で使用される場合、「に対応する(corresponding to)」または「に対応する(corresponds to)」または「に対応する(correspond to)」または「対応する(corresponds)」は、タンパク質もしくはペプチド中の列挙された位置におけるアミノ酸残基、またはタンパク質もしくはペプチド中の列挙された残基と類似するか、相同であるかもしくは同等であるアミノ酸残基を指す。本明細書で使用される場合、「対応する領域」は一般に、関連するタンパク質または参照タンパク質における類似の位置を指す。
【0040】
当業者は、本明細書に開示されるアミノ酸配列の改変を、開示されるアミノ酸配列に関連する機能を保ちながら行い得ることを理解するであろう。例えば、所与の部位で化学的に同等なアミノ酸の生成をもたらすが、コードされるタンパク質の機能特性に影響を及ぼさない遺伝子の変更が一般的であることは、当技術分野で周知である。
【0041】
「化粧品」という用語は、ほとんどのパーソナルケア、スキンケア、メーキャップおよび化粧品を指す。化粧品は、体臭を変え、身体の外観を変化させ、身体を洗浄し、身体を良好な状態に維持し、身体に香りを付け、および/または身体を保護する目的で、人体の任意の部分と接触して配置されることが意図される任意の物質または調製物である。化粧品としては、石鹸、シャンプーおよびコンディショナー、保湿剤、バスボム、染毛剤、香水、口紅、マスカラ、マニキュア液、デオドラントおよび多くの他の製品が挙げられるが、これらに限定されない。「化粧品調製物」はすぐに使用することができる形態である。
【0042】
「DHHB」という用語は、分子式C24H31NO4(CAS登録番号302776-68-7)を有するジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエートを指す。DHHBは、UV-A範囲に高度の吸収を有するUVフィルターである。これは2005年に欧州で認可された。
【0043】
「に由来する」という用語は、「から生じる」、「から得られる」、「から入手可能である」、「から単離される」、「から精製される」および「から作製される」という用語を範囲に含み、一般に、1つの指定の材料が、その起源を別の指定の材料に見出すか、または別の指定の材料を参照して記載することができる特徴を有することを示す。
【0044】
「イミン」という用語は、一般式R2C=NRを有する有機窒素化合物のクラスのうちのいずれかを指し、それらは「エナミン」と互変異性である。互変異性体は、容易に相互変換する化合物の構造異性体である。したがって、本明細書で使用される「イミン」という用語は、「イミン」およびその対応する構造異性体である「エナミン」の両方を指す。「構造異性体」および「互変異性体」いう用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0045】
本明細書で使用される「単離された」、「精製された」、「分離された」、および「回収された」という用語は、それに天然に結び付いている少なくとも1つの構成要素から取り出された材料(例えば、タンパク質、核酸、または細胞)を指す。例えば、これらの用語は、本来の状態において、例えば、無傷の生物学的システムにおいて見出されるように通常それに付随する成分を実質的にまたは本質的に含まない材料を指すことができる。単離された核酸分子には、核酸分子を通常発現する細胞に含まれる核酸分子が含まれるが、核酸分子は、染色体外に存在するか、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0046】
「ケトン含有UVフィルター」という用語は、a)構造:R2C=O(式中、Rは種々の炭素含有置換基であり得、すなわち、Rは水素原子ではない)によって示されるように炭素原子が酸素原子に共有結合しているカルボニル部分を含む任意の化合物または化合物の混合物を指し、b)そのような化合物または化合物の混合物は、UV光を遮断するかまたは吸収することもできる。
【0047】
「リジルオキシダーゼ」(「LOX」)という用語(タンパク質-リジン6-オキシダーゼとしても知られる)は、コラーゲンおよびエラスチン前駆体におけるリジン残基からのアルデヒドの形成を触媒する銅依存性酵素を指す。これらのアルデヒドは反応性が高く、他のリジルオキシダーゼ由来のアルデヒド残基と、または非修飾リジン残基と自発的な化学反応を起こす。その結果、コラーゲンおよびエラスチンの架橋がもたらされる。LOXタンパク質は、動物、他の真核生物、ならびに細菌および古細菌において同定されている(Grau-Bove, et al. (2015) Scientific Reports 5: Article number: 10568に総説されている)。
【0048】
本明細書における「突然変異」という用語は、置換、挿入、および欠失(切断を含む)を含むがこれらに限定されない、親配列に導入され、それによって「突然変異体」が生じる変化を指す。突然変異の結果としては、親配列によってコードされるタンパク質には見出されない新たな特徴、特性、機能、表現型、または形質の生成が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
「任意選択の」または「任意選択で」は、その後に記載される事象、状況、または材料が起こっても起こらなくてもよく、または存在しても存在しなくてもよいことを意味し、その記載は、その事象、状況、または材料が起こるかまたは存在する場合、およびそれが起こらないかまたは存在しない場合を含む。
【0050】
「オキシベンゾン」という用語は、分子式C14H12O3(CAS登録番号131-57-7)を有する有機化合物を指す。これは日焼け止め剤として使用されるベンゾフェノン誘導体である。これは6%までの濃度でFDAによって認可されている。これはUVB線および一部のUVA線を吸収する。
【0051】
「ペプチド」、「タンパク質」、および「ポリペプチド」という用語は、本明細書において互換的に使用され、ペプチド結合によって一緒に連結されたアミノ酸の重合体を指す。「タンパク質」または「ポリペプチド」は、アミノ酸残基のポリマー配列を含む。IUPAC-IUB生化学命名法合同委員会(JCBN)に従って定義されるアミノ酸の1文字コードおよび3文字コードが、本開示全体を通して使用される。1文字Xは、20種のアミノ酸のうちのいずれかを指す。1つのポリペプチドが、遺伝暗号の縮重性に起因して、2つまたはそれ以上のヌクレオチド配列によってコードされ得ることも理解される。突然変異は、親アミノ酸の1文字コードの後に、位置番号、続いてバリアントアミノ酸の1文字コードを続けることによって命名することができる。例えば、87位のグリシン(G)をセリン(S)に突然変異させることは、「G087S」または「G87S」と表される。改変を記載する場合、位置の後に括弧内に列挙された複数のアミノ酸が続くことは、列挙されたアミノ酸のいずれかによるその位置での置換のリストを示す。例えば、6(L、I)は、6位がロイシンまたはイソロイシンで置換され得ることを意味する。場合によっては、配列中に、置換を定義するためにスラッシュ(/)が使用され、例えば、F/Vは、その位置がフェニルアラニンまたはバリンをその位置に有し得ることを示す。
【0052】
「医薬調製物」という用語は、その完成した剤形で提示される、すなわち、すぐに使用することができる、ヒトでの使用または獣医学的使用を意図した薬物を指す。
【0053】
「第一級アミン」という用語は、水素原子のうちの1つが、例えば、非置換もしくは置換アルキル、環状アルキルまたは芳香族/ヘテロ芳香族基を含むがこれらに限定されないものによって置き換えられている、アンモニアの有機誘導体を指す。
【0054】
「第二級アミン」という用語は、水素原子のうちの2つが、例えば、非置換もしくは置換アルキルおよび/または芳香族/ヘテロ芳香族基を含むがこれらに限定されないものによって置き換えられている、アンモニアの有機誘導体を指す。
【0055】
「スルイソベンゾン」という用語は、分子式C14H12O6S(CAS登録番号4065-45-6)を有する5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシベンゼンスルホン酸を指す。これは10%までの濃度でFDAによって認可されている。これはUVAおよびUVB光線を除去するように働く。これは日焼け止め剤および他のパーソナルケア製品においてUVフィルター成分として使用される。
【0056】
「日焼け止め剤」および「日焼け止め組成物」という用語は、本明細書において互換的に使用され、UV線を遮断するかまたは吸収することができる任意の化合物、物質、混合物、または材料を指す。これは光保護局所剤とみなすことができる。
【0057】
「日焼け止め活性成分」という用語は、この場合にはUVAおよびUVB線の遮断、反射または吸収を伴う、所望の化学的または生物学的効果を生じる化合物または物質の部分を指す。
【0058】
「目的の標的」という用語は、Tgアーゼまたはその任意のバリアントの基質として働くように修飾された任意のケトン含有UVフィルターのイミン形態への結合に好適な、任意の外因性タンパク質もしくはペプチド、例えば、皮膚科学的に関連性のあるタンパク質、または人体もしくは動物体の任意の部分を指す。Tgアーゼまたはその任意のバリアントは、続いて、修飾イミンが人体の関連性のある部分、すなわち、目的の標的にコンジュゲートされる/結合する反応を触媒する。例えば、目的の標的としては、グルタミン-グリシン、コラーゲン、ケラチンおよび/またはエラスチンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0059】
「トランスグルタミナーゼ」(TgアーゼEC 2.3.2.13)という用語は、ペプチド結合したグルタミン基のγ-カルボキシ-アミド基がアシルドナーであるアシル転移反応を触媒することができる酵素を指す。種々の化合物において第一級アミノ基はアシルアクセプターとして機能し、ペプチド結合したグルタミンの一置換γ-アミドがその後に形成される。ペプチド鎖中のリジン残基のε-アミノ基がアシル受容体として働く場合、Tgアーゼは分子内または分子間γ-グルタミル-ε-リシル架橋を形成する。触媒反応は、グルタミンの脱アミノ化および酵素の活性部位でのタンパク質-グルタミル-チオエステルの形成を経て進行する。チオエステル中間体のカルボニル部分での第2のタンパク質のリシルε-アミノ基による求核攻撃は、一般的なペプチダーゼによるタンパク質分解に対して主として耐性であるイソペプチド架橋タンパク質を生成する(Mariniello, et al. (2007) J Agr Food Chem. 55:4717-4721)。
【0060】
Tgアーゼによって形成される結合は、タンパク質分解性の崩壊(タンパク質分解)に対して高い耐性を示す。微生物起源のTgアーゼはカルシウム非依存性であり、これはそれらの実用的な使用にとって大きな利点である。Tgアーゼは、バイオテクノロジーおよび食品加工産業において多くの用途が見出されており、それは「ミートグルー(meat glue)」という名を得ている。ペプチド架橋活性は、食品加工、バイオテクノロジー、医薬品、医療機器、個人用および家庭用品、ならびに皮革および繊維処理の範囲にわたる種々の産業目的に有用であることが示されている。最も一般的に使用されるTgアーゼは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有し、本明細書では以下、Tgアーゼと称される、ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)由来の微生物トランスグルタミナーゼである。
【0061】
「UVフィルター」という用語は、UV光を遮断するか、反射するかまたは吸収する任意の化合物、混合物、物質、または材料を指す。
【0062】
「UV光」という用語は、可視光とX線との間の電磁スペクトルの範囲にある10nm~400nmの波長を有する電磁放射線の形態を指す。UV光には、UVA、UVB、およびUVCの3つのタイプまたはバンドがある。UVAは320~400nmの範囲の波長を有する。これはオゾン層によっては吸収されない。UVA光線はUVA1およびUVA2にさらに分類される。UVA1は波長が340~400nmの間であり、UVA2は波長が320~340nmの間である。UVBは290~320nmの範囲の波長を有する。これはほとんどオゾン層によって吸収されるが、一部は地表に到達する。UVCは100~290nmの範囲の波長を有する。これはオゾン層および地球の大気によって完全に吸収される。
【0063】
関連(および誘導体)タンパク質は、「バリアント」または「突然変異体」タンパク質を範囲に含み、これらの用語は本明細書において互換的に使用される。バリアントタンパク質は、別の(すなわち、親)タンパク質と、および/または互いに、少数のアミノ酸残基が異なる。バリアントは、それが由来する親タンパク質と比較して、1つまたは複数のアミノ酸突然変異(例えば、アミノ酸の欠失、挿入または置換)を含み得る。代替的、または追加的に、バリアントは、配列アラインメントツール、例えば、BLAST、ALIGN、およびCLUSTALを使用して決定されるように、参照タンパク質または核酸と、指定される程度の配列同一性を有し得る。例えば、バリアントタンパク質または核酸は、参照配列と少なくとも約35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはさらには99.5%の、およびそれらの間の整数パーセンテージのアミノ酸配列同一性を有し得る。
【0064】
「可視光」という用語は、UV光と赤外光との間の電磁スペクトルの範囲にある400nm~700nmの波長を有する、ヒトの眼によって知覚される電磁放射線の形態を指す。可視光の中でも、400nm~450nmの波長を有する高エネルギー可視光(HEVL)は、酸化ストレス、フリーラジカル生成、および皮膚への真皮細胞損傷を引き起こすことから特に重要である。
【0065】
「可視光フィルター」という用語は、UV光を遮断するか、反射するかまたは吸収する任意の化合物、混合物、物質、または材料を指す。
【0066】
アミノ酸配列または核酸配列に関する「野生型」という用語は、アミノ酸配列または核酸配列がネイティブ性のまたは天然に存在する配列であることを示す。本明細書で使用される場合、「天然に存在する」という用語は、天然に見出されるあらゆるもの(例えば、タンパク質、アミノ酸、または核酸配列)を指す。反対に、「天然に存在しない」という用語は、天然に見出されないあらゆるもの(例えば、実験室で作製された組換え/操作された核酸およびタンパク質配列、または野生型配列の改変)を指す。
【0067】
上記で考察したように、日焼け止め剤または日焼け防止剤とも称される紫外線フィルターは、エネルギーの吸収、反射または分散を通じて入射する太陽線に直接干渉する光保護剤配合物中に存在する要素である。それらは、その作用機序に基づいて2つのカテゴリーに分類される:化学的または有機的日焼け止め剤、および鉱物ベースまたは有機的日焼け止め剤。
【0068】
米国では、日焼け止め製品は一般用医薬品(OTC)に分類される。これは、それらが厳密に規制されており、米国食品医薬品局(FDA)による販売前登録を必要とすることを意味する。日焼け止め剤に関する規制には、一般用医薬品としての日焼け止め薬品のヒト使用に関するモノグラフ(Sunscreen Drug Products for Over-The-Counter Human Use Monograph(21 CFR 352)および日焼け止め剤イノベーション条例(Sunscreen Innovation Act)が含まれる。2019年2月に米国FDAは、日焼け止め剤および他のサンケア関連製品の製造および販売に関連する規制を変更する規則案を発表した。この規則案は、FDA承認申請なしに市販されている非処方薬であるOTC日焼け止め剤を、最新の科学と併せて、消費者が安全かつ効果的な予防的サンケアの選択肢をより確実に利用できるようにすることを目的としている。
【0069】
現在市販されている16種の日焼け止め活性成分のうち、2種の成分、酸化亜鉛および酸化チタンは、日焼け止め剤に使用するためのGRASE(一般に安全かつ有効と認められている(Generally Recognized as Safe and Effective))である。パラアミノ安息香酸(PABA)およびサリチル酸トロラミンという2つの成分は、日焼け止め剤用としてはGRASEではないと考えられた。残りの12種の成分であるシノキサート、ジオキシベンゾン、エンスリゾール、ホモサラート、メラジメート、オクチノキサート、オクチサレート、オクトクリレン、パディメートO、スルイソベンゾン、オキシベンゾンおよびアボベンゾンは、肯定的なGRASE判定を行うには安全性データが不十分であると考えられた。
【0070】
対照的に、欧州連合は日焼け止め剤を化粧品とみなしている。この分類は米国の分類とは非常に異なるので、欧州の日焼け止め剤に使用されるいくつかの成分、例えば、トリアジン含有UVフィルターは、現在、米国市場では監視なしでは許可されていない。米国における日焼け止め剤の開発に関して何が起こるかはまだ見通せない。したがって、新しい日焼け止め活性成分の必要性は引き続き存在する。
【0071】
本明細書に開示されるのは、少なくとも1種のケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンを含む日焼け止め組成物であって、ケトン含有UVフィルターが反応してケトン含有UVフィルターのイミン類似体を形成し、前記イミン類似体が、a)UV保護を400nmまたはそれを上回る可視領域に拡張することができる、b)耐水性である、および/またはc)皮膚浸透を防止または減少させる、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する、日焼け止め組成物である。
【0072】
したがって、少なくとも1種のケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンを含む日焼け止め組成物であって、ケトン含有UVフィルターは反応してケトン含有UVフィルターのイミン類似体を形成し、前記イミン類似体は、a)UVフィルターおよび可視光フィルターとして使用される、b)耐水性である、ならびに/またはc)皮膚浸透を防止もしくは減少させる、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する組成物が、本明細書に開示される。
【0073】
これは、可視光フィルター機能を提供するための別の構成要素(例えば、酸化鉄顔料)を添加する必要なしに達成され、可視光フィルターに関連する欠点を回避することができ、より少ない活性成分が皮膚と接触することで、アレルギー反応および/または皮膚の刺激のリスクが最小限になる可能性がある。さらに、本明細書に記載される日焼け止め組成物は、多構成要素系よりも容易に、好適にはより低いコストで製造することができる。さらに、それぞれが独自の吸収プロファイルを有するUVフィルターおよび可視光フィルターとして2つの成分をそれぞれ使用することとは対照的に、本明細書に開示される日焼け止め組成物は、UV光から可視光の範囲にわたって連続的な光保護を提供する。このため、UVフィルター成分と可視光フィルター成分との間の吸収プロファイルの(潜在的に不完全な)重複から生じる、可能な波長範囲ギャップおよび/または保護の程度の変動が回避される。本明細書に記載される日焼け止め組成物の実施形態では、そのような日焼け止め組成物は、他の可視光フィルターを含まないか、または実質的に含まない。例えば、酸化鉄などの顔料を含まないか、または実質的に含まない。
【0074】
本明細書に記載される日焼け止め組成物の可視光フィルターは、好ましくは、400nm~450nmの波長の可視光を遮断するかまたは吸収する。
【0075】
ケトン含有UVフィルターの例としては、アボベンゾン、オキシベンゾン、スルイソベンゾン、エンザカメン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、およびエカムスルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいケトン含有UVフィルターは、アボベンゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート(DHHB)、スルイソベンゾン、およびオキシベンゾンである。ケトン含有UVフィルターと反応して所望のイミン類似体を生成することができるほとんどのアミンは、イミン類似体が、a)UVA-1、UVA-2、および/もしくはUVB領域、ならびに400nmまたはそれを上回る可視領域に光吸収(absorbance)を拡張することができる、b)耐水性である、ならびに/またはc)皮膚浸透を防止もしくは減少させる、からなる群から選択される少なくとも1つの特性も有するならば、有用であることが期待される。そのような有用なアミンの例としては、アミノ酸、カダベリン、プトレシン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ベンジルアミン、アニリン、アモジメチコン、トロメタミン、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ジメチルアミノプロピルアミン、アミノメチルプロパノールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
少なくとも1種のケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンが反応器に添加される場合、それらは反応してケトン含有UVフィルターのイミン類似体を形成することができる。好ましくは、イミン類似体は、ChemDrawによって計算されたそれらの推定logP値とともに
図8に示されるイミン-1、イミン-2、イミン-4、イミン-5、イミン-6、イミン-7、イミン-8、イミン-9、N-Boc-イミン7、N-Boc-イミン8、N-Boc-イミン9、および/またはイミン-10のうちの1つまたは複数から選択される。一部の場合には、得られたイミン類似体は、
図8に示されるように、例えば、二量体-イミン6を二量体化することができる。別の態様では、得られたイミン類似体は、ケトン含有UVフィルターと第一級または第二級アミンとの反応生成物とみなすことができる。本実施形態のイミン類似体は、UVフィルターおよび可視光フィルターとして同時に機能し、ならびに/または耐水性であり、ならびに/または皮膚浸透性を低下させる。
【0077】
驚いたことに、および予想外に、ケトン含有UVフィルターのこのイミン類似体の形成は、a)UVA-1、UVA-2、および/またはUVB領域ならびに400nmまたはそれを上回る可視領域に光吸収を拡張することができ、b)耐水性であり、ならびに/またはc)皮膚浸透を防止または減少させる、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有することが見出された。これは、本明細書で考察されるこれらの特性のうちの少なくとも1つを有する初のイミン含有日焼け止め組成物または日焼け止め成分であると考えられる。これは、本明細書に提供される以下の実施例および図面においてより詳細に示される。
【0078】
さらなる一実施形態では、ケトン含有UVフィルターのイミン類似体を可視光フィルターとして含む本明細書に開示される日焼け止め組成物の使用であって、前記イミン類似体が、ケトン含有UVフィルターと第一級または第二級アミンとの反応生成物である、使用がある。
【0079】
化学的UVフィルターは、その光保護特性を維持するために、例えば皮膚の表面上に留まることが必要とされる。日焼け止め製品におけるUVフィルターの皮膚浸透は回避されるべきである。皮膚浸透によるUV保護の低下に加えて、光線過敏反応も起こり得る。
【0080】
局所送達の成功は、皮膚などの生物学的バリアを克服する能力に依存する。日焼け止め剤の安全に関しては、目的は毒性を回避するために局所製剤からの化学物質の皮膚浸透を制限することである。500ダルトン規則は、皮膚吸収を可能にするためには、化合物の分子量(MW)は500ダルトン未満であるべきと仮定している(Bos et al., Exp Dermatol 2000: 9:165-169)。したがって、この規則に基づけば、日焼け止め組成物中のUVフィルターは、皮膚浸透の可能性を減らすために、少なくとも500ダルトンのMWを有するべきである。
【0081】
MWに加えて、物質が植物、動物、ヒトもしくは他の生体組織によって吸収されるか否か、または水によって容易に運び去られ、広められるか否かを評価する際に有用な別の値は、Log P値である。これは、広範な系に影響を与える重要な分子物理特性である。分配係数(P)は、平衡状態にある2種の非混和性溶媒の混合物における化合物の濃度の比である。したがって、この比は、これらの2種の液体における溶質の溶解度、特に非イオン化溶質の溶解度の比較である。溶媒の一方が水であり、他方が非極性溶媒である場合、Log P値は、親油性または疎水性の尺度である。親油性は、組織膜を通過する透過性の重要な決定因子である。log Pの負の値は、化合物が水相に対してより高い親和性を有すること、すなわち、より親水性であることを意味する。Log Pの正の値は、脂質相におけるより高い濃度、すなわち、化合物がより親油性であることを示す。
【0082】
一般に、500ダルトン未満のMWおよび1~3のLog Pを有する小型で中程度に親油性の分子は、皮膚に非常によく浸透することが期待されると考えられている。このことを考慮すると、4~6の範囲のLog Pを有する中程度に親油性の分子は、日焼け止め剤におけるUVフィルターとしての使用に好適であると考えられる。
【0083】
「耐水性」または「非常に耐水性」という用語は、日焼け止め組成物に関して「防水性」という用語を置き換えるものである。「耐水性」または「非常に耐水性」という用語は、日焼け止め製品によって提供される太陽光線保護が、それぞれ40分間または80分間続く微温浴の後に50%未満減少する場合に使用することができる。日焼け止め剤が皮膚に「付着する」と、水中で、または激しい汗を誘発する運動を行った場合に洗い流される可能性が低くなる。
【0084】
上述したように、オキシベンゾンは、第一級または第二級アミンと接触させることでそのイミン類似体を形成することができるケトン含有フィルターである。2当量のオキシベンゾンまたは類似のケトン含有化合物を、1当量のジアミン、例えば、ヘキサメチレンジアミンと組み合わせて、イミンを介してオキシベンゾンを二量体化することも可能である。これは
図8に描写されている。得られた二量体は、UV保護の範囲を400nmまたはそれを上回る可視範囲に拡大することによってもたらされるすべての利点を保ちながら、500ダルトンを超えるMWおよび1~3の範囲を上回るLog Pを有する。
【0085】
本明細書に記載されるUVフィルターに加えて、本実施形態の日焼け止め組成物は、好適には、水、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、増粘剤、保存料、キレート剤、および/または他の慣用的な成分を適切な量で含む。好ましくは、日焼け止め組成物は、1.0~20% w/w%の本明細書に記載されるUVフィルターを含む。
【0086】
別の態様では、本明細書に開示されるケトン含有UVフィルターのイミン類似体は、トランスグルタミナーゼもしくはその任意のバリアントおよび/またはリジルオキシダーゼと反応して、日焼け止め組成物または日焼け止め活性成分を目的の標的に結合させることができる基質を提供するようにさらに修飾されてもよい。
【0087】
Ca2+非依存性微生物トランスグルタミナーゼ(Tgアーゼ)ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)のバリアントであるTgアーゼ酵素が存在する。ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)由来の野生型酵素は、配列番号1に記載されるアミノ酸配列に対応する。
【0088】
配列番号1のTgアーゼバリアントは、野生型Tgアーゼのポリペプチド配列中の1つまたは複数のアミノ酸を突然変異させること、およびグルタミンアミノ酸残基とアミン(またはヒドロキシルアミン)アクセプターとの間のトランスグルタミナーゼアミド基転移活性を観察することによって得ることができる。突然変異置換を有するタンパク質の組換え発現のための方法は以前に記載されており、当技術分野で周知であり、これには例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 4th ed., Cold Spring Harbor Press (1989), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)などがある。点突然変異の組合せは、エラープローンPCR、遺伝子シャフリング、分子育種などを含むいくつかの方法を使用して生成することができる。
【0089】
Tgアーゼバリアントおよび野生型Tgアーゼは、配列番号8のアミノ酸残基334~339で例示されるように、それらのC末端にポリヒスチジンペプチド延長部をさらに含み得る。ポリヒスチジンペプチドは、精製目的のための有用なタグであり、酵素活性に影響を及ぼさない。典型的には、ポリヒスチジンペプチドは、6~8残基の長さである(配列番号9)。
【0090】
Tgアーゼバリアントは、そのN末端にメチオニン残基をさらに含み得る。成熟野生型ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)Tgアーゼ酵素は、この酵素をコードする遺伝子配列によってコードされるN末端メチオニン残基を欠く。一部の実施形態では、Tgアーゼバリアントは、N末端メチオニン残基を有しない成熟ストレプトマイセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)Tgアーゼのバリアントとして発現される。他の実施形態では、Tgアーゼは、Tgアーゼが発現される発現ベクターによって提供され得る追加のN末端メチオニン残基を有する成熟Tgアーゼとして発現される。目的のTgアーゼバリアントは、配列番号2、3、4、5、6または7のアミノ酸配列中に見出すことができる。
【0091】
上記のように、「目的の標的」は、Tgアーゼまたはその任意のバリアントの基質として機能するように修飾された任意のケトン含有UVフィルターのイミンまたはエナミン形態への結合に好適な、任意の外因性タンパク質もしくはペプチド、例えば、皮膚科学的に関連性のあるタンパク質、または人体もしくは動物体の任意の部分を指す。Tgアーゼまたはその任意のバリアントは、続いて、修飾イミンまたはエナミンが人体の関連性のある部分、すなわち、目的の標的にコンジュゲートされる/結合する反応を触媒する。例えば、目的の標的としては、グルタミン-グリシン、コラーゲン、ケラチンおよび/またはエラスチンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0092】
同じく本開示の範囲に含まれるのは、本明細書に開示される日焼け止め組成物または日焼け止め活性成分のうちのいずれかを、化粧品的または薬学的に許容される担体とともに含む化粧品調製物または医薬調製物である。例えば、本明細書に開示されるケトン含有UVフィルターのイミン類似体のうちのいずれかを、さらに修飾して、トランスグルタミナーゼもしくはその任意のバリアントおよび/またはリジルオキシダーゼと反応して、日焼け止め組成物または日焼け止め活性成分を目的の標的に結合させることができる基質を提供してもよく、またはしなくてもよい。
【0093】
好適な化粧品的および薬学的に許容される担体は、当技術分野で周知である。化粧品的に許容される担体の例としては、水および/または水溶性溶媒、水性ゲル、アルコール性ゲル、軟膏、油、アルコール性または水性流体、油中水型エマルジョン、シリコーン中水型エマルジョンなどが挙げられるが、これらに限定されない。化粧品的に許容される担体の非限定的な例としては、グリセリン、C1~4アルコール、有機溶媒、脂肪アルコール、脂肪エーテル、脂肪エステル、ポリオール、グリコール、植物油、鉱油、リポソーム、層状脂質材料が挙げられる。
【0094】
有機溶媒の例としては、モノアルコールおよびポリオール、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ベンジルアルコール、およびフェニルエチルアルコール、またはグリコールもしくはグリコールエーテル、例えば、モノメチル、モノエチルおよびモノブチルエーテル、もしくはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ならびにジエチレングリコールのアルキルエーテル、例えば、ジエチレングリコールのモノエチルエーテルまたはモノブチルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。有機溶媒の他の好適な例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、プロパンジオール、およびグリセリンである。有機溶媒は揮発性または不揮発性化合物であり得る。
【0095】
一部の事例では、化粧品的に許容される担体は、水、水と少なくとも1つの化粧品的に許容される有機溶媒との混合物、または少なくとも1つの化粧品的に許容される有機溶媒を含んでもよい。加えて、化粧品的に許容される担体は、エタノール、グリコールエーテル、例えばジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、イソデカン、鉱油、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロールおよびそれらの混合物であってもよく、またはそれらを含んでもよい。
【0096】
医薬担体または薬物担体は、薬物投与の選択性、有効性、および/または安全性を改善するのに役立つ、薬物送達のプロセスにおいて使用される任意の基質である。薬物担体は、全身循環への薬物の放出を制御するために使用することができる。
【0097】
薬学的に許容される担体の例としては、クリーム、エマルジョン、ゲル、リポソーム、ナノ粒子、ミクロスフェア、高分子ミセル、ナノファイバー、タンパク質-薬物複合体および/または軟膏が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
本明細書に開示される上記のものの非限定的な実施形態:
1.少なくとも1種のケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンを含む日焼け止め組成物であって、ケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンが反応してケトン含有UVフィルターのイミン類似体を形成し、前記イミン類似体が、a)UV保護を400nmまたはそれを上回る可視領域に拡張することができる、b)耐水性である、および/またはc)皮膚浸透を防止もしくは減少させる、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する、日焼け止め組成物。
2.ケトン含有UVフィルターが、アボベンゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート(DHHB)、スルイソベンゾン、およびオキシベンゾンからなる群から選択される、実施形態1に記載の日焼け止め組成物。
3.ケトン含有UVフィルターのイミン類似体形態が、トランスグルタミナーゼもしくはその任意のバリアントおよび/またはリジルオキシダーゼと反応して、前記日焼け止め組成物を目的の標的に結合させることができる基質を提供するようにさらに修飾される、実施形態2に記載の日焼け止め組成物。
4.少なくとも1種のケトン含有UVフィルターおよび少なくとも1種の第一級または第二級アミンを含む日焼け止め活性成分であって、ケトン含有UVフィルターおよび第一級または第二級アミンが反応して、a)UV保護を400nmまたはそれを上回る可視領域に拡張することができる、b)耐水性である、および/またはc)皮膚浸透を防止もしくは減少させる、からなる群から選択される少なくとも1つの特性を有するイミン類似体を形成する、日焼け止め活性成分。
5.ケトン含有UVフィルターが、アボベンゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、スルイソベンゾン、およびオキシベンゾンからなる群から選択される、実施形態4に記載の日焼け止め活性成分。
6.ケトン含有UVフィルターのイミン類似体形態が、さらに修飾され、トランスグルタミナーゼもしくはその任意のバリアントおよび/またはリジルオキシダーゼと反応して、前記日焼け止め活性成分を目的の標的に結合させることができる基質を提供する、実施形態4または5に記載の日焼け止め活性成分。
7.実施形態1もしくは2に記載の日焼け止め組成物または実施形態4もしくは5に記載の日焼け止め活性成分と、化粧品的または薬学的に許容される担体とを含む、化粧品調製物または医薬調製物。
8.実施形態3に記載の日焼け止め組成物または実施形態6に記載の日焼け止め活性成分と、化粧品的または薬学的に許容される担体とを含む、化粧品調製物または医薬調製物。
【実施例】
【0099】
本明細書で他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton, et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY, 2D ED., John Wiley and Sons, New York (1994)、およびHale & Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY, Harper Perennial, N.Y. (1991)は、本開示とともに使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0100】
本開示を、以下の実施例においてさらに定義する。これらの実施例は特定の実施形態を示しているが、単なる例示として与えられることを理解されたい。
【0101】
上記の考察および実施例から、当業者は、本開示の本質的な特徴を確認することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな使用および条件に適合させるためにさまざまな変更および修正を行うことができる。
【0102】
[実施例1]
オキシベンゾン系列のイミンの合成および分析、芳香族性の探索
a.イミン-1の合成
【0103】
【0104】
トルエン(3mL)中のオキシベンゾン(301mg、1.32mmol、1当量)およびベンジルアミン(169mg、1.58mmol、1.2当量)の溶液に、テトライソプロポキシチタン(747mg、2.63mmol、2当量)を25℃で添加した。反応混合物を80℃に12時間加熱し、LCMSによってモニターした。反応物を水(20mL)での希釈によってクエンチし、生成物をEtOAc(30mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、Mg2SO4で乾燥させて濃縮した。粗生成物を1-[2-(4-メチルフェノキシ)エチル]-2-[(2-フェノキシエチル)スルファニル]-1H-ベンゾイミダゾール(METB)(3mL)とともに25℃で15分間粉砕して濾過した。濾過ケーキを真空下で乾燥させて、イミン-1(171mg、収率41%)を緑色固体として得て、LCMSおよび1H NMR(CDCl3)により確認した。
【0105】
b.イミン-2の合成
【0106】
【0107】
トルエン(3mL)中のオキシベンゾン(300mg、1.31mmol、1当量)およびアニリン(147mg、1.58mmol、1.2当量)の溶液に、テトライソプロポキシチタン(747mg、2.63mmol、2当量)を25℃で添加した。反応混合物を80℃にして12時間加熱し、LCMSによってモニターした。反応物を水(20mL)中での希釈によってクエンチし、生成物をEtOAc(30mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、Mg2SO4で乾燥させて濃縮した。粗生成物をMETB(3mL)とともに25℃で15分間粉砕して濾過した。濾過ケーキを真空下で乾燥させて、イミン-2(75mg、収率18%)を緑色固体として得て、LCMSおよび1H NMR(CDCl3)により確認した。
【0108】
c.イミン-3の合成
【0109】
【0110】
トルエン(3mL)中のオキシベンゾン(300mg、1.31mmol、1当量)およびヒドロキシルアミン塩酸塩(109mg、1.58mmol、1.2当量)の溶液に、テトライソプロポキシチタン(747mg、2.63mmol、2当量)を25℃で添加した。反応混合物を80℃にして12時間加熱し、LCMSによってモニターした。反応物を水(20mL)中での希釈によってクエンチし、生成物をEtOAc(30mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、Mg2SO4で乾燥させて濃縮した。粗生成物を逆相HPLC(カラム:Xtimate C18 150*40mm*10um;移動相:[水(NH3H2O+NH4HCO3)-ACN];B%:35%~75%、10分間)により精製して、イミン-3(82mg、収率25%)をオフホワイトの固体として得て、LCMSおよび1H NMR(CDCl3)により確認した。
【0111】
d.UVAおよびUVB吸収特性
イミン-1、イミン-2、およびイミン-3を合成し、精製して単離した(上記を参照)。3種すべての化合物を、5mM(
図1)または0.05mM(
図1、挿入図)の最終濃度になるまでアセトニトリル中に別々に溶解させ、UV/Vis(Cary-50 Spectrophotomer)によって分析した。スペクトル特性をアセトニトリル中のオキシベンゾンと比較した。結果を
図1に示す。
【0112】
シッフ塩基の形成は、スペクトルのUVおよび可視範囲におけるUV吸収特性を変化させる。
図1は、アミンとの反応によってイミンを形成させることによって、オキシベンゾンの吸収特性をモジュレートし得ることを示す。ヒドロキシルアミン-シッフ塩基(イミン-3)は、UVA遮断の喪失およびUVB遮断の減少をもたらしたが、イミン-1およびイミン-2は、UVA-1、UVA-2およびUVB吸収特性の両方を改善した。
【0113】
[実施例2]
カルバメートの合成(米国特許第5490980号明細書)
【0114】
【0115】
米国特許5490980号明細書は、オキシベンゾンのフェノール性酸素をアルキル-ジアミンで官能化したトランスグルタミナーゼ適合オキシベンゾン由来カルバメートを提唱した。提唱されたカルバメートのUVフィルター特性を評価するために、カルバメート-1を当技術分野で公知の方法を用いて調製した。しかし、フェノール性酸素での官能化は、UVフィルター特性を低下させ、UVA遮断が減少した。
【0116】
ジクロロメタン(3mL)中のオキシベンゾン(300mg、1.31mmol、1当量)および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(161mg、1.31mmol、1当量)の溶液に、(4-ニトロフェニル)カルボノクロリデート(265mg、1.31mmol、1当量)を25℃で添加した。反応物を25℃で2時間撹拌した。N-Boc-1,6-ヘキサンジアミン(284mg、1.31mmol、1当量)およびN-エチルジイソプロピルアミン(170mg、1.31mmol、1当量)を添加して、反応物を25℃で2時間撹拌した。反応混合物を水(10mL)中に注ぎ入れ、エチルアセテート(30mL×3)で抽出した。合わせた有機層をMg
2SO
4で乾燥させて濃縮した。粗生成物を逆相HPLC(カラム:Xtimate C18 150*40mm*10μm;移動相:[水(HCl)-ACN];B%:50%~80%、10分間)により精製して、カルバメート-1(165mg、収率26%)を白色固体として得て、LCMSおよび
1H NMR(DMSO)により確認した。
a.UVAおよびUVB吸収特性
米国特許第5490980号明細書に最初に記載されたカルバメート-1を合成し、精製して単離した(上記を参照)。カルバメート-1をアセトニトリル中に溶解させて0.05mMの最終濃度にし、UV/Vis(Cary-50 Spectrophotomer)によって分析した。スペクトル特性を、最終濃度0.05 mMのアセトニトリル中のオキシベンゾンと比較した。
図2における結果は、カルバメート-1(フェノール性酸素に官能化を有する)が、UVフィルター特性の低下をもたらし、より具体的には、UVA遮断が減少したことを示す。
【0117】
[実施例3]
Tgアーゼ基質であるオキシベンゾン系列のイミンの合成および分析
【0118】
a.イミン-4の合成
【0119】
【0120】
メタノール(3mL)中のオキシベンゾン(300mg、1.31mmol、1当量)およびNα-(tert-ブトキシカルボニル)-リジン(Nα-Boc-リジン-OH)(388mg、1.58mmol、1.2当量)の溶液に、ナトリウムメトキシド(5Mの394μL、1.5当量)を25℃で添加した。反応混合物を80℃に12時間加熱し、LCMSによってモニターした。反応混合物を水(20mL)で希釈することによってクエンチし、エチルアセテート(30mL×2)で抽出した。有機層を廃棄した。水相を凍結乾燥させて粗生成物を得て、これを逆相HPLC(カラム:Xtimate C18 150*40mm*10μm;移動相:[水(HCl)-ACN];B%:30%~60%、10分間)により精製した。N-Boc-イミン-4(350mg、537μmol、収率41%)を緑色固体として単離し、LCMSおよび1H NMR(CDCl3)により確認した。
【0121】
N-Boc-イミン-4(350mg、767μmol、1当量)のDCM中の溶液(10mL)に、HCl/ジオキサン(4Mの1.15mL、6当量)を25℃で添加した。反応混合物を25℃で2時間撹拌して、LCMSによってモニターした。反応混合物を真空下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を酢酸エチル(5mL)とともに25℃で30分間粉砕して濾過した。濾過ケーキを真空下で乾燥させてイミン-4(139mg、収率46%)を黄色固体として得て、LCMSおよび1H NMR(DMSO)により確認した。
【0122】
b.イミン-5の合成
【0123】
【0124】
メタノール(5mL)中のオキシベンゾン(500mg、2.19mmol、1当量)およびグルタミン(384mg、2.63mmol、1.2当量)の溶液に、ナトリウムメトキシド(5Mの876μL、2当量)を25℃で添加した。反応混合物を65℃にして12時間加熱し、LCMSによってモニターしたところ、約43%の所望の生成物が形成されたことが明らかになった。懸濁液を濾過し、濾過ケーキをメタノール(5mL×3)で洗浄した。合わせた濾液を濃縮した。粗生成物を分取HPLCによって、さらにSFC(カラム:DAICEL CHIRALPAK AD(250mm*30mm、10μm)によって精製して、イミン-5(19mg、収率2%)を灰色固体として得て、LCMSおよび1H NMR(DMSO)により確認した。
【0125】
c.イミン-6の合成
【0126】
【0127】
トルエン(3mL)中のオキシベンゾン(341mg、1.58mmol、1.2当量)およびN-Boc-1,6-ヘキサンジアミン(300mg、1.31mmol、1当量)の溶液に、テトライソプロポキシチタン(747.14mg、2.63mmol、775.84μL、2当量)を25℃で添加した。反応混合物を80℃にして12時間加熱し、LCMSによってモニターした。反応物を水(20mL)での希釈によってクエンチし、生成物をEtOAc(30mL×3)で抽出した。合わせた有機層をMg2SO4で乾燥させて濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO2、酢酸エチル:石油エーテル=0~30%)によって精製して、N-Boc-イミン-6(450mg、収率80%)を黄色の油状物として得て、LCMSにより確認した。
【0128】
【0129】
ジクロロメタン(10mL)中のN-Boc-イミン-6(450mg、1.05mmol、1当量)の溶液に、HCl/ジオキサン(4M、1.32mL、5当量)を添加した。反応物を25℃で2時間撹拌し、LCMSによってモニターした。反応物を真空下で濃縮して、標的6(95mg、収率27%)を緑色油状物として得て、LCMSおよび1H NMR(DMSO)により確認した。
【0130】
d.UVAおよびUVB吸収特性
イミン-4、イミン-5、およびN-Boc-イミン-6を合成し、精製して単離した(上記を参照)。3種すべての化合物を、5mMの最終濃度になるまでアセトニトリル中に別々に溶解させ(
図3)、UV/Vis(Cary-50 Spectrophotomer)によって分析した。N-Boc-イミン-6は、0.05mMの最終濃度になるまでアセトニトリル中で希釈し(
図3、挿入図)、UV/Visによって分析した。イミン-6はアセトニトリル中での溶解性が乏しいため、このデータについてはイミン-6の代わりにN-Boc-イミン-6を利用した。スペクトル特性を、アセトニトリル中の同じ濃度のオキシベンゾンと比較した。
図3は、オキシベンゾンに由来する3種のイミンの吸収スペクトルを描写しており、3種のイミンがUVA-1、UVA-2およびUVB領域ならびにスペクトルの可視領域(400nmを上回る)を範囲に含むことを示している。
【0131】
プロトン性溶媒中でのBoc保護イミンの溶液安定性を把握するために、N-Boc-イミン-6をエタノール中にて触媒の氷酢酸の存在下で調製した。手短に述べると、エタノール(0.3mL)中のオキシベンゾン(0.10g、0.438mmol、1当量)およびN-Boc-1,6-ヘキサンジアミン(0.094g、0.43mmol、1当量)の溶液に、触媒の氷酢酸(1μL)を添加した。反応混合物を900rpm、70℃で16時間撹拌し、LCMSによってモニターした。単一の生成物ピークへの出発材料の完全な反応がLCMSによって観察され、完了が示された。続いて、反応物を0.04mMの最終濃度までエタノール中で希釈し、UV/Vis分光法によって分析した。N-Boc-イミン-6は、出発ケトンおよびアミンに戻ることなく、エタノール中にて高温(70℃)で24時間にわたって安定であった(
図4)。さらに、Boc保護基は、反応およびUV/Vis分析を通して無傷のままであった。
図4における結果は、N-Boc-イミン6の吸収が、UVAおよびUVB領域ならびにスペクトルの可視領域(400nmを上回る)を範囲に含むことを示す。
【0132】
[実施例4]
アボベンゾンイミン、イミン-7の合成および分析
【0133】
【0134】
トルエン(80mL)中のアボベンゾン(2g、6.44mmol、1当量)およびN-Boc-1,6-ヘキサンジアミン(1.39g、6.44mmol、1当量)の溶液に、4A分子篩(2g、9.90mmol、1.54当量)、続いてAmberlyst(R)15水素形態(2g、6.37mmol)をN2下にて25℃で添加した。添加後に、反応混合物を110℃で72時間撹拌し、LCMSによってモニターした。この懸濁液を濾過し、濾過ケーキをDCM(20mL×3)で洗浄した。合わせた濾液を濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(SiO2、酢酸エチル:石油エーテル=0~25%)によって精製した。N-Boc-イミン-7(1.09g、1.99mmol、収率約30%)を黄色油状物として得て、LCMSおよび1H NMR(CDCl3)により確認した。
【0135】
DCM(6mL)中のN-Boc-イミン-7(300mg、590μmol、1当量)の溶液に、N2下にて25℃でHCl/ジオキサン(4M、737μL、5当量)を添加した。添加後に、反応混合物を25℃で4時間撹拌し、LCMSによってモニターした。混合物を濃縮して乾燥させ、イミン-7(150mg、332μmol、収率約50%)を黄色油状物として得て、LCMSおよび1H NMR(DMSO)により確認した。
【0136】
UVAおよびUVB吸収特性
イミン-7およびN-Boc-イミン-7を合成し、精製して、分取HPLCを使用して単離した(上記を参照)。イミン-7およびN-Boc-イミン-7をアセトニトリル中に溶解させ、5mM(
図5)および0.05mM(
図5、挿入図)の推定濃度にした。両方の溶液をUV/Vis(Cary-50 Spectrophotomer)によって分析した。イミン-7およびN-Boc-イミン-7の濃度(0.05mM)は推定値であり、吸光度シグナルは予想されるよりも低い。化合物の純度の低さは、HPLC精製による付加塩および残留t-ブタノールの存在(NMRによって確認される)に起因する可能性が高い。吸光係数が官能化されていないアボベンゾンと等しいかまたはそれを上回る可能性が高いことから、スペクトル特性は定性的目的でのみアセトニトリル中のアボベンゾンと比較した。結果を
図5に示す。
【0137】
[実施例5]
Tgアーゼ基質であるスルイソベンゾン由来イミンの合成および分析
【0138】
【0139】
エタノール(0.3mL)中のスルイソベンゾン(0.10g、0.32mmol、1当量)およびN-Boc-1,6-ヘキサンジアミン(0.070g、0.32mmol、1当量)の溶液に、触媒の氷酢酸(1μL)を添加した。添加後に、反応混合物を70℃で16時間撹拌し、LCMSによってモニターした。N-Boc-イミン-8を濃縮し、さらに精製することなく使用した。LCMSは、506、407、および432のm/zを有する単一ピークを示した。
【0140】
DCM(6mL)中のN-Boc-イミン-8(0.32μmol、1当量)を、HCl/ジオキサン(4M、737μL、5当量)により25℃で4時間処理する。混合物を濃縮して、イミン-8を得る。
【0141】
あるいは、還流エタノール中でのスルイソベンゾン(1当量)と1-6-ヘキサメチレンジアミン(1当量)との反応によって、イミン-8を直接調製した。
【0142】
UVAおよびUVB吸収特性
N-Boc-イミン-8およびイミン-8を合成し、精製して単離した(上記を参照)。N-Boc-イミン-8およびイミン-8をエタノール中に溶解させて、それぞれ0.032mMおよび8mMの最終濃度にして(
図6)、UV/Vis(Cary-50 Spectrophotomer)によって分析した。スペクトル特性を同程度の濃度のエタノール中のスルイソベンゾンと比較した。
図6における結果は、N-Boc-イミン-8およびイミン-8がUVB領域で吸光度を保ち、UVA領域まで吸光度を拡張したことを示している。
【0143】
[実施例6]
Tgアーゼ基質であるジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート由来イミンの合成および分析
【0144】
【0145】
トルエン(0.3mL)中のジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート(DHHB)(0.10g、0.25mmol、1当量)およびN-Boc-1,6-ヘキサンジアミン(0.070g、0.32mmol、1当量)の溶液に、触媒の氷酢酸(1μL)を添加した。添加後に、反応混合物を95℃で16時間撹拌し、LCMSによってモニターした。反応物を濃縮し、さらに精製することなく使用して、深橙色の油状物を得た。LCMSは、595および495のm/zを有する単一ピークを示した。
【0146】
DCM(6mL)中のN-Boc-イミン-9(0.32μmol、1当量)を、HCl/ジオキサン(4M、737μL、5当量)により25℃で4時間処理する。混合物を濃縮して、イミン-9を得る。あるいは、還流エタノール中でのDHHB(1当量)と1-6-ヘキサメチレンジアミン(1当量)との反応によって、イミン-9を直接調製した。N-Boc-イミン-9およびイミン-9は両方とも、吸光度スペクトルの赤方偏移をもたらし、これは可視領域にまで拡張される(データは示さず)。
【0147】
[実施例7]
高分子量重合体上でのオキシベンゾンイミンの合成および分析
【0148】
【0149】
オキシベンゾン(100.0mg、0.44mmol、1当量)に、アモジメチコン(910.0mg、0.55mmol、1.2当量)を25℃で添加した。反応混合物を、連続的に混合しながら95℃にして16時間加熱した。加熱するとオキシベンゾンは溶融し、バイアルの底に不混和相を形成した。反応が進行するにつれて、オキシベンゾン相は収縮し、アモジメチコン相は透明な黄色になった。バイアル中で単一の透明な黄色の相になるまで反応を継続させることによって、イミン-10を得た。この実施例に記載される高分子量イミン重合体は、UVA範囲ならびに可視範囲において吸光度が増加しており(
図7)、その高分子量のために皮膚浸透を回避する。イミン-10は、シリコーン骨格の疎水性のために耐水性を有すると考えられる。
【0150】
UVAおよびUVB吸収特性
イミン-10をまずメチルtert-ブチルエーテル中に溶解させ、続いてエタノール中で5mMおよび0.04mMの最終濃度に希釈し(
図7)、UV/Vis(Cary-50 Spectrophotomer)によって分析した。スペクトル特性を、同程度の濃度のオキシベンゾンと比較した。
図7における結果は、イミン-10がUVB領域において吸光度を保ち、UVAおよび可視領域に吸光度が拡張されたことを示す。
【0151】
[実施例8]
ペプチドへの日焼け止め剤リンカーの共有結合付加
【0152】
【0153】
Cbz-Gln-Glyジペプチド(90%アセトニトリル水溶液に溶解させた10g/Lストック溶液の100μL)を、0.1M Tris-HCl pH 8.0、1mM EDTA中にて野生型トランスグルタミナーゼまたはバリアント(配列番号2および7)の溶液に添加した(800μg/L、最終濃度0.03g/L)。この溶液に、好適な溶媒中に溶解させた実施例3~6に記載のイミン生成物(表2で特定される溶媒に溶解させた10g/Lストック溶液の100μL)を添加した。この懸濁液を、一定に撹拌しながら37℃で一晩インキュベートした。トランスグルタミナーゼ(野生型またはバリアント)によって触媒されたイミンへのジペプチドの共有結合付加を、HPLCおよびLCMSによって確認した。出発物質の生成物への変換を、ピーク面積を使用して計算した。相対的な反応性は、すべての変換を最も反応性の低いイミンについて得られたデータで除算することによって計算される。トランスグルタミナーゼの非存在下では、ペプチドへのイミンの共有結合付加は観察されなかった。イミンの反応性は、水性反応物への添加時のイミンの溶解度に依存した。より水溶性の高いイミンは、イミン-ペプチド生成物へのより高い変換をもたらす。
【0154】
【0155】
[実施例9]
日焼け止め組成物製剤
本明細書に記載されるUVフィルターのうちのいずれかを含む日焼け止め組成物は、表3に記載されるように製剤化することができる。以下に記載される製剤は、水中油型エマルジョンおよび油中水型エマルジョンの両方に好適である。
【0156】
【0157】
[実施例10]
日焼け止め剤の耐水性の決定
インビトロ試験方法(Markovic et al, Alured's Cosmetics and Toiletries, 116(9):61-28 (2001)の方法に基づく)
日焼け止め剤の適用前に、Vitro-Skin(登録商標)N-19(IMS, Inc.)の大きなストリップ(20×10cm)を、製造元の推奨に従って水和させる(室温で90~95%の相対湿度で16~18時間)。Vitro-Skin(登録商標)は、組成、湿潤性、pH、イオン強度、およびヒト皮膚の表面トポグラフィーの特性を模倣する。本明細書に記載されるイミンまたはエナミンを含有する製剤の測定量(6~7mg)を、35mmスライドマウントに取り付けられたVitro-Skin(登録商標)(28×38mm)のあらかじめ水和された小片上に適用する。エマルジョンを、ゴム手袋をはめた指を使用して、最初の円運動により、続いて直線運動させて約1分間は、慎重に広げる。続いて、試料を加湿チャンバー(室温で90~95%の相対湿度)に20分間入れて、エマルジョンを凝集させる。分光光度計を使用して、250~350nmの波長範囲で、1試料当たり4つのUVスペクトルを収集する。試料を90°回転させた後に各スペクトルを収集し、各試料について4つの別個の領域スキャンを得る。試料を、2ビーム分光光度計の参照ビーム中で、未処理の参照試料に対してスキャンする。310および291nmで吸収の読み取りを行い、初期吸光度Aiとして名付ける。続いて、試料を温度制御された水浴中(25±0.2℃)に80分間浸漬し、パドル型インペラを使用して50rpmで一定に混合する。水浴の容量は、分散された日焼け止め剤の高濃縮および再吸着の可能性を防ぐのに十分な大きさ(2000ml)である。浸漬後に試料を水から取り出し、軽く振って大きな水滴を除去し、相対湿度を50%に調節した室内の空気中に30分間吊るす。その後、試料を湿度室に戻して120分間置く。最終的な吸光度の読み取り値Afを、最初のものと同じ方法で得る。耐水性の百分率は、(Af/Al)×100として計算される。試料の評価を4通りずつ行い、試験される各製剤について32回の読み取り値(4試料×4方向×2波長)を得る。試料が水和されたままであることが重要であり、試料があまりに多くの水分を失うと、Vitro-Skin(登録商標)は不透明になり、分光光度分析に適さなくなる。各ブランク対照試料(日焼け止め剤を含まない)を正確に同じ方法で処理して、測定する。対照試料は、製剤で処理した試料から日焼け止め剤が移行しないように、別の水浴中に浸漬する。
【0158】
[実施例11]
Tgアーゼベクターの構築および突然変異誘発
無細胞タンパク質合成(CFPS)ベクター
プロ配列および成熟Tgアーゼをコードする遺伝子を、PCT/US20/49226に記載されているように、公開されているアミノ酸配列(Kanaji, et al. (1993) J. Biol. Chem. 268(16):11565-11572)に基づいて大腸菌(E. coli)における発現のためにコドン最適化し、合成して、pUC 19由来発現ベクター上にクローニングした。
【0159】
大腸菌(E. coli)ベクター
プロ配列および成熟Tgアーゼをコードする遺伝子を、PCT/US20/49226に記載されているように、公表されているアミノ酸配列(Kanaji, et al. (1993) J. Biol. Chem. 268(16):11565-11572)に基づいて、大腸菌(E. coli)における発現のためにコドン最適化し、合成した。DNAを、大腸菌(E. coli)における発現のためにT7プロモーターの制御下にあるpET9aベクター上にクローニングした。
【0160】
Tgアーゼバリアントの作製
当技術分野で公知の部位特異的変異誘発法を使用して、成熟Tgアーゼ遺伝子に突然変異を導入した。
【0161】
[実施例12]
無細胞タンパク質合成を使用したTgアーゼバリアントの発現
プロ配列および成熟Tgアーゼバリアントを、PCT/US20/49226に記載されているように、製造元の指示に従って、市販の無細胞タンパク質合成キットにおいて同時に発現させた。
【0162】
[実施例13]
大腸菌におけるTgアーゼバリアントの発現および精製
Tgアーゼ発現プラスミドを保有する大腸菌(E. coli)BL21(DE3)細胞を振盪フラスコ内で増殖させ、ホモジナイゼーションによって溶解させ、遠心分離によってTgアーゼを細胞デブリから単離した。得られた半精製酵素(清澄化溶解物)を、透析前にNi-IMAC樹脂上のアフィニティーカラムによってさらに精製した。精製Tgアーゼを-80℃で保存した。
【0163】
[実施例14]
Tgアーゼ比活性の測定
本明細書の実施例では、比色ヒドロキサメート活性アッセイ(Folk and Cole (1965) J Biol Chemistry 240(7):2951-2960)を使用して、Tgアーゼ比活性を測定した。手短に述べると、ヒドロキサム酸アッセイは、N-カルボベンゾキシ-L-グルタミルグリシン(Z-Gln-GlyまたはCBZ-Gln-Gly)をアミンアクセプター基質として、ヒドロキシルアミンをアミンドナーとして使用する。トランスグルタミナーゼの存在下では、ヒドロキシルアミンが取り込まれてZ-グルタミルヒドロキサマート-グリシンが形成され、これを37℃で5~60分間インキュベートした後に、525nmで検出可能な鉄(III)との有色錯体が生じる。L-グルタミン酸γ-モノヒドロキサメート(Millipore Sigma)を標準物質として使用して較正を行った。Tgアーゼの1単位は、1分当たり1μmolのγ-グルタミルヒドロキシルアミンのペプチド誘導体の形成を触媒する酵素の量として定義される。
【0164】
本明細書で引用されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願が参照によりそのように組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0165】
【配列表】
【国際調査報告】