(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】水素ガス分配システムのための圧力又は流量調整方法
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
F17C5/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527727
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 US2022049837
(87)【国際公開番号】W WO2023091375
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】グエリフ,ピエール-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】コング,ポール
(72)【発明者】
【氏名】イップ,ウェンディ,メイ イー
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,ホルヘ
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB13
3E172BB17
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA12
3E172EA22
3E172EA35
3E172EB02
3E172KA22
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、水素ガスの分配システムの安定性を改善するための方法に関する。そのようなシステムの例は、水素燃料車両の燃料充填ステーションである。車両は、複数の高圧水素ガスチューブで、通常は、一度に1つのチューブで充填される。安全性及び信頼性のために、そのようなシステムのための制御要件は、圧力上昇のその速度が全充填プロセスの間、一定のままであるように、燃料タンクに一定の速度で水素を送達することが可能であることである。チューブ切換中、流れの連続性及び/又は圧力をより適切に維持するために、二重圧力調整器の設備が提案される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レセプタクル容器に加圧ガスを加えるためのシステムであって、前記レセプタクル容器が前記システムに流体的に接続されており、
a)加圧ガス容器の複数のバンクであって、前記バンクがそれぞれ複数の加圧ガス容器を有し、バンクの各加圧容器が共通のバンクマニホールド及び共通のバンク圧力制御弁(PCV)に流体的に接続されている、複数のバンクと、
b)前記バンク及びそのすべての加圧ガス容器の下流であるように構成された共通バンクPCVであって、前記バンクから前記レセプタクル容器までの前記加圧ガスの流れを制御するように適合された共通バンクPCVと、
c)コンピュータ制御に応答して順番に動作するように構成及び適合されたバンクPCVと、
d)第1のバンク(バンクA)の第1の加圧容器内の加圧ガスの圧力を表す圧力値に応答して前記バンクPCVの開閉を制御するように構成されて、特に、プログラムされたコンピュータ制御であって、
(A)前記第1のバンク(バンクA)の第1の加圧ガス容器内の第1の圧力を検出するステップと、
(B)前記第1のバンク(バンクA)の前記第1の加圧ガス容器の前記第1の圧力をレセプタクル容器圧力と比較するステップと、
(C)前記(B)の比較が所定の最小圧力差に到達したときに、前記レセプタクル圧力容器との最も小さい圧力差を有する第2の加圧ガス容器を識別するために、第2のバンク(バンクB)の各加圧ガス容器の圧力値を比較するステップと、
(D)前記第2の加圧ガス容器と前記第2のバンクPCVとの間を流体連通させるために、前記第2のバンクの前記第2の加圧ガス容器の第2の隔離弁を開けるステップと、
(E)前記第1のバンクPCVを通る加圧されたガス流の圧力減衰に基づいて、前記レセプタクル容器へのガス流の最小圧力を維持するために前記第2のバンクPCVを比例的に開けるステップと、
(F)前記第1の加圧ガス容器の前記第1の圧力が前記レセプタクル容器の前記圧力との第2の予め設定された圧力差になったときに、前記第1のPCVを閉じるステップと
を実行するように特にプログラムされたコンピュータ制御と
を備える、
システム。
【請求項2】
(G)(F)と同時に又は(F)の後に、前記第1の加圧ガス容器の第1の隔離弁を閉じること
をさらに含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コンピュータ制御が、設定点交換プロセスをさらに実行するように構成されて、特に、プログラムされ、
前記第2のPCVの設定点が、前記第1のPCVの設定点より下の所定値に設定され、次いで、前記所定の設定点値がゼロに減少される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コンピュータ制御が、前記第1のバンクの第2の加圧容器及び第3の加圧容器のために(A)~(F)を繰り返すように構成されて、特に、プログラムされる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
請求項1に記載の加圧ガス送達システムに流体的に接続された容器に加圧ガスを加える方法であって、
a)前記第1のバンク(バンクA)の第1の加圧ガス容器内の第1の圧力を検出することと、
b)前記第1のバンク(バンクA)の前記第1の加圧ガス容器の前記第1の圧力をレセプタクル容器圧力と比較することと、
c)前記(B)の比較が所定の最小圧力差に到達したときに、前記レセプタクル圧力容器との最も小さい圧力差を有する第2の加圧ガス容器を識別するために、第2のバンク(バンクB)の各加圧ガス容器の圧力値を比較することと、
d)前記第2の加圧ガス容器と前記第2のバンクPCVとの間を流体連通させるために、前記第2のバンクの前記第2の加圧ガス容器の第2の隔離弁を開けることと、
e)前記第1のバンクPCVを通る加圧されたガス流の圧力減衰に基づいて、前記レセプタクル容器へのガス流の最小圧力を維持するために前記第2のバンクPCVを比例的に開けることと、
f)前記第1の加圧ガス容器の前記第1の圧力が前記レセプタクル容器の前記圧力との第2の予め設定された圧力差になったときに、前記第1のPCVを閉じることと
を含む、
方法。
【請求項6】
g)ステップf)と同時に又はステップf)の後に、前記第1の加圧ガス容器の第1の隔離弁を閉じるステップ
をさらに含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
設定点交換プロセス
をさらに含み、
前記第2のPCVの設定点が、前記第1のPCVの設定点より下の所定値に設定され、次いで、前記所定の設定点値がゼロに減少される、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のバンクの第2の加圧容器及び第3の加圧容器のためにステップa)~f)を繰り返すこと
をさらに含む、
請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加圧ガス流れ、特に、水素燃料電池車(FCEV)に燃料補給するための水素ガスの圧力安定性管理に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のチューブ(チューブバンドル)に貯蔵された高圧水素ガスは、チューブと燃料タンクとの圧力差によって、車両燃料タンク(受取タンク)に分配される。チューブバンドル貯蔵容量の利用を最大化するための戦略は、充填プロセス中のチューブと燃料タンクとの間の平均圧力差を最小化することである。燃料タンクは、最低圧力差を有するチューブから開始するカスケード方式で、一度に1つのチューブによって充填される。チューブの圧力が燃料タンク圧力に対して予め設定された限界に到達すると、それは、チューブと受取タンクとの間の次の最低圧力差を有するチューブに切り換えられる。切り換えは、最初に、流入チューブの隔離弁を開き、次いで、流出チューブの隔離弁を閉じるによって行われる。燃料タンクが所望の圧力に到達するまで、このシーケンスは繰り返される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
流れ、したがって、昇圧の速度を調整する一般的な受け入れられている方法は、圧力制御弁(PCV)による方法である。しかしながら、受取タンクへの安定した流れは、この単一のPCV設備では保証することができない。受取タンクは、弁が自動モードに維持されている場合、チューブ切換中に、おそらく、PCVの上流での急激な圧力上昇(スパイク)による流れの急増を受ける。他方で、PCVが非アクティブモード(すなわち、閉位置)に切り換えられた場合、受取タンクへの流れは阻害される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、以下の実施形態に関して理解されてもよい。システムに流体的に接続されたレセプタクル容器に加圧ガスを加えるためのシステムが開示され、そのシステムは以下を備える。a)加圧ガス容器の複数のバンクであって、バンクはそれぞれ複数の加圧ガス容器を有し、バンクの各加圧容器は、共通のバンクマニホールド及び共通のバンク圧力制御弁(PCV)に流体的に接続されている。b)共通バンクPCVは、そのバンク及びそのすべての加圧ガス容器の下流にあるように構成され、共通バンクPCVは、そのバンクからレセプタクル容器までの加圧ガスの流れを制御するように適合されている。c)バンクPCVは、コンピュータ制御に応答して順番に動作するように構成及び適合されている。d)コンピュータ制御は、第1のバンク(バンクA)の第1の加圧容器内の加圧ガスの圧力を表す圧力値に応答してバンクPCVの開閉を制御するように構成されて、特に、プログラムされる。コンピュータ制御は、A)第1のバンク(バンクA)の第1の加圧ガス容器内の第1の圧力を検出するステップと、B)第1のバンク(バンクA)の第1の加圧ガス容器の第1の圧力をレセプタクル容器圧力と比較するステップと、C)(B)の比較が所定の最小圧力差に到達したときに、レセプタクル圧力容器との最も小さい圧力差を有する第2の加圧ガス容器を識別するために、第2のバンク(バンクB)の各加圧ガス容器の圧力値を比較するステップと、D)第2の加圧ガス容器と第2のバンクPCVとの間を流体連通させるために、第2のバンクの第2の加圧ガス容器の第2の隔離弁を開けるステップと、E)第1のバンクPCVを通る加圧されたガス流の圧力減衰に基づいて、レセプタクル容器へのガス流の最小圧力を維持するために第2のバンクPCVを比例的に開けるステップと、F)第1の加圧ガス容器の第1の圧力がレセプタクル容器の圧力との第2の予め設定された圧力差になったときに、第1のPCVを閉じるステップとを実行するように特にプログラムされている。
【0005】
上記のシステムに流体的に接続された容器に加圧ガスを加える方法も開示される。この方法は、以下のステップを含む。a)第1のバンク(バンクA)の第1の加圧ガス容器内の第1の圧力が検出される。b)第1のバンク(バンクA)の第1の加圧ガス容器の第1の圧力がレセプタクル容器圧力と比較される。c)(B)の比較が所定の最小圧力差に到達したときに、レセプタクル圧力容器との最も小さい圧力差を有する第2の加圧ガス容器を識別するために、第2のバンク(バンクB)の各加圧ガス容器の圧力値が比較される。d)第2の加圧ガス容器と第2のバンクPCVとの間を流体連通させるために、第2のバンクの第2の加圧ガス容器の第2の隔離弁が開けられる。e)第1のバンクPCVを通る加圧されたガス流の圧力減衰に基づいて、レセプタクル容器へのガス流の最小圧力を維持するために第2のバンクPCVが比例的に開けられる。f)第1の加圧ガス容器の第1の圧力がレセプタクル容器の圧力との第2の予め設定された圧力差になったときに、第1のPCVは閉じられる。
【0006】
上記のシステム及び/又は方法は、以下の態様の1つを含んでもよい。
- 第1の加圧ガス容器の第1の隔離弁は、(F)と同時に又は(F)の後に閉じられる。
- コンピュータ制御は、設定点交換プロセスをさらに実行するように構成されて、特に、プログラムされ、第2のPCVの設定点は、第1のPCVの設定点より下の所定値に設定され、次いで、所定の設定点値はゼロに減少される。
- コンピュータ制御は、第1のバンクの第2の加圧容器及び第3の加圧容器のために(A)~(F)を繰り返すように構成されて、特に、プログラムされる。
- g)第1の加圧ガス容器の第1の隔離弁は、ステップf)と同時に又はステップf)の後に閉じられる。
- 設定点交換プロセスにおいて、第2のPCVの設定点は、第1のPCVの設定点より下の所定値に設定され、次いで、所定の設定点値はゼロに減少される。
- ステップa)~f)は、第1のバンクの第2の加圧容器及び第3の加圧容器のために繰り返される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、加圧ガスの流れを発生させるための先行技術のシステムを示す。
【
図2】
図2は、加圧ガス貯蔵容器の2つの独立したバンクを有する本発明の実施形態を示し、各バンクは、共通の出口導管に接続された圧力制御弁を有する。
【
図3】
図3は、圧力設定点交換プロセスの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の目的は、複数のチューブ(1~14)を2つのバンク(バンクA、バンクB)に分けることによって上記の欠点を解消することであり、各バンクは、充填がバンクの間で択一的に行われるように、1つの共通のPCV(PCV-A、PCV-B)を有する。
【0009】
チューブ切換シーケンスは、以下のように、コンピュータ(図示せず)によって管理される。
・充填は、最低圧力差を有するバンクAのチューブ(チューブ1)から車両燃料タンクに開始され、PCV-Aは昇圧の速度を制御している。バンクAのチューブ1と受取タンクとの間の圧力差が予め設定された限界に減衰すると、シーケンスは、最低圧力差を有するバンクBから車両燃料タンクへの次の充填チューブ(チューブ2)を選択し、PCV-Bまでのパイプ及びマニホールドヘッダを加圧するために、対応する隔離弁を開ける。PCV-Bは、隔離弁が開いたあと、PCV-Aの現在の設定値に追従する設定でアクティブモード(自動モード)に切り換えられ、その上流は加圧される。バンクAと受取タンクとの間の圧力差は、PCV-Aが完全な流れをもはや維持しないように減衰し続けるので、PCV-Bは、追加の流れを供給するために開き始め、バンクBは、段階的にオンラインにされる(
図3)。圧力差が予め設定された限界に到達すると、バンクAは、PCV-A、次いで、その隔離弁の傾斜閉鎖によって、オフラインにされる。受取タンクがその所望の圧力に到達するまで、サイクルはバンクAとBとの間で繰り返される。
【0010】
移行は、設定値交換戦略を適応させることによって、さらに改良することができる。PCV-Bは、PCV-Aの設定値より下のオフセットを有して自動に切り換えられる。その場合、オフセットは、段階的にゼロに減少する。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明は少なくとも、水素FCEVへの燃料補給に対して産業上利用可能である。
【0012】
本発明をその特定の実施形態とともに説明したが、当業者には、前述の記載の観点から多くの代替形態、修正形態、及び変形形態が明らかなことは明白である。したがって、一切のそのような代替形態、修正形態、及び変形形態は添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲内にあるものとする。本発明は、開示される要素を適切に含む、そのような要素からなる、又はそのような要素から本質的になることができ、且つ開示されない要素がない状態で実施することができる。さらに、第1及び第2などの順序を指す語がある場合、限定の意味ではなく例示の意味で理解すべきである。たとえば、当業者は、特定のステップを単一のステップに組み合わせることができると認識することができる。
【0013】
単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数形の指示対象を含む。
【0014】
クレーム内の「含む(comprising)」はオープンな移行語であり、その後に示されるクレーム要素が非排他的一覧(すなわち、一覧以外のものを「含む」の範囲内に付加的に含み、その範囲内に留めることができる)ことを意味する。「含む(comprising)」は、本明細書で使用される場合、本明細書中に特段の指示がない限り、より限定的な移行語「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」に入れ替えてもよい。
【0015】
クレーム内の「提供する(providing)」は、何かを備える、供給する、利用可能にする、又は準備する、を意味するように定義される。ステップは、クレーム内にそうでない旨の指示のない限り、明確な語のない状態で任意の行為者によって実施されてもよい。
【0016】
任意選択の(optional)又は任意選択的に(optionally)は、その後に記載される事柄又は状況が起こってもよい又は起こらなくてもよいことを意味する。この記載は、事柄又は状況が起こる場合及び起こらない場合を含む。
【0017】
範囲は、本明細書中において、約1つの特定値から及び/又は約別の特定値までと表されてもよい。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、前記範囲内のすべての組合せとともに、1つの特定値から及び/又は他の特定値までであることは理解すべきである。
【0018】
本明細書中で識別されるすべての参照文献はそれぞれ、それぞれが引用する特定の情報とともに、参照により全体が本出願に組み込まれる。
【国際調査報告】