(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】角度多重化回折型コンバイナ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20241114BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20241114BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/32
H04N5/64 511A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528567
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2022078809
(87)【国際公開番号】W WO2023088621
(87)【国際公開日】2023-05-25
(32)【優先日】2021-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521548733
【氏名又は名称】アーエムエス インターナショナル アーゲー
【氏名又は名称原語表記】AMS INTERNATIONAL AG
【住所又は居所原語表記】Eichwiesstrasse 18b, Jona, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トレンブレイ エリック
(72)【発明者】
【氏名】マシアス カルロス
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H199CA02
2H199CA06
2H199CA12
2H199CA29
2H199CA32
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA62
2H199CA67
2H199CA68
2H199CA69
2H199CA83
2H249CA01
2H249CA05
2H249CA08
2H249CA09
2H249CA22
(57)【要約】
ウェアラブルヘッドアップディスプレイ(100)のための光学系(200)であって、この光学系(200)は、ユーザの眼(202)の方に画像を投影するように構成されたイメージプロジェクタ(201)と、ユーザの視野内で、かつイメージプロジェクタ(201)とユーザの眼(202)との間の光路内に位置決めされたコンバイナ素子(204)とを含み、コンバイナ素子(204)は、ユーザの眼(202)での平面内の複数の位置上に画像を複製するように構成され、コンバイナ素子(204)は、入射光を複数の方向に分割するように構成された分割素子(206)と、複数の多重化ホログラムを有する第一体積位相ホログラフィック(VPH)素子(207)とを含み、各ホログラムは、第一VPH素子(207)上へのそれぞれの入射角に応じて入射光を選択的にコリメートするように構成される。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェアラブルヘッドアップディスプレイ(100)のための光学系(200)であって、
ユーザの眼(202)の方に画像を投影するように構成されたイメージプロジェクタ(201)と、
前記ユーザの視野内で、かつ前記イメージプロジェクタ(201)と前記ユーザの前記眼(202)との間の光路内に位置決めされたコンバイナ素子(204)であって、前記コンバイナ素子(204)は前記ユーザの前記眼(202)での平面(205)内の複数の位置の上に前記画像を複製するように構成され、前記コンバイナ素子(204)は、
入射光を複数の方向に分割するように構成された分割素子(206)、及び、
複数の多重化ホログラムを含む第一体積位相ホログラフィック(VPH)素子(207)であって、各ホログラムは前記第一VPH素子(207)上へのそれぞれの入射角に応じて入射光を選択的にコリメートするように構成される、前記第一VPH素子、を有する、コンバイナ素子と、を含む、光学系(200)。
【請求項2】
前記分割素子(206)は第二VPH素子を含む、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記分割素子(206)は、前記イメージプロジェクタ(201)の像面から離隔された前記光路内に位置決めされる、請求項2に記載の光学系。
【請求項4】
前記分割素子(206)は反射型光学素子であり、前記第一VPH素子(207)は透過型光学素子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項5】
前記イメージプロジェクタ(201)は、(i)前記第一VPH素子(207)に通して第一経路上に光を投影し、(ii)前記分割素子(206)からの光を反射し、(iii)前記分割素子(206)から反射後に前記第一VPH素子(207)に通して第二経路上に光を投影するように配置され、それにより、前記第一VPH素子(207)は、前記第二経路上で前記入射光を選択的にコリメートするように構成される、請求項4に記載の光学系。
【請求項6】
前記第一経路上の前記第一VPH素子(207)上への光の入射角は、前記第一VPH素子(207)の臨界角より大きいことにより、前記光は、前記第一VPH素子(207)によってコリメートされることなく、前記第一VPH素子(207)を通って前記第一経路上に伝播することが可能になる、請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
前記分割素子(206)は透過型光学素子であり、前記第一VPH素子(207)は反射型光学素子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項8】
前記イメージプロジェクタ(201)は、(i)前記分割素子(206)に通して第一経路上に光を投影し、(ii)前記第一VPH素子(207)からの光を反射し、(iii)前記第一VPH素子(207)から反射後に前記分割素子(206)に通して第二経路上に光を投影するように配置され、それにより、前記分割素子(206)は、前記第一経路上で前記複数の方向に前記光を分割するように構成される、請求項7に記載の光学系。
【請求項9】
前記第二経路上の前記分割素子(206)上への光の入射角は、前記分割素子(206)の臨界角より大きいことにより、前記光は、前記複数の方向に分割されることなく、前記分割素子(206)を通って前記第二経路上に伝播することが可能になる、請求項8に記載の光学系。
【請求項10】
前記分割素子(206)は、前記入射光を、前記分割素子(206)上への前記入射光の前記入射角に対して鋭角を有する複数の方向に分割するように構成される、請求項8に記載の光学系。
【請求項11】
前記分割素子(206)は偏光ブラッグ回折グレーティングを含む、請求項1に記載の光学系。
【請求項12】
前記イメージプロジェクタ(201)は、第一偏光を使用して前記画像を投影するように構成され、前記偏光ブラッグ回折グレーティングは、前記第一偏光を回折する場合、前記第一偏光を第二偏光に変化させるように構成される、請求項11に記載の光学系。
【請求項13】
前記分割素子(206)と前記第一VPH素子(207)との両方は透過型光学素子であり、前記光学系は反射素子(215)を含み、前記反射素子は、前記第一VPH素子(207)の後に前記光路内に位置決めされることにより、前記入射光は前記第一VPH素子(207)を2回通過することが可能になる、請求項12に記載の光学系。
【請求項14】
前記分割素子(206)は、表面レリーフ型回折グレーティングを含む、請求項1に記載の光学系。
【請求項15】
前記イメージプロジェクタ(201)は、走査型レーザープロジェクタを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項16】
前記分割素子または前記第一VPH素子のうちの一方を他方に対して移動させるように構成されたアクチュエータを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の光学系(200)と、
前記光学系を取り付けるための支持フレーム(101)と、を含む、ウェアラブルヘッドアップディスプレイ(100)。
【請求項18】
少なくとも1つの接眼レンズ(101b)を含み、
前記分割素子(206)は、前記少なくとも1つの接眼レンズ(101b)の第一表面上に位置決めされ、
前記第一VPH素子(207)は、前記第一表面に対向する、前記少なくとも接眼レンズ(101b)の第二表面上に位置決めされる、請求項17に記載のウェアラブルヘッドアップディスプレイ。
【請求項19】
前記ディスプレイ(100)は、軸外網膜走査型ディスプレイを含む、請求項17または18に記載のウェアラブルヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウェアラブルヘッドアップディスプレイ用の光学系、及びそのような光学系を含むウェアラブルヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
軸外網膜走査型ディスプレイ(ORSD)は、ウェアラブルヘッドアップディスプレイなどの仮想現実用途及び拡張現実用途に使用されるディスプレイのタイプである。それらは、ユーザが自分の視野内に投影されたコンテンツを見ることを、ユーザが自分の外部環境も見続けることを可能にする方法で、可能にするように設計されている。ORSDは、ユーザの頭に固定されたプロジェクタを使用して、ユーザの網膜上に画像を投影することによって機能すると、ユーザには表示されたコンテンツが自分の前の空間に浮かんでいるように見える。
【0003】
プロジェクタは、ウェアラブルフレーム、例えば、接眼レンズを備えたヘッドセットまたはグラスフレームの側面に(つまり、軸外に)取り付けられる。接眼レンズには、プロジェクタによって照明されるホログラフィックコンバイナが設けられる。ホログラフィックコンバイナが照明されると、画像はユーザの瞳孔を通して網膜上に投影される。
【0004】
当分野で知られているように、ORSDなどのニアアイ光学デバイスでは、「アイボックス」という用語は、ORSDに対する空間体積を指し、この空間体積内では、ユーザは、投影されたフル画像を正しくみることができるように自分の眼を位置決めしなければならない。ORSDが小さいアイボックスを有する場合、ユーザがフル画像を正しくみることができる眼の位置の範囲は狭くなる。ORSDが大きいアイボックスを有する場合、ユーザがフル画像を正しくみることができる眼の位置の範囲が広くなるため、ユーザエクスペリエンスが向上する。ユーザが自分の眼の位置をアイボックスから外に動かす場合、投影された画像の一部のみがみえる、またはまったくみえなくなる。これは、ユーザの瞳孔、ひいては網膜がORSDによって投影される光の光路と正しくアライメントされるのはアイボックス内のみであるためである。また、特にアイボックスが小さく、真っ直ぐに前を見つめているユーザの眼の位置のみをカバーする場合、ユーザの瞳孔がORSDによって投影される光の光路と一致するかどうかにユーザの視線の方向が影響することができることも知られている。
【0005】
さらに問題は、ユーザの頭の形状及びサイズが異なるため、アイボックスを所与のユーザの眼に一致させるように、ORSDをユーザの頭の大きさに個別にカスタムフィットさせる(大量生産用に大規模に行うには非効率である)必要があることである。
【0006】
これらのような問題を解決する1つの方法は、ORSDのアイボックスを、ユーザの眼の瞳孔とオーバーラップするようにアクティブに操作することである。例えば、ユーザの眼の位置を追跡し、プロジェクタの投影方向をユーザの眼の位置にマッチングするように適合させることによるものである。しかしながら、それらのようなシステムは複雑であり、電動または作動コンポーネントを必要とする場合があるため、実用的ではない。
【0007】
代替のアプローチは、瞳複製を使用することである。当分野で知られているように、瞳複製における「瞳孔」という用語は、光学系の射出瞳をコピーすること、つまり、投影されるフル画像のコピーを指す。瞳複製は、フル画像を何度も複製し、各コピーをユーザの眼の前の異なる位置に投影することによって機能する。複製された瞳孔のうちの1つがユーザの眼の瞳孔とオーバーラップしている限り、画像の少なくとも1つのコピーがユーザの網膜上に投影され、ユーザは投影された画像を正しくみることができる。ユーザの眼が少なくとも1つの複製された瞳孔とオーバーラップする、いずれかの位置にあることができるため、これにはアイボックスのサイズを大きくする効果がある。US10,031,338B2は、プロジェクタでの瞳複製によるアイボックス拡大方法を提案している。次に、プロジェクタは複製された瞳孔をホログラフィックコンバイナ上に向けてから、ユーザの眼の上に向ける。
【0008】
しかしながら、これらのような既知の瞳複製アプローチは、像面に(光を拡散し、エタンデュを拡大することによって)、または光がコリメートされる瞳面(フーリエ面)に(例えば、導波路型アプローチで行われるように)複製が通常行われる場合にのみ機能する。このような場合、複製を収集し、単一光学関数によって眼に提示することができる。例えば、像面に拡大される場合には単一レンズ関数、または光がコリメートされるときに複製される(例えば、導波路アプローチ)場合には単一グレーティング関数によるものである。
【0009】
この制限には、複製光学素子が位置決めされ得る位置の設計柔軟性が制限されるという大きい欠点がある。例えば、US10,031,338では、瞳複製は、かさ高いプリズムを使用してプロジェクタ内またはプロジェクタに行われるが、これは実用的でなく、達成されることができる複製瞳孔のサイズが制限され、つまり、可能な瞳孔の拡大が制限される。
【0010】
あまりかさが高くなく、光学素子の位置決めに関して設計柔軟性がより高いウェアラブルヘッドアップディスプレイ用の光学系が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
一般的に言えば、本発明者らは、瞳複製が像面または瞳面(フーリエ面)で行われなければならないという上記の要件を克服することができ、これらの2つの平面の方から光路内の位置での複製が、個々の(つまり、選択的な)光学関数を個々の複製ビームに適用するという条件で可能になることを認識した。これは、像面及びフーリエ面の方から位置決めされた分割素子(例えば、回折型分割素子)を使用して初期投影ビームを複製してから、体積位相ホログラフィック(VPH)素子で角度多重化を使用して複製されたビームを正しい角度で収集してコリメートし、ユーザの眼の方に向けることによって達成される。これが可能となるのは、VPH素子の複数の多重化ホログラムが異なる光学関数を、VPH素子上への入射角に応じて個々の複製されたビームのそれぞれに適用するからである。
【0012】
これにより、光学素子を位置決めし得る位置に関して、設計柔軟性の程度が大幅に向上することが可能になる。例えば、これにより、分割素子とコリメート素子との両方がディスプレイの接眼レンズなどの上のディスプレイのホログラフィックコンバイナの上/それに密着して設けられることが、プロジェクタまたはディスプレイ上の他の位置に分割素子が設けられる必要がなく可能になる。したがって、本開示のシステムは、既知の軸外網膜ディスプレイよりも薄く、小さくなり得、より大きいアイボックスを有し得る。
【0013】
従って、第一態様によれば、ウェアラブルヘッドアップディスプレイのための光学系が提供され、この光学系は、ユーザの眼の方に画像を投影するように構成されたイメージプロジェクタと、ユーザの視野内で、かつイメージプロジェクタとユーザの眼との間の光路内に位置決めされたコンバイナ素子とを含み、コンバイナ素子は、ユーザの眼での平面内の複数の位置上に画像を複製するように構成され、コンバイナ素子は、入射光を複数の方向に分割するように構成された分割素子と、複数の多重化ホログラムを有する第一体積位相ホログラフィック(VPH)素子と、を含み、各ホログラムは、第一VPH素子上へのそれぞれの入射角に応じて入射光を選択的にコリメートするように構成される。
【0014】
有利には、上述のように、VPH素子を使用して、分割素子によって分割された入射光をコリメートし、それをユーザの眼の平面内の複数の位置の方に向けることにより、分割素子が像面または瞳面内だけでなく光路内のどこにでも位置決めされ得るため、既知のディスプレイよりも設計柔軟性が大幅に向上していながら、ディスプレイのアイボックスが拡大される。これにより、既知のディスプレイと比較して、はるかによりコンパクトで単純な配置が可能になる。
【0015】
いくつかの実施態様では、分割素子は第二VPH素子を含む。
【0016】
有利なことに、VPH素子は非常に高い効率を有し、それらを通って伝播する光の損失が低くなる。したがって、分割素子もVPH素子である場合、相乗的に、光学系は、分割素子として他の非VPH光学コンポーネントを使用するシステムよりも著しく高い光効率を有する。
【0017】
いくつかの実施態様では、分割素子は、イメージプロジェクタの像面から離隔された光路内に位置決めされる。
【0018】
有利には、上述のように、これが可能になるのは、第一VPH素子を使用すると、例えば、プロジェクタまたはヘッドアップディスプレイ上の他の箇所の上またはそこにではなく、ディスプレイの接眼レンズの表面またはその上などを含む、光路内のどこにでも分割素子の配置が可能になるためである。
【0019】
いくつかの実施態様では、分割素子は反射型光学素子であり、第一VPH素子は透過型光学素子である。例えば、この配置では、イメージプロジェクタは、(i)第一VPH素子に通して第一経路上に光を投影し、(ii)分割素子からの光を反射し、(iii)分割素子から反射後に第一VPH素子に通して第二経路上に光を投影するように配置され、それにより、第一VPH素子は、第二経路上で入射光を選択的にコリメートするように構成される。第一経路上の第一VPH素子上への光の入射角は、第一VPH素子の臨界角より大きいことにより、光は、第一VPH素子によってコリメートされることなく、第一VPH素子を通って第一経路上に伝播することが可能になる。
【0020】
有利なことに、この配置により、初期投影像が第一VPH素子の臨界角の範囲外であるため、第一経路上で第一VPH素子を、それと相互作用することなく通過するように、プロジェクタがコンバイナ素子に対してヘッドアップディスプレイ上で軸外に位置決めされることが可能になる。代わりに、光は最初に、二次元での複数の方向(例えば、2Dの矩形または六角形の角度配置での方向)に分割する像面にも瞳面にも位置していない瞳孔スプリッタとして機能する分割素子(例えば、単一軸外点対多平面波反射VPH素子)と相互作用する。次に、分割された光ビームは、第二経路の第一VPH素子を通過して、そこで角度が臨界角の範囲外でない場合、今度は第一VPH素子と相互作用する。第一VPH素子は、分割素子によって発生した多平面波のそれぞれがユーザの眼の位置の近く、またはその位置に対応する射出瞳点に回折されるように、角度及びシフト多重化され得る。したがって、第一VPH素子は、多平面対多点多重化透過型VPH素子として、また分割素子の回折(すなわち、分割ビーム)ごとに選択的コリメータとして機能する。本明細書では「選択的」という用語は、多重化された各ホログラムが分割素子によって生成される回折角の1つに作用することを意味する。
【0021】
代替に、いくつかの実施態様では、分割素子は透過型光学素子であり、第一VPH素子は反射型光学素子である。例えば、イメージプロジェクタは、(i)分割素子に通して第一経路上に光を投影し、(ii)第一VPH素子からの光を反射し、(iii)第一VPH素子から反射後に分割素子に通して第二経路上に光を投影するように配置され、それにより、分割素子は、第一経路上で複数の方向に光を分割するように構成される。第二経路上の分割素子上への光の入射角は、分割素子の臨界角より大きいことにより、この光は、複数の方向に分割されることなく、分割素子を通って第二経路上に伝播することが可能になる。
【0022】
有利なことに、この配置により、再度、初期投影像が第二経路上で分割素子を、それと相互作用することなく通過するように、プロジェクタがコンバイナ素子に対してヘッドアップディスプレイ上で軸外に位置決めされることが可能になる。
【0023】
いくつかの実施態様では、分割素子は、入射光を、分割素子上への入射光の入射角に対して鋭角を有する複数の方向に分割するように構成される。例えば、ホログラムは、入射光が第一経路上のプロジェクタの角度から入ってくる場合には分割するが、その角度に第二経路上の(反射型)VPHコリメータから反射される場合には分割しないように構成される。
【0024】
有利には、これは、分割素子と相互作用しない第二経路上で分割素子に通して光のクロストーク相互作用を回避するのに役立つ。
【0025】
いくつかの実施態様では、分割素子は偏光ブラッグ回折グレーティングを含む。任意選択で、イメージプロジェクタは、第一偏光を使用して画像を投影するように構成され、偏光ブラッグ回折グレーティングは、第一偏光を回折する場合、第一偏光を第二偏光に変化させるように構成される。
【0026】
有利には、この配置では、偏光制御を使用することによってクロストークを回避し得る。つまり、光が分割素子上に入射すると1つの偏光を有するが、光が分割素子から出射すると異なる偏光を有することにより、フィルタを使用して、所望の偏光を有しないあらゆる光を除去することが可能になり、分割された光のみが伝播し続けることが確保される。
【0027】
いくつかの実施態様では、ブラッグ回折グレーティングと第一VPH素子との両方が透過型光学素子であり、システムはブラッグ回折グレーティング後の光路内に位置決めされた反射素子を含むことにより、入射光がブラッグ回折グレーティングを2回通過することが可能になる。
【0028】
有利には、この2回の通過により、光がブラッグ回折グレーティングと両方の方向に相互作用するため、光が1回だけ通過する場合よりも分割素子(つまり、ブラッグ回折グレーティング)が薄くなることが可能になり、従って、材料の厚さが半分で所望の回折が達成される。
【0029】
いくつかの実施態様では、分割素子は表面レリーフ型回折グレーティングを含む。
【0030】
いくつかの実施態様では、イメージプロジェクタは走査型レーザープロジェクタを含む。
【0031】
いくつかの実施態様では、光学系は、分割素子または第一VPH素子のうちの一方を他方に対して移動させるように構成されたアクチュエータを含む。例えば、アクチュエータは、分割素子もしくは第一VPH素子の一方もしくは両方を変位させるもしくは回転させる機械モータ、または光がそれぞれの素子から出射される角度を変化させるように構成された電気的に対処可能なグレーティングを含み得る。これは、例えば既知の眼または視線追跡ソフトウェア及びハードウェア方法を使用して、追跡され得るユーザの輻輳に応じて、分割素子と第一VPH素子との間の光路を変化させるという効果を有する。
【0032】
有利には、この実装により、輻輳調節競合と、それが一部のユーザに引き起こす不快感に、UIデザインまたはその他の提示もしくはソフトウェア方法(例えば、長い視距離を使用する、ディスプレイ内のシミュレートされた距離と焦点距離を可能な限りマッチングさせる、オブジェクトを奥行きの内外にゆっくりしたペースで移動させる、ユーザに対するその他の奥行きキューを最大にする、シーン内で大きく異なる奥行きで小さいオブジェクトが積み重ねられるのを避けるなど)を使用する代わりに、ハードウェアを使用して対処することが可能になる。したがって、輻輳調節競合によって引き起こされるユーザの不快感は大幅に軽減され、UIデザインに関係なく、信頼性が高く効率的な方法でユーザエクスペリエンスが大幅に向上する。その結果、輻輳調節競合によって引き起こされる不快感を最小にするために上記のアプローチが展開される必要がなくなるため、アプリまたはUIデザインの自由度及び柔軟性が大幅に向上する。
【0033】
本開示の第二態様によれば、上述の光学系と、その上に光学系を取り付けるための支持フレームとを含むウェアラブルヘッドアップディスプレイが提供される。支持フレームは、例えば眼鏡フレームであってもよい。
【0034】
任意選択では、ウェアラブルヘッドアップディスプレイは少なくとも1つの接眼レンズを含み得、分割素子は少なくとも1つの接眼レンズの第一表面上に位置決めされ、第一VPH素子は、第一表面に対向する、少なくとも1つの接眼レンズの第二表面上に位置決めされる。いくつかの実施態様では、ウェアラブルヘッドアップディスプレイは、軸外網膜走査型ディスプレイを含む。
【0035】
有利には、上述のように、この配置は、分割素子がVPH素子から接眼レンズの厚さ以内に離れて位置決めされることができるため、既知のシステムよりも大幅にコンパクトな配置を提供するように接眼レンズ上に設けられることができることを意味する。
【0036】
これよりこれらの及び他の態様を、添付の図面を参照しながらほんの一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本開示による、ウェアラブルヘッドアップディスプレイを例示的に示す。
【
図2a】本開示による、ウェアラブルヘッドアップディスプレイの光学系を例示的に示す。
【
図2b】本開示による、ウェアラブルヘッドアップディスプレイの光学系を例示的に示す。
【
図3】本開示による、ウェアラブルヘッドアップディスプレイの光学系を例示的に示す。
【
図4】本開示による、ウェアラブルヘッドアップディスプレイの簡略化された光学系を例示的に示す。
【
図5a】本開示による、ウェアラブルヘッドアップディスプレイの光学系を例示的に示す。
【
図5b】本開示による、ウェアラブルヘッドアップディスプレイの光学系を例示的に示す。
【
図6】本開示による、ウェアラブルヘッドアップディスプレイの簡略化された光学系を例示的に示す。
【
図7】本開示による、ウェアラブルヘッドアップディスプレイの光学系を例示的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本開示による、ウェアラブルヘッドアップディスプレイ100を例示的に示す。ウェアラブルヘッドアップディスプレイ100は、中心軸101a及び一対の接眼レンズ101bを備えた支持フレーム101を含む軸外網膜走査型ディスプレイである。光学系102を支持フレーム101上に取り付ける。光学系102は、走査型レーザープロジェクタなどのイメージプロジェクタ103と、例えば接眼レンズ101bの一方として、または接眼レンズ101bの表面の両方の上もしくはそれらの両方に、もしくは接眼レンズ101bの一方の内に配置されたコンバイナ素子104とを含む。プロジェクタ103は、中心軸101aからオフセットにあり、コンバイナ素子104を介してユーザの眼106の方に画像105を投影するように構成される。コンバイナ素子104は、ユーザの視野内(すなわち、ユーザの眼の視野内)に位置決めされ、ユーザの眼106での平面107内の複数の位置上に何回か投影された画像を複製して、ウェアラブルヘッドアップディスプレイ100のアイボックスを拡大するように構成される。
【0039】
図2aは、本開示による、ウェアラブルヘッドアップディスプレイの光学系200を例示的に示す。光学系200は、ユーザの眼202の方に画像を投影するためのイメージプロジェクタ201を含む。プロジェクタ201は、光学系への入射瞳として機能するMEMSプロジェクタ及び投影レンズを含み得る。プロジェクタ201は、RGBカラー及びそれらの組み合わせで投影するように構成され得る。
図2aは、他の光線が存在することが理解されるであろうが、プロジェクタ201によって投影される主光線203a、203b、203cのみを示す。
【0040】
光学系200は、ユーザの視野内で、かつイメージプロジェクタ201とユーザの眼202との間の光路内に位置決めされたコンバイナ素子204をさらに含む。コンバイナ素子204は、イメージプロジェクタ201によって投影された画像を複数の位置上に複製して、ユーザの眼202の平面205内のそれらの位置のそれぞれに複製像(すなわち、射出瞳)を生成するように構成される。上述のように、これは、ユーザの瞳孔がディスプレイの複製像(すなわち、射出瞳)の1つとオーバーラップするあらゆる位置にユーザが自分の眼を位置決めし得るため、ディスプレイのアイボックスのサイズを拡大するという効果を有する。
【0041】
コンバイナ素子204は、分割素子206及び第一体積位相ホログラフィック(VPH)素子207を含む。
図2aの例での分割素子206は、1対多のスプリッタとして機能する反射型VPH素子である。VPH素子207は、多重化コリメータとして機能する透過型VPH素子であり、第一VPH素子207上へのそれぞれの入射角に応じて入射光を選択的にコリメートするように構成された複数のホログラムを含む。すなわち、複数のホログラムは、入射角に応じてそれを通過する個々の複製ビームに適用される個々の(すなわち、選択的な)光学関数を提供する。換言すれば、第一VPH素子207は、個々の複製ビームのそれぞれに、第一VPH素子207上へのその入射角に応じて異なる光学関数を適用する。
【0042】
次に、光が光学系を通過する経路を説明する。プロジェクタ201からの光203a、203b、203cは、最初に第一VPH素子207と相互作用することなく第一VPH素子を通って伝播し、分割素子206に到達する。相互作用は、第一VPH素子207上への入射角207aが第一VPH素子207の臨界角、すなわちVPH素子207が影響を及ぼし始める角度よりも大きいことを確保することによって回避される。光203a、203b、203cは、分割素子206に到達すると反射され、複数の方向に分割され、ユーザの眼202の一般的な方向に返される。分割光は、ここで相互作用が起こる角度から第一VPH素子207上に入射すると、第一VPH素子207によって選択的にコリメートされることにより(すなわち、入射角に応じて異なる光学関数が各光線に適用されることにより)、平面205内のこれら複数の位置の方に再指向され、複製像をユーザの眼の平面205内に形成して、ディスプレイのアイボックスを拡大する。各光線のコリメートが第一VPH素子207上へのその入射角に依存するため、スプリッタ素子206も、コリメータとして機能する第一VPH素子207も、プロジェクタ201の像面または瞳面(フーリエ面)内に配置される必要があるコリメータとして機能しないことにより、両方の素子を合わせて既知のシステムよりも大幅に近くに位置決めすることができる。例えば、それらは、それらが使用されるウェアラブルヘッドアップディスプレイの接眼レンズの厚さと同じくらい互いの近くに配置され得るため、どちらのコンポーネントも、プロジェクタ内の空間、またはウェアラブルヘッドアップディスプレイの上もしくは内のその他の位置内の空間を占有しない。
【0043】
図2bは、本開示による、ウェアラブルヘッドアップディスプレイの光学系を例示的に示す。同様の番号の数字は同様の番号の要素を指す。この配置は、ここでは分割素子が透過素子であり、第一VPH素子が反射素子であり、それらが逆に配置されることを除いて
図2aの配置と同じであるため、プロジェクタからの光203a、203b、203cは、最初に分割素子206に到達し、そのうえ相互作用することで、それを通じて第一経路上で分割されるが、今度は分割素子を通じてその第二経路上で相互作用しない。
【0044】
図3は、本開示による、光学系を例示的に示す。同様の番号の数字は同様の番号の要素を指す。
図3は、
図2bの配置によって可能になる利点、すなわち、内角に傾斜バイアスを導入することが可能になることを示す。つまり、分割素子は、ビームをコリメートするVPH素子の表面に対して
図2bよりも傾いている方向に光ビームを分割する。この結果、分割された光ビームとコリメートされたビームとの間の角度の差が大きくなり、そのうえ分割素子がVPH素子から入るコリメートされたビームから部分的または完全に外れて位置決めされることが可能になる。この効果により、クロストークが大幅に減少し、ユーザが投影された画像を見るときの画像アーチファクト及びノイズが減少する。これを別の言い方で言えば、分割素子が光を分割する複数の方向は、分割素子に入射する光の入射角に対して鋭角を有する。
【0045】
図3は傾きを示しているが、傾きはどちらの方向にもなることができることが想定される。これを達成する1つの方法は、例えば、画像が投影されている接眼レンズとは反対側のフレームにプロジェクタ201を位置決めすることで、ユーザの顔全体にユーザが装着しているフレームの1つの側のプロジェクタからもう1つの側の接眼レンズまで画像が投影されることによるものである。これにより、画像が投影されているフレームの接眼レンズと同じ側にプロジェクタを位置決めする場合に可能になるものよりも大幅に大きい傾斜角が達成されることが可能になる。その結果、この配置はクロストークをより強力に減少させることを可能にする。上述のように、クロストークが減少する1つの方法は、ホログラムが入射光に与える影響が角度に依存するためであり、つまり、所定の角度を有する光のみが所定の方向に分割される、またはコリメートされるためである。傾斜角が大きくなると、(i)ホログラムが入射光に影響を与えることが望ましい入射角と、(ii)ホログラムが入射光に影響を与えることが望ましくないいずれかの入射角との間の差が大きくなる。
【0046】
図4は、主光線以外の光線の伝播を説明するために、本開示による簡略化された光学系を例示的に示す。同様の番号の参照番号は同様の番号の要素を指す。簡略化された図は、すべてのコンポーネントが互いに直列に並んでいることを示しているが、それでも実際のシステムが
図1に示されるタイプの軸外システムであることが想定される。上述のように、プロジェクタ201はMEMSプロジェクタと、光学系への入射瞳として機能する任意選択の投影レンズ201aとを含み得る。
図4は、投影像の焦点が合う光路内の位置に中間焦点面208が存在することを示す。この平面208は、既知のシステムがそれらのコンバイナ素子(例えば、分割素子及び/またはコリメート素子)を位置決めする必要がある位置の一例である。ORSDの一般的な光路を考慮すると、この位置では、かさ高い光学部品がフレーム上かプロジェクタ内/プロジェクタかいずれかに位置決めされるため、その結果、ディスプレイがかさ高くなる。対照的に、
図4に見られるように、VPH素子を使用して入射角に応じて分割光をコリメートすることにより、例えば、イメージプロジェクタの像面または焦点面であってもよい、この焦点面から離隔された光路内に分割素子とVPH素子との両方を位置決めすることが可能になる。上述のように、これにより、光学素子の位置決めに関して、既知のシステムよりも設計柔軟性がはるかに高く、大幅にコンパクトな設計が可能になる。
【0047】
図5a及び
図5bは、本開示によるウェアラブルヘッドアップディスプレイ用の光学系を例示的に示し、ユーザの瞳孔を通して眼に入る複製された主光線及び非主光線の挙動を示す。同様の番号の参照番号は同様の番号の要素を指す。20mmスケールは例示のみを目的として示されており、本開示は20mmスケールによって示されるサイズに限定されない。
図5aに示されるように、主光線は、網膜が眼の近軸レンズから約17mmに位置決めされる像面内か、瞳面、つまり射出瞳が複製される位置内かいずれかでスティグマティックである(収差を示さない)。
【0048】
対照的に
図5bは、ユーザの網膜の平面のズームインビュー209aからわかるように、非主光線が異なる収差(例えば、焦点収差及び非点収差)を示すことを図示する。有利には、VPH素子の複数のホログラムが個々の光線のそれぞれに固有の光学関数を適用するようにカスタマイズされることができるため、VPH素子(コリメート素子及び/または分割素子のいずれかとして)は、これらのような収差を補正するために自由形式のVPH関数を与えるようにカスタマイズされることができる。これは、上記の理由によりVPH素子がはるかによりコンパクトな配置を提供するだけでなく、VPH素子のホログラムの適切な設計によって収差を補正し、それを通り伝播する光に、入射角に基づいて収差を減少させるVPH光学関数を適用することを可能にするという相乗効果をもたらす。
【0049】
図6aは、本開示による簡略化された光学系を例示的に示し、この系の一次光学パラメータを示す。同様の番号の参照番号は同様の番号の要素を指す。簡略化された図は、すべてのコンポーネントが互いに直列に並んでいることを示しているが、それでも実際のシステムが
図1に示されるタイプの軸外システムであることが想定される。上述のように、プロジェクタ201はMEMSプロジェクタと、光学系への入射瞳として機能する任意選択の投影レンズ201aとを含み得る。
図6aは、プロジェクタ201の投影レンズ201aの焦点距離209に対応する中間焦点面208が、投影像の焦点が合う光路内の位置に存在することを示す。この平面208は、既知のシステムがそれらのコンバイナ素子(例えば、分割素子及び/またはコリメート素子)を位置決めする必要がある位置の一例である。ORSDの一般的な光路を考慮すると、この位置では、かさ高い光学部品がフレーム上かプロジェクタ内/プロジェクタかいずれかに位置決めされるため、その結果、ディスプレイがかさ高くなる。対照的に、
図6aに見られるように、VPH素子207を使用して入射角に応じて分割光をコリメートすることにより、この焦点面208から離隔された光路内に分割素子206とVPH素子207との両方を位置決めすることが可能になる。また
図6aは、分割素子206及びVPH素子207が、例えば接眼レンズの1つの素子を前面に、そして1つの素子を背面に位置決めすることによって、ウェアラブルヘッドアップディスプレイの接眼レンズの厚さ210と同じくらい互いに近づけて位置決めされ得ることも示す。上述のように、これにより、光学素子の位置決めに関して、既知のシステムよりも設計柔軟性がはるかに高く、大幅にコンパクトな設計が可能になる。また
図6aは、主光線に関して、分割素子206の焦点距離211が入射瞳から(例えば、プロジェクタ201の投影レンズ201aから)分割素子206までの距離に対応することも示す。同様に、VPH素子207の焦点距離212は、アイレリーフ距離、すなわち眼202の瞳孔からVPH素子207までの距離に対応する。
【0050】
図7は、本開示による、光学系を例示的に示す。同様の番号の参照番号は同様の番号の要素を指す。上述の光学系と同様に、イメージプロジェクタ201は、コンバイナ素子204を使用してユーザの眼の方に画像を投影する(213)ために設けられる。この配置は、入射角が第一VPH素子の臨界角よりも大きいため、初期投影光が、第一VPH素子207と相互作用することなく、この第一VPH素子を通じて第一経路上に伝播するという点で、
図2aの配置と同様である。しかしながら、分割素子がVPH素子を含む上記の例とは異なり、
図7の例の分割素子は、偏光体積ブラッググレーティング(PVG)214と、PVGの後ろに位置決めされた反射素子215、例えばダイクロイック(RGB)ミラーとを含む。このような配置では、PVGは透過素子であることが想定される。
【0051】
プロジェクタ201からの光213は、PVG材料を2回通過する(第一経路後に反射素子から反射する)ことによって分割されるため、PVGは、PVGを1回しか通過しなかった場合に必要とされる厚さの半分になり得る。この結果、
図1~
図6bに上述された例よりも分割素子が薄くなることにより、分割素子とコリメータとの両方にVPH素子を使用する場合と比較して、所与のアイボックス拡大サイズに対してさらにコンパクトなコンバイナ素子204を製造する能力が提供される。
【0052】
さらに、プロジェクタ201は、反射素子215からの反射時に回転する1つの偏光で光を投影するため、ユーザが最終的に見る光が、プロジェクタが初期に投影する光とは異なる(例えば、直交する)偏光を有するように構成され得る。これにより、偏光フィルタを使用して不要な偏光を除去し得る場合、クロストーク及び画像アーチファクトが減少するため、ユーザはコンバイナ素子204からの正しい偏光を有する光だけを見る。また
図7は、ユーザの周囲環境からの光が接眼レンズを通過するにもかかわらず、複製されてコリメートされたビームと同じ偏光を有する限り、ユーザの眼に到達することも示す。有利には、
図7の配置により、プロジェクタ201によって投影される初期光線は、
図1~
図6の例よりも急な角度を有することも可能になる。
【0053】
当業者であれば、他の効果的な代替物も思いつくであろう。本発明が記載された実施形態に限定されるものではなく、本明細書に添付された特許請求の範囲内にある当業者にとって明らかな変更形態を包含することが理解されよう。
【0054】
例えば、
図3は透過型分割素子及び反射型コリメート素子によって内角上に傾斜バイアスが導入される
図2bを参照して説明されているが、
図3の教示は、
図2aの配置にも等しく適用され得る。具体的には、傾斜バイアスは
図2aの配置にも等しく導入され得、それにより内角上の傾斜バイアスは、例えば
図2aなどに、示されるように配置された反射分割素子及び透過型コリメート素子によって導入され得る。したがって、傾斜バイアスが透過型と反射型との両方のセットアップでは、分割素子206及びコリメート素子207の相対的な位置決めの様々な配置によって達成され得ることが想定される。例えば、(i)透過素子としての分割素子206はその素子の表面に対して入射光が鈍角となるように配置され得ることと、(ii)透過素子としての分割素子206はその素子の表面に対して入射光が鋭角となるように配置され得ることと、(iii)反射素子としてのコリメート素子207はその素子の表面に対して入射光が鋭角となるように配置され得ることと、(iv)反射素子としてのコリメート素子207はその素子の表面に対して入射光が鈍角となるように配置され得ることと、(v)素子206に鈍角と鋭角との両方で様々な入射光を与える上記の配置の組み合わせと、(iv)素子207に鈍角と鋭角との両方で様々な入射光を与える上記の配置の組み合わせと、という少なくとも6つの異なる配置が想定される。
【符号の説明】
【0055】
100:ウェアラブルヘッドアップディスプレイ
101:支持フレーム
101a:中心軸
101b:接眼レンズ対
102:光学系
103:イメージプロジェクタ
104:コンバイナ素子
105:投影像
106:ユーザの眼
107:ユーザの眼での平面
200:光学系
201:プロジェクタ
201a:投影レンズ
202:ユーザの眼
203a:主光線
203b:主光線
203c:主光線
204:コンバイナ素子
205:ユーザの眼での平面
206:分割素子
207:第一VPH素子
207a:入射角
208:中間焦点面
209:投影レンズの焦点距離
209a:ズームビュー
210:接眼レンズの厚さ
211:分割素子の焦点距離
212:第一VPH素子の焦点距離
213:主光線
214:偏光ブラッグ回折グレーティング
215:反射素子
【手続補正書】
【提出日】2024-05-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェアラブルヘッドアップディスプレイ(100)のための光学系(200)であって、
ユーザの眼(202)の方に画像を投影するように構成されたイメージプロジェクタ(201)と、
前記ユーザの視野内で、かつ前記イメージプロジェクタ(201)と前記ユーザの前記眼(202)との間の光路内に位置決めされたコンバイナ素子(204)であって、前記コンバイナ素子(204)は前記ユーザの前記眼(202)での平面(205)内の複数の位置の上に前記画像を複製するように構成され、前記コンバイナ素子(204)は、
入射光を複数の方向に分割するように構成された分割素子(206)、及び、
複数の多重化ホログラムを含む第一体積位相ホログラフィック(VPH)素子(207)であって、各ホログラムは前記第一VPH素子(207)上へのそれぞれの入射角に応じて入射光を選択的にコリメートするように構成される、前記第一VPH素子、を有する、コンバイナ素子と、を含む、光学系(200)。
【請求項2】
前記分割素子(206)は第二VPH素子を含む、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記分割素子(206)は、前記イメージプロジェクタ(201)の像面から離隔された前記光路内に位置決めされる、請求項2に記載の光学系。
【請求項4】
前記分割素子(206)は反射型光学素子であり、前記第一VPH素子(207)は透過型光学素子である、請求項
1に記載の光学系。
【請求項5】
前記イメージプロジェクタ(201)は、(i)前記第一VPH素子(207)に通して第一経路上に光を投影し、(ii)前記分割素子(206)からの光を反射し、(iii)前記分割素子(206)から反射後に前記第一VPH素子(207)に通して第二経路上に光を投影するように配置され、それにより、前記第一VPH素子(207)は、前記第二経路上で前記入射光を選択的にコリメートするように構成される、請求項4に記載の光学系。
【請求項6】
前記第一経路上の前記第一VPH素子(207)上への光の入射角は、前記第一VPH素子(207)の臨界角より大きいことにより、前記光は、前記第一VPH素子(207)によってコリメートされることなく、前記第一VPH素子(207)を通って前記第一経路上に伝播することが可能になる、請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
前記分割素子(206)は透過型光学素子であり、前記第一VPH素子(207)は反射型光学素子である、請求項
1に記載の光学系。
【請求項8】
前記イメージプロジェクタ(201)は、(i)前記分割素子(206)に通して第一経路上に光を投影し、(ii)前記第一VPH素子(207)からの光を反射し、(iii)前記第一VPH素子(207)から反射後に前記分割素子(206)に通して第二経路上に光を投影するように配置され、それにより、前記分割素子(206)は、前記第一経路上で前記複数の方向に前記光を分割するように構成される、請求項7に記載の光学系。
【請求項9】
前記第二経路上の前記分割素子(206)上への光の入射角は、前記分割素子(206)の臨界角より大きいことにより、前記光は、前記複数の方向に分割されることなく、前記分割素子(206)を通って前記第二経路上に伝播することが可能になる、請求項8に記載の光学系。
【請求項10】
前記分割素子(206)は、前記入射光を、前記分割素子(206)上への前記入射光の前記入射角に対して鋭角を有する複数の方向に分割するように構成される、請求項8に記載の光学系。
【請求項11】
前記分割素子(206)は偏光ブラッグ回折グレーティングを含む、請求項1に記載の光学系。
【請求項12】
前記イメージプロジェクタ(201)は、第一偏光を使用して前記画像を投影するように構成され、前記偏光ブラッグ回折グレーティングは、前記第一偏光を回折する場合、前記第一偏光を第二偏光に変化させるように構成される、請求項11に記載の光学系。
【請求項13】
前記分割素子(206)と前記第一VPH素子(207)との両方は透過型光学素子であり、前記光学系は反射素子(215)を含み、前記反射素子は、前記第一VPH素子(207)の後に前記光路内に位置決めされることにより、前記入射光は前記第一VPH素子(207)を2回通過することが可能になる、請求項12に記載の光学系。
【請求項14】
前記分割素子(206)は、表面レリーフ型回折グレーティングを含む、請求項1に記載の光学系。
【請求項15】
前記イメージプロジェクタ(201)は、走査型レーザープロジェクタを含む、請求項
1に記載の光学系。
【請求項16】
前記分割素子または前記第一VPH素子のうちの一方を他方に対して移動させるように構成されたアクチュエータを含む、請求項
1に記載の光学系。
【請求項17】
請求項
1に記載の光学系(200)と、
前記光学系を取り付けるための支持フレーム(101)と、を含む、ウェアラブルヘッドアップディスプレイ(100)。
【請求項18】
少なくとも1つの接眼レンズ(101b)を含み、
前記分割素子(206)は、前記少なくとも1つの接眼レンズ(101b)の第一表面上に位置決めされ、
前記第一VPH素子(207)は、前記第一表面に対向する、前記少なくとも接眼レンズ(101b)の第二表面上に位置決めされる、請求項17に記載のウェアラブルヘッドアップディスプレイ。
【請求項19】
前記ディスプレイ(100)は、軸外網膜走査型ディスプレイを含む、請求項1
7に記載のウェアラブルヘッドアップディスプレイ。
【国際調査報告】