(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】外側スカートが解放可能に取り付けられた人工心臓弁およびそれに関連した方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527638
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 US2022049661
(87)【国際公開番号】W WO2023086543
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】タミール・エス・リーヴァイ
(72)【発明者】
【氏名】エレナ・シャーマン
(72)【発明者】
【氏名】メリッサ・フサリ
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ・グロヴィッチ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097CC19
4C097DD05
4C097DD12
4C097DD13
(57)【要約】
人工心臓弁は、環状フレームと、一つまたは複数の着脱可能な外側スカートと、を含む。フレームは、複数の相互連結支柱と、フレームの外面に対して解放可能に取り付けられた一つまたは複数の外側スカートと、を含む。いくつかの例では、外側スカートは、一つまたは複数の部分を含み、一つまたは複数の部分は、縫合糸ラインに沿って縫合糸の周囲とフレームの支柱の周囲とを巻回している複数のステッチによって形成された少なくとも一つの保持縫合糸を介して、フレームに対して取り付けられている。外側スカートの一部は、縫合糸ラインに沿って、引張縫合糸とフレームの外面との間に捕捉されている。引張縫合糸を縫合糸ラインから除去することにより、ステッチが外側スカートの開口を通して引き抜かれるとともにフレームに対して取り付けられたままとされ、外側スカートとフレームとを分離させることが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁であって、
複数の相互連結支柱を含む環状フレームと、
前記環状フレームの外面上に配置され、前記複数の相互連結支柱の少なくとも一部に対して着脱可能に固定された外側スカートと、を含み、
前記外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、前記複数の相互連結支柱の前記一部に対して着脱可能に固定されており、前記保持縫合糸と一つまたは複数の引張縫合糸とは、縫合糸ラインに沿って配置されており、前記保持縫合糸は、前記外側スカートを通して延びるとともに前記一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成しており、
前記外側スカートは、前記複数の相互連結支柱の前記一部から取り外されるように構成されているとともに、前記一つまたは複数の引張縫合糸を前記縫合糸ラインから除去することによって、および、前記複数のステッチを、前記外側スカートを通して引き抜くことによって、前記環状フレームを前記外側スカートから分離することを可能とするように構成されている、人工心臓弁。
【請求項2】
前記一つまたは複数の引張縫合糸のそれぞれは、前記縫合糸ラインを越えて延びた端部領域を含み、前記端部領域は、前記環状フレーム、前記外側スカート、または前記環状フレームの内部に配置された弁膜構造のうちの一つまたは複数のところに位置した取付領域に対して、取り付けられており、
前記端部領域は、前記取付領域から解放されるように構成されているとともに、引っ張られることで、前記一つまたは複数の引張縫合糸の対応した引張縫合糸を、前記縫合糸ラインから除去するように構成されている、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項3】
前記端部領域は、接着剤、縫合糸、結び目、または弾性バンドの一つまたは複数を介して、前記取付領域のところで解放可能に取り付けられている、請求項2に記載の人工心臓弁。
【請求項4】
前記端部領域は、前記一つまたは複数の引張縫合糸の対応した引張縫合糸を識別することを可能とするように構成されたマーカーを含む、請求項2または3に記載の人工心臓弁。
【請求項5】
前記マーカーは、前記端部領域に対して取り付けられたまたは前記端部領域の内部に配置された、着色マーカーまたは放射線不透過性マーカーの少なくとも一つを含む、請求項4に記載の人工心臓弁。
【請求項6】
前記一つまたは複数の引張縫合糸は、PTFE、ePTFE、またはプロレンの一つまたは複数から構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項7】
前記少なくとも一つの保持縫合糸は、UHMPEフォースファイバを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項8】
前記少なくとも一つの保持縫合糸は、前記外側スカートに予め形成された開口を通して延びている、請求項1~7のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項9】
各ステッチは、前記外側スカートの単一の開口を通して延びている、請求項1~8のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項10】
前記外側スカートは、二つ以上のスカート部分を含み、前記二つ以上のスカート部分の隣接したスカート部分どうしは、それらの間にオーバーラップ領域を有しており、前記縫合糸ラインは、前記オーバーラップ領域の少なくとも一部を通して延びている、請求項1~19のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項11】
前記外側スカートは、前記環状フレームの前記外面の流入端部分上に配置された第一外側スカートであって、前記環状フレームの前記流入端部分を形成している前記複数の相互連結支柱の第一部分に対して着脱可能に固定された、第一外側スカートを含み、前記人工心臓弁は、前記環状フレームの前記外面の流出端部分上に配置された第二外側スカートであって、前記環状フレームの前記流出端部分を形成している前記複数の相互連結支柱の第二部分に対して着脱可能に固定された、第二外側スカートを、さらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項12】
前記複数のステッチは、前記複数の相互連結支柱の前記一部の周囲にさらに延びている、請求項1~11のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項13】
前記複数のステッチは、摘出手順時に前記環状フレームが前記外側スカートから分離された後、前記複数の相互連結支柱の前記一部に対して取り付けられたままであるように構成されている、請求項12に記載の人工心臓弁。
【請求項14】
前記外側スカートは、さらに、複数の非貫通ステッチを介して、前記複数の相互連結支柱の前記一部に対して着脱可能に固定されており、前記複数の非貫通ステッチは、前記複数の相互連結支柱の前記一部の周囲に延びているとともに、前記少なくとも一つの保持縫合糸と前記外側スカートの内面との間に延びている、請求項1~11のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項15】
前記複数のステッチおよび前記複数の非貫通ステッチは、摘出手順時に前記環状フレームが前記外側スカートから分離された後、前記複数の相互連結支柱の前記一部に対して取り付けられたままであるように構成されている、請求項14に記載の人工心臓弁。
【請求項16】
前記外側スカートは、少なくとも一つの融着エッジを含み、前記融着エッジは、前記人工心臓弁の外面上へと折り返されることにより、折り返しエッジを形成しており、前記折り返しエッジは、前記少なくとも一つの保持縫合糸と、前記一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、前記複数の相互連結支柱の隣接した支柱に対して固定されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項17】
着脱可能な外側スカートを有した人工心臓弁を製造するための方法であって、
フレームであって、前記フレームの流入端と流出端との間に配置された複数の相互連結支柱を含む、フレームを用意するステップと、
前記着脱可能な外側スカートの一つまたは複数の部分を、前記フレームの外面上へと重ね合わせるステップと、
前記複数の相互連結支柱の選択された相互連結支柱の周囲に延びるとともに前記着脱可能な外側スカートを通して延びさらに前記着脱可能な外側スカートの外面上における一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成するステップと、を含む、方法。
【請求項18】
人工心臓弁であって、
複数の相互連結支柱と複数のアンカー止め突起とを含む環状フレームと、
前記環状フレームの外面上に配置され、前記複数の突起の少なくとも一部を覆う外側スカートであって、前記複数の相互連結支柱の少なくとも一部に対して着脱可能に固定された、外側スカートと、を含み、
前記外側スカートは、前記複数の相互連結支柱の前記一部から取り外されるように構成されているとともに、前記環状フレームを前記外側スカートから分離することを可能とするように構成されており、前記環状フレームの前記外面上における前記複数の突起は、前記環状フレームと前記外側スカートとが分離された後には、露出される、人工心臓弁。
【請求項19】
前記外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、前記複数の相互連結支柱の前記一部に対して着脱可能に固定されており、前記保持縫合糸と一つまたは複数の引張縫合糸とは、縫合糸ラインに沿って配置されており、前記保持縫合糸は、前記複数の相互連結支柱の前記一部の周囲に延びるとともに前記外側スカートを通して延びさらに前記一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成しており、前記外側スカートは、前記一つまたは複数の引張縫合糸を前記縫合糸ラインから除去することによって、および、前記複数のステッチを、前記外側スカートを通して引き抜くことによって、前記環状フレームから取り外すことができる、請求項18に記載の人工心臓弁。
【請求項20】
前記一つまたは複数の引張縫合糸のそれぞれは、前記縫合糸ラインを越えて延びた端部領域を含み、前記端部領域は、前記環状フレーム、前記外側スカート、または前記環状フレームの内部に配置された弁膜構造のうちの一つまたは複数のところに位置した取付領域に対して、解放可能に取り付けられており、
前記端部領域は、前記取付領域から解放されるように構成されているとともに、引っ張られることで、前記一つまたは複数の引張縫合糸の対応した引張縫合糸を、前記縫合糸ラインから除去するように構成されている、請求項19に記載の人工心臓弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月13日付けで出願された米国仮特許出願第63/279,095号明細書および2022年8月29日付けで出願された米国仮特許出願第63/401,981号明細書の優先権を主張するものであり、これらの文献は、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、フレームと付属弁構造と解放可能に取り付けられた外側スカートとを含む人工心臓弁に関し、また、その製造方法に関し、さらに、その移植方法および摘出方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトの心臓は、様々な弁膜症に罹患する可能性がある。これらの弁膜症は、心臓の深刻な機能不全を引き起こし得るものであって、最終的には、天然弁を修復することが必要となったり、天然弁を人工弁へと置換することが必要となったり、することがある。修復デバイス(例えば、ステント)および人工弁として、多数のものが知られているとともに、それらデバイスおよび弁をヒト内へと移植したり摘出したりするための方法としても、多数のものが知られている。様々な外科的アプローチ(例えば、経皮的手順、低侵襲的手順、開心術、など)を使用することにより、人工医療デバイスを、身体内部の位置へと送達したり、かつ/または身体内部の位置から除去したり、することができる。
【0004】
低侵襲移植手順の一具体例では、人工心臓弁を、送達デバイスの遠位端上に圧縮状態で装着し得るとともに、患者の血管系を通して(例えば、大腿動脈および大動脈を通して)前進させることができ、心臓内の移植部位へと人工弁を到達させることができる。その後、人工弁を、例えば、人工弁が装着されているバルーンを膨張させることにより、または人工弁に対して拡張力を印加する機械的アクチュエータを駆動することにより、または人工弁を送達デバイスのシースから展開することで人工弁をその機能的サイズへと自己拡張させ得ることにより、その機能的サイズへと拡張させる。これにより、人工弁は、患者の心臓内で動作可能となり、典型的にはおよそ15年~25年であるような人工弁の耐用年数の間にわたって、天然の心臓弁の機能を代替する。
【0005】
大部分の拡張可能な経カテーテル心臓弁は、径方向に拡縮可能な円筒形の金属フレームと、フレームの内部に装着された人工弁尖と、を含む。フレームは、フレームに複数列の開放セルを形成するような、周方向に延びた複数列の傾斜支柱を含むことができる。人工弁は、人工弁を天然心臓弁の組織に対してシールするために、フレームの外面に対して固定された外側シール部材(「外側スカート」とも称される)を含むことができる。外側スカートは、典型的には、縫合によって、フレームに対して取り付けられる。外側スカートは、典型的には、組織の内方成長を促進し、これにより、人工弁が天然弁輪に対してシールされてアンカー止めされることを補助する。外側スカートの使用は、天然の大動脈弁の石灰化を引き起こす大動脈弁狭窄症(AS)を罹患した患者にとっては、特に重要である。石灰化は、天然の弁輪組織上に不規則な形状の面を形成することがある。外側スカートは、人工弁のフレームと、周囲組織の硬化したカルシウム沈着物と、の間の間隙を充填するように設計されており、これにより、人工弁と天然弁輪との間にシールを確立する。
【0006】
患者によっては、弁の機能不全が起こった場合や、経時的な使用による摩耗や損傷や劣化が生じた場合には、および/または、人工インプラント技術の進歩により、改良された人工弁デバイスが所望された場合には、人工弁を着脱または摘出することが望ましいことがあり得る。摘出手順時には、古い人工弁を除去することで、新たな人工心臓弁を、病変した天然弁の内部に移植することができる。しかしながら、従来的な人工弁の摘出は、外側スカートと天然弁輪との間に形成される新生内膜組織のために、極めて困難である。典型的には、人工弁を患者から除去するために、外科医は、人工弁の周囲に位置した組織を切開する必要がある。外側スカートは、典型的には、一方の面上では人工弁のフレームに対して結合されており、かつ、他方の面上では天然弁輪に対して結合されているため、人工弁から切除する必要のある組織に対して外科医がアクセスする余地はほとんどない。理解されるように、これは、繊細な手順であり、患者にとって深刻なリスクを伴い得るものである。場合によっては、例えば、人工弁の摘出により、左心室流出路の組織を損傷することがあり得る。
【0007】
さらに、大動脈弁閉鎖不全症(AI)に罹患している患者などの一部の患者では、天然弁が拡張していることがあり、天然弁輪組織とそこに移植した人工弁との間をシールするための充分な接触の形成に際して、過大なサイズの人工弁を移植する必要がある。狭窄した天然弁と比較して、機能不全となった天然弁の組織は、より柔軟であり、人工弁と天然弁輪との間のシールの確立に際して、人工弁のフレームに対して、より容易に適応することができる。よって、場合によっては外側スカートが必要とされないこともあるけれども、狭窄した天然弁とは異なり、天然組織の柔軟な性質に起因して、人工弁を所定位置にアンカー止めすることは、はるかに困難である。このように、人工弁のフレームの外面上に位置した突起などのアンカー止め特徴は、移植した人工弁の位置を維持することを、補助することができる。しかしながら、AI患者に関して過大なサイズの弁を使用することは、人工弁の経カテーテル送達時における人工弁の圧縮プロファイルがより大きなものとなるため、特に患者の血管系が小さい場合には、および/または、過大なサイズの弁が外側スカートを含む場合には、経カテーテル送達を、妨害したり複雑にしたりする可能性がある。さらに、外側スカートは、移植時に人工弁のアンカー止め特徴の一部または全部を覆ったり阻害したりして、アンカー止めを阻止することがあり得る。よって、狭窄した天然弁内への移植を主目的とした人工弁は、機能不全となった天然弁への移植には適さないことがあり、その逆もまた成立する。
【発明の概要】
【0008】
本明細書で説明するものは、人工心臓弁、送達装置、および、人工心臓弁を移植するための方法である。開示する人工心臓弁、送達装置、および方法は、例えば、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、人工弁のフレームに対して解放可能に取り付けられる外側スカートを提供することができる。このように、本明細書で開示するデバイスおよび方法は、とりわけ、典型的な人工心臓弁における、また、それらに関連した移植手順および/または摘出手順における、一つあるいは複数の欠陥を克服することができる。
【0009】
人工心臓弁は、フレームと、フレームに対して結合された弁構造と、を含むことができる。これらの構成要素に追加して、人工心臓弁は、例えば着脱可能な外側スカートなどの、本明細書で開示する一つまたは複数の構成要素を、さらに含むことができる。いくつかの例では、着脱可能な外側スカートは、縫合糸ラインに沿って配置された少なくとも一つの保持縫合糸と一つまたは複数の引張縫合糸とを介して、フレームに対して取り付けることができる。
【0010】
いくつかの例では、人工心臓弁は、複数の相互連結支柱を含む環状フレームと、環状フレームの外面上に配置された外側スカートであって、複数の相互連結支柱の少なくとも一部に対して着脱可能に固定された、外側スカートと、を含む。外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の一部に対して着脱可能に固定することができ、保持縫合糸と一つまたは複数の引張縫合糸とは、縫合糸ラインに沿って配置されており、保持縫合糸は、複数の相互連結支柱における一部の周囲に延びるとともに外側スカートを通して延びさらに一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成している。さらに、外側スカートは、複数の相互連結支柱の一部から取り外されるように構成されているとともに、一つまたは複数の引張縫合糸を縫合糸ラインから除去することによって、さらに、ステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームを外側スカートから分離することを可能とするように構成されている。
【0011】
いくつかの例では、人工心臓弁は、フレームであって、フレームの流入端と流出端との間に配置された複数の相互連結支柱を含む、フレームと、フレームの外面上に配置された外側スカートと、縫合糸ラインに沿って外側スカートの外面上に配置された一つまたは複数の引張縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸の周囲を巻回したさらに縫合糸ラインに沿って配置された特定の複数の相互連結支柱の周囲を巻回した複数のステッチを形成している少なくとも一つの保持縫合糸と、を含む。このような例では、外側スカートをなす部分は、縫合糸ラインに沿って、引張縫合糸とフレームの外面との間に捕捉されている。さらに、外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、フレームに対して解放可能に取り付けられている。なおもさらに、外側スカートは、一つまたは複数の引張縫合糸を縫合糸ラインに沿って複数のステッチから除去することによって、さらに、複数のステッチを縫合糸ラインに沿って外側スカートを通して引き抜くことによって、フレームから解放されるように構成されている。さらにまた、複数のステッチは、外側スカートがフレームから解放された後でも、縫合糸ラインに沿って、特定の複数の相互連結支柱の周囲に巻回されたままであるように構成されている。
【0012】
いくつかの例では、人工心臓弁を移植するための方法は、複数のステップを含み、複数のステップは、患者の心臓症状と患者の天然弁輪のサイズとを評価するステップと、患者の心臓症状と天然弁輪のサイズとに基づいて、患者の内部に移植するのに適切なサイズを有した人工心臓弁を選択するステップであって、人工心臓弁は、フレームを含み、フレームは、フレームの外面上に着脱可能に固定された外側スカートを有し、外側スカートは、少なくとも一つの引張縫合糸と、少なくとも一つの保持縫合糸と、を介して、フレームに対して着脱可能に固定され、少なくとも一つの保持縫合糸は、引張縫合糸の周囲に巻回されるとともにフレームの一つまたは複数の支柱の周囲にさらに巻回された複数のステッチを形成している、ステップと、患者の心臓症状が大動脈弁閉鎖不全症である場合には、引張縫合糸の端部を把持することにより、そして、端部に対して力を印加することで、引張縫合糸をステッチから引き抜くことにより、さらに、フレームを、外側スカートの一つまたは複数の部分から分離することにより、外側スカートをフレームから除去するステップと、人工心臓弁を患者の天然弁輪の内部に移植するステップと、を含む。
【0013】
いくつかの例では、人工心臓弁は、複数の相互連結支柱と複数のアンカー止め突起とを含む環状フレームと、環状フレームの外面上に配置された外側スカートであって、複数の突起の少なくとも一部を覆うものとされ、複数の相互連結支柱の少なくとも一部に対して着脱可能に固定された、外側スカートと、を含み、外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の一部に対して着脱可能に固定されており、保持縫合糸と一つまたは複数の引張縫合糸とは、縫合糸ラインに沿って配置されており、保持縫合糸は、複数の相互連結支柱の一部の周囲に延びるとともに外側スカートを通して延びさらに一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成しており、外側スカートは、複数の相互連結支柱の一部から取り外されるように構成されているとともに、一つまたは複数の引張縫合糸を縫合糸ラインから除去することによって、さらに、複数のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームを外側スカートから分離することを可能とするように構成されており、環状フレームの外面上における複数の突起は、フレームと外側スカートとが分離された後には、露出される。
【0014】
いくつかの例では、人工心臓弁を移植するための方法は、複数のステップを含み、複数のステップは、患者の心臓症状と患者の天然弁輪のサイズとを評価するステップと、患者の心臓症状と天然弁輪のサイズとに基づいて、患者の内部に移植するのに適切なサイズを有した人工心臓弁を選択するステップであって、人工心臓弁は、フレームを含み、フレームは、フレームの外面上に固定された外側スカートを有している、ステップと、患者の心臓症状が大動脈弁閉鎖不全症である場合には、外側スカートをフレームから除去するステップと、人工心臓弁を患者の天然弁輪の内部に移植するステップと、を含む。
【0015】
いくつかの例では、人工心臓弁を摘出するための方法は、複数のステップを含み、複数のステップは、人工心臓弁の移植部位に対してアクセスするステップであって、人工心臓弁は、フレームを含み、フレームは、フレームの外面上に着脱可能に固定された外側スカートを有し、外側スカートは、少なくとも一つの引張縫合糸と、少なくとも一つの保持縫合糸と、を介して、環状フレームに対して着脱可能に固定され、少なくとも一つの保持縫合糸は、引張縫合糸の周囲に巻回されるとともにフレームの一つまたは複数の支柱の周囲にさらに巻回された複数のステッチを形成している、ステップと、引張縫合糸の端部を把持するとともに、端部に対して力を印加することにより、引張縫合糸をステッチから引き抜くステップと、フレームを、外側スカートの一つまたは複数の部分から分離するステップと、フレームを、移植部位から除去するステップと、を含む。
【0016】
いくつかの例では、着脱可能な外側スカートを有した人工心臓弁を製造するための方法は、フレームであって、フレームの流入端と流出端との間に配置された複数の相互連結支柱を含む、フレームを用意するステップと、着脱可能な外側スカートの一つまたは複数の部分を、フレームの外面上へと重ね合わせるステップと、複数の相互連結支柱の選択された相互連結支柱の周囲に延びるとともに着脱可能な外側スカートを通して延びさらに着脱可能な外側スカートの外面上における一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成するステップと、を含む。
【0017】
いくつかの例では、人工心臓弁を移植するための方法は、複数のステップを含み、複数のステップは、患者の心臓症状と患者の天然弁輪のサイズとを評価するステップと、患者の心臓症状と天然弁輪のサイズとに基づいて、患者の内部に移植するのに適切なサイズを有した人工心臓弁を選択するステップであって、人工心臓弁は、フレームを含み、フレームは、フレームの外面上に固定された外側スカートを有している、ステップと、を含む。いくつかの例では、患者の心臓症状が大動脈弁閉鎖不全症である場合には、外側スカートをフレームから除去するとともに、外側スカートを有していない状態で、人工心臓弁を、患者の天然弁輪の内部に移植する。いくつかの例では、患者の心臓症状が大動脈弁狭窄症である場合には、外側スカートを有した状態で、人工心臓弁を、患者の天然弁輪の内部に移植する。
【0018】
いくつかの例では、人工心臓弁は、複数の相互連結支柱と複数のアンカー止め突起とを含む環状フレームと、環状フレームの外面上に配置された外側スカートであって、複数の突起の少なくとも一部を覆うものとされ、複数の相互連結支柱の少なくとも一部に対して着脱可能に固定された、外側スカートと、を含む。いくつかの例では、外側スカートは、複数の相互連結支柱の一部から取り外されるように構成されているとともに、環状フレームを外側スカートから分離することを可能とするように構成されており、環状フレームの外面上における複数の突起は、フレームと外側スカートとが分離された後には、露出される。
【0019】
いくつかの例では、人工心臓弁は、複数の相互連結支柱を含む環状フレームと、環状フレームの外面上に配置された外側スカートであって、複数の相互連結支柱の少なくとも一部に対して着脱可能に固定されているとともに、少なくとも一つの融着エッジを含む、外側スカートと、を含む。いくつかの例では、融着エッジは、人工心臓弁の外面上へと折り返されることにより、折り返しエッジを形成している。いくつかの例では、外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、折り返しエッジに沿って、複数の相互連結支柱の一部に対して着脱可能に固定されており、保持縫合糸と一つまたは複数の引張縫合糸とは、縫合糸ラインに沿って配置されており、保持縫合糸は、外側スカートを通して延びるとともに一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成している。いくつかの例では、外側スカートは、折り返しエッジに沿って複数の相互連結支柱の一部から取り外されるように構成されているとともに、一つまたは複数の引張縫合糸を縫合糸ラインから除去することによって、さらに、複数のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームを外側スカートから分離することを可能とするように構成されている。
【0020】
いくつかの例では、人工心臓弁は、複数の相互連結支柱を含む環状フレームと、環状フレームの外面上に配置された外側スカートであって、複数の相互連結支柱の少なくとも一部に対して着脱可能に固定された、外側スカートと、を含む。いくつかの例では、外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、複数の非貫通ステッチと、を介して、複数の相互連結支柱の一部に対して着脱可能に固定されており、保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、複数の非貫通ステッチと、は、縫合糸ラインに沿って配置されており、保持縫合糸は、外側スカートを通して延びるとともに一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成しており、非貫通ステッチは、複数の相互連結支柱の一部の周囲に延びているとともに、少なくとも一つの保持縫合糸と外側スカートの内面との間に延びている。いくつかの例では、外側スカートは、複数の相互連結支柱の一部から取り外されるように構成されているとともに、一つまたは複数の引張縫合糸を縫合糸ラインから除去することによって、さらに、複数のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームを外側スカートから分離することを可能とするように構成されている。
【0021】
上記の方法は、生きた動物上で実施することができる、あるいは、死体、死体の心臓、擬人化されたゴースト、シミュレータ(例えば、身体の一部、心臓、組織、等がシミュレートされる)、などのシミュレーション上で実施することができる。
【0022】
本開示における様々な革新は、組み合わせてまたは個別的に、使用することができる。本概要は、以下の詳細な説明でさらに説明する様々な概念の選択を、簡略的な形態で紹介するために提供される。本概要は、特許請求される主題に関する主要な特徴または必須の特徴を特定することを意図したものではなく、また、特許請求される主題の範囲を限定するために使用することを意図したものでもない。本開示に関する上記のおよび他の、目的、特徴、ならびに利点は、以下の詳細な説明から、特許請求の範囲から、さらに添付図面から、より明瞭となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、一例による人工心臓弁に関する斜視図である。
【
図2】
図2は、径方向に拡張可能な人工心臓弁を移植部位へと送達して移植するように構成された、一例をなす送達装置に関する側面図である。
【
図3】
図3は、別の例をなす人工心臓弁に関する斜視図である。
【
図4】
図4は、フレームとこのフレームに対して固定された外側スカートとを含む、別の例をなす人工心臓弁に関する斜視図である。
【
図5A】
図5Aは、本開示による、フレームとこのフレームに対して解放可能に取り付けられた外側スカートとを含む、別の例をなす人工心臓弁に関する斜視図である。
【
図5B】
図5Bは、本開示による、フレームとこのフレームに対して解放可能に取り付けられた外側スカートとを含む、別の例をなす人工心臓弁に関する斜視図である。
【
図5C】
図5Cは、
図5Aおよび
図5Bの人工心臓弁と共に使用するための、一例をなす外側スカートの一部に関する平面図である。
【
図5D】
図5Dは、本開示による、フレームとこのフレームに対して取り付けられた複数の外側スカート部分とを含む、別の例をなす人工心臓弁に関する外観斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、本明細書で開示する人工心臓弁と共に使用するための、一例をなす縫合糸ライン構成に関する図である。
【
図6B】
図6Bは、線6B-6Bに沿って見た際の、
図6Aに示す例示的な縫合糸ライン構成に関する断面図である。
【
図7A】
図7Aは、本開示による、着脱可能な外側スカートを有した人工心臓弁を移植するための例示的な方法に関する論理フロー図である。
【
図7B】
図7Bは、本開示による、着脱可能な外側スカートを有した人工心臓弁を摘出するための例示的な方法に関する論理フロー図である。
【
図7C】
図7Cは、本開示による、人工弁の着脱可能な外側スカートとフレームとを分離するための例示的な方法に関する論理フロー図である。
【
図8A】
図8Aは、着脱可能な外側スカートを有した別の例をなす人工心臓弁に関する斜視図であって、外側スカートをフレームから取り外す際における様々な段階を示している。
【
図8B】
図8Bは、着脱可能な外側スカートを有した別の例をなす人工心臓弁に関する斜視図であって、外側スカートをフレームから取り外す際における様々な段階を示している。
【
図8C】
図8Cは、着脱可能な外側スカートを有した別の例をなす人工心臓弁に関する斜視図であって、外側スカートをフレームから取り外す際における様々な段階を示している。
【
図8D】
図8Dは、着脱可能な外側スカートを有した別の例をなす人工心臓弁に関する斜視図であって、外側スカートをフレームから取り外す際における様々な段階を示している。
【
図9A】
図9Aは、他の例による、例示的な人工心臓弁アセンブリに関する斜視図である。
【
図9C】
図9Cは、
図9Aの人工心臓弁アセンブリにおける弁フレームに関する斜視図であって、環状構成とされた弁フレームを図示している。
【
図9D】
図9Dは、
図9Aの人工心臓弁アセンブリのアンカー止めフレームに関する斜視図であって、環状構成とされたアンカー止めフレームを図示している。
【
図9E】
図9Eは、
図9Aの人工心臓弁アセンブリにおける弁フレームに関する側面図であって、平坦構成とされた弁フレームを図示している。
【
図9F】
図9Fは、
図9Aの人工心臓弁アセンブリのアンカー止めフレームに関する側面図であって、平坦構成とされたアンカー止めフレームを図示している。
【
図10A】
図10Aは、本開示による、フレームとこのフレームに対して解放可能に取り付けられた外側スカートとを含む、別の例をなす人工心臓弁に関する図示である。
【
図11A】
図11Aは、本明細書で開示する人工心臓弁と共に使用するための、別の例をなす縫合糸ライン構成に関する図示である。
【
図12】
図12は、本開示による、フレームとこのフレームの流入端に対して解放可能に取り付けられた外側スカートとを含む、別の例をなす人工心臓弁に関する斜視図である。
【
図13】
図13は、本開示による、フレームとこのフレームの流入端のところに解放可能に取り付けられた第一外側スカートとこのフレームの流出端のところに解放可能に取り付けられた第二外側スカートとを含む、別の例をなす人工心臓弁に関する斜視図である。
【
図14】
図14は、天然の心臓弁の内部に移植された
図13の例示的な心臓弁に関する図示である。
【
図15】
図15は、本開示による、フレームと、生体吸収性カプラを介してフレームの流入端のところに取り付けられた第一外側スカートと、生体吸収性カプラを介してフレームの流出端のところに取り付けられた第二外側スカートと、を含む、別の例をなす人工心臓弁に関する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
一般的な考慮事項
本明細書の目的のために、本開示の例における特定の態様、利点、および新規な特徴について、本明細書で説明する。開示する方法、装置、およびシステムは、いかようにも限定的なものとして解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、互いの様々な組合せで、および互いの様々な下位組合せで、様々な開示する例に関する、すべての新規かつ非自明な、特徴および態様を対象とする。方法、装置、およびシステムは、いかなる特定の態様、特徴、またはこれらの組合せにも限定されるものではなく、また、方法、装置、およびシステムは、任意の一つまたは複数の特定の利点が存在することを必要とするものでも、解決すべき問題点を必要とするものでも、ない。
【0025】
いくつかの開示する例における操作は、提示の便宜上、特定の連続した順序で説明されているけれども、この説明の態様が、以下に記載した具体的な文言によって特定の順序が要求されない限り、並べ替えを包含するものであることは、理解されよう。例えば、順次的に説明する操作は、場合によっては、並べ替えられてもよく、また、同時に実行されてもよい。その上、簡略化のために、添付図面は、開示する方法を他の方法と組み合わせて使用し得る様々な態様を示していないことがあり得る。追加的に、説明では、開示する方法を記述するために、時に、「提供する」または「達成する」などの用語を使用する。これらの用語は、実行される実際の操作に関する高レベルの抽象概念である。これらの用語に対応した実際の操作は、特定の実装によって相違し得るものであって、当業者であれば容易に認識可能である。
【0026】
本出願および特許請求の範囲で使用した際には、「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、別のことを文脈が明確に記述しない限り、複数形を含む。追加的に、「含む(includes)」という用語は、「含む(comprises)」ことを意味する。さらに、「結合する(coupled)」という用語は、一般に、物理的に、機械的に、化学的に、磁気的に、および/または電気的に、結合または連結することを意味するものであり、特定の反対の文言がない限り、結合されたまたは関連付けられた部材どうしの間における中間介在要素の存在を排除するものではない。
【0027】
本明細書で使用した際には、「近位」という用語は、ユーザに対してより近くであり、かつ、移植部位から離間しているような、デバイスの位置、方向、または部分を指す。本明細書で使用した際には、「遠位」という用語は、ユーザから離間しており、かつ、移植部位に対してより近くであるような、デバイスの位置、方向、または部分を指す。よって、例えば、デバイスの近位移動とは、デバイスが移植部位から離間して、ユーザへと向かう(例えば、患者の身体外へと)移動であり、他方、デバイスの遠位移動とは、デバイスがユーザから離間して、移植部位へと向かう(例えば、患者の身体内へと)移動である。「長手方向」および「軸方向」という用語は、別のことが明示的に定義されない限り、近位遠位方向に延びた軸線を指す。
【0028】
本明細書で開示する人工弁は、径方向圧縮状態と径方向拡張状態との間にわたって、径方向に拡縮可能(径方向に圧縮可能かつ径方向に拡張可能)なものとすることができる。よって、人工弁は、送達時には、径方向圧縮状態とされて、インプラント送達装置上へと圧縮することができまたはインプラント送達装置によって保持されることができ、その後、人工弁が移植部位へと到達した後には、径方向拡張状態へと拡張されることができる。本明細書で開示する人工弁が、様々なインプラント送達装置と共に使用され得るとともに、様々な送達手順を介して移植され得るものであって、それらの例について、さらに詳細に後述することとなることは、理解されよう。
【0029】
開示する技術の例
上述したように、AI患者の処置の場合には、外側スカートを有していない過大なサイズの人工弁を利用することが、望ましいまたは必要である場合があり、他方、AS患者の処置の場合には、石灰化した天然弁と人工弁との間にシールを形成するように構成された外側スカートを有した比較的小型の人工弁を利用することが、望ましいまたは必要である場合がある。よって、従来的な人工心臓弁を使用して、AI患者とAS患者との両方を適正に処置するためには、病院は、それぞれが様々なサイズとされた複数のタイプの人工弁を保有することが必要とされ得る。
【0030】
さらに、移植した人工心臓弁を所定期間にわたって使用した後に、新たな人工心臓弁を移植し得るよう、人工心臓弁を摘出することが、望ましいまたは必要である場合がある。このような摘出手順は、患者の解剖学的構造によっては、外科医が実行するには複雑であり得る、かつ/または、患者に対して外傷を与える可能性がある。例えば、人工心臓弁の経時的に軟質となる部分は、例えば外側スカートなどは、組織の内方成長を受けることがあり得る。摘出時には、内方成長組織は、人工弁を移植部位から除去することを困難としてしまう可能性があり、これにより、外科医が実行する手順をより複雑なものとしてしまう可能性があり、かつ/または、外科的手順を実行するのに必要な時間を長いものとしてしまう可能性があり、かつ/または、外科医が患者から人工弁構造を除去しようとする際に、周囲組織(または、複数の組織)を大幅に切断または損傷することが必要とされる可能性がある。
【0031】
したがって、摘出手順を容易とし得る人工心臓弁が、要望されている。例えば、組織の外傷を制限するとともに、除去プロセスの容易さおよび/または迅速さを改良するような、人工心臓弁ならびに摘出手順が必要とされている。
【0032】
また、ASおよびAIに罹患した患者を含めてより多くの患者集団へと移植可能であるような、人工心臓弁が要望されている。例えば、AS患者にもAI患者にも使用し得るような、人工心臓弁が必要とされている。
【0033】
本明細書で説明するものは、環状フレームと、このフレームに対して取り付けられた複数の弁尖(すなわち、弁膜構造)と、外側スカートと、任意選択的に内側スカートと、を含む人工心臓弁の例である。外側スカートは、例えば、人工心臓弁の移植手順の前にもしくは人工心臓弁の摘出時にフレームをスカートから容易に分離または解放し得る着脱可能な態様で、フレームに対して取り付けたり固定したりすることができる。いくつかの例では、弁尖は、弁尖どうしの隣接した端部(例えば、交連タブ)からなる対を接合することによって形成された交連を介して、フレームに対して取り付けることができる。弁尖の尖端エッジは、外側スカートに対して、またはフレームの内面に対して取り付けられた内側スカートに対して、またはフレームの選択された支柱に対して直接的に、取り付けることができる。いくつかの例では、フレームは、径方向に拡縮可能とされ得るとともに、経カテーテル移植のために構成することができる。
【0034】
いくつかの例では、外側スカートは、複数のループ状保持縫合糸を介して、フレーム、内側スカート、および/または弁尖構造の、任意のものに対して、取り付けられることができ、ループ状保持縫合糸は、フレームの支柱(または、人工弁上の別の取付点)の周囲において、縫合糸ラインに沿って延びた引張縫合糸上に形成される。引張縫合糸の一つまたは複数の端部は、スカートおよび/またはフレームのエッジを越えて延び得るとともに、フレーム(または、人工弁の別の取付点)に対して一時的に取り付けることができる。
【0035】
移植手順前には、または摘出手順時には、外科医は、フレームから引張縫合糸の端部を解放することができ、緩んだ端部を引っ張ることによって、引張縫合糸を縫合糸ラインから引き出して、フレームを外側スカートから解放し、保持縫合糸をフレームに対して取り付けたままとすることができる。いくつかの例では、外側スカートは、弁膜構造内の弁尖の数に対応したスカラップ形状を有している。外側スカートは、フレームの全周囲に延びた一枚の材料(例えば、ボリュームのある材料、または、比較的平坦な布層)とすることができる、あるいは、複数の部分を含むことができて、各スカラップ部分は、外側スカートの対応した部分をフレームから解放するための、別個の引張縫合糸を含むことができる。他の例では、単一の引張縫合糸は、外側スカートをフレームから解放するように構成することができる。
【0036】
このように、人工弁は、AI患者とAS患者との両方において、疾患弁の処置など、様々な心臓疾患を処置するために、使用することができる。いくつかの例では、人工心臓弁は、患者の解剖学的構造および症状に応じて人工弁の移植前に選択的に着脱可能であるような、外側スカートを含むことができる。いくつかの例では、外側スカートは、AS患者における不規則な形状とされたまたは石灰化した天然弁輪との間にシールを形成するように特に構成され得るとともに、また、人工弁から除去可能とされることで、外側スカートを必要としないAI患者における使用時には、人工弁を変換することができる。特定の例では、外側スカートは、人工弁のフレームの外周を覆うように構成されているとともに内部への組織内方成長を可能とするように構成された、一つまたは複数の布部分を含む。したがって、病院または医療提供者は、AI患者とAS患者との両方の処置に際して、様々なサイズとされた一種類の心臓弁を保有することができる。
【0037】
さらに、例示的な摘出手順時には、外科医は、内部に組織が内方成長している可能性がある外側スカートから、フレームを容易に分離することができ、これにより、外側スカートおよび移植部位から、フレームを、解放して除去することができる。いくつかの例では、フレームを除去することで、外側スカートおよび/または天然弁尖を切断して除去するための移植部位に対しての、より良好なアクセスを提供することができ、これにより、摘出プロセスを、周囲組織に対してより外傷性の少ないものとすることができる。いくつかの例では、経カテーテル的摘出手順において、解放されたフレームを、外側スカート付き人工弁の直径と比較してより小さな直径へと径方向に容易に圧縮することができ、これにより、経カテーテル的摘出の容易さを向上させることができる。
【0038】
図1は、一例をなす人工心臓弁10を示している。本明細書で開示する任意の人工弁は、天然の大動脈弁輪内へと移植されるように構成されるけれども、他の例では、そのような人工弁は、心臓の他の天然弁輪(例えば、肺動脈弁、僧帽弁、および三尖弁)内へと移植されるように構成することができる。開示する人工弁は、また、肺動脈(病的な肺動脈弁の機能を代替するため)または上大静脈もしくは下大静脈(病的な三尖弁の機能を代替するため)を含めて、心臓に連通した血管の内部に移植することもできる。
【0039】
人工弁10は、四つの主要な構成要素を有することができる、すなわち、ステントまたはフレーム12と、弁膜構造14と、内側スカート16と、弁周囲外側シール部材または外側スカート18と、を有することができる。人工弁10は、流入端部分15と、中間部分17と、流出端部分19と、を有することができる。内側スカート16は、フレーム12の内面上に配置することができ、かつ/またはフレーム12の内面に対して結合することができ、他方、外側スカート18は、フレーム12の外面上に配置することができ、かつ/またはフレーム12の外面に対して結合することができる。
【0040】
弁膜構造14は、集合的に弁尖構造を形成する三つの弁尖40を含むことができ、これら三つの弁尖は、三尖弁配置で圧潰するように構成され得るけれども、他の例では、より多数のまたはより少数の弁尖(例えば、一つまたは複数の弁尖40)が存在することができる。弁尖40は、隣接した側部どうしのところで互いに固定されることで、弁膜構造14の交連22を形成することができる。弁膜構造14の下側エッジは、起伏のある湾曲したスカラップ形状を有することができ、縫合糸(図示せず)によって内側スカート16に対して固定することができる。いくつかの例では、弁尖40は、心膜組織(例えば、ウシ心膜組織)、生体適合性合成材料、あるいは、参照により本明細書に援用される米国特許第6,730,118号明細書に記載されているような当該技術分野において公知の様々な他の適切な天然材料または合成材料、から形成することができる。
【0041】
フレーム12は、径方向に圧縮可能(圧潰可能)かつ拡張可能(例えば、
図1に示す拡張構成)とされ得るとともに、複数の相互連結支柱24を含むことができる。周方向に離間した複数の頂点26が、フレーム12の流入端部分15のところに、および流出端部分19のところに、形成されている(
図1では、流出端部分19における頂点26のみを、見ることができる)。各頂点26は、流入端部分15または流出端部分19のいずれかにおいて、二つの傾斜支柱24の間における接合部のところに形成されている。
図1は、二つの傾斜支柱24の間にU字形状の湾曲を形成している頂点26を有した既知のフレーム設計を図示している。いくつかの例では、頂点26のところで接続している二つの傾斜支柱24の間における角度30は、90度~120度の範囲とすることができる。
【0042】
フレーム12は、弁膜構造14の交連22をフレームに対して取り付けるように構成された複数の周方向に離間したスロットすなわち交連ウィンドウ20を有して形成することができる。フレーム12は、当該技術分野で知られているように、任意の様々な適切な塑性的拡張可能材料(例えば、ステンレス鋼、等)から、または、自己拡張材料(例えば、ニチノールなどの、ニッケルチタン合金(NiTi))から、作製することができる。塑性的拡張可能材料から構成された時には、フレーム12(ひいては、人工弁10)は、送達カテーテルまたは送達装置上において径方向圧潰構成へと圧縮され得るとともに、その後、膨張可能バルーンによってまたは同等の拡張機構によって、患者の内部で拡張されることができる。自己拡張可能な材料から構成された時には、フレーム12(ひいては、人工弁10)は、径方向圧潰構成へと圧縮され得るとともに、送達カテーテルのシース内へとまたは同等の機構内へと挿入することによって、圧潰構成を保持することができる。身体内へと導入された後には、人工弁を、送達シースから前進駆動することができ、これにより、人工弁を、その機能的なサイズへと拡張させることができる。
【0043】
本明細書で開示するフレーム(例えば、フレーム12など)を形成するために使用され得る適切な塑性的拡張可能材料は、金属合金、ポリマー、またはこれらの組合せ、を含む。例示的な金属合金は、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、チタン、もしくは他の生体適合性金属、の一つまたは複数を含むことができる。いくつかの例では、フレーム12は、ステンレス鋼を含むことができる。いくつかの例では、フレーム12は、コバルトクロムを含むことができる。いくつかの例では、フレーム12は、ニッケル-コバルト-クロムを含むことができる。いくつかの例では、フレーム12は、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金を含み、例えば、MP35N(商標)(SPS Technologiesの商標名)を含み、これは、UNS R30035(ASTM F562-02によってカバーされている)と同等である。MP35N(商標)/UNS R30035は、35重量%のニッケルと、35重量%のコバルトと、20重量%のクロムと、10重量%のモリブデンと、を含む。
【0044】
図2は、拡張可能な人工心臓弁(例えば、
図1の人工心臓弁10、または、本明細書で説明する任意の他の人工心臓弁)を移植するために使用し得るような、一例をなす送達装置100を示している。いくつかの例では、送達装置100は、人工弁を心臓内へと導入する際に使用するように、具体的に構成されている。
【0045】
図2に図示した例における送達装置100は、バルーンカテーテルであって、ハンドル102と、ハンドル102から遠位向きに延びた操縦可能な外側シャフト104と、を含む。送達装置100は、ハンドル102から近位向きにおよびハンドル102から遠位向きに延びた中間シャフト106(バルーンシャフトとも称され得る)をさらに含むことができ、ハンドル102から遠位向きに延びた部分は、また、外側シャフト104を通して同軸的に延びている。追加的に、送達装置100は、中間シャフト106および外側シャフト104を通して同軸的にハンドル102から遠位向きに延びるとともに中間シャフト106を通して同軸的にハンドル102から近位向きに延びる内側シャフト108を、さらに含むことができる。
【0046】
外側シャフト104および中間シャフト106は、患者の身体内の移植部位へと人工弁を送達して位置決めすることを容易とするために、送達装置100の中央長手方向軸線120に沿って、互いに対して長手方向に並進(例えば、移動)するように構成することができる。
【0047】
中間シャフト106は、ハンドル102の近位端からアダプタ112までにわたって近位向きに延びた近位端部分110を含むことができる。回転可能なノブ114を、近位端部分110に対して取り付け得るとともに、中間シャフト106を中央長手方向軸線120まわりにおいて外側シャフト104に対して回転させるように構成することができる。
【0048】
アダプタ112は、内部を通してガイドワイヤを受領するように構成された第一ポート138と、流体源から流体(例えば、膨張流体)を受領するように構成された第二ポート140と、を含むことができる。第二ポート140は、中間シャフト106の内腔に対して、流体的に結合することができる。
【0049】
中間シャフト106は、外側シャフト104の遠位端が送達装置100の膨張可能バルーン118から離間して位置決めされた時に、外側シャフト104の遠位端を越えて遠位向きに延びる遠位端部分をさらに含むことができる。内側シャフト108の遠位端部分は、中間シャフト106の遠位端部分を越えて遠位向きに延びることができる。
【0050】
バルーン118は、中間シャフト106の遠位端部分に対して、結合することができる。
【0051】
いくつかの例では、バルーン118の遠位端は、(
図2に示すような)ノーズコーン122などの送達装置100の遠位端に対して、または送達装置100の遠位端のところでの代替部品(例えば、遠位肩部)に対して、結合することができる。バルーン118の中間部分は、送達装置100の遠位端部分の弁取付部分124を被覆することができ、バルーン118の遠位端部分は、送達装置100の遠位肩部126を被覆することができる。弁取付部分124およびバルーン118の中間部分は、径方向圧縮状態とされた人工心臓弁を受領するように構成することができる。例えば、
図2に概略的に示すように、人工心臓弁150(本明細書で説明する人工弁の一つとすることができる)を、送達装置100の弁取付部分124のところで、バルーン118の周囲に取り付けることができる。
【0052】
遠位肩部126を含めたバルーン肩部アセンブリは、患者の血管系を通しての送達時に、バルーン118上の固定位置に人工心臓弁150(または、他の医療デバイス)を維持するように構成されている。
【0053】
外側シャフト104は、その遠位端上に取り付けられた遠位先端部分128を含むことができる。外側シャフト104および中間シャフト106は、人工弁150が弁取付部分124上に径方向圧縮状態で取り付けられている時には(
図2に示すように)、かつ、人工弁を標的移植部位へと送達する際には、遠位先端部分128を弁取付部分124の近位端に隣接して位置決めするよう、互いに対して軸方向に並進させることができる。このように、遠位先端部分128は、遠位先端部分128が弁取付部分124の近位側に隣接して配置された時には、人工弁150が、バルーン118に対して軸方向において近位向きに、バルーン118に対して移動することに抵抗するように構成することができる。
【0054】
環状空間を、内側シャフト108の外面と中間シャフト106の内面との間に規定することができ、この環状空間は、アダプタ112の第二ポート140を介して流体源から流体を受領するように構成することができる。環状空間は、内側シャフト108の遠位端部分の外面とバルーン118の内面との間に形成された流体通路に対して、流体的に結合することができる。このように、流体源からの流体を、環状空間から流体通路へと流すことができ、これにより、バルーン118を膨張させて、人工弁150を径方向に拡張させて展開することができる。
【0055】
内側シャフトの内腔は、送達装置100の遠位端部分を標的移植部位へと操縦するために、内部を通してガイドワイヤを受領するように構成することができる。
【0056】
ハンドル102は、送達装置100の遠位端部分の曲率を調整するように構成されたステアリング機構を含むことができる。図示した例では、例えば、ハンドル102は、図示した回転可能なノブ160などの調整部材を含み、この調整部材は、引張ワイヤの近位端部分に対して動作可能に結合されている。引張ワイヤは、ハンドル102から外側シャフト104を通して遠位向きに延び得るとともに、外側シャフト104の遠位端のところでまたはその近傍で外側シャフト104に対して固定された遠位端部分を有している。ノブ160を回転駆動することにより、引張ワイヤの張力を増減させることができ、これにより、送達装置100の遠位端部分の曲率を調整することができる。送達装置におけるステアリング機構または曲げ機構に関する更なる詳細は、米国特許第9,339,384号明細書に見出すことができ、この文献は、参照により本明細書に援用される。
【0057】
ハンドル102は、図示した回転可能ノブ162などの調整部材を含めた調整機構161と、回転可能ノブ178として構成された別の調整部材を含めた関連したロック機構と、をさらに含むことができる。調整機構161は、外側シャフト104に対する中間シャフト106の軸方向位置を調整するように構成されている(例えば、移植部位における微細な位置決めのために)。送達装置100に関する更なる詳細は、米国仮出願第63/069,567号明細書および米国仮特許出願第63/138,890号明細書に見出すことができ、これらの文献は、参照により本明細書に援用される。
【0058】
図3は、径方向に拡張可能かつ圧縮可能な環状フレーム202とこのフレームに対して固定された複数の弁尖204とを含む、一例をなす人工心臓弁200を示している。各弁尖204は、弁尖204の反対側に位置したサイドに配置された両サイドの交連タブと、両サイドの交連タブどうしの間に延びた尖端エッジ部分と、を含むことができる。さらに、弁尖は、流入端226と流出端228とを含むことができる。
【0059】
フレーム202は、当該技術分野で知られているように、任意の様々な適切な塑性的拡張可能材料(例えば、ステンレス鋼、等)から、または、自己拡張材料(例えば、ニチノールなどの、ニッケルチタン合金(NiTi))から、作製することができる。いくつかの例では、フレーム202は、
図1の人工心臓弁10を参照して上述したものなどの、塑性的拡張可能材料を含む。
【0060】
フレーム202は、フレーム202の流出端210と流入端212との間に複数列の開放セル208を形成するような、複数の相互連結支柱206を含むことができる。いくつかの例では、
図3に示すように、フレーム202は、三つのセル列をなすセル208を含むことができ、セル208は、流出端210のところに配置された第一セル列のセル214であり、残りのセル列内のセル208と比較して、軸方向に(フレーム202の中央長手方向軸線216に対して)長尺とされたセル208を有した、第一セル列のセル214(例えば、
図3における上側)を有している。例えば、第一セル列のセル214をなすセル208は、残りのセル列内のセル208(例えば、流入端212のところでのセル列内におけるセル)と比較して、フレーム202の中央長手方向軸線216の方向において規定されるような、より長い軸方向長さを有することができる。
【0061】
いくつかの例では、
図3に示すように、セル208の各列は、九個のセルを含む。よって、このような例では、フレーム202は、九個セルフレームとして参照することができる。
【0062】
他の例では、フレーム202は、四列以上のセル(例えば、四列もしくは五列)を含むことができる、かつ/または、一列あたりにつき九個を超えるセルまたは八個以下のセルを含むことができる。いくつかの例では、第一列のセル214内におけるセル208は、フレーム202の残りの列内におけるセル208と比較して、長尺でなくてもよい。
【0063】
相互連結支柱206は、周方向に延びた傾斜支柱の複数列をなして配置された複数の傾斜支柱218、234、236、および238を含むことができ、この場合、複数列は、フレーム202の流出端210と流入端212との間においてフレームの長さに沿って配列されている。例えば、フレーム202は、フレームの流入端212のところで、端から端までにわたって配置されていて周方向に延びた第一列をなす複数の傾斜支柱238と、周方向に延びた第二列をなす複数の傾斜支柱236と、周方向に延びた第三列をなす複数の傾斜支柱234と、フレーム12の流出端210のところで、周方向に延びた第四列をなす複数の傾斜支柱218と、を含むことができる。第四列をなす複数の傾斜支柱218は、複数の軸方向延出ウィンドウ支柱部分240と複数の軸方向(例えば、軸方向に延びた)支柱232とによって、第三列をなす複数の傾斜支柱234に対して、接続することができる。軸方向延出ウィンドウ支柱部分240は、周方向においてフレーム202まわりに互いに離間して配置された交連ウィンドウ(例えば、開放ウィンドウ)242を規定しており、交連ウィンドウ242は、交連230内に配置された一対の隣接した弁尖204からなる一対の交連タブを受領するように構成されている。
【0064】
一つまたは複数の(例えば、
図3に示すように、二つの)軸方向支柱232を、周方向において、ウィンドウ支柱部分240によって形成された二つの交連ウィンドウ242の間に位置決めすることができる。フレーム202は、
図1の人工心臓弁10などの、他の人工心臓弁と比較して、一列あたりにつきより少数のセル(例えば、九個)と、各交連ウィンドウ242間においてより少数の軸方向支柱232と、を含み得ることのために、各セル208は、(周方向において)幅を増大させることができ、これにより、血液流および/または冠動脈アクセスのために、より大きな開口を提供することができる。
【0065】
各軸方向支柱232および各ウィンドウ支柱部分240は、二つの傾斜支柱218の下側端部(例えば、流出端210よりも内側に配置された端部であり、かつ、流出端210から最も離間した端部)どうしの収束箇所(これは、上側支柱接合部または上側長尺支柱接合部とも称され得る)によって規定された位置から、二つの傾斜支柱234の上側端部(例えば、流出端210に対してより近くに配置された端部)どうしの収束箇所(これは、下側支柱接合部または下側長尺支柱接合部とも称され得る)によって規定された別の位置までにわたって、延びている。各軸方向支柱232および各ウィンドウ支柱部分240は、第一列のセル214における二つの隣接したセルの、軸方向を向いた側部を形成している。
【0066】
いくつかの例では、
図3に示すように、各軸方向支柱232は、傾斜支柱218、234、236、および/または238の幅と比較して、より大きな幅244を有することができる。本明細書で使用した際には、支柱の「幅」は、支柱の、(フレーム202の中央長手方向軸線216に対して)支柱の径方向に対向した内面と外面との間にわたって延びた対向面上の対向位置どうしの間で測定される。支柱の「厚さ」は、支柱の径方向に対向した内面および外面上における、対向する位置どうしの間で測定されるものであって、支柱の幅に対して垂直である。
【0067】
隣接した弁尖204の交連タブを、一緒に固定することにより、交連230を形成することができる。人工心臓弁200の各交連230は、二つの隣接した弁尖204のそれぞれから一つずつ、フレーム202の交連ウィンドウ242を通して延びた、対をなす二つの交連タブを含む。各交連230は、交連ウィンドウ242を形成するウィンドウ支柱部分240に対して、固定することができる。ウィンドウ242に対する交連230の取付に関する更なる詳細は、先に本明細書に援用された米国特許第9,393,110号明細書に記載されている。
【0068】
各弁尖204の尖端エッジ部分(例えば、スカラップエッジ)は、一つまたは複数の締結部材(例えば、縫合糸)を介して、フレームに対して固定することができる。いくつかの例では、
図3に示すように、各弁尖204の尖端エッジ部分は、フレーム202の支柱(例えば、傾斜支柱234、236、および238)に対して直接的に固定することができる。例えば、弁尖204の尖端エッジ部分250は、縫合糸252を介して、弁尖の尖端エッジ部分の輪郭に対して全体的に追従した傾斜支柱234、236、238に対して、接続することができる。
【0069】
いくつかの例では、弁尖204の尖端エッジ部分250を、内側スカートに対して固定することができ、内側スカートを、フレーム202に対して直接的に固定することができる。
【0070】
さらに、いくつかの例では、外側スカートを、フレーム202の外面に対して接続することができる(例えば、
図1の弁10における外側スカート18と同様のもの、または、
図4に図示して後述する弁400における外側スカート402と同様のもの)。
【0071】
図3に示すように、いくつかの例では、軸方向支柱232の一つまたは複数もしくは各々は、流出端部分246と同様に(上述したように)、軸方向支柱232の中間部分247(幅244によって規定することができる)と比較して、より大きな幅とされた流入端部分(例えば、流出端部分246と比較して、流入端に対してより近い流入端部分)248を含むことができる。いくつかの例では、軸方向支柱232の流入端部分248は、開口部249を含むことができる。開口部249は、人工心臓弁200の軟質構成要素をフレーム202に対して取り付けるための締結部材(例えば、縫合糸)を受領するように構成することができる。例えば、いくつかの例では、外側スカートを、フレーム202の外面まわりに位置決めし得るとともに、開口部249に対して、および/またはフレームの他の構成要素に対して、固定することができる(例えば、
図4に弁400を図示して、以下で説明するように)。
【0072】
フレーム202は、流入端212および流出端210のところに形成された複数の頂点220をさらに含むことができ、各頂点220は、流入端212または流出端210のところで、二つの傾斜支柱218の間における接合部を形成している。このように、頂点220は、流入端212および流出端210のところで、周方向に互いに離間して配置されている。
図3に示すように、各頂点220は、その頂点が接続されている傾斜支柱218から軸方向外向きに湾曲または屈曲している側方部分222と、頂点220の二つの側方部分222の間に延びた端部部分224と、を有することができる。側方部分222は、中央長手方向軸線216に対して平行な方向に延びることができる。端部部分224は、比較的平坦なものとし得るとともに、中央長手方向軸線216に対して直交して配置された面を含むことができる。各頂点220は、端部部分224のところに二つの湾曲部分を有し得るとともに、側方部分222のところに二つの湾曲部分を有することができる(例えば、一つは、各側方部分222と傾斜支柱218との間の接合部のところに)。このようにして、頂点220は、
図1の弁における頂点26と同様に、U字形状とすることができる。
【0073】
図4は、フレーム602とこのフレーム602に対して固定された外側(布または他の生体適合材料)スカート402とを含む、一例をなす人工心臓弁400に関する斜視図である。フレーム602が、単に例示的なものであって、本明細書で説明する任意のフレームと同様のものとされ得ることは、または本明細書で説明する任意のフレームの特徴を含むものとされ得ることは、理解されよう。例えば、フレーム602は、例えば
図3に図示したフレーム202などの、本明細書で説明する任意のフレームと同様の特徴を有することができる(あるいは、本明細書で説明する任意のフレームによって置き換えることができる)。
図4に示すように、外側スカート402は、流入端612から流出端610に向けて、フレーム602の外面まわりに延びることができる。いくつかの例では、
図4に示すように、外側スカート402は、一つまたは複数の縫合糸404によって、流入端612のところでフレームの支柱に対して固定することができる。人工弁の弁尖は、説明の目的のために省略されているけれども、人工弁200の弁尖204と同じとすることができる。
【0074】
さらに、いくつかの例では、外側スカート402の流出端は、一つまたは複数の縫合糸406によって、軸方向支柱632の流入端部分648に対して、および/または、傾斜支柱(図示せず)の上側端部すなわち流出端に対して、固定することができる。いくつかの例では、縫合糸404の一部は、軸方向支柱632の流入端部分648内の開口部649(外側スカート402の直下における位置を示すために、
図4において破線で示された開口部649)を通して延び得るとともに、そのような開口649に対して固定することができる。いくつかの例では、一つもしくは複数の縫合糸404および/または406は、インアンドアウトステッチまたは他のタイプのステッチ(例えば、チェーンステッチ、クロスステッチ、等)とすることができる。
【0075】
いくつかの例では、
図4に示すように、ホイップステッチとして構成され得る追加的な縫合糸408は、外側スカート402を、フレーム602の交連ウィンドウ642を形成するウィンドウ支柱部分の流入端612と流入端との間に配置されてそれらの間に延びたフレーム602の傾斜支柱(図示せず)に対して、固定することができる。
【0076】
本明細書で開示する例示的な着脱可能な外側スカートと組み合わせて使用され得る上記の人工弁(ならびに、他の人工弁、およびそれに関連した移植技術)に関する追加的な特徴と関連した例とは、参照により本明細書に援用される米国仮特許出願第63/178,416号明細書に記載されている。
【0077】
ここで、
図5Aおよび
図5Bを参照すると、フレーム202とこのフレーム202に対して固定された外側(布または他の生体適合材料)スカート502とを含む、一例をなす人工心臓弁500が図示されており、これについて説明する。フレーム202が、例えば、
図1に示すフレーム12、
図4に示すフレーム602、
図9A~
図9Fに示すフレーム904、906(以下で説明する)、および/または、先に本明細書に援用された米国仮特許出願第63/178,416号明細書に記載されたフレームや、参照により本明細書に援用される国際出願第PCT/US2021/034399号に記載されたフレームなどの、別のフレームと同様の特徴を有し得ることは、あるいは、そのような別のフレームによって置き換えられ得ることは、理解されよう。さらに、スカート502は、例えば、
図1に示す外側スカート18、
図4に示す外側スカート402、および/または、それぞれが本明細書に援用される米国特許第9,393,110号明細書や米国特許第11,096,781号明細書に記載された他の外側スカートなどの、別の外側スカートと同様の特徴を含むことができる、あるいは、そのような別の外側スカートによって置き換えられることができる。弁尖204および任意選択的な内側スカートなどの、人工弁500の内部における軟質構成要素は、説明の目的のために、
図5A~
図5Bには示していない。
【0078】
従来的な人工心臓弁とは異なり、人工心臓弁500は、外側スカート502が容易に着脱可能であるように構成されており、これにより、例えば、AI患者に対して人工弁を移植する前に、外側スカートを除去することができる。別の例では、外側スカートが取り付けられた状態で移植済みの人工弁を摘出する際には、フレームを、外側スカートから容易に除去することができ、これにより、移植部位からの人工弁の除去を容易とすることができる。
【0079】
具体的には、
図5Aおよび
図5Bに見られるように、外側スカート502は、保持引張縫合糸機構を介して、フレームに対して解放可能に取り付けることができ、ここで、保持引張縫合糸機構は、フレーム202の、フレームの流入端212と、フレーム202の交連ウィンドウ242を形成するウィンドウ支柱部分の流入端と、の間に配置された支柱234、236、238などの、選択された支柱に対して縫合された、またはそのような選択された支柱の周囲に巻回された、一つまたは複数の保持縫合糸504を含む。いくつかの例では、保持縫合糸504は、外側スカート502をなす材料内の穴もしくは開口部260を通して、引張縫合糸510上へと、傾斜支柱の内面254まわりへと延びたループ状ステッチまたはホイップステッチ262として形成されており、これにより、引張縫合糸510と傾斜支柱の外面256との間に、外側スカート502をなす材料を、挟み込むまたは捕捉する。いくつかの例では、ステッチ262は、また、内側スカート(図示せず)を通して、および/または弁尖204の尖端エッジ部分250を通して、延びることができ、これにより、それらの構成要素をフレームに対して固定することができる。
【0080】
いくつかの例では、
図5Aに示す自由端512などの、引張縫合糸510の一方または両方の自由端は、外側スカート502のエッジを越えておよび/またはフレーム202を越えて延び得るとともに、接着剤、縫合、隣接した支柱に対して自由端512を結んだり結びつけたりすること、弾性バンド、および/または他の解放可能な保持機構を介して、取り付けることなどによって、フレームに対しておよび/または外側スカートに対して、取り付けることができる。特定の例では、引張縫合糸510の両方の端部が、フレームに対して固定される。摘出手順時には、引張縫合糸510の固定端512は、フレームに対する取付から解放することができ、その後、以下でさらに説明するように、その端部を、フレーム202を外側スカート502(または、その一部)から解放するために、縫合糸ラインに沿って保持縫合糸504を通して引っ張ることができる。
【0081】
いくつかの例では、外側スカート502は、複数の別個の部分または複数のセクションを含むことができる。例えば、外側スカートは、フレームに対して取り付けられた弁膜構造内の弁尖(例えば、
図3に図示した弁尖204)の数に対応した数とされ、さらに、同様の形状および同様の構成とされた、複数のセクションを含むことができる。
図3に図示して上述したように、各弁尖204の尖端エッジ部分250は、フレーム202の支柱(例えば、傾斜支柱234、236、および238)に対して直接的に固定することができる。例えば、弁尖の尖端エッジ部分250は、弁尖の尖端エッジの輪郭に対して全体的に追従した傾斜支柱234、236、238の、選択された傾斜支柱に対して、縫合することができる。したがって、特定の例では、外側スカート502の別個の部分は、同様の縫合糸ラインに沿って、あるいは、対応した弁尖と同じ角度の傾斜支柱234、236、238に対して、縫合することができる。一具体例では、弁膜構造は、三つの弁尖を含むことができ、外側スカートは、フレーム内部上における弁尖の位置に対して位置合わせするようにフレームの外部に対して縫合される同様の形状かつ同様のサイズとされた三つのスカート部分を含むことができる。しかしながら、代替可能な例では、外側スカート部分を、弁尖の取付位置に対してオフセットし得ること、また、外側スカートが、弁膜構造内の弁尖の数と比較して、より多数のもしくはより少数のスカート部分を含み得ること、および/または、外側スカートが、単一の材料を含み得ることは、理解されよう。
【0082】
外側スカート502の、一例をなすスカート部分502a(例えば、同様の構成とされた、合計で三つのスカート部分を含む)が、
図5Cに示されている。説明の目的のために、スカート部分502aは、フレームから取り外された状態で、また、(環状フレームの外面上へと巻回されるのではなく)平坦構成として、示されている。また、説明の目的のために、スカート部分502aは、保持縫合糸504および引張縫合糸510a、510bがスカート部分502aに対して縫合された状態で示されているけれども、実際には、外側スカートがフレームの外面上に配置された状態で、上記の縫合糸は、外側スカートに対して取り付けることができまたは縫合することができ、これにより、保持縫合糸は、フレームの傾斜支柱の周囲に延びる、または、フレームの傾斜支柱の周囲を巻回する。
【0083】
図5Cに見られるように、スカート部分502aは、第一被覆セクション518と第二被覆セクション520とを含むような、全体的に台形の形状を有することができる。この例では、スカート部分502aの第一セクション518は、引張縫合糸510aの下降部分と上昇部分との間に配置されており、したがって、弁膜構造の一方の弁尖における尖端エッジをフレーム内部上へと取り付けている領域に対応したフレーム部分を覆うように構成することができる。例えば、人工心臓弁がフレーム202を含む例では、スカート部分502aのセクション518は、一方の弁尖の尖端エッジ(例えば、
図3に示す弁尖204の尖端エッジ250と同様のもの)に対して位置合わせされた傾斜支柱234、236、238の選択された傾斜支柱を、覆うように構成することができる。また、フレーム202上へと取り付けられた時には、スカート部分502aのセクション518は、対応した弁尖の外面に対して対向することができる。
【0084】
また、
図5Cの例では、スカート部分502aの第二セクション520は、引張縫合糸510aの上昇部分と、引張縫合糸510bの下降部分と、の間に配置されており、したがって、隣接した弁尖の尖端エッジどうしの間に位置した領域に対応したフレームセクションを覆うように構成することができる。例えば、フレーム202と共に使用された時には、スカート部分502aの第二セクション520は、隣接した弁尖どうしの間に位置した傾斜支柱234、236、238の選択された傾斜支柱を覆うように構成することができる。
【0085】
特定の例では、スカート部分502aの流入エッジ522は、フレームの流入端を向くことができ、または、フレームの流入端上にもしくはフレームの流入端に近接して、配置することができ、他方、スカート部分502aの流出エッジ524は、フレームの流出端を向いている。第一側方エッジ526aは、隣接した(第二)スカート部分の側方エッジに対してオーバーラップするように構成され得るとともに、内部を通して縫合された引張縫合糸510aの下降部分に対応した縫合糸ラインの一部を有するように構成することができる。よって、第一側方エッジ526aは、縫合糸ラインから引張縫合糸510aを除去することによってフレームから取り外されるように構成されている。第一側方エッジ526aとは反対側に位置している第二側方エッジ528aは、隣接した(第三)スカート部分の側方エッジに対してオーバーラップするように構成され得るとともに、内部を通して縫合された引張縫合糸510bの下降部分に対応した縫合糸ラインのセクションを有するように構成することができる。よって、第二側方エッジ528aは、縫合糸ラインから引張縫合糸510bを除去することによってフレームから取り外されるように構成されている。
【0086】
簡略化のために、
図5A~
図5Cおよび
図8A~
図8Cでは、外側スカート502の単一部分であるスカート部分502aが図示されている。追加的な部分(例えば、二つの追加的な部分)を、フレームに対して同様に解放可能に取り付けることができ、これにより、外側スカートが、フレームの少なくとも流入端部分を実質的に包含するものとされることは、理解されよう。したがって、そのような例では、外側スカートのすべてのスカート部分がフレームに対して取り付けられた時には、それらスカート部分は、オーバーラップした複数の側方エッジを有することができ、オーバーラップしたそれら側方エッジは、縫合糸ラインに沿って保持縫合糸を挿通したそれぞれ対応した引張縫合糸を除去することによって、フレームから取り外すことができる。上記の例では、スカート部分のエッジどうしは、オーバーラップすることができ、各引張縫合糸は、第一スカート部分の第一側方エッジを、および第二スカート部分の第二側方エッジを、解放するように構成することができる。
【0087】
例えば、
図5Dは、外側スカート502の三つのスカート部分502a、502b、502cがフレーム202に対して取り付けられている例を、図示している。ここに見られるように、スカート部分502aの第一側方エッジ526aは、第二スカート部分502bの第二側方エッジ528bに対してオーバーラップすることができる。完全に組み立てられた人工弁では、各スカート部分502は、それぞれ対応した引張縫合糸510と、複数のステッチ262を形成する少なくとも一つの保持縫合糸504と、を有している。各引張縫合糸510の反対側に位置した両端部512a、512bは、便利な位置で、フレームに対して固定することができる。例えば、端部512aは、図示のように、交連ウィンドウに隣接した支柱に対して、結びつけたり結わえたりすることができる。他方の端部512bは、説明の目的のために、フレームから取り外されて示されているけれども、人工弁の完全に組み立てられた構成では、フレームに対して同様に固定することができる。摘出手順において両端部512a、512bがフレームから取り外された時には、引張縫合糸510を、保持縫合糸504を通して引っ張ることができ、それぞれ対応したスカート部分502から取り外すことができる。したがって、引張縫合糸510aを縫合糸ラインに沿ってステッチ262から除去することによりまたは引き抜くことにより、フレームからのスカート部分502aの取り外しを、可能とすることができる。スカート部分502cをフレームから解放するために、第二引張縫合糸510bを、縫合糸ラインから引き抜くことができる。具体的には示していないけれども、各スカート部分が、
図5Cに示す外側スカート部分502aに対して同様に構成され得ることは、理解されよう。
【0088】
上述したように、追加的な例ではまたは代替的な例では、外側スカートは、一つの材料を含むことも、より少数の部分を含むことも、でき、かつ/または、外側スカート部分は、フレーム上で、異なる位置または異なる向きを有することができる。さらに、追加的な例ではまたは代替的な例では、外側スカート部分は、U字形状部分もしくはV字形状部分を交互配置した形状などの他の形状を有することができ、また、フレームおよび/または弁尖の形状に対応したようなあるいは弁膜構造の内側スカートの形状に対応したような、他の形状を有することができる。さらにまた、追加的な例ではまたは代替的な例では、外側スカート部分どうしは、オーバーラップしないものとすることができる、あるいは、図示した例よりも大きな程度でオーバーラップすることができる。なおもさらに、追加的な例ではまたは代替的な例では、外側スカートは、より多数のまたはより少数の引張縫合糸によって、解放可能に取り付けることができる(例えば、弁の摘出時にフレームの解放をより微細に制御するために、外側スカートの各部分は、複数の引張縫合糸によって取り付けることができる、あるいは、フレームを外側スカートから解放するために外科医が引張縫合糸の単一端部を見つけて引っ張るだけでよいよう、外側スカートのすべての部分は、単一の引張縫合糸によって、フレームに対して取り付けることができる)、かつ/あるいは、引張縫合糸は、異なる構成および/または異なる向きを、有することができる(例えば、単一の引張縫合糸が、外側スカートの単一部分の取り外しを可能とする、あるいは、一つまたは複数の端部は、流入端に向けて配向させることができる)。一具体例では、外側スカートは、単一の引張縫合糸によってフレームに対して解放可能に取り付けられた単一の材料を含むことができる。
【0089】
外側スカートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)布などの、生体適合性の布から作製することができる。布は、例えば、織布、編布、編組布、および/または不織布(例えば、フェルト)、とすることができる。他の例では、外側スカートは、非布材料から作製することができ、非布材料は、例えば、ポリマー(例えば、ポリウレタン)から作製された材料シートなどであり、これは、例えば、液化ポリマーから材料シートを、押し出すことによって、または成型することによって、または他の態様で形成することによって、形成することができる。さらに他の例では、外側スカートは、心膜組織(例えば、ウシ心膜、ブタ心膜、または、他の供給源からの心膜)などの、天然組織から作製することができる。
【0090】
図6Aは、一つの傾斜支柱(例えば、傾斜支柱234、236、238の一つ)に沿った一例をなす縫合糸ラインを図示しており、
図6Bは、縫合糸ラインの断面(
図6Aに示す線6B-6Bに沿って見た際の断面)を示している。傾斜支柱234/236/238が、単に例示的なものであること、また、同様の構成の縫合糸ラインが、フレームの他の支柱(例えば、軸方向支柱232、または傾斜支柱218、など)に沿って延び得ることは、理解されよう。
図6に見られるように、いくつかの例では、外側スカート502の内面514は、傾斜支柱234/236/238の外面256を向いているとともに、そのような外面256に対して接触もしくは当接しており、引張縫合糸510は、外側スカート502の外面516に対して接触もしくは当接している。保持縫合糸504は、傾斜支柱234/236/238の周囲に延びているとともに、外側スカート502をなす材料を通して(すなわち、外側スカートをなす材料における、複数の開口部または開口260の内部に配置されて)延びており、さらに、支柱234/236/238の長さに沿ってホイップステッチパターンで引張縫合糸510の周囲に延びている。保持縫合糸504がなす各ホイップステッチ262は、先導端部部分264aを含み、この先導端部部分264aは、支柱234/236/238から延びているとともに、開口部260を通して外部へと延びており、さらに、引張縫合糸510の周囲へと延びており、その後、後続端部部分264bへと移行し、この後続端部部分264bは、同じ開口260を通して内部へと延びているとともに、支柱の周囲へと延びており、ここで、後続端部部分264bは、次なるホイップステッチ262の先導端部部分へと移行する。このようにして、各ホイップステッチ262は、ミシン縫いのロックステッチの糸と同様のパターンで、単一の開口260を挿通する。理解され得るように、引張縫合糸510は、引張縫合糸が縫合糸ラインに沿って位置決めされる時には、ステッチ262が開口260を通して引っ張られることを防止する。したがって、外側スカート502は、引張縫合糸が縫合糸ラインを通して配置された時には、引張縫合糸510上へとおよび傾斜支柱234/236/238の内面254上へと保持縫合糸504が印加する力によって、フレーム202に対して固定することができる。
【0091】
いくつかの例では、外側スカートをなす材料における開口部または開口260は、レーザー穿孔、切断、スタンピング、または、当該技術分野で知られている他の適切な技法、などによって、予め形成することができる。
図8Cに最も明瞭に示すように、開口260は、支柱234、236、238の位置に対応した起伏経路に沿って離間して配置された位置のところで、スカート部分502aに、予め形成することができる。他の例では、開口部または開口260は、外側スカートをなす材料を通して保持縫合糸が縫合される際に、形成されることができる(すなわち、個々のステッチ262の後続端部部分264bは、内部を通して先導端部部分264aが延びたものと同じ開口260を通して、縫い戻される)。
【0092】
引張縫合糸510が(例えば、緩んだ端部512aもしくは512bの一方を、縫合糸ラインに対して平行な方向に、またはフレームから外向きに、引っ張ることによって)除去された時には、保持縫合糸504は、もはや、引張縫合糸510によって保持されない。よって、外側スカート502が、フレーム202から引き離される(あるいは、フレーム202が、外側スカート502から引き離される)際には、ステッチ262を、外側スカート502の開口260を通して引き抜くことができ、これにより、外側スカートの内面514が、傾斜支柱234/236/238から分離されるとともに、ステッチ262が、フレームに対して取り付けられたままとされる。
【0093】
いくつかの例では、外側スカート502の内面514は、組織の内方成長に対して抵抗し得るとともにフレーム202からの外側スカート502の分離の容易さを向上させ得るような、抗血栓性の材料または面から構成されてもよい。さらに、いくつかの例では、外側スカート502の外面516は、組織の内方成長を促進させる態様で形成されてもよくまたは組織の内方成長を促進させる材料から形成されてもよく、あるいは、抗血栓性の材料で構成されてもよい。
【0094】
組織の内方成長を促進させるいくつかの例では、上述したように、外側スカート502の外面516は、ベロア、テリー生地、もしくはタオル、などの布(例えば、PETヤーンから形成される)がなす、パイル層またはプラッシュ層からなる外面とすることができる。換言すれば、外側スカートを形成するために使用される布は、閉塞したループ(ループ状パイル)、開放したフリンジ(切断パイル)、または他のフィラメント形態、などの多数のフィラメントを含むことができ、これは、フィラメント内への組織内方成長と、外側スカートの貫通に対するシールと、を促進する。布のパイル層は、大きなマイクロスケールの面領域(例えば、v=0(境界条件))を形成することにより、血液流を機械的に遅くすることによって、シール特性を増強することができる。追加的に、いくつかの例では、パイル層は、大きな表面積へとパイル層が曝されることによって、周囲の血液および/または組織を撹拌することができ、これにより、異物反応(FBR)を刺激することができる。組織の内方成長を促進するように構成されたスカートに関する更なる詳細は、米国特許第11,013,600号明細書、米国特許公開第2019/0365530号明細書、および米国特許公開第2019/0374337号明細書、に開示されており、これら文献のそれぞれは、参照により本明細書に援用される。
【0095】
組織の内方成長を促進させるいくつかの例では、外側スカートの内面および/または外面は、抗血栓性のコーティングまたは層を含むことができる。例えば、外側スカートは、非常に小さな孔を有しているようなもしくは全く孔を有していないような平滑な疎水性ポリマー材料を含む気密層を含むことができる。疎水性ポリマー材料に関する例示的な材料は、限定するものではないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE(ePTFE)、ウレタン、ポリウレタン(PU)、熱可塑性PU(TPU)、シリコーン、もしくはこれらの組合せ、またはこれらのコポリマー、を含むことができる。一例では、疎水性ポリマー材料は、ePTFEを有してエレクトロスピニングされたウレタン層(例えば、サウスカロライナ州オレンジバーグ所在のZeus Industrial Products Inc.社によって販売されているBioweb(商標)、など)を含む。別の例では、疎水性ポリマー材料は、シリコーンとTPUとのコポリマー(例えば、ユタ州ソルトレークシティ所在のBiomerics社によって販売されているQuadrasil(商標)、など)を含む。上記では具体的に列挙していないけれども、実質的に非多孔性とされたようなまたは細胞の内方成長を妨害するのに充分な小さなサイズの孔を有するような気密層を形成し得る他の疎水性ポリマー材料も、あるいはそれらの組合せも、また、いくつかの実装では可能である。例えば、本明細書で説明する例示的な外側スカートおよび人工弁と組み合わせて使用され得るようなそのような材料ならびに気密シールは、米国仮特許出願63/112,080号明細書に開示されており、この文献は、参照により本明細書に援用される。
【0096】
他の例では、外側スカートの内面および/または外面は、ヒドロゲルコーティング、ヘパリンコーティング、シリコーンコーティング、もしくは他の材料、またはこれらの組合せ、などの抗血栓性材料によって、コーティングすることができる。本明細書で説明する例示的な外側スカートおよび人工弁と組み合わせて使用され得るようなヒドロゲルコーティングの例は、米国仮特許出願63/211,384号明細書に開示されており、この文献は、参照により本明細書に援用される。
【0097】
特定の例では、外側スカート502は、ベロアなどの、パイル布またはプラッシュ布を含むことができ、その布の内面に、抗血栓性層が施されている。パイル層は、スカート502の外面を形成し、抗血栓性層は、スカート502の内面を形成する。
【0098】
外側スカートの外面上に組織が内方成長することで、人工心臓弁が天然の心臓弁内に移植されて動作する際に、人工心臓弁の安定した位置決めが可能とされ得ることは、理解されよう。外側スカートの内面上で抗血栓性材料または抗血栓性層を使用することにより、移植部位からの外側スカートの分離が改良され得ること、また、外側スカートの外面上で抗血栓性材料または抗血栓性層を使用することにより、摘出時における周囲組織の切断が低減され得ることは、さらに理解されよう。
【0099】
いくつかの例では、保持縫合糸は、より太い引張縫合糸と比較して、より細い繊維とすることができる。いくつかの例では、保持縫合糸は、超高分子量ポリエチレン(UHMPE)フォースファイバ(登録商標)もしくは他の同様の材料またはそれらの組合せなどの、より細くかつより大きな引張強度の生体適合性材料から構成することができる。一具体例では、保持縫合糸は、UHMPEフォースファイバから形成され得るとともに、フレームが外側スカートから分離される際に保持縫合糸が外側スカートの外面上における成長し過ぎた組織を切断し得るよう、充分に細くかつ力に耐えるものとすることができる。いくつかの例では、引張縫合糸は、ポリプロピレン(例えば、プロレン4-0)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE(ePTFE)、もしくは他の同様の材料、またはこれらの組合せ、からなるモノフィラメントなどの、より太くかつより大きな引張強度を有した生体適合性材料から構成することができる。一具体例では、引張縫合糸は、プロレンから構成されたマイクロフィラメントとすることができ、これは、摘出手順時に外科医によって引っ張られた時には、周囲のあらゆる内方成長組織から、容易に分離するようにまたは容易に引き離されるように構成されている。
【0100】
いくつかの例では、引張縫合糸材料は、明確な着色をまたは着色コーティングを(例えば、緑色、黒色、もしくは青色の、着色またはコーティング)を有することができる、かつ/あるいは、摘出手順時に外科医によって識別され得るよう、他の態様でタグ付けされることができる。いくつかの例では、引張縫合糸の長さの全体を、例えば、鮮やかな着色済み材料から構成することができる、または、鮮やかに着色されたコーティングを有するものとすることができる。他の例では、引張縫合糸の一部(例えば、引張縫合糸の緩んだ端部部分)を、着色された材料から構成することができる、かつ/または、鮮やかに着色されたコーティングを有するものとすることができる、かつ/または、鮮やかに着色されたタグもしくはフラップが取り付けられたものとすることができる。他の例では、引張縫合糸またはその一部は、専用の可視化装置を使用して可視化され得るような、材料、コーティング、またはタグを含むことができる。例えば、引張縫合糸は、X線透視法もしくはX線デバイスを介して可視化され得るような、放射線不透過性物質あるいは一つまたは複数の放射線不透過性マーカーを、含むことができる。例えば、一つまたは複数の放射線不透過性マーカーは、引張縫合糸の外面内に埋め込むことができる、あるいは、引張縫合糸の外面に対して取り付けることができる。
【0101】
例示的な方法
上述したように、人工心臓弁500の構成は、後述する手順などの、移植手順および/または摘出手順に関して、特に有利なものであり得る。
【0102】
移植に関する例示的な方法700が、
図7Aのフロー図に示されている。まず、ステップ702では、医師は、経カテーテル的移植によって人工弁が心臓の内部に移植されることとなる特定の患者について、心臓の症状を評価することができる。例えば、移植手順を行う前に、心臓の症状(例えば、大動脈弁狭窄症または大動脈弁閉鎖不全症)のタイプを決定するために、また、心臓の解剖学的構造(例えば、天然弁輪のサイズ、など)および患者の血管系を決定するために、心エコー図検査、心電図検査、X線検査、心臓MRI検査、心臓カテーテル検査、ならびに/あるいは、他の撮像モダリティまたは評価モダリティ、などの撮像技術あるいは他の分析技術を、患者に対して実施することができる。このような分析に基づいて、ステップ704では、医師は、患者の処置のための人工弁に関する適切なサイズおよび/または構成を、決定してもよい。例えば、ステップ706では、医師は、内部を通して人工弁が送達されることとなる患者の血管系が特に小さかったり狭かったりするかどうかについて、あるいは、処置のために(例えば、AIの処置のために)、患者が過大なサイズの人工弁を必要とするかどうかについて、また、過大なサイズの人工弁から利益が得られるかどうかについて、決定することができる。代替的には、医師は、患者が(例えば、ASの処置のために)通常サイズの人工弁を必要とするかどうかについて、および/または外側スカートを含む人工弁を必要とするかどうかについて、決定することができる。
【0103】
例えば、患者が、小さな血管系を有していない場合には、および/または、過大なサイズの人工弁を必要としない場合には、医師は、外側スカートをフレームに対して取り付けたままとし得るとともに、経カテーテル技術によって人工弁を移植してもよい(ステップ708)。しかしながら、患者が、小さな血管系を有している場合には、および/または、過大なサイズの人工弁を必要とする場合には、pは、まず、人工弁のフレームから外側スカートを分離することができ(ステップ710、
図7Cを参照して後述する)、これにより、人工弁の移植を行うよりも前に、外側スカートを除去することができる。次に、外側スカートを除去した状態の人工弁を、経カテーテル技術によって、移植することができる(ステップ712)。
【0104】
図7Bを参照すると、着脱可能なスカートを有した人工弁に関する例示的な摘出方法720が図示されており、これについて説明する。まず、ステップ722に示すように、外科医が、人工心臓弁および着脱可能な外側スカート(例えば、人工心臓弁500など)に関する移植部位へと、アクセスする。特定の例では、移植部位に対しては、開心術または部分開心術などの、心臓に対して直接的にアクセスし得る外科手順によって、アクセスすることができる。他の例では、移植部位に対しては、胸腔を開く必要がなくまた患者を心肺バイパス装置上へと配置する必要もない経カテーテル(例えば、経動脈的または経大腿動脈的)手術技法などの低侵襲的手順によって、アクセスすることができる。
【0105】
ステップ724においては、移植部位に対してアクセスした後、外科医は、フレームを外側スカートから分離することができる(
図7Cを参照して後述する)。外側スカートから完全に分離した後に、ステップ726においては、フレームを、移植部位から除去することができる。いくつかの例では、フレームは、移植部位から除去を行う前に、例えばカテーテルによって除去を行うなどの前に、そのサイズを小さくするために、折り畳んだり径方向に圧縮したりすることができる。カテーテルは、フレームを把持するとともにフレームをカテーテルのシース内へと引き込むための、一つまたは複数の把持機構を含むことができ、この把持機構は、フレームがシース内へと引き込まれる際にフレームを径方向に効果的に圧潰する。その後、カテーテルを、人工弁500(外側スカートを有していない)と一緒に、患者の身体から除去することができる。開心的な摘出手順などの他の例では、フレームは、折り畳みや圧縮を行ってもまたは行わなくても、除去され得るものであり、この場合、折り畳みや圧縮の必要性は、患者の解剖学的構造、人工弁/移植部位の位置、および/または、手順の具体的なタイプ、に依存し得る。
【0106】
ステップ728においては、外側スカートを、移植部位から除去することができる。場合によっては、内部に組織が内方成長している場合には、外側スカートは、移植部位に対して取り付けられたままとされてもよい。このような状況では、外側スカートおよび/または弁尖の一部を、移植部位から天然のスカラップラインに沿って切除または切断することができ、これは、弁の他の構成要素がその領域に対するアクセスを妨害または制限することなく、行うことができる。換言すれば、外側スカートを除去する前にフレームを除去することにより、着脱可能ではない外側スカートを有した人工弁(例えば、容易には解放し得ない態様でフレームに対して直接的に縫合された外側スカートを含む人工弁)と比較して、移植部位に対するアクセスが向上され得るとともに、移植部位からの外側スカートおよび/または天然弁尖の切断が容易とされ得る。他の状況では、外側スカートは、組織内方成長を、ほとんどまたは全く有しておらず、移植部位から容易に分離可能である。
【0107】
そして、ステップ730では、例えば、
図2を参照して上述した移植方法によって、新たな人工弁を、移植部位へと移植することができる。人工弁500を除去するのに使用したものと同じカテーテルを使用することにより、あるいは、交換人工弁を担持した別個の送達カテーテル(例えば、送達カテーテル100)を使用することにより、交換人工弁を、天然の心臓弁の内部に位置決めして配備することができる。代替的には、患者の胸腔を開いた場合には、公知の手術技法を使用して、外科用人工心臓弁を移植することができる。
【0108】
図7Cは、人工弁のフレームから外側スカートを分離するための例示的な方法740を示しており、
図8A~
図8Dに示した対応した図示に関して説明する。ステップ742においては、医師または外科医は、人工弁上における一つまたは複数の引張縫合糸を特定することができる。特定の例では、上述したように、引張縫合糸(または、その一部)は、例えば、人工弁の移植前における人工弁の準備時などに、または他の例では、開心摘出手順時などにもしくはカメラを利用した経カテーテル的摘出手順時などに、人工心臓弁の外面上における引張縫合糸を外科医が直接的に視覚的に識別することを可能とするような、明確な着色もしくはコーティングまたは着色タグを有することができる。経カテーテル的摘出における他の例では、引張縫合糸(または、その一部)は、X線透視法もしくはX線デバイスなどの検出可視化装置を利用して外科医が可視化し得るような、放射線不透過性の物質またはマーカーを含むことができる。上記の例のいずれにおいても、人工弁は、外側スカート(一つまたは複数の外側スカート部分を含む)の縫合糸ラインに沿って延びた単一の引張縫合糸を有し得る、あるいは、外側スカートの部分もしくはセクションがなす縫合糸ラインに沿って延びた二つ以上の引張縫合糸を有し得る。したがって、外科医は、各引張縫合糸の位置を特定し得る。さらに、外科医は、いくつかの例では、引張縫合糸の全体を識別してもよい、あるいは、他の例では、外科医は、引張縫合糸の一部のみを識別してもよく、例えば、フレームに対してまたは人工弁の別の部分に対して取り付けられたその端部のみを識別してもよい。
【0109】
次に、ステップ744では、外科医は、識別した引張縫合糸の端部を解放することができる。上述したように、引張縫合糸の端部は、外側スカートの縫合糸ラインを越えて延び得るものであって、人工弁の移植時に端部の位置が保持されることを可能とする態様で、さらに、移植のための人工弁の準備時にもしくは摘出手順時に端部の取付部位に対して近接した引張縫合糸を切断することまたは引っ張ることなどによって外科医が端部を容易に解放することを可能とする態様で、人工弁の一部(例えば、フレーム、一つまたは複数の弁尖、内側スカート、または外側スカート)に対して解放可能に取り付けることができる。
【0110】
いくつかの例では、端部は、接着剤によって人工弁の一部に対して取り付けることができる。他の例では、端部は、支柱を覆う縫合糸またはエラストマー部材の直下に少なくとも部分的に配置されることによって、フレーム支柱の一つに対して固定することができる。さらに他の例では、引張縫合糸の端部は、一つまたは複数のステッチ(例えば、インアンドアウトとされたステッチ)によって外側スカートに対して緩く縫合されてもよく、引張縫合糸の、端部に隣接した部分を引っ張ることにより、端部を、緩い縫合から解放することができる。他の例では、引張縫合糸の端部は、フレームの支柱に対して結ばれる。外科医は、引張縫合糸をフレームから切り離すために、フレームの近くで引張縫合糸の端部を切断することができる。いくつかの例では、引張縫合糸の端部は、フレームの流出端のところで、もしくは、外側スカートの下流側でフレームの流出部分に少なくとも沿って、フレームに対して結ぶことができまたは他の態様で取り付けることができ、この場合、流出部分は、典型的には、大動脈弁輪の直上位置で大動脈の内部に位置決めされる。したがって、フレームの流出部分に沿って引張縫合糸の端部を固定することにより、摘出手順時に引張縫合糸の端部に対して、より大きなアクセスを可能とすることができる。
【0111】
図8Aにおける例示的な外側スカートの除去に関する図示に見られるように、引張縫合糸510の端部512は、人工弁500に対する取付から解放されているため、外科医によってアクセス可能なものとされている。引張縫合糸510の残部は、縫合糸ラインに沿って配置されているとともに、保持縫合糸504と、外側スカート部分502aの外面516と、の間に捕捉されており、これにより、外側スカート部分502aは、フレーム202に対して取り付けられている。例えば、移植の準備時など、または開心による摘出の準備時など、外科医が人工弁に対して直接的にアクセスするいくつかの例では、ハサミまたは別の切断デバイスを使用することにより、端部512を解放することができる。他の例では、経カテーテル的なまたは経皮的な摘出手順が行われる場合、医師は、その遠位端に切断ブレードを有した長尺カテーテルを、患者の血管系内へと挿入し得るとともに、そのカテーテルを、人工弁500のところまで前進駆動することができる。医師は、カテーテルを操作することにより、切断ブレードを使用して、人工弁に対する取付から、引張縫合糸510の端部512を切断することができる。
【0112】
図7Cに戻ると、ステップ746では、外科医は、引張縫合糸の解放済み端部の一方を(手によって、またはツールによって)把持し得るとともに、引張縫合糸に対して引張力を印加することができ、これにより、引張縫合糸を、縫合糸ラインに沿って保持縫合糸から引き抜くことができる。例えば、
図8Bは、引張縫合糸が完全に除去された状態で、さらに、外側スカート502aが、外側スカートの開口260を通して延びた保持縫合糸504を介してフレーム202に対して緩く取り付けられている状態で、人工弁500を図示している。手順が経皮的に行われる場合には、カテーテルは、引張縫合糸の端部512を把持して引っ張るための把持機構を、含むことができる。
【0113】
図6Aおよび
図6Bを参照して上述したように、保持縫合糸504がなすステッチ262は、それぞれ、外側スカート502におけるそれぞれ対応した開口260を通して延び得るとともに、引張縫合糸510が除去された後には、開口260を通して引き抜かれることができる。したがって、ステップ748で示すように、引張縫合糸の除去に続いて、外側スカートの一つまたは複数の部分を、フレームから分離することができる。二つ以上の外側スカート部分(例えば、三つのスカート部分)を含む人工弁の例では、フレームの各部分を外側スカートから段階的に分離するために、それぞれ対応した引張縫合糸によって、各外側スカート部分を解放することができる。
【0114】
いくつかの例では、フレームは、外科医によって(手で、またはツールを介して)把持され得るとともに、外側スカートから引き離されることができ、これにより、ステッチ262が、外側スカートにおける開口部260を通して、引っ張られることとなる。上述したように、保持縫合糸は、細くかつ大きな引張強度の材料から構成することができ、外側スカートを通して引っ張ることでステッチを移植部位から引き離すことにより、ステッチが、成長し過ぎた組織を切断してしまう可能性がある。
図8Cは、摘出手順の例示的な段階であり、フレーム202が外側スカート部分502aから引き離される際にフレームが外側スカート部分502aから部分的に分離されているという段階を、図示している。したがって、保持縫合糸504の一部は、なおも、外側スカート502を通して延びているものの、保持縫合糸の別の部分(図示せず)は、外側スカート502を通して、既に引き抜かれている。
【0115】
図8Dは、分離手順の別の例示的な段階であり、フレーム202が外側スカートから完全に分離されており、かつ、保持縫合糸504がフレーム202の傾斜支柱234、236、238に対して取り付けられたままとされているという段階を、図示している。
【0116】
本明細書で開示する人工心臓弁が、外側スカートの一つまたは複数の部分をフレームに対して解放可能に取り付けることを可能とするような製造方法の開示例によって、作製され得ることは、理解されよう。いくつかの例では、製造方法は、フレームの流入端と流出端との間に配置された相互連結支柱を含むフレームを用意するステップと、着脱可能な外側スカートの一つまたは複数の部分を、フレームの外面上へと重ね合わせるステップと、少なくとも一つの保持縫合糸を、外側スカートを通して、特定の支柱の周囲に巻回することにより、外側スカート上に縫合糸ラインを形成し、これにより、保持縫合糸がなす各ステッチを、スカートの単一の開口を通して延びたものとするとともに、外側スカートの外面上における一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びたものとするステップと、を含むことができる。
【0117】
いくつかの例では、方法は、一つもしくは複数の引張縫合糸の端部と、外側スカート上における取付領域および/またはフレーム上における取付領域および/またはフレームの内部上に配置された弁膜構造上における取付領域と、の間に解放可能な取付を形成するステップを、さらに含むことができる。いくつかの例では、一時的な取付を形成するステップは、接着剤、縫合糸、弾性バンド、またはフレームに対して端部を結ぶこと、の少なくとも一つによって、取付領域の内部に端部を捕捉するステップを、含むことができる。いくつかの例では、外側スカートの一つまたは複数の部分をフレームの外面上へと重ね合わせるステップは、外側スカートの、第一部分、第二部分、および第三部分、のそれぞれを、フレームの内部に対して取り付けられた弁膜構造の、第一弁尖の尖鋭エッジ、第二弁尖の尖鋭エッジ、および第三弁尖の尖鋭エッジ、に対してそれぞれ位置合わせするステップを含む。いくつかの例では、外側スカートの一つまたは複数の部分をフレームの外面上へと重ね合わせるステップは、外側スカートの一つまたは複数の部分の隣接したエッジどうしをオーバーラップさせるステップを含む。いくつかの例では、一つまたは複数の縫合糸ラインを形成することは、外側スカートの一つまたは複数の部分におけるオーバーラップしたエッジのそれぞれ上に縫合糸ラインを形成することを含む。
【0118】
開示する技術に関する追加的な例
上述したように、人工弁は、フレーム202を、または異なるフレームを、含むことができる。着脱可能な外側スカートを有した人工弁において利用され得るような、追加的な例をなすフレームが、
図9A~
図9Fに図示されている。
【0119】
図9Aを参照すると、人工心臓弁アセンブリ900は、弁構成要素902と、人工心臓弁902の弁フレーム906に対して結合されたアンカー止めフレーム904と、を含む。相対的な位置関係に基づいて、アンカー止めフレーム904は、「外側フレーム」と称することもでき、また、弁フレーム906は、「内側フレーム」と称することもできる。
図9A~
図9Fには具体的には図示していないけれども、外側スカート502などの着脱可能な外側スカートを、人工心臓弁アセンブリ900の外面上において、アンカー止めフレーム904に対しておよび/または弁フレーム906に対して、解放可能に取り付けることができる。
【0120】
人工心臓弁アセンブリ900は、送達構成(外側スカートが取り付けられているかどうかにかかわらず)へと径方向に圧縮(これは「圧潰」とも称され得る)され得るとともに、患者の血管系を通して移植位置へと前進駆動されることができる。人工心臓弁アセンブリ900は、送達構成から機能的構成へと径方向に拡張され得るとともに、天然の心臓弁輪内に位置決めされることができる。弁構成要素902は、人工心臓弁アセンブリ900を通して流れる血液流を一つの向きへと調節するように構成されている。アンカー止めフレーム904は、複数の組織係合部材(例えば、突起924)を含む。代替可能な例では、アンカー止めフレームを、人工心臓弁アセンブリ900から省略することができ、弁フレーム906は、複数の組織係合部材(例えば、構成の点で突起924と同様とされた突起)を含むことができる。
【0121】
AI患者の処置のためなどに、人工心臓弁アセンブリ900の送達前に外側スカートが除去されるいくつかの例では、突起924は、人工心臓弁902を天然の心臓弁組織に対して固定することを補助するように構成されている、かつ/または、天然組織と人工心臓弁アセンブリ900との間における組織内方成長を促進させることを補助するように構成されている。代替的には、外側スカートは、人工心臓弁アセンブリ900の外面上へと取り付けられたままとされ得るとともに、アンカー止めフレーム904の全部または一部を覆うことができ、これにより、天然の心臓弁組織は、突起924から遮蔽される。例えば、外側スカートは、AS患者の処置に際しては、人工心臓弁アセンブリ900に対して取り付けられたままとされ得るとともに、石灰化組織における間隙を充填することで、移植された人工弁と天然弁輪との間にシールを形成することができる(上述したように)。
【0122】
再び
図9Aを参照すると、弁構成要素902は、弁膜構造908を含むとともに、任意選択的に、一つまたは複数の内部シール部材910(これは、「シールスカート」または「PVLスカート」とも称され得る)を含む。シール部材910は、布や布地などの様々な材料から形成することができる。いくつかの実例では、シール部材は、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)および/または超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)布から形成することができる。他の例では、様々な他の合成材料または様々な他の天然材料を、使用することができる。
【0123】
弁フレーム906は、弁膜構造908を支持するように構成されている、かつ/または、人工心臓弁アセンブリ900を、天然の心臓弁組織(例えば、天然の心臓弁輪および/または天然の弁尖)に対して固定することを補助するように構成されている。弁膜構造908は、流入端部分912から流出端部分914へと弁構成要素902を通して血液流が流れることを可能とするよう、開放するように構成された一つまたは複数の弁尖919を含む。弁尖918は、また、流出端部分914から流入端部分912へと弁構成要素902を通して血液流が流れることを阻止または制限するよう、閉塞するように構成されている。シール部材910は、弁膜構造908および/または天然組織の周囲を通して血液流が流れること(これは、「弁傍漏出」、「弁周囲漏出」、または「PVL」とも称され得る)を低減または排除するように構成されている。
【0124】
図9Cおよび
図9Eは、他の構成要素を省略した状態で、弁フレーム906を図示している。
図9Cは、その機能的構成に対応した環状構成とされた弁フレーム906を図示しており、
図9Eは、説明の目的のために、平坦構成とされた弁フレーム906を図示している。弁フレーム906は、複数の相互連結支柱を含む。いくつかの例では、支柱は、複数のセルを形成している。例えば、
図9Eを参照すると、弁フレーム906の支柱は、閉塞セルからなる第一列Iと、閉塞セルからなる第二列IIと、閉塞セルからなる第三列IIIと、閉塞セルからなる第四列IVと、を含めて、閉塞セルからなる複数の列を形成している。図示した例では、列Iにおけるセルは、列IIにおけるセルおよび列IIIにおけるセルよりも大きいけれども、列IVにおけるセルよりも小さい。列IIにおけるセルは、列IIIにおけるセルと比較して、同じサイズとされている、あるいは、少なくとも実質的に同じサイズとされている。図示した例では、セルは、全体的に六角形の形状とされている。他の例では、弁フレームは、様々な他の数のセル列を含むことができ、セルは、異なるサイズを含むことができ、かつ/または、セルは、異なる形状を含むことができる。
【0125】
弁フレーム906は、また、複数の交連ウィンドウ916(例えば、図示の例では三つ)を含む。交連ウィンドウ916は、弁尖918からなる交連を、弁フレーム906に対して結合するように構成されている。
【0126】
フレーム12および202と同様に、弁フレーム906は、任意の様々な適切な塑性的拡張可能材料(例えば、ステンレス鋼、等)から、および/または、自己拡張材料(例えば、ニチノール)から、作製することができる。弁フレームが塑性的拡張可能材料を含む時には、弁フレーム(ひいては、人工心臓弁アセンブリ)は、送達カテーテル上において径方向圧縮状態へと圧縮され得るとともに、その後、送達装置の膨張可能バルーンによってまたは同等の拡張機構によって、患者の内部で拡張されることができる。弁フレームが自己拡張可能な材料を含む時には、弁フレーム(ひいては、人工心臓弁アセンブリ)は、径方向圧縮状態へと圧縮され得るとともに、送達装置のシースによってまたは同等の機構によって、圧縮状態に拘束されることができる。身体内へと導入された後には、人工心臓弁アセンブリを、送達シースから前進駆動することができ、これにより、弁を、その機能的なサイズへと自己拡張させることができる。
【0127】
本明細書で開示するフレーム(例えば、弁フレーム906など)を形成するために使用され得る適切な塑性的拡張可能材料は、金属合金、ポリマー、またはこれらの組合せ、を含む。例示的な金属合金は、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、チタン、もしくは他の生体適合性金属、の一つまたは複数を含むことができる。いくつかの例では、弁フレーム906は、ステンレス鋼を含むことができる。いくつかの例では、弁フレーム906は、コバルトクロムを含むことができる。いくつかの例では、弁フレーム906は、ニッケル-コバルト-クロムを含むことができる。いくつかの例では、弁フレーム906は、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金を含み、例えば、MP35N(商標)(SPS Technologiesの商標名)を含み、これは、UNS R30035(ASTM F562-02によってカバーされている)と同等である。MP35N(商標)/UNS R30035は、35重量%のニッケルと、35重量%のコバルトと、20重量%のクロムと、10重量%のモリブデンと、を含む。
【0128】
弁フレームと、弁構造と、外側スカートと、弁構造および/または外側スカートを弁フレームに対して固定し得る態様と、に関する追加的な詳細は、参照により本明細書に援用される米国特許第6,730,118号明細書に、また、先に本明細書に援用された米国特許第9,393,110号明細書および米国特許第11,096,781号明細書に、見出すことができる。
【0129】
図9Dを参照すると、アンカー止めフレーム904は、環状形状に構成された複数の支柱を含む。
図9Bに図示しているように、アンカー止めフレーム904は、また、複数の組織係合部材を含む。図示した例では、組織係合部材は、アンカー止めフレーム904の支柱から延びた突起924(「アンカー」とも称され得る)とされている。突起924は、天然の心臓弁組織に対して係合する(いくつかの実例では、心臓弁組織の内部へと侵入して埋め込まれる)ように構成されている。いくつかの例では、突起924は、返しの形態とすることができる、かつ/または、尖った端部を有することができる。このようにして、突起924は、(人工弁の送達前に外側スカートが除去される場合には)人工心臓弁アセンブリ900と天然の心臓弁組織との間における摩擦係合を増大させることができ、このことは、人工心臓弁アセンブリ900が送達装置から解放された後における、天然の心臓弁組織に対しての、人工心臓弁アセンブリ900の移動量を低減することを補助することができる。突起は、また、組織内方成長の改良を補助することができる、かつ/または、PVLの低減を補助することができる。
【0130】
突起924は、アンカー止めフレーム904の支柱から、様々な向きに延びることができる。例えば、図示した例では、突起924のいくつかは、人工心臓弁アセンブリの流入端から流出端へと延びる中心長手方向軸線に対して傾斜して、支柱から延びている。いくつかの実例では、突起は、突起が延びる起点をなす支柱に対して、垂直とされている、または、少なくとも実質的に垂直(例えば、80度~100度の角度を形成している)とされている。他の例では、突起は、それぞれ対応した支柱から、様々な他の角度(例えば、1度~79度)で延びることができる。例えば、いくつかの実例では、突起は、人工心臓弁アセンブリの流入端から流出端へと延びる中心長手方向軸線に対して突起が平行とされるようまたは少なくとも実質的に平行とされるよう、それぞれ対応した支柱から、約45度の角度で延びることができる。
【0131】
突起は、周囲組織に対する潜在的な有害性を低減しつつも人工心臓弁アセンブリに対して充分に保持力を提供するような、様々な形状および長さを含むことができる。例えば、図示した例では、突起は、歯またはスパイクを含む。他の例では、突起は、ボール形状の膨出を、および/または矩形形状を、含むことができる。追加的にはまたは代替的には、突起の一つまたは複数は、湾曲形状、フック形状、十字形状、T字形状、および/または、返し形状、を含むことができる。突起の形状および/またはサイズに関する様々な組合せを、使用することができる。
【0132】
人工心臓弁アセンブリ900のアンカー止めフレーム904は、アセンブリを形成するために弁フレーム906に対して取り付けられる別個の構成要素として、形成することができる。
図9Dおよび
図9Fは、弁フレーム906から取り外した状態で、人工心臓弁アセンブリ900のアンカー止めフレーム904を図示している。
図9Dは、環状構成とされたアンカー止めフレーム904を図示しており、
図9Fは、平坦構成とされたアンカー止めフレーム904を図示している。
【0133】
いくつかの例では、アンカー止めフレーム904の支柱は、複数のセルを形成することができる。例えば、
図9F(これは、平坦構成とされたアンカー止めフレーム904を図示している)を参照すると、アンカー止めフレーム904の支柱は、閉塞セルからなる第一列Iと、閉塞セルからなる第二列IIと、閉塞セルからなる第三列IIIと、を含めて、閉塞セルからなる複数の列を形成している。図示した例では、第一列Iにおけるセルは、列IIおよび列IIIにおけるセルよりも大きい。第二列IIにおけるセルは、第三列IIIにおけるセルと比較して、同じサイズとされている、または、少なくとも実質的に同じサイズとされている。セルは、全体的に六角形の形状とされている。他の例では、アンカー止めフレームは、様々な他の数(例えば、1、2、4)のセル列を含むことができ、セルは、異なるサイズを含むことができる、かつ/または、セルは、異なる形状を含むことができる。
【0134】
アンカー止めフレーム904は、アンカー止めフレーム904の列I、II、IIIの支柱およびセルが、それぞれ、弁フレーム106の列I、II、IIIの支柱およびセルに対して位置合わせされるように、構成されている(例えば、
図9A参照)。このようにして、アンカー止めフレーム904の支柱接合部926は、
図9Bに図示しているように、弁フレーム906の支柱接合部928に対して結合することができる。図示した例では、アンカー止めフレーム904は、縫合糸930によって弁フレーム906に対して結合されている。いくつかの例では、アンカー止めフレーム904は、縫合糸930を受領するように構成され得る開口932を含む。説明の目的のために、
図9Aには、縫合糸が示されていないことに注意されたい。他の例では、アンカー止めフレームは、様々な他の態様(例えば、締結部材、溶接、接着剤、等)によって、弁フレームに対して結合することができる。アンカー止めフレーム904の接合部926を弁フレーム906の接合部928に対して結合することにより、アンカー止めフレーム904は、例えば、弁フレーム906と同時に、拡張および/または圧縮することができる。
【0135】
いくつかの例では、アンカー止めフレーム904は、(例えば、縫合糸930および/または締結部材を使用して)弁フレーム906に対して着脱可能に結合される。本明細書で使用した際には、「着脱可能に結合される」とは、二つの構成要素が一緒に結合される態様で、かつ、いずれの構成要素も塑性変形させることなく分離され得る態様で、結合されることを意味する。他の例では、アンカー止めフレームは、弁フレームに対して恒久的に結合することができる(例えば、溶接によって)。本明細書で使用した際には、「恒久的に結合する」とは、少なくとも一方の構成要素を塑性変形させなければ二つの構成要素を分離させ得ない態様で結合することを意味する。
【0136】
アンカー止めフレームは、任意の様々な適切な塑性的拡張可能材料(例えば、ステンレス鋼、等)から、および/または、自己拡張材料(例えば、ニチノール)から、作製することができる。アンカー止めフレームが塑性的拡張可能材料を含む時には、アンカー止めフレーム(ひいては、人工心臓弁アセンブリ)は、送達カテーテル上において径方向圧縮状態へと圧縮され得るとともに、その後、送達装置の膨張可能バルーンによってまたは同等の拡張機構によって、患者の内部で拡張されることができる。アンカー止めフレームが自己拡張可能な材料を含む時には、アンカー止めフレーム(ひいては、人工心臓弁アセンブリ)は、径方向圧縮状態へと圧縮され得るとともに、送達装置のシースによってまたは同等の機構によって、圧縮状態に拘束されることができる。身体内へと導入された後には、人工心臓弁アセンブリを、送達シースから前進駆動することができ、これにより、人工心臓弁アセンブリを、その機能的なサイズへと拡張させることができる。
【0137】
本明細書で開示するフレーム(例えば、アンカー止めフレーム904など)を形成するために使用され得る適切な塑性的拡張可能材料は、金属合金、ポリマー、またはこれらの組合せ、を含む。例示的な金属合金は、ニッケル、コバルト、クロム、モリブデン、チタン、もしくは他の生体適合性金属、の一つまたは複数を含むことができる。いくつかの例では、アンカー止めフレーム904は、ステンレス鋼を含むことができる。いくつかの例では、アンカー止めフレーム904は、コバルトクロムを含むことができる。いくつかの例では、アンカー止めフレーム904は、ニッケル-コバルト-クロムを含むことができる。いくつかの例では、アンカー止めフレーム904は、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金を含み、例えば、MP35N(商標)(SPS Technologiesの商標名)を含み、これは、UNS R30035(ASTM F562-02によってカバーされている)と同等である。MP35N(商標)/UNS R30035は、35重量%のニッケルと、35重量%のコバルトと、20重量%のクロムと、10重量%のモリブデンと、を含む。
【0138】
他の例では、アンカー止めフレーム904を、省略することができ、アンカー止め特徴(例えば、突起924)を、弁フレーム906の一つまたは複数の支柱上に形成することができる。一具体例では、突起924は、アンカー止めフレーム904に関して
図9Fに示すのと同じ態様で、列I、II、III内におけるセルを形成している支柱上に形成することができる。
【0139】
AI患者内における人工弁のアンカー止めを改良するためのアンカー止め特徴を有したフレームを含む人工弁に関しての、追加的な説明および追加的な例は、2021年5月27日付けで出願されたPCT出願第PCT/US2021/034399号に開示されており、この文献は、参照により本明細書に援用される。本開示による人工弁の例は、PCT出願第PCT/US2021/034399号に開示された任意の人工弁と、本明細書で開示するフレームに対して着脱可能に接続された取り外し可能な外側スカート(例えば、外側スカート502)と、を含むことができる。
【0140】
他の例では、フレーム202(または、後述するフレーム1201などの、異なるフレーム)を含む人工弁は、異なる構成とされた、または異なるタイプとされた、着脱可能な外側スカートを含むことができる。人工弁において利用され得る着脱可能な外側スカートに関する追加的な例が、
図10A~
図11に、および
図12~
図15に、図示されている。
【0141】
図10A~
図11を参照すると、いくつかの例では、外側スカートは、外側スカートの流入エッジもしくは流出エッジの一方または両方のところに、融着エッジまたは融解エッジを含むことができる。融着エッジまたは融解エッジは、外側スカート材料をなす繊維どうしが解けることを防止するよう、また、繊維の織込構成を維持するよう、外側スカートをなす繊維どうしが融解および/または融着された領域とされ得る。しかしながら、融着エッジは、研磨性であり得るため、フレームの内部上に配置された弁膜構造の弁尖材料(例えば、弁尖204など)を損傷する可能性がある。例えば、弁尖材料は、収縮期に融着エッジによって損傷を受ける可能性がある。したがって、融着エッジは、弁尖から離間する向きにかつ人工弁の外面へと向かう向きに配向させ得るとともに、弁の外面で折り返すことで、融着エッジと人工弁の弁尖との間の接触を防止または制限することができる。いくつかの例では、外側スカートは、折り目に沿ってフレームに対して解放可能に縫合することで、融着エッジの位置を固定し得るとともに、例えば人工弁の摘出時に、フレームからの外側スカートの解放を可能とすることができる。融着エッジを含む外側スカートが、ポリエチレンテレフタレート(PET)布などの、生体適合性の布から作製され得ることは、理解されよう。布は、例えば、織布、編布、および/または編込布、とすることができる。さらに他の例では、外側スカートは、心膜組織(例えば、ウシ心膜、ブタ心膜、または、他の供給源からの心膜)などの、天然組織から作製することができる。
【0142】
例えば、
図10Aは、外側スカート1002の一部に関する外観図を示しており、外側スカート1002のこの部分は、折り返し構成1007で形成された外側スカートの流出端1005のところに融着端部1003を含み、この融着端部1003は、複数の保持縫合糸1004と引張縫合糸1010(この引張縫合糸は、縫合糸ラインから引張縫合糸を除去するための少なくとも一つの自由端をそれぞれが有した一つまたは複数の引張縫合糸とすることができる)とを含む縫合糸ラインに沿って、フレームに対して、接続されているまたは取り付けられている。説明の目的のために、外側スカート1002が取り付けられる対象をなすフレーム(例えば、フレーム202など)は、
図10Aには示されていない。しかしながら、縫合糸ラインの位置が、外側スカート1002が解放可能に取り付けられる対象をなすフレームの支柱の位置に対応することは、理解されよう。
【0143】
図示した例では、流出端1005は、
図1のスカート18と同様に、フレームの傾斜支柱がなす列の形状に対応した起伏形状(例えば、図示のように、一連の三角形状突起を形成するような、ジグザグ形状または鋸歯形状)を有することができる。スカート1002の高さは、様々とすることができる。したがって、流出端1005は、フレームの支柱列の数に応じて、縫合糸ラインによって、フレームの、第二支柱列、第三支柱列、第四支柱列、等などの、選択された支柱列に対して、接続することができる。いくつかの例では、フレーム202は、
図3または
図5Aに示す構成を有するものであって、四つの支柱列を有しており、流出端1003は、第三支柱列(交連取付ポスト242のすぐ上流側に位置した列)に対して、接続されている。
【0144】
図10Bおよび
図10Cは、フレーム202に対して取り付けられた外側スカート1002に関する内観図を図示している。具体的には、
図10Bは、外側スカート1002の流出端1005に関する内観図を示しており、
図10Cは、外側スカート1002の流入端1009に関する内観図を示している。この例では、外側スカート1002の流入端1009は、折り目を含んでおらず、代わりに、スカート材料は、フレーム202の流入端のところで第一支柱列を形成している支柱の周囲に、少なくとも部分的に巻回されてもよい。他の例では、外側スカート1002は、折り目1007と同様に、流入端のところに追加的な折り目を含むことができ、折り目の内側層および外側層は、フレームの流入端のところで支柱に対して固定される。いずれの例においても、外側スカート1002の流入端1009は、複数の保持縫合糸を介して、および、一つもしくは複数の引張縫合糸(図示せず)を介して、フレームに対して解放可能に取り付けることができる。
【0145】
いくつかの例では、外側スカート1002の流出端1005および流入端1009のところにおける縫合糸ラインは、
図6および
図6Bに関して上述したものと同様の構成を有することができる。他の例では、縫合糸ラインは、異なる構成を有することができる。
【0146】
例えば、縫合糸ラインは、参照により本明細書に援用されるPCT特許出願第US2021/041002号に開示されている技術などの、フレームの少なくとも一つの支柱に対して外側スカートを結合するための例示的な非貫通技術を含むことができる。そこで議論されているように、一次縫合糸がインアンドアウトパターンで挿通した状態で、尖端部分が径方向内側に対して位置決めされるようにして、また、尖端部分が任意選択的にはフレームの支柱の内面または内表面に対して接触するようにして、弁尖の尖端部分を、弁尖の尖端部分を支柱に対して位置合わせすることができる。いくつかの例によれば、二次縫合糸を、一次縫合糸を通して、少なくとも一つの支柱における少なくとも一つのセクションの周囲に、ステッチすることができる。本明細書で開示する外側スカートの解放可能な取付などの、フレームに対する外側スカートの取付のために、同様のステッチパターンおよび同様の技術が利用され得ることは、理解されよう。
【0147】
例えば、
図11Aおよび
図11Bは、外側スカート1002の流出端1005をフレームに対して結合するための一つの例示的な技術を示している。具体的には、
図11Aは、一つの傾斜支柱234に沿った一例をなす縫合糸ラインを図示しており、これは、外側スカート1002の内面または内表面1014が傾斜支柱234の外面256に向けて配向されている点において、また、引張縫合糸1010が外側スカート1002の外面1016に対して接触または当接している点において、
図6Aおよび
図6Bの技術と同様である。傾斜支柱234が、単に例示的なものであり、同様の構成とされた縫合糸ラインが、フレームの他の支柱(例えば、軸方向支柱232、または、傾斜支柱218、236、もしくは238、など)に沿って延び得ることは、理解されよう。
【0148】
図11Bは、縫合糸ラインの断面を示している(
図11Aに示す線11B-11Bに沿って見た際に)。この例では、流出端1005は、折り返し構成1007を有しており、したがって、外側スカート1002は、外側の(折り返された)層1002aと内側層1002bとを含むことができる。さらに、保持縫合糸1004は、外側スカート1002の材料層1002a、1002bを通して延びることができる(例えば、保持縫合糸は、外側スカートをなす材料層1002a、1002bにおける複数の開口部または開口260の内部に配置される)。さらに、保持縫合糸1004がなす各ホイップステッチ262は、先導端部部分264aを含み、この先導端部部分264aは、開口部260(両方の層1002a、1002bにおける)を通して外部へと延びているとともに、引張縫合糸1010の周囲へと延びており、その後、後続端部部分264bへと移行し、この後続端部部分264bは、同じ開口260(両方の層1002a、1002bにおける開口部260)を通して内部へと延びており、ここで、後続端部部分264bは、次なるホイップステッチ262の先導端部部分へと移行する。このようにして、各ホイップステッチ262は、ミシン縫いのロックステッチの糸と同様のパターンで、単一の開口または開口部260を挿通する。理解され得るように、引張縫合糸1010は、引張縫合糸が縫合糸ラインに沿って位置決めされる時には、ステッチ262が開口260を通して引っ張られることを防止する。
【0149】
上述したように、いくつかの例では、外側スカートをなす材料層1002a、1002bにおける開口部または開口260は、レーザー穿孔、切断、スタンピング、または、当該技術分野で知られている他の適切な技法、などによって、予め形成することができ、開口260は、支柱234、236、238の位置に対応した起伏経路に沿って離間して配置された位置のところで、外側スカート1002をなす層1002a、1002bに予め形成することができる。他の例では、開口部または開口260は、外側スカートをなす材料層1002a、1002bを通して保持縫合糸が縫合される際に、形成されることができる(すなわち、個々のステッチ262の後続端部部分264bは、内部を通して先導端部部分264aが延びたものと同じ開口260を通して、縫い戻される)。
【0150】
図6Aおよび
図6Bの例とは異なり、この例は、一連の非貫通ホイップステッチ1008を形成している少なくとも一つの縫合糸をさらに含み、この縫合糸は、先に本明細書に援用されたPCT特許出願第US2021/041002号に記載された構成に対して、同一または同様とすることができる。
図11Aに見られるように、非貫通ホイップステッチ1008は、二次ステッチ266の先導端部部分268aを、保持縫合糸1004上へと(すなわち、保持縫合糸1004と外側スカート1002の内面1014との間を)通過させることにより、その後、二次ステッチ266の後続端部部分268bを、フレームに向けて、フレームの支柱234/236/238の内面254の周囲へと、折り返すことにより、形成される。非貫通ホイップステッチ1008を形成している縫合糸の端部は、先に本明細書に援用されたPCT特許出願第US2021/041002号に開示された結び目などの結び目によって、または他の構成の結び目によって、または他の技術(例えば、接着剤を利用する)によって、二つ以上の支柱の間における接合部のところで、フレームに対して固定することができる。
【0151】
よって、この例では、非貫通ホイップステッチ1008は、支柱に対して直接的に固定することができ、保持縫合糸1004は、非貫通ホイップステッチ1008によって、支柱に対して間接的に固定することができる。さらに、外側スカート1002は、引張縫合糸が縫合糸ラインを通して配置された時に、引張縫合糸1010上の保持縫合糸1004がもたらす力によって、および非貫通ホイップステッチ1008がもたらす力によって、フレーム202に対して固定することができる。
【0152】
引張縫合糸1010が(例えば、緩んだ端部1012a、1012bの一方を、縫合糸ラインに対して平行な方向に、またはフレームから外向きに、引っ張ることによって)除去された時には、保持縫合糸1004は、もはや、引張縫合糸1010によって保持されていない。よって、外側スカート1002をフレーム202から引き離す(または、フレーム202を外側スカート1002から引き離す)際には、ステッチ262は、外側スカート1002をなす材料層1002a、1002b内の開口260を通して引き抜かれることができ、これにより、外側スカートの内面1014が、傾斜支柱234から(または、傾斜支柱236もしくは238から)分離され、この場合、ステッチ262および第二二次ステッチ266は、フレームに対して取り付けられたままとされる。
【0153】
ステッチパターンを形成するための追加的な方法と、縫合糸の端部に結び目を形成するための追加的な方法と、本明細書で開示する人工弁および着脱可能な外側スカートと組み合わせて利用され得るような他のステッチ技術と、は、先に本明細書に援用されたPCT特許出願第US2021/041002号に、さらに記載されている。
【0154】
他の例では、外側スカート1002の流出端1005は、折り返し層を有していないものとされるとともに、
図11A~
図11Bに示す態様で、隣接した支柱列に対して解放可能に固定される(よって、各ステッチ262は、流出端のところで、材料がなす単一層を通して延びる)。
【0155】
スカート1002の流入端1009(折り返しの有無にかかわらず)は、少なくとも一つの保持縫合糸1004と、少なくとも一つの引張縫合糸1010と、非貫通ホイップステッチ1008を形成している少なくとも一つの縫合糸と、を使用して、
図11Aおよび
図11Bに示すのと同じ態様で、隣接した支柱列に対して解放可能に取り付けることができる。
【0156】
他の例では、スカート1002の流出端1005は、
図10A、
図10B、
図11A、および
図11Bに示す折り返し構成を有し得るけれども、上述したように、解放可能な縫合アタッチメントを使用することなく、傾斜支柱列に対して縫合される。例えば、折り返された流出端1005は、層1002a、1002bを通して延びるとともに隣接した支柱の周囲に延びた一連のホイップステッチによって、フレームの支柱に対して縫合することができる。代替的には、折り返された流出端1005は、層1002a、1002bを通して延びるとともに隣接した支柱の周囲に延びた離散的な複数の縫合糸ループによって、フレームの支柱に対して縫合することができる。同様に、スカート1002の流入端1009(折り返しの有無にかかわらず)は、一連のシップステッチによって、または離散的な縫合糸ループによって、隣接した傾斜支柱列(典型的には、流入端に位置した列)に対して縫合することができる。
【0157】
図12~
図15を参照すると、一つまたは複数の解放可能に取り付けられた外側スカートを有した追加的で例示的な人工弁が図示されており、これについて説明する。
図12に見られるように、人工弁1200は、フレーム1201と、弁尖1204と、内側スカート1203と、フレーム1201の一方の端部領域に対して固定された外側スカートと、を含むことができる。
図13~
図14に見られるように、人工弁1300は、フレーム1201と、弁尖1204と、内側スカート1203と、フレーム1201の一方の端部領域に対して固定された外側スカート1202と、を含み得るとともに、追加的に、フレーム1201の、外側スカート1202とは反対側の端部領域に対して固定された外側スカート1302を、含むことができる。
図15に見られるように、人工弁1500は、フレーム1201と、弁尖1204と、内側スカート(図示せず)と、フレーム1201の一方の端部領域に対して固定された外側スカート1502と、フレーム1201の、外側スカート1502とは反対側の端部領域に対して固定された外側スカート1602と、を含むことができる。
【0158】
フレーム1201は、本明細書で説明する他のフレーム(例えば、フレーム12、202、904、および/または906、など)と同様の特徴を有することができる。フレーム1201は、フレーム1201の流出端1210と流入端1212との間に複数列の開放セル1208を形成している複数の相互連結支柱1206を含むことができる。いくつかの例では、セル列1208aは、フレーム1201の流出端1210のところで相互連結支柱1206によって形成されており、セル列1208iは、フレーム1201の流入端1212のところで相互連結支柱1206によって形成されている。フレーム1201内には、セル列1208aとセル列1208iとの間に、追加的な開放セル列が形成されている。例えば、
図12~
図15に図示したように、フレーム1201は、相互連結支柱1206によって形成された九個のセル列(セル列1208a~1208i)を含むことができる。
【0159】
図示のように、フレーム1201は、全体的に砂時計の構成を有することができ、フレア形状または膨出形状の流出端部分1214と、狭められた中央部分1216と、フレア形状または膨出形状の流入端部分1218と、を含む。いくつかの例では、流出端部分1214は、セル列1208a~1208cを含むことができ、中央部分1216は、セル列1208d~1208fを含むことができ、流入端部分1218は、セル列1208g~1208iを含むことができる。
図12~
図15に図示したように、いくつかの例では、フレーム1201は、流出端部分1214において最大直径を有することができ、中央部分1216において最小直径を有することができ、流入端部分1218において中間の直径(すなわち、最大直径よりも小さな直径であり、かつ、最小直径よりも大きな直径)を有することができる。いくつかの例では、フレームは、例えば流入端部分において最大直径を有するようなものなど、砂時計形状に関する他の比率を有することができる。いくつかの例では、各部分は、より多数のセル列を、またはより少数のセル列を、含むことができる。
【0160】
フレーム1201に関する砂時計構成は、天然の心臓弁内に移植された時には、流出端部分1214および流入端部分1218のそれぞれが、天然組織に対して接触することを可能とすることができる。例えば、
図14は、天然の大動脈心臓弁1400の内部に移植された人工弁1300に関する図示を示している。この図に見られるように、流入端部分1218は、天然の大動脈心臓弁1400における弁輪1402の内部に着座し得るとともに、天然の弁尖1404に対して接触することができる。さらに、流出端部分1214は、弁輪1402よりも上方に配置され得るとともに、冠動脈よりも上方で上行大動脈内の大動脈壁1406に対して接触することができる。したがって、いくつかの例では、流入端部分1218は、人工弁1200、1300、1500の弁輪部分と称することができ、流出端部分1214は、人工弁1200、1300、1500の大動脈部分と称することができる。
【0161】
フレーム1201は、当技術分野で知られているように、任意の様々な適切な塑性的拡張可能材料(例えば、ステンレス鋼、等)から、または、自己拡張材料(例えば、ニチノールなどの、ニッケルチタン合金(NiTi))から、作製することができる。
【0162】
フレーム1201の摘出を容易とするために、フレームは、フレームの、天然組織に対して接触している一つまたは複数の領域のところに、着脱可能な外側スカートを含むことができる。例えば、人工弁1200(
図12)は、フレーム1201の流入端部分1218に対して解放可能に取り付けられた外側スカート1202を含む。別の例では、人工弁1300(
図12~
図14)は、フレーム1201の流入端部分1218に対して解放可能に取り付けられた外側スカート1202と、フレーム1201の流出端部分1214に対して解放可能に取り付けられた外側スカート1302と、を含む。さらに別の例では、人工弁1500(
図15)は、フレーム1201の流入端部分1218に対して解放可能に取り付けられた外側スカート1502と、フレーム1201の流出端部分1214に対して解放可能に取り付けられた外側スカート1602と、を含む。
【0163】
外側スカート1202、1302、1502、および/または1602は、本明細書で開示する外側スカート18、402、502、および1002と同様の特徴を含むことができる。いくつかの例では、外側スカート1202、1302、1502、および/または1602の、一つあるいは複数は、フレーム1201の外面の周囲に延び得るとともに、単一の材料シートを含むことができる。いくつかの例では、外側スカート1202、1302、1502、および/または1602の、一つあるいは複数は、それぞれがフレーム1201の外面の一部上に延び得る複数のオーバーラップセクション(外側スカート502と同様のオーバーラップセクション)を含むことができる。いくつかの例では、外側スカートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)布などの、生体適合性の布から作製することができる。布は、例えば、織布、編布、編組布、および/または不織布(例えば、フェルト)、とすることができる。いくつかの例では、外側スカート1202、1302、1502、および/または1602の、一つあるいは複数は、非布材料から作製することができ、非布材料は、例えば、ポリマー(例えば、ポリウレタン)から作製された材料シートなどであり、これは、例えば、液化ポリマーから材料シートを、押し出すことによって、または成型することによって、または他の態様で形成することによって、形成することができる。いくつかの例では、外側スカート1202、1302、1502、および/または1602の、一つあるいは複数は、心膜組織(例えば、ウシ心膜、ブタ心膜、または、他の供給源からの心膜)などの、天然組織から作製することができる。内側スカート1203は、上記で列挙した任意の材料から作製することができる。
【0164】
いくつかの例では、外側スカート1202、1302の一方または両方は、本明細書で先に説明したように、フレームの選択された支柱に対して縫合されたもしくはフレームの選択された支柱の周囲に巻回された一つまたは複数の保持縫合糸と、保持縫合糸と外側スカートの外面との間に配置された一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、フレーム1201に対して解放可能に取り付けることができる。例えば、外側スカート1202は、セル列1208g~1208iを形成している選択された支柱1206に対して、取り付けることができる。いくつかの例では、外側スカート1202は、解放可能な縫合糸ライン(例えば、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を含む)を介して、選択された支柱1206に対して取り付けることができ、この場合、縫合糸ライン(ライン1220によって示している)は、外側スカート1202の流入端から、外側スカート1202の反対側に位置した流出端までにわたって、ジグザグパターンまたは起伏パターンで、セル1208i、1208h、1208gの支柱に沿って、延びている。
【0165】
いくつかの例では、外側スカート1202は、解放可能な第一縫合糸ラインおよび解放可能な第二縫合糸ライン(それぞれ、例えば、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を含む)を介して、セル列1208g~1208iを形成している選択された支柱1206に対して、取り付けることができる。例えば、第一縫合糸ラインは、スカートの流出エッジに近接して、セル列1208gの上部を形成している支柱1206がなす列1222に追従したジグザグパターンまたは起伏パターンを形成することができ、第二縫合糸ラインは、スカートの流入エッジに近接して、セル列1208iの下部とフレーム1201の流入端1212とを形成している支柱1206がなす列1224に追従したジグザグパターンまたは起伏パターンを形成することができる。いくつかの例では、一つまたは複数の縫合糸ラインは、外側スカート1202をフレーム1201に対して解放可能に取り付けるために、他の構成を有することができるまたは他の支柱1206上に延びることができる。
【0166】
いくつかの例では、外側スカート1302は、本明細書で先に説明したように、フレームの選択された支柱に対して縫合されたもしくはフレームの選択された支柱の周囲に巻回された一つまたは複数の保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、フレーム1201に対して解放可能に取り付けることができる。いくつかの例では、外側スカート1302は、セル列1208a~1208bを形成している選択された支柱1206に対して、取り付けることができる。いくつかの例では、外側スカート1302は、解放可能な縫合糸ライン(例えば、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を含む)を介して、セル列1208a~1208bを形成している選択された支柱1206に対して取り付けることができ、この場合、縫合糸ライン(ライン1226によって示している)は、外側スカート1202の流出端から、外側スカート1302の反対側に位置した端部までにわたって、ジグザグパターンまたは起伏パターンで、セル1208a、1028bの支柱に沿って、延びている。
【0167】
いくつかの例では、外側スカート1302は、解放可能な第一縫合糸ラインおよび解放可能な第二縫合糸ライン(それぞれ、例えば、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を含む)を介して、セル列1208a~1208bを形成している選択された支柱1206に対して、取り付けることができる。例えば、第一縫合糸ラインは、スカート1302の流出エッジに近接して、セル列1208aの上部とフレーム1201の流出端1210とを形成している支柱1206がなす列1228に追従したジグザグパターンまたは起伏パターンを形成することができ、第二縫合糸ラインは、スカート1302の流入エッジに近接して、セル列1208aの下部を形成している支柱がなす列1230に追従したジグザグパターンまたは起伏パターンを形成することができる。いくつかの例では、一つまたは複数の縫合糸ラインは、外側スカート1302をフレーム1201に対して解放可能に取り付けるために、他の構成を有することができるまたは他の支柱1206上に延びることができる。
【0168】
図13に示すように、外側スカート1302の上側および下側(流出側および流入側)のエッジは、フレームの傾斜支柱がなす隣接した列の形状に対応した起伏形状(例えば、図示のように、一連の三角形状突起を形成するような、ジグザグ形状または鋸歯形状)を有することができる。いくつかの例では、外側スカート1302の上側エッジおよび下側エッジは、直線状(非起伏形状)とすることができる。
【0169】
いくつかの例では、外側スカート1202は、図示のように、フレームの流入端1212に対して近接した下側(流入側)エッジのところにおける起伏形状と、直線状の上側(流出側)エッジと、を有することができる。いくつかの例では、スカート1202の上側エッジは、支柱列1222の形状に対応した起伏パターンを有することができる。スカート1202および/または1302の高さは、
図12~
図14に図示した例に示すものと比較して、相違することができる、かつ/または、フレームの異なる部分を覆うことができる。例えば、スカート1302は、(セル列1208aに加えて)セル列1208bと任意選択的にセル列1208cとの上に延びてそれらを覆うことができる。いくつかの例では、スカート1302の上側エッジは、フレームの流出端1210からフレームの流入端1212に向けて、軸方向に離間して配置することができる、またはオフセットすることができる。
【0170】
いくつかの例では、
図10Aに示すスカート1002と同様に、外側スカート1202、1302の一方または両方は、一つもしくは複数の、融着エッジまたは融解エッジ(例えば、外側スカート1302の上側エッジ、外側スカート1302の下側エッジ部、外側スカート1202の上側エッジ、および/または、外側スカート1202の下側エッジ、など)を含むことができる。融着エッジまたは融解エッジは、外側スカート材料をなす繊維どうしが解けることを防止するよう、また、繊維の織込構成を維持するよう、外側スカートをなす繊維どうしが融解および/または融着された領域とされ得る。融着エッジは、弁尖から離間する向きにかつ人工弁の外面へと向かう向きに配向させ得るとともに、本明細書で先に説明したように、弁の外面で折り返すことで、融着エッジと人工弁の弁尖との間の接触を防止または制限することができる。いくつかの例では、外側スカートは、折り目に沿ってフレームに対して解放可能に縫合することで、本明細書で先に説明したように、融着エッジの位置を固定し得るとともに、例えば人工弁の摘出時に、フレームからの外側スカートの解放を可能とすることができる。融着エッジを含む外側スカートが、ポリエチレンテレフタレート(PET)布などの、生体適合性の布から作製され得ることは、理解されよう。布は、例えば、織布、編布、および/または編込布、とすることができる。
【0171】
いくつかの例では、
図6Aおよび
図6Bに図示したものと同様に、一つまたは複数の外側スカート1202、1302の解放可能な取付のために構成された縫合糸ラインは、外側スカートをなす材料内の穴もしくは開口部を通して、引張縫合糸上へと、支柱の内面まわりへと延びたループ状ステッチまたはホイップステッチとして形成された保持縫合糸を含むことができ、これにより、引張縫合糸と支柱の外面との間に、外側スカートをなす材料を、挟み込むまたは捕捉する。いくつかの例では、
図11Aおよび
図11Bの図示と同様に、縫合糸ラインは、追加的に、一連の非貫通ホイップステッチを形成している少なくとも一つの縫合糸を含むことができ、この場合、非貫通ホイップステッチは、支柱および保持縫合糸に対して直接的に固定され得るとともに、非貫通ホイップステッチによって支柱に対して間接的に固定することができる。いくつかの例では、保持縫合糸がなすステッチは、および/またはホイップステッチ(含まれる場合には)は、また、内側スカートを通しておよび/または弁尖の尖端エッジ部分を通して延びることで、これらの構成要素をフレームに対して固定することができる。いくつかの例では、引張縫合糸の一方または両方の自由端は、外側スカートのエッジを越えておよび/またはフレームを越えて延び得るとともに、接着剤、縫合、隣接した支柱に対して自由端を結んだり結びつけたりすること、弾性バンド、および/または他の解放可能な保持機構を介して、取り付けることなどによって、フレームに対しておよび/または外側スカートに対して、取り付けることができる。
【0172】
引張縫合糸が(例えば、緩んだ端部の一方を、縫合糸ラインに対して平行な方向に、またはフレームから外向きに、引っ張ることによって)除去された時には、保持縫合糸は、もはや、引張縫合糸によって保持されない。よって、外側スカート1202および/または1302が、フレーム1201から引き離される(あるいは、フレームが、外側スカートから引き離される)際には、ステッチを、それぞれ対応した外側スカートの開口を通して引き抜くことができ、これにより、外側スカートの内面が、支柱から分離されるとともに、ステッチが、フレームに対して取り付けられたままとされる。
【0173】
いくつかの例では、保持縫合糸は、より太い引張縫合糸と比較して、より細い繊維とすることができる。いくつかの例では、保持縫合糸は、超高分子量ポリエチレン(UHMPE)フォースファイバ(登録商標)もしくは他の同様の材料またはそれらの組合せなどの、より細くかつより大きな引張強度の生体適合性材料から構成することができる。一具体例では、保持縫合糸は、UHMPEフォースファイバから形成され得るとともに、フレームが外側スカートから分離される際に保持縫合糸が外側スカートの外面上における成長し過ぎた組織を切断し得るよう、充分に細くかつ力に耐えるものとすることができる。いくつかの例では、引張縫合糸は、ポリプロピレン(例えば、プロレン4-0)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE(ePTFE)、もしくは他の同様の材料、またはこれらの組合せ、からなるモノフィラメントなどの、より太くかつより大きな引張強度を有した生体適合性材料から構成することができる。一具体例では、引張縫合糸は、プロレンから構成されたマイクロフィラメントとすることができ、これは、摘出手順時に外科医によって引っ張られた時には、周囲のあらゆる内方成長組織から、容易に分離するようにまたは容易に引き離されるように構成されている。
【0174】
いくつかの例では、引張縫合糸材料は、明確な着色をまたは着色コーティング(例えば、緑色、黒色、もしくは青色の、着色またはコーティング)を有することができる、かつ/あるいは、摘出手順時に外科医によって識別され得るよう、他の態様でタグ付けされることができる。いくつかの例では、引張縫合糸の長さの全体を、例えば、鮮やかな着色済み材料から構成することができる、または、鮮やかに着色されたコーティングを有するものとすることができる。他の例では、引張縫合糸の一部(例えば、引張縫合糸の緩んだ端部部分)を、着色された材料から構成することができる、かつ/または、鮮やかに着色されたコーティングを有するものとすることができる、かつ/または、鮮やかに着色されたタグもしくはフラップが取り付けられたものとすることができる。他の例では、引張縫合糸またはその一部は、専用の可視化装置を使用して可視化され得るような、材料、コーティング、またはタグを含むことができる。例えば、引張縫合糸は、X線透視法もしくはX線デバイスを介して可視化され得るような、放射線不透過性物質あるいは一つまたは複数の放射線不透過性マーカーを、含むことができる。例えば、一つまたは複数の放射線不透過性マーカーは、引張縫合糸の外面内に埋め込むことができる、あるいは、引張縫合糸の外面に対して取り付けることができる。
【0175】
いくつかの例では、一つまたは複数の外側スカート1202、1302の内面は、組織の内方成長に対して抵抗し得るとともにフレームからの外側スカートの分離の容易さを向上させ得るような、外側スカート502を参照して上述した材料などの、抗血栓性の材料または面から構成されてもよい。さらに、いくつかの例では、一つまたは複数の外側スカート1202、1302の外面は、組織の内方成長を促進させる態様で形成されてもよく、または外側スカート502を参照して上述した材料などの、組織の内方成長を促進させる材料から形成されてもよく、あるいは、抗血栓性の材料で構成されてもよい。いくつかの例では、一つもしくは複数の外側スカート1202、1302の内面および/または外面は、外側スカート502を参照して上述した材料などの、ヒドロゲルコーティング、ヘパリンコーティング、シリコーンコーティング、もしくは他の材料、またはこれらの組合せ、などの抗血栓性材料によって、コーティングすることができる、あるいは、ポリウレタンライナーまたはポリテトラフルオロエチレンライナーなどの、滑らかなラミネートライナーを有することができる。
【0176】
外側スカートの外面上に組織が内方成長することで、人工心臓弁が天然の心臓弁内に移植されて動作する際に、人工心臓弁の安定した位置決めが可能とされ得ることは、理解されよう。外側スカートの内面上で抗血栓性材料または抗血栓性層を使用することにより、移植部位からの外側スカートの分離が改良され得ること、また、外側スカートの外面上で抗血栓性材料または抗血栓性層を使用することにより、摘出時における周囲組織の切断が低減され得ることは、さらに理解されよう。
【0177】
図15に示す人工弁1500に戻ると、人工弁1200、1300の場合のように保持縫合糸および引張縫合糸を介して解放可能に取り付けるのではなく、外側スカート1502、1602は、生体吸収性カプラ1508を介して、フレーム1201に対して解放可能に取り付けることができる。生体吸収性カプラは、人工弁1500の移植後に生体吸収によって分解するように構成された生体吸収性材料を含むことができる。例えば、生体吸収性カプラは、ポリ(L-ラクチド)(PPLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリマーポリカプロラクトン(PCL)、もしくは他の生体吸収性材料、または生体吸収性材料どうしの組合せ、を含むことができる。
【0178】
図示した例では、生体吸収性カプラ1508は、外側スカートの外面上へと延びるとともに、外側スカート材料の開口部を通して(予め形成された開口部を通して、もしくは、内部を通してカプラを挿入することにより形成された開口部を通して)延び、さらに、一つの支柱1206の周囲に延びた縫合糸とすることができる。さらに、
図15に図示したように、縫合糸は、外側スカート1502、1602の一方の端部領域に沿った第一縫合糸列と、外側スカート1502、1602の反対側に位置した端部領域に沿った第二縫合糸列と、を含むことができ、これにより、縫合糸1508は、軸方向に離間して配置された二つの縫合糸ラインを形成するものとされている。図示した例では、スカート1502、1602は、離散的に離間して配置されたステッチを形成している縫合糸1508によって、フレームの支柱に対して固定されている。いくつかの例では、生体吸収性縫合糸は、外側スカートをフレームに対して取り付けるための
図1および
図4に示す縫合糸と同様の構成などの、他の構成を、もしくはそれらの組合せを、またはそれらの変形例を、有することができる。例えば、生体吸収性縫合糸は、縫合糸252または408と同様に、一つまたは複数の支柱の周囲を延びるとともにスカートを通して延びた複数のホイップステッチなどの、複数の連続したステッチを形成することができる。いくつかの例では、生体吸収性カプラ1508は、例えば、タブ、フック、ピン、接着性ボディ、もしくは他の形態、またはこれらの組合せ、などの、他の形態とされたカプラを含んでもよい。
【0179】
いくつかの例では、外側スカート1502、1602は、一つまたは複数の生体吸収性カプラ1508によって、フレーム1201に対して直接的に結合されてもよい。いくつかの例では、一つまたは複数の生体吸収性カプラ1508は、外側スカート1502、1602を、内側スカート(図示せず)に対して、または弁尖1204に対して(例えば、弁尖の流入スカラップラインのところで)、結合してもよく、あるいは、外側スカート1502、1602を、フレーム1201および/または内側スカートおよび/または弁尖1204の組合せに対して、結合してもよい。いくつかの例では、他の結合位置が利用されてもよく、または、結合位置どうしの組合せが利用されてもよい。
【0180】
いくつかの例では、外側スカート1502、1602は、人工弁1500の移植後に、外側スカート材料への組織内方成長を可能とするように構成することができる。生体吸収性カプラ1508は、患者の身体内に位置決めされている際に溶解するように構成されてもよく、これにより、外側スカート1502、1602とフレーム1201との間の結合(および/または、外側スカート1502、1602と、内側スカートまたは弁尖と、の間の結合)を、経時的に減少させることができる。外側スカート1502、1602が、組織接着(内方成長)によって移植部位に対して付着している場合、外側スカート1502、1602は、生体吸収性カプラ1508が溶解し終わった後における除去手順時には、より容易に分離され得る。このように、人工弁1500の除去手順時にはまたは摘出手順時には、外側スカート1502、1602は、フレーム1201(および/または、内側スカートまたは弁尖)から分離されることができ、外側スカート1502、1602を所定位置に残したまま、それら構成要素を、移植部位から除去することができる。よって、生体吸収性カプラ1508は、人工弁1500の除去手順または摘出手順の容易さを増強し得る、かつ/または、人工弁1500の除去手順時にまたは摘出手順時に、天然組織を切断する必要性を低減し得る。
【0181】
いくつかの例では、人工弁は、本明細書で開示する解放可能な取付機構どうしの組合せによって解放可能に取り付けられた外側スカートを含むことができる。例えば、外側スカートは、一つまたは複数の生体吸収性カプラと、保持縫合糸と引張縫合糸とからなる機構(少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を含む)と、を介して、人工弁のフレームに対して解放可能に取り付けることができる。別の例では、第一外側スカートを、一つまたは複数の生体吸収性カプラを介して、人工弁のフレームの一部(例えば、大動脈部分または弁輪部分)に対して、解放可能に取り付けることができ、第二外側スカートを、保持縫合糸と引張縫合糸とからなる機構(少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を含む)を介して、フレームの別の部分(例えば、大動脈部分および弁輪部分の他方)に対して、解放可能に取り付けることができる。いくつかの例では、一方のスカートは、一つまたは複数の生体吸収性カプラを介して、および/または保持縫合糸と引張縫合糸とからなる機構(少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を含む)を介して、フレームの一部(例えば、大動脈部分または弁輪部分)に対して、解放可能に取り付けることができ、これとともに、他方のスカートは、従来的な縫合を使用して、フレームに対して取り付けることができる。
【0182】
弁フレームと、弁構造と、内側スカートと、外側スカートと、生体吸収性カプラによって弁構造および/または外側スカートを弁フレームに対して固定し得る態様と、に関する追加的な詳細は、PCT国際公開第WO2022/192500号に見出すことができ、この文献は、参照により本明細書に援用される。
【0183】
送達技術
経大腿送達アプローチを介して人工弁を天然の大動脈弁内へと移植するために、人工弁は、送達装置の遠位端部分に沿って径方向圧縮状態で取り付けられる。人工弁と、送達装置の遠位端部分と、は、大腿動脈内へと挿入され、下行大動脈内へとおよび下行大動脈を通して、大動脈弓のまわりを、ならびに上行大動脈を通して、前進駆動される。人工弁は、天然の大動脈弁の内部に位置決めされて、径方向に拡張される(例えば、バルーンを膨張させることにより、送達装置の一つまたは複数のアクチュエータを駆動することにより、あるいは、シースから人工弁を展開して人工弁を自己拡張可能とすることにより)。代替的には、人工弁は、経心尖手順で天然の大動脈弁の内部に移植することができ、この場合、人工弁(送達装置の遠位端部分上)は、胸部および心臓の心尖部の外科的開口を通して左心室内へと導入され、人工弁は、天然の大動脈弁の内部に位置決めされる。代替的には、経大動脈手順では、人工弁(送達装置の遠位端部分上)は、例えば部分的なJ胸骨切開または右胸骨傍の小開胸術などによって、上行大動脈の外科的切開を通して大動脈内へと導入され、その後、上行大動脈を通して天然の大動脈弁に向けて前進駆動される。
【0184】
経中隔送達アプローチを介して人工弁を天然の僧帽弁の内部に移植するために、人工弁は、送達装置の遠位端部分に沿って径方向圧縮状態で取り付けられる。人工弁と、送達装置の遠位端部分と、は、大腿静脈内へと挿入され、下大静脈内へとおよび下大動脈を通して、右心房内へと、心房中隔を横断して(心房中隔内で行われた穿刺を通して)、左心房内へと、ならびに天然の僧帽弁に向けて、前進駆動される。代替的には、人工弁は、経心尖手順で天然の僧帽弁の内部へと移植することができ、この場合、人工弁(送達装置の遠位端部分上)は、胸部および心臓の心尖部の外科的開口を通して左心室内へと導入され、人工弁は、天然の僧帽弁の内部に位置決めされる。
【0185】
人工弁を天然の三尖弁の内部に移植するために、人工弁は、送達装置の遠位端部分に沿って径方向圧縮状態で取り付けられる。人工弁と、送達装置の遠位端部分と、は、大腿静脈内へと挿入され、下大静脈内へとおよび下大静脈を通して、右心房内へと前進駆動され、人工弁は、天然の三尖弁の内部に位置決めされる。同様のアプローチを、人工弁が天然の三尖弁を通して右心室内へとおよび肺動脈弁/肺動脈に向けて前進駆動されることを除いて、人工弁を天然の肺動脈弁または肺動脈の内部に移植するために使用することができる。
【0186】
別の送達アプローチは、経心房アプローチであり、この場合、人工弁(送達装置の遠位端部分上)は、胸部の切開口を通して挿入され、切開口が、天然の心臓弁のいずれかに対してアクセスするために、心房壁(右心房または左心房の心房壁)を通して形成される。心房送達は、また、例えば肺静脈からなど、血管内から行うことができる。さらに別の送達アプローチは、経心室アプローチであり、この場合、人工弁(送達装置の遠位端部分上)は、胸部の切開口を通して挿入され、切開口が、人工弁を天然の三尖弁の内部にまたは天然の肺動脈弁の内部にまたは肺動脈の内部に移植するために、右心室の壁(典型的には、心臓の基部またはその近傍)を通して形成される。
【0187】
すべての送達アプローチでは、送達装置は、以前に患者の血管系内へと挿入されたガイドワイヤ上を通して前進駆動することができる。その上、開示した送達アプローチは、限定されることを意図したものではない。本明細書で開示する任意の人工弁は、当該技術分野で知られている任意の様々な送達手順および任意の様々な送達デバイスを使用して、移植することができる。
【0188】
本明細書における、任意の、システム、デバイス、装置、等は、患者に対して安全に使用することを確保するために、滅菌(例えば、加熱/高温、圧力、蒸気、放射線、および/または化学薬品、等を使用して)することができ、本明細書における任意の方法は、関連したシステム、デバイス、装置、等を滅菌することを、方法のステップの一つとして含むことができる。加熱/高温による滅菌の例は、蒸気による滅菌、および、オートクレーブによる滅菌、を含む。滅菌のために使用される放射線の例は、限定するものではないが、ガンマ線、紫外線、および電子線、を含む。滅菌のために使用される化学薬品の例は、限定するものではないが、エチレンオキシド、過酸化水素、過酢酸、ホルムアルデヒド、およびグルタルアルデヒド、を含む。過酸化水素による滅菌は、例えば、過酸化水素プラズマを使用して実施されてもよい。
【0189】
本明細書において説明もしくは示唆するような、または本明細書に援用される参考文献において説明もしくは示唆されるような、処置技術、処置方法、処置ステップ、等は、生きた動物上で実施することができる、あるいは、死体、死体の心臓、擬人化されたゴースト、シミュレータ(例えば、身体の一部、心臓、組織、等がシミュレートされる)、等などの非生体シミュレーション上で実施することができる。
【0190】
開示する技術に関する追加的な例
開示する主題に関して上述した例を考慮して、本出願は、以下に列挙する追加的な例を開示する。一例における個別の一つの特徴が、またはその例における組合せでの二つ以上の特徴が、および任意選択的に、一つもしくは複数の更なる例における一つ以上の特徴との組合せも、また、本出願の開示内に属する更なる例であることに、留意すべきである。
[実施例]
【0191】
実施例1.
人工心臓弁であって、複数の相互連結支柱を含む環状フレームと、環状フレームの外面上に配置された外側スカートであって、複数の相互連結支柱の少なくとも一部に対して着脱可能に固定された、外側スカートと、を含む、人工心臓弁。外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の一部に対して着脱可能に固定されており、保持縫合糸と一つまたは複数の引張縫合糸とは、縫合糸ラインに沿って配置されており、保持縫合糸は、複数の相互連結支柱における一部の周囲に延びるとともに外側スカートを通して延びさらに一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成している。外側スカートは、複数の相互連結支柱の一部から取り外されるように構成されているとともに、一つまたは複数の引張縫合糸を縫合糸ラインから除去することによって、さらに、ステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームを外側スカートから分離することを可能とするように構成されている。
【0192】
実施例2.
一つまたは複数の引張縫合糸のそれぞれは、縫合糸ラインを越えて延びた端部領域を含み、端部領域は、環状フレームと、外側スカートと、環状フレームの内部に配置された弁膜構造と、の一つまたは複数のところに位置した取付領域に対して、取り付けられており、端部領域は、取付領域から解放されるように構成されているとともに、引っ張られることで、一つまたは複数の引張縫合糸の対応した引張縫合糸を、縫合糸ラインから除去するように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1に記載の、人工心臓弁。
【0193】
実施例3.
端部領域は、接着剤と、縫合糸と、結び目と、弾性バンドと、の一つまたは複数を介して、取付領域のところで解放可能に取り付けられている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例2に記載の、人工心臓弁。
【0194】
実施例4.
端部領域は、一つまたは複数の引張縫合糸の対応した引張縫合糸を識別することを可能とするように構成されたマーカーを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例2または3に記載の、人工心臓弁。
【0195】
実施例5.
マーカーは、端部領域に対して取り付けられたまたは端部領域の内部に配置された、着色マーカーと放射線不透過性マーカーとの少なくとも一つを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例4に記載の、人工心臓弁。
【0196】
実施例6.
外側スカートは、第一スカート部分と第二スカート部分とを含み、第一スカート部分は、少なくとも第一引張縫合糸と、第一組のステッチを形成している少なくとも一つの第一保持縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の第一部分に対して着脱可能に固定されており、第二スカート部分は、少なくとも第二引張縫合糸と、第二組のステッチを形成している少なくとも一つの第二保持縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の第二部分に対して着脱可能に固定されており、人工心臓弁は、少なくとも第一引張縫合糸を縫合糸ラインから少なくとも除去することによって、さらに、第一組のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームの第一部分を第一スカート部分から分離することを可能とするように構成されており、人工心臓弁は、少なくとも第二引張縫合糸を除去することによって、さらに、第二組のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームの第二部分を第二スカート部分から分離することを可能とするようにさらに構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1~5のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0197】
実施例7.
外側スカートは、少なくとも第三引張縫合糸と、第三組のステッチを形成している少なくとも一つの第三保持縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の第三部分に対して着脱可能に固定された第三スカート部分を、さらに含み、人工心臓弁は、少なくとも第三引張縫合糸を縫合糸ラインから除去することによって、さらに、第三組のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームの第三部分を第三スカート部分から分離することを可能とするように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例6に記載の、人工心臓弁。
【0198】
実施例8.
環状フレームの内部に配置された複数の弁尖を含む弁膜構造をさらに含み、複数の弁尖は、第一弁尖と、第二弁尖と、第三弁尖と、を含み、第一スカート部分は、第一弁尖に対して位置合わせされた位置で、複数の相互連結支柱の第一部分に対して着脱可能に固定されており、第二スカート部分は、第二弁尖に対して位置合わせされた位置で、複数の相互連結支柱の第二部分に対して着脱可能に固定されており、第三スカート部分は、第三弁尖に対して位置合わせされた位置で、複数の相互連結支柱の第三部分に対して着脱可能に固定されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例7に記載の、人工心臓弁。
【0199】
実施例9.
人工心臓弁は、人工心臓弁の摘出手順時には、環状フレームの第一部分と第二部分と第三部分とを、外側スカートから、段階的に分離するように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例7または8に記載の、人工心臓弁。
【0200】
実施例10.
外側スカートは、内部への組織内方成長を可能とするように構成された材料を含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1~9のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0201】
実施例11.
外側スカートは、内部への組織内方成長を妨害するように構成された材料を含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1~9のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0202】
実施例12.
一つまたは複数の引張縫合糸は、PTFEと、ePTFEと、プロレンと、の一つまたは複数から構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1~11のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0203】
実施例13.
一つまたは複数の引張縫合糸は、識別材料またはコーティングを含み、識別材料またはコーティングは、人工心臓弁の摘出手順時に一つまたは複数の引張縫合糸を識別することを可能とするように構成されており、識別材料またはコーティングは、着色材料と、着色コーティングと、放射線不透過性材料と、放射線不透過性コーティングと、の少なくとも一つを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1~12のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0204】
実施例14.
少なくとも一つの保持縫合糸は、UHMPEフォースファイバを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1~13のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0205】
実施例15.
外側スカートは、環状フレームの周縁まわりにおいて、環状フレームの外面上に配置されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1~14のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0206】
実施例16.
少なくとも一つの保持縫合糸は、一つまたは複数の引張縫合糸を通して延びていない、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1~15のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0207】
実施例17.
少なくとも一つの保持縫合糸は、外側スカートに予め形成された穴を通して延びている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1~16のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0208】
実施例18.
各ステッチは、外側スカートの単一の開口を通して延びている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1~17のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0209】
実施例19.
ステッチは、摘出手順時に環状フレームが外側スカートから分離された後でも、複数の相互連結支柱の一部に対して取り付けられた状態で所定位置に留まるように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1~18のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0210】
実施例20.
外側スカートは、二つ以上のスカート部分を含み、二つ以上のスカート部分の隣接したスカート部分どうしは、それらの間にオーバーラップ領域を有しており、縫合糸ラインは、オーバーラップ領域に沿って延びている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1~19のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0211】
実施例21.
人工心臓弁であって、フレームであって、フレームの流入端と流出端との間に配置された複数の相互連結支柱を含む、フレームと、フレームの外面上に配置された外側スカートと、縫合糸ラインに沿って外側スカートの外面上に配置された一つまたは複数の引張縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸の周囲と、縫合糸ラインに沿って配置された特定の複数の相互連結支柱の周囲と、を巻回した複数のステッチを形成している少なくとも一つの保持縫合糸と、を含み、外側スカートをなす材料は、縫合糸ラインに沿って、引張縫合糸とフレームの外面との間に捕捉されている、人工心臓弁。外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、フレームに対して解放可能に取り付けられている。外側スカートは、一つまたは複数の引張縫合糸を縫合糸ラインに沿って複数のステッチから除去することによって、さらに、ステッチを縫合糸ラインに沿って外側スカートを通して引き抜くことによって、フレームから解放されるように構成されている。複数のステッチは、外側スカートがフレームから解放された後でも、縫合糸ラインに沿って、特定の複数の相互連結支柱の周囲に巻回されたままであるように構成されている。
【0212】
実施例22.
一つまたは複数の引張縫合糸のそれぞれは、縫合糸ラインを越えて延びた端部を含み、端部は、フレームと、外側スカートと、フレームの内部に配置された弁膜構造と、の一つまたは複数のところに位置した取付領域に対して、取り付けられており、端部は、取付領域から解放されるように構成されているとともに、引っ張られることで、一つまたは複数の引張縫合糸の対応した引張縫合糸を、縫合糸ラインから除去するように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例21に記載の、人工心臓弁。
【0213】
実施例23.
端部は、接着剤と、縫合糸と、結び目と、弾性バンドと、の一つまたは複数を介して、取付領域のところに一時的に取り付けられる、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例22に記載の、人工心臓弁。
【0214】
実施例24.
一つまたは複数の引張縫合糸のそれぞれの少なくとも一部は、識別材料またはコーティングから構成されており、識別材料またはコーティングは、人工心臓弁の摘出手順時に一つまたは複数の引張縫合糸を識別することを可能とするように構成されており、識別材料またはコーティングは、着色材料と、着色コーティングと、放射線不透過性材料と、放射線不透過性コーティングと、の少なくとも一つを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例21~23のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0215】
実施例25.
外側スカートは、二つ以上のスカート部分を含み、二つ以上のスカート部分の隣接したスカート部分どうしは、それら隣接したスカート部分どうしの間にオーバーラップ領域を有しており、縫合糸ラインは、オーバーラップ領域に沿って延びている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例21~24のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0216】
実施例26.
外側スカートは、第一スカート部分と第二スカート部分とを含み、第一スカート部分は、少なくとも第一引張縫合糸と、第一組のステッチを形成している少なくとも一つの第一保持縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の第一部分に対して着脱可能に固定されており、第二スカート部分は、少なくとも第二引張縫合糸と、第二組のステッチを形成している少なくとも一つの第二保持縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の第二部分に対して着脱可能に固定されており、人工心臓弁は、少なくとも第一引張縫合糸を縫合糸ラインから少なくとも除去することによって、さらに、第一組のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、フレームの第一部分を第一スカート部分から分離することを可能とするように構成されており、人工心臓弁は、少なくとも第二引張縫合糸を除去することによって、さらに、第二組のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、フレームの第二部分を第二スカート部分から分離することを可能とするようにさらに構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例21~25のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0217】
実施例27.
外側スカートは、少なくとも第三引張縫合糸と、第三組のステッチを形成している少なくとも一つの第三保持縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の第三部分に対して着脱可能に固定された第三スカート部分を、さらに含み、人工心臓弁は、少なくとも第三引張縫合糸を縫合糸ラインから除去することによって、さらに、第三組のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、フレームの第三部分を第三スカート部分から分離することを可能とするように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例26に記載の、人工心臓弁。
【0218】
実施例28.
外側スカートの内面は、抗血栓性材料を含み、外側スカートの外面は、内部への組織内方成長を促進させるように構成された材料を含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例21~27のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0219】
実施例29.
少なくとも一つの保持縫合糸は、一つまたは複数の引張縫合糸よりも細い、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例21~28のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0220】
実施例30.
人工心臓弁を摘出するための方法であって、複数のステップを含み、複数のステップは、人工心臓弁の移植部位に対してアクセスするステップであって、人工心臓弁は、フレームを含み、フレームは、フレームの外面上に着脱可能に固定された外側スカートを有し、外側スカートは、少なくとも一つの引張縫合糸と、少なくとも一つの保持縫合糸と、を介して、環状フレームに対して着脱可能に固定され、少なくとも一つの保持縫合糸は、引張縫合糸の周囲に巻回されるとともにフレームの一つまたは複数の支柱の周囲にさらに巻回された複数のステッチを形成している、ステップと、引張縫合糸の端部を把持するとともに、端部に対して力を印加することにより、引張縫合糸をステッチから引き抜くステップと、フレームを、外側スカートの一つまたは複数の部分から分離するステップと、フレームを、移植部位から除去するステップと、を含む、方法。
【0221】
実施例31.
引張縫合糸に関連したマーカーを識別するステップをさらに含み、マーカーは、着色材料と、着色コーティングと、放射線不透過性マーカーと、放射線不透過性コーティングと、の少なくとも一つを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例30に記載の、方法。
【0222】
実施例32.
取付箇所から、引張縫合糸の端部を解放するステップを、さらに含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例30または31に記載の、方法。
【0223】
実施例33.
端部を解放するステップは、端部の露出部分を切断することと、端部の露出部分を引っ張ることと、の少なくとも一方を行うことにより、取付箇所から解放するステップを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例32に記載の、方法。
【0224】
実施例34.
フレームを外側スカートの一つまたは複数の部分から分離するステップは、引張縫合糸の引き抜き後に、フレーム上へと力を印加することにより、複数の保持縫合糸を、外側スカートをなす材料を通して引き抜くステップを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例30~33のいずれか一つに記載の、方法。
【0225】
実施例35.
フレーム上へと力を印加することによりステッチを外側スカートを通して引き抜くことにより、ステッチの一つまたは複数が、一つまたは複数の外側スカートにおける外面のところで、成長し過ぎた組織を切断する、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例34に記載の、方法。
【0226】
実施例36.
外側スカートは、自身の周囲にステッチの一部が巻回された第一引張縫合糸と、自身の周囲にステッチの一部が巻回された第二引張縫合糸と、自身の周囲にステッチの一部が巻回された第三引張縫合糸と、を介して、フレームに対してそれぞれ解放可能に取り付けられた第一部分と第二部分と第三部分とを含み、緩んだ端部に対して力を印加することにより引張縫合糸を引き抜くとともにフレームを外側スカートの一つまたは複数の部分から分離するステップは、第一引張縫合糸を引き抜いて外側スカートの第一部分の少なくとも一セクションを分離することと、第二引張縫合糸を引き抜いて外側スカートの第二部分の少なくとも一セクションを分離することと、第三引張縫合糸を引き抜いて外側スカートの第三部分の少なくとも一セクションを分離することと、を段階的に行うステップを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例30~35のいずれか一つに記載の、方法。
【0227】
実施例37.
フレームを移植部位から除去する前に、フレームを径方向に圧縮することによりまたは折り畳むことにより、フレームの直径を小さくするステップを、さらに含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例30~36のいずれか一つに記載の、方法。
【0228】
実施例38.
外側スカートを移植部位から除去する前に、移植部位のところで、外側スカート内へとまたは天然の弁尖内へと、内方成長した一つまたは複数の組織を切断するステップを、さらに含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例30~37のいずれか一つに記載の、方法。
【0229】
実施例39.
フレームを除去した後に、外側スカートの一つまたは複数の部分を、移植部位から除去するステップを、さらに含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例30~38のいずれか一つに記載の、方法。
【0230】
実施例40.
複数のステップを、開心術手順で実行する、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例30~39のいずれか一つに記載の、方法。
【0231】
実施例41.
複数のステップを、経カテーテル的手順で実行する、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例30~39のいずれか一つに記載の、方法。
【0232】
実施例42.
着脱可能な外側スカートを有した人工心臓弁を製造するための方法であって、フレームであって、フレームの流入端と流出端との間に配置された複数の相互連結支柱を含む、フレームを用意するステップと、着脱可能な外側スカートの一つまたは複数の部分を、フレームの外面上へと重ね合わせるステップと、複数の相互連結支柱の選択された相互連結支柱の周囲に延びるとともに着脱可能な外側スカートを通して延びさらに着脱可能な外側スカートの外面上における一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成するステップと、を含む、方法。
【0233】
実施例43.
一つまたは複数の引張縫合糸のそれぞれに関して、引張縫合糸の端部と、着脱可能な外側スカートとフレームとフレームの内部に配置された弁膜構造との一つ上における取付領域と、の間に取付箇所を形成するステップを、さらに含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例42に記載の、方法。
【0234】
実施例44.
取付箇所を形成するステップは、接着剤と縫合糸と結び目と弾性材料との少なくとも一つによって、取付領域の内部に端部を捕捉するステップを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例43に記載の、方法。
【0235】
実施例45.
着脱可能な外側スカートの一つまたは複数の部分をフレームの外面上へと重ね合わせるステップは、着脱可能な外側スカートの第一部分と第二部分と第三部分とのそれぞれを、フレームの内部に配置された弁膜構造の、第一弁尖の尖鋭エッジと第二弁尖の尖鋭エッジと第三弁尖の尖鋭エッジとに対してそれぞれ位置合わせするステップを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例42~44のいずれか一つに記載の、方法。
【0236】
実施例46.
一つまたは複数の引張縫合糸は、着脱可能な外側スカートの少なくとも第一部分の取り外しを可能とするように構成された第一引張縫合糸と、着脱可能な外側スカートの少なくとも第二部分の取り外しを可能とするように構成された第二引張縫合糸と、着脱可能な外側スカートの少なくとも第三部分の取り外しを可能とするように構成された第三引張縫合糸と、を、含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例45に記載の、方法。
【0237】
実施例47.
着脱可能な外側スカートの一つまたは複数の部分をフレームの外面上へと重ね合わせるステップは、着脱可能な外側スカートの一つまたは複数の部分の隣接したエッジどうしをオーバーラップさせることにより、それらエッジどうしの間にオーバーラップ領域を形成するステップを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例42~46のいずれか一つに記載の、方法。
【0238】
実施例48.
ステッチを形成するステップは、オーバーラップ領域に沿ってステッチを形成するステップを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例47に記載の、方法。
【0239】
実施例49.
ステッチを形成するステップは、外側スカートを通して縫合糸を挿通することにより、各ステッチを、外側スカートの単一の開口を通して延びたものとするステップを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例42~48のいずれか一つに記載の、方法。
【0240】
実施例50.
ステッチは、ホイップステッチを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例49に記載の、方法。
【0241】
実施例51.
外側スカートは、ステッチを受領することとなる複数の予め形成された開口を含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例49または50に記載の、方法。
【0242】
実施例52.
開口は、ステッチの形成時に、形成される、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例49または50に記載の、方法。
【0243】
実施例53.
人工心臓弁を移植するための方法であって、複数のステップを含み、複数のステップは、患者の心臓症状と患者の天然弁輪のサイズとを評価するステップと、患者の心臓症状と天然弁輪のサイズとに基づいて、患者の内部に移植するのに適切なサイズを有した人工心臓弁を選択するステップであって、人工心臓弁は、フレームを含み、フレームは、フレームの外面上に着脱可能に固定された外側スカートを有し、外側スカートは、少なくとも一つの引張縫合糸と、少なくとも一つの保持縫合糸と、を介して、フレームに対して着脱可能に固定され、少なくとも一つの保持縫合糸は、引張縫合糸の周囲に巻回されるとともにフレームの一つまたは複数の支柱の周囲にさらに巻回された複数のステッチを形成している、ステップと、患者の心臓症状が大動脈弁閉鎖不全症である場合には、引張縫合糸の端部を把持することにより、そして、端部に対して力を印加することで、引張縫合糸をステッチから引き抜くことにより、さらに、フレームを、外側スカートの一つまたは複数の部分から分離することにより、外側スカートをフレームから除去するステップと、人工心臓弁を患者の天然弁輪の内部に移植するステップと、を含む、方法。
【0244】
実施例54.
引張縫合糸に関連したマーカーを識別するステップをさらに含み、マーカーは、着色材料と、着色コーティングと、の少なくとも一つを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例53に記載の、方法。
【0245】
実施例55.
取付箇所から、引張縫合糸の端部を解放するステップを、さらに含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例53または54に記載の、方法。
【0246】
実施例56.
端部を解放するステップは、端部の露出部分を切断することと、端部の露出部分を引っ張ることと、の少なくとも一方を行うことにより、取付箇所から解放するステップを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例55に記載の、方法。
【0247】
実施例57.
フレームを外側スカートの一つまたは複数の部分から分離することは、引張縫合糸の引き抜き後に、外側スカートとフレームとの少なくとも一方上へと力を印加することにより、ステッチを、外側スカート通して引き抜くことを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例53~56のいずれか一つに記載の、方法。
【0248】
実施例58.
外側スカートは、自身の周囲にステッチの一部が巻回された第一引張縫合糸と、自身の周囲にステッチの一部が巻回された第二引張縫合糸と、自身の周囲にステッチの一部が巻回された第三引張縫合糸と、を介して、フレームに対してそれぞれ解放可能に取り付けられた第一部分と第二部分と第三部分とを含み、緩んだ端部に対して力を印加することにより引張縫合糸を引き抜くとともにフレームを外側スカートの一つまたは複数の部分から分離することは、第一引張縫合糸を引き抜いて外側スカートの第一部分の少なくとも一セクションを分離することと、第二引張縫合糸を引き抜いて外側スカートの第二部分の少なくとも一セクションを分離することと、第三引張縫合糸を引き抜いて外側スカートの第三部分の少なくとも一セクションを分離することと、を段階的に行うことを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例53~57のいずれか一つに記載の、方法。
【0249】
実施例59.
人工心臓弁を移植するステップは、経カテーテル的手順で人工心臓弁を移植するステップを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例53~58のいずれか一つに記載の、方法。
【0250】
実施例60.
人工心臓弁であって、複数の相互連結支柱と複数のアンカー止め突起とを含む環状フレームと、環状フレームの外面上に配置された外側スカートであって、複数の突起の少なくとも一部を覆うものとされ、複数の相互連結支柱の少なくとも一部に対して着脱可能に固定された、外側スカートと、を含み、外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の一部に対して着脱可能に固定されており、保持縫合糸と一つまたは複数の引張縫合糸とは、縫合糸ラインに沿って配置されており、保持縫合糸は、複数の相互連結支柱の一部の周囲に延びるとともに外側スカートを通して延びさらに一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成しており、外側スカートは、複数の相互連結支柱の一部から取り外されるように構成されているとともに、一つまたは複数の引張縫合糸を縫合糸ラインから除去することによって、さらに、複数のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームを外側スカートから分離することを可能とするように構成されており、環状フレームの外面上における複数の突起は、フレームと外側スカートとが分離された後には、露出される、人工心臓弁。
【0251】
実施例61.
一つまたは複数の引張縫合糸のそれぞれは、縫合糸ラインを越えて延びた端部を含み、端部は、環状フレームと、外側スカートと、環状フレームの内部に配置された弁膜構造と、の一つまたは複数のところに位置した取付領域に対して、取り付けられており、端部は、取付領域から解放されるように構成されているとともに、引っ張られることで、一つまたは複数の引張縫合糸の対応した引張縫合糸を、縫合糸ラインから除去するように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60に記載の、人工心臓弁。
【0252】
実施例62.
端部は、接着剤と、縫合糸と、結び目と、弾性バンドと、の一つまたは複数を介して、取付領域のところに一時的に取り付けられる、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例61に記載の、人工心臓弁。
【0253】
実施例63.
端部は、端部に対して取り付けられたまたは端部内に配置されたマーカーを含み、マーカーは、一つまたは複数の引張縫合糸の対応した引張縫合糸を識別することを可能とするように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例61または62に記載の、人工心臓弁。
【0254】
実施例64.
マーカーは、着色マーカーを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例63に記載の、人工心臓弁。
【0255】
実施例65.
外側スカートは、第一スカート部分と第二スカート部分とを含み、第一スカート部分は、少なくとも第一引張縫合糸と、第一組のステッチを形成している少なくとも一つの第一保持縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の第一部分に対して着脱可能に固定されており、第二スカート部分は、少なくとも第二引張縫合糸と、第二組のステッチを形成している少なくとも一つの第二保持縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の第二部分に対して着脱可能に固定されており、人工心臓弁は、少なくとも第一引張縫合糸を縫合糸ラインから少なくとも除去することによって、さらに、第一組のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームの第一部分を第一スカート部分から分離することを可能とするように構成されており、人工心臓弁は、少なくとも第二引張縫合糸を除去することによって、さらに、第二組のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームの第二部分を第二スカート部分から分離することを可能とするようにさらに構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60~64のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0256】
実施例66.
外側スカートは、少なくとも第三引張縫合糸と、第三組のステッチを形成している少なくとも一つの第三保持縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の第三部分に対して着脱可能に固定された第三スカート部分を、さらに含み、人工心臓弁は、少なくとも第三引張縫合糸を縫合糸ラインから除去することによって、さらに、第三組のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームの第三部分を第三スカート部分から分離することを可能とするように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例65に記載の、人工心臓弁。
【0257】
実施例67.
環状フレームの内部に配置された複数の弁尖を含む弁膜構造をさらに含み、複数の弁尖は、第一弁尖と、第二弁尖と、第三弁尖と、を含み、第一スカート部分は、第一弁尖に対して位置合わせされた位置で、複数の相互連結支柱の第一部分に対して着脱可能に固定されており、第二スカート部分は、第二弁尖に対して位置合わせされた位置で、複数の相互連結支柱の第二部分に対して着脱可能に固定されており、第三スカート部分は、第三弁尖に対して位置合わせされた位置で、複数の相互連結支柱の第三部分に対して着脱可能に固定されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例66に記載の、人工心臓弁。
【0258】
実施例68.
外側スカートは、内部への組織内方成長を可能とするように構成された材料を含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60~67のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0259】
実施例69.
外側スカートは、天然の心臓弁における石灰化組織内の一つまたは複数の間隙を充填するように構成された材料を含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60~68のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0260】
実施例70.
一つまたは複数の引張縫合糸は、PTFEと、ePTFEと、プロレンと、の一つまたは複数から構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60~69のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0261】
実施例71.
一つまたは複数の引張縫合糸は、識別材料またはコーティングを含み、識別材料またはコーティングは、人工心臓弁の移植手順の前に、一つまたは複数の引張縫合糸を識別することを可能とするように構成されており、識別材料またはコーティングは、着色材料または着色コーティングを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60~70のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0262】
実施例72.
少なくとも一つの保持縫合糸は、UHMPEフォースファイバを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60~71のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0263】
実施例73.
外側スカートは、環状フレームの周縁まわりにおいて、環状フレームの外面上に配置されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60~72のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0264】
実施例74.
少なくとも一つの保持縫合糸は、一つまたは複数の引張縫合糸を通して延びていない、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60~73のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0265】
実施例75.
少なくとも一つの保持縫合糸は、外側スカートに予め形成された開口を通して延びている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60~74のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0266】
実施例76.
各ステッチは、外側スカートの単一の開口を通して延びている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60~75のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0267】
実施例77.
ステッチは、環状フレームが外側スカートから分離された後でも、複数の相互連結支柱の一部に対して取り付けられた状態で所定位置に留まるように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60~76のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0268】
実施例78.
外側スカートは、二つ以上のスカート部分を含み、二つ以上のスカート部分の隣接したスカート部分どうしは、それらの間にオーバーラップ領域を有しており、縫合糸ラインは、オーバーラップ領域に沿って延びている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60~77のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0269】
実施例79.
外側スカートは、大動脈弁閉鎖不全症を有した患者の処置のために、選択的に着脱可能であるように構成されており、外側スカートは、大動脈弁狭窄症を有した患者の処置のために、環状フレームに対して取り付けられたままであるように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例60~78のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0270】
実施例80.
人工心臓弁を移植するための方法であって、複数のステップを含み、複数のステップは、患者の心臓症状と患者の天然弁輪のサイズとを評価するステップと、患者の心臓症状と天然弁輪のサイズとに基づいて、患者の内部に移植するのに適切なサイズを有した人工心臓弁を選択するステップであって、人工心臓弁は、フレームを含み、フレームは、フレームの外面上に固定された外側スカートを有している、ステップと、患者の心臓症状が大動脈弁閉鎖不全症である場合には、外側スカートをフレームから除去するステップと、人工心臓弁を患者の天然弁輪の内部に移植するステップと、を含む、方法。
【0271】
実施例81.
人工心臓弁を移植することにより、フレーム上の複数のアンカー止め突起を、天然弁輪に対して係合させる、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例80に記載の、方法。
【0272】
実施例82.
外側スカートは、少なくとも一つの引張縫合糸と、少なくとも一つの保持縫合糸と、を介して、フレームに対して着脱可能に固定され、少なくとも一つの保持縫合糸は、引張縫合糸の周囲に巻回されるとともにフレームの一つまたは複数の支柱の周囲にさらに巻回された複数のステッチを形成しており、外側スカートをフレームから除去するステップは、引張縫合糸の端部を把持するステップと、端部に対して力を印加することで、引張縫合糸をステッチから引き抜くステップと、フレームを、外側スカートの一つまたは複数の部分から分離するステップと、を含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例80または81に記載の、方法。
【0273】
実施例83.
引張縫合糸に関連したマーカーを識別するステップをさらに含み、マーカーは、着色材料と、着色コーティングと、の少なくとも一つを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例82に記載の、方法。
【0274】
実施例84.
取付箇所から、引張縫合糸の端部を解放するステップを、さらに含み、端部を解放するステップは、端部の露出部分を切断することと、端部の露出部分を引っ張ることと、の少なくとも一方を行うことにより、取付箇所から解放するステップを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例82または83に記載の、方法。
【0275】
実施例85.
フレームを外側スカートの一つまたは複数の部分から分離するステップは、引張縫合糸の引き抜き後に、外側スカートとフレームとの少なくとも一方上へと力を印加することにより、ステッチを、外側スカート通して引き抜くステップを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例82~84のいずれか一つに記載の、方法。
【0276】
実施例86.
人工心臓弁を移植するステップは、経カテーテル的手順で人工心臓弁を移植するステップを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例80~85のいずれか一つに記載の、方法。
【0277】
実施例87.
人工心臓弁を移植するための方法であって、複数のステップを含み、複数のステップは、患者の心臓症状と患者の天然弁輪のサイズとを評価するステップと、患者の心臓症状と天然弁輪のサイズとに基づいて、患者の内部に移植するのに適切なサイズを有した人工心臓弁を選択するステップであって、人工心臓弁は、フレームを含み、フレームは、フレームの外面上に固定された外側スカートを有している、ステップと、患者の心臓症状が大動脈弁閉鎖不全症である場合には、外側スカートをフレームから除去するとともに、外側スカートを有していない状態で、人工心臓弁を、患者の天然弁輪の内部に移植するステップと、患者の心臓症状が大動脈弁狭窄症である場合には、外側スカートを有した状態で、人工心臓弁を、患者の天然弁輪の内部に移植するステップと、を含む、方法。
【0278】
実施例88.
外側スカートは、少なくとも一つの引張縫合糸と、少なくとも一つの保持縫合糸と、を介して、フレームに対して着脱可能に固定され、少なくとも一つの保持縫合糸は、引張縫合糸の周囲に巻回されるとともにフレームの一つまたは複数の支柱の周囲にさらに巻回された複数のステッチを形成しており、フレームは、外側スカートによって被覆された複数のアンカー止め突起を含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例87に記載の、方法。
【0279】
実施例89.
外側スカートをフレームから除去することは、引張縫合糸の端部を把持することと、端部に対して力を印加することで、引張縫合糸をステッチから引き抜くことと、フレームを、外側スカートの一つまたは複数の部分から分離することと、を含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例88に記載の、方法。
【0280】
実施例90.
患者の心臓症状が大動脈弁閉鎖不全症である場合には、人工心臓弁を移植することにより、フレーム上の複数のアンカー止め突起を、天然弁輪に対して係合させる、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例88または89に記載の、方法。
【0281】
実施例91.
患者の心臓症状が大動脈弁狭窄症である場合には、人工心臓弁を移植することにより、外側スカートを天然弁輪に対して接触させることで、天然弁輪とフレーム上の複数のアンカー止め突起との間における接触を、制限する、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例88に記載の、方法。
【0282】
実施例92.
人工心臓弁であって、複数の相互連結支柱と複数のアンカー止め突起とを含む環状フレームと、環状フレームの外面上に配置された外側スカートであって、複数の突起の少なくとも一部を覆うものとされ、複数の相互連結支柱の少なくとも一部に対して着脱可能に固定された、外側スカートと、を含み、外側スカートは、複数の相互連結支柱の一部から取り外されるように構成されているとともに、環状フレームを外側スカートから分離することを可能とするように構成されており、環状フレームの外面上における複数の突起は、フレームと外側スカートとが分離された後には、露出される、人工心臓弁。
【0283】
実施例93.
外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の一部に対して着脱可能に固定されており、保持縫合糸と一つまたは複数の引張縫合糸とは、縫合糸ラインに沿って配置されており、保持縫合糸は、複数の相互連結支柱の一部の周囲に延びるとともに外側スカートを通して延びさらに一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成しており、外側スカートは、一つまたは複数の引張縫合糸を縫合糸ラインから除去することによって、さらに、複数のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、フレームから取り外すことができる、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例92に記載の、人工心臓弁。
【0284】
実施例94.
一つまたは複数の引張縫合糸のそれぞれは、縫合糸ラインを越えて延びた端部領域を含み、端部領域は、環状フレームと、外側スカートと、環状フレームの内部に配置された弁膜構造と、の一つまたは複数のところに位置した取付領域に対して、解放可能に取り付けられている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例93に記載の、人工心臓弁。
【0285】
実施例95.
端部は、取付領域から解放されるように構成されているとともに、引っ張られることで、一つまたは複数の引張縫合糸の対応した引張縫合糸を、縫合糸ラインから除去するように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例94に記載の、人工心臓弁。
【0286】
実施例96.
一つまたは複数の引張縫合糸のそれぞれにおける少なくとも一部は、識別材料またはコーティングを含み、識別材料またはコーティングは、人工心臓弁の移植手順の前に、一つまたは複数の引張縫合糸を識別することを可能とするように構成されており、識別材料またはコーティングは、着色材料または着色コーティングを含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例93~95のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0287】
実施例97.
人工心臓弁であって、複数の相互連結支柱を含む環状フレームと、環状フレームの外面上に配置された外側スカートであって、少なくとも一つの融着エッジを含む、外側スカートと、を含み、融着エッジは、人工心臓弁の外面上へと折り返されることにより、折り返しエッジを形成しており、折り返しエッジは、複数の相互連結支柱の隣接した支柱に対して固定されている、人工心臓弁。
【0288】
実施例98.
外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、折り返しエッジに沿って、複数の相互連結支柱の一部に対して着脱可能に固定されており、保持縫合糸と一つまたは複数の引張縫合糸とは、縫合糸ラインに沿って配置されており、保持縫合糸は、外側スカートを通して延びるとともに一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成している、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例97に記載の、人工心臓弁。
【0289】
実施例99.
外側スカートは、折り返しエッジに沿って複数の相互連結支柱の一部から取り外されるように構成されているとともに、一つまたは複数の引張縫合糸を縫合糸ラインから除去することによって、さらに、複数のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームを外側スカートから分離することを可能とするように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例98に記載の、人工心臓弁。
【0290】
実施例100.
一つまたは複数の引張縫合糸のそれぞれは、縫合糸ラインを越えて延びた端部領域を含み、端部領域は、環状フレームと、外側スカートと、環状フレームの内部に配置された弁膜構造と、の一つまたは複数のところに位置した取付領域に対して、取り付けられており、端部領域は、取付領域から解放されるように構成されているとともに、引っ張られることで、一つまたは複数の引張縫合糸の対応した引張縫合糸を、縫合糸ラインから除去するように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例99に記載の、人工心臓弁。
【0291】
実施例101.
少なくとも一つの保持縫合糸は、外側スカートに予め形成された開口を通して延びている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例98~100のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0292】
実施例102.
外側スカートは、複数の非貫通ステッチを介して、折り返しエッジに沿って複数の相互連結支柱の一部に対してさらに着脱可能に固定されており、複数の非貫通ステッチは、複数の相互連結支柱における一部の周囲に延びているとともに、少なくとも一つの保持縫合糸と外側スカートの内面との間に延びている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例98~101のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0293】
実施例103.
ステッチおよび非貫通ステッチは、摘出手順時に環状フレームが外側スカートから分離された後でも、複数の相互連結支柱の一部に対して取り付けられた状態で所定位置に留まるように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例102に記載の、人工心臓弁。
【0294】
実施例104.
人工心臓弁であって、複数の相互連結支柱を含む環状フレームと、環状フレームの外面上に配置された外側スカートであって、複数の相互連結支柱の少なくとも一部に対して着脱可能に固定された、外側スカートと、を含み、外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、複数の非貫通ステッチと、を介して、複数の相互連結支柱の一部に対して着脱可能に固定されており、保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、複数の非貫通ステッチと、は、縫合糸ラインに沿って配置されており、保持縫合糸は、外側スカートを通して延びるとともに一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成しており、非貫通ステッチは、複数の相互連結支柱の一部の周囲に延びているとともに、少なくとも一つの保持縫合糸と外側スカートの内面との間に延びており、外側スカートは、複数の相互連結支柱の一部から取り外されるように構成されているとともに、一つまたは複数の引張縫合糸を縫合糸ラインから除去することによって、さらに、複数のステッチを外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームを外側スカートから分離することを可能とするように構成されている、人工心臓弁。
【0295】
実施例105.
ステッチおよび非貫通ステッチは、摘出手順時に環状フレームが外側スカートから分離された後でも、複数の相互連結支柱の一部に対して取り付けられた状態で所定位置に留まるように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例104に記載の、人工心臓。
【0296】
実施例106.
一つまたは複数の引張縫合糸のそれぞれは、縫合糸ラインを越えて延びた端部を含み、端部は、環状フレームと、外側スカートと、環状フレームの内部に配置された弁膜構造と、の一つまたは複数のところに位置した取付領域に対して、取り付けられており、端部は、取付領域から解放されるように構成されているとともに、引っ張られることで、一つまたは複数の引張縫合糸の対応した引張縫合糸を、縫合糸ラインから除去するように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例104または105に記載の、人工心臓弁。
【0297】
実施例107.
少なくとも一つの保持縫合糸は、外側スカートに予め形成された開口を通して延びている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例104~106のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0298】
実施例108.
外側スカートは、少なくとも一つの融着エッジを含み、融着エッジは、人工心臓弁の外面上へと折り返されることにより、折り返しエッジを形成しており、外側スカートは、折り返しエッジに沿って複数の相互連結支柱の一部に対して着脱可能に固定されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例104~107のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0299】
実施例108.
外側スカートは、少なくとも一つの融着エッジを含み、融着エッジは、人工心臓弁の外面上へと折り返されることにより、折り返しエッジを形成しており、外側スカートは、折り返しエッジに沿って複数の相互連結支柱の一部に対して着脱可能に固定されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例104~107のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0300】
実施例109.
融着エッジは、外側スカートの流出エッジと流入エッジとの一方とされている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例108に記載の、人工心臓弁。
【0301】
実施例110.
外側スカートの流出エッジは、複数の相互連結支柱の一部に対して着脱可能に固定されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例104~107のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0302】
実施例111.
外側スカートの流入エッジは、複数の相互連結支柱の一部に対して着脱可能に固定されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例104~107のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0303】
実施例112.
人工心臓弁であって、複数の相互連結支柱を含む環状フレームと、環状フレームの流入端領域の外面上に配置された第一外側スカートであって、複数の相互連結支柱の少なくとも第一部分に対して着脱可能に固定された、第一外側スカートと、環状フレームの流出端領域の外面上に配置された第二外側スカートであって、複数の相互連結支柱の少なくとも第二部分に対して着脱可能に固定された、第二外側スカートと、を含む、人工心臓弁。
【0304】
実施例113.
流入端部分は、天然弁輪内に着座するように構成された弁輪部分とされており、流出端部分は、人工心臓弁が天然心臓弁内に移植された時に大動脈壁に対して接触するように構成された大動脈部分とされている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例112に記載の、人工心臓弁。
【0305】
実施例114.
第一外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の第一部分に対して着脱可能に固定されており、保持縫合糸と一つまたは複数の引張縫合糸とは、縫合糸ラインに沿って配置されており、保持縫合糸は、複数の相互連結支柱における第一部分の周囲に延びるとともに第一外側スカートを通して延びさらに一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成している、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例112または113に記載の、人工心臓弁。
【0306】
実施例115.
第一外側スカートのそれぞれは、複数の相互連結支柱の第一部分から取り外されるように構成されているとともに、一つまたは複数の引張縫合糸をそれぞれ対応した縫合糸ラインから除去することによって、さらに、ステッチを第一外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームを第一外側スカートから分離することを可能とするように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例114に記載の、人工心臓弁。
【0307】
実施例116.
第二外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、を介して、複数の相互連結支柱の第二部分に対して着脱可能に固定されており、保持縫合糸と一つまたは複数の引張縫合糸とは、縫合糸ラインに沿って配置されており、保持縫合糸は、複数の相互連結支柱における第二部分の周囲に延びるとともに第二外側スカートを通して延びさらに一つまたは複数の引張縫合糸上へと延びた複数のステッチを形成している、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例112~115のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0308】
実施例117.
第二外側スカートは、複数の相互連結支柱の第二部分から取り外されるように構成されているとともに、一つまたは複数の引張縫合糸をそれぞれ対応した縫合糸ラインから除去することによって、さらに、ステッチを第二外側スカートを通して引き抜くことによって、環状フレームを第二外側スカートから分離することを可能とするように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例116に記載の、人工心臓弁。
【0309】
実施例118.
第二外側スカートは、生体吸収性縫合糸によって、複数の相互連結支柱の第二部分に対して固定されており、生体吸収性縫合糸は、溶解することで、環状フレームを第二外側スカートから分離することを可能とするように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例112~115のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0310】
実施例119.
第一外側スカートは、生体吸収性縫合糸によって、複数の相互連結支柱の第一部分に対して固定されており、生体吸収性縫合糸は、溶解することで、環状フレームを第一外側スカートから分離することを可能とするように構成されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例112または113に記載の、人工心臓弁。
【0311】
実施例120.
第一外側スカートおよび/または第二外側スカートは、心膜から作製されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例112~119のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0312】
実施例121.
人工心臓弁であって、弁輪部分と大動脈部分を含む環状フレームと、大動脈部分の外面に対して着脱可能に固定された第一外側スカートと、を含む、人工心臓弁。
【0313】
実施例122.
第一外側スカートは、生体吸収性縫合糸によって、大動脈部分の外面に対して着脱可能に固定されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例121に記載の、人工心臓弁。
【0314】
実施例123.
第一外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、によって、大動脈部分の複数の相互連結支柱に対して着脱可能に固定されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例121または122に記載の、人工心臓弁。
【0315】
実施例124.
第一外側スカートは、心膜から作製されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例121~123のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0316】
実施例125.
弁輪部分の外面に対して固定された第二外側スカートをさらに含む、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例121~124のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0317】
実施例126.
第二外側スカートは、生体吸収性縫合糸によって、弁輪部分の外面に対して着脱可能に固定されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例125に記載の、人工心臓弁。
【0318】
実施例127.
第二外側スカートは、少なくとも一つの保持縫合糸と、一つまたは複数の引張縫合糸と、によって、弁輪部分の複数の相互連結支柱に対して着脱可能に固定されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例125に記載の、人工心臓弁。
【0319】
実施例128.
第二外側スカートは、心膜から作製されている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例125~127のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0320】
実施例129.
人工心臓弁は、滅菌されたものとされている、本明細書の任意の実施例に記載の、特に実施例1~128のいずれか一つに記載の、人工心臓弁。
【0321】
任意の例に関して本明細書で説明する様々な特徴は、別のことを記述しない限り、他の例における、任意の一つまたは複数の例で説明する他の特徴に対して、組み合わせることができる。例えば、ある人工弁における任意の一つまたは複数の特徴は、別の人工弁における任意の一つまたは複数の特徴に対して、組み合わせることができる。別の例として、ある外側スカートにおける任意の一つまたは複数の特徴は、別の外側スカートにおける任意の一つまたは複数の特徴に対して、組み合わせることができる。なおも別の例として、ある方法における任意の一つまたは複数の特徴は、別の方法における任意の一つまたは複数の特徴に対して、組み合わせることができる。
【0322】
本開示の原理が適用され得る多くの可能な態様を考慮すると、図示した構成が、開示した技術に関する例を図示したものであって、本開示の範囲や特許請求の範囲を限定するものとして捉えられるべきではないことは、認識されよう。むしろ、特許請求される主題の範囲は、以下の特許請求の範囲によって、およびその均等物によって、規定される。
【国際調査報告】