(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】内燃機関の運転方法、方法を実施するためのシステム及び内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02D 19/02 20060101AFI20241114BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20241114BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20241114BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20241114BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20241114BHJP
F02M 26/36 20160101ALI20241114BHJP
F02M 26/37 20160101ALI20241114BHJP
【FI】
F02D19/02 B
F01N3/08 A
F01N3/18 B
F01N3/24 N
F02M21/02 G
F02M26/36
F02M26/37
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024527613
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2022081601
(87)【国際公開番号】W WO2023084015
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】102021129506.8
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520078075
【氏名又は名称】ケヨウ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KEYOU GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プリューム フランツ ウェルナー
(72)【発明者】
【氏名】コッホ ダニエル
【テーマコード(参考)】
3G062
3G091
3G092
【Fターム(参考)】
3G062ED03
3G091AA02
3G091AA11
3G091AA19
3G091AB06
3G091BA14
3G091CA19
3G091EA33
3G091FA12
3G091FA13
3G091FB10
3G091FB12
3G091HA37
3G091HB05
3G092AB09
3G092FA15
(57)【要約】
本発明は内燃機関(2)の運転方法に関し、ここで、内燃機関(2)は、燃料が周囲空気と共に少なくとも部分的に燃焼される少なくとも1つの燃焼室(3)と、少なくとも1つの燃焼室(3)の排気口側(7b)に流体流通可能に連結された排気管(6)とを備え、ここで、内燃機関(2)の燃料として水素が用いられ、ここで、内燃機関(2)はまた、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13)を有し、少なくとも1つの燃焼室(3)から排気管(6)に排出された排気ガスは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13)を流通し、ここで、リーンな水素-空気混合物は、第1の運転状態で少なくとも1つの燃焼室(3)で燃焼され、ここで、NOx吸蔵触媒(13)は、第2の運転状態で再生される。低エミッションシステムとして内燃機関を容易に運転するために、リッチな水素-空気混合物が、第2の運転状態で少なくとも1つの燃焼室(3)で燃焼される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(2)の運転方法であって、前記内燃機関(2)は、
燃料が周囲空気と共に少なくとも部分的に燃焼される少なくとも1つの燃焼室(3)と、
前記少なくとも1つの燃焼室(3)の排気口側(7b)に流体流通可能に連結された排気管(6,106)と、を備え、
前記内燃機関(2)の燃料として水素が用いられ、
前記内燃機関(2)は、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13,13a,13b)を有し、前記少なくとも1つの燃焼室(3)から前記排気管(6)に排出された排気ガスは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13,13a,13b)を流通し、
リーンな空気/水素混合物が、第1の運転状態で前記少なくとも1つの燃焼室(3)で燃焼され、
前記NOx吸蔵触媒(13,13a,13b)は、第2の運転状態で再生され、
リッチな空気/水素混合物が、前記第2の運転状態で前記少なくとも1つの燃焼室(3)で燃焼される、内燃機関(2)の運転方法。
【請求項2】
前記内燃機関(2)は、排気ガス再循環装置(14)をさらに備え、前記排気ガス再循環装置(14)を介して、排気ガスが前記排気管(6)から前記燃焼室(3)に戻される、請求項1に記載の内燃機関(2)の運転方法。
【請求項3】
前記第2の運転状態において、排気ガスは、前記排気ガス再循環装置(14)を介して前記少なくとも1つの燃焼室(3)に再循環される、請求項1又は請求項2に記載の内燃機関(2)の運転方法。
【請求項4】
前記第2の運転状態は、前記内燃機関(2)のアイドリング運転において設定される、請求項1~3に記載の内燃機関(2)の運転方法。
【請求項5】
前記第2の運転状態は、前記内燃機関(2)のオーバーラン運転において設定される、請求項1~4に記載の内燃機関(2)の運転方法。
【請求項6】
内燃機関(2)の運転方法であって、前記内燃機関(2)は:
燃料が周囲空気と共に少なくとも部分的に燃焼される少なくとも1つの燃焼室(3)と、
前記少なくとも1つの燃焼室(3)の排気口側(7b)に流体流通可能に連結された排気管(6,106)と、を備え、
前記内燃機関(2)の燃料として水素が用いられ、
前記内燃機関(2)は、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13,13a,13b)を有し、前記少なくとも1つの燃焼室(3)から前記排気管(6)に排出された排気ガスは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13,13a,13b)を流通し、
リーンな空気/水素混合物が、第1の運転状態で前記少なくとも1つの燃焼室(3)で燃焼され、
前記NOx吸蔵触媒(13,13a,13b)が第2の運転状態で再生され、
前記第2の運転状態で、前記NOx吸蔵触媒(13,13a,13b)に吸蔵された前記窒素酸化物を還元するための還元剤が、前記排気ガスの一部として、前記少なくとも1つの燃焼室に、又は、前記排気管(6,106a)において前記少なくとも1つの燃焼室(3)の下流であって前記NOx吸蔵触媒の上流若しくは前記NOx吸蔵触媒(13,13a,13b)に供給され、
好ましくは、回転又は拡散成分が、前記供給された還元剤の流れの少なくとも一部分に付与され、
前記還元剤は、好ましくは水素であり、特に好ましくは、燃料として用いられる前記水素と同一の供給源(15)に由来する、方法。
【請求項7】
前記第2の運転状態において、リーンな空気/水素混合物が継続して燃焼され、及び/又は、前記還元剤は、燃焼プロセスの完了後、好ましくは、前記排気ガスが前記燃焼室から排出される排気行程の最中に、前記燃焼室に供給される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
内燃機関(2)の運転方法であって、前記内燃機関(2)は:
燃料が周囲空気と共に少なくとも部分的に燃焼される少なくとも1つの燃焼室(3)と、
前記少なくとも1つの燃焼室(3)の排気口側(7b)に流体流通可能に連結された排気管(6,106)と、を備え、
前記内燃機関(2)の燃料として水素が用いられ、
前記排気管は、互いに並列に接続された複数の排気管部分(106a,106b)を有し、前記複数の排気管部分(106a,106b)の少なくとも2つは各々、前記少なくとも1つの燃焼室(3)から前記排気管(6)に排出された排気ガスの少なくとも一部が少なくとも一時的に流通する、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)を有し、
前記排気管部分(106a,106b)の少なくとも一方における前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)における流量が、好ましくは、前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)の上流に配置された可変絞り装置により、少なくとも一時的に変更される、運転方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒を各々備える複数の前記排気管部分(106a,106b)における前記流量が、相互に独立して変更される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)の再生のために、前記排気管部分(106a,106b)の少なくとも一方における前記流量が低減、好ましくは完全に抑制される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記NOx吸蔵触媒(13,13a,13b)に吸蔵された前記窒素酸化物を還元するための還元剤が、前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)の上流における少なくとも1つの排気管部分(106a,106b)に、又は、前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)に別々に、少なくとも一時的に供給される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記排気管部分(106a,106b)の少なくとも2つが、少なくとも一時的に交互に再生される、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実施するよう構成された制御装置(17)。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実施するためのシステム(1)であって、システム(1)は
請求項1~11のいずれか一項に記載の内燃機関(2)と、
前記内燃機関に流体流通可能に連結された水素用の貯蔵装置(15)と、
好ましくは、請求項12に記載の制御装置(17)と、を備え、
好ましくは、前記内燃機関(2)は、前記燃焼室(3)又は前記排気管(6)に還元剤を供給可能である少なくとも1つの流入装置(16a)であって、好ましくは、並列に接続された複数の排気管部分の各排気管部分に少なくとも1つの流入装置を有し、
前記流入装置(16a)はまた、好ましくは、水素の前記貯蔵装置(15)に流体流通可能に連結される、システム(1)。
【請求項15】
請求項14に記載のシステム(1)のための内燃機関(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の運転方法、方法を実施するためのシステム、及び、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
エミッションの観点から、水素駆動式内燃機関が好ましいことが知られている。例えば、煤及び一酸化炭素などの炭素を含有する排出生成物がこれらの内燃機関において除去される。
【0003】
さらに、独国特許出願公開第10 2016 107 466 A1号明細書によれば、水素駆動式燃焼機関からの排気ガス中のNOx成分を低減するための選択的触媒還元が提案されている。しかしながら、還元剤を排気管に連続して供給しなければならない。この場合、連続的な制御が要求される還元剤の正確な供給が必要となり、機能不全の場合には、NOx排出物が大気中に放出されてしまう可能性がある。
【0004】
特開2006-057504号公報には、内燃機関を水素で運転する方法がされている。燃焼中に生成された窒素酸化物を吸蔵するNOx吸蔵触媒が、内燃機関の排気管に位置されている。NOx吸蔵触媒を再生するために、化石燃料が燃焼混合気に加えられる。
【0005】
再生には難易度の高い制御が要求され、加えて、燃焼混合気の形成に複数種の燃料が関与するため、システム及び燃焼が複雑なものとなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の根底にあるは従って、ゼロ/低エミッションシステムとして内燃機関を単純でロバストな方法で運転することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題は、請求項1、6又は8に係る内燃機関の運転方法により解決される。
【0008】
第1の態様によれば、内燃機関の運転方法が提供されており、ここで、内燃機関は:燃料が周囲空気と共に少なくとも部分的に燃焼される少なくとも1つの燃焼室と;少なくとも1つの燃焼室の排気口側に流体流通可能に連結された排気管とを備える。内燃機関の燃料として水素が用いられる。内燃機関はまた、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒を有すると共に、少なくとも1つの燃焼室から排気管に排出された排気ガスは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒を流通する。リーンな空気/水素混合物が、第1の運転状態で少なくとも1つの燃焼室で燃焼される。NOx吸蔵触媒が第2の運転状態で再生され、リッチな空気/水素混合物がこの第2の運転状態で少なくとも1つの燃焼室で燃焼される。
【0009】
第1の態様によれば、内燃機関は、排出された排気ガスが流通する少なくとも1つのNOx吸蔵触媒を有する。これにより、窒素酸化物(NOx)排出物が、LNT触媒とも称される前記NOx吸蔵触媒に貯蔵可能となる。これにより、還元剤を連続的に供給する必要性がなくなる。
【0010】
第1の態様は、水素が燃焼機関の燃料として用いられることによる相乗効果を利用するものである。このように運転される燃焼機関は、有害な燃焼生成物として窒素酸化物を熱的にしか発生させない。従って、排気ガス後処理のための他の装置を省くことが可能である。従って、排気管には、適切な寸法のNOx吸蔵触媒のためのスペースが存在する。
【0011】
さらに、水素駆動式燃焼機関の燃焼温度などのプロセス条件では、例えばディーゼルエンジンと比して窒素酸化物形成が低い結果となる。これは、窒素酸化物は、長期間にわたって確実にNOx触媒に吸蔵されることが可能であることを意味する。
【0012】
さらに、本方法においては、リーンな空気/水素混合物は、第1の運転状態で少なくとも1つの燃焼室で燃焼される。
【0013】
リーン混合物を燃焼させることにより、燃焼機関の効率を高めることが可能である。同時に、燃焼温度を低くすることが可能となり、これにより、窒素酸化物の形成がさらに阻害され、そのため、NOx吸蔵触媒に窒素酸化物を長期間にわたって吸蔵させることが可能となる。このプロセスにおいて、リーン混合物の燃焼は、連続的に、それ故、燃焼機関の複数のサイクルにわたって運転されることが好ましい。リーンな空気/水素混合物は超化学量論的混合物である。好ましくは、1以上5以下のλが設定され;運転点に応じて、1.3以上3.5以下のλが特に好ましい。
【0014】
加えて、NOx吸蔵触媒が第2の運転状態で再生される。
【0015】
NOx吸蔵触媒に吸蔵された窒素酸化物を、大気中の窒素に転換して、大気中に放出することが可能である。次いで、NOx吸蔵触媒は再度窒素酸化物を吸収することが可能である。このように、有害な排出物の連続的な排出を防ぐことが可能である。
【0016】
本発明によれば、第2の運転状態においては、リッチな空気/水素混合物が少なくとも1つの燃焼室で燃焼される。
【0017】
第2の運転状態で、従って、準化学量論的空気/水素混合物を燃焼室に供給可能である。好ましくは0.6以上1.0以下、特に好ましくは0.8以上0.9以下のλが設定される。一方で、リッチな空気/水素混合物は、酸素の欠乏による窒素酸化物の形成を低減し、好ましくは完全に防止することが可能であり、また他方では、未燃焼の水素を確実に還元剤として排気管に供給することが可能である。これは、過剰量の水素を用いてNOx吸蔵触媒を再生することが可能であることを意味する。
【0018】
リッチ混合物は、窒素酸化物の形成が少なく、関連する長期の吸蔵が可能であることにより、適切な状況で設定可能である。
【0019】
好ましくは、内燃機関はまた排気ガス再循環装置を有し、排気ガス再循環装置は、排気ガスを排気管から燃焼室に戻す。
【0020】
これにより、燃焼生成物の不活性成分を排気管から燃焼室に再循環させることが可能となる。これらの成分はもはや燃焼に関与することはなく、燃焼プロセスから発熱エネルギーを取り出す。それ故、プロセス温度を低くすることが可能であり、これにより、さらなる窒素酸化物の形成が阻害される。好ましくは、排気ガスは、高圧の排気ガスとして、特に排気管におけるタービンの上流位置から再循環される。これにより、十分な再循環量が確保される。
【0021】
さらに他の態様によれば、第2の運転状態において、排気ガスは、排気ガス再循環装置を介して少なくとも1つの燃焼室に再循環可能である。
【0022】
それ故、NOx吸蔵触媒の再生のための第2の運転状態において、さらなる窒素酸化物の形成を低減、好ましくは完全に防止することが可能であり、及び、吸蔵触媒の再生を確実に実施することが可能である。反応性の低い混合物が事前の点火、すなわち、早期の点火となる傾向を防止可能であるため、他の好ましい効果が特に水素と併せて得られる。
【0023】
好ましくは、第2の運転状態は、燃焼機関のアイドリング運転において設定される。
【0024】
このように、燃焼機関によって駆動される装置の挙動に対する再生運転の影響を防止することが可能である。特に、水素駆動式内燃機関を備えた自動車において、運転挙動に対する影響を防止することが可能である。既述のとおり、第2の運転状態は、それ故、特に、内燃機関が、例えば、車両の少なくとも1つの駆動輪から切り離されることにより内燃機関に係る所定の仕事を行わずに運転される時、又は、換言すると、内燃機関に負荷がかけられていない時といった、信号での静止中などの適切な状況で実施可能である。内燃機関が自動車において用いられている際にこのような状況は十分に生じやすいため、自動車の運転が触媒の必要な再生フェーズによって制限されることなはい。さらに、アイドリング中に行われる空気の供給量の絞りによって、高い排気ガス再循環率を達成することが可能である。これは、排気ガスの背圧(可能な排気ターボ過給器のタービンの上流)がこの状態におけるインテークマニホールド内の圧力よりも高いことによる。それ故、排気ガス再循環に係る上記の効果を再生モードにおいて確実に達成することが可能である。
【0025】
さらなる態様によれば、第2の運転状態は、内燃機関のオーバーラン運転において設定可能である。オーバーラン運転は、特に、内燃機関により生成される出力が、内燃機関に加えられる引きずり力よりも小さいことを特徴とする。換言すると、内燃機関は、出力側から回転が維持されることが可能である。
【0026】
この場合にも、燃焼機関のオーバーラン運転も長距離の走行中に十分に生じやすいため、自動車の運転は触媒の必要とする再生フェーズによって制限されることはない。アイドリングモード中に空気の供給量が絞られても、オーバーラン運転中においては、供給される燃料の量は、リッチ混合物が燃焼されるよう特定的に設定することが可能である。同時に、点火を非常に遅らせることが可能であり、これにより、燃焼を安定させ、それ故、さらなる窒素酸化物の形成を低減又は好ましくは防止する。好ましくは、点火は、クランクシャフト角度の上死点前最大40°から排気弁の開放までの範囲内、特に、上死点の前最大40°から上死点の後最大360°まで、さらに好ましくは、上死点の前最大20°から上死点の後最大360、さらに好ましくは、上死点に対応する最大角度から上死点後最大360°までのクランクシャフトの角度範囲内で行われる。
【0027】
リッチ混合物及び着火遅れは排気ガスエンタルピーを高めることが可能であり、これにより、触媒の再生に十分な温度が確保される。オーバーラン運転中に燃焼機関により生成される出力は加えられる引きずり力よりも小さく、従って、オーバーラン運転は維持可能である。オーバーランフェーズにおいて再生モードとしてリッチ混合物の燃焼を行うことで、リーンからリッチな混合範囲への移行を非連続的に行うことが可能であり、そのため、1に等しいλ付近の混合範囲を通過する必要がないという利点が得られる。この範囲での窒素酸化物の形成は通常、きわめて高い。
【0028】
好ましくは、排気ガスは、第1の運転状態と第2の運転状態との移行時に、少なくとも一時的に再循環される。
【0029】
それ故、移行時に化学量論比に近い混合物を経る場合であっても、窒素酸化物の形成を低減、好ましくは完全に防止することが可能である。
【0030】
独立した態様として、又は、第1の態様に従属する態様として提供可能であるさらなる態様によれば、内燃機関の運転方法が提供されており、ここで、内燃機関は、燃料が周囲空気と共に少なくとも部分的に燃焼される少なくとも1つの燃焼室と、少なくとも1つの燃焼室の排気口側に流体流通可能に連結された排気管とを有する。水素が内燃機関の燃料として用いられ、ここで、内燃機関はまた、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒を有すると共に、少なくとも1つの燃焼室から排気管に排出された排気ガスは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒を流通し、ここで、リーンな空気/水素混合物が、第1の運転状態で少なくとも1つの燃焼室で燃焼され、ここで、NOx吸蔵触媒が第2の運転状態で再生され、ここで、第2の運転状態で、NOx吸蔵触媒に吸蔵された窒素酸化物を還元するための還元剤が、排気ガスの一部として、少なくとも1つの燃焼室に、又は、排気管において、少なくとも1つの燃焼室の下流であってNOx吸蔵触媒の上流、若しくは、NOx吸蔵触媒に供給される。
【0031】
この態様によっても、熱的窒素酸化物のみが、リーンな空気/水素混合物の燃焼中に、有害な燃焼生成物として生成される。従って、他の排気ガス後処理装置を省略することが可能である。従って、排気管には、適切な寸法のNOx吸蔵触媒のためのスペースが存在する。
【0032】
さらに、リーンで運転される、及び/又は、排気ガス再循環率が高い水素駆動式内燃機関の燃焼温度などのプロセス条件は、例えばディーゼルエンジンと比して窒素酸化物形成が低くなる。これは、NOx触媒に窒素酸化物を長期間にわたって確実に吸蔵させることが可能であることを意味する。
【0033】
リーン混合物の燃焼は燃焼機関の効率の程度を高めることが可能である。同時に、燃焼温度を低くすることが可能となり、これにより、窒素酸化物の形成がさらに阻害され、そのため、NOx吸蔵触媒に窒素酸化物を長期間にわたって吸蔵させることが可能となる。このプロセスにおいて、リーン混合物の燃焼は、連続的に、それ故、燃焼機関の複数のサイクルにわたって操作されることが好ましい。リーンな空気/水素混合物は超化学量論的な混合物である。好ましくは、1以上5以下のλが設定され;運転点に応じて、1.3以上3.5以下のλが特に好ましい。
【0034】
加えて、NOx吸蔵触媒が第2の運転状態で再生される。
【0035】
NOx吸蔵触媒に吸蔵された窒素酸化物を、大気中の窒素に転換して、大気中に放出することが可能である。その後、NOx吸蔵触媒は再度窒素酸化物を吸収することが可能である。このように、有害な排出物の連続的な排出を防ぐことが可能である。
【0036】
さらに、この態様によれば、還元剤は、燃焼プロセス由来の排気ガスとして提供される必要なく、排気管に直接供給可能である。それ故、内燃機関は、リーンな空気/水素混合物を燃焼させる第1の運転状態で継続して運転されることが可能である。特に、リーンな空気/水素混合物を継続して燃焼させることが可能である。第1及び第2の運転状態は、従って、相互に排他的ではなく、共存することも可能である。当然ながら、第2の運転状態のみが存在することとなるよう、リッチ混合物の燃焼と平行して、還元剤の排気管への直接的な供給を行うことも可能である。
【0037】
この態様によれば、しかしながら、特に燃料を燃焼室に直接供給する内燃機関において、還元剤を排気ガスの一部として提供することも可能である。この場合、還元剤は、燃焼室に供給され、次いで、燃焼室から排出された後に排気管に供給されることができる。
【0038】
好ましくは、回転又は拡散成分が、供給された還元剤の流れに、少なくとも部分的に付与される。
【0039】
これにより排気管における混合を高めることが可能であると共に、還元剤が均等に流通するため吸蔵触媒を確実に再生させることが可能である。
【0040】
好ましくは、還元剤は水素であり、特に好ましくは、燃料として用いられる水素と同一の供給源に由来する。特に、還元剤が燃焼室に直接噴射される場合、水素を燃焼室に供給するために用いられるものと同一の供給装置を使用することが可能である。
【0041】
これにより、すべての成分を水素に適合させることが可能であるため、システムの複雑さが低減される。さらに、還元剤のタンクなどの追加の貯蔵装置が不要である。
【0042】
好ましくは、還元剤は、燃焼プロセスの完了後に、さらに好ましくは、排気ガスが燃焼室から排出される排気行程の最中に燃焼室に供給される。これにより、還元剤は、確実に、燃焼室中に含有される空気中の酸素と共に燃焼されない。
【0043】
さらなる態様によれば、第2の運転状態の設定は、20%超又は100%未満、好ましくは70~90%、特に好ましくは80%のNOx吸蔵触媒の飽和度で実施可能である。飽和度を測定する公知の方法を使用可能である。
【0044】
これは、吸蔵触媒はその吸蔵容量の大部分を利用可能であることを意味する。第1の運転状態における窒素酸化物形成は少ないため、切り替え時における過飽和を防止することが可能であり、従って、吸蔵容量限界に非常に近い状態で切り替えを行うことが可能である。
【0045】
さらなる独立した態様として、又は、上記の態様に従属する態様として提供可能であるさらなる態様によれば、内燃機関の運転方法が提供されており、ここで、内燃機関は、燃料が周囲空気と共に少なくとも部分的に燃焼される少なくとも1つの燃焼室と、少なくとも1つの燃焼室の排気口側に流体流通可能に連結された排気管とを有し、水素が内燃機関の燃料として用いられる。排気管は並列に接続された複数の排気管部分を有し、複数の排気管部分の少なくとも2つの各々は、少なくとも1つの燃焼室から排気管に排出された排気ガスの少なくとも一部が少なくとも一時的に流通する少なくとも1つのNOx吸蔵触媒を有し、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒における流量は、排気管部分の少なくとも一方において、好ましくは、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒の上流に配置された可変絞り装置により少なくとも一時的に変更される。
【0046】
排気ガスの流れは、それ故、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒の残存する容量に応じて影響を受けることが可能である。排気管中のNOx吸蔵触媒が容量限界に近い場合、この排気管における流量を低減することが可能であり、一方で、並列に接続されたNOx吸蔵触媒により多くの量を継続して流通させることが可能である。これにより、NOx吸蔵触媒を上記の態様のように効率的に運転することが可能となる。
【0047】
好ましくは、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒を各々有する複数の排気管部分における流量は、互いに独立して変更される。
【0048】
この目的のために、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒の上流に互いに並列に配列された少なくとも1つ、好ましくは、複数の排気管部分に可変絞り装置を配置することが可能であり、可変絞り装置は独立して制御されて、それぞれの排気管部分における排気ガス量を調整する。
【0049】
それ故、各並列に接続されたNOx吸蔵触媒を独立して反応させることが可能である。
【0050】
さらに、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒を再生するために、排気管部分の少なくとも1つにおける流量を低減、好ましくは完全に抑制することが可能である。
【0051】
内燃機関がリーン燃焼混合物で運転される場合、例えば、窒素酸化物は、容量限界に近いNOx吸蔵触媒を有する少なくとも1つの排気管部分を、絞られていない状態で流通し続けることとなる。低減により、それ故、再生中における、排気管部分の少なくとも1つにおける窒素酸化物のさらなる多量の供給を抑制することが可能である。
【0052】
好ましくは、NOx吸蔵触媒に吸蔵された窒素酸化物を還元するための還元剤は、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒の上流で互いに並列に接続された複数の排気管部分の少なくとも1つ、特に好ましくは各排気管部分に、又は、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒に、供給され、特に好ましくは、供給される還元剤の量は、排気管部分ごとに個別に制御される。
【0053】
これにより、NOxの吸蔵及び再生に係る効率を高めることが可能である。内燃機関は、継続して、リーン燃焼混合物で運転されることが可能である。この方法において単一の排気管のみが設けられている場合、相当な量の還元剤(水素)が、リーン燃焼のために存在する酸素を補償するために加えられなければならない。そうして初めて、酸素の不在下で再生を行うことが可能である。対照的に、上記の態様によれば、それぞれの排気管部分の少なくとも1つにおける酸素の供給を、例えば絞り装置により減らすことが可能であり、これにより、内燃機関がリーン燃焼混合物で継続して運転された場合であっても、1つの排気管部分のみが設けられている場合と比して、より少ない量の水素が必要とされる。従って、再生のために、それぞれの排気管部分における流量が絞られていない状態などの非再生状態と比して低減されている場合には、それぞれの排気管部分への還元剤の別々の供給が特に好ましい。
【0054】
さらなる態様によれば、排気管部分の少なくとも2つを、少なくとも一時的に、交互に再生させることが可能である。
【0055】
例えば、2つの吸蔵触媒が並列に接続されており、内燃機関が最大出力の半分以下で運転されているときに、効率の最大の向上が得られる。これは、この場合、排気管部分の絞り装置は、少なくともこれに配置された吸蔵触媒の再生のために、その少なくとも一方の吸蔵触媒が再生されるこの排気管部分における排気ガスの供給を完全に遮断するよう制御可能であるからである。並列排気管部分において、絞り装置は全開となるよう制御されることが好ましい。これは、排気管部分の2つにおいて再生は交互に行われることを意味し、ここで、再生は、一方の排気管部分で行われ、他方においては行われていない。同様に、非再生状態などの基準状態におけるものと比した流量の変更であって、特に低減は、交互に行うことが可能である。特に好ましくは、それぞれの絞り装置は、最大出力の半分以下での内燃機関の運転中に交互に全開閉され、それ故、それぞれの流量は交互に完全に抑制され、及び、低減はされない。好ましくは、流量は、「定格出力の1倍」から「並列に配置された排気管部分の数の逆数×定格出力」を差し引いたもの以下で交互に低減され、特に完全に抑制され、及び、低減はされない。
【0056】
さらなる態様によれば、少なくとも並列に接続された吸蔵触媒、好ましくは、各事例において排気管部分全体は、最大出力で生成された窒素酸化物を、絞られていない状態のすべての排気管部分に、それ故、流量が低減されていない時、特に、並列に接続された吸蔵触媒の合計が所定の空間速度に従って構成されている時に、完全に吸蔵させることが可能であるよう構成されていることが可能である。吸蔵触媒及び排気管部分は同じ寸法とされることが好ましい。
【0057】
しかしながら、少なくとも並列に接続された吸蔵触媒、好ましくは、それぞれの排気管部分全体を、流量を、定格出力で、少なくとも1つの排気管部分で完全に抑制可能であるよう構成することも考えられる。これにより、流量は、流量が低減されておらず、及び、吸蔵触媒が中に配置されている残りの排気管部分を定格出力で流れることが可能である。これにより、定格出力でも生成される窒素酸化物は、流量が低減されていない排気管部分の吸蔵触媒で吸蔵される。特に、並列に接続された吸蔵触媒の残りの合計は、所定の空間速度に従って構成されていることが可能である。2つの並列排気管部分の場合、排気管部分の各々は、定格出力で、生じる窒素酸化物が、流量が低減されていない排気管部分の少なくとも1つの吸蔵触媒において、完全に吸蔵されるよう構成されていることが好ましい。これにより、完全な再生が可能であるマップ範囲を拡張させることが可能である。
【0058】
さらに、この問題は、前述の態様のいずれかに係る方法を実施するよう構成された制御装置により解決される。
【0059】
このような制御装置により、搭載されることとなるプラットフォームを低エミッションシステムとして運転することが可能となる。
【0060】
制御装置に追加して、本発明はまた、内燃機関に接続されたコンピュータで実行された時に、上記の方法を実施するプログラムに関する。同様に、本発明は、前記プログラムが実行される、コンピュータ読取可能な記録媒体に関する。
【0061】
上記の問題はさらに、上記の態様のいずれかに係る方法を実施するためのシステムにより解決され、ここで、システムは:上記の態様のいずれかに定義されている内燃機関;及び、内燃機関に流体流通可能に連結された水素貯蔵装置を備える。
【0062】
このようなシステムは、高い信頼性を有するゼロ/低エミッションシステムを構成する。
【0063】
好ましくは、このシステムはさらに、上記の態様のいずれかに係る方法を実施するよう構成された制御装置を備える。
【0064】
上記の効果は、制御装置、燃焼機関及び貯蔵装置の相互作用により確実に実現可能である。
【0065】
好ましくは、このシステムにおいて、内燃機関はまた、還元剤を燃焼室又は排気管に供給可能である少なくとも1つの流入装置を有し、好ましくは、複数の排気管部分並列に接続されている場合において、各排気管部分に少なくとも1つの流入装置を有する。
【0066】
これにより、燃焼機関中の排気管に、燃焼室を介して、又は、燃焼室をバイパスして還元剤を供給可能となり、従って、リーン混合物からリッチ混合物への混合物の切り替えは不要である。
【0067】
好ましくは、本システムにおいて、内燃機関はさらに、排気管における還元剤の流れに、少なくとも部分的に、回転又は拡散成分を付与するよう構成されており、ここで、内燃機関は、好ましくは、旋回装置、又は、主流れ方向に対して傾斜したプロファイルを有する。
【0068】
これにより、排気管内における還元剤の向上した混合が可能であり、これによって、触媒の効率が向上する。回転成分は旋回装置により容易に付与することが可能である。流れは、傾斜したプロファイルによってこのプロファイルに沿って拡散させることが可能である。
【0069】
特に、本開示に係る構造的特徴のいずれかの組み合わせを有し得る、既述のシステムのための内燃機関がさらに提供されている。
【0070】
ここで、図面に係る例示的な実施形態を参照して、上記の態様をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】
図1は、上記に説明した方法を実施可能であるシステムを概略的に示す。
【
図2】
図2は、本発明に係る内燃機関の排気管の変形例の概略縦断面図を示す。
【
図3】
図3は、NOx吸蔵触媒を再生する方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
システム1は、内燃機関2の円筒状の燃焼室3の軸に沿った縦断面図で
図1に示されている内燃機関2(エンジン)を備える。内燃機関2は、燃焼室3に加えて、インテークマニホールド5及び排気管6を有し、これらは、それぞれバルブを介して開閉される吸気口及び排気口7a及び7bを介して、流体流通可能に燃焼室に接続されている。
【0073】
図1に示すとおり、空気量を調整する絞り弁8と燃料をインテークマニホールド5に噴射する噴射装置9とを、インテークマニホールド5に配置することが可能である。上端部では、燃焼室3は、吸気口7aから燃焼室に流入した空気/燃料の混合物に点火するよう点火プラグ10が配置されたシリンダヘッドによって閉止されている。下端では、燃焼室3は、クランクシャフト12に回転可能に連結されたピストン11により閉止されている。好ましくは、水素のみが燃料として用いられる。
【0074】
空気/燃料の混合物の燃焼によって生成された排気ガスが排気管6に流入する排気口7bは、軸に対して吸気口7aとは反対側に位置されている。
【0075】
NOx吸蔵触媒(NSK)13が排気管6中の排気口7bの下流に位置されている。このNOx吸蔵触媒13は、例えば、CeO2及びBa(OH)2又はBaCO3が付着している酸化アルミニウム基材から主に構成される。例えば、白金及びロジウム又はパラジウムが、活性成分として用いられることができる。
【0076】
吸蔵触媒13の上流で、排気管は分岐部14を有する。吸蔵触媒13が位置されている分岐部14aは排気管の終端管で終端し、他の分岐部14bは排気ガス再循環装置の一部であって、分岐部に対する下流端でインテークマニホールド5に開口する。排気ガス再循環装置はそれ故、高圧ガスを再循環させる。排気ガス再循環装置はまた、例えばバルブ、及び、再循環排気ガスを監視するためのセンサを備えていることが可能である。分岐部14aにおいては、好ましくは、吸蔵触媒13の上流に、排気ターボ過給器を駆動するタービンを設けることも可能である。
【0077】
システム1はまた、水素が充填される貯蔵装置15を備える。貯蔵装置15は、噴射装置9を介して流体流通可能にインテークマニホールド5に連結されており、ここで、噴射装置9は、吸気口7aの上流でインテークマニホールド5に水素を噴射可能である。噴射装置9は、燃料を供給するための供給装置の一例である。さらに、貯蔵装置15は、ライン16を介して流体流通可能に触媒13の上流で排気管に連結されている。ライン16の末端部分16a(噴射器)は排気口16a1の方向に広がった形状を有し、それ故、ライン16の主流れ方向に対して角度を有する形状となっている。排気口16a1を有する末端部分16aは、特許請求の範囲で意味するところの還元剤の流入装置である。
【0078】
さらに、システム1はECUなどの制御装置17を有する。制御装置17はシステム1に配置された数多くのセンサからの信号(破線で示す)を受信し、次いで、電気信号(破線で示す)を介してシステム1に配置されたアクチュエータ及びバルブを制御する。
【0079】
システム1は、上記に説明した方法を実施するために使用可能である。制御装置17が内燃機関2を始動させる始動信号を受信すると、噴射装置9が作動して、吸気行程において、インテークマニホールド5中の空気に水素燃料を噴射する。点火プラグ10による点火による燃焼室3内における水素/空気混合物の燃焼で、クランクシャフト12に動力が供給される。排気ガスとしての燃焼生成物が排気口7bを通って排気管6に入る。そして、燃焼生成物はNOx吸蔵触媒13を流通する。
【0080】
吸蔵触媒13の機能は以下のとおりである。エンジン2の通常の第1の運転状態(λ>1、リーン混合物の燃焼)においては、NOは、過剰に存在する酸素によって、触媒13の白金などの貴金属でNO2に酸化され、亜硝酸塩、特に硝酸塩として、好ましくは、Ba(OH)2又はBaCO3などの塩基性吸蔵成分といった吸蔵成分に結合される。
【0081】
エンジン2は、第1の運転状態で連続して運転されることが可能である。リーン混合物を燃焼させることにより、エンジン2の効率を高めることが可能である。同時に、燃焼温度を低くすることが可能となり、これにより、窒素酸化物の形成が阻害され、それ故、NOx吸蔵触媒13に窒素酸化物を長期間にわたって吸蔵させることが可能となる。リーン混合物の燃焼は、好ましくは、連続的に、それ故、内燃機関の複数のサイクルにわたって行われる。好ましくは、λは1以上5以下に設定され;運転点に応じて、1.3以上3.5以下のλが特に好ましい。
【0082】
ここで、制御装置17が、例えばシステム1が用いられている自動車が信号で停止しているためにエンジン2がアイドリング運転で運転されているという情報を受信した場合、制御装置17は絞り弁8を制御し、これにより、インテークマニホールド5中における空気の量を低減させる。同時に、制御装置17は、例えば分岐部14bに配置された遮断弁を開くことにより排気ガス再循環装置を作動させて、分岐部14a中における排気ガスの流量を低減させる。これにより、同一の混合物発熱量で噴射装置9により噴射される燃料の量でリッチ混合物が形成される程度に空気の量が低減されるため、リッチな空気/水素混合物(λ<1)が燃焼するアイドリング運転における第2の運転状態が設定される。同時に、再循環排気ガスが混合物に供給される。空気の供給は、少なくともアイドリング出力に必要とされる混合物発熱量の準化学量論的混合物が達成されるように設定されることが好ましい。
【0083】
一方で、リッチな空気/水素混合物は、酸素と水素の完全燃焼による窒素酸化物の形成を低減、好ましくは完全に防止することが可能であり、また他方では、未燃焼の水素を確実に還元剤として排気管6に供給することが可能である。これは、過剰量の水素を用いてNOx吸蔵触媒13を再生することが可能であることを意味する。再循環排気ガスは、燃焼生成物の不活性成分を排気管6から燃焼室3に戻す。これらの成分は、もはや燃焼プロセスに関与しない。これは、プロセス温度を低くすることが可能であり、これにより、さらなる窒素酸化物の形成が阻害されることを意味する。これは、吸蔵触媒は確実に再生可能であることを意味する。このために、第1の運転状態と第2の運転状態との移行時に、排気ガスを少なくとも一時的に再循環させることも好ましい。
【0084】
第2の運転状態は、触媒13が完全に再生されるまで制御装置17によって設定されることが好ましい。
【0085】
アイドリング運転と同様に、制御装置は、エンジン2のオーバーラン運転中においても第2の運転状態に設定可能である。例えば、制御装置17がオーバーランモードが存在していることを検出した場合、制御装置17は、絞り弁8によって調整可能である空気の供給量に応じて、リッチ混合物が存在するよう噴射装置9を制御する。さらに、排気ガス再循環がアイドリング運転と同様に作動される。
【0086】
オーバーラン運転に係る一つの前提条件は、オペレータ(例えば運転手)は燃焼機関からのトルクを全く要求しておらず、すなわち、アクセルペダルを踏み込んでいないことである。燃料の供給にもかかわらずゼロトルクを確保するために、点火プラグ10は非常に遅い段階で点火される。
【0087】
好ましくは、点火は、クランクシャフト角度の上死点前最大40°から排気弁の開放までの範囲内、特に、上死点の前最大40°から上死点の後最大360°まで、さらに好ましくは、上死点の前最大20°から上死点の後最大360、さらに好ましくは、最大上死点に対応する最大角度から上死点後最大360°までのクランクシャフトの角度範囲内で行われる。
【0088】
好ましくは、オーバーラン運転における空気の供給は、例えば絞り弁を調整することにより、作動モード(内燃機関による駆動)と比して減らされている。これは、リッチ混合物を形成するために供給が必要とされる水素は非常に少量であることを意味する。
【0089】
リッチ混合物及び着火遅れは排気ガスエンタルピーを高めることが可能であり、これにより、触媒13の再生に十分な温度が確保される。リッチ混合物の発熱量に対応するオーバーラン運転中に内燃機関により生成される出力は、内燃機関に加えられる引きずり力よりも小さい。オーバーランフェーズにおいて再生運転としてリッチ混合物を燃焼させる利点は、リーンからリッチな混合範囲への移行を非連続的に行うことが可能であり、従って、1に等しいλ付近の混合範囲を通過する必要がないということである。この範囲での窒素酸化物の形成は一般にきわめて高い。超化学量論的範囲(ストイキオメトリック)から準化学量論的範囲に混合物が連続的に移行する場合には、アイドリング運転への移行中、窒素酸化物形成が高くなる混合範囲が一定の状況下で生じ得る。
【0090】
上記の方法は
図3に要約される。ステップS1において、システム1は触媒13の飽和状態NOx%を連続的に監視し、ここで、例えば計測による公知の方法を使用可能であり、及び/又は、飽和状態はモデル化することが可能である。制御装置17は、飽和状態が、例えば、20%超又は100%未満、好ましくは70~90%の所定の限界値Thに達したと判定したら、ステップS2で再生が要求され、それ故、第2の運転状態が指示される。
【0091】
ステップS3において、アイドリング運転LL又はオーバーラン運転SBが既定の時間間隔で予想されるかどうかがチェックされる。例えば、内燃機関を搭載した車両が走行している経路プロファイル、又は、ナビゲーションデータを使用することが可能である。所定の時間間隔は、好ましくは、限界値Thに依存する。アイドリング又はオーバーラン運転が特定の時間間隔内に予想される場合、ステップS3aにおいて、この2つの状態のいずれか一方で再生が実施される。アイドリング運転又はオーバーラン運転が存在しないか、又は、存在する予定がないと判定されると、例えば、ライン16の遮断弁が開放され、水素貯蔵装置15から水素が、流入装置16aを介して、燃焼室3をバイパスして排気管6に直接供給される。このように、リッチ混合物の燃焼に適切な条件が長期間にわたって生じない場合においても、触媒13の再生を確保することが可能である。特に、触媒13は、全負荷VL又はTLにおいても再生可能である。
【0092】
必要であれば、ライン16及び流入装置16aを省略することも可能である。この場合、制御装置17は、例えば、触媒13の飽和度が20%超又は100%未満、好ましくは70~90%である時、内燃機関2の使用者(運転手)に、アイドリング運転に切り替える必要があると警告を発することが可能である。オーバーラン又はアイドリング運転に切り替えるために十分な時間を与えるために、流入装置が存在する場合よりも限界値は低いことが好ましい。
【0093】
しかしながら、制御装置17はまた、オーバーラン運転又はアイドリング運転の何れにおいても、排気ガス再循環下でリッチ混合物の燃焼を設定しないようにプログラムすることが可能である。この場合、第2の運転状態での再生はライン16及び流入装置16aを介することのみで実施可能であり、ここでは、還元剤が排気管6に直接供給される。これは、エンジン2を第1の運転状態(リーン混合物)で継続して運転することが可能であり、その一方で、第2の運転状態が同時に存在していることを意味する。しかしながら、選択的に、又は、追加で、特に、エンジンにおいて供給装置を介して燃焼室3に燃料が直接供給される場合、還元剤を排気ガスの一部として供給することも可能である。この場合、還元剤は、燃焼室3に供給され、次いで、燃焼室3から排出された後に排気管6に供給可能である。燃焼室3への供給は、好ましくは、燃焼プロセスの完了後、従って、点火プラグによる点火が完了し、燃焼した混合物のエネルギーが、特に排気行程において、供給された還元剤の燃焼を可能にしない時に行われる。特に、還元剤は水素であり、燃焼水素と同じ供給装置を介して供給可能である。この場合、リーン混合物も燃焼可能である。
【0094】
図2は、エンジンの排気管106の変形例の概略縦断面図を示す。
【0095】
図2に示すとおり、排気管106は、例えば、好ましくは
図1に示す分岐部の下流で、相互に並列に接続された2つの排気管部分106a及び106bに分割されている点で上記の排気管6とは異なる。排気管部分106a及び排気管部分106bはそれぞれ、NOx吸蔵触媒13a及び13bを有する。2つの触媒13a及び13bの各々の上流には、絞り弁(特許請求の範囲に記載されている絞り装置)18a及び18bが設けられている。絞り弁18a及び18bと触媒13a及び13bとの間には、それぞれ、流入装置19a又は19bがさらに設けられており、これを介して、触媒13a及び13bを再生するための還元剤を、それぞれの排気管部分106a及び106bに少なくとも1つの燃焼室をバイパスして供給可能である。換言すると、排気管部分106a及び106bは各々、触媒13a及び13bの上流に流入装置19a及び19bを備える。流入装置19a及び19bは各々、噴射器を備えることが好ましい。噴射器は、還元剤(水素)を排気管部分106a及び106bに噴射する。
【0096】
絞り弁18a及び18bは絞り開度が可変である。絞り弁18a及び18bの各々の開放角度は個別に設定が可能であり、それ故、他の絞り弁とは独立して設定が可能である。それ故、それぞれの排気管部分106a及び106bに流れる排気ガスの量を変えること、特に、個々に調整することが可能である。また、流入装置(噴射器)は、個々に制御でき、還元剤を各排気管部分106a及び106bに別々に供給可能である。特に、供給される還元剤の量(質量流)は個々に制御される。
【0097】
上記の変形例は、エンジンが、最適な運転点で運転可能であると共に、排気ガス中の酸素及び窒素酸化物成分を抑制するためにリッチ燃焼を行う必要がない点で有利である。上記の変形例によれば、窒素酸化物の吸蔵及び再生の効率を高めることが可能である。並列排気管部分におけるNOx吸蔵触媒13a及び13bの一方(例えば13a)がその容量限界に近い場合、例えば所定の限界値Thより高い場合、排気ガスは、その容量限界近くで作動されている吸蔵触媒13aが位置している排気管部分の絞り装置18aによって、この排気管部分に供給される流量を低減、好ましくは完全に抑制することで、他の排気管部分106bの他のNOx吸蔵触媒13bに継続して吸蔵させることが可能である。この構成は再生に特に効果的である。1つの吸蔵触媒のみでは、内燃機関は、再生のためにリッチで運転しなければならないか、又は、少なくとも1つの燃焼室をバイパスして、相当な量の還元剤を排気管に別途供給しなければならない。後者の方法では、内燃機関は依然としてリーンで運転が可能であるが、リーン燃焼のために存在する酸素を補償するために相当な量の還元剤(水素)を供給する必要がある。そうして初めて、酸素を排除した状態で再生を行うことが可能である。対照的に、本実施形態では、それぞれの排気管部分106aにおける酸素の供給を絞り装置18aにより減らすことが可能であり、これは、第1の実施形態のように排気管部分が1つしかない場合と比して、必要とされる水素の量が少ないことを意味する。
【0098】
好ましくは、吸蔵触媒13a及び13bと排気管部分106a及び106bは、同じ寸法とされている。並列に接続された吸蔵触媒13a及び13bと排気管部分106a及び106bとは、一緒になって、すべての排気管部分が絞られていない状態、それ故、流量が低減されていない時に、最大出力で生成された窒素酸化物を完全に吸蔵可能であるよう構成されている。換言すると、排気管部分106a及び106bが全開の場合、最大出力で生成されたすべての排気ガスは、場合により排気ガス再循環量を差し引いて、窒素酸化物が浄化される。
【0099】
この文脈では、2つの吸蔵触媒が並列に接続されており、燃焼機関が最大出力の半分以下で運転されているときに、効率の最大の向上が得られる。その結果、流量は交互に低減、特に完全に抑制されることがあり、「並列に配置された排気管部分の数の逆数(2、逆数:1/2)×定格出力」を「定格出力の1倍」から差し引いた適用出力以下では低減されない。
【0100】
これは、この場合、排気管部分の絞り装置18aは、少なくともその中に配置された吸蔵触媒13aの再生のために、少なくとも一方の吸蔵触媒13aが再生されるときに、この排気管部分106aにおける排気ガスの供給を完全に遮断するよう制御可能であるからである。同時に、並列排気管部分106bにおける絞り装置18bは、全開となるよう制御されることが好ましい。それぞれの流量は従って、交互に完全に抑制され、及び、低減はされない。
【0101】
特に好ましくは、それぞれの絞り装置18a及び18bは、最大出力の半分以下が適用される場合、内燃機関の運転中に、交互に全開閉される。ECU17は、絞り弁18a及び18b、並びに、流入装置19a及び19bを制御する。
【0102】
しかしながら、少なくとも並列に配置された吸蔵触媒、好ましくは、それぞれの排気管部分の全体は、少なくとも1つの排気管部分において、定格出力(最大出力)で、流量を完全に抑制可能であるよう構成することも考えられる。これにより、流量は、流量が低減されておらず、及び、中に吸蔵触媒が配置されている残りの排気管部分を、公称出力で流れることが可能である。これにより、公称出力で生成された窒素酸化物も、流量が低減されていない排気管部分の吸蔵触媒で確実に吸蔵される。2つの並列排気管部分の場合、各排気管部分は、定格出力で、生じる窒素酸化物を、流量が低減されていない排気管部分の少なくとも1つの吸蔵触媒において、完全に吸蔵可能であるよう構成されていることが好ましい。これにより、完全な再生が可能であるマップ範囲を拡張させることが可能である。触媒及び排気ガストレーン部分は、従って、これらが、絞られていない状態で排気ガスの全量を浄化可能であるよう適応されている場合と比して、大型化されている。
【0103】
触媒の下流には、処理された後の排気ガス中の窒素酸化物の含有量を検出し、それ故、触媒の完全な飽和又は異常を判定することが可能である窒素酸化物センサ21a及び21bが設けられている。例えば、窒素酸化物の含有量が触媒13aの下流で検出された場合、制御装置17は、絞り弁18aを完全に閉じるよう制御することが可能である。同時に、他の絞り弁18bが全開とされる。触媒自体における飽和度は、公知の方法を用いて計測が可能である。飽和度はまた、モデル化することも可能である。
【0104】
少なくとも1つの窒素酸化物センサを吸蔵触媒の上流に配置することも可能である。これは、並列排気管部分106a及び106bの各々において、好ましくは、それぞれの絞り弁の上流に、及び/又は、分岐上流の共通の排気管106において行うことが可能である。特に、この少なくとも1つの窒素酸化物センサの出力を用いて、並列に配置された排気管部分を制御することが可能である。
【0105】
排気管部分、特に絞り弁及び噴射器は、それ故、触媒の上流又は下流における少なくとも1つの窒素酸化物センサからの信号に基づいて制御することが可能である。絞り弁18a及び18bは、一の触媒13aにおいて例えば80%飽和レベルの再生限界値に達したら、他の触媒13bが、その再生限界値まで少なくとも20%飽和レベルの余地を有するように制御されることが好ましい。このように、触媒13aが再生されている時に、他の触媒13bがさらなる窒素酸化物に対して十分な容量を有することを保証することが可能である。
【0106】
変形例において、排気管部分の数は2つに限定されない。むしろ、3つ以上の排気管部分を設けることも可能である。加えて、触媒の上流の排気管部分の1つだけが可変絞り装置を有する場合でも、好ましい効果がすでに達成される。これは、該当する触媒は、容量限界に達した時にさらなる窒素酸化物から離間させることが可能であると共に、他の並列の触媒とは独立して再生されることが可能であるからである。好ましくは、並列に配置された触媒及び/又は排気管部分は各々、吸蔵容量又は断面積で1:1のサイズ比に適合されている。これにより、効率の特に高い増加が可能となる。
【0107】
リッチ燃焼混合物もまた再生のために燃焼させることが可能である。
【0108】
同様に、上記の実施形態において、1つの燃焼室の代わりに複数の燃焼室を設けることが可能である。
【0109】
既述のとおり、混合物形成の種類は重要ではない。これは、燃焼室の中又は外で生じることが可能である。
【0110】
ライン16の末端部分16aにおける傾斜したプロファイルの代わりに、それ自体に沿って流体が強制的に流れるスクリューフライトを有する旋回装置を設けることも可能である。排気口16a1の主流れ方向はまた、排気管又は排気管部分の主流れ方向に対して傾いていることが可能である。傾斜したプロファイルを提供することは必須ではない。傾いた構成は、流れに回転成分を付与する。
【0111】
排気ガスが少なくとも1つの吸蔵触媒の上流で再循環することが好ましいが、しかしながら、排気ガス再循環は少なくとも1つの吸蔵触媒の下流で生じてもよい。
【0112】
本開示が別途教示しない限りにおいて、「少なくとも」はそれぞれの全体をも含む。
【0113】
上記のシステム1は、自動車に使用され、組み込まれることが好ましい。エンジン2は、好ましくは、転換された従来のディーゼルエンジン、特に好ましくは、トラックなどの商業用車両のディーゼルエンジンである。システムは、ディーゼルタンクの代わりに、燃料貯蔵装置15として水素タンクをさらに提供する。システム1及び上記の方法については、それに応じて大型であり、したがって、水素エンジンについて長期の吸蔵時間が確保される、NOx吸蔵触媒を備えるディーゼル原理による内燃機関が好ましく用いられる。
【0114】
本発明のさらなる態様はしたがって、例えば自動車に実装され得る既存のディーゼル駆動系の転換方法に関し、燃料の貯蔵装置は水素貯蔵装置に置き換えられ、及び、直接噴射式装置が点火プラグにより置き換えられる。水素を燃焼室に、好ましくは、シリンダヘッドに供給する供給装置を設けることも考えられる。利用可能ではない場合、絞り弁を加えることも可能である。さらに、制御装置は、上記の方法を実施するようプログラムされる。
【0115】
本発明はまた、少なくとも1つの吸蔵触媒、並びに/又は、本開示に記載のシステムにおける、及び/若しくは、本システムにおいて説明されている方法のための少なくとも1つの吸蔵触媒を備える、ディーゼル駆動系において用いられる内燃機関の使用に関する。
【符号の説明】
【0116】
1 システム
2 内燃機関
3 燃焼室
5 インテークマニホールド
6,106 排気管
106a,106b 排気管部分
7a,7b 吸気口、排気口
8 絞り弁
9 噴射装置
10 点火プラグ
11 ピストン
12 クランクシャフト
13,13a,13b NOx吸蔵触媒/NOx吸蔵触媒
14 分岐部
14a,14b 分岐部
15 貯蔵装置
16 ライン
16a,19a,19b 流入装置
16a1 末端部分(流入装置)の排気口
17 制御装置
18a,18b 絞り装置/絞り弁
21a,21b 窒素酸化物センサ
【手続補正書】
【提出日】2024-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(2)の運転方法であって、前記内燃機関(2)は、
燃料が周囲空気と共に少なくとも部分的に燃焼される少なくとも1つの燃焼室(3)と、
前記少なくとも1つの燃焼室(3)の排気口側(7b)に流体流通可能に連結された排気管(6,106)と、を備え、
前記内燃機関(2)の燃料として水素が用いられ、
前記内燃機関(2)は、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13,13a,13b)を有し、前記少なくとも1つの燃焼室(3)から前記排気管(6)に排出された排気ガスは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13,13a,13b)を流通し、
リーンな空気/水素混合物が、第1の運転状態で前記少なくとも1つの燃焼室(3)で燃焼され、
前記NOx吸蔵触媒(13,13a,13b)は、第2の運転状態で再生され、
リッチな空気/水素混合物が、前記第2の運転状態で前記少なくとも1つの燃焼室(3)で燃焼され
、
前記第2の運転状態は、前記内燃機関(2)のアイドリング運転で設定され、及び/又は、
前記第2の運転状態は、前記内燃機関(2)のオーバーラン運転で設定されることを特徴とする、内燃機関(2)の運転方法。
【請求項2】
前記内燃機関(2)は、排気ガス再循環装置(14)をさらに備え、前記排気ガス再循環装置(14)を介して、排気ガスが前記排気管(6)から前記燃焼室(3)に戻される、請求項1に記載の内燃機関(2)の運転方法。
【請求項3】
前記第2の運転状態において、排気ガスは、前記排気ガス再循環装置(14)を介して前記少なくとも1つの燃焼室(3)に再循環される、請求項1又は請求項2に記載の内燃機関(2)の運転方法。
【請求項4】
内燃機関(2)の運転方法であって、前記内燃機関(2)は:
燃料が周囲空気と共に少なくとも部分的に燃焼される少なくとも1つの燃焼室(3)と、
前記少なくとも1つの燃焼室(3)の排気口側(7b)に流体流通可能に連結された排気管(6,106)と、を備え、
前記内燃機関(2)の燃料として水素が用いられ、
前記排気管は、互いに並列に接続された複数の排気管部分(106a,106b)を有し、前記複数の排気管部分(106a,106b)の少なくとも2つは各々、前記少なくとも1つの燃焼室(3)から前記排気管(6)に排出された排気ガスの少なくとも一部が少なくとも一時的に流通する、少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)を有し、
前記排気管部分(106a,106b)の少なくとも一方における前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)における流量が
、少なくとも一時的に変更され
、
前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒を各々備える複数の前記排気管部分(106a,106b)における前記排気ガスの前記流量は、絞り開度が可変であると共に、前記複数の排気管部分(106a,106b)における前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)の上流にそれぞれ配置された絞り装置により、相互に独立して変更され、
前記NOx吸蔵触媒(13a,13b)に吸蔵された前記窒素酸化物を還元するための還元剤は、前記それぞれの少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)と前記可変絞り装置(18a,18b)との間の前記複数の排気管部分(106a,106b)に供給されることを特徴とする、運転方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)の再生のために、前記排気管部分(106a,106b)の少なくとも一方における前記流量が低減、好ましくは完全に抑制される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記NOx吸蔵触媒(13,13a,13b)に吸蔵された前記窒素酸化物を還元するための還元剤が、前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)の上流における少なくとも1つの排気管部分(106a,106b)に、又は、前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)に別々に、少なくとも一時的に供給される、
請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記排気管部分(106a,106b)の少なくとも2つが、少なくとも一時的に交互に再生される、
請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法を実施するよう構成された制御装置(17)。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法を実施するためのシステム(1)であって、システム(1)は
内燃機関(2)
であって:
燃料が周囲空気と共に少なくとも部分的に燃焼可能である少なくとも1つの燃焼室(3)と;
前記少なくとも1つの燃焼室(3)の排気口側(7b)に流体流通可能に連結された排気管(6,106)と;
少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13,13a,13b)であって、前記少なくとも1つの燃焼室(3)から前記排気管(6)に排出された排気ガスが、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、流通可能である前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13,13a,13b)と、
を備える内燃機関(2)と、
前記内燃機関に流体流通可能に連結された水素用の貯蔵装置(15)と、
請求項8に記載の制御装置(17)と、を備え、
好ましくは、前記内燃機関(2)は、前記燃焼室(3)又は前記排気管(6)に還元剤を供給可能である少なくとも1つの流入装置(16a)であって、好ましくは、並列に接続された複数の排気管部分の各排気管部分に少なくとも1つの流入装置を有し、
前記流入装置(16a)はまた、好ましくは、水素の前記貯蔵装置(15)に流体流通可能に連結される、システム(1)。
【請求項10】
請求項4~7のいずれか一項に記載の方法を実施するための請求項9に記載のシステム(1)のための内燃機関(2)
であって、内燃機関(2)は
水素が周囲空気と共に少なくとも部分的に燃焼可能である少なくとも1つの燃焼室(3)と、
前記少なくとも1つの燃焼室(3)の排気口側(7b)に流体流通可能に連結された排気管(6,106)と、を備え、
前記排気管(106)は、互いに並列に接続された複数の排気管部分(106a,106b)を有し、前記複数の排気管部分(106a,106b)の少なくとも2つは各々、前記少なくとも1つの燃焼室(3)から前記排気管(6)に排出された排気ガスの少なくとも一部が少なくとも一時的に流通可能な少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)を有し、
前記少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)の上流に互いに並列に配置された前記複数の排気管部分(106a,106b)に、絞り開度が可変である絞り装置(18a,18b)がそれぞれ配置されており、前記可変絞り装置は、前記それぞれの排気管部分(106a,106b)における前記排気ガス量を調整するよう独立して制御可能であり、
前記複数の排気管部分(106a,106b)はそれぞれ、前記NOx吸蔵触媒(13a,13b)に吸蔵された前記窒素酸化物を還元するための還元剤を供給するための流入装置(19a,19b)を、前記それぞれの少なくとも1つのNOx吸蔵触媒(13a,13b)と前記可変絞り装置(18a,18b)との間に備える、内燃機関(2)。
【国際調査報告】