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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】運動測定方法とデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20241114BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61B5/11
A61B10/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528531
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 GB2022053180
(87)【国際公開番号】W WO2023111534
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】17/549,226
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520233043
【氏名又は名称】コネクサ ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】ケリー ピーター ジョン
(72)【発明者】
【氏名】エリス ロバート
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB01
4C038VB31
4C038VC20
(57)【要約】
【解決手段】
本発明は、ユーザの回内運動期間と回外運動期間とを分析するために、ユーザの運動を測定および/または分析する方法とデバイスとに関する。特に、神経変性疾患または筋制御に影響を与える他の疾患を示す医学的バイオマーカが決定される。方法は、ユーザの身体部位の回転に対して保持されるかまたは取り付けられるセンサから、身体部位の反復回転運動中に運動データを受信することにより始まる。受信データは、ユーザの身体部位の運動に関する回転の相互に直交する1次軸と2次軸と3次軸とにおけるセンサに関連付けられる基準系内の向きを識別するために処理される。次いで、医学的バイオマーカは、1次軸と2次軸と3次軸とのうちの少なくとも1つの周りにおけるユーザの身体部位の回転運動を分析することにより抽出される。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性疾患または筋制御に影響を与える他の疾患を示す医学的バイオマーカを決定する方法であって、前記方法は、
ユーザの身体部位の回転に対して保持されるかまたは取り付けられるセンサから、前記身体部位の反復回転運動中に運動データを受信するステップと、
前記ユーザの前記身体部位の前記運動の回転の1次軸と2次軸と3次軸とにおける前記センサに関連付けられる基準系内の向きを識別するために前記データを処理するステップと、
前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とのうちの少なくとも1つの周りにおける前記ユーザの前記身体部位の前記回転運動を分析することにより、前記医学的バイオマーカを抽出するステップと、
を有してなり、
前記運動データは、前記センサに関連付けられる前記基準系に対して提供されて、
前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸それぞれは、互いに対して相互に直交する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ユーザの前記身体部位の前記回転運動を分析することは、前記反復回転運動全体を通じて連続的に実行される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記回転運動を分析することは、
前記1次軸、前記2次軸、および/または前記3次軸に沿った前記回転運動を時間の関数として抽出すること、
を含む、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ピークとトラフとが所定の閾値よりも大きい大きさを有するプロミネンスを有する時間を識別することにより、局所的な最大値と最小値とを抽出するステップ、
を有してなる、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記分析は、前記所定の閾値よりも大きいプロミネンスを有する運動のみに対して実行される、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
最初の運動および/または最後の運動は、前記分析から除外される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記医学的バイオマーカは、前記身体部位の前記運動と、前記ユーザが行うように指示されるモデル運動と、の間の相違を示す、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記医学的バイオマーカを抽出するステップは、
前記回転運動の反復の頻度、
単一の回転運動に関する時間、
単一の回転運動に関する平均時間、
前記回転運動の角振幅、
中立ポイントに対する前記回転運動の角振幅の非対称性、
前記回転運動の角速度もしくは角加速度の非対称性、および/または
前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とのうちの1つに沿った前記回転運動の角振幅、対、前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とのうちの別の軸に沿った前記回転運動の角振幅の比、のうちの1つ以上を抽出すること、
を含む、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記医学的バイオマーカを抽出するステップは、
前記回転運動の反復の頻度、
単一の回転運動に関する時間、
前記センサに関連付けられる前記基準系における前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とのうちの1つ以上の向き、
前記回転運動の角振幅、
中立ポイントに対する前記回転運動の角振幅の非対称性、
前記回転運動の角速度もしくは角加速度の非対称性、および/または
前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とのうちの1つに沿った前記回転運動の角振幅、対、前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とのうちの別の軸に沿った前記回転運動の角振幅の比、のうちの1つ以上に関する変化を検出すること、
を含む、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反復回転運動が生じる期間は、2つ以上の別のサブ期間に分割されて、
前記分析は、前記サブ期間のうちの1つの間に受信される運動データに対して個々に実行される、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記処理は、前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸との向きを識別するために主成分分析を使用する、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ローパスフィルタは、前記識別ステップが実行される前に、前記運動データに対して適用される、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反復回転運動は、手の回内回外であるか、または膝もしくは肘の曲げ伸ばしである、
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸との向きに基づいて、前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とに対して、受信された前記運動データを位置合わせするための変換を計算するステップ、
を有してなる、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸それぞれに沿った前記ユーザの前記回転運動を抽出するために、受信された前記運動データに対して前記変換を適用するステップ、
を有してなる、
請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法のステップをプログラム可能なコンピュータデバイスに実行させるコンピュータ実装可能命令、
を有してなる、
ことを特徴とする有形のコンピュータ可読媒体。
【請求項17】
神経変性疾患または筋制御に影響を与える他の疾患を示す医学的バイオマーカを決定する装置であって、前記装置は、
ユーザの身体部位の回転に対して保持されるかまたは取り付けられるセンサから、前記身体部位の反復回転運動中に運動データを受信することと、
前記ユーザの前記身体部位の前記運動の回転の1次軸と2次軸と3次軸とにおける前記センサに関連付けられる前記基準系内の向きを識別するために前記データを処理することと、
前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とのうちの少なくとも1つの周りにおける前記ユーザの前記身体部位の前記回転運動を分析することにより、前記医学的バイオマーカを抽出することと、
を実行するように構成される、
1つ以上のプロセッサと、
メモリと、
を有してなり、
前記運動データは、前記センサに関連付けられる前記基準系に対して提供されて、
前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸それぞれは、互いに対して相互に直交する、
ことを特徴とする装置。
【請求項18】
前記運動データを供給する加速度計および/またはジャイロスコープ、
を有してなる、
請求項17記載の装置。
【請求項19】
1つ以上の前記プロセッサと前記メモリとは、前記ユーザの前記身体部位の前記回転運動を分析することが前記反復回転運動全体を通じて連続的に実行されるようにさらに構成される、
請求項17または18記載の装置。
【請求項20】
1つ以上の前記プロセッサと前記メモリとは、前記1次軸、前記2次軸、および/または前記3次軸に沿った前記回転運動を時間の関数として抽出するために前記回転運動を分析するようにさらに構成される、
請求項17乃至19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
1つ以上の前記プロセッサと前記メモリとは、ピークとトラフとが所定の閾値よりも大きい大きさを有するプロミネンスを有する時間を識別することにより、局所的な最大値と最小値とを抽出するようにさらに構成される、
請求項20記載の装置。
【請求項22】
1つ以上の前記プロセッサと前記メモリとは、前記所定の閾値よりも大きいプロミネンスを有する運動のみを分析するようにさらに構成される、
請求項21記載の装置。
【請求項23】
1つ以上の前記プロセッサと前記メモリとは、最初の運動および/または最後の運動を前記分析から除外するようにさらに構成される、
請求項17乃至22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記医学的バイオマーカは、前記身体部位の前記運動と、前記ユーザが行うように指示されるモデル運動と、の間の相違を示す、
請求項17乃至23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
1つ以上の前記プロセッサと前記メモリとは、前記医学的バイオマーカの抽出の一部として、
前記回転運動の反復の頻度、
単一の回転運動に関する時間、
単一の回転運動に関する平均時間、
前記回転運動の角振幅、
中立ポイントに対する前記回転運動の角振幅の非対称性、
前記回転運動の角速度もしくは角加速度の非対称性、および/または
前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とのうちの1つに沿った前記回転運動の角振幅、対、前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とのうちの別の軸に沿った前記回転運動の角振幅の比、のうちの1つ以上を抽出するようにさらに構成される、
請求項17乃至24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
1つ以上の前記プロセッサと前記メモリとは、前記医学的バイオマーカの抽出の一部として、
前記回転運動の反復の頻度、
単一の回転運動に関する時間、
前記センサに関連付けられる前記基準系における前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とのうちの1つ以上の向き、
前記回転運動の角振幅、
中立ポイントに対する前記回転運動の角振幅の非対称性、
前記回転運動の角速度もしくは角加速度の非対称性、および/または
前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とのうちの1つに沿った前記回転運動の角振幅、対、前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とのうちの別の軸に沿った前記回転運動の角振幅の比、のうちの1つ以上に関する変化を検出するようにさらに構成される、
請求項17乃至25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
1つ以上の前記プロセッサと前記メモリとは、前記反復回転運動が生じる期間を2つ以上の別のサブ期間に分割して、前記サブ期間のうちの1つの間に受信される運動データに対して個々に前記分析を実行するようにさらに構成される、
請求項17乃至26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
1つ以上の前記プロセッサと前記メモリとは、前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸との向きを識別するために主成分分析を使用するようにさらに構成される、
請求項17乃至27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
1つ以上の前記プロセッサと前記メモリとは、前記識別を実行する前に、前記運動データに対してローパスフィルタを適用するようにさらに構成される、
請求項17乃至28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記反復回転運動は、手の回内回外であるか、または膝もしくは肘の曲げ伸ばしである、
請求項17乃至29のいずれか一項に記載の装置。
【請求項31】
1つ以上の前記プロセッサと前記メモリとは、前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸との向きに基づいて、前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とに対して、受信された前記運動データを位置合わせするための変換を計算するようにさらに構成される、
請求項17乃至30のいずれか一項に記載の装置。
【請求項32】
1つ以上の前記プロセッサと前記メモリとは、前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸それぞれに沿った前記ユーザの前記回転運動を抽出するために、受信された前記運動データに対して前記変換を適用するようにさらに構成される、
請求項31記載の装置。
【請求項33】
1つ以上の前記プロセッサと前記メモリとは、第1デバイスにおいて提供されて、
前記ジャイロスコープおよび/または前記加速度計は、前記第1デバイスに対して離れた位置に位置する第2デバイスにおいて提供されて、
前記第1デバイスと前記第2デバイスとは、
互いに通信する、協働する通信ユニット、
を備える、
請求項18または請求項18に従属するいずれか一項に記載の装置。
【請求項34】
複数のユーザデバイスと通信する中央コンピュータを備える治験システムの一部を形成する装置であって、前記ユーザデバイスのそれぞれは、前記ユーザデバイスに関連付けられるユーザの身体部位の反復回転運動に関する運動データを収集するように構成されて、
前記中央コンピュータまたは少なくとも1つの前記ユーザデバイスは、
医学的バイオマーカを決定するために請求項16に記載の装置、
を備える、
請求項17乃至33のいずれか一項に記載の装置。
【請求項35】
請求項17乃至34のいずれか一項に記載の装置としてプログラム可能なコンピュータデバイスを構成させるコンピュータ実装可能命令、
を有してなる、
ことを特徴とする有形のコンピュータ可読媒体。
【請求項36】
前記バイオマーカは、
【数1】
のように定められる軸方向の変動パラメータVax
を含み、
とvとvとは、それぞれ、前記1次軸と前記2次軸と前記3次軸とに関する前記データの固有値である、
請求項1乃至35のいずれか一項に記載の方法または装置。
【請求項37】
前記医学的バイオマーカを抽出するステップは、
集団に亘って前記バイオマーカの統計分析から導出される閾値に対して前記バイオマーカを比較すること、
をさらに含む、
請求項1乃至36のいずれか一項に記載の方法または装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの回転運動の測定の分野に関する。本発明は、排他的ではないが特に、ユーザの回内運動期間と回外運動期間とを分析するためにユーザの運動を測定および/または分析する方法とデバイスとに関連する。
【背景技術】
【0002】
現在、加速度計および/またはジャイロスコープは、一般的で容易に利用可能となっている。例えば、最近の携帯電話には、加速度計および/またはジャイロスコープが搭載されている。これらのセンサからの出力は、携帯電話の移動と向きとに関連付けられる特徴を判定するために分析され得る。典型的には、このデータ処理は、ユーザのナビゲーションの支援、またはゲームなどのアプリケーションに対する入力の提供を対象とするが、フィットネストラッカアプリ、例えば、ステップカウンタなどにも使用され得る。
【0003】
現在の使用は、一般に、精度が反復可能性ほど重要ではないレジャー市場に集中している。デバイスは、デバイスに加えられる物理的な移動の形態でのユーザ入力を考慮することにより、デバイスの移動を監視するように設計された専用デバイスであり得るか、またはデバイスは、携帯電話、スマートウォッチ、もしくは同種のものなどのユーザデバイスにおいて実行されるソフトウェアアプリケーションの形態を取り得る。ほとんどの使用ケースにおいて、入力データの処理は、例えば、ユーザがデバイスを回転させることを意図する入力回転軸を識別するように、「十分優れた」結果を達成するために簡略化される。複数の軸周りの回転に関係する情報を抽出するためのより複雑な処理は、ほとんど使用されず、多くのアプリケーションにおいて、測定デバイスの基準系における実質的に不変の回転軸周りの回転を識別することがより好ましい。
【0004】
加えて、例えば、医学的評価の一部として、身体部位の運動を測定するときに、運動を監視するための運動検知を使用することが望ましい場合がある。従来技術のデバイスは、通常、監視されている身体部位の回転の軸に対して加速度測定デバイス内の加速度計が位置合わせされることを想定しており、加速度測定デバイスが評価の開始時に慎重に配置されて、評価中に移動しないように、所定位置に固定されることを必要とする。
【0005】
本発明は、任意の特定の軸に沿ってデバイスが位置合わせされることも、回転の軸が事前に知られている必要があることも必要としない。本発明は、訓練された臨床医または他の専門家がデバイスを正確に配置して、次いで、評価中における配置の変化を防止するために被験者とデバイスとを能動的に監視する必要性を排除する。本発明は、より正確なデータをより一貫して提供して、これらの健康指標に基づく意思決定を著しく改善する。
【0006】
このようなセンサにより提供されるデータセットは、多量の有用な情報を含み、本発明者らは、既存の技術において実現されない様々なニーズを識別した。例えば、より微妙な違いの測定と、同測定に関するより詳細な分析と、に対するニーズが存在する。
【0007】
さらに、既存のアルゴリズムは、最初の回転の開始時間と、最後の回転の終了時間と、を判定するのが困難な場合があり、計算される回転速度と他の特徴スコアとにおいて誤差をもたらす。本発明は、同誤差を著しく低減する。
【0008】
一部の病状、例えば、神経変性疾患と、中枢神経系障害と、筋制御に影響を与える他の疾患と、の結果、被験者は、モデル運動を再現するのに不完全な能力を有する場合があるため、分析を簡略化するように特定の運動を想定しているデバイスとアルゴリズムとは、不適切な場合がある。
【0009】
一部の被験者は、特定の位置(例えば、手首)におけるデバイスまたは特定のデバイス(例えば、アンクルタグウォッチ)を着用できないか、または着用したくない場合があるため、デバイスとアルゴリズムとは、理想的には、装着位置に関して依存しないようにするべきであり、これらの困難に対応するために様々なハードウェアデバイスに亘って有効となるべきである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の態様は、独立請求項に記載されて、好ましい特徴は、従属請求項に記載される。
【0011】
第1態様によれば、神経変性疾患または筋制御に影響を与える他の疾患を示す医学的バイオマーカを決定する方法が提供される。本方法は、ユーザの身体部位の回転に対して保持されるかまたは取り付けられるセンサから、身体部位の反復回転運動中に運動データを受信することを含む。運動データは、センサに関連付けられる基準系に対して提供される。次いで、運動データは、ユーザの身体部位の運動に関する回転の1次軸と2次軸と3次軸とにおけるセンサに関連付けられる基準系内の向きを識別するために処理されて、1次軸と2次軸と3次軸それぞれは、互いに対して相互に直交する。医学的バイオマーカは、1次軸と2次軸と3次軸とのうちの少なくとも1つの周りにおけるユーザの身体部位の回転運動を分析することにより抽出される。すなわち、1次軸と2次軸と3次軸とに関して受信される回転運動の分析は、医学的バイオマーカを抽出するために分析される。疑義を避けるために、場合によって、分析自体は、3つすべての軸、軸のうちの2つのみ、または1つの軸のみに関するデータを利用し得る。運動データは、3つの軸に沿った、または3つの軸それぞれの周りの、回転位置または直線位置、速度、または加速度の情報の形態を取り得る。
【0012】
ユーザの身体部位の回転運動を分析することは、反復運動全体を通じて連続的または継続的に行われ得る。換言すれば、分析は、回転運動が反復して行われる連続的な期間全体を通じて生じ得る。
【0013】
回転運動を分析することは、1次軸、2次軸、および/または3次軸に沿った回転運動を時間の関数として抽出することを含み得る。
【0014】
本方法は、ピークとトラフとが所定の閾値よりも大きい大きさを有するプロミネンスを有する時間を識別することにより、局所的な最大値と最小値とを抽出することをさらに含み得る。
【0015】
分析は、所定の閾値よりも大きいプロミネンスを有する運動のみに対して実行され得る。
【0016】
本方法は、最初の運動および/または最後の運動が分析から除外されるように実行され得る。さらなる例において、最初のM個の運動および/または最後のN個の運動は、分析から除外され得る。MとNとは、異なる整数または同じ整数であり得る。
【0017】
医学的バイオマーカは、身体部位の運動と、ユーザが行うように指示されるモデル運動と、の間の相違を示し得る。
【0018】
医学的バイオマーカを抽出することは、回転運動の反復の頻度、単一の回転運動に関する時間、単一の回転運動に関する平均時間、回転運動の角振幅、中立ポイントに対する回転運動の角振幅の非対称性、回転運動の角速度もしくは角加速度の非対称性、および/または1次軸と2次軸と3次軸とのうちの1つに沿った回転運動の角振幅、対、1次軸と2次軸と3次軸とのうちの別の軸に沿った回転運動の角振幅の比、のうちの1つ以上を抽出することを含み得る。
【0019】
医学的バイオマーカを抽出することは、回転運動の反復の頻度、単一の回転運動に関する時間、センサに関連付けられる基準系における1次軸と2次軸と3次軸とのうちの1つ以上の向き、回転運動の角振幅、中立ポイントに対する回転運動の角振幅の非対称性、回転運動の角速度もしくは角加速度の非対称性、および/または1次軸と2次軸と3次軸とのうちの1つに沿った回転運動の角振幅、対、1次軸と2次軸と3次軸とのうちの別の軸に沿った回転運動の角振幅の比、のうちの1つ以上に関する変化を検出することを含み得る。
【0020】
場合によって、反復回転運動が生じる期間は、2つ以上の別のサブ期間に分割されて、分析は、サブ期間のうちの1つの間に受信される運動データに対して個々に実行される。さらなる例において、分析は、サブ期間のうちの複数に対して互いに独立して実行され得る。さらなる追加の例において、サブ期間それぞれは、すべての他のサブ期間とは独立して分析され得る。
【0021】
任意選択的に、処理は、1次軸と2次軸と3次軸との向きを識別するために主成分分析を使用する。
【0022】
ローパスフィルタは、識別のステップが実行される前に運動データに対して適用され得る。
【0023】
反復回転運動は、手の回内回外、または膝もしくは肘の曲げ伸ばしであり得る。
【0024】
本方法は、1次軸と2次軸と3次軸との向きに基づいて、1次軸と2次軸と3次軸とに対して、受信された運動データを位置合わせするための変換を計算することをさらに含み得る。任意選択的に、変換は、1次軸と2次軸と3次軸それぞれに沿ったユーザの回転運動を抽出するために、受信された運動データに対して適用される。
【0025】
また、本発明は、プログラム可能なコンピュータデバイスに前述のとおりの方法のステップを実行させるコンピュータ実装可能命令を備える有形のコンピュータ可読媒体を提供する。
【0026】
また、本発明は、1つ以上のプロセッサとメモリとを備える装置を提供する。本装置は、神経変性疾患を示す医学的バイオマーカを決定するように構成される。本装置は、ユーザの身体部位の回転に対して保持されるかまたは取り付けられるセンサから、身体部位の反復回転運動中に運動データを受信するように構成される。運動データは、センサに関連付けられる基準系に対して提供されて、本装置は、ユーザの身体部位の運動に関する回転の1次軸と2次軸と3次軸とにおけるセンサに関連付けられる基準系内の向きを識別するためにデータを処理するように構成される。1次軸と2次軸と3次軸それぞれは、互いに対して相互に直交する。本装置は、さらに、1次軸と2次軸と3次軸との周りにおけるユーザの身体部位の回転運動を分析することにより、医学的バイオマーカを抽出するように構成される。すなわち、1次軸と2次軸と3次軸とに関して受信される回転運動の分析は、医学的バイオマーカを抽出するために分析される。疑義を避けるために、場合によって、分析自体は、3つすべての軸、軸のうちの2つのみ、または1つの軸のみに関するデータを利用し得る。運動データは、3つの軸それぞれに沿った、または3つの軸それぞれの周りの、回転位置または直線位置、速度、または加速度の情報の形態を取り得る。
【0027】
本装置は、運動データを供給する加速度計および/またはジャイロスコープをさらに含み得る。
【0028】
1つ以上のプロセッサとメモリとは、さらに、ユーザの身体部位の回転運動を分析することが反復運動全体を通じて連続的に実行されるように構成され得る。
【0029】
1つ以上のプロセッサとメモリとは、さらに、1次軸、2次軸、および/または3次軸に沿った回転運動を時間の関数として抽出するために回転運動を分析するように構成される。
【0030】
1つ以上のプロセッサとメモリとは、さらに、ピークとトラフとが、所定の閾値よりも大きい大きさを有するプロミネンスを有する時間を識別することにより、局所的な最大値と最小値とを抽出するように構成され得る。
【0031】
1つ以上のプロセッサとメモリとは、さらに、所定の閾値よりも大きいプロミネンスを有する運動のみを分析するように構成され得る。
【0032】
1つ以上のプロセッサとメモリとは、さらに、最初の運動および/または最後の運動を分析から除外するように構成され得る。さらなる例において、最初のM個の運動および/または最後のN個の運動は、分析から除外され得る。MとNとは、異なる整数または同じ整数であり得る。
【0033】
医学的バイオマーカは、身体部位の運動と、ユーザが行うように指示されるモデル運動と、の間の相違を示し得る。
【0034】
任意選択的に、医学的バイオマーカの抽出の一部として、1つ以上のプロセッサとメモリとは、さらに、回転運動の反復の頻度、単一の回転運動に関する時間、単一の回転運動に関する平均時間、回転運動の角振幅、中立ポイントに対する回転運動の角振幅の非対称性、回転運動の角速度もしくは角加速度の非対称性、および/または1次軸と2次軸と3次軸とのうちの1つに沿った回転運動の角振幅、対、1次軸と2次軸と3次軸とのうちの別の軸に沿った回転運動の角振幅の比、のうちの1つ以上を抽出するように構成される。
【0035】
任意選択的に、医学的バイオマーカの抽出の一部として、1つ以上のプロセッサとメモリとは、さらに、回転運動の反復の頻度、単一の回転運動に関する時間、センサに関連付けられる基準系における1次軸と2次軸と3次軸とのうちの1つ以上の向き、回転運動の角振幅、中立ポイントに対する回転運動の角振幅の非対称性、回転運動の角速度もしくは角加速度の非対称性、および/または1次軸と2次軸と3次軸とのうちの1つに沿った回転運動の角振幅、対、1次軸と2次軸と3次軸とのうちの別の軸に沿った回転運動の角振幅の比、のうちの1つ以上に関する変化を検出するように構成される。
【0036】
1つ以上のプロセッサとメモリとは、さらに、反復回転運動が生じる期間を2つ以上の別のサブ期間に分割して、サブ期間のうちの1つの間に受信される運動データに対して個々に分析を実行するように構成され得る。さらなる例において、分析は、サブ期間のうちの複数に対して互いに独立して実行され得る。さらなる追加の例において、サブ期間それぞれは、すべての他のサブ期間とは独立して分析され得る。
【0037】
1つ以上のプロセッサとメモリとは、さらに、1次軸と2次軸と3次軸との向きを識別するために主成分分析を使用するように構成され得る。
【0038】
1つ以上のプロセッサとメモリとは、さらに、識別を実行する前に運動データに対してローパスフィルタを適用するように構成され得る。
【0039】
反復回転運動は、手の回内回外、または膝もしくは肘の曲げ伸ばしであり得る。
【0040】
1つ以上のプロセッサとメモリとは、さらに、1次軸と2次軸と3次軸との向きに基づいて、1次軸と2次軸と3次軸とに対して、受信された運動データを位置合わせするための変換を計算するように構成され得る。
【0041】
1つ以上のプロセッサとメモリとは、さらに、1次軸と2次軸と3次軸それぞれに沿ったユーザの回転運動を抽出するために、受信された運動データに対して変換を適用するように構成され得る。
【0042】
1つ以上のプロセッサとメモリとは、第1デバイスにおいて提供されてもよく、ジャイロスコープおよび/または加速度計は、第1デバイスに対して離れた位置に位置する第2デバイスにおいて提供されて、第1デバイスと第2デバイスとは、互いに通信する、協働する通信ユニットを含む。
【0043】
本発明は、また、複数のユーザデバイスと通信する中央コンピュータを備える治験システムの一部を形成する、前述のとおりの装置を提供する。各ユーザデバイスは、ユーザデバイスに関連付けられるユーザの身体部位の反復回転運動に関する運動データを収集するように構成される。中央コンピュータまたは少なくとも1つのユーザデバイスは、医学的バイオマーカを決定する、前述のとおりの装置を備える。
【0044】
分析は、局所的に、または中央コンピュータにおいて集中的に実行され得る。
【0045】
任意選択的に、バイオマーカは、以下のように定められる軸方向の変動パラメータVaxを含む。
【数1】
ここで、vとvとvとは、1次軸と2次軸と3次軸それぞれに関するデータの固有値である。
【0046】
さらに、場合によって、バイオマーカを抽出することは、集団に亘るバイオマーカの統計的な分析から導出される閾値に対してバイオマーカを比較することをさらに含む。
【0047】
例として、バイオマーカは、バイオマーカVaxであり得るが、バイオマーカが抽出されて閾値と比較される前述の一般的な原理は、回転運動データから抽出されるいかなるバイオマーカの分析にも同様に適用される。前述のとおり、閾値は、例えば、バイオマーカに関する値と、例えば、特定の疾患または障害の重症度に関する独立した評価と、の間の相関を調べて、同バイオマーカ(または、実際には、他の関連のバイオマーカ)の集団に亘る統計分析から抽出され得る。
【0048】
本発明は、また、プログラム可能なコンピュータデバイスを前述のとおりの装置に係る装置として構成させるコンピュータ実装可能命令を備える有形のコンピュータ可読媒体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
ここで、本発明の例示的な実施形態は、添付の図を参照して説明される。
図1A図1Aは、治験に参加するユーザの運動が、ユーザが着用または携帯するユーザデバイスにより判定されて、収集と分析とのために中央サーバに報告される治験を概略的に示す。
図1B図1Bは、図1Aに示されるシステムの主要電子部品を示すブロック図である。
図2図2は、図1Bに示されるユーザデバイスの主要構成要素を示すブロック図である。
図3図3は、システムまたは方法が評価するように構成される例示的な運動を示す概略図である。
図4図4は、医学的バイオマーカを回転運動データから抽出する例示的な方法のステップを示すフローチャートである。
図5A図5Aは、ユーザによるモデル運動の試行中にセンサから受信される、3つの直交軸に沿った生の回転速度データを示すプロットである。
図5B図5Bは、回転の1次軸と2次軸と3次軸とに対して受信運動データを位置合わせする処理後における図5Aの回転速度データを示すプロットである。
図5C図5Cは、図5Bの回転速度データから抽出される回転角を示すプロットである。
図6図6は、3つの半回転のセットに関する回転角のプロットを示す。
図7A図7Aは、健康な集団における軸方向の変動に関するバイオマーカの収集データを示す。
図7B図7Bは、疾患を伴う集団における軸方向の変動に関するバイオマーカの収集データを示す。
【0050】
図面では、同様の要素を示すために、同様の参照番号が使用される。
【発明を実施するための形態】
【0051】
概要
上記でまとめられるように、本発明は、ユーザの運動を分析する代替的な方法を提供する。本発明により提供される方法とデバイスとは、様々なアプリケーション、例えば、フィットネストラッカなどにおいて使用され得る。しかしながら、本発明は、次に説明される医学的環境においても使用され得る。
【0052】
より具体的には、図1A図1Bとは、治験システム10において、本発明がどのように使用され得るかを示して、治験システム10において、(以下でユーザとも称される)多数の被験者30a-30eは、身体部位の回転運動を含むモデル運動を試行しているときに、対応する被験者の運動を監視するためにそれぞれのユーザデバイス100a-100eを使用する。多くの例において、モデル運動は、特定の運動の一連の反復、例えば、10回、20回、50回、さらには、100回の反復を含む。運動は、例えば、手首の回内/回外運動、または膝もしくは肘の曲げ伸ばしであり得る。ユーザデバイス100により収集される情報は、(図1Aにおいて破線40a-40eで表される)通信ネットワーク120上で、クリニック20内で表示され得る結果と共に中央サーバ140に送信し返される。
【0053】
クリニック20は、病院または医師の手術室などの医療センタでもよい。クリニック20は、単一のセンタで構成されてもよく、または多数の異なる地理的位置に位置する多数のセンタで構成されてもよい。被験者30a-30eは、クリニック20の患者であり、クリニック20が組織する治験に参加している。治験における患者それぞれは、同じ病状を伴うグループに分けられる。
【0054】
被験者30a-30eそれぞれには、クリニック専用であり、治験終了後にクリニックに返却され得るユーザデバイス100が提供される。代替的に、クリニックは、携帯電話やスマートウォッチなど、被験者自身のユーザデバイス上で作動できるソフトウェアアプリケーションを患者に提供してもよい。いずれの場合も、各被験者は、ユーザデバイスに関連付けられるセンサが治験中にユーザの運動を捕捉できるように、自身のユーザデバイスを着用または携帯するように求められる。図1Bに示されるように、一部のユーザデバイス100は、内蔵型センサ102を有するが、一部のユーザデバイス100は、有しない(この例では、ユーザデバイス100a)。ユーザデバイス100がセンサを有していない場合、被験者30aの運動を捕捉するセンサ102-aを有する別体のアクチグラフ測定デバイス101が提供される。センサ102,102-aは、ユーザにより保持されるように配置されるか、または他の場合において、運動が評価される身体部位の回転に対して取り付けられる。それにより、モデル運動を行おうとするユーザの運動は、センサにより捕捉される。
【0055】
以下でより詳細に述べられるように、センサ102,102-aは、1つ以上の加速度計および/またはジャイロスコープであり得る。加速度計は、典型的には、加速度計の向きに依存する1つ、2つ、または3つの直交方向における直線加速度情報を提供する。ジャイロスコープは、典型的には、1つ、2つ、または3つの直交方向における角速度情報を提供する。適切な分析により、境界条件(例えば、積分定数)を使用して、適宜データを積分または微分することにより、加速度と速度と位置との間(または角加速度と角速度と向きとの間)の変換が実行可能である。(局所的な重力場および/または磁場の方向を使用して、GPS座標から導出可能な位置固有の補正を適用して抽出され得る)デバイスの絶対的な向きに関するさらなる仮定を実行することにより、特定の仮定が実行され得る場合には、場合によって、直線加速度と角速度との間の変換が実行可能であり得る。センサデータを分析することにより、ユーザデバイス100は、被験者の身体部位の回転運動情報を判定できて、次いで、同回転運動情報は、治験の一部としてさらなる分析のために中央サーバ140へ被験者データとして(無線または有線接続で)送信される。
【0056】
一例において、中央サーバ140に提供される被験者データは、回転データと、回転運動データが関連する被験者を識別する識別データと、を含む。回転データは、治験により指定される期間、例えば、日、週、月、または年に亘る、回転運動の反復の頻度、単一の回転運動に関する時間、センサに関連付けられる基準系内の1次軸と2次軸と3次軸とのうちの1つ以上の向き、回転運動の角振幅、および/または1次軸と2次軸と3次軸とのうちの1つに沿った回転運動の角振幅、対、1次軸と2次軸と3次軸とのうちの別の軸に沿った回転運動の角振幅の比のうちの1つ以上に関する絶対的なものおよび/または変化を含み得る。被験者データは、被験者がクリニックに訪れるときにユーザデバイス100から取得され得るか、または被験者データは、携帯電話や有線電話、またはコンピュータネットワークで(無線または有線接続で)クリニックに送信され得る。クリニックで収集される被験者データには、クリニック20でのみ行われて遠隔で監視され得ない身体観察とテストとが補われ得る。クリニック20の外と家とにおける被験者の活動に関するクリニック20に提供されるデータの精度は、治験が監視期間中に被験者の活動に関する真の表示を受信することを保証するのに重要である。これは、治験の治療の有効性を判定するのに役立ち得る。
【0057】
別の例において、中央サーバ140に提供される被験者データは、センサデータと共に被験者に関する識別データを含むため、中央サーバ140は、各被験者に関するセンサデータを処理して、同センサデータから、中央サーバ140は、各被験者の回転運動データ自体を分析する。図1Bに示されていないが、この場合、中央サーバ140は、キーボードなどのユーザ入力デバイス、および/またはシステムのユーザデバイスから収集されるデータを処理するソフトウェアを含むユーザインタフェースをさらに備える。
【0058】
被験者データは、ユーザの身体の健康に関する様々な態様を示し得る。非常に高いレベルで、ユーザが特定の運動を実行可能な時間量、または同運動の数もしくは速度は、身体の健康状態に関する概略的なレベルを示し得る。追加の情報は、より微妙な違いを観察することにより取得され得る。場合によって、高レベルデータは、患者がクリニックに呼び出される必要があることを示し得て、または患者が短期間入院する必要があり得ることを示し得る。いくつかの例において、収集された患者データは、必要に応じて患者が医師または臨床医との予約を取るのに役立つように、クリニックにより使用され得る。
【0059】
また、被験者データは、競技力の測定と管理とのために使用され得る。競技活動の対象となる評価における運動の範囲および/または速度に関する詳細な分析は、アスリート、またはアスリートのトレーナとコーチとに提供され得る。次いで、同データは、競技力向上のためのトレーニング法を知らせるために使用され得る。
【0060】
また、被験者データは、理学療法の性能の測定と管理とのために使用され得る。管理されている、または管理されていない治療セッション活動時の対象となる評価中の運動の範囲および/または速度に関する詳細な分析は、患者、または患者の療法士と医師とに提供され得る。次いで、同データは、回復プログラムを改善するための治療法を知らせるために使用され得る。
【0061】
さらに、ユーザがモデル運動の再現を試行することにより取得される回転情報データは、特に、運動能力に影響を与えることが知られている1つ以上の病状を有することが知られているか、または有することが疑われる患者に関する研究に有用である。一時的な運動の問題は、怪我、外傷、炎症、または痛みにより引き起こされる場合がある。また、手の回内回外または膝もしくは肘の曲げ伸ばしなどの回転運動の問題は、特定の状態により引き起こされる場合がある。回転運動活動を測定する際に特に重要となり得る状態としては、関節炎、多発性硬化症(MS:multiple sclerosis)、メニエール病、出血や腫瘍などによりもたらされる脳損傷、パーキンソン病、臀部または下半身の整形外科手術、癌および関連付けられる治療、脳性麻痺、肥満、痛風、筋ジストロフィ、脳卒中、脊髄損傷、変形などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
周波数および/または運動中の周波数の変化は、多数の反復が検出された時間において検出された多数の反復を平均化することにより抽出され得て、または、例えば、フーリエ変換(もしくは離散コサイン変換などの他の周波数分析)などを伴うより高度な方法により抽出され得る。同抽出が達成されるどの方法においても、一般的に、器用さが年齢および/または身体の健康状態の欠如により低下するという点で、周波数または測定中の周波数の変化の測定は、概略的な身体の健康を示し得る。周波数の変化の正確な形態を分析することにより、さらなる情報が導出され得て、同情報において、ユーザが特定の疾患または障害を起こしている可能性から評価がなされ得る。
【0063】
また、単一の回転運動に要する時間もしくは単一の回転運動に要する平均時間および/またはこれらのパラメータの変化は、健康なユーザよりも年配または病気のユーザの方が遅いと予想されるユーザの運動可能速度に関連するため、ユーザの健康状態の概略的なレベルに関する表示であり得る。加えて、要する時間(または平均時間)の変化は、ユーザが疲れきっていることを示し得て、ユーザが疲れきる速度は、様々な疾患および/または障害を示し得る。
【0064】
同様に、振幅および/または振幅の変化は、(使用されている特定のモデル運動に合わせて調整される)運動のより大きい範囲が通常、より優れた身体の健康状態に関連付けられるため、ユーザの概略的な健康を示し得る。運動の範囲がテスト中に変化する場合、これは、ユーザが(範囲が減少する場合)疲れていること、または(範囲が増加する場合)ウォームアップしていることを示し得る。いずれにしても、経時的な運動の範囲の進展は、ユーザを評価する際に有用なバイオマーカとなり得る。
【0065】
さらなる例において、1次軸と2次軸と3次軸とのうちの1つに沿った回転運動の角振幅、対、1次軸と2次軸と3次軸とのうちの別の軸に沿った回転運動の角振幅の比、および/または同比の変化率が考慮され得る。これもまた、モデル運動を行う際のユーザの能力を評価するために使用され得る。典型的には、モデル運動は、運動が単一の回転軸周りに行われるものである。後述のとおり、この軸は、センサが運動を測定する3つの軸のうちの1つに対して位置合わせされる必要はない。それにも関わらず、回転の主軸は、センサ測定軸に対して位置合わせされていない1つ以上の垂直軸周りの回転を含むデータを分析することにより識別され得る。2次軸と3次軸との周りの回転の相対的な大きさがモデル運動との適合の程度を示し得るため、単一の軸回転を行うユーザの能力は、このように3つの垂直な主軸周りの回転の大きさの比を考慮することにより、識別され得る。また、前述の他のパラメータのように、このように計算される比の経時的な変化は、ユーザが疲れ得るか、または他の場合には、モデル運動を正確に再現できにくくなるという点で、有用な情報を含み得る。また、これは、特定の疾患および/または障害の存在および/または重症度を示す関連のバイオマーカを示し得る。比は、回転振幅、回転速度、または軸周りの回転のエネルギーの比として計算され得る。
【0066】
前述のパラメータは、絶対値として提供され得て、またはモデル運動についての特定の閾値(閾値は、健康な集団における典型的な値を示す)に対して提供され得る。場合により、ユーザは、後日、モデル運動を再び完了させて、後のセッションにおける能力は、以前のセッションと比較される(例えば、閾値を調整または設定するために以前のセッションが使用される)。
【0067】
モデル運動は、通常、反復運動であり、多数の反復(例えば、25回の反復)または設定時間(例えば、20秒)に亘って継続する。場合により、運動データの分析は、テストの全継続時間からのデータに対して実行され得る。他の例では、運動データは、連続的な期間に細分化されて、各期間は、別々に分析され得る。
【0068】
上記パラメータのうちの2つ以上は、バイオマーカを提供するために互いに組み合わされ得る。換言すれば、バイオマーカは、様々なパラメータの組み合わせから導出され得る。ここで、加重平均、またはパラメータと閾値とを比較して、決定木を進むために結果を使用することなどの組み合わせは、適用可能な方法の例である。
【0069】
任意選択的に、バイオマーカは、以下のように定められる軸方向の変動パラメータVaxを含む。
【数2】
ここで、vとvとvとは、それぞれ、1次軸と2次軸と3次軸とに関するデータの固有値である。さらに、場合により、バイオマーカを抽出することは、集団に亘るVaxの統計的な分析から導出される閾値に対してVaxを比較することをさらに含む。例えば、健康な集団と疾患を伴う集団とに亘って別々に取得される平均(例えば、平均値、最頻値、または中央値)が計算されて、閾値は、各集団の平均値の間の数の範囲内にある値として識別され得る。本態様は、図7A図7Bとに関連して、以下でより詳細に述べられる。
【0070】
いくつかの例において、変化の組み合わせは、経時的に、例えば、後の測定セッションにおいて評価され得る。例えば、被験者は、最初に、各角方向において120度の運動を伴う安定した腕運動に対する評価を実行可能であり、被験者の最初のセッションにおいて1分に20回の回転運動を完了させ得る。その後、その同じ患者は、後のセッションでは、不安定な腕運動で、各角方向において60度だけ運動可能であり、1分に5回の回転運動を完了させ得る。この能力低下により、臨床医は、その患者において、疾患が、その特定の疾患について認識されている等級スケールの、より重症度の低い等級である、例えば、等級1で始まり、例えば、等級のステージ3まで進んでいることを判定可能であり得る。代替的に、これらのパラメータの単一の測定により、臨床医は、パラメータのこの組み合わせが5段階評価の2であることを識別可能であり得る。
【0071】
さらに追加の場合において、データは、名目上の開始点からの軸のうちの1つの周りの回転の非対称性を測定するために分析され得る。通常、これは、1次軸周りで評価されるが、場合により、試行されている特定の運動と、評価されている特定の疾患と、に応じて2次軸および/または3次軸周りの非対称運動を識別することが望ましい場合がある。ここで、患者は、患者の身体部位(例えば、手首)を特定の方法で保持して、患者の運動範囲を調べるために可能な限り同身体部位を回転させるように指示され得る。これらの端点が識別されると、反復運動が指示され得て、分析が上記のように進み得る。他の場合において、較正が必要なく、運動範囲は、ユーザの身体部位が正確な位置と向きとにある状態でユーザが開始しているという仮定の下、開始角に対して評価され得る。
【0072】
同様に、データは、回転運動の角速度または角加速度の非対称性を識別するために分析され得る。これは、回転自体の非対称性に関連する前述の方法とほぼ同じ方法で実行される。ユーザが静止して、すなわち、角速度と角加速度とがゼロに等しい状態でデバイスを保持して評価が開始するということは、妥当な仮定である。例えば、一部のユーザにおける振動による小さい運動は、考慮に入れられなくてもよく(例えば、ローパスフィルタによりフィルタリングされる)、または分析の期間は、1次軸と2次軸と3次軸とのうちのいずれか(もしくは場合により、いずれか2つもしくは3つすべて)に関する角速度および/もしくは角加速度が、所与の閾値を超える場合にのみ開始するとみなされてもよい。いかなる場合において、どのような方法で非対称性が回転運動データから抽出されても、ユーザが、一貫した回転速度または回転加速度運動を提供可能な程度は、特定の疾患または障害の欠如、存在、および/または重症度を示すために使用され得る。
【0073】
さらに追加の場合において、ユーザが行うように指示される対象の運動は、(角運動、角速度、および/または角加速度の観点で)可能な限り非対称な運動を行うように指定するものであり得て、これを達成するためのユーザの能力は、一般の集団からの結果に対して比較されて、これにより、バイオマーカが決定され得る。
【0074】
さらなる追加の例において、デバイス100により実行される測定は、(例えば、歩行パターンを識別するために加速度計を使用する)同一のデバイスから、または例えば、特定の運動を検出するためにさらに携帯もしくは保持される1つ以上の異なる追加のデバイスにより実行される、他の読取により補われ得る。場合により、追加のデバイスは、患者に関する、バイタルサイン、認知評価、声の震動などのうちの1つ以上を測定または提供するためのセンサを備え得る。バイオマーカは、前述のとおりのパラメータの組み合わせから形成され得る。
【0075】
データは、様々な測定パラメータの数値表示として提供されるため、本発明のさらなる利点は、測定数値をより微妙な違いの診断計画に変換することにより、診断がよりきめ細かい方法で提供され得ることであり得る。例えば、疾患と障害とを伴うグループの患者に関する重症度を幅広いカテゴリ、例えば、整数値のみが使用される1から5までのスケールに格付けする多くのスケールが使用される。本発明は、重症度の値を、はるかにきめ細かく詳細なレベルにし得る。次いで、これにより、早期の診断が可能となり得て、それに伴う患者の予後における改善が可能となり得る。例えば、上記の1から5までのスケール(ここで、1は、疾患がない、または最小の重症度を示して、5は、疾患もしくは障害が非常に進行したステージを示す)と、よりきめ細かい割合スケールと、の間の大まかな対応関係を取り上げると、粗いスケールにおける1は、0%から20%までの範囲内のいずれかに等しいことが分かり得る。粗いスケールを使用すると、リスクは、最小であり、介入の必要性が全くないに等しいと評価される。対照的に、本発明のより細かい分解能は、従来の測定指標では現れないが、それにも関わらず治療の恩恵を受ける、疾患または障害の早期の(または非常に早期の)ステージにユーザがいることを示すために使用され得る。これらの場合における早期の介入は、全体的により優れた結果につながり、ユーザの症状が衰弱状態となるポイントまで進行する症状を大きく遅らせることにつながり得る。
【0076】
図3は、ユーザ30が行うように求められ得るモデル運動の例を提供する。ここで、ユーザは、ユーザの手でユーザデバイス100を保持して、ユーザの手首で回内/回外運動を行うように求められる。例えば、左の図に示されるように、ユーザ30は、回内位置でユーザ30の手の甲が上向きの状態で水平にユーザ30の腕を差し出して、ユーザ30の手の甲が下を向くようにユーザ30の手首を(左の図に示される方向に)ねじるように求められ得る(これは、最初の半回転である)。この完了位置は、回外位置であり、右の図に示される。運動は、ユーザの手の甲がまた上を向くようにユーザの手を反対方向(すなわち、右の図における矢印の方向)に回転させることにより、ユーザの手を初期位置にユーザが戻すことにより完了し得る(この完了した運動が完全な回転である)。この運動が図3における軸A周りの回転をもたらすことは、明らかである。
【0077】
デバイス100は、回転運動を監視するためにユーザの手で保持される直方体デバイス(したがって、携帯電話や他の個人用通信デバイス、または専用設計デバイスであり得る)として図示されているが、デバイス100は、いかなる形状でもよい。例えば、デバイス100がこの状況における使用のために専用設計される場合、デバイス100は、ハンドルやグリップ部などに関して人間工学的に設計され得る。これにより、デバイス100の確実かつ容易な把持がユーザにもたらされ得るだけでなく、このようにデバイスの対称性を破ることは、例えば、評価される運動の主要回転軸のうちの1つ以上における概略的な向きに関する特定の仮定を可能にすることにより、分析を簡略化するための手がかりも提供し得る。加えて、デバイス100は、手持ち式デバイスでさえなくてもよく、本明細書に記載されるように回転運動を評価するために、ユーザの身体部位に、ひもで結び付けられてもよく、クリップで留められてもよく、または他の場合には取り付けられてもよい。
【0078】
運動は、設定された回数繰り返され得るか、または所与の時間において可能な限り多くの回数繰り返され得る。場合により、開始位置と半回転位置とは、切り替えられてもよい。さらに追加の場合において、運動は、異なる運動、例えば、肩、膝、臀部などに関連付けられる運動でもよい。ユーザが完了するように求められる運動がユーザの手を必要とするものでない場合、ストラップ、ホルダ、または他の取付手段は、運動を測定するためにデバイス100がユーザの適切な部位に取り付けられることを可能にするようにデバイス100に供給されてもよい。
【0079】
センサ102は、デバイス100に取り付けられるため、例えば、図3に示されるデバイス100の直線のエッジに位置合わせされるため、センサ102が回転運動データを提供する軸は、デバイス100の基準系に対して固定されることに留意されたい。しかしながら、ユーザは、実質的に任意の向きにデバイスを保持し得る(またはデバイスは、ユーザに対して取り付けられ得る)。さらに、快適性の理由で、この向きは、取付位置だけでなくユーザごとにも変わり得る。概して、これは、デバイスが移動中に回転する軸(軸A)が必ずしも、センサ102が回転情報を提供する軸に対して位置合わせされていないことを意味する。例えば、図3に示されるように、軸Aは、デバイス100における直線のエッジのいずれかに対しても位置合わせされていない。もちろん、これらの軸が偶然整列される場合、分析は、著しくより簡易である。これらの軸が整列されない場合(一般的な場合のように)、ユーザが実際に単一の軸回転を達成しているかどうか、または運動に軸外成分が存在するかどうかは、生データからすぐに明らかとはならない。結果として、運動が複数の軸周りの回転を含むかどうかと、どの程度まで運動が複数の軸周りの回転を含むかと、を評価する後述の処理が、必要がある。
【0080】
場合により、外部の基準系は、回転軸を判定するのを補助するために使用され得る。例えば、図3に示される例において、ユーザは、水平にユーザの腕を差し出すように指示され得る。意図される回転軸が水平に延在する(例えば、「ロール」軸である)ことが知られている場合、軸外回転は、局所的な重力場の状況で運動を考慮すると、検出可能であり得るピッチ運動とヨー運動とのようになり得る。軸Aは、水平であることが意図されるため、ここからの逸脱は、局所的な地理的基準系において検出可能であり得る。
【0081】
ユーザデバイス
図2は、前述のとおりのシステムで使用される典型的なユーザデバイス100のブロック図である。図示のとおり、この場合、ユーザデバイス100は、回転運動データを少なくとも1つの中央処理装置(CPU:central processing unit)108に提供するセンサ102を有する。CPU108の動作は、メモリ106に記憶されたソフトウェア命令により制御される。図示のとおり、ソフトウェア命令は、オペレーティングシステム106-1-1と回転運動分析アプリケーション106-2-1とを含む。センサ102からの運動データは、被験者の回転運動データを分析するために回転運動分析アプリケーション106-2により処理される。
【0082】
また、ユーザデバイス100は、回転運動分析アプリケーション106-2により判定される被験者データを中央サーバ140に通信する通信インタフェース110と、被験者がユーザデバイス100とやり取りすることを可能にするためのキーパッド112-1とディスプレイ112-2とを備えるユーザインタフェース112と、を備える。ディスプレイ112-2は、情報をユーザに提供するように構成された1つ以上のアイコン、ならびに/または時間と、日付と、回転数と、活動固有のアイコン(モデル運動、警告もしくはアラートなど)と、活動継続時間と、活動に関するリマインダメッセージおよび/もしくは命令と、ネットワーク接続状況と、バッテリ残量と、ユーザに表示される任意の他の有用な情報と、のうちの1つ以上を表示し得る。
【0083】
センサデータ分析
入力回転運動情報からのバイオマーカの抽出を示すフローチャート400が図4に示される。図2と様々な動作ユニット106-1,106-2と、図4で実行されるステップと、の間に対応関係が存在して、動作ユニット106-1,106-2の動作は、図4に示されるフローチャートと交互に以下で説明されることが理解されるだろう。
【0084】
プロセスは、回転運動データが受信されるステップ405で始まる。前述のとおり、これは、加速度、速度、または変位に関係する直線情報または回転情報の形態を取り得る。センサは、3つの直交軸に沿った運動を登録して、この情報を、連続的な時間における一連のデータポイントとして提供する。各データポイントは、3つの軸における情報を含み、センサの基準系におけるベクトルとして提供され得る。このデータの例は、以下でより詳細に述べられる図5Aで示される。
【0085】
任意選択的なローパスフィルタ106-2-1は、ユーザの回転運動に関連付けられない加速度計測定における高周波数変動を除去するために、センサから受信される時系列測定データポイントをフィルタリングする(ステップ410)。ローパスフィルタのカットオフ周波数は、典型的には、8Hzと30Hzとの間、好ましくは約20Hzである。
【0086】
その後、データは、回転運動分析アプリケーション106-2に伝達される。このユニットは、概して、前述のバイオマーカ情報を抽出するためにデータ処理を実行する。
【0087】
より具体的には、共分散計算ユニット106-2-2は、受信データの共分散行列を計算するために、センサデータを処理する(ステップ415-1)。共分散行列は、(iまたはjでラベル付けされる)各軸周りの角運動から計算される成分Ci,jを有する3×3の行列である。以下の例では、以下のように、角速度ωがN回のステップのtそれぞれで受信されるという仮定が実行される。
【数3】
ここで、
【数4】
は、データセットの(時間)継続時間に亘る軸i周りの平均角速度信号である。入力測定値は、反対方向における同じ距離の回転が後に続く、ある方向における概略的な回転を含む反復運動のものであるため、平均値は、通常、ある方向における回転の大部分が別の方向における後の回転により打ち消されるため、小さい。入力データが処理の開始時に角速度の形態でない場合、情報は、共分散行列の計算の前に角速度に変換され得る。他の場合、対応する共分散行列は、後の処理ステップで使用される角加速度または変位データから形成され得る。
【0088】
共分散行列が計算されると、固有ベクトル固有値計算ユニット106-2-3は、ステップ415-2で分かるように、共分散行列の固有値と固有ベクトルとを計算するように動作可能である。ステップ420で示されるように、これは、また、各固有ベクトルに沿った固有値間の比の計算につながり得る。これは、各軸に沿ったエネルギーまたは回転、換言すれば、意図される回転の軸と意図されない回転の軸とに沿った回転間の加重に関連する。
【0089】
固有ベクトルと固有値とがデータから抽出されると、回転角処理ユニット106-2-4は、固有ベクトルを使用して、デバイスの軸のうちの1つ、例えば、z軸に対して位置合わせさせるために、最大の固有値を有する固有ベクトルを回転させる回転行列を構築するように動作可能である(ステップ415-3参照)。また、回転行列は、次に大きい固有値を有する固有ベクトルが、デバイスの軸のうちの別の軸、例えば、y軸に対して位置合わせされることを保証し得る。これにより、x軸に沿って向いている最小の固有値の固有ベクトルが残る。回転行列が計算されると、回転は、測定の軸に対してデータを位置合わせするようにデータに適用され得る。図5Aに示されるデータに適用されるこの結果は、以下でより詳細に述べられる図5Bで分かり得る。
【0090】
他の実施例は、ある軸にエネルギーが集中することをもたらす回転を見つけるために使用され得る。例えば、別の実施例において、複数の回転が適用されて、最も集中を与えるものが選択される「ブルートフォース」法が使用され得る。代替的に、これは、勾配降下法などの数多くの方法が可能である最適化問題として解かれ得る。
【0091】
デバイスの回転の大部分が単一の軸周りである場合、回転角速度信号のz成分は、他の2つの方向(x軸、y軸)における成分よりもはるかに大きい大きさである。この場合、最大の固有値は、他の2つの固有値よりもはるかに大きい。他方、デバイスの回転の軸が一定でない場合、x成分とy成分とは、概して、より大きい大きさとなる。この場合、最大の固有値と他の2つの固有値との間のサイズの相違は、より少なくなる。
【0092】
単一の軸周りにデバイスを回転させる被験者の能力は、手先の器用さの表示であり得て、したがって有用なバイオマーカであり得る。したがって、最大の固有値のサイズ、対、他の2つの固有値のうちの一方または両方のサイズの比は、疾患および/または障害の存在および/または重症度のインジケータとして有用であり得る。これは、多数の方法、例えば、最大の固有値、対、2番目に大きい固有値の比、最大の固有値、対、他の2つの固有値の合計(もしくは平均)の比、または回転角速度信号のz成分におけるエネルギー、対、角速度の3つすべての成分における総エネルギーの比などで計算され得る。
【0093】
データが主軸に対して位置合わせされたフォーマットで利用可能になると、ステップ415-4で示されるように、回転速度情報を角変位情報に変換することが可能である。このタスクもまた、回転角処理ユニット106-2-4により実行される。これは、3つの直交軸に分離された時間の関数としての角回転の抽出を可能にする。図5Bに示されるデータに適用されるこの結果は、以下でより詳細に述べられる図5Cで分かり得る。
【0094】
前述のとおり、積分は、角変位を回転速度から抽出するために使用され得る。しかしながら、累積和は、非連続的な信号(すなわち、別々の時間に受信される信号)に対して、好ましい手法であり得る。
【0095】
角速度の累積和は、時間tにおける回転角を出すために、回転角速度データのz成分と、サンプリングレート(f)と、のみを使用して計算される。
【数5】
【0096】
回転角は、多くの場合、有用なバイオマーカである身体部位の運動の範囲を計算するために使用され得る。以前の手法は、回転角を計算しているが、デバイスが回転の軸に対して位置合わせされていることを想定している。そうでない場合、計算される回転角は、過小評価になり、身体部位の運動と角速度との範囲は、不正確になる。この過小評価は、あまり正確でない健康指標をもたらして、これらの評価を使用すると、効果的な意思決定の能力に悪影響を及ぼす。
【0097】
次いで、最大値最小値識別ユニット106-2-5は、回転角Φの局所的な最大値と最小値との位置を識別するように動作可能である(ステップ415-5)。これらは、図5Cにおいて黒丸で識別される。
【0098】
フィルタリングユニット106-2-6は、特定の最大値および/または最小値を分析から除外するように動作する(ステップ415-6)。図4において使用される基準は、プロミネンス基準であるが、他の例における(さらにまたは代替的に)基準は、特定の数の最初または最後の最大値および/または最小値を分析から破棄するためのものであり得る。
【0099】
最後に、バイオマーカ決定ユニット106-2-7は、計算されるパラメータの生の値を使用することにより、新しいパラメータを計算することにより、パラメータ値を閾値と比較することにより、データの継続時間全体に亘るパラメータ値の変化を考慮することにより、および/またはパラメータを互いに組み合わせることにより、1つ以上のバイオマーカをデータから抽出するように動作可能である(ステップ425,430)。
【0100】
上記プロセス400は、データセット全体に対して実行されるものとして記載されているが、場合により、データは、連続的な時間ブロックに分割されてもよく、各時間ブロックは、別々に処理されることに留意されたい。例えば、20秒のデータセットは、4つの5秒のブロック(または2つの6秒のブロックと1つの8秒のブロック)に細分されてもよく、次いで、各ブロックは、前述の概略的な方法400に従って別々に分析される。場合により、時間ブロックは、互いに重複してもよく、例えば、例示的なテストの20秒の継続時間は、0秒から4秒まで、2秒から6秒まで、4秒から8秒までなどで継続する一連の9つの重複ブロックに分割されてもよい。これらの様々なオプションは、様々な時間ブロックにおけるパラメータの変化に関する所望のとおりの詳細を提供するために、必要に応じて組み合わされてもよい。より小さい細分を作成することは、より正確な指標を生成するのに重要であり得る。
【0101】
この手法は、1次軸の向きの変化を識別するのに特に役立ち得る。例えば、ユーザが、図3に示される運動を行っている間に、水平にユーザの腕を保持することが難しいと感じる場合、データセットを別々の連続的な時間の塊に分割することは、何が生じたのかという微妙な違いの見解を提供するのに役立ち得て、医療専門家が、この例と、例えば、正確なモデル運動に沿った医療専門家のテストに対する大きな軸外の「ピッチ」成分と、を区別することを可能にする。
【0102】
ここで、図5A図5Cに移る。前述のとおり、これらは、、処理ストリームにおける様々なステージの3つのプロット500a-500cそれぞれを示す。入力データは、入力データがデバイスから受信されたフォーマットにおける角速度データの形態で図5Aに示されている。これは、ユーザが行おうとしていた運動に関係なく、データがデバイスのx軸とy軸とz軸とに沿って位置合わせされていることを意味する。(ここで図示されるように)センサの各軸から受信される運動を別々にプロットしても、運動が、非常に複雑な回転であるか、または回転の大部分が単一の軸に沿ったものであるかは、すぐに明らかとはならない。
【0103】
図5Bで、プロット500bは、同じデータセットのものであるが、データは、z軸に対して1次回転軸(最大の固有値を有する共分散行列の固有ベクトル)を位置合わせするために回転される。2次回転軸(2番目に大きい固有値を有する共分散行列の固有ベクトル)は、y軸に対して位置合わせされて、最後の3次回転軸は、x軸に対して位置合わせされる。これにより、(ここで図示されるように)データが、データの個々の軸に沿ってプロットされると、1次回転軸周りの回転が他の2つの軸に沿ったものよりもはるかに大きいことが明確であるため、はるかに優れた明確性が提供される。また、ユーザが単一の軸回転を試行していたとしても、軸外成分は、ゼロでないことにも留意されたい。例えば、これは、(2番目に強いと予想され得るような)y軸プロットにおいて2秒と4秒との間で特に明らかである。
【0104】
角変位プロット500cは、図5Cに示されており、最大値と最小値とは、黒丸で強調表示されている。すべての最大値と最小値とがこのように強調表示されているわけではないことに留意されたい。特に、一部の既定のプロミネンス基準を満たしていないものは、強調表示されておらず、分析から除外される場合もある。
【0105】
プロミネンス基準は、角運動が指定のプロミネンス閾値、例えば、60度(1.04ラジアン)を超えることを必要とし得る。同様に、局所的な最小値は、「負の」プロミネンスが、対応する閾値を超えるような最小値のみを含むようにフィルタリングされる、すなわち、信号は、最小値よりも低い値に遭遇する前に、最小値から少なくとも閾値分上昇する必要がある。本明細書で使用される、高さhのピークがプロミネンスpを有するために、信号は、hよりも高い値に遭遇する前に、または最初もしくは最後のデータポイントに遭遇する前に、ピークの両側(h-p)以下の値まで下がる必要がある。
【0106】
このモデルを使用すると、1.1秒での局所的な最大値は、信号が0.5秒でのより高い最大値を見出す前に閾値未満分下がるため、プロミネンス基準を満たしていないことが分かり得る。同様に、0.5秒での最大値は、信号がデータの左側のエッジに遭遇する前に閾値未満分下がるため、プロミネンス基準を満たしていない。
【0107】
回転をカウントするとき、プロミネンス基準によりフィルタリングした後の最大値の数をNと記して、プロミネンス基準によりフィルタリングした後の最小値の数をNと記すと、回転数は、(N+N+1)/2であり、ここで、各回転は、ある方向における第1回転運動(例えば、患者の手が、手首をねじることにより、手の甲が上を向いた状態から、手の甲が下を向いた状態へ運動する回外)と、第1回転運動に対して反対方向における第2回転運動(例えば、患者の手が、手首をねじることにより、手の甲が下を向いた状態から、手の甲が上を向いた状態へ運動する回内)と、で構成される。
【0108】
これは、半回転を表す半整数をもたらし得ることに留意されたい。半回転は、対応する第2回転を伴わない第1回転、例えば、対応する回内運動を伴わない回外運動、または対応する回外運動を伴わない回内運動で構成される。
【0109】
回転速度、すなわち、単位時間当たりの回転数は、(N+N-1)/(2*(tlast-tfirst))と定められて、ここで、tfirstは、最も初期の最大値または最小値の時間であり、tlastは、最後の最大値または最小値の時間である。
【0110】
最後の最大値/最小値は、一連の回転の終わりではなく、半回転前であることが図5Cで分かり得る。同様に、最も初期の最大値/最小値は、一連の回転の始まりではなく、半回転後である。本発明者らは、これが、完全な一連の回転における回転速度を計算することと比較して、より信頼できる回転速度をもたらすことを見出した。
【0111】
この背後にある理由は、図6を参照して説明され得る。図6は、短い一連の1.5回転600を示す。2.0秒での最大値と3.3秒での最小値とは、明確に定められる。対照的に、回転の終わりを定めるのはより困難であり、ピーク値は5秒にあるが、信号はこのポイントで非常に平らであるため、小量のノイズにより、ピークの時間が容易にずれ得る。実際、人間の目は、おそらく、約4.3秒で回転がより早く完了していると判断する。したがって、回転の終わりの時間に関する任意の推定は、信頼できない可能性があり、バイオマーカの不正確な抽出をもたらし得る。したがって、回転速度などの一連の回転の継続時間に応じた特徴は、最初の最大値/最小値と最後の最大値/最小値との間の時間が回転の開始時間と終了時間とに比べてより十分に判定されるため、最初の最大値/最小値と最後の最大値/最小値との間の時間に基づいて最適に計算されて、この手法は、本明細書で述べられる方法と装置とにより提供される情報の品質をさらに改善する。
【0112】
最後に、図7A図7Bとを参照すると、健康な集団(図7A)と、特定の中枢神経系疾患を伴う集団(図7B)と、において取得される測定データの2つのヒストグラム700a,700bが示されている。ここで、バイオマーカは、軸方向の変動パラメータVaxとして提供されて、以下のように定められる。
【数6】
ここで、vとvとvとは、それぞれ、1次軸と2次軸と3次軸とに関するデータの固有値である。
【0113】
第1ヒストグラム700aを第2ヒストグラム700bと比較すると、2つのデータセット間に違いがあることが明らかである。難解な統計学を全く行うことなく、健康な集団が、この指標において、疾患を伴う集団が可能なスコアよりも低いスコアを達成できることが明らかである。したがって、この指標は、健康な被験者と、神経変性疾患、中枢神経系障害、または筋制御に影響を与える他の疾患を伴う被験者と、を区別するのに役立ち得るバイオマーカを生成するために使用され得る。また、このようなバイオマーカは、疾患の階層化に有用であり得る。
【0114】
この例では、軸方向の変動Vaxは、回転主軸(max{}関数により識別される、最大の固有値を有する軸)以外の軸周りの回転に関する割合の指標である。すべての回転が1つの回転軸周りのみである場合、Vaxは、最小可能値であるゼロとなり、したがって、健康な患者のスコアは、より低くなる。他方、3つすべての軸周りの回転量が等しい(v=v=v)場合、Vaxは、2/3となる。場合により、Vaxは、測定が0(完全な1軸運動)から1(支配的な軸が全くない)までより直観的に実行されるようにするために、3/2の係数によりスケール変更され得る。
【0115】
データをさらに取って統計分析を実行することは、有用な情報の抽出の補助となり得る。例えば、様々な平均は、以下のようにデータから抽出され得る。
【表1】
【0116】
それぞれの場合において各平均は、異なる値を出しているが、各指標において、健康と疾患との間に約0.008の相違があることに留意されたい。これらの値から、各集団の特定の平均間の値は、健康な患者と疾患を伴う患者との間の閾値を導出するために使用され得ることが分かり得る。上記表において、0.014または0.016の値は、患者を疾患または健康とカテゴリ化するために使用され得る。もちろん、集団のより難解な統計分析が、この知見を改良するために提供されてもよい。特定のデータセットから導出される閾値の値は、もちろん、異なるデータが各疾患について専用に収集されるため、疾患間で変動し得る。
【0117】
加えて、2次指標は、補助指標を考慮することにより、異なる運動を明確にするために使用され得る(それにより、臨床医は、異なる疾患を区別可能となり得る)。例えば、v/vまたはv/vを計算することは、軸外運動が、大部分で1つの他の軸に限定されているか、または2つの他の軸間でより均一に分配されているかを識別するのに役立ち得る。次いで、これは、ユーザが対象の運動を正確に再現できない原因に対する手がかりを提供し得る。
【0118】
2つのグループのVaxスコア間に重複があるため、このバイオマーカは、複合バイオマーカを生成するために、他のバイオマーカと有利に組み合わされてもよく、同複合バイオマーカは、複数の態様の疾患を組み合わせることにより、個々のバイオマーカのうちのいずれかよりも信頼できるものになり得ることに留意されたい。
【0119】
2つのヒストグラム700a,700bは、集団を2つのグループ(健康と疾患のそれぞれ)に大別しているが、さらなる微妙な違いは、疾患を伴う集団をサブグループに細分化することにより提供され得る。一例において、疾患に関して認識されている重症度スケールが存在する場合、疾患を伴う集団は、疾患の各特定のステージについて異なるグループに分割されて、ヒストグラムは、各グループについてプロットされ得る。例えば、疾患が5段階評価で評価される場合、集団は、同スケールにおいて0(健康),1,2,3,4,5を測定する患者にグループ分けされ得る。次いで、閾値は、臨床医がスケールを使用して適切な重症度レベルに患者を容易に定めることを可能にするように、上記分析に沿って各グループ間で決定され得る。さらに、この微妙な違いの手法は、臨床医が、スケールにおいて、例えば、3.5(または、これよりもさらによりきめ細かい、0と5との間の小数点第1位または第2位の任意の値)の重症度レベルを提供することを可能にし得る。これは、現在可能なものよりも微妙な違いの分析であり、臨床医が、現在可能なものよりも早期に高度な重症度レベルに対して適切な治療を開始することを可能にし得る。知られているとおり、疾患における早期の介入は、通常、予後を改善する。
【0120】
この例は、特定のバイオマーカVaxの観点で提示されているが、バイオマーカが抽出されて閾値と比較される前述の一般的な原理は、回転運動データから抽出される任意のバイオマーカの分析にも同様に適用されることが理解されるだろう。前述のとおり、閾値は、例えば、バイオマーカに関する値と、例えば、特定の疾患または障害の重症度に関する独立した評価と、の間の相関を調べて、集団に亘って同バイオマーカ(または、実際には、他の関連のバイオマーカ)の統計分析から抽出され得る。
【0121】
変形例および代替例
詳細な実施形態は、前述のとおりである。上記実施形態に対して、様々な変形と変更とが可能である。以下、これらの代替例の一部が説明される。
【0122】
上記の例において、データは、回転のフォーマット、具体的には、回転速度で提供されることが想定される。角速度データが利用可能でない場合、かつ、前述のとおり、概して手の回内-回外評価においてそうであるように、回転の軸の大部分が水平面に存在する場合、代替的な実施例において、角速度は、直線加速度データから推定され得る。デバイスが回転するとき、直線加速度データに対する支配的な寄与である重力の方向は、また、デバイスに対して回転するように考えられて、これから、水平面の角速度の成分が計算され得る。
【数7】
ここで、ω(t)は、時間tにおける推定角速度ベクトルであり、
【数8】
は、重力加速度を含む直線加速度単位ベクトルであり、×は、クロス積を示す。1つ以上のfは、サンプリング周波数である。
【0123】
前述の角速度データの使用と比較すると、この実施例は、垂直軸周りの回転の成分を検出できないという欠点を有しており、デバイスの直線加速度は、角速度と誤って解釈され得る。
【0124】
さらに、ユーザのデバイスが、同デバイスに内蔵された複数のセンサ(例えば、複数の加速度計および/またはジャイロスコープ)を有する場合、各センサからのデータが分析されてもよく、結果は、より正確であるかまたはよりノイズの少ないバイオマーカを算出するために組み合わされる(例えば、平均化される)。同様に、ユーザが(携帯電話などの)複数のデバイスと、アクチグラフデバイスと、を携帯していて、両方のデバイスがセンサを有する場合、システムは、両方のセンサからのデータを使用してバイオマーカを抽出してもよい。次いで、2つの(もしくはそれよりも多くの)センサからの測定値は、信号対ノイズ比を改善するために再び平均化され得るか、またはあるセンサからの測定値は、他のセンサから取得される回転運動データから決定されるバイオマーカを確証もしくは検証するために使用され得る。
【0125】
前述の実施形態において、加速度計データを処理するソフトウェアアプリケーションがユーザデバイスにおいて提供された。中央サーバが前述のバイオマーカの決定と抽出分析とを実行するように、同一または同様のソフトウェアは、中央サーバのコンピュータにおいて提供されてもよい。このソフトウェアアプリケーションは、キャリア信号または有形のコンピュータ可読媒体において、コンピュータ実装可能命令として提供されてもよい。代替的に、ソフトウェアアプリケーションの機能は、FPGAまたはASICデバイスなどのハードウェア回路で定義されてもよい。
【0126】
上記の説明から、様々な例の多くの特徴は、交換可能であり、組み合わせ可能であることが理解されるだろう。本開示は、特に言及されていない方法で互いに組み合わされる様々な例からの特徴を含むさらなる例までに及ぶ。実際に、上記の例で提示される特徴が多数あり、これらが互いに有利に組み合わされ得ることは、当業者に明らかだろう。特に、方法の一部として提示される特徴は、装置の一部として含まれてもよく、逆もまた同様である。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
【国際調査報告】