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特表2024-543490眼圧を低下させるために強膜支持構造を用いる眼科用レーザ手術のための患者インターフェース
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  • 特表-眼圧を低下させるために強膜支持構造を用いる眼科用レーザ手術のための患者インターフェース 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】眼圧を低下させるために強膜支持構造を用いる眼科用レーザ手術のための患者インターフェース
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/009 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
A61F9/009
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528542
(86)(22)【出願日】2022-11-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 IB2022060936
(87)【国際公開番号】W WO2023084482
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】63/264,093
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510281612
【氏名又は名称】エーエムオー ディベロップメント エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ラガルト・クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア・ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ハノン・トレバー
(72)【発明者】
【氏名】ロー・バイチ
(57)【要約】
眼科手術用レーザシステムのための患者インターフェース装置は、レーザシステムに結合するための円錐水晶体構成要素と、患者の眼に結合するための吸引リング構成要素とを含む。吸引リングは、円錐水晶体を受け入れて保持するための開口部を有するグリッパと、真空力で眼に結合するためにグリッパに接合された可撓性スカートとを含む。可撓性スカートは、眼表面に接触するための円形内側縁および円形外側縁と、円周側壁から突出する複数の円周方向に分散された強膜支持突出部とを含む。強膜支持突出部の端面は、側断面図において傾斜している。強膜支持突出部は、1.1~2.1の長さ対幅比を有し、強膜支持突出部間の間隙に対する強膜支持突出部の弧角比は、2.2~3.0である。強膜支持突出部は、スカートが眼にドッキングされたときに眼の表面に接触し、ドッキングおよび圧平による眼内圧上昇を最小限に抑える一方で、吸引リングと眼との間の良好な真空シールを依然として達成する。強膜支持突出部は、角膜が圧平されるときに強膜の大きな変形を防止するように機能する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の眼を眼科手術用レーザシステムに結合するための患者インターフェース装置であって、
前記眼科手術用レーザシステムに結合されるように構成された円錐水晶体と、
前記患者の眼に結合されるように構成される吸引リングであって、前記吸引リングは、円形受容開口部を画定するグリッパと、前記グリッパに接合され、前記受容開口部と同心であるリング状可撓性スカートとを含み、前記グリッパは、前記円形受容開口部内に前記円錐水晶体の一部を受容し、保持するように構成されている、吸引リングと、を備え、
前記可撓性スカートは、前記患者の眼に結合されるように構成され、
両方とも下方に延在し、前記眼の表面に接触するように構成される、円形内側縁および円形外側縁と、
前記内側縁と前記外側縁との間の周方向側壁と、
前記側壁から内側下方に突出する複数の第1の強膜支持突出部であって、前記第1の強膜支持突出部は、隣接する第1の強膜支持突出部間に間隙を伴って円周方向に分散され、各第1の強膜支持突出部の端面は、側断面図において傾斜および湾曲している、複数の第1の強膜支持突出部と、を含み、
各第1の強膜支持突出部の前記端面について、円周方向に沿った長さと前記円周方向に垂直な方向に沿った幅との比が1.1~2.1であり、各第1の強膜支持突出部の弧角と前記第1の強膜支持突出部と隣接する第1の強膜支持突出部との間の前記間隙の弧角との比が1~4である、患者インターフェース装置。
【請求項2】
前記複数の第1の強膜支持突出部は、同じサイズを有し、周方向に均等に分布している、請求項1に記載の患者インターフェース装置。
【請求項3】
各第1の強膜支持突出部の長さが0.9mm~3.6mmである、請求項2に記載の患者インターフェース装置。
【請求項4】
前記複数の第1の強膜支持突出部は、5~20個の第1の強膜支持突出部を含む、請求項1に記載の患者インターフェース装置。
【請求項5】
前記可撓性スカートは、前記側壁と前記内側縁との間に位置する周方向上壁と、前記上壁から下方に突出する複数の第2の強膜支持突出部とをさらに備え、前記第2の強膜支持突出部は、周方向に分布し、前記複数の第1の複数の強膜支持突出部と半径方向に整列し、各第2の強膜支持突出部の端面は、側断面図において傾斜して湾曲し、前記対応する第1の強膜支持突出部の前記端面と同じ面にあり、
各第2の強膜支持突出部の前記端面について、円周方向に沿った長さと前記円周方向に垂直な方向に沿った幅との比が2.0~3.0である、請求項1に記載の患者インターフェース装置。
【請求項6】
各第2の強膜支持突出部と前記対応する第1の第2の強膜支持突出部との間の半径方向間隙の幅は、0.24mm~0.29mmである、請求項5に記載の患者インターフェース装置。
【請求項7】
前記可撓性スカートが、可撓性がありかつ柔軟な材料から形成されている、請求項1に記載の患者インターフェース装置。
【請求項8】
前記可撓性スカートは、前記可撓性がありかつ柔軟な材料を前記グリッパ上にオーバーモールドすることによって形成されている、請求項7に記載の患者インターフェース装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)のもとに、2021年11月15日出願の米国仮特許出願第63/264093号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、眼科手術用レーザシステムに関し、特に、患者の眼を安定させ、眼科手術中にレーザビームを眼に照射するために使用される患者インターフェース装置に関する。
【背景技術】
【0003】
レーザ技術の著しい発展は、眼科手術の分野におけるその用途をもたらし、レーザ手術は、眼科手術用途のために選択される技術になっている。眼科手術は、精密な手術であり、手術道具(すなわち、レーザビーム)と治療される領域(すなわち、患者の眼の一部)との間の精密な結合を必要とする。レーザビームの意図された焦点に対する眼の動きは、最適でない結果をもたらす場合があり、眼内の組織に永久的な損傷をもたらす可能性がある。眼の動きは自律神経反射の結果であることが多いので、入射レーザビームに対する患者の眼の位置を安定させようとする技術が開発されてきた。
【0004】
患者インターフェースと呼ばれる機械的安定化装置が、眼科レーザ手術中に患者の眼をレーザシステムに結合するために開発されてきた。患者インターフェースは、典型的には、眼に直接接触し、眼に係合して安定化させる構成要素を有する。一方、レーザビームを眼に対して位置合わせすることができるように、患者インターフェースはレーザシステムに取り付けられる。患者インターフェースは、眼を静止状態に保持し、処置中にレーザビームが眼の中に送達されることを可能にするように機能する。いくつかの患者インターフェースは、眼上にドッキングされた可撓性吸引リングを使用し、吸引リングおよび眼の表面によって形成された真空チャネル内に真空が引かれて、治療処置中に患者インターフェースを眼に取り付ける。吸引リングが眼に取り付けられると、眼は、患者インターフェースのコンタクトレンズによって圧平される。真空を引くプロセスおよび眼に対する圧平力の両方は、患者の眼内圧(IOP)の増加に関連する。
【0005】
IOPの上昇を緩和することは、眼への起こり得る損傷を防ぐために望ましい。加えて、特定のIOP閾値(患者ごとに異なる)を超えると、患者は、ブラウンアウトまたはグレーアウトとしても知られる一過性の視力喪失を経験する。治療中に可能な限り長い持続時間にわたって低いIOPを維持することは、患者が固視標を固視することを可能にするのに役立ち、眼を静止状態に保つのに役立ち、これは治療ワークフローにおいて役立ち得る。
【0006】
患者のIOP上昇を低減する目的で、様々な患者インターフェース設計が説明されてきた。例えば、いくつかの患者インターフェース設計は、ちょうど眼の角膜にドッキングし、それは、強膜が自由に動くことを可能にし、その結果、より少ない表面積を平坦化し、したがって、より低いIOPをもたらす。いくつかの患者インターフェース設計は、眼を圧平するために使用される湾曲コンタクトレンズを有する。湾曲レンズは、眼を平らにするのに必要な力の量を最小限に抑え、したがって、IOPの増加を最小限に抑える。加えて、いくつかの患者インターフェース設計は、特に比較的迅速な処置の場合、IOP増加に関与しない。
【0007】
いくつかの既知の患者インターフェース装置は、様々な目的のために吸引リングの真空チャネルの内側に接触または支持構造を提供する。例えば、「Ophthalmological patient interface」と題された米国特許第10799107号は、「上壁および円周外壁を伴う陰圧空洞」を含む、患者インターフェースデバイスについて記載している。患者インターフェースは、いくつかのリブ部材をさらに含む。これらのリブ部材は、円周方向外壁と光路との間の陰圧空洞内に頂壁から互いに離間して突出している。(第2欄、37~46行目)。リブは、「患者インターフェースと患者の眼との間の相対運動、特に相対回転を防止する」ための回転防止機構として機能する。(第2欄、25~29行目)。リブは、「それらの眼接触底面23aが、陰圧空洞21内の陰圧および結果として生じる患者の眼の変形に起因して、眼組織にわずかに押し付けられ、したがって、患者インターフェースが患者の眼に対して動く、特に回転するのを防止する「ポジティブロッキング」をもたらす」ように設計される。(第7欄、29~35行目)。
【0008】
別の実施例では、「Patient interface device for laser eye surgery having light guiding structure for illuminating eye」と題された米国特許第10799394号は、眼表面に空間を形成する可撓性または半可撓性膜322と、この空間に真空を印加するための複数の真空チャネル324とを含む患者インターフェースデバイスについて説明している。「膜322は、圧平レンズ22が患者の眼5に適用されるときに患者の眼5の強膜上で膜322を支持するように構成された複数の支持構造327を含むか、またはその中に形成されている」。(第7欄、4~8行目、図7を参照)。
【0009】
「Ophthalmic interface apparatus,method of interfacing a surgical laser with an eye,and support ring for use with a suction ring」と題された米国特許第9724238号は、角膜表面とインターフェースするように構成された吸引リング18を有する患者インターフェース装置について記載しており、別個の支持リング20が吸引リングの環状キャビティ内に設けられている(図11~13、第12欄、58~64行目を参照)。「支持リング20は、吸引リング18の環状空洞106内に配置され、眼安定装置10が眼球上に配置されたときに眼圧の上昇を防止するように構成される。このようにして、デバイス10は、レーザ手術処置の完了後に眼球からより容易に除去されることができる。図12および図13をさらに参照すると、支持リング20は、プラスチックなどの可撓性材料から形成され、環状溝128と、複数の外部真空チャネル130と、比較的広い接触端面132とを有する」。(第13欄、47~56行目)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
患者の眼におけるIOP上昇を効果的に低減し、製造も容易である、患者インターフェースのための吸引リング構造の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は、可撓性吸引リングが最適化された幾何学形状を有する強膜支持機構を含む、患者インターフェース装置を提供する。強膜支持機構は、スカートが眼にドッキングされると、眼の表面に接触し、それは、ドッキングおよび圧平に起因するIOP増加を最小限にする一方、依然として、吸引リングと眼との間の良好な真空シールを達成する。強膜支持機構は、角膜が圧平されるときに強膜の大きな変形を防止するように機能する。
【0012】
開示される実施形態の更なる特徴および利点は、以下の説明に記載され、一部はその説明から明らかとなるか、または本開示の実践によって習得されることができる。本発明の目的および他の利点は、詳細な説明および特許請求の範囲ならびに添付の図面において特に指摘される構造によって実現および達成される。
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、患者の眼を眼科手術用レーザシステムに結合するための患者インターフェース装置であって、眼科手術用レーザシステムに結合されるように構成された円錐水晶体と、患者の眼に結合されるように構成された吸引リングであって、円形受容開口部を画定するグリッパと、グリッパに接合され、受容開口部と同心であるリング形状の可撓性スカートとを含み、グリッパは、円形受容開口部内に円錐水晶体の一部を受容して保持するように構成され、可撓性スカートは、患者の眼に結合されるように構成され、両方とも下方に延在し、眼の表面に接触するように構成された円形内側縁部および円形外側縁部と内側縁部と外側縁部との間の周方向側壁と、側壁から内向きかつ下向きに突出し、隣接する第1の強膜支持突出部間に間隙を有して円周方向に分布する複数の第1の強膜支持突出部と、を備え、各第1の強膜支持突出部の端面は、側断面図において傾斜して湾曲しており、各第1の強膜支持突出部の端面について、円周方向に沿った長さと円周方向に垂直な方向に沿った幅との比は、1.1~2.1であり、各第1の強膜支持突出部の弧角の、第1の強膜支持突出部と、隣接する第1の強幕突出部との間の間隙の弧角に対する比は、1~4である。
【0014】
先行の一般的な記載および以下の詳細な記載の双方が、代表的かつ例示的であり、主張されるように、本発明の更なる説明を提供することを意図していることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による、円錐水晶体構成要素および吸引リング構成要素を含む患者インターフェースデバイスを概略的に示す図である。
図2】共に接合された円錐水晶体および吸引リングを有する図1の患者インターフェース装置の切断図を概略的に示す図である。
図3】それぞれ、図1および図2の患者インターフェース装置の吸引リング構成要素の2つの底面斜視図、側断面図および底面図を概略的に示す図である。
図4】それぞれ、図1および図2の患者インターフェース装置の吸引リング構成要素の2つの底面斜視図、側断面図および底面図を概略的に示す図である。
図5】それぞれ、図1および図2の患者インターフェース装置の吸引リング構成要素の2つの底面斜視図、側断面図および底面図を概略的に示す図である。
図6】それぞれ、図1および図2の患者インターフェース装置の吸引リング構成要素の2つの底面斜視図、側断面図および底面図を概略的に示す図である。
図7図1および図2の患者インターフェース装置の吸引リング構成要素の詳細を示す断面図を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態は、眼科手術中に患者の眼を安定させ、レーザビームを眼に照射するために使用される患者インターフェース装置を提供する。図1および図2に示すように、患者インターフェース装置10は、圧平レンズ21を有する円錐水晶体20と、グリッパ31およびグリッパに接合されたリング状の可撓性スカート32を含む吸引リング30とを含む。円錐水晶体20は、手術中にレーザシステム(図示せず)のレーザ照射ヘッドに取り付けられるように構成された略円錐台形のシェル23を有する。吸引リング30は、可撓性スカートおよび眼の表面によって形成されるリング形状真空チャネルに加えられる真空力によって、可撓性スカート32を介して患者の眼に結合されるように構成される。
【0017】
吸引リング30のグリッパ31は、クリップまたは布ピンのように構成され、可撓性スカート32と同心の円形受容開口部36を形成する。グリッパ31は、受容開口内に円錐水晶体20のベース部分22を受容し、クランプ力によってそれを保持するように構成される。圧平レンズ21は、円錐水晶体20のベース部分22の下端の近くに配置され、吸引リング30が眼に結合され、円錐水晶体ベース部分22がグリッパ31に挿入されて保持されるときに患者の眼に接触する。したがって、円錐水晶体20がレーザ照射ヘッドに結合され、可撓性スカート32が眼に結合され、円錐水晶体20のベース部分22がグリッパ31の受容開口部36内に保持されると、眼がレーザシステムに結合され、治療処置を行うことができる。
【0018】
図示の実施形態では、円錐水晶体20および吸引リング30は2つの別個の部品であるが、本発明はそのような構成に限定されないことに留意されたい。円錐水晶体20と吸引リング30とは、代替的に一体化されてもよい。
【0019】
図3図6は、グリッパ31の一部を有する吸引リング30のスカート32の詳細を示している。可撓性スカート32は、円形内側(上)縁部321および円形外側(下)縁部322を画定し、その両方は、下向きに(眼に向かって)延在し、眼の表面に接触するように構成される。円形内側縁部321は、眼の表面のほぼ球形の形状により良く適合するように、円形外側縁部322よりも高く配置されている。可撓性スカートが眼の上に配置され、両方の縁部が眼の表面に接触すると、可撓性スカート32と眼の表面との間に円形リング状の密封空間が形成される。真空ポート34は、可撓性スカート32に接続され、内側縁部321と円形外側縁部322との間の開口部329において可撓性スカート32の内部に開口して、リング形状の密閉空間に真空を印加する。
【0020】
複数の第1の強膜支持突出部323および第2の強膜支持突出部324が、可撓性スカート32に設けられる。第1の強膜支持突出部は、可撓性スカート32の円周側壁327から内向き(リングの中心軸に向かって)および下向きの両方に突出する。第2の強膜支持突出部324は、内側縁部321のより近くに配置され、可撓性スカート32の円周上壁328から下方に突出する。
【0021】
第1の強膜支持突出部323は、可撓性スカート32のリング形状の周囲に円周方向に配置され、好ましくは、隣接する突出部間に間隙325を伴って均一に分散される。第2の強膜支持突出部324もまた、可撓性スカート32のリング形状の周りに円周方向に配置され、第1の強膜支持突出部323と半径方向に整列される。第2の強膜支持突出部324および対応する第1の強膜支持突出部323はそれぞれ、間隙326によって半径方向に分離される。好ましくは、全ての第1の強膜支持突出部323は同じ形状およびサイズを有し、全ての第2の強膜支持突出部324は同じ形状およびサイズを有する。各第1の強膜支持突出部の端面323Aおよび各第2の強膜支持突出部の端面324Aは、側断面図において傾斜し、わずかに湾曲している(図5参照)。好ましくは、端面323Aおよび324Aは、平均的な眼の曲率に適合するように設計された同じほぼ球面上にある。底面図(図6参照)において、各端面323Aおよび324Aの形状は、リングのセグメントである。
【0022】
特定の一実施形態による第1および第2の強膜支持突出部323および324の寸法を、図6および図7を参照して以下に説明する。この実施形態では、13個の均等に分配された第1の強膜支持突出部323および13個の均等に分配された第2の強膜支持突出部324が存在する。底面図(図6参照)では、各第1および第2の強膜支持突出部323および324の弧角は、約20度であり、各間隙325の弧角は、約Lg=7.69度である。各第1および第2の強膜支持突出部323および324の弧長(それぞれ、2つの縁部323Bと323Cとの間、および2つの縁部324Bと324Cとの間の中心で測定される)は、それぞれ、約L1=3.24mmおよびL2=2.74mmである。各間隙325の弧長は、内側端部で約0.99mm、外側端部で1.34mmである。傾斜端面323Aおよび324Aの幅(傾斜面にほぼ平行で周方向に垂直な方向、すなわち、それぞれ縁部323Bと323C間および縁部324Bと324C間の距離)は、それぞれ約W1=2.00mm,W2=1.10mmである。各第2強膜支持突出部324の半径方向の幅は、約0.892mmである。第1の強膜支持突出部323および第2の強膜支持突出部324の各対の間の間隙326の(半径方向の)幅は、約0.266mmである。
【0023】
以上、具体例を示したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。他の数およびサイズの第1および第2の強膜支持突出部が使用されてもよい。より一般的には、11~15個の第1の強膜支持突出部および対応する第2の強膜支持突出部があってもよい。各第1および第2の強膜支持突出部の弧角は、5~22度であってもよく、各間隙の弧角は、22~5度の間であってもよい。隣接する第1(または第2)の強膜支持突出部間の間隙の弧角に対する第1(または第2)の強膜支持突出部の弧角の比は、0.25~4、より好ましくは1~4であってもよい。各第1および第2の強膜支持突出部の弧長L1およびL2は、それぞれ、0.9~3.6mmおよび0.7~3.1mmであってもよい。各間隙325の弧長は、0.7~3.8mmであってもよい。各第1および第2の強膜支持突出部の傾斜端面の幅W1およびW2は、それぞれ、1.5~2.5mmおよび0.8~1.4mmであってもよい。第1および第2の強膜支持突出部の各対の間の間隙326の半径方向幅は、0.24~0.29mmであってもよい。間隙326の半径方向幅に対する第2の強膜支持突出部324の半径方向幅の比は、3.0~3.7であってもよい。
【0024】
好ましくは、第1および第2の強膜支持突出部の端面の弧長および幅は、1.1<L1/W1<2.1および2.0<L2/W2<3.0の関係を満たす。
【0025】
より一般的には、強膜支持突出部の設計上の考慮事項は以下の通りである。第1に、円周(360度)に沿った突出部の数(N)は、5~20個であることが好ましい。数Nが5未満であると、構造上の変化が少なすぎて、保持力が損なわれる。数Nが20より大きい場合、各突出部が小さすぎて十分な保持力を有することができない(多数の突出部による力が円周の周りに均一な力を生成する傾向がある)。上記で示し、説明した好ましい実施形態では、数Nは13である。
【0026】
第2に、数Nが選択された後、円周がN個のセクタに分割される。各セクタ内で、突出部によって占められる弧角の割合は、好ましくは20%~80%(残りは間隙である)であり、より好ましくは50%~80%である。上記で示し、説明した好ましい実施形態では、この割合は約72%の突出である(28%の隙間を残す)。別の実施形態では、この割合は60%の突出である(40%の間隙を残す)。
【0027】
第3に、突出部の同心円の数(M)は、好ましくは1~4である。数Mが4より大きい場合、突出部を収容するための空間が不十分になる。上記で示し、説明した好ましい実施形態では、数Mは2である。
【0028】
これらの第1および第2の強膜支持突出部323および324は、吸引リング30が眼に付着し、真空が開始されるとき、眼の強膜の構造的完全性を維持するのに役立つ。これらの構造は、吸引リングが眼の上にドッキングされたときに眼球の形状を維持するのに役立ち、IOP増加が最小限に抑えられることを確実にする。
【0029】
第1および第2の強膜支持突出部323および324を含む可撓性スカート32は、成形によって、軟質熱可塑性エラストマー(TPE)材料、またはシリコーン、可撓性プラスチック、ゴム等の他の好適な可撓性および適合性材料の一片として形成されてもよい。好ましくは、材料は、ショアD 30~80Aの硬度を有し、これは、十分に柔らかく可撓性スカートの要件と、十分に硬い強膜支持構造の要件との両方を満たす。好ましくは、第1および第2の強膜支持突出部323および324を含む可撓性スカート32は、グリッパ31上にTPE材料をオーバーモールドすることによって形成され、これは、製造時間および誤差を最小限にすることができる。この一体型構造および関連する製造方法によって課される1つの制約は、狭い間隙は金型内に対応する薄い部品を必要とするため、様々な強膜支持突出部間の間隙が狭すぎてはならないことであり、これは達成するのが困難である。
【0030】
本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、本発明の患者インターフェース装置において様々な改変および変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内に入る変更および変形を包含することが意図される。
【0031】
〔実施の態様〕
(1) 患者の眼を眼科手術用レーザシステムに結合するための患者インターフェース装置であって、
前記眼科手術用レーザシステムに結合されるように構成された円錐水晶体と、
前記患者の眼に結合されるように構成される吸引リングであって、前記吸引リングは、円形受容開口部を画定するグリッパと、前記グリッパに接合され、前記受容開口部と同心であるリング状可撓性スカートとを含み、前記グリッパは、前記円形受容開口部内に前記円錐水晶体の一部を受容し、保持するように構成されている、吸引リングと、を備え、
前記可撓性スカートは、前記患者の眼に結合されるように構成され、
両方とも下方に延在し、前記眼の表面に接触するように構成される、円形内側縁および円形外側縁と、
前記内側縁と前記外側縁との間の周方向側壁と、
前記側壁から内側下方に突出する複数の第1の強膜支持突出部であって、前記第1の強膜支持突出部は、隣接する第1の強膜支持突出部間に間隙を伴って円周方向に分散され、各第1の強膜支持突出部の端面は、側断面図において傾斜および湾曲している、複数の第1の強膜支持突出部と、を含み、
各第1の強膜支持突出部の前記端面について、円周方向に沿った長さと前記円周方向に垂直な方向に沿った幅との比が1.1~2.1であり、各第1の強膜支持突出部の弧角(arc angle)と前記第1の強膜支持突出部と隣接する第1の強膜支持突出部との間の前記間隙の弧角との比が1~4である、患者インターフェース装置。
(2) 前記複数の第1の強膜支持突出部は、同じサイズを有し、周方向に均等に分布している、実施態様1に記載の患者インターフェース装置。
(3) 各第1の強膜支持突出部の長さが0.9mm~3.6mmである、実施態様2に記載の患者インターフェース装置。
(4) 前記複数の第1の強膜支持突出部は、5~20個の第1の強膜支持突出部を含む、実施態様1に記載の患者インターフェース装置。
(5) 前記可撓性スカートは、前記側壁と前記内側縁との間に位置する周方向上壁と、前記上壁から下方に突出する複数の第2の強膜支持突出部とをさらに備え、前記第2の強膜支持突出部は、周方向に分布し、前記複数の第1の複数の強膜支持突出部と半径方向に整列し、各第2の強膜支持突出部の端面は、側断面図において傾斜して湾曲し、前記対応する第1の強膜支持突出部の前記端面と同じ面にあり、
各第2の強膜支持突出部の前記端面について、円周方向に沿った長さと前記円周方向に垂直な方向に沿った幅との比が2.0~3.0である、実施態様1に記載の患者インターフェース装置。
【0032】
(6) 各第2の強膜支持突出部と前記対応する第1の第2の強膜支持突出部との間の半径方向間隙の幅は、0.24mm~0.29mmである、実施態様5に記載の患者インターフェース装置。
(7) 前記可撓性スカートが、可撓性がありかつ柔軟な材料から形成されている、実施態様1に記載の患者インターフェース装置。
(8) 前記可撓性スカートは、前記可撓性がありかつ柔軟な材料を前記グリッパ上にオーバーモールドすることによって形成されている、実施態様7に記載の患者インターフェース装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】