(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-21
(54)【発明の名称】アンギオテンシノゲン(AGT)タンパク質の発現を阻害する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20241114BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241114BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20241114BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20241114BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20241114BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241114BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20241114BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241114BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241114BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241114BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20241114BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241114BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N5/10
A61K31/713
A61K47/54
A61K48/00
A61P9/12
A61P27/02
A61P27/06
A61P9/00
A61P13/12
A61P9/10 101
A61P9/04
A61P43/00 105
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024528580
(86)(22)【出願日】2022-11-15
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 CN2022131861
(87)【国際公開番号】W WO2023088227
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/130832
(32)【優先日】2021-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2022/081578
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524109142
【氏名又は名称】シャンハイ アルゴ バイオファーマシューティカル カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】シュ,ドンシュ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ペンチェン パトリック
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065CA44
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC11
4C076CC41
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4C084AA13
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA65
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4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZA42
4C084ZA45
4C084ZA81
4C084ZB21
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA65
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA81
4C086ZB21
(57)【要約】
アンギオテンシノゲン(AGT)タンパク質発現を阻害する組成物及び方法が提供される。具体的には、AGT遺伝子発現を低減するため、且つAGT関連疾患及び障害を治療するために使用することができる組成物及び方法が提供される。細胞及び対象におけるAGT発現を低減するために使用することができるAGT dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド剤、AGT dsRNA剤を含有する組成物、並びにAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を含有する組成物が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンギオテンシノゲン(AGT)の発現を阻害する二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤であって、前記dsRNA剤がセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、前記アンチセンス鎖におけるヌクレオチド2~18位が、AGT RNA転写物に対して相補性の領域を含み
、前記相補性の領域が、表1~4の1つに示すアンチセンス配列の1つと、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なる少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含み、任意に標的化リガンドを含む、dsRNA剤。
【請求項2】
前記AGT RNA転写物に対する相補性の領域が、表1~4の1つに示すアンチセンス配列の1つと、3個以下のヌクレオチドが異なる少なくとも15、16、17、18、又は19個の隣接ヌクレオチドを含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項3】
前記dsRNAの前記アンチセンス鎖が、配列番号519のいずれかの標的領域と少なくとも実質的に相補的であり、且つ表1~4のいずれか1つに提供される、請求項1又は2に記載のdsRNA剤。
【請求項4】
前記dsRNAの前記アンチセンス鎖が、配列番号519のいずれかの標的領域と少なくとも完全に相補的であり、且つ表1~4のいずれか1つに提供される、請求項3に記載のdsRNA剤。
【請求項5】
前記dsRNA剤が、表1~4のいずれか1つに記載のセンス鎖配列を含み、前記センス鎖配列が、前記dsRNA剤における前記アンチセンス鎖配列に対して少なくとも実質的に相補的である、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項6】
前記dsRNA剤が、表1~4のいずれか1つに記載のセンス鎖配列を含み、前記センス鎖配列が、前記dsRNA剤における前記アンチセンス鎖配列に対して完全に相補的である、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項7】
表1~4のいずれか1つに記載のアンチセンス鎖配列を含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項8】
表1~4のいずれか1つに二重鎖配列として示す配列を含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項9】
少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項10】
前記アンチセンス鎖におけるすべての、又は実質的にすべてのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項11】
前記少なくとも1つの修飾ヌクレオチドが:2’-O-メチルヌクレオチド、2’-フルオロヌクレオチド、2’-デオキシヌクレオチド、2’,3’-セコヌクレオチドミミック、ロック(locked)ヌクレオチド、アンロック核酸(UNA)ヌクレオチド、グリコール核酸(GNA)ヌクレオチド、2’-F-アラビノヌクレオチド、2’-メトキシエチルヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、リビトール、逆位ヌクレオチド、逆位脱塩基ヌクレオチド、逆位2’-OMeヌクレオチド、逆位2’-デオキシヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、2’-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド及び3’-OMeヌクレオチド、5’-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、又はコレステロール誘導体若しくはドデカン酸ビスデシルアミド基に連結された末端ヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、ホスホロアミダート、又は非天然塩基含有ヌクレオチドを含む、請求項5又は6に記載のdsRNA剤。
【請求項12】
E-ビニルホスホネートヌクレオチドが、ガイド鎖の5’末端に含まれる、請求項9又は10に記載のdsRNA剤。
【請求項13】
少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項14】
前記センス鎖が、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項15】
前記アンチセンス鎖が、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項16】
前記センス鎖が、1、2、3、4、5、又は6個のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項17】
前記アンチセンス鎖が、1、2、3、4、5、又は6個のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項18】
前記センス及びアンチセンス鎖のすべての、又は実質的にすべてのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項19】
前記修飾センス鎖が、表2~4の1つに示す修飾センス鎖配列である、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項20】
前記修飾アンチセンス鎖が、表2~4の1つに示す修飾アンチセンス鎖配列である、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項21】
前記センス鎖が、前記アンチセンス鎖に対して相補的又は実質的に相補的であり、且つ前記相補性の領域が、16~23ヌクレオチドの長さである、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項22】
前記相補性の領域が、19~21ヌクレオチドの長さである、請求項21に記載のdsRNA剤。
【請求項23】
各鎖が、30ヌクレオチド以下の長さである、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項24】
各鎖が、25ヌクレオチド以下の長さである、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項25】
各鎖が、23ヌクレオチド以下の長さである、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項26】
少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み、且つ1つ若しくは複数の標的化基又は連結基をさらに含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項27】
前記1つ若しくは複数の標的化基又は連結基が、前記センス鎖にコンジュゲートされる、請求項26に記載のdsRNA剤。
【請求項28】
前記標的化基又は連結基がN-アセチル-ガラクトサミン(GalNAc)を含む、請求項26又は27に記載のdsRNA剤。
【請求項29】
各標的化基が以下の構造:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
を有する、請求項26又は27に記載のdsRNA剤。
【請求項30】
前記センス鎖の5’末端にコンジュゲートされた標的化基を含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項31】
前記センス鎖の3’末端にコンジュゲートされた標的化基を含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項32】
前記アンチセンス鎖が、前記3’末端に逆位脱塩基残基を含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項33】
前記センス鎖が、前記3’又は/及び5’末端に1つ又は2つの逆位脱塩基残基を含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項34】
2つの平滑末端を含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項35】
少なくとも1つの鎖が少なくとも1ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項36】
少なくとも1つの鎖が少なくとも2ヌクレオチドの3’オーバーハングを含む、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項37】
請求項1から36のいずれか一項に記載のdsRNA剤を含む、組成物。
【請求項38】
薬剤として許容される担体をさらに含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
1種又は複数種の追加の治療薬をさらに含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
キット、容器、パック、ディスペンサー、プレフィルドシリンジ又はバイアルにパッケージされる、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
皮下投与用に製剤化される、又は静脈内(IV)投与用に製剤化される、請求項37に記載の組成物。
【請求項42】
請求項1から36のいずれか一項に記載のdsRNA剤を含む、細胞。
【請求項43】
哺乳動物細胞、任意にヒト細胞である、請求項42に記載の細胞。
【請求項44】
(i)請求項1から36のいずれか一項に記載の二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤又は請求項37から41のいずれか一項に記載の組成物を、有効量で含む細胞を調製することを含む、細胞におけるAGT遺伝子発現を阻害する方法。
【請求項45】
(ii)請求項44に記載の(i)で調製された細胞を、前記AGT遺伝子のmRNA転写物の分解を得るのに十分な時間維持し、それによって前記細胞における前記AGT遺伝子の発現が阻害されることをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記細胞が対象中にあり、且つ前記dsRNA剤が、前記対象に皮下投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞が対象中にあり、且つ前記dsRNA剤が、前記対象にIV投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記対象に前記dsRNA剤を投与した後に、前記AGT遺伝子の阻害を評価することをさらに含む方法であって、
(i)前記対象における前記AGT関連疾患又は病状の1つ又は複数の生理学的特徴を決定すること、及び
(ii)前記AGT関連疾患若しくは病状のベースラインの治療前生理学的特徴及び/又は前記AGT関連疾患若しくは病状の対照の生理学的特徴に対して、決定された生理学的特徴を比較すること、を含み、
前記比較から、前記対象における前記AGT遺伝子の発現の阻害の有無の1つ又は複数が示される、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
前記生理学的特徴が、本態性高血圧、二次性高血圧、高血圧緊急症(悪性高血圧症及び加速型高血圧など)、急性高血圧症、妊娠関連性高血圧症、及び治療抵抗性高血圧を含む高血圧症である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
対象の血圧の減少が、前記対象におけるAGT遺伝子発現の減少を示す、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
対象におけるAGT遺伝子発現を阻害する方法であって、請求項1から36のいずれか一項に記載の二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤又は請求項37から41のいずれか一項に記載の組成物を有効量で前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項52】
前記dsRNA剤が、前記対象に皮下投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記dsRNA剤が、前記対象にIV投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記対象に前記dsRNA剤を投与した後に、前記AGT遺伝子の阻害を評価することをさらに含む方法であって、
(i)前記対象における前記AGT関連疾患又は病状の1つ又は複数の生理学的特徴を決定すること、及び
(ii)前記AGT関連疾患若しくは病状のベースラインの治療前生理学的特徴及び/又は前記AGT関連疾患若しくは病状の対照の生理学的特徴に対して、決定された生理学的特徴を比較すること、を含み、
前記比較から、前記対象における前記AGT遺伝子の発現の阻害の有無の1つ又は複数が示される、請求項51から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記生理学的特徴が、本態性高血圧、二次性高血圧、高血圧緊急症(悪性高血圧症及び加速型高血圧など)、急性高血圧症、妊娠関連性高血圧症、及び治療抵抗性高血圧を含む高血圧症である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
対象の血圧の減少が、前記対象におけるAGT遺伝子発現の減少を示す、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
AGTタンパク質と関連する疾患又は病状を治療する方法であって、AGT遺伝子発現を阻害するために、請求項1から36のいずれか一項に記載の二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤、又は請求項37から41のいずれか一項に記載の組成物を有効量で前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項58】
前記疾患又は病状が、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の活性化によって起こる、又はそれと関連する、或いはRAASの活性化に応じたその症状若しくは進行であり、前記疾患又は病状が、限定されないが、以下の高血圧疾患、高血圧症、境界型高血圧、本態性高血圧、二次性高血圧、孤立性高血圧症、収縮期又は拡張期高血圧、妊娠関連性高血圧症、糖尿病性高血圧症、治療抵抗性高血圧、難治性高血圧、発作性高血圧、腎血管性高血圧症、ゴールドブラット高血圧症、高眼圧、緑内障、肺高血圧症、門脈圧亢進、全身性静脈性高血圧、収縮期高血圧、不安定性高血圧症、高血圧性心疾患、高血圧性腎症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、血管症、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、糸球体硬化症、大動脈狭窄、大動脈瘤、心室繊維化、心不全、心筋梗塞、アンギナ、脳卒中、腎疾患、腎不全、全身性硬化症、子宮内発育遅延(IUGR)、及び胎児発育遅延のうちの1つ又は複数を含む、高血圧症と通常関連する、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記対象に追加の治療レジメンをさらに施すことを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記追加の治療レジメンが、本発明の1種又は複数種のAGTアンチセンスポリヌクレオチドを前記対象に投与すること、非AGT dsRNA治療薬を投与すること、及び行動修飾を前記対象に行うこと、を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記非AGT dsRNA治療薬は、以下の:追加の治療薬、例えば利尿剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、β遮断薬、血管拡張薬、カルシウムチャネルブロッカー、アルドステロンアンタゴニスト、α-2アゴニスト、レニン阻害剤、α遮断薬、末梢作用性アドレナリン作動薬、選択的D1受容体部分アゴニスト、非選択的α-アドレナリン拮抗薬、合成ステロイド性抗鉱質コルチコイド、又は上述のいずれかの組合せ、及び作用剤の組み合わせへとして製剤化される高血圧症の治療薬のうちの1つ又は複数である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記dsRNA剤が、前記対象に皮下投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記dsRNA剤が、前記対象にIV投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項64】
前記対象における前記の投与された二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤の有効性を決定することをさらに含む、請求項57から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記対象における治療の有効性を決定する方法が:
(i)前記対象における前記AGT関連疾患又は病状の1つ又は複数の生理学的特徴を決定すること、及び
(ii)前記AGT関連疾患又は病状のベースラインの治療前生理学的特徴に対して、決定された生理学的特徴を比較すること、を含み、
前記比較から、前記対象に投与された二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤の有効性の有無、及びレベルのうちの1つ又は複数が示される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
決定された前記生理学的特徴が、本態性高血圧、二次性高血圧、高血圧緊急症(悪性高血圧症及び加速型高血圧など)、急性高血圧症、妊娠関連性高血圧症、及び治療抵抗性高血圧を含む高血圧症である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
対象の血圧の減少が、前記対象への前記二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤の投与の有効性の存在を示す、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
対象におけるAGTタンパク質のレベルを、前記対象におけるAGTタンパク質のベースラインの治療前レベルと比較して低減する方法であって、AGT遺伝子発現のレベルを低減するために、請求項1から36のいずれか一項に記載の二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤、又は請求項37から41のいずれか一項に記載の組成物を有効量で前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項69】
前記dsRNA剤が、前記対象に皮下又はIV投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
対象におけるAGT関連疾患又は病状の生理学的特徴を、前記対象におけるAGT関連疾患又は病状のベースラインの治療前生理学的特徴と比較して改変する方法であって、前記対象におけるAGT関連疾患又は病状の前記生理学的特徴を変化させるために、請求項1から36のいずれか一項に記載の二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤、又は請求項37から41のいずれか一項に記載の組成物を有効量で前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項71】
前記dsRNA剤が、前記対象に皮下又はIV投与される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記生理学的特徴が、本態性高血圧、二次性高血圧、高血圧緊急症(悪性高血圧症及び加速型高血圧など)、急性高血圧症、妊娠関連性高血圧症、及び治療抵抗性高血圧を含む高血圧症である、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
式(A):5’-Z
1AGCUUGUUUGUGAAACZ
2-3’と0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なるセンス鎖を含み、式中、Z
1が、0~15ヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列であり、且つZ
2が、A、U、C、Gの1つから選択されるか、又は存在しない、請求項1に記載のdsRNA剤。
【請求項74】
式(B):5’-Z
3GUUUCACAAACAAGCUZ
4-3’と、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なるアンチセンス鎖を含み、式中、Z
3が、A、U、C、Gの1つから選択されるか、又は存在せず、且つZ
4が、0~15ヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列である、請求項1に記載のdsRNA剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一部は、アンギオテンシノゲン(AGT)タンパク質の発現の阻害に有用な組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)は、血圧調節に重要な役割を果たす。RAASカスケードは、腎臓の傍糸球体細胞による循環へのレニンの分泌で開始する。レニン分泌は、遠位尿細管におけるNa+ローディング、β交感神経刺激及び/又は腎臓血流の低下など、いくつかの因子によって刺激される。血漿中の活性レニンは、アンギオテンシノゲン(肝臓によって産生される)をアンギオテンシンIへと分解し、続いて循環し、且つ局所的に発現されたアンギオテンシン変換酵素(ACE)によって、アンギオテンシンIIへと変換される。RAASに対するアンギオテンシンIIの作用の大部分は、アンギオテンシンII型1受容体(AT1R)へのその結合により発揮され、Na+再吸収又は糸球体濾過量の調節の向上など、動脈血管収縮、尿細管及び糸球体作用が生じる。さらに、他の刺激(副腎皮質刺激ホルモン、抗利尿ホルモン、カテコールアミン、エンドセリン、及びセロトニンなど)、並びにMg2+及びK+レベルと共に、AT1R刺激がアルドステロンの放出を導き、続いて遠位尿細管におけるNa+及びK+の排出が促進される。
【0003】
例えば、過剰なアンギオテンシンII産生及び/又はAT1R刺激を生じる結果となるRAASの調節不全は、高血圧の原因となり、例えば心臓、腎臓、及び動脈における酸化ストレスの増加、炎症の促進、肥大化を引き起こし、例えば、左心室繊維化、動脈リモデリング、及び糸球体硬化も引き起こし得る。
【0004】
高血圧症は、成人母集団の20~50%が罹患している、先進国における最も蔓延している、管理しやすい疾患である。高血圧症は、余命の短縮、慢性腎臓疾患、脳卒中、心筋梗塞、心不全、動脈瘤(例えば、大動脈瘤)、末梢血管疾患、心外傷(例えば、心拡大又は肥大)及び他の心血管関連疾患、障害及び/又は病状(condition)など、様々な疾患、障害、及び病状の主要な危険因子である。さらに、高血圧症は、心血管罹患率及び死亡率の重要な危険因子であることが判明しており、すべての脳卒中の62%、及びすべての心疾患の49%を占める、又は構成する。2017年に、高血圧症の診断、予防、及び治療のガイドラインが変更され、高血圧関連疾患及び障害のリスクをさらに低減するために、さらに低い血圧目標が提供された(例えば、Reboussin et al.,Systematic Review for the 2017ACC/AHA/AAPA/ABC/ACPM/AGS/APhA/ASH/ASPC/NMA/PCNA Guideline for the Prevention,Detection,Evaluation,and Management of High Blood Pressure in Adults:A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines.J Am Coll Cardiol.2017 Nov7.pii:S0735-1097(17)41517-8.doi:10.1016/j.jacc.2017.11.004;及びWhelton et al.(2017ACC/AHA/AAPA/ABC/ACPM/AGS/APhA/ASH/ASPC/NMA/PCNA Guideline for the Prevention,Detection,Evaluation,and Management of High Blood Pressure in Adults:A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines.J Am Coll Cardiol.2017 Nov7.pii:S0735-1097(17)41519-1.doi:10.1016/j.jacc.2017.11.006参照)。
【0005】
高血圧を治療するのに利用可能な抗高血圧薬が多数あるにもかかわらず、対象の3分の2を超える人数において、症状を1種類の抗高血圧薬によってコントロールすることができず、異なる薬物のクラスから選択される2種類以上の抗高血圧薬が必要とされている。このためさらに、服薬コンプライアンスの低下、及び多量の薬物使用で経験する副作用の増加が原因で、血圧がコントロールされる対象の数が減少する。
【0006】
したがって、高血圧症及び他のアンギオテンシノゲン関連疾患の治療の代替及び併用療法が、当技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様に従って、アンギオテンシノゲン(AGT)発現を阻害する二本鎖リボ核酸(dsRNA)薬剤が提供され、前記dsRNA剤は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖におけるヌクレオチド2~18位は、AGT RNA転写物に対して相補性の領域を含み、その相補性の領域は、表1~4に示すアンチセンス配列の1つと0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なる少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含み、任意に標的化リガンドを含む。一部の実施形態において、AGT RNA転写物に対して相補性の領域は、表1~4に示すアンチセンス配列の1つと、3ヌクレオチド以下が異なる少なくとも15、16、17、18、又は19個の隣接ヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、dsRNAのアンチセンス鎖は、配列番号519のいずれかの標的領域と少なくとも実質的に相補的であり、且つ表1~4のうちの1つに提供される。一部の実施形態において、dsRNAのアンチセンス鎖は、配列番号519のいずれかの標的領域と完全に相補的であり、且つ表1~4のうちの1つに提供される。一部の実施形態において、dsRNA剤は、表1~4に示すセンス鎖配列のいずれか1つを含み、センス鎖配列は、dsRNA剤におけるアンチセンス鎖配列と少なくとも実質的に相補的である。特定の実施形態において、dsRNA剤は、表1~4に示すセンス鎖配列のいずれかを含み、そのセンス鎖配列は、dsRNA剤におけるアンチセンス鎖配列と完全に相補的である。一部の実施形態において、dsRNA剤は、表1~4に示すセンス鎖配列のいずれかを含む。一部の実施形態において、dsRNA剤は、表1~4に二重鎖配列として示す配列のいずれかを含む。
【0008】
一部の実施形態において、dsRNA剤は、式(A):5’-Z1AGCUUGUUUGUGAAACZ2-3’と0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なるセンス鎖を含み、式中、Z1は、0~15個のヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列であり、且つZ2は、A、U、C、Gの1つから選択されるか、又は存在しない。特定の実施形態において、Z1は、1~4個のヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列である。特定の実施形態において、Z1は、1、2、3、又は4個のヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列である。特定の実施形態において、Z2はAである。特定の実施形態において、Z1は、CACC又はGACCモチーフを含むヌクレオチド配列である。特定の実施形態において、Z1ヌクレオチド配列は、以下のモチーフ:C、AC、UC、GC、CC、ACC、UCC、GCC、CCC、GACC、AACC、UACC、CACC、CGACC、CCGACC、ACCGACC、AACCGACC、CAACCGACC、CCAACCGACC、UCCAACCGACC、UUCCAACCGACC、AUUCCAACCGACC、AAUUCCAACCGACC又はGAAUUCCAACCGACCのうちの1つから選択される。一部の実施形態において、dsRNA剤は、式(B):5’-Z3GUUUCACAAACAAGCUZ4-3’と、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なるアンチセンス鎖を含み、上記式中、Z3は、A、U、C、Gのうちの1つから選択されるか、又は存在せず、且つZ4は、0~15個のヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列である。特定の実施形態において、Z4は、1~4個のヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列である。特定の実施形態において、Z4は、1、2、3、又は4個のヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列である。特定の実施形態において、Z3はUである。特定の実施形態において、Z4ヌクレオチド配列は、GGUC又はGGUGモチーフを含むヌクレオチド配列から選択される。特定の実施形態において、Z4ヌクレオチド配列は、以下のモチーフ:G、GU、GC、GA、GG、GGU、GGA、GGC、GGG、GGUG、GGUC、GGUU、GGUA、GGUCG、GGUCGG、GGUCGGU、GGUCGGUU、GGUCGGUUG、GGUCGGUUGG、GGUCGGUUGGA、GGUCGGUUGGAA、GGUCGGUUGGAAU、GGUCGGUUGGAAUU又はGGUCGGUUGGAAUUCのうちの1つから選択される。一部の実施形態において、dsRNA剤はセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、そのセンス鎖及びアンチセンス鎖はそれぞれ、本明細書に記載の式(A)及び式(B)と、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含み、任意に標的化リガンドを含む。特定の実施形態において、dsRNA剤のセンス鎖(A)及びアンチセンス鎖(B)はそれぞれ、35個以下のヌクレオチドの長さである。特定の実施形態において、Z1及びZ4ヌクレオチドモチーフは完全に、又は部分的に相補的である。一部の実施形態において、dsRNA剤は、式(A’):5’-Z1’CAGCUUGUUUGUGAAACA-3’と0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なるセンス鎖を含み、且つ式(B’):5’-UGUUUCACAAACAAGCUGZ4’-3’と0、1、2又は3ヌクレオチドが異なるアンチセンス鎖を含み、式中、Z1’及びZ4’はそれぞれ独立して、ヌクレオチドモチーフ0~13ヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、Z1’及びZ4’はそれぞれ独立して、ヌクレオチドモチーフ1、2、又は3ヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、Z1’ヌクレオチド配列は、以下のモチーフ:A、U、G、C、AC、UC、GC、CC、GAC、AAC、UAC、CAC、CGAC、CCGAC、ACCGAC、AACCGAC、CAACCGAC又はGAAUUCCAACCGACのうちの1つから選択される。Z4’ヌクレオチド配列は、以下のモチーフ:U、C、A、G、GU、GA、GC、GG、GUG、GUC、GUU、GUA、GUCG、GUCGG、GUCGGU、GUCGGUU、GUCGGUUG又はGUCGGUUGGAAUUCのうちの1つから選択される。
【0009】
一部の実施形態において、dsRNA剤はセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は、以下に示すアンチセンス配列
5’-UACUCAUUAGAAGAAAGGUG-3’(配列番号162);
5’-UCUUAGACCAAGGAGAAACGG-3’(配列番号163);
5’-UGUUUCACAAACAAGCUGGUC-3’(配列番号167);
5’-UGUUUCACAAACAAGCUGGUG-3’(配列番号523);
5’-UUCGGUUGGAAUUCUUUUUGC-3’(配列番号184);
5’-GUUUCACAAACAAGCUGG-3’(配列番号653);
のうちの1つと、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含む。
【0010】
一部の実施形態において、dsRNA剤はセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、そのそれぞれが以下に示すヌクレオチド配列:
センス鎖:5’-CACCUUUUCUUCUAAUGAGUA-3’(配列番号65)、
アンチセンス鎖:5’-UACUCAUUAGAAGAAAAGGUG-3’(配列番号162)
のうちの1つと、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含む。
【0011】
一部の実施形態において、dsRNA剤はセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、そのそれぞれが以下に示すヌクレオチド配列:
センス鎖:5’-CCGUUUCUCCUUGGUCUAAGA-3’(配列番号66)、
アンチセンス鎖:5’-UCUUAGACCAAGGAGAAACGG-3’(配列番号163)
のうちの1つと、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含む。
【0012】
一部の実施形態において、dsRNA剤はセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、そのそれぞれが以下に示すヌクレオチド配列:
センス鎖:5’-GACCAGCUUGUUUGUGAAACA-3’(配列番号70)、
アンチセンス鎖:5’-UGUUUCACAAACAAGCUGGUC-3’(配列番号167)
のうちの1つと、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含む。
【0013】
一部の実施形態において、dsRNA剤はセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、そのそれぞれが以下に示すヌクレオチド配列:
センス鎖:5’-CACCAGCUUGUUUGUGAAACA-3’(配列番号:522)
アンチセンス鎖:5’-UGUUUCACAAACAAGCUGGUG-3’(番号:523);
のうちの1つと、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含む。
一部の実施形態において、dsRNA剤はセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、そのそれぞれが以下に示すヌクレオチド配列:
センス鎖:5’-GCAAAAAGAAUUCCAACCGAA-3’(配列番号87)、
アンチセンス鎖:5’-UUCGGUUGGAAUUCUUUUUGC-3’(配列番号184)
のうちの1つと、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含む。
【0014】
一部の実施形態において、dsRNA剤はセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、そのそれぞれが以下に示すヌクレオチド配列:
センス鎖:5’-CCAGCUUGUUUGUGAAAC-3’(配列番号652)、
アンチセンス鎖:5’-GUUUCACAAACAAGCUGG-3’(配列番号653)
のうちの1つと、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含む。
【0015】
一部の実施形態において、dsRNA剤二重鎖は、表1におけるAD00158-19-2、AD00158-19-1、AD00158-3、AD00158-1、AD00158-2、AD00158、AD00159、AD00159-1、AD00159-2、AD00159-19-1、AD00159-19-2、AD00163、AD00163-1、AD00163-2、AD00163-19-1、AD00163-19-2、AD00163-3、AD00300-1、AD00300-19-1及びAD00300-19-2のいずれか1つの二重鎖から選択される。
【0016】
一部の実施形態において、dsRNA剤二重鎖は、表1におけるAV01227、AV01228、AV01229、AV01230、AV01231、AV01232、AV01233、AV01234、AV01235、AV01236、AV01237、AV01238、AV01239、AV01240、AV01241、AV01242、AV01243、AV01244、AV01245、AV01246、AV01247、AV01248、AV01249、AV01250、AV01251、AV01252、AV01253、AV01254、AV01255、AV01256、AV01257又はAV01711のいずれか1つの二重鎖から選択される。
【0017】
一部の実施形態において、dsRNA剤は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、アンチセンス鎖のヌクレオチドのすべて、又は実質的にすべてが修飾ヌクレオチドである。一部の実施形態において、その少なくとも1つの修飾ヌクレオチドとしては、2’-O-メチルヌクレオチド、2’-フルオロヌクレオチド、2’-デオキシヌクレオチド、2’,3’-セコヌクレオチドミミック、ロック(locked)ヌクレオチド、アンロック核酸(UNA)ヌクレオチド、グリコール核酸(GNA)ヌクレオチド、2’-F-アラビノヌクレオチド、2’-メトキシエチルヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、リビトール、逆位ヌクレオチド、逆位脱塩基ヌクレオチド、逆位2’-OMeヌクレオチド、逆位2’-デオキシヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、2’-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド及び3’-OMeヌクレオチド、5’-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、又はコレステロール誘導体若しくはドデカン酸ビスデシルアミド基に連結された末端ヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、ホスホロアミダート若しくは非天然塩基含有ヌクレオチドが挙げられる。
【0018】
一部の実施形態において、これらの二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤は、センス鎖と、標的遺伝子に相当するmRNAの少なくとも一部に相補的であるアンチセンス鎖と、を含み、dsRNA剤は、式(C)によって示されるアンチセンス鎖を有するヌクレオチド配列、及び式(D)によって示されるセンス鎖を有するヌクレオチド配列を含む。
【0019】
アンチセンス鎖は、3’から5’の方向に示される式(C):
3’-(NL)nNM1NLNM2NLNFNLNM3NLNM4NLNM5NM6NLNM7NM8NLNFNL-5’式(C)を含み、且つ
センス鎖は、5’から3’の方向に示される式(D):
5’-(N’L)n’N’LN’LN’LN’N1N’N2N’N3N’N4N’FN’LN’N5N’N6N’LN’LN’LN’LN’LN’LN’L-3’式(D)
を含む。
【0020】
上記式中、NFがそれぞれ、2’-フルオロ-修飾ヌクレオチドを表す。NM1、NM2、NM3、NM4、NM5、NM6、NM7及びNM8は独立して、修飾又は未修飾ヌクレオチドを表す。NM1、NM2、NM3、NM4、NM5、NM6、NM7及びNM8において3個のみ2’-フルオロ-修飾ヌクレオチド、又は1個のみの2’-フルオロ-修飾ヌクレオチドが存在する。NLはそれぞれ独立して、修飾又は未修飾ヌクレオチドを表し、この修飾は2’-フルオロ-修飾ヌクレオチドではない。N’Fはそれぞれ、2’-フルオロ-修飾ヌクレオチドを表す。N’N1、N’N2、N’N3、N’N4、N’N5及びN’N6は独立して、修飾又は未修飾ヌクレオチドを表す。N’N1、N’N2、N’N3、N’N4、N’N5及びN’N6において2’-フルオロ-修飾ヌクレオチドが2つのみ存在する。N’Lはそれぞれ独立して、修飾又は未修飾ヌクレオチドを表し、この修飾は2’-フルオロ-修飾ヌクレオチドではない。n及びn’はそれぞれ独立して、0~7の整数であり得る。
【0021】
特定の実施形態において、dsRNA剤における式(C)によって表されるアンチセンス鎖の2、7、12、14、及び16位(5’末端の最初の対のヌクレオチドからカウントする)のヌクレオチドは、2’-フッ素(fluorine)-修飾ヌクレオチドであり;式(D)によって表されるセンス鎖の9、11及び13位(3’末端の最初の対のヌクレオチドからカウントする)は2’-フルオロ-修飾ヌクレオチドである。特定の実施形態において、式(C)によって表されるアンチセンス鎖のNM2、NM3、NM6位のヌクレオチドは、2’-フルオロ-修飾ヌクレオチドであり、式(D)によって表されるセンス鎖のN’N3、N’N5位のヌクレオチドは2’-フルオロ-修飾ヌクレオチドである。
【0022】
一部の実施形態において、dsRNA剤は、ガイド鎖の5’末端にE-ビニルホスホネートヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、dsRNA剤は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。特定の実施形態において、センス鎖は少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。一部の実施形態において、アンチセンス鎖は少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。一部の実施形態において、センス鎖は1、2、3、4、5、又は6個のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。一部の実施形態において、アンチセンス鎖は1、2、3、4、5、又は6個のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。
【0023】
特定の実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖のすべての、又は実質的にすべてのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである。一部の実施形態において、修飾センス鎖は、表2~4に示す修飾センス鎖配列である。一部の実施形態において、修飾アンチセンス鎖は、表2~4に示す修飾アンチセンス鎖配列である。
【0024】
特定の実施形態において、センス鎖は、アンチセンス鎖に対して相補的又は実質的に相補的であり、相補性の領域は、16~23ヌクレオチドの長さである。一部の実施形態において、相補性の領域は19~21ヌクレオチドの長さである。特定の実施形態において、相補性の領域は、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチドの長さである。
【0025】
一部の実施形態において、各鎖の長さは40ヌクレオチド以下である。一部の実施形態において、各鎖は、30ヌクレオチド以下の長さである。一部の実施形態において、各鎖は25ヌクレオチド以下の長さである。一部の実施形態において、各鎖は23ヌクレオチド以下の長さである。一部の実施形態において、各鎖は4、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30ヌクレオチドの長さである。
【0026】
特定の実施形態において、dsRNA剤は少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み、さらに1つ又は複数の標的化又は連結(linking)基を含む。一部の実施形態において、1つ又は複数の標的化基又は連結基は、センス鎖にコンジュゲートされる。一部の実施形態において、標的化基又は連結基はN-アセチル-ガラクトサミン(GalNAc)を含む。一部の実施形態において、標的化基は以下の構造:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
を有する。
【0027】
特定の実施形態において、dsRNA剤は、センス鎖の5’末端にコンジュゲートされた標的化基を含む。一部の実施形態において、dsRNA剤は、センス鎖の3’末端にコンジュゲートされた標的化基を含む。一部の実施形態において、アンチセンス鎖は、3’末端に逆位脱塩基残基を含む。特定の実施形態において、センス鎖は、3’及び/又は5’末端に1つ又は2つの逆位脱塩基残基を含む。一部の実施形態において、dsRNA剤は2つの平滑末端を有する。一部の実施形態において、少なくとも1つの鎖は、少なくとも1ヌクレオチドの長さである3’オーバーハングを含む。一部の実施形態において、少なくとも1つの鎖は、少なくとも2ヌクレオチドの長さである3’オーバーハングを含む。
【0028】
特定の実施形態において、本発明は、治療において使用されるオープンな核酸(UNA)オリゴマーに関する。アンロック核酸(UNA)は、リボース間のC2’原子とC3’原子との結合が切断されている、RNAの非環式類似体である。UNAの取込みは忍容性がよいことが判明しており、場合によっては、siRNA遺伝子サイレンシングの活性を増強する(Meghan A.et al.Locked vs.unlocked nucleic acids(LNA vs.UNA):contrasting structures work towards common therapeutic goals.Chem.Soc.Rev.,2011、40,5680-5689)。
【0029】
UNAは熱不安定な修飾であり、リボヌクレオチドをUNAで置き換えることによって、塩基対の強度及び二重鎖の安定性が低下する。siRNAアンチセンス鎖のシード領域におけるUNAの戦略的配置は、マイクロRNA(miRNA)によって仲介される遺伝子サイレンシングメカニズムにおけるオフターゲット活性を低減することができる。miRNAは主に、アンチセンスシード領域(末端から2~8位)と、遺伝子抑制の標的mRNAとの塩基対を介して標的遺伝子を認識する。各miRNAは、多数の遺伝子を調節する可能性を有する。RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によってロードされたsiRNAアンチセンス鎖もまた、miRNA仲介メカニズムを介して、意図しない多数の遺伝子を調節できる可能性がある。したがって、siRNAのシード領域に、UNAなどの熱不安定なヌクレオチドを付加することによって、オフターゲット活性を低減することができる(Lam JK,Chow MY,Zhang Y,Leung SW.siRNA Versus miRNA as Therapeutics for Gene Silencing.Mol Ther Nucleic Acids.2015 Sep15;4(9):e252.doi:10.1038/mtna.2015.23.PMID:26372022;PMCID:PMC4877448.)。特に、かかるRNAオリゴヌクレオチド又はRNAオリゴヌクレオチドの複合体は、シード領域に少なくとも1つのUNAヌクレオチドモノマーを含有する(Narendra Vaish et al.Improved specificity of gene silencing by siRNAs containing unlocked nucleobase analog.Nucleic Acids Research,2011,Vol.39,No.5 1823-1832)。
【0030】
本発明の技術的解決策に従って、RNAオリゴヌクレオチド又はRNAオリゴヌクレオチドの複合体にUNAを組込む潜在的な利点としては、限定されないが、以下のことが挙げられる:
1.オフターゲット活性の低減。iRNAシード領域にUNAを付加すると、シード領域の塩基対強度が低減され、それによってミクロ-RNAによって起こる潜在的なオフターゲット活性が減少する。
2.siRNA活性の点でのUNAの良好な寛容(toleration)。場合によっては、UNAは、活性の増加を引き起こし得る。
【0031】
技術的解決策で使用することができる例示的なUNAモノマーとしては、限定されないが:
【化12】
が挙げられる。
【0032】
一部の実施形態において、dsRNA剤は、表2~4における二重鎖AD00158-19-2、AD00158-19-1、AD00158-3、AD00158-1、AD00158-2、AD00158、AD00159、AD00159-1、AD00159-2、AD00159-19-1、AD00159-19-2、AD00163、AD00163-1、AD00163-2、AD00163-19-1、AD00163-19-2、AD00163-3、AD00300-1、AD00300-19-1及びAD00300-19-2のいずれか一つから選択される修飾二重鎖である。
【0033】
一部の実施形態において、dsRNA剤は、表2~4における二重鎖AV01227、AV01228、AV01229、AV01230、AV01231、AV01232、AV01233、AV01234、AV01235、AV01236、AV01237、AV01238、AV01239、AV01240、AV01241、AV01242、AV01243、AV01244、AV01245、AV01246、AV01247、AV01248、AV01249、AV01250、AV01251、AV01252、AV01253、AV01254、AV01255、AV01256及びAV01257のいずれかから選択される修飾二重鎖である。
【0034】
本発明の一態様に従って、本発明の上述のdsRNA剤の態様のいずれかの実施形態を含む組成物が提供される。特定の実施形態において、その組成物はさらに、薬剤として許容される担体を含む。一部の実施形態において、組成物はさらに、1種又は複数種の追加の治療薬を含む。特定の実施形態において、組成物は、キット、容器、パック、ディスペンサー、プレフィルドシリンジ、又はバイアルにパッケージされる。一部の実施形態において、組成物は、皮下又は静脈内(IV)投与用に製剤化される。
【0035】
本発明の別の態様に従って、発明の上述のdsRNA剤の態様のいずれかの実施形態を含む細胞が提供される。一部の実施形態において、その細胞は哺乳動物細胞、任意にヒト細胞である。
【0036】
本発明の別の態様に従って、細胞におけるAGT遺伝子の発現を阻害する方法が提供され、前記方法は:(i)前述のdsRNA剤又は本発明の前述の組成物のいずれかの実施形態を有効量で含む細胞を調製することを含む。特定の実施形態において、その方法はさらに:(ii)AGT遺伝子のmRNA転写物を分解するのに十分な時間、調製細胞を維持し、それによって、細胞におけるAGT遺伝子の発現が阻害されることを含む。一部の実施形態において、細胞は対象における細胞であり、dsRNA剤は、対象に皮下投与される。一部の実施形態において、細胞は対象における細胞であり、dsRNA剤は、対象にIV投与される。特定の実施形態において、その方法はさらに、対象にdsRNA剤を投与した後に、AGT遺伝子の阻害を評価することを含み、この評価の手段は:(i)対象におけるAGT関連疾患又は病状の1つ又は複数の生理学的特徴を決定すること;AGT関連疾患若しくは病状のベースラインの治療前生理学的特徴及び/又はAGT関連疾患若しくは病状の対照の生理学的特徴と、決定された生理学的特徴を比較することであって、その比較が、対象におけるAGT遺伝子の発現の阻害の有無を示すこと;を含む。一部の実施形態において、その決定された生理学的特徴は、血中のAGTのレベルである。一部の実施形態において、決定された生理学的特徴は、収縮期血圧(SBP)、弛緩期血圧(DBP)、及び平均動脈圧(MAPR)などの血圧である。血中のAGTレベル及び/又は血圧の減少は、対象におけるAGT遺伝子発現の減少を意味する。
【0037】
本発明の別の態様に従って、対象におけるAGT遺伝子発現を阻害する方法であって、上記のdsRNA剤態様の実施形態又は上記の組成物の実施形態を有効量で対象に投与することを含む方法が提供される。一部の実施形態において、dsRNA剤は、対象に皮下投与される。特定の実施形態において、dsRNA剤は対象にIV投与される。一部の実施形態において、その方法はさらに、dsRNA剤の投与後に、AGT遺伝子の阻害を評価することを含み、この評価の手段は:(i)対象におけるAGT関連疾患又は病状の1つ又は複数の生理学的特徴を決定すること;(ii)AGT関連疾患若しくは病状のベースラインの治療前生理学的特徴及び/又はAGT関連疾患若しくは病状の対照の生理学的特徴と、決定された生理学的特徴を比較することであって、その比較が、対象におけるAGT遺伝子の発現の阻害の有無を示すこと;を含む。一部の実施形態において、その決定された生理学的特徴は、血中のAGTのレベルであり;一部の実施形態において、決定された生理学的特徴は、収縮期血圧(SBP)、弛緩期血圧(DBP)、及び平均動脈圧(MAPR)などの血圧である。血中のAGTレベル及び/又は血圧の減少は、対象におけるAGT遺伝子発現の減少を意味する。
【0038】
本発明の別の態様に従って、AGTタンパク質と関連する疾患又は病状を治療する方法であって、AGT遺伝子発現を阻害するために、本発明の上記のdsRNA剤の態様のいずれかの実施形態又は本発明の上記の組成物を有効量で対象に投与することを含む方法が提供される。特定の実施形態において、AGT関連障害は:高血圧症、高血圧、境界型高血圧、本態性高血圧、二次性高血圧、孤立性収縮期若しくは又は拡張期高血圧、妊娠関連性高血圧、糖尿病性高血圧、治療抵抗性高血圧、難治性高血圧、発作性高血圧、腎血管性高血圧症、ゴールドブラット高血圧、高眼圧、緑内障、肺高血圧症、門脈圧亢進、全身性静脈性高血圧、収縮期高血圧、不安定性高血圧;高血圧性心疾患、高血圧性腎症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、血管症、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、糸球体硬化症、大動脈狭窄、大動脈瘤、心室繊維化、心不全、心筋梗塞、アンギナ、脳卒中、腎疾患、腎不全、全身性硬化症、子宮内胎児発育遅延(IUGR)、及び胎児発育遅延から選択される。一部の実施形態において、この方法はさらに、対象に追加の治療レジメンを施すことを含む。一部の実施形態において、その追加の治療レジメンは、AGT関連疾患又は病状の治療を含む。特定の実施形態において、追加の治療レジメンは:本発明の1種又は複数種のAGTアンチセンスポリヌクレオチドを対象に投与すること;非AGT dsRNA治療薬を対象に投与すること;及び対象において行動上の変化をもたらすこと;を含む。一部の実施形態において、非AGT dsRNA治療薬は、以下の:追加の治療薬、例えば利尿剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、β遮断薬、血管拡張薬、カルシウムチャネルブロッカー、アルドステロンアンタゴニスト、α2-アゴニスト、レニン阻害剤、α-遮断薬、末梢作用性アドレナリン作動薬、選択的D1受容体部分アゴニスト、非選択的α-アドレナリン拮抗薬、合成ステロイド性抗ミネラルコルチコイド、又は上述のいずれかの組合せ、及び薬剤の組合せとして製剤化された高血圧用の治療薬のうちの1つである。
【0039】
一部の実施形態において、dsRNA剤は対象に皮下投与される。特定の実施形態において、dsRNA剤は対象にIV投与される。一部の実施形態において、その方法はさらに、対象において投与された二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤の有効性を決定することを含む。一部の実施形態において、対象において治療の有効性を決定する手段は:(i)対象における1つ又は複数の生理学的特徴を決定すること;(ii)AGT関連疾患若しくは病状と、決定された生理学的特徴を相関させることであって、その比較が、対象に投与された二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤の有効性の有無、及び有効性のレベルのうちの1つ又は複数を示すこと;を含む。一部の実施形態において、決定されたその生理学的特徴は、血中のAGTのレベルであり;一部の実施形態において、決定された生理学的特徴は、収縮期血圧(SBP)、弛緩期血圧(DBP)、及び平均動脈圧(MAPR)などの血圧である。血中のAGTレベル及び/又は血圧の減少は、対象に投与された二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤の有効性の存在を意味する。
【0040】
本発明の別の態様に従って、対象におけるAGTタンパク質のベースラインの治療前レベルと比較して、対象におけるAGTタンパク質のレベルを低減する方法であって、AGT遺伝子発現のレベルを低減するために、本発明の上記のdsRNA剤態様のいずれかの実施形態又は本発明の上記の組成物のいずれかの実施形態を、有効量で対象に投与することを含む方法が提供される。一部の実施形態において、dsRNA剤は、対象に皮下投与又はIV投与される。
【0041】
本発明の別の態様に従って、対象におけるAGT関連疾患又は病状のベースラインの治療前生理学的特徴と比較して、対象におけるAGT関連疾患又は病状の生理学的特徴を改変する方法が提供され、前記方法が、対象におけるAGT関連疾患又は病状の生理学的特徴を改変するために、本発明の上記のdsRNA剤態様のいずれかの実施形態又は本発明の上記の組成物のいずれかの実施形態を、有効量で対象に投与することを含む。一部の実施形態において、dsRNA剤は、対象に皮下又はIV投与される。特定の実施形態において、生理学的特徴は、血中のAGTのレベルであり;一部の実施形態において、決定された生理学的特徴は、収縮期血圧(SBP)、弛緩期血圧(DBP)、及び平均動脈圧(MAPR)などの血圧である。
【0042】
配列の説明
二重鎖AD00051~AD00122-19-2、AD00163-3、AV01227~AVAV01257及びAV01711を表1に示し、且つそのセンス鎖配列を示す。
【0043】
二重鎖AD00051~AD00122-19-2、AD00163-3、AV01227~AVAV01257及びAV01711を表1に示し、且つ、そのアンチセンス鎖配列を示す。
【0044】
配列番号519はヒトアンギオテンシノゲン(AGT)mRNAである[NCBI参照配列:NM_001384479.1]:
【化13】
【化14】
【0045】
配列番号520はマウスアンギオテンシノゲン(AGT)mRNAである[NCBI参照配列:NM_007428.4]
【化15】
【0046】
配列番号521はカニクイザルアンギオテンシノゲン(AGT)mRNAである[NCBI参照配列:NM_001283634.1]
【化16】
【0047】
表2に示す配列において、化学修飾は、大文字:2’-フルオロ;小文字:2’-OMe;チオリン酸:*として示される。
【0048】
表3に示す配列において、生体内(in vivo)での研究で使用される送達分子は、各センス鎖の3’末端の「GLO-0」によって示される。化学修飾は、大文字:2’-フルオロ;小文字:2’-OMe;チオリン酸:*;アンロック核酸:UNA;と表される(注:AD00052,AD00113-AD00260:UNAなし;AD00282-AD00301:UNAバージョン)。
【0049】
表4に示す配列において、化学修飾は、大文字:2’-フルオロ;小文字:2’-OMe;チオリン酸:*;Invab=逆位脱塩基;と示される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】AD00158-1、AD00158-2、AD00163-1、AD00159-1、及びAD00300-1をそれぞれ2mg/kgで投与した後の、カニクイザルにおける血清AGTタンパク質レベルを示すグラフである。
【
図2】AD00163-3 10mg/kgの投与後の、カニクイザルにおける血清AGTタンパク質レベルを示すグラフである。
【
図3】AD00163-3 10mg/kgの投与後の、カニクイザルにおける血清SBPの変化を示すグラフである。
【
図4】AD00163-3 10mg/kgの投与後の、カニクイザルにおける平均血圧(MBP)を示すグラフである。
【
図5】AD00163-3 10mg/kgの投与後の、カニクイザルにおける弛緩期血圧(DBP)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の一部の実施形態は、限定されないが、二本鎖(ds)RNAi剤などの、アンギオテンシノゲン(AGT)遺伝子の発現を阻害することができるRNAi剤を含む。本発明の一部の実施形態は、AGT RNAi剤を含む組成物、及びその組成物を使用する方法も含む。本明細書に開示のAGT RNAi剤は、肝細胞への送達など、細胞への送達用の送達化合物に取り付けることができる。本発明の医薬組成物は、少なくとも1つのdsAGT剤及び送達化合物を含み得る。本発明の一部の実施形態において、送達化合物はGalNAc含有送達化合物である。細胞に送達されるAGT RNAi剤は、AGT遺伝子の発現を阻害することができ、それによって細胞における遺伝子のAGTタンパク質産生が低減される。本発明のdsRNAi剤を使用して、AGT関連疾患及び病状を治療することができる。かかるdsRNAi剤としては、例えば、表1に示す二重鎖AD00051~AD00122-19-2が挙げられる。一部の実施形態において、好ましいdsRNAi剤としては、例えば、二重鎖AD00158、AD00163、AD00159、AD00290、AD00300、又はAD00122が挙げられる。他の実施形態において、好ましいdsRNAi剤としては、例えば、AD00158-1、AD00158-2、AD00163-1、AD00163-3.AD00159-1又はAD00300-1が挙げられる。一部の他の実施形態において、かかるdsRNAi剤としては、二重鎖AD00158、AD00163、AD00163-3、AD00159、AD00290、AD00300又はAD00122のバリアントなど、二重鎖バリアントが挙げられる。
【0052】
本発明の一部の実施形態において、細胞又は対象におけるAGT発現の低減によって、細胞又は対象それぞれにおいてAGT発現と関連する疾患又は病状が治療される。AGT活性の低減によって治療することができる、疾患及び病状の非制限的な例は、高血圧症、高血圧、境界型高血圧、本態性高血圧、二次性高血圧、孤立性収縮期又は拡張期高血圧、妊娠関連性高血圧、糖尿病性高血圧、治療抵抗性高血圧、難治性高血圧、発作性高血圧、腎血管性高血圧症、ゴールドブラット高血圧、高眼圧、緑内障、肺高血圧症、門脈圧亢進、全身性静脈性高血圧、収縮期高血圧、不安定性高血圧;高血圧性心疾患、高血圧性腎症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、血管症、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、糸球体硬化症、大動脈狭窄、大動脈瘤、心室繊維化、心不全、心筋梗塞、アンギナ、脳卒中、腎疾患、腎不全、全身性硬化症、子宮内発育遅延(IUGR)、及び胎児発育遅延である。
【0053】
AGT遺伝子発現を阻害するAGT一本鎖(ssRNA)及び二本鎖(dsRNA)剤を含む組成物をどのように調製及び使用するか、並びにAGT遺伝子発現によって生じる、又は調節される疾患及び病状を治療するための組成物及び方法が以下に記述される。「RNAi」という用語は当技術分野で公知であり、「siRNA」とも呼ばれ得る。
【0054】
本明細書で使用される、「RNAi」という用語は、RNAを含み、且つRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)経路を介してRNA転写物の標的化された切断を仲介する、作用(agent)剤を意味する。当技術分野で公知のように、RNAi標的領域とは、一次転写産物のRNA処理産物であるメッセンジャーRNA(mRNA)などの、遺伝子転写中に形成されるRNA分子のヌクレオチド配列の隣接部分を意味する。配列の標的部分は、この部分での、又はこの部分付近でのRNAi指向性切断の基質としての役割を果たすのに少なくとも十分に長い。標的配列は8~30ヌクレオチド長さ(含めて)、10~30ヌクレオチド長さ(含めて)、12~25ヌクレオチド長さ(含めて)、15~23ヌクレオチド長さ(含めて)、16~23ヌクレオチド長さ(含めて)、又は18~23ヌクレオチド長さ(含めて)であり得て、各指定範囲内のより短いすべての長さを含む。本発明の一部の実施形態において、標的配列は、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25又は26ヌクレオチド長さである。特定の実施形態において、標的配列は、その間のすべての部分範囲及び整数を含む、9~26ヌクレオチドの長さ(含めて)である。例えば、本発明の特定の実施形態において制限されることを意図しないが、標的配列は、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチド長さであり、且つAGT遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部に対して完全に、又は少なくとも実質的に相補的である。本発明の一部の態様は、1種又は複数種のAGT dsRNA剤と、薬剤として許容される担体と、を含む医薬組成物を含む。本発明の特定の実施形態において、本明細書に記載のAGT RNAiは、AGTタンパク質の発現を阻害する。
【0055】
本明細書において使用される、「dsRNA剤」とは、標的mRNA転写物を分解する、又は標的mRNA転写物の翻訳を阻害することができるRNA又はRNA様(例えば、化学修飾されたRNA)オリゴヌクレオチド分子を含む組成物を意味する。特定の理論に束縛されることは望まないが、本発明のdsRNA剤は、RNA干渉メカニズムを介して作用し得て(つまり、哺乳動物細胞のRNA干渉経路の仕組み(RNA誘導サイレンシング複合体又はRISC)と相互作用することによってRNA干渉を誘導する)、又は代替のメカニズム若しくは経路を介して作用し得る。植物、無脊椎動物及び脊椎動物細胞における遺伝子をサイレンシングする方法は当技術分野でよく知られており(例えばSharp et al.,Genes Dev.2001,15:485;Bernstein,et al.,(2001)Nature409:363;Nykanen、et al.,(2001)Cell 107:309;及びElbashir,et al.,(2001)Genes Dev.15:188)参照)、その開示内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。当技術分野で公知の遺伝子サイレンシング手段は、AGT発現の阻害を達成するために、本明細書において提供される開示内容と併せて使用することができる。
【0056】
本明細書に開示のdsRNA剤は、センス鎖及びアンチセンス鎖からなり、且つ限定されないが:短鎖干渉RNA(siRNA)、RNAi剤、マイクロRNA(miRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)及びダイサー基質が挙げられる。本明細書に記載のdsRNA剤のアンチセンス鎖は、標的化mRNAに対して少なくとも部分的に相補的であり、且つ種々の長さのdsRNA二重鎖を用いて、標的遺伝子発現を阻害することができることは当技術分野で理解されている。例えば、19、20、21、22、及び23塩基対の二重鎖構造を有するdsRNAは、RNA干渉を有効に誘導することが知られている(Elbashiret al.,EMBO 2001、20:6877-6888)。それより短い、又は長いRNA二重鎖構造もまた、RNA干渉の誘導に有効であることも当技術分野で公知である。本発明の特定の実施形態におけるAGT dsRNAは、少なくとも21ヌクレオチドの長さの少なくとも1つの鎖を含み得て、又は二重鎖は、表1~4に示す配列の少なくとも1つに基づく長さから、1、2若しくは3ヌクレオチドを引いた長さ、又はそれ以下の長さを有し得る。表1~4に示すdsRNAと比較して、一方の末端又は両方の末端での4ヌクレオチドの減少もそれぞれ、有効であり得る。本発明の一部の実施形態において、AGT dsRNA剤は、表1~4の1つ又は複数の配列からの少なくとも15、16、17、18、19、20又はそれ以上の隣接ヌクレオチドの部分配列を有し得て、且つ全配列(本明細書において「親」配列とも呼ばれる)を含むdsRNAによって生じる阻害のレベルと、5%、10%、15%、20%、25%、又は30%を超えるレベルでAGT遺伝子発現を阻害するその能力が異なる。
【0057】
本発明の組成物及び方法の特定の実施形態は、組成物中に一本鎖RNAを含み、且つ/又は一本鎖RNAを対象に投与する。例えば、表1~4のいずれかに示すアンチセンス鎖を組成物として、又は組成物内で使用することができ、対象に投与した場合に、対象においてAGTポリペプチド活性及び/又はAGT遺伝子の発現が低減される。表1~4は、アンチセンス及びセンス鎖のコアが、一部のAGT dsRNA剤のベース配列をどのように伸ばすかを示す。本発明の特定の組成物に含有され得て、及び/又は本発明の特定の方法で投与され得る一本鎖アンチセンス分子は、本明細書において「一本鎖アンチセンス剤」又は「アンチセンスポリヌクレオチド剤」と呼ばれる。本発明の特定の組成物に含有され得て、及び/又は本発明の特定の方法で投与され得る一本鎖センス分子は、本明細書において「一本鎖センス剤」又は「センスポリヌクレオチド剤」と呼ばれる。本明細書で使用される、「ベース配列」という用語は、化学修飾又は送達化合物を含まないポリヌクレオチド配列を意味する。例えば、表1に示すセンス鎖は、表3における、それに対応するベース配列に相当し;表3における対応する配列は、それぞれの化学修飾及び送達化合物を示す。本明細書に開示される配列は、割り当てられた識別子であり得る。例えば、一本鎖センス配列は、「センス鎖SS番号」によって同定され得て;一本鎖アンチセンス配列は、「アンチセンス鎖AS番号」によって同定され得て;且つセンス鎖及びアンチセンス鎖を含む二重鎖は、「二重鎖AD番号」によって同定され得る。
【0058】
表1は、センス及びアンチセンス鎖を含み、且つ表1の同じ列にあるセンス及びアンチセンス鎖によって形成される二重鎖の識別番号を提供する。本発明の特定の実施形態において、アンチセンス配列は、その最初の位置に核酸塩基u又は核酸塩基aを含有する。本発明の特定の実施形態において、アンチセンス配列は、その最初の位置に核酸塩基uを含む。本明細書において使用される、「マッチング位置」という用語は、2つの鎖が二重鎖として働く場合に、ある意味では、互いに「対をなす」各鎖における位置を意味する。例えば、21核酸塩基センス鎖及び21核酸塩基アンチセンス鎖において、センス鎖の1位にある核酸塩基は、アンチセンス鎖の21位の核酸塩基との「マッチング位置」にある。23核酸塩基センス鎖及び23核酸塩基アンチセンス鎖における別の非制限的な例において、センス鎖の2位の核酸塩基は、アンチセンス鎖の22位とのマッチング位置にある。18核酸塩基センス鎖及び18核酸塩基アンチセンス鎖における別の非制限的な例において、センス鎖の1位の核酸塩基は、アンチセンス鎖の18位とのマッチング位置にある。センス鎖の4位にある核酸塩基は、アンチセンス鎖の15位にある核酸塩基とのマッチング位置にある。当業者であれば、二重鎖及び対をなす鎖のセンス及びアンチセンス鎖間のマッチング位置をどのように同定するかは理解されよう。
【0059】
表1における最後の欄は、表の同じ列におけるセンス及びアンチセンス配列を含む二重鎖の二重鎖AD番号/AV番号を示す。例えば、表1は、対応するセンス及びアンチセンス鎖配列を含む、「二重鎖AD番号AD00051」と名付けられた二重鎖を開示する。したがって、表1の各列は、同じ列に示すセンス及びアンチセンス配列をそれぞれが含む、本発明の二重鎖を識別し、各二重鎖に対して名付けられた識別子は、欄の列の最後に示される。
【0060】
本発明の方法の一部の実施形態において、表1に記載のポリヌクレオチド配列を含むRNAi剤が対象に投与される。本発明の一部の実施形態において、対象に投与されるRNAi剤は、表1に示すベース配列のうちの少なくとも1つを含み、且つ0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24の配列修飾を含む、二重鎖を包含する。本発明の方法の一部の実施形態において、表1に示すポリヌクレオチド配列のRNAi剤を送達分子に連結することがさらに含まれ、その非制限的な例は、GalNAcを含む送達化合物である。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
表2は、本発明の特定の化学修飾AGT RNAi剤のアンチセンス及びセンス鎖配列を示す。本発明の一部の実施形態において、表2に示すポリヌクレオチド配列を有するRNAi剤が、細胞及び/又は対象に投与される。本発明の一部の実施形態において、表2に記載のポリヌクレオチド配列を有するRNAi剤が対象に投与される。本発明の一部の実施形態において、対象に投与されるRNAi剤は、表2の最初の欄に示す二重鎖を含み、且つ表2における同じ列の第3番目及び6番目の欄にそれぞれ示すセンス及びアンチセンス鎖配列の配列修飾を含む。本発明の一部の実施形態において、表2に示す配列は、対象の細胞及び/又は組織にRNAi剤を送達することができる化合物に連結(本明細書においてコンジュゲートとも呼ばれる)することができる。本発明の特定の実施形態において有用な送達化合物の非制限的な例は、GalNAc含有化合物である。表2において、第1欄は、表1に対応するベース配列の二重鎖AD番号又はAV番号を表す。二重鎖のAD番号によって識別されるベース配列に関して、センス及びアンチセンス鎖に含有されるベース配列が示されるだけでなく、指定の化学修飾もまた表2の同じ列に示される。例えば、表1の第1列は、二重鎖AD番号AD00051として識別される、二重鎖を共に形成する、一本鎖センス及びアンチセンスベース配列を示すのに対して、表2に示す二重鎖AD番号AD00051において二重鎖として、それはAD00051-SS及びAD00051-ASのベース配列を含み、且つ第3欄及び第6欄それぞれに示すセンス及びアンチセンス配列において化学修飾を含有する。表2の第2欄における「センス鎖SS番号」は、同じ列の第3欄に示すセンス配列(修飾を含む)の指定の識別子である。表2の第5欄における「アンチセンス鎖AS番号」は、第6欄に示すアンチセンス配列(修飾を含む)の指定の識別子である。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
表3は、本発明の特定の化学修飾AGT RNAi剤のアンチセンス及びセンス鎖配列を示す。本発明の一部の実施形態において、表3に示すRNAi剤が細胞及び/又は対象に投与される。本発明の一部の実施形態において、表3に記載のポリヌクレオチド配列を有するRNAi剤が対象に投与される。本発明の一部の実施形態において、対象に投与されるRNAi剤は、表3の第1欄において識別される二重鎖を含み、且つ表3の同じ列の第3欄及び第6欄それぞれのセンス及びアンチセンス鎖配列で示される配列修飾及び/又は送達化合物を含む。その配列は、本明細書において他に記載の特定の生体内(in vivo)試験研究で使用された。本発明の一部の実施形態において、表3に示す配列は、送達のための化合物に連結(本明細書においてコンジュゲートとも呼ばれる)することができ、その化合物の非制限的な例は、GalNAc含有化合物であり、つまり「GLX-n」と識別される送達化合物が、表3の第3欄におけるセンス鎖上に存在する。本明細書で使用される、「GLX」は、「GLS」又は「GLO」送達化合物(「X」は「S」又は「O」であることができる)を意味するために使用され、GLX-nは、合成プロセス中に本発明のオリゴヌクレオチドの3’又は5末端に連結することができる、いずれかのGLS及びGLOであり得る。非制限的な例として、GLX-13及びGLX-14は、合成プロセス中に本発明のオリゴヌクレオチドの3’末端に連結することができ、GLX-5及びGLX-15は、合成プロセス中に本発明のオリゴヌクレオチドの5’末端に連結することができる。一部の実施形態において、本明細書で使用され、且つ表3に示される、「GLX-n」は、結合されたGalNAc含有化合物を表すために使用され、且つ化合物GLS-1、GLS-2、GLS-3、GLS-4、GLS-5、GLS-6、GLS-7、GLS-8、GLS-9、GLS-10、GLS-11、GLS-12、GLS-13、GLS-14、GLS-15、GLS-16、GLO-1.GLO-2、GLO-3、GLO-4、GLO-5、GLO-6、GLO-7、GLO-8、GLO-9、GLO-10、GLO-11、GLO-12、GLO-13、GLO-14、GLO-15及びGLO-16のいずれかである。一部の実施において、限定されないが、そのすべてが本明細書に記載されている、Jayaprakash,et al.,(2014)J.Am.Chem.Soc.,136,16958に開示のライゲーションに有用なGalNAc含有など、GLO-0は、ライゲーションに使用可能として先行技術で開示されているGalNAc含有化合物を表す。一部の実施において、当業者は、限定されないが:GLS-1、GLS-2、GLS-3、GLS-4、GLS-5と、GLS-6、GLS-7、GLS-8、GLS-9、GLS-10、GLS-11、GLS-12、GLS-13、GLS-14、GLS-15、GLS-16、GLO-1、GLO-2、GLO-3、GLO-4、GLO-5、GLO-6、GLO-7、GLO-8、GLO-9、GLO-10、GLO-11、GLO-12、GLO-13、GLO-14、GLO-15及びGLO-16のうちの1つと、を含む結合された送達化合物と共に、本発明のdsRNA化合物を調製し、使用することができるだろう。これらのそれぞれの構造が本明細書の他の箇所で提供される。表3の第1欄は、表のその列におけるセンス及びアンチセンス配列に割り当てられた二重鎖の二重鎖AD番号を提供する。例えば、二重鎖AD番号AD00052は、センス鎖AD00052-SS及びアンチセンス鎖AD00052-ASで構成される二重鎖である。表3の各列は、1つのセンス鎖及び1つのアンチセンス鎖を提供し、示されるセンス鎖及びアンチセンス鎖によって構成される二重鎖を開示する。表3の第2欄における「センス鎖SS番号」は、同じ列の第3欄に示すセンス配列(修飾を含む)に対する指定の識別子である。表3の第5欄における「アンチセンス鎖AS番号」は、第6欄に示すアンチセンス配列(修飾を含む)に対する指定の識別子である。特定の連結GalNAc含有GLO化合物の識別子はGLO-0と示され、且つGLO-n又はGLS-n化合物のもう1つが、GLO-0と示される化合物の代わりに置換され得ること、且つ得られる化合物はまた、本発明の方法及び/又は組成物の実施形態に包含されることを理解されたい。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
表4は、本発明の特定の化学修飾AGT RNAi剤のアンチセンス及びセンス鎖配列を示す。本発明の一部の実施形態において、表4に示すポリヌクレオチド配列を有するRNAi剤が対象に投与される。本発明の一部の実施形態において、対象に投与されるRNAi剤は、表4の第1欄の列で識別される二重鎖を含み、且つ表4の第3及び第6欄における同じ列のセンス及びアンチセンス鎖配列で示される配列修飾及び/又は送達化合物を含む。本発明の一部の実施形態において、表4に示す配列は、RNAi剤を、対象の細胞及び/又は組織に送達することができる化合物に連結することができる。本発明の特定の実施形態において有用な送達化合物の非制限的な例は、GalNAc含有化合物である。表4において、「GLX-n」という用語は、示されるセンス鎖においてGalNAcを含有する化合物を意味する。例えば、「GLO-0」及び「GLS-5」という用語はそれぞれ、センス鎖に結合された異なるGalNAc含有化合物を表す。GLO-0と示される化合物は、GLO-n又はGLS-n化合物のうちもう1つによって置換され得ること、且つ得られる化合物もまた、本発明の方法及び/又は組成物に包含されることを理解されたい。同様に、GLS-5と示される化合物もまた、GLS-n又はGLO-n化合物のもう1つによって置換され得て、且つ得られる化合物は、本発明の方法及び/又は組成物の実施形態に包含される。表4において、結合されたGalNAC含有化合物を示すために使用される化合物GLX-nは、化合物GLS-1、GLS-2、GLS-3、GLS-4、GLS-5、GLS-6、GLS-7、GLS-8.GLS-9、GLS-10、GLS-11、GLS-12、GLS-13、GLS-14、GLS-15、GLS-16、GLO-1、GLO-2、GLO-3、GLO-4、GLO-5、GLO-6、GLO-7、GLO-8、GLO-9、GLO-10、GLO-11、GLO-12、GLO-13、GLO-14、GLO-15及びGLO-16であり、そのそれぞれの構造は、本明細書における他の箇所で提供される。表4の第1欄は、表3に示す二重鎖に対応する二重鎖AD番号を表す。二重鎖AD番号は、表3に対応する二重鎖配列を識別し、表4におけるセンス、アンチセンス、及び二重鎖配列が、表3における同じ二重鎖AD番号を有するベース配列と同一であるが、表4における配列及び二重鎖は、表3に示す対応する配列及び二重鎖と比較して異なる化学修飾及び/又は送達化合物を有することを示す。例えば、表4に示すように、配列AD00113-1-SS及びAD00113-1-AS及びその二重鎖AD番号AD00113-1はそれぞれ、表3に示すAD00113-SS(センス)、AD00113-AS(アンチセンス)及び二本鎖AD番号AD00113と同じベース配列を有するが、各表に示すように化学修飾及び/又は送達化合物を有する。表4の第1欄は二重鎖AD番号番号を識別し;各列において番号によって識別される二重鎖は、同じ列で第3及び第6欄それぞれに示すセンス及びアンチセンス鎖を含み、且つ修飾を含み、それぞれが、センス鎖の3’又は5’末端に結合されたGLO-又はGLS-送達化合物を有する。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
ミスマッチ
特にミスマッチがdsRNAの末端領域内にある場合に、ミスマッチがdsRNAの効力に耐えることは当業者には知られている。ゆらいだ塩基対G:U及びA:Cを有するミスマッチなど、特定のミスマッチはより良く耐える(Duet al.,A systematic analysis of the silencing effects of an active siRNA at all single-nucleotide mismatched target sites.Nucleic Acids Res.2005 Mar21;33(5):1671-7.Doi:10.1093/nar/gki312.Nucleic Acids Res.2005;33(11):3698)。本発明の方法及び化合物の一部の実施形態において、AGT dsRNA剤は、AGT標的配列に対して1つ又は複数のミスマッチを含有し得る。一部の実施形態において、本発明のAGT dsRNA剤は、ミスマッチを含有しない。特定の実施形態において、本発明のAGT dsRNA剤は、1以下のミスマッチを含有する。一部の実施形態において、本発明のAGT dsRNA剤は、2以下のミスマッチを含有する。特定の実施形態において、本発明のAGT dsRNA剤は、3つ以下のミスマッチを含有する。本発明の一部の実施形態において、AGT dsRNA剤のアンチセンス鎖は、相補性の領域の中央に位置しないAGT標的配列に対してミスマッチを含有する。一部の実施形態において、AGT dsRNA剤のアンチセンス鎖は、相補性の領域の5’又は3’末端の一方又は両方から最後の5、4、3、2又は1ヌクレオチド内に位置する1、2、3、4、又はそれ以上のミスマッチを含有する。AGT標的配列に対するミスマッチを含有するAGT dsRNA剤が、AGT遺伝子の発現の阻害に有効か否かを決定するために、本明細書に記載の方法及び/又は当技術分野で公知の方法を使用することができる。
【0094】
相補性
別段の指定がない限り、本明細書において使用される、「相補性/相補的」という用語は、第2ヌクレオチド配列(例えば、AGT dsRNA剤アンチセンス鎖又は一本鎖アンチセンスポリヌクレオチド)に対する、第1ヌクレオチド配列(例えば、AGT dsRNA剤センス鎖又は標的化AGT mRNA)の関連を説明するために使用される場合、第2ヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、且つ特定の条件下にて二重らせん若しくは二重鎖構造を形成する[哺乳類の生理学的条件(又は生体外での類似の条件)下にて塩基対の間で水素結合を形成する]、第1ヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの能力を意味する。生体において遭遇し得る生理的に関連する条件など、他の条件も当てはまり得る。ハイブリダイズされたヌクレオチドの最終的な適用に基づいて2つの配列の相補性を試験するのに最も適している条件のセットを当業者は決定することができるだろう。相補的配列は、ワトソン・クリック塩基対又は非ワトソン・クリック塩基対を含み、且つ上記のハイブリダイゼーションの必定条件が少なくとも満たされる程度まで、天然若しくは修飾ヌクレオチド又はヌクレオチドミミックを含む。配列同一性又は相補性は修飾に依存しない。
【0095】
例えば、本明細書に記載のAGT dsRNA内の相補的配列は、一方若しくは両方のヌクレオチド配列の長さ全体にわたって、第2ヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドに対して、第1ヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドの塩基対を含む。かかる配列は、互いに「完全に相補的」と本明細書において呼ばれ得る。2つのオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイゼーションすると1つ又は複数の一本鎖オーバーハングを形成するようにデザインされる実施形態において、かかるオーバーハングは、本明細書において相補性に基づいて決定されるミスマッチと考えられない理解すべきである。例えば、長さが19ヌクレオチドである1つのオリゴヌクレオチドと、長さが20ヌクレオチドであるもう一方のオリゴヌクレオチドを含むAGT dsRNA剤であって、長いオリゴヌクレオチドが、短いオリゴヌクレオチドに対して完全に相補的である19ヌクレオチドの配列を含むAGT dsRNA剤は、本明細書に記載の目的のために、「完全に相補的」と呼ばれ得る。したがって、本明細書で使用される「完全に相補的」とは、第1ポリヌクレオチドの隣接配列における塩基すべて(100%)が、第2ポリヌクレオチドの隣接配列における同じ数の塩基とハイブリダイズすることを意味する。隣接配列は、第1又は第2ヌクレオチド配列のすべて又は一部を含み得る。
【0096】
本明細書で使用される、「実質的に相補的」という用語は、核酸塩基配列のハイブリッド対において、第1ポリヌクレオチドの隣接配列における塩基の少なくとも約85%(すべてではない)が、第2ポリヌクレオチドの隣接配列における同じ数の塩基とハイブリダイズすることを意味する。ハイブリダイズされた場合に、2つの配列が1つ又は複数のミスマッチ塩基対、例えば少なくとも1、2、3、4又は5個のミスマッチ塩基対を含有する場合に、「実質的に相補的」という用語は、その最終用途に、例えばRISC経路を介したAGT遺伝子発現の阻害に最も関連する条件下にてハイブリダイズする能力を保持ながら、第2配列に対して第1配列によって形成される15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30塩基対(bp)までの二重鎖に関して使用され得る。「部分的に相補的」という用語は、第1ポリヌクレオチドの隣接配列における塩基の少なくとも75%(すべてではない)が、第2ポリヌクレオチドの隣接配列における同じ数の塩基とハイブリダイズする、核酸塩基配列のハイブリダイズ対を意味するために、本明細書において使用され得る。一部の実施形態において、「部分的に相補的」とは、第1ポリヌクレオチドの隣接配列における塩基の少なくとも76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%が、第2ポリヌクレオチドの隣接配列における同じ数の塩基とハイブリダイズすることを意味する。
【0097】
「相補的」、「完全に相補的」、「実質的に相補的」及び「部分的に相補的」は、AGT dsRNA剤のセンス鎖とアンチセンス鎖との、AGT dsRNA剤のアンチセンス鎖と標的AGT mRNAの配列との、又は一本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドと標的AGT mRNAの配列との、塩基ミスマッチを意味するために使用され得る。「AGT dsRNA剤のアンチセンス鎖」は、「AGTアンチセンスポリヌクレオチド剤」の同じ配列を意味し得ることを理解されたい。
【0098】
本明細書で使用される、核酸配列に言及する場合に、「実質的に同一」又は「実質的な同一性」という用語は、核酸配列が、参照配列に対して少なくとも約85%以上の配列同一性、好ましくは少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。配列同一性のパーセンテージは、比較窓にわたって最適にアライメントされた2つの配列を比較することによって決定される。そのパーセンテージは、同じ核酸塩基が両方の配列に存在する位置の数を決定して、マッチ位置の数を得て、比較窓における位置の総数でマッチ位置の数を割り、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを得ることによって計算される。本明細書に開示の本発明は、本明細書(例えば、表1~5)に開示の配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、そのヌクレオチド配列は、本明細書(例えば、表1~4)に開示の配列と同一、又は少なくとも約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一である。
【0099】
本明細書で使用される、「配列を含む鎖」という用語は、標準的なヌクレオチド命名法を用いて参照される配列によって記述されるヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを意味する。本明細書で使用される、「二本鎖RNA」又は「dsRNA」という用語は、RNA分子、或いは標的AGT RNAに対して「センス」及び「アンチセンス」配向を有すると呼ばれる、逆平行な、及び実質的に若しくは完全に相補的な2つの核酸鎖を含むハイブリダイズされた二重鎖領域を有するRNAi分子の複合体を含む配列を意味する。二重鎖領域は、RISC経路によって標的AGT RNAの特異的な分解を可能にする任意の所望の長さであり得るが、通常、9~30塩基対長さ、例えば15~30塩基対長さである。9~30塩基対の二重鎖を考えると、その二重鎖は、この範囲内の任意の長さ、例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30塩基対、及びその中の部分範囲内、限定されないが、15~30塩基対、15~26塩基対;15~23塩基対、15~22塩基対、15~21塩基対、15~20塩基対、15~19塩基対、15~18塩基対、15~17塩基対、18~30塩基対、18~26塩基対、18~23塩基対、18~22塩基対、18~21塩基対、18~20塩基対、19~30塩基対、19~26塩基対、19~23塩基対、19~22塩基対、19~21塩基対、19~20塩基対、20~30塩基対、20~26塩基対、20~25塩基対、20~24塩基対、20~23塩基対、20~22塩基対、20~21塩基対、21~30塩基対、21~26塩基対、21~25塩基対、21~24塩基対、21~23塩基対、又は21~22塩基対の長さであり得る。ダイサー及び同様な酵素での処理によって細胞において産生されるAGT dsRNA剤は通常、19~22塩基対の範囲の長さである。AGT dsDNA剤の二重鎖領域の1つの鎖は、標的AGT RNAの領域に対して実質的に相補的である配列を含む。二重鎖構造を形成する2つの鎖は、少なくとも1つの自己相補的領域を有する単一RNA分子から生じ得て、又は2つ以上の別のRNA分子から形成され得る。二重鎖領域が単一分子から形成される場合には、分子は、ヌクレオチドの一本鎖の3’末端の一方の鎖と、相当する5’末端の別の鎖との間で形成される二重鎖構造を有する(本明細書において「ヘアピンループ」と呼ばれる)。本発明の一部の実施形態において、ヘアピン立体配置は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれ以上の不対ヌクレオチドを含む。AGT dsRNA剤の実質的に相補的な2つの鎖が、別々のRNA分子からなる場合、これらの分子は共有結合する必要はないが、共有結合し得る。2つの鎖が、ヘアピンループ以外の手段によって共有結合される場合、連結構造は、「リンカー」と呼ばれる。「siRNA」という用語はまた、本明細書に記載のdsRNA剤を意味するため本明細書で使用される。
【0100】
本発明の一部の実施形態において、AGT dsRNA剤は、dsRNA剤の一方の又は両方の端に不対ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を有するセンス及びアンチセンス配列を含み得る。不対ヌクレオチドを含まない末端は、「平滑末端」と呼ばれ、且つヌクレオチドオーバーハングを持たない。dsRNA剤の両方の末端が平滑である場合、dsRNAは、「平滑末端」と言われる。本発明の一部の実施形態において、dsRNA剤の第1末端が平滑である場合、一部の実施形態において、dsRNA剤の第2末端は平滑であり、本発明の特定の実施形態において、AGT dsRNA剤の両方の末端は平滑である。
【0101】
本発明のdsRNA剤の一部の実施形態において、dsRNAには、1つ又は2つの平滑末端がない。この場合には、dsRNA剤の鎖の末端に少なくとも1つの不対ヌクレオチドがある。例えば、dsRNAの一方の鎖の3’末端は、もう一方の鎖の5’末端を超えて伸び、又はその逆も同じである場合、ヌクレオチドオーバーハングが存在する。dsRNAは、少なくとも1、2、3、4、5、6、又はそれ以上のヌクレオチドのオーバーハングを含有し得る。ヌクレオチドオーバーハングは、デオキシヌクレオチド/ヌクレオシドなどの、ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体を含み得る、又はからなり得る。一部の実施形態において、ヌクレオチドオーバーハングはdsRNA剤のセンス鎖上、dsRNA剤のアンチセンス鎖上、又はdsRNA剤の両方の末端にあり、且つオーバーハングのヌクレオチドは、dsRNAのアンチセンス鎖又はセンス鎖のいずれかの5’末端、3’末端若しくは両方の末端に存在し得ることを理解されたい。本発明の特定の実施形態において、オーバーハングにおける1つ又は複数のヌクレオチドは、ヌクレオシドチオリン酸で置き換えられる。
【0102】
本明細書で使用される、「アンチセンス鎖」又は「ガイド鎖」という用語は、AGT標的配列に対して実質的に相補的な領域を含むAGT dsRNA剤の鎖を意味する。本明細書で使用される、「センス鎖」又は「パッセンジャー鎖」という用語は、AGT dsRNA剤のアンチセンス鎖の領域に対して実質的に相補的な領域を含有するAGT dsRNA剤の鎖を意味する。
【0103】
修飾
本発明の一部の実施形態において、AGT RNAi剤のRNAは化学修飾されて、安定性の向上及び/又は1つ若しくは複数の他の有益な特性が得られる。本発明の特定の実施形態における核酸は、当技術分野でよく知られている方法によって合成及び/又は修飾することができ、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、“Current protocols in Nucleic Acid Chemistry”,Beaucage,SL et al.(Eds.),John Wiley & Sons,Inc.,New York,NY,USAを参照のこと。本発明のAGT dsRNA剤の特定の実施形態に存在し得る修飾としては、例えば:(a)末端修飾、例えば5’末端修飾(リン酸化、抱合、逆位結合等)、3’末端修飾(抱合、DNAヌクレオチド、逆位結合等);(b)塩基修飾、例えば安定化塩基、拡大されたパートナープールを有する塩基若しくは塩基ペアリング、欠損塩基(脱塩基ヌクレオチド)若しくはコンジュゲートされた塩基での置換;(c)糖修飾(例えば、2’位又は4’位での)又は糖の置換;及び(d)リン酸ジエステル結合の修飾又は置換などの、主鎖の修飾が挙げられる。本発明のAGT dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド、及びAGTセンスポリヌクレオチドの特定の実施形態において有用なRNA化合物の特異的な例としては、限定されないが、修飾主鎖を含む、又は天然ヌクレオシド間結合を欠くRNAが挙げられる。非制限的な例として、主鎖修飾を有するRNAは、主鎖にリン原子を保有しない。そのヌクレオシド間主鎖にリン原子を持たないRNAは、オリゴヌクレオシドと呼ばれ得る。本発明の特定の実施形態において、修飾RNAは、そのヌクレオシド間主鎖にリン原子を有する。
【0104】
「RNA分子」又は「RNA」又は「リボ核酸分子」という用語は、天然で発現又は見出されるRNA分子だけでなく、本明細書に記載の、又は当技術分野で公知のリボヌクレオチド/分子類似体又は誘導体を含む、RNAの類似体及び誘導体も包含すると理解されたい。「分子」及び「リボヌクレオチド」という用語は、本明細書で区別なく使用され得る。RNA分子は、核酸塩基構造又はリボース-リン酸主鎖構造(例えば、以下に記載される)において修飾され得て、分子類似体又は誘導体を含有する分子は、二重鎖を形成する能力を保持しなければならない。非制限的な例としては、RNA分子はまた、少なくとも1つの修飾分子、例えば、限定されないが、ロックされたヌクレオシド、脱塩基ヌクレオシド、2’-デオキシ-2’-フルオロ修飾ヌクレオシド、2’-アミノ修飾ヌクレオシド、2’-アルキル修飾ヌクレオシド、モルホリノヌクレオシド、ホスホロアミダート又は非天然塩基含有ヌクレオシド、或いはその組み合わせなどを含み得る。本発明の一部の実施形態において、RNA分子は、以下の数の修飾リボヌクレオシド:少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は完全長までの、AGT dsRNA剤分子のリボヌクレオシドを含む。かかるRNA分子における多数の修飾リボヌクレオシドのそれぞれに関して、修飾は同じである必要はない。
【0105】
一部の実施形態において、本発明のdsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド、及び/又はAGTセンスポリヌクレオチドは、1つ若しくは複数の独立して選択される修飾ヌクレオチド及び/又は1つ若しくは複数の独立して選択される非リン酸ジエステル結合を含み得る。本明細書で使用される、修飾ヌクレオチド、非リン酸ジエステル結合等の選択される要素を意味するために使用される場合、「独立して選択される」という用語は、2つ以上の選択される要素が、互いに同一である必要はないが、互いに同一であり得ることを意味する。本明細書で使用される、「ヌクレオチド塩基」、「ヌクレオチド」又は「核酸塩基」とは、すべての核酸の標準構成要素である複素環式ピリミジン又はプリン化合物であり、ヌクレオチドを形成する塩基:アデニン(a)、グアニン(g)、シトシン(c)、チミン(t)及びウラシル(u)を含む。核酸塩基はさらに、それに限定することを意図しないが、ユニバーサル塩基、疎水性塩基、プロミスキャス(promiscuous)な塩基、サイズ拡張塩基、及びフッ素化塩基を含むように修飾され得る。本明細書において「リボヌクレオチド」又は「ヌクレオチド」という用語は、未修飾ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、又は別の部位を意味するために使用され得る。かかる置換部位を保持するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対特性を著しく改変することなく、グアニン、シトシン、アデニン及びウラシルを他の部位によって置換することができることは、当業者は認識されよう。
【0106】
一実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物での使用が企図される修飾RNAは、目的の二重鎖構造を形成し、且つRISC経路を介した標的の特異的な分解を可能にする、又は仲介する能力を有するペプチド核酸(PNA)である。本発明の特定の実施形態において、AGT RNA干渉剤は、標的AGT RNA配列と相互作用して、標的AGT RNAの切断を指示する一本鎖RNAを含む。
【0107】
修飾RNA主鎖は、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル及び他のアルキルホスホネート(3’-アルキレンホスホネート及びキラルホスホネートなど)、ホスフィネート、ホスホロアミダート(3’-アミノホスホロアミダート及びアミノアルキルホスホロアミダートなど)、チオホスホロアミダート、チオアルキルホスホネート、チオアルキルホスホトリエステル、及びボラノホスフェート(通常の3’-5’結合、並びにこれらの2’-5’結合類似体を有し、且つヌクレオシド単位の隣接対が、3’-5’ないし5’-3’又は2’-5’ないし5’-2’形式で連結される、逆極性のものを有する)を含み得る。種々の塩、混合塩及び遊離酸形態も含まれる。リン含有結合を形成する方法は当技術分野において通常、実施されており、かかる方法を用いて、本発明の特定の修飾AGT dsRNA剤、特定の修飾AGTアンチセンスポリヌクレオチド、及び/又は特定の修飾AGTセンスポリヌクレオチドを調製することができる。
【0108】
リン原子を含有しない修飾RNA主鎖は、短鎖アルキル若しくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、混合ヘテロ原子及びアルキル若しくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、又は1種若しくは複数の短鎖ヘテロ原子若しくは複素環式ヌクレオシド間結合で形成された構造を有する。モルホリノ結合(ヌクレオシドの糖部分から一部形成された);シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシド及びスルホン主鎖;メチルアセチル及びチオメチルアセチル主鎖;メチレンメチルアセチル及びチオメチルアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネート及びスルホンアミド主鎖;アミド主鎖;並びに混合N、O、S及びCH2成分を有する他の部分を有するものが挙げられる。リン原子を含有しない修飾RNA主鎖を製造する方法は、当技術分野で通常、実施されており、かかる方法を用いて、本発明の特定の修飾AGT dsRNA剤、特定の修飾AGTアンチセンスポリヌクレオチド、及び/又は特定の修飾AGTセンスポリヌクレオチドを調製することができる。
【0109】
本発明の特定の実施形態において、限定されないが、例えば、ヌクレオチド単位の糖及びヌクレオシド間結合(つまり、主鎖)の代わりに新たな基を用いて、RNAミメティックを、AGT dsRNA、AGTアンチセンスポリヌクレオチド、及び/又はAGTセンスポリヌクレオチドに含ませる。かかる実施形態において、塩基単位は、適切なAGT核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。優れたハイブリダイゼーション特性を有することが分かっている、かかるオリゴマー化合物、RNAミメティックは、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物において、RNAの糖主鎖は、アミド含有主鎖、具体的にはアミノエチルグリシン主鎖によって置換される。核酸塩基は、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子に直接又は間接的に保持及び結合される。RNAミメティックを製造する方法は、当技術分野で通常、実施されており、かかる方法を用いて、本発明の特定の修飾AGT dsRNA剤を製造することができる。
【0110】
本発明の一部の実施形態は、ホスホロチオエート主鎖を有するRNA、及びヘテロ原子主鎖、特に--CH2--NH--CH2-、--CH2--N(CH3)--O--CH2--[メチレン(メチルイミノ)又はMMI主鎖として知られる]、--CH2--O--N(CH3)--CH2--、--CH2--N(CH3)--N(CH3)--CH2--及び--N(CH3)--CH2----[天然ホスホジエステル主鎖は--O--P--O--CH2--と表される]を有するオリゴヌクレオシドを含む。ホスホロチオエート主鎖を有するRNA、及びヘテロ原子主鎖を有するオリゴヌクレオチドを製造する方法は当技術分野で通常、実施されており、かかる方法を用いて、本発明の特定の修飾AGT dsRNA剤、特定のAGTアンチセンスポリヌクレオチド及び/又は特定のAGTセンスポリヌクレオチドを製造することができる。
【0111】
修飾RNAは、1つ又は複数の置換糖部位も含有し得る。本発明のAGT dsRNA、AGTアンチセンスポリヌクレオチド及び/又はAGTセンスポリヌクレオチドは、2’位置に以下の:OH;F;O--、S--、若しくはN-アルキル;O--、S--若しくはN-アルケニル;O-、S-若しくはN-アルキニル;又はO-アルキル-O-アルキル;のうちの1つを含み得て、ここで、アルキル、アルケニル及びアルキニルは、置換若しくは未置換C1~C10アルキル又はC2~C10アルケニル及びアルキニルであり得る。例示的な適切な修飾は:O[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、及びO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2(n及びmは1~約10である)を含む。他の実施形態において、dsRNAは、2’位置に以下の:C1~C10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリール又はO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター(intercalator)、AGT dsRNA剤の薬物動態学的特性を改善するために使用される基、或いはAGT dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド及び/又はAGTセンスポリヌクレオチドの薬力学的特性を改善するために使用される基、及び類似の特性を有する他の基;のうちの1つを含む。一部の実施形態において、修飾は、2’-メトキシエトキシ(2’-O-(2-メトキシエチル)又は2’-MOEとしても知られる2’-O--CH2CH2OCH3)(Martinet al.,Helv.Chim.Acta,1995,78:486-504)、つまりアルコキシ-アルコキシ基を含む。別の例示的な修飾は、2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ、つまり、以下の実施例に記載の2’-DMAOEとしても知られるO(CH2)2ON(CH3)2基、及び2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ(2’-O-ジメチルアミノエトキシエチル又は2’-DMAEOEとしても当技術分野で知られる)、つまり2’-O--CH2-O--CH2--N(CH2)2である。記載のものなど、修飾RNAを製造する方法は、当技術分野で通常、実施されており、かかる方法を用いて、本発明の特定の修飾AGT dsRNA剤を製造することができる。
【0112】
他の修飾としては、2’-メトキシ(2’-OCH3)、2’-アミノプロポキシ(2’-OCH2CH2CH2NH2)及び2’-フルオロ(2’-F)が挙げられる。類似の修飾は、本発明のAGT dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド、AGTセンスポリヌクレオチド及び/又はAGTセンスポリヌクレオチドのRNA上の他の位置、特に、3’末端ヌクレオチド上の糖の3’位置、又は2’-5’連結AGT dsRNA、AGTアンチセンスポリヌクレオチド、若しくはAGTセンスポリヌクレオチドにおける3’位置、及び5’末端ヌクレオチドの5’位置でも加えることができる。AGT dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド、及び/又はAGTセンスポリヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりにシクロブチル部位などの糖ミメティックも有し得る。記述されるものなど、修飾RNAを製造する方法は当技術分野で通常、実施されており、かかる方法を用いて、本発明の特定の修飾AGT dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド、及び/又はAGTセンスポリヌクレオチドを製造することができる。
【0113】
一部の実施形態において、AGT dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド、及び/又はAGTセンスポリヌクレオチドは、核酸塩基(当技術分野で通常、「塩基」と呼ばれる)修飾又は置換を含み得る。本明細書で使用される、「未修飾」又は「天然」核酸塩基としては、プリン塩基アデニン(A)及びグアニン(G)、及びピリミジン塩基チミン(T)、シトシン(C)、及びウラシル(U)が挙げられる。修飾核酸塩基としては、他の合成及び天然核酸塩基、例えば5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニン及びグアニンの6-メチル及び他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル及び他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトサン(thiocytosan)ピリミジン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(偽ウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換ウラシル及びシトシン;7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-アザグアニン及び7-アザアデニン、並びに3-アザグアニン及び3-アザアデニンが挙げられる。本発明のAGT dsRNA剤の特定の実施形態に含まれ得る追加の核酸塩基は、当技術分野で公知であり、例えば:Modified Nucleosides in Biochemistry,Biotechnology and Medicine,Herdewijn,P.Ed.Wiley-VCH2008;The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,pages 858-859,Kroschwitz,J.L,Ed.John Wiley & Sons,1990,English et al.,Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613,Sanghvi,Y S.,Chapter15,dsRNA Research and Applications,pages289-302、及びCrooke,ST and Lebleu,B.,Ed.,CRC Press,1993を参照されたい。本明細書に記載のものなど、核酸塩基修飾及び/又は置換を含む、dsRNA、AGTアンチセンス鎖ポリヌクレオチド、及び/又はAGTセンス鎖ポリヌクレオチドを製造する方法は、当技術分野で通常、実施されており、かかる方法を用いて、本発明の特定の修飾AGT dsRNA剤、AGTセンスポリヌクレオチド及び/又はAGTアンチセンスポリヌクレオチドを製造することができる。
【0114】
本発明のAGT dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド、及び/又はAGTセンスポリヌクレオチドの特定の実施形態は、1つ又は複数のロック核酸(LNA)を含むように修飾されたRNAを含む。ロック核酸は、2’及び4’炭素を連結する追加の架橋を含む修飾リボース部位を有するヌクレオチドである。この構造は、3’末端構造コンフォメーションにおけるリボースを有効に「ロック」する。本発明のAGT dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド及び/又はAGTセンスポリヌクレオチドにロック核酸を付加することによって、血清中の安定性が増加し、且つオフターゲット効果が低減され得る(Elmen,J.etal.,(2005)Nucleic Acids Research 33(1):439-447;Mook,O R.et al.,(2007)Mol Canc Ther6(3):833-843;Grunweller,A.et al.,(2003)Nucleic Acids Research 31(12):3185-3193)。ロック核酸を含む、dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド、及び/又はAGTセンスポリヌクレオチドを製造する方法は、当技術分野で通常、実施されており、かかる方法を用いて、本発明の特定の修飾AGT dsRNA剤を製造することができる。本発明のAGT dsRNA化合物、センスポリヌクレオチド及び/又はアンチセンスポリヌクレオチドの特定の実施形態は、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み、その少なくとも1つの修飾ヌクレオチドは:2’-O-メチルヌクレオチド、2’-フルオロヌクレオチド、2’-デオキシヌクレオチド、2’,3’-セコヌクレオチドミミック、ロックされたヌクレオチド、2’-F-アラビノヌクレオチド、2’-メトキシエチルヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、2’-アルキル修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド及び3’-Omeヌクレオチド、5’-ホスホロチオエート基を含有するヌクレオチド、又はコレステロール誘導体若しくはドデカン酸ビスデシルアミド基に連結された末端ヌクレオチド、2’-アミノ修飾ヌクレオチド、ホスホロアミダート、又は非天然塩基含有ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、AGT dsRNA化合物は、アンチセンス鎖(本明細書においてガイド鎖とも呼ばれる)の5’末端にE-ビニルホスホネートヌクレオチドを含有する。
【0115】
本発明の特定の実施形態において、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドは、AGT dsRNA化合物、センスポリヌクレオチドの3’及び5’末端、及び/又はアンチセンスポリヌクレオチドの3’末端にて含まれ、その少なくとも1つの修飾ヌクレオチドは、脱塩基ヌクレオチド、リビトール、逆位ヌクレオチド、逆位脱塩基ヌクレオチド、逆位2’-OMeヌクレオチド、及び逆位2’-デオキシヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドの末端に脱塩基又は逆位脱塩基ヌクレオチドを含めることによって、安定性を高めることができることは当業者には公知である(Czauderna et al.Structural variations and stabilizing modifications of synthetic siRNAs in mammalian cells.Nucleic Acids Res.2003;31(11):2705-2716.doi:10.1093/nar/gkg393)。
【0116】
本発明の特定の実施形態において、AGT dsRNA化合物及びアンチセンスポリヌクレオチドは少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含み、前記少なくとも1つの修飾ヌクレオチドは、アンロック核酸(UNA)ヌクレオチド及び/又はグリコール核酸(GNA)ヌクレオチドを含む。UNA及びGNAが、siRNA化合物のオフターゲットプロファイルを有意に改善し得る、熱に不安定な化学修飾であることは当業者には公知である(Janas,et al.,Selection of GalNAc-conjugated siRNAs with limited off-target-driven rat hepatotoxicity.Nat Commun 2018;9(1):723.doi:10.1038/s41467-018-02989-4;Laursen et al.,Utilization of unlocked nucleic acid(UNA)to enhance siRNA performance in vitro and in vivo.Mol BioSyst.2010;6:862-70)。
【0117】
本発明のAGT dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド、及び/又はAGTセンスポリヌクレオチドの特定の実施形態のRNAに含まれ得る別の修飾は、AGT dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド及び/又はAGTセンスポリヌクレオチドそれぞれの1つ又は複数の特徴を高める、RNAに化学結合された1つ又は複数のリガンド、部位又はコンジュゲートを含む。高めることができる特徴の非制限的な例は:AGT dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド及び/又はAGTセンスポリヌクレオチド活性、細胞分布、AGT dsRNA剤の送達、AGT dsRNA剤の薬物動態学的特性、及びAGT dsRNA剤の細胞内取り込み;である。本発明の一部の実施形態において、AGT dsRNA剤は、本発明の特定の実施形態において、センス鎖にコンジュゲートされる、1つ又は複数の標的化又は連結基を含む。標的化基の非制限的な例は、N-アセチル-ガラクトサミン(GalNAc)を含む化合物である。「標的化剤」、「連結剤(linking agent)」、「標的化化合物」、及び「標的化リガンド」は本明細書において区別なく使用され得る。本発明の特定の実施形態において、AGT dsRNA剤は、センス鎖の5’末端にコンジュゲートされた標的化化合物を含む。本発明の特定の実施形態において、AGT dsRNA剤は、センス鎖の3’末端にコンジュゲートされた標的化化合物を含む。本発明の一部の実施形態において、AGT dsRNA剤はGalNAc含有標的化基を含む。本発明の特定の実施形態において、AGT dsRNA剤は、センス鎖の3’末端及び5’末端の一方又は両方にコンジュゲートされた標的化化合物を含まない。本発明の特定の実施形態において、AGT dsRNA剤は、センス鎖の5’末端及び3’末端の一方又は両方にコンジュゲートされたGalNAc含有標的化化合物を含まない。
【0118】
追加の標的化及び連結作用剤は当技術分野でよく知られており、例えば、本発明の特定の実施形態において有用な標的化及び連結作用剤としては、限定されないが、コレステロール部位などの脂質部位(Letsinger et al.,Proc.Natl.Acid.Sci.USA,1989,86:6553-6556)、コール酸(Manoharan et al.,Biorg.Med.Chem.Let.,1994,4:1053-1060)、ベリル(beryl)-S-トリチルチオールなどのチオエーテル(Manoharan et al.,Ann.NY Acad.Sci.,1992,660:306-309;Manoharan et al.,Biorg.Med.Chem.Let.,1993,3:2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al.,Nucl.Acids Res.,1992,20:533-538)、ドデカンジオール又はウンデシル残基などの脂肪族鎖(Saison-Behmoaras et al.,EMBO J,1991,10:1111-1118;Kabanov et al.,FEBS Lett.,1990,259:327-330;Svinarchuk et al.,Biochimie,1993,75:49-54)、リン脂質、例えば2-ヘキサデシル-rac-グリセロール又はトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロール-3-ホスホネート(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651-3654;Shea et al.,Nucl.Acids Res.,1990,18:3777-3783)、ポリアミン又はポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al.,Nucleosides & Nucleotides,1995,14:969-973)又はアダマンタン酢酸(Manoharan et al.,Tetrahedron Lett.,1995,36:3651-3654)、パルミトイル部位(Mishra et al.,Biochim.Biophys.Acta,1995,1264:229-237)又はオクタデシルアミン若しくはヘキシルアミノ-カルボニルオキシコレステロール部位(Crooke et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.,1996,277:923-937)が挙げられる。
【0119】
AGT dsRNA剤、AGTアンチセンスポリヌクレオチド、及び/又はAGTセンスポリヌクレオチを含む組成物の特定の実施形態は、AGT dsRNA剤の分布、標的化等の特性を変化させるリガンドを含み得る。本発明のAGT dsRNA剤を含む組成物の一部の実施形態において、例えば、リガンドは、かかるリガンドが存在しない種と比較して、選択された標的(例えば、分子、細胞又は細胞型、コンパートメント、例えば、細胞若しくは臓器コンパートメント、組織、臓器又は身体領域)に対する親和性を増加する。本発明の組成物及び/又は方法において有用なリガンドは、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)又はグロブリン)、炭水化物(例えば、デキストラン、アミロペクチン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン又はヒアルロン酸)又は脂質などの天然物質であり得る。リガンドは、組換え又は合成分子、例えば合成ポリアミノ酸又はポリアミンなどの合成ポリマーであってもよい。ポリアミノ酸の例は、ポリリジン(PLL)、ポリL-アスパラギン酸、ポリL-グルタミン酸、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、ポリ(L-ラクチド-co-グリコール酸)コポリマー、ジビニルエーテル-無水マレイン酸コポリマー、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2-エチルアクリル酸)、N-イソプロピルアクリルアミドポリマー、又はポリホスファゼンである。ポリアミンの例としては:ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、偽ペプチド-ポリアミン、ペプチドミメティックポリアミン、樹状ポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの第4級塩、又はαヘリックスペプチドが挙げられる。
【0120】
本発明の組成物及び/又は方法に含まれるリガンドは、標的化基を含み得て、その非制限的な例は、細胞若しくは組織標的化剤、例えば、レクチン、糖タンパク質、脂質又はタンパク質、例えば、腎臓細胞若しくは肝細胞などの特異的な細胞型に結合する抗体である。標的化基は、甲状腺刺激ホルモン、メラノゲン、レクチン、糖タンパク質、界面活性剤タンパク質A、ムチン炭水化物、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース、多価フコース、グリコシル化ポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、葉酸、ビタミンB12、ビタミンA、ビオチン又はRGDペプチド若しくはRGDペプチドミメティックであり得る。
【0121】
リガンドの他の例としては、染料、インターカレーター(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、ソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サフィリン(sapphyrin))、多環式芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性分子例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビス-O(ヘキサデシル)グリセリン、ゲラニルオキシヘキシル、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3-(オレオイル)リトコール酸、O3-(オレオイル)コール酸、ジメトキシトリチル又はフェノキサジン及びペプチドコンジュゲート(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、リン酸、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG-40K)、MPEG、[MPEG]2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収エンハンサー(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン-イミダゾールコンジュゲート、テトラアザ大環状分子のEu3+複合体)、ジニトロフェニル、HRP又はAPが挙げられる。
【0122】
本発明の組成物及び/又は方法に含まれるリガンドは、糖タンパク質又はペプチドなどのタンパク質、例えば共リガンドに対する特異的な親和性を有する分子、又は抗体、例えば癌細胞、内皮細胞、心筋細胞若しくは骨細胞などの特異的な細胞型に結合する抗体であり得る。本発明の組成物及び/又は方法の実施形態において有用なリガンドはホルモン又はホルモン受容体であり得る。本発明の組成物及び/又は方法の実施形態において有用なリガンドは脂質、レクチン、炭水化物、ビタミン、補酵素、多価ラクトース、多価ガラクトース、N-アセチル-ガラクトサミン、N-アセチル-グルコサミン多価マンノース又は多価フコースであり得る。本発明の組成物及び/又は方法の実施形態において有用なリガンドは、例えば、細胞の細胞骨格を破壊することによって(例えば、細胞の微小管、ミクロフィラメント、及び/又は中間径フィラメントを破壊することによって)、細胞内へのAGT dsRNA剤の取込みを増加する物質であり得る。かかる作用剤の非制限的な例は:タクソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャスプラキノリド、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン及びミオセルビン(myoservin)であり得る。
【0123】
一部の実施形態において、本発明のAGT dsRNA剤に結合されるリガンドは、薬物動態学的(PK)修飾因子としての役割を果たす。本発明の組成物及び方法において有用なPK修飾因子の例としては、限定されないが、親油性作用剤、胆汁酸、ステロイド、リン脂質類似体、ペプチド、タンパク質バインダー、PEG、ビタミン、コレステロール、脂肪酸、コール酸、リトコール酸、ジアルキルグリセリド、ジアシルグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、ナプロキセン、イブプロフェン、ビタミンE、ビオチン、及び血清タンパク質に結合するアプタマー等が挙げられる。多くのホスホロチオエート結合を含有するオリゴヌクレオチドは、血清タンパク質に結合することも知られており、したがって、主鎖に複数のホスホロチオエート結合を含有する短いオリゴヌクレオチド、例えば約5塩基、10塩基、15塩基又は20塩基のオリゴヌクレオチドもまた、本発明の組成物及び/又は方法においてリガンドとして使用され得る。
【0124】
AGT dsRNA剤組成物
本発明の一部の実施形態において、AGT dsRNA剤は組成物中にある。本発明の組成物は、1種又は複数種のAGT dsRNA剤、及び任意に1種又は複数種の薬剤として許容される担体、送達剤、標的化剤、検出可能な標識等を含み得る。本発明の方法の一部の実施形態に従って有用であり得る標的化剤の非制限的な例は、本発明のAGT dsRNA剤を、処理すべき細胞に、且つ/又は処理すべき細胞内に方向付ける作用剤である。標的化剤の選択は、AGT関連疾患又は病状の性質、及び標的細胞型に応じて異なる。非制限的な例において、本発明の一部の実施形態では、AGT dsRNA剤を肝細胞に、且つ/又は肝細胞内に標的化することが望ましい。本発明の一部の実施形態において、治療薬は、追加の連結要素なく、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を含む送達剤などの送達剤のみと共にAGT dsRNA剤を含むことを理解されたい。例えば、本発明の一部の態様において、AGT dsRNA剤は、GalNAcを含む送達化合物に連結することができ、且つ薬剤として許容される担体を含有する組成物中に含ませることができ、AGT dsRNA剤に連結された検出可能な標識若しくは標的化剤等の非存在下にて、細胞又は対象に投与することができる。
【0125】
本発明のAGT dsRNA剤は、1種又は複数種の送達剤、標的化剤、標識化剤等と共に投与され、且つ/又は1種又は複数種の送達剤、標的化剤、標識化剤等に連結される場合、当業者は、本発明の方法で使用される適切な作用剤を選択及び使用することができることは理解されよう。標識化剤は、細胞及び組織におけるAGT dsRNA剤の位置を決定するために、本発明に特定の方法で使用され得て、且つ本発明の方法で投与されるAGT dsRNA剤を含む治療組成物の細胞、組織、又は臓器位置を同定するために使用され得る。酵素標識、色素、放射標識等を取り付け、且つ使用する手段は当技術分野でよく知られている。本発明の組成物及び方法の一部の実施形態において、標識化剤は、AGT dsRNA剤に含まれるセンス及びアンチセンスポリヌクレオチドの一方又は両方に連結されることを理解されたい。
【0126】
AGT dsRNA剤及びAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の送達
本発明の方法の特定の実施形態は、細胞内へのAGT dsRNA剤の送達を含む。本明細書で使用される、「送達」という用語は、細胞内取り込み若しくは吸収を促進すること、又は細胞内取り込み若しくは吸収に影響を及ぼすこと意味する。AGT dsRNA剤の吸収又は取り込みは、非依存的な拡散的若しくは能動的な細胞プロセスによって、又は本発明のAGT dsRNA剤と結合し得る送達剤、標的化剤等の使用によって起こり得る。本発明の方法での使用に適した送達様式としては、限定されないが、AGT dsRNA剤が組織部位に注入される、又は全身投与される、生体内(in vivo)送達が挙げられる。本発明の一部の実施形態において、AGT dsRNA剤は送達剤に連結される。
【0127】
細胞、組織、及び/又は対象へのAGT dsRNA剤の送達に使用することができる方法の非制限的な例としては:AGT dsRNA-GalNAcコンジュゲート、SAMiRNA技術、LNPベースの送達法、及び裸のRNA送達が挙げられる。様々な疾患及び病状、限定されないが肝臓疾患、急性間欠性ポルフィリン症(AIP)、血友病、肺線維症等の治療においてRNAi治療薬を送達するために、これらの及び他の送達法が当技術分野でうまく使用されている。種々の送達法の詳細が、Nikam,R.R.& K.R.Gore(2018)Nucleic Acid Ther,28(4),209-224 Aug 2018;Springer A.D.&S.F.Dowdy(2018)Nucleic Acid Ther.Jun1;28(3):109-118;Lee,K.et al.,(2018)Arch Pharm Res,41(9),867-874;及びNair,J.K.et al.,(2014)J.Am.Chem.Soc.136:16958-16961などの出版物に記載されており、その内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0128】
本発明の一部の実施形態は、本発明のAGT dsRNA剤を細胞、組織及び/又は対象に送達するための脂質ナノ粒子(LNP)の使用を含む。LNPは、AGT dsRNA治療剤などのAGT dsRNA剤の生体内送達に通常、使用される。LNP又は他の送達剤を使用する1つの利点は、LNP又は他の送達剤を使用して対象に送達された場合に、AGT RNA剤の安定性が高められることである。本発明の一部の実施形態において、LNPは、本発明の1つ又は複数のAGT RNAi分子をロードされたカチオン性LNPを含む。AGT RNAi分子を含むLNPは対象に投与され、LNP及びその結合されたAGT RNAi分子は、エンドサイトーシスを経て細胞によって取り込まれ、その存在によって、RNAiトリガー分子が放出され、それによってRNAiが仲介される。
【0129】
本発明のAGT dsRNA剤を細胞、組織及び/又は対象に送達するために、本発明の実施形態で使用され得る送達剤の別の非制限的な例は、本発明のAGT dsRNA剤に連結され、且つAGT dsRNA剤を細胞、組織、及び/又は対象に送達する、GalNAcを含む作用剤である。本発明の方法及び組成物の特定の実施形態において使用され得る、特定の他のGalNAc含有送達剤の例は、PCT出願国際公開第2020191183A1号パンフレットに開示されている。AGT dsRNA剤を細胞に送達するために本発明の組成物及び方法で使用することができるGalNAc標的化リガンドの非制限的な例は、標的化リガンドクラスターである。本明細書において提案される標的化リガンドクラスターの例は:リン酸ジエステル結合(GLO)を有するGalNAcリガンド及びホスホロチオエート結合(GLS)を有するGalNAcリガンドである。「GLX-n」という用語は本明細書において、結合されたGalNAC含有化合物が、化合物GLS-1、GLS-2、GLS-3、GLS-4、GLS-5、GLS-6、GLS-7、GLS-8、GLS-9、GLS-10、GLS-11、GLS-12、GLS-13、GLS-14、GLS-15、GLS-16、GLO-1、GLO-2、GLO-3、GLO-4、GLO-5、GLO-6、GLO-7、GLO-8、GLO-9、GLO-10、GLO-11、GLO-12、GLO-13、GLO-14、GLO-15及びGLO-16のうちのいずれか1つであることを意味するために使用され得て、それぞれの構造を以下に示す。以下の図において、本発明のGalNAc標的化リガンド及びRNAi剤の連結位置は、各標的化リガンドの最も右側にある。本発明のいずれかのRNAi及びdsRNA分子は、GLS-1、GLS-2、GLS-3、GLS-4、GLS-5、GLS-6、GLS-7、GLS-8、GLS-9、GLS-10、GLS-11、GLS-12、GLS-13、GLS-14、GLS-15、GLS-16、GLO-1、GLO-2、GLO-3、GLO-4、GLO-5、GLO-6、GLO-7、GLO-8、GLO-9、GLO-10、GLO-11、GLO-12、GLO-13、GLO-14、GLO-15及びGLO-16に連結することができると理解されたい。GLO-1~GLO-16及びGLS-1~GLS-16の構造を以下に示す。
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【0130】
本発明の一部の実施形態において、生体内送達は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,032,401号明細書及び米国特許第5,607,677号明細書、米国特許出願公開第2005/0281781号明細書に記載の送達システムなど、β‐グルカン送達システムによる送達でもあり得る。AGT RNAi剤は、電気穿孔法及びリポフェクションなどの当技術分野で公知の方法を用いて、生体外で細胞に導入することもできる。本発明の方法の特定の実施形態において、AGT dsRNAは、標的化剤なしで送達される。これらのRNAは、「裸の」RNA分子として送達することができる。非制限的な例として、本発明のAGT dsRNAは、標的化剤(例えば、GalNAc標的化化合物)ではなく、RNAi剤を含む医薬組成物中で対象に投与して、高血圧症などの対象におけるAGT関連疾患又は病状を治療することができる。
【0131】
本明細書に記載の特定の送達様式の他に、他のRNAi送達様式が、本明細書に記載のAGT RNAi剤及び治療方法の実施形態、限定されないが、本明細書に記載のもの、及び当技術分野で使用されるものなどと共に使用され得ることを理解されたい。
【0132】
本発明のAGT dsRNA剤は、細胞及び/又は対象におけるAGTポリペプチドのレベル及び活性を低減するのに有効な量及び手法で対象に投与することができる。本発明の一部の実施形態において、1種又は複数種のAGT dsRNA剤が対象に投与されて、AGT発現及び活性と関連する疾患又は病状が治療される。一部の実施形態において、本発明の方法は、対象におけるAGT発現と関連する疾患又は病状を軽減するために、かかる治療を必要とする対象に、1種又は複数種のAGT dsRNA剤を投与することを含む。本発明のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を投与して、試験管内、生体外、及び生体内の細胞の1つ又は複数においてAGT発現及び/又は活性を低減することができる。
【0133】
本発明の一部の実施形態において、細胞におけるAGTポリペプチドのレベル、したがってその活性は、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を細胞内へ送達(例えば、導入)することによって低減される。標的化剤及び方法を用いて、特異的な細胞型、細胞サブタイプ、臓器、又は対象内の空間領域及び/又は細胞内の細胞下領域へのAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の送達を促進することができる。AGT dsRNA剤は、本発明の特定の方法において、単独で、或いは1つ又は複数の追加のAGT dsRNA剤と併せて投与される。一部の実施形態において、2、3、4、又はそれ以上の、独立して選択されたAGT dsRNA剤が対象に投与される。本発明の特定の実施形態において、AGT dsRNA剤は、AGT関連疾患又は病状の治療のための1つ又は複数の追加の治療法と併せて、AGT関連疾患又は病状を治療するために対象に投与される。追加の治療レジメンの非制限的な例は、本発明の1つ又は複数のAGTアンチセンスポリヌクレオチドの投与、非AGT dsRNA治療薬の投与、及び行動修飾である。追加の治療レジメンは、以下の時点:本発明のAGT dsRNA剤の投与前、投与と同時、及び投与後のうちの1つ又は複数の時点で施され得る。本明細書で使用される「同時に」とは、ゼロ時点の5分以内、ゼロ時点の10分以内、ゼロ時点の30分以内、ゼロ時点の45分以内、及びゼロ時点の60分以内を意味し、「ゼロ時点」は、本発明のAGT dsRNA剤が対象に投与される時点であると理解れたい。非AGT dsRNA治療剤の非制限的な例は:利尿剤、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、β遮断薬、血管拡張薬、カルシウムチャネルブロッカー、アルドステロンアンタゴニスト、α-2アゴニスト、レニン阻害剤、α遮断薬、末梢作用性アドレナリン作動薬、選択的D1受容体部分アゴニスト、非選択的α-アドレナリン拮抗薬、合成、ステロイド性抗鉱質コルチコイド、又は上述のいずれかの組合せなどの追加の治療薬、及び製薬的組み合わせへと製剤化される高血圧の治療薬である。行動的修飾の非制限的な例は:投与計画、カウンセリング及び運動療法である。これらの、及び他の治療薬及び行動的修飾は技術分野で公知であり、対象におけるAGT疾患又は病状を治療するために使用され得て、AGT疾患又は病状を治療するために、本発明の1つ又は複数のAGT dsRNA剤と併せて対象に施され得る。AGT関連疾患又は病状を治療するために細胞又は対象に投与される、本発明のAGT dsRNA剤は、1種又は複数種の他の治療薬又は有効成分と相乗効果的に作用することができ、それによって、1種又は複数種の他の治療薬若しくは有効成分の有効性がブーストされ、且つ/又はAGT関連疾患若しくは病状の治療におけるAGT dsRNA剤の有効性が高められる。
【0134】
本発明の治療方法は、AGT関連疾患若しくは病状の発症前、及び/又はAGT関連疾患若しくは病状が存在する場合に、例えば疾患若しくは病状の初期、中期、末期、及びこれらのステージのいずれか前若しくは後いつでも使用され得る、AGT dsRNA剤の投与を含む。本発明の方法では、対象のAGT関連疾患又は病状の治療で不成功であった、最小限の成功であった、且つ/或いはもはや成功しなかった、1種若しくは複数種の他の治療薬及び/又は治療有効成分で、AGT関連疾患若しくは病状に対して予め治療されている対象も治療され得る。
【0135】
ベクターコード化dsRNA
本発明の特定の実施形態において、AGT dsRNA剤を細胞に送達するために、ベクターを使用することができる。AGT dsRNA剤転写単位が、DNA又はRNAベクターに含まれ得る。細胞及び/又は対象に配列を送達するための、かかる導入遺伝コード化ベクターの作製及び使用は当技術分野でよく知られている。例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10時間又はそれ以上の時間、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週又はそれ以上の週の間、AGT dsRNAの一過的発現が起こるベクターを本発明の方法において使用することができる。一過的発現の長さは、限定されないが、選択される特異的なベクター構築物、及び標的細胞及び/又は組織などの因子に基づく従来の方法を用いて決定することができる。かかる導入遺伝子は、組込み又は非組込みベクターであり得る、直鎖状構築物、環状プラスミド又はウイルスベクターとして導入することができる。導入遺伝子は、染色体外プラスミドとして受け継がれるように、導入遺伝子を作成することもできる(Gassmann,etal.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1995)92:1292)。
【0136】
AGT dsRNA剤の1つ又は複数の一本鎖は、発現ベクター上でプロモーターから転写され得る。2つの別々の鎖が、例えば、dsRNAを産生するように発現される場合には、2つの別々の発現ベクターが、トランスフェクション又は感染などの手段を用いて細胞に同時導入され得る。特定の実施形態において、本発明のAGT dsRNA剤の個々の鎖それぞれが、同じ発現ベクター上に含まれるプロモーターから転写され得る。本発明の特定の実施形態において、AGT dsRNA剤は、AGT dsRNA剤が幹(stem)及びループ構造を有するように、リンカーポリヌクレオチド配列によって連結される逆位反復ポリヌクレオチドとして発現される。
【0137】
RNA発現ベクターの非制限的な例は、DNAプラスミド又はウイルスベクターである。本発明の実施形態において有用な発現ベクターは、真核細胞と適合性であり得る。真核生物の発現ベクターは通常、当技術分野で使用されており、多くの商業上の供給元から入手可能である。AGT dsRNA発現ベクターの送達は、例えば静脈内又は筋肉内投与による、対象から取り出され、対象に再導入される標的細胞への投与による、或いは目的の標的細胞の導入を可能にするいずれかの手段による、全身的送達であり得る。
【0138】
方法の実施形態に含まれ得るウイルスベクターシステムとしては、限定されないが:(a)アデノウイルスベクター;(b)レトロウイルスベクター、限定されないが、レンチウイルスのベクター、モロニーマウス白血病ウイルス等;(c)アデノ随伴ウイルスベクター;(d)単純ヘルペスウイルスベクター;(e)SV40ベクター;(f)ポリオーマウイルスベクター;(g)乳頭腫ウイルスベクター;(h)ピコルナウイルスベクター;(i)ポックスウイルスベクター、例えばオルソポックスウイルスベクター、例えば、ワクシニアウイルスベクター又はカナリヤ若しくは家禽ポックスウイルスベクターなどのトリポックスウイルスベクター;(j)ヘルパー依存性若しくはガットレス(gutless)アデノウイルスベクターが挙げられる。AGT dsRNA剤の組換え発現のための構築物は、構成的又は調節/誘導発現を提供するように選択され得る、プロモーター、エンハンサー等の調節因子を含有し得る。ウイルスベクターシステム、並びにプロモーター及びエンハンサー等の使用は、当技術分野では慣例であり、且つ本明細書に記載の方法及び組成物と組み合わせて使用することができる。
【0139】
本発明の特定の実施形態は、細胞にAGT dsRNA剤を送達するためのウイルスベクターの使用を含む。多くのアデノウイルスベースの送達システムは、例えば肺、肝臓、中枢神経系、内皮細胞、及び筋肉に送達するために当技術分野で通常、使用されている。本発明の方法で使用され得るウイルスベクターの非制限的な例は:AAVベクター、ワクシニアウイルスなどのポックスウイルス、修飾ウイルスアンカラ(MVA)、NYVAC、又は家禽若しくはカナリヤポックスウイルスなどのトリポックスウイルスである。
【0140】
本発明の特定の実施形態は、ベクターを用いてAGT dsRNA剤を細胞に送達する方法を含み、かかるベクターは、遺伝子送達ベクターが埋め込まれる徐放性マトリックスを含む必要はないが、含み得る、薬剤として許容されるベクターであり得る。一部の実施形態において、AGT dsRNAを送達するためのベクターは、組換え細胞によって産生することができ、本発明の医薬組成物は、AGT dsRNA送達システムを産生する1種又は複数種の細胞を含み得る。
【0141】
AGT dsRNA又はssRNA剤を含有する医薬組成物
本発明の特定の実施形態は、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤と、薬剤として許容される担体と、を含有する医薬組成物の使用を含む。AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を含有する医薬組成物は、細胞におけるAGT遺伝子発現及びAGT活性を低減するために本発明の方法において使用することができ、関連疾患又は病状を治療するために使用することができる。かかる医薬組成物は、送達様式に基づいて製剤化され得る。送達様式に対する製剤の非制限的な例は:皮下送達用に製剤化された組成物、非経口的送達による全身投与用に製剤化された組成物、静脈内(IV)送達用に製剤化された組成物、髄腔内送達用に製剤化された組成物、及び脳内に直接送達するために製剤化された組成物等である。本発明の医薬組成物は、細胞にAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を送達するために1種又は複数の手段を用いて、例えば:局所(例えば、経皮パッチによる)投与;経肺投与、例えば、ネブライザーを介してなど、粉末若しくはエアロゾルの吸入又は通気による投与;気管内、鼻腔内、表皮及び経皮、経口若しくは非経口投与で投与され得る。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内若しくは筋肉内注射又は注入;例えば植込みデバイスによる皮下投与;或いは例えば実質内、髄腔内又は脳室内投与による頭蓋内投与;を用いて投与され得る。AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、肝臓に直接、腎臓に直接など、標的組織に直接、送達することもできる。細胞に「AGT dsRNA剤を送達する」又は「AGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を送達する」は、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤をそれぞれ送達すること、細胞において直接AGT dsRNA剤を発現すること、並びに細胞に送達されたコード化ベクターからAGT dsRNA剤を発現すること、或いは細胞にAGT dsRNA又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を存在させる、いずれかの適切な手段を包含すると理解されたい。製剤の調製及び使用、並びに阻害性RNAを送達する手段は当技術分野でよく知られており、通常使用されている。
【0142】
本明細書で使用される、「医薬組成物」は、本発明の薬理学的有効量のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤と、薬剤として許容される担体と、を含む。「薬剤として許容される担体」という用語は、治療薬を投与するために使用される担体を意味する。かかる担体としては、限定されないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、グルコース、水、グリセロール、エタノール、及びその組み合わせが挙げられる。この用語は具体的には、細胞培養培地を除外する。経口投与される薬物に関して、薬剤として許容される担体としては、限定されないが、薬剤として許容される賦形剤、例えば不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味料、着香剤、着色剤及び保存剤が挙げられる。適切な不活性希釈剤としては、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム及びリン酸カルシウム、及びラクトースが挙げられ、トウモロコシデンプン及びアルギン酸が適切な崩壊剤である。結合剤としては、デンプン及びゼラチンが挙げられ、白色滑沢剤が、存在する場合には、通常、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルクである。所望の場合には、錠剤は、胃腸管での吸収を遅らせるために、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリルなどの材料で被覆され得る。医薬製剤に含まれる作用剤(agent)は、以下にさらに記述される。本明細書で使用される、「薬理学的有効量」、「治療有効量」、及び「有効量」などの用語は、意図する薬理学的、治療的、又は予防的結果を生み出す、本発明のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の量を意味する。例えば、それが、疾患又は障害と関連する測定可能なパラメーターを少なくとも10%低減した場合に、所定の臨床的治療が有効とみなされるとすると、その疾患又は病状を治療するために使用される薬物の治療有効量は、そのパラメーターを少なくとも10%低減する必要がある量である。例えば、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の治療有効量は、AGTポリペプチドレベルを少なくとも10%低減することができる。医薬組成物は、表1に示すAD00051~AD00122-19-2、AD00163-3、AV01227~AVAV01257、及びAV01711などの二重鎖を含むdsRNAi剤を含み得る。一部の実施形態において、好ましいdsRNAi剤としては、例えば、二重鎖AD00158、AD00163、AD00159、AD00290、AD00300、又はAD00122が挙げられる。他の実施形態において、好ましいdsRNAi剤としては、例えば、AD00158-1、AD00158-2、AD00163-1、AD00159-1、又はAD00300-1が挙げられる。一部の他の実施形態において、かかるdsRNAi剤としては、二重鎖バリアント、例えば、二重鎖AD00158、AD00163、AD00163-3、AD00159、AD00290、AD00300又はAD00122のバリアントが挙げられる。
【0143】
有効量
一部の態様において、本発明の方法は、接触細胞におけるAGT遺伝子発現を低減するために、有効量のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤と細胞を接触させることを含む。本発明の方法の特定の実施形態は、AGT遺伝子発現を低減し、且つ対象におけるAGT関連疾患又は病状を治療するのに有効な量で、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を対象に投与することを含む。AGTの発現を低減するための、且つ/又はAGT関連疾患若しくは病状の治療のための使用の場合、「有効量」は、所望の生物学的効果を認識するのに必要な、又は十分な量である。例えば、AGT関連疾患又は病状を治療するための、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の有効量は、疾患又は病状の進行を遅らせる、或いは停止する;(ii)疾患又は病状の1つ又は複数の症状を逆戻りさせる、低減する、或いは解消する;のに必要な量であり得る。本発明の一部の態様において、有効量は、AGT関連疾患又は病状の治療を必要とする対象に投与した場合に、治療反応をもたらし、疾患又は病状が予防及び/又は治療される、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の量である。本発明の一部の態様に従って、有効量は、AGT関連疾患又は病状の別の治療的処置と組み合わせた、又は同時投与した場合に、治療反応をもたらし、疾患又は病状が予防及び/又は治療される、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の量である。本発明の一部の実施形態において、本発明のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤で対象を治療する生物学的効果は、AGT関連疾患又は病状によって起こる症状の緩和及び/又は完全な解消であり得る。本発明の一部の実施形態において、生物学的効果は、例えば、対象にAGT関連疾患又は病状がないことを示す診断試験によって実証される、AGT関連疾患又は病状の完全な阻止である。検出可能な生理学的症状の非制限的な例としては、本発明の作用剤の投与後の、対象の肝臓における脂質蓄積の低減が挙げられる。AGT関連疾患又は病状の状態を評価する、当技術分野で知られる他の手段を使用して、AGT関連疾患若しくは病状に対する本発明の作用剤及び/又は方法の効果が決定され得る。
【0144】
AGT関連疾患又は病状を治療するレベルに、AGTポリペプチドの活性を低減するAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の有効量は臨床試験で通常決定され、対照集団に対する試験集団の盲検試験において有効用量が確立される。一部の実施形態において、有効量は、疾患若しくは病状に罹患している細胞、組織、及び/又は対象におけるAGT関連疾患若しくは病状の低減など、所望の反応がもたらされる量である。したがって、AGTポリペプチド活性を低減することによって治療可能なAGT関連疾患若しくは病状を治療するためのAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の有効量は、投与した場合に、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を投与しない細胞、組織及び/又は対象に存在するであろう量を下回る量に、対象におけるAGTポリペプチド活性の量を低減する量であり得る。本発明の特定の態様において、本発明のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤に曝露されていない、又は投与されていない細胞、組織及び/又は対象に存在するAGTポリペプチド活性及び/又はAGT遺伝子発現のレベルは、「対照」量と呼ばれる。本発明の一部の実施形態において、対象の対照量は、対象の治療前の量であり、言い換えると、AGT剤の投与前の対象におけるレベルは対象の対照レベルであり得て、対象へのsiRNAの投与後の、対象におけるAGTポリペプチド活性及び/又はAGT遺伝子発現のレベルとの比較のために使用され得る。AGT関連疾患又は病状を治療する場合には、所望の反応とは、細胞、組織、及び/又は対象における疾患又は病状の1つ又は複数の症状が低減されること、或いは解消されることであり得る。低減又は解消は一時的又は永続的であり得る。AGTポリペプチド活性、AGT遺伝子発現、症状の評価、臨床試験等を決定する方法を用いて、AGT関連疾患又は病状の状態をモニターすることができることを理解されたい。本発明の一部の態様において、AGT関連疾患又は病状の治療に対する所望の反応は、症状又は病状の発症を遅らせる、又はさらには予防する。
【0145】
AGTポリペプチドの活性を低減する化合物の有効量は、投与後のAGT関連疾患又は病状の低減など、細胞又は対象に対するAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の投与の生理学的効果を評価することによっても決定することができる。対象におけるアッセイ及び/又は症状のモニタリングを用いて、本発明のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤(本発明の医薬化合物中で投与することができる)の有効性を決定することができ、且つ治療に対する反応があるかどうかを決定することができる。非制限的な例は、当技術分野で公知の1つ又は複数の血圧試験である。別の非制限的な例は、本発明のAGT dsRNA剤で対象を治療する前及び後に、対象のAGT関連障害の状態を決定するための、当技術分野で公知の1つ又は複数の血圧試験である。別の非制限的な例において、血圧レベルを下げる、当技術分野で公知の1つ又は複数の試験を用いて、対象におけるAGT関連疾患の状態が決定される。この例において、疾患は、高血圧症を含み、その試験を用いて、本発明のAGT dsRNA剤で治療する前及び後の対象における血圧レベルの低下が決定される。
【0146】
本発明の一部の実施形態は、対象におけるAGT関連疾患又は病状の1つ又は複数の「生理学的特徴」を評価及び/又はモニタリングすることによって、AGT関連疾患又は病状を治療するために対象に投与された、本発明のdsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の有効性を決定する方法を含む。AGT関連疾患又は病状の生理学的特徴の非制限的な例は、対象における血清AGTレベル、平均血圧、及び弛緩期血圧である。かかる生理学的特徴を決定するための標準法は当技術分野で公知であり、限定されないが、血液検査、画像化研究、身体的検査等が挙げられる。
【0147】
対象に投与されるAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の量は、対象によって決定される疾患のかかる決定要因及び/又は病状の状態及び/又は生理学的特徴に少なくとも一部基づいて修飾され得ることを理解されたい。AGT-dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の量を増加又は低減するために、例えば、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤がその中で投与される組成を変えることによって、投与経路を変えることによって、投与のタイミングを変えることによって、治療量を変更することができる。AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の有効量は、治療される具体的な病状、治療される対象の年齢及び病状、状態の重症度、治療期間、同時治療の性質(もしあれば)、具体的な投与経路、並びに健康な医師の知識及び専門的意見内の他の因子に応じて異なる。例えば、有効量は、AGT関連疾患又は病状の治療に有効なAGTポリペプチド活性及び/又はAGT遺伝子発現の目的のレベルに応じて異なり得る。当業者は経験的に、必要以上に実験を行うことなく、本発明の方法で使用される特定のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の有効量を決定することができる。本明細書で提供される教示と共に、本発明の種々のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤、及び重視される因子、例えば効力、相対的なバイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の重症度、及び好ましい投与形式の中から選択することによって、具体的な対象を有効に治療するための、有効な予防的又は治療的療法を考案することが可能である。本発明の実施形態において使用される、本発明のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の有効量は、それと接触した場合に、細胞において所望の生物学的効果がもたらされる量であることができる。
【0148】
AGT遺伝子サイレンシングは、構成的に、又はAGTを発現するいずれかの細胞においてゲノムエンジニアリングによって実施することができ、適切なアッセイによって決定することができると認識されよう。本発明の一部の実施形態において、AGT遺伝子発現は、本発明のAGT dsRNA剤を投与することによって、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%低減される。本発明の一部の実施形態において、AGT遺伝子発現は、本発明のAGT dsRNA剤を投与することによって5~10%、5~25%、10~50%、10~75%、25~75%、25~100%又は50~100%低減される。
【0149】
投薬
AGT dsRNA剤及びAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、AGT遺伝子の発現を阻害するのに十分な投薬量で、医薬組成物中で送達される。本発明の特定の実施形態において、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の用量は、レシピエントの体重1キログラム当たり、1日に0.01~200.0mg、一般に1~50mg/kg体重、5~40mg/kg体重、10~30mg/kg体重、1~20mg/kg体重、1~10mg/kg体重、又は4~15mg/kg体重/日である。例えば、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の各単回投与は、約0.01mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2mg/kg、2.1mg/kg、2.2mg/kg、2.3mg/kg、2.4mg/kg、2.5mg/kg、2.6mg/kg、2.7mg/kg、2.8mg/kg、2.9mg/kg、3.0mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4mg/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg、3.9mg/kg、4mg/kg、4.1mg/kg、4.2mg/kg、4.3mg/kg、4.4mg/kg、4.5mg/kg、4.6mg/kg、4.7mg/kg、4.8mg/kg、4.9mg/kg、5mg/kg、5.1mg/kg、5.2mg/kg、5.3mg/kg、5.4mg/kg、5.5mg/kg、5.6mg/kg、5.7mg/kg、5.8mg/kg、5.9mg/kg、6mg/kg、6.1mg/kg、6.2mg/kg、6.3mg/kg、6.4mg/kg、6.5mg/kg、6.6mg/kg、6.7mg/kg、6.8mg/kg、6.9mg/kg、7mg/kg、7.1mg/kg、7.2mg/kg、7.3mg/kg、7.4mg/kg、7.5mg/kg、7.6mg/kg、7.7mg/kg、7.8mg/kg、7.9mg/kg、8mg/kg、8.1mg/kg、8.2mg/kg、8.3mg/kg、8.4mg/kg、8.5mg/kg、8.6mg/kg、8.7mg/kg、8.8mg/kg、8.9mg/kg、9mg/kg、9.1mg/kg、9.2mg/kg、9.3mg/kg、9.4mg/kg、9.5mg/kg、9.6mg/kg、9.7mg/kg、9.8mg/kg、9.9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、22mg/kg、23mg/kg、24mg/kg、25mg/kg、26mg/kg、27mg/kg、28mg/kg、29mg/kg、30mg/kg、31mg/kg、32mg/kg、33mg/kg、34mg/kg、35mg/kg、36mg/kg、37mg/kg、38mg/kg、39mg/kg、40mg/kg、41mg/kg、42mg/kg、43mg/kg、44mg/kg、45mg/kg、46mg/kg、47mg/kg、48mg/kg、49~50mg/kg体重の範囲の用量で投与され得る。
【0150】
本発明のAGT dsRNA剤の投薬量及び送達のタイミングを決定する場合に、様々な因子が考慮され得る。送達されるAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の絶対量は、同時処置、投与回数、並びに年齢、体調、サイズ、及び体重などの個々の対象パラメーターなど、様々な因子に応じて異なる。これらの因子は当業者にはよく知られており、慣例的な実験によって取り組むことができる。一部の実施形態において、極量、つまり健全な医学的判断に従った最高安全用量が使用され得る。
【0151】
一部の実施形態において、本発明の方法は、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回用量又はそれ以上の用量を対象に投与することを含み得る。場合によっては、医薬化合物の用量(例えば、AGT dsRNA剤を含む、又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を含む)が、少なくとも毎日、隔日に、毎週、隔週に、毎月等に対象に投与され得る。用量は、1日に1回若しくは複数回、例えば、24時間の間に、2、3、4、5回若しくはそれ以上の回数で投与され得る。本発明の医薬組成物は、1日1回投与することができ;或いはAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、その日全体を通して適切な間隔にて2回、3回若しくはそれ以上の部分用量で、又は持続注入若しくは徐放性製剤による送達を用いて、投与することができる。本発明の一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、1日1回又は複数回、毎週1回又は複数回、毎月1回又は複数回、或いは毎年1回又は複数回、対象に投与される。
【0152】
特定の態様において、本発明の方法は、医薬化合物を単独で、1種又は複数種の他のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤と組み合わせて、且つ/或いはAGT関連疾患若しくは病状に罹患している対象に施される他の薬物療法又は治療活動又は投与計画と組み合わせて、投与することを含む。医薬化合物は、医薬組成物の形態で投与され得る。本発明の方法で使用される医薬組成物は無菌であり、且つ対象に投与するのに適した重量又は体積の単位で所望の反応をもたらすのに十分なレベルにAGTポリペプチドの活性を低減する、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の量を含有し得る。AGTタンパク質活性を低減するために、対象に投与されるAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を含む医薬組成物の投薬量は、様々なパラメーター、特に用いられる投与形式及び対象の状態に応じて選択され得る。他の因子としては、必要とされる治療の期間が挙げられる。初回用量での対象の反応が不十分である場合には、患者によって耐えられる限り、それより高い用量が投与され得る(又は異なる、より局所的な送達経路を介して、有効に用量が増加され得る)。
【0153】
治療
本明細書で使用される、AGT遺伝子発現の低減から利益を得るであろう、疾患、障害、又は病状を意味するために使用される場合、「予防」又は「予防する」という用語は、対象が、例えば、高血圧などのレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の活性化によって起こる、或いはそれと関連する症状である、疾患、障害、又は病状と関連する症状を発症する可能性が低いことを意味する。かかる状況において、高血圧症を発症する可能性が低下し;例えば、個体が高血圧症の1つ又は複数の危険因子を有するが、高血圧症を発症しない、又は重症度の低い高血圧症を発症するのみであるか、又は疾患、障害、若しくは病状を発症しない、又はかかる疾患、障害、若しくは病状と関連する症状の発症が、本明細書に記載の治療を受けていない同じ危険因子を有する母集団と比べて低減される(例えば、臨床上のセッティングにける疾患又は病状のスケールの少なくとも10%の低減)、又は症状の発現が遅れる(例えば、日数、週数、月数、又は年数単位で)場合に、予防は有効であるとみなされる。
【0154】
2回以上の来院中に正確に測定された端座位血圧読み取り値の平均に基づいて、正常血圧対象は、収縮期血圧約90~119mmHg(約12~15.9kPa(kN/m2))及び弛緩期血圧約60~79mmHg(約8.0~10.5kPa(kN/m2))を有する。高血圧前症の対象は、収縮期血圧約120~139mmHg(約16.1~18.5kPa(kN/m2))及び弛緩期血圧約60~79mmHg(約8.0~10.5kPa(kN/m2))を有し;高血圧症の対象(例えば、ステージI高血圧症)は、収縮期血圧約140~159mmHg(約18.7~21.2kPa(kN/m2))及び弛緩期血圧約90~99mmHg(約12.0~13.2kPa(kN/m2))を有し;高血圧症の対象(例えば、ステージII高血圧症)は、収縮期血圧約≧160mmHg(約≧21.3kPa(kN/m≧))及び弛緩期血圧約≧100mmHg(約≧13.3kPa(kN/m2))を有する。
【0155】
特定の実施形態において、アンギオテンシノゲン関連疾患は本態性高血圧である。「本態性高血圧」は環境又は遺伝因子の結果(例えば、明確な、根底にある医学的原因のない結果)である。
【0156】
特定の実施形態において、アンギオテンシノゲン関連疾患は二次性高血圧である。「二次性高血圧」は、同定可能な根底にある条件を有し、且つ腎臓、血管、及び内分泌の原因、例えば腎実質性疾患(例えば、多発性嚢胞腎、糸球体又は間質性疾患)、腎血管疾患(例えば、腎動脈狭窄、線維筋性形成異常)、内分泌障害(例えば、副腎皮質ステロイド又は鉱質コルチコイド過剰症、褐色細胞腫、甲状腺機能亢進症又は甲状腺機能低下症、成長ホルモン過剰症、副甲状腺機能亢進症)、大動脈の縮窄、又は経口避妊薬の使用などの、複数の病因を有し得る。
【0157】
特定の実施形態において、アンギオテンシノゲン関連疾患は、悪性高血圧及び加速型高血圧などの高血圧性緊急症である。「加速型高血圧」とは、1つ又は複数の終末器官への直接的なダメージを伴う血圧の重篤な上昇(つまり、収縮期血圧180mmHg以上又は弛緩期血圧110mmHg)を意味する。血圧は、更なる臓器の損傷を防ぐために、即座に下げなければならない。「悪性高血圧症」とは、1つ又は複数の終末器官への直接的なダメージ及び乳頭浮腫を伴う、重度の高血圧(つまり、収縮期血圧180mmHg以上又は弛緩期血圧110mmHg)を意味する。血圧は、更なる臓器の損傷を防ぐために、即座に下げなければならない。血圧がコントロールされていないことが原因の神経終末器官の損傷としては、高血圧性脳障害、脳血管障害/脳梗塞、くも膜下出血及び/又は頭蓋内出血が挙げられ得る。心血管終末器官の損傷としては、心筋虚血/梗塞、急性左心室機能不全、急性肺浮腫、及び/又は動脈解離が挙げられる。他の器官系もまた、急性腎不全/機能不全、網膜症、子癇、又は細血管障害性溶血性貧血を引き起こし得る、未コントロールの高血圧によって影響を受け得る。
【0158】
特定の実施形態において、アンギオテンシノゲン関連疾患は急性高血圧症である。「急性高血圧症」とは、1つ又は複数の器官に直接的なダメージを及ぼさない、血圧の重篤な上昇(つまり、収縮期血圧180mmHg以上又は弛緩期血圧110mmHg)を意味する。血圧は、数時間以内に安全に下げることができる。
【0159】
特定の実施形態において、アンギオテンシノゲン関連疾患は妊娠関連性高血圧症、例えば妊娠の慢性高血圧症、妊娠高血圧症、子癇前症、子癇、慢性高血圧症に加重される子癇前症、HELLP症候群、及び妊娠誘発高血圧症(一過性妊娠高血圧症、妊娠後期に見られる慢性高血圧症、及び妊娠高血圧(PIH)とも呼ばれる)である。「慢性妊娠高血圧症」の対象は、妊娠前又は妊娠20週前に、その血圧が140/90mmHgを超える対象である。「妊娠高血圧症」又は「妊娠誘発高血圧症」とは、子癇前症の他の特徴なく、妊娠後期(妊娠20週を超える)に発症し、且つ分娩後に正常に戻る高血圧症を意味する。「軽度子癇前症」は、妊娠20週前に正常血圧の女性に少なくとも6時間おいて起こるが、終末器官損傷の証拠がない、高血圧症(血圧≧140/90mmHg)の2つのエピソードとして定義される。既存の本態性高血圧を有する対象において、子癇前症は、収縮期血圧が30mmHg上昇するか、又は弛緩期血圧が15mmHg上昇した場合に診断される。「重症子癇前症」は、子癇前症の以下の徴候又は症状:少なくとも6時間おいて収縮期血圧160mmHg以上、又は弛緩期血圧110mmHg以上の2つのエピソード;24時間にわたって採取された5gを超えるタンパク尿、又は少なくとも4時間おいて採取される2つのランダムな尿試料において3+を超える;肺浮腫又はチアノーゼ;尿量過少(24時間で400mL未満);持続性の頭痛、心窩部痛、及び/又は肝機能障害;血小板減少、羊水過少、胎児発育遅延、又は胎盤剥離;のうちの1つの存在として定義される。「子癇」は、子癇前症を有する女性における他の原因に起因し得ない発作として定義される。「HELLP症候群」(浮腫-タンパク尿-高血圧妊娠中毒症B型としても知られる)とは、妊娠中の対象における溶血、肝臓酵素レベルの上昇、及び血小板レベルの減少を意味する。
【0160】
特定の実施形態において、アンギオテンシノゲン関連疾患は治療抵抗性高血圧である。「治療抵抗性高血圧症」とは、そのうちの1つがチアジド系利尿薬である、抗高血圧薬の3つの異なるクラスの同時使用にも関わらず、上記の目標値を超えた値(例えば、140/90mmHg)のままである血圧を意味する。4種類以上の薬物で血圧をコントロールした対象も、治療抵抗性高血圧を有するとみなされる。
【0161】
AGTポリペプチドのレベル及び/又は活性の減少が、疾患又は病状の治療において有効である、AGT関連疾患及び病状を、本発明の方法及びAGT dsRNA剤を使用して治療し、AGT発現を阻害することができる。本発明のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤及び本発明の方法で治療することができる疾患及び病状の例としては、限定されないが、高血圧性疾患、高血圧症、境界型高血圧、本態性高血圧、二次性高血圧、孤立性収縮期若しくは拡張期高血圧、妊娠関連性高血圧、糖尿病性高血圧、治療抵抗性高血圧、難治性高血圧、発作性高血圧、腎血管性高血圧症、ゴールドブラット高血圧、高眼圧、緑内障、肺高血圧症、門脈圧亢進、全身性静脈性高血圧、収縮期高血圧、不安定性高血圧;高血圧性心疾患、高血圧性腎症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、血管疾患、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、糸球体硬化症、大動脈狭窄、大動脈瘤、心室繊維化、心不全、心筋梗塞、アンギナ、脳卒中、腎疾患、腎不全、全身性硬化症、子宮内発育遅延(IUGR)、及び胎児発育遅延が挙げられる。かかる疾患及び病状は、本明細書において「AGT関連疾患及び病状」及び「AGTによって起こり、且つ/又は調節される疾患及び病状」と呼ばれ得る。
【0162】
本発明の特定の態様において、本発明のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、AGT関連疾患又は病状の診断前又は後に1回又は複数回、対象に投与することができる。本発明の一部の態様において、対象は、AGT関連疾患又は病状に罹患する、或いは発症するリスクがある。AGT関連疾患又は病状を発症するリスクのある対象は、AGT関連疾患又は病状を発症する対照リスクと比較して、AGT関連疾患又は病状を発症する可能性が高くなる対象である。本発明の一部の実施形態において、リスクのレベルは、リスクの対照レベルと比較して統計学的に有意である。リスクのある対象としては、例えば:既存の疾患若しくは遺伝的異常のない対照対象よりも、AGT関連疾患又は病状をその対象が発症しやすくなる、既存の疾患及び/又は遺伝的異常を有する対象である、又は対象となるだろう対象;AGT関連疾患又は病状の家族歴及び/又は個人歴を有する対象;並びにAGT関連疾患又は病状の治療を以前に受けている対象;が挙げられる。AGT関連疾患又は病状に対象が罹りやすくなる、既存の疾患及び/又は遺伝的異常は、存在する場合、AGT関連疾患又は病状を発症する可能性が高くなることと関連することが以前に決定されている疾患又は遺伝的異常であり得ることは理解されたい。
【0163】
AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、個々の対象の病状に基づいて対象に投与され得ることを理解されたい。例えば、対象に提供される健康管理によって、対象から採取した試料中で測定されるAGTレベルが評価され得て、且つ本発明のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を投与することによって、対象のAGTレベルを低減することが望ましいかどうかが決定され得る。非制限的な例において、血液又は血清試料などの生体試料は、対象から採取され、対象のAGTレベルが試料において決定され得る。AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を対象に投与し、投与後に対象から血液又は血清試料を採取し、試料を使用してAGTレベルを決定し、対象の投与前(以前の)試料と、その結果を比較する。投与前レベルと比較される、その後の試料中の対象のAGTレベルの減少は、対象のAGTレベルの低減における、投与されたAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の有効性を示す。非制限的な一例において、たとえ対象が、本明細書に開示の障害などAGT関連障害と診断されていないとしても、血圧は関連障害の生理学的特徴とみなされ得る。健康管理の提供者は、本発明の投与されたAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の有効性の尺度として、対象の血圧の変化をモニターすることができる。
【0164】
本発明の方法の特定の実施形態は、対象におけるAGT関連疾患又は病状の1つ又は複数の生理学的特徴の変化の評価に少なくとも一部基づいて、本発明のdsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を対象に投与することを含む。例えば、本発明の一部の実施形態において、対象に投与される、本発明のdsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の作用を決定し、用いて、対象に続いて投与される本発明のdsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の量を調節するのを助けることができる。非制限的な一例において、本発明のdsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は対象に投与され、対象の血圧が投与後に決定され、且つその決定されたレベルに少なくとも一部基づいて、対象の血圧を下げる、又はさらに下げるなど、投与剤の生理学的作用を高めるために、より多くの量のdsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤が必要か否かが決定される。別の非制限的な例において、本発明のdsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤が対象に投与され、対象の血圧が投与後に決定され、且つその決定されたレベルに少なくとも一部基づいて、より少ない量のdsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を投与することが予想される。
【0165】
したがって、本発明の一部の実施形態は、対象に続いて投与される本発明のdsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の量を調節するために、対象の治療前からの1つ又は複数の生理学的特徴の変化を評価することを含む。本発明の方法の一部の実施形態は、AGT関連疾患又は病状の生理学的特徴の1、2、3、4、5、6つ又はそれ以上の決定;本発明の投与されたAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の有効性の評価及び/又はモニタリング;並びに任意に、対象におけるAGT関連疾患又は病状を治療するための本発明のdsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の投薬量、投与計画、及び/又は投与頻度のうちの1つ又は複数を調節するための、決定された結果の使用;を含む。本発明の一部の実施形態において、対象に本発明のdsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を有効量で投与することで望まれる結果は、対象に対して決定された以前の血圧と比較して、対象の血圧が低下すること、又は正常血圧範囲内の血圧となることである。
【0166】
本明細書で使用される、AGT関連疾患又は病状に関して使用される場合に、「治療」、「治療的」又は「治療された」という用語は、AGT関連疾患又は病状を発症する対象の可能性を下げる予防的治療を意味し得て、且つAGT関連疾患若しくは病状を解消するため、又はAGT関連疾患若しくは病状のレベルを下げるため、AGT関連疾患若しくは病状がより重症となることを防ぐため、且つ/又は対象においてAGTポリペプチド活性を低減する治療を受けていない対象と比較して、対象におけるAGT関連疾患若しくは病状の進行を遅くするために、対象がAGT関連疾患若しくは病状を発症した後の治療も意味し得る。
【0167】
本発明の作用剤、組成物、及び方法の特定の実施形態を、AGT遺伝子発現を阻害するために用いることができる。AGT遺伝子の発現に関して、本明細書で使用される、「阻害する」、「サイレンス(silence)」、「低減」、「ダウンレギュレート」及び「ノックダウン」という用語は、AGT遺伝子から転写されたRNAの対照レベル、発現されたAGTの活性の対照レベル、又はmRNAから翻訳されたAGTの対照レベルそれぞれと比較して、本発明のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤に細胞、細胞のグループ、組織、器官、又は対象を曝露した(例えばそれで処理した)場合に、例えば以下の:AGT遺伝子が転写される細胞、細胞のグループ、組織、器官、又は対象において、遺伝子から転写されるRNAのレベル、発現されたAGTの活性のレベル、及びmRNAから翻訳されたAGTポリペプチド、タンパク質又はタンパク質サブユニットのレベルが低減されること;のうちの1つ又は複数によってAGT遺伝子の発現を改変することを意味する。一部の実施形態において、その対照レベルは、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤に曝露されていない(例えば、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤で処置されていない)細胞、組織、器官又は対象におけるレベルである。
【0168】
投与方法
AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の様々な投与経路が本発明の方法で使用され得る。特定の送達様式の選択は、治療される具体的な状態及び治療有効性に必要な投薬量に少なくとも一部依存する。一般に、本発明の方法は、医学的に許容可能ないずれかの投与形式を用いて実施され得て、臨床的に容認できない副作用を生じることなく、AGT関連疾患又は病状に対して有効な治療レベルをもたらす、いずれかの様式を意味する。本発明の一部の実施形態において、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、経口、経腸的、経粘膜、皮下、及び/又は非経口経路によって投与され得る。「非経口」という用語は、皮下、静脈内、髄腔内、筋肉内、腹腔内及び胸骨内注射又は注入技術を含む。他の経路としては、限定されないが、経鼻(例えば、経鼻胃管による)、経皮、経腟、経直腸、舌下、及び吸入が挙げられる。本発明の送達経路としては、髄腔内、脳室内、又は頭蓋内送達が挙げられる。本発明の一部の実施形態において、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、緩効性マトリックス中に置かれ、対象にマトリックスを配置することによって投与することができる。本発明の一部の態様において、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、特異的な細胞又は細胞器官を標的化する送達剤で被覆されたナノ粒子を用いて、対象の細胞に送達され得る。様々な送達様式、方法、及び試薬が当技術分野で公知である。送達方法及び送達剤の非制限的な例が本明細書における他の箇所に提供される。本発明の一部の態様において、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤に関して「送達」という用語は、1つ又は複数の「裸の」AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の配列を細胞又は対象に投与することを意味し得る。本発明の特定の態様において、「送達」とは、トランスフェクションによって細胞又は対象に投与すること、AGT dsRNA剤若しくはAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を含む細胞を送達すること、或いは細胞及び/又は対象に、AGT dsRNA剤若しくはAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤をコードするベクターを送達することを意味する。トランスフェクションを用いたAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の送達は、細胞及び/又は対象へのベクターの投与を含み得る。
【0169】
本発明の一部の方法において、1種又は複数種のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、薬剤として許容される濃度で塩、緩衝剤、保存剤、適合性の担体、アジュバント、及び任意に治療成分を一般に含有し得る、製剤(preparation)の形で、或いは薬剤として許容される溶液で投与され得る。本発明の一部の実施形態において、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、同時投与用の別の治療薬と共に製剤化することができる。本発明の方法に従って、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は医薬組成物の形態で投与することができる。通常、医薬組成物は、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤と、任意に薬剤として許容される担体とを含む。薬剤として許容される担体は当業者によく知られている。本明細書で使用される、薬剤として許容される担体とは、有効成分の生物活性の有効性(例えば、細胞又は対象においてAGT遺伝子発現を阻害する、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の能力)を妨げない非毒性物質を意味する。治療的用途のためのdsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を投与及び送達する種々の方法が当技術分野で公知であり、本発明の方法において使用することができる。
【0170】
薬剤として許容される担体としては、希釈剤、充填剤、塩、緩衝剤、安定剤、可溶化剤及び当技術分野で公知の他の物質が挙げられる。例示的な薬剤として許容される担体は、米国特許第5,211,657号明細書に記述されており、他の担体は当業者には公知である。かかる製剤は一般に、塩、緩衝剤、保存剤、適合性の担体、及び任意に他の治療薬を含有し得る。医薬品において使用される場合、塩は、薬剤として許容されるべきであるが、薬剤として許容されない塩は、その薬剤として許容される塩の調製のために便利に使用することができ、本発明の範囲から除外されない。かかる薬理学的な、及び薬剤として許容される塩としては、限定されないが、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等から調製される塩が挙げられる。さらに、薬剤として許容される塩は、ナトリウム、カリウム若しくはカルシウム塩などのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩として調製され得る。
【0171】
本発明の方法の一部の実施形態は、1種又は複数種のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を組織に直接、投与することを含む。一部の実施形態において、化合物が投与される組織は、AGT関連疾患若しくは病状が存在するか、又は起こる可能性がある組織であり、その非制限的な例は肝臓又は腎臓である。直接的な組織薬物送達は、直接的な注射又は他の手段によって達成することができる。経口的に送達される多くの化合物は肝臓及び腎臓に自然に入り、通過し、本発明の治療方法の一部の実施形態は、1種又は複数種のAGT dsRNA剤を対象に経口投与することを含む。単独で、又は他の治療薬と組み合わせて、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を1回投与することができ、或いは複数回投与することができる。複数回投与する場合、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、異なる経路によって投与してもよい。例えば、制限することを意図しないが、最初の(又は最初数回の)投与は皮下投与され得て、1回又は複数回の追加の投与は経口及び/又は全身投与であり得る。
【0172】
AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を全身投与することが望まれる本発明の実施形態に関して、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、注射による、例えば、ボーラス注入又は持続注入による非経口投与用に製剤化され得る。注射可能な製剤は、保存剤が添加された、又は添加されていない、アンプル又は複数回量容器などの単位剤形で存在し得る。AGT dsRNA剤製剤(医薬組成物としても知られる)は、オイル若しくは水性担体中の懸濁液、溶液又はエマルジョンの形態をとり得て、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含有し得る。
非経口投与用の剤形としては、滅菌水溶液又は非水溶液、懸濁液及びエマルジョンが挙げられる。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。水性担体としては、水、アルコール/水溶液、エマルジョン又は懸濁液、例えば生理食塩水及び緩衝培地が挙げられる。非経口的担体としては、塩化ナトリウム溶液、リンガーブドウ糖溶液、ブドウ糖及び塩化ナトリウム溶液、乳酸加リンガー溶液、又は固定油が挙げられる。静脈内賦形剤としては、液体及び栄養サプリメント、電解質サプリメント(リンガーブドウ糖溶液をベースとする溶液など)が挙げられる。保存剤及び抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガス等の他の添加剤も存在し得る。静脈内投与などの投与の他の形態によって、用量が少なくなる。初回用量での対象の反応が不適切である場合、患者の耐性によって許容される程度に、より多い用量が投与され得る(又は異なり、より局所的な送達経路によって有効に用量が増加され得る)。1種又は複数種のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の適切な全身若しくは局所的レベルを達成するために、且つAGTタンパク質活性の適切な低減を達成するために、1日に複数回の投与を必要に応じて用いることができる。
【0173】
他の実施形態において、本発明の方法は、生体適合性微粒子、ナノ粒子、又は対象などのレシピエントにおける埋め込みに適したインプラントなど、送達担体の使用を含む。この方法に従って使用され得る例示的な生分解性植込錠は、国際公開第95/24929号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)に記述されており、生体高分子を含ませるための生体適合性、生分解性マトリックスが説明される。
【0174】
対象に1種又は複数種のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を送達するために、非生分解性及び生分解性ポリマーマトリックスの両方を本発明の方法において使用することができる。一部の実施形態において、マトリックスは生分解性であることができる。マトリックスポリマーは天然又は合成ポリマーであることができる。ポリマーは、放出が望まれる期間、通常、およそ数時間から1年又はそれ以上の期間に基づいて選択され得る。通常、数時間から3か月ないし12か月の範囲の期間にわたる放出が利用可能である。ポリマーは任意に、ヒドロゲルの形態をとり、水中でその重量の約90%までを吸収することができ、任意に多価イオン又は他のポリマーでさらに架橋される。
【0175】
通常、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、本発明の一部の実施形態において、生分解性植込錠を使用して、ポリマーマトリックスの拡散又は分解によって送達され得る。この目的のための例示的な合成ポリマーは当技術分野でよく知られている。生分解性ポリマー及び非生分解性ポリマーを使用して、当技術分野で公知の方法を用いてAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を送達することができる。AGT関連疾患又は病状の治療のため、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を送達するために、生体崩壊性(bioerodible)ヒドロゲルなどの生体接着剤ポリマー(H.S.Sawhney,C.P.Pathak and J.A.Hubellin Macromolecules,1993,26,581-587)も使用することができる。他の適切な送達システムとしては、持効性、遅延放出、又は徐放性送達システムが挙げられる。かかるシステムは、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の反復投与を避け、それによって対象及び健康管理専門家に対する利便性が改善され得る。放出送達システムの多くの種類が利用可能であり、且つ当業者には知られている(例えば、米国特許第5,075,109号明細書、米国特許第4,452,775号明細書、米国特許第4,675,189号明細書、米国特許第5,736,152号明細書、米国特許第3,854,480号明細書、米国特許第5,133,974号明細書、及び米国特許第5,407,686号明細書参照)。さらに、ポンプ式ハードウェア送達システムが利用可能であり、その一部が植込みにも適している。
【0176】
長期徐放性植込錠の使用は、再発性のAGT関連疾患又は病状を発症している対象及びリスクのある対象の予防的治療に適している。本明細書で使用される、長期間放出とは、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の治療的レベルを、少なくとも10日間まで、20日間、30日間、60日間、90日間、6か月間、1年間、又はそれ以上の間、送達するように構成及び配置された植込錠を意味する。長期徐放性植込錠は当業者にはよく知られており、上述の放出システムの一部を含む。
【0177】
所望の純度を有する分子又は化合物を任意の薬剤として許容される担体、賦形剤又は安定剤[Remington’s Pharmaceutical Sciences 21st edition(2006)]と混合することによって、AGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤の治療製剤を凍結乾燥調製物又は水溶液の形態で貯蔵用に製造し、使用することができる。許容可能な担体、賦形剤又は安定剤は、用いられる用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、且つ:リン酸、クエン酸及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンなどの酸化防止剤;保存剤(例えば、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブタノール及びベンジルアルコール、又はメチル若しくはプロピルパラベンなどのパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール);低分子量(約10個未満の残基)ペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジンなどのアミノ酸;単糖、二糖及びグルコース、マンノース又はデキストリンなどの他の炭水化物、;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、亜鉛-タンパク質複合体);及び/又はTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0178】
細胞、対象及び対照
本発明の方法は、細胞、組織、器官及び/又は対象と共に使用することができる。本発明の一部の態様において、対象は、ヒト又は脊椎動物哺乳動物、限定されないが、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、マウス、ラット、及びサルなどの霊長類などである。したがって、本発明は、ヒト及び非ヒト対象におけるAGT関連疾患又は病状を治療するために使用され得る。本発明の一部の態様において、対象は家畜、動物園の動物、家畜化、又は非家畜化動物であり得て、本発明の方法は、獣医学的予防及び治療法において使用され得る。本発明の一部の実施形態において、対象はヒトであり、且つ本発明の方法は、ヒトの予防的療法及び治療法において使用することができる。
【0179】
本発明が適用され得る、対象の非制限的な例は、「高AGT発現レベル」とも呼ばれる、望ましいAGT発現及び/又は活性レベルよりも高いレベルを伴う疾患又は病状と診断された、有する疑いがある、或いは罹患するリスクがある対象である。AGT発現及び/又は活性の望ましいレベルよりも高いレベルを伴う疾患及び病状の非制限的な例は、本明細書における他の箇所で記載されている。本発明の方法は、治療の時点で、疾患又は病状に罹患していると診断されている対象、望ましいAGT発現及び/又は活性より高いレベルを伴う対象、又は望ましいAGT発現及び/又は活性レベルよりも高いレベルを伴う疾患若しくは病状のリスクがあるとみなされる対象に適用され得る。本発明の一部の態様において、AGT発現及び/又は活性の望ましいレベルよりも高いレベルを伴う疾患又は病状は、急性疾患又は病状であり;本発明の特定の態様において、AGT発現及び/又は活性の望ましいレベルよりも高いレベルを伴う疾患又は病状は、慢性疾患又は病状である。
【0180】
非制限的な例において、本発明のAGT dsRNA剤は、高血圧症、例えば本態性高血圧、二次性高血圧、高血圧緊急症(悪性高血圧症及び加速型高血圧症、急性高血圧症、妊娠関連性高血圧症、及び治療抵抗性高血圧など)と診断された患者に投与される。本発明の方法は治療の時点で、疾患若しくは病状を有すると診断されている、又は疾患若しくは病状を発症している、又は発症するリスクがあると見なされる、対象に適用され得る。
【0181】
別の非制限的な例において、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の活性化によって起こる、若しくはそれと関連する疾患又は障害、或いはRAASが不活性化される疾患又は障害に応じてその症状若しくは進行を治療するために、本発明のAGT dsRNA剤が投与される。「アンギオテンシノゲン関連疾患」という用語は、AGTの発現の低減から利益を得る、疾患、障害又は病状を含む。かかる疾患は一般に、高血圧を伴う。アンギオテンシノゲン関連疾患の非制限的な例としては、高血圧症、例えば、境界型高血圧(高血圧前症としても知られる)、本態性高血圧(本態性高血圧又は特発性高血圧症としても知られる)、二次性高血圧(非特発性高血圧症とも呼ばれる)、孤立性収縮期又は拡張期高血圧、妊娠関連性高血圧症(ego、子癇前症、子癇、及び分娩後子癇前症)、糖尿病性高血圧症、治療抵抗性高血圧、難治性高血圧、発作性高血圧、腎血管性高血圧症(腎臓高血圧症とも呼ばれる)、ゴールドブラット高血圧症、高眼圧、緑内障、肺高血圧症、門脈圧亢進、全身性静脈性高血圧、収縮期高血圧、不安定性高血圧症、高血圧性心疾患、高血圧性腎症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、血管疾患(末梢血管疾患など)、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、慢性心不全、心筋症、糖尿病性心筋症、糸球体硬化症、大動脈縮窄症、大動脈瘤、心室繊維化、睡眠時無呼吸、心不全(例えば、左心室収縮期機能不全)、心筋梗塞、アンギナ、脳卒中、腎疾患(例えば、任意に妊娠のセッティングでの慢性腎疾患又は糖尿病性腎症)、腎不全(例えば、慢性腎不全)、認知障害(例えば、アルツハイマー病)及び全身性硬化症(例えば、強皮症腎)が挙げられる。特定の実施形態において、AGT関連障害としては、子宮内発育遅延(IUGR)又は胎児発育遅延が挙げられる。
【0182】
本発明を適用することができる細胞は、試験管内、生体内、及び生体外細胞である細胞を含む。その細胞は、対象中、培養物中及び/又は懸濁液中、或いは他の適切ないずれかの状態又は条件にあり得る。本発明の方法を適用することができる細胞は:肝臓細胞、肝細胞、心臓細胞、膵臓細胞、心血管細胞、腎臓細胞又はヒト及び非ヒト哺乳動物細胞などの他のタイプの脊椎動物細胞であり得る。本発明の特定の態様において、本発明の方法を適用することができる細胞は、患部細胞であることが分かっていない健康な正常細胞である。本発明の特定の実施形態において、本発明の方法及び組成物は、肝臓、肝細胞、心臓細胞、膵臓細胞、心血管細胞、及び/又は腎臓細胞の細胞に適用される。本発明の特定の態様において、対照細胞は正常細胞であるが、疾患又は病状を有する処置細胞の結果を、疾患又は病状を有する未処置細胞と比較した場合など、特定の環境において、疾患又は病状を有する細胞は対照細胞としても使用され得ることは理解されたい。
【0183】
本発明の方法に従って、AGTポリペプチド活性のレベルを決定し、AGTポリペプチド活性の対照レベルと比較することができる。対照は、多くの形態を取り得る所定の値であり得る。それは、中央値又は平均値などの単一のカットオフ値であることができる。例えば、AGTポリペプチド及び/又はAGTポリペプチド活性の正常レベルを有する群において、且つAGTポリペプチド及び/又はAGTポリペプチド活性のレベルの増加を有する群において、群を比較することに基づいて確立され得る。比較群の別の非制限的な例は、疾患若しくは病状の1つ又は複数の症状又は診断のない母集団に対する、AGT関連疾患若しくは病状の1つ又は複数の症状又は診断を有する母集団、或いは本発明のsiRNA治療が施されていない対象の群に対する、本発明のsiRNA治療が施された対象の群であり得る。通常、対照は、適切な年齢群における外見上健康な正常な個体又は外見上健康な正常な細胞に基づき得る。所定の値の他に、本発明による対照は、実験材料と並行して試験される材料の試料であり得ることは理解されよう。例としては、実験試料と並行して試験するための製造によって産生された対照集団又は対照試料からの試料が挙げられる。本発明の一部の実施形態において、対照は、本発明のAGT dsRNA剤に曝露されていない、又は本発明のAGT dsRNA剤で処置されていない細胞又は対象を含み得て、その場合には、AGTポリペプチド及び/又はAGTポリペプチド活性の対照レベルは、本発明のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤に曝露された細胞又は対象におけるAGTポリペプチド及び/又はAGTポリペプチド活性のレベルと比較され得る。
【0184】
本発明の一部の実施形態において、対照レベルは、対象について決定されたAGTポリペプチドレベルであり得て、同じ対象について異なる時点で決定されたAGTポリペプチドレベルが比較される。非制限的な一例において、AGTのレベルは、本発明のAGT治療を受けていない対象から採取された生体試料おいて決定される。一部の実施形態において、生体試料は血清試料である。対象から採取された試料において決定されるAGTポリペプチドレベルは、対象に対してベースライン又は対照値としての役割を果たし得る。本発明の治療方法においてAGT dsRNA剤を1回又は複数回投与した後、1つ又は複数の追加の血清試料が対象から採取され得て、その後の1つ又は複数の試料におけるAGTポリペプチドレベルは、対象の対照/ベースラインレベルと比較され得る。かかる比較を用いて、対象におけるAGT関連疾患若しくは病状の発症、進行、又は後退を評価することができる。例えば、対象に本発明のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を投与した後に同じ対象から採取されたレベルよりも高い、対象から採取したベースライン試料におけるAGTポリペプチドのレベルは、AGT関連疾患又は病状の後退を表し、AGT関連疾患又は病状の治療における、投与された本発明のAGT dsRNA剤の有効性を示す。
【0185】
本発明の特定の態様において、対象に対して決定されるAGTポリペプチド及び/又はAGTポリペプチド活性レベルのうちの1つ又は複数は、同じ対象におけるAGTポリペプチド及び/又はAGT活性レベルの後の比較のための対照としての役割を果たし得て、それによって、対象における「ベースライン」AGTポリペプチド活性からの変化の評価が可能となる。したがって、初期値が対象に対して対照レベルとして使用される場合、初期AGTポリペプチドレベル及び/又は初期AGTポリペプチド活性レベルを用いて、その対象におけるAGTポリペプチド及び/又はAGTポリペプチド活性のレベルを低減する、本発明の方法及び化合物の能力が示され、且つ/或いは決定され得る。
【0186】
本発明の方法を用いて、本発明のAGT dsRNA剤及び/又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤が対象に投与され得る。かかるdsRNAi剤は、例えば、表1に示す二重鎖AD00051~AD00122-19-2、AD00163-3、AV01227~AVAV01257、及びAV01711を含む。一部の実施形態において、好ましいdsRNAi剤としては、例えば、二重鎖AD00158、AD00163、AD00163-3、AD00159、AD00290、AD00300又はAD00122が挙げられる。他の実施形態において、好ましいdsRNAi剤としては、例えば、AD00158-1、AD00158-2、AD00163-1、AD00159-1、又はAD00300-1が挙げられる。一部の他の実施形態において、かかるdsRNAi剤としては、二重鎖バリアント、例えば、二重鎖AD00158、AD00163、AD00163-3、AD00159、AD00290、AD00300又はAD00122のバリアントが挙げられる。本発明の投与及び治療の有効性は、以前の時点で対象から採取された血清試料中のAGTポリペプチドの投与前レベルと、又は非曝露対照レベル(例えば、対照血清試料中のAGTポリペプチドのレベル)と比較して評価され得る。投与及び治療された場合に、対象から採取された血清試料中のAGTポリペプチドのレベルは、少なくとも0.5%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上低減される。AGTポリペプチドのレベルとAGTポリペプチド活性のレベルの両方がAGT遺伝子発現のレベルに関連することが理解される。本発明の方法の特定の実施形態は、AGT遺伝子発現の阻害に有効な量で本発明のAGT dsRNA及び/又はAGTアンチセンス剤を対象に投与することを含み、それによって対象におけるAGTポリペプチドのレベルが低減され、且つAGTポリペプチド活性のレベルが低減される。
【0187】
本発明の一部の実施形態は、1つ又は複数の対象から採取された1つ又は複数の生体試料中のAGTポリペプチドの有無、及び/又は量(本明細書においてレベルと呼ばれる)を決定することを含む。この決定を用いて、本発明の治療方法の有効性が評価され得る。例えば、本発明の方法及び組成物を用いて、本発明のAGT dsRNA剤及び/又はAGTアンチセンス剤の投与で予め治療された対象から採取された生体試料中のAGTポリペプチドのレベルが決定され得る。投与及び治療後の血清試料中のAGTポリペプチドレベルの低減は、以前の時点で対象から採取された血清試料中のAGTポリペプチドの予備投与レベルと比較して、又は非曝露対照レベル(例えば、対照血清試料中のAGTポリペプチドレベル)と比較して、少なくとも0.5%、1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上であり、対象に与えられた治療の有効性のレベルが示される。
【0188】
本発明の一部の実施形態において、対象に対して決定されるAGT関連疾患又は病状の生理学的特徴が対照結果として使用され得て、異なる時点での同じ対象の生理学的特徴の決定が、対照結果と比較される。非制限的な一例において、血圧(及び/又はAGT疾患若しくは病状の他の生理学的特徴)は、本発明のAGT治療が全く施されていない対象から測定され、それをベースライン又は対照値として対象に使用することができる。本発明の治療方法において対象にAGT dsRNA剤を1回又は複数回投与した後、血圧が測定され、対象の対照/ベースラインレベルそれぞれと比較される。かかる比較を用いて、対象におけるAGT関連疾患若しくは病状の発症、進行、又は後退を評価することができる。例えば、対象に本発明のAGT dsRNA剤又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を投与した後に同じ対象から測定された血圧よりも高い、対象から得たベースライン血圧は、AGT関連疾患又は障害の後退を表し、AGT関連疾患又は病状の治療における、本発明のAGT dsRNA剤を投与する有効性が証明される。
【0189】
本発明の一部の態様において、AGT関連疾患又は障害の1つ又は複数の生理学的特徴について対象に対して決定された値は、同じ対象の生理学的特徴の後の比較のための対照値としての役割を果たし得て、対象の「ベースライン」の生理学的特徴の変化を評価することが可能となる。したがって、個体において初期の生理学的プロファイルを得て、その対象の対照として測定される初期の生理学的プロファイルを測定し、且つ本発明の方法及び化合物を使用して、個体におけるAGTポリペプチドのレベル及び/又はAGTポリペプチドの活性を低減する効果を決定することが可能である。本発明の方法を用いて、本発明のAGT dsRNA剤及び/又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤は、AGT疾患又は病状の治療に有効な量で対象に投与することができる。本発明の投与及び治療の有効性は、AGT疾患又は病状の1つ又は複数の生理学的特徴の変化を決定することによって評価することができる。非制限的な一例において、対象の血圧は、以前の時点で対象から得た血圧と比較して、又は非曝露対照血圧と比較した場合に、対象の血圧が正常範囲内になるまで、少なくとも0.5mmHg、1mmHg、2mmHg、3mmHg、4mmHg、5mmHg、6mmHg、7mmHg、8mmHg、9mmHg、10mmHg、11mmHg、12mmHg、13mmHg、14mmHg、15mmHg、16mmHg、17mmHg、18mmHg、19mmHg、20mmHg又はそれ以上低減される。
【0190】
本発明の一部の実施形態は、限定されないが:(1)対象の血圧を測定すること;(2)1つ又は複数の対象から採取された1つ又は複数の生体試料の生理学的特徴を評価すること;(3)対象の身体的検査;などの方法を用いて、AGT関連疾患若しくは病状の生理学的特徴の有無、及び/又は変化を決定することを含む。この決定は、本発明の治療方法の有効性を評価するために使用され得る。
【0191】
キット
1種又は複数種のAGT dsRNA剤及び/又はAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤と、本発明の方法でのその使用のための説明書と、を収容するキットもまた本発明の範囲内である。本発明のキットは、AGT関連疾患又は病状の治療において有用なAGT dsRNA剤、AGTセンスポリヌクレオチド、及びAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤のうちの1つ又は複数を含み得る。1つ又は複数のAGT dsRNA剤、AGTセンスポリヌクレオチド、及びAGTアンチセンスポリヌクレオチド剤を収容するキットは、本発明の治療方法において使用するために製造することができる。本発明のキットの成分は、水性媒体で、又は凍結乾燥状態でパッケージされ得る。本発明のキットは、1種又は複数種の容器手段又は一連の容器手段(試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、シリンジ等)に密封するために分けられた担体を含み得る。第1容器手段又は一連の容器手段は、1種又は複数種の化合物、例えばAGT dsRNA剤及び/又はAGTセンス若しくはアンチセンスポリヌクレオチド剤を含有し得る。第2容器手段又は一連の容器手段は、本発明の治療方法の実施形態において投与されるAGT dsRNA及び/又はAGTアンチセンスポリヌクレオチドの一部としてその中に含まれ得る、標的化剤、標識化剤、又は送達剤等を含有し得る。
【0192】
本発明のキットは、説明書も備え得る。説明書は通常、書面形式であり、キットによって具体化される治療を実施するため、且つその治療に基づく決断をするためのガイドラインを提供する。
【0193】
以下の実施例は、本発明の実施の具体的な例を説明するために提供され、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。本発明は様々な組成物及び方法に適用可能であることは明らかであるだろう。
【実施例】
【0194】
実施例1.RNAi剤の合成
以下の基本手順に従って、上記の表2~4に示すAGT RNAi剤二重鎖を合成した:
ホスホルアミダイト化学に基づく確立した固相合成を用いて、siRNAセンス及びアンチセンス鎖配列をオリゴヌクレオチドシンセサイザーで合成した。オリゴヌクレオチド鎖の増殖(propagation)は、4段階サイクル:脱保護、縮合、キャップ化、及び各ヌクレオチドの付加のための酸化又は硫化工程を用いて達成された。多孔性ガラス(CPG,1000Å)製の固体担体で合成を実施した。モノマーホスホルアミダイトを供給元から購入した。GalNAcリガンドクラスター(非制限的な例としてGLPA1及びGLPA2)を有するホスホルアミダイトを本明細書の実施例2~3の手順に従って合成した。生体外(in vitro)スクリーニングに使用されるsiRNA(表2)については、2μmolスケールで合成を実施し;生体内(in vivo)試験用のsiRNA(表3、4)については、5μmol以上のスケールで合成を行った。GalNAcリガンド(制限的な例としてGLO-0)がセンス鎖の3’末端に結合される場合には、GalNAcリガンドがそれに結合されるCPG固体担体が使用された。GalNAcリガンド(非制限的な例としてGLS-1又はGLS-2)がセンス鎖の5’末端に結合される場合には、GalNAcホスホルアミダイト(非制限的な例としてGLPA1又はGLPA2)が、最終的なカップリング反応に使用された。3%ジクロロメタン中のトリクロロ酢酸(TCA)が、4,4’-ジメトキシトリチル保護基(DMT)の脱保護に使用された。5-エチルチオ-1H-テトラゾールが活性化剤として使用された。THF/Py/H2O中のI2及びピリジン/MeCN中のフェニルアセチルジスルフィド(PADS)がそれぞれ、酸化反応及び硫化反応に使用された。最終的な固相合成工程後、固体担体に結合したオリゴマーが切断され、体積1:1の40重量%メチルアミン水溶液及び28%水酸化アンモニウム溶液で処理することによって、保護基が除去された。生体外スクリーニング用のsiRNAを合成するために、粗混合物を濃縮した。残存する固体を1.0M NaOAcに溶解し、氷冷EtOHを添加して、ナトリウム塩として一本鎖生成物を沈殿させ、さらに精製することなくアニーリングに使用した。生体内試験のためのsiRNAを合成するために、粗製一本鎖生成物をイオンペア逆相HPLC(IP-RP-HPLC)によってさらに精製した。1.0M NaOAcに溶解し、氷冷EtOHを添加して沈殿させることによって、IP-RP-HPLCからの精製一本鎖オリゴヌクレオチド生成物をナトリウム塩に変換した。センス及びアンチセンス鎖オリゴヌクレオチドを水中の等モルの補完(complementation)によってアニーリングし、二本鎖siRNA生成物を形成し、それを凍結乾燥させて、綿毛状の白色固体を得た。
【0195】
実施例2.中間体A及び中間体Bの製造
以下のスキーム1に示すように、ジクロロメタン(DCM)中で市販の五酢酸ガラクトサミンをトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TMSOTf)で処理することによって、中間体Aを合成した。これに続いて、Cbz保護2-(2-アミノエトキシ)エタン-1-オールでグリコシル化して、化合物IIを得た。水素化によってCbz保護基を除去し、トリフルオロ酢酸(TFA)塩として中間体Aを得た。Cbz保護2-(2-(2-アミノエトキシ)エトキシ)エタン-1-オールが出発原料としての役割をしたことを除いて、同じスキームで中間体Bを合成した。
【化28】
【0196】
スキーム1
1,2-ジクロロエタン(DCE)100mL中の化合物I(20.0g,51.4mmol)の溶液に、TMSOTf(17.1g,77.2mmol)を添加した。得られた反応溶液を60℃で2時間攪拌し、次いで25℃で1時間攪拌した。Cbz保護2-(2-アミノエトキシ)エタン-1-オール(13.5g,56.5mmol)をDCE(100mL)に溶解し、4Å粉末分子ふるい(10g)上で乾燥させ、N2雰囲気下にて0℃で上記の反応溶液に一滴ずつ添加した。得られた反応混合物を25℃で16時間、N2雰囲気下にて攪拌した。反応混合物を濾過し、飽和NaHCO3(200mL)、水(200mL)及び飽和ブライン(200mL)で洗浄した。有機層を無水Na2SO4上で乾燥させ、減圧下にて濾過及び濃縮して、粗生成物を得て、それを2-メチルテトラヒドロフラン/ヘプタン(5/3,v/v,1.80L)で2時間粉砕した。得られた混合物を濾過し、乾燥させて、白色の固体として化合物II(15.0g,収率50.3%)を得た。
【0197】
乾燥及びアルゴンパージされた水素化フラスコに、10%Pd/C(1.50g)を注意深く添加し、続いてテトラヒドロフラン(THF)10mL、次いでTHF(300ml)中の化合物II(15.0g,26.4mmol)の溶液及びTFA(トリフルオロ酢酸,3.00g,26.4mmol)を添加した。得られた混合物を脱気し、H2で3回パージし、H2(45psi)雰囲気下にて25℃で3時間攪拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC,溶媒:DCM:MeOH=10:1)によって、化合物IIの完全な消費が示された。反応混合物を減圧下にて濾過し、濃縮した。残留物を無水DCM(500mL)に溶解し、濃縮した。プロセスを3回繰り返して、中間体Aを泡沫状白色固体(14.0g,収率96.5%)として得た。1H NMR(400MHz DMSO-d6):δ ppm 7.90(d,J=9.29Hz,1H),7.78(br s,3H),5.23(d,J=3.26Hz,1H),4.98(dd,J=11.29,3.26Hz,1H),4.56(d,J=8.53Hz,1H),3.98-4.07(m,3H),3.79-3.93(m,2H),3.55-3.66(m,5H),2.98(br d,J=4.77Hz,2H),2.11(s,3H),2.00(s,3H),1.90(s,3H),1.76(s,3H).
【0198】
中間体Aの合成と同様な手順を用いて、中間体Bを合成した。1H NMR(400MHz DMSO-d6):δ ppm 7.90(br d,J=9.03Hz,4H),5.21(d,J=3.51Hz,1H),4.97(dd,J=11.1Hz,1H),4.54(d,J=8.53Hz,1H),3.98 -4.06(m,3H),3.88(dt,J=10.9Hz,1H),3.76-3.83(m,1H),3.49-3.61(m,9H),2.97(br s,2H),2.10(s,3H),1.99(s,3H),1.88(s,3H),1.78(s,3H).C20H34N2O11の質量計算値:478.22;実測値:479.3(M+H+).
【0199】
実施例3.GalNAcリガンドクラスターホスホルアミダイトGLPA1、GLPA2及びGLPA15の合成
以下のスキーム2に従って、GLPAl及びGLPA2を調製した。ベンジル保護プロパン-1,3-ジアミンから開始して、2-ブロモ酢酸t-ブチルでのアルキル化によって、トリエステル化合物Iを得た。ベンジル保護基の水素化による除去によって、第2級アミン化合物IIを得た。6-ヒドロキシカプロン酸でのアミドのカップリングによって、化合物IIIを得た。次いで、ジオキサン中のHClでの処理で、t-ブチル保護基を除去し、三酸化合物IVを得た。三酸化合物IVと中間体A又は中間体Bとのアミドカップリングが実施され、化合物Va又はVbが得られた。2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロリドホスホロアミダイト及び触媒量の1H-テトラゾールを用いて、化合物Va又はVbをリン酸化することによって、ホスホルアミダイトGLPA1又はGLPA2を合成した。
【化29】
【0200】
スキーム2
ジメチルホルムアミド(DMF,100mL)中のN-ベンジル-1,3-プロパンジアミン(5.00g,30.4mmol)を添加し、2-ブロモ酢酸t-ブチル(23.7g,121mmol)に添加し、続いて、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA,23.61g,182mmol)を一滴ずつ添加した。得られた反応混合物を25~30℃で16時間攪拌した。LCMSから、N-ベンジル-1,3-プロパンジアミンの完全な消費が示された。反応混合物をH2O(500mL)で希釈し、EtOAc(500mL×2)で抽出した。合わせた有機成分(organics)を飽和ブライン(1L)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濃縮し、減圧下にて濃縮して、粗生成物を得て、それをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(勾配:石油エーテル:酢酸エチル20:1~5:1)によって精製した。化合物Iを無色のオイルとして得た(12.1g,収率78.4%)。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ ppm 7.26-7.40(m,5H),3.79(s,2H),3.43(s,4H),3.21(s,2H),2.72(dt,J=16.9,7.34Hz,4H),1.70(quin,J=7.2Hz,2H),1.44-1.50(m,27H).
【0201】
乾燥した水素化ボトルをアルゴンで3回パージした。Pd/C(200mg,10%)を添加し、続いてMeOH(5mL)、次いでMeOH(5mL)中の化合物I(1.00g,1.97mmol)を添加した。反応混合物を真空下で脱気し、H2で再充填した。このプロセスを3回繰り返した。25℃でH2(15psi)雰囲気下にて、混合物を12時間攪拌した。LCMSから、化合物Iが完全に消費されたことが示された。反応混合物を減圧下にてN2雰囲気下にて濾過した。濾液を減圧下で濃縮して、黄色のオイルとして化合物II(655mg,収率79.7%)を得て、それをさらに精製することなく、次の工程に使用した。1H NMR(400MHz,CDCl3):δ ppm 3.44(s,4H),3.31(s,2H),2.78(t,J=7.1Hz,2H),2.68(t,J=6.9Hz,2H),1.88(br s,1H),1.69(quin,J=7.03Hz,2H),1.44-1.50(s,27H).
【0202】
DMF(6mL)中の化合物II(655mg,1.57mmol)、6-ヒドロキシカプロン酸(249mg,1.89mmol)、DIEA(1.02g,7.86mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI,904mg,4.72mmol)及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,637mg,4.72mmol)の混合物を脱気し、N2で3回パージし、次いでN2雰囲気下にて25℃で3時間攪拌した。LCMSから、目的の生成物が示された。反応混合物をH2O(10mL)で希釈し、EtOAc20mL(10mL×2)で抽出した。有機成分を合わせ、飽和ブライン(20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、粗生成物を得て、それをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(勾配:石油エーテル:酢酸エチル5:1~1:1)によって精製し、化合物III(650mg,収率77.8%)を黄色のオイルとして得た1H NMR(400MHz,CDCl3):δ ppm 3.90-3.95(s,2H),3.63(t,J=6.40Hz,2H),3.38-3.45(m,6H),2.72(t,J=6.65Hz,2H),2.40(t,J=7.28Hz,2H),1.55-1.75(m,8H),1.44(s,27H).C27H50N2O8の質量計算値:530.36;実測値:531.3(M+H+).
【0203】
HCl/ジオキサン(2M,55mL)中の化合物III(5.5g,10.3mmol)の混合物を25℃で3時間攪拌した。LCMSから、化合物IIIの完全な消費が示された。反応混合物を濾過し、EtOAc(50mL)で洗浄し、減圧下で乾燥させて、粗生成物を得た。これをCH3CN(50mL)に溶解し、揮発性成分を真空下にて除去した。このプロセスを3回繰り返して、化合物IVを白色の固体として得た(2.05g,収率54.5%)。1H NMR(400MHz,D2O):δ ppm 4.21(s,1H),4.07(d,J=4.5Hz,4H),3.99(s,1H),3.45-3.52(m,3H),3.42(t,J=6.5Hz,1H),3.32-3.38(m,1H),3.24-3.31(m,1H),2.37(t,J=7.4Hz,1H),2.24(t,J=7.4Hz,1H),1.99(dt,J=15.5,7.53Hz,1H),1.85-1.94(m,1H),1.85-1.94(m,1H),1.39-1.56(m,4H),1.19-1.31(m,2H).
【0204】
混合物を25℃でN2雰囲気下にて3時間攪拌する前に、DMF(10mL)(496mg,3.67mmol)中の化合物IV(500mg,1.05mmol)、中間体A(2.02g,3.67mmol)、DIEA(813mg,6.30mmol)、EDCI(704mg,3.67mmol)及びHOBtの混合物を脱気し、N2で3回パージした。LCMSから、目的の生成物が示された。H2O(10mL)を添加することによって、反応混合物をクエンチし、DCM(10mL×2)で抽出した。合わせた有機成分を10%クエン酸(20mL)で抽出した。水相を飽和NaHCO3溶液で中和し、DCM(10mL×2)で再抽出した。有機成分を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下にて濾過し、濃縮して化合物Vaを白色の固体として得た(570mg,0.281mmol,26.8%収率)。1H NMR:(400MHz,CDCl3)ppm δ 7.84-8.12(m,3H),6.85-7.15(m,2H),6.66-6.81(m,1H),5.36(br d,J=2.7Hz,3H),5.11-5.27(m,3H),4.63-4.85(m,3H),3.90-4.25(m,18H),3.37-3.75(m,28H),3.15-3.28(m,4H),2.64(br d,J=6.53Hz,2H),2.30-2.46(m,2H),2.13-2.18(m,9H),2.05(s,9H),1.94-2.03(m,18H),1.68(br s,2H),1.45(br s,2H),1.12(br t,J=7.0Hz,2H).
【0205】
無水DCM(5mL)中の化合物Va(260mg,0.161mmol)の溶液に、ジイソプロピルアンモニウムテトラゾリド(30.3mg,0.177mmol)に続いて、3-ビス(ジイソプロピルアミノ)ホスファニルオキシプロパンニトリル(194mg,0.645mmol)をN2下にて周囲温度で一滴ずつ添加した。反応混合物を20~25℃で2時間攪拌した。LCMSから、化合物Vaが完全に消費されたことが示された。-20℃に冷却した後、0℃のブライン/飽和NaHCO3(1:1,5mL)の攪拌溶液に反応混合物を添加した。1分間攪拌した後、DCM(5mL)を添加し、層形成が起こった。有機層をブライン/飽和NaHCO3水溶液(1:1,5mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、約1mLの体積に濃縮した。攪拌しながら、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)20mLに、残存する溶液を一滴ずつ添加した。この結果、白色の固体が沈殿した。混合物を遠心し、固体を収集した。固体をDCM1mLに再溶解し、MTBE(20mL)を添加することによって沈殿させた。遠心によって、固体を再び単離した。回収された固体を無水CH3CNに溶解し、揮発性成分を除去した。このプロセスをあと2回繰り返して、GalNAcリガンドホスホルアミダイト化合物GLPA1(153mg,84.4μmol)を白色の固体として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3):ppm δ 7.71-8.06(m,2H),6.60-7.06(m,3H),5.37(br d,J=3.0Hz,3H),5.18-5.32(m,3H),4.70-4.86(m,3H),3.92-4.25(m,18H),3.42-3.85(m,30H),3.25(m,4H),2.59-2.75(m,4H),2.27-2.44(m,2H),2.15-2.20(s,9H)2.07(s,9H),1.96-2.03(m,18H),1.65(br s,4H),1.44(br d,J=7.28Hz,2H),1.14-1.24(m,12H).31P NMR(CDCl3):ppm δ 147.15.
【0206】
中間体-Bが使用されたことを除いては、同じ手順を用いて、GalNAcリガンドホスホルアミダイト化合物GLPA2を合成した。1H NMR(400MHz,CDCl3):ppm δ 7.94-8.18(m,1H),7.69(br s,1H),6.66-7.10(m,3H),5.35(d,J=3.5Hz,3H),5.07-5.25(m,3H),4.76-4.86(m,3H),4.01-4.31(m,10H),3.91-4.01(m,8H),3.74-3.86(m,4H),3.52-3.71(m,30H),3.42-3.50(m,6H),3.15-3.25(m,4H),2.52-2.70(m,4H),2.22-2.45(m,2H),2.15-2.22(s,9H),2.06(s,9H),1.95-2.03(m,18H),1.77(br s,2H),1.58-1.66(m,4H),1.40(m,2H),1.08-1.24(m,12H).31P NMR(CDCl3):ppm δ 147.12.
【0207】
GLPA15を製造するために、以下のスキーム3に従った。
【化30】
ジクロロメタン(2.75L)中の中間体化合物II(275g,660mmol,1.00当量)の溶液に、トリエチルアミン(133g,1.32mol,2.00当量)を添加し、続いてCbz-Cl(169g,990mmol,1.50当量)を一滴ずつ添加した。反応溶液を25℃で2時間攪拌し、その結果、LCMSから、化合物IIが完全に変換されたことが示された。反応溶液を飽和NaHCO
3(800mL)溶液及び飽和ブライン(500mL)で順に洗浄し、有機相を無水Na
2SO
4で乾燥させた。濾過して乾燥剤を除去した後、濾液を乾燥状態まで濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO
2,PE/EA=100/1~5/1)にかけて、無色のオイルとして化合物5(290g,527mmol,収率75.7%)を得た。
1H NMR(400MHz in DMSO-d
6):δ ppm 7.23-7.40(m,5H),5.00-5.12(m,2H),3.86-3.95(m,2H),3.23-3.39(m,6H),2.55-2.67(m,2H),1.56-1.64(m,2H),1.31-1.46(m,27H).MS(ESI)[M+H]
+ m/z:551.6.
【0208】
化合物5(145g,263mmol,1.00当量)に、HCOOH(2.9L)を添加し、溶液を60℃で12時間攪拌し、その結果、LCMSから、化合物5の完全な変換が示された。トルエン1.5L及びアセトニトリルトルエンを反応溶液に添加し、それを減圧下で約500mLに濃縮した。次いで、約500mLに濃縮する前に、トルエン/アセトニトリル(1:1,約750mL)を添加した。これに続いて、乾燥状態まで濃縮する前に、アセトニトリル(約1000mL)を添加した。粗生成物を60℃のアセトニトリル700mLで2時間微粉砕し、次いで濾過した。固体を回収し、乾燥させて、白色の固体、化合物6(105g,定量的)を得た。1H NMR(400MHz in DMSO-d6):δ ppm 7.26-7.40(m,5H),5.02-5.10(m,2H),3.89-4.00(m,2H),3.36-3.45(m,4H),3.24-3.34(m,2H),2.59-2.72(m,2H),1.40(s,2H).MS(ESI)[M+H]+ m/z:383.0.
【0209】
化合物6(100g,261mmol.)及び中間体A(502g,915.mmol,3.50当量)のDMF(1.0L)溶液に、TBTU(327g,1.02mol,3.90当量)及びトリエチルアミン(212g,2.09mol,8.00当量)を添加した。反応を25℃で1時間行い、その結果、LCMSから、化合物6の完全な変換が示された。反応溶液を水4000mLに添加し、メチルt-ブチルエーテル(2000mL2回)で抽出して、不純物を除去した。残存する水相をジクロロメタン(3000mL2回)で抽出した。ジクロロメタン相を10%クエン酸水溶液(2000mL,2回洗浄で分割された)飽和NaHCO3(2.0L,2回洗浄で分割された)、及び飽和ブライン(2.0L)で連続的に洗浄し、次いで無水Na2SO4で乾燥させた。濾液を減圧下で濾過及び濃縮して、白色の固体、化合物8(260g,159mmol,収率60.9%)を得た。1H NMR(400MHz in DMSO-d6):δ ppm 7.99-8.08(m,2H),7.93(br d,J=5.50Hz,1H),7.79-7.86(m,3H),7.26-7.39(m,5H),5.22(d,J=3.13Hz,3H),4.95-5.08(m,5H),4.54(br d,J=8.38Hz,3H),4.03(s,9H),3.81-3.93(m,5H),3.76(br d,J=4.88Hz,3H),3.44-3.62(m,10H),3.34-3.43(m,6H),3.24(br d,J=6.13Hz,7H),3.02-3.09(m,4H),2.40-2.47(m,2H),2.10(s,9H),1.99(s,9H),1.89(s,9H),1.77(s,9H),1.57-1.68(m,2H).MS(ESI)[M+H]+ m/z:816.4.
【0210】
乾燥Pd/C(9g)、続いてMeOH(50mL)を注意深く添加してPd/Cを湿らせる前に、2L水素化ケトルをアルゴンで不活性化した。次に、化合物8の溶液(90g,55.1mmol,1.00当量)及びMeOH(850mL)中のトリフルオロ酢酸(6.29g,55.1mmol,1.00当量)をアルゴン雰囲気下にてゆっくりと添加した。混合物を脱気し/H2を3回添加することによって置換して、水素雰囲気を得て、25℃で10時間攪拌した。LCMSから、化合物8の完全な変換が示された。Pd/Cを濾過によって除去し、減圧下にて濾液を濃縮して、化合物9(80g,収率90.2%)を得た。1H NMR(400MHz in DMSO-d6):δ ppm 9.12(br s,2H),8.50(br t,J=5.19Hz,1H),8.10(br t,J=5.50Hz,2H),7.85-7.91(m,3H),5.22(d,J=3.25Hz,3H),4.95-5.01(m,3H),4.52-4.58(m,3H),4.03(s,9H),3.84-3.93(m,3H),3.75-3.83(m,3H),3.39-3.61(m,16H),3.23-3.32(m,6H),3.15-3.18(m,3H),2.97-3.05(m,2H),2.54-2.61(m,2H),2.10(s,9H),2.00(s,9H),1.89(s,9H),1.77-1.80(m,9H),1.70-1.76(m,2H).MS(ESI)[M+H]+ m/z:749.3.
【0211】
化合物9(270g,168mmol,1.00当量)のジクロロメタン(2.7L)溶液及びグルタル酸無水物(28.6g,252mmol,1.50当量)に、トリエチルアミン(67.8g,672mmol,4.00当量)を添加し、溶液を25℃で1時間攪拌した。LCMSによって、化合物9が化合物11に完全に変換されたことが分かった。4-ヒドロキシピペリジン(42.4g,420mmol,2.50当量)及びTBTU(107g,335mmol,2.00当量)を反応溶液に添加し、25℃で攪拌を1時間続けた。LCMSから、化合物11の完全な変換が示された。飽和NH4Cl(3.0L)をゆっくりと添加することによって、反応をクエンチし、層を分離し、水相をジクロロメタン(2×1000mL)で抽出し、前の有機相と合わせた。合わせた有機相を飽和NaHCO3(水溶液)及び飽和ブライン(3.0L)の1:1混合物で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、減圧下にて濾過し、濃縮した。ジクロロメタン1.5Lに粗生成物を溶解し、メチルt-ブチルエーテル(7.5L)に一滴ずつ添加した。一滴ずつ添加する間、半透明の白色沈殿物が徐々に形成した。沈殿物を真空下にて濾過し、固体を回収し、真空下で乾燥させて、化合物13を白色の固体として得た(207g,収率72.8%)。1H NMR(400MHz in DMSO-d6):δ ppm 8.05(br d,J=2.00Hz,2H),7.82(br d,J=7.38Hz,3H),5.21(br s,3H),4.98(br d,J=10.26Hz,3H),4.72(br s,1H),4.54(br d,J=7.88Hz,3H),4.03(br s,9H),3.74-3.94(m,9H),3.45-3.71(m,12H),3.40(br s,6H),3.24(br s,7H),3.07(br d,J=14.13Hz,5H),2.91-3.01(m,1H),2.24-2.44(m,5H),2.20(br s,1H),2.10(s,9H),1.96-2.04(m,9H),1.89(br s,9H),1.74-1.81(m,9H),1.51-1.73(m,6H),1.07-1.36(m,3H).MS(ESI)[M+H]+ m/z:848.0.
【0212】
ジクロロメタン(2.0L)中の化合物13(200g,118mmol,1.00当量)及びテトラゾールジイソプロピルアンモニウム(8.08g,47.2mmol,0.40当量)の溶液に、3-ビス(ジイソプロピルアミノ)ホスファニルオキシプロパンニトリル(53.3g,177mmol,1.50当量)を添加した。反応溶液を40℃で2時間攪拌し、その結果、LCMSによって、化合物13の完全な変換が示された。飽和NaHCO3及び飽和ブライン(2.0L)の1:1混合物で反応溶液を洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させた。濾液を濃縮した後に得られた粗生成物をジクロロメタン(1.2L)に溶解し、攪拌されたメチルt-ブチルエーテル(6.0L)に一滴ずつ添加した。懸濁液を濾過し、濾過ケークをt-ブチルエーテルですすいだ。固体を回収し、真空下で乾燥させた。生成物をジクロロメタン(1.0L)に溶解し、乾燥状態まで濃縮した。この作業を4回繰り返して、残存するt-ブチルエーテルを除去し、GLPA15(164g,収率73.3%)を得た。1H NMR(400MHz in DMSO-d6):δ ppm 8.05(br d,J=6.50Hz,2H),7.81(br d,J=9.01Hz,3H),5.22(d,J=3.25Hz,3H),4.98(dd,J=11.26,3.25Hz,3H),4.55(br d,J=8.50Hz,3H),4.03(s,9H),3.64-3.97(m,12H),3.55-3.63(m,6H),3.50(br s,5H),3.40(br d,J=6.13Hz,6H),3.17-3.30(m,9H),3.07(br d,J=14.26Hz,4H),2.76(t,J=5.82Hz,2H),2.18-2.47(m,6H),2.10(s,9H),1.99(s,9H),1.89(s,9H),1.78(s,9H),1.52-1.74(m,6H),1.12-1.19(m,12H).31P NMR(DMSO-d6):ppm δ 145.25.MS(ESI)[M+H]+ m/z:1895.7.
【0213】
一部の研究において、センス鎖の5’末端に、GalNAc(本明細書においてGalNAc送達化合物とも呼ばれる)を含む標的化基を結合する方法であって、センス鎖の5’末端にそれを結合するための、オリゴヌクレオチド鎖伸長(つまり、センス鎖の5’末端へのヌクレオチドの付加)に使用されるプロセスなどの合成プロセスを用いた固相合成の最終カップリング工程におけるGalNAcホスホルアミダイト(GLPA1)の使用を含む方法が提供される。
【0214】
一部の研究において、センス鎖の3’末端にGalNAc含有標的化基を結合する方法は、GLO-n含有固体担体(CPG)の使用を含む。一部の研究において、センス鎖の3’末端にGalNAc含有標的化基を結合する方法は、エステル結合を介してCPG固体担体にGalNAc標的化基を連結すること、センス鎖の合成中に、GalNAc標的化基が結合された、得られたCPGを使用することを含み、その結果、センス鎖の3’末端に結合されたGalNAc標的化基が得られる。他のGalNAcホスホルアミダイト化合物(GLPAn)は同様に、本明細書における方法と類似の、又は当技術分野でよく知られている方法を用いて、合理的に相当する中間体の使用後に得ることができ、且つ標的化基としてsiRNA二重鎖の適切な位置に連結され得る。
【0215】
実施例4.AGT siRNA二重鎖の生体外スクリーニング
Hep3B細胞をトリプシン処理し、適切な密度に調整し、次いで96ウェルプレートにシーディングした。シーディングと同時に、製造元の推奨に従って、リポフェクタミンRNAiMax(Invitrogen-13778-150)を用いて試験siRNA又は対照siRNAを細胞にトランスフェクトした。siRNAを2通りの濃度(0.2nMないし1.0nM)にて三つ組(triplicate)で試験し、4.6pM~10nMの連続3倍希釈で8通りの濃度で対照siRNAを三つ組で試験した。
【0216】
トランスフェクションから24時間後に、培地を除去し、RNA抽出のために細胞を収集した。マニュアルに従ってTRIzol(商標)試薬(Invitrogen-15596018)を使用して、全RNAを抽出した。
【0217】
マニュアルに従ってPrimeScript(商標)RT試薬キット及びgDNA Eraser(Perfect Real Time)(TaKaRa-RR047A)を使用して、cDNAを合成した。AGT cDNAをqPCRによって検出した。GAPDH cDNAは、内部対照と平行して検出された。PCRは以下の通りに実施された:95℃で30秒、続いて95℃で10秒と60℃で30秒の間の40サイクル。
【0218】
データ解析
各試料における発現が、比較Ct(ΔΔCt)法;を用いて相対的定量化(RQ)によって決定された;この方法では、標的遺伝子とハウスキーピング遺伝子(GAPDH)とのCt差(ΔCt)が測定される。
【0219】
等式を以下に示す。
ΔCT=標的遺伝子平均Ct-GAPDH平均Ct
ΔΔCT=ΔCT(試料)-ΔCT(ランダムな対照又はリポフェクタミンRNAiMax対照)
標的遺伝子mRNAの相対的定量化=2(-ΔΔCT)
阻害パーセント=(対照の相対的定量化-試料の相対的定量化)/対照の相対的定量化×100%
【0220】
【0221】
【0222】
実施例5.AGT siRNA二重鎖の生体内(In vivo)試験
AGT siRNAの生体内活性を評価するために、ヒトAGT遺伝子をコードするAAVに感染したマウスを使用した(マウス4匹/群)。siRNAの投与から14日後に、ヒトAGT遺伝子をコードするアデノ随伴ウイルス8(AAV8)ベクターの1×1011ウイルス粒子を静脈内注射することによって、メスC57BL/6Jマウスを感染させた。0日目に、AGT siRNA剤又はPBS2.5mg/kg又は3mg/kgを単回用量で皮下注射した。0日目、siRNAの投与前及び7日目の最後に、血液試料を採取した。製造元の推奨プロトコル(IBL America,ヒトアンギオテンシノゲンELISAキット)に従って、ELISAアッセイによってヒトAGTタンパク質濃度を測定した。siRN処置群及びPBS処置群の間で、7日目にマウス肝臓におけるヒトAGT mRNAレベル(qPCRによって決定される)又は血漿試料中のヒトAGTタンパク質レベルを比較することによって、ノックダウンパーセンテージを算出した。その結果を表6~9に示す。
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
実施例6.AGT siRNA二重鎖の生体内試験
AGT siRNAの生体内活性を評価するために、合計15匹のカニクイザル(13~22歳,体重7~9kg)をこの研究にリクルートした。動物3匹それぞれの5群に動物をランダムに分割し、各動物に試験物質2mg/kgを皮下注射し、使用された試験物質は、表4における化合物(AD00158-1、AD00158-2、AD00163-1、AD00159-1、AD00300-1)に相当する。
【0229】
一晩絶食した後、-14日目(投与前)日目、-7日目(投与前)、1日目(投与前)及び投与後8日目、15日目、22日目、29日目、43日目、57日目、64日目、71日目、78日目、85日目及び92日目に血液を採取した。次いで、採取された血液試料を室温で少なくとも30分間放置し、凝固させ、次いで350rpmにて4℃で10分間遠心分離した。回収された血清(およそ1.0mL)を予めラベル付けされた2本のポリプロピレンねじ蓋バイアル(0.5ml/バイアル、1本はELISAアッセイ用、もう一本は後に使用される)に移し、試験するまで、-80℃のフリーザー内で保管した。
【0230】
血清中のAGTタンパク質レベルが、ELISAによって決定された。1日目のサルの血漿中のAGTレベルと比較して残存するパーセンテージを
図1に示す。
【0231】
実施例7.AGT siRNA二重鎖の生体外(In vitro)スクリーニング
生体外での研究を実施例4の方法に従って行い、実験結果を表10に示す。
【0232】
【0233】
実施例8.AAVマウスモデルにおけるAD00163-3の生体内(In vivo)試験:
順応期間後、メスC57BL/6Jマウス12匹を体重による2つの群:モデル(溶媒)群及びAD00163-3(1mg/kg)群にランダムに分けた。1日目に各マウスの尾静脈にAAV-AGTウイルス1×1011vgを注入し、100μL/動物の体積を注入することによって、動物モデルを確立した。15日目に、表4におけるPBS又はAD00163-3を各群におけるマウスに皮下注射によって、体積5mL/kgで投与することによって与えた。15日目の投与前に、各マウスの顎下静脈から血液を採取し、血清試料を遠心分離後に収集した。22日目に、すべてのマウスをCO2で屠殺し、心臓穿刺によって全血を採取し、血清試料を遠心分離後に収集した。製造元の推奨プロトコル(IBL America,ヒトアンギオテンシノゲンELISAキット)に従って、ELISAアッセイによってヒトAGTタンパク質濃度を測定した。siRN処置群及びPBS処置群の間で、7日目にマウス血漿試料中のヒト由来AGTタンパク質レベルを比較することによって、ノックダウンパーセンテージを算出した。そのデータから、AD00163-3(1mg/kg)治療によって、マウス血清中のヒトAGTタンパク質の発現が有意に91%低減され得ることが分かった。
【0234】
実施例9.カニクイザルの自然発症高血圧モデルにおけるAD00163-3の試験
高血圧を有するカニクイザル10匹を2つの群(各群において5匹のサル)にランダムに分割し、表4における生理食塩水又はAD00163-3を10mg/kgで投与した。-6日目及び-2日目(投与前)、並びに投与後2、7、14、21、28及び35日目に血液試料を採取した。血清AGT濃度を製造元の推奨プロトコルに従ってELISAによって測定し、テールカフ(tailcuff)デバイスを使用して血圧を測定した。
図2及び3に示すように、血清AGTの低減(投与後35日目に98%低減)と同時に、AD00163-3 10mg/kgを単回皮下投与した結果、投与後35日目に28mmHgのSBPが有意に低下し(SBPは、147~119mmHgのベースラインに変化した)、同じ期間中の対照群におけるSBPの有意な変化はなかった(SBPは、144~145mmHgのベースラインに変化した)。平均血圧及び拡張期圧(MBP及びDBP)の有意な低下もまた、
図4及び5それぞれに示すように確認された。
【0235】
等価物
本発明のいくつかの実施形態は本明細書において記述及び例証されているが、本明細書に記載の機能を果たし、且つ/或いはその結果及び/又は1つ若しくは複数の利点を得るために、種々の他の手段及び/又は構造を使用してもよいこと、並びにこれらの変更及び/又は修飾それぞれが、本発明の範囲内にあるとみなされることは、当業者には容易に理解されよう。より一般的には、本明細書に記載のすべてのパラメーター、寸法、材料、及び構成は例示的であること、並びに実際のパラメーター、寸法、材料、及び/又は立体配置が本発明の教示が用いられる具体的な用途に応じて異なることは、当業者には容易に理解されよう。通常の実験だけでなく、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態の多くの等価物を用いることは、当業者は認識されよう、又は理解することができるだろう。したがって、上述の実施形態は単なる一例として示されており、且つ添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内で、具体的に記載及び請求される以外に実施され得ることを理解されたい。本発明は、本明細書に記載の個々の各特徴、システム、物品、材料及び/又は方法に関する。さらに、2つ以上のかかる特徴、システム、物品、材料及び/又は方法のいずれかの組合せも、かかる特徴、システム、物品、材料及び/又は方法が互いに矛盾していないことを条件として、本発明の範囲内に含まれる。
【0236】
本明細書において定義及び使用されるすべての定義は、対照辞書定義、参照によって組み込まれる文書における定義、及び/又は定義される用語の通常の意味として理解されるべきである。
【0237】
定量的制限が本明細書及び特許請求の範囲において用いられない場合、これは、それと反対に明確に指定さていない限り「少なくとも1つ」と理解されるべきである。
【0238】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される、「及び/又は」のフレーズは、要素の「一方又は両方」がこのように組み合わされたこと、つまり、かかる要素が特定の場合において、及び他の場合において別々に組み合わされたらしいことを意味すると理解すべきである。「及び/又は」によって具体的に同定される要素に加えて、具体的に同定された要素に関連するか無関係かにかかわらず、それと反対に明確に指定されていない限り、他の要素が任意に存在し得る。
【0239】
本出願に記載又は参照されるすべての参考文献、特許及び特許出願及び出版物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-09-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
一部の実施形態において、dsRNA剤は、式(A):5’-Z1AGCUUGUUUGUGAAACZ2-3’(配列番号656)と0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なるセンス鎖を含み、式中、Z1は、0~15個のヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列であり、且つZ2は、A、U、C、Gの1つから選択されるか、又は存在しない。特定の実施形態において、Z1は、1~4個のヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列である。特定の実施形態において、Z1は、1、2、3、又は4個のヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列である。特定の実施形態において、Z2はAである。特定の実施形態において、Z1は、CACC又はGACCモチーフを含むヌクレオチド配列である。特定の実施形態において、Z1ヌクレオチド配列は、以下のモチーフ:C、AC、UC、GC、CC、ACC、UCC、GCC、CCC、GACC、AACC、UACC、CACC、CGACC、CCGACC、ACCGACC、AACCGACC、CAACCGACC、CCAACCGACC(配列番号657)、UCCAACCGACC(配列番号658)、UUCCAACCGACC(配列番号659)、AUUCCAACCGACC(配列番号660)、AAUUCCAACCGACC(配列番号661)又はGAAUUCCAACCGACC(配列番号662)のうちの1つから選択される。一部の実施形態において、dsRNA剤は、式(B):5’-Z3GUUUCACAAACAAGCUZ4-3’(配列番号663)と、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なるアンチセンス鎖を含み、上記式中、Z3は、A、U、C、Gのうちの1つから選択されるか、又は存在せず、且つZ4は、0~15個のヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列である。特定の実施形態において、Z4は、1~4個のヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列である。特定の実施形態において、Z4は、1、2、3、又は4個のヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列である。特定の実施形態において、Z3はUである。特定の実施形態において、Z4ヌクレオチド配列は、GGUC又はGGUGモチーフを含むヌクレオチド配列から選択される。特定の実施形態において、Z4ヌクレオチド配列は、以下のモチーフ:G、GU、GC、GA、GG、GGU、GGA、GGC、GGG、GGUG、GGUC、GGUU、GGUA、GGUCG、GGUCGG、GGUCGGU、GGUCGGUU、GGUCGGUUG、GGUCGGUUGG(配列番号664)、GGUCGGUUGGA(配列番号665)、GGUCGGUUGGAA(配列番号666)、GGUCGGUUGGAAU(配列番号667)、GGUCGGUUGGAAUU(配列番号668)又はGGUCGGUUGGAAUUC(配列番号669)のうちの1つから選択される。一部の実施形態において、dsRNA剤はセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、そのセンス鎖及びアンチセンス鎖はそれぞれ、本明細書に記載の式(A)及び式(B)と、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なるヌクレオチド配列を含み、任意に標的化リガンドを含む。特定の実施形態において、dsRNA剤のセンス鎖(A)及びアンチセンス鎖(B)はそれぞれ、35個以下のヌクレオチドの長さである。特定の実施形態において、Z1及びZ4ヌクレオチドモチーフは完全に、又は部分的に相補的である。一部の実施形態において、dsRNA剤は、式(A’):5’-Z1’CAGCUUGUUUGUGAAACA-3’(配列番号670)と0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なるセンス鎖を含み、且つ式(B’):5’-UGUUUCACAAACAAGCUGZ4’-3’(配列番号671)と0、1、2又は3ヌクレオチドが異なるアンチセンス鎖を含み、式中、Z1’及びZ4’はそれぞれ独立して、ヌクレオチドモチーフ0~13ヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、Z1’及びZ4’はそれぞれ独立して、ヌクレオチドモチーフ1、2、又は3ヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態において、Z1’ヌクレオチド配列は、以下のモチーフ:A、U、G、C、AC、UC、GC、CC、GAC、AAC、UAC、CAC、CGAC、CCGAC、ACCGAC、AACCGAC、CAACCGAC又はGAAUUCCAACCGAC(配列番号672)のうちの1つから選択される。Z4’ヌクレオチド配列は、以下のモチーフ:U、C、A、G、GU、GA、GC、GG、GUG、GUC、GUU、GUA、GUCG、GUCGG、GUCGGU、GUCGGUU、GUCGGUUG又はGUCGGUUGGAAUUC(配列番号673)のうちの1つから選択される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
一部の実施形態において、dsRNA剤はセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、そのそれぞれが以下に示すヌクレオチド配列:
センス鎖:5’-CACCAGCUUGUUUGUGAAACA-3’(配列番号:522)
アンチセンス鎖:5’-UGUUUCACAACAAGCUGGUG-3’(番号:523);
のうちの1つと、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含む。
一部の実施形態において、dsRNA剤はセンス鎖及びアンチセンス鎖を含み、そのそれぞれが以下に示すヌクレオチド配列:
センス鎖:5’-GCAAAAAGAAUUCCAACCGAA-3’(配列番号87)、
アンチセンス鎖:5’-UUCGGUUGGAAUUCUUUUUGC-3’(配列番号184)
のうちの1つと、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項73
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項73】
式(A):5’-Z
1AGCUUGUUUGUGAAACZ
2-3’
(配列番号656)と0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なるセンス鎖を含み、式中、Z
1が、0~15ヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列であり、且つZ
2が、A、U、C、Gの1つから選択されるか、又は存在しない、請求項1に記載のdsRNA剤。
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項74
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項74】
式(B):5’-Z
3GUUUCACAAACAAGCUZ
4-3’
(配列番号663)と、0、1、2、又は3ヌクレオチドが異なるアンチセンス鎖を含み、式中、Z
3が、A、U、C、Gの1つから選択されるか、又は存在せず、且つZ
4が、0~15ヌクレオチドモチーフを含むヌクレオチド配列である、請求項1に記載のdsRNA剤。
【国際調査報告】