(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】回転案内成長装置、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/80 20060101AFI20241114BHJP
A61B 17/82 20060101ALI20241114BHJP
A61B 17/88 20060101ALI20241114BHJP
A61B 17/86 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
A61B17/80
A61B17/82
A61B17/88
A61B17/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527481
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 US2022045514
(87)【国際公開番号】W WO2023086169
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513256479
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ユタ リサーチ ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】University of Utah Research Foundation
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザックリー エヴァンス
(72)【発明者】
【氏名】ティー.ウェイド フォーリン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター エム.スティーヴンス
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL27
4C160LL33
4C160LL35
4C160LL42
(57)【要約】
テザーアセンブリを骨に取り付けて、回転変形を矯正してもよい。骨は、骨の第1セクションと骨の第2セクションとを分離する成長板を有してもよい。テザーアセンブリは、第1端、第2端、および第1端と第2端との間に延在する中央部分を有するテザー部材を有してもよい。第1端は、第1開口部を画定し、第1開口部の全境界を画定する閉止外壁を有してもよい。第2端は、第2開口部を画定し、第2開口部の境界の一部を画定する開放外壁を有してもよい。開放外壁は、第2開口部と連通するスロットを画定してもよい。第1端および第2端は、それぞれ、連結部材によって骨の第1セクションおよび第2セクションに固定可能であってもよい。連結部材は、第1開口部および第2開口部を貫通して挿入され、第1セクションおよび第2セクションに固定されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨の第1セクションを骨の第2セクションから分離する成長板を含む骨に取り付け可能なテザーアセンブリであって、テザーアセンブリは、第1端と、第2端と、第1端と第2端との間に延びる中央部分とを含むテザー部材を含み、
第1端は、第1開口部を画定し、第1開口部の全境界を画定する閉止外壁を含み;
第2端は、第2開口部を画定し、第2開口部の境界の一部を画定する開放外壁を含み、開放外壁は、第2開口部と連通するスロットを画定し;
第1端は、第1開口部を通して挿入されて第1セクションに固定される第1連結部材によって、骨の第1セクションに固定されるように構成され;および
第2端は、第2開口部を通して挿入されて第2セクションに固定される第2連結部材によって、骨の第2セクションに固定されるように構成されている
ことを特徴とするテザーアセンブリ。
【請求項2】
第1頭部および第1軸部を含む第1連結部材であって、第1軸部は、第1軸部を骨内に保持するように構成された第1骨係合特徴部を含む第1連結部材と、
第2頭部および第2軸部を含む第2連結部材であって、第2軸部は、第2軸部を骨内に保持するように構成された第2骨係合特徴部を含む第2連結部材と
をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のテザーアセンブリ。
【請求項3】
第2軸部が第2軸部幅を有し、第2頭部が第2頭部幅を有し、第2軸部幅および/または第2頭部幅は、スロットを通って第2開口部から離脱するために通過しなければならないスロットの対応部分以上であり、第2連結部材と第2端との間の閾値レベルの張力の作用に応じてのみ第2連結部材がスロットを通って移動可能であるようにする
ことを特徴とする、請求項2に記載のテザーアセンブリ。
【請求項4】
スロットの対応部分が、閾値レベルの張力の作用に応じて第2軸部の通過を可能にするように弾性変形するように構成されていることを特徴とする、請求項3に記載のテザーアセンブリ。
【請求項5】
第1頭部および第2頭部の少なくとも一方は、球状表面を含み;
第1開口部および第2開口部の対応する一方は、前記球状表面を受容する寸法の相補的球状表面を含み、第1開口部または第2開口部に対する第1頭部または第2頭部の調節可能な位置決めを提供する
ことを特徴とする、請求項2に記載のテザーアセンブリ。
【請求項6】
中央部分が、矢状面上で規定される縦長領域を小児の遠位大腿骨の内側上顆骨表面または外側上顆骨表面に投影することによって作成される輪郭形状を含み、縦長領域が、長軸と、長軸に直交する短軸とを有する
ことを特徴とする、請求項1に記載のテザーアセンブリ。
【請求項7】
矢状面で測定される長軸は、横断面に対して角度をなして配置され、前記角度は30°から60°の範囲内であることを特徴とする、請求項6に記載のテザーアセンブリ。
【請求項8】
スロットは、中央部分の長手方向の長さに対して非直角に配向していることを特徴とする、請求項1に記載のテザーアセンブリ。
【請求項9】
スロットは、長手方向の長さに対する角度に配向されており、前記角度は0°から80°の範囲内であることを特徴とする、請求項8に記載のテザーアセンブリ。
【請求項10】
骨の第1セクションを骨の第2セクションから分離する成長板を含む骨に取り付け可能なテザーアセンブリであって、
テザーアセンブリは、第1連結部材と、第2連結部材と、テザー部材とを含み、
第1連結部材は、第1頭部および第1軸部を含み、第1軸部は、第1軸部を骨内に保持するように構成された第1骨係合特徴部を含み、
第2連結部材は、第2頭部および第2軸部を含み、第2軸部は、第2軸部を骨内に保持するように構成された第2骨係合特徴部を含み、
テザー部材は、第1端と、第2端と、第1端と第2端との間に延在する中央部分とを含み、
第1端は、第1頭部と係合して、第1端と骨の第1セクションとを離脱不可能に固定するように構成され、
第2端は、第2頭部と係合して、第2端と骨の第2セクションとを離脱可能に固定し、第2連結部材と第2端との間に閾値レベルの張力が作用する際に、骨の第2セクションから第2端を離脱させるように構成されている
ことを特徴とするテザーアセンブリ。
【請求項11】
第1端は、全境界が画定されている第1開口部を含み;
第2端は、スロットを通してアクセス可能な、境界の一部が画定されている第2開口部を含む
ことを特徴とする請求項10に記載のテザーアセンブリ。
【請求項12】
第2軸部はスロットのスロット幅以上の第2軸部幅を含み、閾値レベルの張力の作用に応じて第2軸部がスロットを通って移動可能であることを特徴とする請求項11に記載のテザーアセンブリ。
【請求項13】
閾値レベルの張力の作用に応じて第2軸部のスロット通過を可能にするように、スロットが弾性変形するように構成されていることを特徴とする請求項12に記載のテザーアセンブリ。
【請求項14】
スロットが、中央部分の長手方向の長さに対して非直角に配向されていることを特徴とする請求項11に記載のテザーアセンブリ。
【請求項15】
第1頭部および第2頭部の少なくとも一方は、球状表面を含み;
第1開口部および第2開口部の対応する一方は、前記球状表面を受容する寸法の相補的球状表面を含み、第1開口部または第2開口部に対する第1頭部または第2頭部の調節可能な位置決めを提供する
ことを特徴とする請求項10に記載のテザーアセンブリ。
【請求項16】
中央部分が、矢状面上で規定される縦長領域を小児の遠位大腿骨の内側上顆骨表面または外側上顆骨表面に投影することによって作成される輪郭形状を含み、縦長領域が、長軸と、長軸に直交する短軸とを有する
ことを特徴とする、請求項10に記載のテザーアセンブリ。
【請求項17】
骨の第1セクションを骨の第2セクションから分離する成長板を含む骨に対して回転矯正を行う方法であって、前記方法は、
テザーアセンブリのテザー部材を骨の上に配置する工程であって、テザーアセンブリは、第1連結部材と、第2連結部材と、テザー部材とを含み、第1連結部材は、第1頭部および第1軸部を含み、第1軸部は、第1軸部を骨内に保持するように構成された第1骨係合特徴部を含み、第2連結部材は、第2頭部および第2軸部を含み、第2軸部は、第2軸部を骨内に保持するように構成された第2骨係合特徴部を含み、テザー部材は、第1端と、第2端と、第1端と第2端との間に延びる中央部分とを含む工程と、
第1連結部材を用いて、テザー部材の第1端を骨の第1セクションに固定する工程と、
第2連結部材を用いて、テザー部材の第2端を骨の第2セクションに離脱可能に固定する工程であって、第2連結部材と第2端との間に閾値レベルの張力が作用する際に、骨の第2セクションから第2端を離脱させるようにする工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
第1端は、全境界が画定されている第1開口部を含み;
第2端は、スロットを通してアクセス可能な、境界の一部が画定されている第2開口部を含み、
第1端を骨の第1セクションに固定する工程は、
第1開口部を通して第1軸部を挿入する工程と、
第1軸部を第1セクションに固定する工程と
を含み、
第2端を骨の第2セクションに離脱可能に固定する工程は、
第2開口部を通して第2軸部を挿入する工程と、
第2軸部を第2セクションに固定する工程と
を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
スロットが、中央部分の長手方向の長さに対して非直角に配向されていることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1頭部および第2頭部のそれぞれは、球状表面を含み;
第1端および第2端のそれぞれは、相補的球状表面を含み;
第1端を第1セクションに固定する工程は、第1端の相補的球状表面内に第1頭部の球状表面を受容し、第1端に対する第1頭部の調節可能な位置決めを提供する工程を含み、
第2端を第2セクションに固定する工程は、第2端の相補的球状表面内に第2頭部の球状表面を受容し、第2端に対する第2頭部の調節可能な位置決めを提供する工程を含む
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、骨固定装置、システム、および方法に関する。より具体的には、本開示は、無傷の骨の回転アラインメントを外科的に変更するためのテザーアセンブリ、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
整形外科において、下肢の骨の回転変形により、股関節、膝、足首の種々の解剖学的特徴間の相対的配向が変化することがある。たとえば、大腿骨において、下部大腿骨の経顆軸に対する上部大腿骨の大腿骨頸部の角形成を大腿骨前捻と称する。ヒトの正常な発育では、大腿骨前捻は一般に約11°である。
図1Bは、足を前方に向けた適切な歩行を可能とする、正常な大腿骨前捻を有する足の骨の上方の大腿骨の上面図である。
【0003】
正常な人間の発育とは対照的に、
図2Bは、約41°の大腿骨前捻角、すなわち30°の異常前捻を示す。この異常大腿骨前捻は股関節に対して内側にねじれた膝をもたらし、その結果として足を「内股」にする。このため、患者は、股関節における靭帯または関節唇の損傷、膝関節における膝蓋骨脱臼または靭帯(前十字靭帯など)損傷のような、大腿骨の両端における関節損傷を起こしやすくなる。前捻による持続的な回転変形は、装具または理学療法では矯正できない。回転変形はねじれ変形とも呼ばれる。いずれの場合も、これらの用語は、骨の長軸に対する解剖学的特徴の配向を指す。
【0004】
前捻に対する現在の標準治療である外科的矯正は、大腿骨の回転骨切り術である。大腿骨を切断し、上側と下側とを適切な前捻が得られるような相対的配向で再結合させる。これは、典型的には、大型のプレートまたは髄内ロッドによる内部固定が必要であり、多くの場合、術後に骨が治癒した際に、プレートまたはロッドを抜去する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
具体的には、伝統的な異常大腿骨前捻の矯正術(大腿骨減捻骨切り術と呼ばれる)では、外科医は大腿骨を骨の長軸に対して垂直に切断し、正しい回転整列を達成するために遠位部分を骨の近位端に対して外側に回転(典型的には約20°~30°)させ、切断された骨部分を再結合させる。その後、大型の骨プレートまたは髄内ロッドを埋め込み、切断された骨部分を矯正された回転アラインメントに保持する。しかし、この手術は非常に侵襲的で、多くの有害な副作用を伴う。この手術に伴う副作用は、以下のようなものを含む:(1)骨の切断および治癒に伴う著しい痛み;(2)手術部位感染および創傷合併症の危険性を増大させる、比較的大きな切開およびその結果として生じる大きな瘢痕;(3)骨が治癒する間、骨を保護するために、処置後の数週間、場合によっては数ヶ月間にわたる歩行の遅れ;(4)骨固定の喪失またはインプラントの不具合、およびその後の再手術の危険性;(5)骨の治癒が遅れる危険性;(6)骨の非結合の危険性;(7)神経血管損傷の危険性。したがって、これらの悪影響の一部または全部を軽減することができる、改良されたインプラント装置、システム、および方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該技術の現状に対応して、本開示の種々のインプラント装置、システム、および方法は、現在利用可能なインプラント装置、システム、および方法ではまだ完全に解決されていない技術分野の問題およびニーズに対応して開発された。いくつかの実施形態において、本開示のインプラント装置、システム、および方法は、下肢の長骨の改善された回転矯正を提供し得る。
【0007】
いくつかの実施形態において、大腿骨前捻のような骨の回転変形を矯正するために、テザーアセンブリを骨に取り付けてもよい。骨は、骨の第1セクションと骨の第2セクションとを分離する成長板を有してもよい。テザーアセンブリは、第1端、第2端、および第1端と第2端との間に延在する中央部分を有するテザー部材を有してもよい。第1端は、第1開口部を画定する閉止外壁を有し、閉止外壁は第1開口部の全境界を画定してもよい(fully bound)。第2端は、第2開口部を画定する開放外壁を有し、開放外壁は第2開口部の境界の一部を画定してもよい(partially bound)。開放外壁は、第2開口部と連通するスロットを画定してもよい。第1端および第2端は、それぞれ、連結部材によって骨の第1セクションおよび第2セクションに固定可能であってもよい。連結部材は、第1開口部および第2開口部を貫通して挿入され、骨の第1セクションおよび第2セクションに固定される。
【0008】
テザーアセンブリは、第1連結部材をさらに含んでもよく、この第1連結部材は、第1頭部と、第1軸部(shank)とを有してもよく、第1軸部は、骨内に第1軸部を保持するように構成される第1骨係合特徴部を有してもよい。テザーアセンブリは、第2連結部材をさらに含み、この第2連結部材は、第2頭部と、第2軸部とを有してもよく、第2軸部は、骨内に第2軸部を保持するように構成された第2骨係合特徴部を有してもよい。
【0009】
第2軸部は第2軸部幅を有してもよく、第2頭部は第2頭部幅を有してもよい。第2軸部幅および/または第2頭部幅は、スロットを通って第2開口部から離脱するために通過しなければならないスロットの対応部分の寸法以上であって、第2連結部材と第2端との間の閾値レベルの張力の作用に応じてのみ第2連結部材がスロットを通って移動可能であるようにしてもよい。
【0010】
スロットの対応部分は、閾値レベルの張力の作用に応じて第2軸部の通過を可能にするように、弾性変形するように構成されてもよい。
【0011】
第1頭部および第2頭部の少なくとも一方は、球状表面を有してもよい。第1開口部および第2開口部の対応する一方は、当該球状表面を受容する大きさの相補的球状表面を有して、第1開口部または第2開口部に対する第1頭部または第2頭部の調節可能な位置決めを提供してもよい。
【0012】
中央部分は、矢状面上に画定される縦長領域を、小児の大腿骨遠位端の内側上顆骨表面または外側上顆骨表面に投影することによって作成される輪郭形状を有してもよい。縦長領域は、長軸と、長軸に直交する短軸とを有してもよい。
【0013】
矢状面上で測定される長軸は、横断面に対して角度をなして配置されてもよい。この角度は、30°から60°の範囲内であってもよい。
【0014】
スロットは、中央部分の長手方向の長さに対して非直角方向に配向していてもよい。
【0015】
スロットは、長手方向の長さに対して角度をなしていてもよい。角度は30°から80°の範囲内であってもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、テザーアセンブリは、大腿骨前捻などの骨の回転変形を矯正するために骨に取り付け可能であってもよい。骨は、骨の第1セクションと骨の第2セクションとを分離する成長板を有してもよい。テザーアセンブリは、第1連結部材を有してもよく、第1連結部材は、第1頭部と、第1軸部を骨内に保持するように構成された第1骨係合特徴部を有する第1軸部とを有してもよい。テザーアセンブリは、第2連結部材をさらに有してもよく、第2連結部材は、第2頭部と、第2軸部を骨内に保持するように構成された第2骨係合特徴部を有する第2軸部とを有してもよい。テザーアセンブリは、第1端、第2端、および第1端と第2端との間に延在する中央部分を有するテザー部材をさらに有してもよい。第1端は、第1頭部に係合して、第1端を骨の第1セクションに離脱不可能に固定するように構成されていてもよい。第2端は、第2頭部に係合して第2端を骨の第2セクションに離脱可能に固定するように構成して、第2連結部材と第2端との間の閾値レベルの張力の作用に応じて、第2端を骨の第2セクションから離脱させてもよい。
【0017】
第1端は、その全境界が画定された第1開口部を有してもよい。第2端は、スロットを介してアクセス可能である、その境界の一部が画定された第2開口部を有してもよい。
【0018】
第2軸部は、スロットのスロット幅以上の第2軸部幅を有し、閾値レベルの張力の作用に応じて、スロットを通って移動可能であってもよい。
【0019】
閾値レベルの張力の作用に応じて第2軸部の通過を可能にするように、スロットを弾性変形するように構成してもよい。
【0020】
スロットは、中央部分の長手方向の長さに対して非直角方向に配向していてもよい。
【0021】
第1頭部および第2頭部の少なくとも一方は、球状表面を有してもよい。第1端および第2端の対応する一方は、当該球状表面を受容する大きさの相補的球状表面を有して、第1端または第2端に対する第1頭部または第2頭部の調節可能な位置決めを提供してもよい。
【0022】
中央部分は、矢状面上に画定された縦長領域を小児の大腿骨遠位端の内側上顆骨表面または外側上顆骨表面に投影することによって作成される輪郭形状を有してもよい。縦長領域は、長軸と、長軸に直交する短軸とを有してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、本方法を使用して、骨の第1セクションと骨の第2セクションとを分離する成長板を有する骨に対して回転変形矯正を行ってもよい。本方法は、テザーアセンブリのテザー部材を骨に位置決めすることを含んでもよい。テザーアセンブリは、第1連結部材と、第2連結部材と、テザー部材とを含んでもよい。第1連結部材は、第1頭部と、第1軸部を骨内に保持するように構成された第1骨係合特徴部を有する第1軸部とを有してもよい。第2連結部材は、第2頭部と、第2軸部を骨内に保持するように構成された第2骨係合特徴部を有する第2軸部とを有してもよい。テザー部材は、第1端、第2端、および第1端と第2端との間に延在する中央部分を有してもよい。本方法は、第1連結部材を用いて、テザー部材の第1端を骨の第1セクションに固定する工程と、第2連結部材と第2端との間の閾値レベルの張力の作用に応じて第2端を骨の第2セクションから離脱させるように、第2連結部材を用いてテザー部材の第2端を骨の第2セクションに離脱可能に固定する工程と、をさらに含んでもよい。
【0024】
第1端は、その全境界が画定された第1開口部を有してもよい。第2端は、スロットを通してアクセス可能である、その境界の一部が画定された第2開口部を有してもよい。第1端を第1セクションに固定する工程は、第1開口部を通して第1軸部を挿入し、第1軸部を第1セクションに固定する工程を含んでもよい。第2端を第2セクションに離脱可能に固定する工程は、第2開口部から第2軸部を挿入し、第2軸部を第2セクションに固定する工程を含んでもよい。
【0025】
スロットは、中央部分の長手方向の長さに対して非直角方向に配向していてもよい。
【0026】
第1頭部および第2頭部のそれぞれは、球状表面を有してもよい。第1端および第2端のそれぞれは、相補的球状表面を有してもよい。第1端を第1セクションに固定する工程は、第1頭部の球状表面を第1端の相補的球状表面内に受容して、第1端に対する第1頭部の調節可能な位置決めを提供する工程を含んでもよい。第2端を第2セクションに固定する工程は、第2頭部の球状表面を第2端の相補的球状表面内に受容して、第2端に対する第2頭部の調節可能な位置決めを提供する工程を含んでもよい。
【0027】
本開示のこれらおよび他の特徴および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになるか、または以下に記載する装置、システム、および方法の実施によって知ることができる。
【0028】
本開示の例示的な実施形態は、添付の図面と併せて考慮される以下の説明からより完全に明らかになるであろう。これらの図面は、例示的な実施形態のみを描いており、したがって、本開示の範囲を限定するものとはみなされないことを理解した上で、本開示の例示的な実施形態を、添付図面の使用を通じて、さらなる具体性をもって詳細に説明する。
【0029】
図面は、本開示の概念を説明するためのものであり、正確な縮尺で描かれてもよく、または正確な縮尺からの変形を含んでもよいことを理解されたい。さらに、図面は、例示的な実施形態を示すものであり、本開示の範囲に対する制限を表すものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】正常な前捻を有する下肢骨格の後面図である。
【
図2A】異常な前捻を有する下肢骨格の後面図である。
【
図3A】1つの実施形態にしたがうテザーアセンブリを大腿骨に取り付けた小児右膝の手術時の内側図である。
【
図4A】術後第1期間における、
図3Aのテザーアセンブリを装着した小児右膝の内側図である。
【
図5A】術後第2期間における、
図3Aのテザーアセンブリを装着した小児右膝の内側図である。
【
図6B】各連結部材の複数の潜在的な配向を有するテザー部材を示す、
図3Aのテザーアセンブリの側面図である。
【
図6C】
図3Aのテザーアセンブリのテザー部材および一方の連結部材の拡大透視図である。
【
図7A】
図3Aのテザーアセンブリのテザー部材の上面図である。
【
図8A】
図3Aのテザーアセンブリの連結部材の側面図である。
【
図9】20mm、26mm、および32mmのプレート長のそれぞれにおける、矯正角度、大腿骨幅、開始角度、治療時間の関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の例示的な実施形態は、図面を参照することによって最もよく理解され、類似の部品は、全体を通して同様の参照符号によって指定される。図面に一般的に記載および図示されているように、本開示の構成要素は、多種多様な異なる構成で配置および設計できることは容易に理解されるであろう。したがって、図に表されるようなインプラント、システム、および方法の実施形態のより詳細な以下の説明は、本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、単に本開示の例示的な実施形態を代表するものである。
【0032】
本明細書において、「例示的」という語は、「例、例証、または説明として役立つ」という意味で使用される。本明細書において「例示的」として説明される実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましいか、あるいは有利であると解釈されるものではない。実施形態の種々の態様が図に示されているが、図面は、特段の記載のない限り、必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【0033】
以下の実施例は、本開示の主題の代表的な実施形態を実施するための指針を当業者に提供するために含まれている。本開示および当業者の一般的な技術レベルに照らして、当業者であれば、以下の実施例は例示的なものであることのみを意図しており、本開示の主題の範囲から逸脱することなく、多数の変更、修正、および改変を採用できることを理解することができる。
【0034】
本明細書に記載または企図される任意の実施形態の特徴は、本開示の真意または範囲から逸脱することなく、本明細書に記載または企図される任意の他の実施形態と組み合わせることができることが理解されるであろう。
【0035】
図1Aは、小児における左脚20および右脚22の正常なアラインメントを示す下肢骨格の後面図(すなわち、後方の視点からの図)である。
図1Bは、大腿骨頸部30と大腿骨頭32の前捻を示す右脚22の上面図である。
図1Bにおいて、足34が膝36および股関節38とよく整合していることが理解できる。前捻は、本明細書では経顆軸とも呼ばれる大腿骨遠位端の後顆に接する線42と、大腿骨頸部および骨頭を2等分する線44との間で測定される角度、すなわち前捻角40である。
図1Bにおいて前捻角40は11°であり、これは一般的な小児では正常範囲内と考えられる。
【0036】
図2Aは、小児における左脚20および右脚22の異常なアラインメントを示す左脚20および右脚22の後面図である。
図2Bは、大腿骨頸部30と大腿骨頭32の前捻を示す右脚22の上面図である。
図2Bにおいて、足34および膝36が股関節38に対して内側に回転していることが理解できる。
図2Bにおいて、前捻角50(大腿骨頸部と大腿骨頭とを2等分する線44と大腿骨遠位端の後顆に接する線46との間で測定される)は41°であり、これは一般的な小児の正常範囲外である。この異常な前捻は足の「内反」として観察され、立位で足を見下ろしたときに、左足が時計回り方向に過剰回転し、足34が反時計回り方向に過剰回転している。異常な前捻は、骨の長軸に沿って観察する際の角度異常を表すため、回転変形またはねじり変形とも呼ばれる。上記のように「内反足」を引き起こすこともあれば、足を外側に広げることもある。有利なことには、本開示によって、そのいずれをも矯正することができる。前捻を特定の例として使用しているが、当業者であれば、本開示によって教示される技術、インプラント、および原理が、大腿骨および/または他の骨の他の回転変形に適用され得ることを認識するであろう。
【0037】
図2Aは、大腿骨回転変形が存在する場合に一般的である、両側大腿骨回転変形の例を提供しているが、小児においては、ときとして片側大腿骨回転変形も存在する。前述の議論は大腿骨に限定されているが、脛骨のような四肢の他の骨にも回転欠陥が存在し得ること、および、本明細書で提供される装置、システム、および方法は、脚、足、腕、または手の他の骨を含むがこれらに限定されない、他の四肢の骨にも同様に適用可能であることが理解される。
【0038】
図3Aは、成長板とも呼ばれる骨端軟骨60を示す大腿骨58の遠位部の内側図であり、本発明の1つの実施形態を示す。大腿骨58は、骨端軟骨60の遠位側の骨端部62と、骨端軟骨60の近位側の骨幹端部64とを有していてもよい。骨端軟骨60は、骨端部62を骨幹端部64から分離してもよい。大腿骨58は、骨端軟骨60から長手方向に成長し続ける、小児大腿骨であってもよい。
【0039】
テザーアセンブリ100は、大腿骨58の遠位部分に連結される。テザーアセンブリ100は、本明細書において「骨プレート」とも称されるテザー部材102と、本明細書において「骨ネジ」とも称される2つの連結部材104とを含んでもよい。テザー部材102は、第1端110、第2端112、および第1端110と第2端112との間に延在する中央部分114を有してもよい。
【0040】
種々の剛性生体適合性材料の任意のものから、テザー部材102を作製してもよい。剛性生体適合性材料は、ステンレス鋼、チタンおよびその合金、ニッケルチタン合金、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、炭素繊維強化PEEK、ポリ-L-乳酸(PLLA)のような生分解性ポリマー、およびこれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。あるいはまた、縫合糸または外科用メッシュに使用されるような可撓性の生体適合性織物を用いて、テザー部材102を作製してもよい。あるいはまた、テザー部材102は、中央部分114が可撓性織物材料で構成され、第1端110および第2端112が剛性材料で構成されるハイブリッド構成体であってもよい。あるいはまた、前述のポリマーのいずれかをマトリックスとして使用し、前述の織物のいずれかをマトリックスの繊維強化材として使用する複合材料を用いて、テザー部材102を作製してもよい。複合材料をカスタマイズして、テザー部材102の長手方向軸に沿った方向のような引張応力が最も高い方向において高い剛性および強度を提供し、他の方向において高い柔軟性および伸展性を提供して、テザー部材102を大腿骨58の遠位部分の骨表面の輪郭により良好に適合させてもよい。いくつかの実施形態では、テザー部材102は再吸収性であってもよい。
【0041】
連結部材104に使用される材料がテザー部材102に使用される材料と電気化学的および機械的に適合する限りにおいて、テザー部材102に関して上記で列挙された剛性生体適合性材料の任意のものから、連結部材104を作製してもよい。連結部材104は、整形外科技術において既知の種類の骨ネジであってもよい。代替の実施形態(図示せず)において、連結部材は、ステープル、縫合糸アンカー、ピン、鋲および/または当業者に知られている他の骨締結装置を含んでもよい。また、連結部材は、所望により再吸収性にしてもよい。
【0042】
図3Aに示すテザー部材102は、右大腿骨であってもよい大腿骨58の遠位部の内側に結合されてもよい。テザー部材102の第1端110および第2端112はそれぞれ、連結部材104の一方によって大腿骨58に固定されてもよい。
【0043】
テザー部材102の中央部分114は細長い形状であってもよく、当該形状において、第1端110および第2端112を通る長手方向軸70に沿って延在する長さが、長手方向軸を横断する幅よりも大きくてもよい。第1端110は、閉止外壁120と、閉止外壁120によって全境界を画定される第1開口部122とを有してもよい。第2端112は、開放外壁124と、開放外壁124によって境界を画定される第2開口部126とを有することができる。開放外壁124は、開口部すなわちスロット128を画定することができ、この開口部を通じて、連結部材104の関連する一方を、方向130に沿って第2開口部126から取り外すことができる。方向130は、概略的にテザー部材102の面内であり、かつテザー部材102に対して非直角である。対照的に、第1開口部122内に保持された連結部材104の関連する一方は、テザー部材102に対して略垂直な方向(すなわち、
図3Aの図において、ページの外方)に沿ってのみ、第1開口部122から引き抜くことが可能である。
【0044】
図示されるように、スロット128を、テザー部材102の中央部分114の長さに対して非平行および/または非直角に配向することができる。したがって、方向130とテザー部材102の長手方向軸70との間に角度132が存在してもよい。角度132は、全患者に対して一定であってもよいし、所望の前捻矯正量を制御するために患者毎に選択されてもよい。角度132は0°超90°未満であってもよい。さらに、角度132は、20°超70°未満であってもよい。さらに、角度132は、30°超50°未満であってもよい。さらに、角度132は、35°超45°未満であってもよい。いくつかの実施形態では、角度132は約40°であってもよい。
【0045】
以下により詳細に説明するように、スロット128は、第2端112を骨端部62に離脱可能に固定することを可能にしてもよい。「離脱可能」な固定とは、離脱を行うための別の外科的介入の必要なしに、手術完了後、経時的または身体的に互いから取り外すことができるような外科的設定において、2つの物品を一緒に固定することを意味する。対照的に、「離脱不可能」な固定とは、別の外科的介入なしに一般的に互いから切り離すことができないような外科的設定において、2つの物品を一緒に固定することを意味する。第1端110は、骨幹端部64に離脱不可能に固定することができる。
【0046】
スロット付き開口部の使用は、離脱可能な固定を提供できる1つの機構に過ぎない。代替の実施形態では、離脱可能な固定は、テザー部材または連結部材を所望の条件下で破断するのに十分に弱くすることによって提供することができる。たとえば、テザー部材102は、中央部分114よりはるかに薄くするように修正して、張力下で破断可能にすることができる。あるいはまた、連結部材104の1つを修正して、分離ヘッドなどを有するようにすることもできる。
【0047】
図3Aに戻ると、長手方向軸70は、テザー部材102の中央部分114を2等分してもよい。テザー部材102は、長手方向軸70のほぼ中間点に配置された第3開口部140をさらに有してもよい。第3開口部140は、第3開口部140を骨端軟骨60と整列させることによって、テザー部材102を骨端軟骨60上の中心に位置決めするために使用することができる。これは、たとえば、テザー部材102が大腿骨58の遠位端に着座した際に骨端軟骨60が第3開口部140を通して見えるようにすることによって、テザー部材102を設置する外科医が視覚的に行うことができる。追加的または代替的に、ガイドワイヤまたは他の器具を骨端軟骨60上またはその近傍に位置合わせし、それら器具を第3開口部140に挿入して骨端軟骨60に接触させ、第3開口部140が骨端軟骨60上またはその近傍に配置されるようにテザー部材102の配置を案内してもよい。
【0048】
長手方向軸70は、大腿骨58の長手方向軸74に垂直な解剖学的横断面に整列された横断軸72に対して、整列角αをなしてもよい。本明細書において、角度αを「初期アラインメント角度」と呼称する。
【0049】
テザー部材102を大腿骨58上に適切に位置決めしたならば、連結部材104の一方を第1開口部122を通して配置し、骨端軟骨60の近位である、大腿骨58の骨幹端部64の前方部分に、テザー部材102を連結してもよい。連結部材104の他方を第2開口部126を通して配置し、テザー部材102を、骨端軟骨60の遠位であり、かつ第1端110の後方である、骨端部62の後方部分にテザー部材102を連結してもよい。有利なことには、連結部材104が骨端軟骨60から起こる自然な成長を妨げないように、骨端軟骨60の中央部から6mm~8mmの最小距離だけ離して、連結部材104を配置してもよい。代替の実施形態において、テザー部材102を反転させて、第1端110を骨幹端部64に固定し、第2端112を骨端部62に固定してもよい。
【0050】
図3Bは、テザーアセンブリ100のない
図3Aの大腿骨58を示す。
図3Aにおいて、大腿骨58が異常前捻を有していることが理解できる。
図3Bにおいて、異常の程度を角度θとして示す。この角度θは、正常な前捻角度11°を超える前捻の量である。角度θは、
図2Bの前捻角50から
図1Bの前捻角40(11°)を減算した角度であってもよい。大腿骨58の遠位端を大腿骨58の近位端に対してθ°だけ回転させて回転変形を矯正し、大腿骨58の後顆を大腿骨58の大腿骨頸部および大腿骨骨頭との正常なアラインメントに戻すことが望ましい。有利なことには、第2テザーアセンブリ(図示せず)を大腿骨58の第2の側に配置して、大腿骨58に誘起される回転変化が径方向に対称であることを確実にしてもよい。大腿骨58の遠位端の場合、第2テザーアセンブリを大腿骨58の外側に配置して、
図3A、
図4Aおよび
図5Aに示す内側上のテザーアセンブリ100の配置の反対側かつ径方向に対称な配置としてもよい。
【0051】
当業者であれば、2つのテザーアセンブリの使用は任意選択的であることを認識するであろう。いくつかの実施形態においては、1個のテザーアセンブリのみを使用してもよい。1個のテザーアセンブリは、大腿骨58の外側、内側、前側、または後側に配置してもよく、あるいは大腿骨58の後外側、前外側、後内側、または前内側に配置してさえもよい。代替の実施形態では、3個以上のテザーアセンブリを使用してもよい。このような場合、任意選択的に、大腿骨58の遠位端の周囲で径方向に対称にテザーアセンブリを配置および配向してもよく、大腿骨58の上記の側面のいずれかにテザーアセンブリを配置してもよい。さらなる代替の実施形態においては、2個のテザーアセンブリを使用して、上述とは異なるように配置してもよい。たとえば、テザーアセンブリは、必ずしも大腿骨58の外側および内側に配置する必要はなく、上記の側面のいずれに配置してもよい。繰り返しになるが、径方向の対称性は任意選択的である。
【0052】
図3Aおよび
図3Bは、テザーアセンブリ100(および任意選択的な1つまたは複数の追加のテザーアセンブリ)が最初に取り付けられる手術の際の、大腿骨58およびテザーアセンブリ100を図示する。
図4Aおよび
図4Bは、術後の第1期間の経過後の、
図3Aおよび
図3Bに示す大腿骨58およびテザーアセンブリ100を示す図である。第1期間の間に、大腿骨58の自然な成長が起こり、骨端部62と骨幹端部64との間の長手方向の間隔が広がる可能性がある。テザーアセンブリ100(および任意選択的な1つまたは複数の追加のテザーアセンブリ)の拘束により、大腿骨58の長手方向の成長の一部を、長手方向軸74周りの骨端部62と骨幹端部64との間の相対的な回転に変換し、それにより、大腿骨58に最初に存在したθ°の異常前捻を減少させ、最終的には解消させる。骨端部62と骨幹端部64との間の相対的な回転により、テザー部材102は、横断軸72に対する初期アラインメント角度α(
図3Aおよび
図3Bに示す)から、終端中間アラインメント角度β(
図4Aおよび
図4Bに示す)まで回転してもよい。
【0053】
β°の終端アラインメントに到達した際に、テザー部材のスロットの変化したアラインメント(横断面に対する)は、大腿骨58の継続的な長手方向の成長に応じて第2開口部126から連結部材104の関連する一方の引き抜くことを可能にするように、第2開口部126のスロット128を配向させる。したがって、大腿骨58がさらに長手方向に成長すると、連結部材104の関連する一方が方向130に沿って移動して、当該部材を第2開口部126から離脱させてもよい。これは、テザー部材102を骨端部62への取り付けから離脱させ、それにより、さらなる回転調整なしに大腿骨58が伸長することを可能にする。
【0054】
図5Aおよび
図5Bに示す大腿骨58は、術後の第2期間の経過後の、
図3A、
図3B、
図4Aおよび
図4Bの大腿骨58を示し、第2期間は第1期間よりも長い。第1期間の後、第2期間が終了するまでの時間間隔の間に、大腿骨58の長手方向のさらなる成長が生じ、第2開口部126内に以前に捕捉されていた連結部材104の一方が、第2開口部126のスロット128の長さを横断し、テザー部材102の第2端112の外周の外側へと並進移動する。したがって、遠位大腿骨の所与の直径幅に対して、α、β、およびテザー部材102の第1開口部122と第2開口部126との間の距離150(本明細書では「プレート長」と称する)の適切な組み合わせを選択することによって、角度θによって測定される回転矯正の量を手術手技において「プログラム」することができる。前述の寸法パラメータのリストは、方程式形式で表すことができる解析的な幾何学的関係を有し、目標の回転矯正角度θを達成するための適切なパラメータ値を決定することができる。
【0055】
図4Bの大腿骨と比較すると、
図5Bの大腿骨は、回転アラインメントが変化していないことが理解できる。これは、以前は第2開口部126に捕捉されていた連結部材104の一方がテザー部材102から離脱し、それによって先の回転変化を強制した拘束がもはや有効でないためである。さらに、大腿骨58の回転変形が矯正されたならば、テザー部材102が横断面に対してより垂直なアラインメントに移行する前に、テザー部材102によって課される拘束の「自動的」な除去を提供することが有利である可能性がある。もし、垂直方向の整列を達成する際に、テザー部材102が連結部材104間の距離を拘束し続ける場合、テザー部材102は、大腿骨58のさらなる長手方向の成長を阻止することになる。実際、このような拘束は、臨床文献では、成長板すなわち骨端軟骨60が新しい骨を生成して骨の自然な成長を継続させる能力を永久的に無効にする状態である、「成長板の停止」として知られている。このような臨床状態は、足の長さの不一致、または成人期の正常な身長を達成できないことをもたらす可能性があり、小児にとって非常に有害である恐れがある。
【0056】
図6Aは、分離状態における、
図3Aのテザーアセンブリ100の上面図である。連結部材104は、第1開口部122および第2開口部126内に配置される。
図6Bは、
図3Aのテザーアセンブリ100の側面図であり、連結部材104が第1開口部122および第2開口部126とどのように関節接合して、テザー部材102と連結部材104との間の多数の相対的な配向を可能にするかを示す。連結部材104上に球状表面160を有し、第1開口部122および第2開口部126上に相補的球状表面162を有することによって、前述の関節接合を達成してもよい。「球状表面」という語句は、全球ではなく、凹状または凸状の球状の任意の三次元部分を必要とすると理解されるであろう。
【0057】
相補的球状表面162のそれぞれは、2つの離間した平行面の間に画定される凹状の球面部分であってもよい。可能であれば、これらの面の一方を第1端110または第2端112の上面によって画定してもよく、他方をこの上面と関連する底面との間の空間を通過させてもよい。スロット128を形成する2つの平行面に対して斜めに配置された面によって、第2開口部126の境界をさらに画定してもよい。スロット128の拡大図を
図6Cに示す。
【0058】
テザー部材102に対する各連結部材104の中間関節接合位置170の相対的アラインメントは、発散角をなしていることに留意されたい。これは、テザー部材102が大腿骨58に取り付けられる際に、連結部材104を骨端軟骨60から離れるように配向させることを確実にすることを補助する。なぜなら、骨端軟骨60内への連結部材104の配置は、骨端軟骨60からの骨の成長が阻害する恐れがあるためである。
図6Bは、テザー部材102に対して連結部材104を配向させるための垂直範囲を示すが、上述の球状関節接合により、その中間関節接合位置170に位置する連結部材104のそれぞれの軸172を含む全ての面において、同様の運動範囲が存在してもよい。
【0059】
図6Aおよび
図6Bにおいて、テザー部材102が3次元の輪郭を有することがさらに理解できる。この輪郭を選択して、テザー部材102が取り付けられる内側上顆骨表面または外側上顆骨表面の輪郭と整合させてもよい。テザー部材102は、骨の前捻を矯正する過程で関連する骨表面上で回転するため、テザー部材102は、初期アラインメント角度と最終アラインメント角度との間の角度をなす骨の一部(たとえば、
図3Aに示すαと
図4Aに示すβとの間の角度をなす)と整合する輪郭を有してもよい。したがって、整合させるべき輪郭は、前捻矯正プロセスの途中でテザー部材102によって重畳される骨の部分であってもよい。
【0060】
テザー部材102の中央部分114は、この輪郭の一部として存在する中央湾曲部180を有してもよい。第3開口部140は、中央湾曲部180を貫通してもよい。さらに、中央部分114は、第1端110と第2端112とが同一面上にないような中央ねじれを有してもよい。その結果、(
図7Bに示すように)第2開口部126は、第1開口部122の軸174と非平行の軸176を有してもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、この輪郭は、矢状面上で定義される縦長領域を、大腿骨58のような代表的な小児遠位大腿骨の内側上顆骨表面および外側上顆骨表面の一方の上に投影することによって作成してもよい。縦長領域は、長軸と、長軸に直交する短軸とを有してもよい。矢状面で測定される長軸は、横断面に対して角度をなして配置されてよく、その角度は70°未満である。長軸は、一般的には20°と70°との間、好ましくは30°と60°との間、より好ましくは40°と50°との間に配置される。長軸は約45°に配置されてもよい。
【0062】
図7Aは、
図3Aのテザーアセンブリ100のテザー部材102の実施形態の別の上面図であり、
図7Bは、テザー部材102の側面部分断面図である。図示されるように、スロット128は、複数の側壁190およびスロット軸192を有してもよい。スロット軸192は、複数の側壁190の間に位置し、側壁190を2等分してもよい。断面図は、第2開口部126の相補的球状表面162の一部を示し、スロット128の1つの滑り面上の側壁190も示す。スロット128の一部は、第2開口部の直径196よりも小さいスロット幅194を有する。
【0063】
図8Aは、
図3Aのテザーアセンブリ100の連結部材104の一方の側面図である。
図8Bは、連結部材104の一方の側面断面図である。連結部材104のそれぞれは、整形外科技術分野で知られている任意の種類の骨ネジまたは他の骨締結装置であってもよい。図示されるように、連結部材104のそれぞれは、頭部200と、頭部200から延在する軸部202とを有してもよい。軸部202は、そこから延在する複数の骨係合特徴部を有することができる。
図8Bに具体化されているように、骨係合特徴部は、ねじ山204であってもよい。
【0064】
軸部202は、スロット幅194よりも大きく、第2開口部126の直径196よりも小さい軸部直径206を有してもよい。連結部材104の球状表面160は、連結部材104のそれぞれの頭部200に接してもよい。球状表面160は、第1開口部122および第2開口部126の相補的球状表面162と嵌合して、前述のような多軸関節接合を可能にしてもよい。
図6Bに例示されるように、軸部の直径206と第2開口部126の直径196との間の相対的な寸法決定により、テザー部材102の第2端112と連結部材104の関連する一方との間の球面関節接合を可能にしてもよい。
【0065】
図6Cに示すように、軸部202を第2開口部126内に配置して、軸部直径206がスロット128と整列するようにしてもよい。したがって、上述のように、軸部202はスロット128を通過することができる。しかしながら、軸部直径206とスロット幅194との間の相対的な大きさを選択して、軸部202がスロット128を通過する前に、テザー部材102と軸部202との間に閾力(threshold force)を加えなければならないようにしてもよい。具体的には、軸部直径206に比べてスロット幅194の相対的に小さい寸法を選択して、スロット軸192と整列した方向の閾力を軸部202に加えた際に、軸部202がスロット128の側壁190を弾性変形させ(すなわち、得られるひずみが材料の降伏ひずみ未満であり)、それによって、軸部202がスロット128を通って第2開口部126から離脱することを可能にしてもよい。
【0066】
テザー部材102からの軸部202の離脱は、テザー部材102に完全に回復可能なひずみを誘起するので、軸部202は、別の離脱を誘起するのに必要な閾力を失うことなしに、第2開口部126と再び係合することができる。さらに、閾力を選択して、対応する拘束力を骨端軟骨60に誘起し、拘束力を骨端軟骨60からの成長を「停止」させる力を下回るようにしてもよい。あるいはまた、別の実施形態(図示せず)は、テザー部材からの連結部材の離脱時にスロット側壁を永久変形させる離脱構成を有してもよい。
【0067】
軸部202とスロット128との間の干渉に対する追加または代替として、頭部200が、スロット128を通る頭部200の通過に干渉してもよい。具体的には、
図8Aに示すように、頭部200は、(軸部202に加えて)同じくスロット128を通過する頭部200の部分において、頭部幅208を有してもよい。
図7Bにより明確に示すように、スロット128は、大腿骨58の表面に隣接する軸部接触部分210と、大腿骨58からさらに離れた頭部接触部分212とを有してもよい。
【0068】
前述のように、軸部接触部分210は、軸部202との干渉を提供してもよい。しかしながら、いくつかの実施形態において、テザー部材102に対する軸部202の配向の多軸調整可能性を考慮すると、軸部202と軸部接触部分210との間の干渉は、比較的に予測不可能な引き抜き力を提供する恐れがある。具体的には、軸部202がテザー部材102との垂直状態から角度的にずれている場合、引き抜き力は、軸部202がテザー部材102に対して垂直である場合よりも高くなる可能性がある。
【0069】
したがって、頭部200と頭部接触部分212との間に干渉があることが有益な場合がある。それゆえ、頭部200が頭部接触部分212に接触する深さにおいて、頭部幅208は、頭部接触部分212の幅以上であってもよい。
図7Aは、第2開口部126が180°以上にわたる弧を描いてもよいことを例示する。したがって、頭部200が第2開口部126から離脱してスロット128に入るために、頭部200は頭部接触部分212の隣接する肩部214を十分に強く押してそれらを押し広げ、それによってスロット128の頭部接触部分212の幅を広げることを必要としてもよい。その後、頭部200はスロット128に入り、これを通過し、上述のように第2端112が連結部材104の対応する一方から離脱してもよい。
【0070】
図9は、回転矯正角度θ(度)、所与の長さ(mm)のプレートに関する平均大腿骨遠位部幅(mm)に対応する、開始角度α(度)および治療時間概算値(月)を示す表250である。
図5Aに示されるように、表250に提供されるプレート長は、第1開口部122の中心と第2開口部126の中心との間の距離150である。
【0071】
表250の値の全て、一定値(70°)の終了角度βに基づく。必要に応じて、解析幾何学を用いて、異なる値の終了角度、開始角度、治療時間、大腿骨幅、回転矯正角度、およびプレート長に関する同様の表を作成することができる。表250に示されているよりも重度の変形に対しては、同一の患者に複数の治療を適用してもよい。たとえば、35°の回転変形を有し、54mmの大腿骨幅を有する患者に対して、外科医は、テザー部材102を43°の開始角度で適用して、約7ヶ月で20°の回転矯正を達成してもよい。次いで、その後の外科処置において、外科医は、連結部材104およびテザー部材102を除去し、52°の開始角度で連結部材104およびテザー部材102(または、異なるサイズおよび/または輪郭を有するテザー部材102)再適用することにより、約5ヶ月でさらに15°の回転矯正を達成してもよい。このように、患者は、約12ヶ月で合計35°の回転矯正を受ける。
【0072】
前述の開示は、本開示の範囲内に包含される選択された実施形態のみを記載している。当業者であれば、本明細書で教示される原理が、多くの代替概念を生成するために適用され得ることを認識するであろう。たとえば、種々のクリップ、留め具、ステープル、プレート、ネジ、および/または他の締結システムを使用して、骨の2つのセクションを成長板の両側において固定することができる。このような締結システムは、離脱可能な接続部および/または破断可能な構成要素により、所望の前捻矯正が得られたときに解除されるように、意図的に離脱可能にすることができる。
【0073】
本明細書全体を通した「実施形態」または「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて援用される引用またはその変形は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではない。
【0074】
同様に、上記の実施形態の説明において、本開示を合理化する目的で、種々の特徴を1つの実施形態、図、またはその説明においてグループ化することがあることを理解されたい。しかしながら、この開示方法は、どのような実施形態であっても、その実施形態において明示的に記載されている特徴よりも多くの特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきものではない。むしろ、発明の概念は、前述の開示された1つの実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴の組み合わせにある。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「近位」とは、使用者が部品を取り付ける際に使用者に面する部品の端部の位置を意味する。用語「遠位」とは、近位端の反対側の端を意味する。たとえば、使用者がドライバーを用いて骨ネジを材料に取り付ける場合、ドライバーと係合する骨ネジの末端は近位端であり、最初に材料と係合する骨ネジの先端は遠位端である。「カニューレ状」とは、部品の近位端と遠位端との間に、部品の長手方向軸に沿って延びる中央腔を有することを意味する。
【0076】
特徴または要素に関して「第1」という用語が記載されていても、必ずしも第2のまたは追加のそのような特徴または要素の存在を示唆するものではない。ミーンズ・プラス・ファンクション形式で記載された要素は、米国特許法第112条(f)に従って解釈されることを意図する。本明細書に記載された基本原理から逸脱することなく、上述の実施形態の細部に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0077】
「接続されている」、「連結されている」、「連通している」という表現は、機械的、電気的、磁気的、電磁気的、流体的、熱的相互作用を含む、2つ以上の実体間のあらゆる形態の相互作用を指す。1つの構成要素が互いに直接接触していなくても、機能的に結合している場合がある。「連結」という用語は、一体形成を介して互いに結合される構成要素、ならびに互いに取り外し可能および/または取り外し不能に結合される構成要素を含むことができる。「隣接」という用語は、物品が必ずしも一緒に取り付けられていなくてもよいが、互いに直接物理的に接触していてもよい物品を指す。「流体連通」とは、ある特徴内の流体が別の特徴内に通過できるように連結された2つ以上の特徴を指す。本明細書において、「実質的に」という用語は、目標値、測定値、または所望の特性の±20%以内を意味する。
【0078】
本開示の具体的な実施形態および用途を図示および説明したが、本開示の範囲は、本明細書に開示された正確な構成および構成要素に限定されないことを理解されたい。当業者には明らかであろう様々な修正、変更、および変形が、本明細書に開示される装置、システム、および方法の配置、動作、および詳細においてなされてもよい。
【国際調査報告】