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特表2024-543449等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527743
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2022081682
(87)【国際公開番号】W WO2023084061
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】21386071.1
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524176605
【氏名又は名称】バイオピックス・ディーエヌエイ・テクノロジー・エス・エイ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【弁理士】
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】パパダキス,ゲオルギオス
(72)【発明者】
【氏名】パンタジス,アレクサンドロス
(72)【発明者】
【氏名】フィカス,ニコラオス
(72)【発明者】
【氏名】フォウンタ,ディミトラ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA23
4B029BB20
(57)【要約】
等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)は、核酸増幅が行われる反応容器(15)を受容するための開口(4)と、電子回路(10)とを備える。電子回路(10)は、加熱要素としての正温度係数サーミスタ(13)と、電源ポート(9)と、任意選択的に抵抗器(12)とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)であって、
増幅されるべき核酸のサンプルを含有する反応容器(15)を受容するように構成されている開口(4)と
電子回路(10)であって、前記回路が、前記反応容器の中身を加熱するための加熱要素と、電源入力ポート(9)と、任意選択的に抵抗器(12)とを含む、電子回路(10)と
を備え、
前記加熱要素が、正温度係数サーミスタ(13)である、温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項2】
前記電源入力ポート(9)が、電源ソケット、電源プラグ、電源コンセント、モレックスポート、IECコネクタ、JSTコネクタ、同軸ポート、DINコネクタ、USBポート、バレルコネクタ、アンダーソンパワーポール、SAEコネクタ、XLRコネクタ、EmPowerコネクタ、タミヤコネクタ、またはIP44から選択されている、請求項1に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項3】
前記電源入力ポート(9)が、USBポートである、請求項2に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項4】
前記電源入力ポート(9)を通して印加される電流が、直流である、請求項1から3のいずれか一項に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項5】
前記装置(1)が、0.01W/(m・K)から0.9W/(m・K)までの熱伝導率を有する材料で作られている、請求項1から4のいずれか一項に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項6】
前記開口(4)の壁(7)が、少なくとも1W/(m・K)の熱伝導率を有する材料で作られている、請求項1から5のいずれか一項に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項7】
前記開口(4)の前記壁(7)が、金属、非金属、高充填のエポキシ、シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、またはグラフェンから選択された材料で作られている、請求項6に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項8】
前記装置は、前記反応容器(15)を保持するための手段(5)をさらに備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項9】
前記等温核酸増幅が、LAMP、Iso-IMRS、RPA、またはRCAから選択されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項10】
前記電子回路(10)が、いかなる追加の電気構成部品も備えない、請求項1から9のいずれか一項に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項11】
前記装置(1)は、いかなる追加の電子回路も備えない、請求項1から10のいずれか一項に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項12】
前記反応容器(15)が、チューブ、好ましくはPCRチューブである、請求項1から11のいずれか一項に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項13】
前記装置(1)は、前記サーミスタ(13)に面する前記開口(4)の端部において、前記開口(4)をその定位置に固定するために前記開口(4)に面する前記サーミスタ(13)の側の円形の開口部(8)と組み合わされるリング(14)を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項14】
前記開口(4)を含む前記装置の部品(2)が、前記サーミスタ(13)を含む前記装置の部品(3)に取り外し可能に接続されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【請求項15】
前記装置(1)が2つの開口(4)を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の高温における核酸増幅の実行のためのポケットサイズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸増幅は、いくつかの特定の酵素がサンプル中の少量の核酸を増幅させ、単位複製配列を生成する能力に基づいており、単位複製配列は、続いてまたはリアルタイムで、蛍光法または比色法などの様々な方法を用いて検出されることができる。核酸の増幅には、いくつもの異なる方法がある。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの、これらの方法の一部は、55℃から95℃の間での加熱および冷却の反復サイクルにサンプルを曝すことを必要とする。等温増幅法として知られる他の方法は、サンプルを一定の高温、すなわち室温よりも高い温度に曝すことを必要とする。当分野では、多くの等温増幅法が知られており、ループ介在等温増幅(LAMP:loop-mediated isothermal amplification)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA:recombinase polymerase amplification)、ローリングサークル増幅(RCA:rolling circle amplification)、および等温同一多数反復配列増幅(isoIMRS:isothermal identical multirepeat sequences amplification)等がある。ループ介在等温増幅(LAMP)法は、顕著な鎖置換活性を伴うDNAポリメラーゼとともに、分析されるDNAの異なる領域への複数のプライマー(4から6)の相補性を利用する。複数のプライマーの使用により、反応の高い特異性が確実になる。LAMPは、通常60~65℃の間の一定の温度で行われ、15~60分以内に最大10のDNAコピーの生成を可能にする指数関数特性を有する。等温同一多数反復配列(isoIMRS)増幅アッセイは、Bstポリメラーゼと、一定温度での指数関数的DNA増幅のために、ゲノムにわたって多数の遺伝子座に結合する計算的に識別された反復プライマーの単一の対とを使用する。リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)法は、リコンビナーゼ酵素と順方向プライマーと逆方向プライマーとの間の複合体の形成を必要とする。この複合体は、DNA二本鎖をほどき、指数関数的な鋳型の増幅を可能にする。RPAは、22~45℃で行われることができるが、最適な温度の範囲は、37~42℃である。ローリングサークル増幅(RCA)法は、分析される配列と、分析物に相補的な配列が側面に並んだ一本鎖DNAプローブとの相互作用によって形成される環状DNAの使用に基づいている。複合体形成の過程において、プローブの5’端および3’端が一緒に運ばれ、次いで結び付けられて、環状分子を形成する。形成された環状プローブは、DNAポリメラーゼによって伸ばされたプライマーとハイブリッド形成して、分析物DNAの多数のコピーからなる配列の生成をもたらすことができる。通常、RCAは30~37℃で行われ、一定温度での線形増幅は、数時間から数日かかり、多数の分析物コピーの合成を生じる。
【0003】
当分野の等温核酸増幅のための装置の間での共通の特徴は、加熱要素と、温度を正確に調節する温度センサと、回路を制御する処理ユニットとを含む電子回路の要求である。これが主な理由となり、例えば使い捨ての迅速抗体/抗原検査が使用される場合などに、診断研究所の外で分子検査を実行することは、依然として費用がかかり、複雑である。これまでに、単純で低コストの分子診断装置を生み出す複数の試みが展開されてきたが、それらの大部分は、複雑な電子回路およびマイクロプロセッサを含む。
【0004】
A.Ganguliらの、Rapid isothermal amplification and portable detection system for SARS-CoV-2、PNAS、2020、117,37,22727-22735は、マイクロ流体カートリッジにおいて実行されたLAMPアッセイからの蛍光発光を検出するための、器具とスマートフォンとを組み合わせたマイクロ流体診断カートリッジを開示している。この器具は、マイクロレンズ、プリント回路板(PCB)、ロングパスフィルタ、8つのLED、4つのショートパスフィルタ、オンオフスイッチ、および自動調節正温度係数加熱器を含む、光学構成部品、電気構成部品、ならびに加熱構成部品に対応する4つの主な部品を含む。
【0005】
N.Y.Jayanathらの、Development of a portable electrochemical loop mediated isothermal amplification (LAMP) device for detection of hepatitis B virus、RSC Adv.、2018,8,34954-34959は、電気化学法を用いた、LAMP反応のリアルタイム測定のための特注携帯用プロトタイプ装置の開発を開示している。このシステムは、ドロップセルコネクタと、水槽中であらかじめ設定された温度に加熱されるヒートシンクと、携帯用ポテンシオスタットと、微小電極とを備える。
【0006】
D.Kaygusuzらの、DaimonDNA: A portable, low-cost, loop-mediated isothermal amplification platform for naked-eye detection of genetically modified organisms in resource-limited settings、Biosensors and Bioelectronics、2019、141,111409は、比色法LAMP増幅および肉眼結果解釈のための携帯用装置を開示しており、この装置は、以下の電子構成部品、ペルチェ効果加熱器、温度センサ、プリント回路板(PCB)、熱電対、熱電対デジタル変換器、および電力供給源(12V直流、5A)を備える。また、ペルチェを動作させる信号を切り替え増幅するためのMOSFETおよびトランジスタを含む電子回路を制御するために、Arduino Nanoマイクロコントローラも使用された。
【0007】
米国特許出願公開第20200122142(A1)号は、DNA増幅、および分析下で生体サンプルの光学特性を検出することなどの、バイオアッセイを実行するための装置を開示している。この装置の利用された構成部品は、加熱要素、温度センサ、回路板、光センサ、発光要素、電子結果表示機構、および電力供給源を含む。
【0008】
サーミスタは、標準的な抵抗器よりも大幅に温度に依存する抵抗を持つ電気抵抗器の一種である。サーミスタには2つの主なカテゴリ、負温度係数(NTC:negative temperature coefficient)を示すもの、つまり温度が上昇するにつれてより良い導電体になるものと、正温度係数(PTC:positive temperature coefficient)を示すもの、つまり温度が上昇するにつれてより悪い導電体になるものとがある。サーミスタは、火災報知器、オーブンおよび冷蔵庫、デジタル体温計、ならびに多くの自律的な用途において、あるいは電気装置や電子装置のモータおよび回路の保護のための突入電流抑制装置ならびに電流制限装置において、温度センサとして広く使用されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、紙ベースの抗原検査(迅速検査)の造りの簡潔さおよび費用対効果に、分子検査の正確さを組み合わせた、核酸の等温増幅のためのポケットサイズ装置を提供する。
【0010】
本発明の装置は、等温核酸増幅が行われる反応容器を受容するように構成されている開口を備える。さらに、本装置は、加熱要素としての正温度係数(PTC)サーミスタと、電源入力ポートと、任意選択的に抵抗器とを含む電子回路を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による装置を示す図である。
図2】本発明による装置の2つの部品を示す図である。
図3】サーミスタを含む、本発明による装置の部品を示す図である。
図4】反応容器を受容するための開口を含む、本発明による装置の部品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、等温核酸増幅のためのポケットサイズ装置を提供する。装置は、等温核酸増幅が行われる反応容器を受容するように構成されている開口と、反応容器の中身を加熱するための電子回路とを備える。
【0013】
装置の電子回路は、加熱要素としてのPTCサーミスタと、電源入力ポートと、任意選択的に抵抗器とを含む。
【0014】
サーミスタは、開口に熱的に連結されるように配置されている。したがって、反応容器が開口に位置付けられているとき、サーミスタは、反応容器に熱的に連結されている。
【0015】
電流がサーミスタを通って流れ、サーミスタは、その温度が上昇し、その抵抗もまた増加し、したがって、通る電流を自動調節する。このようにして、サーミスタの温度は一定に保たれる。印加される電圧とサーミスタの温度との間の関係があるため、温度は、サーミスタに印加される電圧によってあらかじめ決定される。
【0016】
サーミスタが要求される温度に到達するために必要な電圧よりも、電源入力ポートを通して与えられる入力電圧が大きい場合、電子回路は抵抗器をさらに含み、この抵抗器は、電圧分配器として機能し、所望の電圧をサーミスタに送達する。代替的に、要求される電圧を、電源入力ポートを通してサーミスタに直接印加することが可能である。この場合、電子回路は抵抗器を含む必要がない。
【0017】
電源入力ポートは、電源ソケット、電源プラグ、電源コンセント、モレックスポート、国際電気標準会議(IEC)コネクタ、日本無はんだ端子(JST)コネクタ、同軸ポート、ドイツ工業規格(DIN)コネクタ、ユニバーサルシリアルバス(USB)ポート、バレルコネクタ、アンダーソンパワーポール、SAEコネクタ、XLRコネクタ、EmPowerコネクタ、タミヤコネクタ、IP44、または電力を送達することができる任意の類似のコネクタなどの、当分野でよく知られている異なる形態を有することができる。好ましい一実施形態によれば、電源入力ポートは、USBポートタイプA、B、C、もしくはマイクロUSBポートなどのUSBポート、または小さな実装面積を有することが好ましい任意の類似のポートを含む。
【0018】
電源入力ポートを通して印加される電流は、直流(DC)であることが好ましい。印加される電圧は、1Vから230Vの範囲であることが好ましい。電流は最大5Aであることが好ましい。代替的に、交流(AC)もまた、本発明の装置に印加されることができる。しかしながら、PTCサーミスタ製造業者によれば、材料の構造のため、AC電圧に対するPTCサーミスタは、純粋なオーム抵抗器ではなく、粒界接合により容量性抵抗器として作用する。したがって、本発明の装置で使用されるべき入力電圧は、DC電圧であることが好ましい。好ましい一実施形態によれば、装置に印加される入力電圧は5VのDC電圧であり、電流は2~3Aである。
【0019】
好ましい一実施形態によれば、装置は、いかなる追加の電子回路も備えない。
【0020】
別の好ましい実施形態によれば、装置の電子回路は、いかなる追加の電気的な構成部品も含まない。
【0021】
装置は、等温核酸増幅が行われる反応容器を受容するように構成されている開口を備える。開口の壁は、1W(m・K)よりも高い熱伝導率を有する材料で作られていることが好ましい。そのような材料の例には、高充填のエポキシ、シリコン、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、グラフェンなどの金属、非金属、またはポリマーがある。しかしながら、ポリプロピレン(PP)およびアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)などの熱伝導率がより低い(例えば0.01~0.9W/(m・K))の他の材料もまた使用されることができる。開口およびサーミスタは、サーミスタが開口に熱的に連結されているように、配置されている。したがって、反応容器が開口に位置付けられているとき、反応容器は、サーミスタに熱的に連結されている。装置の動作中、サーミスタの温度が上昇するにつれて、開口の壁の温度も増加し、それによって、反応容器およびその中身が加熱される。
【0022】
装置の残りの部分は、装置の開口内に熱を保つために、低い熱伝導率(例えば0.01~0.9W/(m・K))を有する材料で作られていることが好ましい。そのような材料の例には、ABS、アクリル、PP、FR4、ガラス、ポリ(4,4’-オキシジフェニレン-ピロメリチミド)(Kapton(登録商標)など)、ナイロン、プレキシガラス、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ゴム、ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標)など)がある。
【0023】
反応容器の加熱は、反応容器がサーミスタおよび開口の壁と熱的に接触しているので、主に伝導を通じて起こり、サーミスタが開口内に捕捉されているいずれの空気をも加熱し、その空気が反応容器を加熱するので、部分的には対流を通じて起こる。
【0024】
装置は、反応容器を受容するように各々構成されている2つ以上の開口、例えば2つの開口を備え得る。そのような場合、2つ以上の増幅反応が同時に行われることができる。そのような一実施形態では、すべての容器の加熱が、同じPTCサーミスタによって実施されることが好ましい。
【0025】
反応容器は、核酸増幅の実行のために一般的に使用される任意の容器であることができる。反応容器の容量は、0.1mlから5mlまでであることが好ましい。反応容器は、PCRチューブなどのチューブであることが好ましい。反応容器は、ポリプロピレンなどの透明または半透明の材料から作られていることが好ましい。
【0026】
分析を実行するために、分析されるべきサンプルと、プライマー、酵素、検出剤などの要求される試薬とが、反応容器に加えられる。次いで、反応容器は、装置の開口の中に挿入される。次いで、電源入力ポートが電力源に接続され、増幅反応の完了に要求される時間、典型的には15分から30分の間、接続された状態を保たれる。次いで、反応容器は装置から取り除かれ、反応容器の中身は、例えば目視で、着目する核酸がサンプル中に存在したかどうかを確かめるために調査される。反応容器の中身を目視検出するためには、いくつもの異なる方法があり、当分野でよく知られている。例えば、目視検出は、pH感受性色素または金属結合指示薬またはDNAインターカレーティング色素などを利用することによって、反応容器の中身の色変化に基づくことができる。また、目視検出は、ピロリン酸マグネシウムの生成後に、溶液の濁度の変化を可視化することによって実行されることもできる。肉眼での検出の代わりとして、比濁法、蛍光法などの他の方法によって、またはUV光源を用いることによって、DNA単位複製配列の生成が検出されることができる。スマートフォンのカメラおよび適切なスマートフォンのアプリもまた、DNA増幅生成物の感度の高い検出のために使用され得る。
【0027】
本発明の装置は、等温核酸増幅法、すなわち、核酸増幅が室温よりも高い一定の温度で実行される方法において使用される。等温核酸増幅法は、LAMP、RPA、RCA、またはIso-IMRSであることが好ましい。より好ましくは、等温核酸増幅法は、LAMP、またはIso-IMRSである。
【0028】
本発明の装置は、使い捨て、すなわち1回限りの使用に適していることができ、または使い捨てではない、すなわち2回以上の使用に適していることができる。
【0029】
好ましい一実施形態によれば、反応容器は、装置の開口の中に挿入された後に、安全確保リングなどの安全確保手段の使用によって、固定されることができる。このようにして、反応容器は、動作中に装置から不注意で取り除かれることができない。増幅の完了後、安全確保手段が装置から取り除かれ得、反応容器は、取り除かれ調査される。
【0030】
別の好ましい実施形態によれば、反応容器は、取り除くことができない安全確保リングなどの安全確保手段で固定されている。この実施形態によれば、開口を含む装置の部品は、サーミスタを含む装置の部品に取り外し可能に接続されている。反応容器の下部部品は、開口を含む装置の部品の下部表面を通って突出することが好ましい。サンプルの分析が完了すると、反応容器を保持する開口を含む装置の部品は、装置の残りの部品から取り外され、反応容器の中身は、着目する核酸がサンプル中に存在したかどうかを確かめるために調査される。装置が使い捨てではない場合、開口を含む装置の部品は、検査が完了する度に交換される。このようにして、この部品に保持されている反応容器は、適正に捨てられる。
【0031】
本発明の装置は、ポケットサイズであり、すなわち大人のユーザーの手の掌またはポケットに収まる。さらに装置は、非常に単純で、低コストで、製造が容易である。反応容器の中身を加熱することは、簡単かつ効果的に実行される。したがって、従来技術の装置の複雑な電子回路は必要ではない。さらに、装置の動作は非常に簡潔であり、つまりユーザーは、核酸増幅を実行するためのいずれの専門的な知識または技能も必要としない。それに加えて、装置は、研究所の中だけでなく、任意の状況で使用されることができる。
【0032】
図1は、本発明による装置の一実施形態を示す。装置(1)は、下部部品(3)に取り外し可能に接続されている上部部品(2)を備える。
【0033】
図2は、装置の上部部品(2)が、2つの反応容器(図示せず)を受容するための2つの開口/スロット(4)を含むことを示す。各反応容器を取り囲む開口(4)の壁(7)は、アルミニウムで作られているのに対し、装置の上部部品(2)の残りの部分(6)は、ポリプロピレンで作られている。リング(5)は、各反応容器を上部部品(2)の開口部(4)内に保持する。装置の下部部品(3)は、開口(4)に面するサーミスタ(13)の側に円形の開口部(8)を含み、この円形の開口部(8)は、上部部品(2)およびしたがって開口(4)をそれらの定位置に固定するために、上部部品(2)のリング(図示せず)と組み合わされる。装置の下部部品(3)は、ポリプロピレンで作られている。下部部品(3)はさらに、タイプCのUSBポート(9)およびPCB上に電子回路(10)を含む。電子回路(10)は、導電線(11)と、抵抗器(12)と、PTCサーミスタ(13)とを含む。上部部品(2)がその定位置に固定されているとき、サーミスタ(13)は、開口(4)に熱的に連結されている。
【0034】
図3は、図2に関して上記で述べた特徴を含む装置の下部部品(3)の異なる図を示す。
【0035】
図4は、図2に関して上記で述べた特徴を含む装置の上部部品(2)の異なる図を示す。さらに、図4は、装置の下部部品(3)のディスク形状の開口部(8)と組み合わされる装置の上部部品(2)のリング(14)を示す。右手側では、図はさらに、開口(4)に挿入された反応容器(15)を示す。
【0036】
実施例
【実施例1】
【0037】
COVID-19疾患
図1図4に示した装置は、核酸精製を必要としないで、唾液、口腔咽頭ぬぐい液、または鼻咽頭ぬぐい液からのSARS-CoV-2 RNAの検出のために使用された。ウイルスRNAの検出は、6本のLAMPプライマーの市販のセット、逆転写酵素およびBst DNAポリメラーゼを含む混合酵素、および色指示薬(フェノールレッドpH指示薬またはHNB比色色素)を用いて、65℃での培養後に20分未満で達成された。装置に印加された入力電圧は、2.4Aの電流とともに、5VのDC電圧であった。装置の抵抗器は、4.7Ωの抵抗を有した。
【実施例2】
【0038】
マラリア疾患
図1図4に示した装置は、唾液から、または血液サンプルからのDNA抽出後に、熱帯熱マラリア原虫DNAの検出のために使用された。標的DNAの検出は、2本のIso-IMRSまたは4~6本のLAMPのいずれかの市販のアッセイプライマーのセット、Bst DNAポリメラーゼ酵素、および色指示薬(フェノールレッドpH指示薬またはHNB比色色素)を用いて、65℃での培養後に20分未満で達成された。装置に印加された入力電圧は、2.4Aの電流とともに、5VのDC電圧であった。装置の抵抗器は、4.7Ωの抵抗を有した。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】