(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ミル削りツール
(51)【国際特許分類】
B23C 5/10 20060101AFI20241114BHJP
B23C 5/16 20060101ALI20241114BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20241114BHJP
B23B 27/20 20060101ALI20241114BHJP
C23C 16/27 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B23C5/10 Z
B23C5/16
B23B27/14 B
B23B27/20
B23B27/14 A
C23C16/27
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527588
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2022081794
(87)【国際公開番号】W WO2023088840
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517007574
【氏名又は名称】エレメント シックス (ユーケイ) リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】506231892
【氏名又は名称】エレメント シックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ギルロイ ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】レイヒー ウィリアム ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ペンナ フランカ ルイス フェルナンド
【テーマコード(参考)】
3C022
3C046
4K030
【Fターム(参考)】
3C022KK03
3C022KK25
3C022KK26
3C046AA01
3C046AA02
3C046FF12
3C046FF22
3C046FF35
3C046HH04
3C046HH08
4K030BA28
4K030BB03
4K030CA01
4K030CA11
4K030CA17
4K030FA01
4K030FA17
4K030LA22
(57)【要約】
材料をミル削りするためのミル削りツールを提供する。ミル削りツールは、回転軸を有するツールシャンクを含み、かつその一端にツールヘッドを更に含む。ツールヘッドは、少なくとも2つの階層を含み、各階層は、ツールヘッドの周りを周方向に延びる複数のフルートを含む。ツールヘッドは、超硬材料を含み、階層は、互いから軸線方向に変位してツールヘッドの非切削部分によって分離される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料をミル削りするためのミル削りツールであって、ミル削りツールが、
回転軸を有するツールシャンクを含み、かつ
その一端にツールヘッドを更に含み、前記ツールヘッドは、各階層が前記ツールヘッドの周りを周方向に延びる複数のフルートを有する少なくとも2つの階層を含み、
前記ツールヘッドは、超硬材料を含み、
前記階層は、互いから軸線方向に変位して前記ツールヘッドの非切削部分によって分離される、
ミル削りツール。
【請求項2】
前記超硬材料は、高圧高温多結晶ダイヤモンド、化学気相蒸着ダイヤモンド、及び多結晶質立方晶窒化ホウ素のうちのいずれかを含む請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項3】
前記超硬材料は、焼結炭化物基板上に被覆された多結晶化学気相蒸着ダイヤモンドを含む請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項4】
ミル削りされる前記材料は、ガラス、セラミック、ポリマー、複合材料、金属材料、及び金属セラミック複合材料のうちのいずれかを含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のミル削りツール。
【請求項5】
少なくとも3つの階層を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のミル削りツール。
【請求項6】
前記ツールヘッドは、円筒形かつ非管状である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のミル削りツール。
【請求項7】
前記超硬材料は、モノリシック多結晶ダイヤモンドである請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項8】
前記超硬材料は、炭化物裏打ち部分に隣接する多結晶ダイヤモンドである請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項9】
少なくとも1つの階層が、粗削り、中仕上げ削り、及びミル削りのうちのいずれかから選択された作動に対して構成される請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のミル削りツール。
【請求項10】
2又は3以上の階層が、同じミル削り作動に対して構成される請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のミル削りツール。
【請求項11】
各階層が、残りの階層とは別様に構成される請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のミル削りツール。
【請求項12】
少なくとも1つの階層が、他の階層とは異なる直径を有する請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のミル削りツール。
【請求項13】
前記ツールヘッドは、12mmよりも大きくない全高を有する請求項1から請求項12のいずれか1項に記載のミル削りツール。
【請求項14】
前記ツールヘッドは、0.5mmよりも小さくない全高を有する請求項13に記載のミル削りツール。
【請求項15】
15mmよりも大きくなく、10mmよりも大きくなく、かつ6mmよりも小さくないそのいずれかから選択された外径を有する微小エンドミルツールである請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のミル削りツール。
【請求項16】
前記ツールシャンクは、焼結炭化物を含む請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のミル削りツール。
【請求項17】
前記ツールシャンクは、廃棄ミル削り媒体を排出するために圧縮空気を前記ツールヘッドまで搬送するための導管を更に含む請求項1から請求項16のいずれか1項に記載のミル削りツール。
【請求項18】
ミル削りツールヘッドの製造方法であって、
a.超硬材料を含むディスクブランクを与える段階、
b.少なくとも1つの前駆体ツールヘッドを前記ディスクから機械加工する段階、
c.複数のフルートを含有する階層をレーザを使用して前記前駆体ツールヘッドに形成する段階、
d.段階cを必要に応じて繰り返し、それにより、少なくとも2つの階層を含むツールヘッドであって、各階層が前記ツールヘッドの周りを周方向に延びる複数のフルートを含む前記ツールヘッドを形成する段階であって、前記ツールヘッドが、前記超硬材料を含み、前記階層が、互いに軸線方向に変位して前記ツールヘッドの非切削部分によって分離される前記形成する段階、
を含む方法。
【請求項19】
前記超硬材料は、高圧高温多結晶ダイヤモンド、化学気相蒸着ダイヤモンド、及び多結晶質立方晶窒化ホウ素のうちのいずれかを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ミル削りツールヘッドの製造方法であって、
a.ディスクブランクを与える段階、
b.少なくとも1つの前駆体ツールヘッドを前記ディスクから機械加工する段階、
c.複数のフルートを含有する階層をレーザを使用して前記前駆体ツールヘッドに形成する段階、
d.段階cを必要に応じて繰り返し、それにより、少なくとも2つの階層を含むツールヘッドであって、各階層が前記ツールヘッドの周りを周方向に延びる複数のフルートを含む前記ツールヘッドを形成する段階であって、前記ツールヘッドが、前記超硬材料を含み、前記階層が、互いに軸線方向に変位して前記ツールヘッドの非切削部分によって分離される前記形成する段階、及び
e.化学気相蒸着を使用して前記複数のフルート上に多結晶ダイヤモンドを堆積させる段階、
を含む方法。
【請求項21】
多結晶ダイヤモンドの前記化学気相蒸着は、ホットフィラメント化学気相蒸着を含む請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の開示は、脆性材料をミル削りするためのエンドミルツール(又はカッター)に関する。特に、それは、ガラスをミル削りするためのツールに関する。より具体的には、それは、多結晶ダイヤモンドを含む微小エンドミルツールに関する。
【背景技術】
【0002】
ミル削りは、複数の切削面を有するツールが工作物の面から材料を除去するために回転される切削工程である。カッターとしても公知のそのようなツールは、工作物の設計に応じてあらゆる形状及びサイズになる。ツールは、プロファイル付き切削面を有するツールヘッドに隣接する細長シャンク又はハンドルを有する。シャンクは、ミル削りツールホルダに装着され、それは、次に、機械のツールスピンドルに装着されて回転される。
【0003】
エンドミルカッターは、最も一般的な形態のミル削りカッターであり、それらは、広範な高さ、直径、及びタイプで利用可能である。エンドミルカッターは、工作物の面及び側部を機械加工するのに使用される。典型的なミル削り作動中に、カッターは、その回転軸に対して垂直に移動し、それがカッターの周囲で工作物から材料を除去することを可能にする。エンドミルカッターは、溝削り、倣削り、輪郭削り、座ぐり、及び孔ぐりに使用される。エンドミルの側部上の螺旋形刃先は、「フルート」として公知であり、それらは、エンドミルが工作物内で回転している時に切削屑がそこから逃げるための空の経路を提供する。
【0004】
エンドミルカッターは、一般的に高速度鋼(すなわち、コバルト鋼合金)又はコバルト格子の炭化タングステンから作られる。炭化物は、高速度鋼よりもかなり硬く、剛性が高く、かつ耐摩耗性に優れる。しかし、炭化物は脆く、かつ摩耗ではなく欠ける傾向がある。材料の選択は、切削される材料に、並びに機械の最大スピンドル速度に依存する。
【0005】
コーティングの使用は、ツールの面硬度を増大する。これは、より長いツール寿命及び高い切削速度を可能にする。標準的なコーティングは、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)、及びアルミニウムチタン窒化物(AlTiN)を含む。
【0006】
より硬い材料で作られた工作物に対して、ダイヤモンド電気メッキツールヘッドが多くの場合に使用される。電気メッキカッターでは、数百の個々のダイヤモンド粒がツールヘッドの面上の結合剤の中に埋め込まれ、多数の切削面及び刃先を提供する。しかし、電気メッキされたミル削りツールの問題点は、ダイヤモンド粒が結合剤から抜け落ち易く、工作物を不良粒からの不要な擦過に対して弱くすることである。別の問題は、ダイヤモンド電気メッキツールは、限られたツール寿命を有し、定期的なツール交換を必要とし、必要なツール毎に生産コストを増大することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粒の抜け落ちとツール寿命の問題に対処することが本発明の目的である。
【0008】
微小エンドミルカッターでは、ツールヘッドの外径は、通常は15mmよりも大きくなく、かつ典型的に6から10mmの範囲にある。微小エンドミルカッターは、例えば携帯電話受話器シェルの構成中のミル削り作動に配備される。受話器シェルは、典型的に、アルミニウム、ポリカーボネート、又はセラミックから作られる。既存技術の1つは、ダイヤモンド電気メッキ微小エンドミルカッターである。
【0009】
ガラスなどのようなセラミックから作られた携帯電話受話器シェルをミル削りする際の使用に適する微小エンドミルツールを提供することが本発明の更に別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様により、材料をミル削りするためのミル削りツールを提供し、ミル削りツールは、回転軸を有するツールシャンクを含み、さらにその一端にツールヘッドを更に含み、ツールヘッドは、少なくとも2つの階層を含み、各階層は、ツールヘッドの周りを周方向に延びる複数のフルートを含む。ツールヘッドは、超硬材料を含み、階層は、互いから軸線方向に変位し、かつツールヘッドの非切削部分によって分離される。
【0011】
オプションとして、超硬材料は、高圧高温多結晶ダイヤモンド、化学気相蒸着ダイヤモンド、及び多結晶質立方晶窒化ホウ素のうちのいずれかを含む。
【0012】
代替オプションとして、超硬材料は、焼結炭化物基板上に被覆された多結晶化学気相蒸着ダイヤモンドを含む。
【0013】
ミル削りされる材料は、任意的に、ガラス、セラミック、ポリマー、複合材料、金属材料、及び金属セラミック複合材料のうちのいずれかを含む。
【0014】
オプションとして、ミル削りツールは、少なくとも3つの階層を含む。
【0015】
ツールヘッドは、任意的に、円筒形かつ非管状である。
【0016】
オプションとして、超硬材料は、モノリシック多結晶ダイヤモンドである。代替オプションとして、超硬材料は、炭化物裏打ち部分に隣接する多結晶ダイヤモンドである。
【0017】
任意的に、少なくとも1つの階層は、粗削り、中仕上げ削り、及びミル削りのうちのいずれかから選択される作動に対して構成される。
【0018】
2又は3以上の階層は、任意的に、同じミル削り作動に対して構成される。
【0019】
オプションとして、各階層は、残りの階層とは別様に構成される。
【0020】
オプションとして、少なくとも1つの階層は、他の階層とは異なる直径を有する。
【0021】
ツールヘッドは、任意的に、12mmよりも大きくない全高を有する。
【0022】
ツールヘッドは、任意的に、0.5mmよりも小さくない全高を有する。
【0023】
ミル削りツールは、任意的に、15mmよりも大きくなく、10mmよりも大きくなく、かつ6mmよりも小さくないそのいずれかから選択された外径を有する微小エンドミルツールである。
【0024】
オプションとして、ツールシャンクは、焼結炭化物を含む。
【0025】
ツールシャンクは、任意的に、廃棄ミル削り媒体を排出するために圧縮空気をツールヘッドまで搬送するための導管を更に含む。
【0026】
第2の態様により、ミル削りツールヘッドを作る方法を提供し、本方法は、以下の段階を含む:
a.超硬材料を含むディスクブランクを与える段階、
b.少なくとも1つの前駆体ツールヘッドをディスクから機械加工する段階、
c.レーザを使用して複数のフルートを含有する階層を前駆体ツールヘッドに形成する段階、
d.段階cを必要に応じて繰り返し、それによって各階層がツールヘッドの周りを周方向に延びる複数のフルートを有する少なくとも2つの階層を含むツールヘッドを形成する段階であって、ツールヘッドが、超硬材料を含み、階層が、互いから軸線方向に変位してツールヘッドの非切削部分によって分離される上記形成する段階。
【0027】
オプションとして、超硬材料は、高圧高温多結晶ダイヤモンド、化学気相蒸着ダイヤモンド、及び多結晶質立方晶窒化ホウ素のうちのいずれかを含む。
【0028】
第3の態様により、ミル削りツールヘッドを作る方法を提供し、本方法は、以下の段階を含む:
a.ディスクブランクを与える段階、
b.少なくとも1つの前駆体ツールヘッドをディスクから機械加工する段階、
c.レーザを使用して複数のフルートを含有する階層を前駆体ツールヘッドに形成する段階、
d.段階cを必要に応じて繰り返し、それによって各階層がツールヘッドの周りを周方向に延びる複数のフルートを有する少なくとも2つの階層を含むツールヘッドを形成する段階であって、ツールヘッドが、超硬材料を含み、階層が、互いから軸線方向に変位してツールヘッドの非切削部分によって分離される上記形成する段階。及び
e.化学気相蒸着を使用して複数のフルート上に多結晶ダイヤモンドを堆積させる段階。
【0029】
オプションとして、多結晶ダイヤモンドの化学気相蒸着は、ホットフィラメント化学気相蒸着を含む。
【0030】
ここで添付図面を参照して単に一例として本発明をより具体的に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】ツールヘッドの第1の実施形態を有する本発明によるツールの斜視図である。
【
図4】ツールヘッドの第2の実施形態の前面図である。
【
図5】ツールヘッドの第3の実施形態の前面図である。
【
図6】ツールヘッドの第4の実施形態の前面図である。
【
図7】ツールヘッドの第5実施形態の前面図である。
【
図8】
図5及び/又は6のツールヘッドの注釈版である。
【
図9】
図5及び/又は6のツールヘッドの別の注釈版である。
【
図10】ツールヘッド内のフルートの横断面を示す概略図である。
【
図11】使用中のフルートの切削アクションを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施形態全体を通して、類似の部品は同じ参照番号によって表記され、更に別の説明は、簡潔にするために省略される。
【0033】
以下の説明は、超硬材料を含むツールヘッドを参照する。実施例では、多結晶ダイヤモンド(PCD)に言及するが、これは一例に過ぎない。鉄鋼材のミル削りに対して、多結晶質立方晶窒化ホウ素が好ましい。更に、PCDが使用される場合もあるが、化学気相蒸着(CVD)ダイヤモンドのような他の形態の合成ダイヤモンドを使用することができる。
【0034】
更に、以下の説明は、一例としてガラスのミル削りを参照するが、同じツール構成は、他のタイプの材料のミル削りに対して使用することができることは認められるであろう。ミル削り可能な材料の非限定的なリストは、ガラス、セラミック、ポリマー、複合材料、金属材料、及び金属セラミック複合材料を含むことができる。
【0035】
最初に
図1から3を参照すると、ミル削りツールが全体的に10で示されている。ツールは、長手回転軸14を有するツールシャンク12を含み、更に、シャンク12の一端にツールヘッド16を含む。ツールヘッド16は、少なくとも1つの階層18(すなわち、ステージ又はレベル)を含み、各階層は、ツールヘッド16の周りを周方向に延びる複数のフルート20を含む。いずれの階層18でも、全てのフルートは、バンド内にあり、すなわち、互いに軸線方向に位置合わせされている。追加の階層は、最初の階層に対して軸線方向に変位している。従って、複数の階層を有するツールは、同軸的に位置合わせされて互いに隣接した階層を有する。
【0036】
この例でのツールヘッド16は、多結晶ダイヤモンド(PCD)を含む。
【0037】
図3は、ツールヘッド16の第1の実施形態を示している。ツールヘッド16は、3つの階層18a、18b、18cとノッチ要素22とを含む。階層18aは、シャンクに最も近い階層に対応し、階層18cは、シャンクから最も遠く離れた階層に対応し、階層18bは、軸線方向に階層18aと18cの中間にある階層に対応する。各階層18は、複数のフルートを含む。フルート20は、ツールヘッドの外面に設けられる。フルート20は、ツールヘッド16の円周全体の周りに延びる。フルート20は、レーザを使用して外面に生成され、レーザは、最初に不要な材料を除去して前駆体フルート20の間に凹部を生成し、続いて前駆体フルートを望ましいプロファイルに従って成形して最終的なフルート20の構成にする。フルート20の詳細は後ほど与える。
【0038】
各階層18は、ツールヘッド16の非切削部分17によって隣接階層18から分離される。
【0039】
ノッチ要素22は、例えば、相応に成形されたノッチを工作物の中に、例えば、携帯電話の受話器シェル内のマイクロフォン開口に彫り込むように構成される。単に一例として、ノッチ要素22は、直径が1mmまで、高さが1mmまでとすることができる。ノッチ要素22は、完全に任意的であり、省くことができる。
【0040】
図4は、例示的ツールヘッド24を示しているが、これは、特許請求する本発明の範囲外である。この例では、単一階層18aだけが設けられる。
【0041】
ここで
図5に移ると、ツールヘッド26の更に別の実施形態が示されている。この実施形態では、ここでもまた3つの階層18a、18b、18cが設けられ、各階層は、非切削部分によって隣接階層から分離される。3つの階層18a、18b、及び18cの各々は、仕上げ削り作動に対して構成される。しかし、3つの階層は、全て粗削りに対して構成することができ、又は代わりに全て中仕上げ削りに対して構成することができる。全ての階層が同じミル削り作動に対して構成される構成の利点は、それにより、「n」を階層の数とした場合にツールの使用寿命が「n」倍に延びることである。いずれの階層とすることもできるが、最初に使用する最初の階層が摩耗するのに伴って、スピンドルを適宜延長する又は後退させ、他の階層のうちの1つを定められた位置まで移動することができる。これは、設けられた階層の数に依存して必要に応じて繰り返される。3つの階層全てに対して摩耗速度が同じであるので、ツールの作動寿命が最大になる。
【0042】
図6は、ツールヘッド28の更に別の実施形態が示されている。この実施形態では、ここでもまた3つの階層18a、18b、18cが設けられ、それぞれ非切削部分によって隣接階層から分離される。第1の階層18a及び第2の階層18bは、それぞれ中仕上げミル削り作動に対して構成される。第3の階層18cだけが仕上げミル削り作動に対して構成される。この構成の利点の1つは、
図5に与えた例とは異なり、ミル削り作動間に追加のツール交換を必要としないことである。このツールは、多機能であり、1よりも多い特定のミル削り作動に使用することができ、それにより、機械の停止時間が短縮され、作動的機器有効性が最大になる。1よりも多いタイプのミル削り作動に対して構成されたツールは、「マルチツール」と見なすことができる。
【0043】
シャンク12から最も遠く離れた階層は、使用中に最大の力と最大のモーメントを受けるので、原理的に最も大きい速度で擦り減ると考えられることを本発明者は見出した。モーメントが大きいほど、安定性が低下し、振動も大きくなる。異なるミル削り作動に対して摩耗形態も異なることを考慮することが重要である。例えば、仕上げ削り中に、摩耗は、専ら研磨摩耗になる傾向があるが、中仕上げ削りではチッピングも生じる。これらの要因は、全てツールの早期損傷の一因になる可能性がある。従って、特定のミル削り作動に対して階層18の相対的な位置決めと構成とを考慮することが重要である。
【0044】
仕上げ削り作動では必要な力が少なく、摩耗も少なくなるので、仕上げ削り作動に対して構成された階層は、シャンクから最も遠く離れた位置に据えることが好ましい。中仕上げ削りに対して構成された2つの階層をシャンクの近くに配置することにより、3つの階層18間で摩耗速度が均衡し、3つの階層18の寿命が最大になる。同じく、中仕上げ削り及び粗削りのための階層数を増すことにより、これらのミル削り作動からはチッピングによる損傷の可能性が高くなるので、このツールは、作動的冗長性を提供し、後続の階層との迅速な置換を可能にし、それによって機械の停止時間が最小にされる。
【0045】
仕上げ削り作動は、中仕上げ削り工程の半分の摩耗を生じるので、仕上げ削りに対して構成された階層は、中仕上げ削りに対して構成された階層の約2倍の寿命を有することになる。従って、中仕上げミル削り作動のための階層数を仕上げ削り作動のための階層数の2倍にすることが最適な割合になる。一例として、全部で6階層のツールの場合に、そのうちの4階層は中仕上げ削りに対する及び2階層は仕上げ削りに対するものになる。この例を続けると、全部で12階層のツールの場合に、そのうちの8階層は中仕上げ削りに対する及び4階層は仕上げ削りに対するものになる。
【0046】
図示しない別の実施形態では、階層18を全て粗削り作動専用に構成することができる。
【0047】
粗削りに対して構成された階層は、中仕上げ削りに対して構成された層よりも更に多くの摩耗を生じるので、粗削りに対して構成された階層の割合は、中仕上げ削りに対して構成された階層の数の少なくとも2倍、典型的には、3から4倍になる。例えば、全部で3つのミル削り作動に対して構成された単一ツールは、全部で9階層を有し、粗削りのために6階層、中仕上げ削りのために2階層、仕上げ削りのために1階層を有することができる。
【0048】
ここで
図7に移ると、ツールヘッド30の別の実施形態が示されている。この実施形態では、2つの階層18a及び18bが設けられ、それぞれ非切削部分によって隣接階層から分離されており、ツールヘッドにはノッチ要素22が設けられる。
【0049】
ツールシャンク12は、例えば、炭化タングステンのような焼結金属炭化物を含むが、他の適切な材料も想定している。任意的に、ツールシャンク12は、フルートから廃棄ミル削り媒体を排出するために圧縮空気をツールヘッドまで搬送するための導管(図示せず)を含む。
【0050】
ツールヘッド16は、円筒形かつ非管状である。一例では、ツールヘッド16は、中実モノリシックPCDブロックを含む。この関連では、「モノリシック」とは、PCDが1回の焼結作動で単一部品として焼結されることを意味する。上述の例では、PCD部分32は、炭化物裏打ち層34に焼結接合されるが、そうである必要はなく、炭化物裏打ち層34を省いてもよい。階層18は、ツールヘッドのPCD部分32に設けられ、炭化物裏打ち層34には設けられない。炭化物裏打ち層34は、ツールシャンク12への取り付けを容易にし、これは、あらゆる妥当な手段を使用して達成することができる。
【0051】
図8を参照すると、ツールヘッド16の全高は36に示されており、炭化物裏打ち層34を含む場合に、それは、PCD部分32の高さ38と炭化物部分34の高さ40との合計である(そうでなければ、それは、PCD部分32の高さ38のみである)。任意的に、ツールヘッド16の高さ36は、0.5mmから12mmである。任意的に、ツールヘッド16の高さ36は、1から10mmである。任意的に、ツールヘッド16の高さ36は、6mmである。PCD部分32の高さ32は、0.5から6mmの範囲にあり、例えば、2.5mmとすることができる。ツールヘッドの高さは、ナノメートルの程度(すなわち、<100nm)であり、例えば、全高は、50から95nm又はそれ未満とすることができると想定している。任意的に、ツールヘッド16の高さ36は、12mmよりも大きくない。
【0052】
ツール10の外径は42に示されており、これは、階層18及びシャンク12のうちで最大の最も外側の直径である。個々の階層18は、例えば、どのミル削り作動に対して構成されるかに応じて互いに異なる直径を有することができる。任意的に、全ての階層18は、同じ直径を有することになる。
【0053】
好ましくは、ツール10、24、26、28、30は、外径が15mmよりも大きくない微小エンドミルツールである。任意的に、ツールの外径42は、10mmである。微小エンドミルツールの一例では、ツールシャンク12及びツールヘッド16を含むツールの全高は、約200mmである場合がある。
【0054】
各階層18の高さ44(軸線方向に測定され、直前の高さ測定と同じ)は、炭化物裏打ち層34で裏打ちされているか否かに関わらず、階層18の数とPCDの高さとに依存する。一例として、ツールヘッド36の高さが6mmである炭化物層34で裏打ちされたPCD部分32を含むツールヘッド16の場合に、PCD部分の高さ38は、2.5mmであり、3階層の場合に、各階層の高さ44は、0.6から0.7mmである。
【0055】
図9、10、及び11を参照すると、各フルート20は、三角形の横断面を有する。様々なフルートパラメータは、ある一定の要因に影響を及ぼす。螺旋角αとフルート深さdは、ミル削り作動中にフルート間に生じる屑砕片による目詰まりの量に及び従ってツールヘッド16の洗浄に影響を与える。螺旋角αはまた、ツールの安定性に影響を与える。フルート角β、すくい角(切削角)θ、及びフルートの数Nは、面仕上げ、表面下の損傷、ツール性能(切削力)、及びツール寿命に直接に影響を与える。
図11は、使用中にツールが矢印の方向に横方向前進する時に、各フルートが工作物46をどのように切削するかを模式的に示している。
【0056】
上述のパラメータ、すなわち、螺旋角α、フルート角β、すくい角(切削)角θ、溝の数N、及びフルート深さdは、ガラス又は他の類似した脆性材料のミル削りという関連では、ミル削り作動の目的が粗削り、中仕上げ削り、又は仕上げ削りのいずれであるかに応じて最適化される。粗ミル削り作動は、一般的に、仕上げ削り作動の前に工作物の面を与えることを意図している。その目的は、寸法を最終寸法の「大まかな」サイズにすることである。主目的は比較的大量の材料を迅速に取り除くことなので、それがどのように見えるかはほとんど重要でないと考えられる。粗削りでは、より大きい力に対処するためにより実質的なフルート本体を提供するように他の作動よりも大きいフルート角βが必要になる可能性が高いことになる。これにより、限られたスペースに収まるフルートの数が減り、従って1階層内のフルートの数も減ることになる。中仕上げミル削り作動は、典型的には、粗削りの次の段階である。その目的は、最終寸法に更に近い寸法を達成することである。仕上げミル削り作動は、工作物を機械加工する最終段階である。極少量の工作物材料が除去され、工作物はサイズに合わせて機械加工され、最終寸法が得られ、一部の事例では面も更に研磨される。
【0057】
上述のツールヘッドの1つを作るための一例示的方法は、次の通りである:PCD又はPCBNのような超硬材料を含むディスク状に成形された典型的に円形のブランクを与える。少なくとも1つの前駆体ツールヘッドをディスクから機械加工する。得られる前駆体ツールヘッドの数は、ブランクの直径、欠陥のない使用可能区域、及びツールの外径に依存する。ブランクは、炭化物裏打ち層で裏打ちされている場合もあれば、裏打ちされていない、つまり「独立型」の場合もある。ブランクの深さによってツールヘッド16の深さが決まる。次に、レーザを使用して前駆体ツールヘッドに複数のフルートを形成する。フルートは、軸線方向に隣接する階層に配置される。その後に、この後者の段階が望ましい場合は何度でも繰り返され、それによって少なくとも1つの階層を含むツールヘッドが形成され、当該の又は各階層は、ツールヘッドの周りを周方向に延びる複数のフルートを含む。
【0058】
上述のツールヘッドの1つを作るための代替方法は、次の通りである:焼結炭化物のディスクブランクを与え、そのディスクから前駆体ツールヘッドを機械加工する。レーザを使用して複数のフルートを含有する階層を前駆体ツールヘッドに形成する。この段階を必要に応じて繰り返して各階層がツールの周りを周方向に延びる複数のフルートを有する少なくとも2つの階層を含むツールヘッドを形成し、ツールヘッドが、超硬材料を含み、階層が、互いから軸線方向に変位してツールヘッドの非切削部分によって分離される。最後に、化学気相蒸着を使用して複数のフルート上に多結晶ダイヤモンドを堆積させる。典型的に、ホットフィラメントCVDを使用するが、マイクロ波プラズマCVDのような他の形態のCVDを使用することもできる。フルート上に堆積したダイヤモンド層に対して最終仕上げ作動が必要になる場合がある。
【0059】
要約すると、本発明者は、ツール寿命を最大化し、費用対効果を改善するミル削りツールを考案した。これは、PCD、CVDダイヤモンド、又はPCBNのような超硬材料の使用を通して、特に、ミル削り作動に対する階層式手法を通して行われる。
【0060】
実施形態を参照して本発明を具体的に図示して説明したが、特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱することなく形態及び細部に様々な修正を加えることができることは当業者によって理解されるであろう。例えば、上述の例の一部は、モノリシックPCD部分を含むが、それほど好ましくない実施形態では、ツールヘッドは、互いに隣接して並べて積み重ねられた2又は3以上のPCDセグメントを含み、各セグメントは、当該階層の1又は2以上を形成する。そのような配置では、PCDセグメントは、環状であり、回転軸と同軸的に位置合わせされ、かつツールシャンクから延びるハブの周りに装着される場合がある。
【符号の説明】
【0061】
16 ツールヘッド
17 非切削部分
18 階層
20 フルート
22 ノッチ要素
【手続補正書】
【提出日】2024-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料をミル削りするためのミル削りツールであって、ミル削りツールが、
回転軸を有するツールシャンクを含み、かつ
その一端にツールヘッドを更に含み、前記ツールヘッドは、各階層が前記ツールヘッドの周りを周方向に延びる複数のフルートを有する少なくとも2つの階層を含み、
前記ツールヘッドは、超硬材料を含み、
前記階層は、互いから軸線方向に変位して前記ツールヘッドの非切削部分によって分離される、
ミル削りツール。
【請求項2】
前記超硬材料は、高圧高温多結晶ダイヤモンド、化学気相蒸着ダイヤモンド、及び多結晶質立方晶窒化ホウ素のうちのいずれかを含む請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項3】
前記超硬材料は、焼結炭化物基板上に被覆された多結晶化学気相蒸着ダイヤモンドを含む請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項4】
ミル削りされる前記材料は、ガラス、セラミック、ポリマー、複合材料、金属材料、及び金属セラミック複合材料のうちのいずれかを含む
請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項5】
少なくとも3つの階層を含む
請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項6】
前記ツールヘッドは、円筒形かつ非管状である
請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項7】
前記超硬材料は、モノリシック多結晶ダイヤモンドである請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項8】
前記超硬材料は、炭化物裏打ち部分に隣接する多結晶ダイヤモンドである請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項9】
少なくとも1つの階層が、粗削り、中仕上げ削り、及びミル削りのうちのいずれかから選択された作動に対して構成される
請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項10】
2又は3以上の階層が、同じミル削り作動に対して構成される
請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項11】
各階層が、残りの階層とは別様に構成される
請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項12】
少なくとも1つの階層が、他の階層とは異なる直径を有する
請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項13】
前記ツールヘッドは、12mmよりも大きくない全高を有する
請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項14】
前記ツールヘッドは、0.5mmよりも小さくない全高を有する請求項13に記載のミル削りツール。
【請求項15】
15mmよりも大きくなく、10mmよりも大きくなく、かつ6mmよりも小さくないそのいずれかから選択された外径を有する微小エンドミルツールである
請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項16】
前記ツールシャンクは、焼結炭化物を含む
請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項17】
前記ツールシャンクは、廃棄ミル削り媒体を排出するために圧縮空気を前記ツールヘッドまで搬送するための導管を更に含む
請求項1に記載のミル削りツール。
【請求項18】
ミル削りツールヘッドの製造方法であって、
a.超硬材料を含むディスクブランクを与える段階、
b.少なくとも1つの前駆体ツールヘッドを前記ディスクから機械加工する段階、
c.複数のフルートを含有する階層をレーザを使用して前記前駆体ツールヘッドに形成する段階、
d.段階cを必要に応じて繰り返し、それにより、少なくとも2つの階層を含むツールヘッドであって、各階層が前記ツールヘッドの周りを周方向に延びる複数のフルートを含む前記ツールヘッドを形成する段階であって、前記ツールヘッドが、前記超硬材料を含み、前記階層が、互いに軸線方向に変位して前記ツールヘッドの非切削部分によって分離される前記形成する段階、
を含む方法。
【請求項19】
前記超硬材料は、高圧高温多結晶ダイヤモンド、化学気相蒸着ダイヤモンド、及び多結晶質立方晶窒化ホウ素のうちのいずれかを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ミル削りツールヘッドの製造方法であって、
a.ディスクブランクを与える段階、
b.少なくとも1つの前駆体ツールヘッドを前記ディスクから機械加工する段階、
c.複数のフルートを含有する階層をレーザを使用して前記前駆体ツールヘッドに形成する段階、
d.段階cを必要に応じて繰り返し、それにより、少なくとも2つの階層を含むツールヘッドであって、各階層が前記ツールヘッドの周りを周方向に延びる複数のフルートを含む前記ツールヘッドを形成する段階であって、前記ツールヘッドが、前記超硬材料を含み、前記階層が、互いに軸線方向に変位して前記ツールヘッドの非切削部分によって分離される前記形成する段階、及び
e.化学気相蒸着を使用して前記複数のフルート上に多結晶ダイヤモンドを堆積させる段階、
を含む方法。
【請求項21】
多結晶ダイヤモンドの前記化学気相蒸着は、ホットフィラメント化学気相蒸着を含む請求項20に記載の方法。
【国際調査報告】