(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】電極とその製作方法、電気化学装置および電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20241114BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20241114BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20241114BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20241114BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20241114BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20241114BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20241114BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241114BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241114BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20241114BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/485
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/62 Z
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024527870
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 CN2021130627
(87)【国際公開番号】W WO2023082247
(87)【国際公開日】2023-05-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ミンジュ
(72)【発明者】
【氏名】リー ヤージエ
(72)【発明者】
【氏名】チャン チンウェン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA02
5H050DA03
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA10
5H050EA23
5H050EA24
5H050FA16
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA08
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、電極とその製作方法、電気化学装置および電子装置を提供する。電極は、集電体と、集電体の片側または両側に位置する活物質層とを含み、活物質層は第1領域と第2領域とを含み、電極の厚さ方向に沿って、第1領域は集電体と第2領域との間に位置し、第1領域は集電体側から活物質層の厚さの三分の二までの領域であり、第2領域は活物質層の厚さの三分の二から電極表面までの領域であり、不活性雰囲気下で昇温速度10℃/minで活物質層に対して熱重量分析を行って、熱重量分析の結果は、第1領域と前記第2領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数の差が≧1である。これは、本発明における活物質層の第2領域具が良い導電性を有することで、イオンと電子は第2領域を経由して第1領域に伝送されることができ、電極全体の導電性を高め、さらに、当該電極を用いた電気化学装置の容量とエネルギー密度を向上させることに有利であることを示している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体の片側または両側に位置する活物質層とを含む電極であって、
前記活物質層は第1領域と第2領域とを含み、
前記電極の厚さ方向に沿って、前記第1領域は前記集電体と前記第2領域との間に位置し、前記第1領域は前記集電体側から前記活物質層の厚さの三分の二までの領域であり、前記第2領域は前記活物質層の厚さの三分の二から前記電極表面までの領域であり、
不活性雰囲気下で昇温速度10℃/minで前記活物質層に対して熱重量分析を行って、前記熱重量分析の結果は、前記第1領域と前記第2領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数の差が≧1であることを示していることを特徴とする、電極。
【請求項2】
不活性雰囲気下で昇温速度10℃/minで前記活物質層に対して熱重量分析を行って、前記熱重量分析の結果は、前記第1領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数が1以上であり、前記第2領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数が0~2であることを示していることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記電極は、
(a)前記熱重量分析の結果は、前記第1領域の200℃~800℃における質量変化が0.21%~13%であることを示していることと、
(b)前記熱重量分析の結果は、前記第2領域の200℃~800℃における質量変化が0%~2.4%であることを示していることと、
のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記熱重量分析の結果は、前記第1領域の200℃~800℃における質量変化が1.6%~4.02%であることを示していることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記電極は負極であり、前記活物質層は負極活物質層であり、前記集電体は負極集電体であることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記電極は、
(c)前記負極活物質層の圧縮密度ρ
1は、ρ
1≧0.6g/cm
3であることと、
(d)前記負極集電体における片側の前記負極活物質層の厚さh
1は、h
1≧10μmであることと、
(e)前記負極活物質層は負極材料を含み、前記負極材料はチタン酸リチウム、一酸化ケイ素、黒鉛、ケイ素およびハードカーボンのうちの少なくとも1種を含むことと、
のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項5に記載の電極。
【請求項7】
前記電極は、
(f)前記負極活物質層の圧縮密度ρ
1は、1.85g/cm
3≧ρ
1≧0.65g/cm
3を満たすことと、
(g)前記負極集電体における片側の前記負極活物質層の厚さh
1は、1500μm≧h
1≧15μmを満たすことと、
のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項5に記載の電極。
【請求項8】
前記電極は、
(h)前記負極活物質層の圧縮密度ρ
1は、1.83g/cm
3≧ρ
1≧1.0g/cm
3を満たすことと、
(i)前記負極集電体における片側の前記負極活物質層の厚さh
1は、150μm≧h
1≧30μmを満たすことと、
のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項5に記載の電極。
【請求項9】
前記電極は正極であり、前記集電体は正極集電体であり、前記活物質層は正極活物質層であり、
前記電極は、
(j)前記正極活物質層の圧縮密度ρ
2は、ρ
2≧2g/cm
3であることと、
(k)前記正極集電体における片側の前記正極活物質層の厚さh
2は、h
2≧20μmであることと、
(l)前記正極活物質層は正極材料を含み、前記正極材料はリン酸鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウムおよびニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムのうちの少なくとも1種を含むことと、
のうちの少なくとも1つを満たす、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項10】
前記電極は正極であり、前記集電体は正極集電体であり、前記活物質層は正極活物質層であり、
前記電極は、
(m)前記正極活物質層の圧縮密度ρ
2は、4.25g/cm
3≧ρ
2≧2.3g/cm
3を満たすことと、
(n)前記正極集電体における片側の前記正極活物質層の厚さh
2は、1500μm≧h
2≧30μmを満たすことと、
のうちの少なくとも1つを満たす、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項11】
前記電極は正極であり、前記集電体は正極集電体であり、前記活物質層は正極活物質層であり、
前記電極は、
(o)前記正極活物質層の圧縮密度ρ
2は、4.23g/cm
3≧ρ
2≧4.0g/cm
3を満たすことと、
(p)前記正極集電体における片側の前記正極活物質層の厚さh
2は、130μm≧h
2≧26μmを満たすことと、
のうちの少なくとも1つを満たす、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項12】
前記活物質層は、導電剤を含み、かつ、
前記活物質層は、
(q)前記第1領域における前記導電剤の質量百分率をBとし、前記第2領域における前記導電剤の質量百分率をAとし、AがBより大きいことと、
(r)前記第1領域における前記導電剤の質量百分率をBとし、前記第2領域における前記導電剤の質量百分率をAとし、(A-B)/B≧20%であることと、
(s)前記導電剤はカーボンナノチューブ、炭素繊維、アセチレンブラック、グラフェン、ケッチェンブラックおよび導電性カーボンブラックのうちの少なくとも1種を含むことと、
(t)前記活物質層の総質量に対して、前記活物質層における前記導電剤の質量百分率は0~2%であることと、
のうちの少なくとも1つを満たす、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項13】
前記第1領域は高分子化合物を含み、かつ、
前記第1領域は、
(u)前記高分子化合物はポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアクリル酸、ポリプロピレン誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、ポリメチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、スチレンアクリレートおよびスチレンブタジエンゴムのうちの少なくとも1種を含むことと、
(v)前記活物質層における前記高分子化合物の質量百分率は0.42%~14%であることと、
のうちの少なくとも1つを満たす、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項14】
前記第1領域は高分子化合物を含み、前記活物質層における前記高分子化合物の質量百分率は2.0%~5.0%であることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の電極の製作方法であって、
活物質層のスラリーを集電体の少なくとも一方の表面に塗布し、乾燥し、冷間プレスし、初期電極を得ることと、
前記初期電極に対して処理を行い、前記電極を得ることと、を含み、
前記初期電極に対する処理は、真空環境下で前記初期電極に対するプラズマ処理、真空または不活性ガス環境下で前記初期電極に対する熱処理、あるいは、真空または不活性ガス環境下で前記初期電極に対するレーザー衝撃を含み、
真空環境下で前記初期電極に対するプラズマ処理では、プラズマの出力が0.5kW~5kWであり、ガス源が窒素ガス、アルゴンガスおよび四フッ化炭素のうちの少なくとも1種を含み、ガス流量が3000sccm~5000sccmであり、温度が20℃~60℃であり、処理時間が0.5min~1minであり、
真空または不活性ガス環境下で前記初期電極に対する熱処理では、熱処理温度が200℃より高く、熱処理時間が1min~3minであり、
真空または不活性ガス環境下で前記初期電極に対するレーザー衝撃では、レーザー強度が30W~100Wであり、処理時間が0.5s~1sである、
ことを特徴とする、製作方法。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の電極の製作方法であって、
活物質層のスラリーを集電体の少なくとも一方の表面に塗布し、乾燥し、冷間プレスし、初期電極を得ることと、
前記初期電極に対して処理を行い、前記電極を得ることと、を含み、
前記初期電極に対する処理は、真空または不活性ガス環境下で前記初期電極に対する熱処理を含み、熱処理温度が350℃~600℃であり、熱処理時間が1min~3minである、
ことを特徴とする、製作方法。
【請求項17】
電極を含む電気化学装置であって、
前記電極は請求項1~14のいずれか1項に記載の電極であり、または、
前記電極は請求項15~16のいずれか1項に記載の製作方法により製作された電極である、
ことを特徴とする、電気化学装置。
【請求項18】
請求項16に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学エネルギー貯蔵分野に関し、特に、電極とその製作方法、電気化学装置および電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気化学装置、例えばリチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、出力が高く、サイクル寿命が長いなどの利点があり、各分野で広く使用されている。技術の発展に伴い、電気化学装置のエネルギー密度に対する要求は高まっている。電気化学装置のエネルギー密度を向上させるために、いくつかの技術では、活物質の容量または電圧を高め、別の技術では、単位体積あたりの活物質の含有量を高め、非活物質の含有量を低減する。非活物質の含有割合の低減は、集電体またセパレータの厚さを減少すること、配合における非活物質の含有割合を低減すること、および、より厚い電極を製造することによって、達成することができるが、実際の応用において、集電体およびセパレータはいずれも、厚さが限界に近づいているため、電極の厚さを増やすしかない。しかしながら、電極の厚さを増やしすぎると、電気化学装置の性能に影響を与えるおそれがあるため、電極の厚さを大幅に増やすことはできない。そのため、電気化学装置の性能を確保しつつ、電気化学装置の容量が増えるように電極の厚さをできるだけ増やすことは、早急に解決すべき問題である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明のいくつかの実施例は、電極とその製作方法、電気化学装置および電子装置を提供する。不活性雰囲気下で昇温速度10℃/minで活物質層に対して熱重量分析を行って、熱重量分析の結果は、第1領域と第2領域の熱重量減少ピーク数の差が≧1であることを示している。これにより、活物質層の第2領域の導電性を改善することができ、さらに、活物質層の厚さを増やすことに有利であるため、電気化学装置のエネルギー密度を高める。
【0004】
本発明のいくつかの実施例にかかる電極は、集電体と、集電体の片側または両側に位置する活物質層とを含み、活物質層は第1領域と第2領域とを含み、電極の厚さ方向に沿って、第1領域は集電体と第2領域との間に位置し、第1領域は集電体側から活物質層の厚さの三分の二までの領域であり、第2領域は活物質層の厚さの三分の二から電極表面までの領域であり、不活性雰囲気下で昇温速度10℃/minで活物質層に対して熱重量分析を行って、熱重量分析の結果は、第1領域と第2領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数の差が≧1である。これは、第2領域の導電性が第1領域よりも優れており、電子伝導に有利であることを示している。
【0005】
本発明のいくつかの実施例において、不活性雰囲気下で昇温速度10℃/minで活物質層に対して熱重量分析を行って、熱重量分析の結果は、第1領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数が1以上であり、第2領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数が0~2であることを示している。これは、本発明における活物質層の第2領域が良い導電性を有することを示している。これにより、電極の厚さを高めることに有利であり、さらに、電気化学装置の容量とエネルギー密度を向上させることに有利である。
【0006】
本発明のいくつかの実施例において、熱重量分析の結果は、第1領域の200℃~800℃における質量変化が0.21%~13%であることを示しており、熱重量分析の結果は、第2領域の200℃~800℃における質量変化が0%~2.4%であることを示している。これは、本発明における活物質層の第2領域は、高分子化合物の含有量がゼロまたは極めて低いことを示している。これにより、活物質層の第2領域においてのイオンと電子の伝導を高めることに有利であり、イオンと電子が活物質層の第1領域に伝送されることができ、全体の導電性が改善される。いくつかの実施例において、高分子化合物はバインダーおよび/または増粘剤である。本発明のいくつかの実施例において、熱重量分析の結果は、第1領域の200℃~800℃における質量変化が1.6%~4.02%であることを示している。
【0007】
本発明のいくつかの実施例において、電極は正極または負極である。いくつかの実施例において、電極は負極であり、活物質層は負極活物質層であり、集電体は負極集電体である。いくつかの実施例において、負極活物質層の圧縮密度ρ1は、ρ1≧0.6g/cm3であり、より高い圧縮密度は、単位体積あたりの電気化学装置が貯蔵できるエネルギーを高めることに有利である。いくつかの実施例において、負極集電体における片側の負極活物質層の厚さh1は、h1≧10μmであり、より厚い厚さは、より多くの活物質を担持し、電気化学装置のエネルギー密度を高めることに有利である。いくつかの実施例において、負極活物質層は負極材料を含み、負極材料はチタン酸リチウム、一酸化ケイ素、黒鉛、ケイ素およびハードカーボンのうちの少なくとも1種を含む。
【0008】
本発明のいくつかの実施例において、電極は負極であり、活物質層は負極活物質層であり、集電体は負極集電体であり、負極活物質層の圧縮密度ρ1は、1.85g/cm3≧ρ1≧0.65g/cm3を満たす。これにより、エネルギー密度を高めることに有利である。いくつかの実施例において、負極集電体における片側の前記負極活物質層の厚さh1は、1500μm≧h1≧15μmを満たす。これにより、エネルギー密度を高めるとともに、負極活物質層の脱落を防止することに有利である。
【0009】
本発明のいくつかの実施例において、負極活物質層の圧縮密度ρ1は、1.83g/cm3≧ρ1≧1.0g/cm3を満たす。本発明のいくつかの実施例において、負極集電体における片側の前記負極活物質層の厚さh1は、150μm≧h1≧30μmを満たす。
【0010】
本発明のいくつかの実施例において、電極は前記正極であり、集電体は正極集電体であり、活物質層は正極活物質層であり、正極活物質層の圧縮密度ρ2は、ρ2≧2g/cm3である。これにより、エネルギー密度を高めることに有利である。いくつかの実施例において、正極集電体における片側の正極活物質層の厚さh2は、h2≧20μmである。これにより、より多くの正極材料を担持し、容量を高めることに有利である。いくつかの実施例において、正極活物質層は正極材料を含み、正極材料はリン酸鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0011】
本発明のいくつかの実施例において、電極は正極であり、集電体は正極集電体であり、活物質層は正極活物質層であり、正極活物質層の圧縮密度ρ2は、4.25g/cm3≧ρ2≧2.3g/cm3を満たす。これにより、エネルギー密度を高めるとともに、粒子が砕けることを防止する。いくつかの実施例において、正極集電体における片側の正極活物質層の厚さh2は、1500μm≧h2≧30μmを満たす。これにより、電池の容量を高めるとともに、集電体から正極活物質層が脱落することを防止する。本発明のいくつかの実施例において、電極は正極であり、集電体は正極集電体であり、活物質層は正極活物質層であり、正極活物質層の圧縮密度ρ2は、4.23g/cm3≧ρ2≧4.0g/cm3を満たす。いくつかの実施例において、正極集電体における片側の前記正極活物質層の厚さh2は、130μm≧h2≧26μmを満たす。
【0012】
本発明のいくつかの実施例において、活物質層は導電剤を含み、第1領域における導電剤の質量百分率をBとし、第2領域における導電剤の質量百分率をAとし、AがBより大きい。これにより、第2領域の導電性を高めることで、イオンと電子が第1の領域に伝送されることができる。いくつかの実施例において、第1領域における導電剤の質量百分率をBとし、第2領域における導電剤の質量百分率をAとし、(A-B)/B≧20%である。いくつかの実施例において、導電剤はカーボンナノチューブ、炭素繊維、アセチレンブラック、グラフェン、ケッチェンブラックおよび導電性カーボンブラックのうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、活物質層の総質量に対して、活物質層における導電剤の質量百分率は0%~2%である。
【0013】
本発明のいくつかの実施例において、第1領域は高分子化合物を含み、高分子化合物はポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアクリル酸、ポリプロピレン誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、ポリメチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、スチレンアクリレートおよびスチレンブタジエンゴムのうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、活物質層における高分子化合物の質量百分率は0.42%~14%である。いくつかの実施例において、前記活物質層における高分子化合物の質量百分率は2.0%~5.0%である。
【0014】
本発明のいくつかの実施例において、本発明のいずれかの電極を製作できる、電極の製作方法を提供する。前記電極の製作方法は、活物質層のスラリーを集電体の少なくとも一方の表面に塗布し、乾燥し、冷間プレスし、初期電極を得ることと、初期電極に対して処理を行って、電極を得ることとを含む。ここで、初期電極に対する処理は、真空環境下で初期電極に対するプラズマ処理、真空または不活性ガス環境下で初期電極に対する熱処理、あるいは、真空または不活性ガス環境下で初期電極に対するレーザー衝撃を含む。真空環境下で初期電極に対するプラズマ処理では、プラズマの出力が0.5kW~5kWであり、ガス源が窒素ガス、アルゴンガスおよび四フッ化炭素のうちの少なくとも1種を含み、ガス流量が3000sccm~5000sccmであり、温度が20℃~60℃であり、処理時間が0.5min~1minである。真空または不活性ガス環境下で初期電極に対する熱処理では、熱処理温度が200℃より高く、熱処理時間が1min~3minである。真空または不活性ガス環境下で初期電極に対するレーザー衝撃では、レーザー強度が30W~100Wであり、処理時間が0.5s~1sである。
【0015】
本発明のいくつかの実施例において、本発明のいずれかの電極を製作できる、電極の製作方法を提供する。前記電極の製作方法は、活物質層のスラリーを集電体の少なくとも一方の表面に塗布し、乾燥し、冷間プレスし、初期電極を得ることと、初期電極に対して処理を行って、電極を得ることとを含む。ここで、初期電極に対する処理は、真空または不活性ガス環境下で初期電極に対する熱処理を含む。ここで、熱処理温度が350℃~600℃であり、熱処理時間が1min~3minである。本発明のいくつかの実施例において、電極を含む電気化学装置を提供する。電極は、本発明のいずれかの電極である。または、電極は、本発明にかかる製作方法により製作した電極である。
【0016】
本発明のいくつかの実施例において、本発明にかかる電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明実施例にかかる電極は、集電体と、集電体の片側または両側に位置する活物質層とを含み、活物質層は第1領域と第2領域とを含み、第1領域は集電体と第2領域との間に位置し、第1領域は厚さ方向に沿って集電体側から活物質層の厚さの三分の二までの領域であり、第2領域は厚さ方向に沿って活物質層の厚さの三分の二から電極表面までの領域である。不活性雰囲気下で昇温速度10℃/minで活物質層に対して熱重量分析を行って、熱重量分析の結果は、第1領域と第2領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数の差が≧1であることを示している。これは、本発明における活物質層の第2領域は良い導電性を有することを示している。これにより、イオンと電子は第2領域を経由して第1領域に伝送され、電極全体の導電性を高めることができるため、電極の厚さを高めることに有利であり、さらに、当該電極を用いた電気化学装置の容量とエネルギー密度を向上させることに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図面および以下の具体的な実施形態を参照しながら、本発明の各実施例の上記および他の特徴、利点および態様がより明らかになるであろう。図面を通して、同一または類似の符号は同一または類似の要素を表す。なお、図面は概略的なものであり、要素と要素は必ずしも比例して描かれていないことを理解すべきである。
【0019】
【
図1】
図1は本発明実施例にかかる電極の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の実施例によれば、当業者は本発明を全面的に理解することができるが、いかなる方法でも本願を限定するものではない。
【0021】
電気化学装置のエネルギー密度を高めるために、いくつかの技術では、電極における活物質層の厚さを増やすことによって電気化学装置のエネルギー密度を高めたが、電極における活物質層の厚さを増やすと、活物質層が厚すぎるため、活物質層の導電性が悪化するおそれがある。活性物層の導電性を高めるために、いくつかの技術では、多層活物質層の構造を採用したが、複数の単層構造に対する複合冷間プレスのプロセスが複雑であり、再冷間プレスの過程における単層ごとの元の圧縮密度と空隙率の変化を避けることができず、かつ、層と層の結合箇所に結合が不十分であるために剥がれやすく、電子、イオンの伝導に影響を与え、サイクル性能が悪化してしまう。別のいくつかの技術では、レーザーにより活物質層に対して穴あけしたが、レーザーによる穴あけは、効率が低く、コストが高く、穴あけ中にエネルギー密度を失いやすい。別のいくつかの技術では、造孔剤の溶液を電極表面に塗布したが、電極表面の溶解を回避できず、かつ、造孔剤が形成する孔の深さが限られ、集電体に近い側に対する改善は限られている。以上の技術では、異なる方法によって電解液の活物質表面へのイオン伝送を解決したが、活物質表面から活物質層内部へのイオン伝送は依然として変わらず、イオン伝送に対する阻害は依然として存在し、改善効果はよくない。
【0022】
本発明のいくつかの実施例は、電極の活物質層の導電性を改善できることで、電気化学装置のエネルギー密度を高めることに有利である電極を提供する。いくつかの実施例において、電極を提供する。電極は電気化学装置の電極であってもよい。電極は、集電体と、集電体の片側または両側に位置する活物質層とを含み、活物質層は第1領域と第2領域とを含み、電極の厚さ方向に沿って、第1領域は集電体と第2領域との間に位置し、第1領域は集電体側から活物質層の厚さの三分の二までの領域であり、第2領域は活物質層の厚さの三分の二から電極表面までの領域であり、不活性雰囲気下で昇温速度10℃/minで前記活物質層に対して熱重量分析を行って、熱重量分析の結果は、第1領域と第2領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数の差が≧1である。いくつかの実施例において、第1領域の厚さは活物質層の総厚さの三分の二を占め、第2領域の厚さは活物質層の総厚さの三分の一を占め、第2領域の重量減少ピーク数は第1領域の重量減少ピーク数よりも少ない。これは、第2領域に含まれる高分子化合物の種類または含有量は第1領域より少ないことを示している。これにより、第2領域の導電性に有利であり、電子が第2領域を経由して第1領域に伝送されることで、極片全体の導電性を高めることに有利である。
【0023】
本発明のいくつかの実施例において、不活性雰囲気下で昇温速度10℃/minで活物質層に対して熱重量分析を行って、熱重量分析の結果は、前記第1領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数が1以上であり、第2領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数が0~2であることを示している。いくつかの実施例において、第2領域は第1領域における集電体から離れる片側に位置し、イオンと電子の伝送は第2領域を経由する必要があるため、第2領域の導電性は電極の導電性に大きな影響を与える。本発明の実施例において、第2領域の200℃~800℃範囲内の重量減少ピーク数が0~2である。これは、第2領域では、高分子系増粘剤およびバインダーなどの高分子化合物が存在しないこと、または上記高分子化合物の含有量が極めて低いことを示している。これにより、活物質層における高分子化合物が活物質層の第2領域の導電性に与える影響を回避することで、活物質層全体のイオンと電子に対する伝導性能を高めることができる。このように、活物質層の厚さを増やすことで電気化学装置のエネルギー密度を高める場合、活物質層が良い導電性を有するため、活物質層の厚さの増加により電気化学装置の電気特性が悪化することはない。一方、本発明おいて、活物質層の第1領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数が1以上である。これは、本発明の活物質層の第1領域では高分子化合物が存在することを示している。これは、活物質層には、活物質層における物質が互いに結着され、集電体の間に付着するように、高分子化合物を使用する必要があるからである。これから分かるように、本発明の実施例にかかる電気化学装置において、活物質層が良い導電性を有するため、電気化学装置の性能に有利であり、かつ、エネルギー密度を高めることに有利である。そして、本発明は、第1領域と第2領域の厚さを限定した。その原因は以下のとおりである。第2領域の厚さが小さすぎると、活物質層の導電性に対する改善が著しくなく、第2領域の厚さが大きすぎると、転圧時に活物質層が脱落するおそれがあり、第1領域の厚さが小さすぎると、活物質層全体の容量が不足となり、第1領域の厚さが大きすぎると、活物質層と集電体との間の結着力が不足となり、活物質層を担持しにくくなる。
【0024】
本発明のいくつかの実施例において、熱重量分析の結果は、第1領域の200℃~800℃における質量変化が0.21%~13%であることを示している。いくつかの実施例において、熱重量分析の結果は、第2領域の200℃~800℃における質量変化が0%~2.4%であることを示している。いくつかの実施例において、熱重量分析装置の検出精度が0.2%であり、本実施例における活物質層の第2領域の200℃~800℃における質量変化が低いことは、本発明の活物質層の第2領域において、高分子化合物の含有量がゼロまたは極めて低いことを示している。これは、活物質層の第2領域においてのイオンと電子の伝導を高めることに有利であり、電気化学装置の電気特性を高めることに有利である。第1領域における高分子化合物の含有量がゼロではないことは、活物質層全体の重合力および集電体との間の結着力を確保することに有利である。いくつかの実施例において、熱重量分析の結果は、第1領域の200℃~800℃における質量変化が1.6%~4.02%であることを示している。いくつかの実施例において、高分子化合物はバインダーおよび/または増粘剤であり、第2領域においては、導電性を確保するために、バインダーおよび/または増粘剤の含有量がほぼゼロである。
【0025】
本発明のいくつかの実施例において、電極は負極または正極であり、電気化学装置の負極または正極であってもよい。いくつかの実施例において、電極は負極であり、活物質層は負極活物質層であり、集電体は負極集電体であり、集電体は、銅箔、アルミニウム箔、鋼箔などであってもよく、これらに限定されることはない。いくつかの実施例において、負極活物質層の圧縮密度ρ1は、ρ1≧0.6g/cm3であり、より高い圧縮密度は、電極の単位体積あたりに担持される活物質層の質量がより多いことを示している。負極活物質層の質量が多いほど、単位体積あたり電気化学装置が貯蔵できるエネルギーを高めることで、エネルギー密度を高めることができる。いくつかの実施例において、活物質層の圧縮密度ρ1は、1.85g/cm3≧ρ1≧0.65g/cm3を満たす。いくつかの実施例において、1.83g/cm3≧ρ1≧1.0g/cm3であることは、電気化学装置のエネルギー密度を高めることに有利である。いくつかの実施例において、負極活物質層の圧縮密度が1.0g/cm3以上であることを限定することにより、電気化学装置のエネルギー密度をさらに確保することができ、一方、負極活物質層の圧縮密度が1.83g/cm3以下であることを限定することで、圧縮密度が大きすぎることによる活物質層中の粒子の破砕を防止し、これにより、電解液の消耗の増加およびサイクル性能の悪化を防止することができる。
【0026】
本発明のいくつかの実施例において、負極集電体における片側の負極活物質層の厚さh1は、h1≧10μmである。いくつかの実施例において、負極活物質層の厚さがより厚いことは、電気化学装置における負極活物質層が占める比率を高めることに有利であり、電気化学装置のエネルギー密度を高めることに有利である。本発明のいくつかの実施例において、負極集電体における片側の負極活物質層の厚さh1は、1500μm≧h1≧15μmを満たす。いくつかの実施例において、150μm≧h1≧30μmであり、負極活物質層の厚さが30μm以上であることを限定することにより、負極活物質層の厚さを確保できることで、電気化学装置全体のエネルギー密度を高めることができ、負極活物質層の厚さが150μm以下であることを限定することにより、負極活物質層が厚すぎることによる負極活物質層と集電体との間の離脱を防止できる。
【0027】
本発明のいくつかの実施例において、負極活物質層は負極材料を含み、負極材料はチタン酸リチウム、一酸化ケイ素、黒鉛およびハードカーボンのうちの少なくとも1種を含む。
【0028】
本発明のいくつかの実施例において、電極は正極であり、集電体は正極集電体であり、活物質層は正極活物質層であり、正極活物質層の圧縮密度ρ2は、ρ2≧2g/cm3である。正極活物質層の圧縮密度を限定することは、エネルギー密度を高めることができる。好ましく、正極活物質層の圧縮密度ρ2は、4.25g/cm3≧ρ2≧2.3g/cm3を満たす。いくつかの実施例において、4.23g/cm3≧ρ2≧4.0g/cm3であり、正極活物質層の圧縮密度をさらに限定することは、エネルギー密度をさらに高めるとともに、圧縮密度が高すぎることによる材料粒子の破砕および電解液の浸潤不足の問題を防止することができる。
【0029】
本発明のいくつかの実施例において、正極集電体における片側の正極活物質層の厚さh2は、h2≧20μmである。いくつかの実施例において、正極集電体における片側の正極活物質の厚さを増やすことにより、正極がより多くの活物質を担持し、容量を高めることができる。いくつかの実施例において、正極集電体における片側の正極活物質層の厚さh2は、1500μm≧h2≧30μmを満たす。いくつかの実施例において、130μm≧h2≧26μmであり、正極活物質層の厚さをさらに限定することにより、容量を高めるとともに、正極活物質層が厚すぎることによる正極集電体からの脱落を防止できる。
【0030】
本発明のいくつかの実施例において、正極活物質層は正極材料を含み、正極材料はリン酸鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムのうちの少なくとも1種を含む。正極材料は、その中の2種また2種以上の組み合わせを含んでもよい。
【0031】
本発明のいくつかの実施例において、活物質層は導電剤を含み、第1領域における導電剤の質量百分率をBとし、第2領域における導電剤の質量百分率をAとし、AがBより大きい。いくつかの実施例において、第2領域は第1領域における集電体から離れる片側に位置するため、第2領域の導電剤の含有量を増やすことで、導電性を改善し、イオンと電子が活物質層内部に伝送されることができる。
【0032】
本発明のいくつかの実施例において、第1領域における導電剤の質量百分率をBとし、第2領域における導電剤の質量百分率をAとし、(A-B)/B≧20%である。いくつかの実施例において、第2領域の導電剤の質量百分率は明らかに第1領域より多い。第2領域は活物質層の外部により近く、イオンと電子の伝送経路は第2領域を経由する必要があるため、第2領域の導電剤の質量百分率が第1領域より20%以上多いと、第1領域の導電性を確保することができる。
【0033】
本発明のいくつかの実施例において、導電剤はカーボンナノチューブ、炭素繊維、アセチレンブラック、グラフェン、ケッチェンブラックおよび導電性カーボンブラックのうちの少なくとも1種を含む。本発明のいくつかの実施例において、活物質層の総質量に対して、活物質層における導電剤の質量百分率は0%~2%である。導電剤におけるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブであってもよく、多層カーボンナノチューブであってもよく、長距離電子伝導を増やすことができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施例において、第1領域は高分子化合物を含み、高分子化合物はバインダーおよび/または増粘剤を含んでもよく、高分子化合物はポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアクリル酸、ポリプロピレン誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、ポリメチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、スチレンアクリレートおよびスチレンブタジエンゴムのうちの少なくとも1種を含む。
【0035】
本発明のいくつかの実施例において、活物質層における高分子化合物の質量百分率は0.42%~14%であり、いくつかの実施例において、活物質層における高分子化合物の質量百分率は2.0%~5.0%である。高分子化合物の質量百分率が低すぎると、活物質層と集電体との間の付着力が不足となるおそれがあり、バインダーの質量百分率が高すぎると、活物質層の導電性に影響を与えるおそれがある。
【0036】
本発明のいくつかの実施例において、高分子化合物は、活物質層の活物質(例えば、負極材料)表面に点状または面状に分布し、活物質表面または活物質の粒子間に集まる。活物質の露出が多いと、電子、イオンの伝送に対する妨害が小さく、導電性を確保することに有利である。
【0037】
図1を参照し、本発明のいくつかの実施例において、電極は集電体10と活物質層とを含み、活物質層は第1領域と第2領域とを含み、活物質層は活物質20(正極材料または負極材料であってもよい)と導電剤30と高分子化合物40とを含み、ここで、活物質20は第1活物質と第2活物質とを含んでもよく、第1活物質の粒子径は第2活物質の粒子径より大きく、異なる粒子径の活物質を配合することにより、隙間を十分に充填できる。
【0038】
本発明のいくつかの実施例において、第2領域における導電剤の質量百分率を増やすことにより、第2領域の電子伝導を改善し、第2領域の高分子化合物(例えば、バインダーおよび/または増粘剤)の含有量を減らすことにより、イオンの伝送に対する妨害を減少し、電極動力学を改善する。
【0039】
本発明のいくつかの実施例において、本発明のいずれかの電極を製作するために使用できる、電極の製作方法を提供する。前記電極の製作方法は、活物質層のスラリーを集電体の少なくとも一方の表面に塗布し、乾燥し、冷間プレスし、初期電極を得ることと、初期電極に対して処理を行って、電極を得ることとを含む。ここで、初期電極に対する処理は、真空環境下で初期電極に対するプラズマ処理、真空または不活性ガス環境下で初期電極に対する熱処理、あるいは、真空または不活性ガス環境下で初期電極に対するレーザー衝撃を含む。真空環境下で初期電極に対するプラズマ処理では、プラズマの出力が0.5kW~5kWであり、ガス源が窒素ガス、アルゴンガスおよび四フッ化炭素のうちの少なくとも1種を含み、ガス流量が3000sccm~5000sccmであり、温度が20℃~60℃であり、処理時間が0.5min~1minである。
真空または不活性ガス環境下で初期電極に対する熱処理では、熱処理温度が200℃より高く、熱処理時間が1min~3minである。真空または不活性ガス環境下で初期電極に対するレーザー衝撃では、レーザー強度が30W~100Wであり、処理時間が0.5s~1sである。
【0040】
本発明の実施例において、初期電極に対して処理を行うことにより、初期電極における活物質層の表層である第2領域の高分子化合物を除去し、例えば、第2領域のバインダーおよび/または増粘剤を除去することで、製作された電極がよりよい導電性を有し、活物質に対する高分子化合物の被覆面積を減らし、イオン伝導に対する妨害を減らし、動力学特性を向上させ、電極性能を低下させないとともに、活物質層の厚さを高めることに有利である。
【0041】
本発明のいくつかの実施例において、上記電極の製作方法を提供する。前記電極の製作方法は、活物質層のスラリーを集電体の少なくとも一方の表面に塗布し、乾燥し、冷間プレスし、初期電極を得ることと、初期電極に対して処理を行って、電極を得ることとを含む。ここで、初期電極に対する処理は、真空または不活性ガス環境下で初期電極に対する熱処理を含む。真空または不活性ガス環境下で初期電極に対する熱処理では、熱処理温度が350℃~600℃であり、熱処理時間が1min~3minである。
【0042】
本発明のいくつかの実施例において、電極を含む電気化学装置を提供する。電極は、本発明のいずれかの電極である。または、電極は、本発明にかかる製作方法により製作した電極である。
【0043】
本発明のいくつかの実施例にかかる電気化学装置は、正極と、負極と、正極と負極との間に設けられているセパレータとを含む。いくつかの実施例において、負極と正極はいずれも、上記のいずれか1種の電極である。いくつかの実施例において、正極の集電体はAl箔を用いてもよいが、勿論、本分野によく用いられる他の集電体を用いてもよい。
【0044】
いくつかの実施例において、セパレータは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドおよびアラミドのうちの少なくとも1種を含む。例えば、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび超高分子量ポリエチレンから選択される少なくとも1種を含む。中でも、ポリエチレンおよびポリプロピレンは、短絡防止に良好な役割を果たし、オフ効果により電池の安定性を改善することができる。いくつかの実施例において、セパレータの厚さは約5μm~50μmの範囲内である。
【0045】
いくつかの実施例において、セパレータ表面は多孔質層を含んでもよく、多孔質層はセパレータの少なくとも一方の表面に設けられており、多孔質層は無機粒子とバインダーとを含み、無機粒子は酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化チタン(TiO2)、二酸化ハフニウム(HfO2)、酸化錫(SnO2)、二酸化セリウム(CeO2)、酸化ニッケル(NiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、炭化ケイ素(SiC)、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび硫酸バリウムから選択される少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、セパレータの孔は約0.01μm~1μmの範囲である直径を有する。多孔質層のバインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリヘキサフルオロプロピレンから選択される少なくとも1種を含む。セパレータ表面の多孔質層は、セパレータの耐熱性能、抗酸化性能および電解質浸潤性能を向上させ、セパレータと極片との間の接着性を強化することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施例において、電気化学装置は、巻回構造または積層構造であってもよい。いくつかの実施例において、電気化学装置の正極および/または負極は、巻き取るまたは積み重ねることによって形成された多層構造であってもよく、単層正極、セパレータ、単層負極を重ねた単層構造であってもよい。
いくつかの実施例において、電気化学装置はリチウムイオン電池を含むが、本発明はこれに制限されない。いくつかの実施例において、電気化学装置は電解質をさらに含んでもよい。電解質は、ゲル電解質、固体電解質および電解液のうちの1種または複数種であってもよく、電解液は、リチウム塩と非水系溶媒とを含む。リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiSiF6、LiBOBおよびジフルオロホウ酸リチウムから選択される1種または複数種である。例えば、LiPF6は、イオン導電率が高く、かつサイクル特性を改善できるため、リチウム塩として選択される。
【0047】
非水系溶媒は、カーボネート化合物、カルボキシレート化合物、エーテル化合物、その他の有機溶媒、またはこれらの組み合わせであってもよい。カーボネート化合物は、鎖状カーボネート化合物、環状カーボネート化合物、フルオロカーボネート化合物またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0048】
鎖状カーボネート化合物の実例としては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)およびこれらの組み合わせが挙げられる。前記環状カーボネート化合物の実例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)およびこれらの組み合わせが挙げられる。前記フルオロカーボネート化合物の実例としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
カルボキシレート化合物の実例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、デカラクトン、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトン、ギ酸メチル、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
エーテル化合物の実例としては、ジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
その他の有機溶媒の実例としては、ジメチルスルホキシド、1,2-ジオキソラン、シクロブタンスルホン、メチルシクロブタンスルホン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル、リン酸エステルおよびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
本発明のいくつかの実施例において、リチウムイオン電池を例として、正極、セパレータ、負極を順に巻回または積層して電極アセンブリーを形成した後、例えばアルミニウムプラスチックフィルムに入れて封止し、電解液を注入し、フォーメーションし、封止し、リチウムイオン電池を製作する。次に、製作したリチウムイオン電池に対して性能試験を行う。
【0053】
なお、以上説明した電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)の製作方法が実施例にすぎないことは、当業者は理解すべきである。本発明に開示された内容から逸脱しない上で、当分野でよく用いられる他の方法を採用することができる。
【0054】
本発明は、電気化学装置を含む電子装置を提供する。電気化学装置は、本発明のいずれか1項の電気化学装置である。本発明の実施例の電子装置は、特に限定されず、従来技術で知られている任意の電子装置に用いられているものであってもよい。いくつかの実施例において、電子装置は、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、アシスト自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、および家庭用大型蓄電池などを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0055】
以下に、本発明をより良く説明するために、いくつかの具体的な実施例および比較例を挙げ、ここで、例としてリチウムイオン電池を使用する。
【0056】
実施例1
【0057】
正極片の製作:正極材料であるコバルト酸リチウムと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、カーボンナノチューブ(CNT)とを、97.5:1.5:1.0の質量比で混合し、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を入れ、スラリーを調製し、均一に攪拌し、正極活物質層のスラリーを形成した。スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔に均一に塗布し、乾燥した後、正極片を得た。
【0058】
負極片の製作:負極材料である黒鉛と、導電剤であるカーボンナノチューブと、バインダー(スチレンアクリレートとカルボキシメチルセルロースリチウム)とを予め設定された質量比で混合し、溶媒として脱イオン水を入れ、負極活物質層のスラリーを形成し、負極集電体として銅箔を用い、負極活物質層のスラリーを負極集電体に塗布し、90℃の条件で乾燥し、乾燥された極片に対して熱処理を行い、熱処理温度が350℃であり、熱処理時間が2minであってもよく、熱処理した後、負極片を得た。
【0059】
セパレータの製作:セパレータは厚さ8μmのポリエチレン(PE)である。
【0060】
電解液の調製:含水量が10ppm未満の環境下で、ヘキサフルオロリン酸リチウムと非水有機溶媒(エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC):プロピレンカーボネート(PC):プロピオン酸プロピル(PP):ビニレンカーボネート(VC)=20:30:20:28:2、重量比)とを8:92の重量比で調製して、電解液を得た。
【0061】
リチウムイオン電池の製作:セパレータが正極と負極との間に介在して隔離の役割を果たすように、正極片と、セパレータと、負極片とを順に重ねて、巻回し、電極アセンブリーを得た。電極アセンブリーを外装アルミニウムプラスチックフィルムに入れ、80℃下で水分を除去した後、上記電解液を注入して封止し、フォーメーション、脱気、トリミングなどの工程を経て、リチウムイオン電池を得た。
【0062】
実施例1の関連パラメータは以下の通りである。正極活物質層はコバルト酸リチウムと、PVDFと、CNTとを含み、それぞれの質量百分率が97.5%、1.5%、1%である。正極集電体の片側における正極活物質層の厚さが63μmであり、正極集電体の片側における正極活物質層の圧縮密度が4.1g/cm3である。負極活物質層は黒鉛と、スチレンアクリレートと、カルボキシメチルセルロースリチウムと、CNTとを含み、それぞれの質量百分率が97.4%、1%、1%、0.6%である。負極活物質層の圧縮密度が1.74g/cm3であり、負極集電体の片側における負極活物質層の厚さが75μmである。負極材料は黒鉛であり、負極活物質層の第1領域の厚さが50μmであり、負極活物質層の第2領域の厚さが25μmである。負極中の第2領域における導電剤の質量百分率Aが0.6%であり、負極中の第1領域における導電剤の質量百分率Bが0.4%である。負極中の導電剤はカーボンナノチューブであり、負極中の第1領域におけるバインダーはスチレンアクリレートであり、負極中の第1領域におけるバインダーの質量百分率が2.5%である。負極活物質層の第1領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数が1であり、負極中の第1領域の質量変化が1.6%である。負極活物質層の第2領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数が0であり、負極中の第2領域の質量変化が0.1%である。
【0063】
実施例2~36は、実施例1のステップの上でパラメータを変更したものである。変更されたパラメータは、具体的に、以下の表に示す。
【0064】
実施例37
【0065】
正極片の製作:正極材料であるコバルト酸リチウムと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、カーボンナノチューブ(CNT)とを、97.5:1.5:1.0の質量比で混合し、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を入れ、スラリーを調製し、均一に攪拌し、正極活物質層のスラリーを形成した。スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔に均一に塗布し、90℃の条件で乾燥し、乾燥された極片に対して熱処理を行い、熱処理温度が350℃であり、熱処理時間が2minであってもよく、熱処理した後、正極片を得た。
【0066】
負極片の製作:負極材料である黒鉛と、導電剤であるカーボンナノチューブと、バインダー(スチレンアクリレートとカルボキシメチルセルロースリチウム)とを予め設定された質量比で混合し、溶媒として脱イオン水を入れ、負極活物質層のスラリーを形成し、負極集電体として銅箔を用い、負極活物質層のスラリーを負極集電体に塗布し、90℃の条件で乾燥し、負極片を得た。
【0067】
実施例37の他のステップは、実施例1と同様にした。
【0068】
実施例37の関連パラメータは以下の通りである。正極活物質層はコバルト酸リチウムと、PVDFと、CNTとを含み、それぞれの質量百分率が97.5%、1.5%、1%である。正極集電体の片側における正極活物質層の厚さが63μmであり、正極集電体の片側における正極活物質層の圧縮密度が4g/cm3である。正極活物質層の第1領域の厚さが42μmであり、正極活物質層の第2領域の厚さが21μmである。正極中の第2領域における導電剤の質量百分率Aが1%であり、正極中の第1領域における導電剤の質量百分率Bが0.67%である。正極中の導電剤はカーボンナノチューブであり、正極中の第1領域におけるバインダーはPVDFであり、正極中の第1領域におけるバインダーの質量百分率が1.5%である。正極活物質層の第1領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数が1であり、正極中の第1領域の質量変化が1.2%である。正極活物質層の第2領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数が0であり、正極中の第2領域の質量変化が0.1%である。
【0069】
負極活物質層は黒鉛と、スチレンアクリレートと、カルボキシメチルセルロースリチウムと、CNTとを含み、それぞれの質量百分率が97.4%、1%、1%、0.6%である。負極活物質層の圧縮密度が1.74g/cm3であり、負極集電体の片側における負極活物質層の厚さが73μmである。負極材料は黒鉛である。
【0070】
実施例38~48は、実施例34のステップの上でパラメータを変更したものである。変更されたパラメータは、具体的に、以下の表に示す。
【0071】
実施例49
【0072】
正極片の製作:正極材料であるコバルト酸リチウムと、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、カーボンナノチューブ(CNT)とを、97.5:1.5:1.0の質量比で混合し、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を入れ、スラリーを調製し、均一に攪拌し、正極活物質層のスラリーを形成した。スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔に均一に塗布し、90℃の条件で乾燥し、乾燥された極片に対して熱処理を行い、熱処理温度が350℃であり、熱処理時間が2minであってもよく、熱処理した後、正極片を得た。
【0073】
負極片の製作:負極材料である黒鉛と、導電剤であるカーボンナノチューブと、バインダー(スチレンアクリレートとカルボキシメチルセルロースリチウム)とを予め設定された質量比で混合し、溶媒として脱イオン水を入れ、負極活物質層のスラリーを形成し、負極集電体として銅箔を用い、負極活物質層のスラリーを負極集電体に塗布し、90℃の条件で乾燥し、乾燥された極片に対して熱処理を行い、熱処理温度が350℃であり、熱処理時間が2minであってもよく、熱処理した後、負極片を得た。
【0074】
実施例49の他のステップは、実施例1と同様にした。
【0075】
実施例49の関連パラメータは以下の通りである。正極活物質層はコバルト酸リチウムと、PVDFと、CNTとを含み、それぞれの質量百分率が97.5%、1.5%、1%である。正極集電体の片側における正極活物質層の厚さが63μmであり、正極集電体の片側における正極活物質層の圧縮密度が4.1g/cm3である。正極活物質層の第1領域の厚さが42μmであり、正極活物質層の第2領域の厚さが21μmである。正極中の第2領域における導電剤の質量百分率Aが1%であり、正極中の第1領域における導電剤の質量百分率Bが0.67%である。正極中の導電剤はカーボンナノチューブであり、正極中の第1領域におけるバインダーはPVDFであり、正極中の第1領域におけるバインダーの質量百分率が1.5%である。正極活物質層の第1領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数が1であり、正極中の第1領域の質量変化が1.2%である。正極活物質層の第2領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数が0であり、正極中の第2領域の質量変化が0.1%である。負極活物質層は黒鉛と、スチレンアクリレートと、カルボキシメチルセルロースリチウムと、CNTとを含み、それぞれの質量百分率が97.4%、1%、1%、0.6%である。負極活物質層の圧縮密度が1.74g/cm3であり、負極集電体の片側における負極活物質層の厚さが75μmである。負極材料は黒鉛であり、負極活物質層の第1領域の厚さが50μmであり、負極活物質層の第2領域が25μmであり、負極中の第2領域における導電剤の質量百分率Aが0.6%であり、負極中の第1領域における導電剤の質量百分率Bが0.4%である。負極中の導電剤はカーボンナノチューブであり、負極中の第1領域におけるバインダーはスチレンアクリレートとカルボキシメチルセルロースリチウムであり、この2種類のバインダーの質量比率が1:1である。負極中の第1領域におけるバインダーの質量百分率が2%であり、負極活物質層の第1領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数が2であり、負極中の第1領域の質量変化が1.6%である。負極活物質層の第2領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数が0であり、負極中の第2領域の質量変化が0.1%である。
【0076】
比較例1
【0077】
正極片の製作:正極材料であるコバルト酸リチウムと、バインダーであるPVDFと、導電剤であるカーボンナノチューブとを、97.5%:1.5%:1%の質量比で混合し、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を入れ、スラリーを調製し、均一に攪拌し、正極活物質層のスラリーを形成した。スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔に均一に塗布し、90℃の条件で乾燥した後、正極片を得た。
【0078】
負極片の製作:負極材料である黒鉛と、バインダーであるスチレンアクリレートと、バインダーであるカルボキシメチルセルロースリチウムと、導電剤であるCNTとを、97.5%:1%:1%:0.5%で混合し、溶媒として脱イオン水を入れ、負極活物質層のスラリーを形成し、負極集電体として銅箔を用い、負極活物質層のスラリーを負極集電体に塗布し、90℃の条件で乾燥し、負極片を得た。
【0079】
比較例1の他の製作ステップは実施例1と同様にして、比較例1と実施例1のパラメータの違いは以下の表に示す。
【0080】
比較例2~3は、比較例1のステップの上でパラメータを変更したものである。変更されたパラメータは、具体的に、以下の表に示す。
【0081】
以下、本発明の試験方法を説明する。
【0082】
1、熱重量試験
【0083】
電池を3.0Vまで放電し、電池を分解して負極片を得た。DMC(ジメチルカーボネート)で極片を12時間~24時間浸漬し、DMCを入れ替えて、極片をさらに12時間~24時間浸漬し、80℃~100℃で乾燥し、極片表面から対応位置にある活物質層粉末を掻き取って測定し、熱重量分析法を用いて、製作されたリチウムイオン電池の負極の活物質層に対して熱重量分析を行って、熱重量分析過程においての質量変化および重量減少ピーク数を測定した。測定範囲が200℃~800℃であり、昇温速度が10℃/minであり、試験雰囲気が不活性雰囲気である。
【0084】
2、抵抗率試験
【0085】
抵抗測定器を用いて、活物質層の抵抗率を測定した。上下平面圧力制御可能プローブを用いて極片を直接に測定し、試験正極片または負極片に交流電流を加えるとともに、試験活物質層に一定の圧力(0.35T)を加え、極片の厚さ方向の全体抵抗を得た。同時に、試験極片の面積(A)と厚さ(l)を集め、抵抗率計算式(ρ=R*A/l)で、試験極片の抵抗率を算出した。
【0086】
3、交流抵抗試験
【0087】
1Khzの交流小電流を電池の正負極に加え、その電圧の応答を測定することにより、電池の交流抵抗値を得た。
【0088】
4、25℃直流抵抗DCR試験
【0089】
25℃で、リチウムイオン電池を0.5Cで4.45Vまで定電流充電し、そして、0.05Cまで定電圧充電し、30min静置し、電池の充電深度が70%SOCになるまで0.1Cで3h放電し(放電終了時に対応する電圧値U1を記録する)、そして、1Cで1s放電した(放電終了時に対応する電圧値U2を記録する)。ここで、「1C」とは、1時間内で電池容量を完全に放電した電流値である。以下の式により、電池の70%SOCのDCRを算出した:DCR=(U1-U2)/(1C-0.1C)。
【0090】
5、レート性能の試験
【0091】
25℃の環境下で、電池を3Vまで定電流放電し、第1回の充電と放電を行い、上限電圧が4.48Vになるまで0.7Cの充電電流で定電流充電し、さらに0.05Cまで定電圧充電し、そして、最終電圧が3Vになるまで0.2Cの放電電流で定電流放電し、0.2Cの放電容量を記録した。その後、上限電圧が4.48Vになるまで0.7Cの充電電流で充電を繰り返して、さらに、0.05Cまで定電圧充電し、そして、3Cの放電電流で定電流放電するように放電レートを設定し、最終電圧が3Vになるまで放電し、3Cの放電容量を記録した。
【0092】
3C放電容量維持率=(3C放電容量/0.2C放電容量)×100%
【0093】
【0094】
【0095】
表1と表2は実施例1~15および比較例1~3の製作パラメータと性能試験結果を示している。表中の比率はいずれも質量比である。
【0096】
表1と表2を参照し、実施例1~15において、負極中の第1領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数と負極中の第2領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数との差はいずれも1以上であり、比較例1~3において、負極中の第1領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数と負極中の第2領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数との差はいずれも0であり、実施例1~15は、交流抵抗、直流抵抗がいずれも比較例1~3より小さく、かつ、3C放電容量維持率がいずれも比較例1~3より高い。これは、第1領域と前記第2領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数の差が≧1である場合、第2領域がより良い導電性を有し、イオンと電子が第2領域を通過して第1領域に到達しやすいため、極片の動力学特性を高めたと考えられる。
【0097】
実施例1~3を参照し、負極中の第1領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数の変化に伴い、リチウムイオン電池の交流抵抗、直流抵抗および3C放電容量は、依然として比較例1~3より優れている。これから分かるように、第1領域と第2領域の重量減少ピーク数の差が1以上であれば、本発明に記載の技術的効果を実現することができる。
【0098】
比較例1~3では、第1領域における導電剤の含有量が第2領域より高いため、第2領域の導電性が悪く、電子とイオンの第2領域から第1領域への伝送に影響を与え、動力学性能に影響を与える。一方、実施例1~12では、第2領域における導電剤の含有量が第1領域より高いため、動力学特性を高めることに有利である。
【0099】
実施例1、4~6は、異なるバインダー成分の影響を示している。これから分かるように、異なるバインダーは、リチウムイオン電池の直流抵抗、交流抵抗および3C放電容量維持率に、ある程度の影響を与え、バインダーがスチレンアクリレートとカルボキシメチルセルロースリチウムである場合、リチウムイオン電池の性能が最も優れている。
【0100】
実施例7~9、11~12は、負極中の第1領域におけるバインダーの質量百分率の変化がリチウムイオン電池に与える影響を示している。バインダーの質量百分率の増加に伴い、第1領域の200℃~800℃における熱重質量変化が増加する。これは、バインダーが熱重量分析過程において分解酸化したからである。交流抵抗と直流抵抗が増加し、3C放電容量維持率が低下する。これは、バインダーの存在がイオンと電子の伝送を妨害し、導電性を低下させたからである。
【0101】
実施例9と10は、バインダーの成分が変化しない場合、バインダーの成分比率を変更することがリチウムイオン電池の性能に影響を与えることを示している。
【0102】
実施例13~15では、負極中の第2領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数が実施例2、3、11と異なるように、負極に対する熱処理の時間および/または温度を適切に調整した。それは、負極中の第2領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数が0であることに制御した場合、リチウムイオン電池の性能が最も優れていることを示している。
【0103】
【0104】
【0105】
表3と表4は、実施例8、20~27の製作パラメータと性能試験結果を示している。表中の比率はいずれも質量比である。
【0106】
実施例8、16~19は、負極活物質層の厚さの影響を示している。負極活物質層の厚さの増加に伴い、リチウムイオン電池の交流抵抗と直流抵抗が増加し、3C放電容量維持率が低下する。これは、厚さの増加により、イオンと電子の伝送経路が長くなり、動力学特性が低下したからである。しかし、負極活物質層の厚さが小さすぎると、担持する負極活物質が少なすぎ、エネルギー密度に不利である。
【0107】
実施例8、20~23は、正極活物質層の厚さの影響を示している。負極と同様に、正極活物質の厚さが増加すると、直流抵抗と交流抵抗が増加し、3C放電容量維持率が低下する。しかし、正極活物質層の厚さが小さすぎると、エネルギー密度にも影響を与える。
【0108】
実施例8、24~27は、負極活物質層の成分の影響を示している。これから分かるように、負極材料が一酸化ケイ素、コバルト酸リチウム、黒鉛、ケイ素およびハードカーボンから選択されたものである場合、いずれも良い効果を得ることができるが、異なる負極材料を選択すると、負極活物質層の圧縮密度が異なり、負極材料が黒鉛である場合、総合的な性能が優れている。
【0109】
【0110】
【0111】
表5と表6は、実施例8、28~36の製作パラメータと性能試験結果を示している。表中の比率はいずれも質量比である。
【0112】
実施例8、28~29は、負極活物質層における導電剤の質量百分率の影響を示している。導電剤の質量百分率の増加に伴い、直流抵抗と交流抵抗はいずれも下がり、3C放電容量維持率が高くなる。これは、導電剤が負極活物質層全体の導電性を高めたからである。しかし、導電剤の質量百分率が高すぎると、リチウムイオン電池のエネルギー密度が低下する。
【0113】
実施例8、30~31は、負極活物質層における導電剤の分布の影響を示している。これから分かるように、(A-B)/Bが20%より大きい場合、直流抵抗と交流抵抗を著しく下げるとともに、レート性能を高めることができる。これは、第2領域における導電剤の含有量の増加により、イオンと電子が第1領域に伝送されることができ、動力学特性が向上したからである。
【0114】
実施例8、32~36は、負極活物質層における導電剤の種類の影響を示している。導電剤が導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンまたは炭素繊維である場合、リチウムイオン電池の性能はいずれも優れ、その中、導電剤がカーボンナノチューブである場合、性能が最も良い。
【0115】
【0116】
【0117】
表7と表8は、実施例37~49の製作パラメータと性能試験結果を示している。表中の比率はいずれも質量比である。実施例37~49はいずれも正極に対して熱処理を行った。実施例49は正極と負極の両方に対して熱処理を行った。
【0118】
実施例37~41は、正極活物質層の圧縮密度の影響を示している。正極活物質層の圧縮密度の増加に伴い、交流抵抗と直流抵抗が増加し、3C放電容量維持率が低下する。これは、圧縮密度の増加により、単位体積あたりの正極材料が増加し、電解液の浸潤性が低下し、動力学特性が低下したからである。
【0119】
実施例42~44は、正極活物質層の厚さの影響を示している。正極活物質層の厚さの増加に伴い、動力学特性が低下し、抵抗が増加し、レート性能が劣化する。
【0120】
実施例45~48は、正極活物質の影響を示している。これらの実施例に用いられた活物質は、いずれも良い性能を有し、その中、活物質がコバルト酸リチウムである場合、総合的な性能が優れている。実施例49では、正極と負極の両方に対して熱処理を行ったため、その正極と負極はいずれも良い動力学特性を有し、交流抵抗と直流抵抗が最も小さく、かつ、3C放電性能が最も良い。
【0121】
以上の説明は、本発明の好適な実施形態および使用される技術原理の説明にすぎない。本発明にかかる範囲は、上記した技術的特徴の特定の組み合わせによる技術案に限定されるものではなく、同時に上記した技術的特徴またはその同等な特徴を任意に組み合わせて形成された他の技術案も包含すべきであることを、当業者は、理解すべきである。例えば、上記特徴と本発明に開示された同様の機能を有する技術的特徴とを互いに置き換えて形成されたものである。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体の片側または両側に位置する活物質層とを含む電極であって、
前記活物質層は第1領域と第2領域とを含み、
前記電極の厚さ方向に沿って、前記第1領域は前記集電体と前記第2領域との間に位置し、前記第1領域は前記集電体側から前記活物質層の厚さの三分の二までの領域であり、前記第2領域は前記活物質層の厚さの三分の二から前記電極表面までの領域であり、
不活性雰囲気下で昇温速度10℃/minで前記活物質層に対して熱重量分析を行って、前記熱重量分析の結果は、前記第1領域と前記第2領域の200℃~800℃における熱重量減少ピーク数の差が≧1であることを示していることを特徴とする、電極。
【請求項2】
不活性雰囲気下で昇温速度10℃/minで前記活物質層に対して熱重量分析を行って、前記熱重量分析の結果は、前記第1領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数が1以上であり、前記第2領域の200℃~800℃における重量減少ピーク数が0~2であることを示していることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記電極は、
(a)前記熱重量分析の結果は、前記第1領域の200℃~800℃における質量変化が0.21%~13%であることを示していることと、
(b)前記熱重量分析の結果は、前記第2領域の200℃~800℃における質量変化が0%~2.4%であることを示していることと、
のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記熱重量分析の結果は、前記第1領域の200℃~800℃における質量変化が1.6%~4.02%であることを示していることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
前記電極は負極であり、前記活物質層は負極活物質層であり、前記集電体は負極集電体であることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項6】
前記電極は、
(c)前記負極活物質層の圧縮密度ρ
1は、ρ
1≧0.6g/cm
3であることと、
(d)前記負極集電体における片側の前記負極活物質層の厚さh
1は、h
1≧10μmであることと、
(e)前記負極活物質層は負極材料を含み、前記負極材料はチタン酸リチウム、一酸化ケイ素、黒鉛、ケイ素およびハードカーボンのうちの少なくとも1種を含むことと、
のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項5に記載の電極。
【請求項7】
前記電極は、
(f)前記負極活物質層の圧縮密度ρ
1は、1.85g/cm
3≧ρ
1≧0.65g/cm
3を満たすことと、
(g)前記負極集電体における片側の前記負極活物質層の厚さh
1は、1500μm≧h
1≧15μmを満たすことと、
のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項5に記載の電極。
【請求項8】
前記電極は、
(h)前記負極活物質層の圧縮密度ρ
1は、1.83g/cm
3≧ρ
1≧1.0g/cm
3を満たすことと、
(i)前記負極集電体における片側の前記負極活物質層の厚さh
1は、150μm≧h
1≧30μmを満たすことと、
のうちの少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項5に記載の電極。
【請求項9】
前記電極は正極であり、前記集電体は正極集電体であり、前記活物質層は正極活物質層であり、
前記電極は、
(j)前記正極活物質層の圧縮密度ρ
2は、ρ
2≧2g/cm
3であることと、
(k)前記正極集電体における片側の前記正極活物質層の厚さh
2は、h
2≧20μmであることと、
(l)前記正極活物質層は正極材料を含み、前記正極材料はリン酸鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、マンガン酸リチウム、コバルト酸リチウムおよびニッケルコバルトアルミニウム酸リチウムのうちの少なくとも1種を含むことと、
のうちの少なくとも1つを満たす、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項10】
前記電極は正極であり、前記集電体は正極集電体であり、前記活物質層は正極活物質層であり、
前記電極は、
(m)前記正極活物質層の圧縮密度ρ
2は、4.25g/cm
3≧ρ
2≧2.3g/cm
3を満たすことと、
(n)前記正極集電体における片側の前記正極活物質層の厚さh
2は、1500μm≧h
2≧30μmを満たすことと、
のうちの少なくとも1つを満たす、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項11】
前記電極は正極であり、前記集電体は正極集電体であり、前記活物質層は正極活物質層であり、
前記電極は、
(o)前記正極活物質層の圧縮密度ρ
2は、4.23g/cm
3≧ρ
2≧4.0g/cm
3を満たすことと、
(p)前記正極集電体における片側の前記正極活物質層の厚さh
2は、130μm≧h
2≧26μmを満たすことと、
のうちの少なくとも1つを満たす、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項12】
前記活物質層は、導電剤を含み、かつ、
前記活物質層は、
(q)前記第1領域における前記導電剤の質量百分率をBとし、前記第2領域における前記導電剤の質量百分率をAとし、AがBより大きいことと、
(r)前記第1領域における前記導電剤の質量百分率をBとし、前記第2領域における前記導電剤の質量百分率をAとし、(A-B)/B≧20%であることと、
(s)前記導電剤はカーボンナノチューブ、炭素繊維、アセチレンブラック、グラフェン、ケッチェンブラックおよび導電性カーボンブラックのうちの少なくとも1種を含むことと、
(t)前記活物質層の総質量に対して、前記活物質層における前記導電剤の質量百分率は0~2%であることと、
のうちの少なくとも1つを満たす、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項13】
前記第1領域は高分子化合物を含み、かつ、
前記第1領域は、
(u)前記高分子化合物はポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアクリル酸、ポリプロピレン誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、ポリメチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、スチレンアクリレートおよびスチレンブタジエンゴムのうちの少なくとも1種を含むことと、
(v)前記活物質層における前記高分子化合物の質量百分率は0.42%~14%であることと、
のうちの少なくとも1つを満たす、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項14】
前記第1領域は高分子化合物を含み、前記活物質層における前記高分子化合物の質量百分率は2.0%~5.0%であることを特徴とする、請求項1に記載の電極。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の電極の製作方法であって、
活物質層のスラリーを集電体の少なくとも一方の表面に塗布し、乾燥し、冷間プレスし、初期電極を得ることと、
前記初期電極に対して処理を行い、前記電極を得ることと、を含み、
前記初期電極に対する処理は、真空環境下で前記初期電極に対するプラズマ処理、真空または不活性ガス環境下で前記初期電極に対する熱処理、あるいは、真空または不活性ガス環境下で前記初期電極に対するレーザー衝撃を含み、
真空環境下で前記初期電極に対するプラズマ処理では、プラズマの出力が0.5kW~5kWであり、ガス源が窒素ガス、アルゴンガスおよび四フッ化炭素のうちの少なくとも1種を含み、ガス流量が3000sccm~5000sccmであり、温度が20℃~60℃であり、処理時間が0.5min~1minであり、
真空または不活性ガス環境下で前記初期電極に対する熱処理では、熱処理温度が200℃より高く、熱処理時間が1min~3minであり、
真空または不活性ガス環境下で前記初期電極に対するレーザー衝撃では、レーザー強度が30W~100Wであり、処理時間が0.5s~1sである、
ことを特徴とする、製作方法。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか1項に記載の電極の製作方法であって、
活物質層のスラリーを集電体の少なくとも一方の表面に塗布し、乾燥し、冷間プレスし、初期電極を得ることと、
前記初期電極に対して処理を行い、前記電極を得ることと、を含み、
前記初期電極に対する処理は、真空または不活性ガス環境下で前記初期電極に対する熱処理を含み、熱処理温度が350℃~600℃であり、熱処理時間が1min~3minである、
ことを特徴とする、製作方法。
【請求項17】
電極を含む電気化学装置であって、
前記電極は請求項1~14のいずれか1項に記載の電極であり、または、
前記電極は請求項15~16のいずれか1項に記載の製作方法により製作された電極である、
ことを特徴とする、電気化学装置。
【請求項18】
請求項
17に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【国際調査報告】