(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】冷却工程を利用したオイル回収率が向上したバイオオイル抽出方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/64 20220101AFI20241114BHJP
C12N 1/12 20060101ALI20241114BHJP
C11B 1/10 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C12P7/64
C12N1/12 C
C11B1/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527435
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 KR2022020311
(87)【国際公開番号】W WO2023146127
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】10-2022-0012556
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507406611
【氏名又は名称】シージェイ チェルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ア・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ジュンガプ
(72)【発明者】
【氏名】イ,イン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AD85
4B064CA08
4B064CC01
4B064CE02
4B064DA10
4B064DA20
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065BD01
4B065BD03
4B065BD04
4B065BD08
4B065BD09
4B065BD15
4B065BD16
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、冷却工程を利用してオイル回収率が向上したバイオオイル抽出方法に関し、本発明の微細藻類を含む培養液の細胞を破砕した懸濁液を冷却する工程を追加したバイオオイル抽出方法は、高いオイル回収率を示し、オイル回収率を上昇させるために他の添加物を投入しないため、オイルを回収し、残った副産物を飼料化することができ、持続可能な生産が可能であり、回収したオイルは飼料用組成物または食品用組成物などで有用に活用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)微細藻類培養液から細胞破砕液を得るステップ;
2)前記細胞破砕液を遠心分離して上澄液を回収するステップ;
3)前記上澄液を冷却するステップ;
4)前記冷却した上澄液を加熱するステップ;および
5)前記加熱した上澄液を遠心分離してオイルを回収するステップ;を含む微細藻類培養液からオイルを抽出する方法。
【請求項2】
前記1)ステップの微細藻類は、シゾキトリウム属菌株である、請求項1に記載の微細藻類培養液からオイルを抽出する方法。
【請求項3】
前記1)ステップの細胞破砕液は、酵素処理または物理的処理で破砕したものである、請求項1に記載の微細藻類培養液からオイルを抽出する方法。
【請求項4】
前記物理的な処理は、微細藻類培養液をビードミル、フレンチプレッシャー、ホモジナイザー、またはマイクロフルイダイザーを利用して物理的に破砕させる、請求項3に記載の微細藻類培養液からオイルを抽出する方法。
【請求項5】
前記2)ステップの遠心分離は、3000g~4600gで行われる、請求項1に記載の微細藻類培養液からオイルを抽出する方法。
【請求項6】
前記3)の冷却するステップは、35℃以下の温度で行われる、請求項1に記載の微細藻類培養液からオイルを抽出する方法。
【請求項7】
前記3)の冷却するステップは、30分~4時間行われる、請求項6に記載の微細藻類培養液からオイルを抽出する方法。
【請求項8】
前記4)の加熱するステップは、55℃以上の温度で行われる、請求項1に記載の微細藻類培養液からオイルを抽出する方法。
【請求項9】
前記4)の加熱するステップは、30分~4時間行われる、請求項8に記載の微細藻類培養液からオイルを抽出する方法。
【請求項10】
前記方法は、抽出されたオイルのオイル回収率を向上させる、請求項1に記載の微細藻類培養液からオイルを抽出する方法。
【請求項11】
前記オイル回収率は、75%以上である、請求項10に記載の微細藻類培養液からオイルを抽出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2022年01月27日付韓国特許出願第10-2022-0012556号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、冷却工程を利用したバイオオイルを抽出する方法に関し、当該方法を通じて、微細藻類から高いオイル回収率でバイオオイルを抽出することができる。
【背景技術】
【0003】
高血圧、狭心症、心筋梗塞などの心臓血管疾患を予防する多くの利点を有するオメガ-3系の高度不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA、docosahexaenoic acid)は、一般に人体内では合成されず、人間が摂取しなければならないため、必須脂肪酸と見なされている。このようなDHAは、主に魚類の油に多量含有されている。一般にサケ、イワシ、マグロなどに多く含まれているため、魚類の肝臓から多く抽出しており、タラの肝臓から抽出した原料が全世界的に最も多く使用されてきている。しかし、このような漁油からのDHAオイルの生産は多くの問題点を招いている。魚類の乱獲による海洋生態系の破壊と海洋環境汚染物質である水銀、重金属、ダイオキシンなど有機汚染物質が漁油に多量含まれており、人体が有害な物質に晒され得る危険性が持続的に提起されてきた。
【0004】
微細藻類から抽出したオメガ-3であるDHAは、魚油由来のオメガ-3DHAの問題点を解決している。海洋微細藻類の一種であるスラウストキトリウム(Thraustochytrium)属およびシゾキトリウム(Schizochytrium)属微生物は多価不飽和脂肪酸を生産することができる。微細藻類によるオメガ-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の製造方法は、Ellenbogen(Ellenbogen B. B et al, Comparative Biochemistry and Physiology, 29:805-811 (1969))により知られている。このような微細藻類によるDHAオイルの生産は、100%清浄条件で純粋な微細藻類だけを培養する方式を選ぶことで、海洋生態系を破壊する危険性が全くない。また、培養方式による大量生産が可能であり、安定した品質で供給が可能である。さらに、漁油より不飽和脂肪酸の含有量が高く、重金属など不純物の抽出の危険性が低いことから注目されており、その市場も増加する傾向にある。
【0005】
微細藻類から多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含むオイルを製造する一般的な方法は、目的物質を含む微細藻類を反応器において発酵して培養して回収および乾燥し、溶媒を利用した抽出過程を経る。しかし、有機溶媒を利用した抽出は防爆設備が必要となり、溶媒回収工程により抽出の製造費用上昇の原因となる。また、オイル内の残留溶媒の危険性がある。このような問題点を解決するために、有機溶媒を使用せずに細胞からオイルを抽出する方法に対する要求が存在する。無溶媒抽出の場合、ヘキサンのような有機溶媒を不使用または最小化してオイルを得る方法で、酵素分解反応、熱処理などのような方法が無溶媒抽出の一つの方法として挙げられる。無溶媒抽出の場合、通常オイルと他の極性の物質との比重差を利用して遠心分離や自然浸漬のような方法でオイルを得ることができ、人体に有害な有機溶媒の使用を排除することによって得られる長所がある。しかし、微細藻類からオイルを分離することに妨害する微生物の外壁に由来するリン脂質が乳化剤の役割を果たして、オイル回収率を減少させるという問題点がある。
【0006】
このような問題点を解決する方法として、pH調整のための酸および塩基類の化学物質の添加または塩化ナトリウムのような多量の塩の物質を投入する方法がある(US16/473805)。しかし、このような方法は、オイルを抽出して残った副生産物を飼料化することができず、装備の急速な腐食化を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国公開特許US2019/0323043A
【特許文献2】米国特許出願US16/473805
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ellenbogen B. B et al, Comparative Biochemistry and Physiology, 29:805-811 (1969)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願の一実施形態は
1)微細藻類培養液から細胞破砕液を得るステップ;
2)細胞破砕液を遠心分離して上澄液を回収するステップ;
3)上澄液を冷却するステップ;
4)冷却した上澄液を加熱するステップ;および
5)加熱した上澄液を遠心分離してオイルを回収するステップ;を含む微細藻類培養液からオイルを抽出する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願で開示されるそれぞれの説明および実施形態は、それぞれの他の説明および実施形態にも適用され得る。つまり、本出願で開示された多様な要素の全ての組み合わせが、本出願の範囲内にある。また、下記記述された具体的な叙述により本出願の範囲が制限されるものではない。また、当該技術分野における通常の知識を有する者は、通常の実験だけを用いて本出願に記載された本出願の特定様態に対する多数の等価物を認知または確認することができる。また、このような等価物は、本出願に含まれると意図される。
【0011】
本出願の一実施形態は、
1)微細藻類培養液から細胞破砕液を得るステップ;
2)細胞破砕液を遠心分離して上澄液を回収するステップ;
3)上澄液を冷却するステップ;
4)冷却した上澄液を加熱するステップ;および
5)加熱した上澄液を遠心分離してオイルを回収するステップ;を含む微細藻類培養液からオイルを抽出する方法を提供する。
【0012】
本明細書で使用される用語「微細藻類(microalgae)」は、肉眼で見ることができず、顕微鏡でしか見ることができない程度の小さな藻類を意味し、微細藻類には多様な種類が含まれ、光合成が不可能で従属栄養だけで生長する菌株まで含まれる。このような微細藻類は、二酸化炭素を固定化させることができ、蛋白質および脂質含有量が高いため、食品、飼料または燃料生産用バイオマス(biomass)として活用され得る。具体的に、微細藻類に含有された脂質成分は、液体燃料で使用されるバイオディーゼルオイル生産の原料として使用することができる。
【0013】
本明細書で、微細藻類は、シゾキトリウム(Schizochytrium)属、スラウストキトリウム(Thraustochytrium)属、ヤポノキトリウム(Japonochytrium)属、ウルケニア(Ulkenia)属、クリプテコディニウム(Crypthecodinium)属、またはハリフトロス(Haliphthoros)属菌株であり、より好ましくはシゾキトリウム(Schizochytrium)属またはスラウストキトリウム(Thraustochytrium)属菌株であり、最も好ましくはシゾキトリウム(Schizochytrium)属菌株であり得る。
【0014】
本明細書で使用された用語「培養液」は、微細藻類を培養して生成された産物を含むもので、用語「発酵液」と同様の意味で使用され得、具体的に微細藻類を含む培養液、または培養液から微細藻類が除去された培養濾液であり得るが、これに制限されるのではない。
【0015】
微細藻類培養液は、微細藻類培養培地に微細藻類を接種し、当該技術分野に公知の培養方法により製造され得る。
【0016】
本明細書で使用された用語「破砕液」は、破砕された細胞の内容物を含有する溶液を称すもので、微細藻類培養液に酵素を処理して破砕するか、または物理的な方法で破砕して得ることができる。
【0017】
本明細書で使用される用語「上澄液」は、遠心分離した液体で上部に位置した液体を意味することができ、「上層液」と同様の意味で使用され得る。また、本明細書において、微細藻類を培養液に酵素を処理するか、または物理的方法で破砕した細胞破砕液を遠心分離したステップでの「上澄液」は、「乳化層」または「乳化液」または「破砕された懸濁液」と同様の意味で使用され得る。また、上澄液の回収後、冷却および/または熱処理を行った後に遠心分離したステップでの上澄液は、「オイル」が含まれたものであり得る。
【0018】
本発明のステップ1)において、細胞破砕液は、微細藻類培養液に酵素を処理して破砕したものであり得る。
【0019】
微細藻類培養液の破砕に使用される酵素は、アルカラーゼ(Alcalase)、プロテアーゼ(protease)、セルラーゼ(cellulase)、ペクチナーゼ(pectinase)、キチナーゼ(chitinase)、リパーゼ(lipase)、β-グルカナーゼ(beta-glucanase)、キシラナーゼ(xylanase)、マンナナーゼ(mannanase)、アミラーゼ(amylase)、またはこれらの組み合わせであり得、好ましくはアルカラーゼ(Alcalase)であり得るが、これに制限されるのではない。
【0020】
本発明でステップ1)において、細胞破砕液は、物理的方法で破砕したものであり得る。
【0021】
「物理的方法」は、微細藻類の細胞壁を破壊することができる装備(つまり、破砕機)を利用して微細藻類を破砕させる方法を意味し、ビードミル(bead mill)、フレンチプレッシャー(French pressure)、ホモジナイザー(Braun homogenizer)またはマイクロフルイダイザー(Microfluidizer)を利用することができ、好ましくはビードミルまたはホモジナイザーを利用することができ、より好ましくはビードミルを利用することができる。
【0022】
本発明において、2)のの遠心分離ステップは、3000g~4600g、3200g~4400g、3400g~4200g、または3600g~4000gで、1分~10分、3分~8分、または4分~6分間行うことができる。
【0023】
本発明の実施例において、冷却処理前の遠心分離過程の有無によるオイル回収率を比較した結果、微細藻類培養液に遠心分離過程なしに冷却処理と熱処理の温度調節工程を経た場合のオイル回収率は低く、微細藻類培養液を遠心分離して回収した上澄液を冷却処理と熱処理過程を経た場合、オイル回収率が大幅に上昇することを確認した。
【0024】
本発明において、3)の冷却するステップは、45℃以下、40℃以下、35℃以下、30℃以下、5℃~45℃、5℃~40℃、または5℃~35℃の温度で行うことができる。
【0025】
3)の冷却するステップは、30分以上行うことができ、40分以上行うことができ、50分以上行うことができ、30分~4時間行うことができるが、これに限定されない。
【0026】
3)の冷却するステップを行う時間は、1)の細胞破砕液を得るステップにより変わり得る。具体的に、1)ステップの細胞破砕液を酵素を処理して得た場合、3)の冷却するステップは、1時間~5時間行うことができ、1時間30分~4時間30分間行うことができ、2時間~4時間行うことができ、2時間30分~3時間30分間行うことができるが、これに限定されない。1)ステップの細胞破砕液を物理的な方法を利用して得た場合、3)の冷却するステップは、30分~3時間30分間行うことができ、30分~3時間行うことができ、30分~2時間30分間行うことができ、30分~2時間行うことができ、30分~1時間30分間行うことができるが、これに限定されない。
【0027】
本発明において、4)の加熱するステップは、50℃以上、55℃以上、60℃以上、50℃~75℃、50℃~70℃、50℃~65℃、55℃~75℃、55℃~70℃、または55℃~65℃の温度で行うことができる。
【0028】
4)の加熱するステップは、30分以上行うことができ、40分以上行うことができ、50分以上行うことができ、30分~4時間行うことができるが、これに限定されない。
【0029】
本発明の微細藻類培養液からオイルを抽出する方法は、オイル回収率を向上させることができる。
【0030】
本明細書において「オイル(oil)」は、「バイオオイル(bio-oil)」と同様の意味で使用され、微細藻類に含まれている全ての種類のオイルを意味し、例えば、多価不飽和脂肪酸(例えば、オメガ-3不飽和脂肪酸およびオメガ-6不飽和脂肪酸)、ラウリン酸(Lauric acid)、ミリスチン酸(Myristic acid)、パルミチン酸(Palmitic acid)、ステアリン酸(Stearic acid)およびアラキン酸(Arachidic acid)のような飽和脂肪酸、リン脂質(Phospholipid)およびステロイド(Steroid)系の化合物を含む。
【0031】
本明細書において、用語「オイル回収率」は、細胞内のオイル含有量、つまり、粗脂肪含有量のうち、実験を通じてオイルを抽出した時に抽出可能なオイルの量を意味する。
【0032】
本発明の微細藻類培養液からオイルを抽出する方法によりオイルを抽出する場合、微細藻類内の粗脂肪総重量を基準としてオイル回収率は70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、または90%以上であり得る。
【0033】
本発明の実施例において、微細藻類の細胞破砕液に遠心分離した後、冷却処理した後に熱処理すればオイル回収率が大幅に上昇することを確認したところ、微細藻類培養液から得た細胞破砕液を遠心分離するステップ、冷却するステップおよび加熱するステップを含む本発明のオイルを抽出する方法は、オイル回収率を高め、他の添加物を投入しないため、オイルを回収し、残った副産物を飼料化することができ、持続可能な生産が可能な方法で有用に使用することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の微細藻類を含む培養液の細胞を破砕した懸濁液を冷却する工程を含むバイオオイル抽出方法は、高いオイル回収率を示し、オイル回収率を上昇させるために他の添加物を投入しないため、オイルを回収し、残った副産物を飼料化することができ、持続可能な生産が可能であり、回収したオイルは飼料用組成物または食品用組成物などで有用に活用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は一つ以上の具体的な例を説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるのではない。
【0036】
実施例1.酵素処理を利用した細胞破砕液のバイオオイルの抽出
実施例1-1.酵素処理で細胞壁を破砕した微細藻類の細胞破砕液の収得
微細藻類のシゾキトリウム(Schizochytrium)sp.菌株を5L発酵槽で培養液全体に対して35%のグルコース(Glucose)炭素源を供給し、60時間培養を行った。
【0037】
種菌培養(Seed culture)の目的で滅菌されたMJW02培地を利用して500mLフラスコで30℃、150rpm条件で約20時間培養を行った。
【0038】
種菌培養したフラスコは、5L培養器(fermenter)で分注および接種され、滅菌されたMJW02培地および培養環境30℃、500rpm、1.5vvm条件で培養を行って培養液を得た。
【0039】
培養液を60℃に加温した後、培養液の重量に対してアルカラーゼ(Alcalase 2.4FG、Novozymes)を0.2%(w/w)投入し、60℃で3時間攪拌反応させて細胞外壁が破砕された細胞破砕液を準備した。
【0040】
実施例1-2.冷却工程の有無によるオイル回収率の比較
実施例1-1で得た細胞破砕液を3800gで5分間遠心分離した後、上澄液をスポイトまたはピペットを利用して回収し、これから冷却処理の有無によるオイル回収率の向上の有無を確認した。
【0041】
具体的に、実施例1-1の微細藻類培養を下記表1に示す1-A、1-B、1-C、1-D、1-Eおよび1-Fの工程順序と工程条件でそれぞれ処理した後、オイル回収率を比較した。昇温速度および冷却速度は±0.5℃/minに調節し、設定温度に到達後、工程条件での時間だけ加熱および冷却した。オイル回収率は、投入した培養液での脂肪重量に対する回収したオイルの比を測定して下記数式を利用して計算した。回収したオイルの重量は最終の遠心分離ステップ後の上澄液をスポイトまたはピペットを活用して回収した後に測定した。
オイル回収率(%)=回収オイル重量/(培養液重量*固形分%)X100
【0042】
【0043】
その結果、表1に示すように、上澄液に加熱処理や冷却処理しない場合(Case 1-A)は、オイル回収率が0%であって、60℃で約1時間加熱処理後、直ちに遠心分離した場合(Case 1-B)はオイル回収率が20%であった。より高い温度である75℃で1時間加熱処理した場合(Case 1-C)は、オイル回収率が22%となり、オイル回収率が向上しないことを確認した。
【0044】
これに対して、上澄液に30℃で3時間冷却処理した後、60℃で1時間加熱処理した場合(Case 1-D)と、25℃で3時間冷却処理をした後、60℃で1時間加熱処理した場合(Case 1-E)は、88%の高いオイル回収率を示し、冷却処理した後に再び加熱処理すれば、オイル回収率が大幅に上昇することを確認した。
【0045】
しかし、加熱処理なしに冷却工程だけを経たCase 1-Fのような場合には、むしろオイル回収率が8%と低かった。その理由としては、微細藻類から抽出したオイルに含まれている常温では固体である飽和脂肪酸が、遠心分離により回収し難いため、抽出収率が低いと判断される。
【0046】
実施例1-3.冷却処理前の遠心分離過程の有無によるオイル回収率の比較
酵素処理を通じて細胞が破砕された微細藻類細胞破砕液の冷却処理前の遠心分離過程の有無によるオイル回収率を比較するために下記のような実験を行った。
【0047】
具体的に、実施例1-1の微細藻類細胞破砕液を下記表2に示す2-Aおよび2-Bの工程順序と工程条件でそれぞれ処理した後、オイル回収率を比較した。昇温速度および冷却速度は±0.5℃/minに調節し、設定温度に到達後に工程条件での時間だけ加熱および冷却した。オイル回収率は実施例1-2と同様な方法で測定した。
【0048】
【0049】
その結果、表2に示すように、酵素処理された微細藻類細胞破砕液に遠心分離過程なしに冷却処理と加熱処理の温度調節工程を経た場合のオイル回収率は9%と低かった(Case 2-A)。これに対して、遠心分離して回収した上澄液をCase2-Aと同一の温度調節工程を経た場合、オイル回収率が92%と大幅に上昇することを確認した(Case 2-B)。これによって、酵素処理された微細藻類細胞破砕液を遠心分離過程なしにそのまま利用する場合、温度調節工程を経てもオイル回収が難しかったが、遠心分離過程を通じて微細藻類細胞外壁とオイルが混在された上澄液を利用する場合、冷却処理と加熱処理の温度調節工程を経れば顕著にオイル回収率が上昇することを確認した。
【0050】
実施例2.物理的な処理を利用した細胞破砕液のバイオオイルの抽出
実施例2-1.物理的処理で細胞壁を破砕した微細藻類細胞破砕液の収得
微細藻類のシゾキトリウム(Schizochytrium)sp.菌株を5L発酵槽で培養液全体に対して35%のグルコース(Glucose)炭素源を供給して60時間培養を行った。
【0051】
種菌培養(Seed culture)の目的で滅菌されたMJW02培地を利用して500mLフラスコで30℃、150rpmの条件で約20時間培養を行った。
【0052】
種菌培養したフラスコは、5L培養器(fermenter)で分注および接種されて滅菌されたMJW02培地および培養環境30℃、500rpm、1.5vvm条件で培養を行って培養液を得た。
【0053】
培養が終わった微細藻類培養液をビードミル(bead mill)装備(Dyno-mill ECM-MULTI LAB)を利用し、ビードサイズ(Bead size)が0.8mmであるものを反応器の65%程度まで充填し、30℃で維持し、3600rpm回転速度、0.15kg/minの培養液の注入速度で1passを行い、細胞破砕率が90%以上、バイオマス濃度が100g/L以上、pHは7、温度は30℃である細胞破砕液を得た。
【0054】
実施例2-2.冷却工程の有無によるオイル回収率の比較
実施例2-1で得た物理的な処理による微細藻類細胞破砕液を利用して冷却処理によるオイル回収率の向上の有無を確認した。
【0055】
具体的に、実施例2-1で得た物理的な処理による微細藻類細胞破砕液を利用して下記表3に示す3-A、3-B、3-C、3-D、3-Eおよび3-Fの工程順序と工程条件でそれぞれ処理した後、オイル回収率を比較した。サーキュレーター(Julabo FP50-HE)に500ml二重ジャケットを連結して温度を調節し、その二重ジャケットの中に工程液を投入して実験を行った。昇温速度および冷却速度は±1℃/minに調節し、設定温度に到達後、下表の工程条件での時間だけ加熱および冷却した。オイル回収率は実施例1-2と同様な方法で測定した。
【0056】
【0057】
その結果、表3に示すように、微細藻類細胞破砕液に加熱処理や冷却処理しない場合(Case 3-A)は、オイル回収率が1.5%と低く、60℃で約1時間熱処理後、直ちに遠心分離した場合(Case 3-B)は、オイル回収率が33.7%であった。より高い温度である75℃で1時間熱処理した場合(Case 3-C)はオイル回収率が32.3%とオイル回収率が向上しないことを確認した。
【0058】
反面、微細藻類細胞破砕液に25℃で1時間冷却処理した後、60℃で1時間熱処理した場合(Case 3-D)と、微細藻類細胞破砕液に15℃で1時間冷却処理した後、60℃で1時間加熱処理した場合(Case 3-E)は、それぞれ76%、75.8%の高いオイル回収率を示し、5℃で1時間冷却処理した場合(Case 3-F)も78.4%の高いオイル回収率を示すことを確認して、物理的処理による微細藻類細胞破砕液に冷却処理をした後に再び加熱処理をすれば、オイル回収率が大幅に上昇することを確認した。
【0059】
実施例2-3.冷却処理前の遠心分離過程の有無によるオイル回収率の比較
物理的処理を通じて細胞が破砕された微細藻類細胞破砕液の冷却処理前の遠心分離過程の有無によるオイル回収率を比較するために下記のような実験を行った。
【0060】
具体的に、ビードミル(bead mill)装備(Dyno-mill ECM-MULTI LAB)で、回転速度2400rpm、培養液の注入速度0.15kg/minの条件で2passを行うことを除き、実施例2-1と同様の方法で物理的な処理を利用して細胞壁を破砕した微細藻類細胞破砕工程液を得た。得た細胞破砕工程液を50mlのファルコン(falcon)に入れてサーモミックス(Thermomix)で温度調節し、600rpmで攪拌して実験を行った。遠心分離する前である物理的な処理により細胞が破砕された微細藻類懸濁液を利用して下記表1に示す4-Aおよび4-Bの工程順序と工程条件でそれぞれ処理した後、オイル回収率を比較した。加熱速度および冷却速度は±1℃/minに調節して設定温度に到達後、下表の工程条件での時間だけ加温および冷却した。オイル回収率は実施例1-2と同様な方法で測定した。
【0061】
【0062】
その結果、表4に示すように、ビードミル(bead mill)処理を経た微細藻類細胞破砕液に遠心分離過程なしに冷却処理と加熱処理の温度調節工程を経た場合のオイル回収率は48.3%と低かった(Case 4-A)。これに対して、ビードミル(bead mill)処理を経た微細藻類細胞破砕液を3800gで5分間遠心分離して回収した細胞外壁物質とオイルが混在された上澄液がCase 4-Aと同一の冷却および加熱処理を経ればオイル回収率が95.4%と上昇することを確認した(Case 4-B)。
【国際調査報告】