IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

特表2024-543427リチウム二次電池用電解質及びこれを含むリチウム二次電池
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電解質及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20241114BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 10/056 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241114BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
H01M10/056
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/131
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527647
(86)(22)【出願日】2023-04-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2023004913
(87)【国際公開番号】W WO2023200236
(87)【国際公開日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】10-2022-0045454
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0043320
(32)【優先日】2023-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スンウク・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヒャウン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・キュ・キム
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AJ11
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM12
5H029AM16
5H029HJ02
5H050AA12
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
カチオン高分子主鎖(backbone)を形成してアニオンの動きを最小化することで、カチオンを加速化し、酸化物系セラミックまで含め、追加的なリチウムイオンの伝達能力及び機械的物性を向上させることができるリチウム二次電池用電解質及びこれを含むリチウム二次電池が開示される。前記リチウム二次電池用電解質は、カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物を含む、高分子電解質;難燃性液体電解質;及び架橋剤;を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物を含む高分子電解質;難燃性液体電解質;及び架橋剤;を含むリチウム二次電池用電解質。
【請求項2】
前記炭化水素系の高分子化合物が、カチオン性官能基を一つ以上含む炭素数6~20の炭化水素の構造単位を含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項3】
前記カチオン性官能基が窒素カチオン、酸素カチオン及び硫黄カチオンの中から選択される1種以上のカチオンを含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項4】
前記カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物が、ポリジアリルジメチルアンモニウム((C16)n、1≦n≦10,000)、ポリメタクロキシエチルトリメチルアンモニウム((C18NO )n, 1≦n≦10,000)、ポリアリルアミン([CHCH(CHNH)]n, 1≦n≦10,000)及びポリ4-スチレンスルホン酸ナトリウム((CNaOS)n, 1≦n≦10,000)からなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項5】
前記炭化水素系の高分子化合物は、カチオン性官能基に含まれるカチオンに対する対イオンとして、アニオンをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項6】
前記アニオンが、リチウム二次電池用電解質に含まれるリチウム塩のアニオンであることを特徴とする、請求項5に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項7】
前記難燃性液体電解質が、カーボネート系化合物、ホスフェート系化合物及びイオン性液体(Ionic liquid)からなる群から選択される1種以上の溶媒;及びリチウム塩;を含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項8】
前記架橋剤が、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ/ヘキサ-アクリレート及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項9】
前記高分子電解質が30~60重量%で、前記難燃性液体電解質が30~50重量%で、前記架橋剤が2~30重量%で含まれることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項10】
前記リチウム二次電池用電解質が、活性酸化物系セラミックをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項11】
前記活性酸化物系セラミックが、Li1+xAlGe2-x(PO(LAGP)、LiLaZr12(LLZO)及びLi1+xAlTi2-x(PO(LATP)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項12】
前記活性酸化物系セラミックが、高分子電解質、難燃性液体電解質及び架橋剤を含むリチウム二次電池用電解質総100重量部に対して15~100重量部で含まれることを特徴とする、請求項10に記載のリチウム二次電池用電解質。
【請求項13】
リチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質を含む正極;負極;前記正極と負極との間に介在する、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質;を含むリチウム二次電池。
【請求項14】
前記リチウム二次電池用電解質が、正極または負極の一面に薄膜の形態で付着するか、正極と負極との間に独立して介在することを特徴とする、請求項13に記載のリチウム二次電池。
【請求項15】
前記リチウム二次電池が、正極と負極との間に別途の分離膜をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載のリチウム二次電池。
【請求項16】
前記リチウム二次電池が、液体電解質及び固体電解質を含む半(Semi)固体電池であることを特徴とする、請求項13に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年4月13日付韓国特許出願第10-2022-0045454号及び2023年4月3日付韓国特許出願第10-2023-0043320号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用電解質及びこれを含むリチウム二次電池に関し、さらに詳しくは、カチオン高分子主鎖(backbone)を形成してアニオンの動きを最小化することで、カチオンを加速化し、酸化物系セラミックまで含め、追加的なリチウムイオンの伝達能力及び機械的物性を向上させることができるリチウム二次電池用電解質及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車など、電池を使用する電子器具の急速な普及に伴い、小さく軽いながらも、相対的に高容量である二次電池の需要が急速に増大している。特に、リチウム二次電池は、軽量で高エネルギー密度を有しており、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。これによって、リチウム二次電池の性能向上のための研究開発の努力が活発に進行している。このようなリチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入(intercalation)及び脱離(deintercalation)が可能な活物質からなる正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させた状態で、リチウムイオンが正極及び負極で挿入/脱離する時の酸化と還元反応によって電気エネルギーが生産される。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMnO、LiMnなど)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePO)、ニッケル(Ni)の一部をコバルト(Co)とマンガン(Mn)で置換し、高い容量の具現が可能なリチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質(またはリチウムNCM系の正極活物質、またはNCM系のリチウム複合遷移金属酸化物、またはHigh Ni正極材)などが使用されてきた。しかし、以上で説明した通常のリチウム二次電池は、負極SEI(solid electrolyte interface)分解反応から始まる発熱反応及びニッケル(Ni)の含量が増加するにつれて不安定になる正極と、カーボネート(Carbonate)系の溶媒を含む電解液間の反応によって熱暴走に至り、これは電池の安定性に大きな脅威要因として作用する。そして、特にリチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質と黒鉛負極を一緒に使用するリチウムイオン電池(LIB)は、相対的により熱に脆弱であるという問題点がある。
【0005】
そこで、当業界では正極活物質の構成成分や電解質の構成成分を変更するなどの試みをしており、特に電解質に高分子系の化合物及び無機系の化合物などを適用することで、従来のリチウム二次電池が有する問題点を補完するための努力を続けている。そして、高分子系の電解質が無機系の固体電解質に比べて柔軟性、軽量性、加工性及び費用の側面で優れた利点があり、リチウム二次電池に適用される事例が漸進的に増加する傾向にある。
【0006】
このように、高分子系の電解質が様々な利点を有するにもかかわらず、他の系列の電解質に比べて劣位にある点もまた明らかであるため、該当問題点を補完するための努力もまた持続的に行われている。すなわち、高分子系の電解質は無機系の固体電解質に比べて機械的物性が弱く、イオン伝導度が低いことが問題点として指摘されている。また、高分子系の電解質は液体電解質に比べて低いカチオン(Li-ion)の輸送係数(t+)により、濃度分極(抵抗)が大きくなるしかない限界があることも事実である。
【0007】
従って、様々な利点がある高分子系の電解質を使用するが、カチオン高分子主鎖(backbone)を形成してアニオンの動きを最小化することで、カチオンを加速化し、酸化物系セラミックまで含め、追加的なリチウムイオンの伝達能力及び機械的物性を向上させることができるリチウム二次電池用電解質の開発が切実に求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、カチオン高分子主鎖(backbone)を形成してアニオンの動きを最小化することで、カチオンを加速化し、酸化物系セラミックまで含め、追加的なリチウムイオンの伝達能力及び機械的物性を向上させることができるリチウム二次電池用電解質及びこれを含むリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物を含む、高分子電解質;難燃性液体電解質;及び架橋剤;を含む、リチウム二次電池用電解質を提供する。
【0010】
また、本発明は、リチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質を含む正極;負極;前記正極と負極との間に介在する前記リチウム二次電池用電解質;を含む、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるリチウム二次電池用電解質及びこれを含むリチウム二次電池によると、カチオン高分子主鎖(backbone)を形成してアニオンの動きを最小化することで、カチオンを加速化し、酸化物系セラミックまで含め、追加的なリチウムイオンの伝達能力及び機械的物性を向上させることができるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明によるリチウム二次電池用電解質は、カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物を含む高分子電解質、難燃性液体電解質及び架橋剤を含む。
【0014】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入(intercalation)と脱離(deintercalation)が可能な活物質からなる正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させた状態で、リチウムイオンが正極及び負極で挿入/脱離する時の酸化と還元反応によって電気エネルギーが生産される。そして、熱的安定性を高めるため、ニッケル(Ni)の一部をコバルト(Co)とマンガン(Mn)で置換したリチウムニッケルコバルトマンガン系などの正極活物質を電池に適用している。しかし、通常のリチウム二次電池は、負極SEI(solid electrolyte interface)分解反応で始まる発熱反応及びニッケル(Ni)の含量が増加するにつれて不安定になる正極と、カーボネート(Carbonate)系の溶媒を含む電解液間の反応によって熱暴走に至り、これは電池の安定性に大きな脅威要因として作用する。そして、特にリチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質と黒鉛負極を一緒に使用するリチウムイオン電池(LIB)は、相対的により熱に脆弱であるという問題点がある。
【0015】
そこで、当業界では、正極活物質の構成成分や電解質の構成成分を変更するなどの試みをしており、特に電解質に高分子系の化合物及び無機系の化合物などを適用することで、従来のリチウム二次電池が有する問題点を補完するための努力を続けている。そして、高分子系の電解質が無機系の固体電解質に比べて柔軟性、軽量性、加工性及び費用の側面で優れた利点があり、リチウム二次電池に適用される事例が漸進的に増加する傾向にある。このように、高分子系の電解質が様々な利点を有するにもかかわらず、他の系列の電解質に比べて劣位にある点もまた明らかであるため、該当問題点を補完するための努力もまた持続的に行われている。すなわち、高分子系の電解質は無機系の固体電解質に比べて機械的物性が弱く、イオン伝導度が低いことが問題点として指摘されている。また、高分子系の電解質は液体電解質に比べて低いカチオン(Li-ion)の輸送係数(t+)により、濃度分極(抵抗)が大きくなるしかない限界も有する。
【0016】
そこで本出願人は、様々な利点がある高分子系の電解質を使用するが、カチオン高分子主鎖(backbone)を形成してアニオンの動きを最小化することで、カチオンを加速化し、酸化物系セラミックまで含め、追加的なリチウムイオンの伝達能力及び機械的物性を向上させることができるリチウム二次電池用電解質及びこれを含むリチウム二次電池を発明した。
【0017】
以下、本発明によるリチウム二次電池用電解質についてより具体的に説明する。まず、本発明のリチウム二次電池用電解質に含まれる高分子電解質は、カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物を含む。前記カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物は、高分子主鎖(backbone)上に形成されたカチオン(すなわち、正電荷が帯電した高分子鎖を形成)がアニオンの動きを最小化することで、カチオンを加速化することができる。そして、これを通じて、カチオン性官能基を含有しない従来の高分子電解質を使用した場合と対比してカチオンの輸送係数が大きくなり、濃度分極(抵抗)を低下させることができる。
【0018】
前記カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物は、カチオン性官能基を一つ以上含む炭素数6~20、望ましくは炭素数8~14の炭化水素の構造単位を含む。また、前記カチオン性官能基は、窒素カチオン、酸素カチオン及び硫黄カチオンの中から選択される1種以上のカチオンを含むものであってもよく、このうち少なくとも一つの窒素カチオンを基本的に含むことが望ましい。
【0019】
さらに具体的には、前記カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物は、下記化学式1で表されるポリジアリルジメチルアンモニウム((C16)n)、ポリメタクリロキシエチルトリメチルアンモニウム((C18NO )n, 1≦n≦10,000)、ポリアリルアミン([CHCH(CHNH)]n, 1≦n≦10,000)及びポリ4-スチレンスルホン酸ナトリウム((CNaOS)n, 1≦n≦10,000)からなる群から選択される1種以上を含むものであってもよい。
【0020】
[化学式1]
【化1】
【0021】
前記化学式1において、nは1~10,000、望ましくは1~100の自然数である。
【0022】
前記炭化水素系の高分子化合物の主鎖上に位置するカチオンによって動きが最小化されるアニオンは、カチオンが位置する高分子の主鎖に結合するため、動きが減少する。そして、前記アニオンは、電解質に含むことが可能なすべてのアニオンであってもよく、具体的には、電解質に含まれるリチウム塩のアニオンであってもよい。すなわち、言い換えると、前記炭化水素系の高分子化合物は、カチオン性官能基に含まれるカチオンに対する対イオンとして、アニオンをさらに含むことができる。前記電解質に含まれるリチウム塩のアニオンは、例えば、LiTFSIのTFSI、LiSCNのSCN、LiBrのBr及びLiClのClなど、当業界において一般的に知られているリチウム塩のアニオンであってもよい。また、前記カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物は、最初から以上で説明したアニオンがカチオンに対する対イオンとして結合した状態であってもよい。
【0023】
従って、例えば、前記カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物が前記化学式1で表されるポリジアリルジメチルアンモニウムであると、下記化学式2のように、リチウム塩のアニオン(TFSI)がカチオンに対する対イオンとして結合することができる(ポリジアリルジメチルアンモニウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、DADMA-TFSI)。そして、アニオンの動きが減少することで、カチオンが加速化され、これを通じてカチオンの輸送係数が大きくなり、濃度分極(抵抗)を低下させることができる。
【0024】
[化学式2]
【化2】
【0025】
前記化学式2において、nは1~10,000、望ましくは1~100の自然数である。
【0026】
一方、本発明のリチウム二次電池用電解質に含まれる高分子電解質は、以上のカチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物以外に、必要に応じて、当業界で通用する通常の高分子化合物をさらに含むことができる。
【0027】
前記高分子電解質は、本発明のリチウム二次電池用電解質の総重量に対して30~60重量%、望ましくは30~50重量%、さらに望ましくは35~40重量%の含量で含んでもよい。もし、前記高分子電解質の含量が30重量%未満であると、カチオン高分子による効果が表れない問題が発生することがあり、60重量%を超過する場合には、カチオン高分子の重量が過度になり、むしろイオン伝導を妨害する問題が発生することがある。
【0028】
次に、本発明のリチウム二次電池用電解質に含まれる難燃性液体電解質について説明する。前記難燃性液体電解質は、以上で説明したカチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物を溶解させ、リチウム塩の解離及び伝達のためであり、前記カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物と一緒に含まれなければならない。そして、前記難燃性液体電解質は、硬化したカチオン高分子に閉じ込められて流れ落ちたり、染み出ることはないが、最終的に製造される電解質に液状で存在することもできる。
【0029】
より具体的には、前記難燃性液体電解質は、溶媒及びリチウム塩を含む。前記難燃性液体電解質に含まれる溶媒としては、カーボネート系化合物、ホスフェート系化合物及びイオン性液体(Ionic liquid)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。前記カーボネート系化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート及びメチル(2、2、2-トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。前記ホスフェート系化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート及び2-(2、2、2-トリフルオロエトキシ)-1、3、2-ジオキサホスホラン2-オキシド等が挙げられる。前記イオン性液体としては、N-プロピル-N-メチルピロリジニウム及び1-ブチル-1-メチルピロリジニウム等が挙げられる。
【0030】
また、前記溶媒は、必要に応じてエステル、エーテルまたはケトンを単独または2種以上さらに含んでもよい。これらの例としては、γ-ブチロラクトン、n-メチルアセテート、n-エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジブチルエーテル、N-メチル-2-ピロリジノン、1、2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフランのようなテトラヒドロフラン誘導体、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン及びその誘導体、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1、3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒等が挙げられる。
【0031】
前記難燃性液体電解質に含まれるリチウム塩としては、LiFSI、LiTFSI、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiPF、LiB10Cl10、LiCFSO、LiCFCO、LiCBO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CSONLi、(CFSOCLi、クロロボランリチウム、炭素数4以下の低級脂肪族カルボン酸リチウム、4-フェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群から選択される1種以上が挙げられる。前記リチウム塩は、本発明のリチウム二次電池用電解質において、1.5M~4.0M、望ましくは1.5M~2.0Mの濃度になるように含んでもよい。もし、前記リチウム塩の濃度が1.5M未満であるか、4.0Mを超過する場合には、電池の熱的安定性に寄与する程度が微々たるか、電池の熱的安定性の向上にこれ以上の利点がないことがある。また、前記リチウム塩の濃度が1.5M未満であると、電池駆動に適したイオン伝導度の確保が難しく、4.0Mを超過する場合には、電解質の粘度が増加し、リチウムイオンの移動性が低下するか、リチウム塩自体の分解反応が増加し、電池の性能が低下することがある。
【0032】
前記難燃性液体電解質は、本発明のリチウム二次電池用電解質の総重量に対して30~50重量%、望ましくは30~40重量%、さらに望ましくは35~40重量%の含量で含んでもよい。もし、前記難燃性液体電解質の含量が30重量%未満であると、イオン伝導度が非常に低く、電解質として使用することができない状態になることがあり、50重量%を超過する場合には、固体状態ではなく、液体状態の成分が過渡に多く存在するという問題が発生することがある。
【0033】
続いて、本発明のリチウム二次電池用電解質に含まれる架橋剤について説明する。前記架橋剤は、漏液防止及び追加的な機械的物性の向上のためのものであり、特に本発明のリチウム二次電池用電解質をゲル化(Gelation)または固形化させる役割を果たす。前記架橋剤としては、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ/ヘキサ-アクリレート及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートからなる群から選択される1種以上が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
前記架橋剤は、本発明のリチウム二次電池用電解質の総重量に対して2~30重量%、望ましくは10~30重量%、さらに望ましくは20~30重量%の含量で含んでもよい。もし、前記架橋剤の含量が2重量%未満であると、架橋が正常的に行われない問題が発生することがあり、30重量%を超過する場合には、過度な架橋剤の重量により、イオン伝導を妨害する問題が発生することがある。
【0035】
一方、本発明によるリチウム二次電池用電解質は、追加的なリチウムイオンの伝達能力及び機械的物性を向上させるための目的で、活性酸化物系セラミックをさらに含むことができる。前記活性酸化物系セラミックとしては、Li1+xAlGe2-x(PO(LAGP)、LiLaZr12(LLZO)及びLi1+xAlTi2-x(PO(LATP)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。ただし、ここに例示されなくても、前記LAGP、LLZO及びLATPと類似ないし同等の性質を有する活性酸化物系セラミックであると、特別な制限なく、本発明の活性酸化物系セラミックとして適用可能である。
【0036】
また、前記活性酸化物系セラミックは、高分子電解質、難燃性液体電解質及び架橋剤を含むリチウム二次電池用電解質総100重量部に対して15~100重量部、望ましくは40~65重量部で含んでもよい。
【0037】
次に、本発明によるリチウム二次電池について説明する。
【0038】
前記リチウム二次電池は、リチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質を含む正極、負極、前記正極と負極との間に介在する前記リチウム二次電池用電解質を含む。前記正極は、リチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質(またはリチウムNCM系の正極活物質、またはNCM系のリチウム複合遷移金属酸化物、またはHigh Ni正極材)を含むものであり、これを電池に適用する場合、高い容量の具現が可能である。そして、前記リチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質は、表面に金属酸化物がコーティングされたものであってもよい。
【0039】
前記リチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質は、市販されているものを購入して使用するか、当該技術分野でよく知られている製造方法に従って製造して使用してもよい。一例として、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質及びマンガン含有原料物質を含む遷移金属溶液にアンモニウムカチオン含有錯体形成剤と塩基性化合物を添加して共沈反応させ、ニッケル-コバルト-マンガン前駆体を製造した後、前記ニッケル-コバルト-マンガン前駆体とリチウム原料物質を混合し、980℃以上の温度で過焼成させ、リチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質を製造することができる。
【0040】
前記ニッケル含有原料物質は、例えば、ニッケル含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などであってもよく、具体的には、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、脂肪酸ニッケル塩、ニッケルハロゲン化物またはこれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。前記コバルト含有原料物質は、例えば、コバルト含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などであってもよく、具体的には、Co(OH)、CoOOH、Co(OCOCH・4HO、Co(NO・6HO、CoSO、Co(SO・7HOまたはこれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。前記マンガン含有原料物質は、例えば、マンガン含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、硫化物、水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物またはこれらの組み合わせであってもよく、具体的には、Mn、MnO、Mnなどのようなマンガン酸化物;MnCO、Mn(NO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン塩のようなマンガン塩;オキシ水酸化マンガン、塩化マンガンまたはこれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0041】
前記遷移金属溶液は、前記ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質及びマンガン含有原料物質を溶媒、具体的には、水、または水と均一に混合することができる有機溶媒(例えば、アルコールなど)の混合溶媒に添加して製造されたものであるか、ニッケル含有原料物質の水溶液、コバルト含有原料物質の水溶液及びマンガン含有原料物質を混合して製造されたものであってもよい。前記アンモニウムカチオン含有錯体形成剤は、例えば、NHOH、(NHSO、NHNO、NHCl、CHCOONH、NHCOまたはこれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。一方、前記アンモニウムカチオン含有錯体形成剤は、水溶液の形態で使用してもよく、この時の溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物を使用してもよい。
【0042】
前記塩基性化合物は、例えば、NaOH、KOHまたはCa(OH)などのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、これらの水和物またはこれらの組み合わせであってもよい。前記塩基性化合物もやはり水溶液の形態で使用してもよく、この時の溶媒としては、水、または水と均一に混合可能な有機溶媒(具体的には、アルコールなど)と水の混合物を使用してもよい。前記塩基性化合物は、反応溶液のpHを調節するために添加されるもので、金属溶液のpHが11~13になる量で添加してもよい。
【0043】
一方、前記共沈反応は、窒素またはアルゴンなどの非活性雰囲気下で、40~70℃の温度で行ってもよい。前記のような工程により、ニッケル-コバルト-マンガン水酸化物の粒子が生成され、反応溶液内に沈殿する。沈殿したニッケル-コバルト-マンガン水酸化物粒子を通常の方法に従って分離させ、乾燥させて、ニッケル-コバルト-マンガン前駆体を得ることができる。前記ニッケル-コバルト-マンガン前駆体は、1次粒子が凝集して形成された2次粒子であってもよく、前記ニッケル-コバルト-マンガン前駆体の2次粒子の平均粒径(D50)が4~8μmであってもよく、望ましくは4~7.5μm、さらに望ましくは4~7μmであってもよい。
【0044】
前記リチウム原料物質としては、リチウム含有硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、ハロゲン化物、水酸化物またはオキシ水酸化物などを使用してもよく、水に溶解することができる限り特に限定されない。具体的には、前記リチウムのソースは、LiCO、LiNO、LiNO、LiOH、LiOH・HO、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CHCOOLi、LiO、LiSO、CHCOOLiまたはLiなどであってもよく、これらの中のいずれか一つまたは二つ以上の混合物を使用してもよい。前記ニッケル-コバルト-マンガン前駆体の全体金属元素(M)に対するリチウム(Li)のモル比率(Li/M)が1~1.5、望ましくは1~1.1になるように、前記リチウム原料物質を混合してもよい。
【0045】
前記リチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質の含量は、前記正極の100重量部に対して50~95重量部、望ましくは60~90重量部であってもよい。前記リチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質の含量が正極総100重量部に対して50重量部未満であると、正極活物質による電池の電気化学的特性が低下することがあり、95重量部を超過すると、バインダー及び導電材のような追加的な構成成分が少量で含まれることがあり、効率的な電池の製造が難しいことがある。
【0046】
前記正極は、正極活物質以外に、バインダー及び導電材などをさらに含む。前記バインダーは、正極活物質と導電材などの結合及び集電体に対する結合に助力する成分として、例えば、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリビニリデンフルオライド-ポリヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF/HFP)、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、アルキル化ポリエチレンオキシド、ポリプロピレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルクロライド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリドン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、スチレン-ブチレンゴム、フッ素ゴム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上を使用してもよいが、必ずしもこれらに限定されない。
【0047】
前記バインダーは、正極の総100重量部に対して1~50重量部、望ましくは3~15重量部の含量で使用してもよい。前記バインダーの含量が正極の総100重量部に対して1重量部未満であれば、正極活物質と集電体との接着力が不十分になることがある。また、前記バインダーの含量が正極の総100重量部に対して50重量部を超えると接着力は向上するが、その分正極活物質の含量が減少し、電池容量が低くなることがある。
【0048】
前記正極に含まれる導電材は、リチウム二次電池の内部環境で副反応を引き起こさず、当該電池に化学的変化を引き起こさずに、優れた電気伝導性を有するものであれば特に制限されず、代表的には、黒鉛または導電性炭素を使用してもよく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック;結晶構造がグラフェンやグラファイトである炭素系物質;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム粉末、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスキー;酸化チタンなどの導電性酸化物;及びポリフェニレン誘導体などの導電性高分子;を単独で、または2種以上を混合して使用してもよいが、必ずしもこれらに限定されない。
【0049】
前記導電材は、正極の総100重量部に対して0.5~50重量部、望ましくは1~30重量部の含量で使用してもよい。前記導電材の含量が正極の総100重量部に対して0.5重量部未満で少なすぎると、電気伝導性の向上効果を期待し難いか、電池の電気化学的特性が低下することがある。また、前記導電材の含量が正極の総100重量部に対して50重量部を超えて多すぎると、相対的に正極活物質の量が少なくなり、容量及びエネルギー密度が低下する可能性がある。正極に導電材を含有させる方法は特に限定されず、正極活物質へのコーティングなど当該分野に公知の通常の方法を用いることができる。また、必要に応じて、正極材に導電性の第2被覆層を付加することにより、前記のような導電材の添加に代わることもできる。
【0050】
また、本発明の正極には、その膨張を抑制する成分として、充填剤を選択的に添加してもよい。このような充填剤は、当該電池に化学的変化を引き起こさずに電極の膨張を抑制できるものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系ポリマー;ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状物質;等を使用してもよい。
【0051】
前記正極活物質、バインダー及び導電材等を分散媒(溶媒)に分散、混合させてスラリーを作製し、これを正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することにより、本発明のリチウム二次電池に含まれる正極を製造することができる。前記分散媒としては、NMP(N-methyl-2-pyrrolidone)、DMF(Dimethyl formamide)、DMSO(Dimethyl sulfoxide)、エタノール、イソプロパノール、水及びこれらの混合物を使用してもよいが、必ずしもこれらに限定されない。
【0052】
前記正極集電体としては、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ステンレス鋼(STS)、アルミニウム(Al)、モリブデニウム(Mo)、クロム(Cr)、カーボン(C)、チタニウム(Ti)、タングステン(W)、ITO(In doped SnO)、FTO(F doped SnO)、及びこれらの合金と、アルミニウム(Al)またはステンレス鋼の表面にカーボン(C)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)または銀(Ag)を表面処理したもの等を使用してもよいが、必ずしもこれらに限定されない。正極集電体の形態は、箔、フィルム、シート、パンチングされたもの、多孔質体、発泡体などの形態であってもよい。
【0053】
前記負極は、該当技術分野で知られている通常の方法に従って製造することができる。例えば、負極活物質、導電材、バインダー、必要に応じて充填剤などを分散媒(溶媒)に分散、混合させてスラリーを作製し、これを負極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延して負極を製造することができる。前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物を使用してもよい。具体例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Sb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金など、リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のように、リチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらの中のいずれか一つまたは二つ以上の混合物を使用してもよい。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜を使用してもよい。また、炭素材料は、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などをすべて使用してもよい。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球形または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0054】
また、前記負極に使用されるバインダー及び導電材は、先に正極で説明したものと同じものであってもよい。前記負極集電体としては、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、ルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ステンレス鋼(STS)、銅(Cu)、モリブデニウム(Mo)、クロム(Cr)、カーボン(C)、チタニウム(Ti)、タングステン(W)、ITO(In doped SnO)、FTO(F doped SnO)、及びこれらの合金と、銅(Cu)またはステンレス鋼の表面にカーボン(C)、ニッケル(Ni)、チタニウム(Ti)または銀(Ag)を表面処理したものなどを使用してもよいが、必ずしもこれらに限定されない。負極集電体の形態は、箔、フィルム、シート、パンチングされたもの、多孔質体、発泡体などの形態であってもよい。
【0055】
一方、前記リチウム二次電池において、正極及び負極との間には、層状構造の膜として位置する固体電解質、すなわち、本発明によるリチウム二次電池用電解質が位置することができる。従って、この場合には、前記固体電解質が分離膜の役割(すなわち、負極と正極を電気的に絶縁すると同時に、リチウムイオンを通過させる役割)を兼ねることもできる。この時、前記固体電解質は、正極または負極の一面に薄膜の形態で付着し、前記リチウム二次電池に含まれてもよい。また、前記固体電解質は、正極と負極との間に独立的に介在してもよい。そして、本発明のリチウム二次電池は、必要に応じて液体電解質と固体電解質を併用する半(Semi)固体電池であってもよい。併せて、この場合には、別途の分離膜をさらに含んでもよい(すなわち、前記正極と負極との間には、分離膜及び固体電解質の中のいずれか一つ以上を介在してもよい)。
【0056】
もし、別途の分離膜がさらに含まれる場合、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなオレフィン系ポリマー、ガラス繊維などをシート、多重膜、微細多孔性フィルム、織布及び不織布などの形態で使用してもよいが、必ずしもこれらに限定されない。ただし、多孔性のポリエチレンまたは多孔性のガラス繊維不織布(ガラスフィルター(glass filter))を分離膜として適用することが望ましく、多孔性のガラスフィルター(glass filter)(ガラス繊維不織布)を分離膜として適用することがより望ましい。前記分離膜は、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜であってもよく、分離膜の気孔直径は一般的に0.01~10μm、厚みは一般的に5~300μmの範囲であってもよいが、これに限定されない。
【0057】
一方、本発明のリチウム二次電池は、当該分野の通常的な方法に従って製造することができる。例えば、正極と負極との間に多孔性の分離膜を入れ、電解液を投入することにより製造することができる。本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として用いられる電池セルに適用されることはもちろん、中・大型デバイスの電源である電池モジュールの単位電池として特に好適に用いることができる。このような面から、本発明はまた、二つ以上のリチウム二次電池が電気的に連結(直列または並列)されて含まれた電池モジュールを提供する。前記電池モジュールに含まれるリチウム二次電池の数量は、電池モジュールの用途及び容量等を考慮して多様に調節できることは無論である。
【0058】
さらに、本発明は、当該分野の通常の技術により、前記電池モジュールを電気的に連結した電池パックを提供する。前記電池モジュール及び電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、HEV)、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気自動車;電気トラック;電気商用車;又は電力貯蔵用システムの中のいずれか一つ以上の中・大型デバイス電源として用いることができるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0059】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を示すが、これは本発明を例示するものであり、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【0060】
[実施例1] リチウム二次電池の製造
電解質の製造
ポリジアリルジメチルアンモニウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(DADMA-TFSI、高分子電解質)を難燃性液体電解質(SCE05、溶媒:EC/EMC=1:9(v/v)、リチウム塩:1M LiFSI及び1M LiPF)に溶解させた後、ここにトリメチルオルプロパントリアクリレート(ETPTA、架橋剤)を添加及び混合し、続いてUV硬化機ランプで約40秒間硬化させ、薄膜状のリチウム二次電池用電解質を製造した。一方、前記高分子電解質、難燃性液体電解質及び架橋剤は、1:1:0.8の重量比(約35.7重量%:35.7重量%:28.6重量%)で使用した。
【0061】
正極の製造
まず、50℃に設定された回分式バッチ(batch)型40L反応器において、NiSO、CoSO、MnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が80:10:10のモル比になるようにする量で、水(water)の中で混合し、2.4M濃度の前駆体形成溶液を準備した。共沈反応器(容量40L)に脱イオン水13リットルを入れた後、窒素ガスを反応器に25リットル/分の速度でパージして水の中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気に造成した。以後、25%濃度のNaOH水溶液83gを投入した後、50℃の温度で700rpmの速度で攪拌し、pH11.5を維持するようにした。以後、前記前駆体形成溶液を1.9L/hrの速度でそれぞれ投入し、NaOH水溶液及びNHOH水溶液を一緒に投入しながら、48時間共沈反応させ、ニッケル-コバルト-マンガン含有水酸化物(Ni0.5Co0.3Mn0.2(OH))の粒子を形成した。前記水酸化物粒子を分離して洗浄後、120℃のオーブンで乾燥し、ニッケル-コバルト-マンガン前駆体(D50=4.8μm)を製造した。引き続き、前記製造されたニッケル-コバルト-マンガン前駆体及びリチウムのソースLiOHをLi/M(Ni,Co,Mn)モル比が1.02になるようにヘンシェルミキサー(20L)に投入し、中心部300rpmで20分間ミキシング(mixing)した。混合された粉末を330mm×330mmサイズのアルミナるつぼに入れ、酸素雰囲気下で1,010~1,030℃で15時間焼成し、リチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質を製造した。
【0062】
続いて、前記製造されたリチウムニッケルコバルトマンガン系の正極活物質、導電材としてのカーボンブラック及びバインダーとしてのポリビニリデンフルオライド(PVdF)を96.5:1.5:2の重量比で混合し、NMP溶媒に分散させてスラリーを製造した後、これをブレードタイプのコーティング機械であるマティスコーター(Labdryer/coater type LTE、Werner Mathis AG社)で、25μm厚みのアルミニウムホイル(Al foil)に均一な厚みでコーティングし、120℃の真空オーブンで13時間乾燥して、リチウム二次電池用の正極を製造した。
【0063】
リチウム二次電池の製造
黒鉛を活物質として含む負極と前記製造された正極を対面するように位置させた後、その間に前記製造されたリチウム二次電池用電解質の薄膜を介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケース内部に位置させてリチウム二次電池を製造した。
【0064】
[実施例2] リチウム二次電池の製造
架橋剤(トリメチルオルプロパントリアクリレート、ETPTA)の添加時、LiLaZr12(LLZO、活性酸化物系セラミック)まで一緒に添加したものを除いては、前記実施例1と同様に行い、リチウム二次電池を製造した。一方、前記高分子電解質、難燃性液体電解質、架橋剤及び活性酸化物系セラミックは、1:1:0.8:0.5の重量比で使用した。
【0065】
[比較例1] リチウム二次電池の製造
高分子電解質をポリジアリルジメチルアンモニウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(DADMA-TFSI)からポリエチレンオキシド(PEO、Mw=約10,000)に変更したことを除いては、前記実施例1と同様に行い、リチウム二次電池を製造した。
【0066】
[比較例2] リチウム二次電池の製造
架橋剤(トリメチルオルプロパントリアクリレート、ETPTA)を使用しなかったことを除いては、前記実施例1と同様に行い、リチウム二次電池を製造した。
【0067】
[比較例3] リチウム二次電池の製造
高分子電解質、難燃性液体電解質及び架橋剤の重量比を1:1:0.8(約35.7重量%:35.7重量%:28.6重量%)から1:2.2:1.78(約20重量%:44.5重量%:35.5重量%)に変更したことを除いては、前記実施例1と同様に行い、リチウム二次電池を製造した。
【0068】
[比較例4] リチウム二次電池の製造
高分子電解質、難燃性液体電解質及び架橋剤の重量比を1:1:0.8(約35.7重量%:35.7重量%:28.6重量%)から1:2.55:0.7(約23.5重量%:60重量%:16.5重量%)に変更したことを除いては、前記実施例1と同様に行い、リチウム二次電池を製造した。
【0069】
[実験例1] イオン伝導度の測定
前記実施例1、2及び比較例1から4でそれぞれ製造されたリチウム二次電池用電解質のイオン伝導度を測定し、その結果を下記表1に示した。前記イオン伝導度の測定には、交流インピーダンス(AC impedance)測定器であるIVIUM STAT(Ivium Technologies, Netherlands)を使用した。
【0070】
【表1】
【0071】
前記実施例1、2及び比較例1から4でそれぞれ製造されたリチウム二次電池用電解質のイオン伝導度を測定した結果、前記表1のように、カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物を含む高分子電解質、難燃性液体電解質及び架橋剤を含む実施例1の電解質と、これに活性酸化物系セラミックまでさらに含む実施例2の電解質は、通常の高分子電解質を含む比較例1の電解質や実施例1の電解質から架橋剤のみを除いた比較例2の電解質に比べ、イオン伝導度が高く表れた。また、高分子電解質の含量が本発明の範疇を外れる比較例3と、難燃性液体電解質の含量が本発明の範疇を外れる比較例4の場合にも、実施例1及び2に比べ、低いイオン伝導度を示した。併せて、実施例1及び実施例2の比較及び対照を通じては、電解質に活性酸化物系セラミックまで含むと、イオン伝導度がさらに高くなることを確認することができた。
【0072】
[実験例2] カチオン輸送係数の測定
前記実施例1、2及び比較例1から4でそれぞれ製造されたリチウム二次電池に10mVの電圧を印加し、電極に分極を誘導した後、分極された状態での電流を測定し、測定された電流値に基づいてブルース-ヴィンセント(Bruce-Vincent)法による下記数式1を用いて、液体電解質のカチオン輸送係数(t+)を測定した。一方、前記測定電流値は、1μAの電流変化がある時の1秒毎の電流値である(すなわち、dl=1μA & dt=1sec)。
【0073】
[数式1]
【数1】
【0074】
前記数式1において、Issは、定常状態(steady state)である時に流れる電流値であって25.5μAであり(6時間まで測定)、Iは、分極された状態である時に流れる電流値であって44.6μAであり、ΔVは、セル全体に適用された電位差であり、Rは、分極された状態である時の界面抵抗であって136.06であり、Rssは、定常状態である時の界面抵抗であっって314.74である。
【0075】
そして、前記実施例1、2及び比較例1から4でそれぞれ製造されたリチウム二次電池について、カチオン輸送係数を測定した結果を下記表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
前記のように、実施例1、2及び比較例1から4でそれぞれ製造されたリチウム二次電池について、カチオン輸送係数を測定した結果、前記表2のように、カチオン性官能基を含有する炭化水素系の高分子化合物を含む高分子電解質、難燃性液体電解質及び架橋剤を含む実施例1の電解質と、これに活性酸化物系セラミックまでさらに含む実施例2の電解質は、通常の高分子電解質を含む比較例1の電解質や実施例1の電解質から架橋剤のみを除いた比較例2の電解質に比べ、カチオン輸送係数が高く表れた。また、高分子電解質の含量が本発明の範疇を外れる比較例3と、難燃性液体電解質の含量が本発明の範疇を外れる比較例4の場合にも、実施例1及び2と比べ、低いカチオン輸送係数を示した。これを通じて、本発明によると、通常の電解質に比べ、濃度分極(抵抗)が低くなる利点があることを確認することができた。
【国際調査報告】