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特表2024-543431二次電池の電極製造のためのロール、及びこれを適用した電極製造装置
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  • 特表-二次電池の電極製造のためのロール、及びこれを適用した電極製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】二次電池の電極製造のためのロール、及びこれを適用した電極製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20241114BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527654
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 KR2022017614
(87)【国際公開番号】W WO2023085796
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0155217
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0046994
(32)【優先日】2022-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドゥク・ヒョン・リュ
(72)【発明者】
【氏名】クワンヒ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジンス・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ユンジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】グンホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】スンヨン・ソン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050CB29
5H050GA03
5H050GA29
(57)【要約】
本発明は、第1面と、その裏面である第2面とを備える金属ホイルの少なくともいずれか面に、活物質層が塗布されたシート状の電極を圧延して移送する電極製造装置である。前記電極を圧延する圧延ロールと、前記電極を圧延した後に移送する走行ロールの少なくともいずれかロールは、所定の直径を有して、外周にベース面が設けられたベースロール;及び前記ベースロールの外周に結合されて、前記ベース面よりも直径の拡張した形態の段差面を備える段差リング;を備える。前記段差リングは、前記ベースロールに着脱可能に結合される。前記段差の大きさは、前記活物質層の厚さと異なる。前記段差面の表面で測定される摩擦係数は、前記ベース面の摩擦係数と異なる。前記段差リングの弾性係数は、前記ベースロールの弾性係数よりも小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面(21)と、その裏面である第2面(22)とを備える金属ホイル(20)の少なくともいずれか面に、活物質層(30)が塗布されたシート状の電極を圧延して移送する電極製造装置であって、
前記電極を圧延する圧延ロールと、前記電極を圧延した後に移送する走行ロールとの少なくともいずれかのロール(40)は、
所定の直径を有し、外周にベース面(413)が設けられたベースロール(41);及び
前記ベースロール(41)の外周に結合されて、前記ベース面(413)よりも直径の拡張した形態の段差面(422)を備える段差リング(42);
を備える、
電極製造装置。
【請求項2】
前記圧延ロールは、前記段差リング(42)を備えておらず、前記走行ロールは、前記段差リング(42)を備える、
請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項3】
前記圧延ロールと前記走行ロールとは、いずれも前記段差リング(42)を備える、
請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項4】
複数本の走行ロールのうち、前記圧延ロールの近くに位置する一以上の走行ロールは、ベースロールと段差リングをいずれも備え、それよりも後ろに配置される走行ロールは、段差リングを備えない、
請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項5】
前記段差リング(42)は、前記ベースロール(41)に着脱可能に結合される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の電極製造装置。
【請求項6】
前記段差リング(42)の外周に設けられた、前記段差面(422)の表面で測定される摩擦係数は、前記ベースロール(41)の外周に設けられた、前記ベース面(413)の摩擦係数よりもさらに大きい、
請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項7】
前記段差面(422)と前記ベース面(413)との段差は、前記活物質層(30)の厚さよりもさらに小さい、
請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項8】
前記段差リング(42)が、前記圧延ロールに設けられる、
請求項6又7に記載の電極製造装置。
【請求項9】
前記段差リング(42)の外周に設けられた、前記段差面(422)の表面で測定される摩擦係数は、前記ベースロール(41)の外周に設けられた、前記ベース面(413)の摩擦係数よりもさらに小さい、
請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項10】
前記段差面(422)と前記ベース面(413)との段差は、前記活物質層(30)の厚さよりもさらに大きい、
請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項11】
前記段差リング42が、前記走行ロールに設けられる、
請求項9又は10に記載の電極製造装置。
【請求項12】
前記段差リング(42)の弾性係数は、前記ベースロール(41)の弾性係数よりも小さい、
請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項13】
前記ベースロール(41)は、金属材質を含み、前記段差リング(42)は、合成樹脂材質を含む、
請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項14】
前記ベースロール(41)は、第1金属材質を含み、前記段差リング(42)は、前記第1金属材質よりも軟質な第2金属材質を含む、
請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項15】
前記ベースロール(41)は、第1金属材質を含み、前記段差リング(42)は、前記第1金属材質よりも熱膨張係数のさらに大きい第2金属材質を含む、
請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項16】
前記段差リング(42)は、前記ベースロール(41)の外周にバンドを1回又は2回以上巻き取って形成された、
請求項1に記載の電極製造装置。
【請求項17】
所定の直径を有して、外周にベース面(413)が設けられたベースロール(41);及び
前記ベースロール(41)の外周に結合されて、前記ベース面(413)よりも直径の拡張した形態の段差面(422)を備える段差リング(42);
を備えるロール(40)の製作方法であって、
前記ベースロール(41)を準備するステップ;及び
前記ベースロール(41)の外周に前記段差リング(42)を設置するステップ;
を含む、
ロールの製作方法。
【請求項18】
前記段差リング(42)は、その直径が拡張するように弾性変形した状態で前記ベースロール(41)に挟まれる、
請求項17に記載のロールの製作方法。
【請求項19】
前記段差リング(42)は、その直径が拡張するように加熱された状態で前記ベースロール(41)に挟まれ、挟まれた状態で冷却される、
請求項17に記載のロールの製作方法。
【請求項20】
前記段差リング(42)は、前記ベースロール(41)の外周にバンドを1回又は2回以上巻き取って形成する、
請求項17に記載のロールの製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月11日付韓国特許出願第10-2021-0155217号及び2022年4月15日付韓国特許出願第10-2022-0046994号に基づく優先権を主張し、同韓国特許出願の文献で開示の全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、二次電池の電極製造のためのロールに関し、より詳細は、活物質層がコーティングされた領域と、コーティングされていない領域との間の電極厚さの段差にもかかわらず、延伸を均一に行うことができ、延伸後の移送過程でも、電極の変形を防止することができるロールの構造に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に関する技術の開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加しており、近年は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)の動力源として二次電池の使用が実現化しており、これら二次電池のうち、高いエネルギー密度、高い放電電圧及び出力安定性のリチウム二次電池に対する需要が高い。
【0004】
二次電池は、正極/分離膜/負極構造の電極組立体がどのような構造からなっているかによって分類されたりもし、代表的には、長いシート状の正極と負極を、分離膜を介在した状態で巻き取った構造のジェリーロール(巻取型)電極組立体、所定の大きさの単位で切り取った複数の正極と負極を、分離膜を介在した状態で順次積層したスタック型(積層型)電極組立体、所定の単位の正極と負極とを、分離膜を介在した状態で積層したユニットセル、例えば、バイセル(Bi-cell)又はフルセル(Full cell)を巻き取った構造のスタック-ホールディング型電極組立体などが挙げられる。
【0005】
これら電極組立体の製造のためには、先ず、正極と負極に該当するシート状の電極を製造しなければならない。シート状の電極は、シートの表面に活物質層が塗布乃至コーティングされた維持部と、前記活物質層が塗布されていない無地部とを備える。これらシート状の電極は、それよりもさらに幅の広い、且つ長さのさらに長い金属シートで製作されるため、移送方向に沿って長く延在するマルチ-レーン(multi-lane)状に製作される。マルチ-レーン状の電極シートは、複数本の無地部が長さ方向に延在して、幅方向に離隔して配置される形態を有する。
【0006】
電極シートにおける活物質層が塗布された部位と、塗布されていない部位とは、厚さの差を有するようになる。これによって、前記マルチ-レーン電極シートを圧延ロールで圧延するとき、維持部と無地部との間の延伸量差が発生し、これにより、無地部に襞や変形が発生する。また、このように、無地部の変形した電極シートが移送ロールに走行する過程で、襞や変形が激しく、さらには、無地部が折られて断線する問題が発生し得る。
【0007】
US2015-0360268A1とKR2261491B1では、電極シートの無地部と維持部との厚さ差に対応するようにロールに段差を置いて、無地部と維持部との間の延伸量差に対応する技術が開示されている。しかし、単に圧延ロールに幾何学的に無地部と維持部との厚さ差に相当する段差を置くことだけでは、延伸量の差によって無地部に発生する襞を直ちに無くす機能を果たすだけであり、無地部に発生する襞自体を防止することはできなかった。
【0008】
結局、圧延ロールを通りながら発生した電極シートの維持部領域の金属ホイルの延伸量と、無地部領域の金属ホイルの延伸量との差を解消しないと、電極シートの走行が継続する過程で、延伸量の差による変形は、再発するしかない。
【0009】
さらに、上記のようなロールは、製造しようとする電極シートの活物質層厚さの寸法が変更する場合に伴って、取り替らなければならないことが面倒であった。なお、電極シートの無地部の位置、つまりレーンの位置の異なる電極シートを製造する度に、同様にロールを取り替えなければならないことが面倒であった。なお、相異する寸法のマルチレーン電極シートを製作しようとする度に、それに対応するロールも伴って製作しなければならないことが面倒であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するために案出したものであって、無地部と維持部との厚さ差により、電極を延伸する際に無地部に襞が発生することを根本的に防止することができるロール、及びこれを適用した電極製造装置を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、加工しようとする電極シートの活物質層の厚さが変更するか、無地部の位置や幅などが変更しても、変更された電極シートにそれぞれ対応するロールをすべて製作する必要がなく、変更された電極シートにロールを柔軟に対応させることができるロール、及びこれを適用した電極製造装置を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の技術的課題は、以上に言及した目的に制限されず、言及していない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解することができ、本発明の実施形態によってより明らかに理解することができる。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示した手段及びその組み合わせによって実現できることが分かりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するため本発明は、第1面と、その裏面である第2面とを備える金属ホイルの少なくともいずれか面に、活物質層が塗布されたシート状の電極を圧延して移送する電極製造装置を提供する。
【0014】
前記電極製造装置は、前記電極を圧延する圧延ロールと、前記電極を圧延した後に移送する走行ロールとを含む。
【0015】
前記圧延ロールは、一対備えることができる。前記電極は、上記一対の圧延ロールの間を通りながら、加圧して圧延されてもよい。
【0016】
前記走行ロールは、少なくとも1つ以上、複数本具備されていてもよい。
【0017】
各々の走行ロールは、前記電極の第1面と第2面のいずれか面に接することができる。
【0018】
前記走行ロールは、電極の走行方向に、相異する位置で、前記電極の上部及び下部に配置することができる。
【0019】
前記走行ロールは、電極の走行方向に、同一の位置で、前記電極の上部及び下部に配置することができる。
【0020】
前記電極は、金属ホイルの表面に活物質層が塗布された維持部領域と、前記表面に活物質層が塗布されていない無地部領域とを含むことができる。
【0021】
前記維持部領域と前記無地部領域とが、前記電極の第1面に設けられることができる。
【0022】
前記維持部領域と前記無地部領域とが、前記電極の第2面に設けられることができる。
【0023】
前記維持部領域と前記無地部領域が、前記電極の第1面及び第2面にいずれも設けられることができる。このとき、前記第1面と第2面に設けられた無地部領域と維持部領域とは、互いに対応することができる。
【0024】
前記無地部領域は、電極の走行方向(長さ方向)に延在していてもよい。
【0025】
前記無地部領域は、電極の幅方向に沿って複数本が離隔して配置されていてもよい。
【0026】
前記電極における無地部領域の厚さは、維持部領域の厚さよりも薄くてもよい。
【0027】
前記圧延ロール及び走行ロールの少なくともいずれかロールは、所定の直径を有するベース面と、それより拡大した直径を有する段差面とを備えることができる。
【0028】
一例として、前記圧延ロールは、前記ベース面と段差面をいずれも備え、前記走行ロールは、段差面は備えずに、ベース面のみを備えることができる。
【0029】
他の一例として、前記圧延ロールは、前記段差面は備えずに、ベース面のみを備え、前記走行ロールは、ベース面と段差面をいずれも備えことができる。
【0030】
他の一例として、前記圧延ロールは、前記ベース面と段差面をいずれも備え、前記走行ロールも、ベース面と段差面をいずれも備えることができる。
【0031】
他の一例として、複数本の走行ロールのうち、前記圧延ロールの近くに位置する1つ以上の走行ロールは、ベース面と段差面をいずれも備え、それよりも後ろに配置される走行ロールは、ベース面のみを備えることができる。
【0032】
前記段差面は、前記電極の無地部領域と対応する位置にリング状に設けられていてもよい。
【0033】
前記ロールは、所定の直径を有するベースロールと、前記ベースロールの外周に結合される段差リングとを備えることができる。
【0034】
前記ベースロールは、その外周に円筒状のベース面が設けられていてもよい。
【0035】
前記段差リングは、その外周面が、前記ベース面よりも直径の拡張した形態の段差面を備えることができる。
【0036】
前記ベース面と段差面との段差は、前記維持部と無地部との段差、つまり前記活物質層の表面と、露出した金属ホイルの表面との間の段差と対応することができる。これによって、同一の回転速度で回転するロールの段差面の線速度は、ベース面の線速度よりもさらに大きくてもよい。すなわち、維持部の表面に接するベース面の線速度よりも、無地部の表面に接する段差面の線速度がさらに大きくてもよい。無地部の表面に接する段差面の線速度が大きいと、それだけ維持部の金属ホイルよりも、無地部の金属ホイルにさらに大きな張力が作用するため、無地部の金属ホイルの延伸量をさらに増加させることができる。
【0037】
前記圧延ロールにおいて、前記ベース面と段差面との段差は、前記維持部と無地部との段差よりも小さくてもよい。これによって、維持部に対するベース面の圧力が大きく作用するようにして、圧延を円滑に行うことができる。
【0038】
前記圧延ロールは、ベース面のみを備えることができる。これによって、維持部に対するベース面の圧力が大きく作用するようにして、圧延を円滑に行うことができる。
【0039】
前記走行ロールにおいて、前記ベース面と段差面との段差は、前記維持部と無地部との段差よりも大きくてもよい。これによって、無地部に対する段差面の圧力が大きく作用するようにして、無地部に対する延伸量を増加させることにより、圧延ロールを通りながら発生した維持部領域の金属ホイルの延伸量と、無地部領域の金属ホイルの延伸量との差を減らすことができる。
【0040】
ベース面と段差面をいずれも備える走行ロールは、前記圧延ロールの真後ろに配置されていてもよい。
【0041】
ベース面と段差面をいずれも備える走行ロールによって、維持部の金属ホイルの延伸量と、無地部の金属ホイルの延伸量との差を、所定の割合以上に解消した場合、これよりも後ろに配置する走行経路には、ベース面のみを備える走行ロールを配置することができる。
【0042】
前記所定の割合は、維持部の金属ホイルの延伸量と、無地部の金属ホイルの延伸量との差によって、走行過程で、無地部に変形が生じない程の範囲で決定することができる。
【0043】
前記ロールにおいて、ベース面は、ベースロールによって規定され、段差面は、段差リングによって規定される。
【0044】
前記ベース面は、維持部の表面と接し、前記段差面は、前記無地部と接することができる。
【0045】
前記段差リングが設置された位置は、前記ロールが接する電極の無地部領域の位置と対応することができる。
【0046】
前記段差リングの幅は、段差リングと対応する無地部領域の幅と対応するか、それよりも1mm内外と、さらに小さくてもよい。
【0047】
前記段差リングの外周に設けられた、前記段差面の表面で測定される摩擦係数は、前記ベースロールの外周に設けられた、前記ベース面の摩擦係数よりもさらに大きくてもよい。
【0048】
前記段差面が、前記ベース面よりも摩擦係数がさらに大きいのは、前記電極の活物質層の表面が、金属ホイルの表面よりも摩擦係数がさらに大きいのと相補的なものであってもよい。
【0049】
これによって、前記ベース面と前記活物質層との間の摩擦係数と、前記段差面と前記金属ホイルとの間の摩擦係数とのバランスを取ることができる。これによって、前記維持部と無地部との圧延率差をさらに減らすことができるようになる。
【0050】
このように、段差リングの摩擦係数が、ベース面の摩擦係数よりもさらに大きいロールの構造は、例えば、圧延ロールに適用することができる。
【0051】
前記段差リングの外周に設けられた、前記段差面の表面で測定される摩擦係数は、前記ベースロールの外周に設けられた、前記ベース面の摩擦係数よりもさらに小さくてもよい。
【0052】
これによって、ロールの回転力によって電極シートに伝達される力が、相対的に幅の狭い無地部に集中しないようにして、無地部の過度な変形が生じないようにすることはもちろん、段差リングの耐久性も確保することができる。
【0053】
このように、段差リングの摩擦係数が、ベース面の摩擦係数よりもさらに小さいロールの構造は、例えば、走行ロールに適用することができる。
【0054】
前記段差リングの弾性係数は、前記ベースロールの弾性係数よりも小さくてもよい。かかる構造を圧延ロールに適用するとき、前記圧延効果をさらに高めることができる。かかる構造を走行ロールに適用するとき、無地部の過度な変形が生じないようにすることはもちろん、段差リングの耐久性も確保することができる。
【0055】
前記ベースロールは、第1金属材質を含み、前記段差リングは、前記第1金属材質よりも軟質な第2金属材質を含むことができる。これと違って、前記ベースロールは、金属材質を含み、前記段差リングは、合成樹脂材質を含むことができる。
【0056】
これによって、無地部の圧延率を向上させて、前記維持部の圧延率との差をさらに減らすことができる。
【0057】
前記ベースロールと段差リングは、別途部品として提供することができる。
【0058】
これによって、前記段差リングは、前記ベースロールに着脱可能に結合することができる。
【0059】
前記ロールは、用意したベースロールの外周に段差リングを設置して製作することができる。
【0060】
前記段差リングは、前記ベースロールに粘着又は接着することができる。
【0061】
前記段差リングは、バンドを前記ベースロールに1回又は2回以上巻き取って具現することができる。
【0062】
前記バンドは、PTFE(Polytetrafluoroethylene)がコーティングされた材質であってもよい。
【0063】
前記段差リングを弾性変形して、その内径を拡張した状態で前記ベースロールに挟み、その内径が縮小するように弾性修復させる方式で、前記段差リングを前記ベースロールに固定させることができる。
【0064】
前記段差リングは、軸方向に、前記ベースロールの外周に圧入(press fit)される。かかる圧入の便宜のため、前記段差リングは、前記ベースロールよりも軟質であってもよい。
【0065】
前記段差リングを熱膨張し、その内径を拡張した状態で前記ベースロールに挟み、その内径が縮小するように冷凍させる方式で、前記段差リングを前記ベースロールに固定させることができる。これら焼きばめの便宜のため、前記ベースロールは、第1金属材質を含み、前記段差リングは、前記第1金属材質よりも熱膨張係数のさらに大きい第2金属材質を含むことができる。
【0066】
本発明によれば、前記電極製造装置のロールは、前記ロールが巻き取る電極の寸法と形態によって交換することができる。
【0067】
前記電極製造装置のロール交換方法は、ベースロールに既に結合された段差リングを、前記ベースロールから分離する段差リングの除去ステップと、さらに前記ベースロールに他の段差リングを結合する段差リングの再設置ステップとを含む。
【0068】
段差リングの除去ステップにおいて、前記段差リングの内周面と、前記ベースロールの外周面との間の粘着又は接着層を除去することができる。
【0069】
段差リングの除去ステップにおいて、前記段差リングは、その直径が拡張するように、弾性変形又は熱変形した状態で前記ベースロールから除去することができる。
【0070】
段差リングの除去ステップにおいて、前記段差リングは、前記ベースロールから軸方向に押出することができる。
【0071】
段差リングの再設置ステップにおいて、前記段差リングの内周面と、前記ベースロールの外周面は、粘着又は接着することができる。
【0072】
段差リングの再設置ステップにおいて、前記段差リングは、その直径が拡張するように、弾性変形又は熱変形した状態で前記ベースロールに挟まれていてもよい。
【0073】
段差リングの再設置ステップにおいて、前記段差リングは、前記ベースロールに軸方向に圧入することができる。
【発明の効果】
【0074】
本発明によれば、圧延ロールを通過して、延伸率が相違する無地部と維持部に対して、前記圧延ロールに後ろに配置する走行ロールにおいて、これに相補的な延伸を行うことにより、無地部の金属ホイルに襞が発生する現象を防止することができる。
【0075】
本発明によれば、圧延ロールと走行ロールの特性に適するように、ベース面と段差面との段差の大きさを定めて、ベース面と段差面の摩擦係数を区別し、ベースロールと段差リングの弾性係数を異なって適用することにより、無地部に発生する襞を根本的に防止することができる。
【0076】
本発明は、ベース面を構成するベースロールと、段差面を構成する段差リングとを着脱可能に提供してロールを構成することから、加工しようとする電極シートの活物質層の厚さが変更されるか、無地部の位置や幅などが変更されても、変更された電極シートに対応するように、ロールを容易に構成することができる。これは、電極の寸法や形状が変更される度に、別途ロールを備えなければならない面倒を減らす。
【0077】
上述した効果並びに本発明の具体的な効果は、以下の発明を実施するための形態を説明するとともに記述する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】本発明の電極製造装置によって圧延加工が行われる電極の実施形態を示した斜視図である。
図2】本発明の電極製造装置によって圧延加工が行われる電極の実施形態を示した平面図である。
図3】本発明による電極製造装置に電極が走行される状態と、当該電極を省略した状態とを、第1方向から視た斜視図である。
図4】本発明による電極製造装置に電極が走行される状態と、当該電極を省略した状態とを、第1方向から視た斜視図である。
図5】本発明による電極製造装置に電極が走行される状態と、当該電極を省略した状態とを、前記第1方向と異なる第2方向から視た斜視図である。
図6】本発明による電極製造装置に電極が走行される状態と、当該電極を省略した状態とを、前記第1方向と異なる第2方向から視た斜視図である。
図7】本発明による電極製造装置に電極が走行される状態を、それぞれ側面と上方から視た側面図である。
図8】本発明による電極製造装置に電極が走行される状態を、それぞれ側面と上方から視た平面図である。
図9】電極製造装置のロールのベースロールと段差リングとの組み立て過程の第1実施形態を示した図である。
図10】電極製造装置のロールのベースロールと段差リングとの組み立て過程の第2実施形態を示した図である。
図11】電極製造装置のロールのベースロールと段差リングとの組み立て過程の第3実施形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
前述した目的、特徴及び長所は、添付の図面を参照して詳細に後述され、これによって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術思想を容易に実施することができる。本発明を説明するにあたり、本発明に係る公知の技術に関する具体的な説明が、本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には、詳細な説明を省略する。以下では、添付の図面を参照して、本発明による好ましい実施形態を詳説することとする。図面における同じ参照符号は、同一又は類似の構成要素を示すために使われる。
【0080】
たとえ、第1、第2などは、様々な構成要素を示すために使われるものの、これら構成要素は、これらの用語によって制限されないことは勿論である。これらの用語は、単に一構成要素を他の構成要素と区別するために使うものであり、特に逆の記載がない限り、第1構成要素は、第2構成要素であってもよいことは勿論である。
【0081】
全明細書において、特に逆の記載がない限り、各構成要素は、単数であってもよく、複数であってもよい。
【0082】
以下では、構成要素の「上部(又は下部)」又は構成要素の「上(又は下)」に任意の構成が配されるということは、任意の構成が、上記構成要素の上面(又は下面)に接して配されるだけでなく、上記構成要素と、上記構成要素上に(又は下に)配された任意の構成との間に他の構成が介在し得ることを意味する。
【0083】
また、ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」又は「接続」されると記載されている場合、上記構成要素は、互いに直接に連結されるか、或いは接続されていてもよいものの、各構成要素の間に他の構成要素が「介在」するか、各構成要素が他の構成要素を介して「連結」、「結合」又は「接続」されていてもよいと理解しなければならない。
【0084】
本明細書で使われる単数の表現は、文脈上白らかに他に意味しない限り、複数の表現を含む。本出願における「構成される」又は「含む」などの用語は、明細書上に記載した複数の構成要素、或いは複数のステップを必ずしも全て含むものであると解釈されてはならず、その中、一部の構成要素又は一部のステップは含まれていなくてもよく、或いはさらなる構成要素又はステップをさらに含むことができると解釈しなければならない。
【0085】
また、本明細書で使われる単数の表現は、文脈上明らかに他に意味しない限り、複数の表現を含む。本出願における「構成される」又は「含む」などの用語は、明細書上に記載した複数の構成要素、或いは複数のステップを必ずしも全て含むものであると解釈されてはならず、その中、一部の構成要素又は一部のステップは含まれていなくてもよく、或いはさらなる構成要素又はステップをさらに含むことができると解釈しなければならない。
【0086】
全明細書における「A及び/又はB」とするとき、これは特に逆の記載がない限り、A、B又はA及びBを意味し、「C~D」とするとき、これは特に逆の記載がない限り、C以上かつD以下であることを意味する。
【0087】
以下では、本発明の好ましい実施形態を添付の図面を参照して詳説する。
【0088】
実施形態を説明するにあたり、電極の長さ方向は、電極が走行移送される方向を意味し、電極の幅方向は、ロールの幅と対応する方向を意味する。
【0089】
<電極シート>
以下では、図1及び図2を参照して、本発明の電極製造装置に用いられる電極の実施形態を説明する。電極10は、所定の幅を有し、長さ方向に延在したシート状の金属ホイル20を含む。前記金属ホイルの表面と裏面である第1面21と第2面22には、活物質層30が塗布乃至コーティングされる。
【0090】
前記活物質層30は、第1面21と第2面22の少なくともいずれか面に塗布することができる。実施形態では、両面にいずれも塗布された構造を例示する。
【0091】
前記金属ホイル20の表面に活物質層30を塗布する際には、前記活物質層30を塗布する領域と塗布しない領域とが存在し得る。このとき、前記活物質層30が維持部13領域内に、前記活物質層30が塗布されていない1つ又は2つ以上の無地部12領域が、長さ方向に長く延在し得る。また、前記第1面21と第2面22に設けられた無地部12領域と維持部13領域は、互いに対応する位置に形成することができる。
【0092】
実施形態では、活物質層30の幅方向内部に、2レーン(lane)の無地部12が設けられることを例示するが、これら無地部12のレーン数は、1つ又は2つ以上、様々である。無地部12のレーン数が複数本である場合、前記無地部12領域は、電極の幅方向に沿って複数本が離隔して配置されていてもよい。
【0093】
結果として、前記維持部13領域と前記無地部12領域は、一定の幅を有し、電極の走行方向(長さ方向)に延在する形態を有することができる。
【0094】
前記電極10における無地部12領域の厚さは、維持部13領域の厚さよりも薄い。
【0095】
前記電極10は、二次電池の正極板を構成するか、負極板を構成することができる。
【0096】
本発明において、正極板にコーティングされる正極活物質と、負極板にコーティングされる負極活物質は、当業界における公知の活物質であれば、制限なく用いることができる。
【0097】
前記正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物、又は1種以上の転移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-x(ここで、xは、0~0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物(LiMnO);リチウム銅酸化物(LiCuO);LiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B、又はGaであり、x=0.01~0.3である)で表されるニッケルサイト型リチウムニッケル酸化物(lithiated nickel oxide);化学式LiMn-xM(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、Zn、又はTaであり、x=0.01 ~0.1である)又はLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、Cu、又はZnである)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;化学式のリチウムの一部がアルカリ土金属イオンで置換されたLiMn;ジスルフィド化合物;Fe(MoO、又はこれらの組み合わせによって形成される複合酸化物などのように、リチウム吸着物質(lithium intercalation material)を主成分とし、上記のような種類があるものの、これらだけに限定されるものではない。
【0098】
前記金属ホイル、つまり正極集電体は、例えば、3~500μmの厚さを有する。これら正極集電体は、電池に化学的変化を誘発しない、且つ導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、塑性炭素、又はアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。電極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して、正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態が可能である。
【0099】
前記正極活物質粒子には、導電材をさらに混合することができる。これら導電材は、例えば、正極活物質を含む混合物の全体重量を基準に、1~50重量%で添加される。これら導電材は、電池に化学的変化を誘発しない、且つ高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマールブラックなどのカーボンブラック;炭素纎維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを用いることができる。
【0100】
また、負極は、金属ホイルである負極集電体上に、負極活物質粒子を塗布及び乾燥して製作され、必要に応じて、前述した導電材、バインダー、溶媒などのような成分をさらに含むことができる。
【0101】
前記負極集電体は、例えば、3~500μmの厚さを有する。これら負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発しない、且つ導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、塑性炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。また、正極集電体と同様、表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態に用いることができる。
【0102】
前記負極活物質は、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1-xMe’yO(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の 1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)の金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Biなどの酸化物;ポリアセンチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料などを用いることができる。
【0103】
前記電極に使用可能なバインダー高分子は、電極活物質粒子と導電材などの結合と、電極集電体に対する結合を助ける成分であって、例えば、電極活物質を含む混合物の全体重量を基準に1~50重量%で添加される。これらバインダー高分子の例としては、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene:PVdF)、ポリビニリデンフルオライド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、セルロースアセテートブチレート(cellulose acetate butyrate)、セルロースアセテートプロピオネート(cellulose acetate propionate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)、及びカルボキシメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)からなる群から選択されたいずれかバインダー高分子、又はこれらのうち2種以上の混合物を用いることができるものの、これに制限されるものではない。
【0104】
前記電極の製造に用いられる溶媒の非制限的な例としては、アセトン(acetone)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、メチレンクロライド(methylene chloride)、クロロホルム(chloroform)、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone,NMP)、シクロヘキサン(cyclohexane)、水、又はこれらの混合体などがある。これら溶媒は、電極集電体の表面に対して、所望の水準にスラーリ塗布層が作られるように、適正な水準の粘度を提供する。
【0105】
前記負極は、集電体;及び前記集電体の少なくとも一面に位置し、負極活物質、バインダー高分子、及び導電材を含む負極活物質層を備え、前記負極活物質層が前記集電体と面接する下層領域と、前記下層領域と当接しつつ負極活物質層の表面まで延在する上層領域とからなり、前記下層領域及び上層領域がそれぞれ独立に負極活物質として黒鉛及びケイ素係化合物のうち少なくとも1種以上を含むことができる。
【0106】
前記下層領域は、負極活物質として天然黒鉛を含み、前記上層領域には、負極活物質として人造黒鉛を含むことができる。
【0107】
前記下層領域及び上層領域は、それぞれ独立に負極活物質としてケイ素系化合物をさらに含むことができる。
【0108】
前記ケイ素系化合物は、SiO(0≦x≦2)及びSiCのうち1種以上を含むことができる。
【0109】
本発明の一具現例によると、前記負極は、下層用負極活物質として含む下層用スラーリを集電体に塗布及び乾燥して、下層領域を形成し、その後、下層領域上に上層用負極活物質として含む上層用スラーリを塗布及び乾燥して、上層領域を形成して製造することができる。
【0110】
また、本発明の一具現例によると、前記負極は、下層用負極活物質を含む下層用スラーリと、上層用負極活物質を含む上層用スラーリとを準備するステップ;負極集電体の一面に前記下層用スラーリをコーティングして、同時に或いは所定の時間差を置いて、前記下層用スラーリ上に前記上層用スラーリをコーティングするステップ;及び前記コーティングされた下層用スラーリ及び上層用スラーリを同時に乾燥して、活物質層を形成するステップ;を含む方法で製造することができる。
【0111】
このように、後者の方法で製造される場合、前記負極における下層領域と上層領域とが当接する部分に、これら相異する種類の活物質が互いに混在する混合領域(インターミキシング、intermixing)が存在し得る。これは、下層負極活物質として含む下層用スラーリと、上層負極活物質として含む上層用スラーリとを集電体上に、同時に或いは非常に短い時間差を置いて、連続してコーティングし、その後、同時に乾燥する方式で活物質層を形成する場合、下層用スラーリと上層用スラーリが、乾燥前に当接した界面上に所定の混合区間が発生し、その後、乾燥しつつ、これら混合区間が混合領域の層状に形成されるからである。
【0112】
本発明の一具現例の負極活物質層において、前記上層領域と前記下層領域の重量比(又は単位面積当たりロード量比)は、20:80~50:50、詳細は、25:75~50:50であってもよい。
【0113】
本発明の負極活物質層の下層領域及び上層領域の厚さは、前記コーティングされた下層用スラーリと、前記コーティングされた上層用スラーリとの厚さと完全に一致しなくてもよい。しかし、乾燥又は選択的な圧延工程を経た結果、最終に得られる本発明の負極活物質層の下層領域及び上層領域の厚さの割合は、前記コーティングされた下層用スラーリと、前記コーティングされた上層用スラーリとの厚さの割合と一致することができる。
【0114】
前記第1スラーリをコーティングして、同時に或いは所定の時間差を置いて、前記第1スラーリ上に前記第2スラーリをコーティングし、本発明の一具現例によれば、前記所定の時間差は、0.6秒以下、又は0.02秒~0.6秒、又は0.02秒~0.06秒、又は0.02秒~0.03秒の時間差であってもよい。このように、第1スラーリと第2スラーリをコーティングするとき、時間差が発生することは、コーティング装備に起因することから、前記第1スラーリと第2スラーリを同時にコーティングするのがさらに好ましい。前記第1スラーリ上に第2スラーリをコーティングする方法は、二重スロットダイ(double slot die)などの装置を用いることができる。
【0115】
前記活物層を形成するステップにおいて、乾燥ステップ後、活物質層を圧延させるステップをさらに含むことができる。このとき、圧延は、ロールプレス(roll pressing)のように、当業界分野における通常に用いられる方法で行うことができ、例えば、1~20MPaの圧力および15~30℃の温度で行うことができる。
【0116】
前記コーティングされた下層用スラーリ及び上層用スラーリを同時に乾燥して、活物質層を形成するステップは、熱風乾燥及び赤外線乾燥の装置を組み合わせた装置を用いて、当業界分野における通常に用いられる方法で行うことができる。
【0117】
前記下層用スラーリの固形分における第1バインダー高分子の重量%が、前記上層用スラーリの固形分における第2バインダー高分子の重量%と同様であるか、さらに多くてもよい。本発明の一具現例によれば、前記下層用スラーリの固形分における第1バインダー高分子の重量%が、前記上層用スラーリの固形分における第2バインダー高分子の重量%よりも1.0~4.2倍、又は1.5~3.6倍、又は1.5~3倍大きくてもよい。
【0118】
このとき、前記コーティングされた下層用スラーリにおける第1バインダーの重量%と、前記コーティングされた上層用スラーリにおける第2バインダーの重量%との割合とが、かかる範囲を満たす場合、下層領域のバインダーが少な過ぎなくて、電極層の脱離が発生しないし、上層領域のバインダーが多過ぎなくて、電極上層部の抵抗が減少して、急速充電性能に有利である。
【0119】
前記下層用スラーリの固形分における第1バインダー高分子の重量%は、2~30重量%、又は5~20重量%、又は5~20重量%であってもよく、前記上層用スラーリの固形分における第2バインダー高分子の割合(重量%)は、0.5~20重量%、又は1~15重量%、又は1~10重量%、又は2~5重量%であってもよい。
【0120】
前記下層用スラーリ及び前記上層用スラーリ全体の固形分における第1バインダー高分子及び第2バインダー高分子の総割合(重量%)は、2~20重量%、又は5~15重量%であってもよい。
【0121】
<電極製造装置>
以下では、図3図8を参照して、前記ロールプレスによる圧延工程を行う本発明の電極製造装置について説明する。
【0122】
本発明の電極製造装置は、上述したシート状の電極10を圧延する圧延ロール(A)と、これを移送する走行ロール(B)と、電極10のテンションを調節するテンションロール(C)と、を含むことができる。走行ロール(B)は、圧延ロール(A)の以前にも存在し得るが、本発明によるロール40の形態は、圧延ロール(A)の以後に存在すれば結構であるため、実施形態では、圧延ロール(A)以後の走行ロール(B)とテンションロール(C)とを開示する。
【0123】
実施形態における前記圧延ロール(A)は、一対が揃って備えられる。前記電極10は、上記一対の圧延ロール(A)の間を通りながら圧延されていてもよい。
【0124】
前記走行ロール(B)は、少なくとも1つ以上、複数本具備されていてもよい。各々の走行ロール(B)は、前記電極の第1面21と第2面22のいずれか面に接することができる。実施形態で示した走行ロール(B)とテンションロール(C)の配置は、一例に過ぎないし、本発明の技術的範囲が、これらロールの配置に限定されないことは当然である。
【0125】
前記圧延ロール(A)及び前記圧延ロール(A)よりも後ろに配置する走行ロール(B)は、所定の直径を有するベース面413と、それより拡大した直径を有する段差面422とを備えることができる。
【0126】
前記段差面422は、前記電極製造装置を滑走する電極10の無地部12領域と対応する位置に、リング状に設けることができる。
【0127】
前記ベース面413と段差面422は、一部品として製作されるロール40に設けられていてもよい。
【0128】
これと違って、前記ベース面413を提供する部品と、段差面422を提供する部品とは、別途部品として製作された後に結合する形態にロール40を提供することもできる。
【0129】
前記ベース面413は、所定の直径を有するベースロール41の外周面によって規定される。すなわち、前記ベースロール41は、その外周に円筒状のベース面413が設けられていてもよい。
【0130】
前記段差面422は、前記ベースロール41の外周に結合される段差リング42によって規定される。すなわち、前記段差リング42は、その外周面が、前記ベース面413よりも直径の拡張した形態の段差面422を備えることができる。
【0131】
このように、相異する部品としてベースロール41と段差リング42を製作すると、相異する材質を適用することができる。相異する材質は、相異する固有の性質を有する。例えば、ベースロール41と段差リング42は、弾性係数の異なる材質であってもよく、系列(金属、合成樹脂など)自体が異なる材質であってもよく、軟性、熱膨張係数など、相異する性質を有する材質として製作することができる。
【0132】
前記ベース面413と段差面422との段差、つまり半径の差は、前記維持部13と無地部12の段差、つまり前記活物質層30の表面と、露出した金属ホイル20の表面との間の段差、つまり高さの差と実質的に対応することができる。
【0133】
これによって、前記ベース面413は、維持部13の表面と接し、前記段差面422は、前記無地部12の表面と接することができる。
【0134】
さらに、ベースロール41上に前記段差リング42が設置された位置は、前記ロール40が接する電極10の無地部12領域の位置と対応することができる。
【0135】
前記段差リング42の幅は、段差リング42と対応する無地部12領域の幅と対応するか、それよりも1mm内外と、さらに小さくてもよい。
【0136】
前記段差リング42の外周に設けられた前記段差面422の表面で測定される摩擦係数は、前記ベースロール41の外周に設けられた前記ベース面413の摩擦係数と異なっていてもよい。
【0137】
同様、前記電極10の維持部13の表面の摩擦係数と、無地部12の表面の摩擦係数とは、互いに異っていてもよい。
【0138】
前記段差面422の摩擦係数と、前記ベース面413の摩擦係数とが異なることは、前記無地部12の表面の摩擦係数と、前記維持部13の表面の摩擦係数とが異なるのと相補的なものであってもよい。
【0139】
例えば、維持部13の摩擦係数が、前記無地部12の摩擦係数よりも大きいと、前記段差面422の摩擦係数は、前記ベース面413の摩擦係数よりも大きくてもよい。
【0140】
また、例えば、維持部13の摩擦係数が、前記無地部12の摩擦係数よりも大きいだけ、前記段差面422の摩擦係数は、前記ベース面413の摩擦係数よりもさらに大きくてもよい。
【0141】
これによって、前記ベース面413によって、前記活物質層30が加圧される際に作用する摩擦力と同様、前記段差面422によって、前記金属ホイル20が加圧される際にも摩擦力が作用し得る。これによって、電極10が圧延ロール(A)を通りながら圧延されるとき、前記維持部13と無地部12との圧延率差をさらに減らすことができるようになる。
【0142】
前記段差リング42の弾性係数は、前記ベースロール41の弾性係数よりも小さくてもよい。例えば、前記ベースロール41は、第1金属材質を含み、前記段差リング42は、前記第1金属材質よりも軟質な第2金属材質を含むことができる。これと違って、前記ベースロール41は、金属材質を含み、前記段差リング42は、合成樹脂材質を含むことができる。これによって、無地部の圧延率を向上させて、前記維持部の圧延率との差をさらに減らすことができる。
【0143】
前記電極製造装置は、前記圧延ロール(A)を、段差リング42を備えるロール40で構成し、それより後位に位置する走行ロール(B)も、段差リング42を備えるロール40で構成するものの、前記走行ロール(B)は、2つ以上備えられて、これらのいずれかは、電極10の第1面21と接して、これらの他のいずれかは、電極10の第2面に接するように構成することで、圧延ロール(A)における発生し得る無地部12の変形を、移送走行過程で走行ロール(B)の段差リング42を再び復元させることができる。
【0144】
<ロールの交換>
本発明によれば、前記電極製造装置のロール40は、前記ロール40が巻き取る電極10の寸法と形態によって交換することができる。
【0145】
前述したように、段差リング42の位置は、無地部12の位置と対応するように設定され、段差リング42の幅は、無地部12の幅と対応するように設定される。したがって、電極製造装置に適用される電極10の無地部12レーンの数や位置や幅が異なってくると、段差リング42の適用されたロール40を全て交換しなければならない。
【0146】
本発明のロール40は、前記ベースロール41と段差リング42を別途部品として提供するものの、前記段差リング42が、前記ベースロール41に着脱可能に結合するように提供される。
【0147】
これによって、相異する形態の電極10に対応するロールをいずれも別途備えることなく、1つのベースロール41に適用される段差リング42の幅を互いに異なって構成するだけでも、相異する形態の電極10に対応することができる。すなわち、相異する材質の別途部品としてベースロール41と段差リング42を製作することは、前述したように、圧延や移送過程で、ロール40と電極10との間の相互作用を、より細密に制御することを可能にすることはもちろん、電極10に対応するロール40を備える方法においても、大きな利点をもたらし得るものである。
【0148】
図9を参照すると、前記ベースロール41に前記段差リング42を結合させる方法は、先ず、前記段差リング42を弾性変形して、その内径を拡張した状態で前記ベースロール41に挟み、前記段差リング42の内径が縮小するように、前記段差リング42を弾性復元させることにより、前記段差リング42の内周面が、前記ベースロール41の外周面に圧着する方式であってもよい。
【0149】
もちろん、これによれば、既に段差リング42がベースロール41に結合した状態で、前記段差リング42を前記ベースロール41から分離させる方法は、上記結合方法の逆順に行うことができる。
【0150】
前記段差リング42は、弾性変形させるに足りる程に弾性係数が小さく、弾性変形範囲が広い材質であってもよい。これは、例えば、ゴムリングであってもよい。
【0151】
次に、前記段差リング42を熱膨張して、その内径を拡張した状態で前記ベースロール41に挟み、その内径が縮小するように冷凍させる方式であって、前記段差リング42を前記ベースロール41に固定させることもできる。これら焼きばめの便宜のため、前記ベースロール41は、第1金属材質を含み、前記段差リング42は、前記第1金属材質よりも熱膨張係数のさらに大きい第2金属材質を含むことができる。これら材質の選定は、ベースロール41に結合されている段差リング42を分離する際にさらに便利性を提供する。
【0152】
次に、図10を参照すると、前記段差リング42は、軸方向に、前記ベースロール41の外周に圧入(press fit)することができる。かかる圧入の便宜のため、前記段差リング42は、前記ベースロール41よりも軟質であってもよい。これはもちろん、ベースロール41から段差リング42を分離する押出過程においても有利である。
【0153】
次に、図11を参照すると、前記段差リング42は、前記ベースロール41の周をテープやバンドにより、1回~数回包む方式でベースロール41に結合することができる。このとき、前記段差リング42は、前記ベースロール41に粘着又は接着されていてもよい。前記段差リング42をベースロール41から分離する際は、前記粘着又は接着を破壊して、前記段差リング42を前記ベースロール41から分離することができる。
【0154】
これによって、前記電極製造装置のロール40交換方法は、ベースロール41に既に結合された段差リング42を、前記ベースロール41から分離する段差リングの除去ステップと、さらに前記ベースロール41に他の段差リング42を結合する段差リングの再設置ステップとを含む。
【0155】
前述したように、段差リングの除去ステップにおいて、前記段差リング42は、その直径が拡張するように、弾性変形又は熱変形した状態で前記ベースロール41から除去することができる。
【0156】
これと違って、前記段差リング42は、前記ベースロール41から軸方向に押出することができる。
【0157】
これと違って、前記段差リング42の内周面と、前記ベースロール41の外周面との間の粘着又は接着層を除去することができる。
【0158】
段差リングの再設置ステップにおいて、前記段差リング42は、その直径が拡張するように、弾性変形又は熱変形した状態で前記ベースロール41に挟むことができる。
【0159】
これと違って、前記段差リング42は、前記ベースロール41に軸方向に圧入することができる。
【0160】
これと違って、前記段差リング42の内周面と、前記ベースロール41の外周面は、粘着又は接着されていてもよい。
【0161】
前述した実施形態は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならず、本発明の範囲は、前述した詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示される。そして、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲はもちろん、その等価概念から想到するすべての変更及び変形可能な形態は、本発明の範囲に含まれると解釈しなければならない。
【0162】
以上のように、本発明について例示の図面を参照して説明したが、本発明は、本明細書で開示の実施形態と図面によって限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で通常の技術者によって様々な変形が行われることは自らかである。なお、本発明の実施形態を前述しつつ、本発明の構成による作用効果を明示的に記載して説明しなかったとしても、当該構成によって予測可能な効果も認めるべきであることは当然である。
【符号の説明】
【0163】
10 電極
12 無地部
13 維持部
20 金属ホイル
21 第1面
22 第2面
30 活物質層
40 ロール
41 ベースロール
413 ベース面
42 段差リング
422 段差面
A 圧延ロール
B 走行ロール
C テンションロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】