(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ステムレスインプラントによる関節形成術用インプラントシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/40 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A61F2/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527636
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 US2022079591
(87)【国際公開番号】W WO2023086853
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514290052
【氏名又は名称】アースレックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ARTHREX, INC.
【住所又は居所原語表記】1370 Creekside Blvd, Naples, FL 34108, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・デイヴィッド・パターソン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・アラン・ナイト
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA11
4C097BB01
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC13
4C097DD10
4C097EE20
4C097SC10
(57)【要約】
関節の機能を回復させるための関節形成術用インプラントシステムおよび方法が提供される。関節形成術用インプラントシステムは、円筒形の本体およびフランジを有するねじ付きカップを含んでいてもよい。ねじ山は、円筒形の本体上に設けられていてもよい。ねじ山は骨と係合するように構成され、フランジは骨の皮質リムと係合するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関節形成術用インプラントシステム用の上腕骨インプラント組立品であって、
関節インプラントと、
前記関節インプラントを受容するための転換可能なプラットフォームを形成するように適合されたステムレスインプラントと、
前記ステムレスインプラントが、骨と係合するように構成されたねじ山と、前記骨の皮質リムと係合するようにサイズが設定されたフランジと、を含む、組立品。
【請求項2】
前記関節インプラントが、前記ステムレスインプラントに結合されるスペーサーと、前記スペーサーに結合されるライナーとを含み、前記ライナーが凹状の関節面を含み、任意選択的に、前記スペーサーがCクリップによって前記ステムレスインプラントに結合される、請求項1に記載の組立品。
【請求項3】
前記ステムレスインプラントが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料から構成される、請求項1または2に記載の組立品。
【請求項4】
前記ステムレスインプラントが、前記関節インプラントを受容するように適合された受容空洞を含み、さらに、前記受容空洞が、前記フランジから前記ステムレスインプラントの丸みを帯びた基部の床部まで内側に延び、任意選択的に、前記床部が、前記丸みを帯びた基部の内表面を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組立品。
【請求項5】
前記ねじ山が、前記ステムレスインプラントの円筒形の本体の半径方向外表面の周りに円周方向に配置される、請求項1~4のいずれか一項に記載の組立品。
【請求項6】
前記フランジの外径が、前記ねじ山の先端で前記円筒形の本体の外径よりも大きく、任意選択的に、前記円筒形の本体が、骨の内殖を促進するように適合された複数のポケットを含む、請求項5に記載の組立品。
【請求項7】
前記フランジが、それぞれ糸様の材料を受容するように構成された複数の縫合糸アイレットを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組立品。
【請求項8】
関節形成術用インプラントシステムであって、
円筒形の本体と、前記円筒形の本体上に設けられたねじ山と、フランジとを含むねじ付きカップと、を備え、
前記ねじ山が、骨と係合するように構成され、前記フランジが、前記骨の皮質リムと係合するようにサイズが設定される、関節形成術用インプラントシステム。
【請求項9】
前記フランジが、前記円筒形の本体と一体的に形成されて、前記ねじ付きカップの一体型のシングルピース設計を確立する、請求項8に記載の関節形成術用インプラントシステム。
【請求項10】
前記ねじ付きカップが、関節インプラントを受容するための転換可能なプラットフォームを確立するインレー設計を具体化し、任意選択的に、前記関節インプラントが、Cクリップによって前記ねじ付きカップに結合されたスペーサーと、前記スペーサーに結合されたライナーとを含む、請求項8または9に記載の関節形成術用インプラントシステム。
【請求項11】
前記フランジが、前記円筒形の本体の第一の側面上に提供され、丸みを帯びた基部が、前記円筒形の本体の第二の側面上に提供される、請求項8~10のいずれか一項に記載の関節形成術用インプラントシステム。
【請求項12】
受容空洞が、前記フランジから前記丸みを帯びた基部の床部へと内側に延び、さらに前記床部が前記丸みを帯びた基部の内表面を形成する、請求項11に記載の関節形成術用インプラントシステム。
【請求項13】
前記丸みを帯びた基部を貫通して形成された少なくとも一つの係合開口部を備え、任意選択的に、前記丸みを帯びた基部がトラップドアを含む、請求項11に記載の関節形成術用インプラントシステム。
【請求項14】
前記フランジの外径が、前記ねじ山の先端における前記円筒形の本体の外径よりも大きい、請求項8~13のいずれか一項に記載の関節形成術用インプラントシステム。
【請求項15】
前記円筒形の本体が、骨の内殖を促進するように適合された複数のポケットを含み、前記フランジが、それぞれ糸様の材料を受容するように構成された複数の縫合糸アイレットを含む、請求項8~14のいずれか一項に記載の関節形成術用インプラントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本開示は、2021年11月11日に出願された、米国仮特許出願第63/278,226号に対する優先権を主張し、またその全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、関節形成術の分野に関し、より具体的には、関節インプラントと連結するためのステムレスに転換可能なプラットフォームを形成することができるインプラントを含む関節形成術用インプラントシステムに関する。
【0003】
ヒトの筋骨格系の多くの骨は、関節面を含む。関節面は、連携して、異なる種類および程度の関節の動きを促進する。関節面は、繰り返しの使用または摩耗によって、経時的に侵食され、または骨の損失を経験することがあり、それによって関節の不安定性および痛みを引き起こす可能性がある。
【0004】
関節形成術は、変性骨欠損を呈する関節を修復または置換するために実施される整形外科的処置である。骨欠損は、骨の関節面に沿って発生することがある。一部の関節形成術処置では、関節面を修復するために一つ以上のインプラントを利用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、関節の機能を回復させるために設計された関節形成術用インプラントシステムおよび方法に関する。関節形成術用インプラントシステムは、ステムレスに転換可能なインプラントを含むインプラント組立品を含んでいてもよい。
【0006】
関節形成術用インプラントシステム用の例示的な上腕骨インプラント組立品は、特に、関節インプラント、および関節インプラントを受容するための転換可能なプラットフォームを形成するように適合されたステムレスインプラントを含んでいてもよい。ステムレスインプラントは、骨の皮質および/または海綿骨と係合するように構成されたねじ山と、骨の皮質リムと係合するようにサイズが設定されたフランジとを含む。
【0007】
さらなる実施形態では、関節インプラントは、凸状の関節面を含む解剖学的関節インプラントである。
【0008】
さらなる実施形態では、関節インプラントは、凹状の関節面を含むリバース型関節インプラントである。
【0009】
さらなる実施形態では、関節インプラントは、ステムレスインプラントに結合されるスペーサーと、スペーサーに結合されるライナーとを含む。ライナーは、凹状の関節面を含む。
【0010】
さらなる実施形態では、スペーサーは、Cリングによってステムレスインプラントに結合される。
【0011】
さらなる実施形態では、ステムレスインプラントは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料から構成される。
【0012】
さらなる実施形態では、ステムレスインプラントは、関節インプラントを受容するように適合された受容空洞を含み、受容空洞は、フランジからステムレスインプラントの丸みを帯びた基部の床部まで内側に延びている。
【0013】
さらなる実施形態では、床部は丸みのある基部の内表面を形成する。
【0014】
さらなる実施形態では、ねじ山は、ステムレスインプラントの円筒形の本体の半径方向外表面の周りに円周方向に配置される。
【0015】
さらなる実施形態では、フランジの外径は、ねじ山の先端における円筒形の本体の外径よりも大きい。
【0016】
さらなる実施形態では、円筒形の本体は、骨の内殖を促進するように適合された複数のポケットを含む。
【0017】
さらなる実施形態では、フランジは、各々が糸様の材料を受容するように構成された複数の縫合糸アイレットを含む。
【0018】
例示的な関節形成術用インプラントシステムは、特に、円筒形の本体およびフランジを有するねじ付きカップを含んでいてもよい。ねじ山は、円筒形の本体上に設けられていてもよい。ねじ山は、骨の皮質および/または海綿骨と係合するように構成され、フランジは、骨の皮質リムと係合するようにサイズが設定される。
【0019】
さらなる実施形態では、フランジは円筒形の本体と一体的に形成され、ねじ付きカップの一体型のシングルピース設計を確立する。
【0020】
さらなる実施形態では、ねじ付きカップは、関節インプラントを受容するための転換可能なプラットフォームを確立するインレー設計を具体化する。
【0021】
さらなる実施形態では、関節インプラントは、Cクリップによってねじ付きカップに結合されたスペーサーと、スペーサーに結合されたライナーとを含む。
【0022】
さらなる実施形態では、フランジは円筒形の本体の第一の側面上に設けられ、丸みを帯びた基部は円筒形の本体の第二の側面上に設けられる。
【0023】
さらなる実施形態では、受容空洞は、フランジから丸みを帯びた基部の床部へと内側に延び、さらに床部は丸みを帯びた基部の内表面を形成する。
【0024】
さらなる実施形態では、少なくとも一つの係合開口部は、ねじ付きカップの丸みを帯びた基部を通して形成される。
【0025】
さらなる実施形態では、丸みを帯びた基部はトラップドアを含む。
【0026】
さらなる実施形態では、フランジの外径は、ねじ山の先端における円筒形の本体の外径よりも大きい。
【0027】
さらなる実施形態では、円筒形の本体は、骨の内殖を促進するように適合された複数のポケットを含む。
【0028】
さらなる実施形態では、フランジは、各々が糸様の材料を受容するように構成された複数の縫合糸アイレットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、関節形成術用インプラントシステムの上腕骨インプラント組立品を示す。
【
図2】
図2は、関節形成術用インプラントシステムの別の例示的な上腕骨インプラント組立品を示す。
【
図3】
図3は、上腕骨インプラント組立品の例示的なねじ付きカップを示す。
【
図6】
図6は、骨の皮質リムと係合する
図3のねじ付きカップのフランジを図示する。
【
図7】
図7は、
図3~
図6のねじ付きカップの円周方向ねじ山に関連する様々な詳細を図示する。
【
図8】
図8は、上腕骨インプラント組立品の別の例示的なねじ付きカップを示す。
【
図9】
図9は、
図8のねじ付きカップで利用可能なモジュール式ステムを図示する。
【
図10】
図10は、ねじ付きカップを含む上腕骨インプラント組立品を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、関節形成術用インプラントシステムおよび関節の機能を回復させるための方法を説明する。関節形成術用インプラントシステムは、関節インプラントと連結するためのステムレスに転換可能なプラットフォームを確立することができるインプラントを含んでいてもよい。
【0031】
一部の実施形態では、本開示の関節形成術用インプラントシステムは、円筒形の本体およびフランジを有するねじ付きカップを含んでいてもよい。ねじ山は、円筒形の本体上に設けられていてもよい。ねじ山は、骨の皮質および/または海綿骨と係合するように構成され、フランジは、骨の皮質リムと係合するように構成される。本開示のこれら及び他の特徴は、以下に更に詳述される。
【0032】
図1は、上腕骨インプラント組立品12を含む関節形成術用インプラントシステム10を図示する。上腕骨インプラント組立品12は、肩関節の上腕骨14内に移植されて、上腕骨14の天然関節面の再構築および/または肩関節の機能(例えば、可動域または動き、安定性など)の回復を補助することができる。図示されていないが、関節形成術用インプラントシステム10は、肩関節に対する機能を回復させるために上腕骨インプラント組立品12と連結するように構成された関節窩インプラント組立品をさらに含んでいてもよい。さらに、本開示の教示は、特に肩関節を参照して説明されているが、本開示は、ヒト筋骨格系のいずれかの特定の関節に限定されることを意図しておらず、例えば、股関節などの他の関節に適用可能であり得る。
【0033】
上腕骨インプラント組立品12は、ねじ付きカップ16および解剖学的関節インプラント18A(
図1参照)またはリバース型関節インプラント18B(
図2参照)を含んでいてもよい。解剖学的関節インプラント18Aは、解剖学的全肩関節形成術処置を実施するためにねじ付きカップ16と組み合わせて利用されてもよく、リバース型関節インプラント18Bは、リバース型肩関節形成術処置を実施するためにねじ付きカップ16と組み合わせて利用されてもよい。リバース型肩関節形成術処置では、再構成上腕骨14は窩部分を提供し、関節窩(図示せず)は球窩関節の球部分を提供するが、これは生来の解剖学的構造とは逆である。解剖学的関節インプラント18Aは、凸状の関節面20Aを含んでもよく、リバース型関節インプラント18Bは、凹状の関節面20Bを含んでいてもよい。関節面20A、20Bは、関節形成術用インプラントシステム10の天然関節窩又は関節窩インプラント組立品と連結するように構成されている。
【0034】
いくつかの実装形態では、ねじ付きカップ16、解剖学的関節インプラント18A、およびリバース型関節インプラント18Bは、外科手術キットの一部として一緒に提供されてもよい。外科手術キットはさらに、ねじ付きカップ16、解剖学的関節インプラント18A、およびリバース型関節インプラント18Bの各々を、複数のサイズで用意することもできる。
【0035】
図示した実施形態では、上腕骨14の上腕骨頭部が切除され、したがって上腕骨14の本来の関節構成要素は、上腕骨インプラント組立品12を受容するための上腕骨14を準備するために除去されている。上腕骨14が適切に準備された後、ねじ付きカップ16は上腕骨14の骨幹端22にねじ込まれることができる。一実施形態では、ねじ付きカップ16は、上腕骨インプラント組立品12のステムレスインプラントであり、したがって、上腕骨14の骨幹部24の内部に延びるステムが存在しない。ねじ付きカップ16は、解剖学的関節インプラント18Aまたはリバース型関節インプラント18Bのいずれかを受容するための転換可能なプラットフォームを確立するように構成されてもよい。解剖学的関節インプラント18Aまたはリバース型関節インプラント18Bは、上腕骨インプラント組立品12を組み立てるためにねじ付きカップ16に取り付けられてもよい。
【0036】
上腕骨インプラント組立品12のねじ付きカップ16は、
図3、
図4、および
図5にさらに図示されている(引き続き
図1および
図2を参照)。一実施形態では、ねじ付きカップ16はチタン材料で構築される。別の実施形態では、ねじ付きカップ16は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの皮質骨の弾性係数に比較的近い弾性係数を有する材料で作製されてもよい。代わりに、ねじ付きカップ16を構築するための他の材料を本開示の範囲内で利用することができる。
【0037】
ねじ付きカップ16は、ねじ付きカップ16の上部または近位側に位置するフランジ28と、ねじ付きカップ16の底部または遠位側に位置する丸みを帯びた基部30との間に延びる円筒形の本体26を含んでいてもよい。この実施形態では、ねじ付きカップ16は、フランジ28が円筒形の本体26と一体的に形成される一体型のシングルピース設計を具体化する。
【0038】
ねじ付きカップ16の受容空洞32は、解剖学的関節インプラント18Aまたはリバース型関節インプラント18Bのいずれかを受容し、ねじ付きカップ16に固定するように構成されていてもよい。受容空洞32は、フランジ28および円筒形の本体26によって囲まれていてもよい。受容空洞32は、フランジ28から丸みを帯びた基部30の床部34へと内側に延びてもよい。床部34は、丸みを帯びた基部30の内表面を形成してもよい。
【0039】
受容空洞32は、ねじ付きカップ16の大部分(フランジ28を除く)が上腕骨14の内側に配置される、インレー設計を提供することができる。このようにして、ねじ付きカップ16と関節インプラント18A、18Bとの間の接続部も、アンレー設計を示すのではなく、インレーされる。
【0040】
ねじ山36は、円筒形の本体26の半径方向外表面38の周りに円周方向に配置されてもよい。ねじ山36は、ねじ付きカップ16が上腕骨14内にねじ込まれることを可能にするように構成されたセルフタッピングねじであってもよい。ねじ山36は、時計回りの回転または反時計回りの回転のいずれかが、ねじ付きカップ16を上腕骨14の中に前進させるように機能するように構成されてもよい。
【0041】
一実施形態では、フランジ28の外径D1は、円筒形の本体26の外径D2(ここではねじ山36の先端に画定される)よりも大きい(例えば、
図5を参照)。フランジ28の外径D1は、フランジ28が上腕骨14の皮質リム40(例えば、
図6を参照)と係合することを可能にするようにサイズが設定されてもよい。皮質リム40をこのように係合させることは、追加の固定支持を提供し、上腕骨14の近位部分をより好ましく装填することができる。
【0042】
さらに、外径D2は、ねじ付きカップ16がその中に挿入されると、ねじ山36が上腕骨14の皮質骨42に比較的近接して位置付けられるようにサイズが設定されてもよい(例えば、
図6を参照)。ねじ山36を皮質骨42に可能な限り近づけてねじ付きカップ16を固定することは、「圧入」インプラント設計と比較して、初期固定および長期固定の改善をもたらす可能性がある。したがって、ねじ山36は、皮質骨42、海綿骨43、またはその両方と係合することができる。
【0043】
円筒形の本体26は、内径D3をさらに含んでいてもよい。内径D3は、ねじ付きカップ16のカップサイズを確立することができる。内径D3は、外径D1および外径D2の両方より小さくてもよい。
【0044】
フランジ28の外径D1、円筒形の本体26の外径D2、および円筒形の本体26の内径D3の実際の寸法は、他の要因の中でも特に、患者の寸法に応じて変化し得る。上記で参照された外科手術キットは、フランジ28の外径サイズおよび円筒形の本体26の内径サイズの複数の組み合わせを有するねじ付きカップを含んでいてもよい。以下の表1は、外科手術キットの一部として提供される可能性のあるねじ付きカップ16の例示的なサイズを示す。列挙されたサイズは、例示に過ぎず、したがって非限定的であることが意図される。
【表1】
【0045】
ねじ付きカップ16のフランジ28は、円形または楕円形のいずれかであってもよい。しかしながら、フランジ28の実際の形状は、本開示を限定することを意図していない。
【0046】
複数の縫合糸アイレット44が、フランジ28を貫通して延びていてもよい。縫合糸アイレット44は、縫合糸46などの糸様の材料を受容するように構成されていてもよい(
図3を参照)。その後、フランジ28の周りの領域で組織(例えば、肩甲下筋、棘上筋など)を上腕骨14に結束するのを補助するために縫合糸46を利用することができる。
【0047】
ねじ付きカップ16のフランジ28/円筒形の本体26内に、一つ以上の切り欠きまたは中断部48が形成されてもよい。中断部48は、ねじ付きカップ16と関節インプラント18A、18Bとの間の弛緩を低減するためにねじ付きカップ16と組み合わせて利用されてもよい、くさび/スペーサー(図示せず)の接合特徴を受容するようにサイズが決定される。くさび/スペーサーの接合特徴は、ねじ付きカップ16に対するくさび/スペーサーの回転を防止するために、中断部48を画定するフランジ28の壁に係合することができる。
【0048】
一つ以上の係合開口部50は、ねじ付きカップ16の丸みを帯びた基部30を貫通して形成されてもよい。係合開口部50は、くさび/スペーサーの追加の接合特徴を受容するように構成されてもよい。係合開口部50は、例えば、ねじ式の円形の開口部であってもよい。
【0049】
丸みを帯びた基部30は、それを貫通して形成された一つ以上の追加的な係合開口部52を含んでいてもよい。係合開口部52は、上腕骨14内にねじ付きカップ16を移植するために利用されることがあるインサータ装置の接合特徴を受容するように構成されてもよい。係合開口部52は、例えば楕円形または円形であってもよい。
【0050】
ねじ付きカップ16は、複数のポケット54をさらに備えてもよい。ポケット54は、フランジ28のすぐ内側の位置で円筒形の本体26の半径方向外表面38内に形成されてもよい。ポケット54は、挿入後の骨の内殖を促進することができる。代替的に、または追加的に、骨の内殖を促進するために、円筒形の本体26の選択部分に、多孔性コーティングを適用することができる。さらに別の実施形態では、ねじ山36の表面仕上げは、骨の内殖を促進するためにグリットブラスト加工であってもよい。一実施形態では、ポケット54は楕円形であってもよい。
【0051】
図7は、ねじ付きカップ16のねじ山36に関連する追加的な詳細を図示する。ねじ山36は、ねじ山のピッチ60、ねじ山の角度62、ねじ山の先端幅64、ねじ底の幅66、ねじ山の深さ68、およびねじ底の半径70などの設計特性を含んでいてもよい。以下の表2は、ねじ山36の例示的な設計特性を示す。開示された特性は、例示のみを目的としており、したがって、他のねじ山の特異的な構成は、本開示の範囲内であることが意図される。本開示では、「約」という用語は、表現された量または範囲が正確である必要はなく、許容可能な公差、変換係数、測定誤差などを反映して、近似および/またはより大きい、もしくはより小さい場合があることを意味する。
【表2】
【0052】
ねじ山のピッチ60は、可変ピッチであってもよい。一実施形態では、可変ピッチは、ねじ付きカップ16の近位側からねじ付きカップ16の遠位側に向かって延びる方向に増加する。別の実施形態では、可変ピッチは、ねじ付きカップの遠位側からねじ付きカップ16の近位側に向かって延びる方向に増加する。
【0053】
ねじ山36は、一条ねじ、二条ねじ、または三条ねじであってもよい。ねじのリードは、ねじ付きカップ16を骨内に着座させるのにかかる巻きの量を制御するために修正されてもよい。
【0054】
ねじ付きカップ16は、肩関節形成術処置中に上腕骨14内に移植されてもよい。肩関節形成術処置は、少なくとも以下の工程を含んでいてもよい。(1)ねじ付きカップ16を受容するための上腕骨14の準備(例えば、上腕骨頭の切除、切除された上腕骨内の空洞の準備など)、(2)準備された上腕骨へのねじ付きカップ16のねじ込み、(3)移植されたねじ付きカップ16への関節インプラントの18A、18Bの接続。本開示の範囲内で、肩関節形成術処置の一部として、より多い、またはより少ない数の工程が実施されてもよい。一旦移植されると、ねじ付きカップ16のねじ山36は、皮質骨42の近くの上腕骨14と係合してもよく、フランジ28は皮質リム40に対して負荷をかけてもよい。したがって、ねじ山36は、皮質骨42、海綿骨43、または両者と係合することができる。
【0055】
図8および
図9は、関節形成術用インプラントシステムの上腕骨インプラント組立品のための別の例示的なねじ付きカップ116を図示する。ねじ付きカップ116は、上述のねじ付きカップ16と同様である。しかしながら、この実施形態では、ねじ付きカップ116は、ねじ付きカップ116の丸みを帯びた基部30に移動可能または取り外し可能に接続され得るトラップドア72を含んでいてもよい。トラップドア72は、丸みを帯びた基部30に対して移動されてもよく、または丸みを帯びた基部30から取り外されて、丸みを帯びた基部30を貫通して開口部74を露出してもよい。ステム76(例えば、
図9を参照)などの別のインプラントは、開口部74を通して挿入され、トラップドア72がねじ付きカップ116のねじり安定性を改善するために移動され、または取り外された際に、ねじ付きカップ116に接続されてもよい。
【0056】
ここで
図10、11、および12を参照すると、ねじ付きカップ16(またはねじ付きカップ116)は、関節形成術用インプラントシステムの上腕骨インプラント組立品99の一部として利用されてもよい。ねじ付きカップ16に加えて、上腕骨インプラント組立品99は、スペーサー78およびライナー80を含んでいてもよい。スペーサー78およびライナー80はひとまとめに、上腕骨インプラント組立品99の関節インプラント82を形成することができる。
【0057】
この実施形態では、関節インプラント82は、リバース型関節インプラントである。したがって、ライナー80は、凹状の関節面84を含んでいてもよい。しかしながら、解剖学的関節インプラントも本開示の範囲内であることが意図される(例えば、
図1を参照)。
【0058】
ねじ付きカップ16は、丸みを帯びた基部30内に形成された一つ以上の係合開口部91を含んでいてもよい。係合開口部91は、ねじ付きカップ16に対してスペーサー78の回転を安定化させるために、スペーサー78(あるいは、スペーサー78が使用されていない場合はライナー80)の回転止めペグ93を収容することができる。
【0059】
スペーサー78をねじ付きカップ16に結合するために、Cクリップ86が使用されてもよく、ライナー80は、テーパー接続または任意の他の接続によってスペーサー78に結合されてもよい。Cクリップ86は、ねじ付きカップ16の受容空洞32内に形成された円周溝88内に収容されてもよく、Cクリップ86はさらに、スペーサー78内に形成された円周溝90内に収容されてもよい。
【0060】
一実施形態では、ライナー80はロックブロック92を含む。ロックブロック92は、スペーサー78内に形成されたノッチ94内に収容されてもよい。ロックブロック92は、Cクリップ86が内向きに変形するのを防止し、スペーサー78がねじ付きカップ16から係合解除されることを可能にするように構成されてもよい。
【0061】
別の実施形態では、ロックブロック92はスペーサー78によって提供される(例えば、
図13Aおよび
図13Bを参照)。この実施形態では、ロックブロック92は、Cクリップ86が自由に変形する開放位置(
図13A)と、Cクリップ86が変形することが防止されるロック位置(
図13B)との間で並進することができる。ロックブロック92は、ライナーがスペーサー78との連結係合へと移動する際にライナー80によって加えられる力に応じて、開放位置からロック位置へと移動することができる。
【0062】
他の実装形態では、スペーサー78は、テーパー接続を介してねじ付きカップ16に固定されてもよい。さらに他の実施形態では、スペーサー78は、上腕骨インプラント組立品99から除去されてもよく、ライナー80は、例えば、テーパー接続またはCクリップのいずれかを介して、ねじ付きカップ16に直接固定されてもよい。したがって、本開示は、
図10~13Bに示される正確な実施形態に限定されることを意図するものではない。
【0063】
一実施形態では、ライナー80は金属構成要素である(
図14を参照)。別の実施形態では、ライナー80は、金属部分96およびポリマー部分98の両方を含んでいてもよい(
図15を参照)。ポリマー部分98は、関節インプラント82の凹状の関節面84を形成することができ、金属部分96によって提供されるシェル内に挿入成形されることができる。
【0064】
本開示の例示的な関節形成術用インプラントシステムは、関節インプラントと連結するための転換可能なプラットフォームを確立することができるステムレスインプラントを採用する。ステムレスインプラントは、追加の固定支持を提供し、移植時に骨をより有利に装填するために、切除された骨の皮質リムの上に載置するように適合されたフランジ(例えば、円周リング/トラニオン)を組み込むねじ付きカップとして構成されてもよい。ステムレスインプラントは、インレー型のリバース型人工装具の構成を可能にするインレー設計をさらに提供することができる。
【0065】
異なる非限定的な実施形態が、特定の構成要素または工程を有するものとして例示されているが、本開示の実施形態は、それらの特定の組み合わせに限定されない。非限定的な実施形態のいずれかからの構成要素または特徴のいくつかを、他の非限定的な実施形態のいずれかからの特徴または構成要素と組み合わせて使用することが可能である。
【0066】
当然のことながら、同様の参照符号は、いくつかの図面全体を通して、対応する要素または同様の要素を特定する。さらに当然のことながら、これらの例示的な実施形態では、特定の構成要素の配置が開示され、また図示されるが、他の配置もまた、本開示の教示から恩恵を受けることができる。
【0067】
前述の記述は、例示的であるとして解釈されるべきであり、いかなる限定的な意味でも解釈されるべきではない。当業者は、ある特定の修正が、本開示の範囲内になる場合があることを理解するであろう。これらの理由により、以下の特許請求の範囲は、本開示の真の範囲及び内容を決定するために研究されるべきである。
【符号の説明】
【0068】
10 関節形成術用インプラントシステム
12 上腕骨インプラント組立品
14 上腕骨
16 ねじ付きカップ
18A 解剖学的関節インプラント
18B リバース型関節インプラント
20A 関節面
20B 関節面
22 骨幹端
24 骨幹部
26 本体
28 フランジ
30 基部
32 受容空洞
34 床部
36 ねじ山
38 半径方向外表面
40 皮質リム
42 皮質骨
43 海綿骨
44 縫合糸アイレット
46 縫合糸
48 中断部
50 係合開口部
52 係合開口部
54 ポケット
60 ねじ山のピッチ
62 ねじ山の角度
64 ねじ山の先端幅
66 ねじ底の幅
68 ねじ山の深さ
70 ねじ底の半径
72 トラップドア
74 開口部
76 ステム
78 スペーサー
80 ライナー
82 関節インプラント
84 関節面
86 Cクリップ
88 円周溝
90 円周溝
91 係合開口部
92 ロックブロック
93 回転止めペグ
94 ノッチ
96 金属部分
98 ポリマー部分
99 上腕骨インプラント組立品
116 ねじ付きカップ
D1 外径
D2 外径
D3 内径
【国際調査報告】