(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】SSAO阻害剤による肝障害の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20241114BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/428 20060101ALI20241114BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/355 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P1/16
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/4439
A61K31/192
A61K31/40
A61K31/428
A61K38/05
A61K31/715
A61K31/575
A61K31/395
A61K31/355
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527619
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 US2022049692
(87)【国際公開番号】W WO2023086562
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521083599
【氏名又は名称】ターンズ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TERNS PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,クリストファー ティー
(72)【発明者】
【氏名】フェノー,マルタイン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ユジン
(72)【発明者】
【氏名】ジン,フォン
(72)【発明者】
【氏名】クリッテンデン,ディー バリー
(72)【発明者】
【氏名】クワーク,エリン ケイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA14
4C084BA23
4C084DC32
4C084NA05
4C084ZA751
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4C084ZC751
4C086AA01
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4C086ZA75
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4C206DA30
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA75
4C206ZC75
(57)【要約】
本明細書では、患者における非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む肝障害、ならびにその症状及び徴候を治療する方法であって、SSAO阻害剤
またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、当該方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療を必要とする患者におけるNASHを治療する方法であって、以下の式の化合物
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を約0.5mg~約25mgの用量で1日1回経口投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を約1mg~約15mgの用量で1日1回投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を約2mg~約10mgの用量で1日1回投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を約4mg~約10mgの用量で1日1回投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を約1mgの用量で1日1回投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を約4mgの用量で1日1回投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を約10mgの用量で1日1回投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
NASHの治療を必要とする患者におけるNASHを治療する方法であって、以下の式の化合物
【化2】
またはその薬学的に許容される塩を、前記患者に、前記化合物の血漿中濃度が定常状態に達したときに前記血漿中のメチルアミン濃度が少なくとも約25ng/mLとなる用量で投与することを含む、前記方法。
【請求項9】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、前記化合物の血漿中濃度が定常状態に達したときに前記血漿中のメチルアミン濃度が少なくとも約50ng/mLとなる用量で投与する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、前記化合物の血漿中濃度が定常状態に達したときに前記血漿中のメチルアミン濃度が少なくとも約100ng/mLとなる用量で投与する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、前記化合物の血漿中濃度が定常状態に達したときに前記血漿中のメチルアミン濃度が少なくとも約300ng/mLとなる用量で投与する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、前記化合物の血漿中濃度が定常状態に達したときに前記血漿中のメチルアミン濃度が約25ng/mL~約400ng/mLとなる用量で投与する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、前記化合物の血漿中濃度が定常状態に達したときに前記血漿中のメチルアミン濃度が約50ng/mL~約350ng/mLとなる用量で投与する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩は、前記化合物の血漿中濃度が定常状態に達したときに前記血漿中のメチルアミン濃度が約100ng/mL~約300ng/mLとなる用量で投与する、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を経口投与する、請求項8~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を非経口投与する、請求項8~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
NASHの治療を必要とする患者におけるNASHを治療する方法であって、以下の式の化合物
【化3】
またはその薬学的に許容される塩を、前記患者に、0時間から無限大時間までの定常状態曲線下面積(AUC
0-∞)が約100ng*h/mLから約1,000ng*h/mLとなる用量で投与することを含む、前記方法。
【請求項18】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、定常状態AUC
0-∞が約100ng*h/mLから約700ng*h/mLとなる用量で投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、定常状態AUC
0-∞が約500ng*h/mLから約1,000ng*h/mLとなる用量で投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を、定常状態AUC
0-∞が約500ng*h/mLから約700ng*h/mLとなる用量で投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を経口投与する、請求項17~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を非経口投与する、請求項17~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
NASHの治療を必要とする患者におけるNASHを治療する方法であって、以下の式の化合物
【化4】
またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与することを含み、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を1日おきに1回投与する、前記方法。
【請求項24】
NASHの治療を必要とする患者におけるNASHを治療する方法であって、以下の式の化合物
【化5】
またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与することを含み、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を週2回投与する、前記方法。
【請求項25】
NASHの治療を必要とする患者におけるNASHを治療する方法であって、以下の式の化合物
【化6】
またはその薬学的に許容される塩を前記患者に投与することを含み、前記化合物またはその薬学的に許容される塩を週1回投与する、前記方法。
【請求項26】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を約0.5mg~約25mgの用量で投与する、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を約1mg~約15mgの用量で投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を約2mg~約10mgの用量で投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を約4mg~約10mgの用量で投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を約1mgの用量で投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を約4mgの用量で投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を約10mgの用量で1日1回投与する、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を経口投与する、請求項23~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩を非経口投与する、請求項23~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記化合物をファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストと組み合わせて投与する、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記FXRアゴニストが、
【化7】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記化合物をペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニストと組み合わせて投与する、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記PPARアゴニストは、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、エラフィブラノール、サログリタザール、ラニフィブラノール、またはセラデルパルである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記化合物を汎カスパーゼ阻害剤と組み合わせて投与する、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記汎カスパーゼ阻害剤はエムリカサンである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記化合物をガレクチン-3阻害剤と組み合わせて投与する、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記ガレクチン-3阻害剤はベラペクチンである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記化合物をステアロイルCo-Aデサチュラーゼ1阻害剤と組み合わせて投与する、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記ステアロイルCo-Aデサチュラーゼ1阻害剤はアラムコールである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記化合物をケモカイン受容体2及び5型(CCR2/CCR5ケモカイン)アンタゴニストと組み合わせて投与する、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記CCR2/CCR5ケモカインアゴニストはセニクリビロックである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記化合物を抗酸化物質と組み合わせて投与する、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記抗酸化物質はビタミンEである、請求項47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月11日に出願された米国仮出願第63/263,934号及び2022年6月7日に出願された同第63/349,978号の利益及び優先権を主張する。前述の特許出願の内容は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、患者における非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む肝疾患を治療するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
脂肪肝疾患(FLD)は、炎症を伴うことが多い肝における脂肪の過剰蓄積を特徴とする一連の疾患状態を包含する。FLDは、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を引き起こす可能性がある。未治療の場合、NAFLDは、持続的な炎症応答または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、進行性肝線維症に進行し、最終的には肝硬変に進行する可能性がある。欧米では、NAFLDは、肝移植の2番目に多い理由である。したがって、治療の必要性は緊急であるが、患者に明らかな症状がないため、患者は、治療レジメン、特に、注射薬、1日に何度も投与される薬、または危険なもしくは刺激性の副作用を生じさせるいずれかの負担のかかる治療レジメンを維持する動機を欠く可能性がある。現在、承認されたNASHの治療法は存在しない。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、NASHなどの肝障害の治療を必要とする患者におけるNASHなどの肝障害を治療するための方法及び組成物が提供される。この方法は、以下の構造を有するセミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO)/血管接着タンパク質-1(VAP-1)阻害剤(本明細書では、「化合物1」と称する)またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む。
【化1】
化合物1は、化学名(E)-3-フルオロ-2-(((2-(4-メトキシピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-イル)オキシ)メチル)プロパ-2-エン-1-アミンを有し、米国特許出願公開第2018/0297987号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。一形態において、化合物1は遊離塩基として提供される。別の形態において、化合物1は、酸付加塩、例えば一塩酸付加塩もしくは二塩酸付加塩(複数可)、またはスルホン酸塩、好ましくは4-メチルベンゼンスルホン酸塩(トシル酸塩)として提供される。
【0005】
本発明者らは、肝障害を患っている患者に、化合物1またはその薬学的に許容される塩を驚くほど低用量で投与しても、望ましいレベルの有効性を維持できることを発見した。この発見は、化合物1が血漿SSAOについて非常に強い親和性を有することにより、標的を介した飽和性クリアランスを示すという観察に部分的に基づいている。化合物1またはその薬学的に許容される塩は、血漿SSAOの完全飽和または血漿SSAOの完全飽和に満たない用量で投与され得る。血漿SSAOは、膜結合型血漿SSAOによって血漿中に放出される活性型可溶性血漿SSAOである。本明細書に記載されるように、化合物1またはその薬学的に許容される塩を、血漿SSAOの飽和に満たない用量で投与しても、依然として有効である。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、血漿SSAO標的の少なくとも約25%の飽和度を達成する用量で投与され得る。別の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、血漿SSAO標的の少なくとも約50%の飽和度を達成する用量で投与され得る。別の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、血漿SSAO標的の少なくとも約75%の飽和度を達成する用量で投与され得る。別の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、血漿SSAO標的の少なくとも約95%の飽和度を達成する用量で投与され得る。別の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、血漿SSAO標的の少なくとも約100%の飽和度を達成する用量で投与され得る。
【0006】
本開示のいくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、患者に、1mg以下の低用量で1日1回経口投与することができ、依然としてアミンオキシダーゼ活性を十分に低下させ、リンパ球の接着及び遊走を低下させることができる。例えば、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約0.5mg~約25mgの用量で1日1回経口投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約1mg~約15mgの用量で1日1回経口投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約2mg~約10mgの用量で1日1回経口投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約1mgの用量で1日1回経口投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約4mgの用量で1日1回経口投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約5mgの用量で1日1回経口投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約10mgの用量で1日1回経口投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約20mgの用量で1日1回経口投与され得る。
【0007】
さらに、本発明者らは、驚くべきことに、化合物1には、肝障害(例えば、NASH)を患っている患者への1日1回未満の投与でさえも支持する長期にわたる薬力学的効果があることを発見した。例えば、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、1日おきに1回(例えば、週に3回または4回)投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、週に1回投与され得る。化合物1またはその薬学的に許容される塩が1日1回未満投与される実施形態において、投与は、経口または非経口(例えば、筋肉内、皮下、または静脈内)で行われてもよい。
【0008】
本開示のいくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)を患っている患者に、化合物1の血漿中濃度が定常状態に達したときに血漿中のメチルアミンの濃度が少なくとも25ng/mLとなる用量で投与される。他の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)を患っている患者に、化合物1の血漿中濃度が定常状態に達したときに血漿中のメチルアミンの濃度が少なくとも約50ng/mLとなる用量で投与される。他の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)を患っている患者に、化合物1の血漿中濃度が定常状態に達したときに血漿中のメチルアミンの濃度が少なくとも100ng/mLとなる用量で投与される。他の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)を患っている患者に、化合物1の血漿中濃度が定常状態に達したときに血漿中のメチルアミン濃度が少なくとも約100ng/mLとなる用量で投与される。他の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)を患っている患者に、化合物1の血漿中濃度が定常状態に達したときに血漿中のメチルアミン濃度が少なくとも約200ng/mLとなる用量で投与される。他の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)を患っている患者に、化合物1の血漿中濃度が定常状態に達したときに血漿中のメチルアミン濃度が少なくとも約300ng/mLとなる用量で投与される。他の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)を患っている患者に、化合物1の血漿中濃度が定常状態に達したときに血漿中のメチルアミン濃度が少なくとも約300ng/mLとなる用量で投与される。他の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)を患っている患者に、化合物1の血漿中濃度が定常状態に達したときに血漿中のメチルアミン濃度が約25ng/mL~約400ng/mLとなる用量で投与される。他の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)を患っている患者に、化合物1の血漿中濃度が定常状態に達したときに血漿中のメチルアミン濃度が約50ng/mL~約350ng/mLとなる用量で投与される。他の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)を患っている患者に、化合物1の血漿中濃度が定常状態に達したときに血漿中のメチルアミン濃度が約100ng/mL~約300ng/mLとなる用量で投与される。
【0009】
一態様において、本開示は、肝臓の炎症を軽減することを必要とする患者における肝臓の炎症を軽減する方法であって、化合物1またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含み、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、本明細書に記載される用量で投与される、当該方法を提供する。
【0010】
別の態様において、本開示は、肝線維症を軽減することを必要とする患者における肝線維症を軽減する方法であって、化合物1またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含み、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、本明細書に記載される用量で投与される、当該方法を提供する。
【0011】
別の態様において、本開示は、肝臓の線維化を特徴とする疾患または病状を治療する方法であって、化合物1またはその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含み、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、本明細書に記載される用量で投与される、当該方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】健康なボランティアのベースラインと、プラセボまたは1、3、6、もしくは10mgの化合物1を単回投与して投与から4時間及び168時間後の血漿SSAO特異的アミンオキシダーゼ活性を比較して示す。
【
図1B】健康なボランティアのベースラインと、プラセボまたは1、3、6、もしくは10mgの化合物1を単回投与した場合の血漿総アミンオキシダーゼ活性を比較した経時変化を示す。
【
図1C】プラセボまたは1、3、6、もしくは10mgの化合物1を健康なボランティアに単回投与した後の化合物1のレベルの経時変化を示す。
【
図1D】プラセボまたは1、3、6、もしくは10mgの化合物1を健康なボランティアに単回投与した後の血漿メチルアミン濃度の経時変化を示す。
【0013】
【
図2A】1、4、または10mgの化合物1を健康なボランティアに単回投与した後の化合物1の濃度の経時変化を示す。
【
図2B】1日用量1mgまたは4mgの化合物1の7日間投与の最終日、及び1日用量10mgの化合物1の14日間投与の最終日についての化合物1の濃度の経時変化を示す。
【0014】
【
図3A】1日用量1、4、または10mgの化合物1の初回投与から24時間後のSSAO特異的アミンオキシダーゼ活性を示す。
【
図3B】1日用量1、4、または10mgの化合物1の初回投与後の血漿メチルアミン濃度の経時変化を示す。
【
図3C】1日用量1mgまたは4mgの化合物1の7日間投与の最終日、及び1日用量10mgの化合物1の14日間投与の最終日後の血漿メチルアミン濃度の経時変化を示す。
【
図3D】1、4、または10mgの化合物1を健康なボランティアに単回投与した後の総アミンオキシダーゼ活性の経時変化を示す。
【
図3E】健康なボランティアへの、1日用量1mgまたは4mgの化合物1の7日間投与のうちの6回目、または1日用量10mgの化合物1の14日間投与のうちの13回目の後の総アミンオキシダーゼ活性の14日間の経時変化を示す。
【0015】
【0016】
【
図5】患者の人口統計及びベースライン特徴を示す。
【0017】
【0018】
【0019】
【
図8A】ベースラインから6週目及び12週目までのTIMP-1変化を示す。
【0020】
【
図8B】ベースラインから12週目までのNASH及び炎症バイオマーカーの平均(SE)変化に関する結果を示す。
【0021】
【0022】
【
図10】ベースラインと比較した12週目のVAP-1/SSAO活性(%)を示す。
【0023】
【
図11】ベースラインから12週目までのELF成分(TIMP-1、P3NP、HA)の変化を示す。
【0024】
【
図12】ベースラインから12週目までのICAM-1及びVCAM-1の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
本明細書で使用される場合、特に指示がない限り、以下の定義が適用される。さらに、本明細書で使用されるいかなる用語または記号が、以下に記載されるように定義されない場合、それが当該技術分野で通常有する意味を持つものとする。
【0026】
「含む」は、組成物及び方法が列挙された要素を含むが、他の要素を除外しないことを意味することを意図している。組成物及び方法を定義するために使用される場合、「本質的に~からなる」は、組み合わせに任意の本質的な重要性を有する他の要素を除外することを意味するものとする。例えば、本質的に本明細書で定義される要素からなる組成物は、特許請求される発明の基本的及び新規特徴(複数可)に実質的に影響を与えない他の要素を除外しない。「~からなる」は、例えば、微量を超える記載される他の成分及び実質的な方法ステップを除外することを意味するものとする。これらの移行句のそれぞれによって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0027】
本明細書で使用される「添加剤」という用語は、本発明の化合物を有効成分として含有する錠剤などの薬物または医薬品の製造に使用され得る不活性または不活性な物質を意味する。様々な物質は、添加剤という用語に包含され得るが、これには結合剤、崩壊剤、コーティング、圧縮/カプセル化補助剤、クリームまたはローション、潤滑剤、非経口投与用溶液、チュアブル錠用材料、甘味料または香料、懸濁/ゲル化剤、または湿式造粒剤として用いられる任意の物質が含まれるが、これらに限定されない。結合剤は、例えば、カルボマー、ポビドン、キサンタンガムなどを含み;コーティングは、例えば、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ジェランガム、マルトデキストリン、腸溶性コーティングなどを含み;圧縮/カプセル化補助剤は、例えば、炭酸カルシウム、デキストロース、果糖dc(dc=「直接打錠可能」)、蜂蜜dc、乳糖(無水物または一水物;任意にアスパルテーム、セルロース、または微結晶セルロースと組み合わせて)、デンプンdc、スクロースなどを含み;崩壊剤は、例えば、クロスカルメロースナトリウム、ジェランガム、デンプングリコール酸ナトリウムなどを含み;クリームまたはローションは、例えば、マルトデキストリン、カラギーナンなどを含み;潤滑剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウムなどを含み;チュアブル錠用材料は、例えば、デキストロース、フルクトースdc、ラクトース(一水塩、任意にアスパルテームまたはセルロースと組み合わせて)などを含み;懸濁/ゲル化剤は、例えば、カラギーナン、デンプングリコール酸ナトリウム、キサンタンガムなどを含み;甘味料は、例えば、アスパルテーム、デキストロース、フルクトースdc、ソルビトール、スクロースdcなどを含み;湿式造粒剤は、例えば、炭酸カルシウム、マルトデキストリン、微結晶セルロースなどを含む。
【0028】
「患者」は、哺乳動物を指し、ヒト及び非ヒト哺乳動物を含む。患者の例には、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ブタ、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、及びヒトが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、患者は、ヒトを指す。
【0029】
「薬学的に許容される」とは、好ましくはインビボのため、より好ましくは、ヒトへの投与について、安全かつ非毒性であることを指す。
【0030】
「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容される塩を指す。本明細書に記載される化合物は、薬学的に許容される塩として投与され得る。
【0031】
「塩」は、酸と塩基との間に形成されるイオン性化合物を指す。本明細書で提供される化合物が酸性官能基を含む場合、かかる塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びアンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、アンモニウム塩は、プロトン化窒素塩基及びアルキル化窒素塩基を含有する塩を包含する。薬学的に許容される塩に有用な例示的かつ非限定的なカチオンとしては、Na、K、Rb、Cs、NH4、Ca、Ba、イミダゾリウム、及び天然に存在するアミノ酸に基づくアンモニウムカチオンが挙げられる。本明細書で使用される化合物が塩基性官能基を含有する場合、かかる塩としては、カルボン酸及びスルホン酸などの有機酸、ならびにハロゲン化水素、硫酸、リン酸などの鉱物酸の塩が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩に有用な例示的かつ非限定的なアニオンとしては、シュウ酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、塩化物、硫酸塩、重硫酸塩、一塩基性、二塩基性、及び三塩基性リン酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩などが挙げられる。
【0032】
化合物または組成物の「治療有効量」または用量は、患者における症状の軽減もしくは阻害、または生存期間の延長をもたらす化合物または組成物の量を指す。結果は、化合物または組成物の複数回投与を必要とし得る。
【0033】
「治療」または「治療すること」は、臨床結果を含む有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを指す。本発明の目的のために、有益なまたは所望の結果には、疾患または障害に起因する1つ以上の症状を減少させること、疾患または障害の範囲を減少させること、疾患または障害を安定させること(例えば、疾患または障害の悪化を予防または遅延させること)、疾患または障害の発生または再発を遅延させること、疾患または障害の進行を遅延または遅延させること、疾患または障害の状態を改善すること、疾患または障害の寛解(部分的または完全な)を提供すること、疾患または障害を治療するのに必要な1つ以上の他の薬剤の用量を減少させること、疾患または障害を治療するのに使用される別の薬剤の効果を増強すること、疾患または障害の進行を遅延させること、生活の質を向上させること、及び/または患者の生存期間を延長させること、のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。また、「治療」には、疾患または障害の病理学的結果の軽減も包含される。本発明の方法は、治療のこれらの態様のうちの任意の1つ以上を企図する。
【0034】
本明細書で使用される場合、疾患の発症を「遅延させる」とは、疾患の発症を引き延ばす、妨げる、遅らせる、遅延させる、安定化させる、及び/または延期する、及び/または疾患が発症したら進行を遅延させる、または基礎疾患プロセス及び/または経過を変化させることを意味する。この遅延は、治療される疾患及び/または個体の履歴に応じて、様々な長さの時間であり得る。当業者には明らかであるように、個体が疾患に関連する臨床症状を発症しないという点で、十分なまたは有意な遅延は、実際には、予防を包含することができる。疾患の発症を「遅らせる」方法は、その方法を使用しない場合と比較して、所与の時間枠における疾患発症の確率を低下させ、及び/または所与の時間枠における疾患の程度を低下させる方法であり、疾患に起因する1つ以上の症状を安定化させることを含む。
【0035】
疾患を発症する「リスクがある」個体は、検出可能な疾患を有していても有していなくてもよく、本明細書に記載される治療方法の前に検出可能な疾患を示していても示していなくてもよい。「リスクがある」とは、個体が、1つ以上のいわゆる危険因子を有することを示し、疾患の発症と相関する測定可能なパラメータである。これらの危険因子のうちの1つ以上を有する個体は、これらの危険因子(複数可)を有しない個体よりも、疾患を発症する可能性が高い。これらの危険因子には、年齢、性別、人種、食事、以前の疾患の病歴、前駆疾患の存在、及び遺伝(すなわち、遺伝性)の考慮が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、化合物は、疾患または病状のリスクがあるまたは家族歴を有する対象(ヒトを含む)に投与され得る。
【0036】
本明細書に記載される化合物の投与量は、化合物の遊離塩基に基づいて決定される。
【0037】
薬学的に許容される組成物及び製剤
本明細書に詳述される化合物のうちのいずれかの薬学的に許容される組成物または単に「医薬組成物」は、本発明によって包含される。したがって、本発明は、化合物1またはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体または添加剤を含む、医薬組成物を含む。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される塩は、無機酸または有機酸で形成される塩などの酸付加塩である。本発明による医薬組成物は、経口、口腔、非経口、経鼻、局所または直腸投与に好適な形態、または吸入による投与に好適な形態をとり得る。
【0038】
本明細書に詳述される化合物は、一態様において、精製形態であってもよく、精製形態の化合物を含む組成物は、本明細書に詳述される。本明細書に詳述される化合物またはその塩を含む組成物、例えば、実質的に純粋な化合物の組成物が、提供される。いくつかの実施形態において、本明細書に詳述される化合物またはその塩を含有する組成物は、実質的に純粋な形態である。一変形例において、「実質的に純粋な」とは、35%以下の不純物を含有する組成物を意図しており、不純物は、組成物の大部分を構成する化合物以外の化合物またはその塩を示す。例えば、実質的に純粋な化合物の組成物は、35%以下の不純物を含有する組成物を意図し、不純物は、化合物またはその塩以外の化合物を示す。一変形例において、実質的に純粋な化合物またはその塩の組成物が提供され、この組成物は、25%以下の不純物を含有する。別の変形例では、実質的に純粋な化合物またはその塩の組成物が提供され、この組成物は、20%以下の不純物を含有する。さらに別の変形例では、実質的に純粋な化合物またはその塩の組成物が提供され、この組成物は、10%以下の不純物を含有する。さらなる変形例では、実質的に純粋な化合物またはその塩の組成物が提供され、この組成物は、5%以下の不純物を含有する。別の変形例では、実質的に純粋な化合物またはその塩の組成物が提供され、この組成物は、3%以下の不純物を含有する。さらに別の変形例では、実質的に純粋な化合物またはその塩の組成物が提供され、この組成物は、1%以下の不純物を含有する。さらなる変形例では、実質的に純粋な化合物またはその塩の組成物が提供され、この組成物は、0.5%以下の不純物を含有する。さらに他の変形例では、実質的に純粋な化合物の組成物は、この組成物が15%以下、または好ましくは10%以下、またはより好ましくは5%以下、またはさらにより好ましくは3%以下、及び最も好ましくは1%以下の不純物を含有することを意味し、この不純物は、異なる立体化学的形態の化合物であり得る。
【0039】
一変形例では、本明細書の化合物は、ヒトなどの個体への投与のために調製される合成化合物である。別の変形例では、実質的に純粋な形態の化合物を含有する組成物が、提供される。別の変形例では、本発明は、本明細書に詳述される化合物と、薬学的に許容される担体または添加剤とを含む薬学的組成物を包含する。別の変形例では、化合物を投与する方法が、提供される。精製形態、薬学的組成物、及び化合物を投与する方法は、本明細書に詳述される任意の化合物またはその形態に適している。
【0040】
化合物は、経口、粘膜(例えば、鼻腔、舌下、膣、頬、または直腸)、非経口(例えば、筋肉内、皮下、または静脈内)、局所または経皮送達形態を含む任意の利用可能な送達経路のために製剤化され得る。化合物は、錠剤、カプレット、カプセル(硬質ゼラチンカプセルまたは軟質弾性ゼラチンカプセルなど)、カシェ、トローチ、ロゼンジ、ガム、分散液、座薬、軟膏、カタプラズム(湿布)、ペースト、粉末、ドレッシング、クリーム、溶液、パッチ、エアゾール(例えば、鼻腔スプレーまたは吸入器)、ゲル、懸濁液(例えば、水性または非水性液体懸濁液、水中油エマルジョン、または油中水液体エマルジョン)、溶液及びエリキシル剤を含むが、これらに限定されない、送達形態を提供するために好適な担体とともに製剤化され得る。
【0041】
本明細書に記載される化合物は、有効成分としての化合物を、上述のものなどの薬学的に許容される担体と組み合わせることによって、薬学的製剤などの製剤の調製に使用することができる。システムの治療形態(例えば、経皮パッチ対口腔錠剤)に応じて、担体は、様々な形態であり得る。さらに、薬学的製剤は、保存料、可溶化剤、安定剤、再湿潤剤、乳化剤、甘味料、色素、調整剤、及び浸透圧の調整のための塩、緩衝剤、コーティング剤または酸化防止剤を含み得る。化合物を含む製剤は、貴重な治療特性を有する他の物質も含有し得る。薬学的製剤は、既知の医薬方法によって調製され得る。適切な製剤は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams&Wilkins,21st ed.(2005)に見出すことができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
本明細書に記載される化合物は、個体(例えば、ヒト)に、錠剤、コーティングされた錠剤、及び硬質または軟質のシェルのゲルカプセル、エマルジョンまたは懸濁液などの一般的に許容される経口組成物の形態で投与され得る。かかる組成物の調製に使用され得る担体の例としては、乳糖、トウモロコシデンプンまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸塩またはその塩などが挙げられる。軟質シェルを有するゲルカプセルの許容される担体は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体、及び液体ポリオールなどである。さらに、薬学的製剤は、保存料、可溶化剤、安定剤、再湿潤剤、乳化剤、甘味料、色素、調整剤、及び浸透圧の調整のための塩、緩衝剤、コーティング剤または酸化防止剤を含み得る。
【0043】
本明細書に記載される化合物のうちのいずれも、本明細書に記載される任意の剤形の錠剤に製剤化することができる。
【0044】
本開示はさらに、キット(例えば、医薬品パッケージ)を包含する。提供されるキットは、本明細書に記載される薬学的組成物または化合物ならびに容器(例えば、薬剤ボトル、アンプル、ボトル、注射器、及び/またはサブパッケージ、または他の好適な容器)を含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、化合物1またはその薬学的に許容される塩を含む容器を含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、本明細書では、治療有効量の化合物1またはその薬学的に許容される塩を含む投与形態が提供される。
【0046】
使用方法及び使用
いくつかの態様において、本明細書に記載される化合物及び組成物は、肝障害の治療または予防に使用され得る。いくつかの実施形態において、患者の肝障害を治療または予防する方法は、化合物1、その薬学的に許容される塩。
【0047】
肝障害は、肝臓の炎症、線維症、及び脂肪性肝炎を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、肝障害は、肝臓の炎症、肝線維症、アルコール誘発性線維症、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆道肝硬変(PBC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)から選択される。特定の実施形態において、肝障害は、肝線維症、アルコール誘発性線維症、NAFLD、及びNASHから選択される。一実施形態において、肝障害はNASHである。別の実施形態において、肝障害は肝臓炎症である。別の実施形態において、肝障害は、肝線維症である。別の実施形態において、肝障害は、アルコール誘発性線維症である。別の実施形態において、肝障害は、NAFLDである。一実施形態において、本明細書で提供される治療方法は、NAFLDからNASHへの進行を妨げるかまたは遅らせる。一実施形態において、本明細書で提供される治療方法は、NASHへの進行を妨げるかまたは遅らせる。NASHは、例えば、肝硬変、肝臓癌などのうちの1種以上に進行する可能性がある。いくつかの実施形態において、肝障害はNASHである。いくつかの実施形態において、患者は、肝臓生検を受けたことがある。いくつかの実施形態において、当該方法は、肝臓生検の結果を得ることをさらに含む。
【0048】
いくつかの実施形態において、肝障害の治療を必要とする患者における肝障害を治療する方法であって、肝障害は、肝臓の炎症、肝線維症、アルコール誘発性線維症、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆道肝硬変(PBC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からなる群から選択される。
【0049】
肝障害の治療または予防を必要とする患者(例えば、ヒト患者)における肝障害を、化合物1またはその薬学的に許容される塩を用いて治療または予防する方法であって、肝障害は、肝臓の炎症、肝線維症、アルコール誘発性線維症、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆道肝硬変(PBC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)からなる群から選択される、当該方法が提供される。
【0050】
また、本明細書では、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)への進行を妨げるかまたは遅らせることを必要とする患者(例えば、ヒト患者)における、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)から非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)への進行を妨げるかまたは遅らせる方法であって、SSAO阻害剤(例えば、化合物1またはその薬学的に許容される塩)を投与することを含む、当該方法も提供される。いくつかの実施形態において、当該方法は、治療有効量の化合物1を投与することを含む。また、本明細書では、NASHへの進行を妨げるかまたは遅らせることを必要とする患者(例えば、ヒト患者)におけるNASHへの進行を妨げるかまたは遅らせる方法であって、化合物1またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、当該方法も提供される。
【0051】
いくつかの実施形態において、本明細書では、肝疾患の治療を必要とする患者における肝疾患を、化合物1またはその薬学的に許容される塩を用いて治療する方法であって、SSAO阻害剤がSSAOを選択的に阻害する、当該方法が提供される。したがって、いくつかの実施形態において、MAO-A(モノアミンオキシダーゼA)は阻害されない。いくつかの実施形態において、MAO-B(モノアミンオキシダーゼB)は阻害されない。いくつかの実施形態において、MAO-A及びMAO-Bは阻害されない。
【0052】
いくつかの実施形態において、患者はヒトである。肥満は、NAFLD及びNASHと高度に相関しているが、痩せている人々もまた、NAFLD及びNASHの影響を受け得る。したがって、いくつかの実施形態において、患者は肥満である。いくつかの実施形態において、患者は、肥満ではない。肥満は、真性糖尿病または心臓血管障害などの他の疾患と相関するか、または他の疾患を引き起こすこともある。したがって、いくつかの実施形態において、患者はまた、真性糖尿病及び/または心臓血管障害も有する。理論に拘束されることなく、肥満、真性糖尿病、及び心臓血管障害などの併存疾患は、NAFLD及びNASHを治療することをより困難にする可能性があると考えられている。逆に、NAFLD及びNASHに対処するための現在認識されている唯一の方法は、体重減少であり、これは痩せている患者にほとんどまたは全く影響しない可能性がある。
【0053】
NAFLD及びNASHのリスクは、年齢とともに増加するが、子供でもNAFLD及びNASHに罹患する可能性があり、2歳くらいの子供にも発症する文献報告がある(Schwimmer,et al.,Pediatrics,2006,118:1388-1393)。いくつかの実施形態において、患者は、2~17歳、例えば、2~10、2~6、2~4、4~15、4~8、6~15、6~10、8~17、8~15、8~12、10~17、または13~17歳である。いくつかの実施形態において、患者は、18~64歳、例えば、18~55、18~40、18~30、18~26、18~21、21~64、21~55、21~40、21~30、21~26、26~64、26~55、26~40、26~30、30~64、30~55、30~40、40~64、40~55、または55~64歳である。いくつかの実施形態において、患者は、65歳以上、例えば、70歳以上、80歳以上、または90歳以上である。
【0054】
NAFLD及びNASHは、肝移植の一般的な原因となるが、既に一度肝移植を受けた患者は、NAFLD及び/またはNASHが再発症することが多い。したがって、いくつかの実施形態において、患者は、肝移植を受けたことがある。
【0055】
いくつかの実施形態において、患者は、本明細書に提供される方法に従って、投与前に副作用を発症するリスクがある。いくつかの実施形態において、副作用は、腎臓、肺、心臓、及び/または皮膚に影響を及ぼす副作用である。
【0056】
いくつかの実施形態において、患者は、以前に1つ以上の療法を受けたことがある。いくつかの実施形態において、肝障害は、治療中に進行した。
【0057】
いくつかの実施形態において、当該方法は、抗ヒスタミン剤、免疫抑制剤、ステロイド(コルチコステロイドなど)、リファンピシン、オピオイド拮抗剤、または選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を投与することを含まない。
【0058】
また、本明細書では、化合物1またはその薬学的に許容される塩を投与するための投与レジメンも提供される。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、血漿SSAOの飽和を達成するための用量である。血漿SSAOの飽和を達成する用量は、ベースラインレベルと比較して、血漿SSAO活性を少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%減少させる用量である。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩の治療有効量は、肝臓SSAOの飽和を達成する用量である。化合物1またはその薬学的に許容される塩を、血漿SSAOの飽和に満たない用量で投与しても、依然として有効である。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、血漿SSAO標的の少なくとも約25%の飽和度を達成する用量で投与され得る。他の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、血漿SSAO標的の少なくとも約50%の飽和度を達成する用量で投与され得る。他の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、血漿SSAO標的の少なくとも約75%の飽和度を達成する用量で投与され得る。他の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、血漿SSAO標的の少なくとも約95%の飽和度を達成する用量で投与され得る。他の実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、血漿SSAO標的の約100%の飽和度を達成する用量で投与され得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、0時間から無限大時間までの定常状態血漿中濃度-曲線下面積(AUC0-∞)が約10ng*h/mLから約2,000ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、定常状態血漿中濃度-曲線下面積AUC0-∞が約10ng*h/mLから約1,500ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、定常状態血漿中濃度-曲線下面積AUC0-∞が約100ng*h/mLから約1,500ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、定常状態血漿中濃度-曲線下面積AUC0-∞が約10ng*h/mLから約1,000ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、定常状態血漿中濃度-曲線下面積AUC0-∞が約100ng*h/mLから約1,000ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、定常状態血漿中濃度-曲線下面積AUC0-∞が約500ng*h/mLから約1,000ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、定常状態血漿中濃度-曲線下面積AUC0-∞が約10ng*h/mLから約700ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、定常状態血漿中濃度-曲線下面積AUC0-∞が約100ng*h/mLから約700ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、定常状態血漿中濃度-曲線下面積AUC0-∞が約500ng*h/mLから約700ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、定常状態血漿中濃度-曲線下面積AUC0-∞が約10ng*h/mLから約200ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、定常状態血漿中濃度-曲線下面積AUC0-∞が約100ng*h/mLから約200ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、定常状態血漿中濃度-曲線下面積AUC0-∞が約10ng*h/mLから約100ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、定常状態血漿中濃度-曲線下面積AUC0-∞が約10ng*h/mLから約50ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。いくつかの実施形態において、化合物は、定常状態血漿中濃度-曲線下面積AUC0-∞が約10ng*h/mLから約20ng*h/mLとなる用量で、個体に毎日投与される。
【0060】
本開示のいくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、患者に、1mg以下の低用量で1日1回経口投与することができ、依然としてアミンオキシダーゼ活性を十分に低下させ、リンパ球の接着及び遊走を低下させることができる。例えば、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約0.5mg~約25mgの用量で1日1回経口投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約1mg~約15mgの用量で1日1回経口投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約2mg~約10mgの用量で1日1回経口投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約1mgの用量で1日1回経口投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約4mgの用量で1日1回経口投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約5mgの用量で1日1回経口投与され得る。いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、肝障害(例えば、NASH)のある患者に、約10mgの用量で1日1回経口投与され得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、約0.5mg~約50mgの化合物1またはその薬学的に許容される塩が個体に投与される。具体的な実施形態において、化合物は、患者に1日1回経口投与される。他の実施形態において、化合物は、患者に1日おきに1回投与される。他の実施形態において、化合物は、患者に週2回投与される。他の実施形態において、化合物は、患者に週1回投与される。いくつかの実施形態において、約1mg~約5mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約1mg~約3mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約5mg~約10mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約10mg~約15mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約15mg~約20mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約20mg~約25mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約25mg~約30mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約30mg~約35mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約35mg~約40mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約40mg~約45mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約45mg~約50mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約0.5mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約1mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約2mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約3mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約4mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約5mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約6mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約7mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約8mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約9mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約10mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約15mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約20mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約25mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約30mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約35mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約40mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約45mgの化合物が個体に投与される。いくつかの実施形態において、約50mgの化合物が個体に投与される。
【0062】
治療期間は、概して、1週間以上であり得る。いくつかの実施形態において、治療期間は、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、1年、2年、3年、4年、またはそれ以上である。いくつかの実施形態において、治療期間は、約1週間~約1カ月、約1カ月~約1年間、約1年間~約数年間である。いくつかの実施形態において、治療期間は、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、12カ月、1年間、2年間、3年間、4年間、またはそれ以上のうちのいずれかである。いくつかの実施形態において、治療期間は、患者の残存寿命である。
【0063】
いくつかの実施形態において、治療期間の1日目に投与される化合物1またはその薬学的に許容される塩の量は、治療期間の全ての後続の日に投与される量以上である。いくつかの実施形態において、治療期間の1日目に投与される量は、治療期間の全ての後続の日に投与される量に等しい。
【0064】
本明細書に記載される方法に従って使用される化合物1またはその薬学的に許容される塩を、個体に、第1の期間の間に1日1回用量で投与した後、第2の期間には、化合物の投与を中止することができ、SSAO阻害活性が、第1の期間及び第2の期間の両方の間に維持される。いくつかの実施形態において、第1及び第2の期間はそれぞれ1週間の期間である。例えば、本明細書では、最初の7日間は化合物1またはその薬学的に許容される塩を1日1回用量で個体に投与し、その後の7日間は化合物の投与を中止する、個体への14日間の治療方法であって、個体におけるSSAO阻害活性が14日間の期間全体にわたって維持される、当該方法が提供される。別の例として、本明細書では、最初の2週間は化合物1またはその薬学的に許容される塩を1日1回用量で個体に投与し、その後の2週間は化合物の投与を中止する、個体への4週間の治療方法であって、個体におけるSSAO阻害活性が4週間の期間全体にわたって維持される、当該方法が提供される。いくつかの実施形態において、1日用量は、約1mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、または約40mgである。
【0065】
いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩を投与すると、個体における肝臓の炎症が軽減される。肝臓の炎症を評価する方法は、当業者に既知であり、組織学的分析及び小葉炎症の組織学的スコアの割り当てを含み得る。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に詳述される治療方法は、肝臓の炎症、肝線維症、アルコール誘発性線維症、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆道肝硬変(PBC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの肝障害の治療を必要とする個体における肝障害を治療することを含み、治療は、小葉炎症または小葉炎症に関連する組織学的マーカーを低減することを含むことが理解される。
【0066】
いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、個体における肝線維症を軽減させる。肝線維症を評価する方法は、当業者に既知であり、組織学的分析を含み得る。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に詳述される治療方法は、肝臓の炎症、肝線維症、アルコール誘発性線維症、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆道肝硬変(PBC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの肝障害の治療を必要とする個体における肝障害を治療することを含み、治療は、線維症または線維症に関連する組織学的マーカーを低減することを含むことが理解される。
【0067】
いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩を投与すると、個体における肝臓の炎症及び線維症の少なくとも1つが軽減される。いくつかの実施形態において、投与により、個体における肝臓の炎症及び線維症が軽減される。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に詳述される治療方法は、肝臓の炎症、肝線維症、アルコール誘発性線維症、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆道肝硬変(PBC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの肝障害の治療を必要とする個体における肝障害を治療することを含み、治療は、小葉炎症、線維症、または前述のいずれかの組織学的マーカーのうちの少なくとも1つを低減することを含むことが理解される。
【0068】
いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩を投与すると、個体における血清アラニンアミノトランスフェラーゼが減少する。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に詳述される治療方法は、肝臓の炎症、肝線維症、アルコール誘発性線維症、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆道肝硬変(PBC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの肝障害の治療を必要とする個体における肝障害を治療することを含み、治療は、血清アラニンアミノトランスフェラーゼを低下させることを含むことが理解される。
【0069】
本明細書ではまた、本明細書に記載される方法を使用して、肝臓の炎症、肝線維症、アルコール誘発性線維症、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆道肝硬変(PBC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの肝障害の治療を必要とする個体における肝障害の治療に使用するための化合物1またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0070】
本明細書ではまた、本明細書に記載される方法を使用して、肝臓の炎症、肝線維症、アルコール誘発性線維症、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆道肝硬変(PBC)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの肝障害の治療を必要とする個体における肝障害を治療する医薬品の製造のための、化合物1またはその薬学的に許容される塩の使用が提供される。
【0071】
組み合わせ
本開示ではさらに、化合物1またはその薬学的に許容される塩と、肝疾患の治療に使用される他の治療剤との組み合わせが提供される。特に、本開示では、化合物1またはその薬学的に許容される塩と、NASHの治療に使用される他の治療剤との組み合わせが提供される。本明細書に開示されているように、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、臨床用量が低いため、NASHの治療のための多剤混合薬に使用される魅力的な候補である。
【0072】
いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、FXRアゴニストは、オベチコール酸である。いくつかの実施形態において、FXRアゴニストは、シロフェキソールである。いくつかの実施形態において、FXRアゴニストは、トロピフェキソールである。いくつかの実施形態において、FXRアゴニストは、EYP001(Vonafexor、INN提案)である。いくつかの実施形態において、FXRアゴニストは、MET409(メタクリン)である。いくつかの実施形態において、FXRアゴニストは、EDP-305(Enantaによる)である。いくつかの実施形態において、FXRアゴニストは、
【化2】
であるか、またはその薬学的に許容される塩である。
【0073】
いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)アゴニストと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、PPARアゴニストは、ピオグリタゾンである。いくつかの実施形態において、PPARアゴニストは、ロシグリタゾンである。いくつかの実施形態において、PPARアゴニストは、エラフィブラノールである。いくつかの実施形態において、PPARアゴニストは、サログリタザールである。いくつかの実施形態において、PPARアゴニストは、ラニフィブラノールである。いくつかの実施形態において、PPARアゴニストは、セラデルパルである。
【0074】
いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、汎カスパーゼ阻害剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、汎カスパーゼ阻害剤はエムリカサンである。
【0075】
いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、ガレクチン-3阻害剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、ガレクチン-3阻害剤はベラペクチンである。
【0076】
いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、ステアロイルCo-Aデサチュラーゼ1阻害剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、ステアロイルCo-Aデサチュラーゼ1阻害剤はアラムコールである。
【0077】
いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、ケモカイン受容体2及び5型(CCR2/CCR5ケモカイン)アンタゴニストと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、CCR2/CCR5ケモカインアゴニストはセニクリビロックである。
【0078】
いくつかの実施形態において、化合物1またはその薬学的に許容される塩は、抗酸化物質と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、抗酸化物質はビタミンEである。
【0079】
製品及びキット
本開示ではさらに、本明細書に記載される化合物またはその塩、本明細書に記載される組成物、または本明細書に記載される1つ以上の単位用量を好適な包装で含む製品が提供される。特定の実施形態において、製品は、本明細書に記載される方法のうちのいずれかにおいて使用するためのものである。好適な包装(例えば、容器)は、当該技術分野で既知であり、例えば、バイアル、容器、アンプル、ボトル、瓶、フレキシブル包装などを含む。製品は、さらに滅菌及び/または密封されてもよい。
【0080】
本開示ではさらに、本明細書に記載される少なくとも2つの化合物、またはその薬学的に許容される塩、または本明細書に記載される化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む組成物を含む、本開示の方法を実施するためのキットが提供される。キットは、本明細書に開示される化合物のうちのいずれかまたはその薬学的に許容される塩を使用し得る。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に記載される化合物1またはその薬学的に許容される塩を使用する。キットは、本明細書に記載される使用のうちのいずれか1つ以上のために使用され得、したがって、本明細書に記載される治療のための説明書を含有し得る。
【0081】
キットは、一般に、好適な包装を含む。キットは、本明細書に記載される任意の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む1つ以上の容器を含み得る。各構成要素は、別々の容器に包装されることができるか、またはいくつかの構成要素は、交差反応性及び貯蔵寿命が許容される1つの容器に組み合わせることができる。いくつかの実施形態において、キットは、化合物1またはその薬学的に許容される塩を含む容器を含む。
【0082】
キットは、単位剤形、バルクパッケージ(例えば、複数回用量パッケージ)またはサブユニット用量であり得る。例えば、本明細書に開示される化合物、またはその薬学的に許容される塩、及び/または本明細書に詳述される疾患に有用な追加の薬学的活性化合物の十分な用量を含有して、長期間、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3カ月、4カ月、5カ月、7カ月、8カ月、9カ月、またはそれよりも長い期間のうちのいずれかの期間の間に個体への有効な治療を提供するキットが、提供され得る。キットはまた、複数の単位用量の化合物及び使用説明書を含み得、薬局(例えば、病院薬局及び配合薬局)での保管及び使用に十分な量で包装され得る。
【0083】
キットは、本開示の方法の構成要素(複数可)の使用に関連して、説明書を含む電子記憶媒体(例えば、磁気ディスケットまたは光ディスク)も許容されるが、任意に、説明書のセット、概して書面での説明書を含み得る。キットに含まれる説明書は、概して、構成要素及び個体へのそれらの投与に関する情報を含む。
【実施例】
【0084】
本明細書で提供される治療は、既知のマウスモデルに薬剤もしくは複数の薬剤を投与し、結果を評価することによって試験することができる。そのような試験の方法は、既知のものから適合させることができる。例えば、米国特許公開第2015/0342943号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0085】
実施例1
背景技術
セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO)は、一級アミン(例えば、メチルアミン、MMA)のアルデヒド、アンモニウム、及びH2O2への脱アミノ化による酸化ストレスの増加、ならびに肝臓への炎症性細胞の動員により、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に寄与し、肝臓の炎症及び傷害を悪化させる。SSAOレベルは、NASHにおいて上昇し、線維症病期と相関する。化合物1は、NASHのラットモデルにおける肝臓炎症及び線維症を低減させる選択的共有結合性SSAO阻害剤である。化合物1の単回投与用量漸増試験を行った。
【0086】
方法
8名の健康な参加者の4つの群を無作為化して、化合物1のカプセルまたはマッチするプラセボを3:1の比率で投与した。投与前及び投与後の様々な時点で、化合物1及びPDバイオマーカーの血漿レベルを決定した。SSAO阻害は、外因性基質(ベンジルアミン)の添加後の血漿H2O2生成における相対的な減少を測定することにより決定した。SSAO阻害時に増加すると予測される内因性メチルアミン(MMA)レベルを、血漿中で測定した。安全性は、投与後7(±3)日間評価した。
【0087】
化合物1の濃度及びSSAO活性測定のための血漿試料を、試験薬(プラセボまたは化合物)の単回投与後、0.25、0.5、1、2、3、4、6、8、10、12、24、48(SSAO活性のみ)、及び168(SSAO活性のみ)時間で収集した。血漿PKパラメータを非コンパートメント解析により決定した。SSAO活性は、プラセボ及び活性化合物1レシピエントからの血漿試料中の過酸化水素(H2O2)生成レベルを測定することにより評価した。総アミンオキシダーゼ活性のパーセント変化を、対応する投与前(ベースライン)試料と比較して決定した。
【0088】
血漿中のSSAO特異的アミンオキシダーゼレベルを、本質的には以前記載されているように動的アッセイを用いて決定した(Schilter et al)。プラセボ及び活性レシピエントにおけるH2O2生成レベルを測定する前に、血漿試料にパルギリンを添加することにより、内因性モノアミンオキシダーゼA及びBを阻害した。高用量の化合物1で追加的に処理した投与前(ベースライン)試料を用いて最大阻害を定義し、SSAO特異的活性のパーセント変化をベースライン試料と比較して計算した。
【0089】
結果
32名の健康なヒト参加者(100%男性、63%黒人、19%アジア人、13%白人)を登録し、化合物1(1、3、6、及び10mg、各n=6)またはプラセボ(n=2)の単回経口用量が投与された。化合物1の血漿PK曝露は、3mg及び10mgの用量レベル間で、用量に比例した方法よりも大きく増加した。化合物1の平均半減期は、1~3時間の範囲であった。投与から4時間後、全ての用量コホートにおいて、血漿SSAO活性のほぼ完全な阻害が見られ、化合物1の単回投与後、最大1週間の継続的な抑制が検出された。化合物1により最大血漿MMAレベルが増加した。臨床的に関連する有害事象または検査所見の異常は報告されなかった。
【0090】
表1に示すように、化合物1の1、3、6、及び10mgの用量は全て、十分に忍容性があった。
【表1】
【0091】
化合物1のトシル酸塩の単回投与を血漿から迅速に除去し、3~10mgの用量に比例した血漿PKよりも大きいことを示した。
【0092】
図1A及び
図1Bに示すように、化合物1の単回投与は、全ての対象における血漿アミンオキシダーゼ活性を急速かつ強力に低下させた。投与から4時間後にSSAO特異的活性のほぼ完全な阻害が観察された(
図1A及び
図1B)。血漿SSAOアミンオキシダーゼ活性の阻害及び血漿MMAの用量依存性増加が、化合物1の単回投与から1週間後まで持続し、これは強力な共有結合性標的エンゲージメントを示唆し、血漿半減期が短いにもかかわらず、1日1回投与を支持する(
図1A及び
図1B)。
【0093】
SSAOに対する化合物1の濃度(C
max)は、全ての用量レベルで、MAO-A及びMAO-BのIC
50濃度よりも800倍超低かった(
図1C、表2)。
【表2】
【0094】
用量依存的なメチルアミンの増加が観察され、用量範囲全体にわたる強力な血漿SSAO標的エンゲージメントを示した。
図1D。
【0095】
結論
化合物1は、1mg~10mgの範囲の単回経口用量が投与された健康な対象において安全であり、かつ十分に忍容性があった。化合物1は、単回投与後最大7日間、SSAO活性を阻害した。これは、化合物1が、SSAOを選択的に阻害することにより、肝疾患または障害を治療するのに有効であり得ることを示唆する。また、単回投与後7日間のSSAO活性を示す可能性があり、これは、1週間の毎日の投与が2週間の治療効果を発揮し得ることを示唆する。
【0096】
実施例2
化合物1の反復投与用量漸増試験を実施した。8名の健康な参加者の3つの群を無作為化して、7日間(1mg及び4mg)または14日間(10mg)、化合物1またはマッチするプラセボの1日1回(QD)用量を3:1の比率で複数回投与した。投与前及び投与後の様々な時点で、化合物1及びPDバイオマーカーの血漿レベル(血漿アミンオキシダーゼ活性及びメチルアミンレベル)を決定した。特に臨床検査値、バイタルサイン、心電図を含めた安全性について、最終投与の後、最大14日間評価を実施したが、対象全体で注目すべき所見はなかった。プラセボ治療群における中等度(グレード2)の有害事象1件を除き、全ての有害事象は軽度(グレード1)と判断された。有害事象により試験を中止した対象はいなかった(表3を参照)。
【0097】
化合物1の血漿PK曝露量の増加は、1日目に用量群間の用量比例よりも大きく、複数回のQD投与後には各用量レベルで有意な蓄積が観察された。投与初日と投与最終日の間の蓄積率は、用量が増加するにつれて減少した。最高用量コホート(10mg)では7日後に定常状態を達成した。化合物1の半減期は用量とともに増加し、飽和性標的介在性クリアランスと一致した(
図2A及び
図2B、表4を参照)。
【0098】
1日目に、全ての投与コホートにおいて血漿SSAO活性のほぼ完全な阻害が見られ(
図3A)、その結果、SSAOの内因性基質であるメチルアミンが増加した(
図3B)。血漿メチルアミン濃度は用量に比例して増加した(
図3B)。複数回投与後、化合物1の投与最終日に血漿メチルアミンのさらなる増加が観察された(
図3C)。化合物1によって阻害されない血漿アミンオキシダーゼ(例えば、MAO-A、MAO-B)が存在したので、総アミンオキシダーゼの阻害は不完全であった(
図3D、E)
【0099】
化合物1は、健康な対象に14日間、最大QD10mgを投与した場合、安全であり、かつ十分に忍容性があった。化合物1の定常状態レベルは、7日間の投与後に達成され、QD投与レジメンを支持した。血漿SSAOアミンオキシダーゼ活性のほぼ完全な阻害及び血漿メチルアミンの用量依存的な増加は、投与中止後、最大2週間持続し、化合物1を2週間毎日投与すると、投与中止後2週間にわたって治療効果を発揮し得ることを示唆した。
【表3】
【表4】
【0100】
実施例3
非肝硬変性の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と疑われる患者を対象に化合物1を経口投与した場合の安全性、薬物動態、薬力学、及び予備的有効性を評価するための多施設共同無作為化二重盲検用量範囲プラセボ対照臨床試験を実施する。研究参加の総期間は約22週間であり、6週間のスクリーニング期間、12週間の治療期間、及び4週間の追跡期間で構成される。
【0101】
研究の適格基準を満たす、臨床的または組織学的に診断された成人の非肝硬変推定NASH患者約80名が登録されて、研究の2つのパートにわたって、全体的に2:1の比率で3つの用量群とプラセボとに無作為に分けられる。適格基準には、太りすぎまたは肥満、臨床診断または生検によるNASHの存在、ALT≧43U/L(男性)または≧28U/L(女性)、MRI-cT1肝炎>800msが含まれる。
【0102】
この研究の第1のパートでは、実施例2で研究された最高用量である10mgの化合物1を評価する。実施例2では、この用量により、健康な参加者の血漿VAP-1/SSAO特異的アミンオキシダーゼ活性が>90%抑制された。NASH患者は、VAP-1のベースラインレベルが高いことが予想されるため、NASH患者における化合物1のPD効果は健康な参加者と異なる可能性がある。10mg用量における安全性及びPK評価に基づいて、最大20mgの高用量を登録し、10mgコホートにおいて血漿VAP-1/SSAO活性に対する化合物1の強力なPD効果が観察されたことに基づいて、4mgの低用量を登録することが可能である。これにより、化合物1のPK及びPDの効果が研究の第1のパートで確認されるまで、曝露される患者数を最小限に抑えることが可能である。
【0103】
第1のパートでは、約30名の患者は、1日1回、10mgの化合物1(n=20)または対応するプラセボ(n=10)を12週間経口投与されることになる。無作為化された約12名の患者は、治験薬の初回投与後(0週目/1日目)6週目、及び最終投与後(12週目)に集中的なPK及びPDの収集に参加する。化合物1群の約8名の患者及びプラセボ群の約4名の患者が、無作為化により、PK/PDサブスタディに割り当てられることになる。PK/PDサブスタディに参加していない患者は、トラフPK/PDサンプリングのみを受けることになる。
【0104】
第1のパートの全ての患者が6週目の評価を完了すると、中間分析が実行される。中間PK及びPDデータが評価される。盲検化された安全性データも検討される。強力なVAP-1/SSAO活性抑制が観察され、第1のパートから得られたPKに基づき、より低用量でも強力なVAP-1/SSAO活性抑制が得られる可能性があることが示唆される場合、4mgの化合物1を使用した第2のパートへの登録を開始し得る。安全性データから、10mgの化合物1が全般的に安全でありかつ十分に忍容性があることが示され、第1のパートから得られたPKに基づき、最大20mgまでの用量に対する標的曝露量がAUC0-24hrについて5400ng・hr/mL及びCmaxについて768ng/mLの上限を下回ることが予想される場合、最大20mg用量の化合物1の投与を伴う第2のパートへの登録を開始し得る。
【0105】
第2のパートでは、約50名の患者は、1日1回、4mgの化合物1(n=20)、及び/または最大20mgの化合物1(n=20)、または対応するプラセボ(n=10)を12週間経口投与される。無作為化された約15名の患者は、研究薬物の初回投与後(0週目/1日目)6週目、及び最終投与後(12週目)に集中的なPK及びPDの収集に参加する。化合物1の各々の用量レベルの約6名の患者及びプラセボ群の約3名の患者が、無作為化によりPK/PDサブスタディに割り当てられることになる。PK/PDサブスタディに参加していない患者は、トラフPK/PDサンプリングのみを受けることになる。
【0106】
PK/PDサブスタディ及びトラフPK/PDサンプリング
血漿中の研究薬物及び代謝物の濃度を測定するために血漿試料を採取する。尿中の研究薬物及び代謝物の濃度を測定するために尿試料を採取する。PK/PDサブスタディに参加していない患者は、トラフPKサンプリングのみを実施する。NASH/線維化マーカー(CK-18(M30及びM65)、PIIINP、TIMP-1、HA、PRO-C3、及びC3M)及び炎症マーカー(hs-CRP、IL-6、ICAM-1、及びVCAM-1)のための採血も行う。FIB-4、強化肝線維症(ELF)、及びNAFLDについての探索的線維化スコアも計算し得る。PRO-C3/C3M比を計算し得る。患者は有害事象についてモニタリングされる。
【0107】
1、2、15、29、43、57、85日目に、全ての患者から投与前に血漿及び尿試料を採取する。PK/PDサブスタディの患者の場合、1日目(0週目)、43日目(6週目)、及び85日目(12週目)に、投与から30分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間後に血漿試料を採取し、投与から0~8時間後に総尿採取を実施する。2日目(0週目)、44日目(6週目)、96日目(12週目)に試料を採取する(投与から24時間後)。87日目及び88日目に試料を採取する(12週目の投与から48及び72時間後)。ALT、AST、ALP、総ビリルビンを含むマーカーがモニタリングされる。
【0108】
実施例4
方法
2つのパートから構成されている治験の第1のパートは、非肝硬変性のNASH表現型の成人30名を対象とした二重盲検プラセボ対照試験であり、10mgの化合物1を1日1回(QD)投与して12週間評価し、続いて16週目に治療終了後の評価を実施した(
図4)。有害事象(AE)及び臨床検査によって評価された安全性を第1のパートの中間分析の主要評価項目とし、血漿VAP-1活性のベースライン(BL)からのパーセント変化を副次評価項目とした。肝臓の炎症及び線維症の探索的画像診断と血液ベースのバイオマーカーも評価された。ベースラインからの変化(またはパーセント変化)の分析では、治療群と無作為化層を固定効果とし、ベースラインを共変量として含めた従属変数として、ベースラインからの変化(またはパーセント変化)を用いるANCOVAモデルを使用した。
【0109】
結果
プラセボ群と治療群における患者の人口統計及びベースライン特性は、全体的に類似であった(
図5)。ほぼ全ての患者(30名のうちの28名、95%が化合物1であり、プラセボは90%)が第1のパートを完了した(
図6)。化合物1(10mg)は、プラセボと同様のAE発生率で十分な忍容性を示した(
図7)。全てのAEは、軽度または中等度であり、重篤なAEもしくはAEの傾向、または検査所見の異常は報告されなかった。ベースラインから治療終了までcT1に有意な変化は認められなかった(
図9)。化合物1(10mg)は、2週目までにほとんどの対象の血漿VAP-1活性を>98%阻害し、12週目まで抑制効果が持続された(
図10)。プラセボと10mgの化合物1との間のBL cT1、肝脂肪含有量、肝酵素、またはサイトケラチン-18からの変化に、統計的に有意な差はなかった。12週目には、細胞接着マーカーであるVCAM-1と、肝線維化マーカーである組織メタロプロテアーゼ阻害物質1(TIMP-1)において、プラセボから有意な差が観察された(
図8A、8B、11、及び12)。VCAM-1及びICAM-1を含めた細胞接着マーカーの場合、12週目に、VCAM-1は、BL(p=0.0245)と比較して、化合物1群では平均(±SE)24.327(20.5850)μg/L減少し、プラセボ群では平均(±SE)63.450(31.6861)増加した。8週目に、ICAM-1は、BL(p=0.0313)と比較して、化合物1群では平均(±SE)34.85(56.03)μg/L減少し、プラセボ群では、平均(±SE)7.46(46.97)増加した。12週目に、組織TIMP-1は、BL(p<0.05)と比較して、化合物1群では平均(±SE)29.58(9.26)ng/mL減少し、プラセボ群では平均(±SE)13.56(14.22)ng/mL増加した。
【0110】
結論
化合物1は、ベースラインのマルチパラメータMRI及びLS値が少なくともステージ2の線維症を伴うNASHを示す患者において、プラセボと同様の安全性プロファイルで十分な忍容性を示した。化合物1(10mg)は、プラセボと比較して、血漿VAP-1活性のほぼ完全な阻害、肝線維化マーカーTIMP-1のレベル減少、及び細胞接着バイオマーカーICAM-1(8週目)とVCAM-1(12週目)の統計的に有意な減少をもたらした。12週間の治療後、肝臓の炎症及び損傷の他のマーカーに関して、化合物1とプラセボとの間に統計的に有意な差は観察されなかった。全体として、これらのデータは、NASH患者を対象とした現在進行中の研究の第2のパートにおける20mgの化合物1の安全性及び活性のさらなる評価を支持するものである。
【0111】
本明細書で言及される特許、特許出願、及び科学論文を含む全ての刊行物は、特許、特許出願、または科学論文を含む個々の刊行物が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0112】
前述の発明は、理解を明確にするために、例示及び実施例としてある程度詳細に説明されているが、特定の小さな変更及び修正が、上記の教示に照らして実施されることは、当業者には明白である。したがって、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【国際調査報告】